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特表2024-537078システム内で発生する騒音および/または振動を低減または除去するために、車両のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分布を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】システム内で発生する騒音および/または振動を低減または除去するために、車両のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分布を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20241003BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519722
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2022059178
(87)【国際公開番号】W WO2023052992
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021000025136
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】マッツォーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】チェルッティ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】シェウチク,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】マルマッサーリ,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA08
3D246DA01
3D246GA09
3D246GA10
3D246GB37
3D246HA34A
3D246HA41A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA86A
3D246HB07A
3D246JA12
3D246JB03
3D246LA12Z
3D246LA13Z
3D246LA73Z
3D246LA75Z
(57)【要約】
本発明は、車両(1)のディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)および少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)にブレ-キ力(F3、F4、F5、F6)を分配するために、車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法(200;300;400)に関する。この方法は、ブレ-キ力分配用のブレ-キシステム制御システム(100)によって実行される。本方法は、ブレ-キシステムのペダル/ボタン(5,EPB-B)に加えられるブレ-キ操作に続いて、ブレ-キ力(X)を加える要求を受信するステップ(201)と、ブレ-キシステムに関連する第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)を受信するステップ(202)と、第1の複数のパラメ-タの各受信パラメ-タを、ブレ-キシステムの臨界動作状態を代表する第2の複数のパラメ-タの基準パラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の各臨界範囲と比較するステップ(203)と、第1の複数のパラメ-タのパラメ-タの少なくとも1つが第2の複数のパラメ-タの対応する基準パラメ-タに等しい場合、ディスクブレ-キのキャリパの少なくとも1つの第1ピストンに第1ブレ-キ力(Y)を加えるステップ(204)と、ディスクブレ-キのキャリパの少なくとも1つの第2ピストンに第2ブレ-キ力(Z)を加えるステップ(205)であって、第1ブレ-キ力と第2ブレ-キ力の合計は要求されたブレ-キ力に等しく、第1ブレ-キ力と第2ブレ-キ力の比は1とは異なる、ステップ(205)を含む。方法はまた、要求ブレ-キ力(X)の半分に等しい第3ブレ-キ力(X/2)を、ディスクブレ-キキャリパの少なくとも1つの第1ピストンと少なくとも1つの第2ピストンの両方に加える(206)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)および少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)にブレ-キ力(F3、F4、F5、F6)を分配するために、車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法(200;300;400)であって、
前記方法は、ブレ-キ力を分配するために前記ブレ-キシステム(1000)の制御システム(100)によって実行され、
前記方法は、
前記制御システム(100)により、前記ブレ-キシステム(1000)のペダル/ボタン(5,EPB-B)に加えられたブレ-キ動作に続いて要求ブレ-キ力(X)を加える要求を受信するステップ(201)と、
前記制御システム(100)から、前記ブレ-キシステム(1000)に関連して前記ブレ-キシステム(1000)の現在の動作状態を代表する第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)を受信するステップ(202)であって、前記第1の複数のパラメ-タが、前記車両(1)の現在の速度(V)、外部環境の現在の温度(Temp)、現在の作動力/圧力(F)、車輪滑走面の現在の勾配(S)、現在のディスクパッド温度または現在のディスク温度(DPTemp)を含む、ステップ(202)と、
前記制御システム(100)により、受信した前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)のそれぞれを、前記ブレ-キシステム(1000)の臨界動作状態を代表する第2の複数の基準パラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の対応する基準パラメ-タと比較するステップ(203)とを含み、
前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)の少なくとも1つのパラメ-タが第2の複数のパラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の対応する基準パラメ-タに等しい場合、前記方法は、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)に第1ブレ-キ力(Y)を加えるステップ(204)と、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に第2ブレ-キ力(Z)を加えるステップ(205)であって、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)の合計が前記要求ブレ-キ力(X)に等しく、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)の比が1とは異なる、ステップ(205)を含み、
前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)の少なくとも各パラメ-タが、前記第2の複数のパラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の各基準パラメ-タと異なる場合、前記方法は、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)と前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)の両方に、前記要求ブレ-キ力(X)の半分に等しい第3ブレ-キ力(X/2)を加えるステップ(206)、または
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)および前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)にそれぞれに、さらなる第1ブレ-キ力およびさらなる第2ブレ-キ力を加えるステップを含み、
前記さらなる第1ブレ-キ力と前記さらなる第2ブレ-キ力との比が1とは異なり、
前記さらなる第1ブレ-キ力と前記さらなる第2ブレ-キ力との合計が、前記要求ブレ-キ力(X)に等しい、車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項2】
前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)の少なくとも1つのパラメ-タが前記第2の複数のパラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の対応する基準パラメ-タに等しいとき、前記方法は、前記加えるステップ(204,205)の後に、
前記制御システム(100)によって、前記ブレ-キシステムに作動的に関連する少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)の現在の特性周波数(FReq)を検出するステップ(301)であって、前記現在の特性周波数(FReq)は、前記ブレ-キシステム(1000)に関連する現在の騒音および/または振動を代表するものであるステップ(301)と、
前記制御システム(100)によって、検出された前記現在の特性周波数(FReq)を、前記ブレ-キシステム(1000)の臨界動作状態を代表する基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302)と、
前記ブレ-キシステム(1000)の検出された前記現在の特性周波数情報(FReq)が前記基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、方法(300)は、
時間的に変化する振幅(A)を有する力信号(SIG、SIG1)を前記第1ブレ-キ力(Y)に重畳することによって生成された第4ブレ-キ力(Y1)を、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)に加えるステップ(303)と、
前記時間的に変化する振幅(A)を有する前記力信号(SIG,SIG1)を前記第2ブレ-キ力(Z)に重畳することによって生成された第5ブレ-キ力(Z1)を、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12,P22)に加えるステップ(304)を含み、
前記第4ブレ-キ力(Y1)と前記第5ブレ-キ力(Z1)の合計は、ブレ-キ力(X)に等しい、請求項1に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項3】
前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)の各パラメ-タが前記第2の複数のパラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の対応する基準パラメ-タと異なるとき、前記方法(300)は、前記加えるステップ(206)の後に、
前記制御システム(100)において、前記ブレ-キシステムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)の現在の特性周波数(FReq)を検出するステップ(301)であって、前記現在の特性周波数(FReq)は、前記ブレ-キシステム(1000)に関連付けられた現在のノイズおよび/または振動を代表するものである、ステップ(301)と、
前記制御システム(100)によって、検出された前記現在の特性周波数(FReq)を、前記ブレ-キシステム(1000)の臨界動作状態を代表する基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302)を含み、
前記ブレ-キシステム(1000)の検出された前記現在の特性周波数情報(FReq)が前記基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、方法(300)はさらに、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)に第1ブレ-キ力(Y)を加えるステップ(204)と、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に第2ブレ-キ力(Z)を加えるステップ(205)であって、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)との合計が要求ブレ-キ力(X)に等しく、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)との比が1とは異なる、ステップ(205)と、
前記制御システム(100)において、前記ブレ-キシステムに作動的に関連する少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)のさらなる現在の特性周波数(FReq’)を検出するステップ(301)と、
前記制御システム(100)により、検出された前記さらなる現在の特性周波数(FReq’)情報を、前記ブレ-キシステム(1000)の基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302)を含み、
前記ブレ-キシステム(1000)の前記さらなる現在の特性周波数(FReq’)が前記基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、前記方法(300)は、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)に前記第4ブレ-キ力(Y1)を加えるステップ(303)と、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に前記第5ブレ-キ力(Z1)を加えるステップ(304)を含む、請求項1に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項4】
前記方法(400)は、
前記第1の複数のパラメ-タ(V、Temp、F、S、DPTemp)の各パラメ-タが、前記第2の複数のパラメ-タ(Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc)の対応する各基準パラメ-タと異なる場合、前記方法(400)は、前記加えるステップ(206)の後に、
前記制御システム(100)によって、前記ブレ-キシステム(1000)に作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)の現在の特性周波数(FReq)情報を検出するステップ(301)であって、前記現在の特性周波数(FReq)は、前記ブレ-キシステム(1000)に関連付けられた現在のノイズおよび/または振動を代表するものである、ステップ(301)と、
前記制御システム(100)によって、検出された前記現在の特性周波数情報(FReq)を、前記ブレ-キシステム(1000)の臨界動作状態を代表する基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302)を含み、
前記ブレ-キシステム(1000)の検出された前記現在の特性周波数情報(FReq)が前記基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、前記方法(400)は、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)および前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)へのブレ-キ力(F3、F4、F5、F6)を分配する第1分配方法(402)または第2分配方法(403)をランダムに選択するステップ(401)を含む、請求項1に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項5】
前記ブレ-キ力(F3、F4、F5、F6)を分配する前記第1分配方法(402)が、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)に第1ブレ-キ力(Y)を加えるステップ(204)と、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に第2ブレ-キ力(Z)を加えるステップ(205)であって、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)の合計が前記要求ブレ-キ力(X)に等しく、前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)の比が1とは異なる、ステップ(205)と、
前記制御システム(100)によって、前記ブレ-キシステムに作動的に関連付けられた前記少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)のさらなる現在の特性周波数(FReq’)を検出するステップ(301’)と、
前記制御システム(100)によって、検出された前記更なる現在の特性周波数(FReq’)を、前記ブレ-キシステム(1000)の基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302’)を含み、
前記ブレ-キシステム(1000)の前記さらに検出された現在の特性周波数(FReq’)情報が基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、前記方法はさらに、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)に、前記第1ブレ-キ力(Y)に時間的に変化する振幅(A)を有する力信号(SIG、SIG1)を重畳することによって生成された第4ブレ-キ力(Y1)を加えるステップ(303)と、
前記第2ブレ-キ力(Z)に、時間的に変化する振幅(A)を有する前記力信号(SIG,SIG1)を重畳することによって得られる第5ブレ-キ力(Z1)を、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12,P22)に加えるステップ(304)を含み、
前記第4ブレ-キ力(Y1)と前記第5ブレ-キ力(Z1)の合計は、前記要求ブレ-キ力(X)に等しい、請求項4に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項6】
前記ブレ-キ力(F3,F4,F5,F6)を分配する前記第2分配方法(403)が、
第1ブレ-キ力(Y)および第2ブレ-キ力(Z)を提供するステップであって、前記第1ブレ-キ力(Y)および前記第2ブレ-キ力(Z)の合計が前記要求ブレ-キ力(X)に等しく、前記第1ブレ-キ力(Y)および前記第2ブレ-キ力(Z)の比が1とは異なる、ステップと、
時間的に変化する振幅(A)を有する力信号(SIG)を前記第1ブレ-キ力(Y)に重畳することによって生成される第4ブレ-キ力(Y1)を、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11、P21)に加えるステップ(303)と、
時間的に変動する振幅(A)を有する前記力信号(SIG)を前記第2ブレ-キ力(Z)に重畳することによって得られる第5ブレ-キ力(Z1)を、前記車両(1)のディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に加えるステップ(304)であって、前記第4ブレ-キ力(Y1)と前記第5ブレ-キ力(Z1)との合計が前記要求ブレ-キ力(X)に等しい、ステップ(304)と、
前記制御システム(100)によって、前記ブレ-キシステムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、前記ブレ-キシステム(1000)のさらなる現在の特性周波数情報(FReq’)を検出するステップ(301’)と、
前記制御システム(100)によって、検出された前記さらなる現在の特性周波数(FReq’)情報を、前記ブレ-キシステム(1000)の基準特性周波数(FReq1)と比較するステップ(302’)を含み、
前記ブレ-キシステム(1000)の前記さらに検出された現在の特性周波数(FReq’)情報が前記基準特性周波数(FReq1)と等しい場合、方法(400)はさらに、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1,P2)の前記少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)に前記第1ブレ-キ力(Y)を加えるステップ(204)と、
前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の前記少なくとも1つの第2ピストン(P12、P22)に前記第2ブレ-キ力(Z)を加えるステップ(205)を含む、請求項4に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項7】
前記第1ブレ-キ力(Y)と前記第2ブレ-キ力(Z)との間の比が1より大きい、請求項1-6のいずれか1項に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項8】
前記第1ブレ-キ力(Y)および前記第2ブレ-キ力(Z)が、
第1ブレ-キ力(Y)=0.8x要求ブレ-キ力(X)、
第2ブレ-キ力(Z)=0.2x要求ブレ-キ力(X)、として計算される、請求項7に記載の車両(1)のブレ-キ装置(1000)を制御するための方法。
【請求項9】
前記制御システム(100)によって、前記ブレ-キシステム(1000)の前記現在の特性周波数情報(FReq)を検出する前記ステップ(301)が、
前記ブレ-キシステムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのマイクロフォン、または、前記車両(1)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)にそれぞれ関連付けられた複数の加速度センサ、を採用することによって行われる、請求項2-6のいずれか1項に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項10】
前記時間的に変化する振幅(A)を有する前記力信号(SIG,SIG1)が、平均値よりも高い振幅値または低い振幅値を仮定する信号を有する、請求項2-6のいずれか1項に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項11】
前記時間的に変化する振幅(A)を有する前記力信号(SIG,SIG1)が、正弦波信号、ランプ信号、三角波信号、矩形波信号、平均値がランダムに変化する信号からなる群から選択される、請求項2-6のいずれか1項に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項12】
前記時間的に変化する振幅(A)を有する前記力信号(SIG、SIG1)は、相互に位相が逆である第1力信号(SIG)と第2力信号(SIG1)を含み、
前記第1力信号(SIG)は、前記第1ブレ-キ力(Y)に重畳されて前記第4ブレ-キ力(Y1)を発生し、
前記第2力信号(SIG1)は、前記第2ブレ-キ力(Z)に重畳されて、前記前記第5ブレ-キ力(Z1)を発生する、請求項10に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項13】
前記ブレ-キシステム(1000)の臨界動作状態を代表する前記基準特性周波数(FReq1)は、所定の振幅を有する臨界周波数帯域を含み、
前記臨界周波数帯域は、基準特性周波数値と、前記基準特性周波数値の近くの周波数値との両方を含む、請求項2-6のいずれか1項に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項14】
前記臨界周波数帯域は、絶対値において前記基準特性周波数から最大5%、特に最大3%だけ異なる周波数からなる、請求項13に記載の車両(1)のブレ-キシステム(1000)を制御する方法。
【請求項15】
車両(1)のディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)の少なくとも1つの第1ピストン(P11,P21)と少なくとも1つの第2ピストン(P12,P22)にブレ-キ力(F3,F4,F5,F6)を分配するために前記車両(1)のいブレ-キシステム(1000)を制御する制御システム(100)であって、
前記制御システム(100)は、前記ブレ-キシステム(1000)の前記ディスクブレ-キキャリパ(P1、P2)を動作するための電気信号を生成するように構成された少なくとも1つの電子ブレ-キ制御ユニット(BCU1、BCU2、BCU3)を含み、
前記制御システム(100)の前記少なくとも1つのブレ-キ電子制御ユニット(BCU1、BCU2、BCU3)は、請求項1-14に記載の方法のステップを実行するように構成されている、制御システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、ブレ-キバイワイヤ(BBW)技術で作動する車両のブレ-キシステムの分野に関する。より詳細には、本発明は、システム内で発生する騒音および/または振動を低減または除去するために、車両の車輪に関連する少なくとも1つのディスクブレ-キを備える車両のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御する方法に関する。
【0003】
背景技術
【0004】
知られているように、ブレ-キシステムは主に、サ-ビスブレ-キとパ-キングブレ-キの2つのために用いられる。
【0005】
ブレ-キバイワイヤ(BBW)技術で作動する車両、特に自動車のブレ-キシステムは、自動車の1つの車輪にそれぞれ関連付けられた複数のディスクブレ-キから構成されている。各ディスクブレ-キは、ディスクをクランプし、サ-ビスブレ-キまたはパ-キングブレ-キの際にディスクをロックするように構成された各電動ブレ-キキャリパからなる。このブレ-キシステムには、電子制御ユニット(ECU)と、この電子制御ユニットによって制御され、キャリパのクランプを有効/無効にすることでブレ-キキャリパの電動モ-タに作用する電気機械アクチュエ-タが使用されている。
【0006】
自動車分野では、自動車の快適性を測定するための代表的なパラメ-タがNVH(Noise,Vibration,and Harshness)という頭字語で示されている。このパラメ-タは、自動車に関連して知覚される騒音および振動特性に関する指針を提供する。特に、自動車のブレ-キシステムは、自動車の騒音と振動の発生に直接関与している。
【0007】
現在では、自動車のブレ-キシステムに関連する騒音と振動を低減するために、設計開発中にブレ-キシステムのプロトタイプで試験を行うことが知られている。これにより、生産開始前にテストシステムを最適化することが可能になる。
【0008】
しかし、テストブレ-キシステムの騒音と振動の低減に関する問題を解決するには、何度も改良を繰り返す必要があるため、長い開発期間と多大な資源が必要となる。
【0009】
換言すれば、実際には、ブレ-キシステムを最適化するためのテストのこのステップは、完了するにはコストがかかりすぎるか、過度に時間がかかるかのいずれかに見えることが多い。
【0010】
したがって、車両ブレ-キシステム、特に自動車において発生する騒音および/または振動を低減または除去し、上述した既知の方法の限界および欠点を克服できるようにする必要性が依然として強く感じられる。
【発明の概要】
【0011】
解決手段
【0012】
本発明の目的は、システム内で発生する騒音および/または振動を低減または除去するために、車両の車輪に関連する少なくとも1つのディスクブレ-キからなる車両のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御する方法を考案し、利用可能にすることである。
【0013】
この必要性は、請求項1に記載の車両のブレ-キシステムを制御する方法によって達成される。
【0014】
本発明の制御方法は、車両のブレ-キシステムの受動制御を実施する第1アルゴリズムからなる。この第1アルゴリズムは、ブレ-キシステムが所定の臨界状態にあるときは常に起動されるように構成されている。
【0015】
本発明の制御方法は、車両のブレ-キシステムの能動制御を実施する第2アルゴリズムをさらに備える。この第2アルゴリズムは、所定の振幅の臨界周波数の範囲または帯域内に配置された閾値または臨界周波数に等しいブレ-キシステムの現在の動作周波数情報が、例えばマイクロフォンまたは加速度計によって検出された場合にのみ起動されるように構成されている。例えば、この臨界周波数の範囲は、基準臨界周波数値または中心帯域臨界周波数値周辺のすべての周波数、例えば、絶対値で基準臨界周波数から5%以上、特に3%以上異なる臨界周波数から構成される。
【0016】
本発明の実施形態において、本発明の制御方法は、連続して起動される第1アルゴリズム及び第2アルゴリズムの両方を備える。
【0017】
本発明のさらなる目的は、請求項15に記載のブレ-キ力を分配するための車両のブレ-キシステムを制御するためのブレ-キシステムである。
【0018】
いくつかの有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面
【0020】
本発明による制御方法のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる、その好ましい例示的な実施形態の以下に提供される説明から明らかになる。
【0021】
図1図1は、本発明による方法を実施する車両のサ-ビスブレ-キまたは駐車ブレ-キのためのブレ-キ力の分配を制御するシステムを採用する車両ブレ-キシステムア-キテクチャの一例を図式的に示している;
【0022】
図2図2は、本発明による図1のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御するための方法の第1実施形態をフロ-チャ-トで示す。
【0023】
図3図3は、本発明による図1のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御するための方法の第2実施形態をフロ-チャ-トで示す。
【0024】
図4図4は、本発明による図1のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御するための方法の第3実施形態をフロ-チャ-トで示す。
【0025】
図5図5は、図1のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御するための方法の一実施形態をフロ-チャ-トで示す。
【0026】
図6図6は、図1のブレ-キシステムにおけるブレ-キ力の分配を制御するための方法のさらなる実施形態をフロ-チャ-トで示す。
【0027】
前述した図において類似または等価な要素は、同じ参照数字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい実施形態の説明
【0029】
図1を参照すると、参照数字1000は、本発明による車両1のサ-ビスブレ-キおよび/またはパ-キングブレ-キのためのブレ-キ力を分配するためのブレ-キシステムの制御システム100からなる車両1のブレ-キシステムの全体を示している。以下、このブレ-キシステムの制御システム100を単に制御システムまたはシステムともいう。
【0030】
例えば、制御システム100が使用可能なブレ-キシステム1000は、ブレ-キバイワイヤ(BBW)技術を用いたア-キテクチャである。
【0031】
本明細書において、「車両」とは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の車輪を有する、商用タイプでもある車両またはオ-トバイを意味する。
【0032】
さらに、「ブレ-キシステム」とは、車両のサ-ビスブレ-キの発生または車両のパ-キングブレ-キの発生に寄与するすべての構成要素(機械的および/または電気的または電子的、さらにブレ-キ液)の全体を意味する。
【0033】
図1を参照すると、車両1は、第1前輪FLおよび第2前輪FRが連結された前車軸A1を有する。
【0034】
例えば、第1前輪FLは左前輪であり、第2前輪FRは右前輪である。
【0035】
さらに、車両1は、第1後輪RL及び第2後輪RRが連結された後車軸R1を備える。
【0036】
例えば、第1後輪RLは左後輪であり、第2後輪RRは右後輪である。
【0037】
ブレ-キシステム1000は、第1前車軸A1に作動可能に連結された少なくとも1つの第1アクチュエ-タモジュ-ル2を備える。
【0038】
ブレ-キシステム1000は、後車軸R1に作動可能に連結された少なくとも1つの第2アクチュエ-タモジュ-ル3をさらに備える。
【0039】
各アクチュエ-タモジュ-ル2,3は、車軸ごとに各車輪用の1つまたは複数のアクチュエ-タから構成される。
【0040】
各アクチュエ-タは、電気機械式または電気油圧式のいずれかである。
【0041】
図1に示す実施形態を参照すると、前車軸A1に作動的に接続された少なくとも1つの第1アクチュエ-タモジュ-ル2は、第1前輪FLの第1ブレ-キキャリパP1、特に2ピストンキャリパに作用するように構成された第1アクチュエ-タACT1と第2アクチュエ-タACT2を有する。
【0042】
より詳細には、第1ブレ-キキャリパP1は、第1アクチュエ-タACT1および第2アクチュエ-タACT2によってそれぞれ作動される第1ピストンP11および第2ピストンP12を有する。
【0043】
さらに、少なくとも1つの第1アクチュエ-タモジュ-ル2は、第2前輪FRの第2ブレ-キキャリパP2、特に2ピストンキャリパに作用するように構成された第3アクチュエ-タACT3および第4アクチュエ-タACT4を有する。
【0044】
より詳細には、この第1ブレ-キキャリパP2は、第3アクチュエ-タACT3および第4アクチュエ-タACT4によってそれぞれ作動される第1ピストンP21および第2ピストンP22を有する。
【0045】
再び図1に示す実施形態を参照すると、後車軸R1に作動的に連結された少なくとも1つの第2アクチュエ-タモジュ-ル3は、第1後輪RLの第3ブレ-キキャリパP3に作用するように構成された第5アクチュエ-タACT5を備える。この第3ブレ-キキャリパは、特に、シングルピストンキャリパである。
【0046】
より詳細には、第3ブレ-キキャリパP3は、第5アクチュエ-タACT5によって作動される第1ピストンP31を有する。
【0047】
さらに、少なくとも1つの第2アクチュエ-タモジュ-ル3は、第2後輪RRの第4ブレ-キキャリパP4に作用するように構成された第6アクチュエ-タACT6を含んでいる。特に、第4ブレ-キキャリパは、シングルピストンキャリパである。
【0048】
より詳細には、第4ブレ-キキャリパP4は、第6アクチュエ-タACT6によって作動されるそれぞれの第1ピストンP41から構成されている。
【0049】
前車軸A1の車輪に作用する2つのピストンを有するキャリパと、後車軸R1の車輪に作用するシングルピストンキャリパとを有する上述のブレ-キシステム1000のア-キテクチャは、一例であることは注目に値する。実際、本発明の目的のために、例えば、前車軸の車輪と後車軸の車輪の両方に2より大きい数のピストンを有するキャリパ、後車軸の車輪にも2つのピストンを有するキャリパ、前車軸の車輪と後車軸の車輪の両方にシングルピストンキャリパ、等のような、複数の変形例および変形例の組み合わせを提供することができる。本発明の目的のために、前述のブレ-キキャリパP1、P2、P3、P4は、「乾式」または「湿式」タイプのキャリパであってもよいことは、さらに注目に値する。
【0050】
各アクチュエ-タACT1、ACT2、ACT3、ACT4、ACT5、ACT6は、それぞれの電子アクチュエ-タ制御モジュ-ルまたは電子ブレ-キ制御ユニットまたはBCUから受信した制御に基づいて、ブレ-キ指令を実行するように構成されている。各アクチュエ-タ制御モジュ-ルは、例えば、ブレ-キシステム(スタンドアロンまたはアクチュエ-タ自体に統合された)または車両1のハ-ドウェアモジュ-ル内のハ-ドウェアモジュ-ルまたはソフトウェアロジックモジュ-ルである。
【0051】
図1の例を参照すると、電子ブレ-キ制御ユニットBCU1、BCU2、BCU3は、車両1のブレ-キシステム1000の制御システム100の形成に寄与する。
【0052】
特に、前述の電子ブレ-キ制御ユニットBCU1、BCU2、BCU3の各々は、例えばマイクロコントロ-ラまたはマイクロプロセッサを有し、システム1000の電気作動式ブレ-キキャリパP1、P3、P3、P4の作動のための電気信号を生成するように構成されている。
【0053】
特に、ブレ-キシステム1000の制御システム100は、第2アクチュエ-タモジュ-ル3に動作可能に接続された第1ブレ-キ制御ユニットBCU1を備える。
【0054】
この第1ブレ-キ制御ユニットBCU1または主制御ユニットは、第2アクチュエ-タモジュ-ル3を直接制御して、ブレ-キシステム1000のペダル5に加えられたブレ-キ動作に応答して、車両1の後車軸R1の車輪にサ-ビスブレ-キングを行うように構成されている。
【0055】
この第1ブレ-キ制御ユニットBCU1は、二次ブレ-キ制御ユニットBCU2、BCU3を介して、第1アクチュエ-タモジュ-ル2を制御して、ブレ-キシステム1000のペダル5上に加えられたブレ-キ動作に応答して、車両1の前車軸A1の車輪にサ-ビスブレ-キングを行うように構成されている。
【0056】
特に、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1は、システム1000のペダル5に加えられた動作の結果として生成されたブレ-キ信号S1,S2に基づいて、車両1の後車軸の車輪R1および前車軸の車輪A1の両方に加えられるべき目標ブレ-キトルク値を計算するように構成されている。この第1ブレ-キ制御ユニットBCU1は、例えば「マスタ制御ユニット」と呼ばれる。
【0057】
目標ブレ-キトルク値は、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1と二次ブレ-キ制御ユニットBCU2,BCU3とを接続する双方向デ-タ通信ラインまたはバスCAN1、例えばシリアルタイプのものを介して、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2,BCU3に提供される。
【0058】
図1の例を参照すると、二次ブレ-キ制御ユニットBCU2、BCU3は、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2と第3ブレ-キ制御ユニットBCU3とを備え、それぞれがデ-タ通信ラインCAN1を介して第1ブレ-キ制御ユニットBCU1に接続されている。
【0059】
実施形態では、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2は、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1によって生成された目標ブレ-キトルク値を受信して、前車軸A1の各車輪に印加するように構成されている。この動作構成では、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2は、「スレ-ブ制御ユニット」として動作する。
【0060】
特に、図1の例を参照すると、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2は、第2前輪FRの第3アクチュエ-タACT3と第1前輪FLの第1アクチュエ-タの両方を制御するように構成されている。
【0061】
異なる実施形態では、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2は、バックグラウンドで、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1とは独立して目標ブレ-キトルク値を生成し、前車軸A1の各車輪に適用するように構成される。特に、目標ブレ-キトルク値は、システム1000のペダル5への操作の結果として生成される更なるブレ-キ信号S3に基づいて生成される。この動作構成において、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2は、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1が故障した場合でも、前車軸A1の車輪のブレ-キを管理することを可能にし、「準マスタ制御ユニット」として動作する。
【0062】
実施形態において、第3ブレ-キ制御ユニットBCU3は、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1によって生成された目標ブレ-キトルク値を受信して、それを前車軸A1の各車輪に適用するように構成される。この動作構成では、この第3ブレ-キ制御ユニットBCU3は「スレ-ブ制御ユニット」として動作する。「準マスタ制御ユニット」とは異なり、第3ブレ-キ制御ユニットBCU3は、目標ブレ-キトルク値を生成するタスクは負っていない。
【0063】
特に、第3ブレ-キ制御ユニットBCU3は、第1前輪FLの第2アクチュエ-タACT2および第2前輪FRの第4アクチュエ-タの両方を制御するように構成されている。
【0064】
第2ブレ-キ制御ユニットBCU2および第3ブレ-キ制御ユニットBCU3を介して達成されるアクチュエ-タACT1、ACT2、ACT3、ACT4の制御に基づいて、制御ユニットのうちの1つが故障した場合でも、本発明のシステム100は、車両1の前車軸A1の両輪のバランスのとれたブレ-キを保証する。
【0065】
一実施形態では、第1BCU1、第2BCU2、および第3BCU3のブレ-キ電子制御ユニットは、ブレ-キシステム1000のそれぞれの電源マネ-ジャブロック31を介して、車両1のバッテリ30の直流電圧を通じて給電される。
【0066】
さらに、ブレ-キシステム1000は、それぞれの車輪速度センサWS1、WS2、WS3、WS4を、車両1の車輪の1つ、それぞれ第1RLおよび第2RRの後輪、ならびに第1FLおよび第2FRの前輪に動作可能に関連付け、それぞれのブレ-キ制御ユニットに送信される各車輪の速度を検出するように構成されている。
【0067】
特に、第1WS1と第2WS2の速度センサは、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1に接続されている。第3WS3と第4WS4速度センサは、第2ブレ-キ制御ユニットBCU2に接続されている。
【0068】
図1の例を参照すると、ブレ-キシステム1000の少なくとも1つの第1アクチュエ-タモジュ-ル2は、パ-キングブレ-キが作動したときに、前車軸A1の第1P1および第2P2ブレ-キキャリパにそれぞれ作用するように構成された第1EP1および第2EP2パ-キングアクチュエ-タを備える。
【0069】
再び図1に示す実施形態を参照すると、少なくとも1つの第2アクチュエ-タモジュ-ル3は、パ-キングブレ-キが作動したときに、それぞれ後車軸R1の第3P3および第4P4ブレ-キキャリパに作用するように構成された第3EP3および第4EP4パ-キングアクチュエ-タを備える。
【0070】
第1EP1および第2EP2パ-キングアクチュエ-タは、第3ブレ-キ制御ユニットBCU3によって制御される。第3EP3および第4EP4のパ-キングアクチュエ-タは、第1ブレ-キ制御ユニットBCU1によって制御される。
【0071】
特に、パ-キングコマンドは、ユ-ザによってパ-キングボタンEPB-Bに加えられた圧力に続いて、車両1のパ-キングコントロ-ルユニット20によって起動される。このパ-キングコントロ-ルユニット20は、パ-キングコントロ-ルユニット20をブレ-キ制御ユニットBCU1、BCU2、BCU3の各々に接続する、例えばシリアルタイプの更なる双方向デ-タ通信ライン又はバスCAN2を介して、システムの第1BCU1、第2BCU2、及び第3BCU3のブレ-キ制御ユニットに前述のパ-キングコマンドを送信するように構成されている。
【0072】
図2-4を参照して、以下では、車両1のブレ-キシステム1000において、車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第1ピストンP11,P21および少なくとも1つの第2ピストンP12,P22に対するブレ-キ力F3,F4,F5,F6の分配を制御するための方法200,300,400の動作ステップをより詳細に説明する。この制御方法は、上述した制御システム100を介して実施される。
【0073】
特に、本発明のこの制御方法は、車両1のブレ-キシステム1000の受動的制御を実施する第1アルゴリズムからなる。この第1アルゴリズムは、ブレ-キシステムが所定の臨界状態にあるときはいつでも作動するように構成されている。
【0074】
例として、以下では、車両1の前車軸A1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21および第2ピストンP12,P22について言及する。
【0075】
一般的な実施形態では、システム100の前述の第1BCU1、第2BCU2、および第3BCU3の各ブレ-キ制御ユニットは、本発明の方法200、300、400を実施するアプリケ-ションプログラムのコ-ドを実行するように構成される。
【0076】
例えば、図1の例を参照して、以下では、制御方法200、300、400が、システム100の第2BCU2および/または第3BCU3ブレ-キ制御ユニットによって実施されると仮定する。
【0077】
特定の実施形態では、制御ブレ-キユニットのプロセッサは、それぞれのメモリブロックに、本発明の方法200、300、400を実施するアプリケ-ションプログラムコ-ドをロ-ドし、実行するように構成される。
【0078】
図2-4の制御方法200、300、400は、開始「STR」の記号ステップで始まり、終了「ED」の記号ステップで終わる。
【0079】
最も一般的な実施形態では、ブレ-キシステム1000の制御方法200、300、400は、制御システム100によって、例えばユ-ザによってブレ-キシステム1000のペダル5(またはボタンEPB-B)上で加えられたブレ-キ動作に続いてブレ-キ力Xを加える要求を受信するステップ201を備える。
【0080】
さらに、方法200、300、400は、制御システム100によって、ブレ-キシステム1000に関連する第1の複数のパラメ-タV、Temp、F、S、DPTempを、ブレ-キシステムの現在の動作状態をそれぞれ代表するように受信するステップ202を備える。
【0081】
この第1の複数のパラメ-タは、好ましくは、車両1の現在の速度V、外部環境の現在の温度Temp、現在の作動力/圧力F、車輪滑走面の現在の勾配S、ディスクパッドの現在の温度またはディスク自体の現在の温度DPTempに関する情報からなるが、これらに限定されない。
【0082】
この第1の複数のパラメ-タV、Temp、F、S、DPTempは、車両1のBBWブレ-キシステム1000に装備される適切なセンサまたは「推定」装置、例えば前述の速度センサWS1、WS2、WS3、WS4、またはブレ-キシステムまたは車両に装備されるセンサ(HW)、または推定装置(SW)、周囲温度、路面勾配、ブレ-キシステム圧力のセンサなどを通じて制御システム100から得ることができる。
【0083】
さらに、制御システム100によって、前記第1の複数のパラメ-タの各受信パラメ-タV、Temp、F、S、DPTempを、ブレ-キシステム1000の臨界動作状態を代表する第2の複数のパラメ-タの各基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcと比較するステップ203が設けられる。
【0084】
この第2の複数のパラメ-タは、好ましくは、車両1の臨界速度Vc、外部環境の臨界温度Tempc、臨界作動力/圧力Fc、車輪滑走面の臨界勾配Sc、ディスクパッドの臨界温度DPTempc、またはディスク自体の臨界温度に関する情報からなるが、これらに限定されない。ブレ-キシステム1000の各臨界ベンチマ-クパラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcは、単一の臨界パラメ-タ値を想定することができるか、または、好ましくは、同じ臨界パラメ-タを代表する値の範囲から複数の値、例えば、「臨界」圧力または「臨界」速度の異なる値、さらには互いのパラメ-タの異なる組み合わせを取ることができることは注目に値する。実際、特定のブレ-キシステムのノイズまたは外乱周波数1000は、特定の動作条件に対する複数の推定および測定されたクリティカルパラメ-タ値に関連付けられる。例えば、2kHzのノイズ周波数は、速度が5-15km/h、圧力が10-20bAr、温度が-5℃から0℃の場合に特徴付けられる。異なる周波数を持つ他のノイズは、この周波数に特有であり、2kHzのノイズ周波数に関連する前述の値とは異なる、それぞれの複数の推定および測定されたクリティカルパラメ-タ値と関連付けられる。
【0085】
この第2の複数のパラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc(単一の値または値のセットのいずれか)は、例えば、車両1のCANデ-タベ-スに格納される。
【0086】
第1の複数のパラメ-タのパラメ-タV、Temp、F、S、DPTempのうちの少なくとも1つが、第2の複数のパラメ-タのそれぞれの基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcに等しい場合、方法200、300、400は、以下のステップを備える。
【0087】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に第1ブレ-キ力Yを加えるステップ204。
【0088】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第2ピストンP12,P22に第2ブレ-キ力Zを加えるステップ205。
【0089】
特に、前述の第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの合計は要求ブレ-キ力Xに等しく、第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの比は1とは異なる。
【0090】
第1の複数のパラメ-タの各パラメ-タV、Temp、F、S、DPTempが、第2の複数のパラメ-タの各基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcと異なる場合、すなわち、ブレ-キシステムが臨界動作範囲から外れている場合、方法200、300、400は、車両1のディスクブレ-キキャリパP1、P2の第1ピストンP11、P21と第2ピストンP12、P22の両方に、要求ブレ-キ力Xの半分に等しい第3ブレ-キ力X/2を加えるステップ206を含んでいる。
【0091】
代替実施形態では、第1の複数のパラメ-タの各パラメ-タV、Temp、F、S、DPTempが、第2の複数のパラメ-タの各基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcと異なる場合、すなわち、ブレ-キシステムが臨界状態から外れている場合、ブレ-キシステムが臨界状態から外れる、 ブレ-キシステムが臨界動作範囲から外れている場合、方法200、300、400は、車両1のディスクブレ-キキャリパP1、P2の第1ピストンP11、P21と第2ピストンP12、P22にそれぞれさらなる第1ブレ-キ力とさらなる第2ブレ-キ力を加えるステップを含み、その際、前記さらなる第1ブレ-キ力とさらなる第2ブレ-キ力との間の比率は予め決定され1とは異なり、前記さらなる第1ブレ-キ力とさらなる第2ブレ-キ力との合計は要求ブレ-キ力Xに等しい。
【0092】
第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの間の関係は、不安定性(ノイズ)を回避するためにキャリパP1,P2の開発中に特徴付けられ、キャリパの不安定性の関数としてだけでなく、この不安定性がトリガされるクランプ力のレベル、温度および車速の関数としてもあることは注目に値する。
【0093】
実施形態では、第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの比は1より大きくなるように選択される。
【0094】
試験車両で実施された実験試験において、出願人は、キャリパP1、P2が、5kHz、0℃、速度V<15km/h、および5-10kNの間で構成される力値Fにおいて不安定性を示すことを観察した。さらに、本出願人は、これらの動作条件下で、第1ブレ-キ力Yおよび第2ブレ-キ力Zが式によって計算される場合、前述の不安定性が消失することを実験的に検証した。
第1ブレ-キ力Y=0.8x要求ブレ-キ力X
第2ブレ-キ力Z=0.2x要求ブレ-キ力X
【0095】
図3を参照すると、さらなる実施形態において、第1の複数のパラメ-タのパラメ-タV、Temp、F、S、DPTempのうちの少なくとも1つが、第2の複数のパラメ-タのそれぞれの基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcに等しいとき、本発明の方法300は、前述の適用するステップ204、205の後に、制御システム100によって、ブレ-キシステム1000の現在の特性周波数FReqの情報を、システムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって検出するステップ301を備える。この特性周波数FReqは、ブレ-キシステム1000に関連する現在の騒音および/または振動を代表するものである。
【0096】
一実施形態では、制御システム100によって、ブレ-キシステム1000の現在の特性周波数情報FReqを検出する前述のステップ301は、以下のものを採用することによって実行される。
【0097】
ブレ-キシステムと作動的に関連付けられた少なくとも1つのマイクロフォン、または
【0098】
各々が車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2に関連付けられた複数の加速度センサ。
【0099】
一実施形態では、ブレ-キシステムに関連する前述のマイクロフォンは、最も一般的なケ-スでは、例えば、内部ハンズフリ-マイクロフォンのような、(乗客コンパ-トメントの内側または外側のいずれかの)自動車に既に設置されているマイクロフォンとすることができる。
【0100】
方法300はさらに、制御システム100によって、この検出された現在の特性周波数FReq情報を、ブレ-キシステム1000の臨界動作状態を代表する基準特性周波数または臨界周波数FReq1と比較するステップ302を提供する。
【0101】
好ましくは、前述の臨界周波数FReq1は、所定の振幅を有する臨界周波数の範囲または帯域からなる。例えば、この臨界周波数の範囲は、基準臨界周波数値又は中心帯域臨界周波数値の周りの全ての周波数、例えば、絶対値で基準臨界周波数から5%以上、特に3%以上異なる周波数から構成される。したがって、以下では、特性基準周波数または臨界周波数FReq1という用語は、前述の基準臨界周波数の値と、前述の周波数帯域における、基準臨界周波数から公差で5%以上、特に3%以上異なる周波数のすべての値との両方を示すために使用される。
【0102】
臨界周波数FReq1は、ブレ-キシステムを開発する段階で測定され、ノイズと振動の検出に関係する。臨界周波数基準値は、ロ-ラ-スタンドベンチまたはプロトタイプ車両での技術承認または生産開始前の製品開発の段階で特徴付けられる。
【0103】
ブレ-キシステム1000の検出された現在の現在の特性周波数情報FReqが、基準特性周波数FReq1に等しい場合、すなわち、現在の特性周波数FReqが、基準特性周波数の値を中心に定義される、前述の臨界周波数の帯域内の周波数である場合、方法300は、さらに、以下のステップを備える。
【0104】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に、第1ブレ-キ力Yに時間的に変化する振幅Aを有する力信号SIG,SIG1を重畳することによって生成された第4ブレ-キ力Y1を印加するステップ303。
【0105】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第2ピストンP12,P22に、第2ブレ-キ力Zに時間的に変化する振幅Aを有するこの力信号SIG,SIG1を重畳することによって生成された第5ブレ-キ力Z1を加えるステップ304。
【0106】
特に、第4ブレ-キ力Y1と第5ブレ-キ力Z1との合計は、要求されたブレ-キ力Xに等しい。
【0107】
再び図3を参照すると、さらなる実施形態において、第1の複数のパラメ-タのパラメ-タV、Temp、F、S、DPTempのうちの少なくとも1つが、第2の複数のパラメ-タのそれぞれの基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcと異なるとき、方法300は、前述の適用ステップ206の後に、制御システム100によって、システムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000の現在の特性周波数情報FReqを検出するステップ301を備える。この特性周波数FReqは、ブレ-キシステム1000に関連する現在の騒音および/または振動を代表するものである。
【0108】
さらに、方法300は、制御システム100によって、この検出された現在の特性周波数FReq情報を、ブレ-キシステム1000の臨界動作状態を代表する基準特性周波数FReq1と比較するステップ302を提供する。
【0109】
ブレ-キシステム1000の検出された現在の特性周波数情報FReqが基準特性周波数FReq1に等しい場合、すなわち、現在の特性周波数FReqが基準特性周波数の値を中心に定義される臨界周波数の帯域内にある場合、方法300はさらに以下のステップを備える。
【0110】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に第1ブレ-キ力Yを加えるステップ204。
【0111】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第2ピストンP12,P22に第2ブレ-キ力Zを加えるステップ205。
【0112】
特に、前述の第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの合計は、要求されたブレ-キ力Xに等しく、第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの比は、1とは異なる。
【0113】
上述と同様に、方法300はさらに、制御システム100によって、システムに作動的に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000のさらなる現在の特性周波数情報FReq’を検出するステップ301と、制御システム100によって、検出された現在のさらなる特性周波数情報FReq’をブレ-キシステムの基準特性周波数FReq1と比較するステップ302とを含んでいる。
【0114】
ブレ-キシステムの該さらに検出された現在の特性周波数情報FReq’が基準特性周波数FReq1に等しい場合、方法300はさらに以下のステップを含む。
【0115】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第1ピストンP11,P21に第4ブレ-キ力Y1を加えるステップ303。
【0116】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第2ピストンP12,P22に第5ブレ-キ力Z1を加えるステップ304。
【0117】
一実施形態において、時間可変振幅Aを有する前述の力信号SIG,SIG1は、平均値よりも大きいか小さいかのいずれかの振幅値を仮定する信号からなる。
【0118】
特定の実施形態において、時間可変振幅Aを有する力信号SIG、SIG1は、サイン信号、ランプ信号、三角波信号、矩形波信号、平均値の周りでランダムに変化する信号からなる群から選択される。
【0119】
さらに特定の実施形態では、時間的に変化する振幅Aを有する力信号SIG,SIG1は、相互に位相が反対である第1力信号SIGと第2力信号SIG1とからなる。この第1力信号SIGは、第4ブレ-キ力Y1を発生させるために第1ブレ-キ力Yに重畳可能であり、第2力信号SIG1は、第5ブレ-キ力Z1を発生させるために第2ブレ-キ力Zに重畳可能である。
【0120】
実施形態において、第1力信号SIGおよび第2力信号SIG1の重畳可能な周波数は、少なくとも1-200Hzの範囲内である。
【0121】
図4を参照すると、さらなる実施形態において、第1の複数のパラメ-タの各パラメ-タV、Temp、F、S、DPTempが、第2の複数のパラメ-タの各基準パラメ-タVc,Tempc,Fc,Sc,DPTempcと異なる場合、方法400は、206を適用する前述のステップの後に、以下のステップを備える。
【0122】
制御システム100によって、システムに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000の更なる現在の特性周波数FReq情報を検出するステップ301。
【0123】
制御システム100によって、この検出された現在の特性周波数FReq情報を、ブレ-キシステム1000の臨界動作状態を代表する基準特性周波数FReq1と比較するステップ302。
【0124】
ブレ-キシステム1000の前記検出された現在の特性周波数FReq情報が基準特性周波数FReq1に等しい場合、方法400は、車両ディスクブレ-キ1のキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21および第2ピストンP12,P22上のブレ-キ力F3,F4,F5,F6の第1分配方法402または第2分配方法403をランダムに選択するステップ401を備える。
【0125】
より詳細には、ブレ-キ力F3,F4,F5,F6の第1分配方法402は、以下のステップを有する。
【0126】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に第1ブレ-キ力Yを加えるステップ204。
【0127】
ディスクブレ-キキャリパP1,P2の第2ピストンP12,P22に第2ブレ-キ力Zを加えるステップ205。
【0128】
前記第1ブレ-キ力Yと前記第2ブレ-キ力Zとの合計が、要求されたブレ-キ力Xに等しく、前記第1ブレ-キ力Yと前記第2ブレ-キ力Zとの比が、1とは異なる。
【0129】
さらに、方法400は以下を提供する。
【0130】
制御システム100によって、システムに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000の更なる現在の特性周波数情報FReq’を検出するステップ301’。
【0131】
制御システム100によって、前記さらに検出された現在の特性周波数情報FReq’をブレ-キシステムの基準特性周波数FReq1と比較するステップ302’。
【0132】
ブレ-キシステム1000のこのさらに検出された現在の特性周波数情報FReq’が基準特性周波数FReq1と等しい場合、方法400はさらに以下のステップを備える。
【0133】
時変振幅Aを有する力信号SIGを第1ブレ-キ力Yに重畳することによって生成された第4ブレ-キ力Y1を、車両のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に印加するステップ303。
【0134】
車両のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第2ピストンP12,P22に、第2ブレ-キ力Zに時間的に変化する振幅Aを有する前記力信号SIG1を重畳することによって生成された第5ブレ-キ力Z1を印加するステップ304。
【0135】
前記第4ブレ-キ力Y1と前記第5ブレ-キ力Z1の合計は、要求されたブレ-キ力Xに等しい。
【0136】
再び図4を参照すると、さらなる実施形態において、ブレ-キ力F3,F4,F5,F6のための前述の第2分配方法403は、以下のステップを含む。
【0137】
第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとを利用可能にするステップであって、前記第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの合計が要求されたブレ-キ力Xに等しく、第1ブレ-キ力Yと第2ブレ-キ力Zとの比が1とは異なるステップ。
【0138】
車両のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第1ピストンP11,P21に、第1ブレ-キ力Yに時間的に変化する振幅Aを有する力信号SIGを重畳することによって生成された第4ブレ-キ力Y1を印加するステップ303。
【0139】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の少なくとも1つの第2ピストンP12,P22に、第2ブレ-キ力Zに時間的に変化する振幅Aを有する前述の力信号SIG1を重畳することによって生成された第5ブレ-キ力Z1を印加するステップ304。
【0140】
特に、第4ブレ-キ力Y1と第5ブレ-キ力Z1の合計は、要求されたブレ-キ力Xに等しい。
【0141】
方法400は、制御システム100によって、システムに動作可能に関連付けられた少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000の更なる現在の特性周波数情報FReq’を検出するステップ301’と、
【0142】
制御システム100によって、さらに検出された現在の特性周波数情報FReq’をブレ-キシステムの基準特性周波数FReq1と比較するステップ302’を含む。
【0143】
このさらに検出された現在の特性周波数情報FReq’が基準特性周波数FReq1と等しい場合、方法400はさらに以下のステップを含む。
【0144】
車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21に第1ブレ-キ力Yを加えるステップ204。
【0145】
キャリパP1,P2の第2ピストンP12,P22に第2ブレ-キ力Zを加えるステップ205。
【0146】
図5-6を参照して、以下では、車両1のディスクブレ-キキャリパP3,P4,P1,P2の少なくとも1つのピストンP31,P41,P11,P12,P21,P22上で、車両1のブレ-キシステム1000におけるブレ-キ力F1,F2,F3,F4,F5,F6の分配を制御するための方法500,600の一例の動作ステップをより詳細に説明する。
【0147】
この制御方法は、上述した制御システム100を通じて実施される。
【0148】
制御方法500、600は、車両1のブレ-キシステム1000の能動制御を実施する第2アルゴリズムからなる。この第2アルゴリズムは、例えばマイクロフォンまたは加速度計によって、予め設定された基準または臨界周波数FReq1に等しいブレ-キシステムの現在のFReq動作周波数情報が検出された場合にのみ作動するように構成されている。
【0149】
この制御方法500は、シングルピストンキャリパ、すなわち車両1の後車軸R1の第3キャリパP3、第4キャリパP4の第1ピストンP31、P41上のブレ-キ力の分配に適用可能であることは注目に値する。別の実施形態では、この方法600は、2つ以上のピストンを有するキャリパ、例えば、車両1の前車軸A1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21及び第2ピストンP12,P22にさらに適用される。
【0150】
一般的な実施形態では、システム100の前述の第1BCU1、第2BCU2、および第3BCU3の各ブレ-キ制御ユニットは、方法500,600を実施するアプリケ-ションプログラムのコ-ドを実行するように設定される。換言すれば、以下では、制御方法500、600は、システム100の任意のブレ-キ制御ユニットによって実施されると仮定する。
【0151】
特定の実施形態では、制御ブレ-キユニットのプロセッサは、それぞれのメモリブロックに、方法500、600を実施するアプリケ-ションプログラムコ-ドをロ-ドし、実行するように構成される。
【0152】
図5-6の制御方法500、600は、開始「STR」の記号ステップで始まり、終了「ED」の記号ステップで終わる。
【0153】
この制御方法500は、ブレ-キシステム1000のペダル5(またはEPB-Bボタン)に加えられたブレ-キ動作に続いてブレ-キ力Xを加える要求を制御システム100によって受信するステップ501を含んでいる。
【0154】
さらに、シングルピストンキャリパP3またはP4の場合、方法500は、前述のピストンP31、P41に要求されたブレ-キ力Xを加えること502を含む。
【0155】
方法500はさらに、制御システム100によって、ブレ-キシステムに作動的に関連する少なくとも1つのセンサによって、ブレ-キシステム1000の現在の特性周波数情報FReq’をさらに検出するステップ503’を含んでいる。この特性周波数FReqは、ブレ-キシステム1000に関連する現在の騒音および/または振動を代表するものである。
【0156】
さらに、制御システム100によって、この検出された現在の特性周波数FReq情報を、ブレ-キシステム1000の臨界動作状態を代表する基準特性周波数FReq1と比較するステップ504を含む。
【0157】
検出されたブレ-キシステム1000のこの現在の特性周波数情報FReqが基準特性周波数FReq1に等しい場合、方法500は、車両1のディスクブレ-キのキャリパP3,P4の少なくとも1つのピストンP31,P41に、要求されるブレ-キ力Xに、時間的に変化する振幅Aを有する力信号SIGを重畳することによって生成される更なるブレ-キ力X’を加えるステップ505を含んでいる。
【0158】
この場合、例えば、力信号SIGの時変振幅Aは、平均値よりも20%低い。
【0159】
さらに、力の可変部分は、車両1の全減速を知覚可能な方法で偏らせないように設けられ、システム1000の2つの車軸A1,R1の間で逆位相に補償され、全ブレ-キトルク、ひいては減速度を一定に保つ。
【0160】
さらに、重畳可能な作動力信号SIGの周波数は、少なくとも1-200Hzの範囲内である。
【0161】
図6を参照すると、車両1のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21および第2ピストンP12,P22上のブレ-キ力F3,F4,F5,F6の分配を制御するための方法600の実施形態において 図5を参照して説明した前記適用ステップ502は、ディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21と第2ピストンP12,P22の両方に、要求されたブレ-キ力Xの2分の1に等しい第6ブレ-キ力X6=X/2を適用するステップ601を含んでいる。
【0162】
さらに、方法600は、図5を参照して説明した前記印加ステップ505が、車両のディスクブレ-キキャリパP1,P2の第1ピストンP11,P21および第2ピストンP12,P22に、前記第6ブレ-キ力X6に、時間的に変化する振幅Aを有する前記力信号SIG,SIG1を重畳することによって生成された第7ブレ-キ力X1およびさらなる第7ブレ-キ力X2をそれぞれ印加するステップ602を備えることを規定する。特に、第7ブレ-キ力X1とさらなる第7ブレ-キ力X2との合計は、要求されたブレ-キ力Xに等しい。
【0163】
一実施形態では、時間的に変化する振幅Aを有する前記力信号SIG,SIG1は、相互に位相が逆位相の第1力信号SIGと第2力信号SIG1とからなる。第1力信号SIGは、第7ブレ-キ力X1を発生させるために第1ピストンP11,P21に加えられる第6ブレ-キ力X6と重畳可能である。
【0164】
第2力信号SIG1は、前記さらなる第7ブレ-キ力X2を発生させるために第2ピストンP12,P22に加えられる第6ブレ-キ力X6と重畳可能である。
【0165】
以上実証したように、車両1のブレ-キシステム1000におけるブレ-キ力の分配を制御するための方法200,300,400,500,600は、多くの利点を有し、その意図する目的を達成する。
【0166】
実際、本発明の制御方法は、システム設計の開発期間およびコストを短縮しつつ、車両、特に自動車のブレ-キシステムにおいて発生する騒音および/または振動を低減または除去することを可能にする。
【0167】
特に、長時間の機械設計とそれに続く試験によって騒音と振動の問題を解決する必要がなくなる。
【0168】
実際、第1アルゴリズム、または上述の第1および第2アルゴリズムを連続して適用することにより、それぞれ、システムの現在のV、Temp、F、S、DPTempパラメ-タの少なくとも1つが臨界条件内に入ったときに作動修正を作動させること、またはブレ-キシステムの臨界周波数FReq1の1つがマイクロフォンまたは加速度計によって検出されたときに作動修正制御を作動させることが可能である。これにより、車両のブレ-キシステムで発生するノイズおよび/または振動を自動的に低減または除去することが可能になる。
【0169】
偶発的かつ特定のニ-ズを満たすために、当業者は、上述の方法の実施形態に対していくつかの変更および適合を行うことができ、また、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、要素を他の機能的に等価なものと置き換えることができる。
【符号の説明】
【0170】
1000:ブレ-キシステム
1:車両
100:ブレ-キシステムの制御システム
A1:前車軸
FL:第1前輪
FR:第2前輪
R1:後車軸
RL:第1後輪
RR:第2後輪
2:第1アクチュエ-タモジュ-ル
3:第2アクチュエ-タモジュ-ル
ACT1:第1アクチュエ-タ
ACT2:第2アクチュエ-タ
P1:第1ブレ-キキャリパ
ACT3:第3アクチュエ-タ
ACT4:第4アクチュエ-タ
P2:第2ブレ-キキャリパ
ACT5:第 5 アクチュエ-タ
P3:第3ブレ-キキャリパ
ACT6:第6アクチュエ-タ
P4:第4ブレ-キキャリパ
BCU1:第1ブレ-キ制御ユニット
BCU2:第2ブレ-キ制御ユニット
BCU3:第3ブレ-キ制御ユニット
5:ペダル
S1、S2:ブレ-キ信号
S3:更なるブレ-キ信号
CAN1:デ-タ通信ラインまたはバス
CAN2:デ-タ通信ラインまたはバス
20:パ-キングコントロ-ルユニット
30:バッテリ
31:システム電源管理ブロック
WS1:第1スピ-ドセンサ
WS2:第2スピ-ドセンサ
WS3:第3スピ-ドセンサ
WS4:第4スピ-ドセンサ
EP1:第1パ-キングアクチュエ-タ
EP2:第2パ-キングアクチュエ-タ
EP3:第3パ-キングアクチュエ-タ
EP4:第4パ-キングアクチュエ-タ
EPB-B:パ-キングボタン
F1,F2,F3,F4,F5,F6:ブレ-キ力
P11、P21、P13、P14:第1ピストン
P12、P22:第2ピストン
V、Temp、F、S、DPTemp:第1の複数のパラメ-タ
Vc,Tempc,Fc,Sc,DPTempc:第2の複数のパラメ-タ
X:要求ブレ-キ力
Y:第1ブレ-キ力
Z:第2ブレ-キ力
X/2:第3ブレ-キ力
FReq:現在の特性周波数情報
FReq1:基準特性周波数
Y1:第4ブレ-キ力
Z1:第5ブレ-キ力
SIG:第1力信号
SIG1:第2力信号
FReq’:更なる現在の特性周波数情報
X’:更なるブレ-キ力
X6:第6ブレ-キ力
X1:第7のブレ-キ力
X2:さらなる第7ブレ-キ力
200,300,400,500,600:ブレ-キ力分配制御方法
201,501:ブレ-キ力付与要求を受信するステップ
202:第1の複数のパラメ-タを受信するステップ
203、302、302’、504:比較するステップ
204、205、206、303、304、502、505、601、602:適用するステップ
301、301’、503:現在の特性周波数情報を検出するステップ
401:ランダムに選択するステップ
402、403:第1および第2ブレ-キ力分配方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】