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特表2024-537242高粘性流体を塗布する方法および装置
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  • 特表-高粘性流体を塗布する方法および装置 図1
  • 特表-高粘性流体を塗布する方法および装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】高粘性流体を塗布する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/16 20060101AFI20241003BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20241003BHJP
   B29D 30/08 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 7/02 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241003BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241003BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C73/16
B60C19/12 Z
B29D30/08
B05C7/02
B05C11/00
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D7/00 N
B05D7/24 301N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521223
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2022059591
(87)【国際公開番号】W WO2023057969
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021000025682
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ポントーニ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ストラッフィ
【テーマコード(参考)】
3D131
4D075
4F041
4F042
4F213
4F501
【Fターム(参考)】
3D131BC09
3D131BC24
3D131BC51
3D131BC55
3D131LA13
3D131LA28
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC92
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC95
4D075AC99
4D075DA13
4D075DA23
4D075DA32
4D075DB35
4D075DC13
4D075EA39
4D075EB52
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA22
4F041BA32
4F041BA34
4F042AA09
4F042BA02
4F042BA04
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB02
4F042CB10
4F042CB11
4F042CB19
4F042DF11
4F042DF32
4F042DH09
4F042EA03
4F042EA24
4F042EA27
4F213AH20
4F213AP06
4F213AR02
4F213AR08
4F213AR14
4F213AR15
4F213WA95
4F213WA97
4F213WB01
4F213WM05
4F213WM35
4F501TA02
4F501TB03
4F501TC25
4F501TE30
4F501TK06
4F501TQ02
4F501TR06
4F501TR14
4F501TV04
(57)【要約】
【課題】タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、高粘性流体を塗布する方法およびシステム(1)を提供する。
【解決手段】
タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、高粘性流体を塗布する方法およびシステム(1)は、高粘性流体の塗布装置(7)と、当該塗布装置(7)に接続された高粘性流体の送出回路(10)と、を備えるシステム(1)であって、収集チャンバ(C)を内部に画定するタンク(14)を備える、高粘性流体収集装置(11)と、塗布装置(7)に高粘性流体を送出するポンプ装置(17)によって実施される、高粘性流体のための送出装置(13)と、収集チャンバ(C)の周囲を区画する、可動ピストン(26)と、収集チャンバ(C)内の第1の高粘性流体を引き出してポンプ装置(17)に送るように交互に動く、抽出要素(28)と、第1のピストン(26)の位置を検出するのに適した、特には線形位置トランスデューサである、位置センサ(30)と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、特にはシール剤である高粘性流体を塗布するシステム(1)は、前記高粘性流体の塗布装置(7)と、当該塗布装置(7)に接続された前記高粘性流体の送出回路(10)と、を備えるシステム(1)であって、
第1の可変容積収集チャンバ(C)を有する第1のケーシング(15)によって画定されたタンク(14)を備える、シール剤収集装置(11)と、
前記塗布装置(7)に第1の高粘性流体を送出する第1のポンプ装置(17)によって実施される、前記高粘性流体を送出するための第1の送出装置(13)と、前記第1の収集チャンバ(C)の周囲を区画する、第1の可動ピストン(26)と、前記第1の収集チャンバ(C)内の前記第1の高粘性流体を引き出して前記第1のポンプ装置(17)に送るように交互に動く、第1の抽出要素(28)と、
前記第1のピストン(26)の位置を検出するのに適した、特には線形位置トランスデューサである、第1の位置センサ(30)と、を有する、システム(1)。
【請求項2】
可変容積収集チャンバ(C)を有する第2のケーシング(15)によって画定されたタンク(14)を備える、第2の高粘性流体のための第2の収集装置(11)と、
前記塗布装置(7)に前記第2の高粘性流体を送出する第2のポンプ装置(17)によって実施される、前記第2の高粘性流体を送出するための第2の送出装置(13)と、前記第2の収集チャンバ(C)の周囲を区画する、第2の可動ピストン(26)と、前記第1の収集チャンバ(C)内の前記第2の高粘性流体を引き出して前記第2のポンプ装置(17)に送るように交互に動く、第2の抽出要素(28)と、
前記第2のピストン(26)の位置を検出するのに適した、特に線形位置トランスデューサである、第2の位置センサ(30)と、を有する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記第1および/または第2のピストン(26,26)によって前記第1および/または第2の高粘性流体に及ぼされる圧力を制御するのに適した、好ましくは比例圧力制御型の、第1の電磁弁(33,33)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記高粘性流体抽出要素(28)の交互運動の速度を制御することによって、前記第1および/または第2のタンク(14,14)からの前記第1および/または第2の高粘性流体の抽出速度を制御するのに適した、好ましくは比例型の、第2の電磁弁(34,34)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムにより、タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、特にシール剤である高粘性流体を塗布する方法であって、
前記位置センサ(30,30)を前記ピストン(26,26)に対向する位置に配置するステップと、
前記高粘性流体の塗布中に、前記位置センサ(30,30)によって前記ピストン(26,26)の位置を検出するステップと、
前記位置センサ(30,30)によって検出された前記ピストン(26,26)の位置の関数として、各ポンプ装置(17,17)から抽出される前記高粘性流体の有効体積(V,V)および流量(P,P)を決定するステップと、
各ポンプ装置(17,17)から抽出される前記高粘性流体の前記有効体積(V,V)および流量(P,P)に応じて、前記高粘性流体の塗布を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項6】
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、の比の目標値(RRSS)を決定するステップと、
前記高粘性流体の総抽出速度の目標値(SSP)を決定するステップと、
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体との比の前記目標値(RRSS)と、前記高粘性流体の抽出速度の前記目標値(SSP)と、から、各送出装置(13,13)における前記高粘性流体の抽出速度の目標値を算出するステップと、をさらに含む、請求項2および5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、の比の有効値(RR)を決定するステップと、前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体との比の前記有効値(RR)と、前記目標値(RRSS)と、の間の偏差が限界値よりも大きい場合に、故障および/または誤動作を通知するステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塗布された高粘性流体の重量(W)を算出するステップと、
過去n回の塗布の間に塗布された前記高粘性流体の重量の代表値(wAVG)を決定するステップと、
前記塗布された高粘性流体の重量(W)と、過去n回の塗布の間に塗布された前記高粘性流体の重量の前記代表値(wAVG)と、の両方の関数として、適用する高粘性流体補正係数(FCF)を決定するステップと、をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各ポンプ装置(17,17)から抽出された前記高粘性流体の体積(V,V)および有効流量(P,P)を、前記高粘性流体補正係数(FCF)の関数として決定するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘性流体を塗布する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、タイヤは、2つの環状のビードを有して環状のトレッドを支える、トロイダル状のカーカスを備える。カーカスとトレッドとの間には、多数のトレッドプライを備えるトレッドベルトが介在している。カーカスプライの内側には、気密性の高いインナーライナーが配置されており、このインナーライナーが内張りを構成し、タイヤの空気圧を長期にわたって維持するべく、タイヤ内の空気を保持する機能を果たしている。
【0003】
近年、タイヤの開発は、あらゆるパンクを塞ぐことを目的としたシール剤を使用して製造された、インナーライニングを有するタイヤに向けられている。通常、シール剤は、穴に対するシール作用を確保するとともに、タイヤの状態とは関係なしに内部空洞内での安定性を確保するために、高い粘度を有する。
【0004】
シール剤は加硫前のタイヤに塗布され、好ましくは、タイヤの路面と接触する部分(または、パンクが発生する可能性のある部分)のインナーライナーに塗布される。特に、シール剤はトレッドに塗布され、少なくとも部分的にサイドウォールに塗布される。
【0005】
通常、シール剤を塗布する工程では、加硫前のタイヤをフレーム上に置き、該タイヤを横方向のレールでブロックし、タイヤ自体の横方向への移動を防止する。
【0006】
オペレータの指令に応じて、シール剤塗布装置をタイヤの内部空洞に挿入し、内部空洞の表面に直接対向する位置でシール剤塗布工程を開始する。塗布装置は、ノズルの一端に設けられた可動アームによって都合よく実施され、空洞の内面に、シール剤の実質的に均一なビードを塗布することが意図されている。特に、塗布装置は、内部空洞の2つの側方端部間の往復運動によってシール剤のビードを塗布することが意図されており、特に、アームは、タイヤ赤道面に対して垂直な面内で動作する。電動ローラを使用して支持体によりタイヤを回転させ、アームの動きとタイヤの回転との組み合わせによってシール剤を塗布するが、シール剤は、可能な限り均一でなければならない。
【0007】
塗布装置は、シール剤送出回路に接続され、当該回路は、好ましくは金属材料から製造されてシール剤を収容するタンクと、好ましくは加熱され、タンクから延びる、塗布装置と液圧的に連通する導管と、シール剤をタンクから引き出し、塗布装置に加圧下で送出するポンプ装置と、を備える。特に、タンク内のシール剤を引き出してポンプ装置に供給するように、交互に動くことが意図された可動スクープの一端に、抽出要素が設けられている。
【0008】
しかしながら、シール剤の粘度が高いため、タンクからの抽出が特に複雑になることがある。特に、タンク内のシール剤の量を減らすと、シール剤自体がタンクの側壁から抽出箇所に向かって流れにくくなり、キャビテーション現象に似た現象が発生することがある。換言すれば、抽出要素の近傍に空洞が生じ、ポンプ装置がアイドル状態で作動し、1分当たりのストロークが増加するため、長期的にはポンプ装置自体が損傷する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の欠点から解放され、特に、実施が容易で安価な、高粘性流体を塗布する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、先行技術の欠点から解放され、特に、実施が容易で安価な、高粘性流体を塗布する装置を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されるように、高粘性流体を塗布する方法および装置が提供される。
【0012】
次に、本発明を、いくつかの非限定的な例示的実施形態を示す添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】タイヤの内部空洞の表面にシール剤を塗布するべく実施したシステムを、分かりやすくするために部品を取り外した状態で、正面から見た概略図である。
図2】本発明に従って実施した、図1のシステムの一部を示す概略図である。
図3】本発明に従い、図1の電子制御ユニットによって実施した制御方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、符号1は、タイヤ4の内部空洞3の表面2にシール剤を塗布するように構成されたシステム1の全体を示す。「タイヤ4の内部空洞3のプロファイル」という表現は、タイヤ4の表面プロファイルをいうものと理解されたい。
【0015】
タイヤ4は、該タイヤ4を支持し、かつ電動ローラ6によってタイヤの中心軸Xを中心に当該タイヤ4を回転させるのに適した、フレーム5上に配置される。このシステム1は、可動アーム8を備えたロボットによって都合よく実施されたシール剤塗布装置7を備え、当該装置は、タイヤの路面と接触する部分、すなわち、トレッドおよび少なくとも部分的にサイドウォールの表面2に、実質的に均一なビードのシール剤を塗布することを目的としている。好ましい変形例によれば、半流動状態のシール剤を非接触で塗布するために、塗布装置7はノズル9によって実施され、ノズル9は、好ましくは可動アーム8の軸方向一端に配置される。
【0016】
シール剤送出回路10は、塗布装置7に接続される。システム1は、塗布装置7および/または送出回路10の作動を監督する電子制御ユニットECUを備えるが、これについては後ほど詳述する。
【0017】
図2に示すように、送出回路10は、新規のシール剤を収集する装置(新規シール剤収集装置)11、新規のシール剤を送出する装置(新規シール剤送出装置)13、再生されたシール剤を回収する装置(再生シール剤収集装置)11、および再生されたシール剤を送出する装置(再生シール剤送出装置)13を備える。
【0018】
新規シール剤収集装置11と新規シール剤送出装置13とによって画定されるアセンブリは、再生シール剤収集装置11と再生シール剤送出装置13とによって形成されるアセンブリと実質的に同一である。
【0019】
シール剤収集装置11は、好ましくは金属材料からなる、特にスチール製の回収タンク14を備え、その中にシール剤を収集する。
【0020】
タンク14は、底壁16によって底部が閉じられ、上部が開いている(すなわち、上壁や蓋を備えない)円筒形の筒状ケーシング15(または、ドラム)によって画定されている。タンク14は、容積可変の収集チャンバCを有し、当該収集チャンバCは、回転軸を中心に円筒対称を有し、ケーシング15によって横方向が区切られている。
【0021】
対照的に、シール剤送出装置13は、電子制御ユニットECUに接続されたポンプ装置17を備え、このポンプ装置によって作動する。ポンプ装置17は、タンク14からシール剤を汲み上げ、該シール剤をシール剤送出導管18によって塗布装置7に加圧供給するのに適している。シール剤送出導管18は、好ましくは加熱され、タンク14から出発して塗布装置7と液圧的に連通している。好ましい変形例によれば、シール剤の流れを制御・調整する多数の遮断弁(図示せず)も、ポンプ装置17の下流側に、送出導管18に沿って配置されている。
【0022】
ポンプ装置17は、好ましくは、特にタイヤ用の、特に高粘度材料用の抽出ポンプ(それ自体は既知であり、詳細には説明しない)によって実施される。
【0023】
次に、シール剤送出装置13は、タンク14の外部に配置された一対の抽出装置19を備える。とりわけ、2つの抽出装置19は、タンク14に対して横方向に配置された一対の油圧抽出シリンダ19によって実施される。2つの抽出シリンダ19は、タンク14に対して正反対に配置されている。2つの抽出シリンダ19は既知のタイプのものであり、それぞれ、中空の円筒体を備える関連シリンダ20と、シリンダ20自体に含まれる流体によって加えられる圧力の影響によりシリンダ20内を摺動する可動ピストン(図示せず)と、当該ピストンに連結された第1の端部およびシリンダ20に連結された第2の外側端部を有するロッド21と、を備える。特に、ロッド21は、第2の端部がスラストプレート22に接続されている。スラストプレート22には、実質的に中央位置に貫通孔23が形成されている。上面24(すなわち、外側を向いており、収集装置11に面していない面)において、スラストプレート22は、実質的に中心位置で連結されたポンプ装置17を担持する。内面25において(すなわち、収集装置11に直接面する位置において)、スラストプレート22は、実質的に中央位置で連結されたアセンブリAを担持する。当該アセンブリAは、収集チャンバCの周囲を区画するピストン26と、ピストン26とスラストプレート22とを連結するロッド27と、によって形成される。
【0024】
特に、スラストプレート22とアセンブリAは、タンク14内のシール剤の量が変化しても、シール剤に対して実質的に一定の圧力を及ぼすように、下方に(換言すれば、底壁16に向かって)移動することができる。
【0025】
使用時に、スラストプレート22およびアセンブリAは、収集チャンバCの容積が最大となる上側の移動終了位置(図2に示す)と、タンク14が完全に空である状態に実質的に対応する下側の移動終了位置と、の間で移動可能であり、この位置にあるとき、収集チャンバCの容積は最小となり、ピストン26は実質的に底壁16に配置される。
【0026】
ピストン26およびロッド27は共に内部が中空である。すなわち、これらは、使用時に、抽出要素28が通過するためのチャネルを画定するように互いに対向し、かつ互いに連通するように配置された、それぞれの貫通孔が設けられている。さらに、ロッド27に形成された開口部は、貫通孔23に面しており、貫通孔23と連通している。抽出要素28の一端には、ピストン26の近傍で収集チャンバC内のシール剤を引き出し、当該シール剤をポンプ装置17に送出するように往復運動する、可動スクープ29が設けられている。
【0027】
さらに、送出回路10は、位置センサ30、特に、ピストン26の位置を検出することを目的とした線形位置トランスデューサ(例えば、ホールセンサ)を備える。位置センサ30は、好ましくは、タンク14および一対の抽出シリンダ19の外部に配置される。位置センサ30は、電子制御ユニットECUに接続され、ECUにピストン26の位置を示す信号を送信する。言い換えれば、位置センサ30は、所定の時間間隔にわたってピストン26の変位を検出するように、ピストン26に対向する位置に配置される。特に、位置センサ30は、スラストプレート22(ひいては、ピストン26)に接続されたブラケット32の位置を示す信号を送信する。好ましい変形例によれば、位置センサ30は、好ましくはL字型のブラケット31によって支持される。
【0028】
さらに、送出回路10は、電子制御ユニットECUに接続された電磁弁33を備える。電磁弁33は、好ましくは比例圧力制御型であり、電磁弁33は、ピストン26がシール剤に及ぼす圧力を正確に制御することを可能にする。
【0029】
最後に、送出回路10は、電子制御ユニットECUに接続された電磁弁34を備える。電磁弁34は、好ましくは比例型であり、電磁弁34は、抽出要素28の往復運動の速度を制御することにより、タンク14からのシール剤の抽出速度を正確に制御することを可能にする。
【0030】
好ましい変形例によれば、底壁16または代替的にピストン26に収容され、シール剤を加熱するための加熱要素35が設けられた、加熱装置12も備える。加熱装置12は、好ましくは、電子制御ユニットに接続された電気抵抗によって実施され、電子制御ユニットが電気抵抗を制御する。シール剤を加熱するための電気抵抗は、好ましくは、厚みを減らしたディスク要素内に埋め込まれる。あるいは、加熱要素は、送出回路から供給される加熱流体が循環する導管またはコイルによって実施される。
【0031】
電子制御ユニットECUがシール剤の塗布を制御するために実施する方法を、以下に説明する。
【0032】
電子制御ユニットECUは、シール剤の塗布を制御するために処理される、複数の入力データを取得する。
【0033】
第一に、電子制御ユニットECUは、前回の塗布時に塗布されたシール剤の重量Wをkg単位で取得する(通常、塗布されたシール剤の重量は、シール剤の塗布後に検出されたタイヤ4の重量と、シール剤の塗布前に検出されたタイヤ4の重量と、の差から算出される)。
【0034】
図3においてCORRで示すブロックは、塗布されたシール剤の重量Wの誤差、すなわち、塗布されたシール剤の重量Wと、過去n回の塗布の間に塗布されたシール剤の平均重量wAVG(nは可変)との差を打ち消そうとするものである。塗布されたシール剤の重量Wと、過去n回の塗布の間に塗布されたシール剤の平均重量wAVGと、に基づいて、毎分パルス(pls/min)で表されるシール剤フロー補正係数FCFを算出する。好ましい変形例によれば、塗布回数nは50以上である。
【0035】
好ましい実施形態によれば、補正係数FCFは、直近のn回(nは可変)の塗布の間に塗布されたシール剤の平均重量wAVGと、塗布するシーリング剤の理論(または、理想)重量wと、の比から算出する。そして、この比に(補正量を調整するために)ゲイン・インデックスを乗算し、当該比をさらに補正する。
【0036】
図3においてCRPSで示すブロックは、代わりに、毎分パルスで表されるポンプ装置17の目標抽出速度と、毎分パルスで表されるポンプ装置17の目標抽出速度と、の算出を可能にする。
【0037】
特に、電子制御ユニットECUは、再生シール剤と新規シール剤との比の目標値RRSP(パーセントで表され、目標値15%は、合計に対して15%の再生シール剤と、合計に対して85%の新規シール剤と、を得ることが望ましいこと、を示す)と、ポンプ装置17およびポンプ装置17の両方で得られる全シール剤抽出速度(毎分パルス)の目標値SSP(例えば、100pls/min)と、を入力として受け取る。
【0038】
目標値RRSPと目標値SSPとの積から、ポンプ装置17の目標抽出速度S17を決定することが可能であるが、その一方で、ポンプ装置17の目標抽出速度S17は、単純に、総抽出速度の目標値SSPと、ポンプ装置17の目標抽出速度S17と、の差から得られる。例えば、先の考察で報告されたデータを使用すると、15パルス/分に等しいポンプ装置17の目標抽出速度S17と、85パルス/分に等しいポンプ装置17の目標抽出速度S17と、が得られる。
【0039】
最後に、図3のCFで示すブロックは、入力データとして以下のパラメータを受け取る:
・タンク14を画定するケーシング15の寸法DD(特に、円筒管状のケーシング15の内径)(単位:例えば、mm)
・流量補正係数FCF(単位:毎分パルス(pls/min))
・位置センサ30が提供するピストン26の位置(単位:好ましくは、mm)
・位置センサ30が提供するピストン26の位置(単位:好ましくは、mm)
【0040】
これらの入力データ、ならびにタンクの形状を知ることによって、電子制御ユニットECUは以下の項目を決定するように設計されている:
・新規シール剤と再生シール剤との比の有効値RR(パーセントで表され、有効値5%は、シール剤の合計のうち、再生シール剤が5%であり、新規シール剤が95%であることを示す)
・所定の時間間隔の間に各ポンプ装置17,17から抽出されたシール剤の体積V,V
・各ポンプ装置17,17の有効流量P,P(kg/min)
【0041】
新規シール剤の再生シール剤に対する比の実効値RRと、再生シール剤と新規シール剤の比の目標値RRSPとの偏差が、(可変であり、予備設定段階で予め決められている)限界値よりも大きい(例えば、±5%)場合:
・電子制御ユニットは、アラーム信号を送信するように設計されている。
【0042】
以上の議論では、タイヤ4の内部空洞3の表面2にシール剤を塗布するシステムについて明確に言及したが、説明したシステムおよび方法は、高粘性の流体であれば、どのような流体にも有利に適用することができる。
【0043】
したがって、以上の議論では、新規シール剤および再生シール剤を適用するシステムについて明確に言及しているが、議論したシステムおよび方法は、高粘性流体のどのような組み合わせにも有利に適用できる。
【0044】
前述したシステム1の利点は明らかである。特に、当該システム1は、シール剤の流れを最適化することを可能にし、タンク14からのシール剤の抽出を簡素化することを可能にし、このようにして、ポンプ装置17の損傷を防止し、タンク14を完全に空にすることを可能にする。
【符号の説明】
【0045】
1:シール剤塗布システム
2:表面
3:内部空洞
4:タイヤ
5:フレーム
6:電動ローラ
7:塗布装置
8:アーム
9:ノズル
10:送出回路
11,11:収集装置
12:加熱装置
13,13:送出装置
14:タンク
15:ケーシング
16:底壁
17,17:ポンプ装置
18:送出導管
19:抽出装置
20:シリンダ
21:ロッド
22:スラストプレート
23:貫通孔
24:上面
25:下面
26,26:ピストン
27:ロッド
28:抽出要素
29:スクープ
30,30:ピストンセンサ
31:ブラケット
32:ブラケット
33:電磁弁
34:電磁弁
35:加熱要素
X:中心軸
ECU:制御ユニット
C:収集チャンバ
A:アセンブリ
DD:タンク寸法
W:シール剤重量
AVG:シール剤平均重量
FCF:補正係数
RRSP:比の目標値
SP:速度の目標値
17,S17 :抽出速度
RR:比の有効値
V,V:シール剤体積
P,P:シール剤流量
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、特にはシール剤である高粘性流体を塗布するシステム(1)は、前記高粘性流体の塗布装置(7)と、当該塗布装置(7)に接続された前記高粘性流体の送出回路(10)と、を備えるシステム(1)であって、
第1の可変容積収集チャンバ(C)を有する第1のケーシング(15)によって画定されたタンク(14)を備える、シール剤収集装置(11)と、
前記塗布装置(7)に第1の高粘性流体を送出する第1のポンプ装置(17)によって実施される、前記高粘性流体を送出するための第1の送出装置(13)と、前記第1の収集チャンバ(C)の周囲を区画する、第1の可動ピストン(26)と、前記第1の収集チャンバ(C)内の前記第1の高粘性流体を引き出して前記第1のポンプ装置(17)に送るように交互に動く、第1の抽出要素(28)と、
前記第1のピストン(26)の位置を検出するのに適した、特には線形位置トランスデューサである、第1の位置センサ(30)と、を有する、システム(1)。
【請求項2】
可変容積収集チャンバ(C)を有する第2のケーシング(15)によって画定されたタンク(14)を備える、第2の高粘性流体のための第2の収集装置(11)と、
前記塗布装置(7)に前記第2の高粘性流体を送出する第2のポンプ装置(17)によって実施される、前記第2の高粘性流体を送出するための第2の送出装置(13)と、前記第2の収集チャンバ(C)の周囲を区画する、第2の可動ピストン(26)と、前記第1の収集チャンバ(C)内の前記第2の高粘性流体を引き出して前記第2のポンプ装置(17)に送るように交互に動く、第2の抽出要素(28)と、
前記第2のピストン(26)の位置を検出するのに適した、特に線形位置トランスデューサである、第2の位置センサ(30)と、を有する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記第1および/または第2のピストン(26,26)によって前記第1および/または第2の高粘性流体に及ぼされる圧力を制御するのに適した、好ましくは比例圧力制御型の、第1の電磁弁(33,33)を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記高粘性流体抽出要素(28)の交互運動の速度を制御することによって、前記第1および/または第2のタンク(14,14)からの前記第1および/または第2の高粘性流体の抽出速度を制御するのに適した、好ましくは比例型の、第2の電磁弁(34,34)を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムにより、タイヤ(4)の空洞(3)の内面(2)に、特にシール剤である高粘性流体を塗布する方法であって、
前記位置センサ(30,30)を前記ピストン(26,26)に対向する位置に配置するステップと、
前記高粘性流体の塗布中に、前記位置センサ(30,30)によって前記ピストン(26,26)の位置を検出するステップと、
前記位置センサ(30,30)によって検出された前記ピストン(26,26)の位置の関数として、各ポンプ装置(17,17)から抽出される前記高粘性流体の有効体積(V,V)および流量(P,P)を決定するステップと、
各ポンプ装置(17,17)から抽出される前記高粘性流体の前記有効体積(V,V)および流量(P,P)に応じて、前記高粘性流体の塗布を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項6】
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、の比の目標値(RRSS)を決定するステップと、
前記高粘性流体の総抽出速度の目標値(SSP)を決定するステップと、
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体との比の前記目標値(RRSS)と、前記高粘性流体の抽出速度の前記目標値(SSP)と、から、各送出装置(13,13)における前記高粘性流体の抽出速度の目標値を算出するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と、の比の有効値(RR)を決定するステップと、前記第1の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体と前記第2の送出装置(13)によって送出される前記高粘性流体との比の前記有効値(RR)と、前記目標値(RRSS)と、の間の偏差が限界値よりも大きい場合に、故障および/または誤動作を通知するステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塗布された高粘性流体の重量(W)を算出するステップと、
過去n回の塗布の間に塗布された前記高粘性流体の重量の代表値(wAVG)を決定するステップと、
前記塗布された高粘性流体の重量(W)と、過去n回の塗布の間に塗布された前記高粘性流体の重量の前記代表値(wAVG)と、の両方の関数として、適用する高粘性流体補正係数(FCF)を決定するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
各ポンプ装置(17,17)から抽出された前記高粘性流体の体積(V,V)および有効流量(P,P)を、前記高粘性流体補正係数(FCF)の関数として決定するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【国際調査報告】