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特表2024-537217免疫療法のための新規免疫細胞エンゲージャー(Engagers)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】免疫療法のための新規免疫細胞エンゲージャー(Engagers)
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/32 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12N15/13
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/06
A61P35/00
A61K31/7088
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K48/00
C07K16/18 ZNA
C07K16/32
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521056
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022077679
(87)【国際公開番号】W WO2023060180
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,658
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516142001
【氏名又は名称】ザ ウィスター インスティテュート オブ アナトミー アンド バイオロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】デビバシャ ボルドロイ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ウェイナー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA05
4C084ZB08
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C085AA16
4C085BB01
4C085CC23
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA05
4C086ZB08
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、シグレックに結合することを通してナチュラルキラー細胞を活性化させるのに特異的なナチュラルキラーエンゲージャー、及びそれをコードする核酸分子、及びそれらを使用して疾患又は障害を治療又は予防するための方法を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)又はその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記シアル酸結合受容体が、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15及び-16からなる群より選択される、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記シアル酸結合受容体が、シグレック-9又はシグレック-7である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記目的の標的細胞が腫瘍細胞である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
腫瘍抗原に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記腫瘍抗原が、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、及びBARF1からなる群より選択される、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
FSHR、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、及びBARF1からなる群より選択される腫瘍抗原に特異的に結合するscFv抗体断片に連結された、シグレック-9に特異的に結合するscFv抗体断片、を含む二重特異性抗体をコードする、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
RNA分子及びDNA分子からなる群より選択される、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17及び配列番号19からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項12】
薬学的に許容される賦形剤及びアジュバントからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の核酸分子を含む脂質ナノ粒子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において前記疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記疾患又は障害が、細菌感染に関連する疾患又は障害、ウイルス感染に関連する疾患又は障害、自己免疫疾患又は障害、がん、及びがんに関連する疾患又は障害からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、及び子宮内膜がんからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナチュラルキラー細胞の機能の増加を必要とする対象においてナチュラルキラー細胞の機能を増加させる方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項18】
標的細胞又は粒子へのナチュラルキラー細胞の誘導を必要とする対象において前記標的細胞又は粒子にナチュラルキラー細胞を誘導する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記標的細胞が、腫瘍細胞、病原体の細胞又は粒子、細菌細胞、ウイルス感染細胞、及び自己免疫疾患又は障害に関連する抗原を発現する細胞からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍細胞が、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、及び子宮内膜がんからなる群より選択されるがんに由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含む、NKE。
【請求項22】
前記シアル酸結合受容体が、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15及び-16からなる群より選択される、請求項21に記載のNKE。
【請求項23】
前記シアル酸結合受容体が、シグレック-9又はシグレック-7である、請求項21に記載のNKE。
【請求項24】
前記目的の標的細胞が腫瘍細胞である、請求項21に記載のNKE。
【請求項25】
腫瘍抗原に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含む、請求項24に記載のNKE。
【請求項26】
前記腫瘍抗原が、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、及びBARF1からなる群より選択される、請求項25に記載のNKE。
【請求項27】
FSHR、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、及びBARF1からなる群より選択される腫瘍抗原に特異的に結合するscFv抗体断片に連結された、シグレック-9に特異的に結合するscFv抗体断片、を含む、請求項26に記載のNKE。
【請求項28】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載のNKE。
【請求項29】
請求項21~28のいずれか一項に記載のNKEを含む組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される賦形剤及びアジュバントからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項21~28のいずれか一項に記載の前記NKEを発現する細胞を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記細胞が、前記NKEを含むキメラ抗原受容体を発現する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において前記疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、請求項21~28のいずれか一項に記載のNKE又は請求項29~32のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記疾患又は障害が、細菌感染に関連する疾患又は障害、ウイルス感染に関連する疾患又は障害、自己免疫疾患又は障害、がん、及びがんに関連する疾患又は障害からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記がんが、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、及び子宮内膜がんからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ナチュラルキラー細胞の機能の増加を必要とする対象においてナチュラルキラー細胞の機能を増加させる方法であって、請求項21~28のいずれか一項に記載のNKE又は請求項29~32のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項37】
標的細胞又は粒子へのナチュラルキラー細胞の誘導を必要とする対象において前記標的細胞又は粒子にナチュラルキラー細胞を誘導する方法であって、請求項21~28のいずれか一項に記載のNKE又は請求項29~32のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記標的細胞が、腫瘍細胞、病原体の細胞又は粒子、細菌細胞、ウイルス感染細胞、及び自己免疫疾患又は障害に関連する抗原を発現する細胞からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記腫瘍細胞が、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、及び子宮内膜がんからなる群より選択されるがんに由来する、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/252,658号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
がんは、いくつかの免疫機構を巧みに利用して、腫瘍進行の助長を許す局所微小環境を確保する。がんの特徴としてしばしばグリコシル化が取り上げられる。がん細胞は、シアル酸を結合する免疫抑制性シグレック(Siglec)などのレクチンとの相互作用を変化させる、異常なグリコシル化パターンを有する。例えば、腫瘍細胞の表面グリコシル化の変化は、とりわけ卵巣がんの重要な特徴として現れる。糖タンパク質と糖脂質の両方に見られるシアル化糖鎖は、腫瘍微小環境における多くの免疫細胞サブタイプの表面に発現されるレクチンファミリーであるシグレックを含め、多くのタンパク質によって認識される。シグレック-7及びシグレック-9は、NK細胞上の免疫調節の2つの主要なシグレックである。シグレック7/9は、シアル酸含有リガンドと相互作用することによって、ヒトナチュラルキラー(NK)細胞の機能を負に調節し、免疫応答を調節する;したがって、ウイルス、自己免疫及び腫瘍細胞標的に対するNK媒介細胞傷害性を調節する。
【0003】
当技術分野では、負の影響を最小限に抑える一方で、がん、自己免疫疾患及び感染性疾患を効果的に治療する免疫治療薬に対するニーズが依然として存在する。本発明は、この未だ満たされていないニーズに応えるものである。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では、本発明は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)又はその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
【0005】
1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15又は-16である。
【0006】
1つの実施形態では、シアル酸結合受容体はシグレック-9又はシグレック-7である。
【0007】
1つの実施形態では、目的の標的細胞は腫瘍細胞である。
【0008】
1つの実施形態では、核酸分子は、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片をコードする。1つの実施形態では、腫瘍抗原は、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、又はBARF1である。
【0009】
1つの実施形態では、核酸分子は、FSHR、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、及びBARF1から選択される腫瘍抗原に特異的に結合するscFv抗体断片に連結された、シグレック-9に特異的に結合するscFv抗体断片、を含む二重特異性抗体をコードする。
【0010】
1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0011】
1つの実施形態では、核酸分子はRNA分子又はDNA分子である。
【0012】
1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)又はその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物に関する。
【0014】
1つの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤及びアジュバントからなる群より選択される少なくとも1つ含む。
【0015】
1つの実施形態では、組成物は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)又はその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む脂質ナノ粒子を含む。
【0016】
1つの実施形態では、本発明は、疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において前記疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。
【0017】
1つの実施形態では、疾患又は障害は、細菌感染に関連する疾患若しくは障害、ウイルス感染に関連する疾患若しくは障害、自己免疫疾患若しくは障害、がん、又はがんに関連する疾患若しくは障害である。1つの実施形態では、がんは、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、又は子宮内膜がんである。
【0018】
1つの実施形態では、本発明は、ナチュラルキラー細胞の機能の増加を必要とする対象においてナチュラルキラー細胞の機能を増加させる方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。
【0019】
1つの実施形態では、本発明は、標的細胞又は粒子へのナチュラルキラー細胞の誘導を必要とする対象において前記標的細胞又は粒子にナチュラルキラー細胞を誘導する方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)若しくはその断片をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。
【0020】
1つの実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞、病原体の細胞若しくは粒子、細菌細胞、ウイルス感染細胞、又は自己免疫疾患若しくは障害に関連する抗原を発現する細胞である。
【0021】
1つの実施形態では、腫瘍細胞は、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、又は子宮内膜がんに由来する。
【0022】
1つの実施形態では、本発明は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むNKEに関する。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15又は-16である。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体はシグレック-9又はシグレック-7である。
【0023】
1つの実施形態では、目的の標的細胞は腫瘍細胞である。
【0024】
1つの実施形態では、NKEは、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含む。1つの実施形態では、腫瘍抗原は、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、又はBARF1である。
【0025】
1つの実施形態では、FSHR、HER2、IL13Rα、EGFRvIII、又はBARF1に特異的に結合するscFv抗体断片に連結された、シグレック-9に特異的に結合するscFv抗体断片を含む。
【0026】
1つの実施形態では、NKEは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0027】
1つの実施形態では、本発明は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むNKEを含む組成物に関する。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15又は-16である。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体はシグレック-9又はシグレック-7である。
【0028】
1つの実施形態では、組成物はさらに、薬学的に許容される賦形剤、アジュバント又はそれらの組み合わせを含む。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体又はその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体又はその断片を含むNKEを発現する細胞に関する。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15又は-16である。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体はシグレック-9又はシグレック-7である。
【0030】
1つの実施形態では、細胞は、NKEを含むキメラ抗原受容体を発現する。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、疾患又は障害の治療又は予防を必要とする対象において前記疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。
【0032】
1つの実施形態では、疾患又は障害は、細菌感染に関連する疾患若しくは障害、ウイルス感染に関連する疾患若しくは障害、自己免疫疾患若しくは障害、がん、又はがんに関連する疾患若しくは障害である。
【0033】
1つの実施形態では、がんは、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、及び子宮内膜がんからなる群より選択される。
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、ナチュラルキラー細胞の機能の増加を必要とする対象においてナチュラルキラー細胞の機能を増加させる方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。
【0035】
1つの実施形態では、本発明は、標的細胞又は粒子へのナチュラルキラー細胞の誘導を必要とする対象において前記標的細胞又は粒子にナチュラルキラー細胞を誘導する方法であって、目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを投与すること、又は目的の標的細胞に特異的に結合する抗体若しくはその断片に連結された、シアル酸結合受容体に特異的に結合する抗体若しくはその断片を含むNKEを含む組成物を投与すること、を含む方法に関する。1つの実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞、病原体の細胞若しくは粒子、細菌細胞、ウイルス感染細胞、又は自己免疫疾患若しくは障害に関連する抗原を発現する細胞である。
【0036】
1つの実施形態では、腫瘍細胞は、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、又は子宮内膜がんに由来する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、一方の端において特異的なシグレックを標的とし、且つもう一方の端において疾患又は障害関連抗原を標的とする新規細胞エンゲージャーの開発の模式図を示す。設計されたのは、腫瘍抗原結合モチーフ、この場合はFSHRと連結されて設計された特異的なシグレック9結合可変領域の一例である。この例の新規クラスのNKE(ナチュラルキラーエンゲージャー)はNKE-9と命名された。また設計されたのは、腫瘍抗原結合モチーフ、この場合はFSHRと連結されて設計された特異的なシグレック7結合可変領域の一例である。この例の新規クラスのNKEはNKE-7と命名された。
図2図2は、OVCAR4細胞(42歳女性の高悪性度卵巣漿液性腺がん;転移部位由来:腹水)に対する二重特異性FSHR抗体の細胞傷害性効果を示す例示的データを示す。示されている画像は96時間の時点で取得された。
図3図3は、OVCAR8細胞(高悪性度卵巣漿液性腺がん;卵巣がんの64歳女性に由来)に対する二重特異性FSHR抗体の細胞傷害性効果を示す例示的データを示す。示されている画像は136時間の時点で取得された。
図4図4は、PEO-1細胞に対する二重特異性FSHR抗体の細胞傷害性効果を示す例示的データを示す。PEO-1は、低分化漿液性腺がんの患者の腹腔腹水から得られた悪性浸出液に由来する。患者は以前に、シスプラチン、5-フルオロウラシル及びクロラムブシル治療を受けた。
図5図5は、倉持細胞(卵巣がんの日本人女性の高悪性度卵巣漿液性腺がん;転移部位由来:腹水)に対する二重特異性FSHR抗体の細胞傷害性効果を示す例示的データを示す。
図6図6は、FSHR腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図7図7は、FSHR腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図8図8は、HER2腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図9図9は、HER2腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図10図10は、IL13Rα腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図11図11は、IL13Rα腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図12図12は、EGFRvIII腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図13図13は、EGFRvIII腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図14図14は、BARF1腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図15図15は、BARF1腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図16図16は、PFDM1400 HIV抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図17図17は、PFDM1400 HIV腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図18図18は、3BNC117 HIV抗原結合モチーフと連結されたシグレック9結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図19図19は、3BNC117 HIV腫瘍抗原結合モチーフと連結されたシグレック7結合可変領域を含むNKEの模式図を示す。
図20図20は、抗シグレック9 ScFV成分が、MHC/HLA分子との関連において腫瘍細胞の表面に存在する抗原と結合することを示す模式図を示す。抗シグレック9成分は、NK細胞上のシグレック9分子と結合し、且つNK媒介腫瘍殺傷を促進する。
図21図21は、抗シグレック7 ScFV成分が、MHC/HLA分子との関連において腫瘍細胞の表面に存在する抗原と結合することを示す模式図を示す。抗シグレック7成分は、NK細胞上のシグレック7分子と結合し、且つNK媒介腫瘍殺傷を促進する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、少なくとも1つのシアル酸受容体を標的とするドメイン及び目的の細胞型に発現された抗原を標的とするドメインを含むナチュラルキラーエンゲージャー(NKE)、又はそれをコードする核酸分子、並びに、ナチュラルキラー細胞の目的の細胞への誘導を必要とする対象においてナチュラルキラー細胞を前記目的の細胞に誘導するための使用方法に関する。
【0039】
1つの態様では、本発明は、NKE、その断片、そのバリアント、又はそれらをコードする核酸分子を投与することによって、免疫応答を増加させる、又は増強する、すなわち、より効果的な免疫応答を作り出すために使用できる組成物に関する。1つの実施形態では、NKEはシグレック-9を標的とする。
【0040】
1つの態様では、本発明は、シアル酸受容体抗体、又はその断片、又はそのバリアントと、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体、又はその断片、又はそのバリアントとの組み合わせを含むNKEに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、シアル酸受容体抗体、又はその断片、又はそのバリアントと、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体、又はその断片、又はそのバリアントとの組み合わせを含むNKEをコードする核酸分子に関する。
【0041】
1つの態様では、本発明は、疾患又は障害の治療を必要とする対象において前記疾患又は障害を治療する方法であって、その対象に、NKE、その断片、そのバリアント、又はそれらをコードする核酸分子を投与することを含む方法に関する。1つの実施形態では、疾患又は障害はがんである。1つの実施形態では、疾患又は障害は感染性疾患である。
【0042】
1つの実施形態では、本発明は、がん又はそれに関連する疾患若しくは障害の治療を必要とする対象において前記がん又はそれに関連する疾患若しくは障害を治療する方法であって、その対象に、シアル酸受容体抗体、若しくはその断片、若しくはそのバリアントと、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体、ウイルス糖タンパク質、MHC結合抗体断片、若しくはその断片、若しくはそのバリアント、又はそれらをコードする核酸分子の組み合わせを含むNKEを投与することを含む方法に関する。
【0043】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似した又は均等な任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験に使用できるものの、例示的な方法及び材料が記載されている。
【0044】
本明細書で使用される場合、以下の用語はそれぞれ、本項においてそれに関連する意味を有する。
【0045】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は複数(more than one)の(すなわち、少なくとも1つ)を意味するように使用される。一例として、「要素(an element)」は、1つ要素又は複数の要素を意味する。
【0046】
量、持続時間、及び同種のものの測定可能な値に言及する際に本明細書で使用される「約」とは、特定された値から±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1%のばらつきを包含することを意味し、そのようなばらつきは開示の方法を実施するのに適切である。
【0047】
「抗体」とは、IgG、IgM、IgA、IgD、若しくはIgEクラスの抗体、又はFab、F(ab’)2、Fd、及び一本鎖抗体、及びそれらの誘導体を含むそれらの断片、断片若しくは誘導体を意味することができる。抗体は、所望のエピトープ又はそれらに由来する配列に充分な結合特異性を呈する哺乳動物の血清試料から単離された抗体、ポリクローナル抗体、アフィニティー精製抗体、又はそれらの混合物であることができる。
【0048】
「抗原」は、宿主において免疫応答を引き起こす能力を有するタンパク質を意味する。抗原は、抗体によって認識され、且つ結合することができる。抗原は、体内に由来することもあり、又は外部環境に由来することもある。
【0049】
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域アミノ酸配列と定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照。免疫グロブリンの可変部には、3つの重鎖及び3つの軽鎖のCDR(又はCDR領域)がある。したがって、本明細書で使用される「CDR」は、3つの重鎖CDRすべて、又は3つの軽鎖CDRすべて(又は該当する場合、重鎖CDRすべてと軽鎖CDRすべての両方)を意味する。抗体の構造及びタンパク質の折り畳みは、他の残基が抗原結合領域の一部とみなされることを意味し、当業者によってそのように理解されるであろう。例えば、Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p 877-883を参照。
【0050】
本明細書で交換可能に使用される「抗体断片」又は「抗体の断片」は、抗原結合部位又は可変領域を含むインタクトな抗体の部分を意味する。この部分は、インタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体アイソタイプに応じてCH2、CH3又はCH4)を含まない。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、単鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインのみを含有する単鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域のみを含有する単鎖ポリペプチド、及び重鎖可変領域の3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される「アジュバント」は、抗原の免疫原性を高めるために本明細書に記載のワクチンに添加される任意の分子を意味する。
【0052】
本明細書で使用される「コード(Coding)配列」又は「コード(encoding)核酸」は、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(RNA又はDNA分子)を意味しうる。コード配列はまた、RNA配列をコードするDNA配列を含むことができる。コード配列はさらに、核酸が投与される個人又は哺乳動物の細胞における発現を誘導できるプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに動作可能に連結された開始シグナル及び終結シグナルを含むことができる。コード配列はさらに、シグナルペプチドをコードする配列を含むことができる。
【0053】
本明細書で使用される「相補体」又は「相補的な」は、核酸が核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ間にワトソン・クリック(例えば、A-T/U及びC-G)又はフーグスティーン塩基対を有することができることを意味しうる。
【0054】
本明細書で使用される「定電流」は、同じ組織に送達される電気パルスの持続時間にわたって、組織又は前記組織を画定する細胞によって受け取られる、又は経験される電流を定義する。電気パルスは、本明細書に記載のエレクトロポレーション装置から送達される。本明細書で提供されるエレクトロポレーション装置は、フィードバック要素、好ましくは瞬時フィードバックを有するので、この電流は、電気パルスの寿命を通して、前記組織において一定のアンペア数に留まる。フィードバック要素は、パルスの持続時間を通して組織(又は細胞)の抵抗を測定し、エレクトロポレーション装置にその電気エネルギー出力(例えば電圧を上げる)を変化させることができ、その結果、同じ組織内の電流は、電気パルス(およそマイクロ秒)全体を通して、及びパルスからパルスで一定に留まる。いくつかの実施形態では、フィードバック要素はコントローラを含む。
【0055】
本明細書で使用される「電流フィードバック」又は「フィードバック」は、交換可能に使用でき、提供されるエレクトロポレーション装置の能動的応答を意味することができ、電極間の組織内の電流を測定し、且つそれに応じて、電流を一定レベルに維持するために、EP装置によって送達されるエネルギー出力を変更することを含む。この一定レベルは、パルスシーケンス又は電気的処理の開始前にユーザによって予めセットされる。フィードバックは、エレクトロポレーション装置のエレクトロポレーションコンポーネント、例えばコントローラによって達成することができ、その中の電気回路は、電極間の組織内の電流を連続的にモニターし、且つそのモニターした電流(又は組織内の電流)を予めセットした電流と比較し、且つモニターした電流を予めセットしたレベルに維持するためにエネルギー出力調整を連続的に行うことができる。フィードバックループは、アナログの閉ループフィードバックであるので、瞬時であることができる。
【0056】
本明細書で使用される「分散電流(decentralized current)」は、本明細書に記載のエレクトロポレーション装置の様々な針電極アレイから送られる電流のパターンであって、エレクトロポレーションされている組織の任意の領域においてエレクトロポレーション関連熱ストレスの発生を最小限に抑える、又は好ましくは排除するパターンを意味することができる。
【0057】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持できない動物の健康状態であり、疾患が改善しなければ、動物の健康状態は悪化し続ける。
【0058】
対照的に、動物における「障害」は、動物がホメオスタシスを維持できるが、その動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない健康状態のことである。放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすとは限らない。
【0059】
疾患若しくは障害の徴候若しくは症状の重症度、患者がそのような徴候若しくは症状を経験する頻度、又はその両方が減少する場合、疾患又は障害は「緩和」される。
【0060】
本明細書で交換可能に使用される「エレクトロポレーション」、「電気透過化(electro-permeabilization)」又は「電気運動増強(electro-kinetic enhancement)」(「EP」)は、膜貫通電場パルスを使用して生体膜に微細な経路(孔)を誘導することを意味することができ、その存在により、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物、イオン、及び水などの生体分子が細胞膜の一方の側から他方へ通過することができる。
【0061】
「コード化」は、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定の配列のヌクレオチドが、定義された配列のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)又は定義された配列のアミノ酸のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマー及び高分子を合成するための鋳型として機能する固有の特性、及びそこから生じる生物学的特性を意味する。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的な系においてタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、且つ通常は配列表に与えられるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のためのテンプレートとして使用される非コード鎖のどちらも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0062】
化合物の「有効量」は、化合物が投与される対象又は系に効果をもたらすのに充分な化合物の量である。
【0063】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に動作可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを意味する。発現ベクターは、発現に充分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞又はインビトロ発現系で供給することができる。発現ベクターは、組み換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸の状態(naked)又はリポソームに含有される)並びにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)など、当該技術分野で公知のものすべてを含む。
【0064】
本明細書で使用される「フィードバック機構」は、ソフトウェア又はハードウェア(又はファームウェア)のいずれかによって実行されるプロセスを意味することができ、そのプロセスは、所望の組織のインピーダンス、好ましくは電流(エネルギーのパルスの送達前、送達中、及び/又は送達後)を受信し、且つ現在の値と比較し、且つ予めセットした値を達成するように送達されるエネルギーのパルスを調整する。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路(analog closed loop circuit)によって実行することができる。
【0065】
「断片」は、機能する、すなわち、所望の標的に結合することができ、且つ完全長抗体と同じ意図された効果を有する抗体のポリペプチド断片を意味することができる。抗体の断片は、シグナルペプチド及び/又は1位のメチオニンを伴う又は伴わないいずれの場合においても、N末端及び/又はC末端から少なくとも1つのアミノ酸が欠落していることを除いて完全長と100%同一であることができる。断片は、いずれの付加された異種シグナルペプチドも除いて、特定の完全長抗体の長さの20%又はそれより多く、25%又はそれより多く、30%又はそれより多く、35%又はそれより多く、40%又はそれより多く、45%又はそれより多く、50%又はそれより多く、55%又はそれより多く、60%又はそれより多く、65%又はそれより多く、70%又はそれより多く、75%又はそれより多く、80%又はそれより多く、85%又はそれより多く、90%又はそれより多く、91%又はそれより多く、92%又はそれより多く、93%又はそれより多く、94%又はそれより多く、95%又はそれより多く、96%又はそれより多く、97%又はそれより多く、98%又はそれより多く、99%又はそれより多くを含むことができる。断片は、抗体と95%若しくはそれより多く、96%若しくはそれより多く、97%若しくはそれより多く、98%若しくはそれより多く又は99%若しくはそれより多く同一であるポリペプチドの断片を含み、且つ同一性パーセントを計算する際に含まれないN末端メチオニン又は異種シグナルペプチドをさらに含むことができる。断片は、N末端メチオニン及び/又は免疫グロブリンシグナルペプチド、例えばIgE若しくはIgGシグナルペプチドなどのシグナルペプチドをさらに含むことができる。N末端メチオニン及び/又はシグナルペプチドは抗体の断片に連結させることができる。
【0066】
抗体をコードする核酸配列の断片は、シグナルペプチド及び/又は1位のメチオニンをコードする配列を伴う又は伴わないいずれの場合においても、5’末端及び/又は3’末端から少なくとも1つのヌクレオチドが欠落していることを除いて、完全長と100%同一であることができる。断片は、いずれの付加された異種シグナルペプチドも除いて、特定の完全長コード配列の長さの20%又はそれより多く、25%又はそれより多く、30%又はそれより多く、35%又はそれより多く、40%又はそれより多く、45%又はそれより多く、50%又はそれより多く、55%又はそれより多く、60%又はそれより多く、65%又はそれより多く、70%又はそれより多く、75%又はそれより多く、80%又はそれより多く、85%又はそれより多く、90%又はそれより多く、91%又はそれより多く、92%又はそれより多く、93%又はそれより多く、94%又はそれより多く、95%又はそれより多く、96%又はそれより多く、97%又はそれより多く、98%又はそれより多く、99%又はそれより多くを含むことができる。断片は、抗体と95%若しくはそれより多く、96%若しくはそれより多く、97%若しくはそれより多く、98%若しくはそれより多く又は99%若しくはそれより多く同一であるポリペプチドをコードする断片を含み、且つ同一性パーセントを計算する際に含まれないN末端メチオニン又は異種シグナルペプチドをコードする配列をさらに任意選択で含むことができる。断片は、N末端メチオニン及び/又は免疫グロブリンシグナルペプチド、例えばIgE若しくはIgGシグナルペプチドなどのシグナルペプチドのコード配列さらに含むことができる。N末端メチオニン及び/又はシグナルペプチドをコードするコード配列は、コード配列の断片に連結させることができる。
【0067】
本明細書で使用される「遺伝子コンストラクト」は、抗体などのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA又はRNA分子を意味する。遺伝子コンストラクトは、は、RNAを転写するDNA分子を意味することもできる。コード配列は、プロモーター及び核酸分子が投与された個体の細胞における発現を誘導できるポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに動作可能に連結された開始及び終結シグナルを含む。本明細書で使用される場合、「発現可能な形態」という用語は、個体の細胞に存在したときコード配列が発現することになるように、タンパク質をコードするコード配列に連結された動作可能な必須調節エレメントを含有する遺伝子コンストラクトを意味する。
【0068】
「相同である」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を意味する。比較した2つの配列の両方の位置が、同じ塩基又はアミノ酸単量体サブユニットによって占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによって占められる場合、分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列によって共有される一致又は相同な位置の数を、比較した位置の数で割ったものに100を乗じた関数である。例えば、2つの配列の10箇所の位置のうち6箇所が一致又は相同である場合、その2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性を共有する。一般に、比較は2つの配列が最大の相同性を与えるように整列された状態で行われる。
【0069】
本明細書で2つ又はそれより多くの核酸又はポリペプチド配列に関して使用される「同一である」又は「同一性」は、配列が、特定の領域にわたって、特定のパーセンテージ割合の同一残基を有することを意味する。このパーセンテージ割合は、2つの配列を最適に整列させ、特定の領域にわたって2つの配列を比較し、両方の配列で同一の残基が現れる位置の数を求めて一致した位置の数を得て、一致した位置の数を特定の領域の位置の総数で割り、且つその結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算することができる。2つの配列が異なる長さであるか、又はアラインメントにより1つ若しくは複数のずれた末端が生じ、且つ特定の比較領域が単一の配列のみを含む場合、単一の配列の残基は計算の分母に含まれるが、分子には含まれない。DNAとRNAを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は同等であると考えることができる。同一性は、手作業で行うこともでき、又はBLAST若しくはBLAST2.0などのコンピュータ配列アルゴリズムを使用するとこによって行うこともできる。
【0070】
「単離された」は、自然の状態から変化した、又は取り出されたれたことを意味する。例えば、生きている動物の天然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されないが、その天然状態の共存物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」される。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、又は例えば宿主細胞などの非天然環境で存在することもできる。
【0071】
本発明の文脈では、一般的に存在する核酸塩基について以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを意味し、「C」はシトシンを意味し、「G」はグアノシンを意味し、「T」はチミジンを意味し、且つ「U」はウリジンを意味する。
【0072】
別段の定めがない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、且つ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という句は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでイントロン(複数可)を含有する限りにおいてイントロンも含むことができる。
【0073】
本明細書で使用される「インピーダンス」は、フィードバック機構を論じる際に使用でき、且つオームの法則に従って電流値に変換でき、したがって予めセットした電流との比較が可能である。
【0074】
本明細書で使用される「免疫応答」は、1つ又は複数の核酸及び/又はペプチドの導入に応答した宿主の免疫系、例えば哺乳動物の免疫系の活性化を意味しうる。免疫応答は、細胞性若しくは液性応答、又はその両方の形態であることができる。
【0075】
「患者」、「対象」、「固体」という用語及び同種のものは、本明細書で互換的に使用され、且つ本明細書に記載の方法に適した任意の動物、又はインビトロ又はインサイチュを問わずその細胞を意味する。いくつかの実施形態では、患者、対象、又は個体はヒトである。
【0076】
組成物の「非経口」投与としては、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)又は皮内注射又は注入技術が挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、互いに共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドをすることができる。一本鎖の記載は、相補鎖の配列も画定する。したがって、核酸は、記載された一本鎖の相補鎖も包含する。核酸の多くのバリアントが、所与の核酸と同じ目的に使用されうる。したがって、核酸は実質的に同一の核酸及びその相補体も包含する。一本鎖は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズしうるプローブを提供する。したがって、核酸はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも包含する。
【0078】
核酸は、一本鎖若しくは二本鎖であることができ、又は二本鎖配列と一本鎖配列の両方の一部を含有することができる。核酸は、DNA、ゲノム及びcDNAの両方、RNA、又はハイブリッドであることができ、核酸は、デオキシリボ及びリボヌクレオチドの組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチンヒポキサンチン、イソシトシン及びイソグアニンを含む塩基の組み合わせを含有することができる。核酸は、化学合成法又は組み換え法によって得ることができる。
【0079】
本明細書で使用される「動作可能に連結された」は、遺伝子の発現が、空間的に連結されたプロモーターの制御下にあることを意味することができる。プロモーターは、その制御下にある遺伝子の5’(上流)又は3’(下流)に位置することができる。プロモーターと遺伝子との間の距離は、プロモーターが由来する遺伝子におけるそのプロモーターとそれが制御する遺伝子との間の距離とほぼ同じとすることができる。当該技術分野で公知のように、この距離のばらつきは、プロモーター機能を失うことなく調整することができる。
【0080】
本明細書で使用される「ペプチド」、「タンパク質」、又は「ポリペプチド」は、アミノ酸の連結配列を意味することができ、且つ天然、合成、又は天然と合成の修飾若しくは組み合わせであることができる。
【0081】
本明細書で使用される「プロモーター」は、細胞で核酸の発現を付与、活性化又は増強することができる合成又は天然由来の分子を意味することができる。プロモーターは、発現をさらに増強し、且つ/又はその空間的発現及び/若しくは時間的発現を変化させるために、1つ又は複数の特異的な転写調節配列を含むことができる。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対も離れて位置する遠位のエンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントも含むことができる。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物を含む供給源に由来しうる。プロモーターは、細胞、発現が起こる組織若しくは器官に関して、又は発現が起こる発生段階に関して、又は生理的ストレス、病原体、金属イオン、若しくは誘導薬剤などの外部刺激に応答して、遺伝子成分の発現を構成的に又は差次的(differentially)に調節することができる。プロモーターの代表的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーター又はSV40後期プロモーター及びCMV IEプロモーター挙げられる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に動作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。ある場合には、この配列はコアプロモーター配列であることができ、他の場合には、この配列は遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列及び他の調節エレメントも含むことができる。例えば、プロモーター/調節配列は、組織特異的に遺伝子産物を発現する配列であることができる。
【0083】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードする、又は特定するポリヌクレオチドと動作可能に連結されたとき、細胞のほとんど又はすべての生理学的条件下で遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0084】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードする、又は特定するポリヌクレオチドと動作可能に連結されたとき、プロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合にのみ実質的に細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0085】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコードする、又は特定するポリヌクレオチドと動作可能に連結されたとき、細胞が、プロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ実質的に細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0086】
「シグナルペプチド」及び「リーダー配列」は、本明細書で交換可能に使用され、且つ本明細書に記載のタンパク質のアミノ末端で連結されうるアミノ酸配列を意味する。シグナルペプチド/リーダー配列は典型的には、タンパク質の局在を誘導する。本明細書で使用されるシグナルペプチド/リーダー配列は、それが産生される細胞からのタンパク質の分泌を促進しうる。シグナルペプチド/リーダー配列は、細胞からの分泌時に、しばしば成熟タンパク質と呼ばれるタンパク質の残りの部分から切断されることが多い。シグナルペプチド/リーダー配列は、タンパク質のN末端に連結される。
【0087】
本明細書で使用される「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、核酸の複雑な混合物中など、第1の核酸配列(例えば、プローブ)が第2の核酸配列(例えば、標的)にハイブリダイズすることになる条件を意味することができる。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、且つ異なる状況で異なることになる。ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度のpHにおいて、特定の配列の熱融解点(T)より約5~10℃低くなるように選択することができる。Tは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度、pH、及び核濃度の下で)でありうる(標的配列が過剰に存在するので、Tでは、プローブの50%が平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、例えばpH7.0~8.3で約0.01~1.0Mナトリウムイオン濃度(又は他の塩)など約1.0Mナトリウムイオン未満であり、且つ温度が短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約30℃、且つ長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチドより大きい)の場合は少なくとも約60℃であるものでありうる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することができる。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルはバックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2~10倍でありうる。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては次が挙げられる:50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベート、又は5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2×SSC、0.1%SDSで、65℃で洗浄。
【0088】
本明細書で交換可能に使用される「対象」及び「患者」は、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ヒト以外の霊長類(例えば、カニクイザル又はアカゲザル、チンパンジーなどのサル)、及びヒト)を含むがそれらに限定されない任意の脊椎動物を意味する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト又は非ヒトであることができる。対象又は患者は、他の形態の治療を受けていてもよい。
【0089】
本明細書で使用される「実質的に相補的」は、第1の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個若しくはそれより多くのヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたって、第2の配列の相補体と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であること、又は2つの配列が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味することができる。
【0090】
本明細書で使用される「実質的に同一」は、第1及び第2の配列が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100個若しくはそれより多くのヌクレオチド若しくはアミノ酸の領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であること、又は核酸に関して、第1の配列が第2の配列の相補体に実質的に相補的である場合を意味することができる。
【0091】
本明細書で使用される「合成抗体」は、本明細書に記載の組み換え核酸配列によってコードされ、且つ対象で作られる抗体を意味する。
【0092】
本明細書で使用される「治療(Treatment)」又は「治療すること(treating)」は、疾患を予防、抑制(suppressing)、抑制(repressing)、又は完全に除去する手段を通して、対象を疾患から保護することを意味することができる。疾患を予防することは、疾患の発症前に本発明のワクチンを対象に投与することを含む。疾患を抑制すること(Suppressing)は、疾患の誘発後であるが、その臨床症状が現れる前に、本発明のワクチンを対象に投与することを含む。疾患を抑制すること(Repressing)は、臨床症状が現れた後に、本発明のワクチンを対象に投与することを含む。
【0093】
「治療的な(therapeutic)」治療は、疾患又は障害の徴候又は症状を示す対象に、それらの徴候又は症状の頻度又は重症度を減少させる、又は取り除く目的で投与される治療である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「疾患又は障害を治療すること」は、患者が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度若しくは重症度、又はその両方を減少させることを意味する。
【0095】
本明細書で使用される「治療有効量」という句は、疾患及び障害の徴候及び/又は症状を緩和することを含め、そのような疾患又は障害を予防又は治療する(発症を遅らせる又は予防する、進行を防ぐ、抑制する、減少させる、又は逆転させる)のに充分又は有効な量を意味する。
【0096】
本明細書で使用される用語としての疾患又は障害を「治療する」ことは、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を減少させることを意味する。
【0097】
核酸に関して本明細書で使用される「バリアント」は、(i)参照されるヌクレオチド配列の一部若しくは断片;(ii)参照されるヌクレオチド配列若しくはその一部の相補体;(iii)参照される核酸若しくはその相補体と実質的に同一である核酸;又は(iv)参照される核酸、その相補体、若しくはそれらと実質的に同一な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を意味する。
【0098】
バリアントはさらに、アミノ酸の挿入、欠失、又は保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持するペプチド又はポリペプチドとして定義することができる。「生物学的活性」の代表的な例としては、特異性抗体と結合する能力又は免疫応答を促進する能力が挙げられる。バリアントはまた、少なくとも1つの生物学的活性を保持するアミノ酸配列をもつ参照タンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列をもつタンパク質を意味することができる。アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を類似の性質(例えば、親水性、荷電領域の程度及び分布)をもつ異なるアミノ酸で置換することは、典型的には、軽微な変化を伴うものとして当該技術分野で認識されている。これらの軽微な変化は、当該技術分野で理解されているように、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することによって部分的に特定することができる。Kyte et al., J. Mol. Biol. 157:105-132 (1982)。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性及び電荷の考慮に基づいている。類似のハイドロパシー指数のアミノ酸は置換でき、且つタンパク質機能を保持できることは当該技術分野で公知である。1つの態様では、±2のハイドロパシー指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性はまた、タンパク質が生物学的機能を保持することになる置換を明らかにするために使用することができる。ペプチドに関連するアミノ酸の親水性を考慮することにより、そのペプチドの最大の局所平均親水性を計算することが可能になり、抗原性及び免疫原性とよく相関することが報告されている有用な尺度である。類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、当該技術分野で理解されているように、生物学的活性、例えば免疫原性を保持するペプチドをもたらすことができる。置換は、互いに親水性値が±2以内のアミノ酸で行うことができる。アミノ酸の疎水性指数と親水性値はともに、そのアミノ酸の特定の側鎖に影響される。この観察と一致して、生物学的機能に適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び他の特性によって明らかにされるアミノ酸、特にそれらのアミノ酸の側鎖の相対的類似性に依存すると理解される。
【0099】
バリアントは、完全な遺伝子配列又はその断片の全長にわたって実質的に同一である核酸配列であることができる。核酸配列は、遺伝子配列又はその断片の全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であることができる。バリアントは、アミノ酸配列又はその断片の全長にわたって実質的に同一であるアミノ酸配列であることができる。アミノ酸配列は、アミノ酸配列又はその断片の全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であることができる。
【0100】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、且つ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる物質の組成物である。直鎖ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがそれらに限定されない多数のベクターが当該技術分野で公知である。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、例えばポリリジン化合物、リポソーム及び同種のものなど、細胞内への核酸の移動を容易にする非プラスミド化合物及び非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及び同種のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0101】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様を範囲形式で示すことができる。範囲形式での記載は、単に便宜的且つ簡潔にするためのものであり、且つ本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値と同様に、可能性のあるすべての部分範囲(subranges)を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0102】
説明
本明細で提供されるのは、シアル酸結合受容体に特異的に結合するドメイン、その断片、そのバリアントを含み、且つ目的の標的細胞が発現する抗原に特異的に結合するドメインをさらに含むNKE、及びそれをコードする核酸分子である。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン(シグレック)ポリペプチド又はセレクチンポリペプチドである。例示的なシグレックとしては、シグレック-1、-2、-4及び-15、並びにシグレック-3、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14及び-16を含むシグレックのCD33関連群が挙げられる。例示的なセレクチンとしては、L-、E-、及びP-セレクチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、NKEはシグレック-7又はシグレック-9への結合に特異的であり、直接NK細胞に結合し、且つ病原体細胞の殺傷及び排除を誘導することができる。
【0103】
1つの実施形態では、本発明は、本発明のNKE又はそれをコードする核酸分子を含む免疫原性組成物を提供する。本発明の免疫原性組成物は、がん及び感染性疾患を含むがそれらに限定されない疾患又は障害を防ぐために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、がん細胞、自己免疫細胞又は感染標的細胞上の糖タンパク質の細胞特異的ターゲティングに使用することができる。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、シアル酸結合受容体に特異的に結合するドメイン、その断片、そのバリアントを含み、且つ目的の標的細胞によって発現される抗原に特異的に結合するドメインをさらに含む1つ又は複数のNKEをコードする核酸分子を含む組成物を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象に、本発明の二重特異性シアル酸結合受容体抗体又はそれをコードする核酸分子を投与することを含む、疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明は、シアル酸結合受容体に特異的に結合するドメイン、その断片、そのバリアントを含み、且つがん抗原に特異的に結合するドメインをさらに含む二重特異性シアル酸結合受容体抗体、その断片、若しくはそのバリアント、又はそれらをコードする核酸分子を、対象に投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を提供する。
【0107】
抗体組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、シアル酸結合受容体への結合に特異的なドメインを含む少なくとも1つのNKEを含む組成物に関する。1つの実施形態では、シアル酸結合受容体は、シグレックポリペプチド又はセレクチンポリペプチドである。1つの実施形態では、シグレックは、シグレック-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14、-15又は-16である。1つの実施形態では、シグレックはCD33関連シグレックである。1つの実施形態では、シグレックは、シグレック-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-14又は-16である。1つの実施形態では、シグレックは、シグレック-9又はシグレック-7である。
【0108】
1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つのシグレック-9結合ドメインを含むNKE又はその断片を含む、組成物に関する。1つの実施形態では、NKE又はその断片は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列のバリアントは、定義されたアミノ酸配列と比較して、特定の領域にわたって、少なくとも約60%の同一性、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列のバリアントは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20のアミノ酸配列の完全長にわたって、少なくとも約60%の同一性、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列の断片は、定義されたアミノ酸配列の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列の断片は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。
【0111】
本明細書で使用される場合、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は、タンパク質の免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのタンパク質(糖タンパク質を含む)を意味する。抗体又は免疫グロブリン(Ig)分子は、2つの同一の軽鎖ポリペプチド及び2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む四量体であることができる。2本の重鎖はジスルフィド結合で連結し、各重鎖はジスルフィド結合で軽鎖と連結している。各完全長Ig分子は、特定の標的又は抗原に対する少なくとも2つの結合部位を含有する。
【0112】
シアル酸結合受容体抗体又はその抗原結合断片としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル融合タンパク質、その抗体若しくは断片、キメラ化若しくはキメラ融合タンパク質、その抗体若しくは断片、ヒト化融合タンパク質、その抗体若しくは断片、脱免疫化ヒュムフュージョン(humfusion)タンパク質、その抗体若しくは断片、完全ヒュムフュージョンタンパク質、その抗体若しくは断片、単鎖抗体、単鎖Fv断片(scFv)、Fv、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、ダイアボディ又はその抗原結合断片、ミニボディ又はその抗原結合断片、トリアボディ又はその抗原結合断片、ドメイン融合タンパク質、その抗体若しくは断片、ラクダ科動物融合タンパク質、その抗体若しくは断片、ドロメダリ融合タンパク質、その抗体若しくは断片、ファージディスプレイ融合タンパク質、その抗体若しくは断片、又は反復バックボーンアレイ(repetitive backbone array)(例えば反復抗原ディスプレイ(repetitive antigen display))で明らかにされた抗体、若しくはその抗原結合断片が挙げられるが、それらに限定されない。
【0113】
免疫系は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む、いくつかの異なるクラスのIg分子(アイソタイプ)を作り出し、それぞれは、存在する重鎖ポリペプチドの特定のクラス:IgAに見られるアルファ(a)、IgDに見られるデルタ(δ)、IgEに見られるイプシロン(ε)、IgGに見られるガンマ(γ)、及びIgMに見られるミュー(μ)によって区別される。IgGに見られる少なくとも5種類のγ重鎖ポリペプチド(アイソタイプ)が存在する。対照的に、軽鎖ポリペプチドのアイソタイプはカッパ(κ)鎖とラムダ(λ)鎖と呼ばれる2種類しか存在しない。抗体アイソタイプの独特の特徴は、重鎖の定常ドメインの配列によって特徴付けられる。
【0114】
IgG分子は、ジスルフィド結合によって一緒に結合した2つ軽鎖(κ又はλ型のずれか)と2つの重鎖(γタイプ型)を含む。IgG軽鎖のκ型及びλ型はそれぞれ、可変領域と呼ばれる比較的ばらつきのあるアミノ酸配列のドメイン(「V-」、「Vκ-」、又は「Vλ-領域」と様々に呼ばれる)、及び定常領域(C-領域)と呼ばれる比較的保存されたアミノ酸配列のドメインを含有する。同様に、各IgG重鎖は可変領域(V-領域)及び1つ又は複数の保存領域を含有する:完全なIgG重鎖は3つの定常ドメイン(「C1-領域」、「C2-領域」、及び「C3-領域」)並びにヒンジ領域を含有する。各V領域又はV領域内には、相補性決定領域(「CDR」)としても知られる超可変領域が、比較的保存されたフレームワーク領域(「FR」)の間に散在している。一般に、軽鎖又は重鎖ポリペプチドの可変領域は、ポリペプチドに沿って以下の順序で配置された4つのFR及び3つのCDRを含有する:NH-FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-COOH。まとめるとCDRとFRは、IgG結合部位の三次元構造を決定し、且つしたがって、IgG分子が結合する特定の標的タンパク質又は抗原を決定する。各IgG分子は二量体であり、2つの抗原分子と結合することができる。プロテアーゼであるパパインで二量体IgGを切断すると、2つの同一の抗原結合断片(「Fab」)及び「Fc」断片又はFcドメイン(これは結晶化しやすいことから名付けられた)が生成される。
【0115】
本開示全体を通して使用されるように、「抗体」という用語はさらに、当該分野で公知であり、且つ本明細書に記載の様々な方法のいずれか1つによって生成される、全抗体分子又はインタクトな抗体分子(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、又はIgE)を意味する。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ化又はキメラ抗体、ヒト化抗体、脱免疫化ヒト抗体、及び完全ヒト抗体を含む。抗体は、様々な種、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、又はチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、ラット、及びマウスなどの哺乳動物のいずれかで作製することができ、又はそれに由来することができる。抗体は、精製された抗体又は組み換え抗体であることができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体によって結合されるタンパク質上の部位を意味する。「重複エピトープ」は、少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、又は6つ)の共通アミノ酸残基(複数可)を含む。
【0117】
1つの実施形態では、本発明の抗体はシグレックポリペプチドに特異的に結合する。本明細書で使用される場合、「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、2つの分子が生理的条件下で比較的安定である複合体を形成することを意味する。典型的には、結合定数(K)が10-1より大きいとき、結合は特異的とみなされる。このように、抗体は少なくとも10-1(又はそれより大きい)Ka(例えば、少なくとも10若しくはそれより大きい、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、又は1015若しくはそれより高い)M-1)で、標的と特異的に結合することができる。
【0118】
1つの実施形態では、本発明のNKEは、シグレック-9に特異的に結合するドメインを含む。
【0119】
抗体がタンパク質抗原に結合するかどうかを決定する方法、及び/又はタンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、限定されないが、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB、ウプサラ、スウェーデン及びニュージャージー州ピスカタウェイ)、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの様々な技術を用いて、タンパク質抗原に対する抗体の結合を検出及び/又は定量することができる。例えば、Harlow and Lane (1988) "Antibodies: A Laboratory Manual" Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Benny K. C. Lo (2004) "Antibody Engineering: Methods and Protocols," Humana Press (ISBN: 1588290921);Borrebaek (1992) "Antibody Engineering, A Practical Guide," W.H. Freeman and Co., NY;Borrebaek (1995) "Antibody Engineering," 2nd Edition, Oxford University Press, NY, Oxford;Johne et al. (1993) J. Immunol. Meth. 160: 191-198;Jonsson et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51: 19- 26;及びJonsson et al. (1991) Biotechniques 11 :620-627を参照。さらに米国特許第6,355,245号明細書も参照。
【0120】
抗体の免疫特異的結合及び交差反応性を分析するために使用できるイムノアッセイとしては、ウエスタンブロット、RIA、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を用いた競合及び非競合アッセイシステムが挙げられるが、それらに限定されない。そのようなアッセイは当該技術分野でよく使われる方法であり、且つ周知である。
【0121】
抗体はまた、抗体とその標的又はエピトープとの相互作用の速度論的パラメーターを特徴付けるために、当該技術分野で公知の表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイのいずれかを用いてアッセイすることができる。BIAcore機器(Biacore AB、ウプサラ、スウェーデン);lAsys機器(Affinity Sensors、マサチューセッツ州フランクリン);IBISシステム(Windsor Scientific Limited、バークス、英国);SPR-CELLIAシステム(日本レーザ電子株式会社(Nippon Laser and Electronics Lab)、北海道、日本);及びSPR Detector Spreeta(テキサス・インスツルメンツ、テキサス州ダラス)を含むが、これらに限定されない、市販の任意のSPR機器を、本明細書に記載の方法に使用することができる。例えば、Mullett et al. (2000) Methods 22: 77-91; Dong et al. (2002) Reviews in Mol Biotech 82: 303-323;Fivash et al. (1998) Curr Opin Biotechnol 9: 97-101及びRich et al. (2000) Curr Opin Biotechnol 11:54-61を参照。
【0122】
抗体及びその断片は、いくつかの実施形態では、「キメラ」であることができる。キメラ抗体及びその抗原結合断片は、2つ又はそれより多くの異なる種(例えば、マウス及びヒト)からの部分を含む。キメラ抗体は、所望の特異性のマウス可変領域を定常ドメイン遺伝子セグメントにスプライシングして作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)。このようにして、非ヒト抗体をヒトの臨床応用(例えば、ヒト対象の補体関連障害を治療又は予防する方法)に好適なものに改変することができる。
【0123】
本開示のモノクローナル抗体は、非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態を含む。ヒト化又はCDRグラフト化mAbは、マウス抗体ほど速やかに循環から排除されず、典型的には有害な免疫反応を引き起こさないので、ヒトに対する治療薬として特に有用である。ヒト化抗体を調製する方法は一般に当該技術分野で周知である。例えば、ヒト化は本質的に、Winterと共同研究者の方法(例えば、Jones et al. (1986) Nature 321 :522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327;及びVerhoeyen et al. (1988) Science 239: 1534-1536を参照)に従って、齧歯類のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置き換えることによって行うことができる。さらに、例えばStaelens et al. (2006) Mol Immunol 43:1243-1257も参照。いくつかの実施形態では、非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態は、ヒト抗体(レシピエント抗体)の超可変(CDR)領域残基が、所望の特異性、親和性、及び結合能を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域残基で置換されたレシピエント抗体である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域残基も、対応する非ヒト残基で置換される(いわゆる「逆突然変異」)。さらに、ファージディスプレイライブラリーを用いて、抗体配列内の選択した位置でアミノ酸を変化させることができる。ヒト化抗体の特性はまた、ヒトフレームワークの選択にも影響される。さらに、ヒト化及びキメラ化抗体は、例えば親和性又はエフェクター機能などの抗体特性をさらに向上させるために、レシピエント抗体又はドナー抗体には見られない残基を含むように改変することができる。
【0124】
完全ヒト抗体も本開示において提供される。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域(存在する場合)を有する抗体を含む。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発、又は生体内体細胞変異によって導入された変異)を含むことができる。ただし、「ヒト抗体」という用語には、マウスなど他の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に移植した抗体(すなわち、ヒト化抗体)は含まれない。完全ヒト抗体又はヒト抗体は、(可変(variable)(V)、多様性(diversity)(D)、結合(joining)(J)及び恒常(constant)(C)エクソンをもつ)ヒト抗体遺伝子を保有するトランスジェニックマウス、又はヒト細胞から誘導することができる。例えば、現在では、内因性の免疫グロブリン産生の非存在下において、免疫化により、ヒト抗体の全レパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが可能である(例えば、Jakobovits et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551;Jakobovits et al. (1993) Nature 362:255-258;Bruggemann et al. (1993) Year in Immunol. 7:33;and Duchosal et al. (1992) Nature 355:258を参照)。トランスジェニックマウス系統は、再配列されていない(unrearranged)ヒト免疫グロブリン遺伝子の遺伝子配列を含有するように遺伝子操作して作ることができる。ヒト配列はヒト抗体の重鎖と軽鎖をともにコードしている可能性があり、マウスで正しく機能し、再配列を経てヒトと同様の幅広い抗体レパートリーを提供することになるであろう。トランスジェニックマウスは、標的タンパク質で免疫することができる(多様な特異性抗体及びそれをコードするRNAを作り出すため)。そのような抗体の抗体鎖成分をコードする核酸は、動物からディスプレイベクターにクローニングすることができる。典型的には、重鎖及び軽鎖配列をコードする核酸の別々の集団がクローニングされ、且つその後その別々の集団はベクターへの挿入時に再び一緒にされ、その結果所与のベクターのコピーはいずれも、重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせを受け取る。ベクターは、抗体鎖が、ベクターを含有するディスプレイパッケージの外側表面に集合し、且つ提示されるように設計されて抗体鎖を発現する。例えば、抗体鎖は、ファージ外側表面のファージコートタンパク質との融合タンパク質として発現させることができる。その後、標的に結合する抗体のディスプレイについて、ディスプレイパッケージをスクリーニングすることができる。
【0125】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、本明細書に記載のマウスモノクローナル抗体の1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含み、マウスモノクローナル抗体対応物のその抗原に結合する能力を(例えば、少なくとも50、60、70、80、90、若しくは100%、又はさらに100%超)保持するヒト化、脱免疫化又は霊長類化(primatized)抗体を提供する。
【0126】
さらに、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリーから得ることができる(Hoogenboom et al. (1991) J. Mol. Biol. 227:381;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol, 222:581-597;及びVaughan et al. (1996) Nature Biotech 14:309 (1996))。合成ヒト抗体V領域のランダムな組み合わせを使用する合成ファージライブラリーを作り出すことができる。抗原を選択することによって、V領域が性質上非常にヒトに近い完全ヒト抗体を作ることができる。例えば、米国特許第6,794,132号明細書、同第6,680,209号明細書、同第4,634,666号明細書、及びOstberg et al. (1983), Hybridoma 2:361-367を参照。これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0127】
ヒト抗体の作製については、Mendez et al. (1998) Nature Genetics 15: 146-156及びGreen and Jakobovits (1998) J. Exp. Med. 188:483-495を参照。それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。ヒト抗体は、米国特許第5,939,598号明細書;同第6,673,986号明細書;同第6,114,598号明細書;同第6,075,181号明細書;同第6,162,963号明細書;同第6,150,584号明細書;同第6,713,610号明細書;及び同第6,657,103号明細書、並びに米国特許出願公開第2003-0229905(A1)号明細書、同第2004-0010810(A1)号明細書、同第2004-0093622(A1)号明細書、同第2006-0040363(A1)号明細書、同第2005-0054055(A1)号明細書、同第2005-0076395(A1)号明細書、及び同第2005-0287630(A1)号明細書でさらに論じられ、且つ詳しく説明されている。また、国際公開第94/02602号パンフレット、同第96/34096号パンフレット、及び同第98/24893号パンフレット、並びに欧州特許第0463151(B1)号明細書を参照。上に引用の特許、出願及び参考文献のそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0128】
代替的なアプローチにおいて、GenPharm International, Inc.を含む他のものは、「ミニ遺伝子座(minilocus)」法を利用している。ミニ遺伝子座法では、Ig遺伝子座からの小片(個々の遺伝子)を含めることを通して、外因性Ig遺伝子座を模倣する。したがって、1つ又は複数のVH遺伝子、1つ又は複数のDH遺伝子、1つ又は複数のJH遺伝子、μ定常領域、及び第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物に挿入するためのコンストラクトに形成される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,625,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,770,429号明細書;同第5,789,650号明細書;及び同第5,814,318号明細書;同第5,591,669号明細書;同第5,612,205号明細書;同第5,721,367号明細書;同第5,789,215号明細書;同第5,643,763号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,877,397号明細書;同第6,300,129号明細書;同第5,874,299号明細書;同第6,255,458号明細書;及び同第7,041,871号明細書に記載されている。それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。また、欧州特許第0546073(B1)号明細書、国際特許公開第92/03918号パンフレット、同第92/22645号パンフレット、同第92/22647号パンフレット、同第92/22670号パンフレット、同第93/12227号パンフレット、同第94/00569号パンフレット、同第94/25585号パンフレット、同第96/14436号パンフレット、同第97/13852号パンフレット、及び同第98/24884号パンフレットを参照。これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。さらに、Taylor et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20: 6287;Chen et al. (1993) Int. Immunol. 5: 647;Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 3720-4;Choi et al. (1993) Nature Genetics 4: 1 17;Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856-859;Taylor et al. (1994) International Immunology 6: 579-591 ;Tuaillon et al. (1995) J. Immunol. 154: 6453- 65;Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845;及びTuaillon et al. (2000) Eur. J. Immunol. 10: 2998-3005を参照。これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0129】
いくつかの実施形態では、脱免疫化(de-immunized)抗体又はその抗原結合断片が提供される。脱免疫化抗体又はその抗原結合断片は、抗体又はその抗原結合断片が、所与の種に対して(例えば、人に対して)、免疫原性が無くなる、又は免疫原性が低くなるように改変された抗体である。脱免疫化は、当業者に公知の様々な技術のいずれかを利用して、融合タンパク質、その抗体又は断片を改変することによって達成することができる(例えば、PCT公報国際公開第04/108158号パンフレット及び国際公開第00/34317号パンフレットを参照)。例えば、融合タンパク質、その抗体又は断片は、融合タンパク質、その抗体又は断片のアミノ酸配列内の潜在的なT細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープを特定すること、並びに例えば組換え技術を用いて、融合タンパク質、その抗体又は断片から潜在的なT細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープの1つ又は複数を除去することによって脱免疫化することができる。次いで、改変された抗体又はその抗原結合断片を任意選択で作製及び試験して、例えば結合親和性など1つ又は複数の所望の生物学的活性を保持するが、免疫原性を低下させた抗体又はその抗原結合断片を特定することができる。潜在的なT細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープを特定するための方法は、例えば、コンピュータによる方法(例えば、PCT公報国際公開第02/069232号パンフレットを参照)、インビトロ又はインシリコ技術、及び生物学的アッセイ若しくは物理的方法(例えば、ペプチドのMHC分子への結合の決定、融合タンパク質、抗体若しくはその断片を受ける種由来のT細胞レセプターへのペプチド:MHC複合体の結合の決定、抗体又はその抗原結合断片を受ける種のMHC分子をもつトランスジェニック動物を用いたタンパク質又はそのペプチド部分の試験、又は融合タンパク質、抗体若しくはその断片を受ける種由来の免疫系細胞で再構築されたトランスジェニック動物を用いた試験など)などの当該技術分野で公知の技術を用いて実施することができる。様々な実施形態において、本明細書に記載の脱免疫化抗体には、脱免疫化抗原結合断片、Fab、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)、モノクローナル抗体、マウス抗体、遺伝子操作された抗体(例えばキメラ、単鎖、CDR移植、ヒト化、完全ヒト抗体、及び人為的に選択された抗体など)、合成抗体及び半合成抗体が含まれる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、二重特異性抗体を提供する。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、モノクローナル抗体、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。例えば、1つの実施形態では、本発明のNKEは、シグレックタンパク質又はポリペプチドに対する結合特異性をもつ1つのドメイン、及び代替タンパク質又はポリペプチドに対する結合特異性をもつ1つのドメインを含む。1つの実施形態では、本発明のNKEは、シグレックタンパク質又はポリペプチドに対する結合特異性をもつ1つのドメイン、及び代替シグレックタンパク質又はポリペプチドに対する結合特異性をもつ1つのドメインを含む。
【0131】
NKEを作製する方法は当業者の範囲内である。従来、二重特異性抗体の組み換え生産は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づき、2つの重鎖/軽鎖対は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello (1983) Nature 305:537-539)。所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)をもつ抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させることができる。重鎖可変領域の融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。免疫グロブリン重鎖融合体及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。二重特異性抗体を作製するための例示的な現在知られている方法のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al. (1986) Methods in Enzymology 121 :210;PCT Publication No. WO 96/27011 ;Brennan et al. (1985) Science 229:81 ;Shalaby et al, J Exp Med (1992) 175:217-225;Kostelny et al. (1992) J Immunol 148(5): 1547-1553;Hollinger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448;Gruber et al. (1994) J Immunol 152:5368;及びTutt et al. (1991) J Immunol 147:60を参照。二重特異性抗体には、架橋抗体又はヘテロ結合抗体も含まれる。ヘテロ結合抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該技術分野で周知であり、且つ多数の架橋技術と一緒に米国特許第4,676,980号明細書に開示されている。
【0132】
組み換え細胞培養物から直接二重特異性抗体断片を作製及び単離するための様々な技術も報告されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを用いて作製されている。例えば、Kostelny et al. (1992) J Immunol 148(5): 1547-1553を参照。Fosタンパク質及びJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結することができる。抗体二量体はヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、且つその後再び酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は抗体二量体の作製にも利用することができる。Hollinger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448に記載の「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作るための代替機序を示している。その断片は、同一鎖上の2つのドメイン間で対になるには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)につながった重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、ある断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成せざるを得ず、それにより2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(scFv)二量体に使用によって二重特異性抗体断片を作る別の戦略も報告されている。例えば、Gruber et al. (1994) J Immunol 152:5368を参照。あるいは、抗体は、例えば、Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10): 1057-1062に記載の「直鎖状抗体」であることができる。簡潔に説明すると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性であることができる。
【0133】
2価超の抗体(例えば、三重特異性抗体)もまた企図されており、且つ例えば、Tutt et al. (1991) J Immunol 147:60に記載されている。
【0134】
本開示はまた、Wu et al. (2007) Nat Biotechnol 25(11): 1290-1297に記載のデュアル可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)分子などの多重特異性抗体のバリアント形態も包含する。DVD-Ig分子は、2つの異なる親抗体からの2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)が、組み換えDNA技術によって、直接又は短いリンカーを介してタンデムに連結され、それに続いて軽鎖定常ドメインがくるように設計されている。同様に、重鎖は、タンデムに連結された2つの異なる重鎖可変ドメイン(VH)、それに続く定常ドメインCH1及びFc領域を含む。2つの親抗体からDVD-Ig分子を作る方法は、例えば、PCT国際公開第08/024188号パンフレット及び同第07/024715号パンフレットにさらに記載されている。
【0135】
本開示はまた、ラクダ科動物又はドロメダリの抗体(例えば、カメルス・バクトリアヌス、カメルス・ドロマデリウス、又はラマ・パコス由来の抗体)を提供する。そのような抗体は、大部分の哺乳類の典型的な2つの鎖の(断片)抗体又は4つの鎖の(全抗体)抗体とは違って、一般に軽鎖を欠いている。米国特許第5,759,808号明細書;Stijlemans et al. (2004) J Biol Chem 279: 1256-1261;Dumoulin et al. (2003) Nature 424:783-788;及びPleschberger et al. (2003) Bioconjugate Chem 14:440-448を参照。
【0136】
ラクダ科動物の抗体及び抗体断片の人工ライブラリーは、例えばAblynx(ゲント、ベルギー)から市販されている。非ヒト由来の他の抗体と同様に、ラクダ科動物の抗体のアミノ酸配列は、組み換え的に変えられて、ヒトの配列により近い配列を得ることができる、すなわち、ナノボディは「ヒト化」され、それにより抗体の潜在的な免疫原性をさらに低下させることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載のペプチド、タンパク質又は抗体のバリアントである抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントペプチド、タンパク質又は抗体は、親ペプチド、タンパク質又は抗体の結合能及び阻害能を維持する。既知のタンパク質、ペプチド又は抗体のバリアントを調製する方法は当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、少なくとも単一アミノ酸置換、欠失、挿入、又は他の修飾を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質、抗体又はその断片は、2つ又はそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個又はそれより多く)のアミノ酸修飾(例えば、アミノ酸置換、欠失、又は付加)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質、抗体又はその断片は、アミノ酸修飾をCDRに含有しない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質、抗体又はその断片は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個)のアミノ酸修飾をCDRに含有する。
【0138】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」、「抗原結合断片(antigen-binding fragment)」、「抗原結合断片(antigen binding fragment)」という用語、又は同様の用語は、抗原に結合する能力を保持する抗体の断片を意味し、抗原結合断片は、もとの抗体由来の断片(複数可)だけでなく、もとの抗体の一部ではないさらなる組成(例えば、異なるフレームワーク領域又は変異)を任意選択で含むことができる。例としては、単鎖抗体、単鎖Fv断片(scFv)、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、又はF(ab’)断片が挙げられるが、それらに限定されない。scFv断片は、scFvが由来する抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を含む単一のポリペプチド鎖である。さらに、補体成分タンパク質に結合するダイアボディ(Poljak (1994) Structure 2(12): 1121-1123; Hudson et al. (1999) J. Immunol. Methods 23(1-2): 177-189、これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される)、ミニボディ、トリアボディ(Schoonooghe et al. (2009) BMC Biotechnol 9:70)、及びドメイン抗体(「重鎖免疫グロブリン」又はラクダ科動物抗体(camelids)としても知られる;Holt et al. (2003) Trends Biotechnol 21(1 1):484-490)、(これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される)は、本明細書に記載の組成物に組み込むことができ、且つ本明細書に記載の方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原結合断片のいずれも、抗体に関連する断片を意味する場合、そのような断片が実際に抗体に由来するか、又は同一のエピトープ若しくは重複するエピトープ若しくは抗体のエピトープに含有されるエピトープに結合する抗原結合断片であるかにかかわらず、「その抗原結合断片」又は均等な用語の下に含めることができる。その抗原結合断片は、元の抗体と同じ、又は重複する抗原に結合する抗原結合断片を含むことができ、且つ抗原結合断片は、元の抗体の断片である部分(例えば、1つ又は複数のCDR、1つ又は複数の可変領域など)を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、親抗体と比較して安定性又は半減期の変化をもたらす改変又は変異配列を含む。これには、例えば、インビトロ若しくは生体内において、より高い親和性若しくはより長いクリアランス時間のための安定性若しくは半減期の増加、又はより低い親和性若しくはより速い除去のための安定性若しくは半減期の減少が含まれる。さらに、本明細書に記載の抗体は、例えば、グリコシル化パターンの変化(例えば、1つ若しくは複数の糖成分の付加、1つ若しくは複数の糖成分の消失、又は1つ若しくは複数の糖成分の組成の変化)を含む翻訳後修飾の変化をもたらす1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個)のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含有しうる。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、低下した(例えば、又は全くない)エフェクター機能を含む。エフェクター機能の変化としては、例えば、以下の活性の1つ又は複数のモジュレーションが挙げられる:抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス、1つ又は複数のFc受容体への結合、及び炎症促進性応答。モジュレーションは、変化していない形態の定常領域のエフェクター機能活性と比較した、変化した定常領域を含有する対象抗体が呈する活性の増加、減少、又は排除を意味する。特定の実施形態では、モジュレーションは、活性が消失した又は完全にない状況を含む。
【0141】
エフェクター機能が変化した又はそれがない抗体は、バリアント定常、Fc、又は重鎖領域をもつ抗体を操作又は作製することによって作り出すことができる;機能及び/又は活性が変化した抗体を作製するための組み換えDNA技術及び/又は細胞培養及び発現条件を使用することができる。例えば、組み換えDNA技術は、エフェクター機能を含む抗体機能に影響する領域(例えば、Fc領域又は定常領域など)における1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を遺伝子操作するために使用することができる。あるいは、例えばグリコシル化パターンなどの翻訳後修飾の変化は、抗体が産生される細胞培養及び発現条件をコントロールすることによって達成することができる。抗体のFc領域に1つ又は複数の置換、付加、又は欠失を導入するための好適な方法は、当該技術分野において周知であり、例としては、例えば、Sambrook et al. (1989) "Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition," Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Harlow and Lane (1988)、前出;Borrebaek (1992)、前出;Johne et al. (1993)、前出;PCT国際公開第06/53301号パンフレット;及び米国特許第7,704,497号明細書に記載の標準的なDNA変異誘発技術が挙げられる。
【0142】
核酸分子
本明細で提供されるのは、本発明のNKE抗体、又はその断片をコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはまた、コード配列の5’末端で動作可能に連結されたシグナルペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはまた、リンカー配列をコードする配列を含む。
【0143】
1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18又は配列番号20を含むNKEをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のヌクレオチド配列を含む。
【0144】
1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のヌクレオチド配列に対応し、NKEをコードするRNA分子を含む。
【0145】
1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のヌクレオチド配列に対応し、NKEをコードするDNA分子を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレオチド配列のバリアントは、定義されたヌクレオチド配列と比較して、特定の領域にわたって、少なくとも約60%の同一性、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い同一性を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレオチド配列のバリアントは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のヌクレオチド配列の完全長にわたって、少なくとも約60%の同一性、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い同一性を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレオチド配列の断片は、定義されたヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレオチド配列の断片は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。
【0148】
単離された核酸は、DNA、cDNA、及びRNAを含むがそれらに限定されない任意の種類の核酸を含むことができる。例えば、1つの実施形態では、組成物は、タンパク質阻害剤又はその機能的断片をコードする、例えば単離されたcDNA分子を含む、単離されたDNA分子を含む。1つの実施形態では、組成物は、NKE又はその機能的断片をコードする単離されたRNA分子を含む。
【0149】
本発明の核酸分子は、安定性を向上させるように修飾することができる。本発明の核酸分子の安定性、機能性、及び/又は特異性を高め、且つ免疫刺激性を最小にするように修飾を加えることができる。例えば、安定性を高めるために、3’-残基を分解に対して安定にすることができ、例えば、それらの残基は、プリンヌクレオチド、特にアデノシン又はグアノシンヌクレオチドからなるように選択することができる。あるいは、ピリミジンヌクレオチドの修飾アナログによる置換、例えばウリジンの2’-デオキシチミジンによる置換が許容され、分子の機能に影響を与えない。
【0150】
本発明の1つの実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドアナログを含有することができる。例えば、末端は、修飾ヌクレオチドアナログを組み込むことによって安定化することができる。
【0151】
ヌクレオチドアナログの非限定的な例としては、糖及び/又はバックボーン修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸-糖バックボーンへの修飾を含む)が挙げられる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素又は硫黄ヘテロ原子を含むように修飾することができる。例示的なバックボーン修飾リボヌクレオチドでは、隣接するリボヌクレオチドにつながっているホスホエステル基は、修飾基、例えばホスホチオエート基で置換される。
【0152】
修飾の他の例は、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然に存在する核酸塩基の代わりに少なくとも1つの天然に存在しない核酸塩基を含有するリボヌクレオチドである。塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性を妨げるように修飾することができる。例示的な修飾核酸塩基としては、5位で修飾されたウリジン及び/又はシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシン及び/又はグアノシン、例えば、8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが挙げられるが、それらに限定されない。上記の修飾は組み合わせることができる。
【0153】
場合によっては、核酸分子は、1つ又は複数のヌクレオチドの、次の化学修飾:2’-H、2’-O-メチル、又は2’-OH修飾の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、本発明の核酸分子はヌクレアーゼに対する増強された抵抗性を有することができる。ヌクレアーゼ抵抗性の増加には、核酸分子は、例えば、2’-修飾リボース単位及び/又はホスホロチオエート結合を含むことができる。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、多数の異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾又は置換することができる。ヌクレアーゼ抵抗性の増加には、本発明の核酸分子は、2’-O-メチル、2’-フッ素、2’-O-メトキシエチル、2’-O-アミノプロピル、2’-アミノ、及び/又はホスホロチオエート結合を含むことができる。ロック核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、例えば、2’-4’-エチレン-架橋核酸、及び2-アミノ-A、2-チオ(例えば、2-チオ-U)、G-クランプ修飾などの特定の核酸塩基修飾を含めることも、標的に対する結合親和性を増加させることができる。
【0154】
1つの実施形態では、核酸分子は、2’-修飾ヌクレオチド、例えば、2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含む。1つの実施形態では、核酸分子は少なくとも1つの2’-O-メチル-修飾ヌクレオチドを含み、いくつかの実施形態では、核酸分子のすべてのヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を含む。
【0155】
本明細書で論じられる核酸剤には、非修飾のRNA及びDNA、並びに例えば有効性を向上させるように修飾されたRNA及びDNA、並びにヌクレオシドサロゲートのポリマーが含まれる。非修飾RNAは、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分が、天然に存在するもの、例えばヒトの体内に自然に存在するものと同じか、本質的に同じである分子を意味する。当該技術分野では、希少である又は珍しいが、天然に存在するRNAは修飾RNAと呼ばれてきた。例えば、Limbach et al. (Nucleic Acids Res., 1994, 22:2183-2196)を参照。そのようなしばしば修飾RNAと呼ばれる希少又は珍しいRNAは、典型的には転写後修飾の結果であり、且つ本明細書で使用される非修飾RNAという用語の範囲内である。本明細書で使用される場合、修飾RNAは、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、及びリン酸部分の1つ又は複数が自然に存在するものとは異なる、例えばヒトの体内に存在するものとは異なる分子を意味する。それらは「修飾RNA」と呼ばれるが、もちろん、修飾されているため、厳密に言えばRNAではない分子も含まれることになる。ヌクレオシドサロゲートは、ハイブリダイゼーションがリボリン酸バックボーンで見られるものと実質的に類似するように塩基が正しい空間的関係で存在することを可能にする非リボリン酸コンストラクト、リボリン酸バックボーンの非荷電模倣体で、リボリン酸バックボーンが置換された分子である。
【0156】
本発明の核酸の修飾は、1つ又は複数のリン酸基、糖基、バックボーン、N末端、C末端、又は核酸塩基に存在しうる。
【0157】
本発明はまた、本発明の単離核酸が挿入されたベクターも含む。当該技術分野において、本発明に有用な好適なベクターは豊富にある。
【0158】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明のヌクレオチド配列又は本発明のコンストラクトを含むベクターに関する。ベクターの選択は、その後に導入される宿主細胞によって決まることになる。いくつかの実施形態では、本発明のベクターは発現ベクターである。好適な宿主細胞には、多種多様な原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞が含まれる。特定の実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター及び哺乳類細胞ベクターからなる群より選択される。ポリヌクレオチド又はその同族ポリペプチドを産生するために、原核生物及び/又は真核生物のベクターをベースとする系を本発明との使用に採用することができる。多くのそのような系は、商業的に且つ広く利用可能である。
【0159】
いくつかの実施形態では、タンパク質をコードする合成核酸の発現は、典型的には、タンパク質又はその一部をコードする核酸をプロモーターに動作可能に連結すること、及びコンストラクトを発現ベクターに組み込むことによって達成される。使用されるベクターは、真核生物細胞における複製及び任意選択で組み込みに適したものである。典型的なベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、及び所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含有する。
【0160】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ又は複数の転写終結領域を含むことができる。転写終結領域は、効率的な終結を提供するためにコード配列の下流に存在することができる。転写終結領域は、上記のプロモーターと同じ遺伝子から得ることができる、又は1つ又は複数の異なる遺伝子から得ることができる。
【0161】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ又は複数の開始コドンを含むことができる。開始コドンはコード配列の上流に位置することができる。開始コドンはコード配列のフレーム内に存在することができる。開始コドンは、効率的な翻訳開始に必要な1つ又は複数のシグナル、例えば、限定されないがリボソーム結合部位と結合することができる。
【0162】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ又は複数の終止コドン又は停止コドンを含むことができる。終止コドンはコード配列の下流に存在することができる。終止コドンはコード配列コード配列のフレーム内に存在することができる。終止コドンは、効率的な翻訳終結に必要な1つ又は複数のシグナルと結合することができる。
【0163】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ又は複数のポリアデニル化シグナルを含むことができる。ポリアデニル化シグナルは、転写物の効率的なポリアデニル化に必要な1つ又は複数のシグナルを含むことができる。ポリアデニル化シグナルはコード配列の下流に位置することができる。ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、又はヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルであることができる。SV40ポリアデニル化シグナルは、pCEP4プラスミド(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)のポリアデニル化シグナルであってもよい。
【0164】
組み換え核酸配列コンストラクトは、1つ又は複数のリーダー配列を含むことができる。リーダー配列は、シグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリン(Ig)シグナルペプチド、例えば、限定されないが、IgGシグナルペプチド及びIgEシグナルペプチドである。
【0165】
本発明のベクターはまた、標準的な遺伝子送達プロトコールを用いて核酸免疫に使用することができる。遺伝送達のための方法は当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,399,346号明細書、同第5,580,859号明細書、同第5,589,466号明細書を参照。それらはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0166】
本発明の単離核酸は、は、多くの種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがそれらに限定されないベクターにクローニングすることができる。特に興味深いベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成(probe generation)ベクター、及びシーケンシングベクターが挙げられる。
【0167】
さらに、ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に供給することができる。ウイルスベクター技術は当該技術分野で周知であり、且つ例えば、Sambrook et al. (2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ又は複数の選択可能マーカーを含有する(例えば、国際公開第01/96584号パンフレット;国際公開第01/29058号パンフレット;及び米国特許第6,326,193号明細書)。
【0168】
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に供給することができる。ウイルスベクター技術は当該技術分野で周知であり、且つ例えばSambrook et al. (2012)並びにAusubel et al. (1997)並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ又は複数の選択可能マーカーを含有する(例えば、国際公開第01/96584号パンフレット;国際公開第01/29058号パンフレット;及び米国特許第6,326,193号明細書を参照)。
【0169】
例示として、核酸配列が導入されるベクターは、宿主細胞内に導入されたとき、宿主細胞のゲノムに組み込まれる、又は組み込まれないプラスミドであることができる。本発明のヌクレオチド配列又は本発明の遺伝子コンストラクトが挿入されうるベクターの例示的で非限定的な例としては、真核生物細胞での発現のためのtet-on誘導性ベクターが挙げられる。
【0170】
ベクターは、当業者に公知の従来の方法で得ることができる(Sambrook et al., 2012)。特定の実施形態では、ベクターは動物細胞の形質転換に有用なベクターである。
【0171】
1つの実施形態では、組み換え発現ベクターは、本明細書の他の箇所に記載の本発明のペプチド又はタンパク質をコードする核酸分子を含有することもできる。
【0172】
哺乳類細胞への遺伝子導入のために、数多くのウイルスをベースとする系が開発されてきた。例えば、レトロウイルスは遺伝子送達システムに便利なプラットフォームを提供する。当該技術分野で公知の技術を用いて、選択した遺伝子をベクターに挿入し、且つレトロウイルス粒子にパッケージすることができる。次いで、組み換えウイルスを単離し、且つ生体内又は生体外のいずれかで対象の細胞に送達することができる。数多くのレトロウイルス系が当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。数多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野で公知である。1つの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0173】
例えば、レンチウイルスなどのレトロウイルス由来のベクターは、長期の安定した導入遺伝子の組み込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にするので、長期の遺伝子導入を達成するための好適なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入できるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクターに比べて付加的な利点を有する。また、免疫原性が低いという付加的な利点も有する。1つの実施形態では、組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを含む。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、様々な障害の治療のための強力な遺伝子送達ツールとなっている。AAVベクターは、病原性がないこと、最小限の免疫原性、及び安定でかつ効率的な方法で後成細胞を形質導入する能力を含む、それらのベクターを遺伝子治療に理想的に適したものにする数多くの特徴を有する。AAVベクター内に含有された特定の遺伝子の発現は、AAV血清型、プロモーター、及び送達方法の適切な組み合わせを選ぶことによって、1つ又は複数の種類の細胞に特異的にターゲティングすることができる。
【0174】
いくつかの実施形態では、ベクターはまた、プラスミドベクターでトランスフェクトされた細胞又は本発明によって作製されたウイルスに感染した細胞での、その転写、翻訳及び/又は発現を許容する方法で導入遺伝子に動作可能に連結された従来の制御エレメントを含む。本明細書で使用される場合、「動作可能に連結された」配列には、目的の遺伝子と連続する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランス又は離れた位置で作用する発現制御配列の両方が含まれる。発現制御配列としては、適切な転写開始、終止、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化(polyA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;並びに所望の場合、コードされた産物の分泌を増強する配列が挙げられる。ネイティブ、構成的、誘導性且つ/又は組織特異的であるプロモーターを含む、非常に数多くの発現制御配列が当該技術分野で公知であり、且つ利用することができる。
【0175】
プロモーターは、コードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られうるように、遺伝子又はポリヌクレオチド配列に天然に結合したものであることができる。このようなプロモーターは「内因性」と呼ばれることがある。同様に、エンハンサーは、ポリヌクレオチド配列と天然に結合し、その配列の下流又は上流のいずれかに位置するものであることができる。あるいは、コードポリヌクレオチドセグメントを、組み換え又は異種プロモーターの制御下に置くことによって、ある種の利点が得られることになり、ここで組み換え又は異種プロモーターとは、その自然環境においてポリヌクレオチド配列と通常は結合しないプロモーターのことをいう。組み換えエンハンサー又は異種エンハンサーはまた、自然環境では通常ポリヌクレオチド配列と結合しないエンハンサーも意味する。そのようなプロモーター又はエンハンサーとしては、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及び他の原核生物、ウイルス、又は真核生物の細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然に存在しない」、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は発現を変化させる変異を含有するプロモーター又はエンハンサーを挙げることができる。合成的にプロモーター及びエンハンサーの核酸配列を作製することにくわえて、配列は、本明細書に開示の組成物に関連して、組み換えクローニング及び/又はPCRを含む核酸増幅技術を用いて作製することができる(米国特許第4,683,202号明細書、米国特許第5,928,906号明細書)。さらに、ミトコンドリア、緑葉体、及び同種のものなどの非核オルガネラ内の配列の転写及び/又は発現を誘導する制御配列も採用できることが企図される。
【0176】
当然のことながら、発現に選択された細胞型、オルガネラ、生物において、DNAセグメントの発現を効果的に誘導するプロモーター及び/又はエンハンサーを採用することが重要であろう。分子生物学の当業者は一般に、タンパク質発現にどのプロモーター、エンハンサー、及び細胞型の組み合わせを用いるかを一般的に知っている。例えば、Sambrook et al. (2012)を参照されたい。採用されるプロモーターは、組換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産において有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を誘導する適切な条件下で、構成的、組織特異的、誘導性であり、且つ/又は有用である。プロモーターは異種又は内因性であることができる。
【0177】
組み換え発現ベクターはまた、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にする選択可能マーカー遺伝子を含有することができる。好適な選択可能マーカー遺伝子は、特定の薬物に対する耐性を与えるG418及びハイグロマイシンなどのタンパク質、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、又は免疫グロブリン若しくはIgGのなどの免疫グロブリンのFc部分などのその一部をコードする遺伝子である。選択可能マーカーは、目的の核酸とは別のベクターに導入してもよい。
【0178】
さらなるプロモーターエレメント、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、それらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、最近、多くのプロモーターが開始部位の下流にも機能エレメントを含有することが示されている。プロモーターエレメント間の間隔は、エレメントが互いに反転又は移動しても、プロモーター機能が維持されるように、柔軟であることが多い。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性が低下し始めるまでにプロモーターエレメント間の間隔を50bpにまで広げることができる。プロモーターによって、個々のエレメントは、協同的に、又は独立して機能して、転写を活性化できるようである。
【0179】
好適なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに動作可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルを推し進めることができる強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの別の例は、伸長成長因子(Elongation Growth Factor)-1α(EF-1α)である。しかし、他の構成的プロモーター配列もまた使用することができ、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びに限定されないがアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。さらに、本発明は構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、それが動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が所望の場合にはオンにし、発現が所望されない場合にはオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。
【0180】
ベクターに見られるエンハンサー配列も、そこに含有される遺伝子の発現を調節する。典型的には、エンハンサーはタンパク質因子と結合して遺伝子の転写を増強する。エンハンサーは調節する遺伝子の上流に位置することもあり、又は下流に位置することもある。エンハンサーはまた、特定の細胞又は組織型での転写を増強するために、組織特異的である場合もある。1つの実施形態では、本発明のベクターは、ベクター内に存在する遺伝子の転写を増大させるための1つ又は複数のエンハンサーを含む。
【0181】
タンパク質阻害剤の発現を評価するために、細胞に導入する発現ベクターはまた、選択可能マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は両方を含有して、ウイルスベクターを通してトランスフェクション又は感染させようとする細胞の集団からの発現細胞の特定及び選択を容易にすることができる。他の態様では、選択可能マーカーは、DNAの別の小片に担持され、且つ共トランスフェクション手順で使用される。選択可能マーカーとレポーター遺伝子はともに、宿主細胞での発現を可能にする適切な調節配列に隣接することができる。有用な選択可能マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子及び同種のものが挙げられる。
【0182】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を特定し、調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物又は組織には存在しないか、又は発現していない遺伝子であり、且つその発現が何らかの検出可能な性質、例えば酵素活性によって明にされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時間においてにアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。好適な発現系は周知であり、且つ公知の技術を用いて調製することもでき、又は商業的に入手することもできる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小限の5’隣接領域をもつコンストラクトがプロモーターとして特定される。そのようなプロモーター領域をレポーター遺伝子に連結し、且つプロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用することができる。
【0183】
遺伝子を細胞に導入し発現させる方法は当技術分野で公知である。発現ベクターの状況下では、ベクターは宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に、当該技術分野の任意の方法で容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは物理的、化学的、又は生物学的な手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0184】
宿主細胞にペプチド又はタンパク質を導入する物理的な方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、及び同種のものが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を作製する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al. (2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照。
【0185】
目的のペプチドやタンパク質を宿主細胞に導入する生物学的な方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳類、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使われている方法になってきている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス、並びに同種のものに由来することができる。例えば、米国特許第5,350,674号明細書及び同第5,585,362号明細書を参照。
【0186】
宿主細胞にペプチド又はタンパク質を導入する化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームなどの脂質系がある。インビトロ及び生体内での送達担体として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0187】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達担体はリポソームである。宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、生体外又は生体内)には、脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸は脂質と結合することができる。脂質と結合した核酸は、リポソームの水性内部に封入される、リポソームの脂質二重層内に散在させる、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合している連結分子を介してリポソームに結合する、リポソームに封入される、リポソーム複合体を形成する、脂質を含有する溶液に分散される、脂質と混合される、脂質と組み合わされる、脂質の懸濁液として含有される、ミセル若しくは脂質ナノ粒子と含有される、若しくは複合体を形成する、又は他の方法で脂質と結合することができる。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中のいずれの特定の構造にも限定されない。例えば、二重層構造で、ミセルとして、又は「崩壊」構造で存在しうる。また、単に溶液中に散在している場合もあり、サイズ又は形状が均一でない凝集体を形成している可能性もある。脂質は脂肪物質であり、天然に存在する脂質の場合もあり、又は合成脂質の場合もある。例えば、脂質としては、細胞質に天然に存在する脂肪滴、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する化合物の一群が挙げられる。
【0188】
使用に適した脂質は市場供給元のものから入手できる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、シグマ、ミズーリ州セントルイスから入手することができ;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(ニューヨーク州プレインビュー)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質はAvanti Polar Lipids,Inc.(アラバマ州バーミングハム)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも蒸発しやすいので、単独の溶媒として使用される。「リポソーム」は、閉じた脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される、様々な単一及び多重膜脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部の水性媒体をもつ小胞構造を有することを特徴としうる。多重膜のリポソームは、水性媒体で隔てられた複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水性溶液に懸濁されると、リポソームが自然に形成される。脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再編成(self-rearrangement)を経て、且つ水及び溶存溶質を脂質二重層の間に閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。ただし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質はミセル構造をとることもあり、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在するだけのこともある。さらに、リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0189】
ScFv抗体
1つの実施形態では、抗体断片はscFv断片を含む。1つの実施形態では、ScFv抗体断片はCH1及びCL領域を含まないFab断片に関する。したがって、1つの実施形態では、scFv抗体断片は、VH及びVLを含むFab断片に関する。1つの実施形態では、scFv抗体断片は、VHとVLの間にリンカーを含む。1つの実施形態では、scFv抗体断片は、VH、VL並びにCH2及びCH3領域を含む。1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比較して、発現、安定性、半減期、抗原結合、重鎖-軽鎖対形成、組織浸透性又はそれらの組み合わせが改変されている。
【0190】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より高い発現を有する。
【0191】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より高い抗原結合を有する。
【0192】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より長い半減期を有する。
【0193】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より高い安定性を有する。
【0194】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より大きい組織浸透性を有する。
【0195】
1つの実施形態では、本発明のscFv抗体断片は、親MAbと比べて、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍又は50倍超えて、より大きい重鎖-軽鎖対形成を有する。
【0196】
宿主細胞
さら提供されるのは、本明細書に記載の分子を発現させるための宿主細胞(単離された細胞、一過性の細胞株、及び安定な細胞株など)である。宿主細胞は、原核生物であることもでき、又は真核生物であることもできる。例示的な原核生物宿主細胞としては、E.コリ K12株294(ATCC番号31446)、E.コリ B、E.コリ X1776(ATCC番号31537)、E.コリ W3110(F-、ガンマ-、原栄養性/ATCC番号27325)、バチルス・サブチリスなどの桿菌、及びサルモネラ・ティフィムリウム又はセラチア・マルセッセンスなどの他の腸内細菌科、及び様々なシュードモナス属の種が挙げられる。好適な原核生物宿主細胞の1つは大腸菌BL21(ストラタジーン)であり、これはOmpT及びLonプロテアーゼを欠損しており、インタクトな組み換えタンパク質の単離を妨害する可能性があり、pETベクターなどのT7プロモーター駆動ベクターに有用である。別の好適な原核生物はE.コリW3110(ATCC番号27325)である。原核生物によって発現された、ペプチドは典型的には、N末端メチオニン又はホルミルメチオニンを含有し、且つグリコシル化されていない。融合タンパク質の場合、N末端メチオニン又はホルミルメチオニンは、融合タンパク質のアミノ末端又は融合タンパク質のシグナル配列に存在する。もちろん、これらの例は限定的なものではなく、例示的なものであることを意図している。
【0197】
原核生物にくわえて、糸状菌又は酵母などの真核微生物も、融合タンパク質をコードするベクターの好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロマイセス・セレビシエは、一般的に用いられる下等真核生物の宿主微生物である。他のものとしては、シゾサッカロミケス・ポンベ(Beach and Nurse, Nature, 290: 140 (1981);1985年5月2日公開の欧州特許第139,383号明細書);例えば、K.ラクチス(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt et al., J. Bacteriol., 154(2):737-742 (1983))、K.フラジリス(ATCC12,424)、K.ブルガリクス(ATCC番号16,045)、K.ウィッカーラミ(wickeramii)(ATCC番号24,178)、K.ウォルティ(waltii)(ATCC番号56,500)、K.ドロソフィラルム(drosophilarum)(ATCC番号36,906;Van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990))、K.サーモトレランス(thermotolerans)、及びK.マルシアナスなどのクルイベロマイセス宿主(米国特許第4,943,529号明細書;Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991));ヤロウイア(欧州特許第402,226号明細書);ピキア・パストリス(欧州特許第183,070号明細書;Sreekrishna et al., J. Basic Microbiol., 28:265-278 (1988));カンジダ;トリコデルマ・リージア(欧州特許第244,234号明細書);ニューロスポラ・クラッサ(Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 (1979));シュワニオミセス・オシデンタリス(1990年10月31日に公開の欧州特許第394,538号明細書)などのシュワニオミセス;並びに例えば、ニューロスポーラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(1991年1月10日に公開の国際公開第91/00357号パンフレット)などの糸状菌、並びにA.ニデュランス(Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 (1983);Tilburn et al., Gene, 26:205-221 (1983);Yelton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 (1984))及びA.ニガー(Kelly and Hynes, EMBO J., 4:475-479 (1985))などのアスペルギルス宿主が挙げられる。メチロトローフ酵母は本明細書で好適であり、ハンセヌラ、カンジダ、クロエケラ、ピキア、サッカロマイセス、トルロプシス及びロドトルラからなる属から選択されるメタノールで増殖できる酵母を含むが、それらに限定されない。このクラスの酵母を例示する特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)で見ることができる。さらに、宿主細胞には、ドロソフィラS2及びスポドプテラSf9などの昆虫細胞、並びに植物細胞も含まれる。
【0198】
有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COS-7、L細胞、C127、3T3、BHK、CHL-1、NSO、HEK293、WI38、BHK、C127又はMDCK細胞株が挙げられるが、それらに限定されない。別の例示的な哺乳類細胞株はCHL-1である。CHL-1が使用される場合、真核生物の選択マーカーとしてハイグロマイシンが含まれる。CHL-1細胞は、入手しやすいヒト細胞株であるRPMI7032メラノーマ細胞に由来する。本発明で使用するのに適した細胞は、ATCCから市販されている。
【0199】
送達担体
1つの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のNKE、その断片、又はそれらをコードする核酸分子を含む送達担体を含む組成物を提供する。1つの実施形態では、NKEをコードする核酸分子はmRNA分子を含む。
【0200】
例示的な送達担体としては、マイクロスフェア、微粒子、ナノ粒子、ポリマーソームポリマーソーム、リポソーム、及びミセルが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、送達担体は、本発明のNKE又はその断片をコードする核酸分子が搭載された脂質ナノ粒子である。1つの実施形態では、NKEをコードする核酸分子はmRNA分子を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、送達担体は、その搭載された積み荷(loaded cargo)の制御された放出、遅延放出、又は継続的な放出を提供する。いくつかの実施形態では、送達担体は、送達担体を治療部位にターゲティングするターゲティング部分を含む。
【0202】
場合によっては、コードするmRNAを送達することによってタンパク質を発現させることには、タンパク質、プラスミドDNA又はウイルスベクターを使用する方法よりも多くの利点がある。mRNAトランスフェクションの間、所望のタンパク質のコード配列のみが細胞に送達される、したがってプラスミドバックボーン、ウイルス遺伝子、及びウイルスタンパク質に関連するすべての副作用を避けることができる。より重要なことは、DNAベースやウイルスベースのベクターとは違って、mRNAはゲノムに組み込まれる危険性がなく、且つmRNAの送達後すぐにタンパク質の生産が開始されることである。例えば、高レベルの循環タンパク質が、コードするmRNAを生体内に注射してから15分~30分以内に測定されている。ある特定の実施形態では、タンパク質よりむしろmRNAを使うこともまた多くの利点がある。循環中のタンパク質の半減期は短いことが多く、したがってタンパク質治療は頻繁な投与を要することになるが、mRNAは数日間継続的にタンパク質を生成産するための鋳型を提供する。タンパク質の精製は問題点が多く、且つタンパク質は、有害作用を引き起こす凝集体及び他の不純物を含有しうる(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0203】
宿主細胞でのmRNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイとしては、例えば、ノーザンブロッティング及びRT-PCRのなど当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫原性手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、又は本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出して、本発明の範囲内に入る薬剤を明らかにすることなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0204】
CAR分子
1つの実施形態では、本発明は、本発明のNKEを含む結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。1つの実施形態では、CARは抗原結合ドメインを含む。1つの実施形態では、抗原結合ドメインはターゲティングドメインであり、そのターゲティングドメインは、CARを発現する細胞を、シアル酸結合受容体を発現する細胞又は粒子に誘導する。
【0205】
様々な実施形態では、CARは、「第一世代」、「第二世代」、「第三世代」、「第四世代」又は「第五世代」CARでありうる(例えば、Sadelain et al., Cancer Discov. 3(4):388-398 (2013);Jensen et al., Immunol. Rev. 257:127-133 (2014);Sharpe et al., Dis. Model Mech. 8(4):337-350 (2015);Brentjens et al., Clin. Cancer Res. 13:5426-5435 (2007);Gade et al., Cancer Res. 65:9080-9088 (2005);Maher et al., Nat. Biotechnol. 20:70-75 (2002);Kershaw et al., J. Immunol. 173:2143-2150 (2004);Sadelain et al., Curr. Opin. Immunol. (2009);Hollyman et al., J. Immunother. 32:169-180 (2009)を参照)。
【0206】
本発明で使用する「第一世代」CARは、T細胞受容体鎖の細胞質/細胞内ドメインに融合した膜貫通ドメインに融合した、抗原結合ドメイン、例えば、単鎖可変断片(scFv)を含む。「第一世代」CARは典型的には、CD3ζ鎖の細胞内ドメインを有し、そのドメインは内因性T細胞受容体(TCR)からのシグナルの主要な伝達物質である。「第一世代」CARは、HLAを介した抗原提示とは無関係に、単一の融合分子中のCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを通じて、新たに抗原認識をもたらし、且つCD4+T細胞とCD8+T細胞の両方の活性化を引き起こすことができる。
【0207】
本発明で使用する「第二世代」CARは、T細胞を活性化することができる細胞内シグナル伝達ドメイン並びにT細胞の能力及び持続性を増やすように設計された共刺激ドメインに融合された抗原結合ドメイン、例えば、単鎖可変断片(scFv)を含む(Sadelain et al., Cancer Discov. 3:388-398 (2013))。したがって、CARのデザインは、生理学的にはTCRヘテロ二量体とCD3複合体という2つの別々の複合体がもたらす、抗原認識とシグナル伝達という2つの機能を組み合わせることができる。「第二世代」CARは、CARの細胞質尾部に、様々な共刺激分子、例えば、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、及び同種のものからの細胞内ドメインを含んで、細胞にさらなるシグナルをもたらす。
【0208】
「第二世代」CARは、例えば、CD28又は4-1BBドメインによる共刺激と、例えば、CD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方をもたらす。前臨床研究は、「第二世代」CARがT細胞の抗腫瘍活性を向上できることを示している。例えば、「第二世代」CAR修飾T細胞の強い有効性が、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者におけるCD19分子を標的とする治験において示された(Davila et al., Oncoimmunol. 1(9):1577-1583 (2012))。
【0209】
「第三世代」CARは、例えばCD28と4-1BBドメインの両方を含むことによる複数の共刺激及び例えばCD3ζ活性化ドメインを含むことによる活性化をもたらす。
【0210】
「第四世代」CARは、例えばCD28又は4-1BBドメインによる共刺激、及び、例えば構成的又は誘導性ケモカイン成分にくわえて、CD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化をもたらす。
【0211】
「第五世代」CARは、例えばCD28又は4-1BBドメインによる共刺激、並びに、例えばCD3ζシグナル伝達ドメイン、構成的又は誘導性ケモカイン成分、及びサイトカイン受容体、例えばIL-2Rβの細胞内ドメインによる活性化をもたらす。
【0212】
様々な実施形態では、CARは、多価CAR系、例えばデュアルCAR又は「タンデムCAR」系に含めることができる。多価CAR系は、複数のCARを含む系又は細胞、及び複数の抗原を標的とする2価/二重特異的CARを含む系又は細胞を含む。
【0213】
本明細書に開示の実施形態では、CARは一般に、上記のように、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む。特定の非限定的な実施形態では、抗原結合ドメインは、シアル酸結合受容体への結合に特異的な、二重特異性シアル酸結合受容体抗体、又はそのバリアントである。
【0214】
基材
1つの実施形態では、本発明は、NKE、その断片、又はそれらをコードする核酸分子を含むスキャフォールド、基材、又は装置を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、モジュレーターを含む、限定されないが、ヒドロゲル、電界紡糸スキャフォールド、ポリマーマトリックス、又は同種のものを含む組織工学スキャフォールドを提供する。ある特定の実施形態では、NKE、その断片、又はそれらをコードする核酸分子は、スキャフォールド、基材、又は装置の表面に沿ってコーティングすることができる。ある特定の実施形態では、NKE、その断片、又はそれらをコードする核酸分子は、スキャフォールド、基材、又は装置内に封入される。
【0215】
医薬組成物
本発明はまた、1つ又は複数の本明細書に記載の組成物を含む医薬組成物を提供する。製剤は、従来の賦形剤、すなわち、治療部位への投与に適した薬学的に許容される有機又は無機担体物質との混合物として使用することができる。医薬組成物滅菌することができ、所望であれば、補助剤、例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧緩衝剤に影響を与える塩、着色剤及び/又は芳香物質及び同種のものと混合することができる。これらはまた、所望であれば、他の活性剤、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせることができる。
【0216】
本発明の組成物の投与は、例えば、非経口によって、静脈内、皮下、筋肉内、若しくは腹腔内注射によって、又は注入によって、又は任意の他の許容される全身的方法によって行うことができる。
【0217】
本明細書で使用される場合、「追加成分」としては、以下の1つ又は複数が挙げられるが、それらに限定されない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;着色剤t;防腐剤;ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;並びに薬学的に許容されるポリマー又は疎水性材料。本発明の医薬組成物に含まれうる他の「追加成分」は、当該技術分野で公知であり、例えば、Genaro, ed. (1985, Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA)(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0218】
本発明の組成物は、組成物全体の重量に対して約0.005%~2.0%の防腐剤を含むことができる。防腐剤は、環境中の汚染物質に曝露された場合の腐敗を防止するために使用される。本発明において有用な防腐剤の例としては、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミド尿素及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0219】
1つの実施形態では、組成物は、抗酸化剤及び、組成物の1つ又は複数の成分の分解を阻害するキレート剤を含む。いくつかの化合物に対する例示的な酸化防止剤は、BHT、BHA、α-トコフェロール、及びアスコルビン酸である。例示的なキレート剤としては、エデト酸塩(例えば、エデト酸二ナトリウム)及びクエン酸が挙げられる。キレート剤は、製剤の有効期間に悪影響を及ぼす可能性のある組成物中の金属イオンをキレート化するのに有用である。BHT及びエデト酸二ナトリウムは、いくつかの化合物に対してそれぞれ抗酸化剤及びキレート剤でありうるが、当業者に公知であるように、他の好適且つ均等な抗酸化剤及びキレート剤をそれらの代用とすることができる。
【0220】
液体懸濁液は、本発明の化合物又は他の組成物の水性又は油性ビヒクル中の懸濁液を得るための従来の方法を用いて調製することができる。水性ビヒクルとしては、例えば、水及び等張生理食塩水が挙げられる。油性ビヒクルとしては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、アラキス油、オリーブ油、ゴマ油、又はヤシ油などの植物油、分別植物油、及び流動パラフィンなどの鉱物油が挙げられる。液体懸濁液は、懸濁剤、分散剤又は湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、防腐剤、緩衝剤、塩、香味料、着色剤、及び甘味剤を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含むことができる。油性懸濁液は、増粘剤をさらに含むことができる。既知の懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、水素化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアガム、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。既知の分散剤又は湿潤剤としては、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドと、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステル、又は脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられるが、それらに限定されない。既知の乳化剤としては、レシチン、及びアカシアが挙げられるが、それらに限定されない。既知の防腐剤としては、メチル、エチル、又はn-プロピルパラヒドロキシ安息香酸塩、アスコルビン酸、及びソルビン酸が挙げられるが、それらに限定されない。
【0221】
経口剤の場合、特に好適なのは、錠剤、ドラジェ、液剤、ドロップ剤、坐剤、又はカプセル剤、カプレット剤、及びゲルキャップ剤である。経口投与に適した他の製剤としては、粉末又は顆粒剤、水性又は油性懸濁剤、水性又は油性溶液、ペースト剤、ゲル剤、歯磨剤、洗口剤、コーティング剤、口腔洗浄剤、チューインガム、ワニス、シーラント、口腔及び歯の「溶解ストリップ」、又はエマルションが挙げられるが、それらに限定されない。経口使用を意図した組成物は、当該技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、且つそのような組成物は、錠剤の製造に適した不活性で無毒性の薬学的賦形剤からなる群より選択される1つ又は複数の薬剤を含有することができる。そのような賦形剤としては、例えば、乳糖などの不活性希釈剤;コーンスターチなどの造粒剤及び崩壊剤;デンプンなどの結合剤;並びにステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤などが挙げられる。
【0222】
錠剤は非コーティングでもよく、又は、対象の消化管内で遅延崩壊を達成し、それにより有効成分の持続放出及び吸収をもたらすように公知の方法を用いてコーティングしてもよい。例として、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの材料を錠剤のコーティングに使用することができる。さらに例として、米国特許第4,256,108号明細書;同第4,160,452号明細書;及び同第4,265,874号明細書に記載の方法を用いて錠剤をコーティングして、浸透圧によって放出が制御される錠剤を形成することができる。錠剤は、薬学的にエレガントで口当たりのよい製剤を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤、又はこれらのいくつかの組み合わせをさらに含むことができる。
【0223】
有効成分を含む硬カプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて作製することができる。そのような硬カプセル剤は有効成分を含み、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンなどの不活性固体希釈剤を含む追加成分をさらに含むことができる。
【0224】
有効成分を含む軟ゼラチンカプセル剤は、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて作製することができる。そのような軟ゼラチンカプセル剤は有効成分を含み、水又はピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油などの油媒体と混合することができる。
【0225】
経口投与の場合、本発明の組成物は、結合剤;充填剤;滑沢剤;崩壊剤;又は湿潤剤などの薬学的に許容される賦形剤を用いて、従来の手段により調製された錠剤又はカプセルの形態であることができる。所望により、錠剤は、Colorcon、ペンシルバニア州ウェストポイントから入手可能なOPADRY(商標)フィルムコーティングシステム(例えば、OPADRY(商標)OYタイプ、OYCタイプ、有機腸溶OY-Pタイプ、水性腸溶OY-Aタイプ、OY-PMタイプ及びOPADRY(商標)White、32K18400)などの好適な方法及びコーティング材料を使用してコーティングすることができる。
【0226】
経口投与用の液体製剤は、溶液、シロップ、又は懸濁液の形態がありうる。液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピルp-ヒドロキシ安息香酸塩又はソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤とともに従来の手段により調製することができる。経口投与に適した本発明の医薬組成物の液体製剤は、液体の形態で、又は使用前に水若しくは他の好適なビヒクルで再溶解することを意図した乾燥製品の形態のいずれかで調製、包装、及び販売することができる。
【0227】
有効成分含む錠剤は、例えば、任意選択で1つ又は複数の追加成分とともに有効成分を圧縮又は成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒製剤のような流動性のある形態の有効成分を好適な装置で、任意選択で結合剤、滑沢剤、賦形剤、表面活性剤、及び分散剤の1つ又は複数と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、有効成分、薬学的に許容される担体、及び混合物を湿らせるのに少なくとも充分な液体の混合物を、好適な装置内で成形することによって作ることができる。錠剤の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、造粒剤及び崩壊剤、結合剤、及び滑沢剤が挙げられるが、それらに限定されない。既知の分散剤としては、ジャガイモデンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されない。既知の表面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されない。既知の希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、及びリン酸ナトリウムが挙げられるが、それらに限定されない。既知の造粒剤及び崩壊剤としては、コーンスターチアルギン酸が挙げられるが、それらに限定されない。既知の結合剤としては、ゼラチン、アカシア、アルファ化トウモロコシ(maize)デンプン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられるが、それらに限定されない。既知の滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、及びタルクが挙げられるが、それらに限定されない。
【0228】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせた有効成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、又は販売することができる。注射製剤は、アンプル又は防腐剤を含有する複数回投与容器などの単位投与形態で調製、包装、又は販売することができる。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、及び移植可能な徐放性製剤又は生分解性製剤が挙げられるが、それらに限定されない。そのような製剤は、懸濁剤、安定化剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含むことができる。非経口投与用製剤の1つの実施形態では、活性成分は、再溶解された組成物の非経口投与の前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再溶解するために乾燥(すなわち、粉末又は粒状)形態で提供される。
【0229】
医薬組成物は、滅菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で調製、包装、又は販売することができる。この懸濁液又は溶液は、公知の技術に従って製剤化することができ、且つ有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加成分を含むことができる。そのような滅菌の注射製剤は、例えば水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を用いて調製することができる。他の許容可能な希釈剤及び溶媒としては、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド又はジグリセリドなどの固定油が挙げられるが、それらに限定されない。有用な他の非経口投与可能製剤としては、活性成分を微結晶の形態で、リポソーム製剤で、又は生分解性ポリマー系の成分として含むものがある。徐放性又は移植用の組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、やや溶けにくいポリマー、又はやや溶けにくい塩などの、薬学的に許容されるポリマー又は疎水性材料を含みうる。
【0230】
組成物の賦形剤及びその他の成分
組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。薬学的に許容される賦形剤は、ビヒクル、アジュバント、担体、又は希釈剤などの機能性分子であることができる。薬学的に許容される賦形剤は、免疫刺激複合体(ISCOMS)などの表面活性剤、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリルリピドAを含むLPSアナログ、ムラミルペプチド、キノンアナログ、スクアレン及びスクアレンなどのビヒクル、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、若しくはナノ粒子を含むことができるトランスフェクション促進剤、又は他の既知のトランスフェクション促進剤であることができる。
【0231】
トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリ-L-グルタミン酸(LGS)を含むポリカチオン、又は脂質である。トランスフェクション促進剤はポリ-L-グルタミン酸であり、ポリ-L-グルタミン酸は6mg/ml未満の濃度で組成物中に存在することができる。トランスフェクション促進剤としてはまた、免疫刺激複合体(ISCOMS)などの表面活性剤、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリルリピドAを含むLPSアナログ、ムラミルペプチド、キノンアナログ並びにスクアレン及びスクアレンなどのビヒクルを含むことができ、且つヒアルロン酸も組成物とともに投与して使用することができる。組成物はまた、脂質、レシチンリポソーム又は当該技術分野でDNA-リポソーム混合物として公知の他のリポソーム(例えば国際公開第9324640号パンフレットを参照)を含むリポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、若しくはナノ粒子などのトランスフェクション促進剤、又は他の既知のトランスフェクション促進剤を含むことができる。トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリ-L-グルタミン酸(LGS)を含むポリカチオン、又は脂質である。組成物中のトランスフェクション剤の濃度は、4mg/ml未満、2mg/ml未満、1mg/ml未満、0.750mg/ml未満、0.500mg/ml未満、0.250mg/ml未満、0.100mg/ml未満、0.050mg/ml未満、又は0.010mg/ml未満である。
【0232】
薬学的に許容される賦形剤は、本発明のチェックポイント阻害剤抗体にくわえて、アジュバントであることができる。追加のアジュバントは、代替プラスミドで発現される他の遺伝子であることができる、又は組成物中の上記プラスミドと組み合わせてタンパク質として送達される。アジュバントは以下からなる群より選択することができる:α-インターフェロン(IFN-α)、β-インターフェロン(IFN-β)、γ-インターフェロン、血小板由来成長因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、上皮成長因子(EGF)、皮膚T細胞誘引性ケモカイン(cutaneous T cell-attracting chemokine)(CTACK)、上皮胸腺発現ケモカイン(epithelial thymus-expressed chemokine)(TECK)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)、IL-12、IL-15、MHC、CD80、シグナル配列を欠失したIL-15を含み、任意選択でIgE由来のシグナルペプチドを含むCD86。アジュバントは、IL-12、IL-15、IL-28、CTACK、TECK、血小板由来成長因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、上皮成長因子(EGF)、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、PD-1、IL-10、IL-12、IL-18、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0233】
本発明の抗体にくわえてアジュバントとして有用でありうる他の遺伝子としては、以下をコードするものが挙げられる:MCP-1、MIP-1a、MIP-1p、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、IL-18の変異形態、CD40、CD40L、血管増殖因子、線維芽細胞増殖因子、IL-7、IL-22、神経成長因子、血管内皮細胞増殖因子、Fas、TNF受容体、Flt、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-1、Ap-1、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-1、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANKリガンド、Ox40、Ox40リガンド、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2及びそれらの機能的断片。
【0234】
組成物は、1994年4月1日に出願された米国特許出願第021,579号(参照により本明細書に完全に援用される)に記載の遺伝子促進剤(genetic facilitator agent)をさらに含むことができる。
【0235】
組成物は、約1ナノグラム~100ミリグラム;約1マイクログラム~約10ミリグラム;又は好ましくは約0.1マイクログラム~約10ミリグラム;又はより好ましくは約1ミリグラム~約2ミリグラムの量でDNAを含むことができる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明による組成物は、約5ナノグラム~約1000マイクログラムのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、約10ナノグラム~約800マイクログラムのDNAを含有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、約0.1~約500マイクログラムのDNAを含有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、組成物、約1~約350マイクログラムのDNAを含有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、約25~約250マイクログラム、約100~約200マイクログラム、約1ナノグラム~100ミリグラム;約1マイクログラム~約10ミリグラム;約0.1マイクログラム~約10ミリグラム;約1ミリグラム~約2ミリグラム、約5ナノグラム~約1000マイクログラム、約10ナノグラム~約800マイクログラム、約0.1~約500マイクログラム、約1~約350マイクログラム、約25~約250マイクログラム、約100~約200マイクログラムのDNAを含有することができる。
【0236】
組成物は、使用される投与方法に応じて製剤化することができる。注射用医薬組成物は、無菌で、パイロジェンフリーで、且つ微粒子無しであることができる。等張製剤又は溶液を使用することができる。等張性のための添加物としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、及び乳糖を挙げることができる。組成物は血管収縮剤を含むことができる。等張溶液はリン酸緩衝生理食塩水を含むことができる。組成物は、ゼラチン及びアルブミンを含む安定剤をさらに含むことができる。LGS又はポリカチオン又はポリアニオンを含む安定剤は、製剤を室温又は周囲温度で長期間安定な状態にすることができる。
【0237】
遺伝子操作免疫細胞を用いた送達の方法
1つの実施形態では、本発明は、二重特異性シアル酸結合受容体抗体を発現する遺伝子操作免疫細胞を用意して、標的細胞に二重特異性シアル酸結合受容体抗体を送達するための方法を提供する。1つの実施形態では、免疫細胞は本発明の二重特異性シアル酸結合受容体抗体の内因性分泌のために遺伝子操作される。
【0238】
様々な実施形態では、本発明は、腫瘍細胞を標的とする二重特異性抗シアル酸結合受容体抗体の発現又は内因性分泌のために操作された免疫細胞を含む組成物に関する。本発明の二重特異性シアル酸結合受容体抗体の発現又は内因性分泌のために遺伝子操作できる免疫細胞の例としては、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はマクロファージが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫細胞はさらにキメラ抗原受容体(CAR)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の二重特異性シアル酸結合受容体抗体の発現又は送達のためのCAR-T細胞の使用に関する。
【0239】
投与の方法
本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能又は活性を増加させるための方法を提供する。これは、例えば、標準的なNK細胞又はT細胞ベースの細胞傷害性アッセイで測定することができ、そのアッセイではシグレック陽性リンパ球によるシアル酸リガンド陽性細胞の殺傷を刺激する治療化合物の能力が測定される。1つの実施形態では、抗体調製物は、記載の細胞傷害性アッセイを参照して、シグレック制限リンパ球の細胞傷害性の少なくとも10%の増加、任意選択でリンパ球細胞傷害性の少なくとも40%~50%の増加、又は任意選択でNK細胞傷害性の少なくとも70%の増加を引き起こす。1つの実施形態では、抗体調製物は、記載の細胞傷害性アッセイを参照して、シグレック制限リンパ球によるサイトカイン放出の少なくとも10%の増加、任意選択でサイトカイン放出の少なくとも40%~50%の増加、又は任意選択でサイトカイン放出の少なくとも70%の増加を引き起こす。1つの実施形態では、抗体調製物は、シグレック制限リンパ球による細胞傷害性のマーカー(例えばCD107及び/若しくはCD137)の細胞表面発現の少なくとも10%の増加、任意選択で少なくとも40%~50%の増加、又は任意選択で細胞傷害性のマーカー(例えばCD107及び/若しくはCD137)の細胞表面発現の少なくとも70%の増加を引き起こす。
【0240】
本発明はまた、対象における免疫応答を増加させる方法に関する。免疫応答を増加させることを、対象の疾患を治療及び/又は予防するために用いることができる。本方法は、本明細書に開示のワクチンを対象に投与することを含むことができる。ワクチンを投与された対象は、抗原のみを投与された対象と比較して、増加又は増大した免疫応答を有することができる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、約0.5倍~約15倍、約0.5倍~約10倍、又は約0.5倍~約8倍増加することができる。あるいは、ワクチンを投与された対象における免疫応答は、少なくとも約0.5倍、少なくとも約1.0倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5.0倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6.0倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7.0倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8.0倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9.0倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10.0倍、少なくとも約10.5倍、少なくとも約11.0倍、少なくとも約11.5倍、少なくとも約12.0倍、少なくとも約12.5倍、少なくとも約13.0倍、少なくとも約13.5倍、少なくとも約14.0倍、少なくとも約14.5倍、又は少なくとも約15.0倍増加することができる。
【0241】
さらに他の代替的な実施形態では、ワクチンを投与された対象における免疫応答は、約50%~約1500%、約50%~約1000%、又は約50%~約800%増加することができる。他の実施形態では、ワクチンを投与された対象における免疫応答は、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約650%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、少なくとも約1200%、少なくとも約1250%、少なくとも約1300%、少なくとも約1350%、少なくとも約1450%、又は少なくとも約1500%増加することができる。
【0242】
ワクチン投与は、1μg~10mgの有効成分/kg体重/回であることができ、且つ20μg~10mgの成分/kg体重/回であることができる。ワクチンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又は31日毎に投与することができる。有効な治療のためのワクチン投与の回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回であることができる。
【0243】
ワクチン
1つの実施形態では、本発明は、シアル酸受容体抗体、若しくはその断片、若しくはそのバリアントと、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体との組み合わせを含む二重特異性抗体、又はシアル酸受容体抗体、若しくはその断片、若しくはそのバリアントと、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体との組み合わせを含む二重特異性抗体をコードする核酸分子の投与に関する。免疫原性組成物は、腫瘍抗原を発現する標的細胞の殺傷を増加させるのに使用することができる。
【0244】
免疫原性組成物は、DNAワクチン、ペプチドワクチン、又はDNA及びペプチドワクチンの組み合わせであることができる。DNAワクチンは、腫瘍抗原をコードする核酸配列を含むことができる。核酸配列は、DNA、RNA、cDNA、それらのバリアント、それらの断片、又はそれらの組み合わせであることができる。核酸配列は、ペプチド結合によって本発明の二重特異性抗体をコードする配列に連結されるリンカー、リーダー、又はタグ配列をコードするさらなる配列も含むことができる。
【0245】
ワクチンによって誘導される腫瘍細胞殺傷は、ワクチンを投与されなかった対象と比較して、ワクチンを投与された対象における標的腫瘍抗原を発現する細胞の殺傷レベルの増加を含むことができる。ワクチンを投与された対象における腫瘍細胞殺傷レベルは、ワクチンを投与されなかった対象と比較して、約1.5倍~約16倍、約2倍~約12倍、又は約3倍~約10倍増加することができる。ワクチンを投与された対象における腫瘍細胞殺傷レベルは、ワクチンを投与されなかった対象と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5.0倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6.0倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7.0倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8.0倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9.0倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10.0倍、少なくとも約10.5倍、少なくとも約11.0倍、少なくとも約11.5倍、少なくとも約12.0倍、少なくとも約12.5倍、少なくとも約13.0倍、少なくとも約13.5倍、少なくとも約14.0倍、少なくとも約14.5倍、少なくとも約15.0倍、少なくとも約15.5倍、又は少なくとも約16.0倍増加することができる。
【0246】
本発明のワクチンは、ワクチン自体が病気又は死亡を引き起こさないように安全であるなど、有効なワクチンに要求される特徴を有することができ、標的抗原を発現する細胞の存在に起因する病気を防ぎ;且つ投与が容易で、副作用がほとんどなく、生物学的に安定しており、且つ投与1回当たりのコストが低い。
【0247】
いくつかの実施形態では、NKEは病原体関連抗原又はウイルス抗原へと誘導され、これを利用してNK細胞を病原体又はウイルス感染細胞へと誘導することができる。いくつかの実施形態では、抗原は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、エボラウイルス、日本脳炎ウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、狂犬病ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(HHV-4)、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)及び単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、JCウイルス、アルボウイルス、エンテロウイルス、ウエストナイルウイルス、デングウイルス、ポリオウイルス、並びに水痘帯状疱疹ウイルスの抗原を含むがそれらに限定されないウイルス抗原を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ナイセリア・メニンジティディス、ストレプトコッカス・アガラクティアエ、及びエシェリヒア・コリの抗原を含むが、それらに限定されない細菌抗原を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、及びトキソプラズマ・ゴンディの抗原を含むがそれらに限定されない真菌抗原又は原生動物抗原を含む。
【0248】
細菌抗原
本発明のNKEは、細菌抗原又はその断片若しくはバリアントへの結合に特異的であることができる。細菌は、以下の門のいずれか1つに由来することができる:アシドバクテリア、アクチノバクテリア、アクウィフェクス、バクテロイデス、カルディセリカ、クラミジア、クロロビウム、クロロフレクサス、クリシオジェネテス、シアノバクテリア、デフェリバクテレス、デイノコックス・テルムス、ディクチオグロミ、エルシミクロビア、フィブロバクテル、ファーミキューテス、フソバクテリウア、ゲンマティモナス、レンティスファエラ、ニトロスピラ、プランクトミケス、プロテオバクテリア、スピーロカエテス、シネルギステス、テネリクテス、サーモデスルフォバクテリア、テルモトガ、及びウェルコミクロビウム。
【0249】
細菌はグラム陽性細菌又はグラム陰性細菌であることができる。細菌は好気性細菌又は嫌気性細菌であることができる。細菌は独立栄養細菌又は従属栄養細菌であることができる。細菌は、中温細菌、好中性細菌、好極限性細菌、好酸性細菌、好アルカリ性細菌、好熱細菌、好冷細菌、好塩性細菌、又は好濃性細菌であることができる。
【0250】
細菌は、炭疽菌、抗生物質耐性菌、疾患原因菌、食中毒菌、感染菌、サルモネラ菌、スタフィロコッカス菌、ストレプトコッカス菌、又はテタヌス菌であることができる。細菌は、マイコバクテリア、クロストリジウム・テタニ、エルシニア・ペスティス、バシラス・アンソラシス、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、又はクロストリジウム・ディフィシルであることができる。
【0251】
ウイルス抗原
本発明のNKEは、ウイルス抗原又はその断片又はそのバリアントへの結合に特異的であることができる。ウイルス抗原は、以下の科の1つのウイルスに由来することができる:アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、カリシウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドウイルス、ヘルペスウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルス。ウイルス抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルスウイルス(HPV)、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、及びE型肝炎ウイルス(HEV)、天然痘ウイルス(大痘瘡及び小痘瘡)、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、黄熱病ウイルス、ノーウォークウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)、有毛細胞白血病ウイルス(HTLV-II)、カリフォルニア脳炎ウイルス、ハンタウイルス(出血熱)、狂犬病ウイルス、エボラ熱ウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペス1型(口腔ヘルペス)、単純ヘルペス2型(性器ヘルペス)、帯状疱疹(水痘帯状疱疹、別名、水痘)、SARS-CoV-2、サイトメガロウイルス(CMV)、例えばヒトCMV、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、フラビウイルス、口蹄疫ウイルス、ラッサウイルス、アレナウイルス、又は発がんウイルスに由来することができる。
【0252】
寄生虫抗原
本発明のNKEは、寄生虫抗原又はその断片若しくはバリアントへの結合に特異的であることができる。寄生虫は、原虫、蠕虫、又は外部寄生虫であることができる。蠕虫(すなわち、虫(worm))は、扁形動物(例えば、吸虫及び条虫)、鉤頭虫、又は回虫(例えば、蟯虫)であることができる。外部寄生虫は、シラミ、ノミ、マダニ、及びダニであることができる。
【0253】
寄生虫は、以下の疾患のいずれか1つを引き起こすいずれかの寄生虫であることができる:アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミヤ、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮病、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポリア症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、マラリア、メタゴニミア症、蝿蛆症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、及び鞭虫症。
【0254】
寄生虫は、アカントアメーバ、アニサキス、アスカリス・ラムブリコイデス、ボットフライ、バランチジウム・コリ、トコジラミ、セストーダ(サナダムシ)、チャガー、コクリオミア・ホミニボラックス、エンタメーバ・ヒストリティカ、ファスチオラ・ヘパチカ、ラジアルジア・ランブリア、鉤虫、リーシュマニア、リンガトゥラ・セラータ、肝吸虫、ロア・ロア、パラゴニムス-肺吸虫、蟯虫、プラスモディウム・ファルシパルム、住血吸虫、ストロンギロイデス・ステルコラリス、ダニ、条虫、トキソプラズマ・ゴンディ、トリパノソーマ、鞭虫、又はブケレリア・バンクロフトであることができる。
【0255】
真菌抗原
本発明のNKEは、真菌抗原又はその断片若しくはバリアントへの結合に特異的であることができる。真菌は、アスペルギルス属の種、ブラストミセス・デルマティティジス、カンジダ属酵母(例えば、カンジダ・アルビカンス)、コクシジオイデス、クリプトコックス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティ、皮膚糸状菌、フザリウム属の種、ヒストプラスマ・カプスラーツム、ケカビ亜門、ニューモシスチス・イロベチイ、スポロトリクス・シェンキィ、エクスセロヒルム、又はクラドスポリウムであることができる。
【0256】
自己抗原
本発明のNKEは、自己抗原への結合に特異的であることができる。いくつかの実施形態では、自己抗原は自己免疫疾患又は障害に関連する抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原は腫瘍抗原である。
【0257】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、ナチュラルキラー細胞を腫瘍細胞に誘導するための組成物を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、本発明のNKEの標的となる抗原を発現する。非限定的な例として、1つの実施形態では、本発明は、ナチュラルキラー細胞を、FSHRを発現する腫瘍細胞に誘導する二重特異的なFSHR-シグレック9 NKEを提供する。FSHRを発現する例示的な腫瘍細胞としては、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん、胃がん、肺がん、精巣がん、子宮内膜がん、及び甲状腺がんに由来する腫瘍細胞を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0258】
1つの実施形態では、本発明のNKEの標的となる抗原は腫瘍関連表面抗原である。腫瘍関連表面抗原の実例は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD33、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、上皮成長因子受容体(EGFR)、Her2neu、Her3、IGFR、CD133、IL3R、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、CDCP1、Derlin1、テネイシン、frizzled1~10、血管抗原VEGFR2(KDR/FLK1)、VEGFR3(FLT4、CD309)、PDGFR-アルファ(CD140a)、PDGFR-ベータ(CD140b)エンドグリン、CLEC14、Tem1-8、及びTie2である。さらなる例としては、A33、CAMPATH-1(CDw52)、がん胎児性抗原(CEA)、カルボアンヒドラーゼ(Carboanhydrase)IX(MN/CA IX)、CD21、CD25、CD30、CD34、CD37、CD44v6、CD45、CD133、de2-7 EGFR、EGFRvIII、EpCAM、Ep-CAM、葉酸結合タンパク質、G250、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、c-Kit(CD117)、CSF1R(CD115)、HLA-DR、IGFR、IL-2受容体、IL3R、MCSP(メラノーマ関連細胞表面コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、Muc-1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的抗原(PSA)、及びTAG-72を挙げることができる。
【0259】
本発明の文脈において、「腫瘍抗原」又は「過剰増殖性障害抗原」又は「過剰増殖性障害に関連する抗原」は、がんなどの特定の過剰増殖性障害に共通する抗原を意味する。本明細書で論じられる抗原は、単に例として含まれているに過ぎない。リストは排他的であることを意図しておらず、さらなる例は当業者に容易に明らかであろう。
【0260】
腫瘍抗原は、本発明のNKEの標的となる腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明のNKEの抗原結合部分の選択は、治療されるがんの特定の種類に依存することになる。腫瘍抗原は、当該技術分野において周知であり、例えば、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺がん腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体及びメソテリンが挙げられる。
【0261】
1つの実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する1つ又は複数の抗原性がんエピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原として機能できる多数のタンパク質を発現する。これらの分子としては、メラノーマのMART-1、チロシナーゼ及びGP100などの組織特異的抗原並びに前立腺がんの前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられるが、それらに限定されない。他の標的分子は、がん遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2のような形質転換関連分子のグループに属する。さらに別の標的抗原のグループは、がん胎児性(carcinoembryonic)抗原(CEA)などのがん胎児性(onco-fetal)抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンが、個々の腫瘍に特有の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20及びCD37などのB細胞分化抗原もB細胞リンパ腫の標的抗原の他の候補である。これらの抗原のいくつか(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイプ)は、モノクローナル抗体を用いた受動免疫療法の標的として使用されてきたが、その成功は限定的であった。
【0262】
本発明でいう腫瘍抗原の種類は、腫瘍特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)でもありうる。TSAは腫瘍細胞に特有であり、体内の他の細胞上には存在しない。TAA関連抗原は腫瘍細胞に特有ではなく、代わりに、抗原に対する免疫寛容の状態を誘導できない条件下で正常細胞上にも発現する。腫瘍上での抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で起こりうる。TAAは、免疫系が未熟で、応答できない胎児の発育期に正常細胞に発現する抗原であることもあれば、又は正常な細胞上に極めて低いレベルで通常存在するが、腫瘍細胞上でははるかに高いレベルで発現する抗原であることもある。
【0263】
TSA又はTAA抗原の非限定的な例としては以下が挙げられる:MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2などの分化抗原並びにMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15などの腫瘍特異的多系列抗原;CEAなどの過剰発現胎児性抗原;p53、Ras、HER-2/neuなどの過剰発現がん遺伝子及び変異がん抑制遺伝子;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RARなどの染色体転座に起因する独特の腫瘍抗原;並びにエプスタイン・バーウイルス抗原EBVA及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7などのウイルス抗原。他の大きい、タンパク質ベースの抗原としては、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、β-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが挙げられる。
【0264】
1つの実施形態では、本発明は、抗シグレック9 抗FSHR NKEを提供する。1つの実施形態では、本発明は、抗シグレック9 抗HER2 NKEを提供する。1つの実施形態では、本発明は、抗シグレック9 抗IL13Rα NKEを提供する。1つの実施形態では、本発明は、抗シグレック9 抗EGFRvIII NKEを提供する。1つの実施形態では、本発明は、抗シグレック9 抗BARF1 NKEを提供する。
【0265】
組成物の送達の方法
本発明はまた、組成物を、それを必要とする対象に送達する方法に関する。送達の方法は、対象に組成物を投与することを含みうる。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のNKE、若しくはその断片、又はそれらをコードする核酸分子の投与に関する。いくつかの実施形態では、核酸分子はDNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子はRNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子はmRNA分子である。
【0266】
投与には、抗体の静脈内送達、生体内エレクトロポレーションを伴う、あるいは伴わないDNA注入、リポソームを介した送達、ナノ粒子促進送達などがあるが、それらに限定されるものではない。
【0267】
組成物の送達を受ける哺乳動物は、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、アンテロープ、バイソン、スイギュウ、バイソン、ウシ科動物、シカ、ハリネズミ、ゾウ、ラマ、アルパカ、マウス、ラット、及びニワトリでありうる。
【0268】
組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入経由、頬投与経由、胸腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、鼻腔内、髄腔内、及び関節内、又はこれらの組み合わせを含む様々な経路によって投与されうる。獣医学的使用の場合、本組成物は、通常の獣医学的診療に従って好適に許容される製剤として投与することができる。獣医は、特定の動物に最も適した投薬レジメン及び投与経路を容易に決定することができる。組成物は、従来の注射器、無針注射装置、「微粒子銃遺伝子ガン」、又はエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、若しくは超音波などの他の物理的方法によって投与することができる。
【0269】
エレクトロポレーション
本発明の二重特異性シアル酸結合受容体抗体をコードする核酸分子のエレクトロポレーションを介した投与は、哺乳動物の所望の組織に、可逆的な孔を細胞膜に形成させるのに有効なエネルギーのパルスを送達するように構成できるエレクトロポレーション装置を使用して達成することができ、好ましくは、エネルギーのパルスは、使用者によって予め設定された電流に類似した定電流である。エレクトロポレーション装置は、エレクトロポレーション構成要素及び電極アセンブリ又はハンドルアセンブリを備えることができる。エレクトロポレーション構成要素は、コントローラ、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力要素、状態報告要素、通信ポート、メモリ構成要素、電源、及び電源スイッチを含む、エレクトロポレーション装置の様々な要素の1つ又は複数を含み、且つ組み込むことができる。エレクトロポレーションは、生体内エレクトロポレーション装置、例えばCELLECTRA EPシステム(Inovio Pharmaceuticals、ペンシルバニア州プリマスミーティング)又はElgenエレクトロポレーター(Inovio Pharmaceuticals、ペンシルバニア州プリマスミーティング)を使用して実行して、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを促進することができる。
【0270】
エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーション装置の1つの要素として機能することができ、他の要素は、エレクトロポレーション構成要素と連通する別個の要素(又は構成要素)である。エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーション装置の複数の要素として機能することができ、それらは、エレクトロポレーション構成要素と別個のエレクトロポレーション装置のさらに他の要素と連通することができる。1つの電気機械的又は機械的デバイスの一部として存在するエレクトロポレーション装置の要素は、1つの装置として、又は互いに連通する別個の要素として機能することができるので、限定されない。エレクトロポレーション構成要素は、所望の組織に定電流を作り出すエネルギーのパルスを送達する能力を有することができ、且つフィードバック機構を含む。電極アセンブリは、空間的に配置された複数の電極を有する電極アレイを含むことができ、電極アセンブリは、エレクトロポレーション構成要素からエネルギーのパルスを受け取り、且つ電極を通してそれを所望の組織に送達する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーのパルスの送達の間、ニュートラルであり、且つ所望の組織のインピーダンスを測定し、且つインピーダンスをエレクトロポレーション構成要素に連通する。フィードバック機構は、測定されたインピーダンスを受け取ることができ、且つエレクトロポレーション構成要素によって送達されるエネルギーのパルスを調整して、定電流を維持することができる。
【0271】
複数の電極は、分散パターンでエネルギーのパルスを送達することができる。複数の電極は、プログラムされたシーケンスの下で電極の制御を通して分散パターンでエネルギーのパルスを送達することができ、且つプログラムされたシーケンスは、ユーザによってエレクトロポレーション構成要素に入力される。プログラムされたシーケンスは、順次送達される複数のパルスを含むことができ、複数のパルスの各パルスは、インピーダンスを測定する1つのニュートラル電極をもつ少なくとも2つの活性電極によって送達され、且つ複数のパルスの後続のパルスは、インピーダンスを測定する1つのニュートラル電極をもつ少なくとも2つの活性電極のうちの異なる1つによって送達される。
【0272】
フィードバック機構は、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実行することができる。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路によって実行することができる。フィードバックは、50μ秒、20μ秒、10μ秒、又は1μ秒ごとに生じるが、リアルタイムフィードバック又は瞬時(すなわち、応答時間を測定するための利用可能な技術によって決定される実質的に瞬時)であることが好ましい。ニュートラル電極は、所望の組織におけるインピーダンスを測定し、且つインピーダンスをフィードバック機構に連通することができ、且つフィードバック機構は、インピーダンスに応答し、且つエネルギーのパルスを調整して、予め設定された電流に類似した値で定電流を維持する。フィードバック機構は、エネルギーのパルスの送達の間、連続的かつ瞬間的に定電流を維持することができる。
【0273】
本発明の組成物の送達を容易にしうるエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法の例としては、Draghia-Akli,et al.による米国特許第7,245,963号明細書、Smith,et al.によって提出された米国特許出願公開第2005/0052630号明細書に記載のものを挙げることができ、それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。組成物の送達を容易にするために使用できる他のエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法としては、2007年10月17日に出願された同時係属中及び共同所有の米国特許出願第11/874072号明細書に提供のものが挙げられ、この米国特許出願は、2006年10月17日に出願された米国仮出願第60/852,149号及び2007年10月10日に出願された米国仮出願第60/978,982号に対する米国特許法第119条(35USC119)(e)に基づく利益を主張するものであり、それらはすべて、その全体が本明細書に援用される。
【0274】
Draghia-Akli,et al.による米国特許第7,245,963号明細書には、身体又は植物の選択された組織の細胞への生体分子の導入を促進するためのモジュラー電極システム及びその使用が記載されている。モジュラー電極システムは、複数の針電極;皮下注射針;プログラム可能な定電流パルスコントローラから複数の針電極への導電性リンクを提供する電気コネクタ;及び電源を備えることができる。オペレーターは、支持構造体に取り付けられた複数の針電極を把持し、身体又は植物の選択された組織にそれらをしっかりと挿入することができる。次いで、生体分子は、皮下注射針を介して選択された組織に送達される。プログラム可能な定電流パルスコントローラが起動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞への生体分子の導入を容易にする。米国特許第7,245,963号明細書の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0275】
Smith,et al.によって提出された米国特許出願公開第2005/0052630号明細書には、身体又は植物の選択された組織の細胞への生体分子の導入を効果的に促進するために使用できるエレクトロポレーション装置が記載されている。エレクトロポレーション装置は、ソフトウェア又はファームウェアによって動作が指定される動電式(electro-kinetic)装置(「EKD装置」)を備える。EKD装置は、ユーザの制御及びパルスパラメータの入力に基づいて、アレイ内の電極間に一連のプログラム可能な定電流パルスパターンを生成し、電流波形データの保存及び取得を可能にする。エレクトロポレーション装置はまた、針電極のアレイを有する交換可能な電極ディスク、注射針用の中央注入チャネル、及び取り外し可能なガイドディスクを備える。米国特許出願公開第2005/0052630号明細書の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0276】
米国特許第7,245,963号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書に記載の電極アレイ及び方法は、筋肉などの組織だけでなく、他の組織又は器官への深い浸透にも適合させることができる。電極アレイの構成のため、(選択した生体分子を送達するための)注射針はまた、標的器官内に完全に挿入され、且つ注射は、電極によって予め画定された領域において、標的組織に対して垂直に投与される。米国特許第7,245,963号明細書及び米国特許出願公開第2005/005263号明細書に記載の電極は、好ましくは、長さ20mm及び21ゲージである。
【0277】
さらに、エレクトロポレーション装置及びその使用を組み込んだいくつかの実施態様において企図される、以下の特許に記載のものであるエレクトロポレーション装置がある:1993年12月28日発行の米国特許第5,273,525号明細書、2000年8月29日発行の米国特許第6,110,161号明細書、2001年7月17日発行の同第6,261,281号明細書、及び2005年10月25日発行の同第6,958,060号明細書、並びに2005年9月6日発行の米国特許第6,939,862号明細書。さらに、様々な装置のいずれかを用いたDNAの送達に関する、2004年2月24日に発行された米国特許第6,697,669号明細書及びDNAを注入する方法に関する、2008年2月5日に発行された米国特許第7,328,064号明細書で提供される主題をカバーする特許が、本明細書において企図される。上記特許は参照によりその全体が援用される。
【0278】
外来の核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における組み換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイとしては、例えば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR並びにPCRのなど当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫原性手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、又は本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出して、本発明の範囲内に入る薬剤を明らかにすることなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0279】
治療の方法
1つの実施形態では、本発明は、NK細胞の機能又は活性の増加から利益を受けることになると思われる疾患又は障害の治療又は予防のための方法を提供する。本発明の組成物及び方法を用いて治療できる例示的な疾患及び障害としては、がん及び感染性疾患が挙げられるが、それらに限定されない。
【0280】
以下は、開示の方法及び組成物によって診断又は治療できるがんの非限定的な例である:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、虫垂がん、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍及び脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児視路腫瘍、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚がん、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、頭蓋外がん、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、肝外がん、眼がん、息肉腫、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gist)、胚細胞腫瘍、妊娠がん、妊娠性絨毛腫瘍、膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部及び視覚路神経膠腫、視床下部腫瘍、眼内(眼)がん、眼内メラノーマ、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)がん、ランゲルハンス細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、口唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、骨悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、髄芽腫、髄上皮腫、メラノーマ、メルケル細胞がん、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、真菌症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、骨髄性白血病(myeloid leukemia)、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん(oral cancer)、口腔がん(oral cavity cancer)、口腔咽頭がん、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、卵巣、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、中分化松果体実質細胞腫瘍、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、肺胸膜芽腫、原発性中枢神経系がん、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎盂及び尿管がん、第15染色体のnut遺伝子に関係する気道がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん(メラノーマ)、皮膚がん(非メラノーマ)、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織がん、軟部肉腫、扁平上皮がん、頸部扁平上皮がん、胃(胃)がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽腫、T細胞リンパ腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、移行細胞がん、腎盂及び尿管の移行細胞がん、絨毛腫瘍、尿道がん、子宮体がん、子宮肉腫、膣がん、視覚路及び視床下部神経膠腫、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍。
【0281】
1つの実施形態では、組成物は高レベルのシアル酸を有するがんを治療するために使用される。高レベルのシアル酸に関連するがんとしては、卵巣がん、メラノーマ、腎細胞がん、前立腺がん、結腸がん、乳がん、及び口腔がんが挙げられるが、それらに限定されない。
【0282】
細菌感染症
1つの実施形態では、感染性疾患又は障害は細菌に関連する。いくつかの実施形態では、細菌は、以下の門のいずれか1つに由来することができる:アシドバクテリア、アクチノバクテリア、アクウィフェクス、バクテロイデス、カルディセリカ、クラミジア、クロロビウム、クロロフレクサス、クリシオジェネテス、シアノバクテリア、デフェリバクテレス、デイノコックス・テルムス、ディクチオグロミ、エルシミクロビア、フィブロバクテル、ファーミキューテス、フソバクテリウア、ゲンマティモナス、レンティスファエラ、ニトロスピラ、プランクトミケス、プロテオバクテリア、スピーロカエテス、シネルギステス、テネリクテス、サーモデスルフォバクテリア、テルモトガ、及びウェルコミクロビウム。
【0283】
細菌はグラム陽性細菌又はグラム陰性細菌であることができる。細菌は好気性細菌又は嫌気性細菌であることができる。細菌は独立栄養細菌又は従属栄養細菌であることができる。細菌は、中温細菌、好中性細菌、好極限性細菌、好酸性細菌、好アルカリ性細菌、好熱細菌、好冷細菌、好塩性細菌、又は好濃性細菌であることができる。
【0284】
細菌は、炭疽菌、抗生物質耐性菌、疾患原因菌、食中毒菌、感染菌、サルモネラ菌、スタフィロコッカス菌、ストレプトコッカス菌、又はテタヌス菌であることができる。細菌は、マイコバクテリア、クロストリジウム・テタニ、エルシニア・ペスティス、バシラス・アンソラシス、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、又はクロストリジウム・ディフィシルであることができる。
【0285】
ウイルス感染症
1つの実施形態では、感染性疾患又は障害は細菌に関連する。いくつかの実施形態では、ウイルスは以下の科の1つに由来する:アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、カリシウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドウイルス、ヘルペスウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルス。ウイルス抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルスウイルス(HPV)、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、及びE型肝炎ウイルス(HEV)、天然痘ウイルス(大痘瘡及び小痘瘡)、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、黄熱病ウイルス、ノーウォークウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)、有毛細胞白血病ウイルス(HTLV-II)、カリフォルニア脳炎ウイルス、ハンタウイルス(出血熱)、狂犬病ウイルス、エボラ熱ウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペス1型(口腔ヘルペス)、単純ヘルペス2型(性器ヘルペス)、帯状疱疹(水痘帯状疱疹、別名、水痘)、サイトメガロウイルス(CMV)、例えば、ヒトCMV、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、フラビウイルス、口蹄疫ウイルス、ラッサウイルス、アレナウイルス、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS CoV2)又は発がんウイルスに由来することができる。
【0286】
寄生虫感染症
1つの実施形態では、感染性疾患又は障害は寄生虫に関連する。いくつかの実施形態では、寄生虫は、原生動物、蠕虫、又は外部寄生虫であることができる。蠕虫(すなわち、虫)は、扁形動物(例えば、吸虫及び条虫)、鉤頭虫、又は回虫(例えば、蟯虫)であることができる。外部寄生虫は、シラミ、ノミ、マダニ、及びダニであることができる。
【0287】
寄生虫は、以下の疾患のいずれか1つを引き起こすいずれかの寄生虫であることができる:アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミヤ、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮病、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポリア症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、マラリア、メタゴニミア症、蝿蛆症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、及び鞭虫症。
【0288】
寄生虫は、アカントアメーバ、アニサキス、アスカリス・ラムブリコイデス、ボットフライ、バランチジウム・コリ、トコジラミ、セストーダ(サナダムシ)、チャガー、コクリオミア・ホミニボラックス、エンタメーバ・ヒストリティカ、ファスチオラ・ヘパチカ、ラジアルジア・ランブリア、鉤虫、リーシュマニア、リンガトゥラ・セラータ、肝吸虫、ロア・ロア、パラゴニムス-肺吸虫、蟯虫、プラスモディウム・ファルシパルム、住血吸虫、ストロンギロイデス・ステルコラリス、ダニ、条虫、トキソプラズマ・ゴンディ、トリパノソーマ、鞭虫、又はブケレリア・バンクロフトであることができる。
【0289】
真菌感染症
1つの実施形態では、感染性疾患又は障害は真菌に関連する。いくつかの実施形態では、真菌は、アスペルギルス属の種、ブラストミセス・デルマティティジス、カンジダ属酵母(例えば、カンジダ・アルビカンス)、コクシジオイデス属、クリプトコックス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティ、皮膚糸状菌、フザリウム属の種、ヒストプラスマ・カプスラーツム、ケカビ亜門、ニューモシスチス・イロベチイ、スポロトリクス・シェンキィ、エクスセロヒルム、又はクラドスポリウムであることができる。
【0290】
1つの態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することによって、対象において疾患又は障害を予防する方法を提供する。予防薬の投与は、疾患又は障害に特徴的な症状が現れる前に行うことができ、その結果疾患又は障害の進行を予防する、又は遅延させる。
【0291】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の組成物の有効量を、がん若しくは感染性疾患若しくは障害と診断された、それを有する疑いのある、又はそれを発症するリスクのある対象に投与することを含む。1つの実施形態では、組成物は対象に全身投与される。
【0292】
本発明の組成物は、多種多様な方法で、必要な患者又は対象に投与することができる。投与方法としては、術中静脈内、血管内、筋肉内、皮下、脳内、腹腔内、軟部組織注射、外科的留置、関節鏡視下留置、及び経皮的挿入、例えば、直接注入、カニューレ挿入又はカテーテル挿入が挙げられる。投与はいずれも、発明の組成物の単回適用でもよく、又は複数回適用でもよい。投与は、治療される個体の単一の部位に行うこともでき、又は複数の部位に行うこともできる。複数回の投与は、基本的に同時に行うこともでき、又は時間を隔てて行うこともできる。
【0293】
本発明の医薬組成物の投与が企図される対象としては、ヒト並びに他の霊長類、ヒト以外の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ及びイヌなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0294】
本発明の医薬組成物は、治療される(又は予防される)疾患に適した方法で投与することができる。投与の量及び頻度は、対象の状態並びに対象の疾患の種類及び重症度などの要因によって決定されるが、適切な用量は治験によって決定することができる。
【0295】
「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、疾患の種類、疾患の程度、及び状態の個人差を考慮して、医師によって決定されうる。
【0296】
本発明主題の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸液、インプラント又は移植を含む任意の都合のよい方法で実施することができる。本明細書に記載の組成物は患者に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、又は腹腔内に投与することができる。1つの実施形態では、本発明の組成物は、皮内又は皮下注射により患者に投与される。別の実施形態では、本発明の組成物はiv注射により投与される。
【0297】
本発明の実施に有用な医薬組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の投与量を送達するように投与することができる。1つの実施形態では、本発明は、哺乳動物において1μM~10μMの本発明の化合物の濃度をもたらす投与量の投与を想定する。
【0298】
典型的には、本発明の方法で哺乳動物に投与できる投与量は、哺乳動物の体重1キログラム当たり0.5μg~約50mgの範囲の量であるが、投与される正確な投与量は、哺乳動物の種類及び治療される病態の種類、哺乳動物の年齢及び投与経路を含むがそれらに限定されない、任意の数の要因に依存して様々であることになる。1つの実施形態では、投与量は哺乳動物の体重1キログラムあたり約1μgから約50mgまで様々であることになる。1つの実施形態では、投与量は哺乳動物の体重1キログラムあたり約1mgから約10mgまで様々であることになる。
【0299】
化合物は、1日に数回の頻度で哺乳動物に投与することができ、又は1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回などより少ない頻度で、若しくは数ヶ月に1回などさらにより少ない頻度で、若しくは1年に1回若しくはそれより少なくても投与することができる。投与の頻度は、当業者には容易に明らかと思われ、限定されないが、治療される疾患の種類及び重症度、哺乳動物の種類及び年齢などの任意の数の要因に依存することになる。
【0300】
がん治療
1つの実施形態では、本発明は、がんを治療若しくは予防する方法、又は腫瘍の増殖若しくは転移を治療及び予防する方法を提供する。本発明に例示される関連する態様は、個体における過形成細胞又は腫瘍細胞の転移を予防する、予防を補助する、且つ/又は減少させる方法を提供する。
【0301】
1つの実施形態では、組成物は、卵巣がん、メラノーマ、腎細胞がん、前立腺がん、結腸がん、乳がん、頭頸部扁平上皮がん、及び口腔がんを含むがそれらに限定されない、高レベルのシアル酸を有するがんを治療するために使用される。
【0302】
本発明の1つの態様は、転移の抑制を必要とする個体において前記転移を抑制する方法であって、本発明の多価抗体をコードする核酸分子の有効量を個体に投与することを含み、その多価抗体が治療されるがんに特異的である方法を提供する。本発明はさらに、転移の抑制を必要とする個体において前記転移を抑制する方法であって、効果的に転移を抑制する量の、本発明の多価抗体をコードする核酸分子を個体に投与することを含み、その多価抗体が治療されるがんに特異的である方法を提供する。
【0303】
がんを治療若しくは予防する、又は腫瘍の転移の治療及び予防を必要とする個体において前記腫瘍の転移を治療及び予防する、いくつかの実施形態では、抗悪性腫瘍薬などの第2の薬剤が個体に投与される。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、プラスミノーゲンアンタゴニスト、又はアデノシンデアミナーゼアンタゴニストなどの第2の転移抑制剤を含む。他の実施形態では、第2の薬剤は血管新生阻害剤である。
【0304】
本発明の組成物は、ヒト及び動物におけるがんの予防、緩和、最小化、コントロール、及び/又は軽減に使用することができる。本発明の組成物は、原発性腫瘍の増殖の速度を遅くするためにも使用することができる。本発明の組成物は、治療を必要とする対象に投与する場合、がん細胞の拡散を阻止するために使用することができる。したがって、治療されるがんに特異的である本発明の多価抗体をコードする核酸分子の有効量を、1つ又は複数の薬物又は他の医薬品との併用療法の一部として投与することができる。併用療法の一部として使用される場合、本発明の組成物によって得られる転移の減少及び原発性腫瘍増殖の減少は、患者の治療に使用される医薬又は薬物療法の、より有効で、且つ効率的な使用を可能にする。さらに、本発明の組成物による転移をコントローすることは、疾患を一箇所に集中させる、より大きな能力(a greater ability)を対象に与える。
【0305】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の組成物による治療の前に、同時に、又はその後に、手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、又はホルモン療法又はそれらの組み合わせなどなど、がんの補完療法で対象を治療することを含むがん転移の治療方法を提供する。
【0306】
化学療法剤としては、細胞傷害性薬剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組み換え体、パクリタキセル、テニポシド、及びストレプトゾシン(streptozoci))、細胞傷害性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はエチルスルホン酸(ethylesulfonic acid))、アルキル化剤(例えば、アサリー(asaley)、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラト白金(carboxyphthalatoplatinum)、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シス白金、クロメゾン、シアノモルフォリノドキソルビシン、シクロジゾン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、及びYoshi-864)、有糸分裂阻害薬(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン及びタキソテール)、生物製剤(例えば、αインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、及びインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、及びモルフォリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26及びVP-16)、並びに合成物質(例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、cis-ジアンミンジクロロプラチムン(cis-diamminedichloroplatimun)、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オールトランス型レチノイン酸、グリアデル及びポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0307】
抗増殖剤は、細胞の増殖を減少させる化合物である。抗増殖剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、酵素、生体応答修飾物質、他の薬剤(miscellaneous agents)、ホルモン及びアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及び酢酸リュープロリド)、抗エストロゲン(例えば、クエン酸タモキシフェン及びそのアナログ、トレミフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)並びにラロキシフェン)が挙げられる。具体的な抗増殖剤のさらなる例としては、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチム、塩化ストロンチウム-89、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン、及びオンダンセトロンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0308】
本発明の化合物は、単独で、又は細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬及び抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬は、がん細胞を攻撃し、且つ殺傷する薬剤と定義される。細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬には、腫瘍細胞の遺伝子材料をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレン チオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、及びダカルバジン(dacabazine)がある。他の細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬は、腫瘍細胞のための代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン(azathioprime)、及びプロカルバジンである。他の細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、及びダウノマイシンである。これらの化合物には、市販されている数多くのリポソーム製剤がある。さらに他の細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)がある。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドが挙げられる。他の細胞傷害性/抗悪性腫瘍薬としては、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、及びビンデシンが挙げられる。
【0309】
抗血管新生剤は当業者に周知である。本発明の方法及び組成物に使用するのに適した抗血管新生剤としては、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。他の既知の血管新生阻害剤としては、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(α及びβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、並びに組織メタロプロテアーゼ阻害物質-1及び-2(TIMP-1及び-2)が挙げられる。血管新生阻害活性をもつトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどのトポイソメラーゼを含む小分子も使用することができる。
【0310】
本発明の組成物と組み合わせて使用できる他の抗がん剤としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビスアントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン;ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII又はrIL2を含む);インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸リュープロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパーホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロウロシン(vinleurosine sulfate);酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。他の抗がん剤としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン(abiraterone);アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド(andrographolide);血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス(antarelix);抗背側化形態形成タンパク質(anti-dorsalizing morphogenetic protein)1;抗アンドロゲン、前立腺がん腫;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィジコリン;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス調節物質;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレスチン;ベータクラマイシンB(betaclamycin B);ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビズレシン;ブルフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリアポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミドアミノトリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エレコロマブ;エフルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオダウノルニシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害薬;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;ヨーベングアン;ヨードドックスソルビシン;イポメタノール,4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハライドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球αインターフェロン;リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミンアナログ;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リゾフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ(methioninase);メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+マイオバクテリウム(myobacterium)細胞壁SK;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍抑制因子1に基づく療法;マスタード抗がん剤;マイカペロキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチプ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド酸化防止剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導物質;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン(parabactin);パゼリプチン;ペグアスパラガーゼ;ペルデシン;ペントサン硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン結合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害薬;ras阻害剤;ras-GA
P阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプタート(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣物;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン(titanocene bichloride);トプセンチン;トレミフェン;分化全能性(totipotent)幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チロホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖抑制因子(growth inhibitory factor);ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療;ベラレゾール;ベラミン;ベルジン(verdins);ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);バイタクシン(vitaxin);ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマー。1つの実施形態では、抗がん剤は、5-フルオロウラシル、タキソール、又はロイコボリンである。
【0311】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。これらの実施例は、本発明の例示的な実施形態を示す一方で、例示のためにだけ与えられていることが理解されるべきである。上記の考察(discussion)及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために様々な変更及び修正を行うことができる。したがって、本明細書に示され、記載されたものにくわえて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかであろう。さらに、そのような修正は添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。
【実施例
【0312】
以下の実験例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供され、別段の定めがない限り、限定することを意図していない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるあらゆる変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0313】
さらなる説明がなくても、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な例を使用して、本発明を製造及び利用し、クレームされた方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、開示の残りの部分をいかなる意味においても限定するものと解釈されるべきではない。
【0314】
実施例1:シグレックベースのNKエンゲージャー(NKE)
2つの結合抗体断片(単鎖可変断片、scFvs)を有するFSHR-シグレック9NKEが開発された。一方は標的となる腫瘍抗原FSHRに結合し、もう一方はシグレック9に結合することを通して免疫系に関与し、腫瘍でのNK細胞活性化を促進する。したがって、抗ヒトFSHR scFvを、GSリンカーを用いて抗ヒトシグレック9 scFvをコードする最適化された配列と融合させた(図1)。
【0315】
Balb/cマウスの両肢の大腿四頭筋に、ヒトシグレック-9をコードするDNAを注入した(それぞれに50μgのDNAを与えた)。注入は2週間の間隔で3回行った(2回のブースター注射;1回はDNA、1回は50μgの精製タンパク質)。ブーストの3~4日後にマウスを犠牲にし、脾臓をSP2/0マウス骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを作製した。重鎖及び軽鎖に対する抗体の配列を決定し、pCDNA3.4抗体発現ベクターにクローニングした。
【0316】
漿液性卵巣がんにおける細胞傷害性効果はxCelligenceを用いて評価した。エフェクター細胞はPBMCで、エフェクター:標的=10:1の比率であった。エフェクター細胞及び投与は36.73時間の時点で与えた。図2は、OVCAR4細胞(高悪性度卵巣漿液性腺がん;由来転移部位:腹水、42歳女性)における細胞傷害性効果を示す。示されている画像は96時間の時点で得られたものである。図3は、OVCAR8細胞(高悪性度卵巣漿液性腺がん;卵巣がんの64歳女性由来)における細胞傷害性効果を示す。示されている画像は136時間の時点で得られたものである。
【0317】
さらに、細胞傷害性効果は、BRCA2変異卵巣がん細胞においてxCelligenceを用いて評価した。図4は、PEO-1細胞における細胞傷害性効果を示す。PEO-1は、低分化漿液性腺がん患者の腹膜腹水からの悪性滲出液に由来する。患者は以前に、シスプラチン、5-フルオロウラシル及びクロラムブシルの治療を受けていた。図5は、倉持細胞における細胞傷害性効果を示す(卵巣がん罹患日本人女性の高悪性度卵巣漿液性腺がん;転移部位由来:腹水)。エフェクター細胞はPBMCで、エフェクター:標的(PEO-1)=25:1及びエフェクター:標的(倉持)=10:1の比率であった。エフェクター細胞及び投与は22.41時間の時点で与えた。示されている画像は、それぞれエフェクター細胞及び投与を加えた20時間後に得られたものである。
【0318】
本明細書に提示のデータは、複数の腫瘍表現型が新規エンゲージャー戦略による標的となることを示す。このデータは、新規標的化シグレックNKエンゲージャーの開発及び研究に関する最初の報告を提供する。このデータは、これらのNKエンゲージャーによる強力な腫瘍殺傷とともに、ターゲティングの特異性を示している。さらに、データは、様々ながん遺伝子変異細胞の殺傷を示す。
【0319】
配列:
FSHR-シグレック9 NKE
配列番号1
【0320】
配列番号2
【0321】
シグレック9-FSHR NKE
配列番号3
【0322】
配列番号4
【0323】
HER2-シグレック9 NKE
配列番号5
【0324】
配列番号6
【0325】
シグレック9-Her2 NKE
配列番号7
【0326】
配列番号8
【0327】
IL13Rα-シグレック9 NKE
配列番号9
【0328】
配列番号10
【0329】
シグレック9-IL13Rα NKE
配列番号11
【0330】
配列番号12
【0331】
EGFRvIII-シグレック9 NKE
配列番号13
【0332】
配列番号14
【0333】
シグレック9-EGFRvIII NKE
配列番号15
【0334】
配列番号16
【0335】
BARF1-シグレック9 NKE
配列番号17
【0336】
配列番号18
【0337】
シグレック9-BARF1 NKE
配列番号19
【0338】
配列番号20
【0339】
本明細書で引用される各特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本発明は、特定の実施形態を参照して開示されてきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって本発明の他の実施形態及び変形が考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような実施形態及び均等な変形を含むように解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
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【国際調査報告】