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特表2024-537226減摩コーティング、及び減摩コーティングを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】減摩コーティング、及び減摩コーティングを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09D 161/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241003BHJP
   C09D 191/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241003BHJP
   C09D 7/61 20180101ALN20241003BHJP
【FI】
C09D5/00 Z
C09D161/04
C09D163/00
C09D183/04
C09D201/00
C09D7/63
C09D191/00
C09D7/65
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521105
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022041707
(87)【国際公開番号】W WO2023059407
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,624
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030844
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アナ オシチョウ
(72)【発明者】
【氏名】マリタ バース
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ブッシュ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA212
4J038CD102
4J038DA031
4J038DB001
4J038DL031
4J038HA036
4J038HA146
4J038HA356
4J038JA11
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA09
4J038PB06
(57)【要約】
減摩コーティング組成物を作製する方法であって、(A)(i)固体潤滑剤と(ii)溶剤と(iii)結合剤と(iv)任意選択的に添加剤とを組み合わせる工程と、(B)バスケットミルを用いて、溶剤(ii)中で(i)固体潤滑剤を粉砕する工程であって、粉砕が(ii)溶剤中で粉砕された(i)固体潤滑剤の分散液を形成するのに十分な時間にわたる、粉砕する工程とを含み、結合剤(iii)及び任意選択的な添加剤(iv)が、(B)の前に、最中に、後で、又は(B)の前、最中、及び後のうち2つ以上の組み合わせで、それぞれ独立して固体潤滑剤(i)及び溶剤(ii)と組み合わせられる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減摩コーティング組成物を作製する方法であって、
(A)
(i)固体潤滑剤と、
(ii)溶剤と、
(iii)結合剤と、
(iv)任意選択的に添加剤
を組み合わせる工程と、
(B)バスケットミルを用いて、前記溶剤(ii)中で前記(i)固体潤滑剤を十分な時間、粉砕して、前記(ii)溶剤中で前記粉砕された(i)固体潤滑剤の分散液を形成する工程と、を含み、
前記結合剤(iii)及び前記任意選択的な添加剤(iv)が、(B)の前に、その間に、その後で、又は(B)の前、その間、及び、その後のうち2つ以上の組み合わせで、それぞれ独立して前記固体潤滑剤(i)及び溶剤(ii)と組み合わせられる、方法。
【請求項2】
前記結合剤(iii)が、(B)の前に、又はその間に、前記固体潤滑剤(i)及び前記溶剤(ii)と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合剤(iii)が、Bにおいて(i)と(ii)との組み合わせ物を粉砕した後で、前記固体潤滑剤(i)及び前記溶剤(ii)と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結合剤(iii)と第2の溶剤(v)とを組み合わせて混合物を形成することと、前記混合物と前記固体潤滑剤(i)及び前記溶剤(ii)とを組み合わせることと、を更に含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕が単一の工程で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(C)ディソルバーディスクを用いて前記結合剤と前記固体潤滑剤と前記溶剤と前記任意選択的な添加剤との予備分散液を形成すること、その後、(D)前記予備分散液が形成されたのと同じ容器内で、前記予備分散液の前記粉砕(B)を実施することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バスケットミルが、容器及び撹拌機バスケットを含み、前記撹拌機バスケットが、ビーズ及びビーズ撹拌機、ディソルバーディスク、並びに駆動軸を含み、前記ビーズ撹拌機及び前記ディソルバーディスクが、前記駆動軸と係合している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分散液が低粘度であるか、代わりに20mPa・s~2500mPa・sの粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固体潤滑剤の平均粒径及び粒度分布を変化させるために前記粉砕時間を変更することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粉砕された固体潤滑剤が、最大75μmの粒径(d90)及び最大25μmの(d50)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビーズは、ZrO、金属、ガラス、又はZrOと金属とガラスとの組み合わせを含み、前記ビーズは直径0.6~2.5mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結合剤は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂のうち2つ以上の混合物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体潤滑剤は、黒鉛、MoS、PTFE、シリコーン、ワックス、固形炭化水素ワックス、又は黒鉛、MoS、PTFE、シリコーン、ワックス、及び固形炭化水素ワックスのうち2つ以上の混合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤は、水、1~4個の炭素原子を含むアルコール、3~6個の炭素原子を含むケトン、エステル、複素環式、脂肪族、又は芳香族化合物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分散液が色素を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって調製された減摩コーティング組成物。
【請求項17】
前記減摩コーティングが、請求項13に記載の減摩コーティング組成物のフィルムを基材上に作製することと、前記溶剤を除去して前記減摩コーティングを形成するための条件に前記減摩コーティング組成物を晒すことと、によって調製される、減摩コーティング。
【請求項18】
(i)固体潤滑剤と、
(ii)溶剤と、
(iii)結合剤と、
(iv)任意選択的に添加剤
の分散液を含む、減摩コーティング組成物であって、
前記固体潤滑剤が、最大75μmの粒径(d90)及び最大50μmの(d50)を有する、減摩コーティング組成物。
【請求項19】
前記分散液中の固形粒子として、前記粒径(d90)が20~30μmであり、(d50)が7~9μmである、請求項18に記載の減摩コーティング組成物。
【請求項20】
減摩コーティングを作製する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に従って調製された前記減摩コーティング組成物を基材に塗布する工程と、前記溶剤を除去するための条件に前記塗布された減摩コーティング組成物を晒す工程とを含む方法。
【請求項21】
前記減摩コーティングが、はけ塗り、浸漬、スピン、浸漬スピン、又は噴霧よって前記基材に塗布される、請求項20に記載の減摩コーティングを作製する方法。
【請求項22】
前記減摩コーティング組成物を硬化させて前記減摩コーティングを形成することを更に含む、請求項20又は21に記載の減摩コーティングを作製する方法。
【請求項23】
前記減摩コーティング組成物が請求項1~15のいずれか一項に記載の方法に従って調製される、請求項18~22のいずれか一項に記載の減摩コーティング組成物。
【請求項24】
請求項18~23のいずれか一項に記載の減摩コーティング組成物でコーティングされた摺動部材を含む部品。
【請求項25】
前記減摩コーティング組成物が硬化して減摩コーティングを形成する、請求項24に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
本発明は、広義には、結合剤、固体潤滑剤、溶剤、及び任意の他の補助的添加剤を含む減摩コーティング組成物、減摩コーティング組成物を製造する方法、減摩コーティング組成物から製造された減摩コーティング、並びに減摩コーティングでコーティングされた部品の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
結合潤滑剤としても知られる減摩コーティング(AFC)は、多くの用途で摩擦、摩耗、及び騒音を低減させるために用いられている。AFCは、一般的には、AFC組成物を基材に塗布し、続いてAFC組成物を硬化プロセスに供してAFCを形成することによって生成される。AFC組成物は、一般的には、通常はポリマー樹脂である結合剤、固体潤滑剤、溶剤、及び他の添加剤からなる分散液である。減摩コーティング組成物は、従来の塗布技法によって基材に塗布される。例えば、AFC組成物は、はけ塗り、浸漬、浸漬スピン、及び噴霧によって塗布することができる。一般的なコーティングの厚さは5~20μmである。
【0004】
減摩コーティングの性能は、顕微鏡で観察してコーティング被覆率を特定することによって、並びにコーティングが破損するまで負荷が増加するか又は一定に維持される線形振動摩擦試験を用いて負荷容量及び製品寿命を測定することによって、決定することができる。
【0005】
5~20μmのコーティング厚さを達成し、スプレー塗布法で使用できるようにするためには、一製造工程として、AFC組成物中の固形分を粉砕することが必要とされる。粉砕は、一般的には、液体中で粒度の範囲が最大で約500μmから下はサブミクロン(ナノメートル)範囲までの、超微細固形分を加工するために使用可能なビーズミルを用いて実施される。製品の特性に応じて、異なる粉砕システムを備えた様々なタイプのアジテータービーズミルを用いることができる。ビーズミルを用いた粉砕工程は、AFC生産において最も費用のかかる製造工程である。
【0006】
ビーズミルの粉砕工程は、その機械の技術的要求が厳しく、且つ清掃が困難であり、並びにポンプ、ホース、及び攪拌棒などの周辺装置も清掃する必要があるため、高い費用がかかる。清掃が困難であるため、ビーズミルグラインダーは単一のAFC製品又はAFC製品群への使用にのみ限定する必要がある。ビーズミルの粉砕プロセスに伴う追加の費用には、AFC組成物を調製するために2つの容器が必要であること(1つは固形分を予備分散するためであり、もう1つは粉砕された製品をビーズミルから受けるためである)、及び粉砕された低粘度のAFC組成物のためにビーズミルのチャンバー上にアブレシブ摩耗が生じ、そのため頻繁な設備の交換が必要となることが含まれる。最後に、AFC組成物を製造するために用いられるビーズミルは、所望の粒度を達成するには複数回のビーズミルのパスが必要があり、また粒度及び分布を制御するのが困難であるため、一般的には効率的でない。
【0007】
製造時間が短縮され、また清掃が容易な機器を使用し、同じ容器中で分散されて固形分を粉砕し、複数の製品又は製品群にまたがって使用可能であり、且つ摩耗による交換を必要する頻度がより少ない設備を用いる、AFC組成物を生産するためのより効率的なプロセスが必要とされる。更に、粉砕した固形分の粒度及び粒度分布に対してより優れた制御を可能にする、AFC組成物を生産するためのプロセスも必要とされる。最後に、負荷容量及び製品寿命の点で性能が改善されたAFCが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、減摩コーティング組成物を作製するプロセスであって、(A)(i)固体潤滑剤と、(ii)溶剤と、(iii)結合剤と、(iv)任意選択的に、添加剤と、を組み合わせる工程と、(B)バスケットミルを用いて、溶剤(ii)中で(i)固体潤滑剤を粉砕する工程であって、粉砕が、(ii)溶剤中で粉砕された(i)固体潤滑剤の分散液を形成するのに十分な時間にわたる、工程と、を含み、結合剤(iii)及び任意選択的な添加剤(iv)が、(B)の前に、最中に、後で、又は(B)の前、最中、及び後のうち2つ以上の組み合わせで、それぞれ独立して固体潤滑剤(i)及び溶剤(ii)と組み合わせられる、プロセスに関する。
【0009】
本発明は、更に、(i)固体潤滑剤と、(ii)溶剤と、(iii)結合剤と、(iv)任意選択的に、添加剤と、のs分散液(s dispersion)を含む、減摩コーティング組成物であって、結合剤及び固体潤滑剤が、最大50μmの粒度(d90)及び最大25μmの(d50)を有する、減摩コーティング組成物に関する。
【0010】
本発明のプロセスは、製造時間を短縮し、清掃がより容易な機器を使用し、同じ容器内で固形分を分散させて粉砕し、複数の製品又は製品群にまたがって使用可能であり、且つ摩耗による交換を必要とする頻度がより少ない、AFC組成物を作製するためのより効率的なプロセスを提供する。更に、このプロセスは、AFC組成物中の粉砕した固形分の粒度に対するより優れた制御を可能にし、また、負荷容量及び製品寿命の点で改善された性能を有するAFC組成物をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って用いられるバスケットミルの断面図を示す。
図2】粉砕装置が下降した位置にある、図1のバスケットミルを示す。
図3図1のバスケットミルの断面の倍尺図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「AFC組成物」は、溶剤を含む未硬化の組成物を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「AFC」は、AFC組成物を基材に塗布し、基材上のAFC組成物から溶剤を除去し、且つ/又は基材上のAFC組成物を硬化させた結果得られるコーティングを指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、冠詞「a」及び「an」は非限定的であり、本発明の要素を説明する場合、1つ以上を含むものとして解釈されるものとする。
【0015】
減摩コーティング組成物を作製する方法であって、
(A)
(i)固体潤滑剤と、
(ii)溶剤と、
(iii)結合剤と、
(iv)任意選択的に添加剤と、を組み合わせる工程と、
(B)バスケットミルを用いて、溶剤(ii)中で(i)固体潤滑剤を粉砕する工程であって、粉砕が(ii)溶剤中で粉砕された(i)固体潤滑剤の分散液を形成するのに十分な時間にわたる、粉砕する工程と、を含み、
結合剤(iii)及び任意選択的な添加剤(iv)が、(B)の前に、最中に、後で、又は(B)の前、最中、及び後のうち2つ以上の組み合わせで、それぞれ独立して固体潤滑剤(i)及び溶剤(ii)と組み合わせられる、方法。
【0016】
固体潤滑剤(i)と、溶剤(ii)と、結合剤(iii)と、任意選択的に、添加剤と、は組み合わせられる。固体潤滑剤は、AFCで使用することが知られている任意の固体潤滑剤、又は固体潤滑剤の混合物であってよい。固体潤滑剤の例としては、黒鉛、MoS、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、硫化亜鉛、リン酸三カルシウム、蝋、固形炭化水素蝋、例えば、ポリオレフィンワックス(ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス)、又はPTFE、ポリオレフィンワックス、二硫化モリブデン、黒鉛、硫化亜鉛、若しくはリン酸三カルシウムのうち2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、AFC組成物に適した固体潤滑剤、及び固体潤滑剤の選び方が分かるであろう。固体潤滑剤は市販されている。
【0017】
溶剤は、AFC組成物で一般的に使用される任意の溶剤、又は溶剤の混合物であってよく、一般的には結合剤用の溶剤となるように選択される。固体潤滑剤、色素、及び任意の他の成分は、溶剤に可溶性でない場合があり、一般的には溶剤に可溶性でない。溶剤の例としては、水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル類(例えば酢酸ブチル)、脂肪族炭化水素類、複素環式(例えば、N-メチルピロリドン)及び非複素環式芳香族溶剤(例えばトルエン、キシレン)(これらのうち2つ以上の混合物を含む)が挙げられるがこれらに限定されない。或いは、溶剤はアルコール:エステル比が10:90~50:50(w/w)のアルコールとエステルとの混合物である。或いは、溶剤は、アルコール、エステル、及びケトンの任意の好適な組み合わせ、或いは酢酸ブチル、エタノール、及びメチルエチルケトンの混合物である。当業者であれば、AFC中で組み合わせるための溶剤の選び方が分かるであろう。好適な溶剤は市販されている。
【0018】
結合剤は、AFCでの使用に適した任意の結合剤、又は結合剤の混合物であってよい。結合剤の例としては、樹脂、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン・無水マレイン酸(SMA)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、高分子チタン酸ブチル、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドイミド、及びシリコーン樹脂、又は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン・無水マレイン酸(SMA)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、高分子チタン酸ブチル、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドイミド、及びシリコーン樹脂のうち2つ以上の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。当業者であれば、減摩コーティング用の結合剤の選び方は分かるであろう。好適な結合剤は市販されている。
【0019】
任意選択的な添加剤は、1つ以上の添加剤であってよく、任意選択的な添加剤は、AFCで一般的に使用されるが、AFCに必須でない任意の他の材料を含む。任意選択的な添加剤の例としては、触媒、色素、表面張力添加剤、カップリング剤、及び増粘剤が挙げられるがこれらに限定されない。AFCで一般的に使用される任意の好適な触媒がAFCに含まれてよい。好適な触媒の例としては、リン酸及びフェノールスルホン酸を含む、この目的のための触媒が挙げられるが、これらに限定されない。触媒は、AFC組成物がAFCを形成するための硬化速度に影響を及ぼすであろう。当業者であれば、AFC組成物の材料に好適な触媒の選び方が分かるであろう。好適な触媒は市販されている。
【0020】
AFCの成分と共に使用するのに好適な任意の色素を組み合わせてもよい。好適な色素の例としては、フッ化カルシウム(CaF)、カーボンブラック、三酸化アルミニウム(Al)、炭化ケイ素(SiC)、三酸化アンチモン、窒化ケイ素(SiN)、炭化チタン(TiC)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、タルク、及びその他の適した無機粉末、並びにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。使用され得るその他の色素としては、シアヌル酸メラミン(単独で、又は微粉化アミドワックス、ポリアミド12ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンポリマー、及びこれらの混合物と、並びに上記で列挙された無機材料と混合して)が挙げられる。当業者であれば、好適な色素又は色素の混合物の選び方が分かるであろう。AFCでの使用に好適な色素は市販されている。
【0021】
AFCの成分と共に使用するのに好適な任意の表面張力添加剤を組み合わせてもよい。表面張力添加剤は、一般的にはコーティングされた部品の濡れを改善するために添加される。好適な表面張力添加剤の例としては、シリコーングリコール、ポリエステル修飾ポリジメチルシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない。当業者であれば、好適な表面張力添加剤の選び方が分かるであろう。AFCでの使用に好適な表面張力添加剤は市販されている。
【0022】
AFCの成分と共に使用するのに好適な任意のカップリング剤を組み合わせてもよい。カップリング剤添加剤は、AFCと基材との接着及び結合剤と固体潤滑剤との凝集を改善するために添加される。好適なカップリング剤の例としては、シラン類、例えばメチルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、好適なカップリング剤の選び方が分かるであろう。AFCでの使用に好適なカップリング剤は市販されている。
【0023】
AFCの成分と共に使用するのに好適な任意の増粘剤又は増粘剤の混合物を、任意選択的な添加剤として組み合わせてもよい。増粘剤は、AFC組成物の粘度を変更して、基材に対するAFC組成物の適切な塗布を可能にし、所望のAFCの厚さをもたらすために添加される。好適な増粘剤の例としては、ポリアミド、金属石鹸、シリカ、ベントナイト、及び尿素系材料が挙げられるがこれらに限定されない。当業者であれば、AFCでの使用に好適な増粘剤の選び方が分かるであろう。好適な増粘剤は市販されている。
【0024】
固体潤滑剤(i)と溶剤(ii)とは、下記の(B)における粉砕の前及び/又は最中に、或いは(B)における粉砕の前に、或いは(B)における粉砕の最中に、任意の順序で組み合わせられる。固体潤滑剤(i)と溶剤(ii)とは、(B)で粉砕に使用されたものと同じ容器又は異なる容器のいずれかで、任意の順序で組み合わせることができ、或いは、(i)と(ii)とは、粉砕工程(B)に使用されたものと同じ容器で任意の順序で組み合わせられ、或いは、(i)と(ii)とは、混合及び/又は粉砕しながら、最初に(ii)を容器に添加し、続いて(i)を容器に添加することによって、或いは、混合及び/又は粉砕しながら、(i)を容器に添加し、続いて(ii)を添加することによって、組み合わせられる。(i)と(ii)とが(B)における粉砕の前に組み合わせられる場合、これらは(B)の前に予備混合されていてもよく、予備混合されていなくてもよい。
【0025】
結合剤(iii)と任意選択的な添加剤(iv)との組み合わせは、それぞれが独立して、(B)における粉砕の前、最中、又は後のいずれかで、当該技術分野で既知の方法で且つ任意の順序で(i)及び(ii)と一緒に又は個別に組み合わせられて様々となり得るか、或いは、溶剤(ii)は一部ずつAFC組成物中で組み合わせられ、一部は(B)の前及び/又は最中に固体潤滑剤(i)と組み合わせられ、(ii)の一部は別途に(iii)と組み合わせられて(ii)と(iii)との混合物を形成し、ここで(ii)と(iii)との混合物は一般的には溶液を形成し、続いて、工程(B)で(i)と(ii)との組み合わせを粉砕した後で、(ii)と(iii)との混合物を、(i)と(ii)との組み合わせと組み合わせる。(ii)が一部ずつ組み合わせられるとき、(ii)と(iii)との組み合わせから形成された混合物は、(B)の前、最中、又は後のいずれかで、或いは(B)の後、或いは(B)の前、或いは(B)の最中に、(i)と(ii)との組み合わせと組み合わせられ得る。
【0026】
ディソルバーディスク又はパドルミキサーを用いるなどの当該技術分野で既知の方法を、(i)と(ii)と(iii)と(iv)とを混合するのに用いてもよい。当業者であれば、好適なミキサーの選び方が分かるであろう。多くの好適なミキサーが市販されている。
【0027】
一実施形態では、本方法は、(B)で(i)及び(ii)が粉砕される前、最中、又は後で、或いは後で、結合剤(iii)と第2の溶剤(v)とを組み合わせて混合物を形成することと、混合物と固体潤滑剤(i)及び溶剤(ii)とを組み合わせることと、を更に含む。
【0028】
第2の溶剤(v)は、溶剤(ii)に関して上述した通りのものである。溶剤(ii)と第2の溶剤(v)とは同一であっても異なっていてもよく、或いは(ii)と(v)とは同じであり、或いは(ii)と(v)とは異なる。結合剤及び固体潤滑剤は上述した通りのものである。
【0029】
結合剤(iii)と第2の溶剤(v)とは、当該技術分野で既知の方法で組み合わせられ得る。一実施形態では、(iii)と(v)とは混合して組み合わせられる。当該技術分野で既知の混合方法を使用してよい。当業者であれば、(iii)と(v)とを組み合わせる方法、及び(iii)と(v)とを混合するのに使用する機器が分かるであろう。
【0030】
本発明のバスケットミルを、図1~3を参照して説明する。本明細書で説明されるバスケットミルは、良好に機能することが判明した好ましい実施形態とみなされるべきである。当業者であれば、バスケットミルの特定の実施形態に多くの変更を加えても、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同種又は同様の結果を得ることが可能であると理解されよう。本発明のバスケットミルは、蓋で密閉することが可能な実質的に円筒形の二重層容器10、ディソルバー20、及びアジテーターバスケットミル30を備える。本明細書では詳細に示されていない清掃装置も、容器内に配置することが可能である。
【0031】
ディソルバー20は、その下端部にディソルバーディスク22を有した円筒形シャフト21を備える。ディソルバーディスク22は、円形面上で上下交互に湾曲した複数の歯23をその外周部に備える。シャフト21は、第1の外径の中央部分24を有し、中央部分24はその下端部で、その外径が中央部分の外径よりも大きな下部分25に入る。
【0032】
シャフト21は、円筒形のベアリングフランジ26によって機械上部60に固定され、機械上部60はベアリングフランジを箱状に包囲する。必要な安定性を保証するため、ベアリングフランジ26は合計シャフト長の1/3を超えて延在することが好ましい。本発明の実施形態では、そのピストンロッド64が中板66に取り付けられた空気圧シリンダー62によって、アジテーターバスケットミル30の高さを調整することが可能である。複数の中空棒33が、中板66の下面からアジテーターバスケット30の上端部まで延在する。この構成のおかげで、空気圧シリンダー62を用いてアジテーターバスケット30の配置を上下に変位させることが可能であり、更に、中空棒を介して冷却剤がアジテーターバスケット30中を循環することが可能である。空気圧シリンダーの代わりに、例えば水圧シリンダー又はウォーム駆動などのその他の調整手段を用いることも可能である。
【0033】
シャフト21は、ベアリングフランジ26中で回転ベアリングによって支持され、ここでニードルベアリング又はローラーベアリング27がベアリングフランジ26の下端部に設けられ、二重の自動調心ベアリング28が上端部に設けられる。シャフト21は、ベルトプーリ29による既知の方法で駆動される。ベアリングフランジ26を補強するために、その上端部に複数の補強リブ32が周方向に互いに変位した関係で提供される。リブ32は、ベアリングフランジ26のほぼ中心から、連続的に傾斜して、設置位置にある上部フランジである水平フランジまで延在する。これらの補強リブ32は、特に予備分散操作においてシャフト21の不要な撓みを防ぐために、現況技術で既知のベアリングフランジと比較して著しく高いレベルの安定性をベアリングフランジ26に付与する。
【0034】
アジテーターバスケット30は、互いに対して周方向に離間された複数の円筒形中空棒33を経由し、中板66を経由して機械上部60の下面に固定され、その結果、空気圧シリンダー62を用いて機械上部60によってアジテーターバスケット30の高さを調整することが可能となる。空気圧シリンダーの代わりに、例えば水圧シリンダー又はウォーム駆動などのその他の調整手段を用いることも可能である。
【0035】
アジテーターバスケット30自体はハウジング34を備え、これは孔の開いた篩様であり、その中に粉砕ボール及び/又はビーズ(図示せず)が保持されている。その上端部で、ハウジング34は漏斗を備え、漏斗はその底部にシャフト21が通る開口部35を有する。ハウジング34は、単層構造、二重層構造、又は別の好適な構造であってもよい。ハウジング34は、中心孔35を備えた環状通路を形成する。ビーズ及び/又はボールアジテーター36は、これと同軸関係で延在する環状通路内に配設される。
【0036】
その上端部で、ビーズ及び/又はボールアジテーター36は、リングディスク37によって一般に参照番号39で識別されるベアリングブロックへと接続される。ベアリングブロックは、円筒形のブシュ40を含み、ブシュ40は、下降位置で下部シャフト部分25を中心として配置され、また外方に拡大するステップ41をその下端部に有する。二重回転ベアリング42はステップ41上で支持され、ベアリングは外部スペーサリング43によって互いに離間される。コンベヤスクリュー44は、二重回転ベアリング42のベアリング間でスペーサリング43から半径方向内向きに配置される。二重回転ベアリング42は、更なるスペーサリング45によって、上面において、リングディスク37の下面に対して支持されている。ブレード付きインペラ46は、アセンブリ操作中に容器からハウジング34への生成物の流量を増加させるため、また同時に、粉砕ボールが不必要にアジテーターバスケットミルの外に出ることを防ぐために、リングディスク37の半径方向外部ステップ上に配置される。ベアリングブロック39の下端部でブシュ40のステップ41の真下に、シャフト21からリングディスク36までトルクを伝達するための第1のカップリング要素を表す弓状の歯カップリングの内部歯配列47が設けられている。内部歯配列47とブシュ40のステップ41との間に、複数の吸引穴48が周方向に互いに離間した関係で配置される。半径方向外向きに、二重回転ベアリング配列42は、中空の円錐台49の内部に対して支持され、中空の円錐台49は、その下部円筒形部分からその上端部まで連続的に先細になっており、また、二重回転ベアリング42の上部ベアリングの内部ステップで支持されている。
【0037】
上部ベアリングの上方、中空の円錐台49の上端部の内側の間で、中空の円錐台49と第2のスペーサリング45との間に約0.3mmの間隙が存在する。操作中、ベアリングを冷却し、且つこれらが乾燥するのを防ぐために、この間隙を製品流が通過することができる。この構成により、ビーズ又は粉砕ボールの侵入が防がれ、ひいては恐れられる「ビーズ破壊」も防がれる。製品流は連続的にベアリング中を流れて、コンベヤスクリュー44及び吸引穴48に因る自己冷却効果を提供する。
【0038】
中空の円錐台は、複数の周方向に配置されたねじ50によって、円形ディスク部分51の内部リング要素にねじ止めされる。このディスク部分51は、アジテーターバスケットミル30の底部を形成し、ディスク部分51の内部リング要素から外部リング要素まで半径方向外向きに延在する篩52を収容する。微細分散操作中に媒体がこの篩52を通って流れ、粉砕された材料をビーズから分離する。
【0039】
ディソルバーディスク22の上方且つ下部シャフト部分25の下方には、第2のカップリング要素を形成する外部歯配列53が設けられている。アジテーターバスケットミル30が、図1に示す予備分散位置から図2に示す微細分散位置まで下方に移動すると、ブシュ40は、内部歯配列47が外部歯配列53と係合するまで下部シャフト部分25上で変位する。ここで、弓状の歯カップリングが、微細分散操作を実施するために、シャフトのトルクをビーズ及び/又はボールアジテーター36に伝達する。
【0040】
上部シャフト部分24の構成は外径が下部シャフト部分25よりも小さいため、予備分散位置ではシャフト21とアジテーターバスケット30との間に十分な間隙が存在することが確実となり、予備分散操作中のシャフト21の横撓み運動によるブシュ40の望ましくない損傷を防ぐ。
【0041】
アジテーターバスケットの下端部におけるカップリングの配置によって、現況技術で見られる中空シャフトを不要にし、また同時に、更に、予備分散装置と微細分散装置とを1つのユニット内で組み合わせることが可能になり、ここで方法工程間の変更は、容器を開ける必要なしに、単に容器内でアジテーターバスケットミルを下降させることによって達成が可能である。ポジティブロックカップリング(positively locking coupling)の代わりに、フォースロック(force-locking)、又はクイックコネクトの関係を伴うカップリング、例えばプレートカップリングなどを使用することも可能であることが理解されよう。最後に、ベアリングブロック中の回転ベアリングの代わりに、プレーンベアリングを使用することも可能である。
【0042】
バスケットミルは市販されている。一実施形態では、バスケットミルはVMA-Getzmannからのものである。本発明での使用に好適なバスケットミルは、米国特許第7,641,137号明細書及び同第6,565,024号明細書に記載されており、これらは参照によりそのバスケットミルの説明が本明細書に組み込まれる。
【0043】
アジテーターによって保持される粉砕ボール及び/又はビーズは、様々な材料を含み得る。ビーズに含まれる材料の例としては、ZrO、金属、ガラス、又はZrOと金属とガラスとの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。(B)の間にビーズがビーズアジテーターによって攪拌され、ビーズの動きによって固体潤滑剤(i)が粉砕される。
【0044】
粉砕ボール及び/又はビーズは、実質的に球状である。ビーズの直径は変動してもよく、或いは、ビーズの直径は最大5mmであり、或いは直径0.5~4mm、或いは0.6~2.5mm、或いは1.0~2.5mmである。粉砕ビーズの直径は、固体潤滑剤の粒度分布に影響を与える。固体潤滑剤の粒度分布は、負荷容量及び製品寿命の点でAFCの性能に影響を与え得る。
【0045】
(B)の粉砕により、溶剤(ii)中の固体潤滑剤(i)の分散液が形成される。分散液の粘度は変動してもよく、或いは、粘度は最大5,000mPa・sであり、或いは、分散液の粘度は5~5,000、或いは20mPa・s~2500mPa・sである。分散液の粘度は、ASTM D1084 方法Bに従い、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される。
【0046】
(B)における粉砕の前に固体潤滑剤(i)と溶剤(ii)との予備分散液を作製してもよく、或いは、予備分散液を作製することなしに、(i)と(ii)とを組み合わせてから(B)で粉砕してもよい。予備分散液は、(B)の粉砕と同じ容器内で作製してもよく、別の容器内で作製してもよい。予備分散液をディソルバー10で作製した後で、アジテーターバスケット30を下降させて予備分散液に入れ、(B)で同じ容器内で分散液を粉砕してもよく、或いは、(i)を(ii)の中で予備分散させずに、アジテーターバスケット30を使用して(i)と(ii)との組み合わせを粉砕してもよい。予備分散液は、別のディソルバーディスクを用いて作製してもよく、このディソルバーディスクは、クイックコネクタを使用することによりバスケットミルに置き換えられ、ここでディソルバーディスクはクイックコネクトコネクタにおいてモーターから切断され、バスケットミルがクイックコネクトコネクタを用いて接続される。当業者であれば、ディソルバーディスクとバスケットミルとを交換するためにクイックコネクタを使用し、バスケットミルのディソルバーディスク10を使用して固体潤滑剤(i)と溶剤(ii)との分散液を作製する方法、又は別の容器内で分散液を作製してからバスケットミルで(B)の粉砕を行う方法(別の分散機器及びバスケットミルを使用して予備分散を行い、続いて溶剤(ii)中で固体潤滑剤(i)を粉砕する)が分かるであろう。
【0047】
固体潤滑剤の粒度及び粒度分布は、ビーズアジテーターの粉砕時間及び先端速度を制御することによって制御可能である。当業者であれば、ビーズアジテーターの先端速度及び時間を変更して粒度及び粒度分布を変更する方法が分かるであろう。粉砕(B)を実施することができる時間は変化してもよく、或いは、粉砕(B)は最大で20時間、或いは、5分間~10時間、或いは、5分間~5時間実施される。
【0048】
粒度及び/又は粒度分布を変更するためにビーズアジテーターの回転速度は変化することができ、或いはビーズアジテーターの回転速度は、最大で15,000の毎分回転数(rpm)、或いは100rpm~6000rpm、或いは200~2000rpmである。当業者であれば、ビーズアジテーターの回転速度を変更する方法が分かるであろう。
【0049】
本方法の温度は変化してよい。一実施形態では、本方法は、雰囲気温度で、或いは0℃~80℃で、或いは10℃~60℃で、或いは10℃~40℃で実施される。
【0050】
ディソルバーディスクの寸法は、機器の寸法に応じて変化してもよい。一実施形態では、ディソルバーディスクの直径は最大で600mm、或いは150mm~450mm、或いは30mm~400mmである。
【0051】
粉砕(B)後の分散液中の固体潤滑剤は、最大75μmの粒度(d90)及び最大25μmの(d50)、或いは15μm~35μmの粒度(d90)及び5μm~15μmの(d50)を有する。本明細書で使用するとき、粒度(d90)とは、直径がその値を下回る粒子の部分が90%である粒度値であり、粒度分布(d50)とは、直径がその値を下回る粒子の部分が50%である粒度値である。当業者であれば、分散液中の固形分の粒度を測定する方法が分かるであろう。粒度は、Horiba LA-950レーザー回折粒度分布分析機を使用して測定される。
【0052】
上記の減摩コーティング組成物の作製方法によって調製された減摩コーティング組成物。AFC組成物は、多くの用途で摩擦、摩耗、及び騒音を低減させるなどのAFC組成物が表面に塗布されるあらゆる理由のために、表面に塗布され得る。
【0053】
減摩コーティングが、上記の減摩コーティング組成物の皮膜を基材上に作製することと、溶剤を除去して減摩コーティングを形成するための条件、或いはAFC組成物を硬化させてAFCを形成するための条件に減摩コーティング組成物を晒すことと、によって調製される、減摩コーティング。
【0054】
(i)固体潤滑剤と、
(ii)溶剤と、
(iii)結合剤と、
(iv)任意選択的に添加剤
との分散液を含む、減摩コーティング組成物であって、
前記固体潤滑剤が、最大50μmの粒度(d90)及び最大25μmの(d50)を有する、減摩コーティング組成物。
【0055】
固体潤滑剤(i)、溶剤(ii)、結合剤(iii)、及び任意選択的な添加剤(iv)は、上記の通りである。
【0056】
AFC中の固体潤滑剤の粒度は、上記の通りである。つまり、固体潤滑剤は、最大50μmの粒度(d90)及び最大25μmの(d50)、或いは15μm~35μmの粒度分布(d90)及び5μm~15μmの(d50)を有する。粒度及びその測定方法は、AFC組成物の作製方法に関して上述した通りである。
【0057】
AFC組成物は、上記のAFC組成物の作製方法によって作製される。
【0058】
減摩コーティングを作製する方法であって、上記の方法にある通りに調製された減摩コーティング組成物を基材に塗布する工程と、溶剤を除去するための条件、或いはAFC組成物を硬化させてAFCを形成するための条件に塗布された減摩コーティング組成物を晒す工程と、を含む、方法。
【0059】
AFC組成物は、当該技術分野で既知の方法で基材に塗布され得る。AFC組成物を塗布することのできる方法の例としては、噴霧、スピンコート、はけ塗り、浸漬、及び浸漬スピンが挙げられるがこれらに限定されない。当業者であれば、AFC組成物を基材に塗布する方法が分かるであろう。
【0060】
AFC組成物は、溶剤を除去し、且つ/又はAFC組成物を硬化させるのに十分な条件に晒され、或いは、溶剤を除去し、且つ/又はAFC組成物を硬化させてAFCを形成するために、AFCは、高温、或いは10℃~280℃の温度、或いは30℃~230℃の温度に晒される。当業者であれば、AFC組成物を硬化させてAFCを形成する方法が分かるであろう。或いは、AFC組成物は、湿気、紫外線(UV)、又は赤外線(IR)など異なる硬化機構を用いる材料を含む場合もある。当業者であれば、AFCに用いられる硬化系に応じて、AFC組成物を高温、湿気、UV、又はIRに晒す方法が分かるであろう。AFC組成物は、溶剤を除去するために準大気圧に晒される場合もある。当業者であれば、ここでAFC組成物を準大気圧に晒す方法が分かるであろう。
【0061】
減摩コーティングの厚さは変化してもよく、或いは、AFCの厚さは、2μm~50μm、或いは5μm~20μmである。当業者であれば、これらのAFCの厚さを達成するために部品をコーティングする方法が分かるであろうし、また、コーティングの厚さを測定する方法が分かるであろう。
【0062】
上記の方法によって調製された減摩コーティング組成物でコーティングされた摺動部材を含む部品。
【0063】
AFC組成物が硬化されている、上記の方法によって調製された減摩コーティング組成物でコーティングされた摺動部材を含む部品。
【0064】
AFC組成物でコーティングした部品を、AFC組成物を硬化させるのに十分な条件に晒すことによって、AFC組成物は部品上で硬化される。AFC組成物を硬化させるのに十分な条件は、減摩コーティングを調製する方法に関して上述した通りである。
【0065】
本発明は、清掃がより容易な機器を使用することによって製造時間を短縮し、同じ容器内で固形分を分散させて粉砕し、複数の製品又は製品群にまたがって使用可能であり、且つ摩耗による交換の必要がより低頻度の、AFC組成物を作製するための効率的なプロセスを提供する上で有用である。更に、本発明は、負荷容量及び製品寿命の点で改善された性能を有するAFC組成物をもたらす、AFC組成物中の粉砕した固形分の粒度分布に対するより優れた制御を提供するのに有用である。AFC組成物は、摩擦、摩耗、及び騒音を低減させるために部品をコーティングするのに有用である。
【実施例
【0066】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれるが、それらは、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される本発明を限定するものとみなすべきではない。当業者であれば、以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能すると本発明者によって見出された技術を表し、従って、その実施に好ましい態様を構成するとみなされ得ることが理解されよう。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えても、依然として同様又は類似の結果を得ることができることを理解するはずである。別段の記載がない限り、全てのパーセンテージは重量%単位である。次の表は、本実施例で用いられる略語を説明する。
【0067】
【表1】
【0068】
続いて、減摩コーティング組成物を作製するために実施例で用いられる配合物を表2に記載する。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例1-1、1-2、及び1-3では、スラリー試料を、700rpmで10分間及び600rpmで更に10分間、90mmのディソルバーディスクで混合することによって予備分散液を作製した。予備分散液を、時間の間ビーズで粉砕した。ビーズ寸法の範囲、バスケットの充填容量、ビーズの充填レベル、及びビーズアジテーターの速度は下記の表3で指定する通りである。使用したバスケットミルは、5L容器を備えたVMA-Getzmann製TML5からのものであり、1.0~1.2mmのZrOビーズを使用した。
【0071】
実施例2-1、2-2、2-3、3-1、3-2、及び3-3では、320kgのスラリーを、250mmのディソルバーディスクを使用し、400rpmで30分間攪拌した。次に、攪拌したスラリーを500Lの二重層容器に充填し、バスケットミルを用いて粉砕した。実施例2-1、2-2、及び2-3で用いたバスケットミルは、3-1、3-2、及び3-3とは異なっていた。2-1、2-2、及び2-3では、VMA-Getzmann製のモデルTML250バスケットミルを使用し、実施例3-1、3-2、及び3-3にはVMA-Getzmann製のモデルTML500を使用した。どちらのバスケットミルも、1.2~1.7mmのZrOビーズを用いた。
【0072】
予備分散液の粉砕の粒度結果を、下記の表4に記す。試料を様々な回数で採取し、Horiba LA-950レーザー回折粒度分布分析機を用いて粒度を測定した。皮膜はAFC組成物の鋳造物であり、製品の耐久時間を決定するために、SRV EL-4試験の耐久性/寿命試験をASTM D5707に従って実施した。
【0073】
全ての実施例1-X~3-X(Xは、1、2、又は3である)を、表3のパラメータで粉砕した。各バスケットミルのランから、特定の時間の後で試料を採取した(表3)。全ての実験を、粉砕工程の間、容器及びバスケット冷却によって冷却した。比較実施例(320kg)を、15Lのミリングチャンバー及び2.0mmのスチール(steal)ビーズを備えた一般的な水平ビーズミルを用いて1回のパスで粉砕した。ミリングチャンバーのみを冷却した。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
SRV EL-4試験をASTM D5707に従って実施し、製品の耐久時間を証明するために15N(EL-4)の定荷重を実施した。20Hzの周波数及び1mmのストローク長さを用いた。
【0077】
【表5】
【0078】
SRV LCC-4 200N(負荷容量)試験を、ASTM D5706の手順Bに従って実施した。負荷容量(LCC)試験では、負荷は、50℃の温度で最初に15Nで10分間保持した後、1N/分の速度で最大200Nまで増加させる。20Hzの周波数及び1mmのストローク長さを用いた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】