(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】温度で選択可能なFRETカセットシグナル伝達
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6818 20180101AFI20241003BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12Q1/6818 Z ZNA
G01N33/53 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519682
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077243
(87)【国際公開番号】W WO2023056345
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500169900
【氏名又は名称】ジェン-プローブ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ギリ, マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャー, アンクル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ギルダー, アンドリュー エス.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA12
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR14
4B063QR32
4B063QR38
4B063QR56
4B063QS25
4B063QS36
(57)【要約】
核酸分析装置の単一の蛍光検出チャネルのみを使用して温度依存性様式で複数の特異的核酸配列または一塩基多型(すなわち、「SNP」)の存在を検出するのに有用な多重化核酸増幅および検出システム。この技術は、蛍光検出またはモニタリングのために装備された標準的なPCR機器を使用して行うことができる。本開示は、一般に、バイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本開示は、侵襲的切断反応および単一の蛍光検出チャネルを使用して異なる検体核酸を検出および識別するための組成物、方法、キット、およびシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRETカセットレポーターシステムを含む組成物であって、前記組成物が、
(i)5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドであって、
第1のフルオロフォア部分を含む5’フラップ部と、
第1のクエンチャー部分を含むステムループ部と、
切断されたフラップハイブリダイズ配列を含む3’部と、を含み、
前記5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記切断されたフラップハイブリダイズ配列に相補的なカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、前記第1のフルオロフォア部分と前記第1のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成し、
前記切断部位での前記5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断が、前記5’フラップ部および前記第1のフルオロフォア部分を含むカセット切断フラップを産生する、5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチド、並びに
(ii)第2のクエンチャー部分を含むマスキングオリゴヌクレオチドであって、
前記マスキングオリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、前記FRETカセットオリゴヌクレオチドの前記5’フラップ部に特異的にハイブリダイズ可能であり、
前記カセット切断フラップへの前記マスキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、第1の融解ピークを示す第1の融解温度を有する二重鎖を形成し、
前記二重鎖中の前記第1のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、前記第2のクエンチャー部分によって消光される、マスキングオリゴヌクレオチドと
を含む、組成物。
【請求項2】
前記第1のクエンチャー部分および前記第2のクエンチャー部分が互いに同じである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FEN-1エンドヌクレアーゼをさらに含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記FEN-1エンドヌクレアーゼが、熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼが、古細菌生物に由来する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
第1の標的特異的侵襲性オリゴヌクレオチドおよび第1の標的特異的一次プローブオリゴヌクレオチドをさらに含み、
前記第1の標的特異的侵襲性オリゴヌクレオチドおよび前記第1の標的特異的一次プローブオリゴヌクレオチドの各々が、標的核酸にハイブリダイズして、FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成して、一次切断フラップを産生するように構成された配列を含み、
前記一次切断フラップが、前記5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成するように構成されたカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記標的核酸をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、熱安定性DNAポリメラーゼ、および鋳型依存性核酸増幅反応において前記標的核酸を鋳型として使用する前記熱安定性DNAポリメラーゼによって伸長可能な3’末端を有するプライマーをさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(iii)以下:
第2のフルオロフォア部分を含む5’部と、
第3のクエンチャー部分を含むステムループ部と、
第2の切断されたフラップハイブリダイズ配列を含む3’部と
を含む、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドをさらに含み、
前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記第2の切断されたフラップハイブリダイズ配列への第2のカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、前記第2のフルオロフォア部分と前記第3のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成し、
前記切断部位での前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断が、前記第2のフルオロフォア部分を含むカセット切断産物を産生する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドが、5’フラップ部を含む第2の5’フラップFRETカセットであり、前記カセット切断産物が、前記第2のフルオロフォアを含む第2のカセット切断フラップであり、前記組成物が、
(iv)第4のクエンチャー部分を含む第2のマスキングオリゴヌクレオチドであって、
前記第2のマスキングオリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記5’フラップ部に特異的にハイブリダイズ可能であり、
前記第2のカセット切断フラップへの前記第2のマスキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、前記第1の融解温度より高い第2の融解温度を有する第2の二重鎖を形成し、
前記第2の二重鎖中の前記第2のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、前記第4のクエンチャー部分によって消光される、第2のマスキングオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2のカセット切断産物が、5個以下、好ましくは4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヌクレオチドを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のフルオロフォア部分および前記第2のフルオロフォア部分からの発光シグナルが、蛍光モニタリング装置の同じ蛍光検出チャネルにおいて検出可能である、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のフルオロフォア部分および前記第2のフルオロフォア部分が、互いに同じである、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のフルオロフォア部分および前記第2のフルオロフォア部分が、互いに同じではない、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第3のクエンチャー部分および前記第4のクエンチャー部分が互いに同じである、請求項10および12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
反応混合物中の2つの異なるFRETカセットのどちらが切断されて蛍光シグナルを生成したかを決定する方法であって、前記方法は、
(a)切断が起こった場合、第1のFRETカセットおよび第2のFRETカセットの一方または両方を切断して2つの異なる蛍光切断産物を産生するために、前記反応混合物中で多重侵襲的切断反応を実施する工程であって、
前記第1のFRETカセットが、フルオロフォアが付着した第1の5’フラップ部を含み、前記フルオロフォアの付着は、前記多重侵襲的切断反応におけるFEN-1エンドヌクレアーゼによる前記第1のFRETカセットの切断が、前記フルオロフォアを含む第1のカセット切断フラップを産生するように配置され、
前記反応混合物が、前記第1のカセット切断フラップに安定にハイブリダイズして、第1のTmより低い温度で第1の二重鎖を形成するが、前記第1のTmより高い温度では形成しない第1のマスキングオリゴヌクレオチドを含み、前記第1の二重鎖の前記第1のカセット切断フラップの前記フルオロフォアからの蛍光発光が消光され、
前記多重侵襲的切断反応で産生された前記2つの異なる蛍光切断産物の各々が、前記反応混合物中の異なる温度依存性蛍光消光プロファイルを特徴とする、工程と、
(b)前記多重侵襲的切断反応の前記異なる蛍光切断産物によって産生された蛍光を示差的に消光する温度条件下で、蛍光モニタリング装置の単一チャネルを使用して、前記反応混合物中で産生された蛍光シグナルを測定する工程と、
(c)工程(b)の結果から、前記異なるFRETカセットのどれが前記多重侵襲的切断反応において切断されたかを決定する工程と
を含む、方法。
【請求項17】
工程(a)における前記第2のFRETカセットが、切断された場合、蛍光消光をもたらす前記反応混合物中のいかなるマスキングオリゴにもハイブリダイズしない蛍光切断産物を産生する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(c)が、前記第1のTmより低い温度および前記第1のTmより高い温度で測定された蛍光シグナルを比較することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)が、測定された蛍光シグナル間の差を計算することによって蛍光シグナルを比較することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)が、前記第1のTmより低い温度で前記蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、前記第1の二重鎖の前記第1のカセット切断フラップの前記フルオロフォアからの蛍光発光が消光され、
工程(c)が、測定可能な蛍光が工程(b)で検出された場合、前記反応混合物中で前記第2のFRETカセットが切断されたと決定することを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)が、前記第1のTmより低い温度および前記第1のTmより高い温度の各々で前記蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、
工程(c)が、前記第1のTmより高い温度で測定された前記蛍光シグナルが、前記第1のTmより低い温度で測定された前記蛍光シグナルより大きい場合、前記反応混合物中で前記第1のFRETカセットが切断されたと決定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)が、融解/アニーリング曲線を生成するために、温度の関数として前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルのいずれかを測定することを含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)が、前記融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された前記導関数から、前記反応混合物が、前記第1のFRETカセットが前記反応混合物中で切断されたことの指標としての前記第1のTmを特徴とする前記第1の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のFRETカセットが、フルオロフォアが付着した第2の5’フラップ配列を含み、前記フルオロフォアの付着は、前記多重侵襲的切断反応における前記FEN-1エンドヌクレアーゼによる前記第2のFRETカセットの切断が、前記フルオロフォアを含む第2のカセット切断フラップを産生するように配置され、
前記反応混合物が、第2のTmより低い温度で第2の二重鎖を形成するために前記第2のカセット切断フラップにハイブリダイズするが、前記第2のTmより高い温度ではハイブリダイズしない第2のマスキングオリゴを含み、前記第2の二重鎖の前記第2のカセット切断フラップの前記フルオロフォアからの蛍光発光が消光され、
前記第1のTmと前記第2のTmとが、少なくとも5℃異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のTmが、前記第2のTmよりも大きく、
工程(b)が、前記第2のTmより低い温度および前記第1のTmより高い温度で前記蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、
前記工程(c)が、前記第1のTmより高い温度で測定された前記蛍光シグナルが、前記第2のTmより低い温度で測定された前記蛍光シグナルより大きい場合、前記第1のFRETカセットおよび前記第2のFRETカセットの少なくとも一方が前記反応混合物中で切断されたと決定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(b)が、融解/アニーリング曲線を生成するために、温度の関数として前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルのいずれかを測定することを含む、請求項24または25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
工程(c)が、前記融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された前記導関数から、前記反応混合物が、前記第1のFRETカセットが前記反応混合物中で切断されたことの指標としての前記第1のTmを特徴とする前記第1の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)が、前記融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された前記導関数から、前記反応混合物が、前記第2のFRETカセットが前記反応混合物中で切断されたことの指標としての前記第2のTmを特徴とする前記第2の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第1および第2のFRETカセットが、同一のフルオロフォアで標識される、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1および第2のFRETカセットが、同一のフルオロフォアで標識されていない、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
工程(a)における前記多重侵襲的切断反応の前記FEN-1エンドヌクレアーゼが、熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼを含む、請求項16~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程(c)が、ソフトウェアでプログラムされたコンピュータを用いて決定することを含む、請求項16~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
標的核酸を含む試料を分析する方法であって、
(a)反応混合物中で、前記試料の第1の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第1の一次プローブオリゴヌクレオチドおよびFEN-1エンドヌクレアーゼと、前記第1の一次プローブオリゴヌクレオチドが前記第1の標的核酸にハイブリダイズする場合、前記第1の一次プローブが前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて第1の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させる工程であって、
前記第1の一次切断フラップが、前記反応混合物に含まれる第1のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、前記第1のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第1のフルオロフォア部分と第1のクエンチャー部分との間の切断部位で前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、前記第1のフルオロフォア部分を含む第1のカセット切断フラップを放出する侵襲的切断構造を形成し、
第2のクエンチャー部分を含む第1のマスキングオリゴヌクレオチドが、前記第1のカセット切断フラップにハイブリダイズして、前記第1のマスキングオリゴヌクレオチドおよび前記第1のカセット切断フラップの第1のTmより低い温度で二重鎖を形成し、
前記二重鎖の前記第1のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、前記第2のクエンチャー部分によって消光され、
前記第1のTmより高い第2の温度では、前記第1のマスキングオリゴヌクレオチドおよび前記第1のカセット切断フラップは、安定な二重鎖を形成しない、工程と、
(b)前記第2の温度で前記第1のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出する工程と、
(c)以下:
前記第1のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、前記試料は前記第1の標的核酸を含むか、または
工程(b)において前記第1のフルオロフォア部分から放出された蛍光が検出されない場合、前記試料は前記第1の標的核酸を含まない、
のいずれであるかを決定する工程と
を含む、方法。
【請求項34】
工程(a)が、前記反応混合物中で、前記試料の第2の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第2の一次プローブオリゴヌクレオチドおよび前記FEN-1エンドヌクレアーゼと、前記第2の一次プローブオリゴヌクレオチドが前記第2の標的核酸にハイブリダイズする場合、前記第2の一次プローブが前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、前記第1の一次切断フラップとは異なる第2の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させることをさらに含み、
前記第2の一次切断フラップが、前記反応混合物に含まれる第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第2のフルオロフォア部分と第3のクエンチャー部分との間の切断部位で前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、前記第2のフルオロフォア部分を含む第2のカセット切断フラップを放出する侵襲的切断構造を形成し、
第2のTmより低い第3の温度で、第4のクエンチャー部分を含む第2のマスキングオリゴヌクレオチドが、前記第2のカセット切断フラップにハイブリダイズして二重鎖を形成し、
前記二重鎖の前記第2のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、前記第4のクエンチャー部分によって消光され、
前記第2のTmより高い第4の温度では、前記第2のマスキングオリゴヌクレオチドおよび前記第2のカセット切断フラップは、安定な二重鎖を形成せず、
前記第1のTmと前記第2のTmとは、互いに少なくとも5℃異なり、
工程(b)が、前記第4の温度で前記第2のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出することをさらに含み、
工程(c)が、
前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記5’フラップ切断産物の前記第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、前記試料が前記第2の標的核酸を含むこと、または
前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの前記5’フラップ切断産物の前記第2のフルオロフォア部分から放出される蛍光が工程(b)において検出されない場合、前記試料が前記第1の標的核酸を含まないこと
のいずれであるかを決定することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
工程(a)が、前記反応混合物中で、前記試料の第2の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第2の一次プローブオリゴヌクレオチドおよび前記FEN-1エンドヌクレアーゼと、前記第2の一次プローブオリゴヌクレオチドが前記第2の標的核酸にハイブリダイズする場合、前記第2の一次プローブが前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第2の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させることをさらに含み、
前記第2の一次切断フラップが、前記反応混合物に含まれる第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、前記第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第2のフルオロフォア部分と第3のクエンチャー部分との間の切断部位で前記FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、前記第2のフルオロフォア部分を含む切断産物を放出する侵襲的切断構造を形成し、
前記切断産物は、蛍光消光をもたらす前記反応混合物中のいかなるマスキングオリゴヌクレオチドにもハイブリダイズせず、
工程(b)が、前記切断産物の前記第2のフルオロフォア部分から放出される任意の蛍光を検出することをさらに含み、
工程(c)が、
前記第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、前記試料が前記第2の標的核酸を含むこと、または
前記第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出されない場合、前記試料が前記第1の標的核酸を含まないこと、
のいずれであるかを決定することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
工程(b)が、蛍光モニタリングデバイスの単一チャネルを用いて、前記第1および前記第2のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出することを含む、請求項34または請求項35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
工程(b)が、核酸増幅反応が前記反応混合物中で起こっている間に実施され、前記核酸増幅反応の生成物が前記第1の標的核酸および前記第2の標的核酸を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記核酸増幅反応が、熱サイクリングのための工程を含み、前記反応混合物が熱安定性DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
工程(b)が、前記反応混合物の温度が低下してマスキングオリゴヌクレオチドおよび相補的カセット切断フラップのアニーリングを可能にするときに実施される、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1および前記第2のフルオロフォア部分が、互いに同じである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
任意の蛍光を検出する(b)の前記工程が、任意の蛍光を測定することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の温度で蛍光を検出または測定するいずれかの工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1のフルオロフォア部分および前記第2のフルオロフォア部分の両方が、エネルギーセンサデバイスの同じ蛍光検出チャネルにおいて検出可能である、請求項34または35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2のフルオロフォア部分が、前記第1のフルオロフォア部分と同じである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2のフルオロフォア部分が、前記第1のフルオロフォア部分と同じではない、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第2のフルオロフォアからの蛍光が、前記第1の温度で検出および/または測定される、請求項33~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第3のクエンチャー部分が、前記第1のクエンチャー部分および/または前記第2のクエンチャー部分と同じである、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記反応混合物が、標的核酸を増幅するプライマーオリゴヌクレオチドを含み、少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチドが、一次プローブオリゴヌクレオチド並びに標的核酸および/または標的アンプリコンの存在下で侵襲性オリゴヌクレオチドとして作用して、前記熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断される侵襲的切断構造を形成する、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
工程(c)が、ソフトウェアでプログラムされたコンピュータを用いて決定することを含む、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
複数の標的核酸検体のうちのどれが反応混合物中に存在するかを決定するためのシステムであって、前記複数の標的核酸検体のうちの各標的核酸検体が蛍光シグナルによって検出可能であり、前記システムは、
サーモサイクラーと、
前記サーモサイクラーと光学的に連通する蛍光光度計であって、
前記蛍光光度計が、前記サーモサイクラーによる核酸増幅産物の産生を示す蛍光シグナルを単一の光チャネルで測定する、蛍光光度計と、
前記蛍光光度計と通信するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータに、
(a)前記蛍光光度計によって行われた測定から作成された融解/アニーリング曲線データセットを取得させる、
(b)前記融解/アニーリング曲線データセットにおいて、前記反応混合物中の蛍光が最大限消光される温度で第1の蛍光切断産物からの蛍光シグナルを検出することによって、前記反応混合物中に第1の標的核酸が存在すると決定させる、
(c)前記融解/アニーリング曲線データセットから導関数プロットを作成させる、および
(d)前記導関数プロットが第1の二重鎖に特有な特徴を含む場合、前記反応混合物中に第2の標的核酸が存在すると決定させる、
ソフトウェア命令で前記コンピュータがプログラムされ、
ここで、前記第1の二重鎖が、第1のマスキングオリゴヌクレオチドと、前記第2の標的核酸が存在する場合に前記反応混合物中で産生される第2の蛍光切断産物とを含む、
システム。
【請求項51】
前記コンピュータに、
(e)前記導関数プロットが、第2の二重鎖に特有な特徴を含む場合、前記反応混合物中に第3の標的核酸が存在すると決定させる、
ソフトウェア命令で前記コンピュータがプログラムされ、
ここで前記第2の二重鎖が、第2のマスキングオリゴヌクレオチドと、前記第3の標的核酸が存在する場合に前記反応混合物中で産生される第3の蛍光切断産物とを含む、
請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記第1の二重鎖に特有な特徴が、計算された導関数の最大値、最小値、またはゼロ交差点を含む、請求項50または請求項51のいずれかに記載のシステム。
【請求項53】
計算された前記導関数が、計算された一次導関数を含み、
前記第1の二重鎖に特有な特徴が、第1の融解ピークとして、前記融解/アニーリング曲線データセットの計算された一次導関数の第1の最大値を含み、
前記第2の二重鎖に特有な特徴が、第2の融解ピークとして、前記融解/アニーリング曲線データセットの計算された前記一次導関数の第2の最大値を含む、
請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記サーモサイクラー、前記蛍光光度計、および前記コンピュータが全てリアルタイムPCR機器の構成要素である、請求項50~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記コンピュータによって得られた前記融解/アニーリング曲線データセットが、温度の関数として蛍光を示すデータ点を含む、請求項50に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願された米国仮出願第63/250,894号の35U.S.C.§119(e)の下での利益を主張する。この先の出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
ファイルサイズが27,886バイトである、2022年4月16日に作成された「DIA0105-PCT_SEQUENCE_LISTING」と題する、本明細書と共に提出されたコンピュータ可読配列表の本文は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本開示は、一般に、バイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本開示は、侵襲的切断反応および単一の蛍光検出チャネルを使用して異なる検体核酸を検出および識別するための組成物、方法、キット、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
核酸の定量化は、生物学および医学の分野において重要な役割を果たす。例えば、核酸の定量化は、がんの診断および予後、並びに細菌、真菌およびウイルス性病原体によって引き起こされる感染性疾患の診断およびモニタリングに使用される。
【0005】
単一の反応混合物中の複数の核酸検体を検出することには大きな価値がある。実際、いわゆる「多重」検出は、関連する試薬コストを低減しながら、核酸アッセイの価値を大幅に向上させる。しかしながら、異なるアッセイフォーマットは、異なる範囲への多重化能力に対応し、これは、実際的なトレードオフが存在することを意味する。例えば、次世代シーケンシング技術は、膨大な量の情報の取得を可能にするが、その技術は技術的に非常に困難であり、一般に高度に特殊化された機器を必要とする。「侵襲的切断アッセイ」と呼ばれる別の技術は、単一ヌクレオチド相違(「SNP」)のレベルまでの核酸配列検出を可能にし、いくつかの多重アッセイフォーマットに関連して既に使用されている。
【0006】
例えば、Hallらは、米国特許第5,994,069号において、侵襲的切断検出方法に関連して有用な2つの多重化アプローチを記載した。第1に、特定の標的配列(または内部対照)の存在は、蛍光エネルギー移動フォーマットの異なる色素等の異なる検出可能な部分にカップリングした異なるカスケードを引き起こすように設計することができる。最終生成物に対する各特異的標的配列の寄与を集計することができ、核酸配列の混合物に含まれる異なる核酸配列の定量的検出が可能になる。第2の構成では、いくつかの検体のいずれかが試料中に存在するかどうかを決定することが望ましいが、それぞれの正確な正体を知る必要はない。例えば、血液バンクでは、血液試料中に感染因子の宿主のいずれか1つが存在するかどうかを知ることが望ましい。血液は、どの作用物質が存在するかにかかわらず廃棄されるため、異なるプローブによって産生される異なるシグナルは、そのような適用では必要とされず、実際には機密性の理由から望ましくない場合がある。したがって、検体間を区別することが不必要または望ましくない場合、単一の検出可能な標識を使用することができる。
【0007】
他の場所では、Petersonらは、公開された米国特許出願第2018/0163259号A1において、異なる温度および異なる時間で二次侵襲的切断反応を行うことによる異なる核酸検体の検出を記載している。ここで、第1の二次侵襲的切断反応は、第2の二次侵襲的切断反応が始まる時点までに完了する。異なる温度下で異なる時間に反応を行うことにより、単一の多重反応において核酸検体を区別することが可能である。
【0008】
異なるアッセイフォーマットを使用して、Kozlovらは、米国特許第11,034,997号において、タグ付き加水分解プローブを使用した標的核酸の検出および定量化のための多重化リアルタイムPCRを実施する方法を教示している。5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼがタグ部を切断し、プローブの残りの部分を加水分解するため、PCR反応の各サイクルで単一のプローブ切断事象が起こる。タグが、プローブのアニーリング部上のクエンチャーから分離したフルオロフォアを有する場合、蛍光シグナルを生成することができる。標的核酸にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブと会合した蛍光標識は、プライマー伸長(すなわち、重合)反応の1サイクルの間に、プローブの標的相補的部分から切断され得、その後分解される。結果として、シグナル強度の増大は、PCR反応のさらなるサイクルの実施に依存する。同様に、Kozlovらは、「消光分子」(例えば、オリゴ)が、PCRのプライマー伸長反応においてプライマーを伸長するために使用される温度で、切断されていない加水分解プローブのタグ部にハイブリダイズすることを教示している。PCR反応におけるプライマー伸長サイクルの前に、蛍光は、プローブのアニーリング部および消光分子に連結されたクエンチャー部分によって消光される。
既存の核酸多重検出プラットフォームの利用可能性にもかかわらず、自動試験プラットフォームに容易に適合させることができる追加のアプローチが依然として必要とされている。より具体的には、ハードウェアの変更を必要とせずに、展開された試験機器の検出能力を最大化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,994,069号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0163259号明細書
【特許文献3】米国特許第11,034,997号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本明細書では、以下の番号が付された実施形態が提供される。
【0011】
実施形態1は、FRETカセットレポーターシステムを含む組成物であって、組成物が、(i)5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドであって、第1のフルオロフォア部分を含む5’フラップ部と、第1のクエンチャー部分を含むステムループ部と、切断されたフラップハイブリダイズ配列を含む3’部と、を含み、5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列に相補的なカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、第1のフルオロフォア部分と第1のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成し、切断部位での5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断が、5’フラップ部および第1のフルオロフォア部分を含むカセット切断フラップを産生する、5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチド、並びに(ii)第2のクエンチャー部分を含むマスキングオリゴヌクレオチドであって、マスキングオリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、FRETカセットオリゴヌクレオチドの5’フラップ部に特異的にハイブリダイズ可能であり、カセット切断フラップへのマスキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、第1の融解ピークを示す第1の融解温度を有する二重鎖を形成し、二重鎖中の第1のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、第2のクエンチャー部分によって消光される、マスキングオリゴヌクレオチドとを含む、組成物である。
【0012】
実施形態2は、第1のクエンチャー部分および第2のクエンチャー部分が互いに同じである、実施形態1の組成物である。
【0013】
実施形態3は、FEN-1エンドヌクレアーゼをさらに含む、実施形態1または実施形態2のいずれかの組成物である。
【0014】
実施形態4は、FEN-1エンドヌクレアーゼが熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼである、実施形態3の組成物である。
【0015】
実施形態5は、熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼが、古細菌生物に由来する、実施形態4の組成物である。
【0016】
実施形態6は、第1の標的特異的侵襲性オリゴヌクレオチドおよび第1の標的特異的一次プローブオリゴヌクレオチドをさらに含み、第1の標的特異的侵襲性オリゴヌクレオチドおよび第1の標的特異的一次プローブオリゴヌクレオチドの各々が、標的核酸にハイブリダイズして、FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成して、一次切断フラップを産生するように構成された配列を含み、一次切断フラップが、5’フラップFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成するように構成されたカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドである、実施形態1~5のいずれか1つの組成物である。
【0017】
実施形態7は、標的核酸をさらに含む、実施形態6の組成物である。
【0018】
実施形態8は、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、熱安定性DNAポリメラーゼ、および鋳型依存性核酸増幅反応において標的核酸を鋳型として使用する熱安定性DNAポリメラーゼによって伸長可能な3’末端を有するプライマーをさらに含む、実施形態7の組成物である。
【0019】
実施形態9は、(iii)第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドであって、第2のフルオロフォア部分を含む5’部と、第3のクエンチャー部分を含むステムループ部と、第2の切断されたフラップハイブリダイズ配列を含む3’部とをさらに含み、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第2の切断されたフラップハイブリダイズ配列への第2のカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、第2のフルオロフォア部分と第3のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成し、切断部位での第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断が、第2のフルオロフォア部分を含むカセット切断産物を産生する、実施形態1~8のいずれか1つの組成物である。
【0020】
実施形態10は、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドが、5’フラップ部を含む第2の5’フラップFRETカセットであり、カセット切断産物が、第2のフルオロフォアを含む第2のカセット切断フラップであり、組成物が、(iv)第4のクエンチャー部分を含む第2のマスキングオリゴヌクレオチドであって、第2のマスキングオリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの5’フラップ部に特異的にハイブリダイズ可能であり、第2のカセット切断フラップへの第2のマスキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、第1の融解温度より高い第2の融解温度を有する第2の二重鎖を形成し、第2の二重鎖中の第2のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、第4のクエンチャー部分によって消光される、第2のマスキングオリゴヌクレオチドをさらに含む、実施形態9の組成物である。
【0021】
実施形態11は、第2のカセット切断産物が、5個以下、好ましくは4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヌクレオチドを含む、実施形態9の組成物である。
【0022】
実施形態12は、第1のフルオロフォア部分および第2のフルオロフォア部分からの発光シグナルが、蛍光モニタリング装置の同じ蛍光検出チャネルにおいて検出可能である、実施形態9~11のいずれか1つの組成物である。
【0023】
実施形態13は、第1のフルオロフォア部分および第2のフルオロフォア部分が、互いに同じである、実施形態9~12のいずれか1つの組成物である。
【0024】
実施形態14は、第1のフルオロフォア部分および第2のフルオロフォア部分が、互いに同じではない、実施形態9~12のいずれか1つの組成物である。
【0025】
実施形態15は、第3のクエンチャー部分および第4のクエンチャー部分が互いに同じである、実施形態10および12~14のいずれか1つの組成物である。
【0026】
実施形態16は、反応混合物中の2つの異なるFRETカセットのどちらが切断されて蛍光シグナルを生成したかを決定する方法であって、方法が、(a)切断が起こった場合、第1のFRETカセットおよび第2のFRETカセットの一方または両方を切断して2つの異なる蛍光切断産物を産生するために、反応混合物中で多重侵襲的切断反応を実施する工程であって、第1のFRETカセットが、フルオロフォアが付着した第1の5’フラップ部を含み、フルオロフォアの付着は、多重侵襲的切断反応におけるFEN-1エンドヌクレアーゼによる第1のFRETカセットの切断が、フルオロフォアを含む第1のカセット切断フラップを産生するように配置され、反応混合物が、第1のカセット切断フラップに安定にハイブリダイズして、第1のTmより低い温度で第1の二重鎖を形成するが、第1のTmより高い温度では形成しない第1のマスキングオリゴヌクレオチドを含み、第1の二重鎖の第1のカセット切断フラップのフルオロフォアからの蛍光発光が消光され、多重侵襲的切断反応で産生された2つの異なる蛍光切断産物の各々が、反応混合物中の異なる温度依存性蛍光消光プロファイルを特徴とする、工程と、(b)多重侵襲的切断反応の異なる蛍光切断産物によって産生された蛍光を示差的に消光する温度条件下で、蛍光モニタリング装置の単一チャネルを使用して、反応混合物中で産生された蛍光シグナルを測定する工程と、(c)工程(b)の結果から、異なるFRETカセットのどれが多重侵襲的切断反応において切断されたかを決定する工程とを含む、方法である。
【0027】
実施形態17は、工程(a)における第2のFRETカセットが、切断された場合、蛍光消光をもたらす反応混合物中のいかなるマスキングオリゴにもハイブリダイズしない蛍光切断産物を産生する、実施形態16の方法である。
【0028】
実施形態18は、工程(c)が、第1のTmより低い温度および第1のTmより高い温度で測定された蛍光シグナルを比較することを含む、実施形態17の方法である。
【0029】
実施形態19は、工程(c)が、測定された蛍光シグナル間の差を計算することによって蛍光シグナルを比較することを含む、実施形態18の方法である。
【0030】
実施形態20は、工程(b)が、第1のTmより低い温度で蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、第1の二重鎖の第1のカセット切断フラップのフルオロフォアからの蛍光発光が消光され、工程(c)が、測定可能な蛍光が工程(b)で検出された場合、反応混合物中で第2のFRETカセットが切断されたと決定することを含む、実施形態17の方法である。
【0031】
実施形態21は、工程(b)が、第1のTmより低い温度および第1のTmより高い温度の各々で蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、工程(c)が、第1のTmより高い温度で測定された蛍光シグナルが、第1のTmより低い温度で測定された蛍光シグナルより大きい場合、反応混合物中で第1のFRETカセットが切断されたと決定することを含む、実施形態17の方法である。
【0032】
実施形態22は、工程(b)が、融解/アニーリング曲線を生成するために、温度の関数として反応混合物中で産生された蛍光シグナルのいずれかを測定することを含む、実施形態16~21のいずれか1つの方法である。
【0033】
実施形態23は、工程(c)が、融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された導関数から、反応混合物が、第1のFRETカセットが反応混合物中で切断されたことの指標としての第1のTmを特徴とする第1の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、実施形態22の方法である。
【0034】
実施形態24は、第2のFRETカセットが、フルオロフォアが付着した第2の5’フラップ配列を含み、フルオロフォアの付着は、多重侵襲的切断反応におけるFEN-1エンドヌクレアーゼによる第2のFRETカセットの切断が、フルオロフォアを含む第2のカセット切断フラップを産生するように配置され、反応混合物が、第2のTmより低い温度で第2の二重鎖を形成するために第2のカセット切断フラップにハイブリダイズするが、第2のTmより高い温度ではハイブリダイズしない第2のマスキングオリゴを含み、第2の二重鎖の第2のカセット切断フラップのフルオロフォアからの蛍光発光が消光され、第1のTmと第2のTmとが、少なくとも5℃異なる、実施形態16の方法である。
【0035】
実施形態25は、第1のTmが、第2のTmよりも大きく、工程(b)が、第2のTmより低い温度および第1のTmより高い温度で蛍光シグナルのいずれかを測定することを含み、工程(c)が、第1のTmより高い温度で測定された蛍光シグナルが、第2のTmより低い温度で測定された蛍光シグナルより大きい場合、第1のFRETカセットおよび第2のFRETカセットの少なくとも一方が反応混合物中で切断されたと決定することを含む、実施形態24の方法である。
【0036】
実施形態26は、工程(b)が、融解/アニーリング曲線を生成するために、温度の関数として反応混合物中で産生された蛍光シグナルのいずれかを測定することを含む、実施形態24または25のいずれかの方法である。
【0037】
実施形態27は、工程(c)が、融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された導関数から、反応混合物が、第1のFRETカセットが反応混合物中で切断されたことの指標としての第1のTmを特徴とする第1の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、実施形態26の方法である。
【0038】
実施形態28は、工程(c)が、融解/アニーリング曲線の導関数を計算することと、次いで、計算された導関数から、反応混合物が、第2のFRETカセットが反応混合物中で切断されたことの指標としての第2のTmを特徴とする第2の二重鎖を含むかどうかを決定することとを含む、実施形態26の方法である。
【0039】
実施形態29は、第1および第2のFRETカセットが、同一のフルオロフォアで標識される、実施形態16~28のいずれか1つの方法である。
【0040】
実施形態30は、第1および第2のFRETカセットが、同一のフルオロフォアで標識されていない、実施形態16~28のいずれか1つの方法である。
【0041】
実施形態31は、工程(a)における多重侵襲的切断反応のFEN-1エンドヌクレアーゼが、熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼを含む、実施形態16~30のいずれか1つの方法である。
【0042】
実施形態32は、工程(c)が、ソフトウェアでプログラムされたコンピュータを用いて決定することを含む、実施形態16~31のいずれか1つの方法である。
【0043】
実施形態33は、標的核酸を含む試料を分析する方法であって、(a)反応混合物中で、試料の第1の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第1の一次プローブオリゴヌクレオチドおよびFEN-1エンドヌクレアーゼと、第1の一次プローブオリゴヌクレオチドが第1の標的核酸にハイブリダイズする場合、第1の一次プローブがFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて第1の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させる工程であって、第1の一次切断フラップが、反応混合物に含まれる第1のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、第1のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第1のフルオロフォア部分と第1のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第1のフルオロフォア部分を含む第1のカセット切断フラップを放出する侵襲的切断構造を形成し、第2のクエンチャー部分を含む第1のマスキングオリゴヌクレオチドが、第1のカセット切断フラップにハイブリダイズして、第1のマスキングオリゴヌクレオチドおよび第1のカセット切断フラップの第1のTmより低い温度で二重鎖を形成し、二重鎖の第1のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、第2のクエンチャー部分によって消光され、第1のTmより高い第2の温度では、第1のマスキングオリゴヌクレオチドおよび第1のカセット切断フラップは、安定な二重鎖を形成しない、工程と、(b)第2の温度で第1のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出する工程と、(c)第1のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、試料は第1の標的核酸を含み、または工程(b)において第1のフルオロフォア部分から放出された蛍光が検出されない場合、試料は第1の標的核酸を含まない、のいずれであるかを決定する工程とを含む、方法である。
【0044】
実施形態34は、工程(a)が、反応混合物中で、試料の第2の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第2の一次プローブオリゴヌクレオチドおよびFEN-1エンドヌクレアーゼと、第2の一次プローブオリゴヌクレオチドが第2の標的核酸にハイブリダイズする場合、第2の一次プローブがFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第1の一次切断フラップとは異なる第2の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させることをさらに含み、第2の一次切断フラップが、反応混合物に含まれる第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第2のフルオロフォア部分と第3のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第2のフルオロフォア部分を含む第2のカセット切断フラップを放出する侵襲的切断構造を形成し、第2のTmより低い第3の温度で、第4のクエンチャー部分を含む第2のマスキングオリゴヌクレオチドが、第2のカセット切断フラップにハイブリダイズして二重鎖を形成し、二重鎖の第2のフルオロフォア部分からの蛍光発光が、第4のクエンチャー部分によって消光され、第2のTmより高い第4の温度では、第2のマスキングオリゴヌクレオチドおよび第2のカセット切断フラップは、安定な二重鎖を形成せず、第1のTmと第2のTmとは、互いに少なくとも5℃異なり、工程(b)が、第4の温度で第2のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出することをさらに含み、工程(c)が、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの5’フラップ切断産物の第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、試料が第2の標的核酸を含むこと、または第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの5’フラップ切断産物の第2のフルオロフォア部分から放出される蛍光が工程(b)において検出されない場合、試料が第1の標的核酸を含まないことのいずれであるかを決定することをさらに含む、実施形態33の方法である。
【0045】
実施形態35は、工程(a)が、反応混合物中で、試料の第2の標的核酸のいずれかを、それに相補的な配列を含む第2の一次プローブオリゴヌクレオチドおよびFEN-1エンドヌクレアーゼと、第2の一次プローブオリゴヌクレオチドが第2の標的核酸にハイブリダイズする場合、第2の一次プローブがFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第2の一次切断フラップを生成するような条件下で接触させることをさらに含み、第2の一次切断フラップが、反応混合物に含まれる第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズして、第2のFRETカセットオリゴヌクレオチドの第2のフルオロフォア部分と第3のクエンチャー部分との間の切断部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて、第2のフルオロフォア部分を含む切断産物を放出する侵襲的切断構造を形成し、切断産物は、蛍光消光をもたらす反応混合物中のいかなるマスキングオリゴヌクレオチドにもハイブリダイズせず、工程(b)が、切断産物の第2のフルオロフォア部分から放出される任意の蛍光を検出することをさらに含み、工程(c)が、第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出される場合、試料が第2の標的核酸を含むこと、または第2のフルオロフォア部分から放出された蛍光が工程(b)において検出されない場合、試料が第1の標的核酸を含まないこと、のいずれであるかを決定することをさらに含む、実施形態33の方法である。
【0046】
実施形態36は、工程(b)が、蛍光モニタリングデバイスの単一チャネルを用いて、第1および第2のフルオロフォア部分から放出された任意の蛍光を検出することを含む、実施形態34または実施形態35のいずれかの方法である。
【0047】
実施形態37は、工程(b)が、核酸増幅反応が反応混合物中で起こっている間に実施され、核酸増幅反応の生成物が第1の標的核酸および第2の標的核酸を含む、実施形態36の方法である。
【0048】
実施形態38は、核酸増幅反応が、熱サイクリングのための工程を含み、反応混合物が熱安定性DNAポリメラーゼをさらに含む、実施形態37の方法である。
【0049】
実施形態39は、工程(b)が、反応混合物の温度が低下してマスキングオリゴヌクレオチドおよび相補的カセット切断フラップのアニーリングを可能にするときに実施される、実施形態33~36のいずれか1つの方法である。
【0050】
実施形態40は、第1および第2のフルオロフォア部分が、互いに同じである、36の方法である。
【0051】
実施形態41は、任意の蛍光を検出する(b)の工程が、任意の蛍光を測定することを含む、実施形態36の方法である。
【0052】
実施形態42は、第1の温度で蛍光を検出または測定するいずれかの工程をさらに含む、実施形態41の方法である。
【0053】
実施形態43は、第1のフルオロフォア部分および第2のフルオロフォア部分の両方が、エネルギーセンサデバイスの同じ蛍光検出チャネルにおいて検出可能である、実施形態34または35のいずれか1つの方法である。
【0054】
実施形態44は、第2のフルオロフォア部分が、第1のフルオロフォア部分と同じである、実施形態43の方法である。
【0055】
実施形態45は、第2のフルオロフォア部分が、第1のフルオロフォア部分と同じではない、実施形態43の方法である。
【0056】
実施形態46は、第2のフルオロフォアからの蛍光が、第1の温度で検出および/または測定される、実施形態33~43のいずれか1つの方法である。
【0057】
実施形態47は、第3のクエンチャー部分が、第1のクエンチャー部分および/または第2のクエンチャー部分と同じである、実施形態33~44のいずれか1つの方法である。
【0058】
実施形態48は、反応混合物が、標的核酸を増幅するプライマーオリゴヌクレオチドを含み、少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチドが、一次プローブオリゴヌクレオチド並びに標的核酸および/または標的アンプリコンの存在下で侵襲性オリゴヌクレオチドとして作用して、熱安定性FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断される侵襲的切断構造を形成する、実施形態33~47のいずれか1つの方法である。
【0059】
実施形態49は、工程(c)が、ソフトウェアでプログラムされたコンピュータを用いて決定することを含む、実施形態33~48のいずれか1つの方法である。
【0060】
実施形態50は、複数の標的核酸検体のうちのどれが反応混合物中に存在するかを決定するためのシステムであって、複数の標的核酸検体のうちの各標的核酸検体が蛍光シグナルによって検出可能であり、システムが、サーモサイクラーと、サーモサイクラーと光学的に連通する蛍光光度計であって、蛍光光度計が、サーモサイクラーによる核酸増幅産物の産生を示す蛍光シグナルを単一の光チャネルで測定する、蛍光光度計と、蛍光光度計と通信するコンピュータと、を備え、コンピュータに、(a)蛍光光度計によって行われた測定から作成された融解/アニーリング曲線データセットを取得させる、(b)融解/アニーリング曲線データセットにおいて、反応混合物中の蛍光が最大限消光される温度で第1の蛍光切断産物からの蛍光シグナルを検出することによって、反応混合物中に第1の標的核酸が存在すると決定させる、(c)融解/アニーリング曲線データセットから導関数プロットを作成させる、(d)導関数プロットが第1の二重鎖に特有な特徴を含む場合、反応混合物中に第2の標的核酸が存在すると決定させることであって、第1の二重鎖が、第1のマスキングオリゴヌクレオチドと、第2の標的核酸が存在する場合に反応混合物中で産生される第2の蛍光切断産物とを含む、反応混合物中に第2の標的核酸が存在すると決定させる、ソフトウェア命令でコンピュータがプログラムされている、システムである。
【0061】
実施形態51は、コンピュータに、(e)導関数プロットが、第2の二重鎖に特有な特徴を含む場合、反応混合物中に第3の標的核酸が存在すると決定させることであって、第2の二重鎖が、第2のマスキングオリゴヌクレオチドと、第3の標的核酸が存在する場合に反応混合物中で産生される第3の蛍光切断産物とを含む、反応混合物中に第3の標的核酸が存在すると決定させるソフトウェア命令でコンピュータがプログラムされている、実施形態50のシステムである。
【0062】
実施形態52は、第1の二重鎖に特有な特徴が、計算された導関数の最大値、最小値、またはゼロ交差点を含む、実施形態50または実施形態51のシステムである。
【0063】
実施形態53は、計算された導関数が、計算された一次導関数を含み、第1の二重鎖に特有な特徴が、第1の融解ピークとして、融解/アニーリング曲線データセットの計算された一次導関数の第1の最大値を含み、第2の二重鎖に特有な特徴が、第2の融解ピークとして、融解/アニーリング曲線データセットの計算された一次導関数の第2の最大値を含む、実施形態52のシステムである。
【0064】
実施形態54は、サーモサイクラー、蛍光光度計、およびコンピュータが全てリアルタイムPCR機器の構成要素である、実施形態50~53のいずれか1つのシステムである。
【0065】
実施形態55は、コンピュータによって得られた融解/アニーリング曲線データセットが、温度の関数として蛍光を示すデータ点を含む、実施形態50のシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、同じ反応混合物中で連続的に行われる2つの侵襲的切断反応を用いるアッセイの概略図を提供する。一次反応では、「侵襲性オリゴヌクレオチド」(配列番号1)および「一次プローブオリゴ」(配列番号2)(すなわち、5’フラップオリゴヌクレオチド)が「標的鎖」核酸(配列番号3)にハイブリダイズして、FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な侵襲的切断構造を形成して、切断された5’フラップ(「一次切断フラップ」)を放出する(配列番号4)。二次反応では、一次反応からの一次切断フラップが、蛍光色素およびクエンチャー分子で標識されたヘアピンオリゴヌクレオチドであるFRETカセット(「FRETカセット1」)(配列番号5)にハイブリダイズして、フルオロフォア(「HEX」として示される)とクエンチャー(「Q」)との間の部位でFEN-1エンドヌクレアーゼによって切断可能な第2の侵襲的切断構造を形成する。「FRETカセット1」(配列番号5)の切断は、「切断されたFRETカセット1」(配列番号6)を産生し、クエンチャーをフルオロフォアから分離し、その結果、フルオロフォアからの蛍光シグナルを検出することができる。各一次切断フラップは、一連の新しい非切断FRETカセットにハイブリダイズして、さらなる蛍光切断産物を形成することができる。
【0067】
【
図2】
図2は、5’フラップFRETカセットの構造および使用を示す一連の概略図である。
図2Aは、「5’フラップFRETカセット」の一例(配列番号7)の構造を示す。
図2Bは、「一次プローブから切断されたフラップ」(配列番号8)にハイブリダイズした例「5’フラップFRETカセット1」(配列番号7)を示す(すなわち、侵襲性オリゴヌクレオチドとして機能する一次切断フラップ)。
図2Cは、「カセット切断フラップ」(配列番号9)(すなわち、5’フラップFRETカセットから切断された5’フラップ)と相補的な「マスキングオリゴ」(配列番号10)との間の温度依存性相互作用を示す。
【0068】
【
図3】
図3は、3つの異なるFRETカセット(「フラップレスFRETカセット」(配列番号11)、「5’フラップFRETカセット1」(配列番号7)、および「5’フラップFRETカセット2」(配列番号13))の切断によって産生された蛍光シグナルが、温度依存性消光によってどのように区別され得るかを模式的に示す。「標的2一次プローブから切断されたフラップ」(配列番号8)は、「5’フラップFRETカセット1」(配列番号7)にハイブリダイズして酵素依存性切断反応を促進する。「カセット切断フラップ1」(配列番号9)、または「5’フラップFRETカセット1」(配列番号7)から切断された5’フラップは、「マスキングオリゴ1」(配列番号10)にハイブリダイズして、消光した蛍光を示す第1のハイブリッド二重鎖を形成することができる。「標的3一次プローブから切断されたフラップ」(配列番号14)は、「5’フラップFRETカセット2」(配列番号13)にハイブリダイズして酵素依存性切断反応を促進する。「カセット切断フラップ2」(配列番号15)、または「5’フラップFRETカセット2」(配列番号13)から切断された5’フラップは、「マスキングオリゴ2」(配列番号16)にハイブリダイズして、消光した蛍光を示す第2の二重鎖を形成することができる。2つのハイブリッド二重鎖は、固有の融解/アニーリング特性を有するように設計されており、これにより、一方を他方から区別することが可能になる。「フラップレスFRETカセット」(配列番号11)の切断によって産生されたシグナルは、全ての温度条件下で検出可能なままである。
【0069】
【
図4】
図4は、3つ全てのFRETカセットが同じレポーター色素(HEX)で標識されている、フラップレスFRETカセットおよび2つの異なる5’フラップFRETカセットを使用して調製された切断産物の概略図である。異なるFRETカセットは、核酸分析装置の単一の蛍光検出チャネルのみを使用して異なる核酸標的配列の検出を可能にする。図示される実施形態では、温度1は温度2より低い(例えば、温度1は40℃であり得、温度2は50℃であり得る)。標的1の検出は、標的1からのシグナルが全ての温度で検出可能であるように、対応するマスキングオリゴヌクレオチドを有さないフラップレスFRETカセット(例えば、
図3の配列番号11)を使用して行われる。標的2の検出は、「カセット切断フラップ1」(配列番号9)を産生する5’フラップFRETカセット(例えば、
図3の配列番号7)を用いて行い、これを、反応混合物が温度1より低いときに「マスキングオリゴ1」(配列番号10)とのハイブリダイゼーションによってマスクする。温度1より高いが温度2より低い場合、標的1および標的2の両方の検出を反映するシグナルが検出可能である。標的3の検出は、「カセット切断フラップ2」(配列番号15)を産生する5’フラップFRETカセット(例えば、
図3の配列番号13)を用いて行い、これを、反応混合物が温度2より低いときに「マスキングオリゴ2」(配列番号16)とのハイブリダイゼーションによってマスクする。温度2より高い温度では、標的1、2、および3の3つ全てからのシグナルが検出可能である。図示される実施形態では、異なるFRETカセットの切断の検出のために選択された温度は、3つの異なる標的核酸の配列とは無関係である。
【0070】
【
図5】
図5は、HEXチャネルで測定された蛍光をサイクル数の関数として示すグラフの集合を提供する。反応は、実施例1に記載されるように、標的検体A(
図5A)、標的検体B(
図5B)、または標的検体AおよびBを一緒に(
図5C)含む。
【0071】
【
図6】
図6は、実施例2に記載されるように、標的検体A、標的検体B、並びに標的検体AおよびBを一緒に含む反応について、HEXチャネルで検出された蛍光を使用した融解曲線分析を示すグラフである。
【0072】
【
図7】
図7A~
図7Dは、サイクル数および蛍光測定が行われた温度の関数としてHEXチャネルで測定された蛍光を示すグラフの集合を提供する。
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ63℃および39℃で蛍光を測定した場合に、標的検体Bのみを含む反応(5’フラップFRETカセットおよび低温で消光するマスキングオリゴヌクレオチドを使用)について得られた結果を示す。
図7Cおよび
図7Dは、標的検体AおよびBを一緒に含む反応について得られた結果を示し、検体Aを、フラップレスFRETカセット(5’フラップを含まない)を使用して検出し、両方の温度で蛍光を発する生成物を産生し、蛍光をそれぞれ63℃および39℃で測定した。手順を実施例3に記載する。
【0073】
【
図8】
図8は、実施例4に記載されるように、標的検体A、標的検体B、標的検体C、および3つ全ての標的検体の組み合わせを含む反応物についてHEXチャネルで検出された融解曲線分析を示すグラフである。
【0074】
【
図9】
図9は、実施例4に記載されるように、追加の検体の組み合わせについて観察された固有の融解/アニーリング曲線プロファイルを示すグラフを提供する。図の左パネルは、検体Bまたは検体Cのいずれかを増幅した反応の融解/アニーリング曲線の結果を示す。図の右側のパネルは、検体B単独、検体C単独、または検体Bと検体Cの組み合わせを増幅した反応の融解/アニーリング曲線分析結果を示す。
【0075】
【
図10】
図10は、
図9の2つのパネルに示される測定された蛍光データの一次導関数プロットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0076】
定義
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。明細書および特許請求の範囲を通して、以下の用語は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、本明細書に明示的に関連する意味をとる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「一実施形態において」という語句は、同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、本明細書で使用される場合、「別の実施形態において」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らないが、そうであってもよい。したがって、以下に説明するように、本技術の範囲または趣旨から逸脱することなく、本技術の様々な実施形態を容易に組み合わせられ得る。
【0078】
「~に基づく/~に基づいて」という用語は排他的ではなく、文脈上他に明確に指示されない限り、記載されていない追加の要因に基づくことを可能にする。さらに、本明細書全体を通して、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の意味は、複数の言及を含む。「において(in)」の意味は、「その中(in)」および「その上(on)」を含む。
【0079】
本出願の特許請求の範囲で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 USPQ 461,463(CCPA 1976)で論じられているように、特許請求の範囲に記載された発明の特定の材料または工程「並びに基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。例えば、列挙された要素「から本質的になる」組成物は、存在するが、汚染物質が純粋な組成物(すなわち、列挙された成分「からなる」組成物)と比較して列挙された組成物の機能を変化させないようなレベルで、列挙されていない汚染物質を含有し得る。本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、目的の検体(例えば、微生物、ウイルス、遺伝子等の核酸、または検体中の核酸配列もしくは検体に由来する核酸配列を含むその成分)を含み得る検体を指す。試料は、生物学的標本または環境源等の任意の源からのものであり得る。生物学的検体には、検体中にまたは検体に由来する検体または核酸を含み得る、生きているまたは死んだ生物に由来する任意の組織または材料が含まれる。生物学的試料の例としては、鼻スワブ試料、膣スワブ試料、呼吸器組織、滲出液(例えば、気管支肺胞洗浄)、生検、痰、末梢血、血漿、血清、リンパ節、胃腸組織、糞便、尿、または他の流体、組織もしくは材料が挙げられる。環境試料の例には、水、氷、土壌、スラリー、デブリ、バイオフィルム、浮遊粒子、およびエアロゾルが含まれる。試料は、濾過、遠心分離、沈降、またはマトリックスもしくは支持体等の媒体への接着を使用することによって試料を処理することから得られる等、処置された標本または材料であり得る。試料の他の処理は、組織、細胞凝集体、または細胞を物理的または機械的に破壊して、核酸を含む細胞内成分を、酵素、緩衝液、塩、洗剤等の他の成分を含み得る溶液に放出する処置を含み得る。検体の存在について試験されている試料は、「試験試料」と呼ばれることがある。
【0080】
「標的核酸」および「標的配列」という用語は、検出または分析される核酸を指す。したがって、「標的」核酸は、他の核酸または核酸配列と区別されることが求められている。例えば、増幅反応に関して使用される場合、これらの用語は、反応によって増幅される核酸または核酸の一部を指し得、多型に関して使用される場合、それらは、疑われる多型の核酸における遺伝子座を指し得る。侵襲的切断反応に関して使用される場合、これらの用語は、典型的には、第1の核酸分子(例えば、プローブオリゴヌクレオチド)および第2の核酸分子(侵襲性オリゴヌクレオチド)に選択的にハイブリダイズしてオーバーラップする侵襲的切断構造を形成する配列を含む核酸分子を指す。一般に、標的核酸(例えば、試料内に存在する、試料から単離される、試料から濃縮される、または試料からもしくは試料内で増幅される)は標的領域内に位置し、切断剤によって切断可能な第1および第2の核酸分子(例えば、プローブオリゴヌクレオチドおよび侵襲性オリゴヌクレオチド)と組み合わせた侵襲的切断構造の形成の成功によって識別可能である。生物由来の標的核酸は、ゲノムDNAおよびRNAに限定されない。生物由来の標的核酸は、ゲノムDNAおよびRNA、メッセンジャーRNA、構造RNA、リボソームおよびtRNA、並びにsnRNA、siRNAおよびマイクロRNA(miRNA)等の低分子RNAを含むがこれらに限定されない任意の核酸種を含み得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,851,150号を参照されたい。「セグメント」は、標的配列内の核酸の領域として定義される。
【0081】
モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチドペントース環に結合した5’リン酸がホスホジエステル結合を介してその隣の3’酸素に一方向に付着するように反応してオリゴヌクレオチドを作製するので、オリゴヌクレオチドの5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結していない場合、オリゴヌクレオチドの末端は「5’末端」と呼ばれ、3’酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に連結していない場合、オリゴヌクレオチドの末端は「3’末端」と呼ばれる。本明細書で使用される場合、核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にあっても、5’末端および3’末端を有するとも言われる場合がある。核酸鎖に沿った第1の領域は、核酸の鎖に沿って5’から3’方向に移動するときに、第1の領域の3’末端が第2の領域の5’末端の前にある場合、別の領域の上流にあると言われる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「5’末端部」という用語は、5’末端を有する核酸の一部分(すなわち、5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されていない5’末端)のことを指す。「3’末端部」という用語は、3’末端を有する核酸の一部(すなわち、3’酸素が後続のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に連結されていない3’末端)を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」(および文法的同等のもの)という用語は、相補的核酸の対合に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、二重鎖に関与する核酸鎖間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比等の要因によって影響を受ける。
【0084】
2つの異なるオーバーラップしないオリゴヌクレオチドが同じ直鎖相補的核酸の異なる領域にアニールし、一方のオリゴヌクレオチドの3’末端が他方の5’末端に隣接している場合、前者は「上流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ、後者は「下流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ得る。同様に、2つのオーバーラップするオリゴヌクレオチドが同じ直鎖相補的核酸にハイブリダイズし、その5’末端が第2のオリゴヌクレオチドの5’末端の上流にあり、第1のオリゴヌクレオチドの3’末端が第2のオリゴヌクレオチドの3’末端の上流にあるように第1のオリゴヌクレオチドが配置されている場合、第1のオリゴヌクレオチドは「上流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ得、第2のオリゴヌクレオチドは「下流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「Tm」という用語は、相補的核酸鎖に対する核酸鎖の「融解温度」に関して使用される。核酸二重鎖の融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖に半分解離する温度である。標識された核酸二重鎖の融解温度を測定することは、典型的には、蛍光を温度の関数としてプロットして、二重鎖の解離に特徴的な融解曲線を作成することを含む。融解曲線の負の一次導関数を温度の関数としてグラフ化すると、Tmはピークとして識別可能である。例えば、KM Ririeら、Analytical Biochemistry 245:154-160(1997)を参照されたい。
【0086】
「計算されたTm」は、反応条件の因子(例えば、塩濃度、混合物中の相補鎖の濃度)と共に、相補的核酸の物理的配列から計算によって決定される融解温度を指す。核酸のTmを計算するためのいくつかの式は、当技術分野で周知である。標準的な参考文献によって示されるように、Tm値の単純な推定値は、核酸が1M NaCl(例えば、Young and Anderson,(1985)in Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach(Hames&Higgins,Eds.)pp 47-71,IRL Press,Oxfordを参照)の水溶液中にある場合、式:Tm=81.5+0.41(%G+C)によって計算され得る。Tmを計算するための他の計算は当技術分野で公知であり、構造的および環境的並びに配列特性を考慮に入れる(例えば、Allawi,H.T.and SantaLucia,J.,Jr.Biochemistry 36,10581-94(1997));and SantaLucia,Proc Natl Acad Sci U S A.,95(4):1460(1998)を参照)。
【0087】
本明細書で使用される場合、「サイクリングハイブリダイゼーション」という用語は、温度サイクルなしでオリゴヌクレオチドが標的鎖に絶えずアニールし、解離する(すなわち、反応混合物の温度をシフトさせずに、プローブ-標的核酸二重鎖を交互に融解およびアニーリングする)ように、ハイブリダイズした核酸鎖のTmまたはその付近(例えば、4℃以内、より好ましくは3℃以内、さらに好ましくは2℃以内、さらにより好ましくは1℃以内)の核酸を含む反応混合物のインキュベーション(例えば、プローブオリゴヌクレオチドおよびそれらの相補的標的核酸)を指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「侵襲的切断アッセイ」は、1またはそれを超える異なる侵襲的切断構造の酵素的切断によって標的核酸を検出または定量化する手順であり、少なくとも1つの切断構造がFRETカセットを含む。好ましい実施形態では、侵襲的切断アッセイは、2つの侵襲的シグナル増幅反応(例えば、「一次反応」および「二次反応」)を単一の反応混合物中で直列に組み合わせる。侵襲的切断アッセイのための試薬には、構造特異的5’ヌクレアーゼ(例えば、FEN-1エンドヌクレアーゼ)、「侵襲性オリゴヌクレオチド」、「一次プローブ」および「FRETカセット」が含まれ得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「INVADERアッセイ」という用語は、構造特異的フラップエンドヌクレアーゼ切断アッセイ(Hologic,Inc.)を指し、例えば米国特許第5,846,717号;同第5,985,557号;同第5,994,069号;同第6,001,567号;同第6,090,543号;同第6,872,816号;同第7,935,800号;同第9,133,503号;同第9,096,893号、Lyamichevら、Nat.Biotech.,17:292(1999),Hallら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:8272(2000),Allawiら、RNA(2004),10:1153-1161(2004)に記載され、これらの各々が、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「侵襲的切断構造」(時には単に「切断構造」)という用語は、フラップエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN-1エンドヌクレアーゼ)による切断のための基質である、オーバーラップする核酸二重鎖構造を指す。酵素によって触媒される切断反応は、いかなる核酸鎖の伸長も必要としない。いくつかの実施形態において、侵襲的切断構造は、(i)連続的な核酸鎖(例えば、標的DNAまたは標的RNA);(ii)標的鎖の第1の部分にハイブリダイズして上流二重鎖を形成する上流核酸(例えば、INVADERオリゴヌクレオチドと呼ばれることもある侵襲性オリゴヌクレオチド);および(iii)ハイブリダイズして下流二重鎖を形成する下流核酸(例えば、5’フラッププローブ、または標的鎖に相補的でない5’フラップを有する一次プローブオリゴヌクレオチド)を含む。上流および下流の核酸は、標的核酸の隣接領域にアニールし、上流の核酸の3’部と、下流の核酸と標的核酸との間に形成された二重鎖との間にオーバーラップを形成する。上流および下流核酸からの1またはそれを超える塩基が標的核酸塩基に対して同じ位置を占める場合、上流核酸のオーバーラップする塩基(複数可)が標的核酸に相補的であるか否か、およびそれらの塩基が天然塩基または非天然塩基であるか否かにかかわらず、オーバーラップが起こる。いくつかの実施形態において、下流二重鎖とオーバーラップする上流核酸の3’部は、芳香環構造(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,090,543号明に開示されるように)等の非塩基化学部分である。いくつかの実施形態において、核酸のうちの1またはそれより多くは、核酸ステム-ループ等の共有結合性の連結によって、または非核酸化学的な連結(例えば、多炭素鎖)によって互いに付着され得る。切断された5’フラップがFRETカセットにハイブリダイズすると、侵襲的切断構造も作り出される(例えば、「標的核酸」および「下流核酸」は、ステムループ構成で共有結合性に連結している)。切断された5’フラップにハイブリダイズするFRETカセットの「標的核酸」配列は、「切断されたフラップハイブリダイズ配列」と呼ぶことができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、標的核酸が増幅され(例えば、PCRによって)、増幅産物が、増幅反応が起こっているときに侵襲的切断アッセイを使用して検出される。増幅アッセイと組み合わせて検出アッセイ(例えば、侵襲的切断アッセイ)を実施するように構成されたアッセイは、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第9,096,893号に記載される。さらなる実施形態では、RNA標的核酸は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006/050499号に記載されているように、単一反応で侵襲的切断アッセイを使用して逆転写、増幅および検出され得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「プローブオリゴヌクレオチド」という用語は、標的核酸と相互作用して検出可能な複合体を形成するオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、プローブと標的との間の複合体は、存在している間に検出される。他の実施形態では、複合体の形成は、(例えば、プローブ/標的複合体の形成の結果として起こる切断事象等の事象の検出によって)それがもはや存在しなくなったときに、検出され得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「フラッププローブ」という用語は、標的核酸に特異的にハイブリダイズする標的特異的部分と、標的核酸にハイブリダイズしない5’フラップ部とを含むプローブオリゴヌクレオチドを指す。典型的には、5’フラップ部は、標的核酸とフラッププローブの標的特異的部分との間に形成された二重鎖に隣接する標的核酸の領域に相補的ではない。
【0094】
連続侵襲的切断アッセイに関して本明細書で使用される場合、「一次プローブ」は、検出される標的核酸に相補的な3’配列または部と、標的核酸に相補的ではない5’フラップ部(すなわち、相補的でない5’フラップ部は標的核酸にハイブリダイズしない)とを含むフラッププローブである。5’フラップ部は、逐次侵襲的切断アッセイの「一次」反応において侵襲的切断構造に関与する一次プローブの切断時に、一次プローブから放出された切断された5’フラップがFRETカセットにハイブリダイズして、逐次侵襲的切断アッセイの二次反応を促進することができるように構成される。
【0095】
本明細書で使用される場合、「一次反応」という用語は、一般に、一次プローブのフラップエンドヌクレアーゼ切断を指し、それによって切断された5’フラップが生成される。一次プローブがFEN-1エンドヌクレアーゼで切断される場合、一次プローブから切断された5’フラップの配列は、典型的には、一次プローブの5’フラップ部に、一次プローブの標的特異的部分の最初の(最も5’に近い)ヌクレオチドを加えたものになる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「二次反応」という用語は、一般に、二次侵襲的切断構造を形成するための一次反応からの切断された5’フラップのFRETカセットへのハイブリダイゼーション、および検出可能なシグナルを産生するためのフラップエンドヌクレアーゼによる二次侵襲的切断構造の切断を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、反応生成物が生成される場合、反応は「活性」である。例えば、二次反応は、必要な成分(例えば、FRETカセット、FRETカセットに特異的な切断された5’フラップ、およびFEN酵素を含む)を含有する反応混合物を、切断された5’フラップの反応混合物中のFRETカセットへのサイクリングハイブリダイゼーションを可能にする温度でインキュベートして、FRETカセットの切断並びにドナー(例えば、フルオロフォア)およびアクセプター(例えば、クエンチャー)部分の分離をもたらすときに活性である。
【0098】
「侵襲性オリゴヌクレオチド」(時には「INVADERオリゴヌクレオチド」)という用語は、プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション領域の近くの位置で標的核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを指し、侵襲性オリゴヌクレオチドは、プローブと標的との間のハイブリダイゼーション領域とオーバーラップする部分(例えば、その標的に相補的であるか否かにかかわらず、化学的部分またはヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態において、侵襲性オリゴヌクレオチドは、プローブオリゴヌクレオチドの5’末端に位置する配列と実質的に同じである配列をその3’末端に含有する。
【0099】
本明細書で使用される場合、「FRET」という用語は、化学部分(例えば、フルオロフォア)がそれらの間で、またはフルオロフォアから非フルオロフォア(例えば、クエンチャー分子)にエネルギーを移動させるプロセスである蛍光共鳴エネルギー移動を指す。状況によっては、FRETは、励起されたドナーフルオロフォアが、短距離(例えば、約10nmまたはそれ未満)双極子-双極子相互作用を介して低エネルギーのアクセプターフルオロフォアにエネルギーを移動させることを伴う。他の状況では、FRETは、ドナーからの蛍光エネルギーの損失およびアクセプターフルオロフォアにおける蛍光の増加を伴う。FRETのさらに他の形態では、励起ドナーフルオロフォアから非蛍光分子(例えば、消光分子)にエネルギーを交換することができる。FRETは当業者に公知であり、記載されている(Stryerら、1978,Ann.Rev.Biochem.,47:819;Selvin,1995,Methods Enzymol.,246:300;Orpana、2004 Biomol Eng 21,45-50;Olivier、2005 Mutant Res 573,103-110(これらの各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0100】
本明細書で使用される場合、「FRETカセット」という用語は、ドナー部分(例えば、「フルオロフォア」)および近くのアクセプター部分(例えば、「クエンチャー」)を含むステム-ループまたはヘアピン構造(すなわち、分子内で塩基対を形成して二重らせんステムを形成する核酸塩基の領域であって、ステムの一端に塩基対の鎖を接続するヌクレオチドのループを有する核酸の領域)を含むオリゴヌクレオチドを指し、同じFRETカセットへのドナー部分およびアクセプター部分の付着は、ドナー部分(例えば、蛍光発光)からの検出可能なエネルギー放出を実質的に抑制する(例えば、消光する)。FEN-1酵素は、一本鎖および二本鎖DNA、一般に1つのヌクレオチドの接合部に隣接するホスホジエステル結合3’の、オリゴヌクレオチドのステムループ部の5’末端への加水分解切断を触媒し、FRETカセットのステムループ部から5’ヌクレオチドまたは5’フラップを放出する。フルオロフォア部分は、典型的には、FRETカセットオリゴヌクレオチドの5’末端または5’フラップに付着し、クエンチャー部分は、典型的には、オリゴヌクレオチドのステムループ部に付着している。
【0101】
FRETカセットの「切断されたフラップハイブリダイズ配列」とは、相補的核酸またはオリゴヌクレオチド、例えば一次プローブから切断された5’フラップ(「一次切断フラップ」)の3’末端に特異的にハイブリダイズするFRETカセットの3’部のヌクレオチド塩基配列を指し、フラップ切断産物がFRETカセットにハイブリダイズするとき、相補的オリゴヌクレオチドの3’末端は、FRETカセット上の切断部位がフルオロフォア部分とクエンチャー部分との間に位置するように、侵襲的切断構造(すなわち、FEN酵素の基質)を形成するように配置される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「5’フラップFRETカセット」という用語は、一本鎖5’フラップ部、ステムループ部、および切断されたフラップハイブリダイズ配列を含む一本鎖3’部を有し、5’フラップ部と切断されたフラップハイブリダイズ配列とが互いに相補的ではないFRETカセットオリゴヌクレオチドを指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「フラップレスFRETカセット」という用語は、一本鎖5’部、例えば1またはそれを超える非相補的5’ヌクレオチドを有さず、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドがFRETカセットのステムループ部の非ループ末端上の最後の塩基対として塩基対形成可能であるFRETカセットを指す
【0104】
FRETカセットの切断からの蛍光シグナルの増幅は、FRETカセットの集団中の切断されたフラップハイブリダイズ配列に対する相補的オリゴヌクレオチド(例えば、一次プローブから切断された5’フラップ)の反復またはサイクリングハイブリダイゼーションに起因することから、典型的には、切断された5’フラップが、FRETカセットを鋳型として使用するポリメラーゼによって伸長可能でないように一次プローブが設計される。例えば、一次プローブは、典型的には、FRETカセットにハイブリダイズしたときに、FRETカセット中の切断されたフラップハイブリダイズ配列に相補的ではない3’末端を有する5’切断フラップ産物を産生するように設計される。
【0105】
いくつかの実施形態において、2またはそれを超える異なる切断されたフラップハイブリダイズ配列を有するFRETカセットの混合物が使用され得る(例えば、多重侵襲的切断反応において)。2つの切断されたフラップハイブリダイズ配列は、(例えば、侵襲的切断アッセイ条件下で)切断されたフラップ産物が一方の切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズ可能であり、他方の切断されたフラップハイブリダイズ配列に測定可能にハイブリダイズ可能でない場合、互いに「異なる」と言われ、逆もまた同様である。二次反応におけるFEN酵素(例えば、FEN-1エンドヌクレアーゼ)によるFRETカセットの切断は、ドナー部分およびアクセプター部分を分離し、その結果、抑制が緩和され、シグナルの生成が可能になる。いくつかの実施形態において、ドナー部分およびアクセプター部分は、蛍光共鳴エネルギー移動(例えば、「FRET」)によって相互作用する。他の実施形態では、FRETカセットのドナーおよびアクセプターは、非FRET機構によって相互作用する。
【0106】
本明細書で使用される場合、「相互作用性」標識対は、同じFRETカセットに付着しており、互いにエネルギー移動関係(すなわち、FRET機構によるものか非FRET機構によるものか)にあるドナー部分およびアクセプター部分を指す。シグナル(例えば、蛍光シグナル)は、ドナー部分およびアクセプター部分が、例えば二次反応におけるFRETカセットの切断によって分離されるときに生成され得る。異なる切断5’フラップに特異的にハイブリダイズする異なるFRETカセットはそれぞれ、同じ相互作用性標識対を含むことができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、プローブオリゴヌクレオチドに関して使用される「非標識」という用語は、検出を容易にするために発色団またはフルオロフォアを含まないプローブオリゴヌクレオチドを指す。非標識プローブは、ポリメラーゼによる伸長を防止するための修飾、例えば3’ブロッキング基を含み得る。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ドナー」という用語は、第1の波長で吸収し、第2のより長い波長で発光する部分(例えば、フルオロフォア)を指す。「アクセプター」という用語は、フルオロフォア、クロモフォアまたはクエンチャー等の部分であって、ドナーがドナー基の近(典型的には1~100nm)にあるときにドナーから放出されたエネルギーの一部または大部分を吸収することができる部分を指す。アクセプターは、ドナーの発光スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルを有し得る。一般に、アクセプターがフルオロフォアである場合、それはさらに長い第3の波長で再発光する。アクセプターがクロモフォアまたはクエンチャーである場合、それは光子を放出することなくドナーから吸収されたエネルギーを放出する。いくつかの好ましい実施形態では、(例えば、ドナーおよび/またはアクセプター部分の間の、またはドナーおよび/またはアクセプター部分からのエネルギー移動を測定することによって)ドナー部分および/またはアクセプター部分のエネルギーレベルの変化が検出される。これは、発光を検出することを含むことができる。いくつかの好ましい実施形態では、アクセプター部分の発光スペクトルは、部分からの発光(例えば、光および/またはエネルギーの)を互いに区別(例えば、スペクトル分解)できるように、ドナー部分の発光スペクトルとは異なる。
【0109】
いくつかの実施形態において、ドナー部分は、複数のアクセプター部分と組み合わせて使用される。好ましい実施形態では、ドナー部分が非蛍光クエンチャー部分およびアクセプター部分と組み合わせて使用され、その結果、ドナー部分がクエンチャーに近い(例えば、1~100nmの間、またはより好ましくは1~25nmの間、またはさらにより好ましくは約10nmもしくはそれ未満)場合、その励起がアクセプター部分ではなくクエンチャー部分に移動し、クエンチャー部分が除去される(例えば、プローブの切断によって)場合、ドナー部分の励起がアクセプター部分に移動する。いくつかの好ましい実施形態では、アクセプター部分からの発光が検出される(例えば、波長シフト分子ビーコンを使用する)(Tyagiら、Nature Biotechnology 18:1191(2000);MhlangaおよびMalmberg、2001 Methods 25,463-471;Olivier、2005 Mutant Res 573,103-110、並びに米国特許出願第20030228703号(これらの各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0110】
本明細書で使用される場合、シグナル(例えば、1またはそれを超えるの標識)に関して「別個の」という用語は、例えば、蛍光発光波長、色、吸光度、質量、サイズ、蛍光偏光特性、電荷等のスペクトル特性によって、または化学試薬、酵素、抗体等とのような別の部分との相互作用の能力によって互いに区別することができるシグナルを指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、プローブ)に関して使用される「合成」という用語は、無細胞インビトロ反応(例えば、酵素または化学合成反応)で作製された核酸を指す。合成核酸の酵素的形成の例としては、制限酵素消化、重合(鋳型化または非鋳型化)、ライゲーション等による形成が挙げられる。核酸の化学合成の例としては、ホスホジエステルおよびホスホトリエステル化学、ホスホルアミダイトおよびH-ホスホネート、化学等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Methods in Molecular Biology,Vol 20:Protocols for Oligonucleotides and Analogs pp.165-189(S.Agrawal,Ed.,Humana Press,1993).;Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.,1991);およびUhlmann and Peyman前出。Agrawal and Iyer,Curr.Op.in Biotech.6:12(1995);並びにAnti-sense Research and Applications(Crooke and Lebleu;Eds.,CRC Press,Boca Raton,1993),Beaucage and Caruthers,Tetrahedron Lett.22:1859-1862(1981)、およびAgrawal and Zamecnik、米国特許第5,149,798号(1992)を参照されたい。いくつかの実施形態において、予め形成された合成オリゴヌクレオチドを反応に導入するが、他の実施形態では、合成オリゴヌクレオチドを反応内で形成または修飾する(例えば、ポリメラーゼ、リガーゼ、切断酵素等の作用によって)。
【0112】
本明細書で使用される場合、「フラップエンドヌクレアーゼ」または「FEN」(例えば、「FEN酵素」)という用語は、一本鎖DNAと二本鎖DNAとの間の接合部にオーバーラップするヌクレオチドが存在するように、核酸の別の鎖によって置き換えられる鎖の1つに一本鎖5’オーバーハングまたは5’フラップを含む二重鎖を有するDNA構造上の構造特異的エンドヌクレアーゼとして作用する核酸分解酵素のクラスを指す。FEN酵素は、一本鎖および二本鎖DNAの接合部に対して3’側に隣接するホスホジエステル結合の加水分解切断を触媒し、オーバーハングまたは「フラップ」を放出する(Trends Biochem.Sci.23:331-336(1998)およびAnnu.Rev.Biochem.73:589-615(2004)を参照)。FEN酵素は、個々の酵素または多サブユニット酵素であり得る。いくつかの特定の実施形態では、FEN酵素活性は、DNAポリメラーゼ等の別の酵素またはタンパク質複合体の活性として存在し得る。いくつかの好ましい実施形態では、FEN酵素はDNA重合活性を有しない(例えば、鋳型、プライマーおよびdNTPの存在下であってもDNAを重合しない)。他の好ましい実施形態では、FEN酵素は、DNA重合活性を有するが、FRETカセットへのサイクリングハイブリダイゼーションを実質的に排除する様式でオリゴ(例えば、一次プローブから切断された、または別の供給源に由来する5’フラップ)を伸長させることによってこの活性を示さない。例えば、FRETカセットからフルオロフォアまたは蛍光5’フラップを切断するための二次侵襲的切断反応に関与するFEN酵素は、切断された5’フラップを一次プローブ(すなわち、FRETカセットに可逆的にハイブリダイズして切断反応を触媒する侵襲性プローブ)から伸長させない。フラップエンドヌクレアーゼは熱安定性であり得る。本明細書に開示される方法に有用なFEN酵素の例は、米国特許第5,614,402号;同第5,795,763号;同第6,090,606号、並びに国際公開第98/23774号;国際公開第02/070755号;国際公開第01/90337号;および国際公開第03/073067号で特定される公開されたPCT出願(これらの各々は、参照によりその全体が組み込まれる)に記載されている。市販のFEN酵素の特定の例としては、Cleavase(登録商標)酵素(Hologic,Inc.)が挙げられる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「FEN-1」は、FEN-1(フラップ構造特異的エンドヌクレアーゼ1)遺伝子によってコードされる真核生物または古細菌生物由来の非ポリメラーゼフラップエンドヌクレアーゼを指す。例えば、Kaiserらに対する米国特許第6,562,611号、およびKaiser M.W.ら、(1999)J.Biol.Chem.,274:21387;国際公開第02/070755号並びに米国特許第7,122,364号(これらは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。「FEN-1活性」という用語は、FEN-1酵素の任意の酵素活性を指す。FEN-1エンドヌクレアーゼはまた、国際公開第02/070755号および米国特許第7,122,364号に記載されているように、修飾FEN-1タンパク質(例えば、異なる生物由来のFEN-1酵素の一部を含むキメラタンパク質)、および1またはそれを超える突然変異(例えば、置換、欠失、挿入等)を含む酵素を含む。古細菌生物は、生物界古細菌の一般に単細胞生物のいずれかである。
【0114】
「第1」および「第2」および「第3」等(例えば、標的核酸、FRETカセット、侵襲的切断アッセイ等)への言及は、必ずしも一方が他方に先行することを示すのではなく、単に一方を他方から区別するための識別子を提供する。
【0115】
「反応混合物」は、単一の反応容器内の試薬(例えば、オリゴヌクレオチド、標的核酸、酵素等)の組み合わせである。
【0116】
本明細書で使用される場合、「多重」アッセイは、単回試行のアッセイで複数の検体(2またはそれを超える)を検出または測定するアッセイの一種である。これは、反応混合物あたり1つの検体を測定する手順とは区別される。多重侵襲的切断アッセイは、独立した侵襲的切断アッセイを使用して2またはそれを超える異なる検体を検出または測定するための試薬を単一の反応容器に組み合わせることによって行われる。いくつかの実施形態において、同じ種の蛍光レポーターが、マルチプレックスのアッセイの各々において検出される。他の実施形態では、異なる種の蛍光レポーターが使用されるが、異なるレポーターは、ある範囲の蛍光波長を検出する機器の同じチャネルで検出可能である。
【0117】
本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、二本鎖水素結合領域を形成することができる核酸塩基配列を指す。核酸塩基配列は、「完全に相補的」(すなわち、1つの配列中の各核酸塩基は、第2の配列中の対応する核酸塩基と対形成することができる)であってもよく、または「部分的に相補的」(すなわち、1つの配列中の少なくとも1つの核酸塩基は、第2の配列中の対応する核酸塩基と水素結合することができない)であってもよい。核酸塩基配列は、同じまたは異なるポリヌクレオチド内にあり得る。
【0118】
本明細書で使用される場合、「二重鎖」および「ハイブリッド二重鎖」という用語は、二本鎖水素結合領域を含む核酸構造を指す。そのような構造は、完全にまたは部分的に二本鎖であり得、RNA:RNA、RNA:DNAおよびDNA:DNA分子並びにそれらの類似体を含む。例として、「二重鎖」は、FRETカセットの相補的な切断されたフラップハイブリダイズ配列にハイブリダイズした切断5’フラップ配列(例えば、一次切断フラップ)、および相補的なマスキングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしたカセット切断フラップを含む。
【0119】
本明細書で使用される場合、「切断型」という用語は、1またはそれを超えるヌクレアーゼの作用によってポリヌクレオチドの残りの部分から切断されたポリヌクレオチドの一部を指す。例として、5’フラップ配列は、一次プローブがエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN酵素)によって切断され、それによって5’フラップ部をフラッププローブの標的ハイブリダイズ部から分離している場合に「切断型」である。
【0120】
ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド、標的核酸等)に関して本明細書で使用される場合、「一本鎖状態」という用語は、塩基対合に利用可能なポリヌクレオチドの領域を指す。自己相補的領域を有する一本鎖ポリヌクレオチドの場合、「一本鎖状態」という用語は、塩基対合に利用可能な自己相補的ポリヌクレオチドの領域への言及である。例として、カセット切断フラップは、マスキングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする前、またはカセット切断フラップをマスキングオリゴヌクレオチドから分離する融解後に一本鎖状態にある。
【0121】
本明細書で使用される場合、反応を行うために使用される「温度条件」は、反応が起こることを可能にする温度または温度範囲を指す。異なる反応の異なる温度プロファイルは、1つの反応が起こることを可能にする温度条件が、異なる反応が起こることを可能にしない場合があることを意味する。この用語は、フルオロフォア部分を含む相補的オリゴ配列へのマスキングオリゴのハイブリダイゼーションを可能にする温度プロファイルにも適用される。
【0122】
本明細書で使用される場合、「最適な」(およびその文法上の変形)反応条件は、反応が起こることを促進または可能にするための最も好ましい反応条件を指す。例えば、二次反応を実施するための最適な温度は、FRETカセットが反応混合物中で最も効率的に切断された温度(例えば、反応温度の関数としての蛍光シグナルのプロット上のピークに対応する)であろう。同様に、最適な温度範囲は、反応が起こることを促進または許容するための最も好ましい温度条件の範囲である。特定の例示的な実施形態では、好ましい最適温度範囲は、最適温度プラスマイナス5℃、より好ましくはプラスマイナス4℃、より好ましくはプラスマイナス3℃、さらにより好ましくはプラスマイナス2℃、さらにより好ましくはプラスマイナス1℃を含み得る。
【0123】
本明細書で使用される場合「付着された」、(例えば、2つのものが「付着している」)は、化学的に一緒に結合されていることを意味する。例えば、フルオロフォア部分は、FRETカセットの構造に化学的に結合している場合、FRETカセットに「付着」している。
【0124】
本明細書で使用される場合、(例えば、「等価なドナー-アクセプター対」または「等価なドナー」または「等価なフルオロフォア」部分との関連において)「等価な」とは、検出可能な化学種の励起および発光スペクトルが、シグナルをモニターするために使用される機器の同じチャネル内の蛍光発光波長の検出を可能にするように、波長範囲によって十分に類似またはオーバーラップすることを意味する。
【0125】
本明細書で使用される場合、「スペクトルオーバーラップ」という用語は、少なくとも1つの共通波長を有する2またはそれを超える光スペクトルを指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、ドナー部分(例えば、フルオロフォア)からの発光は、アクセプター部分(例えば、クエンチャー)が十分に近いため、ドナーからの光子の検出可能な発光が抑制または防止される場合に「消光」される。例えば、ドナー部分およびアクセプター部分の両方が同じFRETカセットに付着している場合、ドナー部分からの発光は消光される。同様に、FRETカセットから切断された5’フラップに付着したドナーまたはフルオロフォア部分からの発光は、切断された5’フラップ(カセット切断フラップ)がクエンチャー部分を含む相補的オリゴにハイブリダイズするときに消光され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「特異的な」とは、1つのみ(または特に示された基のみ)に特定の効果を有する、または特定の方法で1つのみ(または特に示された基のみ)に影響を及ぼす等、1つのみ(または特に示された基のみ)に関係することを意味する。例えば、FRETカセットに特異的な切断5’フラップ(例えば、一次切断フラップ)は、そのFRETカセットにハイブリダイズし、侵襲的切断構造を形成し、切断反応を促進することができるが、異なるFRETカセット(例えば、異なる切断されたフラップハイブリダイズ配列を有するFRETカセット)にハイブリダイズして切断反応を促進することはできない。同様に、FRETカセットから切断された蛍光5’フラップ(カセット切断フラップ)は、2つのオリゴヌクレオチドの配列が互いに相補的である場合、そのカセット切断フラップに特異的なマスキングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、「特異的にハイブリダイズする」という用語は、所与のハイブリダイゼーション条件下で、プローブまたはプライマーが、標的配列(すなわち、非標的配列に対する検出可能なハイブリダイゼーションはほとんどまたは全く存在しない)を含む試料中の標的配列にのみ実質的に検出可能にハイブリダイズすることを意味する。同様に、FRETカセットに「特異的」である切断5’フラップは、そのFRETカセットに特異的にハイブリダイズして侵襲的切断構造を形成し、切断反応を促進することができるが、侵襲的切断構造を形成する様式では異なるFRETカセットにハイブリダイズしない。
【0129】
「熱安定性」という用語は、FEN酵素等の酵素に関して使用される場合、酵素が高温(例えば、約55℃またはそれよりも高温)で機能的または活性(すなわち、触媒作用を実施しすることができる)であることを示す。いくつかの実施形態において、酵素は、65℃またはそれよりも高温(例えば、75℃、85℃、さらには95℃)の高温で機能的または活性である。
【0130】
本明細書で使用される場合、「増幅された」という用語は、分子、部分または効果の存在量の増加を指す。標的核酸は、例えばPCR等によるインビトロ複製によって増幅され得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、核酸増幅に関して使用される「増幅方法」という用語は、目的の核酸の存在量を特異的に増幅するプロセスを意味する。いくつかの増幅方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR)は、熱変性、鋳型分子へのオリゴヌクレオチドプライマーアニーリングおよびアニーリングされたプライマーの核酸ポリメラーゼ伸長の反復サイクルを含む。これらの工程の各々に必要な条件および時間は、当技術分野で周知である。いくつかの増幅方法は、単一の温度で行われ、「等温」と見なされる。増幅産物の蓄積は指数関数的または線形的であり得る。いくつかの増幅方法(例えば、「標的増幅」法)は、標的配列を何度もコピーすることによって標的配列の存在量を増幅するが(例えば、PCR、NASBA、TMA、鎖置換増幅、リガーゼ連鎖反応、LAMP、ICAN、RPA、SPA、HAD等)、いくつかの増幅方法は、標的配列を含有しても含有しなくてもよいが、その増幅は反応中の特定の標的配列の存在を示す核酸種の存在量を増幅する。いくつかのシグナル増幅方法は、例えば出発核酸を切断して切断産物を形成することによって、または例えば重合もしくはライゲーションによってそれを伸長することによって、出発核酸を変換することによって核酸の種の存在量を増加させ得る。標的増幅法は、シグナル分子(例えば、PCRを使用して、ライゲーション、切断、または非標的コピー反応の産物のより多くのコピーを産生することができる)に適用されてもよく、またはその逆も同様であってもよい。
【0132】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」および「PCR」という用語は、DNAのセグメントがインビトロで標的核酸から複製される酵素反応を指す。反応は、一般に、標的核酸の各鎖上のプライマーを鋳型依存性DNAポリメラーゼで伸長して、その鎖の一部の相補的コピーを産生することを含む。連鎖反応は、例えば加熱、続いてプライマーアニーリングおよび伸長を可能にするための冷却によるDNA鎖の変性の反復サイクルを含み、プライマー結合部位に隣接し、プライマー結合部位を含む標的核酸の領域のコピーの指数関数的蓄積をもたらす。RNA標的核酸がPCRによって増幅される場合、それは一般に、逆転写が可能な酵素によってDNAコピー鎖に変換される。例示的な酵素には、MMLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、並びに当業者によく知られている他の酵素が含まれる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」(例えば、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド)という用語は、2個またはそれを超えるヌクレオチド、好ましくは少なくとも5個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10~15個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約15~30個のヌクレオチドまたはそれよりも長いヌクレオチドを含む分子として定義される。オリゴヌクレオチドは、典型的には、200残基未満の長さ(例えば、15~100ヌクレオチドの間)であるが、本明細書で使用される場合、この用語は、より長いポリヌクレオチド鎖も包含することが意図される。正確なサイズは多くの因子に依存し、これらは次にオリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、その長さによって言及されることが多い。例えば、24ヌクレオチドオリゴヌクレオチドは「24mer」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズによって、または他のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることによって、二次および三次構造を形成することができる。そのような構造は、二重鎖、ヘアピン、十字形、屈曲、および三重鎖を含むことができるが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはそれらの組み合わせを含む任意の様式で生成され得る。いくつかの実施形態において、侵襲的切断構造を形成するオリゴヌクレオチドは、反応(例えば、酵素伸長反応におけるプライマーの伸長による)において生成される。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用され得、天然に存在しないモノマーまたはその一部を含み得る。より具体的には、オリゴヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらの置換およびアルファ-アノマー形態、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、2’-O-メチル修飾、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スペーサー等を含む、天然および/または修飾モノマーもしくは連結の線状または環状オリゴマーを含み得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「シグナル」は、電磁エネルギー(例えば、光)等のエネルギーの検出可能な量またはインパルスである。適切に刺激されたフルオロフォアからの光の放射は、蛍光シグナルの一例である。いくつかの実施形態において、「シグナル」は、検出機器(例えば、蛍光光度計)の単一チャネルで検出された集約エネルギーを指す。
【0135】
本明細書で使用される場合、「バックグラウンド」シグナルは、標的核酸特異的反応が起こらない条件下で生成されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)である。例えば、FRETカセットおよびFEN酵素を含むがカセット特異的侵襲性オリゴヌクレオチド(例えば、一次切断フラップ)を含まない二次反応で生成されたシグナルは、バックグラウンドシグナルと考えられる。いくつかの例では、バックグラウンドシグナルは、標的核酸を省いた「陰性対照」反応または試験で測定される。
【0136】
本明細書で使用される場合、光エネルギーセンサを装備されたデバイス等のエネルギーセンサデバイスの「チャネル」は、他の波長帯域を除外して検出または定量化することができる所定の波長帯域を指す。例えば、蛍光光度計の1つの検出チャネルは、ある波長範囲にわたって1またはそれを超える蛍光標識によって放出された光エネルギーを単一の事象として検出することができる。蛍光の結果として放出された光は、所与の波長または波長帯にわたって相対蛍光単位(RFU)として定量化することができる。一般的な蛍光検出チャネルの例としては、約510~530nm(例えば、「FAM」検出チャネルに共通)、約560~580nm(例えば、「HEX」検出チャネルに共通)、約610~650nm(例えば、「テキサスレッド」検出チャネルに共通)、約675~690nm(例えば、「Cy5」検出チャネルに共通)、および約705~730nm(例えば、「Quasar 705」検出チャネルに共通)の範囲の蛍光発光波長を検出するものが挙げられる。Cy5およびAlexa Fluor(登録商標)647は、蛍光光度計のCy5チャネルで検出され得る2つの異なるフルオロフォアの例である。
【0137】
本明細書で使用される場合、「閾値」または「閾値カットオフ」は、実験結果を解釈するために使用される定量的限界を指し、カットオフを上回る結果と下回る結果は異なる結論をもたらす。例えば、カットオフを下回る測定シグナルは、特定の標的の不在を示すことができるが、同じカットオフを超える測定シグナルは、その標的の存在を示すことができる。慣例により、カットオフ(すなわち、カットオフ値を正確に有する)を満たす結果には、カットオフを超える結果と同じ解釈が与えられる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「閾値サイクル数」は、リアルタイム試行曲線シグナルが任意の値または閾値を横切るときに時間またはサイクル数を測定する増幅の指標を指す。「TTime」および「Ct」の決定は、増幅の閾値に基づく表示の例である。他の方法は、リアルタイム試行曲線の導関数解析を実施することを含む。本開示の目的のために、TArcおよびOTArcを使用して、リアルタイム試行曲線シグナルが任意の値(例えば、それぞれ曲率の最大または最小角度に対応する)と交差するときを決定することもできる。TTime決定の方法は、米国特許第8,615,368号に開示され、Ct決定の方法は、欧州特許第0640828号B1に開示され、導関数に基づく方法は、米国特許第6,303,305号に開示され、TArcおよびOTArc決定の方法は、米国特許第7,739,054号に開示されている。当業者は、閾値サイクル数を決定するためにも使用することができる変形例を認識するであろう。
【0139】
本明細書で使用される場合、「内部キャリブレータ」核酸は、インビトロ核酸増幅反応で増幅することができ、同じ反応で共増幅される検体核酸(例えば、試験試料からの標的核酸)と区別可能な核酸である。「内部」とは、キャリブレータ核酸が、検体標的核酸またはその断片と同じ反応混合物内で増幅および検出されることを意味する。いくつかの実施形態において、内部キャリブレータ核酸は、定量化される検体核酸を増幅するために使用されるのと同じプライマーによって増幅される。他の実施形態では、この目的のために異なるプライマーが使用される。一般的に言えば、検体核酸および内部キャリブレータ核酸は、侵襲的切断反応によって識別することができる少なくとも1つのヌクレオチド位置によって異なる。これにより、多重化された侵襲的切断アッセイが、増幅された内部キャリブレータおよび検体標的核酸を独立して検出することが可能になる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「較正標準」は、既知または所定量の内部キャリブレータ核酸を含む組成物である。
【0141】
本明細書で使用される場合、「反応容器」または「反応レセプタクル」は、反応混合物を収容するための容器である。例としては、マルチウェルプレートの個々のウェル、およびプラスチックチューブ(例えば、マルチチューブユニットの形成された線形アレイ内の個々のチューブ等を含む)が挙げられる。しかしながら、反応混合物を収容するために任意の適切な容器が使用され得ることを理解されたい。
【0142】
本明細書で使用される場合、反応を「可能にする」とは、反応混合物中に存在してもしなくてもよい特定の核酸(例えば、標的DNA、または切断された5’フラップ)の存在を試験するために反応混合物によって試薬および条件が提供されることを意味する。例えば、侵襲的切断アッセイの一次反応が起こることを「可能にする」とは、標的DNAも一次反応に関与するために反応混合物中で利用可能である場合、一次プローブの切断および切断された5’フラップの放出を可能にするために、適切な緩衝液および温度条件下で、反応混合物が、侵襲的プローブ、5’フラップ配列を含む一次プローブ、およびFEN酵素を含むことを意味する。同様に、侵襲的切断アッセイの二次反応が起こることを「可能にする」とは、FRETカセットに特異的な切断5’フラップも二次反応に関与するために反応混合物中で利用可能である場合、反応混合物が、FRETカセットの切断を可能にする適切な緩衝液および温度条件下で、FRETカセットおよびFEN酵素を含むことを意味する。さらに、反応が起こることを「可能にする(permitting)」(または「可能にする(permit)」または「(反応が起こることが)可能な(permissive)」)温度条件は、反応を行うまたは進行させるのに役立つ温度条件である。
【0143】
「キット」とは、互いに組み合わせて使用することを意図した材料のパッケージされた組み合わせを意味する。開示された技術に従って有用なキットは、様々な試薬を含有する1またはそれを超える容器またはチューブを含み得る。キットはさらに、(例えば、印刷された情報、コンピュータ可読媒体に電子的に記録された情報、またはバーコード等の機械可読媒体に記録された情報)「有形」形式の命令または他の情報を含むことができる。
【0144】
詳細な説明
本明細書では、核酸分析装置の単一の蛍光検出チャネルのみを使用して温度依存性様式で複数の特異的核酸配列の存在を検出するために使用することができる多重化された核酸増幅および検出システムが開示される。この技術は、診断適用で使用することができるように、一塩基多型(すなわち、「SNP」)等の核酸検体の多重検出を単純化する。簡便には、この技術は、蛍光検出またはモニタリングのために装備された標準的なPCR機器を使用して行うことができる。
【0145】
開示される手順は、侵襲的切断アッセイにおいてプローブまたはFRETカセット(例えば、カセット切断フラップ)から切断された蛍光標識5’フラップに相補的塩基対合によってハイブリダイズする「マスキングオリゴ」を使用する。マスキングオリゴヌクレオチドは、それに付着した蛍光消光部分(本明細書では「クエンチャー」と呼ばれることもある)を含む。マスキングオリゴヌクレオチドと標識された切断されたフラップとの間のハイブリダイゼーションが起こると、マスキングオリゴの消光部分は、切断された5’フラップのフルオロフォア部分に近接する。次いで、切断された5’フラップのフルオロフォアによって放出された蛍光シグナルが消光される。異なる切断産物(例えば、異なる長さおよび/または異なる配列の切断されたフラップ)を適切な温度で同族マスキングオリゴにハイブリダイズさせると、カセット切断フラップを遊離させた二次反応の同一性を決定することが可能になり、そのため、どの標的配列が反応混合物中に存在したかを決定することが可能になる。
【0146】
侵襲的切断反応およびアッセイ
FRETカセットの切断によって検体核酸の存在を示す蛍光シグナルを生成する他の侵襲的切断アッセイとは異なり、本技術は、特定のFRETカセットが切断されたかどうかを決定するために蛍光シグナルの持続を必要としない。実際、本明細書中に記載される技術は、多重アッセイにおける少なくとも1つのFRETカセットの切断が、反応混合物の温度の関数として消光または消失される蛍光シグナルを産生することを実際に必要とする。これは、少なくとも1つのFRETカセットの蛍光切断産物に相補的なマスキングオリゴヌクレオチドを反応混合物に含めることによって達成される。蛍光切断産物および相補的マスキングオリゴヌクレオチドを含む二重鎖を形成するためのハイブリッド相互作用は、融解温度(Tm)によって特徴付けられる。Tmより高い温度では、蛍光切断産物は、蛍光シグナルを産生および検出または測定することができる一本鎖状態にある。Tmより低い温度では、二重鎖が形成し、5’フラップFRETカセットから切断された5’フラップに付着したフルオロフォアから放出された蛍光を消光する。異なる蛍光5’フラップ切断産物に相補的な異なるマスキングオリゴを反応混合物に含めることによって、マスキングオリゴヌクレオチドと蛍光切断産物とのハイブリダイゼーションから生じる異なる二重鎖が異なるTmを示す場合、蛍光光度計の同じチャネルで検出可能なフルオロフォアで標識された複数のFRETカセットのうち、どのFRETカセットが切断されてシグナルを生成したかを決定することが可能である。この蛍光消光能力、または蛍光シグナルの温度依存性差は、開示された技術の機能に不可欠である。
【0147】
本明細書に開示される侵襲的切断アッセイは、侵襲的切断構造の形成、およびフラップエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN-1)酵素による侵襲的切断構造の酵素的切断を含む。いくつかの実施形態において、侵襲的切断構造は、以下を含む:(1)FRETカセット;および(2)FRETカセットにハイブリダイズした侵襲性オリゴヌクレオチド。いくつかの実施形態において、FRETカセットにハイブリダイズした侵襲性オリゴヌクレオチドは、一次プローブから切断された5’フラップである。いくつかの実施形態において、侵襲的切断アッセイは、以下を含む:(1)検出される標的核酸;(2)5’フラップを有する一次プローブであって、一次プローブの標的相補配列が標的核酸にハイブリダイズする一次プローブ;および(3)ハイブリダイズした一次プローブに隣接し、その上流の標的核酸にハイブリダイズした侵襲性オリゴヌクレオチド。いくつかの実施形態において、侵襲的切断アッセイは、第1および第2の侵襲的切断反応を連続的に組み合わせる(
図1を参照)ため、一次プローブから切断された5’フラップ(例えば、時には「一次切断フラップ」)は、二次反応におけるFRETカセットの酵素的切断を促進するための侵襲性オリゴヌクレオチドとして働く。
【0148】
一次反応の上流の侵襲性オリゴヌクレオチドは、典型的には、アッセイ温度(例えば、アッセイ温度より実質的に高いTmを有すること)で標的DNAに本質的に永続的にアニールするように設計されるが、一次プローブオリゴヌクレオチドはアニールしない。標的鎖にアニールする一次プローブの部分は、アッセイ温度に近い標的鎖に対するTmを有するように設計されており、その結果、反応混合物中の一次プローブオリゴヌクレオチドは、温度サイクルを伴わない反応温度で標的鎖に常にアニールし、標的鎖から解離する。いくつかの実施形態において、Tmは、アッセイ温度の約4℃以内、より好ましくは3℃以内、さらにより好ましくは2℃以内、さらにより好ましくは1℃以内である。切断構造は、侵襲性オリゴヌクレオチドの隣および下流の一次プローブオリゴヌクレオチドのアニーリング時に形成される。この切断構造は、フラップエンドヌクレアーゼによって切断され得る。
【0149】
本開示による侵襲的切断反応の重要な特徴および動作原理は、切断産物の数が増加し、等温条件下で蓄積し得ることである(すなわち、温度サイクルなし)。例えば、標的核酸にハイブリダイズする一次プローブオリゴヌクレオチドは、温度サイクルなしで繰り返しアニールおよび解離することができる。標的DNA上の単一部位を再使用または再利用して、温度サイクルなしで一連の新しい未切断プローブにハイブリダイズし、各標的分子に対して数千の切断プローブを生成することができる。例えば、Olivier,Mutat Res,573:103-110(2005)を参照されたい。同様に、一次プローブから切断された5’フラップへのサイクリングハイブリダイゼーション後のFRETカセットのFEN-1切断から生じる蛍光シグナルも、等温条件下で増加および蓄積する。
【0150】
侵襲的切断アッセイはまた、第2の切断構造を形成するために一次侵襲的切断反応から切断されたフラップが使用される逐次的様式で作動するように構成され得る。例えば、HallのSISARアッセイは、2つの逐次的なシグナル増幅反応を使用して、アッセイによって生成されたシグナルの総量を増加させる(Hallら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.97(2000)8272-8277を参照)。
図1に示すSISARアッセイでは、各一次プローブの切断により、切断された5’フラップ(
図1の「一次切断フラップ」)が放出される。切断されたフラップは、ヘアピン「FRETカセット」オリゴヌクレオチドにハイブリダイズして、第2の切断構造を形成する。第2の切断構造の切断は、FRETカセットの消光部分からフルオロフォア色素を分離し、それによってフルオロフォアからの蛍光を検出可能にする。
【0151】
FRETカセット(例えば、連続侵襲的切断アッセイ)を使用する侵襲的切断アッセイは、典型的には、切断されたフラップ-FRETカセット複合体がアッセイ温度(例えば、アッセイ温度の4℃以内、より好ましくは3℃以内、さらにより好ましくは2℃以内、さらにより好ましくは1℃以内)に近いTmを有するように設計され、その結果、切断されたフラップは、温度サイクルなしで、反応温度でFRETカセットから常にアニールし、解離する。切断されたフラップをFRETカセットにアニーリングすると、切断構造が形成され、その構造は、フラップエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN-1エンドヌクレアーゼ)によって切断され得る。したがって、FRETカセットの切断を伴う二次反応は、一次反応と同じリサイクル原理を使用してシグナルを生成する。各切断フラップは、温度サイクルなしで一連の新しい非切断FRETカセットにハイブリダイズすることができ、それによって各切断フラップに対して数千の消光されないフルオロフォアを生成する。
【0152】
検体核酸、侵襲性プローブ、一次プローブおよびFRETカセットをさらに含む反応混合物中に存在するフラップエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN-1)酵素は、両方が検体核酸にハイブリダイズしたときに、侵襲性プローブと一次プローブとの間に1塩基オーバーラップがある場合に、一次プローブの残りの部分から5’フラップを切断する。この切断反応は、「一次」反応と呼ばれる。次いで、一次プローブから放出された5’フラップは、それに相補的な配列を有するFRETカセットへのサイクリングハイブリダイゼーションを受け、その際、FEN媒介性切断反応により、同じFRETカセット上に存在するクエンチャー部分からフルオロフォアが分離されて、検出可能な蛍光放出がもたらされる。FRETカセットの切断によって蛍光シグナルを生成するこの切断反応は、「二次」反応と呼ばれる。上記のように、二次反応が、サイクリングハイブリダイゼーションを容易にするために一次プローブから切断された5’フラップとFRETカセットとの間の二重鎖のTm(すなわち、融解温度)に近い温度で行われる場合、同じ5’フラップは、同様の同族FRETカセットと自由に相互作用して、切断反応をさらに触媒する。固定温度で起こり得るこの線形増幅は、時間の関数としての蛍光の増加によって検出可能である。一次反応および二次反応の各々は、本質的に等温プロセスである。実際、FEN-1依存性の二次侵襲的切断反応は、熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼ)が著しく損なわれた重合活性を示す熱条件下でさえ、重合の要件をともなわずに検出可能な蛍光シグナルを生成する。実際、FRETカセットを鋳型として使用した切断された5’フラップのポリメラーゼに基づく伸長は、蛍光シグナル蓄積に有益なサイクリングハイブリダイゼーションを損なうであろう。したがって、切断された5’フラップの伸長は禁忌である。
【0153】
有用なフルオロフォアおよびクエンチャー
いくつかの実施形態において、本開示の技術による多重化侵襲的切断アッセイは、多重化侵襲的切断アッセイによって生成された蛍光シグナルを検出するために単一の検出チャネルのみを使用することができ、好ましくは、多重化反応における異なる標的からのシグナル生成のために同じ化学種のフルオロフォアを使用する。他の実施形態では、多重化反応において異なる標的からのシグナル生成のために、複数の異なるフルオロフォアを組み合わせてもよい。本開示の技術のFRETカセットシステムに使用される例示的なフルオロフォアとしては、限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、REDMOND RED色素、YAKIMA YELLOW色素、ヘキサクロロ-フルオレセイン、TAMRA色素、ROX色素、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ--s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-メトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセン-プロピオン酸、6-カルボキシ-X-ローダミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン、テキサスレッド、エオシン、フルオレセイン、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-エトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン3-プロピオン酸および4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセン-プロピオン酸、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2’,4’,1,4,-テトラクロロフルオレセイン(TET)、21,4’,51,7’,1,4-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシローダミン(JOE)、2’-クロロ-5’-フルオロ-7’,8’-縮合フェニル-1,4-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(NED)、2’-クロロ-7’-フェニル-1,4-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(VIC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、アミノ-メチルクマリン(AMCA)、エリスロシン、BODIPY色素、CASCADE BLUE色素、OREGON GREEN色素、ピレン、リサミン、キサンテン、アクリジン、オキサジン、フィコエリトリン、QUANTUM色素、チアゾールオレンジ-エチジウムヘテロダイマー等が挙げられる。
【0154】
本技術のFRETカセットシステムで使用するための例示的なクエンチャーとしては、限定されないが、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7等のシアニン色素、テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)およびテトラプロパノ-6-カルボキシローダミン(ROX)等のローダミン色素、DABSYL色素、DABCYL色素、シアニン色素、ニトロチアゾールブルー(NTB)、アントラキノン、マラカイトグリーン、ニトロチアゾール、またはニトロイミダゾール化合物、QSY7(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)、ECLIPSEクエンチャー(Epoch Biosciences,Inc.、ユタ州ローガン)等が挙げられる。代替的なクエンチャーとしては、Black Holeクエンチャー色素、特にBHQ-1、BHQ-2およびBHQ-3(Biosearch Technologies、カリフォルニア州ペタルーマ);BLACKBERRY(登録商標)クエンチャー(Berry&Associates、ミシガン州イーストデクスター);IOWA BLACK(登録商標)(Integrated DNA Technologies、アイオワ州コーラルビル)が挙げられる。FRET構成で使用するための部分の対または群の選択における様々な分子の吸光度および発光スペクトル等の因子の分析は、当業者に周知である。
【0155】
当業者は、蛍光光度計の異なるチャネルによって検出することができる波長範囲を認識し、異なるフルオロフォアからの発光を同じ蛍光光度計チャネルで検出することができる、異なるFRETカセットに対するフルオロフォアを容易に選択することができる。
【0156】
温度依存製多重化技術の特徴
蛍光シグナルの中断されない持続から恩恵を受ける以前の侵襲的切断アッセイとは異なり、本開示の技術は、FRETカセットのFEN-1媒介切断後の蛍光の選択的抑制から恩恵を受ける。Petersonらは、同出願公開第2018/0163259号A1において、同じフルオロフォアで標識された異なるFRETカセットが異なる温度で切断され、異なる温度が本質的に一方の反応を他方から単離した方法を開示した。時間またはサイクル数の関数として蓄積された蛍光シグナルをモニターすることにより、FRETカセットの活性の分解が可能になった。このようにして、複数の核酸標的を、蛍光光度計の単一チャネルのみを使用して、さらには単一種類の蛍光標識のみを使用して、多重フォーマットで検出することができた。本明細書に開示されるように、本技術は、異なるFRETカセットが同一の蛍光標識を有する場合でも、異なるFRETカセットから生じる蛍光シグナルの寄与を効果的に除去するための温度依存性蛍光消光に依存する。したがって、FRETカセット切断後に行われる手順または事象は、本開示の技術において有益である。
【0157】
本技術は、二次反応においてFEN-1酵素による切断後にフルオロフォアを保持する5’フラップ部を含むように構造化された少なくとも1つのFRETカセットを使用する。好ましくは、5’フラップの長さは、8~30ヌクレオチド、より好ましくは8~25ヌクレオチド、さらにより好ましくは8~16ヌクレオチドの範囲にある。特に好ましい5’フラップ長さは、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、または15ヌクレオチドである。
図1は、FRETカセットが5’フラップ部を含まないフラップレスFRETカセットであり、二次反応における切断が単一ヌクレオチドに付着した蛍光色素を遊離させる、連続侵襲的切断反応を示す。対照的に、5’フラップFRETカセット(
図2Aを参照)は、一次プローブ(
図2Bを参照)から切断されたフラップへのサイクリングハイブリダイゼーションによってハイブリダイズして、FEN-1酵素によって切断可能な構造を産生することができる。得られたカセット切断フラップは、一本鎖状態にあるときに蛍光シグナルを放出するが、そのシグナルは、カセット切断フラップの、消光部分(
図2Cを参照)を含むマスキングオリゴへのハイブリダイゼーションによって可逆的に抑制または消光され得る。カセット切断フラップとマスキングオリゴとの間のハイブリッド相互作用は、温度依存的に制御することができる。同じ反応混合物中で使用される場合、フラップレスFRETカセットおよび5’フラップFRETカセットは、切断反応が起こった後の温度変化によって分解可能なシグナルを産生することができる。
【0158】
フラップレスFRETカセット(5’フラップ部なし)および5’フラップFRETカセットから生じる蛍光の起源を区別することに加えて、開示された技術は、異なる5’フラップFRETカセットの同一の蛍光色素から生じるシグナルの分解を可能にする。
図3は、蛍光光度計の同じチャネル内で検出可能なフルオロフォア(例えば、同一のフルオロフォア)で各々標識された3つの異なるFRETカセット(フラップレスFRETカセット;5’フラップFRETカセット1;および5’フラップFRETカセット2)によって産生された蛍光シグナルが、異なる温度条件下でどのように互いに区別され得るかを概略的に示す。図の上部は、5’フラップを含まないフラップレスFRETカセットを示す。このFRETカセットは、一次プローブからの相補的切断フラップへのサイクリングハイブリダイゼーション後に、FEN-1エンドヌクレアーゼによって切断されて蛍光色素を放出することができ、放出された色素から放出された蛍光は、反応に使用されるいかなるマスキングオリゴヌクレオチドとの相互作用によっても消光され得ない。この消光されない色素から放出された蛍光は、全ての温度で検出可能である。
図3の図の中央部は、一次プローブからの相補的切断5’フラップへのサイクリングハイブリダイゼーション後に、FEN-1酵素によって切断されて5’フラップ(「カセット切断フラップ1」)を放出することができる第1の5’フラップFRETカセット(5’フラップFRETカセット1)を示す。カセット切断フラップ1は、切断反応後にフルオロフォアに付着したままであるが、カセット切断フラップ1が相補的なマスキングオリゴにハイブリダイズする場合、蛍光シグナルは消光される。これは、カセットフラップ1および相補的なマスキングオリゴを含むハイブリッド二重鎖のT
mより低い温度で起こり得る。温度がこのT
m(「T
m1」)を超えて上昇し、カセット切断フラップ1が一本鎖状態(図中の「消光されていないカセット切断フラップ1」)になると、カセット切断フラップ1のフルオロフォアによって蛍光シグナルが放出され得る。
図3の図の下部は、一次プローブからの相補的切断5’フラップへのサイクリングハイブリダイゼーション後に、FEN-1酵素によって切断されて5’フラップ(「カセット切断フラップ2」)を放出することができる第2の5’フラップFRETカセット(5’フラップFRETカセット2)を示す。カセット切断フラップ2は、切断反応後にフルオロフォアに付着したままであるが、カセット切断フラップ2が相補的なマスキングオリゴにハイブリダイズする場合、蛍光シグナルは消光される。これは、カセット切断フラップ2および相補的マスキングオリゴを含むハイブリッド二重鎖のT
mより低い温度で起こり得る)。温度がこのT
m(「T
m2」)を超えて上昇し、カセット切断フラップ2が一本鎖状態(図中の「消光されていないカセット切断フラップ2」)になると、カセット切断フラップ2のフルオロフォアによって蛍光シグナルが放出され得る。異なるT
m(例えば、異なる長さおよび/またはG:C含有量を有することによって)を有する5’フラップ部を有するように異なる5’フラップFRETカセットを設計することにより、異なる切断フラップから生じるシグナルを互いに区別することができる。例えば、(1)カセット切断フラップのうちの1つのみのフルオロフォアが一度にシグナルを放出するように、または(2)融解プロファイルを決定するための温度の関数として、異なるカセット切断フラップのフルオロフォアによって放出されるシグナルをモニターすることができる。これらの代替形態の両方は、本明細書の実際に機能する実施例に示されている。
【0159】
特に、複数の異なる5’フラップFRETカセットおよびマスキングオリゴを使用する手順では、5’フラップ切断産物(「カセット切断フラップ」)および同族マスキングオリゴを含むハイブリッド二重鎖のTmは、好ましくは異なっていなければならない。好ましくは、同じ多重反応(例えば、リアルタイム核酸増幅反応であるか、エンドポイント融解/アニーリング分析手順であるか)において分析される異なるハイブリッド二重鎖のTmは、少なくとも2℃、より好ましくは少なくとも3℃、より好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも7℃、より好ましくは少なくとも10℃、またはさらには少なくとも15℃異なる。カセット切断フラップおよび同族マスキングオリゴを含むハイブリッド二重鎖のTm間の好ましい差は、2℃~20℃異なる、より好ましくは5℃~20℃異なる、より好ましくは5℃~15℃異なる、またはさらにより好ましくは5℃~10℃異なる範囲である。いくつかの実施形態において、マスキングオリゴヌクレオチドおよび/またはFRETカセットオリゴヌクレオチドの5’フラップは、マスキングオリゴヌクレオチド-カセット切断フラップ二重鎖のTmを調整または変更するための1またはそれを超えるヌクレオチド修飾を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、1またはそれを超えるヌクレオチド修飾は、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、架橋核酸(BNA)、2’-Oアルキル置換、L-鏡像異性ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0160】
図4は、異なるFRETカセットのFEN-1媒介性切断産物を検出することによる異なる標的配列の同定を概略的に示し、各FRETカセットは、蛍光光度計(例えば、同一のHEXフルオロフォアとして示されている)の同じチャネルで検出することができる蛍光色素を有する。示されている切断産物およびマスキングオリゴは、
図3に示されているものに対応する。フラップレスFRETカセット(上)からのフルオロフォア含有切断産物は、標的1の存在を示し、全ての温度で消光されないままである。したがって、カセット切断フラップ1およびカセット切断フラップ2がそれぞれのマスキングオリゴにハイブリダイズする温度1より低い温度では、検出可能な蛍光は標的1の存在を示す。標的2(中央)の存在を示す、5’フラップFRETカセット1からのフルオロフォア含有切断産物は、温度1より高い温度で消光されない。温度1より高く温度2より低い温度では、検出可能な蛍光は、標的1および標的2の存在を示すことができる。手順で測定された蛍光シグナルは相加的であるので、温度1より高いが温度2より低い温度で測定された蛍光シグナル(
図4の中央部)と温度1より低い温度で測定された蛍光シグナル(
図4の上部)との間の差は、標的2の存在に起因するシグナルを示す。標的3(下部)の存在を示す5’フラップFRETカセット2からのフルオロフォア含有切断産物は、温度2より高い温度で消光されない。温度2より高い温度では、検出可能な蛍光は、標的1および標的2および標的3の存在を示すことができる。したがって、温度2より高い温度で測定された蛍光シグナル(
図4の下部)と、温度1より高いが温度2より低い温度で測定された蛍光シグナル(
図4の中央部)との差は、標的3の存在に起因するシグナルを示す。この図では、温度1<温度2<温度3である。異なる温度での蛍光検出の結果の比較を使用して、どの標的が切断反応(複数可)の促進に関与したかを決定することができる。いくつかの実施形態において、これは、蛍光シグナルの大きさを比較することを含み、異なる温度で測定されたシグナルは、上記のように、既知の検出可能な蛍光の相加的な結果である。いくつかの実施形態において、どの標的が切断反応(複数可)の促進に関与したかを決定することは、融解/アニーリング曲線分析を行うことを含む。
【0161】
結果処理および装置
本明細書に開示される手順は、核酸を増幅し、アンプリコン産生をモニターする従来の実験装置(適切なソフトウェアでプログラムされた統合されたまたはスタンドアロンのコンピュータまたはプロセッサを有する装置を含む)を使用して行うことができる。「コンピュータ」の意味に含まれるのは、ソフトウェアによって制御される組み込みプロセッサである。コンピュータは、製造業者またはエンドユーザのいずれかによって、1またはそれを超える温度変化またはステップを実行するようにプログラムすることができ、好ましくは増幅反応のサイクルが起こっているときに反応混合物内の蛍光のモニタリングを可能にする。好ましくは、反応混合物は、核酸増幅装置内に保持された反応容器(例えば、チューブまたはマルチウェルプレートのウェル)内に収容される。しかしながら、増幅反応が完了した後に(例えば、増幅産物の融解/アニーリング曲線を確立するために)増幅産物の分析を完了することも可能である。この後者の分析は、核酸を増幅する装置の外部で完了することさえできる。
【0162】
開示された技術を実施するのに有用な装置のコンピュータ構成要素は、コンピュータに特定の工程を実施「させる」ソフトウェア命令でプログラムすることができる。これらの工程は、核酸を増幅するサーモサイクラーを制御すること;侵襲的切断反応においてFRETカセット切断が起こる反応混合物における蛍光発光をモニターする蛍光光度計からの入力を受け取ること;または2もしくはそれを超えるFRETカセットのうちのどれが切断されて蛍光シグナルを生成したかを決定するために結果を処理することのいずれかを含み得る。好ましい実施形態では、FRETカセットは切断して蛍光切断産物を生成し、異なる切断産物によって産生された蛍光を、蛍光光度計の単一チャネルで検出または測定することができる。いくつかの実施形態において、異なるFRETカセットは、同一のフルオロフォアで標識される。コンピュータを使用して、数学的工程(例えば、加算、減算、乗算、および/または除算)を実施して、混合物中のどのFRETカセットが切断されて検出可能なまたは測定可能な蛍光シグナルが生じるかについての決定に導くこともできる。
【0163】
本明細書に開示される方法は、核酸を増幅し、核酸増幅産物の産生をモニターするデバイス等の自動核酸分析装置を使用して行うことができる。これらの分析装置は、PCR機器、または一連の温度サイクル工程を実行するようにプログラムすることができるリアルタイムPCR機器を含む。好ましくは、PCR機器は、チューブまたはマルチウェルプレートのウェル(一般に、反応「レセプタクル」)内で起こる反応の進行をモニターする蛍光光度計を装備している。リアルタイムPCR反応を実施およびモニターするように構成された機器は、開示された技術と共に使用するのに特に好ましい。開示された技術を用いて得られる結果を実施、モニター、および評価するための好ましい装置の一例は、手順の工程を有利に自動化するパンサー融合システム(Hologic,Inc.;カリフォルニア州サンディエゴ)である。別の好ましい装置は、ABI 7500リアルタイムPCRシステム(ThermoFisher Scientific;ニューヨーク)である。
【0164】
フラップレスFRETカセットと1またはそれを超える5’フラップFRETカセットとの混合物の中で蛍光切断産物の状態を評価するための1つの一般的なアプローチは、2種類のFRETカセットの切断を別々に評価することを含む。この手順は、混合物中のマスキングオリゴヌクレオチドと5’フラップFRETカセットの蛍光切断産物との間に形成された任意の二重鎖について、反応混合物の温度を最低Tm未満に低下させることを含み得る。その結果、残留蛍光シグナルは、消光され得ない蛍光切断産物に由来し、そのため、温度の関数としての蛍光の変化の一次導関数プロットで一定の値を示す。したがって、マスキングオリゴヌクレオチドを用いた二重鎖形成の結果として他の蛍光切断産物からの蛍光が消光されるときの残留蛍光シグナル(例えば、バックグラウンド蛍光を超える特異的シグナル)を測定または検出することにより、非消光性蛍光切断産物の存在を示すことができる。この条件下で蛍光シグナルを検出することにより、非消光性蛍光切断産物が反応混合物中に存在し、その結果、対応するFRETカセットが切断されたことを示すことができる。第2の工程では、蛍光切断産物を含有する反応混合物について温度依存性融解/アニーリング曲線(時には「消光プロファイル」)を作成することができ、そこから導関数プロットを作成することができる。例えば、温度の関数としての蛍光変化の一次導関数プロットは、反応混合物中に存在する異なる二重鎖に対応するピークまたは最大値を含み、二重鎖形成は、その中に含まれる蛍光切断産物からのシグナルを消光する。このようにして、どのFRETカセットが切断されて蛍光切断産物を産生したかを決定することが可能である。
【0165】
例示的なシステムは、異なるFRETカセットの侵襲的切断を使用して2つまたは3つの検体のいずれかを多重検出することによって本明細書に示され、FRETカセットは、蛍光光度計または蛍光モニタリング装置の単一チャネルで検出またはモニターすることができる蛍光標識を有する。いくつかの実施形態において、多重手順において複数のFRETカセットを使用した。例えば、2つの異なるFRETカセットを単一の反応混合物に組み合わせることができ、FRETカセットのうちの1つだけが、同じ反応混合物に含まれるマスキングオリゴヌクレオチドに相補的な5’フラップ配列を有する。他のFRETカセットは、いかなる5’フラップ配列も含まないフラップレスFRETカセットであり得るか、または代替的に、相補的なマスキングオリゴヌクレオチドを含まない反応混合物中の5’フラップFRETカセットであり得る。そのような場合、2つのFRETカセットのうちの1つのみの切断から生じる蛍光シグナルは、温度依存性蛍光消光を受けるであろう。上記のように、FRETカセットの切断によって生成された蛍光シグナルは、蛍光を消光するために蛍光切断産物がいかなるマスキングオリゴヌクレオチドとも相互作用しない場合、反応混合物の温度が変化するときに実質的に一定に維持される。この非消光性蛍光切断産物の検出は、マスキングオリゴヌクレオチドを含む二重鎖の形成が、反応混合物中の同じ蛍光チャネルでモニターされる他の全ての消光性蛍光切断産物からの蛍光シグナルを消光する温度で、蛍光シグナル(例えば、バックグラウンドを上回る蛍光シグナル)を検出することを含み得る。多重反応混合物中の消光性蛍光切断産物の検出は、蛍光消光が最大であるTmより低い温度と比較して、オリゴ二重鎖形成をマスキングするためのTmより高い温度で測定可能な蛍光シグナルがより大きいことを単純に確立することを含み得る。
【0166】
異なる実施形態では、多重反応混合物は2つの異なるFRETカセットを含み、FRETカセットの各々は切断可能な5’フラップ配列を含み、各切断5’フラップによって放出された蛍光シグナルは、異なる相補的マスキングオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって消光され得る。どのFRETカセットが反応混合物中で切断されたかを決定することは、導関数解析を含むことができ、好ましくは同様に上記の融解/アニーリング曲線の一次導関数プロットを含む。このアプローチにより、複数の切断産物を単一の手順で分解および同定することができる。
【0167】
いくつかの実施形態において、多重侵襲的切断反応は、3つまたはそれを超える異なるFRETカセットを含み、それぞれが、蛍光光度計の単一チャネルにおいて検出可能な蛍光標識(例えば、全ての蛍光標識が同じであってもよい)で標識される。FRETカセットはそれぞれ、切断後に蛍光シグナルを放出する異なる切断可能な5’フラップ配列を有することができ、相補的なマスキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に温度依存的様式で蛍光シグナルを消光することができる。異なる蛍光カセット切断フラップのハイブリダイゼーションによって形成された二重鎖が異なるTmによって特徴付けられる場合、二重鎖の正体は、融解/アニーリング特徴(例えば、導関数解析を使用する)を評価することによって容易に決定することができる。これは、マスキングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズした蛍光切断産物を含む二重鎖を検出および同定するために一次導関数プロットを使用して以下に示される。さらに、多重反応に使用されるFRETカセットの1つは、反応混合物中で消光しない蛍光切断産物を産生することができる。この状況では、いくつかは異なる温度で蛍光消光を示すが、1つは蛍光消光を示さないため、合計した切断産物は依然として異なる温度依存性蛍光消光プロファイルを示すと言うことができる。実際的に言えば、反応混合物の温度が変化するにつれて蛍光シグナルをモニターすることによって、異なる切断産物を区別することができる。これは、温度が高い状態から低い状態に変化するとき(例えば、相補鎖のアニーリングを可能にして二重鎖を形成させるために)、あるいは低い状態から高い状態に変化するとき(例えば、予め形成された二重鎖の融解を促進するために)、蛍光シグナルをモニターすることを含んでもよい。このため、温度依存性蛍光消光プロファイルは、「融解/アニーリング」曲線またはプロファイルと呼ばれることがある。
【0168】
多重侵襲的切断反応で産生された蛍光切断産物の示差的消光からの結果は、異なるアプローチによって分析して、どの代替FRETカセットが切断されて蛍光光度計または蛍光検出デバイスの単一チャネルで検出可能な蛍光シグナルを産生したかを決定することができる。自動化することができる2つの好ましい分析アプローチ(例えば、コンピュータ、プロセッサ、またはコントローラによって、)は、以下を含む:(1)異なる蛍光切断産物がマスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに起因してより大きいまたはより小さい蛍光消光を受ける温度での蛍光読み取り値または測定値の間の差を評価すること;(2)例えば、二重鎖の特徴的な融解温度(すなわち、「Tm」)によって反応混合物中に形成された二重鎖を同定するための数学的導関数解析を使用して、蛍光消光プロファイル(すなわち、相補的なマスキングオリゴヌクレオチドの存在下で温度の関数として測定される蛍光)を評価すること。特定の好ましい実施形態では、これらの異なるアプローチの組み合わせを使用して、複数の異なるFRETカセットのうちのどれが反応混合物中で切断されたかを解明することができ、ここで異なる切断産物が、蛍光光度計の同じチャネル中で検出されるフルオロフォアを有する。いくつかの実施形態において、異なるFRETカセットは、同一のフルオロフォアを有する。例えば、消光をもたらすためにマスキングオリゴヌクレオチドと相互作用しない蛍光切断産物を含有する反応混合物は、同族マスキングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする1またはそれを超える蛍光切断産物と共に、好ましくは、マスキングオリゴヌクレオチドおよび5’フラップFRETカセットの相補的蛍光切断産物を含む二重鎖のTmより高い温度で測定される蛍光とそのTmより低い温度で測定される蛍光との差、並びに温度の関数としての蛍光の変化の導関数プロット(例えば、一次導関数プロット)を評価することによって分析される。
【0169】
2つの蛍光切断産物を生成するための多重侵襲的切断アッセイにおけるFRETカセットの切断は、一方のみが温度依存性消光を受ける場合、2つの温度での蛍光発光を評価することによって、または代替的にこの評価アプローチを曲線分析と一緒に使用してTmによって二重鎖を同定することによって分析することができる。反応混合物中で消光され得ない蛍光切断産物は、測定された温度範囲にわたって均一に蛍光性のままであり、したがって、温度の関数としての蛍光のプロット上で一定の傾き(すなわち、傾きが0である)を有する。温度の関数として変化する蛍光の一次導関数プロットは、任意の二重鎖のTmを示すいかなる最大値も示さない。対照的に、温度依存性消光(すなわち、マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに起因して)を受けた蛍光切断産物の存在を示す一次導関数プロットは、蛍光切断5’フラップを含む二重鎖のTmを示すピークを示す。さらに、2つの温度で測定された蛍光シグナルの単純な評価は、2つの蛍光切断産物の各々の存在または不在を示すことができる。より具体的には、蛍光は、反応混合物中の二重鎖のTmより高い1つの温度(すなわち、蛍光消光がない温度)および反応混合物中の二重鎖のTmより低い第2の温度(すなわち、二重鎖が形成される温度;完全な蛍光消光)で測定または検出することができる。
【0170】
いくつかの例において、単一の非消光性蛍光切断産物(例えば、フラップレスFRETカセットの切断、または相補的なマスキングオリゴヌクレオチドの不在下でのカセット切断フラップから生じる)が、1またはそれを超える消光可能な蛍光切断産物との反応混合物中に存在する。マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光に供されない蛍光切断産物は、蛍光光度計チャネルにおける検出可能な蛍光シグナルが、蛍光光度計チャネルにおける蛍光消光が最大である他の蛍光切断産物を含有する二重鎖のTmより低い温度で測定される場合、存在すると決定される。換言すれば、二重鎖が反応混合物中の他の切断産物からの蛍光を消光する点で測定可能な蛍光(すなわち、バックグラウンドシグナルの閾値を超える特異的なシグナル)は、マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光に供されない蛍光切断産物の存在を示す。Tmより高い温度(例えば、蛍光消光が最小である温度)で測定された蛍光シグナルが、Tmより低い温度(すなわち、蛍光消光が完了する温度)で測定された蛍光シグナルを超える場合、マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光を受ける蛍光切断産物が存在すると決定することができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、特に、マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光を受ける複数の異なる蛍光切断産物が、消光を受けない1つの蛍光切断産物と組み合わされる場合、両方のアプローチを組み合わせて使用することが望ましい。そのような場合、融解/アニーリング曲線を生成し、導関数解析によって評価して、蛍光を消光する二重鎖のTmを検出することによって消光可能な蛍光切断産物の存在を決定することができる。同様に、完全な蛍光消光および/または蛍光消光の不在に対応する融解/アニーリング曲線上の点を上記の評価に使用することができる。より具体的には、消光を受けない蛍光切断産物の存在は、マスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光が完了した低温で評価することができる。反応混合物中で消光が完了した(すなわち、最大)ときに残留蛍光シグナルを検出することは、非消光性蛍光切断産物の存在を示す。単一の消光可能な蛍光切断産物では、二本鎖形成のTmより低い温度での蛍光読み取り値(例えば、二重鎖が形成され、安定している場合)と比較して、二重鎖形成のTmより高い温度でのより高い蛍光読み取り値(例えば、二重鎖が存在しない場合)は、消光可能な蛍光切断産物の存在を示す。
【0172】
1より多い異なる蛍光切断産物を含む反応混合物であって、それぞれがマスキングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによる消光を受ける反応混合物は、混合物中に存在し得る二重鎖のTmを同定するために導関数解析を使用して融解/アニーリング曲線の結果を処理することによって好都合に評価することができる。例えば、融解/アニーリング曲線を処理して一次導関数を計算し、次いで、温度の関数として蛍光の変化の一次導関数プロットを確立することができる。一次導関数プロット上のピークまたは最大値は、マスキングオリゴヌクレオチドと相補的な蛍光切断産物との間の二重鎖のTmに対応する。二重鎖の各々が異なるTmを特徴とする場合、互いに独立して二重鎖を検出することが可能となる。二重鎖を同定し、複数のFRETカセットのうちのどれが切断されて蛍光シグナルを生成するかを決定するために、より高次の導関数も企図される。本明細書の他の箇所に記載されているように、1つの二重鎖と他の二重鎖(複数可)との区別を容易にするために、異なる二重鎖に対するTmを最小温度差だけ離間させることが望ましい。
【0173】
コンピュータに結果を処理させ、切断産物を産生したFRETカセットの混合物のうちのどのFRETカセットが上記の説明に包含されるかを決定させるソフトウェア。
【実施例】
【0174】
実施例
本明細書には、少なくとも1つの5’フラップFRETカセット(すなわち、5’フラップ部を有するFRETカセット)を使用して多重検出するための技術が示されており、その5’フラップ部は蛍光標識を有する。侵襲的切断アッセイにおけるFEN-1エンドヌクレアーゼによる5’フラップFRETカセットの切断後に蛍光標識から放出されるシグナルは、温度に基づいて選択的に消光可能である。いくつかの実施形態において、侵襲的切断アッセイは、一次および二次の両方の侵襲的切断反応を含む。いくつかの他の実施形態において、侵襲的切断アッセイは、一次侵襲的切断反応を伴わない二次侵襲的切断反応を含む。FEN-1が介在する切断は、5’フラップFRETカセットのフルオロフォア部分およびクエンチャー部分を異なるオリゴヌクレオチド分子上に物理的に分離し、それによってインタクトな5’フラップFRETカセットに特徴的な蛍光消光を緩和することを理解されたい。切断された5’フラップから発せられる蛍光の消光は、切断された5’フラップの、クエンチャー部分を有する相補的なマスキングオリゴヌクレオチドへの温度依存性ハイブリダイゼーションによって媒介される。このアプローチにより、消光可能なフラップは、検出される標的核酸にハイブリダイズするどのプローブの一部でもない。代わりに、消光可能なフラップは、等温条件下で重合せずに起こる線形増幅反応の生成物であり得る。
【0175】
本開示によれば、異なる標的分子を報告する5’フラップFRETカセットを、単一チャネル蛍光検出を使用して検出することができる。異なるFRETカセットの蛍光標識は、同一の蛍光標識であり得る。いくつかの実施形態において、同じ蛍光標識が、異なる5’フラップを有するFRETカセットで使用される。異なる標識が光学検出器(例えば、蛍光光度計)の同じ蛍光チャネルで検出され得るという条件で、同一の標識の代わりに異なる蛍光標識を使用することができる。全ての場合において、蛍光シグナルをもたらすためのFRETカセットの切断は、FEN-1酵素(すなわち、非重合フラップエンドヌクレアーゼ)によって媒介された。一次プローブから切断された5’フラップは、FRETカセットの切断において触媒機能を果たし、これは、5’フラップがFRETカセットに一時的にハイブリダイズし、切断を促進して蛍光シグナルを遊離させ、次いで脱ハイブリダイズして、切断されたフラップと新しいFRETカセットとの相互作用を可能にすることを意味する。検出される核酸標的にハイブリダイズする一次プローブから切断された5’フラップは、好ましくはフルオロフォア部分を有していない。
【0176】
実施例1は、2つの異なる核酸配列(検体Aおよび検体B)が、単一チャネルまたは二重チャネル蛍光検出のいずれかを使用して同じ反応混合物中でどのように増幅および検出されたかを示す。増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるものであった。PCR反応の生成物を、蛍光標識されたFRETカセットを使用する侵襲的切断反応を用いて検出した。リアルタイムPCR機器の蛍光光度計構成要素のHEXチャネルで検出可能な第1の標識(ヘキサクロロ-フルオレセインまたは「HEX」)を有するFRETカセットを使用して、検体Aを検出した。検体Bは、同じ反応混合物中の2つの異なるFRETカセットのいずれかを使用して検出され、各FRETカセットは異なる標識を有していた。検体Bを検出するために使用された第1の5’フラップFRETカセットは、PCR機器のHEXチャネルにおいても検出可能であった第2の標識を有していた。このFRETカセットから切断された5’フラップに結合した標識によって発せられたシグナルは、検体Bの存在を示し、FRETカセットの切断された5’フラップを相補的なマスキングオリゴにハイブリダイズさせた後に消光に供した。検体Bを検出するための第2のFRETカセットは、PCR機器のROXチャネルで検出可能であった標識を含み、切断後に放出された蛍光シグナルは消光を受けなかった。特に、リアルタイム増幅および検出機器のROXチャネルで検出されたシグナルは、機器のHEXチャネルでは実質的に検出されず、逆もまた同様であった。換言すれば、蛍光HEXシグナルは、ROXチャネルにおいて実質的に検出できず、蛍光ROXシグナルは、HEXチャネルにおいて実質的に検出できなかった。結果は、2つの検体核酸の各々を増幅することができ、PCR機器の同じまたは異なる光チャネルで検出されたフルオロフォアを使用して異なる増幅産物の合成をモニターすることができることを確立した。
【0177】
実施例1
1回の反応における2つの検体核酸の単一チャネルまたは二重チャネル蛍光検出
反応混合物を複製物として調製し、各反応混合物は、水性再構成緩衝液に取り込まれた凍結乾燥組成物を含んでいた。凍結乾燥組成物は、dNTP、熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼ;Promega Corporation ウィスコンシン州マディソン製)、FEN-1フラップエンドヌクレアーゼ酵素(例えば、Cleavase 2.0;Hologic Inc.マサチューセッツ州マールボロー製)、オリゴヌクレオチド、およびトレハロースを含んでいた。凍結乾燥組成物中のオリゴヌクレオチドは、検出される2つの検体核酸の各々について、1対のプライマー、増幅および/または検出される検体配列に非相補的な5’フラップを有する一次プローブ、および一次プローブから切断された5’フラップのハイブリダイゼーション後にFEN-1酵素によって切断され得るFRETカセットを含んだ。この実施例では、一次プローブからの5’フラップの切断を促進したオリゴヌクレオチドは、核酸増幅反応におけるプライマーとしても機能した。等温サイクリングハイブリダイゼーション反応において、2つの異なる一次切断フラップ(検体Aおよび検体Bに相補的な一次プローブの各々から1つ)は、3つの異なるFRETカセットに可逆的にハイブリダイズした。FRETカセット1(検体Aを検出するために使用)は、HEXフルオロフォアおよびBlackBerryクエンチャー部分(Berry&Associates;ミシガン州デクスター)で標識されたフラップレスFRETカセットであった。FRETカセット1の切断後、HEXフルオロフォアからの発光シグナルは、核酸を増幅し、増幅反応の進行をモニターするために使用される機器のHEXチャネルで検出可能であった。FRETカセット1は、5’フラップ配列を有していなかった。FRETカセット2もまた、5’フラップを含まないが、CAL Fluor Red 610フルオロフォア(Biosearch Technologies,Inc.;カリフォルニア州ノバト)およびBHQ(登録商標)-2クエンチャー部分(Biosearch Technologies,Inc.)で標識されたフラップレスFRETカセットであり、検体Bを検出するために使用した。切断反応後、CAL Fluor Red 610フルオロフォアからの発光シグナルは、核酸を増幅し、増幅反応の進行をモニターするために使用される機器のHEXチャネルではなくROXチャネルで検出可能であった。検体Bを検出するためにも使用されたFRETカセット3は、ヘアピン部に付着したBHQ(登録商標)消光部分(Biosearch Technologies,Inc.)で消光されたCAL Fluor(登録商標)Orange 560フルオロフォアで5’フラップ上に標識された5’フラップFRETカセットであった。切断反応後、CAL Fluor(登録商標)Orange 560フルオロフォアからの発光シグナルは、核酸を増幅し、増幅反応の進行をモニターするために使用される機器のHEXチャネルで検出可能であった。FRETカセット3の5’フラップに相補的であり、BHQ(登録商標)消光部分(Biosearch Technologies,Inc.)を含むマスキングオリゴヌクレオチドを、FRETカセット3に対して3倍モル過剰で反応混合物に含めた。
【0178】
この手順で使用される標的検体、FRETカセット構成、および検出チャネルを表1に要約する。
【表1】
【0179】
表1に示す検出システムを用いる増幅反応は、検体A標的単独、検体B標的単独、または検体Aおよび検体B標的の組み合わせのいずれかを含んでいた。「標的なし」の陰性対照反応は、全ての試薬を含んでいたが、添加された鋳型を含まなかった。各反応は、3つ全てのFRETカセットおよびマスキングオリゴヌクレオチドを含んでいた。熱サイクリングおよび蛍光モニタリングは、ABI 7500 Real-Time PCR System機器(ThermoFisher Scientific;ニューヨーク州グランドアイランド)を使用して行った。反応条件は、95℃で120秒間、69℃で5秒間、67℃で5秒間、65℃で6秒間、および72Cで5秒間の10サイクルを含んだ。これに続いて、95℃で10秒間、69℃で5秒間、67℃で5秒間、65℃で25秒間の40サイクルを行った。マスキングオリゴがFRETカセット3から放出された5’フラップにハイブリダイズしないままである温度で、リアルタイムPCR機器のROXチャネルおよびHEXチャネルについて蛍光発光データを収集した。蛍光シグナルを、検体Bおよび検体Aの両方を含む反応のサイクル数の関数としてHEXおよびROXチャネルで測定した。ROXチャネルのシグナル(データは示さず)は、検体BがPCR反応で増幅したことを示すシグナルのサイクル依存的増加を反映するシグモイド曲線をもたらした。HEXシグナルは、検体Bおよび検体Aの増幅からの組み合わせたシグナルを反映したが、一方と他方とを区別しなかった(データは示さず)。HEXおよびROXの蛍光シグナルは、検体Bおよび検体Aを増幅する多重反応において独立して検出可能であった。
【0180】
図5A~
図5Cは、示されるように、個々にまたは組み合わせて検体を含む反応のサイクル数の関数としてHEXチャネルで測定されたシグナルを表示する。
図5Aのグラフは、増幅された検体Aが、検体B鋳型を添加しない場合に検出され得ることを確認し、この検体についてのシグナル蓄積について特徴的なシグモイド曲線を示した。
図5Bは、検体A鋳型の不在下での検体B鋳型の増幅を示すHEXチャネルで測定されたシグナルを表示する。この場合の単調なシグナル蓄積曲線は、
図5Aに示す曲線のシグモイド特徴を欠いていた。
図5Cは、単一の反応に検体Aおよび検体Bの両方の鋳型を含む増幅反応で検出されたシグナルを示す。ここで、HEXチャネルで測定されたシグナルは、蛍光光度計の単一チャネルで測定された検体Aおよび検体BのFRETカセットによって産生された組み合わせたシグナルを表す、延長されたシグモイド曲線を産生するように増加した。この場合、同一でないフルオロフォアによって産生されたシグナルは、蛍光光度計の単一(すなわち、同じ)チャネルで検出された。本明細書の他の箇所で論じるように、融解/アニーリング曲線分析、および曲線形状の分析(例えば、一次導関数解析)を使用して、各異なる結果を生じさせる検体の正体を推定することができる。
【0181】
実施例2は、検体Bの検出に使用される5’フラップFRETカセットからのシグナルを消光するためにマスキングオリゴヌクレオチドを使用して、多重増幅反応混合物中の異なる検体核酸の正体を分解するための手順を示す。マスキングオリゴに相補的な切断5’フラップの標識から放出された蛍光のみを消光に供した。
【0182】
実施例2
エンドポイント融解/アニーリング曲線分析は増幅された標的を区別する
実施例1からのPCR後反応混合物を、核酸増幅に使用したのと同じリアルタイムPCR機器での融解/アニーリング曲線分析に使用した。これは、温度が90℃から21.4℃まで変化するにつれて、リアルタイムPCR機器のHEXチャネルにおける蛍光シグナルの大きさをモニターすることを伴った。
【0183】
増幅後の融解/アニーリング曲線分析の結果を
図6に示す。これらのデータにより、検体Aの検出に特異的なFRETカセットの切断産物は、マスキングオリゴヌクレオチドでは消光できないフラップレスFRETカセットから産生されたHEXチャネルシグナルを有し、温度の関数として(すなわち、図示された温度範囲にわたって)均一に蛍光のままであることが確認された。対照的に、消光部分を含むマスキングオリゴヌクレオチドの存在下で、検体Bの検出に特異的な5’フラップFRETカセット3の切断後に産生されたHEXチャネルシグナルは、温度依存性蛍光消光を示した。より具体的には、検体B鋳型のみをスパイクした反応混合物中の蛍光は、温度が20℃に近づくにつれて効果的に消光され、その結果、蛍光シグナルは500,000RLUに向かって減少した。実験的には、蛍光の実質的に全てが40℃未満の温度で消光されることが観察された。検体Aおよび検体Bの両方の鋳型を含む反応では、HEXチャネル内のシグナルは本質的に個々の温度プロファイルの組み合わせであった。より具体的には、この融解/アニーリング曲線のプロファイルは、検体Bの鋳型反応の融解/アニーリング曲線に従ったが、鋳型反応における検体Aの存在に起因する不変の蛍光の添加によって全体的にシグナルが増加した。温度が20℃に近づくと、検体Bの存在を示すシグナルが消光されたため、混合反応における蛍光は、検体Aのみの反応で観察されたシグナルレベルに近づいた。図に示すように、蛍光は、検体B鋳型を含む反応混合物において約63℃で最大になり、63℃を超えると減少した。操作の特定の理論によって制限されることを望まないが、マスキングオリゴハイブリダイゼーションは、5’フラップマスキングオリゴヌクレオチド二重鎖のT
mより実質的に高い温度(例えば、10℃~20℃高い)で減少または完全に失われるはずであるため、63℃を超えた蛍光のこの減少は、フルオロフォアに対する温度依存性緩衝効果によるものである可能性がある。
【0184】
本明細書に開示される核酸検体の多重検出のための侵襲的切断システムを使用して得られた結果は、試験試料中の検体の存在または不在を決定するために異なる方法で処理することができる。例えば、単一チャネル(例えば、本図における蛍光光度計のHEXチャネル)内の2つの異なる温度(例えば、63℃および30℃)で測定された蛍光シグナルを閾値と比較して、2つの異なる検体の各々の存在または不在を確立することができる。閾値は、事前に確立されてもよく(すなわち、アッセイを実施する前に)、またはアッセイが行われる時点で確立されてもよい(例えば、検出される1またはそれを超える検体を有する1またはそれを超える較正標準を使用して)。この分析方法は、2.2×10
6RFUおよび1×10
6RFUにおける例示的な閾値、並びに
図6の結果を使用して示すことができる。これらのパラメータの下で、63℃で2.2×10
6RFUを超える蛍光読み取り値は、検体Bの検出を示したが、この閾値を下回る読み取り値は、検体Bが存在しないことを示した。63℃での1.0×10
6RFUと2.2×10
6RFUとの間の蛍光読み取り値は、検体Aの存在および検体Bの不在を示した。同様に、あるいは、30℃で1×10
6RFUを超える蛍光読み取り値は、検体Aの存在を示した。その検体の存在を示す切断された5’フラップからの蛍光は、その温度で実質的に完全に消光されたため、そのような読み取り値は検体Bの存在について知らせない。30℃で1×10
6RFU未満の蛍光読み取り値は、検体Aが存在しないことを示す。
【0185】
導関数に基づくデータ分析手法は、上述の閾値に基づく分析の代わりに、またはそれと組み合わせて使用することができる。例えば、検体A(
図6を参照)の存在に関連するデータプロットは、一定の勾配(例えば、0勾配)および約5×10
5RFUのバックグラウンド蛍光よりも少なくとも2倍大きい蛍光の大きさを有する。この蛍光の大きさ(例えば、反応混合物中の蛍光消光が最大になる温度で測定される)は、検体Aの存在を示すために使用することができる。検体Bの存在に関連するデータプロットは、約50℃~58℃の範囲で一次導関数最大値を示し、約63℃でゼロ点交差(すなわち、ゼロ勾配を示すx軸交差)を示した。これらの特徴を示す任意のデータセットは、検体Bの存在を示すと解釈することができる。いくつかの実施形態において、特定の温度での蛍光の大きさを閾値に基づく分析に使用することができ、蛍光の温度依存性変化率を導関数に基づくデータ分析に使用することができ、2つの分析を組み合わせて、アッセイ反応に存在し得る複数の検体の各々の存在または不在について決定することができる。
【0186】
まとめると、上記の結果および考察は、固有のプロファイルが3つの異なる出発標的条件(すなわち、検体Aのみ、検体Bのみ、または検体Aと検体Bとの組み合わせ)の各々についての融解/アニーリング曲線を特徴付けることを実証した。これらのデータは、単一の検出チャネルを使用するエンドポイント融解/アニーリング曲線分析が、1つまたは複数の標的が反応混合物中に存在することを容易に分解したことを示す。
【0187】
前述の実施例は、リアルタイムおよびエンドポイントフォーマット核酸分析を使用した侵襲的切断反応を使用した2つの異なる増幅核酸標的配列の検出を実証した。異なる増幅された標的に対する蛍光シグナルを、反応が起こっているときに核酸増幅をモニターした機器の蛍光光度計構成要素の単一の光チャネル(すなわち、HEXチャネル)において検出した(例えば、時間またはサイクル数の関数として)。この手順は、マスキングオリゴヌクレオチドおよび蛍光標識を含む切断されたフラップを含むハイブリッド二重鎖が、二重鎖のT
mより低い温度で安定であり、二重鎖のT
mより高い温度で不安定であるという事実を利用した。結果は、最大の消光が約39℃で観察され、最小の消光が約63℃で観察されることを確立した。まとめると、
図5および
図6に示す結果は、蛍光光度計の単一の光チャネルのみを使用して、多重反応混合物中で複数の異なる核酸検体を互いにどのように検出および分解し得るかを示している。これは、蛍光光度計の同じ光チャネルで検出された異なるフルオロフォア種を使用して達成されたが、(例えば、以下に実証されるように)代わりに単一種のフルオロフォアを使用することができた。さらに、当業者は、上記の例示的な標識の代わりに異なる蛍光標識をどのように置換することができるかを理解し、HEXチャネル以外の機器チャネルをそれらの標識の検出にどのように使用することができるかを理解するであろう。
【0188】
実施例3では、リアルタイムモニタリングとPCR機器の蛍光光度計の単一の光チャネルのみを用いて、複数の検体の存在または不在を検出する手順を記載する。ここで、サイクリング手順は、マスキングオリゴヌクレオチドによる蛍光消光が2つの検体の各々の存在または不在の決定を可能にする温度ステップを含んでいた。より具体的には、PCR手順のサイクル中に63℃および39℃で蛍光読み取り値を決定した。以下に示すように、この技術は、単一の光チャネルで測定された二重シグナルをリアルタイムフォーマットで区別した。この手順は、増幅の閾値レベルが達成されるサイクル数(例えば、Ct値)を決定することによってリアルタイム増幅試行曲線を処理するための標準的な手順に従って、検出された検体の各々の定量化に有利に使用することができる。次いで、決定されたCt値を、閾値および検体核酸の量または濃度を関連付ける較正プロットまたは式と比較することができる。代替的なリアルタイム手順は、検体核酸が、指定された(例えば、所定の)量または濃度レベルを上回ってまたは下回って多重反応混合物中に存在するかどうかを確立することができる。これは、特定のレベルの反応の進行(例えば、Ct値によって測定される)が指定されたサイクル数によって達成されるかどうかを確立することを含むことができる。特に、先の実施例がPCR機器に連結された蛍光光度計の同じ光チャネルで検出された2つの異なるフルオロフォアを使用した場合、ここでは同じフルオロフォアを使用して2つの異なる検体が検出された。
【0189】
実施例3
単一のフルオロフォア種を用いた多重増幅のリアルタイムモニタリング
リアルタイム増幅プロトコルのための反応混合物を以下のように調製した。検体Aの標的配列を含むプラスミドDNAの段階希釈物を標準ストック溶液から調製した。検体Bの標的配列を有する野生型細菌ゲノムDNAは、その検体の増幅のための鋳型核酸の供給源として機能した。実施例1に記載の凍結乾燥ペレットを水性緩衝液を用いて再構成し、次いで、検体Bの検出に特異的な5’フラップFRETカセットおよび対応するマスキングオリゴヌクレオチドの各々をスパイクした。再び、反応混合物中のFRETカセットの切断を、一次プローブからの一次切断フラップによって触媒した。
【0190】
4つの反応混合物を、マルチウェルPCRプレート(高温および低温モニタリングを実証するためにそれぞれ1つのプレート)を使用して2連で調製した。陰性対照混合物は、検体Aまたは検体Bのいずれについても核酸鋳型を受けなかった。第2のセットの混合物は、検体Aプラスミドではなく、検体B鋳型を含む細菌ゲノムDNAのみを受け取った。第3のセットの混合物は、検体Aプラスミドのみを受け取り、検体B鋳型を含有する細菌ゲノムDNAは受け取らなかった。第4のセットの混合物は、検体B鋳型を含有する細菌ゲノムDNAと検体Aプラスミドの両方を受け取った。全ての試行は、検体Bの検出に使用される対応する5’フラップFRETカセットに対して3倍過剰のマスキングオリゴを含んでいた。FRETカセットの侵襲的切断によって生成された蛍光シグナルのモニタリングを伴うPCR反応を、63℃での蛍光モニタリングを伴う第1のセットのサイクリング条件(「高」温モニタリング)または39℃での蛍光モニタリングを伴う第2セットのサイクリング条件(「低」温モニタリング)のいずれかを使用してABI 7500リアルタイムPCR機器で実施した。高温(63℃)蛍光モニタリングに用いたサイクリング条件は以下の通りであった。(1)95℃で120秒間;(2)95℃で15秒;69℃で5秒間;67℃で5秒間;65℃で6秒間;および72℃で25秒間×10サイクル(初期Taq最適段階)、(3)95℃で10秒間;69℃で5秒間;67℃で5秒間;65℃で5秒間;および63℃で25秒間×40サイクル。低温(39℃)蛍光モニタリングに用いたサイクリング条件は以下の通りであった。(1)95℃で120秒間;(2)95℃で15秒;69℃で5秒間;67℃で5秒間;65℃で6秒間;および72℃で25秒間×10サイクル(初期Taq最適段階)、(3)95℃で10秒間;69℃で5秒間;67℃で5秒間;65℃で5秒間;および39℃で25秒間×40サイクル。高温および低温での蛍光モニタリングを合計50サイクル実施した。
【0191】
手順の結果を
図7A~
図7DのリアルタイムPCR増幅プロットに示す。最も興味深い結果は、検体B鋳型のみ、または検体A鋳型と組み合わせた検体B鋳型を使用して実施された試行であった。検体A鋳型のみを使用した反応は、対照として処置され、図には示されていない。
【0192】
図7Aおよび
図7Bは、検体B特異的蛍光をサイクル数の関数として示し、蛍光は、63℃(蛍光消光なし)または39℃(マスキングオリゴヌクレオチドによって消光された蛍光)でPCR機器のHEXチャネルで決定された。バックグラウンドを超える蛍光の増加は、
図7Aに示すように、約サイクル12から開始し、サイクル40を通して継続する63℃で明らかであった。
図7Bに示すように、39℃で取得された蛍光測定値は、手順を通してバックグラウンドレベルのままであった。これらのデータにより、検体Bの蛍光シグナルの消光が、切断されたフラップの相補的なマスキングオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより、より低い温度で実質的に完了することが確認された。
図7Bのプロットにおいて低温(39℃)で観察された蛍光は、バックグラウンド蛍光によるものであり、検体Bの存在を示すシグナルによるものではなかった。
【0193】
図7Cおよび
図7Dは、検体Bおよび検体A鋳型核酸の組み合わせを増幅および検出した反応で産生された蛍光シグナルをモニタリングすることによって得られたリアルタイム試行曲線結果を示す。蛍光読み取り値を63℃の温度ステップ中に測定した
図7Cに示す曲線は、両方のFRETカセットの切断から産生された蛍光からの複合的な寄与を反映している。検体Bの存在を示すFRETカセットの切断のみが、39℃で蛍光シグナルを消光する効果を有するマスキングオリゴヌクレオチドによってハイブリダイズされ得る蛍光フラップ配列を生じた。
図7Cに示すように、63℃の温度ステップ(すなわち、蛍光消光なし)で測定された蛍光シグナルは、約サイクル11でバックグラウンドレベルを超えて上昇し始め、約サイクル19までに対数線形相に入った。蛍光増加率は、約サイクル29までに漸減し始めたが、シグナルの大きさは増加し続けた。
図7Dに示す曲線は、39℃の温度ステップ中に測定された蛍光読み取り値を反映している。検体Bの存在を示す切断フラップからのシグナルはこの温度で効率的に消光されたため、
図7Dで測定された蛍光は、検体Aの存在を示す切断反応のみに由来した。
【0194】
まとめると、
図7A~
図7Dに提示される結果は、単一の蛍光検出チャネル(例えば、単一のフルオロフォア種からの発光をモニターすること)のみのリアルタイムモニタリングを使用して複数の標的核酸を検出するために単一の反応混合物を使用することができ、異なる温度で蛍光発光をモニタリングすることによって各標的を区別することができることを示す。開示された技術が実施されるとき、1つの温度は蛍光消光の条件に対応した(すなわち、切断されたフラップに起因する蛍光の実質的に完全なまたは最大の消光)。検体Bの検出は、この条件を示した。手順における異なる温度は、切断されたフラップから生じる蛍光を消光させなかった。
【0195】
図7A~
図7Dに示す結果をもたらすために使用した反応は、同じ機器で逐次的に試行されたが(すなわち、蛍光測定は、63℃ステップまたは39℃ステップのいずれかの間に行われる)、システム内の複数の検体の検出を単純化するために、両方の温度ステップで蛍光について単一の反応混合物をモニターすることが好ましい。ここでも、検体Bのシグナルの検出は、蛍光消光によって二重陽性試料(すなわち、検体Bおよび検体Aを有する試料)から効果的に除去され、それによって検体Aの存在を示すシグナルのみが残ったため、これが可能になる。
【0196】
上記のように、多重反応混合物のリアルタイムモニタリングからの結果を使用して、検体核酸を定量化することができ、または検体核酸が閾値量もしくは濃度(例えば、0濃度であってもよい)より多いかまたは少ない量で存在するかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態において、検体核酸の定量化は、決定されたCt値を、Ct値および検体濃度を関連付ける較正プロットまたは式と比較することを含み得る。他の実施形態では、検体核酸が閾値量または濃度より多いかまたは少ない量で存在するかどうかを決定することは、時間依存性蛍光値が指定された時間またはサイクル数までにあるレベルの反応進行に達するかどうかを決定することを含み得る。例として
図7A~
図7Dからのデータを使用して、検体の存在または不在に関する定性的決定は、少なくとも500,000RFU(相対蛍光単位)の蛍光読み取り値が30PCRサイクルまでに達成されるかどうかを決定することを含み得る。検体Bの検出による
図7Bおよび
図7D中の蛍光シグナルは、蛍光消光によって効果的に除去されている。
図7Bのプロットと比較して
図7Aのプロットで観察されたシグナルの増加は、検体Bの検出による蛍光の寄与を示すことから、反応混合物中のその標的の存在を確認する。したがって、
図7Aおよび
図7Bから得られた結果を比較すると、反応混合物が検体Bのみを含み、検体Aを含まないことを示す。
図7Dのプロットと比較して
図7Cのプロットで観察されたシグナルの増加は、その反応混合物中の検体Bの検出による蛍光の寄与を示す。ここでも、
図7Dにプロットされた残りの蛍光は、検体Aの検出から生じるシグナルに起因する。したがって、
図7Cおよび
図7Dから得られた結果を比較すると、反応混合物が検体Aおよび検体Bの両方を含有したことを示す。同様のプロセスを使用して、3つの異なる検体の存在または不在を評価することができる。
【0197】
実施例4は、3つのFRETカセットが同じフルオロフォア(すなわち、HEX)で標識された、侵襲的切断反応を用いて単一の反応混合物中の3つの異なる検体核酸配列を検出した手順を記載する。もちろん、核酸を増幅する機器と光学的に連通する蛍光光度計の同じまたは異なる単一の光チャネルで検出することができる他のフルオロフォアを、HEXフルオロフォアの代わりに使用することができる。
【0198】
実施例4
単一タイプのフルオロフォアを用いた3つの検体核酸の多重検出
PCRによって増幅された3つの検体核酸の侵襲的切断検出を、同じ反応混合物中の3つの異なるセットのオリゴヌクレオチドを使用して行った。検出オリゴヌクレオチドの各セットを使用して、3つの検体のうちの異なる1つを検出した(検体A、検体Bおよび検体C)。使用した各アッセイ反応:(1)標的特異的結合配列と、検出される標的増幅産物に相補的ではなかった固有の5’フラップとを有する固有の一次プローブ;(2)一次プローブがその同族標的核酸にハイブリダイズしたときに、一次プローブから5’フラップを切断するための侵襲性オリゴヌクレオチドとして機能し、増幅反応においてプライマーとしてさらに機能した、固有のオリゴヌクレオチド(「侵襲性プライマー」と呼ばれる);および(3)固有のFRETカセット。3つの異なるFRETカセットの各々を、HEXフルオロフォアおよびクエンチャー部分で標識した。検体Aの存在を示すために使用されたFRETカセットは、反応混合物中の任意のマスキングオリゴによってハイブリダイズされた5’フラップを含まなかった。より具体的には、実施例1の侵襲性プライマー、一次プローブおよびフラップレスFRETカセットを用いて、検体Aを検出した。検体Bおよび検体Cを検出するためのFRETカセットは、5’フラップ配列を含んでいた。FRETカセットを、一次プローブからの関連する切断フラップおよび上記手順で使用されるマスキングオリゴと共に
図3に示す。検体A、CおよびBを検出するためのFRETカセットシステムは、それぞれ図の上部、中央部および下部に現れる。
【0199】
多重反応混合物は、2つの異なるマスキングオリゴヌクレオチドを含み、1つは検体Bを検出するために使用されるFRETカセットの5’フラップに相補的であり、1つは検体Cを検出するために使用されるFRETカセットの5’フラップに相補的であった。各マスキングオリゴヌクレオチドは、その5’末端に消光部分を含んでいた。検体Bに対するFRET 5’フラップマスキングオリゴヌクレオチド二重鎖は、約60%のGC含有量を有し、検体Cに対するFRET 5’フラップマスキングオリゴヌクレオチド二重鎖は、約40%のGC含有量を有した。2つの二重鎖は、異なるTmを特徴とした。検体Bを検出するために使用される5’フラップFRETカセットの切断産物および相補的なマスキングオリゴヌクレオチドは、「高温」検出のためにより安定性の高い二重鎖を形成し、検体Cを検出するために使用される5’フラップFRETカセットの切断産物および相補的なマスキングオリゴヌクレオチドは、「低温」検出のためにより安定性が低い二重鎖を形成した。
【0200】
個々の反応混合物は、3つの検体核酸のPCR増幅、異なる検体核酸に特異的な一次プローブの切断、および対応するFRETカセットの切断を行うのに必要な全ての試薬と共に、全てのアッセイオリゴヌクレオチド(3つ全てのFRETカセットを含む)を含んでいた。反応は、検体Aのみ、検体Bのみ、検体Cのみ、または検体AおよびBおよびCの組み合わせのいずれかを含んでいた。熱サイクル条件は以下の通りであった:(1)95℃で120秒間×1サイクル;(2)95℃で15秒間、69℃で5秒間、67℃で5秒間、65℃で6秒間、および72℃で25秒間×10サイクル(初期Taq最適段階);ならびに(3)95℃で10秒間、69℃で5秒間、67℃で5秒間、および65℃で25秒間×40サイクル。90℃~20.7℃の範囲にわたる増幅後の融解/アニーリング曲線分析を、ABI 7500リアルタイムPCR機器で行った。
【0201】
図8は、3つの検体ポリヌクレオチドの各々を個々にまたは互いに組み合わせて使用して行われた反応の増幅後の融解/アニーリング曲線の結果を示す。結果は、4つの反応の各々が固有の融解/アニーリング曲線プロファイルをもたらし、それにより、単一タイプのフルオロフォアを使用した3つの検体の単一チャネル多重化の成功を実証することを確認した。
【0202】
図9の2つのパネルに示される結果は、さらなる検体の組み合わせについて観察された固有の融解/アニーリング曲線プロファイルを示す。
図9の左パネルは、検体Bおよび検体Cを個々に増幅した反応の融解/アニーリング曲線の結果を示す。結果は、リアルタイムPCR機器の単一の蛍光モニタリングチャネルのみを使用して、FRETカセットの各々からの切断5’フラップ(ここで切断5’フラップは、異なるマスキングオリゴにハイブリダイズした)がどのようにして区別され得るかを示す。
図9の右側パネルは、検体B単独、検体C単独、または検体Bと検体Cとの組み合わせのいずれかを増幅した反応の融解/アニーリング曲線分析結果を示す。ここでも、結果は、リアルタイムPCR機器の単一の蛍光モニタリングチャネルのみを使用して、FRETカセットの各々からの切断5’フラップ(ここで、切断5’フラップは、異なるマスキングオリゴにハイブリダイズした)がどのようにして互いに区別され得るかを示す。
【0203】
図10は、
図9の2つのパネルに示される測定された蛍光データの一次導関数プロットを提示する。
図10の左パネルは、
図9の左パネルに示される融解/アニーリング曲線の一次導関数プロットを示す。温度の関数としての蛍光の一次導関数プロットの最大値は、50%のハイブリダイゼーションが起こる融解温度(T
m)を示す。この場合、2つの消光可能な標的のT
mは、約10℃(すなわち、検体Cの検出のための約46℃および検体Bの検出のための約56℃)だけ互いに分離された。2つの融解/アニーリング曲線間のこの区別により、2つの検体のうちのどれが分析中の反応混合物中に存在したかを分解することが可能になった。約46℃で観察または検出された単一の最大値は、検体Cの存在を示し、約56℃での単一の最大値は、検体Bの検出を示す)。
図10の右側のパネルは、
図9の右側のパネルに現れる融解プロットの一次導関数を示す。異なる曲線の各々は、検体B、検体C、または検体Bと検体Cとの組み合わせを含む反応混合物を区別することを可能にする固有の特徴を有していた。検体Aの存在から生じる蛍光シグナルは、温度(すなわち、FRETカセット切断産物に相補的なマスキングオリゴは存在しない)の関数として消光可能ではないため、一次導関数に影響はない(すなわち、定数の一次導関数は0である)。
【0204】
上記の例では、融解/アニーリング曲線の導関数解析を使用して、2つの異なる検体の存在について試験試料を分析した。ここでは、例示の目的で一次導関数計算を使用した。しかしながら、この目的のために、二次またはさらに高次の導関数解析が企図される。この手順は、リアルタイム核酸増幅装置の蛍光光度計構成要素の単一チャネルのみを使用して増幅反応混合物中の蛍光シグナルを検出またはモニターすることを含んでいた。プロットは、生データの一次導関数を提示することができるが、代替的に、処理済みデータの一次導関数(例えば、平滑化された、一定の最大読み取り値に正規化された等)を提示することができる。46℃での一次導関数プロットにおけるピークまたは最大値の検出は、検体Cまたはその増幅産物の存在を示した。56℃での一次導関数プロットにおけるピークまたは最大値の検出は、検体Bまたはその増幅産物の存在を示した。46℃および56℃の両方でピーク(例えば、これらの温度の両方における高レベルシグナル)を検出したことは、検体Cおよび検体Bの両方、またはこれらの検体の増幅産物の存在を示した。いくつかの実施形態において、分析は、閾値(例えば、予め確立された閾値、または正規化された最大値の割合もしくはパーセンテージに基づく閾値)より大きいシグナルを識別することを含むことができる。実施例は一次導関数解析の使用を示しているが、代わりに二次導関数解析を使用することができる。ここで、一次導関数プロット上の最大値は、二次導関数プロット上のゼロ交差点に対応する。検体Aの存在を検出することは、この検体を検出するために使用されるFRETカセットが任意のマスキングオリゴに相補的な5’フラップ配列を含まなかったため、導関数解析に依拠しなかった。このFRETカセットの切断は、融解/アニーリング曲線分析に使用される温度範囲にわたって安定なままであった蛍光シグナルをもたらした。試験試料中の検体Aの存在は、他のFRETカセット(例えば、検体Bおよび/または検体Cを検出するため)の切断から生じるシグナルが消光される温度での蛍光の大きさによって反映された(例えば、
図10のプロットでは約30℃である)。
【0205】
特許、特許出願、論文、書籍、論文、およびインターネットウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願で引用された全ての文献および同様の資料は、任意の目的のためにその全体が参照により明示的に組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書に記載の様々な実施形態が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。組み込まれた参考文献中の用語の定義が本教示で提供される定義と異なるように見える場合、本教示で提供される定義が優先されるものとする。
【0206】
記載された技術の範囲および趣旨から逸脱することなく、本技術の記載された組成物、方法および使用の様々な改変および変形が当業者には明らかであろう。本技術を特定の例示的な実施形態に関連して説明したが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、生化学、分子生物学、または関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】