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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多価インフルエンザワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/145 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241003BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/44 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K39/145
A61K39/39
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K9/127
A61K47/28
A61K47/10
A61K47/24
A61K48/00
C12N15/44
C07K14/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520887
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 US2022045992
(87)【国際公開番号】W WO2023059857
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,986
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/277,848
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・アレファンティス
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・バロ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・バイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デーヴィッドソン
(72)【発明者】
【氏名】メリーアン・ギエル-モロニー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ-アレクサンドレ・ジルベール
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・クリーンサウス
(72)【発明者】
【氏名】アルマハン・ナイク
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・プガチョフ
(72)【発明者】
【氏名】サランヤ・シュリダー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス・ワレン
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・ゼルドヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC06
4C076DD34
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF63
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA55
4C085CC08
4C085DD86
4C085EE03
4C085FF11
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
標準治療インフルエンザウイルス株由来のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、又はそれをコードするリボ核酸分子と;機械学習によって同定若しくは設計された1つ以上のインフルエンザウイルスHA、又は機械学習によって同定若しくは設計されたインフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子とを含む多価ワクチン又は免疫原性組成物が開示される。また、ワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)(ここで、前記第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)、又は前記第1のインフルエンザウイルスH1 HAをコードする第1のリボ核酸分子と;
(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、前記第2のインフルエンザウイルスHAは、第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである)、又は前記第2のインフルエンザウイルスH3 HAをコードする第2のリボ核酸分子と;
(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、前記第3のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の前記第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子と;
(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、前記第4のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の前記第4のインフルエンザウイルスHAをコードする第4のリボ核酸分子と;
(e)機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(ここで、前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、若しくはこれらの組み合わせから選択される)と、
を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記リボ核酸分子は、mRNA分子である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記リボ核酸分子は、脂質-ナノ粒子(LNP)に封入されている、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記分子配列は、アミノ酸配列又は核酸配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、非野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、組換えインフルエンザウイルスHAを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、不活化インフルエンザウイルス、任意選択によりスプリット不活化ウイルス中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAの少なくとも1つをコードするリボ核酸分子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なる、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレードに由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似している、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、前記第5のインフルエンザH3 HAは前記第2のインフルエンザH3 HAと同じクレードに由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なる、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、前記第5のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと同じクレードに由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAは、3C.2Aクレード由来のH3 HAである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、前記第5のインフルエンザウイルスHAは、3C.3Aクレード由来のH3 HAである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
第6のインフルエンザウイルスHAをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記第6のインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するH1 HA、又は前記第6のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子である、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なるか、前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1HAによって誘導される防御免疫反応を増強するか、前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するか、前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来するか、前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと同じクレードに由来するか、又は前記第6のインフルエンザH1 HAは前記第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するB/ビクトリア系統由来の第7のインフルエンザウイルスHA、又は前記第7のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するB/山形系統由来の第8のインフルエンザウイルスHA、又は前記第8のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記機械学習モデルは、生物学的反応を予測するように訓練される、請求項1~28のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記生物学的反応は、ヒト、フェレット、又はマウスの生物学的反応である、請求項29に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記生物学的反応は、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)、抗体法医学(AF)、又は中和アッセイを含む、請求項29又は30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、組換えインフルエンザウイルスHAである、請求項1~31のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
前記第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する、請求項1~31のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
前記第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAをリボ核酸分子として含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、培養昆虫細胞においてバキュロウイルス発現系によって産生される、請求項7~34のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
前記第1のインフルエンザウイルスHAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1HAであり、前記第2のインフルエンザウイルスHAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである、請求項1~35のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
アジュバントをさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
前記アジュバントは、水中スクアレンアジュバント又はリポソームベースのアジュバントを含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記水中スクアレンアジュバントは、AF03を含む、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記リポソームベースのアジュバントは、SPA14を含む、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
各リボ核酸分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
筋肉内注射用に製剤化される、請求項1~41のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
前記リボ核酸分子は、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロールベースの脂質、及びヘルパー脂質を含むLNPに封入されている、請求項1~42のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項44】
インフルエンザウイルスに対して対象を免疫する方法であって、請求項1~43のいずれか一項に記載の免疫原性組成物の免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項45】
前記対象におけるインフルエンザウイルス感染を予防する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象に防御免疫反応を生じさせる、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記防御免疫反応は、HA抗体反応を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象は、ヒトである、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫原性組成物は、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、鼻腔内、吸入、又は腹腔内投与される、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方によって引き起こされる疾患を治療又は予防する、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象はヒトであり、前記ヒトは生後6か月以上、生後6~35か月、少なくとも2歳、少なくとも3歳、18歳未満、少なくとも18歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも生後6か月且つ18歳未満、少なくとも3歳且つ18歳未満、又は少なくとも18歳且つ65歳未満である、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、請求項1~43のいずれか一項に記載の免疫原性組成物の予防的有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項53】
2~6週間、任意選択により4週間の間隔で、2用量の前記免疫原性組成物を前記対象に投与することを含む、請求項44~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~43のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を含むワクチン組成物。
【請求項55】
前記免疫原性組成物は、ワクチン組成物である、請求項44~53のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月8日に出願された米国仮特許出願第63/253,986号、及び2021年11月10日に出願された米国仮特許出願第63/277,848号の利益を主張し、その出願日に依拠し、それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書においては、複数のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タンパク質又はインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子を含む多価インフルエンザワクチン又は免疫原性組成物が開示され、この多価ワクチン又は免疫原性組成物は、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する少なくとも1つのインフルエンザウイルスHA(又は、少なくとも1つのインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子)を含む。さらに、多価インフルエンザワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法が本明細書において開示される。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザは、主に鼻、咽喉及び気管支を含む上気道を攻撃し、稀にまた肺も攻撃するウイルスによって引き起こされる。感染は、通常、約1週間続く。それは、高熱、筋肉痛、頭痛及び重度の倦怠感、乾性咳嗽、咽頭痛、並びに鼻炎の突然の発症を特徴とする。ほとんどの人は、いかなる治療も必要とせずに、1~2週間以内に回復する。しかしながら、非常に若い人、高齢者、及び肺疾患、糖尿病、癌、腎臓又は心臓の問題などの病状に苦しんでいる人々においては、インフルエンザは深刻なリスクをもたらす。これらの人々では、感染が基礎疾患、肺炎及び死亡の重度の合併症をもたらし得るが、健康な成人や年長の小児であっても同様に影響を受け得る。毎年の季節性インフルエンザの流行により、世界中で毎年、300万~500万人が重症化し、250,000~500,000人が死亡すると考えられている。
【0004】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバーである。インフルエンザウイルスには、インフルエンザA型、インフルエンザB型及びインフルエンザC型と呼ばれる3つの主なサブタイプがある。インフルエンザビリオンは、以下のタンパク質をコードするセグメント化されたマイナスセンスRNAゲノムを含有する:ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリックス(M1)、プロトンイオンチャネルタンパク質(M2)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質1(PB1)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質2(PB2)、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)、及び非構造タンパク質2(NS2)。HA、NA、M1、及びM2は膜結合型であるが、NP、PB1、PB2、PA、及びNS2はヌクレオカプシド結合型タンパク質である。HA及びNAタンパク質はエンベロープ糖タンパク質であり、それぞれ、細胞へのウイルスの付着及びウイルス粒子の侵入、並びに細胞からの放出に主に関与している。
【0005】
HA及びNAタンパク質はともに、ウイルス中和及び防御免疫のための主要な免疫優性エピトープの供給源であり、インフルエンザ予防ワクチンの重要な成分となっている。インフルエンザウイルスの遺伝子構成は、抗原ドリフトとして知られる、頻繁な軽微な遺伝子変化を可能にする。したがって、HA及びNAを含むインフルエンザの主要な抗原のアミノ酸配列は、特定の群、サブタイプ及び/又は株にわたって非常に変化しやすい。このため、現在の季節性インフルエンザワクチンは毎年の接種が推奨されており、HAにおける変異(抗原ドリフト)を説明し、急速に変化するウイルス株に合わせるために、年1回のサーベイランスを必要とする。
【0006】
特定の既知の認可されたインフルエンザワクチン組成物は、全ビリオン、若しくは脂質を溶解する薬剤で処理したビリオン(「スプリット」ワクチン)、細胞培養において発現された糖タンパク質の精製物(「サブユニットワクチン」)を含有する不活化ワクチン、又は生弱毒化ワクチンである。RNA/DNAベース、ウイルスベクターベースなどの他のタイプのワクチンが開発されている。これらのワクチンは、抗原、例えばHAに対する対象の抗体産生を誘導することによって防御を提供する。変異によるインフルエンザウイルスの抗原性の進化は、HAを変化させ、程度は低いが、NAも変化させる。したがって、利用可能なワクチンは、同一又は交差反応性エピトープを含む表面糖タンパク質を有する株のみを防御することができる。十分な抗原スペクトルを提供するために、従来のワクチンは、いくつかの異なるウイルス株からの成分、例えばA型及びB型インフルエンザの両方の株からの成分を含む。ワクチンに使用するための株の選択は、特定の年ごとに毎年見直され、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)の推奨に基づいている。これらの推奨は国際的な疫学的観察を反映している。
【0007】
推奨されるWHO株は標準治療株として知られ、典型的には、H1N1サブタイプ、H3N2サブタイプ、B/山形系統、及びB/ビクトリア系統を含む。上述のように、抗原ドリフトのために、標準治療株の選択はその年の予想される循環株に適合させるために、毎年更新されなければならない。したがって、市販の従来のインフルエンザワクチンは、通常、インフルエンザウイルス株由来の4つのHA、すなわちH1(HIN1)、H3(H3N2)、B/山形、及びB/ビクトリアのサブタイプ/系統のそれぞれからのものを含む四価ワクチンである。ワクチン組成物は、組換えHAタンパク質、スプリット不活化ビリオンなどの不活化ビリオン、又は弱毒化ビリオンを含み得る。WHOは、世界的なワクチン供給を生産するのに十分な時間を製造業者に与えるために、インフルエンザの季節が始まるかなり前に、標準治療株を選択しなければならず、これは、WHOによって選択された標準治療株が特定の年の循環インフルエンザ株と必ずしも一致しないことを意味する。インフルエンザワクチンの有効性は、年及びサブタイプに応じて約40~60%の範囲で変動し、特にA/H3N2について非常に変動しやすい。A/H3N2の急速な抗原ドリフトは、過去に、例えば北半球の2018~2019年シーズンにおいて、ワクチンミスマッチを引き起こした。季節性ワクチン製剤に含まれるWHOによって選択された推奨標準治療株が、所与の季節の循環インフルエンザ株と異なる場合、市販の従来のインフルエンザワクチンが提供する抗原範囲は狭まり、したがって、インフルエンザ疾患に対する防御効力は低減される。
【0008】
したがって、ワクチン中のインフルエンザ標準治療株を、より広範なインフルエンザ株及びドリフトしたHA株に対して追加の防御及び/又は防御を付与し得る追加の抗原及び/又は抗原を補充し得ることが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、標準治療インフルエンザウイルス株由来のインフルエンザウイルスHA、又は標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子と、1つ以上の、機械学習インフルエンザウイルスHA、又は機械学習インフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子と、を含む多価ワクチン又は免疫原性組成物を提供する。1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA(又はそれをコードするリボ核酸)は、標準的な治療株よりも循環インフルエンザ株に対してより強化された及び/又はより広範な防御を提供し、ワクチンの有効性を高めるように選択され得る。
【0010】
本明細書には、(a)標準治療インフルエンザウイルス株由来の少なくとも3つ若しくは少なくとも4つのインフルエンザウイルスHA、又はそのインフルエンザウイルスHAをコードする少なくとも3つ若しくは少なくとも4つのリボ核酸分子と;(b)機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又はその1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上の複数のリボ核酸分子と、を含むワクチン又は免疫原性組成物が開示される。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0011】
一態様では、(a)第1のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)、又は第1のインフルエンザウイルスH1 HAをコードする第1のリボ核酸分子と;(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは、第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである)、又は第2のインフルエンザウイルスH3 HAをコードする第2のリボ核酸分子と;(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子と;(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAをコードする第4のリボ核酸分子と;(e)機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(ここで、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、若しくはこれらの組み合わせから選択される)と、を含むワクチン又は免疫原性組成物が本明細書において開示される。機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上のHAのそれぞれ(及び、もし存在すれば、他のものから独立して)、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子のそれぞれ(及び、もし存在すれば、他のものから独立して)のそれぞれ(及び、もし存在すれば、他のものから独立して)は、特定の態様においては、免疫原性組成物中のそれぞれの標準治療インフルエンザウイルス株HAと、抗原的に異なっていても、抗原的に類似していても、異なるクレード由来であっても、同じクレード由来であっても、それによって誘導される防御免疫反応を増強するものであっても、及び/又はそれによって誘導される防御免疫反応を拡大するものであってもよい。
【0012】
特定の実施形態では、リボ核酸はmRNA分子であり、特定の実施形態では、リボ核酸分子は脂質-ナノ粒子(LNP)に封入される。特定の実施形態では、リボ核酸分子は、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロールベースの脂質、及びヘルパー脂質を含むLNPに封入される。
【0013】
本明細書に開示される様々な実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含み、特定の実施形態では、機械学習インフルエンザウイルスHAは、非野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含む。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、組換えインフルエンザウイルスHAであり、特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、スプリット不活化ウイルスなどの不活化インフルエンザウイルス中に存在する。特定の実施形態では、多価インフルエンザワクチンは、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAの少なくとも1つをコードする1つ以上のリボ核酸分子を含む。
【0014】
様々な実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHA、又は第5のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子であり、第5のインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである。第5のインフルエンザウイルスH3 HAは、特定の態様においては、第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なっていても、第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似していても、第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強するものであっても、及び/又は第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するものであってもよい。第5のインフルエンザウイルスH3 HAは、特定の態様においては、第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレード由来であっても、第2のインフルエンザH3 HAと同じクレード由来であってもよい。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスH3 HAは、3C.2Aクレード由来であり、特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスH3 HAは、3C.3Aクレード由来である。
【0015】
様々な実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHA、又は第5のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子であり、第5のインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである。第5のインフルエンザウイルスH1 HAは、特定の態様においては、第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なっていても、第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似していても、第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強するものであっても、及び/又は第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するものであってもよい。第5のインフルエンザウイルスH1 HAは、特定の態様においては、第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレード由来であっても、第1のインフルエンザH1 HAと同じクレード由来であってもよい。
【0016】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、第6のインフルエンザウイルスHAをさらに含む。特定の実施形態では、第6のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、特定の実施形態では、第6のインフルエンザウイルスは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するH3 HA、又は第6のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子である。特定の実施形態では、第6のインフルエンザウイルスHAは、H1 HA、例えば機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するH1 HA、又は第6のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子である。特定の実施形態では、第6のインフルエンザH1 HAは、第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なるか、第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強するか、第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するか、第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレード由来であるか、第1のインフルエンザH1 HAと同じクレード由来であるか、又は第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第6のインフルエンザH3 HAは、第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なるか、第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強するか、第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するか、第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレード由来であるか、第2のインフルエンザH3 HAと同じクレード由来であるか、又は第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似している。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、B/ビクトリア系統又はB/山形系統に由来し、且つ機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する第7のインフルエンザウイルスHA、又は第7のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む。
【0018】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する、B/ビクトリア系統に由来する第7のインフルエンザウイルスHA、及びB/山形系統に由来する第8のインフルエンザウイルス、又は第7及び第8のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む。
【0019】
特定の態様では、機械学習モデルは、生物学的反応、例えばヒト、フェレット又はマウスの生物学的反応を予測するように訓練され、特定の態様では、生物学的反応は、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)、抗体法医学(antibody forensics)(AF)、又は中和アッセイを含む。特定の実施形態では、分子配列は、アミノ酸配列又は核酸配列である。特定の実施形態では、分子配列はアミノ酸配列である。
【0020】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の様々な態様では、第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、培養昆虫細胞におけるバキュロウイルス発現系によって産生される組換えインフルエンザウイルスHAなどの組換えインフルエンザウイルスHAである。特定の態様では、第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、スプリット不活化ウイルスなどの不活化インフルエンザウイルス中に存在する。なおさらなる態様では、ワクチン又は免疫原性組成物は、本明細書に記載の第1、第2、第3、及び第4のリボ核酸分子を含む。
【0021】
本明細書に開示される特定の実施形態では、第1のインフルエンザウイルスHAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HAであり、第2のインフルエンザウイルスHAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3HAである。
【0022】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、アジュバント、例えば水中スクアレンアジュバント、例えばAF03、又はリポソームベースのアジュバント、例えばSPA14をさらに含む。
【0023】
本開示の別の態様は、対象にインフルエンザウイルスに対する免疫性を付与する方法であって、本明細書に開示のワクチン又は免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を対象とする。同様に、本開示は、対象にインフルエンザウイルスに対する免疫性を付与するために使用するための、本明細書に記載の免疫学的有効量のワクチン又は免疫原性組成物を提供する。同様に、本開示はまた、インフルエンザウイルスに対する免疫性を付与するための医薬を製造するための、本明細書に記載の免疫学的有効量のワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、本方法又は使用は、対象におけるインフルエンザウイルス感染を予防し、特定の実施形態では、本方法又は使用は、対象に防御免疫反応、例えばHA抗体反応を生じさせる。本明細書に開示の方法又は使用の特定の実施形態では、対象はヒトであり、特定の実施形態では、ヒトは生後6か月以上、生後6~35か月、少なくとも2歳、少なくとも3歳、18歳未満、少なくとも18歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも生後6か月且つ18歳未満、少なくとも3歳且つ18歳未満、又は少なくとも18歳且つ65歳未満である。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、鼻腔内、吸、又は腹腔内に投与されるか又は投与されるように調製される。特定の実施形態では、本明細書に開示の方法又は使用は、季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方によって引き起こされる疾患を治療又は予防する。
【0024】
また、インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、本明細書に開示ワクチン又は免疫原性組成物の予防的有効量を対象に投与することを含む方法が、本明細書において開示される。同様に、本開示は、対象におけるインフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状の軽減に使用するための、本明細書に記載の予防的有効量のワクチン又は免疫原性組成物を提供する。同様に、本開示はまた、対象におけるインフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減するための医薬を製造するための、本明細書に記載の予防的有効量のワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。特定の態様では、本明細書に開示の方法又は使用は、2~6週間、任意選択で4週間の間隔で、2用量のワクチン又は免疫原性組成物を対象に投与することを含む。
【0025】
別の態様では、本明細書に開示の免疫原性組成物を含むワクチン組成物が本明細書において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、HAIアッセイにおいてスコア化されたウイルスサンプルのウイルス1及びウイルス2の仮想的な例を示すモデル図であり、異なるウイルス株の抗原類似性又は非類似性を評価するために、ウイルス1及びウイルス2のHAI力価を、前シーズンのワクチンウイルスと比較し得る。
図2図2は、実施例1に記載するように、A/HONGKONG/45/2019単独(灰色)、A/ALASKA/43/2019単独(緑色)、並びにA/HONGKONG/45/2019及びA/ALASKA/43/2019の組み合わせ(橙色)に同時感染させたフェレットの各群の平均マイクロ中和力価を示す棒グラフである。3C.2クレードの7つの株で観察された力価を左に示し、5つの3C.3クレード株で観察された力価を右に示す。
図3図3は、実施例1に記載するように、A/HONGKONG/45/2019単独(緑色)、A/KANSAS/14/2017単独(青色)、並びにA/HONGKONG/45/2019及びA/KANSAS/14/2017の組み合わせ(橙色)に同時感染させたフェレットの各群の平均マイクロ中和力価を示す棒グラフである。7つの3C.2クレード株で観察された力価を左に示し、5つの3C.3クレード株で観察された力価を右に示す。
図4A図4Aは、実施例1に記載するように、A/HONGKONG/45/2019単独(薄い灰色)、A/ALASKA/43/2019単独(濃い灰色)、並びにA/HONGKONG/45/2019及びA/ALASKA/43/2019(橙色)の組み合わせによる同時感染後の、インフルエンザウイルスの3C.2クレード株(上)及び3C.3株(下)のマイクロ中和力価を示すグラフである。
図4B図4Bは、実施例1に記載するように、A/HONGKONG/45/2019単独(薄い灰色)、A/KANSAS/14/2017単独(濃い灰色)、並びにA/HONGKONG/45/2019及びA/KANSAS/14/2017(橙色)の組み合わせによる同時感染後の、インフルエンザウイルスの3C.2クレード株(上)及び3C.3株(下)のマイクロ中和力価を示すグラフである。
図5図5は、実施例1に記載するように、A/HONGKONG/45/2019及びA/ALASKA/43/2019の組み合わせ(青)による同時感染後、並びにA/HONGKONG/45/2019及びA/KANSAS/14/2017(橙色)の組み合わせによるチャレンジ後の平均中和力価を、評価した12株のそれぞれの最大平均単独力価に対して示すプロットである。
図6図6は、実施例2に記載するように、A/Tasmania/503/2020、A/Victoria/2570/2019、B/Phuket/3073/2013、及びB/Washington02/2019のそれぞれに対する群1~7及び10の幾何平均力価(GMT)マイクロ中和アッセイ力価を示すグラフである。
図7図7は、実施例2に記載するように、3C.2Aクレードのウイルスに対する群1~7及び10(各群の左の棒)及び3C.3Aクレードのウイルスに対する群1~7及び10(各群の右の棒)のGMTマイクロ中和アッセイ力価を示す棒グラフである。
図8図8は、実施例2に記載するように、A/Bangladesh/3190613015/2019、A/Hong Kong/45/2019、A/Singapore/INFIMH160019/2016、A/Valladolid/182/2017、A/Kansas/14/2017、及びA/Mexico/2356/2019のそれぞれに対する群1~7及び10の幾何平均力価(GMT)マイクロ中和アッセイ力価を示すグラフである。
図9図9は、実施例2に記載するように、3C.2Aクレードのウイルスに対する群1~7(各群の左の棒)及び3C.3Aクレードのウイルスに対する群1~7(各群の右の棒)のカバレッジ率(GMT値>1:160)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
いくつかのウイルスは、それらのエンベロープ糖タンパク質成分の構造を実質的に変化させることができる。例えば、インフルエンザウイルスは、そのエンベロープ糖タンパク質のアミノ酸配列を絶えず変化させる。主要なアミノ酸変異(抗原シフト)又は軽微な変異(抗原ドリフト)が、新しいエピトープを生じさせることができ、ウイルスが免疫系を回避することを可能にする。抗原変異は、インフルエンザの流行が繰り返されることが主な原因である。サブタイプ(すなわち、H1又はH3)内の抗原変異体が出現し、優勢なウイルスとして徐々に選択される一方で、先行するウイルスは、集団において生じる特異的抗体によって抑制される。一般に、1つの変異体に対する抗体の中和は、連続的に変異体が生じるにつれて、効果が次第に低下する。サブタイプ内の変異体に対する免疫反応は、宿主の以前の経験に依存し得る。
【0028】
サイレントヌクレオチド置換の速度は、HAの遺伝子を含む、インフルエンザウイルスの全ての遺伝子のコードヌクレオチド置換の速度よりも大きいことが示されている(Webster らにより概説;Webster,R.G.,et al.,1992)。しかしながら、HAは、内部タンパク質よりもはるかに大きいコード変化速度を有する。他の遺伝子と比較してHA遺伝子のコードヌクレオチド変化の速度が大きいことは、免疫選択がその進化の重要な要因であることの証拠と考えられている(Palese,P.,et al.,1982)。非特異的立体障害を排除するために再集合抗原を用いて、Kilbourneらは、10年間にわたってヒトから単離した疫学的に重要なHA及びNA抗原の進化速度を研究し、HAがノイラミニダーゼ(NA)よりも急速に進化することを見出した(Kilbourne,E.D.,et al.,1990)。これは、A型H1N1及びH3N2ウイルスの両方で示され、より最近の株を用いたその後の実験によって確認されている。進化速度が明らかに異なる理由は不明であるが、HAに対する抗体がウイルスを中和し、感染を防ぐという事実に起因する可能性がある。これにより、部分的に免疫がある集団においてそれ自身が維持されるように、HAにより選択的な圧力がかかる。
【0029】
したがって、補足株に由来するHA抗原の添加によりワクチン有効性が増大する可能性がある。この有効性の増大は、2つの主要なメカニズムによると考えられ得る。第1に、1つ以上の追加のHA抗原を含めることにより、例えば、循環株が追加の株と一致するか又は抗原的に類似しているが、標準治療株とは一致しない場合、より広範囲の循環インフルエンザ株に対する防御が可能になり得る。第2に、標準治療株及び追加の株の両方に抗原的に類似する循環株について、ワクチン中のマッチング又は類似の抗原の用量の効果を2倍にすることができ、次に抗体力価及びセロコンバージョン率を増加させることができる。いずれか又は両方のメカニズムがワクチンの有効性を高める可能性がある。
【0030】
したがって、本明細書には、標準治療インフルエンザウイルス株に由来するインフルエンザウイルスHA(及び/又はそのような標準治療インフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子)に加えて、機械学習モデルを使用して同定又は設計され得る、1つ以上の補足HAタンパク質又はそれをコードするリボ核酸分子を含む多価インフルエンザワクチンが開示される。
【0031】
定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書を通して記載され得る。以下に記載する用語の定義が、参照により組み込まれる出願又は特許中の定義と矛盾する場合、その用語の意味は、本出願に記載の定義を使用して理解されるべきである。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載されるタイプの1つ又は複数の方法及び/又は工程を含み、且つ/或いはそれは本開示などを読めば当業者に明らかになるであろう。
【0033】
請求項の要素を変更するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体、1つの請求項要素の別の請求項要素に対する重要度、優先度若しくは順序、又は方法の操作が実行される時間的順序を意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、ある名称を有するある1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の請求項要素から区別する(ただし、序数用語の使用のための)ラベルとして使用される。
【0034】
アジュバント:本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、ワクチンの抗原成分に対する免疫反応を増強するために使用され得る物質又は物質の組み合わせを指す。
【0035】
抗原:本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、生物に曝露又は投与された場合に、免疫反応を誘発する薬剤、並びに/或いはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示された場合)又は抗体(例えば、B細胞によって産生された)に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、体液性反応(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発し、代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、細胞性反応(例えば、受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞が関与する)を誘発する。当業者であれば、特定の抗原が、標的生物(例えば、マウス、フェレット、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つ又は複数のメンバーにおいて免疫反応を誘発し得るが、標的生物種の全てメンバーで誘発し得るわけではないことは、理解していよう。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫反応を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、生物において特定の生理学的反応を誘導することもあれば誘導しないこともある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原はインビトロで抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、これは、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらない。いくつかの実施形態では、抗原は、特定の体液性又は細胞性免疫の産物と反応し、そのような産物には異種免疫原によって誘導されるものも含まれる。抗原は、本明細書に記載のHA形態を含む。
【0036】
抗原的に異なる:本明細書で使用される場合、「抗原的に異なる」という用語は、以下に記載するように、2つの抗原(例えば、HA抗原)が、結合力価又は中和力価によって測定した場合に、互いに4倍を超える抗体反応を生じることを示す。異なるクレード由来のHA抗原は、抗原的に異なり得る。
【0037】
抗原的に類似:本明細書で使用される場合、「抗原的に類似」という用語は、以下に記載するように、2つの抗原が、結合力価又は中和力価によって測定した場合に、互いに4倍以内の抗体反応を生じることを示す。
【0038】
2つの抗原が抗原的に異なるか又は抗原的に類似しているかを評価するために、ナイーブフェレットモデルを実施例に記載のように使用することができる。このモデルでは、ナイーブフェレットを生インフルエンザウイルスに鼻腔内感染させ、血清を回収してウイルスに対する抗体反応を評価する。抗体反応は、ウイルス抗体結合力価を測定するヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイによって、又はウイルス中和力価を測定する中和アッセイ(例えば、マイクロ中和アッセイ)によって測定され得る。異種ウイルス株の結合又は中和の効率は、株が抗原的に異なっているか、又は抗原的に類似しているかを示すことができる。図1は、HAIアッセイにおいてスコア化されたウイルス試料を示す。循環ウイルス1をワクチンウイルスと比較すると、循環ウイルス1は1希釈(2倍の差)だけ異なり、したがって、前シーズンのワクチンウイルスと抗原的に類似していると考えられる。循環ウイルス2をワクチンウイルスと比較すると、循環ウイルス2は5希釈(32倍の差)異なり、したがって、前シーズンのワクチンウイルスと抗原的に類似していると考えられる。
【0039】
およそ:本明細書で使用される場合、1つ又は複数の対象の値に適用される「およそ」又は「約」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。いくつかの実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、記載された基準値のどちらの方向でも(それより大きい、又はそれより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満に入る範囲の値を指す(そのような数があり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0040】
担体:本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体には、例えば、水及び油、例えば石油、動物油、植物油又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの滅菌液体が含まれる。いくつかの実施形態では、担体は、1つ以上の固体成分であるか、又はそれを含む。
【0041】
エピトープ:本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語には、免疫グロブリン(例えば、抗体又はT細胞受容体)結合成分によって全体的又は部分的に特異的に認識される部分が含まれる。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学原子又は化学基から構成される。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原が関連する三次元構造をとるときに表面に露出される。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原がそのような構造をとるとき、空間内で物理的に互いに近接する。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのそのような化学原子又は化学基は、抗原が選択的構造をとる(例えば、線状化される)時、互いに物理的に離れる。
【0042】
賦形剤:本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、例えば、所望の一貫性又は安定化効果を付与するか、又はそれに寄与するために、医薬組成物に含まれ得る非治療薬を指す。好適な医薬品賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0043】
免疫反応:本明細書で使用される場合、「免疫反応」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ又は多形核球などの免疫系の細胞の、抗原、免疫原又はワクチンなどの刺激に対する反応を指す。免疫反応は、例えば、インターフェロン又はサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御反応に関与する身体のあらゆる細胞を含むことができる。免疫反応としては、自然免疫反応及び/又は適応免疫反応が挙げられるが、これらに限定されない。免疫反応を測定する方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、リンパ球(B細胞又はT細胞など)の増殖及び/又は活性の測定、サイトカイン又はケモカインの分泌の測定、炎症の測定、抗体産生の測定などが挙げられる。抗体反応又は体液性反応は、抗体が産生される免疫反応である。「細胞性免疫反応」は、T細胞及び/又は他の白血球によって媒介されるものである。
【0044】
免疫原:本明細書で使用される場合、「免疫原」又は「免疫原性」という用語は、適切な条件下で、動物に注入又は吸収される組成物を含む、動物における抗体の産生又はT細胞反応などの免疫反応を刺激することができる化合物、組成物又は物質を指す。本明細書で使用される場合、「免疫する」とは、感染性疾患(例えば、インフルエンザ)に対する防御免疫反応を対象に誘導することを意味する。
【0045】
免疫学的有効量:本明細書で使用される場合、「免疫学的有効量」という用語は、対象を免疫するのに十分な量を意味する。
【0046】
いくつかの実施形態では:本明細書で使用される場合、「いくつかの実施形態では」という用語は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、本開示の全ての態様の実施形態を指す。
【0047】
機械学習:本明細書で使用される場合、用語「機械学習」は、経験を通して及び/又はデータの使用によって自動的に改善するアルゴリズムの使用を指す。機械学習は、予測モデルを通して候補抗原を選択するように設計されたアルゴリズムの使用を含む、データの予測を可能にするためのインフルエンザ抗原性のモデルなどの予測モデルの構築を伴い得る。標的株を同定し、次に選択アルゴリズムを構築することができる。機械学習アルゴリズム及び方法の例は、例えば、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、及び国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)に見出すことができ、これらの両文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。機械学習にはまた、本明細書で使用される場合、データを分析し解釈するための計算ツール、例えば、系統発生解析などのバイオインフォマティクス解析の適用も含まれ得る。同様に、「機械学習インフルエンザウイルスHA」は、機械学習によって同定又は設計されたインフルエンザウイルスHAを示す。「機械学習モデル」は、候補抗原などのデータを予測するために、経験を通して、及び/又はデータの使用によって自動的に改善するアルゴリズムを使用するモデルを示す。
【0048】
パンデミック株:「パンデミック」インフルエンザ株は、ヒト集団などの対象集団のパンデミック感染を引き起こしたか、又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、パンデミック株は、パンデミック感染を引き起こしている。いくつかの実施形態では、そのようなパンデミック感染は、複数の地域にわたるエピデミック感染を含み、いくつかの実施形態では、パンデミック感染は、感染が通常それらの間で伝わることがないように、(例えば、山によって、水域によって、別個の大陸の一部としてなど)互いに離れている地域にわたる感染を含む。
【0049】
予防:「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害又は病態(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の1つ以上の症状の、予防、疾患発現の回避、発症の遅延、並びに/又は頻度及び/若しくは重症度の低減を指す。いくつかの実施形態では、予防は、集団ベースで評価され、疾患、障害又は病態の1つ以上の症状の発生、頻度、及び/又は強度の統計的に有意な減少が疾患、障害又は病態に罹りやすい集団において観察される場合、薬剤が特定の疾患、障害又は病態を「予防する」とみなされる。
【0050】
組換え体:本明細書で使用される場合、「組換え体」という用語は、組換え手段によって設計され、操作され、調製され、発現され、作製され又は単離されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載のHAポリペプチド)、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されるポリペプチド、組換え、コンビナトリアルポリペプチドライブラリーから単離されるポリペプチド、又は選択された配列要素を互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され又は単離されるポリペプチドを指すことが意図されている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ又は複数は天然に見出される。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ又は複数はコンピュータで設計される。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ又は複数は、既知の配列要素の変異誘発(例えば、インビボ又はインビトロで)から、例えば天然又は合成源から生じる。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の1つ又は複数は、天然には同じポリペプチドに存在しない複数の(例えば、2つ以上の)既知の配列要素(例えば、2つの別々のHAポリペプチドからの2つのエピトープ)の組み合わせから生じる。
【0051】
季節性株:「季節性」インフルエンザ株は、ヒト集団などの対象集団の季節性感染(例えば、毎年のエピデミック)を引き起こしたか、又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、季節性株は、季節性感染を引き起こしている。
【0052】
配列同一性:アミノ酸又は核酸の配列間の類似性は、配列間の類似性の観点から表され、それ以外の場合、配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、同一性(又は類似性若しくは相同性)のパーセンテージの観点から測定されることが多く、パーセンテージが大きいほど、2つの配列はより類似している。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。所与の遺伝子又はタンパク質の相同体又は変異体は、標準的な方法を用いてアラインさせた場合、比較的高度の配列同一性を有する。
【0053】
用語「%同一の」、「%同一性」又は類似の用語は特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。前記パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしも分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメントの後に、セグメント又は「比較の窓」に関して、前記配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で、又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて行うことができる
【0054】
同一性パーセンテージは、比較する配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除し、この結果に100を乗ずることによって得られる。
【0055】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200個のヌクレオチドについて、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドで、与えられる。いくつかの実施形態において、同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0056】
所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対してそれぞれ特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列の少なくとも1つの機能的及び/又は構造的特性を有し得、例えば、いくつかの例では、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。
【0057】
標準治療株:世界保健機関(World Health Organization)(WHO)は、毎年、集中的なサーベイランス努力に基づいて、季節性ワクチン製剤に含まれるべきインフルエンザ株を選択する。本明細書で使用される場合、「標準治療株」又は「SOC株」という用語は、例えば、北半球及び南半球のための季節性ワクチン製剤に含まれるように、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)によって選択されるインフルエンザ株を指す。標準治療株には、過去の標準治療株、現在の標準治療株、又は将来の標準治療株が含まれ得る。
【0058】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物界の任意のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒトを指す。いくつかの実施形態において、「対象」は、非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、対象に、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/又は蠕虫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、及び/又はクローンであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、成人、青年又は乳児である。いくつかの実施形態では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と置き換え可能であることが意図されている
【0059】
ワクチン組成物:本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」又は「ワクチン」という用語は、対象において防御免疫反応を生じさせる組成物を指す。本明細書で使用される場合、「防御免疫反応」は、感染から対象を保護する(感染を予防するか、又は感染に関連する疾患の発症を予防する)か、又は感染(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の症状を軽減する免疫反応を指す。ワクチンは、予防(prophylactic)(予防(preventative))反応及び治療反応の両方を誘発し得る。投与方法はワクチンによって異なるが、接種、摂取、吸入、又は他の投与形態が含まれ得る。接種は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、又は筋肉内などの非経口を含む多くの経路のいずれかによって送達することができる。ワクチンは、免疫反応を増強するためにアジュバントと共に投与され得る。
【0060】
免疫原性組成物:本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」という用語は、防御免疫反応であってもなくてもよい免疫反応を生じる組成物を指す。
【0061】
ワクチン接種する:本明細書で使用される場合、「ワクチン接種する」などの用語は、対象における防御免疫反応、例えばインフルエンザウイルスなどの疾患を引き起こす病原体に対する反応を生成するためのワクチン組成物の投与を指す。ワクチン接種は、疾患を引き起こす病原体への曝露の前、間、及び/又は後に、並びに/或いは1つ以上の症状の発現の前、間、及び/又は後に、いくつかの実施形態では、病原体への曝露の前、間、及び/又は直後に行うことができる。いくつかの実施形態では、ワクチン接種には、ワクチン組成物の適切な時間間隔を置いての複数回の投与を含む。
【0062】
野生型(WT):当該技術分野で理解されているように、「野生型」という用語は一般に、天然に見出されるような正常な形態のタンパク質又は核酸を指す。例えば、野生型HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然単離物中に見出される。様々な異なる野生型HA配列を、NCBIインフルエンザウイルス配列データベースに見出すことができる。
【0063】
インフルエンザウイルスの命名法
インフルエンザウイルスを分類するために使用される全ての命名法は、当業者によって一般的に使用されるものである。したがって、インフルエンザウイルスのタイプ、又はグループは、次の3つの主要なタイプのインフルエンザを指す:ヒトに感染する、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ又はC型インフルエンザ。インフルエンザA及びBは、毎年、かなりの罹患率と死亡率とを引き起こす。ウイルスの特定のタイプとしての指定が、それぞれのMl(マトリックス)タンパク質又はP(核タンパク質)における配列の違いに関連することは、当業者に理解されている。A型インフルエンザウイルスは、グループ1及びグループ2にさらに分けられる。これらのグループはさらに、ウイルス表面の2つのタンパク質HA及びNAの配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分類される。現在、18の認識されたHAサブタイプ(H1~H18)及び11の認識されたNAサブタイプ(N1~N11)が存在する。グループ1は、N1、N4、N5及びN8と、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17及びH18とを含む。グループ2は、N2、N3、N6、N7及びN9と、H3、H4、H7、H10、H14及びH15とを含む。N10及びN11は、コウモリから単離されたインフルエンザ様ゲノムにおいて同定されている(Wu et al.,Trends in Microbiology,2014,22(4):183-91)。潜在的に198の異なるインフルエンザAサブタイプの組み合わせが存在するが、自然界では約131のサブタイプしか検出されていない。季節的な大流行を引き起こす、ヒト集団において一般的に循環しているA型インフルエンザウイルスの現在のサブタイプとしては、A(H1N1)及びA(H3N2)が挙げられる。
【0064】
便宜上、本明細書に記載するタンパク質構築物及びその一部を指すために、特定の略語を使用することができる。例えば、HAは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質を指すことができる。H1は、インフルエンザサブタイプ1株由来のHAを指す。H3は、インフルエンザサブタイプ3株由来のHAを指す。
【0065】
インフルエンザAサブタイプはさらに、異なる遺伝「クレード」及び「サブクレード」に分類することができる 例えば、AサブタイプのA(H1N1)は、クレード6B.1及びサブクレード6B.1Aを含む。AサブタイプのA(H3N2)は、クレード3C.2A及び3C.3A、並びにサブクレード3C.2A1、3C.2A2、3C2A3及び3C.2A4を含む。同様に、BサブタイプビクトリアはクレードV1A及びサブクレードV1A.1、V1A.2及びV1A.3を含有し、一方、Bサブタイプ山形はクレードY1、Y2及びY3を含有する。最後に、株という用語は、ゲノムに小さな遺伝的変異を有するという点で互いに異なるサブタイプ内のウイルスを指す。
【0066】
ヘマグルチニン(HA)
ヘマグルチニン(HA)は、ノイラミニダーゼ(NA)と共に、2つの主要なインフルエンザ表面タンパク質のうちの1つである。HAの機能には、細胞の表面に発現される糖タンパク質又は糖脂質上の糖部分に結合する末端分子であるシアル酸との相互作用が含まれる。細胞表面のシアル酸へHAが結合することにより、細胞によるウイルスのエンドサイトーシスが誘導され、ウイルスが細胞に侵入し感染することが可能になる。シアル酸はまた、感染細胞内で起こるグリコシル化プロセスの一部としてHAに付加される。
【0067】
HAは、宿主細胞へのインフルエンザウイルスの付着、及び細胞へのウイルスの浸透の間のウイルス-細胞膜融合を媒介すると考えられている。HA分子における抗原性の変異は、インフルエンザの頻繁な流行、及び免疫化による感染の限られた制御の原因である。
【0068】
HAは、成熟インフルエンザウイルス中に三量体として存在する。各HAモノマーは、ジスルフィド結合によって連結された2つのポリペプチド(HA1及びHA2)からなる。これらのポリペプチドは、インフルエンザウイルスの成熟中の単一前駆体タンパク質HA0の開裂によって誘導される。一部には、これらの分子はしっかりと折り畳まれているので、HA0並びに成熟HA1及びHA2は、立体構造及び抗原特性が僅かに異なる。さらに、HA0はより安定であり、変性及びタンパク質分解に対して耐性である。組換えHA0由来のバキュロウイルス/昆虫細胞培養物は、インフルエンザに対する防御免疫を付与することが知られている。
【0069】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に存在するインフルエンザウイルスHAは、任意の形態のインフルエンザウイルスHAであり得、標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAと機械学習インフルエンザウイルスHAとの任意の組み合わせを含み得る。例えば、特定の実施形態では、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHAは、ワクチン又は免疫原性組成物中に、不活化インフルエンザウイルス中に存在するHA、組換えインフルエンザウイルスHA、若しくは前述のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子、又はこれらの任意の組み合わせとして存在し得る。特定のさらなる実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、ワクチン又は免疫原性組成物中に、不活化インフルエンザウイルスに存在するHA、組換えインフルエンザウイルスHA、若しくは前述の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子、又はこれらの組み合わせとして存在し得る。
【0070】
同様に、本明細書に開示される実施形態では、標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHA及び機械学習から同定又は設計されたHAは、野生型HA、非野生型HA、季節性又はパンデミックインフルエンザウイルス株由来のHA、及び/又は当該技術分野で知られた他の任意の形態のHAであり得る。本明細書に開示される特定の実施形態では、インフルエンザウイルスHAは、例えば、H1、H2、H3、H5、H7、及び/又はH10を含む、パンデミック株又はパンデミック潜在性を有する株由来である。
【0071】
本明細書に開示される特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA及び/又は機械学習インフルエンザウイルスHAは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0072】
特定の認可されたインフルエンザワクチンは、例えばインフルエンザAサブタイプH1N1、インフルエンザA H3N2、インフルエンザB/ビクトリア、及び/又はインフルエンザB/山形を含む、複数のインフルエンザサブタイプからのホルマリン不活化全サブユニット調製物又は化学的に分割されたサブユニット調製物を含み得る。このようなインフルエンザA及びBワクチンのための種ウイルスは、ニワトリ卵の尿膜腔又は培養細胞において高力価に複製する天然に存在する株(すなわち、野生型株)であり得る。
【0073】
或いは、株は正しい表面抗原遺伝子を有する再集合体ウイルスであり得る。再集合体ウイルスは、ウイルスゲノムのセグメント化により、各親株の特徴を有するものである。2つ以上のインフルエンザウイルス株が細胞に感染する場合、これらのウイルスセグメントは混合されて、両方の親由来の様々な種類の遺伝子を含む子孫ビリオンを作る。感染性再集合体ウイルスを産生するために使用されるリバースジェネティクス法は当業者によく知られており、以下に限定されないが、Neuman et al,1999,Proc Natl Acad Sci USA,96(16):9345-9350;Neumann et al,2005,Proc Natl Acad Sci USA,102(46):16825-16829;Zhang et al,2009,J Virol,83(18):9296-9303;Massin et al,2005,J Virol,79(21):13811-13816;Murakami et al,2008,82(3):1605-1609に記載のプラスミドを使用する方法;及び/又はNeuman et al,1999,Proc Natl Acad Sci USA,96(16):9345-9350;Neumann et al,2005,Proc Natl Acad Sci USA,102(46):16825-16829;Zhang et al,2009,J Virol,83(18):9296-9303;Massin et al,2005,J Virol,79(21):13811-13816;Murakami et al,2008,82(3):1605-1609;Koudstaal et al,2009,Vaccine,27(19):2588-2593;Schickli et al,2001,Philos Trans R Soc Lond Biol Sci,356(1416):1965-1973;Nicolson et al,2005,Vaccine,23(22):2943-2952;Legastelois et al,2007,Influenza Other Respi Viruses,1(3):95-104;Whiteley et al,2007,Influenza Other Respi Viruses,1(4):157-166に記載の細胞を使用する方法が挙げられる。
【0074】
したがって、本明細書に開示されるHAタンパク質は、不活性化ビリオン中に存在するHAを含む。特定の実施形態では、不活化ウイルスは、スプリット不活化ウイルスである。特定の実施形態では、不活化ウイルス中に存在するインフルエンザウイルスHAであって、HAは、標準治療インフルエンザウイルス由来のH1 HA、標準治療インフルエンザウイルス由来のH3 HA、B/ビクトリア系統の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA、又はB/山形系統の標準治療インフルエンザウイルス由来のHAから選択される、インフルエンザウイルスHAが本明細書において開示される。
【0075】
特定の実施形態では、機械学習インフルエンザウイルスHAであって、HAは、不活化ウイルス中に存在し、機械学習HAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、インフルエンザウイルスHAが本明細書において開示される。
【0076】
また、標準治療インフルエンザウイルス株由来の組換えHA及び/又は機械学習組換えHAを含む、組換えHAを含むワクチン又は免疫原性組成物が、本明細書において開示される。
【0077】
所望のHA遺伝子をクローニングするためのインフルエンザウイルス株の単離、増殖、及び精製は、当該技術分野で知られる任意の方法、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,939号に開示されている方法によって行うことができる。
【0078】
組換えHA抗原は、ウイルス-ヘマグルチニンベクターに感染させた昆虫細胞などの細胞において発現される。一次遺伝子産物は、プロセシングされていない完全長HA(rHA0)であり、分泌されず、感染細胞の周辺膜と結合したままである。昆虫細胞において、このrHA0は、N結合高マンノース型グリカンでグリコシル化されており、rHA0が翻訳後に三量体を形成し、その後に細胞質細胞膜に蓄積している証拠がある。
【0079】
rHA0は、非変性非イオン性界面活性剤で、或いは細胞、例えば昆虫細胞から組換えタンパク質を精製するための当該技術分野で知られる他の方法、例えばアフィニティー若しくはゲルクロマトグラフィー、抗原結合、DEAEイオン交換、又はレンチルレクチンアフィニティークロマトグラフィーを用いて、周辺膜から選択的に抽出することができる。次いで、精製rHA0を、等張の緩衝溶液に再懸濁することができる。特定の実施形態では、rHA0は、少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%まで精製される。
【0080】
特定の実施形態では、インフルエンザウイルス由来の完全長非開裂(HA0)ヘマグルチニン抗原は、培養昆虫細胞中のバキュロウイルス発現ベクターを用いて産生し、例えば、非変性条件下でさらに精製することができる。インフルエンザA株及び/又はインフルエンザB株由来の2つ以上(例えば、3つ、4つ又はそれ以上)の精製されたヘマグルチニン抗原を混合して、多価インフルエンザワクチンを生成することができる。
【0081】
バキュロウイルスは、バキュロウイルス科(Baculoviridae)のDNAウイルスである。これらのウイルスは、主に鱗翅目の昆虫種(例えば、チョウ及びガ)に限定される狭い宿主範囲を有することが知られている。例えば、バキュロウイルスオートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)は、感受性培養昆虫細胞において効率的に複製する。AcNOVは、約130,000塩基対の二本鎖閉鎖環状DNAゲノムを有し、宿主範囲、分子生物学及び遺伝学に関して十分に特徴付けられている。
【0082】
AcNPVを含む多くのバキュロウイルスは、感染細胞の核内に大きなタンパク質結晶性閉塞を形成する。ポリヘドリンと呼ばれる単一のポリペプチドは、これらの閉塞体のタンパク質質量の約95%を占める。ポリヘドリンの遺伝子は、AcNPVウイルスゲノム中に単一コピーとして存在する。ポリヘドリン遺伝子は、培養細胞におけるウイルス複製に必要とされないので、外来遺伝子を発現するように容易に修飾することができる。ポリヘドリンプロモーターの転写制御下に存在するように、外来遺伝子配列を、AcNPV遺伝子のポリヘドリンプロモーター配列のちょうど3’に挿入することができる。組換えHAタンパク質をコードする組換えバキュロウイルスを含む組換えバキュロウイルスを、次いで、様々な昆虫細胞株において複製することができる。組換えHAタンパク質はまた、例えばエントモポックスウイルス(昆虫のポックスウイルス)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、及び組換えHA遺伝子による昆虫細胞の形質転換を含む、他の発現ベクターにおいて発現され得る。
【0083】
HAをコードするリボ核酸分子
本明細書に開示されるインフルエンザウイルスHAの1つ以上をコードするmRNA分子などのリボ核酸分子もまた本明細書に開示される。mRNAなどのリボ核酸分子は、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、又はB/山形系統由来のHAの組み合わせのいずれか1つなどの標準治療インフルエンザウイルス株をコードし得る。特定の実施形態では、mRNAなどのリボ核酸分子は、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、又はB/山形系統由来のHAの組み合わせのいずれか1つなどの機械学習インフルエンザウイルスHAをコードし得る。特定の実施形態では、リボ核酸分子は、脂質-ナノ粒子(LNP)に封入される。
【0084】
例示的なmRNA及びLNPは、例えば、2021年11月5日に出願された国際出願第PCT/US2021/058250号明細書に開示されており、その全体が参照により組み込まれる。
【0085】
任意の知られたLNP製剤が、本明細書に開示される実施形態において使用され得る。特定の実施形態では、LNPは以下の4つの脂質の混合物を含む:イオン化(例えば、カチオン性)脂質、ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート脂質、コレステロールベースの脂質、及びリン脂質などのヘルパー脂質。LNPはリボ核酸分子(例えば、mRNA)を封入するために使用される。封入されたmRNA分子は、天然に存在するリボヌクレオチド、化学修飾されたヌクレオチド、又はこれらの組み合わせから構成され得、1つ又は複数のタンパク質をそれぞれ又は集合的にコードし得る。
【0086】
イオン化脂質はmRNA封入を促進し、カチオン性脂質であり得る。カチオン性脂質は、低pHで正に帯電した環境を与え、負に帯電したmRNA原薬の効率的なカプセル化を促進する。
【0087】
企図されるPEG化脂質としては、誘導体化セラミド(例えば、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)](C8 PEGセラミド))などの、C~C20(例えば、、C10、C12、C14、C16、又はC18)長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した、最大5kDa長のポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DLPE-PEG);1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-ポリエチレングリコール(DSG-PEG);N,N-ジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えば、ALC-0159);又は1-モノメトキシポリエチレングリコール-2,3-ジミリスティルグリセロール(例えば、PEG2000-DMG)である。
【0088】
PEGは、高分子量、例えば2000~2400g/molを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、PEGは、PEG2000(又はPEG-2K)である。特定の実施形態では、本明細書におけるPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DLPE-PEG2000、DSG-PEG2000、又はC8 PEG2000である。PEG化脂質成分は、ナノ粒子の粒径及び安定性の制御を提供する。このような成分を添加することにより、複雑な凝集が防止され、循環寿命を延ばし、標的組織への脂質-核酸医薬組成物の送達を増大させる手段を提供し得る(Klibanov et al.,FEBS Letters(1990)268(1):235-7)。これらの成分は、インビボで医薬組成物から迅速に交換されるように選択することができる(例えば、米国特許第 5,885,613号明細書を参照されたい)。
【0089】
コレステロール成分は、ナノ粒子内の脂質二重層構造に安定性を提供する。いくつかの実施形態では、LNPは、1つ以上のコレステロールベースの脂質を含む。適切なコレステロールベースの脂質としては、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao et al.,Biochem Biophys Res Comm.(1991)179:280;Wolf et al.,BioTechniques(1997)23:139;米国特許第 5,744,335号明細書)、イミダゾールコレステロールエステル(「ICE」;国際公開第2011/068810号パンフレット)、β-シトステロール、フコステロール、スチグマステロール、及びコレステロールの他の修飾形態が挙げられる。いくつかの実施形態では、LNPに使用されるコレステロールベースの脂質は、コレステロールである。
【0090】
ヘルパー脂質は、LNPの構造的安定性を増強し、エンドソーム脱出におけるLNPを助ける。それは、mRNA薬物ペイロードの取り込み及び放出を改善する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、薬物ペイロードの取り込み及び放出を増強するための融合特性を有する双性イオン脂質である。特定の実施形態では、ヘルパー脂質は、リン脂質である。ヘルパー脂質の例は、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンコリン(DOPS)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPOC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC);1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、及び1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE)である。
【0091】
他の例示的なヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、又はこれらの組み合わせである。
【0092】
本明細書に開示される特定の実施形態では、LNPは、(i)OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10、GL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14、ALC-0315、又はSM-102から選択されるカチオン性脂質;(ii)DMG-PEG2000;(iii)コレステロール;及び(iv)DOPEを含む。
【0093】
本明細書に開示される特定の実施形態では、LNPは(i)カチオン性脂質としてALC-0315、(ii)PEG化脂質としてN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えば、ALC-0159)、(iii)ヘルパー脂質としてDSPC、及び(iv)コレステロールを含む。特定の実施形態では、LNPは、(i)約25%~約65%、例えば約46.3%のモル比でカチオン性脂質としてALC-0315;(ii)約0.5%~約2.6%、例えば1.6%のモル比でPEG化脂質としてN,Nジテトラデシルアセトアミド-ポリエチレングリコール(例えばALC-0159);(iii)約5%~約15%、例えば9.4%のモル比でヘルパー脂質としてDSPC;及び(iv)約20%~約60%、例えば42.7%のモル比でコレステロールを含む。
【0094】
上記のLNP成分のモル比は、mRNAの送達におけるLNPの有効性を高め得る。カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール系脂質、及びヘルパー脂質のモル比は、A:B:C:D(ここで、A+B+C+D=100%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するLNP中のカチオン性脂質のモル比(すなわち、A)は、35~50%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するPEG化脂質成分のモル比(すなわち、B)は、0.25~2.75%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するコレステロール系脂質のモル比(すなわち、C)は、20~50%である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するヘルパー脂質のモル比(すなわち、D)は、5~35%である。いくつかの実施形態では、(PEG化脂質+コレステロール)成分は、ヘルパー脂質と同じモル量を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質に対するカチオン性脂質のモル比は、1超である。
【0095】
LNP製剤中に含まれる各脂質の実際の量を計算するために、まず、カチオン性脂質のモル量を、所望のN/P比(ここで、Nはカチオン性脂質中の窒素原子の数であり、Pは、LNPによって輸送されるmRNA中のリン酸基の数である)に基づいて決定する。次に、カチオン性脂質のモル量及び選択したモル比に基づいて、他の脂質のそれぞれのモル量を算出する。次いで、これらのモル量を、各脂質の分子量を用いて重量に変換する。
【0096】
特定の実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール系脂質、及びヘルパー脂質を、40:1.5:28.5:30のモル比で含有する。さらなる特定の実施形態では、LNPは、(i)OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10、又はGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14、(ii)DMG-PEG2000、(iii)コレステロール;及び(iv)DOPEを、40:1.5:28.5:30で含有する。
【0097】
所望であれば、LNP又はLNP製剤は多価であってもよい。いくつかの実施形態では、LNPは、同じ又は異なる病原体由来の2つ以上の抗原、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の抗原をコードするリボ核酸分子(例えば、mRNA)を保有し得る。例えば、LNPは、それぞれが異なる抗原をコードする複数のリボ核酸分子(例えば、mRNA)を担持し得るか;又は2つ以上の抗原に翻訳され得るポリシストロン性mRNAを担持し得る(例えば、各抗原コード配列は、2Aペプチドなどの自己開裂ペプチドをコードするヌクレオチドリンカーによって分離される)。異なるリボ核酸分子(例えば、mRNA)を担持するLNPは、典型的には各mRNA分子の複数のコピーを含む(封入する)。例えば、2つの異なるリボ核酸分子(例えば、mRNA)を担持又は封入するLNPは、典型的には2つの異なるリボ核酸分子(例えば、mRNA)のそれぞれの複数のコピーを担持する。
【0098】
いくつかの実施形態では、単一のLNP製剤は、複数種(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)のLNPを含み得、各種は異なるリボ核酸分子(例えば、mRNA)を担持する。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、及び/又はB/山形系統由来のHAから選択される1つ又は複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)のインフルエンザウイルスタンパク質に由来するポリペプチドをコードするリボ核酸分子を含む。さらなる実施形態では、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、4つのリボ核酸分子(例えば、mRNA)を含有し、第1のリボ核酸分子は第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAをコードし、第2のリボ核酸分子は第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAをコードし、第3のリボ核酸分子はB/ビクトリア系統由来の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードし、第4のリボ核酸分子はB/山形系統由来の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAをコードする。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、本明細書に開示される1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(例えば、mRNA)をさらに含み、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上の自己増幅mRNAなどの1つ以上の自己増幅リボ核酸を含み得る。従来のmRNAからの抗原発現は、ワクチン又は免疫原性組成物から対象に首尾よく送達されるmRNA分子の数に比例する。しかしながら、自己増幅mRNAは、自己複製ウイルスに由来する遺伝子操作されたレプリコンを含み、したがって、同等の結果を達成しながら、従来のmRNAよりも低用量でワクチン又は免疫原性組成物に添加され得る。
【0101】
自己増幅mRNAは、例えば、標準治療インフルエンザウイルス由来のH3 HA、標準治療インフルエンザウイルス由来のH1 HA、B/ビクトリア系統の標準治療インフルエンザウイルス由来のHA、B/山形系統の標準治療インフルエンザウイルス由来のHA、及び/又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAを含む、本明細書に開示のインフルエンザウイルスHAのいずれかをコードし得る。
【0102】
リボ核酸分子(例えば、mRNA)は、非修飾(すなわち、ホスホジエステル結合によって連結された天然リボヌクレオチドA、U、C、及び/又はGのみを含む)であっても、化学修飾(例えば、プソイドウリジン(例えば、N-1-メチルプソイドウリジン)、2’-フルオロリボヌクレオチド、及び2’-メトキシリボヌクレオチド、並びに/又はホスホロチオエート結合)などのヌクレオチド類似体を含む)であってもよい。リボ核酸分子(例えば、mRNA)は、5’キャップ及びポリAテールを含み得る。特定の実施形態では、1つ以上のリボ核酸分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み、特定の実施形態では、1つ以上の修飾ヌクレオチドは、プソイドウリジン、メチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオプソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メトキシウリジン、及び2’-O-メチルウリジンから選択される。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、メチルプソイドウリジン、特に1N-メチルプソイドウリジンである。特定の実施形態では、リボ核酸分子中の全てのウリジンは、プソイドウリジン、例えばメチルプソイドウリジン、例えば1N-メチルプソイドウリジンによって置き換えられる。
【0103】
各リボ核酸分子は、本明細書に開示される組成物中に、組成物が投与される対象に免疫反応を誘導するのに有効な量で含まれ得る。特定の実施形態では、各リボ核酸分子は、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約0.1mg~約150mg、例えば約5mg~約120mg、約10mg~約60mg、又は約15mg~約45mgの範囲の量で含まれ得る。特定の実施形態では、各リボ核酸分子は、ワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約5mg~約120mg、例えば約10mg~約60mg、又は約15mg~約45mgのインフルエンザウイルスHAをコードするのに十分な量で含まれる。
【0104】
核酸及び/又はLNPを安定化するために(例えば、ワクチン製品の貯蔵寿命を延長するために)、LNP医薬組成物の投与を容易にするために、及び/又は核酸のインビボ発現を増強するために、核酸及び/又はLNPを、1つ以上の担体、標的化リガンド、安定化試薬(例えば、防腐剤及び抗酸化剤)、及び/又は他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて製剤化することができる。そのような賦形剤の例は、パラベン、チメロサール、チオマーサル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、及びキレート剤(例えばEDTA)である。
【0105】
本開示のLNP組成物は、凍結液体形態又は凍結乾燥形態として提供することができる。様々な凍結保護剤、例えば、以下に限定されないが、スクロース、トレハロース、グルコース、マンニトール、マンノース、デキストロースなどを使用することができる。凍結保護剤と共に製剤化されると、LNP組成物は、-20℃~-80℃で凍結(又は凍結乾燥及び凍結保存)され得る。LNP組成物は、緩衝水溶液で患者に提供され得る(予め凍結されている場合には解凍され、又は予め凍結乾燥されている場合にはベッドサイドにて緩衝水溶液で再構成され得る)。緩衝液は等張であることが好ましく、例えば筋肉内又は皮内注射に適している。いくつかの実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0106】
機械学習
毎年WHOによって選択される4つの標準治療インフルエンザウイルス株からのHA分子を含む、現在利用可能な四価ワクチンによって提供される防御を補完するために、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物及び方法は、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子をさらに含み、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0107】
本明細書に開示される実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAに加えて、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は上記に開示される1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子を含み得る。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習HAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0108】
本明細書に開示される機械学習HAは、不活化ウイルス中に存在するHA若しくは組換えHAを含むHAの任意の形態、又は前述のHAのいずれかをコードするHA核酸分子(例えば、mRNA)を含む、本明細書に開示されるリボ核酸分子であり得る。
【0109】
1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAを選択する際、任意の機械学習アルゴリズムが使用され得る。例えば、本明細書においては、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)、米国仮出願第63/319,692号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)、及び米国仮出願第63/319,700号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。の開示の機械学習アルゴリズム及び方法が想定されている。
【0110】
特定の実施形態では、インフルエンザ抗原性の予測機械学習モデルを構築して、動物モデル及び/又はヒトにおける抗体力価の予測を可能にし得る。特定の実施形態では、機械学習モデルは、トレーニングセットの入力データから特徴値を抽出することができ、特徴は入力データ項目が関連する特性を有するか否かにかかわらず、潜在的に関連するとみなされる変数である。入力データのための特徴の順序付きリストは、入力データのための特徴ベクトルと呼ばれ得る。特定の実施形態では、機械学習モデルは、次元削減を(例えば、線形判別分析(LDA)、主成分分析(PCA)、ニューラルネットワークからの学習された深層特徴などを介して)適用して、入力データの特徴ベクトル内のデータの量を、より小さく、より代表的なデータのセットに削減する。
【0111】
次いで、防御すべき一連のインフルエンザ配列(例えば、標的株)を同定し、選択アルゴリズムを構築することができる。特定の実施形態では、ワクチンを設計するためのシステムが提供される。システムは、1つ以上のプロセッサを含む。システムは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに1つ以上の操作を実行させる、実行可能なコンピュータ命令を保存するコンピュータストレージを含む。1つ以上の操作は、1つ以上の分子配列を表す出力データを生成するように構成された複数のドライバモデルを第1の時系列データセットに適用することを含み、第1の時系列データセットは、1つ以上の分子配列、及び1つ以上の分子配列のそれぞれについて、その分子配列を天然抗原として含む病原性株の1回以上の循環を示す。1つ以上の操作は、複数のドライバモデルのそれぞれについて、以下によってドライバモデルを訓練することを含む:i)ドライバモデルから、受け取った第1の時系列データセットに基づく1つ以上の予測分子配列を表す出力データを受け取り、ii)予測された1つ以上の分子配列を表す出力データに、複数の並進軸についての分子配列に対する生物学的反応を予測するように構成された並進モデルを適用して、出力データの1つ以上の予測分子配列に基づいて複数の並進軸の特定の並進軸に対応する1つ以上の第1の並進応答を表す第1の並進応答データを生成し、iii)第1の並進応答データに基づいてドライバモデルの1つ以上のパラメータを調整し、iv)ステップi~iiiを多数回繰り返して、特定の並進軸に対応する1つ以上の訓練された並進応答を表す訓練された並進応答データを生成する。1つ以上の操作は、1つ以上の訓練された並進応答に基づいて、複数のドライバモデルのうちの訓練されたドライバモデルのセットを選択することを含む。1つ以上の操作は、訓練されたドライバモデルのセットの各訓練されたドライバモデルについて、特定の季節のための1つ以上の予測分子配列を表す訓練された出力データを生成するために、訓練されたドライバモデルを第2の時系列データセットに適用し;複数の並進軸の各並進軸について、1つ以上の第2の並進応答を表す第2の並進応答データを生成するために、並進モデルを最終出力データに適用し;第2の並進応答データに基づいて、訓練されたドライバモデルのセットの訓練されたドライバモデルのサブセットを選択することを含む。
【0112】
複数のドライバモデルのうちの少なくとも1つは、リカレントニューラルネットワークを含むことができる。複数のドライバモデルのうちの少なくとも1つは、長・短期記憶リカレントニューラルネットワークを含む。
【0113】
受信された第1の時系列データセットに基づく1つ以上の予測分子配列を表す出力データは、複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データを含むことができる。複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節の循環中の全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する分子配列を予測することによって決定される抗原を含むことができる。複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節の循環中の最大数のウイルスに対して効果的に免疫する反応を生成する分子配列を予測することによって決定される抗原を含むことができる。
【0114】
複数の並進軸は、フェレット中和軸、フェレット抗体法医学(AF)軸、フェレット赤血球凝集阻害アッセイ(HAI)軸、マウス中和軸、マウスAF軸、マウスHAI軸、ヒト中和軸、ヒトレプリカAF軸、ヒトAF軸、又はヒトHAI軸のうちの少なくとも1つを含むことができる。反復回数は、所定の反復回数に基づくことができる。反復回数は、所定の誤差値に基づくことができる。1つ以上の第1の翻訳応答は、予測フェレットHAI力価、予測フェレットAF力価、予測マウスAF力価、予測マウスHAI力価、予測ヒトレプリカAF力価、予測ヒトAF力価、又は予測ヒトHAI力価のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0115】
複数のドライバモデルのうちの訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルの各ドライバモデルをドライバモデルのクラスに割り当てることを含むことができ、各クラスはそのドライバモデルを訓練するために使用される複数の並進軸の特定の並進軸に関連付けられる。複数のドライバモデルのうちの訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルのうちの各ドライバモデルについて、そのドライバモデルのうちの1つ以上の訓練された並進応答を、そのドライバモデルと同じクラスに割り当てられた少なくとも1つの他のドライバモデルのうちの1つ以上の訓練された並進応答と比較することを含むことができる。
【0116】
操作は、訓練されたドライバモデルのサブセットの各訓練されたドライバモデルについて、その訓練されたドライバモデルに対応する第2の並進応答データを、観察された実験応答データと比較することによって、その訓練されたドライバモデルを検証し、その訓練されたドライバモデルの検証に応答して、その訓練されたドライバモデルに対応する訓練された出力データによって表される1つ以上の分子配列を含むワクチンを生成することをさらに含むことができる。
【0117】
一態様では、システムが提供される。システムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。システムは、1つ以上の分子配列を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行しているとき、少なくとも1つのプロセッサは、1つ以上の操作を実行するように構成されている。1つ以上の操作は、1つ以上の分子配列を示す時系列データを受信すること、及び1つ以上の分子配列のそれぞれについて、天然抗原としてその分子配列を含む病原性株の1回以上の循環を受信することを含む。1つ以上の操作は、機械学習モデルに含まれる実行可能ロジックの1つ以上の部分を保存する1つ以上のデータ構造を通して時系列データを処理し、この時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することを含む。
【0118】
時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、予測された1つ以上の分子配列が将来の使用に与える1つ以上の免疫学的特性を予測することを含むことができる。時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、時系列データの全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する1つ以上の分子配列を予測することを含むことができる。時系列データに基づいて1つ以上の分子配列を予測することは、時系列データの最大数の病原菌株を効果的にカバーする生物学的反応を生成する1つ以上の分子配列を予測することを含むことができる。予測された1つ以上の分子配列を使用して、時系列データの1回以上の循環の後の時間に循環する病原性株のためのワクチンを設計することができる。
【0119】
機械学習モデルは、リカレントニューラルネットワークを含むことができる。
【0120】
特定の実施形態では、生物学的反応を予測するためのデータ処理システムが提供される。システムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。 システムは、生物学的反応を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行しているとき、少なくとも1つのプロセッサは、1つ以上の操作を実行する。1つ以上の操作は、第1の分子配列の第1の配列データを受信することを含む。1つ以上の操作は、第2の分子配列の第2の配列データを受信することを含む。1つ以上の操作は、受信した第1及び第2の配列データに少なくとも部分的に基づいて、第2の分子配列に対する生物学的反応を予測することを含む。
【0121】
1つ以上の操作は、第1の分子配列及び第2の分子配列に対応する非ヒト生物学的反応データを受信することを含むことができる。1つ以上の操作は、さらに非ヒト生物学的反応データに少なくとも部分的に基づいて生物学的反応を予測することを含むことができる。1つ以上の操作は、第1の配列データ及び第2の配列データをアミノ酸ミスマッチとしてコードすることを含むことができる。
【0122】
第1の分子配列は、候補抗原を含み得る。第2の分子配列は、既知のウイルス株を含み得る。
【0123】
生物学的反応を予測することは、ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応を予測することは、少なくとも1つのヒト生物学的反応、及び少なくとも1つの非ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応は、抗体力価を含み得る。機械学習モデルは、ディープニューラルネットワークを含むことができる。
【0124】
機械学習法は、偽陽性及び偽陰性の発生率が低下するように、生物学的反応を予測する機械学習モデルを訓練するために使用することができる。記載のシステム及び方法のうちの少なくともいくつかは、従来の手法と比較した場合、例えば、データの次元を削減することによって、本質的に疎なデータを効率的に処理するために使用することができる。記載のシステム及び方法の少なくともいくつかは、従来の手法と比較して予測精度を高めるために、受信データにおける非線形関係を利用することができる。記載のシステム及び方法の少なくともいくつかは、ヒト生物学的反応及び非ヒト生物学的反応を同時に予測するために使用することができる。記載のシステム及び方法の少なくともいくつかは、実験的に観察されない結果を予測するために使用することができる。
【0125】
特定の実施形態では、1つ以上のコンピュータからなるシステムは、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成することができる。1つ以上のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると、装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成することができる。一般的な一態様には、連続データアルゴリズムを使用することによってワクチンを製造する方法が含まれる。本方法は、複数の第1の離散値を含み得る離散データオブジェクトを受信することを含み、離散データオブジェクトは、1つ以上のアミノ酸配列を含み得る。本方法はまた、離散データオブジェクトを、複数の第1の連続値を含み得る連続データオブジェクトに変換することを含む。本方法はまた、連続データオブジェクトに、連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含み得る連続結果オブジェクトを生成することを含む。本方法はまた、連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含み得る離散結果オブジェクトに変換することを含む。本方法はまた、i)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含み得るワクチンを製造することを含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0126】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る方法(第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれは、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む)。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含む。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。本方法はさらに、複数の候補離散結果オブジェクトを生成すること、及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成するための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットに見出されないサブ配列の損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0127】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。システムはまた、1つ以上のプロセッサを含み得る。システムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を記憶するコンピュータメモリを含み得、その操作には、複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは1つ以上のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成すること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること、並びにi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義定されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含むワクチンを製造することが含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0128】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む、システムがある。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含む。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。操作はさらに:複数の候補離散結果オブジェクトを生成すること、及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成するための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットに見出されないサブ配列の損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0129】
一般的な一態様は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに、以下を含み得る操作を実行させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは1つ以上のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成すること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること、並びにi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義定されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含むワクチンを製造することが含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0130】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。1つ以上のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る媒体(第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれは、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む)。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含む。各重みベクトルは20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は複数の第2の離散値を形成する。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0131】
特定の実施形態では、ワクチンとして使用するためのインフルエンザ抗原を生成することができるアルゴリズムが本明細書において開示される。一実装形態では、これには以下が含まれ得る:1)次の2つのステップを使用する機械学習(例えば、変分オートエンコーダアーキテクチャ)によって、全ての野生型ヘマグルチニン配列の削減次元空間を生成する:
a)削減された空間に可変的に埋め込む(例えば、モデルが予測された平均及び分散を有する正規分布から選択された埋め込まれた座標を用いて、入力配列から平均及び分散を予測する);
b)次いで、削減された空間位置「オートエンコーダ」損失関数から元の配列にデコードし、入力及び出力配列の類似性によって削減する。
【0132】
2)削減次元空間における抗原(ワクチン候補)及びリードアウト株(標的配列)の位置に基づく免疫反応予測モデルを訓練する[入力:ステップ1のモデルにより埋め込まれた抗原及びリードアウト、出力:抗体力価などの免疫反応の尺度]。
【0133】
3)削減空間から候補ワクチン成分表現をサンプリングし、ステップ2に記載されたモデルを用いて標的配列に対する予測性能によって候補ワクチン成分表現をランク付けし、上位候補を特定する。
【0134】
4)上位候補表現をデコードして[ステップ1bからのモデルを使用する]、元の野生型セットで観察された可能性又は観察されなかった可能性のあるヘマグルチニン配列を放出する。
【0135】
1つ以上のコンピュータからなるシステムは、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成することができる。1つ以上のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると、装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成することができる。一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するための次元削減方法が含まれ、この方法は、1つ以上のコンピュータからなるシステムによって実行される。本方法は、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信することを含む。本方法はまた、1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間内の複数の削減次元配列を生成することを含み、各削減次元配列は野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する。本方法はまた、複数の削減次元配列を使用して、削減次元空間内に複数の候補配列を生成することを含む。本方法はまた、ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信することを含む。本方法はまた、削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成することを含む。本方法はまた、力価予測因子への入力として、候補配列のそれぞれ及び少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を提供することを含む。本方法はまた、力価予測因子からの出力として、候補配列のそれぞれについての候補スコアを受信することを含む。本方法はまた、候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択することを含む。本方法はまた、選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成することを含む。本方法はまた、生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供することを含む。この方法はまた、生成されたアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれのワクチンを製造するのに適している操作を含む。ワクチンには、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含み得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0136】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。本方法は、複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る操作を含む。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。本方法は、単一の候補シーケンスが選択されるように、nが1の値である操作を含む。本方法は、複数の候補シーケンスが選択されるように、nが1より大きい値である操作を含む。少なくとも1つの候補配列を選択された候補配列として選択することは、それぞれの候補スコアが閾値よりも大きい候補配列を選択することを含み得る。生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、野生型アミノ酸配列のいずれとも異なる。候補配列のうちの少なくとも1つは、複数の削減次元配列内にある。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0137】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。システムはまた、1つ以上のプロセッサを含む。システムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を記憶するコンピュータメモリを含み、その操作には、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること、その1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成すること(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する);複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成すること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成すること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列のうちの少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれの候補スコアを力価予測子から出力として受信し、候補配列の中から少なくとも1つの王甫配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成すること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって規定されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)が含まれる。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0138】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得るシステム。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0139】
一般的な一態様は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに、以下を含む操作を実行させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること、その1つ以上のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成すること(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する);複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成すること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ以上のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成すること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列のうちの少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれの候補スコアを力価予測子から出力として受信し、候補配列の中から少なくとも1つの王甫配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成すること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成することができる核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって規定されるタンパク質を生成することができる送達ビヒクルの少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)が含まれる。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ以上のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0140】
実装形態には、以下の特徴の1つ以上が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る媒体。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。記載される手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0141】
これら及び他の態様、特徴、及び実装形態は、方法、装置、システム、構成要素、プログラム製品、ビジネスを行う方法、機能を実行するための手段又はステップとして、及び他の方法で表すことができ、特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになるであろう。
【0142】
本開示の実装形態は、以下の利点を提供することができる。従来の手法と比較して、ワクチンを将来の病原性シーズンに向けて設計し、将来の病原性シーズンの少なくとも1つの病原性株に対する生物学的反応量の観点から、より多くの防御を付与することができる。従来の手法と比較して、ワクチンを将来の病原性シーズンに向けて設計し、将来の病原性シーズンの複数の病原性株を有効にカバーすることができる範囲の広さ(すなわち、将来の病原性シーズンにおいて多くの病原性株に対し有効な免疫学的反応を誘発する)の観点から、より多くの防御を付与することができる。従来の手法とは異なり、頻繁に観察される株よりも多くの株と交差反応するため、「より多くの防御」を与え得る、稀にしか観察されない株を評価することができ、それらのワクチン接種の有効性を予測することができる。
【0143】
生物学的反応を測定する方法
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、対象に投与されると、生物学的反応(例えば、免疫学的反応)を誘導する。これらの生物学的反応を用いて、ワクチン又は免疫原性組成物を比較し、例えば、ワクチン又は免疫原性組成物が、1つ以上の機械学習HAを含まないワクチン又は免疫原性組成物と比較して、免疫反応を増強又は拡大するかどうかを決定することができる。
【0144】
生物学的反応を測定するために使用することができる例示的なアッセイは、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)である。HAIは、赤血球(RBC)表面のシアル酸受容体がインフルエンザウイルス(及びいくつかの他のウイルス)の表面に存在するヘマグルチニン糖タンパク質に結合し、ウイルス粒子に濃度依存的に生じる、相互接続されたRBC及びウイルス粒子のネットワーク又は格子構造を作り出す、赤血球凝集反応と呼ばれる赤血球凝集反応のプロセスを適用する。これは、体内の病原体を標的とする細胞上の類似のシアル酸受容体に結合するウイルスの機能に関する代用として取られる物理的測定である。別のウイルス(アッセイにおいてRBCに結合するために使用されるウイルスと遺伝的に類似又は異なり得る)に対するヒト又は動物の免疫反応において生じた抗ウイルス抗体の導入は、ウイルス-RBC相互作用を妨害し、アッセイにおいて赤血球凝集が観察される濃度を変えるのに十分なウイルスの濃度を変化させる。HAIの1つの目標は、アッセイにおいて赤血球凝集を阻害するそれらの能力と比較して、抗体を含有する抗血清又は他の試料中の抗体の濃度を特徴付けることであり得る。赤血球凝集を防止する抗体の最も高い希釈はHAI力価(すなわち、測定された反応)と呼ばれる。
【0145】
生物学的反応を測定するための別のアプローチは、ヒト又は動物の免疫反応によって誘発され、HAIアッセイにおいて赤血球凝集に必ずしも影響を及ぼすことができない潜在的により大きな抗体のセットを測定することである。このための一般的なアプローチは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術を利用するものであり、ウイルス抗原(例えば、ヘマグルチニン)を固体表面に固定化し、次いで、抗血清由来の抗体を抗原に結合させる。リードアウトは、抗血清由来の抗体、又はそれ自体が抗血清の抗体に結合する他の抗体に複合化した外因性酵素の基質の触媒作用を測定する。基質の触媒作用は、容易に検出可能な生成物を生じる。この種のインビトロアッセイには多くのバリエーションがある。そのようなバリエーションの1つは、抗体法医学(AF)と呼ばれ、これは多くの抗原に対して同時に単一の血清試料を測定することを可能にする多重ビーズアレイ技術である。これらの測定は、HAI力価と比較して、濃度及び総抗体認識を特徴付けるものであり、これらはヘマグルチニン分子によるシアル酸結合の干渉とより特異的に関連すると考えられている。したがって、抗血清の抗体は、場合によっては、別のウイルスの赤ヘマグルチニン分子と比較して、1つのウイルスのヘマグルチニン分子について対応するHAI力価よりも比例的に高いか又は低い測定値を有し得る;言い換えれば、これらの2つの測定値、AF及びHAIは、一般に直線的に相関しない。
【0146】
体液性免疫反応を測定する別の方法は、ウイルス中和アッセイ(例えば、マイクロ中和アッセイ)を含み、この場合、ウイルスを抗体/血清試料の連続希釈物とインキュベートした後の許容培養細胞において、特異的中和アッセイ技術に応じて、プラーク、巣、及び/又は蛍光シグナルの減少により、抗体力価が測定される。
【0147】
ワクチン又は免疫原性組成物
本開示は、標準治療インフルエンザウイルス株由来のインフルエンザウイルスHA(例えば、少なくとも3つ又は少なくとも4つの標準治療インフルエンザ株由来のHA)又は標準治療インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子と、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上のインフルエンザウイルスHA又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子とを含む多価ワクチン又は免疫原性組成物を提供する。
【0148】
特定の態様では、
(a)第1のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)、又は第1のインフルエンザウイルスH1 HAをコードする第1のリボ核酸分子と;
(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは、第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである)、又は第2のインフルエンザウイルスH3 HAをコードする第2のリボ核酸分子と;
(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子と;
(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAをコードする第4のリボ核酸分子と;
(e)機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(ここで、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、若しくはこれらの組み合わせから選択される)と、
を含むワクチン又は免疫原性組成物が本明細書において開示される。
【0149】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAを含み、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なる。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH3 HAは、第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH3HAは、第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強又は拡大する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH3 HAは、第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレードに由来し、特定の実施形態では、第5のインフルエンザH3HAは、第2のインフルエンザH3 HAと同じクレードに由来する。特定の実施形態では、第5のH3 HAは、3C.2Aクレード由来であり、特定の実施形態では、第5のH3 HAは、3C.3Aクレード由来である。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、2つ以上のH3 HA、例えば2つ、3つ、又は4つのH3 HAを含む。
【0150】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定のさらなる実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なる。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH1 HAは、第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH1 HAは、第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強又は拡大する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザH1 HAは、第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来し、特定の実施形態では、第5のH1 HAは、第1のインフルエンザH1 HAと同じクレードに由来する。特定の実施形態ではH1 HAは、6B.1クレード由来であり、特定の実施形態では、H1 HAは、6B.1Aサブクレード由来である。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、2つ以上のH1 HA、例えば2つ、3つ、又は4つのH1 HAを含む。
【0151】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定のさらなる実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統由来の第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザは第3のインフルエンザウイルスHAと抗原的に異なる。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第3のインフルエンザウイルスHAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第3のインフルエンザHAによって誘導される防御免疫反応を増強又は拡大する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第3のインフルエンザウイルスHAとは異なるクレードに由来し、特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第3のインフルエンザウイルスHAと同じクレードに由来する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリアのV1Aクレード由来であり、特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリアのV1A.1サブクレード、V1A.2サブクレード、又はV1A.3サブクレード由来である。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統由来の2つ以上のHA、例えばB/ビクトリア系統由来の2つ、3つ、又は4つのHAを含む。
【0152】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定のさらなる実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、B/山形系統由来の第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザは第4のインフルエンザウイルスHAと抗原的に異なる。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第4のインフルエンザウイルスHAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第4のインフルエンザHAによって誘導される防御免疫反応を増強又は拡大する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第4のインフルエンザウイルスHAとは異なるクレードに由来し、特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、第4のインフルエンザウイルスHAと同じクレードに由来する。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、B/山形のY1クレード由来であり、特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、B/山形のY2クレード由来である。特定の実施形態では、第5のインフルエンザウイルスHAは、B/山形のY3クレード由来である。特定の実施形態では、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、B/山形系統由来の2つ以上のHA、例えばB/山形系統由来の2つ、3つ、又は4つのHAを含む。
【0153】
本開示の特定の態様では、ワクチン又は免疫原性組成物は、第6のインフルエンザウイルスHA(ここで、第6のインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するH1 HA又はH3 HAである)、又は第6のインフルエンザウイルスHAをコードする核酸分子を含む。
【0154】
特定の実施形態では、第6のインフルエンザは、H1 HAであって、第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なるか、第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強若しくは拡大するか、第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来するか、第1のインフルエンザH1 HAと同じクレード由来するか、又は第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している。特定の実施形態では、第6のインフルエンザは、H3 HAであって、第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なるか、第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強若しくは拡大するか、第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレードに由来するか、第2のインフルエンザH3 HAと同じクレード由来するか、又は第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似している。
【0155】
本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物の特定の実施形態では、第1のインフルエンザウイルスHAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HAであり、第2のインフルエンザウイルスHAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3HAである。
【0156】
多価ワクチン又は免疫原性組成物中のHAの1つ以上は、組換えHAであってよく、単独で、又は他の組換えHA抗原と組み合わせて、例えば標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA及び/若しくは機械学習HAと組み合わせて、製剤化し包装することができる。特定の実施形態では、組換えHAは、1つ、2つ、又は3つの追加の組換えHA抗原、例えば標準治療インフルエンザウイルス株由来の1つ、2つ、又は3つの追加の組換え抗原と共に製剤化される。特定の実施形態では、組換えHAは、3つの追加の組換えHA抗原と共に製剤化され、四価のワクチン又は免疫原性組成物が生成される。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、標準治療インフルエンザウイルス株由来の4つの組換え抗原、及び1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの機械学習インフルエンザウイルスHAを含有し得る。
【0157】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、及び組換え機械学習H3 HAを含み得る。
【0158】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、及び組換え機械学習H1 HAを含み得る。
【0159】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、組換え機械学習H3 HA、及び組換え機械学習H1 HAを含み得る。
【0160】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、組換え機械学習H3 HA、組換え機械学習H1 HA、及びB/ビクトリア系統由来の組換え機械学習HAを含み得る。
【0161】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、組換え機械学習H3 HA、組換え機械学習H1 HA、及びB/山形系統由来の組換え機械学習HAを含み得る。
【0162】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、組換えH3 HA、組換えH1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えHA、B/山形系統由来の組換えHA、組換え機械学習H3 HA、組換え機械学習H1 HA、B/ビクトリア系統由来の組換え機械学習HA、及びB/山形系統由来の組換え機械学習HAを含み得る。
【0163】
ワクチン又は免疫原性組成物が組換えHAを含む実施形態のいずれかにおいて、ワクチン又は免疫原性組成物中の1つ以上の組換えHAは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する1つ以上のHAによって、又はインフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子によって置き換えることができる。例えば、特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、不活化インフルエンザウイルスH3 HA、不活化インフルエンザウイルスH1HA、B/ビクトリア系統由来の不活化インフルエンザウイルスHA、B/山形系統由来の不活化インフルエンザウイルスHA、及び組換え機械学習H3 HA又は機械学習インフルエンザウイルスH3 HAをコードするリボ核酸を含み得る。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスH3 HAをコードするリボ核酸、インフルエンザウイルスH1 HAをコードするリボ核酸、B/ビクトリア系統由来のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸、B/山形系統由来のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸、及び組換え機械学習H3HA又は機械学習インフルエンザウイルスH3 HAをコードするリボ核酸を含み得る。
【0164】
多価ワクチン又は免疫原性組成物中のHAの1つ以上は、本明細書に開示されるように、不活化インフルエンザウイルス中に存在してもよく、単独で、又は他のHAと組み合わせて、例えば標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA及び/又は機械学習HA、例えば組換えHA、不活化インフルエンザウイルス中に存在する他のHA、又はHAをコードするリボ核酸と組み合わせて、製剤化し包装することができる。
【0165】
特定の実施形態では、不活化インフルエンザウイルス中に存在するHAは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する1つ、2つ、又は3つの追加のHA、例えば標準治療インフルエンザウイルス株由来の1つ、2つ、又は3つの追加のHAと共に製剤化される。特定の実施形態では、不活化インフルエンザウイルス中に存在するHAは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する3つの追加のHAと共に製剤化されて、四価のワクチン又は免疫原性組成物を生成する。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、標準治療インフルエンザウイルス株由来の不活化インフルエンザウイルス中に存在する4つのHA、及び1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの機械学習インフルエンザウイルスHAを含有し得る。
【0166】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、及び機械学習H3 HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0167】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、及び機械学習H1 HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0168】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、機械学習H3 HA、及び機械学習H1 HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0169】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、機械学習H3 HA、機械学習H1 HA、及びB/ビクトリア系統由来の機械学習HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0170】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA抗原、B/山形系統由来のHA、機械学習H3 HA、機械学習H1 HA、及びB/山形系統由来の機械学習HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0171】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3 HA、H1 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、機械学習H3 HA、機械学習H1 HA、B/ビクトリア系統由来の機械学習HA、及びB/山形系統由来の機械学習HAを含み得、組成物中の各HAは不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0172】
ワクチン又は免疫原性組成物が不活化インフルエンザウイルス中に存在するHAを含む実施形態のいずれかにおいて、不活化インフルエンザウイルス中に存在する1つ以上のHAは、1つ以上の組換えHAによって、又はインフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子によって置き換えることができる。
【0173】
各組換えHAは、本明細書に開示される組成物中に、組成物が投与される対象に免疫反応を誘導するのに有効な量で含まれ得る。特定の実施形態では、各組換えHAは、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約5μg~約120μg、例えば約10μg~約60μg又は約15μg~約45μgの範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、各組換えHAは、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、又は約60μgの量で存在する。
【0174】
HAをコードするリボ核酸分子は、それぞれ、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約5μg~約120μg、例えば約10μg~約60μg又は約15μg~約45μgの範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、HAをコードするリボ核酸分子は、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、又は約100μgの量で存在する。
【0175】
不活化ウイルス中に存在する各HAは、本明細書に開示される組成物中に、組成物が投与される対象に免疫反応を誘導するのに有効な量で含まれ得る。特定の実施形態では、不活化ウイルス中に存在する各HAは、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約5μg~約120μg、例えば約10μg~約100μg、約10μg~約60μg、又は約15μg~約45μgの範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、不活化ウイルス中に存在する各HAは、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物中に、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、又は約100μgの量で存在する。
【0176】
本明細書においては、以下を含むワクチン又は免疫原性組成物がさらに開示される:
(a)第1のインフルエンザHA(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)、又は第1のインフルエンザウイルスH1 HAをコードする第1のリボ核酸分子;
(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の第2のインフルエンザウイルスHAをコードする第23のリボ核酸分子;
(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子;及び
(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する機械学習インフルエンザウイルスH3 HAである)、又は機械学習インフルエンザウイルスH3 HAをコードする1つ以上のリボ核酸分子。
【0177】
本明細書においては、以下を含むワクチン又は免疫原性組成物がさらに開示される:
(a)第1のインフルエンザウイルスHA(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである)、又は第1のインフルエンザウイルスH3 HAをコードする第1のリボ核酸分子;
(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の第2のインフルエンザウイルスHAをコードする第2のリボ核酸分子;
(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子;及び
(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する機械学習インフルエンザウイルスH1 HAである)、又は機械学習インフルエンザウイルスH1 HAをコードする1つ以上のリボ核酸分子。
【0178】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物は、さらなるインフルエンザウイルスH1 HA、及びさらなるインフルエンザウイルスH3 HA、B/ビクトリア系統由来のインフルエンザウイルスHA、並びに/又はB/山形系統由来のインフルエンザウイルスHA(ここで、各さらなるHAは、機械学習モデルから同定又は設計された分子配列を有する)、或いはさらなる機械学習インフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む。
【0179】
特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、四価のHAワクチンである。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、五価のHAワクチンである。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、六価のHAワクチンである。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、七価のHAワクチンである。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、八価のHAワクチンである。特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、8つを超える異なるHA分子を含む多価のワクチン又は免疫原性である。
【0180】
ワクチン又は免疫原性組成物はまた、アジュバントをさらに含むことができる。アジュバントとしては、抗原が吸着される無機物(ミョウバン、アルミニウム塩(例えば水酸化アルミニウム/オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)、リン酸アルミニウム(AlPO)、アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩(AAHS)及び/又は硫酸アルミニウムカリウムを含む))の懸濁液;又は抗原溶液が鉱油中に乳化された油中水型エマルション(例えば、フロイントインコンプリートアジュバント)(抗原性をさらに増強するために、死滅マイコバクテリアが含まれることもある(フロイントコンプリートアジュバント))を挙げることができる。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むものなど)もアジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号明細書;同第6,207,646号明細書;同第6,214,806号明細書;同第6,218,371号明細書;同第6,239,116号明細書;同第6,339,068号明細書;同第6,406,705号明細書;及び同第6,429,199号明細書を参照されたい)。アジュバントとしてはまた、脂質及び共刺激分子などの生体分子が挙げられる。例示的な生物学的アジュバントとしては、AS04(Dierlaurent,A.M.et al,J.Immunol.,2009,183:6186-6197)、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L及び41 BBLが挙げられる。
【0181】
特定の実施形態では、アジュバントは、少なくともスクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、及び疎水性非イオン性界面活性剤を含む水中油型アジュバントエマルションを含むスクアレンベースのアジュバントである。特定の実施形態では、エマルションは熱可逆性であり、任意選択で、油滴の体積基準で90%の集団が200nm未満のサイズを有する。
【0182】
特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、式CH-(CH-(O-CH-CH-OH(式中、nは10~60の整数であり、xは11~17の整数である)のものである。特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤は、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテルである。
【0183】
特定の実施形態では、油滴の体積基準で90%の集団が160nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で90%の集団が150nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で50%の集団が100nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、油滴の体積基準で50%の集団が90nm未満のサイズを有する。
【0184】
特定の実施形態では、アジュバントは、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含むがこれらに限定されない、少なくとも1つのアルジトールをさらに含む。
【0185】
特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は10以上である。特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは9未満である。
【0186】
特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤のHLBは10以上であり、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは9未満である。
特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤は、ソルビタンモノオレアートなどのソルビタンエステル、又はマンニドエステル界面活性剤である。特定の実施形態では、スクアレンの量は5~45%である。特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤の量は、0.9~9%である。特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤の量は、0.7~7%である。特定の実施形態では、アジュバントは、i)32.5%のスクアレン、ii)6.18%のポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル、iii)4.82%のソルビタンモノオレアート、及びiv)6%のマンニトールを含む。
【0187】
特定の実施形態では、アジュバントは、アルキルポリグリコシド及び/又は凍結防止剤、例えば糖、特にドデシルマルトシド及び/又はスクロースをさらに含む。
【0188】
特定の実施形態では、アジュバントは、Kluckerら、J.Pharm.Sci.2012,101(12):4490-500(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなAF03を含む。特定の実施形態では、アジュバントは、例えば、国際公開第2022/090359号パンフレット(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなSPA14などのリポソームベースのアジュバントを含む。
【0189】
HA及び任意選択のアジュバントに加えて、ワクチン又は免疫原性組成物はまた、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。一般に、賦形剤の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的に且つ生理学的に許容される流体を含む注入可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、又はカプセル形態)では、従来の非毒性固体担体として、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるワクチン又は免疫原性組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、浸透圧を調整する薬学的に許容される塩、保存剤、安定剤、緩衝剤、糖、アミノ酸、及びpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0190】
典型的には、ワクチン又は免疫原性組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、又は筋肉内などの非経口投与用に製剤化された無菌の液体溶液である。ワクチン又は免疫原性組成物はまた、鼻腔内又は吸入投与用に製剤化され得る。ワクチン又は免疫原性組成物はまた、任意の他の意図される投与経路のために製剤化され得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、皮内注射、鼻腔内投与、又は筋肉内注射用に製剤化される。いくつかの実施形態では、注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、注射前に液体の溶液若しくは懸濁液とするのに適した固体形態として、又はエマルションとして、従来の形態で調製される。いくつかの実施形態では、注射溶液及び懸濁液は、滅菌された粉末又は顆粒から調製される。これらの経路による投与のための医薬品の製剤化及び製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995(参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。現在、経口又は経鼻スプレー又はエアロゾル経路(例えば、吸入による)は、治療薬を肺及び呼吸器系に直接送達するために最も一般的に使用される。いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、ワクチン又は免疫原性組成物を定量送達するデバイスを使用して投与される。本明細書に記載の皮内用医薬組成物の送達に使用するのに好適なデバイスとしては、短針デバイス、例えば米国特許第4,886,499号明細書、米国特許第5,190,521号明細書、米国特許第5,328,483号明細書、米国特許第5,527,288号明細書、米国特許第4,270,537号明細書、米国特許第5,015,235号明細書、米国特許第5,141,496号明細書、米国特許第5,417,662号明細書(これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載のものが挙げられる.皮内用組成物はまた、皮膚への針の有効な貫入長を制限するデバイス、例えば国際公開第1999/34850号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるもの、及びその機能的等価物によって投与され得る。また、液体ジェット式注射器によって、又は角質層を穿孔し、真皮に到達するジェットを生成する針によって、液体ワクチンを真皮に送達するジェット式注射デバイスも好適である。ジェット式注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号明細書、米国特許第5,599,302号明細書、米国特許第5,334,144号明細書、米国特許第5,993,412号明細書、米国特許第5,649,912号明細書、米国特許第5,569,189号明細書、米国特許第5,704,911号明細書、米国特許第5,383,851号明細書、米国特許第5,893,397号明細書、米国特許第5,466,220号明細書、米国特許第5,339,163号明細書、米国特許第 5,312,335号明細書、米国特許第 5,503,627号明細書、米国特許第 5,064,413号明細書、米国特許第5,520,639号明細書、米国特許第4,596,556号明細書、米国特許第4,790,824号明細書、米国特許第4,941,880号明細書、米国特許第4,940,460号明細書、国際公開第1997/37705号パンフレット、及び国際公開第1997/13537号パンフレット(これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、皮膚の外層を通って真皮まで粉末形態のワクチンを加速する圧縮ガスを使用して、弾道粉末/粒子送達デバイスも好適である。加えて、皮内投与の古典的なマントー法において、従来のシリンジが使用され得る。
【0192】
非経口投与のための製剤には、典型的には滅菌した水性又は非水性の溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。水性担体としては、水、アルコール性/水性の溶液、乳液又は懸濁液、例えば生理食塩水、緩衝媒体が挙げられる。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は不揮発性油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、流体及び栄養補充物、電解質補充物(例えばリンガーデキストロースをベースとしたもの)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども含まれ得る。
【0193】
キット
ワクチン又は免疫原性組成物のためのキットも本明細書においてさらに開示される。キットには、ワクチン若しくは免疫原性組成物を含む好適な容器、又はワクチン若しくは免疫原性組成物の種々の成分を含む複数の容器が、任意選択により使用説明書と共に含まれ得る。
【0194】
特定の実施形態では、キットは、例えば、(a)第1のインフルエンザウイルスHA(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)と;(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)と;(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAはB/ビクトリア系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAと;(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAはB/山形系統の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)とを含む複数の容器と、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(ここで、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAはH1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される)を含む第2の容器と、を含み得る。
【0195】
特定の実施形態では、第1の容器中の第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、組換えインフルエンザウイルスHAであり、第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、組換えインフルエンザウイルスHAである。或いは、第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは不活化ウイルス中に存在するか、又は第2の容器は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子を含む。
【0196】
特定の実施形態では、第1の容器中の第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは不活化インフルエンザウイルス中に存在し、且つ第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは不活化ウイルス中に存在する。或いは、第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは組換えHAであるか、又は第2の容器は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子を含む。
【0197】
特定の実施形態では、第1の容器中の第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、それぞれのインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子として存在し、且つ第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAはそれぞれ、それぞれのインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子として存在する。或いは、第2の容器中の1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、組換えHAであるか、又は不活化インフルエンザウイルス中に存在する。
【0198】
核酸、クローニング及び発現系
本開示は、開示されたHAをコードする核酸分子をさらに提供する。核酸は、例えば、ワクチン若しくは免疫原性組成物中で、又はワクチン若しくは免疫原性組成物の成分として使用することができる組換えHAを発現させるために使用され得る。核酸は、DNAを含むか又はRNAを含んでよく、また全体が又は部分的に合成であっても組換えであってもよい。本明細書に記載のヌクレオチド配列への言及は、特定の配列を有するDNA分子を包含し、文脈上別段の要求がない限り、UがTに置換されている特定の配列を有するRNA分子、又はプソイドウリジンなどのその誘導体を包含する。他のヌクレオチド誘導体又は修飾ヌクレオチドを、開示されたHAをコードする核酸分子に組み込むことができる。
【0199】
本開示はまた、本明細書に開示されるHAをコードする人工核酸分子を含むベクター(例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、転写又は発現カセット、人工染色体など)の形態の構築物を提供する。本開示はさらに、上記の1つ以上の構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0200】
また、これらの核酸分子によってコードされるHAを作製する方法も提供される。HAポリペプチドは、組換え技術を用いて生成され得る。組換えタンパク質の生成及び発現は当該技術分野においてよく知られており、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th Ed.2012),Cold Spring Harbor Pressに開示されているような従来の手順を用いて行うことができる:例えば、HAポリペプチドの発現は、本明細書に開示されるHAをコードする核酸分子を含有する宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成され得る。発現により生成後、任意の好適な技術を用いてHAを単離及び/又は精製し、次いで、必要に応じて使用することができる。
【0201】
様々な異なる宿主細胞におけるクローニング及びポリペプチド発現のための系は、当該技術分野においてよく知られている。本明細書に開示される構築物に適合する任意のタンパク質発現系(例えば、安定又は一過性)を使用して、本明細書に記載されるHAを生成することができる。
【0202】
好適なベクターは、適切な調節配列、例えばプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び必要に応じて他の配列を含むように選択又は構築することができる。
【0203】
組換えHAを発現するために、HAをコードする核酸を宿主細胞に導入することができる。導入は、任意の利用可能な技術を用いることができる。真核細胞では、好適な技術として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、及びレトロウイルス若しくは他のウイルス、例えばワクシニア、又は昆虫細胞ではバキュロウイルスを使用する形質導入を挙げ得る。細菌細胞では、好適な技術として、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを用いたトランスフェクションを挙げ得る。これらの技術は当該技術分野でよく知られている。(例えば、”Current Protocols in Molecular Biology”,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,2010を参照されたい)。DNA導入に続いて、ベクターを含有する細胞を選択する選択方法(例えば、抗生物質耐性)を行ってもよい。
【0204】
宿主細胞は、植物細胞、酵母細胞、又は動物細胞であってもよい。動物細胞は、無脊椎動物細胞(例えば、昆虫細胞)、非哺乳類脊椎動物細胞(例えば、鳥類、爬虫類及び両生類)及び哺乳動物細胞を包含する。一実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の例としては、COS-7細胞、HEK293細胞;ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;マウスセルトリ細胞;アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HeLa);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK)などが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、宿主細胞は昆虫細胞である。
【0205】
使用方法
本開示は、本明細書に記載のワクチン又は免疫原性組成物を対象に投与する方法を提供する。方法は、対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をするために使用され得る。いくつかの実施形態では、ワクチン接種方法は、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を、これを必要とする対象に、対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をするのに有効な量で投与することを含む。同様に、本開示は、対象へのインフルエンザウイルスのワクチン接種に使用するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子を含むワクチン又は免疫原性組成物を提供する。
【0206】
本開示はまた、対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をするための医薬を製造するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子を含むワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。本開示はまた、対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をする方法であって、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。同様に、本開示は、対象をインフルエンザウイルスに対し免疫するために使用するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子を含むワクチン又は免疫原性組成物を提供する。本開示はまた、対象をインフルエンザウイルスに対し免疫するための医薬を製造するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子を含むワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。
【0207】
いくつかの実施形態では、本方法又は使用は、対象におけるインフルエンザウイルスによる感染又は疾患を予防する。いくつかの実施形態では、方法又は使用は、対象に防御免疫反応を引き起こす。いくつかの実施形態では、防御免疫反応は、抗体反応である。
【0208】
本明細書で提供される免疫化の方法(又は関連する使用)は、1つ以上のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫反応を誘発することができる。したがって、様々な実施形態において、本明細書に記載の組成物は、様々なタイプのインフルエンザウイルスに対して広範な交差防御を提供することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、トリ、ブタ、季節性、及び/又はパンデミックインフルエンザウイルスに対する交差防御を提供する。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1つ以上の季節性インフルエンザ株(例えば、標準治療株)に対し、改善された免疫反応を誘発することができる。例えば、改善された免疫反応は、改善された体液性免疫反応であり得る。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1つ以上のパンデミックインフルエンザ株に対し、改善された免疫反応を誘発することができる。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1つ以上の豚インフルエンザ株に対し、改善された免疫反応を誘発することができる。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1つ以上のトリインフルエンザ株に対し、改善された免疫反応を誘発することができる。
【0209】
また、対象におけるインフルエンザウイルス疾患を予防する方法であって、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を、対象におけるインフルエンザウイルス疾患を予防するのに有効な量で、対象に投与することを含む方法が提供される。同様に、本開示は、対象におけるインフルエンザウイルス疾患の予防に使用するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を提供する。本開示はまた、対象におけるインフルエンザウイルス疾患の予防のための医薬を製造するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。
【0210】
また、対象においてインフルエンザウイルスHAに対する免疫反応を誘導する方法であって、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。同様に、本開示は、対象におけるインフルエンザウイルスHAに対する免疫反応の誘導に使用するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を提供する。本開示はまた、対象におけるインフルエンザウイルスに対する免疫反応を誘導するための医薬を製造するための、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物の使用を提供する。
【0211】
本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と、任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザ感染の1つ以上の症状の発症前又は発症後に投与され得る。すなわち、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザ感染を予防するために、又は潜在的インフルエンザ感染の症状を改善するために、予防的に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象がパンデミックインフルエンザウイルスに感染していることが知られているか又は疑われる他の個体又は家畜(例えば、ブタ)と接触するような場合、及び/或いはインフルエンザ感染が知られているか又は流行している若しくはエンデミックであると考えられる地域に対象が存在しているような場合、対象はインフルエンザウイルスに感染するリスクがある。いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、インフルエンザ感染に罹患している対象、又はインフルエンザ感染に一般に関連する1つ以上の症状を示している患者に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されているとわかっているか又は曝露されていると考えられている。いくつかの実施形態では、対象がインフルエンザウイルスに曝露されているとわかっているか又は曝露されていると考えられている場合、対象はインフルエンザに感染するリスクがあるか又は感染しやすい。いくつかの実施形態では、パンデミックインフルエンザウイルスに感染しているとわかっているか又は疑われる他の個体又は家畜(例えば、ブタ)と対象が接触している場合、及び/或いはインフルエンザ感染が知られているか又は流行している若しくはエンデミックであると考えられる地域に対象が存在するか若しくは存在している場合、対象はインフルエンザウイルスに曝露されているとわかるか又は曝露されていると考えられる。本明細書に開示のワクチン又は免疫原性組成物は、季節性インフルエンザ株又はパンデミックインフルエンザ株によって、又はその両方によって引き起こされる疾患を治療又は予防するために使用され得る。
【0212】
本開示によるワクチン又は免疫原性組成物は、所望の結果を達成するのに適切な任意の量又は用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、所望の結果は、季節性株及びパンデミック株の両方を含む広範囲のインフルエンザ株に対する持続的適応免疫反応の誘導である。いくつかの実施形態では、所望の結果は、インフルエンザ感染の1つ以上の症状の強度、重症度、及び/又は頻度の低下、並びに/或いは発症の遅延である。必要とされる用量は、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、治療される感染症の重症度、使用される特定の組成物、及びその投与方法に応じて、対象ごとに異なり得る。
【0213】
様々な実施形態において、本明細書に記載のワクチン又は免疫原性組成物は対象に投与され、対象は動物界の任意のメンバーであり得る。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、鳥類(avian)(例えば、ニワトリ又はトリ(bird)、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、及び/又は線虫である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のワクチン又は免疫原性組成物は、ヒト対象に投与される。特定の実施形態では、ヒト対象は、生後6か月以上、6か月~35か月、少なくとも2歳、少なくとも3歳、36か月~8歳、9歳以上、少なくとも6か月18歳未満、又は少なくとも3歳18歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、乳児(36か未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、小児又は青年(18歳未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、高齢者(少なくとも60歳又は少なくとも65歳)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、非高齢成人(少なくとも18歳65歳未満)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のワクチン又は免疫原性組成物の方法及び使用は、プライムブーストワクチン接種法を含む。プライムブーストワクチン接種は、プライミングワクチンを投与し、その後、ある期間が経過した後、ブースティングワクチンを対象に投与することを含む。免疫反応は、プライミングワクチンの投与時に「プライミング」され、ブースティングワクチンの投与時に「ブースティング」される。プライミングワクチンは、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を含むことができる。同様に、ブースティングワクチンは、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子と任意選択のアジュバントとを含むワクチン又は免疫原性組成物を含むことができる。プライミングワクチン又は免疫原性組成物はブースティングワクチンと同じであり得るが、同じである必要はない。ブースティングワクチンの投与は一般に、プライミング組成物の投与から数週間乃至数か月後、好ましくは約2~3週間後、又は4週間後、又は8週間後、又は16週間後、又は20週間後、又は24週間後、又は28週間後、又は32週間後である。
【0215】
ワクチン又は免疫原性組成物は、上記のように、例えば非経口送達を含む、任意の好適な投与経路を用いて投与することができる。
【0216】
典型的には、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子並びに任意選択のアジュバントは、同じワクチン又は免疫原性組成物の成分として一緒に投与される。しかしながら、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子は、同じワクチン又は免疫原性組成物の一部として投与される必要はない。すなわち、本明細書に記載のHA及び/又はリボ核酸分子並びに任意選択のアジュバントは、必要に応じて、対象に連続的に投与することができる。
【0217】
本開示の代表的な実施形態
1.(a)第1のインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)(ここで、第1のインフルエンザウイルスHAは、第1の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH1 HAである)、又は第1のインフルエンザウイルスH1 HAをコードする第1のリボ核酸分子と;
(b)第2のインフルエンザウイルスHA(ここで、第2のインフルエンザウイルスHAは、第2の標準治療インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである)、又は第2のインフルエンザウイルスH3 HAをコードする第2のリボ核酸分子と;
(c)第3のインフルエンザウイルスHA(ここで、第3のインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統の第3の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/ビクトリア系統由来の第3のインフルエンザウイルスHAをコードする第3のリボ核酸分子と;
(d)第4のインフルエンザウイルスHA(ここで、第4のインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統の第4の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHAである)、又はB/山形系統由来の第4のインフルエンザウイルスHAをコードする第4のリボ核酸分子と;
(e)機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有する1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHA、又は1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAをコードする1つ以上のリボ核酸分子(ここで、1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、若しくはこれらの組み合わせから選択される)と、
を含む免疫原性組成物。
【0218】
2.リボ核酸分子は、mRNA分子である、実施形態1の免疫原性組成物。
【0219】
3.リボ核酸分子は、脂質-ナノ粒子(LNP)に封入されている、実施形態1又は2の免疫原性組成物。
【0220】
4.分子配列は、アミノ酸配列又は核酸配列である、実施形態1~3のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0221】
5.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0222】
6.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、非野生型インフルエンザウイルスHA分子配列を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0223】
7.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、組換えインフルエンザウイルスHAを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0224】
8.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、不活化インフルエンザウイルス、任意選択によりスプリット不活化ウイルス中に存在する、実施形態1~6のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0225】
9.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAの少なくとも1つをコードするリボ核酸分子を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0226】
10.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に異なる、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0227】
11.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を増強する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0228】
12.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0229】
13.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAとは異なるクレードに由来する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0230】
14.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAと抗原的に類似している、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0231】
15.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH3 HAであり、第5のインフルエンザH3 HAは第2のインフルエンザH3 HAと同じクレードに由来する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0232】
16.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なる、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0233】
17.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を増強する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0234】
18.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0235】
19.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0236】
20.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0237】
21.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAはH1 HAであり、第5のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと同じクレードに由来する、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0238】
22.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAは、3C.2Aクレード由来のH3 HAである、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0239】
23.1つ以上の機械学習インフルエンザウイルスHAは、第5のインフルエンザウイルスHAであり、第5のインフルエンザウイルスHAは、3C.3Aクレード由来のH3 HAである、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0240】
24.第6のインフルエンザウイルスHAをさらに含む、実施形態1~15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0241】
25.第6のインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するH1 HA、又は第6のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子である、実施形態24に記載の免疫原性組成物。
【0242】
26.第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に異なるか、第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1HAによって誘導される防御免疫反応を増強するか、第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAによって誘導される防御免疫反応を拡大するか、第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAとは異なるクレードに由来するか、第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと同じクレードに由来するか、又は第6のインフルエンザH1 HAは第1のインフルエンザH1 HAと抗原的に類似している、実施形態25に記載の免疫原性組成物。
【0243】
27.機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するB/ビクトリア系統由来の第7のインフルエンザウイルスHA、又は第7のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む、実施形態24~26のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0244】
28.機械学習モデルから同定若しくは設計された分子配列を有するB/山形系統由来の第8のインフルエンザウイルスHA、又は第8のインフルエンザウイルスHAをコードするリボ核酸分子をさらに含む、実施形態24~27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0245】
29.機械学習モデルは、生物学的反応を予測するように訓練される、実施形態1~28のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0246】
30.生物学的反応は、ヒト、フェレット、又はマウスの生物学的反応である、実施形態29に記載の免疫原性組成物。
【0247】
31.生物学的反応は、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)、抗体法医学(AF)、又は中和アッセイを含む、実施形態29又は30に記載の免疫原性組成物。
【0248】
32.第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、組換えインフルエンザウイルスHAである、実施形態1~31のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0249】
33.第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、不活化インフルエンザウイルス中に存在する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0250】
34.第1、第2、第3、及び第4のインフルエンザウイルスHAをリボ核酸分子として含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0251】
35.組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、培養昆虫細胞においてバキュロウイルス発現系によって産生される、実施形態7~34のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0252】
36.第1のインフルエンザウイルスHAは、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1HAであり、第2のインフルエンザウイルスHAは、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HAである、実施形態1~35のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0253】
37.アジュバントをさらに含む、実施形態1~36のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0254】
38.アジュバントは、水中スクアレンアジュバント又はリポソームベースのアジュバントを含む、実施形態37に記載の免疫原性組成物。
【0255】
39.水中スクアレンアジュバントは、AF03を含む、実施形態38に記載の免疫原性組成物。
【0256】
40.リポソームベースのアジュバントは、SPA14を含む、実施形態38に記載の免疫原性組成物。
【0257】
41.各リボ核酸分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、実施形態1~40のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0258】
42.筋肉内注射用に製剤化される、実施形態1~41のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0259】
43.リボ核酸分子は、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロールベースの脂質、及びヘルパー脂質を含むLNPに封入されている、実施形態1~42のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【0260】
44.インフルエンザウイルスに対して対象を免疫する方法であって、実施形態1~43のいずれか1つの免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法。
【0261】
45.対象におけるインフルエンザウイルス感染を予防する、実施形態44に記載の方法。
【0262】
46.対象に防御免疫反応を生じさせる、実施形態44又は45に記載の方法。
【0263】
47.防御免疫反応は、HA抗体反応を含む、実施形態46に記載の方法。
【0264】
48.対象は、ヒトである、実施形態44~47のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
49.免疫原性組成物は、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、鼻腔内、吸入、又は腹腔内投与される、実施形態44~48のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
50.季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方によって引き起こされる疾患を治療又は予防する、実施形態44~49のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
51.対象はヒトであり、ヒトは生後6か月以上、生後6~35か月、少なくとも2歳、少なくとも3歳、18歳未満、少なくとも18歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも生後6か月18歳未満、少なくとも3歳18歳未満、又は少なくとも18歳65歳未満である、実施形態44~50のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
52.インフルエンザウイルス感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、実施形態1~43のいずれか1つの免疫原性組成物の予防的有効量を対象に投与することを含む方法。
【0269】
53.2~6週間、任意選択により4週間の間隔で、2用量の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、実施形態44~52のいずれか1つの方法。
【0270】
54.実施形態1~43のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を含むワクチン組成物。
【0271】
55.免疫原性組成物は、ワクチン組成物である、実施形態44~53のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより深く理解されるであろう。
【実施例
【0273】
以下の実施例は例示的なものとみなされるべきであり、上記の開示の範囲を限定するものではない。
【0274】
動物実験は、実験動物の人道的管理と使用(Humane Care and Use of Laboratory Animals)に関する公衆衛生局(Public Health Service)(PHS)規範、及び実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に準拠して行い、Sanofi動物実験委員会(Institutional animal Care and Use Committee)(IACUC)から承認された動物プロトコルで実施した。全ての動物を、特定の病原体を含まない条件下で、食物及び水を自由に与えて飼育した。
【0275】
ヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイ:HAIアッセイの前に、血清を受容体破壊酵素(RDE;Denka Seiken,Co.,Japan)で処理して、非特異的阻害剤を不活性化した。RDE処理した血清を、v底マイクロタイタープレートで連続的に希釈した(2倍希釈)。HAIリードアウトパネルからの各ウイルスの等量を各ウェルに加えた(1ウェル当たり4赤血球凝集単位(HAU))。使用する相同ウイルスパネルは以下の実施例に記載しており、別段の指示がない限り、卵中で増殖させた。プレートを覆い、室温で20分間(又は45~60分間)インキュベートし、続いて、PBS中の、ニワトリ赤血球(erythrocyte)(赤血球(red blood cell);CRBC)の1%混合物又はシチメンチョウ赤血球(TRBC)(Lampire Biologicals)の0.5%混合物を添加した。プレートを撹拌によって混合し、覆い、RBCを室温で約30分~1時間静置した。HAI力価は、非凝集RBCを含有する最後のウェルの希釈率の逆数によって決定した。
【0276】
HINT mNTインフルエンザプロトコル:インフルエンザ株に対する中和力価は、Jorquera,P.A.et al,Insights into antigenic advancement of influenza A(H3N2)viruses,2011-2018,Sci.Reports 9,2676(2019)に記載される方法で測定した。簡潔に記載すると、RDE処理した血清の1:20~1:2,560の連続2倍希釈物を、等量のウイルス、約1000フォーカス形成単位(FFU)と混合し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、MDCK-SIAT1細胞懸濁液をウイルス:血清混合物に加え、約22時間インキュベートした。単層をメタノールで固定し、染色の準備をした。次いで、ウェルを、核タンパク質(NP)に対する抗インフルエンザモノクローナル抗体、続いて、ALEXA FLUOR(登録商標)488コンジュゲート二次抗体(Thermo Fisher Scientific;Waltham、MA)と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、CTL IMMUNOSPOT(登録商標)Cell Imaging v2(CTL、Cleveland、OH)でプレートを走査した。プレートからのカウントをGraphpad Prismソフトウェアに移し、中和力価50(NT50)を、シグモイド用量反応、可変勾配、非線形進行を用いて計算した。ウイルス投入のみの対照ウェルの50%までウイルス感染を阻害した血清試料のNT50力価は、シグモイド曲線から計算した力価であった。このアッセイは、トリプシンを含まず、血清を含まないウイルス投入対照ウェルと比較して、ウイルス侵入の阻害を測定する。カウントは個々の感染細胞であり、このアッセイは、H1、H3、B/ビクトリア、及びB/山形を含む全ての生ウイルスサブタイプに好適である。
【0277】
実施例1-複数のH3 HA株の投与に対する免疫反応
HA免疫反応に対する効果を決定するために、ナイーブフェレットモデルにおいて複数のH3 HAを投与した。フェレットに単一のH3N2不活化ウイルス又は2つのH3N2不活化ウイルスのカクテルを感染させて、カクテルによって誘発された抗体反応が、抗原的に多様なウイルスリードアウトパネルに対する単一のウイルスによって誘発された反応よりも範囲の広がりを示したかどうかを決定した。
【0278】
同時感染のために選択したウイルスは、同じクレード3C.2A(類似ウイルス)又は異なるクレード3C.2A及び3C.3A(非類似ウイルス)から選択し、以下の表1に示す。
【0279】
【表1】
リードアウトパネルは2016~2019年の期間のウイルスを含み、2つの抗原的に異なるクレード、3C.2A及び3C.3Aからの循環株の代表であり、クロスクレードカバレッジを評価した。以下の7つの3C.2Aウイルスをリードアウトパネルで使用した:A/Valladolid/182/2017、A/Alaska/43/2019、A/Bangladesh/3190613015/2019、A/Hongkong/45/2019、A/Victoria/617/2017、A/Peru/9519/2019、及びA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016。以下の5つの3C.3Aウイルスをリードアウトパネルで使用した:A/Kansas/14/2017、A/Brisbane/34/2018、A/Mexico/2356/2019、A/Suriname/0902/2019、及びA/Indiana/08/2018。
【0280】
ナイーブフェレット(1群当たり2匹)に、(1)A/Hongkong/45/2019単独;(2)A/Alaska/43/2019単独;(3)A/Kansas/14/2017単独;(4)A/Hongkong/45/2019及びA/Alaska/43/2019の1:1組み合わせ;又は(5)A/Hongkong/45/2019及びA/Kansas/14/2017の1:1組み合わせを鼻腔内接種した。各ウイルスを同じ用量、5log10フォーカスフォーミングユニット(FFU)で与えた。-8日目に血液を採取し、0日目にフェレットを免疫し、14日目に再び血液を採取した。
【0281】
A/HONGKONG/45/2019+A/KANSAS/14/2017ウイルスの組み合わせを感染させたフェレットから、3C.2A及び3C.3Aクレードをカバーするリードアウトウイルスに対する高いマイクロ中和力価が観察された。図3及び図4Bを参照されたい。対照的に、A/HONGKONG/45/2019+A/ALASKA/43/2019の組み合わせを含有する抗原的に類似のウイルスカクテルを感染させたフェレットは、よりクレードに制限された反応を示し、3C.2Aクレード由来のリードアウト株に対し高い力価が観察された。図2及び図4Bを参照されたい。ウイルスカクテルの組み合わせは、カクテル内の各個々の株に対して誘発される反応を妨害しないようであり、単一感染で観察される反応と同様である。図5を参照されたい。
【0282】
対向クレード(3C.2A及び3C.3A)由来のH3 HAの混合物は、最高の中和力価を伴うクロスクレードの広がりを示す抗体反応の相加効果を示した。したがって、この3C.2A+3C.3Aカクテルで観察された全反応は、3C.2A及び3C.3Aウイルスの各単一感染で観察されたものと同様であった。同じ3C.2Aクレードのウイルス混合物は、3C.2A+3C.3Aウイルスカクテルと同じ大きさの力価を3C.3Aクレードに広げて誘発することはなかったが、この混合物は、標準治療ウイルスのA/HONGKONG/45/2019へのA/ALASKA/43/2019ウイルスの付加が全リードアウトパネルにわたって抗体力価を高めることを示した。(1)A/Hongkong/45/2019の力価と(2)A/Hongkong/45/2019とA/Alaska/43/2019の組み合わせによる(2)の力価を比較する図2を参照されたい。これらのデータは、異なるH3 HAを組み合わせることにより、範囲を広げることができ、抗原的に多様なインフルエンザウイルスのカバレッジを改善することが可能になることを示している。
【0283】
実施例2-四価及び五価インフルエンザワクチンを評価するナイーブフェレットモデルにおける免疫原性
本研究の目的は、修飾非複製(MNR)mRNA製剤で送達された2つのH3 HAを混合することにより、ナイーブフェレットモデルにおけるHA免疫反応に対して、相加的、相乗的又は拮抗的効果が誘発されるかどうかを決定することであった。本研究では、さらなるH3株を含む五価インフルエンザワクチン(PIV)が、さらなる株を含まない四価インフルエンザワクチン(QIV)と比較して、カバレッジを広げる実行可能性をさらに評価した。
【0284】
多価ワクチン免疫原性を評価するために使用されるナイーブフェレットに、以下の表2に記載するように、以下の10群のうちの1つを21日の間隔を置いて2回(0日目及び21日目に)ワクチン接種した:
群(1)HA抗原をコードする5つのmRNAの混合物、そのうちの4つは、2021~2022年の北半球WHO標準治療(WHO SOC)株(H1、H3、BVic、及びBYam)から(具体的には、A/Wisconsin/588/2019(H1N1)株、A/Tasmania/503/2020(H3N2)株、B/Washington/02/2019(Victoria系統)株、及びB/Phuket/3073/2013(Yamagata系統)株から)選択され、そのうちの1つは、クレードH3C.2A防御するために機械学習によって選択され(具体的には、野生型A/Norway/2629/2015)、各株からのHA mRNAは15mgの量で存在した;
群(2)HA抗原をコードする5つのmRNAの混合物、そのうちの4つは、WHO SOC株であり、そのうちの1つは、クレードH3C.2A防御するために機械学習によって選択され(具体的には、非野生型A/Design/H3S25/2019)、各株からのHA mRNAは15μgの量で存在した;
群(3)HA抗原をコードする5つのmRNAの混合物、そのうちの4つは、WHO SOC株であり、そのうちの1つは、クレードH3C.3A防御するために機械学習によって選択され(具体的には、野生型A/Washington/526/2019)、各株からのHA mRNAは15μgの量で存在した;
群(4)HA抗原をコードする5つのmRNAの混合物(そのうちの4つは、上記のWHO SOC株であり、そのうちの1つは、クレードH3C.3A防御を提供するために選択された追加のWHO SOC株、A/Kansas/14/2017であり、各株からのHA mRNAは15μgの量で存在した;
群(5)HA抗原をコードする5つのmRNAの混合物、そのうちの4つは、上記のWHO SOC株であり、そのうちの1つは、2019~2020年の北半球WHO SOC株のA/Kansas/14/2017であり、H1、BYam、及びBVicnのそれぞれに由来するHA mRNAはそれぞれ15μgの量で存在し、2つのH3株(A/Tasmania/503/2020及びA/Kansas/14/2017)のmRNAはそれぞれ7.5μgの量で存在した;
群(6)WHO SOC株をコードする4つのmRNAの混合物、H1、BYam、及びBVic株のそれぞれに由来するmRNAは15μg、H3株に由来するmRNAは30μgの量で存在した;
群(7)WHO SOC株をコードする4つのmRNAの混合物、4つの株のそれぞれに由来するmRNAは15μgの量で存在した;
群(8)WHO SOC株から選択される4つの組換えHAタンパク質の混合物、4つの株のそれぞれに由来する組換えHAは45μgの量で存在した;
群(9)WHO SOC株から選択される4つの不活化ウイルスの混合物、4つの株のそれぞれは60μgの量で存在した;及び
群(10)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)。
【0285】
群8~10を除いて、全てのワクチン製剤は、単一カプセル化(単一サブタイプ/LNP)MNR mRNA HAを含有し、これらは、免疫化の前に単一製剤に組み合わされて、所望のワクチン組み合わせを生成した。
【0286】
フェレットを、0日目及び21日目に筋肉内接種により免疫し、体液性反応を、49日目、2回目の免疫の1ヶ月後に、機能的HA抗体反応を測定するマイクロ中和(mNT)アッセイにより評価した。
【0287】
【表2】
【0288】
【表3】
【0289】
各群について、n=6フェレットであり、以下の卵増幅インフルエンザウイルス株:A/Tasmania/503/2020、A/Victoria/2570/2019、B/Phuket/3073/2013及びB/Washington/02/2019に対するmNT抗体力価を測定し、幾何平均力価(GMT)値を算出した。結果を図6に示す。
【0290】
H1(A/Victoria/2570/2019)の力価上限は6,000~7,000であった。上記及び図6に示すように、四価mRNAワクチン(群6及び7)を受けたフェレットは、49日目までに4つの相同インフルエンザサブタイプH1N1、H3N2、B/山形、及びB/ビクトリアの全てに対し、機能的抗体反応を生じた。H1反応は、群1~9の全てで堅牢であった(ここで、力価上限は1:6,000とした)
【0291】
1株当たり15mgのHA mRNAを含有するPIVを接種されたフェレット(群1~4)におけるB/ビクトリア反応では、B/Washington/02/2019に対して誘発された中和力価は、1株当たり15mgのHA mRNAを含有するQIVを接種されたフェレット(群7)から誘発されたものと同等であった。同様に、類似したB/山形の反応は、群2~4及び7で観察されたが、ただし、群1ではフェレットのうちの4匹が、B/Phuket/3073/2013に対して相同中和力価を生じず、全体的な力価は群7の力価よりも有意に低かった(混合モデル分析において、p<0.0001)。理論に束縛されるものではないが、他のPIV群におけるH3株の添加はmNT力価の有意な低下をもたらさなかったので、その結果は免疫化又は株特異的影響に関する技術的問題を示している可能性がある。
【0292】
15μg用量のH3 A/Tasmania/503/2020又は30μg用量のH3A/Tasmania/503/2020 QIV mRNAワクチン群6及び7の間で、49日目に測定された抗体反応に統計的有意差はなかった(p=0.95、混合モデル分析)。このことは、H3抗原用量を倍加しても、この用量範囲では、中和抗体力価は増加しなかったことを示唆している。
【0293】
PIV製剤中の7.5μg用量のH3で免疫したフェレット(群5)は、QIV製剤で免疫したフェレット(群6及び7、H3成分をそれぞれ15μg及び30μg投与)よりも有意に高いA/Tasmania/503/2020 mNT力価を示した(p<0.05;混合モデル分析)。
【0294】
PIV製剤中に2つのH3株(総H3量 30μg)をそれぞれ含む群1~4は、QIV対照GMT力価の2倍以内(群6及び7)の同等の相同A/Tasmania/503/2020 mNT力価を示した(混合モデル分析による有意差なし)。低用量(各H3株7.5μg)で免疫した群5のフェレットは、群6及び7のそれより有意に高い相同反応を誘発し、反応は2.3倍高かった(混合モデル分析でp<0.05)。意義深いことに、データは、PIV製剤を作製するためのH3株の添加によって、H1、H3、B/ビクトリア、又はB/山形WHO SOC株により誘発される相同mNT反応が妨害されることがなかったことを示している。
【0295】
この研究ではまた、機械学習選択から又は以前のWHO SOC選択から第2のH3株をQIVに追加して、PIV(例えば、群1~5)を作製することによって、H3抗原性空間のカバレッジを拡大することができるかどうかを検討した。WHO 2021-2022 SOC H3株のA/Tasmania/503/2020(3C.2A循環クレード)はQIV製剤の一部であったが、PIV製剤には、第5の株として、次の2つの別のH3クレード3C.2A株が含まれた:機械学習で選択された野生型株A/Norway/2629/2015(群1)及び機械学習で選択された非野生型株A/Design/H3S25/2019(群2)。2つの3C.2A H3株を含有するこれらのPIV製剤は、QIV中の単一の3C.2A製剤(群7)と比較して、GMT mNT力価の僅かな増加を示し、類似したHAをナイーブフェレットに同時投与した場合に、異種反応に対し負の干渉を示すことはなかった。結果を以下の表3に示す。PIV(群1~5)及びQIV(群6及び7)の両方のワクチン製剤の3C.2A株及び3C.3A株に対するmNT GMT値を示す図7も参照されたい。
【0296】
【表4】
【0297】
一般に、3C.2Aクレード由来の2種のH3(群1及び群2)で免疫されたフェレットは、3C.3A空間に拡大することはなかったが、機械学習により設計されたH3株A/Design/H3S25/2019は、QIV対照の群6及び7とは異なり、3C.3Aウイルスの50%を効率的に中和した。図9を参照されたい。
【0298】
或いは、3C.3Aクレード由来のH3株を四価ワクチンのH3 3C.2A株に添加すると、群3~5で行われたように、図8に示し、以下の表4に報告するように、異種マルチクレードの3C.2Aウイルス及び3C.3Aウイルスと比較して、少なくとも抗体反応の相加効果を示した。
【0299】
群番号1~7のそれぞれで、以下の細胞増幅インフルエンザウイルス株についてmNT力価を測定した:A/Bangladesh/3190613015/2019;A/Mexico/2356/2019;A/Valladolid/182/2017;A/Brisbane/75/2019;A/Tasmania/503/2020;A/HongKong/45/2019;A/Kansas/14/2017;及びA/Singapore/Infimh160019/2016。A/Mexico/2356/2019及びA/Kansas/14/2017は、いずれもクレード3C.3Aである。A/Bangladesh/3190613015/2019;A/Brisbane/75/2019;A/Tasmania/503/2020;及びA/HongKong/45/2019は、クレード/サブクレード3C.2A1bである。A/Valladolid/182/2017は、クレード/サブクレード3C.2A4であり、A/Singapore/Infimh160019/2016は、クレード/サブクレード3C.2A1である。結果を以下の表4で報告する。
【0300】
【表5】
【0301】
上記の表4及び図8に示すように、mNT力価の増加に加えて、多様な3C.3Aクレードにおける株のカバレッジは、PIV製剤群3~5において100%であったが、図9に示すように、QIV製剤群6及び7においては、3C.3Aクレードのカバレッジは観察されなかった。2つの異なるH3HAの送達によるマルチクレードシーズンにおけるカバレッジの最大化は、四価の標準治療ワクチン製剤の有効性を改善する可能性を示している。
【0302】
また、本開示及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。任意選択の(Optional)又は任意選択により(optionally)、は、後に記載される事象又は状況が起こることも起こらないこともあることを意味し、説明は、事象又は状況が起こる場合も起こらない場合も含むことを意味する。例えば、組成物は任意選択により組み合わせを含むことができる、というフレーズは、説明が組み合わせ及び組み合わせの非存在(すなわち、組み合わせの個々のメンバー)の両方を含むように、組成物が異なる分子の組み合わせを含むことも、組み合わせを含まないこともあることを意味する。範囲は、本明細書においては、約1つの特定の値から、且つ/又は約別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、且つ/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することは理解されよう。範囲のそれぞれの両端点が、他方の端点と関連して、及び他方の端点とは独立して、の両方の意味を有していることもさらに理解されよう。本開示において引用される全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】