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特表2024-537135少なくとも1つのバクテリオファージと少なくとも1つの酵母との混合物及びその乾燥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】少なくとも1つのバクテリオファージと少なくとも1つの酵母との混合物及びその乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20241003BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12N1/00 N
C12N1/16 J
C12N1/20 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520696
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 FR2022051939
(87)【国際公開番号】W WO2023062328
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2110984
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル アラン
(72)【発明者】
【氏名】プラン エディス
(72)【発明者】
【氏名】スイシ ジャン-ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】トゥサン ルノー
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA72X
4B065BD10
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA49
(57)【要約】
本出願は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物の製造方法に関し、前記混合物は固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなり、前記方法は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとを懸濁液中で混合するステップと、この混合物を乾燥させるステップとによって行われることを特徴とする。また、本出願は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物に関し、この乾燥混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と、バクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物を製造する方法であって、前記混合物は固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなり、前記方法は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとを懸濁液中で混合するステップと、この混合物を乾燥させるステップとによって行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物を製造する方法であって、
・好ましくはクリーム形態の少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージとを懸濁液中に提供するステップと、
・混合物を形成するために、前記少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体を前記少なくとも1つのバクテリオファージと混合するステップと、
・乾燥混合物を形成するために、前記混合物の乾燥ステップを実施するステップと、
・前記乾燥混合物を回収するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記乾燥ステップは、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、あるいは流動床上で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥ステップは、乾燥賦形剤、好ましくはマルトデキストリンの存在下で行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵母は、Saccharomyces cerevisiae及びSaccharomyces boulardiiの種から選択される株に由来し、好ましくは、前記酵母は、2007年10月17日に番号CNCM I-3856で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2018年3月22日に番号CNCM I-5298で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、及び2007年8月21日に番号CNCM I-3799で寄託されたSaccharomyces boulardii株から選択される株に由来することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のバクテリオファージは、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・パーフリンジェンス又はサルモネラ属菌株から選択される細菌株、乳酸菌に対して抗菌活性を有するものから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵母誘導体は、酵母殻であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物であって、前記乾燥混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなることを特徴とする、乾燥混合物。
【請求項9】
前記固体実体は、フレーク、グレイン、バーミセリ又は顆粒の形態を有することを特徴とする、請求項8の乾燥混合物。
【請求項10】
前記酵母は、Saccharomyces cerevisiae及びSaccharomyces boulardiiの種から選択される株に由来し、好ましくは、前記酵母は、2007年10月17日に番号CNCM I-3856で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2018年3月22日に番号CNCM I-5298で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、及び2007年8月21日に番号CNCM I-3799で寄託されたSaccharomyces boulardii株から選択される株に由来することを特徴とする、請求項8又は9に記載の乾燥混合物。
【請求項11】
前記1つ以上のバクテリオファージは、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・パーフリンジェンス又はサルモネラ属菌株から選択される細菌株、乳酸菌に対して抗菌活性を有するものから選択されることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の乾燥混合物。
【請求項12】
前記酵母誘導体は、酵母殻であることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の乾燥混合物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物。
【請求項14】
胃液の酸性度の処理に使用するための、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物。
【請求項15】
胃液の酸性度の処理のための組成物に使用するための、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物。
【請求項16】
植物の刺激、保護、生物制御及び/又は栄養のための組成物における、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物の使用。
【請求項17】
食品組成物又は食品サプリメントにおける、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物の使用。
【請求項18】
ビール醸造及び/又はワイン醸造における、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物の使用。
【請求項19】
製パンにおける、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物の使用。
【請求項20】
バイオエタノールの製造における、請求項8~12のいずれか一項に記載の乾燥混合物又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法から得られた乾燥混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのバクテリオファージ及び少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体の乾燥混合物を製造する方法、それぞれが少なくとも1つのバクテリオファージ及び少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体からなる固体実体(entites solides)を含む混合物、並びにそのような混合物の様々な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトも動物又は植物も、細菌型感染を引き起こす細菌の宿主の役割を果たし得る。バクテリオファージの使用は、細菌起源の疾患又は消化障害を訓練するために選択された。例えば、特許文献1は、ヒトにおける胃腸の炎症又は疼痛を治療又は予防するための方法であって、サイフォウイルス(Siphoviridae)科又はマイオウイルス(Myoviridae)科由来のバクテリオファージから選択される1つ以上のバクテリオファージを含む組成物の経口投与を含む方法を記載している。特に、1つ以上のバクテリオファージは、LH01-マイオウイルス科、LL5-サイフォウイルス科、T4D-マイオウイルス科及びLL12-マイオウイルス科から選択される。したがって、バクテリオファージは、胃腸細菌叢を保護するのに役立つプレバイオティクスの役割を果たし得る。
【0003】
非特許文献1は、天然微生物叢を破壊することなく腸からサルモネラ株を除去するためにヒト患者に投与されるバクテリオファージカクテルを扱っている。このカクテルは、またサルモネラによる腸上皮の浸潤のリスクを予防する役割を果たす。
【0004】
非特許文献2は、大腸菌O157/H7株に対して同じバクテリオファージカクテルを使用している。この研究の結果、研究者らは、このようなカクテルが、アンピシリンのような腸内微生物叢に対して有害な効果を示すことなく、アンピシリンの抗生物質効果と同様の抗生物質効果を有すると結論付けた。
【0005】
さらに、酵母は、ヒトの栄養及び健康と、動物の栄養及び健康又は植物の栄養及び健康との双方に有益な役割を果たすことが知られている。例えば、Saccharomyces cerevisiaeのいくつかの株は、腸の健康を促進するプロバイオティク酵母と見なされる。上記で見られるように、バクテリオファージは、ヒト、動物又は植物における細菌感染を予防又は処置するために、その部分で使用され得る。したがって、細菌感染を予防又は処置すると同時に、酵母を発達させ、それらの栄養的、保護的及び刺激的役割をヒト、動物又は植物の健康において果たすことも可能にするために、少なくとも1つのバクテリオファージと少なくとも1つの酵母とを組み合わせることが適切である。
【0006】
魅力的な革新的概念は、プロバイオティク酵母及びファージを単一の製品に組み合わせて、適用中にそれらのそれぞれの効果(ファージの抗菌効果及び酵母によって提供される保護)を組み合わせることからなる。例えば、特許文献2は、プレバイオティク剤としての少なくとも1つのタイプのバクテリオファージと、Saccharomyces boulardii又はSaccharomyces cerevisiaeから選択され得る少なくとも1つのプロバイオティク剤とを含む組成物を扱っている。バクテリオファージは、有害な細菌の集団を減少させることによって、及び個体の消化系の有益な細菌によって使用されることが意図されるその環境において栄養素を放出することによって、有益な細菌の発生を促進する役割を有する。列挙されたプレバイオティク剤及びプロバイオティク剤は、組成物内で別々に添加される。この特許文献2によれば、各バクテリオファージは、1つの望ましくない細菌に特異的である。したがって、バクテリオファージは、消化管内の他の生物にもプロバイオティクスにも直接影響を及ぼさない。したがって、特定の望ましくない細菌は、破壊され、それらの細胞材料は、プロバイオティクス又は内因性生物のための栄養素として利用可能である。さらに、特定の望ましくない細菌の集団を弱めることによって、プロバイオティク生物は、首尾よく競合し、それらに適した環境であるが、望ましくない生物には不適な環境を産生するコロニーを確立し得る。
【0007】
乾燥形態での微生物の提示は、取り扱い、安定性及び長期貯蔵、特定の用途(動物飼料、食品等)に適したジェルカプセル又は他の提示形態及び用量で使用される可能性を促進させる。
【0008】
現在、生きている微生物を乾燥させるために様々な方法が使用され得るが、それらの全てが満足のいく最終生存率(taux de viabilite final)を得ることを可能にするわけではない。既存の方法には、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥及び流動床乾燥が含まれる。
【0009】
本出願人は、乾燥形態の酵母(急速凍結中間水分酵母、活性乾燥酵母(ADY:active dry yeast)及び即時乾燥酵母(IDY:instant dry yeast)を得るための方法の広範な知識を有する。
【0010】
生きた微生物の乾燥方法の例は、細菌を酵母と共乾燥させる特許文献3に示されている。この共乾燥が可能になるのは、細菌が酵母プロテアーゼによる分解に対して非感受性である複雑な壁を有するためである。
【0011】
バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスである。バクテリオファージは、タンパク質のみで構成された壁を有し、細菌の壁よりも薄く脆弱である。したがって、バクテリオファージ(1つの科又はファージの混合物)の懸濁液を乾燥させることを伴う場合、ほとんどの場合、生存を増強するために、及び/又は必要な特性(形状、顆粒サイズ分布、乾燥エキス、多孔性、可溶化又は瞬時特性、圧縮性等)を有する最終乾燥製品を得るために、支持体を実施することが必要である。実際、懸濁液中の乾燥物質の量(ファージの保存に適した溶解した細菌培養物又は生理食塩水に由来するもの)が一般に非常に少ない(<5%)ため、この状態で乾燥させることは不可能である。これらの条件下で乾燥させることは、経済的に魅力的ではなく、特にファージにとって、あまりにも有害である。
【0012】
したがって、乾燥支持体(support de sechage)は、乾燥が可能かつ容易であるように微生物と共に1つ以上の成分又は支持体又は賦形剤を導入することを含む製剤概念と密接に関連している。
【0013】
さらに、バクテリオファージが粉末形態であるという条件では、完成した工業製品における酵母とバクテリオファージとの混合物は、混合粉末の均質性を保証すること、あるいは限られた体積での提示及び投薬のためにジェルカプセル又は他の形態に充填すること等のいくつかの困難を克服することが必要である。粉末形態に関連する問題を回避するために、ファージと酵母との混合物を酵母クリーム又は圧搾酵母の形態で想像することが可能である。しかしながら、酵母クリーム及び圧搾酵母は、酸性(pH5.8)であり、プロテアーゼ活性と関連している可能性があり、ファージ力価及び細菌標的に対するファージの溶解活性の両方を変化させる可能性がある。
【0014】
最後に、ファージは、保存中に、またその使用(不活性又は生体支持体上への適用、保護された雰囲気又は開放空気中への適用、ヒト又は動物による摂取等)に応じて、一般的に遭遇するストレスに対する保護を必要とする生物学的実体である。
【0015】
したがって、バクテリオファージによる細菌感染の予防は、動物又はヒトの胃で満たされる困難な条件(pH約2~3)によって、又はファージを不活性にする胃腸管における胆汁及び消化酵素への曝露によって複雑になる可能性がある。同様に、様々な植物環境におけるファージの短い持続性は、植物病原体に向けられたファージを使用する生物学的制御において依然として大きな懸念事項である。実際、日光からのUV照射は、保存中にファージを不活性化し、生物学的制御剤としてのその潜在的な適用を妨げることがある。
【0016】
新鮮な酵母をベースとする発酵食品及び飲料も細菌による汚染を受け得ることも知られている。上記で見られるように、バクテリオファージは、これらの細菌と戦うために使用され得る。これらの食品及び飲料の中でも、製パン用製品、ワイン又はビールタイプの発酵飲料が挙げられる。
【0017】
同様に、バイオエタノール、より具体的には、第一世代バイオエタノールの生産中に、その増殖が生産収率に悪影響を及ぼし得る乳酸菌の天然細菌叢を制御することが必要である。したがって、バクテリオファージの使用は、乳酸菌叢の制御に役立ち得る。バイオエタノールは、発酵性糖を含有する農産物の発酵によって生成されるエタノールに相当する。
【0018】
したがって、酵母又は酵母誘導体の活性及びバクテリオファージの溶解活性を保証しながら、pH変化及びUV照射に対する耐性を有する酵母及びバクテリオファージの混合物が必要とされている。
【0019】
ファージは、細菌に感染するウイルスである。本発明によれば、用語「ファージ」及び「バクテリオファージ」は、交換可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0255122号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0161382号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2,708,621号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Moye et al. (A Bacteriophage Cocktail Eliminates Salmonella typhimurium from the Human Colonic Microbiome while Preserving Cytokine Signaling and Preventing Attachment to and Invasion of Human Cells by Salmonella In Vitro. J Food Prot. 2019 Aug;82(8):1336-1349)
【非特許文献2】Dissanayake et al. (Bacteriophages Reduce Pathogenic Escherichia coli Counts in Mice Without Distorting Gut Microbiota. Front Microbiol. 2019 Sep 10;10:1984)
【発明の概要】
【0022】
本発明は、状況を改善することを目的とする。
【0023】
第一の態様によれば、本発明の目的は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物を製造する方法であって、前記混合物は固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなり、前記方法は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとを懸濁液中で混合するステップと、この混合物を乾燥させるステップとによって行われることを特徴とする。
【0024】
第二の態様によれば、本発明の目的は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物であり、前記乾燥混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、前記混合物は、第一の態様による方法によって得られる。
【0026】
第三の態様によれば、本発明の目的は、胃液の酸性度を低減することを意図した組成物中の医薬としての、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0027】
第四の態様によれば、本発明の目的は、植物の刺激、保護、生物制御及び/又は栄養のための組成物における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0028】
第五の態様によれば、本発明の目的は、食品組成物又は食品サプリメントにおける、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0029】
第六の態様によれば、本発明の目的は、ビール醸造及び/又はワイン醸造における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0030】
第七の態様によれば、本発明の目的は、製パンにおける、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0031】
第八の態様によれば、本発明の目的は、バイオエタノールの製造における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
したがって、第一の態様によれば、本発明の目的は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物を製造する方法であり、前記方法は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージを懸濁液中で混合するステップと、この混合物を乾燥させるステップとによって行われることを特徴とする。
【0033】
前記混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とから構成される。
【0034】
用語「構成される(compose de)」は、「からなる(consistant en)」として読まれる。
【0035】
したがって、第一の態様によれば、本発明の目的は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物を製造する方法であり、混合物は固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなり、前記方法は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとを混合するステップと、この混合物を乾燥させるステップとによって行われることを特徴とする。
【0036】
このような方法により、ファージを含む安定な製剤の製造が可能になり、ファージを最適に保護し、胃腸管又は植物の葉圏(地上部)等の作用部位への経路を保証する。乾燥形態は、その取扱いが容易であり、例えば周囲温度での長期貯蔵安定性があり、したがって貯蔵のためのコールドチェーンの必要性が回避されるため、好ましい。
【0037】
動物、ヒト及び植物の健康においてプロバイオティクスとして使用された酵母又は酵母誘導体は、その耐性と、製造方法(上流プロセス、例えば乾燥、貯蔵)及び腸管のストレス条件(胃pH、胆汁及び消化酵素)の両方に関連するいくつかのストレス因子に対する耐性について特徴付けた。
【0038】
酵母及び/又は酵母誘導体とファージとの組み合わせは、酵母又はその誘導体によってファージを保護し、それらを標的部位に輸送するための代替物を構成する。したがって、酵母(又はその誘導体)は、以下の二重の役割を有し、一方では、プロバイオティクスの役割を果たし、他方では、以下の実施例によって示されるように、乾燥ステップ中に支持体として働く。この解決策は、組み合わせの成分のそれぞれの有益な効果を最大化するのに役立つ。
【0039】
さらに、特に植物の保護のための使用の場合、ファージを酵母及び/又は酵母誘導体と共乾燥させる方法から得られる混合物は、酵母の有益な活性及び特性も保持しながら、環境条件及びUV効果(インビトロ条件)に対するファージの保護を改善するのに役立つ。
【0040】
このような混合物は、その在庫及び供給の管理を最適化することによって、酵母又は酵母誘導体及びバクテリオファージの両方を含む組成物の使用に関連するコストを削減するのに役立つ。したがって、それはすぐに使用でき、損失のリスクを低減し、乾燥酵母又は酵母誘導体とバクテリオファージとの混合に関連する余分な費用をもたらさず、同時に、例えば投薬ミス等の微生物の管理における取り扱いミスのリスクを回避する。実際、これらの誤差は、特に、ユーザが特定の重量比で発酵物を添加しなければならない場合、酵母粉末の混合物の調製中に起こり得る。この混合物を使用することによって、酵母又は酵母誘導体の使用を含む組成物の調製がより容易になる。
【0041】
少なくとも1つの酵母と1つのバクテリオファージとの間の従来の乾燥/乾燥混合物と比較したこの方法の別の顕著な利点は、得られる混合物の均質性にある。こうして、均質性の喪失のリスクは、大幅に最小限に抑えられる。これは、本発明による方法から得られる乾燥混合物を構成する各固体実体が、酵母又は酵母誘導体及びバクテリオファージを同時に含むためである。この乾燥混合物は、また、粉末製品の取り扱いを制限し、したがって健康リスクを制限する働きをする。言い換えれば、単一の乾燥混合物が使用される。
【0042】
したがって、乾燥前に酵母をバクテリオファージと混合するこの新しいアプローチは、性能を改善し、単一の場所でのいくつかの粉末又は微生物の使用に関連する取扱いエラーのリスクを排除し、実用性及び単純化を改善し、コストを削減し、注文変更及び市場変動に続く損失を大幅に制限するのに役立つ。
【0043】
本発明による方法は、活性酵母及び/又は酵母誘導体を使用することによって実施することができる。
【0044】
「活性酵母」という用語は、「生酵母」又は「新鮮酵母」と同義であり、代謝的に活性である酵母細胞の集団を示す。「新鮮な」と呼ばれる酵母を使用する場合、活性は、その生存率を示す。
【0045】
本発明による酵母誘導体は、物理的又は化学的作用による、例えば、酵母のプラスモリシス、加水分解又は自己消化による酵母の分解の間に得られる画分として定義される。酵母誘導体は全て、全酵母細胞又は物理的若しくは化学的作用によって分画された細胞から得ることができる全ての産物である。特に、それらは、自己消化によって得られる酵母エキス又は自己消化物、酵母殻(ecorces de levure)、マンノプロテイン、不活性化酵母を含む。それらは、ほとんどの場合、粉砕後に多かれ少なかれ微細な粉末形態で、又は再水和媒体中の懸濁液で、酵母クリーム又は圧搾酵母形態で得られる。有利なことに、酵母誘導体は、酵母殻又は酵母エキスである。さらにより有利なことに、酵母誘導体は、酵母殻である。
【0046】
殻は、当業者に公知の技術に従って、特に酵素的溶解又は機械的溶解(分離、濃縮等)によって取得又は調製することができる。
【0047】
一実施形態では、殻は、例えば遠心分離等の物理的手段による可溶性部分と不溶性部分の分離、及び不溶性部分の回収に続く酵母細胞の酵素的溶解(それら自体のタンパク質分解酵素による自己消化又はヘテロ分解)によって産生される。不溶性部分は、典型的には、遠心分離による可溶性部分の除去によって回収される。不溶性部分は、酵母殻に相当する。この方法から得られ、明るい色及び低い濁度を有する可溶性部分は、酵母エキスと呼ばれる。
【0048】
好ましくは、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物の製造方法は、
・好ましくはクリーム形態の少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージとを懸濁液中に提供するステップと、
・混合物を形成するために、前記酵母及び/又は前記酵母誘導体を少なくとも1つのバクテリオファージと混合するステップと、
・乾燥混合物を形成するために、混合物の乾燥ステップを実施するステップと、
・乾燥混合物を回収するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0049】
好ましくは、バクテリオファージは、水溶液、好ましくは生理食塩水中の懸濁液である。当業者は、例えば、緩衝生理食塩水を選択することによって、そのような溶液をそれらの必要性に従ってどのように適合させるかを知っているであろう。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ステップは、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、あるいは流動床上で行われる。
【0051】
好ましくは、少なくとも1つの酵母又は1つの酵母誘導体及び少なくとも1つのバクテリオファージの乾燥ステップ前の混合物中の酵母及び/又は酵母誘導体の乾燥物質含有量は、乾燥される混合物中の乾燥物質の総量に対して20~60%の間に位置する。
【0052】
好ましくは、乾燥ステップの前に、乾燥物質含有量を増加させる脱水ステップを行ってもよい。次いで、この脱水ステップの後に、実際の乾燥ステップを行って、回収すべき最終乾燥混合物を取得する。言い換えれば、乾燥ステップは、2つの段階において行われ得る。
【0053】
好ましくは、乾燥ステップの後に、乾燥混合物が、例えば粉砕によって、さらに分割されるステップが続いてもよい。
【0054】
凍結乾燥は、フレーク(paillettes)形態又は微粉末に粉砕することができる凍結乾燥物を得るのに役立つが、噴霧乾燥は、微粉化乾燥製品を得るのに役立つ。
【0055】
噴霧乾燥(英語でspray drying)の原理は、乾燥塔内を循環する高温ガス(例えば空気)の流れの中で液滴を脱水することである。乾燥されるべき液体(粘性が高すぎないように適合された乾燥エキスを含む溶液又は懸濁液又は混合物)は、通常、塔の上部に配置された噴霧装置(ノズル又はタービン)を用いて微細な液滴の形態で噴霧される。これには、同伴による乾燥が含まれ、液滴は、固体粒子にほぼ瞬時に変換されて、乾燥機(単純、二重又は多重効果)の構成に応じて、乾燥の終わりに空気から分離され、微粉末又は微粒化粉末が得られる。
【0056】
空気入口温度は、概して高く、例えば100~300℃、好ましくは120~250℃であるが、出口空気温度、特に塔内部の製品の温度は、水膜に囲まれた粒子が液体水から蒸気への状態変化中に冷却するため、数十度低い。当業者は、自分のニーズに基づいて、これらの温度をどのように適合させるかを知っている。
【0057】
それにもかかわらず、製品の温度がより低い場合であっても、この技術は、微生物のような生きている製品の脱水にとって破壊的であり得る。しかしながら、適切でより穏やかな操作条件(特に、初期混合物の配合における乾燥支持体又は添加剤の添加及び温度スケールの選択)を利用することによって、生存率を部分的に保存することが可能である。さらに、乾燥塔における粒子の通過時間も、生存能力に影響を与えることがあるので、製品(貯蔵)の所望の寿命に適合する粉末の最終含水率を目標とするように注意を払うことによって、最小限に抑える必要がある。
【0058】
ファージ単独の懸濁液を、それが産生されるとき(細菌溶解物)に噴霧乾燥することは、乾燥エキスが弱すぎるので不可能である、操作は、経済的に魅力的でないだけでなく、微生物にとっても有害であり得る(高い空気温度の使用)。乾燥エキスを増加させるために、本発明によれば、酵母及び/又は酵母誘導体が使用され、場合によっては、特定の効果(例えば保護)を有する二次成分又は賦形剤が使用される。
【0059】
乾燥される調製物によって標的とされる乾燥エキスに特に注意が払われる。つまり、液体自体は、噴霧装置によってポンプで送って微細な液滴に変換することができるように、特定の粘度を超えてはならない。
【0060】
混合物の調製は、成分又は支持体が完全に溶解又は分散するまで行われ、いかなる製品の破壊も微生物増殖も避けるために、これは、噴霧塔においてできるだけ迅速に乾燥される。好ましくは、混合物は、乾燥時間全体を通じて低温で保持される。当業者であれば、必要な温度を選択する方法を知っているであろう。
【0061】
乾燥パラメータは、塔及び噴霧装置の構成だけでなく、混合物の特性(粘度、乾燥エキス)にも応じて適合され、その目的は、最終含水率が最大10%、好ましくは最大8%、より好ましくは6%の微粉末を得るためである。
【0062】
酵母及び/又は酵母誘導体に加えて、マルトデキストリン、天然デンプン、トレハロース及びL-ロイシン等の追加の乾燥賦形剤を列挙することもできる。
【0063】
概して、凍結乾燥(英語でfreeze-drying)は、予め凍結された液体又は半ペースト状製品の真空下での乾燥を可能にする乾燥技術である。この技術は、しばしば、直接乾燥に耐えない脆弱な製品に使用される。こうして、腐敗しやすい製品の安定性を保証し、生物学的製品の代謝を停止させ、容易に再水和可能な粉末製品を得ることが可能になる。したがって、凍結乾燥製品は、それが含有する溶媒(一般に水)に対して高い親和性を有する。
【0064】
実際的な観点から、この操作は、3つの主要な段階を含み、したがって、凍結乾燥サイクルということができる。
【0065】
第一の段階は、製品を凍結させる操作であり、これは、マトリックスを凝固させる働きをし、特にそれが氷の形態で含有する水を結晶化させる働きをする。そのためには、製品の温度を完全に凝固する温度よりも十分に低くする必要がある。当業者であれば、必要な温度を選択する方法を知っているであろう。
【0066】
第二の段階は、一次乾燥又は昇華ステップである。この段階の間、凍結乾燥チャンバ内の圧力を下げる必要があり、したがって、高真空にする必要がある。そのため、圧力は、検討中の温度での氷の蒸気圧未満でなければならない。さらに、製品の温度は、初期溶融温度未満に保つ必要がある。
【0067】
第三の段階は、二次乾燥ステップであり、このステップは、脱着によって最終的な微量の水を除去することによって脱水を終了させるのに役立つ。これは、チャンバ内の可能な限り低い圧力と、その変性温度未満のままである高い製品温度とによって特徴付けられる。
【0068】
したがって、この最終段階では、非常に低い残留含水率(例えば<1%)を有する乾燥製品を得ることができる。
【0069】
最後に、凍結乾燥サイクルの関連する動作は、以下の通りである。
・凍結乾燥される生成物の調製は、一般に、それを、保護効果及び凍結保護効果を有する賦形剤又は担体の混合物と組み合わせることからなる、
・最終凍結乾燥製品を保護すること、最終凍結乾燥製品は、非常に多孔性な構造であるため、不安定であることが多く、含まれている溶媒をすぐに吸収してしまう可能性がある(水性製品の場合は吸湿性)。この場合、凍結乾燥物を外部環境から単離し、適切な方法で包装することを伴う。
・ファージ懸濁液は、支持体及び/又は凍結保護剤の役割を有するアジュバント又は賦形剤と共に製剤化される。乾燥エキス(例えば、約25~30%)は、ファージ懸濁液を濃縮し、したがって、排除される水の量を減少させるために、増加される必要がある。本発明によれば、この乾燥物質の増加は、酵母及び/又は酵母誘導体との混合によって可能になる。当業者であれば、乾燥後にファージの最良の生存率を得るために、「バクテリオファージ/酵母及び/又は酵母誘導体」比をどのように選択するかを知っているであろう。
・混合物の調製は、賦形剤及び/又は酵母及び/又は酵母誘導体の完全な溶解又は分散まで行われる。
【0070】
酵母及び酵母誘導体に加えて、マルトデキストリン、天然デンプン、トレハロース及びL-ロイシン等の他の乾燥賦形剤を列挙することもできる。
【0071】
このステップの間に、混合物を完全に冷却し(例えば<8℃)、特定の層高さ(例えば15mm)を維持しながらトレイ又はバイアルに分配し、その後、冷凍庫又は急速冷凍庫の中で、-20℃未満で凍結させる。
【0072】
混合物の凝固をチェックした後、これは完了しているはずであり(水は完全に結晶化している)、容器又はバイアルは、コールドトラップを始動することによって予め冷却された(例えば、-55℃に)凍結乾燥機の棚の上に置かれる。
【0073】
当業者であれば、乾燥ステップを実施し、結果として温度を調整する方法を知っているであろう。
【0074】
凍結乾燥サイクルの終了時に、凍結乾燥物は、概して、多孔性メレンゲの外観を有する。場合によっては、このメレンゲは、ソフトミリングによって微細な粉末にされ、好ましくは、この操作は、真空下又は不活性雰囲気下で急速包装する前に、(水を再び取り込むことを回避するために)吸湿制御されたエンクロージャ内で行われる。
【0075】
好ましくは、本発明による方法は、脱水混合物を押出して押出混合物を形成するステップをさらに含み、乾燥ステップは、押出混合物を流動床中で行って乾燥混合物を形成する。
【0076】
流動床での乾燥によって、顆粒状又はバーミセリ(vermicelles)状の乾燥製品を得ることが可能になる。
【0077】
一般に、流動床での乾燥の原理は、高温空気流中で湿った固体粒子を脱水することである。この場合、これらの固体湿潤粒子は、空気中での流動化に適した形状及び密度を有する固体を生成するのに役立つ顆粒化ステップ後に得られる。したがって、粒子(顆粒とも呼ばれる)は、接触することなく熱風中に浮遊していることが見出され、均一に乾燥され得るのは空気との接触面全体である。乾燥顆粒は、残留含水率が10%未満、好ましくは8%未満、また好ましくは5%未満であることを特徴とし、これは経時的な製品の良好な安定性(貯蔵)を提供する。
【0078】
この技術の利点は、低温で適度な乾燥を行うことができることであり、このため、これを、生きている微生物又は脆弱な生物学的製品を乾燥するための最適な方法である。顆粒化ステップ後に乾燥される粒子のサイズは重要であり、そのサイズが小さければ小さいほど、製品はより速く乾燥する。製品の熱への曝露時間も短縮され、これは乾燥後のより良好な生存度レベルに有利である。
【0079】
適用の観点から、この技術は、通常、パン酵母を乾燥させるために使用され、この場合、瞬間乾燥酵母は、水の中で、又は水が添加される粉末混合物(小麦粉)中で非常に迅速に再水和され得る多孔性顆粒形態で得られる。
【0080】
押出成形とも呼ばれる造粒は、流動床での乾燥に先立つステップであり、押出成形機を通過するこの操作に適合する乾燥エキスを有するペースト状又は半ペースト状の製品に対してのみ行うことができる。例えば、酵母クリームを濾過すると、この特性を有する圧搾酵母が得られる。
【0081】
実際、乾燥させる塊を押出機で成形し、これによって連続的な細いフィラメントを製造し、次いでこれを短いバーミセリに砕いて顆粒を得る。押し出される塊があまりに湿っている場合、フィラメントは押し出し後に互いに粘着する傾向があり、フィラメントを個別化された形態で乾燥させることは、もはや不可能である。乾燥の終わりに、ある程度の水分を保持する大きな凝集体が生じる。
【0082】
当業者であれば、必要性に応じて押出される塊の含水率をどのように適合させるかを知っているであろう。
【0083】
例えば、この困難に対抗する方法は、乾燥賦形剤の添加である。好ましくは、乾燥賦形剤は、マルトデキストリン、天然デンプン、トレハロース及びL-ロイシンから選択される。
【0084】
好ましくは、乾燥ステップは、乾燥賦形剤、好ましくはマルトデキストリンの存在下で行われる。
【0085】
酵母は、Saccharomyces cerevisiae及びSaccharomyces boulardiiの種から選択される株に由来してもよく、好ましくは、酵母は、2007年10月17日に番号CNCM I-3856で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2018年3月22日に番号CNCM I-5298で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2007年8月21日に番号CNCM I-3799で寄託されたSaccharomyces boulardii株、2016年8月31日に番号CNCM I-5129で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2016年8月31日に番号CNCM I-5130で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、又は2011年2月9日に番号CNCM I-4444で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株から選択される株に由来する。
【0086】
好ましくは、酵母は、Saccharomyces cerevisiae及びSaccharomyces boulardiiの種から選択される株に由来し、好ましくは、酵母は、2007年10月17日に番号CNCM I-3856で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、2018年3月22日に番号CNCM I-5298で寄託されたSaccharomyces cerevisiae株、及び2007年8月21日に番号CNCM I-3799で寄託されたSaccharomyces boulardii株から選択される株に由来する。
【0087】
好ましくは、1つ以上のバクテリオファージは、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・パーフリンジェンス又はサルモネラ属菌株から選択される細菌株、及び乳酸菌に対して抗菌活性を有するものから選択される。乳酸菌は、Lactobacillus fermentum(新たな分類:Limosilactobacillus fermentum)、Lb. delbrueckii、Lb.Reuteri(Limosilacobacillus Reuteri)、Lb.Casei(Lacticaseibacillus Casei)、Lb.Brevis(Levilactobacillus Brevis)、Lb.Perolens(Schleiferilactobacillus perolen)及びL.amylovorusから選択され得る。抗菌活性は、細菌の感染後の細菌に対するバクテリオファージによる溶解活性を意味すると理解される。
【0088】
「乳酸菌」は、酸素に対して部分的に耐性であり、糖を乳酸に発酵させることができる嫌気性菌であるグラム陽性菌を意味すると理解される。
【0089】
使用され得る公知のバクテリオファージは、DSMZによりカタログ番号DSM4505で販売され、マイオウイルス科に属するT4、DSMZによりカタログ番号DSM16353で販売され、サイフォウイルス科に属するT5、DSMZによりカタログ番号DSM4623で販売され、ポドウイルス科に属するT7、又はこれらの混合物から、又はIntralytix Inc.により販売されるSalmoFresh(商標)若しくはFOP(商標)ファージ混合物から選択される。バクテリオファージT4、T5及びT7は、大腸菌に対する抗菌活性を有する。SalmoFresh(商標)の名称で販売されているマイオウイルス科に属する6つのバクテリオファージのカクテルは、Salmonella属の病原菌株、例えば、Salmonella enterica又はさらにはSalmonella typhimurium、Salmonella Heidelberg、Salmonella Newport、Salmonella Kentucky、Salmonella infantisに対する抗菌活性を有する。FOP(商標)は、Salmonella enterica、大腸菌及びリステリア・モノサイトゲネスの病原菌株に対して広範な防御を提供する15個の個別の溶解性ファージの独特で排他的な混合物である。
【0090】
第二の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの酵母及び/又は酵母誘導体と少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物に関し、固体実体の形態であり、この乾燥混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とから構成される。
【0091】
用語「構成される(compose de)」は、「からなる(consistant en)」として読まれる。
【0092】
したがって、第二の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージとの乾燥混合物に関し、この乾燥混合物は、固体実体の形態であり、各固体実体は、少なくとも1つの酵母及び/又は少なくとも1つの酵母誘導体と、少なくとも1つのバクテリオファージと、場合によっては少なくとも1つの乾燥賦形剤とからなる。
【0093】
好ましくは、混合物は、第一の態様に記載の方法に従って得られる。
【0094】
好ましくは、酵母誘導体は、酵母殻である。
【0095】
好ましくは、乾燥混合物は、固体成分と、場合によっては乾燥賦形剤とを含む粉末形態に分割される。
【0096】
好ましくは、固体実体は、フレーク、グレイン、バーミセリ又は顆粒の形態を有する。
【0097】
好ましくは、乾燥賦形剤は、マルトデキストリン、天然デンプン、トレハロース及びL-ロイシンから選択される。
【0098】
好ましくは、酵母及びバクテリオファージは、上述したものから選択される。
【0099】
第三の態様によれば、本発明の目的は、胃液の酸性度を低減することを意図した組成物中の医薬としての、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0100】
第四の態様によれば、本発明の目的は、植物の刺激、保護、生物制御及び/又は栄養のための組成物における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0101】
より具体的には、これは、病原体、特に真菌、細菌又はウイルスによって産生又は誘発される疾患に対する植物を治療又は保護するためのものであり、病原体に対する植物における天然の防御を誘導又は刺激するためのものである。
【0102】
第五の態様によれば、本発明の目的は、食品組成物又は食品サプリメントにおける、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0103】
第六の態様によれば、本発明の目的は、ビール醸造及び/又はワイン醸造における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0104】
第七の態様によれば、本発明の目的は、製パンにおける、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0105】
第八の態様によれば、本発明の目的は、バイオエタノールの製造における、第二の態様による乾燥混合物又は第一の態様による方法から得られる乾燥混合物の使用である。
【0106】
(材料及び方法)
長い収縮性尾部を有するマイオウイルス科に属するT4バクテリオファージ又はT4ファージ
長い非収縮性尾部を有するサイフォウイルス科に属するT5バクテリオファージ又はT5ファージ
短い非収縮性尾部を有するポドウイルス科に属するT7バクテリオファージ又はT7ファージ
【0107】
これら3つのファージは、大腸菌に感染する溶解性ファージである。
【0108】
SalmoFresh(商標)は、Salmonella属の病原菌株、例えば、Salmonella typhimurium、Salmonella Heidelberg、Salmonella Newport、Salmonella Kentucky、Salmonella infantisに対する広範な防御を提供する6つの個別の溶解性ファージの独特で排他的な混合物である。
【0109】
FOP(商標)は、Salmonella enterica、大腸菌及びリステリア・モノサイトゲネスの病原菌株に対して広範な防御を提供する15の個別の溶解性ファージの独特で排他的な混合物である。
【0110】
使用した微生物のリストを以下の表1に示す。
【表1】
【0111】
使用した試薬のリストを以下の表2に示す。
【表2】
【0112】
(模擬胃液(SGF))
模擬胃液は、Maら(2008)、Colomら(2015)及びVinnerら(2018)の研究に従って調製される(100mLについて)。
・0.2gのNaCl
・0.4gのペプシン(500U/mg)
・蒸留水 QS 100mL
・HCl又はNaOHでpHを調節して、達成したpHのライン:2.5、3.0、3.5、4.0
【0113】
酵素活性(U/mL)は、Adouardら(2019)の研究に従って再現した。調製したら、液体を37℃に予熱する。
【0114】
共乾燥した試料について、50mLのSGFを180mLのジャーに注ぎ、0.5gの試料を添加する。これは、100分の1の希釈に相当する。
【0115】
溶液中のファージ(対照)について、9.9mLのSGFを60mLのジャーに注ぎ、その中に100μLのファージ溶液を添加する。これは100分の1の希釈に相当する。ファージ溶液を希釈して、共乾燥試料のファージ濃度に最も近いファージ濃度を得る。
【0116】
次いで、ジャーを撹拌しながら(100rpm)37℃でインキュベートして、胃の中の通過を模倣する。時間ゼロ(試料を加えた直後)及び15、30、60、120分で、下記の方法によるスポットによるファージカウントを、希釈のためにアリコートを回収する前にジャーを撹拌することを忘れることなく行う。
【0117】
酵母カウントは、また、記載される方法に従って、実験の開始時(T0)及び終了時(T120)にpH2.5の胃液中で行われる。
【0118】
実験の最後にpHを再度測定する。
【0119】
(模擬腸液(SIF))
模擬腸液は、Maら(2008)、Colomら(2015)及びVinnerら(2018)の研究に従って調製される(100mLについて)。
・0.68gのKH2PO4
・1gの豚胆汁
・2.16gのパンクレアチン
・蒸留水 QS 100mL
・NaOHで6.8に調整されたpH
【0120】
酵素活性は、Adouardら(2019)の研究に従って再現した。調製したら、液体を37℃に予熱する。
【0121】
共乾燥試料については、50mLのSIFを180mLのジャーに注ぎ、その中に0.5gの試料を添加し、これは100分の1の希釈に相当する。
【0122】
溶液中のファージ(対照)について、9.9mLのSIFを60mLのジャーに注ぎ、そこに100μLのファージ溶液を添加し、これは1/100の希釈に相当する。ファージ溶液を希釈して、共乾燥試料の濃度に可能な限り最も近いファージの濃度を得る。次いで、ジャーを撹拌しながら(100rpm)37℃でインキュベートし、腸の通過を模倣する。時間ゼロ(試料の添加直後)及び30、60、120分(Minekus et al. 2014)において、以下の段落に記載される方法によるスポットによるファージカウントを、希釈のためにアリコートを回収する前にジャーを撹拌することを忘れることなく行う。
【0123】
酵母カウントは、また、記載される方法に従って、実験の開始時(T0)及び終了時(T120)にも行われる。
【0124】
実験の最後に、pHを再度測定する。
【0125】
(共乾燥ファージ及び酵母のカウント)
酵母と共乾燥させたファージのカウントは、Stomacherブレンダー中で粉末を再水和するステップの後に行い、内部手順から適合した方法(PFU当たりのバクテリオファージのカウント)に従って行う。
【0126】
(共乾燥した試料の再水和)
・精密天秤を用いて1gの共乾燥ファージ酵母試料を秤量し、それをStomacherバッグに入れる、
・37℃の滅菌蒸留水9mLをバッグに加え、次いで、それを中速で3分間Stomacherブレンダーに入れる。
【0127】
(ファージのインデプス(en profondeur)カウント技術)
・TSA+YE(トリプトカゼインソイ寒天(TSA)+酵母エキス(YE))ゼラチンを寒天+シクロヘキシミド(0.5%)の6g/Lで溶かし、それを過冷却状態に維持する、
・約15mLのTSA+YE+シクロヘキシミド(0.5%)培地を含む90mmのペトリ皿を準備し、フード下で30分間乾燥させる、
・新鮮な培養物に由来するコロニーから20mLのTSB+YE(トリプトカゼインソイブロス(TSB)+酵母エキス(YE))ブロスを播種する、
・指数増殖期の開始時に培養物が得られるまで撹拌しながらインキュベートする(例:大腸菌、サルモネラ及びリステリアについて、DO0.2~0.7で培養を停止する)。
・DO値を読み取る。
・900μLのSM溶液を含むEppendorf(商標)チューブ中で再水和共乾燥試料の1/10希釈物(dilutions decimales)を調製する。
・100μLの宿主細菌溶液(0.2~0.7の間のDO)を含む13mLチューブに、100μLの所望のファージ希釈液を加え、10分間接触させたままにする。
・3mLのTSA+YE培地、6g/Lの寒天+シクロヘキシミドを添加し、予め注ぎ、乾燥させたゼラチン皿に注ぐ。固まるまで放置する。
・宿主細菌の増殖温度で24時間にわたってインキュベートする。
【0128】
スポットによりファージをカウントする技術
(寒天皿の調製)
・ゼラチンを6g/L寒天で溶かし、次いで0.5%シクロヘキシミドを添加し、それを過冷却状態に維持する。
・新鮮な培養物に由来するコロニーから20mLのTSB+YEブロスを播種する。指数増殖期の開始時に培養物が得られるまで撹拌しながらインキュベートする(例:大腸菌、サルモネラ及びリステリアについて、DO0.2~0.7で培養を停止する)、25mLのTSA+YE+シクロヘキシミド(0.5%)培地で正方形ペトリ皿を調製し、フード下で30分間乾燥させる、
・DO値を読み取る。
・300μLの宿主細菌溶液(0.2~0.7の間のDO)を含む13mLチューブに、9mLのTSA+YE培地、6g/Lの寒天+シクロヘキシミドを添加し、予め注ぎ、乾燥させたゼラチン皿に注ぐ。
・固まるまで放置する。
【0129】
(ファージ溶液の1/10希釈物の調製)
・スポット播種を可能にするために96ウェルマイクロプレートのウェルのカラムを、カラム3から開始し、1つおきに飛ばしながら、180μLのSM緩衝液で満たす。
・第一のカラムのウェルに、試料の再水和に由来する100μLの溶液を添加し、これは、ここで1/10の第一の希釈を構成する。
・マルチチャネルピペットを使用して、第一のカラムに20μLを集め、それを次の希釈カラムのウェルに移し、最後の希釈まで続けて行う。
【0130】
(皿への沈着)
1つのマイクロプレートライン(96ウェル)から、10μLを適切なマルチチャネルピペットで収集する必要がある。
【0131】
次に、予め宿主細菌を播種した正方形のペトリ皿を4つのカラムに分割し、10μLのファージ/酵母溶液のスポットを沈着させ、それらを乾燥させ、宿主細菌の増殖温度で24時間インキュベートする。
【0132】
酵母のカウントを並行して行う。
【0133】
試料を再水和した後、100μLを回収し、900μLの滅菌蒸留水で満たされたEppendorf(商標)チューブ中で1/10希釈を行う。
【0134】
目的の希釈液100μLを回収し、YMゼラチン皿上に置き、塗抹する。
【0135】
次いで、皿を25℃で3時間インキュベートする。
【0136】
技術とは無関係に、結果は、以下のように表される。
【0137】
理論力価PFU/gDM(乾燥前):この力価は、ファージ懸濁液のファージアッセイ力価から、及び添加された全ての成分(例えば、酵母、画分、保護剤、添加剤)を考慮する実験室で達成された製剤の実際の組成から計算される。偏りを避けるために、この力価を混合物の乾燥物質(乾燥前)と呼ぶ。
【0138】
アッセイ力価PFU/gDM(乾燥後):これは、乾燥最終製品からアッセイされ、乾燥最終製品の実際のエキスと称されるときの実際の力価である。
【0139】
ファージの損失(Log10 PFU/g)は、以下の間の差:
Log10(乾燥前の理論力価PFU/g DM)-Log10(乾燥後のアッセイ力価PFU/g DM)
に等しく、Log10 PFU/gで表される。
【0140】
(胃抵抗性試験)
簡易化したインビトロ胃腸管抵抗性試験を、共乾燥した試料に対して行った。これらの試験の目標は、模擬胃腸液中の異なる時点で経時的にカウントすることによって、ファージ及び酵母の生存率を分析することである。これらの試験は、ここでは模擬液体中で直接行われるStomacherブレンダーによる再水和段階なしで、上記のカウント方法を繰り返す。
【0141】
0.5gの試料を50mLの液体に入れた。pHのラインは、胃試験のために2.5~4.0に調製した。
【0142】
(アルカリ化ポテンシャル(Potentiel d’alcalinisation))
どの賦形剤が胃内pHの上昇に関与するかを定義する目的で、SalmoFresh(商標)溶液を各ファージ賦形剤と個々に同じ割合で凍結乾燥することによって、共乾燥試料を作製した(99%DM賦形剤対1%DMファージ)。試料は、実験室で作製した。
【0143】
各試料0.5gをpH2.5の模擬胃液50mLと接触させた。均質化後に、各調製物のpHを、均質化後にpHメーターで測定した。
【0144】
(UV抵抗性試験)
UV抵抗性試験を、Stomacherブレンダー(9mLの滅菌蒸留水中1g)を用いて3分間、再水和共乾燥試料に対して、及びUV-Cバルブを有するUV-BS-03+UV-MAチャンバ中の溶液中のファージに対して行った。測定された照射は、12mW/cmである。各試料形態について、3つの異なる時間(5、15、30分)曝露するために、3つの同一のアリコートを作製した。これらの試験は、Ramirezら(2018)のチームによって行われた試験に従って適合される。ファージ及び酵母の生存率は、カウント方法によって測定した。
【0145】
T0におけるカウントは、共乾燥試料及びその再水和形態について同じであり、これは、上述のスポットの方法に従って行われ、溶液中のファージのカウントは、内部手順に従って行われる。
【0146】
共乾燥した試料については、約1.5gを秤量し、チャンバの中央の開放ペトリ皿に広げる。UVに曝露した後、1gを精密天秤で秤量し、次いでStomacherブレンダーで3分間再水和し、上記のスポットの方法に従ってファージをカウントする。
【0147】
再水和した共乾燥試料については、1mLをチャンバの中央の開放ペトリ皿に入れる。UVに曝露した後、100μLを回収し、上記のスポットの方法に従ってファージをカウントする。
【0148】
溶液中のファージについては、1mLをチャンバの中央の開放ペトリ皿に入れる。溶液のファージ濃度は、希釈による共乾燥試料中のファージ濃度に可能な限り近い。UVに曝露した後、100μLを回収し、内部手順に従ってファージをカウントする。
【0149】
酵母のカウントは、記載された方法に従ってT0及びT30で行われる。
【0150】
(安定性試験)
真空下でパケット又は丸薬に保存されたファージ・酵母共乾燥製品の安定性を、以下の3つの温度及び湿度条件下で3ヶ月にわたって研究した。
・25℃/60%RH
・30℃/65%RH
・40℃/75%RH
【0151】
インデプスカウント技術によるファージのカウントは、異なる時点(0、15、30、60、90日目)で行った。a(水分活性)は、AquaLab Serie 4TEV露点湿度計を用いてT0、30及び90日目に25℃で測定した。
【0152】
水分活性は、乾燥製品の品質に関連する重要なパラメータである。a値は、微生物が増殖し、毒素を産生する可能性の指標である。水分活性の値は、0(全ての水が製品に結合しているため、反応性がない状態まで乾燥した製品)と1(溶質を含まない純水)との間で変化する。
【0153】
実際、aは、製品中の自由水の割合、すなわち、例えば、微生物の増殖に利用できる水の割合を示す。aが高いほど、これらの微生物の発育に利用できる水が多くなる。0.6を超える水分活性値は、微生物の増殖を促進する可能性がある。
【実施例
【0154】
(実施例1:流動床中での乾燥によって乾燥酵母・バクテリオファージ混合物を得るための一般的な方法)
本方法のステップは、以下の通りである。
・酵母クリーム又は酵母誘導体のpHを制御し、場合によっては10%水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整する
・圧力下にあるプレートフィルタ上で酵母クリームを濾過し、圧搾酵母(PY)を得る
・PYをファージ懸濁液及び乾燥剤又は保護剤(乾燥賦形剤とも呼ばれる)と混合する、
・押出によって造粒し、成形する
・流動空気床乾燥機の中で顆粒を乾燥させる、
・乾燥顆粒の最終含水率を制御し、真空下又は不活性雰囲気下で包装する
【0155】
したがって、16.5gのSalmoFresh(商標)ファージの懸濁液(0.6%乾燥物質)、2gのトレハロース二水和物、2gのマルトデキストリン及び0.065gのL-ロイシンを、200gの圧搾酵母(30%乾燥エキス)に添加する。混合用の可動式ダッシュボードを備えたMatfer AlphaMix 5Lミキサービーター中で1分間混合した後、60gのデンプン(ジャガイモデンプン)を添加し、混合物を1分間混合する。次いで、約40%の乾燥エキスを含有する混合塊を、1mmの開口部を有する押出グリッドを備えたDRC i10押出機上で押し出す。得られたフィラメントを5Lビーカーに収集し、激しく振盪することによって手動で破壊する。乾燥は、マルチチャンバ支持体を備えたFluid Bed Dryer Tornado M501(Sherwood)で行われる。2×80gの湿った顆粒を、250メッシュのステンレス鋼ふるい(流動空気入口)をベースに備えた2つのガラス乾燥チャンバ(直径60mm及び長さ400mm)に入れる。乾燥プログラムは、開始され、それぞれ40~60℃の温度で実行される2つのステップを含む。流動化及び加熱空気を、空気除湿機(Munters ComDry M190Y)によって脱水する。
【0156】
乾燥は、顆粒の乾燥エキスが少なくとも94%に達した時点で終了する。顆粒の包装は、経時的な製品の最良の安定性を保証するために真空下で行われる。
【0157】
(実施例2:噴霧乾燥によって乾燥酵母・バクテリオファージ混合物を得るための一般的な方法)
本方法のステップは、以下の通りである。
・酵母又は酵母誘導体を添加し、場合によってはファージ懸濁液中の成分を乾燥させることによって混合物を調製する
・全ての成分が完全に溶解又は分散するまで激しく混合する
・混合物のpHを制御し、場合によっては10%水酸化ナトリウムで7.0に調整する
・噴霧塔の中で混合物を乾燥させる
・最終含水率を制御し、真空下又は不活性雰囲気下で微粉末を包装する
【0158】
したがって、75.3gのSafmannan(商標)酵母殻を336gの脱塩水に分散させることによって、酵母殻の懸濁液を部分的に再構成する(調製物1)。酵母殻懸濁液のpHは、場合によっては、10%水酸化ナトリウムで7.0に調整することができた。調製物1を2~10℃の間の温度に冷却する。
【0159】
次に、42gのトレハロース二水和物及び2.7gのL-ロイシンを112gの温脱塩水に溶解する(調製物2)。調製物2を冷却した後、39gのSalmoFresh(商標)ファージの懸濁液(2.5%乾燥エキス)を加え、激しく撹拌しながら混合する。次いで、この混合物を激しく撹拌しながら調製物1に加えて、ファージ、酵母又は酵母誘導体及び種々の支持体又は成分を含む乾燥される混合物を得る。この混合物を、プロセス全体を通して低温で撹拌し続ける。
【0160】
乾燥は、圧縮空気二流体ノズル、蠕動ポンプ、湿った空気から乾燥粒子を分離するためのサイクロン、及びポリエステル出口フィルタを備えたMini Spray Dryer B-290(Buchi)塔で行われる。装置は、噴霧塔への入口で空気を処理する空気除湿機(Munters ComDry M190Y)によって補われる。
【0161】
操作パラメータ(空気温度及び流速、乾燥させる溶液の供給速度等)は、適度な温度に曝露することによって適度な条件下でファージを乾燥させるために調整される。したがって、出口温度が60℃を超えないように制御される。
【0162】
乾燥は、粉末の含水率が6%未満であるときに終了する。噴霧乾燥粉末を真空下で包装する。
【0163】
(実施例3:凍結乾燥によって乾燥酵母・バクテリオファージ混合物を得るための一般的な方法)
本方法のステップは、以下の通りである。
・ファージ懸濁液中に酵母又は酵母誘導体、場合によっては他の成分を添加することによって混合物を調製する
・全ての成分が完全に溶解又は分散するまで激しく混合する
・混合物のpHを制御し、場合によっては10%水酸化ナトリウムで7.0に調整する
・少なくとも-20℃まで急冷し、凍結する
・減圧下の凍結乾燥機中で凍結混合物を乾燥する
・凍結乾燥物を粉砕し、最終含水率を制御する
・微粉化された乾燥製品を真空下又は不活性雰囲気下で包装する。
【0164】
したがって、新たに収集した酵母クリーム(21.3%乾燥エキス)のpHを、10%水酸化ナトリウムによって7.0に調整する。支持体又は賦形剤を含む保護溶液を調製し、18.9gのトレハロース二水和物、18.9gのマルトデキストリン及び0.63gのL-ロイシンを51.1gの温脱塩水に溶解する。7.9gのT5ファージの懸濁液(2.3%乾燥エキス)を、その冷却後に、この保護溶液に加える。混合物を撹拌下に保持し、冷却する。この混合物を、撹拌し続けながら、113gの前述の酵母クリームに加え、冷却する。これは、約27.4%の乾燥エキスを含有する。
【0165】
液体酵母/ファージ/保護剤混合物は、容器内の層の高さが15mmを超えないようにガラスのトレイ又はバイアルに分配される。全ての容器を温度≦-20℃まで冷却し、冷凍庫内で急速に凍結させる。
【0166】
数時間の凍結後に、容器を、凍結乾燥棚及びチャンバを予め冷却した実験用凍結乾燥機(Lyovapor L-200 Buchi)に入れる。
【0167】
先に論じたように、一次乾燥に続いて二次乾燥を開始し、凍結乾燥プロセスを80~96時間の終わりに停止する。凍結乾燥物を、乳鉢ミルを用いて微粉砕し、穏やかに粉末にし、場合によっては500μmのメッシュのふるいに通す。最終含水率を制御して、<3%にしなければならない。真空下での包装は、経時的な製品の変化を回避するために迅速に行われる。
【0168】
以下に記載される試験において使用される混合物は、実施例1~3に記載される3つの方法のうちの1つに従って乾燥させた。
【0169】
安定性試験の文脈において、カウントは、ファージのインデプスカウント技術を用いて行った。他の試験の文脈において、カウントは、スポットによるカウント技術及び1/100希釈を構成する出発試料を用いて行った。したがって、この方法の検出限界は、4Log(以下NDという)である。
【0170】
酸性条件に直面する場合、ファージは、pH3.5付近に位置する特定の閾値を下回ると突然不活性になるようである(Ma et al. 2008, Davis et al. 1985)。したがって、4つのpH値(2.5、3.0、3.5、4.0)のラインについて、この閾値を跨ぐために、また空腹時胃又は消化器ボーラスの吸収後に見出され得る全スペクトルを分析するために試験した(胃液中の胃抵抗性試験)。
【0171】
使用した乾燥モードにかかわらず、T5バクテリオファージ又はSalmoFresh(商標)バクテリオファージカクテルは、産業的使用のために完全に満足のいく活性を保持した。同様の結果が、T4及びT7バクテリオファージでもFOPカクテルでも得られた。
【0172】
(実施例4:S.cerevisiae CNCM I-3856酵母又は酵母殻をT5バクテリオファージ又はSalmoFresh(商標)バクテリオファージカクテルと噴霧することによって共乾燥することから得られた混合物を用いた胃液における胃抵抗性試験)
【表3】
【0173】
溶液中にファージ単独のときは、pH4で不活性だが、pH3から酵母と共乾燥したファージをカウントすることが可能である。
【0174】
pH2.5では、試験したファージのいずれの形態も活性を維持できなかった。
【0175】
pH3では、酵母CNCM I-3856と共乾燥させたT5ファージは、検出閾値未満に移る前に少なくとも30分間活性を維持した。
【0176】
pH3.5では、2時間後に、酵母CNCM I-3856と共乾燥したT5ファージの喪失が、より大きいLog PFU/gとして見られる。
【0177】
pH4では、酵母CNCM I-3856と共乾燥させたT5ファージは、より安定な環境にある。試料のPFU/gの濃度は、T0とT30との間で増加し得ることに留意されたい。これは、粉末(特に噴霧乾燥粉末)が、常に非常に迅速に溶解するとは限らない凝集体を形成し得るという事実に最も確かに起因する。
【0178】
pH2.5で胃液と接触させた試料からの酵母を、実験の開始時(T0)及び終了時(T120)にカウントした。結果は、全ての試験について同様である。酸性環境下で2時間後に、酵母濃度は、非常にわずかに低下する。
【表4】
【0179】
(実施例5:酵母をSalmoFresh(商標)バクテリオファージカクテルと噴霧することによって共乾燥することから得られた混合物を用いた胃液における胃耐性試験)
【表5】
【0180】
ファージ溶液単独(T5及びSalmoFresh(商標))の胃耐性を比較すると、SalmoFresh(商標)溶液中に存在するファージで、より良好な生存が観察された。SalmoFresh(商標)溶液がファージカクテルを含有し、各ファージのpHに対する感受性が異なり得ることも注目に値する。
【0181】
酵母との噴霧による共乾燥は、ファージが、検出閾値未満に移る前に、pH2.5でさえ30分間活性を維持できることに留意されたい。
【0182】
pH3.0、3.5及び4.0では、試料は、実験している2時間にわたって、活性を維持する。
【0183】
同様に、pH2.5で胃液と接触させた試料からの酵母を、実験の開始時(T0)及び終了時(T120)にカウントした。結果は、全ての試験について同様である。酸性環境下で2時間後に、酵母濃度は、非常にわずかに低下する。
【表6】
【0184】
(実施例6:酵母殻をT5バクテリオファージ又はSalmoFresh(商標)バクテリオファージカクテルと共乾燥することから得られた混合物を用いた胃液における胃抵抗性試験)
【表7】
【0185】
これらの試料は、噴霧乾燥による共乾燥によって作製した。ファージの生存率は、酵母CNCM I-3856を使用する他の噴霧乾燥試験と比較して、試料によって酸性度がより弱く中和されているにもかかわらず、pH3.0、3.5及び4.0について同一であるように見える。
【0186】
pH3では、T5ファージは60分間生存し、SalmoFresh(商標)溶液からのファージは実験の120分間を通して生存することが観察された。考えられる仮説は、これらの試験から得られた粉末が、生きている酵母を用いて得られた噴霧乾燥粉末よりも可溶性がさらに低いため、ファージの拡散がより遅れて起こり、これがその保護に関与し得ることである。この仮説は、また、T0分で行われたカウントよりも多くのファージが曝露の30分後にカウントされる理由を説明することができる。
【0187】
(実施例7:酵母をT5バクテリオファージ又はSalmoFresh(商標)バクテリオファージカクテルと共乾燥することから得られた混合物を用いた腸液における抵抗性試験)
【表8】
【0188】
腸管抵抗性試験は、1つのpHのみ(pH6.8)が試験されることを除いて、胃試験と同じ原理に基づく。このことから、腸液は、ファージ又は酵母の生存率に影響を及ぼさないことが分かる。
【表9】
【0189】
(実施例8:アルカリ化ポテンシャル試験)
製剤からのどの成分が酸性媒体中でファージを保護するのに役立つこのアルカリ化効果を有するかを決定するために、5つの試料を作製し、その全ては、DM(乾燥物質)/TDM(総乾燥物質)中の1%のSalmoFresh(商標)ファージ及び使用した単一賦形剤の99%から構成された。これらの試料0.5gをpH2.5の胃液50mLと接触させた。粉末を溶解した後、pHを測定した。
【0190】
酵母及びL-ロイシンを含む乾燥試料は、有意なpH変動を引き起こした。測定したpHが3.59であり、酵母を含有する試料は、3.5の不活性化閾値を超えることさえ可能であった。最も有効な乾燥支持体を構成し、したがってL-ロイシンとは異なり様々な製剤中に有意な量で存在するのは酵母であることを観察することができる。
【表10】
【0191】
(実施例9:耐紫外線性試験)
【表11】
【0192】
溶液中のファージ及び噴霧乾燥によって酵母と共乾燥させたファージをUV-Cに30分間曝露し、ファージをカウントするために0、5、15、30分で更新した。カウントは、胃耐性についての試験と同様にスポットによって、同じ試料を用いて行った。利用可能な第一の希釈は1/10希釈(Stomacherによる再水和に由来する)であったので、この技術の検出限界は、3Logである。
【0193】
溶液中のファージ(T5及びSalmoFresh(商標)ファージ)はUV-Cに対して非常に敏感であることが観察できる。SalmoFresh(商標)溶液からのファージは、5分間の曝露後に、もはや活性ではなく、T5ファージは、5分間しか持続しない。逆に、酵母と共乾燥させたファージは、UV-Cによる影響をごくわずかしか受けない。
【0194】
30分間の曝露の前後の酵母のカウントによって、試験した全ての構成について、UV-C曝露がそれらの生存率に影響を及ぼさないことを示すことができた。
【0195】
(実施例10:経時的な安定性試験)
3ヶ月にわたる安定性試験を、25℃/60%RH、30℃/65%RH及び40℃/75%RHでの噴霧乾燥によって共乾燥させた試料に対して行った。a(水分活性)及びファージの喪失を、実験の開始時(T0日)、中間時(T30日)及び終了時(T90日)に測定した。
【表12】
【表13】
【0196】
の値が非常に低いことは、得られる製品中に放出される水の割合が非常に低く、微生物の増殖を阻止し、したがって経時的な製品の安定性を保証するのに十分に低いことを示す。
【国際調査報告】