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特表2024-537254対をなすヘテロ原子を有するゼオライト触媒及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】対をなすヘテロ原子を有するゼオライト触媒及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20241003BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 39/04 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01J37/08
B01J37/02 301C
C01B39/04
F01N3/10 A
F01N3/28 301E
F01N3/28 301F
F01N3/24 E
F01N3/28 301D
F01N3/08 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521262
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022079261
(87)【国際公開番号】W WO2023081789
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/263,599
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュミットホースト、マイケル ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】プラサド、スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】チメルカ、ブラッドリー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】モイニ、アハマド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッティパリ、ヴィヴェック
【テーマコード(参考)】
3G091
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091AB15
3G091BA14
3G091CA17
3G091GA06
3G091GB01X
3G091GB09W
3G091GB17X
3G091HA09
3G091HA10
3G091HA12
4G073BA04
4G073BA63
4G073CZ03
4G073CZ17
4G073FA11
4G073FB19
4G073FB30
4G073FE02
4G073GA40
4G073UA05
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA14
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BE17C
4G169CA03
4G169CA08
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4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EC03Y
4G169EC04Y
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4G169EC27
4G169ED05
4G169ED06
4G169EE09
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB23
4G169FB30
4G169FC08
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA32A
4G169ZB03
4G169ZB08
4G169ZB09
4G169ZC04
4G169ZC10
4G169ZD06
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒に関する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、例えば、ゼオライト構造中の2つの骨格アルミニウム原子の、骨格中の第3の最近接(3NN)相対位置における位置決めを含む。ゼオライト触媒は、2つの四面体配位Si部位によって分離されている2つの四面体配位Al部位を有する。本開示はまた、それらの特徴付け及び使用のためのプロセス及び方法も対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒であって、前記対をなすアルミニウム原子が、ゼオライト構造中の第3の最近接(3NN)であり、前記ゼオライト触媒が、エージング耐久性、改善された触媒活性、又はそれらの組み合わせを有する、ゼオライト触媒。
【請求項2】
前記ゼオライト触媒が、CHAゼオライト触媒である、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項3】
前記CHAゼオライト触媒が、銅-CHA触媒である、請求項2に記載のゼオライト触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトが、小細孔ゼオライトである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記小細孔ゼオライトが、AEIである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトが、AFXである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記小細孔ゼオライトが、AFTである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記ゼオライト触媒が、2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ NMRを使用して測定した場合、単一量子(SQ)次元において-104ppm~-108ppm及び二重量子(DQ)次元において-208~-212ppmの範囲の29Si NMRシグネチャを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のゼオライト触媒。
【請求項9】
前記ゼオライト触媒が、2D27Al{29Si}J-HMQC NMRを使用して測定した場合、29Si次元において-98ppm~-100ppm及び27Al次元において55~60ppmの範囲のNMRシグネチャを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のゼオライト触媒。
【請求項10】
前記エージング耐久性が、800℃の熱水エージング後であり、前記ゼオライト触媒が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、10%高いNO変換を呈する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項11】
エージ耐久性が、850℃の熱水エージング後であり、前記ゼオライト触媒が、少なくとも50%のNO変換を呈する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項12】
メタノール二量化のための前記ゼオライト触媒の前記改善された触媒活性が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、おおよそ10%高い変換を有する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項13】
前記ゼオライト触媒が、8~40、10~30、及び11~25から選択されるSiO/Al比(SAR)を有する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項14】
前記ゼオライト触媒が、0.2~0.5、0.25~0.45、及び0.3~0.4から選択されるCu/Al比に対応するCu含有量を有する銅(Cu)を更に含む、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項15】
リーンバーンエンジン排気ガスから窒素酸化物(NO)を減少させるために有効な触媒物品であって、請求項1に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒を有する基材キャリアを含む、触媒物品。
【請求項16】
前記基材キャリアが、ハニカム基材であり、任意選択的に、金属又はセラミックから構成されている、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
ハニカム基材キャリアが、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項18】
排気ガス処理システムであって、
排気流を生成するリーンバーンエンジンと、
前記リーンバーンエンジンの下流に位置決めされ、かつ前記排気ガス流と流体連通している、請求項15に記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【請求項19】
以下:
a.前記触媒物品の上流に位置決めされたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.前記触媒物品の上流に位置決めされたすすフィルタ、
及び
c.前記触媒物品の下流に位置決めされたアンモニア酸化触媒(AMOX)、のうちの1つ以上を更に備える、請求項18に記載の排気ガス処理システム。
【請求項20】
選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒を調製することと、
(b)前記触媒をセラミック又は金属ハニカム基材モノリス上にコーティングとして適用することと、
(d)前記コーティングされたモノリスを乾燥させることと、
(e)前記コーティングされたモノリスを400℃~800℃の範囲の温度で焼成することと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月5日に出願された米国特許出願第63/263,599号に対する優先権を主張するものであり、本開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒に関する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、すなわち、ゼオライト構造中の2つのアルミニウム原子の3NN相対位置における位置決めを含む。ゼオライト触媒は、2つの四面体Si部位によって分離されている2つの四面体Al部位を有する。本開示は、それらの特徴付け及び使用のためのプロセス及び方法も対象とする。
【0003】
ゼオライトなどのモレキュラーシーブは、アンモニア、尿素又は炭化水素などの還元剤を用いた窒素酸化物(NO)の選択的触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)において利用されてきた。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ並びにゼオライト格子中に含まれるカチオンのタイプ及び数に依存して、直径約3~約25オングストロームの範囲であるかなり均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。8員環細孔開口部及び二重6員環二次構造単位を有するゼオライト、例えば、かご状構造を有するゼオライトが、SCR触媒として関心対象である。環の数は、ゼオライト骨格の相互連結環におけるほぼ四面体配位した原子の数を指す。このカテゴリーに含まれるのは、チャバザイト(chabazite、CHA)結晶構造を有するゼオライトであり、これは8員環細孔開口部(約3.8オングストローム)を有する小細孔ゼオライトであり、その三次元多孔性によってアクセス可能である。かご様構造は、4員環による二重6員環構成単位の連結から生じる。
【0004】
チャバザイト(CHA)ゼオライト触媒は、NOの選択的触媒還元(SCR)に関心を集めている。Alの量は、ゼオライト骨格の反応特性及び安定性に対して役割を有し得るが、現在、ゼオライト骨格内に位置するAlを決定するための直接的な証拠を提供する方法はなく、Alの分布がどの種類の役割及びどの程度反応特性に影響を与えるかは不明である。
【0005】
金属で促進されたゼオライト触媒はまた、多くの場合、イオン交換されたゼオライト又は銅及び/若しくは鉄で担持されたゼオライトとも呼ばれ、とりわけ、アンモニアによる窒素酸化物のSCRのための銅で促進されたゼオライト触媒及び鉄で促進されたゼオライト触媒が知られており、典型的には、金属イオン交換プロセスを介して調製することができる。しかしながら、過酷な熱水条件下では、多くの金属促進ゼオライトの活性が低下し始めることが見出されている。この活性の低下は、ゼオライト内の金属含有触媒部位の脱アルミニウム化又は還元などによるゼオライトの不安定化によるものと考えられる。
【0006】
SCRプロセスにおいて使用される触媒は、理想的には、熱水条件下で、広範囲の使用温度条件、例えば、約150℃~約600℃以上にわたって高い触媒活性を保持することができるはずである。水は、燃料燃焼の副生成物であり、高温の熱水条件は、炭素質粒子の除去のために使用される排気ガス処理システムの構成要素である、すすフィルタの再生中など、ディーゼル排気用途において生じるので、熱水条件は、現実的に遭遇する。
【0007】
SCRプロセスは、窒素酸化物(NO)を窒素(N)及び水(HO)に変換する。望ましくないNOの形成を最小限に抑えながら、内燃エンジン排気流内でNへのNOの選択的変換が発生することが所望される。望ましくないNO形成は、NOへの(NO+NO)のモルパーセント変換として観察され得る。窒素酸化物(NO)は、NO、NO、N、NO、N、N、又はNOを含み得る。
【0008】
アルミノシリケートゼオライトなどのゼオライトは、それらの高い表面積、明確に画定されたサブナノメートル細孔、及びカチオン交換部位が、炭化水素変換又は汚染低減のための触媒用途を可能にするので、かなりの技術的関心対象である。ゼオライトの触媒特性は、それぞれSiO四面体に対するAlO四面体の非化学量論的置換から生じ、これは交換可能なカチオンによって釣り合わされる負の骨格電荷を導入する。フォージャサイト(Yゼオライト)及びチャバザイト(CHA、ゼオライトSSZ-13)などのアルミノシリケートゼオライトは、それらの固体酸(H)形態において、クラッキング又はメタノールの軽質オレフィンへの変換を含む炭化水素転位反応のための不均一触媒として高度に活性である。それらの金属交換形態において、アルミノシリケートゼオライトは、犠牲還元剤(sacrificial reductant)の存在下で、NO化合物をN及びHOに変換することによって自動車排気流中のNO排出を低減する触媒として関心対象である。この用途のための金属交換形態の例としては、銅及び鉄が挙げられる。異なる銅交換ゼオライトは、非常に異なる反応性を呈し、これについては原子レベルではほとんど知られていない。かかる相違の理由の中には、多くの場合、触媒的に重要な部位である交換可能なカチオンの分布に直接影響を及ぼす、アルミニウムなどの骨格ヘテロ原子の別個の局所組成及び原子環境がある。触媒活性及び選択性に対する骨格ヘテロ原子環境の影響を測定及び理解することは、従来の散乱又は分光技術による詳細な分析を妨げるゼオライト骨格内のヘテロ原子の無秩序な分布に部分的に起因して、困難であった。比較すると、固相核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光測定は、アルミノシリケートゼオライト中のNMR活性種(例えば、H、27Al、及び29Si)の局所的化学環境に敏感である。固相NMR分光法を使用して、異なる種類の27Al及び29Si種を同定し、交換可能な銅カチオンを含む、それらの相対量及び近接性を確立することができる。
【0009】
例えば、メタノール又はプロパノールをオレフィンに変換するために、より高い熱水安定性を有する改善されたゼオライト触媒を調製することが望まれている。追加的に、より高い触媒活性及び選択性を有する改善されたゼオライト触媒を調製することが望まれている。本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒を提供する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、すなわち、2つのSi四面体部位によって分離されているゼオライト構造中の部位における、かつ第3最近接(third-nearest-neighbor、3NN)相対位置における、2つの四面体配位アルミニウム原子の位置決めを含む。本開示はまた、それらの特徴付け及び使用のためのプロセス及び方法も対象とする。
【0010】
本開示は、概して、対をなす骨格アルミニウム原子を有するゼオライト触媒であって、対をなすアルミニウム原子が、ゼオライト構造中の第3の最近接(3NN)であり、ゼオライト触媒が、エージング耐久性、改善された触媒活性、又はそれらの組み合わせを有する、ゼオライト触媒を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、CHAゼオライト触媒である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、CHAゼオライト触媒であり、CHAゼオライト触媒は、銅-CHA触媒である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒組成物のゼオライトは、小細孔ゼオライトである。
【0014】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒組成物の小細孔ゼオライトは、AEIゼオライト骨格タイプである。
【0015】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒組成物の小細孔ゼオライトは、AFXゼオライト骨格タイプである。
【0016】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒組成物の小細孔ゼオライトは、AFTゼオライト骨格タイプである。
【0017】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、2D29Si-29Si J媒介NMRを使用して測定した場合、単一量子(single quantum、SQ)次元で-104ppm(すなわち、Hz/10Hz)~-108ppm及び二重量子(double quantum、DQ)次元で-208~-212ppmの範囲の29Si信号を呈する29Si NMRシグネチャを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、固相2D27Al{29Si}J媒介異核多量子相関(heteronuclear multiple-quantum correlation、HMQC)NMRを使用して測定した場合、29Si次元において-98ppm~-100ppm、27Al次元において55~60ppmの範囲の29Si NMRシグネチャを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、800℃の熱水エージング後にエージング耐久性を呈し、ゼオライト触媒は、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、10%高いNO変換を呈する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、850℃の熱水エージング後にエージ耐久性を呈し、ゼオライト触媒は、少なくとも50%のNO変換を呈する。
【0021】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、おおよそ10%高い変換で、メタノール二量体化に対するゼオライト触媒の改善された触媒活性を呈する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、8~40、10~30、又は11~25から選択されるSiO/Al比(SiO2/Al2O3 ratio、SAR)を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、ゼオライト触媒は、0.2~0.5、0.25~0.45、又は0.3~0.4から選択されるCu/Al比に対応するCu含有量を有する銅(Cu)を更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、触媒物品は、リーンバーンエンジン排気ガスから窒素酸化物(NO)を減少させるために有効であり、触媒物品は、ゼオライト触媒を含む選択的触媒還元(SCR)触媒を有する基材キャリアを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、SCR触媒において、基材キャリアはハニカム基材であり、任意選択的に、金属又はセラミックから構成されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、SCR触媒において、ハニカム基材キャリアは、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである。
【0027】
いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、排気流を生成するリーンバーンエンジンと、リーンバーンエンジンの下流に位置決めされ、かつ排気ガス流と流体連通するSCR触媒と、を備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、以下:
SCR触媒物品の上流に位置決めされたディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)、触媒物品の上流に位置決めされたすすフィルタ、及び触媒物品の下流に位置決めされたアンモニア酸化触媒(ammonia oxidation catalyst、AMOX)のうちの1つ以上を更に備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、ディーゼル酸化触媒(DOC)を調製するためのプロセスは、
ゼオライト触媒組成物を製造することと、触媒をセラミック又は金属ハニカム基材モノリス基材上にコーティングとして適用することと、コーティングされたモノリスを乾燥させることと、コーティングされたモノリスを400℃~800℃の範囲の温度で焼成することと、を含む。
【0030】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下で簡単に説明される添付の図面とともに、以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。開示される主題の他の態様及び利点は、以下から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の実施形態の理解を提供するために、参照番号が開示される主題の例示的な実施形態の構成要素を指す添付の図面が参照される。図面は、例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書において説明される開示は、添付の図面において、限定としてではなく例として例解される。例解を簡単かつ明確にするために、図に例解される特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、いくつかの特徴の寸法は、明確にするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。更に、適切であると考えられる場合、対応する要素又は類似の要素を示すために、参照ラベルが図面間で繰り返されている。
図1A】封止されたNMRロータ中、150℃で、試料A及び試料Bの脱水H型上で反応して、ジメチルエーテルを形成するメタノールの1D直接励起インサイツ13C MAS NMRの代表的なスペクトルである。
図1B図1(A)に示されるように、直接励起13C NMRによって追跡される、125℃及び150℃における試料A及び試料Bに関する経時的なメタノール変換である。
図1C】試料C、D及びGに関するNO変換データである。
図1D】試料C、D、及びGに関するNO選択性データである。
図1E】試料A及びBに関するNO変換データである。
図2A】1D直接励起29Si MAS NMRスペクトルである。
図2B】試料A及びBの水和H形態の1D直接励起27Al MAS NMRスペクトルである。
図3A】試料Aの水和H形態の2D29Si{29Si}J媒介単一量子二重量子(SQ-DQ)NMRスペクトルである。
図3B】試料Bの水和H形態の2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ NMRスペクトルである。
図4A】試料Aの水和H形態の2D27Al{29Si}J媒介HQMC NMRスペクトルであり、試料Aに関して同一条件下で得られた1D29Si{H}交差分極マジック角回転(CP-MAS)スペクトルが、各2Dスペクトルの縦軸に沿って示される。
図4B】試料Bの水和H形態の2D27Al{29Si}J媒介HQMC NMRスペクトルであり、試料Bに関して同一条件下で得られた1D29Si{H}CP-MASスペクトルが、各2Dスペクトルの縦軸に沿って示される。
図5】アルミノシリケートチャバザイト(SSZ-13)中の触媒部位の図である。
図6】Cu2+含有触媒に関する「対をなす」Al骨格の構造を示す。
図7A】2D NMRによって明らかにされた29Si-O-29Si結合性の差を例解する。
図7B図7(A)に示される2D NMRスペクトルに対応する29Si-O-29Si結合性の差を例解する概略図である。
図8】試料Cの水和H形態の2D29Si{29Si}J媒介固相NMRスペクトルである。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。
図9A】試料Cの水和H形態の2D29Si{29Si}双極子媒介固相NMRスペクトルである。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。
図9B】試料Dの水和H形態の2D29Si{29Si}双極子媒介固相NMRスペクトルである。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。
図10】試料Dの水和H形態の2D29Si{29Si}J媒介固相NMRスペクトルである。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。
図11】試料Gの水和H形態の2D29Si{29Si}J媒介固相NMRスペクトルである。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。
【0032】
定義:
本明細書において使用される場合、「a」又は「an」実体は、その実体のうちの1つ以上を指し、例えば、「化合物(a compound)」は、別段の記載がない限り、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。このような、「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0033】
本明細書において使用される場合、「[X]及び[Y]の総モル数に基づいて計算される[X]のモルパーセンテージ」は、例えば、ナノ粒子の文脈において、以下のように計算されたパーセンテージを指す。
【0034】
【数1】
【0035】
本明細書において使用される場合、「関連付けられる」という用語は、すなわち、「装備される」、「接続される」、又は「連通する」、例えば、「電気的に接続される」若しくは「流体連通する」、又は別様に機能を実施するために接続されることを意味する。本明細書において使用される場合、「関連付けられる」という用語は、1つ以上の他の物品又は要素と直接的に関連付けられるか、又は間接的に関連付けられる、すなわち、1つ以上の他の物品又は要素を通して関連付けられることを意味し得る。
【0036】
本明細書において使用される場合、「AEI」という用語は、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association、IZA)構造委員会によって認められるAEIタイプ骨格を指し、「AEIゼオライト」という用語は、主結晶相がAEIであるアルミノシリケートを意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合、「AFX」という用語は、国際ゼオライト協会(IZA)構造委員会によって認められるAFXタイプ骨格を指し、「AFXゼオライト」という用語は、シリコ-アルミノホスフェート56を意味する。
【0038】
本明細書において使用される場合、「AFT」という用語は、国際ゼオライト協会(IZA)構造委員会によって認められるAFTタイプ骨格を指し、「AFTゼオライト」という用語は、AlPO-52触媒を意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、「BET表面積」という用語は、N吸着によって多孔質材料の表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Teller法を指すその通常の意味を有する。細孔直径及び細孔体積は、BETタイプN吸着又は脱着実験を使用して決定することもできる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「触媒」又は「触媒材料(catalyst material)」又は「触媒材料(catalytic material)」という用語は、反応を促進する材料を指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、基材、例えば、ハニカム基材上に、触媒種、例えば、触媒組成物を含有するウォッシュコートを含み得る。
【0042】
本明細書において使用される場合、「平均粒径」という用語は、平均して粒子の直径を示す粒子の特性を指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、「材料」という用語は、何かが構成されるか又は作製され得る要素、構成要素、又は物質を指す。
【0044】
本明細書において使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、長さが1nm~999nmの範囲である少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。
【0045】
本明細書において使用される場合、「窒素酸化物」又は「NO」という用語は、窒素酸化物を示す。
【0046】
本明細書において使用される場合、「粒径」という用語は、粒子を完全に取り囲む最小直径の球を指し、この測定値は、2つ以上の粒子の凝集とは対照的に個々の粒子に関する。粒径は、例えば、ASTM法D4464に従って、分散液又は乾燥粉末を用いるレーザ光散乱技術によって測定することができる。粒径はまた、サブミクロンサイズの粒子に関しては走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)若しくは透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)によって、又は支持体含有粒子(ミクロンサイズ)に関しては粒径分析器によって測定され得る。TEMに加えて、一酸化炭素(CO)化学吸着を使用して、平均PGM粒径を決定することができる。この技術は、様々なPGM種(例えば、XRD、TEM、及びSEMと比較して、Pt、Pdなど)を区別せず、平均粒径を決定するだけである。本明細書において使用される場合、「室温」又は「周囲温度」という用語は、15℃~25℃、例えば、20℃~25℃などの範囲内にある温度を指す。
【0047】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、75%を超える統計的出現率を有する特性を指す。
【0048】
本明細書において使用される場合、触媒材料又は触媒ウォッシュコートにおける「支持体」は、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の好適な方法を通して触媒(例えば、貴金属、安定剤、助触媒、結合剤などを含む)を受容する材料を指す。
【0049】
本明細書において使用される場合、「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素還元剤を使用して窒素の酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを指す。SCRプロセスは、アンモニアによる窒素酸化物の触媒還元を使用して、窒素及び水を形成する。
【0050】
本明細書において使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性である、ハニカムタイプキャリア部材などのキャリア基材材料に適用される触媒材料又は他の材料の薄い接着性コーティングの当該技術分野における通常の意味を有する。当該技術分野で理解されるように、ウォッシュコートは、スラリー中の粒子の分散液から取得され、これを基材に適用し、乾燥させ、焼成して、多孔質ウォッシュコートを提供する。
【0051】
本明細書において使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素原子及びアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ並びにゼオライト格子中に含まれるカチオンのタイプ及び量に依存して、直径が約3~10オングストローム(Å)の範囲であるかなり均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。
【0052】
より具体的な実施形態では、「アルミノシリケートゼオライト」骨格タイプへの言及は、骨格中に置換されたリン又は他の金属を含まないモレキュラーシーブに材料を限定する。しかしながら、明確にするために、本明細書において使用される場合、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、ALPO、及びMeAPO材料などのアルミノホスフェート材料を除外し、より広い「ゼオライト」という用語は、アルミノシリケート及びアルミノホスフェートを含むことが意図される。
【0053】
ゼオライトCHA骨格タイプモレキュラーシーブは、別様に、本明細書において「CHAゼオライト」とも呼ばれる。
【0054】
本明細書において使用される場合、「促進された」という用語は、モレキュラーシーブに固有の不純物とは対照的に、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加される金属成分(「助触媒金属」)を指す。このため、助触媒は、意図的に添加された助触媒を有しない触媒と比較して、触媒の活性を増強するために意図的に添加される。アンモニアの存在下で窒素酸化物の選択的触媒還元を促進するために、1つ以上の実施形態では、好適な金属が独立してモレキュラーシーブに交換される。いくつかの実施形態では、開示された触媒組成物の促進ゼオライトを調製するために使用することができる更なる助触媒金属としては、銅(Cu)が挙げられるが、これに限定されない。酸化物として計算された助触媒金属含有量は、1つ以上の実施形態では、独立して、対応する焼成ゼオライト(助触媒金属を含む)の総重量に基づいて、約0.01重量%~約15重量%、約0.5重量%~約12重量%、又は約1.0重量%~約10重量%の範囲であり、揮発物を含まない基準で報告される。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、銅又は鉄である。いくつかの実施形態では、銅及び鉄の両方が、助触媒金属として存在する。
【0055】
ゼオライト触媒
本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒に関する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、すなわち、ゼオライト構造中の2つのアルミニウム原子の3NN相対位置における位置決めを含む。ゼオライト触媒は、ゼオライト骨格内に2つの四面体配位Si部位によって分離されている2つの四面体配位Al部位を有する。
【0056】
、Cu2+、Zn2+などの交換可能なカチオンの場所及び近接性は、ゼオライト骨格中のAlヘテロ原子の場所に依存する。例えば、アルミノシリケート骨格中の第2の、又は第3の最近接するものとして互いに近くに位置する対をなすAlヘテロ原子は、二価の交換可能なカチオンを安定化させるために役立つ。この安定化は、改善された化学反応特性を作り出す。すなわち、Al含有量及び特にゼオライト骨格中の対をなすAl部位の分布は、メタノールのオレフィンへの変換率及びアルミノシリケートゼオライトH/Cu2+-SSZ-13触媒に対して結果として得られる生成物選択性に影響を及ぼす。これは、アルミノシリケートチャバザイト(SSZ-13)中の触媒部位の図である図5に示されている。
【0057】
別の例では、車両排気流中のNO汚染物質種のN及び他の生成物に対するSCRは、Cu2+の交換のための対をなすAl部位に依存する。
【0058】
SAPO-34及びSSZ-13は、メタノールからオレフィン(methanol-to-olefin、MTO)への反応のために一般的に研究されてきたCHA構造を有する2つの触媒である。SAPO-34は、MTO反応における使用のために商業化されており、SSZ-13は、SAPO-34のゼオライト類似体であり、エチレン及びプロピレンに対する選択性を呈することができる。SSZ-13は、SAPO-34のゼオライト類似体であるが、SAPO-34とは異なる反応挙動を呈し、反応挙動における差は、ブレンステッド酸部位に起因する。SSZ-13及びSAPO-34の両方において、ブレンステッド酸部位が、MTO反応を触媒する。より強いブレンステッド酸部位がSSZ-13中に存在し、これはコークス化及び失活の増加につながる。両方のCHAタイプ触媒の失活及び生成物選択性は、酸部位密度に起因する。SSZ-13試料中のSi/Al比を増加させることは、触媒安定性及び失活前の反応時間を増加させ得る。
【0059】
対をなす骨格Al部位の数を増加させるために、Alヘテロ原子及び関連するカチオンの集合及び分布を理解し、かつ制御することは、ゼオライト触媒の触媒特性を改善する。Cu2+含有触媒の「対をなす」Al骨格の構造の例は、図6に示される。Alヘテロ原子の集団及び分布を決定する従来の方法としては、元素分析、1D固相NMRが挙げられる。しかしながら、1D固相NMRは、信号が重なり合い、異なる部位間の連結性を定義することが困難になるので、Al位置決定に関して限られた洞察しか提供しない。
【0060】
本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒に関する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、すなわち、ゼオライト構造中の2つのアルミニウム原子の3NN相対位置における位置決めを含む。ゼオライト触媒は、2つの四面体Si部位によって分離されている2つの四面体Al部位を有する。
【0061】
本開示は、例えば、改善された触媒特性につながる、SSZ-13ゼオライト骨格中の第2の、又は第3の最近接四面体部位として分離された対をなすAl原子を対象とする。本開示は、例えば、二価又は三価カチオンが著しい影響を有する吸着プロセスを含む反応に関する、標的反応特性を有する触媒の設計を可能にする。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示は、対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒を対象とし、対をなすアルミニウム原子は、ゼオライト構造中で第2又は第3の近接として分離される。例えば、異なる種類の27Al及び29Si種を同定する際に、関心対象となるのは、対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒であり、主にアルミニウム原子が第3の最近接(3NN)である。3NN分布では、2つの四面体Al部位は、2つの四面体Si部位によって分離される。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、8員環細孔開口部及び二重6員環二次構造単位を有し、特にかご状構造を有するゼオライトは、SCR触媒としての使用に適している。いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、チャバザイト(CHA)であり、これは、その三次元多孔性によってアクセス可能な8員環細孔開口(約3.8オングストローム)を有する小細孔ゼオライトである。かご状構造は、4員環による二重6員環構成単位の結合から生じる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、アルミノシリケートゼオライト、二重6員環(double-6-ring、D6R)構成単位を有するアルミノシリケートゼオライト、小細孔(8員環細孔開口)アルミノシリケートゼオライト、二重6員環(double-6-ring、D6R)構成単位を有する小細孔(8員環細孔開口)アルミノシリケートゼオライト、及びチャバザイトゼオライトを対象とする。いくつかの実施形態では、3NN分布のAl原子を有するゼオライト触媒は、ゼオライト合成自体の後に導入することができる銅などの金属を含有し得る。いくつかの実施形態では、Cu金属もまたゼオライトの合成中に導入される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、対をなすアルミニウム原子を有するアルミノシリケート触媒を含む触媒組成物を対象とし、対をなすアルミニウム原子は、アルミノシリケート構造において第2又は第3の近接として分離される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、8~40の範囲のSiO/Al(SAR)比を含む。いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、10~30などの範囲のSiO/Al(SAR)比を含む。いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、11~25の範囲のSiO/Al(SAR)比を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、約0.2~約0.5のCu/Al比に対応するCu含有量を含む。いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、約0.25~約0.45のCu/Al比に対応するCu含有量を含む。いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、約0.3~約0.4のCu/Al比に対応するCu含有量を含む。
【0068】
本開示の触媒は、触媒作用又は分離における用途を有するナノ多孔質アルミノ-、ボロ-、又はガロ-シリケートなどの広範囲のヘテロ原子含有シリケート材料に適合させることができる。
【0069】
3NNアルミニウム分布を有するゼオライトは、Cuなどの金属の導入後、選択的触媒還元(SCR)条件下で改善されたNO変換を呈する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、3NNアルミニウム分布を有しないゼオライトと比較して、エージング耐久性及び高い又は改善された触媒活性を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、800℃での熱水エージング後の本開示のゼオライト触媒は、10%高いNO変換を呈する(10体積%の蒸気及び残部の空気の存在下、800℃で16時間、排ガスは、擬似定常状態条件下で80000h-1の毎時体積基準空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO2、5%のHO、残部のNのガス混合物を含む)。いくつかの実施形態では、850℃(16時間)の熱水エージング後の本開示のゼオライト触媒は、最低50%のNO変換を提供する(上記と同じ条件)。
【0071】
いくつかの実施形態では、3NNアルミニウム分布を有する本開示のゼオライト触媒は、周囲圧力でアルゴンの不活性雰囲気中、125℃又は150℃で、50mgの脱水触媒に対する20μLの13CHOHのバッチ反応において、3NN部位を含有しないゼオライトに対しておおよそ10%高い変換で、メタノール二量体化に関して改善された触媒性能を呈する。メタノールのジメチルエーテルへの変換をインサイツ13C NMRによって追跡した。
【0072】
ゼオライト合成
本開示は、エージング耐久性及び改善された触媒活性を有するゼオライト触媒に関する。例えば、ゼオライト触媒は、特定のアルミニウム分布、すなわち、ゼオライト構造中の2つのアルミニウム原子の3NN相対位置における位置決めを含む。ゼオライト触媒は、2つの四面体Si部位によって分離されている2つの四面体Al部位を有する。本開示はまた、それらのゼオライト触媒を特徴付け、使用するためのプロセス及び方法も対象とする。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示のゼオライト触媒は、様々な合成アプローチによって調製される。いくつかの実施形態では、アルミニウム供給源は、フォージャサイト(FAU)構造を有するものなどの前駆体ゼオライトである。いくつかの実施形態では、FAU供給源は、Na-Y又は様々な脱アルミニウム化形態のゼオライトYを含む。いくつかの実施形態では、他のゼオライト前駆体もまた使用され得る。いくつかの実施形態では、アルミニウム供給源は、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム及び関連化合物などのアルミニウム塩又は錯体であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示は、ゼオライト触媒を形成するための方法を更に対象とする。例えば、方法は、ゼオライト(典型的には、FAU骨格を有するゼオライト)を含む少なくとも1つのアルミナ供給源、少なくとも1つのシリカ供給源(アルカリ金属シリケート溶液及び/又はコロイドシリカを含む供給源など)、少なくとも1つの有機構造指向剤、及び任意選択的に、反応混合物のアルカリ金属含有量を増加させるための二次アルカリ金属カチオン供給源を含む反応混合物を形成することを含む。反応混合物は、典型的には、アルカリ性水性条件下で提供される。ある特定の実施形態では、アルカリ金属対Siのモル比(M/Si、式中Mは、アルカリ金属のモル数である)及び有機構造指向剤対Siのモル比(R/Si、式中Rは、有機構造指向剤のモル数である)の合計は、水酸化物イオン対Siのモル比(OH/Si)より大きい。換言すると、M/Si+R/Siの合計モル比は、モル比OH/Siよりも大きい。バルク反応混合物に関しては、SAR範囲は、典型的には、約25~約35である。
【0075】
いくつかの実施形態では、合計M/Si+R/Si比は、約0.75超、又は約0.80超、又は約0.82超、又は約0.85超であり、例えば、約0.75~約0.95、又は約0.80~約0.95、又は約0.85~約0.95の範囲である。
【0076】
いくつかの実施形態では、OH/Siモル比は、約0.7未満、又は約0.65未満、又は約0.6未満、又は約0.55未満であり、例えば、約0.3~約0.7、又は約0.4~約0.65の範囲である。
【0077】
いくつかの実施形態では、個々のM/Siモル比は、少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5、又は少なくとも約0.6、又は少なくとも約0.7、又は少なくとも約0.8であり、例えば、約0.4~約1.2、又は約0.6~約1.0、又は約0.7~約0.9の範囲である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、又はフランシウムが挙げられ得る。ある特定の実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウム又はカリウムである。
【0078】
いくつかの実施形態では、個々のR/Siモル比は、約0.12未満、又は約0.11未満、又は約0.10未満、又は約0.08未満、又は約0.06未満であり、例えば、約0.04~約0.12、又は約0.06~約0.10の範囲である。
【0079】
反応混合物はまた、水対Siのモル比(HO/Si)によって特徴付けることができ、典型的には、約12~約40の範囲内にある。
【0080】
反応混合物中で使用されるアルカリ金属シリケート溶液は、上記の比を達成するのに必要なアルカリ金属含有量の全てを提供することができる。しかしながら、反応混合物のアルカリ金属含有量は、任意選択的に、二次アルカリ金属カチオン供給源で補充され、例としては、アルカリ金属硫酸塩(例えば、NaSO)、アルカリ金属酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、及びアルカリ金属臭化物(例えば、臭化ナトリウム)が挙げられる。所望であれば、ある特定の実施形態では、アルカリ金属シリケート溶液は、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、テトラエチルオルソシリケート(tetraethyl orthosilicate、TEOS)、及びそれらの組み合わせなどの他のシリカ供給源で補充されるか、又は置換することができる。
【0081】
アルミナ供給源として使用されるゼオライトは、様々であり得、当技術分野で公知の様々なゼオライト材料、特に様々なアルミノシリケートゼオライトを含むであろう。ある特定の実施形態では、12環構造によって形成され、約7.4Åのチャネルを有するFAU結晶構造を有するゼオライトが使用され、かかるゼオライトの例としては、フォージャサイト、ゼオライトX、ゼオライトY、LZ-210、及びSAPO-37が挙げられる。かかるゼオライトは、x、y及びz平面において互いに垂直に走る細孔を有し、二次構造単位4、6及び6-6を有する三次元細孔構造によって特徴付けられる。バルクFAUゼオライト材料の例示的なSAR範囲は、約3~約6であり、典型的には、XRDによって決定される際、単位セルサイズ範囲は24.35~24.65である。ゼオライトYは、本発明のある実施形態に対して特に有用である。FAUゼオライトは、典型的には、Na形態などのアルカリ金属形態で使用される。いくつかの実施形態では、FAUゼオライトは、ナトリウム形態であり、約2.5重量%~13重量%のNaOを含む。
【0082】
この合成のための典型的な有機構造指向剤は、アダマンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドであるが、他のアミン及び/又は四級アンモニウム塩が、置換されるか、又は添加され得る。例としては、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する四級アンモニウムカチオンが挙げられる。有機構造指向剤の更なる例としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、及びジメチルピペリジニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0083】
水酸化物イオンは、反応混合物中で必要とされる唯一の必要な鉱化剤であり、上記の比を達成するために必要な水酸化物の量は、もっぱらアルカリ金属シリケート溶液から提供され得、それほどではないにせよ、有機構造指向剤供給源から提供され得る。所望であれば、水酸化物イオン含有量は、NaOH又はKOHなどの追加の水酸化物イオン供給源で補うことができる。
【0084】
反応混合物は、シリカ(SiO)及びアルミナ(Al)の重量パーセンテージとして表される固形分に関して特徴付けることができる。固形分は、様々であってよく、例示的な範囲は、約5~約25%、又は約8~約20%である。
【0085】
反応混合物は、圧力容器中で撹拌しながら加熱して、所望のCHA結晶生成物を生じさせる。典型的な反応温度は、約100℃~約180℃、例えば、約120℃~約160℃の範囲内にあり、対応する自発生圧力を有する。典型的な反応時間は、約30時間~約3日間である。任意選択的に、生成物は、遠心分離され得る。有機添加剤は、固体生成物の取り扱い及び単離を助けるために使用され得る。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意選択的な工程である。
【0086】
いくつかの実施形態では、MOR結晶骨格を有するゼオライトは、中間生成物として、又は副生成物として形成される。MOR相は、有機テンプレートを含有し得る。
【0087】
固体ゼオライト生成物は、空気又は窒素中で熱処理されるか、又は焼成される。典型的な焼成温度は、約400℃~約850℃。(例えば、約500℃~約700℃)であり、1~10時間の期間にわたる。最初の焼成に続いて、CHAゼオライト生成物は、主にアルカリ金属形態(例えば、Na形態)である。任意選択的に、単一又は複数のアンモニアイオン交換を使用して、ゼオライトのNH 形態を生じさせることができ、任意選択的に、更に焼成して、H形態を形成する。
【0088】
いくつかの実施形態では、CHAゼオライトは、助触媒金属で更にイオン交換されて、金属促進ゼオライト触媒を形成する。例えば、銅又は鉄は、イオン交換されて、Cu-CHA又はFe-CHAを形成することができる。酢酸銅が使用される場合、銅イオン交換に使用される液体銅溶液の銅濃度は、いくつかの実施形態では、約0.01~約0.4モルの範囲内、更に、例えば、約0.05~約0.3モルの範囲内にある。
【0089】
いくつかの実施形態では、結晶化から得られるCHAゼオライト結晶は、約80%~約99%結晶性又は約90%~約97%結晶性であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、CHAゼオライト生成物は、良好な触媒性能を提供するゼオライト表面積(zeolite surface area、ZSA)と組み合わされた比較的低いメソ細孔表面積(mesopore surface area、MSA)によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、CHAゼオライト生成物のMSAは、約25m/g未満又は約10m/g未満(例えば、約5~約25m/g)である。CHAゼオライト生成物のZSAは、典型的には、少なくとも約400m/g、又は少なくとも約450m/g、又は少なくとも約500m/gであり、例示的なZSA範囲は、約400~約600m/g又は約450~約600m/gである。細孔体積及び表面積特性は、窒素吸着(BET表面積法)によって決定することができる。メソ細孔及びゼオライト(ミクロ細孔)表面積は、ISO 9277法に従って、Micromeritics TriStar 3000シリーズ機器でのN吸着ポロシメトリ-を介して決定された。試料を、Micromeritics SmartPrep脱ガス装置上で、合計6時間脱気した(乾燥窒素流下で、2時間かけて300℃まで昇温し、次いで300℃で4時間保持した)。窒素BET表面積は、0.08~0.20の5つの分圧点を使用して決定される。ゼオライト及びマトリックスの表面積は、同じ5つの分圧点を使用して決定され、Harkins及びJuratプロットを使用して計算される。20Åより大きい直径を有する細孔は、マトリックス表面積に寄与すると考えられる。
【0091】
CHAゼオライト生成物はまた、例えば、H形態のゼオライト材料を40重量%のNHF溶液で、50℃において350rpmで撹拌及び超音波処理(35kHz、90W)を20分間した後、乾燥及び450℃で6時間の焼成によって、約60%未満(又は約50%未満)など、NHF溶液で処理した後の相対的に低い正規化ZSA損失によって特徴付けられ得る。正規化されたZSA損失を計算するための式は、米国特許第11,267,717号に提示される。
【0092】
いくつかの実施形態では、CHAゼオライト生成物は、典型的には、拡散反射赤外フーリエ変換(diffuse reflectance infrared Fourier transform、DRIFT)分光法を使用して、3742cm-1を中心とするピーク(ピークX)の積分強度を3609cm-1を中心とするピーク(ピークY)の積分強度と比較することによって推定されるように、架橋シラノール(ブレンステッド部位)と比較して、相対的に少ない表面シラノールを呈し得る。DRIFTS測定を、水銀-カドミウム-テルル化物(Mercury-Cadmium-Telluride、MCT)検出器を備えたThermo Nicolet及びZnSe窓を備えたHarrick環境チャンバで行った。試料を、乳鉢及び乳棒で微粉末に粉砕し、次いで、試料カップに充填した。試料粉末を、最初に40ml/分の流量でArを流しながら400℃で1時間脱水し、次いで30℃に冷却した。試料に関してスペクトルを取り、KBrを基準として使用した。ある特定の実施形態では、CHAゼオライト生成物の表面シラノール割合(X/Yピーク比)は、約0.04未満又は約0.03未満である。
【0093】
本方法から得られるCHAゼオライト生成物は、典型的には、最大約3μm、又は約200nm~約3μm、又は約500nm~約2μm、又は約800nm~約1.5μmの範囲の平均結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、例えば、顕微鏡法、例えば、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して測定することができる。
【0094】
CHAゼオライト生成物はまた、27Al NMRによって検出された全アルミニウムのパーセンテージとして決定される、H形態の骨格外アルミニウム(extra-framework aluminum、EFAl)の量によって特徴付けることができる。ゼオライトのH形態は、Na形態をNHNOでアンモニウム交換し、続いて450℃(6時間)で焼成することによって取得される。ある特定の実施形態では、CHAゼオライト生成物は、約20%未満又は約18%未満、例えば、約5%~約18%(又は約5%~約15%)のEFAlを有する。骨格外アルミニウム(EFAl)のパーセンテージは、14.1Tで測定されたNMRスペクトルにおける20~-30ppmの周波数範囲内の積分ピーク強度として定義される。
【0095】
第3の最近接(3NN)の対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒の決定
ゼオライト材料中のJ結合ヘテロ原子間の共有結合連結性を特徴付ける方法は、ゼオライト材料を合成することを含み、トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)が、ゼオライト材料のための有機構造指向剤(organic structure directing agent、OSDA)として使用される。ゼオライトの結晶化は、鉱化剤、Na+供給源、Al供給源、及び/又はSi供給源を使用して実施され得る。鉱化剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)であり得る。Na+供給源は、NaOH及び/又はNaSOから選択することができる。Al供給源は、Na-FAU及び/又はアルミニウムイソプロポキシドから選択され得る。Si供給源は、コロイド状シリカ及び/又はケイ酸ナトリウム溶液から選択され得る。次いで、ゼオライト材料生成物を、濾過を介して単離し、乾燥させ、540℃で6時間焼成して、Na+形態を生じさせる。ゼオライト材料は、XRD及びN-物理吸着を介して特徴付けられる。焼成を実施した後、NaO含有量が<500ppmに達するまで、単一又は複数のNH 交換を実施する。次いで、ゼオライト材料のNH 形態を450℃で6時間焼成して、H形態を生じさせ、次いでこれを固相NMRによって分析する。
【0096】
対をなす2NN及び3NNのAl種を含む、ゼオライト骨格内のAl種の分布は、それぞれ2D27Al{29Si}J-HMQC NMR及び2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ NMRスペクトルによって評価することができ、これらの両方のタイプは、9.4T、8kHz MAS及び100Kで取得された。
【0097】
NMRスペクトルをゼオライト材料のアルミニウム(Al)部位に相関させることは、1D及び2D固相NMRスペクトルの両方を分析することによって実施される。ゼオライトの1D固相状態1D NMRから、29Si NMRスペクトルは、-105ppm、-110ppm、-113ppm、-115ppm、及び-119ppmのQ領域において29Si信号を呈することが知られている。架橋Siシラノール種は、-97ppm、-99ppm、及び-101ppmのQ領域において29Si信号を起こす。2D27Al{29Si}J媒介スペクトルにおける相関27Al-29Si信号は、焼成ゼオライトの以前の2D29Si{29Si}及び29Si{H}NMR分析、平均-T-O-T結合角及びT-O結合長に対する分析及び29Si化学シフト値、並びに以前の文献との比較に基づいて、割り当てられる。相関した27Al及び29Si信号は、2D27Al{29Si}J媒介HMQCスペクトルにおいて、-107ppm~-105ppm及び-101~-99ppmの29Siシフトで分解される。この相関関係はまた、Q(1Al)29Si化学シフトδを平均-T-O-T結合角θ’に相関させることによって計算することもできる。
【0098】
ゼオライト材料中のJ結合ヘテロ原子間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、ゼオライト材料中の合成が、有機構造指向剤(OSDA)としてトリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を使用することを含む、方法。この合成は、シリケート溶液及びNa-FAUを結晶化させることと、過剰分をHSOで中和することと、を更に包含する。29Si-O-29Si結合性の差と2D NMRスペクトルとの相関の例は、図7(A)及び図7(B)に示される。
【0099】
ゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、NMRスペクトルが、2D固相NMRスペクトルである、方法。
【0100】
ゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、NMRスペクトルが、HQMC NMRスペクトルである、方法。
【0101】
ゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、ゼオライト材料が、骨格中に対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト組成物を含み、対をなすアルミニウム原子が、ゼオライト構造中の第2の又は第3の最近接T部位の近接原子として分離されている、方法。
【0102】
ゼオライト材料中のヘテロ原子のJ-結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、ゼオライト触媒が、チャバザイトゼオライト触媒である、方法。
【0103】
ゼオライト材料中のヘテロ原子のJ-結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、チャバザイトゼオライト触媒が、Na-FAUを使用して合成される、方法。
【0104】
CHAゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、触媒組成物が、2D29Si{29Si}J媒介NMRを使用して測定した場合、2Dを使用して測定した場合に、単一量子(SQ)次元において-104ppm~-108ppm及び二重量子(DQ)次元において-208~-212ppmの範囲のシグネチャを有する、方法。
【0105】
CHAゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、触媒組成物が、ピーク強度が、対をなすアルミニウム原子が第3の最近接(3NN)ではない触媒組成物よりも約10%~50%高いNMRスペクトルシグネチャを生じさせる、方法。
【0106】
CHAゼオライト材料中のヘテロ原子のJ結合核間の共有結合連結性を特徴付ける方法であって、触媒組成物が、2D27Al{29Si}J-HMQC NMRを使用して測定した場合、29Si次元において-98ppm~-100ppm及び27Al次元において55~59ppmの範囲のNMRスペクトルシグネチャを生じさせる、方法。
【0107】
実施形態
限定することなく、本開示のいくつかの実施形態は、以下を含む。
【0108】
実施形態1.対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒であって、対をなすアルミニウム原子が、ゼオライト構造中の第3の最近接(3NN)であり、ゼオライト触媒が、エージング耐久性、改善された触媒活性、又はそれらの組み合わせを有する、ゼオライト触媒。
【0109】
実施形態2.ゼオライト触媒が、CHAゼオライト触媒である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0110】
実施形態3.CHAゼオライト触媒が、銅-CHA触媒である、実施形態2に記載のゼオライト触媒。
【0111】
実施形態4.ゼオライトが、小細孔ゼオライトである、実施形態1に記載の触媒組成物。
【0112】
実施形態5.小細孔ゼオライトが、AEIである、実施形態4に記載の触媒組成物。
【0113】
実施形態6.小細孔ゼオライトが、AFXである、実施形態4に記載の触媒組成物。
【0114】
実施形態7.小細孔ゼオライトが、AFTである、実施形態4に記載の触媒組成物。
【0115】
実施形態8.ゼオライト触媒が、2D29Si{29S}iJ媒介NMRを使用して測定した場合、単一量子(SQ)次元で-104ppm~-108ppm及び二重量子(DQ)次元で-208~-212ppmの範囲の29Si NMRシグネチャを有する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0116】
実施形態9.ゼオライト触媒が、2D27Al{29Si}J-HMQC NMRを使用して測定した場合、29Si次元において-98ppm~-100ppm及び27Al次元において55~59ppmの範囲のNMRシグネチャを有する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0117】
実施形態10.エージング耐久性が、800℃の熱水エージング後であり、ゼオライト触媒が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、10%高いNO変換を呈する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0118】
実施形態11.エージ耐久性が、850℃の熱水エージング後であり、ゼオライト触媒が、少なくとも50%のNO変換を呈する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0119】
実施形態12.メタノール二量化のためのゼオライト触媒の改善された触媒活性が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、おおよそ10%高い変換を有する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0120】
実施形態13.ゼオライト触媒が、8~40、10~30、及び11~25から選択されるSiO/Al比(SAR)を有する、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0121】
実施形態14.ゼオライト触媒が、0.2~0.5、0.25~0.45、及び0.3~0.4から選択されるCu/Al比に対応するCu含有量を有する銅(Cu)を更に含む、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0122】
実施形態15.リーンバーンエンジン排気ガスから窒素酸化物(NOx)を減少させるために有効な触媒物品であって、実施形態1に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒を有する基材キャリアを含む、触媒物品。
【0123】
実施形態16.基材キャリアが、ハニカム基材であり、任意選択的に、金属又はセラミックから構成されている、実施形態15に記載の触媒物品。
【0124】
実施形態17.ハニカム基材キャリアが、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、実施形態15に記載の触媒物品。
【0125】
実施形態18.排気ガス処理システムであって、
排気流を生成するリーンバーンエンジンと、
リーンバーンエンジンの下流に位置決めされ、かつ排気ガス流と流体連通している、実施形態15に記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【0126】
実施形態19.以下:
a.触媒物品の上流に位置決めされたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.触媒物品の上流に位置決めされたすすフィルタ、
及び
c.触媒物品の下流に位置決めされたアンモニア酸化触媒(AMOX)、のうちの1つ以上を更に備える、実施形態18に記載の排気ガス処理システム。
【0127】
実施形態20.選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)実施形態1~14のいずれか一項に記載の触媒を調製することと、
(b)触媒をセラミック又は金属ハニカム基材モノリス上にコーティングとして適用することと、
(d)コーティングされたモノリスを乾燥させることと、
(e)コーティングされたモノリスを400℃~800℃の範囲の温度で焼成することと、を含む、プロセス。
【0128】
実施形態21.アルミニウム供給源が、Na-FAUである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0129】
実施形態22.アルミニウム供給源が、アルミニウムイソプロポキシドである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0130】
実施形態23.アルミニウム供給源が、H-FAUである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0131】
実施形態24.ケイ素供給源が、ケイ酸ナトリウムである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0132】
実施形態25.ケイ素供給源が、コロイド状シリカである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0133】
実施形態26.ケイ素供給源が、H-FAUである、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0134】
実施形態27.Na/Si比が、0.818である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0135】
実施形態28.Na/Si比が、0.785である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0136】
実施形態29.Na/Si比が、0.194である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0137】
実施形態30.OH/Si比が、0.506である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0138】
実施形態31.OH/Si比が、0.675である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0139】
実施形態31.OH/Si比が、0.418である、実施形態1に記載のゼオライト触媒。
【0140】
群の少なくとも1つの部材の間に「又は」又は「及び/又は」を含む特許請求の範囲又は説明は、1つ、1つより多く、又は全ての群の部材が、反対に示されるか、又は別様に文脈から明白でない限り、所与の生成物又はプロセス内に存在するか、採用されるか、又は別様に関連する場合に満たされると考えられる。本開示は、群のうちの正確に1つの部材が、所与の生成物又はプロセス内に存在するか、採用されるか、又は別様に関連する実施形態を含む。本開示は、群の部材のうちの1つ超又は全てが、所与の生成物又はプロセス中に存在するか、使用されるか、又は別様に関連する実施形態を含む。
【0141】
更に、本開示は、列挙された特許請求の範囲のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの限定、要素、節、及び記述用語が別の特許請求の範囲に導入される、全ての変形、組み合わせ、及び置換を包含する。例えば、別の特許請求の範囲に従属する任意の特許請求の範囲は、同じ基本の特許請求の範囲に従属する任意の他の特許請求の範囲に見出される少なくとも1つの限定を含むように修正され得る。要素が、例えば、マーカッシュ群形式などでリストとして提示される場合、要素の各サブグループもまた開示され、任意の要素を群から除去することができる。概して、本開示又は本開示の態様が特定の要素及び/若しくは特徴を含むものとして言及される場合、本開示の実施形態又は本開示の態様は、かかる要素及び/若しくは特徴からなるか、又は本質的になることを理解されたい。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書においてこのように具体的に記載されていない。範囲が与えられている場合(例えば、[X]から[Y]など)、別段の指示がない限り、端点(例えば、「[X]から[Y]」という句における[X]及び[Y]など)が含まれる。更に、別段の指示がない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を想定することができる。
【0142】
当業者は、本明細書に記載される本開示の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【実施例
【0143】
以下の実施例は、例示的であることが意図され、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0144】
実施例1:試料A、B、C、D及びGの触媒特性の測定
試料Aは、CHAゼオライトであり、トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を、CHAの有機構造指向剤(OSDA)として使用して合成した。試料Aの結晶化は、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO=2.6、固形分37%)及びNa-FAU(SiO/Al=5.1)を、それぞれSi供給源及びAl供給源として利用した。過剰のOHをHSOで中和することによって、所望のOH/Si比を取得した。ケイ酸ナトリウム溶液に関して、NaとOHとの1:1の比を仮定して、OH/SiO比を計算した。
【0145】
またCHAゼオライトである試料Bを合成し、トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を、CHAに対する有機構造指向剤(OSDA)として使用した。試料Bの結晶化のために、水酸化ナトリウム(NaOH)を、鉱化剤及びゲル中のNaの唯一の供給源として使用し、アルミニウムイソプロポキシド及びコロイド状シリカ(40重量%SiO)を、それぞれSi及びAl供給源として作用させた。
【0146】
結晶化後、試料A及び試料Bを濾過によって単離し、乾燥させ、540℃で6時間焼成して、Na+形態を生じさせた。
【0147】
焼成後、NaO含有量が<500ppmに達するまで、単一又は複数のNH 交換を実施した。NH 形態を450℃で6時間更に焼成して、H形態を生じさせた。
【0148】
NMRを使用して、経時的なメタノールのジメチルエーテルへの変換を決定する。いくつかの実施形態では、インサイツ13C NMRを使用したバッチ反応器における125℃及び150℃でのメタノールのジメチルエーテルへの変換を使用して、試料A及び試料Bの脱水H形態の触媒特性を測定した。図1Aに示されるように、代表的な時間分解13C直接励起NMRスペクトルは、47ppm~54ppmの範囲の13C信号を示し、これは、異なる局所環境における吸着メタノール種に対応する。スペクトルは、11.7T及び5kHz MASで得た。図1Aはまた、13C信号が56ppm~64ppmの範囲であるNMRスペクトルも示し、ジメチルエーテル種に対応する。
【0149】
時間の関数としてのメタノールの変換を、125℃及び150℃での両方の試料にわたる反応に関して図1Bに示す。異なる条件での経時的なメタノールの変換を決定するために、吸着されたメタノール及びジメチルエーテル種に関するスペクトルの強度を、各々積分した。両方の温度において、試料Aに対するメタノール変換率は、試料Bに対するメタノール変換率よりも著しく高かった。
【0150】
試料C、D、及びGは、CHAゼオライトであり、CHA用の有機構造指向剤(OSDA)としてトリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を使用して合成した。試料Cに関するSi及びAl供給源は、それぞれケイ酸ナトリウム及びNa-FAUであった。試料Cの成分モル比は、以下の通りである:Na/Si=0.785、R/Si=0.03、OH/Si=0.625、及びHO/Si=33.2。試料Cの結晶化は、140℃、72時間で行った。
【0151】
試料Dに関するSi及びAl供給源は、それぞれコロイドシリカ及びアルミニウムイソプロポキシドであった。試料Dの成分モル比は、以下の通りである:Na/Si=0.207、R/Si=0.108、OH/Si=0.315、及びHO/Si=23.6。試料Dの結晶化は、160℃、45時間で行った。
【0152】
試料GのSi及びAl供給源は、H-FAUであった。試料Gの成分モル比は、以下の通りである:Na/Si=0.194、K/SI=0.124、R/Si=0.100、OH/Si=0.418、及びHO/Si=22.2。試料Gの結晶化は、150℃、24時間で行った。
【0153】
試料C、D、及びGを、乾燥空気流の下で540℃、6時間で焼成した。第1の焼成工程の後、試料A及びBとは異なり、試料C、D及びGを、2回のアンモニウム交換工程に供した。次いで、2回のアンモニウム交換工程に続いて、乾燥空気流下で、450℃、6時間の第2の焼成工程を行った。Cuイオンを、H形態ゼオライトに導入して、6.8~7.2重量%の目標CuO充填量を達成した。Cu-CHA、酸化ジルコニウム、及び擬ベーマイト結合剤を含有する触媒コーティングを、ウォッシュコートプロセスを介して試料上に配置した。コーティングされたモノリスを、110~150℃で乾燥させ、約550℃で1時間焼成した。コーティングプロセスは、2.2g/inの触媒充填量を提供し、そのうち5%は酸化ジルコニウムであり、5%は酸化アルミニウム結合剤である。コーティングされたモノリスを、10%のHO/空気の存在下、800℃で16時間、熱水エージングさせた。
【0154】
800℃/16時間エージングさせたモノリス(試料C、D、及びG)に関するNO変換を、200℃~550℃で、5℃/分の温度勾配において、500ppmのNO、525ppmのNH、10%のO、10%のHO、残りがNのガス混合物中の擬似定常状態条件下で、80,000h-1のガス毎時体積基準空間速度で、実験室反応器内で測定した。それぞれ、図1C及び図1DにおけるNO変換及びNO選択性データは、これらの関心対象である性能特性が、3つの試料における3NNの対をなすAl部位の量に直接依存することを実証する。試料A及びBに関するNO変換は、米国特許第11,267,717号において(図5の試料F及びCとして)以前に決定されており、図1Eに示されている。
【0155】
試料C及び試料Dの両方よりも著しく高い3NNの対をなすAl部位を示す試料Gは、全温度範囲にわたって最も高いNO変換を有し、全温度範囲にわたって3つの試料の最も低いNO選択性を有する。3つの試料の中で最も少ない第3の最近接Al部位配置を示す、試料Dは、550℃を除いて3つの材料の中で最も低いNO変換を有し、全温度範囲にわたって最も高いNO選択性を有する。
【0156】
試料A、B、C、D、及びGは、2つの主なグループに分けることができる。試料Aは、シリケート溶液及びNa-FAUを、それぞれSi供給源及びAl供給源として用いて合成したが、試料Bは、コロイド状シリカ及びアルミニウムイソプロポキシドを用いて合成した。試料A及びBは、両方とも、アンモニウムで1回だけイオン交換した。試料C及びDは、それぞれ試料A及びBと同じ出発材料を有していた。試料Gは、ケイ素及びアルミニウム供給源としてH-FAUを用いて合成した。試料C、D、及びGは、アンモニウムで2回イオン交換した。試料A、Bの中で、試料Aは、図1A及び図1Bにおけるメタノール変換試験において実証されるように、より良好な性能を示した。試料C、D、及びGの中で、試料C及びGは、図1C及び図1Dに示されるように、NO変換及びNO選択性試験において、より高い3NNの対をなすAl部位及びより良好な性能を示した。図1A図1Eは、試料A、B、C、D、及びGの中で、試料A、C、及びGが、本開示による触媒性能及び固有のNMR特徴を有することを示す。以下の表(表1)は、試料A、C、及びG、それらの出発材料、並びにそれらのNa/Si及びOH/Si比に関するデータを示す。
【0157】
【表1】
【0158】
実施例2:固相NMRを介する反応特性の測定
固相NMRは、アルミノシリケートゼオライト中の27Al及び29Si原子の局所的化学環境に敏感であり、反応特性を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、図2Aは、おおよそ同じSiO/Al比(SAR)を有する試料A及び試料BのH形態の一次元(1D)29Si直接励起NMRスペクトルを示す。スペクトルは、18.8T、20kHz MAS及び298Kで得られた。各試料は、-111ppm及び-105ppmで、Q(0Al)及びQ(1Al)部分に対応する2つの強力な信号を呈する。Q(0Al)及びQ(1Al)に関する信号の相対強度は、試料A及び試料Bの両方に関して同様であり、これは、同様のSAR値を有する試料A及び試料Bに対応する。
【0159】
図2Bは、試料A及び試料BのH形態の1D27Al直接励起NMRスペクトルを示す。59ppmでの両方のスペクトルにおける顕著な27Al信号は、4配位Al原子に対応する。これは、アルミノシリケートゼオライト骨格内へのそれらの組み込みと一致するが、各スペクトルにおける-1ppm付近の弱い信号は、骨格外の6配位Al原子に対応する。2つの試料のこれらの1D27Al NMRスペクトルにおいて著しい差は観察されなかった。
【0160】
実施例3:多次元NMR技術を介する反応特性の測定
多次元NMRを使用して、NMR活性核間のナノスケールのスルーボンド相互作用及びスルースペース相互作用を調べることによって、材料の局所化学環境へのより詳細な洞察を提供した。例えば、アルミノシリケート材料中の29Si-O-29Si結合性を検出するために、二次元(two-dimensional、2D)J媒介29Si{29Si}単一量子(SQ)-二重量子(DQ)NMR相関スペクトルを使用することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、図3A及び図3Bは、試料A及び試料BのH形態の2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ NMR相関スペクトルを示す。これらのスペクトルにおいて、相関信号強度は、29Si-O-29Si部分における共有結合架橋酸素原子を介するものを含む、共有結合した29Si原子を明示し得る。対角線に沿った信号は、同じ局所環境における29Si-O-29Si部分に対応するが、対角線の両側で等距離である同じ二重量子シフト(垂直寸法)を有する相関信号の対は、2つの異なる局所29Si環境を伴う29Si-O-29Si部分に対応する。例えば、各スペクトルにおける単一量子(水平)次元における-112ppm及び二重量子(垂直)次元における-224ppmでの29Si信号は、各材料のケイ質領域における共有結合したQ(0Al)部分に対応する。比較すると、試料Aから取得されたスペクトルにおける、SQ(垂直)次元における-216ppm、並びにDQ(水平)次元における-105ppm及び-111ppmでの相関信号は、共有結合したQ(0Al)及びQ(1Al)部分に対応する。注目すべきことに、垂直次元における-209ppmの対角線付近の相関信号は、試料Aから取得されたスペクトルに現れるが、試料Bから取得されたスペクトルでは検出されない。これらの信号は、Al-O-(Si-O)-Al配置の骨格Al中に存在する共有結合したQ(1Al)部分に対応する。
【0162】
実施例4:固相/ヘテロ核多重量子コヒーレンス(Heteronuclear Multiple Quantum Coherence、HQMC)NMRを介する共有結合連結性の測定
同様に、固相2D NMR技術はまた、アルミノシリケート材料中の27Al及び29SiなどのJ結合ヘテロ原子間の共有結合連結性を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態では、2D27Al{29Si}J媒介異核多重量子コヒーレンス(heteronuclear multiple quantum coherence、HMQC)NMRスペクトルは、アルミノシリケートゼオライト中の骨格27Al原子に関する直接情報をもたらし得、27Al-O-29Si部分の異なるタイプ及び分布を区別することができる。
【0163】
一実施形態では、図4A及び図4Bは、試料A及び試料BのH形態に関して取得された2D27Al{29Si}J-HMQC NMRスペクトルを示す。スペクトルは、9.4T、8kHz MAS、及び100Kで得られた。これらのスペクトルは、骨格29Si原子と相関する4配位骨格Al原子に対応する57ppmでの27Al信号を明らかにする。両方の試料から取得されたスペクトルにおいて、この27Al信号は、Q(1Al)部分に対応する-106ppmにおける29Si信号と相関している。試料Aのスペクトルは、骨格Al原子からの57ppmにおける27Al信号と、Q(2Al)種に帰属される29Si次元における-99ppmでの信号との間に更なる相関信号強度が観察されることを示す。この信号は、試料Bから取得されたスペクトルでは観察されず、かかる部分が著しい程度まで存在しないことを示す。これは、試料Aが、試料Bよりも、1つ又は2つのO-Si-O部分によって分離されているより多くの局所的に対をなすAl原子を含有するという更なる証拠を提供する。試料A及びBにおける、近接する骨格Al原子のタイプ及び数を含む骨格Al原子の異なる分布は、それらの異なる吸着及び反応特性を説明すると考えられる。
【0164】
実施例5
第3の最近接(3NN)の対をなすAlの分光学的シグネチャを更に実証するために、試料Cと呼ばれる、第3の試料の2D29Si{29Si}J媒介固相単一量子二重量子NMR相関スペクトルが、図8に示される。Jカップリングは、共有結合した原子中のNMR活性核間で、又は他の共有結合した原子によって起こる。試料Cは、試料A及びBの約19のSARとは対照的に、11のSARを有する。試料Cの合成は、試料Aの合成と同様である。図8における2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQNMR相関スペクトルは、それらの等方性29Si化学シフトに基づいて、29Si核のJ結合対からの信号を分解する。これは試料A及びBと同様の条件下で取得されたものであった。単一量子(SQ)次元における-112ppm及び二重量子(DQ)次元における-224ppmでの相関信号は、架橋酸素原子によって共有結合しているQ(0Al)種の対(例えば、29Si-O-29Si)に対応し、一方、二重量子次元における-216ppm及び単一量子次元における-105及び-111ppmにおける信号は、同様に架橋酸素原子によって共有結合しているQ(1Al)及びQ(0Al)種に対応する。最も重要なことに、(-104ppm、-208ppm)における相関(SQ、DQ)強度は、対をなすQ(1Al)種に対応し、これは、第3の最近接アルミニウム配置の直接的な証拠を提供する。
【0165】
実施例6
Jカップリングを使用することによる共有結合接続性を調べることに加えて、固相NMRは、それらの等方性29Si化学シフトに基づいて、29Si核の双極子結合対からの信号を分解するために使用されるスルースペース29Si-29Si双極子-双極子カップリングを利用することによって、核のより離れた(約1nm)近接性を調べることができる。図9(A)及び図9(B)は、11のSARを有する2つの試料、それぞれ試料C及び試料Dに関しての2D29Si{29Si}双極子媒介NMR相関スペクトルを示し、これは、ゼオライト骨格内の異なるAl分布を表す異なる強度分布を明示する。試料Dの合成は、試料Bの合成と同様である。これらの測定は、上記の2D29Si{29Si}J媒介相関スペクトルと同じ条件下で行った。相関信号強度の領域は、約1nm離れた29Si核(及びそれらの関連原子)の近接対に対応する。単一量子次元における-112ppm及び二重量子次元における約-223ppmでの信号は、近接Q(0Al)種に対応する。単一量子次元における-105ppm及び約-111ppmでの信号は、二重量子次元における-216ppmでの信号と相関しており、近接Q(0Al)及びQ(1Al)種に対応する。単一量子次元において-105ppmを中心とし、二重量子次元において-210ppmを中心とする信号は、Q(1Al)種の近接対に対応する。試料C及びDの両方は、近接するQ(1Al)骨格部分からの2D29Si{29Si}強度を呈するが、興味深いことに、それらの強度分布は異なる。例えば、2つのスペクトルの二重対角線に沿って、2D29Si{29Si}強度の分布は、より不均一に広がっているように見える試料Dと比較して、試料Cに関してより狭く、より細長い。これは、試料Cにおける骨格Al環境が、試料Dにおける骨格AI環境よりも局所的により均一であることを示す。
【0166】
実施例7
異なる調製方法を用いたチャバザイト材料における第3の最近接(3NN)タイプの対をなすAl種の分光シグネチャにおける違いを理解するために、試料Dの2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ固相状態NMR相関スペクトルが図10に示される。試料Dは、試料Cと同じ11のケイ素対アルミニウム比(SAR)を有する。図10に示されるスペクトルは、J結合29Si核の対からの信号を分解し、架橋酸素原子(29Si-O-29Si)を介して共有結合している29Si原子の対からの信号をもたらす。このスペクトルは、試料A、B、C、D、及びGと同じ条件下で取得された。-112ppmでの相関単一量子(SQ)29Si信号及び-224ppmでの二重量子(DQ)29Si信号は、架橋酸素原子(29Si-O-29Si)によって共有結合している局所ケイ酸質領域におけるQ(0Al)29Si種の対に対応する。SQ次元において-111及び-105ppmでの29Si信号と相関する-216でのDQ29Si信号は、J結合Q(0Al)及びQ(1Al)29Si部分のスルーボンド対に対応する。-104ppmでのSQ29Si信号に相関する-210ppmでのDQ29Si信号は、J結合した29Si核のQ(1Al)-O-Q(1Al)対に対応し、これは、ゼオライト骨格中のAl原子の3NN対(すなわち、-27Al-O-29Si-O-29Si-O-27Al-m部分)の証拠を提供する。注目すべきことに、この信号は、実施例5の試料Cの同じ信号よりも強度が低いようであり、試料Cよりも試料Dに存在する第3の最近接四面体部位(T部位)配置が少ないことを示唆している。
【0167】
実施例8
更なる比較として、第3の低SARチャバザイト材料である試料Gを調製し、分析した。試料Gは、試料C及びDと同様に、約11のSARを有する。図11は、試料Gの2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ固相NMR相関スペクトルを示す。このスペクトルは、試料A、B、C、D、及びGの同様のスペクトルと同じ条件下で得られた。2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ固相NMR相関スペクトルは、29Si-O-29Si共有結合リンク機構に対応する29Si核のJ結合対から生じる相関信号を示す。図11は、-112ppmにおける単一量子(SQ)29Si信号と-224ppmにおける二重量子(DQ)29Si信号との間の相関強度を示し、これは、Q(0Al)種の共有結合対に対応する。-105及び-111ppmにおけるSQ29Si信号と相関する-216ppmでのDQ29Si信号は、他の試料と同様に、Q(0Al)-O-Q(1Al)リンク機構に対応する。最も注目すべきことに、-210ppmでのDQ29Si信号は、-105ppmでのSQ29Si信号と相関し、これは、第3の最近接の対をなすアルミニウム配置を有する共有結合したQ(1Al)-O-Q(1Al)骨格部分の対に対応する。注目すべきことに、この相関29Si{29Si}信号は、試料A、B、C、及びD(上記参照)に関してこのスペクトル領域において観察される強度よりもはるかに強く、これらの他の試料よりも試料Gにおける3NNの対をなすAl配置の数が多いことを明示する。加えて、図11における(-210ppm、-105ppm)付近の相関強度のより大きい幅は、他の試料と比較して、試料Gに存在する異なる3NNの対をなすAl配置のより広い分布を明示する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなすアルミニウム原子を有するゼオライト触媒であって、前記対をなすアルミニウム原子が、ゼオライト構造中の第3の最近接(3NN)であり、前記ゼオライト触媒が、エージング耐久性、改善された触媒活性、又はそれらの組み合わせを有する、ゼオライト触媒。
【請求項2】
前記ゼオライト触媒が、CHAゼオライト触媒である、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項3】
前記CHAゼオライト触媒が、銅-CHA触媒である、請求項2に記載のゼオライト触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトが、小細孔ゼオライトである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記小細孔ゼオライトが、AEIである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトが、AFXである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記小細孔ゼオライトが、AFTである、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記ゼオライト触媒が、2D29Si{29Si}J媒介SQ-DQ NMRを使用して測定した場合、単一量子(SQ)次元において-104ppm~-108ppm及び二重量子(DQ)次元において-208~-212ppmの範囲の29Si NMRシグネチャを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のゼオライト触媒。
【請求項9】
前記ゼオライト触媒が、2D27Al{29Si}J-HMQC NMRを使用して測定した場合、29Si次元において-98ppm~-100ppm及び27Al次元において55~60ppmの範囲のNMRシグネチャを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のゼオライト触媒。
【請求項10】
前記エージング耐久性が、800℃の熱水エージング後であり、前記ゼオライト触媒が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、10%高いNO変換を呈する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項11】
エージ耐久性が、850℃の熱水エージング後であり、前記ゼオライト触媒が、少なくとも50%のNO変換を呈する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項12】
メタノール二量化のための前記ゼオライト触媒の前記改善された触媒活性が、3NN部位を含有しないゼオライトに対して、おおよそ10%高い変換を有する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項13】
前記ゼオライト触媒が、8~40、10~30、及び11~25から選択されるSiO/Al比(SAR)を有する、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項14】
前記ゼオライト触媒が、0.2~0.5、0.25~0.45、及び0.3~0.4から選択されるCu/Al比に対応するCu含有量を有する銅(Cu)を更に含む、請求項1に記載のゼオライト触媒。
【請求項15】
リーンバーンエンジン排気ガスから窒素酸化物(NO)を減少させるために有効な触媒物品であって、請求項1に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒を有する基材キャリアを含む、触媒物品。
【請求項16】
前記基材キャリアが、ハニカム基材であり、任意選択的に、金属又はセラミックから構成されている、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
ハニカム基材キャリアが、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項18】
排気ガス処理システムであって、
排気流を生成するリーンバーンエンジンと、
前記リーンバーンエンジンの下流に位置決めされ、かつ前記排気ガス流と流体連通している、請求項15に記載の触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【請求項19】
以下:
a.前記触媒物品の上流に位置決めされたディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.前記触媒物品の上流に位置決めされたフィルタ、
及び
c.前記触媒物品の下流に位置決めされたアンモニア酸化触媒(AMOX)、のうちの1つ以上を更に備える、請求項18に記載の排気ガス処理システム。
【請求項20】
選択的触媒還元(SCR)触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)請求項1~のいずれか一項に記載の触媒を調製することと、
(b)前記触媒をセラミック又は金属ハニカム基材モノリス上にコーティングとして適用することと、
(d)前記コーティングされたモノリスを乾燥させることと、
(e)前記コーティングされたモノリスを400℃~800℃の範囲の温度で焼成することと、を含む、プロセス。
【国際調査報告】