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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイオリアクター加熱装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20241003BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12M1/02 B
C12M1/00 D
C12N1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521077
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 NL2022050552
(87)【国際公開番号】W WO2023063815
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2029378
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065931
【氏名又は名称】アプリコン・バイオテクノロジー・ベスローテン・ヴェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】APPLIKON BIOTECHNOLOGY B.V.
【住所又は居所原語表記】Heertjeslaan 2, 2629 JG DELFT (NL)
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォルヴード,ウィルバート ティモテウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァステンホルト、メノ ヤン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA12
4B029BB01
4B029DD02
4B029DD03
4B029GA02
4B029GA06
4B029GA08
4B029GB09
4B065BC04
(57)【要約】
【解決手段】バイオリアクター(70)用の加熱装置(10)であって、加熱装置が、バイオリアクター培養液の直接可視化を実現する透明な可撓性の本体(20)を有し、1つ以上の異なるタイプのバイオリアクター容器(72)に取り外し可能に連結され、カスタマイズされた加熱を提供するように適合されることを特徴とする加熱装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターのための加熱装置(10)であって
透明な可撓性の本体(20)と、
前記可撓性の本体(20)に結合された加熱要素(40)と、
前記可撓性の本体(20)に結合されたセンサ(60)と、
を備え、
前記可撓性の本体(20)は、透光性を有する材料を備えた透明部分(30)を有し、バイオリアクター培養物を収容する透明なバイオリアクター容器(72)の周囲を定義する側壁に着脱可能に結合可能であって、かつ前記側壁を実質的に囲み、
前記加熱要素(40)は、前記バイオリアクター培養物を均一に加熱するために前記側壁に熱を伝達し、
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の前記透明部分(30)を含む熱伝達部分全体にわたって配置されており、
前記加熱要素(40)は、前記透明部分(30)を通した視認性が実質的に妨げられないように、導電性の抵抗性ワイヤとして構成され、
前記加熱要素(40)は、熱伝達を調節するコントローラ(50)に接続可能であり、
前記センサ(60)は、前記加熱装置(10)および/または前記バイオリアクター培養物の温度および/または温度変化を検出し、
前記センサ(60)は、前記加熱装置(10)および/または前記バイオリアクター培養物の温度を監視および/または調節するために、前記コントローラ(50)に接続可能であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記センサ(60)および前記加熱要素(40)は、前記加熱装置(10)の一体化されたユニットまたは構成要素として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分を形成する1本以上の導電性ワイヤを備え、
前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分は透明であり、
前記加熱要素(40)は、前記加熱装置(10)が前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合されたときに、前記熱伝達部分を通した前記バイオリアクター培養物の視認性が実質的に妨げられないように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記可撓性の本体(20)は、前記透明なバイオリアクター容器(72)の対向する外側壁の周囲に前記透明なバイオリアクター容器(72)と隣接して設置されたとき、前記外側壁を通した前記バイオリアクター培養物の視認性が妨げられないように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱装置(10)は、第1のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、前記第1のバイオリアクターに適合した第1の加熱を行い、
前記加熱装置(10)は、第2のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、前記第2のバイオリアクターに適合した第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、所定の温度もしくは温度範囲まで加熱すること、所定の温度で熱を伝達すること、所定の加熱速度で熱を伝達すること、温度閾値に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、温度変化に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、所定の時間加熱することまたは所定のプログラムに従って熱を印加すること、のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)のタイプ、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)の構成および/もしくは材料特性、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)の目的とされる操作または前記加熱装置(10)に結合されるバイオリアクター容器(72)のバイオリアクター培養物の所望の温度、温度範囲もしくは温度変化のいずれかによって異なり、かつこれらのいずれかに依存することを特徴とする請求項5または6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、所定の加熱速度で熱を伝達するものであり、
前記第1のバイオリアクターは、1回使用のバイオリアクターであり、
前記第2のバイオリアクターは、多数回使用のバイオリアクターであり、
前記加熱装置は、前記第1のバイオリアクターの容器を所定の第1の加熱速度で加熱し、
前記加熱装置は、前記第2のバイオリアクターの容器を前記第1の加熱速度より速い所定の第2の加熱速度で加熱することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項9】
前記可撓性の本体(20)は加熱ジャケットとして構成され、
前記可撓性の本体(20)は、
第1の可撓性層(22)であって当該第1の可撓性層(22)を通した視認性を妨げない第1の透明部分(30)を備えた第1の可撓性層(22)と、
第2の可撓性層(24)であって当該第2の可撓性層(24)を通した視認性を妨げない第2の透明部分(30)を備えた第2の可撓性層(24)と、
を備え、
前記加熱要素(40)は、前記第1の可撓性層(22)と前記第2の可撓性層(24)との間に配置され、
前記加熱装置が前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合されたとき、前記バイオリアクター培養物が、前記可撓性の本体(20)の第1の透明部分(30)および第2の透明部分(30)を通して視認可能であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分の全体にわたって、連続的に配置された行および列の上に、ならびに/または、渦巻の上に、密に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の加熱装置(10)と、
熱伝達を監視および/または調節するコントローラ(50)と、
を備え、
前記コントローラ(50)は、前記加熱要素(40)および前記センサ(60)に接続されていることを特徴とするバイオリアクターシステム。
【請求項12】
プラスチック製のバイオリアクター容器を備えた1回使用のバイオリアクターと、
ガラス製のバイオリアクター容器を備えた複数回使用のバイオリアクターと、
を備え、
前記加熱装置(10)は、前記プラスチック製のバイオリアクター容器および前記ガラス製のバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、かつ前記プラスチック製のバイオリアクター容器および前記ガラス製のバイオリアクター容器と連通して作動し、
前記加熱装置(10)は、前記プラスチック製のバイオリアクター容器に第1の加熱を行い、前記ガラス製のバイオリアクター容器に第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項11に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項13】
ユーザーが前記加熱装置(10)の加熱を調節するための、前記コントローラ(50)と作動的に関連付けられたユーザーインターフェース(82)を備えることを特徴とする請求項11または12に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項14】
前記コントローラ(50)に接続され、前記透明なバイオリアクター容器(72)に熱を伝達するために前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合された補助ヒーター(84)を備え、
前記コントローラ(50)は、前記加熱装置(10)および前記補助ヒーター(84)を伝って流れる熱伝達を集中的に制御および調整することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載のバイオリアクターシステム。
【請求項15】
組織を培養する第1のバイオリアクター(70)を備え、
前記第1のバイオリアクター(70)は、第1のバイオリアクター培養物を収容する第1の透明なバイオリアクター容器(72)を備え、
前記加熱装置(10)は、前記第1の透明なバイオリアクター容器(72)と動作可能に関連付けられ、
前記加熱装置(10)は、前記透明な第1のバイオリアクター容器(72)またはバイオリアクター容器部品(74、76、78)の外面の周囲に配置され、
前記加熱装置(10)は、前記第1のバイオリアクター培養物に熱を伝達し、前記加熱装置(10)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度を測定し、前記第1のバイオリアクター培養物の視認性を実質的に妨げないように構成され、
前記コントローラ(50)は、前記第1のバイオリアクター培養物の温度および前記加熱装置(10)によって加えられる熱を調節するために、前記加熱装置(10)に接続され、
前記加熱装置(10)は、前記第1のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第1の加熱を行い、第2のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載のバイオリアクターシステム。
【請求項16】
補助ヒーター(84)をさらに備え、
前記補助ヒーター(84)は、前記第1の透明のバイオリアクター容器(72)に結合され、前記第1の透明のバイオリアクター容器(72)に熱を伝達し、
前記コントローラ(50)は、前記補助ヒーター(84)に接続され、前記加熱装置(10)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度を調節するために、前記加熱装置(10)および前記補助ヒーター(84)によって加えられる熱を集中的に制御および調整することを特徴とする請求項15に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項17】
第2のバイオリアクターをさらに備え、
前記第1のバイオリアクターは1回使用のバイオリアクターであり、前記第1の透明なバイオリアクター容器はプラスチック製の透明なバイオリアクター容器であり、
前記第2のバイオリアクターは第2の透明なバイオリアクター容器を備えた多数回使用のバイオリアクターであり、前記第2の透明なバイオリアクター容器はガラス製の透明なバイオリアクター容器であり、
前記加熱装置(10)は、前記第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、前記第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器と関連して作動するように構成されていることを特徴とする請求項15または16に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項18】
1つ以上の透明部分を備えた可撓性の本体(20)と、
加熱要素と、
前記コントローラに接続された温度センサと、
を備え、
前記透明部分は、前記加熱装置が前記バイオリアクターに結合されたとき、前記第1のバイオリアクター培養物が視認可能であるようにし、
前記加熱要素は、前記加熱装置(10)が前記第1のバイオリアクターに結合されたときに、前記可撓性の本体(20)の透明部分を通した前記第1のバイオリアクター培養物の視認性が実質的に妨げられないように構成され、
前記温度センサは、前記可撓性の本体(20)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度または温度変化を検出することを特徴とする請求項15~17のいずれかに記載のバイオリアクターシステム。
【請求項19】
前記加熱装置は、前記バイオリアクターの構成要素と一体的に形成されているか、前記バイオリアクターの構成要素に結合されているか、前記バイオリアクターの構成要素に取り付けられているか、または前記バイオリアクターの構成要素に接続されているかしており、
前記バイオリアクターの構成要素は、透明なバイオリアクター容器の壁、前記バイオリアクターのインペラー、前記バイオリアクターのインペラーシャフト、前記バイオリアクターのディップチューブおよび/または前記バイオリアクターのスピンフィルタであることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載のバイオリアクターシステム。
【請求項20】
バイオリアクターの温度を調節する方法であって、
請求項1から10のいずれかに記載の加熱装置(10)をバイオリアクター容器(72)と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記バイオリアクター容器(72)または前記バイオリアクター容器(72)内に収容されたバイオリアクター培養物を加熱するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記加熱装置(10)を用いて、前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化を検出するステップと、
検出された前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化に基づいて、前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の温度を調節するステップと、
を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
透明な本体(20)を有する加熱装置(10)を第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記第1のバイオリアクター容器または前記第1のバイオリアクター容器内に収容された第1のバイオリアクター培養物に適合した第1の加熱を行うステップと、
前記加熱装置(10)を第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記第2のバイオリアクター容器または前記第2のバイオリアクター容器内に収容された第2のバイオリアクター培養物に適合した第2の加熱を行うステップと、
前記加熱装置(10)が前記第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は前記透明な本体(20)を通して前記第1のバイオリアクター培養物を直接視覚化し、前記加熱装置(10)が前記第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は前記透明な本体(20)を通して前記第2のバイオリアクター培養物を直接視覚化するステップと、
を含み、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱装置、バイオリアクターシステム、および関連する使用方法に関する。特に本開示は、微生物および他の生物の成長および培養を促進するために、バイオリアクターの温度を効率的に加熱および調節するための装置、システムおよび方法を取り扱う。
【背景技術】
【0002】
バイオリアクターは、一般に、生物学的に活性な環境を支持するために使用される装置またはシステムを指す。バイオリアクターは、生物または生物に由来する生化学的に活性な物質の培養のような生物学的プロセスが実施される容器を含み得る。このプロセスは、好気性でも嫌気性でもよい。バイオリアクターはまた、細胞培養の文脈で細胞または組織を増殖させるように設計された装置またはシステムを指すこともある。
【0003】
バイオリアクターは、円筒形、可変直径その他の構成を有してよく、ミリリットルから立方メートルまでのサイズの範囲にあってよい。バイオリアクターは、ガラス、ステンレス鋼、ポリマーなどの様々な材料から作成することができる。バイオリアクターのサイズおよび構成は、意図される操作モード、例えば、バッチ処理、供給バッチ処理、連続使用、多用途処理、または1回使用のバイオプロセス活動用に構成されたバイオリアクターによって部分的に決定され得る。一例として、連続使用のバイオリアクターは、オートクレーブ可能な再使用可能なガラス製またはステンレス製の円筒容器として構成されることが多い。対照的に1回使用のバイオリアクターは使い捨てで、プラスチックその他のポリマーで構成されることが多い。
【0004】
典型的なバイオリアクターは、以下の部品から構成される。攪拌機またはインペラー。これは、リアクターの内容物の攪拌に使用され、「細胞」を完全な均質状態に保ち、細胞への栄養分と酸素の輸送を改善する。バッフル。これは、容器内の渦形成を破壊するために使用されるが、システムの重心を変化させ、攪拌を促進することなく追加的な動力を消費するため、通常は望ましくない。スパージャー。好気性培養プロセスでは、スパージャーの目的は、成長する細胞に適切なガス(酸素やCO2など)を供給することである。ジャケット。これは、熱伝達のために、温水または冷水を循環させる環状領域を提供する。
【0005】
バイオプロセシングの速度および質は、栄養レベル、pH、O2レベル、および温度など、バイオリアクターによって確立される環境条件およびパラメーターに直接依存する。特に温度の調節と維持は、生物の成長と生化学的に活性な物質の生産を促進する上で重要な要素である。バイオリアクター培養の温度を調整、調節、カスタマイズする能力と、バイオリアクター培養全体に均一に熱を伝達する能力は、バイオプロセス全体に大きく影響する。温度調節のための既存のヒーターは、通常、バイオリアクター容器の遠位基部に隣接して支持する一次加熱または冷却ユニットを提供するのみである。このような装置では、培養液全体に均一で一貫した熱伝達が行われないため、バイオリアクター培養液全体に温度勾配が生じ、熱伝達速度が制限されることが多い。このような装置を使用した場合、バイオリアクター培養液のポケットは、所望の温度範囲よりも高温または低温になる可能性がある。さらに、バイオリアクターの伝熱面が断熱されていないため、ヒーターは非効率的な作動を余儀なくされ、非断熱/非加熱面を通る熱損失を考慮するために、より強く働くことになる。
【0006】
単一壁のバイオリアクター容器に巻き付けることができる電気加熱ジャケットも知られている。しかしながらこれらは、典型的には、単一の温度設定と加熱速度とオン/オフ機能を有する単純な装置である。このような装置は、熱伝達の調節やカスタマイズはできず、また、異なるバイオプロセス操作用に設計され、異なる温度閾値、異なる熱伝達特性、バイオリアクター容器を安全かつ効率的に加熱することができる異なる速度を有する、異なるタイプのバイオリアクター容器に使用するように構成または適合されていない。このような装置はまた、環境条件、バイオプロセシングデータ、バイオリアクターからのその他の情報とは無関係に操作される。基本的な温度制限や加熱ジャケットの潜在的に破壊的な用途を提供するためのフィードバックループもないため、低融点材料で構成されたバイオリアクター容器に関連して使用すると、加熱ジャケットやバイオリアクターの過熱、損傷、および/または融解を引き起こす可能性がある。このように、これらの装置は、バイオリアクター、特に異なるタイプのバイオリアクターに、インテリジェントに、効率的に、または効果的に熱を伝達することができない。
【0007】
さらに、従来の加熱ジャケットは、典型的には、電気的および熱的絶縁のために意図的に設計された不透明な多層絶縁布および/または硬質外装から構成されている。この場合、加熱ジャケットを通してバイオリアクター培養物を直接視覚化することができない。しかしながら、バイオリアクター培養の継続的でリアルタイムの視覚的なモニタリングや調節は、バイオプロセスを管理し、進行中の生化学反応を評価し、高い収率効率を確保する上で重要な要素である。濁度、着色および色合いのような潜在的な重要なバイオプロセス指標を正確かつ明瞭に直接視覚的に評価するためには、バイオリアクター容器および加熱装置を通る光の妨げのない透過が必要である。例えばUS2016/184827 A1は、容器の温度を制御するための温度制御装置を開示しており、この温度制御装置は、容器の壁面に形状適合的にフレキシブルに配置することができる。しかしながら、US2016/184827 A1による温度制御装置は、温度制御装置を通してバイオリアクター培養物を可視化することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した欠陥に鑑みて、現在のバイオリアクター加熱システムの欠陥に対処する加熱装置を開発する必要がある。
【0009】
本開示の目的は、加熱装置がバイオリアクターに連結され、作動している間、バイオリアクター培養物の直接的な可視化ができる透明体を有する加熱装置を提供することである。CN108998376 Aは、誘電性エラストマー駆動装置に基づく動的細胞培養装置および方法を開示している。CN108998376 Aによる動的細胞培養装置は、容器本体、カバー、ホルダーモジュールおよび/または発熱シートコンパートメントを透明材料で作ることができることを開示している。
【0010】
本開示の別の目的は、様々な異なるタイプのバイオリアクターに再利用可能に結合され得、取り付けられたバイオリアクターおよびバイオリアクター培養の必要性に特に適合したカスタマイズされた熱伝達を可能にする加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある実施の形態は、バイオリアクター用の加熱装置である。この加熱装置は以下を備える。透明な可撓性の本体、可撓性の本体に結合された加熱要素、可撓性の本体に結合されたセンサ。可撓性の本体は、透光性を有する材料を備えた透明部分を有し、バイオリアクター培養物を収容する透明なバイオリアクター容器の周囲を定義する側壁に着脱可能に結合可能であって、かつ側壁を実質的に囲む。加熱要素は、バイオリアクター培養物を均一に加熱するために側壁に熱を伝達する。加熱要素は、可撓性の本体の透明部分を含む熱伝達部分全体にわたって配置されている。加熱要素は、透明部分を通した視認性が実質的に妨げられないように、導電性の抵抗性ワイヤとして構成される。加熱要素は、熱伝達を調節するコントローラに接続可能である。センサは、加熱装置および/またはバイオリアクター培養物の温度および/または温度変化を検出する。センサは、加熱装置および/またはバイオリアクター培養物の温度を監視および/または調節するために、コントローラに接続可能である。従って、加熱装置がバイオリアクターに連結されている間、バイオリアクター培養物の直接的な可視化が達成される。CN108998376 Aは、容器本体、カバー、ホルダモジュールおよび/または発熱シート区画のみが透明材料で作られ得ることを開示しているのではなく、発熱シート自体が透明材料で作られ得ることを開示していることに留意すべきである。
【0012】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、センサおよび加熱要素は、加熱装置の一体化されたユニットまたは構成要素として構成されている。
【0013】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、加熱要素は、可撓性の本体の熱伝達部分を形成する1本以上の導電性ワイヤを備え、可撓性の本体の熱伝達部分は透明であり、加熱要素は、加熱装置が透明なバイオリアクター容器に結合されたときに、熱伝達部分を通したバイオリアクター培養物の視認性が実質的に妨げられないように構成されている。
【0014】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、可撓性の本体が、透明なバイオリアクター容器の対向する外側壁の周囲に透明なバイオリアクター容器と隣接して設置されたとき、外側壁を通したバイオリアクター培養物の視認性が妨げられないように構成されている。
【0015】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置は、第1のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、第1のバイオリアクターに適合した第1の加熱を行い、加熱装置は、第2のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、第2のバイオリアクターに適合した第2の加熱を行い、第1の加熱と第2の加熱とは異なる。
【0016】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、第1の加熱および第2の加熱は、所定の温度もしくは温度範囲まで加熱すること、所定の温度で熱を伝達すること、所定の加熱速度で熱を伝達すること、温度閾値に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、温度変化に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、所定の時間加熱することまたは所定のプログラムに従って熱を印加すること、のいずれかである。
【0017】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、第1の加熱および第2の加熱は、加熱装置に結合可能なバイオリアクター容器のタイプ、加熱装置に結合可能なバイオリアクター容器の構成および/もしくは材料特性、加熱装置に結合可能なバイオリアクター容器の目的とされる操作または加熱装置に結合されるバイオリアクター容器のバイオリアクター培養物の所望の温度、温度範囲もしくは温度変化のいずれかによって異なり、かつこれらのいずれかに依存する。
【0018】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、第1の加熱および第2の加熱は、所定の加熱速度で熱を伝達するものであり、第1のバイオリアクターは、1回使用のバイオリアクターであり、第2のバイオリアクターは、多数回使用のバイオリアクターであり、加熱装置は、第1のバイオリアクターの容器を所定の第1の加熱速度で加熱し、加熱装置は、第2のバイオリアクターの容器を第1の加熱速度より速い所定の第2の加熱速度で加熱する。
【0019】
ある実施の形態は、前述の加熱装置に関する。この加熱装置では、可撓性の本体は加熱ジャケットとして構成され、可撓性の本体は、第1の可撓性層であって当該第1の可撓性層を通した視認性を妨げない第1の透明部分を備えた第1の可撓性層と、第2の可撓性層であって当該第2の可撓性層を通した視認性を妨げない第2の透明部分を備えた第2の可撓性層と、を備える。加熱要素は、第1の可撓性層と第2の可撓性層との間に配置され、加熱装置が透明なバイオリアクター容器に結合されたとき、バイオリアクター培養物が、可撓性の本体の第1の透明部分および第2の透明部分を通して視認可能である。
【0020】
本発明の別の態様は、バイオリアクターシステムである。このバイオリアクターシステムは、前述の加熱装置と、熱伝達を監視および/または調節するコントローラと、を備える。コントローラは、加熱要素およびセンサに接続されている。
【0021】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、プラスチック製のバイオリアクター容器を備えた1回使用のバイオリアクターと、ガラス製のバイオリアクター容器を備えた複数回使用のバイオリアクターと、を備える。加熱装置は、プラスチック製のバイオリアクター容器およびガラス製のバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、かつプラスチック製のバイオリアクター容器およびガラス製のバイオリアクター容器と連通して作動し、加熱装置(10)は、プラスチック製のバイオリアクター容器に第1の加熱を行い、ガラス製のバイオリアクター容器に第2の加熱を行い、第1の加熱と第2の加熱とは異なる。
【0022】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、ユーザーが加熱装置の加熱を調節するための、コントローラと作動的に関連付けられたユーザーインターフェースを備える。
【0023】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、コントローラに接続され、透明なバイオリアクター容器に熱を伝達するために透明なバイオリアクター容器に結合された補助ヒーターを備える。コントローラは、加熱装置および補助ヒーターを伝って流れる熱伝達を集中的に制御および調整する。
【0024】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、組織を培養する第1のバイオリアクターを備える。第1のバイオリアクターは、第1のバイオリアクター培養物を収容する第1の透明なバイオリアクター容器を備える。加熱装置は、第1の透明なバイオリアクター容器と動作可能に関連付けられ、加熱装置は、透明な第1のバイオリアクター容器またはバイオリアクター容器部品の外面の周囲に配置され、加熱装置は、第1のバイオリアクター培養物に熱を伝達し、加熱装置および/または第1のバイオリアクター培養物の温度を測定し、第1のバイオリアクター培養物の視認性を実質的に妨げないように構成され、コントローラは、第1のバイオリアクター培養物の温度および加熱装置によって加えられる熱を調節するために、加熱装置に接続され、加熱装置は、第1のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第1の加熱を行い、第2のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第2の加熱を行い、第1の加熱と第2の加熱とは異なる。
【0025】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、補助ヒーターをさらに備える。補助ヒーターは、第1の透明のバイオリアクター容器に結合され、第1の透明のバイオリアクター容器に熱を伝達し、コントローラは、補助ヒーターに接続され、加熱装置および/または第1のバイオリアクター培養物の温度を調節するために、加熱装置および補助ヒーターによって加えられる熱を集中的に制御および調整する。
【0026】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムは、第2のバイオリアクターをさらに備える。第1のバイオリアクターは1回使用のバイオリアクターであり、第1の透明なバイオリアクター容器はプラスチック製の透明なバイオリアクター容器であり、第2のバイオリアクターは第2の透明なバイオリアクター容器を備えた多数回使用のバイオリアクターであり、第2の透明なバイオリアクター容器はガラス製の透明なバイオリアクター容器であり、加熱装置は、第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器と関連して作動するように構成されている。
【0027】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムの加熱装置は以下を備える。加熱装置がバイオリアクター結合されたときに第1のバイオリアクター培養物の可視性を可能にする1つ以上の透明部分を含む可撓性の本体、加熱装置が第1のバイオリアクターに結合されたときに可撓性の本体の1つ以上の透明部分を通したバイオリアクター培養物の視認性を実質的に妨げないように構成された加熱要素、およびコントローラに接続された温度センサであって可撓性の本体および/または第1のバイオリアクター培養物の温度または温度変化を検出する温度センサ。
【0028】
ある実施の形態は、前述のバイオリアクターシステムに関する。このバイオリアクターシステムでは、加熱装置は、バイオリアクターの構成要素と一体的に形成されているか、バイオリアクターの構成要素に結合されているか、バイオリアクターの構成要素に取り付けられているか、またはバイオリアクターの構成要素に接続されているかしている。バイオリアクターの構成要素は、透明なバイオリアクター容器の壁、バイオリアクターのインペラー、バイオリアクターのインペラーシャフト、バイオリアクターのディップチューブおよび/またはバイオリアクターのスピンフィルタである。
【0029】
別の実施の形態は、バイオリアクターの温度を調節する方法である。この方法は、前述の加熱装置をバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、加熱装置を用いて、バイオリアクター容器またはバイオリアクター容器内に収容されたバイオリアクター培養物を加熱するステップと、を含む。
【0030】
ある実施の形態は、前述の方法に関する。この方法は、加熱装置を用いて、バイオリアクター培養物および/または加熱装置の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化を検出するステップと、検出されたバイオリアクター培養物および/または加熱装置の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化に基づいて、バイオリアクター培養物および/または加熱装置の温度を調節するステップと、を含む。
【0031】
ある実施の形態は、前述の方法に関する。この方法は、透明な本体を有する加熱装置を第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、加熱装置を用いて、第1のバイオリアクター容器または第1のバイオリアクター容器内に収容された第1のバイオリアクター培養物に適合した第1の加熱を行うステップと、加熱装置を第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、加熱装置を用いて、第2のバイオリアクター容器または第2のバイオリアクター容器内に収容された第2のバイオリアクター培養物に適合した第2の加熱を行うステップと、加熱装置が第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は透明な本体を通して第1のバイオリアクター培養物を直接視覚化し、加熱装置が第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は透明な本体を通して第2のバイオリアクター培養物を直接視覚化するステップと、を含む。第1の加熱と第2の加熱とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下の図面は、例示的な実施の形態を示し、特許請求の範囲を限定することを意図しない。説明を容易にするために、図全体を通して、同様の要素は共通のまたは同様の符号を使って参照される場合がある。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0033】
図1A】バイオリアクターのための例示的な第1の加熱装置を示す図である。
【0034】
図1B図1Aの加熱装置の分解図である。
【0035】
図2】バイオリアクター加熱装置の第2の実施の形態を示す図である。
【0036】
図3】バイオリアクターに配置された図1Aの例示的な加熱装置を示す図である。
【0037】
図4図1Aの例示的な加熱装置を含む例示的なバイオリアクターシステムを示す図である。
【0038】
図5】バイオリアクター加熱装置の第3の実施の形態を示す図である。
【0039】
図6】バイオリアクター加熱装置の第4の実施の形態を示す図である。
【0040】
図7】加熱装置を使用して加熱装置および/またはバイオリアクター培養物の温度を調節する例示的な第1の方法を示す図である。
【0041】
図8】加熱装置を使用する例示的な第2の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
例示を目的として、本開示の一般原理を、様々な例示的な実施の形態を参照して説明する。本明細書では、本開示の特定の実施の形態が具体的に説明される。しかし当業者は、同じ原理が他の変形例および実施の形態にも同様に適用および採用されてもよいことを容易に理解するであろう。本開示の範囲は、本明細書に記載される特定の実施の形態に限定されない。さらに本明細書で使用される用語は、説明および図示のためのものであり、限定のためのものではない。
【0043】
以下、図面を参照して様々な実施の形態を説明する。これらの図面は、例示的な実施の形態の説明を容易にすることのみを意図する。これらは、網羅的な説明ではなく、本開示の範囲を限定するものでもない。図示された実施の形態は、必ずしも本開示の主題の全ての態様、特徴または利点を具現化するものではない。加えて、特定の実施の形態に関連して説明される任意の態様、特徴または利点は、必ずしもその実施の形態に限定されず、本明細書で図示または説明されるか否かにかかわらず、他の実施の形態でも具現化または実施され得る。
【0044】
本詳細な説明の目的上、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照を含む場合がある。従って、例えば、「発熱体」への言及は、当業者に公知の複数の発熱体およびその等価物を含む場合がある。用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用され得る。さらに、用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「から構成される(composed of)」および「有する(having)」は、互換的に使用され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「バイオリアクター培養物」とは、生物、細胞、組織その他の生物学的および/または化学的成分の培養物などであるが、これらに限定されないバイオリアクター容器又はバイオリアクターの任意の内容物を指す。
【0046】
本明細書で使用される「透明」とは、完全な透明性から実質的な透明性またはいくつかの半透明特性を含む光透過性の範囲を指し、光の大部分が材料を通って伝播し、視野を実質的に妨げることなく可視性であることを意味する。バイオリアクターの操作者は、本質的に、バイオリアクターの内部の色、内容物レベル、撹拌、均質性などを見ることができる。すなわち操作者は、加熱装置を通してバイオ反応の状態を視覚的に決定することができる(操作者がそのような加熱装置を持たないバイオリアクターでできたように)。これは、例えば、加熱装置の光透過率を10%以上、好ましくは20%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは50%以下低下させないように、導電性抵抗(加熱)ワイヤを構成することによって達成され得る。導電性抵抗ワイヤは、例えば、伝熱領域の表面積の1%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは20%以下、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは50%以下を占めるように構成され得る。
【0047】
本明細書で使用される「センサ」とは、パラメーター、状態、特性またはその変化を検出する任意の装置、要素または物品を指す。本明細書で使用される「検出」または「検知」とは、測定、感知、計算または決定のための任意の直接的または間接的手段を指す。例えば、温度センサには、温度を直接検知または測定する装置と、温度または別のパラメーターに基づく温度変化を間接的に決定する装置の両方が含まれる。
【0048】
本開示は、バイオリアクター70のための加熱装置10、バイオリアクターシステム80、および1つまたは複数のバイオリアクター70および/または加熱装置10の温度を加熱および/または調節するための方法を主題とする。例示的な実施の形態において、加熱装置10およびバイオリアクターシステム80は、加熱装置10および/または1つ以上のバイオリアクター70の安全で効率的でカスタマイズされたインテリジェントな温度調節のために構成されるとともに、バイオリアクター培養物のバイオプロセス、培養および評価を容易にすることを目的に、加熱装置10の透明部分30を通してバイオリアクター培養物を明瞭に可視化するために構成される。加熱装置10は、1回使用のバイオリアクターだけでなく、連続使用バイオリアクター、多数回使用のバイオリアクターまたはバッチ供給バイオリアクターを含む、異なるタイプのバイオリアクター70に関連して使用するように構成されてもよい。さらに様々な熱伝達パラメーターが、加熱速度、設定温度、温度閾値、温度の変化、加熱持続時間、加熱サイクルなどの、対応するバイオリアクター70および/またはバイオリアクター培養物用にカスタマイズされる。加熱装置10および/またはバイオリアクター70の温度を加熱および/または調節するための例示的な方法は、バイオリアクター容器72に熱を伝達するために加熱装置10を使用すること、加熱装置10および/またはバイオリアクター内容物の温度または温度変化を決定すること、決定された温度および/または温度変化に基づいて熱伝達を調節すること、および加熱装置10の透明部分30を通してバイオリアクター培養物を直接可視化することによってバイオリアクター培養物およびバイオプロセスを監視することを含むこともある。
【0049】
図1A~1Bおよび図3~4は、1つまたは複数のバイオリアクター70のための加熱装置10の例示的な実施の形態を示す。加熱装置10は、バイオリアクター容器72に着脱可能に結合され、1つまたは複数の透明部分30を有する可撓性の本体20を有する。加熱装置10は、バイオリアクター70に熱を伝達するための1つ以上の加熱要素40と、加熱装置10および/またはバイオリアクター容器72の内容物の状態またはパラメータを決定するための1つ以上のセンサ60と、をさらに含む。例示的な実施の形態において、加熱要素40およびセンサ60は、加熱装置10の単一の一体型ユニットまたは構成要素であってもよく、熱伝達および温度検出の両方として機能する。加熱要素40および/またはセンサ60に接続されるか、または他の方法で動作可能に関連付けられたコントローラ50は、バイオリアクター容器72および/または加熱装置10内に含まれるバイオリアクター培養物の温度を調節する。ある実施の形態において、コントローラ50は、加熱装置10または加熱装置システムの一部、構成要素、加熱装置10に含まれるか、または他の方法で動作可能に関連付けられる。別の実施の形態において、コントローラ50は、バイオリアクターシステム80のバイオコントローラなどの別個のデバイスであってもよい。例示的な実施の形態において、加熱装置10は、再使用可能かつ再取付け可能に結合することができ、異なる熱伝達機能を必要とする様々な異なるタイプのバイオリアクター70と共に使用するように適合される。
【0050】
図1A~1Bおよび図3の例示的な実施の形態では、加熱装置10の可撓性の本体20は、効率的かつ均一な熱伝達のために、バイオリアクター容器72の側壁の周囲を完全に取り囲むように、透明な円筒形のバイオリアクター容器72の外面の周囲に調節可能に配置され、かつ外面に直接接触するように配置されるように構成される。可撓性の本体20は、バイオリアクター70の周囲および外側壁に実質的にまたは完全に適合し、包囲し、断熱するように適合されたラップ、ジャケット、ブランケットまたは他の構成として構成されてもよい。ある実施の形態では、バイオリアクター容器72の側壁または表面の実質的部分、大部分または全体が、加熱装置10によって包囲される。可撓性の本体20の形状は、好ましくは、バイオリアクター容器72に対応し、かつ確実な取り付けを容易にする。例えば可撓性の本体20および加熱装置10は、円筒形バイオリアクターの外側壁に適合し、これを取り囲むように適合した概ね長方形の構成を有するか、または円錐形または他の可変直径バイオリアクターに適合するように台形または非対称の構成を有してもよい。ある実施の形態では、可撓性の本体20は、バイオリアクター容器72への取り付けを容易にするために、円筒形、円錐形または湾曲構成などのプレハブ3次元構造を有してもよい。図1A、1Bおよび図3に示される実施の形態では、可撓性の本体20は、保管を容易にする平坦化された構成(図1A)、円筒形のバイオリアクター容器72の外側壁の円周を完全に包囲する円筒形の構成(図3)、バイオリアクター容器72の外面に適合するその他の形状および/または配置などといった、複数の形状または構成を有してもよい。可撓性の本体20はまた、バイオリアクター電源コード、コネクター、サンプリングポート、またはバイオリアクター容器72の表面から突出する他の構成要素の周囲に加熱装置10を位置決めするのを容易にするために、その長さに沿って1つまたは複数のカットアウト28を含んでもよい。加熱装置10および可撓性の本体20は、容量1000mL未満または250mL~1000mLの範囲の小型実験室用卓上バイオリアクターを含む、異なるサイズのバイオリアクター容器72に適合するように構成されてもよい。他の実施の形態では、加熱装置10および可撓性の本体20は、1L、2L、3Lまたはそれ以上の大きさのバイオリアクターに適合する大きさであってもよい。
【0051】
図1A~1Bに示すように、可撓性の本体20は、可撓性の本体20をバイオリアクター80に調節可能に配置し固定するための1つまたは複数のファスナーまたはファスナー部26を含んでもよい。ファスナー26は、好ましくは、加熱装置10および可撓性の本体20が、再使用可能なバイオリアクター80に着脱自在に結合できるように設計される。ある実施の形態において、ファスナーまたはファスナー部26a、26bは、可撓性の本体20の対向する端部上またはその近傍に配置されてもよい(図1A)。使用者は、第1のファスナー26aを第2のファスナー26bに重ね合わせて取り付けることによって、バイオリアクター容器72について可撓性の本体20を包んで固定することができる(図3)。ファスナー26は、面ファスナー、再使用可能な接着剤、フック、クリップ、クランプ、スナップまたは他のタイプのファスナーとして構成してもよい。
【0052】
可撓性の本体20は、加熱装置10に囲まれているときに透明なバイオリアクター容器72内のバイオリアクター培養物の明瞭な可視化を実現する1つ以上の透明部分30を含んでもよい。バイオリアクター培養物のこのような直接可視化は、バイオリアクター培養物のバイオプロセス分析、評価、モニタリングおよび培養を可能とする。ある実施の形態では、可撓性の本体20は、透明なファスナー部26を含む全体が透明であり、加熱装置10の全表面を通しての可視化を可能にする。代替的な実施の形態では、可撓性の本体20は、加熱装置10の大部分または実質的な部分を通しての可視性を実現するように位置決めまたは配置された1つ以上の透明部分30a、30b、30cと同様に、不透明なファスナー部26のような1つ以上の不透明部分を有する。好ましくは、透明部分30は、加熱装置10がバイオリアクター容器72に取り付けられるとき、バイオリアクター培養物が、透明なバイオリアクター容器72の対向する外側壁を通して、およびバイオリアクター容器72を包囲する加熱装置10の対向する外側壁を通して、ユーザーが直接的な視野を有するように、透明なバイオリアクター容器72の対向する外側壁に隣接する可撓性の本体20の対向する外側壁、表面、または部分の1つまたは複数の対を通して明瞭に見ることができるように、位置決めおよび配置される。バイオリアクター容器72および加熱装置10の対向する透明な外側壁を通したバイオリアクター培養物の光の遮られない透過および明瞭な可視化は、バイオリアクター培養物の視覚評価を改善し、他の方法では容易に識別できない分析を可能にする。例えば、バイオリアクター培養の進行および/または状態を測定するための濁度、着色および/または色合いの正確な評価は、好ましくは、バイオリアクター容器72および加熱装置10を通る光の直接の経路/透過がある場合に評価される。別の実施の形態では、透明部分30は、可撓性の本体20の複数の隣接および/または対向する外面または面を通して可視化できるように配置される。別の実施の形態では、透明部分30は、可撓性の本体20の少なくとも50%または少なくとも75%を構成する。別の実施の形態では、加熱装置10が透明バイオリアクター容器72の側壁に取り付けられ、実質的にまたは完全に囲まれている場合、加熱装置10によって囲まれている透明バイオリアクター容器72の側壁の少なくとも50%または少なくとも75%が、バイオリアクター培養の直接可視化を可能にする。
【0053】
図1Bに示される実施の形態では、可撓性の本体20は、1つまたは複数の透明部分30を有する第1の層22、24と、対応する1つまたは複数の透明部分30を含む第2の層24と、を含む多層材料構造を有することができる。第1および第2の層は、高分子材料、好ましくはシリコーンなどの耐熱性高分子材料から作られたシートとして構成してもよい。別の実施の形態では、層22、24は透明金属から作られてもよい。第1および第2の層22、24の透明部分30も同様に、透明な高分子材料、好ましくはシリコーンのような耐熱性高分子材料、または透明な金属から作られてよい。ある実施の形態では、第1および第2の層22、24は、可撓性の本体20の実質的な範囲または全体を定義し、可撓性の本体20を形成する第1および第2の層22、24の全体を通した可視化を実現する透明な高分子材料から構成される。別の実施の形態では、可撓性の本体20は、第1および第2の層22、24に取り付けられて隣接できる1つまたは複数のファスナー部26によってさらに定義される。または複数のファスナー26は、第1および第2の層22、24と同一または類似の透明ポリマー材料から構成されてもよく、可撓性の本体20の全体を通して完全な可視性を実現する。あるいは、1つ以上のファスナー部26は不透明であってもよいが、好ましくは可撓性の本体20の小部分のみを形成する。
【0054】
加熱装置10および可撓性の本体20は、1つまたは複数の加熱要素40をさらに含む。加熱要素40は、可撓性の本体20上に配置されるか、可撓性の本体20に埋め込まれるか、可撓性の本体20に取り付けられるか、可撓性の本体20に結合されるか、または他の方法で可撓性の本体20と動作可能に関連付けられる。加熱要素40は、可撓性の本体20を介して、加熱装置10に隣接するか、または他の方法で結合されたバイオリアクター容器72に熱を伝達するように構成および適合される。具体的には、加熱要素40は、バイオリアクター容器72の側壁を通してバイオリアクター培養物に熱を伝達するように構成および適合されている。ある実施の形態では、加熱要素40は、バイオリアクター容器72の側壁に均一に熱を加えるように構成、配置および適合されてもよい。加熱要素40は、透明プラスチック材料から作成されたバイオリアクター容器72を有する1回使用のバイオリアクター、またはガラスから作成されたバイオリアクター容器72を有する多数回使用または連続使用のバイオリアクターを含むがこれらに限定されない、異なるタイプのバイオリアクター70に熱を伝達するように構成され、適合されてもよい。加熱装置10はさらに、バイオリアクター容器72、その内容物および加熱装置10のカスタマイズされた安全な加熱を提供するために、各バイオリアクター70に対して異なる加熱、例えば、異なる適用加熱速度、異なる温度閾値および/または設定点、異なる加熱持続時間、異なる加熱プロファイル、サイクルまたはプログラムなどを行うように構成およびプログラムされてもよい。
【0055】
ある実施の形態では、加熱要素40は、透明部分30および/または取り付け部分26を含む、第1および/または第2の層22、24の任意の部分に直接配置されるか、埋め込まれるか、取り付けられるか、結合されるか、または他の方法で動作可能に関連付けられる。別の実施の形態では、発熱体40は、第1および第2の層22、24と同一または類似の構造および材料組成および特性を有する第3の層上に配置され、埋め込まれ、取り付けられ、結合され、または他の方法で動作可能に関連付けられてもよい。ある実施の形態では、発熱体40および/または発熱体40を含む第3の層は、好ましくは、第1および第2の層22、24の間に配置され、第1および第2の層22、24によって絶縁される。
【0056】
加熱要素40は、熱伝達を可能にし、可撓性の本体20を通して、具体的には1つ以上の透明部分30を通して、透明性を実質的に妨げず、可視化を妨げない任意のタイプの要素として構成されてよい。図1A~1Bの実施の形態では、加熱要素40は、電流がワイヤに通されると熱を放出する導電性の抵抗性ワイヤとして構成される。ある実施の形態では、ワイヤは、プレハブ化され、可撓性の本体20の一部に配置され、配置され、埋め込まれ、結合され、接着され、一緒に成形され、または他の方法で結合されてもよい。別の実施の形態では、ワイヤは、可撓性の本体20上に印刷されるか、エッチングされるか、または他の方法で形成されて、可撓性の本体20に取り付けられる。ワイヤは、透明部分30の一部分上またはその中に密に配置されても、そのような透明領域を通しての視界が実質的に妨げられず、透明部分30を通してバイオリアクター培養物をはっきりと見ることができるように、細いまたは微細なワイヤとして構成されてもよい。ある実施の形態では、ワイヤは、銅、アルミニウム、ニッケル、白金、それらの合金、透明金属、または同様の導電性材料から作製されてもよい。ワイヤは予め形成され、可撓性の本体20に結合されてもよく、または導電性熱伝達回路が切断、エッチング、蒸着または他の方法によって形成されてもよい。ワイヤは、例えば円形の断面を有してもよいが、正方形、三角形または他の断面も考えられる。好ましくは、1つ以上の加熱要素40は、可撓性の本体20の伝熱領域全体にわたって実質的に均一な加熱を可能にするように、可撓性の本体20と関連して配置される。ある実施の形態では、可撓性の本体20の伝熱領域は透明部分30を含む。図1Aに示す実施の形態では、発熱体40は、可撓性の本体20の熱伝達部分の全体にわたって、連続的に配置された行および列の上に、ならびに/または、渦巻の上に、密に配置されている。1つまたは複数の加熱要素40は、透明部分30を含む可撓性の本体20の熱伝達領域全体に密に配置され、その範囲に及ぶが、図3に示されるように、可撓性の本体20および透明部分30の熱伝達領域は、完全にまたは実質的に透明なままである。
【0057】
加熱装置10および可撓性の本体20は、1つまたは複数のセンサ60をさらに含む。センサ60は、加熱装置10および/または結合されたバイオリアクター70の1つまたは複数のパラメータまたは条件を測定、感知、検出および/または決定するために、可撓性の本体20上に配置または位置決めされ、可撓性の本体20に埋め込まれ、可撓性の本体20に取り付けられ、または結合され、または他の方法で動作可能に関連付けられる。センサ60は、加熱装置10の操作、熱伝達調節および/またはバイオ処理を容易にする任意のタイプのセンサであり得る。ある実施の形態において、センサ60は、温度センサ、容量性センサ、光電センサ、超音波センサおよび/または他のセンサであってもよい。例示的な実施の形態において、センサ60は、可撓性の本体20および/またはバイオリアクター培養物の温度を直接的または間接的に決定するために使用されてもよく、熱電対、サーミスタまたは抵抗温度検出器として構成されてもよい。複数のセンサ60を可撓性の本体20に結合し、可撓性の本体20全体に配置してもよい。好ましくは、複数の一体型温度センサを可撓性の本体20全体に配置してもよい。図1A~1Bの例示的な実施の形態に示されるように、加熱要素40および温度センサ60は、単一の一体化された構成要素またはユニットとして構成されてもよい。例えば、加熱要素40は、熱を伝達し、測定された電圧および/または決定されたワイヤの抵抗の変化に基づいて、可撓性の本体20および/またはバイオリアクター培養物の温度を決定するように構成された導電性の抵抗性ワイヤであってもよい。別の実施の形態では、温度センサに加えて、または温度センサの代替として、加熱装置10は、バイオリアクター容器72の材料特性、バイオリアクター容器72のサイズおよび/または構成、あるいは潜在的にバイオリアクター培養物の細胞濃度または密度を検出し得るセンサ60を含んでもよい。
【0058】
代替的な例示的実施の形態では、図5~6に示されるように、加熱装置10は、バイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72の構成要素と一体化されてもよい。ある実施の形態では、加熱装置10は、バイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72と一体的に形成された、バイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72に取り付けられた、またはバイオリアクター容器72に結合された本体を有してもよい。ある実施の形態では、加熱装置10の本体は、生体適合性材料から構成され、1つ以上の加熱要素40および1つ以上のセンサ60に結合されるか、これに取り付けられるか、または他の方法で動作可能に関連付けられる、シリコーンフィルムまたは層状構成体などの可撓性の本体20として構成されてもよい。例えば、発熱体40およびセンサ60は、可撓性の本体20に埋め込まれ、そうでなければ可撓性の本体20によって絶縁されてもよい。別の実施の形態では、加熱要素40およびセンサ60は、担体または本体によって支持されず、その代わりに、バイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72と一体的に形成され、これに取り付けられ、またはこれに結合される。図5に示す実施の形態では、加熱装置10ならびに加熱要素40およびセンサ60は、限定されないが、インペラーシャフトおよび/またはインペラーブレード、スピンフィルタ75、ディップチューブ76またはバイオリアクター培養センサ78を含む、インペラー72の1つまたは複数の部分に取り付けられ、付着され、一体化され、または他の方法で動作可能に関連付けられる。図6に示される実施の形態では、加熱装置10および加熱要素40およびセンサ60は、バイオリアクター容器72(図6)の透明な側壁に取り付けられ、付着され、一体化され、または他の方法で動作可能に関連付けられてもよい。このような配置は、加熱装置10が作動している間、使用者がバイオリアクター72の内容物を明瞭に見ることを可能にする。例示的な実施の形態において、これらのバイオリアクター構成要素は、実質的にまたは完全に透明であってよく、ガラスまたは透明プラスチックのような透明材料から作られてよく、加熱装置10および加熱装置本体は、実質的にまたは完全に透明であってよい。これによりバイオリアクター容器内の内容物の可視性がさらに設備されるので、ユーザーは、1つまたは複数のバイオリアクター構成要素および加熱装置10を通してバイオリアクター培養物を見ることができる。
【0059】
加熱装置10のコネクタ62は、加熱要素40および/またはセンサ60を、加熱装置10を作動させるためのコントローラ50および/または電源に接続する。加熱要素40およびセンサ60は、加熱装置10および/またはバイオリアクター容器72の内容物の熱伝達および/または温度を調節するためのコントローラ50に接続され、および/または他の方法で作動可能に関連付けられる。ある実施の形態では、コントローラ50は、加熱装置10の一部であり、加熱装置10と一体であり、および/または加熱装置10と動作可能に関連し得る。例えば、コントローラ50は、加熱要素40および/またはセンサ60を電源と接続する機能も有するコネクタ62の一体構成要素であってもよい。図4に示される例示的な実施の形態において、加熱要素40およびセンサ60は、コネクタ62を介して、バイオリアクターシステム80の一部であるバイオコントローラとして構成されたコントローラ50に接続される。
【0060】
コントローラ50は、加熱装置10および/またはバイオリアクター容器72の内容物の温度および/または温度変化、ならびにその間の熱伝達を監視するために使用されてもよい。例示的な実施の形態において、コントローラ50および加熱装置10は、好ましくは、異なるタイプのバイオリアクター70、異なるバイオリアクター培養物および異なるバイオプロセス用途の固有の要件および/または制限に特異的であり、それを対象とする、カスタマイズされた熱伝達を提供するように構成され、プログラムされ、適合される。例えば、より低い熱伝達率を必要とし、より低い最高温度閾値/より低い融点を有し、より短い加熱許容時間を有する、1回使用のバイオリアクター70および対応する1回使用の透明プラスチック製バイオリアクター容器72のための所望され、許容される加熱活性、熱伝達作用または熱伝達機能は、より高い熱伝達率、より高い最高温度閾値/より高い融点およびより長い加熱許容時間を必要とするガラス製バイオリアクター容器72を含む多回使用または連続使用のバイオリアクター70とは異なっていてもよい。従って、加熱装置10を使用するカスタマイズされた加熱および熱伝達は、加熱装置10の効率的かつ安全な操作ならびに付属のバイオリアクター70に対する効果的な加熱を可能にする。ある実施の形態では、加熱装置10およびコントローラ50は、加熱装置10に結合されたバイオリアクター70のタイプ、加熱装置10に結合されたバイオリアクター容器72の構成および/または材料特性、加熱装置10および/または可撓性の本体20の材料特性、バイオリアクター70の意図されたバイオプロセス操作、意図された収量またはバイオプロセス結果、バイオリアクター培養物の所望の温度または温度変化、加熱装置10の所望の温度または温度変化、加熱装置10またはバイオリアクター培養物の検出された温度または温度変化、バイオリアクターシステム構成要素およびアクチュエーター(インペラー74の撹拌モーターなど)から導入された検出された熱、バイオリアクター培養物の検出された濁度または透明度、バイオリアクター培養物の検出された色または色合い、バイオリアクター培養物の検出された細胞濃度または密度、またはユーザー入力/ユーザー指定パラメーターなどを含むがこれらに限定されない様々な異なる要因に基づいて、加熱および/または温度調節を調整するように構成およびプログラムされる。任意の状況において、コントローラ50および加熱装置10は、適用される加熱速度・加熱温度・加熱時間・加熱サイクル・プロファイル・プログラム、初期、最終、および/または中間温度設定点などの加熱活性、熱伝達作用または熱伝達関数などを決定する際に、上記の要因を考慮に入れて、異なるバイオリアクター70、異なるバイオリアクター容器72、異なるバイオリアクター培養物、および/または異なるバイオプロセス用途に対して、カスタマイズされた、効率的な、高収率で安全な加熱を提供することができる。
【0061】
コントローラ50と作動的に関連する1つまたは複数のセンサ60は、バイオリアクター培養および加熱装置10の状態の連続的なリアルタイム監視および評価を容易にするフィードバックループを提供する。または複数のセンサ60からのデータに基づいて加熱装置10の熱伝達機能を調整することにより、カスタマイズされた効率的なバイオプロセスが可能になる。
【0062】
例示的な実施の形態において、加熱装置10およびコントローラ50は、加熱装置を使う際にユーザーによる最小限のセットアップおよび/または監視を必要とするように予めプログラムされている。加熱装置10、コントローラ50および/またはバイオリアクターシステム80は、スマートデバイスおよびシステムとして構成されてもよい。このとき加熱装置10は、コントローラ50との接続および/またはバイオリアクター70との連結時に、以下の情報、すなわち、コントローラ50から受信した、異なる用途およびバイオリアクター装置に対する予めプログラムされた熱伝達機能および設定;バイオリアクター70、バイオリアクター容器72および/または加熱装置10に関連するセンサ60によって検出された環境または物理的パラメータまたは条件;および/またはユーザーによって入力/指示された情報に基づいて、適切な加熱活動または機能を自動的に検出および決定してもよい。ある実施の形態では、加熱装置10は、加熱装置10をバイオリアクター容器72、バイオリアクター70および/またはコントローラ50に連結すると、対応するバイオリアクター70、バイオリアクター容器72、バイオリアクター培養物および/または意図されるバイオプロセシング用途に特に適合した初期加熱機能を自動的に検出および実施する。あるいは加熱装置10は、加熱装置10、バイオリアクター70、バイオリアクター容器72および/またはバイオリアクター培養物に有害かつ/または悪影響を及ぼす加熱機能を制限する。例えば加熱装置10およびコントローラ50は、異なるタイプのバイオリアクター、異なるタイプのバイオリアクター容器、異なるバイオリアクター培養物および/または意図されたバイオプロセス用途に適合する熱伝達機能および動作などに基づいて、予めプログラムされてもよい。センサ60は、加熱装置10をバイオリアクター70およびバイオリアクター容器72に接続したとき、予めプログラムされた選択肢のうちどれが意図された用途に最も適しているかを決定するように機能してもよい。同様に、予めプログラムされた加熱動作および熱伝達機能は、目的とするバイオプロセス用途、培養されるバイオリアクター培養物のタイプその他の情報に関してコントローラ50からユーザー入力を受け取ると、加熱装置10を使用した加熱の推奨される行動方針を決定するために、さらにソートおよびフィルタリングされてもよい。
バイオリアクターシステム
【0063】
本開示の加熱装置10は、新規なバイオリアクターシステム80の一部であってもよい。ある実施の形態において、バイオリアクターシステム80は、前述の加熱装置10の実施の形態のいずれか、コントローラ50および1つ以上のバイオリアクター70を含んでもよい。ある実施の形態において、バイオリアクターシステム80は、1回使用バイオリアクター、多数回使用バイオリアクター、連続使用バイオリアクターなどの、2つ以上の異なるタイプのバイオリアクター70を含んでもよい。さらにバイオリアクターシステム80は、ガラスおよび透明プラスチックなどの異なる材料から作成された2つのバイオリアクター容器72を含んでもよい。ある実施の形態では、バイオリアクター容器72は透明であってもよい。別の実施の形態のバイオリアクター容器72は、不透明だが、その中に含まれるバイオリアクター培養物のpH値に基づいて色が変化する場合もある。
【0064】
図4に示される実施の形態では、バイオリアクターシステム80は、加熱装置10、コントローラ50、1つ以上のバイオリアクター70、およびディスプレイおよび/またはユーザーインターフェース82を含んでもよい。任意選択で、バイオリアクターシステム80は、コントローラ50に接続され得るベースヒーター84をさらに含んでもよい。このときコントローラ50は、加熱装置10およびベースヒーター82の両方を通る熱伝達を制御することによって、1つ以上のバイオリアクター容器72のバイオリアクター培養物の温度を集中的に調節することができる。
【0065】
加熱装置10およびバイオリアクターシステム80は、いくつかの利益および利点、すなわちモニタリング機能の向上や、カスタマイズされた、調整可能で、効率的、効果的かつ安全な温度調節機能を提供する。特に、加熱装置10は再利用可能であり、様々な異なるバイオリアクター70、バイオリアクター容器72、バイオリアクターシステム80およびバイオリアクター培養に関連して使えるように適合されるので、特定のバイオリアクター、バイオリアクターシステムまたは目的とするバイオプロセス用途のために複数のカスタマイズされた加熱装置が不要となる。加熱装置10はさらに、連結されたバイオリアクターに特に適合した熱伝達機能が実現されるように構成される。センサ60はさらに加熱装置10および/またはバイオリアクター培養の条件およびパラメーターの連続的なフィードバックループを提供し、加熱装置10からの熱伝達の調整を含むがこれに限定されない、バイオプロセス条件およびパラメーターの連続的なリアルタイムモニタリング、評価および調整が容易となる。加熱装置10の透明部分30は、バイオリアクター培養物の即時かつ明確な可視化を可能にし、必要に応じてバイオプロセス条件およびパラメーターのモニタリング、評価および調整をさらに支援する。
バイオリアクターを加熱するための方法
【0066】
本開示はさらに、加熱装置10を使用してバイオリアクター70を加熱するための方法を主題とする。図7に示される例示的な実施の形態において、この方法は以下のステップを含む。前述の加熱装置10のいずれかを使用して、加熱装置10と作動可能に関連付けられたバイオリアクター容器72を加熱するステップ。バイオリアクター培養物および/または加熱装置10の条件、パラメーターまたはその変化を決定するステップ。バイオリアクター培養物および/または加熱装置10の決定された条件、パラメーターまたはその変化に基づいて、加熱装置10を使用して熱伝達を調節するステップ。加熱装置10は、バイオリアクター容器72の外側壁を包囲するように加熱装置10を取り外し可能かつ再利用可能に取り付けるなど、本開示の方法のいずれかを用いてバイオリアクター70と作動的に関連付けられてもよい。ある実施の形態では、本方法は、1回使用のプラスチック製バイオリアクター容器のような第1のバイオリアクター容器72から加熱装置10を取り外し、多数回使用または連続使用のガラス製バイオリアクター容器のような異なる第2のバイオリアクター容器に加熱装置10を再使用可能に取り付けるステップをさらに含む。
【0067】
別の実施の形態では、加熱装置10は、バイオリアクター容器72の透明側壁、インペラー74、インペラーシャフト、インペラーブレード、スピンフィルタ75、ディップチューブ76またはバイオリアクターセンサ78のような、バイオリアクター70の構成要素と一体的に形成されてもよい(図5~6)。加熱装置10および一体的に連結されたバイオリアクター構成要素は、1回使用の透明プラスチック製バイオリアクター容器のような第1のバイオリアクター70またはバイオリアクター容器72に着脱可能に連結され、その後、多数回使用または連続使用のガラス製バイオリアクター容器のような別の第2のバイオリアクター70またはバイオリアクター容器72に着脱可能に連結されることにより再利用可能に連結されてもよい。例えば、一体型加熱装置10およびバイオリアクター構成要素は、第1の1回使用透明プラスチック製バイオリアクター容器72のバイオリアクター蓋71を通して挿入され、および/または、バイオリアクター蓋71に再装着可能に連結され、その後取り外され、第2の多数回使用または連続使用ガラス製バイオリアクター容器72の第2の蓋71を通して再使用可能に挿入および連結されてもよい。
【0068】
加熱装置10は、第1のバイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72に対して、第2のバイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72に関して実行される加熱機能とは異なる加熱機能を実行するために使ってもよい。実行される加熱作用は、対応して取り付けられたバイオリアクター70および/またはバイオリアクター容器72に対してカスタマイズされてもよく、特に適合されてもよい。ある実施の形態では、本方法は、前述のように、加熱装置10および/またはバイオリアクター72内に含まれるバイオリアクター培養物の様々な検出された条件、パラメーターまたはその変化に基づいて、加熱装置10からの印加熱および/またはバイオリアクター培養物および/または加熱装置10の温度を調節するステップを含む。
【0069】
ある実施の形態では、本方法は、加熱装置10の透明部分30を通してバイオリアクター培養物を直接可視化するステップをさらに含む。例えば、加熱装置10が透明なバイオリアクター容器72の周囲に配置され、かつそれを包囲する加熱ラップまたはジャケットとして構成される場合、ユーザーは、透明なバイオリアクター容器72の側壁およびバイオリアクター容器72の周囲を包囲する加熱装置10の透明な側壁を通して、バイオリアクター培養物を直接見ることができる。別の実施の形態では、バイオリアクター70および/またはインペラー72もしくはスピンフィルタ75などのバイオリアクター容器72の構成要素は透明であり、それと一体化された透明な加熱装置10と一体化されてもよい。このときユーザーは、バイオリアクター70およびバイオリアクター容器72の透明な構成要素ならびに透明な加熱装置10を通してバイオリアクター培養物を見ることができる。
【0070】
図8に示されるように、別の例示的な方法は、以下のステップを含んでもよい。透明な本体を有する加熱装置10を第1のバイオリアクター容器72に作動的に関連付けるステップ。加熱装置10を使って、第1のバイオリアクター容器72または第2のバイオリアクター培養に特異的または適合された第1の加熱を行うステップ。加熱装置10を第2のバイオリアクター容器72に作動的に関連付けるステップ。加熱装置10を使って、第2のバイオリアクター容器72または第2のバイオリアクター培養物に特異的または適合された第2の加熱を行うステップ。ここで、第1の加熱と第2の加熱とは異なる。加熱装置10が第1および第2の透明なバイオリアクター容器72に作動的に関連付けられるとき、加熱装置10の透明な本体を通して第1および第2のバイオリアクター容器72の内容物を直接可視化するステップ。
【0071】
上記の方法は、カスタマイズされた温度調節を必要とするバイオリアクター培養物の培養および成長促進に特に有利である。本方法の例示的な用途には、バイオプロセス実験がバイオ医薬品のバイオプロセスおよび温度条件に特に敏感であり、実質的な温度のカスタマイズおよび調節を必要とし、理想的な温度条件が未知であり/まだ評価/決定されていない場合、およびバイオプロセスの監視および管理において視覚的指標が重要である場合、当該バイオプロセス実験の実施が含まれてもよい。
【0072】
特定の方法は、特定の順序で提示されるステップ用いて説明することができる。しかし当業者に理解され得るように、多くの場合これらのステップは、任意の順序で実行してもよい。従って、本開示の方法は、本明細書に記載されたステップの特定の順序に限定されない。
【0073】
特定の実施の形態を示し説明したが、これらは本願の特許請求の範囲を限定することを意図しない。当業者には、特許請求の範囲の思想および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正が可能なことは明らかだろう。特許請求の範囲の記載は、代替、修正および同等の実施の形態をカバーすることを意図する。
【0074】
以上の開示は、例示および説明のみを目的になされたものであり、いかなる意味においても請求の範囲を限定するものとして解釈されない。
【符号の説明】
【0075】
10 加熱装置
20 加熱装置の可撓性本体
22 可撓性本体の第1の層
24 可撓性本体の第2の層
26 ファスナー、可撓性本体のファスナー部
28 可撓性本体の切り抜き
30 可撓性本体の透明部分
40 加熱エレメント
50 コントローラ
60 温度センサ
62 コネクタ
70 バイオリアクター
71 バイオリアクター蓋
72 バイオリアクター容器
74 バイオリアクター攪拌機
75 バイオリアクタースピンフィルタ
76 バイオリアクターディップチューブ
78 バイオリアクターセンサ
80 バイオリアクターシステム
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターのための加熱装置(10)であって
透明な可撓性の本体(20)と、
前記可撓性の本体(20)に結合された加熱要素(40)と、
前記可撓性の本体(20)に結合されたセンサ(60)と、
を備え、
前記可撓性の本体(20)は、透光性を有する材料を備えた透明部分(30)を有し、バイオリアクター培養物を収容する透明なバイオリアクター容器(72)の周囲を定義する側壁に着脱可能に結合可能であって、かつ前記側壁を実質的に囲み、
前記加熱要素(40)は、前記バイオリアクター培養物を均一に加熱するために前記側壁に熱を伝達し、
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の前記透明部分(30)を含む熱伝達部分全体にわたって配置されており、
前記加熱要素(40)は、前記透明部分(30)を通した視認性が実質的に妨げられないように、導電性の抵抗性ワイヤとして構成され、
前記加熱要素(40)は、熱伝達を調節するコントローラ(50)に接続可能であり、
前記センサ(60)は、前記加熱装置(10)および/または前記バイオリアクター培養物の温度および/または温度変化を検出し、
前記センサ(60)は、前記加熱装置(10)および/または前記バイオリアクター培養物の温度を監視および/または調節するために、前記コントローラ(50)に接続可能であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記センサ(60)および前記加熱要素(40)は、前記加熱装置(10)の一体化されたユニットまたは構成要素として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分を形成する1本以上の導電性ワイヤを備え、
前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分は透明であり、
前記加熱要素(40)は、前記加熱装置(10)が前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合されたときに、前記熱伝達部分を通した前記バイオリアクター培養物の視認性が実質的に妨げられないように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記可撓性の本体(20)は、前記透明なバイオリアクター容器(72)の対向する外側壁の周囲に前記透明なバイオリアクター容器(72)と隣接して設置されたとき、前記外側壁を通した前記バイオリアクター培養物の視認性が妨げられないように構成されていることを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱装置(10)は、第1のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、前記第1のバイオリアクターに適合した第1の加熱を行い、
前記加熱装置(10)は、第2のバイオリアクターに再利用可能かつ取り外し可能に結合され、前記第2のバイオリアクターに適合した第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、所定の温度もしくは温度範囲まで加熱すること、所定の温度で熱を伝達すること、所定の加熱速度で熱を伝達すること、温度閾値に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、温度変化に基づいて熱の印加を促進もしくは制限すること、所定の時間加熱することまたは所定のプログラムに従って熱を印加すること、のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)のタイプ、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)の構成および/もしくは材料特性、前記加熱装置(10)に結合可能なバイオリアクター容器(72)の目的とされる操作または前記加熱装置(10)に結合されるバイオリアクター容器(72)のバイオリアクター培養物の所望の温度、温度範囲もしくは温度変化のいずれかによって異なり、かつこれらのいずれかに依存することを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1の加熱および前記第2の加熱は、所定の加熱速度で熱を伝達するものであり、
前記第1のバイオリアクターは、1回使用のバイオリアクターであり、
前記第2のバイオリアクターは、多数回使用のバイオリアクターであり、
前記加熱装置は、前記第1のバイオリアクターの容器を所定の第1の加熱速度で加熱し、
前記加熱装置は、前記第2のバイオリアクターの容器を前記第1の加熱速度より速い所定の第2の加熱速度で加熱することを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記可撓性の本体(20)は加熱ジャケットとして構成され、
前記可撓性の本体(20)は、
第1の可撓性層(22)であって当該第1の可撓性層(22)を通した視認性を妨げない第1の透明部分(30)を備えた第1の可撓性層(22)と、
第2の可撓性層(24)であって当該第2の可撓性層(24)を通した視認性を妨げない第2の透明部分(30)を備えた第2の可撓性層(24)と、
を備え、
前記加熱要素(40)は、前記第1の可撓性層(22)と前記第2の可撓性層(24)との間に配置され、
前記加熱装置が前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合されたとき、前記バイオリアクター培養物が、前記可撓性の本体(20)の第1の透明部分(30)および第2の透明部分(30)を通して視認可能であることを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱要素(40)は、前記可撓性の本体(20)の熱伝達部分の全体にわたって、連続的に配置された行および列の上に、ならびに/または、渦巻の上に、密に配置されていることを特徴とする請求項に記載の加熱装置。
【請求項11】
請求項に記載の加熱装置(10)と、
熱伝達を監視および/または調節するコントローラ(50)と、
を備え、
前記コントローラ(50)は、前記加熱要素(40)および前記センサ(60)に接続されていることを特徴とするバイオリアクターシステム。
【請求項12】
プラスチック製のバイオリアクター容器を備えた1回使用のバイオリアクターと、
ガラス製のバイオリアクター容器を備えた複数回使用のバイオリアクターと、
を備え、
前記加熱装置(10)は、前記プラスチック製のバイオリアクター容器および前記ガラス製のバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、かつ前記プラスチック製のバイオリアクター容器および前記ガラス製のバイオリアクター容器と連通して作動し、
前記加熱装置(10)は、前記プラスチック製のバイオリアクター容器に第1の加熱を行い、前記ガラス製のバイオリアクター容器に第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項11に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項13】
ユーザーが前記加熱装置(10)の加熱を調節するための、前記コントローラ(50)と作動的に関連付けられたユーザーインターフェース(82)を備えることを特徴とする請求項11に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項14】
前記コントローラ(50)に接続され、前記透明なバイオリアクター容器(72)に熱を伝達するために前記透明なバイオリアクター容器(72)に結合された補助ヒーター(84)を備え、
前記コントローラ(50)は、前記加熱装置(10)および前記補助ヒーター(84)を伝って流れる熱伝達を集中的に制御および調整することを特徴とする請求項11に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項15】
組織を培養する第1のバイオリアクター(70)を備え、
前記第1のバイオリアクター(70)は、第1のバイオリアクター培養物を収容する第1の透明なバイオリアクター容器(72)を備え、
前記加熱装置(10)は、前記第1の透明なバイオリアクター容器(72)と動作可能に関連付けられ、
前記加熱装置(10)は、前記透明な第1のバイオリアクター容器(72)またはバイオリアクター容器部品(74、76、78)の外面の周囲に配置され、
前記加熱装置(10)は、前記第1のバイオリアクター培養物に熱を伝達し、前記加熱装置(10)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度を測定し、前記第1のバイオリアクター培養物の視認性を実質的に妨げないように構成され、
前記コントローラ(50)は、前記第1のバイオリアクター培養物の温度および前記加熱装置(10)によって加えられる熱を調節するために、前記加熱装置(10)に接続され、
前記加熱装置(10)は、前記第1のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第1の加熱を行い、第2のバイオリアクターの1つ以上のパラメータまたは条件に適合した第2の加熱を行い、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項11に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項16】
補助ヒーター(84)をさらに備え、
前記補助ヒーター(84)は、前記第1の透明のバイオリアクター容器(72)に結合され、前記第1の透明のバイオリアクター容器(72)に熱を伝達し、
前記コントローラ(50)は、前記補助ヒーター(84)に接続され、前記加熱装置(10)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度を調節するために、前記加熱装置(10)および前記補助ヒーター(84)によって加えられる熱を集中的に制御および調整することを特徴とする請求項15に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項17】
第2のバイオリアクターをさらに備え、
前記第1のバイオリアクターは1回使用のバイオリアクターであり、前記第1の透明なバイオリアクター容器はプラスチック製の透明なバイオリアクター容器であり、
前記第2のバイオリアクターは第2の透明なバイオリアクター容器を備えた多数回使用のバイオリアクターであり、前記第2の透明なバイオリアクター容器はガラス製の透明なバイオリアクター容器であり、
前記加熱装置(10)は、前記第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器に取り外し可能に結合され、前記第1の透明なバイオリアクター容器および第2の透明なバイオリアクター容器と関連して作動するように構成されていることを特徴とする請求項15に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項18】
1つ以上の透明部分を備えた可撓性の本体(20)と、
加熱要素と、
前記コントローラに接続された温度センサと、
を備え、
前記透明部分は、前記加熱装置が前記バイオリアクターに結合されたとき、前記第1のバイオリアクター培養物が視認可能であるようにし、
前記加熱要素は、前記加熱装置(10)が前記第1のバイオリアクターに結合されたときに、前記可撓性の本体(20)の透明部分を通した前記第1のバイオリアクター培養物の視認性が実質的に妨げられないように構成され、
前記温度センサは、前記可撓性の本体(20)および/または前記第1のバイオリアクター培養物の温度または温度変化を検出することを特徴とする請求項15に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項19】
前記加熱装置は、前記バイオリアクターの構成要素と一体的に形成されているか、前記バイオリアクターの構成要素に結合されているか、前記バイオリアクターの構成要素に取り付けられているか、または前記バイオリアクターの構成要素に接続されているかしており、
前記バイオリアクターの構成要素は、透明なバイオリアクター容器の壁、前記バイオリアクターのインペラー、前記バイオリアクターのインペラーシャフト、前記バイオリアクターのディップチューブおよび/または前記バイオリアクターのスピンフィルタであることを特徴とする請求項15に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項20】
バイオリアクターの温度を調節する方法であって、
請求項に記載の加熱装置(10)をバイオリアクター容器(72)と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記バイオリアクター容器(72)または前記バイオリアクター容器(72)内に収容されたバイオリアクター培養物を加熱するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記加熱装置(10)を用いて、前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化を検出するステップと、
検出された前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の状態、パラメータまたは当該パラメータの変化に基づいて、前記バイオリアクター培養物および/または前記加熱装置(10)の温度を調節するステップと、
を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
透明な本体(20)を有する加熱装置(10)を第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記第1のバイオリアクター容器または前記第1のバイオリアクター容器内に収容された第1のバイオリアクター培養物に適合した第1の加熱を行うステップと、
前記加熱装置(10)を第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けるステップと、
前記加熱装置(10)を用いて、前記第2のバイオリアクター容器または前記第2のバイオリアクター容器内に収容された第2のバイオリアクター培養物に適合した第2の加熱を行うステップと、
前記加熱装置(10)が前記第1のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は前記透明な本体(20)を通して前記第1のバイオリアクター培養物を直接視覚化し、前記加熱装置(10)が前記第2のバイオリアクター容器と作動的に関連付けられている場合は前記透明な本体(20)を通して前記第2のバイオリアクター培養物を直接視覚化するステップと、
を含み、
前記第1の加熱と前記第2の加熱とは異なることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【国際調査報告】