(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プラスチック熱分解のための多重流動床または噴流層反応器
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20241003BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C10G1/10 ZAB
C08J11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521041
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022045801
(87)【国際公開番号】W WO2023059733
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウー-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,グアン
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング,ロバート・ヒバード
(72)【発明者】
【氏名】シッディーク,アブバッカー
(72)【発明者】
【氏名】ラビキラン,アナパガッディ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA27
4F401BA06
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4F401EA77
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4F401FA01Z
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4F401FA08Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB04
4H129BC18
4H129BC22
4H129BC26
(57)【要約】
プラスチックを変換するための系は、触媒再生器と、プラスチック原料を収容するフィーダーと、当該触媒再生器と流体連通し、かつ当該フィーダーと流体連通している第1の円錐形噴流層反応器ステージと、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第2の円錐形噴流層反応器ステージと、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを低分子量生成物に変換する系であって、
触媒再生器と、
プラスチック原料を収容するフィーダーと、
前記触媒再生器と流体連通し、かつ前記フィーダーと流体連通している第1の円錐形噴流層反応器ステージと、
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第2の円錐形噴流層反応器ステージと、
を備える、系。
【請求項2】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージを収容する第1の反応器容器と、
前記第2の円錐形噴流層反応器ステージを収容する第2の反応器容器と、
をさらに備え、
前記第1の反応器容器および前記第2の反応器容器が、触媒および未反応プラスチック原料の流れを前記第1の反応器容器から前記第2の反応器容器に送るように構成された少なくとも1本のパイプと流体接続している、請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記第2の反応器容器が、前記第1の反応器容器よりも低い高さにある、および/または前記パイプが、前記第1の反応器容器から前記第2の反応器容器への触媒および未反応プラスチック原料の流れが空気圧で駆動されるように通気される、請求項2に記載の系。
【請求項4】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、単一の反応器容器内に収容されており、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、バッフルによって少なくとも部分的に分離されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の系。
【請求項5】
前記バッフルが、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部、底部、もしくは少なくとも1つの側面において、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージと前記第2の円錐形噴流層反応器ステージとの間の少なくとも1つの開口部を画定する、ならびに/または前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、異なる相対高さにある、請求項4に記載の系。
【請求項6】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージが、前記触媒再生器から触媒を受容するように構成されている、および/または前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、前記触媒再生器と流体連通しており、前記触媒再生器から触媒を受容するように構成されている、および/または前記第1の円錐形噴流層反応器ステージが、熱分解レジームで動作する、請求項1~5のいずれか一項に記載の系。
【請求項7】
前記触媒再生器から前記第1の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れが、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である、および/または前記触媒再生器から前記第2の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れが、前記第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である、請求項6に記載の系。
【請求項8】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部から前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部に向かって延在するドラフトチューブをさらに備え、前記ドラフトチューブが、第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブと、前記ドラフトチューブの底部から上向きに延びる少なくとも1つの開口部とを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の系。
【請求項9】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部から前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部に向かって延在する閉じ込め器(confiner)をさらに備え、前記閉じ込め器が、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の系。
【請求項10】
前記第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第3の円錐形噴流層反応器ステージをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の系。
【請求項11】
動作中に、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、もしくは約450℃~約600℃、もしくは約480℃~約550℃の温度を有する、および/または動作中に、前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、もしくは約450℃~約600℃、もしくは約480℃~約550℃の温度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の系。
【請求項12】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通しているガス供給系をさらに備え、前記ガス供給系が、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージに駆動ガス(motive gas)を供給するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の系。
【請求項13】
前記駆動ガスが、1.0重量%未満の酸素、またはより好ましくは0.1重量%未満の酸素を含有する、請求項12に記載の系。
【請求項14】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している分離サイクロンのセットをさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の系。
【請求項15】
プラスチックから炭化水素生成物を生成する方法であって、
プラスチック原料および駆動ガスを、触媒を収容する第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第1の生成物蒸気および第1の残留プラスチックを生成することと、
前記第1の生成物蒸気の少なくとも一部を前記駆動ガスおよび前記第1の残留プラスチックから分離して、前記第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することと、
前記第1の残留プラスチックを前記第1の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第2の生成物蒸気および第2の残留プラスチックを生成することと、
前記第2の生成物蒸気の少なくとも一部を前記駆動ガスおよび前記第2の残留プラスチックから分離して、前記第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記触媒の少なくとも一部を第1の円錐形噴流層反応器ステージから前記第2の円錐形噴流層反応器ステージに移送することをさらに含む、および/または前記触媒の少なくとも一部を第2の円錐形噴流層反応器ステージから再生器に移送することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記再生器から前記第1の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することをさらに含む、および/または前記再生器から前記第2の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することをさらに含む、請求項15~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージから前記第2の円錐形噴流層反応器ステージへの前記触媒の前記一部の前記移送が、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される、および/または前記第2の円錐形噴流層反応器ステージから前記再生器への前記触媒の前記一部の前記移送が、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、もしくは約450℃~約600℃、もしくは約480℃~約550℃の温度を有する、および/または前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、もしくは約450℃~約600℃、もしくは約480℃~約550℃の温度を有する、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージの温度が、高温触媒を前記再生器から前記第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される、および/または前記第2の円錐形噴流層反応器ステージの温度が、高温触媒を前記再生器から前記第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記プラスチック原料が、最初に約1mm~約20mmまたは約8mm~約10mmの公称サイズに細断された後に、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給される、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第2の円錐形噴流層反応器ステージが、両方とも単一の反応器容器内に収容されている、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の残留プラスチックを前記第2の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第3の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第3の生成物蒸気および残留物を生成することと、前記第3の生成物蒸気、駆動ガス、および残留物を分離して、前記第3の生成物蒸気を含む第3の生成物流を生成することと、をさらに含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の生成物流および前記第2の生成物流をサイクロン分離器内に導くことをさらに含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の生成物流および前記第2の生成物流が、サイクロン分離器のセット内に導かれる前に組み合わされる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の生成物流および前記第2の生成物流を分離容器に収集することをさらに含む、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記プラスチック原料が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の炭化水素生成物および前記第2の炭化水素生成物が、C
1~C
12飽和炭化水素、C
1~C
12不飽和炭化水素、もしくはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含み、前記第1の炭化水素生成物および前記第2の炭化水素生成物が同じであっても異なっていてもよい、ならびに/または前記第1の炭化水素生成物および前記第2の炭化水素生成物が、オレフィン、芳香族化合物、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の炭化水素生成物、前記第2の炭化水素生成物、前記第1のプラスチック残留物、または前記第2のプラスチック残留物のうちの1つ以上を、水蒸気分解装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、深度接触分解装置、高過酷度流動接触分解装置、水蒸気改質装置、液体分解ガスプラント、または芳香族回収ユニットにおいて処理および精製することをさらに含む、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージのサイズが、前記第2の円錐形噴流層反応器ステージのサイズと同じである、および/または前記方法が連続的に実施される、および/または前記プラスチック原料が廃棄プラスチックを含む、請求項15~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の生成物蒸気の前記少なくとも一部を前記駆動ガスおよび前記第1の残留プラスチックから分離して、前記第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することが、前記第1の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる、請求項15~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の生成物流が、形成されたら直ちに前記第1の円錐形噴流層反応器ステージから除去される、および/または前記第2の生成物流が、形成されたら直ちに前記第2の円錐形噴流層反応器ステージから除去される、請求項15~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の生成物蒸気の前記少なくとも一部を前記駆動ガスおよび前記第2の残留プラスチックから分離して、前記第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することが、前記第2の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる、請求項15~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の円錐形噴流層反応器ステージにおける平均気相滞留時間が、約0.2秒~約60秒、もしくは好ましくは約0.5秒~約5秒である、および/または前記第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける平均気相滞留時間が、約0.2秒~約60秒、もしくは好ましくは約0.5秒~約5秒である、請求項15~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記駆動ガスが、1.0重量%未満の酸素、もしくはより好ましくは、0.1重量%未満の酸素を含有する、ならびに/または前記第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび前記第1の円錐形噴流層反応器ステージが、高速熱分解レジームで動作する、請求項15~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月6日出願の米国特許仮出願第63/252,929号に対する優先権の利益を主張するものであり、ありとあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本技術は、一般に、プラスチックの低分子量炭化水素生成物への変換に関する。具体的には、本技術は、プラスチック原料を熱分解によってオレフィンおよび芳香族生成物に変換するための直列の円錐形噴流層反応器の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチック廃棄物は、材料が生分解性ではないことから深刻化している問題である。しかしながら、多くのプラスチック材料は、循環経済、すなわち、廃棄物の100%をリサイクルすることができるかまたは他の有用な材料のための原料を生成するために使用することができるパラダイムを作り出すための優れた候補である。
【0004】
廃棄プラスチックを液体燃料または化学原料に変換するための有望な経路として、流動床または噴流層反応器における廃棄プラスチックの熱分解が提案されており、これを使用して再生プラスチックを作製することができる。公開されている研究の大部分は、ミリメートルサイズのプラスチックが触媒の固定床に連続的に注入される固定流動床または固定噴流層に依存している。触媒熱分解については広く研究されてきたが、軽質オレフィンおよび芳香族化合物などの望ましい生成物の収率を最大にし、メタンおよびエタンなどの望ましくない生成物の収率を最小にする、より効率的な触媒熱分解法を開発することが依然として必要とされている。特に、プロピレンは、世界で最も大きくかつ最も急速に成長している合成材料および熱可塑性物質の多くで使用されているので、需要の高い特別な軽質オレフィンである。
【0005】
本開示は、プラスチック原料から高い選択性でプロピレンなどのオレフィンおよび芳香族生成物を生成することができる系およびプロセスを提供する。
【発明の概要】
【0006】
流動床反応器および噴流層反応器内でのプラスチックの熱分解は、オレフィンおよび芳香族化合物を生成するための有望な経路として提案されている。しかしながら、このような提案には重大な問題があり、それは、これまで十分には解決されていない。流動床または噴流層反応器におけるミリメートルサイズのプラスチック粒子の熱分解は、数百秒の時間スケールで起こる。流動床または噴流層反応器では、触媒流は高度に逆混合され、触媒滞留時間分布は不均一である。反応器と触媒再生器との間の触媒の循環が一定であり、任意の所与の時間における反応器内の触媒およびプラスチック滞留時間分布が不均一であるため、再生器に入る際に未変換プラスチックが同伴される。本発明は、直列の2つ以上の流動床または噴流層を有し、それによって、触媒およびプラスチックの滞留時間分布を大幅に狭め、反応器から再生器へと循環する触媒によって同伴される未変換プラスチックの割合を低下させることによって、この問題を解決する。
【0007】
第1の態様では、プラスチックをより低分子量の生成物に変換するための系であって、触媒再生器と、プラスチック原料を収容するフィーダーと、当該触媒再生器と流体連通し、かつ当該フィーダーと流体連通している第1の円錐形噴流層反応器ステージと、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第2の円錐形噴流層反応器ステージと、を備える、系、が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第3の円錐形噴流層反応器ステージが使用される。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1および第2の円錐形噴流層反応器ステージは、単一の反応器容器内に収容される。これらの実施形態のいくつかでは、第1および第2の円錐形噴流層反応器ステージは、バッフルによって少なくとも部分的に分離されている。これらの実施形態のいくつかでは、バッフルは、第1の反応器ステージの上部、底部、または1つ以上の側面における開口部を画定する。
【0009】
他の実施形態では、各円錐形噴流層反応器ステージは、別個の反応器容器内に収容される。これらの実施形態のいくつかでは、容器は異なる高さに配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、触媒および未反応プラスチック原料を含む反応器ステージ内の材料は、パイプまたは他の通路を介して第1の反応器ステージから第2の反応器ステージに進むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、パイプまたは通路は、触媒および未反応原料の流れが第1の反応器ステージから第2の反応器ステージに空気圧で駆動されるように通気される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージは、触媒再生器から触媒を受容するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、触媒再生器から第1の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れは、第1の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である。いくつかの実施形態では、第2の反応器ステージはまた、触媒再生器と流体連通しており、触媒再生器から触媒を受容するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、触媒再生器から第2の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れは、第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である。いくつかの実施形態では、第3の反応器ステージはまた、触媒再生器と流体連通しており、触媒再生器から触媒を受容するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、触媒再生器から第3の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れは、第3の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である。
【0012】
いくつかの実施形態では、反応器ステージは、ドラフトチューブを含み、各チューブは、関連する反応器ステージの底部から反応器ステージの上部に向かって延在し、当該ドラフトチューブは、反応器ステージの底部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブと、当該ドラフトチューブの底部から上向きに延びる少なくとも1つの開口部とを備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、反応器ステージは閉じ込め器(confiner)を含み、各閉じ込め器は、関連する反応器ステージの上部から反応器ステージの底部に向かって延在し、当該閉じ込め器は、反応器ステージの上部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブを備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージは、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度で動作する。いくつかの実施形態では、第2の円錐形噴流層反応器ステージは、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度で動作する。
【0015】
いくつかの実施形態では、系は、第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通しているガス供給系をさらに備え、当該ガス供給系は、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージに駆動ガスを供給するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、駆動ガスは、1.0重量%未満の酸素またはより好ましくは0.1重量%未満の酸素を含有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、系は、第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している分離サイクロンのセットを備える。
【0017】
第2の態様では、プラスチックから炭化水素生成物を生成する方法であって、プラスチック原料および駆動ガスを、触媒を収容する第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第1の生成物蒸気および第1の残留プラスチックを生成することと、当該第1の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第1の残留プラスチックから分離して、当該第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することと、当該第1の残留プラスチックを、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該駆動ガスから触媒を収容する第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第2の生成物蒸気および第2の残留プラスチックを生成することと、当該第2の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第2の残留プラスチックから分離して、当該第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することと、を含む、方法、が開示される。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、触媒の少なくとも一部を第1の円錐形噴流層反応器ステージから第2の円錐形噴流層反応器ステージに移送することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、触媒の少なくとも一部を第2の円錐形噴流層反応器ステージから再生器に移送することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、再生器から第1の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、再生器から第2の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することを含む。いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージから第2の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の一部の移送は、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される。いくつかの実施形態では、第2の円錐形噴流層反応器ステージから再生器への触媒の一部の移送は、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージは、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する。これらの実施形態のいくつかでは、第1の円錐形噴流層反応器ステージの温度は、高温触媒(hot catalyst)を再生器から第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される。いくつかの実施形態では、第2の円錐形噴流層反応器ステージは、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する。これらの実施形態のいくつかでは、第2の円錐形噴流層反応器ステージの温度は、高温触媒を再生器から第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される。
【0020】
いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、最初に約1mm~約20mmまたは好ましくは約8mm~約10mmの公称サイズに細断された後、第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給される。いくつかの実施形態では、方法は、第2の残留プラスチックを、第2の円錐形噴流層反応器ステージおよび駆動ガスから触媒を収容する第3の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第3の生成物蒸気および残留物を生成することと、当該第3の生成物蒸気、駆動ガス、および残留物を分離して、当該第3の生成物蒸気を含む第3の生成物流を生成することと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の生成物流および第2の生成物流をサイクロン分離器内に導くことを含む。これらの実施形態のいくつかでは、第1の生成物流および第2の生成物流は、サイクロン分離器内に導かれる前に組み合わされる。いくつかの実施形態では、方法は、第1の生成物流および第2の生成物流を分離容器に収集することを含む。いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1および第2の炭化水素生成物は、C1~C12飽和炭化水素、C1~C12不飽和炭化水素、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含み、当該第1および第2の炭化水素生成物は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素生成物は、オレフィン、芳香族化合物、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の炭化水素生成物、第2の炭化水素生成物、第1のプラスチック残留物、または第2のプラスチック残留物のうちの1つ以上を、水蒸気分解装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、深度接触分解装置、高過酷度流動接触分解装置、水蒸気改質装置、液体分解ガスプラント、または芳香族回収ユニットにおいて処理および精製することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージのサイズは、第2の円錐形噴流層反応器ステージのサイズと同じである。いくつかの実施形態では、方法は連続的に実施される。いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、廃棄プラスチックを含む。いくつかの実施形態では、第1の生成物蒸気の少なくとも一部を駆動ガスおよび第1の残留プラスチックから分離して、第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することは、第1の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の生成物流は、形成されたら直ちに第1の円錐形噴流層反応器ステージから除去される。いくつかの実施形態では、第2の生成物蒸気の少なくとも一部を駆動ガスおよび第2の残留プラスチックから分離して、第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することは、第2の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる。いくつかの実施形態では、第2の生成物流は、形成されたら直ちに第2の円錐形噴流層反応器ステージから除去される。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける平均気相滞留時間は、約0.2秒~約60秒または好ましくは約0.5秒~約5秒である。いくつかの実施形態では、第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび第1の円錐形噴流層反応器ステージは、高速熱分解レジームで動作する。いくつかの実施形態では、駆動ガスは、1.0重量%未満の酸素またはより好ましくは0.1重量%未満の酸素を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例による、時間の関数としての500℃および550℃でのHDPE、LDPE、およびPPの分画変換率のグラフである。
【
図2】実施例による、一連の十分に混合された反応器に出入りする連続流の滞留時間分布のグラフである。
【
図3】実施例による、550℃での一連の十分に混合された反応器における各滞留時間間隔からの未変換HDPEの合計のグラフである。
【
図4】実施例による、550℃での一連の十分に混合された反応器における各滞留時間間隔からの未変換PPの合計のグラフである。
【
図5】例示的な実施形態による、直列の2つの反応器容器の概略図である。
【
図6】種々の実施形態による、バッフルによって分離された3つの反応チャンバを収容する単一反応器容器の構成の概略図であり、左側の図では、全てのチャンバが同じ高さにあり、右側の図では、チャンバの高さは漸減している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
様々な実施形態が以下に記載される。特定の実施形態は、網羅的な記載として、または本明細書で論じられるより広い態様への限定として意図されていないことに留意されたい。特定の実施形態と併せて記載される一態様は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、任意の他の実施形態で実践することができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約(about)」は、当業者に理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化するであろう。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考慮すると、「約」は、特定の用語の最大プラスまたはマイナス10%を意味するであろう。
【0030】
要素を記載する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」および「the」、ならびに同様の指示対象は、本明細書において別途指示がない限り、または内容が明らかに矛盾していない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において特に指示がない限り、この範囲内にある各別個の値を個々に指す簡略な方法としての役目を果たすことを意図しているに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別途指示がない限り、または別様に内容が明らかに矛盾していない限り、任意の好適な順序で行われ得る。本明細書に提供されるあらゆる全ての例、または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、実施形態をよりよく説明することを意図しているに過ぎず、特に明記されていない限り、特許請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書における文言は、任意の請求されない要素を不可欠なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0031】
プラスチック原料を価値ある炭化水素生成物に変換するための系
プラスチック原料を、オレフィンおよび芳香族などのより価値のある炭化水素原料に高収率で変換するための系が、本明細書に開示される。系の目的は、噴流層反応器においてプラスチック廃棄物を熱分解するための連続プロセスを提供することである。本明細書に開示される系は、反応器と再生器との間で触媒を連続的に循環させてコークスを燃焼除去しながらプラスチックをより低分子量の生成物に連続的に変換するための、直列の2つ以上の噴流層を備える新規の反応器設計を特徴とする。円錐形噴流層反応器を使用すると、反応器から再生器に循環する未変換プラスチックが最小化され、プロセスの全体効率が増大することが見出された。また、直列の複数の反応器を使用すると、系内のプラスチック滞留時間の均一性が増大し、プラスチックの再生器へのバイパスが実質的に排除される。
【0032】
系は、触媒再生器と、プラスチック原料を収容するフィーダーと、互いに流体連通している少なくとも2つの円錐形噴流層反応器ステージとを備え、第1の反応器ステージはフィーダーとも流体連通している。円錐形噴流層反応器ステージは、底部と、円錐台形部分と、底部から延在する円筒形部分とを備える。プラスチック原料および触媒のための入口は、典型的には、反応器ステージの上部付近に設けられる。反応器ステージの底部には、駆動ガス用の入口が設けられる。
【0033】
本開示は、2つまたは3つの反応器ステージを有する系に焦点を当てているが、これは、本開示を単純かつ簡潔にするために行われており、系を2つまたは3つの反応器ステージのみに限定すると解釈されるべきではない。これらの実施形態うちのいくつかでは、第3の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第4の円錐形噴流層反応器ステージが使用される。いくつかの実施形態では、より多数の反応器ステージが使用される。例えば、5、6、7、8、9、または10個の反応器ステージを使用することができる。
【0034】
系の動作中、触媒床に触媒を収容している反応器ステージにプラスチック原料が供給される。いくつかの実施形態では、触媒も反応器ステージに供給される。いくつかの実施形態では、触媒は、プラスチック原料とは別に供給される。他の実施形態では、プラスチック原料および触媒は一緒に供給される。
【0035】
駆動ガスは、ガス供給系によって反応器ステージに供給される。流動ガスは、触媒床を通る円筒形の経路、つまり噴出口を形成する。噴出口を通って流れるガスによって同伴される触媒は、触媒床の表面の上側に推進され、沈降して噴水の形状に戻る。触媒は、環状領域を下方に移動して円錐形床の底部に戻り、このようにしてサイクルが完了する。触媒および反応物の迅速な循環により、反応器中での良好な混合が保証される。噴水は希薄相と呼ばれる低触媒密度の領域であり、環状部は濃密相と呼ばれる高触媒密度の領域である。ドラフトチューブが存在しない場合、ガスの一部は噴出口の周りを流れ、環状領域を通過する。未反応プラスチック原料(または生成物に完全には変換されていないプラスチック原料粒子)は、ある反応器ステージから後続のステージに進むことができる。2つを超えるステージが使用される場合、反応器ステージ内の未反応プラスチック原料は、最終ステージに到達するまで、各後続ステージに流入し得る。触媒はまた、あるステージから後続のステージへと流れてもよい。直列で反応器ステージが動作することは、原料の生成物への変換の増加、原料の反応器内での滞留時間の増加、および触媒再生器ユニットへの原料のキャリーオーバーの減少を含むがこれらに限定されない多くの利点を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、系の動作において、ある反応器ステージから次の反応器ステージへの未反応プラスチック原料および触媒の移送は、2つの反応器ステージを接続するパイプによって促進され得る。ステージ間の材料の移送は、各反応器ステージに供給される駆動ガスなどの系を通って流れるガスの流れによって部分的に駆動される。反応器間の流れは、あるステージから次のステージへの材料の移動が少なくとも部分的に重力によって駆動され得るように、後続の反応器ステージを先行する反応器ステージよりも低い高さに配置することによってさらに促進され得ることが企図される。ステージを接続するパイプは、材料の移送が空気圧で駆動されるように、例えば窒素などの不活性ガスで通気されてもよい。反応器ステージが異なる高さに配置された場合または反応器ステージが同じ高さにある場合、通気を使用してよい。オーガ(auger)または類似の物理的手段の使用など、反応器ステージ間の材料の移送を促進する他の手段も企図される。
【0037】
いくつかの実施形態では、各反応器ステージは同じ反応器容器内に収容される。他の実施形態では、複数のステージが単一の反応器容器内に収容される。例えば、3つの反応器ステージを含む系では、各反応器ステージは単一の容器内に収容され得る。あるいは、各反応器ステージが別々の容器に収容されてもよい。あるいは、1つの反応器ステージが他の2つのステージとは別の容器に収容されてもよい(例えば、第1の反応器ステージが、第2および第3のステージを収容する容器とは別の容器に収容される)。
【0038】
複数の反応器ステージが単一容器内に収容される実施形態では、バッフルを使用して反応器ステージを互いに分離することができる。バッフルは、反応器ステージ間に通路を提供するように配置されてもよい。例えば、ステージのうちの1つの上部、ステージのうちの1つの底部、またはステージのうちの1つの側面に通路が存在するように、バッフルを2つのステージの間に配置してよい。組み合わせも可能であり、反応器容器内の反応器ステージの位置が異なることに起因して、ある反応器ステージの上部が次の反応器ステージの上部に対応しない場合があることを理解されたい。
【0039】
前述したように、系内では触媒再生器が使用される。動作中に、プラスチック原料の熱分解を促進するために使用される触媒は、コークスの蓄積によって不活性化され得る。触媒は、反応器ステージと再生器との間で連続的に循環される。再生器内で、触媒は、高温および酸素または空気に曝露されて、蓄積したコークスが燃焼除去され、それによって触媒が再生される。いくつかの実施形態では、失活した触媒は空気に曝露される。次いで、高温触媒は反応器ステージに戻される。高温触媒は反応器ステージのいずれに供給することもできる。例えば、高温触媒を第1の反応器ステージもしくは第2の反応器ステージに、または各反応器ステージに供給することができる。
【0040】
触媒供給物は、プラスチック原料の熱分解に必要な熱を提供することによって反応器ステージ内の温度を維持するために使用することもできる。プラスチック原料の熱分解は吸熱反応であるので、追加の熱入力が必要になる。この熱は、高温触媒によって補うことができる。いくつかの実施形態では、反応器への触媒流量は、反応器ステージを所定の温度設定点に維持するために系内で調整可能である。例えば、反応器ステージ内の温度が低温設定点を下回った場合、再生器からその反応器ステージへの高温触媒の流量を増加させて、反応器ステージ内の温度を上昇させることができる。逆に、反応器ステージ内の温度が高温設定点を上回った場合、再生器からその反応器ステージへの高温触媒の流量を減少させて、反応器ステージ内の温度を低下させることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、反応器ステージは、駆動ガスの流れを導き、触媒とプラスチック原料との混合の増強を誘導するためにドラフトチューブを備える。いくつかの実施形態では、ドラフトチューブは、反応器ステージの底部から反応器ステージの上部に向かって延在する。いくつかの実施形態では、ドラフトチューブは、駆動ガスの入口と同心円状に配置されてよい。ドラフトチューブは、関連する円錐形噴流層反応器ステージの底部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブを含む。いくつかの実施形態では、ドラフトチューブ直径対駆動ガス入口直径の比は、約1:1~約2:1である。ドラフトチューブは、ドラフトチューブの底部から上方に延びる少なくとも1つの開口部を含んでいてもよく、この開口部を通って触媒材料が通過することができる。いくつかの実施形態では、ドラフトチューブは、側面開放ドラフトチューブである。他の実施形態では、ドラフトチューブは非多孔質である。ドラフトチューブを通って流れる駆動ガスは、チューブの底部に負圧の領域を作り出し、それにより、スロットを通って環状領域から触媒が引き込まれ、ドラフトチューブの上側に推進される。それによって、反応器ステージ内に収容される触媒が駆動ガスに同伴されるようになり、材料を混合することができる。ドラフトチューブは、従来の噴流層反応器と比較してより少ないガスが環状部を通って移動するように、噴出口を通してガスを導く。したがって、ドラフトチューブの存在下における最低噴出速度は、ドラフトチューブの非存在下よりもはるかに遅い。
【0042】
いくつかの実施形態では、反応器ステージは、反応器ステージの上部から底部に向かって延在する閉じ込め器を備える。いくつかの実施形態では、閉じ込め器は、反応器ステージの上部から底部に向かって延在する円筒形チューブである。閉じ込め器は、反応器の上部のプラスチック原料入口と同心円状に配置されてもよい。上部が閉鎖されている閉じ込め器は、噴出した触媒の方向を下向きに変化させる。閉じ込め器は、反応器ステージにおけるガスおよび蒸気相に利用可能な容積を減少させるように働き、それにより、反応器の上部から供給される原料が、閉じ込め器の容積内に噴出される触媒材料とより迅速に混合される。この結果、触媒とプラスチックとがより多く乱流混合され、熱伝達がより多くなり、プラスチック原料が溶融し、その溶融粒子が触媒粒子上に分配されるようになる。
【0043】
円錐形噴流層反応器を使用すると、伝統的に使用されているものよりもはるかに大きな直径のプラスチック原料を使用することが可能になる。当業者であれば、プラスチック原料が1mm以下の平均公称粒径を有するように加工されていると予想するであろう。プラスチック原料の処理は、プラスチックを溶融し、押し出された材料を所望のサイズに切断することを含み得る。本明細書に開示される本系では、約1mm~20mmの粒径を使用することができる。好ましくは、プラスチック原料は、約8mm~10mmの平均公称粒径を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、反応器ステージは熱分解レジームで動作する。いくつかの実施形態では、反応器ステージは、反応器ステージが熱分解温度で動作し、気相が1秒以下の滞留時間を有する「高速熱分解」レジームで動作する。いくつかの実施形態では、反応器ステージは、約300℃~約650℃、またはより好ましくは約450℃~約600℃、または最も好ましくは約480℃~約550℃の温度で動作する。反応器ステージは全て同じ温度で動作してもよく、または系の変換要求に応じてもしくは生成物の選択性を調整するために、各反応器ステージが異なる温度で動作してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、駆動ガスは不活性ガスである。いくつかの実施形態では、駆動ガスは、窒素、アルゴン、蒸気、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、駆動ガスは、1.0重量%未満の酸素、またはより好ましくは、0.1重量%未満の酸素である。いくつかの実施形態では、駆動ガスは実質的に酸素を含まない。
【0046】
生成物の分解を低減するために、系は、生成物が生成されると直ちに生成物を分離および収集するための手段を備えていてもよい。生成物蒸気は、各反応器から分離され、収集され得る。これにより、生成物蒸気が各後続の反応器ステージを通って移動することが防止される。いくつかの実施形態では、系はまた、炭化水素生成物が生成された際に炭化水素生成物を処理するための他の機器を備える。いくつかの実施形態では、系は、反応器ステージのうちの少なくとも1つと流体連通しているサイクロン分離器のセットを備える。これらの実施形態のうちのいくつかでは、サイクロン分離器のセットは、サイクロン分離器の単一のセットが系に貢献し得るように各反応器ステージに接続される。他の実施形態では、各反応器ステージは、サイクロン分離器の別のセットを有する。他の実施形態では、系は、水蒸気分解装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、深度接触分解装置、高過酷度流動接触分解装置、水蒸気改質装置、液体分解ガスプラント、または芳香族回収ユニットのうちの少なくとも1つを備える。
【0047】
プラスチック原料を価値ある炭化水素生成物に変換するためのプロセス
第2の態様である、プラスチックから価値ある炭化水素生成物を生成する方法も、本明細書に開示される。方法は、プラスチック原料および駆動ガスを、触媒を収容する第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第1の生成物蒸気および第1の残留プラスチックを生成するステップと、当該第1の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第1の残留プラスチックから分離して、当該第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成するステップと、当該第1の残留プラスチックを当該第1の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第2の生成物蒸気および第2の残留プラスチックを生成するステップと、当該第2の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第2の残留プラスチックから分離して、当該第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成するステップと、を含む。いくつかの実施形態では、方法はまた、第2の残留プラスチックを、第2の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第3の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第3の生成物蒸気および第3の残留プラスチックを生成することと、当該第3の生成物蒸気、駆動ガス、および第3の残留プラスチックを分離して、当該第3の生成物蒸気を含む第3の生成物流を生成することと、を含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、方法はまた、第3の残留プラスチックを第3の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を含有する第4の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第4の生成物蒸気および残留物を生成することと、当該第4の生成物蒸気、駆動ガス、および残留物を分離して、当該第4の生成物蒸気を含む第4の生成物流を生成することと、を含む。プラスチック原料の所望の全体変換を達成するために、必要に応じて、追加の反応器ステージを使用してもよい。
【0048】
方法で使用される反応器ステージは、単一の反応器容器内に収容されてもよく、または複数の反応器容器に分配されてもよい。例えば、3つの反応器ステージを使用する実施形態では、3つのステージ全てが単一の反応器容器に収容される。3つの反応器ステージを使用する別の実施形態では、各反応器ステージが別の容器に収容される。3つの反応器ステージを使用する別の実施形態では、第1および第2の反応器ステージは反応器容器内に収容され、第3のステージは別の反応器容器内に収容される。3つの反応器ステージを使用する別の実施形態では、第1のステージはある反応器容器内に収容され、第2および第3のステージは別の反応器容器内に収容される。
【0049】
この方法は、いくつかの異なるプラスチック原料に適用可能である。原料は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、プラスチック廃棄物に由来する。いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、主にプラスチック廃棄物である。
【0050】
プラスチック原料は、一般に、約1mm~約20mmまたはより好ましくは約8mm~約10mmの平均公称粒径を達成するように前処理される。いくつかの実施形態では、プラスチック原料は、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、または20mmの平均公称粒子を有する。
【0051】
この方法で使用される反応器ステージは、熱分解条件または高速熱分解条件で動作することができる。熱分解条件を達成するために、反応器ステージの温度を約300℃超に上昇させ、系に利用可能な酸素の量を制限する。いくつかの実施形態では、反応器ステージは、約300℃~約650℃の温度で動作する。いくつかの実施形態では、反応器ステージは、約450℃~約600℃の温度で動作する。いくつかの実施形態では、反応器ステージは、約480℃~約550℃の温度で動作する。
【0052】
この方法における反応器は、各反応器ステージが約0.2秒~約60秒または好ましくは約0.5秒~約5秒の平均気相滞留時間を有するように動作する。
【0053】
各反応器ステージは、プラスチック原料の熱分解を促進するための触媒を収容する。各ステージにおける触媒の質量対プラスチックの質量の比は、ステージによって変化する。いくつかのステージでは、触媒の質量対燃料の質量の比は、約5:1~約15:1またはより好ましくは約8:1~約10:1の範囲である。他のステージでは、触媒の質量対燃料の質量の比は、約15:1~約40:1またはより好ましくは約25:1~約35:1の範囲である。方法は、ある反応器から別の反応器ステージに触媒を移送し、それによって触媒が反応器ステージを通って流れて、最終的に再生器に移動することを可能にすることを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、触媒の少なくとも一部を第1の円錐形噴流層反応器ステージから第2の円錐形噴流層反応器ステージに移送するステップを含む。他の実施形態では、方法は、触媒の少なくとも一部を第2の円錐形噴流層反応器ステージから第3の円錐形噴流層反応器ステージに移送するステップを含む。または、一般的に述べると、いくつかの実施形態では、方法は、触媒の少なくとも一部を所与の円錐形噴流層反応器ステージから後続の円錐形噴流層反応器ステージに移送するステップを含む。あるステージから次のステージへの触媒の移送は、駆動ガスの流れ、空気もしくは通気ガスの流れ、重力、またはこれらの組み合わせによって駆動され得る。
【0054】
プラスチック原料を処理するために触媒が使用されるにつれて、触媒は、触媒の表面上にコークスが蓄積することに起因して失活する場合がある。触媒の再生は、再生器内でコークスを燃焼除去することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、方法は、触媒を再生するステップを含む。いくつかの実施形態では、触媒は、再生器内で触媒を高温および酸素源に曝露することによって再生される。いくつかの実施形態では、酸素源は空気である。触媒の再生は、酸化および発熱反応である。
【0055】
プラスチック熱分解プロセスは吸熱性であるので、十分に高い温度を維持するためには反応器ステージに熱を印加しなければならない。触媒は非常に高い温度で再生器を出る。反応器ステージに戻される再生触媒の速度を調整することによって、反応器ステージ内の温度を制御することができる。いくつかの実施形態では、再生触媒は、第1の反応器ステージにのみ供給される。他の実施形態では、再生触媒は、各反応器ステージに供給される。いくつかの実施形態では、再生された供給速度は、所定の目標温度に基づいて調整可能である。例えば、特定のステージ内部の温度が上限温度を上回った場合、そのステージへの高温触媒の供給速度を低下させてよい。そして、特定の反応器ステージにおける温度が下限温度を下回った場合、その反応器ステージへの高温触媒の供給速度を上昇させてよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1および第2の炭化水素生成物は、C1~C12飽和炭化水素、C1~C12不飽和炭化水素、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む。ある反応器ステージに由来する生成物は、別の反応器ステージに由来する生成物と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素生成物は、オレフィン、芳香族化合物、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む。
【0057】
方法からの生成物流は、さらなる処理および精製のために収集される。生成物蒸気は、反応器ステージ内で形成されたら直ちに除去されることが好ましい。いくつかの実施形態では、反応器ステージ内の他の材料からの生成物流の分離は、その反応器ステージ自体の内部で始まる。これは、非限定的な例として、反応器ステージ内で閉じ込め器を使用することによって達成することができる。2つの反応器ステージを使用するいくつかの実施形態では、第1および第2の生成物流が別個の容器に収集される。2つの反応器ステージを使用するいくつかの実施形態では、第1および第2の生成物流は組み合わされ、単一セットのサイクロン分離器に運ばれる。いくつかの実施形態では、プラスチック熱分解プロセスは、精製所と統合され、精製所は、回収された生成物流を受け取り、既存のFCCガスプラントにおいてそれを精製するか、または水素化処理もしくは接触分解を介してそれをさらに処理して輸送燃料もしくは石油化学製品を生成することができる。水素化処理は、固定床または沸騰床水素処理または水素化分解を含み得る。接触分解は、流動接触分解(fluid catalytic cracking、FCC)、深度接触分解(DeepCatalytic Cracking、DCC)、および高過酷度流動接触分解(High SeverityFluid Catalytic Cracking、HSFCC)を含み得る。
【0058】
本発明の別の実施形態では、プラスチック熱分解プロセスは、石油化学プラントと統合され、石油化学プラントは、回収された生成物を受け取り、それをガスまたは液体蒸気分解プロセスによってさらに変換して、エチレン、プロピレン、ブテン、およびブタジエンなどの石油化学製品の生成を増加させることができる。
【0059】
したがって、一般的に記載された本発明は、例示として提供され、本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照してより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0060】
実施例1.500℃および550℃におけるHDPE、LDPE、およびPPの変換率を
図1に示す。500℃では、600秒後であっても反応は100%の変換率に達しない。550℃では、HDPEおよびLDPEについては120秒で、PPについては180秒で、反応は99%超の変換率に達する。計算に使用した反応速度は実験的に決定した。
【0061】
実施例2.直列の1、2、3、および4個の反応器について計算された滞留時間分布を
図2に示す。4つの場合全てにおいて、平均滞留時間は360秒である。反応器が1つだけの場合、熱分解反応が完了する前に、180秒未満でプラスチックのかなりの部分が反応器から出る。入った直後に反応器から出る物質さえある。この問題は、2つ以上の反応器を直列で使用することによって解消される。直列の反応器の数が増加するにつれて、滞留時間分布は狭くなり、反応器を出る未変換プラスチックの割合が低下する。
図1の反応速度論を
図2の滞留時間分布と組み合わせて、各滞留時間増分における未変換プラスチックの割合を求めることができる。未変換プラスチックの全割合は、全滞留時間分布にわたって積分することによって求めることができる。550℃の反応温度でのHDPEおよびPPについての結果を
図3および
図4に示す。単一の反応器では、未変換のPEおよびPPは、全プラスチックのそれぞれ6.0%および9.8%に相当する。触媒に同伴された未変換プラスチックが再生器に循環した場合、コークス収率が増大し、価値ある生成物の収率が低下する。余分なコークスはまた、再生器温度を上昇させ、熱平衡ユニットの触媒循環速度の低下を引き起こし、これが変換率をさらに低下させる可能性がある。さらに、十分な触媒冷却能力を有さないユニットについては、再生器温度が容器の冶金学的限界に達する可能性があるので、供給物スループットを減少せることが必要になる。
【0062】
直列の2つの反応器では、未変換のPEおよびPPは、それぞれ1.3%および3.2%に急速に減少する。未変換のPEおよびPPは、直列の3つの反応器の場合はそれぞれ0.42%および1.5%にさらに減少し、直列の4つの反応器の場合はそれぞれ0.17%および0.86%にさらに減少する。この実施例は、プラスチック熱分解のために2つ以上の反応器を直列で使用することの利点を明確に示す。
【0063】
実施例3.直列の反応器は、別々の反応器容器または複数のチャンバもしくは区画を有する単一の容器を有することによって達成することができる。2つの噴流層反応器容器の概略図を
図5に示す。プラスチックは、再生器からの高温触媒と共に反応器1に供給される。反応生成物は反応器1から取り出される。使用済み触媒および未反応プラスチックが反応器1から反応器2に流れる。反応温度を制御するために、再生器からの追加の高温触媒を反応器2に添加してもよい。流動化または噴出のためのガスは、各容器に別々に供給される。反応器中の未反応プラスチックの割合は、
図3および
図4に示すように、非常に低い。反応器2からの使用済み触媒は、空気圧によって再生器に運ばれる。反応器2からの反応生成物は、反応器1からの生成物と組み合わされ、生成物の回収および精製に送られる。
【0064】
実施例4.3つの相互接続された噴流層反応チャンバを収容する単一容器の2つの配置を
図6に示す。構成を容易にするために、チャンバは、真っ直ぐな側面を有する逆ピラミッド形状であってよい。第1の配置では、チャンバは同じ高さに配置され、触媒のレベルを制御するために最後のチャンバに堰板が設置される。触媒は、あるチャンバから次のチャンバへと堰板を越えて流れる。この配置では、触媒床のレベル、ひいては触媒の量は、最初のチャンバから最後のチャンバに向かって減少する。第2の配置では、チャンバは、各チャンバが先行するチャンバよりも低い高さになるようにずらして配置されているので、触媒が重力によって流れることが可能になる。この配置では、触媒の量は、各チャンバにおいて同じであり得る。
【0065】
両方の配置について、流動化または噴出のためのガスは、各チャンバに別々に供給される。プラスチックが第1チャンバに供給される。触媒および未変換プラスチックは、開口部を通ってあるチャンバから次のチャンバに流れ、開口部は、触媒床のレベル、触媒床のレベルよりも下方、または触媒床の側面にあってよい。チャンバは、触媒床の表面の下方、上方、または下方および上方の両方のいずれかに存在するバッフルによって分離されてもよい。温度プロファイルを制御するために、高温の再生触媒は、全て第1のチャンバに導かれてもよく、または全てのチャンバに分配されてもよい。生成物蒸気は、各チャンバから収集され、下流で組み合わされ、生成物の回収および精製に送られる。
【0066】
段落1.プラスチックを低分子量生成物に変換する系であって、
触媒再生器と、
プラスチック原料を収容するフィーダーと、
当該触媒再生器と流体連通し、かつ当該フィーダーと流体連通している第1の円錐形噴流層反応器ステージと、
当該第1の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第2の円錐形噴流層反応器ステージと、
を備える、系。
【0067】
段落2.
当該第1の円錐形噴流層反応器ステージを収容する第1の反応器容器と、
当該第2の円錐形噴流層反応器ステージを収容する第2の反応器容器と、
をさらに備え、
当該第1の反応器容器および当該第2の反応器容器が、触媒および未反応プラスチック原料の流れを当該第1の反応器容器から当該第2の反応器容器に送るように構成された少なくとも1本のパイプと流体接続している、段落1に記載の系。
【0068】
段落3.当該第2の反応器容器が、当該第1の反応器容器よりも低い高さにある、段落2に記載の系。
【0069】
段落4.当該パイプが、当該第1の反応器容器から当該第2の反応器容器への触媒および未反応プラスチック原料の流れが空気圧で駆動されるように通気される、段落2に記載の系。
【0070】
段落5.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、単一の反応器容器内に収容され、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、バッフルによって少なくとも部分的に分離されている、段落1~4のいずれか1つに記載の系。
【0071】
段落6.当該バッフルが、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部、底部、または少なくとも1つの側面において、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージと当該第2の円錐形噴流層反応器ステージとの間の少なくとも1つの開口部を画定している、段落5に記載の系。
【0072】
段落7.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、異なる相対高さにある、段落5に記載の系。
【0073】
段落8.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージが、当該触媒再生器から触媒を受容するように構成されている、段落1~7のいずれか1つに記載の系。
【0074】
段落9.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、当該触媒再生器と流体連通しており、当該触媒再生器から触媒を受容するように構成される、段落1~8のいずれか1つに記載の系。
【0075】
段落10.当該触媒再生器から当該第1の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れが、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である、段落8に記載の系。
【0076】
段落11.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージが、熱分解レジームで動作する、段落1~10のいずれか1つに記載の系。
【0077】
段落12.当該触媒再生器から当該第2の円錐形噴流層反応器ステージへの触媒の流れが、当該第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける温度が所定の温度設定点を下回ることに応答して調整可能である、段落9に記載の系。
【0078】
段落13.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部から当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部に向かって延在するドラフトチューブをさらに備え、当該ドラフトチューブが、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブと、当該ドラフトチューブの底部から上向きに延びる少なくとも1つの開口部とを備える、段落1~12のいずれか1つに記載の系。
【0079】
段落14.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部から当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの底部に向かって延在する閉じ込め器をさらに備え、当該閉じ込め器が、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの上部の内径よりも小さな外径を有する円筒形チューブを備える、段落1~13のいずれか1つに記載の系。
【0080】
段落15.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している第3の円錐形噴流層反応器ステージをさらに備える、段落1~14のいずれか1つに記載の系。
【0081】
段落16.動作中に、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する、段落1~15のいずれか1つに記載の系。
【0082】
段落17.動作中に、当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する、段落1~16のいずれか1つに記載の系。
【0083】
段落18.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通しているガス供給系をさらに備え、当該ガス供給系が、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージに駆動ガスを供給するように構成されている、段落1~17のいずれか1つに記載の系。
【0084】
段落19.当該駆動ガスが、1.0重量%未満の酸素、またはより好ましくは、0.1重量%未満の酸素を含有している、段落18に記載の系。
【0085】
段落20.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージと流体連通している分離サイクロンのセットをさらに備える、段落1~19のいずれか1つに記載の系。
【0086】
段落21.プラスチックから炭化水素生成物を生成する方法であって、
プラスチック原料および駆動ガスを、触媒を収容する第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第1の生成物蒸気および第1の残留プラスチックを生成することと、
当該第1の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第1の残留プラスチックから分離して、当該第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することと、
当該第1の残留プラスチックを当該第1の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第2の生成物蒸気および第2の残留プラスチックを生成することと、
当該第2の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第2の残留プラスチックから分離して、当該第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することと、
を含む、方法。
【0087】
段落22.当該触媒の少なくとも一部を当該第1の円錐形噴流層反応器ステージから当該第2の円錐形噴流層反応器ステージに移送することをさらに含む、段落21に記載の方法。
【0088】
段落23.当該触媒の少なくとも一部を当該第2の円錐形噴流層反応器ステージから再生器に移送することをさらに含む、段落21~22のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
段落24.当該再生器から当該第1の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することをさらに含む、段落21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
段落25.当該再生器から当該第2の円錐形噴流層反応器ステージに触媒を供給することをさらに含む、段落23に記載の方法。
【0091】
段落26.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージから第2の円錐形噴流層反応器ステージへの当該触媒の一部の移送が、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される、段落22~25のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
段落27.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージから当該再生器への当該触媒の一部の移送が、少なくとも部分的に、駆動ガスの流れによって駆動される、段落23~26のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
段落28.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する、段落21~27のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
段落29.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージの温度が、高温触媒を当該再生器から当該第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される、段落28に記載の方法。
【0095】
段落30.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、約300℃~約650℃、または約450℃~約600℃、または約480℃~約550℃の温度を有する、段落21~29のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
段落31.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージの温度が、高温触媒を当該再生器から当該第2の円錐形噴流層反応器ステージに供給することによって部分的に制御される、段落29に記載の方法。
【0097】
段落32.当該プラスチック原料が、最初に約1mm~約20mmまたは約8mm~約10mmの公称サイズに細断された後に、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージに供給される、段落21~31のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
段落33.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第2の円錐形噴流層反応器ステージが、両方とも単一の反応器容器内に収容される、段落21~31のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
段落34.当該第2の残留プラスチックを当該第2の円錐形噴流層反応器ステージから触媒を収容する第3の円錐形噴流層反応器ステージに供給して、第3の生成物蒸気および残留物を生成することと、当該第3の生成物蒸気、駆動ガス、および残留物を分離して、当該第3の生成物蒸気を含む第3の生成物流を生成することと、をさらに含む、段落21~31のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
段落35.当該第1の生成物流および当該第2の生成物流をサイクロン分離器内に導くことをさらに含む、段落21~34のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
段落36.当該第1の生成物流および第2の生成物流が、サイクロン分離器のセットに導かれる前に組み合わされる、段落35に記載の方法。
【0102】
段落37.当該第1の生成物流および当該第2の生成物流を分離容器に収集することをさらに含む、段落21~36のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
段落38.当該プラスチック原料が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、段落21~37のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
段落39.当該第1の炭化水素生成物および当該第2の炭化水素生成物が、C1~C12飽和炭化水素、C1~C12不飽和炭化水素、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含み、当該第1の炭化水素生成物および当該第2の炭化水素生成物が同じであっても異なっていてもよい、段落21~38のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
段落40.当該炭化水素生成物が、オレフィン、芳香族化合物、またはそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、段落21~39のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
段落41.当該第1の炭化水素生成物、当該第2の炭化水素生成物、当該第1のプラスチック残留物、または当該第2のプラスチック残留物のうちの1つ以上を、水蒸気分解装置、水素化分解装置、流動接触分解装置、深度接触分解装置、高過酷度流動接触分解装置、水蒸気改質装置、液体分解ガスプラント、または芳香族回収ユニットにおいて処理および精製することをさらに含む、段落21~40のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
段落42.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージのサイズが、当該第2の円錐形噴流層反応器ステージのサイズと同じである、段落21~41のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
段落43.連続的に実施される、段落21~42のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
段落44.当該プラスチック原料が廃棄プラスチックを含む、段落21~43のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
段落45.当該第1の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第1の残留プラスチックから分離して、当該第1の生成物蒸気を含む第1の生成物流を生成することが、当該第1の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる、段落21~44のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
段落46.当該第1の生成物流が、形成されたら直ちに当該第1の円錐形噴流層反応器ステージから除去される、段落21~45のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
段落47.当該第2の生成物蒸気の少なくとも一部を当該駆動ガスおよび当該第2の残留プラスチックから分離して、当該第2の生成物蒸気を含む第2の生成物流を生成することが、当該第2の円錐形噴流層反応器ステージ内で行われる、段落21~46のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
段落48.当該第2の生成物流が、形成されたら直ちに当該第2の円錐形噴流層反応器ステージから除去される、段落21~47のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
段落49.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージにおける平均気相滞留時間が、約0.2秒~約60秒、または好ましくは約0.5秒~約5秒である、段落21~48のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
段落50.当該第2の円錐形噴流層反応器ステージにおける平均気相滞留時間が、約0.2秒~約60秒、または好ましくは約0.5秒~約5秒である、段落21~49のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
段落51.当該駆動ガスが、1.0重量%未満の酸素、またはより好ましくは、0.1重量%未満の酸素を含有する、段落21~50のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
段落52.当該第1の円錐形噴流層反応器ステージおよび当該第1の円錐形噴流層反応器ステージが、高速熱分解レジームで動作する、段落21~51のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
ある特定の実施形態を例示および記載してきたが、以下の特許請求の範囲において定義されるようなそのより広い態様における技術から逸脱することなく、当業者によって、その中で変更および修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【0119】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素(複数可)、限定(複数可)の非存在下で好適に実践され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定せずに読み取られるべきである。加えて、本明細書で用いられる用語および表現は、限定的なものではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され、記載される特徴またはそれらの一部分のいずれの均等物も除外することを意図していないが、様々な修正が特許請求される技術の範囲内で可能であることが認識される。加えて、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に列挙されたこれらの要素、ならびに特許請求される技術の基本的な特徴および新規の特徴に物質的に影響しないこれらの追加の要素を含むことが理解されよう。「からなる(consisting of)」という語句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
【0120】
本開示は、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形が行われ得る。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等な方法および組成物は、前述の記載から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲の範疇内に収まることが意図される。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるものである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的系に限定されず、これらは当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定するものとしては意図されていないことも理解されたい。
【0121】
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0122】
当業者によって理解されるように、あらゆるおよび全ての目的で、特に書面による説明を提供するという観点で、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆるおよび全ての可能性のある部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。いずれの列記された範囲も、同じ範囲が、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに細分されることを十分に記載し、それを可能にすることが簡単に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1などに容易に細分され得る。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「~超の(~を超える)」、「未満」などの全ての文言は、列挙される数を含み、かつその後、上で考察した部分範囲に細分され得る範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。
【0123】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、発行済み特許、および他の文献は、各個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、または他の文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる記載内容に含まれる定義は、それらが本開示における定義に矛盾する限りにおいて除外される。
【0124】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される。
【国際調査報告】