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特表2024-537098オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を増強するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を増強するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241003BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520007
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022045664
(87)【国際公開番号】W WO2023059629
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,596
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ジアミャオ
(72)【発明者】
【氏名】オルマン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,チー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ソンリー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR90
4B063QS38
4B063QS40
4B063QX10
(57)【要約】
本発明は、オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を増強するための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、細胞内の標的遺伝子の発現を低減するリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の効力を向上させるために、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aなどのサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内の第1のオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性を増強するための方法において、
前記細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することであって、前記サプレッサータンパク質が、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aである、阻害することと、
標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む前記第1のオリゴヌクレオチド化合物と前記細胞を接触させることであって、前記オリゴヌクレオチド化合物が、前記細胞の表面に発現する受容体のリガンドに共有結合される、接触させることと
を含む方法。
【請求項2】
前記サプレッサータンパク質がRAB18、ZW10又はSTX18である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サプレッサータンパク質がRAB18である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することが、前記サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に相補的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチド化合物と前記細胞を接触させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が一本鎖である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾ヌクレオチドが2’-修飾ヌクレオチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
細胞内の標的遺伝子の発現を低減させるための方法において、
前記細胞をサプレッサータンパク質の阻害剤と接触させることであって、前記サプレッサータンパク質が、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aである、接触させることと、
前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド化合物に前記細胞を接触させることであって、前記オリゴヌクレオチド化合物が、前記細胞の表面に発現する受容体のリガンドに共有結合される、接触させることと
を含む方法。
【請求項13】
前記サプレッサータンパク質がRAB18、ZW10又はSTX18である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サプレッサータンパク質がRAB18である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記サプレッサータンパク質の前記阻害剤が、前記サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に相補的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチド化合物である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が一本鎖である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記修飾ヌクレオチドが2’-修飾ヌクレオチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、BNA、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的遺伝子がヒト遺伝子である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記標的遺伝子の発現が、疾患又は障害に関連付けられる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、約15~約30ヌクレオチド長である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、前記アンチセンス鎖が前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記センス鎖が、約15~約30塩基対長の二重鎖領域を形成するために、前記アンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ独立して、約19~約30ヌクレオチド長である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ独立して、約19~約23ヌクレオチド長である、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記修飾ヌクレオチドが2’-修飾ヌクレオチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、BNA、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記リガンドが、コレステロール部分、ビタミン、ステロイド、胆汁酸、葉酸部分、脂肪酸、炭水化物、グリコシド、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記リガンドが、ガラクトース、ガラクトサミン、又はN-アセチル-ガラクトサミンを含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記リガンドが、多価ガラクトース部分又は多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記多価ガラクトース部分又は多価N-アセチル-ガラクトサミン部分が、三価又は四価である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記リガンドが、肝臓細胞の表面に発現する受容体のリガンドである、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記受容体がアシアロ糖タンパク質受容体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞がインビトロである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞がインビボである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、前記標的遺伝子の発現を低減させる必要のある対象に存在する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が肝細胞である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
対象の標的遺伝子の発現を低減させるための方法において、
サプレッサータンパク質の阻害剤であって、前記サプレッサータンパク質が、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aである、サプレッサータンパク質の阻害剤と、
前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド化合物であって、第1のリガンドに共有結合される第1のオリゴヌクレオチド化合物と
を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項47】
前記サプレッサータンパク質がRAB18、ZW10又はSTX18である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記サプレッサータンパク質がRAB18である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記サプレッサータンパク質の前記阻害剤が、前記サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に相補的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチド化合物である、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が一本鎖である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2のオリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記第2のオリゴヌクレオチドが、第2のリガンドに共有結合される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記第2のリガンドが、前記第1のリガンドと同一である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記標的遺伝子がヒト遺伝子である、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記標的遺伝子の発現が、前記対象の疾患又は障害に関連付けられる、請求項46~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記標的遺伝子が、肝臓で発現する遺伝子である、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項46~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、約15~約30ヌクレオチド長である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物が、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、前記アンチセンス鎖が前記標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む、請求項46~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記センス鎖が、約15~約30塩基対長の二重鎖領域を形成するために、前記アンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ独立して、約19~約30ヌクレオチド長である、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ独立して、約19~約23ヌクレオチド長である、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物、前記第2のオリゴヌクレオチド化合物、又は前記第1及び第2のオリゴヌクレオチド化合物の両方が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項49~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記修飾ヌクレオチドが2’-修飾ヌクレオチドである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、BNA、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物、前記第2のオリゴヌクレオチド化合物、又は前記第1及び第2のオリゴヌクレオチド化合物の両方の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記第1のオリゴヌクレオチド化合物、前記第2のオリゴヌクレオチド化合物、又は前記第1及び第2のオリゴヌクレオチド化合物の両方が、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項49~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記第1のリガンド、前記第2のリガンド、又は前記第1及び第2のリガンドの両方が、コレステロール部分、ビタミン、ステロイド、胆汁酸、葉酸部分、脂肪酸、炭水化物、グリコシド、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む、請求項46~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記第1のリガンド、前記第2のリガンド、又は前記第1及び第2のリガンドの両方が、ガラクトース、ガラクトサミン、又はN-アセチル-ガラクトサミンを含む、請求項46~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記第1のリガンド、前記第2のリガンド、又は前記第1及び第2のリガンドの両方が、多価ガラクトース部分又は多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記多価ガラクトース部分又は多価N-アセチル-ガラクトサミン部分が、三価又は四価である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のリガンド、前記第2のリガンド、又は前記第1及び第2のリガンドの両方が、肝臓細胞の表面に発現する受容体のリガンドである、請求項46~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記受容体がアシアロ糖タンパク質受容体である、請求項72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月5日出願の米国仮特許出願第63/252,596号明細書の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子提出されたテキストファイルの説明
本出願は、XMLフォーマットで電子提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年10月3日に作成したコンピュータ可読フォーマットの配列表のコピーは、名称がA-2846-WO01-SEC_ST26.xmlであり、サイズが81.2キロバイトである。
【0003】
本発明は、細胞内でオリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を抑制するように作用するタンパク質の同定に関する。より具体的には、本発明は、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aなどのこのようなサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することによって、細胞内の標的遺伝子の発現を低減するリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の効力を増強するための組成物及び方法に関する。記載される方法は、治療目的で投与されるリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の効力を増大させるのに特に有用である。
【背景技術】
【0004】
低分子干渉RNA(siRNA)分子及びアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸ベースの治療薬は、大型で高電荷の核酸を送達することに伴う課題があるにもかかわらず、近年急速に発展してきている。従来の薬剤分子と比較して、siRNA分子及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは高い効力があり、以前は「創薬不可能(non-druggable)」であった標的に作用することができる(Juliano,Nucleic Acids Res,Vol.44;6518-6548,2016;Dowdy,Nat Biotechnol,Vol.35;222-229,2017;及びKhvorova and Watts,Nat Biotechnol,Vol.35;238-248,2017)。更に驚くべきことに、特にsiRNA媒介遺伝子サイレンシングの持続時間は、数ヶ月間継続することが示されている(Nair et al.,Nucleic Acids Res,Vol.45;10969-10977,2017;Juliano,2016;Dowdy,2017;及びKhvorova and Watts,2017、前掲)。
【0005】
オリゴヌクレオチド治療用分子の肝臓への送達は、肝細胞表面に高発現するアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合するN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から構成されるリガンドへのオリゴヌクレオチドの結合によって確立されている(例えば、Nair et al.,J Am Chem Soc,Vol.136;16958-16961,2014を参照されたい)。次いで、siRNA分子は、受容体依存性エンドサイトーシス機構によって原形質膜を通過し、エンドソームに送達される(例えば、Baenziger and Fiete,Cell,Vol.22;611-620,1980;Prakash et al.,Nucleic Acids Res,Vol.42;8796-8807,2014を参照されたい)。エンドソームが成熟すると、内部のpHが低下して、GalNAcコンジュゲートオリゴヌクレオチドのASGPRからの放出がもたらされ、次いでASGPRは速やかに細胞表面に再度リサイクルされるが、GalNAcコンジュゲートオリゴヌクレオチドはエンドソーム内部に留まる(Prakash et al.,2014、前掲)。標的mRNAと接近してタンパク質発現を効果的に阻害するためには、オリゴヌクレオチドがエンドソームから細胞質ゾルに脱出し、siRNA分子の場合であればRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に、アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合であればRNアーゼHと会合する必要がある。エンドソーム内のオリゴヌクレオチド分子の1%未満が、細胞質ゾルに脱出することができる(Gilleron et al.,Nat Biotechnol,Vol.31;638-646,2013)。治療用オリゴヌクレオチド分子の細胞内輸送及び脱出のステップは非常に非効率的であり、その根底にあるメカニズムは完全に理解されていない(Springer and Dowdy,Nucleic Acid Ther,Vol.28;109-118,2018;Prakash et al.,2014、前掲)。
【0006】
従って、治療用オリゴヌクレオチドの細胞質ゾル内の作用部位への細胞内送達を向上させ、その結果、これらの分子の効力を向上し得ることが当技術分野において依然として求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Juliano,Nucleic Acids Res,Vol.44;6518-6548,2016
【非特許文献2】Dowdy,Nat Biotechnol,Vol.35;222-229,2017
【非特許文献3】Khvorova and Watts,Nat Biotechnol,Vol.35;238-248,2017
【非特許文献4】Nair et al.,Nucleic Acids Res,Vol.45;10969-10977,2017
【非特許文献5】Nair et al.,J Am Chem Soc,Vol.136;16958-16961,2014
【非特許文献6】Baenziger and Fiete,Cell,Vol.22;611-620,1980
【非特許文献7】Prakash et al.,Nucleic Acids Res,Vol.42;8796-8807,2014
【非特許文献8】Gilleron et al.,Nat Biotechnol,Vol.31;638-646,2013
【非特許文献9】Springer and Dowdy,Nucleic Acid Ther,Vol.28;109-118,2018
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オリゴヌクレオチド化合物、特にリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を阻害又は抑制するように作用する細胞タンパク質の同定に部分的に基づく。従って、本明細書に記載される本発明の方法は、標的細胞又は対象におけるこのようなサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することによって、リガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物、特に治療用オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を増強するための手段を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、細胞をサプレッサータンパク質の阻害剤と接触させることによって、細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することと、標的遺伝子配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド化合物(例えば、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物)と細胞を接触させることであって、オリゴヌクレオチド化合物が、細胞の表面に発現する受容体のリガンドに共有結合される、接触させることとを含む。細胞は、インビトロ又はインビボであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、標的遺伝子の発現を低減させる必要のある対象に存在する。従って、特定の実施形態では、本発明はまた、サプレッサータンパク質の阻害剤と、標的遺伝子の配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド化合物(例えば、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物)であって、リガンドに共有結合されるオリゴヌクレオチド化合物とを対象に投与することを含む、対象の標的遺伝子の発現を低減するための方法を含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、ヒト遺伝子であり、肝臓細胞又は組織に発現する遺伝子であり得る。これら及び他の実施形態では、標的遺伝子の発現は、対象の疾患又は障害と関連するものであり、従ってオリゴヌクレオチド化合物は治療的であり得る。
【0010】
本発明の方法に使用される標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。このような実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15~約30ヌクレオチド長であり得る。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNA分子であり、アンチセンス鎖は、標的遺伝子の配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約15~約30塩基対長の二重鎖領域を形成するために、アンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含み得る。これら及び他の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、約19~約30ヌクレオチド長である。
【0011】
本発明の方法に使用される標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物は、リボース環、核酸塩基又はホスホジエステル骨格に修飾を有するヌクレオチドを含む、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の2’-修飾ヌクレオチドを含む。このような2’-修飾ヌクレオチドとしては、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物のヌクレオチド全てが、修飾ヌクレオチドである。特定の実施形態では、本発明の方法に使用される標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物は、修飾ヌクレオチド間結合又はヌクレオシド間結合などの少なくとも1つの骨格修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0012】
本発明の方法の特定の実施形態では、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物は、オリゴヌクレオチド化合物を送達することが意図される細胞又は組織内に発現する受容体のリガンドに共有結合される。いくつかの実施形態では、リガンドは、コレステロール部分、ビタミン、ステロイド、胆汁酸、葉酸部分、脂肪酸、炭水化物、グリコシド、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物を肝臓細胞(例えば、肝細胞)に送達することを標的とする。これら及び他の実施形態では、リガンドは、アシアロ糖タンパク質受容体のリガンドであってよく、ガラクトース、ガラクトサミン、又はN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含み得る。特定の実施形態では、リガンドは、多価ガラクトース又は多価GalNAc部分、例えば、三価又は四価のガラクトース又はGalNAc部分を含む。リガンドは、任意選択により、リンカーを介して、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端に共有結合され得る。
【0013】
サプレッサータンパク質の阻害剤は、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物が送達される細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を低減する、あらゆる種類の分子又は薬剤であり得る。本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、VPS37A、YAP1、CCNE1、SLC30A9、TEDC1、HIF1AN、又はTRAF2である。本発明の方法の特定の実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aである。本発明の方法の特定の他の実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18、ZW10、又はSTX18である。特定の一実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18である。
【0014】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤、例えば、本明細書に記載されるサプレッサータンパク質のいずれかは、サプレッサータンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)の発現を低減するオリゴヌクレオチドベースの阻害剤であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、本明細書に記載されるようなオリゴヌクレオチド化合物であって、オリゴヌクレオチド化合物は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む化合物である(例えば、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物)。このようなサプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖であってよく、例えば、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。代替的な実施形態では、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物は、二本鎖であってもよく、例えば、siRNA又はshRNAを含んでもよい。本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNA分子であり、アンチセンス鎖は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物は、本明細書に記載されるように、1つ以上の修飾ヌクレオチド(例えば、2’-修飾ヌクレオチド)、又は修飾ヌクレオチド間結合若しくはヌクレオシド間結合(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合)を含み得る。いくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物は、本明細書に記載されるリガンドのいずれかに共有結合されてもよい。このような一実施形態では、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物に共有結合されたリガンドは、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物に共有結合されたリガンドと同一であってもよい。別の実施形態では、サプレッサータンパク質指向性オリゴヌクレオチド化合物に共有結合されたリガンドは、標的遺伝子指向性オリゴヌクレオチド化合物に共有結合されたリガンドと異なっていてもよいが、どちらのリガンドも、同一の細胞型又は組織に発現する受容体のリガンドである。
【0015】
本発明の方法の他の実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤、例えば、本明細書に記載されるサプレッサータンパク質のいずれかは、低減した活性又は機能を有するサプレッサータンパク質のバリアントをコードするように、又は遺伝子の発現を全体的に排除する(すなわち遺伝子をノックアウトする)ように、サプレッサータンパク質をコードする遺伝子を改変する遺伝子改変剤である。特定の実施形態では、遺伝子改変剤は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)若しくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又はヌクレアーゼをコードするベクター/ポリヌクレオチドを含む。特定の他の実施形態では、遺伝子改変剤は、(i)Casヌクレアーゼ又はヌクレアーゼをコードするベクター/ポリヌクレオチド、及び(ii)ガイドRNA又はガイドRNA発現カセットを含むベクター/ポリヌクレオチドを含み、ガイドRNAは、サプレッサータンパク質をコードする遺伝子配列の一部と相補的な配列を含む。ヌクレアーゼ及び/又はガイドRNA発現カセットをコードするベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】2つのgRNAレンチウイルスベクター、SLC3A2-83又はSLC3A2-84のうちの1つで形質導入した後の、Hep3B親細胞株又は異なる3つの安定Hep3BCas9細胞株のうちの1つにおけるSLC3A2発現の棒グラフを示す。
図1B】2つのgRNAレンチウイルスベクター、ASGR1-77又はASGR1-78のうちの1つで形質導入した後の、Hep3B親細胞株又は3つの異なる安定Hep3BCas9細胞株のうちの1つにおけるASGR1発現の棒グラフを示す。
図2A】異なる4つの処理群のうちの1つにおける、100μMの6-チオグアニン(6TG)で処理した後の3日目(図2A)及び6日目(図2B)に測定された生存細胞数の棒グラフである。gRNAレンチウイルスライブラリーで形質導入されたHep3BCas9細胞を、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA単独(HPRT1-si)、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAと6TG(HPRT1-si+6-TG)、6-TG単独(6-TG)、又はsiRNAも6TGも含まないもの(陰性対照)で処理した。各処理群で、6TG処理後の3日目と6日目にViCellで測定した生存細胞数を、陰性対照群の測定値によって正規化した。両時点で得られた各群の正規化された生存率を、平均±標準偏差で示す。
図2B】異なる4つの処理群のうちの1つにおける、100μMの6-チオグアニン(6TG)で処理した後の3日目(図2A)及び6日目(図2B)に測定された生存細胞数の棒グラフである。gRNAレンチウイルスライブラリーで形質導入されたHep3BCas9細胞を、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA単独(HPRT1-si)、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAと6TG(HPRT1-si+6-TG)、6-TG単独(6-TG)、又はsiRNAも6TGも含まないもの(陰性対照)で処理した。各処理群で、6TG処理後の3日目と6日目にViCellで測定した生存細胞数を、陰性対照群の測定値によって正規化した。両時点で得られた各群の正規化された生存率を、平均±標準偏差で示す。
図3A】siRNAを含まないが6TGで処理された試料(nosi6TGd9)に対する150nMのsiRNA+6TG処理試料(150si6TGd9)、及びsiRNAを含まないが6TGで処理された試料(nosi6TGd9)に対する750nMのsiRNA+6TG処理試料(750si6TGd9)の両方で濃縮された遺伝子を示す散布図である。偽発見率(FDR)<0.2の合計17個の遺伝子が同定された(黒く塗りつぶされた点で表示されている)。
図3B】siRNAを含まず、6TGを含まない試料に対する6TGのみで枯渇した遺伝子による、siRNAを含まないが6TGで処理された試料(nosi6TGd9)に対する750nMのsiRNA+6TG処理試料(750si6TGd9)による濃縮された遺伝子を示す散布図である。横軸は6TGに対する感受性を示す。6TGで処理したときに大幅に枯渇したFDR<0.2の8個の遺伝子が、破線の枠によって囲われている。
図4A】様々な濃度の異なる3つのRAB18標的siRNA分子のうちの1つで24時間処理されたHep3B細胞における、RAB18のmRNAレベルのパーセンテージを示す折れ線グラフである。RAB18遺伝子を標的とする様々な濃度の異なる3つのsiRNA分子で処理されたHep3B細胞から、処理してから24時間後にRNA試料を抽出した。次いで、逆転写によってRNAから合成したcDNA試料を、ddPCR分析にかけた。RAB18のddPCR測定値をハウスキーピングTBP遺伝子のddPCR測定値に正規化し、RAB18のmRNAレベルのパーセンテージを算出した。
図4B】GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA分子によって処理してから4日後の、非標的対照siRNA分子(siNTC)又はRAB18標的siRNA分子(siRAB18)でトランスフェクトしたHep3B細胞における、RAB18のmRNAレベルの棒グラフである。Hep3B細胞を、トランスフェクションによってsiRAB18-3又はsiNTC分子で前処理した。24時間後、トランスフェクション培地を洗い流した後に、様々な濃度のGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(二重鎖番号8172)で細胞を処理した。二重鎖番号8172による処理後の4日目に、RAB18のmRNAレベルをddPCRで測定するために細胞を採取した。
図4C】非標的対照siRNA分子(siNTC)又はRAB18標的siRNA分子(siRAB18)のいずれかでトランスフェクトしたHep3B細胞における、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(二重鎖8172)の用量反応曲線を示す。二重鎖番号8172による処理後の4日目に、HPRT1のmRNAレベルを、図4Bに記載した実験から採取した細胞からddPCRによって測定した。HPRT1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図5】示されたGalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子の、濃度を関数とした細胞溶解率のグラフである。Hep3BCas9細胞及び異なる2つのRAB18ノックアウト細胞プール(RAB18 KO_1及びRAB18 KO_2)を、様々な濃度のGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲート分子(HPRT1-si)又はGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲート分子(PPIB-si)のいずれかで3日間処理した。次いで、細胞を100μMの6TGを使用する生存/死滅選択スクリーニングにかけた。6TG処理後の6日目に、CellTiter-Glo試薬を使用して生存細胞を検出した。
図6A】Hep3BCas9細胞及び異なる2つのRAB18ノックアウト細胞プール(RAB18 KO_1及びRAB18 KO_2)における、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(二重鎖番号8172)の用量反応曲線を示す。細胞を、様々な濃度のGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲート分子(HPRT1-si)又は対照としてのGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲート分子(PPIB-si)のいずれかで4日間処理した。mRNAレベルをddPCRによって測定した。HPRT1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図6B】Hep3BCas9細胞及び異なる2つのRAB18ノックアウト細胞プール(RAB18 KO_1及びRAB18 KO_2)における、GalNAc部分コンジュゲートASGR1 siRNA分子(二重鎖番号16084)の用量反応曲線を示す。細胞を、様々な濃度のGalNAc-ASGR1 siRNAコンジュゲート分子(ASGR1-si)又は対照としてのGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲート分子(PPIB-si)のいずれかで4日間処理した。mRNAレベルをddPCRによって測定した。ASGR1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図6C】Hep3BCas9細胞及び異なる2つのRAB18ノックアウト細胞プール(RAB18 KO_1及びRAB18 KO_2)における、GalNAc部分コンジュゲートPPIB siRNA分子(二重鎖番号8714)の用量反応曲線を示す。細胞を、様々な濃度のGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲート分子(PPIB-si)又は対照としてのGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲート分子(HPRT1-si)のいずれかで4日間処理した。mRNAレベルをddPCRによって測定した。PPIBのmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図7】Hep3BCas9細胞及び異なる2つのRAB18ノックアウト細胞プール(RAB18 KO_1及びRAB18 KO_2)における、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(二重鎖番号8172)の用量反応曲線を示す。細胞を、抗ASGR1抗体(7E11)、アイソタイプ対照抗体(アイソタイプ)、又は抗体を含まないもので30分間前処理した。次いで、GalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートを様々な濃度で細胞に添加した。siRNA処理後の4日目に、mRNAレベルをddPCRによって測定した。HPRT1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図8】Hep3BCas9細胞とRAB18ノックアウト細胞(RAB18 KO)における、リポフェクタミン試薬(RNAiMAX)を含む場合と含まない場合の、非コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(二重鎖番号17629)の用量反応曲線を示す。細胞を、様々な濃度の非コンジュゲートHPRT1 siRNA分子(HPRT1-si 17629)単独で、又はリポフェクタミンRNAiMAX試薬と共に4日間処理した。mRNAレベルをddPCRによって測定した。HPRT1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びsiRNAを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
図9】Hep3BCas9細胞とRAB18ノックアウト細胞(RAB18 KO)における、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)分子(化合物番号15469及び15470)、並びに対照のGalNAc部分コンジュゲートPNPLA3 ASO分子(化合物番号15472)の用量反応曲線を示す。細胞を、様々な濃度の異なるGalNAc-ASOコンジュゲート分子で4日間処理した。mRNAレベルをddPCRによって測定した。HPRT1のmRNAレベルを、ハウスキーピングTBP遺伝子の測定値及びASOを含まない(PBSのみの)処理対照群で正規化したパーセンテージとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、siRNA分子などのオリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性に負の影響を及ぼす細胞内タンパク質の同定に部分的に基づく。本明細書に更に記載されるように、このようなサプレッサータンパク質の発現又は活性を抑制又は阻害することにより、オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を著しく増大させ、それによってオリゴヌクレオチド化合物の治療的有用性が潜在的に拡張される。RAB18などの同定されたサプレッサータンパク質のいくつかは、エンドソームを細胞内輸送する役割を果たすものと考えられているため、本発明の方法は、受容体依存性エンドサイトーシス経路を介して細胞に侵入するリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を増強又は増大させるのに特に有用である。従って、特定の実施形態では、本発明は、細胞内のオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性を増強するための方法であって、細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することと、細胞をオリゴヌクレオチド化合物と接触させることであって、オリゴヌクレオチド化合物が標的遺伝子の配列と実質的に相補的な配列を含む、接触させることとを含む方法を提供する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド化合物」は、標的核酸とハイブリダイズして遺伝子サイレンシング活性を引き起こすために、標的核酸配列と十分に相補的なヌクレオチド配列を有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む化合物である。「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」は、典型的には2つのオリゴヌクレオチド内の相補的塩基間の水素結合(例えばワトソン-クリック水素結合、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合)を介した、相補的ポリヌクレオチドの対形成を指す。本明細書で使用する場合、第1の配列を含むオリゴヌクレオチドが、生理的条件などの特定の条件下で第2の配列を含むオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして二本鎖領域を形成することができる場合、第1の配列は第2の配列と「相補的」である。他のそのような条件には、中程度又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を含むことができ、これらは当業者に公知である。第1の配列を含むオリゴヌクレオチドが、第2の配列を含むオリゴヌクレオチドと、あらゆるミスマッチも含まずに一方又は両方のヌクレオチド配列の全長にわたって塩基対形成する場合、第1の配列は第2の配列と完全に相補的(100%相補的)であるとみなされる。配列が標的配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%相補的である場合、配列は標的配列と「実質的に相補的」である。相補性パーセントは、第2の配列又は標的配列内の対応する位置の塩基と相補的な第1の配列内の塩基の数を、第1の配列の全長で割ることによって算出することができる。また、2つの配列がハイブリダイズしたときに、30塩基対の二本鎖領域にわたって5、4、3、又は2つ以下のミスマッチが存在する場合、配列は他方の配列と実質的に相補的であると言うことができる。
【0019】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子配列と実質的に又は完全に相補的な配列を有する領域を有する、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。標的遺伝子配列とは、一般的には、ポリペプチドの部分的又は完全なコード配列を含む核酸配列を指す。標的遺伝子配列は、5’若しくは3’非翻訳領域(UTR)又はプロモーター領域などの非コード領域も含み得る。特定の実施形態では、標的遺伝子配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)配列である。mRNA配列は、スプライスバリアントを含み、任意の種(例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ヒト)に由来するタンパク質、タンパク質バリアント、又はアイソフォームをコードする任意のメッセンジャーRNA配列を指す。一実施形態では、標的遺伝子配列は、ヒトタンパク質をコードするmRNA配列である。標的遺伝子配列はまた、tRNA配列、マイクロRNA配列、又はウイルスRNA配列などの、mRNA配列以外のRNA配列であってもよい。
【0020】
本発明の方法の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子配列の少なくとも10個の連続的なヌクレオチドと実質的に相補的な又は完全に相補的な領域を有する、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが相補性領域を含む標的遺伝子配列の領域は、約10~約30個の連続したヌクレオチド、約15~約30個の連続したヌクレオチド、約16~約28個の連続したヌクレオチド、約18~約26個の連続したヌクレオチド、約17~約24個の連続したヌクレオチド、約15~約20個の連続したヌクレオチド、約19~約30個の連続したヌクレオチド、約19~約25個の連続したヌクレオチド、約19~約23個の連続したヌクレオチド、又は約19~約21個の連続したヌクレオチドの範囲であり得る。
【0021】
「遺伝子サイレンシング活性」又は「サイレンシング活性」は、転写又は翻訳のレベルにおける標的遺伝子の下方制御又は発現の低減を指す。遺伝子サイレンシング活性には、RNA干渉メカニズムによる遺伝子発現の低減、RNアーゼH媒介分解、及び立体阻害が包含される。RNA干渉は、核酸分子が、例えば、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介して、配列特異的に標的RNA分子(例えば、メッセンジャーRNAすなわちmRNA分子)の切断及び分解を誘導するプロセスである。RNアーゼH媒介分解は、デオキシリボヌクレオチドのストレッチ又はギャップを含むオリゴヌクレオチドが標的RNA分子(例えばmRNA分子)にハイブリダイズし、リボヌクレアーゼであるRNアーゼHの基質となるDNA/RNAハイブリッドが生成され、これによってRNアーゼHによる標的RNA分子の切断が起こるときに生じる。遺伝子サイレンシング活性はまた、オリゴヌクレオチドが標的核酸配列にハイブリダイズし、RNAポリメラーゼによる転写を阻害する(例えば、標的核酸配列がプロモーター領域である場合)、又は標的核酸配列がmRNA分子である場合はリボソームによる翻訳を阻害する立体阻害によって生じる可能性がある。
【0022】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は一本鎖である。例えば、オリゴヌクレオチド化合物は、あらゆる二本鎖領域又は自己相補領域も含まない、単一のオリゴヌクレオチドを含むか又はそれからなる。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子配列と実質的に相補的な又は完全に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10~約30ヌクレオチド長、約15~約30ヌクレオチド長、約12~約28ヌクレオチド長、約18~約26ヌクレオチド長、約20~約30ヌクレオチド長、約15~約20ヌクレオチド長、約19~約25ヌクレオチド長、約19~約23ヌクレオチド長、約19~約21ヌクレオチド長、約21~約25ヌクレオチド長、又は約20~約23ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、又は約25ヌクレオチド長である。
【0023】
本発明の方法の他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は二本鎖である。このようないくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するために、互いに十分に相補的な2つの逆平行オリゴヌクレオチドを含むか又はそれからなる。標的遺伝子配列(例えば、標的mRNA)と実質的に相補的な又は完全に相補的な配列を有する領域を含むオリゴヌクレオチドは、「アンチセンス鎖」又は「ガイド鎖」と称される。「センス鎖」又は「パッセンジャー鎖」は、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な又は完全に相補的な領域を含むオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、センス鎖は、標的遺伝子配列と実質的に同一な配列を有する領域を含み得る。
【0024】
二本鎖オリゴヌクレオチド化合物(例えば、二本鎖RNA分子)は、本明細書に記載されるか又は当技術分野において公知のものなどの、リボヌクレオチドのリボース糖、塩基、又は骨格構成要素の修飾を含む、リボヌクレオチドの化学修飾を含み得る。二本鎖RNA分子(例えば、siRNA、shRNAなど)で使用されているように、このようなあらゆる修飾が、本開示の目的のために「二本鎖RNA」という用語によって包含される。
【0025】
オリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である実施形態では、アンチセンス鎖の領域は、標的遺伝子配列(例えば、標的mRNA)の領域と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。このような実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の配列と完全に相補的な配列を含み得る。他のこのような実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の配列と実質的に相補的な配列、例えばセンス鎖とアンチセンス鎖によって形成された二重鎖領域に1、2、3、4、又は5つのミスマッチを有する配列を含み得る。特定の実施形態では、任意のミスマッチが末端領域内(例えば、鎖の5’末端及び/又は3’末端の6、5、4、3又は2ヌクレオチド以内)に生じることが好ましい。一実施形態では、センス鎖とアンチセンス鎖から形成される二重鎖領域内の任意のミスマッチは、アンチセンス鎖の5’末端の6、5、4、3又は2ヌクレオチド以内に生じる。
【0026】
本発明の方法の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するが、そうでなければ分離している別々の2つの分子であり得る。2つの別々の鎖から形成されるそのような二本鎖RNA分子は、「低分子干渉RNA」又は「短干渉RNA」(siRNA)と称される。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、siRNAを含むか又はそれからなる。
【0027】
他の実施形態では、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖は、単一のオリゴヌクレオチドの一部であってよく、すなわち、センス鎖及びアンチセンス鎖は、単一のオリゴヌクレオチドの自己相補的領域の一部である。このような場合、オリゴヌクレオチド化合物は、二重鎖領域(ステム領域とも称される)とループ領域を含む単一のオリゴヌクレオチドを含むか又はそれからなる。センス鎖の3’末端は、不対ヌクレオチドの連続配列によってアンチセンス鎖の5’末端に連結されており、これによりループ領域が形成されることとなる。ループ領域は、典型的には、アンチセンス鎖がセンス鎖と塩基対を形成して二重鎖領域又はステム領域を形成することができるように、オリゴヌクレオチドがそれ自体で再度折り畳まれることが可能なほど十分に長い。ループ領域は、約3~約25、約5~約15、又は約8~約12個の不対ヌクレオチドを含み得る。少なくとも部分的な自己相補的領域を含むこのようなオリゴヌクレオチド(例えば、RNA分子)は、「低分子ヘアピン型RNA」(shRNA)と称される。特定の実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、shRNAを含むか又はそれからなる。単一で、少なくとも部分的な自己相補的オリゴヌクレオチドの長さは、約40ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約45ヌクレオチド~約85ヌクレオチド、又は約50ヌクレオチド~約60ヌクレオチドであってよく、それぞれ本明細書に列挙される長さを有する二重鎖領域及びループ領域を含み得る。
【0028】
オリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である(例えば、siRNAを含む)実施形態では、センス鎖は、典型的に、2本の鎖が生理的条件下でハイブリダイズして二重鎖領域を形成するように、アンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含む。「二重鎖領域」は、ワトソン-クリック塩基対形成又は他の水素結合相互作用のいずれかによって互いに塩基対を形成して、2つのオリゴヌクレオチド間で二重鎖を生成する、2つの相補的又は実質的に相補的なオリゴヌクレオチド内の領域を指す。オリゴヌクレオチド化合物の二重鎖領域は、例えば、ダイサー酵素及び/又はRISC複合体の関与によって化合物がRNA干渉経路に入ることができるほど十分な長さでなければならない。例えば、いくつかの実施形態では、二重鎖領域は、約15~約30塩基対長である。この範囲内における二重鎖領域の他の長さ、例えば約15~約28塩基対、約15~約26塩基対、約15~約24塩基対、約15~約22塩基対、約17~約28塩基対、約17~約26塩基対、約17~約24塩基対、約17~約23塩基対、約17~約21塩基対、約19~約25塩基対、約19~約23塩基対、又は約19~約21塩基対も好適である。特定の実施形態では、二重鎖領域は、約17~約24塩基対長である。他の実施形態では、二重鎖領域は、約19~約21塩基対長である。一実施形態では、二重鎖領域は、約19塩基対長である。別の実施形態では、二重鎖領域は、約21塩基対長である。
【0029】
センス鎖及びアンチセンス鎖が2つの別々のオリゴヌクレオチドである(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含むか又はそれからなる)実施形態の場合、センス鎖及びアンチセンス鎖は、二重鎖領域の長さと同一の長さである必要はない。例えば、一方又は両方の鎖が二重鎖領域よりも長くてもよく、二重鎖領域に隣接する1つ以上の不対ヌクレオチド又はミスマッチを有してもよい。従って、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含む。本明細書で使用する場合、「ヌクレオチドオーバーハング」は、鎖の末端に二重鎖領域を越えて延在する不対ヌクレオチドを指す。ヌクレオチドオーバーハングは、典型的に、一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて延在する場合、又は一方の鎖の5’末端が他方の鎖の3’末端を越えて延在する場合に生成される。ヌクレオチドオーバーハングの長さは、一般に、1~6ヌクレオチド、1~5ヌクレオチド、1~4ヌクレオチド、1~3ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、又は2~4ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、1、2、3、4、5、又は6ヌクレオチドを含む。特定の一実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、1~4ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、2ヌクレオチドを含む。特定の他の実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、単一のヌクレオチドを含む。
【0030】
オーバーハング内のヌクレオチドは、本明細書に記載されるようなリボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、2’-修飾ヌクレオチド(例えば、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド)、デオキシリボヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、逆位ヌクレオチド(例えば、逆位脱塩基ヌクレオチド、逆位デオキシリボヌクレオチド)、又はこれらの組み合わせである。例えば、一実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、例えば、デオキシチミジンである。別の実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせである。他の実施形態では、オーバーハングは、5’-ウリジン-ウリジン-3’(5’-UU-3’)ジヌクレオチドを含む。このような実施形態では、UUジヌクレオチドは、リボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチド、例えば2’-修飾ヌクレオチドを含み得る。他の実施形態では、オーバーハングは、5’-デオキシチミジン-デオキシチミジン-3’(5’-dTdT-3’)ジヌクレオチドを含む。ヌクレオチドオーバーハングがアンチセンス鎖に存在する場合、オーバーハング内のヌクレオチドは、標的遺伝子配列と相補的であり得るか、標的遺伝子配列とミスマッチを形成し得るか、又は何らかの他の配列を含み得る(例えば、ポリピリミジン配列又はポリプリン配列、例えば、UU、TT、AA、GGなど)。
【0031】
ヌクレオチドオーバーハングは、一方又は両方の鎖の5’末端又は3’末端に存在し得る。例えば、一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、アンチセンス鎖の5’末端及び3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、センス鎖の5’末端及び3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の5’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0032】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、二重鎖分子の一方の末端に単一のヌクレオチドオーバーハングを含み、他の末端に平滑末端を含み得る。「平滑末端」は、センス鎖及びアンチセンス鎖が分子の末端で完全な塩基対を形成しており、二重鎖領域を越えて延在する不対ヌクレオチドが存在しないことを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、センス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含み、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端に平滑末端を含む。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、アンチセンス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含み、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端に平滑末端を含む。特定の実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)は、二重鎖分子の両方の末端に平滑末端を含む。このような実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は同一の長さを有し、二重鎖領域は、センス鎖及びアンチセンス鎖と同一の長さである(すなわち、分子は、その全長にわたって二本鎖である)。
【0033】
オリゴヌクレオチド化合物がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNA分子を含むか又はそれからなる)実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、約15~約30ヌクレオチド長、約19~約30ヌクレオチド長、約18~約28ヌクレオチド長、約19~約27ヌクレオチド長、約19~約25ヌクレオチド長、約19~約23ヌクレオチド長、約19~約21ヌクレオチド長、約21~約25ヌクレオチド長、又は約21~約23ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、又は約25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同一の長さを有するが、オリゴヌクレオチド化合物が2つのヌクレオチドオーバーハングを有するように、これらの鎖よりも短い二重鎖領域を形成する。例えば、一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、(i)それぞれ21ヌクレオチド長のセンス鎖及びアンチセンス鎖、(ii)19塩基対長の二重鎖領域、並びに(iii)センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端の両方における2つの不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、(i)それぞれ23ヌクレオチド長のセンス鎖及びアンチセンス鎖、(ii)21塩基対長の二重鎖領域、並びに(iii)センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端の両方における2つの不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は同一の長さを有し、二本鎖分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないように、それらの全長にわたって二重鎖領域を形成する。このような一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は平滑末端であり(例えば、2つの平滑末端を有し)、且つ(i)それぞれ21ヌクレオチド長のセンス鎖及びアンチセンス鎖、並びに(ii)21塩基対長の二重鎖領域を含む。別のこのような実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は平滑末端であり(例えば、2つの平滑末端を有し)、且つ(i)それぞれ23ヌクレオチド長のセンス鎖及びアンチセンス鎖、並びに(ii)23塩基対長の二重鎖領域を含む。更に別のこのような実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は平滑末端であり(例えば、2つの平滑末端を有し)、且つ(i)それぞれ19ヌクレオチド長のセンス鎖及びアンチセンス鎖、並びに(ii)19塩基対長の二重鎖領域を含む。
【0034】
本発明の方法の他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖又はアンチセンス鎖が他方の鎖よりも長く、この2本の鎖が、オリゴヌクレオチド化合物(例えば、siRNA分子)が少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含むように、短い方の鎖の長さと等しい長さを有する二重鎖領域を形成する。例えば、一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、(i)19ヌクレオチド長のセンス鎖、(ii)21ヌクレオチド長のアンチセンス鎖、(iii)19塩基対長の二重鎖領域、及び(iv)アンチセンス鎖の3’末端における2つの不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、(i)21ヌクレオチド長のセンス鎖、(ii)23ヌクレオチド長のアンチセンス鎖、(iii)21塩基対長の二重鎖領域、及び(iv)アンチセンス鎖の3’末端における2つの不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0035】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、ペントース環、又はホスフェート基に1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。本明細書で使用する場合、修飾ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、及びシチジン一リン酸を含有するリボヌクレオチドを包含しない。しかしながら、オリゴヌクレオチド化合物は、修飾ヌクレオチドとリボヌクレオチドの組み合わせを含み得る。オリゴヌクレオチド化合物に修飾ヌクレオチドを組み込むことにより、例えば、ヌクレアーゼ及び他の分解プロセスに対する分子の感受性を低減させることで、オリゴヌクレオチド分子のインビボ安定性を向上させることができる。修飾ヌクレオチドの組み込みにより、標的遺伝子の発現を低減するオリゴヌクレオチド化合物の効力を増強させることもできる。
【0036】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、リボース糖の修飾を有する。これらの糖修飾としては、ペントース環の2’位及び/又は5’位の修飾、並びに二環式糖修飾を挙げることができる。2’-修飾ヌクレオチドは、OH以外の置換基を2’位に備えるペントース環を有するヌクレオチドを指す。このような2’-修飾としては、2’-H(例えば、デオキシリボヌクレオチド)、2’-O-アルキル(例えば、O-C-C10又はO-C-C10置換アルキル)、2’-O-アリル(O-CHCH=CH)、2’-C-アリル、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’-F又は2’-フルオロとも称される)、2’-O-メチル(OCH)、2’-O-メトキシエチル(O-(CHOCH)、2’-OCF、2’-O(CHSCH、2’-O-アミノアルキル、2’-アミノ(例えば、NH)、2’-O-エチルアミン、及び2’-アジドが挙げられるがこれらに限定されない。ペントース環の5’位の修飾としては、5’-メチル(R又はS)、5’-ビニル、及び5’-メトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「二環式糖修飾」は、環の2つの原子を架橋により連結して第2の環を形成し、二環式糖構造を生じさせる、ペントース環の修飾を指す。いくつかの実施形態では、二環式糖修飾は、ペントース環の4’炭素と2’炭素との間に架橋を含む。二環式糖修飾を有する糖部分を含むヌクレオチドは、本明細書では二環式核酸又はBNAと称される。例示的な二環式糖修飾としては、α-L-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)二環式核酸(BNA);β-D-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)BNA(ロックド核酸又はLNAとも称される);エチレンオキシ(4’-(CH-O-2’)BNA;アミノオキシ(4’-CH-O-N(R)-2’)BNA;オキシアミノ(4’-CH-N(R)-O-2’)BNA;メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH)-O-2’)BNA(拘束エチル又はcEtとも称される);メチレン-チオ(4’-CH-S-2’)BNA;メチレン-アミノ(4’-CH2-N(R)-2’)BNA;メチル炭素環式(4’-CH-CH(CH)-2’)BNA;プロピレン炭素環式(4’-(CH-2’)BNA;及びメトキシ(エチレンオキシ)(4’-CH(CHOMe)-O-2’)BNA(拘束MOE又はcMOEとも称される)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に組み込むことができるこれら及び他の糖修飾ヌクレオチドは、米国特許第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書、及びDeleavey and Damha,Chemistry and Biology,Vol.19:937-954,2012に記載されており、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。特定の一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。別の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、BNA、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0039】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含むか又はそれからなる)実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、センス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、センス鎖の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の修飾ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、アンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。特定の他の実施形態では、センス鎖の全てのヌクレオチド及びアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。これら及び他の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0040】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物が一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むか又はそれからなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである。このような実施形態では、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ギャップマーオリゴヌクレオチドであり得る。ギャップマーオリゴヌクレオチドは、5’末端セグメント及び3’末端セグメントを含み、各末端セグメントは2~5個の修飾ヌクレオチド(例えば、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド又はBNA)を含み、末端セグメントは8~10個のデオキシリボヌクレオチドから構成される中央の「ギャップ」領域を挟んでいる。一実施形態では、ギャップマーオリゴヌクレオチドは、5’から3’の順に、5個の2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、10個のデオキシリボヌクレオチド、及び5個の2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、ギャップマーオリゴヌクレオチドは、5’から3’の順に、3個のBNA(例えば、LNA)、10個のデオキシリボヌクレオチド、及び3個のBNA(例えば、LNA)を含む。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に組み込まれる修飾ヌクレオチドは、核酸塩基(本明細書では「塩基」とも称される)の修飾を有する。「修飾核酸塩基」又は「修飾塩基」は、天然に存在するプリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)以外の塩基を指す。修飾核酸塩基は、合成であっても天然に存在する修飾であってよく、ユニバーサル塩基、5ーメチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン(X)、ヒポキサンチン(I)、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、並びにアデニン及びグアニンの他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、並びに2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン、及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、並びに他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、並びに他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、修飾塩基はユニバーサル塩基である。「ユニバーサル塩基」は、結果として生じる二重鎖領域の二重らせん構造を変えることなく、RNA及びDNA内の天然の塩基の全てと無差別に塩基対を形成する塩基類似体を指す。ユニバーサル塩基は当業者に公知であり、イノシン、C-フェニル、C-ナフチル及び他の芳香族誘導体、アゾールカルボキサミド、並びに3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール及び6-ニトロインドールなどのニトロアゾール誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に組み込むことができる他の好適な修飾塩基としては、Herdewijn,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,Vol.10:297-310,2000、及びPeacock et al.,J.Org.Chem.,Vol.76:7295-7300,2011に記載されているものが挙げられ、これらの両方は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。グアニン、シトシン、アデニン、チミン、及びウラシルは、上記に記載された修飾核酸塩基などの他の核酸塩基によって置換され得る(但し、そのような置換核酸塩基を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変えない)ことを当業者は十分に認識している。
【0044】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の脱塩基ヌクレオチドを含み得る。「脱塩基ヌクレオチド」又は「脱塩基ヌクレオシド」は、リボース糖の1’位に核酸塩基を欠くヌクレオチド又はヌクレオシドである。特定の実施形態では、脱塩基ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド化合物の1つ以上のオリゴヌクレオチドの末端に組み込まれる。例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含むか又はそれからなる一実施形態では、センス鎖は、その3’末端、その5’末端、又はその3’末端及び5’末端の両方における末端ヌクレオチドとして脱塩基ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、アンチセンス鎖は、その3’末端、その5’末端、又はその3’末端及び5’末端の両方における末端ヌクレオチドとして脱塩基ヌクレオチドを含む。脱塩基ヌクレオチドが末端ヌクレオチドであるこのような実施形態では、ヌクレオチドは、逆位ヌクレオチドであってよく、すなわち、天然の3’-5’ヌクレオチド間結合ではなく、3’-3’ヌクレオチド間結合を介して(鎖の3’末端上にある場合)、又は5’-5’ヌクレオチド間結合を介して(鎖の5’末端上にある場合)、隣接するヌクレオチドと結合され得る。また、脱塩基ヌクレオチドは、糖修飾、例えば上記に記載された糖修飾のいずれかを含み得る。特定の実施形態では、脱塩基ヌクレオチドは、2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾、又は2’-H(デオキシ)修飾などの2’-修飾を含む。一実施形態では、脱塩基ヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を含む。別の実施形態では、脱塩基ヌクレオチドは2’-H修飾を含む(すなわち、デオキシ脱塩基ヌクレオチド)。
【0045】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物はまた、1つ以上の修飾ヌクレオチド間結合を含み得る。本明細書で使用する場合、「修飾ヌクレオチド間結合」という用語は、天然の3’-5’ホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合を指す。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート(例えば、メチルホスホナート、3’-アルキレンホスホナート)、ホスフィナート、ホスホロアミダート(例えば、3’-アミノホスホロアミダート及びアミノアルキルホスホロアミダート)、ホスホロチオエート(P=S)、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、及びボラノホスフェートなどのリン含有ヌクレオチド間結合である。一実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、2’-5’ホスホジエステル結合である。他の実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、非リン含有ヌクレオチド間結合であり、従って修飾ヌクレオシド間結合と称し得る。このような非リン含有結合としては、モルホリノ結合(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン結合(-O-Si(H)-O-);スルフィド、スルホキシド及びスルホン結合;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル結合;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンメチルイミノ(-CH-N(CH)-O-CH-)及びメチレンヒドラジノ結合;スルホナート及びスルホンアミド結合;アミド結合;並びに混合されたN、O、S及びCH構成要素部分を有する他のものが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、修飾ヌクレオシド間結合は、米国特許第5,539,082号明細書、米国特許第5,714,331号明細書、及び米国特許第5,719,262号明細書に記載されているようなペプチド核酸又はPNAを生成するためのペプチドベースの結合(例えばアミノエチルグリシン)である。オリゴヌクレオチド化合物で使用され得る他の好適な修飾ヌクレオチド間結合及びヌクレオシド間結合は、米国特許第6,693,187号明細書、米国特許第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書、及びDeleavey and Damha,Chemistry and Biology,Vol.19:937-954,2012に記載されており、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
特定の実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。オリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含む)実施形態では、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合は、オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖、アンチセンス鎖、又は両方の鎖に存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、センス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、アンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。更に他の実施形態では、両方の鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖、アンチセンス鎖、又は両方の鎖の3’末端、5’末端、又は3’末端及び5’末端の両方に1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖、アンチセンス鎖、又は両方の鎖の3’末端に、約1~約6つ以上(例えば、約1、2、3、4、5、6つ以上)の連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖、アンチセンス鎖、又は両方の鎖の5’末端に、約1~約6つ以上(例えば、約1、2、3、4、5、6つ以上)の連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。特定の一実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも1つであるが6つ以下のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖は、少なくとも1つであるが4つ以下のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。別の特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも1つであるが4つ以下のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖は、少なくとも1つであるが2つ以下のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む(すなわち、アンチセンス鎖の3’末端の第1及び第2のヌクレオチド間結合におけるホスホロチオエートヌクレオチド間結合)。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。なお別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖の5’末端に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。更に別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む(すなわちアンチセンス鎖の5’末端及び3’末端の両方の第1及び第2のヌクレオチド間結合におけるホスホロチオエートヌクレオチド間結合、並びにセンス鎖の5’末端及び3’末端の両方の第1及び第2のヌクレオチド間結合におけるホスホロチオエートヌクレオチド間結合)。なお別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方の末端ヌクレオチド間に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖の3’末端の末端ヌクレオチド間に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一方又は両方の鎖が1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む実施形態のいずれかでは、鎖内の残りのヌクレオチド間結合が、天然の3’-5’ホスホジエステル結合であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の各ヌクレオチド間結合が、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択され、少なくとも1つのヌクレオチド間結合がホスホロチオエートである。同様に、オリゴヌクレオチド化合物が単一のオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド)を含むか又はそれからなる実施形態では、オリゴヌクレオチド中の各ヌクレオチド間結合が、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択され、少なくとも1つのヌクレオチド間結合がホスホロチオエートである。他の実施形態では、一本鎖オリゴヌクレオチド内の全てのヌクレオチド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合である。
【0048】
オリゴヌクレオチド化合物がヌクレオチドオーバーハングを含む実施形態では、オーバーハングの不対ヌクレオチドの2つ以上が、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結され得る。特定の実施形態では、アンチセンス鎖及び/又はセンス鎖の3’末端のヌクレオチドオーバーハングの全ての不対ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。他の実施形態では、アンチセンス鎖及び/又はセンス鎖の5’末端のヌクレオチドオーバーハングの全ての不対ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。更に他の実施形態では、任意のヌクレオチドオーバーハングの全ての不対ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。
【0049】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に組み込むことができる修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載される2つ以上の化学修飾を有し得る。例えば、修飾ヌクレオチドは、リボース糖の修飾と同様に、核酸塩基の修飾を有し得る。例として、修飾ヌクレオチドは、2’糖修飾(例えば、2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、又はBNA)を含み得、修飾塩基(例えば、5-メチルシトシン又はプソイドウラシル)を含み得る。他の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに組み込まれたときに修飾ヌクレオチド間結合又はヌクレオシド間結合を生成する、5’ホスフェートの修飾と組み合わせた糖修飾を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは糖修飾、例えば2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾、2’-O-メトキシエチル修飾、又は二環式糖修飾、並びに5’ホスホロチオエート基を含み得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物の一方又は両方のオリゴヌクレオチドは、2’修飾ヌクレオチド又はBNA及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合の組み合わせを含む。特定の実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合の組み合わせを含む。
【0050】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物は、当技術分野において公知の技術を使用して、例えば、従来の核酸固相合成を使用して、容易に作製することができる。オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド又はヌクレオシド前駆体(例えば、ホスホラミダイト)を利用して、適切な核酸合成装置でアセンブルすることができる。自動核酸合成装置は、いくつかのベンダーによって市販されており、Applied Biosystems(Foster City、CA)のDNA/RNA合成装置、BioAutomation(Irving、TX)のMerMade合成装置、及びGE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh、PA)のOligoPilot合成装置が挙げられる。
【0051】
ホスホラミダイトの化学的性質によってオリゴヌクレオチドを合成するために、酸解離性ジメトキシトリチル(DMT)と共に、リボヌクレオシドの5’位に2’シリル保護基を使用することができる。RNA産物を著しく分解することのない、最終的な脱保護条件は公知である。全ての合成は、任意の自動又は手動合成装置により、大規模、中規模、又は小規模で行うことができる。また、合成は、複数のウェルプレート、カラム、又はスライドガラスにおいて実行することができる。
【0052】
2’-O-シリル基は、フッ化物イオンに曝露することによって除去することができ、フッ化物イオンは、フッ化物イオンの任意の供給源、例えば無機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えば、フッ化セシウム及びフッ化カリウム、又は有機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えば、フッ化テトラアルキルアンモニウムを含み得る。脱保護反応では、クラウンエーテル触媒を無機フッ化物と組み合わせて利用することができる。好ましいフッ化物イオン源は、フッ化テトラブチルアンモニウム又はアミノヒドロフルオリドである(例えば、ジメチルホルムアミドなどの双極性非プロトン溶媒中でHF水溶液をトリエチルアミンと混合する)。
【0053】
亜リン酸トリエステル及びホスホトリエステルに使用するための保護基を選択することにより、フッ化物に対するトリエステルの安定性を変化させることができる。ホスホトリエステル又は亜リン酸トリエステルのメチル保護により、フッ化物イオンに対する結合を安定化させ、プロセス収率を向上させることができる。
【0054】
リボヌクレオシドは、反応性の2’ヒドロキシル置換基を有することから、RNA中の反応性の2’位を、5’-O-ジメトキシトリチル保護基に対して直交性である保護基(例えば、酸処理に対して安定な保護基)で保護することが望ましい可能性がある。シリル保護基はこの条件を満たし、最終的なフッ化物脱保護ステップで容易に除去することができ、これにより、RNA分解を最小限に抑えることが可能となる。
【0055】
標準的なホスホラミダイトカップリング反応では、テトラゾール触媒が使用され得る。好ましい触媒としては、例えば、テトラゾール、S-エチル-テトラゾール、ベンジルチオテトラゾール、p-ニトロフェニルテトラゾールが挙げられる。
【0056】
当業者によって理解され得るように、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物を合成する更なる方法は当業者に明らかであろう。加えて、様々な合成ステップを代替の順番又は順序で実施して、所望の化合物を得てもよい。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物の合成に有用な他の合成化学転換、(例えば、塩基に存在するヒドロキシル、アミノなどのための)保護基、及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当技術分野において公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、並びにそれらの後続版に記載される方法が挙げられる。オリゴヌクレオチド化合物のカスタム合成もまた、Dharmacon,Inc.(Lafayette、CO)、AxoLabs GmbH(Kulmbach、Germany)、及びAmbion,Inc.(Foster City、CA)を含む複数の商業的ベンダーによって利用可能である。
【0057】
本発明の方法の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、リガンドに共有結合される。本明細書で使用する場合、「リガンド」は、別の化合物又は分子と特異的又は可逆的に結合し、複合体を形成する任意の化合物又は分子を指す。リガンドと別の化合物又は分子との相互作用は、生物学的応答を誘発する(例えば、シグナル伝達カスケードを惹起する、受容体依存性エンドサイトーシスを誘導する)ものであってよく、又は単に物理的会合であってよい。いくつかの実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物が特異的に送達されることが意図される細胞などの、細胞の表面に発現する受容体のリガンドである。リガンドは、結合するオリゴヌクレオチド化合物の1つ以上の特性、例えば、オリゴヌクレオチド化合物の薬力学、薬物動態、結合、吸収、細胞分布、細胞内取り込み、電荷及び/又はクリアランス特性を改変することができる。
【0058】
リガンドは、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、低密度リポタンパク質、グロブリン)、コレステロール部分、ビタミン(ビオチン、ビタミンE、ビタミンB12)、葉酸部分、ステロイド、胆汁酸(例えば、コール酸)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン若しくはヒアルロン酸)、グリコシド、リン脂質、又は抗体若しくはその結合断片(例えば、オリゴヌクレオチド化合物を肝臓などの特定の細胞型に標的化する抗体若しくは結合断片)を含み得る。リガンドの他の例は、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子、例えばアダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、又はフェノキサジン)、ペプチド(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド、RGDペプチド)、アルキル化剤、ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG-40K)、ポリアミノ酸、及びポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、リガンドは、脂質又は他の疎水性分子を含む。一実施形態では、リガンドは、コレステロール部分又は他のステロイドを含む。コレステロールコンジュゲートオリゴヌクレオチドは、それらの非コンジュゲートオリゴヌクレオチドよりも活性があることが報告されている(Manoharan,Antisense Nucleic Acid Drug Development,Vol.12:103-228,2002)。核酸分子にコンジュゲートするためのコレステロール部分及び他の脂質を含むリガンドは、米国特許第7,851,615号明細書;同第7,745,608号明細書;及び同第7,833,992号明細書にも記載されており、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、リガンドは、葉酸部分を含む。葉酸部分にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドは、受容体依存性エンドサイトーシス経路を介して細胞に取り込まれ得る。このような葉酸-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、米国特許第8,188,247号明細書に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
特定の実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物が送達されることが意図される標的細胞の表面に発現する受容体又は他のタンパク質に特異的に結合する。このようないくつかの実施形態では、リガンドは、肝臓に送達するためのアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)又は低密度リポタンパク質(LDL)受容体、骨格筋、心筋、及び中枢神経系に送達するためのトランスフェリン受容体、並びに腫瘍組織に送達するための上皮成長因子受容体などの、細胞表面受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片(例えば、Fab、scFv)である。
【0061】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、肝細胞などの肝臓細胞の表面に発現する受容体のリガンドに共有結合される。このような一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、ASGPR又はその構成要素(例えば、ASGR1、ASGR2)に結合するリガンドに共有結合される。特定の一実施形態では、リガンドは、ASGR1及び/又はASGR2に特異的に結合する抗体又はその結合断片を含む。別の実施形態では、リガンドは、ASGR1及び/又はASGR2に特異的に結合する抗体のFab断片を含む。「Fab断片」は、1つの免疫グロブリン軽鎖(すなわち軽鎖可変領域(VL)及び定常領域(CL))、並びに1つの免疫グロブリン重鎖のCH1領域及び可変領域(VH)で構成される。別の実施形態では、リガンドは、ASGR1及び/又はASGR2に特異的に結合する抗体の単鎖可変抗体断片(scFv断片)を含む。「scFv断片」は、抗体のVH領域及びVL領域を含み、これらの領域は単鎖ポリペプチドに存在しており、任意選択によりVH領域とVL領域との間にペプチドリンカーを含み、これによってFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能となる。オリゴヌクレオチド化合物を肝臓に標的化するためのリガンドとして使用することができる、ASGR1に特異的に結合する例示的な抗体及びその結合断片は、国際公開第2017/058944号パンフレットに記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に共有結合することができるリガンドとして使用するのに好適な、ASGR1、LDL受容体、又は他の肝臓表面に発現するタンパク質に特異的に結合する他の抗体又はその結合断片は、市販されている。
【0062】
特定の実施形態では、リガンドは、炭水化物を含む。「炭水化物」は、少なくとも6個の炭素原子(直鎖状、分岐状又は環状であり得る)を有し、各炭素原子に結合された酸素、窒素又は硫黄原子を含む、1つ以上の単糖単位で構成される化合物を指す。炭水化物としては、糖(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、及び約4、5、6、7、8、又は9つの単糖単位を含有するオリゴ糖)、並びに多糖、例えば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、及び多糖類ガムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リガンドに組み込まれる炭水化物は、ペントース、ヘキソース、又はヘプトースから選択される単糖、並びにこのような単糖単位を含む二糖及び三糖である。他の実施形態では、リガンドに組み込まれる炭水化物は、ガラクトサミン、グルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、及びN-アセチルグルコサミンなどのアミノ糖である。
【0063】
いくつかの実施形態では、リガンドは、ヘキソース又はヘキソサミンを含む。ヘキソースは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、又はフルクトースから選択され得る。ヘキソサミンは、フルクトサミン、ガラクトサミン、グルコサミン、又はマンノサミンから選択され得る。特定の実施形態では、リガンドは、グルコース、ガラクトース、ガラクトサミン、又はグルコサミンを含む。一実施形態では、リガンドは、グルコース、グルコサミン、又はN-アセチルグルコサミンを含む。別の実施形態では、リガンドは、ガラクトース、ガラクトサミン、又はN-アセチル-ガラクトサミンを含む。特定の実施形態では、リガンドは、N-アセチル-ガラクトサミンを含む。グルコース、ガラクトース、及びN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含むリガンドは、このようなリガンドが肝細胞の表面に発現するASGPRに結合するため、化合物を肝臓細胞に標的化するのに特に有効である。例えば、D’Souza and Devarajan,J.Control Release,Vol.203:126-139,2015を参照されたい。オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドに共有結合され得るGalNAc又はガラクトース含有リガンドの例は、米国特許第7,491,805号明細書;同第8,106,022号明細書;及び同第8,877,917号明細書;米国特許出願公開第20030130186号明細書;並びに国際公開第2013166155号パンフレットに記載されており、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
特定の実施形態では、リガンドは、多価炭水化物部分を含む。本明細書で使用する場合、「多価炭水化物部分」は、独立して他の分子と結合又は相互作用することができる2つ以上の炭水化物単位を含む部分を指す。例えば、多価炭水化物部分は、2つ以上の異なる分子、又は同じ分子上の2つ以上の異なる部位に結合することができる、炭水化物で構成される2つ以上の結合ドメインを含む。炭水化物部分の価数は、炭水化物部分内の個々の結合ドメインの数を示す。例えば、炭水化物部分に関する「一価」、「二価」、「三価」、及び「四価」という用語は、それぞれ、1、2、3及び4つの結合ドメインを有する炭水化物部分を指す。多価炭水化物部分は、多価ラクトース部分、多価ガラクトース部分、多価グルコース部分、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分、多価N-アセチル-グルコサミン部分、多価マンノース部分、又は多価フコース部分を含み得る。いくつかの実施形態では、リガンドは、多価ガラクトース部分を含む。他の実施形態では、リガンドは、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含む。これら及び他の実施形態では、多価炭水化物部分は、二価、三価、又は四価であり得る。このような実施形態では、多価炭水化物部分は、二分岐又は三分岐であり得る。特定の一実施形態では、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分は、三価又は四価である。別の特定の実施形態では、多価ガラクトース部分は、三価又は四価である。本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に共有結合するための例示的な三価又は四価GalNAc含有リガンドを、下記に詳細に記載する。
【0065】
リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物に直接又は間接的に共有結合又はコンジュゲートされ得る。例えば、オリゴヌクレオチド化合物が二本鎖(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含む)いくつかの実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖又はアンチセンス鎖に直接共有結合される。他の実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖又はアンチセンス鎖にリンカーを介して共有結合される。リガンドは、本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物に含まれるオリゴヌクレオチドの核酸塩基、糖部分、又はヌクレオチド間結合に結合され得る。プリン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーション又は結合は、環内原子及び環外原子を含むあらゆる位置で生じ得る。特定の実施形態では、プリン核酸塩基の2位、6位、7位又は8位がリガンドに結合される。ピリミジン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーション又は結合もまた、あらゆる位置で生じ得る。いくつかの実施形態では、ピリミジン核酸塩基の2位、5位及び6位がリガンドに結合され得る。ヌクレオチドの糖部分へのコンジュゲーション又は結合は、あらゆる炭素原子で生じ得る。リガンドに結合され得る糖部分の例示的な炭素原子としては、2’、3’及び5’炭素原子が挙げられる。例えば、脱塩基ヌクレオチドでは、1’位もリガンドに結合することができる。ヌクレオチド間結合も、リガンドの結合を支持することができる。リン含有結合(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダートなど)の場合、リガンドは、リン原子に直接結合され得るか、又はリン原子に結合されたO、N若しくはS原子に結合され得る。アミン又はアミド含有ヌクレオシド間結合(例えば、PNA)の場合、リガンドは、アミン若しくはアミドの窒素原子か、又は隣接する炭素原子に結合され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、リガンドは、一本鎖オリゴヌクレオチド化合物(例えば、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド)の3’末端又は5’末端に結合され得る。オリゴヌクレオチド化合物が二本鎖である(例えば、オリゴヌクレオチド化合物がsiRNAを含む)実施形態では、リガンドは、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの3’末端又は5’末端に結合され得る。特定の実施形態では、リガンドは、センス鎖の5’末端に共有結合される。このような実施形態では、リガンドは、センス鎖の5’末端ヌクレオチドに結合される。これら及び他の実施形態では、リガンドは、センス鎖の5’末端ヌクレオチドの5’位で結合される。他の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端に共有結合される。例えば、いくつかの実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドに結合される。このような特定の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドの3’位で結合される。代替的な実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端の近傍ではあるが、1つ以上の末端ヌクレオチドの前(すなわち1、2、3又は4つの末端ヌクレオチドの前)で結合される。いくつかの実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドの糖の2’位で結合される。他の実施形態では、リガンドは、センス鎖の5’末端ヌクレオチドの糖の2’位で結合される。
【0067】
特定の実施形態では、リガンドは、リンカーを介してオリゴヌクレオチド化合物に結合される。「リンカー」は、リガンドをオリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド構成要素に共有結合する原子又は原子団である。リンカーは、約1~約30原子長、約2~約28原子長、約3~約26原子長、約4~約24原子長、約6~約20原子長、約7~約20原子長、約8~約20原子長、約8~約18原子長、約10~約18原子長、及び約12~約18原子長であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つの官能基を有するアルキル部分を一般に含む、二官能性結合部分を含み得る。官能基の一方は、目的の化合物(例えば、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド)に結合するように選択され、他方は、本明細書に記載されるようなリガンドなどの任意の選択された基に実質的に結合するように選択される。特定の実施形態では、リンカーは、エチレングリコール単位又はアミノ酸単位などの反復単位からなる鎖構造又はオリゴマーを含む。二官能性結合部分に典型的に使用される官能基の例としては、求核性基と反応させるための求電子剤、及び求電子性基と反応させるための求核剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、二官能性結合部分としては、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、不飽和(例えば、二重結合又は三重結合)などが挙げられる。
【0068】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドにリガンドを結合するのに使用され得るリンカーとしては、ピロリジン、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、6-アミノヘキサン酸、置換C~C10アルキル、置換若しくは非置換C~C10アルケニル又は置換若しくは非置換C~C10アルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなリンカーに好ましい置換基としては、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ、チオール、チオアルコキシ、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
特定の実施形態では、リンカーは、切断可能である。切断可能リンカーは、細胞外部では十分に安定であるが、標的細胞に進入すると切断され、リンカーが一体に保持している2つの部分を放出する。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、標的細胞中又は第1の参照条件(例えば、細胞内条件を模倣するか、又はそれに相当するように選択され得る)下において、対象の血液中又は第2の参照条件(例えば、血液若しくは血清に見出される条件を模倣するか、又はそれに相当するように選択され得る)下よりも少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上、又は少なくとも100倍速く切断される。
【0070】
切断可能なリンカーは、切断剤、例えばpH、酸化還元電位、又は分解性分子の存在に対して感受性である。一般に、切断剤は、血清又は血液中よりも細胞内部で優勢であるか、又は高いレベル若しくは活性で見出される。このような分解性薬剤の例としては、特定の基質のために選択されるか、又は基質特異性のない酸化還元剤、例えば、酸化酵素若しくは還元酵素、又は細胞内に存在し、還元によって酸化還元切断可能リンカーを分解することができるメルカプタンなどの還元剤を含む酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソーム又は酸性環境を生成することができる薬剤、例えば、5以下のpHをもたらすもの;一般酸として作用することによって酸切断可能リンカーを加水分解又は分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)、及びホスファターゼが挙げられる。
【0071】
切断可能リンカーは、pHに感受性のある部分を含み得る。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均的な細胞内のpHはそれより僅かに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、更により酸性であるおよそ5.0のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断され、それによってリガンドから細胞内部又は細胞の所望の区画にオリゴヌクレオチド化合物を放出する、切断可能な基を有する。
【0072】
リンカーは、特定の酵素によって切断可能となる、切断可能な基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能な基の種類は、標的化される細胞に依存し得る。例えば、肝臓標的化リガンドは、エステル基を含むリンカーを介してオリゴヌクレオチド化合物に結合され得る。肝細胞はエステラーゼに富んでいるため、リンカーは、エステラーゼに富んでいない細胞型よりも肝細胞で効率的に切断されることとなる。エステラーゼに富む他の種類の細胞としては、肺、腎皮質及び精巣の細胞が挙げられる。肝臓細胞及び滑膜細胞などのペプチダーゼに富む細胞を標的化する場合は、ペプチド結合を含有するリンカーを使用することができる。
【0073】
一般に、切断可能リンカー候補の適合性は、リンカー候補を切断する分解性薬剤の能力(又は条件)を試験することによって評価することができる。また、血液中又は他の非標的組織と接触するときの切断に抵抗する能力について、切断可能なリンカー候補を試験することが望ましい。従って、標的細胞内で切断を示すように選択される第1の条件と、他の組織又は体液、例えば血液又は血清内で切断を示すように選択される第2の条件との間で、切断に対する相対的感受性を判断することができる。評価は、無細胞系、細胞、細胞培養物、臓器若しくは組織培養物中において又は動物全体で実行することができる。無細胞又は培養条件で初期評価を行い、更に動物全体で評価することによって確認することが有用であり得る。いくつかの実施形態では、有用なリンカー候補は、細胞において(又は細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)、血液又は血清(又は細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して少なくとも2倍、4倍、10倍、20倍、50倍、70倍又は100倍速く切断される。
【0074】
他の実施形態では、酸化還元切断可能なリンカーが利用される。酸化還元切断可能リンカーは、還元又は酸化されると切断される。還元的に切断可能な基の一例は、ジスルフィド連結基(-S-S-)である。切断可能なリンカー候補が、好適な「還元的に切断可能なリンカー」であるかどうか、又は、例えば特定のオリゴヌクレオチド化合物及び特定のリガンドと共に使用するのに好適であるかどうかを判断するために、本明細書に記載される1つ以上の方法を使用することができる。例えば、ジチオスレイトール(DTT)や、又は細胞(例えば標的細胞)中で観察されるであろう切断速度を模倣する当技術分野において公知の他の還元剤とインキュベートすることにより、リンカー候補を評価することができる。リンカー候補は、血液条件又は血清条件を模倣するように選択された条件下で評価することもできる。特定の実施形態では、リンカー候補は、血液中で最大10%切断される。
【0075】
なお他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドにリガンドを共有結合するために、ホスフェート基を分解又は加水分解する剤によって切断されるホスフェート系切断可能リンカーを利用する。細胞内でホスフェート基を加水分解する剤の一例は、細胞内におけるホスファターゼなどの酵素である。ホスフェート系の切断可能な基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、及び-O-P(S)(Rk)-S-であり、式中、Rkは、水素又はアルキルであり得る。特定の実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、及び-O-P(S)(H)-S-を含む。別の特定の実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらのリンカー候補は、上記に記載される方法に類似した方法を使用して評価することができる。
【0076】
他の実施形態では、リンカーは、酸性条件下で切断される基である、酸切断可能な基を含み得る。いくつかの実施形態では、酸切断可能な基は、約6.5以下のpH(例えば、約6.0、5.5、5.0以下)の酸性環境において、又は一般酸として作用し得る酵素などの薬剤によって切断される。細胞内では、エンドソーム及びリソソームなどの特定の低pHオルガネラが、酸切断可能な基に切断環境を提供することができる。酸切断可能な結合基の例としては、ヒドラゾン、エステル、及びアミノ酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-、C(O)O、又は-OC(O)を有し得る。特定の実施形態は、エステルの酸素(アルコキシ基)に結合した炭素が、アリール基、置換アルキル基、又はジメチル、ペンチル若しくはt-ブチルなどの三級アルキル基である場合である。これらの候補は、上記に記載される方法に類似した方法を使用して評価することができる。
【0077】
他の実施形態では、リンカーは、細胞中のエステラーゼ及びアミダーゼなどの酵素によって切断される、エステル系の切断可能な基を含み得る。エステル系の切断可能な基の例としては、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。エステル切断可能な基は、一般式-C(O)O-又は-OC(O)-を有する。これらのリンカー候補は、上記に記載される方法に類似した方法を使用して評価することができる。
【0078】
更なる実施形態では、リンカーは、細胞中のペプチダーゼ及びプロテアーゼなどの酵素によって切断される、ペプチド系の切断可能な基を含み得る。ペプチド系の切断可能な基は、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)及びポリペプチドを生じるような、アミノ酸間で形成されたペプチド結合である。ペプチド系の切断可能な基は、アミド基(-C(O)NH-)を含む。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン間で形成され得る。ペプチド結合は、ペプチド及びタンパク質を生じるような、アミノ酸間で形成される特殊な種類のアミド結合である。ペプチド系の切断可能な基は、一般に、ペプチド及びタンパク質を生じさせる、アミノ酸間に形成されるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定される。ペプチド系の切断可能な連結基は、一般式-NHCHRC(O)NHCHRC(O)-を有し、式中、R及びRは、2つの隣接するアミノ酸の側鎖である。これらの候補は、上記に記載される方法に類似した方法を使用して評価することができる。
【0079】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドにリガンドを結合するのに好適な他の種類のリンカーは、当技術分野において公知であり、米国特許第7,723,509号明細書;同第8,017,762号明細書;同第8,828,956号明細書;同第8,877,917号明細書;及び同第9,181,551号明細書に記載されるリンカーを含むことができ、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドに共有結合されるリガンドは、GalNAc部分、例えば、多価GalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、多価GalNAc部分は、三価GalNAc部分であり、オリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)の3’末端に結合される。他の実施形態では、多価GalNAc部分は、三価GalNAc部分であり、オリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)の5’末端に結合される。なお他の実施形態では、多価GalNAc部分は、四価GalNAc部分であり、オリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)の3’末端に結合される。更に他の実施形態では、多価GalNAc部分は、四価GalNAc部分であり、オリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)の5’末端に結合される。
【0081】
本発明の方法に使用されるオリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチドに結合され得る、例示的な三価及び四価GalNAc部分並びにリンカーを、下記の構造式I~IXに示す。本明細書に列記される式中の「Ac」は、アセチル基を表す。
【0082】
一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式Iの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、各nは独立して1~3であり、kは1~3であり、mは1又は2であり、jは1又は2であり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の3’末端に結合される。
【化1】
【0083】
別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式IIの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、各nは独立して1~3であり、kは1~3であり、mは1又は2であり、jは1又は2であり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の3’末端に結合される。
【化2】
【0084】
なお別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式IIIの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の3’末端に結合される。
【化3】
【0085】
更に別の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式IVの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の3’末端に結合される。
【化4】
【0086】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式Vの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、各nは独立して1~3であり、kは1~3であり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の5’末端に結合される。
【化5】
【0087】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式VIの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、各nは独立して1~3であり、kは1~3であり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の5’末端に結合される。
【化6】
【0088】
特定の一実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式VIIの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、X=O又はSであり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(波線で表される)の5’末端に結合される。
【化7】
【0089】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式VIIIの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、式中、各nは独立して1~3であり、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の5’末端に結合される。
【化8】
【0090】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、以下の式IXの構造を有するリガンド及びリンカーを含み、リガンドは、オリゴヌクレオチド化合物のオリゴヌクレオチド(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物のセンス鎖)(実線の波線で表される)の5’末端に結合される。
【化9】
【0091】
リガンド及びリンカーをオリゴヌクレオチドと共有結合させるために、ホスホロチオエート結合を式I~IXのいずれか1つに示されるホスホジエステル結合と置き換えてもよい。
【0092】
本発明の方法は、細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することを含む。本明細書で使用する場合、サプレッサータンパク質は、オリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を低減又は阻害するタンパク質の存在又は活性を指す。特定の実施形態では、サプレッサータンパク質は、細胞内の小胞輸送、特にエンドソーム輸送を負に制御することによって、受容体依存性エンドサイトーシスによって内在化したリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の遺伝子サイレンシング活性を低減又は防止する。本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質は、Ras関連タンパク質Rab-18(RAB18)、Zw10動原体タンパク質(ZW10)、シンタキシン18(STX18)、Sec1ファミリードメイン含有タンパク質2(SCFD2)、NSF付着タンパク質γ(NAPG)、滅菌アルファモチーフドメイン含有タンパク質4B(sterile alpha motif domain-containing protein 4B)(SAMD4B)、液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37A(vacuolar protein sorting-associated protein 37A)(VPS37A)、yes関連タンパク質1(YAP1)、サイクリンE1(CCNE1)、溶質キャリアファミリー30メンバー9タンパク質(solute carrier family 30 member 9 protein)(SLC30A9)、チューブリンε及びδ複合体タンパク質1(tubulin epsilon and delta complex protein 1)(TEDC1;C14orf80としても公知である)、低酸素誘導性因子1-αタンパク質阻害剤(hypoxia-inducible factor 1-alpha inhibitor protein)(HIF1AN)、又はTNF受容体関連因子2(TRAF2)である。特定の実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18、ZW10、STX18、SCFD2、NAPG、SAMD4B、又はVPS37Aである。特定の他の実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18、ZW10、又はSTX18である。本発明の方法の特定の一実施形態では、サプレッサータンパク質は、RAB18である。
【0093】
サプレッサータンパク質の発現又は活性は、細胞をサプレッサータンパク質の阻害剤と接触させることによって阻害することができる。サプレッサータンパク質の阻害剤は、阻害剤と接触させなかった細胞におけるサプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性と比較して、サプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性を少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%低減する。特定の実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、阻害剤と接触させなかった細胞におけるサプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性と比較して、サプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性を約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%低減する。一実施形態では、サプレッサータンパク質は、阻害剤と接触させなかった細胞におけるサプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性と比較して、サプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性を少なくとも75%低減する。別の実施形態では、サプレッサータンパク質は、阻害剤と接触させなかった細胞におけるサプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性と比較して、サプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性を少なくとも80%低減する。別の実施形態では、サプレッサータンパク質は、阻害剤と接触させなかった細胞におけるサプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性と比較して、サプレッサータンパク質の細胞内の量又は活性を少なくとも90%低減する。
【0094】
本発明の方法の特定の実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、サプレッサータンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)の発現を低減するオリゴヌクレオチドベースの阻害剤であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、本明細書に記載されるようなオリゴヌクレオチド化合物であり、オリゴヌクレオチド化合物は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。このようないくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。他の実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、本明細書に記載されるようなsiRNA又はshRNAなどの二本鎖オリゴヌクレオチド化合物である。一実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNA分子であり、アンチセンス鎖は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。別の実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチド化合物は、ループ領域によって共に結合されたセンス鎖及びアンチセンス鎖を含むshRNA分子であり、アンチセンス鎖は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む。
【0095】
サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列は、任意の種(例えば、非ヒト霊長類、ヒト)由来のサプレッサータンパク質のバリアント又はアイソフォームを含む、サプレッサータンパク質をコードする対立遺伝子バリアント及びスプライスバリアントなどの、あらゆるメッセンジャーRNA配列であり得る。サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列には、その相補的DNA(cDNA)配列として発現される転写物配列も含まれる。cDNA配列は、RNA塩基(例えば、グアニン、アデニン、ウラシル、及びシトシン)ではなく、DNA塩基(例えば、グアニン、アデニン、チミン、及びシトシン)として発現されるmRNA転写物の配列を指す。従って、いくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列又はcDNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を有する領域を含むオリゴヌクレオチド化合物であり得る。オリゴヌクレオチド化合物が実質的に又は完全に相補的であり得る選択されたサプレッサータンパク質の例示的なmRNA配列及びcDNA配列に関する、Ensembl Genomeデータベース又は全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)データベースにおける参照を下記の表1に列挙する。
【0096】
【表1】
【0097】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質はRAB18であり、RAB18の阻害剤は、配列番号8~10、5’-UUUAGCCUUAUUUCCAUCC-3’(配列番号25)、5’-AACGUAUCAUCUGUGAACC-3’(配列番号26)、5’-AUCGACUUCACGAUUUUCC-3’(配列番号27)、5’-CCUCUAUAAUAGCUGGGAGUUA-3’(配列番号28)、及び5’-CCCUGUGCACCUCUAUAAUAGC-3’(配列番号29)から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、RAB18の阻害剤は、配列番号25~29のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、チミンがウラシルに置換されている。他の実施形態では、サプレッサータンパク質はRAB18であり、RAB18の阻害剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、アンチセンス鎖は、配列番号8~10及び25~29から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。このような実施形態では、センス鎖のヌクレオチド配列は、アンチセンス鎖の配列と実質的に又は完全に相補的である。特定の実施形態では、RAB18の阻害剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、(i)センス鎖が配列番号5のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなり、アンチセンス鎖が配列番号8のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなり、(ii)センス鎖が配列番号6のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなり、アンチセンス鎖が配列番号9のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなり、又は(iii)センス鎖が配列番号7のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなり、アンチセンス鎖が配列番号10のヌクレオチド配列を含むか若しくはそれからなる。
【0098】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害するには、CRISPR-Casに基づく方法、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)に基づく方法、及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に基づく方法を含むがこれらに限定されない、任意の好適な公知のゲノム編集技術を使用してサプレッサータンパク質をコードする遺伝子を改変することが含まれ得る(例えば、Porteus,Annual Review of Pharmacology and Toxicology,Vol.56:163-190,2016;Maeder and Gersbach,Mol Ther.,Vol.24;430-446,2016を参照されたい)。遺伝子が活性若しくは機能の低減したサプレッサータンパク質のバリアントをコードするようにサプレッサータンパク質をコードする遺伝子を改変してもよく、又は遺伝子の発現を完全に排除するように(すなわち、遺伝子をノックアウトするように)遺伝子を改変してもよい。従って、そのような実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、遺伝子改変剤であり得る。利用するゲノム編集技術に応じて、遺伝子改変剤は、ヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ、TALEN、若しくはZFN)、又はヌクレアーゼ及び/若しくはガイドRNAをコードするベクターを含み得る。ガイドRNAとは、標的配列にハイブリダイズしてCasヌクレアーゼの標的配列への配列特異的結合を誘導するように、標的核酸配列と十分な相補性を有する配列を含むポリヌクレオチドを指す。TALENに基づく方法又はZFNに基づく方法の場合、ヌクレアーゼはサプレッサータンパク質をコードする遺伝子配列、例えば表1に記載される配列のいずれかの一部を認識するように遺伝子操作される。サプレッサータンパク質をコードする遺伝子を改変するためにCRISPR-Casシステムが使用される実施形態では、ガイドRNAは、サプレッサータンパク質をコードする遺伝子配列、例えば表1に記載される配列のいずれかの一部に相補的な配列を含む。標的遺伝子配列を改変するためにガイドRNAを設計する方法は当業者に公知であり、例えば、Mohr et al.,The FEBS Journal,Vol.283;3232-3238,2016及びBrazelton et al.,GM Crops & Food,Vol.6;266-276,2015に記載されている方法がある。特定の実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、Casヌクレアーゼ又はCasヌクレアーゼをコードするベクター/核酸と、サプレッサータンパク質をコードする遺伝子配列の一部に相補的な配列を含むガイドRNAとを含む遺伝子改変剤である。本明細書に更に記載されているように、遺伝子改変剤は、CRISPR-Casシステムに使用する場合はヌクレアーゼ又はCasヌクレアーゼとガイドRNAの両方をコードするウイルスベクターを使用して、並びにヌクレアーゼ又はCasヌクレアーゼ-ガイドRNA複合体をパッケージングすることが可能な脂質ベースの送達ビヒクルによって、細胞内に送達することができる。
【0099】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質はRAB18であり、RAB18の阻害剤は、配列番号11又は配列番号12の配列に相補的な配列を有するガイドRNAを含む遺伝子改変剤である。関連する実施形態では、RAB18の阻害剤は、配列番号8~10及び25~29から選択される配列を含むガイドRNAを含む遺伝子改変剤である。前述の実施形態のいずれかでは、遺伝子改変剤は、Casヌクレアーゼ又はCasヌクレアーゼをコードするベクター/核酸を更に含み得る。
【0100】
特定の実施形態では、本発明は、例えば、本明細書に記載される、又は当技術分野において公知のいずれかの阻害剤などのサプレッサータンパク質の阻害剤と細胞を接触させ、細胞をオリゴヌクレオチド化合物と接触させることによって、細胞内のサプレッサータンパク質の発現又は活性を阻害することを含む、細胞内のオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性を増強するための方法を提供する。オリゴヌクレオチド化合物、例えば本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物のいずれかのサイレンシング活性を増強することは、サプレッサータンパク質の発現若しくは活性が阻害されていない細胞、又はサプレッサータンパク質の阻害剤と接触させなかった細胞におけるオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性と比較して、遺伝子発現における低減のレベル、低減の持続時間、及び/又は低減の効力の観点から、サイレンシング活性が細胞内で増大していることを意味する。オリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性は、サプレッサータンパク質の発現若しくは活性が阻害されていない細胞、又はサプレッサータンパク質の阻害剤と接触させなかった細胞におけるオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性と比較して、本発明の方法によって、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、又は少なくとも30倍増強され得る。オリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性は、オリゴヌクレオチド化合物の存在下の標的遺伝子の発現の量を、オリゴヌクレオチド化合物の非存在下の細胞内の標的遺伝子の発現量と比較して測定することによって評価することができる。標的遺伝子の発現は、下記で更に記載されるように、標的mRNA、標的タンパク質、又は標的遺伝子の発現に関連する別のバイオマーカーの量又はレベルを測定することによって評価することができる。
【0101】
本明細書の実施例に記載されているように、サプレッサータンパク質(例えば、RAB18)の発現を阻害又は排除することは、リガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物によって媒介される標的遺伝子のノックダウンのレベルを著しく増大させ、それによって、通常ではオリゴヌクレオチド化合物を使用してサイレンシングすることが不可能な、極めて豊富なタンパク質の発現ですらも低減することが可能となる。従って、本発明はまた、本明細書に記載されるようなサプレッサータンパク質の阻害剤と細胞を接触させ、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物などのオリゴヌクレオチド化合物と細胞を接触させることを含む、細胞内の標的遺伝子の発現を低減させる方法を含み、オリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子の配列に実質的に又は完全に相補的な配列を含む。細胞は、インビトロ又はインビボであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、標的遺伝子の発現を低減させる必要のある対象(例えば、ヒト対象)に存在する。細胞は、標的遺伝子を天然に発現する細胞であってもよく、又は標的遺伝子を発現するように遺伝子操作された細胞若しくは細胞株であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞又は哺乳動物細胞株である。細胞は、脂肪細胞、上皮細胞、ニューロン、グリア細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、膵β細胞、マクロファージ、B細胞、腫瘍細胞、又は肝細胞を含むがこれらに限定されない、標的遺伝子を発現するあらゆる組織型の細胞であり得る。特定の実施形態では、細胞は、初代肝細胞などの肝細胞である。他の実施形態では、細胞は、HepAD38細胞、HuH-6細胞、HuH-7細胞、HuH-5-2細胞、BNLCL2細胞、Hep3B細胞、又はHepG2細胞などの肝臓細胞株である。一実施形態では、細胞は、Hep3B細胞である。
【0102】
本発明の方法によるオリゴヌクレオチド化合物と接触させた細胞又は動物における標的遺伝子発現の低減は、オリゴヌクレオチド化合物と接触させなかったか、又は対照オリゴヌクレオチド化合物と接触させた細胞又は動物における標的遺伝子発現と比較して判断することができる。例えば、いくつかの実施形態では、標的遺伝子発現の低減は、(a)本発明の方法によるオリゴヌクレオチド化合物と接触させた細胞における標的mRNAの量又はレベルを測定すること、(b)対照オリゴヌクレオチド化合物(例えば、細胞内では発現することのないRNA分子、若しくはナンセンス配列若しくはスクランブル配列を有するオリゴヌクレオチド化合物に誘導されるオリゴヌクレオチド化合物)と接触させた細胞、又は化合物を含まない細胞における標的mRNAの量又はレベルを測定すること、及び(c)(a)で処理された細胞に由来する測定された標的mRNAレベルと、(b)の対照細胞に由来する測定された標的mRNAレベルとを比較することによって評価される。比較する前に、処理された細胞及び対照細胞における標的mRNAレベルを、対照遺伝子(例えば、18SリボソームRNA又はハウスキーピング遺伝子)のRNAレベルに正規化してもよい。標的mRNAレベルは、ノーザンブロット分析、ヌクレアーゼプロテクションアッセイ、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、逆転写酵素(RT)-PCR、リアルタイムRT-PCR、定量PCR、ドロップレットデジタルPCRなどを含む様々な方法によって測定することができる。
【0103】
他の実施形態では、標的遺伝子発現の低減は、(a)本発明の方法によるオリゴヌクレオチド化合物と接触させた細胞における標的タンパク質の量又はレベルを測定すること、(b)対照オリゴヌクレオチド化合物(例えば、細胞内では発現することのないRNA分子、若しくはナンセンス配列若しくはスクランブル配列を有するオリゴヌクレオチド化合物に誘導されるオリゴヌクレオチド化合物)と接触させた細胞、又は化合物を含まない細胞における標的タンパク質の量又はレベルを測定すること、及び(c)(a)で処理された細胞に由来する測定された標的タンパク質と、(b)の対照細胞に由来する測定された標的タンパク質レベルとを比較することによって評価される。標的タンパク質レベルを測定する方法は当業者に公知であり、ウエスタンブロット、イムノアッセイ(例えば、ELISA)、及びフローサイトメトリーが挙げられる。
【0104】
本発明はまた、本明細書に記載されるようなサプレッサータンパク質の阻害剤と、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物などのオリゴヌクレオチド化合物とを対象に投与することを含む、それを必要とする対象の標的遺伝子の発現を低減させるための方法であって、オリゴヌクレオチド化合物は、標的遺伝子の配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む方法を提供する。本発明の方法のいくつかの実施形態では、標的遺伝子の発現は、例えば、遺伝子産物の過剰発現又はタンパク質バリアント若しくはアイソフォーム(例えば、遺伝子産物の変異形態)の発現が病理学的表現型の起因となる疾患又は障害に関連付けられる。本発明の方法の特定の実施形態では、標的遺伝子はヒト遺伝子である。例示的な標的遺伝子としては、LPA、PNPLA3、ASGR1、F7、F12、FXI、APOCIII、APOB、APOL1、TTR、PCSK9、HSD17B13、HPRT1、PPIB、EPAS1、DUX4、DMPK、XDH、SCNN1A、SCAP、KRAS、CD274、PDCD1、C3、C5、CFB、ALAS1、GYS1、HAO1、LDHA、ANGPTL3、SERPINA1、ALDH2、AGT、HAMP、LECT2、EGFR、VEGF、KIF11、AT3、CTNNB1、HMGB1、HIF1A、及びSTAT3が挙げられるが、これらに限定されない。標的遺伝子としては、B型肝炎及びC型肝炎ウイルス遺伝子、ヒト免疫不全ウイルス遺伝子、ヘルペスウイルス遺伝子などのようなウイルス遺伝子も挙げることができる。本発明の方法のいくつかの実施形態では、標的遺伝子は、ヒトマイクロRNA(miRNA)をコードする遺伝子である。本発明の方法の特定の実施形態では、標的遺伝子は、肝臓に発現する遺伝子である。
【0105】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、細胞又は対象において、標的遺伝子の発現が少なくとも50%低減する。本発明の方法の他の実施形態では、細胞又は対象において、標的遺伝子の発現が少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%低減する。更に他の実施形態では、細胞又は対象において、標的遺伝子の発現が約90%以上、例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上低減する。標的遺伝子発現の低減率は、本明細書に記載される方法だけでなく、当技術分野において公知の他の方法のいずれかによって測定することができる。
【0106】
本発明の方法の特定の実施形態では、方法は、サプレッサータンパク質の阻害剤と、標的遺伝子の配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド化合物と細胞を接触させることを含み、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、細胞の表面に発現する受容体のリガンドに共有結合されており、サプレッサータンパク質の阻害剤は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に相補的な又は完全に相補的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチド化合物である。いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、siRNAである。前述の実施形態のいずれかでは、第2のオリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAである。
【0107】
本発明の方法の特定の他の実施形態では、方法は、サプレッサータンパク質の阻害剤と、標的遺伝子の配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド化合物とを対象に投与することを含み、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、第1のリガンドに共有結合されており、サプレッサータンパク質の阻害剤は、サプレッサータンパク質をコードするmRNA配列と実質的に相補的な又は完全に相補的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチド化合物である。いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド化合物は、siRNAである。前述の実施形態のいずれかでは、第2のオリゴヌクレオチド化合物は、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAである。いくつかの実施形態では、第2のオリゴヌクレオチド化合物は、第2のリガンドに共有結合される。第1のリガンド、第2のリガンド、又は第1及び第2のリガンドの両方は、本明細書に記載されるリガンドのいずれかであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のリガンド、第2のリガンド、又は第1及び第2のリガンドの両方は、コレステロール部分、ビタミン、ステロイド、胆汁酸、葉酸部分、脂肪酸、炭水化物、グリコシド、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む。他の実施形態では、第1のリガンド、第2のリガンド、又は第1及び第2のリガンドの両方は、ガラクトース、ガラクトサミン、又はN-アセチル-ガラクトサミンを含む。一実施形態では、第1のリガンド、第2のリガンド、又は第1及び第2のリガンドの両方は、多価ガラクトース部分又は多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含む。前述の実施形態のいずれかでは、第1のオリゴヌクレオチド化合物に共有結合された第1のリガンドは、第2のオリゴヌクレオチド化合物に共有結合された第2のリガンドと同一である。このようないくつかの実施形態では、第1及び第2のリガンドは、ASGPRなどの肝臓細胞の表面に発現する受容体のリガンドである。本発明の方法の他の実施形態では、第1のリガンドは第2のリガンドとは異なるが、第1のリガンドと第2のリガンドの両方は、同一の細胞型に発現する受容体のリガンドである。例として、第1のリガンドは、肝細胞に発現するASGPRのリガンドである多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含み得、第2のリガンドは、同様に肝細胞に発現するLDL受容体のリガンドであるコレステロール部分を含み得る。
【0108】
本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物及び遺伝子改変剤は、トランスフェクション、ウイルス形質導入、脂質ベースの粒子、及び本明細書に更に記載されるようなリガンドへのコンジュゲーションを含む様々な方法によって細胞内に送達することができる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物及び/又は遺伝子改変剤は、ベクターから発現される。「ベクター」とは、遺伝物質を宿主細胞に導入するのに使用される、任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を指す。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター及び発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態で好ましい好適なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及びレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターが挙げられる。「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の標的配列と、作動可能に連結された標的配列を特定の細胞で発現させるのに必要となる適切な核酸制御配列とを含む、組換え核酸分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を及ぼすか、又はそれらを制御し、且つ、イントロンが存在する場合には、そこに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含み得るが、これらに限定されない。原核生物における発現に必要な核酸配列としては、プロモーター、任意選択によりエンハンサー配列、並びに終止シグナル及びポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0109】
サプレッサータンパク質の阻害剤が、本明細書に記載されるようなオリゴヌクレオチド化合物であるいくつかの実施形態では、サプレッサータンパク質の阻害剤は、オリゴヌクレオチド化合物が細胞内で発現されるように、プロモーター(例えば、RNA pol IIIプロモーター)に作動可能に連結されたオリゴヌクレオチドを含むベクター(例えば、ウイルスベクター)を使用して、細胞内に送達される。このような実施形態では、プロモーターに作動可能に連結されたオリゴヌクレオチド配列は、上記に記載されるようなアンチセンスオリゴヌクレオチド又はshRNAであり得る。本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を誘導することが可能な核酸分子が生成されるように、2つ以上の核酸配列が連結されていることを指す。例えば、ヌクレオチド配列に「作動可能に連結された」ベクターの制御配列は、制御配列の転写活性と適合する条件下でヌクレオチド配列の発現が達成されるように、ヌクレオチド配列にライゲートされる。種々の潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターは、当業者によく知られている。例えば、哺乳動物宿主細胞と共に使用するのに好適なプロモーターとしては、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2型など)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが挙げられる。所望の産物がオリゴヌクレオチド化合物又はガイドRNAである実施形態では、プロモーターは、U6プロモーターなどのRNA pol IIIプロモーターであり得る。
【0110】
サプレッサータンパク質の阻害剤が、Casヌクレアーゼ、ZFN、又はTALENなどのヌクレアーゼを含む遺伝子改変剤である他の実施形態では、ヌクレアーゼは、目的の細胞に発現させるのに好適なプロモーターに作動可能に連結された、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むベクター(例えばウイルスベクター)を使用して細胞に送達することができる。遺伝子改変剤がガイドRNAを更に含む実施形態(例えば、CRISPR-Casゲノム編集方法を利用する場合)では、ベクターは、U6プロモーターなどのRNA pol IIIプロモーターに作動可能に連結されたガイドRNA配列を含むガイドRNA発現カセットを更に含み得る。代替的な実施形態では、ヌクレアーゼをコードする第1のベクターと同時に、又は第1のベクターと接触させた後に、ガイドRNA発現カセットを含む第2のベクターと細胞を接触させることができる。
【0111】
本発明の方法の他の実施形態では、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物及び遺伝子改変剤は、脂質ベースの送達方法を使用して細胞に送達することができる。例えば、オリゴヌクレオチド化合物及び遺伝子改変剤の送達ビヒクルとして、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースの系などのコロイド分散系が使用され得る。核酸を送達するのに好適な市販の脂肪エマルションとしては、Intralipid(登録商標)(Baxter International Inc.)、Liposyn(登録商標)(Abbott Pharmaceuticals)、Liposyn(登録商標)II(Hospira)、Liposyn(登録商標)III(Hospira)、Nutrilipid(B.Braun Medical Inc.)、及び他の類似の脂質エマルションが挙げられる。インビボにおける送達ビヒクルとして使用するための好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち、人工膜小胞)である。オリゴヌクレオチド化合物及び/又は遺伝子改変剤は、リポソーム内に封入されてもよく、又は、リポソーム、特にカチオン性リポソームと複合体を形成してもよい。或いは、オリゴヌクレオチド化合物及び/又は遺伝子改変剤は、脂質、特にカチオン性脂質と複合体化されてもよい。好適な脂質及びリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、及びジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))、並びにカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。そのようなコロイド分散系の調製及び使用は、当技術分野においてよく知られている。また、例示的な製剤は、米国特許第5,981,505号明細書、米国特許第6,217,900号明細書;米国特許第6,383,512号明細書;米国特許第5,783,565号明細書;米国特許第7,202,227号明細書;米国特許第6,379,965号明細書;米国特許第6,127,170号明細書;米国特許第5,837,533号明細書;米国特許第6,747,014号明細書;及び国際公開第03/093449号パンフレットにも開示されている。
【0112】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物及び/又は遺伝子改変剤は、脂質製剤内に完全に封入されて、例えば、SNALP又は他の核酸脂質粒子を形成する。本明細書で使用する場合、「SNALP」という用語は、安定的な核酸脂質粒子を指す。SNALPは、典型的には、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を妨げる脂質(例えば、PEG脂質コンジュゲート)を含有する。SNALPは、静脈内注射後に長期間の循環寿命を示し、且つ遠位部位(例えば、投与部位から物理的に隔てられた部位)で蓄積するため、全身投与に極めて有用である。核酸脂質粒子は、典型的には、平均直径が約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、又は約70nm~約90nmであり、実質的に非毒性である。加えて、核酸は、核酸脂質粒子中に存在する場合、水溶液中でのヌクレアーゼによる分解に対して耐性がある。核酸脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号明細書、同第5,981,501号明細書、同第6,534,484号明細書、同第6,586,410号明細書、同第6,815,432号明細書及び国際公開第96/40964号パンフレットに開示されている。従って、サプレッサータンパク質の阻害剤が、本明細書に記載されるようなオリゴヌクレオチド化合物であるいくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、SNALP又は他の種類のリポソームに封入され得る。同様に、サプレッサータンパク質の阻害剤が、ヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ、ZFN、又はTALEN)を含む遺伝子改変剤であるいくつかの実施形態では、ヌクレアーゼをコードするmRNAは、任意選択によりガイドRNAによって(例えば、CRISPR-Casシステムを使用する場合)、SNALP又は他のリポソームに組み込まれ得る。
【0113】
本発明の方法の特定の好ましい実施形態では、目的の遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチド化合物は、上記で詳細に記載されているように、細胞の表面に発現する受容体のリガンドにコンジュゲートすることによって、インビトロ又はインビボで細胞に送達される。従って、このような実施形態では、オリゴヌクレオチド化合物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物中で製剤化され得る。このような組成物は、標的遺伝子の発現の低減を、それを必要とする対象において行うのに有用である。臨床適用が企図される場合、医薬組成物は、目的の用途に適切な形態で調製される。一般に、このことは、パイロジェンと同様に、ヒト又は動物に有害となる虞のある他の不純物も本質的に含まない組成物を調製することが必要とされる。
【0114】
「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という語句は、動物又はヒトに投与される場合に、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤」としては、医薬、例えばヒトの投与に好適な医薬の製剤化に使用するのに容認される溶媒、緩衝液、溶液、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、並びに吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に活性な物質にそのような媒体及び薬剤を使用することは、当技術分野においてよく知られている。任意の従来の媒体又は薬剤がオリゴヌクレオチド化合物と適合しない場合を除いて、治療用組成物中で使用することが企図される。また、補助的な活性成分も、組成物のオリゴヌクレオチド化合物を不活性化しないのであれば、組成物に組み込むことができる。
【0115】
医薬組成物を製剤化するための組成物及び方法は、投与経路、治療すべき疾患若しくは障害の種類及び程度、又は投与すべき用量が挙げられるがこれらに限定されない、多くの基準に依存する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、意図される送達経路に基づいて製剤化される。例えば、特定の実施形態では、医薬組成物は、非経口送達用に製剤化される。非経口の送達形態としては、静脈内、動脈内、皮下、髄腔内、腹腔内、又は筋肉内注射又は注入が挙げられる。一実施形態では、医薬組成物は、静脈内送達用に製剤化される。別の実施形態では、医薬組成物は、皮下送達用に製剤化される。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される有効量のオリゴヌクレオチド化合物を含む。「有効量」とは、有利な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量とは、対象の特定の組織又は細胞型(例えば、肝臓又は肝細胞)内の標的遺伝子の発現を低減させるのに十分な量である。
【0117】
医薬組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、あらゆる一般的な経路を介して行われ得る。そのような経路としては、非経口(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内若しくは静脈内)、経口、経鼻、頬側、皮内、経皮、及び舌下経路、又は標的組織(例えば、肝臓組織)への直接注射若しくは肝門脈を介する送達が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与される。例えば、特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与される。他の実施形態では、医薬組成物は、皮下投与される。
【0118】
注射用途に好適な医薬組成物は、例えば、注射用滅菌溶液又は分散体を即時調製するための滅菌水溶液又は分散体及び滅菌粉末を含む。一般に、これらの調製物は、滅菌済みであり、容易に注射可能となる程度の流体である。調製物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。適切な溶媒又は分散媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合液、並びに植物油を含有し得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散体の場合に必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによってもたらすことができる。
【0119】
滅菌注射溶液は、活性化合物を適切な量で所望の(例えば、上記に列挙したような)他の任意の成分と共に溶媒中に組み込んだ後に、濾過滅菌することによって調製してもよい。一般的に、分散体は、塩基性分散媒及び所望の他の成分、例えば上記で列挙された成分を含有する滅菌ビヒクル中に、滅菌された様々な活性成分を組み込むことによって調製される。注射用滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法としては、真空乾燥及び凍結乾燥技術が挙げられ、これは、活性成分及び任意の追加の所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から得るものである。
【0120】
本発明の組成物は、一般に、中性又は塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸若しくはリン酸)又は有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)から誘導される酸付加塩(遊離アミノ基により形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは水酸化第二鉄)から誘導することもでき、又は有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導することもできる。
【0121】
水溶液中で非経口投与する場合、例えば、溶液は、通常適切に緩衝化され、液体希釈剤は、例えば十分な生理食塩水又はグルコースにより最初に等張にされる。このような水溶液は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に使用され得る。特に本開示を考慮すれば、当業者に公知であるような滅菌水性媒体を使用することが好ましい。例として、単回用量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下注入液1000mlに添加してもよく、又は提示された注入部位に注射してもよい(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。ヒトに投与する場合、調製物は、FDA基準に要求される無菌性、発熱性、一般的安全性及び純度の基準を満たさなければならない。特定の実施形態では、医薬組成物は、滅菌生理食塩水及び本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物を含むか又はそれらからなる。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物及び滅菌水(例えば、注射用水、WFI)を含むか又はそれらからなる。更に他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド化合物及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むか又はそれらからなる。
【0122】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみのために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0123】
実施例1.siRNA媒介遺伝子サイレンシングを調節するタンパク質の同定
siRNA治療用分子の細胞内送達を制限する細胞性因子を明らかにするために、ヒト肝細胞癌Hep3B細胞におけるHPRT1遺伝子を標的とするN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分コンジュゲートsiRNAの送達を利用して、プールしたゲノムワイド機能喪失スクリーニングを実施した。Hep3B細胞株を、その増殖能とアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)の発現レベルの高さから、スクリーニングに選択した。加えて、Hep3B細胞は、GalNAc部分コンジュゲートsiRNAにより誘発されるサイレンシングによって、標的遺伝子を強固にノックダウンすることが示された(データは示さず)。
【0124】
CRISPR関連タンパク質9(Cas9)を安定的に発現するHep3B細胞を、3つの異なる感染多重度(MOI;0.5、1、及び2)のTransEDIT CRISPR Cas9ヌクレアーゼ発現レンチウイルス(pCLIP-Cas9-ヌクレアーゼ-EFS-Blast;TransOMIC technologies、Huntsville、AL、カタログ番号NC0956087)で細胞を形質導入することによって生成した。導入後に、全ての細胞を10μg/mLのブラストサイジンで選択して維持した。いずれのCas9安定発現Hep3Bプールにおいても、毒性は観察されなかった。Cas9安定Hep3B細胞の編集能力を、2つの標的遺伝子、SLC3A2及びASGR1における編集の有効性を検証することによって評価した。SLC3A2遺伝子(SLC3A2-83及びSLC3A2-84)又はASGR1遺伝子(ASGR1-77及びASGR1-78)を標的とする2つの異なるガイドRNA(gRNA)レンチウイルスベクターを、親Hep3B細胞株と各Cas9安定Hep3Bプールの両方に個々に形質導入した。これらのgRNAレンチウイルスベクターを下記の表2に示す。gRNAレンチウイルスを形質導入する前と後のSLC3A2及びASGR1の発現レベルを、抗体染色後のフローサイトメトリー分析によって測定した。親Hep3B細胞株と比較して、全てのCas9安定Hep3Bプールでは、両方の標的遺伝子が正常にノックアウトされており(図1A及び1B)、Cas9安定Hep3BCas9細胞が編集機能を十分に備えていることが実証された。3つのCas9安定Hep3Bプールの全てで編集効果が類似していたため、潜在的なCas9毒性を最小化するために、最も低いMOIを有するもの(0.5、Hep3BCas9と称する)を選択し、GalNAc部分コンジュゲートsiRNAによって誘導されるサイレンシングの潜在的な調節因子を同定するために、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)スクリーニングを実施した。
【0125】
【表2】
【0126】
GalNAc部分コンジュゲートsiRNAの効力の潜在的な調節因子を同定するために、CRISPRノックアウトスクリーニングにHPRT1-6TGに基づく生存/死滅選択系を使用した。6-チオグアニン(6TG)は、プリン類似体であり、ヒトではHPRT1遺伝子にコードされるヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)によってリン酸化された後にDNA及びRNAに組み込まれ、その結果として細胞死を生じさせる(Liao et al.,Nucleic Acids Res,Vol.43(20);e134,doi:10.1093/nar/gkv675,2015)。細胞内のHPRT1の発現をノックダウン又はノックアウトすることにより、6TGに対する耐性がもたらされ、それらの細胞の生存が可能となる。2’-フルオロ及び2’-メトキシ(OMe)修飾を組み込んだヒトHPRT1を標的とするGalNAc部分コンジュゲートsiRNA(二重鎖番号8172)を設計し、検証を行った。二重鎖番号8172のセンス配列及びアンチセンス配列を下記の表5に示す。GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAが細胞に侵入してHPRT1遺伝子サイレンシングを誘導することが可能である場合、これらの細胞は6TGの存在下で生存することができる。そうでない場合、細胞は6TGの選択によって死滅することとなる。CRISPRノックアウト条件下において、ある遺伝子がsiRNA活性に通常必要とされている場合、この遺伝子をノックアウトすることでsiRNAの機能が低下又は消失することとなり、6TGの選択によって細胞が排除される。或いは、ある遺伝子がsiRNAの活性を阻害又は遮断するように通常機能している場合、この遺伝子をノックアウトすることでsiRNAの効力が向上し、細胞が6TGの選択で生存することが可能となる。従って、生存細胞でgRNAの塩基配列を決定する場合、濃縮されたgRNAにはsiRNAの活性を通常阻害し得る遺伝子が反映されるが、siRNAの機能に不可欠な遺伝子を標的とするgRNAは枯渇することになる。しかしながら、siRNAに関連しないメカニズムによって細胞生存率に影響を及ぼす遺伝子を標的とする他のgRNAも生細胞集団から枯渇してしまうため、枯渇したgRNA集団からsiRNAに必須となる遺伝子を同定することは困難となる。従って、GalNAc部分コンジュゲートsiRNAによって誘導されるサイレンシングを阻害する遺伝子を同定することができるように、生存細胞由来の濃縮されたgRNAに焦点を当てて、CRISPRノックアウトスクリーニングによる分析を行った。
【0127】
最初に、siRNAで処理されていないHep3BCas9細胞におけるベースラインの6TG死滅曲線を確定した。6TGに起因する不十分な死滅と過剰な死滅の両方を回避するため、100μMの6TG(約IC70)及び20μMの6TG(約IC50)を使用して小規模なパイロットランを実施した。80KのゲノムワイドgRNAレンチウイルスライブラリー(CRISPR KOHGW 80K(ロット番号17050301)、Cellecta、Mountain View、CA)でHep3BCas9細胞を形質導入し、ゲノムワイドノックアウトプールを生成した。最初に、細胞を4つの群(0.6E+06細胞/群):1)siRNAのみ、2)6TGで処理したsiRNA、3)6TGのみ、及び4)陰性対照に均等に分けた。十分ではあるが過剰でないsiRNA効果を得るために、750nM(約IC60)のGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)を、実験の0日目に第1群及び第2群に添加した。実験の3日目に、各群から組織培養培地を除去し、次いで、第2群及び第3群には100μMの6TG又は20μMの6TGを添加する一方で、第1群及び第4群には非選択完全増殖培地を添加した。6TGで処理した後に、細胞を3日間インキュベートした。次いで、細胞を分割し、6TG培地を6TGを含まない完全増殖培地で交換し、更に3日間培養した。6TG処理後の3日目と6TG処理後の6日目に、細胞数の測定値(ViCellによって測定した)を記録した(図2A及び2B)。図2Aに図示されるように、6TG処理後の3日目では、6TGのみの群は生存細胞が35%であったが、HPRT1-si+6TG群は生存細胞が52%であった。6TG処理後の6日目では、6TGのみの群は生存細胞が5%しかなかったが、HPRT1-si+6TG群は生存細胞が17%であった(図2B)。これらの結果は、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAによる処理により、部分的に保護されたことを示している。これにより、RNA干渉(RNAi)活性を増強する遺伝子ノックアウトを検出するのに非常に適したスクリーニング表現型がもたらされる。この初期スクリーニングからの知見に基づき、大規模ゲノムワイドノックアウトスクリーニングの条件として、6日間の100μMの6TG処理が選択された。
【0128】
siRNAの投与量の影響を試験するために、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)の異なる2つの濃度、150nMのsiRNAコンジュゲート(低用量群)及び750nMのコンジュゲート(高用量群)を用いて大規模スクリーニングを実施した。野生型U6プロモーター下でgRNAを発現し、ヒトユビキチンCプロモーター下でTagRFP及びPuro耐性遺伝子を発現するgRNAレンチウイルスライブラリーでHep3BCas9細胞を形質導入した。ライブラリーは、約19,000個の遺伝子をカバーし、各遺伝子に対して4つのgRNAを含む。gRNAレンチウイルスライブラリーを9.2E+07のHep3BCas9細胞に形質導入した。RFP陽性細胞集団によって反映された実際のライブラリーの形質導入効率(61%)を、形質導入後の4日目にフローサイトメトリー分析によって確認した。計算に基づくと、実際のgRNAレンチウイルスライブラリーの形質導入のMOIは約0.9であり、実際のカバレッジは1035であった。次いで、形質導入細胞をピューロマイシンとブラスチジンで14日間選択した。選択後の14日目では、フローサイトメトリーによって細胞の87%がRFP陽性であった(細胞の87%でgRNAが組み込まれたことを示す)。選択後の14日目に、1E+08細胞をベースライン試料として採取し、冷凍した。残りの細胞を3つの群(2.4E+08細胞/群)に均等に分けた:第1群を低用量群として150nMのGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)で処理し、第2群を高用量群として750nMのGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAで処理し、群3をsiRNAを含まない対照として設定した。siRNA処理後の3日目に、6TG処理前の試料として、各群から2E+08細胞を採取して冷凍し、次いで各群の残りの細胞を更に2つのサブグループ:a)6TGを含まない群、及びb)6TG群に分けた。siRNAを含む細胞培養培地を各フラスコから除去し、6TG群の各フラスコには100μMの6TGを含む新鮮な培地を添加し、6TGを含まない群の各フラスコには6TGを含まない新鮮な培地を添加した。全ての細胞を更に3日間インキュベートし、次いで、全ての細胞を6TGを含まない新鮮な培地に分割した。最終的に3日間インキュベートした後に、全ての細胞を採取した。製造業者の指示書に従い、Gentra Puregene Cellキット(QIAGEN INC、カタログ番号158767)を使用して、採取された全ての試料からゲノムDNA試料を抽出し、次世代シークエンシング(NGS)バーコードシークエンシングに供した。NGSシークケンスの結果を、OGAアルゴリズム(Meisen et al.,Mol Ther Methods Clin Dev,Vol.17;601-611,2020)によって分析した。カットオフラインとして、偽発見率(FDR)<0.2を使用した。全ての試料はgRNAライブラリーの良好な再現性を維持していた(約77,000個のgRNAが全体的に類似した分布で存在する)。加えて、HPRT1を標的とするgRNAは、6TGを含まない群と比較して、6TG処理群において約2倍で正常に濃縮されていた(データは示さず)。
【0129】
ノックアウトされた場合にGalNAc部分コンジュゲートsiRNAの内部移行、輸送又はRNAi活性を向上させることができる遺伝子を同定するために、siRNAと6TGの両方で処理した試料中では濃縮されるが、6TGのみで処理した対照群では濃縮されないgRNAに焦点を当てた分析を行った。これらのヒットには、ノックアウトされた場合に、1)HPRT1 siRNAのサイレンシング効力を増強する、2)siRNAの非存在下で6TGに対する感受性を向上させる、又は3)6TGの存在下で細胞生存率を増強することができる遺伝子が含まれる。最も強力な効力を有する遺伝子を同定するために、高用量(750nM)及び低用量(150nM)の両方のGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAと6TGで処理された群の中で、6TGのみの処理群と比較すると大幅に(FDR<0.2)濃縮されている遺伝子ヒットを選択した(図3A)。この分析により、以下の17個の遺伝子:ADK、C14orf80(TEDC1としても公知である)、CAB39、CCNE1、DENR、FKBP1A、HIF1AN、NAPG、NDUFB11、RAB18、SAMD4B、SCFD2、SLC30A9、SNRNP40、TRAF2、VPS37A、及びYAP1が同定された(図3A)。これらの17個の遺伝子のいずれかが、siRNA処理の非存在下の6TG処理に対する細胞の感受性に影響を及ぼしているかどうかを知るために、これらの遺伝子を、siRNA又は6TGで処理しなかった細胞に由来する試料(siRNAを含まず、6TGを含まない試料)に対して6TG単独で処理した群(siRNAを含まない)で枯渇した遺伝子でプロットした(図3B)。図3Bにおいて、横軸は6TGに対する感受性を示す。遺伝子の発現がノックアウトされた場合に6TGに対する感受性が増強し、6TGで処理すると強力な細胞死をもたらす遺伝子は、濃縮され、FDRの小さい横軸上にある。FDR<0.2をカットオフとして設定した場合、8つの遺伝子が6TGの処理に対する感受性を促進するものとして同定された(図3B)。残りの9つの遺伝子は、横軸上の大きいFDRによって示されるように、ノックアウトされた場合でも6TGの感受性に影響しなかった。これら9つの遺伝子(RAB18、YAP1、CCNE1、SLC30A9、C14orf80(TEDC1としても公知である)、HIF1AN、TRAF2、NAPG及びSCFD2)の濃縮は、恐らくは、siRNAの送達及び活性における役割に直接的に関与するものと思われた。従って、これらの遺伝子の発現や、又はこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することにより、GalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子などのリガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性を増強することができる。
【0130】
実施例2.siRNAサイレンシング活性のタンパク質調節因子の検証
HPRT1-6TG選択方法を使用して同定された候補を、異なるアッセイシステムによって独立して検証することが必要である。実施例1に記載されるゲノムワイド機能喪失スクリーニングで同定されたヒットを検証するために、マルチプレックス化合成gRNA(Synthego Corporation、Redwood City、CA)を用いる二次スクリーニングを使用した。このマルチガイド方式では、標的遺伝子に大きな欠失を誘導し、単一のgRNAよりも効率的な標的遺伝子のノックアウトを誘導するために、互いに近接して設計された3つのgRNAが、共にCas9+細胞に送達される。
【0131】
実施例1に記載される初期スクリーニングで同定された遺伝子(RAB18、CCNE1、SLC30A9、NAPG、SCFD2、VPS37A、SAMD4B及びCAB39)を含む58個の選択された遺伝子のマルチプレックス化合成gRNAを、いくつかの対照遺伝子(AGO2、ASGR1、及びASGR2)と共に、リポフェクタミンCRISPRMAX Cas9トランスフェクション試薬(Invitrogen、カタログ番号CMAX00008)を使用して、96ウェルプレート形式でHep3BCas9安定細胞にトランスフェクトした。最初に、0.3μMのマルチプレックス化合成gRNA1.5μLを、各ウェルで8.5μLのOpti-MEM培地と混合した。次いで、5μLのOpti-MEM培地に希釈した0.2μLのCRISPRMAX試薬を各ウェルに添加し、室温で5~10分間インキュベートした。インキュベート後に、Hep3BCas9安定細胞85μL(1ウェルあたり15,000細胞)を各ウェルに添加した。プレートを20分間静置してから37℃の組織培養インキュベーターに入れ、トランスフェクションして約6時間後に、トランスフェクション培地を10%FBS及び1%AA(抗生物質-抗真菌溶液)を含むEMEMと交換した。インキュベート後の3日目に、細胞を1:6の比率で分割した。CRISPRMAXによるトランスフェクションの後に、細胞を合計で6日間インキュベートし、タンパク質をノックダウンさせた。トランスフェクトしてから6日目後に、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)、抗ASGR1抗体にコンジュゲートされたHPRT1 siRNA(二重鎖番号6709)、又はコレステロールにコンジュゲートされたHPRT1 siRNA(二重鎖番号17102)で細胞を処理した。これらのHPRT1 siRNAコンジュゲートの構造を、下記の表5に示す。HPRT1 siRNAコンジュゲートを所望の濃度(500nM、100nM及び20nM)で各ウェルに添加し、続いて37℃の組織培養インキュベーター内で4日間インキュベートした。各試料のトータルRNAを、KingFisher Flex System(Thermo Fisher Scientific)及びMagMAX mirVana Total RNA Isolation Kit(Applied Biosystems、カタログ番号A27828)を使用することによって、製造業者の指示書に従って抽出した。次いで、Applied Biosystems High Capacity Reverse Transcription Kit(カタログ番号4368813)を使用してトータルRNA試料からcDNAを合成し、これをddPCR(ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応)によってsiRNA活性を定量化するために使用した。ddPCR反応は、BioRad ddPCR Supermix for Probes(カタログ番号1863010)を使用して、ユーザーマニュアルに従って組み立てた。次いで、QX200 Automated Droplet Generator(BioRad、カタログ番号1864101)によってドロップレットを生成した。次いで、96-Deep Well Reaction Moduleを備えたC1000 Touch Thermal Cycler(BioRad、カタログ番号1851197)でサーマルサイクリング反応を行った。次いで、QX200 Droplet Reader(BioRad、カタログ番号1864003)で反応物を読み取り、BioRad QuantaSoftソフトウェアパッケージを使用することで分析を行った。プライマー/プローブ比が3.6:1の、ddPCRアッセイ用に予め設計されたプライマー/プローブを、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)から入手した。HPRT1遺伝子及びハウスキーピングTBP(TATAボックス結合タンパク質)遺伝子を定量化するのに使用したプライマー/プローブのアッセイIDは、それぞれHs.PT.39a.22214821及びHs.PT.58.19489510であった。各ウェルで、標的遺伝子(HPRT1)とハウスキーピングTBP遺伝子の両方のddPCRコピー数の測定値(コピー数/20μL)を記録した。標的遺伝子のddPCRの測定値を、同じウェルから採取したTBPのddPCRの測定値で除算することによって、正規化された標的遺伝子のmRNAレベルを算出した。得られたsiRNA処理試料の数を、更にsiRNAを含まない処理試料の数で除算して、標的遺伝子のmRNAレベルの測定値のパーセンテージを得た。
【0132】
選択された遺伝子をノックアウトした細胞における、ddPCRによって測定したときのHPRT1 siRNAサイレンシング効力(siRNAを含まない対照に正規化した)を、下記の表3に示す。予想されるように、AGO2をマルチプレックス化合成gRNAでノックアウトした場合、試験された全てのsiRNAコンジュゲートによって、HPRT1 siRNAサイレンシング活性が消失する。ASGR1はASGPRの極めて重要な構成要素であるため、ASGR1 CRISPR-KOにより、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAと同様に、抗ASGR1抗体コンジュゲートHPRT1 siRNAに対しても反応の喪失がもたらされる。しかしながら、ASGR1のノックアウトは、コレステロールコンジュゲートHPRT1 siRNAの機能には影響を及ぼさなかった。これらの結果は、マルチプレックス化合成gRNAシステムが予想通りに機能していたことを示している。表3に示すように、CRISPRスクリーニングヒットであるRAB18、SCFD2、NAPG、及びSAMD4Bを、マルチプレックス化合成gRNAでノックアウトすると、siRNAコンジュゲートの効力が異なる程度に増強された。VPS37Aは、コレステロールコンジュゲートsiRNAの効力を特異的に増強した。他のスクリーニングヒットであるCAB39、CCNE1及びSLC30A9は、マルチプレックス化合成gRNAによる手法では検証することができなかった。ZW10及びSTX18によってコードされるタンパク質は、RAB18タンパク質と相互作用することが示されている(Xu et al.,J Cell Biol,Vol.217;975-995,2018;Li et al.,Cell Rep,Vol.27;343-358 e345,2019)。マルチプレックス化合成gRNAによるZW10及びSTX18のノックアウトでも、siRNAサイレンシング効果が増強された(表3)。本実施例における実験結果は、RAB18、SCFD2、NAPG、VPS37A、及びSAMD4Bを含む、siRNAサイレンシング活性の潜在的な調節因子として同定された遺伝子のいくつかが、マルチプレックス化合成gRNAを使用することによる、第二のアレイ化CRISPRスクリーニングシステムによって検証されたことを示している。
【0133】
【表3】
【0134】
実施例3.RAB18発現を阻害することによって複数のsiRNAコンジュゲートのサイレンシング効果が増強される
RAB18は機能喪失スクリーニングで検出された唯一のRABファミリーメンバーであり、RABファミリーが細胞内小胞輸送の調節に重要なものであることから、RAB18がHep3B細胞のsiRNA活性を調節するメカニズムを理解するために、更なる実験を行った。RAB18の機能について研究するために、ヒトRAB18遺伝子を標的とする異なる3つのsiRNA分子(siRAB18-1、siRAB18-2、及びsiRAB18-3)をAmbion(Austin、TX;カタログ番号4390824、siRNA ID番号s22703、s22704、及びs22705)から入手し、それらのHep3B細胞におけるRAB18のサイレンシング効力について検証した。RAB18標的siRNA分子のそれぞれのセンス鎖及びアンチセンス鎖の核酸塩基配列を、下記の表4に示す。各siRNA分子は、センス鎖の3’末端とアンチセンス鎖の3’末端の両方に2ヌクレオチドのオーバーハングを含む、19塩基対の二重鎖領域を有していた。非標的siRNA(siNTC;Invitrogen;カタログ番号4390843)を陰性対照として使用した。
【0135】
【表4】
【0136】
RAB18標的siRNA分子の効力を試験するために、いくつかの濃度のそれぞれ3つのsiRNA分子(0.24nM~50nM)又は滅菌水(陰性対照)を、リポフェクタミンRNAiMAX(Invitrogen、カタログ番号13778075)を使用して、Hep3B細胞に個別に二度繰り返してリバーストランスフェクトした。トランスフェクトしてから24時間後、製造業者の指示書に従って、MagMAX mirVana Total RNA Isolation kit(Applied Biosystems、カタログ番号A27828)を使用して、細胞を溶解してRNAを採取し、Applied Biosystems High Capacity Reverse Transcription Kit(カタログ番号4368813)を使用して、ddPCR分析のために逆転写した。ハウスキーピング遺伝子であるTBPで正規化したRAB18のddPCR測定値を使用して、RAB18のmRNAレベルの正規化されたパーセンテージを算出した。結果を図4Aに示す。試験した3つのRAB18標的siRNA分子の中で、siRAB18-3がRAB18の発現を低減するのに最も高い効力を示したため(図4A)、HPRT1を標的とするGalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子のサイレンシング活性におけるRAB18の機能を研究する更なる実験のために選択した。
【0137】
GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAの効力に及ぼすRAB18ノックダウンの効果を分析するために、非標的対照siRNA分子(siNTC)(50nM)又はsiRAB18-3(50nM)をHep3B細胞にリバーストランスフェクトした。トランスフェクトしてから24時間後に、細胞をトリプシン処理し、EMEM中で2回洗浄して残留するトランスフェクション試薬を除去し、次いでPBS又は複数の濃度のGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)のいずれかを含む96ウェルプレートに蒔いた。GalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートによる処理後の4日目に、上記に記載されるようにRNAを単離してcDNAを合成するために細胞を溶解した。図4Bに図示されるように、ddPCRによって測定されたRAB18のmRNAは、二重鎖番号8172による処理後の4日目にsiRNA18-3でトランスフェクトした細胞では、siNTCでトランスフェクトした細胞のRAB18のmRNAレベルと比較して低レベル(23.2%)で維持された。また、二重鎖番号8172による処理後の4日目に、HPRT1のmRNAのレベルをddPCRによって測定した。図4Cに示されるように、HPRT1発現を低減するGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAの効力は、siNTCでトランスフェクトした細胞と比較して、siRAB18-3でトランスフェクトしたHep3B細胞の方が大きかった。特に、siRAB18-3トランスフェクト細胞におけるGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートのIC50は24.8nMであったのに対し、siNTCトランスフェクト細胞では223.6nMであり(図4C)、効力は10倍に向上した。
【0138】
次に、RAB18の機能を完全に消失させるために、RAB18を標的とする2つのレンチウイルスgRNAベクター(SIGMAベクター:U6-gRNA:PGK-puro-2A-tagBFP)をHep3BCas9細胞に形質導入することによって、2つのRAB18ノックアウトプール(RAB18_KO_1及びRAB18_KO_2)を生成した。RAB18 gRNAレンチウイルスベクターの構造的特徴は以下の通りである:
・ RAB18 gRNAレンチウイルスベクター番号1:サンガークローンID:HS5000033611;DNA標的配列:TAACTCCCAGCTATTATAGAGG(配列番号11)
・ RAB18 gRNAレンチウイルスベクター番号2:サンガークローンID:HS5000033612;DNA標的配列:GCTATTATAGAGGTGCACAGGG(配列番号12)
【0139】
Amplicon-EZシークエンシングによってRAB18のノックアウト効率を実証した(データは示さず)。RAB18遺伝子をノックアウトしても、Hep3BCas9細胞の細胞生存率が変化することはなかった(データは示さず)。HPRT1-6TG選択スクリーニングによってRAB18が同定されたため、RAB18ノックアウト細胞で同じHPRT1-6TGスクリーニングアッセイを繰り返した。具体的には、実験の0日目に、Hep3BCas9細胞と2つのRAB18ノックアウト細胞を、様々な濃度のGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)又はGalNAc部分コンジュゲートPPIB(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼB)siRNA(二重鎖番号8714;配列については表5を参照されたい)のいずれかで処理した。実験の3日目に、siRNAコンジュゲートを含む組織培養培地を除去し、次いで、細胞に100μMの6TGを添加した。6TGで処理した後に、細胞を4日間インキュベートした。次いで、細胞を分割し、培地を除去し、7日目に新鮮な6TGを添加して、更に2日間培養した。6TG処理後の6日目に、CellTiter-Glo試薬(Promega、Madison、WI)を使用して細胞溶解率を測定した。図5に示すように、親Hep3BCas9細胞と比較して、GalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNAで処理した場合、RAB18ノックアウト細胞は6TGの選択下で約15%多く生存することができ(試験されたsiRNAの最大用量で、Hep3BCas9細胞では43%であったのと比較して、RAB18ノックアウト細胞では58%であった)、このことは、HPRT1 siRNAがHep3BCas9親細胞よりもRAB18ノックアウト細胞でより良好に遺伝子サイレンシングを誘導したことを示している。非関連siRNA対照としてPPIB遺伝子を標的とするGalNAc部分コンジュゲートsiRNAで処理された、Hep3BCas9細胞も、RAB18ノックアウト細胞も、6TG処理に対して増強された耐性を示さなかった(図5)。
【0140】
次に、異なる3つのGalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子のサイレンシング効力に及ぼすRAB18のノックアウトの効果を評価した。Hep3BCas9細胞とRAB18ノックアウト細胞を、3つのGalNAc部分コンジュゲートsiRNA:HPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)、ASGR1 siRNA(二重鎖番号16084)、及びPPIB siRNA(二重鎖番号8714)で4日間処理した。siRNA分子のそれぞれの配列を、下記の表5に示す。細胞を溶解してRNAを抽出し、上記に記載されるようにddPCR分析のために逆転写した。HPRT1遺伝子及びハウスキーピングTBP遺伝子を定量化するのに使用したプライマー/プローブのアッセイIDは、実施例2に記載されているものと同一であった。ASGR1遺伝子及びPPIB遺伝子を定量化するのに使用したプライマー/プローブのアッセイIDは、それぞれHs.PT.56a.24725395及びHs.PT.58.40006718であった。各標的遺伝子(HPRT1、ASGR1、又はPPIB)のddPCR測定値を、ハウスキーピングTBP遺伝子のddPCR測定値で正規化し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で処理された対照細胞(すなわち、GalNAc-siRNAコンジュゲート分子で処理しなかった細胞)における対応するmRNAレベルのパーセンテージとして表した。試験した3つのGalNAc-siRNAコンジュゲート全てにおいて、標的遺伝子のノックダウンは、Hep3BCas9の親細胞と比較すると、RAB18ノックアウト細胞の方が良好であった(図6A、6B、及び6C)。Hep3BCas9のGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートのIC50は、2つのRAB18ノックアウト株が2.6nMと4.1nMであったのと比較すると83.4nMであり、20~30倍の変化であった(図6A)。同様のsiRNAサイレンシング効力の増大が、RAB18ノックアウト細胞株のGalNAc-ASGR1 siRNAコンジュゲートで観察された。GalNAc-ASGR1 siRNAコンジュゲートでは、IC50は、Hep3BCas9細胞で198.3nMであり、2つのRAB18ノックアウト細胞では、7.9nM又は6.5nMであった(図6B)。HPRT1及びASGR1と比較して、PPIBはHep3B細胞で高発現している遺伝子であるが、Hep3BCas9細胞では、GalNAc部分コンジュゲートPPIB siRNAによって効果的にサイレンシングすることができなかった(図6C)。しかしながら、この同じGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲートは、2つのRAB18ノックアウトプールでPPIB発現をサイレンシングすることができ(IC50=205.2nM又は391.8nM)(図6C)、このことは、RAB18を抑制することで、GalNAc-siRNAコンジュゲート分子のサイレンシング効力を増強することができることを示している。また、3つ全てのGalNAc-siRNAコンジュゲート分子のsiRNAサイレンシング効果を11日目に評価した。この一連の実験では、細胞をGalNAc-siRNAコンジュゲート分子で4日間処理し、次いで、GalNAc-siRNAコンジュゲート分子を含まない培地中で更に7日間維持し、この時点で細胞を溶解し、RNAを抽出してddPCR分析のために逆転写した。時間の経過と共に細胞が増殖するにつれて、サイレンシング効果は低下したものの、サイレンシング効力はHep3BCas9細胞よりもRAB18ノックアウト細胞の方が大きかった。例えば、GalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートで処理した場合、11日目のIC50は、2つのRAB18ノックアウトプールでは41.3nMと58.3nMであったのと比較して、Hep3BCas9細胞では363.6nMであった。これらの結果は、RAB18の発現を阻害することで、siRNA分子によって標的化される遺伝子に関係なく、GalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子のサイレンシング効力が増強することを実証している。
【0141】
RAB18がリガンドコンジュゲートsiRNA分子の効力を制御し得るメカニズムを更に調査するために、最初に、抗体ブロッキング試験を用いて、GalNAc-siRNAコンジュゲートがRAB18ノックアウト細胞で機能するのにASGR1が必要となるのかどうかを試験した。Hep3BCas9細胞とRAB18ノックアウト細胞を、最初に抗ASGR1抗体(国際公開第2017/058944号パンフレットに記載のクローン番号7E11)、アイソタイプ対照抗体、又は抗体を含まないもので30分間プレインキュベートし、続いてGalNAc部分コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号8172)を異なる濃度で添加した。最終抗体濃度は50μg/mLであり、2,000個の細胞を各ウェルに播種した。37℃の組織培養インキュベーター内で4日間インキュベートした後、細胞を溶解してRNAを抽出し、上記に記載されるように逆転写してddPCR分析にかけた。細胞を7E11抗ASGR1抗体で前処理すると、Hep3BCas9細胞及びRAB18ノックアウト細胞のHPRT1遺伝子をサイレンシングするGalNAc-HPRT1 siRNAコンジュゲートの効力が低減した(図7)。ASGR1遺伝子とPPIB遺伝子をそれぞれサイレンシングするために、GalNAc-ASGR1 siRNAコンジュゲート及びGalNAc-PPIB siRNAコンジュゲートを使用して同一の実験を実施したときに、類似した結果が得られた(データは示さず)。この一連の実験の結果は、GalNAc-siRNAコンジュゲートをHep3B細胞とRAB18ノックアウト細胞に送達するのにASGR1が必要となることを示している。
【0142】
RAB18をノックアウトすることによって、ASGPRを介して送達されるGalNAc部分コンジュゲートsiRNA分子のsiRNA効力が増強されることを確認した後に、本発明者らは、RAB18をノックアウトすることにより、リポフェクタミン媒介トランスフェクションによって送達されるsiRNA分子のsiRNA効力を増強することができるかどうかを検討した。この疑問を解決するために、Hep3BCas9細胞とRAB18ノックアウト細胞を、リポフェクタミンRNAiMAX試薬(Invitrogen、Waltham、MA)を含む場合と含まない場合で、様々な濃度の非コンジュゲートHPRT1 siRNA(二重鎖番号17629;表5に記載されている配列)で処理した。図8に示されるように、リポフェクタミン媒介トランスフェクションによってHPRT1 siRNA分子を細胞に送達した場合、HPRT1発現を低減するsiRNA分子の効力は、Hep3BCas9細胞(IC50=0.2nM)とRAB18ノックアウト細胞(IC50=0.3nM)の間で類似したものであった。この知見は、RAB18活性を抑制しても、リポフェクタミン媒介トランスフェクションによって送達されたsiRNA分子の活性を増強しないことを示している。
【0143】
まとめると、本実施例に記載された実験結果は、RAB18の発現を阻害することで、ASGPRのような細胞表面受容体を介して細胞に送達されるsiRNA分子のサイレンシング効力を少なくとも20倍大幅に増強することを実証するものである。RAB18は、脂質滴(LD)の形成の調節(Xu et al.,J Cell Biol,Vol.217;975-995,2018;Martin et al.,J Biol Chem,Vol.280;42325-42335,2005)、ゴルジ体から小胞体(ER)へのCOPI非依存的逆行輸送の阻害(Dejgaard et al.,J Cell Sci,Vol.121;2768-2781,2008)、分泌顆粒及びペルオキシソームの調節(Vazquez-Martinez et al.,Traffic,Vol.8;867-882,2007;Gronemeyer et al.,FEBS Lett,Vol.587;328-338,2013)、LD膜上のC型肝炎ウイルス(HCV)の会合の促進(Salloum et al.,PLoS Pathog,Vol.9,e1003513,2013)、及び正常なER構造体の調節(Gerondopoulos et al.,J Cell Biol,Vol.205;707-720,2014)を含む、様々な生理学的プロセスと関連付けられてきた。RAB18がオリゴヌクレオチド化合物のサイレンシング活性を調節することができるメカニズムはまだ明らかになっていないが、ER-LDの繋留を調節するRAB18の機能に関連する可能性がある。実施例2に記載され、また上記の表3に示されるように、マルチプレックス化合成gRNAによって遺伝子ZW10及びSTX18(シンタキシン18をコードする)をノックアウトすることでsiRNAサイレンシング効力が増強されるが、このことは、RAB18と相互作用してER-LDの繋留を調節する遺伝子が、siRNAサイレンシング活性に同一の抑制効果を及ぼしていることを示している。ERはsiRNA媒介サイレンシングの中心的な核形成部位であることが報告されており、ER膜に常在するタンパク質(CLIMP-63)がダイサーと相互作用して安定化することが証明されている(Stalder et al.,EMBO J,Vol.32;1115-1127,2013;Pepin et al.,Nucleic Acids Res,Vol.40;11603-11617,2012)。RAB18の機能を抑制することで、受容体依存性エンドサイトーシスによって内在化したsiRNA又は他のオリゴヌクレオチド化合物を含むエンドソームの、siRNA分子の潜在的な細胞内サイレンシング部位であるERへの逆行輸送が増強される可能性がある。RAB18は、複数の組織型にわたって普遍的に発現している遺伝子であり、種にわたって高度に保存されている。従って、肝臓以外の細胞及び組織でRAB18の発現又は活性を抑制することで、リガンドコンジュゲートsiRNA分子の効力が増強する可能性もある。
【0144】
siRNA分子
下記の表5は、実施例1~3に記載された実験で使用したリガンドコンジュゲートsiRNA分子のそれぞれに関する、センス配列及びアンチセンス配列、並びにsiRNA分子にコンジュゲートされたリガンドの種類を列挙したものである。表5のヌクレオチド配列は、以下の表記法に従って列記されている。a、u、g、及びc=対応する2’-O-メチルリボヌクレオチド;Af、Uf、Gf、及びCf=対応する2’-デオキシ-2’-フルオロ(「2’-フルオロ」)リボヌクレオチド;並びにinvAb=逆位脱塩基ヌクレオチド(すなわち鎖の3’末端上にあるときにはその3’位の置換基を介して隣接するヌクレオチドに結合するか(3’-3’結合)、又は鎖の5’末端上にあるときにはその5’位の置換基を介して隣接するヌクレオチドに結合した(5’-5’ヌクレオチド間結合)脱塩基ヌクレオチド)。配列中の「s」の挿入は、2つの隣接するヌクレオチドがホスホロチオジエステル基(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合)によって連結されることを示す。別段の指示がない限り、全ての他のヌクレオチドは、3’-5’ホスホジエステル基によって連結される。GalNAcリガンドにコンジュゲートされる分子に関して、式VII(前掲)に示されるような構造を有するGalNAc部分を、示されたsiRNA分子のセンス鎖の5’末端にホスホロチオエート結合を介してコンジュゲートした。二重鎖番号17102をセンス鎖の5’末端を介してコレステロールにコンジュゲートする一方で、二重鎖番号6709をセンス鎖の3’末端を介して抗ASGR1抗体にコンジュゲートした。
【0145】
【表5】
【0146】
実施例4.RAB18発現を阻害することによってGalNAcコンジュゲートアンチセンスオリゴヌクレオチドのサイレンシング効果が増強される
一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、遺伝子発現をサイレンシングするために広く使用されている、別の種類のオリゴヌクレオチド化合物である。RAB18がASO媒介遺伝子サイレンシングの効力も調節しているかどうかを知るために、RAB18のノックアウトがASOサイレンシング効力に及ぼす影響について研究した。実施例3に記載されたHep3BCas9親細胞とRAB18ノックアウト細胞を、PBS、又はHPRT1遺伝子を標的とする複数の濃度の2つのGalNAc部分コンジュゲートASO分子(化合物番号15469及び15470)のうちの1つ、又はPNPLA3遺伝子を標的とする対照GalNAc部分コンジュゲートASO分子(化合物番号15472)のいずれかで、4日間処理した。3つのGalNAc部分コンジュゲートASO分子のそれぞれの配列を、下記の表6に示す。Hep3BCas9親細胞及びRAB18ノックアウト細胞用に、EMEM+10%FBS培地中で4E+05細胞/mlの濃度の細胞懸濁液を作製した。この細胞溶液を、50μl/ウェルの量で96ウェルプレートに蒔いた。細胞を蒔いた直後に、EMEM+10%FBS培地で希釈した様々な濃度のGalNAc-ASOコンジュゲート50μlを、各ウェルに添加した。次いで、96ウェルプレートを37℃の組織培養インキュベーター内で4日間インキュベートした。GalNAc部分コンジュゲートASO分子による処理後の4日目に、細胞を溶解して各ウェルからRNA試料を抽出し、cDNAに逆転写した。次いで、HPRT1のmRNA発現における異なるGalNAc部分コンジュゲートASO分子のそれぞれのサイレンシング効果をddPCR分析によって測定した。HPRT1遺伝子のddPCR測定値を、ハウスキーピングTBP遺伝子のddPCR測定値で正規化し、PBSで処理された対照細胞(すなわち、GalNAc-ASOコンジュゲート分子で処理しなかった細胞)における対応するmRNAレベルのパーセンテージとして表した。
【0147】
図9に示されるように、PNPLA3遺伝子を標的とする対照GalNAcコンジュゲートASO分子(化合物番号15472)で処理しても、Hep3BCas9細胞又はRAB18ノックアウト細胞のいずれかにおけるHPRT1の発現レベルに影響しなかった。HPRT1を標的とするGalNAcコンジュゲートASO分子で処理した群では、Hep3BCas9親細胞と比較したときに、RAB18ノックアウト細胞において、HPRT1発現におけるサイレンシング効果が増強したことが観察された(図9)。例えば、Hep3BCas9親細胞における化合物番号15469のIC50値は2501nMであった一方で、RAB18ノックアウト細胞における同化合物のIC50値は100nMであり、サイレンシング効力が25倍増強されていた。これらの結果は、RAB18が、GalNAcコンジュゲートsiRNA分子とGalNAcコンジュゲートASO分子の両方で同様に用いられる細胞内のステップを調節していることを示している。従って、RAB18の発現を阻害することは、リガンドコンジュゲートASO分子と同様にリガンドコンジュゲートsiRNA分子のサイレンシング活性を増強するための有効な手法である。
【0148】
ASO分子
表6の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)化合物のヌクレオチド配列を、以下の表記に従って列記する:dA、dT、dG、及びdC=対応するデオキシリボヌクレオチド;
【化10】
(下線及び太字)=対応するβ-D-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)ヌクレオチド(「ロックド核酸」又はLNA);並びにC*=5-メチルシトシン塩基を含むヌクレオチド。
【化11】
であって、5-メチルシトシン塩基を含むLNA。配列中の「s」の挿入は、2つの隣接するヌクレオチドがホスホロチオジエステル基(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合)によって連結されることを示す。別段の指示がない限り、全ての他のヌクレオチドは、3’-5’ホスホジエステル基によって連結される。3つ全ての一本鎖ASO分子を、式VII(前掲)に示されるような構造を有するGalNAc部分に、ホスホロチオエート結合を介して5’末端にコンジュゲートした。
【0149】
【表6】
【0150】
本明細書で説明及び引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書により組み込まれる。記載された特定の方法、手順、及び材料は変動する可能性があるため、開示された本発明はそれらに限定されないことが理解されよう。また、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0151】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を、単なる日常的な実験を使用して認識するか、又は確認可能であろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】