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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】強化ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241003BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241003BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241003BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241003BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/08
C08L53/00
C08L23/26
B33Y70/00
B33Y80/00
B32B27/32 Z
D01F6/46 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521097
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2022078112
(87)【国際公開番号】W WO2023072570
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21205228.6
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】520025013
【氏名又は名称】アルベルト-ルートヴィヒ-ウニヴェルシタット フライブルク
【氏名又は名称原語表記】Albert-Ludwigs-Universitaet Freiburg
【住所又は居所原語表記】Friedrichstr. 39, 79098 Freiburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】スキルマイスター,カール ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,エリック ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ヘース,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ロールマン,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】コーラー,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミハン,シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ムエルハウプト,ロルフ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4F100AH02A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AL01
4F100AL01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA07
4F100CA07A
4F100CA08A
4F100CA13A
4F100CA17A
4F100CA19A
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100JA06
4F100JA07
4F100JA07A
4F100JK02
4F100JK10
4F100JL01
4F100YY00A
4J002BB03X
4J002BB04X
4J002BB05Y
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB15W
4J002BB215
4J002BP034
4J002DJ046
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
4J002GT00
4L035AA05
4L035FF01
4L035HH01
4L035HH02
4L035LA02
(57)【要約】
【解決手段】 低密度で改良された機械的特性を有するポリオレフィン組成物(I)であって、(A)異相ポリマー組成物15~80重量%であって、(a)プロピレン系ポリマー50~80重量%と、(b)エチレンと少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマー20~50重量%と、を含む、異相ポリマー組成物15~80重量%と、(B)ポリエチレン組成物20~85重量%であって、(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70重量%を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%である、ポリエチレン組成物20~85重量%と、を含み、前記(A)および(B)の量は、(A)+(B)の全重量を基準にしている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン組成物(I)であって、
(A)異相ポリマー組成物15~80重量%であって、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%とを含み、
前記(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、異相ポリマー組成物15~80重量%と、
(B)ポリエチレン組成物20~85重量%であって、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70重量%を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%である、ポリエチレン組成物20~85重量%と、を含み、
前記(A)および(B)の量は、(A)+(B)の全重量を基準にしている、ポリオレフィン組成物(I)。
【請求項2】
異相ポリマー組成物(A)40~80重量%、好ましくは50~70重量%とポリエチレン組成物(B)20~60重量%、好ましくは30~50重量%とを含む請求項1に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項3】
前記成分(a)は異相ポリマー組成物であり、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー35~70重量%、好ましくは、40~65重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー15~40重量%、好ましくは20~35重量%と、
(c)エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィン、およびそれらの混合物とのプロピレンコポリマーであって、前記プロピレンコポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(c)の重量基準で50%重量%以下、好ましくは15~50重量%含む、少なくとも1種のプロピレンコポリマー5~30重量%、好ましくは7~20重量%と、を含み、
前記(a)、(b)、および(c)の量は、(a)+(b)+(c)の全重量を基準にしている、請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項4】
前記異相ポリマー組成物(A)に含まれる少なくとも1種α-オレフィンは、ブテン-1、ヘキセン-1,4-メチル-1-ペンテン、オクテン-1およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはブテン-1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項5】
前記ポリエチレン組成物(B)は、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%、好ましくは60~75重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%、好ましくは10~20重量%と、
(iii)成分(i)および成分(ii)と異なるポリエチレン成分100重量%以下と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の(i)+(ii)を含み、成分(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量100%を基準にしている、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項6】
前記ポリエチレン組成物(B)に含まれるポリエチレン成分は前記エチレンホモポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項7】
前記ポリエチレン組成物(B)は、Mw/Mn(B)の値が300以上であり、好ましくは300~1500の範囲であり、前記ポリエチレン成分(I)および(ii)は、5以下、好ましくは1.2~5、より好ましくは1.5~4.5からなる群から独立して選択されるMw/Mnを有し、前記Mwは重量平均分子量であり、前記MnはGPC測定による数平均分子量である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項8】
前記ポリエチレン組成物(B)は、ISO1133-2:2011に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(B)が10g/10min、好ましくは0.00001~10g/10minの範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項9】
成分(C)40重量%以下、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~20%を含み、前記成分(C)は、
(C1)強化剤と、
(C2)ポリスチレンを(d1)の重量基準で30重量%以下、好ましくは10~30重量%含む、飽和もしくは不飽和のスチレンまたはα-メチルスチレンブロックコポリマーと、
(C3)前記相溶化剤(D)は、無水マレイン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のマレイン酸ジアルキル、C1~C10の直鎖もしくは分岐のフマル酸ジアルキル、無水イタコン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のイタコン酸、ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物で官能化されたポリオレフィンと、
(C4)顔料、染料、伸展油、難燃剤、紫外線防止剤、紫外線安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、ワックスからなる群から選択される添加剤と、
(C5)それらの組み合わせと、を含み、
前記成分(C)の量は、(A)+(B)+(C)の全重量を基準にしている、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、50s-1以上、好ましくは150s-1以上の剪断速度を与えるステップを含む成形品の製造プロセス。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップを射出成形法または押出法により行う、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップは射出成形により行われ、前記剪断速度は50~3000s-1、好ましくは200~2000s-1である、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、50s-1以上の剪断速度を与えるステップを押出に基づく3D印刷によって行う行われ、前記剪断速度は50~1000s-1、好ましくは100~600s-1であり、あるいは、好ましくは、歪速度は3~50s-1、好ましくは3~20s-1の範囲である、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載のプロセスにより得られた物品。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)を含む押出積層造形用フィラメント。
【請求項16】
ポリエチレン組成物(B)の使用であって、前記ポリエチレン組成物(B)は、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70%の重量を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%であり、
前記異相ポリマー組成物(A)のための強化マスターバッチとして、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%と、を含み、
前記成分(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィン組成物、およびそれから得られる射出成形品または3Dプリント品に関する。
【背景技術】
【0002】
他のエンジニアリング材料と競合するために、ポリオレフィンはガラス繊維や鉱物などの無機充填材で強化されることが多い。
【0003】
充填ポリオレフィンは、例えば、高強度・高剛性などいくつかの有利な特性を有し、自動車分野で内外装部品の射出成形に使われるなど、多くの産業分野で広く使用されている。
【0004】
無機充填材の存在はポリオレフィンの機械的特性を向上させる一方で、充填材の環境持続性に悪影響を及ぼす。
【0005】
メカニカルリサイクルされたガラス繊維充填ポリオレフィンの機械的特性は、リサイクルの各ステップで繊維が破損して細断されるため、時間の経過とともに劣化する。そのため、無機充填プラスチック材料のライフサイクルは、未充填材料のライフサイクルよりも短く、すぐに使い捨て廃棄物になる。
【0006】
ケミカルリサイクルの場合、無機充填材をポリオレフィンマトリックスから分離する必要があるため、プロセスが複雑になり、持続可能性が低下する。
【0007】
さらに、通常の無機フィラーが充填されたプラスチックは高密度である。プラスチック材料が重いほど、材料を輸送する際の車両の質量が大きくなる。これにより、内燃機関車の燃料消費量が増加したり、電気自動車の航続距離が減少したりして、充填材の物流の環境への影響が増大する。
【0008】
無機強化剤を含まない強化ポリオレフィンを提供するために、自己強化ポリオレフィン溶液が開発されてきた。
【0009】
Timo Heesらは、Polymer,Volume 151,p.47-55に、従来のHDPEにUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)とHDPEワックスのツインピーク反応器ブレンドを配合した全PE自己強化複合材料を公開した。得られた三峰性自己強化ポリエチレンは機械的性能を向上させる。
【0010】
しかし、UHMWPEでポリプロピレンを強化しようとする過去の試みは、UHMWPEとポリプロピレンとの混和性が悪いために結果が悪かったか、非従来型でエネルギーを消費するプロセスを使用することができた。
【0011】
X.Wangら、高分子科学学報、第1巻、100,3495-3509(2006)は、ポリオレフィンを共回転四軸押出機内で溶融ブレンドしたとき、最終的にはEPDMの存在下、UHMWPEでプロピレンホモポリマーを強化する際に満足のいく結果を達成した。従来の2軸押出機では、結果が悪かった。
【0012】
T.Heesら、ACS応用高分子材料,2021,3,3455-3464は、低量のUHMWPEとPEワックスの反応器混合物でiPPを増強することで劣悪な結果を得た。
【0013】
米国特許出願第2014/0066574A1号は、60~85重量%の高流動性熱可塑性樹脂を15~40重量%のUHMWPE繊維に引抜成形することにより強化された射出成形品を得ることを教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この場合、同じ非強化ポリオレフィンと比較して改善された機械的特性、特に同時に増加した引張強度および耐衝撃性、低密度および無機充填ポリオレフィンと比較して改善されたリサイクル性を有する強化ポリオレフィンの必要性が依然として存在する。
【0015】
したがって、本開示は、
(A)異相ポリマー組成物15~80重量%であって、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%とを含み、
前記(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしており、
前記(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、異相ポリマー組成物15~80重量%と、
(B)ポリエチレン組成物20~85重量%であって、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70重量%を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%である、ポリエチレン組成物20~85重量%と、を含み、
前記(A)および(B)の量は、(A)+(B)の全重量を基準にしている、ポリオレフィン組成物(I)を提供する。
【0016】
溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップを含む成形品の製造プロセスも提供される。
【0017】
別の態様では、本開示は、ポリエチレン組成物(B)の使用であって、前記ポリエチレン組成物(B)は、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70%の重量を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%であり、
前記異相ポリマー組成物(A)のための強化マスターバッチとして、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%と、を含み、
前記成分(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、使用を提供する。
【0018】
本開示のポリオレフィン組成物(I)は、改良された機械的特性、特に、高い引張弾性率および引張強度と、高い耐衝撃性とを有する。
【0019】
また、ポリオレフィン組成物(I)は、従来の無機充填材(例えばガラス繊維。)で強化された多相ポリオレフィン組成物(A)と比較して、密度が著しく低減されている。
【0020】
ポリオレフィン組成物(I)は、2軸押出機のような従来の押出機を用いて、従来のプロセスおよび装置設定をほとんど変更することなく、または変更することなく、容易に成形品に変換することができる。
【0021】
また、ポリオレフィン組成物(I)の機械的特性が多数回の加工後に著しく低下することがなく、ポリオレフィン組成物(I)の多数回のリサイクルが可能となり、従来の無機充填材を含むポリオレフィン組成物に比べて環境持続性が向上する。
【0022】
複数の実施形態が開示されているが、さらに他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。明らかになるように、本明細書に開示される特定の実施形態は、すべて本明細書に記載される特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な自明な態様で修正が可能である。したがって、以下の詳細な説明は、本質的に例示的なものであって、限定的なものではないと見なされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の文脈では、
-別段の記載がない限り、割合は重量で表される。別段の記載がない限り、組成物の全重量の合計が100%であること
-ポリマーについては、「ブレンド」とは、反応器によって製造されるブレンド、すなわち、重合プロセスから直接得られる少なくとも2つのポリマー成分のブレンド、機械的ブレンド、すなわち、少なくとも2つの異なるポリマー成分を溶融混合することによって得られるブレンド、および両者の組み合わせをいう。
【0024】
-「含む」という用語がポリマー、またはポリマー組成物、混合物もしくはブレンドに言及する場合、それは「含む、または本質的にからなる」ことを意味すると解釈されるべきである。
【0025】
-「本質的にからなる」という用語は、ポリマーまたは組成物、混合物もしくはブレンドの本質的な特性がそれらの存在によって実質的に影響を受けない限り、必須の成分に加えて、他の成分もポリマーまたはポリマー組成物、混合物もしくはブレンド中に存在し得ることを意味する。通常の量で存在する場合、ポリマーまたはポリオレフィン組成物、混合物もしくはブレンドの特性に実質的な影響を与えない成分の例は、触媒残留物、帯電防止剤、溶融安定化剤、光安定化剤、酸化防止剤および酸防止剤である。
【0026】
好ましい一実施形態では、ポリオレフィン組成物(I)は、40~80重量%、好ましくは50~70重量%の異相ポリマー組成物(A)と、20~60重量%、好ましくは30~50重量%のポリエチレン組成物(B)とを含む。
【0027】
ポリオレフィン組成物は、好ましくは、以下の特性の少なくとも1つを有する。
【0028】
-ISO 1133-2:2011法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(tot)は0.001~5.0g/10minであること、および/または
-ASTM規格D792-08に準拠して測定された密度は1.00g/cm以下であること。一実施形態では、密度は0.90g/cm以上である。および/または
-ISO527-1:2012法に準拠して射出成形試験片について測定された引張弾性率は、異相ポリマー組成物(A)の引張弾性率より少なくとも100%、好ましくは少なくとも150%、より好ましくは少なくとも200%高い。一実施形態では、ポリオレフィン組成物(I)の引張弾性率は、異相ポリマー組成物(A)の引張弾性率より500%以下高い。
【0029】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物(I)は、ガラス繊維または鉱物性充填材のような無機強化剤、および/またはポリオレフィン繊維または羊毛のような繊維強化剤を含まない。
【0030】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物(I)は、強化剤として成分(B)のみを含む。
【0031】
以下、ポリオレフィン組成物(I)の各成分をより詳細に定義する。前記成分は、ポリオレフィン組成物(I)中に任意選択で組み合わせて含有されていてもよい。
【0032】
異相ポリマー組成物(A)の成分(a)および(b)に含まれていてもよいα-オレフィンは、独立にブテン-1、ヘキセン-1,4-メチル-1-ペンテン、オクテン-1およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、好ましくは、α-オレフィンはブテン-1である。
【0033】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)の成分(a)は、プロピレンポリマーの混合物である。
【0034】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)の成分(a)は、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンホモポリマーの混合物である。
【0035】
好ましい実施形態では、ポリオレフィン組成物(A)の成分(a)は、以下の特性の少なくとも1つ、より好ましくはすべてを有する。
【0036】
-25℃の温度でキシレン可溶画分XS(a)は、(a)の重量基準で5重量%以下、好ましくは3重量%以下であること。一実施形態では、各上限について、下限は、(a)の重量基準で、0.1重量%であること。および/または
-ISO1133-2:2011法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(a)は、が50g/10min以上であり、好ましくは50g/10min~300g/10minであること。
【0037】
一実施形態では、成分(a)は、上記の全ての特性を有するプロピレンホモポリマーまたはプロピレンホモポリマーの混合物である。
【0038】
成分(b)は、エチレンコポリマーまたはエチレンコポリマーの混合物である。
【0039】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)の成分(b)は、エチレンと1-ブテンとのコポリマーまたはコポリマーの混合物である。
【0040】
好ましい実施形態では、異相ポリマー組成物(A)の成分(b)は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを有する。
【0041】
-GPC測定による重量平均分子量Mwは、50,000g/mol以上、好ましくは50,000g/mol以上1,000,000g/mol未満の範囲であること。および/または
【0042】
-25℃の温度でキシレン可溶画分XS(b)は、(b)の重量基準で40重量%以上、好ましくは65重量%以上であること。一実施形態では、25℃の温度でキシレン可溶画分XS(b)の上限は、各下限について100重量%に等しい。
【0043】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)は、以下を含むことが好ましい。
【0044】
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー35~70重量%、好ましくは、40~65重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー15~40重量%、好ましくは20~35重量%と、
(c)エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィン、およびそれらの混合物とのプロピレンコポリマーであって、前記プロピレンコポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(c)の重量基準で50%重量%以下、好ましくは15~50重量%含む、少なくとも1種のプロピレンコポリマー5~30重量%、好ましくは7~20重量%と、を含み、
前記(a)、(b)、および(c)の量は、(a)+(b)+(c)の全重量を基準にしている。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのプロピレンコポリマー(c)は、プロピレン-エチレンコポリマーからなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、ポリオレフィン組成物は、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、滑り剤、酸防止剤、溶融安定化剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の更なる添加剤を3.0重量%以下含んでいてもよく、更なる添加剤の量は、更なる添加剤を含んでいるポリオレフィン組成物の全重量を基準にしている。
【0047】
本開示の異相ポリマー組成物(A)は、ISO1133-2:2011法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(A)が8.0g/10min以上であることが好ましい。一実施形態では、ISO1133-2:2011法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたMFR(A)は150g/10min以下である。
【0048】
異相ポリマー組成物(A)は、反応器ブレンドまたは溶融ブレンドまたはそれらの組み合わせである。
【0049】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)は、反応器ブレンド多相ポリオレフィン組成物(A1)であり、反応器ブレンド多相ポリオレフィン組成物(A1)は、
(a)プロピレンホモポリマー35~70重量%、好ましくは40~65重量%と、
(b)10~40重量%、好ましくは20~35重量%の1-ブテン由来の単位を(b)の重量基準で含むエチレンと1-ブテンとのコポリマー15~40重量%、好ましくは20~35重量%と、
(c)エチレン由来の単位を(c)の重量基準で50重量%、好ましくは15~50重量%含む、エチレンとのプロピレンコポリマー5~30重量%、好ましくは7~25重量%と、
(d)任意選択で、3.0重量%以下、好ましくは0.01重量%~3.0重量%の、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スリット剤、抗酸剤、溶融安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる添加剤と、を含み、
前記(a)、(b)、(c)、および(d)の量は、(a)+(b)+(c)+(d)の全重量100%を基準にしている。
【0050】
異相ポリオレフィン組成物(A1)は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを有する。
【0051】
-25℃の温度でキシレン可溶画分XS(A1)は、(A1)の重量基準で30重量%~50重量%であること。および/または
-25℃でキシレン可溶画分XSIV(A1)の固有粘度は1.50~3.00dl/g、好ましくは2.00~2.50dl/gであること。および/または
-ISO1133-2:2011法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(A1)は、5~20g/10min、好ましくは8~15g/10minであること。
【0052】
異相ポリマー組成物(A)は、成分(a)、(b)、および場合により(c)および(d)を溶融ブレンドすることによって、または関連モノマーを少なくとも2つの重合段階で重合させることによって製造され、第2、および任意の後続の各重合段階は、製造されたポリマーおよび直前の重合段階で使用された触媒の存在下で行われ、それによって、それにより、成分(a)、(b)および任意選択で(c)の反応器ブレンドを得、そして任意に、こうして得られた反応器ブレンドを成分(d)と溶融ブレンドする。
【0053】
一実施形態では、異相ポリマー組成物(A)は、成分(a)、(b)、および任意選択で(c)の反応器混合物である。
【0054】
モノマーは、メタロセン化合物、高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒系、およびそれらの組み合わせから選択される触媒の存在下、好ましくは以下を含む高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で重合される。
(1)少なくともTi-ハロゲン結合を有するTi化合物がその上に存在するハロゲン化マグネシウム担体と、立体調節内部供与体とを含む固体触媒成分、
(2)任意選択であるが好ましくはAl含有共触媒、および
(3)任意選択であるが好ましくは更なる電子供与性化合物(外部供与体)。
【0055】
固体触媒成分(1)は、固体触媒成分(1)の総重量に対して0.5~10重量%のTiが存在する量のTiClを含むことが好ましい。
【0056】
固体触媒成分(1)は、一座または二座の有機ルイス塩基から選択され、好ましくはエステル、ケトン、アミン、アミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、ニトリル、アルコキシシランおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの立体制御内部電子供与体化合物を含む。
【0057】
好ましい供与体は、欧州特許第45977A2号および欧州特許第395083A2号に記載されているようなフタル酸のエステル、特にフタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ベンジルブチル、およびそれらの組み合わせである。
【0058】
脂肪酸のエステルは、国際公開第98/056830号、国際公開第98/056833号、国際公開第98/056834号に記載されているもの等のマロン酸のエステル、国際公開第00/55215号に開示されているもの等のグルタル酸のエステル、および国際公開第00/63261号に開示されているもの等のコハク酸のエステルから選択され得る。
【0059】
特定の種類のジエステルは、国際公開第2010/078494号および米国特許第7,388,061号に記載されているもの等の脂肪族または芳香族ジオールのエステル化に由来するものである。
【0060】
いくつかの実施形態では、内部供与体は、欧州特許第361493号、欧州特許第728769号および国際公開第02/100904号に記載されているもの等の1,3-ジエーテルから選択される。
【0061】
内部供与体の特定の混合物、特に国際公開第07/57160号および国際公開第2011/061134号に開示されている脂肪族または芳香族のモノまたはジカルボン酸エステルおよび1,3-ジエーテルの混合物を内部供与体として使用することができる。
【0062】
好ましいハロゲン化マグネシウム担体は二ハロゲン化マグネシウムである。
【0063】
固体触媒成分(1)上に固定された内部供与体の量は、ジハロゲン化マグネシウムに対して5~20モル%である。
【0064】
固体触媒成分(1)の好ましい製造方法は、欧州特許第395083A2号に記載されている。
【0065】
一般的な方法による触媒成分の製造は、例えば米国特許第4,399,054号、米国特許第4,469,648号、国際公開第98/44009A1、および欧州特許第395083A2号に記載されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、触媒系は、Al-トリアルキルから選択される、好ましくはAl-トリエチル、Al-トリイソブチルおよびAl-トリ-n-ブチルからなる群から選択されるAl含有共触媒(2)を含む。触媒系におけるAl/Ti重量比は、1~1000、好ましくは20~800である。
【0067】
実施形態では、触媒系は、ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環式化合物、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、およびケトンから選択されるさらなる電子供与性化合物(3)(外部電子供与体)を含む。
【0068】
好ましいケイ素化合物は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(C供与体)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)、およびそれらの混合物の中から選択される。
【0069】
単一成分(a)、(b)および任意選択で(c)を得る重合、または異相ポリマー組成物(A)を得る逐次重合プロセスは、液相または気相のいずれかで連続またはバッチで実施することができる。
【0070】
液相重合は、スラリー、溶液、またはバルク(液体モノマー)のいずれかで行うことができる。
【0071】
相重合は、欧州特許第1012195号に示されているように、流動床反応器または撹拌固定床反応器、あるいはマルチゾーン循環反応器で行うことができる。
【0072】
反応温度は40℃~90℃の範囲が好ましく、重合圧力は液相でのプロセスでは3.3~4.3MPa、気相でのプロセスでは0.5~3.0MPaである。
【0073】
異相ポリマー組成物(A)を製造するのに適した重合プロセスは、国際特許出願第03/051984号および国際特許出願第03/076511号に記載されており、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
組成物(B)は、UHMWPE画分(i)およびPE-ワックス(ii)を含む多モードポリエチレン組成物である。
【0075】
好ましい実施形態では、ポリエチレン組成物(B)は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の(i)+(ii)を含み、ここで、(i)および(ii)の量は、ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、全重量は100%である。
【0076】
好ましくは、上記ポリエチレン組成物(B)は、ISO1133-2:2011に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(B)は10g/10minまで、好ましくは0.00001~10g/10minである。
【0077】
ポリエチレン組成物(B)は、好ましくは、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1000g/mol以上であるポリエチレン成分が25~85重量%、好ましくは60~75重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%、好ましくは10~20重量%と、
(iii)成分(i)および成分(ii)と異なるポリエチレン成分の100重量%(100重量%を含む)と、を含み、
ポリエチレン組成物(B)は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の(i)+(ii)を含み、(i)および(ii)の量は、ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、全重量は、100%である。
【0078】
好ましくは、ポリエチレン組成物(B)は、GPCにより測定したポリエチレン組成物(B)の重量をMw、数平均分子量をMnとしたとき、Mw/Mn(B)の値が300以上であり、好ましくは300~1500の範囲である。
【0079】
ポリエチレン成分(i)~(iii)は、エチレンホモポリマー、CH=CHR(ただし、Rは直鎖または分枝鎖のC2~C8アルキルである)の少なくとも1つのα-オレフィンを有するエチレンコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から独立して選択される。
【0080】
α-オアルファ-オレフィンは、好ましくは、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-1-ペンテン、オクテン-1、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
好ましい実施形態では、ポリエチレン成分(i)~(iii)はエチレンホモポリマーである。
【0082】
ASTMD792-08法により測定したポリエチレン成分(i)および(ii)の密度は、0.900~0.965g/cmであることが好ましく、0.930~0.960g/cmであることがより好ましい。
【0083】
好ましくは、ポリエチレン成分(i)は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを有する。
【0084】
-分子量分布MWD(i)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される1000g/mol~3000g/mol、好ましくは1500g/mol~3000g/molの範囲に含まれるGPCピーク(1)を有すること。および/または
【0085】
-Mw/Mn(i)の値は5、好ましくは1.2~5、より好ましくは1.5~4.5であり、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量であること。
【0086】
ポリエチレン成分(ii)は、好ましくは、以下の特性の少なくとも1つ、より好ましくはすべてを有する。
【0087】
-MWD(ii)は、500~1500g/molの範囲に含まれるGPCピーク(2)を有し、ここで、MWD(ii)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されること。および/または
【0088】
-Mw/Mn(ii)の値は、5以下、好ましくは1.2~5、より好ましくは1.5~4.5であり、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量であること。
【0089】
さらに好ましくは、前記ポリエチレン組成物(B)は、MWDが10000g/mol~3000g/molの範囲、好ましくは15,000g/mol~3000g/molの範囲に含まれるGPCピーク(1)と、500~1500g/molの範囲に含まれるGPCピーク(2)とを示すマルチモーダルポリエチレン組成物である。
【0090】
ポリエチレン成分(i)~(iii)は、UHMWPE成分(i)について国際特許出願第01/021668号および国際特許出願第2011/089017号に報告され、本成分(ii)について欧州特許第1188762号に報告された低Mw値ポリエチレンのような単位触媒を用いた重合プロセスにより得られることが好ましい。
【0091】
ポリエチレン成分(iii)は、ポリエチレン成分(i)および/またはポリエチレン成分(ii)を製造する重合プロセスで得られることが好ましい。
【0092】
ポリエチレン成分(i)は、クロムのシクロペンタジエニル錯体からなる重合触媒を用いて当該単量体を重合することにより製造されることが好ましく、η5シクロペンタジエニル部分、特に[η-3,4,5-トリメチル-1-(8-キノリニル)-2トリメチルシリル-シクロペンタジエニル-二塩化クロム(CrQCp触媒成分)を含むことが好ましい。
【0093】
ポリエチレン成分(ii)は、好ましくは、クロムのビス(イミノ)ピリジン錯体、好ましくは2,6-ビス-[1-(2,6-ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム(III)三塩化物(CrBIP触媒成分)を含む重合触媒を用いて関連モノマーを重合させることによって製造される。
【0094】
触媒成分は、固体成分に担持されていることが好ましい。好ましくは、有機固体または無機固体のいずれであってもよく、微細に分離された担体を用いる。シリカゲル、塩化マグネシウム、アルミナ、メソポーラス材料、アルミノシリケート、ハイドロタルサイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機ポリマー、またはエチレンとアクリル酸エステル、アクロレイン、酢酸ビニルなどの極性官能基を有するポリマーが例示される。担体材料として、比表面積が10~1000m/g、細孔容積が0.1~5ml/g、平均粒径が1~500mであるものを用いることが好ましい。
【0095】
担体触媒の製造は、物理的吸着または化学反応、すなわち担体表面の反応基への成分の共有結合によって行われる。
【0096】
触媒成分は、好ましくは、適当な溶媒中で担体と接触させて、可溶性反応生成物、付加物または混合物を得る。
【0097】
好適かつ好ましい担体材料、それらの製造方法、および担持触媒を製造するためのそれらの使用が国際特許出願第2005/103096号に記載されている。
【0098】
触媒成分、特にCrQCpおよびCrBIP成分は、高い重合生産性を達成するために、好ましくはアルミノキサンおよび非アルミノキサン活性剤からなる群から選択される活性剤と接触することが一般的に必要である。
【0099】
特に有用なアルモキサンは、一般式(1)の開鎖アルモキサン化合物、
【化1】

または下記一般式(2)で表される環状アルミノキサン化合物である。
【化2】
【0100】
ただし、ここで、R-Rは独立してC1~C6アルキル基から選択され、好ましくは、R-Rは、メチル、エチル、n-ブチルおよびイソブチルからなる群から独立して選択され、Iは、1~40、好ましくは4~25の整数である。
【0101】
メチルアルミノキサン(MAO)が好ましい。
【0102】
適切な非アルモキサン活性化剤としては、アルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、ホウ素またはアルミニウムのアニオン性化合物、トリアルキルホウ素およびトリアリールホウ素化合物などが挙げられる。例としては、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルカルベニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミン酸リチウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素およびトリス(ペンタブロモフェニル)ホウ素が挙げられる。
【0103】
活性剤の使用量は、一般に0.01~10,000の範囲であり、好ましくは、単位触媒1モル当たり1~5,000モルである。
【0104】
これらは、それぞれ重合領域に供給され、単位触媒の製造中に前記担体に支持され、および/または単位触媒と予備接触され得る。
【0105】
好ましい実施形態では、ポリエチレン成分(i)~(iii)は、2つの単位触媒成分(特にCrQCpとCrBIP)を同一担体上に担持することにより、単一の重合ステップで製造され、これにより、触媒中心が相対的に近い空間的近接を確保し、各触媒中心上に形成されたポリエチレン成分の緊密な混合をもたらす二位触媒成分が得られる。
【0106】
したがって、好ましい実施形態では、ポリエチレン組成物(B)は、ポリエチレン成分(i)~(iii)の反応器ブレンドである。
【0107】
先に報告されたポリエチレン成分(i)~(iii)の相対量は、2つの単位触媒成分、特にCrQCpとCrBIPの相対量を適切に設定することにより、ポリエチレン組成物(B)中の成分(i)~(iii)の量を決定することができる。
【0108】
CrBIP/CrQCpモル比は0.1~20、より好ましくは0.3~10、特に0.5~8の範囲であることが好ましい。
【0109】
好ましくない代替例では、ポリエチレン成分(i)~(iii)は、それぞれの単位触媒の存在下で関連するモノマーを重合することにより別個に製造され、ポリエチレン組成物(B)は、個々の成分を溶融混合することにより製造される。
【0110】
ポリエチレン成分(i)~(iii)は、気相重合、特に気相流動床反応器、溶液重合または懸濁重合、特にループ反応器および撹拌槽反応器で製造される。気相重合は、循環ガスの一部が露点以下に冷却され、二相混合物として反応器に再循環される凝縮モードまたは超凝縮モードで実行できる。
【0111】
ポリエチレン成分(i)~(iii)は、2つの相互接続された重合ゾーンを有するマルチゾーン循環反応器(MZCR)と呼ばれる気相反応器で製造することもできる。ポリマー粒子は、高速流動化または輸送条件下で、「ライザー」と呼ばれる第1重合ゾーンを通って上向きに流れ、ライザーを出て、重力によって緻密な形で流れる「ダウンカマー」と呼ばれる第2重合ゾーンに入る。ポリマーの連続循環がライザーとダウンカマーとの間で確立される。一般に、関連するモノマーを含むガス混合物をライザーに供給することにより、ライザー内で急速流動化の条件が確立される。触媒系は、好ましくは、ライザーの任意の点で反応器に供給される。
【0112】
マルチゾーン循環反応器では、気体/液体ストリーム(バリアストリーム)をダウンカマーの上部に供給することにより、組成の異なる2つの重合ゾーンを得ることが可能である。気体/液体の流れは、ライザーからの気相の障壁となり、ダウンカマーの上部に上向きの純ガス流を確立することができる。確立されたガスの上向きの流れは、ライザー内に存在するガス混合物がダウンカマー内に入るのを防止する効果を有する。このような反応器は、例えば、国際特許出願第97/04015号に記載されている。
【0113】
異なるまたは同一の重合ゾーンは、必要に応じて、例えばHostalen(登録商標)プロセスのように、重合カスケードを形成するように直列に接続することもできる。2つ以上の異なるまたは同一の重合プロセスを使用する反応器を並列に配置することも可能である。また、水素のようなモル質量調整剤や帯電防止剤のような従来の添加剤を重合に用いることもできる。
【0114】
重合温度は一般に-20℃~115℃の範囲であり、圧力は一般に1~100バールの範囲である。
【0115】
懸濁重合の場合、懸濁媒体は、好ましくはイソブタンなどの不活性炭化水素、炭化水素の混合物、あるいはモノマー自体である。懸濁液の固形分は、一般に10~80%の範囲である。重合は、撹拌オートクレーブのようなバッチ式のものであってもよいし、管状反応器のような連続的なものであってもよいし、好ましくはループ反応器のようなものであってもよい。
【0116】
一実施形態では、ポリエチレン組成物(B)は、関連する技術分野のための少なくとも1つの追加の添加剤(iv)を含み、好ましくは、加工安定剤、光安定剤、熱安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、染料およびそれらの混合物から選択される。添加剤を含有するポリエチレン組成物(B)の全重量(全重量100%)に対して、添加剤が最大6重量%(6重量%を含む)、好ましくは0.1~1重量%の量でポリエチレン組成物(B)に含有される。
【0117】
1つの好ましい実施形態では、ポリエチレン組成物(B)は、ポリエチレン以外のポリマーを含まない。
【0118】
別の実施形態では、ポリエチレン組成物(B)は、ポリエチレン成分(i)~(iii)および任意選択で別の添加剤(iv)からなる。
【0119】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物(I)は、他の成分(C)を40重量%以下、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~20重量%含有していてもよく、他の成分(C)は、
(C1)強化剤と、
(C2)ポリスチレンを(d1)の重量基準で30重量%以下、好ましくは10~30重量%含む、飽和もしくは不飽和のスチレンまたはα-メチルスチレンブロックコポリマーと、
(C3)前記相溶化剤(D)は、無水マレイン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のマレイン酸ジアルキル、C1~C10の直鎖もしくは分岐のフマル酸ジアルキル、無水イタコン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のイタコン酸、ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物で官能化されたポリオレフィンと、
(C4)顔料、染料、伸展油、難燃剤、紫外線防止剤、紫外線安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、ワックスからなる群から選択される添加剤と、
(C5)それらの組み合わせと、から選択され、
前記成分(C)の量は、(A)+(B)+(C)の全重量を基準にしている。
【0120】
強化剤(C1)は、無機繊維(例えば、ガラス繊維)、鉱物性充填材(例えば、タルク)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される無機強化剤であることが好ましい。強化剤(C1)は、ガラス繊維であることが好ましい。
【0121】
飽和または不飽和のスチレンまたはα-メチルスチレンブロックコポリマー(C2)は、(C2)の重量に基づいて10重量%~30重量%のスチレンを含むことが好ましい。好ましくは、(C2)は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン-ポリ(イソプレン-ブタジエン)-ポリスチレン(SIBS)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、スチレンブロックコポリマー(C2)は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)である。
【0122】
ススチレンブロック共重合体(C2)は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを有することが好ましい。
【0123】
-ASTM D1238(230℃、2.16Kg)に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)は、5~80g/10分、好ましくは10~60g/10分、より好ましくは10~30g/10分の範囲であること、および/または
【0124】
-ASTM2240に準拠して測定されたショアA値(30s)は、70以下、好ましくは30~70、より好ましくは30~60の範囲であること。
【0125】
スチレンまたはアルファメチルスチレンブロックコポリマー(C2)は、関連するモノマーのイオン重合によって調製され、Kraton(登録商標)の商品名でKraton Polymersによって市販されている。
【0126】
官能化ポリオレフィン(C3)は、好ましくは、無水マレイン酸、C1~C10の直鎖または分枝鎖マレイン酸ジアルキル、C1~C10の直鎖または分枝鎖のフマル酸ジアルキル、無水イタコン酸からなる群から選択される化合物で官能化された、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびC1~C10の直鎖状または分枝鎖状のイタコン酸、ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびそれらの混合物から選択される。
【0127】
好ましい実施形態では、官能化ポリオレフィン(C3)は、無水マレイン酸でグラフトされたポリエチレンおよび/またはポリプロピレン(MAH-g-PPおよび/またはMAH-g-PE)である。
【0128】
変性ポリマーは、本技術分野において知られており、例えばグラフト化合物およびフリーラジカル開始剤の存在下でポリマーの反応性押出によって、溶液中、固体状態、または好ましくは溶融状態で実施される官能化プロセスによって製造することができる。無水マレイン酸によるポリプロピレンおよび/またはポリエチレンの官能化は、例えば、欧州特許第EP0572028A1号に記載されている。
【0129】
官能化ポリオレフィンの例は、ダウ・ケミカル・カンパニーによる市販製品Amplify(商標)TY、エクソンモービル・ケミカル・カンパニーによるExxelor(商標)、Byk(Altana Group)によるScona(登録商標)TPPP、Polyram GroupによるBondyram(登録商標)(およびChemturaによるPolybond(登録商標)、およびそれらの組み合わせである。
【0130】
ポリオレフィン組成物(I)は、成分(A)、(B)、および必要に応じて(C)を、180°~220℃の温度で成分を配合することなど、当該技術分野で公知の方法および装置、例えば、混合物を使用して緊密に混合することによって製造される。
【0131】
ポリオレフィン組成物(I)を適切な条件で成形することにより、異相ポリマー組成物(A)の引張性がポリエチレン組成物(B)の流動誘起増強作用により改善されることを見出した。
【0132】
したがって、本開示は、上記の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、50s-1以上、好ましくは150s-1以上の剪断速度を与えるステップを含む成形品の製造プロセスにも関する。
【0133】
一実施形態では、溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、3秒-1以上、好ましくは8秒-1以上の歪み速度を与える。
【0134】
製造プロセスは、好ましくは、
-上記のポリオレフィン組成物(I)を180℃以上、好ましくは180℃~220℃の範囲で溶融するステップと、
-溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上、好ましくは150s-1以上の剪断速度を与えるステップと、
-溶融ポリオレフィン組成物(I)を成形し、冷却するステップと、を含む。
【0135】
溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップは、射出成形または押出成形によるプロセスで行うことが好ましい。
【0136】
溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップを射出成形により行うことが好ましく、剪断速度は50~3000s-1、好ましくは200~2000s-1である。
【0137】
一実施形態では、射出成形プロセスにおいて、上記の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、3~200s-1、好ましくは8~120s-1の範囲の歪み速度を与える。
【0138】
射出成形プロセスは、ポリオレフィン組成物(I)を従来の2軸押出機、好ましくは従来の2軸同時回転押出機で溶融混合することによって有利に行われる。
【0139】
ポリオレフィン組成物(I)の各成分は、それぞれ射出成形機に供給されるか、好ましくは予混合され、より好ましくは溶融状態で密に予混合される。溶融状態での予混合は、ポリオレフィン組成物(I)の成分を、当該分野で使用されるタイプのミキサーで混合することにより行われることが好ましい。
【0140】
押出ベースのプロセスは、押出ベース3D印刷プロセスであることが好ましく、溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上の剪断速度を与えるステップを押出ベース3D印刷により行い、剪断速度は50~1,000s-1、好ましくは100~600s-1であることが好ましい。
【0141】
1つの好ましい実施形態では、押出ベース3D印刷プロセスは、溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、3~50s-1、好ましくは3~20s-1の範囲の歪み速度を与えることを含む。
【0142】
3D印刷プロセスは、好ましくは、熱溶解積層(FDM)とも呼ばれる溶融フィラメント製造(FFF)プロセスであり、市販されている押出ベースの3Dプリンタを使用して行われる。
【0143】
ポリオレフィン組成物(I)の各成分は、それぞれ3Dプリンタに供給されるか、好ましくは予混合され、より好ましくは溶融状態で密に予混合される。溶融状態での予混合は、ポリオレフィン組成物(I)の成分を、当該分野で使用されるタイプのミキサーで混合することにより行われることが好ましい。
【0144】
別の態様では、本開示は、押出ベースの追加製造とも呼ばれる押出ベースの3D印刷用フィラメントであって、上述したポリオレフィン組成物(I)を含むか、またはそれからなるフィラメントに関する。
【0145】
本開示の製造プロセスにより得られる成形体は、従来の無機充填材、例えばガラス繊維のみで強化された異相ポリマー組成物(A)に比べて密度が著しく低減され、優れた機械的特性を有する。
【0146】
別の態様では、本開示は、上記の異相ポリマー組成物(A)の強化マスターバッチとして上記のポリエチレン組成物(B)を使用することに関する。
【0147】
ポリオレフィン組成物(B)を使用して異相ポリマー組成物(A)を強化する方法は、
-異相ポリマー組成物(A)15~80重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~70重量%に、ポリエチレン組成物(B)20~85重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは30~50重量%を添加して、ポリオレフィン組成物(I)を得るステップであって、(A)+(B)の合計重量に対して(A)および(B)の量が多いステップと、
-好ましくは、ポリオレフィン組成物(I)を180℃以上の温度で溶融し、溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに50s-1以上、好ましくは150s-1以上の剪断速度を与えるステップと、
-溶融ポリオレフィン組成物(I)を成形し、冷却するステップと、を含む。
【0148】
前記方法において、ポリオレフィン組成物を冷却溶融するステップが、押出ベースのプロセスまたは射出成形によるポリオレフィン組成物の成形を含むことが好ましい。より好ましくは、押出ベースのプロセスは3D印刷である。
【0149】
本開示の主題を説明する特徴は、互いに密接に関連しているわけではない。したがって、1つのフィーチャーの特定の優先度が、同じまたは異なるコンポーネントの残りのフィーチャーの同じ優先度に必ずしも関係しない。本開示では、ポリオレフィン組成物(I)が得られる成分(A)および(B)の特徴の好ましい範囲は、好みのレベルに関係なく組み合わせることができ、成分(A)および(B)は、本開示で説明される任意の可能な追加コンポーネントおよびその特徴と組み合わせることができる。
【0150】
実施例
【0151】
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる形であっても本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0152】
特徴付け方法
【0153】
以下の方法は、明細書、特許請求の範囲、および実施例に示される特性を決定するために使用される。
メルトフローレート:ISO 1133-2:2011法に準拠して、ポリマーに応じて温度230℃または190℃、荷重2.16Kgで測定された。組成物のメルトフローレート(MFR(tot))は、次式により、成分のメルトフローレートと相関する。
【数1】

ここで、
w(i)は組成物中の成分iの重量分率であり、MFR(i)は成分iのメルトフローレートである。
【0154】
密度:ASTM D 792-08法に準拠して測定される。
【0155】
25℃でのキシレンへの溶解度:2.5gのポリマーサンプルおよび250mlのキシレンを、冷蔵装置およびマグネチックスターラーを備えたガラスフラスコに導入した。温度は30minで135℃まで上昇した。得られた清澄溶液を、還流下で保持し、さらに30min撹拌した。溶液は2段階で冷却された。第1段階では、空気中で撹拌しながら10~15minかけて、温度を100℃まで低下させた。第2段階では、25℃で、フラスコをサーモスタット制御された水槽に30minかけて移した。最初の20minは撹拌せずに温度を25℃に下げ、最後の10min撹拌しながら25℃に維持した。形成された固体を急速濾紙(例えば、ワットマン濾紙グレード4または541))上で濾過した。濾過した溶液(S1)100mlを、あらかじめ秤量したアルミニウム容器に注ぎ、窒素流下、加熱板上で140℃に加熱し、溶媒を蒸発除去した。次いで、容器を真空下、80℃のオーブン上で一定の重量に達するまで保持した。次いで、25℃でキシレンに可溶なポリマーの量を計算した。
【0156】
組成物のキシレン可溶画分(XS(tot))は、以下の式により成分のキシレン可溶画分と相関する。
【数2】

ここで、w(i)は、組成物中のi成分の重量分率であり、XS(i)は、i成分のキシレン可溶画分率である。
【0157】
C3、C2、およびC4を含むポリマー中のC2およびC4含有量:13C NMRスペクトルは、120℃、フーリエ変換モードで160.91MHzで動作する凍結プローブを備えたBruker AV-600分光計で取得された。Sδδ炭素のピーク(命名法は“Monomer Sequence Distribution in Ethylene-Propylene Rubber Measured by 13C NMR.3.Use of Reaction Probability Mode”C.J.Carman,R.A.Harrington and C.E.Wilkes,Macromolecules,1977,10,536に従う)を、29.9ppmにおける内部参照として使用した。
試料約30mgを120℃で1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2 0.5mlに溶解し、酸化防止剤としてIrganox 1010(AO1010)0.1mg/mlを添加した。各スペクトルを90°パルスで取得し、1H-13Cカップリングを除去するためにパルスとCPDの間に15秒の遅延が設けられている。9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して、512個のトランジェントが65Kデータポイントに保存された。トライアドの分布は次の方程式を使用して作成された(AO1010 に由来するピークとの重複の可能性が考慮される)。
【数3】

ここで、Σ=I19+I13+I11+I+I+I3+21+I6+10+0.5I17+0.25(I16+I15)であり、Iiは、以下の表に報告されている対応する炭素の面積であり、Xはプロピレンまたはブテン-1のいずれかである。
【表1】
エチレン、プロピレンおよびブテン-1のモル含有量は、次の式を使用して三元から計算された。
【数4】

モル含有量は、モノマーの分子量を使用して重量含有量に変換された。
【0158】
プロピレンとエチレンを含むポリマーのC2とC3:13C NMRスペクトルは、120℃、フーリエ変換モードで160.91MHzで動作する凍結プローブを備えたBruker AV-600分光計で取得された。Sδδ炭素のピーク(命名法は“Monomer Sequence Distribution in Ethylene-Propylene Rubber Measured by 13C NMR.3.Use of Reaction Probability Mode”C.J.Carman,R.A.Harrington and C.E.Wilkes,Macromolecules,1977,10,536に従う)を、29.9ppmにおける内部参照として使用した。
約30mgの試料を120℃で0.5mlの1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に溶解し、酸化防止剤として0.1mg/mlのIrganox 1010(AO1010)を添加した。各スペクトルを90°パルス、パルス間の15秒の遅延、および1H-13Cカップリングを除去するためのCPDで取得された。9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して、512個のトランジェントが32Kデータポイントに保存された。スペクトルの割り当て、トライアド分布の評価、および組成は、M.Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,1982,15,4,1150-1152に従って、次の式(AO1010に由来するピークとの重複の可能性が考慮される)を用いて、行われた。
【数5】

エチレンとプロピレンのモル含有量は、次の方程式を使用してトライアッドから計算された。
【数6】

モル含有量は、モノマーの分子量を使用して重量含有量に変換された。
【0159】
分子量特性:平均分子量Mw、Mn、分子量分布は、3本のPLGel Olexisカラムと3重検出系(差動屈折率検出器、差動粘度計210R(Viskotek)、低角度光散乱)を備えたPL-220高温ゲル浸透クロマトグラフ(HT-GPC Agilent)上でゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定した。クロマトグラフィーカラムは、分子量分布の狭い単分散ポリスチレン標準品(Achillon Technology社)12種類を使用し、580g/molから11,600000g/molの範囲で校正されていた。検量線は、ユニバーサル検量法(Grubisic Z., Rempp P and Benoit H., J. Polymer Sci., 5, 753 (1967)))を用いてポリエチレンに適合させた。ポリスチレンに使用される Mark-HouwingパラメータkPS=0.000121 dl/g、αPS=0.706、およびポリエチレンに使用されるkPE=0.000406 dl/g、αPE=0.725、135℃のTCBで有効である。それぞれNTGPC_Control_V6.02.03とNTGPC_V6.4.24(hs GmbH,Hauptstrasse 36,D-55437 Ober-Hilbersheim,Germany)を用いてデータ記録、校正と計算を行った。試料測定は、1,2,4-トリクロロベンゼン(0.2wt%2,6-ジ-tert-ブチル-(4-メチルフェノール、BHT)で安定化)中、流速1.0mL/min、注入量500μL、ポリマー濃度0.01%~0.05%w/w、160℃で行われた。
【0160】
試験片の射出成形:射出成形システムDSM Xplore 10ccを備えたDSM Xploreマイクロチャージャー5ccを用いて、220℃、0.8MPa、8秒保圧して、組成物を射出成形することにより、引張衝撃試験片を作製した。金型温度は60℃である。
【0161】
圧縮成形:200℃、0.8MPa、20minの保持時間で操作される圧縮成形システムCollin 200Pを用いて、110×80×2および4mmのプレートを得た。ISO 527-2:2012、タイプ5A形状の引張試験片を厚さ2mmのプレートから切り出した。厚さ4mmのプレートからISO 179-1/1EAの衝撃試験片を切り出した。
【0162】
破断時の引張特性:引張弾性率と引張強度はISO527-1:2012法に基づき、引張試験機ZWICK Z005、makroXtens引張計(ロードセル2.5kN)を用いて測定した。ISO527-2:20125a型幾何学形状の6つの試験片を50mm/minの引張速度で試験した。ソフトウェアTESTXPERT II V3.31を使用してデータを評価した。テスト属性の値として、6つの測定値の平均値が使用された。
【0163】
衝撃試験:衝撃試験機Zwick 5102.100/00振り子式衝撃試験機を用いて、ISO 179-1:2010法(23℃でのノッチ衝撃)により試験用試験片ISO 179-1/1eA上でシャルピー衝撃強度を測定した。各組成物について5つの試験片を試験した。切り欠き部の断面積を決定した後、全ての試験片に衝撃を与えた。衝撃試験の特性を、散逸エネルギーによって決定した。5回の測定の平均値を衝撃試験抵抗値とした。
剪断速度:押出し中にポリマー溶融物に加えられる剪断速度
【数7】

は、次の式で計算される。
【数8】

ここで、Rはダイまたはノズルの半径(単位:mm)を示し、
【数9】

は、ポリマーの体積流量(単位:mm/s)である。体積流量
【数10】

は、3Dプリンタ、ノズル直径、温度、印刷速度(つまり、押出速度)の特定の組み合わせに対して測定された。そのため、ポリマーフラックス(単位:g/s)を重量法で測定し、以下の式によりポリマー融液密度ρ(単位:g/mm)で割る。
【数11】

歪み率:押出時にポリマー融液に加えられる歪み率
【数12】

は、次の式で計算される。
【数13】

ここで、
【数14】

はポリマーの体積流量(単位:mm/s)、Lは金型またはノズルの収束領域の長さ(単位:mm)、Rは収束領域の出口における金型またはノズルの半径(単位:mm)、Rは収束領域の入口における金型またはノズルの半径(単位:mm)である。体積流量
【数15】

は、3Dプリンタ、ノズル径、温度、および印刷速度(つまり、押出速度)の特定の組み合わせについて測定された。そのため、ポリマーフラックス(単位:g/s)を重量法で測定し、以下の式によりポリマー融液密度ρ(単位:g/mm)で割る。
【数16】
【0164】
原材料:
【0165】
HECO-1-((a)+(b)+(c)の総重量に基づく)を含む異相ポリマー:
(a)キシレン可溶画分XS(a)が、(a)の重量基準で3重量%であり、MFR(a)が70g/10min(ISO 1133-2:2011,230℃/2.16Kg)であるプロピレンホモポリマー56.5重量%
(b)ブテン-1に由来する単位を(b)の重量基準で27.4重量%含む、エチレンとブテン-1とのコポリマー23.0重量%
(c)エチレンに由来する単位を(c)の重量基準で41.5重量%含むプロピレン-エチレンコポリマー20.5重量%。
【0166】
HECO-1は、国際特許出願第03/076511A1号の実施例1~3に記載された成分(a)、(b)および(c)の反応器混合物であり、以下の性質を有する。
-25℃温度でキシレン可溶画分XS(HECO-1)は35.2重量%であること、
-25℃でキシレン可溶画分XSIV(HECO-1)の固有粘度は2.26 dl/gであること。
-ISO 1133法に準拠して温度230℃、荷重2.16Kgで測定されたメルトフローレートMFR(HECO-1)は12.5グラム/10minであること。および
-(a)+(b)+(c)の重量に基づく全エチレン含有量は25.2重量%、全ブテン-1含有量は6.3重量%であること。
(a)、(b)および(c)の数は原子炉の分割に相当し、成分b)および成分c)中のエチレンの量および成分c中のブテン-1の量は、HECO-1で測定されたエチレンC2(tot)およびブテン-1 C4(tot)の合計量から以下の式を用いて算出される。
【数17】

ここで、w(b)およびw(c)はHECO-1中の成分(b)および(c)の重量分率であり、C2(b)およびC2(c)は成分(b)および(c)中のエチレン量であり、C4(b)は成分(b)中のブテン-1の量である。
【0167】
成分B:ポリエチレン組成物は、特許出願第2020/169423A1号において、組成物II-2について記載されたように製造される。
【0168】
2,6-ビス-[1-(2,6-ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンクロム(III)三塩化物(CrBIP)は、Esteruelas MA, et al.Organometallics 2003;22(3):395-406に従って合成された。[η-3,4,5-トリメチル-1-(8-キノリル)-2 トリメチルシリル-シクロペンタジエニル-二塩化クロム(CrQCp)は、Enders et al.Organometallics 2004; 23(16):3832-9, and Fernandez et al.Organometallics 2007; 26(18):4402-12に従って合成された。
混合触媒系の製造方法
細孔容積が1.5ml/g、比表面積が400m-1であるメソポーラスシリカ触媒担体(GraceのSylopol XPO2107)を、160℃で14時間乾燥させたSchlenkチューブ中で、トルエン20mLを添加し、高真空(10-3bar)で懸濁液を10min超音波処理した。計算された量のMAO(Al:Cr=300:1)を添加した後、混合物を30min撹拌し、5min超音波処理した。沈降後、MAO処理した触媒担体を乾燥トルエンで洗浄し、上澄みを除去および交換した。CrBIPをトルエン(0.2mg mL-1)に溶解し、トリメチルアルミニウム(TMA、10当量)で前処理し、シリンジで加えた。5min撹拌した後、トルエン中のCrQCp(0.2mg mL-1)も加え、混合物を再度5min撹拌した。CrBIP/CrQCpモル比は3.0であった。沈降後、活性化触媒をn-ヘプタン(20mL)に捕集し、反応器に移して重合を開始した。エチレン重合は、メカニカルスターラー、サーモスタット、およびソフトウェアインターフェースを備えた2.6L鋼製反応器(HITEC ZANG)中で実施した。そのため、反応器を90℃の高真空で2時間加熱し、n-ヘプタン(580ml)とトリイソブチルアルミニウム(TiBAl、3ml、n-ヘキサン中1M)を充填し、エチレン(5bar)で飽和させた。製造した触媒を反応器に移送した後、40℃、5バールのエチレン圧力、200rpmの撹拌速度で120min重合を行った。ポリマーをメタノール中でBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)で安定化し、ろ過し、60℃で減圧乾燥して一定重量とした。
【0169】
ポリエチレン組成物の性質を表1に示す。
表1
【表2】
【0170】
HECO-2(成分)-以下を含む異相ポリオレフィン組成物
(a)プロピレンホモポリマー60重量%、
(b)(b)の重量基準で68重量%のエチレンからなるプロピレン-エチレンコポリマー40重量%
【0171】
HECO-2は、国際特許出願第2005/014715号の実施例1-2に記載されているように得られる成分(a)および(b)の反応器混合物であり、以下の性質を有する。
-25℃温度でキシレン可溶画分XS(HECO-2)は31.2重量%であること
-25℃でキシレン可溶画分XSIV(HECO-2)の固有粘度は2.29dl/gであること、および
-ISO 1133法に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートMFR(HECO-1)は、11.3g/10minであること。
成分(b)中のエチレンC2(b)の量は、HECO-2で測定されたエチレンC2(tot)の総量から次式を用いて算出される。
【数18】

ここで、w(b)は成分(b)のHECO-2中の重量分率であり、C2(b)とC2(b)は成分(b)中のエチレン量である。
【0172】
Metocene MF650Y-LyondellBasellから提供された分子量分布が非常に狭く、MFR(ISO1133、230℃/2.16Kg)が1800g/10minであるプロピレンホモポリマー。
【0173】
Kraton(商標)G1657V-13重量%のポリスチレンを含有する、スチレンおよびエチレン/ブチレンをベースとする線状スチレントリブロックコポリマーであり、MFR(ASTM D1238;230℃、5Kg)が22g/10分であり、ショアA値(ASTM D2240、10秒)が47である。
【0174】
Dow社のEngage 7467-ブテン-1に由来する単位を31重量%含有し、密度0.862g/cm(ASTM D792)およびメルトインデックス(ASTM D1238、190℃/2.16Kg)を有するエチレン-ブテンコポリマーである。
【0175】
ポリボンド3200-SI Groupによって供給され、無水マレイン酸含量が0.8~1.2重量%(ASTM D6047)の範囲であり、MFRが115g/10分の無水マレイン酸変性ポリプロピレンホモポリマー(ASTM D1238、190℃/2.16kg)である。
【0176】
Moplen HP500N-LyondellBasellによって供給され、温度230℃、荷重2.16KgでISO 1133法に従って測定した12g/10分のMFRを有するプロピレンホモポリマー。
【0177】
GF-Johns Manville(diemeter:10メートル;長さ:4ミリ)社のガラス繊維サーモフロー636 EC10
【0178】
添加剤パックは、5.0重量%のIrgafos168(BASF)αトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、7.5重量%のIrganox 1076(BASF)αオクタデシル-3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル、2.5重量%のTinuvin622(BASF)αオリゴヒンダードアミン光安定剤、12.5重量%のタルク、25重量%のポリジメチルシロキサン、2.5重量%の酸化マグネシウム、45重量%のMoplenHF501N(LyondellBasell)からなり、これらの両は、添加剤パックの重量を基準にしている。
【0179】
実施例E1と比較例CE2~CE5
【0180】
成分をDSM Xplore Compounder 5ccで200℃、120 rpm、保持時間90秒で溶融混合し、ペレット化し、射出成形した。
【0181】
試験用試験片の組成と引張・衝撃性能の試験結果を表2に示す。
表2
【表3】
【0182】
実施例E6~E9および比較例CE10およびCE11
成分をDSM Xplore Compounder 5cc中で200℃、120rpm、90秒の保持時間で溶融混合し、ペレット化した。ペレットを射出成形して試験片を作成した。試験用試験片の組成と引張・衝撃性能の試験結果を表3に示す。
表3
【表4】
【0183】
比較例CE12、CE13
【0184】
成分をDSM Xplore Compounder 5cc中で200℃、120rpm、90秒の保持時間で溶融混合し、ペレット化した。試験片をペレットの圧縮成形によって得た。試験用試験片の組成と試験結果を表4と表4aに示す。
表4
【表5】
表4a
【表6】
【0185】
実施例E14および比較例CE15
【0186】
実施例E8と比較例CE10の組成物は、射出成形システムDSM Xplore 10ccを備えたDSM Xploreマイクロチャージャー5ccにおいて、220℃、0.8MPa、8秒で保圧して(金型温度は60℃)造粒と射出成形の4つのプロセスサイクルを行った。
各プロセスサイクルの終了時に測定した引張弾性率と引張強さの値を表5に示す。
表5
【表7】
【0187】
実施例E16~E18および比較例CE19~CE21
【0188】
実施例E8で製造された組成物と実施例CE10で製造された組成物のペレットを、円形ダイ(3.00mm径)を有する2軸押出機COLLIN TEACH-LINETM ZK25T上で押出し、3D印刷用フィラメントを得た。押し出しパラメータを表6に示す。押出されたフィラメントを、水で冷却し、プリンタコイルに巻き取った。
表6
【表8】
【0189】
3Dプリント部品は、100%インフィルと直径0.8mmのノズルを使用するUltimaker2+FFFプリンタで製造された。印刷パラメータを表7に示す。
表7
【表9】
【0190】
引張試験およびシャルピー衝撃試験用試験片は、引張/衝撃方向に対する0°配向に対応して、試料の最長寸法に平行なパッチパターン配向を有するフィラメントを3D印刷して作製された。
【0191】
印刷/押出速度ごとに測定された引張弾性率と引張強さの値、およびプロセス中にポリマー溶融体が受ける剪断と歪みの速度を表8に示す。
表8
【表10】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン組成物(I)であって、
(A)異相ポリマー組成物15~80重量%であって、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%とを含み、
前記(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、異相ポリマー組成物15~80重量%と、
(B)ポリエチレン組成物20~85重量%であって、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70重量%を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%である、ポリエチレン組成物20~85重量%と、を含み、
前記(A)および(B)の量は、(A)+(B)の全重量を基準にしている、ポリオレフィン組成物(I)。
【請求項2】
異相ポリマー組成物(A)40~80重量%、好ましくは50~70重量%とポリエチレン組成物(B)20~60重量%、好ましくは30~50重量%とを含む請求項1に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項3】
前記成分(a)は異相ポリマー組成物であり、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー35~70重量%、好ましくは、40~65重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーは、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー15~40重量%、好ましくは20~35重量%と、
(c)エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィン、およびそれらの混合物とのプロピレンコポリマーであって、前記プロピレンコポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(c)の重量基準で50%重量%以下、好ましくは15~50重量%含む、少なくとも1種のプロピレンコポリマー5~30重量%、好ましくは7~20重量%と、を含み、
前記(a)、(b)、および(c)の量は、(a)+(b)+(c)の全重量を基準にしている、請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項4】
前記ポリエチレン組成物(B)に含まれる前記ポリエチレン成分は、エチレンホモポリマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項5】
前記ポリエチレン組成物(B)は、Mw/Mn(B)の値が300以上、好ましくは、300~1,500の範囲であり、前記ポリエチレン成分(i)および(ii)は、Mw/Mnが独立して5以下の値から選択され、好ましくは、1.2~5、よりこの好ましくは、1.5~4.5であり、前記Mwは、GPCにより測定した重量平均分子量であり、Mnは、GPCにより測定した数平均分子量である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項6】
成分(C)40重量%以下、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~20%を含み、前記成分(C)は、
(C1)強化剤と、
(C2)ポリスチレンを(d1)の重量基準で30重量%以下、好ましくは10~30重量%含む、飽和もしくは不飽和のスチレンまたはα-メチルスチレンブロックコポリマーと、
(C3)前記相溶化剤(D)は、無水マレイン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のマレイン酸ジアルキル、C1~C10の直鎖もしくは分岐のフマル酸ジアルキル、無水イタコン酸、C1~C10の直鎖もしくは分岐のイタコン酸、ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物で官能化されたポリオレフィンと、
(C4)顔料、染料、伸展油、難燃剤、紫外線防止剤、紫外線安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、ワックスからなる群から選択される添加剤と、
(C5)それらの組み合わせと、を含み、
前記成分(C)の量は、(A)+(B)+(C)の全重量を基準にしている、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の溶融ポリオレフィン組成物(I)の流れに、50s-1以上、好ましくは150s-1以上の剪断速度を与えるステップを含む成形品の製造プロセス。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスにより得られた物品。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物(I)を含む押出積層造形用フィラメント。
【請求項10】
ポリエチレン組成物(B)の使用であって、前記ポリエチレン組成物(B)は、
(i)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(i)が1,000,000g/mol以上であるポリエチレン成分25~85重量%と、
(ii)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量Mw(ii)が5,000g/mol以下であるポリエチレン成分10~65重量%と、を含み、
前記ポリエチレン組成物(B)は、(i)+(ii)の少なくとも70%の重量を含み、前記(i)および(ii)の量は、前記ポリエチレン組成物(B)の全重量を基準にしており、前記全重量は100%であり、
前記異相ポリマー組成物(A)のための強化マスターバッチとして、
(a)プロピレンホモポリマー、エチレンおよび/または式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐状のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプロピレンポリマーであって、前記コポリマーは、前記エチレンおよび/または前記α-オレフィンに由来する単位を(a)の重量基準で10.0%重量%以下、好ましくは0.05~8.0重量%含む、少なくとも1種のプロピレンポリマー55~80重量%と、
(b)エチレンと式CH=CHR(ただし、Rは直鎖もしくは分岐のC2~C8アルキルである。)で表される少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記α-オレフィンに由来する単位を(b)の重量基準で10~40重量%以下、好ましくは20~35重量%含む、少なくとも1種のコポリマー20~50重量%と、を含み、
前記成分(a)および(b)の量は、(a)+(b)の全重量を基準にしている、使用。

【国際調査報告】