(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイオベースのポリグリセリルエステル及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/33 20060101AFI20241003BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 9/02 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241003BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241003BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
C07C69/33
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q5/12
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q5/04
A61Q5/10
A61Q1/14
A61Q1/10
A61Q3/02
A61Q17/04
A61Q19/10
A61Q9/02
A61Q15/00
A61Q1/00
A61Q1/04
A61Q19/08
A61P17/00
A61Q11/00
A61P1/02
A61K31/77
A61K8/86
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520675
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022046130
(87)【国際公開番号】W WO2023059925
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511299355
【氏名又は名称】イノレックス インベストメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェボラ マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モッサー ゲイリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ピーズ ブリタニー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ヅォンユー
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018ME14
4C083AC122
4C083AC401
4C083AC402
4C083CC02
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC17
4C083CC19
4C083CC21
4C083CC23
4C083CC24
4C083CC25
4C083CC28
4C083CC31
4C083CC33
4C083CC34
4C083CC36
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD28
4C083EE12
4C083EE17
4C083EE18
4C083EE25
4C083EE26
4C083EE28
4C083EE29
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZA92
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB12
4H006AB68
4H006BN10
4H006BP10
4H006KC12
(57)【要約】
本発明は、バイオベースのポリグリセリルエステル化合物及び組成物、並びにそれを含む配合物、本発明のバイオベースのポリグリセリルエステル組成物を調製する方法、並びに製品又は製品の構成要素の配合における本発明の化合物及び組成物の使用を含むその用途に関する。バイオベースのポリグリセリルエステル組成物は、1つ以上の式(I):
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、n=1~3であり、1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を含む混合物を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオベースのポリグリセリルエステル組成物であって、
1つ以上の式(I):
【化1】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
前記1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を含む混合物を含む、組成物。
【請求項2】
n=1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rが直鎖C
5~C
8アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Rが直鎖C
6アルキル基であり、RCOがバイオベースのn-ヘプタン酸に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
PGが60%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、40%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
500mg KOH/g超のヒドロキシル価及び約15%未満のエステル化度(DE)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約2mg KOH/g未満の酸価を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
22℃の脱イオン水中で決定される臨界ミセル濃度(CMC)で測定される約2000ms
-1超の表面張力平衡速度定数(STERC)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
23±2℃の脱イオン水中5%で測定される約10NTU未満の水溶液濁度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を含む配合物。
【請求項11】
パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素である、請求項10に記載の配合物。
【請求項12】
化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤からなる群から選択されるパーソナルケア製品であるか、又はその構成要素である、請求項10に記載の配合物。
【請求項13】
中鎖末端ジオール、
中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せ、並びに、
グリセリン及び/又はC
3~C
4ジオール、
の少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
1つ以上の式(I):
【化2】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
前記1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を含む混合物である、約30%~約90%のバイオベースのポリグリセリルエステルと、
約5%~約50%の中鎖ジオールと、
約0.1%~約20%の中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せと、
約1%~約75%のグリセリン及び/又はC
3~C
4ジオールと、
を含む、自己分散型濃縮物。
【請求項15】
前記中鎖末端ジオールがアルカンジオール、グリセリルエーテル及びグリセリルエステルからなる群から選択される、請求項14に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項16】
前記中鎖末端ジオールがC
5~C
101,2-アルカンジオール、C
6~C
12アルキルグリセリルエーテル、C
6~C
12アシルモノグリセリルモノエステル及びそれらの組合せから選択される、請求項15に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項17】
C
6~C
12アルキルヒドロキサム酸、その塩及びそれらの組合せから選択される中鎖アルキルヒドロキサム酸を含む、請求項14に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項18】
プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、メチルプロパンジオール及びそれらの組合せから選択されるC
3~C
4ジオールを含む、請求項14に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項19】
約10NTU未満の水溶液濁度値を有する、請求項14に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項20】
ポリグリセリルエステルと中鎖ジオールとの比率が約1:1~約10:1、好ましくは約2:1~約8:1、より好ましくは約2:1~約7:1である、請求項14に記載の自己分散型濃縮物。
【請求項21】
バイオベースのポリグリセリルエステル組成物を調製する方法であって、
1つ以上の式(I):
【化3】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
前記1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を混合することを含む、方法。
【請求項22】
前記バイオベースのポリグリセリルエステルを中鎖末端ジオールと組み合わせることを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組合せが、約30%~約90%の前記バイオベースのポリグリセリルエステルと約5%~約50%の中鎖ジオールとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組合せが、
中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せ、並びに、
グリセリン及び/又はC
3~C
4ジオール、
の少なくとも1つを更に含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年10月8日付で出願された米国仮特許出願第63/253,662号に対する優先権を主張するものであり、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、バイオベースのポリグリセリルエステル化合物及び組成物、該化合物及び組成物を含有する配合物、該化合物、組成物及び配合物を製造及び使用する方法、並びに特に化粧品用途を含むその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリグリセロール(PG)は、脂肪酸で容易にエステル化され、食品成分として、また化粧品及びパーソナルケア製品の配合に頻繁に用いられる、よく知られた種類の非イオン性界面活性剤及び乳化剤であるポリグリセリルエステル(PGE)を生じる。エステル結合により親油性/疎水性脂肪酸アシル基に連結した親水性PG基から構成されるPGEは、その両親媒性構造により表面活性及び界面活性を示す。PGE構造は通例、乳化、可溶化/マイクロ乳化、洗浄力、泡の発生及び泡の安定化等の機能において最適な性能をもたらすために、最大限の表面活性及び界面活性を引き出すように設計される。PGEは、溶媒を必要とせずに大量に合成され、微生物汚染からの保護を必要としない100%活性の無水物質として提供されるという利点を有する。
【0004】
PGEは、水性媒体中の水不溶性種の可溶化又はマイクロ乳化のための界面活性剤として用いられ、安定したクリアな、すなわち透明な溶液を生じることができる。PGEは、例えば香料、精油、活性成分、防腐成分、及び難水溶性の他の成分をクリアな水性配合物に可溶化するのに有用である。
【0005】
非イオン性界面活性剤は、静微生物成分(微生物の成長を阻害することを意図した成分)及び殺微生物成分(微生物を死滅させることを意図した成分)に対して不活性化効果を有することが知られている。例えば、ポリエトキシル化ソルビタンエステル又はポリソルベートは、化粧品防腐剤の抗微生物活性を阻害することが知られている非イオン性界面活性剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水不溶性の静微生物成分及び殺微生物成分の生物学的効果を阻害することなく、かかる化合物を可溶化又はマイクロ乳化し、クリアな溶液を生成することが可能な非イオン性界面活性剤が必要とされている。かかる非イオン性界面活性剤は、より持続可能な成分に対する市場の需要及び再生可能なバイオベースの供給原料に由来する、いわゆる「天然」成分の消費者へのより大きな魅力のために、再生可能な炭素源、すなわち植物由来の炭素を選択的にベースとすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
出願人らは、驚くべきことに、本明細書に記載されるバイオベースのポリグリセリルエステル組成物が、ポリグリセリルエステルの親水性及び親油性の特性間の正確なバランスを有し、それにより、例えば微生物汚染からの保護のために配合物に使用される静微生物/殺微生物化合物の活性を阻害しない、安定した透明な水溶液を形成し得ることを発見した。
【0008】
幾つかの実施の形態においては、本発明はバイオベースのポリグリセリルエステル組成物に関する。組成物は、
1つ以上の式(I):
【化1】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を含む混合物を含む。
【0009】
他の実施の形態においては、本発明は自己分散型濃縮物に関する。濃縮物は、先の段落に記載の組成物と、中鎖末端ジオールとを含む。任意に、濃縮物は、中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを含む。任意に、濃縮物は、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールを含む。
【0010】
更に他の実施の形態においては、本発明は自己分散型濃縮物に関する。濃縮物は、
1つ以上の式(I):
【化2】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を含む混合物である、約30%~約90%のバイオベースのポリグリセリルエステルと、
約5%~約50%の中鎖ジオールと、
約0.1%~約20%の中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せと、
約1%~約75%のグリセリン及び/又はC
3~C
4ジオールと、
を含む。
【0011】
更に他の実施の形態においては、本発明は、先の段落のいずれかに記載の組成物又は濃縮物を含む配合物に関する。
【0012】
本発明はバイオベースのポリグリセリルエステル組成物を調製する方法に更に関する。方法は、
1つ以上の式(I):
【化3】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を混合することを含む。
【0013】
本発明は、自己分散型濃縮物を調製する別の方法に更に関する。方法は、
1つ以上の式(I):
【化4】
(式中、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖又は分岐C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
1つ以上の式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである)の化合物を混合することにより、バイオベースのポリグリセリルエステルを調製することと、
バイオベースのポリグリセリルエステルと中鎖末端ジオールとを組み合わせることと、
を含む。
【0014】
更に他の実施の形態においては、本発明は、先の段落のいずれかに記載のバイオベースのポリグリセリルエステル組成物及び/又は自己分散型濃縮物を含む配合物を調製する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヘプタン酸ポリグリセリル-10の5%溶液中のSpectrastat(商標) G2 Natural(1%)の濁度をヘプタン酸ポリグリセリル-10のエステル化度(DE)の関数として示す図である。
【
図2A】実施例14の調製時のO/Wマイクロエマルション濁度値を油負荷の関数として示す図である。濁度値が100NTUを超える配合物は、熱力学的に不安定なマクロエマルションとみなされる。
【
図2B】実施例14の24時間後のO/Wマイクロエマルション濁度値を油負荷の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に本発明の化合物、組成物及び方法を説明する前に、記載の特定のプロセス、組成物又は方法が変更され得るため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。また、説明に使用される用語が特定のバージョン又は実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。他に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス及び材料をここで記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈すべきではない。
【0017】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上他に明らかに指示されない限り、数量を特定していない単数形(the singular forms "a," "an," and "the")が複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「細胞」への言及は、当業者に既知の1つ以上の細胞及びその等価物への言及である等である。
【0018】
指定のない限り、「%」は、重量パーセント又は体積パーセントのいずれかを指すことができる。
【0019】
「化粧品に許容可能な」とは、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに皮膚と接触させて使用するのに適していることを意味する。
【0020】
該当する場合に、化学物質は、化粧品成分の国際命名法のガイドラインに従って、それらのINCI名によって指定される。供給業者及び商品名を含む追加情報は、米国パーソナルケア製品評議会(ワシントンDC)によって発行された国際化粧品成分辞書・ハンドブック第16版における適切なINCIモノグラフで、又は米国パーソナルケア製品のINCIpedia(http://incipedia.personalcarecouncil.org)にオンラインで見出すことができる。
【0021】
多くの実施形態の中でも、本発明は、バイオベースの組成物を含む。バイオベースの組成物の製造には、バイオベース又は「自然」の供給原料を使用する必要がある。バイオベースの組成物の例は、生物由来の供給原料から調製されるものであり(例えば、発酵、藻類、植物又は野菜由来のような現在の持続可能な農業活動による;例えば、好ましくは非遺伝子組換え生物又はバイオマスを用いて植物源から得られる)、非石油化学由来である(例えば、石油、天然ガス又は石炭等の化石源に対し、21世紀に活動する持続可能な樹木及び植物の農場から得られる)。かかる供給原料は、本明細書において「自然」及び「再生可能」(すなわち、「持続可能」)と称され、非石油由来供給原料として当該技術分野で知られている。さらに、かかる材料は、石油又は他の化石燃料源(「古い」炭素)ではなく、「新たな」炭素によって形成される。かかる製品は、本明細書において「ナチュラル」製品と称され、非石油化学由来又は「バイオ」製品として当該技術分野で知られている。本明細書で使用される場合、「持続可能な」という用語は、再生可能な供給源に由来する出発物質、反応生成物、組成物及び/又は配合物を指す。したがって、「持続可能」という用語は、化石燃料(例えば石油又は石炭)、天然ガス等の限られた天然資源からの炭素を含有する「持続不可能」な出発物質、反応生成物、組成物及び/又は配合物とは対照的である。このため、ナチュラル製品又はバイオ製品は非石油化学由来であり、及び/又は石油化学に由来せず、むしろ持続可能で再生可能な供給源から製造される。真のナチュラル製品(バイオ製品)は、バイオマス(例えば、生きている植物、根等における炭素循環プロセスから貯蔵されるか、又は動物の呼吸若しくは排泄物から、若しくは分解によって放出された物質)を用いて形成される。炭素が分解され、圧力下で数百万年かけて分解されると、化石燃料(石油化学由来の炭素の供給源)が生成する。本明細書におけるバイオ化合物は、最近存在する(存在していた)植物源/バイオマスの炭素に由来する材料を含み、及び/又は持続可能であることが意図され、化石燃料に由来する材料は明示的に除外される。
【0022】
本発明の組成物及び/又は配合物は、そのバイオベース炭素含有量によって特定し、従来技術の組成物及び/又は配合物と区別することができる。幾つかの実施形態においては、バイオベース炭素含有量は、有機(すなわち、炭素含有)物質から構成される材料の相対年代を決定する放射性炭素年代測定によって測定することができる。放射性炭素は、炭素-14(すなわち、「14C」)として知られる炭素の不安定な同位体である。14Cは、非常に一貫した速度にてベータ粒子の形態で放射エネルギーを放出し(すなわち、放射性炭素の半減期は5730年である)、最終的により安定した窒素-14(14N)へと崩壊する不安定な同位体である。石油系の(すなわち、石油化学由来の)供給原料は、数百万年前に埋もれた植物及び動物に由来するため、かかる供給原料の放射性炭素(すなわち、14C)は、放射性崩壊にまで失われている。ASTM国際標準は、放射性炭素を用いて「バイオベース化合物」の確実性を決定するための試験規格を定めており、これはASTM D6866-16に見ることができる。この規格により、より新しい炭素と、化石燃料又は石油由来及び石油化学由来の供給源に由来する炭素、すなわち、「古い炭素」とが区別される。最近又は現在のバイオマス中の14Cの量は既知であるため、再生可能な供給源に由来する炭素のパーセンテージは、全有機炭素分析から推定することができ、これにより、化合物が真に「自然な」及び/又は「持続可能な」(「再生可能な」)供給原料源に由来するか、又は逆に「古い」隔離(sequestration)の化合物(すなわち、石油化学由来又は石油系の供給源)に由来するかを決定するために必要なデータが提供される。石油系(「化石系」とも称される)の供給原料の使用は、概して持続不可能であると認められ、すなわち、古い炭素は持続不可能であり、再生可能な供給原料ではなく、さらに当該技術分野において「自然」及び/又は「持続可能」とはみなされない。
【0023】
幾つかの実施形態においては、本発明の配合物及び/又は組成物は、化合物の混合物中に存在する炭素の実質的に全てとしてバイオベース炭素を含み、これは少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のバイオベース炭素含有量を指すことができる。
【0024】
幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、現在の大気中の14C含有量と実質的に同等の14C含有量を含む。幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、現在の大気中の14C含有量の少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の14C含有量を含む。幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約0.8個の14C原子、組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約1.0個の14C原子、又は組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約1.2個の14C原子を含む。
【0025】
代替的には、石油由来の製品と真に天然の及び/又は持続可能な製品とを区別するために、質量分析法を用いた安定な同位体の詳細な分析、並びに炭素-12/炭素-13及び/又は水素-1/水素-2の比率の評価により、確実性を試験することができる。かかる試験は、幾つかの分析サービス試験機関により利用可能であり、放射性炭素試験法と比較して、はるかに迅速であり、より費用対効果が高く、より詳細な情報が得られる。
【0026】
安定同位体分析は、速度論的同位体効果の原理に基づく。後者の効果は、化学反応速度論の当業者にはよく知られている。最も広い意味では、特定の元素の重同位体は、より軽い同位体よりも反応が遅い(例えば、炭素-13に対して炭素-12)。そのため、植物が二酸化炭素をバイオマスに組み込む際に、炭素-12と炭素-13との比率は、バイオマスを作るために植物において用いられる化学の種類(例えば、植物がC3光合成経路を経るか、又はC4光合成経路を経るか)に応じて変化する。これは一般に、δ13C/12C比(すなわち、δ13C)として報告され、現在の二酸化炭素標準が参照される。加えて、水が新たなバイオマスに組み込まれる際にも同様の同位体速度論的効果が観察され、これはδ2H/1H比(すなわち、δ2H)として測定される。δ13C及びδ2H比の組合せを用いることで、関連技術に精通した者は、分析される製品を調製するために使用された供給原料の性質(すなわち、石油化学に由来するか、又は最近まで生きていた若しくは生きている藻類、植物若しくは同様のバイオ源に由来するか)を容易に区別し、検証することが可能である。
【0027】
本出願人らは、本明細書の「持続可能な」により、再生可能な供給源に由来する材料を指す。対照的に、「持続不可能な」とは、化石燃料(例えば、石油、天然ガス、石炭等)のような限られた天然資源に由来する材料を指す。
【0028】
序論
本発明は、1つ以上の式(I):
【化5】
(式中、
PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり、
Rは直鎖C
5~C
8アルキル基であり、
n=1~3であり、
式(I)の構造を有する化合物の混合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースの炭素を含む)の化合物を含む混合物を含むバイオベースのポリグリセリルエステル(PGE)組成物に関する。
【0029】
出願人らは、驚くべきことに、安定した透明な水溶液を提供し、微生物汚染からの保護に使用される静微生物/殺微生物化合物の活性を阻害しないPGE組成物を提供するために、PGE組成物の親水性及び親油性の特性間の正確なバランスを確立する必要があることを発見した。
【0030】
本発明の組成物は、PGEのポリグリセリル部分の組成によって決まる顕著な親水性を有する。本発明の組成物はまた、脂肪酸アシル部分の炭素鎖長及びPGE組成物のエステル化度(DE)によって決まる親油性の臨界閾値を超えない。
【0031】
グリセリル反復単位を有するポリグリセロール
幾つかの実施形態においては、本発明は、エステル化ポリグリセロールに関する。ポリグリセロール(PG)は、本質的に直鎖、分岐又は環状であり得る無水3炭素グリセロール基をベースとする反復単位から構成される複雑な多分散低分子量ポリエーテルである。かかるグリセリル反復単位の例は、引用することにより本明細書の一部をなす、G. Rokicki, G. et al. Green Chem. 2005, 7, 529-539に見られ、以下を含む:
(a)式(IIa)の直鎖1,4(L
1,4)PG反復単位:
【化6】
(b)式(IIb)の直鎖1,3(L
1,3)PG反復単位:
【化7】
(c)式(IIc)の分岐及び環状PGを生じる樹状(D)PG反復単位:
【化8】
(d)式(IId)の末端1,2(T
1,2)単位(ポリグリセリル部分PGに付着して示される):
【化9】
及び(e)式(IIe)の末端1,3(T
1,3)単位(ポリグリセリル部分PGに付着して示される):
【化10】
【0032】
個々のPG分子は、グリセリル重合度(DPPG)によって記載される。すなわち、PG分子は、分子中に存在するグリセリル反復単位の数によって記載され、例えば、ジグリセロールは、2つのグリセリル反復単位を有し、トリグリセロールは、3つのグリセリル反復単位を有し、テトラグリセロールは、4つのグリセリル反復単位を有する等である。様々なPG分子から構成される多分散組成物は、組成物中に存在するPG分子の分布によって特徴付けられ、これは特定のDPPGを有するPG分子の割合に関して定義することができる。当業者であれば、PG組成物が通例、その平均DPPGによって言及されることも認識するであろう。例えば、平均DPPG=10の多分散PG組成物は、様々なDPPG値を有する個々のPG分子から構成される多分散組成物であるにも関わらず、デカグリセロールとして、又はINCI名ポリグリセリン-10によって言及され得る。DPPG値は、ヒドロキシル価決定、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又はMS検出によるHPLC(HPLC-MS)を含む、当業者に既知の技術のいずれかによって決定され、報告され得る。
【0033】
PGは、第一級及び第二級の位置における多くのペンダントヒドロキシル基の存在のために、極めて親水性が高い。しかしながら、PGのヒドロキシル価及び親水性は、形成される各環状反復単位が、1つのペンダントヒドロキシル基を効果的に消費するため、環状反復単位の含有量が増加するにつれて減少する。バイオベースのPGは、水を副生成物とするグリセロール(精製グリセリン)の直接縮合重合、又はグリセロールから合成される環状カーボネートモノマーであるグリセリルカーボネート(GC)の開環重合によって製造することができる。例えば、グリシドール又はエピクロルヒドリンの重合によるPGへの他の経路も存在するが、殆どのグリシドール及びエピクロルヒドリンが、再生可能でない供給原料に由来し、これらのモノマーが顕著な健康及び安全上の危険を示すため、これらの経路はあまり好ましくない。本明細書の実施形態において、PGは、グリシドール又はエピクロルヒドリンの重合によって誘導されない。
【0034】
ポリグリセロールエステル組成物
PGE組成物の親水性は、エステル化前の出発PG材料のPG分布、及びエステル化後のPGE組成物のヒドロキシル価(OHV)によって特徴付けられる。好ましいPG分布は、40%以上のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%以下のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとから構成され、ここで、PGE組成物のOHVは、約500mg KOH/g超である。本明細書の実施形態において、上記式(I)のようなPGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基である。幾つかの実施形態においては、PGは、40%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロール、例えば45%超、50%超、55%超又は60%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールを含むポリグリセリル基である。幾つかの実施形態においては、PGは、60%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロール、例えば55%未満、50%未満、45%未満又は40%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールを含むポリグリセリル基である。
【0035】
式(I)によるPGE化合物におけるエステル化度及び分布に関して、nは1~3に等しい。殆どの化合物は、モノエステル(n=1)となる。しかしながら、2つ又は場合によってはそれ以上の脂肪酸アシル基で置換されたPGE化合物も組成物中に存在する。式(I)による化合物は、1~3のn値を有する。幾つかの実施形態においては、n=1、n=1~2又はn=1~3である。幾つかの実施形態においては、n=1~2である。幾つかの好ましい実施形態においては、式(I)の化合物がモノエステルを含む場合、n=1である。当業者であれば、概して出発ポリグリセロールのモノエステルであるPGE組成物が、実際には非置換ポリグリセロール、ポリグリセリルモノエステル、ポリグリセロールジエステル、さらにはポリグリセロールトリエステルの分布を含み得ることを認識するであろう。このため、個々のPGE化合物よりもPGE組成物の平均エステル化度(DE)の観点で述べる方がより実用的である。
【0036】
PGE組成物の好ましい親油性は、C9を超えないバイオベースの脂肪酸、好ましくはC6~C8を有するバイオベースの脂肪酸を使用し、約15%未満のDEを維持することによって達成される。
【0037】
本発明のPGE組成物は、当業者に既知の様々な方法によって合成することができる。好ましい経路は、バイオベースのC6~C9脂肪酸によるバイオベースのPG(植物性グリセロールの縮合重合に由来する)の直接エステル化である。好ましいバイオベースの脂肪酸としては、n-ヘキサン酸(カプロン酸)、n-ヘプタン酸(エナント酸)、n-オクタン酸(カプリル酸)及びn-ノナン酸(ペラルゴン酸)が挙げられる。PG及び脂肪酸を反応器に投入し、エステル形成を推進するために加熱し、得られた反応水を縮合副生成物として除去する。反応は、窒素スパージ等の不活性ガススパージを用いて大気圧で選択的に行われるが、必要に応じて、水の除去を改善するために系に真空を適用してもよい。PGE組成物は、反応の副生成物であるアルコールを加熱、不活性ガススパージ及び/又は真空の適用によって除去することを伴う、バイオベースのC6~C9脂肪酸の単純エステル(例えば、メチルエステル又はエチルエステル)のエステル交換により合成することもできる。
【0038】
反応は、理想的には、脂肪酸又はその単純エステルの全てが消費され、ポリグリセリルエステルに変換される変換に達するように行われる。残留脂肪酸含有量は、酸価(AV)として定量され、本発明のPGE組成物は、約2.0mg KOH/g未満のAVを有する。
【0039】
出願人らは、本発明の好ましいPGE組成物が、水溶液中での動的表面活性によって特徴付けられ得ることを発見した。動的表面張力の低下、すなわち時間の関数としての表面張力の低下は、最大泡圧(MBP)法を用いる泡圧張力測定によって測定される。MBP実験から得られた動的表面張力データを表面寿命の関数としてプロットすると、データを式(III)のような一次崩壊関数にフィッティングすることで、特定の濃度での所与の界面活性剤の表面張力平衡速度定数(STERC)を得ることができる。
【0040】
表面張力平衡速度定数(STERC)は、式(III):
γt=γeq+(γi-γeq)-t/K (III)
(式中、
γtは時間=tでの表面張力(mN/m単位)であり、
γeqは平衡表面張力(mN/m単位)であり、
γiは初期表面張力(mN/m単位)であり、
tは時間(ms単位)であり、
Kは表面張力平衡速度定数(STERC)(ms-1単位)である)
に従って算出される。
【0041】
STERCは、表面活性種が空気-水界面にどれだけ急速に吸着し、水溶液の表面張力を低下させるかという指標を与える。STERC値がより低い化合物は、STERC値がより高い化合物と比較して、空気-水界面でより強く吸着し、吸着した後にそこに留まる傾向があり、後者は、MBP実験における表面生成の時間スケールにわたって、より容易に吸着及び脱着する傾向がある。この吸着-脱着現象は、ミセルが形成された後に界面活性剤がミセル状態に留まる傾向の代理としても機能し得る。
【0042】
理論に束縛されることを望むものではないが、より大きなSTERC値を示し、すなわち、空気-水界面でのより弱い吸着のために平衡表面張力を達成するまでの時間がより長い界面活性剤は、ミセル交換及び分解の促進から、より動的なミセルも形成すると考えられる。さらに、より大きなSTERC値を示すPGE組成物は、これらのPGE組成物のより動的なミセル挙動により、「中和」として知られる現象であるミセルの封入/隔離を介して、これらの化合物の活性を阻害する可能性が低くなるため、静微生物/殺微生物化合物の可溶化剤としてより良好に機能すると考えられる。
【0043】
試験方法。本明細書において用いられる試験方法には、以下が含まれる:
酸価(AV):AOCS公定法Te 2a-64、
ヒドロキシル価(OHV):AOCS公定法Cd 13-60、
鹸化価(SAP):AOCS公定法Tl 2a-64、及び、
エステル化度(DE)の算出:DE=[(SAP-AV)/(SAP+OHV)]×100
DE(%)=[(SAP-AV)/(SAP+OHV)]×100 (IV)。
【0044】
平衡表面張力測定による臨界ミセル濃度(CMC)の決定。CMC値の決定のための平衡表面張力値を、NIST基準分銅で±0.00001g(±0.002mN/m)に較正し、72.50mN/m±0.05mN/mの純蒸留水標準表面張力に対して較正した高分解能Kruss K100張力計で標準19.9mm×0.2mm白金プレートを用いるウィルヘルミープレート法により、各濃度で各サンプルについて収集した。表面張力の測定のために、プレートの浸漬距離は、±0.01mm以内で、表面に戻るまで3.00mmに設定した。全ての試験を22℃±0.2℃で行った。各界面活性剤について、純水中の1.00%ストック溶液を調製し、各濃度増加後に表面張力を測定しながら、最初の純水に段階的に添加して界面活性剤濃度を増加させた。各界面活性剤は、0.001%~0.500%の範囲の界面活性剤濃度にて二連実験で試験した。CMC値は、直線依存領域の回帰直線と、表面張力を濃度の関数としてプロットした場合にプラトーを通る直線との交点で取られる。
【0045】
泡圧張力測定によるSTERCの決定。動的表面張力は、試験及び浮力調整のために1.00cmの深さまで沈めた0.256mm ODシラン処理ガラス毛管を用い、Kruss BP100泡圧張力計で決定した。張力計は、表面寿命にわたる全分散範囲が5ms~50000msの範囲であったことから、純蒸留水で72.50mN/m±0.1mN/mに較正する。全ての試験を22℃±0.2℃で行った。動的表面張力測定は、CMCで行った。本明細書に報告するSTERCは、CMCで決定され、動的表面張力を表面寿命の関数としてプロットし、データを下記式にフィッティングして、初期値から平衡値までの表面張力の低下に対する一次速度定数を得ることによって得られる。
【0046】
(STERC)は、上に示す通りであり、ここで繰り返される式(III):
γt=γeq+(γi-γeq)-t/K (III)
(式中、
γtは時間=tでの表面張力(mN/m単位)であり、
γeqは平衡表面張力(mN/m単位)であり、
γiは初期表面張力(mN/m単位)であり、
tは時間(ms単位)であり、
Kは表面張力平衡速度定数(STERC)(ms-1単位)である)
に従って算出される。
【0047】
バイオベースのポリグリセリルエステルを含む組成物は、22℃の脱イオン水中で決定される臨界ミセル濃度(CMC)で測定した場合の表面張力平衡速度定数(STERC)が、例えば約2000ms-1超であり得る。これらのバイオベースのポリグリセリルエステル組成物のSTERC値は、例えば約2000ms-1~約4000ms-1、例えば約2050ms-1~約3500ms-1又は約2100ms-1~約3250ms-1の範囲とすることができる。下限に関しては、これらのバイオベースのポリグリセリルエステル組成物のSTERC値は約2000ms-1超、約2050ms-1超又は約2100ms-1超であり得る。幾つかの実施形態においては、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物は、約2200ms-1超のSTERC値を有する。
【0048】
比濁法濁度測定による濁度の測定。溶液及び配合物の透明性は、比濁法濁度単位(NTU)で測定される水溶液濁度(AST)又は配合物濁度(FT)として報告する。濁度値は、室温(23℃±2℃)で操作するHF ScientificのMicro 100卓上濁度計で決定した。水溶液濁度は、23±2℃の脱イオン水中5%で規定通りに測定した場合、PGE組成物の固有の特性である。
【0049】
バイオベースのポリグリセリルエステルを含む組成物は、23±2℃の脱イオン水中5%で測定される、例えば約10NTU未満の水溶液濁度(AST)ように低い濁度を有し得る。本明細書におけるバイオベースのポリグリセリルエステル組成物のASTは、可能な限り低い必要がある。これらのバイオベースのポリグリセリルエステル組成物のASTは、例えば約0NTU~約10NTU、例えば0NTU~5NTU、0NTU~2.5NTU、0NTU~2NTU又は0NTU~1NTUの範囲とすることができる。上限に関しては、ASTは10NTU未満、例えば5NTU未満、2.5NTU未満、2NTU未満、1.5NTU未満、1NTU未満又は0.5NTU未満であり得る。幾つかの実施形態においては、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物は、23±2℃の脱イオン水中5%で測定した場合のASTが約10NTU未満である。幾つかの実施形態においては、ASTは0又は本質的に0であり、例えば検出限界未満である。
【0050】
防腐効力を決定するための配合物の微生物学的チャレンジ試験(MCT)。細菌、酵母及びカビに対する配合物の防腐効力を決定するために、米国薬局方(USP)及びPCPC公定試験方法に準拠したチャレンジ試験を行った。かかる試験は、Personal Care Products Council, Washington, DC発行のPersonal Care Products Council Technical Guidelines, Microbiology Guidelinesの2018年版及びそれに引用された文献に言及されており、これらは引用することにより本明細書の一部をなす。
【0051】
本発明のPGE組成物は水性配合物、特に透明又は半透明な配合物の調製に有用であり、香料、精油、活性成分、防腐成分、及び難水溶性の他の成分等の水に難溶性又は不溶性の疎水性化合物をクリアな水性配合物中に含む。PGE組成物を用いて調製された配合物は、優れた透明性及び微生物汚染に対する防腐効力を示す。
【0052】
本明細書におけるPGE組成物を含む配合物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び両性イオン性界面活性剤を含む界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤若しくは美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、レオロジー調整剤、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体(例えばグリセリドエステル)、酵素、抗炎症剤及び他の薬剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せ等の付加的な構成要素又は成分を含み得る。
【0053】
PGE組成物又は配合物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素であり得る。幾つかの実施形態においては、組成物は、パーソナルケア製品の配合に使用され得るか、又はその構成要素であり得る。パーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0054】
PGE組成物は、パーソナルケア製品の配合物等の配合物中で直接使用することができる。PGE組成物の量は、例えば約0.01wt%~約33wt%、例えば0.025wt%~25wt%、0.1wt%~15wt%又は0.2wt%~10wt%の範囲で配合物中に存在させることができる。上限に関しては、PGEの量は33wt%未満、例えば25wt%未満、15wt%未満又は10wt%未満であり得る。下限に関しては、PGE組成物の量は0.01wt%超、例えば0.025wt%超、0.1wt%超又は0.2wt%超であり得る。
【0055】
PGE組成物を含む配合物は、23±2℃の水を測定した場合の配合物濁度(FT)値がより低く、例えば約100NTU未満である。本明細書におけるPGE組成物を含む配合物のFTは、可能な限り低い必要がある。これらの配合物のFTは、例えば約0NTU~約100NTU、例えば0NTU~50NTU、0NTU~25NTU、0NTU~10NTU又は0NTU~5NTUの範囲とすることができる。上限に関しては、FTは100NTU未満、例えば50NTU未満、25NTU未満、10NTU未満、5NTU未満、2.5NTU未満又は1NTU未満であり得る。幾つかの実施形態においては、PGE組成物を含む配合物は、23±2℃の脱イオン水中5%で測定した場合のFTが約10NTU未満である。幾つかの実施形態においては、FTは0又は本質的に0であり、例えば検出限界未満である。
【0056】
自己分散型濃縮物(SDC)
本発明のPGE組成物は、水に難溶性又は不溶性の疎水性化合物の透明又は半透明な水中油型(O/W)マイクロエマルションの調製に有用な自己分散型濃縮物(SDC)の作製にも使用することができる。SDCは、水に溶解した場合に、典型的には10NTU未満の並外れた透明性を示し、また、典型的には100NTU未満の良好な透明性を有する熱力学的に安定したO/Wマイクロエマルションを形成する。
【0057】
本発明のSDCは、香料、精油、活性成分、防腐成分、及び難水溶性の他の成分等の水に難溶性又は不溶性の疎水性化合物をクリアな水性配合物に含む透明又は半透明な水性配合物の調製に有用である。SDCを用いて調製された配合物は、優れた透明性及び微生物汚染に対する防腐効力を示す。
【0058】
幾つかの実施形態においては、本発明は、様々な用途のための配合物に使用され得るバイオベースのポリグリセリルエステルを含むSDCに関する。SDC組成物又は配合物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素であり得る。幾つかの実施形態においては、組成物は、パーソナルケア製品の配合物に使用してもよく、又はその構成要素であってもよい。パーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0059】
本明細書に開示されるSDCは、水不溶性成分のためのマイクロ乳化系として、又は難溶性又は水不溶性成分を配合物に導入するためのビヒクルとして配合物に使用するのに適している。幾つかの実施形態においては、配合物は、熱力学的に安定したO/Wマイクロエマルションである。
【0060】
場合によっては、SDCは、他の成分と容易に組み合わせて、水で希釈することで完成配合物が得られる配合物濃縮物の調製に有用であり得る。場合によっては、SDCは、「低温処理可能」であるという利点を有し、すなわち水溶液中に分散させるために熱を必要としない。実施形態において、これらのSDCは、上記のようなバイオベースのポリグリセリルエステル組成物と、付加的に中鎖末端ジオール(MCTD)とを含み得る。これらの実施形態のバイオベースのポリグリセリルエステルは、上記のような式(I)の組成物であってもよい。これらの組成物は、上記のようなパーソナルケア製品又は他の用途の配合物に使用されても、又はその構成要素であってもよい。バイオベースのポリグリセリルエステルは他の成分、例えばMCTDと相乗的に作用することができる。
【0061】
化粧品、トイレタリー及び医薬品用途に使用する場合、本明細書に記載される濃縮物又は配合物への使用に最も好ましいジオールは、比較的低い使用レベルで静微生物活性及び/又は抗微生物活性を示す中鎖長の直鎖ビシナルジオールである。幾つかの実施形態においては、中鎖長は、ジオールについてはC4~C10である。かかるジオールとしては、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール(カプリリルグリコール)及び1,2-デカンジオールが挙げられる。本明細書に記載される組成物に有用な他のビシナルジオールには、グリセリンに由来する分子が含まれる。グリセリンは、1位又は3位で他の分子で置換させることができ、2つの隣接ヒドロキシル基が残る。例えば、INOLEX, Inc.からLexgard(商標) Eとして市販されているエチルヘキシルグリセリン又はINOLEX, Inc.からLexgard(商標) MHG Natural MBとして市販されているメチルヘプチルグリセリン等のグリセリルモノエーテルは、抗微生物特性を有する有用な液体ビシナルジオールである。グリセリルモノエステル、例えばグリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノヘプタノエート、又はINOLEX, Inc.(Philadelphia, Pa.)から市販されているLEXGARD(商標) GMCYであるグリセリルモノカプリレートも有用な抗微生物ビシナルジオールである。
【0062】
幾つかの実施形態においては、中鎖末端ジオールはグリセリルモノエステル、グリセリルモノエーテル、1,2-アルカンジオール及びそれらの組合せの少なくとも1つである。中鎖末端ジオールは、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノヘプタノエート及びグリセリルモノウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステルであってもよい。中鎖末端ジオールは、エチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン、ヘキシルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテルであってもよい。中鎖末端ジオールは、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール(カプリリルグリコール)及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオールであってもよい。
【0063】
化粧品、トイレタリー及び医薬品の防腐について、ビシナルジオールが細菌及び酵母に対して効果的であるが、真菌に対しては弱いことが知られている。書籍D. Steinberg, Preservatives for Cosmetics. 2nd ed, (2006), pg. 102において、著者は、ビシナルジオールに関して、「これら全てに対して最も弱い活性が真菌である」と述べている。論文D. Smith et al., "The Self-Preserving Challenge," Cosmetic & Toiletries, No. 1, 115, No. 5 (May 2000)において、ビシナルジオールは、細菌に対する活性を有するが、「アスペルギルス属に対しては限定的である」と記載されている。アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)としても知られるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)は、PCPCチャレンジ試験に使用される微生物の1つであるため、本明細書に記載されるビシナルジオールを唯一の防腐剤成分とする製品は、PCPCチャレンジ試験を十分に通過しない可能性がある。
【0064】
これらの実施形態の組成物は、キレート剤も含み得る。本発明の組成物、配合物、製品及び方法とともに使用するのに適したキレート剤としては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸又はそのアルキルヒドロキサム酸塩、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、フィチン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、ガラクツロン酸又はその塩、ガラクタル酸又はその塩、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せから本質的になる。アルキルヒドロキサム酸キレート剤等のキレート剤の添加により、真菌に対する付加的な効力が得られる。
【0065】
SDCは、少なくとも以下の成分を含む:上記のようなバイオベースのポリグリセリルエステル組成物及び中鎖末端ジオール。任意に、SDCは、中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを含むことができる。任意に、SDCは、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールを含むことができる。任意のC3~C4ジオールの例としては、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、メチルプロパンジオール及びそれらの組合せが挙げられる。
【0066】
SDCは、約30%~約90%の式(I)のバイオベースのポリグリセリルエステル組成物と、約5%~約50%の中鎖末端ジオールとを含み得る。幾つかの実施形態においては、濃縮物は、約0.1%~約20%の中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを更に含む。幾つかの実施形態においては、濃縮物は、付加的又は代替的には約1%~約75%のグリセリン及び/又はC3~C4ジオールを含む。他の任意の成分が下記のようにSDCに含まれていてもよい。
【0067】
SDCは、式(I)のバイオベースのポリグリセリルエステル組成物、例えば式(I)の組成物を約30wt%~約90wt%、例えば40wt%~85wt%、45wt%~80wt%又は50wt%~75wt%の範囲で含むことができる。上限に関しては、式(I)の組成物の量は90wt%未満、例えば85wt%未満、80wt%未満又は75wt%未満であり得る。下限に関しては、式(I)の組成物の量は30wt%超、例えば40wt%超、45wt%超又は50wt%超であり得る。
【0068】
SDCは、中鎖末端ジオールを約5wt%~約50wt%、例えば7.5wt%~40wt%、10wt%~30wt%又は10wt%~25wt%の範囲で含む。上限に関しては、中鎖末端ジオールの量は50wt%未満、例えば40wt%未満、30wt%未満又は25wt%未満であり得る。下限に関しては、中鎖末端ジオールの量は5wt%超、例えば7.5wt%超又は10wt%超であり得る。SDC中のポリグリセリルエステルと中鎖末端ジオールとの比率は、約1:1~約10:1、好ましくは約2:1~約8:1、より好ましくは約2:1~約7:1である。
【0069】
SDCは、中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを約0.1wt%~約20wt%、例えば0.5wt%~17.5wt%、1.0wt%~15wt%又は2.0wt%~10wt%の範囲で含む。上限に関しては、中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せの量は20wt%未満、例えば17.5wt%未満、15wt%未満又は10wt%未満であり得る。下限に関しては、中鎖末端ジオール中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せの量は0.1wt%超、例えば0.5wt%超、1.0wt%超又は2.0wt%超であり得る。
【0070】
SDCは、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールを約1.0wt%~約75wt%、例えば2.5wt%~50wt%、5wt%~50wt%又は5wt%~25wt%の範囲で含む。上限に関しては、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールの量は75wt%未満、例えば50wt%未満又は25wt%未満であり得る。下限に関しては、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールの量は1.0wt%超、例えば2.5wt%超又は5wt%超であり得る。
【0071】
任意に、SDCは、有機酸及び/又はポリオール等の付加的な構成要素又は成分を含む。SDCは、安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される有機酸を含み得る。SDCは、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオールを含み得る。SDCは、アミノ酸グリシンの中鎖(C6~C10)脂肪酸アミド、例えばカプリロイルグリシン又はその塩を含み得る。幾つかの実施形態においては、SDCは、実質的に無水であり、すなわち水が調製時にSDCに意図的に添加されず、SDCは約2%未満の水、例えば加工又は大気からの吸収による偶発的な水分を含有する。
【0072】
これらの構成要素は、任意とみなされ得る。場合によっては、本節において、例えば請求項の文言により、開示の組成物から上述の成分の1つ以上が明示的に除外されることがある。例えば、請求項の文言は、開示の組成物、配合物、方法等が上述の任意の成分の1つ以上を利用しないか、又は含まないことを記載するように変更されることがある。
【0073】
続いて、SDCをパーソナルケア製品の配合等のその後の配合に使用することができる。SDCの量は、例えば約0.1wt%~約50wt%、例えば0.25wt%~30wt%、0.5wt%~15wt%又は1.0wt%~10wt%の範囲で配合物中に存在するものであり得る。上限に関しては、SDCの量は、50wt%未満、例えば30wt%未満、15wt%未満又は10wt%未満であり得る。下限に関しては、SDCの量は、0.1wt%超、例えば0.25wt%超、0.5wt%超又は1.0wt%超であり得る。
【0074】
バイオベースのポリグリセリルエステル及び中鎖末端ジオールを含むSDCを含む配合物は、23±2℃の水を測定した場合の配合物濁度(FT)値がより低く、例えば約100NTU未満である。本明細書におけるSDCを含む配合物のFTは、可能な限り低い必要がある。これらのSDC配合物のFTは、例えば約0NTU~約100NTU、例えば0NTU~50NTU、0NTU~25NTU、0NTU~10NTU又は0NTU~5NTUの範囲とすることができる。上限に関しては、FTは100NTU未満、例えば50NTU未満、25NTU未満、10NTU未満、5NTU未満、2.5NTU未満又は1NTU未満であり得る。幾つかの実施形態においては、SDCは、23±2℃の脱イオン水中5%で測定した場合のFTが約10NTU未満である。幾つかの実施形態においては、FTは0又は本質的に0であり、例えば検出限界未満である。
【0075】
任意に、本明細書におけるSDCを含む配合物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び両性イオン性界面活性剤を含む界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤若しくは美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、レオロジー調整剤、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体(例えばグリセリドエステル)、酵素、抗炎症剤及び他の薬剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せ等の付加的な構成要素又は成分を含み得る。
【0076】
バイオベースのポリグリセリルエステル組成物を含む組成物及び濃縮物を調製する方法
本発明の方法は、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物及び自己分散型濃縮物、並びにバイオベースのポリグリセリルエステル組成物及び自己分散型濃縮物を含む配合物及び/又は構成要素の調製に関する。
【0077】
バイオベースのポリグリセリルエステル組成物を調製する方法は、1つ以上の式(I)の化合物を混合することを含む。式(I)については、上で詳細に説明している。混合はフラスコ、反応器、又は当該技術分野で既知の他の容器内で行うことができ、撹拌を含んでいてもよい。混合は、約150℃~250℃の温度に加熱することを含んでいてもよく、窒素スパージの使用を含んでいてもよい。凝縮水は混合中に除去される。混合により、酸価で示される所望の変換率が達成されるまで化合物を反応させる。混合及び反応は、約8時間~36時間の混合を含み得る。幾つかの実施形態においては、2.0mg KOH/g未満の酸価によって示されるような変換率が達成される。
【0078】
方法は、式(I)のnが1、2又は3であることを含み得る。幾つかの実施形態においては、n=1である。式(I)のRは、直鎖又は分岐C5~C8アルキル基であり得る。幾つかの実施形態においては、Rは直鎖C5~C8アルキル基である。幾つかの実施形態においては、Rは直鎖C6アルキル基であり、RCOはバイオベースのn-ヘプタン酸に由来する。
【0079】
方法は、式(I)のPGが60%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、40%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり得ることを含んでいてもよい。幾つかの実施形態においては、方法は、PGが60%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、40%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であることを含む。
【0080】
方法は、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物が、500mg KOH/g超のヒドロキシル価及び約15%未満のエステル化度(DE)を有することを含み得る。幾つかの実施形態においては、方法は、組成物が約2mg KOH/g未満の酸価(AV)を有することを含む。
【0081】
方法は、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物が、22℃の脱イオン水中で決定される臨界ミセル濃度(CMC)で測定した場合に約2000ms-1超の表面張力平衡速度定数(STERC)を有することを含み得る。
【0082】
方法は、23±2℃の脱イオン水中5%で測定した場合にバイオベースのポリグリセリルエステル組成物が、約10NTU未満の水溶液濁度を有することを含み得る。
【0083】
バイオベースのポリグリセリルエステル組成物を含む自己分散型濃縮物を調製する方法は、1つ以上の式(I)の化合物を混合することを含み得る。混合及び式(I)については、上で詳細に説明している。混合に続いて、方法は、バイオベースのポリグリセリルエステルと中鎖末端ジオールとを組み合わせることを含む。方法は、式(I)のnが1~3であることを含み得る。場合によっては、n=1である。場合によっては、Rは直鎖C5~C8アルキル基である。或る特定の実施形態においては、Rは直鎖C6アルキル基であり、RCOはバイオベースのn-ヘプタン酸に由来する。PGは60%超のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、40%未満のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとを含むポリグリセリル基であり得る。
【0084】
幾つかの実施形態においては、組合せは約30%~約90%のバイオベースのポリグリセリルエステルと、約5%~約50%の中鎖ジオール配合物とを含む。
【0085】
自己分散型濃縮物を調製する方法における組合せは、中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを更に含み得る。幾つかの実施形態においては、組合せは約0.1%~約20%の中鎖アルキルヒドロキサム酸、その塩又はそれらの組合せを含む。
【0086】
自己分散型濃縮物を調製する方法における組合せは、グリセリン及び/又はC3~C4ジオールを更に含み得る。幾つかの実施形態においては、組合せは約1%~約75%のグリセリン及び/又はC3~C4ジオールを含む。
【0087】
方法は、バイオベースのポリグリセリルエステル組成物及び/又はSDCから配合物を調製することを含み得る。最終使用配合物に応じて、上記のような更に付加的な成分を付加的に組み合わせることができる。配合物又は組成物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品の構成要素とすることができる。本明細書の方法によって製造することができるパーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0088】
これらの詳細な説明は、本発明の一部をなす上記の一般的な説明及び実施形態を例示するのに役立つ。これらの詳細な説明は、例示のみを目的として提示され、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0089】
実施例1:ヘプタン酸ポリグリセリル-10組成物の合成。ヘプタン酸ポリグリセリル-10PGE組成物を以下のように合成した:オーバーヘッドメカニカルスターラー、加熱マントル、温度調節器、凝縮器/受液器及び窒素スパージを備える1リットルの四つ口丸底フラスコに、表1の仕様に適合するバイオベースのポリグリセリン-10(Pure Vegetable Polyglycerine-10、Spiga Nord SpA、598g、0.78mol)及びバイオヘプタン酸(bio-heptanoic acid)(Oleris(商標) n-Heptanoic Acid、Arkema、152g、1.17mol)を添加した。フラスコの内容物を適度な速度で撹拌しながら、0.10L/分の速度で窒素スパージを用いて200℃に加熱した。これらの条件下で反応を保持し、凝縮水を除去した。所望の変換率(2.0mg KOH/g未満の酸価で示される)が達成されるまで反応を進行させ、これにはおよそ18時間かかった。次いで、反応器を80℃に冷却し、内容物を適切な容器に取り出して保管した。
【0090】
【0091】
実施例2~実施例6:ヘプタン酸ポリグリセリル-10組成物の合成。実施例2~実施例6は、ポリグリセリン-10に対するバイオヘプタン酸のモル比を表2に挙げる値に従って変更した以外は、実施例1と同様の方法で調製した。
【0092】
実施例7:ヘキサン酸ポリグリセリル-10組成物の合成。ヘキサン酸ポリグリセリル-10 PGE組成物を以下のように合成した:オーバーヘッドメカニカルスターラー、加熱マントル、温度調節器、凝縮器/受液器及び窒素スパージを備える1リットルの四つ口丸底フラスコに、表1の仕様に適合するバイオベースのポリグリセリン-10(Pure Vegetable Polyglycerine-10、Spiga Nord SpA、607g、0.8mol)及びバイオヘキサン酸(ヘキサン酸、天然、98%超、Sigma Aldrich、93g、0.8mol)を添加した。フラスコの内容物を適度な速度で撹拌しながら、0.10L/分の速度で窒素スパージを用いて200℃に加熱した。これらの条件下で反応を保持し、凝縮水を除去した。所望の変換率(2.0mg KOH/g未満の酸価で示される)が達成されるまで反応を進行させ、これにはおよそ20時間かかった。次いで、反応器を80℃に冷却し、内容物を適切な容器に取り出して保管した。
【0093】
実施例8:カプリル酸ポリグリセリル-10組成物の合成。カプリル酸ポリグリセリル-10 PGE組成物を以下のように合成した:オーバーヘッドメカニカルスターラー、加熱マントル、温度調節器、凝縮器/受液器及び窒素スパージを備える1リットルの四つ口丸底フラスコに、表1の仕様に適合するバイオベースのポリグリセリン-10(Pure Vegetable Polyglycerine-10、Spiga Nord SpA、607g、0.8mol)及びバイオカプリル酸(カプリル酸、99%、FA C0899、Unilever Oleochemical、112g、0.8mol)を添加した。フラスコの内容物を適度な速度で撹拌しながら、0.10L/分の速度で窒素スパージを用いて200℃に加熱した。これらの条件下で反応を保持し、凝縮水を除去した。所望の変換率(2.0mg KOH/g未満の酸価で示される)が達成されるまで反応を進行させ、これにはおよそ15時間かかった。次いで、反応器を80℃に冷却し、内容物を適切な容器に取り出して保管した。
【0094】
【0095】
比較例1:ヘプタン酸ポリグリセリル-4組成物の合成。ヘプタン酸ポリグリセリル-4PGE組成物は、表3の仕様に適合するバイオベースのポリグリセリン-4(Pure Vegetable Polyglycerine-4、Spiga Nord SpA)をバイオヘプタン酸と1:1のモル比で使用した以外は、実施例1の手順に従って合成した。
【0096】
【0097】
比較例2:ヘプタン酸ポリグリセリル-6組成物の合成。ヘプタン酸ポリグリセリル-6PGE組成物は、表1の仕様に適合するバイオベースのポリグリセリン-6(Pure Vegetable Polyglycerine-6、Spiga Nord SpA)をバイオヘプタン酸と1:1のモル比で使用した以外は、実施例1の手順に従って合成した。
【0098】
比較例3:市販のカプリル酸ポリグリセリル-10。カプリル酸ポリグリセリル-10 PGE組成物の市販のサンプル(SY-Glyster MCA-750、モノカプリル酸デカグリセロール)を阪本薬品工業株式会社から入手し、そのまま使用した。
【0099】
比較例4:市販のヘプチルグルコシド。C7アルキルポリグルコシド界面活性剤であるヘプチルグルコシドの市販のサンプル(Sepiclear G7)をSeppic, Inc.から入手し、そのまま使用した。この材料は、水中70%~75%の溶液として提供される。ヘプチルグルコシドは、アルキルポリグルコシド(PGEではない)であり、O/Wマイクロエマルションの調製に非常に効果的な可溶化剤であり(米国特許第9,080,132号を参照されたい)、本明細書には比較性能ベンチマークとして含まれる。
【0100】
比較例5:市販のカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル-10。カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル-10 PGE組成物の市販のサンプル(Polyaldo 10-1-CC K)をArxada(元Lonza)から入手し、そのまま使用した。
【0101】
実施例1~実施例8及び比較例1~比較例4の特性評価データ(AV、OHV、SAP及びDE)を表2に報告する。比較例4は、エステルではなくエーテルであるため、OHVのみを決定した。バイオベースのPGE組成物の水溶性及び透明性は、脱イオン水中のPGE組成物の5%及び10%の水溶液を調製することによって評価した。データを表2に報告する。ポリグリセリン-10を用いて調製した実施例1~実施例8は、容易に水溶性であり、AST値が7.0NTU未満で良好な透明性を示す透明な溶液を形成した。ポリグリセリン-4及びポリグリセリン-6を用いて調製した比較例1及び比較例2は、それぞれ水に不溶性であり、クリアな溶液を形成しなかった。実施例1~実施例8は、溶解性及び透明性を確実にするために、40%以上のヘキサグリセロール及び高級ポリグリセロールと、60%以下のペンタグリセロール及び低級ポリグリセロールとから構成されるポリグリセリン前駆体を選択することの重要性を実証する。比較例3及び比較例4は、低い濁度値のクリアな溶液を形成した。
【0102】
【0103】
実施例9:CMC及びSTERC値の決定。CMC及びCMCでのSTERCの値を幾つかの本発明のPGE組成物(実施例2、実施例4及び実施例6~実施例8)及び比較例について決定した。結果を表4に報告する。本発明のPGE組成物のSTERC値は、2000ms-1超であるが、比較例3の比較PGE組成物は、2000s-1未満のSTERCを示す。比較例4の市販の性能ベンチマークであるヘプチルグルコシドは、3226ms-1のSTERCを示した。
【0104】
実施例10:多機能防腐系の可溶化。Spectrastat(商標) G2 Naturalは、INOLEX, Inc.製の100%バイオベースの多機能防腐系であり、カプリル酸グリセリル、カプリルヒドロキサム酸及びグリセリンから構成される。Spectrastat(商標) G2 Naturalは、水に溶けにくく、透明な溶液を形成しない。実施例1~実施例8並びに比較例3及び比較例4の可溶化性能は、5%可溶化剤を含有する水溶液中の1%Spectrastat(商標) G2 NaturalのFTを決定することによって評価した(比較例4は供給されたままの5%で使用し、約3.5%の活性ヘプチルグルコシドが得られたことに留意されたい)。濁度値を表5に報告する。
【0105】
【0106】
実施例2、実施例4、実施例5、実施例6及び実施例8は、5%で使用した場合、FT値が9.0NTU未満の1%Spectrastat(商標) G2 Naturalのクリアな配合物を形成した。実施例7のヘキサン酸ポリグリセリル-10は、5%では透明な溶液を形成しなかったが、7%で使用した場合、実施例7は、濁度6.54NTUのSpectrastat(商標) G2 Naturalの1%配合物を生成した。実施例7の効率低下は、ヘキサン酸ポリグリセリル-10のC6脂肪酸エステルがより短く、他の実施例のC7及びC8脂肪酸エステルよりも親油性が低くなることに起因する。実施例1及び実施例3のヘプタン酸ポリグリセリル-10は、不透明なエマルションを形成し、比較例3の市販のカプリル酸ポリグリセリル-10は、濁度57.1NTUの濁った半透明な配合物を形成した。比較例4のヘプチルグルコシドは、4.21NTUの濁度値で最も高い透明性を示した。
【0107】
図1は、一連のヘプタン酸ポリグリセリル-10の例について、様々なヘプタン酸ポリグリセリル-10を5%配合した場合のSpectrastat(商標) G2 Naturalの1%配合物の濁度をDEの関数として示す。ヘプタン酸ポリグリセリル-10組成物では、PGE組成物のOHVが528mg KOH/g超であり、DEが8%~11%である場合に理想的な可溶化性能が達成される。実施例8のカプリル酸ポリグリセリル-10も、この範囲のOHV値及びDE値を示し、FTが5.04NTUの透明な配合物を形成した。実施例1及び実施例3はそれぞれ、Spectrastat(商標) G2 NaturalのO/Wマイクロ乳化剤として良好に機能するには過度に疎水性(低いOHV、過剰なDE)及び過度に親水性(不十分なDE)である。同様に、比較例3の市販のカプリル酸ポリグリセリル-10は、実施例8のカプリル酸ポリグリセリル-10(OHV=617mg KOH/g及びDE=9.4%)と比較して、低いOHV(492mg KOH/g)及び過剰なDE(13.3%)を示すため、比較例3は良好に機能せず、濁った溶液を生じる。
【0108】
実施例11:可溶化多機能防腐系の防腐効力。以下の手順を用いて表6に示す配合物を調製することにより、防腐効力に対する様々な可溶化剤の影響を評定した:オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレードを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、水(バッチに必要とされる全水の95%)を投入した。低速~中速で混合を開始し、指定の可溶化剤を水に添加し、完全に溶解するまで混合した。Spectrastat(商標) G2 Naturalをバッチに添加し、均一に混合された均質な溶液が形成されるまで混合した。クエン酸の10%溶液を用いて、配合物のpHをpH6.6±0.2に調整した。残りの水を100%になるまで適量添加し、バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。
【0109】
【0110】
表6に、評価した各可溶化剤のOHV、DE及びSTERCのデータに加えて、配合物の濁度値を報告する。配合物A(可溶化剤なし)は、不透明な分散液を形成し、濁度は100NTUを超える。比較例4のヘプチルグルコシドの性能ベンチマークを用いた配合物Bと、実施例2のヘプタン酸ポリグリセリル-10を用いた配合物Dとはどちらも、それぞれ5.2及び5.7の濁度値の透明な溶液を形成した。比較例3の市販のカプリル酸ポリグリセリル-10を用いた配合物Cは、濁度57.1で濁った溶液を形成した。
【0111】
USP及びPCPC公定試験方法に準拠したMCTを行い、配合物中のSpectrastat(商標) G2 Naturalの防腐効力を決定した。結果を表7A~表7Dに示す。配合物A及び配合物Bは、良好な防腐効力を示し、14日目までに5つの微生物の強い減少を達成する。比較PGE組成物を用いて調製した配合物Cは、殆どの微生物に対して弱い防腐効力を示し、14日目にMCTを中断した。本発明のPGE組成物を用いて調製した配合物Dは、配合物Cよりも顕著に強い防腐効力を示し、微生物成長の大きな減少を達成した。配合物Cと比較した配合物Dの防腐効力の改善は、本発明のPGE組成物のより高いSTERC値に起因する(2115ms-1対1964ms-1)。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
実施例12.自己分散型濃縮物(SDC)の調製。表8に示すSDCを指定量の各成分を組み合わせて混合し、均一で均質な組成物が得られるまで40℃~45℃で混合することによって調製した。
【0117】
【0118】
実施例13:ミセラーウォーター配合物の防腐効力。以下の手順を用いて表9に示すミセラーウォーター配合物を調製することにより、防腐効力に対する様々な可溶化剤の影響を評定した:オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレードを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、水(バッチに必要とされる全水の95%)を投入した。低速~中速で混合を開始し、指定の可溶化剤を水に添加し、完全に溶解するまで混合した。ヘプタン酸グリセリル(45%)、カプリルヒドロキサム酸(10%)及びプロパンジオール(45%)を含む多機能防腐系をバッチに添加し、均一に混合された均質な溶液が形成されるまで混合した。クエン酸の10%溶液を用いて、配合物のpHをpH6.6±0.2に調整した。残りの水を100%になるまで適量添加し、バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。配合物Hについては、多機能防腐系及び可溶化剤を別々に添加する代わりに実施例12DのSCDをバッチに添加した。全てのミセラーウォーターが、濁度値が4.0NTU未満のクリアで透明な溶液であった(表9)。
【0119】
【0120】
USP及びPCPC公定試験方法に準拠したMCTを行い、ミセラーウォーター配合物の防腐効力を決定した。結果を表10A~表10Dに示す。全ての配合物が良好な防腐効力を示し、14日目までに5つの微生物の強い減少を達成し、USP、PCPC及びEPの公定ガイドラインに従う防腐効力の成功基準を満たした。本発明のPGE組成物(実施例2)を用いて調製した配合物F及び配合物G、並びに本発明のSDC(実施例12A)を用いて調製した配合物Hはいずれも、透明性及び防腐効力の望ましい組合せを達成し、ヘプチルグルコシド(比較例3)を用いて調製された配合物Eの性能ベンチマークを満たした。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
実施例14.SDCを用いたO/Wマイクロエマルションの調製。O/Wマイクロエマルション配合物の調製に対する本発明のSDCの有用性を実証するために、実施例12B、実施例12C及び実施例12DのSDCを用いて、表11に示す配合物を調製した。配合物は、適切な量の各成分を20mLシンチレーションバイアルに充填した後、ボルテックスミキサーで均一になるまで混合することにより、20gスケールで調製した。マイクロエマルションは、溶液中に気泡が存在しなくなるまで沈降させた後、濁度を測定した。マイクロエマルションを24時間エージングした後に濁度測定を繰り返した。調製時に濁度値が100NTU超の溶液は、熱力学的に不安定なマクロエマルションとみなし、24時間での濁度については更に評価しなかった。
【0126】
【0127】
マイクロ乳化剤としてSDCを用いて調製した配合物の濁度データを表12に示す。ヘプタン酸ポリグリセリル-10:メチルヘプチルグリセリンの比率が5:1(実施例12B)から7:1(実施例12D)に増加するにつれ、濁度が100NTUを超える前に系が可溶化し得るオレンジ油の最大量によって証明されるように、系の油可溶化能が高まることが観察される。実施例12D(7:1)のSDCは、一連の中で最も低い油可溶化能を有するが、所与の油負荷でのより低い濁度値によって示されるように、より高い透明性を有するO/Wマイクロエマルションが得られる。透明性データから、所与の油負荷で、液滴が小さいほど光の散乱が少なくなり、濁度値が低くなることから、ヘプタン酸ポリグリセリル-10:メチルヘプチルグリセリンの比率が7:1から5:1に減少するにつれ、マイクロエマルションの液滴サイズが減少することが示唆される。
図2A及び
図2Bは、マイクロエマルションの調製時及び24時間後の両方での3つの異なるSDCについてのO/Wマイクロエマルションの濁度を油負荷の関数として示す。濁度値が100NTU未満のO/Wマイクロエマルション配合物は、調製後数週間にわたって安定で透明なままであることが観察され、熱力学的に安定したマイクロエマルション系の形成が示された。
【0128】
【0129】
実施例15.多機能防腐系の可溶化のための本発明のPGE組成物と市販のPGE組成物との比較
【0130】
【0131】
本発明のPGE組成物(実施例2)又は市販のPGE組成物(比較例5)のいずれかを含むミセラーウォーター配合物を調製し、配合物濁度について評価した。表13のデータから、ヘプタン酸(C7)エステル官能基を有する本発明のPGE組成物が、カプリル酸(C8)及びカプリン酸(C10)エステル官能基の混合物を有する市販のPGE組成物と比較して、10NTU未満の濁度値で劇的によりクリアな配合物をもたらすことが実証される。
【0132】
実施例16:ミセラーウォーター配合物における精油の可溶化
表14に示す実施例16A~実施例16Hは、精油と、カプリルヒドロキサム酸及びプロパンジオールから構成される多機能防腐成分であるZeastat(商標)とを含むミセラーウォーター配合物である。これらの実施例から、芳香精油を含有するクリアなミセラーウォーター配合物の調製に対する実施例2の本発明のPGE組成物の有用性が実証される。いずれの場合にも、10NTU未満のFT値で示されるように、配合物中の0.5%の精油をマイクロ乳化するためには、最低5.00%のPGE組成物が必要であった。これらの配合物では、濁度値が10NTU未満の配合物を得るために、PGE組成物と組み合わせて中鎖末端ジオールを使用する必要はなく、したがって、精油のクリアなマイクロエマルションをもたらす本発明のPGE組成物の能力が実証される。
【0133】
【0134】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、本発明の様々な変更形態が上記の説明及び図面から当業者には明らかである。かかる変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0135】
全ての値が近似値であり、説明のために提供されることを更に理解されたい。本明細書において引用され、論考される全ての参照文献は、各参照文献が個別に引用することにより本明細書の一部をなすのと同じ程度に、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【国際調査報告】