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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】肥満細胞関連障害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P25/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P19/04
A61P11/00
A61P1/16
A61P9/00
A61P7/00
A61P29/00
A61P9/12
A61P7/10
A61P1/00
A61P13/12
A61P1/18
A61P21/00
A61P19/08
A61P37/02
A61P3/10
A61P13/10
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520819
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2022015064
(87)【国際公開番号】W WO2023059113
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0133123
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520253694
【氏名又は名称】ノベルティー、ノビリティー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク、サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、グァンヒョク
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片を伴う方法及び使用が本願において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体に配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法。
【請求項2】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:11及び12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片がSCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体に抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法であって、
ここで、抗体抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである方法。
【請求項7】
1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体に配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含む抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法であって、
ここで、CDRの変異体は少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである方法。
【請求項8】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:7と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含むものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含むものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗-c-Kit抗体が2価単一特異的抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗-c-Kit抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗-c-Kit抗体がネイキッド抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
対象体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路が経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片を含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬組成物。
【請求項21】
対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法で用いるための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬の製造のための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は肥満細胞関連障害の治療に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満細胞は身体全体にわたって結合組織で発見される免疫細胞である。肥満細胞は多重メカニズムを通じてバクテリア、ウイルス及び寄生虫感染に対する感染性疾患で保護の役割をする。肥満細胞の保護の役割にもかかわらず、過度な増殖及び異常な活性化は多様な肥満細胞疾患を誘発する。ほとんどの肥満細胞疾患はIgE-媒介された脱顆粒化によって誘発される。例えば、喘息、慢性自発性じんましん(CSU)、アレルギー性鼻炎(AR)、アトピー性皮膚炎(AD)、食物アレルギー、及びアナフィラキシーをはじめとするアレルギー性疾患は最もよくある肥満細胞疾患である。
【0003】
肥満細胞脱顆粒化を抑制する抗-IgEモノクローナル抗体(例えば、オマリズマブ及びリゲリズマブ)はアレルギー性喘息及びCSUの治療のために開発され、食品医薬局(Food and Drug Administration)により承認された。オマリズマブの作用メカニズムは、循環IgEを中和させ、FcεRI発現を減少させることによって脱顆粒化を抑制することである。しかし、オマリズマブは、肥満細胞疾患の根本的な原因であり得る肥満細胞の数を減少させることができないので限界がある(例えば、[Beck LA,et al., J Allergy Clin Immunol 114:527-30]参照)。従って、オマリズマブ治療のためには2又は4週の間隔で繰り返される連続投与が必要である(IgE水準及び体重によって皮下で4週ごとに150-300mg又は2週ごとに225-375mg)(例えば、[Easthope S et al.,(2001) Drugs 61:253-60]参照)。これは、また、オマリズマブが肥満細胞症及び肥満細胞活性化症候群(MCAS)で不充分な効能を有する理由である(例えば、[Weiler CR (2019) J Allergy Clin Immunol Pract 7:2396-2397]参照)。
【0004】
結果的に、肥満細胞関連障害を効果的に管理又は治療する療法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗-IgE抗体の限界を克服するために、本開示内容は、肥満細胞の増殖及び脱顆粒化をいずれも抑制できる治療抗体を開発することを目的とした。本開示内容は、ヒトc-Kitの特異的ドメインに結合する抗体が肥満細胞の増殖及び移動、及び幹細胞因子(SCF)によるサイトカイン分泌の調節を抑制するということを示す。
【0006】
一実施様態において、本開示内容は、ヒトc-Kitの免疫グロブリン-類似(“Ig-類似”)ドメインD2及びD3に特異的に結合する抗-c-Kit抗体を用いて肥満細胞-関連障害及び/又はその1つ以上の症状の治療、予防、管理又は好転に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施様態において、本開示内容は、1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体にヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法に関するものである。
【0008】
更に他の実施様態において、本開示内容は、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法で用いるための、ヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片に関するものである。
【0009】
更に他の実施様態において、本開示内容は、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬の製造のための、ヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用に関するものである。
【0010】
更に他の実施様態において、本開示内容は、ヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片を含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬組成物に関するものである。
【0011】
一実施様態において、ヒトc-Kitエピトープは配列番号(SEQ ID NO):13のアミノ酸配列を含み得る。
【0012】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び/又は12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合し得る。
【0013】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合し得る。
【0014】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合し得る。
【0015】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合する。
【0016】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争し得る。
【0017】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含み得るか、又は、CDRの変異体を含み得、CDRの変異体は少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含み得る。
【0018】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含み得る。
【0019】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含み得る。
【0020】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含み得る。
【0021】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含み得る。
【0022】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体は、2価単一特異的抗体であり得る。
【0023】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体はヒト化抗体であり得る。
【0024】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体はヒト抗体であり得る。
【0025】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体はネイキッド抗体であり得る。
【0026】
一実施様態において、対象体はヒトであり得る。
【0027】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量は約0.01mg/kg~1,000mg/kgであり得る。
【0028】
一実施様態において、肥満細胞関連障害は、肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択され得る。
【0029】
一実施様態において、肥満細胞関連障害は、慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択され得る。
【0030】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路は、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つであり得る。
【0031】
本願に記載された薬剤、方法、医薬組成物、使用のための抗体、及び/又は抗体の使用の非制限的な実施様態が下記に提示される:
【0032】
1.1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体に配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法。
【0033】
2.実施様態1において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11又は12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである方法。
【0034】
3.実施様態1又は2において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである方法。
【0035】
4.実施様態1~3のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである方法。
【0036】
5.実施様態1~4のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである方法。
【0037】
6.実施様態1~5のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである方法。
【0038】
7.実施様態1~6のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含み、CDRの変異体が少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである方法。
【0039】
8.実施様態1~7のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである方法。
【0040】
9.実施様態1~8のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである方法。
【0041】
10.実施様態1~9のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7を含むVH及び配列番号:8を含むVLを含むものである方法。
【0042】
11.実施様態1~10のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:9を含む重鎖及び配列番号:10を含む軽鎖を含み得るものである方法。
【0043】
12.実施様態1~11のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体が2価単一特異的抗体である方法。
【0044】
13.実施様態1~12のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体がヒト化抗体である方法。
【0045】
14.実施様態1~13のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体がネイキッド抗体である方法。
【0046】
15.実施様態1~14のうちいずれか1つにおいて、対象体がヒトである方法。
【0047】
16.実施様態1~15のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである方法。
【0048】
17.実施様態1~16のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである方法。
【0049】
18.実施様態1~17のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである方法。
【0050】
19.実施様態1~18のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路が経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つであり得るものである方法。
【0051】
20.配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片を含む、対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬組成物。
【0052】
21.実施様態20において、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11又は12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである医薬組成物。
【0053】
22.実施様態20又は21において、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである医薬組成物。
【0054】
23.実施様態20~22のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである医薬組成物。
【0055】
24.実施様態20~23のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである医薬組成物。
【0056】
25.実施様態20~24のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである医薬組成物。
【0057】
26.実施様態20~25のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含み、CDRの変異体が少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである医薬組成物。
【0058】
27.実施様態20~26のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである医薬組成物。
【0059】
28.実施様態20~27のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである医薬組成物。
【0060】
29.実施様態20~28のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含むものである医薬組成物。
【0061】
30.実施様態20~29のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含み得るものである医薬組成物。
【0062】
31.実施様態20~30のうちいずれか1つにおいて、抗体が2価単一特異的抗体である医薬組成物。
【0063】
32.実施様態20~31のうちいずれか1つにおいて、抗体がヒト化抗体である医薬組成物。
【0064】
33.実施様態20~32のうちいずれか1つにおいて、抗体がネイキッド抗体である医薬組成物。
【0065】
34.実施様態20~33のうちいずれか1つにおいて、対象体がヒトである医薬組成物。
【0066】
35.実施様態20~34のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである医薬組成物。
【0067】
36.実施様態20~35のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである医薬組成物。
【0068】
37.実施様態20~36のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである医薬組成物。
【0069】
38.実施様態20~37のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路が経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つであり得るものである医薬組成物。
【0070】
39.対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法で用いるための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0071】
40.実施様態39において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11又は12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0072】
41.実施様態39又は40において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0073】
42.実施様態39~41のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0074】
43.実施様態39~42のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0075】
44.実施様態39~43のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0076】
45.実施様態39~44のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含み、CDRの変異体が少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0077】
46.実施様態39~45のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0078】
47.実施様態39~46のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0079】
48.実施様態39~47のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含むものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0080】
49.実施様態39~48のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含み得るものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0081】
50.実施様態39~49のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体が2価単一特異的抗体である使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0082】
51.実施様態39~50のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体がヒト化抗体である使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0083】
52.実施様態39~51のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体がネイキッド抗体である使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0084】
53.実施様態39~52のうちいずれか1つにおいて、対象体がヒトである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0085】
54.実施様態39~53のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0086】
55.実施様態39~54のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0087】
56.実施様態39~55のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0088】
57.実施様態39~56のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路が経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つであり得るものである使用のための抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0089】
58.対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬の製造のための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0090】
59.実施様態58において、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11又は12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0091】
60.実施様態58又は59において、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0092】
61.実施様態58~60のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0093】
62.実施様態58~61のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0094】
63.実施様態58~62のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0095】
64.実施様態58~63のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含み、CDRの変異体が少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0096】
65.実施様態58~64のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0097】
66.実施様態58~65のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0098】
67.実施様態58~66のうちいずれか1つにおいて、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含むものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0099】
68.実施様態58~67のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が、配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含み得るものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0100】
69.実施様態58~68のうちいずれか1つにおいて、抗体が2価単一特異的抗体である抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0101】
70.実施様態58~69のうちいずれか1つにおいて、抗体がヒト化抗体である抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0102】
71.実施様態58~70のうちいずれか1つにおいて、抗体がネイキッド抗体である抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0103】
72.実施様態58~71のうちいずれか1つにおいて、対象体がヒトである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0104】
73.実施様態58~72のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0105】
74.実施様態58~73のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0106】
75.実施様態58~74のうちいずれか1つにおいて、肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【0107】
76.実施様態58~75のうちいずれか1つにおいて、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の投与経路が経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つであり得るものである抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【0108】
77.実施様態39~57のうちいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片及び製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。
【0109】
78.実施様態39~57のうちいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片、又は、実施様態20~38のうちいずれか1つの医薬組成物を含むキット。
【発明の効果】
【0110】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、c-Kitリガンドとしても公知となった幹細胞因子(SCF)の結合を遮断することによってc-Kit信号伝達(例えば、c-Kitのリン酸化経路)を抑制することができる。
【0111】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、c-Kit信号伝達を抑制することによって肥満細胞で増殖、移動及び脱顆粒化を阻害することができる。
【0112】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、アレルギー性症状を悪化させ得る顆粒球-マクロファージコロニー-刺激因子、血管内皮成長因子、C-Cモチーフケモカインリガンド2、脳-由来した神経栄養因子、及び補体成分C5/C5aをはじめとし、これに制限されないプロ-炎症性サイトカインの分泌を阻害することができる。
【0113】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、肥満細胞疾患のための治療剤として用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1図1は、LAD2細胞で2G4及び4C9抗体結合の流動細胞分析法の結果を示す。図1は、2G4及び4C9抗体がLAD2細胞の細胞表面上のc-Kitに結合するということを立証する。
図2図2a及び2bは、LAD2細胞でc-Kitの2G4及び4C9抗体抑制のウェスタンブロットの結果を示す。図2a及び2bは、2G4及び4C9抗体がLAD2細胞でSCF-媒介されたc-Kit活性化を抑制するということを立証する。
図3図3a及び3bは、細胞増殖検定の結果を示す。図3a及び3bは、2G4抗体がLAD2細胞で細胞増殖を抑制するということを立証する。図3a及び3bで、黒色点線(100%)は7日目にSCF及び抗体がないウェルで正規化された細胞カウントを示す。
図4図4は、移動検定の結果を示す。図4は、2G4抗体がLAD2細胞で細胞移動を抑制するということを立証する。全ての結果は3回独立実験の平均±SDを示す。*SCF/抗体に比べ、及び、#SCF/抗体に比べ。*P<0.05、及び#P<0.05(スチューデント(Student)両側t-検定)。
図5図5a、5b、5c及び5dは、肥満細胞脱顆粒化検定の結果を示す。図5a、5b及び5cは、2G4抗体が敏感化されていない、IgE-敏感化及びIFN-γ-敏感化LAD細胞で抗体-媒介された肥満細胞脱顆粒化を誘発しないが、4C9抗体が脱顆粒化を誘発するということを立証する。図5dは、2G4抗体がSCFによって増強されたIgE-媒介された脱顆粒化を抑制するということを立証する。全ての結果は3回独立実験の平均±SDを示す。*、**、及び***非処理に比べ;#、##、及び###SCF/ストレプトアビジンに比べ;§、§§、及び§§§SCF/ストレプトアビジンに比べ;†、††、及び†††SCF/ストレプトアビジンに比べ;及び‡、‡‡、及び‡‡‡SCF/ストレプトアビジンに比べ。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001;#P<0.05、##P<0.01、及び###P<0.001;§P<0.05、§§P<0.01、及び§§§P<0.001;†P<0.05、††P<0.01、及び†††P<0.001;及び‡P<0.05、‡‡P<0.01、及び‡‡‡P<0.001(ダネット(Dunnett)事後-検定とともに一元ANOVA)。
図6図6は、サイトカイン-放出検定の結果を示す。図6は、2G4抗体がサイトカイン分泌の調節を抑制するということを立証する。図6で、結果は3回独立実験の平均±SDを示す。*、**、及び***IgE+ビヒクルに比べ;#、##、及び###IgE+ストレプトアビジンに比べ;§、§§、及び§§§IgE+ストレプトアビジン/SCFに比べ。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001;#P<0.05、##P<0.01、及び###P<0.001;及び§P<0.05、§§P<0.01、及び§§§P<0.001(スチューデント両側t-検定)。
図7図7は、サイトカイン-放出検定の結果を示す。図7は、2G4がサイトカイン分泌の調節を抑制するということを立証する。CCL5、M-CSF及びIL-2をはじめとする特定のサイトカインはSCFによって減少し、サイトカイン放出の減少は2G4によって抑制された(図7)。*、**、及び***IgE+ビヒクルに比べ;#、##、及び###IgE+ストレプトアビジンに比べ;§、§§、及び§§§IgE+ストレプトアビジン/SCFに比べ。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001;#P<0.05、##P<0.01、及び###P<0.001;及び§P<0.05、§§P<0.01、及び§§§P<0.001(スチューデント両側t-検定)。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本開示内容の多様な実施様態又は実施例は、本出願の例示及び/又は説明の目的のためのものであり、制限的なものとして意図されない。本開示内容は、本出願に記載されたそれぞれの実施様態又は実施例の多様な変形、等価物及び/又は代案、及び/又は本出願に記載されたそれぞれの実施様態又は実施例の全て又は一部の任意の可能な組合わせを含む。本開示内容の権利範囲は下記に提示された多様な実施様態又は実施例、若しくは、実施様態又は実施例の具体的な説明に制限されない。
【0116】
本出願で用いられた全ての技術的及び科学的用語は、特に定義されなければ、一般的に本開示内容の属する技術分野の通常の技術者によって理解される一般的な意味を有する。本出願で用いられた全ての用語は、本開示内容の記載及び/又は説明の目的で選択され、本開示内容による権利範囲を制限するものとして意図されない。本開示内容の組成物及び方法を記載及び/又は説明するにおいて追加の指針を提供するために特定の用語を本出願で論議する。
【0117】
I.定義
【0118】
本開示内容で用いられるたびに、単数の形態及び単数の単語は、文脈上、特に明示されなければ、複数形を含み、請求項に提示された単数の形態及び単語にも同一に適用される。例えば、「化合物」は複数のこのような化合物を含み、「化合物A」は複数の化合物Aを含む。
【0119】
用語「及び/又は」は、項目のうち任意の1つ以上、項目の任意の組合わせ、又はこの用語が連関した全ての項目を意味する。用語「含有した」、「含有する」、「含んだ」、「含む」、「有した」、「有する」又はこれらの変形は、用語「含んだ」と類似の方式で包括的に解釈される。
【0120】
本出願に引用された全ての範囲は、任意の可能な全ての下位範囲及びその下位範囲の組合わせを含み得る。引用された範囲には範囲内のそれぞれの具体的な値、整数又は小数が含まれる。関連技術分野の通常の技術者は、任意の引用された範囲が引用された範囲の1/2、1/3、1/4、1/5又は1/10をはじめとし、これに制限されないその下位範囲を十分に記載するか、及び/又は可能にするということを容易に理解することができる。
【0121】
用語「超」、「少なくとも」、「以上」、「未満」等は、引用された数字を含み、上記用語は、上記論議した下位範囲に分けられることができる範囲を指す。範囲について引用された具体的な値は、単に例示の目的のためのものであり、制限的なものとして意図されず、これらは範囲内の他の値を排除しない。
【0122】
特に示さなければ、用語「約」及び「略」は、一般に関連技術分野の技術者に広く公知となった通り引用された範囲に近接した値又は許容可能な程度の誤差内の値を含む。許容可能な程度の誤差は、測定値の性質又は精度の観点から決定され得る。一実施様態において、許容可能な程度の誤差は、組成物又は方法又は実施様態の機能性の観点から同等性を基盤として決定され得る。一実施様態において、本開示内容に提示された数値又は範囲の脈絡で、用語「約」又は「略」は、提供された値の±25%、±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%又は±1%の変動を指し得る。更に他の実施様態において、特に生物学的システムで、用語「約」及び「略」は、与えられた値の9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍又は2倍以内である一桁数内の値を意味し得る。本出願に提供された全ての数値的量は、特に明示されなければ、近似値である。追加で、これらの量は、本質的にそれらの測定から必然的に発生する変動性を含む。
【0123】
本願で用いられた通り、用語「抗体」及び「免疫グロブリン」及び「Ig」は、関連技術分野の用語であり、本願で相互交換的に用いられることができ、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を指す。
【0124】
本願で用いられた通り、「抗原」はエピトープを含有するモイエティ又は分子であり、従って、また、抗体によって特異的に結合される。具体的な実施様態において、本願に記載された抗体が結合する抗原はc-Kit(例えば、ヒトc-Kit)、又は、その断片、例えば、c-Kit(例えば、ヒトc-Kit)の細胞外ドメイン又はc-Kit(例えば、ヒトc-Kit)のD2及び/又はD3領域である。
【0125】
本願で用いられた通り、用語「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、「抗原結合断片」及び類似の用語は、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性を抗体分子に付与するアミノ酸残基(例えば、相補性決定領域(CDR))を含む抗体分子の一部を指す。抗原結合領域は、任意の動物種、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット又はハムスター)及びヒトに由来し得る。抗体分子のCDRは、関連技術分野の通常の技術者に広く公知となった任意の方法によって決定され得る。
【0126】
本願で用いられた通り、用語「不変領域」又は「不変ドメイン」は、抗原に対する抗体の結合に直接的に関与しないが、多様なエフェクタ機能、例えば、Fc受容体との相互作用を示すか、又は、それに寄与する抗体の部分、例えば、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端の部分を指す。上記用語は、免疫グロブリン可変ドメインに比べて一般にさらに保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。
【0127】
本願で用いられた通り、「エピトープ」は関連技術分野の用語であり、抗体が特異的に結合できる抗原の局部領域を指す。エピトープに寄与する領域又はポリペプチドは、ポリペプチドの連続したアミノ酸であり得るか、又は、エピトープはポリペプチドの2個以上の連続していない領域から共に出ることができる。
【0128】
本願で用いられた通り、用語「重鎖」は、抗体と関連して用いられる時、不変ドメインのアミノ酸配列を基盤とする任意の別個の類型、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指し、それぞれ抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM部類を生成し、IgGの下位部類、例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。具体的な実施様態において、重鎖はヒト重鎖である。
【0129】
本願で用いられた通り、「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」及び「特異的に認識する」という用語は、抗体の脈絡で類似の用語であり、抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合する分子を指し、このような結合は関連技術分野の通常の技術者によって理解される。例えば、抗原に特異的に結合する分子は、免疫検定、ビアコア(Biacore)TM、キネクサ(KinExA)3000装備(サピダインインスツルメンツ(Sapidyne Instruments)、アイダホ州ボイシ)又は関連技術分野で公知となった他の検定によって決定されるように、一般に更に低い親和度で他のペプチド又はポリペプチドに結合し得る。具体的な実施様態において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、分子が更に他の抗原に結合する時のKaより少なくとも2ログ、2.5ログ、3ログ、4ログ又はそれ超でKaで抗原に結合する。更に他の具体的な実施様態において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、他の蛋白質と交差反応しない。更に他の具体的な実施様態において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、他の非-KIT蛋白質と交差反応しない。
【0130】
本願で用いられた通り、「単離された」又は「精製された」抗体には抗体が由来した細胞又は組織供給源からの細胞物質又は他の汚染蛋白質が実質的にないか、又は、化学的に合成される時の化学的前駆体又は他の化学物質が実質的にない。
【0131】
本願で用いられた通り、用語「軽鎖」は、抗体と関連して用いられる時、任意の別個の類型、例えば、不変ドメインのアミノ酸配列を基準にカッパ(κ)又はラムダ(λ)を指す。軽鎖アミノ酸配列は、関連技術分野に広く公知となっている。具体的な実施様態において、軽鎖はヒト軽鎖である。
【0132】
本願で用いられた通り、用語「モノクローナル抗体」は、相同性である、又は、実質的に相同性である抗体の集団から得られた抗体を指し、それぞれのモノクローナル抗体は典型的に抗原上の単一エピトープを認識するはずである。用語「モノクローナル」は、抗体の任意の特定の製造方法に制限されない。一般に、モノクローナル抗体の集団は、細胞、細胞集団、又は、細胞株によって生成され得る。具体的な実施様態において、本願で用いられた通り、「モノクローナル抗体」は単一ハイブリドーマ又は他の細胞(例えば、組換え抗体を生成する宿主細胞)によって生成された抗体であり、抗体は、例えば、ELISA、又は、関連技術分野で、又は、本願に提供された実施例で公知となった他の抗原-結合、又は、競争的結合検定によって決定されるように、c-Kitエピトープ(例えば、ヒトc-KitのD2及び/又はD3のエピトープ)に免疫特異的に結合する。本願に記載されたモノクローナル抗体は、例えば、[Kohler et al.;Nature、256:495(1975)]に記載されたハイブリドーマ方法によって製造され得るか、又は、例えば、本願に記載された技術を用いてファージライブラリーから単離され得る。クローナル細胞株及びそれによって発現したモノクローナル抗体の他の製造方法は関連技術分野に広く公知となっている(例えば、[Chapter 11 in:Short Protocols in Molecular Biology,(2002) 5th Ed.,Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New York]参照)。具体的な実施様態において、モノクローナル抗体は、その抗原結合領域が同一であるエピトープに対して特異的な単一特異的抗体である。さらに具体的な実施様態において、モノクローナル単一特異的抗体は、1価(1つの抗原結合領域を有する)又は多価(1つ超の抗原結合領域を有する)、例えば、2価(2つの抗原結合領域を有する)であり得る。
【0133】
本願で用いられた通り、用語「ネイキッド抗体」は、更に他の作用剤又は分子(例えば、標識又は薬品)、ペプチド又はポリペプチドに連結されるか、融合するか、又は、接合されていない抗体を指す。具体的な実施様態において、哺乳動物宿主細胞によって発現したネイキッド抗体は、宿主細胞のグリコシル化機構、例えば、グリコシル化酵素によってグリコシル化し得る。特定の実施様態において、ネイキッド抗体がそれ自体グリコシル化機構、例えば、グリコシル化酵素を有しない宿主細胞によって発現する時にはグリコシル化しない。特定の実施様態において、ネイキッド抗体は全体抗体であり、他の実施様態において、ネイキッド抗体は全体抗体の抗原結合断片、例えば、Fab抗体である。
【0134】
本願で用いられた通り、用語「ポリクローナル抗体」は、抗原又は抗原内の同一の、及び、異なるエピトープに対して指定された多様な異なる抗体を含む抗体集団を指す。ポリクローナル抗体の生成方法は関連技術分野で公知となっている(例えば、[Chapter 11 in:Short Protocols in Molecular Biology,(2002) 5th Ed.,Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New York]参照)。
【0135】
本願で用いられた通り、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって単離されるか、製造されるか、発現するか、又は、生成されたヒト抗体、例えば、宿主細胞で形質感染された組換え発現ベクターを用いて発現した抗体、組換え、組合わせヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニック及び/又はトランス染色体性である動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ又はウシ)から単離された抗体(例えば、[Taylor, L. D. et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295]参照)、又は、生成を伴う任意の他の手段によって、例えば、合成、ヒト免疫グロブリン配列をコードするDNA配列の遺伝子操作、又は、ヒト免疫グロブリンをコードする配列、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列をこのような他の配列でスプライシングを通じて製造されるか、発現するか、生成されるか、又は、単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来した可変及び不変領域を有し得る。特定の実施様態において、このような組換えヒト抗体のアミノ酸配列は、組換え抗体の重鎖可変領域(「VH」)及び/又は軽鎖可変領域(「VL」)のアミノ酸配列がヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、それと関連があるが、生体内でヒト抗体生殖系列レパートリー内に自然に存在しない配列であるように変形された。非制限的な例として、組換えヒト抗体は、いくつかのヒト配列断片を組換えヒト抗体の複合ヒト配列に組み立てることによって得られることができる。
【0136】
本願で用いられた通り、用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の一部、一般に、軽鎖又は重鎖の一部、典型的に、成熟した重鎖でアミノ-末端の約110~120個のアミノ酸、及び、成熟した軽鎖で約90~100個のアミノ酸を指し、これは抗体の間で配列が広範囲に異なり、その特定の抗原に対する特定の抗体の結合及び特異性として用いられる。配列の可変性は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれるこれらの領域に集中している一方、可変ドメインで更に高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ある特定のメカニズム又は理論にとらわれることを願うのではないが、軽鎖及び重鎖のCDRが主に抗体と抗原の相互作用を担うと信じられる。特定の実施様態において、可変領域はヒト可変領域である。特定の実施様態において、可変領域はげっ歯類又はミューリンCDR及びヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の実施様態において、可変領域は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。特定の実施様態において、可変領域はげっ歯類又はミューリンCDR及び霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。非制限的な例として、本願に記載された可変領域は、ヒト配列の2つ以上の断片を複合ヒト配列に組み立てることによって得られる。
【0137】
本願で用いられた通り、用語「交差競争する」又は「交差競争」は、抗原結合蛋白質が標的上の同一のエピトープ又は結合部位に対して競争するということを意味する。このような競争は、参照抗原結合蛋白質(例えば、抗体又はその抗原-結合の部分)は試験抗原結合蛋白質の特異的結合を防止又は抑制し、その反対の場合にも、同様の検定によって決定され得る。数多くの類型の競争的結合検定を用いて、試験分子が結合のために参照分子と競争するかを決定することができる。用いられ得る検定の例には、固相直接又は間接放射線免疫検定(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫検定(EIA)、サンドイッチ競争検定(例えば、[Stahli et al. (1983) Methods in Enzymology 9:242-253]参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、[Kirkland et al. (1986) J. Immunol. 137:3614-3619]参照)、固相直接標識された検定、固相直接標識されたサンドイッチ検定、ルミネクス(Luminex)(Jia et al.,“A novel method of Multiplexed Competitive Antibody Binning for the characterization of monoclonal antibodies” J. Immunol. Methods (2004) 288,91-98)及び表面プラズモン共鳴(SPR)(Song et al.,“Epitope Mapping of Ibalizumab,a Humanized Anti-CD4 Monoclonal Antibody with Anti-HIV-1 Activity in Infected Patients” J. Virol. (2010) 84,6935-6942)が含まれる。一般に、競争抗原結合蛋白質(又は抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片)が過度に存在する場合、これは共通抗原に対する参照抗原結合蛋白質(又は参照抗体)の結合を少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、又は、75%抑制するはずである。一部の例で、結合は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は、それ超で抑制される。
【0138】
本願で用いられた通り、用語「参照抗体」は、同一のエピトープ、重複エピトープ又は隣接したエピトープに結合する競争抗体の分析のための比較基準の役割をする抗体を意味し、エピトープに対する結合のために上記競争抗体と交差競争する。
【0139】
本開示内容で、用語「医薬組成物」は、組成物に含まれた活性成分の生物学的活性が効果的になるようにする製薬製剤の形態を指し得る。一実施様態において、医薬組成物は、患者に投与されることができる1つ以上の活性成分を含む組成物であり、許容不可能な毒性成分をさらに含まない。
【0140】
本開示内容で、「製薬上許容可能な」という用語は、一般に安全かつ無毒性であり、生物学的に、又は、特に望ましい医薬組成物の製造に有用な物質の性質を指し得、ヒト製薬的適用及び/又は獣医学適用に許容可能である。一実施様態において、「製薬上許容可能な」という用語は、ヒト及び/又は動物において用いるために政府規制機関によって承認されるか、又は、承認可能であるか、又は、米国薬局方、ヨーロッパ薬局方又は他の一般に認識される薬局方に羅列されたものを意味する。
【0141】
本開示内容で、用語「製薬上許容可能な賦形剤」は、治療的に活性ではなく、(非活性)無毒性である任意の成分を指す。一実施様態において、製薬上許容可能な賦形剤には、例えば、製薬製品の剤形化に用いられるように構成された結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、緊張剤、安定化剤、抗酸化剤、界面活性剤又は潤滑剤が含まれ得るが、これに制限されない。
【0142】
本開示内容で、用語「製薬上許容可能な担体」は、活性成分以外の医薬組成物の成分を指し、上記成分は対象体に対して無毒性である。一実施様態において、薬理学的に許容可能な担体には、例えば、緩衝剤、賦形剤、安定化剤又は保存剤が含まれ得るが、これに制限されない。
【0143】
本開示内容で、医薬組成物の「製薬学的有効用量」、「製薬学的有効量」、「投与用量」、「投与量」、「治療有効用量」、「治療有効量」、「有効用量」又は「有効量」という用語は、治療反応又は効果、所望の局所又は全身治療結果又は所望の予防結果を達成するのに十分な(必要な期間投与される)医薬組成物の量を指し得る。一実施様態において、上記用語は、対象体に投与される時、本願に記載された疾患、状態又は障害(例えば、肥満細胞関連障害)を(i)治療するか、又は、予防する、(ii)その1つ以上の症状を緩和させるか、減少させるか、中断させるか、弱化させるか、好転させるか、又は、除去する、若しくは(iii)その1つ以上の症状の開始を予防するか、又は、遅延させる医薬組成物の量を指す。
【0144】
本開示内容で、用語「対象体」又は「患者」は、任意の哺乳動物を指す。「必要とする」ものとして記載された対象体又は患者は、疾患の治療(又は予防)を必要とすることを指す。哺乳動物(即ち、哺乳類動物)にはヒト、実験室動物(例えば、霊長類、ラット、マウス)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ)、及び家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類)が含まれる。対象体はヒトであり得る。対象体はイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ロバ、ヤギ、ラクダ、マウス、ラット、モルモット、ヒツジ、ラマ、サル、ゴリラ又はチンパンジーをはじめとし、これに制限されない非ヒト哺乳動物であり得る。一部の実施様態において、対象体はヒトである。対象体は、健康であるか、又は、任意の発達段階で肥満細胞関連障害を病み得、任意の段階は肥満細胞の増殖又は蓄積によってもたらされるか、又は、肥満細胞関連障害の発達危険があり得る。一部の実施様態において、対象体は肥満細胞関連障害を有する。一部の実施様態において、対象体は慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択された肥満細胞関連障害を有する。
【0145】
本開示内容で、対象体で疾患を「治療する」若しくは、疾患を有しているか、又は、有していると疑われる対象体を「治療する」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状を減少させるか、又は、悪化から予防するように対象体を製薬学的治療に適用すること、例えば、1つ以上の作用剤を投与することを指す。従って、一実施様態において、「治療する」という用語は、特に、進行の遅延、寛解の促進、寛解の誘導、寛解の増大、回復の加速化、代案的な治療剤の効能増加又はそれに対する耐性減少、又は、これらの組合わせを指す。
【0146】
本開示内容で、「投与」は、広範囲には、対象体に組成物を投与する経路を指す。投与経路の例には、経口投与、直腸投与、局所投与、吸入(鼻腔)又は注射が含まれる。注射による投与には、静脈内(IV)、筋肉内(IM)及び皮下(SC)投与が含まれる。本願に記載された医薬組成物は、経口、非経口、腸内、静脈内、腹腔内、局所、経皮(例えば、任意の標準パッチ使用)、皮内、鼻腔(内)、局所、非経口、例えば、エアゾール、吸入、皮下、筋肉内、直腸(経由)、膣、動脈内、及び髄腔内、粘膜経由(例えば、尿道(経由)、膣(例えば、膣経由及び膣周囲)、移植、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、及び気管支内をはじめとし、これに制限されない任意の効果的な経路によって任意の形態で投与され得る。特定の実施様態において、本願に記載された医薬組成物は、経口に、直腸に、局所に、膀胱内に、排水リンパ節内に、又は、隣接して注射によって、静脈内に、吸入又はエアゾールによって、又は、皮下に投与される。一部の特定の実施様態において、本願に記載された医薬組成物は静脈内に投与される。
【0147】
本開示内容で、用語「c-Kit」は、幹細胞因子(SCF)の受容体としても公知となった第III型受容体チロシンキナーゼを指す。「c-Kit」は細胞によって天然的に発現するc-Kitの任意の変異体又はイソ型を含む。従って、本願に開示された抗-c-Kit抗体は同一の種の異なるイソ型(例えば、ヒトc-Kitの異なるイソ型)と交差反応できるか、又は、ヒト以外の種のc-Kit(例えば、マウスc-Kit)と交差反応できる。代案的に、抗-c-Kit抗体はヒトc-Kitに対して特異的であることもあり、他の種のc-Kitと交差反応しないこともある。c-Kit、又は、その任意の変異体及びイソ型は、それらを天然的に発現する細胞又は組織から分離されるか、又は、組換え的に生成され得る。一実施様態において、25個の信号ペプチドを除いたヒトc-Kitのドメイン1~3の配列(Q26~D309)は配列番号:14であり得る。
【0148】
II.抗-c-Kit抗体
【0149】
肥満細胞関連障害を予防するか、治療するか、又は、管理するための方法で用いるためにヒトc-Kit(例えば、ヒトc-Kit受容体の細胞外ドメイン又はIg-類似ドメイン)又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗-c-Kit抗体が本願に提供される。本願に提供された方法で用いるのに適した抗-c-Kit抗体は、本願に記載された通り選択され得る。
【0150】
c-Kitは、細胞外区画に5種類の免疫グロブリン-類似ドメイン(D1-D5)及び細胞内区画に2種類のキナーゼドメインを有する。c-Kitのリガンドである幹細胞因子(SCF)はD1-D3に結合する(例えば、[Liu H, et al., EMBO J 26:891-901]参照)。SCF結合はc-Kitの同種二量体化を誘導し、リン酸化をもたらす。ホスホ-c-Kitはホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)-Akt、マイトジェン-活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)-ERK、SRC、ヤヌス(Janus)キナーゼ(JAK)-信号変換因子及び転写(STAT)経路の活性化剤をはじめとする多重信号伝達経路を活性化させ、細胞増殖、生存、分化及び移動を引き起こす(例えば、[Lennartsson J et al., (2012) Physiol Rev 92:1619-49]参照)。SCF/c-Kitは、肥満細胞において成長、生存及び分化に必須であり、SCF-化学走性を通じて特異的組織への移動及び侵入も誘導する(例えば、[Cruse G et al (2014), Immunol Allergy Clin North Am 34:219-37;El-Agamy DS (2012), Eur J Pharmacol 690:1-3;及びHundley TR et al (2004), Blood 104:2410-7]参照)。追加で、SCFは脱顆粒化及びサイトカイン生成を相乗作用的に増加させることによって炎症性反応を増強させる(例えば、[Okayama Y et al (2006), Immunol Res 34:97-115;及びVarricchi G et al (2018), Immunol Rev 282:8-34]参照)。本開示内容で、c-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合し、c-Kitに対するSCFの結合を抑制する抗体はSCF/c-Kit信号伝達を抑制して、c-Kitのリン酸化及び肥満細胞の増殖、移動及び/又は脱顆粒化を阻害するか、又は、抑制すると確認された。一実施様態において、本開示内容で、抗体は特定の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合し得る。一実施様態において、本開示内容で、抗体はSCFとc-Kitの間に比べて更に大きい結合親和度でc-Kitに特異的に結合し得る。本開示内容で、上記記載された1つ以上の特徴を有する抗体は、c-Kitリン酸化及び肥満細胞の増殖、移動及び/又は脱顆粒化を阻害又は抑制して、1つ以上の肥満細胞関連障害を治療し、予防し、管理し/するか、好転させることができる。
【0151】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、肥満細胞でc-KitとSCFの間の結合を抑制して、SCF/c-Kit信号伝達を抑制又は阻害することができる。一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Kitの特定の(各)Ig-類似ドメインに免疫特異的に結合し得る。具体的には、一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、下記に説明された通り、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に免疫特異的に結合し得、追加でIg-類似ドメインD2及びD3の特定のエピトープに特異的に結合し得る。上記記載されたこのような結合によって、本開示内容の抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、SCF/c-Kit信号伝達を抑制し;肥満細胞での増殖、移動及び脱顆粒化を阻害し/するか;肥満細胞関連障害のアレルギー性症状を悪化させ得るプロ-炎症性サイトカインの分泌を阻害することができる。一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、c-Kitの特定のエピトープ(例えば、下記に追加で記載されるIg-類似ドメインD2及び/又はD3)を標的とする抗体と定義され得、このようなエピトープに免疫特異的に結合する任意の抗体は非制限的に本開示内容の抗-c-Kit抗体として用いられ得、その範囲に含まれ得る。
【0152】
特定の実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD1-D3(配列番号:14)、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD2及びD3(配列番号:13)、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD2のR112-R205領域(配列番号:11)及びヒトc-KitのIg-類似ドメインD3のS240-H263領域(配列番号:12)、又は、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD2及びD3のR122、Y125、R181、K203、R205、S261、及びH263のエピトープに特異的に結合し得る。
【0153】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合し得る。特定の実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263に特異的に結合し得る。一実施様態において、配列番号:14は信号ペプチドの25個配列を除いたヒトc-KitのIg-類似ドメインD1~D3の配列(Q26~D309)であり、上記それぞれのアミノ酸の番号(例えば、R122)は信号ペプチドの25個配列を含むアミノ酸の番号である。従って、例えば、R122は配列番号:14から97番目のアミノ酸配列を意味し、Y125は100番目のアミノ酸配列を意味する。残りのアミノ酸は同一の方式で解釈され得る。
【0154】
特定の実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Kitに対して10-11M以下の平衡解離定数(KD)値を有し得る。一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Kitに対して10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値を有し得る。一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片のヒトc-Kitに対する平衡解離定数(KD)値は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)をはじめとし、これに制限されない関連技術分野で公知となった方法によって測定され得る。具体的には、例えば、抗体製造のために用いられるヒトc-KitであるSR7500DC(ライヒェルト(Reichert)、米国)をPEG(ライヒェルト、米国)チップ上に固定させ得る。その後に、抗-c-kit抗体を濃度別に流動させた後、c-Kitに対する親和度であるKD値を、例えば、スクラバー(Scrubber)2プログラムを用いて分析し得る。特定の実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、上記KDでc-Kitに結合して、SCFとc-Kitの間の結合を抑制し得るか、又は、c-Kitリン酸化を抑制するか、又は、1つ以上の肥満細胞関連障害を治療し、予防し、管理し/するか、好転させるような効果を奏し得る。一実施様態において、抗体又はその抗原結合断片は、SCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合する。特定の実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、上記KDでc-Kitに結合して、SCFとc-Kitの間の結合を抑制し得るか、又は、c-Kitリン酸化を抑制するか、又は、1つ以上の肥満細胞関連障害を治療し、予防し、管理し/するか、好転させるような効果を奏し得る。
【0155】
同一のエピトープ又は重複エピトープを有する抗原結合蛋白質は、たびたび抗原への結合に対して交差競争するはずである。従って、特定の実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体はヒトc-Kitへの結合に対して参照抗体と交差競争し得る。
【0156】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び/又は12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2、及び/又は配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争し得る。
【0157】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び/又は12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:7を含むVH及び/又は配列番号:8を含むVLを含む参照抗体と交差競争し得る。
【0158】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び/又は配列番号:6のVL CDR3を含み得る。
【0159】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:7を含むVH及び/又は配列番号:8を含むVLを含み得る。
【0160】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、CDRに存在する1つ又は2つの(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含み得るが、これに制限されない。
【0161】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH及び/又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0162】
一実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含み得る。
【0163】
一実施様態において、抗体は、例えば、モノクローナル抗体、組換え的に生成された抗体、単一特異的抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ、異種接合体抗体、単一ドメイン抗体、1価抗体、単一鎖抗体又は単一鎖Fv(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド-連結Fv(sdFv)、抗-イディオタイプ(抗-Id)抗体(例えば、抗-抗-Id抗体を含む)、及び上記のうち任意のもののエピトープ-結合断片のうち任意の1つ以上を含み得る。特定の実施様態において、本願に記載された抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。抗体は、免疫グロブリン分子の任意の類型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY)、任意の部類(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2)、又は、任意の下位部類(例えば、IgG2a又はIgG2b)であり得る。特定の実施様態において、本願に記載された抗体は、IgG抗体、又は、その部類(例えば、ヒトIgG1又はIgG4)又は下位部類である。
【0164】
一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、補体-依存性細胞毒性(CDC)及び/又は抗体-依存性細胞毒性(ADCC)を誘発するエフェクタ機能を減少させるように追加で変形され得る。抗体薬品投与は過敏反応(HSR)を誘発し得る。特に、治療抗体はヒト肥満細胞で上方調節されるFcガンマ受容体(FcγR)を通じて肥満細胞脱顆粒化を誘導し得、IgGによるFcγRの交差連結はFcεRIと同様に脱顆粒化を誘導する(例えば、[Caslin HL et al (2018)]など参照)。ノバルティス(Novartis)により開発された抗-c-Kit抗体-薬品接合体であるLOP628はHSRによってI相臨床実験に失敗した。これはc-Kit-LOP628から形成された免疫複合体がヒト肥満細胞のFcγRI-媒介された脱顆粒化を増加させたためである。IgG及び抗原で構成された巨大免疫複合体が高い結合力でFcγRに結合し、FcγR交差連結を誘導して、脱顆粒化を誘発し得ると報告されている(例えば、[Bournazos S et al (2020), Nat Rev Immunol 20:633-643]参照)。追加で、IFN-γがFcγRIの発現及びFcγRI-媒介された脱顆粒化を増強させるので、これはアレルギー患者において特に致命的であり得る([L’Italien L et al (2018)]など)。追加で、治療抗体の過度なエフェクタ機能はIgGのガラクトシル化及びアフコシル化によって誘導され得る。高い程度のガラクトシル化がC1q結合及びCDCを増強させることによって補体活性化を増加させることができ、ADCCに対して適当な効果を奏することができると公知となっている([D. Reusch et al,Glycobiology 25 (12) (2015) 1325-1334])。追加で、コア-フコース水準の減少はFcγRIIIaに対するIgG1の増加した親和度によってADCCの類似の増加を引き起こす([X.R. Jiang et al, Nat. Rev. Drug Discov. 10 (2) (2011) 101-111])。追加で、フコースの欠乏はFcγRIIIa-陽性単核球及びマクロファージによって媒介された抗体-依存性細胞食菌作用を促進させる([S. Herter et al,J. Immunol. 192 (5) (2014) 2252-2260])。一方、IgGの増加したG0FはFcγRとの結合親和度を減少させ、ADCCを減少させる([G.P. Subedi et al, MAbs 8 (8) (2016) 1512-1524])。従って、望まない過敏反応を減少させるためには、ガラクトシル化が減少しなければならず、抗体のフコシル化が増加しなければならない。一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、FcγRとの親和度を低下させることによってエフェクタ機能を有しないように、又は、エフェクタ機能を減少させるように変形され得、具体的には、本開示内容の抗-c-Kit抗体のFc領域はそのエフェクタ機能を除去するか、又は、減少させるように変形され得る。一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、形質感染された細胞又は宿主細胞として中国ハムスター卵巣(CHO)細胞を用いることによって製造されるか、又は、発現し得る。
【0165】
一実施様態において、本発明の抗-c-Kit抗体は、2G4抗体であり得るが、これに制限されない。2G4抗体は完全ヒト抗-c-Kit抗体であり、c-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合し、SCF結合を遮断して、c-Kit抑制効果を奏する。2G4の高度でフコシル化した形態のc-Kit結合親和度、エピトープマップ、c-Kit-陽性細胞-結合能力、エフェクタ機能、免疫原性、及び結晶構造は[Kim JO, et al., (2020) Int J Biol Macromol 159:66-78]に記載されており、下記に記載された実施例で用いられた。
【0166】
III.治療
【0167】
一実施様態において、本願に提供された1つ以上の抗-c-Kit抗体又はその抗原-結合断片を含む、肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、又は、好転させるための医薬組成物が本願に提供される。
【0168】
一実施様態において、本願に記載された方法又はその抗原-結合断片で用いるための1つ以上の抗-c-Kit抗体(例えば、ヒト化抗体)を含む組成物、例えば、医薬組成物が本願に提供される。特定の実施様態において、本願に記載された組成物は、試験管内、生体内、又は、生体外使用のためのものであり得る。具体的な実施様態において、本願に記載された方法で用いるための抗-c-Kit抗体(例えば、ヒト化抗体)(又はその抗原-結合断片)及び製薬上許容可能な担体又は賦形剤を含む医薬組成物が本願に提供される。
【0169】
一実施様態において、肥満細胞関連障害の治療、予防又は好転を必要とする対象体に、本願に提供された1つ以上の抗-c-Kit抗体又はその抗原-結合断片を投与することを含む、対象体において肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、又は、好転させる方法が本願に提供される。必要とする対象体には、例えば、肥満細胞関連障害と診断されたことがある対象体、又は、治療を受けたことがある対象体、例えば、以前の治療に不応性であった対象体が含まれ得る。
【0170】
一実施様態において、肥満細胞関連障害の治療、予防又は好転のための本願に提供された抗-c-Kit抗体又はその抗原-結合断片の使用が本願に提供される。
【0171】
一実施様態において、肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、又は、好転させる方法で用いるための本願に提供された抗-c-Kit抗体又はその抗原-結合断片、又は、それを含む医薬組成物が本願に提供される。
【0172】
特定の実施様態において、本願に提供された方法は、対象体に第2治療剤と併用して抗-c-Kit抗体を投与することを含む。併用療法には、後続的な作用剤が投与された時、投与された第1作用剤の治療効果が完全に消えないように活性化合物を順次、同時に、及び、別に投与するか、又は、共同-投与することが含まれる。特定の実施様態において、第2作用剤は第1作用剤と共同-剤形化され得るか、又は、別途の医薬組成物として剤形化され得る。
【0173】
肥満細胞関連障害
【0174】
肥満細胞関連障害の主な原因には、肥満細胞の過度な増殖及び異常な活性化が含まれる。従って、肥満細胞の増殖又は移動の抑制は、臓器又は組織で肥満細胞の数を減少させることによって肥満細胞関連障害を治療することができる。一実施様態において、本開示内容の抗-c-Kit抗体又は抗原-結合断片は、SCF-媒介されたc-Kitリン酸化、肥満細胞の増殖又は移動を抑制するか、又は、阻害して、肥満細胞関連障害及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、好転させるか、又は、管理するための治療剤として用いられ得る。
【0175】
例えば、喘息、慢性自発性じんましん(CSU)、アレルギー性鼻炎(AR)、アトピー性皮膚炎(AD)、食物アレルギー、及びアナフィラキシーをはじめとし、これに制限されないアレルギー性疾患は最もよくある肥満細胞関連障害である。例えば、肥満細胞の数及び炎症性媒介者の水準が喘息患者の気管支で増加すると明らかになった。気道での肥満細胞数の増加は、増加した炎症及び免疫リモデリングを誘導する。免疫リモデリングは、多様な炎症性細胞、例えば、好酸球、好塩基球、及びヘルパーT細胞を動員させ、肥満細胞関連障害の症状を追加で悪化させる(例えば、[Thomson NC et al (2012), Clin Med Insights Circ Respir Pulm Med 6:27-40]参照)。喘息は、肥満細胞によって触発される過度な炎症性反応により肺及び気道で発生するアレルギー性疾患である(例えば、[Brown JM et al (2008)]参照)。SCFの水準は喘息気道を有意に増加させ、肥満細胞の動員、増殖及び生存を誘発する(例えば、[Al-Muhsen SZ et al (2004), Clin Exp Allergy 34:911-6]参照)。以前の研究で、SCFが気道過敏性を増加させ、これはSCF中和によって抑制されたことが立証された(例えば、[Campbell E et al (1999), Am J Pathol 154:1259-65]参照)。従って、肥満細胞でSCF/c-Kit信号伝達は喘息に密接に寄与し、肥満細胞でSCF/c-Kit信号伝達を抑制できる本開示内容の抗-c-Kit抗体は喘息及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、管理するか、又は、好転させるための治療剤として用いられ得る。
【0176】
CSU、AR、及びADにおいて、肥満細胞の蓄積及び肥満細胞によって放出された炎症性媒介者の増加した水準はこれら疾患の主な原因である(例えば、[Min TK et al (2019), Allergy Asthma Immunol Res 11:470-481]参照)。従って、肥満細胞及び炎症性媒介者(例えば、肥満細胞によって放出されたサイトカイン)の増殖又は移動を抑制するか、又は、阻害することができる本開示内容の抗-c-Kit抗体は、CSU、AR、及びAD、及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、管理するか、又は、好転させるための治療剤として用いられ得る。
【0177】
肥満細胞活性化疾患(MCAD)、例えば、肥満細胞白血病(MCL)で、肥満細胞数の増加が観察され(Haenisch B et al (2012), Immunology 137:197-205)、MCAD又はMCLの主な原因は肥満細胞数の過度な増加又はその非正常な活性化である。従って、肥満細胞及び炎症性媒介者(例えば、肥満細胞によって放出されたサイトカイン)の増殖又は移動を抑制するか、又は、阻害することができる本開示内容の抗-c-Kit抗体は、MCAD(例えば、MCL)及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、管理するか、又は、好転させるための治療剤として用いられ得る。
【0178】
一実施様態において、肥満細胞関連障害には肥満細胞症及び肥満細胞活性化症候群(MCAS)が含まれ得るが、これに制限されない。肥満細胞症の主な原因は、皮膚(cutaneous)又は他の臓器(全身性)で非正常な(新生物性)肥満細胞の拡張及び蓄積であり;これは多様な症状、例えば、かゆみ、じんましん、血管不安定、頭痛、肝肥大、及びアナフィラキシー性ショックを示す(例えば、[Nedoszytko B et al (2021), Int J Mol Sci 22]参照)。骨髄又は他の組織(一般に皮膚)生検で肥満細胞の多発性緻密浸潤(総計的に>15個肥満細胞)が肥満細胞症診断の主な基準の中の1つであるため、肥満細胞の蓄積が肥満細胞症の主な原因であることが明白である(例えば、[Akin C (2017), J Allergy Clin Immunol 140:349-355]参照)。これら異常な肥満細胞は、主にc-Kitの機能獲得突然変異を保有し、c-Kit突然変異は肥満細胞症を有する患者の約90%で発見された(例えば、[Chatterjee A et al (2015), Oncotarget 6:18250-64]参照)。MCASの原因及び症状は、全身性肥満細胞症のものと類似するが、肥満細胞が特定の臓器で蓄積されない(例えば、[Frieri M et al (2013), Curr Allergy Asthma Rep 13:27-32]参照)。MCASは1つ超の臓器に現れる症状及び周期的に現れる症状を特徴とし得る。従って、肥満細胞及び炎症性媒介者(例えば、肥満細胞によって放出されたサイトカイン)の増殖又は移動を抑制するか、又は、阻害することができる本開示内容の抗-c-Kit抗体は、肥満細胞症及びMCAS及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、管理するか、又は、好転させるための治療剤として用いられ得る。
【0179】
肥満細胞は多様な免疫細胞を動員し刺激する多様なサイトカインを分泌する。従って、肥満細胞によるサイトカイン分泌の調節は炎症性反応を増加させ得、増加した炎症性反応はアレルギー患者で症状を悪化させる深刻な要因であり得る(例えば、[Velez TE et al (2018), Curr Allergy Asthma Rep 18:30]参照)。従って、肥満細胞から分泌されたサイトカインが制御されるか、又は、管理され得るならば、1つ以上の連関した炎症性反応が阻害されることができ、従って、肥満細胞関連障害患者又はアレルギー患者の1つ以上の症状が好転し/するか、管理されることができる。
【0180】
GM-CSFが好酸球の発達、機能及び生存に必須なものとして公知となっている。喘息及びCSUを有する患者の病変で増加したGM-CSF水準は好酸球の動員及び生存を誘導して、好酸球の過度な蓄積を引き起こす(例えば、[Altrichter S et al (2020), J Allergy Clin Immunol 145:1510-1516]参照)。好酸球だけではなく、肥満細胞は慢性及び重症症状学で重要な役割をするため、アレルギー性疾患に対する治療標的として考慮される(例えば、[O’Sullivan JA et al (2020), J Leukoc Biol 108:73-81]参照)。好酸球は、繊維形成因子、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ヘパリン結合表皮成長因子、IL-4、IL-13、IL-17、神経成長因子、血小板に由来した成長因子、及び形質転換成長因子-β(TGF-β)を生成し分泌して、重症喘息の発達を誘発する(例えば、[Aceves SS et al (2008), Curr Mol Med 8:350-8]参照)。従って、本開示内容の抗-c-Kit抗体による肥満細胞からGM-CSF分泌の抑制は、好酸球の動員及び生存を阻害することによって肥満細胞関連障害又はアレルギー性疾患に対する相乗作用的活性を示し得る。追加で、c-Kitは好酸球でも発現し、好酸球でSCF/c-Kit信号伝達の活性化がFGF-5、FGF-7、及びTGF-βの発現を増強させると報告されている(例えば、[Dolgachev V et al (2008), Am J Pathol 172:68-76]参照)。従って、肥満細胞不活性化を通じた好酸球動員の減少の他にも、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、好酸球でSCF/c-Kit信号を抑制することによって治療効果を直接的に示すことができる。
【0181】
肥満細胞でSCFによって分泌が増加する他のサイトカインも肥満細胞関連障害でアレルギー性反応を悪化させ得る。VEGFは血管透過性を増加させることによって炎症性細胞の移動を促進させ、CCL2は化学走性を通じて多様な炎症性細胞の動員を促進させる(例えば、[Ribatti D et al (2012), Biochim Biophys Acta 1822:2-8]参照)。BDNFは喘息患者で気道平滑筋細胞の増殖を促進させることによって気管支の収縮を誘導し、C5/C5aは喘息の病理学的特徴、例えば、粘液放出、平滑筋細胞の収縮、増加した血管透過性、及び炎症性細胞の浸潤に寄与する(例えば、[Khan MA et al (2014), Respir Med 108:543-9]参照)。一方、抗炎症性反応を誘発し得るIL-2をはじめとするいくつかのサイトカインはSCFによって減少する。IL-2は免疫恒常性を調節することによってアレルギー性疾患、例えば、アレルギー性鼻炎(AR)及びアトピー性皮膚炎(AD)を予防する役割をする調節性T細胞(Treg)の機能及び生存を促進させる(例えば、[Noval Rivas M et al (2016), J Allergy Clin Immunol 138:639-652]参照)。SCFによって誘導されたIL-2下方調節はTregの活性を減少させ、炎症性反応を増加させる。
【0182】
従って、SCFは肥満細胞によるサイトカイン分泌を調節することができ、調節は主に多様なプロ-炎症性サイトカインの増加及び少数の抗炎症性サイトカインの減少として示される。本開示内容の抗-c-Kit抗体は、細胞関連障害及び/又はその1つ以上の症状の進行及び症状を加速化させる肥満細胞でSCF-媒介されたサイトカイン調節を抑制することによって肥満細胞関連障害を治療し、予防し、好転させ/させるか、管理する効能又は効果を奏する。
【0183】
特定の実施様態において、肥満細胞関連障害には肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害が含まれ得るが、これに制限されない。
【0184】
特定の実施様態において、肥満細胞関連障害は、慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択され得る。
【0185】
組成物
【0186】
本願に提供された1つ以上の抗-c-Kit抗体(例えば、ヒト化抗体)を含有する治療剤形は、所望の程度の純度を有する抗体を任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤と混合することによって凍結乾燥された剤形又は水性溶液の形態で保管のために製造され得る([Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, Pa.; Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed. (2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, Md.])。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で需要者に無毒性であり、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;及び/又はノニオン性界面活性剤、例えば、ツイン(TWEEN)TM、プルロニック(PLURONICS)TM又はポリエチレングリコール(PEG)が含まれ得る。
【0187】
一実施様態において、本願に記載されたような剤形は、また、治療する特定の兆候に必要な1つ超の活性化合物(例えば、分子、例えば、本願に記載された抗体又は抗体)を含有し得る。特定の実施様態において、剤形は、本願に提供された抗-c-Kit抗体、及び互いに不利な影響を及ぼさない相補性活性を有する1つ以上の活性化合物を含む。このような分子は、好適には、意図的目的のために効果的な量で組み合わせられて存在する。
【0188】
一実施様態において、生体内投与のために用いられる剤形は滅菌性であり得る。これは、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。
【0189】
具体的な実施様態において、本願に提供された医薬組成物は、製薬上許容可能な担体の中に、本願に提供された抗-c-Kit抗体(例えば、ヒト化抗体)のうちの1つ以上の治療有効量、及び任意的に1つ以上の追加の予防剤又は治療剤を含有する。このような医薬組成物は、肥満細胞関連障害、又は、その1つ以上の症状の予防、治療、管理又は好転に有用である。
【0190】
追加で、本願に提供された抗-c-Kit抗体は、組成物中に単独製薬活性成分として剤形化され得るか、又は、他の活性成分(例えば、1つ以上の他の予防剤又は治療剤)と組み合わせられ得る。
【0191】
組成物は、本願に提供された1つ以上の抗-c-Kit抗体を含有し得る。一実施様態において、抗体は、非経口投与のために滅菌溶液又は懸濁液の中で適した製薬製剤、例えば、溶液、懸濁液、粉末、又は、エリキシルとして剤形化される。一実施様態において、抗体は、経口投与のために適した製薬製剤、例えば、溶液、懸濁液、錠剤、分散性錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続した放出剤形又はエリキシルとして剤形化される。
【0192】
このような組成物において、本願に提供された1つ以上の抗-c-Kit抗体は、適した製薬学的担体と混合される。組成物において抗体又は抗体の濃度は、例えば、投与時に肥満細胞関連障害及び/又はその1つ以上の症状を治療するか、予防するか、それから保護するか、好転させるか、又は、管理する量の伝達に効果的であり得る。
【0193】
一実施様態において、組成物は、単一用量投与のために剤形化される。組成物を剤形化するために、選択された担体で化合物の重量分画を処理された障害が緩和されるか、予防されるか、又は、1つ以上の症状が好転するように効果的な濃度で溶解させるか、懸濁させるか、分散させるか、又は、異なって混合する。
【0194】
特定の実施様態において、本願に提供された抗-c-Kit抗体(例えば、ヒト化抗体)は、処理された患者に対して望ましくない副作用がないか、若しくは、最小の、又は、無視する程度に治療的に有用な効果を発揮するのに十分な有効量で製薬上許容可能な担体の中に含まれる。
【0195】
一実施様態において、治療有効用量は約0.1ng/ml乃至約50~100μg/mlの抗体の血清濃度を生成する。更に他の実施様態において、医薬組成物は一定期間にわたって、例えば、毎日、週2回又は3回、週1回、2週ごとに、又は、3週ごとに投与のために体重キログラム当たり約0.001mg~約2000mgの抗体の用量を提供する。製薬投与単位の形態は約0.01mg~約2000mg、一実施様態において、投与単位形態当たり約10mg~約500mgの抗体及び/又は他の任意の必須成分を提供するように製造され得る。
【0196】
本願に記載された抗-c-Kit抗体は、一度に投与され得るか、又は、時間の間隔をおいて投与される数多くのさらに小さい用量に分けられ得る。
【0197】
抗体の混合又は添加時、生成された混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得る。生成された混合物の形態は、選択された担体又はビヒクルのうち抗-c-Kit抗体の意図的投与方式及び可溶性をはじめとする数多くの因子によって左右される。
【0198】
本願に記載された医薬組成物は、抗-c-Kit抗体又はその製薬上許容可能な誘導体の適した量を含有する単位投与形態、例えば、滅菌非経口(例えば、静脈内)溶液又は懸濁液でヒト及び動物、例えば、哺乳動物(例えば、ネコ又はイヌ)に投与するために提供される。医薬組成物は、また、抗-c-Kit抗体又はその製薬上許容可能な誘導体の適した量を含有する単位投与形態、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、及び経口溶液又は懸濁液、及び油水エマルジョンでヒト及び動物、例えば、哺乳動物(例えば、ネコ又はイヌ)に投与するために提供される。一実施様態において、抗-c-Kit抗体は、単位-投与形態又は多重-投与形態で剤形化され投与される。本願で用いられた通り、単位-投与形態は、関連技術分野で公知となった通り、ヒト及び動物対象体に適し、個別的に包装された物理的に区別された単位を指す。それぞれの単位-用量は、必要な製薬学的担体、ビヒクル又は希釈剤とともに所望の治療効果を生成するのに十分な抗体の予定された量を含有する。単位-投与形態の例には、アンプル及びシリンジ及び個別的に包装された錠剤又はカプセルが含まれる。単位-投与形態は、その分画で、又は、いくつかで投与され得る。多重-投与形態は、分離された単位-投与形態で投与されるように単一コンテナに包装された複数の同一の単位-投与形態である。多重-投与形態の例には、バイアル、錠剤又はカプセルのボトル、又は、パイント又はガロンのボトルが含まれる。従って、多重投与形態は、包装から分離されないいくつかの単位-用量である。
【0199】
特定の実施様態において、本願に記載された1つ以上の抗-c-Kit抗体は、液体製薬剤形中にあり得る。投与可能な液体製薬剤形は、例えば、上記に定義された活性化合物及び任意の製薬学的アジュバントを担体、例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどの中で溶解させるか、分散させるか、又は、異なって混合して、溶液又は懸濁液を形成することによって製造され得る。必要な場合、投与される医薬組成物は、また、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤化剤、乳化剤、可溶化剤、及びpH緩衝化剤などを含有し得る。
【0200】
このような投与形態の実際の製造方法は、公知となっているか、又は、関連技術分野の技術者に自明であるはずであり;例えば[Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, Pa.; Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed. (2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, Md.]を参照する。
【0201】
抗体を0.005%~100%の範囲で含有し、残りは無毒性担体で構成される投与形態又は組成物が製造され得る。これら組成物の製造方法は関連技術分野の技術者に公知となっている。
【0202】
一実施様態において、非経口投与は注射を特徴とし、皮下、筋肉内又は静脈内も本願で考慮される。注射剤は、液体溶液又は懸濁液として、注射する前に液体中の溶液又は懸濁液に適した固体形態として、又は、エマルジョンとして通常の形態で製造され得る。注射剤、溶液及びエマルジョンは、また、1つ以上の賦形剤を含有する。適した賦形剤には、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールが含まれ得るが、これに制限されない。追加で、必要な場合、投与される医薬組成物は、また、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤化剤又は乳化剤、pH緩衝化剤、安定化剤、可溶性増強剤、及びこのような他の作用剤を含有し得る。他の投与経路には、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与が含まれ得る。
【0203】
非経口投与のための製剤には、直ちに注射可能な滅菌溶液、使用する直前に溶媒と直ちに組み合わせられる滅菌乾燥可溶性生成物(例えば、凍結乾燥された粉末)、皮下製剤、直ちに注射可能な滅菌懸濁液、使用する直前にビヒクルと直ちに組み合わせられる滅菌乾燥不溶性生成物、及び滅菌エマルジョンが含まれる。溶液は水性又は非水性であり得る。
【0204】
静脈内に投与される場合、適した担体には、生理食塩水又はリン酸塩緩衝された食塩水(PBS)、及び/又は増粘剤及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール及びこれらの任意の混合物を含有する溶液が含まれ得るが、これに制限されない。
【0205】
非経口製剤で用いられる製薬上許容可能な担体には、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張性作用剤、緩衝剤、抗酸化剤、局部麻酔剤、懸濁化剤及び分散化剤、乳化剤、隔離剤又はキレート剤、及び/又は他の製薬上許容可能な物質が含まれ得るが、これに制限されない。
【0206】
製薬学的担体には、また、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及び/又はプロピレングリコール;及びpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び/又は乳酸が含まれ得る。
【0207】
一実施様態において、活性化合物を含有する滅菌水性溶液の静脈内又は動脈内注入は効果的な投与方式である。更に他の実施様態において、活性物質を含有する滅菌水性又は油性溶液又は懸濁液は、所望の薬理効果を生成するために必要に応じて対象体に注射され得る。
【0208】
本願に記載された抗-c-Kit抗体は、微粉化した、又は、他の適した形態で懸濁され得る。生成された混合物の形態は、選択された担体又はビヒクルの中で抗-c-Kit抗体の意図的投与方式及び可溶性をはじめとする数多くの因子によって左右される。
【0209】
他の実施様態において、製薬剤形は、溶液、エマルジョン及び/又は他の混合物として投与のために再構成され得る凍結乾燥された粉末である。これらは、また、固体又はゲルとして再構成され、剤形化され得る。
【0210】
凍結乾燥された粉末は、適した溶媒中に本願に提供された抗-c-Kit抗体を溶解させることによって製造される。一部の実施様態において、凍結乾燥された粉末は滅菌性である。溶媒は、粉末、又は、粉末から製造された再構成された溶液の安定性及び/又は他の薬理学的成分を改善させる賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤には、デキストロース、ソルビタル、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又は他の適した作用剤が含まれるが、これに制限されない。溶媒は、また、一実施様態において、略中性pHの緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム又は関連技術分野の技術者に公知となったこのような他の緩衝剤を含有し得る。溶液の後続的な滅菌濾過に続き、関連技術分野の技術者に公知となった標準条件下の凍結乾燥は所望の剤形を提供する。一実施様態において、生成された溶液は凍結乾燥のためにバイアルに分配されるはずである。それぞれのバイアルは抗-c-Kit抗体の単一用量又は多重用量を含有するはずである。凍結乾燥された粉末は、適切な条件下に、例えば、約4℃~室温で保管され得る。
【0211】
この凍結乾燥された粉末を注射用水として再構成すれば、非経口投与で用いるための剤形が提供される。再構成のために、凍結乾燥された粉末を滅菌水又は他の適した担体に添加する。正確な量は選択された化合物によって左右される。
【0212】
本願に記載された抗体は、局部又は局所適用、例えば、ゲル、クリーム及びローションの形態で皮膚及び粘膜に局所適用、及び水槽内又は脊髄内適用のために剤形化され得る。局所投与は、経皮伝達のために、及び/また、粘膜への投与のために、若しくは、吸入療法のために考慮される。単独で、又は、他の製薬上許容可能な賦形剤と組み合わせて活性化合物の鼻腔溶液も投与され得る。
【0213】
本願に提供された抗体及び他の組成物は、また、治療する対象体の特定の組織、受容体、又は、他の身体領域を標的化するように剤形化され得る。このような種々の標的化方法は、関連技術分野の技術者に広く公知となっている。このような全ての標的化方法は、本発明の組成物において用いるために本願で考慮される。標的化方法の非制限的な例については、例えば、米国特許番号6,316,652、6,274,552、6,271,359、6,253,872、6,139,865、6,131,570、6,120,751、6,071,495、6,060,082、6,048,736、6,039,975、6,004,534、5,985,307、5,972,366、5,900,252、5,840,674、5,759,542及び5,709,874を参照する。一部の実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体は、骨髄、胃腸管又は脳に標的化される(又は異なって投与される)。具体的な実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体は、血液-脳障壁を横切り得る。
【0214】
特定の実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体を含む組成物は、耳に標的化され得る。
【0215】
用量及び投与
【0216】
本願に記載された抗-c-Kit抗体又はその医薬組成物を、それを必要とする対象体(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ又はネコ)に投与するための用量及び頻度は、本願に記載された抗-c-Kit抗体又はその医薬組成物の投与が副作用を最小化しつつ、効果的であるように本願に提供された肥満細胞関連障害の治療方法によって決定される。特定の対象体に投与される本願に記載された抗-c-Kit抗体又はその医薬組成物の正確な用量は、治療を必要とする対象体と関連した因子に照らして決定され得る。一実施様態において、考慮できる因子には、疾患状態の重症度、対象体の全般的な健康、対象体の年齢及び体重、食餌、投与時間及び頻度、他の治療剤又は薬品との(各)組合わせ、反応敏感度、及び療法に対する耐性/反応が含まれ得るが、これに制限されない。本願に記載された抗-c-Kit抗体又はその医薬組成物の投与用量及び頻度は、十分な水準の抗-c-Kit抗体を提供するために、又は、所望の効果を維持するために時間にわたって調整され得る。
【0217】
剤形において用いられる正確な用量は、また、投与経路及び肥満細胞関連障害の重症度によって左右されるはずであり、医師の判断及び/又はそれぞれの患者の状況によって決定され得る。
【0218】
特定の実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体の場合、肥満細胞関連障害を予防するか、それから保護するか、管理するか、又は、治療するために患者に投与される用量は、典型的に0.1mg/kg~100mg/kg患者の体重である。一般に、ヒト抗体は外来ポリペプチドに対する免疫反応により他の種からの抗体よりヒトの身体内でさらに長い半減期を有する。従って、ヒト抗体のさらに低い用量及び/又はあまり頻繁でない投与がたびたび可能である。追加で、本願に記載された抗体の投与用量及び頻度は変形、例えば、脂質化によって抗体の吸収及び組織浸透を増強させることによって減少することができる。
【0219】
一実施様態において、略0.001mg/kg(対象体の体重1kg当りの抗体mg)~略500mg/kgの本願に記載された抗-c-Kit抗体が肥満細胞関連障害を予防するか、それから保護するか、管理するか、又は、治療するために投与される。
【0220】
一部の実施様態において、本願に記載された抗体の有効量は、約0.01mg~約1,000mgである。従って、本開示内容の医薬組成物は、約0.001mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約30mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg又は約1,000mgの本願に提供された抗-c-Kit抗体を単一用量で含み得る(これら数字の間の任意の値を含む)。具体的な実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体の「有効量」又は「治療有効量」は、下記の効果のうち少なくとも1種類、2種類、3種類、4種類又はその超過を達成するのに十分な本願に記載された抗-c-Kit抗体の量を指す:肥満細胞関連障害及び/又はそれと連関した1つ以上の症状の重症度の減少又は好転;肥満細胞関連障害と連関した1つ以上の症状の持続期間の減少;肥満細胞関連障害の1つ以上の症状の再発の予防;肥満細胞関連障害及び/又はそれと連関した1つ以上の症状の退行;対象体の入院の減少;入院期間の減少;肥満細胞関連障害を有する対象体の生存の増加;肥満細胞関連障害及び/又はそれと連関した1つ以上の症状の進行の抑制(例えば、部分抑制);肥満細胞関連障害と連関した1つ以上の症状の発達又は開始の予防;肥満細胞関連障害を有する対象体の生物学的試片(例えば、血漿、血清、脳脊髄液、小便、又は、任意の他の生体液)において1つ以上の炎症性媒介者(例えば、サイトカイン又はインターロイキン)の濃度の減少;及び関連技術分野に広く公知となった方法、例えば、質問用紙によって評価される生活の質の改善。一部の実施様態において、本願で用いられた通り「有効量」は、また、具体的な結果(例えば、細胞の1つ以上のc-Kit生物学的活性の抑制又は阻害、例えば、肥満細胞の増殖、蓄積、移動及び/又は脱顆粒化の抑制又は阻害)を達成するための本願に記載された抗体の量を指す。
【0221】
一部の実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体は、必要に応じて、例えば、毎週、隔週(即ち、2週に1回)、毎月、隔月、3ヶ月ごと等で投与される。
【0222】
一部の実施様態において、本願に記載された抗-c-Kit抗体の単一用量は、肥満細胞関連障害を妨害し、予防し、管理し、治療し/するか、好転させるために患者に1回以上投与される。
【0223】
特定の実施様態において、抗-c-Kit抗体又はその医薬組成物は、本願に提供された肥満細胞関連障害の治療方法に応じて対象体に周期的に投与され、抗-c-Kit抗体又は医薬組成物は、一定期間投与された後、休息期間(即ち、抗-c-Kit抗体又は医薬組成物が一定期間投与されない)を有する。
【0224】
本願に提供された方法は、任意の適した経路によって抗-c-Kit抗体を投与することを伴う。投与経路の非制限的な例には、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内又は静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与が含まれる。本願に提供された方法は、脳、脊髄、又は、耳又は心耳組織を標的化する投与経路を含む。特定の実施様態において、本願に提供された方法は、神経系、例えば、中枢神経系を標的化する投与経路を含む。本願に記載された投与は、本開示内容の医薬組成物に適用され得る。
【0225】
具体的な実施様態において、本願に提供された方法は、血液-脳障壁を横切るのに適した経路を通じて抗-c-Kit抗体を投与することを伴う。
【0226】
IV.製造物品及びキット
【0227】
本開示内容の一実施様態において、適した包装内に、本願に記載された医薬組成物(例えば、抗-c-Kit抗体)を含むキット又は製造物品も提供される。本願に記載された組成物の適した包装は関連技術分野で公知となっており、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、壺、可撓性包装(例えば、密封マイラー(Mylar)又はプラスチックバック)等が含まれる。これら製造物品は追加で滅菌され/されるか、密封され得る。
【0228】
一部の実施様態において、キットは、本願に記載された組成物を含み得、組成物の使用方法、例えば、本願に記載された使用に関する(各)指針書を追加で含み得る。本願に記載されたキットは、他の緩衝剤、希釈剤、濾過器、ニードル、シリンジ、及び本願に記載された任意の方法の実行指針を有する包装挿入物をはじめとし、商業的及び使用者の観点から望ましい他の物質を追加で含み得る。例えば、一部の実施様態において、キットは、本願に記載された抗-c-Kit抗体、投与に適した製薬上許容可能な担体、及び次の中の1つ以上を含む:緩衝剤、希釈剤、濾過器、ニードル、シリンジ、及び投与実行指針を有する包装挿入物。
【0229】
V.抗体の生成
【0230】
c-Kit抗原(例えば、c-Kitエピトープ)に免疫特異的に結合する本願に記載された抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)(又はその抗原-結合断片)は、抗体の合成のために関連技術分野で公知となった任意の方法によって、例えば、化学的合成によって、又は、組換え発現技術によって生成され得る。本願に記載された方法は、特に示さなければ、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び変形、核酸ハイブリダイゼーション、及び関連技術分野内の関連分野の通常の技術を用いる。これら技術は、本願に引用された参考文献に記載されており、文献で十分に説明されている。例えば、[Maniatis et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (1987 and annual updates) Gait (ed.) (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein (ed.) (1991) Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Birren et al. (eds.) (1999) Genome Analysis: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press]を参照する。
【0231】
例えば、ヒト化抗体はCDR-移植(ヨーロッパ特許番号EP 239,400;国際公開番号WO 91/09967;及び米国特許番号5,225,539、5,530,101、及び5,585,089)、ベニアリング又は再包装(ヨーロッパ特許番号EP 592,106及びEP 519,596;[Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;及びRoguska et al., 1994, PNAS 91:969-973])、連鎖シャッフリング(米国特許番号5,565,332)、及び、例えば、米国特許番号6,407,213、5,766,886、WO 9317105、[Tan et al., J. Immunol. 169:1119 25 (2002), Caldas et al., Protein Eng. 13(5):353-60 (2000), Morea et al., Methods 20(3):267 79 (2000), Baca et al., J. Biol. Chem. 272(16):10678-84 (1997), Roguska et al., Protein Eng. 9(10):895 904 (1996), Couto et al., Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995), Couto et al., Cancer Res. 55(8):1717-22 (1995), Sandhu J S, Gene 150(2):409-10 (1994)、及びPedersen et al., J. Mol. Biol. 235(3):959-73 (1994)]に開示された技術をはじめとし、これに制限されない関連技術分野で公知となった多様な技術を用いて生成され得る。米国特許公開番号US 2005/0042664 A1 (Feb. 24, 2005)も参照し、これは本願に参照として含まれる。
【0232】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術、又は、これらの組合わせを用いることをはじめ、関連技術分野で公知となった多様な技術を用いて製造され得る。例えば、モノクローナル抗体は関連技術分野で公知となっており、例えば[Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)]に教示されたものなどをはじめとするハイブリドーマ技術を用いて生成され得る。本願で用いられた通り、用語「モノクローナル抗体」はハイブリドーマ技術を通じて生成された抗体に制限されない。例えば、モノクローナル抗体は、組換え技術、例えば、宿主細胞、例えば、哺乳動物の宿主細胞によって発現した組換えモノクローナル抗体によって生成され得る。
【0233】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生成しスクリーニングする方法は、関連技術分野で日常的であり、広く公知となっている。例えば、ハイブリドーマ方法において、マウス又は他の適切な宿主動物、例えば、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスター又はマカクザルを免疫化させ、免疫化のために用いられる蛋白質(例えば、ヒトc-Kitの細胞外ドメイン)に特異的に結合する抗体を生成するか、又は、生成できるリンパ球を誘導する。代案的には、リンパ球は試験管内で免疫化され得る。次いで、適した融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する([Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986)])。追加で、RIMMS(反復免疫化多重部位)技術を用いて動物を免疫化させることができる([Kilptrack et al., 1997 Hybridoma 16:381-9]、これは本願に参照として含まれる)。
【0234】
骨髄腫細胞株の非制限的な例には、ミューリン骨髄腫細胞株、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター(Salk Institute Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来したものなど、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、米国メリーランド州ロックビル)から入手可能なSP-2又はP3X63-Ag8.653 (ATCC CRL-1580)細胞が含まれる。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株もヒトモノクローナル抗体の製造のために記載されたことがある([Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)])。
【0235】
本願に記載された抗体は、特異的c-Kit抗原を認識する抗体断片を含み、関連技術分野の技術者に公知となった任意の技術によって生成され得る。例えば、本願に記載されたFab及びF(ab')2断片は酵素、例えば、パパイン(Fab断片を生成するために)又はペプシン(F(ab')2断片を生成するために)を用いて免疫グロブリン分子の蛋白質分解性切断によって生成され得る。Fab断片は抗体分子の2つの同一のアームに対応し、重鎖のVH及びCH1ドメインと対を形成した完全な軽鎖を含有する。F(ab')2断片はヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された抗体分子の2つの抗原-結合アームを含有する。
【0236】
一実施様態において、全体抗体を生成するために、VH又はVLヌクレオチド配列を含むPCRプライマー、制限部位、及び制限部位を保護するためのフランキング配列を用いてテンプレート、例えば、scFvクローンからVH又はVL配列を増幅させることができる。関連技術分野の技術者に公知となったクローニング技術を用いて、PCR増幅されたVHドメインはVH不変領域を発現するベクターでクローニングでき、PCR増幅されたVLドメインはVL不変領域、例えば、ヒトカッパ又はラムダ不変領域を発現するベクターでクローニングできる。VH及びVLドメインは、また、必要な不変領域を発現する1つのベクターにクローニングできる。次いで、関連技術分野の技術者に公知となった技術を用いて、重鎖転換ベクター及び軽鎖転換ベクターを細胞株に共同形質感染させ、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定した、又は、一時的な細胞株を生成する。
【0237】
単一ドメイン抗体、例えば、軽鎖が欠如している抗体は、関連技術分野に広く公知となった方法によって生成され得る。[Riechmann et al., 1999, J. Immunol. 231:25-38; Nuttall et al., 2000, Curr. Pharm. Biotechnol. 1(3):253-263; Muylderman, 2001, J. Biotechnol. 74(4):277302];米国特許番号6,005,079;及び国際公開番号WO 94/04678、WO 94/25591、及びWO 01/44301を参照する。
【実施例
【0238】
このセクションにおいて、実施例は、制限的なものではなく、説明のために提供される。
【0239】
[実施例1]細胞株及び抗-c-Kit抗体の製造
【0240】
細胞株及び培養
【0241】
LAD2は野生型c-Kitを有するSCF-依存性ヒト肥満細胞株である。従って、LAD2細胞は、原発性肥満細胞と同様に、SCF-依存的方式で活性化され、増殖する。追加で、LAD2は、FcεRI、FcγRI、ヒスタミン及びトリプターゼを発現し、FcεRI又はFcγRIの架橋によって脱顆粒化され、炎症性媒介者の放出を誘発する。従って、LAD2は、肥満細胞実験に適した細胞株である([Kirshenbaum AS, et al., (2003) Leuk Res 27:677-82]参照)。
【0242】
LAD2細胞は、ステムプロ(StemPro)-34栄養補充剤(2.5%、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、米国マサチューセッツ州)、L-グルタミン(2mM、ギブコ(Gibco)、米国カリフォルニア州)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1%、ハイクローン(Hyclone)、米国ユタ州)、及び組換えヒトSCF(100ng/mL、アールアンドディーシステムス(R&D Systems)、米国ミネソタ州)を有するステムプロ-34 SFM(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国マサチューセッツ州)で培養された。培地の半分を、SCFを含有する同等な体積の新たな培地に毎週交換した。細胞密度は2~5×10細胞/mLに維持された。細胞を37℃で5%COインキュベーターにてインキュベーションした。
【0243】
抗-C-Kit抗体
【0244】
2G4抗体を用いて、c-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に対する抗体結合が肥満細胞のリン酸化、増殖、移動などを抑制するか、又は、阻害するということを立証した。
【0245】
実験で用いられた2G4抗体は、パセオンバイオロジクス(エヌジェー)エルエルシー(PATHEON BIOLOGICS (NJ) LLC、米国)で製造された。2G4抗体は、ヒトc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3領域に結合し、c-KitのD2/3領域でR122、Y125、R181、K203、R205、S261、及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合する([Kim JO, et al., (2020) Int J Biol Macromol 159:66-78])。追加で、2G4抗体は、高い結合親和度(KD=2.83×10-12M)でc-Kitに結合し、これはSCFとc-Kitの間に比べて500倍さらに強い(KD=1.5×10-9~3×10-10M;[Debra D. Dahlen et al., Leukemia Research (2001); Tal Tilayov et al., Molecule, 2020])。
【0246】
4C9抗体は、WO 2021/107566に記載された下記の方法を通じて実験室規模で製造され、最終濃度5.31mg/mlのサンプルを実験に用いた。
【0247】
ヒトc-Kitを標的化する完全ヒト4C9抗体は、上記に記載された通り生成された([Kim JO, et al., (2020) Int J Biol Macromol 159:66-78])。簡略に、ヒト組換えc-Kit(Q26-T520、エラブサイエンス(Elabscience)、中国武漢)は、ヒトCD34+造血幹細胞(ロンザ(Lonza)、スイス・バーゼル)で移植されたヒト化NSGマウス(オリエントバイオ(Orient Bio)、大韓民国城南(ソンナム))を免疫化させた。エマルジョンは、c-kit蛋白質(1μg/μL)を同等な体積の完全フロイント(Freund)アジュバント(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国ミズーリ州、セントルイス)と混合することによって生成された。ブースタ注射を5週間投与した。マウス血清でヒト抗体力価は間接ELISAを用いて評価した。マキシソープ(Maxisorp)プレートを0.1μg/ウェルでc-kit蛋白質にコーティングした。陽性免疫反応を有するマウスを7週目に最終ブースティング注射に適用した。ELISAでc-kitに対して陽性反応性を有するハイブリドーマを標準制限希薄方法を用いてサブクローニングした。重鎖及び軽鎖可変ドメインの抗体遺伝子配列は、ジェンスクリプト(GenScript、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって決定された。4C9クローンのヌクレオチド配列は、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)に対してコドン最適化され、IgG1として合成され、pCHO1.0ベクター(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国マサチューセッツ州ウォルサム)にサブクローニングされた。組換えプラスミドを4C9抗体の発現のためにエックスピチョ(ExpiCHO)TM発現システムキット(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いてCD CHO無血清培地で培養されたCHO-S細胞に一時的に形質感染させた。上記[Kim et al. (2020)]文献に記載された通り、蛋白質Aセファロース及びSPセファロースカラム(インビトロジェン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州カールスバッド)を用いて抗体を精製した。
【0248】
2G4抗体のCDR配列を表1に示し、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖及び軽鎖の配列を表2及び表3に示した。4C9抗体のCDR配列を表4に示し、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列を表5に示した。
【0249】
【表1】
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
【0253】
【表5】
【0254】
統計的分析
【0255】
下記の実施例2-7で、グラフ化及び統計的分析はグラフパッドプリズム(GraphPad Prism)5(グラフパッドソフトウェア、米国カリフォルニア州)を用いて行われた。P-値は両側スチューデントt-検定又はダネット事後-検定とともに一元ANOVAによって測定された。統計的有意性はP<0.05に設定された。
【0256】
[実施例2]c-Kit抗体はLAD2細胞に結合する
【0257】
LAD2細胞の細胞表面上のc-Kitに対する抗体結合を立証するために、流動細胞分析法の検定を行った。SCFがc-Kitの内在化及び分解を誘発し得るため、24時間LAD2細胞でSCFを枯渇させた。細胞をダルベッコ(Dulbecco)リン酸塩-緩衝された食塩水(DPBS;ロンザ、米国;カタログ番号:17-512Q)で洗浄し、4℃で1時間5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSで遮断させた。BSAで遮断させた後、ヒトBD Fcブロック(Block)TM(2.5μg/10細胞、ビーディーバイオサイエンシズ(BD Biosciences)、米国カリフォルニア州)を処理して、Fc受容体に対する抗体の結合を遮断した。細胞(2×10細胞)を4℃で1時間2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1(シノバイオロジカル(Sino Biological)、中国北京)で指定された濃度で染色した。次いで、細胞を2%BSAを含有するPBSで3回洗浄し、4℃で1時間塩素抗-ヒトIgG二次抗体(0.3μg/mL、インビトロジェン、米国カリフォルニア州)で染色した。洗浄後、蛍光信号をサイフローキューブ(CyFlow Cube)6(シスメックスパルテック(Sysmex Partec)、ドイツ・ゲルリッツ)を用いて検出し、データ分析はFCSエクスプレス6フロー(デノボ(De Novo)ソフトウェア、米国カリフォルニア州)を用いて行った。流動細胞分析法の分析の結果は図1に示される。
【0258】
図1によれば、2G4及び4C9抗体の二つとも用量-依存的方式でLAD2細胞に結合し、蛍光信号は100ng/mLの濃度で飽和した。しかし、二次抗体による非特異的信号を除いては、正常ヒトIgG1の結合信号が増加しなかった。これらの結果は、2G4がヒトc-KitのD2及び/又はD3領域に結合し、4C9がヒトc-KitのD1及び/又はD2領域に結合するという点で、2G4抗体及び4C9抗体の二つともLAD2細胞上に存在するc-Kit、具体的には、c-Kitの細胞外ドメインに免疫特異的に結合するということを立証する。
【0259】
[実施例3]本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体はSCF/c-Kit信号伝達を抑制する
【0260】
2G4及び4C9抗体がSCF-媒介されたc-Kit活性化を抑制することができるか否かを証明するために、LAD2細胞を24時間SCF-欠乏培地で6-ウェル培養プレート(1×10細胞/ウェル)にシーディングした。SCF-枯渇の後、LAD2細胞を指定された濃度で37℃で1時間2G4又は4C9抗体に前処理した。次いで、細胞を追加で10分間100ng/mL SCFで刺激した。その後に、細胞をRIPA溶解緩衝剤(pH7.6、20mM Tris-HCl、150mM NaCl、1mM NaEDTA、1mM EGTA、1%NP-40、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、10mM β-グリセロリン酸、1mM NaOV、10mM NaF、1μg/mLロイペプチン、1mM PMSF、5μg/mLアプロチニン、及び2mM 2-メルカプトエタノール)で溶解させた。c-Kit及びその下流信号伝達分子(Akt及びErk)のリン酸化をウェスタンブロッティングによって分析した。α-チューブリンをローディング対照群として用いた。本願で用いられた抗体は、抗-ホスホ-c-Kit(Tyr719、Tyr823、Tyr568/570、及びTyr703、セルシグナリングテクノロジー(Cell Signaling Technology)、米国マサチューセッツ州)、抗-ホスホAkt(Ser473、セルシグナリングテクノロジー、米国マサチューセッツ州)、抗-ホスホ-Erk1/2(セルシグナリングテクノロジー、米国マサチューセッツ州)、抗-c-Kit(R&Dシステムズ、米国ミネソタ州)、抗-Akt(サンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology)、米国カリフォルニア州)、抗-Erk1/2(サンタクルーズバイオテクノロジー、米国カリフォルニア州)、及び抗-α-チューブリン(実験室製造)であった。ウェスタンブロット分析の結果は図2a及び2bに示されている。
【0261】
2G4抗体による前処理は、用量-依存的方式でSCFによって誘導されたc-Kitリン酸化を抑制した(図2a)。2G4抗体はc-Kitの全ての試験したチロシン残基(Y719、Y823、Y568/570、及びY703)のリン酸化を抑制した。特に、1μg/ml以上の濃度で、2G4抗体はほとんどのリン酸化を抑制した。追加で、c-Kitの下流信号であるAkt及びErk1/2のリン酸化は用量-依存的方式で2G4抗体によって減少した。これらの結果は、2G4抗体がLAD2細胞でSCFによって誘導されたc-Kit信号伝達の活性化を効果的に抑制したことを立証する。
【0262】
しかし、4C9抗体が総c-Kitの発現を用量-依存的方式で有意に下方調節したが、これはc-Kitリン酸化の下流信号伝達経路と関連があるAkt及びErk1/2のリン酸化を抑制しなかった(図2b)。これらの結果は、4C9抗体がc-Kit自体の発現のみを抑制し、c-Kit及びSCFの結合によるc-Kitリン酸化は抑制しないことを示唆する。
【0263】
これは、また、全ての抗-c-Kit抗体が肥満細胞のリン酸化を抑制するのではないということを示唆し、高い結合親和度でc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞のリン酸化を効果的に抑制することを立証する。
【0264】
[実施例4]本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体は肥満細胞の細胞増殖を阻害する
【0265】
LAD2細胞を100ng/mL SCFの存在又は不在下に96-ウェル培養プレート(1×10細胞/ウェル)にシーディングした。細胞を最終濃度100μg/mLで連続5倍の2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1とともに37℃で7日間インキュベーションした。次いで、細胞を10μMヘキスト(Hoechst)33342(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国マサチューセッツ州)で30分間染色し、セリゴ(Celigo)映像化細胞分析器(ネクセロム(Nexcelom)、米国マサチューセッツ州)を用いてカウントした。細胞増殖検定の結果は図3a及び3bに示される。
【0266】
細胞増殖検定で、LAD2細胞の数を100ng/mL SCFによって7日間2.5倍超に増加させた(図3aにおいてSCFが不在なウェルで(黒色点線)、及び、SCFが存在し、抗体が不在なウェルでの正規化された細胞カウントと比較する)。SCF-媒介された増殖は用量-依存的方式で2G4抗体によって強力に阻害されたが、4C9又は正常ヒトIgG1によっては阻害されなかった(図3a)。LAD2細胞に対する2G4抗体の半分最大抑制濃度(IC50)値は0.058μg/mLであり、増殖は0.8μg/mLより高い濃度で2G4抗体によって完全に抑制された。SCFの不在下に、LAD2細胞は増殖せず、2G4、4C9、及び正常ヒトIgG1は細胞増殖に全く影響を及ぼさなかった(図3b)。これは、2G4抗体がLAD2に対する細胞死滅を直接的に誘導しないが、SCFによって媒介された増殖を抑制できることを意味する。
【0267】
実施例3の結果をともに考慮すると、これらの結果はc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合し、SCF結合によるc-Kitリン酸化を抑制する本開示内容の抗-c-Kit抗体、例えば、2G4抗体が肥満細胞のSCF-媒介された増殖を阻害できることを立証する。しかし、SCF結合によるc-Kitリン酸化(即ち、c-Kit信号伝達経路の下流)を抑制しない4C9抗体は肥満細胞のSCF-媒介された増殖を阻害しない。
【0268】
これは、また、全ての抗-c-Kit抗体が肥満細胞の増殖を阻害するのではないということを示唆し、高い結合親和度でc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞の増殖を効果的に阻害することを立証する。
【0269】
これは、また、全ての抗-c-Kit抗体が肥満細胞の増殖を阻害するのではないということを示唆し、高い結合親和度でc-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞の増殖を効果的に阻害することを立証する。
【0270】
[実施例5]本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体は肥満細胞の移動を阻害する
【0271】
24時間LAD2細胞でSCFを枯渇させた。その後に、1×10細胞を低補充培地(0.5%ステムプロ-34栄養補充剤、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するステムプロ-34 SFM)とともに8μm空隙(コスター(Costar)、米国マサチューセッツ州)を有する6-トランスウェルプレートの上部チャンバにシーディングした。次に、24時間、1μg/mLの2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1を上部チャンバに添加し、100ng/mL SCFを下部チャンバに添加した。上部チャンバを除去した後、下部チャンバから移動した細胞を5つの異なるフィールドで高電力フィールド(HPF、×40倍率)を用いて顕微鏡でカウントした。細胞移動検定の結果は図4に示される。
【0272】
8μm空隙ポリカーボネート膜を有するトランスウェルプレートを用いる移動検定で、膜を通過する細胞の数は100ng/mL SCFによって26倍超に増加した(図4)。SCFによって誘導された移動の増加は基底水準で1μg/mLの2G4抗体によって完全に阻害された。しかし、LAD2移動は4C9抗体によって部分的に抑制されたが、有意な差は観察されなかった(P=0.1071)。正常ヒトIgG1の存在下では移動が減少しなかった。
【0273】
実施例4の結果と同様に、c-KitのIg-類似ドメインD2及び/又はD3に結合し、SCF結合によるc-Kitリン酸化を抑制する本開示内容の抗-c-Kit抗体、即ち、2G4抗体はSCFによる肥満細胞の移動を阻害することができた。しかし、SCF結合によるc-Kitリン酸化(即ち、c-Kit信号伝達経路の下流)を抑制しない4C9抗体はSCFによる肥満細胞の移動を阻害しない。
【0274】
これは、また、全ての抗-c-Kit抗体が肥満細胞の移動を阻害するのではないということを示唆し、高い結合親和度でc-Kitの特定Ig-類似ドメインに結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞の移動を効果的に阻害することを立証する。
【0275】
肥満細胞の増殖及び移動の抑制を支配する作用メカニズムは、本開示内容の抗-c-Kit抗体固有の活性であり、これは抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド及び抗-IgE抗体をはじめとする通常の治療剤と異なる。従って、本開示内容の抗-c-Kit抗体は、通常の治療剤では十分に治療され得ない肥満細胞関連障害(例えば、肥満細胞症、MCASなど)に対して効果的な治療効果を奏することができる。対照的に、本開示内容の抗-c-Kit抗体の特徴を有しない4C9抗体はLAD2細胞の増殖及び移動を十分に抑制できなかった。
【0276】
[実施例6]本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体は肥満細胞脱顆粒化を誘導しない
【0277】
ヒト肥満細胞はFcγRI(CD64)及びFcγRII(CD32)をはじめとするFcγRを発現するが、FcγRIII(CD16)は発現しない。FcγRに対するIgGのFc領域の結合は、治療抗体の提供を受ける患者で過敏反応(HSR)を誘発し得る脱顆粒化を触発させ得る。さらに、多量体性IgG-抗原免疫複合体は高い-結合力相互作用でFcγRに結合し得る。従って、β-ヘキソサミニダーゼ検定を行って、2G4又は4C9抗体がLAD2細胞で脱顆粒化を増加させるか否かを決定した。敏感化されていない、IgE-敏感化及びインターフェロン(IFN)-γ-敏感化LAD2細胞を製造した。ビオチン化されたヒトIgE(200ng/mL、NBS-Cバイオサイエンス(NBS-C Bioscience)、オーストリア・ウィーン)又はIFN-γ(150ng/mL、ペプロテック(PeproTech)、米国ニュージャージー州)を37℃で24時間(SCF-欠乏培地で)細胞に添加した。敏感化の後に、細胞をHEPES緩衝剤(10mM HEPES、137mM NaCl、2.7mM KCl、0.4mM NaHPO、5.6mMグルコース、1.8mM CaCl、1.3mM MgSO、及び0.04%BSA)で2回洗浄し、96-ウェル培養プレート(10,000細胞/ウェル)上にシーディングした。次いで、細胞を1又は10μg/mLの2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1とともに37℃で(COなしに)1時間インキュベーションした。陽性対照群としてストレプトアビジン(2ng/mL、シグマ-アルドリッチ、米国ミズーリ州)を用いて、ビオチン化-IgEを架橋させた。450Хgで5分間遠心分離の後に、50μLの上清液を100μLのp-ニトロフェニルN-アセチル-β-D-グルコサミン(PNAG)溶液(3.5mg/mL、シグマ-アルドリッチ、米国ミズーリ州)に37℃で(COなしに)1.5時間添加した。50μLのグリシン緩衝剤(0.4M)を添加する時、黄色はβ-ヘキソサミニダーゼ活性を示した(例えば、[Kuehn HS, Radinger M and Gilfillan AM (2010) Measuring mast cell mediator release. Curr Protoc Immunol Chapter 7:Unit7 38.]参照)。405nmの波長での吸光度はスペクトロスター(SPECTROstar)ナノマイクロプレート判読機(ビーエムジーラボテック(BMG Labtech)、ドイツ・オルテンベルク)を用いて測定した。これらの結果は図5a~5cに示される。
【0278】
追加で、2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1がSCFによって相乗作用的に増加した脱顆粒化を阻害することができるか否かを調査するために、IgE-敏感化LAD2細胞をHEPES緩衝剤中に再懸濁させ、96-ウェル培養プレート(10,000細胞/ウェル)上にシーディングした。細胞を2G4、4C9、又は、正常ヒトIgG1で37℃で0.5時間前処理し、追加で0.5時間100ng/mL SCFで処理した。次いで、その後に、ストレプトアビジンを添加して、ビオチン化-IgEを0.5時間架橋させ、β-ヘキソサミニダーゼ放出検定を行った。これらの結果は図5dに示される。
【0279】
1.本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体は抗体媒介された肥満細胞脱顆粒化を誘導しない
【0280】
敏感化されていないLAD2細胞で2G4抗体及び正常ヒトIgG1によって媒介された脱顆粒化は有意に増加しなかったが、4C9抗体は非処理細胞と比較して用量-依存的方式で脱顆粒化を増加させた(図5a)。
【0281】
IgE-敏感化細胞で、2G4抗体は脱顆粒化を増加させていない一方、4C9抗体は脱顆粒化を有意に増加させた(図5b)。正常ヒトIgG1は脱顆粒化を若干増加させたが;差は統計的に有意ではなかった(P>0.5808)。アレルゲンの模倣体としてIgEライゲーションのためのストレプトアビジンを陽性対照群として用いて、肥満細胞脱顆粒化の活性を立証した。ストレプトアビジンは非処理細胞と比較して脱顆粒化を3倍超に増加させた。
【0282】
IFN-γがヒト肥満細胞でFcγRIの発現を強く増加させ、脱顆粒化がFcγRIによって増強され得ることが報告された[Woolhiser MR et al., Clin Immunol 110:172-80]。従って、肥満細胞脱顆粒化検定においてIFN-γの添加は、ヒトで活性化された免疫系の反応を模倣することができる。IFN-γ-敏感化細胞で、2G4抗体(P>0.1784)及び正常ヒトIgG1(P>0.6074)は脱顆粒化を若干増加させたが、差は統計的に有意ではなかった(図5c)。しかし、敏感化されていない、又は、IgE-敏感化細胞での脱顆粒化と比較して4C9抗体は脱顆粒化を有意に増加させた。
【0283】
従って、これは、本開示内容の抗-c-Kit抗体が抗体媒介された肥満細胞脱顆粒化を誘導せず、これにより、患者に投与される時、例えばHSRを誘発しないことによって安全に用いられ得ることを示す。
【0284】
2.本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体はSCFによって相乗作用的に増加する肥満細胞脱顆粒化を抑制する
【0285】
SCFはLAD2細胞でIgE-媒介された脱顆粒化を増加させるものと公知となっている。肥満細胞脱顆粒化検定で(図5d)、SCF単独はIgE敏感化LAD2細胞でβ-ヘキソサミニダーゼの分泌を有意に増加させていない一方、ビオチン化-IgE架橋剤であるストレプトアビジン(アレルゲン模倣体)はβ-ヘキソサミニダーゼの分泌を3倍増加させた。SCF及びストレプトアビジンの処理がストレプトアビジン単独と比較してβ-ヘキソサミニダーゼの分泌を2倍増加させたので、SCF及びストレプトアビジンで共に処理して相乗作用的効果を奏した。
【0286】
SCF及びストレプトアビジンによる脱顆粒化の増加は用量-依存的方式で2G4抗体によって抑制され(IC50=0.00636μg/mL)、脱顆粒化は0.1μg/mLより高い2G4抗体濃度で(ストレプトアビジン/SCFサンプルでの脱顆粒化水準に)減少した。しかし、4C9抗体及び正常ヒトIgG1は脱顆粒化を全く抑制できなかった。この結果は、2G4抗体がSCFによる肥満細胞脱顆粒化の過度な増加を抑制できることを示した。
【0287】
ほとんどの肥満細胞関連疾患はIgE-媒介された脱顆粒化によって誘発される。上記結果によって、2G4抗体はIgE-ライゲーション及びSCFによる肥満細胞の脱顆粒化の増加を抑制した。しかし、4C9抗体は肥満細胞のIgE-媒介された脱顆粒化を減少させることができなかった。
【0288】
これは、また、全ての抗-c-Kit抗体が肥満細胞のIgE-媒介された脱顆粒化を抑制するのではないということを示唆し、高い結合親和度でc-Kitの特定Ig-類似ドメインに結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞のIgE-媒介された脱顆粒化を効果的に抑制することを立証する。
【0289】
[実施例7]本開示内容の例示的な抗-c-Kit抗体は肥満細胞によるサイトカイン分泌のSCF-媒介された調節を抑制する
【0290】
LAD2細胞(1×10細胞/mL)はビオチン化-IgE(200ng/mL)により37℃で24時間敏感化された。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、低補充培地を有する12-ウェル培養プレート(1×10細胞/ウェル)にシーディングした。その後に、2G4抗体(1μg/mL)、SCF(100ng/mL)、及びストレプトアビジン(10ng/mL)を0.5時間の間隔で細胞に添加した。24時間のインキュベーションの後に、細胞-培養上清液を得、LAD2細胞によって放出されたサイトカインを製造者のプロトコルに従ってヒトXLサイトカインアレイキット(R&Dシステムズ、米国ミネソタ州)を用いてブロッティングした。それぞれのブロットの強度をイメージジェー(ImageJ)ソフトウェア(米国国立保健院(US National Institutes of Health)、米国メリーランド州)を用いて測定した。全ての実験を独立的に3回繰り返した。サイトカイン-放出検定の結果は図6及び7に示される。
【0291】
多様なサイトカインの水準は100ng/mL SCFによる処理後に有意に増加した(図6)。これらサイトカイン水準の増加は1μg/mLの2G4抗体による処理によって強力に抑制された。特に、GM-CSFはSCFによって7倍超に増加するが、上記増加は2G4抗体によって基底水準に完全に減少する(図6)。追加で、腫瘍原性阻害2(ST2)、血管内皮成長因子(VEGF)、C-Cモチーフケモカインリガンド2(CCL2、MCP-1としても公知となっている)、シスタチンC(CST3)、脳-由来した神経栄養因子(BDNF)、T細胞免疫グロブリン及びムチン-ドメイン含有-3(TIM-3)、及び補体成分C5/C5aは2倍超に増加したが、いずれも2G4抗体によって効果的に減少した(図6)。
【0292】
一方、CCL5、マクロファージコロニー-刺激因子(M-CSF)、及びインターロイキン-2(IL-2)をはじめとするいくつかのサイトカインはSCFによって下方調節された(図7)。下方調節は、また、2G4抗体によって阻害された。
【0293】
総合的に、SCFは肥満細胞によるサイトカイン分泌の調節を誘導し、上記調節は主に肥満細胞疾患を悪化させるプロ-炎症性サイトカインの増加によって示される。本開示内容の抗-c-Kit抗体はサイトカインの調節を抑制し、肥満細胞疾患の治療のための治療剤として用いられ得る。
【0294】
上記結果は特定の位置でヒトc-Kitエピトープに結合する本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞障害及びその症状の治療、予防、管理及び/又は好転に効果的であることを示した。特に、実施例の結果は本開示内容の抗-c-Kit抗体、例えば、2G4抗体が通常の治療剤とは異なるメカニズムで肥満細胞関連障害のための治療剤として潜在性を有することを示す。本開示内容の抗-c-Kit抗体は、高い親和度でc-Kitに結合し、c-KitのリガンドであるSCFの結合を完全に遮断する。SCF/c-Kit信号伝達の遮断は、ヒト肥満細胞で細胞の増殖、移動、脱顆粒化、及びサイトカイン放出を効果的に抑制する。従って、これらの結果は本開示内容の抗-c-Kit抗体が肥満細胞疾患に対する治療活性及び効果を奏することを示唆する。
【0295】
上記説明から、本開示内容が属する技術分野の技術者は、本開示内容がその技術的思想又は必須の特徴を変更させずに、他の具体的な形態で実施され得ることを理解するはずである。これと関連し、上記記載された実施例は例示的であり、全ての観点から制限するものではないということを理解すべきである。本開示内容の範囲は、請求項の意味及び範囲、及び本開示内容に由来した全ての変形、変更又は代案及びその等価的な概念を含むように解釈される。
【0296】
(配列目録)
【0297】
2g4抗体のL-CDR2のアミノ酸配列:LGS(配列番号:5)
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
【配列表】
2024537163000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を含む、1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させることに使用するための組成物
【請求項2】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:11及び12のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合するものである、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:14のアミノ酸配列上のR122、Y125、R181、K203、R205、S261及びH263のうち少なくとも1つに特異的に結合するものである、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、8×10-12M、6×10-12M、4×10-12M、3×10-12M、2×10-12M、1×10-12M、又は、10-13M以下の平衡解離定数(KD)値でc-Kitに特異的に結合するものである、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片がSCFとc-Kitの間に比べて50倍超さらに強い、100倍超さらに強い、150倍超さらに強い、200倍超さらに強い、250倍超さらに強い、300倍超さらに強い、350倍超さらに強い、400倍超さらに強い、450倍超さらに強い、500倍超さらに強い、550倍超さらに強い、又は、600倍超さらに強い結合親和度でc-Kitに特異的に結合するものである、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を含む、1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させることに使用するための組成物であって、
ここで、抗体抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:11及び12のアミノ酸配列上のヒトc-Kitエピトープへの結合に対して配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含む参照抗体と交差競争するものである組成物
【請求項7】
列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むか、又は、CDRの変異体を含む抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を含む、1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させることに使用するための組成物であって、
ここで、CDRの変異体は少なくとも1つのCDRに存在する1、2、3、4又は5個の(各)アミノ酸の変形、結実又は置換を含むものである組成物
【請求項8】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:1のVH CDR1、配列番号:2のVH CDR2、配列番号:3のVH CDR3、配列番号:4のVL CDR1、配列番号:5のVL CDR2及び配列番号:6のVL CDR3を含むものである、請求項7に記載の組成物
【請求項9】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:7と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び、配列番号:8と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含むものである、請求項8に記載の組成物
【請求項10】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:7を含むVH、及び、配列番号:8を含むVLを含むものである、請求項9に記載の組成物
【請求項11】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片が配列番号:9を含む重鎖、及び、配列番号:10を含む軽鎖を含むものである、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
抗-c-Kit抗体が2価単一特異的抗体である、請求項1に記載の組成物
【請求項13】
抗-c-Kit抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の組成物
【請求項14】
抗-c-Kit抗体がネイキッド抗体である、請求項1に記載の組成物
【請求項15】
対象体がヒトである、請求項1に記載の組成物
【請求項16】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の治療有効量が約0.01mg/kg~1,000mg/kgである、請求項1に記載の組成物
【請求項17】
肥満細胞関連障害が肥満細胞活性化症候群(MCAS)、原発性肥満細胞活性化症候群、モノクローナル肥満細胞活性化症候群(MMAS)、特発性肥満細胞活性化症候群、続発性肥満細胞活性化症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性炎症、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、アナフィラキシー、特発性アナフィラキシー、Ig-E媒介されたアナフィラキシー、非-Ig-E媒介されたアナフィラキシー、神経線維腫症、アトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、特発性じんましん、慢性じんましん、慢性自発性じんましん、アレルギー性じんましん、特発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、熱誘導性じんましん、皮膚描記症性じんましん、振動性じんましん、コリン性じんましん、接触性じんましん、症状性皮膚描記症、正常補体血症性じんましん性血管炎、好酸球増多症候群、繊維症、特発性肺繊維症(IPF)、肺繊維症、肝繊維症、心臓繊維症、強皮症、骨髄繊維症、炎症性状態、肺動脈性高血圧(PAH)、過敏性腸症候群(IBS)、皮膚病、肥満細胞活性化障害(MCAD)、肥満細胞症、皮膚肥満細胞症(例えば、色素性じんましん)、非活動性全身性肥満細胞症(ISM)、無症状性全身性肥満細胞症(SSM)、連関した血液学的新生物を伴った肥満細胞症(SM-AHN)、攻撃性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫、全身性肥満細胞症(SM)、進行したSM(AdvSM)、進行していないSM(非-Adv SM)、浮腫(血管浮腫)、原発性肺高血圧(PPH)、肥満細胞性胃腸炎、肥満細胞性結腸炎、そう痒症、慢性そう痒症、慢性腎不全及び心臓に対して続発性であるそう痒症、肥満細胞と連関した心臓、血管、腸、脳、腎臓、肝、膵臓、筋肉、骨及び皮膚状態、自己免疫疾患、呼吸器疾患、アレルギー性疾患(例えば、食物アレルギーを含む)、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形紅斑、皮膚壊死性細静脈炎及び虫刺され皮膚炎症、気管支喘息、炎症性疾患、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、中枢神経系(CNS)障害、間質性膀胱炎及び血液学的障害からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の組成物
【請求項18】
肥満細胞関連障害が慢性自発性じんましん、寒冷誘導性じんましん、症状性皮膚描記症及び正常補体血症性じんましん性血管炎からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の組成物
【請求項19】
抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、硬膜外投与、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、脊髄腔内投与、及び腹腔内投与のうち少なくとも1つの経路で投与するためのものである、請求項1に記載の組成物
【請求項20】
1つ以上の肥満細胞関連障害の治療、予防、管理又は好転を必要とする対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させる方法で用いるための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
対象体において1つ以上の肥満細胞関連障害を治療するか、予防するか、管理するか又は好転させるための医薬の製造のための、配列番号:13のアミノ酸配列を含むヒトc-Kitエピトープに特異的に結合する抗-c-Kit抗体又はその抗原結合断片の使用。
【国際調査報告】