(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】反応媒体の事前中和を伴う低色アルキルポリグリコシドの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07H 1/00 20060101AFI20241003BHJP
C07H 15/04 20060101ALI20241003BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C07H1/00
C07H15/04 A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521092
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078400
(87)【国際公開番号】W WO2023062077
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398057293
【氏名又は名称】ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】イロウス,エステル
(72)【発明者】
【氏名】デシラ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C057
4H039
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057AA19
4C057BB02
4C057BB03
4C057BB04
4C057DD01
4C057JJ03
4H039CA61
(57)【要約】
【解決手段】 1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色を有するアルキルポリグリコシドを調製するための方法が開示されており、方法は、(a)少なくとも1種の酸触媒(CA)の存在下で100℃の最小温度及び120℃の最大温度での、少なくとも1種の式(I)のアルコール及び少なくとも1種の式(III)の還元糖:H-O-(G)-H(III)の間の反応にあるグリコシル化ステップ(a);(b)ステップ(a)に由来する反応媒体を事前中和させるステップ(b);(c)ステップ(b)において得た事前中和された反応媒体から、ステップ(a)において反応しなかった式(III)の還元糖を除去するステップ(c);(d)塩基剤(Ab)を含む水溶液によってステップ(c)に由来する反応媒体を中和させるステップ(d);並びに(e)1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色を有する少なくとも1種の組成物(C)を回収するステップ(e)を連続的に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その重量の100%に対して:
i)40重量%と等しいか若しくはそれより多く、95重量%と等しいか若しくはこれ未満の量の式(I)のアルコール:
R-OH(I)
(式中、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含有し得、12~22個の炭素原子を含有する直鎖状若しくは分岐状、飽和若しくは不飽和の炭化水素基を表す)、又は式(I)のアルコールの混合物;
ii)5重量%と等しいか若しくはそれより多く、60重量%と等しいか若しくはこれ未満の量の式(II)によって表される組成物(C1):
R-O-(G)x-H(II)
(式中、残基Gは、還元糖の残基を表し、Rは、式(I)において定義するような基を表し、前記残基Gの平均重合度を示すxは、1.05超及び2.5と等しいか若しくはこれ未満の十進数を表す)、又は式(II)の組成物(C1)の混合物
を含む、1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色を有する組成物(C)を調製するための方法であって、
組成物(C)中の式(I)及び(II)の化合物の重量比率の合計は、100重量%と等しいことが理解され、
前記方法は、
a)少なくとも1種の酸触媒(CA)の存在下で100℃と等しいか若しくはそれより多く、120℃と等しいか若しくはこれ未満の温度での、少なくとも1種の式(I)のアルコール及び少なくとも1種の式(III)の還元糖:H-O-(G)-H(III)の間の反応からなるグリコシル化のステップa)であって、前記少なくとも1種の酸触媒(CA)は、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、次亜リン酸、メタンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性イオン交換樹脂からなる群のメンバーから選択されるステップa)と、
b)ステップa)からの反応媒体を事前中和させるステップb)であって、前記反応媒体の水中の5重量%分散物が3.5~5.5のpHを有する反応媒体を得るように、前記事前中和が行われるステップb)と、
c)ステップb)において得た前記事前中和された反応媒体から、ステップa)において反応しなかった式(III)の前記還元糖を除去するステップc)と、
d)
-式(IVa)の炭酸塩:
XnCO
3(IVa)
(式中、Xは、ナトリウム若しくはカリウム原子を表し、nは、2と等しい整数であるか、又はXは、カルシウム原子若しくはマグネシウム原子を表し、nは、1と等しい整数である)、或いは
-式(IVb)の炭酸水素塩:
Y(HCO
3)m(IVb)
(式中、Yは、ナトリウム若しくはカリウム原子を表し、mは、1と等しい整数であるか、又はYは、カルシウム原子若しくはマグネシウム原子を表し、mは、2と等しい整数である)
からなる群のメンバーから選択される塩基剤(Ab)を含む水溶液によって、ステップc)からの前記反応媒体を中和させるステップd)であって、前記反応媒体の水中の前記5重量%分散物が5.5~7.5のpHを有する反応媒体が得られるように、前記中和が行われるステップd)と、
e)1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色を有する少なくとも1種の組成物(C)を回収するステップe)と
を連続的に含む、方法。
【請求項2】
前記組成物(C1)が、式(II1)、(II2)、(II3)、(II4)、及び(II5):
R-O-(G)1-H (II1)、
R-O-(G)2-H (II2)、
R-O-(G)3-H (II3)、
R-O-(G)4-H (II4)、
R-O-(G)5-H (II5)、
で表される化合物のそれぞれのモル比率a1、a2、a3、a4、及びa5が:
・合計:a1+a2+a3+a4+a5が1に等しい、
・合計a1+2a2+3a3+4a4+5a5がxに等しい、
となるような混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(C)が、2重量%と等しいか若しくはこれ未満の、より特定すると、1重量%と等しいか若しくはこれ未満の量の式(III)の還元糖:
H-O-(G)-H(III);
を含み、組成物(C)中の式(I)、(II)及び(III)の化合物の重量比率の合計が、100重量%と等しいことが理解されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記中和ステップd)において使用される前記水溶液中に含有される前記塩基剤(Ab)が、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)から選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記事前中和ステップb)が、下記の化合物:水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリエチルアミンの少なくとも1つによって行われることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記事前中和ステップb)が、下記の化合物:炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、及び炭酸カルシウム(CaCO
3)の1つによって行われることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)のグリコシル化のために選択される式(III)の前記還元糖が、グルコース、キシロース、アラビノース、及びラムノースからなる群の要素から選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(III)の前記還元糖を除去するステップc)が、濾過、遠心分離、又は沈降によって行われることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップd)において、塩基剤(Ab)の前記水溶液が、10重量%~25重量%の前記塩基剤(Ab)を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)が、以下の連続するサブステップの:
i)機械的撹拌機及び真空装置が取り付けられた反応器(Re)中に式(I)のアルコール又は式(I)のアルコールの混合物を導入するサブステップと;
ii)機械的撹拌下で式(I)の前記アルコールを80℃~90℃の間の温度に加熱するサブステップと;
iii)式(III)の前記還元糖を前記反応器(Re)に投入するサブステップと;
iv)酸触媒(CA)を前記反応器(Re)中に導入するステップと;
v)反応中に、部分真空下で、前記反応器(Re)中に存在するサブステップiv)からの前記反応媒体を100℃~110℃の間の温度に加熱するサブステップと、
vi)サブステップv)からの前記反応媒体を70℃~80℃の間の温度に冷却するサブステップと、
を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基Rが、以下の基の:ラウリル(若しくはn-ドデシル)、ミリスチル(若しくはn-テトラデシル)、n-ペンタデシル、セチル(若しくはn-ヘキサデシル)、n-ヘプタデシル、ステアリル(若しくはn-オクタデシル)、パルミトレイル(若しくは9-ヘキサデセニル)、オレイル(若しくは9-オクタデセニル)、リノレイル(9,12-オクタデカジエニル)、リノレニル(若しくは6,9,12-オクタデカトリエニル)、ノナデシル、アラキジル(若しくはn-エイコシル)、ベヘニル(若しくはn-ドコシル)、エルシル(13-ドコセニル)、又は12-ヒドロキシステアリルから選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基Rが以下の基の:2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、イソステアリル(若しくは16-メチルヘプタデシル)、又はイソミリスチル(若しくは13-メチルトリデシル)から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サブステップii)からiv)の間、前記反応器(Re)は窒素下で不活性化されることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
サブステップii)~iii)の間に、好ましくは50ミリバール以下の圧力における真空ステップを含むことを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
サブステップvi)が大気圧で行われることを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩中和剤を伴う低色アルキルポリグリコシド(1.5VCS未満の色)の調製方法に関する。
【0002】
アルキルポリグリコシド、すなわちAPGは、おそらくは、現在市場において利用可能なバイオベースの界面活性剤の最良の例である。それらの分子構造は、還元糖(D-グルコース、D-キシロース、又はD-ラムノースは、工業規模で主として利用可能な還元糖である)から誘導される親水性頭部と、種々の長さの親油性炭化水素鎖とが同時に存在することを特徴とする(式I:APGの単純化された構造を参照)。
【化1】
【背景技術】
【0003】
それらの工業規模の製造方法は、比較的単純であり、原材料として:i)小麦、トウモロコシ、若しくはジャガイモのデンプンの完全加水分解から、又は木材ヘミセルロースの加水分解からそれぞれ得られる結晶性のグルコース、又はキシロース、又はラムノースと、ii)石油化学工業(植物トリグリセリドのエステル交換で得られるメチルエステルの水素化)からの脂肪アルコールとを使用する。次に、Fischerグリコシル化反応は、例えばグルコースとアルコールとの間の反応(II)などで共有化学結合を形成することによって、これら2つの原材料を互いに結合させることにある。
【化2】
【0004】
このグリコシル化反応を行うために、無機又は有機由来の酸触媒が必要であり、過剰のアルコールが意図的に導入され、そのため反応物及び溶媒として機能する。反応終了時に、APGは、反応していない過剰のアルコール中に分散又は溶解させる。APGは、炭化水素アルキル鎖Rの性質及び長さによって、及び1を超えるが2.5以下であるそれらの平均重合度DPによって区別される。
【0005】
グリコシル化反応段階の終了時、触媒を失活させ、反応を停止させるために、中和ステップが行われる。
【0006】
アルコールのアルキル鎖の長さ、及び関連する使用によるが、上記アルコールは除去されるか、維持されるかのいずれかである。
【0007】
中和ステップは、炭化水素アルキル鎖の長さによって異なる。後者が12未満の炭素原子数を有する場合、中和は水酸化ナトリウム水溶液によって行われる。グリコシル化の終了時に存在する過剰の脂肪アルコールは、高真空蒸留若しくは分子蒸留によって、又は一般に流下薄膜蒸発器若しくはショートパス薄膜蒸発器を用いる蒸発によって除去され、収集されたAPG濃縮物は最後に水中に溶解させる。こうして得られる市販製品は、したがって、40%~~80%の間の重量濃度のAPG水溶液の形態である。
【0008】
炭化水素アルキル鎖Rが12以上の炭素原子数を有する場合、中和は、一般に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの単独によって、又は欧州特許第0 077 167号明細書の番号で公開された欧州特許、欧州特許出願公開第0 338 151 A1号明細書の番号で公開された欧州特許出願、欧州特許第0 388 857 B1号明細書に記載されるような還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)又は次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)との組み合わせによって行われる。APGと過剰の脂肪アルコールとの混合物は、中和後に単離され、そのままで固体である。APGと脂肪アルコールとの比率は、原材料に関して最初に採用されたモル化学量論と、それらの反応性とに依存する。しかしながら、5重量%~30重量%のAPGと、70重量%~95%の脂肪アルコールとの比率が一般に確認される。例えば、得られる組成物は、炭化水素アルキル鎖Rの性質により、固体の形態、例えばフレーク若しくはビーズの形態、又は液体の形態となり得る。
【0009】
しかしながら、5.5~7.5の間の中和媒体の水中の5重量%の分散物のpHを実現するための、12以上の炭素原子数を有する炭化水素アルキル鎖Rを有するAPGの従来技術からの塩基(例えばNaOH、KOH)による中和ステップによって、生成物の顕著な着色が生じる。
【0010】
本発明の目的のため、「水中の5重量%分散物のpHの測定」は、NF EN 1262の但し書きに準拠したAPGをベースとする組成物の分散物のpHを測定するための分析方法を意味し、上記測定は、複合pH電極(水性媒体)とpHメーターとを用いた電位差測定によって行われる。
【0011】
この着色は、APG組成物が導入される最終製品の官能特性を損なうことがある。このため、12以上の炭素原子数を有する炭化水素アルキル鎖Rを有するAPGを含む組成物の着色を最小限にするための解決策が提供される。12以上の炭素原子数を有する炭化水素アルキル鎖Rを有するAPGをベースとするこのような低色(<1.5VCS)組成物を得るために、従来技術で公知の2つの解決策が従来使用されている。
【0012】
本発明の目的のため、「低色組成物」は、DIN-ISO 4630によって規定されるガードナー色数(Gardner color scale)が1.5VCS以下である組成物を意味する。ガードナー色数は、あらゆる媒体上の光透過測定を行うLICO 200/Dr LANGE(又は同等の)測色計を用いて測定される。このような測色計は、DIN 5033によって規定される標準光源Cに相当するハロゲンランプを用い、2°の視野を有する標準観察者を用いて操作される。測定中、参照放射線ビームによって、ランプ及び温度の差による記録値のばらつきが補償される。
【0013】
第1の解決策は、使用される塩基を還元剤と組み合わせることにある。これらの還元剤の中では、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)又は次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)を挙げることができる。この解決策は、全く問題がないわけではない。特に、処理された組成物の着色の最小化においては非常に有効であるが、NaBH4は、取り扱い及び使用に危険が伴う還元剤である(腐食的生成物、水素の放出)。NaH2PO2自体は、高濃度で導入される場合でも、あまり有効ではない。
【0014】
12以上の炭素原子数を有する炭化水素鎖Rを有するAPGをベースとする組成物の色を最小限にするために一般に使用され従来技術に記載される第2の解決策では、最終ステップ中に過酸化水素(H2O2)を用いた脱色が行われる。有効ではあるが、しかしながら、H2O2を加えることによって媒体の酸化力を維持しながら、水中の5重量%分散物のpH値を7.0~7.5の間に調整する必要があるので、このステップは時間がかかる。実施が困難なこのステップは、数時間続く場合があり、したがって製造時間が大幅に増加し、生産性が低下しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、解決すべき技術的課題は、12以上の炭素原子数を有する炭化水素アルキル鎖Rを有するAPG組成物の中和に対する代案を見出すことである。この代案は、脱色ステップを行うことなく1.5VCS以下の色を保証しながら、有効で実施が容易となる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の解決策の1つは、1.5VCS以下の色を有する組成物(C)であって、その重量の100%に対して:
i)40重量%以上及び95重量%以下、好ましくは50重量%以上及び95重量%以下、さらにより優先的には70重量%以上及び90重量%以下の量の、式(I):
R-OH (I)(式中、Rは、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含むことができ、12~22個の炭素原子を含むことができる直鎖又は分岐、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す)のアルコール、又は式(I)のアルコールの混合物と;
ii)5重量%以上及び60重量%以下、好ましくは5重量%以上及び50重量%以下、さらにより優先的には10重量%以上及び30重量%以下の量の、式(II):
R-O-(G)x-H (II)(式中、残基Gは還元糖の残基を表し、Rは式(I)において定義される基を表し、残基Gの平均重合度を示すxは、1.05を超え2.5以下の十進数を表す)によって表される組成物(C1)、又は式(II)の組成物(C1)の混合物とを含み;
組成物(C)における式(I)及び(II)の化合物の重量比率の合計は100重量%となることが理解される、組成物(C)の調製方法であって、
上記方法が:
a)グリコシル化のステップa)であって、少なくとも1つの式(I)のアルコールと、少なくとも1つの式(III):H-O-(G)-H (III)の還元糖との間の、少なくとも1つの酸触媒(CA)の存在下で、100℃以上及び120℃以下、優先的には100℃以上及び115℃以下、さらにより優先的には100℃以上及び110℃以下の温度での反応からなり、酸触媒(CA)が、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、次亜リン酸、メタンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び酸性イオン交換樹脂からなる群の要素から選択されるステップa)と、
b)ステップa)からの反応媒体を事前中和させるステップb)であって、上記反応媒体の水中の5重量%分散物が3.5~5.5のpHを有する反応媒体を得るように、事前中和が行われるステップb)と、
c)ステップa)で反応しなかった式(III)の還元糖をステップb)で得た事前中和された反応媒体から除去するステップc)と、
d)塩基剤(Ab)であって:
・式(IVa):
XnCO3 (IVa)
(式中、Xはナトリウム原子若しくはカリウム原子を表し、nは2に等しい整数である、又はXはカルシウム原子若しくはマグネシウム原子を表し、nは1に等しい整数である)の炭酸塩、又は
・式(IVb):
Y(HCO3)m (IVb)
(式中、Yはナトリウム原子若しくはカリウム原子を表し、mは1に等しい整数である、又はYはカルシウム原子若しくはマグネシウム原子を表し、mは2に等しい整数である)の炭酸水素塩、
からなる群の要素から選択される塩基剤(Ab)を含む水溶液を用いて、ステップc)からの反応媒体を中和するステップd)であって、
水中の上記反応媒体の5重量%分散物が5.5~7.5の間のpHを有する反応媒体が得られるように、上記中和が行われるステップd)と、
e)1.5VCS以下の色を有する少なくとも1つの組成物(C)を回収するステップe)と、
を連続して含む調製方法である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題である方法により調製される組成物(C)を特徴づける色数は、DIN-ISO 463によって規定されるガードナー色数である。ガードナー色数は、あらゆる媒体上の光透過測定を行うLICO 200/Dr LANGE(又は同等の)測色計を用いて測定される。このような測色計は、DIN 5033によって規定される標準光源Cに相当するハロゲンランプを用い、2°の視野を有する標準観察者を用いて操作される。測定中、参照放射線ビームによって、ランプ及び温度の差による記録値のばらつきが補償される。
【0018】
本発明の主題である方法により調製される組成物(C)を特徴づけるガードナー色数を表す単位はVCSである。
【0019】
場合によって、本発明による方法は、下記の特徴の1つ若しくは複数を有し得る:
-上記組成物(C1)は、
■合計:a1+a2+a3+a4+a5が1と等しく、
■合計a1+2a2+3a3+4a4+5a5がxと等しくなるように、それぞれのモル比率a1、a2、a3、a4及びa5での、式(II1)、(II2)、(II3)、(II4)及び(II5):
R-O-(G)1-H(II1)、
R-O-(G)2-H(II2)、
R-O-(G)3-H(II3)、
R-O-(G)4-H(II4)、
R-O-(G)5-H(II5)、
によって表される化合物の混合物からなる;
-組成物(C)は、2重量%と等しいか若しくはこれ未満の、より特定すると、1重量%と等しいか若しくはこれ未満の量の式(III)の還元糖を含み、
H-O-(G)-H(III);
組成物(C)中の式(I)、(II)及び(III)の化合物の重量比率の合計は、100重量%と等しいことが理解される;
-中和ステップd)において使用される水溶液中に含有される塩基剤(Ab)は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)から選択される;
-事前中和ステップb)は、下記の化合物:水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリエチルアミンの少なくとも1つによって行われる;
-事前中和ステップb)は、下記の化合物:炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、及び炭酸カルシウム(CaCO3)の1つによって行われる;
-ステップa)のグリコシル化のために選択される式(III)の還元糖は、グルコース、キシロース、アラビノース及びラムノースからなる群のメンバーから選択される;
-式(III)の還元糖を除去するステップc)は、濾過、遠心分離又は沈降によって行われる;
-ステップd)において、塩基剤(Ab)の水溶液は、10重量%~25重量%の上記塩基剤(Ab)を含む;
-ステップa)は、下記の連続的なサブステップ
i)式(I)のアルコール又は式(I)のアルコールの混合物を機械式撹拌機及び真空装置を取り付けた反応器(Re)中に導入することと;
ii)式(I)のアルコールを80℃~90℃の温度に機械的撹拌しながら加熱することと;
iii)式(III)の還元糖を反応器(Re)に投入することと;
iv)酸触媒(CA)を反応器(Re)中に導入することと;
v)部分真空下で、反応器(Re)中に存在するサブステップiv)からの反応媒体を100℃~110℃の温度に反応の持続時間の間加熱することと、
vi)サブステップv)からの反応媒体を70℃~80℃の温度に冷却することと
を含む;
-基Rは、下記の基:ラウリル(若しくはn-ドデシル)、ミリスチル(若しくはn-テトラデシル)、n-ペンタデシル、セチル(若しくはn-ヘキサデシル)、n-ヘプタデシル、ステアリル(若しくはn-オクタデシル)、パルミトレイル(若しくは9-ヘキサデセニル)、オレイル(若しくは9-オクタデセニル)、リノレイル(9,12-オクタデカジエニル)、リノレニル(若しくは6,9,12-オクタデカトリエニル)、ノナデシル、アラキジル(若しくはn-エイコシル)、ベヘニル(若しくはn-ドコシル)、エルシル(13-ドコセニル)、又は12-ヒドロキシステアリルから選択される、
-基Rは、下記の基:2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、イソステアリル(若しくは16-メチルヘプタデシル)又はイソミリスチル(若しくは13-メチルトリデシル)から選択される;
-酸触媒(CA)は、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、次亜リン酸、メタンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性イオン交換樹脂からなる群のメンバーから選択される;
-サブステップii)~iv)の間に、反応器(Re)を窒素下で不活性化させる;
-方法は、サブステップii)及びiii)の間に、好ましくは、50ミリバールと等しいか若しくはこれ未満の圧力での真空ステップを含む;
-サブステップvi)は、大気圧にて行われる。
【0020】
式(IVa)の炭酸塩又は式(IVb)の炭酸水素塩の使用は、組成物(C)の色の増加に寄与しない(そのため還元剤の存在は不用である)が、所望のpHまで組成物(C)の5重量%分散物を中和する(5.5~7.5の間の値)。塩基剤(Ab)を使用することで、過酸化物剤などの使用を伴う脱色ステップを回避できるが、その理由は、これによって1.5VCS以下の色を実現できるからである。
【0021】
式(II)の定義及び式(III)の定義における「還元糖」という用語は、参考刊行物:“Biochemistry”,Daniel Voet/Judith G.Voet,page 250,John Wiley & Sons,1990において定義されるように、アノマー炭素とアセタール基の酸素との間に形成されるグリコシド結合をそれらの構造の中に有しない糖類誘導体を意味する。
【0022】
式(II)中に存在するオリゴマー構造(G)xは、光学異性、幾何異性、又は位置異性のいずれかに関連するあらゆる異性体であってよく、これは異性体の混合物を表すこともできる。
【0023】
前述の定義の式(II)において、基Rは、糖類残基のアノマー炭素を介してGに結合して、アセタール官能基を形成する。
【0024】
本発明の特定の一態様によると、式(II)及び式(III)の化合物の定義において、Gは、グルコース、デキストロース、スクロース、フルクトース、イドース、グロース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、ラクトース、セロビオース、マンノース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、ラムノース、デキストラン、又はタロースから選択される還元糖の残基を表す。
【0025】
本発明の特定の一態様によると、式(II)の化合物の定義において、Gは、グルコース、キシロース、アラビノース、又はラムノースの残基から選択される還元糖の残基を表し、xは1.05以上及び2.5以下の十進数を表す。
【0026】
本発明のさらなる特定の一態様によると、式(II)の化合物の定義において、Gは、グルコース、キシロース、アラビノース、又はラムノースの残基から選択される還元糖の残基を表し、xは1.05以上及び2.0以下、さらに特に1.25以上及び2.0以下の十進数を表す。
【0027】
本発明の別の特定の一態様によると、式(III)の還元糖は、グルコース、デキストロース、スクロース、フルクトース、イドース、グロース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、ラクトース、セロビオース、マンノース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、ラムノース、デキストラン、又はタロースからなる群の要素から選択される。
【0028】
本発明のより特定の態様によると、式(III)の還元糖は、グルコース、キシロース、アラビノース又はラムノースから選択される。
【0029】
本発明による方法は、3.5~5.5の上記媒体の水中の5重量%分散物のpHを達成するために、グリコシル化反応の終わりにおいて媒体を事前中和させることにある。この事前中和は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属炭酸水素塩、又は当業者には公知の任意の他の塩基を使用して行うことができる。式(II)の残留する還元糖はそれに続いて濾過によって除去され、塩基剤(Ab)の水溶液を加えて、5.5~7.5の組成物(C)の水中の5重量%分散物のpHを達成する。
【0030】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 45重量%~55重量%の式(I)のアルコールの混合物(M1)であって、上記混合物(M1)の重量の100%に対して、Rがn-ヘキサデシル基を表す式(I)のアルコール50重量%、及びRがn-オクタデシル基を表す式(I)のアルコール50重量%を含む混合物(M1)と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ヘキサデシル基及びn-オクタデシル基を表す式(II)によって表される、45重量%~54重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0031】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 45重量%~55重量%の式(I)のアルコールの混合物(M’1)であって、上記混合物(M’1)の重量の100%に対して、Rがn-ヘキサデシル基を表す式(I)のアルコール70重量%、及びRがn-オクタデシル基を表す式(I)のアルコール30重量%を含む混合物(M’1)と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ヘキサデシル基及びn-オクタデシル基を表す式(II)によって表される、45重量%~54重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0032】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の式(I)のアルコールの混合物(M’’1)であって、上記混合物(M’’1)の重量の100%に対して、Rがn-ヘキサデシル基を表す式(I)のアルコール50重量%、及びRがn-オクタデシル基を表す式(I)のアルコール50重量%を含む混合物(M’’1)と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ヘキサデシル基及びn-オクタデシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0033】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の式(I)のアルコールの混合物(M’’’1)であって、上記混合物(M’’’1)の重量の100%に対して、Rがn-ヘキサデシル基を表す式(I)のアルコール70重量%、及びRがn-オクタデシル基を表す式(I)のアルコール30重量%を含む混合物(M’’’1)と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ヘキサデシル基及びn-オクタデシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0034】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の、Rがn-テトラデシル基を表す式(I)のアルコールと、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rがn-テトラデシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0035】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の、Rが、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、及びn-オクタデシル基を表す式(I)のアルコールの混合物と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、及びn-オクタデシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0036】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の、Rがn-エイコシル基及びn-ドコシル基を表す式(I)のアルコールの混合物と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-エイコシル基及びn-ドコシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0037】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 75重量%~90重量%の、Rが、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-エイコシル基、及びn-ドコシル基を表す式(I)のアルコールの混合物と、
- Gが、α,β-D-グルコピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるグルコシル基又はα,β-D-グルコピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-エイコシル基、及びn-ドコシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~24重量%の少なくとも1つの組成物(C1)と、
- 1重量%未満のグルコースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0038】
特定の一態様によると、上記方法の主題の1つは、組成物(C)であって、1.5VCS以下の色を有し、その重量の100%に対して:
- 70重量%~90重量%の、Rが、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-エイコシル基、及びn-ドコシル基を表す式(I)のアルコールの混合物と、
- Gが、α,β-D-キシロピラノースのヘミアセタールヒドロキシル基の除去によって得られるキシロシル基又はα,β-D-キシロピラノシル基を表し、xが1.05以上及び2.0以下の十進数を表し、Rが2-オクチルドデシル基を表す式(II)によって表される、10重量%~29重量%の組成物(C1)と、
- 1重量%未満のキシロースと、
を含む組成物(C)の調製である。
【0039】
特定の一態様によると、水溶液中に存在する塩基剤(Ab)は、Xがカリウム原子を表し、nが2に等しい式(IVa)の炭酸カリウムである。
【0040】
特定の一態様によると、水溶液中に存在する塩基剤(Ab)は、Yがナトリウム原子を表し、mが1に等しい式(IVb)の炭酸水素ナトリウムである。
【0041】
特定の一態様によると、酸触媒(CA)は、硫酸、リン酸、次亜リン酸、メタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群の要素から選択される。
【実施例】
【0042】
使用した中和用塩基剤が本発明による炭酸塩又は水酸化ナトリウム(比較用中和剤)である場合の、脂肪アルコールとアルキルポリグルコシドとの組成物の色に対する中和剤の影響の比較。
中和剤として炭酸塩及び水酸化ナトリウムの間で比較を行った。この目的のために、結晶性グルコース、並びにカットの形態又は純粋形態の様々な脂肪アルコール:C16/18セテアリルカット、C20/22アラキジル/ベヘニルカット、1-テトラデカノール(C14アルコール)及び1-ドデカノール(C12アルコール)から生じるグリコシル化反応を行った。
【0043】
1.本発明による実施例
実施例1.1 本発明による(16/18アルコールのカット、及び事前中和剤としてのNa2CO3、及び中和剤)
ステップ1:グリコシル化反応:
967.4gのセテアリルアルコール(C16/18)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを85℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で50Torr未満の圧力に置く。脂肪アルコールとグルコースのモル比率が6/1であるようにある量の粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、0.9gのH3PO2の50%水溶液、次いで、1.1gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を5時間45分の期間継続させる。
【0044】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体をそれに続いて大気圧にて80℃に冷却し、次いで、2.21gのNa2CO3の25%水溶液を導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて5時間オーブン中に入れる。生成物(上部相)をそれに続いて濾紙(概ね10μm)上で濾過する。水中の5重量%分散物は、4.7のpHを有し、生成物は、0.6VCSの色を有する。4.61gのNa2CO3の25%水溶液を導入することによって生成物をそれに続いて中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて24時間オーブン中に入れる。生成物(上部相)を回収し、参照する(組成物1)。
【0045】
分析:
- 組成物1の水中の5重量%分散物のpHは6.8であり、
- 組成物1の色の測定値は0.5VCSである。
【0046】
実施例1.2 (16/18アルコールのカット、及び予備中和剤としてのNaOH、及び本発明による中和剤としてのNa2CO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
機械的撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に1364.8gのセテアリルアルコール(C16/18)を投入する。このアルコールを85℃で溶融させ、撹拌し、窒素をスパージする。この媒体を50Torr未満の圧力の真空下に置く。179.2gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始するために、H3PO2の50%水溶液1.2g、次にH2SO4の98%水溶液1.6gを加え、温度を上昇させ、105℃で維持する。反応を5時間45分続ける。
【0047】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体を大気圧にて80℃に冷却し、次いで、3.4gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて5時間オーブン中に入れる。生成物(上部相)をそれに続いて濾紙(約10μm)上で濾過する。
【0048】
水中の5重量%分散物は、4.5のpHを有し、生成物は、1.0VCSの色を有する。生成物(880g)はそれに続いて、3.57gのNa2CO3の10%水溶液を導入することによって85℃にて反応器中で撹拌しながら中和させる。生成物を回収し、参照する(組成物2)。
【0049】
分析:
-組成物2の水中の5重量%分散物のpHは、7.2であり、
-組成物2の色測定は、0.9VCSである。
【0050】
実施例1.3 本発明による(16/18アルコールのカット、及び事前中和剤としてのNaOH、及び中和剤としてのNaHCO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
271.1gのセテアリルアルコール(C16/18)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを85℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で50Torr未満の圧力に置く。35.7gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、0.2gのH3PO2の50%水溶液、次いで、0.3gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を5時間45分継続させる。
【0051】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体を大気圧にて85℃に冷却し、次いで、0.4gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて24時間オーブン中に入れる。水中の5重量%分散物は、3.5のpHを有し、生成物は、0.5VCSの色を有する。生成物(173.8g)はそれに続いて、1.9gのNaHCO3の8%水溶液を導入することによって反応器中で85℃にて撹拌しながら中和させる。生成物を回収し、参照する(組成物3)。
【0052】
分析:
-組成物3の水中の5重量%分散物のpHは、6.3であり、
-組成物3の色測定は、0.4VCSである。
【0053】
実施例1.4 本発明による(20/22アルコールのカット、及び事前中和剤としてのNaOH、及び中和剤としてのNa2CO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
284.7gのベヘニル/アラキジルアルコール(C20/22)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを85℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で50Torr未満の圧力に置く。29.2gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、0.3gのH3PO2の50%水溶液、次いで、0.4gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を4時間30分継続させる。
【0054】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体を大気圧にて90℃に冷却し、次いで、0.89gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて24時間オーブン中に入れる。水中の5重量%分散物は、5.1のpHを有し、生成物は、0.3VCSの色を有する。
【0055】
175.4gの生成物(上部相)はそれに続いて、0.61gのNa2CO3の10%水溶液を導入することによって90℃にて反応器中で撹拌しながら中和させる。
【0056】
生成物を回収し、参照する(組成物4)。
【0057】
分析:
-組成物4の水中の5重量%分散物のpHは、6.8であり、
-組成物4の色測定は、0.5VCSである。
【0058】
実施例1.5 本発明による(20/22アルコールのカット、及び事前中和剤としてのNa2CO3、及び中和剤としてのNa2CO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
391.9gのベヘニル/アラキジルアルコール(C20/22)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを85℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で50Torr未満の圧力に置く。40.1gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、0.4gのH3PO2の50%水溶液、次いで、0.6gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を4時間30分継続させる。
【0059】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体を大気圧にて90℃に冷却し、次いで、2.1gのNa2CO3の25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために105℃にて24時間オーブン中に入れる。水中の5重量%分散物は、5.2のpHを有し、生成物は、0.7VCSの色を有する。生成物(266g)はそれに続いて、0.1gのNa2CO3の25%水溶液を導入することによって90℃にて反応器中で撹拌しながら中和させる。
【0060】
生成物を回収し、参照する(組成物5)。
【0061】
分析:
-組成物5の水中の5重量%分散物のpHは、6.5であり、
-組成物5の色測定は、0.7VCSである。
【0062】
実施例1.6 本発明による(1-テトラデカノール、及び事前中和剤としてのNa2CO3、及び中和剤としてのNa2CO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
428.7gのミリスチルC14アルコール(若しくは1-テトラデカノール)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを80℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で35Torrに置く。59.9gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、1.0gのH3PO2の50%水溶液、次いで、0.7gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を5時間継続させる。
【0063】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体を大気圧にて70℃に冷却し、次いで、1.6gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて24時間オーブン中に入れる。水中の5重量%分散物は、5.2のpHを有し、生成物は、0.6VCSの色を有する。生成物(337g)は、0.7gのNa2CO3の10%水溶液を導入することによって反応器中でそれに続いて70℃にて撹拌しながら中和させる。生成物を回収し、参照する(組成物6)。
【0064】
分析:
-組成物6の水中の5重量%分散物のpHは、7.3であり、
-組成物6の色測定は、0.7VCSである。
【0065】
実施例1.7 本発明による(1-ドデカノール、及び事前中和剤としてのNa2CO3、及び中和剤としてのNa2CO3)
ステップ1:グリコシル化反応:
機械的撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に414.5gのラウリルアルコール(C12)(又は1-ドデカノール)を投入する。このアルコールを85℃で溶融させ、撹拌し、窒素をスパージする。この媒体を30Torrの圧力の真空下に置く。57.9gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始するために、H3PO2の50%水溶液0.4g、次にH2SO4の98%水溶液0.7gを加え、温度を上昇させ、105℃で維持する。反応を5時間続ける。
【0066】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体をそれに続いて大気圧にて67℃に冷却し、次いで、3.55gのNa2CO3の10%水溶液を導入することによって事前中和させる。残留するグルコースを除去するために生成物をフィルタープレート(約100μm)上で濾過する。水中の5重量%分散物は、3.7のpHを有し、生成物は、1.1VCSの色を有する。生成物(197g)はそれに続いて、2.97gのNa2CO3の10%水溶液を撹拌しながら導入することによって反応器中で67℃にて中和させる。
【0067】
生成物を回収し、参照する(組成物7)。
【0068】
分析:
-組成物7の水中の5重量%分散物のpHは、6.1であり、
-組成物6の色測定は、1.5VCSである。
【0069】
2.比較例
実施例2.1:比較例(16/18アルコールのカット、及び予備中和剤としてのNaOH、及び中和剤としてのNaOH)
ステップ1:グリコシル化反応:
機械的撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に778.1gのセテアリルアルコール(C16/18)を投入する。このアルコールを85℃で溶融させ、撹拌し、窒素をスパージする。この媒体を50Torr未満の圧力の真空下に置く。102.2gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始するために、H3PO2の50%水溶液0.7g、次にH2SO4の98%水溶液0.9gを加え、温度を上昇させ、105℃で維持する。反応を5時間45分続ける。
【0070】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体をそれに続いて大気圧にて80℃に冷却し、次いで、1.86gのNaOHの25%水溶液を導入することによって事前中和させる。生成物をそれに続いてガラス製バイアル中に導入し、残留するグルコースを沈殿させるために80℃にて3時間オーブン中に入れる。水中の5重量%分散物は、3.3のpHを有し、生成物は、0.6VCSの色を有する。
【0071】
生成物はそれに続いて、0.28gのNaOHの25%水溶液を導入することによって80℃にて中和させる。生成物を回収し、参照する(組成物1’)。
【0072】
分析:
-組成物1’の水中の5重量%分散物のpHは、6.2であり、
-組成物1’の色測定は、3.8VCSである。
【0073】
実施例2.2:比較例(C12アルコール、及び事前中和剤としてのNaOH、及び中和剤としてのNaOH)
ステップ1:グリコシル化反応:
190.6gのラウリルアルコール(C12)(若しくは1-ドデカノール)を、機械式撹拌機及び真空蒸留装置を取り付けた反応器に投入する。アルコールを85℃にて溶融させ、撹拌し、窒素を散布する。媒体を真空下で30Torrにて置く。26.6gの粉末形態の無水グルコースを加える。媒体を窒素下で不活性化させる。エーテル化反応を開始させるために、0.2gのH3PO2の50%水溶液、次いで、0.3gのH2SO4の98%水溶液を加え、温度を上昇させ、105℃にて維持する。反応を5時間継続させる。
【0074】
ステップ2:反応媒体の中和:
媒体をそれに続いて大気圧にて75℃に冷却し、次いで、0.70gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって事前中和させる。水中の5重量%分散物は5.6のpHを有し、生成物は2.0VCSの色を有する。残留するグルコースを除去するために、生成物をK200フィルター(約3~6μm)上で濾過する。生成物(78g)はそれに続いて、0.08gのNaOHの25%水溶液を撹拌しながら導入することによって反応器中で80℃にて中和させる。
【0075】
生成物を回収し、参照する(組成物2’)。
【0076】
分析:
-組成物2’の水中の5重量%分散物のpHは、6.5であり、
-組成物2’の色測定は、4.5VCSである。
【0077】
3.結果の観察及び分析
下記の表1は、グルコース並びにC16/18アルコール(1-ヘキサデカノール及び1-オクタデカノールの混合物)の間の反応によって得られる組成物(C)を調製するための方法の結果をまとめている。研究する異なるパラメーターは、i)事前中和剤(Na2CO3又はNaOH)の性質、並びにii)最終中和剤(Na2CO3、NaHCO3又はNaOH)の性質である。
【0078】
「組成物1」、「組成物2」及び「組成物3」と参照する組成物は、本発明による方法を実行することによって得られ、「組成物1’」と参照する組成物は、従来技術の比較上の方法を実行することによって得られる。
【0079】
【0080】
NaOHの水溶液による事前中和のステップ及びNaOHの水溶液による中和のステップの存在が、得られた組成物の優れた呈色(組成物1’について3.8VCSまで)をもたらすことをこれらの試験を示す。比較すると、事前中和ステップがNaOH(組成物2)又はNa2CO3(組成物1)の溶液によって行われ、中和ステップがNa2CO3の水溶液によって行われるとき、得られた生成物の色は非常に低い(<1VCS)。
【0081】
組成物3の調製のために、本発明による方法は、NaOHの水溶液による事前中和のステップ(3.5~5.5のpHを達成する)、次いで、濾過の後のNaHCO3の溶液による中和のステップ(5.5~7.5のpHを達成する)を行うことによって実行した。
【0082】
望ましい組成物の低い呈色を保証するために、本発明による方法の中和ステップの間に炭酸水素ナトリウムを使用することが可能であることをこの試験は示す(得られる最終色は、組成物3について0.4VCSであるため)。
【0083】
表2は、上記の研究において関与するものと同じパラメーターを研究する、グルコース並びにC20/22アルコール(1-エイコサノール及び1-ドコサノールの混合物)の間、グルコース及びC14アルコール(若しくは1-テトラデカノール)の間、グルコース及びC12アルコール(若しくは1-ドデカノール)の間の反応によって得られる、組成物(C)を調製するための方法の結果をまとめている。
【0084】
【0085】
本発明による方法は、グルコースと12個、14個、20個及び22個の炭素原子を含有する脂肪アルコールとの反応によって調製される、低色組成物(C)(1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色)を得ることを可能とする。
【0086】
その一方、事前中和及び中和ステップの両方のために水酸化ナトリウムを使用した組成物2’を調製するための方法(グルコース及び1-ドデカノールの間の反応)を実行することによって、得られた分析結果は、最終混合物の明度が4.5VCSであり、すなわち、1.5VCSより有意により高いことを示す。
【0087】
最後に、本発明による方法は、少なくとも1種の還元糖と12~22個の炭素原子を含む脂肪アルコールとの反応からの脂肪アルコール及びアルキルポリグルコシドを含む、低色組成物(1.5VCSと等しいか若しくはこれ未満の色)を得ることを可能とする。
【国際調査報告】