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特表2024-537175回転装置で生成された熱エネルギーを使用して物質を焼却する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転装置で生成された熱エネルギーを使用して物質を焼却する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/00 20060101AFI20241003BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20241003BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F23L15/00 Z
F23G5/44 Z
F23G5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520878
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 FI2022050687
(87)【国際公開番号】W WO2023062283
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,433
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148164
【氏名又は名称】クールブルック オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ベリ マッティ プロラ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス オウニ
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
【Fターム(参考)】
3K023QA11
3K023QB10
3K065AA24
3K065AB01
3K065AC01
3K065AC02
3K065AC05
3K065AC19
3K065BA01
(57)【要約】
焼却によって有害物質及び/又は毒性物質を処分する方法であって、この方法が、少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に配置された固定ベーン集成体として形成されたステータと、を含む、方法が提供される。この方法では、当該流体媒体流が前記ガイド固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与される。この方法は、焼却設備として形成され且つ約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却により有害物質及び/又は毒性物質を処分することに関連する焼却プロセスを実施するようにさらに形成された焼却プロセス設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込み、そして焼却プロセス設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギー量を導き、投入エネルギーが電気エネルギーを含む、ことをさらに含む。回転装置及び関連する使用がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却による物質の処分の方法であって、前記方法が、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、
前記方法が、
- 前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、
- 前記焼却生産設備内へ、少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、及び
- 約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように、前記少なくとも1つの回転装置及び前記焼却設備を操作すること、
をさらに含む、焼却による物質の処分の方法。
【請求項2】
前焼却設備内で、前記少なくとも1つの回転装置が、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように形成された少なくとも1つの焼却ユニットに接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼却設備内部の前記少なくとも1つの焼却ユニット内へ、少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを供給することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの焼却ユニットが、焼却炉、炉、オーブン、キルン、バーナ、加熱器、乾燥器、コンベア装置、反応器、又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成る、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度、好ましくは約1200℃に本質的に等しい温度、又は約1200℃を超える温度、さらに好ましくは約1500℃に本質的に等しい温度、又は約1500℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記ロータブレードと、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記回転装置内で、前記ディフューザ領域が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記付加的な加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の温度への前記流体媒体の予熱が、前記回転装置内で実施される、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記焼却設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって前記加熱された流体媒体を生成し、前記少なくとも2つの回転装置が並列又は直列に接続されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成することを含み、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、前記連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度に予熱される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、順番で前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記焼却プロセス中へ、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入することを含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、有害ガス及び/又は毒性ガスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、揮発性有機化合物(VOC)、有害大気汚染物質(HAP)、臭気ガス、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含有するガスである、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、空気、蒸気(HO)、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、前記焼却設備内の焼却プロセス中に生成された排ガスからリサイクルされたリサイクルガスである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記回転装置の外部で、加熱された流体媒体、例えばガス、蒸気、液体、及びこれらの混合物、及び/又は加熱された固形材料を生成することを、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する上述の物質のいずれか1つとの間の熱伝達プロセスを通して行うことをさらに含む、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記焼却設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記焼却設備内へ組み込まれることにより、前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記焼却設備のエネルギー効率が改善され、且つ/又は前記焼却設備内の温室効果ガス排出量及び粒子排出量が低減される、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
焼却設備であって、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、焼却に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの焼却ユニットとを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、前記少なくとも1つの回転装置が形成されており、そして
前記少なくとも1つの回転装置が、電気エネルギーを含む投入エネルギーの量を受容するように、そして少なくとも1つの焼却ユニット内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成されており、前記焼却ユニットが、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように形成されている、
焼却設備。
【請求項33】
前記少なくとも1つの焼却ユニットが、焼却炉、炉、オーブン、キルン、バーナ、加熱器、乾燥器、コンベア装置、反応器、又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成る、請求項32に記載の焼却設備。
【請求項34】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む、請求項32に記載の焼却設備。
【請求項35】
前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む、請求項32に記載の焼却設備。
【請求項36】
前記回転装置が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成された前記ディフューザ領域を含む、請求項32に記載の焼却設備。
【請求項37】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるようにさらに形成されている、請求項32に記載の焼却設備。
【請求項38】
前記少なくとも2つの回転装置が集成体を成すように配置され、そして並列又は直列に接続されている、請求項32から37のいずれか1項に記載の焼却設備。
【請求項39】
熱酸化プロセスを介して廃ガスの焼却を実施するように形成されている、請求項32から38のいずれか1項に記載の焼却設備。
【請求項40】
焼却設備であって、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法を通した焼却によって、有害物質及び/又は毒性物質を処分するためのプロセスを実施するように形成されている、焼却設備。
【請求項41】
焼却によって有害物質及び/又は毒性物質を処分するための、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法、及び/又は請求項32から38のいずれか1項に記載の設備の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言えば、流体中へ熱エネルギー(熱)を投入するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、高い温度及び極めて高い温度で実施される焼却による有毒物質及び/又は毒性物質の処分に関連する産業プロセスにおいて、エネルギー効率を最適化し、そして温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減するツール及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
業界及び政府は、温室効果ガス(GHG)排出量を著しく低減するための技術を見出そうと闘っている。揮発性有機化合物(VOC)、及び有害大気汚染物質(HAP)の大気中への放出は、重大な環境問題である。なぜならば、これらのいくつかのものには、光化学オゾン生成ポテンシャル(POCP)、オゾン層破壊ポテンシャル(ODP)、地球温暖化ポテンシャル(GWP)、毒性、発がん性、及び局地的な臭気公害、のおそれがあるからである。VOCが大気中へ制御されない状態で放出される結果、VOCは温室効果ガスとして作用することがある。したがって、VOC放出を防止することは、基幹産業プロセスの動作に直面する最も重要な課題の1つと考えられる。
【0003】
一例としては油精製及び石油化学、天然ガスの処理、バイオガスの処理、化学処理、食品及び飲料の処理、鉱業、塗料/スプレーの生産、医薬品産業及び医療デバイス製造、及び土壌及び地下水の修復、を含むほとんどいかなる産業設備によっても、廃ガスが生産される。これらの産業において、廃棄物流の処分及び/又は空気品質管理のために、焼却が用いられることがある。
【0004】
焼却は、産業用ガス流、種々の液体、固体、及びこれらの混合物を含む事実上あらゆる廃棄物を処分する最もよく知られた方法の1つである。産業用空気流からのガス状汚染物質、例えばVOC及びHAPは、典型的にはサーマルオキシダイザとも呼ばれる熱焼却炉内で破壊される。これらの汚染物質は一般には炭化水素系であり、有機化合物の複合混合物から成っていることがある。ときには汚染物質は、水素及び炭素に加えて、種々のイオウ(S)含有化合物、及び窒素(N)含有化合物を含むことがある。熱的燃焼を介して破壊されると、汚染物質は化学的に酸化されることにより、二酸化炭素と水とを形成する。炭素、水素、酸素、そしていくつかの事例では窒素及びイオウをも含有する有機化合物のこのような混合物の燃焼は、等式1A及び1Bに基づく全発熱反応によって記述することができる:
【0005】
二酸化炭素及び水に加えて、サーマルオキシダイザから生じた排ガスは、窒素酸化物、酸性ガス、微量金属、及び廃棄物中に存在する化合物の燃焼から、又は補足燃料の燃焼から生成された他の有害大気汚染物質を含有することもある。スクラバ、又はこれらの化合物を除去するための同様の機器を焼却炉/オキシダイザに後置すると、廃棄物流を制御するための、コスト効率のよい、そして環境的に有益なアプローチを提供し得るものの、このことは、焼却炉システムの据え付けコスト及び操作コストを大幅に高くしてしまう。
【0006】
主なタイプのサーマルオキシダイザは、直接火炎/直接燃焼型サーマルオキシダイザ(アフターバーナ)、触媒型サーマルオキシダイザ(CTO)、再生型サーマルオキシダイザ(RTO)、及び回収型オキシダイザを含む。効果的なサーマルオキシダイザを設計する上で考慮されるべきファクタは、オキシダイザ内部(燃焼チャンバ内)の温度、滞留時間、及び乱流を含む。温度は、廃ガス中の有機化合物に点火するのに十分に高くなければならない。燃焼させられるべき排気物質の性質に応じて、サーマルオキシダイザは590~1200℃の範囲内の温度で動作する。滞留時間(廃棄物流が燃焼チャンバ内で費やす時間)は、燃焼反応が発生するのに十分なものでなければならない。この滞留時間は典型的には廃ガスのタイプに応じて0.2~1秒である。乱流は、廃ガスの完全燃焼を達成するために、酸素と廃ガスとを混合するのに必要とされる適切な燃焼空気流量を定義する。
【0007】
コンベンショナルなサーマルオキシダイザシステムが図1Cに示されている。廃ガスは、燃焼チャンバとして設けられた焼却炉101内で燃焼させられる。焼却炉内では、火炎は(最も単純な直接燃焼型システムの場合)補助燃料(Qaf)、廃ガス、及び必要なときに添加される補足空気(Qa)の組み合わせによって維持される。多くの場合、廃ガス流中の総有機物(VOC及びその他)の燃焼によって放出されたエネルギーは、それ自体の温度を所期レベルまで上昇させるのに十分ではない。これらの事例では、温度を上昇させるために、補助燃料(例えば天然ガス)を添加しなければならない(図1C、Qaf参照)。符号「Q」は、生産された、且つ/又はプロセス中に投入された熱エネルギー(熱)を示す。火炎を通過すると、廃ガスはその入口温度(Qwi)から点火温度(点火温度は廃棄物の性質に依存する)まで加熱される。廃ガス予熱器102、及び(ここでは二次エネルギー回収熱交換器として形成された)熱回収装置104が、焼却設備内に設けられたエネルギー回収装置である。いくつかの実施態様では、熱回収装置は焼却炉/燃焼チャンバの一部を形成しない(燃焼チャンバは、(廃)物質の点火及び燃焼が発生するチャンバとして定義される)が、しかし、数多くの産業用サーマルオキシダイザは、廃ガスを予熱するために焼却炉内へ組み込まれた予熱器(102)を少なくとも有している。第1熱交換器102の入口及び出口における排ガス(煙道ガス)が、相応にfi及びfoで示されている。
【0008】
廃水焼却は、有機及び無機の廃水汚染物質を空気で酸化させ、そして典型的には大気圧に近い圧力、及び730℃~1200℃の温度で、水部分を同時に加熱且つ/又は蒸発させるプロセスである。焼却は、コンベンショナルな廃水処理プラントへ送ることができない種々の毒性廃水流を含む化学多品種製品プラントからの廃水を処理するための効果的な経路である。廃水は、産業又は自治体を起源とするか、任意の他のものを起源とすることができる。
【0009】
固形廃棄物焼却炉は、固形廃棄物を原料として受容する以外は、ガス状廃棄物オキシダイザと同様に動作する。焼却されると、固形廃棄物材料は、灰、煙道ガス、及び熱に変換される。灰は大部分が廃棄物の無機成分によって形成され、そして煙道ガスによって運ばれた固形塊又は粒子の形態を成すことがある。煙道ガスからは、これらが大気中へ分散される前にガス状及び粒子状の汚染物質を除去しなければならない。固形廃棄物焼却炉の種々異なる設計が認識されており、これらはすべて、(固形)廃棄物材料を燃焼させ、VOC及びHAPを破壊する。これらの設計は、火格子式焼却炉(固定型又は可動式)、回転キルン、多段焼却炉、流動床焼却炉、制御式空気焼却炉、及び過剰空気焼却炉を含む。
【0010】
焼却炉及びオキシダイザは、現場で組み立てなければならない小型、プレハブ式、モジュール式の設計、又は大型のユニットであってよい。より大型のユニット、具体的には一般廃棄物を燃焼させるために使用されるユニットのいくつかは、熱回収システムを含む。熱回収システムは、蒸気及び/又は電気の生産のために使用することができる。したがって、直接火炎型焼却炉は、回復熱交換器、又は高エネルギー回収を達成するためにサイクリックモードで動作する再生システムを含んでよい。周知の触媒型焼却炉システムは、固定床(充填床又はモノリス)システムと流動床システムとを含む。これら双方がエネルギー回収を可能にする。
【0011】
これらのプロセスの電化は排出量を低減するための解決手段と見られている。電化の障害の1つは、焼却プロセスにおいて必要とされる高い温度への到達であった。一例としては、典型的にはガス状汚染物質、例えばVOCの破壊のために利用される熱焼却炉は、590~650℃の範囲内の温度で動作する。この温度範囲では、有機化合物のほとんどが発火する。有害ガス状廃棄物用焼却炉は、980~1200℃のより高い範囲で動作する。入口の廃ガス温度(図1CのQwi参照)は概ね燃焼に必要なものよりも大幅に低いので、廃ガスを予熱し、そして燃焼条件を安定に維持するために、付加的な熱エネルギーを焼却炉へ供給しなければならない。しかしながら、廃棄物燃焼プロセス中に放出されるエネルギー量は、プロセス温度を所期レベルに維持するにはしばしば不十分である。これらの事例では、空気及び燃料(例えば天然ガス)を焼却炉内へ連続的に送達する(図1CのそれぞれQa及びQaf参照)ことにより、付加的な熱が典型的には提供される。焼却炉内への付加的な空気及び燃料の供給は、酸素に欠けた有機廃ガスを燃焼させるためにも必要となる。このことは、化学プラント(例えばプロセス通気ライン)を起源とするVOC含有産業用廃ガスに当てはまる。他方において、産業用脱臭システム内で処理されるVOC含有ガスの大部分は、空気中の可燃性ガスの希釈混合物であり、したがって、これらの酸素含有率は、廃棄有機物及び支援燃料の両方を燃焼させるために必要とされるものを上回るが、しかしこれらの発熱量は低い。触媒システムはまた、支援燃料の利用を必要とするものの、これらは、(非触媒型)サーマルオキシダイザと比較して低い温度で動作する。しかし、VOC又は他の廃棄物が化石燃料を使用して焼却炉内で破壊されると、VOC中の炭素及び化石燃料中の炭素の両方がCO排出に関与する。サーマルオキシダイザはNO排出源でもある。NO排出量を最小化する上で、低い動作温度及び均一な温度プロフィールが、考慮するべき重要なファクタである。
【0012】
高温プロセス要件及び厳格な環境規制への遵守の必要性は、利用される技術及びエネルギー源に関連して焼却設備に深刻な負担を課す。電気はいくつかの高温産業プロセスにおいて使用されてはいるものの、既存の焼却技術及び現在の経済状況はそのようにする位置にはない。
【0013】
加熱を目的として、いくつかの回転解決手段が提案されている。米国特許第11,098,725号明細書(Sanger他)に開示された液体力学的加熱器ポンプ装置は、加熱された流体及び/又は加圧された流体の流れを選択的に生成するために動作可能である。前述の液体動圧加熱器ポンプは、自動車車両の乗客コンパートメントを暖める熱を提供するために、そして他の能力、例えばウィンドウの除氷及びエンジンの冷却を可能にするために、自動車車両の冷却システム内に組み付けられるように設計されている。開示された装置は、エンジンを冷却するための加圧流体流を提供することもできる。開示された技術は摩擦に基づくものであり、また加熱されるべき流体は液体なので、提示されたデザインは、ガス空気力学の極端な乱流を伴う条件には適していない。
【0014】
米国特許第7,614,367号明細書(Frick)には、回転運動エネルギーを熱に変換することにより、流体を無炎加熱し、濃縮し、又は蒸発させるシステム及び方法が開示されている。流体加熱のために形成されたシステムは、回転運動エネルギー発生器と、回転加熱装置と、一次熱交換器とを、すべて閉ループ流体連通した形で含んでよい。回転加熱装置は水ブレーキ動力計であってよい。前記明細書は海洋掘削又は採油プラットフォームにおいて水を加熱するためのシステムの使用を開示している。しかしながら、提示されたシステムは、ガス状の媒体を加熱するのには適しておらず、また、高い温度及び極めて高い温度との使用には(液体安定性、蒸気圧などに基づき)実現し得ない。
【0015】
加えて、いくつかの回転ターボ機械型装置も、炭化水素(蒸気)クラッキングのプロセスを実施することで知られており、目標製品、例えばエチレン及びプロピレンの収率を最大化することを目的としている。
【0016】
これに関して、効率的な加熱システム、具体的には高い温度及び極めて高い温度に関連する用途に適したシステムを設計し製造することに関連する技術分野のアップデートが、流体物質の上昇する温度に伴う難題に効率的に且つ環境に優しく対処することに鑑みて、なおも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、関連技術の制約及び欠点から生じる問題の少なくともいくつかを解決し、又は少なくとも軽減することである。1つ又は2つ以上の目的は、本明細書中に記載された、加熱された流体媒体を生成するための方法、回転装置、及び本明細書中に定義された関連の使用の種々の実施態様によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの態様では、焼却による物質、例えば有害物質及び/又は毒性物質、又は廃棄物質の処分の方法が、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。
【発明の効果】
【0019】
一実施態様によれば、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む、焼却による物質の処分の方法が、エネルギー効率を改善するか、又は温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減し、あるいはこれら両方をもたらす。
【0020】
一実施態様では、焼却による物質の処分の方法は、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、前記方法が、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、前記焼却設備内へ、少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、及び約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように、前記少なくとも1つの回転装置及び前記焼却設備を操作すること、をさらに含む。
【0021】
別の態様では、焼却に関連するプロセス中に流体媒体中に熱エネルギーを投入する方法が提供される。
【0022】
一実施態様では、方法が、焼却設備内の焼却に関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入することを含み、前記方法が、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記方法が、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却することに関連するプロセスを実施するように形成された焼却設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込み、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導き、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、そして当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、をさらに含む。
【0023】
一実施態様では、前記方法は、前記焼却設備内部で、少なくとも1つの焼却ユニットに動作接続された前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含み、前記少なくとも1つの焼却ユニットが、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、前記焼却設備内部の少なくとも1つの焼却ユニット内へ供給される。実施態様では、前記少なくとも1つの焼却ユニットが、焼却炉、炉、オーブン、キルン、バーナ、加熱器、乾燥器、ボイラ、コンベア装置、反応器、又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成る。
【0024】
本明細書中に使用される「焼却炉」は、固形、半固形、液状、又はガス状の可燃性廃棄物に点火し、これらを燃焼させる装置を意味する。「炉」は本明細書中では、熱が燃焼プロセス及び/又は焼却プロセスの部分として生成又は添加される装置に関連して使用される。「バーナ」は、本明細書中では、燃焼させるべき材料に点火するために、且つ/又は支援燃料ガス及び/又は空気を混合するために、焼却炉燃焼チャンバ内に設けられた装置に関連して使用される。本明細書中に使用される「バーナ」は焼却炉又は炉の一部である。
【0025】
一実施態様では、前記方法は、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、又は約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、又は約1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む。
【0026】
実施態様では、前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む。
【0027】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される。
【0028】
一実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。前記ディフューザ領域は、固定ベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。
【0029】
一実施態様では、前記方法において、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される。
【0030】
実施態様では、前記方法は、前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記付加的な加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む。実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記方法において、所定の温度への流体媒体流の予熱が、回転装置内で実施される。
【0031】
一実施態様では、前記方法が、焼却設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することをさらに含み、前記少なくとも2つの回転装置が、並列又は直列に接続されている。実施態様では、前記方法が、連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される。実施態様では、連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度に予熱される。実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、順番で前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される。実施態様では、前記方法が、焼却プロセス中へ、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入することを含む。
【0032】
一実施態様では、前記方法において、前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である。
【0033】
一実施態様では、前記方法は、前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む。実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が有害ガス及び/又は毒性ガスである。実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、揮発性有機化合物(VOC)、有害大気汚染物質(HAP)、臭気ガス、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含有するガスである。実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、一例としては油精製及び石油化学、天然ガスの処理、バイオガスの処理、化学処理、食品及び飲料の処理、鉱業、塗料/スプレーの生産、医薬品産業及び医療の廃棄物及びデバイス製造、土壌及び地下水の修復、又はこれらの任意の組み合わせを含む、任意の産業設備に由来する廃ガスを含み、又はこれから成る。実施態様では、前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が不活性ガス、例えば窒素(N)、又は空気を含む。いくつかの形態では、前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、空気、蒸気(HO)、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含む。
【0034】
実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、前記焼却設備内の焼却プロセス中に生成された排ガスからリサイクルされたリサイクルガスである。
【0035】
実施態様では、前記方法は、前記回転装置の外部で、前記加熱された流体媒体、例えばガス、蒸気、液体、及びこれらの混合物、及び/又は加熱された固形材料を生成することを、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する上述の物質のいずれか1つとの間の熱伝達プロセスを通して行うことをさらに含む。いくつかの実施態様では、前記回転装置内で生成された、加熱された流体媒体、例えばガスは、焼却ユニット/プロセス中へ供給される固形材料のための燃焼媒体として使用される。
【0036】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体が、前記焼却設備内部の少なくとも1つの焼却ユニット内へさらに供給され、前記少なくとも1つの焼却ユニットが、焼却炉、炉、オーブン、キルン、バーナ、加熱器、乾燥器、ボイラ、コンベア装置、反応器、又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成る。
【0037】
実施態様では、前記方法は、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む。
【0038】
実施態様では、前記方法において、焼却設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある。実施態様では、前記方法において、前記焼却設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる。実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記焼却設備内へ組み込まれることにより、前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される。
【0039】
別の態様では、焼却設備が提供され、前記焼却設備が、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、焼却に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの焼却ユニットとを含む。
【0040】
一実施態様では、前記焼却設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、前記高温材料生産装置内へ組み込まれ、そして少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与されるように、前記少なくとも1つの回転装置が動作するように形成されており、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、そして前記少なくとも1つの回転装置が、電気エネルギーを含む投入エネルギーの量を受容するように、そして少なくとも1つの動作ユニット内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成されており、前記動作ユニットが、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセスを実施するように形成されている。
【0041】
実施態様では、前記焼却設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの焼却ユニットに接続されており、前記焼却ユニットが、焼却炉、炉、オーブン、キルン、バーナ、加熱器、乾燥器、コンベア装置、反応器、又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成る。
【0042】
実施態様では、前記焼却生産設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む。1つの実施態様では、前記少なくとも1つのロータブレード列の上流側で集成体を成すように配置された固定ベーンが、固定ガイドベーンとして形成されている。1つの実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。前記ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。いくつかの形態では、ベーン付きディフューザは、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側で集成体を成すように配置された複数の固定ベーンとして実現されていてよい。
【0043】
一実施態様では、前記焼却設備内部に設けられた前記少なくとも1つの回転装置が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるようにさらに形成されている。
【0044】
いくつかの形態では、前記焼却設備内部に設けられた少なくとも1つの回転装置は、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に半径方向の軌道、及び左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成される。
【0045】
一実施態様では、前記焼却設備が少なくとも2つの回転装置を含み、前記少なくとも2つの回転装置が集成体を成すように配置され、並列又は直列に接続されている。
【0046】
実施態様では、焼却設備が、熱酸化プロセスを介して廃ガスの焼却を実施するように形成されている。
【0047】
さらなる態様では、集成体が設けられており、そして前記集成体が、何らかの前の態様に基づく少なくとも2つの回転装置を含み、前記回転装置が並列又は直列に接続されている。
【0048】
さらなる態様では、配列が提供され、そして前記配列は、何らかの前の態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含み、前記少なくとも1つの回転装置は、焼却設備内部の少なくとも1つの焼却ユニットに接続されている。
【0049】
さらなる態様では、焼却設備が提供されており、前記焼却設備は、前に定義されたいくつかの態様及び実施態様に基づく方法を通して、焼却プロセスを実施するように形成されており、そして前記焼却設備は何らかの前の態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含む。さらなる態様において、焼却設備が提供されており、前記焼却設備は、前に定義されたいくつかの態様及び実施態様に基づく方法を通して、焼却によって、有害物質及び/又は毒性物質を処分するためのプロセスを実施するように形成されている。1つの態様では、前に定義されたいくつかの態様及び実施態様に基づく方法及び/又は設備が、焼却により有害物質及び/又は毒性物質を処分する際に用いられる。
【0050】
本発明の有用性は、本発明のそれぞれの具体的な実施態様に応じた種々の理由から生じる。
【0051】
全体的に見て、実施態様は、燃料燃焼型加熱器の代わりに、焼却プロセスに使用されるべき、高温の流体、例えばガスを提供するための電化された回転流体加熱器を提供する。提示された方法は、熱消費ユーティリティ、例えば焼却設備内で使用される炉内へ熱エネルギーを投入し、そして高い温度及び極めて高い温度、例えば概ね500℃を超える温度で動作することを可能にする。本発明は、約500℃以上~約1500℃の範囲内の温度、およびそれを超えて約2000℃まで、すなわち種々の廃棄材料の焼却/燃焼に際して用いられる温度まで流体物質を加熱するための装置及び方法を提供する。
【0052】
焼却炉内の種々の物質の燃焼は、熱エネルギーに対して、ひいては熱消費に対して高い需要を有するユーティリティ、例えば燃料燃焼型バーナを典型的には採用する。前記熱消費ユーティリティを使用して、燃焼プロセスのために必要とされる温度に流体を加熱する。ここに提示された本発明は、コンベンショナルな熱消費ユーティリティ、例えば燃料燃焼型バーナの代わりに回転装置を使用することを可能にする。方法において、燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することに伴う利点は、少なくとも、
- 電化加熱を支援すること、
- 温室効果ガス(例えばNO、CO、CO、NO)、燃料に由来する他の有害成分(例えばHCl、HS、SO、及び重金属)、粒子排出量及び煤煙排出量を排除するか、又は少なくとも著しく低減すること、
- 加熱器の体積が低減され、すなわち回転装置の体積が、コンベンショナルな処理加熱器又は熱交換器と比較して少なくとも1桁小さくなり得ること、
- 投資コストが減少すること、
- 引火性の有害な流体/ガスを使用する場合の安全性が改善されること、
- 大量のガスの取り扱いが実現可能であること、
- 圧力降下が存在しないこと、
- ガスの圧縮(ブロワ機能)のためにも回転(加熱器)装置を使用することが可能であること、
- ガスの直接加熱に際しての温度差に依存していないこと。回転装置内の温度上昇は、約10~1700℃以上であり得ること、
- 任意には熱交換器内の温度差を最適化することにより、流体の間接加熱に際して回転装置を使用することが可能であること、
- 高温プロセスガスの少なくとも部分的なリサイクルが可能であり、ひいては熱回収を改善してよりシンプルにし、そしてエネルギー効率を改善すること、
- 発熱反応によりガス温度を例えば2000℃以上までさらに高める反応性化学物質を添加することによって、加熱されるべきガスの温度をさらに上昇させることが可能である、
ことを含む。
【0053】
実施態様では、回転装置は、焼却プロセスに際してコンベンショナルな燃料燃焼型加熱器又はバーナの代わりに使用することができる。伝統的には、このような熱は主として、顕著なCO排出量を招く化石燃料の燃焼を通して生産されている。化石燃料の代わりに、木材又は他のバイオベースの材料を使用することには、顕著な資源限界があり、また環境への他の顕著な影響、例えば持続可能な土地利用と関連する影響がある。再生可能電気のコスト効率が高められるのにともなって、つまり風力圧電及び太陽光発電の急速な開発にともなって、化石燃料燃焼の代わりに、再生可能電気によって給電される回転装置を使用することが可能である。これは温室効果ガス排出を著しく低減することになる。回転装置は、流体を最大1700℃以上の温度に電化加熱することを可能にする。このような温度は、現行の電気加熱を用いることによって到達するのは困難又は不可能である。
【0054】
回転装置は、プロセスガス(廃ガス)、不活性ガス、空気、又は任意のその他のガスを直接加熱するために、又はプロセス流体(液体、蒸気、ガス、蒸気/液体混合物など)を間接加熱するために使用することができる。回転装置は、焼却の際に(廃棄)物質、例えば固体及び/又は液体の燃焼から生成された排ガスからリサイクルされたリサイクルガスを直接加熱するために使用することができる。前記回転装置内で生成された、加熱された流体は、ガス、蒸気、液体、及び固形材料のうちのいずれか1つを加熱するために使用することができる。回転装置は、焼却に際して使用される焼却炉装置又は燃焼炉を含む、固形、液状、又はガス状の化石燃料、いくつかの事例ではバイオベースの燃料で伝統的に燃焼又は加熱される(例えば予熱器としての)多数のタイプの炉、加熱器、キルン、ガス化器、及び反応器と少なくとも部分的に置き換えることができ、あるいはこれらと組み合わせることもできる。このようなアプライアンスの一例としては、焼却炉、バーナ、(燃焼)炉、オーブン、加熱器、乾燥器、コンベア装置、反応器、及びこれらの組み合わせが挙げられる。加熱されたガスは引火性、反応性、又は不活性であってよく、そしてリサイクルして回転装置へ戻すことができる。加熱に加えて、回転装置は複合ブロワ-加熱器として作用してよく、圧力を高め、そしてガスをリサイクルするのを可能にする。
【0055】
加熱された流体、例えばガスを種々の用途に使用することができる。加熱された物体は、固形材料、液体又はガスであり得る。ガスは数多くの反応にさらに参加し、又は加熱媒体として使用される。したがって、焼却プラントにおけるように固形材料を加熱するために、高温ガスを使用することができる。
【0056】
回転装置を焼却設備内へ組み込むことにより、燃焼プロセス中へ補助燃料を導く必要が完全又は部分的になくなる。もちろん、このことは煙道ガス排出量の低減を可能にする。したがって、本発明は温室効果ガス排出量(CO、CO、NO)及び粒子排出量の低減を可能にする。回転装置を使用することにより、プロセスのための閉加熱ループ又は準閉加熱ループを形成すること、そして煙道ガスを通した熱損失を低減することにより、これらのプロセスのエネルギー効率をさらに改善することもできる。コンベンショナルな加熱器内では、煙道ガスを部分的にしかリサイクルすることができない。
【0057】
加えて、本解決手段は、間接加熱に際して熱交換器内の温度差の改善された最適化を可能にする。
【0058】
焼却設備内へ組み込まれた回転装置は、高度な乱流をさらに提供し、ひいては廃ガスの完全な混合を可能にする。補足酸素(空気)又は支援燃料ガスを回転装置内へ注入することもできる。回転装置内で加熱された流体媒体の温度プロフィールは均一であり、すなわちコンベンショナルなバーナの場合に直面するような温度ピークが出現しない。均一な温度プロフィールが、NO及びCO/COの排出物形成を著しく低減するのを可能にする。
【0059】
本発明は、電気エネルギー、例えば再生可能源から得られる電気エネルギーをフレキシブルに使用することをさらに可能にする。再生可能エネルギーの生産量は日を単位として、そしてさらに時間を単位として変化する。本発明は、焼却プロセスに熱を提供するために、ここに開示された回転装置をコンベンショナルな燃料動作型(燃料燃焼型)バーナと一体化することにより、再生可能電気生産量のバランスをとることを可能にする。
【0060】
本発明はさらに、伝統的な化石燃焼炉と比較して、現場投資コストの低減を可能にする。
【0061】
「ガス化」という用語はここでは、任意の可能な手段により物質がガス状形態へ変換されることを示すために用いられる。
【0062】
「いくつかの(a number of)」という表現は、本明細書中では1から出発して例えば1、2、又は3までの任意の正の整数を意味する。「複数の(a plurality of)」という用語は、本明細書中では2から出発して例えば2、3、又は4までの任意の正の整数を意味する。「第1」及び「第2」という用語は、別段の明示がない限り、いかなる順番又は重要性をも示すことなしに、1つのエレメントを別のエレメントから区別するだけのために使用される。
【0063】
詳細な説明及び添付の図面を考察することにより、本発明の種々異なる実施態様が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1A図1Aは、実施態様に基づく方法を実施するように形成された焼却設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。
図1B図1Bは、実施態様に基づく方法を実施するように形成された焼却設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。
図1C図1Cは、コンベンショナルな焼却システムを示す図である。
図2A図2Aは、実施態様に基づく、水素生産設備内部の回転装置100の模範的レイアウトを示す図である。
図2B図2Bは、実施態様に基づく、水素生産設備内部の回転装置100の模範的レイアウトを示す図である。
図2C図2Cは、実施態様に基づく、水素生産設備内部の回転装置100の模範的レイアウトを示す図である。
図2D図2Dは、実施態様に基づく、水素生産設備内部の回転装置100の模範的レイアウトを示す図である。
図3図3は、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の詳細な実施態様が、添付の図面に関連してここに開示される。
【0066】
図1A及び1Bは、実施態様に基づく方法を実施するように形成された高温焼却設備のレイアウトを、符号1000で示すブロックダイアグラムである。図1Aはガス状又は液状供給物を焼却するための模範的レイアウトであり、図1Bは、任意には酸素含有廃ガスと組み合わされた固形又は液状供給物を焼却するための模範的レイアウトである。図2A~2D及び図3は、実施態様に基づく装置及び方法を記述する。図面及び関連する実施例は、例示を目的としたものであり、本発明の概念の適用可能性を、本開示において明示されたレイアウトに限定しようと意図するものではない。破線で示されたブロックダイアグラム区分は任意である。
【0067】
プロセス設備1000は、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で焼却プロセス101を実施するように形成された設備である。本開示において、「焼却」及び「酸化」という用語は大まかに言えば、廃棄材料中の有機物質の熱処理を意味する。「焼却」という用語は大まかに言えば、固形廃棄物及び液状廃棄物、例えば有害廃棄物、医療廃棄物、一般廃棄物、又は下水廃棄物の燃焼プロセスを記述するために使用される。揮発性有機化合物(VOC)、有害大気汚染物質(HAP)、臭気ガスを含有するガス状廃棄物流に関連して、「焼却」及び「酸化」、並びに「焼却炉」及び「オキシダイザ」という用語は本開示では互いに置き換え可能に使用され、そして大まかに言えば、サーマルオキシダイザ及び/又は触媒オキシダイザを含む。
【0068】
設備1000は、産業プラント、工場、又は物質の焼却、具体的には排気物質の焼却を実施するように設計された機器を含む任意の産業システムで代表することができる。設備1000は、外部産業設備から収集された物質を焼却によって処分するように形成することができる。設備1000は、有害物質及び/又は毒性物質を焼却するように形成することができる。これに加えて又はこの代わりに、設備1000は、廃棄物質及び/又はいわゆる臭気化合物(主に、典型的にはクラフトパルププロセスに由来するガス中に含有されるイオウ含有化合物)を焼却するように形成されてもよい。いくつかの事例では、焼却は、熱酸化及び/又は触媒酸化のプロセスを介して行われてよい。
【0069】
実施態様では、設備1000は、500~1700℃の範囲内の温度で産業用焼却プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約800~900℃以上の範囲内の温度で開始する産業用焼却プロセスを実施するように形成されている。
【0070】
実施態様では、設備1000は、本質的に1000℃に等しい、又は1000℃を超える温度で、高温材料生産に関連する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約1100~1200℃以上の範囲内の温度で開始する、高温材料生産に関連する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1200℃に等しい、又は1200℃を超える温度で、高温材料生産に関連する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に約1300~1700℃以上の範囲内の温度で、高温材料生産に関連する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1500℃に等しい、又は1500℃を超える温度で、産業用焼却プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1700℃に等しい、又は1700℃を超える温度で、産業用焼却プロセスを実施するように形成されている。なお指摘しておくが、設備1000は、500℃未満の温度、及び1700℃を上回る温度、例えば約2000℃までの温度で産業用焼却プロセスの少なくとも一部を実施することから排除されない。
【0071】
さらなる説明は、特に明記しない限り、図1A及び1Bに示された符号を利用する。焼却プロセスユニット/ユーティリティと呼ばれる、設備1000内部の前記プロセスを実施するように形成された焼却に関連するプロセス、及び相応する動作ユニットは、集合的に符号101によって示される。設備1000は、焼却に関連する同じ又は異なるプロセスを実施するように形成されたいくつかの動作ユニット101を含んでよい。いくつかの実施態様では、動作ユニット101は、焼却に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの装置を含み、又は装置から成る。実施態様では、ユニット101は、廃棄物流の焼却を実施するように形成された熱焼却炉/サーマルオキシダイザである。回収ユニット101は、一例としては直接燃焼型サーマルオキシダイザ、触媒型サーマルオキシダイザ、再生型サーマルオキシダイザ、及び回収型オキシダイザを含む、任意の可能な形態を採用してよい。実施態様では、ユニット101は、任意の適宜のタイプの燃焼炉/燃焼チャンバを含み、又はこれから成る。付加的な又は代替的な実施態様では、動作ユニット101は、キルン、反応器、炉、又は熱生産に際して使用される支援燃料として廃ガス及び/又は任意の有害/毒性ガスを受容するように形成された任意の他の熱消費装置を含んでもよく、又はこれから成っていてもよい。焼却プロセスを通した材料の燃焼は、熱エネルギーの需要及び消費量が高く、そしてコンベンショナルな解決手段においては、大気中への大量の産業排出物、例えば二酸化炭素を生み出している。本開示は、高い熱エネルギー需要を有する焼却プロセス101中へ熱エネルギーを投入するための装置及び方法を提供する。これにより前記プロセスのエネルギー効率を著しく改善することができ、且つ/又は大気中へ放出される空気汚染物質の量を低減することができる。レイアウト1000(図1)は、改善されたこれらの設備及び方法を概略的に示している。
【0072】
実施態様では、方法は、少なくとも1つの回転装置(以後、装置100)を含む又はこれから成る回転加熱器ユニット100によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。明確にするために、回転加熱器ユニットは、回転装置と同じ符号100によって、本開示において示されている。回転加熱器ユニットは好ましくは、プロセス設備1000内へ組み込まれている。実施態様では、加熱された流体媒体は、少なくとも1つの回転装置によって生産されるものの、複数の回転装置が並列又は直列に使用されてよい。
【0073】
回転装置100は独立型の装置として、又は直列に(連続して)又は並列に配置されたいくつかの装置として提供することができる。1つ又は2つ以上の装置が、共通の動作ユニット101、例えば焼却ユニットに接続されてよい。接続は直接に、又はいくつかの熱交換器を通して行われてよい。
【0074】
動作ユニット101は、1つ又は2つ以上の焼却炉、燃焼炉、又は物質の焼却に関連するプロセスを実施するように構成された又他のユーティリティとして提供される。いくつかの他の形態では、符号100内で加熱された流体、例えばガスの熱エネルギーが、ユニット101内でプロセスを実施するために用いられる。このような事例では、符号100内で加熱された流体は、符号101のプロセス流体を少なくとも部分的に形成する。いくつかの他の形態では、符号100内で加熱された流体はその熱エネルギーを、キルン、反応器、炉、又は任意の他の熱消費装置(ここでは符号101で示される)で使用されるプロセス流体へ転移することにより、反応熱を前記プロセスへ間接的に提供する。間接加熱の場合には、符号100内で加熱された流体は、動作ユニット/プロセス101内で使用されるプロセス流体とは異なる。例えば、流体媒体、例えば回転装置100内で生成された空気又は窒素ガスの熱エネルギーは、廃ガス及び/又は任意の有害/毒性ガスの処分のために構成された産業キルン又は炉(101)内の燃料燃焼型バーナによって生成される熱エネルギーに完全又は部分的に取って代わることができる。本発明の目的上、「プロセス流体」、「プロセス流」、又は「プロセス流体流」という用語は、ガス、液体、蒸気、ペレット状、顆粒状、又は粉末状の材料を含む固体、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つを示すために使用される。前記間接加熱を伴う形態では、回転装置100内の流体中へ加えられる熱エネルギーは、いわゆる「熱交換器」タイプの形態の使用を通して、動作ユニット/プロセス101へ転移されてよい。「熱交換器」タイプの形態は、この文脈では、任意の既存の燃焼型加熱器、炉、又は反応器、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置で代表される。これらすべての装置は熱消費ユニット101とみなされる。
【0075】
焼却のために構成されたプロセスユニット/ユーティリティ101は、典型的には1つ又は2つ以上の焼却炉、オキシダイザ、及び/又は燃焼炉である。いくつかの形態では、いくつかの装置100をいくつかのプロセスユニット101に接続することができる。異なる形態、例えばn+x個の回転装置をn個のユーティリティ(例えば炉)に接続してもよい。nはゼロ以上であり、そしてxは1以上である。こうして、いくつかの形態では、設備1000、及び具体的には回転加熱器100は、共通のプロセスユニット、例えば焼却ユニットに接続された1、2、3又は4つの並列の回転装置ユニットを含んでよい。4を超える回転装置の数も排除されない。いくつかの回転装置を共通のプロセスユニットに並列接続するときには、前記装置100の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを有してよく、例えば電動モータ駆動型装置を、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される装置と組み合わせることができる。
【0076】
一実施態様では、投入エネルギー量Eは、プロセス設備1000内へ(回転)加熱器ユニットとして組み込まれた少なくとも1つの回転装置100内へ導かれる。投入エネルギーEは好ましくは電気エネルギーを含む。いくつかの実施態様では、焼却プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、約5~約100パーセントの範囲内、好ましくは約50~約100パーセントの範囲内で提供される。このように、焼却プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、(総投入エネルギーから)5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100パーセントのうちのいずれか1つ、又は上記点の間に含まれる任意の中間値を占めてよい。
【0077】
電気エネルギーは外部源又は内部源から供給することができる。実際には、装置内へ供給される電気投入エネルギーE1は、電力の観点で定義することができる。後者は単位時間あたりのエネルギー転移速度(ワットで測定される)として定義される。
【0078】
図1A及び1Bの設備レイアウトで実施される本発明のいくつかの実施態様の詳細を、下記ラインに沿って説明する。図1A及び1Bに関して、以下の符号は部材のために使用される。流れ:1.供給物、2.予熱された供給物又は供給混合物、3.回転装置100によって加熱された供給物、4.焼却プロセス101から出る高温流体媒体(流出物)、5.浄化部へ導かれた流体媒体、6.排出流(燃焼生成物、例えば酸化された廃ガス)、7.熱回収部への供給物流、8.熱回収部からの高温流体流、9.焼却プロセス101内の高温流体媒体によって加熱/燃焼させられるべきプロセス流(典型的には、固体又は液体廃棄物)、10.固形残留物/灰。区分(ユニット):100.回転加熱器ユニット(回転装置)、101.焼却プロセス/ユニット、102.予熱器ユニット、104.熱回収ユニット、105.浄化ユニット。
【0079】
回転装置100は、供給流1、以後、供給物1を受容するように形成されている。全体的に見ると、供給物1は、純粋な成分又は成分の混合物として提供された任意の流体、例えば液体又はガス又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成ることができる。実施態様では、供給物1は、焼却によって処理されるべきガス状物質、例えば廃ガス(VOC、HAP、臭気ガスなど)である(図1A)。廃ガスは空気又は他の不活性ガスで希釈することができる。これに加えて又はこの代わりに、ガス状供給物1は不活性ガス、例えば空気(図1B)を含むことができる。全体的に見ると、供給物流1は不活性ガス(例えば窒素)、反応性ガス、例えば酸素、引火性ガス、例えば炭化水素、又は任意の他のガス(例えば空気)又は(水)蒸気を含んでよい。
【0080】
供給物1が本質的にガス状の形態で装置100内へ入ることが好ましい。供給物の予熱、又は液状又は本質的に液状の供給物のガス状形態への変換は、任意の予熱器ユニット102内で実施することができる。予熱器ユニットは、(予)加熱器装置又は装置群として形成されている。予熱器ユニット102内では、最初はガス状形態(例えばプロセスガス)で提供された供給物流をさらに加熱(例えば過熱)することができる。予熱器ユニット102内では、供給物1が既にガス形態になっていなければこれを蒸発させ、そして任意には過熱することができる。
【0081】
予熱器ユニット102は、流体物質に熱を提供するように形成された任意のコンベンショナルな装置/システムであってよい。いくつかの形態では、予熱器ユニット102は燃焼型加熱器(すなわち、加熱器内部に配置されたコイルを通って流れる流体供給物、例えばプロセス流体の温度を上昇させるために高温燃焼ガス(煙道ガス)を使用する直接燃焼型熱交換器)であってよい。これに加えて又はこの代わりに、予熱器ユニット102は、(例えば熱回収部から到着した高温流13から熱エネルギーを抽出することによって)焼却設備内の他のユニットによって利用可能となるエネルギーを活用するように形成することもできる。予熱器ユニット102はこのように、他の蒸気流、並びに電気、及び/又は廃熱流(図示せず)を利用するように形成することができる。
【0082】
この実施態様では(廃棄)物質を焼却する動作プロセス101及び関連の機器に応じて、回転加熱器ユニット(装置100)によって、加熱された流体媒体を生産するために使用される供給物流1は、新鮮供給物、すなわち任意の産業設備から到着した排ガス及び/又はリサイクル流を含む。したがって、供給物1は、新鮮な供給物、リサイクル(流体)流、及びこれらの混合物のうちのいずれか1種から成っていてよい。予熱された供給物を表す流れ2は、供給物1に加えて、すべてのリサイクル流、例えば熱回収区分104(図1A、1Bの流れ8参照)から、且つ/又は浄化区分105(図示せず)から到着したものを含んでよい。
【0083】
回転加熱器ユニット/回転装置100内では、温度は、焼却プロセス101によって必要とされるレベルまで、又は回転装置によって達成される最大レベルまで高められる。回転装置100によって達成された温度上昇が産業焼却プロセスにとって十分ではない場合、且つ/又は例えば流体の温度を、流体がその熱を前記プロセスへ転移したあとで再び上昇させる必要がある場合には、回転加熱器ユニット100(100A)の下流側に、「ブースタ」加熱器とさらに呼ばれる付加的な加熱器ユニット(100B、103)によって、温度をさらに高めることができる。図2Bに関する説明参照。それぞれの付加的な加熱器ユニットは、下記に基づいて実現された付加的な加熱装置を含み、又はこれから成る。
【0084】
本明細書中に記載された焼却による(廃棄)物質処分プロセスにおいて、主な熱消費源は、可燃性原料の加熱である。選択された入口流と、流出流との間に熱回収部を設けることにより、プロセスのエネルギー効率を改善することが概ね可能である。熱回収区分は図1A及び1Bに符号104で示されている。符号101の流入流中に存在し得る又は流入流に加えられ得る任意の不活性化合物とともに、燃焼生成物を含有する流出流4から回収された熱を使用して、廃棄物流1、補助空気(図示せず)、又はその両方を予熱することができる。これに加えて又はこの代わりに、符号104で回収された熱を、リサイクル流(流れ8参照)を加熱するために使用することもできる。
【0085】
熱回収は、プロセスユニット101から出たガスを収集し、これらのガスを予熱器ユニット102及び/又は回転装置100へリサイクルすることを通して準備されてよい。熱回収装置104は、少なくとも1つの熱交換装置で代表することができる。任意の適宜の技術に基づく熱交換器を利用することができる。熱回収は、熱がどこか他の場所で消費される場合、又は安全性又はその他の理由により熱を回収することができない場合、供給ガスを加熱するのに際して任意であってよい。なお、熱交換器装置を予熱ユニット102として使用することもできる。
【0086】
設備レイアウト1000では、熱回収ユニット104は、予熱器102の前及び/又は後に配置することができる。後者の形態では、熱回収ユニット104は、焼却炉101から流れる高温流出物(流れ4)から熱を回収するように配置されている。この熱は、供給物流1、例えば廃ガス供給物流、及びリサイクル流8を加熱するようにさらに利用されてよい。他方において、熱回収ユニット104が予熱器102の前に配置されている場合には、供給物1はまずユニット104へ(流れ7として)導かれ、そして次いで予熱部102へ流れ8として戻される。このような場合には、ユニット104は第1予熱器として作用する。
【0087】
焼却ユニット101から出た燃焼ガスは、浄化ユニット105(ユニット104を迂回する)へ導かれ、そして浄化後に熱回収部へ戻されてもよい(図示せず)。浄化ユニット105は、焼却プロセス101から放出された流れの浄化及び分離を実施するように形成されている。ユニット105は、流れ4、5(図1A、1B)として焼却部101から放出された排ガス中に含有される不純物及び/又は有害化合物を除去するように形成することができる。いくつかの事例では、上下ユニット105はスクラバであってよい。
【0088】
浄化ユニット105は、焼却プロセスから放出された排ガス、例えば二酸化炭素をさらなる炭素捕捉のために浄化するようにさらに構成することができる。焼却設備から流れ6(図1A、1B)として放出された排ガスは、炭素捕捉部へさらに導くことができる(図示せず)。好適な排ガス浄化法の一例としては、例えば圧力スイング吸着(PSA)、蒸留、吸収、及びこれらの方法の任意の組み合わせが挙げられる。
【0089】
焼却炉101から放出された排ガスは、窒素酸化物、酸性ガス、ハロゲン、微量金属(例えばヒ素、ベリリウム、カドミウム、クロム、ニッケル、及び水銀)、及び廃棄物中に存在する化合物の燃焼から、又は補足燃料の燃焼から生成された他の有害大気汚染物質(例えばダイオキシン及びフラン)を含有することもある。一例としては、還元剤、例えばアンモニア系及び尿素系のスクラバの使用を通して、窒素酸化物の形成を制御することができる。機械的コレクタ、湿式スクラバ、ファブリックフィルタ、及び静電集塵装置の使用を通して、微量金属を含む粒子を制御することができる。スプレー乾燥器、水スプレー、又は粒状物質制御装置との組み合わせにおける炭素の注入を用いて、ダイオキシン及びフランの形成を制御してよい。
【0090】
ハロゲン化化合物及びイオウ化合物を含有する廃棄物流の焼却から生じた排出物中に含有されたHCl、SO及び酸性ガスを除去するために、酸性ガス除去システム、例えば湿式スクラバとして、浄化ユニット105が形成されていてよい。
【0091】
これに加えて又はこの代わりに、浄化ユニット105は、二次熱回収ユニットとして形成することができる。ここでは、浄化ユニット105は、図3に示されているように、熱回収のために構成された熱交換器形態で設けられている。
【0092】
実施態様では、焼却プロセス101を実施するために必要とされる、加熱された流体媒体が、少なくとも1つの回転装置100によって生成される。焼却設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置100はこうして、焼却ユニット101及び/又は焼却設備1000内の燃料燃焼型バーナに完全又は部分的に取って代わってよい。
【0093】
一実施態様では、加熱された流体媒体は回転装置100内で生成される。ここでは前記装置を通して伝搬された流体媒体中へ、熱エネルギー量が直接に加えられる。このような形態は、廃ガス及び液体の焼却又は熱酸化において採用されてよい(図1A)。図1Aの形態は、供給物1として、ガス状物質、例えばVOC、HAP、及び/又は焼却ユニット101内で燃焼させ得る任意の他の引火性ガスを利用する。いくつかの非VOC有機化合物は、アセトン、メタン、及び塩化メチレンを含んでよい。
【0094】
VOCは大まかに言えば、揮発性とは無関係に、廃ガス中に見出される任意の非固形有機化合物と定義される。VOCという用語は、多様な物質群に範囲が及び、炭化水素であれ置換型炭化水素であれ、気相において空気に放出されたすべての有機化合物を含む。HAPは大まかに言えば、既知の発がん性物質であり、そして健康に他の深刻な影響を招き得るガス状毒性化合物として定義される。HAPはダイオキシン/フラン、HCl、HS、塩化メチレンなどを含む。
【0095】
いわゆる「臭気ガス」は、紙パルプ産業、例えばクラフトパルププロセス(木材バイオマス材料からのリグニンの化学的除去)に由来するガスである。パルプ化中、数多くの低分子量且つ揮発性の化合物、例えばイオウ化合物、並びにメタノール、エタノール、アセトン、及びテルペンが形成される。紙パルプ産業において、臭気ガスは典型的には石灰キルン内で燃焼させられる。
【0096】
回転装置内で生成された、加熱された流体媒体はこのように廃(供給)ガスであり、このガスは任意には希釈されてよい(図1A、流れ1~3参照)。流れ4、5は、焼却ユニット/プロセス101から放出された排ガス、及び任意には粒状物質を示し、高温流体媒体又は高温流出物とも呼ばれる。直接加熱において、流れ1~5は作業流体又はプロセス流体と呼ばれることがある。
【0097】
図1Bに示されたレイアウトにおいて、回転装置100内で生成された、加熱された流体媒体は、動作ユニット101へ熱エネルギーを転移するためのキャリアとしてさらに使用することができる。キャリアは、(廃棄)物質の焼却に関連するプロセス(101)を実施又は媒介するように形成されている。このような形態は、固形物質の焼却のために構成されてよい。いくつかの事例では、形態1Bは、固形物質の焼却と酸素含有廃ガス供給物の焼却との組み合わせのために採用することができる。
【0098】
図1Bのレイアウトにおいて、供給物流1は、空気又は酸素含有廃ガスで代表することができる。供給物1を回転装置100内で加熱し、そして回転装置によって生成された熱を、焼却プロセス101を実施するように構成された燃焼炉へ搬送するためにさらに使用することができる。焼却炉101内で燃焼させられるべき廃棄物流は、図1Bに符号9で示されている。流れ9は、任意の固形又は液状廃棄物(一般廃棄物、病院廃棄物、又は医療廃棄物、汚染された土壌、廃水、及びこれに類するもの)で代表することができる。任意の媒体、例えばガス、蒸気、液体、固体、及びこれらの混合物を流れ9として利用することは除外されない。
【0099】
これに関連して、加熱された媒体(例えばプロセス101によって活用された流体流又は固体流)の生成は、回転装置内で生成された、加熱された流体媒体と、プロセス101によって活用されひいては回転装置を迂回する適宜の(廃棄)媒体との間の熱転移プロセスを通して、回転装置外部で実施することができる。回転装置100を迂回する廃棄物流9はこの文脈ではプロセス流と呼んでよく、これに対して、回転加熱器100を介して焼却炉101へ到着する流れ1~3は、「熱転移媒体」と呼んでよい。熱転移媒体は焼却プロセス101内へ熱エネルギーを投入する。さらに留意されるべきなのは、実際には、回転装置100から焼却炉101内へ到着する高温流出物3は、廃棄物流9中に含有する物質を燃焼させるための燃焼媒体として作用することである。固形廃棄物9が燃焼チャンバ/焼却炉101内で燃焼させられる場合に、流れ10は、プロセスから引き出された固形残留物/灰を表す。
【0100】
いくつかの事例では、固形廃棄物の焼却は、回転装置100を通して導かれる廃ガスの燃焼と組み合わされてよい。このような場合には、回転装置100内で加熱された酸素含有廃ガスは、固形廃棄物流9の焼却プロセス中へ熱を投入するための熱転移媒体として使用される。
【0101】
図1A及び1Bの形態において、既存の焼却炉101に回転装置100を組み付けることができる。
【0102】
実施態様に基づく、焼却設備内へ供給されるべき加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータブレードを含むロータと、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、を含み、ロータがケーシング内部に閉じ込められている。装置100では、当該流体媒体流が前記回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬するときに、前記少なくとも1つのロータブレード列を通過したときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成される。
【0103】
回転装置100の実施形態は、米国特許第7,232,937号明細書(Bushuev)、米国特許第9,494,038号明細書(Bushuev)、及び米国特許第9,234,140号明細書(Seppala他)に基づく回転反応器装置、並びに米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に基づくラジアル反応器装置の開示内容に概ね従う。前記明細書の内容全体はここに参照することにより援用される。実施態様に基づく方法を採用するように形成され得る、任意の他の実施形態を利用することもできる。
【0104】
上で参照した特許文献において、回転ターボ機械タイプの装置は、炭化水素を処理するための、具体的にはスチームクラッキングするための反応器として設計されている。これらの用途に対する大まかな要件は、ガスの急速加熱、高い温度、短い滞留時間、及び栓流(軸方向の混合を暗示しない流動モデル)である。これらの要件は、ターボ機械タイプの反応器が、比較的小さな容積内に収容されるいくつかの加熱段を有するデザインをもたらす。
【0105】
本開示は、回転装置(限定はしないが上で参照したものを含む)を電化することができ、そして有害物質及び/又は毒性物質、又は廃棄物の焼却に関連するプロセス101においてさらに供給される、加熱された流体媒体を生成するための加熱器として使用し得るという観察に基づいている。回転装置加熱器ユニットを熱消費プロセス中へ組み込むことにより、温室効果ガス及び粒子の排出量を著しく低減することができる。一例としては、回転装置は(下記の)種々の用途において、燃料燃焼型バーナに取って代わることができる。温度範囲は、(上で参照した反応器装置で概ね達成可能な)約1000℃から少なくとも約1700℃まで、そしてさらに2500℃まで広げることができる。これらの高い温度を達成し得る回転装置の構成は、空気力学的ハードルが存在しないことにより可能である。
【0106】
実施態様に基づいて焼却設備内へ組み込まれ、且つ実施態様に基づく方法のために、加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、こうして、少なくとも1つのロータユニットがロータ軸上に取り付けられた状態で、水平方向(長手方向)軸線に沿って位置決めされたロータ軸を含む。ロータユニットは、ロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって配置された複数のロータ(作業)ブレードを含む。ロータブレードは一緒に、ロータブレード・カスケードを形成する。回転装置100はこのように、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータ(作業)ブレードを含み、これらのロータブレードは、本質的に環状のロータブレード集成体又はロータブレード・カスケードを形成している。
【0107】
実施態様では、装置は、少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に位置する集成体を成すように配置された複数の固定ベーンをさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。
【0108】
いくつかの実施態様では、複数の固定ベーンは固定ベーン・カスケード(ステータ)を成すように配置することができる。固定ベーン・カスケードは、少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する、本質的に環状の集成体として提供される。少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する集成体を成すように配置された固定ベーンは、固定ガイドベーン、例えば(入口)ガイドベーン(IGV)として提供されてよく、そして流体流をロータ内へ所定の方向に導くように、例えばロータ固有の作業投入能力を制御し、そしていくつかの事例ではこれを最大化するように、固定ベーンは中心軸の周りにプロフィール、寸法、及び配置関係に関して形成されていてよい。
【0109】
回転装置は、2つ又は3つ以上の本質的に環状のロータブレード列(ブレード・カスケード)がロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的に配置された状態で形成されている。このような場合には、固定ガイドベーンは、第1ロータブレード列の上流側に、各ロータブレード列の上流側に順番に、又はロータブレード列の連続的な配置における任意の選択されたロータブレード列の上流側に設けられていてよい。
【0110】
実施態様では、回転装置100は、少なくとも1つのロータブレード列(ロータブレード・カスケード)の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。この場合では、当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成することができる。いくつかの形態では、ベーン付き又はベーン無しのディフューザが、少なくとも1つのロータブレード・カスケードの下流側の前記ディフューザ領域内に配置されている。いくつかの形態では、ディフューザは、複数の固定(ステータ)ベーンとして実現することができる。これらの固定ベーンは、ロータの下流側の本質的に環状の集成体として提供されるディフューザベーン・カスケードを成すように配置される。
【0111】
ロータ、固定ガイドベーン、及びディフューザ領域は、ケーシング内に形成された内部通路(ダクト)内部に閉じ込められている。
【0112】
例えば米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に記載されたようないくつかの形態では、ディフューザ(装置)を設けることが省かれ、そしてディフューザ領域は、ロータの下流側に配置されたダクトの本質的にベーン無しの部分(いわゆるベーンレス・スペース)によって形成されてよく、そしてロータから到着する高速流体流を拡散するように、そのジオメトリ及び/又は寸法パラメータに関して形成されてよい。
【0113】
ダクトのベーン無し部分を設けることは、上記回転装置100のすべての形態に共通している。形態に応じて、ベーン無し部分(ベーンレス・スペース)はロータブレードの下流側(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、又はディフューザベーン・カスケードの下流側(Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)に配置されている。例えばSeppala他によって記載されたいくつかの形態では、ケーシング内部の内部通路内の回転ブレード列及び固定ブレード列は、ベーン無し部分がロータブレードの下流側に配置された固定ディフューザベーンからの出口と、後続のロータブレード・カスケードユニットのロータブレードの上流側に配置された固定ガイドブレードへの入口との間に形成されるように配置されている。
【0114】
「上流側」及び「下流側」という用語はここでは、装置全体を通した流体流の方向(入口から出口へ)における、所定の部分又は構成部分、ここではロータに対する構造的な部分又は構成部分の空間的且つ/又は機能的な配置を意味する。
【0115】
全体的に見ると、作業ブレード・カスケードを備えたロータは、作業ブレード列の一方又は両方の側に本質的に環状の集成体(カスケードと呼ばれる)を成すように配置された固定(ステータ)ベーン列の間に位置決めすることができる。ロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的(順番に)配置された2つ又は3つ以上のロータブレード/ロータブレード・カスケード列を含む形態が、これらの間に固定ブレードを有する又は有しない状態で考えられる。ロータブレード列の間に固定ベーンが存在しない場合には、ダクトを通って伝搬する流体媒体の速度はそれぞれ後続の列において増大する。このような場合には、複数の定置ベーンが第1ロータブレード・カスケードの上流側に前記順番で(固定ガイドベーンとして)、そして最後のロータブレード・カスケードの下流側に(固定ディフューザベーンとして)、集成体を成すように配置されてよい。
【0116】
任意には固定ディフューザベーン集成体(ディフューザ領域)を備えたケーシング内部に閉じ込められた、ロータブレード列(ロータブレード・カスケード)と、前記ロータブレードの下流側に位置するダクトの一部とは、完全なエネルギー転換サイクルを媒介するように形成された最小限のプロセス段(以後、段)とみなすことができる。したがって、少なくとも1つの回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードから出てダクト内を後続のロータブレード列へ向かって伝搬するか、又は本質的にトロイド形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道に続く同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。(ロータの周囲を閉じ込める)ダクトは好ましくは、流体流がダクト内で伝搬すると、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられるように成形されている。
【0117】
少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する固定ガイドブレード列は、エネルギー変換サイクル中の回転ブレード列(カスケード)の進入時の所要の流動条件を準備する。
【0118】
いくつかの形態では、プロセス段は、(ロータブレードの上流側の)固定ガイドベーンと、ロータブレード列と、前記ロータブレードの下流側に配置されたディフューザ領域とから成る集成体によって確立される。ディフューザ領域は、任意にはディフューザベーンが設けられたタクトの本質的にはベーン無しの部分として提供される。固定ガイドベーン、少なくとも1つのロータブレード列、及びディフューザ領域をそれぞれ通して制御された状態で、流体媒体流が連続的に伝搬することにより可能になるエネルギー変換サイクル中、ロータ軸の機械エネルギーが運動エネルギーへ変換され、そしてさらに流体の内部エネルギーへ変換され、続いて流体温度が高められる。回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードを出てディフューザ領域を通ってダクト内を通過して、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられたときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列内で、流れは加速し、そして軸及び回転ブレードの機械エネルギーは流体流へ転移される。各ロータブレード列の少なくとも一部では、流れは超音速流状態へ達し得る。ディフューザ領域内では、ロータから到着した高速流体流は、顕著なエントロピー増大を伴って拡散される。これにより流れは運動エネルギーを流体物質の内部エネルギー内へ散逸し、ひいては熱エネルギーを流体中へ提供する。ディフューザの上流側の流れが超音速である場合、流体流の運動エネルギーは、多重ショック及び粘性混合及び散逸のシステムを通して流体の内部エネルギーへ変換される。流体の内部エネルギーが増大する結果、流体温度が上昇する。エネルギー変換機能は、例えばロータブレードの下流側に配置されたダクトのベーン無しの部分によって(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、且つ/又は拡散ベーン集成体によって(Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)果たすことができる。
【0119】
回転装置100は、多段又は単一段解決手段として形成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に配置されたいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って連続的に配置された1~5つのロータブレード列)を含むと考えることができる。
【0120】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された模範的形態において、回転装置100は実質的にリングトーラスの形状で実現することができる。ここでは子午面におけるダクトの断面はリング状プロフィールを形成する。装置は、固定ガイドベーン(ノズルベーン)と固定拡散ベーンとの間に配置されたロータユニットを含む。段は、固定ノズルベーン、ロータブレード、及び拡散ベーンの列を有する状態で形成されている。これらを通って流体流は、本質的に螺旋状の軌道に基づいて確立された流路にしたがって、連続的に伝搬する。この形態において、流体流は、装置内部の入口と出口との間を伝搬しながら、数回にわたって回転ロータブレード・カスケードを通って循環する。同様のリング形状の形態がBushuevの米国特許第9,494,038号明細書に記載されている。
【0121】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された別の模範的形態では、回転装置100は、本質的に管状の軸方向タイプのターボ機械として形成することができる。このような形態では、装置は延長された(細長い)ロータハブを含む。このロータハブに沿って、複数のロータブレードがいくつかの連続的な列を成すように配置されている。ロータはケーシング内部に閉じ込められている。ケーシングの内面は固定(ステータ)ベーンとディフューザベーンとを備えている。固定ベーン及びディフューザベーンは、ステータ、ロータ・カスケード、及びディフューザ・カスケードのブレード/ベーンが、ロータハブに沿って長手方向に(ロータシャフトの長さに沿って入口から出口まで)交互に位置している。長手方向においてロータに沿った特定の位置におけるロータ・カスケードのブレードは、それぞれ固定ガイド(ノズル)ベーン及び拡散ベーンの隣接する対と一緒に段を形成する。
【0122】
記載された形態において、後続の段は、段の間にブレード/ベーンのないスペースを有する。
【0123】
Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書に概要を示されたさらに別の模範的形態では、回転装置100は、ラジアル・ターボ機械として形成することができる。ラジアル・ターボ機械は概ね遠心圧縮機又は遠心ポンプのための設計に従う。「遠心」という用語は、装置内部の流体流が半径方向であることを暗示し、したがって、装置は本開示では「ラジアルフロー装置」と呼ばれることがある。装置は細長い軸上に取り付けられたいくつかのロータユニットを含む。各ロータユニットには固定ガイドベーンが先行する。エネルギー変換を可能にする方式で成形されたダクトのベーン無し部分(例えばU字ベンド又はS字ベンド)が、ロータユニットの後に配置されている。加えて形態は、ロータの下流側に配置された別個のディフューザ装置(ベーン付き又はベーン無し)を含んでもよい。
【0124】
上記すべての形態において、回転装置100は、本明細書中に開示された方法において同様に機能する。動作中、焼却プロセス設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ導かれる投入エネルギー量は、ロータの機械エネルギーへ変換される。回転装置内の状態は、流量状態を作り出すように調節される。この流量状態にあるときには、ロータの回転ブレードによって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流が少なくとも1つのロータブレード列から出て、ダクト及び/又はディフューザ領域を通過することにより後続のロータブレード列又は同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列には、固定ガイドベーンが先行してよい。したがって調節し得る状態は、少なくとも回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬する流体媒体流を調節することを含む。流れの調節は、このような装置の動作関連パラメータ、例えば温度、質量流量、圧力などを調節することを含んでよい。これに加えて又はこの代わりに、流れの状態は、ケーシング内部に形成されたダクトの形状を変更することにより調節することができる。
【0125】
いくつかの模範的な形態では、回転装置は、Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書のいずれか一方において論じられた、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において論じられた、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書において論じられた本質的に半径方向の軌道、及びBushuevの米国特許第7,232,937号明細書において論じられているような、左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成することができる。回転装置の空気力学的設計は様々であり得る。
【0126】
回転装置は駆動エンジンを利用する。好ましい実施態様では、装置は電気エネルギーを投入エネルギーとして利用し、したがって装置は電動モータ駆動型である。本開示の目的上、任意の適宜のタイプの電動モータ(すなわち、電源から機械的負荷へエネルギーを転移し得る装置)を利用することができる。モータ駆動軸とロータ軸との間に配置された好適なカップリング、並びに種々のアプライアンス、例えば出力コンバータ、コントローラ、及びこれに類するものは、ここでは説明しない。加えて、装置は例えばガスタービン又は蒸気タービン、又は任意の他の適宜の駆動装置によって直接に駆動することができる。いくつかの回転装置100を共通のプロセスユニット101、例えば炉に並列接続することを伴うレイアウトにおいて、前記装置の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを利用してよく、例えば電動モータ駆動型装置を、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される装置と組み合わせることができる。
【0127】
電力(単位時間当たりのエネルギー転移速度と定義される)を、装置の回転軸を推進するために使用される電動モータに電流を供給することを通して、回転装置内へ供給することができる。回転装置内への電力の供給は(回転加熱器ユニット/装置100及び/又は焼却プロセス設備1000に対して)外部源から実現することができる。これに加えて又はこの代わりに、電気エネルギーを設備1000の内部で生産することもできる。
【0128】
外部源は、持続可能なエネルギー生産のために提供された種々の支援設備を含む。こうして、電力は少なくとも1つの再生可能エネルギー源を活用する発電システム、又は異なる再生可能エネルギー源を活用する発電システムの組み合わせから供給することができる。再生可能エネルギーの外部源は太陽光発電、風力発電、及び/又は水力発電として提供することができる。こうして、電力は以下のユニット、すなわち、太陽光発電システム、風力発電システム、及び水力発電システムのうちの少なくとも1つからプロセス中へ受容されてよい。いくつかの模範的な例では、外部電力源として原子力発電所が提供されてよい。原子力発電所は一般にエミッションフリーとみなされる。「原子力発電所」は、伝統的な原子力、そしてこれに加えて又はこの代わりに、核融合電力を使用するものと解釈されるべきである。
【0129】
電気は、発電機を駆動するための運動エネルギー源としてタービンを利用する発電所から供給することができる。いくつかの事例では、少なくとも1つの装置100を駆動するための電力は、例えば別個の設備として、又はコジェネレーション設備内部、及び/又は複合サイクル発電所内部で提供される少なくとも1つのガスタービン(GT)から供給することができる。電力はこうして、以下のユニット、すなわち複合サイクルガスタービンプラント(CCGT)、及び/又は熱回収と組み合わされた電気生産、及び熱電併給(CHP)を通した利用のために形成されたコジェネレーション設備、のうちの少なくとも1つから供給することができる。いくつかの例では、CHPプラントは、記載のプロセスにおける再生可能エネルギーのシェアを大きくするためのバイオマス燃焼プラントであり得る。これに加えて又はこの代わりに、電力の供給は、任意にはエンジン発電所の一部として提供された、火花点火エンジン、例えばガスエンジン、及び/又は圧縮エンジン、例えばディーゼルエンジンから実現することができる。さらに、典型的には蒸気タービンの使用によって媒介される形で、化石原料、例えば石炭、油、天然ガス、ガソリン、及びこれに類するものから電気エネルギーを生産するように形成された任意のコンベンショナルな発電所を使用して、回転装置100のための投入エネルギーとして電気エネルギーを生成することもできる。また、再生可能エネルギー源として水素を利用して、燃料電池を使用して例えば電気へ再変換することもできる。
【0130】
外部源及び内部源として実現された上述の電力源のいかなる組み合わせも考えられる。低排出量の電力を別の(外部の)源から取り込むことは、焼却プロセス設備のエネルギー効率を改善する。
【0131】
回転装置の駆動エンジン内への電力を含む投入エネルギーの導入にはさらに、任意には設備1000内の他の場所、又は前記設備の外部で生成された熱エネルギーを利用して、出力タービンから機械軸出力を駆動エンジンへ導くことが付随し得る。軸出力は、1つの回転エレメントから別の回転エレメントへ伝達された機械出力と定義され、軸のトルクと回転速度との合計として計算される。機械出力は、単位時間あたりの作業量又はエネルギー量(ワットで測定)と定義される。
【0132】
実際には、例えば電動モータ及び出力タービンからの軸出力は、これらのうちのいずれか一方が全軸出力又はその一部を提供し得るように分割することができる。
【0133】
図2A~2Dは、焼却設備1000内部の回転加熱器ユニットを形成する回転装置100の、予熱器ユニット102、温度ブースタ区分103、及び熱回収ユニット104の関する模範的レイアウトを示している。以下の符号は部材のために使用される。すなわち100、100A、100B-回転加熱器ユニット(回転装置)、101-焼却ユニット/プロセス、102-予熱器ユニット、103-付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)。
【0134】
図2Aは、回転装置を通して導かれた流体媒体流(供給物流1)中に熱を投入するように形成された回転装置100の基本実施形態を概略的に示している。装置100から出た加熱された流れが、それぞれ符号2で示されている。基本実施形態において、流体の体積が、装置100のケーシング内の入口と出口との間に形成された流路に沿って伝搬している間に、所定の温度まで加熱されるように、回転装置100のロータシステムは空気力学的に形成されている(いわゆる「ワンパス」実施形態)。装置100は1つの段において、約10℃~約120℃の範囲内の、いくつかの形態では約500℃までの温度上昇(デルタT、ΔT)を可能にする。したがって、多段実施形態の場合には流体は「ワンパス」の実施に際して1000℃まで加熱することができる(10段装置の場合には1段あたり100℃の温度上昇)。流体媒体が装置段を通過するのに費やす滞留時間は数秒に満たない規模、例えば約0.01~1.0ミリ秒の規模なので、基本形態において既に、高速の効率的な加熱を達成することができる。温度上昇は必要に応じて最適化することができる。
【0135】
図2Bは、いわゆるブースタ加熱に関与する基本概念を示している。ブースタ加熱は、独立型の加熱装置100の能力を超えて流体媒体、例えばプロセスガスを加熱する任意の方法である。
【0136】
温度ブーストは、熱的、化学的、又はその両方のものとみなすことができる。「熱的ブースト」とも呼ばれる第1形態の場合、付加的な回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Bとして示されている)が、「一次」回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Aとして示されている)の下流側に配置されている。装置100A、100Bは、本開示の範囲内では回転加熱器ユニット100として概ね認識される。加熱された流体媒体の生成はこのように、連続して接続された少なくとも2つの回転装置100A、100Bを設けることによって達成し得る。流体媒体流(供給物流1)は、ここでは一次加熱器と呼ばれる、連続内の少なくとも第1の回転装置(100A)内で所定の温度に加熱される。そして第1の回転装置100A内で「予熱された」、当該第2の回転装置100Bを通って伝搬する流体媒体流(流れ3参照)中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流(流れ2参照)は、該連続内の少なくとも第2の回転装置(100B)内でさらに加熱される。装置100Bはしたがってブースタ加熱器と呼ばれる。装置100A、100Bは同一であってよく、またサイズ又は内部設計に関して変化していてもよい。例えば符号100Bのような2つ又は3つ以上のブースタ装置の列を、一次加熱器100Aの後に配置することができる。ブースタ装置は並列又は直列に、あるいはその回転速度及び空気力学特性の最適化を可能にする任意の組み合わせで配置することができる。
【0137】
第2の付加的又は代替的な形態(さらに「化学的ブースト」とも呼ばれる)では、符号103(図1、2B)で示された付加的な加熱装置は、これを通って伝搬する流体媒体流中へ反応性成分5、例えば可燃燃料を受容し、これにより、焼却プロセス101へ前記流体媒体流を導く前に発熱反応によって熱を提供するように構成されている。この形態では、付加的な加熱器ユニット/加熱装置103を通して導かれた流体媒体流中に反応性化学物質5を導入(例えば注入)することにより、温度ブーストを達成することができる。なお、図2Bの流れ5は、図1に示された流れ8に相当する。
【0138】
反応性化学物質に基づくブースタ加熱器ユニット103は、熱的ブースタ加熱器ユニット100、100B(図2B)の後、又は一次加熱器100、100A(図1)のすぐ後に配置されてよい。反応性化学物質(反応物質)5は燃焼ガス、例えば水素ガス、炭化水素、アンモニア、酸素、空気、他のガス及び/又は任意の他の適宜の反応性化合物、任意には触媒を含んでよい。ユニット103において、発熱反応によって、流体流は、化学物質媒介加熱に関与しない単一の回転装置によっては典型的には達成し得ないレベルまで加熱することができる(流れ4参照)。例えば、燃料ガス、例えば水素は、酸素含有プロセスガス、例えば空気中に導入することができる。高温において、水素と酸素とは発熱反応に入ることによって、水分子を生産する(水素燃焼)。
【0139】
燃料ガスを空気(又は富化酸素)とともにバーナを通してブースタ加熱器ユニット103内へ注入することにより、ガスの温度を上昇させ得る。加熱されたガスが引火性ガスを含有し、これらのガスを加熱のためだけに消費し得るならば、空気/又は酸素を添加することができる。プロセスガスは、H、NH、CO、燃焼させて熱を生成し得る燃料ガス(メタン、プロパンなど)を含有することができる。実現し得るならば、他の反応性ガスを注入することにより熱を生成することもできる。
【0140】
化学的ブーストのために構成された付加的な加熱器103は、パイプ片として、又は発熱反応が行われるチャンバとして形成されてよく、且つ/又は付加的な熱エネルギーを生産するための発熱反応に対応するために反応性化合物を受容するように配置された少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。ブースタ区分103はこのように、少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。任意には、反応性化学物質は、熱消費プロセス101に直接に注入することができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、反応性化学物質媒介ブーストは、相応に変更された単一の装置100、103内で実施することもできる。
【0141】
ブースタ加熱に関与する配置関係において、第1の回転装置(100A)内で所定の温度まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で最大限度までさらに上昇させることができる。一例としては、一次加熱器(100A)内で約1700℃まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で2500℃以上までさらに上昇させることができる。
【0142】
上述の概念を別々に又は組み合わせて用いることにより、並列又は直列に(連続に)接続された装置100のいずれか1つに、反応性化学物質5を導入することができる。ブースタ加熱器を設けることは任意である。
【0143】
付加的又は代替的な形態において、予熱及び付加的な加熱を同じ装置100内で実施することもできる(図示せず)。このことは、多段形態において達成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に位置するいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って1~5つのロータブレード列が連続的に配置されている)を含む。
【0144】
少なくとも2つの回転装置、例えば100A、100B、及び任意には103(103が回転装置100として実施される場合)を並列又は直列に接続すると、回転装置集成帯を確立することができる(例えば図2B~2D参照)。「一次」加熱器100A又は「ブースタ」加熱器100B、103として実現された回転装置100間の接続は、機械的且つ/又は機能的であり得る。少なくとも2つの個々の、物理的に一体化された又は一体化されていない個々の装置ユニット間が連携されると、機能的(例えば達成可能な熱投入に関して)な接続を確立することができる。後者の場合、いくつかの補助装置を介して、少なくとも2つの回転装置間の連携を確立することができる(図示せず)。いくつかの形態では、集成体は、互いにミラー状に反映するように接続された少なくとも2つの装置を含む。これにより、前記少なくとも2つの装置はこれらの中心(ロータ)軸を介して少なくとも機能的に接続される。このようなミラー状の形態は、直列に(連続に)機械的に接続された少なくとも2つの回転装置100を有するものとさらに定義し得るのに対して、機能的接続は並列(アレイ状)の接続とみなすことができる。いくつかの事例では、前記「ミラー状」の配列はさらに変更を加えることにより、少なくとも2つの入口と、配列の本質的に中心に配置された共通の排出(放出)モジュールとを含むことができる。
【0145】
回転装置(図2Bの100A、100B、103参照)を同じ(ロータ)軸上で集成することができる。各回転装置は任意には、装置の独立した最適化を可能にする別々の駆動装置(モータ)を備えることができる。2つ又は3つ以上の別々の回転装置が使用されると、動作温度及び圧力の観点から、建築費(材料など)を最適化することができる。
【0146】
これに加えて又はこの代わりに、集成体内部の少なくとも1つの回転装置は、流体流の圧力を高めるように設計することもできる。したがって、集成体内の少なくとも1つの回転装置には、加熱器機能とブロワ機能との組み合わせを割り当てることができる。ブロワとして作用するように構成された装置100は、流体が焼却炉101内で循環するのに必要な圧力増大を可能にする。装置100はこうして、さもなければコンベンショナルな燃料燃焼型焼却炉内で必要となる別個の空気ブロア/システムファンに取って代わることができる。
【0147】
これに加えて又はこの代わりに、反応性ガス又は不活性ガスを含有する流れを回転装置100へ(図示せず)、又は前記装置の下流側に位置する任意の機器へ(例えば焼却ユニット101内へ)供給することもできる。
【0148】
図2Cは、間接プロセス加熱とともに回転加熱器装置100A、任意には100Bを使用する様子を示している。回転装置100(100A、100B)は、プロセスユニット101内の流体を間接加熱するために使用することができる。熱は、熱交換器タイプの形態を成す2つの非混合流体間で転移される。したがって、流体、例えばガス又は液体を、回転装置100内で加熱された流体に対して実現可能な熱交換器装置101内で蒸発(気化)させるか又は過熱することができる。本質的にガス状の物質を処分するプロセスに対応するように形成されたプロセスユニット101は、任意の(既存の)燃焼型加熱器、焼却炉、炉、反応器、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置によって代表することができる。前記「熱交換器」形態(101)は、最適な熱転移のために必要に応じて選択することができる。加熱用ガス(流れ1~3参照)は、加熱及び安全性にとって最適であるように選択することができる(例えば蒸気、N、空気)。回転装置100A、100B内で加熱されたガスは大気圧に近くてよく、あるいは圧力を上昇させることにより、熱転移を改善することもできる。装置100内で加熱された熱転移媒体3(100Bから出た流れ3)は、プロセスユニット101へ導かれる。ここでその熱は流れ3から「低温」プロセス流6へ転移され、これにより「高温」プロセス流7が生産される。流れ4は熱転移媒体流出物をそれぞれ表す。プロセスガス6(例えば廃棄されるべき廃ガス)を装置100内で加熱できない場合(例えば、流れ6が酸素含有ガスであり、この酸素含有ガスが、回転装置100の内面にとって潜在的に有害な毒性化合物及び/又は粒子をも含有している場合)には、プロセスガス6の間接加熱を伴う形態を実現することができる。このような場合には、熱転移流体/ガス(流れ1、2及び3)は回転装置100内で加熱され、そしてプロセスガス(酸素含有廃ガス6)へ熱エネルギーを転移するために、動作ユニット101内へさらに供給される。ユニット101内の熱転移の結果として、プロセスガス6中に含有された毒性化合物は燃焼させられる。流れ7はしたがって、毒性/有害物質のない高温ガス流を表す。
【0149】
図1Bのレイアウトでは、固形廃棄物9を燃焼チャンバ101内で直接に燃焼させることができ、ここでは回転装置の高温流出物(図1B及び2Cの流れ3)は燃焼媒体として作用することを除いては、図2Cのプロセス流6及び7は、それぞれ図1Bの流れ9及び10に概ね相応するとみなしてよい。
【0150】
図2Dは回転加熱器装置100Aを、予熱器102と、焼却プロセス101(図示せず)からリサイクルされたリサイクルプロセス流体(流れ4)と一緒に示している。予熱器は、電気式、燃焼型、燃焼エンジン、ガスタービンなどであってよく、これはプロセスにおける任意の高温流から余剰の熱を回収するための熱交換器であり得る。予熱器102を設けることは任意である。この概念は、装置100Aの下流側に位置する任意のブースタ加熱器100Bを含むことができる。熱的又は化学的なブースタ加熱が利用されてよい。流れ1’は、予熱器102へ送られる(供給物)流体を表す。前記流体は回転装置100A、100Bを通ってさらに伝搬され、そこで供給物は加熱され、そして流れ3において焼却プロセスへ送られる。回転装置100A、100Bのいずれか1つは、流体リサイクル装置(図2Dの流れ4参照)を備えることができる。回転装置と流体リサイクル装置とのいかなる組み合わせも考えられる。少なくとも1つの回転装置による流体媒体流の再循環を通して、リサイクルが可能になる。
【0151】
いくつかの形態において、回転装置100はコンベンショナルな燃焼型加熱器から排出された低酸素含量の煙道ガスを利用することができる。このような場合には、燃焼型加熱器から排出された高温煙道ガスはリサイクルガス(図2Dの流れ4)と混合されることにより、回転加熱器100、100A内での加熱のために使用される。記載の事例において使用される煙道ガス中の酸素含量は好ましくは、安全な加熱を可能にするための引火性限界を下回る。
【実施例
【0152】
図3は、少なくとも1つの回転装置100と少なくとも1つのサーマルオキシダイザ101とを含む設備レイアウト1000において、任意の産業プラント又は工場から放出された廃ガスの熱酸化プロセスを実施例1で示している。ここでは、回転装置100は、サーマルオキシダイザ101の燃焼型加熱器の代わりに使用される。
【0153】
実施例1は、廃ガス中の炭化水素、例えばベンゼン及び塩化メチルの約99%の破壊を目的とする。主要な酸化生成物はCO、HO及びHClである。廃ガス特性が表1に示されている。
【表1】
【0154】
図3の焼却設備1000は、回転装置100内で廃ガスを直接加熱するという概念を利用する。設備は回転装置100と、焼却ユニット/サーマルオキシダイザ101と、予熱器(102)としても作用する熱回収ユニット104と、酸性ガス(例えばHCl)の除去のための廃ガス浄化ユニット105とを含む。浄化ユニット105は、二次熱交換器として形成されてよい。廃ガス供給流1は、予熱器(102、104)を通して回転装置100へ導かれる。予熱器102、104内では、廃ガス流2の温度は約38℃から約718℃へ上昇する。実施例1は、予熱器102、104内の82%(11.4MW)の部分熱回収を利用する。熱交換器形態を成す予熱器102、104内の部分エネルギー回収は、予熱器102、104に入る排ガスから実際に回収されたエネルギー量を、熱交換器が利用できる最低温度に排ガスが接近する場合に回収され得る最大エネルギー量によって割り算したものと定義される。
【0155】
99%の破壊効率を達成するために、燃焼チャンバ内の温度は約871℃(1600F)でなくてはならず、そして滞留時間は約1秒でなければならない。この実施例では、廃ガス温度(流れ3)を約759℃まで上昇させるために回転装置によって焼却プロセス内へ投入される熱エネルギー量は、0.724 MWである。所望の燃焼温度レベル(871℃)を達成するために、エネルギーの残りは、廃ガス(ベンゼン及び塩化メチル)を燃焼させることから得られる。流れ5及び6は、浄化ユニット105へ、そして浄化ユニット105から導かれる焼却生成物ガス流である。
【0156】
実施例1において、回転装置100は、焼却プロセス101中へ投入されるべき約0.724MWの熱エネルギーを生産することにより、燃料燃焼型バーナに効率的に取って代わる。二酸化炭素排出量は相応に低減される。窒素酸化物(NOx)排出量も低減される。なぜならば、燃料駆動型バーナの不在下では、NOx形成を増大させるピーク温度がないからである。サーマルオキシダイザの上流側で回転装置を使用すると、最適な乱流レベルを達成することを通して、燃焼プロセスの速度及び効率を改善することがさらに可能になる。
【0157】
当業者には明らかなように、技術の発展とともに、本発明の基本的な考えを種々の方法で実現し組み合わせることができる。本発明及びその実施態様はこのように上記実施例に限定されることはなく、これらは添付の特許請求の範囲内で広く変化し得る。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
【国際調査報告】