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特表2024-537178p53媒介性癌の処置のための組成物および方法
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  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図1A
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図1B
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図2
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図3
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図4
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図5
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図6
  • 特表-p53媒介性癌の処置のための組成物および方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】p53媒介性癌の処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241003BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241003BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C07K16/18
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/113 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 Z
C12N15/866 Z
C12N7/01
A61K38/16
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K31/711
A61K35/761
A61K35/76
A61K35/763
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520883
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077779
(87)【国際公開番号】W WO2023060248
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,759
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516127178
【氏名又は名称】ソラ・バイオサイエンシズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 彰徳
(72)【発明者】
【氏名】コヤ,ケイゾウ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
p53機能を特異的に回復させるために、細胞の生得的なシャペロン機構、具体的にはHsp70媒介性システムを動員する新規なクラスの融合タンパク質が開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Jタンパク質のJドメインおよびp53結合性ドメインを含む単離された融合タンパク質。
【請求項2】
Jタンパク質のJドメインが真核生物起源である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
Jタンパク質のJドメインがヒト起源である、請求項1または請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
Jタンパク質のJドメインが細胞質に局在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
Jタンパク質のJドメインが、配列番号1~50からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
Jドメインが、配列番号1、5、6、10、16、24、25、31、および49からなる群から選択される配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Jドメインが配列番号5の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
Jドメインが配列番号10の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
Jドメインが配列番号16の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
Jドメインが配列番号25の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
Jドメインが配列番号31の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
p53結合性ドメインが、例えばELISAアッセイを用いて測定された場合、1μM以下、例えば、300nM以下、100nM以下、30nM以下、10nM以下の、p53に対するKを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
p53結合性ドメインが、配列番号51~56からなる群から選択される配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
p53結合性ドメインが、配列番号51~53の配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
p53結合性ドメインが配列番号51の配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
p53結合性ドメインが配列番号52の配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
複数のp53結合性ドメインを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
2つのp53結合性ドメインからなる、請求項1~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
3つのp53結合性ドメインからなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
以下の構築物:
a. DNAJ-X-T、
b. DNAJ-X-T-X-T、
c. DNAJ-X-T-X-T-X-T、
d. T-X-DNAJ、
e. T-X-T-X-DNAJ、
f. T-X-T-X-T-X-DNAJ、
g. T-X-DNAJ-X-T、
h. T-X-DNAJ-X-T-X-T、
i. T-X-T-X-DNAJ-X-TT、
j. T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
k. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T、
l. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T、
m. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
n. DnaJ-X-DnaJ-X-T-X-T、
o. T-X-DnaJ-X-DnaJ、
p. T-X-T-X-DnaJ-X-DnaJ
のうちの1つを含み、
ここで、
Tはp53結合性ドメインであり、
DNAJはJタンパク質のJドメインであり、
Xは任意選択のリンカーである、請求項1~19のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
配列番号5のJドメイン配列および配列番号52のp53結合性ドメインを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
配列番号5のJドメイン配列、および配列番号52のp53結合性ドメインの2個のコピーを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
配列番号80~91、100~107からなる群から選択される配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
配列番号80からなる群から選択される配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
配列番号81の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
配列番号82の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
配列番号83の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
配列番号84の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
配列番号85の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
配列番号86の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
配列番号87の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
配列番号88の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
配列番号89の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
配列番号90の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
配列番号91の配列を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
標的化試薬をさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
エピトープをさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
エピトープが、配列番号68~74からなる群から選択されるポリペプチドである、請求項37に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
細胞透過剤をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
細胞透過剤が、配列番号75~78からなる群から選択される、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
シグナル配列をさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
シグナル配列が、配列番号94~96からなる群から選択されるペプチド配列を含む、請求項41に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
細胞においてp53機能を回復させる能力がある、請求項1~42のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
p53媒介性新生物を低下させる能力がある、請求項1~43のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸配列。
【請求項46】
前記核酸がDNAである、請求項45に記載の核酸配列。
【請求項47】
前記核酸がRNAである、請求項45に記載の核酸配列。
【請求項48】
前記核酸が少なくとも1個の修飾核酸を含む、請求項40~42のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項49】
プロモーター領域、5’UTR、ポリ(A)シグナルなどの3’UTRをさらに含む、請求項45~48のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項50】
プロモーター領域が、CMVエンハンサー配列、CMVプロモーター、CBAプロモーター、UBCプロモーター、GUSBプロモーター、NSEプロモーター、シナプシンプロモーター、MeCP2プロモーター、およびGFAPプロモーターからなる群から選択される配列を含む、請求項49に記載の核酸配列。
【請求項51】
請求項45~50のいずれか一項に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項52】
アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス(ワクシニアまたは粘液腫)、パラミクソウイルス(麻疹、RSV、またはニューキャッスル病ウイルス)、バキュロウイルス、レオウイルス、アルファウイルス、およびフラビウイルスからなる群から選択される、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
AAVである、請求項51または請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
カプシドおよび請求項51~53のいずれか一項に記載のベクターを含むウイルス粒子。
【請求項55】
カプシドが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、偽型AAV、アカゲザル由来AAV、AAVrh8、AAVrh10、およびAAV-DJan AAVカプシド変異体、AAVハイブリッドセロタイプ、臓器向性AAV、心臓向性AAV、および心臓向性AAVM41変異体からなる群から選択される、請求項54に記載のウイルス粒子。
【請求項56】
カプシドが、AAV2、AAV5、AAV8、AAV9、およびAAVrh10からなる群から選択される、請求項54または請求項55に記載のウイルス粒子。
【請求項57】
カプシドがAAV2である、請求項54~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子。
【請求項58】
カプシドがAAV5である、請求項54~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子。
【請求項59】
カプシドがAAV8である、請求項54~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子。
【請求項60】
カプシドがAAV9である、請求項54~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子。
【請求項61】
カプシドがAAV rh10である、請求項54~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子。
【請求項62】
請求項1~39のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項1~39のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する細胞、請求項40~45のいずれか一項に記載の核酸、請求項46~48のいずれか一項に記載のベクター、請求項49~56のいずれか一項に記載のウイルス粒子からなる群から選択される作用物質、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項63】
細胞においてp53タンパク質の毒性を低下させる方法であって、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する細胞、請求項45~50のいずれか一項に記載の核酸、請求項51~53のいずれか一項に記載のベクター、請求項54~61のいずれか一項に記載のウイルス粒子、および請求項62に記載の薬学的組成物からなる群から選択される1つまたは複数の作用物質の有効量と前記細胞を接触させるステップを含む、方法。
【請求項64】
細胞が対象内にある、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
対象がヒトである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
対象が癌を有すると同定されている、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
癌が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
対照細胞と比較した場合、細胞において異常p53タンパク質の量の低下がある、請求項63~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
癌の処置、防止、またはその進行の遅延を必要とする対象において癌を処置する、防止する、またはその進行を遅延させる方法であって、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する細胞、請求項45~50のいずれか一項に記載の核酸、請求項51~53のいずれか一項に記載のベクター、請求項54~61のいずれか一項に記載のウイルス粒子、および請求項62に記載の薬学的組成物からなる群から選択される1つまたは複数の作用物質の有効量を投与するステップを含む、方法。
【請求項70】
p53疾患が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
対象におけるp53疾患の防止またはその進行の遅延に有用な医薬の調製における、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項1~34のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する細胞、請求項45~50のいずれか一項に記載の核酸、請求項51~53のいずれか一項に記載のベクター、請求項54~61のいずれか一項に記載のウイルス粒子、および請求項62に記載の薬学的組成物の1つまたは複数の使用。
【請求項72】
p53疾患が癌である、請求項71に記載の使用。
【請求項73】
癌が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、請求項72に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、2021年10月8日に出願された米国仮出願第63/253,759号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを経由して、電子的に読み取り可能なXMLフォーマットで本明細書と共に提出され、かつ全体として参照により本明細書に組み入れられている、配列表を含有する。2022年10月7日に電子的に出願されかつ「269548-517365_Sequence-listing.XML」というファイル名の電子的配列表ファイルは、142,953バイトのファイルサイズを有する。
【0003】
本開示は、p53媒介性癌の処置のためのシャペロン融合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌は、世界中で死亡の主な原因の一つである。男性および女性のおよそ38.4%が生涯のある時点で癌と診断される(2013~2015データ:NIH National Cancer Researchに基づいて)。癌の苦痛を減少させることは、生活の全体的な質の向上について社会全体へ多大な影響を及ぼすであろう。
【0005】
伝統的な癌処置には、手術、放射線照射、薬物療法、および他の治療が挙げられる。これらのアプローチは、癌を治癒し、癌を縮小させ、または癌の進行を止める可能性がある。しかしながら、いったん癌浸潤または転移が観察されたならば、薬物療法での全身性処置が、症状を寛解させかつ生活の質を向上させるための防御の第一線となるであろう。癌を処置するために過去20~30年間の間に多くの薬物が開発されてきたが、それらのほとんどは満足できるものではなかった。免疫療法を用いる最近の開発は、非常に興奮させるものであるが、たいていの研究はまだ完了していない。癌処置に関連した困難の主な理由は、癌(腫瘍)細胞が正常細胞に由来し、それらは多くの特性を共有し、そのことが、薬物が腫瘍細胞のみを特異的に認識することを難しくしているということである。それでもなお、数え切れないほどの科学者による数十年にわたる努力によって、癌細胞における共通した多くの独特な特徴が同定されている。例えば、ヒト癌の50%より多くは、p53遺伝子に変異を有することが知られている。p53は、遺伝毒性ストレスシグナルに応答して、細胞周期停止、老化、およびアポトーシスを誘導する転写因子として主要な機能を発揮する(Vogelstein,B.ら、(2000)Nature 408、307~310;Petitjean,A.ら、(2007)Oncogene 26、2157~2165)。癌におけるp53変異の高頻度ということから、p53変異体に介入することにより、癌治療における有望なストラテジーを開発することができると当然、思う。しかし、その望みはまだ実現されていない。
【0006】
細胞内で発現した全てのタンパク質は、適切に機能するためにそれらの意図された構造へ正しくフォールドされる必要がある。増え続ける疾患および障害が、タンパク質の不適切なフォールディングならびに/またはタンパク質およびリポタンパク質、加えて感染性タンパク質性物質の不適切な沈着および凝集と関連づけられることが示されている。コンフォメーション病またはプロテオパチーとしても知られている、ミスフォールディングにより引き起こされる疾患の例には、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および前頭側頭葉型認知症(FTLD)が挙げられる。変異タンパク質は、細胞において凝集し、典型的な細胞毒性細胞封入体をもたらす。
【0007】
野生型p53タンパク質は、393アミノ酸を含有し、いくつかの構造ドメインおよび機能ドメインで構成される。N末端領域は、トランス活性化ドメインおよびプロリンリッチな領域からなる。四量体形成ドメインおよび塩基性ドメインはC末端に位置する(Romer,L.ら、(2006)Angew Chem Int Ed Engl 45、6440~6460;Joerger,A.C.およびFersht,A.R.(2008)Annu Rev Biochem 77、557~582;Joerger,A.C.およびFersht,A.R.(2010)Cold Spring Harb Perspect Biol 2、a000919)。癌細胞におけるp53体細胞変異の大部分(約74%)は、R175、G245、R248、R249、R273、およびR282などの、p53タンパク質において1アミノ酸置換をもたらす、「ホットスポット」と呼ばれるDNA結合ドメインにおけるミスセンス型変異である。これらの変異は、以下の2つのクラスへ分けることができる:1)DNA結合残基の喪失を生じるDNA接触変異(R248、R273、およびR282)、および2)p53タンパク質のミスフォールディングをもたらす、p53において構造変化を引き起こす立体構造的変異(R175、R245、およびR249)(Strano,S.ら、(2007)Oncogene 26、2212~2219;Freed-Pastor,W.A.およびPrives,C.(2012)Genes Dev 26、1268~1286)。p53は正常には四量体として機能するため、変異p53は、残りの野生型p53対応部分または他のp53ファミリーメンバー、特にp63およびp73の腫瘍抑制機能を、「ドミナントネガティブな」機構を通して抑止し得る(Brosh,R.およびRotter,V.(2009)Nat Rev Cancer 9、701~713;Muller,P.A.およびVousden,K.H.(2014)Cancer Cell 25、304~317)。したがって、p53機能の回復または変異p53活性の抑制が、新規の有効なストラテジーとして大きな可能性があると考えられている。最近になって初めて、変異体発癌性p53タンパク質を標的化する化合物が出現した(Yu,X.、Narayanan,S.ら(2014)Apoptosis 19、1055~1068)。R273H変異で引き起こされた増殖抑制について、変異p53を特異的に標的化する化合物をスクリーニングすることを目指して、Bykovらは、PRIMA-1(p53-reactivation and induction of massive apoptosis-1、APR-017)と名付けられた化合物2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン-3-オンが、変異p53におけるチオール基を修飾することによりp53のリフォールディングを促進し、いくつかのp53標的遺伝子を誘導することを発見した(Bykov,V.J.ら、(2002)Nat Med 8、282~288;Bykov,V.J.ら、(2002)Carcinogenesis 23、2011~2018)。PRIMA-1は、変異p53を有するヒト癌細胞においてアポトーシスを促進し(Bykov,V.J.ら、(2005)Oncogene 24、3484~3491;Lambert,J.M.ら、(2009)Cancer Cell 15、376~388)、血液悪性腫瘍および前立腺癌についての臨床試験第I相および第II相へ前進している初めての化合物の一つになっている。
【0008】
p53遺伝子における癌関連ミスセンス変異は、そのタンパク質の自由エネルギーを増加させ、変異型のp53と野生型p53を分ける立体構造変化をもたらす場合が多い。そのような変異p53の抑制は、p53機能を回復させる有望なストラテジーの一つである。このストラテジーに沿って、温度を低下させることまたはグリセロールなどの化学シャペロンによる変異p53のリフォールディングが正常なp53機能を回復させることが示されている(Brown,C.R.ら、(1997)J Clin Invest 99、1432~1444;Ohnishi,T.ら、(1999)Int J Radiat Biol 75、1095~1098;Ohnishi,T.、Ohnishi,K.ら、(1999)Radiat Res 151、498~500)。
【0009】
熱ショック70kDaタンパク質(本明細書では「Hsp70s」と呼ぶ)は、様々な種の細胞においてシャペロンタンパク質の遍在性クラスを構成する(Tavariaら、(1996) Cell Stress Chaperones 1、23~28)。Hsp70は、機能するために、Jドメインタンパク質およびヌクレオチド交換因子(NEF)などのコシャペロンタンパク質と呼ばれるアシスタントタンパク質を必要とする(Hartlら、(2009)Nat Struct Mol Biol 16、574~581)。タンパク質をフォールドするためのHsp70シャペロン機構の最新モデルにおいて、Hsp70は、ATP結合状態とADP結合状態との間を循環し、Jドメインタンパク質は、フォールディングまたはリフォールディングを必要とする別のタンパク質(「クライアントタンパク質」と呼ばれる)と結合して、Hsp70のATP結合型(Hsp70-ATP)と相互作用する(Young(2010)Biochem Cell Biol 88、291~300;Mayer、(2010)Mol Cell 39、321~331)。Jドメインタンパク質-クライアントタンパク質複合体のHsp70-ATPとの結合は、ATP加水分解を刺激し、それは、Hsp70タンパク質において立体構造変化を引き起こし、ヘリックスの蓋を閉じ、それにより、クライアントタンパク質とHsp70-ADPとの間の相互作用を安定化し、加えて、Jドメインタンパク質の放出を誘発し、その後、そのJドメインタンパク質は、別のクライアントタンパク質と自由に結合できる。
【0010】
したがって、このモデルにより、Jドメインタンパク質は、架橋として働き、かつ様々なクライアントタンパク質の捕獲およびそのHsp70機構への提出を促進して、適切な立体構造へのフォールディングまたはリフォールディングを促すことにより、Hsp70機構内で重要な部分を果たす(Kampinga & Craig(2010)Nat Rev Mol Cell Biol 11、579~592)。Jドメインファミリーは、原核生物(DnaJタンパク質)から真核生物(Hsp40タンパク質ファミリー)にわたる種において広く保存されている。Jドメイン(約60~80aa)は、4つのヘリックス:I、II、III、およびIVで構成されている。ヘリックスIIおよびIIIは、「HPDモチーフ」を含有する可動性ループを介して接続されており、そのHPDモチーフは、Jドメインにわたって高度に保存されており、活性にとって重要な意味をもつと考えられる(Tsai & Douglas、(1996)J Biol Chem 271、9347~9354)。HPD配列内の変異は、Jドメイン機能を消失させることが見出されている。
【0011】
プロテオパチーについて上記で提供された背景を考えると、ミスフォールドされたタンパク質のレベルを低下させることが、これらの壊滅的な障害の症状を処置する、防止する、または別様に改善するための手段として役に立ち得ること、およびタンパク質ミスフォールディングを修復する細胞の生得的な能力の動員が、追求するべき当然の選択であろうことは明らかなように思われる。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、変異p53のレベルを特異的に低下させまたはその機能を回復させるために、細胞の生得的なシャペロン機構、具体的にはHsp70媒介性システムを動員する新規なクラスの融合タンパク質を開発している。タンパク質分泌および発現を増強するために、Hsp70と相互作用するコシャペロンである、Hsp40タンパク質(Jタンパク質とも呼ばれる)の断片を含む融合タンパク質を用いる本発明者らによる以前の研究においてとは違って、本研究は、変異p53タンパク質のレベルを低下させ、またはその機能を回復させることを目的として、Jドメイン含有融合タンパク質を用いる。この関連において、本発明者らは、機能に必要とされるJドメインのエレメントが、タンパク質発現および分泌を増強することにおけるJドメインの使用とは全く異なるという驚くべき発見をし、本融合タンパク質の作用様式について別個の機構を実証した。本明細書に記載された融合タンパク質は、Jドメイン、およびp53に対する親和性を有するドメインを含む。融合タンパク質内のp53結合性ドメインの存在は、変異p53タンパク質の特異的な回復を生じる。
【0013】
E1. したがって、第1の態様において、Jタンパク質のJドメインおよびp53結合性ドメインを含む単離された融合タンパク質が本明細書で開示される。
E2. Jタンパク質のJドメインが真核生物起源である、E1に記載の融合タンパク質。
E3. Jタンパク質のJドメインがヒト起源である、E1~E2のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E4. Jタンパク質のJドメインが細胞質に局在する、E1~E3のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E5. Jタンパク質のJドメインが、配列番号1~50からなる群から選択される、E1~E4のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E6. Jドメインが、配列番号1、5、6、10、16、24、25、31、および49からなる群から選択される配列を含む、E1~E5のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E7. Jドメインが配列番号5の配列を含む、E1~E6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E8. Jドメインが配列番号10の配列を含む、E1~E6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E9. Jドメインが配列番号16の配列を含む、E1~E6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E10. Jドメインが配列番号25の配列を含む、E1~E6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E11. Jドメインが配列番号31の配列を含む、E1~E6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E12. p53結合性ドメインが、例えばELISAアッセイを用いて測定された場合、1μM以下、例えば、300nM以下、100nM以下、30nM以下、10nM以下の、p53に対するKを有する、E1~E11のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E13. p53結合性ドメインが、配列番号51~56からなる群から選択される配列を含む、E1~E12のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E14. p53結合性ドメインが、配列番号51~53の配列を含む、E1~E13のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E15. p53結合性ドメインが配列番号51の配列を含む、E1~E13のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E16. p53結合性ドメインが配列番号52の配列を含む、E1~E13のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E17. 複数のp53結合性ドメインを含む、E1~E16のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E18. 2つのp53結合性ドメインからなる、E1~E17のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E19. 3つのp53結合性ドメインからなる、E1~E18のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E20. 以下の構築物:
a. DNAJ-X-T、
b. DNAJ-X-T-X-T、
c. DNAJ-X-T-X-T-X-T、
d. T-X-DNAJ、
e. T-X-T-X-DNAJ、
f. T-X-T-X-T-X-DNAJ、
g. T-X-DNAJ-X-T、
h. T-X-DNAJ-X-T-X-T、
i. TDNAJ-X-TTTTTDNAJ-X-T、
j. T-X-T-X-DNAJ-X-TT、
k. TTDNAJ-X-T-X-TTTTTDNAJ-X-T、
l. T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
m. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T、
n. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T、
o. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
p. DnaJ-X-DnaJ-X-T-X-T、
q. T-X-DnaJ-X-DnaJ、
r. T-X-T-X-DnaJ-X-DnaJ、および
s. T-X-TDnaJ-X-TDnaJ-X-TTTT
のうちの1つを含み、
ここで、
Tはp53結合性ドメインであり、
DNAJはJタンパク質のJドメインであり、
Xは任意選択のリンカーである、E1~E19のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E21. 配列番号5のJドメイン配列および配列番号52のp53結合性ドメイン配列を含む、E1~E20のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E22. 配列番号5のJドメイン配列、および配列番号52のp53結合性ドメイン配列の2個のコピーを含む、E1~E21のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E23. 配列番号80~91、および100~107からなる群から選択される配列を含む、E1~E22のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E24. 配列番号80からなる群から選択される配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E25. 配列番号81の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E26. 配列番号82の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E27. 配列番号83の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E28. 配列番号84の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E29. 配列番号85の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E30. 配列番号86の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E31. 配列番号87の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E32. 配列番号88の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E33. 配列番号89の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E34. 配列番号90の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E35. 配列番号91の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E36. 配列番号100の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E37. 配列番号101の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E38. 配列番号102の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E39. 配列番号103の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E40. 配列番号104の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E41. 配列番号105の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E42. 配列番号106の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E43. 配列番号107の配列を含む、E1~E23のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E44. 標的化試薬をさらに含む、E1~E43のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E45. エピトープをさらに含む、E1~E44のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E46. エピトープが、配列番号68~74からなる群から選択されるポリペプチドである、E45に記載の融合タンパク質。
E47. 細胞透過剤をさらに含む、E1~E46のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E48. 細胞透過剤が、配列番号75~78からなる群から選択される、E47に記載の融合タンパク質。
E49. シグナル配列をさらに含む、E1~E48のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E50. シグナル配列が、配列番号94~96からなる群から選択されるペプチド配列を含む、E49に記載の融合タンパク質。
E51. 細胞においてp53機能を回復させる能力がある、E1~E50のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E52. p53媒介性新生物を低下させる能力がある、E1~E51のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
E53. E1~E52のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸配列。
E54. 前記核酸がDNAである、E53に記載の核酸配列。
E55. 前記核酸がRNAである、E54に記載の核酸配列。
E56. 前記核酸が、少なくとも1個の修飾核酸を含む、E53~E55のいずれか1つに記載の核酸配列。
E57. プロモーター領域、5’UTR、ポリ(A)シグナルなどの3’UTRをさらに含む、E53~E56のいずれか1つに記載の核酸配列。
E58. プロモーター領域が、CMVエンハンサー配列、CMVプロモーター、CBAプロモーター、UBCプロモーター、GUSBプロモーター、NSEプロモーター、シナプシンプロモーター、MeCP2プロモーター、およびGFAPプロモーターからなる群から選択される配列を含む、E57に記載の核酸配列。
E59. E53~E58のいずれか1つに記載の核酸配列を含むベクター。
E60. アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス(ワクシニアまたは粘液腫)、パラミクソウイルス(麻疹、RSV、またはニューキャッスル病ウイルス)、バキュロウイルス、レオウイルス、アルファウイルス、およびフラビウイルスからなる群から選択される、E59に記載のベクター。
E61. AAVである、E59またはE60に記載のベクター。
E62. カプシドおよびE59~E61のいずれか1つに記載のベクターを含む、ウイルス粒子。
E63. カプシドが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、偽型AAV、アカゲザル由来AAV、AAVrh8、AAVrh10、およびAAV-DJan AAVカプシド変異体、AAVハイブリッドセロタイプ、臓器向性AAV、心臓向性AAV、および心臓向性AAVM41変異体からなる群から選択される、E62に記載のウイルス粒子。
E64. カプシドが、AAV2、AAV5、AAV8、AAV9、およびAAVrh10からなる群から選択される、E62またはE63に記載のウイルス粒子。
E65. カプシドがAAV2である、E62~E64のいずれか1つに記載のウイルス粒子。
E66. カプシドがAAV5である、E62~E64のいずれか1つに記載のウイルス粒子。
E67. カプシドがAAV8である、E62~E64のいずれか1つに記載のウイルス粒子。
E68. カプシドがAAV9である、E62~E64のいずれか1つに記載のウイルス粒子。
E69. カプシドがAAVrh10である、E62~E64のいずれか1つに記載のウイルス粒子。
E70. E1~E52のいずれか1つに記載の融合タンパク質、E1~E52に記載の融合タンパク質を発現する細胞、E53~E58のいずれか1つに記載の核酸、E59~E61のいずれか1つに記載のベクター、E62~E69のいずれか1つに記載のウイルス粒子からなる群から選択される作用物質、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物。
E71. 細胞においてp53タンパク質の毒性を低下させる方法であって、E1~E52のいずれか1つに記載の融合タンパク質、E1~E52の融合タンパク質を発現する細胞、E53~E58のいずれか1つに記載の核酸、E59~E61のいずれか1つに記載のベクター、E62~E69のいずれか1つに記載のウイルス粒子、およびE70に記載の薬学的組成物からなる群から選択される1つまたは複数の作用物質の有効量と前記細胞を接触させるステップを含む、方法。
E72. 細胞が対象内にある、E71に記載の方法。
E73. 対象がヒトである、E72に記載の方法。
E74. 対象が癌を有すると同定されている、E71~E73のいずれか1つに記載の方法。
E75. 癌が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、E74に記載の方法。
E76. 対照細胞と比較した場合、細胞において異常p53タンパク質の量の低下がある、E71~E75のいずれか1つに記載の方法。
E77. 癌の処置、防止、またはその進行の遅延を必要とする対象において、癌を処置する、防止する、またはその進行を遅延させる方法であって、E1~E52のいずれか1つに記載の融合タンパク質、E1~E52の融合タンパク質を発現する細胞、E53~E58のいずれか1つに記載の核酸、E59~E61のいずれか1つに記載のベクター、E62~E69のいずれか1つに記載のウイルス粒子、およびE70に記載の薬学的組成物からなる群から選択される1つまたは複数の作用物質の有効量を投与するステップを含む、方法。
E78. p53疾患が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、E77に記載の方法。
E79. 対象におけるp53疾患の防止またはその進行の遅延に有用な医薬の調製における、E1~E52のいずれか1つに記載の融合タンパク質、E1~E52に記載の融合タンパク質を発現する細胞、E53~E58のいずれか1つに記載の核酸、E59~E61のいずれか1つに記載のベクター、E62~E69のいずれか1つに記載のウイルス粒子、およびE70に記載の薬学的組成物の1つまたは複数の使用。
E80. p53疾患が癌である、E79に記載の使用。
E81. 癌が、以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物からなる群から選択される、E80に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】代表的なヒトJドメイン配列のClustal Omega配列アラインメントを示す図である。高度に保存されたHPDドメインは、強調表示された四角形内に示されている。
図1B】代表的なヒトJドメイン配列のClustal Omega配列アラインメントを示す図である。
図2】Jドメインおよびp53結合性ドメインを含むいくつかの実例的な融合タンパク質構築物を示す図である。
図3】100nM ドキソルビシンの非存在下かまたは存在下のいずれかでの、単独でかまたは構築物2を同時発現するかのいずれかで、p53の野生型またはR175もしくはR249S変異体を発現することの、p53またはp21の免疫検出可能レベルへの効果を示す図である。
図4】1μM ドキソルビシンありまたはなしで処理された、単独でかまたは構築物2の存在下のいずれかでの、p53のR249S変異体を安定的にトランスフェクトされたHCT-116細胞におけるp21のELISAに基づいた定量化を示す図である。
図5】細胞毒性についての代替としてLDH活性を用いる、p53のR175HかまたはR249Sのいずれかの変異体を発現する構築物を安定的にトランスフェクトされたHCT-116細胞において構築物2を発現することの細胞毒性への効果を示す図である。
図6】細胞毒性の指標としてLDH活性を用いる、p53の野生型、R175H変異体、またはR249変異体のいずれかを発現する構築物をトランスフェクトされた細胞において構築物3を発現することの細胞毒性への効果を示す図である。
図7】細胞毒性の指標としてLDH活性を用いる、p53の野生型、R175H変異体、またはR249変異体のいずれかを発現する構築物をトランスフェクトされた細胞において構築物16または構築物17を発現することの細胞毒性への効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書および特許請求の範囲に用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに他に指図しない限り、複数の指示物を含む。例えば、用語「1つの細胞」は、その混合物を含む、複数の細胞を含む。
【0016】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すのに本明細書で交換可能に用いられる。ポリマーは直鎖状または分岐状であり得、それは修飾アミノ酸を含んでもよく、それは非アミノ酸により中断されてもよい。それらの用語はまた、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識コンポーネントとのコンジュゲーションなどの任意の他の操作により、修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸のいずれかを指し、それには、D型またはL型の両方の光学異性体、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣体が挙げられるが、それらに限定されない。標準一文字または三文字コードが、アミノ酸を名付けるために用いられる。
【0018】
「宿主細胞」は、対象ベクターについてのレシピエントであり得、またはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含む。その子孫は、自然の、偶発的な、または計画的な変異によって、最初の親細胞と必ずしも完全に同一(形態において、または全DNA相補体のゲノムにおいて)というわけではない。宿主細胞は、インビボでこの発明のベクターでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0019】
本明細書で開示された様々なポリペプチドを記載するために用いられる場合の「単離された」は、その天然の環境のコンポーネントから識別および分離されており、ならびに/または回収されているポリペプチドを意味する。その天然の環境の夾雑コンポーネントは、典型的には、本ポリペプチドについての診断的または治療的使用に干渉する材料であり、それには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。当業者には明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、その天然に存在する対応物からそれを区別するために「単離」を必要としない。加えて、「濃縮された」、「分離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、体積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する対応物のそれより一般的に大きい点で、その天然に存在する対応物から区別可能である。一般的に、組換え手段により生成され、かつ宿主細胞において発現したポリペプチドは、「単離」されていると見なされる。
【0020】
「単離された」ポリヌクレオチド、またはポリペプチドをコードする核酸、または他のポリペプチドをコードする核酸は、それが、そのポリペプチドをコードする核酸の天然源において通常付随している少なくとも1つの夾雑核酸分子から識別および分離されている核酸分子である。単離された、ポリペプチドをコードする核酸分子は、それが天然で見出される形または設定以外をとる。したがって、単離された、ポリペプチドをコードする核酸分子は、それが天然の細胞において存在する場合のその特定のポリペプチドをコードする核酸分子から区別される。しかしながら、単離された、ポリペプチドをコードする核酸分子には、そのポリペプチドを通常発現する細胞に含有される、ポリペプチドをコードする核酸分子が挙げられ、ここで、例えば、その核酸分子は、天然細胞の位置とは異なる、染色体または染色体外の位置にある。
【0021】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は交換可能に用いられる。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し得、既知または未知の任意の機能を実施し得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、そのポリマーのアセンブリの前または後に、ヌクレオチド構造への修飾が与えられ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチドコンポーネントによって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識コンポーネントとのコンジュゲーションなど、ポリマー化後にさらに修飾され得る。
【0022】
本明細書で定義される場合、用語「p53障害」または「p53媒介性疾患」は、特にp53変異タンパク質により引き起こされる、p53媒介性新生物形成に関連した障害を指す。p53障害の例には、限定されるわけではないが、好ましくは癌および他の新生物に関して、以下が挙げられるが、それらに限定されない:以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物。
【0023】
「ベクター」は、好ましくは適切な宿主において自己複製する、核酸分子であり、それは、挿入された核酸分子を宿主細胞の中へおよび/または宿主細胞間で転移させる。その用語は、主にDNAまたはRNAの細胞への挿入のために機能するベクター、主にDNAまたはRNAの複製のために機能する複製ベクター、ならびにDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを含む。また、上記の機能の1つより多くを提供するベクターも含まれる。「発現ベクター」は、適切な宿主細胞の中へ導入された場合、転写され、かつポリペプチドへ翻訳され得るポリヌクレオチドである。「発現系」は、通常、所望の発現産物を生じるように機能することができる発現ベクターで構成された適切な宿主細胞を含意する。
【0024】
用語「作動可能に連結された」は、記載されたコンポーネントの並置であって、そこで、それらのコンポーネントが、それらの意図された様式でそれらが機能することを可能にする関係にある、並置を指す。コード配列と「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合した条件下で達成されるように、ライゲーションされている。「作動可能に連結された」配列には、目的の遺伝子と近接する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するようにトランスでまたはある距離を置いて作用する発現制御配列の両方が挙げられ得る。用語「発現制御配列」は、それらがライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングに作用するのに必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーター、およびエンハンサー配列;スプライシングなどの効率的なRNAプロセシングシグナルおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに、必要に応じて、タンパク質分泌を増強する配列が挙げられる。そのような制御配列の性質は、宿主生物体によって異なる;原核生物において、そのような制御配列には、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が挙げられる;真核生物において、一般的に、そのような制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。用語「制御配列」は、その存在が発現およびプロセシングに必須であるコンポーネントを含むことが意図され、その存在が有利である追加のコンポーネント、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。他に言及がない限り、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を発現ベクターへ挿入することの本明細書での記載または言及は、その挿入される核酸もまた、その挿入される核酸分子を含有する発現ベクターが適合性宿主細胞または生物体の適合性細胞へ導入される場合、コードされた融合タンパク質の発現に必要とされる、機能性プロモーターならびに他の転写および翻訳制御エレメントとベクター内で作動可能に連結されていることを意味する。
【0025】
ポリヌクレオチドに適用される場合の「組換え型の」は、そのポリヌクレオチドが、宿主細胞において潜在的に発現し得る構築物を生じる、インビトロクローニング、制限および/またはライゲーションのステップ、ならびに他の手順の様々な組合せの産物であることを意味する。
【0026】
用語「遺伝子」および「遺伝子断片」は、本明細書で交換可能に用いられる。それらは、転写および翻訳された後、特定のタンパク質をコードする能力がある少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。遺伝子または遺伝子断片は、そのポリヌクレオチドが少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有する限り、ゲノムDNAまたはcDNAであり得、それは、コード領域全体またはそのセグメントを網羅し得る。「融合遺伝子」は、一緒に連結されている少なくとも2つの異種性ポリヌクレオチドで構成される遺伝子である。
【0027】
用語「疾患」および「障害」は、当技術分野において容認可能な医療水準および行為により同定された病的状態を示すように、交換可能に用いられる。
【0028】
本明細書で用いられる場合、用語「有効量」は、疾患またはその1つもしくは複数の症状の重症度および/または期間を低下させまたは改善する;有害なまたは病的な状態の進展を防止する;病的状態の退行を引き起こす;病的状態に関連した1つまたは複数の症状の再発、発達、発生、または進行を防止する;障害を検出する;あるいは、治療(例えば、別の予防または治療剤の投与)の予防的または治療的効果を増強しまたは向上させるのに十分である治療の量を指す。
【0029】
本明細書で用いられる場合、用語「Jドメイン」は、Hsp70およびその同族の内因性ATPアーゼ触媒活性を加速する能力を保持する断片を指す。様々なJタンパク質のJドメインが決定されており(例えば、Kampingaら (2010)Nat.Rev.、11:579~592;Hennessyら (2005)Protein Science、14:1697~1709参照(それぞれは、全体として参照により組み入れられている))、以下のいくつかのホールマークによって特徴づけられる:4つのαヘリックス(I、II、III、IV)、および通常、ヘリックスIIとIIIの間に高度に保存された、ヒスチジン、プロリン、およびアスパラギン酸のトリペプチド配列モチーフ(「HPDモチーフ」と呼ばれる)を有することにより特徴づけられる。典型的には、Jタンパク質のJドメインは、50アミノ酸長から70アミノ酸長の間であり、Hsp70-ATPシャペロンタンパク質とのJドメインの相互作用(結合)の部位は、ヘリックスII内から伸びる領域であると考えられており、HPDモチーフは、Hsp70 ATPアーゼ活性の刺激に必要である。本明細書で用いられる場合、用語「Jドメイン」は、Hsp70の内因性ATPアーゼ活性を加速する能力を保持する、天然のJドメイン配列およびその機能性バリアントを含むことを意図され、その能力は、当技術分野においてよく知られた方法を用いて測定することができる(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、Horneら (2010)J.Biol.Chem.、285、21679~21688参照)。ヒトJドメインの非限定的リストは、表1に提供されている。
【0030】
詳細な説明
本発明者らは、Jタンパク質のJドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質構築物と細胞をある程度、接触させることが、変異p53機能を回復させる予想外の効果を生じることを見出している。変異p53は、いくつかの破壊的な新生物形成を引き起こすと考えられている。したがって、p53障害を処置するための、例えばそれを必要とする対象においての、有用な組成物および方法が本明細書に提供される。
【0031】
シャペロンに基づいた治療に関連した問題を克服するために、本発明者らは、高い特異性を有する人工シャペロンタンパク質をデザインすることが可能であるかどうかを調べた。本発明者らは、Hsp70結合/活性化のためのエフェクタードメイン(Jドメイン配列)、およびp53タンパク質に対する特異性を与えるドメインを含む一連の融合タンパク質構築物をデザインした。生じた融合タンパク質は、Hsp70およびその同族の内因性ATPアーゼ触媒活性を加速するように作用し、その結果として、タンパク質フォールディングの増加、機能の回復、および/またはクリアランスの加速を生じる。
【0032】
I. 融合タンパク質構築物
a. 本発明における有用なJドメイン
様々なJタンパク質のJドメインが決定されている。例えば、Kampingaら、Nat.Rev.、11:579~592(2010);Hennessyら、Protein Science、14:1697~1709(2005)参照。本発明の融合タンパク質を調製することにおいて有用なJドメインは、主にHsp70 ATPアーゼ活性を加速するJドメインの特徴を定義する鍵を握る。したがって、本発明において有用な単離されたJドメインは、4つのαヘリックス(I、II、III、IV)、および通常、ヘリックスIIとIIIの間に高度に保存された、ヒスチジン、プロリン、およびアスパラギン酸のトリペプチド配列(「HPDモチーフ」と呼ばれる)を有することにより特徴づけられる、ポリペプチドドメインを含む。典型的には、Jタンパク質のJドメインは、50アミノ酸長から70アミノ酸長の間であり、Hsp70-ATPシャペロンタンパク質とのJドメインの相互作用(結合)の部位は、ヘリックスII内から伸びる領域であると考えられており、HPDモチーフは、原始的な活性の基礎をなす。代表的なJドメインには、DnaJB1、DnaJB2、DnaJB6、DnaJC6のJドメイン、SV40のラージT抗原のJドメイン、および哺乳動物のシステインストリングタンパク質(CSP-α)のJドメインが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の融合タンパク質に用いられ得るこれらを始めとするJドメインについてのアミノ酸配列は、表1に提供されている。保存HPDモチーフは、太字で強調されている。一実施形態において、本明細書に開示された融合タンパク質は、配列番号1~50からなる群から選択されるJドメインを含む。別の実施形態において、本明細書に開示された融合タンパク質は、コンセンサスHPDモチーフを含むJドメインを含む。一つの特定の実施形態において、配列番号1~15、17~50からなる群から選択される。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号1、5、6、10、16、24、25、31、および49からなる群から選択から選択されるJドメインを含む。
【0033】
【表1-1】
【0034】
【表1-2】
【0035】
【表1-3】
【0036】
b. p53結合性ドメイン
融合タンパク質はまた、少なくとも1つのp53結合性ドメインを含む。p53結合性ドメインは、融合タンパク質を形成するようにJドメインと連結された一本鎖ポリペプチドまたは多量体ポリペプチドであり得る。
【0037】
p53結合性ドメインが、細胞内において病的レベルで存在する時のp53タンパク質を結合することができるような十分な親和性を有することは理想である。したがって、一実施形態において、融合タンパク質は、96ウェルマイクロタイタープレート上でのELISAにより試験された場合、例えば、2μM以下、1μM以下、500nM以下、300nM以下、100nM以下、30nM以下の、p53レポーター構築物に対するKを有するp53結合性ドメインを含む。
【0038】
Hsp70機構が、ミスフォールドしたタンパク質だけに係合すると考えられていることは注目される。また一方、場合によっては、融合タンパク質が、p53のミスフォールド型だけを係合することが好ましくあり得る。したがって、いくつかの実施形態において、p53結合性ドメインは、p53のミスフォールド型と優先的に結合する。必ずしもではないが、ミスフォールド型(例えば、p53のR175、R245、およびR249変異型)に対して、より高い親和性を有するp53結合性ドメインの能力は、融合タンパク質が病原型だけをHsp70機構へより選択的に係合させることを可能にするであろう。
【0039】
別の実施形態において、融合タンパク質はまた、Jドメインと化学的にコンジュゲートされているp53結合性ドメインの使用を企図する。p53結合性ドメインは、Jドメインと直接的にコンジュゲートされ得る。あるいは、それは、リンカーによりJドメインとコンジュゲートされ得る。例えば、当業者に知られて、かつp53結合性ドメインをJドメインと、または標的化ドメインを、p53結合性ドメインおよびJドメインを含む融合タンパク質と架橋するのに有用である多数の化学的架橋剤がある。例えば、架橋剤は、分子を段階的な様式で連結するために用いることができるヘテロ二官能性架橋剤である。ヘテロ二官能性架橋剤は、タンパク質をコンジュゲートするためのより特異的なカップリング方法をデザインする能力を提供し、それにより、ホモタンパク質ポリマーなどの望ましくない副反応の発生を低下させる。様々なヘテロ二官能性架橋剤が当技術分野において知られており、それには、スクシンイジミル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-a-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC-SPDP)が挙げられる。N-ヒドロキシスクシンイミド部分を有する架橋剤は、一般的により高い水溶性を有するN-ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得ることができる。加えて、連結鎖内にジスルフィド架橋を有する架橋剤は、インビボでのリンカー切断の量を低下させるためにアルキル誘導体として、代わりに合成することができる。ヘテロ二官能性架橋剤に加えて、ホモ二官能性架橋剤および光反応性架橋剤を含む、いくつかの他の架橋剤が存在する。ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、およびジメチルピメリミデート・2HClは、この開示に用いられる有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス-[B-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)およびN-スクシンイミジル-6(4’-アジド-2’-ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(SANPAH)は、有用な光反応性架橋剤の例である。タンパク質カップリング技術の最近の概説について、参照により本明細書に組み入れられた、Meansら、(1990)Bioconj.Chem.1:2~12を参照されたい。
【0040】
【表2】
【0041】
c. 任意選択のリンカー
本明細書に記載された融合タンパク質は、任意選択で、1つまたは複数のリンカーを含有することができる。リンカーは、ペプチド性または非ペプチド性であり得る。リンカーの目的は、とりわけ、タンパク質内の機能性ドメインの間(例えば、Jドメインとp53結合性ドメインの間、p53結合性ドメインのタンデム配置の間、Jドメインとp53結合性ドメインと任意選択の標的化試薬のいずれかの間、またはJドメインとp53結合性ドメインと任意選択の検出ドメインまたはエピトープのいずれかの間)に、そのドメインのそれぞれの最適な機能のために、適切な距離を与えることである。明らかに、リンカーは、好ましくは、本発明の融合タンパク質のJドメイン、標的タンパク質結合性ドメインのそれぞれの機能に干渉しない。リンカーは、本発明の融合タンパク質に存在する場合には、標的タンパク質(p53タンパク質)によって引き起こされる細胞毒性を減弱するように選択され得、直接的付着が所望の効果を達成するならば、それは省略され得る。本発明の融合タンパク質に存在するリンカーは、本明細書に記載されているようなタンパク質ドメインまたは融合タンパク質全体をコードする核酸セグメントをインフレームで挿入されている発現ベクターのクローニング部位あたりの核酸のセグメント上に存在するヌクレオチド配列によってコードされる1個または複数のアミノ酸を含み得る。一実施形態において、ペプチドリンカーは、1アミノ酸長から20アミノ酸長の間である。別の実施形態において、ペプチドリンカーは、2アミノ酸長から15アミノ酸長の間である。なお別の実施形態において、ペプチドリンカーは、2アミノ酸長から10アミノ酸長の間である。
本発明による融合タンパク質を作製するために1つまたは複数のポリペプチドリンカーを選択することは、当業者の知識と技能の範囲内である。例えば、Araiら、Protein Eng.、14(8):529~532(2001);Crastoら、Protein Eng.、13(5):309~314(2000);Georgeら、Protein Eng.、15(11):871~879(2003);Robinsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:5929~5934(1998)参照(それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。本発明による融合タンパク質を調製することにおいて用いられ得る2個以上のアミノ酸のリンカーの例には、下記の表3に提供されたものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0042】
【表3】
【0043】
d. 標的化試薬
本明細書に開示された融合タンパク質はさらに、標的化部分を含み得る。本明細書で用いられる場合、用語「標的化部分」および「標的化試薬」は、交換可能に用いられ、細胞においてまたは対象の身体において、融合タンパク質の結合、輸送、蓄積、滞留時間、生物学的利用率を増強し、またはその生物活性もしくは治療効果を改変する、融合タンパク質に会合した物質を指す。標的化部分は、組織、細胞、および/または細胞内のレベルで機能性を有し得る。標的化部分は、例えば融合タンパク質の対象への投与により、融合タンパク質の特定の細胞、組織、もしくは器官への局在、または細胞内分布を方向づけることができる。一実施形態において、標的化部分は、融合タンパク質のN末端に位置する。別の実施形態において、標的化部分は、融合タンパク質のC末端に位置する。なお別の実施形態において、標的化部分は内部に位置する。別の実施形態において、標的化部分は、化学的コンジュゲーションを介して融合タンパク質と付着する。
【0044】
標的化部分には、とりわけ、有機もしくは無機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、タンパク質、抗体もしくはその断片、成長因子、酵素、レクチン、抗原もしくは免疫原、ウイルスもしくはそのコンポーネント、ウイルスベクター、受容体、受容体リガンド、毒素、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドもしくはアプタマー、ヌクレオチド、炭水化物、糖、脂質、糖脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド、ホルモン、成長因子、化学誘引物質、サイトカイン、ケモカイン、薬物、または小分子が挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0045】
本発明の例示的実施形態において、標的化部分は、標的細胞または組織、例えば、神経細胞、中枢神経系、および/または末梢神経系において、プラットフォーム、またはその関連したリガンドおよび/もしくは活性物質の結合、輸送、蓄積、滞留時間、生物学的利用率を増強し、またはその生物活性もしくは治療効果を改変する。したがって、標的化部分は、中枢神経系に関連した細胞受容体に対する特異性を有し得、または血液脳関門(BBB)を経由してのCNSへの送達の増強に別様に関連する。結果的に、上記のようなリガンドは、リガンドと標的化部分の両方であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、標的化部分は、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第10,111,965号に記載されているような、細胞透過性ペプチドであり得る。別の実施形態において、標的化部分は、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願第16/131,591号に記載されているような、抗体またはその抗原結合性断片もしくは一本鎖誘導体であり得る。さらなる実施形態において、標的化部分は、核移行シグナルまたは核外移行シグナルについてのアミノ酸配列であり得る。
【0047】
標的化部分は、標的化された細胞送達のためのプラットフォームに、そのコアと直接的または間接的に結合することにより、連結され得る。例えば、コアがナノ粒子を含む実施形態において、標的化部分のナノ粒子とのコンジュゲーションは、ナノ粒子にPEGを繋ぎ止めるために用いられる類似した官能基を利用することができる。したがって、標的化部分は、標的化部分の官能化を通してナノ粒子と直接的に結合することができる。あるいは、標的化部分は、上記で論じられているように、標的化部分の官能化PEGとのコンジュゲーションを通して、ナノ粒子と間接的に結合することができる。標的化部分は、共有結合性、非共有結合性、または静電気性相互作用によってコアと接着することができる。一実施形態において、標的化部分はペプチドである。特定の実施形態において、標的化部分は、融合タンパク質のN末端と共有結合性に付着するペプチドである。
【0048】
e. エピトープ
ある特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質に追加の性質を与えることができる任意選択のエピトープまたはタグを含有する。本明細書で用いられる場合、用語「エピトープ」および「タグ」は、典型的には融合タンパク質のN末端またはC末端と付着する、典型的には300アミノ酸長以下の、アミノ酸配列を指すのに交換可能に用いられる。一実施形態において、本発明の融合タンパク質はさらに、精製を促進するために用いられるエピトープを含む。下記の表4に提供された、精製に有用なそのようなエピトープの例には、ヒトIgG1 Fc配列(配列番号68)、FLAGエピトープ(DYKDDDDK、配列番号69)、His6エピトープ(配列番号70)、c-myc(配列番号71)、HA(配列番号72)、V5エピトープ(配列番号73)、またはグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(配列番号74)が挙げられる。別の実施形態において、本発明の融合タンパク質はさらに、対象、例えばヒトへ投与された時、融合タンパク質の半減期を増加させるために用いられるエピトープを含む。半減期を増加させるために有用なそのようなエピトープの例には、ヒトFc配列が挙げられる。したがって、一つの特定の実施形態において、融合タンパク質は、Jドメインおよびp53結合性ドメインに加えて、ヒトFcエピトープを含む。エピトープは、融合タンパク質のC末端に位置する。
【0049】
【表4】
【0050】
f. 細胞透過性ペプチド
なお他の実施形態において、本明細書に記載された融合タンパク質はさらに、細胞透過性ペプチドを含み得る。細胞透過性ペプチドは、コンジュゲートされたカーゴを、それが小分子であろうと、ペプチドであろうと、タンパク質であろうと、核酸であろうと、細胞へ運ぶことが知られている。本発明の融合タンパク質における細胞透過性ペプチドの非限定的例には、ポリカチオン性ペプチド、例えば、HIV TATペプチド49-57、ポリアルギニン、およびペネトラチンpAntan(43-58)、両親媒性ペプチド、例えば、pep-1、疎水性ペプチド、例えば、C405Y、およびその他同種類のものが挙げられる。下記の表5参照。
【0051】
【表5】
【0052】
したがって、一実施形態において、本融合タンパク質は、細胞透過性ペプチドおよび融合タンパク質を含み、前記細胞透過性ペプチドが、配列番号75~78からなる群から選択され、前記融合タンパク質がJドメインおよびp53結合性ドメインを含む。一実施形態において、前記融合タンパク質は、配列番号80~91および100~107からなる群から選択される。別の実施形態において、本融合タンパク質は、配列番号75のシグナル配列、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。別の実施形態において、本融合タンパク質は、配列番号76の細胞透過性ペプチド、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。なお別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号77の細胞透過性ペプチド、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。さらに別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号78の細胞透過性ペプチド、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。細胞透過性ペプチドを含む本融合タンパク質構築物を発現する細胞は、対象、例えばヒト対象(例えば、p53障害を有し、または患うリスクがある患者)へ投与され得る。融合タンパク質は、細胞から分泌され、p53機能を回復するのを助けおよび/またはp53凝集を低下させる。
【0053】
g. Jドメインおよびp53結合性ドメインの配置
本明細書に記載された融合タンパク質は、多数の様式で配置され得る。一実施形態において、p53結合性ドメインは、JドメインのC末端側へ付着している。別の実施形態において、p53結合性ドメインは、JドメインのN末端側へ付着している。p53結合性ドメインおよびJドメインは、いずれの立体配置においても、任意で、上記のようなリンカーを介して、分離され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、Jドメインは、複数のp53結合性ドメイン、例えば、2つのp53結合性ドメイン、3つのp53結合性ドメイン、4つのp53結合性ドメイン、またはそれ以上と付着し得る。p53結合性ドメインは、JドメインのN末端側へ付着し得る。あるいは、p53結合性ドメインは、JドメインのC末端側へ付着し得る。なお別の実施形態において、p53結合性ドメインは、JドメインのN末端側およびC末端側に付着し得る。複数のp53結合性ドメインのそれぞれは、同じp53結合性ドメインであり得る。別の実施形態において、融合タンパク質における複数のp53結合性ドメインのそれぞれは、異なるp53結合性ドメイン(すなわち、異なる配列)であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、以下の群:
a. DNAJ-X-T、
b. DNAJ-X-T-X-T、
c. DNAJ-X-T-X-T-X-T、
d. T-X-DNAJ、
e. T-X-T-X-DNAJ、
f. T-X-T-X-T-X-DNAJ、
g. T-X-DNAJ-X-T、
h. T-X-DNAJ-X-T-X-T、
i. T-X-T-X-DNAJ-X-TT、
j. TTDNAJ-X-T-X-TTTTTDNAJ-X-T、
k. T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
l. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T、
m. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T、
n. T-X-T-X-T-X-DNAJ-X-T-X-T-X-T、
o. DnaJ-X-DnaJ-X-T-X-T、
p. T-X-DnaJ-X-DnaJ、
q. T-X-T-X-DnaJ-X-DnaJ、および
r. T-X-TDnaJ-X-TDnaJ-X-TTTT
から選択される構造を含み得、
ここで、
Tはp53結合性ドメインであり、
DNAJはJタンパク質のJドメインであり、
Xは任意選択のリンカーである。
【0056】
一実施形態において、融合タンパク質は、配列番号5、6、10、24、および31からなる群から選択されるJドメインを含む。一つの特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号5のJドメインを含む。
【0057】
別の実施形態において、p53結合性ドメインは、配列番号51~56からなる群から選択される。一つの特定の実施形態において、p53結合性ドメインは、配列番号51~52からなる群から選択される。
【0058】
なお別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号5のJドメインおよび配列番号51のp53結合性ドメインを含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号5のJドメイン、および配列番号52のp53結合性ドメインの少なくとも2個のコピーを含む。
【0059】
Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質構築物の非限定的例は、図2に模式的に描かれ、下記の表6にも示されている。別の実施形態において、特定の融合タンパク質構築物は、配列番号80~91からなる群から選択される。
【0060】
【表6-1】
【0061】
【表6-2】
【0062】
【表6-3】
【0063】
II. 融合タンパク質構築物をコードする核酸
本発明の別の態様によれば、(a)前述の実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または(b)(a)のポリヌクレオチドの相補体から選択されるポリヌクレオチドを含む、単離された核酸が提供される。本発明は、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質をコードする、単離された核酸、ならびに融合タンパク質をコードするそのような核酸分子と相補的な配列、加えて、その相同バリアントを提供する。別の態様において、本発明は、本明細書に開示された融合タンパク質をコードする核酸、融合タンパク質をコードする核酸と相補的な配列、加えて、その相同バリアントを作製するための方法を包含する。本発明のこの態様による核酸は、プレメッセンジャーRNA(pre-mRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅されたDNA、相補DNA(cDNA)、合成DNA、または組換えDNAであり得る。
【0064】
さらに別の態様において、(a)融合タンパク質をコードするヌクレオチドを合成しおよび/またはアセンブルするステップ、(b)コード遺伝子を、宿主細胞に適切な発現ベクターへ組み入れるステップ、(c)適切な宿主細胞を発現ベクターで形質転換するステップ、ならびに(d)融合タンパク質が形質転換宿主細胞において発現することを引き起こしまたは可能にする条件下で宿主細胞を培養し、それにより、生物活性融合タンパク質を産生し、産生された生物活性融合タンパク質が、当技術分野において知られた標準タンパク質精製方法によって、単離された融合タンパク質として回収される、ステップを含む、融合タンパク質を産生する方法が開示される。分子生物学における標準組換え技術が、本発明のポリヌクレオチドおよび発現ベクターを作製するために用いられる。
【0065】
本発明によれば、本明細書に開示された融合タンパク質をコードする核酸配列(またはその相補体)は、適切な宿主細胞において融合タンパク質の発現を指示する組換えDNA分子を作製するために用いられる。いくつかのクローニングストラテジーは、本発明を実施するのに適しており、その多くは、本発明の融合タンパク質またはその相補体をコードする遺伝子を含む構築物を作製するために用いられる。いくつかの実施形態において、クローニングストラテジーは、本発明の融合タンパク質またはその相補体をコードする遺伝子を産生するために用いられる。
【0066】
ある特定の実施形態において、1つまたは複数の融合タンパク質をコードする核酸は、RNA分子であり、プレメッセンジャーRNA(pre-mRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅されたDNA、相補DNA(cDNA)、合成DNA、または組換えDNAであり得る。
【0067】
様々な実施形態において、核酸は、所望のポリペプチドを一過性に発現するために細胞へ導入されるmRNAである。本明細書で用いられる場合、「一過性の」は、数時間、数日間、または数週間の期間の間の、組み込まれていない導入遺伝子の発現を指し、発現の期間は、ゲノムへ組み込まれ、または細胞における安定なプラスミドレプリコン内に含有される場合のポリヌクレオチドの発現についての期間より短い。
【0068】
特定の実施形態において、ポリペプチドをコードするmRNAは、インビトロで転写されたmRNAである。本明細書で用いられる場合、「インビトロで転写されたRNA」とは、インビトロで合成されているRNA、好ましくはmRNAを指す。一般的に、インビトロで転写されたRNAは、インビトロ転写ベクターから生成される。インビトロ転写ベクターは、インビトロで転写されたRNAを生成するために用いられる鋳型を含む。
【0069】
特定の実施形態において、mRNAはさらに、5’キャップもしくは修飾5’キャップおよび/またはポリ(A)配列を含み得る。本明細書で用いられる場合、5’キャップ(RNAキャップ、RNA 7-メチルグアノシンキャップ、またはRNA m7Gキャップとも呼ばれる)は、転写の開始後すぐに真核生物メッセンジャーRNAの「最前部(front)」または5’末端に付加されている修飾グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、最初に転写されたヌクレオチドに連結され、かつリボソームによって認識され、かつRnアーゼから保護される末端基を含む。キャッピング部分は、mRNAの機能性、例えば、その安定性または翻訳の効率を調節するために修飾され得る。特定の実施形態において、mRNAは、約50個から約5000個の間のアデニンのポリ(A)配列を含む。一実施形態において、mRNAは、約100塩基から約1000塩基の間、約200塩基から約500塩基の間、または約300塩基から約400塩基の間のポリ(A)配列を含む。一実施形態において、mRNAは、約65塩基、約100塩基、約200塩基、約300塩基、約400塩基、約500塩基、約600塩基、約700塩基、約800塩基、約900塩基、または約1000塩基もしくはそれ以上のポリ(A)配列を含む。ポリ(A)配列は、mRNAの機能性、例えば、局在化、安定性、または翻訳の効率を調節するために化学的または酵素的に修飾され得る。
【0070】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」およびその他同種類のものは、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または以下で定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、参照ポリヌクレオチドと比較して、1個または複数のヌクレオチドが、付加し、または欠失し、または異なるヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドを含む。この点において、変異、付加、欠失、および置換を含むある特定の変更を、参照ポリヌクレオチドに行うことができ、それにより変更されたポリヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することは、当技術分野においてよく理解されている。
【0071】
ある特定の実施形態において、核酸配列は、目的の遺伝子(例えば、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列を核酸カセット内に含む。本明細書で用いられる場合、用語「核酸カセット」または「発現カセット」は、RNAおよびその後、ポリペプチドを発現することができるベクター内の遺伝的配列を指す。一実施形態において、核酸カセットは、目的の遺伝子、例えば、目的のポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態において、核酸カセットは、1つまたは複数の発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、および目的の遺伝子、例えば目的のポリヌクレオチドを含有する。ベクターは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個、またはそれ以上の核酸カセットを含み得る。核酸カセットは、カセット内の核酸がRNAへ転写され、必要に応じて、タンパク質もしくはポリペプチドへ翻訳され、形質転換細胞における活性に必要とされる適切な翻訳後修飾を起こし、適切な細胞内コンパートメントへと標的化することまたは細胞外のコンパートメントへの分泌により、生物活性のために適切なコンパートメントへと転位することができるように、ベクター内に位置的にかつ順序的に方向づけられる。好ましくは、カセットは、ベクターへの即時挿入に適応した3’および5’末端を有し、例えば、それは、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。カセットは、単一ユニットとして、プラスミドまたはウイルスベクターへ除去および挿入され得る。
【0072】
特定の実施形態における使用に適した実例的な遍在性発現制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルスのサルウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、およびPl lプロモーター、伸長因子1-アルファ(EFla)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核生物の翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(b-KIN)、ヒトROSA 26遺伝子座(Irionsら、Nature Biotechnology 25、1477~1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター(Okabeら (1997)FEBS let.407:313~9)、b-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負制御領域が欠失し、dl587revプライマー結合部位に置換された(MND)U3プロモーター(Haasら、Journal of Virology.2003;77(l7):9439~9450)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
一実施形態において、プロモーターなどの導入遺伝子標的特異性および発現を増強するための少なくとも1つのエレメント(例えば、Powellら (2015)Discovery Medicine 19(102):49~57(その内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている)参照)が、本明細書に記載されたポリヌクレオチドと共に用いられ得る。たいていの組織において発現を促進するプロモーターには、ヒト伸長因子la-サブユニット(EFla)、最初期サイトメガロウイルス(CMV)、ニワトリβ-アクチン(CBA)およびその誘導体CAG、βグルクロニダーゼ(GUSB)、またはユビキチンC(UBC)が挙げられるが、それらに限定されない。組織特異的発現エレメントは、ある特定の細胞型へ発現を制限するために用いられ、それには、例えば、ニューロン、アストロサイト、またはオリゴデンドロサイトへ発現を制限するために用いられ得る神経系プロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。ニューロンについての組織特異的発現エレメントの非限定的例には、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来成長因子B鎖(PDGF-β)、シナプシン(Syn)、メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)、CaMKII、mGluR2、NFL、NFH、ηβ2、PPE、Enk、およびEAAT2のプロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。アストロサイトについての組織特異的発現エレメントの非限定的例には、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびEAAT2のプロモーターが挙げられる。オリゴデンドロサイトについての組織特異的発現エレメントの非限定的例には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーターが挙げられる。Yuら(全体として参照により組み入れられた(2011)Molecular Pain、7:63)は、ラットDRG細胞および一次DRG細胞におけるCAG、EFIa、PGK、およびUBCプロモーター下でのeGFPの発現を、レンチウイルスベクターを用いて評価し、UBCが、他の3つのプロモーターより弱い発現を示し、全てのプロモーターについてたった10~12%だけのグリア発現があることを見出した。Soderblomら(全体として参照により組み入れられた、E.Neuro 2015)は、CMVおよびUBCプロモーターを有するAAV8ならびにCMVプロモーターを有するAAV2におけるeGFPの発現を、運動皮質内の注射後、評価した。UBCまたはEFIaプロモーターを含有するプラスミドの鼻腔内投与は、CMVプロモーターでの発現より高い持続性気道発現を示した(例えば、全体として参照により組み入れられた、Gillら、(2001)Gene Therapy、8巻、1539~1546参照)。Husainら(全体として参照により組み入れられた(2009)Gene Therapy)は、hGUSBプロモーター、HSV-1LATプロモーター、およびNSEプロモーターを有するΗβΗ構築物を評価し、ΗβΗ構築物が、マウス脳においてNSEより弱い発現を示すことを見出した。PassiniおよびWolfe(全体として参照により組み入れられた、J.Virol.2001、12382~12392)は、新生仔マウスにおける脳室内注射後のΗβΗベクターの長期効果を評価し、少なくとも1年間の持続性発現があることを見出した。Xuら(全体として参照により組み入れられた、(2001)Gene Therapy、8、1323~1332)により、CMV-lacZ、CMV-luc、EF、GFAP、hENK、nAChR、PPE、PPE+wpre、NSE(0.3kb)、NSE(1.8kb)、およびNSE(1.8kb+wpre)との比較として、NF-LおよびNF-Hプロモーターが用いられた場合、全ての脳領域における低発現が見出された。Xuらは、プロモーター活性が、降順で、NSE(1.8kb)、EF、NSE(0.3kb)、GFAP、CMV、hENK、PPE、NFL、およびNFHであることを見出した。NFLは650ヌクレオチドのプロモーターであり、NFHは、920ヌクレオチドのプロモーターであり、両方とも肝臓に存在しないが、NFHが、自己受容感覚ニューロン、脳、および脊髄において豊富であり、NFHは心臓に存在する。Scn8aは、470ヌクレオチドのプロモーターであり、DRG、脊髄、および脳中に発現し、特に、海馬ニューロンおよび小脳プルキンエ細胞、皮質、視床および視床下部に特に高い発現が見られる。(例えば、全体として参照により組み入れられた、Drewsら 2007およびRaymondら 2004参照)。
【0074】
III. 融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター
本発明による核酸を含むベクターもまた提供される。そのようなベクターは、好ましくは、ホスファターゼをコードする核酸配列の転写/翻訳に必要なエレメント(例えば、プロモーターおよび/またはターミネーター配列)などの追加の核酸配列を含む。前記ベクターはまた、前記ベクターで形質転換された宿主細胞を選択または維持するために選択マーカー(例えば、抗生物質)をコードする核酸配列を含み得る。用語「ベクター」は、別の核酸分子を移入させまたは輸送する能力がある核酸分子を指す。移入した核酸は、一般的に、ベクター核酸分子と連結され、例えば、その中へ挿入される。ベクターは、細胞において自己複製を指示する配列を含み得、または宿主細胞DNAへの組込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。特定の実施形態において、非ウイルスベクターは、本明細書で企図された1つまたは複数のポリヌクレオチドを罹患細胞(例えば、神経細胞)へ送達するために用いられる。一実施形態において、ベクターは、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質をコードする、インビトロで合成されまたは合成的に調製されたmRNAである。非ウイルスベクターの実例には、mRNA、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌人工染色体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
ベクターの実例には、プラスミド、自己複製配列、および転位因子、例えば、piggyBac、Sleeping Beauty、Mosl、Tcl/mariner、Tol2、mini-Tol2、Tc3、MuA、Himar I、Frog Prince、およびそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。ベクターの追加の実例には、非限定的に、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはPl由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして有用なウイルスの実例には、非限定的に、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(vims))、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。発現ベクターの実例には、哺乳動物細胞における発現のためのpClneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子移入および発現のためのpLenti4/V 5-DEST(商標)、pLenti6/V 5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V 5-GW/lacZ(Invitrogen)が挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に開示されたポリペプチドのコード配列は、哺乳動物細胞におけるポリペプチドの発現のためにそのような発現ベクターへライゲーションされ得る。
【0076】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソームベクター、または染色体外に維持されるベクターである。本明細書で用いられる場合、用語「エピソームの」は、宿主の染色体DNAへの組込みなしに、かつ分裂する宿主細胞から徐々に失われることなしに複製することができる、つまり、前記ベクターが染色体外にまたはエピソーム的に複製する、ベクターを指す。
【0077】
ベクターは、様々な部位特異的リコンビナーゼのいずれかについての1つまたは複数の組換え部位を含み得る。部位特異的リコンビナーゼについての標的部位が、ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組込みに必要とされる任意の部位に加えてであることは、理解されるべきである。本明細書で用いられる場合、用語「組換え配列」、「組換え部位」、または「部位特異的組換え部位」は、リコンビナーゼが認識しかつ結合する特定の核酸配列を指す。
【0078】
例えば、Creリコンビナーゼについての1つの組換え部位は、8塩基対コア配列に隣接する2つの13塩基対逆方向反復(リコンビナーゼ結合部位として働く)を含む34塩基対配列である、loxPである(Sauer,B.、Current Opinion in Biotechnology 5:521~527(1994)の図1参照)。FLPリコンビナーゼについての適切な認識部位には、FRT(McLeodら、1996)、FI、F2、F3(SchlakeおよびBode、1994)、FyFs(SchlakeおよびBode、1994)、FRT(LE)(Senecoffら、1988)、FRT(RE)(Senecoffら、1988)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0079】
認識配列の他の例は、attB、attP、attL、およびattR配列であり、それらは、リコンビナーゼ酵素lインテグラーゼ、例えば、phi-c3lによって認識される。(pC3l SSRは、ヘテロタイプな部位、attB(34bp長)とattP(39bp長)の間のみの組換えを媒介する(Grothら、2000)。細菌ゲノムおよびファージゲノム、それぞれにおけるファージインテグラーゼについての付着部位に関して名付けられたattBおよびattPはどちらも、おそらくφ031ホモダイマーにより結合される、不完全な逆方向反復を含有する(Grothら、2000)。生成部位、attLおよびattRは、事実上、さらなるtpQA 1媒介性組換えに対して不活性であり(Beltekiら、2003)、反応を不可逆性にさせている。挿入を触媒することについて、attB保有DNAは、attP部位がゲノムattB部位へ挿入するより容易に、ゲノムattP部位へ挿入することが見出されている(Thyagarajanら、2001;Beltekiら、2003)。したがって、典型的なストラテジーは、相同組換えにより、attP保有「ドッキング部位」を、限定された遺伝子座へ位置づけ、その後、そのattP保有「ドッキング部位」が、挿入としてのattB保有の入ってくる配列とパートナーを組まされる。
【0080】
本明細書で用いられる場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)のATGなどの開始コドンへの直接的な配列内リボソーム進入を促進し、それにより、遺伝子のキャップ非依存性翻訳をもたらすエレメントを指す。例えば、Jacksonら、1990 Trends Biochem Sci 15(12):477~83、ならびにJacksonおよびKaminski 1995 RNA 1(10):985~1000参照。特定の実施形態において、ベクターは、1つまたは複数のポリペプチドをコードする1つまたは複数の目的のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、複数のポリペプチドのそれぞれの効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、1つもしくは複数のIRES配列、または自己切断性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によって分離され得る。一実施形態において、本明細書で企図されるポリヌクレオチドに用いられるIRESは、EMCV IRESである。
【0081】
本明細書で用いられる場合、用語「コザック配列」は、リボソームの小サブユニットとのmRNAの最初の結合を大いに促進し、翻訳を増加させる、短いヌクレオチド配列を指す(Kozak、1986、Cell 44(2):283~92、およびKozak、1987、Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。特定の実施形態において、ベクターは、コンセンサスコザック配列を有するポリヌクレオチド、ならびにJドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。異種性核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を方向づけるエレメントは、異種性遺伝子発現を増加させる。転写終結シグナルは、一般的に、ポリアデニル化シグナルの下流に見出される。特定の実施形態において、ベクターは、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’側にポリアデニル化配列を含む。
【0082】
本明細書で企図された特定の実施形態における使用に適したウイルスベクター系の実例には、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスのベクターが挙げられるが、それらに限定されない。
【0083】
様々な実施形態において、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、細胞、例えば、神経細胞へ、1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を細胞に形質導入することにより、導入される。AAVは、小さい(約26nm)複製欠損の、主にエピソーム性の、無エンベロープのウイルスである。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムへ組み入れ得る。組換えAAV(rAAV)は、典型的には、最小限で、導入遺伝子、ならびにその制御配列、ならびに5’および3’ AAV末端逆位配列(ITR)で構成される。ITR配列は、約145bp長である。特定の実施形態において、rAAVは、AAV1、AAV2(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、US6962815B2に記載された)、AAV3、AAV4、AAV5(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、US7479554B2に記載された)、AAV6、AAV7、AAV8(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、US7282199B2に記載された)、AAV9(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、US9737618B2に記載された)、AAV rh10(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、US9790472B2に記載された)、またはAAV10から単離されたITRおよびカプシド配列を含む。一実施形態において、本発明のベクターは、AAV2、AAV5、AAV8、AAV9、およびAAV rh10からなる群から選択されるカプシド内へ被包される。一実施形態において、ベクターは、AAV2内に被包される。一実施形態において、ベクターは、AAV5内に被包される。一実施形態において、ベクターは、AAV8内に被包される。一実施形態において、ベクターは、AAV9内に被包される。なお一実施形態において、ベクターは、AAV rh10内に被包される。
【0084】
いくつかの実施形態において、ITR配列が1つのAAV血清型から単離され、かつカプシド配列が異なるAAV血清型から単離されているキメラrAAVが用いられる。例えば、AAV2に由来したITR配列およびAAV6に由来したカプシド配列を有するrAAVは、AAV2/AAV6と呼ばれる。特定の実施形態において、rAAVベクターは、AAV2に由来したITR、およびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10のいずれか1つに由来したカプシドタンパク質を含み得る。好ましい実施形態において、rAAVは、AAV2に由来したITR配列およびAAV6に由来したカプシド配列を含む。好ましい実施形態において、rAAVは、AAV2に由来したITR配列およびAAV2に由来したカプシド配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、操作および選択方法は、目的の細胞を形質導入する可能性をより高くするために、AAVカプシドへ適用することができる。
【0086】
rAAVベクターの構築、その産生および精製は、例えば、米国特許第9,169,494号;第9,169,492号;第9,012,224号;第8,889,641号;第8,809,058号;および第8,784,799号に開示されており、それらの特許のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0087】
IV. 送達
特定の実施形態において、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、非ウイルスまたはウイルスのベクターにより細胞へ導入される。特定の実施形態において企図されたポリヌクレオチドの非ウイルス性送達の実例的方法には、エレクトロポレーション、ソノポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、DEAE-デキストラン媒介性移入、遺伝子銃、および熱ショックが挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
特定の実施形態において企図された特定の実施形態における使用に適したポリヌクレオチド送達系の実例には、Amaxa Biosystems、Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Inc.により提供される送達系が挙げられるが、それらに限定されない。リポフェクション試薬は、商業的に販売されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適しているカチオン性および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liuら、(2003)Gene Therapy 10:180~187;およびBalazsら、(20W)Journal of Drug Delivery 2011:1~12参照。抗体により標的化された、細菌由来の、非生存のナノセルに基づいた送達もまた、特定の実施形態において企図される。
【0089】
特定の実施形態において企図されたポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボで、個々の患者への投与により、典型的には、下に記載されているように、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内の注入)により、くも膜下腔内注射、脳室内注射、または局所適用により、送達され得る。あるいは、ベクターは、個々の患者(例えば、動員末梢血、リンパ球、骨髄液、組織生検など)から外植された細胞または万能ドナーの造血幹細胞などのエクスビボでの細胞へ送達され、その後、その細胞を患者へ再植え込みされ得る。
【0090】
一実施形態において、本明細書に開示された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボでの細胞の形質導入のために生物体へ直接的に投与される。
【0091】
あるいは、裸のDNAが投与され得る。投与は、分子を血液または組織細胞との最終的な接触へ導入するために通常用いられる経路のいずれかによってであり、その経路には、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションが挙げられるが、それらに限定されない。そのような核酸を投与する適切な方法が利用でき、当業者によく知られており、特定の組成物を投与するために1つより多い経路を用いることができるが、特定の経路が、別の経路より速効性が高くかつより効果的な反応を提供することができる。
【0092】
様々な実施形態において、本明細書に開示された融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、細胞、例えば、神経細胞または神経幹細胞へ、1つまたは複数のポリヌクレオチドを含むレトロウイルス、例えばレンチウイルスを細胞に形質導入することにより、導入される。本明細書で用いられる場合、用語「レトロウイルス」は、そのゲノムRNAを直鎖状二本鎖DNAコピーへ転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムへ共有結合性に組み込む、RNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に適した実例的なレトロウイルスには、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)、ならびにレンチウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で用いられる場合、用語「レンチウイルス」は、複雑なレンチウイルスの一群(または一属)を指す。実例的なレンチウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型を含む);ビスナ・マエディウイルス(VMV);ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態において、HIVに基づいたベクターバックボーン(すなわち、HIVシス作用性配列エレメント)が好ましい。
【0093】
レンチウイルスベクターは、好ましくは、LTRを改変することの結果としてのいくつかの安全性の増強を含有する。「自己不活性化」(SIN)ベクターは、複製欠損ベクター、例えば、U3領域として知られた、右側(3’)のLTRエンハンサー-プロモーター領域が、ウイルス複製の最初のラウンドを超えてのウイルス転写を防止するように(例えば、欠失または置換により)改変されている、ベクターを指す。追加の安全性増強は、5’ LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を駆動させる異種性プロモーターと置き換えることにより提供される。用いられ得る異種性プロモーターの例には、例えば、ウイルスのサルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(vims)(HSV)(チミジンキナーゼ)のプロモーターが挙げられる。ある特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、公知の方法に従って作製される。例えば、Kutnerら、BMC Biotechnol.2009;9:10 Doi:10.1186/1472-6750-9-10;Kutnerら、Nat.Protoc.2009;4(4):495~505 Doi:l0.l038/nprot.2009.22参照。
【0094】
本明細書で企図されたある特定の実施形態によれば、ウイルスベクターバックボーン配列の大部分または全部は、レンチウイルス、例えばHIV-1に由来している。しかしながら、レトロウイルスおよび/もしくはレンチウイルス配列の多くの異なる源が用いられ得、またはレンチウイルス配列のある部分における組み合わせられた多数の置換および変更が、トランスファーベクターが本明細書に記載された機能を実施する能力を損なうことなく、受け入れられ得ることは理解されるべきである。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当技術分野において知られており、Naldiniら(l996a、l996b、および1998);Zuffereyら、(1997);Dullら、1998、米国特許第6,013,516号;および第5,994,136号を参照されたい(それらの多くは、本明細書で企図されたウイルスベクターまたはトランスファープラスミドを作製するように適応し得る)。
【0095】
様々な実施形態において、本明細書に開示された融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、標的細胞へ、1つまたは複数のポリヌクレオチドを含むアデノウイルスを細胞へ形質導入することにより導入される。アデノウイルスに基づいたベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率の能力があり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高い力価および高いレベルの発現が得られている。このベクターは、相対的に単純な系において大量に産生され得る。たいていのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd Ela、Elb、および/またはE3遺伝子を置き換えるように操作され、その後、その複製欠損ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスに供給するヒト293細胞において増殖される。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉内で見出される細胞などの非分裂性の分化細胞を含む複数の型の組織をインビボで形質導入することができる。通常のAdベクターは、大きな運搬能を有する。
【0096】
複製欠損である、現在のアデノウイルスベクターの生成および伝播は、293と名付けられた固有のヘルパー細胞株を利用し得、その細胞株は、ヒト胚性腎臓細胞からAd5 DNA断片により形質転換され、Elタンパク質を構成的に発現する(Grahamら、1977)。E3領域は、アデノウイルスゲノムからなくても済むため(Jones & Shenk、1978)、293細胞の助けを借りる現在のアデノウイルスベクターは、El、E3、または両方のいずれかの領域において外来DNAを有する(Graham & Prevec、1991)。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levreroら、1991;Gomez-Foixら、1992)およびワクチン開発(Grunhaus & Horwitz、1992;Graham & Prevec、1992)に用いられている。異なる組織へ組換えアデノウイルスを投与することにおける研究には、気管滴下(Rosenfeldら、1991;Rosenfeldら、1992)、筋肉注射(Ragotら、1993)、末梢静脈内注射(Herz & Gerard、1993)、および脳への定位接種(Le Gal La Salleら、1993)が挙げられる。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083~9(1998))。
【0097】
様々な実施形態において、本発明の融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、対象の標的細胞へ、1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む単純ヘルペスウイルス、例えば、HSV-l、HSV-2を細胞に形質導入することにより導入される。
【0098】
成熟HSVビリオンは、152kbである直鎖状二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを含む、エンベロープ型正二十面体カプシドからなる。一実施形態において、HSVに基づいたウイルスベクターは、1つまたは複数の必須または非必須のHSV遺伝子が欠損している。一実施形態において、HSVに基づいたウイルスベクターは、複製欠損である。たいていの複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために1つまたは複数の最初期、初期、または後期HSV遺伝子を除去する欠失を含有する。例えば、HSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、およびそれらの組合せからなる群から選択される最初期遺伝子が欠損し得る。HSVベクターの利点は、結果として長期DNA発現を生じ得る、潜伏期を進入できるその能力、および最大25kbまでの外因性DNA挿入断片を収容できるその大きなウイルスDNAゲノムである。HSVに基づいたベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、第5,846,782号、および第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637、およびWO99/06583に記載されている(それらのそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
【0099】
V. 融合タンパク質を発現する細胞
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載された融合タンパク質を発現する細胞を提供する。細胞は、上記で記載されているような融合タンパク質をコードするベクターをトランスフェクトされ得る。一実施形態において、細胞は原核細胞である。別の実施形態において、細胞は真核細胞である。なお別の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態において、細胞はヒト細胞である。別の実施形態において、細胞は、p53媒介性新生物形成を患っておりまたは患うリスクがある患者に由来するヒト細胞であり、p53媒介性新生物形成には、限定されるわけではないが、癌および他の新生物が挙げられ、その癌および他の新生物には、以下が挙げられるが、それらに限定されない:以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物。細胞は肝実質細胞または筋肉細胞であり得る。
【0100】
融合タンパク質を発現する細胞は、融合タンパク質を産生することにおいて有用であり得る。この実施形態において、細胞は、融合タンパク質を過剰発現するベクターをトランスフェクトされる。融合タンパク質は、任意選択で、エピトープ、例えば、(それぞれ、プロテインAカラムまたは抗FLAG抗体カラムを用いる)精製を促進する、本明細書に記載されているようなヒトFcドメインまたはFLAGエピトープを含有し得る。エピトープは、融合タンパク質の残りの部分と、リンカー、または精製中もしくは後にエピトープが融合タンパク質から除去され得るようにプロテアーゼ基質配列を介して、接続され得る。
【0101】
代替の実施形態において、融合タンパク質の分泌型を発現する細胞が用いられ得る。例えば、融合タンパク質構築物は、N末端にシグナル配列を有するようにデザインされ得る。代表的なシグナル配列は下記の表7に示されている。
【0102】
【表7】
【0103】
したがって、一実施形態において、本融合タンパク質は、シグナル配列および融合タンパク質を含み、前記シグナル配列が配列番号94~96からなる群から選択され、前記融合タンパク質がJドメインおよびp53結合性ドメインを含む。一実施形態において、シグナル配列は、配列番号94~96からなる群から選択され、融合タンパク質は、配列番号80~91、100~107からなる群から選択される。別の実施形態において、本融合タンパク質は、配列番号94のシグナル配列、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。別の実施形態において、本融合タンパク質は、配列番号95のシグナル配列、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。別の実施形態において、本融合タンパク質は、配列番号96のシグナル配列、ならびに配列番号80~91、100~107からなる群から選択される融合タンパク質を含む。シグナル配列を含む融合タンパク質構築物を発現する細胞は、対象、例えばヒト対象(例えば、p53障害を有し、または患うリスクがある患者)へ投与され得る。融合タンパク質は、細胞から分泌され、p53機能を回復するのを助けおよび/またはp53凝集を低下させる。
【0104】
上記で記載されているように、ある特定の実施形態において、本融合タンパク質はさらに、細胞透過性ペプチドを含み得る。シグナル配列および細胞透過性ペプチドを含む融合タンパク質を発現する細胞は、シグナル配列を欠く融合タンパク質を分泌する能力がある。細胞透過性ペプチドも含む分泌性融合タンパク質は、その後、すぐ近くの細胞に進入する能力があり、それらの細胞において、p53機能を回復させおよび/またはp53凝集を低下させる潜在能力を有する。
【0105】
VI. 使用方法
別の態様において、本発明は、障害において、および/または変異p53により媒介される障害もしくは状態である、p53障害において、有益な効果を達成するための方法を提供する。p53障害は癌である。癌には、以下のいずれかを挙げることができる:以下の部位の、原発性であると明言または推定される悪性新生物:頭頚部癌を含む、唇、口腔、および咽頭の悪性新生物;食道、結腸、肝臓、または膵臓癌を含む消化器官の悪性新生物;肺癌を含む、呼吸および胸腔内器官の悪性新生物;骨肉腫を含む、骨および関節軟骨の悪性新生物;メラノーマおよび皮膚の他の悪性新生物;肉腫を含む、中皮および軟部組織の悪性新生物;乳房の悪性新生物;卵巣癌を含む、女性生殖器の悪性新生物;前立腺癌を含む、男性生殖器の悪性新生物;膀胱癌を含む、尿路の悪性新生物;神経膠芽腫を含む、眼、脳、および中枢神経系の他の部分の悪性新生物;甲状腺癌を含む、甲状腺および他の内分泌腺の悪性新生物;明確に定義されていない、続発性の、および不特定の部位の悪性新生物;多発性骨髄腫、リンパ性白血病、または骨髄性白血病を含む、リンパ系、造血性、および関連組織の悪性新生物;骨髄異形成症候群を含む、不確定または不明な挙動の新生物。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明は、p53疾患、障害、または状態を有する、ヒトなどの対象を処置するための方法であって、治療的または予防的有効量の融合タンパク質、そのような融合タンパク質をコードする核酸、または本明細書に記載されたそのような融合タンパク質をコードするウイルスベクターを対象へ投与するステップを含み、前記投与が、結果として、p53疾患、障害、または状態に関連した1つまたは複数の生化学的もしくは生理学的パラメータまたは臨床エンドポイントの向上を生じる、方法を提供する。
【0107】
他の実施形態において、本発明は、細胞においてp53機能を回復させおよび/またはp53凝集を低下させる方法を提供する。細胞は培養細胞または単離された細胞であり得る。細胞はまた、対象、例えばヒト対象に由来し得る。一実施形態において、ヒト対象は、1つまたは複数の型の癌を含む、p53障害疾患を患っておりまたは患うリスクがある。
【0108】
p53タンパク質の活性は、いくつかの方法で検出することができる。一例において、p53の転写活性は、p21などの下流遺伝子によりモニターすることができる。別の実施形態において、p53機能は、人工レポーター構築物を含むレポーター遺伝子アッセイによりモニターされる。
【0109】
したがって、一実施形態において、方法は、未処理または対照細胞と比較した場合、少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、p53活性を回復させるのに有効な融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードする核酸、ベクター、もしくはウイルス粒子の量と細胞を接触させるステップを含む。
【0110】
下記の実施例1に示されているように、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む融合タンパク質の発現は、p21発現のレベルを回復させることが見出されている。そのようなものとして、別の実施形態において、方法は、未処理または対照細胞と比較した場合、少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、p53タンパク質の機能を回復させるのに有効な、融合タンパク質、融合タンパク質を発現する細胞、または融合タンパク質をコードする核酸、ベクター、もしくはウイルス粒子の量と細胞を接触させるステップを含む。
【0111】
VII. 薬学的組成物
本明細書で企図された組成物は、本明細書で企図されているような、Jドメインおよびp53結合性ドメインを含む1つまたは複数の融合タンパク質、そのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、それを含むベクター、遺伝子修飾された細胞などを含み得る。組成物は、薬学的組成物が挙げられるが、それに限定されない。「薬学的組成物」は、単独かまたは1つもしくは複数の他の治療モダリティーと組み合わせての細胞または動物への投与のための薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される溶液として製剤化された組成物を指す。必要に応じて、組成物は、なお他の作用物質、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬物、抗体、または他の様々な薬学的活性物質も組み合わせて、投与され得ることも理解されるであろう。追加の作用物質が、意図された治療を送達する本組成物の能力に悪影響を及ぼさないならば、本組成物にまた含まれ得る他のコンポーネントに、事実上、制限はない。
【0112】
句「薬学的に許容される」は、合理的な利益/リスク比に釣り合って、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに、健全な医学的判断の範囲内において、適している、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように、本明細書で用いられる。
【0113】
本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」、「希釈剤」、または「賦形剤」には、ヒトまたは家畜における使用について容認できるとして、米国食品医薬品局によって認可されている、非限定的に、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、香味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶剤、界面活性剤、または乳化剤が挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体には、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;コーン(com)スターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター、ワックス、動物および植物脂肪、パラフィン、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン(com)油、およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリーの水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬学的製剤中に用いられる任意の他の適合性物質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0114】
VIII. 投薬量
本明細書に記載された組成物(例えば、融合タンパク質構築物、核酸、または遺伝子治療ウイルス粒子を含む組成物)の投薬量は、本化合物の薬力学的性質;投与の様式;レシピエントの年齢、健康、および体重;症状の性質および程度;処置の頻度、およびもしあれば、同時処置の型;ならびに処置されることになっている動物における本化合物のクリアランス速度などの多くの因子に依存して変動し得る。本明細書に記載された組成物は、臨床応答に依存して、必要に応じて調整され得る、適切な投薬量で、最初、投与され得る。いくつかの態様において、組成物の投薬量は、予防的または治療的有効量である。
【0115】
IX. キット
(a)本明細書に記載された、細胞または対象においてp53機能を回復させる融合タンパク質構築物、そのような融合タンパク質をコードする核酸、またはそのような核酸を包含するウイルス粒子を含む薬学的組成物、および(b)本明細書に記載された方法のいずれかを実施するための使用説明書を含む添付文書を含むキットが企図される。いくつかの態様において、キットは、(a)本明細書に記載された細胞または対象においてp53機能を回復させる、本明細書に記載された組成物を含む薬学的組成物、(b)追加の治療剤、および(c)本明細書に記載された方法のいずれかを実施するための使用説明書を含む添付文書を含む。
【実施例
【0116】
Jドメインが変異タンパク質の適切なフォールディングを促進するように特定的に操作され得るかどうかを試験するために、本発明者らは、p53タンパク質を標的化するようにデザインされたいくつかの融合タンパク質構築物をデザインし、試験した。
【0117】
実施例1:融合タンパク質デザイン
A. 方法
一般的な技術および材料
本発明の実施は、他に指示がない限り、当業者の能力の範囲内である、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクス、および組換えDNAの通常の技術を用いる。Sambrook,J.ら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001;「Current protocols in molecular biology」、F.M.Ausubelら編、1987;シリーズ「Methods in Enzymology」、Academic Press、San Diego、Calif.;「PCR 2:a practical approach」、M.J.MacPherson、B.D.Hames、およびG.R.Taylor編、Oxford University Press、1995;「Antibodies、a laboratory manual」 Harlow,E.およびLane,D.編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988;「Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第11版、McGraw-Hill、2005;ならびにFreshney,R.I.、「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique」、第4版、John Wiley & Sons、Somerset、NJ、2000(それらの内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている)参照。HEK-293細胞(ヒト胚性腎臓細胞)は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から購入された。抗FLAG抗体は、Thermo Fisher Scientificから購入された。ウサギ抗GFP抗体は、GenScripts(Piscataway、NJ)から購入された。精製および特徴づけを容易にするために、この実施例1に用いられる融合タンパク質構築物のいくつかは、配列番号80~91に提供された配列に加えて、配列番号69のFLAGエピトープを、そのタンパク質のC末端かまたはN末端のいずれかに、短いリンカー配列に加えて、含有する。
【0118】
HCT-116細胞におけるタンパク質の発現および検出
様々なタンパク質構築物をコードする発現ベクタープラスミドを、HCT-116細胞へ、Lipofectamine 3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて、トランスフェクトした。細胞可溶化物を、発現したタンパク質について、イムノブロットアッセイを用いて分析した。培地の試料を、分析前に、遠心分離して、デブリを除去した。細胞を、2mM PMSFおよびプロテアーゼカクテル(完全プロテアーゼ阻害剤カクテル;Sigma)を含有する溶解バッファー(10mM Tris-HCl、pH8.0、150mM NaCl、10mM EDTA、2%SDS)中に溶解した。短時間の超音波処理後、試料を、発現したタンパク質について、イムノブロットアッセイを用いて分析した。イムノブロット分析について、試料を、SDS試料バッファー中で煮沸し、ポリアクリルアミド電気泳動に流した。その後、分離されたタンパク質バンドを、PVDF膜へ転写した。
【0119】
発現したタンパク質を、化学発光シグナルを用いて検出した。簡単に述べれば、ブロットを、特定のタンパク質(例えば、p21)を結合する能力がある一次抗体と反応させた。反応していない一次抗体を洗い流した後、酵素連結型二次抗体(例えば、HRP連結型抗IgG抗体)を、ブロットと結合した一次抗体分子と反応させた。すすいだ後、化学発光試薬を加え、ブロットにおいて結果として生じた化学発光シグナルを、X線フィルム上に捕獲した。
【0120】
ELISA
HCT-116細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル、2mM PMSF、10mM NaF、および2mM Na3VO4を追加した溶解バッファー(50mM Tris、pH8.0、120mM NaCl、0.5% NP-40)中にホモジナイズした。短時間の超音波処理後、遠心分離によりデブリを除去した。タンパク質濃度は、BCAアッセイキット(Pierce)により測定される。上清を、製造業者の標準プロトコールを用いて、ELISA(Human Total p21/CIP1/CDKN1A DuoSet IC ELISA:R&D Systems)に供した。
【0121】
細胞毒性アッセイ(LDHアッセイ)
HCT-116細胞またはp53R249Sを安定的に発現するHCT-116細胞を、48ウェル培養プレート上へ播種した。1日目において、培地を、8ug/ml ポリブレンおよび構築物2を発現するレンチウイルス粒子または実質的な遺伝子をコードしない対照レンチウイルスを含有する新鮮な培地と交換した。72時間後、培地を、1uM ドキソルビシンを含有する新鮮な培地と交換し、細胞を、さらに12時間、培養した。一部の研究について、構築物2を、リポフェクションにより発現させた。トランスフェクションから24時間後、培地を、新鮮な培地と交換し、細胞をさらに24~48時間、培養した。その後、培地を収集し、製造業者のプロトコールを用いて、LDHアッセイ(LDH-Cytox(商標)アッセイキット:BioLegend:426401)に供した。
【0122】
B. レポーター構築物
本発明者らは、まず、p53を標的化する本発明の融合分子が培養細胞においてそれの機能を回復させるかどうかを調べた。この目的を達成するために、本発明者らは、野生型p53、加えて、「立体構造的変異」として知られているR175HおよびR249S変異を含有するp53を含むp53構築物を作製した(下記の表8参照)。HCT-116細胞を、培養し、野生型p53またはR175H(配列番号98)もしくはR249S(配列番号99)を含有するp53変異体をコードするプラスミドをトランスフェクトした。図3に示されているように、本発明者らは、R175H(左)またはR249S(右)を含有する変異p53が、野生型p53の代わりに発現した場合、p53によるp21の下流誘導が消失すること(例えば、レーン2対3を比較する)を見出した。
【0123】
【表8】
【0124】
C. 融合タンパク質構築物
本発明の融合タンパク質が、p53機能を回復させるのに用いることができるかどうかを決定するために、最初の実験をまず、変異p53を認識するペプチド配列とコンジュゲートされた、ヒトHsp40 Jドメインタンパク質に由来したJドメイン配列を含む融合タンパク質の同時発現により行った(データ未呈示)。構築物2(JB1-CDB3)をコードするプラスミドを、レポーター構築物(p53R175Hまたはp53R249S)と共にHCT-116細胞へトランスフェクトした。発現後、細胞を、溶解バッファー中に溶解し、続いて、抗p21抗体または抗p53抗体を用いるイムノブロッティングアッセイに供した。野生型p53の発現は、p21の誘導を生じ、一方、変異体(R175HまたはR249S)はそのように生じることができなかった。驚くべきことに、構築物2を発現する細胞は、p21発現の実質的な回復を示したが、p53タンパク質レベルそれ自体は、有意には変化しなかった(図3)。
【0125】
その結果をさらに検証するために、変異p53(R249S)を発現する安定細胞を、標準方法により確立した。最初のHCT-116細胞またはp53R249Sを安定的に発現するHCT-116細胞を培養し、構築物2を発現するレンチウイルスとインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、1uM ドキソルビシンにより12時間、刺激した。細胞を溶解し、タンパク質濃度をBCAアッセイにより測定した。等量の細胞可溶化液をELISAに供して、p21発現を定量化した。図4に示されているように、変異p53を安定的に発現する細胞は、より低いp21発現レベルを保持した(1番目のバー対2番目のバー)。ドキソルビシンとのインキュベーションは、p21の発現を強く誘導したが(3番目のバー)、変異p53を発現する細胞においてはより弱く誘導した(4番目のバー)。驚くべきことに、構築物2は、p21の誘導を完全に回復させた(5番目のバー)。
【0126】
最後に、p53の細胞毒性活性を評価した。R175HかまたはR249Sのいずれかのp53変異体を安定的に発現するHCT-116細胞を培養し、構築物2を、上記のようにレンチウイルスを用いて発現させた。発現後、細胞を、1μM ドキソルビシンの存在下でさらに12時間、培養した。培地を収集し、LDH細胞毒性アッセイを実施した。図5に示されているように、構築物2を発現する細胞は、ドキソルビシンの細胞毒性効果に対して感受性がより高かった。これらのデータは、p53立体構造問題が、Hsp70媒介性経路を用いて解決され得ることを示唆した。
【0127】
同様に、追加の構築物を作製し、試験した。p53のR175HかまたはR249Sのいずれかの変異型を発現する細胞は、野生型p53と比較してより低い細胞毒性効果を示し、一方、構築物3(図6)、構築物16、または構築物17(図7)のいずれも、細胞毒性効果を部分的に回復した。
【0128】
その後、本発明者らは、表9に表されているように、一連の融合タンパク質構築物をデザインした。
【0129】
【表9-1】
【0130】
【表9-2】
【0131】
実施例2:融合タンパク質構築物をコードするAAVベクター
例示的な遺伝子治療ベクターは、表9の融合タンパク質構築物をコードするコドン最適化cDNAを有するAAV9ベクターにより構築される。構築物をコードするcDNAは、コザック配列の下流に位置し、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGHpA)シグナルによってポリアデニル化される。カセット全体は、AAV-2の2つの非コード末端逆位配列によって隣接されている。
【0132】
組換えAAVベクターは、上記のものと類似したバキュロウイルス発現系を用いて調製される(Urabeら、2002;Unzuら、2011(Kotin、2011に概説されている))。簡単に述べれば、複製およびパッケージングのためのREPをコードする1つ、AAV9のカプシドについてのCAP-5をコードする1つ、および発現カセットを有する1つである、3つの組換えバキュロウイルスが、SF9昆虫細胞に感染するために用いられる。精製は、AVB Sepharose高速アフィニティ媒体(GE Healthcare Life Sciences、Piscataway、NJ)を用いて実施される。ベクターは、導入遺伝子についてのプライマー-プローブの組合せでのQPCRを用いて滴定され、力価は、1mlあたりのゲノムコピー数(GC/ml)として表される。ベクターの力価は、およそ8×1013~2×1014GC/mlの間である。
【0133】
他の態様
この明細書で言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に示されて、全体として参照により組み入れられているかのように同じ程度で、全体として参照により本明細書に組み入れられている。本出願における用語が、参照により本明細書に組み入れられた文書においてと異なって定義されていることが見出された場合、本明細書に提供された定義がその用語についての定義としての役割を果たすものとする。
【0134】
本発明は、その特定の態様に関連して記載されているが、本発明はさらに改変することができ、一般的に本発明の原理に従い、かつ当技術分野内での公知または慣習的な実施範囲内に入り、上記で示された本質的な特徴に適用することができような、本開示からの逸脱を含む、本発明の任意のバリエーション、使用、または適応を網羅することを、この出願は意図され、主張された範囲内に従うことは理解されるであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】