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特表2024-537167ミエリンタンパク質ゼロサイレンシング及びCMT1B疾患を治療するための生成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ミエリンタンパク質ゼロサイレンシング及びCMT1B疾患を治療するための生成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241003BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N15/88 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/12
A61K31/7105
A61P25/00
A61P25/02
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520851
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022077726
(87)【国際公開番号】W WO2023060215
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,357
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ハーパー、スコット クエントン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュノネジャド、アフルーズ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA201
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA20
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA20
(57)【要約】
対象の1つの細胞又は複数の細胞おける変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉ベースの生成物及び方法が開示される。本開示は、異常タンパク質の発現をノックダウンするために、MPZ遺伝子の様々な領域を特異的に標的とするマイクロRNAを含む。追加的に、本開示は、正常、野生型、又は機能的に活性なMPZタンパク質をコードする核酸の送達を含む。追加的に、本開示は、異常なMPZタンパク質の発現をノックダウンするマイクロRNAをコードする核酸を送達するために、かつ/又は正常、野生型、若しくは機能的に活性なMPZタンパク質をコードする核酸を送達するために、組換えアデノ随伴ウイルスを含む。本開示には、シャルコー・マリー・トゥース病1B型(CMT1B)疾患を含むが、これらに限定されないMPZ遺伝子変異に関連する疾患の治療でこれらの核酸を使用する方法が含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸であって、
a)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
b)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
c)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
d)前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、前記標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、又は
e)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、を含む、核酸。
【請求項2】
核酸であって、
a)i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
ii)前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、前記標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列と、
b)i)配列番号1に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、ヒトMPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)配列番号3に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
iii)配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、MPZポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列と、を含む、核酸。
【請求項3】
1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
前記プロモーターが、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記シュワン細胞特異的プロモーターが、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである、請求項3に記載の核酸。
【請求項6】
前記MPZプロモーターが、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸又はそれらのいずれか1つ以上の組み合わせを含む、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクター。
【請求項8】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである、請求項8に記載のウイルスベクター。
【請求項10】
前記ウイルスベクターが、AAVである、請求項8又は9に記載のウイルスベクター。
【請求項11】
前記AAVが、rep及びcap遺伝子を欠いている、請求項10に記載のウイルスベクター。
【請求項12】
前記AAVが、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である、請求項10又は11に記載のウイルスベクター。
【請求項13】
前記AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項10~12のいずれか一項に記載のAAV。
【請求項14】
前記AAVが、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項10~13のいずれか一項に記載のAAV。
【請求項15】
組成物であって、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又は
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクターと、
薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項16】
細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を低減する方法であって、前記細胞を、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又は
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター、又は
(d)請求項15に記載の組成物、と接触させることを含む、方法。
【請求項17】
前記細胞が、神経細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記神経細胞が、シュワン細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、ヒト対象の中にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子を含む対象を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の:
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又は
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター、又は
(d)請求項15に記載の組成物、を投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記対象が、ヒト対象である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸が、請求項2~6のいずれか一項である、請求項16又は23に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸が、組成物中及び/又はナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター中に存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記ウイルスベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-FであるAAVである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記AAVが、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)の発現を低減するための医薬品の調製のための、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又は
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター、又は
(d)請求項15に記載の組成物、
の使用。
【請求項33】
前記細胞が、ヒト対象中にある、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子を含む対象を治療する際の、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又は
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター、又は
(d)請求項15に記載の組成物、
の使用。
【請求項35】
前記対象が、ヒト対象である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記対象が、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している、請求項33又は35に記載の使用。
【請求項37】
前記疾患が、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記核酸、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、ベクター、ウイルスベクター、組成物、又は医薬品が、筋肉内注射、経口投与、皮下、皮内、若しくは経皮輸送、血流への注入、又はエアロゾル投与のために製剤化される、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸、
(b)請求項7に記載のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、
(c)請求項8~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター、
(d)請求項15に記載の組成物、
(e)請求項16~31のいずれか一項に記載の方法、又は
(f)請求項32~37のいずれか一項の記載の使用。
【請求項39】
細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を低減し、細胞において機能的MPZタンパク質を発現させる方法であって、前記方法が、前記細胞に、有効量の
(a)
(i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
(ii)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
(iii)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
(iv)前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、前記標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、のうちの1つ以上を含む核酸と、
(b)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸と、を送達することを含む、方法。
【請求項40】
前記核酸のうちのいずれか1つ以上が、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記プロモーターが、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記シュワン細胞特異的プロモーターが、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記MPZプロモーターが、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、神経細胞である、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記神経細胞が、シュワン細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が、ヒト対象中にある、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患が、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸が、前記細胞に、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせで送達される、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ウイルスベクターが、AAVである、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記AAVが、rep及びcap遺伝子を欠いている、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記AAVが、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記AAVが、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記MPZ miRNAを含むか若しくはコードする前記ポリヌクレオチド配列、及び/又は前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸、並びに
前記コドン最適化MPZ DNAをコードする前記ポリヌクレオチド配列を含む前記核酸が、
前記細胞に同時に送達される、請求項50~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸が、前記細胞に同じベクターで送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記MPZ miRNAを含むか若しくはコードする前記ポリヌクレオチド配列、及び/又は前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸、並びに
前記コドン最適化MPZ DNAをコードする前記ポリヌクレオチド配列を含む前記核酸が、
前記細胞に異なる時間に細胞に送達される、請求項50~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の異常発現に罹患している対象を治療する方法であって、前記方法が、前記対象における前記変異体MPZ遺伝子の発現を低減すること、及び機能的MPZを発現させることを含み、前記方法が、前記対象に、有効量の
(a)
(i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
(ii)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
(iii)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、前記MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
(iv)前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、前記標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、のうちの1つ以上を含む核酸と、
(b)配列番号3又は6に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸と、を送達することを含む、方法。
【請求項62】
前記核酸のうちのいずれか1つ以上が、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記プロモーターが、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記シュワン細胞特異的プロモーターが、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記MPZプロモーターが、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、ヒトである、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記疾患が、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記核酸が、前記対象に、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクターで、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせで送達される、請求項61~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ウイルスベクターが、AAVである、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記AAVが、rep及びcap遺伝子を欠いている、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記AAVが、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である、請求項72又は73に記載の方法。
【請求項75】
前記AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項72~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記AAVが、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記MPZ miRNAを含むか若しくはコードする前記ポリヌクレオチド配列、及び/又は前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸、並びに
前記コドン最適化MPZ DNAをコードする前記ポリヌクレオチド配列を含む前記核酸が、
前記対象に同時に送達される、請求項61~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記核酸が、前記対象に同じベクターで送達される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記MPZ miRNAを含むか若しくはコードする前記ポリヌクレオチド配列、及び/又は前記MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸、並びに
前記コドン最適化MPZ DNAをコードする前記ポリヌクレオチド配列を含む前記核酸が、
前記対象に異なる時間で送達される、請求項61~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の異常発現に罹患している対象を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に、配列番号1、3、及び6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む、MPZ DNA又はコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む有効量の核酸を送達することによって、前記対象において機能的MPZタンパク質を発現させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照による組み込み
本出願は、開示の別個の部分として、コンピュータ可読形態の配列表(ファイル名:57017_Seqlisting.XML、サイズ:111,501バイト、作成:2022年10月3日)を含み、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0002】
ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子(1q22)の発現をサイレンシング又は阻害するための生成物及び方法が提供され、遺伝子の変異は、野生型MPZタンパク質の過小発現及び様々なタイプのシャルコー・マリー・トゥース(CMT)病を含む重度の早期発症型の先天性低髄鞘形成に関連する。MPZは、広い表現型スペクトルを有するCMT原因遺伝子としてよく知られている。MPZ遺伝子におけるいくつかの変異は、多くの異なるタイプの低髄鞘形成疾患及びCMT病を引き起こし、優性中間型CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、及びCMT 2J型(CMT2J)、並びにデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS又はCMT 3型)疾患を含むが、これらに限定されない。CMT1B疾患は、末梢神経障害の症状を示し、遠位筋力低下及び萎縮、足の変形、並びに感覚喪失を含むが、これらに限定されない。本開示は、MPZ遺伝子をコードする標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする人工マイクロRNA(miRNA)をコードする核酸を使用してCMT1Bを治療するための遺伝子療法アプローチを提供し、標的核酸配列との複合体の結合が、MPZ遺伝子発現のノックダウンをもたらし、MPZ遺伝子をノックダウンするように設計された人工miRNAに耐性であるコドン最適化MPZ遺伝子(coMPZ又はresMPZ)をコードする核酸を使用することを伴う。組換えアデノ随伴ウイルスなどの送達ビヒクルは、1つ以上のMPZマイクロRNA、並びにcoPMZ遺伝子をコードする核酸を送達する。これらの生成物及び方法は、CMT1B病及び異常なMPZ発現を示す他の障害の治療における適用を有する。
【背景技術】
【0003】
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は、2,500人に最大1人の有病率を有する遺伝性末梢神経障害の臨床的及び遺伝的に異種の集合である。CMT神経障害1B型(CMT1B)は、CMT1の3番目に最も一般的なサブタイプであり、症例の10%を占め、約30,000個体中およそ1個体に影響を及ぼす。CMT1Bの特徴は、ゆっくり進行する遠位筋の脱力及び萎縮、垂れ足及び変形、感覚の喪失、並びに2つの典型的な発症:早期幼児及び思春期の発症を伴う非常に重度な反射の欠如を含む。CMT1Bは、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ又はP0)遺伝子における200を超える異なる変異によって引き起こされる。MPZ遺伝子は、ミエリン鞘内の主要なタンパク質であるMPZタンパク質をコードする。MPZは、健常で効率的な末梢神経系を維持するのに不可欠なタンパク質である。シュワン細胞における欠陥タンパク質の蓄積は、経時的に脱髄及び細胞死を引き起こす。CMT1B病の病理学的メカニズムは、2つの主要な群:(1)正常な髄鞘形成に直接影響を及ぼす毒性の機能獲得変異、及び(2)欠陥のある折り畳み不全タンパク質応答(UPR)又は小胞体(ER)ストレス応答、にほとんど分けることができる。疾患の両方のメカニズムは、最終的に、シュワン細胞(SC)における変異体ミエリンタンパク質の蓄積、減少した髄鞘形成、筋力低下及び萎縮、並びに下肢及び足の感覚の喪失につながる。例えば、R98C変異は、ERにおける変異したMPZタンパク質及び欠陥UPRを保持することに起因して、早期発症の重度の疾患を引き起こす。この変異を有する患者は、ミエリンが非常に低いか、又はほとんどない。これらの患者は、CMT1Bとして分類されるが、非常に重度のCMT1B又は先天性低髄鞘形成の別の定義であるデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS)としても分類される。この病気のための治療法はまだない。
【0004】
CMT1B病を含むが、これに限定されないMPZ遺伝子障害のための治療の生成物及び方法が当該技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子における変異を治療するため、並びにMPZ遺伝子における変異から生じる疾患を治療、改善、その進行を遅延、及び/又はそれを予防するための生成物、方法、及び使用が提供される。
【0006】
本開示は、
a)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
b)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
c)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
d)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、又は
e)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、を含む、核酸を提供する。
【0007】
本開示は、
a)i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
ii)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列と、
b)i)配列番号1に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、ヒトMPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)配列番号3に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
iii)配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、MPZポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列と、を含む核酸を提供する。
【0008】
いくつかの態様において、核酸は、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む。
いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、H1プロモーター、EF1-アルファプロモーター、最小EF1-アルファプロモーター、unc45bプロモーター、CK1プロモーター、CK6プロモーター、CK7プロモーター、ミニCMVプロモーター、CMVプロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、アルファ-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCKエンハンサー-プロモーター(MHCK7)、tMCKプロモーター、最小MCKプロモーター、デスミンプロモーター、チキンβアクチンプロモーター(CBA)、P546プロモーターシミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即時早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、シュワン細胞特異的プロモーター、ミエリン特異的プロモーター、又はネイティブプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、MPZプロモーター、ミニMPZプロモーター、非圧縮ミエリン関連タンパク質(NCMPA又はMP11)プロモーター、PMP22プロモーター、MBPプロモーター、SOX10プロモーター、又はGAP43プロモーターであり得る。いくつかの態様において、miMPZとともに使用されるプロモーターは、U6プロモーターである。いくつかの態様において、MPZ置換遺伝子とともに使用されるプロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかのより具体的な態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである。いくつかの態様において、かかるシュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーターは、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。
【0009】
本開示は、本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらのいずれか1つ以上の組み合わせを含む、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターを提供する。
いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAVである。いくつかの態様において、AAVは、rep及びcap遺伝子を欠いている。いくつかの態様において、AAVは、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である。いくつかの態様において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの具体的な態様において、AAVは、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである。
【0010】
本開示は、本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせを含む組成物を提供する。本開示は、本開示のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、ベクター、若しくはウイルスベクターのうちのいずれか、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。
【0011】
本開示は、細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を低減する方法を提供し、方法は、細胞を、本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの態様において、方法は、細胞を、
a)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
b)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
c)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
d)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
e)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、を含む核酸と接触させることを含む。
【0012】
いくつかの態様において、方法は、細胞を、
a)i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
ii)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列と、
b)i)配列番号1に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、ヒトMPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)配列番号3に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、及び/又は
iii)配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、MPZポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列と、を含む核酸と接触させることを含む。
【0013】
いくつかの態様において、核酸は、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む。いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、H1プロモーター、EF1-アルファプロモーター、最小EF1-アルファプロモーター、unc45bプロモーター、CK1プロモーター、CK6プロモーター、CK7プロモーター、ミニCMVプロモーター、CMVプロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、アルファ-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCKエンハンサー-プロモーター(MHCK7)、tMCKプロモーター、最小MCKプロモーター、デスミンプロモーター、チキンβアクチンプロモーター(CBA)、P546プロモーターシミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即時早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、シュワン細胞特異的プロモーター、ミエリン特異的プロモーター、又はネイティブプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、MPZプロモーター、非圧縮ミエリン関連タンパク質(NCMPA又はMP11)プロモーター、PMP22プロモーター、MBPプロモーター、SOX10プロモーター、又はGAP43プロモーターであり得る。いくつかの態様において、miMPZとともに使用されるプロモーターは、U6プロモーターである。いくつかの態様において、MPZ置換遺伝子とともに使用されるプロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかのより具体的な態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである。いくつかの態様において、かかるシュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーターは、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。いくつかの態様において、核酸は、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクター中にある。いくつかの態様において、核酸は、ウイルスベクター中にある。いくつかの態様において、核酸、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターは、組成物中にある。いくつかの態様において、細胞は、神経細胞である。いくつかの態様において、神経細胞は、シュワン細胞である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト対象中にある。
【0014】
本開示は、変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子を含む対象を治療する方法を提供し、方法は、対象に、有効量の本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらのいずれか1つ以上の組み合わせを投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、対象に、
a)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
b)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
c)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
d)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
e)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、を含む、有効量の核酸を投与することを含む。
【0015】
いくつかの態様において、方法は、対象に、
a)i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
ii)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列と、
b)i)配列番号1に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、ヒトMPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、
ii)配列番号3若しくは6に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列、又は
iii)配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、MPZポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列と、を含む、有効量の核酸を投与することを含む。
【0016】
いくつかの態様において、核酸は、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む。いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、H1プロモーター、EF1-アルファプロモーター、最小EF1-アルファプロモーター、unc45bプロモーター、CK1プロモーター、CK6プロモーター、CK7プロモーター、ミニCMVプロモーター、CMVプロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、アルファ-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCKエンハンサー-プロモーター(MHCK7)、tMCKプロモーター、最小MCKプロモーター、デスミンプロモーター、チキンβアクチンプロモーター(CBA)、P546プロモーターシミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即時早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、シュワン細胞特異的プロモーター、ミエリン特異的プロモーター、又はネイティブプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、MPZプロモーター、非圧縮ミエリン関連タンパク質(NCMPA又はMP11)プロモーター、PMP22プロモーター、MBPプロモーター、SOX10プロモーター、又はGAP43プロモーターであり得る。いくつかの態様において、miMPZとともに使用されるプロモーターは、U6プロモーターである。いくつかの態様において、MPZ置換遺伝子とともに使用されるプロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかのより具体的な態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである。いくつかの態様において、かかるシュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーターは、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。いくつかの態様において、核酸は、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクター中に存在する。いくつかの態様において、核酸は、ウイルスベクター中にある。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-FであるAAVである。いくつかの態様において、AAVは、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの態様において、核酸、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターは、組成物中にある。いくつかの態様において、対象は、ヒト対象である。いくつかの態様において、対象は、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している。いくつかの態様において、疾患は、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である。
【0017】
本開示は、細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を低減し、細胞において機能的MPZタンパク質を発現させる方法を提供し、方法は、細胞に、有効量の
(a)
(i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
(ii)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
(iii)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
(iv)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、のうちの1つ以上を含む核酸と、
(b)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸と、を送達することを含む。
【0018】
いくつかの態様において、核酸のうちのいずれか1つ以上は、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む。いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである。いくつかの態様において、シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーターは、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。いくつかの態様において、細胞は、神経細胞である。いくつかの態様において、神経細胞は、シュワン細胞である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト対象中にある。いくつかの態様において、対象は、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している。いくつかの態様において、疾患は、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である。いくつかの態様において、核酸は、細胞に、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせで送達される。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAVである。いくつかの態様において、AAVは、rep及びcap遺伝子を欠いている。いくつかの態様において、AAVは、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である。いくつかの態様において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、又はAAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの具体的な態様において、AAVは、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの態様において、MPZ miRNAを含むか若しくはコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はMPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸、並びにコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸は、細胞に同時に送達される。いくつかの態様において、核酸は、細胞に同じベクターで送達される。いくつかの態様において、MPZ miRNAを含むか若しくはコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はMPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸、並びにコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸は、細胞に異なる時間で送達される。
【0019】
本開示は、変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の異常発現に罹患している対象を治療する方法を提供し、方法は、対象における変異体MPZ遺伝子の発現を低減すること、及び機能的MPZを発現させることを含み、方法は、対象に、有効量の
(a)
(i)配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%%の同一性を含む、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)マイクロRNAをコードするポリヌクレオチド配列、
(ii)MPZマイクロRNAを含むポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、
(iii)MPZマイクロRNAを含むか、若しくはコードするポリヌクレオチド配列であって、MPZマイクロRNAが、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、若しくは配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の同一性を含むそのバリアントを含む、ポリヌクレオチド配列、及び/又は
(iv)MPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であって、標的ヌクレオチド配列が、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示される、ポリヌクレオチド配列、のうちの1つ以上を含む核酸と、
(b)配列番号3若しくは6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の同一性を含む、コドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸と、を送達することを含む。
【0020】
本開示はまた、変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の異常発現に罹患している対象を治療する方法を提供し、方法は、対象に、配列番号1、3、及び6のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む、MPZ DNA又はコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む有効量の核酸を送達することによって、対象において機能的MPZタンパク質を発現させることを含む。
【0021】
いくつかの態様において、核酸のうちのいずれか1つ以上は、1つのプロモーター又は複数のプロモーターを更に含む。いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、又はシュワン細胞特異的プロモーターである。いくつかの態様において、シュワン細胞特異的プロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーターは、配列番号5に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。いくつかの態様において、対象は、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している。いくつかの態様において、疾患は、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である。いくつかの態様において、核酸は、対象に、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、若しくはベクター、又はそれらのうちのいずれか1つ以上の組み合わせで送達される。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAVである。いくつかの態様において、AAVは、rep及びcap遺伝子を欠いている。いくつかの態様において、AAVは、組換えAAV(rAAV)、自己相補的組換えAAV(scAAV)、又は一本鎖組換えAAV(ssAAV)である。いくつかの態様において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、又はAAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの具体的な態様において、AAVは、AAV9、AAVrh.10、AAV-PHP.eB、AAVv66、又はAAV-Fである。いくつかの態様において、MPZ miRNAを含むか若しくはコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はMPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸、並びにコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸は、対象に同時に送達される。いくつかの態様において、核酸は、対象に同じベクターで送達される。いくつかの態様において、MPZ miRNAを含むか若しくはコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はMPZ遺伝子で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸、並びにコドン最適化MPZ DNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸は、細胞に異なる時間で送達される。
【0022】
本開示は、本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらの組み合わせの使用を提供する。本開示は、本開示のナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターのうちのいずれかの使用を提供する。本開示は、本開示のウイルスベクターのうちのいずれかの使用を提供する。本開示は、本開示の組成物のうちのいずれかの使用を提供する。いくつかの態様において、使用は、細胞における変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の発現を低減するための医薬品の調製のためのものである。いくつかの態様において、細胞は、ヒト対象中にある。したがって、いくつかの他の態様において、細胞は、エクスビボ又はインビトロ、及び対象の外部である。いくつかの態様において、使用は、変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子を含む対象を治療するためのものである。いくつかの態様において、対象は、ヒト対象である。いくつかの態様において、対象は、低髄鞘形成疾患又はシャルコー・マリー・トゥース病に罹患している。いくつかの態様において、疾患は、CMT(DI-CMT)、CMT 1B型(CMT1B)、CMT 2I型(CMT2I)、CMT 2J型(CMT2J)、又はデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS若しくはCMT 3型)疾患である。
【0023】
本開示は、本明細書に記載の核酸、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、ベクター、ウイルスベクター、組成物、又は医薬品のうちのいずれかが、いくつかの態様において、筋肉内注射、経口投与、皮下、皮内、若しくは経皮輸送、血流への注入、又はエアロゾル投与のために製剤化されることを提供する。
【0024】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の図面の説明及び詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、図面、詳細な説明、及び実施例は、開示される主題の実施形態を示し、例示としてのみ与えられるが、それは本開示の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、図面、詳細な説明、及び実施例から明らかになるためである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ヒト及びマウスMPZ cDNAの概略図を提供する。CMT1Bを引き起こすMPZ cDNAにおける最も一般的な優性変異又は小さな欠失が示される。星印は、マウス及びヒトMPZ配列上の保存領域を表す。太い水平線は、MPZ cDNAで設計されたmiRNAでの標的位置を示す。miRNAは、高度に保存された配列を標的にするように設計され、1つの単一ベクターを使用して、マウスにおける前臨床試験でヒト及びマウスMPZ配列の両方を標的とした。
図2A】本開示のMPZマイクロRNA(miMPZ)ヌクレオチド配列の各々を示し、すなわち、図2AはmiMPZ_225を示し、図2BはmiMPZ_226を示し、図2CはmiMPZ_315を示し、図2DはmiMPZ_316を示し、図2EはmiMPZ_317を示し、図2FはmiMPZ_718を示し、図2GはmiMPZ_719を示し、図2HはmiMPZ_720を示し、図2IはmiMPZ_721を示し、図2JはmiMPZ_722を示し、図2KはmiMPZ_723を示し、図2LはmiMPZ_1852を示す。図2A~Lの各々において、上部配列は、文脈で説明されるプライマー対を使用するPCRによるDNAテンプレート合成を示す。各DNAテンプレートは、それぞれのmiMPZを転写する。折り畳まれたmiRNA転写物は、ヘアピン構造として示される。成熟miMPZ配列は、宿主miRNAプロセシング機構(ドローシャ、DGCR8、ダイサー、及びエクスポーチン-5を含む)による標的細胞におけるプロセシング後に生じる。灰色で薄くした配列は、各miRNAをU6T6ベクターにクローニングするために使用される制限酵素切断部位を示す。RNAにおいて、CTCGAG(配列番号79)は、XhoI部位であり、ACTAGT(配列番号80)は、SpeI部位(RNAにおけるCUCGAG(配列番号81)及びACUAGU(配列番号82)であり、Uはウラシル塩基である)である。下線が引かれたイタリック体配列は、最終的にDUX4標的mRNAの切断を触媒するのに役立つ成熟miRNAアンチセンスガイド鎖を示す。この配列はまた、この図のmiRNAヘアピン部分で下線が引かれている。矢印は、それぞれ、ドローシャ触媒切断部位及びダイサー触媒切断部位を示す。番号13、35、53、及び75は、位置説明のために提供される。位置35~53の間の(及びこれらを含む)配列は、Gが正常なmir-30a配列である位置39のAを除いて、天然のヒトmir-30a配列に由来する。このヌクレオチドは、コンピュータによるRNA折り畳みモデルに基づいて、miRNAループの折り畳みを容易にするためにAに変更された。ステムの塩基(13位の5’及び75位の3’)は、ガイド鎖の一次配列に応じて、mir-30a構造及びいくつかの修飾を有する配列に由来した。具体的には、13位のヌクレオチドは、13位と75位のヌクレオチドとの間の必要なミスマッチを促進するのに役立つように変化させることができる。この膨らんだ構造は、適切なドローシャ切断を促進することが仮定される。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図2E】同上。
図2F】同上。
図2G】同上。
図2H】同上。
図2I】同上。
図2J】同上。
図2K】同上。
図2L】同上。
図3】MPZ発現をノックダウンする有効性について本開示のmiMPZを予備的にスクリーニングした結果を示す。図3Aは、本開示に記載の様々な試験で使用されるデュアルルシフェラーゼプラスミドの概略図を示す。デュアルルシフェラーゼレポータープラスミドを作製するために、ヒトMPZ cDNAを、psiCheck2プラスミド(Promega)中の3’非翻訳領域(3’UTR)として、ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の下流にクローニングした。この構造は、MPZ配列がウミシイタケルシフェラーゼ終止コドンの後に配置されるため、ルシフェラーゼ-MPZ融合タンパク質を産生しない。代わりに、MPZ配列がウミシイタケシルフェラーゼの3’UTRとして作用する融合mRNAが産生される。結果として、任意の有効なMPZ標的化miRNAは、ウミシイタケルシフェラーゼ-MPZ融合mRNAを減少させ、続いて、トランスフェクトされた細胞におけるウミシイタケルシフェラーゼタンパク質発現を低減させる。同じプラスミド内の異なるプロモーターの下で発現された別個のホタルルシフェラーゼ遺伝子が存在し、MPZ配列を含まないため、miMPZによる影響を受けない。図3Bは、最初のmiMPZ有効性スクリーニングのルシフェラーゼアッセイ結果を示す。このアッセイにおける全ての試料は、レポーターベクター及びU6T6プラスミドで共トランスフェクトした細胞に対して正規化した。miMPZ_720を除く全てのmiMPZは、効率的にウミシイタケルシフェラーゼ発現を低減させた。miMPZ 225、226、721、及び723は、この実験で最大の効率を実証した。図3Cは、miMPZ 225、226、317、721、723が、共トランスフェクトしたHEK293細胞においてMPZ発現を著しく低減させたことを示すウェスタンブロットを示す。図3Dは、未処理の対照に関連するhMPZの相対的発現を、qRT-PCRを用いて示し、miMPZがMPZ遺伝子発現を低減させることを実証する。これらの結果に基づいて、miMPZ_225、226、317、721、及び723は、共トランスフェクトしたHEK293細胞において、MPZ mRNAレベルを最も著しく低減させた。これらのmiMPZは、様々な態様において、それらが、共トランスフェクトしたHEK293細胞におけるMPZ R98C発現レベルを標的とし、低減させるのに効率的であることを示す。
図4】本明細書に記載の人工miMPZによって達成されたMPZ R98C発現の低減を示す。図4Aは、HEK293細胞における変異体MPZ R98Cを標的とするmiMPZ有効性スクリーンのルシフェラーゼアッセイ結果を示す。このアッセイにおける全ての試料は、レポーターベクター及びU6T6プラスミドで共トランスフェクトした細胞に対して正規化した。全てのmiMPZは、ウミシイタケルシフェラーゼ発現を効率的に低減させた。図4Bは、共トランスフェクトしたHEK293細胞における様々なmiMPZによるMPZ R98Cノックダウンのウェスタンブロット結果を示す。miMPZ 225、226、317、719、721、及び723は、共トランスフェクトしたHEK293細胞におけるR98C発現をより有意に低減させた。図4Cは、各miMPZ及びR98C発現プラスミドで共トランスフェクトしたHEK293細胞におけるMPZ R98C発現レベルのqRT-PCR結果を示す。全てのMPZ miRNAは、共トランスフェクトした細胞において、未処理のR98Cと比較してR98C mRNAレベルを有意に低減させた。
図5】1200bpのヒトMPZプロモーター(ENSG00000158887)、63bpのヒトMPZ 5’UTR、及び747bpの部分的にコドン最適化したMPZ cDNAから作製されたMPZ発現カセットの配列である配列番号6を示す。それはまた、SV40ポリAシグナル及びCMVアンプリコン配列を有する。CMVアンプリコンは、qRT-PCR又はddPCRアッセイを使用するAAV力価測定に使用される。miMPZは、CMVアンプリコンの後に位置するNsiI部位又はNotI部位にクローニングする。いくつかの例示的な態様において、発現カセットは、各末端で2つのXbaI制限酵素部位を使用してAAVプレプラスミドにクローニングする。coMPZ発現カセット内の配列順は、以下のとおりである:XBAI-stui-SalI-kasi-ヒトMPZプロモーター(1200bp)-NheI-ヒトMPZ 5’UTR-部分的コドン最適化ヒトmpz cds-SPEI-ndei-SV40 PA-paci-DRP用CMVアンプリコン-NSII-noti-XBAI。ヒト、ラット、マウスを含む様々なMPZプロモーター、又はCMVなどのユニバーサルエンハンサー若しくはPMP22などのシュワン特異的エンハンサーとの組み合わせも、この構築物に使用することができる。
図6】mi225とヒト及びマウスMPZとの間の塩基対形成、並びにmiMPZノックダウンに対するcoMPZの耐性を示す。図6Aは、野生型ヒト及びマウスMPZとのmiMPZ-225の完全な塩基対形成を示す。図6Bは、miMPZ225とcoMPZとの間のミスマッチを示す。変異したヌクレオチド(太字)は、揺らぐ位置にあり、野生型MPZアミノ酸を維持する。G・Uは、揺らぐ塩基対である。図6Cは、qRT-PCR結果を示す。miMPZ-225は、共トランスフェクトしたHEK293細胞において野生型ヒトMPZを>75%低減させたが、coMPZは、高レベルのサイレンシングに対して比較的耐性だった。この実験でのcoMPZ発現におけるわずかな減少は、2つのMPZ転写物の転写又はqRT-PCR検出における差を反映した可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、変異体ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ又はP0)遺伝子発現の阻害を、転写後に変異体MPZ遺伝子発現及びタンパク質産生を抑制又は阻害することによって達成する新規戦略を提供するが、変異体MPZタンパク質の発現は、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)を含むがこれに限定されない、低髄鞘形成を伴う先天性神経障害を引き起こすことが知られているためである。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の生成物、方法、及び使用は、CMTを含むがこれに限定されない、低髄鞘形成を伴う神経障害を治療、改善、進行の遅延、及び/又は予防する際に使用される。
【0027】
CMTは、2,500人に最大1人の有病率を有する遺伝性末梢神経障害の臨床的及び遺伝的に異種の集合である。シャルコー・マリー・トゥース1B型(CMT1B)は、遺伝性脱髄性神経障害の3番目に多い一般的な形態であり、症例の10%を占める。CMT1Bは、DNA変異、すなわち、MPZ遺伝子における常染色体優性機能獲得変異によって引き起こされる。MPZは必須タンパク質であり、健常で効率的な末梢神経系を維持するために必要とされるミエリン鞘における主要タンパク質である。末梢神経で細胞を支持しているシュワン細胞における欠陥MPZタンパク質の蓄積は、進行性神経損傷を引き起こし、CMT1B症状につながる。CMT1Bの特徴は、ゆっくり進行する遠位筋の脱力及び萎縮、垂れ足及び変形、感覚の喪失、並びに2つの典型的な発症:早期幼児及び思春期の発症を伴う非常に重度な反射の欠如を含む。非常に重度なCMT1B又は先天性低髄鞘形成の別の定義であるデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS)の治療は、本開示の方法及び使用に含まれる。
【0028】
MPZは、髄鞘形成するシュワン細胞によって発現される27kDaの単一膜糖タンパク質(Magnaghi et al.,Brain Research Reviews,2011,37(1-3):360-371)である。末梢神経系における全てのタンパク質の50%超を占め、PNSで発現される最も一般的なタンパク質となっている(Shy,Journal of the Neurological Sciences,2006,242(1-2):55-66)。CMT1Bを引き起こす大部分のMPZ変異は、優性遺伝である。様々な病理学的メカニズムが、各MPZ遺伝子変異について示唆されている。しかしながら、MPZ遺伝子における優性変異の主な病理学的メカニズムは、2つの主要な群:(1)正常な髄鞘形成に直接影響を及ぼす毒性の機能獲得変異、及び(2)欠陥のある折り畳み不全タンパク質応答(UPR)又は小胞体(ER)ストレス応答、に分けることができる(Bai et al.,Ann Clin Transl Neurol,2018,5:445-455、Bai et al.,Rare Dis,2013,1:e24049、Wrabetz et al.,J Neurosci,2006,26:2358-2368、Fratta et al.,Hum Mol Genet,2019,1;28(1):124-132)。変異体タンパク質の細胞内蓄積は、両方のメカニズムに共通である。例えば、R98C変異は、ERにおける変異体MPZタンパク質及び欠陥UPRを保持することに起因して、早期発症の重度な疾患を引き起こす。この変異を有する患者は、ミエリンが非常に低いか、又はほとんどない。いくらかの患者は、最初の10年の終わりまでに、決して歩行することができないか、又は一人で車椅子を使用し得る。運動神経伝導速度(MNCV)の中央値は、概して6m/秒未満であり、一方、正常ではおよそ40m/秒である。これらの患者は、CMT1Bとして分類される。
【0029】
異常なMPZ発現に関連する追加の疾患には、重度の早期発症型の先天性低髄鞘形成、デジェリーヌ-ソッタス症候群又は疾患(DSS若しくはCMT3型)が含まれるが、これらに限定されない。MPZ遺伝子におけるいくつかの変異はまた、優性中間型シャルコー・マリー・トゥース病(DI-CMT)、CMT 2I型(CMT2I)、及びCMT 2J型(CMT2J)を引き起こす。
【0030】
MPZレベルは、狭義に定義された範囲内に存在しなければならない。ホモ接合性MpzヌルマウスにおけるMpz発現の欠如は、圧縮化が不十分なミエリン鞘(Grandis et al.,Hum Mol Genet,2008,1;17(13):1877-89)、ミエリン特異的遺伝子発現の調節不全、及びシュワン細胞におけるミエリンタンパク質局在の異常(Bai et al.,Ann Clin Transl Neurol,2018,5:445-455、Wrabetz et al.,J Neurosci,2006,26(8):2358-2368)を引き起こす。ヘテロ接合性Mpzヌルマウスは、CMT1Bの後期、成人発症型と同様の非常に軽度の表現型を示す。興味深いことに、Mpz遺伝子の80%を超える(>1.8倍)過剰発現はまた、軸索とのシュワン細胞会合を阻害し、髄鞘形成を破壊する(Bai et al.,Rare Dis,2013,1:e24049)。
【0031】
いくつかの遺伝子導入CMT1Bマウスモデルが作製されており、MPZ遺伝子における優性変異が末梢神経障害を引き起こすことが確認されている(Saporta et al.,Brain, 2012,135(7):2032-47、Wrabetz et al.,同上、Giese et al.,Cell,1992,71:565-576)。CMT1Bマウスモデルのうちの1つは、MPZR98C遺伝子導入系統である。CMT1BのR98C「ノックイン」マウスモデル(Saporta et al.(同上)、Prof.Michael Shy,University of Iowaによって提供された)を、相同組換え方法を使用して部位特異的変異誘発によって作製した。MPZR98Cは、早期発症CMT1Bのマウスモデルにおけるシュワン細胞発生を阻止する。これらのマウスは、組織学的及び行動的表現型を示す。ヘテロ接合(R98C/+)及びホモ接合(R98C/R98C)マウスの両方が、衰弱、異常な神経伝導速度、及び形態的に異常なミエリンを発症し、R98C/R98Cマウスはより重度の影響を受ける。これらのマウスは、同じ変異を有する患者と同様に、小胞体におけるMpzR98Cの蓄積及び髄鞘形成の発達遅延を示す。
【0032】
本開示は、遺伝子療法試験におけるホモ接合R98C/R98C及びヘテロ接合R98C/+マウスの使用を含む。ホモ接合マウスは、遅い不安定な歩行を有し、出生後約21日の離乳時までに歩行中の持続的な振戦によって明らかである。ヘテロ接合R98C/+マウスは、少なくとも1年齢まで一貫した観察可能な臨床的異常を示さない。しかしながら、ヘテロ接合マウス及びホモ接合マウスの両方が、運動能力の試験において異常を示す。R98C/R98Cマウスは、回転ロッド上でそれらのバランスを維持することができず、R98C/+マウスは、野生型マウスよりも著しく悪かった。ホモ接合マウス及びヘテロ接合マウスは、6~8週齢で野生型マウスにおける約40m/sのMNCVと比較して、それぞれ約4m/s及び約15m/sの遅れた運動神経伝導速度(MNCV)を有する(MpzR98Cは、早期発症性シャルコー・マリー・トゥース病1B型のマウスモデルにおけるシュワン細胞発達を停止させる)(Saporta et al.,同上)。したがって、ホモ接合マウスは、重度の早期発症CMT1B(DSS)により関連しており、ヘテロ接合マウスは、後期発症形態のCMT1Bを生じる。したがって、様々な態様において、MPZR98Cマウスは、モデルとして使用される。したがって、MpzR98Cは、治療モデル(http-colon-forwardslash-forwardslash-www.medlink.com-forwardslash-article-forwardslash-charcot-marie-tooth-disease-type-1b)として本開示の様々な態様で使用される。これらのマウスにおける治療ベクター及び用量を最適化すると、追加のマウスモデルが、様々なMPZ変異において提唱した治療戦略の適用可能性を調査する本開示での使用に含まれる。
【0033】
2つの他の一般的な機能獲得バリアントであるS63del(Wrabetz et al.,同上)及びH39Pなどのより軽度の形態のCMT1Bのためのマウスモデルは、それぞれ、小児期発症及び成人発症のCMT1Bを表し、これらのモデルは、本開示の様々な態様に含まれる。S63delマウスは、4~8週齢に明らかな神経筋障害を発症し、振戦、運動失調、衰弱、及び後肢における筋萎縮を特徴とする。S63delマウスはまた、6ヶ月齢で、時々の裸の軸索及びタマネギ様構造(神経線維を囲む同心円状に層化したシュワン細胞プロセス)を伴う顕著な低髄鞘形成を発症し、1年齢後に数を増加させる。MNCV運動は、S63del//+/-マウスにおいて50%低減する(Wrabetz et al.,同上)。
【0034】
本開示は、RNA阻害(RNAi)を使用して、mRNAレベルで欠陥又は変異体のミエリンタンパク質ゼロ(MPZ又はP0)遺伝子サイレンシングを達成する新規戦略を提供する。MPZ阻害性RNAには、野生型及び変異体MPZ遺伝子の発現を阻害するアンチセンスRNA、小分子阻害性RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、又は人工miRNA(MPZ miRNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
MPZ miRNAは、ヒトMPZ遺伝子(ヒトMPZ cDNAである配列番号1によって表される)によってコードされたメッセンジャーRNA(mRNA)のセグメントに特異的に結合することができ、セグメントは、野生型マウスMPZ遺伝子(マウスMPZ cDNAである配列番号82によって表される)によってコードされたmRNAと比較して保存されている。例えば、MPZ miRNAは、配列番号1のヌクレオチド225~247、315~318、又は718~744内の配列に相補的であるmRNAセグメントに特異的に結合することができる。
【0036】
本開示は、健常レベルの正常なMPZタンパク質を維持しながら、シュワン細胞における変異したMPZ発現を阻害することに焦点を当てる。これを達成するために、内因性変異体及び野生型MPZ発現をサイレンシングするように特異的に設計した人工miRNAが、野生型MPZ発現をmiRNA耐性(rMPZ)遺伝子で同時に置き換えることによって提供される。本明細書で使用される場合、「miRNA耐性(rMPZ)」という用語は、「耐性MPZ(resMPZ)」又は「コドン最適化耐性MPZ(coMPZ)」と互換的に使用される。したがって、本開示は、ヒトMPZ及びマウスMpz遺伝子の両方を特異的かつ等しく標的とするように設計されたmiRNA(miMPZと呼ばれる)を提供し、他の転写物との予測される非特異的結合は有しない。この戦略は、ネズミモデルからヒトモデルへの結果の置き換えを可能にし、特に臨床試験において重要である。
【0037】
本開示は、CMT1B疾患を含む、CMT疾患の根底にある遺伝子的原因、及びMPZ遺伝子それ自体を直接的に標的とするための生成物、方法、及び使用を提供する。本開示は、MPZ遺伝子における優性変異によって引き起こされるCMT1Bの全ての早期及び後期発症形態に適用可能な普遍的療法を提供する。MPZ遺伝子のmiRNA媒介サイレンシングを使用することは、CMT1B治療への新規アプローチである。miRNAは、高度に保存された、小さな(およそ22ヌクレオチド長)、非コードRNA分子であり、多くの遺伝子の発現を転写後レベルで負に調節する(He et al.,Nat Rev Genet,2004,5:522-531、Carrington et al.,Science,2003,301:336-338)。天然のmiRNAは、いくつかの疾患表現型に関与し、2つ以上の内因性遺伝子転写物を調節するため、新規アプローチは、治療目的のために人工miRNAを利用する(Hammond,Trends Mol Med,2006,12:99-101、McBride et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2008,105:5868-5873)。
【0038】
本開示は、正常なmiRNA生合成に必要な必須の構造的エレメント及び配列エレメントを維持するが、成熟mir-30配列を、目的のMPZ遺伝子を標的とするものと置き換えることによって、天然のヒトmiR-30に基づいて操作された人工miRNAを提供する。これらの新規人工miRNAは、MPZ遺伝子と完全な相補性の22-ntを含む。本開示のmiRNA(miMPZ)は、マウスMPZ cDNAとヒトMPZ cDNAとの間の高度に保存された配列を標的とするように設計される。miMPZ-6~11は、CMT1Bに関連するいずれの報告された変異も有しないMPZ遺伝子の領域に設計される(図1)。図1は、ヒト及びマウスMPZ cDNAの概略図を提供し、CMT1Bを引き起こす最も一般的な優性変異又は小さい欠失が示される位置、及び単一のmiRNAがヒト及びマウスMPZ配列の両方を標的とすることができるように本開示のmiRNAが設計された位置を示す。
【0039】
いくつかの態様において、本開示は、欠陥MPZタンパク質を低減し、それを健常なMPZタンパク質と置き換えることによるCMT1Bの治療又は改善を含む。この戦略「ノックダウン及び置換」は、遺伝子療法を使用して、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれるMPZ低減分子を、MPZ遺伝子の健常なコピーとともにシュワン細胞に送達することによって達成される。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の生成物及び方法は、CMT1BなどのCMT疾患を含むがこれに限定されないMPZ遺伝子障害の治療に使用される。
【0040】
本開示は、いくつかのmiMPZが、MPZ過剰発現性HEK293細胞において、ヒト変異体及び野生型MPZ発現を80%超で著しく低減させたことを示すデータを提供する。本開示はまた、一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞においてrMPZ発現がmiMPZサイレンシングに耐性であることを実証するデータを提供する。
【0041】
本開示は、様々な核酸及びポリペプチドを提供する。本開示は、本明細書に記載の様々なヌクレオチド配列を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる様々な核酸を含む。いくつかの態様において、核酸は、ヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、核酸は、本質的にヌクレオチド配列からなる。いくつかの態様において、核酸は、ヌクレオチド配列からなる。本開示は、本明細書に記載の様々なアミノ酸配列を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる、様々なペプチドを含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、アミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、本質的にアミノ酸配列からなる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、アミノ酸配列からなる。
【0042】
いくつかの態様において、核酸は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列で示されるヒトMPZをコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様において、核酸は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含むヒトMPZをコードするヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0043】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むヒトMPZポリペプチドである。様々な態様において、ポリペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むヒトMPZポリペプチドのアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0044】
したがって、いくつかの態様において、核酸は、配列番号4に示されるアミノ酸配列で示されるヒトMPZをコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様において、核酸は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に示されるヒトMPZをコードするヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0045】
いくつかの態様において、核酸は、配列番号2に示されるヒトMPZ 3’UTRをコードするヌクレオチド配列を含む。3’UTRにおける標的部位は、miRNAによるサイレンシングに対してそれを耐性にするように最適化される。様々な態様において、核酸は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含むヒトMPZ 3’UTRをコードするヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0046】
RNA阻害(RNAi)は、優性遺伝性障害に対する効果的な長期治療として本明細書に記載される。例として、関与する遺伝子の野生型及び変異体の両方をノックダウンすることによって、MPZ遺伝子変異を有する対象を治療し、一方また、RNAi耐性置換MPZ遺伝子を送達するための生成物及び方法が提供される。例として、本明細書において、対象における変異体MPZ遺伝子及び野生型MPZ遺伝子の発現をノックダウンするための生成物及び方法が記載される。方法は、MPZ阻害性RNAを利用して、変異体MPZ遺伝子発現をノックダウンする。方法はまた、RNAi耐性置換MPZ遺伝子を提供する。方法及び生成物の使用は、例えば、シャルコー・マリー・トゥース病1B型(CMT1B)疾患などのMPZ遺伝子における変異に関連する疾患を、例えば、予防、治療、又は改善することに適応される。
【0047】
本明細書に記載の全てのmiRNAは、野生型MPZ遺伝子及び変異体MPZ遺伝子の両方を標的にするように設計された。CMT1Bは、常染色体優性変異によって引き起こされるため、1つの変異対立遺伝子のみでCMT1B症状を引き起こすのに十分である。MPZ変異に罹患している患者は、1つの野生型及び1つの変異体MPZ対立遺伝子、又は2つの変異体MPZ対立遺伝子を有し得る。1つの変異体MPZ対立遺伝子のみを有する患者は、2つの変異体MPZ対立遺伝子を有する患者と比較して、より軽度の表現型を有する。本明細書に記載のmiRNAは、両方の対立遺伝子を標的にしてサイレンシングするように設計された。追加的に、野生型MPZ対立遺伝子の発現は、健常なミエリン鞘を維持するために必要であるため、MPZ cDNA配列をコドン最適化し、その遺伝子でmiRNA標的部位を変異させることによって、miRNA耐性MPZ遺伝子を設計した(本明細書で説明され、図6A~Bに示されるように)。
【0048】
例示的なmiRNA耐性MPZ遺伝子は、本開示のコドン最適化MPZ cDNA(代替的に、耐性MPZ(resMPZ又はrMPZ)又はcoMPZと呼ばれる)配列であり、配列番号3に示されるか、又は配列番号6に示されるMPZ発現カセット内に見出される。「miRNA-resMPZ」、「resMPZ」、「rMPZ」、「coMPZ」という用語は、本明細書で使用される場合、互換的である。
【0049】
RNAi耐性置換MPZ遺伝子が提供される。「RNAi耐性置換MPZ遺伝子」は、その発現が本明細書に記載のMPZ miRNAによってノックダウンされず、ヌクレオチド配列が依然としてMPZタンパク質活性を有するMPZタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。例示的なRNAi耐性置換MPZ遺伝子は、配列番号3に示されるか、又は配列番号6に示されるMPZ発現カセット内に見出される。
【0050】
したがって、本開示は、MPZマイクロRNA(miRNA)によって下方調節される変異体MPZ又は野生型MPZを置き換えるための核酸を提供する。いくつかの態様において、核酸は、MPZ miRNAの曝露に耐性であるようにコドン最適化される。いくつかの態様において、核酸は、配列番号3に示される部分的にコドン最適化したヒトMPZ(ヒトcoMPZ)をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様において、核酸は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含む、部分的にコドン最適化したヒトMPZをコードするヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号3に示されるヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0051】
いくつかの態様において、変異体MPZ又は野生型MPZを置き換えるための核酸は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含むヒトMPZプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様において、核酸は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を含むヒトMPZプロモーターをコードするヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号5に示されるヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0052】
いくつかの態様において、核酸は、ヒトMPZプロモーター、ヒトMPZ 5’UTR、及び部分的にコドン最適化したヒトMPZ cDNAを含むヒトMPZ発現カセットを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、かかる核酸は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列を含む。様々な態様において、核酸は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列のアイソフォーム又はバリアントである。いくつかの態様において、アイソフォーム又はバリアントは、配列番号6に示されるヌクレオチド配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、及び70%の同一性を含む。
【0053】
例示的なRNAi耐性置換MPZ遺伝子は、配列番号3及び6のうちのいずれか1つに示されるか、又は配列番号3及び6のうちのいずれか1つと少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含むそのバリアントである。例示的なRNAi耐性置換MPZ遺伝子は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号5と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を含むそのバリアントを含むMPZプロモーターを更に含む。
【0054】
以下に示される表1は、本開示の様々なヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を提供する。具体的には、表1は、本開示のヒトMPZ cDNA、3’UTR DNA、部分的にコドン最適化したヒトcDNA、ヒトMPZポリペプチド、ヒトMPZプロモーター、及びヒトMPZ発現カセットの配列を提供する。
【0055】
【表1-1】
【0056】
【表1-2】
【0057】
【表1-3】
【0058】
【表1-4】
【0059】
本開示は、変異したMPZ遺伝子及び結果として生じる変化した型のmRNAに起因する疾患又は障害を有する対象を改善及び/又は治療するための、発現変異体MPZを阻害又はそれに干渉するためのRNA干渉の使用を含む。RNA干渉(RNAi)は、真核細胞における遺伝子調節のメカニズムであり、様々な疾患の治療のために考慮されてきている。RNAiは、阻害性RNAによって媒介される遺伝子発現の転写後制御を指す。miRNAは、配列相同性を共有し、同族のメッセンジャーRNA(mRNA)の3’非翻訳領域と塩基対形成する、小さい(21~25ヌクレオチド)、非コードRNAである。miRNAとmRNAとの間の相互作用は、mRNAの翻訳を妨げる細胞遺伝子サイレンシング機構を支持する。
【0060】
天然RNAi経路の理解が進展してきており、研究者は、疾患を治療するため、標的遺伝子の発現を調節する際に使用するための人工shRNA及びsnRNAを設計している。いくつかのクラスの小RNAは、哺乳動物細胞でRNAiプロセスを誘発することが知られており、これには、短(又は小)干渉RNA(siRNA)、並びに短(又は小)ヘアピンRNA(shRNA)及びマイクロRNA(miRNA)が含まれ、類似のクラスのベクター発現トリガーを構成する[Davidson et al.,Nat.Rev.Genet.12:329-40,2011、Harper,Arch.Neurol.66:933-8,2009]。shRNA及びmiRNAは、プラスミド-又はウイルス-ベースのベクターからインビトロで発現され、そのため、ベクターが標的細胞核内に存在し、駆動プロモーターが活性である限り、単回投与で長期の遺伝子サイレンシングを達成し得る(Davidson et al.,Methods Enzymol.392:145-73,2005)。重要なことには、このベクター発現アプローチは、筋遺伝子治療分野で既になされた数十年の長さにわたる進歩を強化するが、タンパク質コード遺伝子を発現する代わりに、RNAi療法戦略におけるベクターカーゴは、目的の疾患遺伝子を標的とする人工shRNA又はmiRNAカセットである。この戦略は天然のmiRNAを発現させるために使用される。各shRNA/miRNAは、hsa-miR-30a配列及び構造に基づいている。天然のmir-30a成熟配列は、標的遺伝子に由来する固有のセンス及びアンチセンス配列によって置き換えられる。
【0061】
本開示は、内因性変異体MPZ発現及び野生型MPZ発現をサイレンシングするために特異的に設計された人工miRNAを提供する。本開示はまた、内因性変異体MPZ発現及び野生型MPZ発現をサイレンシングするために特異的に設計された人工miRNAを提供し、一方同時に、野生型MPZ発現をmiRNA耐性(rMPZ)遺伝子に置き換える。この「ノックダウン及び置換」戦略は、欠陥のあるMPZタンパク質を低減させ、欠陥のあるタンパク質を健常なMPZタンパク質に置き換える。いくつかの態様において、人工のMPZ低減化miRNAは、単独で送達される。いくつかの態様において、人工のMPZ低減化miRNAは、rMPZ遺伝子とともに、シュワン細胞を含むがこれに限定されない神経細胞に送達される。人工miRNA(本明細書ではmiMPZと呼ばれる)は、ヒトMPZ及びマウスMpz遺伝子の両方を特異的かつ等しく標的化するように設計され、他の転写物との予測される非特異的結合は有しない。この戦略は、ネズミモデルからヒト臨床試験への結果の置き換えを可能にする。したがって、本明細書に記載及び開示のmiMPZは、MPZ変異及びこれらのMPZ変異に関連する、CMT疾患を含むがこれに限定されない疾患を治療するための治療薬として有用である。
【0062】
本開示は、変異体MPZ遺伝子及びタンパク質を含む、MPZ遺伝子及びタンパク質の発現をノックダウン、阻害、又は防止するために、MPZを標的とする阻害性RNA(マイクロRNA(miRNA))をコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。阻害性RNAは、MPZ遺伝子の発現を阻害するアンチセンス配列を含む。いくつかの態様において、本開示は、MPZ miRNAをコードするポリヌクレオチド、及びRNAi耐性MPZ遺伝子を含む核酸を提供する。本開示は、全長非プロセス化MPZ miRNA、及び成熟又はプロセスmiRNAを提供する。本開示はまた、miRNA配列が標的とするように設計されるMPZ配列を提供する。
【0063】
いくつかの態様において、本開示は、配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含むMPZ miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。
【0064】
いくつかの態様において、本開示は、配列番号7~18のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含むMPZ miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。
【0065】
いくつかの態様において、本開示は、配列番号19~30のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む全長miRNAアンチセンスガイド鎖を含むMPZ miRNAを含むポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。したがって、いくつかの態様において、本開示は、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含むMPZ最終プロセス化ガイド鎖miRNAを含むか、又はコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。したがって、いくつかのより特定の態様において、本開示は、配列番号31~42のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含むMPZ最終プロセス化ガイド鎖miRNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0066】
いくつかの態様において、本開示は、配列番号43~54のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含むMPZ遺伝子のDNA配列を標的にするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。
【0067】
以下に示される表2は、例示的なmiRNAコード配列、RNA配列、及びMPZ標的配列を提供する。以下に示される表3は、マイクロRNA(miRNA)をコードするDNAを合成する際に使用されたPCRプライマー(配列番号55~78)を提供する。
【0068】
【表2-1】
【0069】
【表2-2】
【0070】
【表3-1】
【0071】
【表3-2】
【0072】
いくつかの態様において、本開示の核酸は、標的細胞内で機能的である転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサー、及び/又はポリアデニル化シグナルを含むが、これらに限定されない)に操作可能に連結されているポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(又はヌクレオチド)配列は、プロモーターに連結される。
【0073】
誘導性プロモーターもまた、企図される。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリン調節プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。MPZ置換遺伝子を含む遺伝子カセットはまた、哺乳動物細胞で発現されるときにMPZ RNA転写物のプロセシングを促進するためのイントロン配列を含み得る。
【0074】
いくつかの態様において、MPZ miRNAをコードするポリヌクレオチド配列及び/又は置換MPZ遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列は、同じプロモーターの下で発現されるか、又は各ポリヌクレオチド配列は、それら自体のプロモーター下で発現される。かかるプロモーターとしては、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、H1プロモーター、EF1-アルファプロモーター、最小EF1-アルファプロモーター、unc45bプロモーター、CK1プロモーター、CK6プロモーター、CK7プロモーター、ミニCMVプロモーター、CMVプロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、アルファ-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCKエンハンサー-プロモーター(MHCK7)、tMCKプロモーター、最小MCKプロモーター、デスミンプロモーター、チキンβアクチンプロモーター(CBA)、P546プロモーターシミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即時早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、ニューロン特異的プロモーター、ミエリン特異的プロモーター、又はネイティブプロモーターなどに限定されないヒト遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、プロモーターは、シュワン細胞特異的プロモーター又はミエリン特異的プロモーターであり得、限定されないが、例えば、WO2020/245169に記載されているこれらのプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、マウス、ラット、又はヒトプロモーターであり得る。いくつかの態様において、MPZ miRNA及び/又は置換MPZ遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、U6プロモーター、U7プロモーター、H19プロモーター、又はニューロン特異的プロモーターの下で発現される。いくつかの態様において、かかるニューロン特異的プロモーターは、MPZプロモーター、非圧縮ミエリン関連タンパク質(NCMPA又はMP11)プロモーター、PMP22プロモーター、MBPプロモーター、SOX10プロモーター、又はGAP43プロモーターである。いくつかの態様において、miMPZとともに使用されるプロモーターは、U6プロモーターである。いくつかの態様において、MPZ置換遺伝子とともに使用されるプロモーターは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターは、マウス、ラット、又はヒトプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターは、ヒトMPZプロモーター又はヒトミニMPZプロモーターである。いくつかの態様において、ヒトMPZプロモーターは、配列番号5に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号5と少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を含むそのバリアントを含む。
【0075】
いくつかの態様において、本開示の生成物、方法、及び使用はまた、MPZ発現に影響を与える(例えば、発現をノックダウン又は阻害する)ための短ヘアピンRNA又は小ヘアピンRNA(shRNA)を含む。短ヘアピンRNA(shRNA/ヘアピンベクター)は、RNA干渉(RNAi)を介して標的遺伝子の発現をサイレンシングするために使用することができるタイトなヘアピンターンを有する人工RNA分子である。shRNAは、それが分解及びターンオーバーの速度が比較的低いという点でRNAiの有利なメディエーターであるが、それは発現ベクターの使用を必要とする。ベクターが宿主ゲノムを形質導入していると、次にshRNAは、プロモーター選択に応じてポリメラーゼII又はポリメラーゼIIIによって核内で転写される。産物は、pri-マイクロRNA(pri-miRNA)を模倣し、ドローシャによって処理される。得られるpre-shRNAは、エクスポーチン5によって核から輸出される。次にこの産物はダイサーによって処理され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷される。センス(パッセンジャー)鎖が分解される。アンチセンス(ガイド)鎖は、相補的な配列を有するmRNAにRISCを指向させる。完全な相補性の場合、RISCはmRNAを切断する。不完全な相補性の場合、RISCはmRNAの翻訳を抑制する。これらの両方の場合で、shRNAは、標的遺伝子サイレンシングをもたらす。いくつかの態様において、本開示は、shRNAを介してMPZアンチセンス配列を発現するAAVベクターの産生及び投与を含む。shRNAの発現は、様々なプロモーターの使用によって調節される。プロモーター選択は、頑強なshRNA発現を達成するために必須である。様々な態様において、U6及びH1などのポリメラーゼIIプロモーター、並びにポリメラーゼIIIプロモーターが使用される。いくつかの態様において、U6 shRNAが使用される。
【0076】
したがって、いくつかの態様において、本開示は、U6 shRNA分子を使用して、MPZ遺伝子発現を阻害するか、ノックダウンするか、又はそれに干渉する。従来の小/短ヘアピンRNA(shRNA)配列は通常、U6などのPolIIIプロモーターを含むベクターから細胞核内に転写される。内因性U6プロモーターは、通常、スプライシングに関与する小核RNA(snRNA)であるU6 RNAの発現を制御し、十分に特性評価されている[Kunkel et al.,Nature.322(6074):73-7(1986)、Kunkel et al.,Genes Dev.2(2):196-204(1988)、Paule et al.,Nucleic Acids Res.28(6):1283-98(2000)]。いくつかの態様において、U6プロモーターが、哺乳動物細胞におけるshRNA分子のベクターに基づく発現を制御するために使用される[Paddison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(3):1443-8(2002)、Paul et al.,Nat.Biotechnol.20(5):505-8(2002)]が、それは(1)プロモーターが、RNAポリメラーゼIII(polyIII)によって認識され、shRNAの高レベルの恒常的発現を制御し、(2)プロモーターが、ほとんどの哺乳動物細胞タイプにおいて活性であるためである。いくつかの態様において、プロモーターは、shRNAの発現を制御するために必要な全てのエレメントが転写開始部位の上流に配置される、タイプIII PolIIIプロモーターである(Paule et al.,Nucleic Acids Res.28(6):1283-98(2000))。本開示は、ネズミ及びヒトU6プロモーターの両方を含む。ループによって接続された、標的遺伝子からのセンス配列及びアンチセンス配列を含むshRNAは、核から細胞質へと輸送され、そこでダイサーがそれを小/短干渉RNA(siRNA)へと処理する。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示の生成物、方法、及び使用は、MPZ遺伝子発現をノックダウン又は更に阻害するために、通常U-RNAとも称される小核リボ核酸(snRNA)を含む。snRNAは、真核生物細胞における細胞核のスプライシングスペックル及びカハール体の内部に見出される小RNA分子のクラスである。小核RNAは、特定のタンパク質のセットに関連付けられ、複合体は、小核リボ核タンパク質(しばしば「スナープ」と発音されるsnRNP)と称される。各snRNP粒子は、snRNA成分及びいくつかのsnRNP特異的タンパク質(核タンパク質のファミリーであるSmタンパク質を含む)からなる。snRNAは、それらの関連するタンパク質と一緒に、プレmRNA基質上の特定の配列に結合するリボ核タンパク質複合体(snRNP)を形成する。これらは、RNAポリメラーゼII又はRNAポリメラーゼIIIのいずれかによって転写される。snRNAは、多くの場合、共通の配列特徴及びRNA結合LSmタンパク質などの関連するタンパク質因子の両方に基づいて、2つのクラスに分類される。SmクラスのsnRNAとして知られる第1のクラスは、U1、U2、U4、U4atac、U5、U7、U11、及びU12で構成される。SmクラスのsnRNAは、RNAポリメラーゼIIによって転写される。第2のクラスは、LsmクラスのsnRNAとして知られ、U6及びU6atacで構成される。LsmクラスのsnRNAは、RNAポリメラーゼIIIによって転写され、SmクラスのsnRNAとは対照的に、核から決して離れない。いくつかの態様において、本開示は、MPZアンチセンス配列の送達のためのU7 snRNAを含むAAVベクターの産生及び投与を含む。
【0078】
いくつかの態様において、本開示は、U7 snRNA分子を使用して、MPZ遺伝子発現を更に阻害、ノックダウン、又はそれに干渉する。U7 snRNAは、通常、ヒストンプレmRNA3’末端プロセシングに関与するが、いくつかの態様において、スプライシング調節のための汎用ツールに、又は細胞内で連続的に発現されるアンチセンスRNAとして、変換される[Goyenvalle et al.,Science 306(5702):1796-9(2004)]。野生型U7 Sm結合部位を、スプライセオソームsnRNAに由来するコンセンサス配列で置き換えることによって、得られるRNAは、スプライセオソームsnRNAに見出される7つのSmタンパク質と組み立てられる。その結果、このU7 Sm OPT RNAは、より効率的に核質内に蓄積し、ヒストンプレmRNA切断をもはや媒介しないが、依然としてヒストンプレmRNAに結合し、野生型U7 snRNPの競合阻害物質として作用することができる。ヒストン下流エレメントに結合する配列を、スプライシング基質における特定の標的に相補的なもので更に置き換えることによって、特定のスプライシング事象を調節することができるU7 snRNAを作製することが可能である。U7誘導体を使用する利点は、アンチセンス配列が、小核リボ核タンパク質(snRNP)複合体に埋め込まれることである。更に、遺伝子療法ベクターに埋め込まれると、これらの小RNAは、単回注入後に標的細胞内で恒久的に発現することができる[Levy et al.,Eur.J.Hum.Genet.18(9):969-70(2010)、Wein et al.,Hum.Mutat.31(2):136-42,(2010)、Wein et al.,Nat.Med.20(9):992-1000(2014)]。
【0079】
U7 snRNAは、通常、ヒストンプレmRNA3’末端プロセシングに関与するが、スプライシング調節のための汎用ツールとして、又は細胞内で連続的に発現されるアンチセンスRNAとしても使用される。U7誘導体を使用する1つの利点は、アンチセンス配列が、小核リボ核タンパク質(snRNP)複合体に埋め込まれることである。更に、遺伝子療法ベクターに埋め込まれると、これらの小RNAは、単回注入後に標的細胞内で恒久的に発現することができる。
【0080】
いくつかの態様において、本開示は、本開示の核酸のうちのいずれか、又はそれらのいずれか1つ以上の組み合わせを含む、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターを含む。いくつかの態様において、これらの配列の1つ以上のコピーは、単一ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクターに組み合わされる。
【0081】
したがって、本開示は、本開示の核酸又は本開示の核酸の組み合わせを含む、ベクターを含む。本開示の実施形態は、ベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ウマ関連ウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルス、例えば、キメラウイルス、モザイクウイルス、若しくは偽型ウイルス、及び/又は外来タンパク質、合成ポリマー、ナノ粒子、若しくは小分子を含有するウイルスなどのウイルスベクター)を利用して、本明細書に開示の核酸を送達する。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示は、AAVを利用して、MPZ miRNAをコードするDNAなどの阻害性RNAを送達し、MPZ mRNAを標的として変異体MPZ発現を阻害する。AAVは、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、145ヌクレオチドの逆位末端反復(ITR)を含む、長さが約4.7kbである。AAVの複数の血清型がある。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は、既知である。例えば、AAV-1の完全なゲノムは、GenBank寄託番号NC_002077で提供され、AAV-2の完全なゲノムは、GenBank寄託番号NC_001401及びSrivastava et al.,J.Virol.,45:555-564{1983)で提供され、AAV-3の完全なゲノムは、GenBank寄託番号NC_1829で提供され、AAV-4の完全なゲノムは、GenBank寄託番号NC_001829で提供され、AAV-5ゲノムは、GenBank寄託番号AF085716で提供され、AAV-6の完全なゲノムは、GenBank寄託番号NC_001862で提供され、AAV-7及びAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBank寄託番号AX753246及びAX753249で提供され(AAV-8に関して米国特許第7,282,199号及び同第7,790,449号も参照)で提供され、AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)で提供され、AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)で提供され、AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)で提供される。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、及び宿主細胞染色体組み込みを指示するシス作用配列は、AAV ITR内に含まれる。3つのAAVプロモーター(それらの相対的マップ位置でp5、p19、及びp40と名付けられる)は、rep及びcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一のAAVイントロンの差次的スプライシング(ヌクレオチド2107位及び2227位)と結合した、2つのrepプロモーター(p5及びp19)は、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40)の産生をもたらす。repタンパク質は、ウイルスゲノムを複製するために最終的に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質であるVP1、VP2、及びVP3をコードする。代替的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連するカプシドタンパク質の産生に関与する。単一コンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95位に配置される。AAVのライフサイクル及び遺伝学は、Muzyczka,Curr Topics in Microbiol and Immunol,158:97-129(1992)でレビューされている。
【0083】
AAVは、例えば遺伝子療法において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとしてそれを魅力的にする固有の特徴を有する。培養での細胞のAAV感染は、非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は、無症状及び無症候性である。更に、AAVは、多くの哺乳動物細胞を感染させて、インビボで多くの異なる組織を標的とする可能性を与える。更に、AAVは、ゆっくり分裂する細胞及び非分裂性細胞で形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外要素)として本質的にそれらの細胞の存続期間にわたって持続し得る。AAVプロウイルスゲノムは、組換えゲノムの構築を実現可能にする、プラスミド中のクローン化DNAとして感染性である。更に、AAV複製、ゲノムカプシド形成、及び組み込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含有されるため、内部の約4.3kbのゲノム(複製及び構造カプシドタンパク質rep-capをコードする)の一部又は全てが、外来DNAで置き換えられ得る。rep及びcapタンパク質は、トランスで提供され得る。AAVの別の重要な特徴は、それが極めて安定した頑強なウイルスであることである。これは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性を低くする。AAVは、凍結乾燥され得、AAV感染細胞は、重複感染に耐性ではない。いくつかの態様において、AAVは、U6プロモーター、U7プロモーター、又はニューロン特異的プロモーターの制御下で阻害性RNAをコードする核酸を送達するために使用される。いくつかの態様において、AAVは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターの制御下で阻害性RNAをコードする核酸を送達するために使用される。いくつかの態様において、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターは、マウス、ラット、又はヒトである。いくつかの態様において、AAVは、U6プロモーター、U7プロモーター、又はニューロン特異的プロモーターの制御下でRNAi耐性置換MPZ遺伝子をコードする核酸を送達するために使用される。いくつかの態様において、AAVは、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターの制御下でRNAi耐性置換MPZ遺伝子をコードする核酸を送達するために使用される。いくつかの態様において、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターは、マウス、ラット、又はヒトプロモーターである。いくつかの態様において、MPZプロモーター又はミニMPZプロモーターは、ヒトプロモーターである。
【0084】
いくつかの実施形態において、AAVは、rep及びcap遺伝子を欠いている。いくつかの実施形態において、AAVは、組換え直鎖AAV(rAAV)、一本鎖AAV、又は組換え自己相補的AAV(scAAV)である。
【0085】
AAVベクターにおける進歩は、単回注射で治療用導入遺伝子を送達する、より安全でより効率的なウイルスビヒクルをもたらしており、遺伝子療法は現在、単一遺伝子性疾患のための好ましい治療介入である。AAVベクターは、有糸分裂後の標的組織における遺伝子産物の長期的な発現を提供することができる。したがって、現在のAAVベースの戦略は、1回のベクター投与のみを必要とし得る。
【0086】
本開示の組換えAAVゲノムは、例えば、1つ以上のMPZ阻害性RNA又はMPZ miRNAをコードするポリヌクレオチドに隣接する1つ以上のAAV ITRを含む。本明細書に提供されるrAAVのゲノムは、RNAi耐性置換MPZ遺伝子を更に含むか、又はRNAi耐性置換MPZ遺伝子が別個のrAAVに存在するかのいずれかである。miRNA-及び置換MPZ-コードポリヌクレオチドは、標的細胞内で機能的である転写制御DNA、例えばプロモーターDNAに操作可能に連結される。Ambion Inc.(Austin,TX)、Darmacon Inc.(Lafayette,CO)、InvivoGen(San Diego,CA)、及びMolecular Research Laboratories,LLC(Herndon,VA)などの商業的プロバイダーが、カスタム阻害性RNA分子を作製する。加えて、市販のキットが、SILENCER(商標)siRNA構築キット(Ambion Inc.、Austin,TX)又はpsiRNAシステム(InvivoGen、San Diego,CA)などのカスタムsiRNA分子を生成するために利用可能である。
【0087】
本明細書において、1つ以上のMPZ miRNA及び/又は1つ以上のRNAi耐性置換MPZ遺伝子を各々コードするrAAVが提供される。rAAVは、1つ以上のMPZ miRNA及びRNAi耐性置換MPZ遺伝子をコードし得る。1つ以上のMPZ miRNAをコードするrAAVは、1、2、3、4、5、6、7、又は8つのMPZ miRNAをコードすることができる。いくつかの態様において、RNAi耐性置換MPZ遺伝子をコードする別個のrAAVが提供される。いくつかの態様において、rAAVは、RNAi耐性置換MPZ遺伝子を同じrAAVベクターでコードする。いくつかの態様において、1つ以上のMPZ miRNAをコードするrAAVは、1つ、2つ、3つ、又は4つのMPZ miRNAをコードすることができる。
【0088】
したがって、いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAVである。本開示は、全てのタイプのAAVを含み、本明細書に記載されるタイプのAAVのみに限定されない。したがって、かかるAAVには、AAV1(すなわち、AAV1逆位末端反復(ITR)及びAAV1カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV2(すなわち、AAV2 ITR及びAAV2カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV3(すなわち、AAV3 ITR及びAAV3カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV4(すなわち、AAV4 ITR及びAAV4カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV5(すなわち、AAV5 ITR及びAAV5カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV6(すなわち、AAV6 ITR及びAAV6カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV7(すなわち、AAV7 ITR及びAAV7カプシドタンパク質)、AAV8(すなわち、AAV8 ITR及びAAV8カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV9(すなわち、AAV9 ITR及びAAV9カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV10(すなわち、AAV10 ITR及びAAV10カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV11(すなわち、AAV11 ITR及びAAV11カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV12(すなわち、AAV12 ITR及びAAV12カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV13(すなわち、AAV13 ITR及びAAV13カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV-anc80(すなわち、AAV-anc80 ITR及びAAV-anc80カプシドタンパク質を含むAAV)、AAVrh.74(すなわち、AAVrh.74 ITR及びAAVrh.74カプシドタンパク質を含むAAV)、AAVrh.8(すなわち、AAVrh.8 ITR及びAAVrh.8カプシドタンパク質を含有するAAV)、AAVrh.10(すなわち、AAVrh.10 ITR及びAAVrh.10カプシドタンパク質を含むAAV)、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、AAV-F、又はAAV2/1、AAV2/8、若しくはAAV2/9などの偽型AAVが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
様々な態様において、ウイルスベクターは、AAV9、AAV-PHP.eB、又はAAV-Fである。様々な態様において、ウイルスベクターは、AAV9又はAAV-Fである。AAV9は、臨床において確立された安全性プロファイルを有する神経学的適応症のために最も広く使用されたベクターになっている。AAV9の髄腔内投与は、神経系全体にわたる導入遺伝子の散在を可能にし、現在、脊髄筋萎縮(SMA、NCT03381729)について、並びにニューロン性セロイドリポフスチン沈着症3(CLN3、NCT03770572)、CLN6(NCT02725580)、及び巨大軸索神経障害(GAN、NCT02362438)の治療のための治験において、FDAによって承認されている。AAV9はまた、CMT1B疾患及び他の末梢神経障害の明確な治療標的であるシュワン細胞を標的とすることができることが知られている。更に重要なことに、AAV9は、大型動物及び非ヒト霊長類におけるシュワン細胞を形質導入することが報告され(Bradbury et al.,J Clin Invest,2020,130(9):4906-4920、Gautier et al.,Nat Commun,2021,12:2356)、それがヒトシュワン細胞への治療用遺伝子の送達を必要とする臨床適用のための望ましいウイルスベクターであることを示した。AAV-Fは、最近、脊髄において有効であることが示されている(Beharry et al.,Hum Gene Ther.2022 Jan;33(1-2):61-75.doi:10.1089/hum.2021.069.Epub 2021 Aug 26)。
【0090】
本開示のDNAプラスミドは、本開示のrAAVゲノムを含む。いくつかの態様において、DNAプラスミドは、rAAVゲノムの感染性ウイルス粒子への組み立てのために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠失アデノウイルス、又はヘルペスウイルス)による感染を許容できる細胞に移入される。したがって、いくつかの態様において、本開示は、治療剤を細胞内に送達するAAVベクターを含む。いくつかの態様において、細胞は、神経細胞である。いくつかの態様において、神経細胞は、シュワン細胞である。
【0091】
パッケージングされるべきAAVゲノムと、rep及びcap遺伝子と、ヘルパーウイルス機能とを細胞に提供するrAAV粒子を産生する技術は、当該技術分野において標準的である。rAAVの産生は、単一細胞(本明細書においてパッケージング細胞として示される)内に存在する以下の構成要素:rAAVゲノムと、rAAVゲノムから離れた(すなわち、その中に存在しない)AAV rep及びcap遺伝子と、ヘルパーウイルス機能と、を必要とする。AAV rep遺伝子は、組換えウイルスが由来することができる任意のAAV血清型からであり得、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、又はAAVv66を含むが、これらに限定されない、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型からであり得る。いくつかの態様において、rAAVゲノムにおけるAAV DNAは、組換えウイルスが由来することができる、任意のAAV血清型からであり、AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-FであるAAV血清型が含まれるが、これらに限定されない。rAAVバリアントの他のタイプ、例えば、カプシド変異を有するrAAVも本開示に含まれる。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy 22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。上記のように、様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が、当該技術分野において既知である。同族構成要素の使用が具体的に企図される。偽型rAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、偽型AAVであり、1つのAAV血清型からのITR及び異なるAAV血清型からのカプシドタンパク質を含有する。いくつかの実施形態において、偽型AAVは、AAV2/9(すなわち、AAV2 ITR及びAAV9カプシドタンパク質を含有するAAV)である。いくつかの実施形態において、偽型AAVは、AAV2/8(すなわち、AAV2 ITR及びAAV8カプシドタンパク質を含有するAAV)である。いくつかの実施形態において、偽型AAVは、AAV2/1(すなわち、AAV2 ITR及びAAV1カプシドタンパク質を含有するAAV)である。
【0093】
いくつかの実施形態において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVanc80、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV2/1、AAV2/8、AAV2/9、AAV-PHP.B、AAV-PHP.eB、AAV-PHP.S、AAVv66、又はAAV-Fからのカプシドタンパク質のうちの1つ以上のキメラを含むカプシドタンパク質などの組換えカプシドタンパク質を含む。他のタイプのrAAVバリアント、例えば、カプシド変異を有するrAAVもまた、企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。上記の背景セクションで言及されるように、様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が、当該技術分野において既知である。
【0094】
パッケージング細胞を生成する方法は、AAV粒子産生に必要な全ての構成要素を安定して発現する細胞株を作製することである。例えば、AAV rep及びcap遺伝子を欠くrAAVゲノムと、rAAVゲノムから離れたAAV rep及びcap遺伝子と、ネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーと、を含むプラスミド(又は複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、又は直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)などの手順によって細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株を、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスで感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模産生に好適であることである。好適な方法の他の例は、rAAVゲノム並びに/又はrep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するためにプラスミドではなく、アデノウイルス又はバキュロウイルスを用いる。
【0095】
rAAV産生の一般的原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbiol.and Immunol.,158:97-129)にレビューされている。様々なアプローチが、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)、Samulski et al.,J.Virol.,63:3822-3828(1989)、米国特許第No.5,173,414号、WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.,Vaccine,13:1244-1250(1995)、Paul et al.,Human Gene Therapy,4:609-615(1993)、Clark et al.,Gene Therapy,3:1124-1132(1996)、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、米国特許第6,258,595号、及びMcCarty,Mol.Ther.,16(10):1648-1656(2008)に記載されている。前述の文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、rAAV産生に関する文書のこれらの部分を特に強調している。自己相補的(sc)rAAVの産生及び使用が、具体的に企図されて例示される。
【0096】
したがって、本開示は、感染性rAAVを産生するパッケージング細胞を提供する。一実施形態において、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、及びPerC.6細胞(同族293株)などの、安定して形質転換されたがん細胞である。別の実施形態において、パッケージング細胞は、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、及びFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)などの形質転換されたがん細胞ではない細胞である。
【0097】
いくつかの態様において、rAAVは、カラムクロマトグラフィー又は塩化セシウム勾配などの当該技術分野で標準的な方法によって精製される。ヘルパーウイルスからrAAVベクターを精製するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999)、Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号及びWO98/09657に開示されている方法が含まれる。
【0098】
本開示の核酸及びウイルスベクターを含む組成物が提供される。本明細書に記載の送達ビヒクル(rAAVなど)を含む組成物が提供される。様々な態様において、かかる組成物はまた、薬学的に許容される担体を含む。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、希釈剤、賦形剤、又は緩衝剤である。本組成物はまた、アジュバントなどの他の成分を含み得る。
【0099】
許容される担体、希釈剤、賦形剤、及びアジュバントは、レシピエントに非毒性であり、好ましくは、用いられる投与量及び濃度で不活性であり、リン酸、クエン酸、若しくは他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギニン、アルギニン、若しくはリシンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、並びに/又はツイーン、プルロニック(登録商標)、若しくはポリエチルグリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0100】
滅菌注射可能溶液は、rAAVを必要量で適切な溶媒に、必要に応じて上に列挙される他の様々な成分とともに組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。概して、分散剤は滅菌した活性成分を、基礎的な分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それは、活性成分プラス予め滅菌濾過したそれらの溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす。
【0101】
本開示の方法で投与されるrAAVの力価は、例えば、特定のrAAV、投与方式、治療目標、個体、及び標的にされる細胞型に応じて異なり、当該技術分野で標準的な方法によって決定され得る。rAAVの力価は、ml当たり約1×10個、約1×10個、約1×10個、約1×10個、約1×1010個、約1×1011個、約1×1012個、約1×1013~約1×1014個、又はそれを超えるDNase耐性粒子(DRP)の範囲であり得る。投与量はまた、ウイルスゲノム(vg)の単位で表され得る(例えば、それぞれ、1×10vg、1×10vg、1×10vg、1×1010vg、1×1011vg、1×1012vg、1×1013vg、及び1×1014vg)。
【0102】
本開示のrAAVによる細胞の形質導入は、MPZ miRNA及びRNAi耐性置換MPZ遺伝子の持続した発現をもたらす。したがって、本開示は、対象に、MPZ miRNA及びRNAi耐性置換MPZ遺伝子を発現するrAAVを投与/送達する方法を提供する。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物である。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトである。これらの方法には、本明細書に記載の1つ以上のrAAVを用いて細胞及び組織(末梢運動ニューロン、感覚運動ニューロン、ニューロン、シュワン細胞、並びに筋肉、肝臓、及び脳などの他の組織又は臓器を含むが、これらに限定されない)に形質導入することが含まれる。形質導入は、細胞特異的制御エレメントを含む遺伝子カセットを用いて実行され得る。
【0103】
「形質導入」という用語は、例として、標的細胞によるMPZ miRNA及びRNAi耐性置換MPZの発現をもたらす本明細書に記載の複製欠損rAAVを介した、インビボ又はインビトロのいずれかでの標的細胞へのMPZ miRNA及びRNAi耐性置換MPZの投与/送達を指すために使用される。
【0104】
インビボ又はインビトロで、標的細胞を送達ビヒクル(例えば、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、又はベクター(rAAV))で形質導入する方法が、提供される。インビボ方法は、送達ビヒクル(rAAVなど)を含む1回の有効用量又は複数回の有効用量の組成物を、それを必要とする動物(ヒト対象を含む)に投与するステップを含む。用量が、障害/疾患の発症前に投与される場合、投与は予防的である。用量が、障害/疾患の発症後に投与される場合、投与は治療的である。有効用量は、治療される障害/疾患状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和(排除又は低減)し、障害/疾患状態への進行を遅延若しくは防止し、障害/疾患状態の進行を遅延若しくは予防し、疾患の程度を軽減し、障害/疾患状態の寛解(部分若しくは完全)をもたらし、かつ/又は生存を延長する用量である。そのため、有効用量(又は本質的に同時に投与される用量若しくは間隔をおいて投与される用量)の本明細書に記載のrAAVを、それを必要とする患者に投与する方法が提供される。
【0105】
本明細書において、変異体MPZ遺伝子又は異常なMPZ遺伝子発現に関連する疾患を治療、改善、又は予防するための医薬品及び方法が提供される。MPZ遺伝子は、ミエリン鞘内の主要なタンパク質であるMPZタンパク質をコードする。MPZは、健常で効率的な末梢神経系を維持するのに不可欠なタンパク質である。シュワン細胞における欠陥タンパク質の蓄積は、経時的に脱髄及び細胞死を引き起こす。CMT1B病の病理学的メカニズムは、2つの主要な群:(1)正常な髄鞘形成に直接影響を及ぼす毒性の機能獲得変異、及び(2)欠陥のある折り畳み不全タンパク質応答(UPR)又は小胞体(ER)ストレス応答、にほとんど分けることができる。疾患の両方のメカニズムは、最終的に、シュワン細胞(SC)における変異体ミエリンタンパク質の蓄積、減少した髄鞘形成、筋力低下及び萎縮、並びに下肢及び足の感覚の喪失につながる。例えば、R98C変異は、ERにおける変異したMPZタンパク質及び欠陥UPRを保持することに起因して、早期発症の重度の疾患を引き起こす。この変異を有する患者は、ミエリンが非常に低いか、又はほとんどない。これらの患者は、CMT1Bとして分類されるが、非常に重度のCMT1B又は先天性低髄鞘形成の別の定義であるデジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS)としても分類される。したがって、本開示の方法による予防、治療、又は改善のために含まれる疾患の例は、CMT1B疾患である。病理学的MPZ変異を有することが知られている家族において、予防するための方法は、対象に疾患発症前に実行される。他の対象では、本方法は診断後に実行される。
【0106】
分子的、生化学的、組織学的、及び機能的な転帰尺度は、方法の治療有効性を実証する。転帰尺度は、例えば、Dyck and Thomas,Peripheral Neuropathy,Elsevier Saunders,Philadelphia,PA,4thEdition,Volume 1(2005)のチャプター32、35、及び43、並びにBurgess et al.,Methods Mol.Biol.,602:347-393(2010)に記載されている。転帰尺度としては、罹患した組織における変異体MPZ mRNA若しくはタンパク質の低下若しくは除去、MPZ遺伝子ノックダウン、低減した脱髄、又は改善した髄鞘形成のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。他には、低減した細胞死が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
様々な態様において、定量的RT-PCR(qRT-PCR)及びウェスタンブロットアッセイを使用して、miMPZ及び/又はcoMPZの発現を検出する。いくつかの態様において、トルイジンブルー染色を実行して、治療した対象及び未治療対象における脱髄/再髄鞘形成及びタマネギ様構造を調査する。いくつかの態様において、ロータロッド及びフットグリップ検査などの行動分析を行って、運動バランス、整合、及び筋力を評価する。いくつかの態様において、シュワン細胞死の量を決定するために、TUNELアッセイを坐骨神経で実行する。いくつかの態様において、筋肉における小胞体(ER)の変化又はストレス、及び折り畳み不全タンパク質応答(UPR)を試験するために検査が行われる。いくつかの態様において、これらの検査は、qRT-PCRアッセイを使用して実行される。骨格筋は、身体活動、代謝摂動、及び疾患状態などの環境的な合図に応答して広範囲の適応を受ける、人体における高度に可塑的な組織である。ERは、骨格筋を含む多くの哺乳動物細胞タイプにおいて、タンパク質の折り畳み及びカルシウム恒常性で重要な役割を果たす。しかしながら、ER管腔内の誤って折り畳まれたか、又は折り畳み不全タンパク質の過負荷は、ストレスを引き起こし、UPRと呼ばれるシグナル伝達ネットワークの活性化をもたらす。UPRは、3つのER膜貫通センサー:プロテインキナーゼR様小胞体キナーゼ、イノシトール要求タンパク質1α、及び活性化転写因子6によって開始される。UPRは、タンパク質合成の速度を調節し、多くのERシャペロン及び調節タンパク質の遺伝子発現を増強することによって、ER恒常性を回復する。しかしながら、慢性的に高まったERストレスは、細胞死を含む多くの病理学的結果にもつながる可能性がある。証拠の蓄積は、ERストレス誘発性UPR経路が、複数の状態における骨格筋量及び代謝機能での調節において重要な役割を果たすことを示唆する。いくつかの態様において、神経伝導速度(NCV)試験が使用される。試験中、皮膚に取り付けられた表面電極パッチを通常用いて、神経が刺激される。2つの電極が、神経を覆う皮膚に配置される。一方の電極は、非常に軽度の電気インパルスで神経を刺激し、他方の電極はそれを記録する。得られる電気活動は、別の電極によって記録される。これは、試験される各神経について繰り返され、神経をとおる電気インパルスの伝導速度の測定を提供する。したがって、いくつかの態様において、NCV試験は、神経損傷及び破壊、並びに/又は改善を決定することができる。
【0108】
本開示の方法において、変異体MPZ対立遺伝子(又は両方の変異体対立遺伝子)の発現は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98パーセント、少なくとも99パーセント、又は100パーセント阻害される。方法において、野生型MPZ対立遺伝子の発現は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98パーセント、少なくとも99パーセント、又は100パーセント阻害される。
【0109】
併用療法も本開示によって企図される。いくつかの態様において、2つ以上のmiRNAの組み合わせを使用して、より高いサイレンシング効率を達成する。いくつかの態様において、miRNAは、MPZ変異に関連する疾患のための他の療法とともに使用される。いくつかの態様において、本明細書に記載のmiRNAは、変異体MPZ遺伝子の発現を中和又は低減するように設計された他の療法とともに使用される。いくつかの態様において、かかる他の療法は、本明細書に記載されている。いくつかの態様において、かかる他の療法は、当業者に既知である。本明細書に使用される併用は、同時治療及び連続治療の両方を含む。本明細書に記載の方法と標準的な医学的治療及び支持療法との併用は、療法との併用と同様に、具体的に企図される。
【0110】
有効用量の本開示の核酸、ナノ粒子、細胞外小胞、エクソソーム、ウイルスベクター、又は組成物の投与は、筋肉内、非経口、血管内、静脈内、経口、頬側、鼻腔、肺、頭蓋内、脳室内、髄腔内、骨内、眼内、直腸、又は膣を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で標準的な経路によるものであり得る。様々な態様において、有効用量は、経路の組み合わせによって送達される。例えば、様々な態様において、有効用量は、静脈内及び/若しくは筋肉内、又は静脈内及び脳室内などで送達される。いくつかの態様において、有効用量は、順番に、又は連続して送達される。いくつかの態様において、有効用量は、同時に送達される。本開示のrAAVのAAV成分(具体的には、AAV ITR及びカプシドタンパク質)の投与経路及び血清型は、治療される感染症及び/又は疾患状態、並びにmiRNAを発現すべき標的細胞/組織を考慮して、当業者によって選択及び/又は適合され得る。
【0111】
具体的には、送達ビヒクル(rAAVなど)の実際の投与は、送達ビヒクル(rAAVなど)を対象の標的細胞に輸送する任意の物理的方法を使用することによって達成され得る。投与には、筋肉、血流、及び/又は直接的な神経系若しくは肝臓への注入が含まれるが、これらに限定されない。リン酸緩衝化生理食塩水中にrAAVを単に再懸濁させることが、筋肉組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与することができる担体又は他の成分について既知の制限はない(だが、DNAを分解する組成物は、rAAVを用いる通常の手段では避けるべきである)。rAAVのカプシドタンパク質は、rAAVが神経細胞などの目的の特定の標的組織に標的化されるように改変され得る。例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれるWO02/053703を参照されたい。医薬組成物は、注射可能な製剤として、又は経皮輸送によって筋肉に送達される局所製剤として調製することができる。筋肉内注射及び経皮輸送の両方のための多数の製剤が既に開発されており、本開示を方法の実施に使用することができる。送達ビヒクル(rAAVなど)は、投与及び取り扱いを容易にするために、任意の薬学的に許容される担体とともに使用することができる。
【0112】
送達ビヒクル(rAAVなど)の分散液はまた、グリセロール、ソルビトール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で、並びに油中で調製することができる。通常の保存状態及び使用下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。これに関連して、用いられる滅菌水性媒体は全て、当業者に周知の標準的な技術によって容易に得ることができる。
【0113】
注射可能な使用に好適な薬学的形態には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射可能な溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、容易に注射器使用が可能性である程度に流動性でなければならない。製造及び保存の条件下で安定していなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、ソルビトールなど)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合に必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、suMPZ又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0114】
滅菌注射可能溶液は、rAAVを必要量で適切な溶媒に、必要に応じて上に列挙される他の様々な成分とともに組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。概して、分散剤は滅菌した活性成分を、基礎的な分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それは、活性成分プラス予め滅菌濾過したそれらの溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす。
【0115】
本開示はまた、本明細書に記載の疾患又は障害の治療に使用するためのキットを提供する。かかるキットは、上記の本明細書に記載の核酸のうちのいずれか、又は上記の本明細書に記載のウイルスベクターのうちのいずれかを、薬学的に許容される担体中に含む、少なくとも第1の無菌組成物を含む。別の成分は、任意選択的に、治療組成物の投与のための好適な容器及びビヒクルを一緒に伴う、障害の治療のための第2の治療剤である。キットは、任意選択的に、第1及び第2の組成物を懸濁するか、希釈するか、又は送達をもたらすための溶液又は緩衝液を含む。
【0116】
一実施形態において、かかるキットは、密封されたボトル又はベセルなどの容器にパッケージングされた希釈液中に核酸又はベクターを含み、核酸又はベクターの使用を説明する、容器に貼付されたか、又はパッケージに含まれる表示を有する。一実施形態において、希釈液は、容器内のヘッドスペースの量(例えば、液体製剤と容器の上部との間の空気の量)が非常に少なくなるように、容器内にある。好ましくは、ヘッドスペースの量は無視できる(すなわち、ほとんどない)。
【0117】
いくつかの態様において、製剤は、安定剤を含む。「安定剤」という用語は、加熱又は凍結中に生じるものなどの有害な条件から製剤を保護し、かつ/又は安定状態で製剤の安定性若しくは有効期間を延長させる物質又は賦形剤を指す。安定剤の例としては、スクロース、ラクトース、及びマンノースなどの安定剤、糖、マンニトールなどの糖アルコール、グリシン又はグルタミン酸などのアミノ酸、並びにヒト血清アルブミン又はゼラチンなどのタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの態様において、製剤は、抗微生物保存剤を含む。「抗微生物保存剤」という用語は、使用されるバイアル又は容器の反復穿刺時に導入され得る微生物の増殖を阻害する組成物に添加される任意の物質を指す。抗微生物保存剤の例としては、チメロサール、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、及びフェノールなどの物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの態様において、キットは、キットに提供される試薬の使用を説明するラベル及び/又は説明書を含む。キットはまた、本明細書に記載の方法で使用される組成物のうちの1つ以上を送達するためのカテーテル、注射器、又は他の送達デバイスを任意選択的に含む。
【0120】
本文書全体は、統一された開示として関連することが意図されており、特徴の組み合わせが本文書の同じ文章、又は段落、又はセクションで一緒に認められない場合でも、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせが企図されることを理解されたい。本開示はまた、例えば、上記で具体的に言及される変形よりもいくらか範囲が狭い本開示の全ての実施形態を含む。属として記載される本開示の態様に関して、全ての個々の種は、本開示の別個の態様とみなされる。「a」又は「an」で記載又は特許請求される本開示の態様に関して、これらの用語は、文脈がより限定された意味を明確に必要としない限り、「1つ以上」を意味することを理解されたい。本開示の態様が、特徴を「含む」として記載される場合、その特徴「からなる」か又は「から本質的になる」実施形態も企図される。
【0121】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が、本開示と矛盾しない範囲内において、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示的な目的のみのためのものであり、それらの観点から様々な修正又は変更が当業者に示唆されるが、本出願の趣旨及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【実施例
【0123】
本開示の態様及び実施形態は、以下の実施例によって例示されるが、これらは、本発明の範囲を限定することを決して意味するものではない。
実施例1
材料及び方法
マイクロRNA(miRNA)設計及び合成
CMT1B疾患に特異的なマイクロRNA(miRNA)を設計し、合成した。ヒトMPZ cDNA(配列番号1、NM_000530.8)及びその3’UTR(配列番号2、NM_000530.8)の配列が表1に提供される。部分的にコドン最適化したMPZ cDNA(配列番号3)の配列が表1に提供される。配列番号3のヌクレオチド225~247(表1に下線が引かれている)は、miMPZ 225及び226の標的部位を含む。配列番号3のヌクレオチド315~338(表1に下線が引かれている)は、miMPZ 315、316、及び317の標的部位を含む。配列番号3のヌクレオチド718~744(表1に下線が引かれている)は、miMPZ 718、719、720、721、722、及び723の標的部位を含む。完全にコドン最適化したMPZ遺伝子を使用して、MPZの発現レベルを比較するか、又は新規カセットを作製することができる。したがって、各アミノ酸について2つ以上のコドンが存在するため、他のコドン最適化MPZ配列が本開示によって包含される。MPZタンパク質配列(配列番号4、NM_000530.8)の配列が、表1に提供される。ヒトMPZプロモーター(配列番号5、ENSG00000158887)の配列が、表1に提供される。1200bpのヒトMPZプロモーター(ENSG00000158887)、63bpのヒトMPZ 5’UTR、及び747bpの部分的にコドン最適化したMPZ cDNAから作製されたMPZ発現カセット(配列番号6)の配列が、表1に提供される。配列番号6はまた、SV40ポリAシグナル及びCMVアンプリコン配列を含む。CMVアンプリコンは、qRT-PCR又はddPCRアッセイを使用するAAV力価測定のために構築物に使用される。リードmiMPZは、CMVアンプリコンの後に配置されたNsiI部位又はNotI部位にクローニングすることができる。配列全体は、各末端に2つのXbaI制限酵素部位を使用して、AAVプレプラスミドにクローニングされる。配列は、Integrated DNA Technologies(IDT)(Coralville,IA)によって合成された。CoMPZ発現カセットにおける配列順:XBAI-stui-SalI-kasi-ヒトMPZプロモーター(1200bp)-NheI-ヒトMPZ 5’UTR -部分的コドン最適化ヒトmpz cds-SPEI-ndei-SV40 PA-paci -DRP用CMVアンプリコン-NSII-noti-XBAI。代替的に、本開示は、CMV特異的エンハンサーなどのユニバーサルエンハンサー又はPMP22などのシュワン特異的エンハンサーと組み合わせた、ヒト、ラット、又はマウスのプロモーターを含む様々なMPZプロモーター又はミニMPZプロモーターの使用を含む。
【0124】
MPZ(P0)遺伝子を標的とする12の合成miRNA(miMPZと名付けられた)が設計及び作製された。表2を参照されたい。これらのmiRNAは、ヒト及びマウスMPZ遺伝子の両方の領域(MPZ遺伝子配列が両方の種で保存されている)を標的とするように設計された。これらは、非対立遺伝子特異的miMPZであり、すなわち、これらのmiRNAは、変異体MPZ及び野生型MPZの両方を標的とし、標的細胞における全体的なMPZ発現をサイレンシングする。miMPZ番号は、MPZ cDNAでカウントを開始した、cDNA及び3’UTRでの標的配列を示す。表3に提供されるように、12対のプライマーを使用するPCRによって、miMPZ_225、miMPZ_226、miMPZ_315、miMPZ_316、miMPZ_317、miMPZ_718、miMPZ_719、miMPZ_720、miMPZ_721、miMPZ_722、miMPZ_723、及びmiMPZ_1852と名付けられたmiRNAをコードするDNAを生成した。
【0125】
miRNAのPCRクローニング
1μgの各プライマーを、1サイクルプライマー伸長反応:95℃で5分間、94℃で2分間、52℃で1分間、68℃で15分間に添加し、次いで4℃で保持した。PCR産物をQiagen QIAquick PCR精製キットでクリーンアップした後、XhoI及びSpeI制限酵素で一晩消化した。次いで、消化産物を1.5%TBEゲルで展開させ、バンドを切除し、Qiagen QIAquickゲル抽出キットを使用して精製した。図1A~1Lに示される各miRNAの配列。
【0126】
2つのPCR産物を、マウスU6プロモーター及びRNAポリメラーゼIII終結シグナル(6つのチミジンヌクレオチド)を含有するU6T6ベクター(XhoI及びXbaIを介して)に一晩ライゲーションした。miRNAを、U6プロモーターの3’末端と終結シグナルとの間に位置するXhoI及びXbaI制限部位にクローニングする(各miRNAでのDNAテンプレートの3’末端のSpeI部位は、XbaI部位と相補的な付着末端を有する)。ライゲーション生成物によって、42℃の熱ショックを用いて化学的にコンピテントなE-coli細胞を形質転換し、37℃の振とうで1時間インキュベートしてから、カナマイシン選択プレートに播種した。コロニーを37℃で一晩増殖させた。翌日、それらはミニプレップ処理し、正確性のために配列決定した。
【0127】
ルシフェラーゼアッセイ
ルシフェラーゼアッセイを使用して、各miMPZの存在下でのMPZの発現レベルを決定した。42,000個のHEK293細胞を、トランスフェクションの16時間前に、96ウェルプレートの各ウェルで培養した。翌日、細胞は、リポフェクタミン2000を使用して、MPZ標的配列(図3A)を含有する25ngのウミシイタケ-ホタルプラスミド、及び250ngの各miMPZコードプラスミドでトランスフェクトした。24時間後、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイキット(Promega、E1960)を使用するルシフェラーゼアッセイを、製造業者のプロトコルに従って実行した。ウミシイタケ発現をホタル発現で除して、相対的発現を算出した。次いで、相対的発現を、陰性対照としてMPZ及びU6T6プラスミドでトランスフェクトした細胞の発現に対して正規化した。結果が図3B~Dに示される。miMPZ-225、226、721、及び723と名付けられたMPZ標的化miRNAは、初期実験において、トランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼタンパク質発現を低減するのに最も有効だった。
【0128】
ウェスタンブロット
HEK293細胞(細胞250,000個/ウェル)を、トランスフェクションの16時間前に、24ウェルプレートに播種した。翌朝、リポフェクタミン2000(Thermofisher,US)を使用して、250ngのMPZ及び1250ngのmiMPZ発現プラスミドで共トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含有するカクテルを補充したRIPA緩衝液(50mMのTris、150mMのNaCl、0.1%のSDS、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、1%のTritonX100)に溶解した。タンパク質濃度をDCタンパク質アッセイキット(Bio-Rad Laboratories)によって決定した。20μgの各総タンパク質試料を、12%SDS-ポリアクリルアミドゲルで展開させた。GE Healthcare Rainbow分子量マーカー(Fisherscientific,USA)を使用して、タンパク質バンドの分子量を決定した。タンパク質を、SDS-PAGEゲルからPVDF膜に、半乾燥移行方法を介して移した。膜を5%脱脂乳でブロッキングし、次いで、一次ウサギ抗フラッグ抗体(1:10,000、Abcam,ab1162)、又はウサギポリクローナル抗αチューブリン抗体(1:1,000、ab15246,Abcam,Cambridge,MA)とともに4℃で一晩インキュベートした。翌日、洗浄に続いて、次いでブロットを西洋ワサビペルオキシダーゼ-コンジュゲート化ヤギ抗ウサギ二次抗体(1:100,000、Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とともに室温で1時間30分間探査した。Immobilon Chemiluminescent HRP基質(Millipore、Billerica,MA)中で短時間インキュベーションした後、相対的なタンパク質バンドをX線フィルムで現像した。ウェストレンブロットの結果が図2Cに示される。miMPZ225、226、317、721、及び723が、MPZタンパク質発現をノックダウンするのに最も効果的だった。
【0129】
qRT-PCR
ウェスタンブロットアッセイの前セクションで説明したように、MPZ及び各miMPXプラスミドのそれぞれ250及び1250μgを、HEK293細胞に共トランスフェクトした。24時間後、増殖培地を廃棄し、細胞をPBSで2回洗浄した。全RNAは、トリゾール(Fisher,Waltham,MAからのトリゾール)を製造元プロトコルに従って使用して抽出した。単離したRNAの質及び量をナノドロップによって調べ、次いで、DNase処理し、ランダムヘキサマー(Applied Biosystems cDNA Archive キット、Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用するRT-PCRで使用した。その後のcDNA試料は、次いで、事前に設計されたヒトMPZ(Thermo Fisher、Hs01595271_g1)及びヒトRPL13A対照プライマー/プローブセット(Thermofisher)を使用するTaqmanアッセイでテンプレートとして使用した。各試料は三重測定で行った。全てのデータは、MPZのみでトランスフェクトした細胞に対して正規化した。図3Dは、qRT-PCR結果を示す。miMPZ_225、721、及び723は、MPZ mRNAレベルを低減する最も効率的なmiRNAだった。
【0130】
CMT1B疾患を治療するための遺伝子療法としてrAAVベクターを使用するMPZノックダウン及び置換
MPZタンパク質は、主な末梢ミエリンタンパク質又はミエリンタンパク質ゼロ(P0)としても知られ、通常、髄鞘形成するシュワン細胞によって発現され、全PNSミエリンタンパク質の50%超を占める。この試験で設計されたmiRNAは、変異体MPZ遺伝子及び野生型MPZ遺伝子の両方を標的とする。したがって、健常なミエリン鞘を維持するために必要である健常なレベルの正常なMPZ発現を回復させるために、miMPZ耐性MPZ遺伝子がAAVベクターを介してシュワン細胞に送達される。そうするために、ヒトMPZ遺伝子(NM_000530.8、配列番号1)でのmiMPZ標的部位は、miMPZがこれらの領域に結合できないようにコドン最適化した。コドン最適化MPZ cDNA(coMPZ)は、配列番号3として提供される。野生型MPZ及びcoMPZの両方が、同じ健常なMPZタンパク質(配列番号4、NM_000530.8)を産生する。
【0131】
最後に、ノックダウン及び置換の両方を行うために、「ヒトMPZプロモーター(hpMPZ)-coMPZ-U6-miMPZ」(配列番号6)を担持する遺伝子発現カセットを設計し、作製した。このカセットを作製するために、ヒトMPZプロモーター(MPZはシュワン細胞でのみ発現されるため、このプロモーターは非常に好適である)と、ヒトcoMPZと、このカセットにおいてmiMPZをクローニングするのに必要な制限部位と、を含むカセットを設計した。カセットの各部分の完全な配列及び順序が図4に示される。MPZタンパク質の発現は、HEK293細胞においてインビトロで試験され、次いで、MPZ標的配列を標的とする各miMPZの能力は、ウェスタンブロット及びqRT-PCRによって試験される。その後、リードmiMPZをこのプラスミドにクローニングした後、それはCMT1Bマウスでのインビボ試験のために、配列の各末端にXbaI部位を使用してAAVベクターにパッケージングされる。
【0132】
このカセットは、2つの遺伝子を発現し、1つは、内因性(変異体及び野生型の両方)MPZ遺伝子のサイレンシングを提供するU6プロモーター下で発現されるmiMPZである。他方の遺伝子は、miMPZ媒介遺伝子サイレンシングに耐性であり、ヒトシュワン特異的MPZプロモーター、すなわち、1200bpの内因性ヒトMPZプロモーター(配列番号5、ENSG00000158887)下で発現される、健常なコドン最適化MPZ(coMPZ)遺伝子である。
【0133】
転帰尺度
Mpzの発現レベルは、qRT-PCR及びウェスタンブロットアッセイによって調査される。トルイジンブルー染色を実行して、脱髄/再髄鞘形成及びタマネギ様構造の形成を調査する。ロータロッド及びフットグリップ検査などの行動分析を実行して、運動バランス、整合、及び筋力を評価する。シュワン細胞死の量を決定するために、TUNELアッセイを坐骨神経で行う。ER及びUPR応答における変化は、qRT-PCRアッセイを使用して決定される。神経組織学を調べるために、2ヶ月又は6ヶ月齢の処置したマウス又は対照マウスの末梢坐骨神経を、切離し、固定し、プラスチック包埋し、1μmでの切片化し、トルイジンブルーで染色する。軸索数、軸索サイズ、g比、及びミエリンの厚さ、並びにタマネギ様構造形成を、顕微鏡写真で測定する。グリップ強度は、マウスをワイヤグリッド上に置き、次に反転させることによって検査し、落下までの時間を、最大1分間で記録する。この検査は、3週齢以上のマウスに使用され、長軸方向で使用される。ロータロッド検査は、運動バランス及び整合を試験するために使用される。運動バランス及び整合は、加速するロータロッド装置を使用して決定される。マウスは、2ヶ月及び6ヶ月齢で試験される。動物の訓練は、連続する3日間、1日当たり3回の試験で構成され、試験の間に15分間の休息を有する。マウスをロッド上に配置し、速度を4から40RPMに徐々に増加させる。試験は、マウスがロッドから落ちたとき、又はロッド上に600秒間持続するときに終了する。検査は、20及び32RPMの2つの異なる速度を使用して4日目に行われる。落下するまでの潜時(秒)が、速度ごとに計算される。
【0134】
本開示はまた、神経伝導速度(NCV)検査を提供する。マウスをケタミン/キシラジンで麻酔し、坐骨神経を股関節(坐骨ノッチ)及び足首で刺激し、EMGシグナルを後足の母指球筋で記録する。刺激電極間の距離をEMGへの潜時における差で除して、伝導速度を決定する。EMG振幅が決定される。かかるEMG振幅は、複合筋活動電位(iCMAP)のために積分することができる。いくつかの態様において、二次EMG信号が記録される。EMGシグナルは、脊髄運動ニューロンへの活性化した感覚ニューロンの単シナプス反射であるH反射から生じる。したがって、筋活動(EMG)、感覚神経伝導速度、及び脊髄におけるシナプス結合性が測定される。
【0135】
実施例2
共トランスフェクトしたHEK293細胞におけるMPZ発現をノックダウンするためのmiRNAの有効性
miMPZは、PCRによって生成されて、U6プロモーターの制御下でプラスミド中にクローニングされ、これは、RNAポリメラーゼIIIによる小ヘアピンループの発現に好都合である。miMPZのプレスクリーニングは、miRNA及び野生型又は変異体MPZ発現プラスミドをHEK293細胞に共トランスフェクトすることによって実行した。要するに、標的配列を、ウミシイタケ/ホタルデュアルレポーターシステムにおけるウミシイタケルシフェラーゼの3’非翻訳領域に組み込んだ(図3A)。標的結合及びノックダウンの有効性は、発光比によって決定された。図3B及び4Aは、野生型及びR98C変異体MPZ mRNAを標的とする各miMPZを決定するために使用されたルシフェラーゼアッセイ結果を示す。
【0136】
miMPZ_225、226、317、719、721、及び723の使用は、野生型及び変異体MPZ R98Cの両方でルシフェラーゼシグナルにおよそ>80%の減少をもたらした。同じ結果が、トランスフェクションの24時間後に共トランスフェクションしたHEK293細胞からウェスタンブロット及びqRT-PCRを使用して達成された(図3C及び4B)。同じmiMPZは、野生型及び変異体MPZの顕著な低減を引き起こした。
【0137】
これらの結果は、miRNAが、共トランスフェクトしたHEK293細胞におけるMPZ発現をノックダウンするのに有効だったことを示す。
実施例3
R98C CMT1Bマウスモデルからの背根神経節(DRG)/シュワン細胞共培養のビトロモデルにおけるMPZ発現をノックダウンするmiMPZの能力を試験する
インビトロモデルにおいて、MPZ R98Cノックダウン及び置換の有効性を評価し、軸索の再髄鞘形成を調査するために、マウス背根神経節(DRT)及びシュワン細胞(DRG/シュワン)共培養を使用する。このインビトロCMT1Bモデルは、インビボ実験の前に、CMT1B疾患メカニズムの試験及び治療構築物のインビトロ開発を可能にする。
【0138】
R98Cマウスの胚性脊髄から単離及び精製されたDRG(Saporta et al.,同上)は、University of IowaのDr.Michael Shyによって提供され、Florio et al.(J Neurosci.2018,38(18):4275-4287)によって報告されたように、一次シュワン細胞と共培養した。次いで、これらの細胞を、本明細書に記載のmiMPZの各々、及び本明細書に記載のMPZ若しくはcoMPZのいずれか、又は本明細書に記載の発現カセットのいずれかでトランスフェクトする。いくつかの態様において、miMPZ及びcoMPZの各々は、同じ構築物で提供される。いくつかの態様において、miMPZ及びcoMPZの各々は、1つ以上の構築物で提供される。対照は、空ベクター、coMPZ単独、miMPZ単独で処理されるか、又は未処理である。
【0139】
一定期間後、髄鞘形成は、免疫染色、ウェスタンブロット、qPCR、及びqRT-PCRを含む様々な実験方法によって、様々な確立されたマーカーを使用して分析する。qRT-PCR試験及びウェスタンブロットアッセイを使用して、miMPZ、変異体MPZ、及びcoMPZの発現を検出する。トルイジンブルー染色を実行して、脱髄/再髄鞘化及び細胞でのタマネギ様構造の形成を調査する。
【0140】
髄鞘形成における改善が、miMPZ及びcoMPZによる処理で得られる。
実施例4
CMT1BのR98CマウスモデルにおけるmiMPZノックダウン及びMPZ置換
ノックダウン(miMPZによるAAV9媒介MPZ遺伝子サイレンシング)及びAAV9-coMPZによる遺伝子置換のインビボでの有効性を検証及び試験するために、ノックダウン及び遺伝子置換を、University of IowaのDr.Michael Shyによって提供された重度のR98C CMT1Bマウスモデル(Saporta et al.,同上)で実行する。
【0141】
本明細書に記載のmiMPZのうちのいずれか及びcoMPZのうちのいずれかを担持するAAVベクターが、ICV若しくは髄腔内注射のいずれかを介して、又は坐骨神経への直接注射を介して、前症候性又は後症候性のマウスのCSFに投与される。対照は、空ベクター、coMPZ単独、miMPZ単独で処置されるか、又は未処置である。
【0142】
髄鞘形成の改善における変異体MPZノックダウン及びcoMPZ置換の有効性は、マウスにおいて、本明細書に記載されるように、免疫染色、ウェスタンブロッティング、qPCR、及びqRT-PCRを含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して、投与後のいくつかの時点で調査される。
【0143】
qRT-PCR試験及びウェスタンブロットアッセイを使用して、miMPZ、変異体MPZ、及びcoMPZの発現を検出する。トルイジンブルー染色を実行して、処置したマウス及び未処置マウスにおける脱髄/再髄鞘形成及びタマネギ様構造の形成を調査する。ロータロッド及びフットグリップ検査などの行動分析を行い、運動バランス、整合、及び筋力を評価する。シュワン細胞死の量を決定するために、TUNELアッセイを坐骨神経で実行する。ER及びUPR応答における変化は、処置したマウス及び未処置マウスにqRT-PCRアッセイを使用して決定される。NCVアッセイを使用して、処置したマウスにおける運動機能の改善を、未処置動物と比較して調査する。
【0144】
CMT1BのR98CマウスモデルにおけるmiMPZノックダウン及びcoMPZ置換による処置は、マウスにおける髄鞘形成、運動バランス、運動機能、整合、及び/又は筋力を改善する。
【0145】
実施例5
CMT1BのS63delマウスモデルにおけるmiMPZノックダウン及びMPZ置換
ノックダウン(miMPZによるAAV9媒介MPZ遺伝子サイレンシング)及びAAV9-coMPZによる遺伝子置換のインビボでの有効性を検証及び試験するために、ノックダウン及び遺伝子置換を、S63del CMT1Bマウスモデルで実行する(Wrabetz et al.,(同上)、Sidoli et al.,J Neuroscience,2016,36(44):11350-61)。この遺伝子導入マウスモデルは、University of Buffalo,NYのDr.Lawrence Wrabetz及びDr.Laura Fetriによって証明される。
【0146】
miMPZ及びcoMPZを担持するAAVベクターが、ICV若しくは髄腔内注射のいずれかを介して、又は坐骨神経への直接注射を介して、前症候性又は後症候性のマウスのCSFに投与される。対照は、空ベクター、coMPZ単独、miMPZ単独で処理されるか、又は未処理である。
【0147】
髄鞘形成の改善における変異体MPZノックダウン及びcoMPZ置換の有効性は、マウスにおいて、本明細書に記載されるように、免疫染色、ウェスタンブロッティング、qPCR、及びqRT-PCRを含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して、投与後のいくつかの時点で調査される。
【0148】
qRT-PCR試験及びウェスタンブロットアッセイを使用して、miMPZ、変異体MPZ、及びcoMPZの発現を検出する。トルイジンブルー染色を実行して、処置したマウス及び未処置マウスにおける脱髄/再髄鞘形成及びタマネギ様構造の形成を調査する。ロータロッド及びフットグリップ検査などの行動分析を行い、運動バランス、整合、及び筋力を評価する。シュワン細胞死の量を決定するために、TUNELアッセイを坐骨神経で実行する。ER及びUPR応答における変化は、処置したマウス及び未処置マウスにqRT-PCRアッセイを使用して決定される。NCVアッセイを使用して、処置したマウスにおける運動機能の改善を、未処置動物と比較して調査する。
【0149】
CMT1BのS63delマウスモデルにおけるmiMPZノックダウン及びcoMPZ置換による処置は、マウスにおける髄鞘形成、運動バランス、運動機能、整合、及び/又は筋力を改善する。
【0150】
実施例6
MPZの変異を有するヒト患者の治療におけるmiMPZノックダウン及びMPZ置換又は単独でのMPZ置換
MPZにおける変異は、CMT1Bを引き起こし、>200の変異の多くは、ER保持、折り畳み不全タンパク質応答(UPR)の活性化、又はミエリン圧縮の破壊などの変異体タンパク質による毒性の機能獲得を介して神経障害を引き起こす。患者は、ミエリンP0又はPo遺伝子(MPZ)変異について、ヘテロ接合又はホモ接合であると特定されている(Ikegami et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.1996;222:107-110。Ikegami et al.(同上)は、新規ホモ接合性Phe64欠失変異を特定し、髄鞘形成の障害は量依存的であることを示唆した。他の患者は、MPZのハプロ不全をもたらすMPZの変異を有することが特定されており、軽度の神経障害、軸索喪失の実証、並びに様々な程度の下肢及び上肢に対する障害をもたらす(Howard et al.,J.Peripher Nerv Syst.2021;26:177-83)。5人の患者は、ヘテロ接合c.306del;p.Asp104fs変異を有し、1人の患者は、MPZのc.204C>A;p.Tyr68Ter変異を有した(Howard et al.(上記))。Howard et al.(上記)は、この群では、患者は主に大型線維性感覚神経障害を示しているが、マウスは感覚神経の関与よりも大きく運動を有するため、患者の表現型がMpz+/-マウスのものと異なることを報告した。Howardら(上記)は、これらの患者が、Mpz+/-マウスに有効であることが実証されている治療アプローチでの候補として機能し得、MPZ変異を有する患者における他の遅発性表現型を比較するモデルとしても機能し得ると仮定した。
【0151】
ノックダウン(miMPZによるAAV9媒介MPZ遺伝子サイレンシング)及びAAV9-coMPZによる遺伝子置換のインビボの有効性を検証及び試験するために、ノックダウン及び遺伝子置換療法は、MPZ遺伝子のホモ接合及びヘテロ接合変異の両方を有するヒト患者の治療のために企図される。追加的に、単独でのMPZ遺伝子置換は、これらの患者の治療のための1つの手段として企図される。
【0152】
したがって、規制当局の承認を条件として、(i)miMPZのうちのいずれか1つ以上及びcoMPZのうちのいずれかを担持するAAVベクター、(ii)coMPZのうちのいずれかを担持するAAVベクター、又は(iii)MPZ遺伝子若しくはその機能的バリアントを担持するAAVベクターが、これらのMPZ欠陥患者に投与又は送達される。いくつかの態様において、投与は、CNS中へである。いくつかの態様において、投与は、ICV又は髄腔内注射のいずれかを介する。いくつかの態様において、投与は、坐骨神経への直接注射によるものである。
【0153】
ヘテロ接合MPZ機能喪失(LOF)変異は、より軽度の神経障害表現型を引き起こすが、ホモ接合MPZ LOF変異は、デジェリーヌ-ソッタス症候群(DSS)としても知られる重度の早期発症CMT1Bを引き起こす。MPZ遺伝子置換(すなわち、コドン最適化MPZ遺伝子若しくは野生型MPZ遺伝子若しくは機能的MPZ遺伝子バリアントのいずれかの送達)又はMPZノックダウン及び遺伝子置換(すなわち、miMPZとcoMPZとの送達)は、ヘテロ接合及びホモ接合LOF変異患者の両方のための治療選択肢である。
【0154】
遺伝子置換単独、並びにノックダウン及び置換療法の両方の方法は、これらの患者の治療に有用である。同様に、したがって、野生型及びコドン最適化MPZの両方を治療に使用することができる。
【0155】
本開示は特定の実施形態に関して記載されているが、変更及び修正が当業者に生じることが理解されるであろう。したがって、特許請求の範囲内に現れるような制限のみが本開示に認められるべきである。
【0156】
本出願で参照される全ての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】