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特表2024-537214FSHRを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャと、がん治療における利用法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】FSHRを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャと、がん治療における利用法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241003BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 38/095 20190101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/705
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/51
A61K38/095
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521043
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022077665
(87)【国際公開番号】W WO2023060169
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,727
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/377,473
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516142001
【氏名又は名称】ザ ウィスター インスティテュート オブ アナトミー アンド バイオロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ウェイナー
(72)【発明者】
【氏名】アルフレド ペラレス-プチャルト
(72)【発明者】
【氏名】デビバシャ ボルドロイ
(72)【発明者】
【氏名】プラティック ボージナガルワラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076FF70
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA38
4C084MA41
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、二重特異性抗FSHR T細胞エンゲージャをコードする組み換え核酸配列のほか、FSHR特異的CAR分子、その断片、そのバリアント、その組み合わせを含む組成物と、それを利用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む、合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)。
【請求項2】
前記免疫細胞誘引ドメインが、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージからなるグループから選択される細胞を標的とする、請求項1に記載のBICE。
【請求項3】
前記免疫細胞誘引ドメインが、CD3、T細胞受容体(TCR)、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95からなるグループから選択される少なくとも1つのT細胞特異的受容体分子を標的とする、請求項1に記載のBICE。
【請求項4】
前記免疫細胞誘引ドメインがCD3を標的とする、請求項3に記載のBICE。
【請求項5】
a)アミノ酸配列の全長にわたって配列番号2と少なくとも約90%一致するアミノ酸配列;
b)配列番号2の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列の断片;
c)配列番号2のアミノ酸配列;および
d)配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片
からなるグループから選択される1つ以上の配列を含む、請求項1に記載のBICE。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のBICEをコードする核酸分子。
【請求項7】
RNA分子とDNA分子からなるグループから選択される、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
a)核酸配列の全長にわたって配列番号1と少なくとも約90%一致するヌクレオチド配列;
b)核酸配列の少なくとも65%にわたって配列番号1と少なくとも約90%一致するヌクレオチド配列の断片;
c)配列番号1のヌクレオチド配列;および
d)配列番号1のヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片
からなるグループから選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項6または7に記載の核酸分子。
【請求項9】
発現ベクターを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のBICEまたは請求項6~9のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項11】
医薬として許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤をコードする少なくとも1つの核酸分子をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1の阻害剤、PD-L-1の阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の阻害剤、ムチンドメイン含有-3(TIM-3)の阻害剤、およびリンパ球活性化3(LAG3)の阻害剤からなるグループから選択される、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項に記載のBICEまたは請求項6~9のいずれか1項に記載の核酸分子を含む脂質ナノ粒子を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
対象におけるFSHR発現と関係する疾患または障害を予防または治療する方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のBICE、請求項6~9のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項10~15のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記疾患が、良性腫瘍、がん、およびがん関連疾患からなるグループから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、および甲状腺がんからなるグループから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a)配列番号3のアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列;
b)配列番号3の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列の断片;
c)配列番号3のアミノ酸配列;および
d)配列番号3のアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片
からなるグループから選択される配列を含むFSHR scFv分子。
【請求項20】
請求項19に記載のFSHR scFv分子を含む組成物。
【請求項21】
医薬として許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1の阻害剤、PD-L-1の阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の阻害剤、ムチンドメイン含有-3(TIM-3)の阻害剤、およびリンパ球活性化3(LAG3)の阻害剤からなるグループから選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項19に記載のscFvを含む脂質ナノ粒子を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
請求項19に記載のscFvを含むCAR分子を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記CAR分子が、配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなるグループから選択される配列を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項19に記載のscFvまたは請求項25~26のいずれか1項に記載のCAR分子を発現している細胞含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項28】
FSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子。
【請求項29】
配列番号3に示されているヌクレオチド配列を含むFSHR特異的scFvを含む、請求項28に記載のCAR分子。
【請求項30】
配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなるグループから選択される配列を含む、請求項28に記載のCAR分子。
【請求項31】
請求項28~30のいずれか1項に記載のFSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子を含む組成物。
【請求項32】
前記FSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子を発現している細胞を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記細胞が操作されたT細胞である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
対象におけるFSHR発現に関係する疾患または障害を予防または治療する方法であって、請求項19に記載のscFv抗体断片、請求項20~27のいずれか1項に記載の組成物、請求項28~30のいずれか1項に記載のCAR分子、または請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記疾患が、良性腫瘍、がん、およびがん関連疾患からなるグループから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、および甲状腺がんからなるグループから選択される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は2021年10月6日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第63/252,727号と2022年9月28日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第63/377,473号の優先権を主張するものであり、そのそれぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦が資金援助した研究または開発に関する宣言
本発明は政府の支援をアメリカ国防総省陸軍から資金援助第W81XWH-19-1-0189号のもとで得てなされたものであり、政府は本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
卵巣がん(OC)は最も致命的な婦人科悪性腫瘍を代表する。これは女性におけるがん死の5番目の主因であり、女性生殖器系のがんに関する死の最大数を占める。アメリカがん協会によれば、2021年には21,410人の女性が新たに卵巣がんと診断され、OCに起因して13,770人が死亡したと推定されている(Kunit et al., 2021, Obstet Gynecol. 2021;137(1):108-21;Key Statistics for Ovarian Cancer。2021年11月22日にアクセス。cancer.org)。OCは高度に不均一ながんであり、腫瘍の90%が上皮起源である。上皮卵巣がん(EOC)の最も一般的なサブタイプは高異型度の漿液性がんであり、ほぼ70~80%のケースを構成するのに対し、低グレード漿液性(<5%)、類内膜(10%)、明細胞(10%)、および粘液産生性(3%)は、より少ないサブタイプである(Barnes et al., 2021, Genome Med, 13(1):140)。
【0004】
外科手術と化学療法がOCに関する第1の治療法である(Yang et al., 2020, Front Immunol. 11:577869)。これらのアプローチは多くの患者で部分的に成功しているが、最初の治療から数年以内に化学療法抵抗性を発達させ、次いで疾患再発に直面する(Yang et al., 2020, Front Immunol. 11:577869)。OCの大きな死亡率は、主観的症状がないことのほか、原発検出のための低侵襲技術がないことが原因で早期検出率が低いこととも結びついている。したがってOCは、新規な治療アプローチが切実に必要とされる分野であり続けている(Banno et al., 2014, Biomed Res Int, 2014:232817)。卵巣腫瘍細胞と腫瘍微小環境の間には密な相互作用が存在するため、腫瘍細胞を標的とするだけでなく、この微小環境において抗腫瘍機能を維持できる治療アプローチの開発が特に重要である(CSSOCR。Ovarian Cancers: Evolving Paradigms in Research and Care. Washington (DC): National Academies Press (US); 2016)。研究が進んでいる1つの領域は、OCのための免疫に基づく療法である。このような研究に含まれるのは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、キメラ抗原受容体(CAR)(とT細胞受容体(TCR))が操作されたT細胞である (Yang et al., 2020, Front Immunol. 11:577869)。特に、CAR療法の発展における1つの主要な障害は、腫瘍細胞の表面だけで特異的に発現するが健康な組織の表面では発現しない標的を見いだすことである(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)。卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)は、卵巣顆粒膜細胞で選択的に発現しているのに対し、正常な卵巣内皮では低レベルの発現であることが報告されており、1つの重要な標的である。FSHRは漿液性卵巣癌のケースの50~70%で発現しており、免疫療法の1つの重要な潜在的標的を提供する(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)。
【0005】
モノクローナル抗体療法はがん治療におけるゲーム-チェンジャーであり続けてきたが、この療法はいくつかの制約(反復投与の必要性、より限定された安定性、およびコストが含まれる)を有する。モノクローナル技術に関する1つのさらなる進展は、モノクローナル抗体の特異性にT細胞の細胞傷害能力を組み合わせる二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)の開発である。BiTEは白血病臨床試験において有望な結果を示した(Viardot et al., 2016, Blood, 127(11):1410-6;Goebeler et al., 2016, J Clin Oncol, 34(10):1104-11)が、この療法は適用可能性が限定されている。なぜならサイクルごとに4~8週間にわたる連続的な静脈内輸液を必要とすること(Zhu et al., 2016, Clin Pharmacokinet, 55(10):1271-88)と、製造が限られる可能性があるからである。抗体に基づく製品のためのより長寿命でより簡単な製造法は、がん免疫療法のための重要な新ツールとなる可能性が大きい。
【0006】
そのため本分野では、がん免疫療法のための、より長寿命であり、製造がより簡単で、抗体に基づく製品が必要とされている。本発明はこの要求を満たす。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む、合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)に関する。
【0008】
一実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、またはマクロファージを標的とする。
【0009】
一実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、CD3、T細胞受容体(TCR)、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95からなるグループから選択される少なくとも1つのT細胞特異的受容体分子を標的とする。一実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、CD3を標的とする
【0010】
一実施形態では、BICEは、アミノ酸配列の全長にわたって配列番号2と少なくとも約90%一致するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、BICEは、配列番号2の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態では、BICEは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、BICEは、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片を含む。
【0011】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)をコードする核酸分子に関する。一実施形態では、核酸分子RNA分子またはDNA分子。一実施形態では、核酸分子は、核酸配列の全長にわたって配列番号1と少なくとも約90%一致するヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、核酸配列の少なくとも65%にわたって配列番号1と少なくとも約90%一致するヌクレオチド配列の断片を含む。一実施形態では、核酸分子は配列番号1のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片を含む。一実施形態では、核酸分子は発現ベクターを含む。
【0012】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)、またはそれをコードする核酸分子を含む組成物に関する。
【0013】
一実施形態では、組成物は、医薬として許容可能な賦形剤をさらに含む。一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、またはそれをコードする核酸分子をさらに含む。
【0014】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤、PD-L-1の阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の阻害剤、ムチンドメイン含有-3(TIM-3)の阻害剤、またはリンパ球活性化3(LAG3)の阻害剤である。
【0015】
一実施形態では、組成物は、合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)を含む脂質ナノ粒子を含み、その合成二重特異性免疫細胞エンゲージャは、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと、少なくとも1つの細胞誘引ドメインまたはそれをコードする核酸分子を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、対象におけるFSHR発現と関係する疾患または障害を予防または治療する方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの細胞誘引ドメインを含む合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)、またはそれをコードする核酸分子を前記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるFSHR発現と関係する疾患または障害を予防または治療する方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの細胞誘引ドメインを含む合成二重特異性免疫細胞エンゲージャ(BICE)、またはそれをコードする核酸分子を含む組成物を前記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの最低1つの卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)抗原結合ドメインと少なくとも1つの細胞誘引ドメインを含む合成二重特異性免疫細胞エンゲージャと、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、またはそれをコードする核酸分子を含む。
【0017】
一実施形態では、疾患は、良性腫瘍、がん、またはがん関連疾患である。一実施形態では、疾患は、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、または甲状腺がんである。
【0018】
一実施形態では、本発明はFSHR scFv分子に関する。一実施形態では、FSHR scFv分子は、配列番号3のアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、FSHR scFv分子は、配列番号3の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%一致するアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態では、FSHR scFv分子は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、FSHR scFv分子は、配列番号3のアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片を含む。」
【0019】
一実施形態では、本発明は、FSHR scFv分子を含む組成物に関する。一実施形態では、組成物は、医薬として許容可能な賦形剤を含む。一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤PD-1の阻害剤、PD-L-1の阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の阻害剤、ムチンドメイン含有-3(TIM-3)の阻害剤、またはリンパ球活性化3(LAG3)の阻害剤。
【0020】
一実施形態では、組成物は、FSHR scFvを含む脂質ナノ粒子を含む。
【0021】
一実施形態では、組成物は、FSHR scFvを含むCAR分子を含む。一実施形態では、CAR分子は、配列番号4、配列番号5、または配列番号6を含む。
【0022】
一実施形態では、組成物は、FSHR scFv、またはFSHR scFvを含むCAR分子を発現している細胞を含む。一実施形態では、細胞は、FSHR scFv、またはFSHR scFvを含むCAR分子を発現しているT細胞である。
【0023】
一実施形態では、本発明は、FSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子に関する。一実施形態では、CARは、配列番号3に示されているヌクレオチド配列を含むFSHR特異的scFvを含む。一実施形態では、CARは、配列番号4、配列番号5、または配列番号6の配列を含む。
【0024】
一実施形態では、本発明は、FSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子を含む組成物に関する。一実施形態では、CARは、配列番号3に示されているヌクレオチド配列を含むFSHR特異的scFvを含む。一実施形態では、CARは、配列番号4、配列番号5、または配列番号6の配列を含む。
【0025】
一実施形態では、組成物は、FSHR特異的キメラ抗原受容体(CAR)分子を発現している細胞を含む。一実施形態では、細胞は、操作されたCAR T細胞である。
【0026】
一実施形態では、本発明は、対象におけるFSHR発現と関係する疾患または障害を予防または治療する方法に関するものであり、この方法は、FSHR scFv抗体断片、FSHR scFv抗体断片を含むCAR分子、またはFSHR scFv抗体断片またはFSHR scFv抗体断片を含むCAR分子を含む組成物を前記対象に投与することを含む。一実施形態では、この方法は、FSHR scFv抗体断片を含むCAR分子を含む操作されたCAR T細胞を投与することを含む。
【0027】
一実施形態では、疾患は、良性腫瘍、がん、またはがん関連疾患である。一実施形態では、疾患は、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、または甲状腺がんである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、K562-FSHR細胞へのFSHR二重特異性抗体の結合を実証するデータ。
【0029】
図2図2は、FSHR二重特異性abがT細胞の存在下でOVCAR3細胞を殺傷することを実証するデータを示す。エフェクタ細胞:T細胞;エフェクタ:標的 10:1;エフェクタ細胞と処理は23.8時間の時点で与えた。
【0030】
図3図3は、OVISE(卵巣明細胞腺癌)細胞においてxCelligenceを用いて評価したときのFSHR×CD3二重特異性抗体の細胞傷害効果を実証するデータを示す。
【0031】
図4図4は、CaOV3(高異型度の卵巣漿液性腺癌)細胞においてxCelligenceを用いて評価したときのFSHR×CD3二重特異性抗体の細胞傷害効果を実証するデータを示す。
【0032】
図5図5は、NSGマウスにおいて生体内に放出したFSHR×CD3二重特異性がOVCAR3腫瘍細胞の増殖を制御することを実証するデータを示す。
【0033】
図6A-6F】図6Aから図6Fまで:抗ヒトFSHR抗体の生成。(A)FSHRの構造を示す。(B)pBMN-I-GFP発現ベクターへのクローニング戦略。(C)マウス免疫化スキーム。(D)異なる用量のFSHホルモンに対するK562とK562-FSHRのcAMP応答。(E)FSHを用いてK562細胞とK562-FSHR細胞を刺激してから20分後のホスホ-ホスホ-p44/42(Erk1/2)とp44/42(Erk1/2)のウエスタンブロット。(F)FSHRをFSHで刺激したときのK562-FSHR細胞におけるD2AP11抗FSHR抗体によるcAMP産生の部分的阻止。分散分析。***p<0.001、ns:有意差なし。
【0034】
図7A-7D】図7Aから図7Dまで:抗ヒトFSHR抗体のスクリーニング。(A)K562とK562-FSHRを用いたスクリーニングプロセスにおいて可能な結果を表わすフローサイトメトリープロットのスキーム。(B)1:1000に希釈したヒトFSHRまたは空ベクターと、抗マウスIgG APCで免疫化したマウスからの血清で染色したK562(GFP-)/K562-FSHR(GFP+)細胞のフローサイトメトリープロット。(C)ハイブリドーマからFSHR結合抗体をK562-FSHR/K562のフロープロットおよび平均蛍光強度倍数変化として検出するための代表的なフローサイトメトリースクリーニング出力戦略(D)K562-FSHR/K562のMFI倍数変化として測定したときの、FSHRに結合するハイブリドーマ上清を示すウォータフォールプロット。第1ラウンドのスクリーニングの後、上位20クローン(赤い棒の左)をさらなる研究のために選択した。
【0035】
図8A-8B】図8Aから図8Bまで:D2AP11と市販のマウス抗ヒトFSHR抗体の結合効力。(A)FSHRを過剰発現しているK562細胞におけるD2AP11抗FSHR Abと4つの異なる市販のAb(市販のAb#1、2、3、および4)の結合をフローサイトメトリーによって分析。二次Ab対照だけと、無関係なAb対照の場合が左に示されており、ここではK562細胞とK562-FSHR細胞への結合は観察されなかった。異なる抗FSHR抗体との結合を異なる濃度で評価した;2500ng/ml、1250ng/ml、625ng/ml、312.5ng/ml、156.25ng/ml、および78.125ng/ml。(B)K562-FSHR細胞への用量に依存したD2AP11抗FSHR Abの結合をフローサイトメトリーによって分析した。D2AP11の結合が9.77ng/mlという低い濃度で観察され、その効力を示している。
【0036】
図9A-9C】図9Aから図9Cまで:健康な組織と卵巣がん組織へのD2AP11の結合。(A)異なるヒト臓器(膵臓、肺、心臓、小腸、大腸、子宮、卵巣、および卵管内皮)の健康な組織へのD2AP11抗FSHR抗体の結合を示す代表的な画像を免疫組織化学/IHCによって分析。(B)異なる病状(高異型度と低異型度の漿液性癌、粘液腺癌、明細胞癌、未分化胚細胞腫、内胚葉洞癌、および転移腺癌)の卵巣がん組織に対するD2AP11抗FSHR抗体の結合を示す代表的な画像を卵巣がんTMA(US Biomax)のIHC染色によって分析。ニコンNIS-エレメントイメージングシステム(20倍、スケール:500μm)を用いて組織(AとB)を見て画像を取得した。画像の取得後に調整し、明るさ、コントラスト、および画像視認性を最適にした。(C)「ヒトタンパク質アトラス」のデータに基づき、55種類のヒト組織タイプの表面におけるFSHRとERBB2/Her2のRNA発現を規格化して比較。
【0037】
図10A-10B】図10Aから図10Bまで:55種類の組織タイプにおけるFSHRとERBB2/Her2の発現の差。(A)55種類の異なるヒト組織タイプにおけるFSHRの発現(RNA)の差を「ヒトタンパク質アトラス」のデータベースを利用して分析。(B)異なるヒト組織におけるERBB2/Her2の発現(RNA)の差を「ヒトタンパク質アトラス」のデータベース(proteinatlas.org)を利用して分析;nTPM:規格化した発現レベル。
【0038】
図11A-11D】図11Aから図11Dまで:D2AP11はヒトとマウスのFSHRに結合する。(A)D2AP11、または一次抗体なしの後に、二次APC標識抗体で染色したCaOV3、OVCAR3、およびTOV-21Gのフローサイトメトリープロット。(B)TOV-21G親、またはFSHRのクリスパー後のTOV-21GをD2AP11で染色したフローサイトメトリープロット。(C)D2AP11、または一次抗体なしの後に、二次APC標識抗体で染色したK562、K562-FSHR、およびK562-LHCGR 21Gのフローサイトメトリープロット。(D)A20(GFP-)/A20-Fhsr(GFP+)細胞、およびID8-Defb29/Vegf-a細胞とID8-Defb29/Vegf-a-FSHR細胞をD2AP11で染色したフローサイトメトリープロット(両方の細胞系にマウスFSHRをトランスフェクトした)。
【0039】
図12A-12G】図12Aから図12Gまで:D2AP11は免疫組織化学と免疫細胞化学においてFSHRに結合し、抗体依存性細胞傷害を誘導する。(A)K562、K562-FSHR、OVCAR3、およびTOV-21G細胞系に由来する腫瘍の凍結切片をD2AP11で染色したものからの免疫組織化学画像。40倍、スケール棒50μm。(B)ヒトFSHRをトランスフェクトし、マウス抗ヒトFSHRまたはD2AP11抗体いずれかの後に二次抗マウスIgGで染色した293T細胞の免疫蛍光画像。(C)トランスフェクトされていない293T細胞をD2AP11抗体の後に二次抗マウスIgGで染色した免疫蛍光画像。B~D:スケール棒10μm。(D)D2AP11抗体について実施したアイソタイプELISAの吸光値。(E)D2AP11または無関係なマウスIgG2a(C1.18.4)がK562-FSHRに対して生じさせるADCCによる細胞傷害。(F)D2AP11または無関係なマウスIgG2a(C1.18.4)がK562に対して生じさせるADCCによる細胞傷害。(G)D2AP11または無関係なマウスIgG2a(C1.18.4)がOVCAR3細胞に対して生じさせるADCCによる細胞傷害。t検定、分散分析。***p<0.001、ns有意差なし。
【0040】
図13A-13H】図13Aから図13Hまで:FSHR TCEの生成、発現、および抗腫瘍活性。(A)TCE 誘引FSHRとT細胞受容体(TCR)の模式図。GS、グリシン-セリン;VH、重鎖可変領域;VL、軽鎖可変領域。(B)D2AP11-TCEをコードするDNAコンストラクトの図解。(C)D2AP11-TCEまたはpVax1空ベクターをExpi293F細胞にトランスフェクトした後のインビトロ発現のウエスタンブロット。(D)FSHRの天然の発現を欠くK562細胞を用いてD2AP11-TCEの結合特異性を検証した。FSHRを発現していないK562細胞では、D2AP11-TCEの結合は観察されなかった。(E)FSHRを過剰発現しているK562細胞へのD2AP11-TCEの結合。(F)FSHRへのD2AP11-TCEの結合を、追加のFSHR発現細胞であるCaOV3を用いて示す。D2AP11-TCEでピークがpVax1および二次Abだけと比べてシフトしているのは、それがFSHRに結合していることを示す。(G)FSHRへのD2AP11-TCEの結合を、FSHRを過剰発現させるためFSHRをコードするpBMN-I-GFPプラスミドを用いて形質導入したOVCAR3細胞を用いて示す。FSHRを過剰発現しているOVCAR3細胞では、空ベクターおよび二次抗体だけの対照と比べてピークの顕著なシフトが存在する。(H)D2AP11-TCEと空ベクター対照を用いた初代ヒトT細胞のフロー染色、ピークのシフトは、ヒトT細胞へのD2AP11-TCEの結合を示す。
【0041】
図14A-14P】図14Aから図14Pまで:D2AP11-TCEは標的卵巣がん細胞の特異的殺傷を誘導する。FSHR陰性である(AとB)HEK293細胞、(CとD)AGS胃腺癌細胞、および(E)WM3743ヒト悪性黒色腫細胞のほか、標的ヒト卵巣がん細胞である(FとG)OVISE細胞、(HとI)CaOV3細胞、(J)OVCAR4細胞、(KとL)OVCAR3-FSHR細胞、(M)PEO-4細胞、および(N)倉持-FSHR細胞におけるD2AP11-TCEの細胞傷害効果、D2AP11-TCEとヒトPBMCの存在下での(O)OVISE-FSHRと(P)OVCAR3細胞の用量依存性殺傷の評価。xCelligenceリアルタイム細胞分析装置(RTCA)(Agilent Technologies、アメリカ合衆国)を使用し、インピーダンスに基づいてインビトロで細胞傷害を測定した。xCelligence装置によって電気伝導度を15分ごとに無単位の細胞指数(CI)パラメータに変換し、画像は1時間の間隔で取得した。生成したデータは、エフェクタ(E)細胞(PBMC)とD2AP11-TCEを標的(T)細胞に添加した時点によって規格化する;E:Tは5:1(AとB、FとG、M、N)と10:1(C~E、H~L、OとP)である。データはRTCA/RTCA Proソフトウエアを用いて分析した。非特異的殺傷がHEK293T、773AGS、およびWM3743細胞で得られたのに対し、強力な殺傷はOVISE、CaOV3、OVCAR3-FSHR、PEO-4、および倉持-FSHR標的OC細胞で観察された。矢印は、抗体とエフェクタ細胞を標的細胞に添加した時点を示す。示されている画像は、エフェクタ細胞と抗体を添加してから2~3日後の殺傷を示す。
【0042】
図15A-15C】図15Aから図15Cまで:FSHRを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャは、精製したT細胞の存在下で卵巣がんの細胞傷害を誘導した。T細胞を(A) OVCAR3-FSHR細胞および(B)OVCAR4細胞とD2AP11-TCEの存在下で共培養して生じたインビトロでの細胞傷害。リアルタイムインビトロ細胞傷害分析をxCelligenceによって実施した;E:T=5:1/10:1(C)エフェクタ細胞と抗体を添加してから3日後、ヒトT細胞の存在下でのOVCAR4細胞に対するD2AP11-TCEの細胞傷害効果を示す画像。Abなし(エフェクタ+標的だけ)が対照として機能した。矢印は、エフェクタ細胞とTCEを添加した時点を示す。
【0043】
図16A-16C】図16Aから図16Cまで:D2AP11-TCEによる用量に依存したOVISE-FSHR細胞の殺傷。OVISE-FSHR細胞において、(A)ヒトPBMCと(B)ヒトT細胞の存在下でD2AP11-TCEによる用量に依存した殺傷が観察された。(C)ヒトPBMCの存在下でのD2AP11-TCEによる用量に依存したOVCAR3細胞の殺傷。リアルタイムインビトロ細胞傷害分析をxCelligenceによって実施した;E:T=10:1。D2AP11-TCEは、示されている500ng/ml~7.81ng/mlの範囲の濃度で添加した。
【0044】
図17図17A:無関係なTCEは、FSHRを過剰発現している卵巣がん細胞において殺傷を誘導しなかった。IL13Rα2-TCE(無関係な/非FSHR標的TCE)は、ヒトPBMCの存在下で、FSHRを過剰発現しているOVCAR3細胞に対する細胞傷害を引き起こさなかった。矢印は、エフェクタ細胞とTCEを添加した時点を示す。赤い線は、Ab対照なし(エフェクタ+標的細胞だけ)を示す;E:T=5:1。
【0045】
図18A-18D】図18Aから図18Dまで:D2AP11とD2AP11-TCEの比較細胞殺傷分析。(A)ヒトPBMCの存在下における、示されている濃度のD2AP11抗FSHR抗体によるOVCAR4細胞の殺傷。(B)ヒトPBMCの存在下における、示されている濃度のD2AP11-TCEによるOVCAR4細胞の殺傷。矢印は、エフェクタ細胞とD2AP11/D2AP11-TCEを添加した時点を示す。(C)D2AP11抗FSHR AbはヒトPBMCの存在下で用量に依存したOVCAR4細胞の殺傷を示し、EC50値は30.3μg/mlであった(D)D2AP11-TCEはヒトPBMCの存在下で用量に依存したOVCAR4細胞の殺傷を示し、EC50値は11.3ng/mlであった。これは、効力が抗FSHR抗体と比べて約1000倍大きいことを示す。リアルタイムインビトロ細胞傷害分析はxCelligenceによって実施した;E:T=10:1。EC50値はRTCA Proソフトウエアを用いて計算した。
【0046】
図19A-19F】図19Aから図19Fまで:サイトカイン分泌プロファイルと、D2AP11-TCEの生体内活性。(A)サイトカインの分泌プロファイル;D2AP11-TCEの存在下でOVCAR3-FSHRとヒトPBMCを共培養したときのIFN-ガンマ、sFas、グランザイムAとB、およびパーフォリン;E:T=10:1。サイトカイン分泌プロファイルを知るために分析する上清を、エフェクタ細胞とTCEを標的OVCAR3-FSHR細胞に添加してから48時間後に回収した。3人の異なるドナーからのPBMCを使用した;対応のないスチューデントの両側t検定;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(B)K562/K562-FSHRでチャレンジしたNSGマウスモデルにおける腫瘍進行に対するD2AP11-TCEの効果を評価するための腫瘍研究の図解。(C)NSGマウスにグラフトしてD2AP11-TCEまたは空ベクターで治療したK562腫瘍の平均増殖曲線(n=5匹/群)。(D)NSGマウスにグラフトしてD2AP11-TCEまたは空ベクターで治療したK562-FSHR腫瘍の平均増殖曲線(n=5匹のマウス/群)。(E)OVCAR3-FSHRでチャレンジしたNSGマウスモデルにおける腫瘍進行に対するD2AP11-TCEの効果を評価するための腫瘍研究の図解。(F)NSGマウスにグラフトしてD2AP11-TCEまたは空ベクターで治療した36個のOVCAR3-FSHR腫瘍の平均増殖曲線(n=10匹のマウス/群)。二元配置分散分析;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0047】
図20図20は、D2AP11-BTEは卵巣がん細胞においてニボルマブ(抗PD1抗体)による殺傷を相乗的に増強することを示す。矢印は、エフェクタ細胞と処理を与えた時点を示す。
【0048】
図21図21は、D2AP11-BTEは卵巣がん細胞においてペムブロリズマブ(抗PD1抗体)による殺傷を相乗的に増強することを示す。矢印は、エフェクタ細胞と処理を与えた時点を示す。
【0049】
図22-1】図22は、D2AP11-BTEは卵巣がん細胞において抗CTLA4抗体による殺傷を相乗的に増強することを示す。矢印は、エフェクタ細胞と処理を与えた時点を示す。
【0050】
図22-2】図22は、D2AP11-BTEは卵巣がん細胞において抗CTLA4抗体による殺傷を相乗的に増強することを示す。矢印は、エフェクタ細胞と処理を与えた時点を示す。
【0051】
図23図23は、9h11(D2AP11)抗体配列に基づいて開発されたCAR T細胞を示すダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、二重特異性免疫細胞誘引抗体(BICE)、二重特異性T細胞誘引(BiTE)抗体、scFv抗体断片、およびCAR分子、その断片、そのバリアント、その組み合わせを含むFSHR特異性結合分子と、それをコードする核酸分子を含む組成物に関する。
【0053】
一実施形態では、BICEまたはBiTEは、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む。一実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、免疫細胞の表面に発現した抗原に対して特異的である。免疫細胞の非限定的な例に含まれるのは、T細胞、抗原提示細胞、NK細胞、好中球、およびマクロファージである。
【0054】
さまざまな実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、免疫細胞特異的受容体分子への結合に関して特異的な抗体、その断片、またはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、免疫細胞特異的受容体分子はT細胞表面抗原である。一実施形態では、T細胞特異的受容体分子は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95の1つである。
【0055】
さまざまな実施形態では、抗原結合ドメインは、抗原への結合に関して特異的な抗体,またはその断片、またはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、DNAがコードするモノクローナル抗体(DMAb)、またはその断片またはバリアントである。一実施形態では、抗体またはその断片は、mRNAがコードするモノクローナル抗体、またはその断片またはバリアントである。
【0056】
一実施形態では、BICEまたはBiTEの抗原結合ドメインは、標的抗原の結合と、標的抗原へのT細胞のリクルートに関して特異的である。一実施形態では、標的抗原は腫瘍抗原である。一実施形態では、抗原卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)。したがって一実施形態では、本発明により、1つ以上のBICEまたはBiTEを含む組成物と、対象のがん、またはがんに関係する疾患または障害の治療または予防に利用する方法が提供される。
【0057】
一実施形態では、本発明は、FSHRに対する結合に関して特異的な抗原結合ドメインを含むCAR分子を発現しているCAR T細胞に関する。いくつかの実施形態では、FSHR結合ドメインは、FSHRに対する結合に関して特異的なscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、配列番号3に示されている配列を含む。一実施形態では、本発明のCAR分子は、CD28および/または4-1BBドメインによる共刺激と、CD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方を提供する。本明細書に開示されている実施形態では、CARは、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に示されている配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0058】
定義
【0059】
特に断わらない限り、本明細書で用いられているあらゆる科学技術用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を持つ。矛盾がある場合には、本文書が、定義を含めて優先する。好ましい方法と材料が下に記載されているが、本明細書に記載されているのと類似または同等の方法と材料を本発明の実践または試験で利用することができる。本明細書で言及されているあらゆる刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照によって組み込まれている。本明細書に開示されている材料、方法、および実施例は説明だけを目的としており、制限する意図はない。
【0060】
「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する」、「持つ」、「できる」、「含有する」という用語、およびこれらの変化形は、本明細書では、その前とその後をつないでいて列挙する数に制限のない句、用語、または単語であり、追加の操作または構造の可能性を排除しない。単数形「1つの」、「および」、および「その」は、文脈が明らかに別のことを述べているのでない限り、複数形を含む。本開示では、本明細書に示されている実施形態またはエレメントを「含む」、それ「からなる」、および「主に」それ「からなる」他の実施形態も、明示的に示されているかどうかに関係なく考慮する。
【0061】
「抗体」は、クラスIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEの抗体または断片、これらの断片または誘導体(Fab、F(ab’)2、Fd、および一本鎖抗体と、これらの誘導体が含まれる)を意味することができる。抗体として、哺乳類の血清サンプルから単離された抗体、ポリクローナル抗体、アフィニティ精製された抗体で、望むエピトープまたはそれに由来する配列に対して十分な結合特異性を示すもの、またはこれらの混合物が可能である。
【0062】
「抗体断片」または「抗体の断片」は、本明細書では交換可能に使用され、インタクトな抗体のうちで抗原結合部位または可変領域を含む部分を意味する。この部分は、インタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち抗体アイソタイプに応じてCH2、CH3、またはCH4)を含まない。抗体断片の非限定的な例に含まれるのは、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、ディアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインだけを含有する一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域だけを含有する一本鎖ポリペプチド、および重鎖可変領域の3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチドである。
【0063】
「抗原」は、宿主の体内で免疫応答を生じさせる能力を持つタンパク質を意味する。 抗原は、抗体が認識して結合することができる。抗原は、体内または外部環境に由来することができる。
【0064】
「コード配列」または「コード核酸」は、本明細書では、本明細書に記載されている抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(RNA分子またはDNA分子)を意味することができる。コード配列は、調節エレメント(核酸が投与される個人または哺乳類の細胞の中で発現を指示することのできるプロモータとポリアデニル化シグナルが含まれる)に機能可能に連結された開始と終結のシグナルをさらに含むことができる。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。
【0065】
「相補体」または「相補的」は、本明細書では、核酸を意味することができるは、核酸分子のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の間のワトソン-クリック(例えばA-T/UとC-G)対形成またはフーグスティーン型塩基対形成を意味することができる。
【0066】
「内在性抗体」は、本明細書では、液性免疫応答を誘導するために有効な用量の抗原を投与された対象の体内で生成する抗体を意味することができる。
【0067】
「フィードバック機構」は、本明細書では、ソフトウエアまたはハードウエア(またはファームウエア)によって実行されるプロセスを意味することができ、このプロセスは、(エネルギーのパルスを送達する前、間、および/または後に)望む組織のインピーダンスを受け取って現在の値(好ましくは電流)と比較した後、設定値を実現するために送られるエネルギーのパルスを調節する。フィードバック機構はアナログ式閉ループ回路によって実現できる。
【0068】
「断片」は、抗体のポリペプチド断片であって、機能であるもの、すなわち望む標的に結合できて完全長抗体と同じ想定する効果を持つことができるものを意味することができる。抗体の断片は、N末端および/またはC末端から、それぞれの場合にシグナルペプチドおよび/または1位のメチオニンあり、またはなしの状態で少なくとも1個のアミノ酸が失われていることを除き、完全長と100%一致していることが可能である。断片は、付加された任意の異種シグナルペプチドを除き、その特定の完全長抗体の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を含むことができる。その断片は、抗体と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上が同じであるポリペプチドの断片を含むことに加え、パーセント一致を計算するときには含まれないN末端メチオニンまたは異種シグナルペプチドを追加して含むことができる。断片は、N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチド(免疫グロブリンシグナルペプチドなど、例えばIgEまたはIgGシグナルペプチド)をさらに含むことができる。N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチドは抗体の断片に連結させることができる。
【0069】
抗体をコードする核酸配列の断片は、5’および/または3’末端から、それぞれの場合にシグナルペプチドおよび/または1位のメチオニンあり、またはなしの状態で少なくとも1個のヌクレオチドが失われていることを除き、全長が100%一致することが可能である。断片は、付加された任意の異種シグナルペプチドを除き、その特定の完全長コード配列の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を含むことができる。その断片は、抗体と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上が同じであるポリペプチドをコードする断片を含むことに加え、場合により、パーセント一致を計算するときに含まれないN末端メチオニンまたは異種シグナルペプチドをコードする配列を含むことができる。断片は、N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチド(免疫グロブリンシグナルペプチドなどであり、例えばIgEまたはIgGシグナルペプチド)のコード配列をさらに含むことができる。N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチドをコードするコード配列はコード配列の断片に連結させることができる。
【0070】
「遺伝子コンストラクト」は、本明細書では、タンパク質(抗体など)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子またはRNA分子を意味する。コード配列は、調節エレメント(核酸分子が投与される個体の細胞における発現を指示することのできるプロモータとポリアデニル化シグナルが含まれる)に機能可能に連結された開始と終結のシグナルを含む。本明細書では、「発現可能形態」という用語は、タンパク質をコードするコード配列に機能可能に連結された必要な調節エレメントを含有する遺伝子コンストラクトを意味し、個体の細胞内に存在するとき、そのコード配列が発現する。
【0071】
本明細書において2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈で用いられる「同じ」または「一致」は、配列が、指定された領域全体で、指定された割合の同じ残基を持つことを意味する。割合の計算は、2つの配列を最適にアラインメントさせ、その2つの配列を指定された領域全体で比較し、両方の配列で同じ残基になる位置の数を明らかにして一致した位置の数を取得し、一致した位置の数を、指定された領域内の位置の総数で割り、その結果を100倍することによって実現でき、その結果として配列一致の割合が得られる。2つの配列の長さが異なっていて、すなわちアラインメントによって端部に1つ以上のずれが生じて、比較する指定された領域に1つの配列しか含まれない場合には、その1つだけの配列の残基は計算の分母に含まれるが、分子には含まれない。DNAとRNAを比較するとき、チミン(T)とウラシル(U)は同等であると見なすことができる。一致は、手作業で、またはコンピュータ配列アルゴリズム(BLASTやBLAST 2.0など)を用いて実施することができる。
【0072】
「インピーダンス」は、本明細書では、フィードバック機構を議論するときに用いることができ、オームの法則に従って電流値に変換できるため、設定電流と比較することが可能である。
【0073】
「免疫応答」は、本明細書では、1つ以上の核酸および/またはペプチドの導入に応答した宿主(例えば哺乳類)の免疫系の活性化を意味することができる。免疫応答は、細胞応答または液性応答、または両方の形態が可能である。
【0074】
「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、本明細書では、互いに共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを意味することができる。一本鎖の描写は相補鎖の配列も規定する。したがって核酸は、描写された一本鎖の相補鎖も包含する。核酸の多くのバリアントを所与の核酸と同じ目的で用いることができる。したがって核酸は、実質的に同じ核酸とその相補体も包含する。一本鎖は、厳しいハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズできるプローブを提供する。したがって核酸は、厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも包含する。
【0075】
核酸は、一本鎖または二本鎖であること、または二本鎖と一本鎖両方の配列の一部を含有することができる。核酸として、DNA(ゲノムDNAとcDNAの両方)、RNA、またはハイブリッドが可能であり、その核酸は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの組み合わせと、塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、およびイソグアニンが含まれる)の組み合わせを含有することができる。核酸は化学合成法または組み換え法によって取得できる。
【0076】
「機能可能に連結された」は、本明細書では、遺伝子の発現が、それと空間的に接続されたプロモータの制御下にあることを意味することができる。プロモータは、その制御下にある遺伝子の5’(上流)または3’(下流)に位置させることができる。プロモータとある遺伝子の間の距離は、プロモータの出所であるその遺伝子内で、そのプロモータと、このプロモータが制御する遺伝子の間の距離とほぼ同じにすることができる。本分野で知られているように、この距離は、プロモータ機能の喪失なしに調節して変化させることができる。
【0077】
「ペプチド」、「タンパク質」、または「ポリペプチド」は、本明細書では、アミノ酸が連結された配列を意味することができ、天然、合成、または天然と合成の修飾または組み合わせが可能である。
【0078】
「プロモータ」は、本明細書では、細胞における核酸の発現を与える、活性化させる、または増強することのできる合成または天然由来の分子を意味することができる。プロモータは、核酸の発現をさらに増強するため、および/または空間的発現および/または時間的発現を変化させるため、1つ以上の特異的転写調節配列を含むことができる。プロモータは遠位エンハンサエレメントまたは遠位リプレッサエレメントも含むことができ、これは転写開始部位から数千塩基を対離して位置させることができる。プロモータは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、および動物を含む供給源に由来することができる。プロモータは、遺伝子構成要素の発現を構成的に調節すること、または発現が起こる細胞、組織、または臓器に関して、または発現が起こる発生段階に関して異なるように調節すること、または外部刺激(生理学的ストレス、病原体、金属イオン、または誘導剤など)に応答して調節することができる。プロモータの代表例に含まれるのは、バクテリオファージT7プロモータ、バクテリオファージT3プロモータ、SP6プロモータ、lacオペレータ-プロモータ、tacプロモータ、SV40後期プロモータ、SV40初期プロモータ、RSV-LTRプロモータ、CMV IEプロモータ、SV40初期プロモータ、またはSV40後期プロモータ、およびCMV IEプロモータである。
【0079】
「シグナルペプチド」と「リーダー配列」は本明細書では交換可能に使用され、本明細書に示されているタンパク質のアミノ末端に連結させることのできるアミノ酸配列を意味する。シグナルペプチド/リーダー配列は典型的にはタンパク質の局在化を指示する。本明細書で使用されるシグナルペプチド/リーダー配列は、タンパク質が産生される細胞からのそのタンパク質の分泌を容易にすることが好ましい。シグナルペプチド/リーダー配列は、細胞から分泌されるときにしばしばタンパク質の残部(成熟タンパク質と呼ばれる)から切断される。シグナルペプチド/リーダー配列はタンパク質のN末端に連結される。
【0080】
「厳しいハイブリダイゼーション条件」は、本明細書では、核酸の複合混合物の中などで第1の核酸配列(例えばプローブ)が第2の核酸配列(例えば標的)にハイブリダイズする条件を意味することができる。厳しい条件は配列に依存しており、異なる環境では異なることになる。厳しい条件は、規定されたイオン強度pHで特定の配列の融点(T)よりも約5~10℃低くなるように選択することができる。Tとして、(規定されたイオン強度、pH、および核濃度のもとで)平衡状態において標的と相補的であるプローブの50%が標的配列にハイブリダイズする温度が可能である(標的配列が過剰に存在するとき、Tでプローブの50%が占有される)。厳しい条件として、pH7.0~8.3で塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン(約0.01~1.0Mのナトリウム(または他の塩)のイオン濃度など)であり、短いプローブ(例えば約10~50個のヌクレオチド)については温度が少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば約50個超のヌクレオチド)については少なくとも約60℃である条件が可能である。厳しい条件は、不安定化剤(ホルムアミドなど)の添加によって実現することもできる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションのためには、陽性シグナルはバックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2~10倍であることが可能である。代表的な厳しいハイブリダイゼーション条件に含まれるのは、50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSで42℃でのインキュベーション、または5×SSC、1%SDSで65℃でのインキュベーションと、0.2×SSCと0.1%SDSの中での65℃での洗浄という条件である。
【0081】
「対象」と「患者」は本明細書では交換可能であり、任意の脊椎動物を意味し、その非限定的な例に含まれるのは、哺乳類(例えばウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス、非ヒト霊長類(例えばサルであり、カニクイザルまたはアカゲザル、チンパンジーなど)、および ヒト)である。いくつかの実施形態では、対象としてヒトまたは非ヒトが可能である。対象または患者は他の形態の治療中であってもよい。
【0082】
「実質的に相補的」は、本明細書では、第1の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、またはそれよりも多い個数のヌクレオチドまたはアミノ酸の領域にわたって第2の配列の相補体と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致すること、またはそれら2つの配列が厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味することができる。
【0083】
「実質的に同じ」が、本明細書において、第1と第2の配列が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100個、またはそれよりも多い個数のヌクレオチドまたはアミノ酸の領域にわたって、または核酸に関して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であることを意味することができるのは、第1の配列が第2の配列の相補体と実質的に相補的である場合である。
【0084】
「合成抗体」は、本明細書では、本明細書に記載されている組み換え核酸配列によってコードされていて対象の中で生成する抗体を意味する。
【0085】
「治療」または「治療している」は、本明細書では、疾患から対象を、その疾患の予防、抑制、押さえ込み、または完全な排除の手段を通じて保護することを意味することができる。疾患の予防は、その疾患が発症する前に対象に本発明の抗体を投与することを含む。疾患の抑制は、疾患の誘導後だが、その疾患が臨床で出現する前に本発明の抗体を対象に投与することを含む。疾患の押さえ込みは、疾患が臨床で出現した後に本発明の抗体を対象に投与することを含む。
【0086】
核酸に関して本明細書で使用される「バリアント」が意味する可能性があるのは、(i)参照ヌクレオチド配列の一部または断片;(ii)参照ヌクレオチド配列の相補体、またはその一部;(iii)参照核酸と実質的に同じ核酸、またはその相補体;または(iv)参照核酸、その相補体、またはそれらと実質的に同じ配列に厳しい条件下でハイブリダイズする核酸である。
【0087】
アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によってアミノ酸配列は異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持しているペプチドまたはポリペプチドに関する「バリアント」。バリアントは、少なくとも1つの生物活性を保持しているアミノ酸配列を持つ参照タンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を持つタンパク質も意味することができる。アミノ酸の保存的置換、すなわち1個のアミノ酸を似た特性(例えば親水性、帯電領域の程度と分布)の異なるアミノ酸で置き換えることは、本分野では典型的にはわずかな変化を含むと認識されている。これらのわずかな変化は、本分野で理解されているように、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することによって部分的に特定することができる。Kyte et al., J. Mol. Biol. 157:105-132 (1982)。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性と電荷を考慮することに基づく。ハイドロパシー指数が似たアミノ酸は置換してもタンパク質の機能が相変わらず保持されることが本分野で知られている。1つの側面では、±2のハイドロパシー指数を持つアミノ酸が置換される。生物学的機能を保持したタンパク質になると考えられる置換を明らかにするのにアミノ酸の親水性を利用することもできる。ペプチドの文脈においてアミノ酸の親水性を考慮すると、そのペプチドの最大の局所的平均親水性を計算することができる。これは、抗原性および免疫原性とよく相関することが報告されている1つの有用な指標である。アメリカ合衆国特許第4,554,101号(参照によって全体が本明細書に組み込まれている)。本分野で理解されているように、似た親水性値を持つアミノ酸の置換の結果、生物活性(例えば免疫原性)を保持したペプチドになることができる。置換は、互いに±2以内の親水性値を持つアミノ酸を用いて実行することができる。アミノ酸の疎水性指数と親水性値の両方が、そのアミノ酸の具体的な側鎖によって影響を受ける。この観察に合致して、生物学的機能の互換性があるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の特性によって明らかにされるように、アミノ酸の相対的類似性、特にこれらアミノ酸の側鎖に依存すると理解されている。
【0088】
バリアントとして、全遺伝子配列またはその断片の全長にわたって実質的に同じ核酸配列が可能である。その核酸配列は、全遺伝子配列またはその断片の全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%一致する可能性がある。バリアントとして、アミノ酸配列またはその断片の全長にわたって実質的に同じアミノ酸配列が可能である。そのアミノ酸配列は、アミノ酸配列またはその断片の全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%一致する可能性がある。
【0089】
「ベクター」は、本明細書では、複製起点を含有する核酸配列を意味することができる。ベクターとして、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または酵母人工染色体が可能である。ベクターとしてDNAベクターまたはRNAベクターが可能である。ベクターとして、自己複製する染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかが可能である。
【0090】
本明細書における数値範囲の記載について、その中に同程度の精度で入るそれぞれの数が明示的に考慮される。例えば6~9の範囲については、数字7と8が6と9に加えて考慮され、6.0~7.0の範囲については、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0が明示的に考慮される。
【0091】
組成物
【0092】
一実施形態では、本発明は、二重特異性免疫細胞エンゲージャ(すなわちBICE)または二重特異性T細胞エンゲージャ(すなわちBiTE)、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせを含む組成物に関する。組成物は、それを必要とする対象に投与されたとき、対象の体内で合成二重特異性免疫細胞エンゲージャを生成させる結果を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、本発明のBICEまたはBiTEは核酸モレキュー(例えばDNAまたはmRNA)によってコードされる。したがっていくつかの実施形態では、本発明はBICEまたはBiTEをコードする核酸分子に関する。
【0093】
一実施形態では、BICEまたはBiTEは、少なくとも1つの抗原結合ドメインと少なくとも1つの免疫細胞誘引ドメインを含む。一実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、免疫細胞の表面に発現した抗原に対して特異的である。免疫細胞の非限定的な例に含まれるのは、T細胞、抗原提示細胞、NK細胞、好中球、およびマクロファージである。
【0094】
さまざまな実施形態では、免疫細胞誘引ドメインは、免疫細胞特異的受容体分子への結合に関して特異的な抗体、その断片をコードするヌクレオチド配列、またはそのバリアントを含む。一実施形態では、免疫細胞特異的受容体分子はT細胞表面抗原である。一実施形態では、T細胞特異的受容体分子は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95の1つである。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明により、抗原結合ドメインと免疫細胞活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子が提供される。いくつかの実施形態では、免疫細胞活性化ドメインは、共刺激分子(例えばCD28、4-1BB、ICOS、Ox40など)からの少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。
【0096】
さまざまな実施形態では、抗原結合ドメインは、抗原への結合に関して特異的な抗体、その断片(例えばscFv断片)、またはそのバリアントを含む。一実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。一実施形態では、抗原は卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)である。
【0097】
一実施形態では、FSHR-BiTEは、配列番号2のアミノ酸配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0098】
さまざまな実施形態では、抗原結合ドメインはFSHRに対して特異的なscFvを含む。いくつかの実施形態では、scFv分子は配列番号3に示されているアミノ酸配列を含む。
【0099】
ある実施形態では、組成物は、FSHR発現と関係する疾患または障害を治療、予防すること、およびまたは/その疾患または障害から保護することができる。ある実施形態では、組成物は、FSHR発現と関係するがんを治療、予防すること、およびまたは/そのがんから保護することができる。
【0100】
本発明の合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は、組成物を投与された対象の疾患を治療、予防すること、および/または、その疾患から保護することができる。本発明の合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は、組成物を投与された対象の疾患の生存を促進することができる。合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は、組成物を投与された対象において疾患の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の生存率を提供することができる。他の実施形態では、合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は、組成物を投与された対象において疾患の少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%の生存率を提供することができる。
【0101】
組成物は、対象に組成物を投与してから少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、または60時間以内に、その対象で合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子の生成という結果を生じさせることができる。組成物は、対象に組成物を投与してから少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日以内に、その対象で合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子の生成という結果を生じさせることができる。組成物は、対象に組成物を投与してから約1時間~約6日間、約1時間~約5日間、約1時間~約4日間、約1時間~約3日間、約1時間~約2日間、約1時間~約1日間、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、または約1時間~約6時間以内に、その対象で合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子の生成という結果を生じさせることができる。
【0102】
組成物は、それを必要とする対象に投与されたとき、その対象において、液性免疫応答を誘導するために抗原を投与される対象で内在性抗体が生成するよりも迅速な合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子の生成という結果を生じさせることができる。組成物は、液性免疫応答を誘導するために抗原を投与された対象で内在性抗体が生成する少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日前に、合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子の生成という結果を生じさせることができる。
【0103】
本発明の組成物は、有効な組成物に必要とされる特徴を持つことができる。その特徴とは、安全であるため組成物によって病気または死が生じることがないこと;病気から保護すること;および投与が容易で、副作用がほとんどなく、生物学的に安定で、投与1回当たりのコストが低いことなどである。
【0104】
抗体
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせに関する。抗体は、抗原と結合または反応することができる。これについては下により詳しく記載する。いくつかの実施形態では、断片はscFv断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)、その断片、またはそのバリアントである。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖と軽鎖の相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができ、それぞれ、重鎖と軽鎖のフレームワーク(「FR」)セットの間に配置されており、そのFRセットが、CDRのサポートを提供するとともに、CDRの互いの相対的な空間的関係を規定する。CDRセットは、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域を含有することができる。重鎖または軽鎖のN末端から順番に、これらの領域はそれぞれ「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表記される。抗原結合部位はしたがって、重鎖と軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを含むことができる。
【0107】
タンパク質分解酵素パパインはIgG分子を優先的に切断していくつかの断片を生じさせ、そのうちの2つ(F(ab)断片)は、それぞれインタクトな抗原結合部位を含む共有結合ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンはIgG分子を切断していくつかの断片(両方の抗原結合部位を含むF(ab’)断片が含まれる)を提供することができる。したがって抗体としてFabまたはF(ab’)が可能である。Fabは重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドを含むことができる。Fabの重鎖ポリペプチドはVH領域とCH1領域を含むことができる。Fabの軽鎖はVL領域とCL領域を含むことができる。
【0108】
抗体として免疫グロブリン(Ig)が可能である。Igとして例えばIgA、IgM、IgD、IgE、およびIgGが可能である。免疫グロブリンは重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドを含むことができる。重鎖免疫グロブリンのポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含むことができる。免疫グロブリンの軽鎖ポリペプチドはVL領域とCL領域を含むことができる。
【0109】
抗体としてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が可能である。抗体として、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体が可能である。ヒト化抗体として、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを持っていて望む抗原に結合する非ヒト種からの抗体が可能である。
【0110】
抗体として、下により詳しく記述する二重特異性抗体が可能である。抗体として、やはり下により詳しく記述する二機能性抗体が可能である。
【0111】
抗体は対象の体内で半減期を持つことができる。いくつかの実施形態では、抗体は、対象の体内でその半減期を改変して延長または短縮することができる。そのような改変は下により詳しく記述されている。
【0112】
重鎖ポリペプチド
【0113】
本発明の結合分子は、重鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせを含むことができる。重鎖ポリペプチドは、可変重鎖(VH)領域および/または少なくとも1つの定常重鎖(CH)領域を含むことができる。その少なくとも1つの定常重鎖領域は、定常重鎖領域1(CH1)、定常重鎖領域2(CH2)、および定常重鎖領域3(CH3)、および/またはヒンジ領域を含むことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、重鎖ポリペプチドはVH領域とCH1領域を含むことができる。他の実施形態では、重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含むことができる。
【0115】
重鎖ポリペプチドは相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができる。CDRセットはVH領域の3つの超可変領域を含有することができる。重鎖ポリペプチドのN末端から順番に、これらCDRはそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表記される。重鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、およびCDR3は抗原の結合または認識に寄与することができる。
【0116】
軽鎖ポリペプチド
【0117】
本発明の結合分子は、軽鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせを含むことができる。軽鎖ポリペプチドは可変軽鎖(VL)領域および/または 定常軽鎖(CL)領域を含むことができる。
【0118】
軽鎖ポリペプチドは相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができる。CDRセットはVL領域の3つの超可変領域を含有することができる。軽鎖ポリペプチドのN末端から順番に、これらCDRはそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表記される。軽鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、およびCDR3は抗原の結合または認識に寄与することができる。
【0119】
リンカー配列
【0120】
本発明の本発明の結合分子は1つ以上のリンカー配列を含むことができる。リンカー配列は、本明細書に記載されている前記1つ以上の構成要素を空間的に分離または連結することができる。他の実施形態では、リンカー配列は、2つ以上のポリペプチドを空間的に分離または連結するアミノ酸配列を含むことができる。一実施形態では、リンカー配列はG4Sリンカー配列である。
【0121】
リーダー配列
【0122】
本発明の本発明の結合分子は1つ以上のリーダー配列を含むことができる。一実施形態では、リーダー配列はシグナルペプチドである。シグナルペプチドとして免疫グロブリン(Ig)シグナルペプチドが可能であり、その非限定的な例は例えばIgGシグナルペプチドとIgEシグナルペプチドである。
【0123】
ScFv抗体
【0124】
一実施形態では、本発明の結合分子はscFv抗体断片を含む。一実施形態では、scFvはCH1領域とCL領域がないFab断片に関する。したがって一実施形態では、scFvはVHとVLを含むFab断片に関する。一実施形態では、scFvはVHとVLの間にリンカーを含む。一実施形態では、scFvはVLとVHを含むFab断片に関する。一実施形態では、scFvはVLとVHの間にリンカーを含む。一実施形態では、scFv断片はScFv-Fcである。一実施形態では、scFv-Fc断片は、VH、VL、およびCH2領域とCH3領域を含む。一実施形態では、scFv-Fc断片はVHとVLの間にリンカーを含む。一実施形態では、本発明のScFv断片は、親抗体と比べて変化した発現、安定性、半減期、抗原結合、重鎖-軽鎖の対形成、組織侵入力、またはその組み合わせを持つ。
【0125】
一実施形態では、本発明のscFvは、親抗体よりも発現が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超多い。
【0126】
一実施形態では、本発明のscFv断片は、親抗体よりも抗原との結合が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超強い。
【0127】
一実施形態では、本発明のscFv断片は、親抗体よりも半減期が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超長い。
【0128】
一実施形態では、本発明のscFv断片は親抗体よりも安定性が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超大きい。
【0129】
一実施形態では、本発明のscFv断片は親抗体よりも組織侵入力が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超大きい。
【0130】
一実施形態では、本発明のscFv断片は親抗体よりも重鎖-軽鎖の対形成が少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超多い。
【0131】
二重特異性T細胞エンゲージャ
【0132】
上に記載したように、本発明の結合分子として、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせが可能である。BiTEの抗原ターゲティングドメインは抗原と結合または反応することができる。これについては下により詳しく記載する。
【0133】
BiTEの抗原ターゲティングドメインは、抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせを含むことができる。BiTEの抗原ターゲティングドメインは、重鎖と軽鎖の相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができ、それぞれ、重鎖と軽鎖のフレームワーク(「FR」)セットの間に配置されており、そのFRセットが、CDRのサポートを提供するとともに、CDRの互いの相対的な空間的関係を規定する。CDRセットは重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域を含有することができる。重鎖または軽鎖のN末端から順番に、これらの領域はそれぞれ「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表記される。1つの抗原結合ドメインはしたがって、重鎖と軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを含むことができる。
【0134】
タンパク質分解酵素パパインはIgG分子を優先的に切断していくつかの断片を生じさせ、そのうちの2つ(F(ab)断片)のそれぞれは、インタクトな抗原結合部位を含む共有結合ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンはIgG分子を切断していくつかの断片を提供することができ、その中に含まれるF(ab’)断片は両方の抗原結合部位を含む。したがってBiTEの抗原ターゲティングドメインとしてFabまたはF(ab’)が可能である。Fabは重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドを含むことができる。Fabの重鎖ポリペプチドはVH領域とCH1領域を含むことができる。Fabの軽鎖はVL領域とCL領域を含むことができる。
【0135】
BiTEの抗原ターゲティングドメインとして免疫グロブリン(Ig)が可能である。Igとして例えばIgA、IgM、IgD、IgE、およびIgGが可能である。免疫グロブリンは重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドを含むことができる。免疫グロブリンの重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含むことができる。免疫グロブリンの軽鎖ポリペプチドはVL領域とCL領域を含むことができる。
【0136】
BiTEの抗原ターゲティングドメインとしてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が可能である。抗体として、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体が可能である。ヒト化抗体として、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を持っていて望む抗原に結合する非ヒト種からの抗体が可能である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明はBiTEをコードする核酸分子(例えばDNAまたはmRNA)を含む。
【0138】
一実施形態では、本発明のBiTEの抗原結合ドメインと免疫細胞誘引ドメインの少なくとも1つは、上に詳細に記述したscFv抗体断片である。
【0139】
二重特異性抗体
【0140】
本発明の二重特異性T細胞エンゲージャとして、二重特異性抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせが可能である。二重特異性抗体は、2つの抗原(例えば下により詳しく記述する抗原の2つ)と結合または反応することができる。二重特異性抗体は、本明細書に記載されている抗体の2つの断片からなることができ、そのことによって二重特異性抗体は望む2つの標的分子と結合または反応することが可能になる。望む標的分子に含めることができるのは、抗原(下により詳しく記述する)、リガンド(受容体のためのリガンドが含まれる)、受容体(この受容体の表面のリガンド結合部位が含まれる)、リガンド-受容体複合体、およびマーカーである。
【0141】
本発明により、第1の標的に特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含んでいて、特に有利な特性(生産性、安定性、結合親和性、生物活性、あるT細胞を特異的に標的とすること、ターゲティング効率、および低下した毒性など)を持つ新規な二重特異性抗体が提供される。いくつかの場合には、第1の標的に高親和性で、第2の標的に低親和性で結合する二重特異性抗体が存在する。他の場合には、第1の標的に低親和性で、第2の標的に高親和性で結合する二重特異性抗体が存在する。他の場合には、第1の標的に望む親和性で、第2の標的に望む親和性で結合する二重特異性抗体が存在する。
【0142】
一実施形態では、二重特異性抗体は、a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖、およびb)第2の抗原に特異的に結合する抗体の第2の軽鎖と第2の重鎖を含む2価抗体である。
【0143】
本発明による二重特異性抗体分子は、望む特異性が任意である2つの結合部位を持つことができる。いくつかの実施形態では、結合部位の1つは腫瘍抗原が可能である。いくつかの実施形態では、Fab断片に含まれる結合部位は、腫瘍抗原に対して特異的な結合部位である。いくつかの実施形態では、一本鎖Fv断片に含まれる結合部位は、FSHR腫瘍抗原に対して特異的な結合部位である。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明による抗体分子の結合部位の1つは、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子に結合することができる。T細胞特異的受容体はいわゆる「T細胞受容体」(TCR)であり、それが、抗原提示細胞またはAPCと呼ばれる別の細胞によって提示されるエピトープ/抗原にT細胞が結合すること、そして追加シグナルが存在する場合には、APCによってT細胞が活性化されること、およびT細胞がAPCに応答することを可能にする。T細胞受容体は天然の免疫グロブリンのFab断片に似ていることが知られている。それは一般に1価であってアルファ鎖とベータ鎖を包含し、いくつかの実施形態では、ガンマ鎖とデルタ鎖(上記)を包含する。したがっていくつかの実施形態では、TCRはTCR(アルファ/ベータ)であり、いくつかの実施形態ではTCR(ガンマ/デルタ)である。T細胞受容体はCD3 T細胞共受容体と複合体を形成する。CD3はタンパク質複合体であり、4本の明確に異なる鎖からなる。哺乳類では、この複合体は、CD3y鎖、CD36鎖、および2つのCD3E鎖を含有する。これらの鎖はT細胞受容体(TCR)として知られる分子およびζ鎖と会合してTリンパ球の中で活性化シグナルを生成させる。そのためいくつかの実施形態では、T細胞特異的受容体はCD3 T細胞共受容体である。いくつかの実施形態では、T細胞特異的受容体は、T細胞の表面でも発現するタンパク質であるCD28である。CD28は、T細胞の活性化に必要な共刺激シグナルを提供することができる。CD28は、T細胞の増殖と生存、サイトカインの産生、および2型ヘルパーTの発達において重要な役割を果たしている。T細胞特異的受容体のさらなる一例はCD134であり、Ox40とも呼ばれる。CD134/OX40は活性化の24~72時間後に発現しており、第2の共刺激分子を規定すると見なすことができる。T細胞受容体の別の一例は4-1BBであり、抗原提示細胞(APC)の表面の4-1BBリガンドに結合できるため、そのことによってT細胞のための共刺激シグナルが生成する。T細胞の表面に主に見いだされる受容体の別の一例はCD5であり、これはB細胞の表面にも低レベルで見いだされる。T細胞の機能を変化させる受容体のさらなる一例はCD95であり、Fas受容体としても知られており、他の細胞の表面に発現したFasリガンドによってアポトーシスシグナル伝達を媒介する。CD95は、休止しているTリンパ球においてTCR/CD3が駆動するシグナル伝達経路を変化させることが報告されている。
【0145】
NK細胞特異的受容体分子の一例は、低親和性Fc受容体であるであるCD16と、NKG2Dである。T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞の両方の表面に存在する受容体分子の一例は、CD2と、CD2スーパーファミリーのさらなるメンバーである。CD2はT細胞とNK細胞の表面で共刺激分子として機能することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体分子の第1の結合部位は腫瘍抗原に結合し、第2の結合部位はT細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子に結合する。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗体分子の第1の結合部位はFSHRに結合し、第2の結合部位はT細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子に結合する。いくつかの実施形態では、抗体分子の第1の結合部位はFSHRに結合し、第2の結合部位は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95の1つに結合する。いくつかの実施形態では、抗体分子の第1の結合部位はFSHRに結合し、第2の結合部位はCD3に結合する。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗体分子の第1の結合部位はT細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子に結合し、第2の結合部位は腫瘍抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗体の第1の結合部位はT細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子に結合し、第2の結合部位はFSHRに結合する。いくつかの実施形態では、抗体の第1の結合部位は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95の1つに結合し、第2の結合部位はFSHRに結合する。いくつかの実施形態では、抗体の第1の結合部位はCD3に結合し、第2の結合部位はFSHRに結合する。
【0149】
一実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、本明細書に記載されている1つ以上のscFv抗体断片を含むBiTEを含み、そのことによってBiTEが望む標的分子と結合または反応することが可能になる。
【0150】
一実施形態では、BiTEは、標的疾患特異的抗原への結合に関して特異的な第1のscFvを含み、T細胞特異的受容体分子への結合に関して特異的な第2のscFvがそれに連結されている。連結は第1と第2のドメインを任意の順番で配置することができ、例えば一実施形態では、標的疾患特異的抗原への結合に関して特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列を、T細胞特異的受容体分子への結合に関して特異的なscFvにとってC末端に向ける。別の一実施形態では、標的疾患特異的抗原への結合に関して特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列を、T細胞特異的受容体分子への結合に関して特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列にとってN末端に向ける。
【0151】
二機能性抗体
【0152】
二重特異性T細胞エンゲージャとして、二機能性抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせが可能である。二機能性抗体は下記の抗原と結合または反応することができる。二機能性抗体を改変し、抗原を認識してその抗原に結合することを超えた追加機能を抗体に与えることもできる。このような改変の非限定的な例に含めることができるのは、因子Hまたはその断片へのカップリングである。因子Hは補体活性化の可溶性調節因子であるため、補体依存性溶解(CML)を通じた免疫応答に寄与する可能性がある。
【0153】
抗体半減期の延長
【0154】
合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)を改変し、対象の体内での抗体の半減期を延長または短縮することができる。改変は、対象の血清中での抗体の半減期を延長または短縮することができる。
【0155】
改変は、抗体の定常領域に存在することができる。改変として、抗体の定常領域内の1つ以上のアミノ酸置換であって、その抗体の半減期を、その1つ以上のアミノ酸置換を含有しない抗体の半減期と比べて延長させるものが可能である。改変として、抗体のCH2ドメイン内の1つ以上のアミノ酸置換であって、その抗体の半減期を、その1つ以上のアミノ酸置換を含有しない抗体の半減期と比べて延長させるものが可能である。
【0156】
いくつかの実施形態では、定常領域の中の前記1つ以上のアミノ酸置換に含めることができるのは、定常領域内のメチオニン残基からチロシン残基への置換、定常領域内のセリン残基からトレオニン残基への置換、定常領域内のトレオニン残基からグルタミン酸残基への置換、またはこれらの任意の組み合わせであり、そうすることによって抗体の半減期が延長する。
【0157】
他の実施形態では、定常領域の中の前記1つ以上のアミノ酸置換に含めることができるのは、CH2ドメイン内のメチオニン残基からチロシン残基への置換、CH2ドメイン内のセリン残基からトレオニン残基への置換、CH2ドメイン内のトレオニン残基からグルタミン酸残基への置換、またはこれらの任意の組み合わせであり、そうすることによって抗体の半減期が延長する。
【0158】
抗原
【0159】
一実施形態では、合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は、抗原、またはその断片またバリアントに向けられる。抗原として、核酸配列、アミノ酸配列、多糖、またはこれらの組み合わせが可能である。核酸配列として、DNA、RNA、cDNA、そのバリアント、その断片、またはその組み合わせが可能である。アミノ酸配列として、タンパク質、ペプチド、そのバリアント、その断片、またはその組み合わせが可能である。多糖として、核酸がコードする多糖が可能である。
【0160】
抗原として腫瘍抗原が可能である。抗原はがんの発達または進行のリスク増大と関係づけることができる。一実施形態では、抗原としてFSHRが可能である。
【0161】
一実施形態では、本発明の合成二重特異性免疫細胞エンゲージャは2つ以上の抗原を標的とする。一実施形態では、二重特異性抗体の少なくとも1つの抗原は腫瘍抗原である。一実施形態では、二重特異性抗体の少なくとも1つの抗原はT細胞活性化抗原である。
【0162】
腫瘍抗原
【0163】
本発明の合成抗体の抗原結合ドメイン(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子は腫瘍抗原と相互作用することができる。本発明の文脈では、「腫瘍抗原」または「超増殖性障害抗原」、または「超増殖性障害に関係する抗原」は、特定の超増殖性障害(がんなど)に共通する抗原を意味する。
【0164】
本発明で言及する腫瘍抗原のタイプとして、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)が可能である。TSAは腫瘍細胞に独自であり、体内の他の細胞の表面には生じない。TAA抗原は腫瘍細胞に独自ではなく、抗原に対する免疫寛容の状態を誘導するのに失敗した条件下では正常な細胞の表面にも発現する。腫瘍表面での抗原の発現は、免疫系が抗原に応答する条件下で起こることができる。TAAとして、胚発生の間に免疫系が未熟で応答できないときに正常な細胞の表面に発現する抗原が可能である。あるいはTAAとして、正常な細胞の表面には通常は極端に低レベルで存在するが、腫瘍細胞の表面ではそれよりもはるかに高いレベルで発現する抗原が可能である。
【0165】
本明細書で議論する抗原は、例として含まれているにすぎない。リストは網羅的であることを意図しておらず、当業者にはさらなる例が容易に明らかになろう。
【0166】
腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞を媒介とする免疫応答を誘起する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、治療する具体的なタイプのがんに依存するであろう。腫瘍抗原は本分野で周知であり、その中に含まれるのは、例えば神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2、サバイビンとテロメラーゼ、前立腺-癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、およびメソテリンである。
【0167】
腫瘍関連表面抗原の代表例は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD33、CD123、B細胞成熟抗原(BCMA)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4、悪性黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、Her2、Her3、IGFR、CD133、IL3R、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、CDCP1、デルリン1、テネイシン、フリズルド1-10、血管抗原VEGFR2(KDR/FLK1)、VEGFR3(FLT4、CD309)、PDGFR-α(CD140a)、PDGFR-ベータ(CD140b)エンドグリン、CLEC14、Teml-8、およびTie2である。さらなる例に含めることができるのは、A33、CAMPATH-1(CDw52)、癌胎児性抗原(CEA)、炭酸脱水酵素IX(MN/CAIX)、CD21、CD25、CD30、CD34、CD37、CD44v6、CD45、CD133、de2-7 EGFR、EGFRvIII、EpCAM、Ep-CAM、葉酸結合タンパク質、G250、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、c-Kit(CD117)、CSF1R(CD115)、HLA-DR、IGFR、IL-2受容体、IL3R、MCSP(悪性黒色腫関連細胞表面コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、Muc-1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的抗原(PSA)、およびTAG-72である。腫瘍の細胞外マトリックスの表面に発現する抗原の例は、テナシンと線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)である。
【0168】
一実施形態では、腫瘍抗原は、特異的受容体を標的とするのに使用できるホルモンまたはその断片である。非限定的な例に含まれるのは、FSHホルモン、LHホルモン、TSHホルモン、またはこれらの断片である。
【0169】
TSA抗原またはTAA抗原の非限定的な例に含まれるのは、以下のもの、すなわち分化抗原(MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2など)と腫瘍特異的多系統抗原(MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15など);過剰発現した胚性抗原(CEAなど);過剰発現したがん遺伝子と変異した腫瘍抑制遺伝子(53、Ras、HER-2/neuなど);染色体転座から生じる独自の腫瘍抗原;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RARなど;およびウイルス抗原(エプスタイン・バールウイルス抗原EBVAと、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7など)である。タンパク質に基づく他の大きな抗原に含まれるのは、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSである。
【0170】
本発明の側面には、抗原に対する免疫応答の増強を必要とする対象で免疫応答を増強するための組成物が含まれ、その組成物は、対象で免疫応答を生じさせることのできる合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子、またはその生物学的機能性断片またはバリアントを含む。いくつかの実施形態では、抗原はFSHRである。いくつかの実施形態では、本発明の合成抗体は、FSHRを標的とするscFvを含むBiTEである。
【0171】
T細胞特異的受容体
【0172】
一実施形態では、本発明のBiTEまたはBICEはT細胞特異的受容体のscFvを含む。T細胞特異的受容体の非限定的な例に含まれるのは、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95である
【0173】
CAR分子
【0174】
一実施形態では、本発明により、抗原結合ドメインとT細胞活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。一実施形態では、抗原結合ドメインはターゲティングドメインであり、そのターゲティングドメインは、CARを発現している細胞を、抗原を発現している細胞または粒子に向かわせる。一実施形態では、抗原はFSHRである。
【0175】
さまざまな実施形態では、CARとして、「第1世代」、「第2世代」、「第3世代」、「第4世代」、または「第5世代」のCARが可能である(例えばSadelain et al., Cancer Discov. 3(4):388-398 (2013);Jensen et al., Immunol. Rev. 257:127-133 (2014);Sharpe et al., Dis. Model Mech. 8(4):337-350 (2015);Brentjens et al., Clin. Cancer Res. 13:5426-5435 (2007);Gade et al., Cancer Res. 65:9080-9088 (2005);Maher et al., Nat. Biotechnol. 20:70-75 (2002);Kershaw et al., J. Immunol. 173:2143-2150 (2004);Sadelain et al., Curr. Opin. Immunol. (2009);Hollyman et al., J. Immunother. 32:169-180 (2009)を参照されたい)。
【0176】
本発明で使用する「第1世代」CARは、膜貫通ドメインに融合された抗原結合ドメイン(例えば一本鎖可変断片(scFv))を含み、その膜貫通ドメインは、T細胞受容体鎖の細胞質/細胞内ドメインに融合されている。「第1世代」CARは、典型的には、内在性T細胞受容体(TCR)からのシグナルの主要な伝達要素であるCD3ζ鎖からの細胞内ドメインを持つ。「第1世代」CARは新たな抗原認識を提供し、HLAを媒介とした抗原提示とは独立に、CD4+T細胞とCD8+T細胞の両方を、単一の融合分子内のCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを通じて活性化させることができる。
【0177】
本発明で使用する「第2世代」CARは、T細胞を活性化させることのできる細胞内シグナル伝達ドメインに融合された抗原結合ドメイン(例えば一本鎖可変断片(scFv))と、T細胞の効力と持続性を増大させる設計にされた共刺激ドメインを含む(Sadelain et al., Cancer Discov. 3:388-398 (2013))。CARの設計はしたがって抗原認識にシグナル伝達を組み合わせることができ、2つの機能が2つの別々の複合体、すなわちTCRヘテロ二量体とCD3複合体によって生理学的に担われる。「第2世代」CARは、CARの細胞質尾部内にさまざまな共刺激分子(例えばCD28、4-1BB、ICOS、OX40など)からの細胞内ドメインを含み、追加シグナルを細胞に提供する。
【0178】
「第2世代」CARは、例えばCD28または4-1BBドメインによる共刺激と、例えばCD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方を提供する。臨床前研究は、「第2世代」CARがT細胞の抗腫瘍活性を改善できることを示した。例えば「第2世代」CARで改変したT細胞のロバストな有効性が、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)と急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者でCD19分子を標的とする臨床試験において実証された(Davila et al., Oncoimmunol. 1(9):1577-1583 (2012))。
【0179】
「第3世代」CARは、例えばCD28と4-1BBドメインの両方を含むことによる複数の共刺激と、例えばCD3ζ活性化ドメインを含むことによる活性化を提供する。
【0180】
「第4世代」CARは、例えばCD28または4-1BBドメインによる共刺激と、例えば構成的または誘導性のケモカイン成分に加えてCD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化を提供する。
【0181】
「第5世代」CARは、例えばCD28または4-1BBドメインによる共刺激と、例えばCD3ζシグナル伝達ドメイン、構成的または誘導性のケモカイン成分、およびサイトカイン受容体(例えばIL-2Rβ)の細胞内ドメインによる活性化を提供する。
【0182】
さまざまな実施形態では、CARは多価CAR系(例えば二重CAR系または「タンデムCAR」系)に含めることができる。多価CAR系には、複数のCARを含む系または細胞と、2つ以上の抗原を標的とする2価/二重特異性CARを含む系または細胞が含まれる。
【0183】
本明細書に開示されている実施形態では、CARは一般に、上に記載したように抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。特別な非限定的な一実施形態では、抗原結合ドメインは、FSHRへの結合に関して特異的なFSHR scFv抗体断片またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、FSHR結合ドメインは配列番号3に示されている配列を含む。
【0184】
さまざまな実施形態では、本発明のCAR分子は、CD28および/または4-1BBドメインによる共刺激と、CD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方を提供する。
【0185】
本明細書に開示されている実施形態では、CARは、配列番号4、配列番号5、または配列番号6に示されている配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0186】
基板
【0187】
一実施形態では、本発明により、二重特異性免疫細胞エンゲージャ、その断片、またはそれをコードする核酸分子を含む足場、基板、または装置が提供される。例えばいくつかの実施形態では、本発明により、組織を操作する足場(その非限定的な例に含まれるのは、ヒドロゲル、エレクトロスピニングによる足場、ポリマーマトリックスなどである)で前記モジュレータを含むものが提供される。ある実施形態では、足場、基板、または装置の表面に沿って二重特異性免疫細胞エンゲージャ、その断片、またはそれをコードする核酸分子で被覆することができる。ある実施形態では、二重特異性免疫細胞エンゲージャ、その断片、またはそれをコードする核酸分子は、足場、基板、または装置の中に封入される。
【0188】
組み換え核酸配列
【0189】
上に記載したように、組成物は組み換え核酸配列を含むことができる。組み換え核酸配列は、合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードすることができる。
【0190】
組み換え核酸配列として異種核酸配列が可能である。組み換え核酸配列は、少なくとも1つの異種核酸配列、または1つ以上の異種核酸配列を含むことができる。
【0191】
一実施形態では、FSHR-BiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0192】
組み換え核酸配列として、最適化された核酸配列が可能である。そのような最適化は、抗体の免疫原性を増加または変化させることができる。最適化は、転写および/または翻訳を改善することもできる。最適化に含めることができるのは、以下の項目の1つ以上である:低GC含量のリーダー配列による転写の増加;mRNA安定性とコドン最適化;コザック配列(例えばGCC ACC)の付加による翻訳の増加;シグナルペプチドをコードする免疫グロブリン(Ig)リーダー配列の付加;およびシス作用性配列モチーフ(すなわち内部TATAボックス)の可能な限りの除去。
【0193】
組み換え核酸配列は、1つ以上の組み換え核酸配列コンストラクトを含むことができる。組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上の構成要素を含むことができ、それについては下により詳しく記載する。
【0194】
組み換え核酸配列コンストラクトは、重鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸配列を含むことができる。組み換え核酸配列コンストラクトは、軽鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸配列を含むことができる。組み換え核酸配列コンストラクトは、プロテアーゼまたはペプチダーゼの切断部位をコードする異種核酸配列も含むことができる。組み換え核酸配列コンストラクトは、内部リボソーム侵入部位(IRES)をコードする異種核酸配列も含むことができる。IRESとしてウイルスIRESまたは真核生物IRESのいずれかが可能である。組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上のリーダー配列を含むことができ、その中の各リーダー配列はシグナルペプチドをコードしている。組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ以上のプロモータ、1つ以上のイントロン、1つ以上の転写終結領域、1つ以上の開始コドン、1つ以上の終結または終止コドン、および/または1つ以上のポリアデニル化シグナルを含むことができる。組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ以上のリンカーまたはタグ配列も含むことができる。タグ配列はヘマグルチニン(HA)タグをコードすることができる。
【0195】
プロモータ
【0196】
組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上のプロモータを含むことができる。その1つ以上のプロモータとして、遺伝子発現の駆動と遺伝子発現の調節が可能な任意のプロモータが可能である。このようなプロモータは、DNA依存性RNAポリメラーゼを通じた転写に必要なシス作用性配列エレメントである。遺伝子発現を指示するのに使用されるプロモータの選択は具体的な応用に依存する。プロモータは、組み換え核酸配列コンストラクトの中で、転写開始から、天然の設定における転写開始部位からとほぼ同じ距離に位置させることができる。しかしこの距離は、プロモータ機能の喪失なしに調節して変化させることができる。
【0197】
プロモータは、重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列に機能可能に連結させることができる。プロモータとして、真核細胞における発現に有効であることが示されているプロモータが可能である。コード配列に機能可能に連結されるプロモータとして、CMVプロモータ、シミアンウイルス40(SV40)からのプロモータ(SV40初期プロモータとSV40後期プロモータなど)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモータ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモータ(ウシ免疫不全ウイルス(BIV)長い末端反復(LTR)プロモータなど)、モロニーウイルスプロモータ、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ(CMV最初期プロモータなど)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモータ、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモータが可能である。プロモータとして、ヒト遺伝子(ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトポリヘドリン、またはヒトメタロチオネインなど)からのプロモータも可能である。
【0198】
プロモータは構成的プロモータまたは誘導性プロモータが可能であり、宿主細胞がある特定の外部刺激に曝露されたときだけ転写を開始する。多細胞生物の場合には、プロモータは、特定の組織または臓器に対して、または発生の特定の段階に対して特異的であることも可能である。プロモータとして、組織特異的プロモータ(筋肉または皮膚に特異的な天然または合成のプロモータなど)も可能である。そのようなプロモータの例はアメリカ合衆国特許出願公開第20040175727号に記載されており、その内容は全体が本明細書に組み込まれている。
【0199】
プロモータはエンハンサと関連させることができる。エンハンサはコード配列の上流に位置することができる。エンハンサとして、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、またはウイルスエンハンサ(CMV、FMDV、RSV、またはEBVからのものなど)が可能である。ポリヌクレオチド機能は増強するはアメリカ合衆国特許第5,593,972号、第5,962,428号、およびW094/016737に記載されており、それぞれの内容は参照によって完全に組み込まれている。
【0200】
転写終結領域
【0201】
組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上の転写終結領域を含むことができる。効率的な終結を提供するため、転写終結領域はコード配列の下流に存在することができる。転写終結領域は、上記のプロモータと同じ遺伝子から得ること、または1つ以上の異なる遺伝子から得ることができる。
【0202】
開始コドン
【0203】
組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上の開始コドンを含むことができる。開始コドンはコード配列の上流に位置させることができる。開始コドンはコード配列のフレーム内に存在することができる。開始コドンは、効率的な翻訳開始に必要な1つ以上のシグナルと関係させることができる(例えばその非限定的な例はリボソーム結合部位である)。
【0204】
終結コドン
【0205】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ以上の終結または終止コドンを含むことができる。終結コドンはコード配列の下流に存在することができる。終結コドンはコード配列のフレーム内に存在することができる。終結コドンは、効率的な翻訳終結に必要な1つ以上のシグナルと関連させることができる。
【0206】
ポリアデニル化シグナル
【0207】
組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上のポリアデニル化シグナルを含むことができる。ポリアデニル化シグナルは、転写産物の効率的なポリアデニル化に必要な1つ以上のシグナルを含むことができる。ポリアデニル化シグナルはコード配列の下流に位置することができる。ポリアデニル化シグナルとして、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、またはヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルが可能である。SV40ポリアデニル化シグナルとして、pCEP4プラスミドからのポリアデニル化シグナルが可能である(Invitrogen、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)。
【0208】
プロテアーゼ切断部位
【0209】
組み換え核酸配列コンストラクトは、プロテアーゼ切断部位をコードする異種核酸配列を含むことができる。プロテアーゼ切断部位はプロテアーゼまたはペプチダーゼによる認識が可能である。プロテアーゼとしてエンドペプチダーゼまたはエンドプロテアーゼが可能であり、その非限定的な例は、フーリン、エラスターゼ、HtrA、カルパイン、トリプシン、キモトリプシン、トリプシン、およびペプシンである。プロテアーゼとしてフーリンが可能である。他の実施形態では、プロテアーゼとして、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、または内部ペプチド結合を切断する(すなわちN末端またはC末端のペプチド結合を切断しない)任意のプロテアーゼが可能である。
【0210】
プロテアーゼ切断部位は、切断を促進するか切断の効率を増大させる1つ以上のアミノ酸配列を含むことができる。その1つ以上のアミノ酸配列は、離散したポリペプチドの形成または生成を促進するか、その効率を増大させることができる。その1つ以上のアミノ酸配列は2Aペプチド配列を含むことができる。
【0211】
ベクター
【0212】
上に記載した組み換え核酸配列コンストラクトは1つ以上のベクターの中に位置させることができる。前記1つ以上のベクターは複製起点を含有することができる。前記1つ以上のベクターとして、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または酵母人工染色体が可能である。前記1つ以上のベクターとして、自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み込まれるベクターが可能である。
【0213】
前記1つ以上のベクターとして異種発現コンストラクトが可能であり、それは一般に、特定の遺伝子を標的細胞に導入するのに使用されるプラスミドである。発現ベクターが細胞の中に入ると、組み換え核酸配列コンストラクによってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドが、細胞転写・翻訳機構リボソーム複合体によって産生される。前記1つ以上のベクターは、大量の安定なメッセンジャーRNAを、したがってタンパク質を発現することができる。
【0214】
発現ベクター
【0215】
前記1つ以上のベクターとして環状プラスミドまたは直線状核酸が可能である。環状プラスミドと直線状核酸は、適切な対象細胞の中で特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる。組み換え核酸配列コンストラクトを含む前記1つ以上のベクターはキメラであることが可能である。これは、ベクターの構成要素の少なくとも1つが、他の構成要素の少なくとも1つにとって異種であることを意味する。
【0216】
プラスミド
【0217】
前記1つ以上のベクターとしてプラスミドが可能である。プラスミドは細胞に組み換え核酸配列コンストラクトをトランスフェクトするのに有用である可能性がある。プラスミドは組み換え核酸配列コンストラクトを対象に導入するのに有用である可能性がある。プラスミドは、そのプラスミドが投与される細胞における遺伝子発現によく適している可能性のある調節配列も含むことができる。
【0218】
プラスミドは、染色体外でそのプラスミドを維持し、細胞内でそのプラスミドの多数のコピーを生成させるため、哺乳類複製起点も含むことができる。プラスミドとして、Invitrogen(サン・ディエゴ、カリフォルニア州)からのpVAX1、pCEP4、またはpREP4が可能であり、これらはエプスタイン・バールウイルスの複製起点と核抗原EBNA-1コード領域を含むことができるため、組み込まれることなく高コピー数のエピソーム複製を生じさせることができる。プラスミドの骨格としてpAV0242が可能である。プラスミドとして複製欠陥アデノウイルス5型(Ad5)プラスミドが可能である。
【0219】
プラスミドとしてpSE420(Invitrogen、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)が可能であり、大腸菌(E.coli)の中でのタンパク質産生に使用できる。プラスミドとしてpYES2(Invitrogen、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)も可能であり、酵母のサッカロミセス・セレビジエ株の中でのタンパク質産生に使用できる。プラスミドとして、MAXBAC(商標)完全バキュロウイルス発現系(Invitrogen、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)のものも可能であり、昆虫細胞の中でのタンパク質産生に使用できる。プラスミドとしてpcDNAIまたはpcDNA3(Invitrogen、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)も可能であり、哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞など)の中でのタンパク質産生に使用できる。
【0220】
RNA
【0221】
一実施形態では、核酸はRNA分子である。一実施形態では、RNA分子はDNA配列から転写される。したがって一実施形態では、本発明により、本発明の合成抗体の1つ以上をコードするRNA分子が提供される。RNAはプラス鎖が可能である。したがっていくつかの実施形態では、RNA分子は、いかなる複製工程(逆転写など)の介在もなしに細胞による翻訳が可能である。本発明で有用なRNA分子は5’キャップ(例えば7-メチルグアノシン)を持つことができる。このキャップはRNAの生体内翻訳を増強することができる。本発明で有用なRNA分子の5’ヌクレオチドは5’三リン酸基を持つことができる。キャップ付きのRNAでは、これは、5’から5’への架橋を通じて7-メチルグアノシンに連結させることができる。RNA分子は3’ポリ-A尾部を持つことができる。これは、その3’末端近傍にポリ-Aポリメラーゼ認識配列(例えばAAUAAA)も含むことができる。本発明で有用なRNA分子は一本鎖が可能である。本発明で有用なRNA分子は合成RNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、RNA分子は裸のRNA分子である。一実施形態では、RNA分子はベクターの中に含まれる。
【0222】
一実施形態では、RNAは、5’UTRと3’UTRを持つ。一実施形態では、5’UTRはヌクレオチドの長さが0と3000個の間である。コード領域に付加する5’と3’UTR配列の長さはさまざまな方法(その非限定的な例に含まれるのは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用プライマーの設計である)によって変えることができる。このアプローチを利用し、当業者は、転写されたRNAをトランスフェクトした後の最適な翻訳効率を実現するのに必要な5’と3’UTRの長さを変えることができる。
【0223】
5’ UTRおよび3’UTRとして、興味ある遺伝子に関する天然の内在性5’ UTRと3’UTRが可能である。あるいは興味ある遺伝子にとって内在性ではないUTR配列は、UTR配列を順プライマーと逆プライマーに組み込むことによって、または鋳型の他の任意の改変によって、付加することができる。興味ある遺伝子にとって内在性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を変えるために有用である可能性がある。例えば3’UTR配列の中のAUリッチなエレメントはRNAの安定性を低下させる可能性があることが知られている。したがって3’UTRは、本分野で周知のUTRの特性に基づき、転写されたRNAの安定性を増大させるよう選択または設計することができる。
【0224】
一実施形態では、5’UTRは、内在性遺伝子のコザック配列を含有することができる。あるいは興味ある遺伝子にとって内在性ではない5’UTRが上記のようにPCRによって付加されるとき、コンセンサスコザック配列は5’UTR配列を付加することによって再設計することができる。コザック配列は、いくつかのRNA転写産物の翻訳の効率を増加させることができるが、効率的な翻訳を可能にするのに全RNAに必要とされるようには見えない。多くのRNAにコザック配列が必要とされることが本分野で知られている。他の実施形態では、5’UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスに由来することができる。他の実施形態では、さまざまなヌクレオチド類似体を3’ UTRまたは5’ UTRで用いてエキソヌクレアーゼによるRNAの分解を妨げることができる。
【0225】
一実施形態では、RNAは5’末端のキャップと3’ポリ(A)尾部の両方を持ち、これらが、細胞の中でのRNAのリボソーム結合、翻訳開始、および安定性を決定する。
【0226】
一実施形態では、RNAはヌクレオシドが修飾されたRNAである。ヌクレオシドが修飾されたRNAは非修飾RNAと比べて特別な利点(例えば増大した安定性、低いか存在しない天然の免疫原性、および増強された翻訳が含まれる)を持つ。
【0227】
環状ベクターと直線状ベクター
【0228】
前記1つ以上のベクターとして環状プラスミドが可能であり、細胞ゲノムに組み込まれることによって標的細胞を形質転換すること、または染色体外に存在することができる(例えば複製起点を持つ自律的複製プラスミド)。ベクターとして、pVAX、pcDNA3.0、またはprovax、または組み換え核酸配列コンストラクトによってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現させることのできる他の任意の発現ベクターが可能である。
【0229】
本明細書でやはり提供されるのは、対象に効率的に送達し、組み換え核酸配列コンストラクトによってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現させることのできる直線状核酸または直線状発現カセット(「LEC」)である。LECとして、あらゆるリン酸骨格を欠く任意の直線状DNAが可能である。LECは、いかなる抗生剤抵抗性遺伝子および/またはリン酸骨格も含有していなくてよい。LECは、望む遺伝子発現とは無関係な他の核酸配列を含有していなくてもよい。
【0230】
LECは直線化が可能な任意のプラスミドに由来することができる。プラスミドは、組み換え核酸配列コンストラクトによってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現することができる。プラスミドとしてpNP(プエルト・リコ/34)またはpM2(ニュー・カレドニア/99)が可能である。プラスミドとして、WLV009、pVAX、pcDNA3.0、またはprovax、または組み換え核酸配列コンストラクトによってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現することのできる他の任意の発現ベクターが可能である。
【0231】
LECとしてpcrM2が可能である。LECとしてpcrNPが可能である。pcrNPとpcrMRはそれぞれpNP(プエルト・リコ/34)とpM2(ニュー・カレドニア/99)に由来することができる。
【0232】
ベクターを調製する方法
【0233】
本明細書で提供されるのは、組み換え核酸配列コンストラクトが配置された前記1つ以上のベクターを調製する方法である。最終サブクローニング工程の後、本分野で知られている方法を利用し、ベクターを用いて大規模な発酵タンクの中で細胞培養物に接種することができる。
【0234】
前記1つ以上のベクターは既知の装置と技術の組み合わせを利用して形成または作製することができるが、2007年5月23日に出願された同時係属中のライセンスされたアメリカ合衆国仮出願、すなわちアメリカ合衆国シリアル番号第60/939,792号に記載されているプラスミド製造技術を利用して作製されることが好ましい。いくつかの例では、本明細書に記載されているDNAプラスミドは10mg/ml以上の濃度で形成することができる。製造技術には、アメリカ合衆国シリアル番号第60/939,792号に記載されているものに加え、当業者に一般に知られているさまざまな装置とプロトコルも含まれるか組み込まれており、その中にはライセンスされた特許である2007年7月3日に発行されたアメリカ合衆国特許第7,238,522号に記載されているものが含まれる。上に参照した出願と特許、すなわちアメリカ合衆国シリアル番号第60/939,792号とアメリカ合衆国特許第7,238,522号のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0235】
組み換え核酸配列コンストラクトからの発現
【0236】
上に記載したように、組み換え核酸配列コンストラクトは、前記1つ以上の構成要素のうちで、重鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列、および/または軽鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列を含むことができる。したがって組み換え核酸配列コンストラクトは、重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。
【0237】
上記の配置1を利用するとき、第1の組み換え核酸配列コンストラクトは重鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができ、第2の組み換え核酸配列コンストラクトは軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。上記の配置2を利用するとき、組み換え核酸配列コンストラクトは重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。
【0238】
重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは、非限定的な例として例えば細胞、生物、または哺乳類の中で発現すると、組み立てられて合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子になることができる。特に重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは互いに相互作用することができて、組立体は、抗原に結合できる合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子になる。他の実施形態では、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは互いに相互作用することができて、組立体は、本明細書に記載されているように、組み立てられていない抗体と比べて免疫原性がより大きい合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子になる。さらに別の実施形態では、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは互いに相互作用することができて、組立体は、抗原に対する免疫応答を誘起または誘導することのできる合成抗体(例えばscFv抗体断片、BICE、またはBiTE)またはCAR分子になる。
【0239】
賦形剤と、組成物の他の成分
【0240】
組成物は、医薬として許容可能な賦形剤をさらに含むことができる。医薬として許容可能な賦形剤として、機能性分子(ビヒクル、担体、または希釈剤など)が可能である。医薬として許容可能な賦形剤としてトランスフェクション易化剤が可能であり、その中に含めることができるのは、表面活性剤である免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイントの不完全アジュバント、LPS類似体(モノホスホリル脂質Aが含まれる)、ムラミルペプチド、キノン類似体、小胞(スクワレンやスクワレンなど)、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、またはナノ粒子、または他の既知のトランスフェクション易化剤などである。
【0241】
トランスフェクション易化剤は、ポリアニオン、ポリカチオン(ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)が含まれる)、または脂質である。トランスフェクション易化剤はポリ-L-グルタミン酸塩であり、そのポリ-L-グルタミン酸塩は組成物の中に6mg/ml未満の濃度で存在することができる。トランスフェクション易化剤は、表面活性剤である免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイントの不完全アジュバント、LPS類似体(モノホスホリル脂質Aが含まれる)、ムラミルペプチド、キノン類似体、および小胞(スクワレンやスクワレンなど)も含むことができ、ヒアルロン酸は、組成物と組み合わせて投与するのに使用することもできる。組成物は、トランスフェクション易化剤(脂質、リポソーム(レシチンリポソーム、または本分野で知られている他のリポソーム(DNA-リポソーム混合物(例えばW09324640参照)など)が含まれる)、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、またはナノ粒子など)、または他の既知のトランスフェクション易化剤も含むことができる。トランスフェクション易化剤は、ポリアニオン、ポリカチオン(ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)が含まれる)、または脂質である。組成物の中のトランスフェクション剤の濃度は、4mg/ml未満、2mg/ml未満、1mg/ml未満、0.750mg/ml未満、0.500mg/ml未満、0.250mg/ml未満、0.100mg/ml未満、0.050mg/ml未満、または0.010mg/ml未満である。
【0242】
組成物は利用する投与様式に応じて製剤化することができる。注射可能な医薬組成物は、減菌されていて、無発熱物質であり、無粒子状物質であることが可能である。等張製剤または溶液を使用できる。等張性にするための添加剤は、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを含むことができる。組成物は血管収縮剤を含むことができる。等張溶液はリン酸塩緩衝化生理食塩水を含むことができる。組成物は、ゼラチンとアルブミンを含む安定剤をさらに含むことができる。安定剤(LGSまたはポリカチオンまたはポリアニオンが含まれる)は、製剤が室温または周囲温度で長期にわたって安定であることを可能にする。
【0243】
組成物を送達する方法
【0244】
本発明は、組成物を、それを必要とする対象に送達する方法にも関する。送達の方法は対象に組成物を投与することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の二重特異性抗体、scFv、CAR分子、CAR T細胞の投与、または本発明の二重特異性抗体、scFv、またはCAR分子をコードする核酸分子の投与に関する。いくつかの実施形態では、核酸分子はDNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子はRNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子はmRNA分子である。
【0245】
投与の非限定的な例に含めることができるのは、抗体、scFv、CAR分子、またはCAR T細胞の静脈内送達、DNA注入、リポソームを媒介とした送達、DNAナノ粒子によって容易にされた送達である。
【0246】
組成物の送達を受ける哺乳類として、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、アンテロープ、バイソン、スイギュウ、バイソン、ウシ科、シカ、ハリネズミ、ゾウ、ラマ、アルパカ、マウス、ラット、およびニワトリが可能である。
【0247】
組成物は異なる経路によって投与することができ、経路に含まれるのは、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入を通じて、口腔投与を通じて、胸腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内、および関節内、またはこれらの組み合わせである。獣医学で使用するため、組成物は、獣医の慣例に従って適切に受け入れることが可能な製剤として投与することができる。獣医は、ある特定の動物にとって最適な投与計画と投与経路を容易に決定することができる。組成物は、伝統的な注射器、針なし注入装置、「マイクロプロジェクタイルボンバードメント遺伝子銃」、または他の物理的方法(電気穿孔(「EP」)、「ハイドロダイナミック法」、または超音波など)によって投与することができる。
【0248】
治療の方法
【0249】
本明細書でやはり提供されるのは、疾患の治療、疾患からの保護、および/または疾患の予防を必要とする対象において、本発明の二重特異性抗体、scFv、CAR分子、CAR T細胞を、または本発明の二重特異性抗体、scFv、またはCAR分子をコードする核酸分子を対象に投与することによってその疾患の治療、その疾患からの保護、および/またはその疾患の予防をする方法である。この方法は、本発明の二重特異性抗体、scFv、CAR分子、CAR T細胞を含むか、本発明の二重特異性抗体、scFv、またはCAR分子をコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含むことができる。対象への組成物の投与は上に記載した送達法を利用してなすことができる。
【0250】
ある実施形態では、本発明により、がんを治療する、がんから保護する、および/またはがんを予防する方法が提供される。一実施形態では、この方法は、腫瘍増殖を治療する、腫瘍増殖から保護する、および/または腫瘍増殖を予防する。一実施形態では、この方法は、がん進行を治療する、がん進行から保護する、および/またはがん進行を予防する。一実施形態では、この方法は、がん転移を治療する、がん転移から保護する、および/またはがん転移を予防する。
【0251】
一実施形態では、本発明により、良性腫瘍の増殖(その非限定的な例は子宮筋腫である)を予防する方法が提供される。この方法は、良性腫瘍を持つと診断された対象に本発明の組成物の1つ以上を有効な量で投与することを含む。
【0252】
合成抗体、BiTe、scFv、CAR分子、またはCAR T細胞を対象に投与すると、その合成抗体、BiTe、scFv、CAR分子、またはCAR T細胞は、抗原と結合または反応することができる。このような結合は抗原を中和し、別の分子(例えばタンパク質または核酸)による抗原の認識を阻止し、その抗原に対する免疫応答を誘起または誘導し、そのことによって対象でその抗原に関係する疾患を治療する、その疾患から保護する、および/またはその疾患を予防する。
【0253】
組成物の用量は、1μgと10mgの間の活性成分/体重kg/回と、20μg~10mgの成分/体重kg/回が可能である。組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日ごとに投与することができる。有効な治療のための組成物投与の回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回が可能である。
【0254】
がん療法
【0255】
本発明により、がんの治療または予防の方法、または腫瘍の増殖または転移の治療と予防の方法が提供される。本発明の関連する側面により、個体において過形成細胞または腫瘍細胞の転移を予防する、予防を助ける、および/または減らす方法が提供される。
【0256】
本発明の1つの側面により、転移を阻害する必要がある個体において転移を阻害する方法が提供され、この方法は、本発明の組成物をその個体に有効量で投与することを含む。本発明によりさらに、転移を阻害する必要がある対象で転移を阻害する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載されている組成物のいずれか1つをその個体に有効な転移阻害量で投与することを含む。
【0257】
がんの治療または予防、または腫瘍の転移の治療または予防を必要とする個体におけるその治療または予防のいくつかの実施形態では、第2の薬剤(抗悪性腫瘍剤など)がその個体に投与される。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、第2の転移阻害剤(プラスミノーゲンアンタゴニスト、またはアデノシンデアミナーゼアンタゴニストなど)を含む。他の実施形態では、第2の薬剤は血管新生阻害剤である。
【0258】
本発明の組成物を使用して、ヒトと動物におけるがんを予防すること、軽減すること、最小にすること、制御すること、および/またはより小さくすることができる。本発明の組成物は、原発腫瘍の増殖速度を遅くするのにも使用できる。本発明の組成物は、それを必要とする対象に投与されるとき、がん細胞の拡散を停止させるのに使用できる。そのため本発明の組成物は、併用療法の一部として1つ以上の薬または他の医薬剤とともに投与することができる。併用療法の一部として使用されるとき、本発明の組成物によって提供される転移の減少と原発腫瘍増殖の低下により、患者の治療に使用中のあらゆる医薬または薬物療法のより有効かつ効率的な使用が可能になる。それに加え、本発明の組成物によって転移が制御されると、対象は、疾患を1つの位置に集中させるより大きな能力を持つ。
【0259】
一実施形態では、本発明により、悪性腫瘍または他のがん性細胞の転移を予防するほか、腫瘍増殖の速度を低下させる方法が提供される。この方法は、悪性腫瘍またはがん性細胞を診断された対象、または腫瘍またはがん性細胞を持つ対象に、本発明の組成物の1つ以上を有効な量で投与することを含む。
【0260】
本発明の方法と組成物によって治療できるがんの非限定的な例は、以下のもの、すなわち卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、および甲状腺がんである。
【0261】
一実施形態では、本発明により、がん転移を治療する方法として、本発明の組成物を用いて治療する前に、治療するのと同時に、または治療した後に、がんの相補的療法である外科手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、またはホルモン療法など、またはこれらの組み合わせで対象を治療することを含む方法が提供される。
【0262】
化学療法剤に含まれるのは、細胞傷害剤(例えば5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、組み換えインターフェロンアルファ-2a、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシ)、細胞傷害性アルキル化剤(例えばブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、またはエチルスルホン酸)、アルキル化剤(例えばアサリー、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラト白金、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトキシン、シス-白金、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ハイカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、およびヨシ-864)、抗有糸分裂剤(例えばアロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、および硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えばアクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン、およびタキソテール)、生物学的製剤(例えばアルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、およびインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えばカンプトテシン、カンプトテシン誘導体、およびモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えばミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26、およびVP-16)、および合成製剤(例えばヒドロキシウレア、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、シス-ジアミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オール-トランスレチノイン酸、グリアデル、およびポルフィマーナトリウム)である。
【0263】
抗増殖剤は細胞の増殖を減らす化合物である。抗増殖剤に含まれるのは、アルキル化剤、抗代謝剤、酵素、生物学的応答調節物質、さまざまな薬剤、ホルモンとアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えばフルタミドと酢酸リュープロリド)、抗エストロゲン(例えばクエン酸タモキシフェンとその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン、およびロロキシフェン)であり、特異的抗増殖剤の非限定的な追加例に含まれるのは、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチム塩化ストロンチウム-89、フィルグラスチム、ピロカルピン、デキストラゾキサン、およびオンダンセトロンである。
【0264】
本発明の化合物は、単独で、または他の抗腫瘍剤(細胞傷害/抗悪性腫瘍剤や抗血管新生剤が含まれる)と組み合わせて投与することができる。細胞傷害/抗悪性腫瘍剤は、がん細胞を攻撃して殺傷する薬剤と定義される。いくつかの細胞傷害/抗悪性腫瘍剤は、腫瘍細胞の中の遺伝材料をアルキル化するアルキル化剤である例えばシス-プラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホラミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカバジンである。他の細胞傷害/抗悪性腫瘍剤は、腫瘍細胞の抗代謝剤である例えばシトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプイリン、アザチオプリム、およびプロカルバジンである。他の細胞傷害/抗悪性腫瘍剤は、抗生剤である例えばドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、およびダウノマイシンである。これら化合物に関する多数のリポソーム製剤が市販されている。さらに別の細胞傷害/抗悪性腫瘍剤は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)であり、その中には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびエトポシドが含まれる。さまざまな細胞傷害/抗悪性腫瘍剤に含まれるのは、タキソールとその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、およびビンデシンである。
【0265】
抗血管新生剤は当業者に周知である。本発明の方法と組成物で用いるのに適した抗血管新生剤に含まれるのは、抗VEGF抗体(ヒト化抗体とキメラ抗体が含まれる)、抗VEGFアプタマー、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の既知の血管新生阻害剤に含まれるのは、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(アルファとベータが含まれる)インターロイキン12、レチノイン酸、およびメタロプロテイナーゼ-1と-2の組織阻害剤(TIMP-1と-2)である。小分子も、トポイソメラーゼ(抗血管新生活性を持つトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなど)を含め、使用することができる。
【0266】
本発明の組成物と組み合わせて使用できる他の抗がん剤の非限定的な例に含まれるのは、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼアスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロミチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン:リン酸;フルオロウラシル、フルオロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキウレア;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンIIまたはrIL2が含まれる)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸リュープロリド;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコル;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスパー;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドミムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフル;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トチプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩である。他の抗がん薬の非限定的な例に含まれるのは、20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;オール-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドクス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォライド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背側化骨形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィジコリン;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス調節物質;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザステロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキストラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン塩酸塩;ホルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;;インターフェロン;インターロイキン;ヨーベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセタート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直線状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルートテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコル;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロフィン;モノホスホリル脂質A+マイコバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤抵抗性遺伝子阻害剤;多腫瘍抑制遺伝子1に基づく療法;マスタード抗がん剤;ミカペルオキシドB;微生物細胞壁抽出液;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチプ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ナダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;窒素酸化物抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づく免疫調節物質;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン重合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモステロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe 186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモス
チム;Sdi 1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節物質;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ボロカプテイトナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシン;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフル;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;サイマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチプルプリンすず;チラパザミン;チタノセンビクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来の増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーである。一実施形態では、抗がん薬は、5-フルオロウラシル、タキソール、またはロイコボリンである。
【0267】
T細胞応答を改善する薬剤
【0268】
いくつかの側面では、合成抗体、scFv、BiTE、CARコンストラクト、またはCAR T細胞は、T細胞応答を改善する少なくとも1つの薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、T細胞応答を改善する少なくとも1つの薬剤は免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの側面では、本明細書に開示されている方法のいずれか1つで使用される免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント経路に関与するタンパク質に結合する抗体、および/またはその機能を低下させるか阻止する抗体である。
【0269】
いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)である。いくつかの側面では、CTLA-4を標的とする免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブまたはトレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)である。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1を標的とする。いくつかの側面では、PD-1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ(ONO-4538/BMS-936558、MDX1106、オプジーボ(登録商標))、ペムブロリズマブ(MK-3475、キートルーダ(登録商標))、ピジリズマブ(CT-011)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、セミプリマブ(リブタヨ(商標))、スパルタリズマブ(PDR001)、カムレリズマブ(SHR1210)、シンチリマブ(IBI308)、チスレリズマブ(BGB-A317)、トリパリマブ(JS 001)、AMP-224、AMP-514、またはスパルタリズマブ(PDR001)である。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L-1を標的とする。いくつかの側面では、PD-L-1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、AUNP12、CA-170、またはBMS-986189である。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞免疫グロブリンと、ムチン-ドメイン含有-3(TIM-3)および/またはリンパ球活性化3(LAG3)タンパク質を標的とする。いくつかの側面では、TIM3を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、MBG453;TSR-022;またはLY3321367である。いくつかの側面では、LAG3を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、IMP321(エフチラギモドアルファ)、BMS-986016(レラトリマブ)、LAG525(抗LAG-3 mAb)、REGN3767(抗LAG-3mAb)、TSR-033(抗LAG-3 mAb)、MGD013(PD-1/LAG-3二重特異性DART(登録商標)タンパク質)、またはFS118(LAG-3/PD-L1二重特異性抗体)である。
【0270】
いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤はインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)を標的とする。いくつかの側面、IDO1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、インドキシモド(D-1MT;NLG-8189)、ナボキシモド(NLG-919)、エパカドスタット(INCB024360)、BMS-986205、PF-06840003、IOM2983、またはRG-70099である。
【0271】
いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤はT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサ(VISTA)を標的とする。
【0272】
いくつかの側面では、T細胞応答を改善する前記少なくとも1つの薬剤はサイトカイン(炎症性サイトカインなど)である。いくつかの側面では、サイトカインはI型IFNまたはIL-12である。いくつかの側面では、サイトカインは、共通するガンマ鎖受容体を共有するサイトカインである。共通するガンマ鎖受容体を共有するサイトカインの非限定的な例に含まれるのは、IL-2、IL-7、IL-15、およびIL-21である。いくつかの側面では、T細胞応答を改善する前記少なくとも1つの薬剤はIL-2である。
【0273】
いくつかの側面では、T細胞応答を改善する前記少なくとも1つの薬剤はTreg細胞を標的とする。いくつかの側面では、Treg細胞を標的とする薬剤は、抗CCR4抗体、ニューロピリン-1(Nrp-1)阻害剤、またはセマフォリング-4a(Sema4a)阻害剤である。いくつかの側面では、T細胞応答を改善する前記少なくとも1つの薬剤はmTOR阻害剤である。mTOR阻害剤の非限定的な例に含まれるのは、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダホロリムス(AP-23573)、シロリムス、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、サパニセルチブ、AZD8055、およびAZD2014である。
【0274】
免疫チェックポイント阻害剤の投与様式は制限されておらず、本分野で記載されているように、免疫チェックポイント阻害剤に関して推奨されているか適することが知られている任意の様式が可能である。投与様式は、使用する具体的な免疫チェックポイント阻害剤に応じて変わる可能性がある。いくつかの側面では、本明細書に開示されている免疫チェックポイント阻害剤は、全身経路(例えば非経口経路の投与など);粘膜経路;経皮経路によって投与すること;または特定の組織に直接投与することができる。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、それを必要とする対象に、治療に有効な用量で投与される。治療に有効な用量は、治療するがんのタイプ、対象の年齢、体重、および健康と、投与の経路などの因子に依存する。
【0275】
対象に投与される免疫チェックポイント阻害剤の量は制限されておらず、内科医によって決められる任意の量、および/または本分野で記載されているか知られている任意の量が可能である。いくつかの側面では、対象に投与される免疫チェックポイント阻害剤の量は約1μg/kg~約50mg/kgの範囲(例えば5μg/kg、10μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、500μg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、または50mg/kgなど)であり、その中にはその間のあらゆる値と下位範囲が含まれる。いくつかの側面では、その用量を、約0.1mL~約1.5mL(例えば約0.2mL、約0.4mL、0.5mL、約0.6mL、約0.8mL、約1mL、または約1.2mL)の体積で投与することができ、その中にはその間のあらゆる値と下位範囲が含まれる。
【0276】
いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に開示されている合成抗体、scFv、BiTE、CARコンストラクト、またはCAR T細胞と同時に投与される。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に開示されている合成抗体、scFv、BiTE、CARコンストラクト、またはCAR T細胞よりも前に投与される。いくつかの側面では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に開示されている合成抗体、scFv、BiTE、CARコンストラクト、またはCAR T細胞の後に投与される。
【0277】
インビトロと生体外での合成抗体の生成
【0278】
一実施形態では、合成抗体、scFv、BiTE、CARコンストラクト、またはCAR T細胞はインビトロまたは生体外で生成する。例えば一実施形態では、合成抗体、scFv、CARコンストラクト、またはBiTEをコードする核酸をインビトロまたは生体外で細胞の中に導入して発現させることができる。遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は本分野で知られている。発現ベクターの文脈では、ベクターは、本分野の任意の方法によって宿主細胞(例えば哺乳類、細菌、酵母、または昆虫細胞)の中に容易に導入することができる。例えば発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的な手段によって宿主細胞の中にトランスフェクトすることができる。
【0279】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法に含まれるのは、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、粒子ボンバードメント、微量注入、電気穿孔などである。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を生成させる方法は本分野で周知である。例えばSambrookら(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する1つの好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0280】
興味あるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法に含まれるのは、DNAベクターとRNAベクターの使用である。ウイルスベクター(特にレトロウイルスベクター)が遺伝子を哺乳類(例えばヒト細胞)に挿入する最も広く使用される方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来することができる。例えばアメリ合衆国特許第5,350,674号と第5,585,362号を参照されたい。
【0281】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段に含まれるのは、コロイド分散系(巨大分子複合体など)、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油型エマルション、ミセル、混合されたミセル、およびリポソームが含まれる)である。インビトロと生体内で送達ビヒクルとして使用するための1つの代表的なコロイド系はリポソーム(例えば人工膜小胞)である。
【0282】
非ウイルス送達系を使用する場合、代表的な1つの送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用が、宿主細胞に核酸を導入するために考慮される(インビトロ、生体外、または生体内)。別の1つの側面では、核酸を脂質と会合させることができる。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部の中に封入すること、リポソームの脂質二層の中に散在させること、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着させること、リポソームの中に捕獲すること、リポソームとの複合体にすること、脂質を含有する溶液の中に分散させること、脂質と混合すること、脂質と組み合わせること、脂質の中に懸濁液として含めること、ミセルとともに含有するかミセルとの複合体にすること、または他のやり方で脂質と会合させることができる。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターが会合した組成物が溶液中でどれか特定の構造に限定されることはなく、例えば二層構造の中にミセルとして、または「崩壊した」構造で存在することができる。これら組成物は単純に溶液中に散在させることもでき、おそらくサイズまたは形が一様ではない凝集体を形成する。脂質は脂肪物質であり、天然または合成の脂質が可能である。例えば脂質に含まれるのは、細胞質の中に自然に生じる脂肪液滴のほか、長鎖脂肪族炭化水素とその誘導体(脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなど)を含有する化合物のクラスである。
【0283】
送達ベクター
【0284】
一実施形態では、本発明により、本明細書に記載されているように、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体、scFv、CAR分子、またはその断片、またはそれをコードする核酸分子を含む送達ビヒクルを含む組成物が提供される。一実施形態では、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体scFv、CAR分子、またはその断片をコードする核酸分子はmRNA分子を含む。
【0285】
代表的な送達ビヒクルの非限定的な例に含まれるのは、マイクロスフェア、微粒子、ナノ粒子、ポリメロソーム、リポソーム、およびミセルである。例えばいくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、本発明の二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体またはその断片をコードする核酸分子をロードされた脂質ナノ粒子である。一実施形態では、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体をコードする核酸分子はmRNA分子を含む。一実施形態では、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体をコードするmRNAは、配列番号1に示されているDNA配列に対応するか、そのDNA配列から転写される。一実施形態では、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体をコードするmRNAは配列番号2をコードする。一実施形態では、抗FSHR scFvをコードするmRNAは配列番号3をコードする。
【0286】
いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、ロードされたカーゴを制御放出、遅延放出、または連続放出する。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、送達ビヒクルを治療部位に向かわせるターゲティング部分を含む。
【0287】
ある実施形態では、コードmRNAの送達によるタンパク質の発現には、タンパク質、プラスミドDNA、またはウイルスベクターを用いる方法と比べて多くの利点がある。mRNAをトランスフェクトしている間、望むタンパク質のコード配列が細胞に送達される唯一の物質であるため、プラスミド骨格、ウイルス遺伝子、およびウイルスタンパク質に関係するあらゆる副作用が回避される。より重要なのは、DNAとウイルスに基づくベクターとは異なり、mRNAはゲノムに組み込まれるリスクがなく、タンパク質の産生がmRNA送達の直後に始まることである。例えば高レベルのタンパク質の循環が、コードmRNAを生体内に注入してから15~30分以内に測定されている。ある実施形態では、タンパク質ではなくmRNAを使用することには多くの利点もある。循環中のタンパク質の半減期は短いことがしばしばあるため、タンパク質を用いた治療は頻繁な投与を必要とする可能性があるが、mRNAは数日間にわたる連続的なタンパク質産生のための鋳型を提供する。タンパク質の精製は問題であり、タンパク質は、副作用を起こす凝集体と他の不純物を含有する可能性がある(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0288】
宿主細胞の中にmRNA配列が存在することの確認に多彩なアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに含まれるのは、例えば当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ(ノーザンブロッティングやRT-PCRなど);「生化学的」アッセイ(例えば免疫応答を引き起こす手段(ELISAやウエスタンブロット)による、または本発明の範囲に入る薬剤を同定するための本明細書に記載のアッセイによる、特定のペプチドの存在または不在の検出など)である。
【0289】
操作された免疫細胞を用いた送達の方法
【0290】
さまざまな実施形態では、本発明は、腫瘍細胞を標的とするCAR分子を発現するように操作された免疫細胞を含む組成物に関する。腫瘍細胞を標的とする本発明のCAR分子を発現するように操作できる免疫細胞の非限定的な例に含まれるのは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージである。いくつかの実施形態では、免疫細胞はキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む。したがっていくつかの実施形態では、本発明は、本発明のFSHR特異的CAR分子の発現または送達のためのCAR T細胞の利用に関する。
【0291】
一実施形態では、本発明により、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を標的細胞に送達し、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を発現する操作された免疫細胞を提供する方法が提供される。一実施形態では、免疫細胞を操作し、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を内在性分泌させる。一実施形態では、免疫細胞を操作し、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を表面で発現させる。
【0292】
さまざまな実施形態では、本発明は、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を発現するように操作されている操作されたT細胞(STAb-T細胞)によりT細胞リダイレクト二重特異性抗体(T-bsAb)を内在性分泌させるための組成物に関する。さまざまな実施形態では、この方法は、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体を発現するように操作されたSTAb-T細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、STAb-T細胞はキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む。したがっていくつかの実施形態では、本発明は、二重特異性抗FSHR免疫細胞誘引抗体の発現または送達のためのCAR T細胞の利用に関する。
【0293】
実施例
【0294】
本発明を以下の実施例においてさらに説明する。これら実施例は本発明の好ましい実施形態を示しているが、説明だけのために与えられていることを理解すべきである。上記の議論とこれらの実施例から当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができるため、その精神と範囲から逸脱することなく、さまざまな用途と条件のために本発明に対してさまざま変更と改変をなすことができる。したがって、本明細書に示されて記載されている改変に追加される本発明のさまざまな改変は、これまでの記述から当業者にとって明らかであろう。そのような改変も添付の請求項の範囲に入ることが想定されている。
【0295】
実施例1:FSHRを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャをコードするDNAの予備的研究
【0296】
本明細書に示されている研究では、FSHRを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャが開発されることを実証する。FSHR二重特異性抗体は、ヒトFSHRをトランスフェクトされたK562細胞に結合し(図1)、インビトロでT細胞の存在下においてOVCAR3細胞の殺傷を促進する(図2)。図3図4は、xCelligenceによって評価したFSHR×CD3二重特異性の殺傷応答を示す。生体内に放出されたFSHR×CD3二重特異性はNSGマウスにおいてOVCAR3腫瘍細胞の増殖を制御する(図5)。これらのデータは、インビトロと生体内で強力な腫瘍殺傷を示す新たなFSHR T細胞誘引二重特異性が開発されたことを実証している。
【0297】
実施例2:表面に発現した卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)を標的とするモノクローナル抗体を生成させ、それを操作して卵巣がん標的免疫療法のための養子免疫に参加させる
【0298】
OC治療の分野における大きな進歩にもかかわらず、再発OCは致死性が大きいがん表現型と関係する悪い予後を相変わらず示す(Kurnit et al., 2021, Obstet Gynecol, 137(1):108-21;Izar et al., 2020, Nat Med, 26(8):1271-9;Hamanishi et al., Int Immunol, 28(7):339-48)。OCが免疫療法を用いた治療に好ましく応答するであろうと推定する多くの理由があるが;それでもOC患者の間での免疫療法の応答率は比較的低いままである(Coleman et al., 2016, Nat Rev Clin Oncol, 13(2):71-2)。多数の異なる免疫標的が、能動的アプローチ(メソテリン、NY-ESO-1、p53、HER2/Neu、WT-1)、受動的アプローチ(H7-B4、EpCAM、CA-125、CD-25、葉酸受容体α、PD-1/PDL-1、CTLA-4)、および養子アプローチ(養子T細胞療法、天然のT細胞療法、遺伝子改変されたT細胞療法、DC療法)を通じてOCを標的とするのに過去数年間使用されてきた(Schwab et al., 2014, Immunotherapy, 6(12):1279-93)。特に、標的療法の開発における1つの主要な障害は、オフターゲット組織ではなく腫瘍細胞の表面でだけ特異的に発現する標的を見いだすことである(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)。FSHRは、卵巣顆粒膜細胞の表面で選択的に発現する1つのそのような標的である(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)ため、それをOCにおける潜在的な標的と見なすことを可能にするツールが開発された。卵胞刺激ホルモンすなわちFSHは1つの極めて重要な卵巣上皮細胞増殖誘導因子であり、FSHRに結合することによって機能する。FSHRの過剰発現は、発がん経路の上方調節と増加したEOC増殖に責任がある。したがってFSHRは、T細胞をOCに向かわせるための1つの重要な治療標的として利用できる可能性がある(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)。ワクチン接種によってFSHRを標的とすることの腫瘍に対する影響、忍容性、および安全性に関する可能性が、免疫正常マウスモデルを用いて評価された(Perales-Puchalt et al., 2019, Mol Ther, 27(2):314-25)。最適化されたDNA配列の注射とそれに続く電気穿孔により、そのタンパク質が、強力な細胞免疫応答と液性免疫応答を誘起することのできる天然の立体配座で過剰発現する(Tebas et al., 2017, N Engl J Med;Yan et al., 2013, Cancer Immunol Res, 1(3):179-89)。ここではこの仕事を、抗FSHRモノクローナル抗体を生成させるこのアプローチを利用して拡張し、得られた試薬を新規な生物製剤として研究する。強力な抗FSHR抗体の生成および特徴づけと、OCの免疫療法のためのツールとしての応用を記述する。いくつかのクローンが同定され、その中から、追加研究のため、フロー分析において一貫して大きな細胞結合能力だったことに基づいてクローンD2AP11が選択された。このmAbは、多くの方法(フローサイトメトリー、IFA、および免疫組織化学が含まれる)によるサンプル中のFSHR発現の検出をサポートする。これは、追加の研究が、この新たな試薬の臨床での利用の可能性を広げる(臨床では、個別化された医学のアプローチのため、患者サンプルのFSHRの状態を判断する助けになる可能性がある)ために必要であることを示唆する。
【0299】
がん療法のための抗体技術の分野における1つの重要な最近のツールは、二重特異性T細胞エンゲージャのアプローチである(Bhojnagarwala et al., 2022, Molecular Therapy: Oncolytics. S2372-7705(22):00092-4)。二重特異性T細胞エンゲージャは腫瘍細胞を殺傷するためCD4とCD8 T細胞の両方をリダイレクトすることができ、T細胞による固有の抗原特異的TCR認識とは独立である(Dao et al., 2015, Nat Biotechnol, 33(10):1079-86)。これらの大半は臨床前研究と初期臨床研究だが、ごく少数の承認されたがん二重特異性製品が存在する。ビーリンサイト(ブリナツモマブ)は急性リンパ芽球性白血病(ALL)のための療法として使用され、B細胞上のCD19を標的とし、連結した抗CD3結合を通じてT細胞を誘引する(Sheridan, 2021, Nat Biotechnol, 39(3): 251-4);テベンタフスプ-tebn(キムトラック、Immunocore Limited)は、二重特異性gp100ペプチド-HLA指向性CD3 T細胞エンゲージャであり、切除不能または転移ブドウ膜悪性黒色腫を持つ患者に対して承認された(FDAはテベンタフスプ-tebnを切除不能な、または転移ブドウ膜悪性黒色腫について承認した。2022年4月20日にアクセス。fda.gov)ため、このアプローチの重要性を裏づけている。ブリナツモマブは、マイナスの予後因子によって示される再発した/難治性の前駆B細胞性ALLを持つ成人で抗白血病機能を示した。グレード3以上で報告が最も多い有害事象に含まれるのは、発熱性好中球減少症、好中球減少症、および貧血である。患者は、グレード3のサイトカイン放出症候群(2%)と、最悪グレード3(11%)または4(2%)の神経学的事象を示した(Topp et al., 2015, Lancet Oncol, 16(1):57-66)。テベンタフスプを用いた治療により、以前に治療を受けていない転移ブドウ膜悪性黒色腫患者の全生存期間がより長くなった。報告されている最も多い治療関連有害事象は、サイトカインを媒介とする事象と皮膚関連の事象であり、その中には発疹(83%)、発熱(76%)、および掻痒(69%)が含まれる。しかしこれら事象の発生と重症度は最初の3または4回の投与の後に低下することが報告された(Nathan et al., 2021, N Engl J Med, 385(13):1196-206)。重篤な疾患の出現におけるこれら二重特異性T細胞エンゲージャのアプローチ304の利益は重要であるように見えるため、さらなる研究が、重篤な疾患を持つ患者の利益となる可能性がある。
【0300】
D2AP11抗FSHRクローンの特異性に基づき、これがOC二重特異性T細胞エンゲージャ(TCE)アプローチのための1つの重要な標的になりうると推測した。D2AP11-TCEは、一群の異なるヒト卵巣腫瘍細胞で評価したとき、腫瘍特異的細胞殺傷において非常に強力であった。異なる化学療法(HDAC阻害剤、Wee阻害剤、微小管安定剤、アルキル化剤などが含まれる)に対して抵抗性を示す細胞系(Sakai et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6381-6)が含まれていた。OC患者の約23%が最初の化学療法から6ヶ月以内に再発し、別の60%の患者が6ヶ月後の再発を報告された(Pignata et al., 2017, Ann Oncol. 28(suppl_8):viii51-viii6)。治療逃避は、卵巣がん治療アプローチにとって大きな障害である。D2AP11-TCEは、これらの異なる薬抵抗性OC細胞系、すなわちOVISE、CaOV3、倉持、OVCAR3、OVCAR4、およびPEO-4に対して有意な殺傷を示した。BRCA1またはBRCA2腫瘍抑制遺伝子における生殖細胞系変異は相同組み換えにおいて重要な役割を果たしており、EOCのケースの約10%に見られる(Safra et al., 2011, Mol Cancer Ther. 10(10): 2000-7;Hennessy et al., 2009, Lancet. 374(9698):1371-82)。散発性の高異型度漿液性OCのほかBRCA関連OCにおいて優れた活性が実証されているが、残念なことに、古典的化学療法と同様、多くの患者が、ポリ-ADP-リボースポリメラーゼ阻害剤(PARPi)治療に対して最終的に抵抗性を獲得すると報告されている(Yang et al., 2020, Front Immunol, 11:577869;McMullen et al., 2020, Cancers (Basel), 12(6);Franzese et al., 2019, Cancer Treat Rev, 73:1-9;Liu et al., 2014, Gynecol Oncol, 133(2):362-9)。これは、そのようなOC腫瘍を標的とするアプローチの開発が相変わらず重要であることを裏づける。興味深いことに、D2AP11-TCEは、BRCA1(OVISE)とBRCA2(倉持、PEO-4)に変異を有する細胞に対してに加え、PARPi(PEO-4)に対して抵抗性を示す遺伝子シグネチャに対しても非常に有効であった(Sakai et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6381-6)。したがってD2AP11-TCEは、OC療法において以前に文書化されているさまざまな一群の遺伝的逃避と免疫逃避に対して臨床的な利益があるように見える。これらの研究は、D2AP11-TCEが他の治療アプローチ(化学療法、小分子、および免疫調節薬(チェックポイント阻害剤など)など)との組み合わせで価値を持つ可能性があることを裏づける根拠を与える。しかしこの疑問に取り組む将来の研究が重要である。
【0301】
直接的DNA生体内送達を利用し、OCチャレンジモデルにおいてこの新たな可能性のあるツールを迅速に評価した。特に、FSHRを標的とするT細胞エンゲージャが、卵巣腫瘍を有するマウスモデルにおいて生体内で非常に強力に腫瘍量/腫瘍進行を減弱させることが見いだされ、移植された腫瘍がほぼ消失した。12人の異なる健康なヒトドナーからのPBMCをこれらの研究で使用した。これも、FSHRのために開発された、scFvに基づく最初の治療剤である。これは、scFvに基づく他の治療剤(OCのためのFSHRを標的とするCAR T細胞など)の設計に有用である可能性がある。
【0302】
これらの研究は、生体内での腫瘍の増殖に影響を与えるため、OCの1つの主要なサブセットについてFSHRを標的とすることの有用性と、FSHRとCD3に焦点を絞った非常に免疫が強力な二重特異性ツールの有用性を初めて実証する。多彩な集団のOCを標的とすることと、この疾患の治療に現在利用できるツールを補足する能力が、追加のFSHR+腫瘍モデルにおける研究をサポートする。FSHRを発現している多彩な卵巣がんとがんのためのこの新たなツールの潜在的なトランスレーショナルな進展のため、さらなる研究が必要とされる。
【0303】
実験で用いる方法をこれから記述する
【0304】
細胞系と動物
【0305】
研究で使用する細胞系に含まれるのは、ID8-Defb29/Vegf-a-FSHR、ID8-Defb29/Vegf-a、OVCAR3、CaOV3、およびTOV-21G、OVISE、OVCAR4、PEO-4、倉持細胞、ヒト胚性腎臓293T、Expi293F、胃腺癌AGS、およびマウス骨髄腫細胞系Sp2.0/0である。OVCAR3、OVISE、および倉持細胞には、以前に記載されているようにレトロウイルスを用いてヒトFSHRを形質導入した(Perales-Puchalt et al., 2019, Mol Ther, 27(2):314-25)。K562とA20をATCCから購入し、レトロウイルスを用いて形質導入してヒトとマウスのFSHRをそれぞれ発現させた。発現ベクターpBMN-I-GFPはAddgeneから購入した。
【0306】
FSHR×CD3 TCEの設計
【0307】
FSHR×CD3 DNAがコードする二重特異性T細胞エンゲージャ(TCE)を、FSHR MAb(D2AP11)のコドン最適化scFvをコードした後、IgEリーダー配列の付加によって改変したUCHT1抗ヒトCD3抗体のscFvをコードすることによって設計した。このコンストラクトを、改変されたpVax1発現ベクターにサブクローニングした(Perales-Puchalt et al., 2019, JCI Insight. 4(8))。FSHR×CD3 TCEをD2AP11-TCEと表記する。
【0308】
フローサイトメトリー
【0309】
のためのBD LSRIIフローサイトメータを細胞の染色に使用した。BD FACS Ariaセルソーター(BD Biosciences)を使用し、FSHRを安定に発現している細胞をソーティングした。使用した抗ヒト抗体には蛍光色素を直接標識した。PE-二次抗ヒト(H+L)(Invitrogen)、PE/AF647-二次抗ヒトF(ab’)2(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc)、およびAPC二次抗マウスIgG(BioLegend)を使用した。生/死バイオレット生死判定キット(Invitrogen)を使用して死んだ細胞を分析から除外した。
【0310】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
【0311】
D2AP11のアイソタイプを判断するため、PBSの中でELISAプレートを一晩D2AP11で覆った。その後、プレートをブロックし、以下のHRPで標識した抗体を添加した:抗マウスIgA、抗マウスIgM、抗マウスIgG1、抗マウスIgG2a、抗マウスIgG2b、392抗マウスIgG3、抗マウスカッパ軽鎖(すべて、Bethylから)。
【0312】
サイクリックAMPの測定
【0313】
25,000個のK562細胞またはK562-hFSHR細胞を96ウエルのプレートに播種した。温めたPBSで細胞を2回洗浄した後、D2AP11抗体あり、またはなしで、0.5mMのIBMX(Cayman chemicals)を含む100μlの無血清RPMIの中に再懸濁させた。37℃で30分間インキュベートした後、FSH(50ng/mlまたは1μg/ml)またはPBSを添加した。1時間後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、溶解させ、サイクリックAMPの測定を製造者の指示(Cell Signaling)に従って実施した。
【0314】
イムノブロッティング
【0315】
タンパク質の抽出、変性、およびウエスタンブロッティングを以前に記載されているようにして実施した(Bordoloi et al., 2021, ACS Pharmacol Transl Sci, 4(4):1349-61;Tesone et al., 2016, Cell Rep, 14(7):1774-86;Bordoloi et al., 2021, Genes Cancer, 12:51-64)。抗ホスホ-p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)(#9101、Cell Signaling)と抗p44/42 MAPK(Erk1/2)(クローン137F5、Cell Signaling)を用いて膜をブロットした。ImageQuantLAS 4000(GE Healthcare Life Sciences)を用いて画像を取得した。D2AP11-TCEの発現を検出するため、ウサギ抗ヒトF(ab’)2(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)とヤギ抗ウサギ二次抗体(LiCOR)を使用し、LI-COR Odyssey CLxイメージャを用いて膜をスキャンした。
【0316】
ルシフェラーゼ発現の測定を通じたインビトロ細胞傷害分析
【0317】
96ウエルのプレートの中に10,000個のOVCAR3細胞/ウエルで播種し、18時間後に初代末梢血単核細胞(PBMC)を添加した。4時間にわたって両者をインキュベートした後、細胞を7AAD(Invitrogen)、アネキシンV(Biolegend)、および抗ヒトCD45(Biolegend)で染色し、次いでフローサイトメトリーに基づく細胞傷害アッセイを以前に記載されているようにして実施した(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)。K562とK562-FSHRにホタルルシフェラーゼを安定にトランスフェクトした。ルシフェラーッゼを発現している20,000個のK562とK562-FSHRを96ウエルのプレートに播種し、PBMCとともに5時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼの発現をCytoTox Glo(Promega)を用いて以前に記載されているようにして測定した(Zhang et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6506-14)。細胞傷害を、(最大生存率対照-個々のウエル)/(最大生存率対照-最大死亡率対照)×100により、対照(マウスIgG2aアイソタイプ対照C1.18.4を持つPBMC)に対する割合または相対値として計算した。
【0318】
xCelligenceリアルタイム細胞分析装置を用いたインビトロ細胞傷害分析
【0319】
xCelligenceリアルタイム細胞分析装置(RTCA)(Agilent Technologies、アメリカ合衆国)を用い、インピーダンスに基づいてインビトロ細胞傷害アッセイを実施した。インピーダンスは、細胞指数と呼ばれる任意単位として表わした(Curdagi et al., 2021, Mol Ther)。xCelligence RTCA装置の96ウエルの使い捨て減菌E-プレートに標的細胞を最終細胞濃度1×10~2×10個の細胞/ウエルで播種した。実験中はこの装置がCOインキュベータの中に入れられており、制御ユニットにケーブルで接続することによって制御されていた。96ウエルのE-プレートをxCelligence RTCA装置の中に入れて18~24時間インキュベートした。その後、エフェクタ細胞(ヒトPBMC;E(エフェクタ):T(標的)比=5:1/10:1)と処理を加えた。リアルタイム分析を3~7日間実施した。電気伝導度をxCelligence装置によって15分ごとに無単位の細胞指数(CI)パラメータに変換し、画像は1時間間隔で取得した。生成したデータはエフェクタ細胞とTCEを標的細胞に添加した時点に合わせて規格化し、RTCA/RTCA Proソフトウエアを用いて分析した。健康なドナーからのヒトPBMCとT細胞はペンシルヴェニア大学のHuman Immunology Coreによって提供された。
【0320】
免疫組織化学と免疫細胞化学
【0321】
マウス腫瘍をOCT(TissueTek)の中で凍結させ、凍結した切片を切断した。HEK293T細胞を、ポリ-L-リシンで覆ったカバースライド(Sigma)の上で増殖させた後、ヒトまたはマウスのFSHR発現ベクターを用いてこの細胞にトランスフェクトした。次いでスライドを4%パラホルムアルデヒドで438固定し、0.5%トリトンX-100を含むPBSで透過性にした。切片を5%の正常なヤギ血清でブロックした後、D2AP11抗体で染色し、それに続けてヒトまたはマウスのIgGに対して特異的なAF647標識二次抗体(Invitrogen)で染色した。Leica TCS SP-5共焦点顕微鏡とLeica LAS-Xソフトウエア(免疫細胞化学)、またはニコンECLIPSE 80i顕微鏡とNIS-エレメントイメージング(免疫組織化学)を利用してスライドを見た。TMAスライド(US Biomax)を免疫組織化学分析のためにパラフィン処理し、再水和させた後、抗原を回収し、5%の正常なヤギ血清でブロックし、D2AP11抗体で染色し、次いでビオチニル化された抗マウス二次抗体(Vector Laboratories)で染色した。その後、TMAスライドをペルオキシダーゼ溶液(Vector Laboratories)とともに、その後DAB基質とともにインキュベートし、ヘマトキシリン(Leica)で対比染色した。ニコンNISエレメントイメージングシステム(20倍、スケール:500μm)を用いてスライドを見て画像を取得した。
【0322】
サイトカイン分泌プロファイルの分析
【0323】
OVCAR3FSHR(標的)細胞を1×104個の細胞/ウエルの密度で播種した。一晩インキュベートした後、PBMC(エフェクタ細胞;E:T=5:1)と処理(D2AP11-TCEとpVax1)を標的細胞に加えた。48時間後、上清を回収し、分泌されたサイトカインを、LEGENDplex(商標)ヒトCD8/NKパネル多重ビーズに基づくアッセイ(Biolegend)により製造者のプロトコルに従って分析した。
【0324】
腫瘍チャレンジ
【0325】
NOD/SCID-γ(NSG)マウスにK562細胞とK562-FSHR細胞でチャレンジした。NSGマウスの右脇腹に4×106個のK562細胞またはK562-FSHR細胞を皮下注射した。7日後に腫瘍を触知できるようになったとき、マウスにpVax1(100μg)またはD2AP11-TCE(100μg)を接種した。同日に発現ベクターが与えられたとき、4×10個のヒトT細胞を各マウスに腹腔内注射した。マウスにはDNAを1週間空けて2回接種した。OVCAR3-FSHRでチャレンジしたマウスモデルのため、マウスの右脇腹にOVCAR3-FSHR細胞を皮下接種した。14日後に腫瘍を触知できるようになったとき、マウスにpVax1(100μg)またはD2AP11-TCE(100μg)を接種した。同日、10×10個のヒトT細胞を各マウスに腹腔内注射した。マウスには2週間空けて2回接種した。腫瘍のサイズをノギス測定によって定期的にモニタした。移植片対宿主病(GVHD)の兆候が現われたとき、マウスを安楽死させた。腫瘍体積(V)は、式V=[(長さ×幅)]/2によって計算した;幅は、より小さい測定値を持つ側である。動物実験はWistar Instituteの施設内動物実験委員会によって承認された。健康なドナーからのヒトT細胞はペンシルヴェニア大学のHuman Immunology Coreによって提供された。
【0326】
統計分析
【0327】
すべての統計分析をGraph Pad Prismを用いて実施した。p値<0.05を統計的に有意と見なした。実験群の平均の差は、対応のないスチューデントの両側t検定を用いて、または3つ以上の定量的変数を測定した場合には一元配置分散分析を用いて計算した。誤差棒は平均の標準誤差を表わす。それぞれの時点における腫瘍サイズの間の比較は、二元配置分散分析をフィッシャーの最小有意差(LSD)検定とともに用いて実施した。
【0328】
実験結果をこれから記述する
【0329】
抗ヒトFSHR抗体の生成とフローサイトメトリースクリーニング
【0330】
FSHRは腫瘍関連抗原であり、卵巣がん(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500)、前立腺がん(Mariani et al.,, 2006, J Urol, 175(6): 2072-7)、およびがんの80%の新生血管(Radu et al., 2010, N Engl J Med, 363(17): 1621-30)に存在する。これは、7回膜貫通ドメインを持つGタンパク質共役型受容体である(Fan et al., 2005, Nature, 433(7023):269-77)。この複合体構造は古典的抗原タンパク質のアプローチにとって難題である。直接的な生体内免疫化のため、ヒトFSHRのコドン最適化配列(図6A)を生成させ、表面の推定天然抗原構造に対する応答が生じるようにした。直接的なプラスミド注入に続く生体内電気穿孔を利用して抗体応答を生じさせるため、特徴づけられた発現ベクターにFSHR cDNAをサブクローニングし(図6B)、マウスに接種した。動物は隔週で免疫化し、各免疫化の1週間後に血清を回収して抗体レベルを分析した(図6C)。細胞膜の中に発現した天然のFSHRに結合すると考えられる抗FSHR抗体を検出するため、K562細胞にヒトFSHR(K562-FSHR)を安定に形質導入して過剰発現させた。組み換えFSHRが正しく折り畳まれて機能することを検証するため、卵胞刺激ホルモン(FSH)に対するK562-FSHR細胞の応答を調べた。予想通り、K562-FSHRはFSHで刺激されるとサイクリックAMPの産生とERKリン酸化を増加させたが、親K562では応答が観察されなかった(図6DとE)。予備的な実験において、抗FSHR抗体D2AP11がFSHRのFSH刺激によってAMP産生を部分的に阻止することが観察された。FSHの添加がなくD2AP11抗体だけの存在下でのK562-FSHR細胞におけるcAMP産生に違いは見られなかった(図6F)。これは、機構を理解し、この観察をさらに確認するのにこの領域での追加の研究が重要であることを示唆する(Zhu et al., 2018, Trends Endocrinol Metab, 29(8):571-8024;Haldar et al., 2022, Int J Biol Sci, 18(2):675-92)。免疫血清がFSHRに結合する能力をモニタするため、K562(GFP-)細胞とK562-FSHR(GFP+)細胞を同じ比率で組み合わせ、1:1000まで希釈した血清を添加した後、抗マウスIgG APCで標識した二次抗体を添加し(図7AとB)(Sakai et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6381-6)、K562-FSHRの平均蛍光強度(MFI)の倍数変化を野生型K562と比較して求めた。1:1000の血清希釈液が20倍のMFIを超えたとき、FSHRを過剰発現しているA20細胞を用いた追加免疫により、直前の免疫化から3週間後に最後の免疫化を実施した。、追加免疫をされた動物を4日後に安楽死させ、記載されているようにしてハイブリドーマを生成させた(Choi et al., 2020, Hum Vaccin Immunother, 16(4):907-18;Bordoloi et al., 2021, ACS Pharmacol Transl Sci, 4(4):1349-61)。融合の2週間後、15個の96ウエルのプレートからの上清をフローサイトメトリーを利用してスクリーニングし、可能性のあるハイブリドーマを分析した(図7C)。MFIの倍数変化値の範囲は0.2~42.2であった。MFIの倍数に基づく上位20のクローンをさらに分析するため増殖させた(図7D)。大きな結合特異性に基づき、1つの非常に強力なクローンD2AP11(MFI倍数変化42.2)に絞り込んだ。次に、絞り込んだこの強力な抗体の結合能力を、4つの異なる市販のマウス抗ヒトFSHR抗体と、2500ng/ml~9.77ng/mlの範囲の異なる濃度で比較した。図8Aに示されているように、D2AP11は大きな特異的結合を示し(K562-FSHR細胞)、非特異的結合は示さなかった(K562細胞)。市販のAb#1は、K562-FSHR細胞に対して2500、1250、および625ng/mlの濃度で大きな結合を示したが、FSHRを発現していない野生型K562細胞へは非特異的結合を示した。市販のAb#3は、2500と1250ng/mlで中程度の結合を示したが、K562細胞へは大きな非特異的結合を示した。市販のAb#2と市販のAb#4の場合には、最大で2500ng/mlまでの異なる濃度で比較したときFSHRへの結合は観察されなかった。特に、D2AP11 mAbは9.77ng/mlという低い濃度で強力な結合を示した。この強力なmAbクローンの用量依存性結合が図8Bに示されており、ヒトFSHR研究のための新たな強力なツールとなる。
【0331】
抗FSHR抗体はFSHRに大きな特異性で結合する
【0332】
一群の異なる健康なヒト組織(膵臓、肺、心臓、小腸、大腸、子宮、卵巣、および卵管内皮が含まれる)を染色することにより、D2AP11抗FSHR抗体を特異性に関して細かく特徴づけた。健康な組織の大半では、D2AP11の有意な結合は観察されなかった。D2AP11の結合は卵巣と卵管内皮で観察され、大きな結合が、異なる卵巣がん組織で観察された(高異型度の漿液性癌、低異型度の漿液性癌、明細胞癌、未分化胚細胞腫、粘液性癌、内胚葉洞癌、および転移腺癌)(図9AとB)。追加の健康な組織と卵巣がん組織に関するさらなる研究が重要である。Her2を標的とする二重特異性免疫細胞エンゲージャに焦点を絞り、どのモノクローナル抗体と小分子阻害剤が開発されて現在臨床試験が進行しているかに注目しながら、「ヒトタンパク質アトラス」のデータに基づいてFSHRの発現の違い(RNA)をERBB2/Her2と比較した(FDAはテベンタフスプ-tebnを切除不能な、または転移ブドウ膜悪性黒色腫について承認した。2022年4月20日にアクセス。fda.gov;proteinatlas.org)。55種類の異なるヒト組織タイプ(proteinatlas.org)に関するこれらの比較は、FSHRが卵巣がん標的免疫療法のための追加研究に値することの裏づけとなる可能性が大きい(図9C図10)。次いでD2AP11を、FSHRを発現している異なる細胞への結合に関してさらに詳細に特徴づけた。D2AP11は、FSHRを自発的に発現する卵巣がん細胞系に結合する(Perales-Puchalt et al., 2017, Clin Cancer Res, 23(2):441-500;Zhang et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6506-14)。細胞系(CAOV3、OVCAR3、およびTOV-21G)はすべて、D2AP11染色によってFSHRを予想されたように発現した(図11A)。D2AP11によって誘起されたシグナルがFSHRに対応していたことをさらに確認するため、TOV-21G細胞系においてクリスパーによるFSHRの削除を実施した。D2AP11抗体を用いたフローサイトメトリー染色により、クリスパーによるFSHRノックアウトの後はTOV-21G細胞系への結合がないことが示された(図11B)。FSHRと相同なタンパク質であるLHCGR(配列相同性はECDで約46%、7TMDで約72%)(Ulloa-Aguirre et al., 2018, Front Endocrinol (Lausanne), 9:707)をトランスフェクトされたK562細胞はフローサイトメトリー分析によって交差反応性を示さなかったため、このクローンはFSHRに対して非常に特異的であった(図11C)。マウスモデル疾患は新たな療法の生体内での有効性と安全性の研究にとって重要であるため、D2AP11がマウスFSHRにも結合できるかどうかをさらに調べた。マウスFSHRはマウス腫瘍系A20とID8-Defb29/Vegf-aで発現したため、トランスフェクトされた細胞とトランスフェクトされていない細胞へのD2AP11の結合をフローサイトメトリーによって再度調べた。D2AP11はヒトFSHRと同様にマウスFSHRにうまく結合することが見いだされた(図11D)。
【0333】
FSHR+腫瘍細胞を検出するための抗FSHR抗体
【0334】
生物サンプルからのタンパク質の免疫組織化学検出は、腫瘍または他の試料からのタンパク質発現を明らかにして予後予測または治療の目的でそれらタンパク質をよりよく分類するための1つの一般的なやり方である。D2AP11が免疫組織化学においてFSHR+腫瘍細胞を検出するかどうかをさらに調べるため、NSG免疫不全マウスの体内に固形腫瘍を生じさせた。腫瘍を生じさせるため、500万個のK562、K562-FSHR、OVCAR-3、またはTOV-21Gを含む50%PBS/マトリゲル(Corning)をNSGマウスの腋窩部の脇腹に注射した。D2AP11は、凍結した腫瘍切片からのFSHRを検出した(図12A)。ヒトFSHRを形質導入された293T細胞をD2AP11で染色した。D2AP11はポリクローナル抗ヒト抗体と同様にヒトFSHRに結合できたが、モックをトランスフェクトされた293T細胞には結合できなかったため、この活性が確認される(図12B~C)。
【0335】
抗FSHR抗体は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する
【0336】
D2AP11のアイソタイプを明らかにするためELISAを実施すると、D2AP11がIgG2aであり(図12D)、ADCCを誘導できるアイソタイプであることが見いだされた(Akiyama et al., 1984, Cancer Res, 44(11):5127-31)。最初に、ADCCの能力を、FSHRあり、またはなしでK562を用いて調べた。D2AP11はK562-FSHRに対するPBMCの細胞傷害活性を増大させることができたが、K562に対してはできなかった(図12EとF)。改変されていないFSHR+卵巣がん細胞系に対してADCCを誘導する能力を明らかにするため、OVCAR3細胞をPBMCの中でD2AP11または無関係なIgG2a抗体の存在下にて共培養した。卵巣がん細胞の中のFSHRの生理学的発現レベルは、特に抗体の用量を増やしていくと、D2AP11による細胞傷害が標的とするのに十分であることが見いだされた(図12G)。
【0337】
新規な二重特異性T細胞エンゲージャの標的となるFSHRの生成、発現、および結合
【0338】
二重特異性T細胞エンゲージャは、モノクローナル技術の分野における最近の顕著な発展を代表する。D2AP11抗FSHR抗体は初期レベルのADCCを示したため、この可能性の改善を試みた。FSHRを標的とするTCE(D2AP11-TCE)を設計した(Gary et al., 2021, iScience, 24(7):102699;Patel et al., 2018, Cell Rep, 25(7):1982-93 e4;Perales-Puchalt et al., 2019, JCI Insight. 4(8))。FSHR mAbのscFvの遺伝子を最適化し、(UCHT1から改変した)抗CD3をコードするよう開発された最適化配列のscFvと融合させた(図13AとB)。Expi293F細胞にDNAをトランスフェクトするとD2AP11-TCEがインビトロで効率的に発現した(図13C)。この新規な二重特異性は、天然のFSHR発現がないK562細胞への非特異的結合を示さず(図13D)、K562-FSHR細胞への結合を維持した(図13E)。FSHRへの結合は、CaOV3細胞(図13F)とOVCAR3-FSHR細胞(図13G)でさらに確認された。D2AP11-TCE二重特異性のCD3への結合は、初代ヒトT細胞を用いて確認された(図13H)。
【0339】
D2AP11-TCEは多くの卵巣腫瘍系において強力な殺傷を誘導した
【0340】
FSHRを標的とする新規な二重特異性T細胞エンゲージャ;D2AP11-TCEがT細胞の活性化を通じて細胞傷害を誘導する能力を明らかにするため、xCelligenceリアルタイム細胞分析装置を用い、インビトロ細胞傷害アッセイをインピーダンスに基づいて実施した。標的細胞(OVISE、CaOV3、OVCAR3-FSHR、OVCAR4、PEO-4、および倉持-FSHR)をxCelligence RTCA装置の中に入れて18~24時間インキュベートした後、ヒトPBMCとD2AP11-TCEを添加した。HEK293T細胞を対照として使用した;FSHR陰性細胞系(Urbanska et al., 2015, Cancer Immunol Res, 3(10):1130-7)。特に、FSHR陰性HEK293T細胞に対するオフターゲット殺傷は観察されなかった(図14AとB)。追加の対照として、FSHRを発現していない他の2つの細胞(例えばAGS胃腺癌(図14CとD)とWM3743(図14E)ヒト悪性黒色腫細胞)を使用すると、D2AP11-TCEはこれら2つの細胞でもオフターゲット毒性を誘導しなかった。FSHRを発現しているさまざまな卵巣腫瘍細胞の評価から、D2AP11-TCEがCAOV3(図14FとG)、OVCAR3-FSHR(図14HとI、図15A)、OVCAR4(図14J図15BとC)、OVISE(図14KとL)、PEO-4細胞(図14M)、および倉持-FSHR細胞(図14N)を非常に効率的に殺傷することが実証された。用量に依存した殺傷が、OVISE-FSHR細胞とOVCAR3細胞においてD2AP11-TCEとヒトPBMC/T細胞の存在下で観察され、EC50値はそれぞれ24.7ng/mlと15.9ng/mlであった(図14OとP、図16)。OVCAR4は高異型度の漿液性卵巣腺癌細胞系であり、表面受容体を明確に陽性発現することが報告されている;FSHR(depmap.org)とD2AP11-TCEはこの細胞系においてヒトPBMCとヒトT細胞の存在下で強力な殺傷を誘導した(図14J図15BとC)。研究した卵巣腫瘍系はさまざまながんドライバー変異を持ち、多くの抗がん薬に対する抵抗性を示す(表1)。注目すべきことに、倉持とPEO-4はBRCA2変異を持ち、後者はPARP阻害剤に対する抵抗性も示す(Sakai et al., 2009, Cancer Res, 69(16):6381-6、He et al., 2018, Nature, 563(7732):522-6)。このアッセイでは、これら2つの抵抗性卵巣腫瘍系でもD2AP11-TCE殺傷からの逃避はない。画像(図14D、F、およびH)に示されているように、エフェクタ細胞の添加とD2AP11-TCEを用いた処理の3日後、処理されたウエルでは付着した腫瘍細胞は観察されなかった。しかし対照HEK293T細胞(図14B)では、エフェクタ細胞とD2AP11-TCEを添加してから2~3日後、全細胞が健康に増殖していることが見いだされた。それに加え、ヒトIL-13受容体アルファ2を標的とする無関係なTCE(IL13Rα2-TCE)は、OVCAR3-FSHR細胞の中でヒトPBMCの存在下において毒性を示さなかった。これは、FSHRを発現した腫瘍を特異的に殺傷するというD2AP11アームの役割を示す(図17)。注目すべきことに、D2AP11-TCEは、D2AP11抗体と比べたとき、ほぼ1000倍低い濃度でFSHR陽性OVCAR4細胞に有意な毒性を誘導することができた。これは、D2AP11が、その二重特異性エンゲージャ;D2AP11-TCEとしての設計を通じて殺傷有効性を増強されたことを示す(図18AとB)。D2AP11とD2AP11-TCEのEC50値が得られ、それぞれ30.3μg/mlと11.3ng/mlであった。これは、D2AP11-TCEが、抗FSHR abであるD2AP11と比べて約1000倍大きい効力であることを示す(図18CとD)。
【0341】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0342】
FSHRを標的とする新規なT細胞エンゲージャのサイトカイン分泌プロファイル
【0343】
サイトカインは、リンパ球の増殖、生存、分化、および活性化の促進に関与する(Romain et al., 2014, Blood, 124(22):3241-9)。二重特異性T細胞エンゲージャとCARに関するさまざまな知見は、標的細胞に連結したときに分泌されるサイトカインが抗原特異的誘引の近傍で抗原陰性腫瘍細胞を溶解させることを示唆する(Slaney et al., 2018, Cancer Discov, 8(8):924-34)。次に、D2AP11-TCEのサイトカイン分泌プロファイルを調べた。OVCAR3-FSHR標的細胞+ヒトPBMCをD2AP11-TCEとともにインキュベートすると、IFN-γ、237可溶性Fas(sFas)、グランザイムA、グランザイムB、およびパーフォリンが空ベクター対照と比べて48時間の時点で有意に誘導され、このコンストラクトはロバストな腫瘍抗原特異的殺傷を駆動する(図19A)。これらのエフェクタサイトカインは、腫瘍微小環境を変化させ、内在性抗腫瘍免疫を誘導する能力を持つことが知られている(Slaney et al., 2018, Cancer Discov, 8(8):924-34)。
【0344】
FSHRを標的とするT細胞エンゲージャは生体内腫瘍量を減らした
【0345】
D2AP11-TCEの生体内抗腫瘍効果を評価するため、生体内チャレンジモデルを開発した。このモデルのため、K562細胞、またはFSHRを過剰発現しているK562細胞(K562-FSHR)を投与されたNSGマウスを使用した(図19B)。マウスに、D2AP11-TCEをコードするDNA(100μg)とヒトT細胞を記載されているようにして接種した。興味深いことに、D2AP11-TCEで治療した群または空ベクター対照群の両方で、K562でチャレンジされたマウスに腫瘍逃避が存在していた(図19C)が、D2AP11-TCE治療群では、K562-FSHRチャレンジ群の中の空ベクター対照と比べて腫瘍体積が有意に減少した(図19D)。このモデルにおけるD2AP11-TCEの特異性と効力を確認した後、OVCAR3-FSHRでチャレンジした卵巣腫瘍マウスモデルにおけるその効果を調べた。腫瘍移植の14日後、生体内で抗体を生成させるため、マウスに、D2AP11-TCEをコードするDNA(100μg)、または空ベクター(100μg)を2週間空けて2回投与した。14日目、マウスにヒトT細胞(1000万個/マウス)を接種し、腫瘍体積を定期的に測定した(図19E)。この二重特異性を用いた治療はOVCAR3-FSHR腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍量を有意に低下させるに至ったが、対照群では同様の影響は観察されなかった(図19F)。これは、OCに対する治療法開発のためのこの新規なアプローチの可能性を裏づけている。
【0346】
実施例3:卵巣がんにおける免疫チェックポイント阻害剤
【0347】
免疫チェックポイント阻害剤(CPI)はいくつかのがんの生存率を劇的に改善しており、卵巣がん(OC)で評価中である。残念なことに、CPIはOCにおいて全体的に不満足な結果を示している。
【0348】
図20は、D2AP11-BTEが卵巣がん細胞においてニボルマブ(抗PD1抗体)による殺傷を相乗的に増強することを示す。
【0349】
図21は、D2AP11-BTEが卵巣がん細胞においてペムブロリズマブ(抗PD1抗体)による殺傷を相乗的に増強することを示す。
【0350】
図22は、D2AP11-BTEが卵巣がん細胞において抗CTLA4抗体による殺傷を相乗的に増強することを示す。
【0351】
実施例4:CAR分子
【0352】
図23は、FSHRを標的とする9h11(D2AP11)クローンに基づくCAR T細胞の開発を示す。CAR T細胞は、膜貫通ドメインと少なくとも1つの細胞内ドメイン(41bb、CD28、またはCD3z)に連結されたFSHRを標的とするscFvを発現する。
【0353】
配列
【0354】
hu9h11×CD3 BTE(D2AP11とも呼ばれる)
【0355】
配列番号1 - DNA配列
ATGGATTGGACATGGATTCTGTTCCTGGTCGCAGCAGCCACAAGAGTGCATTCCGATATTCAGATGACCCAGTCCCCTTCAAGCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGATAGGGTGACCATCAGCTGCAGAGCCAGCGAGTCCGTGGACAACTACGGCATCTCCTTCCTGAATTGGTTTCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCTAAGCTGCTGATCTATGCAGCAAGCAACCAGCGGTCCGGAGTGCCATCTCGCTTCTCTGGAAGCGGATCCGGAACCGACTTCACCCTGACAATCAGCTCCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACATACTTTTGCCAGCAGAGCAAGGAGGTGCCTTGGACCTTCGGCCAGGGCACAAAGGTGGAGATCAAGAGGGGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCGGCTCTGAGGTGCAGCTGGTGGAGAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCTGGCGGCTCTCTGAGGCTGTCTTGTAGCTTCTCCGGCTTTTCTCTGAGCACCTCCGGAATGGGAGTGGGATGGATCAGACAGGCACCAGGCAAGGGCCTGGAGTGGGTGGCCCACATCTGGTGGGACGATGACAAGCGGTACAACCCCGCCCTGAAGTCTCGCTTCACCCTGAGCGTGGATAGGTCCAAGAACACACTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACCGCCACATACTATTGCGTGCAGATCAACTACGGCAATTATCGGTTTGATAATTGGGGCCACGGCACCCTGGTGACAGTGTCTAGCGGCGGCGGCGGCTCCGAAGTCCAGCTGGTCGAAAGCGGCGGCGGCCTGGTCCAGCCAGGCGGCTCTCTGAGACTGAGCTGTGCAGCATCCGGATACTCTTTCACCGGCTATACAATGAATTGGGTGAGGCAGGCACCTGGCAAGGGCCTGGAATGGGTGGCCCTGATCAACCCATACAAGGGCGTGAGCACCTATAATCAGAAGTTCAAGGATAGGTTTACCATCTCCGTGGACAAGTCTAAGAACACAGCCTACCTGCAAATGAACAGCTTACGCGCCGAGGACACAGCCGTGTACTATTGCGCCAGGAGCGGCTACTATGGCGATTCCGACTGGTATTTTGACGTGTGGGGCCAGGGCACCCTGGTCACAGTGTCCAGCGGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCGGCTCGGACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCTCCCTGTCTGCCAGCGTCGGCGATAGGGTCACCATCACATGTAGAGCCTCCCAGGACATCCGGAACTACCTGAATTGGTATCAGCAGAAGCCAGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACTATACAAGCAGACTGGAGTCCGGCGTGCCTTCTCGGTTCTCCGGATCTGGAAGCGGAACCGATTACACCCTGACAATCTCTAGCCTGCAGCCAGAGGACTTTGCCACATACTATTGTCAGCAGGGGAATACTCTGCCTTGGACCTTCGGACAGGGAACAAAAGTGGAAATCAAATCCTCA
【0356】
配列番号2 - アミノ酸配列
MDWTWILFLVAAATRVHSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDNYGISFLNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQSKEVPWTFGQGTKVEIKRGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQAPGKGLEWVAHIWWDDDKRYNPALKSRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTATYYCVQINYGNYRFDNWGHGTLVTVSSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSFTGYTMNWVRQAPGKGLEWVALINPYKGVSTYNQKFKDRFTISVDKSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLESGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPWTFGQGTKVEIKSS**
【0357】
配列番号3 - FSHR ScFv - IgEリーダー配列なし
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQAPGKGLEWVAHIWWDDDKRYNPALKSRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTATYYCVQINYGNYRFDNWGHGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDNYGISFLNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQSKEVPWTFGQGTKVEIK
【0358】
hu9h11bbz CARTコンストラクト(配列番号4)
MDWTWILFLVAAATRVHSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQAPGKGLEWVAHIWWDDDKRYNPALKSRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTATYYCVQINYGNYRFDNWGHGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDNYGISFLNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQSKEVPWTFGQGTKVEIKTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR**:
【0359】
hu9h1128z CARTコンストラクト(配列番号5):
MDWTWILFLVAAATRVHSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQAPGKGLEWVAHIWWDDDKRYNPALKSRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTATYYCVQINYGNYRFDNWGHGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDNYGISFLNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQSKEVPWTFGQGTKVEIKTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR**
【0360】
hu9h1128bbz CARコンストラクト(配列番号6):
MDWTWILFLVAAATRVHSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQAPGKGLEWVAHIWWDDDKRYNPALKSRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTATYYCVQINYGNYRFDNWGHGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDNYGISFLNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQSKEVPWTFGQGTKVEIKTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR**
【0361】
これまでの詳細な記述と添付の実施例は単なる説明例であり、本発明の範囲を制限すると取ってはならず、本発明の範囲は添付の請求項とその等価物によってだけ規定されることを理解されたい。
【0362】
開示されている実施形態に対するさまざまな変更と改変は当業者に明らかであろう。そのような変更または改変は、本発明の化学構造、置換体、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、または利用の方法に関する非限定的な例としての変更または改変を含め、その精神と範囲から逸脱することなく実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6F】
図7A-7D】
図8A-8B】
図9A-9C】
図10A-10B】
図11A-11D】
図12A-12G】
図13A-13H】
図14A-14P】
図15A-15C】
図16A-16C】
図17
図18A-18D】
図19A-19F】
図20
図21
図22-1】
図22-2】
図23
【配列表】
2024537214000001.xml
【国際調査報告】