IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーワイディー カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-537082ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器
<>
  • 特表-ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器 図1
  • 特表-ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器 図2
  • 特表-ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器 図3
  • 特表-ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器 図4
  • 特表-ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C03C21/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519782
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2022120611
(87)【国際公開番号】W WO2023061182
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111189979.8
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】崔静娜
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼家▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】裴郁蕾
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼双
(72)【発明者】
【氏名】▲蓋▼▲ちぃ▼▲瑩▼
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB06
4G059AB11
4G059AB17
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
(57)【要約】
ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器を開示する。該ガラス基板の互いに反対側に位置する両側には、第1表面圧縮応力層と第2表面圧縮応力層をそれぞれ有する。該第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、該第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きく、該第1表面圧縮応力層の深さは、該第2表面圧縮応力層の深さより小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板であって、反対側に位置する両側には、第1表面圧縮応力層と第2表面圧縮応力層をそれぞれ有し、前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きく、前記第1表面圧縮応力層の深さは、前記第2表面圧縮応力層の深さより小さい、ことを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、いずれかの表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
得られた第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分に等しい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分又は第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より大きい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より小さい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である、ことを特徴とする請求項2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、700MPa~1200MPaであり、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、300MPa~850MPaである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力と前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力との比は、1.2以上である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項6】
前記ガラス基板の厚さがtである場合、前記第1表面圧縮応力層の深さは、0.004mm以上0.1t以下であり、前記第2表面圧縮応力層の深さは、0.085mm以上0.6t以下である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項7】
前記ガラス基板の厚さtは、0.1mm~5mmである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項8】
前記ガラス基板の材質は、リチウムアルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ソーダライムガラスのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項9】
前記第1表面圧縮応力層及び/又は第2表面圧縮応力層は、ガラス板を化学強化するか又は物理強化することにより得られる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項10】
前記ガラス基板の曲げ強度は、1000Mpa~2100MPaである、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のガラス基板。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
ガラス基板前駆体を提供するステップであって、前記ガラス基板前駆体が互いに反対側に位置する両側の表面を含み、一側の表面に第1保護層を設けて、前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を得るステップと、
前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を溶融塩に入れて第1強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第1保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成するステップと、
前記第1保護層を除去し、前記ガラス基板前駆体の圧縮応力層を有する側の表面に第2保護層を設けるステップと、
前記第2保護層を有する前記ガラス基板前駆体を前記溶融塩に入れて、前記前駆体に対して第2強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第2保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成し、前記第2保護層を除去して前記ガラス基板を得るステップと、を含む、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記溶融塩は、ナトリウム塩、カリウム塩である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融塩の温度は、360℃~450℃である、ことを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1強化及び/又は前記第2強化の時間は、60min~200minである、ことを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1強化及び/又は前記第2強化は、複数種の溶融塩を用いて段階的に強化することである、ことを特徴とする請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1保護層及び前記第2保護層は、耐熱性保護コーティングである、ことを特徴とする請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
電子部品(20)と、前記電子部品(20)を覆うガラスカバーと、を含み、前記ガラスカバーは、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラス基板を含む、ことを特徴とする電子機器(100)。
【請求項19】
前記ガラス基板において、前記第2表面圧縮応力層は、前記電子部品(20)に近接し、前記第1表面圧縮応力層は、前記電子部品(20)から離れる、ことを特徴とする請求項18に記載の電子機器(100)。
【請求項20】
前記ガラスカバーは、電子機器(100)のスクリーンカバー(10)及び/又は背面カバー(30)である、ことを特徴とする請求項18又は19に記載の電子機器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月12日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202111189979.8で、出願名称が「ガラス基板及び電子機器」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、ガラス製品の技術分野に関し、具体的には、ガラス基板及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、電子機器において、スクリーンカバー又は背面カバーとしてガラスを用いることが多いが、ガラスは、耐衝撃性が低く、割れやすいという問題がある。電子機器が不注意に落下したり、外力の衝撃を受けたりすると、ガラスが曲げて変形して割れを引き起こし、電子機器の美観が損なわれ、ひいては電子機器の正常な使用に影響を与える。したがって、電子機器の耐衝撃性を向上させ、電子機器の長い耐用年数を確保する新しいガラスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本願に係るガラス基板は、互いに反対側に位置する両側の表面に異なる圧縮応力分布を有することにより、一側が硬い物の衝撃に耐えることができ、他側が曲げ変形の張力に耐えることができ、該ガラス基板を電子機器に応用する場合、電子機器の耐衝撃性が向上し、電子機器の耐久性が高くなることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、本願に係るガラス基板は、互いに反対側に位置する両側に第1表面圧縮応力層と第2表面圧縮応力層をそれぞれ有し、前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きく、前記第1表面圧縮応力層の深さは、前記第2表面圧縮応力層の深さより小さい。
【0006】
本願では、ガラス基板の両側の表面の圧縮応力は、非対称に分布し、第1表面圧縮応力層は、高い表面圧縮応力を有するため、硬い物の衝撃に耐えることができ、第2表面圧縮応力層は、深い深さを有するため、より高い曲げ張力に耐えることができ、該ガラス基板を電子機器に応用する場合、ガラス基板の第1表面が電子機器の外面として機能し、ガラス基板の第2表面が電子部品に近接し、電子機器が外部物質の衝撃を受けた場合、ガラス基板は、電子機器をよりよく保護し、電子機器の信頼性を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、いずれかの表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である。
【0008】
好ましくは、得られた第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分に等しい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分又は第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より大きい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より小さい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である。
【0009】
好ましくは、前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、700MPa~1200MPaであり、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、300MPa~850MPaである。
【0010】
好ましくは、前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力と前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力との比は、1.2以上である。
【0011】
好ましくは、前記ガラス基板の厚さがtである場合、前記第1表面圧縮応力層の深さは、0.004mm以上0.1t以下であり、前記第2表面圧縮応力層の深さは、0.085mm以上0.6t以下である。
【0012】
好ましくは、前記ガラス基板の厚さtは、0.1mm~5mmである。
【0013】
好ましくは、前記ガラス基板の材質は、リチウムアルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ソーダライムガラスのうちの1種又は複数種を含む。
【0014】
好ましくは、前記第1表面圧縮応力層及び/又は第2表面圧縮応力層は、ガラス基板を化学強化するか又は物理強化することにより得られる。
【0015】
好ましくは、前記ガラス基板の曲げ強度は、1000MPa~2100MPaである。
【0016】
本願の第1態様に係るガラス基板は、機械的強度が高く、高い耐衝撃性及び耐落下性を有し、車載表示装置、携帯電話のカバー及び関連する日用家電及び消費型電子製品に応用することができ、これにより、電子機器は、高強度、耐衝撃性及び耐落下性を有し、製品の信頼性及び安全性を向上させる。
【0017】
第2態様では、本願に係る本願の第1態様に記載のガラス基板を製造するガラス基板の製造方法は、ガラス基板前駆体を提供するステップであって、前記ガラス基板前駆体が互いに反対側に位置する両側の表面を含み、一側の表面に第1保護層を設けて、前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を得るステップと、前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を溶融塩に入れて第1強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第1保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成するステップと、前記第1保護層を除去し、前記ガラス基板前駆体の圧縮応力層を有する側の表面に第2保護層を設けるステップと、前記第2保護層を有する前記ガラス基板前駆体を前記溶融塩に入れて第2強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第2保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成し、前記第2保護層を除去して前記ガラス基板を得るステップと、を含む。
【0018】
好ましくは、前記溶融塩は、ナトリウム塩、カリウム塩である。
【0019】
好ましくは、前記溶融塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムのうちの1種又は複数種を含む。
【0020】
好ましくは、前記溶融塩の温度は、360℃~450℃である。
【0021】
好ましくは、前記第1強化及び/又は前記第2強化の時間は、60min~200minである。
【0022】
好ましくは、前記第1強化及び/又は前記第2強化は、複数種の溶融塩を用いて段階的に強化することである。
【0023】
好ましくは、前記第1保護層及び前記第2保護層は、耐熱性保護コーティングである。
【0024】
第3態様では、本願に係る電子機器は、電子部品と、前記電子部品を覆うガラスカバーと、を含み、前記ガラスカバーは、本願の第1態様に記載のガラス基板を含む。
【0025】
好ましくは、前記ガラス基板において、前記第2表面圧縮応力層は、前記電子部品に近接し、前記第1表面圧縮応力層は、前記電子部品から離れる。
【0026】
好ましくは、前記ガラスカバーは、電子機器のスクリーンカバー及び/又は背面カバーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本願の一実施形態に係るガラス基板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図である。
図2】本願の別の実施形態に係るガラス基板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図である。
図3】本願の一実施形態に係るガラス基板の製造方法のフローチャートである。
図4】本願の一実施形態に係る電子機器の概略構成図である。
図5】実施例Aのガラス板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本願の実施例の一部であり、全てではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られる他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0029】
理解を容易にするために、本願に関するいくつかの用語を次のように説明する。圧縮応力深さ(DOL)とは、ガラス内部の圧縮応力が0である箇所からガラス表面までの距離を指し、本明細書において、圧縮応力層の深さは、圧縮応力深さと同一の概念であり、圧縮応力積分とは、圧縮応力と圧縮応力深さとの積分、即ち、圧縮応力と圧縮応力深さとの間の面積を指し、図5に示すように、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分は、S1であり、第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分は、S2である。
【0030】
ガラスは、優れた美観を有するため、電子製品に広く応用されている。しかしながら、ガラスは、耐衝撃性が低く、割れやすく、ガラスの機械的特性を強化するためにガラスを強化処理する必要があり、ガラスが強化処理された後に表面に圧縮応力が発生するとともに、ガラスの内部に圧縮応力に対抗する引張応力が発生し、内部の引張応力がガラスの耐えられる限界を超えると、ガラスは、自己爆発する。強い耐衝撃性と高い安定性を有するガラスを得るために、本願に係るガラス基板は、互いに反対側に位置する両側の表面に異なる圧縮応力分布を有することにより、一側が硬い物の衝撃に耐えることができ、他側が曲げ変形の張力に耐えることができ、該圧縮応力分布により、ガラスが自己爆発することなくガラス基板の両側の特性を最適化できるため、ガラス基板の両側の表面にそれぞれの利点を有し、電子機器におけるガラス基板の応用に適応する。該ガラス基板を電子機器に応用する場合、電子機器の耐衝撃性が向上し、電子機器の耐久性が高くなることができる。
【0031】
電子機器については、一般的に外面が衝撃を受け、ガラスを電子機器に応用する場合、ガラスの片側の表面のみが衝撃面となる。以上のシーンに基づいて、本願は、ガラス内部の引張応力が変化しない前提でガラス両側の圧縮応力分布を再設計し、ガラス両側の表面の特性を最適化する。図1は、本願の一実施形態に係るガラス基板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図である。図1に示すように、本願のガラス基板は、互いに反対側に位置する第1表面及び第2表面を含み、ガラス基板の第1表面側には、第1表面圧縮応力層を有し、ガラス基板の第2表面側には、第2表面圧縮応力層を有し、第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きく、かつ第1表面圧縮応力層の深さは、第2表面圧縮応力層の深さより小さい。ガラスは、硬い物の衝撃を受けた場合、衝撃面に圧縮応力を受けるが、衝撃面の背面に曲げによる引張応力を受ける。本願のガラス基板の第1表面は、より高い表面圧縮応力を有し、硬い物の衝撃に耐え、ガラスを直接貫通することを回避することができ、ガラス基板の第2表面は、より深い深さを有し、より高い曲げ張力に耐え、ガラスの割れを抑制することができ、それにより、ガラス基板の総合的な特性を大幅に向上させ、ガラス基板を応用シーンによりよく応用することができる。
【0032】
本願の実施形態では、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、いずれかの表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である。即ち、ガラス基板の第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分S1と第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分S2との差の絶対値は、|S1-S2|であり、SでS1とS2のいずれかの値(Sは、S1を表してもよく、S2を表してもよい)又は小さい値を表す場合、|S1-S2|とSとの比は、5%以下である。具体的には、S1がS2に等しい場合、|S1-S2|とS2との比又は|S1-S2|とS1との比は、5%以下であり、S1がS2より大きい場合、|S1-S2|とS2との比は、5%以下であり、S2がS1より大きい場合、|S1-S2|とS1との比は、5%以下であり、|S1-S2|とSとの比は、具体的には、5%、3%、2%、1%、0.5%又は0%であってもよいが、これらに限定されない。ガラス両側の圧縮応力層の圧縮応力積分差の絶対値|S1-S2|が大きすぎる場合、ガラス両側の応力のバランスが崩れて変形しやすく、ガラス基板の構造安定性を低減する。好ましくは、ガラス基板の第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分に等しく、即ち、ガラス基板の第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値が0に等しく、ガラス基板の両側の圧縮応力積分が等しい場合、ガラス基板の両側の応力がバランスを取り、ガラス基板の平面度が高く、構造安定性が高い。本願のいくつかの実施形態では、ガラス基板の第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分は、第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より大きい。ガラス基板の第1表面が衝撃面として大きな外力を受けるため、ガラス基板の両側の表面圧縮応力積分差|S1-S2|といずれかの表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比が5%以下である前提で、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が大きいほど、より大きな外力の衝撃に耐えることができ、ガラス基板の耐衝撃性を向上させることができる。
【0033】
本願のガラス基板において、片側表面の圧縮応力分布曲線は、単一の放物線であってもよく、変曲点を有する関数曲線であってもよい。図2は、本願の別の実施形態に係るガラス基板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図であり、図2に示すように、図2における圧縮応力分布曲線は、変曲点を有する関数曲線であり、ガラスが複数回強化される場合、その表面の圧縮応力分布曲線に変曲点が現れ、変曲点の前後の関数曲線の傾きが異なる。ガラス基板の表面の圧縮応力分布曲線が変曲点を有する関数曲線である場合、圧縮応力が低下するため、圧縮応力深さをさらに深くすることができ、かつガラスが自己爆発しない。
【0034】
本願のいくつかの実施形態では、ガラス基板の厚さtは、0.1mm~5mmであり、ガラス基板の厚さは、具体的には、0.1mm、0.5mm、1mm、2mm又は5mmであってもよいが、これらに限定されない。本願のガラス基板の表面の非対称な圧縮応力分布は、上記厚さのガラスに対して顕著な改善効果を有し、また、ガラス基板の厚さが薄すぎる場合、ガラス基板の中心応力が高すぎ、自己爆発しやすくなり、ガラス基板の厚さが厚すぎる場合、電子産業に求められる軽薄化の傾向に適合しない。本願のいくつかの実施形態では、第1表面圧縮応力層の深さは、0.004mm以上0.1t以下であり、第2表面圧縮応力層の深さは、0.085mm以上0.6t以下であり、0.1tとは、ガラス基板の厚さtと0.1との積を指し、0.6tとは、ガラス基板の厚さtと0.6との積を指し、例えば、ガラス基板の厚さが0.5mmである場合、第1表面圧縮応力層の深さは、0.004mm~0.05mmであり、第2表面圧縮応力層の深さは、0.085mm~0.3mmである。圧縮応力層の深さを上記範囲に制御することにより、ガラス基板が自己爆発することなく高い曲げ耐性を有することを確保することができる。
【0035】
本願の実施形態では、第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、700MPa~1200MPaである。第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、具体的には、700MPa、800MPa、1000MPa又は1200MPaであってもよいが、これらに限定されない。本願の実施形態では、第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、300MPa~850MPaである。第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、具体的には、300MPa、400MPa、500MPa、700MPa又は850MPaであってもよいが、これらに限定されない。本願の実施形態では、第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力と第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力との比は、1.2以上である。ガラス基板の両側の表面圧縮応力の比を上記範囲に制御することにより、ガラス基板の機械的特性を効果的に向上させることができる。
【0036】
本願の実施形態では、ガラス基板の材質は、リチウムアルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ソーダライムガラスのうちの1種又は複数種を含む。本願の実施形態では、ガラス基板の曲げ強度は、1000MPa~2100MPaであり、曲げ強度とは、ガラス基板の第2表面の曲げ強度を指す。本願の実施形態では、ガラス基板のサイズは、必要に応じて調整することができ、ガラス基板のサイズは、応力分布に影響を与えない。本願のいくつかの実施形態では、ガラス基板の面積は、0.5cm~1mである。
【0037】
本願に係るガラス基板は、第1表面が高い圧縮応力を有し、鋭い物体による損傷に耐えることができ、第2表面が深い圧縮応力深さを有し、より高い程度の曲げによる破壊に耐えることができ、ガラス基板の両側の圧縮応力分布を調整することにより、ガラス基板の片面の利点をより顕著にし、電子機器におけるガラス基板の応用に適合することができる。
【0038】
本願では、ガラス基板の両側の圧縮応力層は、化学強化又は物理強化によって形成されてもよい。
【0039】
さらに本願に係るガラス基板の製造方法は、上記ガラス基板を製造する。図3は、本願の一実施形態に係るガラス基板の製造方法のフローチャートである。図3に示すように、上記方法によってガラスを強化することは、ガラスの両側に異なる応力分布を形成し、ガラスの両側の表面をそれぞれ強化することであり、上記方法は、具体的には、
ガラス基板前駆体を提供するステップであって、上記ガラス基板前駆体が互いに反対側に位置する両側の表面を含み、一側の表面に第1保護層を設けて、上記第1保護層を有する上記ガラス基板前駆体を得るステップ100と、
上記第1保護層を有する上記ガラス基板前駆体を溶融塩に入れて第1強化を行うことにより、上記ガラス基板前駆体の上記第1保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成するステップ200と、
上記第1保護層を除去し、上記ガラス基板前駆体の圧縮応力層を有する側の表面に第2保護層を設けるステップ300と、
上記第2保護層を有する上記ガラス基板前駆体を上記溶融塩に入れて第2強化を行うことにより、上記ガラス基板前駆体の上記第2保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成し、上記第2保護層を除去して上記ガラス基板を得るステップ400と、を含む。
【0040】
本願では、溶融塩の種類、温度及び強化時間を制御することにより、所望の圧縮応力分布を有するガラス基板を形成することができる。本願の実施形態では、溶融塩は、ナトリウム塩、カリウム塩であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、溶融塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムのうちの1種又は複数種を含む。硝酸カリウムを用いてガラス基板前駆体を強化する場合、単一の放物線型の圧縮応力分布曲線を形成することができ、混合塩、例えば硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとの混合物を用いるか又はそれぞれ硝酸ナトリウムと硝酸カリウムを用いて強化する場合、変曲点を有する圧縮応力分布曲線を形成することができる。本願の実施形態では、溶融塩の温度は、360℃~450℃であり、溶融塩の温度は、具体的には、360℃、380℃、400℃、430℃又は450℃であってもよいが、これらに限定されず、溶融塩の温度が高い場合、所定の応力層の深さに達するために必要な強化時間は、より短い。本願の実施形態では、第1強化及び/又は第2強化の時間は、60min~200minであり、強化の時間が長いほど、所定の温度で強化された応力層の深さがより深くなる。本願の実施形態では、第1強化及び/又は第2強化は、複数種の溶融塩を用いて段階的に強化することであってもよく、例えば、第1強化は、まず溶融した硝酸ナトリウムで10min強化し、次に溶融した硝酸カリウムで90min強化することであってもよく、このとき、第1強化の時間は、100minである。本願の実施形態では、第1保護層及び第2保護層は、耐熱性保護コーティングであり、該コーティングは、ガラス表面を保護し、ガラス表面にイオン交換が発生することを回避することができる。
【0041】
本願の実施形態では、第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力を第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きくするために、第1表面を強化するとき、純度のより高い硝酸カリウムを用い、かつ強化時間を適切に短縮する。本願の実施形態では、第2表面圧縮応力層の深さを第1表面圧縮応力層の深さより深くするために、第2表面を強化するとき、一定の割合の混合溶融塩を用い、かつ強化時間を適切に延長する。
【0042】
本願の実施形態では、本願のガラス基板を得るために、物理強化を用いてガラスを強化してもよい。
【0043】
さらに本願に係るガラスカバーは、上記ガラス基板を含み、ガラスカバーは、外面がガラス基板の第1表面であり、内面がガラス基板の第2表面である。該ガラスカバーは、高い機械的強度を有し、日常の使用シーンにおいて割れにくい。本願の実施形態では、ガラスカバーは、一部がガラス基板を用い、他の部分がプラスチック、金属などの他の材料を用いるものであってもよく、全てガラス基板で構成されてもよい。該ガラスカバーの具体的なサイズは、実際のニーズに基づいて調整又は加工することができ、本実施形態では説明を省略する。本願のいくつかの実施形態では、ガラスカバーは、通信装置のハウジング又はディスプレイに応用することができ、質感がよく、放熱しやすく、耐衝撃性が高いという特徴を有し、かつ通信装置の信号に影響を与えないため、通信分野、特に5G通信分野に広く応用することができる。
【0044】
本願は、電子機器をさらに提供する。図4は、本願の一実施形態に係る電子機器100の概略構成図であり、図4に示すように、電子機器100は、スクリーンカバー10、電子部品20及び背面カバー30を含み、スクリーンカバー10及び背面カバー30は、電子部品20を覆う。本願の実施形態では、スクリーンカバー又は背面カバーは、本願に係るガラスカバーであり、或いは、スクリーンカバー及び背面カバーは、いずれも本願に係るガラスカバーである。ガラスカバーが電子機器に応用される場合、ガラスカバーは、外面が電子部品から離れる表面であり、内面が電子部品に近接する表面であり、ガラス基板の第1表面が高い圧縮応力を有するため、ガラスカバーの外面は、外部からの衝撃に耐えることができ、ガラス基板の第2表面が深い圧縮応力深さを有するため、ガラスカバーの内面は、より高い曲げ張力に耐えることができ、それにより、電子部品を効果的に保護し、電子機器の耐用年数を延長することができる。本願の実施形態では、電子機器は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン、パームトップコンピュータ、ウェアラブルデバイス、スマートブレスレット、スマートウォッチ、歩数計などの移動端末、及びデジタルTV、デスクトップコンピュータなどの固定端末を含むが、これらに限定されない。
【0045】
以下、複数の実施例により本願の技術手段をさらに説明する。
【実施例1】
【0046】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0047】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0048】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第1表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第1表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を25minとし、さらにガラス基板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を90minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0049】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0050】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を147minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が62%のKNOと質量分率が38%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を20minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0051】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0052】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【実施例2】
【0053】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0054】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0055】
ガラス基板前駆体をKNO溶融塩中に入れてガラス基板前駆体の第1表面に対して化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、化学強化の時間を120minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0056】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0057】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を122minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が94%のKNOと質量分率が6%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を10minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0058】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0059】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【実施例3】
【0060】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0061】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0062】
ガラス基板前駆体を質量分率が94%のKNOと質量分率が6%のNaNOの混合溶融塩中に入れてガラス基板前駆体の第1表面に対して化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、化学強化の時間を32minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0063】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0064】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を97minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が62%のKNOと質量分率が38%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を10minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0065】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0066】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【実施例4】
【0067】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0068】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0069】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第1表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第1表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を30minとし、さらにガラス基板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を20minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0070】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0071】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を65minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が62%のKNOと質量分率が38%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を20minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0072】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0073】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【実施例5】
【0074】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0075】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0076】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第1表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第1表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を30minとし、さらにガラス基板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を125minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0077】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0078】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を210minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が62%のKNOと質量分率が38%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を10minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0079】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0080】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【実施例6】
【0081】
ガラス基板の製造方法は、以下を含む。
【0082】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス基板前駆体を提供し、ガラス基板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0083】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第1表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第1表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を30minとし、さらにガラス基板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を60minとし、第1表面に、表面圧縮応力が大きく応力深さが浅い第1表面圧縮応力層を形成した。
【0084】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス基板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0085】
強化用溶融塩中でガラス基板前駆体の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス基板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を90minとし、さらにガラス基板前駆体を質量分率が62%のKNOと質量分率が38%のNaNOの混合溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を60minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0086】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス基板を得た。
【0087】
ガラス基板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス基板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【0088】
(実施例A)
ガラス板の製造方法は、以下を含む。
【0089】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス板前駆体を提供した。
【0090】
ガラス板前駆体をKNO溶融塩中に入れて化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、化学強化の時間を120minとし、ガラス板の両側の表面に対称な圧縮応力分布を形成し、図5は、実施例Aのガラス板の厚さ方向に沿う応力分布曲線図である。
【0091】
ガラス板と電子部品を組み立てて携帯電話を得た。
【0092】
(実施例B)
実施例Bと実施例Aとの相違点は、化学強化を2回行ったことであり、化学強化は、具体的には、以下を含む。
【0093】
ガラス板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を8minとし、さらにガラス板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を90minとし、ガラス板の両側の表面に対称な圧縮応力分布を形成した。
【0094】
ガラス板と電子部品を組み立てて携帯電話を得た。
【0095】
(実施例C)
ガラス板の製造方法は、以下を含む。
【0096】
グレードがコーニングGG5であり、サイズが145mm×70mm×0.7mmであるガラス板前駆体を提供し、ガラス板前駆体の第2表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0097】
強化用溶融塩中でガラス板前駆体の第1表面を2回に分けて化学強化し、ガラス板前駆体をKNO溶融塩中に入れて第1表面に対して化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を65minとした。
【0098】
第2表面の耐熱性保護コーティングを除去し、ガラス板前駆体の第1表面を耐熱性コーティングによって保護した。
【0099】
強化用溶融塩中でガラス板の第2表面を2回に分けて化学強化し、ガラス板前駆体をNaNO溶融塩中に入れて第2表面に対して1回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、1回目の化学強化の時間を8minとし、さらにガラス板前駆体をKNO溶融塩中に入れて2回目の化学強化を行い、溶融塩の温度を380℃とし、2回目の化学強化の時間を20minとした。第2表面に、表面圧縮応力が小さく応力深さが深い第2表面圧縮応力層を形成した。
【0100】
第1表面の耐熱性保護コーティングを除去して、ガラス板を得た。
【0101】
ガラス板と電子部品を組み立てて携帯電話を得て、ガラス板は、第1表面が携帯電話の外面であり、第2表面が携帯電話の内部に配置される(電子部品に近接する)。
【0102】
(効果比較例)
本願で製造されたセラミック外観部材の特性を検証するために、本願は、効果実施例をさらに提供する。
【0103】
1)深セン市田野儀器有限公司のFSM-6000LEUV Plusを用いて実施例1~6のガラス基板及び実施例A~Cのガラス板に対して応力試験を行い、圧縮応力分布曲線を得て、実施例1~6のガラス基板及び実施例A~Cのガラス板の応力パラメータを表1に示し、DOLは、圧縮応力深さを表し、CSは、表面圧縮応力を表し、|S1-S2|/Sは、両側の表面圧縮応力積分差と片側の表面圧縮応力積分との比を表し、Sは、第1表面及び第2表面の圧縮応力層における小さい圧縮応力積分値である。
【0104】
表1 実施例1~6のガラス基板及び実施例A~Cのガラス板の圧縮応力分布
【表1】
【0105】
2)落下衝撃試験機を用いて実施例1~6及び実施例A~Cの製品に対してサンドペーパー落下試験を行い、それらの耐衝撃性を試験し、試験方法は、具体的には、以下を含む。試験機の真空吸引ノズルを水平状態に調整し、電子製品を吸い付き、ガラス基板又はガラス板を下向きにし、80メッシュのサンドペーパーを吸引ノズルの下方の試験台面(試験台面が大理石の平面である)に水平に置き、サンドペーパーが平坦で反りがないことを確保する。製品を試験高さまで上昇させた後、ガスを放出し、落下し始めた。落下高さは、50cmから開始し、ガラス表面が破損するまで毎回5cm徐々に増加し、ガラスが破損する前の高さ(ガラス表面が破損しない最大高さ)を記録し、サンドペーパー落下試験の実験結果を表2に示した。
【0106】
3)耐曲げ強度試験機を用いて実施例1~6のガラス基板及び実施例A~Cのガラス板に対して曲げ強度試験を行い、製品の使用状況(ガラス基板は、第1表面が衝撃面であり、第2表面が曲げ張力を受ける)に基づいて、ガラス基板及びガラス板の第2表面の曲げ張力を試験し、試験過程は、具体的には、以下を含む。ガラスカバーの第2表面を下向きにし、第1表面を上向きにして強度試験を行い、上部支持プレート間の距離を20mmとし、下部支持プレート間の距離を40mmとし、落下速度を3mm/minとし、ガラスが割れるまで力を下向きに加え、割れる時の最大力Pを記録し、
曲げ強度=3P×(40-20)×0.001/(2×ガラス幅×ガラス厚さ×ガラス厚さ)という式を用いて曲げ強度を計算した。
【0107】
曲げ強度試験の実験結果を表2に示した。
【0108】
表2 実施例1~6のガラス基板及び実施例A~Cのガラス板の特性パラメータ表
【表2】
【0109】
表2から分かるように、対称に分布したガラス板に比べて、本願の実施例に係るガラス基板は、特定の応用シーンにおいて、より高い耐衝撃性及び曲げ強度を有し、電子機器に応用される場合、電子機器を効果的に保護することにより、電子機器の耐用年数を延長することができる。
【0110】
以上の記載は、本願の好ましい実施形態であるが、本願の範囲を限定するものと理解してはならない。なお、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本願の保護範囲にあると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板であって、反対側に位置する両側には、第1表面圧縮応力層と第2表面圧縮応力層をそれぞれ有し、前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力より大きく、前記第1表面圧縮応力層の深さは、前記第2表面圧縮応力層の深さより小さい、ことを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、いずれかの表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
得られた第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分に等しい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分又は第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より大きい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下であり、
前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分が前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分より小さい場合、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分と前記第2表面圧縮応力層の圧縮応力積分との差の絶対値と、前記第1表面圧縮応力層の圧縮応力積分との比は、5%以下である、ことを特徴とする請求項2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、700MPa~1200MPaであり、前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、300MPa~850MPaである、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記第1表面圧縮応力層の表面圧縮応力と前記第2表面圧縮応力層の表面圧縮応力との比は、1.2以上である、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項6】
前記ガラス基板の厚さがtである場合、前記第1表面圧縮応力層の深さは、0.004mm以上0.1t以下であり、前記第2表面圧縮応力層の深さは、0.085mm以上0.6t以下である、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項7】
前記ガラス基板の厚さtは、0.1mm~5mmである、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項8】
前記ガラス基板の材質は、リチウムアルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ソーダライムガラスのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項9】
前記第1表面圧縮応力層及び/又は第2表面圧縮応力層は、ガラス板を化学強化するか又は物理強化することにより得られる、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項10】
前記ガラス基板の曲げ強度は、1000Mpa~2100MPaである、ことを特徴とする請求項に記載のガラス基板。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
ガラス基板前駆体を提供するステップであって、前記ガラス基板前駆体が互いに反対側に位置する両側の表面を含み、一側の表面に第1保護層を設けて、前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を得るステップと、
前記第1保護層を有する前記ガラス基板前駆体を溶融塩に入れて第1強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第1保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成するステップと、
前記第1保護層を除去し、前記ガラス基板前駆体の圧縮応力層を有する側の表面に第2保護層を設けるステップと、
前記第2保護層を有する前記ガラス基板前駆体を前記溶融塩に入れて、前記ガラス基板前駆体に対して第2強化を行うことにより、前記ガラス基板前駆体の前記第2保護層が設けられていない側に圧縮応力層を形成し、前記第2保護層を除去して前記ガラス基板を得るステップと、を含む、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記溶融塩は、ナトリウム塩、カリウム塩である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融塩は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融塩の温度は、360℃~450℃である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1強化及び/又は前記第2強化の時間は、60min~200minである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1強化及び/又は前記第2強化は、複数種の溶融塩を用いて段階的に強化することである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1保護層及び前記第2保護層は、耐熱性保護コーティングである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
電子部品(20)と、前記電子部品(20)を覆うガラスカバーと、を含み、前記ガラスカバーは、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラス基板を含む、ことを特徴とする電子機器(100)。
【請求項19】
前記ガラス基板において、前記第2表面圧縮応力層は、前記電子部品(20)に近接し、前記第1表面圧縮応力層は、前記電子部品(20)から離れる、ことを特徴とする請求項18に記載の電子機器(100)。
【請求項20】
前記ガラスカバーは、電子機器(100)のスクリーンカバー(10)及び/又は背面カバー(30)である、ことを特徴とする請求項18に記載の電子機器(100)。
【国際調査報告】