(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フッ素化洗浄流体
(51)【国際特許分類】
C11D 7/28 20060101AFI20241003BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C11D7/28
B08B3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520836
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 IB2022059122
(87)【国際公開番号】W WO2023057853
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパル,ラマ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】安藤 伸明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄介
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB95
4H003CA22
4H003ED03
4H003ED07
4H003ED19
4H003ED32
(57)【要約】
洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、又は複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物である。第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、少なくとも6個の炭素原子を有する全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を有するヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄流体であって、
塩素化ヒドロフルオロオレフィン、又は
ヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物
を含む第1の流体成分と、
少なくとも1つの第2の流体成分と、
を含み、前記第2の流体成分は、
構造4を有するヒドロフルオロチオエーテル:
【化1】
(式中、
R
1は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
f
1及びR
f
2は、1~3個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基から独立して選択される)、
少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、
少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、
全フッ素化オレフィン混合物であって、前記全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物、又は
ヒドロフルオロオレフィン混合物であって、前記ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物
のうちの少なくとも1つを含む、洗浄流体。
【請求項2】
前記第1の流体成分が、構造1の塩素化ヒドロフルオロオレフィン、
【化2】
又は、構造2のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化3】
構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化4】
若しくはそれらの混合物
を含む、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項3】
前記第1の流体成分が、前記洗浄流体の前記第1及び第2の流体成分の総量の30~95重量%を構成する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項4】
前記第1の流体成分が、前記洗浄流体の前記第1及び第2の流体成分の総量の30~70重量%を構成する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項5】
前記第1の流体成分が、前記洗浄流体の前記第1及び第2の流体成分の総量の40~50重量%を構成する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項6】
前記第2の流体成分が構造4の化合物を含み、式中、R
1はメチル基であり、R
f
1及びR
f
2は全フッ素化メチル基である、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項7】
前記洗浄流体が不燃性である、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項8】
前記洗浄流体が噴霧可能である、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項9】
前記洗浄流体が100℃未満の沸点を有する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項10】
前記洗浄流体が、LDPE(低密度ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー合成ゴム)、CR(クロロプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)から選択されるプラスチック及びゴム材料と適合性であり、適合性が、前記洗浄流体中に48時間浸漬されたときの10%未満の重量増加によって測定される、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項11】
前記洗浄流体が、下記を含む少なくとも3つの流体成分:
第1の流体成分であって、
塩素化ヒドロフルオロオレフィン又は
ヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物
を含む第1の流体成分、
第2の流体成分であって、構造4を有するヒドロフルオロチオエーテル:
【化5】
(式中、
R
1は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
f
1及びR
f
2は、1~3個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基から独立して選択される)
を含む第2の流体成分、及び
第3の流体成分であって、
少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、
少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、
全フッ素化オレフィン混合物であって、前記全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物、又は
ヒドロフルオロオレフィン混合物であって、前記ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物
を含む第3の流体成分、
を含む、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項12】
前記第1の流体成分が、構造1の塩素化ヒドロフルオロオレフィン、
【化6】
又は、構造2のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化7】
構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化8】
若しくはそれらの混合物
を含む、請求項11に記載の洗浄流体。
【請求項13】
前記第3の流体成分が、
少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、又は
全フッ素化オレフィン混合物であって、前記全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物
を含む、請求項11に記載の洗浄流体。
【請求項14】
前記第1の流体成分が30~70重量%を構成し、前記第2の流体成分が少なくとも15重量%を構成し、前記第3の流体成分が少なくとも15重量%を構成し、前記重量%が、前記洗浄流体の前記第1、第2及び第3の流体成分の総量の重量%である、請求項11に記載の洗浄流体。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本明細書では、少なくとも2つの流体成分を含む、洗浄流体が開示される。いくつかの実施形態では、洗浄流体は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む第1の流体成分と、少なくとも1つの第2の流体成分と、を含む。第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【発明を実施するための形態】
【0002】
洗浄液は、広範囲の用途、特に輸送用途で使用される。これには、自転車、自動車、トラック、列車、航空機などのビークルの洗浄だけでなく、車体、ブレーキ部品、サスペンション、車輪などのこれらのビークルの部品、及びこれらのビークルを修理及び保守管理するために使用される工具の洗浄も含まれる。多くの場合、これらの用途に関連する汚れは油性汚れである。これらの用途では、水性組成物である石鹸及び洗剤などの従来の洗浄剤は、概して適していない。炭化水素洗浄流体、例えば、芳香族(例えば、ベンゼン及びトルエン)若しくはアルカン(例えば、ヘキサン及び石油エーテル)、又はガソリンなどの混合物は、油性汚れに対して有用であり得るが、これらの材料は可燃性であり、したがって洗浄剤として使用するには危険である。金属表面からの良好な油性汚れ除去を提供し不燃性である、一連の塩素化溶媒が開発されてきたが、これらの材料は欠点を有する。これらの欠点は、洗浄される物品がポリマー材料を含有する場合、特に問題となる。これらの塩素化溶媒は、輸送ビークル及び部品においてますます一般的になりつつあるポリマー材料を溶解又は膨潤させる傾向がある。塩素化溶媒と炭化水素溶媒との混合物も使用することができるが、これらも同様に欠点を有する。上述したように、炭化水素溶媒は可燃性であり、したがって危険であり得る。更に、炭化水素溶媒はより高い表面張力を有するので、これらの溶媒を塩素化溶媒と組み合わせて使用すると、特に物品中の小さな空間に浸透するのに、より効果の低い洗浄剤を生成する可能性がある。
【0003】
したがって、油性汚れに対して有効であり、表面上の小さな空間への浸透を可能にする低い表面張力を有し、不燃性であり、ゴム及びプラスチックなどの様々なポリマー材料と適合性である、洗浄流体が依然として必要とされている。更に、洗浄流体がこれらの特性を達成し、また非毒性で環境に優しいことが望ましい。
【0004】
油性汚れに対する効果的な洗浄、低表面張力、不燃性、ゴム及びプラスチックなどの様々なポリマー材料との適合性という所望の性能特性を提供し、また環境に優しく非毒性である流体の混合物である、洗浄流体が本明細書に開示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物を含む。
【0006】
他の実施形態では、洗浄流体は少なくとも3つの流体成分を含む。第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテルを含む。第3の流体成分は、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物を含む。
【0007】
本明細書で使用する場合、「フルオロ」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」若しくは「フルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」とは、(i)部分的にフッ素化されており、炭素に結合した少なくとも1個の水素原子が存在すること、又は(ii)全フッ素化されていることを意味する。
【0008】
本明細書で使用する場合、「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」若しくは「ペルフルオロアルキル」若しくは「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「全フッ素化」とは、完全にフッ素化されており、その結果、別段の指示をされている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な、炭素に結合した水素原子が存在しないことを意味する。
【0009】
本明細書で使用される場合、基「-Rf」は、化学分野における一般的な用法に従って使用され、フルオロアルキル基を指す。基「-Rf-」は、フルオロアルキレン基を指す。
【0010】
用語「室温」と「周囲温度」とは、互換的に使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0011】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンの基である一価の基を指す。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
「オレフィン」という用語は、化学分野において十分に理解されているとおり本明細書において使用され、オレフィン基、すなわち炭素-炭素二重結合(-C=C-)を有する分子を指し、炭素-炭素二重結合は末端であっても非末端であってもよい。オレフィン基を有する基としては、塩素原子、2個の水素原子、及び結合したフッ素化基を有するオレフィン基である塩素化ヒドロフルオロオレフィン;塩素原子、フッ素原子、水素原子、及び結合したフッ素化基を有するオレフィン基であるヒドロクロロフルオロオレフィン;全ての水素原子がフッ素原子で置き換えられたオレフィン基である全フッ素化オレフィン;並びに少なくとも1個の水素原子に加えてフッ素原子を含有するオレフィン基であるヒドロフルオロオレフィンが挙げられる。
【0013】
本明細書で使用される用語「エーテル」は、Ra-O-Rb型の化合物を指し、式中、Ra及びRbは、アルキル基、又はフッ素化アルキル基である。用語「チオエーテル」は、酸素が硫黄原子で置き換えられているエーテル化合物を指す。本明細書で使用される用語「ヒドロフルオロチオエーテル」は、Ra-S-Rb型のチオエーテルを指し、式中、Raはアルキル基であり、Rbはフッ素化アルキル基、典型的にはペルフルオロアルキル基である。
【0014】
流体成分の混合物を含む、洗浄流体が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。洗浄流体は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、又は複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む、第1の流体成分を含む。洗浄流体はまた、第2の流体成分を含み、当該、第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物のうちの少なくとも1つを含む。これらの成分の各々を、下記により詳細に記述する。
【0015】
洗浄流体は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、又は複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む、第1の流体成分を含む。いくつかの実施形態では、第1の流体成分は、構造1の塩素化ヒドロフルオロオレフィンを含む。
【化1】
【0016】
シス命名法が本明細書で使用され、Z命名法と同等である。塩素化ヒドロフルオロオレフィンは、Central Glass Co.,Ltd.Tokyo,JapanからCELEFIN-1233zとして市販されている。シス異性体が構造中に示されているが、いくらかのトランス異性体も流体中に存在し得ることが化学分野において十分に理解されている。
【0017】
他の実施形態では、第1の流体は、ヒドロクロロフルオロオレフィン又は複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。第1の流体は、構造2のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化2】
構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ、
【化3】
又はその異性体の2つ、3つ若しくは4つ全ての混合物を含む。
【0018】
構造2及び3の異性体の混合物は、(AGC)Asahi Glass Company,Tokyo,JapanからAMOLEA AS-300として市販されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィンとヒドロクロロフルオロオレフィンとの混合物を含んでもよい。
【0020】
洗浄流体中の第1の流体成分の量は、広範囲にわたって変化し得る。第1の流体成分は、油性汚れに対して非常に効果的な洗浄流体であるが、ポリマー材料との適合性の問題を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の流体成分は、洗浄流体の第1及び第2の流体成分の総量の30~95重量%を構成する。他の実施形態では、第1の流体成分は、洗浄流体の第1及び第2の流体成分の総量の30~70重量%を構成する。更に他の実施形態では、第1の流体成分は、洗浄流体の第1及び第2の流体成分の総量の40~50重量%を構成する。
【0021】
洗浄流体は、第2の流体成分と呼ばれる少なくとも1つの追加の流体成分を更に含む。第2の流体成分は、広範囲の基材との適合性を提供する。上述したように、第1の流体成分は、効果的な洗浄特性を提供するが、多くの基材表面、特にポリマー基材表面との適合性に欠ける。第1の流体成分を少なくとも1つの第2の流体成分と組み合わせることが、第1の流体の良好な洗浄特性を維持しながら、広範囲の基材表面との適合性を向上させる。
【0022】
少なくとも1つの第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を含む、混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第2の流体成分は、構造4を有するヒドロフルオロチオエーテルを含み、
【化4】
式中、R
1は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
f
1及びR
f
2は、独立して、1~3個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基から選択される。いくつかの実施形態では、R
1はメチル基であり、R
f
1及びR
f
2の両方は全フッ素化メチル基である。
【0024】
他の実施形態では、第2の流体成分は、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、又は少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィンの混合物を含む。好適な材料の例としては、DR CFX70(Chemours-Mitsui Fluoroproducts Co.)が挙げられる。
【0025】
他の実施形態では、第2の流体成分は、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、又は少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィンの混合物を含む。好適な材料の例としては、OPTEON SF-10(Chemours Chemical Co.)が挙げられる。
【0026】
少なくとも3つの流体成分を含む、洗浄流体も本明細書で開示される。上記の「2成分」流体が、3つ以上の流体成分を含み得る一方、3成分流体は、少なくとも3つの流体成分を含む。第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテルを含む。第3の流体成分は、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物を含む。
【0027】
第1の流体成分は、塩素化ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、若しくは複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。これらの成分は、上記で詳細に説明している。
【0028】
第2の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテルを含む。この成分は、上記で詳細に説明している。
【0029】
第3の流体成分は、少なくとも6個の炭素原子を含む全フッ素化オレフィン、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン、全フッ素化オレフィン混合物であって、当該全フッ素化オレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物、又はヒドロフルオロオレフィン混合物であって、当該ヒドロフルオロオレフィンが少なくとも6個の炭素原子を有する、混合物を含む。これらの成分は、上記で詳細に説明している。
【0030】
いくつかの実施形態では、3成分洗浄流体は、第1の流体成分が30~70重量%を構成し、第2の流体成分が少なくとも15重量%を構成し、第3の流体成分が少なくとも15重量%を構成する、混合物を含む。重量%は、洗浄流体の第1、第2及び第3の流体成分の総量の重量%である。
【0031】
本開示の洗浄流体はまた、追加の任意選択の成分を含んでもよい。任意選択の添加剤は、洗浄流体の望ましい特性を損なわないものとする。使用され得る任意選択の添加剤の例としては、炭化水素溶媒、又は炭化水素系溶媒が挙げられる。例としては、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ケトン、エステル及びアルコールなどの炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0032】
上述したように、本開示の洗浄流体は、広範囲の望ましい特性を有する。洗浄流体は不燃性である。可燃性について好適な試験は、実施例のセクションに記載されている。
【0033】
洗浄流体は、広範囲の用途における洗浄流体としての使用に適した沸点を有する。流体が高すぎる沸点を有する場合、流体の微量残留物は、洗浄された表面から十分に迅速に蒸発しない。一方、沸点が低すぎる場合、洗浄流体は、効果的な洗浄を提供するには揮発性が高すぎる。本開示の洗浄流体は100℃未満の沸点を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、洗浄流体は噴霧可能である。洗浄流体を供給するための広範囲の噴霧技術が知られている。例としては、エアレス噴霧器を含む市販の噴霧器、及びエアロゾル(流体が缶などの加圧容器から分注される)が挙げられる。
【0035】
洗浄流体は、広範囲のポリマー材料との望ましい適合性を有する。これに関連して、適合性は、洗浄流体中に48時間浸漬したときの10%未満の重量増加によって測定される。適合性プラスチック及びゴム材料の中には、LDPE(低密度ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー合成ゴム)、CR(クロロプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)がある。
【0036】
本洗浄液はまた、環境に優しい。これは、洗浄流体が、環境への影響が低いものであり得ることを意味する。この点に関して、本開示のフッ素化化合物は、500、300、200、100、50、10未満、又は1未満の地球温暖化係数(GWP、100年ITH)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO
2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
【0037】
この式中、aiは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象の化合物である。通例許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物、iの濃度は、擬一次速度論(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定される。同じ時間間隔のCO2の濃度は、大気からのCO2の交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
【実施例】
【0038】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【0039】
【0040】
試験方法
適合性試験
洗浄流体と様々なポリマー基材との適合性は、約0.4~0.8gのポリマー基材を秤量し、それを20mlバイアルに入れることによって決定した。バイアルに、約20gの洗浄溶液を添加した。このバイアルに蓋をし、ポリマー基材を洗浄流体溶液中に48時間浸漬させた。ポリマー基材をバイアルから取り出し、表面から残留洗浄流体を乾燥させた。ポリマー基材を再秤量し、重量のパーセント変化を記録した(表6A~6G、表7A~7D、表8A~8D、表9A~9D及び表10A~10B)。
【0041】
溶解性試験
約0.2gのオイル又はグリースをバイアルに入れることによって、各洗浄流体中の様々なオイル及びグリースの溶解性を決定した。次いで、1ミリリットルの洗浄流体をバイアルに添加した。バイアルを密封し、Emerson Electric Co.Ferguson,Missouriから商品名「BRANSONIC 5800H-J」で入手可能な超音波洗浄器(38KHz、160W)に1時間入れた。次いで、超音波適用の10分後に溶液を観察した。オイル及びグリースの溶解性を以下のように評価した。
9-十分に分散し、分離しなかった。
5-分離して部分的に分散した
1-不溶性。
【0042】
結果を、表11~表14に示す。
【0043】
可燃性試験
RIGO Co.,Ltd,Tokyo,Japanから入手可能な自動引火点試験機、モデルRF-301を使用して、タグ密閉式カップ装置法による引火点についてのASTM D56引火点可燃性試験に準拠する手順に従って、可燃性試験を行った。結果を表15に示す
【0044】
実施例(Ex)及び比較例(CE)、
実施例及び比較例は、重量に基づいて適切な比率の洗浄流体成分を混合し、溶液を徹底的に混合することによって調製した(表1~表5)。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【国際調査報告】