(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】はんだ付け接合部の生成方法、及び、はんだ付け接合部を有するアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20241003BHJP
B23K 1/002 20060101ALI20241003BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20241003BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241003BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/34 512C
H05K3/34 507Z
B23K1/002
B23K1/00 330E
B22F1/00 M
B22F1/00 U
B22F1/054
B22F1/00 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520734
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022077550
(87)【国際公開番号】W WO2023061801
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュテグマイヤー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルブレッカー-バール,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4K018
5E319
【Fターム(参考)】
4K018BB05
4K018BD01
4K018KA32
5E319AA01
5E319BB05
5E319BB20
5E319CC60
5E319GG15
5E319GG20
(57)【要約】
はんだ(100)によって第1のはんだ付けパートナ(10)と第2のはんだ付けパートナ(20)との間にはんだ付け接合部を生成する方法が提案されている。はんだは1つの金属はんだ材料(110)と多数の磁性ナノ粒子(120)とを含み、少なくとも、
a)少なくとも1つのマグネットコイル(210、220)で交番磁界(200)を発生させ、交番磁界(200)をはんだ(100)に作用させるステップ、
b)交番磁界(200)との相互作用により複数の磁性ナノ粒子(120)を加熱するステップ、
c)複数の磁性ナノ粒子(120)から金属はんだ材料(110)への熱伝達(300)により金属はんだ材料(110)を溶融し、溶融した金属はんだ材料(110)により第1はんだ付けパートナと第2はんだ付けパートナとの間にはんだ付け接合部を形成するステップ、
を含む。さらに、このようなはんだ付け接合部を有するアセンブリ(1)が提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ(100)によって第1のはんだ付けパートナー(10)と第2のはんだ付けパートナー(20)との間にはんだ付け接合部を生成する方法であって、前記はんだは1つの金属はんだ材料(110)と多数の磁性ナノ粒子(120)とを含み、本方法は少なくとも、
a)少なくとも1つのマグネットコイル(210、220)で交番磁界(200)を発生させ、前記交番磁界(200)を前記はんだ(100)に作用させるステップと、
b)前記交番磁界(200)との相互作用により前記複数の磁性ナノ粒子(120)を加熱するステップと、
c)前記複数の磁性ナノ粒子(120)から前記金属はんだ材料(110)への熱伝達(300)により前記金属はんだ材料(110)を溶融し、溶融した前記金属はんだ材料(110)により前記第1はんだ付けパートナーと前記第2はんだ付けパートナーとの間にはんだ付け接合部を形成するステップと、
含む方法。
【請求項2】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が超常磁性であり、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含み、特に金属合金又は金属酸化物の形態であり、前記合金又は金属酸化物が、鉄、コバルト及びニッケルの元素のうちの少なくとも1つを含み、前記金属合金又は前記金属酸化物のはんだ全体における重量比率が1%から30%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)の直径(d120)が100nm未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)のキュリー温度が100℃~1200℃の範囲内、好ましくは150℃~400℃の範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
個々の前記複数の磁性ナノ粒子(120)のキュリー温度の分布の半値幅(FWHM)が50℃以下、好ましくは30℃以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
d)前記はんだ(100)のそれ以上の加熱が回避されように、前記複数の磁性ナノ粒子(120)をそのキュリー温度に到達させるステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料からなる1つのコア(121)と、1つの非磁性シェル(122)とを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップa)において、磁極の配列方向が異なる少なくとも2つのマグネットコイル(210、220)が使用され、これらのマグネットコイル(210、220)が前記2つのはんだ付けパートナー(10、20)に対して相対的に移動される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱伝達(300)が急激に遮断され、予め定められた最高温度を超えることが回避される、請求項5及び8に記載の方法。
【請求項10】
異なる種類の複数のはんだ付け接合部を生成するために、異なる溶融温度を有する複数の異なるはんだ(100)が1つのアセンブリ(1)内で使用される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つの第1のはんだ付けパートナー(10)及び1つの第2のはんだ付けパートナー(20)を有するアセンブリ(1)であって、これらの2つのはんだ付けパートナー(10、20)が、1つの金属はんだ材料(110)とその中に埋め込まれた多数の磁性ナノ粒子(120)とを含むはんだ(100)によって接合されている、アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が超常磁性であり、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含み、特に金属合金又は金属酸化物の形態であり、前記合金又は金属酸化物が、鉄、コバルト及びニッケルの元素のうちの少なくとも1つを含み、前記金属合金又は前記金属酸化物のはんだ(100)全体における重量比率が1%から30%の間である、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1のはんだ付けパートナー(10)が電気回路基板である、請求項11又は12に記載のアセンブリ(1)。
【請求項14】
前記第2のはんだ付けパートナー(20)が電気部品又は電子部品、特にパワーエレクトロニクス部品である、請求項11から13のいずれか1項に記載のアセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだによって第1のはんだ付けパートナーと第2のはんだ付けパートナーとのはんだ付け接合部を生成する方法に関し、このはんだには本方法を実施する間に溶融される金属はんだ材料が含まれている。本発明は、さらに、このようにして生成されたはんだ付け接合部を備えたアセンブリに関する。
【0002】
従来技術は、複数のはんだ付けパートナー間ではんだ付け接合部を生成することができる種々のはんだ付け方法を開示している。接合材料としては、例えば固体はんだ材料、例えば、はんだワイヤー又はプリフォームを用いることができる。また、例えば、部品が実装される回路基盤に印刷法によって塗布することができるはんだペーストを使用することも可能である。このようなはんだペーストは、通常、多数の金属はんだ粒子を含み、さらにフラックスを含む。それぞれのタイプのはんだに拘わらず、その中に存在する金属材料は、所望のはんだ付け接合部を生成するために、境界面での拡散が可能な程度にまで溶融又は少なくとも加熱されなければならない。このために必要な入熱は、従来技術によれば、例えば、はんだごて、はんだ付けトーチの炎、熱風、熱蒸気、熱放射、レーザにより、又は、誘導コイルによる電磁誘導を介して行うことができる。
【0003】
これらの加熱方法の多くの欠点は、はんだ付けパートナーのはんだ付け部位だけに限定されず、より広い範囲に熱が導入され、その結果、はんだ付けパートナーに対する熱損傷のリスクがある、ということである。このことは、特に、はんだごて、はんだ付けトーチ、熱風、熱蒸気、熱放射に当てはまる。レーザは、状況によっては、局所的な集束加熱を達成することができるが、多くの場合、(例えば、電気的なアセンブリ内の)はんだ付けすべきすべての領域がレーザビームに対して完全にアクセス可能であるとは限らない。誘導はんだ付けの場合も、不都合な渦電流が誘導されるはんだ付け部位の近傍にある他の導電性要素に対する熱損傷のリスクがしばしば存在する。
【0004】
上述された諸加熱方法のさらなる欠点は、はんだ付け部位の領域に到達した温度を正確に測定し制御することが困難であり、したがって、はんだ付け接合部の生成に必要な温度に到達したときに過度に高い入熱を防止することができないことである。したがって、通常、はんだ付けプロセスに必要とされるよりも著しく多くの熱が導入され、その結果、そのはんだ付けパートナー又はさらに隣接する部品にさらに大きな熱応力をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、上述した欠点を克服するはんだ付け接合部を生成する代替方法を提供することにある。特に、はんだ付け部位の領域における空間的に狭く限定された入熱を可能にし、さらに、到達したはんだ付け温度のより良好に制御可能な制限をも好適に可能にするはんだ付け方法を提供することが意図されている。別の課題は、そのようなはんだ付け接合部を含むアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題は、請求項1に記載の方法、及び、請求項13に記載のアセンブリによって解決される。
【0007】
本発明による方法は、はんだによって第1のはんだ付けパートナーと第2のはんだ付けパートナーとの間にはんだ付け接合部を生成するためのものである。このはんだは、1つの金属はんだ材料と多数の磁性ナノ粒子とを含む。本方法は、以下の方法ステップを含む。
a)少なくとも1つのマグネットコイルで交番磁界を発生させ、この交番磁界をはんだに作用させるステップ、
b)前記交番磁界との相互作用により磁性ナノ粒子を加熱するステップ、
c)前記複数の磁性ナノ粒子から前記はんだ粒子への熱伝達により前記金属はんだ材料を溶融し、この溶融した金属はんだ材料により第1はんだ付けパートナーと第2はんだ付けパートナーとの間にはんだ付け接合部を形成するステップ。
【0008】
3つの方法ステップa)からc)のこの順序は、先ず第1に個々の効果の因果関係を示す。ステップa)における交番磁界の発生は、最初にステップb)において磁性ナノ粒子の加熱を生じさせ、この磁性ナノ粒子の加熱は次にステップc)において熱が磁性ナノ粒子からはんだ付け材料に伝達されるので、はんだ材料の溶融をもたらす。全体として、ステップa)及びb)は典型的には同時に進行し、ステップc)も、ステップa)及びb)とほゞ同時に、又は、少なくとも時間的にオーバーラップして実行される。
【0009】
すなわち、本発明にとって重要なのは、このはんだが上述の磁性ナノ粒子及び金属はんだ材料の両方を含むことである。金属はんだ材料の溶融により、従来のはんだペーストの場合と同様に、本来のはんだ付け接合部が形成される。この場合、最終的な機械的に耐久性のあるはんだ付け接合部は、入熱が中止され又は制限され、このはんだ材料が再び凝固して固体となる瞬間に形成される。したがって、形成されたはんだ付け接合部の電気伝導性は本質的に、凝固した金属はんだ材料によって与えられる。
【0010】
補助的に存在するこれらの磁性ナノ粒子は、このはんだへの的確な局所的入熱が可能になるように働く。これらのナノ粒子は特にフェロ磁性又はフェリ磁性である。したがって、これらは、ステップa)で作用する交番磁界によって周期的に磁化することができる。これらの粒子のサイズスケールはナノメートルの範囲以下である必要がある。粒径がこのように小さいので、この磁界によって生じた磁化は保持されず、非常に短い時間スケールでブラウン緩和とネール緩和によって熱エネルギーに変換される。したがって、ステップa)で作用する交番磁界を介して、これらの磁性ナノ粒子が存在するゾーンに、換言すれば、このはんだの領域内で局所的に、局所的に限定された加熱を生じさせることができる。したがって、本発明の方法の本質的な利点は、接合すべきはんだ付けパートナー及び他の隣接する部品の望ましくない加熱を他のはんだ付け方法と比較して大幅に低減することができ、それにもかかわらず、はんだ付けゾーン内で金属はんだ要素の確実な溶融が達成されることである。
【0011】
このはんだの内部で、このはんだ材料は特に複数の金属はんだ粒子の形態で存在することができる。この場合、複数の磁性ナノ粒子は複数の金属はんだ粒子と混合されているか又はそれらの非常に近くに隣接することが可能なので、全体として、最初に加熱された磁性ナノ粒子から金属はんだ粒子への熱伝達が可能であり、それに基づいてはんだ粒子の溶融が可能である。これは、例えば、2つのタイプの粒子が互いに並んで存在する混合物の場合であり、この場合、特に、一般的には本質的により小さい複数の磁性ナノ粒子が、より大きなはんだ粒子間の間隙にわたってほゞ均一に分布している。このような粒子混合物の代替形態として、このはんだが多数の金属はんだ粒子を含み、これらの金属はんだ粒子のそれぞれが、異種材料で構成されていて区画された内在物としての磁性ナノ粒子を含むことも可能である。別の代替案では、これらの磁性ナノ粒子を固体はんだ材料で作られたより大きく膨張された本体内に埋め込むことができ、例えば、いわゆるプリフォーム又ははんだワイヤーの体積上に分布させることができる。
【0012】
本発明によるアセンブリは、1つの第1のはんだ付けパートナー及び1つの第2のはんだ付けパートナーを含む。これら2つのはんだ付けパートナーは、1つの金属はんだ要素とその中に埋め込まれた多数の磁性ナノ粒子とを含むはんだ付け接合部によって接合されている。このはんだ付け接合部は特に本発明による方法によって生成されており、このことは埋め込まれた磁性ナノ粒子の存在によって検知可能である。金属はんだ材料とは異なり、これらの磁性ナノ粒子ははんだ付け接合部の生成時には溶融せずに、凝固したはんだの中にナノスケールの内在物として依然として保持されている。本発明によるアセンブリの利点は、本発明による方法の上述した利点と同様である。
【0013】
本発明の有利な実施形態及び発展形態は、請求項1及び13に従属する請求項から、及び、以降の説明から明らかである。この場合、本方法と本アセンブリの記載された形態は一般に好適に互いに組み合せることができる。
【0014】
一般的に有利な一実施形態によれば、これらの磁性ナノ粒子は超常磁性とすることができる。言い換えると、これらのナノ粒子はフェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含み、これらの粒子の場合、それまで作用していた外部磁場が遮断された後、キュリー温度未満でも、残っている磁化は保持されない。この効果は粒径が小さいために生じ、この場合、そのために超えてはならない粒径はそれぞれの材料にも依存する。しかし、これに関しては、一般には磁性ナノ粒子の直径が100nm以下であると有利である。非球形粒子の場合には、直径ではなく、最大外形寸法が使用される。典型的な粒子サイズの一般的に有利な範囲は、例えば10nm~50nm、特に有利には10nm~25nmである。上述のサイズスケールの磁性ナノ粒子の場合、作用する交番磁界からのエネルギーは、ブラウン緩和及びネール緩和によって特に効率的にナノ粒子の加熱に転換することができる。
【0015】
さらに、これらの磁性ナノ粒子のキュリー温度が100℃~1200℃の範囲内、特に有利には150℃~400℃の範囲内であると一般的に有利である。特に、存在するすべての磁性ナノ粒子が上述の範囲内のキュリー温度を有する必要がある。これにより、そのキュリー温度は、使用されるはんだ付けプロセスの温度範囲に適合している。この場合、特に、磁性ナノ粒子のキュリー温度は金属はんだ材料の溶融温度よりも高い、又は、溶融範囲よりも高い。このようにして、活性な交番磁界中でこれらの磁性ナノ粒子を十分に高い温度まで加熱することができ、その結果、はんだ材料を溶融に至らせることができる。しかしながら、磁性ナノ粒子の温度がキュリー温度を超えると、その温度を超えると本質的に磁場のエネルギーから磁性ナノ粒子内への入熱が行われないので、はんだ材料のそれ以上の加熱は中止される。このように、そのナノ粒子のキュリー温度範囲における入熱が自動的に停止され、これにより、有利に、過剰な熱負荷を回避することができる。すなわち、特にこの方法の場合には、入熱がはんだの領域に局所的に集中されるだけでなく、ナノ粒子材料の適切な選択により、その最高温度を特定の用途に対して望ましい範囲に制限することも可能である。ナノ粒子のキュリー温度は含まれているフェロ磁性又はフェリ磁性の材料の精密な組成に敏感であるので、この材料選択によって、自動停止メカニズムが生じる温度を的確に選択することも可能である。こうして、そのはんだの到達可能な最高温度を、金属はんだ材料の溶融温度に対してだけでなく、はんだ付けパートナーの、及び、場合によってはアセンブリ内に存在するその他の要素の熱耐久性に対しても適切に合わせることが可能である。したがって、アセンブリが熱に敏感な要素、例えば、熱に敏感なポリマーのハウジング及び/又は絶縁層を含むことも有利に可能である。場所的に限定された加熱及びその自動的な制限によって、はんだ付けプロセスにおける損傷を回避することが可能となり、それにもかかわらず、金属はんだ材料を確実に溶融させることが可能である。この場合、加熱に必要な交番磁界を、はんだ付けプロセスにおいてそれ自体ほとんど加熱されない他の要素を貫通させることも可能である。というのは、これらの要素は磁界との相互作用が小さいからである。こうして、例えば、特にシステム全体での、複数の部品を貫くはんだ付けが可能であり、さらに、それどころか、液体内での、又は、液体を通してのはんだ付けプロセスが可能である。
【0016】
個々の磁性ナノ粒子のキュリー温度の分布が比較的に一致していると、上述した停止メカニズムに関連して特に有利である。これらは有利には、CNPs(キュリー温度調整磁性ナノ粒子:Curie temperature tuned magnetic nanoparticles)、すなわち、互いに一致したキュリー温度を有する複数の磁性ナノ粒子である。このようなCNPsは、例えば、「Applied Materials Today 21(2020)100824 “Magnetocuring of temperature failsafe epoxy adhesives” R.Chaudhary, V.Chaudhary, R.V.Ramanujan, T.W.J.Steele」に記載されている。
【0017】
したがって、一般的には個々の磁性ナノ粒子のキュリー温度の分布の半値幅(FWHM)が50℃以下であると有利であり、特に有利には30℃以下である。個々のナノ粒子のキュリー温度がこのようにぴったり一致していると、特に精密に定義された温度範囲内における入熱の上述の自動的な制限が機能する。次いで、本方法は、それに応じて、以下のさらなるステップを含むことができる。
d)これらの磁性ナノ粒子をそのキュリー温度に到達させるステップ、その結果、はんだのそれ以上の加熱が回避される。
【0018】
言い換えれば、ナノ粒子がそのキュリー温度に達すると、入熱が急激に遮断される。従って、予め定められた最高温度を超過することを特に確実に回避することが可能であり、さらに、その結果、隣接する複数の要素の熱的損傷を回避することも可能である。特に、この場合、温度検出のための複雑なセンサシステム、及び、過熱を回避するための追加の閉ループ制御装置を省略することも可能である。
【0019】
一般的に有利な一実施形態では、これらの磁性ナノ粒子は、特に金属合金又は金属酸化物の形態で存在しているフェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含む。この合金又は金属酸化物は有利には、鉄、コバルト及びニッケルの元素のうちの少なくとも1つを含む。ここでは、この金属酸化物は特に混合酸化物、例えばMnx Zn1-x Fe2 O4のタイプの化合物とすることができ、ここで、xは特に0.4と0.7の間の値をとることができる。このタイプの化合物についての精密に定義されたキュリー温度の調整は、R.Chaudharyらによる上掲の引用論文に述べられている。
【0020】
さらに、そのような金属合金又は金属酸化物のはんだ全体における重量比率が1%から30%の間であると、一般的に有利である。ナノ粒子を介してはんだに十分な入熱をもたらすためには、少なくとも1%の重量比率が適切であり、これが次に金属はんだ材料の溶融をひき起こす。他方、30%を超える過度に高い重量比率は、はんだ付け接合部の機械的及び電気的特性があまりにも強く損なわれるので、一般的には不適切である。従って、この重量比率は、はんだ付け接合部の特に良好な電気伝導率を考慮すると、有利には10%以下に限定されるべきである。しかし、長寿命の機械的結合を得ることが特に重要であり、電気伝導率の重要性が下位に位置づけられる場合には、磁性ナノ粒子の重量比率はこの範囲の上部、すなわち、10%と30%の間であるようにすることができる。
【0021】
特に有利な一変形形態では、これらの磁性ナノ粒子は、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料からなる1つのコアと、1つの非磁性のシェルとを有することができる。ここで、非磁性材料とは、少なくともフェロ磁性又はフェリ磁性ではない材料を意味する。したがって、このシェルは、例えば有機材料で形成することもでき、例えば、オレイン酸及び/又はビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むことができる。しかし、二酸化ケイ素(SiO2)やグラフェンなどの無機物もこのシェルに使用できる。このようなシェルは、特に磁性ナノ粒子のコロイド安定化に役立つ。換言すれば、これらのシェルは、例えば湿気の影響によって引き起こされうる粒子の凝集を回避する。この目的のために、コロイドを安定化するこのようなシェルの厚さは、例えば2nm~10nmの範囲内とすることができる。このような薄いシェルは、ナノ粒子が凝集してより大きなクラスタを形成するのを防ぎ、したがって、はんだ全体にわたってナノ粒子の微細でほゞ均一な分布を可能にするのに十分である。こうして、はんだ全体の特に一様な加熱を達成することができる。
【0022】
しかしながらこの実施形態の代替として、原理的に、被覆されていない磁性ナノ粒子を使用することも可能である。場合によっては、そのようなナノ粒子のクラスタの形成を甘受することができる。特に複数の磁性ナノ粒子と複数の金属はんだ粒子の粒子混合物を用いる場合には、形成された凝集体のサイズスケールが使用されたはんだ粒子のサイズスケールの範囲以下であると、有利となりうる。その時は、これらのナノ粒子の凝集にもかかわらず、磁性ナノ粒子から金属はんだ粒子への均一な熱伝達を可能にするのに充分な均質なはんだを提供することができる。
【0023】
このはんだの第1の実施形態によれば、このはんだははんだペーストとすることができる。そのようなはんだペーストは、特に、複数の磁性ナノ粒子と複数の金属はんだ粒子との混合物を含むことができる。そのようなはんだ粒子は好適にはほゞ球形であり、その直径は1μm~160μm、好ましくは2μm~50μmの範囲である。これは、比較的微細なはんだ粒子を有する一般的な従来のはんだペーストにおける通常の粒子径に相当する。
【0024】
しかし、このはんだの代替的な第2の実施形態によれば、このはんだは、この専門業界でプリフォームとも称される、固体はんだ成形体とすることもできる。このようなはんだプリフォームは、例えばはんだ付けリングであってもよく、又は、円盤、テープ、平らな長方形、又は、馬蹄形の形態をとってもよい。あるいは、はんだ付けワイヤー又は別の固体はんだ付け要素を使用することもできる。
【0025】
はんだ粒子を含むはんだペーストであるか、又は、はんだ付けプリフォームであるか否かにかかわらず、一般に、はんだ材料は低融点合金であり、例えば、軟質はんだ、硬質はんだ、又は、高温はんだである。はんだ材料としては基本的にすべての慣用のはんだ合金が適しており、特に、スズ、ビスマス、銀、銅、亜鉛、鉛及び/又はアンチモンを含む合金が適している。
【0026】
このはんだは、はんだ材料及び複数の磁性ナノ粒子に加えて、一般にフラックスを含むことが好ましい。このことも、例えば、それがはんだペーストであるか、又は、固体はんだ付けプリフォームであるか否かにかかわらず、同様に成り立つ。すべての慣用の材料はフラックスに対しても有用である。例えば、フラックスは、樹脂、油、溶媒、塩又は水とすることができ、あるいは、構成成分としてこれらの化合物を含むことができる。全体として、このはんだは複数の材料からなる混合物であり、これは、はんだ材料、複数の磁性ナノ粒子、及び、オプションとしてのフラックスに加えて、必要に応じてさらに他のオプション的な構成要素も含むことができる。
【0027】
本方法の実施形態の一般的に有利な一変形例によれば、ステップa)で磁極の配列方向が異なる少なくとも2つのマグネットコイルを使用することができる。この実施形態では、これによって互いに重畳される2つの交番磁界が生成され、好適に磁束密度の高い複数の範囲が1つの焦点範囲内で重畳されている。こうして、この変形例では、ただ1つのマグネットコイルによって又はただ1つの磁極方向によって作ることができる焦点よりもさらに強い1つの焦点が局所加熱のために1つの狭く限定された範囲に作用する。この焦点範囲のサイズは、用途によって全く異なる:例えば、表面実装デバイス又はボールグリッドアレイのはんだ付けの場合の焦点サイズは、サブミリメートルの範囲とすることができる。例えば、鉄道技術分野におけるような、又は、パイプのはんだ付けのためのような、大面積のはんだ付け範囲に対しては、焦点サイズは著しく大きくなり、メートル範囲にさえなり得る。
【0028】
2つの重畳する磁界により1つの狭い焦点範囲を生成する代わりに、1つ又は複数の磁束ガイド要素によって磁界のフォーカスを達成することができる。磁界を適切な大きさの1つの焦点範囲に集束させるために、はんだ付け部位の両側に、例えば2つの円錐形の鉄心を互いに向き合うように配置することが可能である。
【0029】
一般に、使用されるマグネットコイルの数及び空間的配置にかかわらず、交番磁界の周波数は、数百kHzの範囲、好ましくは100kHzから1000kHzの間、及び、例えば、約400kHzの範囲とすることができる。このような範囲の周波数の場合、磁性ナノ粒子におけるこれに対応する緩和プロセスにより、はんだへの効率的な入熱を達成することができる。
【0030】
マグネットコイルの数及び磁極数とは無関係な本発明の有利な一発展形態によれば、少なくとも1つのマグネットコイルは、はんだ付け工程の間に2つのはんだ付けパートナーに対して相対的に移動させることができる。この場合、そのはんだ付けパートナーが固定され、この少なくとも1つのマグネットコイルが移動するか、又はその逆であるかは重要ではない。いずれにしても、この実施形態における全体的な結果は並進的な相対移動であり、その結果、その焦点範囲又は最大エネルギー入力の範囲は、対象となっているアセンブリを横切って移動し、その結果、複数の連続する位置におけるはんだの目的に合った局部溶融が可能になる。本方法のこの実施形態代案により好適に、それぞれの活性なはんだ付けゾーンがアセンブリの内部領域から外側に移動されるような進行も可能となる(勿論、逆も同様である)。したがって、この代案によって、特に最大エネルギー入力の位置が空間的に狭く限定されていると、複雑なアセンブリ内に個々の局所的なはんだ付け部位を作り出すことも可能であり、必要に応じて、このような内部の局所的に限定されたはんだ付け部位の後日の修理もまた可能である。修理には、例えば、部品の交換、及び、既にはんだ付けされている誤配置された部品の溶融と再配置が含まれる。代替として又は付加的に、上述した熱入力の方式により、既に実施されたはんだ付け接合部内の応力を除去するために、後日の局所的に限定された熱処理が可能である。
【0031】
本方法の一般的に有利な一展開形態によれば、異なる種類のはんだ付け接合部を生成するために、1つのアセンブリ内で溶融温度が異なる複数の異なるはんだを使用することができる。その時は、これらのはんだ付け接合部のうちの少なくとも1つのタイプに、本発明のはんだ付け方法が使用される。他の方式のはんだ付け接合部の場合には、本発明のこの方法を別のはんだと共に使用することも可能であるか、又は、1つ又は複数の他のはんだ付け接合部の場合に、従来のはんだ付け方法を使用することも可能である。例えばSMDはんだ付け接合部に対して、差し込みプラグ又は負荷接続部のはんだ付けに対するものとは異なる方法を使用することが可能である。また、高周波、大電流及び/又は高電圧のための接合部のハンダ付けに対しては、低周波、低電流又は低電圧の範囲のためとは異なるはんだ付け方法を使用することも可能である。最後に、例えば鉛を含むはんだのような特定の材料に対しては、アセンブリの他の場所の鉛フリーはんだとは異なる方法を使用することも可能である。
【0032】
有利な一実施形態によれば、本発明によるアセンブリはエレクトロニクスアセンブリ、特に、1つ以上のパワーエレクトロニクス部品を有するパワーエレクトロニクスアセンブリとすることができる。この場合は、本発明の利点が特に有効である。というのは、ここで非常に重要なのは、信頼性が高く導電性の高いはんだ付け接合部を生成することであるが、他方で、同じアセンブリ内の他の要素を過剰な熱応力から保護する必要性もあるからである。
【0033】
このアセンブリが、本発明の方法によって生成されたはんだ付け接合部を少なくとも1つ有していると一般に有利である。このはんだ付け接合部は、付属している複数のはんだ付けパートナー間に適切に導電性接合部を形成することができる。
【0034】
本アセンブリの有利な一実施形態によれば、第1のはんだ付けパートナーは電気的な回路基板とすることができる。すなわち、それは、例えば、回路基板、又は、セラミック回路基板とすることができる。いずれの場合においても、この回路基板はアセンブリの機械的な及び/又は電気的な基盤を形成し、この基盤によって複数の他の要素が支持される。したがって、本発明の方法により、第2の、及び、任意の他のはんだ付けパートナーを形成する1つ又は複数の他の要素を、この回路基板上にはんだ付けすることができる。
【0035】
したがって、第2のはんだ付けパートナーは、電気部品又は電子部品とすることができる。これは、オプションとして存在する別のはんだ付けパートナーにも当てはまる。特に、回路基板は1つ又は複数のそのような部品を実装することができ、本発明のはんだ付け方法によってこれらに接合されている。この場合、一般的に好適に、導電性の接合が行われ、それによって対象となる部品も電気的に接触される。そのような部品は、例えば、IGBT、ダイオード、MOSFET、サイリスタ、シャント、又は、コンデンサとすることができる。
【0036】
しかしながら、これらのはんだ付けパートナーは、必ずしも電気回路基板、及び、電気部品である必要はない。また、任意の他の部品、例えばパイプ又はマシンハウジングが第1のはんだ付けパートナーを形成することも可能であり、任意の他の部品が第2のはんだ付けパートナーを形成することが可能である。例えば、(特に、温度又は機械的応力のための)センサをパイプ又はマシンハウジング上にはんだ付けすることができる。あるいは、このはんだ付け技術を修理のために現場で、例えば、複数のパイプ部品を互いにはんだ付けするために、使用することもできる。
【0037】
以下に、幾つかの実施例に基づき、添付された図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1の例によるはんだ付け方法を実施中のアセンブリの一部の模式的断面図
【
図2】そのようなはんだ付け接合部のためのはんだの詳細図
【
図3】本はんだ付け方法において使用されるマグネットコイルアレイと共に示されたアセンブリの一部の模式的斜視図
【
図4】本発明の別の例によるはんだ付け接合部を実施中のアセンブリの断面図。 これらの図では、同一要素又は機能的に同一の要素には同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の第1の例におけるアセンブリ1の一部の模式的断面図である。図示されたこのアセンブリ1の詳細図において、本発明の方法により、第1のはんだ付けパートナー10と第2のはんだ付けパートナー20との間にはんだ付け接合部が生成される。これらは、原理的に、はんだ付けによって恒久的に機械的に接合すべきアセンブリの任意の要素である。また、この場合、必要に応じて良好な導電性接合、したがって、2つのはんだ付けパートナー10及び20の電気的接触が得られる。この場合、生成されるこのはんだ付け接合部は1つのはんだ100により媒介され、このはんだはその構成要素として、一方では1つの金属はんだ材料を含み、さらに、多数の磁性ナノ粒子120を含み、これらの磁性ナノ粒子ははんだ100に埋め込まれている。このはんだ100は原理的には異なる方法で構成することができる。それは、例えばはんだペーストであり、又は、その他の固体のはんだプリフォームであってもよい。いずれの各場合にも、これらの磁性ナノ粒子120は、はんだの体積上に分布されている。
図1の例では、このはんだ100は特にはんだペーストであり、これは複数の金属はんだ粒子と複数の磁性ナノ粒子とからなる複数の粒子混合物を含んでいる。
【0040】
2つのはんだ付けパートナー10と20の間にはんだ付け接合部を形成するために、交番磁界200が発生され、これは
図1において対応する両方向矢印によって示されている。この交番磁界ははんだ100の領域に作用する。特に、その中に存在する磁性ナノ粒子120との磁気相互作用が起こり、これがこれらのナノ粒子を加熱する。こうして、はんだ100の中に埋め込まれた複数の磁性ナノ粒子は、交番磁界200の作用下ではんだ100内の複数の局所的な熱源となり、そこからこのはんだの他の構成要素への熱伝達が行われる。この入熱は非常に局所的であり、本質的にはんだ100の領域に限定されているので、はんだ内の金属はんだ材料が溶融する。交番磁界の遮断後、はんだは冷却され、その溶融物はそれに対応して凝固され、こうして、2つのはんだ付けパートナー10、20間に恒久的なはんだ付け接合部が形成される。
【0041】
複数の磁性ナノ粒子の局所的な加熱によりそのキュリー温度を超過すると、はんだへの入熱が自動的に停止される。したがって、到達温度は自動的に制限される。したがって、この効果により、局所的に限定された加熱ゾーンと連携して、この方法は特に優しいはんだ付け方法であり、オプション的に存在するアセンブリの他の要素の熱的損傷が有利に回避される。接合される2つのはんだ付けパートナー10、20への入熱も比較的少ない。
【0042】
図2は、例えば
図1のはんだ付け方法で使用することができるようなはんだ100の領域における詳細図である。ここでも、はんだ100は、多数の金属はんだ粒子110を有するはんだペーストである。これらは、ここでは、比較的低融点の金属合金で構成されたほぼ球状のはんだ球として形成されている。その直径d110は、例えば、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの範囲内とすることができる。これらの金属粒子に加えて、このペーストは、既に述べたように、多数の磁性ナノ粒子120も含む。さらに、この例におけるはんだペーストは、(オプションとしての)有機フラックス130も含む。磁性ナノ粒子120の直径d120は、金属はんだ球110の直径d110より著しく小さい。有利には、磁性ナノ粒子120のサイズスケールは100nm以下の範囲である。これらのナノ粒子はフェロ磁性又はフェリ磁性の材料成分を含む。粒子サイズが小さいので、これらのナノ粒子は全体的に超常磁性である。この特性により、交番磁界における磁性ナノ粒子の強い局所的加熱、したがって、はんだ100へのはんだ付け方法に必要なエネルギー入力が可能となる。例示的な矢印300によって示されるように、ここでもナノ粒子120から金属はんだ粒子110へ熱伝達が生じ、その結果、これらの金属はんだ粒子が溶融される。
【0043】
図2の例では、磁性ナノ粒子は、2つの材料成分、すなわち、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料からなる1つのコア121と、1つの非磁性シェル122とを有する。このことは必要不可欠ではなく、これらのナノ粒子は、代替的に、単一のフェロ磁性材料又はフェリ磁性材料のみで構成してもよい。しかし、ここに示されたコア-シェル構造は、シェル物質による被覆により特に個々のナノ粒子の過剰な凝集を避けることができるので有利である。
【0044】
図3は、本発明の方法を実施するために交番磁界200の焦点範囲F内に位置決めされたアセンブリ1の一部の部分斜視図を示す。それ以外は、このアセンブリ1は
図1の例におけるものと同様に形成されており、特に、はんだ付け接合部を形成するための同様のはんだ100を含んでいる。焦点範囲Fは、はんだに入力されるエネルギーが空間的に狭く限定されるように、比較的狭く形成されている。これを達成するために、ここでは交番磁界200を発生するために2つのマグネットコイルアレイ210及び220が設けられている。この例では、それらは、アセンブリ1が2つのコイルアレイの中間にあるように、アセンブリの両側に存在する。この例では、2つのコイルアレイ210及び220の磁極は互いに同心である。しかし、この代わりに、対応する磁極の方向が異なる2つ以上のマグネットコイルを使用することも可能である。このときには、特に、これらの磁極は焦点範囲F内で交差することができ、これは、ある状況下では、エネルギー入力の一層強いフォーカスを可能にする。
【0045】
図4は本発明の方法によってはんだ付け接合部が同様に生成される別のアセンブリ1の断面図を示している。この例では、第1のはんだ付けパートナーは電気回路基板10であり、第2はんだ付けパートナーは電子部品20である。この第2のはんだ付けパートナーは、特に半導体チップであり、この半導体チップは回路基板に挿入されていて、本はんだ付け方法によって回路基板10上の導体路に導電的に接合される。ここでも、2つのはんだ付けパートナー10と20の間に1つのはんだ100があり、これは前例と同様に1つの金属はんだ成分と、はんだ100上に分布された複数の磁性ナノ粒子とを含む。ここでも、交番磁界200がはんだ付け領域に作用し、比較的狭い焦点範囲Fが形成されており、この焦点範囲内では磁界200から入力されるエネルギーが十分に高いので、金属はんだ要素を溶融させることができる。特に、焦点範囲の横方向の大きさはチップの横方向の大きさよりも小さく、その結果、チップの下の部分領域におけるはんだ100の点状の局所的な溶融が可能である。矢印400は、本はんだ付け方法を実施している間に、交番磁界(又は磁界発生コイルアレイ)とアセンブリ1との間で相対移動が行われることを示す。これにより、加熱されたはんだ付け領域を、このアセンブリの1つの狭い部分領域に的確に限定することができる。さらに、
図4は、この交番磁界がチップ20及び/又はアセンブリの他の要素に重大な加熱をもたらすことなく、電子部品20及び/又はアセンブリの他の要素を貫通することもできることを示す。その理由は、実質的なエネルギー入力が磁性ナノ粒子を有するはんだ100の領域に限定されているからである。
【符号の説明】
【0046】
1 アセンブリ
10 第1のはんだ付けパートナー(回路基板)
20 第2のはんだ付けパートナー(部品)
100 はんだ
110 金属はんだ材料(はんだ粒子)
120 磁性ナノ粒子
121 コア
122 シェル
130 フラックス
200 交番磁界
210 第1のマグネットコイルアレイ
220 第2のマグネットコイルアレイ
300 熱伝達
400 相対移動
d110 金属はんだ粒子の直径
d120 磁性ナノ粒子の直径
F 焦点範囲
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ(100)によって第1のはんだ付けパートナー(10)と第2のはんだ付けパートナー(20)との間にはんだ付け接合部を生成する方法であって、前記はんだは1つの金属はんだ材料(110)と多数の磁性ナノ粒子(120)とを含み、本方法は少なくとも、
a)少なくとも1つのマグネットコイル(210、220)で交番磁界(200)を発生させ、前記交番磁界(200)を前記はんだ(100)に作用させるステップと、
b)前記交番磁界(200)との相互作用により前記複数の磁性ナノ粒子(120)を加熱するステップと、
c)前記複数の磁性ナノ粒子(120)から前記金属はんだ材料(110)への熱伝達(300)により前記金属はんだ材料(110)を溶融し、溶融した前記金属はんだ材料(110)により前記第1はんだ付けパートナーと前記第2はんだ付けパートナーとの間にはんだ付け接合部を形成するステップと、
含む方法。
【請求項2】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が超常磁性であり、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含み
、金属合金又は金属酸化物の液体であり、
前記金属合金又は金属酸化物が、鉄、コバルト及びニッケルの元素のうちの少なくとも1つを含み、前記金属合金又は前記金属酸化物のはんだ全体における重量比率が1%から30%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)の直径(d120)が100nm未満である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)のキュリー温度が100℃~1200℃の範囲
内である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
個々の前記複数の磁性ナノ粒子(120)のキュリー温度の分布の半値幅(FWHM)が50℃
以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
d)前記はんだ(100)のそれ以上の加熱が回避されように、前記複数の磁性ナノ粒子(120)をそのキュリー温度に到達させるステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料からなる1つのコア(121)と、1つの非磁性シェル(122)とを有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップa)において、磁極の配列方向が異なる少なくとも2つのマグネットコイル(210、220)が使用され、これらのマグネットコイル(210、220)が前記2つのはんだ付けパートナー(10、20)に対して相対的に移動される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記熱伝達(300)が急激に遮断され、予め定められた最高温度を超えることが回避される、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
異なる種類の複数のはんだ付け接合部を生成するために、異なる溶融温度を有する複数の異なるはんだ(100)が1つのアセンブリ(1)内で使用される、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
1つの第1のはんだ付けパートナー(10)及び1つの第2のはんだ付けパートナー(20)を有するアセンブリ(1)であって、これらの2つのはんだ付けパートナー(10、20)が、1つの金属はんだ材料(110)とその中に埋め込まれた多数の磁性ナノ粒子(120)とを含むはんだ(100)によって接合されている、アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記複数の磁性ナノ粒子(120)が超常磁性であり、フェロ磁性又はフェリ磁性の材料を含
み、金属合金又は金属酸化物の液体であり、前記
金属合金又は金属酸化物が、鉄、コバルト及びニッケルの元素のうちの少なくとも1つを含み、前記金属合金又は前記金属酸化物のはんだ(100)全体における重量比率が1%から30%の間である、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1のはんだ付けパートナー(10)が電気回路基板である、請求項
11に記載のアセンブリ(1)。
【請求項14】
前記第2のはんだ付けパートナー(20)が電気部品又は電子
部品である、請求項
11に記載のアセンブリ(1)。
【国際調査報告】