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特表2024-537147マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物及び方法
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  • 特表-マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20241003BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G18/30 020
C08G18/32 025
C08G18/72 040
C08G18/08 038
B01J13/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520739
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2021127007
(87)【国際公開番号】W WO2023070431
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】フー、ミンビャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、リャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジグァン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェイ
【テーマコード(参考)】
4G005
4J034
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA02
4G005DA05X
4G005DA06X
4G005DC42Y
4G005DC46Y
4G005DD38Z
4J034BA06
4J034CA15
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CE01
4J034HA14
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QC04
(57)【要約】
本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物及び方法に関する。組成物は、油相成分と、水相成分と、を含み、(1)油相成分が、油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%の相変化材料と、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含み、(2)水相成分が、
-油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有する水溶性アミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である、水溶性アミン化合物と、
を含む。本方法は、有機溶媒又は界面活性剤を必要としない、強固で効率的なプロセスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物であって、前記組成物が、油相成分と、水相成分と、を含み、
(1)前記油相成分が、前記油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%の相変化材料と、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含み、
(2)前記水相成分が、
-前記油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有する水溶性アミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である、水溶性アミン化合物と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記油相成分が、前記油相成分の総重量に基づいて、
-50重量%~90重量%の相変化材料と、
-5重量%~25重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-5重量%~25重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水相成分が、
-前記油相成分の総重量の少なくとも4倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.7:1~2:1である、アミン化合物と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪族イソシアネートが、メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-ジイソシアネート、シクロヘキサン-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択され、
前記芳香族イソシアネート化合物が、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、かつ/又は
前記アミン化合物が、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン及びトリエチレンジアミン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジアミン(TDA)、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジフェニルメタンジアミン(MDA)、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、テトラメチレン-1,4-ジアミン、ヘキサメチレン-1,6-ジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-及び/又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,4-又は2,6-ジアミン-1-メチレシクロヘキサン(methylecyclohexane)、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記油相成分が、前記油相成分の総重量に基づいて、5重量%~25重量%の無機充填剤を更に含み、前記無機充填剤が、CaCO、タルク、マイカ、SiO、TiO、カオリン、石炭脈石粉末、セピオライト粉末、アタパルジャイト粉末、モンモリロナイト、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、界面活性剤、安定剤、有機溶媒及び乳化剤を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法であって、
(1)少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネート及び少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートの混合物を相変化材料とブレンドして、油相成分を形成し、前記油相成分が、前記油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%の相変化材料と、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含む、ブレンドすることと、
(2)少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物を水に溶解させて、水相成分を形成し、前記水相成分が、
-前記油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である、アミン化合物と、
を含む、溶解させることと、
(3)撹拌下で、前記油相成分を前記水相成分に添加して、マイクロカプセル化された相変化材料の分散液を形成することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記油相成分が、前記油相成分の総重量に基づいて、
-50重量%~90重量%の相変化材料と、
-5重量%~25重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-5重量%~25重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水相成分が、
-前記油相成分の総重量の少なくとも4倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.7:1~2:1である、アミン化合物と、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪族イソシアネートが、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-ジイソシアネート、シクロヘキサン-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択され、
前記芳香族イソシアネート化合物が、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、かつ/又は
前記アミン化合物が、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン及びトリエチレンジアミン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジアミン(TDA)、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジフェニルメタンジアミン(MDA)、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、テトラメチレン-1,4-ジアミン、ヘキサメチレン-1,6-ジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-及び/又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,4-又は2,6-ジアミン-1-メチレシクロヘキサン(methylecyclohexane)、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(1)が、前記油相成分が前記油相成分の総重量に基づいて5重量%~25重量%の無機充填剤を更に含むように、前記混合物、相変化材料を無機充填剤とブレンドすることを更に含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(3)が、前記油相成分の総重量に基づいて5重量%~25重量%の量で無機充填剤を添加することを更に含み、前記無機充填剤が、CaCO、タルク、マイカ、SiO、TiO、カオリン、石炭脈石粉末、セピオライト粉末、アタパルジャイト粉末、モンモリロナイト、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、界面活性剤、安定剤、有機溶媒及び乳化剤を含まない、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、ステップ(3)の後に、前記分散液を濾過してマイクロカプセル化された相変化材料粉末を提供するステップ(4)を更に含み、前記ステップ(4)は濾液も生成する、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、ステップ(4)の後に、前記濾液をステップ(3)に再循環することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物及び方法に関する。本方法は、溶媒又は界面活性剤を必要としない、強固で効率的なプロセスである。
【背景技術】
【0002】
相変化材料(phase change material、PCM)は広く研究されており、様々な種類の用途で使用されている。建築システムにおいて、多くの研究が、エネルギー消費を減少させるPCMの性能を証明してきた。固-液PCMは、最も一般的に使用される材料であり、広く研究されている。固-液PCMは、熱を吸収した後に溶融するため、漏れを防ぐために建築構造物に適用される前にカプセル化しておくことが必要である。一般に、PCMは、含浸法、マルコカプセル化(marco-encapsulation)法及びマイクロカプセル化法によって安定化させることができる。2つの主な特徴は、それらの安定化及び熱伝達率である。十分にカプセル化されたPCMは、優れた安定性及び高い熱伝達率を有するはずである。
【0003】
含浸法は、多孔質マトリックスを使用してPCMを吸収する方法である。溶融及び凝固サイクル中に、依然として漏れの危険性がある。通常、有機PCMは、より低い熱伝達率を示す。したがって、含浸される材料の熱伝達率は、マトリックス骨格の熱伝導率に大きく依存する。マクロカプセル化(1mm未満)も簡単で安価な方法である。しかしながら、熱伝達率は通常低い。シミュレーション作業は、ワックスの50mmマクロカプセルを溶融するのに169.2分もかかることを明らかにした。コア部分は固体のままに保たれる場合があるが、エッジ部分は溶融して液体形態になり、したがって有効な熱伝達を妨げる。マイクロカプセル化(1~1000μm)は、その大きな表面積のために、高い熱伝達率を得るための効果的な方法であることが証明されている。シミュレーションによれば、カプセルの直径が500μmである場合、2.2秒しか必要とされなかった。
【0004】
PCMマイクロカプセルを調製するために、ここ数十年で様々な種類のカプセル化方法が開発された。系中重合、界面重合及び乳化重合が3つの主な方法である。界面重合の間、有機PCMはイソシアネートと共に界面活性剤によって水相中に乳化される。時には、溶媒を油相に添加する。アルコール又はアミンなどの硬化剤をゆっくり添加してNCO基と反応させ、ポリ尿素又はポリウレタンシェルを得る。
【0005】
しかしながら、界面重合は、注意深く制御された重合パラメータ、例えば撹拌速度及び硬化剤添加速度を必要とする。更に、相変化材料は、通常、優先的に迅速に反応して安定なシェルを形成する反応性芳香族イソシアネートと不混和性であるため、多くの場合、溶媒の使用が必要とされる。有機PCMへの他のイソシアネートの溶解を助けるために、溶媒を添加してもよい。規制、環境、及びプロセス効率の理由から、溶媒は好ましくない。溶媒を除去する別の重要かつあまり明白でない理由は、系を濾過してマイクロカプセル粉末を回収しなければならない場合の廃水処理の考慮事項である。そのような溶媒を含有しない反応器システムは、カプセル化された材料の容易な分離と、反応器流出水の容易な再利用との両方を可能にする。水性界面活性剤又はコロイド安定剤は、マイクロカプセルが所望の粒径を維持することを確実にするために濃度を監視し、修正する必要があるので、反応器流出液を再循環するプロセスでは好ましくない場合がある。
【0006】
したがって、上述の欠点を克服し、PCMマイクロカプセル、環境規制及びプロセス効率に関する全ての要件を満たすことができる、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための独自の方法に対する緊急の要求が依然として存在する。
【0007】
持続的な調査の後、本願発明者らは、驚くべきことに、PCMマイクロカプセルの製造における上記の欠点を解決することができる特別に設計された配合物を使用することによって、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための独特な組成物を開発した。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための固有の組成物、及びこの組成物を使用してマイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法を提供する。
【0009】
本開示の第1の態様では、本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物であって、組成物が、油相成分と、水相成分と、を含み、
(1)油相成分が、油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%の相変化材料と、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含み、
(2)水相成分が、
-油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有する水溶性アミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である、水溶性アミン化合物と、
を含む、組成物を提供する。
【0010】
本開示の第2の態様では、本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物であって、油相成分が、油相成分の総重量に基づいて、5重量%~25重量%の無機充填剤を更に含む、組成物を提供する。
【0011】
本開示の第3の態様では、本開示は、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法であって、
(1)少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネート及び少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートの混合物を相変化材料とブレンドして、油相成分を形成し、油相成分が、油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%の相変化材料と、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートと、
-0.5重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートと、
を含む、ブレンドすることと、
(2)少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物を水に溶解させて、水相成分を形成し、水相成分が、
-油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-少なくとも2つのNH-官能基を有する水溶性アミン化合物であって、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である、水溶性アミン化合物と、
を含む、溶解させることと、
(3)撹拌下で、油相成分を水相成分に添加して、マイクロカプセル化された相変化材料を形成することと、を含む、方法を提供する。
【0012】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示における比較例の光学顕微鏡写真である。
図2】本開示における本発明の実施例の光学顕微鏡写真である。
図3】本開示の本発明の実施例1の室温での光学顕微鏡写真(a)、室温での偏向顕微鏡写真(b)、及び50℃での偏向顕微鏡写真(c)である。
図4】本開示における20回の固化-融解サイクルのDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0015】
本明細書で開示される場合、「及び/又は」は、「及び、又は代替として」又は「加えて、又は代替的に」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0016】
本開示のある実施形態では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物は、油相成分及び水相成分を含む(すなわち、2成分系)。油相成分は、油相成分の総重量に基づいて、40重量%~99重量%、40重量%~90重量%、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、40重量%~60重量%、40重量%~50重量%、50重量%~99重量%、50重量%~90重量%、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、50重量%~60重量%、60重量%~99重量%、60重量%~90重量%、60重量%~80重量%、60重量%~70重量%、70重量%~99重量%、470重量%~90重量%、70重量%~80重量%、80重量%~99重量%、80重量%~90重量%、又は90重量%~99重量%の相変化材料を含む。油相成分は、油相成分の総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、0.5重量%~25重量%、0.5重量%~20重量%、0.5重量%~15重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、5重量%~30重量%、5重量%~25重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~30重量%、10重量%~25重量%、1.0重量%~20重量%、1.0重量%~15重量%、15重量%~30重量%、15重量%~25重量%、15重量%~20重量%、20重量%~30重量%、20重量%~25重量%、又は25重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートを含む。油相成分は、油相成分の総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、0.5重量%~25重量%、0.5重量%~20重量%、0.5重量%~15重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、5重量%~30重量%、5重量%~25重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~30重量%、10重量%~25重量%、1.0重量%~20重量%、1.0重量%~15重量%、15重量%~30重量%、15重量%~25重量%、15重量%~20重量%、20重量%~30重量%、20重量%~25重量%、又は25重量%~30重量%の少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートを含む。
【0017】
本開示のある実施形態では、水相成分は、油相成分の総重量の少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍の量の水を含む。また、少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物は、0.5:1~3:1、0.5:1~2:1、0.5:1~1:1、0.5:1~0.7:1、0.7:1~3:1、0.7:1~2:1、0.7:1~1:1、1:1~3:1、1:1~2:1、又は2:1~3:1であるNCO-に対するNH-のモル比で使用される。
【0018】
本開示のある実施形態では、相変化材料は、有機PCM又は共晶PCMを含んでもよい。相変化材料の例は、パラフィン炭化水素(例えば、C14~C45パラフィン炭化水素、例えば、パラフィンワックス、C14、C18、C22~C45炭化水素、例えば、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン)、カルボン酸エステル(例えば、脂肪酸エステル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ベヘン酸メチル及びベヘン酸エチル)、カルボン酸(例えば、脂肪酸、カプリン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸)、ポリアルコール(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG))などを含む。
【0019】
本開示のある実施形態では、少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、並びにその二量体及び三量体、C2~C8アルキレンジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、1,12-ドデカンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、並びにその二量体及び三量体、例えば、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexyl methane diisocyanate、HMDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、及び1,3-ビス-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;芳香族ジイソシアネート、並びにその二量体及び三量体、例えば、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(diphenyl methane diisocyanate、MDI)が挙げられる。好ましくは、脂肪族イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物、イソホロンジイソシアネートホモポリマー、イソホロンジイソシアネート付加物、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネートは、メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-ジイソシアネート、シクロヘキサン-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0020】
本開示のある実施形態では、芳香族イソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート(NCO-)基を有するC~C15芳香族イソシアネート化合物である。C~C15芳香族イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(naphthalene diisocyanate、NDI)、フェニレンジイソシアネート、それらの任意の異性体及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。MDIの異性体は、4,4’-MDI、2,4’-MDI、2,2’-MDIなどを含む。TDIの異性体は、2,3-TDI、2,4-TDI、2,5-TDI、2,6-TDI、3,4-TDI、3,5-TDIなどを含む。NDIの異性体は、1,5-NDI、1,2-NDI、1,3-NDI、1,4-NDI、1,6-NDI、1,7-NDI、1,8-NDI、2,3-NDI、2,6-NDI、2,7-NDIなどを含む。フェニレンジイソシアネートの異性体は、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどを含む。芳香族イソシアネート化合物は、上に示される異性体のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。本発明のある実施例によれば、芳香族イソシアネート化合物はMDIであり、例えば、4,4’-MDIと2,4’-MDIとの混合物であり、具体的には、50~99重量%の4,4’-MDIと1~50重量%の2,4’-MDIとの混合物、又は98重量%の4,4’-MDIと2重量%の2,4’-MDIとの混合物である。好ましくは、芳香族イソシアネート化合物は、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
本開示のある実施形態では、アミン化合物は、水溶性であり、少なくとも2つのNH-官能基を有し、一級アミノ基が芳香環の炭素原子に直接的に結合している芳香族ポリアミンを含む。そのような芳香族ポリアミンの例としては、2,4-及び/若しくは2,6-トルエンジアミン(toluene diamine、TDA)、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジフェニルメタンジアミン(methane diamine、MDA)、又はそれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。少なくとも2つのNH-官能基を有する水溶性アミン化合物としては、水素化MDA、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミンを挙げることができる。アミン化合物は水溶性であり、少なくとも2つのNH-官能基を有し、これは脂肪族ポリアミン、例えばテトラメチレン-1,4-ジアミン、ヘキサメチレン-1,6-ジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-及び/又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,4-又は2,6-ジアミン-1-メチレシクロヘキサン(methylecyclohexane)を挙げることができる。好ましくは、アミン化合物は、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine、DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン(ethylenediamine、EDA)、プロピレンジアミン及びトリエチレンジアミン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジアミン(TDA)、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジフェニルメタンジアミン(MDA)、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、テトラメチレン-1,4-ジアミン、ヘキサメチレン-1,6-ジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-及び/又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,4-又は2,6-ジアミン-1-メチレシクロヘキサン(methylecyclohexane)、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
本開示のある実施形態では、油相成分は、油相成分の総重量に基づいて、5重量%~25重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~25重量%、10重量%~20重量%、10重量%~15重量%、15重量%~25重量%、15重量%~20重量%、又は20重量%~25重量%の無機充填剤を更に含む。例示的な無機充填剤としては、限定されないが、白亜、方解石及び大理石を含む天然炭酸カルシウム、合成炭酸塩、マグネシウム及びカルシウムの塩、ドロマイト、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、石灰、マグネシア、硫酸バリウム、重晶石、硫酸カルシウム、シリカ、ケイ酸マグネシウム、タルク、珪灰石、粘土及びケイ酸アルミニウム、カオリン、マイカ、金属又はアルカリ土類の酸化物又は水酸化物、水酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、ガラス又は炭素繊維若しくは粉末、あるいはこれらの化合物の粉末又は混合物が挙げられる。好ましくは、無機充填剤は、CaCO、タルク、マイカ、SiO、TiO、カオリン、石炭脈石粉末、セピオライト粉末、アタパルジャイト粉末、モンモリロナイト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
本開示のある実施形態では、組成物に界面活性剤を添加する必要がないので、乳化プロセスが存在しない。硬化剤としてのアミン化合物を最初に添加し、水相に溶解する。次いで、油相成分を水相成分に添加する。添加中、油相成分中のイソシアネートは、硬化剤と迅速に反応して薄い皮膜を形成し、マイクロカプセルの形状を維持する。油相分散及びシェル形成は、ほぼ同時に起こる。このプロセスは、明快で強固である。マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための組成物は、任意の界面活性剤(例えば、サルフェート界面活性剤、スルホネート界面活性剤、非イオン性界面活性剤など)、安定剤、有機溶媒及び乳化剤(例えば、スチレン無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル(OP-10)など)を実質的に含まない。一般に、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤が挙げられ、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)α-スルホ-ω(ノニルフェノキシ)塩などのエトキシ化フェノールの硫酸塩;アルカリ金属オレイン酸塩及びステアリン酸塩などのアルカリ金属脂肪酸塩;アルカリ金属C12~C16アルキルスルフェート、例えばアルカリ金属ラウリルスルフェート;アミンC12~C16アルキルスルフェート、例えば、アミンラウリルスルフェート、又はトリエタノールアミンラウリルスルフェート;アルカリ金属C12~C16アルキルベンゼンスルホネート、例えば、分岐及び直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;トリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホネートなどのアミンC12~C16アルキルベンゼンスルホネート;フッ素化C~C16アルキルエステル及びアルカリ金属C~C16ペルフルオロアルキルスルホネートなどのアニオン性及び非イオン性フルオロカーボン乳化剤;有機ケイ素乳化剤、例えば変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0024】
本発明のある実施形態では、マイクロカプセル構造は、コア-シェル構造、シングルシェル構造、マルチシェル構造、シングルキャビティ-シングルコア構造、シングルキャビティ-マルチコア構造、マルチキャビティ-マルチコア構造、多孔質構造、骨格構造及び三次元ネットワーク構造のうちの1つ又は組み合わせを含む。
【0025】
本開示では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための典型的な組成物であって、組成物が、油相成分と、水相成分と、を含み、
(1)油相成分が、油相成分の総重量に基づいて、
-40重量%~99重量%のパラフィンワックスと、
-0.5重量%~30重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び/又はジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)と、
-0.5重量%~30重量%のポリメチレンポリフェニルイソシアネートと、
-5重量%~25重量%のCaCO及び/又はタルクと、
を含み、
(2)水相成分が、
-油相成分の総重量の少なくとも3倍の量の水と、
-ジエチレントリアミン(DETA)(ここで、NCO-に対するNH-のモル比が0.5:1~3:1である)と、
を含む、組成物。
【0026】
本開示のある実施形態では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法であって、
(1)少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネート及び少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートの混合物を相変化材料とブレンドして、油相成分を形成することと、
(2)少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物を水に溶解させて、水相成分を形成することと、
(3)撹拌下で、油相成分を水相成分に添加して、マイクロカプセル化された相変化材料の分散液を形成することと、を含む、方法。
【0027】
本開示の更なる実施形態では、ステップ(1)は、少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネート及び少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートの混合物、及び相変化材料と無機充填剤とをブレンドすることを更に含む。本開示の代替的な実施形態では、ステップ(3)は、無機充填剤を、油相成分とは別に、又は油相成分と共に、水相成分に添加することを更に含む。
【0028】
本開示の更なる実施形態では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法は、ステップ(3)の後に、分散液を濾過してマイクロカプセル化された相変化材料粉末を提供するステップ(4)を更に含み、ステップ(4)は濾液も生成する。
【0029】
本開示の更なる実施形態では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための方法は、ステップ(4)の後に、濾液をステップ(3)に再循環することを更に含む。
【0030】
本開示では、マイクロカプセル化された相変化材料を調製するための典型的な方法は、
1)少なくとも2つのNCO-官能基を有する脂肪族イソシアネート及び少なくとも2つのNCO-官能基を有する芳香族イソシアネートの混合物とパラフィンワックス及び無機充填剤(例えば、ケーキング防止剤、例えば、CaCO及び/又はタルク)とをブレンドして、油相を形成することと、
2)少なくとも2つのNH-官能基を有するアミン化合物(硬化剤として)を水に溶解して、水相を提供することと、
3)撹拌しながら油相を水相に注ぎ、代替的な方法では、界面活性剤、コロイド安定剤及び内部安定剤(DMPAなど)を使用しないことと、
4)3)で得られた混合物を数時間(例えば、8時間)硬化させて、マイクロカプセル分散液を提供することと、
5)分散液を濾過して、マイクロカプセル粉末及び濾液を形成することと、
6)濾液を重合のために3)に再循環させることと、を含む。
【0031】
本開示は、有機PCMマイクロカプセルを得るための実現可能なマイクロカプセル化方法を提供する。この方法は、以下の利点を有する。
a)強固で効率的なプロセス、
b)溶媒又は界面活性剤を使用しない、
c)濾液は再利用可能である、及び
d)シェルの厚さは、コストと漏れ防止のバランスをとるように制御可能である。
【実施例
【0032】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、全ての部及びパーセンテージは、他に特定されない限り、重量による。
【0033】
実施例で使用された原材料の情報を以下の表1に列挙する。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明の実施例1~5及び比較例1~4
以下の本発明の実施例(Inventive Example、IE)1~5及び比較例(Comparative Example、CE)1~4において、マイクロカプセル化された相変化材料を、表2に記載の組成物及びプロセスに従って調製した。
【0036】
A.油相の調製
IE1~4及びCE1~4では、ワックスを約50℃まで加熱して、高温液体ワックスを得た。脂肪族及び芳香族イソシアネート混合物並びに充填剤(存在する場合)を、表2に記載の組成物に従って高温液体ワックスに添加した。
【0037】
IE5では、ワックスを約50℃まで加熱して、高温液体ワックスを得た。脂肪族及び芳香族イソシアネート混合物を、表2に記載の組成物に従って高温液体ワックスに添加した。
【0038】
B.水相の調製
IE1~5及びCE1~4では、水を約50℃まで加熱して、次いで表2に記載の組成物に従って硬化剤を添加した。
【0039】
C.油相と水相との混合
IE1~5及びCE1~4では、約500rpmで撹拌しながら高温油相を水相に注いだ。
【0040】
D.界面重合による硬化
IE1~4及びCE1~4では、脂肪族及び芳香族イソシアネート混合物を、約50℃で6時間の界面重合を介して硬化剤で硬化させて、マイクロカプセル化された相変化材料の分散液を得た。
【0041】
IE5では、脂肪族及び芳香族イソシアネート混合物を、約50℃で6時間の界面重合を介して硬化剤で硬化させて、マイクロカプセル化された相変化材料の分散液を得た。6時間の界面重合後、800メッシュのマイカ粉末10gを添加した。
【0042】
E.分散液の濾過
マイクロカプセル化された相変化材料(IE1~4)又はマイクロカプセル凝集物(CE3~4)の分散液を濾過して、マイクロカプセル粉末を得た。
【0043】
【表2】
【0044】
試験及び評価
IE1~5及びCE1~4で得られたマイクロカプセル化された相変化材料の形態を光学顕微鏡で調べた。IE1~5及びCE1~4では、硬化後のPCM分散液の液滴をとってガラススライド上に置いた。次いで、分散液の液滴を室温で乾燥させた後、観察のために光学顕微鏡下に置いた。
【0045】
図1は、比較例CE1~4の光学顕微鏡写真を示す。図2は、本発明の実施例IE1~5の光学顕微鏡写真を示す。図3(a)は、IE1の室温での光学顕微鏡写真を示す。図3(b)は、IE1の室温での偏光顕微鏡写真を示す。図3(c)は、IE1の50℃(c)での偏光顕微鏡写真を示す。図4は、20回の固化-融解サイクルのDSC曲線を示す。
【0046】
図1のCE1を図2のIE1と比較すると、水相がアミン硬化剤を含有しない場合、マイクロカプセルを得ることができないことが分かる。CE1中のイソシアネート混合物を水と反応させたが、反応速度は、温度を約50℃まで上げても、マイクロカプセルを保護するための固体シェルを形成するほど十分に速くない。水相中のアミンは、油相が水相中に分散されたときにイソシアネートと直ちに反応して固体シェルを形成するための必須成分である。
【0047】
油相が充填剤を含有しない場合(図1のCE2)、マイクロカプセルを形成することもできる。しかしながら、分散液は反応後に濃厚になり、このことは、水相中のイソシアネートとアミン又は水との間の反応からのポリマーが分散液を濃厚にすることを意味する。更に、得られたマイクロカプセルは、その弱いシェルに起因して、濾過することができない。添加される無機充填剤は、マイクロカプセル表面へのポリウレアポリマーの沈降を助けるだけでなく、濾過されたマイクロカプセルのケーキングを防止するのにも重要な役割を果たす。異なる種類の無機充填剤、例えばCaCO、雲母粉末、タルカム粉末などを使用することができる。
【0048】
IPDI、HMDI及びHDIなどの脂肪族イソシアネートは、ワックス液体と混和性であるが、芳香族イソシアネートは、通常、ワックス液体への溶解度が比較的低い。したがって、脂肪族及び芳香族イソシアネートの混合物を使用して、溶解度、反応速度及び架橋密度のバランスをとった。これらの組成物を用いてマイクロカプセルを得て、図2に示した。マイクロカプセルのサイズは、1~200mmの範囲である。
【0049】
IPDIを使用してマイクロカプセルを作製した。生成物の形態を図1のCE3に示す。マイクロカプセル凝集体のみを得ることができる。これは、形成された親水性のIPDI-DETAプレポリマーが水相中に拡散し、微小液滴同士が凝集したためであると考えられる。PAPI27もまた、図1のCE4に示されるような生成物の形態で使用した。ワックス液体への溶解度が低く、反応速度が速すぎるため、マイクロカプセルの凝集も起こった。
【0050】
図2のIE1~3は、以下のことを示す。
-脂肪族イソシアネート及び芳香族イソシアネートの混合物は、溶解度と反応速度とをうまくバランスさせて、マイクロカプセルの凝集ではなく、マイクロカプセルを生成することができる(図1のCE3~4に対する図2のIE1~3)。
-水相中のアミン硬化剤が必須成分である(図1のCE1に対する図2のIE1~3)。
-無機充填剤の助け及び補強により、マイクロカプセルを濾過して粉末又はスラリーを形成することができる(図1のCE2に対する図2のIE1~3)。
-異なる種類の充填剤を使用することができる(図1のIE2に対する図2のIE1)。
-異なる融点を有するPCMを使用することができる(図1のIE3に対する図2のIE1及びIE2)。
【0051】
図2のIE4に示されるように、マイクロカプセル化されたPCMを調製する本発明の方法が環境に優しいように、濾液を再循環させて水相中で使用することができる。IE5に示されるように、充填剤ケーキ防止助剤は、反応後に添加されてもよく、これは、製造プロセスにおいてより多くの寛容度を提供し得る。
【0052】
得られたマイクロカプセルは、図3に示すように、良好な固化-溶融安定性を達成することができる。図3(a)は、室温での図2のIE1の光学顕微鏡写真を示す。ワックスが結晶相である場合、図3(b)に示すように、偏光顕微鏡下で明るい結晶ドメインを示す。マイクロカプセル中のワックスが加熱後に溶融すると、図3cに示すように、明るい結晶ドメインが消失する。安定性は、DSC試験によっても証明される。図2のIE3に示すように、マイクロカプセルの20サイクルの加熱及び冷却の後、図4に示すように、潜熱低下は起こらない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】