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特表2024-537090粘着シート及びそれを含むアンテナ構造体
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  • 特表-粘着シート及びそれを含むアンテナ構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粘着シート及びそれを含むアンテナ構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20241003BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/06
G09F9/00 302
G09F9/00 366Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519872
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 KR2022013767
(87)【国際公開番号】W WO2023058924
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132860
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, キョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ヘ リム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドン ヨン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004EA06
4J004FA05
4J040DF031
4J040GA07
4J040GA22
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA09
4J040NA17
4J040NA19
5G435EE49
5G435HH05
(57)【要約】
本発明の実施形態は、粘着シート、それを含むアンテナ構造体及び画像表示装置を提供する。粘着シートは、150μmの厚さで測定した28GHzにおける誘電正接が0を超え、0.01以下であり、25℃における貯蔵弾性率が10~50kPaであり、第1モジュラス比が1.5~4.0、第2モジュラス比が1.0~3.5である粘着剤層を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
150μmの厚さで測定した28GHzにおける誘電正接が0を超え、0.01以下であり、
25℃における貯蔵弾性率が10~50kPaであり、
下記式1で定義される第1モジュラス比が1.5~4.0、下記式2で定義される第2モジュラス比が1.0~3.5である粘着剤層を含む、粘着シート。
[式1]
第1モジュラス比=A/B
[式2]
第2モジュラス比=B/C
(式1及び式2において、Aは粘着剤層の-20℃における貯蔵弾性率、Bは粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率、Cは粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率である。)
【請求項2】
前記粘着剤層は、炭素数18未満の第1アクリレート系単量体および炭素数18以上の第2アクリレート系単量体を含む単量体ブレンドから重合されたアクリル系共重合体を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記単量体ブレンドにおいて、前記第1アクリレート系単量体の重量に対する前記第2アクリレート系単量体の重量の比は0.2~9である、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記単量体ブレンドは、カルボキシル基またはアミド基を含有する極性単量体をさらに含む、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記単量体ブレンドは、前記単量体ブレンドの100重量部に対して、前記第1アクリレート系単量体10~75重量部、前記第2アクリレート系単量体20~85重量部、および前記極性単量体0.5~10重量部を含む、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記単量体ブレンドの100重量部に対して、ヒドロキシル基含有単量体の量は2重量部以下である、請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記第2アクリレート系単量体は、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート(2-decyl-1-tetradecanyl(meth)acrylate)、またはステアリル(メタ)アクリレートを含む、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層の前記誘電正接は0.005以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層の25℃における前記貯蔵弾性率は20~40kPaである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層の少なくとも一方の面上に形成された保護フィルムをさらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項11】
アンテナ誘電層と、
前記アンテナ誘電層の上面上に配置されたアンテナ電極層と、
前記アンテナ誘電層の底面上に貼り付けられた請求項1に記載の粘着シートとを含む、アンテナ構造体。
【請求項12】
表示パネルと、
前記表示パネル上に貼り付けられた請求項11に記載のアンテナ構造体とを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及びそれを含むアンテナ構造体に関する。より詳細には、アクリル系共重合体を含む粘着シート及びそれを含むアンテナ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンのような通信機能が結合された画像表示装置に様々な情報処理機能が付加されている。これにより、一つの画像表示装置に、画像を具現するための光学層(例えば、偏光板、位相差板など)とともに、タッチパネル、アンテナなどの構造物が含まれ得る。
【0003】
このため、表示パネル上に前述の光学層及び構造物を積層するために、粘着層または粘着シートが使用される。例えば、アンテナを表示パネル上に貼り付けるために、粘着シートを使用することができる。
【0004】
最近では、高周波または超高周波のアンテナが画像表示装置に採用されており、アンテナ周辺の誘電特性によってアンテナの放射特性が阻害されやすい。例えば、粘着シートの誘電率が高くなると、アンテナの誘電損失または信号損失が発生し、セットされたアンテナのインピーダンス特性が阻害されることがある。
【0005】
また、折ったり曲げたりできるフレキシブルディスプレイの開発に伴い、画像表示装置に適用される粘着層または粘着シートもまた、向上した柔軟性を有するように設計する必要がある。
【0006】
そこで、フレキシブルディスプレイに適用可能であり、高周波・超高周波の通信に適した誘電特性を有する粘着シートを開発する必要がある。
【0007】
例えば、韓国公開特許第10-2021-0102035号公報では、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む光学フィルム用粘着剤組成物を開示しているが、前述の誘電特性については考慮していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの課題は、向上した誘電特性および柔軟性を有する粘着シートを提供することである。
【0009】
本発明の一つの課題は、向上した誘電特性および柔軟性を有する粘着シートを含むアンテナ構造体を提供することである。
【0010】
本発明の一つの課題は、前記粘着シートが適用された画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.150μmの厚さで測定した28GHzにおける誘電正接が0を超え、0.01以下であり、25℃における貯蔵弾性率が10~50kPaであり、
下記式1で定義される第1モジュラス比が1.5~4.0、下記式2で定義される第2モジュラス比が1.0~3.5である粘着剤層を含む、粘着シート。
[式1]
第1モジュラス比=A/B
[式2]
第2モジュラス比=B/C
(式1及び式2において、Aは粘着剤層の-20℃における貯蔵弾性率、Bは粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率、Cは粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率である。)
【0012】
2.前記項目1において、前記粘着剤層は、炭素数18未満の第1アクリレート系単量体および炭素数18以上の第2アクリレート系単量体を含む単量体ブレンドから重合されたアクリル系共重合体を含む、粘着シート。
【0013】
3.前記項目2において、前記単量体ブレンドにおいて、前記第1アクリレート系単量体の重量に対する前記第2アクリレート系単量体の重量の比は0.2~9である、粘着シート。
【0014】
4.前記項目2において、前記単量体ブレンドは、カルボキシル基またはアミド基を含有する極性単量体をさらに含む、粘着シート。
【0015】
5.前記項目4において、前記単量体ブレンドは、前記単量体ブレンドの100重量部に対して、前記第1アクリレート系単量体10~75重量部、前記第2アクリレート系単量体20~85重量部、および前記極性単量体0.5~10重量部を含む、粘着シート。
【0016】
6.前記項目5において、前記単量体ブレンドの100重量部に対して、ヒドロキシル基含有単量体の量は2重量部以下である、粘着シート。
【0017】
7.前記項目2において、前記第2アクリレート系単量体は、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート(2-decyl-1-tetradecanyl(meth)acrylate)、またはステアリル(メタ)アクリレートを含む、粘着シート。
【0018】
8.前記項目1において、前記粘着剤層の前記誘電正接は0.005以下である、粘着シート。
【0019】
9.前記項目1において、前記粘着剤層の25℃における前記貯蔵弾性率は20~40kPaである、粘着シート。
【0020】
10.前記項目1において、前記粘着剤層の少なくとも一方の面上に形成された保護フィルムをさらに含む、粘着シート。
【0021】
11.アンテナ誘電層と、前記アンテナ誘電層の上面上に配置されたアンテナ電極層と、前記アンテナ誘電層の底面上に貼り付けられた前述の実施形態の粘着シートとを含む、アンテナ構造体。
【0022】
12.表示パネルと、前記表示パネル上に貼り付けられた前述の実施形態によるアンテナ構造体とを含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態による粘着シートは、所定の範囲の常温モジュラス及び温度によるモジュラス比を有することができる。これにより、前記粘着シートは、向上した折り畳み(folding)特性を有し、フレキシブルディスプレイに適用される場合、安定した柔軟性、曲げ(bending)特性を提供することができる。
【0024】
例示的な実施形態によれば、前記粘着シートは、所定の範囲の誘電正接値を有することができる。これにより、向上した折り畳み特性を有しながら、前記粘着シートによるアンテナゲイン及び放射特性を劣化させないようにすることができる。
【0025】
したがって、高周波・超高周波アンテナの放射信頼性を維持しながら、向上した柔軟性を有するアンテナ構造体またはフレキシブルディスプレイを、前記粘着シートにより実現することができる。
【0026】
例示的な実施形態では、前記粘着シートは、アクリル系単量体の共重合体を含み、前記アクリル系単量体は、炭素数18以上のアクリレート単量体および炭素数18未満のアクリレート単量体を共に含むことができる。
【0027】
これにより、前述のように、粘着シートの誘電損失を低減しながら、向上した柔軟性を共に効果的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、例示的な実施形態による粘着シートを示す概略断面図である。
図2図2は、例示的な実施形態によるアンテナ構造体および画像表示装置を示す概略的な断面図である。
図3図3は、例示的な実施形態によるアンテナ構造体および画像表示装置を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は、所定の誘電特性およびモジュラス特性を有する粘着シートを提供する。
【0030】
また、本発明の実施形態は、前記粘着シートが適用されたアンテナ構造体および画像表示装置を提供する。
【0031】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0032】
<粘着シート>
図1は、例示的な実施形態による粘着シートを示す概略断面図である。
【0033】
図1を参照すると、粘着シート100は、粘着剤層110を含むことができる。粘着シート100は、粘着剤層110の少なくとも一方の面上に形成された保護フィルムをさらに含むことができる。
【0034】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層110の150μm厚および28GHzで測定された誘電正接(誘電損失または損失タンジェント;Df)の値は0.01以下であってもよい。例えば、粘着剤層110の前記誘電正接は0を超え、0.01以下であってもよい。
【0035】
前記範囲で粘着剤層110の誘電損失を抑制することにより、粘着剤層110によるアンテナ誘電層の誘電特性が変動または阻害されることがない。
【0036】
好ましくは、粘着剤層110の誘電正接は0を超え、0.005以下、より好ましくは0.003以下、さらに好ましくは0.002以下であってもよい。
【0037】
粘着剤層110の弾性率は、粘着剤層110を含むアンテナ構造体または画像表示装置の折り畳み安定性を考慮して設計することができる。
【0038】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層110の25℃における貯蔵弾性率は10~50kPaであってもよい。前記範囲内では、粘着剤層110によって十分な折り畳み特性を付与しながら、機械的安定性を維持することができる。
【0039】
一実施形態では、粘着剤層110の25℃における貯蔵弾性率は20~40kPa、好ましくは20~30kPaであってもよい。
【0040】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層110の下記式1で定義される第1モジュラス比は1.5~4.0であってもよい。
【0041】
[式1]
第1モジュラス比=A/B
【0042】
式1中、Aは粘着剤層110の-20℃における貯蔵弾性率であり、Bは粘着剤層110の25℃における貯蔵弾性率である。
【0043】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層110の下記式2で定義される第2モジュラス比は1.0~3.5であってもよい。
【0044】
[式2]
第2モジュラス比=B/C
【0045】
式2中、Bは粘着剤層110の25℃における貯蔵弾性率であり、Cは粘着剤層110の80℃における貯蔵弾性率である。
【0046】
前記の第1及び第2モジュラス比の両方の範囲を満足するように粘着剤層110を形成することにより、広い温度範囲にわたって十分な柔軟性、折り畳み特性を維持し、折り畳み/曲げ時のクラック、剥離のような機械的不良を抑制することができる。これにより、粘着剤層110の十分な機械的強度および耐衝撃性を維持しながら、過酷な曲げ条件でもクラックのような不良が発生しないようにすることができる。
【0047】
例えば、粘着剤層110は、-30℃で2mmの曲率半径で毎分25回の速度で10,000回以上曲げてもクラック、剥離が発生しないようにすることができる。
【0048】
一実施形態では、粘着剤層110の前記第1モジュラス比は2~3.5、好ましくは2.4~3.3であってもよい。一実施形態では、粘着剤層110の前記第2モジュラス比は1.5~3.0、好ましくは1.8~2.5であってもよい。
【0049】
粘着剤層110は、アクリル系共重合体を含むことができる。例えば、粘着剤層110は、前記アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。
【0050】
前記アクリル系共重合体は、複数種の単量体が混合された単量体ブレンドまたは単量体シロップから製造することができる。
【0051】
前記単量体ブレンドは、炭素数18未満の第1アクリレート系単量体と、炭素数18以上の第2アクリレート系単量体とを含むことができる。
【0052】
前記第1アクリレート系単量体の非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタフルオロオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
前記第2アクリレート系単量体の非限定的な例としては、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート(2-decyl-1-tetradecanyl(meth)acrylate)、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
本発明で使用される用語「(メタ)アクリル-」は、「アクリル-」及び「メタクリル-」の両方を包含する意味で使用される。
【0055】
例示的な実施形態によれば、相対的に炭素数が大きく、分子長が長い前記第2アクリレート系単量体を使用することにより、粘着剤層110の分極特性を減少させることができる。これにより、粘着剤層110の誘電率を下げながら、誘電正接を効果的に減少させることができる。
【0056】
また、前記第2アクリレート系単量体と共に前記第1アクリレート系単量体を使用することにより、単量体ブレンド中の極性が増加し、凝集力を向上させることができる。これにより、粘着剤層110の折り畳み特性を補完または増強することができる。
【0057】
前述の誘電特性および折り畳み特性を共に考慮して、前記第1アクリレート系単量体及び前記第2アクリレート系単量体の含有量を調整することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記第1アクリレート系単量体の重量に対する前記第2アクリレート系単量体の重量の比は、約0.2~9であってもよい。
【0059】
好ましくは、粘着剤層110の折り畳み時の十分な機械的安定性を実現する観点から、前記第1アクリレート系単量体の重量に対する前記第2アクリレート系単量体の重量の比は0.2~1、好ましくは0.3以上及び1未満であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記単量体ブレンドは、カルボキシル基またはアミド基を含有する極性単量体をさらに含むことができる。前記極性単量体を添加することにより、共重合体の凝集力がより増強され、折り畳み時の粘着剤層110の機械的安定性をさらに向上させることができる。
【0061】
カルボキシル基を含有する極性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0062】
アミド基を含有する極性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記単量体ブレンドの100重量部に対して、前記第1アクリレート系単量体10~75重量部、前記第2アクリレート系単量体20~85重量部、および前記極性単量体0.5~10重量部を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、単量体におけるヒドロキシル基の量が増加すると、分極の増加によって誘電率または誘電損失が増加することがある。したがって、前記単量体ブレンドの100重量部に対して、ヒドロキシル基含有単量体の量は2重量部以下、好ましくは1重量部以下に抑制することができる。
【0065】
一実施形態では、前記単量体ブレンドにおいて、ヒドロキシル基含有単量体は含まれなくてもよい。
【0066】
前記ヒドロキシル基含有単量体の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記粘着剤組成物は、架橋性または硬化性を向上させるために光重合開始剤または熱硬化剤をさらに含んでもよい。
【0068】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルメタノン、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、4,4-ジメトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4-ヒドロキシシクロフェニルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン]、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ジフェニルケトンベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、フルオレン、トリフェニルアミン、カルバゾール、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などを含むことができる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記光重合開始剤は、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して0.01~3重量部、好ましくは0.2~2重量部の量で含むことができる。
【0070】
前記熱硬化剤は、例えば、前記アクリル系共重合体を適切に架橋することにより、粘着剤組成物の凝集力を強化することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤を含むことができる。
【0071】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソシアヌレート三量体等が挙げられる。
【0072】
前記熱硬化剤は、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して0.1~1重量部、好ましくは0.1~0.5重量部の量で含むことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記粘着剤組成物は、前述のアクリル系共重合体の誘電特性、折り畳み特性を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、腐食防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、充填剤、可塑剤、光安定剤、反応開始剤、溶剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0074】
図1に戻ると、粘着シート100は、粘着剤層110の表面上に形成された保護フィルムをさらに含むこともできる。
【0075】
例えば、粘着シート100は、粘着剤層110の底面及び上面上にそれぞれ形成された第1保護フィルム120及び第2保護フィルム130を含むことができる。
【0076】
第1保護フィルム120は、粘着剤層110を形成するための基材フィルムとして提供することができる。第2保護フィルム130は、粘着剤層110を対象体に貼り付けるための離型フィルムとして提供することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1保護フィルム120もまた、離型フィルムとして提供することができる。この場合、粘着シート100は、両面粘着シートとして提供することができる。
【0078】
第1保護フィルム120及び第2保護フィルム130は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリイミド樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレン及びアクリロニトリル-スチレン等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ乳酸樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド等のビニル系樹脂;ポリアミド樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテル-エーテルケトン系樹脂;アリレート系樹脂等を含むことができる。
【0079】
<アンテナ構造体及び画像表示装置>
本発明の実施形態は、前述の粘着シートを含むアンテナ構造体および画像表示装置を提供する。
【0080】
図2及び図3は、それぞれ例示的な実施形態によるアンテナ構造体および画像表示装置を示す概略的な断面図及び平面図である。
【0081】
図2及び図3を参照すると、アンテナ構造体300は、アンテナ電極層160と、アンテナ誘電層150と、前述の例示的な実施形態による粘着シート100とを含むことができる。
【0082】
アンテナ電極層160は、アンテナ誘電層150上に形成することができる。図3に示すように、アンテナ電極層160は、アンテナユニット(AU)を含むことができ、複数のアンテナユニット(AU)をアンテナ誘電層150上に配列することができる。
【0083】
アンテナユニット(AU)は、放射体162と、伝送線路164と、信号パッド166とを含むことができる。信号パッド166は、例えば、フレキシブルプリント回路基板(図示せず)を介してアンテナ駆動ICチップと接続することができる。これにより、伝送線路164を介して、放射体162への給電および信号伝達を行うことができる。
【0084】
信号パッド166の周辺には、一対のグランドパッド168を、信号パッド166を挟んで配置することもできる。
【0085】
例示的な実施形態によれば、放射体162により、例えば、5GHz以上、10GHz以上、20GHz以上の帯域に相当する高周波または超高周波の通信を行うことができる。
【0086】
アンテナ誘電層150は、前記高周波・超高周波の放射特性を実現するための誘電特性を有する絶縁物質を含むことができる。
【0087】
粘着シート100は、例えば、第1保護フィルム130を除去し、アンテナ誘電層150の底面に貼り付けることができる。これにより、粘着剤層110をアンテナ誘電層150の底面と直接接触させることができる。
【0088】
画像表示装置400は、表示パネル200と、アンテナ構造体300とを含むことができる。
【0089】
表示パネル200は、パネル基板205上に配置された画素電極210、画素定義膜220、表示層230、対向電極240、およびエンキャプセレーション層250を含むことができる。
【0090】
パネル基板205上には、薄膜トランジスタ(TFT)を含む画素回路が形成され、前記画素回路を覆う絶縁膜を形成することができる。画素電極210は、前記絶縁膜上で、例えばTFTのドレイン電極と電気的に接続することができる。
【0091】
画素定義膜220は、前記絶縁膜上に形成され、画素電極210を露出させて画素領域を定義することができる。画素電極210上には表示層230が形成され、表示層230は、例えば、液晶層または有機発光層を含むことができる。
【0092】
画素定義膜220及び表示層230上には、対向電極240を配置することができる。対向電極240は、例えば、画像表示装置の共通電極またはカソードとして提供することができる。対向電極240上には、表示パネル200を保護するためにエンキャプセレーション層250を積層することができる。
【0093】
アンテナ構造体300は、粘着シート100を介して表示パネル200上に貼り付けることができる。例えば、第1保護フィルム120を除去した後、粘着剤層110を介して表示パネル200上にアンテナ構造体300を貼り付けることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、表示パネル200上にタッチセンサ層260を積層することができる。例えば、第1粘接着層50を介して、タッチセンサ層260を表示パネル200のエンキャプセレーション層250上に貼り付けることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、タッチセンサ層260上には偏光層270を積層することができる。例えば、第2粘接着層60を介して、偏光層270をタッチセンサ層260上に積層することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、アンテナ構造体300は、偏光層270上に積層することができる。例えば、第1保護フィルム120を除去し、粘着剤層110を偏光層270上に貼り付けることができる。
【0097】
アンテナ構造体300上には、カバーウィンドウ280を積層することができる。例えば、第3粘接着層70を介して、アンテナ構造体300上にカバーウィンドウ280を貼り付けることができる。
【0098】
前述のように、ユーザの視認側から、アンテナ構造体300、偏光層270およびタッチセンサ層260を順次配置することができる。これとは異なり、アンテナ構造体300は、タッチセンサ層260の下に配置してもよく、偏光層270とタッチセンサ層260との間に配置してもよい。
【0099】
図3に示すように、画像表示装置400は、表示領域410と周辺領域420とを含むことができる。周辺領域420は、ベゼル領域または遮光領域(非表示領域)に相当し得る。
【0100】
アンテナ構造体300は、粘着シート100を用いて、放射体162が表示領域410と重畳するように、例えば、パッチの形で画像表示装置400内に貼り付けることができる。
【0101】
前述のように、粘着シート100は、減少した誘電損失を有し、向上した折り畳み特性を有することができる。これにより、放射体162またはアンテナユニット(AU)の高周波・超高周波の放射特性を促進し、信号損失を抑制することができる。また、画像表示装置400の周辺領域420を介して、折り畳み・曲げによって容易にパッチの形で挿入することができる。
【実施例
【0102】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0103】
製造例:アクリル系共重合体の製造
製造例1
1Lの反応器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)の50重量部、2-デシル-1-テトラデカニルアクリレート(DTDA)の45重量部、アクリル酸(AA)の5重量部を含む単量体ブレンドを投入した後、溶剤としてエチルアセテート(EAc)の100重量部を投入した。窒素ガスを1時間パージして酸素を除去し、80℃に維持した。前記単量体ブレンドを均一に混合した後、反応開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.1重量部投入し、8時間反応させ、アクリル共重合体を製造した(重量平均分子量:95万、PDI 4.1)。
【0104】
製造例2~13
単量体の成分及び含有量(重量部)を下記表1のように変更し、製造例1と同様の方法によりアクリル共重合体を製造した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示す具体的な成分は以下の通りである。
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(シグマ・アルドリッチ)
EHDG-AT:2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート(2-Ethyl hexyl diglycol acrylate、共栄社)
DTDA:2-デシル-1-テトラデカニルアクリレート(2-decyl-1-tetradecanyl acrylate、共栄社)
DTDMA:2-デシル-1-テトラデカニルメタアクリレート(2-decyl-1-tetradecanyl methacrylate、共栄社)
SA:ステアリルアクリレート(共栄社)
AA:アクリル酸(シグマ・アルドリッチ)
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド(シグマ・アルドリッチ)
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(シグマ・アルドリッチ)
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(シグマ・アルドリッチ)
【0107】
実験例
前記製造例で合成したアクリル系共重合体を用いて、表2及び表3に示すように、実施例及び比較例による粘着剤組成物を準備した。粘着剤組成物を、シリコーン離型剤がコーティングされた50μmの離型フィルム上に100μm厚になるように塗布し、110℃で5分間乾燥した後、離型フィルムを積層して粘着シートを形成した。
【0108】
1)貯蔵弾性率の測定
実施例及び比較例の各粘着シートについて、25℃における貯蔵弾性率を粘弾性測定装置(MCR-301、Anton Paar社)により測定した。具体的には、粘着シートのサイズを長さ30mm×幅30mmに切断し、切断した粘着シートの片面に貼り付けられた離型フィルムを除去した後、ガラス基板に接合した。その後、測定チップ(tip)に貼り付けた状態で、-20~100℃の温度領域において、周波数1.0Hz、変形2%、昇温速度5℃/minの条件下で貯蔵弾性率を測定した。このとき、-20℃、25℃及び80℃での測定値をそれぞれ読み取り、前述の式1及び式2によるモジュラス比を計算した。
【0109】
2)誘電正接の測定
実施例及び比較例の各粘着シートの誘電正接を25℃で誘電率測定装置(Anritus社、型番MS46522B)により測定した。具体的には、40μmのCOPフィルム(Zeonor社)の間に、離型フィルムが除去された150μmの粘着シートを積層し、長さ30mm×幅70mmのサイズに切断した。
【0110】
切断した粘着シートを測定装置のプローブに投入し、28GHzにおける誘電正接(Df)値を測定した。
【0111】
<評価基準>
◎:0.005以下
○:0.005超え0.01以下
×:0.01超え
【0112】
3)折り畳み(folding)特性の評価
実施例及び比較例で作製した粘着シートを50μmのPETに接合し、20mm×100mmのサンプルを製造した。屈曲性評価装置(COVOTECH社、CFT-720C)にサンプルを固定し、1分間に25回折り畳み、1回の折り畳みの後に0.2秒間保持、曲率半径2mmの条件で-30℃において折り畳みの評価を行った。折り畳み部位で破断、浮き、剥離などの不良が生じる折り畳み回数を測定し、折り畳み特性を以下のように評価した。
【0113】
<評価基準>
◎:30,000回以上折り畳んだ場合、不良が発生しなかった。
○:10,000回~30,000回の折り畳み回数の範囲で不良が発生した。
×:10,000回未満の折り畳み回数で不良が発生した。
【0114】
評価の結果を下記の表2及び表3に示す。表2及び表3では、架橋剤としてTDI系Coronate-L(日本ウレタン社)を使用した。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表2及び表3を参照すると、実施例による粘着シートの場合は、低誘電正接を有しながら、前述の貯蔵弾性率及びモジュラス比の範囲を満足した。これにより、過酷な低温での折り畳みでも優れた耐久性を提供した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】