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特表2024-537116アンモニア水の供給による水素及び電気の複合生成
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  • 特表-アンモニア水の供給による水素及び電気の複合生成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アンモニア水の供給による水素及び電気の複合生成
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241003BHJP
   C01B 3/58 20060101ALI20241003BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 1/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/58
F02C6/18 Z
B01D53/22
B01D1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520576
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022077703
(87)【国際公開番号】W WO2023060201
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,780
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/938,223
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アル-コウェイター、アフマド オー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル、アキル
(72)【発明者】
【氏名】イ、クンホ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D076
4G140
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA52Z
4D006JA66Z
4D006KA01
4D006KA31
4D006KB18
4D006KB30
4D006MA02
4D006MA06
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC90
4D006PA05
4D006PB63
4D006PB66
4D006PC80
4D076AA15
4D076AA22
4D076BA01
4D076BB19
4D076FA04
4D076FA19
4D076HA16
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】
アンモニア水溶液から水素及び電力を生成するシステム及び方法が提供される。例示的なシステムは、アンモニア水溶液からアンモニアガスを生成するための蒸留ユニットと、アンモニアガスの圧力を高めるための圧縮ユニットと、アンモニアガスを触媒作用により窒素と水素に変換し、水素を透過物として除去するための膜分離器と、残留物を燃焼させてエネルギーを発生させるマイクロタービンと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア水溶液から水素及び電力を生成するシステムであって、
前記アンモニア水溶液からアンモニアガスを生成するための蒸留ユニットと、
前記アンモニアガスの圧力を高めるための圧縮ユニットと、
前記アンモニアガスを窒素と水素に変換し、前記水素を透過物として除去するための膜分離器と、
残留物を燃焼させてエネルギーを生成するためのマイクロタービンと、を備える、
システム。
【請求項2】
前記蒸留ユニットは、多段蒸留塔を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧縮ユニットは、多段コンプレッサを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アンモニアガスを前記膜分離器の動作温度まで加熱するために、前記圧縮ユニットの下流に熱交換器を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記膜分離器内の膜は、前記アンモニアガスを窒素と水素に変換する触媒を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記触媒は、パラジウムを備える、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記触媒は、パラジウム合金を備える、
請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記膜分離器内の膜は、プロトン伝導性膜を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記膜分離器内の膜は、電気化学変換システムを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記マイクロタービンは、復熱装置を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記残留物は、アンモニア、水素、窒素あるいはこれらの任意の組み合わせを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
燃料電池電気自動車(FECV)用の燃料補給ステーションを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
電気自動車(EV)用の充電ステーションを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記エネルギーは、前記マイクロタービンの排気流からの熱を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記エネルギーは、前記マイクロタービンに結合された発電機からの電気を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
アンモニア水溶液から水素及び電力を生成する方法であって、
前記アンモニア水溶液を蒸留してアンモニアガス及び廃棄物流を生成する工程と、
前記アンモニアガスを圧縮する工程と、
前記アンモニアガスを窒素と前記水素に変換する工程と、
前記水素を膜分離器において透過物として分離する工程と、
残留物をマイクロタービン内で燃焼させて前記電力を生成する工程と、を備える、
方法。
【請求項17】
前記アンモニアガスを触媒作用により窒素と前記水素に変換する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アンモニアガスを窒素と前記水素に電気化学的に変換する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記アンモニアガスを圧縮した後に、前記アンモニアガスを前記膜分離器の動作温度まで昇温させる工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記アンモニアガスを加熱するために、前記マイクロタービンの排気から熱交換器に熱を供給する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロタービンの排気からの熱を、前記アンモニア水溶液を蒸留するボイラーに供給する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記アンモニア水溶液から水素及び電力を生成する動作ユニットに前記電力を供給する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項23】
燃料電池の仕様を満たすように前記水素を精製する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項24】
燃料電池電気自動車(FCEV)の燃料補給作業のために前記水素を圧縮する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項25】
電気自動車(EV)用の充電ステーションに前記電力を供給する工程を備える、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/252,780号、及び2022年10月5日に出願された米国実用特許出願第17/938,223号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アンモニアから水素及び電気を生成することに関する。より具体的には、アンモニアに触媒作用を引き起こして水素と残留アンモニアを生成する。残留アンモニアはマイクロタービン内で燃焼され、電気及び熱が生成される。
【背景技術】
【0003】
石油や天然ガスを水素と電気に変換することは、運輸部門の排出量削減に大きな影響を与え得る。先進的なプロセスで水素を生成し、この技術を炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)と組み合わせることにより、水素は、よりクリーン且つ安全で、安価なエネルギーの未来に大きな貢献をする可能性がある。水素を長距離にわたって大きな規模で輸送するために、水素をアンモニアに変換することができ、そして、適度な温度及び圧力条件でアンモニアを液体の状態で容易に輸送することができる。
【0004】
さらに、アンモニアを燃料として燃焼させることができるが、内燃機関など、アンモニアを直接使用する技術は依然として開発途上である。したがって、アンモニア流を現在の技術に組み込む技術が有用であろう。
【発明の概要】
【0005】
実施例に記載の一実施形態は、アンモニア水溶液から水素及び電力を生成するシステムを提供する。このシステムは、アンモニア水溶液からアンモニアガスを生成する蒸留ユニットと、アンモニアガスの圧力を高める圧縮ユニットと、アンモニアガスを触媒作用により窒素と水素に変換し、水素を透過物として除去する膜分離器と、残留物を燃焼させてエネルギーを発生させるマイクロタービンとを含む。
【0006】
実施例に記載の別の実施形態は、アンモニア水溶液から水素及び電力を生成する方法を提供する。この方法は、アンモニア水溶液を蒸留してアンモニアガス及び廃棄物流を生成することと、アンモニアガスを圧縮することと、アンモニアガスを触媒作用により窒素と水素に変換することと、水素を膜分離器において透過物として分離することと、残留物をマイクロタービン内で燃焼させて電力を生成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】アンモニア水を水素及び電気に変換するシステムの概略図である。
【0008】
図2】システムのモデルを示したプロセスフローシートである。
【0009】
図3】熱交換ユニット及び膜分離器を示すブロックのモデルを示したプロセスフローシートである。
【0010】
図4】アンモニア水から水素及び電気を生成する方法を示したプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アンモニアはエネルギー密度の高い化合物であり、例えばガスタービン又はボイラーのバーナ内での燃焼によってエネルギー生成に直接利用することが可能である。さらに、アンモニアは炭素を含まない物質で、天然ガスから二酸化炭素を回収することで合成でき、廃棄したり、いわゆるブルーアンモニアの形成など将来の用途に使用したりすることができる。さらに、アンモニアは、風力又は太陽光などの再生可能資源によってもたらされる電力を使用して、電気分解で発生した水素から合成することができる。これらの技術を用いて生成されたアンモニアをグリーンアンモニアと呼ぶ。アンモニアはまた、液体水素又は液化天然ガスよりも輸送が容易であり、液化温度はこれらの物質のいずれよりもはるかに高い。
【0012】
したがって、モビリティ及び発電用途のための潜在的な低炭素燃料としてのアンモニアの使用に関する重要な研究が行われている。しかし、液体のアンモニアは有毒であり、適切な注意を払って取り扱う必要がある。アンモニア水溶液は、より容易に輸送される。
【0013】
本明細書の実施例に記載の実施形態は、アンモニア水を用いて水素及び電気を生成する方法及びシステムを提供する。アンモニア水を蒸留してアンモニアガス流を形成する。次に、例えばパラジウム又はパラジウム合金膜を用いた水素分離膜システムにおいてアンモニアガス流を処理し、燃料電池電気自動車(FCEV)に使用できる精製水素流である透過物(permeate、パーミエイト)を生成することができる。例えば、窒素、水素、未反応アンモニア及びいくらかの水蒸気を含む残留物(retentate)流をマイクロタービン内で燃焼させ、例えば電気自動車(EV)の充電に使用する電気を生成する。
【0014】
説明した技術は、水素、電気及び熱を含む複数の有用な生成物を生産する。このシステムは、FCEV及びEV用の燃料補給ステーションにおいて、アンモニア水を燃料として使用する、現場で用いられる可搬式ユニットであってもよい。
【0015】
図1は、アンモニア水を水素及び電気に変換するシステム100の概略図である。このシステムは、蒸留ユニット(unit)102、圧縮ユニット104、熱交換ユニット106、膜分離器108、及びマイクロガスタービン又はマイクロタービン110を含む。
【0016】
システムへの供給材料はアンモニア水溶液112である。いくつかの実施形態において、アンモニア水溶液112は水中約20重量%~40重量%のアンモニアである。いくつかの実施形態において、アンモニア水溶液112は水中約20重量%~33重量%のアンモニアである。いくつかの実施形態において、アンモニア水溶液は水中約28重量%のアンモニアである。しかしながら、任意の濃度を用いることができ、例えば20%未満の濃度をいくつかの実施形態で用いてもよいことに留意されたい。
【0017】
アンモニア水溶液112は、例えば液体ポンプを用いて蒸留ユニット102に供給される。いくつかの実施形態において、蒸留ユニット102は多段蒸留塔(column、カラム)であり、アンモニア水溶液112中のアンモニアの大部分が蒸留され、アンモニアガス流114が形成される。蒸留ユニット102からの廃棄物流116は、水及びいくらかの残留アンモニアを含む。廃棄物流116は、タンクに回収され、生産施設に戻されてアンモニア水溶液112の生産に使用され得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、蒸留ユニット102での分離は、アンモニア水溶液112のpHを約8より大きく、約10より大きく、約8~12の間、あるいは約10~12の間に調整することによって強化される。これは、蒸留の上流にある貯留タンク内のアンモニア水溶液112に水酸化ナトリウムを添加することによって行うことができる。
【0019】
アンモニアガス流114は圧縮ユニット104において圧縮される。一実施形態において、圧縮ユニット104は、図2のプロセスフローシートに示すように、膜分離器108の作動圧力まで圧力を高めるために、2段、3段あるいはそれ以上のコンプレッサ段を含むことのできる多段コンプレッサである。いくつかの実施形態では、アンモニアガス流114を膜分離器108に供給する前に、例えば1つ以上の熱交換器を含む熱交換ユニット106を使用してアンモニアガス流114を加熱する。
【0020】
膜分離器108は、例えばパラジウム、パラジウム合金、又は任意の他の水素分離膜からなる高温水素選択膜を使用している。いくつかの実施形態において、膜はセラミックをベースとしたプロトン伝導性膜である。例えば、膜を、特にYドープBaZrO系酸化物とすることができる。膜の表面は、特にルテニウム、レニウム、白金、パラジウムもしくはニッケル、又はこれらの組み合わせなどの金属を含む触媒サイトを含むことができる。
【0021】
膜分離器108では、アンモニアガス流114の触媒変換(catalytic conversion、触媒作用による変換)と、透過物流118としての水素の選択的分離が同時に行われる。膜分離器でのアンモニアの触媒変換及び水素の回収を、膜表面積を制御して圧力を制御することによって最適化することができる。流速の制御を用いてプロセスを最適化することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態において、触媒は管型反応器の外管内に配置された触媒床であり、管型反応器の内側部分は水素選択膜によって触媒床から隔てられている。触媒は、特に、ニッケル、ルテニウム又はバリウムなど任意の数の担持金属を含むことができる。支持体は、ジルコニア、アルミナ又はゼオライトベースの材料とすることができる。一実施形態において、触媒はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)上に担持されたルテニウムである。
【0023】
いくつかの実施形態において、管型反応器は、約350℃~約580℃の温度、又は約400℃~約530℃の温度、又は約515℃の温度で運転される。しかしながら、この範囲内の任意の温度を、所望のアンモニア投入量及び水素出力量に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態において、管型反応器は約4バール(bar)~約40バール、又は約20バール~30バール、又は約25バールの圧力で運転される。温度に関しては、作動圧力は所望のアンモニア投入量及び水素出力量に基づくことができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、アンモニアは電気化学的プロセスによって窒素と水素に分解される。これは、得られた窒素から膜を用いて水素を分離する前に、アンモニアを固体酸電気化学セルに通すことによって行うことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、透過物流118中の水素は、燃料電池自動車(FCEV)に用いる純度仕様に達するようさらに処理される。いくつかの実施形態において、純度はISO FDIS 14687-2又はSAE J2719仕様に準拠する。いくつかの実施形態において、透過物流中の水素は、体積比で約95%を超える水素の濃度、又は体積比で約99%を超える水素の濃度、又は体積比で約99.9%を超える水素の濃度に精製され、残りは窒素などの不活性ガスである。次いで、例えばFCEV又は他の用途に分配するために、水素を必要に応じて約400バール(約40,000kPa)~約900バール(約90,000kPa)に圧縮することができる。例えば、窒素、水素、未反応アンモニア及び水蒸気を含む残留物流120は、マイクロタービン110に送られる。
【0026】
いくつかの実施形態において、マイクロタービン110は、例えば、特にキャプストーン・タービン社(Capstone Turbine Corp.,カリフォルニア州ロスアンゼルス)又はアウレリア・タービンズ社(Aurelia Turbines Oy.,フィンランド国ラッペーンランタ)から入手可能な商業用マイクロタービン発電機である。マイクロタービンでは、残留物流120を空気122と共に燃焼させ、例えば電気及び高温排気ガスの形態で、エネルギー124を生成する。いくつかの実施形態において、例えば、マイクロタービン110に供給された流入空気流122を復熱装置(recuperator、レキュペレータ)において加熱することにより、マイクロタービン110の高温排気ガスからの熱の一部を復熱し、マイクロタービン110の効率を高めることができる。いくつかの実施形態では、熱は回収されず、プロセスの他の部分で完全に使用される。プロセスの必要性に応じて、部分的な復熱を行い、プロセスの他の部分のために残す熱量を増加させてもよい。
【0027】
発生したエネルギー124は、プロセスへの動力の供給に使用される。アンモニアの水素及び窒素への触媒変換は吸熱反応であるため、膜分離器108に熱を提供するために排ガスを使用する。さらに、排ガスは、例えば多段蒸留塔においてアンモニアを気化させるために、蒸留until102のボイラー(単数又は複数)に使用される熱を提供する。マイクロタービン110によって生成した電気はプロセスへの動力の供給に使用され、余剰の電気はEV用の充電ステーションに供給される。
【0028】
図2は、システム100のモデルのプロセスフローシート200である。同様の番号は、図1に関して説明した通りである。プロセスは、Aspen plus(バージョン10)ベースのプロセスモデルを用いてモデル化され、プロセスの全てのコンポートネントがモデル化された。熱交換ユニット106及び膜分離器108は、図2ではブロック202として示されており、図3では個々のユニットに分けられている。モデル化から得られた結果を以下の表に示す。プロセスフローシート内の流れ上の識別タグは、以下の表の列に対応している。
【0029】
図3は、熱交換ユニット106及び膜分離器108を示すブロック202のモデルのプロセスフローシート300である。モデル化のために、膜分離器108を2つのユニットに分けた。第1のユニットMEMB1では、アンモニアの触媒変換がモデル化されている。第2のユニットMEMB1-1では、残留物流120からの透過物流118の分離がモデル化されている。
【0030】
マイクロタービンの効率を異ならせて3つのシナリオをモデル化した。これらは39.2%、28.5%及び23.5%であり、仮定及び結果を以下の実施例に示す。
【0031】
実施例1:マイクロタービン効率を39.2%と仮定した場合のプロセスのシミュレーション結果
【0032】
このシミュレーションにおいて、供給組成物はアンモニア25重量%と水75重量%とを含むアンモニア水溶液112であった。蒸留は、蒸留ユニット102において1.1バール(110kPa)で実施し、純度100%のアンモニアを80重量%回収した。
【0033】
膜分離器108を8.1バール(810kPa)、温度450℃で運転した。このシミュレーションでは、アンモニアガス流114中のアンモニアの変換は74重量%であり、透過物流118としての水素の回収は75重量%であった。
【0034】
マイクロタービン110を6.7バール(670kPa)、空燃比2.4で運転した。このシミュレーションにおいて、タービン効率を39.2%に設定し、これは、等エントロピー効率95%、タービン効率85.8%に対応する。マイクロタービン110の出口温度は674℃であり、194kWを生成した。
【0035】
排ガスからの熱回収により、排ガス温度が674℃から470℃になり、そして150℃になると仮定した。排ガスの冷却による熱を、膜分離器108及び蒸留ユニット102のボイラーに使用した。生成した電気をプロセスへの動力の供給に使用した。
【0036】
このシミュレーションによって計算されたプロセスフローを表1A~表1Cに示す。シミュレーションの結果を表2にまとめる。
【表2】
【0037】
実施例2:マイクロタービン効率を28.5%と仮定した場合のプロセスのシミュレーション結果
【0038】
このシミュレーションにおいて、供給組成物はアンモニア25重量%及び水75重量%を含むアンモニア水溶液112であった。蒸留ユニット102において蒸留を1.1バール(110kPa)で実施し、純度100%のアンモニアを80重量%回収した。
【0039】
膜分離器108を8.1バール(810kPa)、温度450℃で運転した。このシミュレーションの結果、アンモニアガス流114中のアンモニアの変換は74重量%であり、透過物流118としての水素の回収は75重量%であった。
【0040】
マイクロタービン110を6.7バール(670kPa)、空燃比2.4で運転した。このシミュレーションにおいて、タービン効率を28.5%に設定した。これは等エントロピー効率68%、タービン効率85.8%に対応する。マイクロタービン110の出口温度は674℃であり、141kWを生成した。
【0041】
排ガスからの熱回収により、排ガス温度が674℃から470℃になり、そして150℃になると仮定した。排ガスの冷却による熱を、膜分離器108及び蒸留ユニット102のボイラーに使用した。生成した電気をプロセスへの動力の供給に使用した。
【0042】
このシミュレーションによって計算されたプロセスフローを表3A~表3Cに示す。シミュレーションの結果を表4にまとめる。
【表4】
【0043】
実施例3:マイクロタービン効率を23.5%と仮定した場合のプロセスシミュレーション結果
【0044】
このシミュレーションにおいて、供給組成物はアンモニア25重量%及び水75重量%を含むアンモニア水溶液112であった。蒸留ユニット102において蒸留を1.1バール(110kPa)で実施し、純度100%のアンモニアを80重量%回収した。
【0045】
膜分離器108を8.1バール(810kPa)、温度450℃で運転した。このシミュレーションの結果、アンモニアガス流114中のアンモニアの変換は74重量%であり、透過物流118としての水素の回収は75重量%であった。
【0046】
マイクロタービン110を6.7バール(670kPa)、空燃比2.4で運転した。このシミュレーションにおいて、タービン効率を23.5%に設定した。これは等エントロピー効率60%、タービン効率85.8%に対応する。マイクロタービン110の出口温度は674℃であり、141kWを生成した。
【0047】
排ガスからの熱回収により、排ガス温度が674℃から470℃になり、そして150℃になると仮定した。排ガスの冷却による熱を、膜分離器108及び蒸留ユニット102のボイラーに使用した。生成した電気をプロセスへの動力の供給に使用した。
【0048】
このシミュレーションによって計算されたプロセスフローを表5A~表5Cに示す。シミュレーションの結果を表6にまとめる。
【表6】
【0049】
図4は、アンモニア水から水素及び電気を生成する方法400を示したプロセスフロー図である。この方法は、アンモニア水溶液を蒸留してアンモニアガスを生成するブロック402から開始する。ブロック404において、アンモニアガスを圧縮し、圧縮アンモニアガスを生成する。ブロック406において、圧縮アンモニアガスを膜分離器の動作温度に加熱する。
【0050】
ブロック408では、膜分離器においてアンモニアガスを触媒作用により水素と窒素に変換する。本明細書に記載のように、いくつかの実施形態では、アンモニアを電気化学的に分解する。ブロック410において、水素を膜分離器から透過物として除去する。
【0051】
ブロック412において、残留物をマイクロタービン内で燃焼し、エネルギーを生成する。エネルギーは、マイクロタービンからの排気からの熱及び電力を含む。
【0052】
ブロック414において、プロセス内の動作ユニットに熱を提供する。本明細書に記載のように、動作ユニットは、膜分離器及び蒸留ユニットのボイラーを含む。
【0053】
ブロック416において、プロセス内の動作ユニットに生成した電気を供給する。ブロック418において、水素を燃料補給プロセスに提供するか又は外部に提供する。これは、水素を精製して燃料補給プロセスで用いる仕様を満たすことを含むことができる。ブロック420において、車両の充電、又はプロセス外での他の使用のために余剰の電気を提供する。
【0054】
実施形態
【0055】
実施例に記載の一実施形態は、アンモニア水溶液から水素及び電力を生成するシステムを提供する。このシステムは、アンモニア水溶液からアンモニアガスを生成するための蒸留ユニットと、アンモニアガスの圧力を高めるための圧縮ユニットと、アンモニアガスを触媒作用により窒素と水素に変換し、水素を透過物として除去するための膜分離器と、残留物を燃焼させてエネルギーを発生させるマイクロタービンと、を含む。
【0056】
一態様において、蒸留ユニットは、多段蒸留塔を含む。
【0057】
一態様において、圧縮ユニットは、多段コンプレッサを含む。
【0058】
一態様において、システムは、アンモニアガスを膜分離器の動作温度に加熱するために、圧縮ユニットの下流に熱交換器を含む。
【0059】
一態様において、膜分離器内の膜はパラジウムを含む。一態様において、膜分離器内の膜はパラジウム合金を含む。
【0060】
一態様において、マイクロタービンは、復熱装置を含む。
【0061】
一態様において、残留物は、アンモニア、水素、窒素、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0062】
一態様において、システムは燃料電池電気自動車(FECV)用の燃料補給ステーションを含む。一態様において、システムは電気自動車(EV)用の充電ステーションを含む。
【0063】
一態様において、エネルギーは、マイクロタービンの排気流からの熱を含む。一態様において、エネルギーは、マイクロタービンに結合された発電機からの電気を含む。
【0064】
実施例に記載の別の実施形態は、アンモニア水溶液から水素及び電力を生成する方法を提供する。この方法は、アンモニア水溶液を蒸留してアンモニアガス及び廃棄物流を生成することと、アンモニアガスを圧縮することと、アンモニアガスを触媒作用により窒素と水素に変換することと、水素を膜分離器において透過物として分離することと、残留物をマイクロタービン内で燃焼させて電力を生成することと、を含む。
【0065】
一態様において、この方法は、アンモニアガスの圧縮後、アンモニアガスを膜分離器の動作温度まで昇温させることを含む。一態様において、この方法は、マイクロタービンの排気から熱交換器に熱を供給してアンモニアガスを加熱することを含む。一態様において、マイクロタービンの排気からの熱を、アンモニア水溶液を蒸留するボイラーに供給する。一態様において、この方法は、アンモニア水溶液から水素及び電力を生成する動作ユニットに電力を供給することを含む。
【0066】
一態様において、この方法は、燃料電池の仕様を満たすように水素を精製することを含む。一態様において、この方法は、燃料電池電気自動車(FCEV)の燃料補給作業のために水素を圧縮することを含む。一態様において、この方法は、電気自動車(EV)用の充電ステーションに電力を供給することを含む。
【0067】
他の実施態様も下記の特許請求の範囲内である。
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表3A】

【表3B】

【表3C】

【表5A】

【表5B】

【表5C】


図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】