(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】少なくともEGFRに結合する抗体を使用した、免疫チェックポイント阻害剤で治療された高いEGFR発現を有するがんの治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241003BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241003BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K39/395 T
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61P35/00
A61K39/395 E
A61P1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519902
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 NL2022050563
(87)【国際公開番号】W WO2023059191
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト・アイザック・ワッサーマン
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・イレス・ラマーツ・ファン・ブエレン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、がんの治療における手段及び方法に関する。本開示は、特に、少なくともEGFRに結合する抗体で個体におけるがんを治療する方法に関する。本発明は、かかる方法における使用、及び特定のEGFRレベルを有するがんの治療のための薬剤の製造における使用に更に関する。かかる抗体は、胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がんなどのがんの治療において特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、前記対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項2】
対象におけるがんを治療するための薬剤の製造における、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体の使用であって、前記対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、使用。
【請求項3】
EGFRを発現するがんを有する対象を治療する方法であって、前記対象が、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行しており、前記方法が、前記対象に、有効量の、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、方法。
【請求項4】
前記がんが、頭頸部がん、好ましくは、前記頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)であり、前記がんが、好ましくは、2+又は3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項5】
前記がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項6】
前記がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項7】
対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、前記がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項8】
対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、前記がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項9】
対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、前記第1の可変ドメインが、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列、又は
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列と多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、あるいは
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖の配列、又は
MF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖に関して、多くとも15個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、好ましくは1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖のアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域であり、前記がんが、頭頸部がん、好ましくは、前記頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)であり、がんが、好ましくは、2+若しくは3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現するか、又は前記がんが、3+のIHCスコア、若しくは好ましくは200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、若しくは胃食道接合部がんである、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項10】
前記対象が、抗EGFR剤で事前の治療を受けていない、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項11】
前記対象が、EGFRを標的とする抗体での事前の治療を受けていない、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項12】
前記対象が、セツキシマブでの事前の治療を受けていない、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項13】
前記がんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行した、請求項7~12のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項14】
前記がんが、200超~300以下のHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項15】
前記EGFRについてのHスコアが、IHCを使用して決定される、請求項14に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
【請求項16】
前記対象が、哺乳動物、好ましくはヒトである、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項17】
前記治療が、前記対象に、有効量の前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項18】
前記治療が、前記対象に、1500mgの均一用量の前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項19】
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、前記対象に、静脈内に提供される、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項20】
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、毎週、隔週、又は毎月、好ましくは隔週で提供され、より好ましくは、前記対象に、少なくとも3回以上の隔週投薬量の前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項21】
前記抗体が、ADCC増強型である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項22】
前記抗体が、アフコシル化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項23】
前記がんが、腺がん又は扁平上皮がん、特に、胃腺がん、食道腺がん、又は胃食道接合部腺がん、特に、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項24】
前記がん及び/又は前記対象が、SMAD4の野生型である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項25】
前記がん又は対象が、TP53における変異、好ましくは、活性化TP53変異を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項26】
前記がん又は対象が、Her2陰性である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項27】
前記抗体が、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項28】
前記抗体が、EGFRに結合しない第2の可変ドメインを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項29】
前記抗体が、LGR5に結合する第2の可変ドメインを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項30】
前記抗体が、第2の可変ドメインを含まない一価抗体であるか、又は前記抗体が、前記第1のEGFR結合可変ドメインを唯一の可変ドメインとして含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項31】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1又はPD-1阻害剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項32】
前記治療が、EGFR状態、SMAD4状態、及び/又はHer2状態について前記対象を診断するステップを含むか、又はそれの後であり、Her2状態についての診断が、好ましくはISH又はIHCによるものである、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項33】
EGFRに結合する前記第1の可変ドメインが、
図2に示されるヒトEGFR配列のアミノ酸残基420~480内に位置するエピトープに結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項34】
前記第1の可変ドメインのEGFRへの結合が、EGFRにおける以下のアミノ酸残基置換I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aのうちの1つ以上によって、前記置換を含まないEGFRタンパク質と比較して低減される、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項35】
LGR5に結合する前記可変ドメインが、
図1に示されるヒトLGR5配列のアミノ酸残基21~118内に位置するエピトープに結合する、請求項29~34のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【請求項36】
前記第1の可変ドメインが、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列、又は
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列と多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、あるいは
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖の配列、又は
MF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖に関して、多くとも15個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、好ましくは1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖のアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域である、請求項1~8又は10~35のいずれか一項に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、がんの治療における手段及び方法に関する。本開示は、特に、少なくともEGFRに結合する抗体で個体におけるがんを治療する方法に関する。本発明は、かかる方法における使用、及び特定のEGFRレベルを有するがんの治療のための薬剤の製造における使用に更に関する。かかる抗体は、胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がんなどのがんの治療において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、ほとんどのがん薬の発見は、必須細胞機能を遮断し、化学療法を介して分裂細胞を死滅させる薬剤に焦点を当ててきた。しかしながら、化学療法が完全な治癒をもたらすことは稀である。ほとんどの場合、患者における腫瘍は、増殖を停止させるか、又は一時的に縮小させるのみであり、再び、場合によっては、より迅速に増殖を開始し、治療するのがますます困難になる。
【0003】
がんは、疾病の治療において遂げられた多くの進歩、及びがんにつながる分子的事象に関する知識の増加にもかかわらず、世界での依然として主要な死因である。
【0004】
米国では、特に口腔及び咽頭における頭頸部がんが、既に悪性腫瘍の3%を占めており、毎年約53,000人の米国人がかかるがんを発症し、かかる状況から10,800人が死亡していることが報告されている(Siegel et al.,CA Cancer J Clin.2020;70(1):7.Epub 2020 Jan 8.)。更に、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)は、世界で6番目に発生率の高いがんであり、HNSCCを有する患者の5年全生存率は約40~50%であると報告されている(Head and Neck Cancer,Union for International Cancer Control,2014 Review of Cancer Medicines on the WHO List of Essential Medicinesにおいて)。
【0005】
局所進行性頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)に対するメタ分析では、放射線療法又は化学放射線療法への抗EGFR剤な添加がLA-HNSCCを有する患者における臨床転帰を改善しなかったことが報告された(Oncotarget.2017;8(60):102371-102380)。また、抗EGFR剤の添加は、皮膚毒性及び粘膜炎のリスクを増加させることが報告された。
【0006】
更に、胃がんは、世界中で5番目に多く診断されるがんであり、3番目に致命的である。2018年には、胃がんによる死者は推定で783,000人にのぼった。食道がんは、9番目に多い一般的ながんであり、6番目に多い一般的ながん死因である。上皮成長因子受容体(EGFR)は、胃腺がん(GAC)及び食道腺がん(EAC)症例の30%以上で過剰発現することが報告されている。しかしながら、6つの異なる研究の分析レビューでは、化学療法に抗EGFR剤を追加しても、進行性/転移性EAC、GAC、又は胃食道接合部腺がん(GEJAC)を有する患者の全生存又は無増悪生存は有意に改善しなかったと結論づけた(Kim et al.2017 Oncotarget.2017 Nov 17;8(58):99033-99040)。
【0007】
したがって、特に、胃がん、食道がん、及び頭頸部がんに対するがん治療の改善の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、以下の好ましい態様を提供する。しかしながら、本発明は、それらに限定されない。
【0009】
本開示は、対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、がんが、EGFR、又はEGFR及びLGR5を発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。
【0010】
本開示は、対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFR、又はEGFR及びLGR5を発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。
【0011】
本開示はまた、対象におけるがんを治療するための薬剤の製造における、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体の使用であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFR、又はEGFR及びLGR5を発現する、使用を提供する。
【0012】
本開示はまた、EGFRを発現するがんを有する対象を治療する方法であって、当該対象が、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行しており、方法が、対象に、有効量の、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、方法を提供する。
【0013】
ある特定の態様では、本開示のがんは、特に、胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がんである。頭頸部がんは、特に、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)である。胃がん、食道がん、胃食道接合部がんは、特に、腺がんである。当該食道がんはまた、扁平上皮がんであり得る。
【0014】
ある特定の態様では、本開示のがんは、特に、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである。ある特定の態様では、本開示のがんは、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである。
【0015】
本開示はまた、対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。本開示はまた、対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。
【0016】
本開示はまた、対象における頭頸部がん、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、EGFR遺伝子増幅を含むことによって特徴付けられる、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。かかるEGFRの遺伝子増幅は、ある特定の態様では、8以上のEGFRコピー数、又は少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5の循環腫瘍DNA(ctDNA)のレベルによって特徴付けられる。
【0017】
ある特定の態様では、EGFR mRNAの増幅は、8以上のEGFRコピー数(次世代配列決定によって定義されるなど)、又は少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5のctDNAによって適格と定義される。
【0018】
いくつかの態様では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤による事前の治療を受けた後に進行している。ある特定の態様では、当該免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、B7-1、又はB7-2阻害剤を含む。ある特定の態様では、かかる阻害剤は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、B7-1又はB7-2阻害剤を標的とする抗体を含む。ある特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、デュルバルマブ、レチファンリマブ、セミプリマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、又はアテゾリズマブを含む。
【0019】
ある特定の態様では、本開示の対象は、抗EGFR剤での事前の治療を受けていない。ある特定の態様では、対象は、EGFRを標的とする抗体での事前の治療を受けていないか、又は対象は、セツキシマブでの事前の治療を受けていない。
【0020】
ある特定の態様では、本開示の胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんは、200超~300以下のHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する。ある特定の態様では、当該EGFRについてのHスコアは、免疫組織化学(IHC)を使用して決定される。
【0021】
ある特定の態様では、本開示の対象は、ヒト対象などの哺乳動物対象である。
【0022】
ある特定の態様では、本開示の治療は、対象に、有効量の当該抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む。ある特定の態様では、当該治療は、500mg~2000mgの均一用量を提供することを含む。ある特定の態様では、当該用量は、1100mg~1800mgである。ある特定の態様では、当該用量は、1100mg~1500mgである。ある特定の態様では、当該治療は、対象に対する1500mgの均一用量の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む。ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、対象に、静脈内に提供される。ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、毎週、隔週、又は毎月提供される。ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、隔週提供される。
【0023】
ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、ADCC増強型である。また、ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、アフコシル化されている。
【0024】
ある特定の態様では、本開示の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、多重特異性抗体である。ある特定の態様では、本開示の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、少なくともEGFRに結合する二重特異性抗体である。ある特定の態様では、抗体は、EGFRに結合しない第2の可変ドメインを含む。ある特定の態様では、抗体は、LGR5に結合する第2の可変ドメインを含む。
【0025】
本開示のEGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体はまた、本明細書で治療剤とも称される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3a)-1】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3a)-2】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3b)-1】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3b)-2】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3c)-1】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3c)-2】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3c)-3】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図3c)-4】(a)ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01の可変領域などの共通の軽鎖可変領域とともに、LGR5及びEGFRに結合する可変ドメインを形成する、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3~15)である。CDR及びフレームワーク領域を、
図3bに示す。それぞれのDNA配列を、
図3cに示す。
【
図4-1】a)共通の軽鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列である。b)共通の軽鎖可変領域DNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)である。c)軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳である。d)V領域IGKV1-39Aの、e)IMGT番号付けによる共通の軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3である。
【
図4-2】a)共通の軽鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列である。b)共通の軽鎖可変領域DNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)である。c)軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳である。d)V領域IGKV1-39Aの、e)IMGT番号付けによる共通の軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3である。
【
図5-1】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖である。a)CH1領域DNA配列及び翻訳である。b)ヒンジ領域DNA配列及び翻訳である。c)CH2領域DNA配列及び翻訳である。d)変異L351K及びT366K(KK)DNA配列及び翻訳を含有するCH3ドメインである。e)変異L351D及びL368E(DE)DNA配列及び翻訳を含有するCH3ドメインである。残基位置は、EU番号付けによる。
【
図5-2】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖である。a)CH1領域DNA配列及び翻訳である。b)ヒンジ領域DNA配列及び翻訳である。c)CH2領域DNA配列及び翻訳である。d)変異L351K及びT366K(KK)DNA配列及び翻訳を含有するCH3ドメインである。e)変異L351D及びL368E(DE)DNA配列及び翻訳を含有するCH3ドメインである。残基位置は、EU番号付けによる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本説明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語が最初に定義される。追加の定義は、必要とみなされる場合、詳細な説明全体にわたって記載され得る。本明細書で個別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有し、免疫学、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法が用いられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示物を含む。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」という用語、並びに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んだ(comprised)」、「有する(has)」、「有する(have)」、「有した(had)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含んだ(included)」などの他の語形の使用は、限定されない。
【0029】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原上のエピトープに結合する1つ以上のドメインを含有する、タンパク質の免疫グロブリンクラスに属するタンパク質分子を意味し、かかるドメインは、抗体の可変領域を有する配列相同性に由来するか、又はその配列相同性を共有する。抗体は、典型的には、各々2つの重鎖及び2つの軽鎖である基本的な構造単位から構成される。本発明による抗体は、任意の特定の形式又はその産生方法に限定されない。
【0030】
「二重特異性抗体」は、抗体の1つのドメインが第1の抗原に結合する一方で、抗体の第2のドメインが第2の抗原に結合し、該第1及び第2の抗原が同一ではないか、又は1つのドメインが抗原上の第1のエピトープに結合する一方で、第2のドメインが抗原上の第2のエピトープに結合する、本明細書に記載される抗体である。「二重特異性抗体」という用語はまた、1つの重鎖可変領域/軽鎖可変領域(VH/VL)の組み合わせが、抗原上の第1の抗原又がエピトープと、抗原上の第2の抗原又はエピトープに結合する第2のVH/VLの組み合わせとに結合する抗体を包含する。この用語は、VHが第1の抗原を特異的に認識することができ、免疫グロブリン可変領域においてVHと対合したVLが、第2の抗原を特異的に認識することができる、抗体を更に含む。得られたVH/VL対は、抗原1又は抗原2のいずれかに結合する。かかるいわゆる「ツーインワン抗体」は、例えば、WO2008/027236、WO2010/108127、及びSchaefer et al(Cancer Cell 20,472-486,October 2011)に記載されている。本発明による二重特異性抗体は、任意の特定の二重特異性形式又はその産生の方法に限定されない。
【0031】
本明細書で使用される「共通軽鎖」という用語は、二重特異性抗体における2つの軽鎖(又はそのVL部分)を指す。2つの軽鎖(又はそのVL部分)は、同一であり得るか、又はいくつかのアミノ酸配列差異を有し得るが、全長抗体の結合特異性は影響を受けない。「再配列された」という用語の付加を伴うか否かにかかわらず、「共通軽鎖」、「共通VL」、「単一軽鎖」、「単一VL」という用語は全て、本明細書で互換的に使用される。「共通」はまた、アミノ酸配列が同一ではない軽鎖の機能的等価物を指す。機能的結合領域の形成に実質的に影響を及ぼさない変異(欠失、置換、挿入及び/又は付加)が存在する当該軽鎖の多くのバリアントが存在する。ある特定の態様では、本発明の軽鎖はまた、0~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを有する、本明細書で既定される軽鎖であり得る。ある特定の態様では、本発明の軽鎖はまた、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを有する、本明細書で既定される軽鎖であり得る。例えば、保存的アミノ酸変化、重鎖と対になったときに結合特異性に寄与しないか、又は部分的にしか寄与しない領域におけるアミノ酸の変化などを導入することにより試験することにより、同一ではないが依然として機能的に等価である可変の軽鎖を調製するか、又は見つけることは、例えば、本明細書で使用される共通軽鎖の定義の範囲内である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「含む」及びその活用は、その単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する、その非限定的な意味で使用される。加えて、「からなる」という動詞は、本明細書で定義される化合物又は補助化合物が、具体的に特定された構成要素以外の追加の構成要素を含んでもよく、当該追加の構成要素は、本発明の固有の特徴を変化させないことを意味する、「から本質的になる」に置き換えられてもよい。
【0033】
本発明による「全長IgG」又は「全長抗体」という用語は、本質的に完全なIgGを含むと定義されるが、必ずしも無傷なIgGの全ての機能を有するわけではない。誤解を避けるために、全長IgGは、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する。各鎖は、定常(C)領域及び可変(V)領域を含有し、これらは、CH1、CH2、CH3、VH、及びCL、VLと指定されたドメインに分類され得る。IgG抗体は、Fab部分に含有される可変領域ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメインを介して、主にFc部分を介して免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。本発明による全長抗体は、所望の特徴を提供する変異が存在し得るIgG分子を包含する。全長IgGは、いずれの領域の実質的な部分の欠失を有してはならない。しかしながら、結果として得られたIgG分子の結合特性を本質的に変化させることなく、1つ又はいくつかのアミノ酸残基が欠失したIgG分子は、「全長IgG」という用語に包含される。例えば、かかるIgG分子は、好ましくは非CDR領域内で、1~10個のアミノ酸残基の欠失を有することができ、欠失したアミノ酸は、IgGの抗原結合特異性に必須ではない。ある特定の態様では、かかるIgG分子は、非CDR領域内で、1~10個のアミノ酸残基の欠失を有することができ、欠失したアミノ酸は、IgGの抗原結合特異性に必須ではない。
【0034】
「抗体の誘導体」は、CDR領域以外では、最大でも20個のアミノ酸において天然抗体のアミノ酸配列から逸脱するタンパク質である。本明細書に開示される抗体の誘導体は、最大でも20個のアミノ酸において当該アミノ酸配列から逸脱する抗体である。機能部分、誘導体、及び/又は類似体は、(二重特異性)抗体の結合特異性を維持する。「抗体の類似体」は、構造、形式、又は起源が異なる可能性があるが、その類似体である抗体の結合特異性を維持するタンパク質である。
【0035】
本明細書における核酸配列又はアミノ酸配列に関する「同一性パーセント(%)」は、最適比較目的のために配列を整列させた後の、選択された配列内の残基と同一の候補配列内の残基のパーセンテージとして定義される。核酸配列を比較する配列同一性パーセントは、改変ClustalWアルゴリズム(Thompson,J.D.,Higgins,D.G.,and Gibson T.J.,(1994)Nuc.Acid Res.22(22):4673-4680)、swgapdnamtスコア行列、15のギャップオープニングペナルティ、及び6.66のギャップ伸長ペナルティを用いるデフォルト設定を使用したVector NTI Advance(登録商標)11.5.2ソフトウェアのAlignXアプリケーションを使用して決定される。アミノ酸配列は、改変ClustalWアルゴリズム(Thompson,J.D.,Higgins,D.G.,and Gibson T.J.,(1994)Nuc.Acid Res.22(22):4673-4680)、blosum62mt2スコア行列、10のギャップオープニングペナルティ、及び0.1のギャップ伸長ペナルティを用いるデフォルト設定を使用したVector NTI Advance(登録商標)11.5.2ソフトウェアのAlignXアプリケーションで決定される。
【0036】
抗体は、典型的には、抗原のエピトープを認識し、かかるエピトープは他の化合物にも同じように存在する場合があるため、抗原、例えば、EGFR又はLGR5を「特異的に認識する」本発明による抗体は、かかる他の化合物が同じ種類のエピトープを含有する場合、他の化合物も認識する場合がある。したがって、抗原と抗体との相互作用に関して「特異的に認識する」という用語は、同じ種類のエピトープを含有する他の化合物への抗体の結合を排除しない。
【0037】
「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、タンパク質の三次フォールディング(いわゆる直鎖状エピトープ及び立体構造エピトープ)によって並置された隣接アミノ酸又は非隣接アミノ酸から形成され得る。隣接直鎖状アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理時に立体構造が失われる。エピトープは、典型的には、特有の空間的立体構造内に3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、テンジクネズミ、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物(例えば、がんを有するヒト患者などの患者)を指す。
【0039】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患に関連する症状、合併症、状態又は生化学的兆候の進行、発生、重症化、又は再発を逆転させる、緩和する、改善する、阻害する、又は遅延させる若しくは予防する目的で、対象に活性薬剤又は活性薬剤の組み合わせを投与する任意の種類の介入又はプロセスを指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「有効な治療」又は「肯定的な治療応答」とは、有益な効果、例えば、疾患又は障害、例えば、がんの少なくとも1つの症状の改善をもたらす治療を指す。有益な効果は、その方法に従って治療を開始する前に行われた測定又は観察を上回る改善を含む、ベースラインを上回る改善の形態をとることができる。例えば、有益な効果は、疾患の臨床症状若しくは診断症状、又はがんのマーカーの軽減又は排除によって証明される、任意の臨床病期において対象におけるがんの進行を遅延させる、安定させる、停止する、又は逆転させる形態をとることができる。有効な治療は、例えば、腫瘍サイズを減少させ得る、循環腫瘍細胞の存在を減少させ得る、腫瘍の転移を軽減若しくは予防し得る、腫瘍増殖を遅延させ得る若しくは停止させ得る、及び/又は腫瘍再発(recurrence)若しくは再発(relapse)を予防し得る若しくは遅延させ得る。
【0041】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤又は薬剤の組み合わせの量を指す。その結果は、疾患の兆候、症状、若しくは原因のうちの1つ以上の低減、改善、寛解、軽減、遅延、及び/若しくは緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。腫瘍の発生に関して、有効量は、腫瘍発生を遅延させるのに十分な量である。腫瘍再発に関して、有効量は、腫瘍再発を予防する又は遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。有効量の薬剤又は組成物は、(i)がん細胞の数を低減させ得、(ii)腫瘍サイズを低減させ得、(iii)がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し得、阻止し得、ある程度遅延させ得、かつ停止し得、(iv)腫瘍転移を阻害し得、(v)腫瘍増殖を阻害し得、(vi)腫瘍の発生及び/若しくは再発を予防若しくは遅延させ得、かつ/又は(vii)がんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。一態様では、「有効量」は、がんの減少(例えば、がん細胞の数の減少)、がんの進行の遅延に影響を及ぼすか、又はがんの再成長若しくは再発を予防する、治療剤として本明細書に開示される抗体の量である。本明細書で前述するように、本開示のEGFRに結合するか、又はEGFR及びLGR5に結合する抗体又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、本明細書では、「治療剤」としても称される。ある特定の態様では、本明細書での有効量は、本開示のがんを有する対象に隔週ベースで投与される1500mgの均一用量である。
【0042】
本明細書における「均一用量」という用語は、対象が、対象の体重とは無関係に、複数回の投与にわたって一定量の治療物質とともに投与される投与レジメンを指す。均一投与は、典型的には、qnwで省略され、式中、nは、間隔を示す整数であり、wは、週である。例えば、1500mg抗体のq2w均一用量投与レジメンは、一定量1500mgの抗体が2週間毎に投与されることを意味する。本明細書では、ある特定の態様では、治療物質は、1500mgのq2w投与レジメンで投与される、EGFR、又はEGFR及びLGR5に結合する抗体である。ある特定の態様では、対象は、1500mgの少なくとも3q2wの均一投薬量で投与されている。ある特定の態様では、当該投与は、少なくとも4投薬量以上であり、患者が十分な臨床的又は放射線学的進行を示すまで持続し得る。
【0043】
均一用量は前投薬され得、これは、本発明の抗体を投与する前に薬物が対象に投与されることを意味する。ある特定の態様では、1500mgの抗体の均一用量は、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、解熱薬、及び/又は抗炎症薬が前投薬される。
【0044】
「Hスコア」という用語は、当該技術分野で、時には「ヒスト」とも称されることもあり、当業者に周知の免疫組織化学(IHC)又はインサイチュハイブリダイゼーション技術(ISH)の方法に基づいたプロトコルに従って、腫瘍試料中の目的の遺伝子の発現を半定量的に計算するために使用され得る再現性のある標準化されたスコアリング方法論を指し、Hスコアの計算方法を掲載するASCO April 10th,2015に従う。Hirsch FR,Varella-Garcia M,Bunn PA Jr,et al: Epidermal growth factor receptor in non- small-cell lung carcinomas: Correlation between gene copy number and protein expression and impact on prognosis.J Clin Oncol 21:3798-3807,2003、及びJohn T,Liu G,Tsao M-S: Overview of molecular testing in non-small-cell lung cancer: Mutational analysis,gene copy number,protein expression and other biomarkers of EGFR for the prediction of response to tyrosine kinase inhibitors.Oncogene 28:S14-S23,2009も参照されたい。これらの参考文献の関連する教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
EGFRについてのHスコアリングの文脈において、「IHCを使用して決定された」という用語は、IHCに代わる方法とは対照的に、Hスコアをその後決定するためのベースとしてIHCを使用するか、又はIHCを含む方法を指す。
【0046】
いくつかの態様では、本開示は、対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。
【0047】
いくつかの態様では、がんは、胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がん、特に、頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)から選択される。
【0048】
ある特定の態様では、がんは、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである。ある特定の態様では、当該がんは、200超のEGFRについてのHスコアを有する。ある特定の態様では、当該IHCは、腫瘍膜スコアである。
【0049】
また、本開示では、対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現し、当該可変ドメインが、本明細書で更に開示されるアミノ酸を含む、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される。
【0050】
また、本開示では、対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現し、当該可変ドメインが、本明細書で更に開示されるアミノ酸を含む、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される。
【0051】
また、本開示では、対象におけるがんを治療するための薬剤の製造における、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体の使用であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、使用が提供される。
【0052】
また、本開示では、EGFRを発現するがんを有する対象を治療する方法であって、当該対象が、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行しており、方法が、対象に、有効量の、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、方法が提供される。
【0053】
また、本開示では、対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される。
【0054】
また、本開示では、対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される。
【0055】
がん及び腫瘍という単語は、特に別途記載されない限り、本明細書で使用され、通常は、両方ともがんを指す。
【0056】
上皮成長因子(EGF)受容体(EGFR、ErbB1、又はHER1)は、Her-又はcErbB-1、-2、-3及び-4と名づけられた4つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)のファミリーのメンバーである。EGFRは様々な同義語で知られており、その最も一般的なものはEGFRである。EGFRは、4つのサブドメインから構成される細胞外ドメイン(ECD)を有し、そのうちの2つはリガンド結合に関与し、そのうちの2つはホモ二量体化及びヘテロ二量体化に関与する。EGFRは、様々なリガンドからの細胞外シグナルを統合し、多様な細胞内応答をもたらす。EGFRによって活性化される主要なシグナル伝達経路は、Ras-マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)分裂促進シグナル伝達カスケードから構成される。この経路の活性化は、Grb2のチロシンリン酸化EGFRへの動員によって開始される。これにより、Grb2結合Ras-グアニンヌクレオチド交換因子セブンレスの息子(Son of Sevenless)(SOS)によるRasの活性化がもたらされる。加えて、PI3-キナーゼ-Aktシグナル伝達経路はEGFRによっても活性化されるが、ErbB-3(HER3)の同時発現がある場合には、この活性化はよりかなり強い。EGFRは、いくつかのヒト上皮悪性腫瘍、特に乳房、膀胱、非小細胞肺がん肺、結腸、卵巣、頭頸部、及び脳のがんに関与している。遺伝子における活性化変異、並びに受容体及びそのリガンドの過剰発現が見出され、自己分泌活性化ループを生じる。したがって、このRTKは、がん療法の標的として広く使用されている。RTKを標的とする小分子阻害剤及び細胞外リガンド結合ドメインに指向されるモノクローナル抗体(mAb)の両方が開発され、これまでにいくつかの臨床的成功が示されているが、ほとんどが選択された患者群に対してである。ヒトEGFRタンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受入番号は、GenBank NM_005228.3である。受入番号は、主に、標的としてのEGFRタンパク質の特定化の更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じる変異などのコード遺伝子における変異のために、変化し得る。
【0057】
本明細書でEGFRについて言及される場合、別途記載されない限り、参照はヒトEGFRについて言及される。EGFRに結合する可変ドメイン抗原結合部位は、EGFR及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのEGFR陽性腫瘍上に発現されるバリアントに結合する。
【0058】
「LGR」という用語は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質カップリング受容体として知られているタンパク質ファミリーを指す。このファミリーのいくつかのメンバーは、LGR4、LGR5及びLGR6に注目して、WNTシグナル伝達経路に関与することが知られている。
【0059】
LGR5は、Gタンパク質共役受容体5を含有するロイシンリッチリピートである。遺伝子又はタンパク質の代替名は、Gタンパク質共役受容体5を含有するロイシンリッチ反復、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5、Gタンパク質共役受容体HG38、Gタンパク質共役受容体49、Gタンパク質共役受容体67、GPR67、GPR49、オーファンGタンパク質共役受容体HG38、Gタンパク質共役受容体49、GPR49、HG38及びFEXである。LGR5に結合する本発明のタンパク質又は抗体は、ヒトLGR5に結合する。LGR5結合タンパク質又は抗体は、ヒトと他の哺乳動物オーソログとの間の配列及び三次構造類似性に起因して、かかるオーソログにも結合し得るが、必ずしもそうではない。ヒトLGR5タンパク質及びそれをコードする遺伝子についてのデータベース受入番号は、(NC_000012.12、NT_029419.13、NC_018923.2、NP_001264155.1、NP_001264156.1、NP_003658.1)である。受入番号は、主に、標的としてのLGR5の更なる特定化方法を提供するために与えられ、結合されたLGR5タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどに生じる変異などのコード遺伝子の変異のため、変化し得る。LGR5抗原結合部位は、LGR5及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのLGR5陽性腫瘍細胞によって発現されるバリアントに結合する。
【0060】
特に、がんは、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである。胃(gastric)がん(胃(stomach)がんとも称される)は、胃の内壁、特に、その中に見られる粘液産生腺細胞から発症するがんである。かかるがんは、胃の内層から発生するために、腺がん、又はこの場合には胃腺がんとも称される。したがって、特に、がんは、本明細書で互換的に使用される胃の内層から発症する胃腺がん又はがんである。食道がんは、食道から発症するがんである。主な2つのサブタイプは、ESCC(食道扁平上皮がん)及びEAC(食道腺がん)である。胃食道接合部がん(胃食道接合部腺がんとしても知られる)は、胃食道接合部から生じる。
【0061】
頭頸部がんとして集合的に知られているがんは、通常、口、鼻、及び喉の内側など、頭部及び頸部の内側の湿った粘膜表面に並ぶ扁平細胞から発生する。これらの扁平上皮がんは、多くの場合、頭頸部の扁平上皮がんと称され、当該がんは、本開示のある特定の態様で治療される。まれではあるが、頭頸部がんはまた、唾液腺で発生する可能性がある。具体的には、頭頸部がんは、口腔内で発生し得る。これには、唇、舌の前部の3分の2、歯茎、頬と唇の内側の内面、舌の下の口の底、硬い口蓋、及び智歯の後ろの歯茎の小さな領域が含まれる。
【0062】
したがって、具体的には、頭頸部がんは、扁平上皮がんであり、鼻咽頭がん、喉頭がん、下咽頭がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、口腔がん、中咽頭がん、又は唾液腺がんが含まれる。より具体的には、本発明は、中咽頭、下咽頭、喉頭、口腔、又は舌に位置するなどの扁平上皮頭頸部がんを含むがんの治療に関する。
【0063】
また、頭頸部がんは、特に、原発不明の扁平上皮がん(当該技術分野では、原発不明のがん又はCUPとも称される)である。
【0064】
本開示では、がんは、EGFR、又はEGFR及びLGR5を発現する。
【0065】
本明細書で使用される場合、がんがEGFRを発現する細胞を含む場合には、がんは、EGFRを発現する。EGFRを発現する細胞は、EGFRをコードする検出可能なレベルのRNAを含む。ある特定の態様では、EGFR発現は、ISHによって決定される。
【0066】
ある特定の態様では、EGFRタンパク質発現は、IHCによって検出される。ある特定の態様では、EGFR発現は、製造業者の推奨事項を使用するDako自動染色装置(Agilent)用のEGFR pharmDx(商標)キット、又はEGFR細胞外ドメインに結合するEGFRクローン113に基づく市販のIHC EGFR検出キット(Leica、https://shop.leicabiosystems.com/us/ihc-ish/ihc-primary-antibodies/pid-epidermal-growth-factor-receptor)などの市販のEGFR検出キットを使用して、IHCによって決定される。あるいは、EGFR発現は、クローンEGFR.113に基づくNovocastra(商標)液体マウスモノクローナル抗体上皮成長因子受容体(製品コード:NCL-L-EGFR、leicabiosystems.com製の上皮成長因子受容体-IHC一次抗体)を使用して決定される。
【0067】
簡潔に述べると、市販のEGFR pharmDx(商標)IHCキットシステムは、規定どおりに固定されたパラフィン包埋標本のIHC染色手順を完了するために必要な試薬を含有する。ヒトEGFRタンパク質に対する一次、非Her2、Her3及びHer4交差反応性モノクローナル抗体(クローン2-18C9)とのインキュベーション後、このキットは、デキストラン技術に基づく即座に使用可能な可視化試薬を用いる。この試薬は、二次ヤギ抗マウス抗体分子及び共通のデキストランポリマー骨格に連結された西洋ワサビペルオキシダーゼ分子の両方からなる。続いて添加された色素原の酵素変換は、抗原部位で可視的な反応生成物の形成をもたらす。結果は、光学顕微鏡を使用して日常的に評価される。2+及び0の染色強度スコアを有する2つのホルマリン固定パラフィン包埋ヒト細胞株を含有する対照スライドが、キット試薬性能の品質管理のために提供される。
【0068】
染色強度は、以下のように確立される。3+(強い染色):必要に応じて高いレベルで確認できる、低いレベルの倍率、5倍の対物レンズで可視、2+(中程度の染色):中程度レベルの倍率、10倍又は20倍の対物レンズで可視、1+(弱い染色):高倍率、40倍の対物レンズでのみ確実に確認可能、0(染色なし):高倍率で可視染色はなし。
【0069】
ある特定の態様では、EGFR発現は、免疫組織化学(IHC)を使用して決定され、がんは、EGFRに対してIHC陽性である。ある特定の態様では、がんは、3+のEGFR IHCスコアによって特徴付けられる、胃がん、食道がん、胃食道接合部がんである。
【0070】
ある特定の態様では、EGFR発現は、免疫組織化学(IHC)を使用して決定され、続いて、0~300の範囲を使用してEGFRについてのHスコアを割り当てる。ある特定の態様では、本開示のがんは、0~300のスケールで200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる、胃がん、食道がん、胃食道接合部がんである。したがって、ある特定の態様では、EGFRHスコアは、200超、300以下である。ある特定の態様では、本開示のがんは、0~300のスケールで50超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる。ある特定の態様では、本開示のがんは、0~300のスケールで50超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる頭頸部がんである。ある特定の態様では、本開示のがんは、0~300のスケールで80超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる。ある特定の態様では、本開示のがんは、0~300のスケールで80超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる頭頸部がんである。
【0071】
別の態様では、がんは、2+又は3+のEGFR IHCスコアによって特徴付けられる頭頸部がんである。
【0072】
本明細書では、EGFR発現状態を割り当てるためにHスコアを決定することは、本明細書に記載のように、所定のフィールド内の各細胞について決定される、膜染色の強度を確立する(0、1+、2+、又は3+のスコアリングをもたらす)第1のステップを含む。続いて、各染色強度レベルでの細胞のパーセンテージを計算し、最後に、以下の式:[1×(1+染色を有する細胞%)+2×(2+染色を有する細胞%)+3×(3+染色を有する細胞%)]を使用してHスコアが割り当てられ、0~300の間のEGFRについてのHスコアがもたらされる。結果として、Hスコアは、所与の腫瘍試料におけるより高い強度又は染色の量に、より相対的な重みを与える。
【0073】
ある特定の態様では、本開示の当該がんは、EGFR遺伝子増幅を含むことによって特徴付けられる。ある特定の態様では、当該がんは、胃がんである。ある特定の態様では、当該がんは、胃食道接合部腺がんである。当該EGFRの遺伝子増幅は、ある特定の態様では、8以上の固体組織試料に基づくEGFRコピー数、又は少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5であるが、ある特定の態様では、5以下の循環腫瘍DNA(ctDNA)に基づくEGFR増幅スコア(コピー数変化(CNA)としても知られる)によって特徴付けられる。
【0074】
ある特定の態様では、EGFR増幅は、8以上のEGFRコピー数として定義される(特に、固形組織増幅に基づいて8コピー以上上回る倍数性として定義される)。ある特定の態様では、EGFRコピー数は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料に対する次世代配列決定によって確立される。
【0075】
ある特定の態様では、EGFR遺伝子コピー数は、次世代配列決定(NGS)を使用して確立される。ある特定の態様では、当該NGSは、固体組織試料又は血液又は血漿などの液体試料に対して行われる。ある特定の態様では、EGFR増幅スコアは、少なくとも2.14又は少なくとも2.5のスコアをもたらす、ctDNAに対する次世代配列決定によって確立される。ある特定の態様では、当該ctDNAスコアは、5以下である。当該コピー数評価は、血液由来のcfDNAに基づき得る。一例として、EGFRコピー数の決定は、Kato et al.2019(Revisiting Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)Amplification as a Target for Anti-EGFR Therapy: Analysis of Cell-Free Circulating Tumor DNA in Patients With Advanced Malignancies.JCO Precis Oncol 3: PO.18.00180)に記載のとおりに実行され得る。
【0076】
本明細書では、「ctDNA」(循環腫瘍DNA)という用語は、「cfDNA」(無細胞腫瘍DNA)と互換的に使用される。
【0077】
ある特定の態様では、EGFR遺伝子コピー数は、FISHを使用して確立される。ある特定の態様では、当該がんは、少なくとも2.0以上のEGFR/CEP7比によって特徴付けられる。EGFR/CEP7比を確立することは、当該技術分野で標準的であるが、例えば、市販のキットを使用して確立されてもよく、又はMaron,et al.,2018(Targeted Therapies for Targeted Populations: Anti-EGFR Treatment for EGFR-Amplified Gastroesophageal Adenocarcinoma.Cancer Discov 8:696-713)に記載のとおりに実行されてもよい。EGFR FISH試験は、EGFR遺伝子座(染色体7p11.2に位置する)の増幅を検出するように設計されている。かかる方法論では、FISHは、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織の切片上で実行される。スライドは、標準プロトコルに従って調製され、100個の間期細胞がスコアリングされる。次いで、増幅についてのカットオフは、EGFR:CEP7の2.0以上の比率で設定される。
【0078】
任意選択で、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体での治療は、対象をEGFR状態について診断するステップを含む(又はある特定の態様では、そのステップの後である)。ある特定の態様では、3+のIHCスコアによって特徴付けられる胃がん、食道がん、胃-食道接合部がんを有する対象、又は当該がんが0~300のスケールで200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる、が治療のために選択される。ある特定の態様では、対象の治療は、0~300のスケールで200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられる、胃がん、食道がん、胃食道接合部がんを有する当該対象を診断するステップの後である。
【0079】
ある特定の態様では、少なくとも2.0以上のEGFR/CEP7比、8以上のEGFRコピー数、又は少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5のEGFR ctDNAスコアを含むEGFR遺伝子増幅によって特徴付けられる胃がん、食道がん、胃食道接合部がんを有する対象が、治療のために選択される。ある特定の態様では、対象の治療は、少なくとも2.0以上のEGFR/CEP7比、8以上のEGFRコピー数、又は少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5のEGFR ctDNAスコアを含むEGFR遺伝子増幅によって特徴付けられる胃がん、食道がん、胃食道接合部がんを有する対象を診断するステップの後である。
【0080】
特に、本開示は、胃がん、食道がん、胃食道接合がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、かつLGR5の細胞外部分に結合する第2の可変ドメインを有し得る抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、がんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、対象が、Her2陽性、Her2高、Her2 3+、Her2 2+、Her2 1+、Her2 0、又はHer2陰性対象であることから選択されるHer2状態を有する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供する。ある特定の態様では、対象は、Her2陰性である。本開示は、Her2陰性対象におけるかかるがんを治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、抗体、又はその機能部分、誘導体及び/若しくは類似体を提供することを含む、方法を更に提供する。ある特定の態様では、当該使用は、対象に、1500mgの均一用量の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む。ある特定の態様では、Her2陰性対象への治療剤の投与は、毎週、隔週、又は毎月行われ得る。ある特定の態様では、治療剤は、2週間に1回投与される。EGFRの細胞外部分に結合する好適な可変ドメイン、及びLGR5の細胞外部分に結合する好適な可変ドメインは、本明細書に開示される。ある特定の態様では、第1の可変ドメインは、
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、又はMF4289からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、又は少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。ある特定の態様では、第2の可変ドメインは、
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、又はMF5818からなる群から選択されるLGR5特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、又は少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。
【0081】
対象のヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の発現を決定する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Her2の発現レベルは、免疫組織化学(IHC)又は(蛍光)in-situハイブリダイゼーション(ISH)を使用して確立され得、これは、Her2陰性対象の同定を含む、Her2状態の同定を可能にする。IHC又はISHは、ヒト対象におけるHer2状態を確立するために日常的に使用される明確に定義された手順及び標準的な手順の両方である。本明細書では、例えば、Bartley et al.,(HER2 Testing and Clinical Decision Making in Gastroesophageal Adenocarcinoma.Arch Pathol Lab Med.2016;140:1345-1363)によるASCO/CAPガイドラインを参照する。例えば、抗HER-2/neu抗体(クローン4B5)を使用することにより、IHCを使用したFFPE胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がんの切片におけるHER-2抗原の半定量的な検出が可能になる。染色及びスコアリングは、このがんの種類のコンセンサスガイドラインに従って実行される。がん組織試料中の細胞の表面上のHER2受容体タンパク質の量を測定するかかるHC試験は、通常は、0~3+のスコアを与える。IHCスコアに基づいて、患者は、例えば、0又は1+のスコアが測定されるときなどに、Her2陰性であると分類され得る。HER2プローブ(17q11.2-q12)及びセントロメア17プローブ(Cen17)を使用するなどして、ISH試験を使用してHer2発現を確立する場合に、診断は「陽性」又は「陰性」のいずれかであり、また時にはHER2について「ゼロ」として報告されることもある。ある特定の態様では、本開示の治療方法は、IHC及び/又はISHによって確立されるHer2陰性である対象を含む。
【0082】
本明細書におけるHer2陰性対象とは、がん、がん細胞、又は腫瘍を有する対象、すなわち、Her2陰性である対象を意味する。Her2状態は、上述のIHC及び/又はISHに従って決定されてもよい。
【0083】
ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体での治療は、対象をHer2状態について診断するステップの後である。ある特定の態様では、Her2陰性状態を有する対象が、治療のために選択される。ある特定の態様では、対象の治療は、Her2陰性胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんを有する対象を診断するステップの後である。本開示の方法によって治療されるかかるがんには、胃腺がん、及び扁平上皮がん組織診断を有する食道がんが含まれる。
【0084】
ある特定の態様では、当該Her2陰性診断は、Her2状態のISH又はIHC試験を含む。
【0085】
ある特定の態様では、Her2陰性対象の治療は、Her2陰性胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんを有する対象をスクリーニングするステップの後である。かかるがんは、特に、腺がんである。ある特定の態様では、当該スクリーニングは、Her2状態のISH又はIHC試験を含む。
【0086】
ある特定の態様では、対象は、以前に抗EGFR剤で治療されていない。ある特定の態様では、対象は、EGFRを標的とする抗体で治療されていない。ある特定の態様では、対象は、セツキシマブで治療されていない。かかる対象はまた、セツキシマブ未経験対象又は抗EGFR未経験対象とも称される。別の言い方をすれば、当該対象のがんは、以前に抗EGFR剤で治療されていない。ある特定の態様では、当該対象のがんは、EGFRを標的とする抗体で治療されていない。ある特定の態様では、当該対象のがんは、セツキシマブで治療されていない。かかる対象はまた、セツキシマブ未経験対象又は抗EGFR未経験対象とも称される。
【0087】
本開示の対象は、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けている。ある特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、レチファンリマブ セミプリマブ、又は承認されたか、又は開発中の他の抗PD1、抗PD-L1抗体を含む。ある特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、デュルバルマブ又はペムブロリズマブを含む。
【0088】
デュルバルマブ(ブランド名(商品名イミフィンジ(商標))で販売は、膀胱がん及び肺がんなどのがんを治療するためのFDA承認の免疫チェックポイント阻害剤である。プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)とPD-1(CD279)との相互作用を遮断するヒト免疫グロブリンG1カッパ(IgG1κ)モノクローナル抗体である。デュルバルマブは、免疫チェックポイント阻害剤であるか、又は時には免疫チェックポイント阻害剤薬物とも称される。実施例セクションに示されるように、免疫チェックポイント阻害剤としてデュルバルマブを用いた事前の治療を受けた患者において、臨床的に関連した応答が観察された。
【0089】
ペムブロリズマブ(ブランド名キイトルーダ(商標)で販売)は、黒色腫、肺がん、及びホジキンリンパ腫を含む様々ながんを治療するためにがん免疫療法において使用されるヒト化抗体であり、免疫チェックポイント阻害剤として機能する。それは、IgG4アイソタイプ抗体であり、リンパ球のプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)受容体を標的とする。ペムブロリズマブは、2014年に米国で医療使用に対して承認された。2017年、米国食品医薬品局(FDA)は、ある特定の遺伝子異常を有する任意の切除不能又は転移性の固形腫瘍に対してそれを承認した。世界保健機関の必須医薬品リストに掲載されている。実施例セクションに示されるように、免疫チェックポイント阻害剤としてペムブロリズマブを用いた事前の治療を受けた患者において、臨床的に関連した応答が観察された。
【0090】
イピリムマブ(ブランド名ヤーボイ(商標)で販売)は、免疫系を下方調節するタンパク質受容体であるCTLA-4を標的とすることによって免疫系を活性化するように働く、モノクローナル抗体及び免疫チェックポイント阻害剤である。イピリムマブは、黒色腫の治療に対して、2011年3月に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
【0091】
ニボルマブ(ブランド名オプジーボ(商標)で販売)は、黒色腫、肺がん、悪性胸膜中皮腫、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮がん、結腸がん、食道扁平上皮がん、肝臓がん、胃がん、及び食道又は胃食道接合部(GEJ)を含む多くのがんを治療するために使用される免疫チェックポイント阻害剤である。ニボルマブは、PD-1を遮断するヒトIgG4モノクローナル抗体である。ニボルマブは、2014年に米国で医療使用に対して承認された。世界保健機関の必須医薬品リストに掲載されている。ニボルマブは、中皮腫に対する2番目のFDA承認の全身療法であり、胃がんの第一選択治療のための最初のFDA承認の免疫療法である。
【0092】
アテゾリズマブ(ブランド名テセントリク(商標)で販売)は、尿路上皮がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、小細胞肺がん(SCLC)、及び肝細胞がん(HCC)を治療するために使用されるモノクローナル抗体薬である。それは、IgG1アイソタイプのヒト化モノクローナル抗体であり、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とする。アテゾリズマブは、米国食品医薬品局によって承認された最初のPD-L1阻害剤である。
【0093】
レチファンリマブ(以前はMGA012として知られていた)は、単剤療法として、及び他のがん治療薬と組み合わせた使用のために開発されているヒト化抗PD-1モノクローナル抗体である。レチファンリマブは、マイクロサテライト不安定性の高い子宮内膜がん、メルケル細胞がん及び肛門管の扁平上皮がん(SCAC)を有する患者のための単剤療法として、並びに非小細胞肺がん及びSCACを有する患者のための白金系化学療法と併用して、臨床試験(NCT04472429及びNCT04205812)を受けている。レチファンリマブは、肛門がんの治療のためにFDAによって希少疾病用医薬品の指定を受けている。
【0094】
セミプリマブ(ブランド名リブタヨ(登録商標)で販売)は、扁平上皮細胞皮膚がんの治療のためのモノクローナル抗体薬である。セミプリマブは、プログラム死受容体1(PD-1)に結合し、PD-1/PD-L1経路を遮断する薬物のクラスに属する。2018年9月、治癒的手術又は治癒的放射線療法の候補ではない転移性皮膚扁平上皮がん(CSCC)又は局所進行性CSCCを有する患者の治療に対してFDAによって承認された。2019年6月に欧州連合で医療使用に対して承認された。
【0095】
また、本明細書に記載される免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、B7-1、又はB7-2を含む免疫チェックポイントタンパク質を標的とすることを目的とする。したがって、本開示の免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、B7-1、又はB7-2から選択される免疫チェックポイントタンパク質を標的とする。
【0096】
プログラム死リガンド1(PD-L1、CD274、又はB7ホモログ1(B7-H1)、HGNC:17635、NCBI、Entrez遺伝子:29126、UniProtKB/Swiss-Prot:Q9NZQ7)は、ヒトにおいてCD274遺伝子によってコードされるタンパク質である。この遺伝子は、T細胞及びB細胞、並びに様々な種類の腫瘍細胞などの造血及び非造血細胞によって発現される免疫抑制性受容体リガンドをコードする。コードされたタンパク質は、免疫グロブリンV様及びC様ドメインを有するI型膜貫通タンパク質である。このリガンドとその受容体との相互作用は、T細胞活性化及びサイトカイン産生を阻害する。正常組織の感染又は炎症の間、この相互作用は、免疫応答の恒常性を維持することによって自己免疫を予防するために重要である。腫瘍微小環境において、この相互作用は、細胞毒性T細胞不活性化を介して腫瘍細胞に免疫逃避を提供する。
【0097】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279、HGNC:8760、NCBI Entrez遺伝子:5133、UniProtKB/Swiss-Prot:Q15116)は、活性化されたT細胞で発現された免疫阻害性受容体であり、エフェクターCD8+T細胞の機能を含むT細胞機能の調節に関与する。加えて、このタンパク質はまた、CD4+T細胞のT制御細胞への分化を促進し得る。それは、黒色腫を含む多くの種類の腫瘍で発現し、抗腫瘍免疫に役割を果たすことが実証されている。更に、このタンパク質は自己免疫に対する保護に関与することが示されているが、効果的な抗腫瘍及び抗微生物免疫の阻害にも寄与する可能性がある
【0098】
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4又はCD152、HGNC:2505、NCBI Entrez遺伝子:1493、UniProtKB/Swiss-Prot:P16410)は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、T細胞に抑制シグナルを伝達するタンパク質をコードする。タンパク質は、Vドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を含有する。異なるアイソフォームをコードする代替転写スプライスバリアントが特徴付けられている。膜結合アイソフォームは、ジスルフィド結合によって相互接続されたホモ二量体として機能する一方、可溶性アイソフォームは、単量体として機能する。この遺伝子における変異は、インスリン依存性糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、セリアック病、全身性エリテマトーデス、甲状腺関連眼窩症、及びその他の自己免疫疾患と関連付けられている。
【0099】
B7-1又は分化クラスター80(CD80、HGNC:1700、NCBI Entrez遺伝子941、UniProtKB/Swiss-Prot:P33681)は、細胞外免疫グロブリン定常様ドメイン及び受容体結合に必要な可変様ドメインを有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの一部分であるB7、I型膜タンパク質である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、CD28又はCTLA-4の結合によって活性化される膜受容体である。生物学的系におけるその機能には、T細胞増殖の誘導及びサイトカイン産生が含まれる。また、それは、Tリンパ球の活性化に必須の共刺激シグナルに関与する。T細胞増殖及びサイトカイン産生は、CD28の結合によって誘導され、CTLA-4への結合は、反対の効果を有し、T細胞活性化を阻害する。これは、別のB7タンパク質であるCD86と密接に関連しており、多くの場合、連携して機能する。CD80及びCD86の両方が、共刺激受容体CD28及びCTLA-4CD152と相互作用する)。
【0100】
B7-2又は分化クラスター86(CD86、HGNC:1705 NCBI Entrez遺伝子:942 UniProtKB/Swiss-Prot:P42081)は、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、B細胞(メモリB細胞を含む)、及び他の抗原提示細胞上で構成的に発現されるタンパク質である。CD80とともに、CD86は、T細胞の活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する。リガンド結合に応じて、CD86は、自己調節及び細胞-細胞会合のために、又は調節の減衰及び細胞-細胞解離のためにシグナル伝達することができる。CD86遺伝子は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであるI型膜タンパク質をコードする。選択的スプライシングは、異なるアイソフォームをコードする2つの転写バリアントをもたらす。
【0101】
対象はまた、1つ以上の標準承認療法又は標準ケアで以前に治療された可能性がある。手術又は放射線療法は、早期又は限局性疾患を有するほとんどの患者にとって好ましい場合があり、限局的に進行した疾患に対して考慮される場合があるが、例えば、がんの解剖学的位置のために、全ての患者に適用することが可能ではない場合がある。ある特定の態様では、本明細書における標準承認療法又は標準ケアは、白金系化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、抗腫瘍性化合物(例えば、メトトレキサート)、フルオロピリミジン(例えば、フルオロウラシル、5-FU、カペシタビン)、タキサン(例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル)、ヌクレオシド類似体(例えば、ゲムシタビン)、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上などの化学療法剤の投与による治療を含む。
【0102】
したがって、ある特定の態様では、本開示の対象は、化学療法剤による事前の治療を受けている。ある特定の態様では、化学療法剤は、白金系化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、抗腫瘍性化合物(例えば、メトトレキサート)、フルオロピリミジン(例えば、フルオロウラシル、5-FU、カペシタビン)、タキサン(例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル)、ヌクレオシド類似体(例えば、ゲムシタビン)、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0103】
本開示によれば、ある特定の態様では、がん及び/又は当該がんを有する当該対象は、SMAD4の野生型である。SMAD4(HGNC:6770、NCBI Entrez遺伝子:4089、UniProtKB/Swiss-Prot:Q13485)は、シグナル伝達タンパク質のSMADファミリーに属する。SMADタンパク質は、形質転換成長因子(TGF)-ベータシグナル伝達に応答して、膜貫通セリントレオニン受容体キナーゼによってリン酸化及び活性化される。この遺伝子の産物は、ホモマー複合体及び他の活性化されたSMADタンパク質とのヘテロマー複合体を形成し、その後、それが核に蓄積し、標的遺伝子の転写を調節する。このタンパク質はDNAに結合し、SMAD結合要素(SBE)と呼ばれる8bp回文配列(GTCTAGAC)を認識する。このタンパク質は、腫瘍抑制剤として作用し、上皮細胞増殖を阻害する。また、血管新生を低減させ、血管透過性を増加させることによって、腫瘍に対する阻害効果を有する場合がある。コードされたタンパク質は、骨形態形成タンパク質シグナル伝達経路の重要な構成要素である。SMADタンパク質は、翻訳後修飾によって複雑な調節に供される。この遺伝子における変異又は欠失は、膵臓がん、若年性ポリポーシス症候群、及び遺伝性出血性毛細血管拡張症候群をもたらすことが示されている。SMAD4において生じる変異のこれらの以前に報告された含意にもかかわらず、本開示のがん及び/又は当該がんを有する対象は、SMAD4の野生型である。ある特定の態様では、当該患者又はがんは、本明細書で言及されるSMAD4タンパク質情報にわたる任意の変異を含まない。
【0104】
任意選択で、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体での治療は、対象をSMAD状態について診断するステップを含む。ある特定の態様では、治療は、当該診断のステップの後である。ある特定の態様では、野生型SMAD4遺伝子及び/又はタンパク質を有する胃がん、食道がん、胃食道接合部がんを有する対象が、治療のために選択される。ある特定の態様では、対象の治療は、野生型SMAD4遺伝子又は遺伝子産物によって特徴付けられる胃がん、食道がん、胃食道接合部がんを有する対象を診断するステップの後である。
【0105】
胃がん、食道がん、胃食道接合部がん、又は頭頸部がんなどのがんは、変異の存在に関連し得る。かかる変異には、PIK3CA、KRAS、BRAF、HRAS、MAP2K1及びNOTCH1などの既知のがん遺伝子における変異が含まれる。発がん性変異は、一般に、新たな機能をもたらす活性化変異又は変異として記載される。別の種類のがん変異は、TP53、MLH1、CDKN2A、及びPTENなどの腫瘍抑制遺伝子に関与する。腫瘍抑制遺伝子における変異は、一般に、不活性化である。
【0106】
ある特定の態様では、がんは、1つ以上のEGFRシグナル伝達経路遺伝子における変異を有する。ある特定の態様では、変異は、その発現産物がEGFRシグナル伝達経路におけるEGFRの下流で活性である遺伝子において存在する。ある特定の態様では、がんは、AKT1、KRAS、MAP2K1、NRAS、HRAS、PIK3CA、PTEN、EGFR、及び/又はPLCG2から選択される遺伝子及びそのコードされたタンパク質産物における変異を有する。ある特定の態様では、がんは、HRASをコードする遺伝子における変異を有する。ある特定の態様では、がんは、KRAS及び/又はBRAFにおける活性化変異を有しない。
【0107】
ある特定の態様では、がんは、1つ以上のWNTシグナル伝達経路遺伝子における変異を有する。ある特定の態様では、APC、CREPPB、CUL1、EP300、SOX17、及び/又はTP53において。
【0108】
ある特定の態様では、HRAS遺伝子における変異は、ミスセンス変異、体細胞変異、及び/又は発がん性ドライバ変異である。ある特定の態様では、HRASは、そのタンパク質配列における変異G12S、又はG>Sアミノ酸変化に繋がるG>Aミスセンス変異を含む。ある特定の態様では、HRAS遺伝子のコドンGGCのコード配列(CDS)におけるミスセンス変異G34A。ある特定の態様では、がんは、口腔扁平上皮がん又は頬粘膜の扁平上皮がんであり、HRASにおけるミスセンス変異G12Sを含む。
【0109】
がんは、MAP2K1をコードする遺伝子における変異を有し得る。ある特定の態様では、MAP2K1遺伝子における変異は、ミスセンス変異、体細胞変異、及び/又は発がん性ドライバ変異である。ある特定の態様では、MAP2K1は、そのタンパク質配列における変異L375R、又はL>Rアミノ酸変化に繋がるT>Gミスセンス変異を含む。ある特定の態様では、ミスセンス変異は、MAP2K1遺伝子のコドンCTCのコード配列(CDS)におけるT1124Gである。
【0110】
TP53は、ストレス応答及び細胞増殖を含むいくつかの活性を調節する転写因子をコードする。TP53における変異は様々ながんと関連しており、胃がん及び食道がんを含むヒトがんの50%以上で発生すると推定されている。特に、TP53 R248Q変異は、胃がん及び食道がんを含むがんと関連することが示された(Pitolli et al.Int.J.Mol.Sci.2019 20:6241)。位置R196及びR342におけるナンセンス変異は、乳房及び食道、並びに卵巣、前立腺、乳房、膵臓、胃、結腸/直腸、肺、食道、骨などのいくつかの腫瘍においてそれぞれ特定されている(Priestly et al.Nature 2019 575:210-216)。特に、本明細書に開示される治療剤は、TP53変異、特に、TP53発現又は活性の低減をもたらす変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0111】
MLH1(MutLホモログ1)は、DNAミスマッチ修復に関与するタンパク質をコードし、既知の腫瘍抑制遺伝子である。MLH1における変異は、消化管がんを含む様々ながんと関連している。低レベルのMLH1はまた、食道がんの家族歴を有する食道がん患者に関連し(Chang et al.Oncol Lett.2015 9:430-436)、MLH1は、悪性食道腫瘍患者の1.39%で変異している(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6)。特に、MLH1 V384D変異は、がん、例えば、結腸直腸がんと関連することが示された(Ohsawa et al.Molecular Medicine Reports 2009 2:887-891)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、MLH1変異、特に、MLH1発現又は活性の低減をもたらす変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0112】
PIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ触媒サブユニットアルファ)は、PI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)の110kDa触媒サブユニットをコードする。PIK3CAの変異は、消化管がんを含む様々ながんと関連している。米国がん学会の報告によると、PIK3CAは悪性固形腫瘍患者の12.75%で変異している。具体的には、PIK3CA H1047R変異は、全悪性固形腫瘍患者の2.91%に存在し、PIK3CA E545Kは、全悪性固形腫瘍患者の2.55%に存在する(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6.を参照されたい)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、PIK3CA変異、特に、PIK2CA又はPIK3CAにおける発がん性変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0113】
CDKN2A(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A)は、CDK4及びARFを阻害するタンパク質をコードする。米国がん学会の報告によると、CDKN2Aは食道がん患者の22.21%、食道扁平上皮がん患者の28.7%、及び胃腺がん患者の6.08%で変異している。具体的には、CDKN2A W110Ter変異は、約0 .11%のがん患者に存在する。(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、CDKN2A変異、特に、CDKN2A発現又は活性の低減をもたらす変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0114】
PTEN(ホスファターゼ及びテンシンホモログ)は、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸3-ホスファターゼをコードする。米国がん学会の報告によると、PTENはがん患者の6.28%、胃腺がん患者の3.41%、食道がん患者の2.37%、食道腺がん患者の2.22%で変異している。特に、PTEN R130Ter変異(Terは終止/停止コドンを指す)は、全ての大腸がん患者の0.21%に存在する(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、PTEN変異、特に、PTEN発現又は活性の低減をもたらす変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0115】
BRAFは、成長シグナル伝達に関与するセリン/トレオニン-タンパク質キナーゼB - Rafをコードする。米国がん学会の報告によると、BRAFは胃がん患者の1.91%、及び胃腺がん患者の1.93%で変異している。具体的には、BRAF V600E変異は、がん患者の2.72%に存在する(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6を参照されたい)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、BRAF変異、特に、BRAFにおける発がん性変異を有するがんを治療するのに有用である。しかしながら、ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、BRAF変異V600Eを有しない胃がんの治療に有用である。
【0116】
KRAS(Kirsten RAt肉腫)は、RAS/MAPK経路のパーティーであるタンパク質をコードする。米国がん学会の報告によると、KRASは、悪性固形腫瘍患者の2.28%に存在するKRAS G12Cを有する悪性固形腫瘍患者の14.7%で変異している(The AACR Project GENIE Consortium.AACR Project GENIE:powering precision medicine through an international consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version 6.を参照されたい)。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、KRAS変異、特に、KRASにおける発がん性変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0117】
UGT1A1(ウリジンジホスファテグルクロノシルトランスフェラーゼ1A1)及びUGT1A8(ウリジンジホスファテグルクロノシルトランスフェラーゼ1A8)は、グルクロニド化経路の酵素をコードする。酵素活性を低減させるいくつかの多型は、イリノテカンの代謝及び効果に影響を与えることが知られている。例えば、中国人、韓国人、及び日本人集団において約0.13%の対立遺伝子頻度を有するUGT1A1*6対立遺伝子(G71R多型)及びUGT1A1*28対立遺伝子(プロモーター領域のTATA配列におけるジヌクレオチド反復多型)は、イリノテカン誘導性好中球減少症にとってのリスク因子である。ある特定の態様では、本明細書に開示される治療剤は、UGT1A1及び/又はUGT1A8変異、特に、UGT1A1及び/又はUGT1A8の発現又は活性の低減をもたらす変異を有するがんを治療するのに有用である。
【0118】
ATM(Ataxia Telangiectaisa Mutated)は、セリントレオニンキナーゼファミリーのメンバーであり、異なるDNA修復経路及びシグナル伝達経路の活性化を介してDNA損傷に対する細胞応答を調整する。ATM生殖細胞系列変異は、毛細血管拡張性運動失調症と関連しており、ATM体細胞変異は、子宮内膜、結腸、膵臓、乳がん、及び尿路上皮がんで共通に観察される。
【0119】
AOS5、hN1、AOVD1、及びTAN1としても知られているNotch1(NOTCH1)は、複数の発生プロセス及び隣接細胞間の相互作用において機能する膜貫通タンパク質をコードする遺伝子である。膜貫通タンパク質はまた、膜結合リガンドの受容体としても機能する。融合、ミスセンス変異、ナンセンス変異、サイレント変異、フレームシフト欠失及び挿入、並びにフレーム内欠失及び挿入が、食道がん、造血及びリンパ系がん、並びに胃がんなどのがんにおいて観察される。NOTCH1は、最も高い有病率の変化を有する結腸腺がん、肺腺がん、乳房浸潤性腺管がん、子宮内膜類内膜腺がん、及び皮膚扁平上皮がんを有する全てのがんの4.48%で変化する。頭頸部扁平上皮がんでは、NOTCH1は、患者の約16%で変化する(The AACR Project GENIE Consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831)。
【0120】
HRAS(HGNC ID:5173)遺伝子産物は、Rasタンパク質シグナル伝達の活性化に関与する。Rasタンパク質は、GDP/GTPに結合し、固有GTPase活性を有する。HRASがん原遺伝子における体細胞変異は、膀胱がん、甲状腺、唾液腺導管がん、上皮-筋上皮がん、及び腎臓がんに関係付けられることが示されている(Chiosea et al.,in Am.J.of Surg.Path.39(6):744-52;Chiosea et al.,in Head and Neck Path.2014.8(2):146-50)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療化合物は、HRAS変異、特に、HRAS変異G12SなどのHRASにおける発がん性変異を有するがんを治療するのに有用である。がんは、具体的には、口腔又は頬粘膜のHNSCCである。
【0121】
MAP2K1(HGNC ID:6840)は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼの群に属する。それは、MAPキナーゼシグナル伝達において活性であり、タンパク質二重特異性マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ1をコードする。MAPキナーゼ経路の一部として、MAP2K1は、細胞増殖、分化、及び転写調節を含む多くの細胞プロセスに関与する。MAP2K1は、最も高い有病率の変化を有する皮膚黒色腫、肺腺がん、結腸腺がん、黒色腫、及び乳房浸潤性腺管がんを有する全てのがんの1.05%で変化する(AACR Project GENIE Consortium.Cancer Discovery.2017;7(8):818-831.Dataset Version8)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療化合物は、MAP2K1変異、具体的には、MAP2K1変異L375Rを有するがんを治療するのに有用である。
【0122】
ある特定の態様では、本開示は、TP53、MLH1、PIK3CA、CDKN2A、UGT1A、UGT1A8、BRAF、PTEN、及びKRASをコードする遺伝子における変異を有するがんを治療するための方法を提供する。ある特定の態様では、がんは、TP53 R196T、TP53 R342T、TP53 R248Q、MLH1 V384D、PIK3CA H1047R、PIK3CA E545K、CDKN2A W110T、UGT1A1 G71R、UGT1A8 G71R、及びKRAS G12Cから選択される1つ以上の変異を有する。ある特定の態様では、がんは、KRASについての野生型である。あるいは、本開示は、ATMをコードする遺伝子における変異、特に、変異W57Tを有するがんを治療するための方法を提供する。具体的には、本開示は、ATMをコードする遺伝子における変異、特に、変異W57Tを有する食道がん、特に、ESCCを治療するための方法を提供する。
【0123】
ある特定の態様では、がんは、変異が、R342TであるなどのTP53をコードする遺伝子における変異を有し、がんは、変異が、V384DであるなどのMLH1をコードする遺伝子における変異を有する。ある特定の態様では、がんは、TP53をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、R248Qである。ある特定の態様では、がんは、PIK3CAをコードする遺伝子における変異を有する。ある特定の態様では、変異は、H1047Rである。ある特定の態様では、がんは、CDKN2Aをコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、W110Tである。ある特定の態様では、がんは、UGT1A1をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rであり、がんは、UGT1A8をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rである。ある特定の態様では、がんは、食道がんである。ある特定の態様では、がんは、食道扁平上皮がん(ESCC)である。
【0124】
ある特定の態様では、がんは、BRAFをコードする遺伝子における変異を有する。しかしながら、ある特定の態様では、がんは、BRAFをコードする遺伝子における変異V600Eを有せず、ある特定の態様では、PTENをコードする遺伝子における変異R130Terを有しない。ある特定の態様では、がんは、KRASをコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G12Cであり、がんは、UGT1A1をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rであり、がんはUGT1A8をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rである。ある特定の態様では、がんは、UGT1A1をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rであり、がんは、UGT1A8をコードする遺伝子における変異を有し、ある特定の態様では、変異は、G71Rである。ある特定の態様では、がんは、PIK3CAにおける変異を有し、ある特定の態様では、変異は、E545Kである。ある特定の態様では、がんは、胃がんである。
【0125】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、多重特異性抗体である。ある特定の態様では、当該抗体は、二重特異性抗体である。当該多重特異性若しくは二重特性抗体、又はそれらの機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、ある特定の態様では、上皮成長因子(EGF)受容体の細胞外部分に結合する第1の可変ドメインと、ある特定の態様ではEGFRに結合しない第2の可変ドメインと、を含む。ある特定の態様では、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、EGFRに一価で結合する。また、ある特定の態様では、当該多重特異性若しくは二重特異性抗体、又はそれらの機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、LGR5に結合する第2の可変ドメインを含む。
【0126】
ある特定の態様では、EGFRは、ヒトEGFRである。本開示の当該抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体によって結合されるEGFRは、野生型EGFR、及び発がん性ドライバ変異を有するEGFRを含む。ある特定の態様では、当該発がん性ドライバ変異は、活性化EGFR変異である。ある特定の態様では、かかる変異は、本開示の抗体によって結合されるエピトープを構造的に変化させない。ある特定の態様では、本開示のEGFR変異は、G719A、G719C、2E709_T710D、E709A、G719Sを含むエクソン18変異;LREA又はVAIKELの欠失を含むエクソン19欠失変異;エクソン19点変異G735S、P753L、L747S、D761Y;1~7アミノ酸のインフレームエクソン20挿入変異、V765A、T783A、V774A、S784P、V769M、T790Mを含むエクソン20変異;L858R、T854A、A871E、L861A、L861C、L861S、V843I、又はP848Lを含むエクソン21変異などの変異を含む。本開示の抗体は、当該変異に近接して位置しないエピトープに結合する。特に、EGFR変異は、S492Rであり、これは、EGFRへのセツキシマブの結合の喪失をもたらす。本開示の抗体は、セツキシマブによって認識されるエピトープとは異なるエピトープに結合する。
【0127】
いかなる理論にも拘束されないが、
図2に示されるアミノ酸残基I462、G465、K489、I491、N493、及びC499は、本開示の抗体によるエピトープへの結合に関与していると考えられる。ある特定の態様では、結合への関与は、I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aから選択されるアミノ酸残基置換のうちの1つ以上を有するEGFRへの可変ドメインの結合の低減を観察することによって決定される。
【0128】
一態様では、ヒトEGFRの細胞外部分上のエピトープに結合する可変ドメインは、
図2に示される配列のアミノ酸残基420~480内に位置するエピトープに結合する可変ドメインである。ある特定の態様では、可変ドメインのEGFRへの結合は、EGFRにおける以下のアミノ酸残基置換I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aのうちの1つ以上によって低減される。ある特定の態様では、抗体のヒトEGFRへの結合は、EGFの受容体への結合を妨げる。ある特定の態様では、EGFR上のエピトープは、立体構造エピトープである。一態様では、エピトープは、
図2に示される配列のアミノ酸残基420~480内、又は
図2に示される配列の430~480内に位置する。ある特定の態様では、当該エピトープは、
図2に示される配列の438~469内に位置する。
【0129】
理論に拘束されるものではないが、エピトープの接触残基、すなわち、可変ドメインがヒトEGFRに接触する場所は、I462、K489、I491、及びN493である可能性が高いと考えられている。アミノ酸残基G465及びC499は、抗体のEGFRへの結合に間接的に関与している可能性が高い。
【0130】
ある特定の態様では、第2の可変ドメインは、LGR5に結合する。ある特定の態様では、LGR5は、ヒトLGR5である。本明細書に記載の多重特異性若しくは二重特異性抗体、又はそれらの機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、ヒト表皮成長因子(EGF)受容体の細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではヒトLGR5に結合する可変ドメインと、を含む。
【0131】
ある特定の態様では、本明細書に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、上皮成長因子(EGF)受容体の細胞外部分に結合し、EGFの受容体への結合を妨げる可変ドメインと、LGR5に結合する可変ドメインと、を含み、抗体とLGR5発現細胞上のLGR5との相互作用は、LGR5へのRspondin(RSPO)の結合を遮断しない。抗体が、LGR5へのRspondinの結合を遮断するか、又は遮断しないかを決定するための方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/069528に記載されている。
【0132】
本明細書において、タンパク質/遺伝子の受入番号又は代替の名称が与えられ、それらは、主に、標的として記載されたタンパク質の特定の更なる方法を提供するように与えられ、抗体によって結合された標的タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じるものなどのコード遺伝子における変異及び/又は選択的スプライシングのため、変化し得る。標的タンパク質は、エピトープがタンパク質内に存在し、かつエピトープが抗体にアクセス可能である限り、抗体によって結合される。
【0133】
ある特定の態様では、本明細書に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、EGFRのリガンドのEGFRへの結合を妨げる。本明細書で使用される「結合を妨害する」という用語は、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体のEGFRへの結合が、EGF受容体への結合についてリガンドと競合することを意味する。抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、リガンド結合を弱めてもよく、これがEGF受容体に既に結合している場合、リガンドを移動させてもよく、あるいはこれは、例えば、立体障害を介して、リガンドがEGF受容体に結合し得ることを少なくとも部分的に防止してもよい。
【0134】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるEGFR抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL-1687)若しくはBxPC3-luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のリガンド誘導性増殖、又はA431細胞(ATCC CRL-1555)のリガンド誘導性細胞死として測定される、それぞれのEGFRリガンド誘導性シグナル伝達を阻害する。EGFRは、いくつかのリガンドと結合し、かつ記載のBxPC3細胞又はBxPC3-luc2細胞の増殖を刺激し得る。EGFRリガンドの存在下で、BxPC3又はBxPC3-luc2細胞の増殖が刺激される。BxPC3細胞のEGFRリガンド誘導性増殖は、リガンドの不在下及び存在下にかかわらず、細胞の増殖を比較することによって測定され得る。BxPC3細胞又はBxPC3-luc2細胞のEGFRリガンド誘導性増殖を測定するための好ましいEGFRリガンドは、EGFである。ある特定の態様では、リガンド誘導性増殖は、飽和量のリガンドを使用して測定される。ある特定の態様では、EGFは、100ng/mlの培地の量で使用される。ある特定の態様では、当該EGFは、EGF R&Dシステム、カタログ番号396-HB及び236-EGである(WO2017/069628も参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0135】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるEGFR抗体は、BxPC3細胞(ATCC CRL-1687)又はBxPC3-luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGFRリガンド誘導性増殖を阻害する。EGFRは、いくつかのリガンドと結合し、かつ記載のBxPC3細胞又はBxPC3-luc2細胞の増殖を刺激し得る。リガンドの存在下で、BxPC3又はBxPC3-luc2細胞の増殖が刺激される。BxPC3細胞のEGFRリガンド誘導性増殖は、リガンドの不在下及び存在下にかかわらず、細胞の増殖を比較することによって測定され得る。ある特定の態様では、BxPC3細胞又はBxPC3-luc2細胞のEGFRリガンド誘導性増殖を測定するためのEGFRリガンドは、EGFである。ある特定の態様では、リガンド誘導性増殖は、飽和量のリガンドを使用して測定される。ある特定の態様では、EGFは、100ng/mlの培地の量で使用される。ある特定の態様では、EGFは、R&DシステムのEGF、カタログ番号396-HB及び236-EGである(WO2017/069628も参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0136】
誤解を避けるために、本明細書で使用される細胞の増殖への言及は、細胞の数の変化を指す。増殖の阻害は、別様には得られたであろう細胞の数の低減を指す。増殖の増加は、別様には得られたであろう細胞の数の増加を指す。細胞の増殖(growth)は、通常は、細胞の増殖(proliferation)を指す。
【0137】
ある特定の態様では、本明細書に記載される抗体が、多重特異性形式でのシグナル伝達を阻害するか、又は増殖を阻害するかどうかは、抗体の単一特異性一価又は単一特異性二価バージョンを使用して、本明細書で上記の方法によって決定される。ある特定の態様では、かかる抗体は、シグナル伝達が決定される受容体に対しての結合部位を有する。単一特異性一価抗体は、破傷風トキソイド特異性などの無関係な結合特異性を有する可変ドメインを有し得る。ある特定の態様では、当該抗体は、抗原結合可変ドメインが、EGF受容体ファミリーメンバーに結合する可変ドメインからなる、二価単一特異性抗体である。
【0138】
そのBiclonics(登録商標)抗体プログラムにおいて、Merusは、EGFR及びLGR5(Gタンパク質共役受容体を含有するロイシンリッチリピート)を標的とする多重特異性抗体が開発された。かかる多重特異性抗体の有効性は、患者由来のCRCオルガノイド及びマウスPDXモデルをそれぞれ使用して、インビトロ及びインビボで評価されている(例えば、WO2017/069628を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。EGFR及びLGR5を標的とする多重特異性抗体は、腫瘍増殖を阻害することが示された。かかる阻害性抗体の効力は、がん由来の細胞によるLGR5 RNA発現のレベルと相関することが示された。ある特定の態様では、EGFR及びLGR5を標的とする当該多重特異性抗体は、WO2017/069628に記載のものである。
【0139】
本明細書に記載の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。ある特定の態様では、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインは、アミノ酸残基D43、G44、M46、F67、R90、及びF91が抗体のエピトープへの結合に関与する、
図1の配列のアミノ酸残基21~118内に位置するエピトープに結合する。
【0140】
ある特定の態様では、LGR5可変ドメインは、D43A、G44A、M46A、F67A、R90A、及びF91AのLGR5におけるアミノ酸残基置換のうちの1つ以上が、可変ドメインのLGR5への結合を低減させる可変ドメインである。
【0141】
ある特定の態様では、LGR5の細胞外部分上のエピトープは、
図1の配列のアミノ酸残基21~118内に位置する。ある特定の態様では、それは、LGR5可変ドメインのLGR5への結合が、LGR5における以下のアミノ酸残基置換D43A、G44A、M46A、F67A、R90A、及びF91Aのうちの1つ以上によって低減されるエピトープである。
【0142】
本開示は、更に、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン、及びLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインを有する抗体であって、LGR5可変ドメインが、
図1の配列のアミノ酸残基21~118内に位置するLGR5上のエピトープに結合する、抗体を提供する。
【0143】
ある特定の態様では、LGR5上のエピトープは、立体構造エピトープである。ある特定の態様では、エピトープは、
図1の配列のアミノ酸残基40~95内に位置する。ある特定の態様では、LGR5への抗体の結合は、以下のアミノ酸残基置換D43A、G44A、M46A、F67A、R90A、及びF91Aのうちの1つ以上で低減される。
【0144】
理論に拘束されるものではないが、
図1に示されるLGR5のM46、F67、R90、及びF91は、本明細書において上で示される可変ドメイン、すなわち、LGR5エピトープに結合する可変ドメインの抗原結合部位についての接触残基であると考えられる。アミノ酸残基置換D43A及びG44Aが抗体の結合を低減することは、これらが接触残基でもあることに起因し得るが、これらのアミノ酸残基置換が、他の接触残基のうちの1つ以上を有するLGR5の部分(すなわち、46位、67位、90位又は91位における)のコンフォメーションの(わずかな)修飾を誘導し、コンフォメーション変化が、抗体結合が低減されるようなものであることも可能性である。エピトープは、上述のアミノ酸置換によって特徴付けられる。抗体が同じエピトープに結合するかどうかは、様々な方法で決定され得る。例示的な方法では、CHO細胞は、細胞膜上のLGR5、又は置換M46A、F67A、R90A、又はF91Aのうちの1つ以上を含む変異体などのアラニン置換変異体を発現する。試験抗体は、CHO細胞と接触され、抗体の細胞への結合を比較される。試験抗体は、LGR5に結合し、M46A、F67A、R90A、又はF91A置換を有するLGR5にはより小さい程度で結合する場合に、エピトープに結合する。1つのアラニン残基置換を各々含む変異体のパネルとの結合を比較することが好ましい。かかる結合試験は、当該技術分野で周知である。多くの場合、パネルは、実質的に全てのアミノ酸残基をカバーする単一アラニン置換変異体を含む。LGR5の場合、パネルは、細胞が使用されるときには、もちろん、タンパク質の細胞外部分、及び細胞膜との関連性を保証する部分のみをカバーする必要がある。特定の変異体の発現は損なわれ得るが、これは異なる領域に結合する1つ以上のLGR5抗体によって容易に検出される。これらの対照抗体についても発現が低減される場合、膜上のタンパク質のレベル又はフォールディングは、この特定の変異体について損なわれる。パネルへの試験抗体の結合特性によって、試験抗体がM46A、F67A、R90A、又はF91A置換を有する変異体への結合の低減を示すかどうか、したがって、試験抗体が本発明の抗体であるかどうかが、容易に識別される。M46A、F67A、R90A、又はF91A置換を有する変異体への結合の低減によって、
図1の配列のアミノ酸残基21~118内に位置するエピトープも識別される。ある特定の態様では、パネルは、両方のD43A置換変異体、G44A置換変異体を含む。MF5816のVHのVH配列を有する抗体は、これらの置換変異体への結合の低減を示す。
【0145】
いかなる理論にも拘束されないが、
図2に示されるアミノ酸残基I462、G465、K489、I491、N493、及びC499は、本明細書において上で示される可変ドメインを含む抗体によるエピトープへの結合に関与していると考えられる。ある特定の態様では、結合への関与は、I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aから選択されるアミノ酸残基置換のうちの1つ以上を有するEGFRへの可変ドメインの結合の低減を観察することによって決定される。例示的な方法では、CHO細胞は、細胞膜上のEGFR、又は置換I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aのうちの1つ以上を含む変異体などのアラニン置換変異体を発現する。試験抗体は、CHO細胞と接触され、抗体の細胞への結合を比較される。試験抗体は、EGFRに結合し、I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499A置換を有するEGFRにはより小さい程度で結合する場合に、エピトープに結合する。1つのアラニン残基置換を各々含む変異体のパネルとの結合を比較することが好ましい。かかる結合試験は、当該技術分野で周知である。多くの場合、パネルは、実質的に全てのアミノ酸残基をカバーする単一アラニン置換変異体を含む。EGFRの場合、パネルは、細胞が使用される場合、もちろん、タンパク質の細胞外部分、及び細胞膜との関連性を保証する部分のみをカバーする必要がある。特定の変異体の発現は損なわれる可能性があるが、これは異なる領域に結合する1つ以上のEGFR抗体によって容易に検出される。これらの対照抗体についても発現が低減される場合、膜上のタンパク質のレベル又はフォールディングは、この特定の変異体について損なわれる。パネルへの試験抗体の結合特性によって、試験抗体がI462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499A置換を有する変異体への結合の低減を示すかどうかが容易に特定される。
【0146】
一態様では、ヒトEGFRの細胞外部分上のエピトープに結合する可変ドメインは、
図2に示される配列のアミノ酸残基420~480内に位置するエピトープに結合する可変ドメインである。ある特定の態様では、可変ドメインのEGFRへの結合は、EGFRにおける以下のアミノ酸残基置換I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aのうちの1つ以上によって低減される。ある特定の態様では、ヒトEGFRへの抗体の結合は、EGFの受容体への結合を妨げる。ある特定の態様では、EGFR上のエピトープは、立体構造エピトープである。一態様では、エピトープは、
図2に示される配列の430~480内など、
図2に示される配列のアミノ酸残基420~480内に位置する。ある特定の態様では、当該エピトープは、
図2に示される配列の438~469内に位置する。
【0147】
理論に拘束されるものではないが、エピトープの接触残基、すなわち、可変ドメインがヒトEGFRに接触する場所は、I462、K489、I491、及びN493である可能性が高いと考えられている。アミノ酸残基G465及びC499は、抗体のEGFRへの結合に間接的に関与している可能性が高い。
【0148】
ある特定の態様では、ヒトEGFRに結合する可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF3755のVHのCDR3配列、又は
図3に示されるMF3755のVHのCDR3配列と、多くとも3つ、多くとも2つ、又は1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列を含む重鎖可変領域を有する可変ドメインである。
【0149】
ある特定の態様では、ヒトEGFRに結合する可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF3755のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する、
図3に示されるMF3755のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を有する可変ドメインである。
【0150】
ある特定の態様では、ヒトEGFRに結合する可変ドメインは、
図3に示されるMF3755のVH鎖の配列、又はMF3755のVH鎖に関して多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3755のVH鎖のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する可変ドメインである。
【0151】
ある特定の態様では、本開示は、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体であって、
当該該可変ドメインの重鎖可変領域が、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR3配列を含むか、又は当該可変ドメインの重鎖可変領域が、
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列を含む、抗体を提供する。ある特定の態様では、当該可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、又はMF4289のCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0152】
ある特定の態様では、当該可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、又は少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289からなる群から選択されるEGFR特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列と、多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR1、CDR2、及びCDR3配列、を含む重鎖可変領域、を含む。ある特定の態様では、当該可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、又はMF4289のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF3755である。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF4280である。
【0153】
ある特定の態様では、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体であって、本明細書の上で示されるCDR3、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びに/若しくはVH配列を有するEGFR結合可変ドメインが、少なくとも
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択されるLGR5特異的重鎖可変領域のCDR3配列、又は
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択されるVHのCDR3配列と、多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列、を含むLGR5に結合する可変ドメインを有する、抗体。ある特定の態様では、当該可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、又はMF5818のCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0154】
ある特定の態様では、LGR5可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択されるLGR5特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択されるLGR5特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列と、多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは多くとも1つのアミノ酸が異なる重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列、を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、当該可変ドメインは、少なくとも
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、又はMF5818のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF5790、MF5803、MF5814、MF5816、MF5817、又はMF5818である。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF5790、MF5814、MF5816、及びMF5818である。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF5814、MF5818、又はMF5816である。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF5816である。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、MF5818である。
【0155】
重鎖可変領域MF3755又はそれらの1つ以上のCDRを有する1つ以上の可変ドメインを含む抗体は、EGFRリガンド応答性がん又は細胞の増殖を阻害するために使用される場合、より良い有効性を有することが示されている。二重特異性抗体又は多重特異性抗体の文脈において、重鎖可変領域MF3755又はその1つ以上のCDRを有する可変ドメインを含む抗体のアームは、重鎖可変領域MF5818又はその1つ以上のCDRを有する可変ドメインを含むアームと良好に組み合わさる。
【0156】
EGFR又はLGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
図3に示される配列に関して1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。ある特定の態様では、VH鎖は、
図3のVH鎖配列に関して、多くとも15個、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、及びある特定の態様では、1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせを有する、
図3のEGFR又はLGR5 VHのアミノ酸配列を有する。
【0157】
CDR配列は、図のCDR配列に関して1つ以上のアミノ酸残基置換を有し得る。かかる1つ以上の置換は、例えば、抗体の結合強度又は安定性を改善するためなどの最適化目的のため作製される。最適化は、例えば、結果として生じる抗体の安定性及び/又は結合親和性が好ましく試験され、かつ改善されたEGFR特異的CDR配列又はLGR5特異的CDR配列が好ましく選択された後に、変異誘発手順によって実行される。当業者は、本発明による少なくとも1つの改変されたCDR配列を含む抗体バリアントを生成することができる。例えば、保存的アミノ酸置換が適用され得る。保存的アミノ酸置換の例としては、1つの疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンを別の疎水性残基への置換、及び1つの極性残基の別の極性残基への置換、例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、又はグルタミンのアスパラギンへの置換が挙げられる。
【0158】
ある特定の態様では、本明細書に指定されるVH又はVLにおける言及される多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。ある特定の態様では、本明細書に指定されるVH又はVLにおけるアミノ酸挿入、欠失、及び置換は、CDR3領域に存在しない。ある特定の態様では、言及されるアミノ酸挿入、欠失、及び置換はまた、CDR1及びCDR2領域に存在しない。ある特定の態様では、言及されるアミノ酸挿入、欠失及び置換はまた、FR4領域に存在しない。
【0159】
ある特定の態様では、言及される多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。ある特定の態様では、挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせは、VH鎖のCDR3領域に存在せず、ある特定の態様では、VH鎖のCDR1、CDR2、又はCDR3領域に存在せず、ある特定の態様では、FR4領域に存在しない。
【0160】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5790のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5790のアミノ酸配列を含む。
【0161】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5803のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5803のアミノ酸配列を含む。
【0162】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5814のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5814のアミノ酸配列を含む。
【0163】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5816のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5816のアミノ酸配列を含む。
【0164】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5817のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5817のアミノ酸配列を含む。
【0165】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、ある特定の態様ではLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、
-
図3に示すVH鎖MF3755のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF3755のアミノ酸配列を含み、
LGR5に結合する可変ドメインのVH鎖は、
-
図3に示されるVH鎖MF5818のアミノ酸配列、又は
-当該VHに関して、多くとも15個(又はある特定の態様では1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はある特定の態様では1、2、3、4、若しくは5個)のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する、
図3に示されるVH鎖MF5818のアミノ酸配列を含む。
【0166】
EGFR又はLGR5結合を保持する開示されたアミノ酸配列の付加のバリアントは、例えば、再配列されたヒトIGKVl-39/IGKJl VL領域(De Kruif et al.Biotechnol Bioeng.2010(106)741-50)を含有するファージディスプレイライブラリ、及び以前に記載されているように(例えば、WO2017/069628)、本明細書に開示されるEGFR又はLGR5 VH領域のアミノ酸配列にアミノ酸置換を組み込んだVH領域の収集から得ることができる。EGFR又はLGR5に結合するFab領域をコードするファージを選択し、フローサイトメトリーによって分析し、抗原結合を保持するアミノ酸置換、挿入、欠失又は付加を有するバリアントを識別するように配列決定することができる。
【0167】
EGFR/LGR5抗体のVH/VL EGFR及びLGR5可変ドメインの軽鎖可変領域は、同じであっても異なっていてもよい。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH/VL EGFR可変ドメインのVL領域は、VH/VL LGR5可変ドメインのVL領域と同様である。ある特定の態様では、第1及び第2のVH/VL可変ドメインにおけるVL領域は、同一である。
【0168】
ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、共通の軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、VH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の共通の軽鎖可変領域は、生殖系列IgVκ1-39可変領域Vセグメントを含む。ある特定の態様では、VH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖VセグメントIgVκ1-39*01を含む。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39としても知られている。この遺伝子についての外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。好適なV領域についてのアミノ酸配列が、
図4に提供される。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと組み合わせることができる。ある特定の態様では、J領域は、jk1及びjk5であり、連結された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と示され、代替的な名称は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01(imgt.orgでのIMGTデータベースワールドワイドウェブによる命名)である。ある特定の態様では、VH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ1*05(
図4に記載)を含む。
【0169】
ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSYを含むLCDR1(
図4に記載)と、アミノ酸配列AASを含むLCDR2(
図4に記載)と、アミノ酸配列QQSYSTPを含むLCDR3(
図4に記載)と(すなわち、IMGTによるIGKV1-39のCDR)、を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSYを含むLCDR1(
図4に記載)と、アミノ酸配列AASSLQSを含むLCDR2(
図4に記載)と、アミノ酸配列QQSYSTPを含むLCDR3(
図4に記載)と、を含む。
【0170】
ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSYを含むLCDR1(
図4に記載)と、アミノ酸配列AASを含むLCDR2(
図4に記載)と、アミノ酸配列QQSYSTPPTを含むLCDR3(
図4に記載)と(すなわち、IMGTによるIGKV1-39のCDR)、を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSYを含むLCDR1(
図4に記載)と、アミノ酸配列AASSLQSを含むLCDR2(
図4に記載)と、アミノ酸配列QQSYSTPPTを含むLCDR3(
図4に記載)と、を含む。当該CDR配列は、IMGT番号付けシステムに従う。
【0171】
ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又両方は、
図4に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、ある特定の態様では少なくとも95%、ある特定の態様では少なくとも97%、ある特定の態様では少なくとも98%、ある特定の態様では少なくとも99%同一、又はある特定の態様では100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又両方は、
図4に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、ある特定の態様では少なくとも95%、ある特定の態様では少なくとも97%、ある特定の態様では少なくとも98%、ある特定の態様では少なくとも99%同一、又はある特定の態様では100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0172】
例えば、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の可変軽鎖は、
図4の配列に関して、0~10個、ある特定の態様では0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し得る。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、示されるアミノ酸配列に関して、0~9個、0~8個、0~7個、0~6個、0~5個、0~4個、ある特定の態様では0~3個、ある特定の態様では0~2個、ある特定の態様では0~1個、及びある特定の態様では0個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを含む。
【0173】
また、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの一方又は両方の軽鎖可変領域は、
図4に示される配列のアミノ酸配列を含み得る。ある特定の態様では、EGFR/LGR5抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの両方は、同一のVL領域を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの両方のVLは、
図4に記載されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体のVH可変ドメイン/VL可変ドメインの両方のVLは、
図4に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0174】
ある特定の態様では、本明細書に記載されるEGFR/LGR5抗体は、EGFRに結合する1つ、及び本明細書に記載されるLGR5に結合する別のドメインである、2つの可変ドメインを有する二重特異性抗体である。本明細書に開示される方法に使用するためのEGFR/LGR5二重特異性抗体は、いくつかのフォーマットで提供され得る。多くの異なる形式の二重特異性抗体が、当該技術分野で既知であり、Kontermann(Drug Discov Today,2015 Jul;20(7):838-47、MAbs,2012 Mar-Apr;4(2):182-97)により、及びSpiess et al.,(Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol.Immunol.(2015)http://dx.doi.org/10.1016/j.molimm.2015.01.003)においてレビューされており、これらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、2つのVH/VLの組み合わせを有する古典的な抗体ではない二重特異性抗体フォーマットは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む少なくとも可変ドメインを有する。この可変ドメインは、単鎖Fv断片、単一体、VH及び第2の結合活性を提供するFab断片に連結されてもよい。
【0175】
ある特定の態様では、本明細書に提供される方法において使用されるEGFR/LGR5二重特異性抗体は、概して、ヒトIgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のものである。ある特定の態様では、抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。全長IgG抗体は、それらの好ましい半減期のため、かつ免疫原性が低い理由で、好ましい。したがって、EGFR/LGR5二重特異性抗体は、ある特定の態様では、全長IgG分子である。ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体は、全長IgG1分子である。
【0176】
したがって、ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体は、結晶化可能な断片(Fc)を含む。ある特定の態様では、EGFR/LGR5二重特異性抗体のFcは、ヒト定常領域からなる。EGFR/LGR5二重特異性抗体の定常領域又はFcは、天然に存在するヒト抗体の定常領域と1つ以上、又は10個以下、又は5つ以下のアミノ酸の差異を含有し得る。例えば、二重特異性抗体の各Fabアームは、二重特異性抗体の形成を促進し、安定性及び/又は本明細書に記載される他の特徴を促進する修飾を含むFc領域を更に含み得る。
【0177】
抗体は、典型的には、その抗体をコードする核酸を発現する細胞によって産生される。したがって、ある特定の態様では、本明細書に開示される二重特異性EGFR/LGR5抗体は、二重特異性EGFR/LGR5抗体の重鎖及び軽鎖可変領域並びに定常領域をコードする1つ以上の核酸を含む細胞を提供することによって産生される。ある特定の態様では、細胞は、哺乳動物細胞、又は霊長類細胞などの動物細胞であり、ある特定の態様では、ヒト細胞である。好適な細胞は、EGFR/LGR5二重特異性抗体を含むことができ、好ましくは、それを産生することができる任意の細胞である。
【0178】
抗体産生に好適な細胞は、当該技術分野で既知であり、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞又はPER-C6細胞を含む。様々な機関及び企業が、例えば、臨床使用のための抗体の大規模な産生のための細胞株を開発している。かかる細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞又はPER.C6細胞である。特に、当該細胞は、ヒト細胞である。好ましくは、細胞は、アデノウイルスE1領域又はその機能的等価物によって形質転換される。かかる細胞株の好ましい例は、PER.C6細胞株又はその等価物である。特に、当該細胞は、CHO細胞又はそのバリアントである。好ましくは、バリアントは、抗体の発現のためにグルタミン合成酵素(GS)ベクター系を使用する。ある特定の態様では、細胞は、CHO細胞である。
【0179】
ある特定の態様では、細胞は、EGFR/LGR5二重特異性抗体を構成する異なる軽鎖及び重鎖を発現する。ある特定の態様では、細胞は、2つの異なる重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を発現する。ある特定の態様では、細胞は、異なる抗体種の数(異なる重鎖及び軽鎖の組み合わせ)を低減させるために、本明細書に記載の「共通軽鎖」を発現する。例えば、それぞれのVH領域は、再編成されたヒトIGKV1 39/IGKJ1(huVκ1 39)軽鎖と併せて、二重特異性IgGの産生のための当該技術分野で既知の方法(WO2013/157954、参照により本明細書に組み込まれる)を使用して発現ベクターにクローニングされ、以前に、2つ以上の重鎖と対合し、それによって、多様な特異性を有する抗体をもたらすことができ、これによって、二重特異性分子の産生が促進されることが示されている(De Kruif et al.J.Mol.Biol.2009(387)548 58;WO2009/157771)。
【0180】
共通の軽鎖及び等量の2つの重鎖を発現する抗体産生細胞は、典型的には、50%の二重特異性抗体及び25%の単一特異性抗体(すなわち、同一の重鎖の組み合わせを有する)の各々を産生する。それぞれの単一特異性抗体の産生よりも二重特異性抗体の産生を有利にするために、いくつかの方法が発表されている。このようなことは、典型的には、重鎖の定常領域を、それらがホモ二量体化よりもヘテロ二量体化(すなわち、他の重鎖/軽鎖の組み合わせの重鎖との二量体化)を有利にするように修飾することによって達成される。ある特定の態様では、本発明の二重特異性抗体は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む。様々な適合性ヘテロ二量体化ドメインが、当該技術分野で記載されている。ある特定の態様では、適合性ヘテロ二量体化ドメインは、適合性免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである。当該技術分野では、かかる重鎖のヘテロ二量体化を達成することができる様々な方法が記載されている。
【0181】
EGFR/LGR5二重特異性抗体を産生するための好ましい一方法が、US9,248,181及びUS9,358,286号に開示されている。具体的には、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366K(EU番号付け)(「KKバリアント」重鎖)並びに第2のドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368E(「DEバリアント」重鎖)、又はその逆である。前述のように、DEバリアント及びKKバリアントは、優先的に対合して、ヘテロ二量体(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)を形成する。DEバリアント重鎖(DEDEホモ二量体)又はKKバリアント重鎖(KKKKホモ二量体)のホモ二量体化は、同一の重鎖間のCH3-CH3界面における荷電残基間の強い反発に起因してほとんど生じない。
【0182】
したがって、ある特定の態様では、EGFRに結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のDEバリアントを含む。ある特定の態様では、LGR5に結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のKKバリアントを含む。
【0183】
候補のEGFR/LGR5 IgG二重特異性抗体は、任意の好適なアッセイを使用して結合することについて試験することができる。例えば、CHO細胞上の膜発現EGFR又はLGR5への結合は、フローサイトメトリーによって(WO2017/069628に以前に記載されているFACS手順によって)評価することができる。ある特定の態様では、CHO細胞上のLGR5への候補のEGFR/LGR5二重特異性抗体の結合は、当該技術分野で既知の標準的な手順に従って実行されるフローサイトメトリーによって示される。CHO細胞への結合は、EGFR及び/又はLGR5の発現カセットでトランスフェクトされていないCHO細胞と比較される。候補の二重特異性IgG1のEGFRへの結合は、EGFR発現構築物でトランスフェクトされたCHO細胞を使用して決定され、LGR5単一特異性抗体及びEGFR単一特異性抗体、並びに無関係なIgG1アイソタイプ対照mAbは、対照(例えば、LGR5、及び破傷風毒素(TT)などの別の抗原に結合する抗体)としてアッセイに含まれる。
【0184】
標的に対する候補のEGFR/LGR5二重特異性抗体のLGR5及びEGFR Fabの親和性は、BIAcore T100を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定され得る。簡単に述べると、抗ヒトIgGマウスモノクローナル抗体(Becton and Dickinson、カタログ番号555784)を、遊離アミン化学(NHS/EDC)を使用してCM5センサーチップの表面上に結合させる。次に、bsAbが、センサー表面上に捕捉される。続いて、組換え精製抗原ヒトEGFR( Sino Biological Inc、カタログ番号11896-H07H )及びヒトLGR5タンパク質を、ある濃度範囲でセンサー表面上を走らせて、オン速度及びオフ速度を測定する。各サイクルの後、センサー表面はHClのパルスによって再生され、bsAbは再び捕捉される。得られたセンサーグラムから、ヒトLGR5及びEGFRへの結合にためのオン速度及びオフ速度並びに親和性値が、US2016/0368988においてCD3について以前に記載されたBIAevaluationソフトウェアを使用して、決定される。
【0185】
本明細書に開示される抗体は、典型的には、ヒトIgGサブクラスのある特定の態様では、二重特異性全長抗体である。ある特定の態様では、当該抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。かかる抗体は、所望に応じて、当該技術分野で既知の技法によって増強することができ、ヒトへのインビボ投与時に好ましい半減期を有し、クローン細胞での共発現時にホモ二量体よりも優先的にヘテロ二量体を形成する修飾された重鎖を提供することができるCH3工学的技術が存在する、優れたADCC特性を有する。
【0186】
抗体のADCC活性は、抗体の定常領域を修飾することにより、抗体自体が低いADCC活性を有する場合に、改善され得る。抗体のADCC活性を改善する別の方法は、還元されたフコースをもたらすグリコシル化経路と酵素的に干渉することによるものである。ADCCを誘発する際に抗体又はエフェクター細胞の有効性を決定するためのいくつかのインビトロ方法が存在する。それらの中には、クロム-51[Cr51]リリースアッセイ、ユウロピウム[Eu]リリースアッセイ、及び硫黄-35[S35]リリースアッセイが含まれる。通常、ある特定の表面が曝露された抗原を発現する標識標的細胞株は、その抗原に特異的な抗体とともにインキュベートされる。洗浄後、Fc受容体CD16を発現するエフェクター細胞を、抗体標識標的細胞と共インキュベートする。続いて、標的細胞溶解を、シンチレーションカウンター又は分光光度法による細胞内標識のリリースによって測定する。
【0187】
本明細書で開示される二重特異性抗体は、ADCC増強型であり得る。ある特定の態様では、かかる二重特異性抗体は、アフコシル化されている。ある特定の態様では、二重特異性抗体は、正常なCHO細胞において産生される同じ抗体と比較した場合、Fc領域におけるN連結炭水化物構造のフコシル化の量の低減を含む。低フコースレベルは、NKエフェクター細胞上のCD16(FcγRIIIa)結合の増加と関連し、ADCC活性の増加をもたらす。ある特定の態様では、その直接的な抗腫瘍活性に加えて、本開示の二重特異性抗体は、オプソニン化並びに続くナチュラルキラー(NK)細胞媒介性ADCC活性及び補体依存性細胞毒性(CDC)活性に続いて、腫瘍細胞を除去することができる。
【0188】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体は、1つ以上の更なる標的に結合し得る1つ以上の追加の可変ドメインを更に含み得る。ある特定の態様では、更なる標的は、細胞外部分を含む膜タンパク質などのタンパク質である。本明細書で使用される膜タンパク質は、細胞の外膜にあるタンパク質などの細胞膜タンパク質であり、細胞を外界から分離する膜である。膜タンパク質は、細胞外部分を有する。膜タンパク質は、細胞の細胞膜内にある膜貫通領域を含有する場合に、少なくとも細胞上にある。
【0189】
2つ以上の可変ドメインを有する抗体は、当該技術分野で既知である。例えば、追加の可変ドメインを結合することが可能である。ある特定の態様では、3つ以上の可変ドメインを有する抗体は、PCT/NL2019/050199に記載される多価多量体抗体であり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
ある特定の態様では、抗体は、2つの可変ドメインを含む二重特異性抗体であり、一方の可変ドメインは、EGFRの細胞外部分に結合し、別方の可変ドメインは、LGR5の細胞外部分に結合する。ある特定の態様では、可変ドメインは、本明細書に記載の可変ドメインである。
【0191】
本明細書に記載される抗体の機能部分は、少なくとも、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン、及び本明細書に記載されるLGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。したがって、それは、本明細書に記載される抗体の抗原結合部分を含み、典型的には、抗体の可変ドメインを含有する。機能部分の可変ドメインは、単鎖Fv断片又はいわゆるシングルドメイン抗体断片であり得る。ある特定の態様では、抗体部分又は誘導体は、抗体又はその等価物の少なくとも2つの可変ドメインを有する。かかる可変ドメイン又はその等価物の非限定的な例は、F(ab)断片及び単鎖Fv断片である。二重特異性抗体の機能部分は、二重特異性抗体の抗原結合部分、又は結合部分の誘導体及び/若しくは類似体を含む。本明細書で上述されるように、抗体の結合部分は、可変ドメインに包含される。
【0192】
また、本明細書に開示される抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体(すなわち、治療剤)並びに薬学的に許容される担体も提供される。かかる医薬組成物は、がんの治療において、特に、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療のために有用である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、政府の規制機関によって承認されたか、又は米国薬局方若しくは動物、特にヒトでの使用のための別の一般に認められた薬局方に記載されたものを意味し、生理学的に適合する任意の及び全ての溶媒、塩、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。「担体」という用語は、化合物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。かかる薬学的担体は、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油、リシノール酸グリセロールポリエチレングリコールリなどを含む、水及び油などの滅菌液体であり得る。水又は生理食塩水及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液は、特に、注射可能な溶液のために担体として用いられてもよい。非経口投与用の液体組成物は、注射又は連続注入による投与のために製剤化され得る。注射又は注入による投与経路としては、膀胱内、腫瘍内、静脈内、腹腔内、筋肉内、くも膜下腔内、及び皮下が挙げられる。投与経路(例えば、静脈内、皮下、関節内など)に応じて、活性化合物をある材料でコーティングして、化合物を不活性化し得る酸の作用及び他の天然条件から化合物を保護してもよい。
【0193】
ヒト患者への投与に好適な医薬組成物は、典型的には、非経口投与のために、例えば、液体担体中に、又は静脈内投与のための溶液若しくは懸濁液への再構成に好適に製剤化される。組成物は、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態で製剤化され得る。また、使用直前に、経口又は非経口投与のいずれかのための液体調製物への変換が意図された固体調製物も含まれる。かかる液体形態としては、溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。
【0194】
開示される治療剤は、好適な投薬量、及び好適な経路(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、くも膜下腔内、又は皮下)に従って投与され得る。例えば、単一のボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割された用量が経時的に投与されてもよく、又は用量が治療状況の緊急性によって示されるように比例的に低減又は増加されてもよい。ある特定の態様では、対象に、本明細書に開示される抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体の単回用量が投与される。ある特定の態様では、治療剤は、治療の経過にわたって繰り返し投与される。例えば、ある特定の実施形態では、複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上)の用量の治療剤が、治療を必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療剤の投与は、毎週、隔週、又は毎月行われ得る。
【0195】
臨床医は、治療されている患者の状態によって妥当とみなされる好ましい用量を利用してもよい。用量は、疾患の病期などを含むいくつかの因子に依存し得る。かかる因子のうちの1つ以上の存在に基づいて投与されるべき特定の用量を決定することは、当業者の技能の範囲内である。一般に、治療は、化合物の最適用量よりも少ないより小さな用量で開始される。その後、この状況下で最適な効果に達するまで、投薬量は、少量ずつ増加される。便宜上、1日当たりの総投薬量は、必要に応じて、1日中に分割して投与されてもよい。間欠療法(例えば、3週間のうちの1週間又は4週間のうちの3週間)がまた、使用されてもよい。
【0196】
ある特定の態様では、治療剤は、0.1、0.3、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/kg体重の用量で投与される。あるいは、治療剤は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/kg体重の用量で投与される。
【0197】
ある特定の態様では、治療剤は、1500mgの均一な投薬量を使用して対象に提供される。均一な投薬量は、準備時間を低減し、潜在的な用量計算ミスを低減するため、体表面又は体重投与に対していくつかの利点を提供する。ある特定の態様では、治療剤は、少なくとも500mgの投薬量で提供される。ある特定の態様では、当該投薬量は、1100~2000mgである。ある特定の態様では、当該投薬量は、1100~1800mgである。当業者に理解されるように、投薬量は、経時的に投与され得る。例えば、投薬量は、IVによって、例えば、1~6時間の注入、好ましくは、2~4時間の注入で投与され得る。ある特定の態様では、治療剤は、2週間に1回投与される。特に、本明細書に開示される均一投薬量は、成人及び/又は少なくとも35kgの体重の対象における使用に好適である。ある特定の態様では、対象は、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんに罹患している。
【0198】
ある特定の態様では、前投薬レジメンが使用され得る。かかるレジメンは、注入関連反応の可能性又は重症度を低減させるのに有用であり得る。一般に、デクスクロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、又はクロルフェニラミンなどのデキサメタゾン及び/又は抗ヒスタミン剤などのステロイドは、抗体治療の前に(例えば、経口、静脈内)投与される。
【0199】
本明細書に記載の治療方法は、典型的には、患者のケアを監督する臨床医が、治療方法が有効である、すなわち、患者が治療に反応しているとみなす限り、継続される。治療方法が有効であることを示す非限定的なパラメータには、腫瘍細胞の減少、腫瘍細胞増殖の阻害、腫瘍細胞の排除、無増悪生存期間、好適な腫瘍マーカーによる適切な応答(該当する場合)のうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0200】
治療剤の投与頻度に関して、当業者であれば、適切な頻度を決定することができるであろう。例えば、臨床医は、治療剤を比較的少ない頻度で(例えば、2週間に1回)投与することを決定し、患者によって許容される用量間の期間を徐々に短縮することができる。特許請求の範囲に記載の方法による療法の経過に関連する例示的な期間の例としては、約1週間、2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月、約13か月、約14か月、約15か月、約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約24か月、約30か月、約3年、約4年、約5年、永続的(例えば、維持療法を継続する)が挙げられる。前述の持続時間は、治療の1つ以上のラウンド/サイクルに関連付けられてもよい。
【0201】
本明細書で提供される治療方法の有効性は、任意の好適な手段を使用して評価され得る。ある特定の態様では、治療の臨床的有効性は、客観的応答基準としてがん細胞数の低減を使用して分析される。本明細書に開示される方法に従って治療される患者、例えば、ヒトは、好ましくは、がんの少なくとも1つの兆候における改善を経験する。ある特定の態様では、以下、がん細胞数を低減させることができること、がんの再発を予防又は遅延させること、がんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度緩和することができることのうちの1つ以上が生じ得る。加えて、T細胞媒介性標的細胞溶解を決定するためのインビトロアッセイ。ある特定の態様では、腫瘍評価は、CTスキャン及び/又はMRIスキャンに基づいており、例えば、RECIST1.1ガイドライン(固形腫瘍における応答評価基準)(Eisenhauer et al.,2009 Eur J Cancer45:228-247)を参照されたい。かかる評価は、一般に、処置後4~8週間毎に行われる。
【0202】
ある特定の態様では、腫瘍細胞は、本明細書に記載の治療後にはもはや検出可能ではない。ある特定の態様では、対象は、部分寛解又は完全寛解にある。ある特定の態様では、対象は、全生存期間、生存期間中央値、及び/又は無増悪生存の増加を有する。
【0203】
治療剤(すなわち、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、LGR5の細胞外部分に結合する可変ドメインと、を含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体)はまた、治療されているがんに対するそれらの特定の有用性のために選択される他の周知の療法(例えば、化学療法又は放射線療法)と併せて使用され得る。
【0204】
化学療法剤の安全かつ効果的な投与のための方法は、当業者に既知である。加えて、それらの投与は、標準的な文献に記載されている。例えば、多くの化学療法剤の投与は、Physicians’ Desk Reference(PDR)、例えば、1996年版(Medical Economics Company,Montvale,N.J.07645-1742,USA)に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
化学療法剤及び/又は放射線療法の投与が、治療されている疾患、及びその疾患に対する化学療法剤及び/又は放射線療法の既知の効果に応じて、変化し得ることが、当業者には明らかであろう。また、当業者の知識に従って、治療プロトコル(例えば、投与量及び投与時間)は、患者に対する投与された治療剤の観察された効果を考慮して、及び投与された治療剤に対する疾患の観察された応答を考慮して変えられ得る。
【0206】
本明細書に開示される化合物及び組成物は、療法として、及び治療処置において有用であり、したがって、薬剤として有用であり、薬剤の調製方法で使用され得る。
【0207】
本明細書に記載されるGenbankエントリ、特許及び公開された特許出願、並びにウェブサイトを含む全ての文書及び参照文献は、各々、あたかも本明細書に全部又は一部が記載されたような同じ範囲で参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0208】
明確かつ簡潔な説明の目的のために、特徴は、本開示の同じ又は別個の部分の一部分として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴の全て又はいくつかの組み合わせを有する好ましい態様を含み得ることが理解されるであろう。
【0209】
ここで、本発明は、以下の実施例を参照して説明され、これらは例示に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、詳細に、その特定の態様を参照して説明されているが、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。
【0210】
条項のリスト
1.対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
2.対象におけるがんを治療するための薬剤の製造における、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体の使用であって、当該対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、使用。
3.EGFRを発現するがんを有する対象を治療する方法であって、当該対象が、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行しており、方法が、対象に、有効量の、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、方法。
4.がんが、頭頸部がん、好ましくは、頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)であり、当該がんが、好ましくは、2+又は3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
5.がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
6.がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
7.がんが、EGFR遺伝子増幅を含むことによって特徴付けられる、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
8.当該EGFR遺伝子増幅が、固体組織試料に対する次世代配列決定によって決定される8以上のEGFRコピー数、循環腫瘍DNA(ctDNA)に対する次世代配列決定によって決定される少なくとも2.14若しくは少なくとも2.5のEGFRスコア、又はFISHに基づく2以上のEGFR/CEP7比によって特徴付けられる、条項7の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
9.対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
10.対象における胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、当該がんが、200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
11.対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体であって、第1の可変ドメインが、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列、又は
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列と多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、あるいは
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖の配列、又は
MF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖に関して、多くとも15個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、好ましくは1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖のアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域であり、当該がんが、頭頸部がん、好ましくは、頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)であり、がんが、好ましくは、2+若しくは3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現するか、又は当該がんが、3+のIHCスコア、若しくは好ましくは200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、若しくは胃食道接合部がんである、抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
12.対象が、抗EGFR剤での事前の治療を受けていない、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
13.対象が、EGFRを標的とする抗体での事前の治療を受けていない、条項1~11のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
14.対象が、セツキシマブでの事前の治療を受けていない、条項1~11のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
15.当該がんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行した、条項9~14のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
16.当該がんが、200超~300以下のHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
17.当該EGFRについてのHスコアが、IHCを使用して決定される、条項16のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体。
18.対象が、哺乳動物、好ましくはヒトである、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
19.当該治療が、対象に、有効量の当該抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
20.当該治療が、対象に、1500mgの均一用量の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
29.抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、対象に、静脈内に提供される、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
22.抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、毎週、隔週、又は毎月、好ましくは隔週で提供され、より好ましくは、対象に、少なくとも3回以上の隔週投薬量の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が提供される、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
22.抗体が、ADCC増強型である、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
24.抗体が、アフコシル化されている、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
25.がんが、腺がん又は扁平上皮がん、特に、胃腺がん、食道腺がん、又は胃食道接合部腺がん、特に、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)である、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
26.当該がん及び/又は当該対象が、SMAD4の野生型である、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
27.当該がん又は対象が、TP53における変異、好ましくは、活性化TP53変異を有する、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
28.当該がん又は対象が、Her2陰性である、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
29.抗体が、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体である、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
30.抗体が、EGFRに結合しない第2の可変ドメインを含む、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
31.抗体が、LGR5に結合する第2の可変ドメインを含む、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
32.抗体が、第2の可変ドメインを含まない一価抗体であるか、又は抗体が、当該第1のEGFR結合可変ドメインを唯一の可変ドメインとして含む、条項1~28のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
33.当該免疫チェックポイント阻害剤が、PD-L1又はPD-1阻害剤を含む、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
34.治療が、EGFR状態、SMAD4状態、及び/又はHer2状態について対象を診断するステップを含むか、又はそれの後であり、Her2状態についての診断が、好ましくはISH又はIHCによるものである、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
35.EGFRに結合する第1の可変ドメインが、
図2に示されるヒトEGFR配列のアミノ酸残基420~480内に位置するエピトープに結合する、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法)。
36.第1の可変ドメインのEGFRへの結合が、EGFRにおける以下のアミノ酸残基置換I462A、G465A、K489A、I491A、N493A、及びC499Aのうちの1つ以上によって、当該置換を含まないEGFRタンパク質と比較して低減される、先行条項のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
37.LGR5に結合する可変ドメインが、
図1に示されるヒトLGR5配列のアミノ酸残基21~118内に位置するエピトープに結合する、条項29~34のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
38.第1の可変ドメインが、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列、又は
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR3配列と多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR3配列、
-少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、あるいは
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖の配列、又は
MF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖に関して、多くとも15個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、好ましくは1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVH鎖のアミノ酸配列、を含む重鎖可変領域である、条項1~10又は12~37のうちのいずれか一項の抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体、又は使用、又は方法。
【実施例】
【0211】
本明細書で使用される場合、Xが独立して数字0~9である「MFXXXX」は、可変ドメインを含むFabを指し、VHは、
図3に示される4桁によって識別されるアミノ酸配列を有する。別段指示されない限り、可変ドメインの軽鎖可変領域は、典型的には、
図4bの配列を有する。実施例における軽鎖は、
図4aに示される配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁で識別されるVHのアミノ酸配列を指す。MFは、更に、軽鎖の定常領域と、通常、軽鎖の定常領域と相互作用する重鎖の定常領域と、を含む。重鎖のVH/可変領域は異なり、典型的には、CH3領域も異なり、重鎖の一方はそのCH3ドメインのKK変異を有し、他方はそのCH3ドメインの相補的DE変異を有する(参考PCT/NL2013/050294(WO2013/157954として公開)、並びに
図5d及び5eを参照されたい)。実施例における二重特異性抗体は、
図5に示されるKK/DE CH3ヘテロ二量体化ドメイン、CH2ドメイン、及びCH1ドメインを有するFc尾部、
図4aに示される共通の軽鎖、及びMF番号によって指定されるVHを有する。例えば、MF3755×MF5816によって示される二重特異性抗体は、上記の一般的な配列、MF3755の配列を有するVHを有する可変ドメイン、及びMF5816の配列を有するVHを有する可変ドメインを有する。
【0212】
様々な重鎖可変領域(VH)のアミノ酸及び核酸配列を、
図3に示す。重鎖可変領域MF3755及びMF5816並びに共通の軽鎖を含み、
図3に示される他のLGR5とEGFRとの組み合わせのうち、アフコシル化からのADCCの強化のための修飾を含む二重特異性抗体EGFR/LGR5、MF3755×MF5816が、WO2017/069628において有効であることが示されている。
【0213】
二重特異性抗体の生成
二重特異性抗体は、効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成を確実にする独自のCH3工学技術を使用して、異なるVHドメインを有するIgGをコードする2つのプラスミドの一過性コトランスフェクションによって生成された。共通の軽鎖はまた、同じプラスミド上又は別のプラスミド上のいずれかで同じ細胞内でコトランスフェクションされる。我々の出願(例えば、WO2013/157954及びWO2013/157953、参照により本明細書に組み込まれる)では、単一細胞から二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されており、それにより、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される。これらの方法も、本発明で有利に用いることができる。具体的には、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメインにおける351位及び366位のアミノ酸置換、例えば、L351K及びT366K(EU番号付けによる番号付け)(「KKバリアント」重鎖)、並びに第2のCH3ドメインにおける351位及び368位のアミノ酸置換、例えば、L351D及びL368E(「DEバリアント」重鎖)、又はその逆である(
図5d及び5eを参照されたい)。負電荷を帯びたDEバリアント重鎖及び正電荷を帯びたKKバリアント重鎖が優先的に対合して、ヘテロ二量体(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)を形成することが、前述の出願で実証された。DEバリアント重鎖(DE-DEホモ二量体)又はKKバリアント重鎖(KK-KKホモ二量体)のホモ二量体化は、同一重鎖間のCH3-CH3界面における荷電残基間の強い反発に起因してほとんど生じない。
【0214】
上述のLGR5に結合する可変ドメインのVH遺伝子を、正に荷電したCH3ドメインをコードするベクターにクローニングした。WO2015/130172(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものなどのEGFRに結合する可変ドメインのVH遺伝子を、負に荷電したCH3ドメインをコードするベクターにクローニングした。懸濁成長に適応した293Fフリースタイル細胞を、3.0×10e6細胞/mlの密度になるまで、シェーカープラトー上のT125フラスコ内で培養した。細胞を、0.3~0.5×10e6生細胞/mlの密度で、24ディープウェルプレートの各ウェル内に播種した。細胞を、異なる抗体をコードする2つのプラスミドの混合物で一過的にトランスフェクトし、独自のベクター系にクローニングした。トランスフェクションから7日後に、細胞上清を回収し、0.22μMフィルター(Sartorius)を通して濾過した。滅菌した上清を、抗体を精製するまで、4℃で保管した。
【0215】
IgG精製及び定量化
精製を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、フィルタープレートでの滅菌条件下で行った。先ず、培地のpHをpH8.0に調整し、続いて、IgG含有上清を、プロテインAセファロースCL-4Bビーズ(50%v/v)(Pierce)とともに、振盪プラットフォーム上600rpmで、25℃で2時間インキュベートした。次に、ビーズを、濾過によって回収した。ビーズを、PBS pH7.4で2回洗浄した。次いで、結合したIgGを、0.1Mのクエン酸緩衝液で、pH3.0で溶出し、溶出液を、Tris pH8.0を使用して直ちに中和した。緩衝液交換を、マルチスクリーンUltracel 10マルチプレート(Millipore)を使用した遠心分離によって実行した。試料を、PBS pH7.4中で最終的に回収した。IgG濃度を、Octetを使用して測定した。タンパク質試料を、4℃で保管した。
【0216】
精製したIgGの量を決定するために、抗体の濃度を、標準として総ヒトIgG(Sigma Aldrich、カタログ番号I4506)を使用して、プロテインAバイオセンサー(Forte-Bio、サプライヤーの推奨に従って)を使用したOctet分析の手段によって決定した。
【0217】
以下の二重特異性抗体は、本実施例における使用及び本発明の方法における使用に好適である。MF3370×MF5790、MF3370×5803、MF3370×5805、MF3370×5808、MF3370×5809、MF3370×5814、MF3370×5816、MF3370×5817、MF3370×5818、MF3755×MF5790、MF3755×5803、MF3755×5805、MF3755×5808、MF3755×5809、MF3755×5814、MF3755×5816、MF3755×5817、MF3755×5818、MF4280×MF5790、MF4280×5803、MF4280×5805、MF4280×5808、MF4280×5809、MF4280×5814、MF4280×5816、MF4280×5817、MF4280×5818、MF4289×MF5790、MF4289×5803、MF4289×5805、MF4289×5808、MF4289×5809、MF4289×5814、MF4289×5816、MF4289×5817、及びMF4289×5818。各二重特異性抗体は、それぞれEGFR及びLGR5に結合することができるMF番号によって指定される2つのVHを含み、更に、それぞれ配列番号136(
図5d)及び配列番号138(
図5e)によって示されるKK/DE CH3ヘテロ二量体化ドメイン、配列番号134(
図5c)によって示されるCH2ドメイン、並びに配列番号131(
図5a)によって示されるCH1ドメイン、配列番号121(
図4)に示される共通の軽鎖を有するFcテイルを含む。
【0218】
実施例1:EAC、GAC、GEJAC、又は頭頸部がんを有する患者に対する抗EGFR×抗LGR5抗体の用量拡大、及び有効性:
進行固形腫瘍における第1相用量漸増試験
試験デザイン
初回用量漸増部分を用いて第1相非盲検多施設試験を実行して、開始用量を5mgの均一用量としてmCRC患者における固形腫瘍についての抗EGFR×抗LGR5二重特異性抗体の推奨第2相用量(RP2D)を決定した。RP2Dが確立されると、抗体は、EAC、GAC、GEJAC、又は頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)を含む頭頸部がんと診断された患者を含む、試験の拡大部分において更に評価される。抗体の安全性、PK、免疫原性及び予備的抗腫瘍活性が、全ての患者において特徴付けられ、EGFR及びLGR5状態を含むバイオマーカー分析が実行される。
【0219】
選択基準
患者は、試験に参加するために以下の要件の全てを満たさなければならない:
1.いずれかの試験手順の開始前に、インフォームドコンセントに署名した。
2.インフォームドコンセントの署名時に、年齢は18歳以上である。
3.根治目的の標準療法に適合しない転移性又は局所進行性疾患の証拠を有する組織学的又は細胞学的に確認された固形腫瘍:
拡大コホート:進行性転移性EAC、GAC、GEJAC頭頸部扁平上皮がんを有する患者は、少なくとも2種の標準承認療法(該当する場合)で以前に治療されたことの有無にかかわらず、探索される。
4.転移性又は原発部位からの新鮮ベースライン腫瘍試料(FFPEであり、十分な材料が凍結もされている場合)。
5.生検に適している。
6.放射線学的方法によるRECISTバージョン1.1で定義される測定可能な疾患。
7.0又は1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス。
8.研究者によると、平均余命は≧12週間である。
9.心エコー図(ECHO)又は複数のゲート収集スキャン(MUGA)による左心室駆出分画率(LVEF)≧50%。
10.適切な臓器機能:
●絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L
●ヘモグロビン≧9g/dL
●血小板≧100x109/L
●正常範囲内の補正総血清カルシウム
●正常範囲内の(又はサプリメントで補正された)血清マグネシウム
●アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦2.5×正常上限(ULN)、総ビリルビン≦1.5×ULN(総ビリルビン>3.0×ULN又は直接ビリルビン>1.5×ULNの場合に除外される既知のジルベール症候群による場合を除いて)、肝臓病変の場合、総ビリルビン≦3.0×ULN若しくは直接ビリルビン≦1.5×ULNが許容される場合、既知のジルベール症候群による場合を除いて、又は総ビリルビン<3mg/dLが許容される場合、肝細胞がん[Child-PughクラスA]による場合を除いて、ALT/AST≦5×ULN及び総ビリルビン≦2×ULNが許容される
●65歳超の年齢の患者のためのCockroft及びGault式又はMDRD式に従って計算された血清クレアチニン≦1.5×ULN又はクレアチニンクリアランス≧60mL/分
●血清アルブミン>3.3g/dL
【0220】
除外基準
以下の基準のうちのいずれかが存在する場合には、患者は試験への参加を除外される:
1.試験登録から14日以内に症状を制御するように、未治療されていないか若しくは症候性である、又は放射線、手術、若しくは持続的ステロイド療法を必要とする中枢神経系転移。
2.既知の軟髄膜関与。
3.試験登録前4週間以内での任意の治験薬による別の臨床試験又は治療への参加。
4.試験治療投与の最初の投与の4週間又は5半減期のいずれか長い方以内の任意の全身抗がん療法。重大な遅延毒性(例えば、ミトマイシンC、ニトロソウレア)を有する細胞毒性剤、又は抗がん免疫療法の場合、6週間のウォッシュアウト期間が必要である。
5.免疫抑制薬(例:メトトレキサート、シクロホスファミド)の要件
6.試験治療の最初の投与から3週間以内の大手術又は放射線療法。骨髄の≧25%に以前の放射線療法を受けた患者は、それを受けたときにかかわらず、適格ではない。
7.既存の抗悪性腫瘍療法に関連する持続性グレード>1の臨床的に有意な毒性(脱毛症を除く);安定した感覚性ニューロパチー≦グレード2のNCI-CTCAE v4.03が許容される。
8.これらの薬剤の恒久的停止を正当化した、ヒトタンパク質又は賦形剤のいずれかに起因する過敏症反応又はいずれかの毒性の既往歴。
9.適切な治療又は不安定な狭心症を伴う制御されていない高血圧(収縮期>150mmHg及び/又は拡張期>100mmHg)。
10.クラスII-IVニューヨーク心臓協会(NYHA)基準のうっ血性心不全の病歴、又は治療を必要とする重度の心不整脈(心房細動、発作性上室性頻拍を除く)。
11.試験登録から6か月以内の心筋梗塞の既往歴。
12.子宮頸部上皮内腫瘍若しくは非黒色腫皮膚がん、又は少なくとも3年間は疾患の証拠がなく、再発のリスクが低いとみなされる治癒的に治療されたがんを除く、以前の悪性腫瘍の既往歴。
13.いずれかの起源の残りの部分での現在の呼吸困難、又は持続的な酸素療法を必要とする他の疾患。
14.間質性肺疾患(例えば、肺炎又は肺線維症)の既往歴又はベースライン胸部CTスキャンでのILDの証拠を有する患者。
15.制御されていない活動性感染症、臨床的に重要な肺の、代謝性の若しくは精神の疾患を含むがそれらに限定されない現在の重篤な疾病又は精神障害。
16.治療を必要とする活動性HIV、HBV、又はHCV感染。
17.Child-PughクラスB又はCの現在の肝硬変状態を有する患者、既知の線維性層板状HCC、肉腫様HCC、又は混合胆管がん及びHCC
18.妊娠中又は授乳中の女性、妊娠可能性のある患者は、試験登録前、試験参加期間中、及び抗体の最後の投与後6か月間、効率が高い避妊方法を使用しなければならない。
【0221】
用量制限毒性(DLT)
第1のサイクル(28日)中に発生し、治験責任医師によって抗体治療に関連するとみなされた以下の臨床毒性及び/又は臨床検査異常のうちのいずれかは、DLTとみなされる:
●血液学的毒性:
-7日間以上のグレード4の好中球減少症(好中球絶対数[ANC]<0.5×109個/L)
-グレード3~4の発熱性好中球減少症
-グレード4の血小板減少症
-出血エピソードに伴うグレード3の血小板減少症
-その他のグレード4の血液学的毒性
●以下を除くグレード3~4の非血液学的AE及び臨床検査毒性:
-グレード3~4の点滴関連反応
-最適な治療で2週間以内にグレード2以下に回復するグレード3の皮膚毒性
-最適な治療で3日以内にグレード1以下又はベースラインまで回復するグレード3の下痢、吐き気、及び/又は嘔吐
-48時間以内に最適な治療で消失するグレード3の電解質異常
-48時間以下のグレード3~4の肝臓異常
●Hyの法則の定義を満たす任意の肝機能異常。
●次の2回の投与を防ぐ、15日以上続く任意の薬物関連の毒性。
【0222】
用量拡大
拡大部では、二重特異性抗体は、EAC、GAC、GEJAC、又は頭頸部がん、特にSCCHNを有する患者にRP2Dで投与される。RP2Dが定義されると、追加の患者をこの用量及びスケジュールで治療して、抗体の安全性、忍容性、PK、及び免疫原性を更に特徴付け、かつ抗腫瘍活性及びバイオマーカー評価の予備的評価を実行する。
【0223】
EAC、GAC、GEJAC、又は頭頸部がん、特にSCCHNを有する患者における抗体治療は、例えば、予備的な抗腫瘍活性の兆候を条件とする、最大40人の患者までの拡大の可能性がある各適応症について10~20人の患者が探索される。RP2Dの安全性は、安全性モニタリング委員会によって試験の拡大部分中に継続的に評価される。DLTの発生率が任意のコホートについて所定の閾値33%を超える場合、このコホートについての登録は一時停止され、安全性、PK、及びバイオマーカーの完全なレビューが、そのコホートで発生を継続することが安全であるかどうかを判断するために、SMCによって実行される。その時点で、薬物の全体的な安全性も尋問される。
【0224】
治験療法及びレジメン
抗EGFR×抗LGR5二重特異性抗体は、IV注入のための透明な液体溶液として製剤化される。IV注入は、5mgの開始用量(均一用量)、及び1500mgの推奨される第2相用量(均一用量)で、標準的な注入手順を使用して、2週間毎に実施される。RP2Dに到達した後、用量エスカレーションを停止した。注入は、サイクル1の間、最低4時間にわたって投与される必要がある。サイクル1後の続く注入は、治験責任医師の裁量により、及びIRRの不在下で、2時間に短縮され得る。サイクルは、4週間とみなされる。
【0225】
前投薬
サイクル1の間、全ての注入は、以下の前投薬レジメンを用いて、少なくとも4時間にわたって投与される:注入開始の24時間前に、8mgのデキサメタゾンPOを注入開始の1時間前に投与し、各患者にデキサメタゾン20mgIV、デクスクロルフェニラミン5mgIV又はジフェンヒドラミン50mgPO又はクロルフェニラミン10mgIV、ラニチジン50mgIV又は150mgPO及びパラセタモール1gIV若しくは650mgPOを投与する。
【0226】
患者は全てのサイクル1注入をIRRなしで耐え、治験責任医師がそれを適切であるとみなす場合、患者はデキサメタゾンの前投薬なしで更なる抗体注入を持続して受けることができ、注入の持続時間を2時間に短縮することができる。かかる場合、IRRの発生率又は重症度を回避又は低減するのに適切であるとみなされる場合、注入持続期間を最大約4時間まで延長することができる。最初の抗体注入(1日目のサイクル1)の場合、各患者は、注入の開始から6時間、2回目の注入の開始から4時間観察される。その後、患者は、全ての後続の投与期間(最低2時間)にわたって観察される。
【0227】
治療期間
試験治療は、進行性疾患(RECIST1.1による)、許容できない毒性、同意の撤回、患者の非コンプライアンス、治験責任医師の決定(例えば、臨床的悪化)、又は連続した6週間超の抗体中断が確認されるまで、投与される。患者は、最後の抗体注入後、及び全ての関連毒性の回復又は安定化までの少なくとも30日間の安全性、並びに12か月間の疾患の進行及び生存状態について追跡される。
【0228】
EGFR増幅又は高EGFRタンパク質発現のための胃患者の事前スクリーニング
胃/胃食道接合部腺がんを有する患者の場合、臨床試験では、DNA事前スクリーニングによるEGFR増幅又は高EGFR発現の文書化が必要である。事前スクリーニングに適格となるには、患者は、他の実行可能な標的が存在しない場合に、胃がんの組織学的診断を受ける必要がある。事前スクリーニング試験は、EGFR増幅及び腫瘍遺伝子変異又はEGFR IHC(例えば、EGFR PharmDxキット又は同等の検証されたIVD)について分子スクリーニングを実行する資格を有する臨床検査室改善修正(CLIA)認定検査室において現地で実行される。EGFR増幅は、FISH試験、ctDNA分析、又は組織NGSを使用して試験され得る。適切な現地検査の選択肢が利用できない場合は、試料を適切な資格を有する承認された中央検査室に送ることができる。
【0229】
ctDNA分析の場合、Guardantから入手可能な血液収集キットに提供されているチューブを使用して、10mLの2つのチューブの血液が収集される。Guardant組織NGS分析の場合、FFPEスライド又は組織ブロックを、Guardantから入手可能な収集キットを使用して提出することができる。適格と定義されるEGFR増幅又はEGFRタンパク質発現の閾値は、FISHスコアEGFR/CEP7比率≧2.0、又はNGS EGFRコピー≧8、又はctDNA>2.14、又はEGFR IHC Hスコア≧200である(Maron SB,et al.,2018.Targeted Therapies for Targeted Populations: Anti-EGFR Treatment for EGFR-Amplified Gastroesophageal Adenocarcinoma.Cancer Discov 8:696-713.、Kato et al.2019.Revisiting Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)Amplification as a Target for Anti-EGFR Therapy: Analysis of Cell-Free Circulating Tumor DNA in Patients With Advanced Malignancies.JCO Precis Oncol 3: PO.18.00180)。次いで、EGFR増幅又はEGFR IHC Hスコアが200以上の患者は、主研究に進んで参加することができる場合、主研究ICFに署名する資格がある。少なくとも10人のEGFR IHC高患者が登録される。
【0230】
現地の認定検査室でのctDNA試験によるEGFR増幅が文書化された患者は、追加の事前スクリーニングを必要とせずに、主研究ICFに署名する資格がある
【0231】
有効性評価
腫瘍評価は、治療開始後8週間毎に、RECIST1.1(Eisenhauer et al.,2009 Eur J Cancer 45:228-247)による造影剤を用いたCT/MRIに基づく。客観的な奏効は、最初の観察から少なくとも4週間後に確認される必要がある。骨スキャンは、ベースライン時に骨転移を有するか、又は研究上の病変の疑いがある患者に対して臨床的に指示されるように実行される。がん胚抗原(CEA)を含む循環血液腫瘍マーカーは、スクリーニング時及び各サイクルの1日目に評価される。
【0232】
実施例2
喉頭に位置する頭頸部の扁平上皮がんを有する67歳の男性患者を、実施例1の臨床試験に登録した。患者は、以前に、白金系化学療法(カルボプラチン)、並びにパクリタキセル及び重要なことに免疫チェックポイント阻害剤としてデュルバルマブで治療されていた。
【0233】
観測された応答には、MF3755×MF5816によって示される第1及び第2の可変ドメインを有することによって特徴付けられる二重特異性抗体を受けた後の-41%のPRcが含まれた。患者は、1500mgの均一用量を使用して、6q2wサイクル超の当該抗体を与えられ、その後、臨床応答が評価された。
【0234】
患者は、2+のEGFR IHC腫瘍膜染色スコアを示した。
【0235】
実施例3
舌に位置する頭頸部の扁平上皮がんを有する59歳の女性患者を、実施例1の臨床試験に登録した。患者は、以前に、白金系化学療法(カルボプラチン)、並びに5-FU及び重要なことに免疫チェックポイント阻害剤としてペムブロリズマブで治療されていた。
【0236】
観測された応答には、MF3755×MF5816によって示される第1及び第2の可変ドメインを有することによって特徴付けられる二重特異性抗体を受けた後の、腫瘍状態の第2の評価での完全応答(CR)を有する-88%の部分応答(PR)が含まれた。患者は、1500mgの均一用量を使用して、4q2wサイクル超の当該抗体を与えられ、その後、臨床応答が評価された。
【0237】
患者は、3+のEGFR IHC腫瘍膜染色スコアを示した。
【0238】
実施例4
中咽頭の頭頸部の扁平上皮がんを有する67歳の男性患者を、実施例1の臨床試験に登録した。患者は、以前に、白金系化学療法(カルボプラチン)及び重要なことに免疫チェックポイント阻害剤としてペムブロリズマブで治療されていた。
【0239】
観測された応答には、MF3755×MF5816によって示される第1及び第2の可変ドメインを有することによって特徴付けられる二重特異性抗体を受けた後の-40%のPRcが含まれた。患者は、1500mgの均一用量を使用して、8q2wサイクルの当該抗体を与えられ、その後、臨床応答が評価された。
【0240】
患者は、3+のEGFR IHC腫瘍膜染色スコアを示した。
【0241】
EGFR Hスコアリングを、実施例6に記載のとおりに実行した。
【0242】
実施例5
胃食道接合部がんを有する80歳の男性患者を、実施例1の臨床試験に登録した。患者は、オキサリプラチン及びイリノテカンに基づく化学療法で以前に治療されていた。
【0243】
観測された応答には、MF3755×MF5816によって示される第1及び第2の可変ドメインを有することによって特徴付けられる二重特異性抗体を受けた後の安定した疾患(SD)が含まれた。患者は、1500mgの均一用量を使用して、4q2wサイクルの当該抗体を与えられ、その後、臨床応答が評価された。
【0244】
患者は、3+のEGFR IHCスコア、及び300のEGFR Hスコアを示した。遺伝子プロファイリングは、患者がSMAD4の野生型であったことを示した。
【0245】
EGFR Hスコアリングを、実施例8に記載のとおりに実行した。
【0246】
実施例6
胃がんを有する62歳の男性患者を、実施例1の臨床試験に登録した。患者は、シスプラチン/カペシタビンによる化学療法で以前に治療されていた。
【0247】
観測された応答には、MF3755×MF5816によって示される第1及び第2の可変ドメインを有することによって特徴付けられる二重特異性抗体を受けた後の確認された部分応答(PRc)が含まれた。患者は、1500mgの均一用量を使用して、7q2wサイクルの当該抗体を与えられ、その後、臨床応答が評価された。
【0248】
患者は、3+のEGFR IHCスコア、及び300のEGFR Hスコアを示した。遺伝子プロファイリングは、患者がSMAD4の野生型であったことを示した。
【0249】
EGFR Hスコアリングを、実施例8に記載のとおりに実行した。
【0250】
実施例7
再開された第2相用量での安全性プロファイルは、RP2Dで治療された固形腫瘍を有する29人の患者に基づいた。最も頻繁な有害事象は、注入関連反応(IRR)であり、72%は、任意のグレードであり、7%は、グレード3以上であった。発症までの時間:全ての患者について最初の注入。IRRは、予防/長期注入で管理可能であった。軽度から中等度の皮膚毒性が観察された(3%の重度の事象を伴う)。
【0251】
注入関連反応は、注入後24時間の間にIRRとして治験責任医師によって考慮される全てのAEを含む複合用語である。
【0252】
実施例8: IHCを介したEGFRスコアリング
EGFR pharmDx(商標)アッセイは、組織学的評価のために規定どおりに固定された正常及び腫瘍組織における上皮成長因子受容体(EGFR)発現を特定するための定性的免疫組織化学(IHC)キットシステムである。EGFR pharmDxは、EGFR発現細胞におけるEGFR(HER1)タンパク質を特異的に検出する。
【0253】
EGFR pharmDx(商標)アッセイは、EGFR抗体、クローン2-18C9(2-18C9)を使用して、EGFRタンパク質を検出する。クローン2-18C9は、EGFR、HER2、HER3、及びHER4を発現する細胞株に対する反応性について試験されている。SKBR3及びA431細胞溶解物のウェスタンブロットにおいて、2-18C9は、EGFRの既知の分子量と一致する170kDバンドを認識した。クローン2-18C9はまた、EGFRvIIIがトランスフェクトされた細胞株の免疫組織化学、フローサイトメトリー、及びウェスタンブロッティングにおいて、EGFRvIII(145kD)形態の受容体を認識することが見出されている。ウェスタンブロッティング実験では、2-18C9は、HER2陽性CAMA-1細胞溶解物、HER3で形質転換されたE.coli BL-21タンパク質抽出物、及びCHO-HER4がトランスフェクトされた細胞溶解物と非反応性であった。更に、myc(ベクタータグ)を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)トランスフェクタントを、単独で、又はHERファミリーのうちの1つと共発現して、ホルマリン固定及びパラフィン包埋されたチャンバースライド中で増殖させ、抗myc及び2-18C9で染色した。myc抗体は、5つのCHOトランスフェクタント全てを染色したが、2-18C9は、HER1でトランスフェクトされたCHO細胞のみを染色した。
【0254】
EGFRスコアリングは、製造業者の指示及び推奨に従って、Dako EGFR pharmDx(商標)ユーザプロトコルを使用して実行される。agilent.com/cs/library/usermanuals/public/08052_egfr_pharmdx_interpretation_manual.pdfのワールドワイドウェブを参照されたい。
【0255】
標本調製
IHC染色のための組織を保存するために、生検標本を処理した。全ての標本について、組織処理の標準的な方法を使用する必要がある。以下の固定剤に保存された標本は、EGFR pharmDxで試験するのに好適である:10%(v/v)中性緩衝ホルマリン、10%(v/v)非緩衝ホルマリン、25%(v/v)非緩衝ホルマリン、AFA(酢酸ホルマリンアルコール)、Richard-Allen ScientificのPen-fix及びBouin’s固定剤。
【0256】
パラフィン包埋切片
規定どおりに処理され、パラフィン包埋された組織は、使用に好適である。生検からの標本は、3又は4mmの厚さにブロック化され、固定剤に適した期間固定する必要がある。次いで、組織を脱水し、一連のアルコール及びキシレンでクリアにし、続いて、溶融パラフィンによって浸潤した。パラフィン温度は、60℃を超えてはならない。涼しい場所(15~25℃)で保管する場合、EGFRタンパク質を発現する適切に固定及び埋め込まれた組織ブロックは、切片化及びスライド取り付けの前に無期限に保持される。
【0257】
組織標本を、3~5μmの切片に切断する必要がある。切片化後、組織をスライドに取り付け、乾燥ラックに配置する必要がある。使用には以下のスライドを勧めする。Fisher’s SuperFrost Plus、Dako’s Silanized(コードS3003)、荷電又はポリL-リジンコーティングされたスライド。スライドラックを吸収性タオルの上で叩いて、パラフィンの下及びガラス上に閉じ込められた水分を除去し、室温で1時間乾燥させる必要がある。次いで、スライドのラックを56~60℃のインキュベーター内に1時間置く必要がある。インキュベーターから取り出した後、スライド上に残っている余分な水は、スライドをタオル上で叩き、インキュベーター内で更に1時間乾燥させることによって除去する必要がある。インキュベーターから取り出した後、スライドは、冷却されパラフィンが硬化するまで室温で保持される必要がある。抗原性を維持するために、スライド(Fisher’s SuperFrost Plus、ポリ-L-リジン、帯電、又はDako’s Silanizedスライド(コードS3003))に取り付けられた組織切片は、室温(20~25℃)で保持した場合、切片化後2か月以内に染色する必要がある。
【0258】
EGFRの評価及び腫瘍の存在の検証に必要なスライドを同時に準備する必要がある。
【0259】
少なくとも5つのスライド、腫瘍存在のための1つのスライド、EGFRタンパク質評価のための2つのスライド(一次抗体のための1つのスライド、及び陰性対照試薬のための1つのスライド)、及びバックアップのための2つのスライドが推奨される。
【0260】
試薬調製
以下の試薬を、染色する前に調製する:
【0261】
洗浄緩衝液:洗浄ステップのために、蒸留水又は脱イオン水(試薬品質の水)を使用して、洗浄緩衝液を10倍、1:10希釈することによって、十分な量の洗浄緩衝液を調製する。外観が曇っている場合は、緩衝液を廃棄する。
【0262】
基質-色素原溶液(DAB+):この溶液は使用前に完全に混合する必要がある。溶液中に発生する任意の沈殿物は、染色品質に影響を与えない。DAB+基質-色素原溶液を調製するために、1バイアルのDAB+基質緩衝液に11滴の液体DAB+色素原を添加し、混合する。任意の未使用の溶液は廃棄する。上記のガイドラインに従って希釈する。過剰な液体DAB+色素原をDAB+基質緩衝液に添加すると、陽性シグナルの劣化をもたらす。
【0263】
対比染色。必要に応じて、対比染色ブルーイング用のアンモニア水を調製する。
【0264】
アンモニア水(0.037mol/L)を、2.5(±0.5)mLの15mol/Lの(濃縮)水酸化アンモニウムを1リットルの試薬品質水と混合することによって調製される。未使用の0.037mol/Lアンモニア水は、室温(20~25℃)で、最大12か月間、しっかりとキャップされたボトルに貯蔵され得る。
【0265】
取り付け培地。水性の取り付けには、DakoのFaramount Aqueous Mounting Medium、Ready-to-use(コードS3025)、DakoのGlycergel Mounting Medium(コードC0563)など取り付け培地を推奨する。使用前に約40(±5)℃に温めることによってグリセルゲルを液化させる。Dako’s Ultramount(コードS1964)など、非水性の永久取付もまた好適である
【0266】
Dako自動染色装置の染色手順
手順の備考
全ての試薬は、免疫染色の前に室温(20~25℃)に平衡化する必要がある。同様に、全てのインキュベーションは室温で行う必要がある。
【0267】
染色手順中に組織切片を乾燥させてはならない。乾燥した組織切片は、非特異的染色の増加を示す場合がある。
【0268】
脱パラフィン及び再水和。染色の前に、組織スライドは、包埋培地を除去するために脱パラフィン化され、再水和される必要がある。パラフィンの不完全な除去を避ける。残留包埋培地は、非特異的染色の増加をもたらす。
【0269】
ステップ1.スライドをキシレン浴に置き、5(±1)分間インキュベートする。浴を交換して、1回繰り返す。
ステップ2.余分な液体を軽くたたいて除き、スライドを無水エタノール中に3(±1)分間置く。浴を交換して、1回繰り返す。
ステップ3.余分な液体を軽くたたいて除き、スライドを95%エタノール中に3(±1)分間置く。浴を交換して、1回繰り返す。
ステップ4.余分な液体を軽くたたいて除き、スライドを試薬品質水中に5(±1)分間置く。
ステップ5.余分な液体を軽くたたいて除き、スライドを洗浄緩衝液中に置く。染色プロトコルに概説されているとおりに、染色手順を開始する。
【0270】
キシレン及びアルコール溶液は、40枚のスライド後に交換する必要がある。ヒストクリアなどのトルエン又はキシレンの代替物が、キシレンの代わりに使用され得る。EGFR pharmDxには、タンパク質分解酵素消化ステップによる前処理が含まれる。組織切片は、時折過剰に消化され、細胞膜及び全体的な組織構造の破壊を引き起こす場合がある。タンパク質分解ステップの期間に注意してアッセイを実行する。
【0271】
固定後の手順
1.切片を脱パラフィンし、試薬品質水に浸す。
2.スライドを10%中性緩衝ホルマリンに10分間浸す。
3.スライドを脱イオン水又は蒸留水で2回すすぐ。
4.EGFR pharmDx染色手順を続行する。
【0272】
自動染色プロトコル
ステップ1.目的のプロトコル及びプログラム染色実行を選択する。
ステップ2.自動プログラムを使用してプログラムを設定し、EGFR pharmDxプログラムを開始する。
ステップ3.コンピュータで生成された試薬マップに従って、試薬バイアルをDAKO自動染色装置試薬ラックに配置する。
ステップ4.コンピュータで生成されたスライドマップに従って、スライドをDAKO自動染色装置にロードする。
ステップ5.実行を開始する。
ステップ6.DAKO自動染色装置からスライドを取り外す。
【0273】
対比染色及び取り付けに進む。DAB+基質-色素原溶液ステップの後、試薬品質水でスライドをすすぐ。(DAKO自動染色装置ハードウェアバージョン02及び03は、基質-色素原ステップの後、試薬品質水でスライドをすすぐ。DAKO自動染色装置の01ハードウェアバージョンは、緩衝液でスライドをすすぐ。したがって、01ハードウェアで染色されたスライドは、自動染色装置から取り出した後、試薬品質水ですすぐ必要がある)。
【0274】
染色手順の解釈
スライド評価は、光学顕微鏡を使用して病理医によって実施される必要がある。全ての評価は、標本の腫瘍領域で行われるものとする。免疫細胞化学的染色及びスコアリングの評価の場合、10倍又は20倍の倍率の対物レンズが適切である。
【0275】
染色結果の解釈に無傷の細胞を使用する。壊死又は変性細胞は、多くの場合、非特異的に染色する。陽性及び陰性の細胞株は、各EGFR pharmDxキットに含まれ、アッセイが実行されるたびに、染色実行を検証する。対照細胞株の適切な染色は、EGFR pharmDxアッセイが適切に機能しているという証拠を提供する。CAMA-1対照細胞株(0)の膜染色はなく、HT-29対照細胞株(2+)における中程度の褐色の完全又は不完全な膜染色は、染色実行が有効であることを示す。陽性対照細胞株の染色強度が弱すぎる場合、又は強すぎる場合は、偽陰性又は偽陽性の結果が得られる可能性があり、試験を繰り返す必要がある。参照画像は、EGFR pharmDx解釈ガイドで入手可能である。
【0276】
EGFR pharmDxは、主に細胞膜を染色し、完全及び不完全な円周染色の両方を示す。免疫染色パターンは、多くの場合不均一であり、単一の新生物内で様々な染色強度を示す。染色はまた、細胞質及び細胞外空間でも観察されている。細胞質染色は一般的に見られるが、著しい細胞質染色により、膜染色の区別及び結果の解釈が困難になる場合、試験を繰り返す必要がある。
【0277】
腫瘍は、評価可能な構造として膜染色を使用して、EGFR陽性又はEGFR陰性として報告される必要がある。腫瘍細胞は、完全に円周状であるかどうかにかかわらず、バックグラウンドを上回る任意の膜染色を有する場合、EGFR陽性である。任意の腫瘍細胞において、バックグラウンドを上回る膜染色のない腫瘍は、EGFR陰性腫瘍として報告される。
【0278】
インキュベーション長さ及び使用されるヘマトキシリンの効力に応じて、対比染色は、細胞核の淡青色から濃青色の着色をもたらすであろう。過度又は不完全な対比染色は、結果の解釈を損なう可能性がある。
【0279】
染色強度は、以下のように確立される。3+(強い染色):必要に応じて高いレベルで確認できる、低いレベルの倍率、5倍の対物レンズで可視、2+(中程度の染色):中程度レベルの倍率、10倍又は20倍の対物レンズで可視、1+(弱い染色):高倍率、40倍の対物レンズでのみ確実に確認可能、0(染色なし):高倍率で可視染色はなし。
【表1】
【0280】
EGFR Hスコアリング
IHCを使用した膜性染色の評価は、試料を4つの染色強度カテゴリー(0~3+)に分類する。注目すべきは、腫瘍細胞の線形細胞間染色のみが陽性とみなされ、完全及び不完全な膜性染色が考慮及び記録されることである。また、Histo-スコア計算のために、全ての膜染色は、完全性(完全及び不完全な膜性染色)とは無関係であるとみなされる。
【0281】
Hスコアは、以下の式:[1×(1+染色を有する細胞%)+2×(2+染色を有する細胞%)+3×(3+染色を有する細胞%)]を使用して割り当てられ、0~300の間のEGFRについてのHスコアがもたらされる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む組成物であって、前記対象におけるがんが、免疫チェックポイント阻害剤での事前の治療を受けた後に進行し、がんが、EGFRを発現する、組成物。
【請求項2】
前記がんが、頭頸部がんである、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記がんが、前記頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記がんが、2+又は3+のIHCスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記がんが、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記がんが、3+のIHCスコアによって、又は200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
対象におけるがんの治療における使用のための、EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインを含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む組成物であって、前記がんが、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんであり、前記がんが、3+のIHCスコアによって、又は200超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、組成物。
【請求項8】
前記抗体が、LGR5に結合する第2の可変ドメインを含む、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の可変ドメインが、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸置換を有する
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択されるLGR5特異的重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列と、多くとも3つ、若しくは多くとも2つ、若しくは多くとも1つのアミノ酸が異なる重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列、を含む重鎖可変領域を含む第2の可変ドメインを含む、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の可変ドメインは、
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、又はMF4289のVH鎖の配列を含む重鎖可変領域であり、
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818のVHの配列を含む重鎖可変領域である第2の可変ドメインを含む、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の可変ドメインが、
-
図3に示されるMF3755のVH鎖のアミノ酸配列、又は
-前記VH鎖に関して、多くとも15個、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又は1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF3755のVH鎖のアミノ酸配列
を含み、
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、
-
図3に示されるMF5816のVH鎖のアミノ酸配列、又は
-前記VH鎖に関して、多くとも15個、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又は1、2、3、4、若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせを有する
図3に示されるMF5816のVH鎖のアミノ酸配列
を含む第2の可変ドメインを含む、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項12】
前記挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組み合わせが、前記VH鎖のCDR1、CDR2、又はCDR3領域に存在しない、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
EGFRの細胞外部分に結合する第1の可変ドメインと、LGR5の細胞外部分に結合する第2の可変ドメインと、を含む抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む、対象におけるがんの治療のための組成物であって、
前記がんが、頭頸部がんであり、2+又は3+のIHCスコアによって特徴付けられる、又は0~300のスケールで80超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、あるいは、
前記がんが、3+のIHCスコアによって、又は0~300のスケールで50超のEGFRについてのHスコアによって特徴付けられるEGFR発現を有する、胃がん、食道がん、又は胃食道接合部がんであり、
前記第1の可変ドメインが、少なくとも
図3に示されるMF3370、MF3755、MF4280、若しくはMF4289のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域であり、
前記第2の可変ドメインが、
図3に示されるMF5790、MF5803、MF5805、MF5808、MF5809、MF5814、MF5816、MF5817、若しくはMF5818からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域である、組成物。
【請求項14】
前記対象が、抗EGFR剤で事前の治療を受けていない、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記がんが、200超~300以下のHスコアによって特徴付けられるEGFRを発現する、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項16】
前記EGFRについてのHスコアが、IHCを使用して決定される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象が、ヒトである、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項18】
前記治療が、前記対象に、有効量の前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項19】
前記治療が、前記対象に、1500mgの均一用量の前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供することを含む、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、毎週、隔週、又は毎月提供される、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗体、又はその機能部分、誘導体、及び/若しくは類似体が、隔週で提供される、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項22】
前記抗体が、ADCC増強型である、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項23】
前記抗体が、アフコシル化されている、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項24】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗体が、共通軽鎖を含む、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗体が、アミノ酸配列QSISSYを含むLCDR1と、アミノ酸配列AASを含むLCDR2と、アミノ酸配列QQSYSTPPTを含むLCDR3とを含む、請求項1、7又は13に記載の組成物。
【国際調査報告】