(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】改善されたエラストマー適合性の為の駆動デバイスシステムの為に意図された潤滑剤において添加剤としての使用の為のカルボジイミド
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241003BHJP
C10M 133/06 20060101ALN20241003BHJP
C10M 159/12 20060101ALN20241003BHJP
C10M 133/22 20060101ALN20241003BHJP
C10M 133/04 20060101ALN20241003BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20241003BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20241003BHJP
C10M 155/04 20060101ALN20241003BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20241003BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20241003BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20241003BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241003BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/06
C10M159/12
C10M133/22
C10M133/04
C10M129/54
C10M159/22
C10M155/04
C10N10:02
C10N10:04
C10N40:25
C10N40:04
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521261
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022078022
(87)【国際公開番号】W WO2023061899
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】デ フェオ,モデスティーノ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ,スティーブ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB24C
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104BE01R
4H104BE02C
4H104BE16C
4H104BE16R
4H104BH11R
4H104BJ05C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104EB13
4H104FA01
4H104FA02
4H104LA20
4H104PA03
4H104PA41
(57)【要約】
本発明は、駆動システムの為の潤滑油組成物であって、1以上のベース油;少なくとも1つのカルボジイミド添加剤;及び、TBNを向上させる少なくとも1つの塩基性有機添加剤を少なくとも含む上記の潤滑油組成物に関する。本発明はまた、潤滑油組成物のエラストマー適合性を向上させる為に、駆動システムの為に意図された潤滑油組成物において、少なくとも1つのカルボジイミド添加剤を使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動システムの為に意図された潤滑油組成物であって、
1以上のベース油;
少なくとも1つのカルボジイミド添加剤;及び、
前記組成物の全塩基価(TBNとして知られている)を向上させる為の少なくとも1つの塩基性有機添加剤
を少なくとも含む、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記カルボジイミド添加剤が、下記の式(I)であることを特徴とする:
【化1】
ここで、
各X及びYは互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状又は環状の、芳香族又は非芳香族の、置換されていてもよい、6~60個の炭素原子、特には8~20個の炭素原子、より特には9~15個の炭素原子、を含む炭化水素系基を表し;
qは、0又は、1~100、特には1~50、より特には1~40、の整数である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボジイミド添加剤が、下記の式(I’)のモノカルボジイミドであることを特徴とする:
【化2】
ここで、X及びYは、同一であってもよく又は異なっていてもよく、下記の式の基を表す:
【化3】
ここで、
*は、カルボジイミド官能基の窒素原子への結合部位を表し;
R
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;
R
1及びR
2のうちの他方は、水素原子;置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;並びに、
R
3は、水素原子;置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;ここで、前記芳香族基は、それを有するフェニル環と縮合していてもよい、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
X及びYは、同一であってもよく又は異なっていてもよく、下記の式の単位を表すことを特徴とする
【化4】
ここで、R
1及びR
2は、同一であってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であり、C
3~C
20、特にはC
3~C
10、とりわけC
3~C
6、分岐アルキル基、より好ましくはイソプロピル基、を表し;及び、
R
3は、水素原子、又はC
3~C
20、特にはC
3~C
10、とりわけC
3~C
6、の分岐アルキル基、好ましくは水素原子、を表す、
請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルボジイミド添加剤が、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N'-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、及びそれらの組み合わせから選択され、特には、前記カルボジイミド添加剤がN,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
TBNを向上させる前記塩基性有機添加剤が、規格ASTM D2896に従って測定された場合に、添加剤の10mg KOH/g超から1200mg KOH/g以下、特には添加剤の50mg KOH/g以上、より特には添加剤の100mg KOH/g以上、の塩基価(BNとして知られている)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
TBNを向上させる前記塩基性有機添加剤が、
(a)ポリアルキルアミン添加剤;
(b)グアニジニウム系イオン液体添加剤、アンモニウム系イオン液体添加剤、又はホスホニウム系イオン液体添加剤;
(c)少なくとも、
炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸;又は、過塩基性であってもよいそれらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩;
ホウ素化合物、及び、
アミン化合物
の間の反応によって生成される添加剤:
並びにそれらの組み合わせ
から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
TBNを向上させる前記塩基性有機添加剤が、下記の式(II)のポリアルキルアミンから選択されることを特徴とする
【化5】
ここで、
R
4及びR
5は互いに独立して、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の、1~22個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
R
6及びR
7は互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状の、1~30個の炭素原子、特には1~22個の炭素原子、を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
A1及びA2は互いに独立して、C
1~C
6、特にはC
1~C
4、アルキレン基、好ましくは-(CH
2)
3であるプロピレン基を表し;並びに、
mは、0、1、2又は3であり、好ましくはmは1又は2である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
TBNを向上させる前記塩基性有機添加剤が、下記の式(II-a)のポリアルキルアミン及び下記の式(II-b)のポリアルキルアミンから選択されることを特徴とする
【化6】
ここで、
R
4及びR
5は互いに独立して、水素原子、又はC
1~C
6、特にはC
1~C
3、のアルキル基、より特にはメチル基、を表し;並びに、
R
6及びR
7は互いに独立して、C
1~C
6、特にはC
1~C
3、のアルキル基、より特にはメチル基、を表す;
【化7】
ここで、
R
4及びR
5は、水素原子を表し;並びに、
R
6及びR
7は互いに独立して、C
8~C
22、好ましくはC
14~C
18、より好ましくはC
16~C
18、のアルキル基、を表す、
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
TBNを向上させる前記1以上の塩基性有機添加剤が、前記組成物の総質量に対して、少なくとも0.1質量%、特には0.1質量%~10質量%、より特には0.5質量%~7質量%、好ましくは1質量%~5質量%、の含有量で使用されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1以上の他の添加剤を含み、該1以上の他の添加剤が、前記1以上のカルボジイミド添加剤と異なり及びTBNを向上させる1以上の前記塩基性有機添加剤と異なり、金属洗剤添加剤;摩擦調整添加剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、抗酸化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、腐食防止剤、銅不動態化剤、及びそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、ガス駆動システム、とりわけバイオガス駆動システム、の為の、特に、液化天然ガスエンジン又は圧縮天然ガスエンジン、水素エンジン又はデュアル燃料エンジン、の為の、特に、4ストローク駆動システムの為の、とりわけ高馬力エンジン又は船舶用4ストロークエンジンの為の、潤滑剤であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
駆動システムを潤滑する方法であって、前記システムの少なくとも1つの機械部品を、請求項1~12のいずれか1項に記載の潤滑油組成物と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項14】
駆動システムの為に意図された潤滑油組成物において、特にはTBNを向上させる少なくとも1つの塩基性有機添加剤を含む潤滑油組成物において、エラストマーとの潤滑油組成物の適合性を向上させる為に、少なくとも1つのカルボジイミド添加剤を使用する方法。
【請求項15】
前記カルボジイミド添加剤及び/又はTBNを向上させる前記塩基性有機添加剤が、請求項2~10のいずれか1項に定義される通りである、請求項14に記載の、使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、とりわけ移動式(mobile)又は固定式(stationary)の駆動システムを潤滑する為の潤滑油組成物、に関する。より特には、本発明は、潤滑油組成物のエラストマーとの適合性、特には駆動システム中に存在するシールのエラストマーとの適合性、を向上させる為に、潤滑油組成物中の添加剤としてのカルボジイミドを使用する方法に関する。
【0002】
有利には、本発明はとりわけ、該組成物の全塩基価(TBN)を向上させる為の1以上の塩基性有機添加剤を含有する潤滑油の、エラストマーとの適合性を改善することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
潤滑油組成物は「潤滑剤」としてまた言及され、エンジン内で運動する様々な金属部品間の摩擦力を低減することを主な目的として、該エンジン内で一般的に使用されている。それらはまた、これらの部品、特にはそれらの表面、の早期摩耗又は損傷を防止する為にも有効である。
【0004】
これを行う為に、潤滑油組成物は慣用的にベース油からなり、該ベース油は一般的に、該ベース油の潤滑剤性能を刺激する為に意図された幾つかの添加剤、例えば摩擦調整添加剤、と組み合わされるが、更なる追加の性能を付与することも意図されている。
【0005】
特には、エンジン、例えばガスエンジン、特には水素エンジン若しくは天然ガスエンジン、又はデュアル燃料エンジン(例えば、ガス/ガソリン混合エンジン、又はガス/ディーゼル混合エンジン等)の潤滑を意図された潤滑油は、多くの要件を満たさなければならない。従って、該潤滑油は、良好な、耐摩耗特性、耐腐食特性、洗浄特性、及び分散特性を兼ね備え、堆積物の形成を低減させる必要がある。
【0006】
内燃機関は酸性の副生成物を生成する。これらの酸性副生成物は例えば、燃料の燃焼、又は燃料若しくは潤滑油組成物中の不純物によって生じる場合があり、水の存在下で加水分解されて酸性副生成物を形成するところの硫黄酸化物の形成を生じる。これらの酸性副生成物は、エンジン潤滑油の性能に悪影響を及ぼし、エンジンにまた直接的に悪影響を及ぼす。それらは、とりわけ、エンジン金属部品の腐食、摩耗及び堆積をもたらしうる。
【0007】
従って、潤滑油は、駆動システムに生じうる損傷を軽減又は防止さえする為に、これらの酸性物質を中和することができなければならない。
【0008】
これらの副生成物を中和する為に、不溶性の金属塩、例えば炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムをベースとした過塩基化された洗剤が一般的に使用されてきた。
【0009】
しかしながら、これらの金属系洗浄剤、例えばフェノキシド及びスルホネートをベースとするものは、灰(Ash)を発生し、結果として好ましくない。
【0010】
特には、欧州自動車工業会(ACEA:Association des Constructeurs Automobiles Euroeens)によって策定された「低い灰(low ash)」(LOW SAPS)仕様は、硫酸塩灰分(sulfated ash)(金属の存在によって生成される)、硫黄及びリンの制限された量を含むことが潤滑油組成物に要求されており、従って、「Low Sulfated Ashes,Phosphorus,Sulfur(低い硫酸灰分、リン、硫黄)」を意味する「Low SAPS」(低いSAPS)という名前が付けられた。特には、硫黄、リン及び硫酸塩灰分は、乗り物に搭載された後処理システムを損傷する場合がある。灰は、とりわけ、パティキュレート・フィルター(PF:particulate filters)に対して有害である。
【0011】
過塩基化された金属系洗浄剤(overbased metallic detergent)の代替として、灰を発生せず且つ酸と反応して中和することができるところの塩基性有機添加剤を使用することが提案されている。
【0012】
これらの塩基性有機添加剤は、「低SAPS」潤滑油に課される制限に適合するように、硫酸塩灰分に影響を与えること無しに、潤滑油組成物の全塩基価(TBN:Total Base Number)を高めることを可能にする。これらはまた一般的に「TBNブースター」として呼ばれる。
【0013】
規格ASTM D2896に従って測定されるTBNは、潤滑油の塩基性の尺度であり、従って、潤滑油が使用されているときに該潤滑油内で発生する酸性を中和する為の能力の尺度である。これは、潤滑油サンプルの1g当たりの水酸化カリウムのミリグラム(mgKOH/g)で表される。
【0014】
特には、無灰アミン添加剤(ash-free amine additives)、例えばアルキル化アミン及び芳香族アミンが、過塩基性金属系洗浄剤の代替として提案されている。
【0015】
残念なことに、そのような塩基性有機添加剤、特にはアミン添加剤、を潤滑剤に補充することにより、潤滑剤のエラストマーとの適合性に関して悪影響を及ぼし、その結果、エラストマーシール材、特にはフッ素樹ポリマーシール、の劣化をもたらす可能性がある(Nersasian et al,Asle Transactions,volume 23,4,343~352)。
【0016】
シールのエラストマー材料の劣化により、例えば、シールの膨潤、収縮又は脆化を結果としてもたらし得、エンジン性能に悪影響を及ぼすシール故障、例えばシール漏れ、をもたらし得、及びまたエンジン損傷の原因になりうる。
【0017】
その結果、そのような塩基性有機添加剤の導入された量は、駆動システムにおいて、例えばシールにおいて、使用されるエラストマー材料に影響を与えないように、満足のいく適合性を確保する為に厳密に制御されなければならない。その結果、そのような添加剤の添加を介して潤滑油のTBNを高めることにより、シールの劣化を引き起こさないように許容できる塩基性有機添加剤、例えばアミン、の量によって制限される。
【0018】
潤滑油組成物のフッ素ポリマーシールとの適合性を向上させる為に、米国特許公開公報第US2014/0315768号は、例えば、少なくとも1つのヨウ素原子、特にはヨウ化アルキル、ヨードドデカン、を含む添加剤を提案している。
【0019】
しかしながら、そのような添加剤を加えることにより、潤滑油組成物と、潤滑剤が接触する駆動システム、例えばガスエンジン又は高馬力エンジン(heavy-duty engine)、のシールにおいて使用されうる様々な種類のエラストマーとの、とりわけエチレン-アクリル系エラストマーに関して、適合性を改善することはできない。
【0020】
本発明は、潤滑剤が接触する駆動システムのシールにおいて使用されうるところの様々なエラストマーとの、潤滑剤の適合性を向上させる為の手段を提案することに対して向けられており、とりわけ、潤滑剤のTBNを増加させる為に使用される塩基性有機添加剤、とりわけアミン、を組み込んだ潤滑剤の調合の文脈において、潤滑剤の適合性を向上させる為の手段を提案することに対して向けられている。
【0021】
カルボジイミドは、ゴム及びプラスチック材料、とりわけ熱可塑性ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン、の為の配合における加水分解防止剤として知られている。
【0022】
その上、潤滑剤の分野において、米国特許第US5,614,483号明細書は、加水分解を防ぐ為にエステル基を含む潤滑油ベースにおける安定化添加剤としてカルボジイミドを使用することを記載する。
【0023】
カルボジイミドはまた、潤滑剤の酸化安定性、防錆又は防錆性能を向上させることが提案されている。例えば、米国特許第US3,346,496号明細書は、ジフェニルアミン又はヒドロキノリン抗酸化剤と組み合わせた、抗酸化剤及び防錆剤としてのカルボジイミドの使用を提案している。
【0024】
国際公開第WO00/22074号パンフレットは、酸性の防錆添加剤と酸失活剤、例えばカルボジイミド、とを組み合わせて、改善された酸化安定性と防錆性能とを有する潤滑油を配合することを提案している。
【0025】
欧州特許公開第EP0,992,571号明細書はまた、鉱油(mineral oil)の酸化安定性を向上させる為に、特定のN-フェニル-ナフチルアミンを有するカルボジイミドを使用することを記載する。
【0026】
潤滑油組成物の防錆特性を向上させる為に、ジチオリン酸の金属塩と組み合わせた脂溶性カルボジイミドの使用を記載した欧州特許公開第EP2,290,043号明細書がまた言及されうる。
【0027】
米国特許公開公報US2006/0122077号明細書はまた、動力伝達(power transmissions)の為の組成物において、腐食抑制特性、潤滑特性及び鉛適合性特性を改善する為に、2~24個の炭素原子数を含むカルボン酸と組み合わせたカルボジイミドの使用を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、駆動システムの為に意図された、潤滑油とエラストマー、特には駆動システム中に存在するシールのエラストマー、との適合性を高める為に、カルボジイミド添加剤を使用することは、これまでに提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の観点に従うと、本発明は、駆動システムの為に意図された潤滑油組成物であって、
1以上のベース油;
少なくとも1つのカルボジイミド添加剤;及び、
該組成物の全塩基価を向上させる為の少なくとも1つの塩基性有機添加剤、特にはポリアルキルアミンタイプの塩基性有機添加剤
を少なくとも含む上記の潤滑油組成物に関する。
【0030】
本発明に従う潤滑油組成物に使用される、「TBNブースター」(TBN boosters)として言及される1以上の塩基性有機添加剤は、該組成物の先に定義された全塩基価(TBNとして注記される)を増加させることを可能にする。換言すれば、それらは例えば、ガスの燃焼又は化学分解副生成物に由来する酸を中和することができ、改善された洗浄性能が達成されることを可能にする。
【0031】
好ましくは、1以上の該「TBNブースター」添加剤は、規格ASTM D2896に従って測定された場合に、添加剤の10mg KOH/g超から1200mg KOH/g以下、特には添加剤の50mg KOH/g以上、より特には添加剤の100mg KOH/g以上、の塩基価(BN)を有する。
【0032】
好ましくは、1以上の該「TBNブースター」添加剤は、
(a)ポリアルキルアミン添加剤;
(b)グアニジニウム系イオン液体添加剤、アンモニウム系イオン液体添加剤、又はホスホニウム系イオン液体添加剤;
(c)少なくとも、
炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸;又は、過塩基性であってもよいそれらのアルカリ金属塩若しくアルカリ土類金属塩;
ホウ素化合物、及び、
アミン化合物
の間の反応によって生成される添加剤:
並びにそれらの組み合わせ
から選択される。
【0033】
これらの「TBNブースター」添加剤の例は、本明細書の続きにおいてより具体的に詳述される。
【0034】
特定の実施態様に従うと、1以上の「TBNブースター」添加剤は、ポリアルキルアミンから選択される。
【0035】
そのような潤滑油組成物は有利には、エラストマーとの、特には、潤滑油組成物が接触することが意図されているところの駆動システム中に存在するシールのエラストマーとの、向上された適合性を有する。
【0036】
具体的には、下記の実施例において示されているように、本発明者等は、特には、潤滑剤のTBNを増加させる為に使用される1以上の塩基性有機添加剤、とりわけポリアルキルアミンタイプ、を含む潤滑油を、カルボジイミド添加剤で補うことによって、潤滑油とエラストマーとの適合性を有意に向上させ、特には、該塩基性有機「TBNブースター」添加剤の使用に関連付けられた有害な影響を有利に低減/制限することが可能であることを発見した。
【0037】
従って、本発明の他の観点に従うと、本発明は、エラストマーとの潤滑油組成物の適合性を向上させる為に、エラストマーとの、特には、潤滑油組成物が接触することが意図されているところの駆動システムのシールのエラストマーとの、潤滑油組成物の適合性を向上させる為に、駆動システムの為に意図された潤滑油組成物、特にはTBNを向上させる少なくとも1つの塩基性有機添加剤を含む潤滑油組成物、を使用する方法に関する。
【0038】
実施例において示されているように、エラストマー適合性は、高荷重ディーゼルエンジン(heavy-duty diesel engine)及びガスエンジンの為に一般的な規格CEC L-112-16に従って評価されることができ、この規格では、下記の4つの異なるエラストマータイプに対する適合性に言及している:「RE6」はフルオロエラストマー、「RE7」はポリアクリレート、「RE8」はニトリル、及び「RE9」はエチレンアクリルである。
【0039】
この適合性は、エラストマーに物理的又は化学的な障害がないこと、従って、引張/摩擦(tensile/friction)係数と破断伸び(elongation-at-break)係数とが満足できるレベルに維持されることを意味する。
【0040】
有利には、カルボジイミド添加剤の添加により、フッ素ポリマーエラストマーだけでなく、該規格に従って検討され、駆動システムにおいて潤滑油に曝露されうる全てのタイプのエラストマーとの潤滑剤適合性が改善されることができる。
【0041】
有利には、本発明に従うカルボジイミド添加剤の添加を介して潤滑剤の適合性を向上させる可能性により、潤滑剤のエラストマーとの適合性特性に悪影響を及ぼすこと無しに、特にはカルボジイミド添加剤がない場合に考えられうる量よりも多い量で、塩基性で無灰の有機添加剤(basic,ash-free organic additives)、特には本明細書の以下において記載されているようなアミン添加剤、を潤滑剤において使用することができる。
【0042】
本発明はまた、駆動システムの為に意図された潤滑油組成物、特には潤滑剤のTBNを向上させる為の1以上の塩基性有機添加剤、好ましくは1以上のポリアルキルアミン、を使用する潤滑油組成物、の、エラストマー、特にはシール、との適合性を向上させる為のプロセス又は方法であって、少なくとも1つのカルボジイミド添加剤を該組成物に添加することを含む上記のプロセス又は方法に関する。
【0043】
従って、本発明に従うカルボジイミド添加剤を1以上の塩基性有機添加剤と組み合わせて使用することにより、エラストマーとの潤滑剤との適合性に対する後者の悪影響を緩和することが可能になり、従って、該潤滑剤によってシールのエラストマー材料によって引き起こされる損傷を低減することができる。
【0044】
従って、本発明は、エラストマー、特にはシールエラストマー、との潤滑剤の適合性を損なうこと無しに、無灰有機塩基性添加剤、特にはポリアルキルアミン、の増加された含有量を含む潤滑剤の配合を有利に可能にする。
【0045】
慣用的な灰生成金属洗浄剤(ash-generating metallic detergents)の代わりに、「TBNブースター」添加剤としての塩基性有機化合物の使用を利用することにより、灰を低く維持しながら、高いTBN全塩基価を有する潤滑剤、特には潤滑剤の所望の使用の為に適した高いTBN全塩基価、を有する潤滑剤を提供することが可能である。
【0046】
従って、本発明に従う潤滑油組成物は、高いTBN、低い灰分(とりわけ、低い硫酸塩灰分)、及び良好なエラストマー適合特性を兼ね備えうる。
【0047】
特には、本発明に従う潤滑油組成物は有利には、規格ASTM D2896に従って測定された、潤滑油組成物1g当たり少なくとも1mgKOH、特には少なくとも2mgKOH、特には少なくとも3mgKOH、のTBNを有しうる。
【0048】
本発明に従う潤滑油組成物は有利には、低い硫酸塩灰分を有しうる。特には、本発明に従う潤滑油組成物の硫酸塩灰分は、該潤滑油組成物の全質量に対して、1.3質量%以下、特には1質量%以下、より特には0.8質量%以下、であってもよい。該硫酸塩灰分は、規格ASTM D874に従って測定されうる。
【0049】
本発明の別の観点に従うと、本発明は、該組成物の灰分に又はエラストマーとの潤滑油組成物の適合性に影響を及ぼすこと無しに、駆動システムの為に意図された潤滑油組成物、特には低い灰分を有する潤滑油組成物、のTBNを増加させる為のプロセス又は方法であって、TBNを向上させる為の少なくとも1つの塩基性有機添加剤、特にはポリアルキルアミン型の少なくとも1つの添加剤、を、少なくとも1つのカルボジイミド添加剤と組み合わせて該潤滑油組成物に添加することを含む上記のプロセス又は方法に関する。
【0050】
本発明に従う潤滑剤は、エラストマーとの改善された適合性を特徴とし、様々な移動式又は固定式の駆動システム、特には、潤滑剤が接触される1以上のエラストマー材料、とりわけエラストマーシール、を含む駆動システムの為に、使用されうる。
【0051】
本発明の目的の場合に、語「駆動システム」は、意図された移動式又は固定式の用途の為に必要な全ての機械部品を備えているシステムであって、少なくとも1つのエンジン、特には内燃機関を包含するシステムを示すことが意図されている。これは、駆動システム内に備えられている1以上のエンジンの性質に依存して、燃焼、ガス、とりわけ、水素、アンモニア、電気、又はハイブリッド、混合燃料(デュアル燃料)、例えばガス/ガソリン又はガス/ディーゼルのデュアル燃料、の駆動システムでありうる。
【0052】
「移動式」駆動システムはより特には、乗り物、例えば、小型乗り物(light vehicles)、大型乗り物(heavy-duty vehicles)、「オフロード」移動機械(“off-road” mobile machines)及び船舶乗り物(marine vehicles)、において使用される駆動システムである。
【0053】
従って、移動駆動システムは、より特には、乗り物の推進システムに相当する。
【0054】
本発明の目的の場合に、語「推進システム」は、乗り物を推進する為に必要な機械部品を備えているシステムを示す。より特には、該推進システムは、エンジン、トランスミッション、及び任意的に、バッテリーを備えている。該バッテリーそれ自体は一般的に、セルとして知られる電気アキュムレータの集合から構成されている。
【0055】
本発明の目的の場合に、「固定式」駆動システムは、駆動システム、例えば固定式エンジンを包含する上記の駆動システム、である。該「固定式」駆動システムは例えば、発電装置に応用することができる。特に、ガス駆動システム、特に定置ガスエンジンである。
【0056】
有利には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、ガス駆動システム、例えば、バイオガス駆動システムを包含する上記のガス駆動システム、の為に、とりわけ天然ガス(液化天然ガス(LNG:liquefied natural gas)又は圧縮天然ガス(CNG:compressed natural gas))エンジン、水素エンジン、又は更にはデュアル燃料エンジン、の為に使用され、その為には、灰分及びTBNの両方を制御することが不可欠である。
【0057】
それは、4ストローク駆動システム(four-stroke drive system)、とりわけ高馬力エンジン(heavy-duty engine)又は船舶用4ストロークエンジン(marine four-stroke engine)の為の潤滑油組成物であってもよい。
【0058】
特定の実施態様に従うと、本発明に従って考慮される潤滑剤は、ガス、とりわけ、水素又は天然ガス、で作動する4ストロークエンジンが意図されている。
【0059】
本発明の別の観点に従うと、本発明はまた、駆動システム、特には上述された駆動システム、を潤滑する為のプロセス又は方法であって、該システムの少なくとも1つの機械部品を、上記で定義された潤滑剤組成物と接触させるステップを含む上記のプロセス又は方法に関する。
【0060】
本発明に従うカルボジイミド添加剤の使用の他の特徴、変形例及び利点は、本発明の非限定的な例示として与えられる以下の説明及び実施例を読むことにより、より明確に現れるであろう。
【0061】
本文の続きにおいて、表現「...から...の間」、「...から...までの範囲」、「...から...までの変化」は等価であり、特に言及されない限り、その限界が含まれることが意図されている。
【0062】
本発明の文脈において、下記の定義が適用される:
「アルキル」:直鎖状又は分枝状の、飽和脂肪族基;例えば、Cx~Czアルキルは、飽和の、直鎖状若しくは分岐状の、x~z個の炭素原子を有する炭素系鎖を表す;
「シクロアルキル」:環状アルキル基、例えば、Cx~Czシクロアルキルは、x~z個の炭素原子を有する環状炭素系基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、を表す;
「アリール」:単環式又は多環式の、特には6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素系基。列挙されうるアリール基の例は、フェニル基及びナフチル基を包含する;
「アラルキル」:前に定義された少なくとも1つのアルキル基で置換された前に定義されたアリール基。該アラルキル基は、該基のアリール部分又はアルキル部分によって分子の残りの部分と連結されてもよい。
「アルキレン」:異なる炭素原子からの2個の水素原子を除去することによって炭化水素から誘導される、二価、好ましくは、飽和、直鎖状若しくは分岐状の基。例えば、C1~C3アルキレン基は、飽和、直鎖状若しくは分岐状の、1~3個の炭素原子を有する炭素ベースの鎖、例えば、メチレン、エチレン、1-メチルエチレン又はプロピレンを表す;
「アルケニル」:例えば1個又は2個のエチレン性不飽和基を含む、直鎖状又は分枝状の、一価又は多価の不飽和脂肪族基、;
「炭化水素系」:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルから選択される化合物、又は該化合物のフラグメント。適切な場合、炭化水素系基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0063】
[詳細な説明]
【0064】
カルボジイミド添加剤
【0065】
先に示されているように、本発明は、エラストマーとの潤滑剤の適合性を向上させる為に、駆動システムの為の潤滑剤において1以上のカルボジイミド添加剤を使用することに基づく。
【0066】
本発明は、特には以下において定義されている、単一のカルボジイミド添加剤、又は少なくとも2つの異なるカルボジイミド添加剤の組み合わせ、とりわけ、2個、3個又はそれ以上の異なるカルボジイミド添加剤の組み合わせを包含しうることが定義される。
【0067】
語「カルボジイミド添加剤」は、少なくとも1つの-N=C=N-単位を含む添加剤を示すことが意図されている。
【0068】
本発明に従って考慮されるカルボジイミド添加剤は、単一のカルボジイミド単位を含む「モノカルボジイミド」添加剤であってもよく、又は少なくとも2つのカルボジイミド単位を含む「ポリカルボジイミド」添加剤であってもよい。
【0069】
好ましくは、本発明に従って使用されるカルボジイミド添加剤は、下記式(I)の化合物である:
【化1】
ここで、
X及びYは互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状又は環状の、芳香族又は非芳香族の、置換されていてもよい、好ましくは6~60個の炭素原子、特には8~20個の炭素原子、より特には9~15個の炭素原子、を含む炭化水素系基を表し;並びに、
qは、0又は、1~100、特には1~50、より特には1~40の整数である。
【0070】
該X基及びY基は好ましくは芳香族であり、芳香族、脂肪族及び/又はシクロ脂肪族置換基、好ましくはカルボジイミド基に対して少なくともオルト位に、例えば少なくとも2個の炭素原子を含むアルキル基、を有していてもよい。
【0071】
特定の実施態様に従うと、本発明に従って考慮されるカルボジイミド添加剤はモノカルボジイミドである。
【0072】
より特には、qが0であるところの上述された式(I)に相当する。
【0073】
換言すれば、本発明に従って考慮されるカルボジイミド添加剤は、下記の式(I’)の化合物であってもよい:
【化2】
ここで、X及びYは、前に定義された通りである。
【0074】
特には、X及びYは、同一であってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であり、フェニル基、好ましくは、カルボジイミド官能基に対してオルト位のうちの少なくとも1つで、好ましくは両方のオルト位で置換された、任意的に該カルボジイミド官能基に対してパラ位で、直鎖状、分岐状又は環状の、置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の脂肪族基及び置換若しくは非置換の芳香族基から選択される基で置換されていてもよいフェニル基を表し、該脂肪族基及び/又は芳香族基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む。
【0075】
言い換えれば、上述された式(I’)におけるX及びYは、同一であってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であり、下記の式の基を表してもよい:
【化3】
ここで、
*は、カルボジイミド官能基の窒素原子への結合部位を表し;
R
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;
R
1及びR
2のうちの他方は、水素原子;置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;並びに、
R
3は、水素原子;置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族基、又は置換若しくは非置換の芳香族基を表し、それら基は、好ましくは2~20個の炭素原子を含む;該芳香族基は、それを有するフェニル環と縮合していてもよい。
【0076】
好ましくは、R1及びR2のうちの少なくとも1つ、特にはR1及びR2、は、同一であってもよく又は異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐状のC2~C20アルキル基、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はtert-ブチル基;C3~C20シクロアルキル基、例えばシクロヘキシル基;又は6~15個の炭素原子を含むアリール基若しくはアラルキル基、例えばフェニル基、トシル基又はベンジル基、を表す。
【0077】
特に好ましい実施態様に従うと、R1及びR2は、同一であってもよく又は異なっていてもよく、特には同一であり、C3~C20、特にはC3~C10、とりわけC3~C6、分岐アルキル基、例えばイソプロピル基、を表す。好ましくは、R3は、水素原子、又はC3~C20、特にはC3~C10、とりわけC3~C6、分岐アルキル基、例えばイソプロピル基、を表し;より好ましくは、R3は水素原子を表す。
【0078】
特定の実施態様に従うと、本発明に従って使用されるカルボジイミド添加剤は、以下に式(I’a)に相当する:
【化4】
ここで、R
1基は互いに、同一であってもよく又は異なっていてもよく、R
2基は互いに、同一であってもよく又は異なっていてもよく、上記に定義された通りであり、特にはC
3~C
6分岐アルキル基、好ましくはイソプロピル基、を表す。
【0079】
一例として、該カルボジイミド添加剤は、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N'-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド及びそれらの組み合わせから選択されうる。
【0080】
特に好ましい実施態様に従うと、該カルボジイミド添加剤は、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである。
【0081】
該カルボジイミド添加剤はまた、「ポリカルボジイミド」添加剤として知られている、カルボジイミド二量体、オリゴマー及びポリマーから選択されてよい。
【0082】
そのようなポリカルボジイミド添加剤はより特には、上述された式(I)に対応し、ここで、qは1以上であり、X基及びY基は、モノカルボジイミドについて先に定義された通りであってもよい。
【0083】
本発明に従って使用されるカルボジイミド添加剤は好ましくは、モノカルボジイミドであり、商業的に入手可能であってもよく、若しくは当業者に既知の合成法に従って調製されてもよい。
【0084】
該1以上のカルボジイミド添加剤は有利にはエラストマーとの潤滑剤の適合性の観点で所望の効果を達成する為に十分な含有量で使用され、特には、例えば規格CEC L-112-16に従って評価されるような、エラストマーとの適合性の観点で潤滑剤の為に要求される仕様に達する為に十分な含有量で使用される。
【0085】
従って、使用される1以上のカルボジイミド添加剤の量は、より特には潤滑剤の性質の関数として、とりわけ、潤滑剤中に存在する塩基性有機添加剤、とりわけアミン添加剤、の性質及び量に関して、変化し、及びそれは、エラストマーとの潤滑剤の適合性に悪影響を及ぼしうる。
【0086】
該1以上のカルボジイミド添加剤は、塩基性有機添加剤、特には本明細書の下記に記載されているような塩基性有機添加剤、の使用に関連付けられた、エラストマーとの潤滑剤の適合性に対する悪影響を緩和/補償する為に、調整された量で有利に使用されうる。
【0087】
一般的に言えば、本発明に従って考慮される該1以上のカルボジイミド添加剤は、特には以前に定義されたものであり、該潤滑油組成物の全質量に対して、市販品の0.1質量%~8質量%、特には0.5質量%~5質量%、より特には1質量%~3質量%、の割合で使用されうる。
【0088】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、該潤滑油組成物の全質量に対して、0.01%~0.8質量%のカルボジイミド活性物質、特には0.05%~0.5質量%のカルボジイミド活性物質、より特には0.1%~0.3質量%のカルボジイミド活性物質を含みうる。
【0089】
カルボジイミド活性物質の質量含量は、それが配合される化合物、特には溶媒、無しに、該カルボジイミド化合物の質量含量を示すことが意図されている。
【0090】
潤滑油組成物
【0091】
従って、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、1以上のベース油、及びまた、潤滑油組成物において慣用的に考慮されている他の添加剤を含む。
【0092】
他の化合物の性質及び量は、潤滑油の意図される目的、より特には、それが意図される駆動システムの種類、例えば、乗り物のエンジン、船舶エンジン等、における使用の為に意図されているかどうかに応じて適切であることが理解される。
【0093】
ベース油
【0094】
慣用的に、潤滑油組成物は、1以上のベース油を含む。
【0095】
これらのベース油は、潤滑油の分野において慣用的に使用されているベース油、例えば、鉱物油、合成油、天然油、動物油、若しくは植物油、又はそれらの組み合わせ、から選択されうる。
【0096】
複数のベース油の組み合わせであってもよく、例えば2、3、4、又は4よりも多いベース油の組み合わせであってもよい。
【0097】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物のベース油は、特にはAPI分類(又はATIEL分類に従ったそれらの等価物)において定義され、下記の表において示されている分類に従ったグループI~Vに属する鉱物の油若しくは合成起源の油、又はそれらの組み合わせでありうる。
【0098】
【0099】
鉱物性ベース油は、粗製油(crude oil)の常圧蒸留及や減圧蒸留、それに続く精製操作、例えば、溶剤抽出、脱アスファルト、溶剤脱パラフィン、水素化分解、水素化異性化及び水素化精製、によって得られるあらゆる種類のベース油を包含する。
【0100】
合成ベース油は、カルボン酸のエステル及びアルコールのエステル、ポリ-α-オレフィン、又は2~8個の炭素原子、特には2~4個の炭素原子、を含むアルキレンオキシドの重合又は共重合によって得られるポリアルキレングリコール(PAG:polyalkylene glycols)であってもよい。ベース油として使用されるポリ-α-オレフィンは、例えば、4~32個の炭素原子を含むモノマー、例えば、デセン、オクテン又はドデセン、から得られ、規格ASTM D445に従って、100℃での粘度が1.5~15mm2;.s-1である。それらの平均分子量は、規格ASTM D5296に従うと、一般的に250~3000である。
【0101】
バイオベースでありうる合成油と鉱油との組み合わせがまた使用されうる。
【0102】
有効な規格に従って測定された特性を、とりわけ粘度、粘度指数、硫黄含有量又は耐酸化性の観点において、有していなければないこと、且つ駆動システム、例えば乗り物のエンジンの為の駆動システム、における使用の為に適していなければならないことの事実は別として、一般的に、潤滑油組成物における異なるベース油の使用に関して制限はない。
【0103】
ある特定の実施態様に従うと、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、少なくとも1つの鉱物性ベース油(グループI)を含む。
【0104】
別の特定の実施態様に従うと、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、API分類のグループII、グループIII及びグループIV油、並びにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのベース油、特には少なくとも1つのグループIIIのベース油、を含む。
【0105】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、その全質量に対して少なくとも50質量%の1以上のベース油、特にはその全質量に対して少なくとも60質量%の1以上のベース油、より特にはその全質量に対して少なくとも70質量%~99質量%の1以上のベース油、を含みうる。
【0106】
添加剤
【0107】
「TBNブースター」塩基性有機添加剤
【0108】
先に示されているように、本発明に従う1以上のカルボジイミド添加剤の使用は、TBNを向上させる塩基性有機添加剤、特にはアミン添加剤、の使用に関連付けられた、エラストマーとの潤滑剤の適合性に対する悪影響を打ち消す為に特に有利であることが判明した。
【0109】
従って本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、1以上のカルボジイミド添加剤で補充され、特には先に定義された1以上のカルボジイミド添加剤で補充され、有利には、該潤滑油組成物のTBNを増加させることができる1以上の塩基性有機添加剤、特には1以上のアミン添加剤、を含みうる。
【0110】
塩基性有機「TBNブースター」添加剤は当業者に知られている。これらは金属系洗剤とは異なる。これらの「TBNブースター」添加剤は、金属系洗浄剤とは異なり、灰をほとんど発生させない又は全く発生させないという利点がある。これらはまた、「無灰」(ashless)化合物又は添加剤と言われる。
【0111】
好ましくは、本発明に従って使用される「TBNブースター」添加剤は、規格ASTM D2896に従って測定される塩基価(BN)が、該添加剤の10mg KOH/g超且つ1200mg KOH/g以下、特には該添加剤の50mg KOH/g以上、より特には該添加剤の100mg KOH/g以上、である。
【0112】
有利には、本発明に従う1以上のカルボジイミド添加剤の使用のおかげで、該潤滑油組成物内に組み込まれることができる、TBNを向上させる1以上の該塩基性有機添加剤、特には1以上のアミン添加剤、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、の量は、エラストマーに関する該塩基の非適合性の考慮の観点から制限されない。
【0113】
その結果、塩基性有機添加剤、特にはアミン添加剤、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、の量は、潤滑油組成物についての所望のTBNを達成するように調整されうる。
【0114】
TBNの目標値は、潤滑油の意図された用途に従って異なりうる。
【0115】
従って、有利な様式において、少なくとも1つのカルボジイミド添加剤の存在により、エラストマーとの潤滑剤の適合性に影響を及ぼすこと無しに、1以上の塩基性有機添加剤の増加された量を使用することを可能にし、所望のTBNを有する潤滑剤を達成することを可能にし、従って、それらが生成する灰の観点において望ましくない金属洗浄剤の存在を低減させることを可能にする。
【0116】
特には、1以上の該塩基性有機「TBNブースター」添加剤、特にはアミン、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、は、該潤滑油組成物の全質量に対して0.1質量%以上、特には0.1質量%~10質量%、より特には0.5質量%~7質量%、好ましくは1質量%~5質量%、の含有量で使用されることができる。
【0117】
好ましくは、1以上の該塩基性有機「TBNブースター」添加剤、特にはアミン、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、は、潤滑油組成物中で、それらの存在が該組成物の全TBNの少なくとも1mg KOH/g、特には潤滑油組成物のTBNの1~40mg KOH/g、特には1~15mg KOH/g、特には少なくとも3mg KOH/g、に寄与するような含有量で使用されることができる。
【0118】
特には、1以上の該塩基性有機「TBNブースター」添加剤、特にはアミン、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、は、該1以上の塩基性有機添加剤のBNが潤滑油組成物のTBNの少なくとも3%、特には少なくとも5%、好ましくは10%~50%、を占めるような含有量で使用されてもよい。
【0119】
特定の実施態様に従うと、1以上の該塩基性有機「TBNブースター」添加剤、特にはアミン、例えばポリアルキルアミンタイプの添加剤、並びに1以上の該カルボジイミド化合物、は、TBNブースター/カルボジイミドの質量比が0.3以上、特には0.8以上、より特には1~10、で、本発明に従う潤滑油組成物中に存在する。
【0120】
本発明に従う組成物において使用される1以上の該塩基性有機「TBNブースター」添加剤は好ましくは、
(a)ポリアルキルアミン添加剤、特には、本明細書の下記において記載されているもの、
(b)グアニジニウム系イオン液体添加剤、アンモニウム系イオン液体添加剤、又はホスホニウム系イオン液体添加剤、特には、本明細書の下記において記載されているもの;
(c)少なくとも、
炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸;又は、過塩基性であってもよいそれらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、特には、本明細書の下記において記載されているもの;
ホウ素化合物、特には、本明細書の下記において記載されているもの、及び、
アミン化合物、特には、本明細書の下記において記載されているもの
の間の反応によって生成される添加剤:
並びにそれらの組み合わせ
から選択されうる。
【0121】
特には、本発明に従って考慮される該「TBNブースター」添加剤は、アミン抗酸化剤、特には芳香族アミン抗酸化剤、でない。芳香族アミン抗酸化剤は一般的に、式NR8R9R10の化合物であり、ここで、R8は、置換されていてもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R9は置換されていてもよい芳香族基を表し、R10は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はR11S(O)zR12を表し、ここで、R11は、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、R12は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、及びzは、0、1又は2を表す。
【0122】
本発明に従う潤滑油組成物は、単一の塩基性有機「TBNブースター」添加剤、又は本明細書の以下において詳述されているアミン化合物から選択される、少なくとも2つの塩基性有機「TBNブースター」添加剤、特には2、3又はそれよりも多い塩基性有機「TBNブースター」添加剤の組み合わせを含みうることが理解される。
【0123】
(a)ポリアルキルアミン添加剤
【0124】
本発明に従う潤滑油組成物において使用される塩基性有機「TBNブースター」添加剤は、より特には、ポリアルキルアミンタイプの添加剤を含みうる。
【0125】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、少なくとも1つのポリアルキルアミン添加剤を含み、より特には、ジアルキレントリアミン及びトリアルキレンテトラミン、から選択される。
【0126】
該ポリアルキルアミン添加剤はより特には、下記の式(II)の化合物でありうる:
【化5】
ここで、
R
4及びR
5は互いに独立して、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の、1~22個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
R
6及びR
7は互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状の、1~30個の炭素原子、特には1~22個の炭素原子、を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
A1及びA2は互いに独立して、C
1~C
6、特にはC
1~C
4、とりわけC
1~C
3 アルキレン基、を表し;
好ましくは、A1及びA2は(CH
2)
3-であるプロピレン基を表し;並びに、
mは、0、1、2又は3であり、好ましくはmは1又は2である。
【0127】
好ましくは、A1及びA2は同一である。特には、これらは、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、メチルエチレン(-CH2-CH(CH3)-若しくは-CH(CH3)-CH2-)又はプロピレン((CH2)3-)基を表すことができる。好ましくは、A1及びA2は、(CH2)3-であるプロピレン(又はトリメチレン)基を表す。
【0128】
好ましくは、R4及びR5は同一である。特には、R4及びR5は、水素原子を表しうる。
【0129】
特定の実施態様に従うと、該ポリアルキルアミン添加剤は、式(II)の化合物であってもよく、ここで、
R4及びR5は水素原子を表s;並びに、
R6及びR7は、同一であってもよく又は異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐の、好ましくは14~18個の炭素原子、より好ましくは16~18個の炭素原子、を含むアルキル基を表す。
【0130】
別の実装の変形に従うと、該ポリアルキルアミン添加剤は、式(II)のものであってもよく、ここで、
R4及びR5は互いに独立して、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6、特にはC1~C3、アルキル基、とりわけメチル基を表し;好ましくは、R4及びR5は同一であり、水素原子又はメチル基を表し;好ましくは、R4及びR5は同一であり、水素原子を表し;
R6及びR7は互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6、特にはC1~C3、のアルキル基、とりわけメチル基を表し;好ましくは、R6及びR7は同一であり、メチル基を表す。
【0131】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、A1及びA2はプロピレン基であるところの上記された式(II)の少なくとも1つのポリアルキルアミン添加剤を含んでいてもよい。
【0132】
特には、該ポリアルキルアミン添加剤は、下記の式(II-a)の化合物であってもよい:
【化6】
ここで、
R
4及びR
5は互いに独立して、水素原子、又はC
1~C
6、特にはC
1~C
3、のアルキル基、より特にはメチル基、を表し;
好ましくは、R
4及びR
5は同一であり、より好ましくは水素原子又はメチル基を表し;更により好ましくはR
4及びR
5は同一であり、水素原子を表し;
R
6及びR
7は互いに独立して、C
1~C
6、特にはC
1~C
3、のアルキル基、より特にはメチル基を表し;好ましくは、R
6及びR
7は同一であり、より好ましくはメチル基を表す。
【0133】
一例として、N,N-ジメチルジプロピレントリアミン(DMAPAPA)(CAS:10563-29-8)及びN,N,N',N'-テトラメチルジプロピレントリアミン(TMDPT)(CAS:6711-48-4)が挙げられうる。
【0134】
別の特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、mが2であり且つA1及びA2がプロピレン基であるところの上述された少なくとも1つのポリアルキルアミン添加剤を含んでいてもよい。
【0135】
特には、該ポリアルキルアミン添加剤は、下記の式(II-b)の化合物でありうる:
【化7】
ここで、
R
4及びR
5は、水素原子を表し;並びに、
R
6及びR
7は互いに独立して、C
8~C
22、好ましくはC
14~C
18、より好ましくはC
16~C
18、のアルキル基、を表す。
【0136】
一例として、IUPAC名 N’-{3-[(3-アミノプロピル)アミノ]プロピル}-N,N-ジ-C16~C18(偶数)アルキルプロパン-1,3-ジアミン(CAS 1623405-26-4)を有する化合物が挙げられうる。
【0137】
他のポリアルキルアミン添加剤がまた考慮されてもよい。従って、本発明に従う潤滑油組成物は、国際公開第WO2017/148816号において記載されているように、1以上の分岐のポリアルキルアミンを組み込んだポリアルキルアミンの組み合わせを含みうる。
【0138】
特には、本発明に従う該潤滑油組成物は、下記の式(III)又は式(IV)のポリアルキルアミンから選択される1以上のポリアルキルアミン及びそれらの誘導体を使用しうる:
【化8】
ここで、
R
6及びR
7は、先に定義された通りであり、特には互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状の、8~22個の炭素原子、特には14~18個の炭素原子、より特には16~18個の炭素原子、を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
N及びzは互いに独立して、0、1、2又は3を表し;並びに、
zが0以外の場合、o及びpは互いに独立して、0、1、2又は3である。
【0139】
該ポリアルキルアミン誘導体は、より特には、1以上のNH官能基がメチル化された及び/又はアルコキシル化されているところの式(III)又は式(IV)のポリアルキルアミンに相当する。
【0140】
特には、本発明に従う組成物は、式(III)又は式(IV)のうちの少なくとも1つの分岐のポリアルキルアミンを使用してもよく、言い換えれば、n及びzのうちの少なくとも1つが1以上である式(III)の化合物、又はnが1以上である式(IV)の化合物である。
【0141】
特定の実施態様に従うと、該潤滑油組成物は、式(III)及び/又は式(IV)のポリアルキルアミンの組み合わせを含み、ここで、該組み合わせにおいて、式(III)及び式(IV)のポリアルキルアミンの組み合わせの総質量に対して、少なくとも3質量%、特には少なくとも5質量%、とりわけ少なくとも10質量%、より特には少なくとも20質量%、の式(III)及び/又は式(IV)の分岐のポリアルキルアミンである。
【0142】
(b)イオン液体
【0143】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、塩基性有機「T BNブースター」添加剤として、グアニジニウム系イオン液体、アンモニウム系イオン液体、ホスホニウム系イオン液体及びそれらの組み合わせから選択される1以上のイオン液体タイプの添加剤を含みうる。
【0144】
そのような添加剤は、とりわけ、国際公開第WO2020/216655号パンフレットにおいて及び欧州特許出願第EP20315181.6号及び同第EP20315180.8号及び同EP20315182.4号の下で出願された特許出願において記載されている。
【0145】
該グアニジニウム系イオン液体添加剤は、より特には、下記の式(V)でありうる:
【化9】
ここで、[CAT
1
+]は、グアニジニウムイオンを表し、及び[X
1
-]は1以上のアニオン種を表す。
【0146】
好ましくは、[CAT
1
+]は、下記の式(Va)のカチオンを表す:
【化10】
ここで、
R1及びR2は互いに独立して、水素原子;又は、直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
30アルキル基、C
3~C
8シクロアルキル基、C
6~C
12アリール基若しくはC
7~C
12アラルキル基から選択され、それら基は、酸素原子及び/又は窒素原子を含む官能基で置換されていてもよい;
R
3、R
4、R
5及びR
6は互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
30アルキル基、C
3~C
8シクロアルキル基、C
6~C
12アリール基若しくはC
7~C
12アラルキル基から選択され、それら基は酸素原子及び/又は窒素原子を含む官能基で置換されていてもよい;
又は、(R3,R4)若しくは(R5,R6)のうちの2つが一緒になってメチレン鎖-(CH
2)p
1-を形成し、ここで、p
1は2~5の整数である。
【0147】
特に好ましい実施態様に従うと、式(Va)において、
R1及びR2は互いに独立して、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6、特にはC1~C3、のアルキル基、とりわけメチル基又はエチル基を表し;
好ましくは、R1=R2であり;
R3、R4、R5及びR6は、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6、特にはC1~C3、のアルキル基から選択され、とりわけメチル基又はエチル基であり;
好ましくは、R3=R4=R5=R6であり、特には、-CH3又は-CH2-CH3を表す。
【0148】
好ましくは、[CAT
1
+]は、下記から選択される:
【化11】
【0149】
式(V)において、[X1
-]は、本発明に従う意図された用途に適合する対イオンを表す。
【0150】
特には、[X1
-]は、ハライド(halides)、パーハライド(perhalides)、シュードハライド(pseudohalides)、サルフェート(sulfates)、サルファイト(sulfites)、スルホネート(sulfonates)、スルホンイミド(sulfonimides)、フォスフェート(phosphates)、フォスファイト(phosphites)、フォスホネート(phosphonates)、メチド(methides)、カルボキシレート(carboxylates)、ヒドロキシカルボキシレート(hydroxycarboxylates)、アルコキシド(alkoxides)、アゾレート(azolates)、カルボナート(carbonates)、カルバメート(carbamates)、チオフォスフェート(thiophosphates)、チオカルボキシレート(thiocarboxylates)、チオカルバメート(thiocarbamates)、チオカルボネート(thiocarbonates)、キサンタート(xanthates)、チオサルホネート(thiosulfonates)、チオサルフェート(thiosulfates)、ナイトレート(nitrate)、ナイトライト(nitrite)、パークロレート(perchlorate)、ハロメタレート(halometallates)、アミノ酸及びボレート(borates)から選択される1以上のアニオンを含んでいてもよい。
【0151】
特定の実施態様に従うと、該対イオン[X1
-]は、下記から選択される:
a)カルボキシレートRa-COO-、ここで、Raは、1~30個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、を含むアルキル基及びアルケニル基;6~30個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、を含むアリール基;7~30個の炭素原子、特には7~20個の炭素原子、を含むアラルキル基から選択され、それら基は、酸素原子及び/又は窒素原子を含む官能基で置換されていてもよい。例えば、[X1
-]は、2-エチルヘキサノエートを表しうる。
b)アルコキシドRaRbHCO-、ここで、Raは、1~30個の炭素原子を含むアルキル基及びアルケニル基、6~30個の炭素原子を含むアリール基、7~30個の炭素原子を含むアラルキル基から選択され;Rbは、H、1~30個の炭素原子を含むアルキル基及びアルケニル基、6~30個の炭素原子を含むアリール基、7~30個の炭素原子を含むアラルキル基から選択され、それら基は、酸素原子及び/又は窒素原子を含む官能基で置換されていてもよい。
【0152】
好ましくは、[X1
-]は、アルキルフェノキシド、特には、7~20個の炭素原子を含むアルキルフェノキシド;アミノフェノキシド、特には、1~18個の炭素原子、特には2~12個の炭素原子、を含む少なくとも1つのアルキル基でアミン基が置換されたところのアミノフェノキシド;及びそれらの組み合わせから選択される。
【0153】
例えば、[X1
-]は、tert-アミルフェノキシド、イソオクチルフェノキシド又はジオクチルアミノフェノキシドを表しうる。
【0154】
c)ヒドロキシカルボキシレートHO-Rc-COO-、ここで、Rcは、1~30個の炭素原子、特には1~15個の炭素原子、を含むアルキル基及びアルケニル基;6~30個の炭素原子、特には6~15個の炭素原子、を含むアリール基;7~30個の炭素原子、特には7~20個の炭素原子、を含むアラルキル基から選択される二価の基であり、それら基は、酸素原子及び/又は窒素原子を含む官能基で置換されていてもよい。例えば、[X1
-]は、2-ヒドロキシプロパン酸を表しうる。
【0155】
特に好ましい実施態様に従うと、[X1
-]は、2-エチルヘキサノエート、2-ヒドロキシプロパノエート、tert-アミルフェノキシド、イソオクチルフェノキシド又はジオクチルアミノフェノキシドから選択される。
【0156】
他の変形に従うと、該グアニジニウム系イオン液体は、上記された式(V)の化合物であり、ここで、[CAT
1
+]は、下記の式(Vb)の1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムを表し;
【化12】
並びに、[X
1
-]は、下記の式(VI)の化合物から選択される1以上の対イオンを表し;
【化13】
ここで、
Aは、6~12個の炭素原子を含むアリール基、特にはフェニル基又はナフチル基、を表し;
R
1は、水素原子;直鎖状若しくは分岐状の、1~30個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基、6~30個の炭素原子を含むアリール基から選択され;
Y
1は、直鎖状若しくは分岐状の、1~6個の炭素原子を含むアルキレン基を表し;並びに、
n
1は、1~20、特には1~15、より特には1~12、好ましくは4~12、より好ましくは6~10、の整数を表す。
【0157】
好ましい実施態様に従うと、[X
1
-]は、下記の式(VIA)に対応し:
【化14】
ここで、
R
1は、水素原子;直鎖状若しくは分岐状の、1~30個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基、6~30個の炭素原子を含むアリール基から選択される;R
1は、オルト位、パラ位又はメタ位であってもよく、好ましくはパラ位であり;
Y
1は、直鎖状若しくは分岐状の、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子、を含むアルキレン基であり、より好ましくは、Y
1は-CH
2-CH
2-であり;並びに、
n
1は、1~15、好ましくは1~12、の整数である。
【0158】
好ましくは、式(VI)又は(VIA)において、R1は、水素原子;並びに、直鎖状若しくは分岐状の、1~30個の炭素原子、好ましくは1~24個の炭素原子、とりわけ1~18個の炭素原子、より好ましくは1~12個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基から選択され;R1は、オルト位、パラ位又はメタ位にある。有利には、R1は、直鎖状若しくは分岐状の、1~18個の炭素原子、特には1~12個の炭素原子、を含むアルキル基を表し、R1は好ましくは、パラ位にある。
【0159】
例えば、R1は、イソプロピル基、n-プロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、tert-ノニル基及びドデシル基から選択されうる。
【0160】
好ましい実施態様に従うと、[X
1
-]は、下記の式(VIB)に対応する:
【化15】
ここで、n
1は、4~10、特には6~10、である。
【0161】
有利には、[X1
-]は、n1=8又は9を有する式(VIB)のtert-オクチルフェニルポリエトキシエトキシドである。
【0162】
該アンモニウム系イオン液体添加剤は、より特には、下記の式(VII)の化合物でありうる。
【化16】
ここで、
[CAT
2
+]は、トリ-n-オクチルメチルアンモニウムカチオンを表し;及び、
[X
2
-]は、下記の式(VIIA)のカルボキシレートから選択される1以上のアニオン種を表す:
【化17】
ここで、R
2は、直鎖状若しくは分岐状の、2~8個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基;好ましくは、直鎖状若しくは分岐状の、2~8個の炭素原子、特には4~8個の炭素原子、より特には5~7個の炭素原子、を含むアルキル基である。
【0163】
好ましい実施態様に従うと、[X2
-]は、2-エチルヘキサノエートである。
【0164】
好ましい実施態様に従うと、該アンモニウム系イオン液体は、トリ-n-オクチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサノエートである。
【0165】
該ホスホニウム系イオン液体添加剤は、より特には、下記の式(VIII)の化合物でありうる:
【化18】
ここで、
[CAT
3
+]はホスホニウムカチオンを表し、及び[X
3
-]は、1以上のアニオン種を表す。
【0166】
好ましくは、[CAT
3
+]は、下記の式(VIIIA)のカチオンから選択される:
【化19】
ここで、
R7、R8、R9及びR10は、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の、1~12個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
R7基、R8基、R9基、R10基のうちの少なくとも1つは、直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
3アルキル基若しくはアルケニル基から選択される;
R7基、R8基、R9基、R10基のうちの少なくとも2つは互いに独立して、直鎖状若しくは分岐状のC
8~C
12のアルキル基若しくはアルケニル基から選択される。
【0167】
有利には、式(VIIIA)において、
R7は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C3のアルキル基若しくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、を表し;並びに、
R8、R9、R10は互いに独立して、アルキル基若しくはアルケニル基、好ましくは、直鎖状若しくは分岐状のC8~C12アルキル基、を表し;好ましくは、R7、R8及びR9は同一であり、及び直鎖状若しくは分岐状のC8~C12アルキル基を表す。
【0168】
有利には、式(VIIIA)において、R7=-CH3であり;及びR8=R9=R10=CH3-(CH2)p3-であり、ここで、p3は、6~8の整数を表す;好ましくは、R8=R9=R10=CH3-(CH2)7-である。
【0169】
式(VIII)において、[X
3
-]は、下記の式(VIIIB)の化合物から選択される対イオンを表し:
【化20】
ここで、R
3は、直鎖状若しくは分岐状の、5~7個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基から選択される。
【0170】
特に有利な実施態様に従うと、[X3
-]は、2-エチルヘキサノエートを表す。
【0171】
好ましい実施態様に従うと、[CAT3
+]はトリ-n-オクチルメチルホスホニウムであり、及び[X3
-]は2-エチルヘキサノエートである。言い換えれば、該ホスホニウム系イオン液体は、トリ-n-オクチルメチルホスホニウム2-エチルヘキサノエートである。
【0172】
該グアニジニウム系イオン液体、アンモニウム系イオン液体、又はスホニウム系イオン液体は好ましくは、潤滑油組成物中に使用される1以上のベース油中に溶解される。化合物は、室温で、ベース油の重量に対して、少なくとも0.01重量%の濃度で溶解されることができる場合に、該ベース油に可溶性であると言われる。
【0173】
(c)アミン官能基、ホウ素官能基、酸官能基又はカルボキシレート官能基を有する添加剤
【0174】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、塩基性有機「TBNブースター」添加剤として、アミン官能基、ホウ素官能基、及び酸官能基又はカルボン酸官能基を有する1以上の添加剤を含みうる。
とができる。
【0175】
そのような添加剤は、とりわけ、特許出願である、国際公開第WO2018/220007号パンフレット、国際公開第WO2018/220009号パンフレット号パンフレット、国際公開第WO2019/229173号パンフレット国際公開第WO2020/094796号パンフレット、国際公開第WO2020/094800号パンフレット及び国際公開第WO2021/089671号パンフレットにおいて記載されている。
【0176】
これらの添加剤は、特には、少なくとも下記の間の反応生成物から選択されうる:
炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸;又は、過塩基性であってもよいそれらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩;
ホウ素化合物;及び、
アミン化合物、特には、以下において詳述されている化合物から選択される。
【0177】
ヒドロキシ安息香酸タイプの化合物、及びそれらのヒドロキシ安息香酸塩
【0178】
炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸化合物は、少なくとも1つの安息香酸フラグメントを含む分子であり、ここで、該芳香環は、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有し、及び任意的に、アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル置換基を有する。それが存在する場合、炭化水素系の置換基及びヒドロキシル官能基は、酸官能基に対して且つ互いに対して、オルト位、メタ位、又はパラ位にありうる。該炭化水素系置換基は、1~50個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0179】
ヒドロキシ安息香酸化合物は、とりわけ、サリチル酸(2-ヒドロキシ安息香酸)、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、好ましくはサリチル酸、を含む。
【0180】
炭化水素系基で置換されたヒドロキシ安息香酸化合物は、例えば、モノ-(アルキル又はアルケニル)で置換されたサリチル酸、ジ-(アルキル及び/又はアルケニル)で置換されたサリチル酸、酸で官能基化されたカリックスアレーン、とりわけ、サリチル酸カリックスアレーン、及びそれらの組み合わせから選択されうる。
【0181】
好ましくは、炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸タイプの化合物は、下記の式(IX)に相当しうる。
【化21】
ここで、
Rは、直鎖状、分岐状又は環状の、1~50個の炭素原子の炭化水素系基を表し;Rは、1以上のヘテロ原子を含んでいてもよく;
aは、0、1又は2であり;好ましくは、aは1である。
【0182】
aが2である場合に、該炭化水素系基は、同一であってもよく又は異なっていてもよい。
【0183】
該炭化水素系基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基を含み、並びに任意的に、1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。炭化水素系基R中の該ヘテロ原子は、O、N、Sから選択されてもよく、例えば、-OH、-NH2若しくは-SH、又は-O-、-NH-、-N=若しくは-S-から選択されてもよい。
【0184】
好ましくは、Rは、ヘテロ原子を含まない。好ましくは、Rは、直鎖状若しくは分岐状の、1~50個の炭素原子、特には12~40個の炭素原子、より特には18~30個の炭素原子、を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し、好ましくは、直鎖状のアルキル基である。
【0185】
好ましくは、式(IX)のヒドロキシ安息香酸化合物は、サリチル酸、又は下記の式(IXA)のサリチル酸誘導体である。
【化22】
ここで、R及びaは、上記された定義を有する。
【0186】
1つの実施態様の変形に従うと、炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸タイプの化合物は、カリックスアレーン(calixarene)構造から選択されてもよい。
【0187】
本発明に従うカリックスアレーン構造は、より特には、下記の式(X)の炭化水素系基で置換されたm個のヒドロキシ安息香酸単位と、互いに連結して環を形成する下記の式(XI)のn個のフェノール単位とを含む環状構造を示す。
【化23】
ここで、
G
1は、直鎖状、分岐状又は環状の、1~50個の炭素原子の炭化水素系基を表し、並びにG
1は、1以上のヘテロ原子、特にはO、N及びSから選択される1以上のヘテロ原子、を含んでいてもよく;
好ましくは、G
1は、とりわけ12~40個の炭素原子、特には18~30個の炭素原子、を有するアルキル基及びアルケニル基、特には直線状のアルキル基、から選択され;
bは、0、1又は2であり;
Qは互いに独立して、二価の結合基を表し;
G
2、G
3、G
4及びG
5は、OH、H、又は1以上のヘテロ原子を含む1~50個の炭素原子の炭化水素系基から選択され、但し、G
2、G
3、G
4及びG
5のうちの1個又は2個はOHであり、
m及びnは、下記の条件を満たす整数である:mは1~8であり、nは少なくとも3であり、m+nは4~20、好ましくは5~12、である。
【0188】
b=2である場合に、該炭化水素系基G1は、同一であってもよく又は異なっていてもよい。
【0189】
好ましくは、該単位(X)は、下記の式(XA)の単位から選択される。
【化24】
ここで、G
1、Q及びbは、式(X)について定義されている通りである。
【0190】
好ましくは、式(XI)において、G5はヒドロキシル基である。
【0191】
有利には、式(XI)中のG2、G3、G4は互いに独立して、H、又は1~50個の炭素原子のアルキル基若しくはアルケニル基;特には、H、又は直鎖状の、1~40個の炭素原子、特には1~30個の炭素原子、より特には4~25個の炭素原子、のアルキル基を表す。
【0192】
2以上の単位(X)が存在する場合に、該単位(X)は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。該単位(XI)はカリックスアレーン分子において、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0193】
Q基は互いに独立して、-S-、及び式(CHG6)c-の基から選択されてもよく、ここで、G6は、水素原子、及び1~10個の炭素原子の炭化水素系基から選択され、並びにcは、炭素原子数の1~4の整数であり;とりわけ、各G6はHである。
【0194】
炭化水素系基で置換されていてもよいアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のヒドロキシベンゾエート化合物は、上述されたヒドロキシ安息香酸タイプの化合物のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩である。
【0195】
好ましくは、該アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム又はカリウム、特にはカリウム、である。好ましくは、該アルカリ土類金属は、カルシウム、バリウム、マグネシウム又はストロンチウム、好ましくはカルシウム、である。
【0196】
特定の実施態様に従うと、該ホウ素化合物と該アミン化合物との反応において、炭化水素系基又はそれらのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸タイプの化合物は、アルキルフェノールとの混合物として使用されてもよい。該混合物は、例えば、アルキルフェノールとアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属ヒドロキシ安息香酸若しくはヒドロキシベンゾエート化合物との混合物の全モル数に対して、50モル%以下のアルキルフェノールを含んでいてもよい。
【0197】
ホウ素化合物
【0198】
該ホウ素化合物(言い換えれば、ホウ素系化合物)は、とりわけ、ホウ酸(B(OH)3)、炭化水素系ホウ酸、ホウ酸エステル及び炭化水素系ホウ酸エステル、酸化ホウ素、並びにホウ酸錯体から選択されうる。
【0199】
特には、該ホウ素化合物は、ホウ酸;酸化ホウ素;ホウ酸錯体;トリアルキルホウ酸塩、特には、アルキル基が互いに独立して1~4個の炭素原子を含むトリアルキルホウ酸塩;C1~C12アルキル基を含むホウ酸;2個のアルキル基で置換されたホウ酸、特にはC1~C12基で置換されたホウ酸;2個のアリール基で置換されたホウ酸、特にはC6~C12基で置換されたホウ酸;1個又は2個のアラルキル基で置換されたホウ酸、特にはC7~C12基で置換されたホウ酸;並びに、少なくとも1つのアルキル基を1以上のアルコキシ基で置換することによって得られるそれらの誘導体から選択されてもよい。
【0200】
該アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状であってもよい。
【0201】
該ホウ酸錯体は特には、ホウ素と、1以上のアルコール官能基を含む1以上の分子との錯体である。
【0202】
特定の実施態様に従うと、該ホウ素化合物はホウ酸である。
【0203】
アミン化合物
【0204】
第1の実施態様の変形に従うと、該アミン化合物は、特許出願である国際公開第WO2021/089671号パンフレットにおいて記載されているような、下記の式(XII)のポリアルキルアミン化合物であってもよい:
【化25】
ここで、
a1は、0又は1を表し;
x1、y1及びz1は互いに独立して、1、2及び3から選択される整数を表し、好ましくは2又は3であり;
a1=0である場合に、R
8及びR
9は互いに独立して、C
1~C
3アルキル基を表し;
a1=1である場合に、R
8及びR
9は互いに独立して、水素原子及びC
1~C
3アルキル基から選択される基を表す。
【0205】
好ましくは、式(XII)において、x1=y1である。
【0206】
好ましくは、式(XII)において、a1=1、x1=y1=z1である。
【0207】
第1の実施態様に従うと、該ポリアルキルアミン化合物は、a1=0である式(XII)の化合物(トリアミン化合物)である。
【0208】
より特には、該ポリアルキルアミン化合物は、下記の式(XIIA)の化合物であってもよい:
【化26】
ここで、
R
8及びR
9は互いに独立して、C
1~C
3アルキル基を表し、好ましくはR
8=R
9であり;
x1及びy1は互いに独立して、1、2及び3から選択される整数、好ましくは2又は3、であり;好ましくはx1=y1であり;
式(XIIA)における炭素原子の総数は、4~10、好ましくは8、である。
【0209】
好ましくは、x1=y1=3である。
【0210】
好ましくは、R8=R9=CH3である。
【0211】
従って、式(XIIA)のジアルキルアミノポリアルキルアミンは、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)であってもよい。
【0212】
他の実施態様に従うと、該ポリアルキルアミン化合物は、a1=1である式(XII)の化合物(テトラミン化合物)である。
【0213】
より特には、該ポリアルキルアミン化合物は、下記の式(XIIB)の化合物でありうる。
【化27】
ここで、
R
8及びR
9は互いに独立して、水素原子、又はC
1~C
3アルキル基を表し;好ましくはR
8=R
9であり;特にはR
8=R
9=Hであり;
x1、y1及びz1は互いに独立して、1、2又は3に等しい整数であり、好ましくはx1=y1=z1であり、とりわけ2又は3に等しく、特には2に等しい。
【0214】
式(XIIB)のトリアルキルアミノポリアルキルアミンは、とりわけ、トリエチレンテトラミンであってもよい。
【0215】
別の実施態様の変形例に従うと、該アミン化合物は、特許出願である国際公開第WO2019/229173号パンフレット及び国際公開第WO2020/094796号パンフレットにおいて記載されているような第4級アンモニウム塩であってもよい。
【0216】
好ましくは、該アミン化合物は、4つの炭化水素系基、有利にはC1~C40のアルケニル及びアルキル基から選択される4つの炭化水素系基、を含む第4級アンモニウム塩から選択されてもよい。
【0217】
特に好ましい実施態様に従うと、該アミン化合物は、下記の式(XIII)に対応する第4級アンモニウム塩から選択される:
【化28】
ここで、
W
-は、対イオン、特には、ハロゲン、例えばCl
-、から選択される対イオンを表し;
R
10、R
11、R
12及びR
13は互いに独立して、1~40個の炭素原子を含む炭化水素系基から選択され、有利には、直鎖状、分岐状又は環状の、1~40個の炭素原子を含むアルケニル及びアルキル基から選択される。
【0218】
第1の実施態様に従うと、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して、直鎖状の、1~8個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、を含むアルキル基及びアルケニル基から選択される。
【0219】
他の実施態様に従うと、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して、直鎖状の、14~22個の炭素原子、好ましくは14~18個の炭素原子、より好ましくは16~18個の炭素原子、を含むアルキル基及びアルケニル基から選択される。
【0220】
式(XIII)の化合物は、例えば、AkzoからArquad登録商標及びEthoquad登録商標の名称で商業的に入手可能である。
【0221】
他の変形に従うと、該アミン化合物は、特許出願である国際公開第WO2018/220007号パンフレット及び同第WO2020/0947966号パンフレットに記載されているように、2又は3個のアミン官能基を含み、ここで、少なくとも1つのアミン官能基が少なくとも1つの炭化水素ベースの基で置換されており、及び任意的に、1以上のアミン官能基が少なくとも1つのモノアルコキシ基又はポリアルコキシ基で置換されている化合物から選択される。
【0222】
この変形例に従うと、好ましくは、該アミン化合物は、2個又は3個のアミン官能基を含む化合物から選択され、ここで、少なくとも1つのアミン官能基は、1~40個の炭素原子からなる少なくとも1つの炭化水素系基、有利にはC1~C40のアルキル基若しくはアルケニル基、で置換されており、並びに1以上のアミン官能基は、C2~C4のモノアルコキシ基又はポリアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0223】
特に好ましい実施態様において、該アミン化合物は、下記の式(XIV)のジアミン、又は下記式(XV)のトリアミンから選択される:
【化29】
【化30】
ここで、
X
1は、水素原子、アルキル基又はアルケニル基R
11から選択される基を表し;
Yは、水素原子、アルキル基又はアルケニル基R
13から選択される基を表し;
Z
1及びZ
2は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアルケニル基R
12を表し;
R
10、R
11、R
12及びR
13は互いに独立して、1~40個の炭素原子を含む炭化水素系基、有利には、1~40個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基、を表し;
Rd及びReは互いに独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
Z
1及びZ
2の両方は、アルキル基若しくはアルケニル基R
12を表し、Z
1及びZ
2は異なっていてもよい。
【0224】
好ましくは、式(XIII)、式(XIV)及び式(XV)において、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して、アルキル基及びアルケニル基から選択され、それら基は好ましくは、直鎖状の、4~30個の炭素原子、特には8~22個の炭素原子、とりわけ14~22個の炭素原子、好ましくは14~18個の炭素原子、より好ましくは16~18個の炭素原子、を含む。
【0225】
特定の実施態様に従うと、R10基、R11基、R12基及びR13基は同一である。
【0226】
式(XIV)及び式(XV)において、Rd及びReは好ましくは、直鎖状の、特には2~4個の炭素原子を含むアルキル基及びアルケニル基、好ましくは直鎖状のアルキル基、から選択される。
【0227】
有利には、Rd及びReは、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-CH2-及び-CH2-CH2-CH2-から選択される。
【0228】
特定の実施態様に従うと、式(XIV)のアミン化合物は、下記の式(XIVA)の化合物である:
【化31】
ここで、R
10及びX
1は、式(XIV)について以前に定義されている通りであり、及びx2は、2、3又は4である。
【0229】
特定の実施態様に従うと、式(XV)のアミン化合物は、下記の式(XVB)の化合物である:
【化32】
ここで、
R
10及びX
1は、式(XV)について以前に定義されている通りであり;
x2は、2、3又は4であり;y2は、2、3又は4である。
【0230】
他の実施態様に従うと、該アミン化合物は、特許出願である国際公開第WO2018/220009号パンフレット及び同第WO2020/094800号パンフレットにおいて記載されているように、2つのアルキル及び/又はアルケニル脂肪鎖で置換されたポリアルキルアミンの組み合わせから選択されてもよい。
【0231】
該ポリアルキルアミンの組み合わせは、より特には、以前に記載されているように、式(III)若しくは式(IV)の1以上のポリアルキルアミン、又はそれらの誘導体を含む。
【化33】
ここで、
R
6及びR
7は互いに独立して、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、4~30個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、より特には14~18個の炭素原子、好ましくは16~18個の炭素原子、を含むアルキル基若しくはアルケニル基を表し;
n及びzは互いに独立して0、1、2又は3を表し;並びに、
zが0以外の場合に、o及びpは互いに独立して、0、1、2又は3であり;
ここで、ポリアルキルアミンの組み合わせが、式(III)と式(IV)のポリアルキルアミンの組み合わせの総質量に対して、少なくとも3質量%、特には少なくとも5質量%、とりわけ7質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より特には少なくとも20質量%、の分岐のポリアルキルアミンを含む。
【0232】
語「分岐状」は、式(III)のポリアルキルアミンの場合に、n及びzのうちの少なくとも1つが1以上であること、及び式(IV)のポリアルキルアミンの場合に、nが1以上であることを意味する。
【0233】
好ましくは、ポリアルキルアミンの混合物は、n、o、p及びzが互いに独立して、0、1若しくは2、好ましくは0若しくは1、であるところの式(III)若しくは式(IV)の化合物を含むか、又はさもなければそれらからなる。
【0234】
式(III)及び式(IV)において、R6及びR7は、好ましくは同一であり、動物油及び植物油、特には先に記載されているもの、特には獣脂(tallow oil)、ヤシ油及びパーム油、好ましくは獣脂、から誘導されうる。
【0235】
そのようなアミンは、例えばAkzo社からTetrameen登録商標 2HBTの商品名で商業的に入手可能である。
【0236】
反応生成物
【0237】
従って、先に示されているように、本発明に従う潤滑油組成物において「TBNブースター」添加剤として使用される化合物は、上述されているように、少なくとも1つの炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸又はそれらのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、少なくとも1つのホウ素化合物、及び少なくとも1つのアミン化合物の反応生成物でありうる。
【0238】
該反応は、例えば、ヒドロキシ安息香酸化合物又はヒドロキシベンゾエート化合物とホウ素化合物とを所望の比で、適切な溶媒の存在下で一緒にすることにより行われうる。適切な溶媒としては、例えばナフサ、並びに極性溶媒、例えば、水及びアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、でありうる。
【0239】
有利には、該反応は、ヒドロキシ安息香酸化合物とホウ素化合物とのモル比が30:1~1:30、好ましくは15:1~1:5、とりわけ10:1~1:5、より特には5:1~1:2、さらにより好ましくは4:1~1:1、の範囲で行われる。
【0240】
十分な時間の後、該ホウ素化合物は溶解される。次に、該アミン化合物が上記の組み合わせ物にゆっくりと加えられ、中和、そして所望の反応生成物の形成をもたらす。
【0241】
有利には、該アミン化合物は、アミン化合物に対するヒドロキシ安息香酸化合物のモル比が、30:1~1:30、とりわけ10:1~1:5、好ましくは15:1~1:5、より好ましくは5:1~1:2、より好ましくは4:1~1:1、になるような量で添加される。
【0242】
有利には、該アミン化合物は、ホウ素化合物/アミン化合物のモル比が、20:1~1:20、好ましくは10:1~1:10、より好ましくは5:1~1:5、より好ましくは2:1~1:2、になるような量で添加される。
【0243】
該反応は、反応媒体を、約20℃~約100℃、例えば約50℃~約75℃、の温度に、一般的に0.5時間~5時間、より好ましくは1時間~4時間、維持することによって実施されうる。
【0244】
結果として得られた生成物は、本発明に従う潤滑油組成物中にそのまま使用されうる化合物の複雑な組み合わせを含む。
【0245】
好ましくは、該生成物は、少なくとも1つアルカリ金属又はアルカリ土類金属のヒドロキシ安息香酸、又は炭化水素系基で置換されていてもよいヒドロキシ安息香酸又はヒドロキシベンゾエート化合物、少なくとも1つのホウ素化合物及び少なくとも1つのアミン化合物、並びに任意的にアルキルフェノールからなる試薬(1以上の溶媒を含まない)の混合物の反応の結果として生じる。
【0246】
TBNを向上させる他の塩基性有機添加剤、例えば、スクシンイミドタイプの分散剤、又はさもなければ窒素系の有機分散剤、がまた、本発明に従って考慮されていてもよい。
【0247】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物において使用される1以上の「TBNブースター」添加剤は、1以上のポリアルキルアミンからなる。代替的には、特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、特に上述されているように、ポリアルキルアミンタイプの添加剤以外の「TBNブースター」添加剤を含まない。
【0248】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、
60質量%~99.8質量%、特には70質量%~90質量%、の1以上のベース油;
0.01質量%~0.8質量%、特には0.05質量%~0.5質量%、の1以上のカルボジイミド添加剤、特には、先に定義されている1以上のカルボジイミド添加剤;
該組成物の全塩基価(TBN)を改善させる為の、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~7質量%、より特には1質量%~5質量%、の少なくとも1つの塩基性有機添加剤、特には1以上のアミン添加剤、好ましくは、先に定義されている1以上のポリアルキルアミンを含む1以上のアミン添加剤
を含んでいてもよく、又はさもなければそれらからなっていてもよく、
ここで、該含有量は、該潤滑油組成物の全質量に対して表される。
【0249】
他の添加剤
【0250】
本発明に従う潤滑油組成物は、以下の本明細書において詳述されているように、潤滑油の意図される使用の為に適した任意のタイプの添加剤、例えば、移動式及び固定式の為のガス動力駆動システム(gas-powered drive systems)、高馬力駆動システム(heavy-duty drive systems)、4ストローク船舶用駆動システム(four-stroke marine drive systems)等における使用の為に適した任意の添加剤、を含みうる。
【0251】
特には、硫酸塩灰分の少ない潤滑油を製剤化することが求められる場合に、該添加剤は、潤滑油組成物の硫酸塩灰分に大きな影響を与えないように選択される。
【0252】
これらの添加剤は、個別に、及び/又は添加剤混合物、例えば、当業者に周知であるACEA(Association des Constructeurs Europeens d'Automobiles)及び/又はAPI(American Petroleum Institute)によって定義されているような性能レベルを有する、乗り物のエンジンの為の市販の潤滑油配合物の為に既に販売されているような添加剤混合物、の形態で、導入されうる。
【0253】
これらの添加剤は、TBNを向上させる1以上の該塩基性有機添加剤と異なり及び該1以上のカルボジイミド添加剤と異なり、とりわけ、金属洗剤剤、摩擦調整添加剤、耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤、抗酸化剤、粘度指数(VI:viscosity index)向上剤(improvers)、流動点降下剤(PPD:pour point depressants)、分散剤、消泡剤、増粘剤、腐食防止剤、銅不動態化剤並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0254】
有利には、本発明に従う潤滑油組成物は、粘度指数向上剤、流動点降下剤、耐摩耗性添加剤、抗酸化剤及びそれらの組み合わせから選択される1以上の添加剤を含む。
【0255】
金属洗剤添加剤
【0256】
金属洗剤剤は、当業者に知られている。一般的に、それらは長い親油性の炭化水素系鎖と親水性の頭部とを含むアニオン性化合物であり、ここで、関連付けられたカチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属カチオンでありうる。
【0257】
これらは一般的に、カルボン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、スルホン酸塩、サリチル酸塩及びナフテン酸塩、並びにまた、フェノキシド塩から選択される。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は好ましくは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はバリウムである。
【0258】
これらの金属塩は一般的に、化学量論的量(従って、それらは非過塩基(non-overbased)又は「中性」(neutral)洗浄剤と呼ばれる)における金属、又はさもなければ、過剰、従って、化学量論的量よりも多い量、における金属を含む。これらは過塩基性の洗剤添加剤である:該洗剤添加剤に過塩基性を与える過剰の金属は一般的に、ベース油中に不溶性である金属塩、例えば炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩又はグルタミン酸塩、の形態であり、好ましくは炭酸塩である。
【0259】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、過塩基性洗剤及び/又は中性洗剤から選択される少なくとも1の金属洗剤添加剤を含む。
【0260】
特には、該過塩基性洗浄剤及び/又は中性洗浄剤は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びバリウムから選択される金属ベースの化合物であり、優先的にはカルシウムベース又はマグネシウムベースである。
【0261】
好ましくは、該過塩基性洗剤は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩の群から選択される不溶性金属塩、好ましくは炭酸カルシウム、で過塩基性である。
【0262】
本発明に従う潤滑油組成物中に使用される過塩基性洗浄剤は特には、炭酸カルシウムで過塩基性化された、フェノキシド、スルホネート、サリシレート、及び混合洗浄剤(フェノキシド-スルホネート-サリシレート)から選択されることができ、より特には、炭酸カルシウムで過塩基性化された、スルホネート及びフェノキシドから選択されることができる。
【0263】
本発明に従う潤滑油組成物は、該潤滑油組成物の全質量に対して、15質量%未満の1以上の金属洗浄剤、とりわけ10質量%未満、より特には0.5質量%~5質量%、とりわけ2質量%未満、の1以上の金属洗浄剤を含んでいてもよい。
【0264】
該1以上の金属系洗浄剤の含有量を下げることにより、有利には、「LOW SAPS」潤滑油組成物の仕様を満たすことが可能である。
【0265】
従って、有利には、本発明に従う潤滑油組成物は、1.3質量%以下、特には1質量%以下、より特には0.8質量%以下、の規格ASTM D-874に従って決定される硫酸塩灰分を有する。
【0266】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、
60質量%~99質量%、特には70%~90質量%、の1以上のベース油;
0.01質量%~0.8質量%、特には0.05質量%~0.5質量%、の1以上のカルボジイミド添加剤、特には、先に定義されている1以上のカルボジイミド添加剤;
該組成物の全塩基価(TBN)を改善させる為の、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~7質量%、より特には1質量%~5質量%、の少なくとも1つの塩基性有機添加剤、好ましくは、先に定義されている1以上のポリアルキルアミンを含む1以上のアミン添加剤;
0.5%~10質量%、特には0.5%~5質量%、の1以上の金属洗剤添加剤、特には、先に記載された過塩基性洗浄剤及び/又は中性洗浄剤から選択される1以上の金属洗剤添加剤
を含んでいてもよく、又はさもなければそれらからなっていてもよく、
ここで、該含有量は、該潤滑油組成物の全質量に対して表される。
【0267】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、少なくとも1つの摩擦調整添加剤を含んでいてもよい。
【0268】
該摩擦調整添加剤は、金属元素を提供する化合物及び無灰化合物から、好ましくは無灰化合物から、選択されてもよい。
【0269】
金属元素を提供する化合物のうち、遷移金属、例えば、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu又はZn、錯体が挙げられ得、ここで、その配位子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を含む炭化水素系化合物であってもよい。
【0270】
有利には、該摩擦調整添加剤は、無灰化合物、一般的に有機起源の無灰化合物、から選択され、より特には、ポリオールの脂肪酸モノエステル、アルコキシル化されたアミン;アルコキシル化された脂肪アミン;脂肪エポキシド;ボレート脂肪エポキシド;脂肪アミン;又は、グリセロールの脂肪酸エステルから選択されうる。本発明に従うと、該脂肪化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素系基を含む。
【0271】
有利な変形例に従うと、潤滑油組成物は、少なくとも1つの摩擦調整添加剤、特には、モリブデンをベースとする少なくとも1つの摩擦調整添加剤、を含む。
【0272】
特には、モリブデン系化合物は、モリブデンジチオカルバメート(Mo-DTC:molybdenum dithiocarbamates)、モリブデンジチオホスフェート(Mo-DTP:molybdenum dithiophosphates)、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0273】
有利には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、該潤滑油組成物の全質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より特には0.1質量%~2質量%、又は更により特には0.1質量%~1.5質量%、の摩擦調整添加剤を含んでいてもよく、有利には少なくとも1つのモリブデン系摩擦調整添加剤を含む摩擦調整添加剤を含んでいてもよい。
【0274】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、少なくとも1つの抗酸化添加剤を含んでいてもよい。抗酸化添加剤は本質的に、使用中の潤滑油組成物の劣化を遅延させることに特化している。この劣化は、とりわけ、堆積物の形成、スラッジの存在、又は潤滑油組成物の粘度における増加によって反映されうる。それらは、とりわけ、フリーラジカル阻害剤又はヒドロペルオキシド破壊剤として作用する。
【0275】
一般的に使用される抗酸化剤のうち、フェノール系抗酸化添加剤、アミン系抗酸化添加剤、及びホスホ-硫黄-系抗酸化添加剤が挙げられうる。これらの抗酸化添加剤の一部、例えばホスホ-硫黄-系抗酸化剤は、灰発生剤(ash generators)であってもよい。フェノール系抗酸化添加剤は無灰であってもよく、又は中性若しくは塩基性金属塩の形態であってもよい。該抗酸化添加剤は、とりわけ、立体障害フェノール;立体障害フェノールエステル;及びチオエーテル橋を含む立体障害フェノール;ジフェニルアミン;少なくとも1つのC1~C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン;N,N'-ジアルキル-アリール-ジアミン;及びそれらの組み合わせから選択されうる。
【0276】
好ましくは、該立体障害フェノールは、アルコール官能基を有する炭素の近傍にある少なくとも1つの炭素が、少なくとも1つのC1~C10アルキル基、好ましくはC1~C6アルキル基、好ましくはC4アルキル基、好ましくはtert-ブチル基、で置換されているフェノール基を含む化合物から選択される。
【0277】
アミン化合物は、任意にフェノール系抗酸化添加剤と組み合わせて、使用されうる別のクラスの抗酸化剤添加剤である。アミン化合物の例は、芳香族アミン、例えば式NR8R9R10の芳香族アミンであり、ここで、R8は、置換されていてもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R9は、置換されていてもよい芳香族基を表し、R10は、水素原子、アルキル基、アリール基、又は式R11S(O)Rz
12の基を表し、ここで、R11は、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、R12は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、及びzは0、1又は2を表す。
【0278】
硫化アルキルフェノール、又はそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩がまた抗酸化剤として使用されてもよい。
【0279】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、当業者に既知の任意のタイプの抗酸化添加剤を含んでいてもよい。有利には、該潤滑油組成物は、少なくとも1つの無灰抗酸化添加剤を含む。
【0280】
有利にはまた、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、該組成物の全質量に対して、0.1質量%~2質量%の少なくとも1つの抗酸化添加剤を含んでいてもよい。
【0281】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、少なくとも1つの流動点降下剤(PPD:pour-point depressant)を含んでいてもよい。パラフィン結晶の形成を遅らせることによって、流動点降下添加剤は一般的に、潤滑油組成物の低温挙動を向上させる。
【0282】
流動点降下剤の例は、ポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン及びポリアルキルスチレンを包含しうる。
【0283】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物はまた、少なくとも1つの分散剤を含んでいてもよい。該分散剤は、潤滑油組成物が使用されているときに形成される酸化副生成物によって構成される懸濁液中の保持及び不溶性固体汚染物の除去を確実にする。それらは、マンニッヒ塩基、スクシンイミド及びそれらの誘導体から選択されうる。
【0284】
特には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、該組成物の全質量に対して、0.2質量%~10質量%の1以上の分散剤を含んでいてもよい。
【0285】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物はまた、少なくとも1つの粘度指数(VI)エンハンサー(enhancer)を含んでいてもよい。該粘度指数(VI)エンハンサー、特には粘度指数エンハンシングポリマー(viscosity index-enhancing polymer)、は、良好な低温挙動及び高温での最小粘度を確保することを可能にする。言及されうる粘度指数エンハンシングポリマーの例は、ポリマーエステル;スチレン、ブタジエン及びイソプレンの水素添加された又は水素添加されていないホモポリマー又はコポリマー;オレフィンのホモポリマー又はコポリマー、例えば、エチレン又はプロピレン;ポリアクリレート;及びポリメタクリレート(PMA)を包含する。
【0286】
特には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、該潤滑油組成物の全質量に対して、1質量%~15質量%の1以上の粘度指数エンハンシング添加剤を含んでいてもよい。
【0287】
本発明に従って考慮される潤滑油組成物はまた、少なくとも1つの消泡添加剤を含んでいてもよい。該消泡添加剤は、極性ポリマー、例えば、ポリメチルシロキサン又はポリアクリレート、から選択されてもよい。
【0288】
特には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、該潤滑油組成物の全質量に対して、0.01質量%~3質量%の1以上の消泡添加剤を含んでいてもよい。
【0289】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑油組成物は、
ベース油、又はベース油の組み合わせ;
1以上のカルボジイミド添加剤、特には、先に定義されている1以上のカルボジイミド添加剤;
該潤滑油組成物のTBNを増加させる為の1以上の塩基性有機添加剤、特には、前述されている1以上のポリアルキルアミンを含む1以上の塩基性有機添加剤;
任意的に、1以上の添加剤、該添加剤は、TBNを向上させる1以上の該塩基性有機添加剤と異なり及び該1以上のカルボジイミド添加剤と異なり、金属洗剤添加剤、摩擦調整剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、抗酸化剤、粘度指数(VI)向上剤、流動点降下剤(PPD)、分散剤、消泡剤、増粘剤、腐食防止剤、銅不動態化剤、及びそれらの組み合わせから選択される
を含むか、又はさもなければそれらからなる。
【0290】
好ましくは、本発明に従って配合される潤滑油組成物は、
60%~99質量%の1以上のベース油;
0.01%~0.8質量%、特には0.05%~0.5質量%、の1以上のカルボジイミド添加剤、特には、先に定義されている1以上のカルボジイミド添加剤;
該組成物の全塩基価(TBN)を改善させる為の、0.1%~10質量%、好ましくは0.5%~7質量%、より特には1%~5質量%、の少なくとも1つの塩基性有機添加剤、特には、先に定義されている1以上のポリアルキルアミンを含む1以上のアミン添加剤;
任意的に、1%~30質量%、好ましくは5%~20質量%、の1以上の他の添加剤、該添加剤は、TBNを向上させる1以上の該塩基性有機添加剤と異なり及び該1以上のカルボジイミド添加剤と異なり、金属洗剤添加剤、摩擦調整添加剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、抗酸化剤、粘度指数(VI)向上剤、流動点降下剤(PPD)、分散剤、消泡剤、増粘剤、腐食防止剤、銅不動態化剤、及びそれらの組み合わせ
を含むか、又はさもなければそれらからなり、
ここで、該含有量は、該潤滑油組成物の全質量に対して表される。
【0291】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う潤滑剤組成物は、規格ASTM D445に従って40℃で測定した、220mm2/秒~50mm2/秒、好ましくは25mm2/秒~40mm2/秒、の動粘度を有しうる。
【0292】
より有利には、本発明に従う潤滑油組成物は、規格ASTM D445に従って100℃で測定した、2mm2/秒~20mm2/秒、好ましくは4mm2/秒~15mm2/秒、の動粘度を有しうる。
【0293】
本発明に従うカルボジイミド化合物の使用及びそれを含む潤滑油組成物に関する全ての特定の特徴及び実施態様はまた、本発明に従って対象とされる使用、プロセス及び方法に適用される。
【0294】
用途
【0295】
先に示されているように、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、様々な移動式又は固定式の駆動システムの為に意図されうる。
【0296】
特には、本発明は、該潤滑剤に曝露されるエラストマー材料、例えばエラストマーシール、を含む駆動システムにおける使用の為に特に有利である。
【0297】
従って、本発明の別の観点に従うと、本発明は、駆動システム、特には移動式又は固定式の駆動システム、を潤滑する為の、エラストマーとの潤滑剤組成物の適合性を向上させる為の添加剤として、1以上のカルボジイミド添加剤を組み込んだ、先に定義されたような組成物の使用に関する。
【0298】
本発明に従う潤滑油組成物は、とりわけ、駆動システム、例えば内燃機関、例えばディーゼルエンジン又はガスエンジン、を包含する上記の駆動システムの為のものであることが意図されうる。
【0299】
該駆動システムは、とりわけ、ディーゼルエンジン、典型的には高馬力ディーゼルエンジン、船舶用エンジン、ガソリンエンジン、ガスエンジン、又はアンモニアエンジンを備えていてもよい。
【0300】
これらは、小型乗り物、大型乗り物又はボートの為の駆動システムでありうる。
【0301】
特には、本発明に従って考慮される潤滑油組成物は、移動式又は固定式のガス駆動システムの為の潤滑油、とりわけ天然ガス(LNG又はCNG)エンジン、水素エンジンだけでなく、ガス/ガソリンデュアル燃料エンジン又はガス/ディーゼルデュアル燃料エンジンの為の潤滑油でありうる。
【0302】
該潤滑油組成物は、4ストロークの高馬力駆動システム又は船舶用駆動システムの為に使用されうる。
【0303】
特には、本発明に従う潤滑油組成物は、2ストローク船舶用エンジンとは異なる駆動システムの為に使用される。
【0304】
該潤滑油組成物は、ガスエンジン、とりわけ、再生可能な起源のガス、例えば不純物を含んだガス、で運転され、高レベルのTBNを有する潤滑油を使用することが重要であるところのガスエンジン、を有する駆動システムの為に特に有利な用途が見出されうる。
【0305】
該潤滑油組成物はまた、特には、高馬力駆動システム、例えばトラック、の潤滑の為に適していてもよい。該潤滑油組成物は、排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)システムを備えた高馬力ディーゼルエンジンの為にまた適している。そのようなシステムは、これらのエンジンの環境排出を削減する為に使用されうる。
【0306】
EGRを備えたディーゼルエンジンでは、排気ガスから潤滑油に伝達される酸性燃焼生成物の負荷が高くなる可能性があり、従って、これらの酸を中和することを実行する為にTBNの高いレベルを有する潤滑油が望まれる場合が多い。
【0307】
本発明は、以下の実施例によってここで説明されるが、これらは本発明の非限定的な例示として与えられるものである。
【0308】
実施例
【0309】
エラストマーとのエンジン潤滑油の適合性が、規格CEC L-112-16に従って評価される。この試験は、4つのタイプのエラストマー物質(RE6:フッ素エラストマー;RE7:ポリアクリレート;RE8:ニトリル;及びRE9:エチレンアクリル)が潤滑油に曝露されたときの性能を調べる。
【0310】
基準潤滑油は、基準NATERIA MJ 40という名称の下に販売されている潤滑油であり、固定式ガスエンジンの潤滑の為に意図されている。
【0311】
配合物C1、I1、I2及びI3は、基準潤滑剤に下記を補充することによって調製される:
ポリアルキルアミンタイプの塩基性有機添加剤:
DMAPAPAとして知られているN,N'-ジメチルジプロピレントリアミン(配合C1、配合I1及び配合I2)、該基準潤滑油の質量に対して、0.5質量%の含有量;又は、
TMDPTとして知られているN,N,N',N'-テトラメチルジプロピレントリアミン(配合I3)、該基準潤滑油の質量に対して、0.7質量%の含有量;並びに、
配合I1、配合I2及び配合I3の場合にも、本発明に従うカルボジイミド添加剤(N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド)を有し、2つの市販品であるカルボジイミド1及びカルボジイミド2の形態で、該基準潤滑油の全質量に対して、1質量%又は2質量%の市販品の質量含有量で導入された。
【0312】
該基準潤滑油に、並びに各々の潤滑油組成物C1、I1、I2及びI3に暴露されたときに、規格CEC L-112-16に従って様々なエラストマー物質で実施された試験に従って、体積変化(volumetric variation)、引張強さにおける変化(variation in tensile strength)及び破断伸び(elongation at break)の点で得られた結果が、下記の表においてまとめられている。
【0313】
【0314】
該結果は、潤滑剤にカルボジイミド添加剤を加えることにより、ポリアルキルアミン添加によるエラストマー適合性への悪影響を、とりわけエラストマー物質の破断伸び特性に対する潤滑剤の影響に関して、打ち消すことができることを示す。
【0315】
従って、本発明に従うカルボジイミド添加剤を潤滑剤に添加することにより、様々なエラストマーとの良好な潤滑適合性が与えられ、アミン添加剤の存在下でも同様である。
【国際調査報告】