(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】植物性チーズ製品および植物性チーズ製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 20/02 20210101AFI20241003BHJP
【FI】
A23C20/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520994
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022046063
(87)【国際公開番号】W WO2023059886
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジューディス グルテン モカ
(72)【発明者】
【氏名】アリソン エム ヒブニック
(72)【発明者】
【氏名】ウシュン カラカプラン
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー リン ドブソン
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ ジー マランゴニ
(57)【要約】
乳製品ベースのチーズに匹敵するプロテイン含量を有する植物性チーズ製品が提供される。また、調理温度での融解および伸展などの、乳製品ベースのチーズに対する消費者の期待に一致する特性を有する植物性チーズ製品が提供される。植物性チーズ製品は、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の植物性プロテインと、ワックス状デンプンと、および油脂との組み合わせを含む。ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品中で少なくとも部分的にゲル化する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性チーズ製品であって、
前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する植物性プロテインと、
ワックス状デンプンであって、前記ワックス状デンプンの総重量に基づいて少なくとも70重量%のアミロペクチンを含み、ここで、前記ワックス状デンプンは少なくとも部分的にゲル化される、前記ワックス状デンプンと、および
油脂と、
を含み、
ここで、前記植物性チーズ製品は、80℃で0.4より大きいTanδ値を有する、
植物性チーズ製品。
【請求項2】
前記植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5にするために有効な量の酸味料をさらに含む、請求項1に記載の植物性チーズ製品。
【請求項3】
前記酸味料が、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、ソルビン酸、および乳酸のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の植物性チーズ製品。
【請求項4】
融点が80℃未満のワックスをさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項5】
前記ワックスが、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の植物性チーズ製品。
【請求項6】
前記ワックスがキャンデリラワックスを含む、請求項4に記載の植物性チーズ製品。
【請求項7】
前記ワックスが、前記油脂の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項4から6のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項8】
エチルセルロースをさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項9】
前記エチルセルロースが、前記油脂の総重量に基づいて、約0.1重量%~約2重量%の範囲内の量で存在する、請求項8に記載の植物性チーズ製品。
【請求項10】
前記植物性プロテインが、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約14重量%~約20重量%の粗タンパク質の量で存在する、請求項1から9のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項11】
前記植物性プロテインが、ファバプロテイン、ヒヨコ豆プロテイン、緑豆プロテイン、大豆プロテイン、ゼインプロテイン、ルパン豆プロテイン、キャノーラプロテイン、エンドウ豆プロテイン、レンズ豆プロテイン、および亜麻プロテインのうちの1つ以上を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項12】
前記植物性プロテインがファバプロテインを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項13】
前記ワックス状デンプンが、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から12のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項14】
前記ワックス状デンプンが、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約12重量%~約16重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から12のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項15】
前記ワックス状デンプンが天然ワックス状トウモロコシを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項16】
前記油脂が、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約15重量%~約30重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から15のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項17】
前記油脂が、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約19重量%~約27重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から15のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項18】
前記油脂が、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約20~約25重量%の量で存在する、請求項1から15のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項19】
前記油脂が、ココナッツオイル、シアオイル、シアステアリン、シアオレイン、シアバター、パームオイル、パームオイル留分、サンフラワーオイル、ココアバター、および綿実グリセロリシスのうちの1つ以上を含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項20】
前記油脂がココナッツオイルを含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項21】
前記植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、前記植物性チーズ製品が約19N~約21Nの範囲内の硬度を有する、請求項1から20のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項22】
前記植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、前記植物性チーズ製品が約76N~約90Nの範囲内の硬度を有する、請求項1から20のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項23】
前記プロテインの少なくとも一部が、前記植物性チーズ製品中に溶解し、前記プロテインの別の一部が、前記植物性チーズ製品中に分散する、請求項1から22のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項24】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.6より大きいTanδ値を有する、請求項1から23のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項25】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.8より大きいTanδ値を有する、請求項1から24のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項26】
前記植物性チーズ製品が、80℃で少なくとも20mmの伸展を有する、請求項1から25のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項27】
前記植物性チーズ製品が、80℃で少なくとも25mmの伸展を有する、請求項1から26のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項28】
植物性チーズ製品を製造する方法であって、
第1の量の植物性プロテインを水性液体と組み合わせて、植物性プロテイン混合物を形成することと、
油脂を加熱して融解油脂を形成することと、
前記植物性プロテイン混合物を前記融解油脂で乳化してエマルジョンを形成することと、
第2の量の植物性プロテインおよびワックス状デンプンを前記エマルジョンに添加し、混合して混合物を形成することと、
前記ワックス状デンプンを少なくとも部分的にゲル化させるために有効な時間の間、前記混合物を加熱および混合して、加熱混合物を形成することと、および
前記加熱混合物を冷却して前記植物性チーズ製品を作成することと、
を含み、
ここで、前記植物性チーズ製品は、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質を含み、並びに
前記ワックス状デンプンは、前記ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも70重量%のアミロペクチンを含む、
方法。
【請求項29】
前記植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5の範囲内にするために、前記エマルジョンまたは前記混合物に酸味料を添加することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
融点が80℃未満のワックスを前記油脂に添加することをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
エチルセルロースを前記油脂に添加することをさらに含む、請求項28から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記エチルセルロースと前記油脂からオレオゲルを形成することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記植物性プロテイン混合物が、約2%w/v~約8%w/vの前記植物性プロテインを含む、請求項28から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記植物性プロテイン混合物が、約4%w/v~約6%w/vの前記植物性プロテインを含む、請求項28から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記油脂の加熱が、約35℃~約60℃の範囲内の温度にすることである、請求項28から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ワックスが、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記ワックスがキャンデリラワックスを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記植物性プロテインがファバプロテインを含む、請求項28から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ワックス状デンプンが天然ワックス状トウモロコシを含む、請求項28から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記油脂がココナッツオイルを含む、請求項28から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
オレオゲレーターを前記油脂に添加し、前記オレオゲレーターを前記油脂と混合して融解油脂混合物を形成することをさらに含む、請求項28、33から35、または38から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項28から41のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、植物性チーズ製品。
【請求項43】
植物性チーズ製品であって、
前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する植物性プロテインであって、ここで、前記プロテインの一部が前記植物性チーズ製品中に可溶化され、前記プロテインの別の一部が前記植物性チーズ製品中に分散する、前記植物性プロテインと、
ワックス状デンプンであって、前記ワックス状デンプンの総重量に基づいて少なくとも65重量%のアミロペクチンを含み、ここで、前記ワックス状デンプンが少なくとも部分的にゲル化される、前記ワックス状デンプンと、および
前記植物性チーズ製品中に分散しているプロテインで被覆された液滴状の油脂と、
を含む、植物性チーズ製品。
【請求項44】
前記油脂が、ココナッツオイル、シアオイル、シアステアリン、シアオレイン、シアバター、パームオイル、パームオイル留分、サンフラワーオイル、ココアバター、および綿実グリセロリシスのうちの1つ以上である、請求項43に記載の植物性チーズ製品。
【請求項45】
オレオゲレーターをさらに含む、請求項43または44に記載の植物性チーズ製品。
【請求項46】
前記オレオゲレーターが、エチルセルロース、ワックス、フィトステロール、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、およびフェヌグリークガムのうちの1つ以上を含む、請求項43から45のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項47】
前記ワックスが、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、プロポリスワックス、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む、請求項64に記載の植物性チーズ製品。
【請求項48】
約15重量%~約30重量%の油脂および約0.1重量%~約5重量%のオレオゲレーターを含む、請求項45から47のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項49】
前記ゲル化デンプンが少なくとも25%ゲル化される、請求項43から48のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項50】
前記ゲル化デンプンが少なくとも50%ゲル化される、請求項43から49のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項51】
前記ゲル化デンプンが少なくとも75%ゲル化される、請求項43から50のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項52】
前記ワックス状デンプンが、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項43から51のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項53】
前記植物性プロテインが、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約14重量%~約20重量%の粗タンパク質の量で存在する、請求項43から52のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項54】
前記植物性プロテインが、ファバプロテイン、ヒヨコ豆プロテイン、緑豆プロテイン、大豆プロテイン、ゼインプロテイン、ルパン豆プロテイン、キャノーラプロテイン、エンドウ豆プロテイン、レンズ豆プロテイン、および亜麻プロテインのうちの1つ以上を含む、請求項43から53のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項55】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.3より大きいTanδ値を有する、請求項43から54のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項56】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.4より大きいTanδ値を有する、請求項43から55のいずれか1項に記載の植物性チーズ製品。
【請求項57】
植物性チーズ製品を製造する方法であって、
第1の量の植物性プロテインを水性液体と組み合わせて、水性植物性プロテイン混合物を形成することと、
オレオゲレーターを油脂と組み合わせることと、
前記油脂を加熱して融解油脂を形成することであって、ここで、前記加熱は前記オレオゲレーターを添加する前または後に行われ得る、前記形成することと、
前記水性植物性プロテイン混合物を、前記融解油脂と前記オレオゲレーターの組み合わせの温度から約20℃以内の温度に加熱することと、
前記植物性プロテイン混合物を前記融解油脂および前記オレオゲレーターで乳化してエマルジョンを形成することと、
第2の量の植物性プロテインおよびワックス状デンプンを前記エマルジョンに添加し、混合して第2の混合物を形成することと、
前記ワックス状デンプンを少なくとも部分的にゲル化させるために有効な時間の間、前記第2の混合物を加熱および混合して、加熱混合物を形成することと、および
前記加熱混合物を冷却して前記植物性チーズ製品を形成することと、
を含み、
ここで、前記植物性チーズ製品は、前記植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質を含み、並びに
前記ワックス状デンプンは、前記ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも65重量%のアミロペクチンを含む、
方法。
【請求項58】
前記油脂が、ココナッツオイル、シアオイル、シアステアリン、シアオレイン、シアバター、パームオイル、パームオイル留分、サンフラワーオイル、ココアバター、および綿実グリセロリシスのうちの1つ以上である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記オレオゲレーターが、エチルセルロース、ワックス、フィトステロール、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、およびフェヌグリークガムのうちの1つ以上を含む、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記ワックスが、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、プロポリスワックス、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む、請求項57から59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
約15重量%~約30重量%の油脂および約0.1重量%~約5重量%のオレオゲレーターを含む、請求項57から60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
請求項57から61のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、植物性チーズ製品。
【請求項63】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.3よりも大きいTanδ値を有する、請求項62に記載の植物性チーズ製品。
【請求項64】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.4よりも大きいTanδ値を有する、請求項62に記載の植物性チーズ製品。
【請求項65】
前記植物性チーズ製品が、80℃で0.6よりも大きいTanδ値を有する、請求項62に記載の植物性チーズ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2022年4月29日に出願された米国特許出願第17/733,732号および2021年10月7日に出願された米国特許仮出願第63/253,456号の利益を主張するものであり、これらの出願はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、植物性チーズ製品に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの市販の植物性チーズ製品は、デンプンベースのゲルを含有する。これらの典型的な植物性チーズ製品は、調理温度での融解および伸展を含む、乳製品ベースのチーズに期待される機能特性を示さないことが多い。むしろ、調理温度では、これらの製品中のデンプンベースのゲルは、一般に、乳製品チーズの融解挙動に類似するほどには軟化しない。より高い調理温度では、これらの製品中のデンプンベースのゲルは一般にその構造を失うため、製品は融解した乳製品チーズよりもソースに似てしまう。さらに、これらの典型的な植物性チーズ製品は、乳製品ベースのプロセスチーズ(以下、「従来のプロセスチーズ」)に典型的な光沢のある外観ではなく、くすんだ外観を有することが多い。このような植物性チーズ製品は、乳製品ベースのチーズを再現した調理および食体験を期待する消費者にはあまり受け入れられていない。
【0004】
さらに、市販の植物性チーズ製品の中には、乳製品ベースのチーズのプロテイン含量に匹敵する栄養含量、特にプロテイン含量を有していないものもある。プロセスチーズは通常、13重量%~20重量%の粗タンパク質を含み、乳製品ベースのナチュラルチーズは15重量%~40重量%の粗タンパク質を含むことがある。例として、ナチュラルチェダーなどのセミハードの乳製品ベースのナチュラルチーズは20重量%~30重量%の粗タンパク質を含むことがあり、ナチュラルパルメザンなどのハードの乳製品ベースのナチュラルチーズは35重量%から40重量%の粗タンパク質を含むことがあり、ナチュラルフェタおよびナチュラルモッツァレラなどのセミソフトの乳製品ベースのナチュラルチーズは約15重量%の粗タンパク質を含むことがある。市販の植物性チーズ製品は、通常、粗タンパク質が2重量%未満である。これより多量のプロテインを含むと、製造上の重大な課題が生じるだけでなく、異なる温度における風味、テクスチャー、および構造的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの植物性チーズ製品は、乳製品ベースのチーズと同様の栄養含量を期待する消費者にはあまり受け入れられていない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から作成された融解曲線のグラフである。
【
図2】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から作成された融解曲線のグラフである。
【
図3】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズの、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図4】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図5】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図6】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図7】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図8】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Pa、Y軸)の貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)を示す、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図9】温度(℃、X軸)に対するサンプル(Y軸)のTanδを示す、市販の乳製品ベースのチーズ、市販の植物性チーズ、および例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成された融解曲線のグラフである。
【
図10】市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδを示す棒グラフである。
【
図11】市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδを示す棒グラフである。
【
図12】市販の乳製品ベースのチーズ、市販の植物性チーズ、および例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδを示す棒グラフである。
【
図13】市販の乳製品ベースのチーズ、市販の植物性チーズ、および例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδを示す棒グラフである。
【
図14】市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の伸展(mm)を示す棒グラフである。
【
図15】市販の乳製品ベースのチーズおよび例示的な植物性チーズ製品の伸展(mm)を示す棒グラフである。
【
図16】市販の乳製品ベースのチーズ、市販の植物性チーズ、および例示的な植物性チーズ製品の伸展(mm)を示す棒グラフである。
【
図17】市販の乳製品ベースのチーズ、市販の植物性チーズ、および例示的な植物性チーズ製品の伸展(mm)を示す棒グラフである。
【
図18A】例示的な植物性チーズ製品の100μmスケールバーを有する光学顕微鏡画像である。
【
図18B】例示的な植物性チーズ製品の100μmスケールバーを有する光学顕微鏡画像である。
【
図18C】例示的な植物性チーズ製品の100μmスケールバーを有する光学顕微鏡画像である。
【
図20A】加熱前の例示的な植物性チーズ製品の写真である。
【
図20B】加熱後の例示的な植物性チーズ製品の写真である。
【
図20C】30分間冷却した後の例示的な植物性チーズ製品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図中の要素は、単純化および明瞭化のために図示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、図中のいくつかの要素の寸法および/または相対的位置関係は、本発明の様々な態様の理解を向上させるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。また、商業的に実現可能な態様において有用であるか、または必要である、一般的であるがよく理解されている要素は、本発明のこれらの様々な態様をあまり妨げずに見やすくするために、描かれていない場合が多い。特定の動作および/または工程は、特定の発生順序で記載または描写される場合があるが、当業者であれば、順序に関するそのような特定性は実際には必要ではないことを理解するであろう。本明細書で使用される用語および表現は、本明細書において異なる特定の意味が別途記載されている場合を除き、上記の技術分野の当業者によってそのような用語および表現に与えられるような通常の技術的意味を有する。
【0007】
本明細書には、植物性チーズ製品が記載される。前記植物性チーズ製品は、乳製品ベースのチーズのプロテイン含量に匹敵するプロテイン含量を有する。さらに、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の量の植物性プロテインと、少なくとも65重量%のアミロペクチン(または少なくとも70重量%のアミロペクチン)を含むワックス状デンプンと、および油脂との組み合わせを使用することによって、調理温度での融解および伸展のような、乳製品ベースのチーズに対する消費者の期待に一致する特性を有する植物性チーズ製品が得られることが予想外に判明した。本明細書において、「植物性」という用語は、乳製品プロテインなどの動物性プロテインを含まず、植物由来のプロテインを含む製品または原料を指す。
【0008】
1つのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する植物性プロテインと、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも65重量%のアミロペクチン(または少なくとも70重量%のアミロペクチン)を含むワックス状デンプンであって、ワックス状デンプンが少なくとも部分的にゲル化される、ワックス状デンプンと、および油脂と、を含む。
【0009】
植物性プロテイン、油脂、およびワックス状デンプンの組合せを含有することは、驚くべきことに、調理温度における望ましい融解特性および伸展特性を含む、植物性チーズ製品の性能に著しい利点を提供することがわかっている。さらに、本明細書に記載のように、植物性プロテインをワックス状デンプンおよび油脂と組み合わせて植物性チーズ製品を調製すると、植物性プロテインを使用せずに調製した植物性チーズ製品と比較して、製品は改善された口当たりを示す。
【0010】
本明細書に記載の植物性チーズ製品のプロテイン含量は、栄養学的観点からも有益である。従来の植物性チーズ製品は、プロテイン含量が低いことが多く、消費者は、これらが乳製品ベースのチーズよりも栄養的に劣っているとみなすことがある。
【0011】
植物性プロテインを含有することは、植物性チーズの望ましい融解特性にも関連する。現在のところ、植物性プロテインは製品マトリックスを安定化させ、油脂滴の表面を被覆することによって油脂滴をより小さく維持すると考えられている。例えば、植物性プロテインなしで調製された植物性チーズ製品は、冷蔵温度(例えば、1℃~5℃)では乳製品ベースのチーズ製品と同様に見えるが、調理温度(例えば、175℃~235℃)にさらされると油分離を示すことがある。これは油脂滴が大きいためであると考えられる。冷蔵温度では、油脂は固体で、乳製品ベースのチーズ製品のようなコールドテクスチャーを与える。しかし、調理温度では、油脂は融解し、安定剤として作用する植物性プロテインを含まないため、より大きな油脂滴に合体し、製品の残りの部分から容易に分離する。
【0012】
本明細書において、小さい油脂滴サイズおよび乳化安定性が、良好な融解特性、すなわちチーズ製品が加熱時に軟化し、顕著な油分離なしに広がることに関連することが判明した。1つのアプローチにおいて、融解の程度は、加熱時の植物性チーズの直径の増加によって測定することができる。また、融解の程度は、「Tanδ値」で評価することもでき、これは、実施例に記載の方法に従って測定したサンプルの融解プロファイルの損失弾性率(G′′)と弾性率(G′)の商(すなわち、G′′/G′)を意味する。
【0013】
さらに、植物性プロテインを含有することは、植物性チーズ製品における望ましい伸展特性に関連することもわかっている。伸展性は、軸方向に引っ張られたときにサンプルが破断するまで伸展する距離で測定することができる。いくつかの態様において、植物性プロテインの一部は可溶化され、植物性プロテインの一部は植物性チーズ製品中で不溶性である。この不溶性部分は油脂滴を被覆するように作用し、可溶性部分は少なくとも部分的にゲル化したワックス状デンプンと共に、製品中にネットワークを形成するように作用する。このネットワークによって、植物性チーズ製品は、乳製品ベースのチーズと同様の伸展特性を有することができる。
【0014】
ワックス状デンプンを含有すること、およびチーズ製造工程中にワックス状デンプンをゲル化させることは、植物性チーズ製品の伸展特性および硬度特性に関連する。ゲル化度が高いほど、得られる植物性チーズ製品の硬度値および伸展が増えることが判明している。ゲル化したデンプンはプロテインと結合してネットワークを形成することができ、このネットワークが伸展特性をもたらすと考えられている。より高いゲル化度を達成するためには、チーズ製造工程でデンプンを十分に水和させる必要がある。植物性チーズを製造するために使用される方法は、意図されたゲル化度を達成することを可能にするために、ワックス状デンプンの十分な水和を可能にするべきである。
【0015】
植物性チーズ製品は植物性プロテインを含む。任意の適切な植物性プロテインを、植物性チーズ製品に使用することができる。いくつかの態様において、植物性プロテインは、ファバプロテイン(ファバ豆プロテイン、ファバ豆プロテイン、およびファバプロテインとも呼ばれる)、ヒヨコ豆プロテイン、緑豆プロテイン、大豆プロテイン、ゼインプロテイン、ルパン豆プロテイン、キャノーラプロテイン、エンドウ豆プロテイン(例えば、黄色エンドウ豆プロテイン)、レンズ豆プロテイン、および亜麻プロテインのうちの1つ以上を含む。ある態様において、植物性プロテインは、ファバプロテインを含む。別の態様において、植物性プロテインは、AGT Food & Ingredients社製Faba Bean Protein 90-C(FFBP-90-C)を含む。FFBP-90-Cは、水分10.0%以下(総重量ベース)、粗タンパク質89.0%以上、デンプン2.0%以上、食物繊維2.0%以上、および油脂6.5%以上(総乾燥重量ベース)を有するファバプロテイン単離物である。乳化安定性能を含むプロテインの機能性は、親水性特性または疎水性特性の逸脱により異なる場合があり、これはプロテインの種類および/またはプロテイン原料の製造方法の結果である場合がある。
【0016】
いくつかのアプローチにおいて、植物性プロテインは、単離物、濃縮物、または小麦粉の形態であり得るが、植物性プロテインの正確な形態は特に限定されないと考えられている。一般に、プロテイン単離物はプロテイン濃縮物よりも粗タンパク質含量が高い。ある態様において、植物性プロテインは単離物の形態であってもよい。植物性プロテインが単離物の形態である場合、ある重量の量の単離物と濃縮物の比較において、植物性チーズ製品においてより高い重量%(例えば、約10重量%~約25重量%)の粗タンパク質が達成され得るとともに、プロテイン単離物の非プロテイン成分に起因するあらゆる有害な影響(例えば、オフフレーバー)を最小限に抑えることがある。いくつかのアプローチにおいて、植物性プロテインは、植物性チーズ製品の乳化に寄与する単離物または濃縮物の形態である。
【0017】
いくつかの態様において、植物性プロテインは、植物性チーズ製品中の唯一のプロテイン源である。この点に関して、いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、例えば、カゼインおよびホエイを含む動物性プロテインを含まない。
【0018】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、例えば、アーモンドプロテイン、ピーナッツプロテイン、およびカシューナッツプロテインのうちの1つ以上を含む、ナッツベースのプロテインを含まない。さらに、または代替的に、植物性チーズ製品は、オーツ麦プロテイン、米プロテイン、小麦プロテイン、および/またはサンフラワーシードの1つ以上を含まないことがある。
【0019】
1つのアプローチにおいて、植物性プロテインは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する。別のアプローチにおいて、植物性プロテインは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約12重量%~約25重量%、約14重量%~約25重量%、約15重量%~約25重量%、約16重量%~約25重量%、約18重量%~約25重量%、約20重量%~約25重量%、約10重量%~約23重量%、約12重量%~約23重量%、約14重量%~約23重量%、約15重量%~約23重量%、約16重量%~約23重量%、約18重量%~約23重量%、約20重量%~約23重量%、約10重量%~約20重量%、約12重量%~約20重量%、約14重量%~約20重量%、約15重量%~約20重量%、約16重量%~約20重量%、約18重量%~約20重量%、約10重量%~約18重量%、約12重量%~約18重量%、約14重量%~約18重量%、約15重量%~約18重量%、または約16重量%~約18重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する。
【0020】
植物性プロテイン原料中の粗タンパク質の量は、原料の形態(例えば、原料が単離物、濃縮物、または小麦粉の形態であるか否か)に依存し得る。したがって、本明細書の目的上、粗タンパク質含量は、任意のプロテイン含有原料によって寄与されるプロテインの量である。例えば、AGT Food & Ingredients社(カナダ)から市販されているファバプロテイン単離物製品は、約90%のプロテイン成分と約10%の非プロテイン成分を含む。植物性チーズ製品が約18重量%のファバプロテイン単離物製品(AGT Food & Ingredients)を含む場合、本明細書におけるパーセンテージの目的上、植物性チーズ製品は約16重量%の植物性プロテインを含む。別の例として、市販のARTESA(登録商標)ヒヨコ豆プロテイン製品は、約60%のプロテイン成分と約40%の非プロテイン成分を含む。例えば、植物性チーズ製品が約13重量%のARTESA(登録商標)ヒヨコ豆プロテイン製品を含む場合、本明細書におけるパーセンテージの目的上、植物性チーズ製品は約8重量%の植物性プロテインを含む。植物性プロテイン原料または植物性チーズ製品中の粗タンパク質の量は、公定分析化学者協会(AOAC)公定メソッド992.15(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって測定することができる。さらに、または代替的に、植物性プロテイン原料または植物性チーズ製品中の粗タンパク質の量は、デュマ法によって測定することができる。
【0021】
植物性プロテインは、植物性チーズ製品中の唯一の乳化剤であってもよい。いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、およびポリソルベートを含まない。他の態様において、植物性チーズ製品はまた、グルコノデルタラクトン、リン酸三カルシウム、砂糖、βカロテン(着色料)、およびクエン酸ナトリウムのいずれか1つ以上を含まないこともある。他の態様において、植物性チーズ製品は、3重量%以下のレシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、およびポリソルベートを含む。他の態様では、植物性チーズ製品は、1.5重量%以下のモノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、およびポリソルベートを含む。いくつかのアプローチにおいて、約0.1重量%~約3重量%のレシチン、または約0.2重量%~約1.5重量%のモノグリセリドとジグリセリドの1つ以上を、油脂と水との界面における表面張力を低下させるために植物性チーズ製品に含めることができる。
【0022】
本明細書において、「乳化剤」という用語は、リン酸塩またはクエン酸塩を含まない。いくつかのアプローチにおいて、約2重量%~約5重量%の1種以上のリン酸塩およびクエン酸塩を植物性チーズ製品に含めることができる。リン酸塩および/またはクエン酸塩は、プロテインの構造を変化させてその機能性を変化させるために使用することができる。
【0023】
植物性チーズ製品は、ワックス状デンプンをさらに含む。任意の適切なワックス状デンプンを植物性チーズ製品に使用してもよい。いくつかの例において、ワックス状デンプンは、天然ワックス状トウモロコシ、タピオカデンプン、およびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。いくつかの態様において、ワックス状デンプンは天然ワックス状トウモロコシを含む。さらに、または代替的に、ワックス状デンプンは、タピオカデンプンおよびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。さらに、または代替的に、ワックス状デンプンはオクテニルコハク酸無水物(OSA)ジャガイモデンプンを含む。
【0024】
ワックス状デンプンは、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも65重量%のアミロペクチンを含む。いくつかのアプローチにおいて、ワックス状デンプンは、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%のアミロペクチンを含む。
【0025】
ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品中では少なくとも部分的にゲル化される。ゲル化していないまたは天然の形態で添加する場合、ワックス状デンプンはチーズ製造工程中に少なくとも部分的にゲル化する必要がある。プレゲル化デンプンを使用する場合、植物性チーズ製品は、デンプンがゲル化していないまたは天然の形態で添加されてチーズ製造工程中に少なくとも部分的にゲル化される場合よりも低い硬度を有する可能性がある。プレゲル化デンプンを使用すると、混合工程中にデンプンの構造化効果が失われる可能性がある。そのため、プレゲル化デンプンを使用することは望ましくない可能性がある。従って、ある態様において、植物性チーズ製品は、プレゲル化デンプンを含有しない。本明細書で使用する「部分ゲル化」または同様の用語は、デンプンが膨潤を開始して結晶構造の一部を失うことを意味する。少なくとも部分的にゲル化したデンプンは、植物性チーズ製品が乳製品ベースのチーズに期待される機能的特性を示すことに寄与する。例えば、少なくとも部分的にゲル化したデンプンは、プロテインおよび油脂の含量と組み合わせて、植物性チーズ製品が冷蔵温度および室温で乳製品ベースのチーズ製品と同様の構造および/または機能性を有する一方で、調理温度で融解および伸展することを可能にし得る。
【0026】
一般に、デンプンのゲル化度は、以下にさらに詳細に記載するように、最終的な植物性チーズ製品における所望の特性に基づいて調整することができる。ゲル化度は、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、および約95%以上など、任意の適切な量とすることができる。一般に、植物性チーズ製品に望ましい融解特性および伸展特性を付与するために、デンプンが完全にゲル化する必要はないが。しかしながら、ゲル化度が低いと、粒状(天然)デンプンに近似して、デンプンの高いゲル化度で達成可能な伸展特性および融解特性を示さない場合がある。デンプンのゲル化度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、光学顕微鏡、X線回折、または他の適切な技術によって測定することができる。1つのアプローチにおいて、偏光を用いた光学顕微鏡法を使用して、サンプル中に存在する複屈折マルタ十字を評価することができる。チーズ製造工程で熱処理を経たサンプルを、熱処理工程を経ないがその他の点では同一(すなわち、同一原料を同一量で含む)のサンプルと比較することができる。マルタ十字の数の減少は、ゲル化度の上昇と関連している。マルタ十字の数の相対的な差は、チーズ製造工程中に起こったゲル化の程度を示す。ゲル化の程度は、デンプン用の染色剤を使用し、デンプンが破裂した顆粒から形成された断片の形態であるか否かを光学顕微鏡で評価することによって、同様に視覚化することができる。
【0027】
1つのアプローチにおいて、ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の範囲内の量で存在する。別のアプローチにおいて、ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約20重量%、約5重量%~約16重量%、約10重量%~約16重量%、または約12重量%~約16重量%の範囲内の量で存在する。
【0028】
植物性チーズ製品はさらに水を含む。いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品の重量に対して、約35重量%~約80重量%、約40重量%~約80重量%、約45重量%~約80重量%、約35重量%~約75重量%、約40重量%~約75重量%、約45重量%~約75重量%、約35重量%~約70重量%、約40重量%~約70重量%、約45重量%~約70重量%、約50重量%~約80重量%、別の態様では約50重量%~約75重量%、別の態様では約55重量%~約75重量%、別の態様では約55重量%~約70重量%、または別の態様では約60重量%~約70重量%の範囲内の植物性チーズ製品の水分割合を提供するために有効な量の水を含む。
【0029】
植物性チーズ製品はさらに油脂を含む。任意の適切な油脂を植物性チーズ製品に使用することができる。いくつかの態様において、油脂は、ココナッツオイル、シアオイル、シアステアリン、シアオレイン、シアバター、パームオイル、パームオイル留分、サンフラワーオイル、ココアバター、および綿実グリセロリシスのうちの1つ以上を含む。ある態様では、油脂はココナッツオイルを含む。別の態様では、油脂はココナッツオイルとサンフラワーオイルを含む。
【0030】
いくつかのアプローチにおいて、油脂は1種類以上の固形油脂、または1種類以上の固形油脂と1種類以上の液体油脂の組み合わせの形態である。本明細書で使用する場合、固形油脂は室温(20℃)で固体である油脂を指し、液体油脂は室温(20℃)で液体状である油脂を指す。いくつかの例において、油脂は10℃で約32%~約95%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。他の例において、油脂は10℃で約70%~約85%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。さらに、または代替的に、油脂は20℃で約28%~約80%の範囲、別の態様では約32%~約55%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。さらに、または代替的に、油脂は30℃で0%~約20%の範囲、別の態様では約0%~約15%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。さらに、または代替的に、油脂は40℃で0%~約5%または0%~4%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。
【0031】
いくつかの例において、油脂は、10℃で約32%~約95%、20℃で約28%~約80%、30℃で0%~約20%、および40℃で0%~約5%の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。いくつかの例において、油脂は、10℃で約70%~約85%、20℃で約32%~約55%、30℃で0%~約15%、および40℃で0%~5%未満の範囲(油脂の総重量に基づく)の固形油脂含量を有する。
【0032】
10℃、20℃、30℃、および/または40℃で、記載された固形油脂含量を提供するように1つ以上の油脂を選択すると、冷蔵温度では植物性チーズ製品に固形の食感を与えるが、加熱された植物性チーズ製品が消費され得る温度(すなわち、約60℃)では軟化する。
【0033】
1つのアプローチにおいて、油脂は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約15重量%~約30重量%の範囲内の量で存在する。他のアプローチにおいて、油脂は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約19重量%~約27重量%、約19重量%~約25重量%、約20重量%~約27重量%、または約20重量%~約25重量%の範囲内の量で存在する。上述したように、油脂は、1種類以上の固形油脂成分または液体油脂成分から構成され得る。
【0034】
植物性チーズ製品に使用され得る例示的な油脂成分の固形油脂含量を、以下の表1に示す。油脂成分は、10℃、20℃、30℃および/または40℃で所望の固形油脂含量を提供するために、必要に応じて単独または組み合わせて使用することができる。
【表1】
【0035】
いくつかのアプローチにおいて、油脂はオレオゲルの形態である。オレオゲルは、連続相が液体油脂である半固体系である。オレオゲルを調製するためには、追加の成分であるオレオゲレーター(有機ゲル化剤ともいう)を油脂に添加してオレオゲルを形成する。いくつかの例において、オレオゲルを形成することは、油脂を加熱して液体油脂とオレオゲレーターを提供して、オレオゲレーターを油脂に溶解させることを含む。例示的なオレオゲレーターには、エチルセルロース、ワックス、フィトステロール、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、およびフェヌグリークガムが含まれる。オレオゲルは一般に、より高い固形油脂含量を有する油脂成分により典型的な物理的特性を有することを特徴とする。オレオゲルにおいて、液体油脂は、構造化剤として作用するオレオゲレーターに包まれる。有利なことに、オレオゲルは、得られる食品に固形油脂の機能性を与える可能性があるが、液体油脂の栄養プロファイルを備えている。
【0036】
いくつかの態様において、オレオゲレーターはワックスである。したがって、いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、80℃未満の融点を有するワックスをさらに含む。いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、70℃未満または60℃未満の融点を有するワックスをさらに含む。任意の適切なワックスを、植物性チーズ製品に使用することができる。いくつかの態様において、ワックスは、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋(例えば、白色蜜蝋または黄色蜜蝋)、プロポリスワックス、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む。他の態様において、ワックスは蜜蝋とキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む。他の態様において、ワックスは、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、および白色蜜蝋のうちの1つ以上を含む。他の態様において、ワックスはオレンジワックス、ライスブランワックス、およびサンフラワーワックスのうちの1つ以上を含む。ある態様において、ワックスはキャンデリラワックスを含む。
【0037】
いくつかのアプローチにおいて、油脂とワックスの組み合わせは60℃以下の結晶化温度を有する。他のアプローチにおいて、油脂とワックスの組み合わせは5℃~60℃の範囲内の結晶化温度を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、結晶化温度未満では融解していない乳製品ベースのチーズに似ており、結晶化温度を超えると融解した乳製品ベースのチーズに似ている。
【0038】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、蜜蝋などの動物性製品を含まない。
【0039】
1つのアプローチにおいて、ワックスは油脂の総重量に基づいて約0.1重量%~約5重量%の範囲内の量で存在する。別の態様では、ワックスは、油脂の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%、約0.5重量%~約3重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2重量%、または約1重量%~約2重量%の範囲内の量で存在する。ある特定の態様において、約1重量%~約2重量%の量で使用されるワックスは白色蜜蝋および/またはオレンジワックスであり、これらは得られる植物性チーズ製品にさらなる伸展特性を与えることがわかっている。別の特定の態様において、約1.5重量%~約2.5重量%の量でサンフラワーワックスが使用され、これは得られる植物性チーズ製品の融解特性を向上させることがわかっている。
【0040】
ワックスの使用量が少なすぎる場合、ワックスは油脂に十分な構造化効果を与えない可能性がある。ワックスの使用量が多すぎる場合、ワックスは望ましくない感覚特性(例えば、口当たり)を植物性チーズ製品に付与する可能性がある。
【0041】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、エチルセルロース、フィトステロール、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、またはフェヌグリークガムなどの非ワックスオレオゲレーターをさらに含んでオレオゲルを形成する。エチルセルロースの例としては、45cp ETHOCEL(商標)Standard 45(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)および20cp ETHOCEL(商標)Standard 20(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)が挙げられる。
【0042】
1つのアプローチにおいて、オレオゲレーターは、油脂の総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の範囲内の量で存在する。別のアプローチにおいて、オレオゲレーター(例えば、エチルセルロース)は、油脂の総重量に基づいて、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%、または約0.5重量%~約1.5重量%の範囲内の量で存在する。
【0043】
いくつかのアプローチにおいて、ワックスおよび/またはエチルセルロースを含むことは、驚くべきことに、植物性チーズ製品が加熱されたときに、植物性チーズ製品のオイルロス(すなわち、他の原料からの油脂の分離)を顕著に減少させることがわかっている。いくつかのアプローチにおいて、ワックスおよび/またはエチルセルロースを含むことは、驚くべきことに、植物性チーズ製品が加熱されたときに、植物性チーズ製品の融解率および/または融解均一性を増加させることがわかっている。
【0044】
植物性チーズ製品はまた、菌体外多糖(EPS)を含み得る。いくつかの態様において、植物性チーズ製品が、約5重量%~約10重量%の範囲内の量でワックス状デンプンを含む場合、植物性チーズ製品は、EPSをさらに含む。1つのアプローチにおいて、EPSは、ATCC PTA-120552として寄託され、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2020/0068914号に記載されているL.lactis株329によって産生され得る。さらに、または代替的に、EPSは、水性混合物または水の中で植物性チーズ製品に添加されてもよい。EPSは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、0重量%超~約0.5重量%の量(EPSの乾燥重量による)で植物性チーズ製品に含まれてもよい。
【0045】
いくつかの例において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5にするために有効な量の酸味料をさらに含む。他の例において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品のpHを約4.8~約5.5、別の態様では約4.8~約5.0にするために有効な量の酸味料をさらに含む。任意の適切な酸味料が使用可能である。1つの例において、酸味料は、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、ソルビン酸、および乳酸のうちの1つ以上を含む。いくつかのアプローチにおいて、乳酸は乳製品ベースの培地での発酵によって生成されるものではない。
【0046】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品はさらに追加成分を含むことができる。植物性チーズ製品に含まれ得る追加成分の例には、塩、抗菌剤、香味料、および着色料のうちの1つ以上が含まれる。
【0047】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、ナッツベースのプロテイン、アーモンドプロテイン、ピーナッツプロテイン、カシュープロテイン、オーツ麦プロテイン、米プロテイン、小麦プロテイン、サンフラワーシード、非植物性プロテイン乳化剤、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、ポリソルベート、パームオイル、およびパームオイル留分のうちの1つ以上を含まない場合がある。
【0048】
さらに、本明細書はまた、植物性チーズ製品を製造する方法を開示する。1つのアプローチにおいて、本方法は、第1の量の植物性プロテインを水性液体(例えば、水)に溶解して、水性植物性プロテイン混合物(例えば、溶液および/または懸濁液の形態)を形成することと、油脂を加熱して融解油脂を形成することと、上記の植物性プロテイン溶液または植物性プロテイン懸濁液を前記融解油脂で乳化してエマルジョンを形成することと、第2の量の植物性プロテインおよびワックス状デンプンを前記エマルジョンに添加し、これらを混合して混合物を形成することと、前記ワックス状デンプンを少なくとも部分的にゲル化するために有効な時間の間、前記混合物を加熱および混合して、加熱混合物を形成することと、および、前記加熱混合物を冷却して植物性チーズ製品を形成することと、を含み、ここで、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質を含み、およびここで、ワックス状デンプンは、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも65重量%のアミロペクチン(または少なくとも70重量%アミロペクチン)を含む。
【0049】
本方法は、水性液体(例えば、水)に第1の量の植物性プロテインを添加して、水性植物性プロテイン混合物(例えば、溶液および/または懸濁液の形態)を形成することを含む。第1の量の植物性プロテインは、最終製品に含まれるプロテインの総量よりも少ない。少なくともいくつかのアプローチにおいて、水性液体中に第1の量の植物性プロテインを混合する一方で、ワックス状デンプンおよび第2の量のプロテインなどの他の乾燥原料の添加を後の工程まで制限することが有益であることがわかっている。全ての乾燥原料を一度に添加すると、原料の水和および製品中の原料の機能性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0050】
最初の水性植物性プロテイン混合物において、プロテインの溶液または懸濁液が形成されるか否かは、少なくとも部分的には、植物性プロテインの溶解性に依存し得る。1つのアプローチにおいて、植物性プロテインの少なくとも一部は水性液体中に溶解し、植物性プロテインの少なくとも一部は水性液体中に懸濁する。植物性プロテインの少なくとも一部が水性液体に溶解し、植物性プロテインの少なくとも一部が水性液体中に懸濁または分散すると、分散した植物性プロテインが油脂滴を被覆し、溶解した植物性プロテインがワックス状デンプンと共にネットワークを形成すると、現在考えられている。いくつかの態様において、水性植物性混合物は、約2%w/v~約8%w/vの植物性プロテインを含む。他の態様において、水性植物性プロテイン混合物は、約4%w/v~約6%w/vの植物性プロテインを含む。第1の量の植物性プロテインは、水性植物性プロテイン混合物中の植物性プロテインの所望の%w/vを達成するように選択され得る。
【0051】
1つのアプローチにおいて、第1の量の植物性プロテインは、植物性チーズ製品中の植物性プロテインの総重量に基づいて、約10重量%~約60重量%である。別のアプローチにおいて、植物性プロテインは、植物性チーズ製品中の植物性プロテインの総重量に基づいて、約15重量%~約60重量%、約15重量%~約50重量%、約15重量%~約40重量%、約15重量%~約35重量%、約15重量%~約33重量%、約15重量%~約30重量%、約15重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約50重量%、約20重量%~約40重量%、約20重量%~約35重量%、約20重量%~約33重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約50重量%、 約25重量%~約40重量%、約25重量%~約35重量%、約25重量%~約33重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約50重量%、約30重量%~約40重量%、約30重量%~約35重量%、約30重量%~約33重量%、約33重量%~約50重量%、約33重量%~約40重量%、約33重量%~約35重量%、約35重量%~約50重量%、約35重量%~約40重量%、または約40重量%~約50重量%である。
【0052】
本方法はさらに、油脂を加熱して融解油脂を形成することを含む。いくつかの例において、油脂の加熱は、約35℃~約60℃の範囲内の温度である。
【0053】
いくつかのアプローチにおいて、本方法は、オレオゲレーターを油脂に添加してオレオゲルを形成することをさらに含む。これらのアプローチのいくつかでは、油脂を加熱して融解油脂を形成する前に、オレオゲレーターを油脂に添加する。これらのアプローチの他のものでは、油脂を加熱して融解油脂を形成する間に、オレオゲレーターを油脂に添加する。いくつかの態様では、油脂を加熱して融解油脂を形成した後にオレオゲレーターを添加することは、オレオゲレーターを油脂に取り込むことを補助する可能性がある。いくつかの例において、オレオゲレーターは、エチルセルロース、ワックス、フィトステロール、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、およびフェヌグリークのうちの1つ以上を含む。いくつかの例において、本方法は、油脂とオレオゲレーターの組み合わせを加熱してオレオゲレーターを溶解させること(例えば、約60℃~約140℃の範囲内の温度)をさらに含む。いくつかのアプローチにおいて、水性植物性プロテイン混合物は、水性植物性プロテイン混合物を融解油脂およびオレオゲレーターで乳化する前に、油脂とオレオゲレーターの組み合わせの温度と同様の温度まで加熱される。水性植物性プロテイン混合物の温度は、プロテイン混合物を油脂およびオレオゲレーターと混合することが油脂の結晶化を引き起こさないように、油脂とオレオゲレーターの組み合わせの温度に十分に近くすべきである。例えば、水性植物性プロテイン混合物は、植物性プロテイン混合物と混合したときに、油脂とオレオゲレーターの組み合わせの温度の±20℃、別の態様では±10℃、別の態様では±5℃、別の態様では±2℃である温度を有することができる。
【0054】
いくつかの例において、本方法は、80℃未満の融点を有するワックスを油脂に添加することをさらに含む。これらの例のいくつかでは、油脂を加熱して融解油脂を形成する前に、ワックスを油脂に添加する。これらの例の他のものでは、油脂を加熱して融解油脂を形成する間に、ワックスを油脂に添加する。これらの例の他のものでは、油脂を加熱して融解油脂を形成した後に、ワックスを油脂に添加する。ある態様において、油脂を加熱して融解油脂を形成した後にワックスを添加することは、ワックスを油脂に取り込むことを補助することがある。いくつかの例において、ワックスはオレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、プロポリスワックス、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む。いくつかの例において、ワックスはキャンデリラワックスを含む。いくつかの例において、本方法は、油脂とワックスの組み合わせを加熱してワックスを溶解させること(例えば、約60℃~約80℃の範囲内の温度)をさらに含む。いくつかのアプローチにおいて、水性植物性プロテイン混合物は、水性植物性プロテイン混合物を融解油脂で乳化させる前に、油脂とワックスの組み合わせの温度と同様の温度まで加熱される。水性植物性プロテイン混合物の温度は、プロテイン混合物を油脂およびワックスと混合することが油脂(および/またはワックス)の結晶化を引き起こさないように、油脂とワックスの組み合わせの温度に十分に近い温度であるべきである。例えば、水性植物性プロテイン混合物は、油脂とワックスの組み合わせと混合するときに、該組み合わせの温度の±10℃、別の態様では±5℃、別の態様では±2℃である温度を有することができる。
【0055】
いくつかのアプローチにおいて、本方法は、エチルセルロースを油脂に添加してオレオゲルを形成することをさらに含む。これらのアプローチのいくつかでは、油脂を加熱して融解油脂を形成する前に、エチルセルロースを油脂に添加する。これらのアプローチの他の例において、油脂を加熱して融解油脂を形成する間に、エチルセルロースを油脂に添加する。これらの他の例において、油脂を加熱して融解油脂を形成した後に、エチルセルロースを油脂に添加する。いくつかの態様において、油脂を加熱して融解油脂を形成した後にエチルセルロースを添加することは、エチルセルロースを油脂に取り込むことを補助することがある。いくつかの例において、本方法は、油脂とエチルセルロースとの組み合わせを加熱してエチルセルロースを溶解させること(例えば、約130℃~約140℃の範囲内の温度)をさらに含む。水性植物性プロテイン混合物の温度は、プロテイン混合物を油脂およびエチルセルロースと混合することが油脂の結晶化を引き起こさないように、油脂とエチルセルロースの組み合わせの温度に十分に近くすべきである。例えば、水性植物性プロテイン混合物は、油脂とエチルセルロースの組み合わせと混合するときに、該組み合わせの温度の±20℃、別の態様では±10℃、別の態様では±5℃、別の態様では±2℃である温度を有することができる。
【0056】
本方法はまた、水性植物性プロテイン混合物を融解油脂で乳化してエマルジョンを形成することを含む。第1の量のプロテインを用いるこの工程は、プレエマルジョン工程として特徴付けられ得る。いくつかのアプローチにおいて、エマルジョンは均質な混合物、または実質的に均質な混合物である。いくつかのアプローチにおいて、エマルションは均一な色であり、および/または目に見える油分離を有しない。適切なエマルジョンを提供するために、特定の油滴サイズを達成する必要があるとは現在のところ考えられていない。むしろ、油滴を被覆する植物性プロテインこそが、適切な安定したエマルジョンを提供すると考えられる。しかし、エマルジョンに過度の負担をかけると、エマルジョンが不安定になり、オイルはがれが生じる可能性がある。したがって、乳化工程が、所望の油滴サイズまたは均質な混合物を達成するために十分な長さでありながら、エマルジョンに過度の負担をかけてプロテインの乳化機能を低下させるほどには長くならないように注意する必要がある。
【0057】
油滴サイズおよび乳化安定性は、融解性能を含む植物性チーズ製品の全体的な性能に影響を与える。いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品が調理温度(例えば、35℃~75℃)などの高温で乳製品ベースのチーズと同様の融解特性および伸展特性を有することを可能にする油脂滴サイズ分布を有する。油脂滴サイズ分布は、ブルカー時間領域核磁気共鳴液滴サイズ分析器(Bruker TD-NMR液滴サイズ分析器)を使用して測定することができる。NMR磁場の減衰曲線(強度対時間)を使用して油脂滴のサイズ分布を導出してもよい。
【0058】
大きな油脂液滴(例えば、20~60μm)は、最終製品にオイル溜りおよび/またはオイルはがれをもたらす可能性があることが判明している。さらに、従来の乳製品では、油脂滴が小さい(例えば、均質牛乳では約0.2~2μm)と口当たりが良いことが判明している。従って、本発明の植物性チーズ製品においては、良好な乳化安定性の達成に有効なプロテイン原料を選択することも望ましく、これは、プロテインが油脂滴表面を被覆して、調理温度(例えば、35℃~75℃)において油脂滴サイズを約0.2μm~約20μmの範囲に維持することを補助するはずであることを意味する。
【0059】
ある態様において、上記混合物は、20℃で0μm超~約20μmの範囲内、別の態様では0.2μm~約20μmの範囲内、別の態様では0μm超~約15μmの範囲内、別の態様では0.2μm~約15μmの範囲内、別の態様では0μm超~約10μm、別の態様では0.2μm~約10μmの範囲内、0μm超~約7μmの範囲内、別の態様では0.2μm~約7μmの範囲内、別の態様では0μm超~約5μmの範囲内、別の態様では0.2μm~約5μmの範囲内、別の態様では0μm超~約3μmの範囲内、別の態様では0.2μm~約3μmの範囲内、別の態様では0μm超~約2μmの範囲内、別の態様では約0.2μm~約2μmの範囲内のD50(すなわち、油脂滴直径の50%がこの値未満である)、を達成するように乳化され得る。
【0060】
本方法は、第2の量(少なくともいくつかの態様では残りの量)の植物性プロテインおよびワックス状デンプンをエマルジョンに添加し、混合して混合物を形成することを含む。第2の量の植物性プロテインの少なくとも一部は、混合物中に溶解してもよい。さらに、または代替的に、第2の量の植物性プロテインの少なくとも一部は、混合物中に懸濁してもよい。混合物中に、植物性プロテインの第2の量の少なくとも一部が溶解するか、および/または植物性プロテインの第2の量の少なくとも一部が懸濁するかは、植物性プロテインの溶解性に少なくとも部分的に依存し得る。植物性プロテインの第2の量は、最終的な植物性チーズ製品中の所望の粗タンパク質量を達成するように選択され得る。ワックス状デンプンは、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも65重量%のアミロペクチン(または少なくとも70重量%のアミロペクチン)を含む。いくつかの例において、ワックス状デンプンは、天然ワックス状トウモロコシ、タピオカデンプン、およびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。いくつかの例において、ワックス状デンプンは天然ワックス状トウモロコシを含む。いくつかの例において、ワックス状デンプンは、タピオカデンプンおよびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。
【0061】
いくつかのアプローチにおいて、第2の量の植物性プロテインおよびワックス状デンプンは、2回以上のバッチで、その間に混合しながら添加してもよい。いくつかの例において、各バッチは、植物性プロテインの少なくとも一部とワックス状デンプンの少なくとも一部を含んでもよい。
【0062】
現在のところ、水性植物性プロテイン混合物を形成し、ワックス状デンプンを添加する前に、第1の量の水性植物性プロテイン混合物を融解油脂で乳化させることによって、第1の量の植物性プロテインがネットワークを形成すること、および油脂滴を被覆することの両方ができると考えられている。さらに、このプロテインネットワークによって、植物性チーズ製品が乳製品ベースのチーズと同様の融解特性および伸展特性を有することが可能になると考えられている。最初のエマルジョンが形成される前にワックス状デンプンが添加された場合、水がワックス状デンプンを水和させるため、植物性プロテインが水中に溶解および/または分散することができず、ネットワークを形成することおよび油脂滴を被覆することができないと考えられている。
【0063】
また、ワックス状デンプンを第2の量の植物性プロテインと一緒に添加することで、ワックス状デンプンが少なくとも部分的にゲル化し、第2の量の植物性プロテインが混合物によってよく取り込まれるようになると現在考えられている。ワックス状デンプンのゲル化度は、製品の硬度および伸展特性に寄与し、ゲル化度が高いほど硬度の値が高くなる。第2の量の植物性プロテインがワックス状デンプンの前に添加された場合、ワックス状デンプンは水和が少なく、ゲル化度が低くなる。ワックス状デンプンのゲル化度が低いと、プロテインネットワークに取り込まれず、植物性チーズ製品の伸展が悪くなり、一部の乳製品ベースのチーズのようにはならない。
【0064】
さらに、ワックス状デンプンを第2の量の植物性プロテインより先に添加すると、第2の量の植物性プロテインが混合物に取り込まれにくくなる可能性がある。第2の量の植物性プロテインを取り込むことができない場合、植物性チーズ製品は、所望の滑らかな口当たりを提供しつつ乳製品ベースのチーズのプロテイン含量に匹敵するプロテイン含量を有することができない可能性がある。取り込まれなかったプロテインは凝集し、最終製品に粒状感をもたらす。
【0065】
いくつかの態様において、本方法は、エマルジョンまたは混合物に酸味料を添加することをさらに含む。これらの態様のいくつかにおいて、酸味料は、植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5の範囲にするために有効な量で添加される。これらの態様のいくつかにおいて、酸味料は、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、ソルビン酸、および乳酸のうちの1つ以上を含む。
【0066】
別の態様において、本方法は、塩、保存料、着色料、および香味料のうちの1つ以上を添加することをさらに含み得る。
【0067】
本方法はさらに、ワックス状デンプンを少なくとも部分的にゲル化して加熱混合物を形成するために有効な時間および温度で、混合物を加熱および混合することを含む。混合物の加熱および混合は、植物性チーズ製品の所望の特性が達成されるまで継続することができる。例えば、(デンプンのゲル化温度を超える温度で)混合物を加熱および混合する時間が長いほど、植物性チーズ製品の硬度が高くなる可能性がある。また、加熱および混合工程でより高い温度を使用すると、植物性チーズ製品の硬度がより高くなる可能性がある。混合物が加熱および混合されるにつれて植物性チーズ製品の硬度が増加することは、少なくとも部分的には、混合物がより長時間および/またはより高温で加熱および混合されるにつれて生じるデンプンのゲル化度の増加によるものと考えられる。
【0068】
本方法はまた、加熱混合物を冷却して植物性チーズ製品を形成することを含む。いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は冷蔵温度まで冷却される。
【0069】
本方法は、冷却工程の前に、加熱混合物を容器に充填することをさらに含んでもよい。
【0070】
本明細書に開示される植物性チーズ製品は、任意の望ましい形状に形成され得る。いくつかの例において、植物性チーズ製品は、チーズブロック、スライスチーズ、ダイスチーズ、またはシュレッドチーズの形態である。
【0071】
本明細書に記載の方法はまた、植物性チーズ製品を、ブロック、スライス、キューブ、シュレッドなどの様々な形状およびサイズに切断することをさらに含み得る。
【0072】
本明細書に記載の方法は、植物性チーズ製品の所望の硬度を提供するように変更することができる。この点において、本方法は、例えば、21C.F.R.§133.102~§133.196で定義されるプロセスチーズ、ハードチーズ、セミソフトチーズ、ソフトチーズ、およびソフト熟成チーズを含む、様々なタイプの乳製品ベースのチーズに典型的な硬度特性をシミュレートするために有利に使用することができる。
【0073】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズまたは乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)に対する消費者の期待と一致する硬度を有する。本明細書において、「硬度」という用語は、実施例(テクスチャー分析)において後述する方法に従って50%圧縮したときに測定されるサンプル(5℃)の力を指す。
【0074】
いくつかの例において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を5℃で50%圧縮したときに、約15N~約118N、約15N~約103N、または約15N~約90Nの範囲内の硬度を有する。他の例において、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約15N~約25N、または約70N~約95Nの範囲内の硬度を有する。一般に、約15N~約103Nの範囲の硬度値は、従来の乳製品ベースのプロセスチーズと同様である。約86N~約118Nの範囲の硬度値は、従来の乳製品ベースのナチュラルチーズと同様である。
【0075】
いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約19N~約21Nの範囲内の硬度を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品の硬度は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズの硬度に対する消費者の期待と一致すると考えられる。いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約76N~約90Nの範囲内の硬度を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品の硬度は、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズの硬度に対する消費者の期待に一致すると考えられる。他のアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約19N~約21Nの範囲内、または約76N~約90Nの範囲内の硬度を有する。
【0076】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズまたは乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)に対する消費者の期待と一致する融解率を有する。本明細書において、「融解率」という用語は、実施例(ディスクメルト試験(修正シュライバー試験))において後述する方法に従って加熱した場合に測定されるサンプルの直径の増加率を指す。
【0077】
いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、約65%~約185%の範囲内の融解率を有する。他のアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、約80%~約185%、約98%~約185%、約110%~約185%、約65%~約155%、約80%~約155%、約98%~約155%、または約110%~約155%の範囲内の融解率を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品の融解率は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズおよび/または乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)の融解率に対する消費者の期待と一致すると考えられる。
【0078】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズまたは乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)に対する消費者の期待と一致するオイルロスを有する。本明細書において、「オイルロス」という用語は、実施例(オイルロス)において後述する方法に従って加熱した場合に測定されるサンプルのオイルロススコアを指す。
【0079】
いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、オイルロスが6以下である。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品のオイルロスは、乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)のオイルロスに対する消費者の期待と一致すると考えられる。いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、オイルロスが4以下、2以下、または1以下である。いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、オイルロスが0である。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品のオイルロスは、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズのオイルロスに対する消費者の期待と一致すると考えられる。
【0080】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズまたは乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)に対する消費者の期待と一致する80℃におけるTanδ値を有する。本明細書において、「Tanδ値」という用語は、実施例(レオメーター温度掃引)において後述する方法に従って測定したサンプルの融解プロファイルの損失弾性率(G′)と弾性率(G′′)の商(すなわち、G′′/G′)を指す。
【0081】
いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、80℃で0.3より大きいTanδ値を有する。他のアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、80℃で0.4より大きい、80℃で0.6より大きい、80℃で0.8より大きい、80℃で1.0より大きい、80℃で1.2より大きい、または80℃で1.4より大きいTanδ値を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズおよび/または乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)の80℃におけるTanδ値に対する消費者の期待と一致すると考えられる。例えば、Kraft(登録商標)American SinglesチーズスライスのTanδは約1.5である。
【0082】
いくつかの態様において、植物性チーズ製品は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズまたは乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)に対する消費者の期待と一致する80℃での伸展を有する。本明細書において、「伸展」という用語は、実施例(軸方向の引張)において後述する方法に従って軸方向の引張を受けたときに、サンプルが破断する前に伸展する距離を指す。
【0083】
いくつかのアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも20mmの伸展を有する。他のアプローチにおいて、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも25mm、80℃で少なくとも30mm、または80℃で少なくとも35mmの伸展を有する。これらのアプローチにおいて、植物性チーズ製品の80℃における伸展は、従来の(乳製品ベースの)プロセスチーズおよび/または乳製品ベースのセミハードナチュラルチーズ(例えば、乳製品ベースのナチュラルマイルドチェダーチーズ)の80℃における伸展に対する消費者の期待と一致すると考えられる。
【0084】
植物性チーズ製品、植物性プロテイン、ワックス状デンプン、油脂、ワックス、エチルセルロース、および酸味料はそれぞれ、本明細書に開示される例のいずれかにおいて上述され得る。
【0085】
チーズは、レイダウンクッカー、ケトル、または他の器具の使用を含む、任意の従来の器具を使用して調理および処理することができる。シュレッドおよび包装もまた、従来の器具を使用して達成することができる。
【0086】
本開示をさらに説明するために、本明細書では例を示す。これらの例は、例示を目的として提供されるものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0087】
例示的な植物性チーズ製品の調製
【0088】
以下の実施例において、例示的な植物性チーズ製品の各々を以下の方法に従って調製した。
【0089】
例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、植物性プロテイン、ワックス状デンプン、油脂、水、および酸味料を含有した。例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約16~18重量%の粗タンパク質を含有した。
【0090】
全量の水を大型ビーカーに入れ、次いで適量の乾燥植物性プロテインを加えて5%(w/v)の水性プロテイン混合物とした。この水性混合物を攪拌プレート上において400rpmで混合するまで混合した。全量の油脂を液状になるまで融解した。融解油脂を5%プロテイン水性混合物に注入し、Polytron(登録商標)ハンドヘルドホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)PT 1300D V3、KINEMATICA社製)を使用して、20,000rpmで1分間均質化した。エマルジョンが形成された。このエマルジョンをThermomix(登録商標)TM6(商標)サーモミキサーに加えて、2~2.5の速度で混合した。この間に、残りの乾燥植物性プロテインの半分と乾燥ワックス状デンプンの半分をサーモミキサーに加えて、完全に混ぜ合わさって乾燥粉が残らなくなるまで混合した。酸性溶液をサーモミキサーに加えて、30秒間混合した。その後、残りの乾燥植物性プロテインと乾燥ワックス状デンプンを加えて、滑らかになるまで混合した。混合を停止し、適切な混合を確実にするために必要に応じて側面を擦った。得られた混合物はそれぞれ160g~170gの間であった。
【0091】
前記混合物が完全に滑らかになった後、加熱法を開始した。実施例1~8の各例示的な植物性チーズ製品および実施例11の例示412を、以下の加熱方法(すなわち、T1、T2、T3、T4、T5、T6、またはT7)のうちの1つに従って製造した。
【0092】
各加熱方法(T1、T2、T3、T4、T5、T6、またはT7)において、Thermomix(登録商標)TM6(商標)サーモミキサーを速度2.0および温度40℃に設定した。40℃に達した時点で、設定温度を50℃まで上昇させた。50℃に達した時点で、設定温度を60℃まで上昇させた。60℃に達した時点で、設定温度を70℃まで上昇させた。70℃に達した時点で混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0093】
次に、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。80℃に達した時点で混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。サーモミキサーを再び速度0.5および温度80℃に設定した。30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。次に、サーモミキサーを速度3.5および温度80℃に設定した。30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。次に、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。1分30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。その後、サーモミキサーを再び速度0.5および温度80℃に設定した。1分30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0094】
その後、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度2.0に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度3.5に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度2.5に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度1.5に設定した。1分混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0095】
加熱方法T1に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T1は約14分間継続した。
【0096】
加熱方法T2、T3、T4、T5、T6またはT7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0097】
加熱方法T2に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T2は約16分間継続した。
【0098】
加熱方法T3、T4、T5、T6またはT7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0099】
加熱方法T3に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T3は約18分間継続した。
【0100】
加熱方法T4、T5、T6またはT7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0101】
加熱方法T4に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T4は約20分間継続した。
【0102】
加熱方法T5、T6、またはT7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0103】
加熱方法T5に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T5は約22分間継続した。
【0104】
加熱方法T6またはT7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0105】
加熱方法T6に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T6は約24分間継続した。
【0106】
加熱方法T7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品について、サーモミキサーを速度0.5および温度80℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0107】
加熱方法T7に従って製造された例示的な植物性チーズ製品は、この時点でサーモミキサーから取り出して冷却した。加熱方法T7は約26分間継続した。
【0108】
前記加熱方法の終了後、例示的な植物性チーズ製品をそれぞれ4℃~5℃の温度で24時間冷蔵保存した。
【0109】
テクスチャー分析
【0110】
テクスチャープロファイル分析(TPA)は、食品の感覚特性を得るために用いられる標準的な手法である。TPAは、食品を所望の変形レベルまで圧縮することで、咀嚼の最初の2噛みを模倣する。TPA試験は、例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズの硬度を測定するために使用した。各サンプルの硬度は、最初の圧縮のピーク力に等しかった。
【0111】
例示的な植物性チーズ製品の分析では、直径20mmの円筒形ダイカッターを使用してサンプルを調製し、その後高さ10mmにトリミングした。あらかじめスライスされた市販サンプルの場合は、ダイカッターを使用してサンプルを切断し、その後、高さが10mmになるように積み重ねた。すべてのサンプルを5℃に保ち、切断後1~5分以内に分析した。75mmの円筒形プレートと30kgのロードセルが取り付けられたTA.XT2テクスチャー分析器(Stable Micro systems、Texture Technologies Corp社製、Scarsdale、米国ニューヨーク州)を使用して、サンプルディスクを分析した。サンプルは、クロスヘッド速度1.00mm/sで元の高さの50%まで圧縮し、圧縮と圧縮の間に5秒の休止時間を設けた。データはニュートン単位で記録し、Exponentソフトウェアを使用して分析した。
【0112】
ディスク融解試験(修正シュライバー試験)
【0113】
例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズの融解性(すなわち、融解率)を、修正シュライバー試験を使用して測定した。サンプルは、円筒形の20mmダイカッターで切断し、その後、高さが10mmになるようにトリミングした。スライス状のサンプルは、一律直径20mmに切断し、高さ10mmになるように積み重ねた。サンプルを5℃で保存した。各サンプルについて、直径100mmのテンプレートを、増大する同心円と45度の角度の線とともに白いプリンター用紙に印刷した。テンプレートはシャーレの底に上向きに配置した。次にサンプルをテンプレートの上に置き、対応するガラストップで覆い、5℃の冷蔵庫で10分間静置した。その後、サンプルを232℃(すなわち450°F)に予熱したオーブンに移し、5分間加熱した。サンプルを取り出し、冷却した後で、4つの異なる角度における広がりの直径を測定した。測定値の平均値を使用して、最初の20mmからの直径の増加率を求めて、融解性を計算した。
【0114】
オイルロス
【0115】
例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズのオイルロスを、融解中に生じたシュライバーディスクペーパーの飽和度に基づいて測定した。オイルで飽和した紙上のリングの数に基づいて、1~7までの数値を割り当てた。
【0116】
レオメーター温度掃引
【0117】
20mmの平行平板形状(PP20/S)を備えた回転型レオメーター(MRC 302、Anton Paar社製、Graz、オーストリア)を使用して、例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズを対象に、振動せん断ひずみ試験と温度掃引を実施した。スリップを避けるため、上板に40グリットのサンドペーパーを、また下板に600グリットのサンドペーパーをそれぞれ貼り付け、少量の瞬間接着剤でサンプルを接着した。サンプルは高さ3mm未満であって、5Nを超えない軸方向の力でプレート間に圧縮した。その後、法線力を0.25Nまで減少させ、3分間保持してサンプルを弛緩させた。温度制御には、ペルチェプレートと強制換気フード(Anton Paar社製、Graz、オーストリア)を使用した。
【0118】
まず、市販のKraft(登録商標)Singlesスライスに、5℃、25℃、および50℃で振幅掃引を行い、ライナー粘弾性領域(LVR)を決定した。掃引は、1Hzの一定周波数として、0.01~200%のひずみの対数速度で実行した。
【0119】
次に、1~10Hzの周波数掃引を0.1%のひずみで行った。
【0120】
例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズの融解プロファイルを調べるために、5~80℃の温度掃引を毎分5℃の速度で、ひずみ0.1%、周波数1Hz、および一定の法線力0.25Nで行い、サンプルの融解を調整した。
【0121】
すべての試験で得られた変数は、弾性率(または貯蔵弾性率)(G′)、損失弾性率(または塑性率)(G′′)、およびTanδ(すなわちG′′/G′)であり、RheoCompass(商標)ソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0122】
軸方向の引張
【0123】
例示的な植物性チーズ製品、市販の植物性チーズ、および市販の乳製品ベースのチーズの拡張性または伸展を、ペルチェプレートおよび温度制御に使用される強制換気フード(Anton Paar社製、Graz、オーストリア)を備えた回転型レオメーター(MRC 302、Anton Paar社製、Graz、オーストリア)を使用して測定した。レオメーターは20mmの平行プレート形状(PP20/S)を備えており、80℃に予熱した。スリップを避けるため、上板に40グリットのサンドペーパーを、また下板に600グリットのサンドペーパーをそれぞれ貼り付け、少量の瞬間接着剤でサンプルを接着した。5mmのサンプルを使用して、5Nを超えない軸方向の力でプレート間に圧縮した。その後、法線力を0.25Nまで減少させた。サンプル、80℃で0.1%のひずみと0.25Nの法線力を加えながら、合計6分間保持した。ギャップの減少が3mmの高さに制限されているため、印加された力によって、融解中のサンプルとの接触が一定に保たれた。加熱後、上部の平行平板の形状を1500μm/sの速度で上方に移動させる軸方向の引張を行った。法線力(N)とギャップ(mm)を、RheoCompass(商標)ソフトウェアを使用して引張中に記録した。
【0124】
さらに、iPhone XS(Apple Inc.社製)のカメラを使用して、軸方向の引張をビデオ録画した。装置の隙間の大きさは、サンプルの伸展と同じフレームで記録し、サンプルが破断した隙間を破断点とした。総合的な伸展は以下の式:伸展(mm)=破断点(mm)-加熱後の開始ギャップ(mm)で測定した。
【0125】
実施例1
【0126】
まず、市販の乳製品ベースのチーズであるKraft(登録商標)Singles(15~20%の粗タンパク質を含むプロセスチーズ)およびCracker Barrel(登録商標)Natural(マイルド/ミディアム)Cheddar(25~30%の粗タンパク質を含む)の硬度、融解率、およびオイルロスを測定した。これらの測定結果を表2に示す。
【表2】
【0127】
次に、本明細書に開示する例示的な植物性チーズ製品を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、一般配合物S1、S2、S3、S4、またはS5を有し、加熱法T3、T4、T5、T6、またはT7で調製した。酸味料として1Mクエン酸溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品のそれぞれに添加した。
【0128】
ファバプロテイン単離物はAGT Food & Ingredients社から入手し、約90%の粗タンパク質を含んでいた。ルパン豆プロテイン単離物はProLupin GmbH社から入手し、約91%の粗タンパク質を含んでいた。大豆プロテイン単離物は、約88%の粗タンパク質を含んでおり、DuPont社から入手した。大豆プロテイン濃縮物は、約84%の粗タンパク質を含んでおり、DuPont社から入手した。緑豆プロテイン単離物はFuji Plant Protein Labs社から入手し、約85%の粗タンパク質を含んでいた。天然ワックス状トウモロコシは、MyProtein社から入手した100% Waxy Maize Starchであった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc社製、Richmond、カナダ)であった。
【0129】
配合物S1、S2、S3、S4、S5のそれぞれを、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表3に示す。
【表3】
【0130】
例示的な植物性チーズ製品の硬度、融解率、およびオイルロスを測定した。硬度の測定結果を表4に示す。融解率の測定結果を表5に示す。オイルロスの測定結果を表6に示す。表4~表6の各々おいて、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
【表4】
【表5】
【表6】
【0131】
硬度
【0132】
例示的な植物性チーズ製品の硬度(表4)は、プロテイン単離物の種類によらず同程度であった。大豆プロテイン濃縮物を含むS4がT3でより高い硬度を示した以外は、すべての配合物がKraft(登録商標)Singlesの硬度(約20N)と同様の硬度に達することができた。また、緑豆プロテインを含むS5を除いて、すべての配合物がCracker Barrel(登録商用)Natural Cheddarと同様の硬度に達することができた。緑豆プロテインの硬度は、他のプロテインよりも一貫して低かった。緑豆タンパク単離物には、プレゲル化デンプンが含まれていた可能性があり、その結果、硬度値が低くなったものと思われる。従って、緑豆(またはプレゲル化デンプンを含む他のプロテイン原料)が植物性チーズ中の植物性プロテインである場合、または植物性チーズ中の植物性プロテインの1つである場合、より高い硬度値を有する植物性チーズを提供するためには、より長い加熱処理が必要となる可能性がある。
【0133】
これらの硬度値は、植物性チーズ製品の製造に複数の植物性プロテインが使用可能であることを示している。
【0134】
融解
【0135】
サンプルの融解性は、配合に使用するプロテインの生存性を示す重要な指標である。目標は、市販の乳製品ベースのチーズに類似させるために、融解プロセス中に大きな広がりが生じるようにすることである。
【0136】
表5に示すように、配合物の融解性は様々であった。しかし、ファバプロテインを含む配合物S1は顕著な融解を示した。ルパン豆プロテインを含む配合物S2を除く他の配合物は、ある程度の融解を達成することができた。
【0137】
オイルロス
【0138】
すべてのサンプルで、融解中にオイルロスが発生した(表6)。ルパン豆プロテインを含む配合物S2は、オイルロスが最も少なかった。これは、サンプルが融解も軟化もしなかったことに起因すると考えられ、このことはルパン豆プロテインが異なる方法でオイルと相互作用するか、またはオイルと結合する可能性を示唆している。他のプロテインを含む配合物で観察されたオイルロスは、加熱方法T6とT7で調製されたサンプルでは許容範囲内であるが、これは、同様にかなりのオイルロスが発生したCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarと同様の硬度値を有するためである。
【0139】
全体として、ファバプロテイン単離物を含むサンプルは最高の融解性を有し、適用される加熱量に応じて、Kraft(登録商標)SinglesとCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの両方と同様の達成可能な硬度範囲を備えていた。すべてのサンプルで観察されたオイルロスは、プロセスチーズよりもナチュラルチーズのオイルロスに類似していた。
【0140】
実施例2
【0141】
植物性チーズ製品の追加例を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、一般配合物S6を有し、加熱法T3、T4、T5、T6、またはT7で調製した。速度0.5から30秒間、速度2.0まで30秒間、速度3.5まで30秒間、速度2.5まで30秒間、次いで速度1.5まで1分間、サーモミキサーのランピング中に、ゼインプロテイン単離物を添加した。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0142】
ファバプロテイン単離物はAGT Food & Ingredients社から入手し、約90%の粗タンパク質を含んでいた。トウモロコシ由来のゼインプロテイン(食品グレード)(FloZein Products社製、Ashburnham、マサチューセッツ州)をゼインプロテイン単離物として使用し、これは約82~100%の粗タンパク質を含んでいた。天然ワックス状トウモロコシは、MyProtein社から入手した100% Waxy Maize Starchであった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0143】
配合物S6を、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表7に示す。
【表7】
【0144】
配合物S6を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の硬度、融解率およびオイルロスを測定した。硬度、融解率およびオイルロスの測定結果を表8に示す。表8において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された加熱方法によって特定される。
【表8】
【0145】
サンプルの硬度値は、プロセスチーズおよびナチュラルチーズに近い硬度範囲であった。加熱法T3およびT4で調製したサンプルでは、配合物S1ならびに加熱法T3およびT4で調製したサンプルよりも融解がわずかに増加したが、サンプルの硬度もわずかに軟らかく、これは融解および変形しやすいことを示していると考えられる。加熱法T6で調製したサンプルの融解は、配合物S1および加熱法T6で調製したサンプルと変わらなかったが、加熱法T7で調製したサンプルの融解は、配合物S1および加熱法T7で調製したサンプルよりも減少した。加熱法T7で調製したサンプルはまた、配合物S1および加熱法T7で調製したサンプルよりも硬度が高かった。また、配合物S6で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと同様のオイルロスを有した。
【0146】
実施例3
【0147】
植物性チーズ製品の追加例を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、一般配合物S7、S8、S9、S10、S11、またはS12を有し、加熱方法T3、T4、T5、T6、またはT7で調製した。以下の表9に示すように、各配合物は、ファバプロテイン成分に加えて、「添加物」原料(ルパン豆プロテイン単離物、亜麻プロテイン濃縮物、ファバプロテイン濃縮物、レシチン、またはゼインプロテイン単離物)を有した。ゼインプロテイン単離物を除いて、添加物は最初のエマルションに使用され、ゼインプロテイン単離物は、その代わりに、他の乾燥原料との混合工程の開始時に添加された。酸味料として1Mクエン酸溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0148】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。粉砕ファバプロテインは、乾燥ファバプロテイン単離物を-20℃で72時間ボールミリングすることによって製造した。ボールミリングの前では、ファバプロテイン単離物の粒子径は25μm~17μmの範囲であった。ボールミリングの後、粒子径は10μm~90μmに減少した。
【0149】
ルパン豆プロテイン単離物は、ProLupin GmbH社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約91%)。亜麻プロテイン濃縮物は、Glanbia社から入手した(粗タンパク質は濃縮物の重量の約26%)。ファバプロテイン濃縮物は、Ingredion社から入手した(粗タンパク質は濃縮物の重量の約60%)。レシチンは、Sunlec(登録商標)25(Perimondo LLC社製、Florida、米国ニューヨーク州)(粗タンパク質は約0重量%)であった。トウモロコシ由来のゼインプロテイン(食品グレード)(FloZein Products社製、Ashburnham、マサチューセッツ州)を、ゼインプロテイン単離物として使用した(粗タンパク質は単離物の重量の約82~100%)。
【0150】
天然ワックス状トウモロコシwは、MyProtein社から入手した100% Waxy Maize Starchであった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0151】
配合物S7、S8、S9、S10、S11、およびS12のそれぞれを、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表9に示す。
【表9】
【0152】
例示的な植物性チーズ製品の硬度、融解率、およびオイルロスを測定した。硬度の測定結果を表10に示す。融解率の測定結果を表11に示す。オイルロスの測定結果を表12に示す。表10~表12の各々において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
【表10】
【表11】
【表12】
【0153】
配合物S7(ファバ+ルパン豆)で調製したサンプルは、配合物S1(すべてファバ)で調製したサンプルと比較して、オイルロスが若干減少し、融解も減少した。
【0154】
配合物S8(ファバ+亜麻)ならびに加熱方法T5およびT6で調製したサンプルは、配合物S1(すべてファバ)ならびに加熱方法T5およびT6で調製したサンプルと比較して、オイルロスがわずかに減少した。
【0155】
配合物S9(ファバプロテイン単離物+ファバプロテイン濃縮物)ならびに加熱方法T3、T4、T6、およびT7で調製したサンプルは、配合物S1ならびに加熱方法T3、T4、T6、およびT7で調製したサンプルと比較して、融解性が増加した。配合物S9および加熱方法T7で調製したサンプルは、配合物S1(すべてファバ)および加熱方法T7で調製したサンプルと比較して、硬度がわずかに低下した。配合物S9で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと同様のオイルロスを有した。
【0156】
配合物S10(ファバプロテイン単離物+レシチン)で調製したサンプルは、配合物S1(すべてファバ)で調製したサンプルと比較して、融解性が増加し、オイルロスが増加した。配合物S10で調製したサンプルは、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarと比較して硬度が低かった。
【0157】
配合物S11(粉砕ファバプロテイン+レシチン)で調製したサンプルの融解性およびオイルロスは、配合物S1(全ファバ)で調製したサンプルの融解性およびオイルロスと同様であった。配合物S11で調製したサンプルはまた、配合物S1で調製したサンプルと比較して硬度が低かった。
【0158】
配合物S12(ファバプロテイン単離物+ゼインプロテイン単離物)で調製したサンプルの硬度は、Kraft(登録商標)Singlesよりもわずかに高かったが、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarよりも低かった。配合物S12で調製したサンプルはまた、配合物S1で調製したサンプルと比較して、オイルロスが減少しなかった。
【0159】
実施例4
【0160】
植物性チーズ製品の追加例を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、一般配合物S13、S14、S15、S16、S17、S18、S19、またはS20を有し、加熱法T3、T4、T5、T6、またはT7で調製した。酸味料として1Mクエン酸溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0161】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。天然ワックス状トウモロコシは、MyProtein社から入手した100% Waxy Maize Starchであった。
【0162】
サンフラワーオイルは、Selection(商標)サンフラワーオイル(Metro Brands社製(モントリオール(ケベック州)、トロント(オンタリオ州)向けに輸入)を使用した。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)を使用した。ココアバターは、精製漂白ココアバター(JB Cocoa Sdn. Bhd.社製(Johor、マレーシア))を使用した。シアステアリンおよびシアオレインは、それぞれAAK(登録商標)社(Malmo、スウェーデン)から入手した。
【0163】
綿実グリセロリシス生成物は、グリセロールと組み合わせた綿実油が化学反応を起こしてモノグリセリド(MG)とジグリセリド(DG)を多く含む生成物を生成する反応から製造された。綿実グリセロリシス生成物は、Guelph大学(オンタリオ州、カナダ)から入手した。
【0164】
配合物S13、S14、S15、S16、S17、S18、S19、およびS20のそれぞれを、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表13に示す。
【表13】
【0165】
例示的な植物性チーズ製品の硬度、融解率、およびオイルロスを測定した。硬度の測定結果を表14に示す。融解率の測定結果を表15に示す。オイルロスの測定結果を表16に示す。表14~表16の各々において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
【表14】
【表15】
【表16】
【0166】
配合物S13(サンフラワーオイル)で調製したサンプルは、T6加熱法を使用した場合に、プロセスチーズと同様の硬度を達成することができた。配合物S13で調製したサンプルはまた、配合物S1(ココナッツオイル)で調製したサンプルと比較して、融解が少なく、オイルロスが減少した。これは、サンプルが驚くほど柔らかくペースト状であったために、油の結合がより良好であったためと考えられる。
【0167】
配合物S14(ココナッツオイル70%/サンフラワーオイル30%)で調製したサンプルは、T6加熱法を使用した場合に、プロセスチーズと同様の硬度を達成することができた。配合物S14で調製したサンプルはまた、配合物S1で調製したサンプルよりも融解が少なく、オイルロスが発生した。
【0168】
配合物S15(ココナッツオイル)で調製したサンプルは、配合物S13およびS14と比較して油脂が少なく、水分含量が多かった。配合物S15で調製したサンプルは、T7加熱法を使用した場合に、プロセスチーズと同様の硬度を達成することができた。配合物S15で調製したサンプルはまた、配合物S1で調製したサンプルよりも融解が少なく、オイルロスが発生した。
【0169】
配合物S16(ココナッツオイル)で調製したサンプルは、配合物S13およびS14と比較して、油脂が少なく、植物性プロテインおよびワックス状デンプンが多かった。配合物S16で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと同様の硬度および融解を有した。配合物S16で調製したサンプルはまた、配合物S1で調製したサンプルと比較して、オイルロスがいくらか減少したが、これはおそらく、配合物中に存在する油脂の量が少なかったためと思われる。
【0170】
配合物S17(ココアバター)で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと同様の硬度および融解性を有した。配合物S17で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルよりもオイルロスがわずかに少なかった。これは、ココアバターの結晶化の違いのため、あるいは、ココアバターがより粘性の高いオイルである傾向があるため、サンプル中の構造がわずかに変化した可能性がある。
【0171】
配合物S18(綿実グリセロリシス50%/ココナッツオイル50%)で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと比較して硬度が低下した。配合物S18で調製したサンプルはまた、融解性が良好であったが、多量のオイルロスが発生した。
【0172】
配合物S19(シアステアリン50%/ココナッツオイル50%)で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルと比較して硬度が低下した。配合物S19で調製したサンプルはまた、融解性が良好であったが、多量のオイルロスが発生した。サンプルの視覚的アピールは、プロセスチーズの外観に望まれるものと非常に類似していた。
【0173】
配合物S20(シアステアリン50%/シアオレイン50%)で調製したサンプルは、硬度が低かった。配合物S20で調製したサンプルは融解することができ、少量のオイルロスしか示さなかった。
【0174】
実施例5
【0175】
植物性チーズ製品の追加例を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、一般配合物S21、S22、S23、S24、S25、S26、またはS27を有し、加熱法T3、T4、T5、T6、またはT7で調製した。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0176】
例示的な植物性チーズ製品のいくつかでは、油脂として使用するオレオゲルを、エチルセルロース(EC)を使用して作製した。ECオレオゲルを作製するために、オイル(例えば、ココナッツオイル)とEC粉末をECのガラス転移温度より高い約140℃まで加熱し、ポリマーが開いた立体構造を形成して液体油相を物理的に包み込むネットワークを作成した。サンプルは、EC粒子が見えなくなるまで(約20分間)140℃で加熱した。使用したエチルセルロース(EC)は、45cp ETHOCEL(商標)Standard 45(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)であった。
【0177】
例示的な植物性チーズ製品のいくつかでは、ワックス(蜜蝋またはキャンデリラワックス)を使用してオイルを構造化してオレオゲルを作成し、それを油脂として使用した。蜜蝋は、Yellow Beeswax NF PAC(KOSTER KEUNEN(登録商標)社製、Watertown、米国コネチカット州)であった。キャンデリラワックスは、Candelilla Wax NF(KOSTER KEUNEN(登録商標)社製、Watertown、米国コネチカット州)であった。
【0178】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。天然ワックス状トウモロコシは、Tate & Lyle社から入手したWaxy No.1であった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。シアステアリンは、AAK(登録商標)社(Malmo、スウェーデン)から入手した。
【0179】
配合物S21、S22、S23、S24、S25、S26、およびS27のそれぞれを、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表17に示す。表示されたECまたはワックスの量は、油脂の総重量に基づく。
【表17】
【0180】
例示的な植物性チーズ製品の硬度、融解率、およびオイルロスを測定した。硬度の測定結果を表18に示す。融解率の測定結果を表19に示す。オイルロスの測定結果を表20に示す。表18~表20の各々において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
【表18】
【表19】
【表20】
【0181】
配合物S21~S24で調製したサンプルでは、ココナッツオイル中の異なる濃度のECを探索し、オレオゲルとしてサンプル中で使用した。配合物S21~S24で調製したサンプルは、プロセスチーズと同様の硬度レベルに達することができたが、配合物S22(ココナッツオイル中ECが1%)およびS23(ココナッツオイル中ECが0.5%)で調製したサンプルのみが、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの硬度値に近い硬度値に達した。配合物S21~S24で調製したすべてのサンプルの融解性も、配合物S1で調製したサンプルと比較してわずかに低下した。しかしながら、プロセスチーズと同様の硬度値を有するサンプルは、配合物S1で調製したサンプルの融解性に比べて良好な融解性を有した。配合物S21(ココナッツオイル中ECが2%)およびS24(ココナッツオイル中ECが0.1%)で調製したサンプルでは、オイルロスは観察されなかった。配合物S22(ココナッツオイル中ECが1%)およびS23(ココナッツオイル中ECが0.5%)で調製したサンプルでは、オイルロスはほとんどなく、硬度値が大きいサンプルでは少量しか観察されなかった。
【0182】
配合物S25(シアステアリン50%/ココナッツオイル50%中ECが1%)で調製したサンプルは、プロセスチーズと同様の硬度値を達成したが、ナチュラルチーズと同様の硬度にはならなかった。配合物S25で調製したサンプルは、良好な融解性を有しており、ECの添加によってオイルロスが防止された。
【0183】
配合物S26(ココナッツオイル中蜜蝋が2%)および配合物S27(ココナッツオイル中キャンデリラワックスが2%)で調製したサンプルは、同様の硬度範囲を有し、プロセスチーズとナチュラルチーズの両方のレベルに達した。配合物S26および配合物S27で調製したサンプルはまた、良好な融解性を有し、配合物S27(ココナッツオイル中キャンデリラワックスが2%)で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルの融解値と類似するか、またはそれを超える融解値を有した。しかしながら、オイルロスは、配合物S26で調製したサンプルと配合物S27で調製したサンプルとでは異なっていた。配合物S26(ココナッツオイル中蜜蝋が2%)で調製したサンプルは、配合物S1で調製したサンプルのオイルロスよりも少なかったものの、オイルロスが発生した。配合物S27(ココナッツオイル中キャンデリラワックスが2%)で調製したサンプルは、オイルロスがより少なかった。特に、配合物S27および加熱方法T3~T5で調製したサンプルはオイルロスがなく、配合物S27および加熱方法T6とT7で調製したサンプルは少量のオイルロスしかなかった。ワックスの添加によって、サンプルのオイルロスを調節できることが判明した。
【0184】
全体として、ワックスおよびオレオゲレーター(例えば、EC)を使用してオイルを構造化すると、良好な融解性および硬度を維持しながらオイルロスを調節できることが判明した。
【0185】
比較例6
【0186】
市販の植物性チーズの硬度、融解率、およびオイルロスもまた測定した。市販の植物性チーズは、Earth Island(登録商標)の「マイルドチェダー類似品」(NON-GMO Cheddar Style Slices、チーズ代替品、製造国ギリシャ、製造元:Earth Island(登録商標)、Chatsworth, カナダ)、Daiya(登録商標)(Daiya(登録商標)チェダー風味スライス(DAIYA FOODS INC.社製, Burnaby、ブリティッシュコロンビア州))、Sheese(登録商標)(Sheese(登録商標)Vegan、Mature Cheddar style Slices、非乳製品擬似チーズ製品、KLBDパラベ、製造業者:Rothesay Isle of Bute、スコットランド、英国)、およびVioLife(登録商標)(Violife(登録商標)Cheddar Style Slicesチーズ代替品、製造国ギリシャ、製造業者ARIVIA S.A.社製、Block 31 Industrial Area of Sindos, Thessaloniki、ギリシャ)であった。これらの測定結果を表21に示す。
【表21】
【0187】
Daiya(登録商標)の植物性チーズを除くすべての市販の植物性チーズの硬度値は、乳製品ベースのプロセスチーズおよびCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarよりも有意に高かった。すべての市販の植物性チーズの融解性はまた、プロセスチーズ、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、および配合物S1で調製したサンプルよりも、有意に低かった。いずれの市販の植物性チーズにもオイルロスは観察されず、これはプロセスチーズのオイルロスと同様であったが、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarではそうではなかった。
【0188】
全体として、配合物S22、S23、S26およびS27(実施例5)で調製したサンプルは、市販の植物性チーズよりもプロセスチーズおよびCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの硬度値により一致する一方で優れた融解性を有し、オイルロスはなかった。
【0189】
実施例7
【0190】
Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1、S22、S26、およびS27ならびに加熱方法T3~T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)について、レオメーター温度掃引を行った。サンプルの融解プロファイルを理解するために、5℃~80℃までの温度掃引を使用した。G′はシステムの固体挙動を示し、G′′は粘性部分を示した。
【0191】
Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品のレオメーター温度掃引から作成した融解曲線を
図1に示す。Kraft(登録商標)Singles、ならびに配合物S1およびS22ならびに加熱法T4で調製したサンプルは、それぞれ19N~21Nの硬度を有した。
図1において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって識別される。
【0192】
図1に示すように、Kraft(登録商標)Singlesは、G′とG′′が着実に減少し、G′とG′′のクロスオーバーが70℃付近で起こる定常的な融解曲線を有した。Kraft(登録商標)SinglesのG′とG′′のクロスオーバーは、サンプルが完全に融解し、完全に粘性であることを示した。
【0193】
また、
図1に示すように、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4で調製したサンプルは、G′が着実に減少し、30℃付近と65℃付近での2つの主な融解事象が見られる融解プロファイルを有した。これらの温度は、ココナッツオイルの融解(30℃)とデンプンのゲル化(65℃)に一致する。配合物S1およびS22ならびに加熱法T4で調製したサンプルの融解曲線は、G′とG′′のクロスオーバーがなく、このことはサンプルが粘性よりも固体のままであることを示した。
【0194】
Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S22および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品のレオメーター温度掃引から作成した融解曲線を
図2に示す。Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarと、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T7を使用して調製したサンプルは、それぞれ76N~90Nの硬度値を有した。
図2において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
【0195】
図2に示すように、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの融解プロファイルは、Kraft(登録商標)Singlesの融解プロファイルと類似していた。Cracker Barrel(登録商標)Natural CheddarのG′とG′′はいずれも、熱の増加とともに着実に減少した。約70℃で、粘性成分G′′は固体成分G′のそれを上回り、サンプルが完全に融解したことを示した。
【0196】
また、
図2に示すように、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T7で調製したサンプルは、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4で調製したサンプルに類似した融解プロファイルを有し、2つの融解事象が生じた。
図2に示す結果は、サンプルの硬度の増加がサンプルの融解能力に影響することを示唆している。
【0197】
比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)のレオメーター温度掃引から生成された融解曲線を
図3に示す。
図3において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0198】
Earth Island(登録商標)マイルドチェダー類似品(比較例6より)と、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7で調製した例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成した融解曲線を、
図4に示す。Daiya(登録商標)マイルドチェダー類似品(比較例6より)と、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成した融解曲線を、
図5に示す。Sheese(登録商標)マイルドチェダー類似品(比較例6より)と、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7で調製した例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成した融解曲線を、
図6に示す。VioLife(登録商標)マイルドチェダー類似品(比較例6より)と、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から生成した融解曲線を、
図7に示す。比較例6の市販の植物性チーズと、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の、レオメーター温度掃引から作製した融解曲線を、
図8に示す。
図4~
図8において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図4~
図8において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0199】
図4~
図8に示すように、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7を使用して調製したサンプルは、市販の植物性チーズと同様の融解プロファイルを有した。全てのサンプルに2つの融解事象があり、それぞれ油脂の融解とデンプンのゲル化に一致した。すべてのサンプルは、温度の上昇とともにG′とG′′が減少したが、G′とG′′のクロスオーバーは見られなかった。
【0200】
しかしながら、例示的な植物性チーズ製品のG′とG′′は、市販の植物性チーズのG′とG′′よりも、互いに近い値であることが観察された。特に、高温(例えば、80℃)では、例示的な植物性チーズ製品のG′とG′′は、市販の植物性チーズのG′とG′′よりも有意に互いに近い値であった。これらの結果は、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4およびT7を使用して調製された例示的な植物性チーズ製品が、加熱中に市販の植物ベースのチーズよりも大きな構造変化を受け、加熱時により粘性のある挙動を示すことを示している。
【0201】
Kraft(登録商標)Singlesプロセスチーズ、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1、S22、S26およびS27ならびに加熱方法T3~T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)について、Tanδ値を測定した。Tanδは、G′に対するG′′の比である。したがって、G′とG′′は互いに対して正規化され、反復間のばらつきがなくなり、融解プロファイルをよりよく理解できるようになる。Tanδが1の値に近づくにつれて、サンプルは粘性が増し、融解特性が向上する。
【0202】
Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、および比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の温度(℃)の関数としてのTanδ値を
図9に示す。
図9では、サンプルの融解傾向の違いが容易に確認できる。
図9において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図9において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0203】
図9に示すように、Kraft(登録商標)Singlesは、Tanδ値が温度の上昇とともに連続的に増加し、1の値を超えることから、全体的に最も良好な融解プロファイルを有し、このことは、加熱時に粘性の高いネットワークを有し、融解性が良好であることを示している。これに対し、市販の植物性チーズのTanδ値は、1の値よりも著しく低く、加熱中もほとんど上昇しなかった。これらの結果は、市販の植物性チーズの加熱中、融解挙動はほとんど起こらず、ネットワークはわずかに軟化したかもしれないが、市販の植物性チーズの固形特性が支配的であったことを示している。
【0204】
配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品のTanδ値の傾向は、市販の植物性チーズよりもKraft(登録商標)Singlesに類似していた。
図9に示すように、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品は、温度が上昇するにつれてTanδが増加した。最終的なTanδは1の値には達しなかったものの顕著に増加して1の値に近づいており、このことは、加熱された市販の植物性チーズよりも、加熱された例示的な植物性チーズ製品において、より高い融解および粘性挙動が起こっていることを示している。市販の植物性チーズは、この程度の融解およびネットワークの軟化を示すことができなかったため、例示的な植物性チーズ製品が増加するTanδを示す能力は重要である。
【0205】
80℃で、各サンプルは最大融解または軟化に達した。配合物S1、S22、S26およびS27ならびに加熱方法T3~T7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδを表22に示す。表22において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、および比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の80℃におけるTanδを表23に示す。
【表22】
【表23】
【0206】
Kraft(登録商標)Singles、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S26および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S27および加熱方法T5で調製した例示的な植物性チーズ製品の、80℃におけるTanδも
図10に示す。Kraft(登録商標)Singlesとこれらの例示的な植物性チーズ製品の硬度は、それぞれ16N~24Nであった。
図10において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物及び加熱方法によって特定される。
【0207】
図10に示すように、例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は統計的に類似しており、例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は、Kraft(登録商標)Singlesの80℃におけるTanδ値よりも低かったが、ECおよびワックスなどの油脂調整添加物の使用は、サンプルの融解性に有意な影響を与えないと結論付けられた。
【0208】
Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S26および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S27および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品の、80℃におけるTanδも
図11に示す。Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarとこれらの植物性チーズ製品の硬度は、それぞれ76N~90Nであった。
図11において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって識別される。
【0209】
図11に示すように、配合物S22および加熱方法T7で調製したサンプルを除く全ての例示的な植物性チーズ製品は、80℃におけるTanδ値が統計的に類似していた。さらに、例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの80℃におけるTanδ値よりも低いことが予想されたが、これはCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの油脂およびプロテイン含量が多いことがより大きな融解性をもたらし、したがって、より大きなTanδをもたらすことが予想されたからである。
【0210】
Kraft(登録商標)Singles、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、および比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の80℃におけるTanδも
図12に示す。
図12において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図12において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0211】
図12に示すように、Kraft(登録商標)Singlesの80℃におけるTanδは、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品のいずれよりも著しく大きかった。しかしながら、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は、いずれの市販の植物性チーズの80℃におけるTanδよりも著しく大きかった。これらの結果は、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T4を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品が、Kraft(登録商標)Singlesの硬度により一致するだけでなく、市販の植物性チーズよりも優れた融解性を有することを示している。
【0212】
Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の80℃におけるTanδも
図13に示す。
図13において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図13において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0213】
図13に示すように、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの80℃におけるTanδは、市販の植物性チーズおよび例示的な植物性チーズ製品のいずれよりも著しく大きかった。しかしながら、配合物S1およびS22ならびに加熱方法T7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の80℃におけるTanδ値は、いずれの市販の植物性チーズの80℃におけるTanδよりも著しく大きかった。これらの結果は、配合例S1およびS22ならびに加熱方法T7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品が、市販の植物性チーズの硬度に一致する一方で優れた融解性を有することを示している。
【0214】
全体として、Tanδ値を比較することによって、例示的な植物性チーズ製品が、市販の植物性チーズのいずれよりも優れた融解性を有することが明確に示された。市販の植物性チーズで到達した80℃における最大Tanδ値は、0.18であった。試験した例示的な植物性チーズ製品で到達した80℃における最小Tanδ値は、0.43であった。
【0215】
実施例8
【0216】
Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1、S22、S26、およびS27ならびに加熱方法T3~T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の伸展を測定するために、軸方向の引張を行った。
【0217】
配合物S1、S22、S26、およびS27ならびに加熱方法T3~T7を使用して調製した例示的な植物性チーズ製品の伸展測定値を、表24に示す。表24において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。Kraft(登録商標)Singles(プロセスチーズ)、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、および比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の伸展測定値を表25に示す。
【表24】
【表25】
【0218】
表24に示すように、すべての例示的な植物性チーズ製品の伸展性は非常に類似していた。この結果は、ECおよびワックスの添加が、(配合物S1で調製した例示的な植物性チーズ製品の伸展性と比較して)例示的な植物性チーズ製品の伸展性に影響を及ぼさなかったことを示している。このことは、例示的な植物性チーズ製品の伸展に有害な影響を与えることなく、オイルロスを管理できることを示している。さらに、同じ配合物のT3~T7までのサンプル間で、伸展にほとんど変化は見られなかった。このことは、サンプルの硬度が例示的な植物性チーズ製品の拡張性に影響しないことを示している。
【0219】
Kraft(登録商標)Singles、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S26および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S27および加熱方法T5で調製した例示的な植物性チーズ製品の伸展測定値も、
図14に示す。Kraft(登録商標)Singlesおよびこれらの例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、16N~24Nの硬度値を有した。
図14において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって識別される。
【0220】
図14に示すように、例示的な植物性チーズ製品の各々の伸展測定値は、Kraft(登録商標)Singlesの伸展と統計的に類似していた。これは有意な結果であり、Kraft(登録商標)Singlesのプロテイン値、硬度、および伸展に一致させながらオイルロスを防止できることを示している。
【0221】
また、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S26および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに配合物S27および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品の、伸展測定値を
図15に示す。Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarおよびこれらの例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、76N~90Nの硬度値を有した。
図15において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって識別される。
【0222】
図15に示すように、全ての例示的な植物性チーズ製品は、統計的に類似した伸展測定値を有した。さらに、例示的な植物性チーズ製品の伸展測定値は、Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの伸展測定値よりも低いことが予想されたが、これは、ナチュラルチーズはプロテイン含有量が多いため、融解性および伸展がより向上するためである。
【0223】
Kraft(登録商標)Singles、配合物S1および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T4で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の伸展測定値も
図16に示す。
図16において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図16において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって識別される。
【0224】
図16に示すように、市販の植物性チーズはすべて、伸展性において統計的に類似していた。しかしながら、市販の植物性チーズの伸展測定値は、Kraft(登録商標)Singlesの伸展測定値および例示的な植物性チーズ製品の伸展測定値よりも著しく低かった。
【0225】
Cracker Barrel(登録商標)Natural Cheddar、配合物S1および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、配合物S22および加熱方法T7で調製した例示的な植物性チーズ製品、ならびに比較例6の市販の植物性チーズ(すなわち、Earth Island(登録商標)、Daiya(登録商標)、Sheese(登録商標)、およびVioLife(登録商標)のマイルドチェダー類似品)の伸展測定値も、
図17に示す。
図17において、例示的な植物性チーズ製品はそれぞれ、その例示的な植物性チーズ製品を調製するために使用された配合物および加熱方法によって特定される。
図17において、市販の植物性チーズはそれぞれ、その製造業者によって特定される。
【0226】
図17に示すように、全ての市販の植物性チーズは、同様に低い拡張性の値を有し、これらはCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarの拡張性および例示的な植物性チーズ製品の拡張性よりも著しく低かった。
【0227】
例示的な植物性チーズ製品が、16N~24Nの硬度範囲および76N~90Nの硬度範囲の両方において、市販の植物性チーズのすべてよりも著しく大きな伸展を有する能力は重要である。これらの結果は、例示的な植物性チーズ製品が市販の植物性チーズを凌駕できることをさらに実証している。全体として、実施例は、クリーンラベル原料を使用して高プロテインの植物性チーズ製品を製造することに成功したことを実証している。植物性チーズ製品の製造に使用された方法によって、Kraft(登録商標)SinglesまたはCracker Barrel(登録商標)Natural Cheddarのいずれかと同様の硬度値の範囲が可能になった。
【0228】
油脂の調整は、エチルセルロースを使用して油脂成分としてオレオゲルを作るか、あるいは蜜蝋またはキャンデリラワックスを油脂成分としてオイルに組み入れることによって達成できることが判明した。オイル調整剤は、サンプルの硬度範囲には影響を与えないことが証明されたが、融解時のサンプルの広がりをわずかに減少させた。しかしながら、レオロジー的調査は、植物性チーズ製品の融解プロファイルがオイル調整剤による影響を受けないことを示した。
【0229】
各システムのTanδは、融解性の最良の比較を提供した。調査したすべての例示的な植物性チーズ製品のTanδは、すべての市販の植物性チーズよりも大きなTanδ値を有した。また、硬度の異なるすべての例示的な植物性チーズ製品のTanδ値はすべて同程度であったことから、サンプルの硬度は融解性に影響しないことが判明した。
【0230】
例示的な植物性チーズ製品の伸展についても調べたところ、同様の傾向が見られた。サンプルの硬度およびオイル調整剤は、サンプルの拡張性に影響を与えなかった。例示的な植物性チーズ製品の伸展は、Kraft(登録商標)Singlesの伸展と統計的に類似していた。例示的な植物性チーズ製品はまた、全ての市販の植物性チーズよりも有意に大きな伸展を有した。
【0231】
例示的な植物性チーズ製品は、市販の植物性チーズより優れているだけでなく、良好な融解性、オイルロスなし、および同等の伸展を有したKraft(登録商標)Singlesの硬度と同等の硬度を有するように調節できることが判明した。
【0232】
実施例9
【0233】
配合物S1を使用して例示的な植物性チーズ製品を調製し、ジャケット付きケトルクッカーで88℃(190°F)まで加熱して、88℃(190°F)で2分間保持した。この例示的な植物性チーズ製品を冷却し、5℃で保存した。
【0234】
得られた植物性チーズ製品を1週間保存した後、光顕微鏡(LM)画像を撮影した。サンプルを、蛍光プローブ(ポリエチレングリコール溶液中のナイルレッドとファストグリーンFCFの混合物)で染色した。ナイルレッドは、アルゴンレーザーからの488nmの光で励起され、500nm~600nmの光を放射した(
図18Aおよび
図18B)。ファストグリーンFCFは、HeNeレーザーからの633nmの光で励起され、655~755nmの光を放射した(
図18Aおよび
図18C)。画像はLeica SP5共焦点レーザー走査型顕微鏡を使用して室温(約23℃)で撮影し、Leicaアプリケーションソフトウェア(LAS)で処理した。
【0235】
【0236】
図からわかるように、ファバプロテインの位置は油脂滴と一致しており、これにより、ファバプロテインが油脂滴を覆い乳化剤として作用していることがわかる。
【0237】
実施例10
【0238】
表26の配合物ならびに加熱方法T1、T2、T3、T4、およびT5を使用して、例示的な植物性チーズ製品を調製した。
【0239】
ヒヨコ豆プロテイン濃縮物は、Nutriati社から入手した(粗タンパク質は濃縮物の重量の約60%)。ゼインプロテインは、FloZein Products社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約100%)。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0240】
ヒヨコ豆プロテイン濃縮物は約5%のデンプンを含み、これは65~70重量%のアミロペクチンを含むワックス状デンプンであった。デンプンは加熱方法中にゲル化した。
【0241】
配合物を、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表26に示す。
【表26】
【0242】
加熱方法の後、サンプルを冷却し、その後偏光下で観察した。白色顆粒中の複屈折マルタ十字を示すために偏光下で画像を撮影したものを、
図19A~19Eに示す。ゲル化度が高くなると、マルタ十字は消失した。
【0243】
各加熱方法で調製したサンプルの植物性チーズの硬度値も測定した。
図19A~19Eに示すように、ゲル化度が高くなるにつれて硬度値は上昇し、これにより、チーズ製造工程中のゲル化度を使用して、得られるチーズの硬度を調整できることが実証された。
【0244】
実施例11
【0245】
植物性チーズ製品の追加例(例示412、430、431、432、および434)を調製した。これらの例示的な植物性チーズ製品は、表27に示す一般配合物を有した。例示412は加熱法T5で調製し、例示430、431、432および434は加熱法「A」(後述)で調製した。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0246】
キャノーラプロテイン単離物は、Merit Foods社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。ヒヨコ豆プロテイン単離物は、ChickP社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約89%)。第1のエンドウ豆プロテイン単離物は、Roquette社から入手した黄色エンドウ豆プロテイン単離物であった(粗タンパク質は単離物の重量の約85%)。第2のエンドウ豆プロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した黄色エンドウ豆プロテイン単離物であった(粗タンパク質は単離物の重量の約85%)。第3のエンドウ豆プロテイン単離物は、Cargill社から入手した黄色エンドウ豆プロテイン単離物であった(粗タンパク質は単離物の重量の約80%)。
【0247】
天然ワックス状トウモロコシは、Tate & Lyle社から入手したWaxy No.1であった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標) Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0248】
各配合物を、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表27に示す。
【表27】
【0249】
加熱方法「A」では、Thermomix(登録商標)TM6(商標)サーモミキサーを速度2.0および温度40℃に設定した。40℃に達した時点で、設定温度を50℃まで上昇させた。50℃に達した時点で、設定温度を60℃まで上昇させた。60℃に達した時点で、設定温度を70℃まで上昇させた。70℃に達した時点で、設定温度を80℃まで上昇させた。80℃に達した時点で混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0250】
次に、サーモミキサーを速度0.5および温度90℃に設定した。90℃に達した時点で混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。サーモミキサーを再び速度0.5および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度3.5および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。次に、サーモミキサーを速度0.5および温度90℃に設定した。1分30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。その後、サーモミキサーを再び速度0.5および温度90℃に設定した。1分30秒間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0251】
次に、サーモミキサーを速度0.5および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度2.0および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度3.5および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度2.5および温度90℃に設定した。30秒間混合した後、サーモミキサーを速度1.5に設定した。1分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。次に、サーモミキサーを速度0.5および温度90℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。その後、サーモミキサーを再び速度0.5および温度90℃に設定した。2分間混合した後、混合を停止し、サーモミキサーの底を擦った。
【0252】
加熱方法「A」に従って製造した例示的な植物性チーズ製品を、この時点でサーモミキサーから取り出し、5℃になるまで冷却した。
【0253】
例示412は固まらず、切断できなかった。
【0254】
例示430、431、432、および434のそれぞれのコールドテクスチャーは切断しにくく、硬くて脆かった。
【0255】
例示430、431、432および434の各々の融解を、第2シュライバー試験に従って評価した。第2シュライバー試験では、厚さ約5mm(3/16インチ)および直径約50mm(1.9インチ)の円盤状スライスに切断した例示的な植物性チーズ製品を使用した。スライスをワックスペーパーの上に置き、加熱前に各スライスの周囲に円を描いてスライスの直径を区切った。その後、これらのスライスを232℃のオーブンで5分間加熱した。加熱後、広がりの量(描かれた円の外側)を測定した。その後、スライスを室温(20℃)で30分間冷却した。
【0256】
図20Aは加熱前のスライスを示す。
図20Bは加熱後のスライスを示し、
図20Cは30分間の冷却後のスライスを示す。
図20Aおよび
図20Bが示すように、例示430はほとんど広がりがなく、例示431および432は約6.35mm(約1/4インチ)の広がりを有し、例示434は約12.7mm(約1/2インチ)の広がりを有した。
図20Bにも示すように、各例示は顕著な油脂の析出を有した。
図20Cに示すように、30分間の冷却後、各例示はさらなる油脂の析出を有した。
【0257】
実施例12
【0258】
植物性チーズ製品の追加例(例示500~514)を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、表28および表29に示す一般配合物を有し、加熱方法「A」(実施例11で上述)を使用して調製した。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品の各々に添加した。
【0259】
これらの例示的な植物性チーズ製品において、エチルセルロース(EC)粉末またはワックスを油脂と組み合わせてオレオゲルを作成した。
【0260】
例示500~503のオレオゲルを作成するために、オイル(ココナッツオイル)を36℃に加熱してオイルを融解した。EC粉末またはワックスを融解したオイルに添加し、Polytron(登録商標)ハンドヘルドホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)PT 1300D V3、KINEMATICA社製)を使用して、4000rpmで30秒間均質化した。
【0261】
例示504および505のオレオゲルを作成するために、オイル(ココナッツオイル)を36℃に加熱してオイルを融解し、EC粉末を融解したココナッツオイルに添加した。次に、EC粉末とココナッツオイルの混合物を加熱して、ECを溶解させた(表28に「加熱あり」と表示)。例示504を作成するために、EC粉末とココナッツオイルの混合物を、133℃に加熱してから、5%プロテイン水性混合物に添加した。例示505を作成するために、EC粉末とココナッツオイルの混合物を133℃に加熱し、次いで120℃に冷却してから、5%プロテイン水性混合物に添加した。
【0262】
例示506~514のオレオゲルを作成するために、オイル(ココナッツオイル)を36℃に加熱してオイルを融解した。融解したココナッツオイルにワックスを添加し、ワックスとココナッツオイルの混合物をさらに加熱してワックスを溶解させた。ワックスとココナッツオイルの混合物を60~80℃(使用するワックスによる)に加熱し、撹拌した。
【0263】
例示502~514を作成するために、5%プロテイン水性混合物をオレオゲルの温度の±2℃以内の温度に加熱してから、5%プロテイン水性混合物をオレオゲルと混合した。
【0264】
使用したエチルセルロース(EC)は、45cp ETHOCEL(商標)Standard 45(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)(45ECと称する)または20cp ETHOCEL(商標)Standard 20(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)(20ECと称する)であった。使用したワックスは、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、キャンデリラワックス、白色蜜蝋、またはオレンジワックス(それぞれKOSTER KEUNEN(登録商標)社製、Watertown、米国コネチカット州)であった。
【0265】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。天然ワックス状トウモロコシは、Tate & Lyle社から入手したWaxy No.1であった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0266】
各配合物を、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表28または表29に示す。表示されたECまたはワックスの量は、油脂の総重量に基づく。
【表28】
【表29】
【0267】
例示500~514のテクスチャーは、各例示をサーモミキサーから冷却用容器に移しながら評価した。例示500~514を5℃に冷却した後、それぞれのコールドテクスチャーを評価した。
【0268】
例示500(ココナッツオイル中20ECが1%)では、ECが製品にうまく混ざらず、得られた混合物は均質ではなかった。例示500は非常に粘性が高く、白いECの斑点が見られた。混合後に白いECの斑点を含むこのサンプルおよび他のサンプルでは、ECの混合が不十分であったため、得られた植物性チーズ製品はECの機能的利点を十分に享受できていない可能性がある。冷却後、例示500は簡単に切断できなかった。非常に砕けやすく、脆かった。
【0269】
例示501(ココナッツオイル中45ECが1%)では、ECがうまく溶液に溶け込まず、ECの約80%が均一化されずに残った。例示501は非常に濃厚で、白いECの斑点が見られた。例示501のコールドテクスチャーは、例示500のコールドテクスチャーに類似していた。これは脆く、切断しにくかった。
【0270】
例示502(ココナッツオイル中20ECが0.5%)では、ECは製品にうまく混ざらず、得られた混合物は均質ではなかった。例示502の粘度は中程度で、白いECの斑点を有した。冷却後、例示502は良好なディスクカットが得られ、例示500および501よりも脆性が低かった。
【0271】
例示503(ココナッツオイル中45ECが0.5%)では、ECがうまく溶液に溶け込まず、ECの約60%が均質化されずに残った。例示503は、粘着性および粘性を有しており、白いECの斑点を有した。例示503のコールドテクスチャーは柔らかく、きれいに切断され、トップは滑らかであった。
【0272】
例示504(ココナッツオイル中20ECが1%、加熱あり)では、ECとココナッツオイルの混合物は均質化するとゲル化した。このゲルは濃厚で粘着性があり、粘性を有していてECの斑点はなかった。しかし、この混合物は、植物性プロテインとデンプンとの均質化後に分離した。この混合物を、植物由来のタンパク質とデンプンを2回目に添加した後で再び組み入れた。例示504のコールドテクスチャーは非常に滑らかで、きれいに切断された。素晴らしいディスクカットが得られ、例示500~503よりもはるかに脆性が低かった。例示504は、成功した配合であるとみなされた。
【0273】
例示505(ココナッツオイル中45ECが1%、加熱あり)では、ECとココナッツオイルの混合物はECの斑点を有さず、例示504で示された分離はなかった。例示505のコールドテクスチャーは、例示504のコールドテクスチャーに類似していた。非常に滑らかで、きれいに切断された。素晴らしいディスクカットが得られ、例示500~503よりもはるかに脆性が低かった。例示505は、成功した配合とみなされた。
【0274】
例示506(ココナッツオイル中ライスブランワックスが1%)では、ECとココナッツオイルの混合物は例示500と501におけるECとココナッツオイルの混合物よりも薄かった。例示506のコールドテクスチャーは切断しにくく、わずかに砕けやすく脆かった。例示506は、成功した配合とみなされた。
【0275】
例示507(ココナッツオイル中ライスブランワックスが2%)では、ワックスとココナッツオイルの混合物は、例示503のECとココナッツオイルの混合物と同様の粘度を有した。5%プロテイン水性混合物を用いた均質化は、5%プロテイン水性混合物がワックスとココナッツオイルの混合物と同じ温度である場合に良好であった。しかし、5%プロテイン水性混合物は40℃を超えると蒸発し濃縮し始めた。例示507のコールドテクスチャーは例示506のコールドテクスチャーと類似していたが、より脆性が高かった。その切断性は平凡であった。例示507は成功した配合とみなされた。
【0276】
例示508(ココナッツオイル中サンフラワーワックスが1%)では、サンフラワーワックスは融解に高い温度(75℃)を要した。ワックスとココナッツオイルの混合物はゲル化せず、例示505のECとココナッツオイルの混合物に似た粘度を有し、非常に濃厚であった。植物性プロテインとデンプンによる均質化は、5%プロテイン水性混合物がワックスとココナッツオイルの混合物と同じ温度であった場合に成功した(すなわち、結晶化は起こらなかった)。冷却後、例示508は優れたディスクカットが得られ、例示506および507よりも脆性が低かった。例示508は、成功した配合とみなされた。
【0277】
例示509(ココナッツオイル中キャンデリラワックスが1%)では、キャンデリラワックスは74℃で融解した。ワックスとココナッツオイルの混合物はゲル化せず、濃厚ではなかったが、非常に粘着性があり、光沢があった。植物性プロテインとデンプンによる均質化は、5%プロテイン水性混合物がワックスとココナッツオイルの混合物と同じ温度であった場合に成功した(すなわち、結晶化は起こらなかった)。冷却後、例示509は良好なディスクカットが得られ、例示506~514の中で最も脆性が低く、ナチュラルチーズに似ていた。例示509は、成功した配合とみなされた。
【0278】
例示510(ココナッツオイル中白色蜜蝋が1%)では、白色蜜蝋は70℃で融解した。ワックスとココナッツオイルの混合物は、例示509のワックスとココナッツオイルの混合物に非常に類似していた。これはゲル化せず、濃厚ではなかったが、非常に粘着性があり、光沢があった。植物性プロテインとデンプンとの均質化は、5%プロテイン水性混合物がワックスとココナッツオイルの混合物と同じ温度であった場合に成功した(すなわち、結晶化は起こらなかった)。冷却後、例示510は優れたディスクカットが得られ、非常に柔らかいが端は脆かった。例示510は特に有益な配合とみなされた。
【0279】
例示511(ココナッツオイル中オレンジワックスが1%)では、ワックスとココナッツオイルの混合物は、他の例のワックスとココナッツオイルの混合物よりも密度が低かった。例示511は非常に水っぽく、薄かった。冷却後、例示511は例示506~514の中で最も良好なディスクカットが得られ、非常に柔らかく、例示506~514の中で最もナチュラルチーズに似ていた。例示511は特に有益な配合とみなされた。
【0280】
例示512(ココナッツオイル中白色蜜蝋が2%)では、ワックスとココナッツオイルの混合物は、70℃で5%プロテイン水性混合物とよく混合した。均質化すると、混合物はミルクのように見えた。塊が形成され、混ぜることで消失した。例示512は非常に濃厚で、非常に粘着性および光沢があり、例510よりも粘着性は低かった。例示512のコールドテクスチャーはわずかに脆かった。例示512は、成功した配合とみなされた。
【0281】
例示513(ココナッツオイル中オレンジワックスが2%)では、オレンジワックスは(他のワックスと比較して)ココナッツオイルへの添加が容易であった。例示513は薄く、油っぽかった。これは例示511より濃厚であり、例示512よりも油っぽさは少なかった。例示513のコールドテクスチャーは脆く、サンプルは切断中に何度か崩れた。例示513は、成功した配合とみなされた。
【0282】
例示514(ココナッツオイル中サンフラワーワックスが2%)では、ワックスを75℃以上に保たないとサンフラワーワックスがゲル化した。ワックスとココナッツオイルの混合物はよく均質化した。塊が形成され、混ぜることで消失した。例示514は光沢があり、濃厚で、例示508よりも密度が高かった。例示514のコールドテクスチャーは、わずかに脆かった。これは、例示513よりも脆性が低かったが、例示512よりも脆性が高かった。例示514は、特に有益な配合とみなされた。
【0283】
上述したように、例示500~503は白いECの斑点を有し、例示504および505はECの斑点を有さなかった。
図21は、白いのECの斑点を有する例示501(ココナッツオイル中45ECが1%)を示す。
図22は、斑点を有さない例示504(ココナッツオイル中20ECが1%、加熱あり)を示す。さらに、例示506~514はワックスの斑点を有さなかった。したがって、これらの例示は、オイルとECまたはワックスの混合物を加熱して、ECまたはワックスをオイルに完全に組み入れることが有益であることを示している。
【0284】
植物性チーズ製品の追加例(例示410)を調製した。例示的な植物性チーズ製品は、表30に示す一般配合物を有し、加熱方法「A」(実施例11で上述)を使用して調製した。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で例示的な植物性チーズ製品に添加した。
【0285】
この例示的な植物性チーズ製品では、油脂としてココナッツオイルのみを使用した。
【0286】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手した(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。天然ワックス状トウモロコシは、Tate & Lyle社から入手したWaxy No.1であった。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であった。
【0287】
配合物を、使用した各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表30に示す。
【表30】
【0288】
例示的な植物性チーズ製品の融解率を、第2シュライバー試験(実施例11で上述)に従って測定した。融解率の測定結果を表31に示す。
【表31】
【0289】
表31に示すように、白色蜜蝋またはオレンジワックスを含む例示(例示510~例示513)は高い融解率を有し、これは例示410(ココナッツオイル)の融解率に類似していた。また、表31に示すように、例示514(ココナッツオイル中サンフラワーワックスが2%)は、例示410(ココナッツオイル)の融解率よりも高い融解率を有した。さらに、表31は、オレオゲル中のサンフラワーワックスのレベルを1%(例示508)から2%(例示514)に増加させると、融解率が有意に改善されることを示している。
【0290】
全体として、表31は、例示506(ココナッツオイル中ライスブランワックスが1%)、例示510(ココナッツオイル中白色蜜蝋が1%)、例示511(ココナッツオイル中オレンジワックスが1%)、および例示514(ココナッツオイル中サンフラワーワックスが2%)が良好な融解性能を有することを示している。
【0291】
シュライバー試験では、例示506(ココナッツオイル中ライスブランワックスが1%)は、均一な融解とわずかに不均一なオイルオフを有した。冷却後、例示506は柔らかいテクスチャーであった。
【0292】
シュライバー試験において、例示510(ココナッツオイル中白色蜜蝋が1%)は、非常に均一な融解を有し、融解後のオイルオフが低かった。しかし、例示510は、融解後30分でオイルオフが高くなった。冷却後、例示510は良好な伸展/引張を有した。
【0293】
シュライバー試験において、例示511(ココナッツオイル中オレンジワックスが1%)は、非常に均一な融解を示し、融解後および融解後30分経過後のオイルオフが低かった。冷却後、例示511は良好な伸展/引張を有した。
【0294】
シュライバー試験において、例示514(ココナッツオイル中サンフラワーワックスが2%)は、視覚的な広がりが最も大きく、非常に均一な融解を有した。例示514は、冷却後の伸展が(例示500~例示513の冷却後の伸展テクスチャーと比較して)最も長かった。伸展テクスチャーは、サンプルを手で伸展させることによって評価した。
【0295】
上記のように、オレオゲレーターの量および種類は、所望の融解性能を達成するために選択することができる。
【0296】
予言的実施例13
【0297】
オレオゲルを含む植物性チーズ製品(例示515~例示532)の追加例を調製することができる。例示的な植物性チーズ製品は、表32~表34に示す一般配合物を有し、加熱方法「A」(実施例11で上述)を使用して調製される。酸味料として1Mクエン酸水溶液を、pHを5.5未満に保つために有効な量で、例示的な植物性チーズ製品の各々に添加する。
【0298】
これらの例示的な植物性チーズ製品において、エチルセルロース(EC)、ワックス、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、またはフェヌグリークガムが、オレオゲルを作成するために使用される。オレオゲルを作成するために、オイル(例えば、ココナッツオイル)を36℃の温度に加熱してオイルを融解させてもよい。有機ゲル化剤を、融解したオイルまたは室温(20℃)のオイルに添加してもよい。必要に応じて混合物を加熱し、有機ゲル化剤を融解/分散させる。次に、Polytron(登録商標)ハンドヘルドホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)PT 1300D V3、KINEMATICA社製)を使用して、混合物を4,000rpmなどで30秒間均質化する。使用するエチルセルロース(EC)は、20cp ETHOCEL(商標)Standard 20(The Dow Chemical Company社製、米国ミシガン州)(20ECと称する)であってもよい。使用するワックスは、キャンデリラワックス(KOSTER KEUNEN(登録商標)、Watertown、米国コネチカット州)またはプロポリスワックスであってもよい。
【0299】
ファバプロテイン単離物は、AGT Food & Ingredients社から入手することができる(粗タンパク質は単離物の重量の約90%)。ファバプロテイン濃縮物は、Ingredion社から入手することができる(粗タンパク質は濃縮物の重量の約60%)。ヒヨコ豆プロテイン濃縮物は、Nutriati社から入手することができる(粗タンパク質は濃縮物の重量の約60%)。天然ワックス状トウモロコシは、Tate & Lyle社から入手したWaxy No 1であってもよい。ココナッツオイルは、精製有機非遺伝子組み換えココナッツオイル(Nutiva(登録商標)Nurture Vitality(商標)、Nutiva Inc.社製、Richmond、カナダ)であってもよい。
【0300】
表32~表34に、各配合物を使用可能な各原料の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)と共に示す。表示されたEC、ワックス、ベントナイトクレイ、大豆レシチン、粘液、またはフェヌグリークガムの量は、油脂の総重量に基づく。例示515~532の各々は、良好な伸展特性および融解特性を有する植物性チーズ配合を提供することが期待される。
【表32】
【表33】
【表34】
【0301】
態様
【0302】
第1の態様において、本開示は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する植物性プロテインと、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも70重量%のアミロペクチンを含むワックス状デンプンであって、ワックス状デンプンが少なくとも部分的にゲル化される、ワックス状デンプンと、および油脂とを含む、植物性チーズ製品に関する。
【0303】
第2の態様において、本開示は、植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5にするために有効な量の酸味料をさらに含む、第1の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0304】
第3の態様において、本開示は、第2の態様の植物性チーズ製品に関し、ここで、酸味料は、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、ソルビン酸、および乳酸のうちの1つ以上を含む。
【0305】
第4の態様において、本開示は、80℃未満の融点を有するワックスをさらに含む、第1の態様から第3の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0306】
第5の態様において、本開示は、第4の態様の植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックスは、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む。
【0307】
第6の態様において、本開示は、第4の態様の植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックスは、キャンデリラワックスを含む。
【0308】
第7の態様において、本開示は、第4の態様から第6の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックスは、油脂の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%の範囲内の量で存在する。
【0309】
第8の態様において、本開示は、エチルセルロースをさらに含む、第1の態様から第7の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0310】
第9の態様において、本開示は、第8の態様の植物性チーズ製品に関し、ここで、エチルセルロースは、油脂の総重量に基づいて、約0.1重量%~約2重量%の範囲内の量で存在する。
【0311】
第10の態様において、本開示は、第1の態様から第9の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性プロテインは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約14重量%~約20重量%の粗タンパク質の量で存在する。
【0312】
第11の態様において、本開示は、第1の態様から第10の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性プロテインは、ファバプロテイン、ヒヨコ豆プロテイン、緑豆プロテイン、大豆プロテイン、ゼインプロテイン、ルパン豆プロテイン、キャノーラプロテイン、エンドウ豆プロテイン、レンズ豆プロテイン、および亜麻プロテインのうちの1つ以上を含む。
【0313】
第12の態様において、本開示は、第1の態様から第11の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性プロテインは、ファバプロテインを含む。
【0314】
第13の態様において、本開示は、第1の態様から第12の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約5重量%~約20重量%の範囲内の量で存在する。
【0315】
第14の態様において、本開示は、第1の態様から第12の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックス状デンプンは、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約12重量%~約16重量%の範囲内の量で存在する。
【0316】
第15の態様において、本開示は、第1の態様から第14の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックス状デンプンは、天然ワックス状トウモロコシを含む。
【0317】
第16の態様において、本開示は、第1の態様から第15の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約15重量%~約30重量%の範囲内の量で存在する。
【0318】
第17の態様において、本開示は、第1の態様から第15の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約19重量%~約27重量%の範囲内の量で存在する。
【0319】
第18の態様において、本開示は、第1の態様から第15の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約20~約25重量%の量で存在する。
【0320】
第19の態様において、本開示は、第1の態様から第18の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂は、ココナッツオイル、シアオイル、シアステアリン、シアオレイン、シアバター、パームオイル、パームオイル留分、サンフラワーオイル、ココアバター、および綿実グリセロリシスのうちの1つ以上を含む。
【0321】
第20の態様において、本開示は、第1の態様から第18の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂はココナッツオイルを含む。
【0322】
第21の態様において、本開示は、第1の態様から第20の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約19N~約21Nの範囲内の硬度を有する。
【0323】
第22の態様において、本開示は、第1の態様から第20の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品を50%圧縮したときに、約76N~約90Nの範囲内の硬度を有する。
【0324】
第23の態様において、本開示は、第1の態様から第22の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約65%~約185%の範囲内の融解率を有する。
【0325】
第24の態様において、本開示は、第1の態様から第22の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約80%~約185%の範囲内の融解率を有する。
【0326】
第25の態様において、本開示は、第1の態様から第21の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約98%~約185%の融解率を有する。
【0327】
第26の態様において、本開示は、第1の態様から第20の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約110%~約185%の融解率を有する。
【0328】
第27の態様において、本開示は、第1の態様から第22の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約65%~約155%の範囲内の融解率を有する。
【0329】
第28の態様において、本開示は、第1の態様から第22の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約80%~約155%の範囲内の融解率を有する。
【0330】
第29の態様において、本開示は、第1の態様から第21の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約98%~約155%の融解率を有する。
【0331】
第30の態様において、本開示は、第1の態様から第20の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、約110%~約155%の融解率を有する。
【0332】
第31の態様において、本開示は、第1の態様から第30の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、オイルロスが6以下である。
【0333】
第32の態様において、本開示は、第1の態様から第30の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、オイルロスが4以下である。
【0334】
第33の態様において、本開示は、第1の態様から第30の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、オイルロスが2以下である。
【0335】
第34の態様において、本開示は、第1の態様から第30の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、オイルロスが1以下である。
【0336】
第35の態様において、本開示は、第1の態様から第30の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、オイルロスが0である。
【0337】
第36の態様において、本開示は、第1の態様から第35の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で0.4より大きいTanδ値を有する。
【0338】
第37の態様において、本開示は、第1の態様から第35の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で0.6より大きいTanδ値を有する。
【0339】
第38の態様において、本開示は、第1の態様から第35の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で0.8より大きいTanδ値を有する。
【0340】
第39の態様において、本開示は、第1の態様から第38の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも20mmの伸展を有する。
【0341】
第40の態様において、本開示は、第1の態様から第38の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも25mmの伸展を有する。
【0342】
第41の態様において、本開示は、第1の態様から第38の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも30mmの伸展を有する。
【0343】
第42の態様において、本開示は、第1の態様から第38の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、植物性チーズ製品は、80℃で少なくとも35mmの伸展を有する。
【0344】
第43の態様において、本開示は、第1の態様から第42の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、ワックス状デンプンは、タピオカデンプンおよびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。
【0345】
第44の態様において、本開示は、第1の態様から第8の態様または第21の態様から第43の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関し、ここで、油脂は、ココナッツオイルおよびサンフラワーオイルを含む。
【0346】
第45の態様において、本開示は、植物性チーズ製品を製造する方法に関し、本方法は、第1の量の植物性プロテインを水性液体に溶解して、水性植物性混合物を形成することと、油脂を加熱して融解油脂を形成することと、水性植物性プロテイン混合物を融解油脂で乳化してエマルジョンを形成することと、第2の量の植物性プロテインおよびワックス状デンプンをエマルジョンに添加し、混合して混合物を形成することと、ワックス状デンプンを少なくとも部分的にゲル化させるために有効な時間の間、混合物を加熱および混合して、加熱混合物を形成することと、および、加熱混合物を冷却して植物性チーズ製品を形成することと、を含み、ここで、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品の総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の粗タンパク質を含み、そしてここで、ワックス状デンプンは、ワックス状デンプンの総重量に基づいて、少なくとも70重量%のアミロペクチンを含む。
【0347】
第46の態様において、本開示は、酸味料をエマルジョンまたは混合物に添加することをさらに含む、第45の態様の方法に関する。
【0348】
第47の態様において、本開示は、第46の態様の方法に関し、ここで、酸味料は、植物性チーズ製品のpHを約4.5~約5.5の範囲内にするために有効な量で添加される。
【0349】
第48の態様において、本開示は、80℃未満の融点を有するワックスを油脂に添加することをさらに含む、第45の態様から第47の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0350】
第49の態様において、本開示は、エチルセルロースを油脂に添加することをさらに含む、第45の態様から第48の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0351】
第50の態様において、本開示は、エチルセルロースおよび油脂からオレオゲルを形成することをさらに含む、第49の態様の方法に関する。
【0352】
第51の態様において、本開示は、冷却工程の前に、加熱混合物を容器に充填することをさらに含む、第45の態様から第50の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0353】
第52の態様において、本開示は、第45の態様から第51の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、水性植物性プロテイン混合物は、約2%w/v~約8%w/vの植物性プロテインを含む。
【0354】
第53の態様において、本開示は、第45の態様から第51の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、水性植物性プロテイン混合物は、約4%w/v~約6%w/vの植物性プロテインを含む。
【0355】
第54の態様において、本開示は、第45の態様から第53の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、油脂の加熱は約35℃~約60℃の範囲内の温度にすることである。
【0356】
第55の態様において、本開示は、第46の態様から第54の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、酸味料は、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、ソルビン酸、および乳酸のうちの1つ以上を含む。
【0357】
第56の態様において、本開示は、第48の態様から第55の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、ワックスは、オレンジワックス、ライスブランワックス、サンフラワーワックス、蜜蝋、およびキャンデリラワックスのうちの1つ以上を含む。
【0358】
第57の態様において、本開示は、第48の態様から第55の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、ワックスはキャンデリラワックスを含む。
【0359】
第58の態様において、本開示は、第45の態様から第57の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、植物性プロテインはファバプロテインを含む。
【0360】
第59の態様において、本開示は、第45の態様から第58の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、ワックス状デンプンは天然ワックス状トウモロコシを含む。
【0361】
第60の態様において、本開示は、第45の態様から第59の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、油脂はココナッツオイルを含む。
【0362】
第61の態様において、本開示は、第45の態様から第60の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、ワックス状デンプンは、タピオカデンプンおよびキャッサバデンプンのうちの1つ以上を含む。
【0363】
第62の態様において、本開示は、第45の態様から第59の態様または第61の態様のいずれか1つの方法に関し、ここで、油脂は、ココナッツオイルおよびサンフラワーオイルを含む。
【0364】
本明細書において提供される範囲は、記載された範囲および記載された範囲内の任意の値または小範囲を含むことを理解されたい。例えば、約10重量%~約25重量%の範囲は、明示的に記載された制限の約10重量%~約25重量%の範囲だけでなく、12.35重量%、15.5重量%、18重量%、20.75重量%、23重量%などの個々の値と、および、例えば約11重量%~約15.5重量%、約13.5重量%~約22.7重量%、約16.75重量%~約24重量%などの小範囲と、を含むと解釈されるべきである。さらに、値を表すために「約」が使用される場合、これは、記載された値からのわずかな変動(最大で+/-10%)を包含することを意味する。
【0365】
すべてのパーセンテージおよび比率は、別段の指示がない限り、重量で計算される。すべてのパーセンテージおよび比率は、別段の指示がない限り、合成物または組成物の総重量に基づいて計算される。
【0366】
本明細書全体を通して、「例」、「1つの例」、「別の例」、「いくつかの例」、「他の例」等への言及は、例に関連して記載される特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれることを意味し、他の例には存在してもしなくてもよい。さらに、任意の例について記載された要素は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、様々な例において任意の好適な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0367】
本明細書で開示される例の説明および特許請求において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0368】
いくつかの例を詳細に説明したが、開示された例は変更可能であることを理解されたい。したがって、前述の説明は非限定的なものとみなされる。
【国際調査報告】