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特表2024-537157シクロデキストリンとの可溶性複合体を形成することにより、水性液滴中で蛍光性生成物の液滴間移動を防止する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シクロデキストリンとの可溶性複合体を形成することにより、水性液滴中で蛍光性生成物の液滴間移動を防止する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520778
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022077648
(87)【国際公開番号】W WO2023060158
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,953
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520489282
【氏名又は名称】パターン バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ロス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QR66
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
エマルションに懸濁した水性液滴内で、蛍光性分子を保持する方法は、水溶液中で、複数の生細胞と、複数の蛍光性分子と、複数のシクロデキストリン分子とを組み合わせることを含む。方法は、水溶液を疎水性流体で乳化させて、水性液滴を形成することもまた含む。水性液滴の少なくとも1つは、(i)複数の生細胞の均質なアグリゲート中に、単一の生細胞または単一の細胞種、(ii)前記複数の蛍光性分子の、少なくとも1つの蛍光性分子、及び、(iii)複数のシクロデキストリン分子の、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションに懸濁した水性液滴内で、蛍光性分子を保持する方法であって、前記方法は、
複数の生細胞と、複数の蛍光性分子と、複数のシクロデキストリン分子と、を水溶液中で組み合わせることと、
前記水溶液を疎水性流体で乳化させて、前記水性液滴を形成することと、
を含み、
前記水性液滴の少なくとも1つは、(i)前記複数の生細胞の均質なアグリゲート中に、単一の生細胞または単一の細胞種、(ii)前記複数の蛍光性分子の、少なくとも1つの蛍光性分子、及び、(iii)前記複数のシクロデキストリン分子の、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記複数の生細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の生細胞は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの少なくとも1つの生細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の生細胞は、ヒト細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性流体は、油を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記油は、フルオロカーボン油である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シクロデキストリン分子は、α-シクロデキストリン分子、β-シクロデキストリン分子、またはγ-シクロデキストリン分子である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光性分子及び前記シクロデキストリン分子は、前記生細胞の生存能、または代謝活性を妨害しない、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組み合わせること、及び前記乳化は、40℃以下の温度で実施される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液中で界面活性剤を組み合わせることをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤はフルオロ界面活性剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
疎水性流体に懸濁した複数の水性液滴を含むエマルションであって、前記水性液滴のうちの少なくとも1つは、
均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種;
少なくとも1つの蛍光性分子;及び
少なくとも1つのシクロデキストリン分子
を含む、前記エマルション。
【請求項16】
均質なアグリゲート中の、前記単一の生細胞または前記単一の細胞種は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの1つを含む、請求項15に記載のエマルション。
【請求項17】
均質なアグリゲート中の、前記単一の生細胞または前記単一の細胞種は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの1つを含む、請求項15または16に記載のエマルション。
【請求項18】
均質なアグリゲート中の、前記単一の生細胞または前記単一の細胞種は、ヒト細胞を含む、請求項15または16に記載のエマルション。
【請求項19】
前記ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する、請求項18に記載のエマルション。
【請求項20】
前記疎水性流体は、油を含む、請求項15~19のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項21】
前記油は、フルオロカーボン油である、請求項20に記載のエマルション。
【請求項22】
前記蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である、請求項15~21のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項23】
前記疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である、請求項22に記載のエマルション。
【請求項24】
前記少なくとも1つのシクロデキストリン分子は、少なくとも1つのα-シクロデキストリン分子、少なくとも1つのβ-シクロデキストリン分子、または少なくとも1つのγ-シクロデキストリン分子である、請求項15~23のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項25】
前記蛍光性分子及び前記シクロデキストリン分子は、(i)均質なアグリゲート中の、前記単一の生細胞または前記単一の細胞種と生体適合性であり、かつ、(ii)均質なアグリゲート中の、前記単一の生細胞または前記単一の細胞種の代謝活性を妨害しない、請求項15~24のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項26】
前記水性液滴の前記少なくとも1つは、界面活性剤をさらに含む、請求項15~25のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項27】
前記界面活性剤はフルオロ界面活性剤である、請求項26に記載のエマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に合わせた方法及び生成物は概して、細胞生物学、微生物学、及びマイクロ流体力学に関する。より具体的には、本開示に合わせた方法及び生成物は、液滴中での蛍光強度を改善すること、及び、アレイの液滴間での蛍光分子の漏洩を低減させることに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な場合において、疾患を引き起こす細胞(DCC)は、従来の分析技術の検出下限を下回る量で発見される。したがって、DCCを特定し、処置に対するこれらの応答を特性決定する方法は、典型的には、用途に応じた、標的細胞の増殖、及び/または、標的細胞の分子内容物及び/または生成物の、標的に依存した増幅のいずれかを必要とする。
【0003】
他の技術と比較した、それらの高い感度により、核酸増幅(例えば、PCRベースの)試験(NAT)が、速い病原体特定のための好ましい方法となっている。DNAは、PCRなどのNTAを用いて、数時間以内に、単一のコピーから数十億個のコピーに増幅することができる。
【0004】
NATは、通常、細胞溶解、続いて、試料からPCR阻害剤もまた取り除く、核酸濃縮ステップを含む、複雑な試料ワークフローステップを必要とする。細胞溶解により、核酸抽出効率の要件において、非対称性が生じる。マイコバクテリア及び真菌は、例えば、グラム陰性細菌と比較して、非常に厚い細胞壁を有し、故に、通常、細胞壁を効率的に破壊するための、機械的溶解ステップを必要とし、溶解がより一層困難である。結果的に、単純な化学的溶解法を利用するNATは多くの場合、これらの手強い病原体に対する感度を欠いている。さらに、試薬がタンパク質を変性させ、PCRが、タンパク質を利用して増幅反応を実施するため、細胞溶解試薬は、PCR反応を阻害する可能性がある。したがって、細胞溶解では、抽出した核酸から、溶解試薬を取り除くための、非常に効率的な洗浄ステップが必要となる。さらに、NATは、各標的に対して特異的に設計される必要がある、病原体特異的なレポーター分子(プライマー及びプローブ)に依存するため、高価なアッセイ開発方法を必要とする。したがって、各NATは、各標的に対する、プライマー/プローブ設計、及びスクリーニングを伴う、高価な分子R&Dプロセスを含む必要がある。
【0005】
2つ以上の標的(多重化されている)を含むNATは、これらの標的を正確かつ精密に、同時に定量することができない。これは、レポーター種間での、同一の非特異的な相互作用が、PCRシグナル出力における分散を引き起こし、定量PCRは、生成した増幅曲線を初期の標的濃度と相関させるために、再現可能な反応結果に依存するためである。これにより、大部分の感染症が生じる、体の非無菌感染領域から、感染症を診断するための、多重NATの使用が制限されることから、これは、重大な制限である。体の非無菌領域において、ヒトには多くの場合、感染症を引き起こす可能性がある、同一の病原体が定着している。感染症は、体の防御を圧倒する微生物により引き起こされるため、これらは一般に、共生動物が行うよりも多くの、コロニー単離物を生成する。したがって、非無菌感染部位では、臨床試料に存在する病原体の数(病原体負荷)が、細菌種が感染症を引き起こす、または、当該部位を「穏やかに」コロニー形成するか否かを決定する。例えば、下部呼吸器系からの肺炎感染症源を確実に診断する(例えば、気管支肺胞洗浄(BAL))ために、試料に存在するあらゆる細菌に対する病原体負荷が、感染症源とみなされるには、103CFU/mLを超える必要がある。同様に、尿被検査物に対しての閾値は、105CFU/mLである。
【0006】
さらに、NATアッセイが、2つ以上のレポーター種(プライマー、及び/またはプローブ対)を必要とする、2つ以上の標的を含む場合(多重アッセイ)、異なる標的及び/またはレポーター種は、互いに非特異的に相互作用する可能性があり、レポーターが、他の試薬に対して非特異的に増幅する場合には偽陽性、または、標的増幅反応が、別の種との非特異的相互作用により阻害される場合には偽陰性のいずれかを引き起こす。結果的に、これは、単一のNATの中で特定可能な標的の数を制限する。グラム陰性細菌及びマイコバクテリアの場合、耐性を示す多くの変異(各変異が標的となる)が存在するため、これは特に、薬剤耐性の問題と関連することになる。NATは、単回試験の中で、これらの変異の小さな画分を調査することができるのみである。加えて、生体の遺伝子型に存在する遺伝子は必ずしも、表現型に寄与し得るとは限らない。したがって、遺伝子型の情報は多くの場合、病原体の表現型応答の、不正確な、または不完全な全体像を表す。メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)は、例えば、多くの場合、耐性を付与するmecA遺伝子を発現しない。したがって、感染症を引き起こす病原体が、特定の薬剤の影響を受けやすいか否かという、臨床的に重要な判定となると、NATは、薬剤耐性を付与することができる遺伝子変異の小さな画分のみを調査することができ、エピジェネティックな耐性メカニズムは全く考慮に入れることができないため、これらの試験の臨床上の妥当性は低いものである。
【0007】
NATはまた、十分理解されている遺伝耐性マーカーを調査するために組み換えられる必要がある。しかし、微生物は、抗菌性薬剤により導入される選択圧の下で、新規の耐性メカニズムを継続して進化させる。経時的に変化する情報(遺伝子型)に依存することで、微生物が新規の耐性メカニズムを進化させるにつれて、NATの精度は低くなる。本質的に変化する薬剤耐性の状況に対応するためには、新規の耐性メカニズムが調査及び理解される必要があり、新規のNATが開発される必要があり、臨床に導入するための規制ハードルをクリアする必要がある。この、費用のかかるプロセスは、数年を要する可能性がある。
【0008】
表現型の抗菌感受性試験(AST)は、処置に対して考慮されている抗菌剤に対する、表現型微生物応答を測定し、それ故、所望の臨床応答に直接変換される機能的なエンドポイントに依存するため、微生物感染症を診断するための判断基準であり続けている。表現型であるため、ASTは、耐性メカニズム全てを包含し、それ故、高い臨床上の妥当性をもたらす。
【0009】
ASTは、微生物増殖を有意に阻害するために必要な抗菌物質の最小濃度に対応する、最少阻害濃度(MIC)の測定をもたらす。異なる微生物は、所与の抗菌剤に対する、観察された応答に影響を及ぼす、異なる固有の特徴を有するため、MICのみでは、病原体が抗生物質の影響を受けやすい、または、抗生物質に耐性を有するか否かが、臨床医に知らされない。例えば、2μg/mLのオキサシリンMICは、病原体がStaphylococcus aureusである場合に、オキサシリンへの感受性を示し(それ故、オキサシリン処置に応答すし)、病原体が、Staphylococcus epidermidisである場合に、オキサシリンへの耐性を示す(それ故、処置に応答しない)。任意のAST結果を解釈するためには、病原体識別(ID)が必要である。
【0010】
複数の病原体が同一試験にて存在する場合、種間での微生物増殖を区別することができず、種の抗生物質応答を特異的に測定することができないため、ASTを正確に実施することができない。さらに、抗菌剤の選択圧の下で、資源をめぐる競合が強化され、抗菌薬そのものの影響が不明瞭となる可能性がある。大部分の細菌感染症は、細菌が常在する体の領域において生じるため、これは、特に重要である。非滅菌部位での感染症に関しては、感染部位に「平和に」存在する細菌(共生動物)から、感染症を引き起こす細菌(病原体)を識別し、分離することが重要である。これにより、使用がより簡便であり、多くの場合、微生物増殖を加速させる液体ブロス培地にて、被検査物の培養が妨げられる。代わりに、定量的または半定量的培養が必要であり、これは、プレートのいくつかの箇所において、微生物が単一種の単離されたコロニーで増殖するように、試料を、異なる濃度でペトリ皿に広げることにより達成される。プレートストリーキングにより、実験技術者が、ある特定の濃度で存在する、目視で区別可能なコロニーの数を数え、試料中の微生物が侵襲性となるか否かを判定することもまた可能となる。異なる種により形成されるコロニーは、互いに目視により区別し、数を数えることができる。実験技術者はまた、さらなる試験のために、全体が同一種で形成される病原体コロニーを手動で抽出することもできる。したがって、定量的/半定量的培養プロセスは、その後のASTに必要な、多数の細胞を産生するだけでなく、試験されている細菌が均質であり、感染症を引き起こすもの(病原体)であることもまた保証する。
【0011】
しかし、定量的/半定量的培養は、非常に主観的でありエラーが起こりやすく、どのコロニーを、後の試験で排除するか、または含めるかを判定するには、高度な熟練の技術者を必要とする。多菌性感染症は特に、困難である。多くの場合、感染病原体の1つは、選好性生体(複雑な栄養要件を有し、典型的には、特定の条件下のみで増殖する生体)、または、低速増殖生体であり、他のものは感染病原体ではない。非選好性/高速増殖生体は多くの場合、培養プレートにて、選好性/低速増殖生体を圧倒し、被検査物中で、その存在を隠してしまう。
【0012】
ASTは、処置の薬剤候補に対する評価が必要な多数の細胞を産生するための、前もっての培養増殖ステップを必要とするため、患者試料に存在する数から、ASTに必要な数にまで微生物個体群を増殖させるには、ペトリ皿で1~5日のインキュベーションが必要となる可能性があり、これは、特に、深刻な細菌感染症に対しては、効率的に抗生物質処置決定を導くには遅すぎる。
【0013】
他の方法よりも、大幅に速い所要時間(4~6時間(hr)未満)で、評価結果を生成する一方法は、マイクロ流体力学を利用することである。速度増加は、部分的には、他の方法により典型的に用いられる、ミリリットル~マイクロリットル体積よりも数桁小さい、閉じ込められた体積において可能とされる、急速なシグナル集中により達成される。
【0014】
個別の細胞または微生物は、別個の液滴または体積に分離または区画化され、定量化を、特定の細胞または微生物の存在を示すシグナルと関連する、これらの液滴または体積の数を数える、簡便なものとすることができる。特定及び特性決定に依存する特徴の1つである、経時的なシグナルの形状または変化(例えば、波形)は、定量法と直交しており、一方が他方に影響を及ぼさない。したがって、正確かつ厳密な多重化特定及び定量化が、同時に達成される。
【0015】
生細胞を、細胞試薬及び/または細胞反応物質と共に懸濁させる。懸濁液を、リアルタイムで観察可能な、ピコスケールの区画に区画化する。各区画に対して観察される変化を波形で記録し、これは、封入された細胞に関する有用な情報に分類することができる。「細胞試薬」という用語は、表現型の変動を観察するために用いられる、任意の物質、または物質の混合物を含む。細胞試薬は、細胞の代謝または表現型を変更または修正することなく、区画内の状態のインジケーターまたは検出器として機能する。細胞試薬は、生存能色素、蛍光性酵素基質、及び、発光性酵素基質を含む。「細胞反応物質」という用語は、表現型の変動を誘発するために用いられる、任意の物質、または物質の混合物-特に、分析中に直接測定されない細胞と相互作用する、任意の物質を含む。細胞反応物質は、細胞の代謝または表現型に影響を及ぼす、または、これを変更する可能性がある。細胞反応物質としては、細胞栄養素、抗菌剤、及び細胞毒性薬が挙げられる。細胞栄養素としては、培養培地、緩衝液、塩、気体(例えば、O2及びCO2)、ホルモンなどが挙げられるが、これらに限定されない。細胞栄養素としては、任意の炭水化物、糖類、ならびに、アルコール(例えば、リビトール/アドニトール、グルコース、マルトース、マンノース、パラチノース、スクロース、ガラクトース、リボース、ラフィノース、トレハロース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、ラムノース、ソルボース、ツラノース、キシロース、及び/またはメリチトース)もさらに挙げられる。細胞反応物質は、酵素阻害剤などもまた含むことができる。薬剤としては、低分子、抗菌剤、化学治療薬、細胞毒性薬、バクテリオファージ、ペプチド、ナノ粒子、CRISPR-CAS9ベースの治療薬、免疫療法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
しかし、マイクロ流体力学の文脈においては、生存能色素、蛍光性酵素基質、または発光性酵素基質などのマーカーが、隣接する液滴間でにじみ出る傾向がある場合がある。これは、生成される評価結果の精度を下げる可能性がある。
【0017】
液滴間での蛍光マーカーの移動を軽減するために、ウシ血清アルブミン(BSA)、デキストラン、またはスクロースなどのいくつかの添加剤が用いられている。しかし、BSA、デキストラン、及びスクロースなどの添加剤は、せいぜい、色素漏洩の軽減において、最低限の改善をもたらすのみである。さらに、これらの添加剤は、シグナル生成速度を遅くする傾向を有する。
【0018】
したがって、マイクロ流体アレイ中で、蛍光マーカーが液滴間を移動しないようにする追加の方法、及び、生細胞の存在下において起こる、蛍光性分子を、非蛍光性から蛍光性に、または、その逆に変換させる反応に干渉を加えることなく、このようにすることの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0019】
本開示は、エマルションに懸濁した水性液滴内で、蛍光性分子を保持する方法であって、水溶液中で、複数の生細胞と、複数の蛍光性分子と、複数のシクロデキストリン分子とを組み合わせることと、上記水溶液を疎水性流体で乳化させて、上記水性液滴を形成することと、を含み、上記水性液滴の少なくとも1つは、(i)上記複数の生細胞の均質なアグリゲート中に、単一の生細胞または単一の細胞種、(ii)上記複数の蛍光性分子の、少なくとも1つの蛍光性分子、及び、(iii)上記複数のシクロデキストリン分子の、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む、上記方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の生細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の生細胞は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの少なくとも1つの生細胞を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の生細胞は、ヒト細胞を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する。
【0024】
いくつかの実施形態では、疎水性流体は、油を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、油はフルオロカーボン油である。
【0026】
いくつかの実施形態では、蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である。
【0028】
いくつかの実施形態では、シクロデキストリン分子は、α-シクロデキストリン分子、β-シクロデキストリン分子、またはγ-シクロデキストリン分子である。
【0029】
いくつかの実施形態では、蛍光性分子及びシクロデキストリン分子は、生細胞の生存能(即ち、生き残る能力)、または代謝活性(即ち、細胞機能)を妨害しない。
【0030】
いくつかの実施形態では、組み合わせること、及び乳化は、40℃以下の温度で実施される。
【0031】
いくつかの実施形態では、方法は、水溶液中で界面活性剤を組み合わせることもまた含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はフルオロ界面活性剤である。
【0033】
本開示は、疎水性流体に懸濁した複数の水性液滴を含むエマルションもまた提供し、水性液滴の少なくとも1つは、均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種;少なくとも1つの蛍光性分子;及び、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの1つを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの1つを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種は、ヒト細胞を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する。
【0038】
いくつかの実施形態では、疎水性流体は、油を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、油はフルオロカーボン油である。
【0040】
いくつかの実施形態では、蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である。
【0041】
いくつかの実施形態では、疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である。
【0042】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシクロデキストリン分子は、少なくとも1つのα-シクロデキストリン分子、少なくとも1つのβ-シクロデキストリン分子、または少なくとも1つのγ-シクロデキストリン分子である。
【0043】
いくつかの実施形態では、蛍光性分子及びシクロデキストリン分子は、(i)均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種と生体適合性であり、かつ、(ii)均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種の代謝活性を妨害しない。
【0044】
いくつかの実施形態では、水性液滴は、界面活性剤をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はフルオロ界面活性剤である。
【0046】
本明細書で使用する場合、「試料のパーティション」または「パーティション」という用語は、試料の一部を意味する。試料は、多数のパーティション、またはサブ試料体積に仕切ることができる。各区画を、個別に、かつ、異なるまたは同様の条件下で処理、処置、操作、及び/またはインキュベートすることができる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「区画」という用語は、バルク体積(例えば、試料)の、分離した部分である、流体(例えば、液体または気体)の体積を意味する。バルク体積は、任意の好適な数の、より小さな体積または区画に区画化することができる。区画は、物理的な障壁により、または、物理的な力(例えば、表面張力、疎水性斥力など)により分離することができる。より大きな体積から生成された区画は、サイズが実質的に均一(単分散)であることができるか、または、不均一なサイズを有する(多分散である)ことができる。区画は、エマルション、マイクロ流体力学、及び、マイクロスプレー法を含む、任意の好適な様式によって生成することができる。区画の一例は、液滴である。
【0048】
本明細書で使用する場合、「液滴」という用語は、その周囲(例えば、気体、液体、表面など)と不混和性である、小体積の液体を意味する。液滴は表面に存在することができるか、または、エマルション、気体、もしくはこれらの組み合わせの連続相などの、不混和性の流体により封入されることができる。液滴は、典型的には、球状、または実質的に球状の形状であるが、非球状であってもよい。別の方法で球状の、または実質的に球状の液滴の形状を、表面への付着により、または、液滴の直径より小さい寸法を有するチャンバーを通過させる、もしくはここで収集することにより、変化させることができる。液滴は、「単純液滴」、または「複合液滴」であってよく、1つの液滴が、1つ以上の追加の、より小さい液滴を封入する。本明細書で提供する、液滴の体積、及び/または、一連の液滴の平均体積は、典型的には、約1マイクロリットル未満である、例えば、液滴体積は、約1μL、100nL、10nL、1nL、100fL、10fL、1fL(これらの間の全ての値及び範囲を含む)であることができる。本明細書で提供する、液滴の直径、及び/または、一連の液滴の平均直径は、典型的には、約1ミリメートル未満、例えば、1mm、100μm、10μm~1μm(これらの間の全ての値及び範囲を含む)である。液滴は、乳化、マイクロ流体力学などを含む任意の好適な技術により形成することができ、単分散、実質的に単分散(直径もしくは体積が5%未満しか変わらない)、または多分散であることができる。
【0049】
他の実施形態について、本出願を通して論じる。一態様に関して議論した任意の実施形態を他の態様にも同様に適用し、逆もまた同じである。本明細書に記載する各実施形態は、全ての態様に適用可能な実施形態であると理解することができる。本明細書で論じる任意の実施形態を、本開示の任意の方法または組成物に関して実装することができ、逆もまた同じであることが想到されている。さらに、組成物及びキットを用いて、本開示の方法を達成することができる。
【0050】
特許請求の範囲及び/または明細書中で用語「含む」と組み合わせて使用する場合の用語「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、同時に「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つまたは複数の」の意味とも矛盾しない。
【0051】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、その値を測定するために使用されるデバイスまたは方法に関する誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0052】
請求項における「または」という用語の使用は、代替案のみを意味することが明確に指示される場合、または代替案が相互排他的である場合を除き、「及び/または」を意味するために使用される。
【0053】
本明細書、及び特許請求の範囲(複数可)で用いられる場合、「含む(comprising)」(ならびに、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの、「含む(comprising)」の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに、「有する(have)」及び「有する(has)」などの、「有する(having)」の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに、「含む(includes)」及び「含む(include)」などの、「含む(including)」の任意の形態)、ならびに、「含有する(containing)」(ならびに、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの、「含有する(containing)」の任意の形態)という言葉は、包括的またはオープンエンドであり、追加の引用されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0054】
以下の議論、及び、特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「含む(comprising)」という用語は、オープンエンド様式で用いられ、したがって、「を含むがこれらに限定されない」を意味するように解釈されなければならない。また、「連結された」、「接続する」、「指す」という用語、及びこれらの形態は、間接的な、または直接的な接続のいずれかを意味することが意図される。したがって、第1の構成要素が第2の構成要素に接続または連結する場合、当該接続は、直接接続による、または、他の構成要素及び接続を介する、間接的な接続によるものであってよい。
【0055】
他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。しかしながら、この詳細な説明及び特定の例は、特定の実施形態を示してはいるが、本開示の趣旨及び範囲内での各種の変更及び修正は、この詳細な説明によって当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられることを理解するべきである。
【0056】
本開示に組み込まれ、本開示の一部を構成する添付図面は、本開示の様々な実施形態及び態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】記載する、急速な表現型診断及びスクリーニングの一般概念を示す。個別の細胞が区画化されているため、区画内での観察可能な変化が、封入された細胞の機能的特徴を表す。機能的な変動が認識され、用いられることで、封入された細胞が分類される。
図2】記載する方法への、図1の一般概念の組み込みを示す。生細胞を、細胞試薬及び細胞反応物質と共に懸濁させる。懸濁液を、リアルタイムで観察可能な、ピコスケールの区画に仕切る。各区画に対して観察される変化を波形で記録し、これは、封入された細胞に関する有用な情報に分類することができる。
図3】細胞懸濁液または試料の、複数の区画への分離の概略図である。
図4】左は、経時的にサンプリングされ、記録された、観察可能な区画シグナルを示す。空の区画は、経時的に、反復可能なバックグラウンドシグナルを生成する。中に細胞がある区画は、空の液滴から、または、細胞の表現型が異なる区画から生成されるものとは異なる、リアルタイム変化を生成する。右では、記録されたシグナル波形が、区画化された各細胞を、サンプリングした波形に基づき分類する分類関数、この場合は、ニューラルネットワークに導入される。
図5】パーティションまたはサブ試料内で、個別の区画から表現型の波形をサンプリングして記録すること、及び、記録された波形を、分類のために深層ニューラルネットワークに導入することの、基本的な実施形態を示す。下は、上述した基本的な実施形態の概略図である。
図6】Aは、所与の試料に対する表現型の変動を増加させるため、または、異なる細胞型の栄養素の必要性を考慮するために、それぞれが独自の反応物質混合物を含む、複数のパーティションまたはサブ試料を利用する一実施形態の概略図である。本実施形態は、以下でより詳細に記載するように、試薬非含有であることができる。Bは、Aと同様の実施形態の概略図であるが、細胞試薬が含まれている。Cは、同一の細胞反応物質を分かち合うが、異なる細胞試薬を含むパーティションを含む実施形態の概略図である。
図7】A~Cは、1つ以上のパーティションにまたがる、細胞反応物質と細胞試薬の組み合わせを含む方法を示す概略図である。
図8】Aは、細胞反応物質が、異なる栄養素ミックスであり、単一細胞試薬が用いられる、図6Bの実施形態を概略的に示す。Bは、細胞反応物質が栄養素ミックスであり、細胞試薬が、生存能色素、蛍光性基質、及び発光性基質の異なる組み合わせである、図7Bの実施形態を概略的に示す。
図9】細胞種上での、細胞反応物質の影響を評価するための診断試験の概略図である。試験試薬(TR)は、試験用試料(TS)にのみ存在し、他は対照試料(CS)パーティションと同一である。N1は、完全波形を、スパース表現に圧縮するエンコーダーであり、スパース表現はその後、CLにより分類される。キャラクタライザー(CH)は、例えば、各区画の平均強度などの、両方の集団の全体統計を含有する。N2は、CLでの分類された波形、ならびに、TS及びCSの両方に対する、CHでの集団統計を用い、臨床エンドポイントを演算する。
図10図9の試験反応物質が薬剤である実施形態の概略図である。ここで、N2は、CLでの分類された波形、及び、CHでの集団統計を利用して、試験されている細胞と相互作用する薬剤の処方と関連する、臨床エンドポイントを演算する。機械学習を用いて、ニューラルネットワークN2は、任意の臨床エンドポイントに合わせてトレーニングを受けることができる。
図11】対照及び試験パーティション、またはサブ試料波形の両方を、同一のN1、CH、及びCLに供給することができるが、得られる統計は、プレディクターニューラルネットワークの別個の入力ノードに供給され、CS及びTSに存在する変動を詳細に比較することが可能になることを示す。
図12】複数の薬剤に対する、図10で記載する実施形態の例の概略図である。
図13】最も正確かつ包括的な診断及び予後に到達するために、他の実験室用結果、患者情報、及びコミュニティ情報と組み合わせた試料パーティション統計を用いる機械学習を用いる、診断方法を示す。
図14】カメラによりイメージングされている液滴単層の図、及び、液滴単層の上面図である。液滴単層は、良好な熱伝導率及び温度制御をもたらす。
図15】液滴生成のために剪断応力を用いること、または、液滴生成のためにラプラス圧勾配を用いることを示す。
図16】液滴単層内の、単離された細菌の可視化を示す。
図17】液滴アレイからの複数の波形を含む、S.aureusとK.pneumoniaeとの間での、固有の波形特性を示す。波形ははっきりと区別することができる。
図18】様々な細菌種を表す波形を示す。
図19】抗生物質含有、及び非含有の、0~2時間のS.aureusのタイムラプス画像を示す。
図20】病原体特定研究からの結果の例を示す。
図21】当初、単一のKlebsiella pneumoniae細菌を含有した、80μmの液滴の、40x顕微鏡画像である。37℃で12時間を超えてインキュベーションした後、液滴中での細菌の増殖はほぼ全体にわたって、液滴を通る光の透過を遮断する。
図22】エマルションに懸濁した水性液滴内で、蛍光性分子を保持する方法を示すフローチャートである。
図23A】Klebsiella pneumoniaeの存在下で、シクロデキストリンを添加した、及び添加しない際の、液滴の蛍光強度を示すグラフである。
図23B】シクロデキストリンを添加せずにKlebsiella pneumoniaeを用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図23C】シクロデキストリンを添加してKlebsiella pneumoniaeを用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図24A】Escherichia coliの存在下で、シクロデキストリンを添加した、及び添加しない際の、液滴の蛍光強度を示すグラフである。
図24B】シクロデキストリンを添加せずにEscherichia coliを用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図24C】シクロデキストリンを添加してEscherichia coliを用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図25A】Serratia marcescensの第1の株の存在下で、シクロデキストリンを添加した、及び添加しない際の、液滴の蛍光強度を示すグラフである。
図25B】シクロデキストリンを添加せずにSerratia marcescensの第1の株を用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図25C】シクロデキストリンを添加してSerratia marcescensの第1の株を用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図26A】Serratia marcescensの第2の株の存在下で、シクロデキストリンを添加した、及び添加しない際の、液滴の蛍光強度を示すグラフである。
図26B】シクロデキストリンを添加せずにSerratia marcescensの第2の株を用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
図26C】シクロデキストリンを添加してSerratia marcescensの第2の株を用いる液滴アレイの顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下の議論は、本発明の様々な実施形態に関する。「発明」という用語は、任意の特定の実施形態を意味する、または別の方法で、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。これらの実施形態の1つ以上が好ましい場合があるが、開示される実施形態は、特許請求の範囲を含む、本開示の範囲を限定するものとして解釈されてはならない、または、別の方法で用いられてはならない。さらに、当業者は、以下の記載は広範囲への適用を有し、任意の実施形態についての議論は、当該実施形態の例を意味するのみであり、特許請求の範囲を含む本開示の範囲を、当該実施形態に限定することを暗示することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0059】
本開示のある特定の態様は概して、シングルセル分析を用いる試料の特性決定方法に関する。試料の特性決定を用いて、状態もしくは病状を診断する、または、試料において、細胞の表現型、例えば、薬剤感受性もしくは耐性を評価し、特性決定することができる。以下の章では、試料またはそのサブ試料(即ち、パーティション)の区画化を用いることにより、細胞表現型を産生し分析する方法についての、一般的な考察について論じる。ある特定の態様では、試薬非含有、光学、発光、蛍光性、発光性、または他のシグナルを、ニューラルネットワーク、及び、データ分析の他の方法を用いて分析し、特性決定することができる。
【0060】
分析方法としては、人工知能(AI)の使用が挙げられる。AIを用いて、1つ以上の試料を分析及び/または比較し、試料中での1つ以上の細胞表現型を判定することができる。特定の態様では、細胞表現型(複数可)を、対象または対象由来の試料の特定、診断、予後判定、または特性決定において使用することができる。方法は、例えば、患者の転帰、最少阻害濃度、罹患容易性または耐性、入院の長さといった予後、患者リスクなど、任意の臨床エンドポイントに対して修正することができる。
【0061】
迅速な表現型診断及び/またはスクリーニングに対する一般的な着想は、個々の細胞または細胞アグリゲートを区画化し、区画内での観察可能変化が、区画化された、または封入された細胞の機能的特徴を表すようにすることを含む。細胞機能の変動を評価及び/または特性決定し、この機能変動または表現型を用いて、細胞を分類する。
【0062】
単一細胞の区画化。拡散環境が限定されているため、ピコスケール(サブナノリットル)区画内での区画化、または封入によって、反応体積内での細胞構成成分及び生成物の濃度が劇的に向上し、細胞出力が、通常の反応体積よりもはるかに速く、検出可能な濃度に達することが可能となる。500ピコリットルの反応体積中の単一細胞は、例えば、1ミリリットルの反応体積中での200万個の細胞に等しい。結果的に、区画化によって、細胞出力が、従来の体積においてよりもはるかに早く、かつ一層高感度に観察可能となる。
【0063】
同様に、封入された、または区画化された細胞は、ピコスケール区画内の環境条件に、迅速に影響を及ぼす可能性がある。区画のpHまたは酸化還元電位の変化は、例えば、封入された細胞、または娘細胞(1回以上の細胞分裂の結果)により支配されるであろう。
【0064】
いくつかの単細胞微生物、特に、多くの場合、細胞分裂後にモノクローナル細胞アグリゲートまたはクラスターに存在する、Staphylococcus aureusなどの細菌は常に、個別の細胞として単離することができるとは限らない。細胞のクラスター化は、実際には、クラスターを形成しないものから、クラスターを形成する生体を区別するために使用可能な、表現型の形質である。さらに、アグリゲート化細胞は、一般的に、同一の治療法、薬剤、または条件に応答するため、治療上区別される必要はない。
【0065】
リアルタイム表現型変動。ピコスケールの体積において、区画内での観察可能な変化は、メタボローム、トランスクリプトーム、プロテオーム、または環境変動を含む、細胞の表現型により支配され、例を以下に挙げる。
【0066】
メタボロームの変動。メタボロームは、酵素基質を含む、細胞と共に区画化される細胞試薬(複数可)を含む、生細胞の存在下で化学的形質転換を受ける区画内の分子の完全なセットを含む。
【0067】
酵素基質は、区画のプロテオームまたはトランスクリプトーム(タンパク質またはRNA)中の酵素により触媒される、または改質される任意の物質を含む。ここでは、生得的に一層多次元的であるため、基質の変動を、プロテオーム及びトランスクリプトーム変動と区別する。
【0068】
基質の反応速度は、溶液の状態、基質濃度、及び、酵素の活性部位への基質の接近に依存する。例えば、酵素基質は、細胞壁及び/または膜を透過して、細胞内の酵素に接近する必要があり得る。細胞膜透過性は種間で変動する可能性があるため、たとえ、プロテオーム及び環境が、両方の区画内で同一であっても、基質濃度は、異なる細胞種を封入する2つの区画内で、時間の経過とともに特徴が変動する。
【0069】
最終的に、メタボローム変動は多くの場合、基質の変動を含むものの、基質変動は、酵素により触媒される化学的形質転換を受ける区画に導入された、任意の試薬を含む、細胞の代謝経路に関与しない酵素及び試薬を含むことが明確なはずである。
【0070】
トランスクリプトームの変動。トランスクリプトームは、メッセンジャーRNA(mRNA)及びマイクロRNA(miRNA)を含む、区画内のRNA転写産物の完全なセットを含む。RNA転写産物の濃度は、細胞の表現型に応じて変化し、これを用いて、区画化された細胞を分類することができる。マイクロRNAは多くの場合、分泌され、細胞の外側からプローブでき、ピコスケール環境で速やかに濃縮し、細胞透過性検出試薬を不要にする。
【0071】
プロテオームの変動。プロテオームは、区画内にタンパク質の完全なセットを含む。生細胞の存在下では、区画のプロテオーム組成物は細胞の表現型に従い変化する。プロテオームは、形質転換、トランスフェクション、及び形質導入により細胞に導入された、外来または異種遺伝子から発現されるタンパク質を含むことができる。
【0072】
環境の変動。環境の変動は、区画の温度、pH、及び酸化還元電位の、任意の変化を含む。ピコスケールの体積において、環境の変動は、細胞と、当該細胞と共に区画化される細胞反応物質との相互作用により支配される。
【0073】
分類。単一細胞の区画化により、区画内で観察される表現型の変化が、複数の種の平均ではなく、単一細胞種の特性であることが保証される。これらの変化を次に、統計データ分析を用いて、有用な情報に分類する。本開示の方法は、教師あり学習、及び教師なし学習の両方に依存する統計アプローチと互換性がある。
【0074】
教師あり学習に基づく表現型の診断。分類は、カテゴリーのメンバーシップが既知の、観察のトレーニングセットに基づく、表現型の観察がカテゴリーのどのセットに属するかを特定する問題である。分類は、正しく特定された観察結果のトレーニングセットが利用可能な、教師あり学習の例と考えられる。一例は、関連する条件下での以前の観測結果に基づき、関数を用いて患者試料の観察される特性に基づいて、所与の患者に診断を割り当てることである。本開示の方法は、ニューラルネットワーク、線形ベクトル量子化、線形分類器、サポートベクターマシン、二次分類器、デシジョンツリー、カーネル推定、及び、メタアルゴリズムアプローチを含む、教師あり学習に基づく、任意の統計分類法と互換性がある。ある特定の態様では、1つ以上のニューラルネットワークを用いる。
【0075】
教師なし学習に基づく表現型診断。教師なし学習に基づく統計分析は、相対的な分類が予測値を有する場合に有用である。例えば、複数の薬剤を単一細胞種で試験する場合、各薬剤の相対的な影響が、最良の薬剤候補(複数可)を予測し得る。
【0076】
迅速な表現型の評価。図2は、迅速な表現型診断の方法を示す。生細胞を、細胞試薬及び/または細胞反応物質と共に懸濁させる。懸濁液を、リアルタイムで観察可能な、ピコスケールの区画に区画化する。各区画に対して観察される変化を波形で記録し、これは、封入された細胞に関する有用な情報に分類することができる。「細胞試薬」という用語は、表現型の変動を観察するために用いられる、任意の物質、または物質の混合物を含む。細胞試薬は、細胞の代謝または表現型を変更または修正することなく、区画内の状態のインジケーターまたは検出器として機能する。細胞試薬は、生存能色素、蛍光性酵素基質、及び、発光性酵素基質を含む。「細胞反応物質」という用語は、表現型の変動を誘発するために用いられる、任意の物質、または物質の混合物-特に、分析中に直接測定されない細胞と相互作用する、任意の物質を含む。細胞反応物質は、細胞の代謝または表現型に影響を及ぼす、または、これを変更する可能性がある。細胞反応物質としては、細胞栄養素、抗菌剤、及び細胞毒性薬が挙げられる。細胞栄養素としては、培養培地、緩衝液、塩、気体(例えば、O2及びCO2)、ホルモンなどが挙げられるが、これらに限定されない。細胞栄養素としては、任意の炭水化物、糖類、ならびに、アルコール(例えば、リビトール/アドニトール、グルコース、マルトース、マンノース、パラチノース、スクロース、ガラクトース、リボース、ラフィノース、トレハロース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、ラムノース、ソルボース、ツラノース、キシロース、及び/またはメリチトース)もさらに挙げられる。細胞反応物質は、酵素阻害剤などもまた含むことができる。薬剤としては、低分子、抗菌剤、化学治療薬、細胞毒性薬、バクテリオファージ、ペプチド、ナノ粒子、CRISPR-CAS9ベースの治療薬、免疫療法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
様々な態様において、試料は、仕切られる、または区画化される(図3)。試料または細胞懸濁液は、処理して複数の区画にすることができる。次に、各区画を特性決定する(図4)。図4の左側では、観察可能な区画シグナルが経時的にサンプリングされ、記録される。空の区画は、経時的に、反復可能なバックグラウンドシグナルを生成する。中に細胞がある区画は、空の液滴から、または、細胞の表現型が異なる区画から生成されるものとは異なる、リアルタイム変化を生成する。記録されたシグナル波形が、区画化された各細胞を、サンプリングした波形に基づき分類する分類関数、この場合は、ニューラルネットワークに導入される。
【0078】
図5は、本明細書に記載する方法の基本的な実施形態を示す。図5は、パーティション(試料のサブ試料または部分)内で、個別の区画から表現型の波形をサンプリングして記録すること、及び、記録された波形を、分類のために深層ニューラルネットワークに導入することの一例を示す。
【0079】
図6は、1つ以上の試薬及び/または1つ以上の反応物質を用いて実施することができる、様々なスキームを示す。図6Aは、所与の試料に対する表現型の変動を増加させるため、または、異なる細胞型の栄養素の必要性を考慮するために、それぞれが独自の反応物質混合物を含む、複数のパーティションを利用する方法を示す。特定の実施形態では、スキームは試薬非含有である。図6Bは、細胞試薬と組み合わせて用いる、図6Aと同様の実施形態の概略図である。図6Cは、同一の細胞反応物質を分かち合うが、異なる細胞試薬を含むパーティションを用いるスキームの概略図である。試薬フリー検出を可能にする方法としては、以下が挙げられる。
【0080】
区画の光学密度。細胞が増殖すると、細胞は、区画の光学密度(OD)に影響を与え、これは、細胞の増殖特性、及び、細胞を分類するために用いることができる、ODにより判定される増殖特性(例えば、図21を参照されたい)に応じて変化する。OD法は特に、簡便な明視野顕微鏡法を用いる2次元液滴アレイに対してよく適している。
【0081】
区画の分光吸光度。分光法を達成するための方法は多く存在する。基本的なアプローチでは、試料を白色ビーム源に曝露し、検出器を用いてベースラインを確立した後、エミッタ-/検出器アセンブリで、液滴の2次元アレイにまたがりスキャンをし、ベースラインに対して、伝達されるスペクトルを比較することで、吸収スペクトルを得る。
【0082】
酸化還元電位またはpH。区画をケイ素にエッチングすることを伴う区画化法により、回路構成要素を組み込み、区画の変化する酸化還元電位及びpHを測定することができる。
【0083】
ある特定のスキームは、複数試薬及び複数反応物質パーティションを用いることができる。図7A~7Cは、1つ以上のパーティションにまたがり細胞反応物質と細胞試薬の組み合わせを含むスキームを示す概略図である。ある特定のスキームを、図8に示す。図8Aは、細胞反応物質が異なる栄養素ミックスであり、単一細胞試薬が用いられる、図6Bに示すスキームの一実施形態を示す。図8Bは、細胞反応物質が栄養素ミックスであり、細胞試薬が、生存能色素、蛍光性基質、及び発光性基質の異なる組み合わせである、図7Bに示すスキームの一実施形態を示す。
【0084】
特定の態様では、本明細書に記載の方法を、試験物質の、細胞への影響に関する評価などの、細胞反応物質の迅速な表現型試験に使用することができる。図9は、細胞種上での、細胞反応物質の影響を評価するための診断試験の概略図である。試験試薬(TR)は、試験用試料(TS)にのみ存在し、他は対照試料(CS)パーティションと同一である。N1は、完全波形を、スパース表現に圧縮するエンコーダーであり、スパース表現はその後、CLにより分類される。キャラクタライザー(CH)は、例えば、各区画の平均強度などの、両方の集団の全体統計を含有する。N2は、CLでの分類された波形、ならびに、TS及びCSの両方に対する、CHでの集団統計を用い、臨床エンドポイントを演算する。
【0085】
図10は、図9の試験反応物質が薬剤であるスキームの概略図である。ここで、N2は、CLでの分類された波形、及び、CHでの集団統計を利用して、試験されている細胞と相互作用する薬剤の処方と関連する、臨床エンドポイントを演算する。機械学習を用いて、ニューラルネットワークN2は、任意の臨床エンドポイントに合わせてトレーニングを受けることができる。例としては、患者の診断、患者の予後などが挙げられる。
【0086】
患者の診断。本明細書に記載の方法の利点の1つは、試験されている細胞と関連する、任意の臨床エンドポイントに対して、診断試験を直接修正することが可能となることである。
【0087】
最少阻害濃度(MIC)。微生物学においては、最少阻害濃度(MIC)とは、微生物の目視可能な増殖を防ぐ化学物質の、最低濃度である。MIC情報を用いて、感染部位に応じて、所与の抗菌剤に対する最適用量を計算することができる。
【0088】
感受性、中間性、または耐性(SIR)。微生物学においては、MIC結果は、組み合わせに対して特異的なカットオフ点を用いることにより、所与の病原体-抗菌剤の組み合わせに対する、感受性(もしくは感度)、中間性、または耐性として解釈される。MICカットオフは、各病原体クラスに対するCLSIガイドラインにより、確立される。従来、抗菌感受性試験(AST)は、所与の抗菌剤に対するMICを生成し、別個の試験を用いて、試験される病原体を特定する(ID)。病原体IDを用いて、試験されている抗菌剤に対するSIRカットオフを確立する。IDが判明した後にのみ、カットオフを確立して、MICが耐性または感受性のどちらを示すか理解することができる。
【0089】
本明細書に記載の方法の利点は、CS試料中の情報を用いて、CSでの波形を、分類学上の分類に変換する、中間IDステップを必要とすることなく、MIC及びSIRカットオフを同時に確立することができることである。これにより、2つの中間ステップではなく、システム全体を臨床エンドポイント(SIR)に向けることが可能となる。
【0090】
薬力学。抗菌性MICは通常、薬剤の薬力学を予測する方法である。MICは、抗菌剤の効能の尺度である。特定の種の単離物は、様々なMICを有する。感受性の高い株は比較的小さいMICを有し、耐性株は比較的大きいMICを有する。ブレークポイントのMICは、感受性株と耐性株とを分離するMICであり、これは従来、2つの異なる集団:ブレークポイントを下回るMICを有する(即ち、感受性の)一の集団、及び、ブレークポイントを上回るMICを有する(即ち、耐性を有する)他の集団を区別する能力に基づき選択されてきた。
【0091】
ブレークポイントMICの別の属性は、標準用量を用いて達成可能な血清薬剤レベルとの対応である。投与戦略をガイドするために、MICを、抗菌剤が時間依存性または濃度依存性であるかなどの、固有の抗生物質情報と組み合わせることができる。
【0092】
患者のアンチバイオグラム。アンチバイオグラムとは、処置を検討している抗菌薬のセットにおける、各抗生物質に対するSIRの結果であり、多数の薬剤に対する、特定の微生物に対する、抗生物質感受性試験結果の全体的なプロファイル全体を提供する。複数の薬剤を用い、各薬剤に対する各プロファイルを文書化することができる。
【0093】
化学感受性試験、及び、哺乳動物細胞診断。抗菌薬感受性試験に関して上述した方法を、がん、加えて、組織/細胞を単離可能であり、薬剤への曝露、または薬剤との接触によって細胞の特性が変化する、組織ベースの疾患に対する化学感受性または薬剤感受性に直接適用可能である。
【0094】
患者の予後。患者の診断に加えて、図9に概して示す方法を修正し、患者の予後情報、例えば、患者の罹患率、死亡率、及び、入院の長さを提供することができる。図11は、波形のシグナルチェーンの概略図を示す。対照及び試験パーティションの波形の両方を、同一のN1、CH、及びCLに供給するが、得られた統計は、プレディクターニューラルネットワーク(N2)の別個の入力ノードに供給され、CS及びTSに存在する変動を詳細に比較することが可能になる。図12は、この一般スキームを使用して、複数の薬剤を試験または評価することにより予後を提供する一例を示す。他の態様では、方法は、例えば、イメージングデータ、バイオマーカー、患者情報、コミュニティ情報などの、様々な他の情報源を含むことができる(例えば、図13を参照されたい)。
【0095】
本明細書に記載の方法の利点の1つは、以下を含むがこれらに限定されない、図10に記載するものに加えて、最も正確かつ包括的な診断及び予後に到達するために、他の実験室用結果、患者情報、及びコミュニティ情報と組み合わせた、試料パーティション統計を用いる機械学習を用いて、診断を導き出すことができることである。
【0096】
推奨される抗菌剤。アンチバイオグラムは臨床医に、感染症を引き起こす微生物に対して効果的である可能性が高い、抗生物質のセットをもたらすことができる。しかし、好ましい抗生物質を選択することは依然として、臨床医次第である。本明細書に記載の方法の利点は、関連する患者情報、コミュニティ情報、イメージングデータ、及び病気マーカーと組み合わせた、感染症の表現型細胞プロファイルに基づき、診断試験を修正して、患者の転帰を改善することができることである。ある特定の実施形態では、どの薬剤を、どの用量で投与するかを考慮する必要がある、最終の臨床決定を判定するために、診断試験を設計することができる。
【0097】
患者情報は、一次もしくは二次診断、年齢、以前の処置歴、及び/または、根底の条件を含むがこれらに限定されない、患者の健康記録及び現在の状態の、任意の情報を含む。患者情報としては、ウェアラブルから導き出される、または、個人用アプリケーションソフトで記録される生体認証データもまた含むことができる。
【0098】
コミュニティ情報は、遺伝子情報;年齢;国籍;エスニシティ;居住地;勤務先;社会経済学的グループ;行動習慣;生活習慣;環境条件;化学物質への曝露;汚染物質などを含むがこれらに限定されない、患者のコミュニティに関連する、集計された医学情報である。患者が微生物感染症に罹患している場合、コミュニティの監視、及び、院内のアンチバイオグラム情報が、抗菌薬候補のセットの間で区別をもたらす、大きな役割を果たし得る。ある特定の態様では、患者のコミュニティは、疾患、状態またはこれらの組み合わせのリスクにある、もしくは現在これらを有する、もしくは以前にこれらを有していた、患者の群;例えば、近所、街、群、州、国、大陸などの地理的領域;1つ以上の共通の層を有する、人口統計コミュニティなどに限定することができる。
【0099】
疾患マーカーとしては、診断を改善するために、表現型細胞データと組み合わせて用いることができる、サイトカイン、マイクロRNA、抗体、無細胞DNA、ヒトゲノム情報、血液化学などを含む、他の実験室試験に由来する、試験されている条件と関連する任意の情報が挙げられる。
【0100】
イメージングデータは、患者の超音波画像、X線、CATスキャン、PETスキャン、MRIなどを含む。このタイプのデータは典型的には、臨床医により解釈される。ある特定の態様では、ニューラルネットワークを用いて、そのままのイメージングデータをコードし、スパース表現を作成し、プレディクターニューラルネット、例えばN1に供給して、診断を補助することができる。
【0101】
抗生物質処置の患者病歴と組み合わせて、本明細書に記載の方法から入手される細胞プロファイルを使用して、患者が将来、抗菌耐性感染症を発症するリスクを予測する、即ち、耐性リスクを特定することができる。コミュニティ情報と組み合わせてもまた、アウトブレークリスクを予測することができる。
【0102】
I.機械学習及びディープラーニング。
データサイエンティストは、機械学習技術を利用して、実際のデータから予測を行うモデルを構築する。典型的には、機械学習モデルをデータに適用する前に、そのままのデータに適用される、いくつかの前処理ステップが存在する。前処理ステップのいくつかの例としては、データ品質プロセス(例えば、補完、及び異常値の除去)、ならびに、特徴抽出プロセスが挙げられる。従来、このようなプロセス及びモデルは、ビッグデータサンプル(「ビッグデータ」)(例えば、多数のデータサンプル、例えば、大きすぎて単独のマシンに適合できず、故に、複数のマシンにまたがり記憶される必要がある、数テラバイト以上のデータ)、または、スモールデータサンプル(「スモールデータ」)(例えば、少数のデータサンプル、例えば、単独のマシンに容易に記憶可能であり、当該マシンで容易に処理可能な、数キロバイトもしくは数メガバイトのデータ)のいずれかと作用するために構築されている。トレーニングセットを、ニューラルネットワークまたはサポートベクターマシンなどの、機械学習ユニットに提供する。トレーニングセットを用いることで、機械学習ユニットは、波形に基づく構成成分に従い、サンプルを分類するモデルを生成することができる。
【0103】
人工ニューラルネットワーク(NNet)は、脳の神経構造に基づく、「ニューロン」のネットワークを模倣する。これらは記録を、一度に1つずつ、またはバッチモードで処理し、記録(当初は、非常に恣意的である)の分類を、記録の既知の実際の分類と比較することにより「学習」する。多層パーセプトロンニューラルネット(MLP-NNet)において、最初の記録における、初期分類でのエラーをネットワークにフィードバックさせ、これを用いて、多くの反復において、2回目などにネットワークのアルゴリズムを修正する。
【0104】
ある特定の実施形態では、蛍光性応答、または他のシグナルを、時間の経過と共に測定し、全ての測定値をまとめて、波形のセットにする。ある特定の態様では、試料の構成成分を認識するように以前にトレーニングを受けたニューラルネットワークを用いて、独特の特徴に基づき、波形を既知のクラスにクラスター化することができる。ある特定の態様は、個別の応答の集団を取得し、機械学習を使用して、診断、処置、ならびにコミュニティの健康評価及び監視に有用な、臨床上関連する情報を抽出する。
【0105】
例えば、提供者は、培養の結果を待つ間に、抗生物質で症候性患者を処置してきた。これは、抗生物質の効果的でない処置、誤った処置、または過剰処置に繋がる可能性があり、これは、個別の患者及び集団全体の両方に、悪影響を及ぼす可能性がある。本開示の態様を使用して、2~6時間で完了することができる抗菌薬の感受性を評価することができるため、効果的な処置を、はるかに早く開始することができる。
【0106】
本開示は、患者の試料から、臨床上関連する情報を抽出する機械学習技術について記載しているため、設計者の偏見なしに、最良の形態を決定し、洗練することができる。機械学習により、人の観察では速やかに明らかとならないであろう、データ中の隠された構造を明らかにすることができる。
【0107】
例えば、アッセイが試験するように設計された、標的病原体全て、及び標的抗生物質全ての、様々な抗生物質耐性レベルにおいて、方法を使用して、病原性微生物試料を入手することができる。これらの試料を、様々な既知の耐性レベルにおいて、対照試料と抗生物質感受性試料とにセグメント化することにより、このことは行うことができる。λを、ポアソン分布の確率変数とする。各対照試料に対して、試料を、蛍光剤、または他の試薬と混合した、λ個の微生物病原体を含有する別個のユニットに区画化する。各抗生物質感受性試料、及び、各抗生物質に対して、試料を、抗生物質及び蛍光剤、または他の試薬と混合した、λ個の微生物病原体を含有する別個のユニットに区画化する。経時的に、区画化した各微生物の蛍光性応答、または他のシグナルを測定し、シグナルを全て回収して、波形のセットにする。どちらの区画に、非ゼロ病原体(正)が含まれ、どちらが空(負)であるかを効果的に判定する、光学メトリックに基づき、シグナルを、2つのクラス、即ち正の波形と負の波形に仕切る。
【0108】
特定の実施形態は、水性エマルションに懸濁した油滴内の、細菌細胞及びレサズリン色素を区画化する。本実施形態では、λ<1は、アッセイのダイナミックレンジ要件に基づき決定される。液滴をイメージングチャンバにロードし、一連のイメージを、2~6時間にわたり撮影する。液滴が各画像で特定され、ソフトウェアにより、一連の画像で相関され、ミトコンドリアのレサズリン/レゾルフィン還元の波形を生成する。次に、各波形に光学メトリックを適用した後、OTSUセグメンテーション、カーネル密度推定、または、固定閾値セグメンテーションを用いて、ソフトウェアで、波形を「正」及び「負」にセグメント化する。さらに、いくつかの実施形態では、方法は、あらゆる合わさった液滴、スタックされた液滴、及び、相関していない液滴をフィルターする。
【0109】
波形データを合わせた後、データを、交差検証のために2つのセット:トレーニングセット、及び試験セットに仕切る。正の各波形を正規化し、波形が、時間次元にN個の点を持ち、その蛍光次元が0.0~1.0の範囲となるようにする。
【0110】
トレーニングは、各波形の次元を、N個の点から、より小さな数のM=4~10まで下げる教師なし学習ステップで開始する。蛍光(またはシグナル)次元を正規化することにより、曲線の相対的な大きさが無視され、曲線の形状が重要となる。オートエンコーダーをトレーニングさせて、次元の数を、Nから、より小さい数のM=4~10まで減らす。トレーニングデータをさらに、オートエンコーダーをトレーニングするためのサブセット、及び、オートエンコーダーを試験するためのサブセットにセグメント化する。いくつかの実施形態では、オートエンコーダーは、1Dの畳み込み層、続けて、サイズがMの、完全接続層を含む、ニューラルネットワークである。出力範囲を0.0~1.0にする、tanhなどの活性化関数を適用する。これらのM活性化の出力は、M次元での、各波形の「コード化」となる。主成分分析及び固有ベクトル分解など、データの次元の数を減らす他の方法も存在しており、これらも同様に有用であり得る。
【0111】
次に、波形「クラス」の最適数Kを決定する。いくつかの実施形態では、最適値Kは、様々な値のKで「K平均クラスター化」を繰り返し適用することにより決定される。各Kに関して、適合の歪みを演算し、「エルボー法」などの統計的手法、または、「ジャンプ法」もしくは「破線法」などの、速度ひずみ法に基づき、最良の値を選択する。最適値Kを決定した後、Kクラスター中心の中で、最も隣接する分類に従い、曲線を分類する。これにより、教師なしトレーニングステップが完了する。
【0112】
トレーニングは、標的抗生物質、及び、波形のダイジェストを、抗生物質感受性メトリックにマッピングする、回帰関数F(t,d)=μをモデリングする教師ありステップに続く。いくつかの実施形態では、抗生物質感受性メトリックは、抗生物質最少阻害濃度であり、波形のダイジェストは、以下のとおりの、4(K+1)成分のベクトルである:
【0113】
(1)各成分0<=j<kが、対照試料中の陽性液滴間で生じる波形クラス「j」の比率であり、j=kにおける成分が、対照試料で生じる陰性液滴の比率である、K+1成分のベクトル。
【0114】
(2)成分が、各クラスの液滴波形の平均強度の、対照試料での全ての液滴波形の平均強度に対する比率であることを除いて、(1)と同様に定義される、K+1成分のベクトル。
【0115】
(3)成分が、抗生物質感受性試験用試料からであることを除いて、(1)と同様に定義される、K+1成分のベクトル。
【0116】
(4)成分が、抗生物質感受性試験用試料からであることを除いて、(2)と同様に定義される、K+1成分のベクトル。
【0117】
いくつかの実施形態では、モデルは、4(K+1)個の入力ノード、多数の隠れ層、及び、抗生物質感受性メトリックに対応する1個の出力ノードを備える深層ニューラルネットワークである。いくつかの実施形態では、抗生物質感受性メトリックは、0~1の範囲の無単位値であり、ここで、0は、抗生物質耐性がないことを表し、1は、対照と差がないものとして定義される、完全な抗生物質耐性を表す。回帰関数をトレーニングした後、試験データセットに対して保留したデータを用いることで、関数の精度を評価する。
【0118】
いくつかの実施形態では、トレーニングデータは、以下により増強される:
【0119】
(1)各データにおける、波形の無作為抽出での波形ダイジェストを構築すること。
【0120】
(2)波形ダイジェストを構築する前に、正の各波形を分類する際に、M近傍分類を用いること。正の各波形wに関して、全てのKの中から、設定したM個の、wに最も近い波形クラスターの中心を見つけ出す。K+1成分、j=0~K+1のベクトルvは、Mにおける位置jでの成分が、wの、各中心jに対する近接度の量であり、Mではない位置jにおける成分が0となる加重平均である。「近接度の量」の例は、逆距離重み付けであることができるか、または、確率分布により評価することができる。
【0121】
(3)小さな分散を含む確率変数による、波形ダイジェストの摂動、それに続く再正規化。
【0122】
患者試料において抗生物質感受性試験を行う際に、試料をA+1個の回路にロードし、ここで、回路数Aは、抗生物質を含有せず、対照データであり、各回路数j=0~A-1は、特定の抗生物質jを含有し、抗生物質jの感受性データである。微生物を区画化し、蛍光性応答(または、他のシグナル)を経時的に測定し、波形を抽出して、前述のように、「正」及び「負」にセグメント化する。各回路に関して、jは波形を正規化し、分類する。各回路j=0~A-1に関して、回路j及びAからの波形を含有する、前述したダイジェストd(j)を構築する。回帰関数F(j,d(j))を評価し、抗生物質感受性メトリックを決定する。この抗生物質感受性メトリックを、トレーニングデータにより画定される標準曲線または表に基づき、SIR値またはMIC値などの臨床的結果にマッピングする。
【0123】
ある特定の態様では、キャラクタライザーは、実施されている分析の目標に応じて、種々の入力を受信し、種々の出力を送信する。キャラクタライザーへの入力及び出力の、ある特定の例:出力-(i)パーティション内での、波形全ての平均最大シグナル、(ii)パーティション内での波形全てに対する、曲線下面積、(iii)パーティション内での波形全てに対する、平均最大導関数、(iv)パーティション内での波形全てに対して、各波形が特定の閾値で交差する際の、平均時点、(v)「平均」の代わりに「中央値」を用いることを除き、上に同じ、(vi)正規化した波形を用いることを除き、上に同じ、ここで、各波形は、同じパーティション内での負の区画(無細胞区画)における波形の、同じ時点での平均シグナルにより除される。分類器への入力の例としては、患者情報、コミュニティ情報、及び/またはイメージングデータを含む上記入力に加え、(i)そのままの波形、及び/または、(ii)次元の数が減った波形が挙げられる。
【0124】
さらに、オートエンコーダーを用いて、正の波形(実際に増殖を示す波形)における、いくつかの教師なし学習を実施することにより、本方法を用いて、コードされたベクトル空間で、データのクラスターを導出することができる。クラスターの数は、いくつかの種の分布が、コードされたベクトル空間内でマルチモーダルである場合に、細菌種の数を上回る場合がある。クラスターの数をKと呼び、これらを、1~K(両端を含む)で標識する。対照のパーティション内での、負の各波形(増殖を示さない波形)に対して、これを、クラスター0に属するものとして数える。対照パーティション内での正の各波形に関して、最も属する可能性が高いクラスターを決定する。
【0125】
キャラクタライザーへの追加の入力としては、(i)成分jは、クラスターjに対応する波形全ての最大蛍光値の平均に対応する、K+1成分j=0~Kのベクトル、(ii)成分jは、クラスターjに属する波形全ての波形蛍光曲線下平均面積に対応する、K+1成分j=0~Kのベクトル、(iii)成分jは、クラスターjに対応する波形全ての最大微分蛍光値の平均に対応する、K+1成分j=0~Kのベクトル、(iv)成分jは、各波形蛍光曲線が、クラスターjに属する波形全ての中で、特定の閾値を最初に達成する平均時点に対応する、K+1成分j=0~Kのベクトル、(v)「平均」の代わりに「中央値」で定義する同様のもの、(vi)各波形が、クラスター0(無細胞区画)、加えて、他のものにおける波形の同じ時点における、平均シグナルにより除される、正規化した波形を用いることを除き、上に同じ、が挙げられる。
【0126】
II.一般的な方法
特定の態様では、試料の処理には、溶解または洗浄を必要としない。無傷の細胞を使用するため、核酸分子ではなく、全細胞のみの操作が必要であり、これは、そのサイズの小ささ、及び、異なる材料との、電荷に基づく相互作用の性質により、はるかに操作が難しい。さらに、細胞は単一温度、典型的には、25~45℃の範囲の比較的低温でインキュベートすることができ、これによって、大部分のNATに必要な熱サイクル装置が不要となり、コストとワークフローの複雑さが軽減される。有利には、高温ステップを避けることで、本開示は、反応の一体性、及び/または、蛍光読出しを損なう可能性がある、流体蒸発及び/または気泡により生じる可能性がある大きな問題を回避する。
【0127】
少なくとも1つの標的細胞を含む試験用試料、または試料の一部を、試薬、例えば、生存能色素またはレポーターと組み合わせて、または組み合わせることなく、統計的に有意な数の区画または液滴が、1個の細胞、または細胞の凝集を含有する(いくつかの細胞は凝集して、細胞クラスターまたは鎖になる傾向がある)ように、区画または液滴に区画化することができる。試薬を、細胞の存在下にて、シグナルを生成するか、または生成しないように作用することができる。各液滴を経時的に監視し、データを使用して、各区画を特定し、特性決定する。これらのプロセスにおけるさらなる詳細を、以下に示す。
【0128】
試料。試料中の細胞としては、細菌、真菌、植物細胞、動物細胞、または、任意の他の細胞生体由来の細胞を挙げることができる。細胞は、培養された細胞、または、自然に存在する源から直接入手した細胞であってよい。細胞は、生体から、または、生体から入手される生体試料から、例えば、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、及び組織から、直接入手することができる。一実施形態では、試料は、種々の他の構成成分、例えば、他の細胞(バックグラウンド細胞)、ウイルス、タンパク質、及び無細胞核酸を含む、生体試料から単離される細胞を含む。細胞を、ウイルス、または他の細胞内病原体で感染させることができる。次に、単離細胞を、入手したものとは違う、異なる培地に再懸濁させてよい。一実施形態では、試料は、複製させることができる、及び/または、生存したままにすることができる栄養素培地に懸濁した細胞を含む。栄養素培地は、量もしくは成分全てが既知の、画定された培地、または、栄養素が、グルコースなどの炭素源、水、様々な塩類、アミノ酸、及び窒素などを含む、未知の割合の多くの化学種の混合物を含有する、酵母菌抽出物もしくはカゼイン加水分解産物などの複合成分である、画定されていない培地であってよい。一実施形態では、試験用試料中の標的細胞は、病原体を含み、栄養素培地は、Lysogenyブロス、ミューラーヒントンブロス、ニュートリエントブロスまたはトリプチックソイブロスなどの、病原体を培養するために一般的に用いられる栄養素ブロス(液体培地)を含む。任意の実施形態では、培地に、血清または合成血清を補充し、選好性生体の増殖を促進することができる。
【0129】
区画化。本開示のある特定の方法は、細胞を含む試料または試料部分を、1つ以上の試薬及び/または1つ以上の反応物質と組み合わせることと、次いで、試料または試料部分を区画化することと、を伴う。区画の統計的に有意な部分が、1つの標的細胞または細胞アグリゲートを含有するように、試料を区画化する。区画の数は、用途に応じて数百~数百万で変化することができる。区画の容積もまた、用途に応じて、1μL~10pL、例えば、25~500pLの間で変化することができる。本明細書に記載の方法は、任意の区画化法と互換性がある。
【0130】
区画化の、ある非限定的な方法は、液滴の使用である。液滴形成の方法は異なるものの、方法は全て、水相、この場合は試験用試料を、連続相とも呼ばれる不混和性相に分散させ、各液滴が、不混和性キャリア流体により囲まれるようにする。一実施形態では、不混和性相は、油である。特定の態様では、油は、界面活性剤を含むことができる。関連する実施形態では、不混和性相は、フルオロ界面活性剤を含むフルオロカーボン油である。フルオロカーボン油を用いる利点は、比較的、気体を良く溶解することができ、生物学的に不活性であるという点である。したがって、本明細書に記載の方法で用いるフルオロカーボン油は、細胞の生存に必要な、可溶化された気体を含む。
【0131】
液滴形成のある非限定例は、ラプラス圧勾配を用いることである(例えば、Dangla et al.,2013,PNAS 110(3):853-58を参照されたい)。ラプラス圧は、液滴の内側と外側とでの圧力差などの、曲面の内側と外側とでの差圧である。細胞または微生物を含有する水相を、適切な装置の中で、水性「舌」を形成する連続相(即ち、不混和性流体)のリザーバーを有する装置に導入することができる。装置は、高さの変動(複数可)を、マイクロチャネルに組み込むことができ、これにより、不混和性界面に、高さの変動に直面していない水相の部分と、高さの変動の下流にある水相の部分とでの、曲率の差が生じる。水相が高さの変動によって流れると、閾値の曲率が、高さの変動の下流にある水相の部分に達し、これを超えると、2つの部分が静的平衡を維持することができなくなり、下流部分が、水相を連続相に導入することにより形成される舌から離れると、水相が液滴に分けられ、液滴のサイズは、装置の形状により決定される。高さの変動は、マイクロチャネルの高さの単一ステップでの変化(ステップ乳化)、複数ステップ(複数ステップ乳化)、及び、傾いた、または、同様の緩やかな閉じ込め勾配で達成することができる。
【0132】
レポーター。種々のレポーターを、本明細書で開示するシステム及び方法での試薬として用いることができる。例えば、レポーターは、フルオロフォア、タンパク質標識フルオロフォア、光酸化可能な補助因子を含むタンパク質、別のインターカレートされたフルオロフォアを含むタンパク質、ミトコンドリアの生体染色または色素、酸化還元反応性色素、膜局在化色素、エネルギー移動特性を有する色素、pHを示す色素、及び/または、色素と、酵素による作用を受けることができる部分と、で構成される任意の分子であることができる。さらなる態様では、レポーターは、レサズリン色素、アクリジン、テトラゾリウム色素、クマリン色素、アントラキノン色素、シアニン色素、アゾ色素、キサンテン色素、アリールメチン色素、ピレン誘導体色素、ルテニウムビピリジル錯体色素、または、これらの誘導体であることができるか、または、これを含むことができる。本明細書で使用する、レポーターという用語にもまた含まれる、細胞生存能色素は、液滴に封入された個別の細胞または病原体を特定し、特性決定するための分析試薬として使用される。生存能色素は、細胞の生存のために、1950年代から使用されている。しかし、これらの試薬は典型的には、体積が1マイクロリットルを著しく超える試料で用いられる、及び/または、生存細胞の存在を示すエンドポイントアッセイで用いられる。本開示の態様では、1μL~100nL、より具体的には、25~500μLの液滴中で、生存能色素を用いる。本明細書に記載する方法では、生存能色素により生成される光学シグナルは、少量の液滴体積により濃縮され、インキュベーション時間にわたって測定及び記録される。生存細胞を含有する液滴では、これは、速やかに生成され、液滴に封入された細胞の特徴についての情報を有する、光学シグネチャーをもたらす。抗菌薬または細胞毒性薬などの、環境ストレッサーと組み合わせて、経時的に、細胞を含有する液滴の光学シグナルを監視することにより、追加のシグネチャーを生成することができる。環境ストレッサーと組み合わせた、及びこれと組み合わせない、細胞からの光学シグネチャーを用いて、細胞の同一性及び/または特徴を決定することができる。さらに、薬剤に曝露された細胞の種から入手した光学シグネチャーと、薬剤に曝露されていない標的細胞の同一種に対する光学シグネチャーとの差を用いて、試験用試料から入手した標的細胞に対する、表現型の薬剤耐性プロファイルを決定することができる。これらのシグネチャーは、液滴に封入された個別の細胞から生成されるため、これらは、多くの細胞を含有するバルク試料から生成される細胞集団の平均特徴とは対照的に、各細胞の個別の特徴についての情報を表す。
【0133】
本明細書に記載の方法は、生細胞と共に用いることができる(細胞溶解を必要としない)、任意の生存能色素もしくはレポーター、または、蛍光性もしくは発光性酵素基質と互換性がある。いくつかの実施形態では、生存能色素は、レゾルフィンベースの色素、またはその誘導体である。一例はレサズリンであり、これは、ピンク色で、非常に蛍光性のレゾルフィンに不可逆的に還元されたとき(図6)、蛍光シグナル及び比色分析シフト(青からピンク)を生成する。好ましい実施形態では、比色分析シグナル変化よりも良好な感度を付与するため、蛍光を用いる。サブナノリットル体積の、分泌された蛍光性分子内での、拡散が制限される閉じ込めは、速やかに、検出可能なシグナルレベルまで濃縮し、その後、後述の方法により検出される。さらに、酸化還元環境が、通常、約-100mVの、特定の酸化還元閾値を下回ると、レゾルフィンは非蛍光性ハイドロレゾルフィンに可逆的に還元される(図6)。液滴の酸化還元電位に応じた、レサズリンからレゾルフィンの不可逆性還元と、レゾルフィンの、ハイドロレゾルフィンへの可逆性還元と、ハイドロレゾルフィンがレゾルフィンに戻る酸化と、の組み合わせにより、酸化還元変化が、単一細胞または細胞アグリゲートの存在下で速やかに生じるのに十分体積が小さい液滴中で、経時的に、固有の蛍光シグネチャーが生み出される。市販されている、レサズリンベース色素の例は、AlamarBlue(商標)(様々)、PrestoBlue(商標)(Thermo Fisher Scientific)、Cell-titer Blue(商標)(Promega)、または、レサズリンナトリウム塩粉末(Sigma-Aldrich)である。レサズリンに、構造的に関係があり、本方法でも使用可能な色素は、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red(商標)としても知られている)、C12レサズリン、及び、1,3-ジクロロ-7-ヒドロキシ-9,9-ジメチルアクリジン-2(9H)-オン(DDAO色素)である。いくつかの実施形態では、レゾルフィンは、蛍光原基質として機能する、切断可能な部分で修飾される。市販されているレゾルフィンベースの蛍光原基質の例は、7-エトキシレゾルフィン、レゾルフィン-β-D-グルクロン酸、及び、レゾルフィン-β-グルクロン酸メチルエステルである。いくつかの実施形態では、ホルマザン色素などの、テトラゾリウム還元に依存する色素を、細胞生存能のインジケーターとして用いることができる。例としては、INT、MTT、XTT、MTS、TTC、またはテトラゾリウムクロリド、NBT、及びWSTシリーズが挙げられる。いくつかの実施形態では、レポーターは、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)、エチル=7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキシレート(EHC)、7-アミド-4-メチルクマリン(AMC)、フルオレセイン、及びレゾルフィンなどの、蛍光性基質を含むことができる。いくつかの実施形態では、レポーターは、Aldol(登録商標)インジケーター(Biosynth)であることができる。いくつかの実施形態では、レポーターは、ルミノール、Shaapデオキセタン、ルシフェリン誘導体及びプロト基質、ならびに、ジオキセタン誘導体などの発光性基質を含むことができる。化学発光レポーターを蛍光性レポーターと組み合わせて、同様のDCCの区別において役立つ、細胞特異的な波形変動を増大させることができる。特定の態様では、レポーターは、特異的な酵素不安定基を有する、ジオキセタン誘導体である。単離細胞により発現される酵素に曝露されるとき、酵素不安定基が切断され、対応する不安定なフェノラートアニオンが遊離して分解し、高エネルギー中間体を生成して、これが、非励起基底状態に戻ることにより発光する。ジオキセタン誘導体の例は、AquaSpark(Biosynth)である。ルシフェラーゼプロト基質を、蛍光及び/または化学発光レポーターともまた組み合わせ、細胞特異的な変動を増大させることもできる。プロト基質は、単離細胞内でルシフェラーゼ基質に還元された後、ルシフェラーゼにより酸化され、生物発光シグナルを生成する。例としては、Real-time Glo(Promega)が挙げられる。
【0134】
本開示は、非発光性の、例えば、蛍光性、比色分析、及び/または、発光性アッセイの多重化を提供する。本明細書で使用する場合、「発光性アッセイ」は、細胞成分により一度作用されると、分子が発光性になる反応を含む。発光性アッセイは、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ラクタマーゼ、プロテアーゼ、アルカリホスファターゼ、またはペルオキシダーゼ、及び、対応する好適な基質、例えば、修飾形態のルシフェリン、セレンテラジン、ルミノール、ペプチドまたはポリペプチド、ジオキセタン、ジオキセタノン、及び、関連するアクリジニウムエステルを用いる、または、これらを検出するものを含むがこれらに限定されない、化学発光及び生物発光アッセイを含む。本明細書で使用する場合、「発光性アッセイ試薬」は、基質、加えて、発光性反応のために基質を切断する、または修飾する、アクティベーターまたは酵素を含む。
【0135】
特定の態様では、1つ以上の単離細胞は、発光性反応を生み出すのに有用な酵素を有することができる、または、発現することができる。具体的には、このような目的のために有用な酵素としては、酵素活性を示す任意のタンパク質、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ、スルファターゼ、ウレアーゼ、アリールアミダーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、オキシダーゼ、カタラーゼ、硝酸レダクターゼ、ならびに、酸ホスファターゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、カルボキシエステラーゼ、及びルシフェラーゼを含むエステラーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、酵素の1つは、加水分解酵素である。いくつかの実施形態では、酵素の少なくとも2つは、加水分解酵素である。加水分解酵素の例としては、アルカリ性及び酸ホスファターゼ、エステラーゼ、デカルボキシラーゼ、ホスホリパーゼD,P-キシロシダーゼ、β-D-フコシダーゼ、チオグルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、α-D-マンノシダーゼ、β-D-マンノシダーゼ、β-D-フルクトフラノシダーゼ、及び、β-D-グルコシドゥロナーゼ(glucosiduronase)が挙げられる。
【0136】
アルカリホスファターゼに関しては、いくつかの実施形態では、基質としては、ホスフェート含有ジオキセタン、例えば、3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3”-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン二ナトリウム塩、または、3-(4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’(5’-クロロ)-トリシクロ-[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル]フェニルリン酸二ナトリウム、または、2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)-トリシクロ{3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルリン酸二ナトリウム、または、2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルリン酸二ナトリウム(それぞれ、AMPPD、CSPD、CDP-Star(登録商標)、及びADP-Star(商標))が挙げられる。
【0137】
3-ガラクトシダーゼに関しては、いくつかの実施形態では、基質は、ガラクトシダーゼ切断可能基、またはガラクトピラノシド基を含有するジオキセタンを含む。アッセイでの発光は、ジオキセタン基質から、糖部分を酵素切断することで生じる。このような基質の例としては、3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3”-β-D-ガラクトピラノシル)フェニル-1,2-ジオキセタン(AMPGD)、3-(4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]-デカン]-4-イル-フェニル-β-D-ガラクトピラノシド(Galacton(登録商標))、5-クロロ-3-(メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1]デカン-4-イル-フェニル-β-D-ガラクトピラノシド(Galacton-Plus(登録商標))、及び、2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’(5’-クロロ)-トリシクロ-[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル)フェニルβ-D-ガラクトピラノシド(Galacton-Star(登録商標))が挙げられる。
【0138】
3-グルクロニダーゼ及び3-グルコシダーゼに対するアッセイでは、基質は、グルクロニドなどの、3-グルクロニダーゼ切断可能基を含有するジオキセタン、例えば、3-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)フェニル-β-D-グルクロン酸ナトリウム(Glucuron(商標))を含むことができる。カルボキシルエステラーゼに対するアッセイでは、基質は、ジオキセタンに結合した、好適なエステル基を含むことができる。プロテアーゼ及びホスホリパーゼに対するアッセイでは、基質は、ジオキセタンに結合した、好適な酵素切断可能基を含むことができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、アッセイにおける、各酵素に対する基質は異なっている。1個のジオキセタン含有基質を含むアッセイに関して、基質は、任意選択的に、置換または非置換のアダマンチル基、置換または非置換であってよいY基、及び、酵素切断可能基を含有する。ジオキセタンの例としては、上述したもの、例えば、Galacton(登録商標)、Galacton-Plus(登録商標)、CDP-Star(登録商標)、Glucuron(商標)、AMPPD、Galacton-Star(登録商標)、及びADP-Star(商標)と呼ばれるもの、加えて、3-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.137]デカン}-4-イル)フェニル-β-D-グルコピラノシド(Glucon(商標))、CSPD、3-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’(5’-クロロ)-トリシクロ-[3.3.1.1]デカン)-4-イル)-1-フェニルリン酸二ナトリウム(CDP)が挙げられる。
【0140】
細胞(DCC)アグリゲート。いくつかの実施形態では、記載した方法は、感染症を引き起こす微生物を特定し、これらが、抗菌剤に耐性を有するか否かを特定することによる、微生物感染の診断に用いられる。したがって、本出願では、DCCは、単一細胞微生物であることができる。しかし、細菌の中には、自然に凝集して、クラスターまたは鎖になるものもある。これらの場合において、いくつかの液滴は、単一の微生物ではなく、同一微生物種の細胞のアグリゲート(均質なアグリゲート)を含み得る。これらの場合において、曲線の形状は、アグリゲート内の細胞の数により影響を受ける場合がある。しかし、区画化された細胞を分類するために使用される、記憶されたシグネチャー波形及び呼び出しロジックは、単一細胞を説明することができるのと同じ方法で、このようなアグリゲートを説明することができる。さらに、実施形態が、抗菌感受性試験を含む場合、抗菌剤を含む混合物は、抗菌剤を補外する混合物と同じ、細胞凝集特性を示し、比較は依然として、正確である。したがって、本明細書に記載する方法は一般に、各液滴中での、単一細胞の単離を含むものの、当該方法は必然的に、個別の細胞ではなく、液滴中で単離された均質なアグリゲートにおける、単一細胞種の場合に対応する。がん疾患診断の場合、標的DCCは、典型的には、血中循環腫瘍細胞である場合には凝集しない。がん細胞が組織から得られる場合、組織は、典型的には、分析前に個別の細胞に分解される。したがって、各液滴は、最大でも1個の細胞を含有する。しかし、場合によっては、がんアグリゲートは、記載の方法を用いてもまた分析することができる。
【0141】
シグナル検出。液滴が生成されたら、これらは、光学系、センサ、またはセンサアレイによる分析のために提示される。いくつかの実施形態では、液滴は、2次元アレイで提示され、熱制御を維持することができ、液滴シグナルを、多くの液滴に対して(単一の瞬間に)同時に測定することができる。標的細胞を含有する液滴中では、レポーターは、細胞を含有しないバックグラウンド液滴を上回って生じる、高濃度の蛍光シグナルを生成する。液滴の高濃度シグナルにより、高速特定のゴールドスタンダードである、標準的なPCR技術に匹敵する時間で、単一細胞の特定を可能にする。ある特定の態様では、シグナルは、特定の波長の光で、還元されたレポーターを励起することと、カメラで、バンドパスフィルタにかけられ、ストークシフトされた光を収集することと、により検出される。イメージング技術を用いる利点は、静止したままであり、それ故に、経時的に、容易に監視することができる液滴アレイをイメージングすることができる、という点である。サイトメトリーベースの方法は、典型的には、経時的に、移動する液滴の追跡を続けるのが困難であるために、リアルタイム検出の代わりに、エンドポイント検出を用いる。アレイをイメージングする別の利点は、液滴が全て、分析時に同じ反応条件を経験するという点である。したがって、液滴シグナルを等価な時点において比較することができ、これは、シグナルは経時的に変化するため有利である。サイトメトリーアプローチによって、液滴は、異なる時点において、検出器を通過する。したがって、分析の時点で、いくつかの液滴が、他の液滴よりも長時間インキュベートされる。最終的に、試験用試料には、異なる標的細胞種が存在し得る。各種に対して、最適な液滴体積、及び、特定の時点でシグナルを最大化する色素またはレポーター濃度が存在し得る。エンドポイント法を用いる場合、時間は部分最適性を補うことができ、異なる種は、単一色素及び液滴濃度内で、普遍的に特性決定することができるため、液滴体積及びレポーター濃度を、同程度に制御する必要がない。
【0142】
多重化。本明細書に記載の方法は、単一の試験用試料から、複数の細胞を特異的に特定することを含む。単一細胞を、固有の単離された液滴に区画化することにより、細胞間でのリソースの競合が排除される。したがって、バルク集団に少数派としてまとまって存在するであろう個別の細胞はここで、細胞の多数派集団と比較したときに、栄養素に平等にアクセスし、これは、複数の細胞型を有する試料において、少量の細胞に対する感度が、より高くなる。本発明にとっての多重化の制限は、異なる細胞型間での生存能シグネチャーを異なるものにする能力に依存する。多重化のための大部分の方法は、複数の色素(フルオロフォア)を必要とし、即ち、複数のセットのLED、励起、及び発光フィルターを必要とする。本明細書に記載する方法は、スペクトル情報ではなく形状情報を用いるため、本方法を使用して、1個のみのLED、発光フィルター、及び励起フィルターを必要とする、単一色素またはレポーターにより、多くの標的を多重化することができ、したがって、分析を行うために必要なハードウェアが簡素化される。いくつかの実施形態では、複数のレポーターを、組み合わせて、まとめて、または別個用いることができ、ここでは、レポーターは、複数の直交する代謝経路を、対象となる各液滴に対して測定することができるように、異なるスペクトル波長または発光性クラス(例えば、蛍光、化学発光、もしくは比色分析)のセットから選択される。例えば、レサズリンなどの、酸化還元感受性蛍光色素を、フルオレセインβ-ガラクトピラノシドなどの、酵素活性用の第2の蛍光性レポーター、及び、ルシフェリン/ルシフェラーゼなどの生物発光レポーターと組み合わせて使用することができる。任意の数の追加のレポーターを組み合わせて使用することができ、ここで、各レポーターは、固有の細胞特異的情報を提供する。
【0143】
III.蛍光漏洩の低減
生細胞反応で生み出される、蛍光性分子の液滴間移動を防ぐために、本開示は、水性液滴中に含有されるシクロデキストリンとの、可溶性複合体を利用する。様々な種類のシクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン分子、β-シクロデキストリン分子、またはγ-シクロデキストリン分子)を使用することができる。このような複合体が形成されることで、(i)バルクでシクロデキストリンを添加することによる、生存能アッセイ特性の向上、及び、(ii)シクロデキストリンの存在下での、疎水性蛍光性分子の可溶性の増大がもたらされる。このような可溶性複合体を、生細胞液滴アッセイに組み込むことによって、これらが生成される液滴内に蛍光性生成物を維持しながら、生細胞のアッセイが可能となる。
【0144】
図22は、開示した実施形態に一致する、エマルションに懸濁した水性液滴に蛍光性分子を維持する方法100の、例示的実施形態を示すフローチャートである。方法は、ステップ102から開始する。
【0145】
ステップ102は、水溶液中で、複数の生細胞と、複数の蛍光性分子と、複数のシクロデキストリン分子とを組み合わせることを伴う。生細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞を含む、任意の種類の細胞であってよい。
【0146】
ステップ104は、水溶液を疎水性流体で乳化させて、水性液滴を形成することを伴う。水溶液を、任意の好適な疎水性溶液(例えば、油)に懸濁して、エマルションを作製することができる。エマルションにより形成される液滴は、少なくとも1つの生細胞、(ii)少なくとも1つの蛍光性分子、及び、(iii)少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む。いくつかの実施形態では、生細胞の生存能を維持するために、エマルションの温度を、約40℃未満で維持する。
【実施例
【0147】
ある特定の実施形態を示すために、以下の実施例、加えて図を含める。実施例または図面において開示された技術は、本発明の実行において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表し、したがって、その好ましい実行のモードを構成すると考えられ得ることを、当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされるが、それでも同様なまたは類似する結果を得ることができることを理解するべきである。
【0148】
実施例1:核となる技術
個別の細胞を、生細胞の存在下で、蛍光性となる、または、いくつかの実施形態では、蛍光を失う、細胞生存能色素と共に、ピコスケールの液滴に封入する。ある特定の実施形態では、レサズリンベースの色素を使用する。生細胞の存在下において、レゾルフィン分子は速やかに、ピコスケールの液滴環境内で濃縮し、容易に検出可能な蛍光シグナルを生成する。
【0149】
シクロデキストリンは、細胞生存能色素及び個別細胞と共に封入される。シクロデキストリンは、生細胞の存在下で、非蛍光性分子を蛍光性分子に、または蛍光性分子を非蛍光性分子に転換することに影響を及ぼさず、液滴の外への、蛍光性生成物の漏洩を緩和する。
【0150】
各細胞がレサズリンを還元する速度は、透過性、代謝プロファイル、サイズ、及び増殖速度などの、細胞特異的な特性に依存する。さらに、液滴内のピコスケール環境内では、封入された細胞は、レゾルフィンがハイドロレゾルフィンを還元するか否かを判定する条件(例えば、酸化還元電位)を支配する。異なる細胞型(例えば、異なる微生物種)が、経時的に固有の蛍光性「シグネチャー」を生成し、各液滴中での、細胞型の特定を可能にすることを、結果は示す。
【0151】
追加の蛍光性試薬もまた、必要に応じてこれらのアッセイに組み込み、シグナル変動を増大させ、それによって、必要に応じてシグネチャーに特異性を付与することができる。さらに、微生物細胞に関しては、抗菌剤を液滴に導入することと、抗菌剤を含有するこれらの液滴からの生存能シグナルを、抗菌剤を含有しない液滴からの生存能シグナルと比較することと、により、抗菌感受性(AST)を測定することができる。
【0152】
数万個の液滴を2次元アレイに配置し、LED励起及びCMOSセンサ検出を備える広視野イメージングシステムを用いて、各液滴からの蛍光を記録することによって、反応がリアルタイムで観察される。
【0153】
ディープラーニングにより駆動されるニューラルネット。機械学習を使用して、蛍光シグネチャーにより、細胞(例えば、微生物)を認識し、薬剤の感受性を判定することができる。具体的には、専用のディープニューラルネットワーク構造を使用して、識別(ID)及び抗生物質感受性(AST)結果を解釈することができる。機械学習を利用することにより、単一細胞の解像において明らかな表現型の差異に基づき細菌を分類することができ、同じ検出様式を用いて、病原体の識別及び抗生物質感受性の、シームレスな一体化が可能となる。本発見により、試験コスト及び複雑性を、比類なく軽減することが可能となる。ニューラルネット入力データは、2次元液滴アレイからの時系列画像に基づく。専用ソフトウェアは、経時的に液滴を識別及び追跡し、時間に対する、液滴1つ当たりの蛍光強度の波形を生成する。
【0154】
細菌IDのために、抗生物質を含有しない「対照」回路のみを使用する。各液滴を分類し、それぞれの種に対する全液滴の数を数える。各抗生物質に対して、抗生物質が存在しない制御回路を、抗生物質が特定の濃度で存在する試験回路と比較する。ニューラルネットワークは、対照回路と、抗生物質試験回路との間で、波形がどのように変化するかを比較することにより、抗生物質の有効性を判定する。
【0155】
病原体の識別。ID及びASTを合わせると、臨床医に、状態(例えば、細菌感染症)を正確に処置するために必要な、決定的な情報が提供される。病原体識別の値は、ASTの結果が入手可能となる時期に依存する。現在の枠組みの下では、ID結果は、AST結果が入手可能となる数時間前に、場合によっては、数日前に入手可能である。適時のAST結果がないと、IDに、臨床医が抗生物質レジメンを調整するのに役立つ種分化を付与する負荷が増大する。
【0156】
例えば、AST結果がないと、臨床医は、A. baumanniiは多くの場合、他のAcinetobacterが耐性を持たないある特定の抗生物質に対して耐性を持つため、Acinetobacter baumanniと他のAcinetobacter属を区別したくなるであろう。
【0157】
しかし、完全な耐性プロファイルが明らかとなり、CLSIガイドラインに従い、AST結果によりガイドされる行動が、全てのAcinetobacter属に対して同一であるため、AST結果が、ID結果と同時に入手可能であれば、A. baumanniiと他のAcinetobacterとを区別する必要はなくなる。
【0158】
ID及びAST結果が同時に入手可能となれば、ID結果を使用して、CLSIガイドラインに従いAST結果を解釈し、感染症に対するアンチバイオグラムが産生される(アンチバイオグラムは、感染症が、列挙した各抗生物質に対して、感染しやすい(S)、中間である(I)、または耐性がある(R)かについて試験された、抗生物質の一覧である)。これは、微生物学実験室において、最も臨床的に重要な試験結果であると、広範で考えられる。
【0159】
実施例2:シクロデキストリンは、液滴の外側への、蛍光性生成物の漏洩を緩和した。
増殖培地、細菌細胞、生存能インジケーター、及びシクロデキストリンをバルク(分散相)で組み合わせ、油及び界面活性剤(連続相)を含有するマイクロ流体回路に分注した。別個の反応において、同一の増殖培地、細菌細胞、及び生存能インジケーター(シクロデキストリンを含まない)を、同一の連続相を含有する、別個のマイクロ流体回路に分注した。次に、各分散相を、対応するマイクロ流体回路に区画化し、数千ピコリットルスケールの液滴を、2次元液滴アレイに形成した。液滴を、38℃の一定温度で6時間、インキュベートした。2分毎に、各液滴の蛍光強度を捕捉する画像を撮影した。6時間のインキュベーション終了時に、144個の画像を使用して、時間の関数として、液滴強度波形を生成した。
【0160】
これらの実験結果を図23~26に示し、これらは、シクロデキストリンが、液滴の外への、蛍光性レポーターの漏洩を防いだことを示す。具体的には、図23A~Cは、Klebsiella pneumoniae細胞を含有する液滴に、2mMのシクロデキストリンを添加すると、蛍光マーカーの漏洩が軽減されたことを示した。図23Aは、シクロデキストリンを欠く液滴と比較して、2mMのシクロデキストリンを含有する液滴に対して、生存能指標強度が増大したグラフ表示である。加えて、個別の液滴の蛍光強度は、シクロデキストリンが添加されていない場合(図23C)よりも、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図23B)において、有意に高かった。さらに、シクロデキストリン非添加(図23C)と比較して、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図23B)に見られる、対比の増大によって、シクロデキストリンを添加した際に、それぞれの液滴内で蛍光性分子が保持されたことが確認される。
【0161】
Escherichia coli細胞を含有する液滴に、2mMのシクロデキストリンを添加することで、蛍光マーカーの漏洩が低減したことを、図24A~Cは示した。図24Aは、シクロデキストリンを欠く液滴と比較して、2mMのシクロデキストリンを含有する液滴に対して、生存能指標強度が増大したグラフ表示である。加えて、個別の液滴の蛍光強度は、シクロデキストリンが添加されていない場合(図24C)よりも、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図24B)において、有意に高かった。さらに、シクロデキストリン非添加(図24C)と比較して、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図24B)に見られる、対比の増大によって、シクロデキストリンを添加した際に、それぞれの液滴内で蛍光性分子が保持されたことが確認される。
【0162】
Serratia marcescens細胞の第1の株を含有する液滴に、2mMのシクロデキストリンを添加することで、蛍光マーカーの漏洩が低減したことを、図25A~Cは示した。図25Aは、シクロデキストリンを欠く液滴と比較して、2mMのシクロデキストリンを含有する液滴に対して、生存能指標強度が増大したグラフ表示である。加えて、個別の液滴の蛍光強度は、シクロデキストリンが添加されていない場合(図25C)よりも、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図25B)において、有意に高かった。さらに、シクロデキストリン非添加(図25C)と比較して、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図25B)に見られる、対比の増大によって、シクロデキストリンを添加した際に、それぞれの液滴内で蛍光性分子が保持されたことが確認される。
【0163】
Serratia marcescens細胞の第2の株を含有する液滴に、2mMのシクロデキストリンを添加することで、蛍光マーカーの漏洩が低減したことを、図26A~Cは示した。図26Aは、シクロデキストリンを欠く液滴と比較して、2mMのシクロデキストリンを含有する液滴に対して、生存能指標強度が増大したグラフ表示である。加えて、個別の液滴の蛍光強度は、シクロデキストリンが添加されていない場合(図26C)よりも、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図26B)において、有意に高かった。さらに、シクロデキストリン非添加(図26C)と比較して、2mMのシクロデキストリンを添加した場合(図26B)に見られる、対比の増大によって、シクロデキストリンを添加した際に、それぞれの液滴内で蛍光性分子が保持されたことが確認される。
【0164】
有益な、液滴中での蛍光強度の増大、及び、液滴間での蛍光漏洩の低減は、他の種類の生細胞を用いる際に確認される。他の種類の細胞の例としては、他の細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞が挙げられる。
【0165】
実施形態の列挙
実施形態1:エマルションに懸濁した水性液滴内で、蛍光性分子を保持する方法であって、上記方法は、水溶液中で、複数の生細胞と、複数の蛍光性分子と、複数のシクロデキストリン分子とを組み合わせることと、上記水溶液を疎水性流体で乳化させて、上記水性液滴を形成することと、を含み、上記水性液滴の少なくとも1つは、(i)上記複数の生細胞の均質なアグリゲート中に、単一の生細胞または単一の細胞種、(ii)上記複数の蛍光性分子の、少なくとも1つの蛍光性分子、及び、(iii)上記複数のシクロデキストリン分子の、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む、上記方法。
【0166】
実施形態2:上記複数の生細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の方法。
【0167】
実施形態3:上記複数の生細胞は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの少なくとも1つの生細胞を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0168】
実施形態4:上記複数の生細胞は、ヒト細胞を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0169】
実施形態5:上記ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する、実施形態4に記載の方法。
【0170】
実施形態6:上記疎水性流体は、油を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態7:上記油は、フルオロカーボン油である、実施形態6に記載の方法。
【0172】
実施形態8:上記蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態9:上記疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である、実施形態8に記載の方法。
【0174】
実施形態10:上記シクロデキストリン分子は、α-シクロデキストリン分子、β-シクロデキストリン分子、またはγ-シクロデキストリン分子である、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0175】
実施形態11:上記蛍光性分子及び上記シクロデキストリン分子は、上記生細胞の生存能、または代謝活性を妨害しない、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態12:上記組み合わせること、及び上記乳化は、40℃以下の温度で実施される、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
【0177】
実施形態13:上記水溶液中で界面活性剤を組み合わせることをさらに含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
【0178】
実施形態14:上記界面活性剤はフルオロ界面活性剤である、実施形態13に記載の方法。
【0179】
実施形態15:疎水性流体に懸濁した複数の水性液滴を含むエマルションであって、上記水性液滴の少なくとも1つは、均質なアグリゲート中の、単一の生細胞または単一の細胞種;少なくとも1つの蛍光性分子;及び、少なくとも1つのシクロデキストリン分子を含む、上記エマルション。
【0180】
実施形態16: 均質なアグリゲート中の、上記単一の生細胞または上記単一の細胞種は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞のうちの1つを含む、実施形態15に記載のエマルション。
【0181】
実施形態17:均質なアグリゲート中の、上記単一の生細胞または上記単一の細胞種は、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、及びSerratia marcescensのうちの1つを含む、実施形態15または16に記載のエマルション。
【0182】
実施形態18:均質なアグリゲート中の、上記単一の生細胞または上記単一の細胞種は、ヒト細胞を含む、実施形態15または16に記載のエマルション。
【0183】
実施形態19:上記ヒト細胞は、痰、唾液、尿、血液、脳脊髄液、精漿、大便、または組織に由来する、実施形態18に記載のエマルション。
【0184】
実施形態20:上記疎水性流体は、油を含む、実施形態15~19のいずれかに記載のエマルション。
【0185】
実施形態21:上記油は、フルオロカーボン油である、実施形態20に記載のエマルション。
【0186】
実施形態22:上記蛍光性分子は、疎水性蛍光性分子である、実施形態15~21のいずれかに記載のエマルション。
【0187】
実施形態23:上記疎水性蛍光性分子は、レサズリン色素分子、アクリジン分子、テトラゾリウム色素分子、クマリン色素分子、アントラキノン色素分子、シアニン色素分子、アゾ色素分子、キサンテン色素分子、アリールメチン色素分子、ピレン誘導体色素分子、または、ルテニウムビピリジル錯体色素分子である、実施形態22に記載のエマルション。
【0188】
実施形態24:上記少なくとも1つのシクロデキストリン分子は、少なくとも1つのα-シクロデキストリン分子、少なくとも1つのβ-シクロデキストリン分子、または少なくとも1つのγ-シクロデキストリン分子である、実施形態15~23のいずれかに記載のエマルション。
【0189】
実施形態25:上記蛍光性分子及び上記シクロデキストリン分子は、(i)均質なアグリゲート中の、上記単一の生細胞または上記単一の細胞種と生体適合性であり、かつ、(ii)均質なアグリゲート中の、上記単一の生細胞または上記単一の細胞種の代謝活性を妨害しない、実施形態15~24のいずれかに記載のエマルション。
【0190】
実施形態26:上記水性液滴の上記少なくとも1つは、界面活性剤をさらに含む、実施形態15~25のいずれかに記載のエマルション。
【0191】
実施形態27:上記界面活性剤はフルオロ界面活性剤である、実施形態26に記載のエマルション。
【0192】
前述の説明は、説明を目的として提示されている。これは網羅的なものではなく、本発明を、開示される厳密な形態または実施形態に限定するものではない。本発明の修正及び順応は、本明細書の考慮及び本発明の開示される実施形態の実践から、当業者に明らかとなろう。
【0193】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書に開示される本発明の実践から、当業者に明らかとなろう。本明細書及び実施例は、例示的なものにすぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲及び精神は、次の特許請求の範囲によって示される。
図1
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図26B
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【国際調査報告】