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特表2024-537255穏和な酸化によって修飾乳清蛋白質組成物を生産する方法、その修飾乳清蛋白質組成物、およびその修飾乳清蛋白質組成物の栄養用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】穏和な酸化によって修飾乳清蛋白質組成物を生産する方法、その修飾乳清蛋白質組成物、およびその修飾乳清蛋白質組成物の栄養用途
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/08 20060101AFI20241003BHJP
   A23C 21/00 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20241003BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23J3/08
A23C21/00
A23L2/00 J
A23L2/38 P
A23L2/66
A23L2/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521264
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022078739
(87)【国際公開番号】W WO2023062232
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202780.9
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522257023
【氏名又は名称】アーラ フーズ アンバ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ソーレン バング
(72)【発明者】
【氏名】イェーヤ,ターニャ クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ゲン,シャオルー
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ローン ヴェンデル
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン,ピーター アステッド
(72)【発明者】
【氏名】クリトガード,ソーレン
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LE01
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK18
4B117LL09
4B117LP06
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
本発明は、β-ラクトグロブリンの遊離チオール基を露出させて選択的に酸化する条件下で穏和な酸化によって、修飾乳清蛋白質組成物を調製する方法に関する。それによって得られる修飾乳清蛋白質産物は、例えば、蛋白質に富んだ飲料製品において優れた性能を有することが明らかにされており、また特に、中性pHにおける滅菌加熱処理中、およびそのような飲料製品の摂取中の、不快臭気が低レベルであることも判明している。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法であって:
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するための乳清蛋白質源を処理する工程であって、
ここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を含み、
および
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、さらに:
(i)0~160℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧される、
乳清蛋白質源を処理する工程;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程であって、
ここで該1種類以上の条件が、
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~160℃の範囲の温度を有すること、
および/または
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を20~4000バールの範囲の圧力に加圧すること、
を含む、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程、
の(a)~(d)の工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1にしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が、過酸化物、オゾン、二酸素、またはそれらの組み合わせを含む、あるいは同上から成る、方法。
【請求項3】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、およびその混合物から成る群から選択される過酸化物である、方法。
【請求項4】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、
ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
間のモル比が、少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも1:1、さらにより好ましくは少なくとも2:1、および最も好ましくは少なくとも3:1である、方法。
【請求項5】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、
ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
間のモル比が、1:2~15:1、より好ましくは1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1である、方法。
【請求項6】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが、7.0~9.5、より好ましくは7.1~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.4~8.2の範囲である、方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総脂肪含量が、総固形物に対して最大で1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.5%w/w、さらにより好ましくは最大で0.2%w/w、および最も好ましくは最大で0.1%w/wである、方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで条件(i)が、5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~55℃の範囲の温度を有する工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液を含む、方法。
【請求項9】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで条件(i)が、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲の温度を有する工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液を含む、方法。
【請求項10】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液に対して、20~4000バール、より好ましくは200~3500バール、さらにより好ましくは300~3000バール、および最も好ましくは500~2500バールの範囲の圧力を加圧することが、条件(ii)に含まれる、方法。
【請求項11】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液に対して、25~1000バール、より好ましくは30~500バール、さらにより好ましくは35~300バール、および最も好ましくは40~200バールの範囲の圧力を加圧することが、条件(ii)に含まれる、方法。
【請求項12】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量を、初期量の20~80%、より好ましくは30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは初期量の60~75%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
【請求項13】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルに減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
【請求項14】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで
・ 工程(b)で消費される酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰の酸化剤の量を除く酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:2~30:1、より好ましくは1:2~25:1、さらにより好ましくは1:1~20:1、および最も好ましくは1:1~15:1である、方法。
【請求項15】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰酸化剤の量は除外する、酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:4~15:1、より好ましくは1:3~10:1、さらにより好ましくは1:2~5:1、および最も好ましくは1:2~2:1である、方法。
【請求項16】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、最長12時間、より好ましくは最長6時間、さらにより好ましくは最長3時間、および最も好ましくは最長1時間である、方法。
【請求項17】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な残存酸化剤を除去する成分、好ましくはカタラーゼに対して、該酸化させる乳清蛋白質溶液を接触させることによって酸化を停止させることが、工程(b)に含まれる、方法。
【請求項18】
前記請求項のいずれかにしたがう方法であって、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を加熱処理工程に供することを含む工程(c)をさらに含む、方法。
【請求項19】
酸化乳清蛋白質組成物であって;
・ 総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 蛋白質g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、
・ 総蛋白質に対して少なくとも0.7%w/wのトリプトファン含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも0.3%w/wのメチオニン含量、
・ 蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの脂肪含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量、
を有する酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項20】
請求項19にしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、18kDa~10000kDa、より好ましくは50~8000kDa、および最も好ましくは80~5000kDaの範囲の蛋白質の重量平均分子量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項21】
請求項19または20にしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、ここで該蛋白質の少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~10000kDaの分子量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項22】
請求項19~21のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、総固形物に対して少なくとも86%w/w、および最も好ましくは総固形物に対して少なくとも90%の蛋白質含量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項23】
請求項19~22のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、総固形物に対して最大で1%w/w、および最も好ましくは最大で0.2%の脂肪含量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項24】
請求項19~23のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、最大で蛋白質g当たり10マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは最大で蛋白質g当たり5マイクロモルの遊離チオール基を含む、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項25】
請求項19~24のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、総蛋白質に対して0.7~3%w/w、および最も好ましくは総蛋白質に対して1.0~3%w/wのトリプトファン含量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項26】
請求項19~26のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、総蛋白質に対して0.3~3.3%w/w、および最も好ましくは総蛋白質に対して1.3~3.2%w/wのメチオニン含量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項27】
請求項19~26のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、および最も好ましくは蛋白質mg当たり最大で0.01マイクログラムのキヌレニン含量を有する、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項28】
請求項19~27のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、粉末形態である、酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項29】
請求項19~27のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、液状形態の酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項30】
請求項19~29のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、請求項1~18のうちの1項以上にしたがう方法によって取得可能な酸化乳清蛋白質組成物。
【請求項31】
加熱処理した、好ましくは加熱滅菌した飲料であって、該飲料のpHが、5.5~8.5、およびより好ましくは6.5~7.5であり、該飲料が請求項19~29のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物を少なくとも0.5%w/wの蛋白質に寄与するのに充分な量で含み、および好ましくは生産から7日後の該飲料のHS含量が最大で5マイクロモル/L、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/Lである、加熱処理飲料。
【請求項32】
食品成分であって、
該食品成分が:
・ 請求項19~30のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物、
および
・ 1種類以上のさらなる成分であって、好ましくは:
・ 乳成分、好ましくは非酸化乳成分、
・ 植物由来成分、
・ 非乳炭水化物源、
・ 矯味矯臭剤、
および/または
・ 甘味料(甘味炭水化物/ポリオール/HIS)、
から選択される成分、
を含む食品成分。
【請求項33】
請求項32にしたがう食品成分であって、ここで請求項19~30のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、該食品成分の重量の0.5~95%w/wに寄与する、より好ましくは1~90%w/w、さらにより好ましくは5~85%w/w、および最も好ましくは該食品成分の重量の10~80%w/wに寄与する、食品成分。
【請求項34】
請求項32または33にしたがう食品成分であって、ここで請求項19~30のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、該食品成分の蛋白質の0.5~95%w/wに寄与する、より好ましくは1~90%w/w、さらにより好ましくは5~85%w/w、および最も好ましくは該食品成分の蛋白質の10~80%w/wに寄与する、食品成分。
【請求項35】
請求項32~34のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
【請求項36】
請求項32~35のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
【請求項37】
請求項32~36のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで該食品成分が粉末形態であり、好ましくは最大で6%w/wの量の水を含む、食品成分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-ラクトグロブリンの遊離チオール基を露出させて選択的に酸化する条件下で穏和な酸化によって、修飾乳清蛋白質組成物を調製する方法に関する。それによって得られる修飾乳清蛋白質産物は、例えば、蛋白質に富んだ飲料製品において優れた性能を有することが明らかにされており、また特に、中性pHにおける滅菌加熱処理中、およびそのような飲料製品の摂取時の、不快臭気が低レベルであることも判明している。
【背景技術】
【0002】
滅菌したpH中性の飲料であって、乳清蛋白質に富む飲料は、加熱処理中に腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気を発生する傾向がある。このような飲料は、典型的には生産直後にボトル詰めするので、ボトルを開けた際にも消費者に不快な臭気を与えることになる。
【0003】
乳清蛋白質産物の酸化、例えば、過酸化水素による酸化は、以前は、乳清蛋白質産物を漂白し、目視品質が改善され微生物学的に許容可能な乳清蛋白質粉末を作成することを目的として用いられていた。しかし、酸化はまた、乳清蛋白質組成物の特定成分の酸化分解に起因する、保存中の不快な臭気の発生、および着色など官能性に関する問題にも関連していたのであった。
【0004】
Jervisらは、高温にて過酸化水素または過酸化ベンゾイルで高蛋白質乳清蛋白質濃縮物を漂白する影響についての研究を開示している(「80%乳清蛋白質濃縮物の官能特性、および機能特性に対する乳清漂白の影響(Effect of bleaching whey on sensory and functional properties of 80% whey protein concentrate)、J.Dairy Sci.、95、2848~2862ページ、2012年)。酸化乳清蛋白質粉末から再構成した非加熱の10%水溶液を官能性について分析したところ、「ボール紙のような匂い」、および「脂肪のような風味」が増加し、「調理/ミルク様風味」が低下することが認められた。
【0005】
米国特許公開第20160235082A1号には、特定の濃度の過酸化水素の存在下で乳清蛋白質を特定の加熱処理に供することによって生産可能な、熱安定な乳清蛋白質成分を生産する方法が開示されている。WPI、WPCまたは乳清蛋白質成分のその他の任意の形態の熱安定な保持液およびWPIまたはWPCの熱安定粉末またはその他の任意の乳清蛋白質粉末を含む乳清蛋白質成分は、過酸化水素溶液と混合した乳清蛋白質溶液を加熱処理することによって調製可能である。熱安定な乳清蛋白質は、シスチンスルホン酸に転化される出発乳清蛋白質シスチンを有しているので、主要乳清蛋白質であるβ-ラクトグロブリンの遊離スルフィドリル基がシステインスルホン酸および/またはシステイン酸などの化合物に転化される;これらによって望ましくないゲル化が最小化または回避されることが示唆されるのみならず、これらは化合物のタウリン基の前駆体でもある。
【発明の概要】
【0006】
乳清蛋白質含有飲料の生産中に発生する、腐敗卵の臭気に類似する不快な臭気を低減する、あるいはさらに除去する目的で乳清蛋白質産物の穏和な酸化を用いることができることを、本発明者らは発見した。
【0007】
本発明の一局面は、酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法に関するが、該方法は以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源を処理する工程;
ここで該乳清蛋白質溶液は:
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を含み;
および
該乳清蛋白質溶液は:
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧され;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
ここで該1種類以上の条件は以下の(I)、および(II)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~160℃の範囲の温度を有すること、
および/または
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を20~4000バールの範囲の圧力に加圧すること;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程。
【0008】
本発明の別の一局面は、以下を有する酸化乳清蛋白質組成物に関する:
・ 総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの脂肪含量、
・ 蛋白質g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.7%w/wのトリプトファン含量、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.3%w/wのメチオニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量、
・ 好ましくは、18kDa~10000kDa、より好ましくは50~8000kDa、および最も好ましくは80~5000kDaの範囲の蛋白質重量平均分子量、
を有し、
および
・ 好ましくは、該蛋白質の少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~10000kDaの分子量を有する。
【0009】
本発明のさらなる一局面は、以下を含む食品生産物を生産するプロセスに関する:
・ 本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物を処理する工程、
および/または
・ 該記載の酸化乳清蛋白質組成物、および/または該処理した酸化乳清蛋白質組成物を、1種類以上のさらなる成分と組み合わせる工程、および任意選択的に該組み合わせ物を処理する工程。
【0010】
食品生産物の好ましい例としては、加熱処理した、および好ましくは加熱滅菌した、5.5~8.5のpHを有する飲料が挙げられる。
【0011】
したがって、本発明のより具体的な一局面は、加熱処理した、および好ましくは加熱滅菌した、5.5~8.5のpH、より好ましくは6.5~7.5のpHを有する飲料を生産するプロセスに関するものであり、該プロセスは以下の工程(1)、および工程(2)を含む:
(1)5.5~8.5のpH、より好ましくは6.5~7.5のpHを有し、以下を含む液状混合物を取得するために、本明細書に記載のような酸化乳清蛋白質組成物を1種類上のさらなる成分と組み合わせる工程:
・ 少なくとも0.5%w/wの蛋白質に寄与するのに充分な量の該酸化乳清蛋白質組成物、
および
・ 水、
(2)該液状混合物を容器、好ましくは滅菌容器に充填する工程;
および
ここで該液状混合物は充填前および/または充填後に加熱処理、および好ましくは加熱滅菌される。
【0012】
本発明のさらなる一局面は、酸化乳清蛋白質組成物、好ましくは本発明の酸化乳清蛋白質組成物の食品成分としての用途であって、好ましくは少なくとも3%w/wの乳清蛋白質含量を有する、pHが5.5~8.5の範囲である加熱滅菌飲料、好ましくは間接的加熱処理を用いて加熱滅菌されている飲料の臭気を好ましくは改善する、および/または腐敗卵の臭気に類似の不快な臭気のレベルを低減するための用途に関する。
【0013】
本発明のさらに別の一局面は、以下を含む食品成分に関する:
・ 本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物の固形物、
および
・ 1種類以上のさらなる成分であって、好ましくは以下から選択される成分:
・ 乳成分、好ましくは非酸化乳成分、
・ 植物由来成分、
・ 非乳炭水化物源、
・ 矯味矯臭剤、
および/または
・ 甘味料(甘味炭水化物/ポリオール/HIS)。
【0014】
本発明のさらに別の一局面は、酸化乳清蛋白質組成物、好ましくは本発明の酸化乳清蛋白質組成物の食品成分としての用途であり、好ましくは、加熱滅菌されている飲料であって、5.5~8.5のpH範囲であり、好ましくは少なくとも3%w/wの乳清蛋白質含量を有し、および好ましくは間接的加熱処理を用いて加熱滅菌されている飲料の臭気を改善する、および/または腐敗卵の臭気に類似の不快な臭気のレベルを低減するための用途に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】模擬UHT処理に供した飲料品試料の写真を示す。実施例2b:試料1:WPI-B22(非加熱参照)、試料2:WPI-B30;試料3:WPI-B29;試料4:WPI-B28;試料5:WPI-B27;試料6:WPI-B26;試料7:WPI-B25;試料8:WPI-B24;試料9:WPI-B23。
図2】非酸化WPI参照(WPI-C24)、本発明(WPI-C25)にしたがう液状酸化WPI、および本発明(WPI-C26)にしたがう酸化WPI粉末のアミノ酸プロファイルのプロットを示す。図2は、本発明によって該乳清蛋白質源のアミノ酸組成を損なうことなくβ-ラクトグロブリンの遊離チオールの選択的酸化が可能となることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一局面は、酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法に関するが、該方法は以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源を処理する工程;
ここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を含み;
および
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧され;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
ここで該1種類以上の条件は以下の(I)および(II)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~160℃の範囲の温度を有すること、
および/または
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を20~4000バールの範囲の圧力に加圧すること;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程。
【0017】
例えば、本発明の好ましい実施態様は、酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法に関するが、該方法は以下を含む:
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源を処理する工程;
ここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤;
および
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)100~4000バールの範囲の圧力に加圧され;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
ここで該1種類以上の条件は以下の(I)および(II)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~65℃の範囲の温度を有すること、
および/または、
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を100~4000バールの範囲の圧力に加圧すること;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程。
【0018】
本発明に関しては、用語「酸化乳清蛋白質組成物」は、遊離チオール基の含量が蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で10マイクロモルである産物であって、それが本発明の方法によって取得可能な産物に関する。
【0019】
本発明に関しては、用語「遊離チオール基」は、例えば、アミノ酸システインに存在するSH基に関する。乳清蛋白質産物においては、遊離チオール基は、典型的には該蛋白質の一部を成すものであり、典型的には該蛋白質のシステイン残基よって提供される。これに関して、用語「遊離」は、SH基が他のSH基と反応してジスルフィド結合(-S-S-)を形成しているのではないことを意味する。遊離チオール基の含量は分析Eにしたがって測定する。
【0020】
本発明に関しては、用語「チオール基の総量」は、-SHの形態で(すなわち遊離チオールとして)存在する、あるいはジスルフィド結合(-S-S-)の形態で存在するチオール基の総計に関する。チオール基の総量は分析Eにしたがって測定する。
【0021】
本発明に関しては、用語「酸化させる乳清蛋白質溶液」は、システインの遊離チオール基を酸化することのできる酸化剤(例えば、過酸化物など)を含む水性乳清蛋白質溶液に関する。
【0022】
本発明に関しては、用語「β-ラクトグロブリン」またはBLGは、哺乳動物種のBLG、例えば、天然型および/またはグリコシル化型に関するものであり、天然の遺伝的バリアントをも含む。用語BLGはまた、組換え微生物によって生産される哺乳動物BLGをも含む。本明細書中の用語「BLG」または「β-ラクトグロブリン」は、変性および凝集したBLGについては除外する。BLG含量は分析Lにしたがって測定する。
【0023】
本発明に関しては、用語「システインのチオール基を酸化可能な酸化剤」は、システインのチオール基を酸化する能力によって特徴付けられる酸化剤であり、したがって、BLGの遊離チオール基を接触可能な状態にした場合に遊離チオール基を酸化可能な1種類以上の酸化剤を指す。有用な例としては、例えば、食品生産に承認された過酸化物、および最も好ましくは、過酸化水素が挙げられる。
【0024】
用語「乳清」は、乳汁のカゼインを沈殿させて除去した後に残る液相に関する。カゼインの沈殿は、例えば、乳汁の酸性化、および/またはレンネット酵素の使用によって達成することができる。乳清には複数のタイプが存在し、カゼインのレンネットによる沈殿によって調製される乳清産物である「甘い乳清」、およびカゼインの酸沈殿によって調製される乳清産物である「酸乳清」または「酸っぱい乳清」などが存在する。カゼインの酸沈殿は、例えば、食品酸の添加、あるいは細菌培養によって行うことができる。
【0025】
用語「乳清(milk serum)」は、例えば、精密濾過または大孔径の限外濾過によって、乳汁からカゼイン、および乳脂肪球を除去した場合に残る液体に関する。乳清(milk serum)はまた「理想的な乳清(ideal whey)」を指すこともある。
【0026】
本発明に関しては、用語「乳清蛋白質」は、乳清(whey)または乳清(milk serum)に含まれる蛋白質に関する。乳清蛋白質は、乳清(whey)または乳清(milk serum)に含まれる蛋白質種のサブセットであってもよく、単一乳清蛋白質種であってもよく、あるいは乳清(whey)または/および乳清(milk serum)に含まれる蛋白質種の完全なセットであってもよい。
【0027】
非分画乳清蛋白質は、典型的には、α-ラクトアルブミン(ALA)、β-ラクトグロブリン(BLG)、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、オステオポンチン、ラクトフェリン、およびラクトパーオキシダーゼを含む。レンネット処理乳汁に由来する乳清蛋白質は、他の蛋白質種に加えてカゼインマクロペプチドをさらに含む(CMP)。
【0028】
本明細書に記載の分析方法は、本発明に関する対応パラメータを決定するために用いる。
【0029】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、過酸化物、オゾン、二酸素、またはそれらの組み合わせを含む、あるいは同上から成る。
【0030】
システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、酸化させる乳清蛋白質溶液に溶解した1種類以上の過酸化物および酸素を含む、あるいは同上から成ることが特に好ましい。
【0031】
さらにより好ましくは、システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、酸化させる乳清蛋白質溶液に溶解した過酸化水素、および酸素を含む、あるいは同上から成る。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)のシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも50%モル/モル、より好ましくは少なくとも70%モル/モル、さらにより好ましくは少なくとも80%モル/モル、および最も好ましくは少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物を含む。
【0033】
過酸化物は、さらにより高い含量であることが好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)のシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して少なくとも92%モル/モルの量の過酸化物を含み、より好ましくは少なくとも94%モル/モル、さらにより好ましくは少なくとも96%モル/モル、および最も好ましくは少なくとも98%モル/モルの過酸化物を含む。
【0034】
システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酢酸、またはその混合物から成る群から選択される過酸化物を含む、あるいは同上から成ることが好ましいことが多い。
【0035】
システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、過酸化水素を含む、あるいは過酸化水素から成ることが特に好ましい。
【0036】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)のシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して少なくとも50%モル/モルの量の過酸化水素、より好ましくは少なくとも70%モル/モル、さらにより好ましくは少なくとも80%モル/モル、および最も好ましくは少なくとも90%モル/モルの量の過酸化水素を含む。
【0037】
過酸化水素の含量はさらにより高いことが好ましいことが多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)のシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤は、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも92%モル/モル、より好ましくは少なくとも94%モル/モル、さらにより好ましくは少なくとも96%モル/モル、および最も好ましくは少なくとも98%モル/モルの量の過酸化水素を含む。
【0038】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を酵素的に生成させる。例えば、乳糖酸化酵素またはヘキソース酸化酵素(例えば、グルコースオキシダーゼなど)を用いることによる。
【0039】
他の好ましい実施態様においては、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を電気化学的に生成させる。
【0040】
システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液に加えるアプローチとしては、2種類の主要なアプローチが存在する。
【0041】
第1のアプローチで必要なことは、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を、工程(a)で添加し、次いで工程(b)において少なくとも部分的に該酸化剤を用いることである。このアプローチは実施が容易であるが、第2のアプローチに比べて望ましくない酸化が少々起こり易くなることが多い。
【0042】
第2のアプローチでは、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を、工程(a)では相対的に低い初期含量を用いるが、工程(b)においてもシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤を(連続的添加または不連続的添加の)追加用量で用いることを含む。本発明者らは、このアプローチが遊離チオール基の非常に穏和な酸化を提供することを発見したが、このアプローチは、実施において第1のアプローチよりも少々複雑である。
【0043】
酸化剤の大部分を工程(a)で添加し、酸化剤の一部については工程(b)で供給する方法を実施することがさらに適している。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、第1のアプローチに特に有用なことは:
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤、
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも1:1、および最も好ましくは少なくとも2:1となることである。
【0045】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも5:1、および最も好ましくは少なくとも10:1であることが好ましいことが多い。
【0046】
本発明に関しては、第1の成分(A)の量と第2の成分(B)の量との間の比は、AをBで除算することを意味し、A:Bと表すこともある。
【0047】
該第1のアプローチにおいては、好ましくは、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比は、1:2~200:1、より好ましくは1:1~100:1、さらにより好ましくは2:1~30:1、および最も好ましくは4:1~15:1である。
【0048】
あるいはまた好ましくは、第1のアプローチに関しては、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、1:2~15:1、より好ましくは1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1である。
【0049】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比は、1:2~200:1、より好ましくは1:1~100:1、さらにより好ましくは2:1~30:1、および最も好ましくは4:1~15:1であることが好ましいことが多い。
【0050】
あるいはまた好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、1:2~15:1、より好ましくは1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1である。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比は、1:1.5~15:1、より好ましくは1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1.5~8:1、および最も好ましくは1:1.5~3:1である。
【0052】
第1のアプローチに関してさらに好ましいのは以下である:
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、2:1~30:1、より好ましくは3:1~25:1、さらにより好ましくは4:1~20:1、および最も好ましくは5:1~15:1である。
【0053】
本発明の他の好ましい実施態様においては、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、最大で5:1、より好ましくは最大で2:1、さらにより好ましくは最大で1:1、および最も好ましくは最大で1:2であることが第2のアプローチにとって特に有用である。
【0054】
好ましくは、また第2のアプローチにとって特に有用なのは、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、最大で1:4、より好ましくは最大で1:10、さらにより好ましくは最大で1:20、および最も好ましくは最大で1:40となることである。
【0055】
該第2のアプローチにおいては、好ましくは、
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、1:100~5:1、より好ましくは1:60~2:1、さらにより好ましくは1:40~1:1、および最も好ましくは1:20~1:2である。
【0056】
工程(a)の酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、6.5~9.5の範囲である。
【0057】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.0~9.5、より好ましくは7.1~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.4~8.2の範囲である。本発明者らは、これらのpH範囲がBLGの遊離チオール基の急速かつ選択的な酸化に特に有益であることを発見した。
【0058】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.5~9.5、より好ましくは7.6~8.5、さらにより好ましくは7.7~8.4、および最も好ましくは7.7~8.3の範囲である。本発明者らは、これらのpH範囲がBLGの遊離チオール基の急速かつ選択的な酸化に特に有益であることを発見した。
【0059】
あるいはまた好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが、6.5~8.5、より好ましくは6.6~8.0、さらにより好ましくは6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲である。
【0060】
特に乾燥を必要とする場合には、生産能力を改善し、またプロセスの水とエネルギー消費を減らすためには、少なくとも1%w/wの蛋白質含量、好ましくはさらにより高い蛋白質含量で該方法を実施することが有益であることを、本発明者らは発見した。
【0061】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して、少なくとも2%w/w、より好ましくは少なくとも3%w/w、さらにより好ましくは少なくとも5%w/w、および最も好ましくは少なくとも6%w/wの総蛋白質含量を有する。
【0062】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して、1~30%w/w、より好ましくは3~20%w/w、さらにより好ましくは4~15%w/w、および最も好ましくは少なくとも6~10%w/wの範囲の総蛋白質含量を有する。
【0063】
本発明者らは、蛋白質含量を12%w/w以下に保つことは利点となることが多く、これによって工程(b)で起こる蛋白質凝集のレベルを制限すると推定されることを見いだしている。工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して、1~12%w/w、より好ましくは3~11%w/w、さらにより好ましくは4~10%w/w、および最も好ましくは少なくとも5~9%w/wの範囲の総蛋白質含量を有することが好ましいことが多い。
【0064】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して少なくとも30%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも75%w/w、および最も好ましくは少なくとも85%w/wの総蛋白質含量を有する。
【0065】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して30~99%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して50~97%w/w、さらにより好ましくは75~96%w/w、および最も好ましくは少なくとも85~95%w/wの範囲の総蛋白質含量を有する。
【0066】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのBLG含量を有する。
【0067】
乳清蛋白質BLGが、少なくとも部分的には中性pHの食品生産物の加熱処理中の不快な臭気の発生の原因であり、BLGの遊離チオール基がその臭気発生に関与していると思われることを、本発明者らは発見した。したがって、本発明は、ある量のBLG、好ましくは総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのBLGを含む乳清蛋白質供給源の処理にとって特に好適である。
【0068】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも20%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、さらにより好ましくは少なくとも45%w/w、および最も好ましくは少なくとも50%w/wのBLG含量を有する。
【0069】
さらにより好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも55%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも60%w/w、さらにより好ましくは少なくとも80%w/w、および最も好ましくは少なくとも90%w/wのBLG含量を有するのであってもよい。
【0070】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して10~99%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して45~98%w/w、さらにより好ましくは80~96%w/w、および最も好ましくは90~95%w/wの範囲のBLG含量を有する。
【0071】
あるいはまた好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して10~90%w/w、より好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して20~80%w/w、さらにより好ましくは30~75%w/w、および最も好ましくは45~70%w/wの範囲のBLG含量を有するのであってもよい。
【0072】
該乳清蛋白質源の蛋白質組成に関して記載される特徴および選好は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の蛋白質組成に等しく当てはまる。
【0073】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液およびそれが調製される由来する乳清蛋白質源はまた典型的には、少なくとも微量にはその他の乳清蛋白質をも含む。例えば、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液およびそれが調製される由来する乳清蛋白質源はまた典型的には、α-ラクトアルブミン(ALA)、カゼインマクロペプチド(CMP)、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、オステオポンチン、ラクトフェリン、およびラクトパーオキシダーゼのうちの1種類以上を含む。
【0074】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液およびそれが調製される由来する乳清蛋白質源は、好ましくは、総蛋白質に対して最大で20%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して最大で10%w/w、さらにより好ましくは最大で6%w/w、および最も好ましくは最大で2%w/wの量のカゼインを含む。
【0075】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の脂肪レベルは、好ましくは低く保たれ、好ましくは典型的には乳清蛋白質濃縮物および高脂質WPIに含まれるレベルよりも低く保たれることを、本発明者らは発見した。
【0076】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量を有する。
【0077】
脂肪がさらにより低レベルであることが、典型的には好ましく、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、総固形物に対して最大で1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.5%w/w、さらにより好ましくは最大で0.2%w/w、および最も好ましくは最大で0.1%w/wの総脂肪含量を有することが好ましいことが多い。
【0078】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、様々な量の炭水化物を含むのであってもよい。
【0079】
しかし、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、総固形物に対して最大で65%w/wの炭水化物含量を有することは、好ましいことが多い。
【0080】
炭水化物がさらにより低レベルであることは典型的には好ましく、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、総固形物に対して最大で20%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で8%w/w、さらにより好ましくは最大で2%w/w、および最も好ましくは最大で0.2%w/wの炭水化物含量を有することが好ましいことが多い。
【0081】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%蛋白質変性度の有する。
【0082】
蛋白質変性度は、WO2020/002426の実施例1.3にしたがって判定する。
【0083】
さらにより低い蛋白質変性度が好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは最大で12%、より好ましくは最大で10%、さらにより好ましくは最大で8%、および最も好ましくは最大で5%の蛋白質変性度を有する。
【0084】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは総固形物に対して最大で8%w/w、より好ましくは最大で6%w/w、さらにより好ましくは最大で5%、および最も好ましくは最大で4.0%の灰分を有する。
【0085】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは総固形物に対して0.4~8%w/w、より好ましく総固形物に対しては最大で0.5~6%w/w、さらにより好ましくは0.5~5%w/w、および最も好ましくは0.6~4.0%w/wの灰分を有する。
【0086】
組成物の灰分はWO2020/002426の実施例1.13にしたがって判定する。
【0087】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは総固形物に対して、最大で1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.7%w/w、さらにより好ましくは最大で0.5%w/w、および最も好ましくは最大で0.2%w/wのマグネシウムとカルシウムの総計含量を有する。
【0088】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、好ましくは総固形物に対して0.01~1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.001~0.7%w/w、さらにより好ましくは0.01~0.5%w/w、および最も好ましくは0.01~0.2%w/wのマグネシウムとカルシウムの総計含量を有する。
【0089】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、0.5~50%w/w、より好ましくは1~35%w/w、さらにより好ましくは2~20%w/w、および最も好ましくは3~10%w/wの固形物含量を有する。
【0090】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液において固形物によって構成されない部分は、好ましくは水を含む。工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液においての固形物によって構成されない部分は、好ましくは少なくとも80%w/w、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは95%w/w、およびより好ましくは少なくとも99%w/wの量の水を含む。
【0091】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧される。
このことは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が:
(i)0~160℃の範囲の温度を有する必要がある、
または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧される必要がある、
または
(i+ii)0~160℃の範囲の温度を有し、かつ20~4000バールの範囲の圧力に加圧される必要がある、
ことを意味する。
【0092】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)は条件(i)を含む。
【0093】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(a)は条件(ii)を含む。
【0094】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、工程(a)は特徴(i)および(ii)の両方を含む。
【0095】
(i)の温度範囲および(ii)の圧力範囲の両方を同時に用いて本発明を実施することが適しており、本明細書に記載の条件下では温度上昇および圧力増加の両方がBLGの遊離チオールの選択的酸化にとって好ましいことを、本発明者らは発見した。
【0096】
好ましくは、工程(a)の条件(i)は、5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~55℃の範囲の温度を有する酸化させる乳清蛋白質溶液を含む。
【0097】
pH6.5に近い最低pH範囲では、より高いpH範囲と比較して、効率的酸化を得るためにより高い温度を必要とすることを、本発明者らは発見した。
【0098】
本発明のいくつかの実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは6.5~7.0の範囲であり、その温度は40~65℃、より好ましくは45~65℃、さらにより好ましくは50~65℃、および最も好ましくは55~65℃の範囲である。
【0099】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは7.1~9.5の範囲であり、その温度は5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~55℃の範囲である。
【0100】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは8.5~9.5の範囲であり、その温度は、0~65℃、より好ましくは0~50℃、さらにより好ましくは0~30℃、および最も好ましくは5~25℃の範囲である。
【0101】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが7.5~8.5の範囲であり、その温度が5~60℃、より好ましくは10~60℃、さらにより好ましくは15~60℃、および最も好ましくは20~60℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲は、BLGの遊離チオールの選択的酸化および比較的速い反応速度の両方にとって、好ましいと思われる。
【0102】
さらに、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが7.7~8.5の範囲であり、その温度が25~55℃、より好ましくは30~55℃、さらにより好ましくは35~50℃、および最も好ましくは35~45℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲はまた、BLGの遊離チオールの選択的酸化および比較的速い反応速度の両方にとって、好ましいと思われる。
【0103】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が6.8~7.5の範囲のpHを有し、そのことによって酸化後のpH調整の必要性が低減する場合には、生産の見通しから利点となることもあるということを、本発明者らは発見した。
【0104】
工程(a)においてさらにより高い温度を用いることができ、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、条件(i)には、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲の温度を有する工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が含まれることを、本発明者らは発見した。
【0105】
さらに、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが7.5~8.5、より好ましくは7.7~8.5の範囲であり、その温度が66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲はまた、BLGの遊離チオールの選択的酸化および比較的速い反応速度の両方にとって、好ましいと思われる。実施例16から分かるように、これらの組み合わせによって、非常に速い工程(b)および数分程度以下の時間で完了する酸化プロセスが可能となる。
【0106】
工程(a)において条件(i)を用いる場合には、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には100バール未満であり、および典型的には0.1~100バールの範囲、およびより好ましくは1~80バールの範囲である。
【0107】
工程(a)の条件(i)を条件(ii)と組み合わせることによって、100バール以上の圧力を用いるのであってもよい。
【0108】
好ましくは、工程(a)の条件(ii)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~4000バール、より好ましくは200~3500バール、さらにより好ましくは300~3000バール、および最も好ましくは500~2500バールの範囲の圧力に加圧されることを含む。
【0109】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の条件(ii)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が100~1000バール、より好ましくは150~800バール、さらにより好ましくは200~600バール、および最も好ましくは200~500バールの範囲の圧力に加圧されることを含む。
【0110】
本発明の他の好ましい実施態様においては、条件(ii)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が25~1000バール、より好ましくは30~500バール、さらにより好ましくは35~300バール、および最も好ましくは40~200バールの範囲の圧力に加圧されることを含む。
【0111】
工程(a)において条件(ii)を用いる場合には、温度は、典型的には0~65℃、より好ましくは5~65℃、さらにより好ましくは20~60℃、および最も好ましくは40~60℃の範囲および条件である。したがって、条件(ii)は、好ましくは条件(i)と共に用いるが、条件(ii)を用いずに条件(i)を用いるのであってもよい。
【0112】
工程(a)が条件(ii)をも含む場合には、より低い温度で充分なことが多いことを、本発明者らは発見した。本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)は条件(ii)の利用を含み、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、0~50℃、より好ましくは0~40℃、さらにより好ましくは0~30℃、および最も好ましくは2~20℃の範囲の温度を有する。
【0113】
しかし、工程(a)において条件(ii)を用いる場合には、温度が66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲であってもよい。
【0114】
工程(a)における乳清蛋白質源の処理は、典型的には、乳清蛋白質源をシステインのチオールを酸化可能な酸化剤に接触させ、蛋白質含量、pH、および温度および/または圧力を所望のレベルに調整する1種類以上の処理工程を含む。
【0115】
好ましくは、工程(a)における乳清蛋白質源の処理は、以下の少なくとも(I)および(II)、および任意選択的に(III)、および/または(IV)を含む:
(I)好ましくは、システインのチオールを酸化可能な少なくとも1種類の酸化剤、および任意選択的にさらなる成分(例えば、水)に該乳清蛋白質源を組み合わせる、またはそれらを混合することにより、接触させること;
(II)必要に応じて、所望のpH範囲(例えば、6.5~9.5の範囲のpH)となるように、pHを調整すること;
(III)任意選択的に、所望の圧力範囲(例えば、20~4000バールの範囲の圧力、例えば、100~4000バールまたは20~200バールなど)となるように、加圧すること;
(IV)任意選択的に、所望の温度範囲、例えば、0~160℃の範囲の温度(例えば、0~65℃または66~160℃など)に温度を調整すること。
【0116】
該酸化させる乳清蛋白質溶液を液状形態に保つこと、および該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度が例えば、100℃を超える場合には、該溶液に加圧して沸騰および蒸発を回避することが好ましいことが多い。
【0117】
所望の特性を有する酸化させる乳清蛋白質溶液が得られる限り、工程(a)において、処理工程(I)、(II)、(III)、および(IV)の順序はあまり重要ではない。
【0118】
処理工程(II)のpH調整は、好ましくは処理工程(I)の前、または処理工程(I)中に実施する。あるいは、処理工程(II)のpH調整を処理工程(I)の後に実施するのであってもよい。しかし、工程(a)においては、pHおよび温度、および/または圧力が所望範囲外である場合には、乳清蛋白質源と酸化剤の接触時間を最小化することが好ましいことが多い。
【0119】
処理工程(III)は、好ましくは処理工程(I)の後に実施する。
【0120】
処理工程(IV)は、好ましくは処理工程(I)の前、処理工程(I)中、または処理工程(I)後に実施する。
【0121】
好ましくは、該乳清蛋白質源および工程(a)における乳清蛋白質源を含む中間混合物は、65℃より高い温度を有することなく、および最も好ましくは55℃より高くはない。
【0122】
本発明に関しては、用語「乳清蛋白質源」は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の調製に用いる乳清蛋白質組成物に関する。該乳清蛋白質源は、単一乳清蛋白質組成物、例えば、乳清蛋白質粉末または水性乳清蛋白質液であってもよく、あるいは該乳清蛋白質源は、複数の副供給源、例えば、複数の乳清蛋白質粉末、および/または複数の水性乳清蛋白質液の組み合わせであってもよい。複数の副供給源を用いる場合には、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の調製前に、それらを組み合わせて単一組成物を形成させるのであってもよく、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の調製中に、個々に添加するのであってもよい。複数の副供給源を用いる場合には、用語「乳清蛋白質源」は、用いる副供給源の組み合わせの特徴を示している。
【0123】
該乳清蛋白質源は粉末または液体であってもよい。粉末形態で提供される場合には、該乳清蛋白質源粉末を水で再構成して、さらなる処理を実施する少なくとも0.5時間前に水和することを可能にすることが好ましい。
【0124】
該乳清蛋白質源は、好ましくは乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質単離物(WPI)、またはそれらの組み合わせである。
【0125】
本発明に関しては、用語「乳清蛋白質濃縮物」(WPC)は、総固形物に対して20~89%w/wの蛋白質総量を含む乾燥組成物または水性組成物に関する。
【0126】
WPCは、好ましくは以下を含む:
総固形物に対して30~85%w/wの蛋白質。
総蛋白質に対して15~90%w/wのBLG、
総蛋白質に対して4~50%w/wのALA、
および
蛋白質に対して0~40%w/wのCMP。
【0127】
最も好ましくは、WPCは以下を含む:
総固形物に対して70~85%w/wの蛋白質、
総蛋白質に対して30~90%w/wのBLG、
総蛋白質に対して4~35%w/wのALA、
および
蛋白質に対して0~25%w/wのCMP。
【0128】
乳清蛋白質のWPCは、典型的にはCMPを含まない、あるいは痕跡程度のCMPのみを含む。
【0129】
用語「乳清蛋白質単離物」(WPI)は、総固形物に対して86~100%w/wの蛋白質総量を含む乾燥組成物または水性組成物に関する。
【0130】
WPIは、好ましくは以下を含む:
総固形物に対して86~99%w/wの蛋白質、
総蛋白質に対して30~100%w/wのBLG、
総蛋白質に対して0~35%w/wのALA、
および
総蛋白質に対して0~25%w/wのCMP。
【0131】
最も好ましくは、WPIは以下を含む:
総固形物に対して90~99%w/wの蛋白質、
総蛋白質に対して50~99%w/wのBLG、
総蛋白質に対して0~35%w/wのALA、
および
総蛋白質に対して0~25%w/wのCMP。
【0132】
乳清蛋白質のWPIは、典型的にはCMPを含まない、あるいは痕跡程度のCMPのみを含む。
【0133】
該乳清蛋白質源がWPIであることは特に好ましい。
【0134】
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の蛋白質組成、脂肪組成、炭水化物組成およびミネラル組成に関して記載される特徴および選好は、該乳清蛋白質源に等しく当てはまる。
【0135】
該乳清蛋白質源は、好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%の蛋白質変性度を有する。
【0136】
さらにより低い蛋白質変性度が好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該乳清蛋白質源は、最大で12%、より好ましくは最大で10%、さらにより好ましくは最大で8%、および最も好ましくは最大で5%の蛋白質変性度を有する。
【0137】
工程(b)においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の少なくとも一部のBLG分子の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする。
【0138】
「1種類以上の条件」は、特定の温度条件および/または特定の圧力条件を意味する。
【0139】
該方法が、工程(c)の加熱処理を含み、酸化チオール基が工程(c)の非酸化遊離チオール基と反応して、安定な分子間ジスルフィド結合を形成することが明確であれば、本明細書における「部分的酸化」とよばれる一部の遊離チオール基のみの酸化でも充分であり得ることを、本発明者らは発見した。
【0140】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の80%、より好ましくは最大で初期量の76%、さらにより好ましくは最大で73%、および最も好ましくは最大で70%に減少させる、あるいは減少するように実施される。
【0141】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは初期量の30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは60~75%に減少させる、あるいは減少するように実施される。該方法が工程(c)を含む場合には、これらの範囲は好ましいことが多い。
【0142】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(c)を含む場合、工程(c)を含まない場合のいずれであっても、工程(b)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で初期量の25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%に減少させる、あるいは減少するように実施される。
【0143】
好ましくは、工程(c)を含む場合、工程(c)を含まない場合のいずれであっても、工程(b)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の10%、より好ましくは最大で初期量の5%、さらにより好ましくは最大で3%、および最も好ましくは最大で1%に減少させる、あるいは減少するように実施される。
【0144】
僅かな残存量の遊離チオールは許容可能であることが多く、該乳清蛋白質溶液の他の成分が不必要な酸化的損傷を受けることを回避するために望ましいこともあり得る。好ましくは、工程(b)は、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の0.01~30%、より好ましくは初期量の0.02~25%、さらにより好ましくは0.05~20%、および最も好ましくは0.1~10%に減少させる、あるいは減少するように実施される。
【0145】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルに減少させる、あるいは減少に充分な時間、実施される。
【0146】
好ましくは、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり0.001~15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~12マイクロモルに減少させる、あるいは減少に充分な時間、実施される。
【0147】
より低いレベルが好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは 蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルに減少させる、あるいは減少に充分な時間、実施される。
【0148】
好ましくは、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、0.001~10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~2マイクロモルに減少させる、あるいは減少に充分な時間、実施される。
【0149】
遊離チオール基がさらにより低レベルであることが所望の場合もあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で1マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で0.7マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で0.5マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で0.2マイクロモルに減少させる、あるいは減少させるのに充分な時間、実施される。
【0150】
本発明者らは、工程(b)の酸化によって、該乳清蛋白質溶液の僅かなpH低下が起こることを観察しており、所望のpH範囲に保つために工程(b)のpHを調整することが利点となる場合も多いことを発見した。特に、酸化剤とチオール基との間の比をより高くした場合が該当する。
【0151】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、酸化中のpHを6.5~9.5、より好ましくは7.0~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpHに調整することを含む。
【0152】
pHが7.0~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.5~8.5の範囲における酸化の実施によって、該乳清蛋白質溶液内の他の酸化標的(例えば、メチオニンおよびトリプトファン)と比較して遊離チオール基の選択的酸化が起こることを、本発明者らは発見した。
【0153】
好ましくは、工程(b)は、酸化中のpHを7.5~9.5、より好ましくは7.6~8.5、さらにより好ましくは7.7~8.4、および最も好ましくは7.7~8.3の範囲に調整することを含む。
【0154】
工程(b)のpH調整は、例えば、1回以上の離散的pH調整、またはより好ましくは例えば、pHスタットを用いた連続的pH制御を含むのであってもよい。pH調整には、好ましくは食品に許容可能な1種類以上の酸、および/または塩基類を用いる。
【0155】
特に、望ましくない酸化反応を回避する目的で、工程(b)において消費される酸化剤の量を制限することが有益であることを、本発明者らは発見した。
【0156】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては:
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量(ただし、工程(b)の最後の段階で除去する過剰酸化剤の量については除く)、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:2~30:1、より好ましくは1:2~25:1、さらにより好ましくは1:2~20:1、および最も好ましくは1:1~15:1である。
【0157】
また、
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量(ただし、工程(b)の最後の段階で除去する過剰酸化剤の量については除く)、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、2:1~30:1、より好ましくは3:1~25:1、さらにより好ましくは4:1~20:1、および最も好ましくは5:1~15:1であることが好ましいことが多い。
【0158】
意外なことに、工程(c)の加熱処理と組み合わせた遊離チオール基の部分酸化でも、非常に低含量の遊離チオール基を有する酸化乳清蛋白質組成物が得られることを、本発明者らは発見した。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては:
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量(ただし、工程(b)の最後の段階で除去する過剰酸化剤の量については除く)、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:4~15:1、より好ましくは1:3~10:1、さらにより好ましくは1:2~5:1、および最も好ましくは1:2~2:1である。
【0159】
好ましくは、工程(b)、および本発明の方法それ自体は、亜硫酸塩類の添加を含まず、また亜硫酸分解も含まない。
【0160】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)の1種類以上の条件が、(I)5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~60℃の範囲の温度を有する酸化させる乳清蛋白質溶液を含む。
【0161】
工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度範囲は、好ましくは工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度範囲と同一である。しかし、本発明者らは、例えば、工程(a)が比較的低い温度である場合には、工程(b)の温度を上昇させることが有益であり得ることも発見しており、また工程(b)が異なる複数の温度ステージを含むのであってもよいことも発見した。
【0162】
pH6.5に近い最低pH範囲では、より高いpH範囲と比較して、効率的酸化のためにより高い温度を必要とすることを、本発明者らは発見した。
【0163】
本発明のいくつかの実施態様においては、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、6.5~7.0の範囲であり、その温度は、40~65℃、より好ましくは45~65℃、さらにより好ましくは50~65℃、および最も好ましくは55~65℃の範囲である。
【0164】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.1~9.5の範囲であり、その温度は、5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~55℃の範囲である。
【0165】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、8.5~9.5の範囲であり、その温度は、0~65℃、より好ましくは0~50℃、さらにより好ましくは0~30℃、および最も好ましくは5~25℃の範囲である。
【0166】
工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.5~8.5の範囲であり、その温度は、5~60℃、より好ましくは10~60℃、さらにより好ましくは15~60℃、および最も好ましくは20~60℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲は、BLGの遊離チオールの選択的酸化および比較的速い反応速度の両方にとって好ましいと考えられる。
【0167】
さらに、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.7~8.5の範囲であり、その温度は、25~55℃、より好ましくは30~55℃、さらにより好ましくは35~50℃、および最も好ましくは35~45℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲はまた、BLGの遊離チオールの選択的酸化および反応の比較的速い速度の両方にとって、好ましいと思われる。
【0168】
工程(b)においてより高い温度を用いることも可能であり、および本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、条件(I)は66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲の温度を有する工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液を含むことを、本発明者らは発見した。
【0169】
さらに、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHは、7.5~8.5、より好ましくは7.7~8.5の範囲であり、その温度は、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲であることが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。これらの範囲はまた、BLGの遊離チオールの選択的酸化および比較的速い反応速度の両方にとって、好ましいと思われる。実施例16から分かるように、これらの組み合わせによって、非常に速い工程(b)および数分程度以下の時間で完了する酸化プロセスを可能にする。
【0170】
工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が6.8~7.5の範囲のpHを有し、そのことが酸化後のpH調整の必要性を低減する場合には、生産の見通しから利点となることもあるということを、本発明者らは発見した。
【0171】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の80%、より好ましくは最大で初期量の76%、さらにより好ましくは最大で73%、および最も好ましくは最大で70%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0172】
上述のように、工程(c)の加熱処理を伴うことによって、遊離チオール基の部分酸化が有益なこともあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは初期量の30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは60~75%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0173】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で初期量の25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0174】
好ましくは、工程(b)において、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の10%、より好ましくは最大で初期量の5%、さらにより好ましくは最大で3%、および最も好ましくは最大で1%に減少させるのに充分な時間、温度を所望の温度範囲に保つ。
【0175】
好ましくは、工程(b)において、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の0.01~30%、より好ましくは初期量の0.02~25%、さらにより好ましくは0.05~20%、および最も好ましくは0.1~10%に減少させるのに充分な時間、温度を所望の温度範囲に保つ。
【0176】
好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0177】
該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり0.001~15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~12マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つことが多い。
【0178】
好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0179】
好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり0.001~10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)を所望の温度範囲に保つ。
【0180】
遊離チオール基がさらにより低レベルであることが所望の場合もあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で1マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で0.7マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で0.5マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で0.2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ。
【0181】
工程(b)において条件(I)を用いる場合には、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には100バール未満であり、および典型的には0.1~100バールの範囲、およびより好ましくは1~80バールの範囲である。
【0182】
工程(b)の条件(I)を条件(II)と組み合わせることによって、100バール以上の圧力を用いるのであってもよい。
【0183】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(b)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~4000バール、より好ましくは200~3500バール、さらにより好ましくは300~3000バール、および最も好ましくは500~2500バールの範囲の圧力に加圧される条件(II)を含む。
【0184】
しかし、本発明のさらに好ましい実施態様においては、条件(II)は、該酸化させる乳清蛋白質溶液が、20~500バール、より好ましくは30~300バール、および最も好ましくは40~200バールの範囲の圧力に加圧されることを含む。
【0185】
工程(b)における該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力の範囲は、好ましくは工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力範囲と同一である。
【0186】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の80%、より好ましくは最大で初期量の76%、さらにより好ましくは最大で73%、および最も好ましくは最大で70%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0187】
上述のように、工程(c)の加熱処理を伴うことによって、遊離チオール基の部分酸化が有益なこともあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは初期量の30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは60~75%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0188】
好ましくは、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で初期量の25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液に圧力を加える。
【0189】
好ましくは、工程(b)において、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の10%、より好ましくは最大で初期量の5%、さらにより好ましくは最大で3%、および最も好ましくは最大で1%に減少させるのに充分な時間、圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0190】
好ましくは、工程(b)において、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の0.01~30%、より好ましくは初期量の0.02~25%、さらにより好ましくは0.05~20%、および最も好ましくは0.1~10%に減少させるのに充分な時間、圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0191】
好ましくは、工程(c)を含む実施態様あるいは工程(c)を含まない実施態様のいずれであっても、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0192】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり0.001~15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.001~14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.001~13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.001~12マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0193】
好ましくは、工程(c)を含む実施態様あるいは工程(c)を含まない実施態様のいずれであっても、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0194】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり0.001~10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0195】
遊離チオール基がさらにより低レベルであることが所望の場合もあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で1マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で0.7マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で0.5マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で0.2マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ。
【0196】
工程(b)において条件(II)を用いる場合には、温度は典型的には、0~65℃、より好ましくは5~65℃、さらにより好ましくは20~60℃、および最も好ましくは40~60℃の範囲の条件である。したがって、条件(II)は、典型的には条件(I)と共に用いられるが、条件(II)を含むことなく条件(I)を用いるのであってもよい。
【0197】
工程(b)が条件(II)をも含む場合には、より低い温度で充分なことが多いことを、本発明者らは発見した。本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、条件(II)の利用を含み、該酸化させる乳清蛋白質溶液は、0~50℃、より好ましくは0~40℃、さらにより好ましくは0~30℃、および最も好ましくは2~20℃の範囲の温度を有する。
【0198】
しかし、本発明のいくつかの実施態様においては、工程(b)は、条件(II)の利用を含み、該酸化させる乳清蛋白質溶液は、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲の温度を有する。
【0199】
工程(b)における温度をゆっくりと上昇させることによって、該乳清蛋白質の遊離チオール基の効率的酸化が可能となることを示唆する証拠を、本発明者らは得ている。
【0200】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(b)において該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を、最大で2℃/分、より好ましくは最大で1℃/分、さらにより好ましくは最大で0.3℃/分、および最も好ましくは最大で0.1℃/分の加熱速度で、最大酸化温度まで上昇させることを含む。
【0201】
工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質が6.5~7.5の範囲のpHを有する場合には、温度を上昇させながら工程(b)を実行することは、特に有用である。
【0202】
温度は連続的に上昇させてもよく、あるいは段階的に上昇させてもよい。
【0203】
pHは分析Bにしたがって測定する。
【0204】
さらに、本発明者らは、特に、pHが7.5~9.5、およびより好ましくは7.7~8.5の範囲である場合には、工程(b)中に温度を急速に上昇させることが有益であり得ることを発見した。
【0205】
本発明のこれらの好ましい実施態様においては、工程(b)が開始すると、該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度は0~65℃の範囲であり、工程(b)において、該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度は、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲に上昇する。このアプローチの利点を実施例16で具体的に示す。
【0206】
上記の第1のアプローチに特に有用である本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(b)においてシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤をさらに添加する、または生成させることを含まない。
【0207】
これは、必要とする酸化剤が全て工程(a)で添加されることを意味している。
【0208】
上記の第2のアプローチに特に有用な本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(b)においてシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤をさらに添加すること、および/またはさらに生成させることを含む。
【0209】
本発明のそのような好ましい実施態様においては、
・ 工程(b)において酸化させる蛋白質溶液に存在する、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の最大量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比が、好ましくは最大で5:1、より好ましくは最大で2:1、さらにより好ましくは最大で1:1、および最も好ましくは最大で1:2である。
【0210】
好ましくは、また特に第2のアプローチに関しては、
・ 工程(b)において該酸化させる蛋白質溶液に存在する、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の最大量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比が、最大で1:5、より好ましくは最大で1:10、さらにより好ましくは最大で1:20、および最も好ましくは最大で1:50である。
【0211】
好ましくは、また特に第2のアプローチに関しては、
・ 工程(b)において該酸化させる蛋白質溶液に存在する、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の最大量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比が、1:1000~1:1、より好ましくは1:100~1:2、さらにより好ましくは1:70~1:5、および最も好ましくは1:60~1:15である。
【0212】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)に要する時間は、最長48時間、より好ましくは最長36時間、さらにより好ましくは最長30時間、および最も好ましくは最長25時間である。
【0213】
好ましくは、工程(b)に要する時間は、0.1~48時間、より好ましくは3~36時間、さらにより好ましくは5~30時間、および最も好ましくは10~25時間である。
【0214】
さらにより速い酸化工程が適しており、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)に要する時間は、最長12時間、より好ましくは最長6時間、さらにより好ましくは最長3時間、および最も好ましくは最長1時間である。
【0215】
好ましくは、工程(b)に要する時間は、0.1~12時間、より好ましくは0.1~6時間、さらにより好ましくは0.1~3時間、および最も好ましくは0.1~1時間である。
【0216】
遊離チオールの急速減少は、例えば、該方法を連続的プロセスとして実施することによって、および/または最適条件に近づくように工程(a)および工程(b)のパラメータを選択することによって、達成するのであってもよい。
【0217】
30分程度以下の工程(b)を実施するだけで充分であることを、本発明者らは発見した。
【0218】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)に要する時間は、最長40分間、より好ましくは最長30分間、さらにより好ましくは最長20分間、および最も好ましくは最長10分間である。
【0219】
さらにより速い酸化工程が適しており、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)に要する時間は、最長10分間、より好ましくは最長8分間、さらにより好ましくは最長4分間、および最も好ましくは最長2分間である。
【0220】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度は、工程(b)において65℃以下であり、より好ましくはより60℃以下である。
【0221】
しかし、上述のように、また実施例16に示されるように、特に該酸化条件および該酸化剤用量を調節する場合においては、より高い温度を用いるのであってもよいことを、本発明者らは発見した。
【0222】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(b)は、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を実質的にすべて消費するまで酸化を進めさせることを含む。
【0223】
本発明の他の好ましい実施態様においては、工程(b)は、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液を、ある成分、例えば、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、残存する酸化剤を除去する酵素、触媒、または反応剤に接触させることによって、酸化を停止させることを含む。
【0224】
好適な酵素としては、過酸化物の不均化が可能なカタラーゼが挙げられる。
【0225】
好適な反応剤としては、抗酸化剤が挙げられる。
【0226】
本発明のさらなる実施態様においては、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液は、工程(b)の終わりにシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤を依然としていくらか含んでいる。しかし、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液におけるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の含量を非常に低く保つことが好ましいことも多い。
【0227】
好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中のシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:50、より好ましくは最大で1:100、および最も好ましくは最大で1:200である。
【0228】
さらにより好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中のシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:500、より好ましくは最大で1:1000、および最も好ましくは最大で1:2000である。
【0229】
最も好ましくは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液は、システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤を検出可能なレベルでは含まない。
【0230】
システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が主に過酸化物を含む場合には、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化物の含量が低いことが好ましい。
【0231】
好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化物の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:50、より好ましくは最大で1:100、および最も好ましくは最大で1:200である。
【0232】
さらにより好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化物の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:500、より好ましくは最大で1:1000、および最も好ましくは最大で1:2000である。
【0233】
最も好ましくは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液は、検出可能なレベルの過酸化物を含まない。
【0234】
システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が主に過酸化水素を含む場合には、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化水素の含量が低いことが好ましい。
【0235】
好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化水素の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:50、より好ましくは最大で1:100、および最も好ましくは最大で1:200である。
【0236】
さらにより好ましくは、
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液中の過酸化水素の量、
および
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量
の間のモル比は、最大で1:500、より好ましくは最大で1:1000、および最も好ましくは最大で1:2000である。
【0237】
最も好ましくは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液は、検出可能なレベルの過酸化水素を含まない。
【0238】
工程(b)は、好ましくは効率的酸化を促進する1種類以上の条件下で単一インキュベーション工程として実施されるが、また1種類以上の条件下で、例えば、添加した酸化剤が消費された場合に、インキュベーション工程が、例えば、中断され、酸化剤がさらに添加された時に再び開始する一連のインキュベーション工程として実施されるのであってもよい。
【0239】
工程(c)は、本発明のいくつかの実施態様においては、工程(c)の加熱処理を含まないという意味において任意選択的である。しかし、工程(c)もまた好ましいものであり、本発明の好ましい方法は、工程(c)を含むことが多い。
【0240】
したがって、工程(c)をも含む方法が、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を加熱処理工程に供し、好ましくはその後に冷却すること含むことが好ましいことが多い。例えば、酸化剤を生成する、および/または残存酸化剤を除去する目的で、例えば、前もって酵素が添加されている場合には、工程(c)の加熱処理は好ましいのである。
【0241】
次いで、加熱処理は酵素不活性化の目的にも用い得る。
【0242】
代替的に、あるいは付加的に、該加熱処理によって残存酸化剤が消費され得る。
【0243】
工程(b)が、遊離チオール基を部分的にのみ酸化するように実施された場合には、工程(c)の加熱処理はさらにより好ましい;すなわち、これは、工程(b)のみで、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の含量を、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量の20~80%に低下させたことを意味する。
【0244】
本発明者らは、部分的に酸化された乳清蛋白質溶液のその後の加熱処理が、遊離チオール基含量をさらに低下させることを発見した。したがって、この部分的酸化アプローチは、遊離チオール基の初期含量に対して僅かな添加量の酸化剤しか必要としないので、該乳清蛋白質の酸化的損傷リスクが減るのである。
【0245】
工程(c)の加熱処理は好ましくは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を5秒間~20分間、60~160℃、より好ましくは65~95℃、さらにより好ましくは70~95℃、および最も好ましくは80~90℃の温度に加熱することを含む。
【0246】
酵素(例えば、カタラーゼなど)の添加により工程(b)の酸化を停止する場合には、該加熱処理は好ましくは、該酵素を不活性するのに充分な時間、好ましくは70~160℃、および最も好ましくは80~150℃の範囲の温度を用いて実施される。
【0247】
本発明者らは、加熱滅菌を工程(c)として有用に用いることができることを発見した;本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、工程(c)は、無菌性を得るのに充分な時間、工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液を少なくとも100℃の温度に加熱することを含む。好ましくは、この加熱処理は、工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液を0.1~10秒間、140~160度の範囲の温度に加熱することを含む。
【0248】
後に該酸化乳清蛋白質溶液を飲料などとして用いる場合には、工程(c)が加熱滅菌を含むことが特に好ましい。そのような実施態様においては、該滅菌酸化乳清蛋白質溶液から成る充填滅菌飲料を提供する目的で、好ましくは無菌充填によって、該滅菌酸化乳清蛋白質溶液を好適な容器に充填する。
【0249】
本発明のその他の実施態様においては、工程(c)の加熱処理は、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を1秒間~1時間、60~100℃の温度に、およびより好ましくは2秒間~50分間、65~95℃の温度に、さらにより好ましくは2秒間~40分間、70~95℃の温度に、および最も好ましくは5秒間~20分間、80~90℃の温度に加熱することを含む。
【0250】
本発明のいくつかの実施態様では、乾燥工程を含まないという意味において、工程(d)は任意選択的である。しかし、好ましい実施態様では工程(d)を実施することが多い。
【0251】
したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該方法は、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を少なくとも含む液状材料を乾燥させる工程(d)をさらに含む。
【0252】
本発明に関しては、用語「工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質」は、液状原料の蛋白質が、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液の蛋白質であり、あるいは該方法が工程(c)を含む場合には工程(c)の加熱処理で得られる蛋白質であることを意味する。
【0253】
好ましくは、乾燥させる液状原料は以下を含む、あるいは以下から成る:
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物、
または
・ 工程(c)で取得される加熱処理酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物。
【0254】
本発明に関しては、第1の液体の「蛋白質濃縮物」は、少なくとも該蛋白質が第1の液体に由来するが、第1の液体と比較して、総固形物に対して高い蛋白質含量(%)を有する第2の液体である。好ましくは、該蛋白質濃縮物の実質的に全ての固形物は第1の液体に由来する。第1の液体の「蛋白質濃縮物」は、好ましくは限外濾過、ナノ濾過、逆浸透、および/または蒸発によって調製される。蛋白質濃縮限外濾過および/またはナノ濾過は、例えば、小型の非蛋白質固形物の一部を除くために透析濾過を用いて実施するのであってもよい。「蛋白質濃縮物」は、同一蛋白質種を含み、好ましくは第1の液体としての総蛋白質に対して同一重量%の乳清蛋白質種を有する。蛋白質濃縮物の取得にはまた、1回以上のpH調整を含む。
【0255】
工程(d)の液状原料の調製は、好ましくは、6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.7、さらにより好ましくは6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲のpHを有する液状原料を得るために、pH調整をさらに含むのであってもよい。
【0256】
したがって、該液状材料は、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.7、さらにより好ましくは6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲のpHを有する。
【0257】
工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質が、好ましくは、該液状原料の総蛋白質のうちの少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wに寄与する。
【0258】
該液状原料は、好ましくは、工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液の蛋白質濃縮物、または工程(c)で取得される加熱処理酸化乳清蛋白質溶液である。該液状原料は、生産後に直接的に乾燥に供するのであってもよい。あるいは、乾燥まで保存タンクに保存する。
【0259】
工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質は、該液状原料の蛋白質のみであることが特に好ましい。
【0260】
工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する固形物が、好ましくは、該液状原料の固形物の少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wに寄与する。
【0261】
pH調整中に添加したミネラルという例外はあるかもしれないが、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する固形物は、該液状原料の蛋白質のみであることが特に好ましい。
【0262】
乾燥のための該液状原料は、好ましくは8~22%w/w、より好ましくは10~18%w/wの範囲の蛋白質含量を有する。
【0263】
乾燥のための該液状原料は、好ましくは8~50%w/w、より好ましくは10~25%w/wの範囲の固形物含量を有する。
【0264】
工程(d)の乾燥は、好ましくは該液状原料を粉末に変換するのである。
【0265】
工程(d)の乾燥は、好ましくは噴霧乾燥することを含む。
【0266】
さらに、該方法は典型的には、該乾燥産物、典型的には工程(d)で取得される粉末を充填する工程を含む。
【0267】
該方法によって取得される酸化乳清蛋白質組成物は、該方法の最終産物であり、好ましくは、工程(b)で取得する酸化乳清蛋白質溶液、工程(c)で取得する加熱処理酸化乳清蛋白質溶液、または工程(d)で取得する酸化乳清蛋白質粉末である。
【0268】
本発明の方法は、バッチ法、準バッチ法、および連続法として実施することができる。
【0269】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該方法を連続法として実施する。少なくとも工程(a)および工程(b)、または工程(a)、工程(b)および工程(c)を連続法として実施することが特に好ましい。
【0270】
工程(b)に要する時間が、比較的短く、例えば、最長2時間、より好ましくは最長1時間、さらにより好ましくは最長30分間、さらにより好ましくは最長20分間、および最も好ましくは最長10分間である本発明の実施態様に関しては、連続実施が好ましいことが多い。
【0271】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該方法を準バッチ法として実施する。
【0272】
該方法の特に好ましい実施態様では、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)20~65℃、および最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し;
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、および最も好ましくは30~60℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHを、7.5~9.5の範囲、最も好ましくは7.7~8.5の範囲に調整すること、
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の30~80%、および最も好ましくは初期量の50~75%に減少させるために、工程(b)を実施すること、
・ 工程(b)においては、さらなる酸化剤の添加を行わないこと、
・ カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、少なくとも75℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、最も好ましくは80~95℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質が、好ましくは該液状原料の蛋白質の少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wに寄与し、
・ 該液状原料は、8~22%w/w、最も好ましくは10~18%w/wの範囲の蛋白質含量を有し、
・ 該液状材料は、6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲のpHを有し、
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0273】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液に加える圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0274】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0275】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0276】
本方法の特に好ましい別の一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)20~65℃、および最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、および最も好ましくは30~60℃の範囲の温度を有すること、
およびここで
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰酸化剤の量は除外する、酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、4:1~20:1、および最も好ましくは5:1~15:1であり;
ここで工程(b)は、さらに以下を含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHを、7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲に調整すること;
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ 工程(b)においては、さらなる酸化剤の添加を行わないこと、
・ カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、少なくとも75℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、最も好ましくは80~95℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで
・ 工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質が、好ましくは該液状原料の蛋白質の少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wに寄与し、
・ 該液状原料は、8~22%w/w、最も好ましくは10~18%w/wの範囲の蛋白質含量を有し、
・ 該液状材料は、6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲のpHを有し、
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0277】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0278】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0279】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のような加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0280】
該方法のさらに特に好ましい一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
およびここで
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰酸化剤の量は除外する、酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:1~10:1、および最も好ましくは1:1~5:1であり、
ここで工程(b)がさらに以下を含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、少なくとも75℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、最も好ましくは80~95℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0281】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0282】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0283】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0284】
該方法のさらに特に好ましい一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、2:1~30:1、および最も好ましくは4:1~15:1であり、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
および
・ カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、少なくとも75℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、最も好ましくは80~95℃の温度でカタラーゼを不活性化するのに充分な時間、加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0285】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0286】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0287】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0288】
本方法の特に好ましい別の一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、2:1~30:1、および最も好ましくは4:1~15:1であり、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0289】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0290】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0291】
工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0292】
本方法の特に好ましい別の一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の30~80%、および最も好ましくは初期量の50~75%に減少させるために、工程(b)を実施する工程;
・ 任意選択的に、カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、2秒間~40分間、70~95℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0293】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0294】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0295】
工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0296】
該方法のさらに特に好ましい実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1.5~8:1、および最も好ましくは1:1.5~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の30~80%、および最も好ましくは初期量の50~75%に減少させるために、工程(b)を実施すること、
・ 任意選択的に、カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、2秒間~40分間、70~95℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0297】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0298】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0299】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0300】
該方法のさらに別の特に好ましい一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の30~80%、および最も好ましくは初期量の50~75%に減少させるために、工程(b)を実施すること、
・ 任意選択的に、カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、70~95℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0301】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0302】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0303】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0304】
該方法のさらに特に好ましい一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1.5~8:1、および最も好ましくは1:1.5~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が20~65℃、最も好ましくは30~65℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の30~80%、および最も好ましくは初期量の50~75%に減少させるために、工程(b)を実施すること、
・ 任意選択的に、カタラーゼを添加することによって工程(b)の酸化を終了させること;
(c)該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるのに充分な時間、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を、70~95℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0305】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0306】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0307】
工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(c)で取得される酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0308】
該方法のさらに特に好ましい一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃、最も好ましくは0~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が70~160℃、最も好ましくは75~100℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ 好ましくは、ここで工程(b)に要する時間は、最長1時間、および最も好ましくは最長10分間である;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0309】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0310】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0311】
工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0312】
本方法の特に好ましい別の一実施態様は、以下の工程(a)~(d)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1.5~8:1、および最も好ましくは1:1.5~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃、最も好ましくは0~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が70~160℃、最も好ましくは75~100℃の範囲の温度を有すること、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ 好ましくは、工程(b)に要する時間は、最長1時間、および最も好ましくは最長10分間であり;
(d)好ましくは、少なくとも工程(b)の酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥する工程;
およびここで該乾燥は噴霧乾燥を含む。
【0313】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0314】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0315】
工程(b)で取得される該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物は、乾燥の代わりに、無菌充填および密閉によって容器、好ましくは滅菌容器に直接充填するのであってもよい。あるいは、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物が滅菌済みでない場合には、本明細書に記載のように加熱滅菌に供するのであってもよい。
【0316】
該方法のさらにまた特に好ましい実施態様は、以下の工程(a)および(b)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1~8:1、および最も好ましくは1:1~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃、最も好ましくは0~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が、好ましくは滅菌酸化乳清蛋白質溶液を提供するために充分な時間、100~160℃、最も好ましくは130~150℃の範囲の温度を有し、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ 好ましくは、ここで工程(b)に要する時間は、最長1時間、および最も好ましくは最長10分間であること;
およびここで、
滅菌充填液状酸化乳清蛋白質溶液を提供するために、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、無菌充填および密閉によって、容器、好ましくは滅菌容器に充填する。
【0317】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0318】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0319】
該方法のさらに特に好ましい実施態様は、以下の工程(a)および(b)を含む:
(a)以下を含む酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源(WPIである)を処理する工程;
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤の総量に対して、少なくとも90%モル/モルの量の過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を含む、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤であって、
以下を有するシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤:
・ 7.5~9.5、最も好ましくは7.7~8.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して2~9%w/w、最も好ましくは3~8%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも40%w/w、最も好ましくは総蛋白質に対して少なくとも50%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、最も好ましくは少なくとも90%w/wの蛋白質含量、
・ 総固形物に対して、最大で1%w/w、最も好ましくは最大で0.2%w/wの総脂肪含量、
およびここで
工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量
の間のモル比は、1:1.5~10:1、さらにより好ましくは1:1.5~8:1、および最も好ましくは1:1.5~3:1であり、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃、最も好ましくは0~65℃の範囲の温度を有し、
(b)該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;ここで該1種類以上の条件は以下の(I)を含む:
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が、好ましくは滅菌酸化乳清蛋白質溶液を提供するために充分な時間、100~160℃、最も好ましくは130~150℃の範囲の温度を有し、
ここで工程(b)は、以下をさらに含む:
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモルに減少させるために、工程(b)を実施すること;
・ 好ましくは、ここで工程(b)に要する時間は、最長1時間、および最も好ましくは最長10分間であること、
およびここで
滅菌充填液状酸化乳清蛋白質溶液を提供するために、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、無菌充填および密閉によって、容器、好ましくは滅菌容器に充填する。
【0320】
上記の特に好ましい実施態様における、該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力は、典型的には0.5~99バール、および最も好ましくは1~30バールである。
【0321】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは上記の特に好ましい実施態様によって取得可能である。
【0322】
本発明のさらに別の一局面は、以下を有する酸化乳清蛋白質組成物に関する:
・ 総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの脂肪含量、
・ 蛋白質g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.7%w/wのトリプトファン含量、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.3%w/wのメチオニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量、
・ 好ましくは、18kDa~10000kDa、より好ましくは50~8000kDa、および最も好ましくは80~5000kDaの範囲の蛋白質重量平均分子量、
を有し、
および
・ 好ましくは、該蛋白質の少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~10000kDaの分子量を有する。
【0323】
該酸化乳清蛋白質組成物は、典型的には5.5~9.5の範囲のpHを有する。
【0324】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、5.5~9.5、より好ましくは6.0~8.5、さらにより好ましくは6.2~8.0、および最も好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する。
【0325】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、該酸化乳清蛋白質組成物の総固形物に対して少なくとも30%w/w、より好ましくは該酸化乳清蛋白質組成物の総固形物に対して少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも75%w/w、および最も好ましくは少なくとも85%w/wの総蛋白質含量を有する。
【0326】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、該酸化乳清蛋白質組成物の総固形物に対して30~99%の範囲、より好ましくは該酸化乳清蛋白質組成物の総固形物に対して50~97%w/w、さらにより好ましくは75~96%w/w、および最も好ましくは少なくとも85~95%w/wの範囲の総蛋白質含量を有する。
【0327】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、総固形物に対して最大で3%w/wの脂肪含量を有する。
【0328】
脂肪レベルがさらにより低いことが典型的には好ましく、該酸化乳清蛋白質組成物が、総固形物に対して最大で1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.5%w/w、さらにより好ましくは最大で0.2%w/w、および最も好ましくは最大で0.1%w/wの総脂肪含量を有することが好ましいことが多い。
【0329】
該酸化乳清蛋白質組成物は、炭水化物を様々な量で含むのであってもよい。
【0330】
しかし、該酸化乳清蛋白質組成物は、総固形物に対して最大で65%w/wの炭水化物含量を有することが好ましいことが多い。
【0331】
炭水化物レベルがさらにより低いことが典型的には好ましく、該該酸化乳清蛋白質組成物が、総固形物に対して最大で20%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で8%w/w、さらにより好ましくは最大で2%w/w、および最も好ましくは最大で0.2%w/wの炭水化物含量を有することが好ましいことが多い。
【0332】
該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは総固形物に対して最大で8%w/w、より好ましくは最大で6%w/w、さらにより好ましくは最大で5%、および最も好ましくは最大で4.0%の灰分を有する。
【0333】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、総固形物に対して0.4~8%w/w、より好ましくは総固形物に対して0.5~6%w/w、さらにより好ましくは0.5~5%w/w、および最も好ましくは0.6~4.0%w/wの灰分を有する。
【0334】
該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは総固形物に対して最大で1%w/w、より好ましくは最大で0.7%w/w、さらにより好ましくは最大で0.5%、および最も好ましくは最大で0.2%のマグネシウムとカルシウムの総計含量を有する。
【0335】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、総固形物に対して0.01~1%w/w、より好ましくは総固形物に対して最大で0.001~0.7%w/w、さらにより好ましくは0.01~0.5%w/w、および最も好ましくは0.01~0.2%w/wのマグネシウムとカルシウムの総計含量を有する。
【0336】
蛋白質g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基を含む酸化乳清蛋白質組成物は、3%の乳清蛋白質を含む加熱処理乳清蛋白質飲料において、非酸化乳清蛋白質と比較して、不快臭気のレベルを低下させることが可能であることを示唆する証拠を、本発明者らは発見した。
【0337】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルの量の遊離チオール基を含む。
【0338】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり0.001~15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~12マイクロモルの量の遊離チオール基を含む。
【0339】
しかし、特に該酸化乳清蛋白質組成物を加熱処理高蛋白質飲料(例えば、6%以上の乳清蛋白質を含む)に用いる場合には、該酸化乳清蛋白質組成物がより低レベルの遊離チオール基を含むことが好ましいことが多い。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む。
【0340】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり0.01~10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む。
【0341】
遊離チオール基がさらにより低レベルであることが所望の場合もあり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり最大で1マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で0.7マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で0.5マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で0.2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む。
【0342】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、総蛋白質に対して少なくとも0.7%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して少なくとも0.8%w/w、さらにより好ましくは少なくとも0.9%w/w、および最も好ましくは少なくとも1.0%w/wのトリプトファン含量を有する。
【0343】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、総蛋白質に対して0.7~3%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して0.8~2.6%w/w、さらにより好ましくは0.9~2.4%w/w、および最も好ましくは1.0~2.2%w/wのトリプトファン含量を有する。
【0344】
あるいはまた好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物が、総蛋白質に対して0.7~3%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して0.8~3%w/w、さらにより好ましくは0.9~3%w/w、および最も好ましくは1.0~3%w/wのトリプトファン含量を有する。
【0345】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、総蛋白質に対して少なくとも0.3%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して少なくとも0.4%w/w、さらにより好ましくは少なくとも0.5%w/w、および最も好ましくは少なくとも0.6%w/wのメチオニン含量を有する。
【0346】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、総蛋白質に対して0.3~3.3%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して0.4~3.2%w/w、さらにより好ましくは0.5~3.2%w/w、および最も好ましくは0.6~3.2%w/wのメチオニン含量を有する。
【0347】
メチオニンの下限がより高いことは好ましいことが多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、総蛋白質に対して1.0~3.3%w/w、より好ましくは総蛋白質に対して1.3~3.2%w/w、さらにより好ましくは1.6~3.2%w/w、および最も好ましくは1.8~3.2%w/wのメチオニン含量を有する。
【0348】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、より好ましくは蛋白質mg当たり最大で0.05マイクログラム、さらにより好ましくは蛋白質mg当たり最大で0.01マイクログラム、および最も好ましくは蛋白質mg当たり最大で0.001マイクログラムを有する。該酸化乳清蛋白質組成物が検出可能なキヌレニンを含まないことは特に好ましい。
【0349】
キヌレニン含量は、Poojaryら、「蛋白質酸化マーカーを定量するための、選択的高感度UHPLC-ESI-ORBITRAP MS法(Selective and sensitive UHPLC-ESI-Orbitrap MS method to quantify protein oxidation markers)」; Talanta、第234巻、第1号、2021年11月(オンラインで利用可能;2021年、7月)にしたがって定量する。
【0350】
キヌレニンは、トリプトファン酸化の有用なマーカーであり、過度の酸化を受けた蛋白質に由来する加熱滅菌乳清蛋白質飲料において黄変の部分的原因となると、本発明者らは考えている。またさらに、キヌレニンは健康上の観点からも望ましくない。
【0351】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、より好ましくは蛋白質g当たり200~500マイクロモルの範囲、および最も好ましくは蛋白質g当たり250~500マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量を有する。
【0352】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物は、蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲、より好ましくは蛋白質g当たり160~350、および最も好ましくは蛋白質g当たり170~300マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量を有する。
【0353】
透明飲料用途において不透明になることを回避し、さらに濃縮中の粘度増加および酸化乳清蛋白質の乾燥を回避するために、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質の粒子サイズが、10000kDa以下であること、好ましくはより小型であることが有益であることを、本発明者らは発見した。
【0354】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質の重量平均分子量は、18kDa~10000kDaの範囲、より好ましくは30~9000kDa、さらにより好ましくは50~8000kDa、および最も好ましくは80~5000kDaの範囲である。
【0355】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~10000kDaの分子量を有する。
【0356】
より好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、50kDa~8000kDaの分子量を有する。
【0357】
さらにより好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、80kDa~5000kDaの分子量を有する。
【0358】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質は、18kDa~200kDa、より好ましくは30~150kDa、および最も好ましくは30~100kDaの範囲の重量平均分子量を有する。
【0359】
該蛋白質の重量平均分子量が小さければ小さいほど、噴霧乾燥の前の濃縮、例えば、限外濾過またはナノ濾過による濃縮において、より高い総蛋白質濃度が可能となることを、本発明者らは発見した。
【0360】
好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~200kDaの分子量を有する。
【0361】
より好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~150kDaの分子量を有する。
【0362】
さらにより好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、18kDa~100kDaの分子量を有する。
【0363】
該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうち大部分が、酸化BLGの二量体化に起因すると思われる少なくとも30kDaの分子量を有することが有益となり得ることを示す証拠を、本発明者らは発見した。
【0364】
したがって、好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、30kDa~200kDaの分子量を有する。
【0365】
より好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、30kDa~150kDaの分子量を有する。
【0366】
さらにより好ましくは、該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質のうちの少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、30kDa~100kDaの分子量を有する。
【0367】
該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは乳清蛋白質源、好ましくは、該乳清蛋白質源の水溶液の酸化を含む方法によって調製される。乳清蛋白質源の好ましい実施態様については、本明細書に記載している。乳清蛋白質単離物が、乳清蛋白質源として特に好ましい。
【0368】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、本明細書に記載の方法によって取得可能である。
【0369】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、液状形態、および好ましくは水性液の形態である。液状形態の該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは最大で0.1~50%w/w、より好ましくは1~35%w/w、さらにより好ましくは5~30%w/w、および最も好ましくは10~30%w/wの固形物含量を有する。
【0370】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、固体形態、好ましくは噴霧乾燥によって調製される好ましくは粉末である。粉末形態の該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは少なくとも90%w/w、より好ましくは少なくとも93%w/w、さらにより好ましくは少なくとも94%w/w、および最も好ましくは少なくとも95%w/wの固形物含量を有する。
【0371】
該酸化乳清蛋白質組成物および該酸化させる乳清蛋白質溶液の、固形物含量に寄与しない部分は、好ましくは水である。
【0372】
該酸化乳清蛋白質組成物の固形物含量に寄与しない部分は、好ましくは少なくとも80%w/wの量、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは95%w/w、およびより好ましくは少なくとも99%w/wの量の水を含む。
【0373】
本発明の特に好ましい一実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は以下を有する:
・ 総固形物に対して少なくとも86%w/w、および最も好ましくは総固形物に対して少なくとも90%の蛋白質含量、
・ 総固形物に対して最大で1%w/w、および最も好ましくは最大で0.2%の脂肪含量、
・ 最大で蛋白質mg当たり10マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは最大で蛋白質mg当たり5マイクロモルの遊離チオール基、
・ 総蛋白質に対して0.7~3%w/wのトリプトファン含量、および最も好ましくは総蛋白質に対して1.0~3%w/wのトリプトファン含量、
・ 総蛋白質に対して0.3~3.3%w/wのメチオニン含量、および最も好ましくは総蛋白質に対して1.3~3.2%w/wのメチオニン含量、
・ 蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラム、および最も好ましくは蛋白質mg当たり最大で0.01マイクログラムのキヌレニン含量。
【0374】
本発明の、上記の特に好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは以下を有する:
・ 蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
および
・ 蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量。
【0375】
さらに、本発明の上記の特に好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は好ましくは以下を有する:
・ 蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
および
・ 蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量。
【0376】
上記の特に好ましい実施態様における酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質の少なくとも60%w/w、より好ましくは少なくとも80%w/w、さらにより好ましくは少なくとも90%w/w、および最も好ましくは少なくとも99%w/wが、30kDa~9000kDaの分子量を有することがさらに好ましいことが多い。
【0377】
該酸化乳清蛋白質組成物の上記の特に好ましい実施態様のpHは、好ましくは6.2~8.0、および最も好ましくは6.5~7.5の範囲である。
【0378】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は、滅菌酸化乳清蛋白質組成物であり、好ましくは充填した滅菌酸化乳清蛋白質組成物である。好ましくは、滅菌形態において、液状酸化乳清蛋白質組成物または滅菌粉末化酸化乳清蛋白質組成物である。
【0379】
本発明のさらに別の一局面は、以下を含む食品生産物を生産するプロセスに関する:
・ 本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物を処理する工程、
および/または
・ 記載の酸化乳清蛋白質組成物および/または該加工酸化乳清蛋白質組成物を1種類以上のさらなる成分と組み合わせて、任意選択的に該組み合わせ物を処理する工程。
【0380】
食品生産物の好ましい例は、加熱処理した飲料、および好ましくは加熱滅菌したpHが5.5~8.5の飲料である。
【0381】
したがって、本発明のより具体的な一局面は、加熱処理した、および好ましくは加熱滅菌した、pHが5.5~8.5、より好ましくはpHが6.5~7.5の飲料を生産するプロセスに関するものであり、該プロセスが以下の工程(1)および(2)を含む:
(1)5.5~8.5のpH、より好ましくは6.5~7.5のpHを有する液状混合物を取得するために、本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物を1種類以上の成分と組み合わせる工程であって、
該液状混合物が、
・ 少なくとも0.5%w/w蛋白質に寄与するのに充分な量の該酸化乳清蛋白質組成物、
および
・ 水、
を含む、
組み合わせる工程;
(2)該液状混合物を、容器、好ましくは滅菌容器に充填する工程、
および
ここで該液状混合物が、充填前に、および/または充填後に加熱処理、好ましくは加熱滅菌される。
【0382】
本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは該食品生産物または該加熱滅菌飲料の唯一の蛋白質源、したがって該液状混合物の唯一の蛋白質源である。
【0383】
腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気の発生を防止するために、加熱処理前に該液状混合物の遊離チオール基含量を低く保つことが有益であることを、本発明者らは発見した。
【0384】
したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物は加熱滅菌前に、液状混合物100g当たり最大で60マイクロモルの遊離チオール基、より好ましくは液状混合物100g当たり最大で40マイクロモルの遊離チオール基、さらにより好ましくは液状混合物100g当たり最大で30マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは液状混合物100g当たり最大で30マイクロモルの遊離チオール基を含む。
【0385】
遊離チオール基含量がさらにより少量であることを必要とする場合も多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物は加熱滅菌前に、液状混合物100g当たり最大で20マイクロモルの遊離チオール基、より好ましくは液状混合物100g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、さらにより好ましくは液状混合物100g当たり最大で10マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは液状混合物100g当たり最大で5マイクロモルの遊離チオール基を含む。
【0386】
好ましくは該液状混合物の重量に対して0.5~15%w/w、より好ましくは該液状混合物の重量に対して1~10%w/w、さらにより好ましくは該液状混合物の重量に対して2~9%w/w、および最も好ましくは該液状混合物の重量に対して3~8%w/wの範囲の総量の蛋白質を含む該液状混合物。
【0387】
あるいはまた好ましくは、該液状混合物が、該液状混合物の重量に対して4~15%w/w、より好ましくは該液状混合物の重量に対して5~14%、さらにより好ましくは該液状混合物の重量に対して6~13%w/w、および最も好ましくは該液状混合物の重量に対して8~12%w/wの範囲の総量の蛋白質を含む。
【0388】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも30%w/w、より好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも70%w/w、および最も好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも80%w/wに寄与する。
【0389】
さらにより高い寄与が好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、該液状混合物の総蛋白質の少なくとも90%w/w、より好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも95%w/w、さらにより好ましくは該液状混合物の総蛋白質の少なくとも99%w/w、および最も好ましくは該液状混合物の総蛋白質の100%w/wに寄与する。
【0390】
該酸化乳清蛋白質組成物を他の蛋白質源と組み合わせて用いる場合には、遊離チオール基が比較的低含有量である供給源を用いることが好ましい。
【0391】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物は、総固形物に対して少なくとも15%w/w、より好ましくは総固形物に対して少なくとも20%w/w、および最も好ましくは少なくとも25%w/w、および最も好ましくは少なくとも30%w/wの量の総蛋白質を含む。
【0392】
例えば、該飲料がスポーツ蛋白質飲料を意図する場合には、該総蛋白質が該総固形物のより大きな割合を占めるのであってもよい。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物は、総固形物に対して少なくとも80%w/w、より好ましくは総固形物に対して少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも92%w/w、および最も好ましくは少なくとも94%w/wの量の総蛋白質を含む。
【0393】
該液状混合物は、典型的には0.5~50%w/w、より好ましくは1~35%w/w、さらにより好ましくは2~20%w/w、および最も好ましくは3~10%w/wの固形物含量を有する。
【0394】
該液状混合物のうちで固形物によって構成されない部分は、好ましくは水を含む。該液状混合物のうちで固形物によって構成されない部分は、好ましくは少なくとも80%w/w、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは95%w/w、およびより好ましくは少なくとも99%w/wの量の水を含む。
【0395】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物のカロリー含量は、最大で100kcal/100g、より好ましくは最大で80kcal/100g、さらにより好ましくは最大で70kcal/100g、および最も好ましくは最大で60kcal/100gである。好ましくは、該液状混合物のカロリー含量は、2~100kcal/100g、より好ましくは4~80kcal/100g、さらにより好ましくは8~70kcal/100g、および最も好ましくは12~60kcal/100gであってもよい。これらの実施態様は、例えば、該蛋白質源が主要なエネルギー供給源となるスポーツ用途にとっては好ましいものである。
【0396】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該液状混合物のカロリー含量は、100kcal/100g超、より好ましくは少なくとも120kcal/100g、さらにより好ましくは少なくとも140kcal/100g、および最も好ましくは少なくとも150kcal/100gである。好ましくは、該液状混合物のカロリー含量は、101~300kcal/100g、より好ましくは120~280kcal/100g、さらにより好ましくは140~270kcal/100g、および最も好ましくは150~260kcal/100gであってもよい。これらの実施態様は、例えば、該蛋白質源がかなりの量の炭水化物および脂肪を伴う臨床栄養にとっては好ましいものである。
【0397】
該加熱処理飲料に関して記載される組成上の特徴および選好は、該液状混合物に等しく当てはまる。
【0398】
該液状混合物のpHは、僅かに酸性から僅かにアルカリ性の範囲であってもよい。
【0399】
pH中性付近の液状混合物は、pH中性付近の飲料の生産に特に好ましい。本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物のpHは、5.5~8.0、より好ましくは6.0~7.5、さらにより好ましくは6.2~7.3、および最も好ましくは6.3~7.2の範囲である。
【0400】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該液状混合物のpHは、6.0~7.5、より好ましくは6.2~7.5、および最も好ましくは6.3~7.5の範囲である。
【0401】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、該液状混合物のpHは、6.0~8.0、より好ましくは6.6~7.7、さらにより好ましくは6.7~7.6、および最も好ましくは6.8~7.5の範囲である。
【0402】
一般的に、任意の好適な食品用の酸または食品用の塩基を該液状混合物のpH調整に用いるのであってもよい。当業者であれば、pH調整のための好適な手段について理解するであろう。好適な食品用の塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または水酸化アンモニウムが挙げられる。あるいは、KOHまたはNaOHをpH調整に用いるのであってもよい。好適な食品用の酸としては、例えば、クエン酸、塩酸、リンゴ酸または酒石酸またはリン酸が挙げられる。
【0403】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該液状混合物の粘度は、20℃および剪断速度300s-1において最大で200cP、より好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で100cP、さらにより好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で50cP、および最も好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で20cPである。
【0404】
該液状混合物は、典型的には該適切な成分を該酸化乳清蛋白質組成物と混合することによって調製される。粉末成分を用いる場合には、加熱処理前にこれらを水和させることが好ましいことも多く、同様に加熱処理前に該液状混合物をホモジナイズするのが好ましいこともある。
【0405】
いくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は粉末形態で提供され、また好ましくは混合水または水性液であり、加熱処理前に水和させる。
【0406】
他の好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は液状形態で提供され、例えば工程(b)または工程(c)で得られる酸化乳清蛋白質溶液である。いくつかの好ましい実施態様においては、該酸化乳清蛋白質組成物は工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液であり、残存する過酸化物酸化剤の除去に用いたカタラーゼを含む。工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液は、工程(c)には供さないが、以下を行う:
・ 該飲料の生産に必要な1種類以上のさらなる成分と共に混合する、
・ 任意選択的に、ホモジナイズする、
・ 140~150度の範囲の温度で1~10秒間、加熱することによって、加熱滅菌する、
・ 該加熱滅菌した飲料を冷却する、
および
・ 滅菌飲料を無菌的に好適な滅菌容器に充填し、次いで密閉する。
【0407】
そのような飲料品加工における加熱滅菌が、本明細書に記載の方法の工程(c)を代替し得るものであり、またカタラーゼを不活性化し、遊離チオール基の含量のさらなる低下に寄与するものであることを、本発明者らは発見した。
【0408】
工程(2)の充填は任意の好適な充填技術であってもよく、また該液状混合物の充填には、任意の好適な容器を用いるのであってもよい。
【0409】
しかし、本発明の好ましい一実施態様においては、工程(2)の充填は無菌充填であり、すなわち、該液状混合物を無菌条件下で充填する。例えば、該無菌充填は、無菌充填システムを用いて実施するのであってもよく、好ましくは1個以上の無菌容器に該液状混合物を充填することを含む。
【0410】
該液状混合物が滅菌済みである場合、または充填前に微生物の存在が非常に低い場合には、無菌充填および密閉が特に好ましい。
【0411】
有用な容器の例としては、ボトル、カートン、ブリック、および/またはバッグが挙げられる。
【0412】
該プロセスの加熱処理では、好ましくは該液状混合物を少なくとも70℃の温度にする。
【0413】
本発明のプロセスのいくつかの好ましい実施態様においては、工程(1)の液状混合物を、少なくとも低温殺菌を含む加熱処理に供し、次いで工程(2)で充填を行う。
【0414】
本発明のプロセスの別の一実施態様においては、工程(2)の充填した液状混合物を少なくとも低温殺菌を含む加熱処理に供する。
【0415】
いくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理は、該液状混合物を70~80℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0416】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理の温度は、70~80℃の範囲、好ましくは70~79℃の範囲、より好ましくは71~78℃の範囲、さらにより好ましくは72~77℃の範囲、および最も好ましくは73~76℃の範囲(おおよそ75℃など)である。
【0417】
好ましくは、該加熱処理を70~80℃の範囲で実施する場合には、その実施時間は1秒間~60分間である。最長加熱時間は、該温度範囲内の最低温度にとって最適であり、またその逆もまた同様である。
【0418】
他の好ましい実施態様においては、該加熱処理の温度は、70℃で少なくとも60分間、または好ましくは75℃で少なくとも45分間、または好ましくは80℃で少なくとも30分間、または好ましくは85℃で少なくとも22分間、または好ましくは90℃で少なくとも10分間である。
【0419】
本発明の特に好ましい実施態様においては、該加熱処理は、70~78℃で1秒間~30分間、より好ましくは71~77℃で1分間~25分間、およびさらにより好ましくは72~76℃で2分間~20分間である。
【0420】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理のプロセスは、85℃~95℃の温度で1~30分間、加熱することを含む。
【0421】
例えば、該加熱処理の温度は、少なくとも81℃、好ましくは少なくとも91℃、好ましくは少なくとも95℃、より好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃、および最も好ましくは少なくとも140℃であってもよい。
【0422】
本発明の特に好ましい実施態様においては、該加熱処理は、該液状混合物の滅菌に充分な時間、該液状混合物を100~160℃の範囲の温度に加熱することを含む。これは、好ましくは無菌性を得るのに充分な時間、典型的には0.1秒間~10分間、該液状混合物を120~155℃の範囲の温度に加熱すること、およびより好ましくは無菌性を得るのに充分な時間、典型的には0.1~30秒間、140~155℃の範囲の温度に加熱することを含む。液状物を無菌状態にする液体加熱処理は、加熱滅菌ともよばれる。
【0423】
もう1種類の好ましい加熱処理はUHT型の滅菌処理であり、典型的には、135~146℃の範囲の温度で無菌性を得るのに充分な時間、加熱することを含むが、典型的には、加熱時間は1~10秒間の範囲である。
【0424】
あるいはまた好ましくは、該加熱処理は、145~180℃の範囲の温度で無菌性を得るのに充分な時間、典型的には0.01~2秒間の範囲の時間、およびより好ましくは150~180℃の範囲の温度で0.01~0.3秒間の範囲の時間、加熱することを含む。
【0425】
加熱処理の実施は、プレート型または管状の熱交換器、かき取り式熱交換器またはレトルトシステムなどの設備の利用を含むのであってもよい。あるいは、95℃を超える加熱処理に特に好ましいものとしては、例えば、直接的スチームインジェクション(水蒸気圧入)、直接的スチームインフュージョン、またはスプレークッキングを用いて、直接的な蒸気による加熱を利用することもできる。さらに、そのような直接的な蒸気による加熱は、好ましくはフラッシュ冷却と組み合わせて用いられる。スプレークッキングの実施に関する好適な例は、WO2009113858A1に記載がある;本参考文献は、全ての目的において本明細書に組み入れられる。直接的スチームインジェクション(水蒸気圧入)および直接的スチームインフュージョンの実施に関する好適な例は、WO2009113858A1およびWO2010/085957A3に記載がある;これらの参考文献は、全ての目的において本明細書に組み入れられる。高温処理の一般的な事柄に関しては、例えば、「食品加工における熱技術(Thermal technologies in food processing)」(ISBN185573558X)に記載がある;本参考文献は、全ての目的において参照として本明細書に組み入れられる。
【0426】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理は、好ましくは少なくとも80℃の温度で、およびより好ましくは少なくとも95℃の温度で、さらにより好ましくは少なくとも100℃の温度で、および最も好ましくは少なくとも120℃の温度で、および好ましくは該処理液を滅菌状態にするのに充分な時間、実施するレトルト加熱処理を含む、あるいは同上から成る。
【0427】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該加熱処理は、好ましくは少なくとも100℃の温度で、およびより好ましくは少なくとも120℃の温度で、さらにより好ましくは少なくとも130℃の温度で、および最も好ましくは少なくとも140℃の温度で、および好ましくは該処理液を滅菌状態にするのに充分な時間、実施する水蒸気圧入またはスプレークッキングを含む、あるいは同上から成る。
【0428】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、低温殺菌を物理的微生物減少と組み合わせる。
【0429】
物理的微生物減少の有用な例としては、滅菌濾過、紫外線、高圧処理、パルス電場処理、および超音波のうちの1種類以上が挙げられる。
【0430】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理は滅菌加熱処理であるため滅菌液状混合物が得られ、したがって滅菌飲料が得られるのである。そのような殺菌は、例えば、滅菌濾過を低温殺菌と組み合わせることによって、あるいは少なくとも100℃で殺菌に充分な時間、加熱処理を実施することによって達成し得る。
【0431】
該加熱処理後に、該液状混合物を冷却することが有益である。本発明のプロセスの好ましい実施態様にしたがえば、加熱処理後に、その加熱処理液状混合物を、好ましくは0~70℃、好ましくは0~60℃、さらにより好ましくは0~30℃、および最も好ましくは0~20℃に冷却する。
【0432】
該加熱処理で該液状混合物を滅菌しない場合には、該加熱処理液状混合物を、好ましくは加熱処理後に0~15℃に、より好ましくは1~10℃に、および最も好ましくは1~5℃に冷却する。
【0433】
該冷却は、充填工程の前であってもよく、あるいは充填工程の後であってもよい。
【0434】
該冷却は、典型的にはフラッシュ冷却および/または従来の熱交換器を含む。
【0435】
少なくともフラッシュ冷却による部分的冷却は好ましいことが多く、特に、加熱滅菌加熱処理後の実施が好ましいことが多い。フラッシュ冷却では、典型的には冷却液体の揮発性化合物の一部が揮散する。5.5~8.5の範囲のpHを有する乳清蛋白質飲料は、特に加熱処理中に不快な臭気の発生が起こり易く、これらの不快な臭気は、部分的には加熱処理した液体から揮散するものであり、フラッシュ冷却システムの近くで放出される。これは不都合である;その理由は、加熱処理システムの操作をおこなうオペレーターがその異臭に晒され、さらに健康上の問題となり得るのである。
【0436】
有利なことに、この酸化乳清蛋白質組成物に由来する加熱処理飲料のフラッシュ冷却は、そのような不快な臭気を僅かにしか放出せず、また不快な臭気を全く放出しないこともあるということを、本発明者らは発見した。
【0437】
本発明のプロセスは、バッチプロセス、準バッチプロセス、または連続的プロセスとして実施することができる。
【0438】
本発明の別の特別な一局面は、加熱処理、および好ましくは加熱滅菌した飲料を生産するプロセスであって、該酸化乳清蛋白質組成物を取得し、次いで本明細書に記載のように工程(2)にしたがって酸化乳清蛋白質組成物を充填するために、本明細書に記載の方法の工程(a)、工程(b)、および任意選択的に工程(c)を実施することを含むプロセスに関する。
【0439】
該酸化乳清蛋白質組成物を飲料として直接的に用いる場合には、工程(b)および/または工程(c)が、加熱滅菌加熱処理、すなわち、該処理液を滅菌状態にする加熱処理を含むことが好ましい。
【0440】
上記のように、そのような加熱処理では、典型的には、該処理する液体を、滅菌に充分な時間、100~160℃の範囲の温度に加熱することが必要である。そのような加熱処理に好適な時間/温度の組み合わせについては、本明細書に記載する。
【0441】
本発明のさらなる別の一局面は、本発明の酸化乳清蛋白質組成物を、好ましくは該食品生産物の重量に対して少なくとも0.5%w/wの量の蛋白質に寄与する量で含む食品生産物に関する。該食品製品は、好ましくは少なくとも1種類の非乳清成分をさらに含む。
【0442】
用語「非乳清成分」は、該酸化乳清蛋白質組成物にも、非酸化乳清蛋白質濃縮物にも存在しない成分を意味する。
【0443】
本発明のより狭い一局面は、加熱処理した飲料、および好ましくは加熱滅菌した飲料であって、そのpHが5.5~8.5であり、本明細書に記載のような酸化乳清蛋白質組成物を、少なくとも0.5%w/wの蛋白質寄与に充分な量で含む飲料に関する。
【0444】
本発明の加熱処理飲料は、同等の従来技術の飲料よりも良好な匂いを有することにおいて有益であり、該飲料のHS含量が意外なことに低いことを、本発明者らは見いだした。
【0445】
該加熱処理した飲料は、好ましくは5.5~8.5のpH、より好ましくは6.0~8.0のpH、さらにより好ましくは6.3~7.5のpH、および最も好ましくは6.5~7.5のpHを有する。
【0446】
好ましくは、該加熱処理した飲料、および好ましくは加熱滅菌した飲料であって、そのpHが5.5~8.5である飲料は、最大で5マイクロモル/L、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有する。
【0447】
該加熱処理した飲料、および好ましくは加熱滅菌した飲料であって、そのpHが5.5~8.5である飲料は、生産から1時間後に、最大で5マイクロモル/L、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有することが、特に好ましい。
【0448】
該加熱処理した飲料、および好ましくは加熱滅菌した飲料であって、そのpHが5.5~8.5である飲料は、生産から7日後に、最大で5マイクロモル/L、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有することが、さらにより好ましい。
【0449】
従来技術で同様の加熱処理を施したpH中性の乳清蛋白質含有飲料と比較して、上記の加熱処理飲料が特に好ましい匂いを有することを、本発明者らは発見した。
【0450】
該加熱処理飲料は無菌であることが特に好ましい。
【0451】
該加熱処理飲料は、好ましくは充填済み加熱処理飲料であり、好ましくは、例えば、ボトルなどの密閉容器に充填される。そのような充填済み加熱処理飲料は、消費者にとって非常に好ましく、また典型的には周囲温度で長期の保存可能期間を有し、消費者の要望に応じた輸送および摂取が成され得る。
【0452】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、周囲温度で少なくとも6か月、より好ましくは少なくとも1年間、およびさらにより好ましくは少なくとも2年間の保存可能期間を有している。
【0453】
好ましくは、該飲料の重量に対して0.5~15%w/w、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/w、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%w/w、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量を含む該加熱処理飲料である。
【0454】
あるいはまた好ましくは、該加熱処理飲料は、該加熱処理飲料の重量に対して4~15%w/w、より好ましくは該加熱処理飲料の重量に対して5~14%w/w、さらにより好ましくは該加熱処理飲料の重量に対して6~13%w/w、および最も好ましくは該加熱処理飲料の重量に対して8~12%w/wの範囲の蛋白質総量を含む。
【0455】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも30%w/w、より好ましくは総蛋白質の少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは総蛋白質の少なくとも70%w/w、および最も好ましくは総蛋白質の少なくとも80%w/wに寄与する。
【0456】
さらにより高い寄与が好ましいことも多く、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも90%w/w、より好ましくは総蛋白質の少なくとも95%w/w、さらにより好ましくは総蛋白質の少なくとも99%w/w、および最も好ましくは総蛋白質の100%w/wに寄与する。
【0457】
該酸化乳清蛋白質組成物を他の蛋白質源と組み合わせて用いる場合には、遊離チオール基が比較的低含有量である供給源を用いることが好ましい。
【0458】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、好ましくは総固形物に対して少なくとも15%w/w、より好ましくは総固形物に対して少なくとも20%w/w、および最も好ましくは少なくとも25%w/w、および最も好ましくは少なくとも30%w/wの量の総蛋白質を含む。これらの範囲の下限は、蛋白質に加えてかなりの量の脂肪および炭水化物を含むことが多い臨床栄養のための飲料にとって特に好ましい。
【0459】
例えば、該飲料がスポーツ蛋白質飲料を意図する場合には、該総蛋白質が総固形物のさらに大きな部分に寄与するのであってもよい。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、総固形物に対して少なくとも80%w/w、より好ましくは総固形物に対して少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも92%w/w、および最も好ましくは少なくとも94%w/wの量の総蛋白質を含む。
【0460】
該加熱処理した飲料は、好ましくは0.5~50%w/w、より好ましくは1~35%w/w、さらにより好ましくは2~20%w/w、および最も好ましくは3~10%w/wの固形物含量を有する。
【0461】
該加熱処理飲料のうちの固形物によって構成されない部分は、好ましくは水を含む。該加熱処理飲料のうちの固形物によって構成されない部分は、好ましくは少なくとも80%w/w、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらにより好ましくは95%w/w、およびより好ましくは少なくとも99%w/wの量の水を含む。
【0462】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、最大で100kcal/100g、より好ましくは最大で80kcal/100g、さらにより好ましくは最大で70kcal/100g、および最も好ましくは最大で60kcal/100gのカロリー含量を有する。好ましくは、該加熱処理飲料は、2~100kcal/100g、より好ましくは4~80kcal/100g、さらにより好ましくは8~70kcal/100g、および最も好ましくは12~60kcal/100gのカロリー含量を有するのであってもよい。これらの実施態様は、例えば、蛋白質源が主要なエネルギー源であるスポーツ用途にとっては好ましい。
【0463】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、100kcal/100g超のカロリー含量、より好ましくは少なくとも120kcal/100g、さらにより好ましくは少なくとも140kcal/100g、および最も好ましくは少なくとも150kcal/100gのカロリー含量を有する。好ましくは、該加熱処理飲料は、101~300kcal/100g、より好ましくは120~280kcal/100g、さらにより好ましくは140~270kcal/100g、および最も好ましくは150~260kcal/100gのカロリー含量を有するのであってもよい。これらの実施態様は、例えば、該蛋白質源がかなりの量の炭水化物および脂肪を伴う臨床栄養にとっては好ましいものである。
【0464】
本発明の加熱処理飲料は、蛋白質以外の主要栄養(例えば、炭水化物および/または脂質など)を含むのであってもよい。
【0465】
本発明のいくつかの実施態様においては、該加熱処理飲料はさらに炭水化物を含む。本発明の加熱処理飲料中の総炭水化物含量は、該加熱処理飲料の意図する用途に依存する。
【0466】
該充填加熱処理飲料の炭水化物は、好ましくは1種類以上の炭水化物源によって提供される。
【0467】
有用な炭水化物源は、以下から成る群から選択されるのであってもよい:
スクロース、マルトース、デキストロース、ガラクトース、マルトデキストリン、コーンシロップ固形物、スクロマルト(sucromalt)、グルコースポリマー、コーンシロップ、加工でんぷん、耐性でんぷん、コメ由来炭水化物、イソマルツロース、白糖、グルコース、フルクトース、乳糖、高フルクトースコーンシロップ、ハチミツ、糖アルコール類、フラクトオリゴ糖類、大豆繊維、トウモロコシ繊維、グアーガム、コンニャク粉、ポリデキストロース、ファイバーソル、およびそれらの組み合わせ。本発明のいくつかの実施態様においては、該充填加熱処理飲料は、フルクタン類などのような非消化型糖類を含み、該フルクタンはイヌリンまたはフラクトオリゴ糖類を含む。
【0468】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、該飲料の総エネルギー含量の0~95%の範囲、より好ましくは該飲料の総エネルギー含量の10~85%の範囲、さらにより好ましくは該飲料の総エネルギー含量の20~75%の範囲、および最も好ましくは該飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲の炭水化物を含む。
【0469】
栄養製品における栄養素のエネルギー寄与の評価は、当業者には周知であり、総エネルギー含量に対して各群の栄養素のエネルギーの寄与を算出することを含む。例えば、炭水化物は炭水化物g当たり4.0kcalの寄与;蛋白質は蛋白質g当たり4.0kcalの寄与;および脂肪は脂肪g当たり9.0kcalの寄与であることが公知である。総エネルギー含量は、対象とする組成物をボンベ熱量計により燃焼させて評価する。
【0470】
さらにより低い炭水化物含量が好ましいことも多く、したがって本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~30%の範囲、より好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~20%の範囲、さらにより好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~10%の範囲である。
【0471】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該飲料はスポーツ飲料として特に有用であり、例えば、最大で該飲料の総エネルギー含量(E%)の75%、より好ましくは最大で40E%、さらにより好ましくは最大で10E%、および最も好ましくは最大で5E%の炭水化物総量を含む。
【0472】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該充填加熱処理飲料は、栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、該飲料の総エネルギー含量(E%)の70~95%の範囲、好ましくは80~90E%の範囲の炭水化物総量を含む。
【0473】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理した飲料は、該飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲の炭水化物総量、および最も好ましくは35~50E%範囲の炭水化物総量を含む。そのような飲料は、栄養的に完全な飲料にとって特に有用である。
【0474】
本発明のいくつかの実施態様においては、該加熱処理飲料は、ビタミン、矯味矯臭剤、ミネラル類、甘味料、抗酸化剤、食品用の酸、脂質類、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1種類の追加成分をさらに含む。
【0475】
該追加成分は、栄養素としての寄与ならびに該飲料の味および風味特性を調整するために用いることができる。
【0476】
本発明の一実施態様においては、該飲料は少なくとも1種類の高強度甘味料(HIS)を含む。少なくとも1種類のHISは、好ましくはアスパルテーム、チクロ、スクラロース、アセサルフェーム塩、ネオテーム、サッカリン、ステビア抽出物、ステビオールグリコシド(例えば、レバウジオシドAなど)、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0477】
本発明のいくつかの実施態様においては、該甘味料が、1種類以上の高強度甘味料を含む、あるいは同上から成ることは特に好ましい。
【0478】
HISは天然甘味料および人工甘味料のいずれでもあり得るが、典型的には少なくともスクロースの10倍の甘味強度を有するものである。
【0479】
用いる場合には、該飲料のHIS総量は、典型的には0.001~2%w/wの範囲である。好ましくは、HIS総量は0.005~1%w/wの範囲である。もっとも好ましくは、HIS総量は0.01~0.5%w/wの範囲である。
【0480】
甘味料の選択は生産する飲料に依存し得る;甘味料からのエネルギー寄与を望まない飲料の場合には、例えば、高強度甘味料(例えば、アスパルテーム、アセサルフェームKまたはスクラロース)を、用いるのであってもよく、他方、天然プロファイルを有する飲料については、天然甘味料(例えば、ステビオールグリコシド類、ソルビトールまたはスクロース)を用いるのであってもよい。
【0481】
さらに、該甘味料は、1種類上のポリオール甘味料を含む、あるいは1種類上のポリオール甘味料から成ることが好ましいこともある。
【0482】
有用なポリオール甘味料の非限定的例としては、還元麦芽糖、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、スレイトール、ガラクチトールまたはそれらの組み合わせが挙げられる。ポリオール甘味料を用いる場合には、該飲料のポリオール甘味料の総量は典型的には1~20%w/wの範囲である。より好ましくは、該飲料のポリオール甘味料の総量は2~15%w/wの範囲である。さらにより好ましくは、ポリオール甘味料の総量は4~10%w/wの範囲である。
【0483】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は以下を含む:
・ 最大で1%w/w、より好ましくは最大で0.5%w/w、および最も好ましくは最大で0.1%w/wの総量の炭水化物、
および
・ 0.001~2%w/wの範囲、より好ましくは0.005~1%w/wの範囲、および最も好ましくは0.01~0.5%w/wの範囲の総量のHIS。
【0484】
本発明のいくつかの実施態様においては、該加熱処理飲料はさらに脂質類を含む。本発明の加熱処理飲料の総脂質含有量は、該加熱処理飲料の意図する用途に依存する。
【0485】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料の脂質含有量は、該飲料の総エネルギー含量の0~50%の範囲、または好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~40%の範囲、または好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~30%の範囲、または好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~20%の範囲、または好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~10%の範囲、または好ましくは該飲料の総エネルギー含量の0~5%の範囲である。
【0486】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該飲料は、最大で10E%、より好ましくは最大で5E%、および最も好ましくは最大で1E%の脂質総量を含む。
【0487】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は栄養的に不完全な栄養補助食品として特に有用であり、例えば、最大で該飲料の総エネルギー含量の10%、好ましくは最大で1E%の脂質総量を含む。
【0488】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該飲料は、最大で10E%、より好ましくは最大で5E%、および最も好ましくは最大で1E%の炭水化物総量を含む。
【0489】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、該加熱処理飲料の粘度は、20℃および剪断速度300s-1において最大で200cPであり、より好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で100cP、さらにより好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で50cP、および最も好ましくは20℃および剪断速度300s-1において最大で20cPである。
【0490】
本発明の酸化乳清蛋白質組成物は、透明飲料に有用であり、本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料の濁度は、最大で400NTU、より好ましくは最大で100NTU、さらにより好ましくは最大で50NTU、および最も好ましくは最大で20NTUであることを、本発明者らは発見した。
【0491】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該飲料は、例えば、スポーツ飲料の形態において、以下を含む:
・ 該飲料の重量に対して0.5~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%w/wの範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量、
・ 該飲料の総エネルギー含量(E%)の最大で75%、より好ましくは最大で40E%、さらにより好ましくは最大で10E%、および最も好ましくは最大で5E%の炭水化物総量、
および
・ 最大で10E%、より好ましくは最大で6E%、さらにより好ましくは最大で3E%、および最も好ましくは最大で1E%の脂質総量。
【0492】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該飲料は、例えば、低糖質スポーツ飲料の形態において、以下を含む:
・ 該飲料の重量に対して0.5~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%の範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量、
・ 最大で10E%、より好ましくは最大で6E%、さらにより好ましくは最大で3E%、および最も好ましくは最大で1E%の炭水化物総量、
・ 最大で5E%、より好ましくは最大で4E%、さらにより好ましくは最大で3E%、および最も好ましくは最大で1E%の脂質総量、
および
・ 0.001~2%w/wの範囲、より好ましくは0.005~1%w/wの範囲、および最も好ましくは0.01~0.5%w/wの範囲のHIS総量。
【0493】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該充填加熱処理飲料は、例えば、栄養的に完全な飲料の形態において、以下を含む:
・ 該飲料の重量に対して0.5~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%w/wの範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量、
・ 該飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、および最も好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物総量、
および
・ 総エネルギー含量の20~50%の範囲、より好ましくは25~45E%の範囲、および最も好ましくは30~40E%の範囲の脂質総量。
【0494】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、6.2~7.5の範囲のpH、最も好ましくは6.8~7.5の範囲のpHを有し、
また以下を含む:
・ 該飲料の重量に対して0.5~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%w/wの範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量、
およびここで該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質は、該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも50%w/w、より好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも90%w/w、および最も好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の100%w/wを提供する。
【0495】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、6.2~7.5の範囲のpH、最も好ましくは6.8~7.5の範囲のpHを有し、
また以下を含む:
・ 該飲料の重量に対して4~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して5~14%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して6~13%w/wの範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して8~12%w/wの範囲の蛋白質総量、
およびここで該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質は、該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも50%w/w、より好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも70%w/w、さらにより好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の少なくとも90%w/w、および最も好ましくは該加熱処理飲料の総蛋白質の100%w/wを提供する。
【0496】
該加熱処理飲料の炭水化物および脂肪の含量は、用途によって異なり得る。
【0497】
本発明のいくつかの好ましい実施態様においては、該加熱処理飲料は、例えば、スポーツ飲料の形態において、以下を含む:
・ 最大で該飲料の総エネルギー含量(E%)の75%、より好ましくは最大で40E%、さらにより好ましくは最大で10E%、さらにより好ましくは最大で5E%、および最も好ましくは最大で1E%の炭水化物総量、
および
・ 最大で10E%、より好ましくは最大で6E%、さらにより好ましくは最大で3E%、および最も好ましくは最大で1E%の脂質総量。
【0498】
本発明の他の好ましい実施態様においては、該充填加熱処理飲料は、例えば、栄養的に完全な飲料の形態においては、以下を含む:
・ 該飲料の総エネルギー含量の30~60%の範囲、および最も好ましくは35~50E%の範囲の炭水化物総量、
および
・ 該総エネルギー含量の20~50%、より好ましくは25~45E%の範囲、および最も好ましくは30~40E%の範囲の脂質総量。
【0499】
該食品生産物、および特に該加熱処理飲料は、好ましくは本発明のプロセスによって取得可能である。
【0500】
本発明のさらに別の一局面は、以下を含む食品成分に関する:
・ 本明細書に記載の酸化乳清蛋白質組成物の固形物、
および
・ 1種類以上の成分、好ましくは以下から選択される成分:
・ 乳成分、好ましくは非酸化乳成分、
・ 植物由来成分、
・ 非乳炭水化物源、
・ 矯味矯臭剤、
および/または
・ 甘味料(甘味炭水化物/ポリオール/HIS)。
【0501】
該食品成分に関するさらなる詳細については、下記の連番実施態様において説明する。
【0502】
本発明のさらに別の一局面は、酸化乳清蛋白質組成物、好ましくは、食品成分としての本発明の酸化乳清蛋白質組成物であって、5.5~8.5の範囲のpHを有し、好ましくは少なくとも3%w/wの乳清蛋白質含量を有し、および好ましくは間接的加熱処理を用いて加熱滅菌した加熱滅菌飲料の、好ましくは臭気を改善する、および/または腐敗卵の臭気に類似の不快な臭気のレベルを低減する目的の酸化乳清蛋白質組成物の用途に関する。
【0503】
本発明のいくつかの特に好ましい実施態様について、以下の連番実施態様で説明する。
[連番実施態様1]
酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法であって;
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源を処理する工程であって、
ここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を含み、
および
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~160℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)20~4000バールの範囲の圧力に加圧される、
乳清蛋白質源を処理する工程;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程であって、ここで該1種類以上の条件が、
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~160℃の範囲の温度を有すること、
および/または
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を20~4000バールの範囲の圧力に加圧すること、
を含む、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程、
の工程(a)~(d)を含む方法。
[連番実施態様1a]
酸化乳清蛋白質組成物を生産する方法であって、該方法が:
(a)酸化させる乳清蛋白質溶液を提供するために、乳清蛋白質源を処理する工程であって、
ここで該酸化させる乳清蛋白質溶液が、
・ システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を含み、
および
・ 6.5~9.5の範囲のpH、
・ 該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して少なくとも1%w/wの総蛋白質含量、
・ 総蛋白質に対して少なくとも10%w/wのβ-ラクトグロブリン(BLG)含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの総脂肪含量、
を有し;
およびここで該酸化させる乳清蛋白質溶液は、さらに:
(i)0~65℃の範囲の温度を有し、
および/または
(ii)100~4000バールの範囲の圧力に加圧される、
乳清蛋白質源を処理する工程;
(b)好ましくは、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の量を、蛋白質g当たり最大で15マイクロモルに低下させる目的において、該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG分子の少なくとも一部の遊離チオールを酸化可能な1種類以上の条件下で、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程であって、
ここで該1種類以上の条件が、
(I)該酸化させる乳清蛋白質溶液が0~65℃の範囲の温度を有すること、
および/または
(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液を100~4000バールの範囲の圧力に加圧すること、
を含む、該酸化させる乳清蛋白質溶液をインキュベートする工程;
(c)任意選択的に、さらに好ましくは、工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液またはその蛋白質濃縮物を、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む加熱処理工程に供する工程;
(d)任意選択的に、さらに好ましくは、少なくとも工程(b)で得られる該酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を含む液状材料を乾燥させる工程、
の工程(a)~(d)を含む方法。
[連番実施態様2]
連番実施態様1にしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が、過酸化物、オゾン、二酸素、またはそれらの組み合わせを含む、あるいは同上から成る、方法。
[連番実施態様3]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な該酸化剤が、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、およびその混合物から成る群から選択される過酸化物である、方法。
[連番実施態様4]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで該酸化剤が電気化学的に生成する、方法。
[連番実施態様5]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで該酸化剤が酵素的に生成する、方法。
[連番実施態様6]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の、
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも1:1、さらにより好ましくは少なくとも2:1、および最も好ましくは少なくとも3:1である、方法。
[連番実施態様7]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の、
・ システインのチオール基を酸化可能な該酸化剤;
および
・ 遊離チオール基の総量、
の間のモル比が、1:2~200:1、より好ましくは1:2~100:1、さらにより好ましくは1:1~30:1、および最も好ましくは1:1~15:1である、方法。
[連番実施態様8]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが、7.0~9.5の範囲、より好ましくは7.1~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.4~8.2の範囲である、方法。
[連番実施態様9]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のpHが、6.5~8.5の範囲、より好ましくは6.6~8.0、さらにより好ましくは6.7~7.5、および最も好ましくは6.8~7.3の範囲である、方法。
[連番実施態様10]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量の少なくとも2%w/w、より好ましくは少なくとも3%w/w、さらにより好ましくは少なくとも5%w/w、および最も好ましくは少なくとも6%w/wである、方法。
[連番実施態様11]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して1~30%、より好ましくは3~20%w/w、さらにより好ましくは4~15%w/w、および最も好ましくは少なくとも6~10%w/wの範囲である、方法。
[連番実施態様12]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の重量に対して1~12%w/w、より好ましくは3~11%w/w、さらにより好ましくは4~10%w/w、および最も好ましくは5~9%w/wの範囲である、方法。
[連番実施態様13a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して少なくとも30%w/w、より好ましくは少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも75%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して少なくとも85%w/wである、方法。
[連番実施態様13b]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して30~99%w/wの範囲、より好ましくは50~97%w/w、さらにより好ましくは75~96%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総固形物に対して少なくとも85~95%w/wの範囲である、方法。
[連番実施態様14]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも20%w/w、より好ましくは少なくとも40%w/w、さらにより好ましくは少なくとも45%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも50%w/wである、方法。
[連番実施態様15]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも55%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらにより好ましくは少なくとも80%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して少なくとも90%w/wである、方法。
[連番実施態様16]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して10~99%w/w、より好ましくは45~98%w/w、さらにより好ましくは80~96%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して90~95%w/wの範囲である、方法。
[連番実施態様17]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液のBLG含量が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して10~90%w/w、より好ましくは20~80%w/w、さらにより好ましくは30~75%w/w、および最も好ましくは該酸化させる乳清蛋白質溶液の総蛋白質に対して45~70%w/wの範囲である、方法。
[連番実施態様18]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の総脂肪含量が、総固形物に対して最大で1%w/w、より好ましくは最大で0.5%w/w、さらにより好ましくは最大で0.2%w/w、および最も好ましくは総固形物に対して最大で0.1%w/wである、方法。
[連番実施態様19]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度が、5~65℃、より好ましくは10~65℃の範囲、さらにより好ましくは30~60℃の範囲、および最も好ましくは40~55℃の範囲であることが条件(i)に含まれる、方法。
[連番実施態様19a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度が、66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲であることが条件(i)に含まれる、方法。
[連番実施態様20]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が100~4000バール、より好ましくは200~3500バールの範囲、さらにより好ましくは300~3000バール、および最も好ましくは500~2500バールの範囲の圧力に加圧されることが条件(ii)に含まれる、方法。
[連番実施態様20a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液が、25~1000バール、より好ましくは30~500バー、さらにより好ましくは35~300バール、および最も好ましくは40~200バールの範囲の圧力に加圧されることが条件(ii)に含まれる、方法。
[連番実施態様21]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)が条件(i)を含む、方法。
[連番実施態様22]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)が条件(ii)を含む、方法。
[連番実施態様23]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)が特徴(i)および(ii)の両方を含む、方法。
[連番実施態様24]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)における該乳清蛋白質源の処理が:
(I)好ましくは、該乳清蛋白質源を少なくともシステインのチオールを酸化可能な酸化剤、および任意選択的にさらなる成分と組み合わせること、または混合することによって、接触させること、
(II)必要に応じて、6.5~9.5の範囲のpHにするためにpH調整すること、
(III)任意選択的に、20~4000バールの範囲の圧力にするために、加圧すること
(IV)任意選択的に、0~160℃の範囲の温度にするために、温度調整すること、
を含む、方法。
[連番実施態様24a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)における該乳清蛋白質源の処理が:
(I)好ましくは、該乳清蛋白質源を少なくともシステインのチオールを酸化可能な酸化剤、および任意選択的にさらなる成分と組み合わせること、または混合することによって、接触させること、
(II)必要に応じて、6.5~9.5の範囲のpHにするためにpH調整すること、
(III)任意選択的に、100~4000バールの範囲の圧力にするために、加圧すること
(IV)任意選択的に、0~65℃の範囲の温度にするために、温度調整すること、
を含む、方法。
[連番実施態様25]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の80%、より好ましくは最大で76%、さらにより好ましくは最大で73%、および最も好ましくは最大で初期量の70%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様26]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは初期量の60~75%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様27]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で初期量の15%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様28]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の10%、より好ましくは最大で5%、さらにより好ましくは最大で3%、および最も好ましくは最大で初期量の1%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様29]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の0.01~30%、より好ましくは0.02~25%、さらにより好ましくは0.05~20%、および最も好ましくは初期量の0.1~10%に減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様30]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルに減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様31]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオールの量を、蛋白質g当たり最大で1マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で0.7マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で0.5マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で0.2マイクロモルに減少させる、あるいは減少するように実施される、方法。
[連番実施態様32]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、酸化中のpHを6.5~9.5、より好ましくは7.0~8.5、さらにより好ましくは7.2~8.5、および最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpHに調整することを含む、方法。
[連番実施態様33]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで:
・ 工程(b)において消費される酸化剤の量(ただし、工程(b)の終わりに、除去する過剰の酸化剤の量を除く)
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:2~30:1、より好ましくは1:2~25:1、さらにより好ましくは1:1~20:1、および最も好ましくは1:1~15:1である、方法。
[連番実施態様34]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで:
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰酸化剤の量は除外する、酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、2:1~30:1、より好ましくは3:1~25:1、さらにより好ましくは4:1~20:1、および最も好ましくは5:1~15:1である、
方法。
[連番実施態様35]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、
ここで
・ 工程(b)において消費されるシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤の量であって、工程(b)の終わりに除去する過剰酸化剤の量は除外する、酸化剤の量、
および
・ 工程(a)における遊離チオール基の初期量、
の間のモル比が、1:4~15:1、より好ましくは1:3~10:1、さらにより好ましくは1:2~5:1、および最も好ましくは1:2~2:1である、
方法。
[連番実施態様36]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、本発明の方法が亜硫酸塩類の添加を含まず、および/または亜硫酸分解を含まない、方法。
[連番実施態様37]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)の1種類以上の条件が、(I)5~65℃、より好ましくは10~65℃、さらにより好ましくは30~60℃、および最も好ましくは40~60℃の範囲の温度を有する酸化させる乳清蛋白質溶液を含む、方法。
[連番実施態様37a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)の該1種類以上の条件が、(I)66~160℃、より好ましくは70~145℃、さらにより好ましくは75~120℃、および最も好ましくは80~100℃の範囲の温度を有する酸化させる乳清蛋白質溶液を含む、方法。
[連番実施態様38]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で該初期量の80%、より好ましくは最大で該初期量の76%、さらにより好ましくは最大で該初期量の73%、および最も好ましくは最大で該初期量の70%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲内に保つ、方法。
[連番実施態様39]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは初期量の60~75%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ、方法。
[連番実施態様40]
連番実施態様38にしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で初期量の15%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を所望の温度範囲に保つ、方法。
[連番実施態様41]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液が100~4000バール、より好ましくは200~3500バール、さらにより好ましくは300~3000バール、および最も好ましくは500~2500バールの範囲の圧力に加圧されることが、工程(b)の条件に含まれる、方法。
[連番実施態様41a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで(II)該酸化させる乳清蛋白質溶液が25~1000バール、より好ましくは30~500バール、さらにより好ましくは35~300バール、および最も好ましくは40~200バールの範囲の圧力に加圧されることが、工程(b)の条件に含まれる、方法。
[連番実施態様42]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の80%、より好ましくは最大で初期量の76%、さらにより好ましくは最大で初期量の73%、および最も好ましくは最大で初期量の70%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ、方法。
[連番実施態様43]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、初期量の20~80%、より好ましくは初期量の30~80%、さらにより好ましくは50~75%、および最も好ましくは60~75%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の圧力を所望の圧力範囲に保つ、方法。
[連番実施態様44]
連番実施態様42にしたがう方法であって、ここで工程(a)の該酸化させる乳清蛋白質溶液の遊離チオール基の初期量から、最大で初期量の30%、より好ましくは最大で初期量の25%、さらにより好ましくは最大で20%、および最も好ましくは最大で15%に減少させるのに充分な時間、工程(b)の該酸化させる乳清蛋白質溶液に圧力を加える、方法。
[連番実施態様45]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)において酸化させる乳清蛋白質溶液の温度を、最大で2℃/分の加熱速度、より好ましくは最大で1℃/分、さらにより好ましくは最大で0.3℃/分、および最も好ましくは最大で0.1℃/分の加熱速度で、最大酸化温度まで上昇させることが、工程(b)に含まれる、方法。
[連番実施態様46]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(b)においてシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤をさらに添加することも、生成させることも含まない、方法。
[連番実施態様47]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、工程(b)においてシステインのチオール基を酸化可能な酸化剤をさらに添加すること、または生成させることを含む、方法。
[連番実施態様48]
前記連番実施態のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、最長48時間、より好ましくは最長36時間、さらにより好ましくは最長30時間、および最も好ましくは最長25時間である、方法。
[連番実施態様49]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、0.1~48時間、より好ましくは3~36時間、さらにより好ましくは5~30時間、および最も好ましくは10~25時間である、方法。
[連番実施態様50]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、最長12時間、より好ましくは最長6時間、さらにより好ましくは最長3時間、および最も好ましくは最長1時間である、方法。
[連番実施態様50a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、最長10分間、より好ましくは最長6分間、さらにより好ましくは最長3分間、および最も好ましくは最長2分間である、方法。
[連番実施態様51]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、0.1~12時間、より好ましくは0.1~6時間、さらにより好ましくは0.1~3時間、および最も好ましくは0.1~1時間である、方法。
[連番実施態様51a]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)に要する時間が、0.1秒間~10分間、より好ましくは1秒間~6分間、さらにより好ましくは5秒間~3分間、および最も好ましくは10秒間~2分間である、方法。
[連番実施態様52]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここで工程(b)が、システインのチオール基を酸化可能な酸化剤を実質的に全て使いきるまで、酸化を進行させることを含む、方法。
[連番実施態様53]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、ここでシステインのチオール基を酸化可能な残存酸化剤を除去する成分、好ましくはカタラーゼに対して、該酸化させる乳清蛋白質溶液を接触させることによって酸化を停止させることが、工程(b)に含まれる、方法。
[連番実施態様54]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液を加熱処理工程に供することを含む工程(c)をさらに含む、方法。
[連番実施態様55]
前記連番実施態様のいずれかにしたがう方法であって、工程(b)で得られる酸化乳清蛋白質溶液に由来する蛋白質を少なくとも含む液状材料を乾燥させる工程(d)をさらに含む、方法。
[連番実施態様56]
酸化乳清蛋白質組成物であって;
・ 総固形物に対して少なくとも30%w/wの蛋白質含量、
・ 好ましくは、総固形物に対して最大で3%w/wの脂肪含量、
・ 蛋白質g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.7%w/wのトリプトファン含量、
・ 好ましくは、総蛋白質に対して少なくとも0.3%w/wのメチオニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質mg当たり最大で0.2マイクログラムのキヌレニン含量、
・ 好ましくは、蛋白質g当たり100~600マイクロモルの範囲の蛋白質結合硫黄の含量、
および
・ 好ましくは、蛋白質g当たり150~400マイクロモルの範囲のジスルフィド結合を形成する蛋白質結合システイン残基の含量、
を有する酸化乳清蛋白質組成物。
[連番実施態様57]
連番実施態様56にしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、本明細書に記載のような乳清蛋白質源の酸化によって、好ましくは連番実施態様1~49のうちの1項以上にしたがう方法によって、取得可能な、酸化乳清蛋白質組成物。
[連番実施態様58]
連番実施態様56~57のいずれかにしたがう酸化乳清蛋白質組成物であって、液状形態または固形状形態、好ましくは粉末形態である、酸化乳清蛋白質組成物。
[連番実施態様59]
食品生産物を生産するプロセスであって;

・ 該酸化乳清蛋白質組成物を処理すること、
および/または
・ 連番実施態様56~58の1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物または加工した酸化乳清蛋白質組成物を、1種類以上のさらなる成分を組み合わせて、および任意選択的に、該組み合わせ物を処理すること、
を含む、プロセス。
[連番実施態様60]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、5.5~8.5のpH、より好ましくは6.5~7.5のpHを有する飲料を生産するプロセスであって、該プロセスが:
(1)pHが5.5~8.5である液状混合物を取得するために、連番実施態様50~52の1項以上にしたがって、酸化乳清蛋白質組成物を1種類以上のさらなる成分と組み合わせる工程であって、
ここで該液状混合物が:
・ 少なくとも0.5%w/wの蛋白質に寄与するのに充分な量の該酸化乳清蛋白質組成物、
・ 好ましくは、甘味料、および/または矯味矯臭剤、
および
・ 水、
を含む、
組み合わせる工程、
(2)該液状混合物を容器に充填する工程、
を含み;
ここで充填前および/または充填後に、該液状混合物を加熱滅菌に供する、
プロセス。
[連番実施態様61]
連番実施態様60にしたがうプロセスであって、ここで該液状混合物が、加熱滅菌の前に、液状混合物100g当たり最大で60マイクロモルの遊離チオール基、より好ましくは液状混合物100g当たり最大で40マイクロモルの遊離チオール基、さらにより好ましくは液状混合物100g当たり最大で30マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは液状混合物100g当たり最大で30マイクロモルの遊離チオール基を含む、プロセス。
[連番実施態様62]
連番実施態様60または61にしたがうプロセスであって、ここで該液状混合物が、加熱滅菌の前に、液状混合物100g当たり最大で20マイクロモルの遊離チオール基、より好ましくは液状混合物100g当たり最大で15マイクロモルの遊離チオール基、さらにより好ましくは液状混合物100g当たり最大で10マイクロモルの遊離チオール基、および最も好ましくは液状混合物100g当たり最大で5マイクロモルの遊離チオール基を含む、プロセス。
[連番実施態様63]
連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物を含む食品生産物であって、好ましくは該酸化乳清蛋白質組成物が、該食品生産物の重量に対して少なくとも0.5%w/w量の蛋白質に寄与する量である、食品生産物。
[連番実施態様64]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、5.5~8.5のpH、およびより好ましくは6.5~7.5のpHを有する飲料であって、連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物を、少なくとも0.5%w/wの蛋白質に寄与するのに充分な量で含む、飲料。
[連番実施態様65]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64にしたがう飲料であって、最大で5マイクロモル/LのHS含量、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有する、飲料。
[連番実施態様66]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64または65にしたがう飲料であって、生産から1時間後に、最大で5マイクロモル/LのHS含量、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有する、飲料。
[連番実施態様67]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~66のいずれかにしたがう飲料であって、生産から7日後に、最大で5マイクロモル/LのHS含量、より好ましくは3マイクロモル/L、さらにより好ましくは1.0マイクロモル/L、および最も好ましくは最大で0.7マイクロモル/LのHS含量を有する、飲料。
[連番実施態様68]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~67のいずれかにしたがう飲料であって、該飲料の重量に対して0.5~15%w/wの範囲、より好ましくは該飲料の重量に対して1~10%w/wの範囲、さらにより好ましくは該飲料の重量に対して2~9%w/wの範囲、および最も好ましくは該飲料の重量に対して3~8%w/wの範囲の蛋白質総量を含む、飲料。
[連番実施態様69]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~68のいずれかにしたがう飲料は、連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物を、少なくとも該加熱処理飲料の総蛋白質の30%w/w、より好ましくは少なくとも総蛋白質の50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも総蛋白質の70%w/w、および最も好ましくは少なくとも総蛋白質の80%w/wに寄与するのに充分な量で含む。
[連番実施態様70]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~69のいずれかにしたがう飲料は、連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物を、少なくとも該加熱処理飲料の総蛋白質の90%w/w、より好ましくは少なくとも総蛋白質の95%w/w、さらにより好ましくは少なくとも総蛋白質の99%w/w、および最も好ましくは総蛋白質の100%w/wに寄与するのに充分な量で含む。
[連番実施態様71]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~70のいずれかにしたがう飲料であって、少なくとも総固形物に対して50%w/w、より好ましくは少なくとも総固形物に対して60%w/w、さらにより好ましくは少なくとも総固形物に対して70%w/w、および最も好ましくは少なくとも総固形物に対して80%w/wの量の総蛋白質を含む、飲料。
[連番実施態様72]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~71のいずれかにしたがう飲料であって、少なくとも総固形物に対して80%w/w、より好ましくは少なくとも総固形物に対して90%w/w、さらにより好ましくは少なくとも総固形物に対して92%w/w、および最も好ましくは少なくとも総固形物に対して94%w/wの量の総蛋白質を含む、飲料。
[連番実施態様73]
加熱処理、好ましくは加熱滅菌した、連番実施態様64~72のいずれかにしたがう飲料であって、0.5~50%w/w、より好ましくは1~35%w/w、さらにより好ましくは2~20%w/w、および最も好ましくは3~10%w/wの固形物含量を有する、飲料。
[連番実施態様74]
連番実施態様63~73のいずれかにしたがう食品生産物であって、連番実施態様60~62のうちの1項以上にしたがうプロセスにしたがって取得可能な、食品生産物。
[連番実施態様75]
食品成分であって;
・ 連番実施態様56~58の1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物、
および
・ 1種類以上の成分、好ましくは:
・ 乳成分、好ましくは非酸化乳成分、
・ 植物由来成分、
・ 非乳炭水化物源、
・ 矯味矯臭剤、
および/または
・ 甘味料(甘味炭水化物/ポリオール/HIS)、
から選択される成分、
を含む、食品成分。
[連番実施態様76]
連番実施態様75にしたがう食品成分であって、ここで該1種類以上のさらなる成分が、ミセル状カゼイン、非酸化乳清蛋白質、カゼインマクロペプチド、乳汁または乳清の限外濾過透過液、変性乳清蛋白質、およびそれらの組み合わせのうちの1種類以上を含む乳成分を含む、食品成分。
[連番実施態様77]
連番実施態様75または76にしたがう食品成分であって、ここで該1種類以上のさらなる成分が、好ましくは、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、植物由来食物繊維、およびそれらの組み合わせのうちの1種類以上を含む植物由来成分を含む、食品成分。
[連番実施態様78]
連番実施態様75~77のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで該1種類以上のさらなる成分が、好ましくはスクロース、マルトデキストリン、非乳性オリゴ糖、非乳性多糖のうちの1種類以上を含む非乳炭水化物源を含む、食品成分。
[連番実施態様79]
連番実施態様75~78のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで該1種類以上のさらなる成分が、好ましくは炭水化物甘味料、ポリオール、高強度甘味料、およびそれらの組み合わせのうちの1種類以上を含む甘味料を含む、食品成分。
[連番実施態様80]
連番実施態様75~79のいずれかにしたがう食品成分であって、ここで連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、該食品成分の重量の0.5~95%w/w、より好ましくは1~90%w/w、さらにより好ましくは5~85%w/w、および最も好ましくは該食品成分の重量の10~80%w/wに寄与する、食品成分。
本発明に関しては、用語「該酸化乳清蛋白質組成物の固形物」は、酸化乳清蛋白質組成物から水を全て除去した場合に、残存する固形物(蛋白質、炭水化物、脂質、およびミネラル類を含む)に関する。「該酸化乳清蛋白質組成物の固形物」は、例えば、粉末形態または液状形態の酸化乳清蛋白質組成物によって提供されるのであってもよい。
[連番実施態様81]
連番実施態様75~80のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、該食品成分の重量の0.5~60%w/w、より好ましくは1~50%w/w、さらにより好ましくは5~40%w/w、および最も好ましくは該食品成分の重量の10~30%w/wに寄与する、食品成分。
[連番実施態様82]
連番実施態様75~81のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、該食品成分の蛋白質の0.5~95%w/w、より好ましくは1~90%w/w、さらにより好ましくは5~85%w/w、および最も好ましくは該食品成分の蛋白質の10~80%w/wに寄与する、食品成分。
[連番実施態様83]
連番実施態様75~82のいずれか1項にしたがう食品成分であって、ここで連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の固形物が、食品成分の蛋白質の0.5~60%w/w、より好ましくは1~50%w/w、さらにより好ましくは5~40%w/w、および最も好ましくは該食品成分の蛋白質の10~30%w/wに寄与する、食品成分。
[連番実施態様84]
連番実施態様75~83のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり最大で15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で12マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
[連番実施態様85]
連番実施態様75~84のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり0.001~15マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~14マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~13マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~12マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
[連番実施態様86]
連番実施態様75~85のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり最大で10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり最大で5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり最大で3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり最大で2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
[連番実施態様87]
連番実施態様75~86のいずれか1項にしたがう食品成分であって、蛋白質g当たり0.01~10マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~8マイクロモル、より好ましくは蛋白質g当たり0.01~5マイクロモル、さらにより好ましくは蛋白質g当たり0.01~3マイクロモル、および最も好ましくは蛋白質g当たり0.01~2マイクロモルの量の遊離チオール基を含む、食品成分。
[連番実施態様88]
連番実施態様75~87のいずれか1項にしたがう食品成分であって、好ましくは主たる溶媒として水を用いる、およびより好ましくは唯一の溶媒として水を用いる液状形態である、食品成分。
[連番実施態様89]
連番実施態様75~87のいずれか1項にしたがう食品成分であって、好ましくは最大で6%w/wの量の水を含む粉末形態である、食品成分。
[連番実施態様90]
連番実施態様89にしたがう食品成分であって、
ここで該粉末が、連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の乾燥混合によって調製され、粉末形態の1種類以上のさらなる成分を伴う粉末形態である、食品成分。
[連番実施態様91]
連番実施態様89にしたがう食品成分であって、
ここで該粉末が、連番実施態様88にしたがい好ましくは噴霧乾燥により液体の乾燥で調製される、食品成分。
[連番実施態様100]
食品成分としての酸化乳清蛋白質組成物、好ましくは連番実施態様56~58のうちの1項以上にしたがう酸化乳清蛋白質組成物の用途であって、加熱滅菌した、pHが5.5~8.5の範囲の飲料であって、好ましくは少なくとも3%w/wの乳清蛋白質含量を有し、および好ましくは間接的加熱処理を用いて加熱滅菌した飲料の、好ましくは該臭気を改善する、および/または腐敗卵の臭気に類似の不快な臭気を低減するための、用途。
【0504】
上記では、特定の実施態様を参照しながら本発明を説明している。しかし、上記以外の実施態様もまた等しく本発明の範囲内であり得る。
特段にそうでないことを明示するのでない限り、本発明の様々な実施態様および局面の異なる特徴および工程は、本明細書に記載の方法以外の方法と組み合わせるのであってもよい。
【0505】
実施例
分析方法
分析A:総蛋白質
試料の総蛋白質含量(真の蛋白質)は、以下によって決定する:
(1)ISO8968~1/2|IDF020~1/2-Milk-にしたがい試料の総窒素を決定する。
窒素含有量の決定 - 1部2:ケルダール法を用いた窒素含有量の決定。
(2)ISO8968~4|IDF020~4-Milk-にしたがい試料の非蛋白質窒素を決定する。
窒素含有量の決定 - 4部:蛋白質窒素含有量の決定。
(3)(m総窒素 - m非蛋白質窒素)*6.38
として蛋白質全量を算出する。
【0506】
分析B:pH
ガラスpH電極を用いて全pH値を測定し25℃に正規化する。
【0507】
ガラスpH電極(温度補償を有する)は、前もって慎重にすすぎ、使用前に較正する。
【0508】
試料が液状形態の場合には、その溶液のpHを直接的測定して25℃に正規化する。
【0509】
試料が粉末の場合には、室温で激しく撹拌しながら10グラムの粉末を90mlの脱塩水に溶解する。次いで、その溶液のpHを測定して25℃に正規化する。
【0510】
分析C:粘度
粘度は、GilsonのViscomanを用いて22℃で推定し、約300s-1の剪断速度で報告する。
【0511】
分析D:HSセンサーを用いたHSの定量
H2Sのレベルは、単一チャンネル増幅器(Monometter-9514、Unisense A/S、デンマーク)に連結しているマイクロセンサー(SULF-NPLR、針型、Unisense A/S、デンマーク)によって測定した。取得したH2Sシグナルはミリボルトで表すが、これは試料中のH2Sレベルの指標として用いることができ、Unisense A/Sが提供する「LOGGER」ソフトウェアによって記録される。マイクロセンサーは使用毎の前日に較正を行った。製造元(Calkit-HS、Unisense A/S、デンマーク)が提供するH2S較正キットを用いる。マニュアル(2020年11月バージョン、Unisense A/S)の第7節にしたがって、較正キット中のH2Sの最高濃度を10倍にさらに希釈した。H2Sの濃度は、ソフトウェアによって自動的にμM単位に変換することができる。
【0512】
模擬UHTまたは試験的スケールのUHTの試料を測定するため、試料を20℃で30分間平衡化し、シリコン密閉部にセンサー針を突き刺して、試料の液相に挿入した。各試料につき3回の繰り返しで実施した。
【0513】
分析E:遊離チオール基および総チオール基
乳清蛋白質試料中の遊離チオール基含量および総チオール基の量は、Kurzら(2020)による記載の方法および該著者らの用いたものと同一の設備を用いて定量した。試料中の遊離チオール(SH)含量は、典型的には分析Aの総蛋白質に関する方法によって決定される蛋白質含量を用いて、蛋白質グラム当たりのマイクロモル数で報告する。
Kurz、F.、Hengst、C.、& Kulozik、U.(2020)。天然清蛋白質および加熱凝集乳清蛋白質中の遊離および総チオール基の同時定量のためのRP-HPLC法。方法X、101112。
【0514】
分析F1:アミノ酸の定量
アミノ酸は、Zainudin MAM、Poojary MM、Jongberg S、Lund MN、「光への曝露は、高酸素雰囲気下で保存した牛肉蛋白質における酸化的多量体化を加速する(Light exposure accelerates oxidative protein polymerization in beef stored in high oxygen atmosphere)」Food Chem.299(2019)125132の文献に記載の方法で定量した。
【0515】
調製後直ぐに全試料を-80℃に凍結し、ドライアイス上に移して分析まで-80℃に保った。
【0516】
PICO TAG加水分解バイアル中の脱気した4Mメタンスルホン酸(0.2%w/vのトリプタミンを含む)を用いて、真空下、110℃で17時間30分、0.5mgの蛋白質を加水分解した。
【0517】
中和した乾燥加水分解物を、アミノカプロン酸(内部標準)と混合して、o-フタルアルデヒドド/3-メルカプトプロピオン酸および塩化フルオレニルメチルオキシカルボニルで誘導体化した。この誘導体化アミノ酸を、Agilent AdvanceBio AAAカラムを備えたUHPLC-FLDシステムを用いて分析した。真の標準を用いて作成した8点較正曲線に基づいて、各アミノ酸の定量(内部標準較正)を行った。
【0518】
分析F2:アミノ酸酸化の定量
蛋白質酸化物は、Mahesha M.Poojary、Brijesh K.Tiwari、Marianne N.Lundの記載する方法(「蛋白質酸化マーカーを定量するための、選択的、高感度UHPLC-ESI-ORBITRAP MS法(Selective and sensitive UHPLC-ESI-Orbitrap MS method to quantify protein oxidation markers)」; Talanta、第234巻(2021)、122700)により測定した。
【0519】
分析評価した試料は全て調製後直ぐに-80℃に凍結し、ドライアイス上に移して分析まで-80℃に保った。
【0520】
脱気した4Mメタンスルホン酸(0.2%w/vのトリプタミンを含む)を用いて、PICO TAG加水分解バイアルにて、真空下、110℃で17時間30分、0.5mgの蛋白質を加水分解した。
【0521】
中和した乾燥加水分解物を、5-メチルトリプトファン(内部標準)と混合して、Waters Aquity HSS T3カラムを備えるUHPLC-FLDシステムを用いて分析した。
【0522】
真の標準を用いて作成した8点較正曲線に基づいて、各アミノ酸の定量(内部標準較正)を行った。
【0523】
分析G:GPC分析による酸化後の分子量および固有粘度の決定
乳清蛋白質試料中の蛋白質種の分子量は、本質的にThermo ISOから成るSEC-MALS-IV-RI HPLCシステムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。3100SDポンプ、WPS-3000TSLオートサンプラーおよびRefractomax 521屈折率検出器。このシステムは、さらにWyatt miniDawn TREOS II光散乱検出器およびWYATT VISCOSTARオンライン粘度計を備えるものであった。
【0524】
溶離液(10mMリン酸、30mMのNaCl(pH7.0)および0.1%ポロクリン)で全試料を蛋白質1%となるように希釈し、1x Bio-SEC-5ガード+2x300Å BioSEC-5を用いて溶離液中で0.75ml/分にて10μlを分離した。
この装置では、αLA、BLGおよびBSAの標準の10%以内で良好な結果が得られる。
【0525】
データ分析:Astraソフトウェア[v7.3.2.19]を用いて空隙容量よりも前に溶出する全シグナル、すなわち、単量体とオリゴマーの両方およびより大型の凝集体種に関するシグナルを積算することにより、重量平均分子量および重量平均固有粘度を測定した。
【0526】
分析H:残存過酸化水素の評価
SYNERGY MXマイクロプレートリーダーを用いた定量比色分析によって、残存過酸化水素を測定した;この測定は、製造元の記載(ABCAM AB102500過酸化水素アッセイキット(比色/蛍光分析;バージョン6;直近アップデートは、2019年1月8日)にしたがって実施した。
【0527】
50μl試料中の残存H2O2の濃度が、アッセイの直線範囲内になるようにするため(すなわちウェル当たり0~5nmolのH2O2;アッセイキットに付属するH2O2標準を用いた)、最初に添加したH2O2の量に対して、全試料を10mMのリン酸(pH7.0)で希釈した。
【0528】
アッセイキットに付属するH2O2標準を用いて製造元の説明にしたがい、ウェル当たり0~5nmolのH2O2を含む較正曲線を作成した。
【0529】
試料中のH2O2の濃度を較正曲線および試料希釈により決定した。
【0530】
分析I:乳清蛋白質試料中の非還元性ランチオニンおよびリジノアラニン架橋の定量
Mahesha M.Poojaryらの「食品および生物学的マトリックスにおける糖化最終産物および蛋白質由来の架橋の同時分析のための液相クロマトグラフィー四重極Orbitrap質量分析(Liquid chromatography quadrupole-Orbitrap mass spectrometry for the simultaneous analysis of advanced glycation end products and protein-derived cross-links in food and biological matrices)」、Journal of Chromatography A、第1615巻、2020年に記載の方法の変法により、分析F2のカラムおよび溶媒を用いて、WPI試料中のランチオニンの量を測定した。
【0531】
分析Iによって分析した試料は全て調製後直ぐに-80℃に凍結し、ドライアイス上に移して分析まで-80℃に保った。
【0532】
簡単に説明すると、脱気した6M塩酸(チオグリコール酸を含む)を用いて、PICO TAG加水分解バイアルにて、真空下、110℃で22時間、0.5mgの蛋白質に対応する試料を加水分解した。
【0533】
乾燥させた加水分解物をリジン-d4(内部標準)と混合し、Waters Aquity HSS T3カラムを備えたLC-MSシステムを用いて分析した。LALおよびLANの定量(内部標準較正)は、真の標準を用いて作成した8点較正曲線に基づいて実施した。
【0534】
分析J:熱処理試料の非H2S臭気の評価
ガスクロマトグラフィーを利用した分離および質量分析を用いた同定と動的ヘッドスペースサンプリング法を組み合わせて用い、非H2S臭気に関して乳清蛋白質飲料を分析した。飲料の非H2S臭気は全て3回の繰り返しで測定した。
【0535】
実施例1に記載の方法で、上記試料をUHT処理(超高温処理)に供し、分析DにしたがってH2S含量を決定した。複数の熱処理バイアルから試料を取り出して、5mLの試料を100mLのブルーキャップフラスコに移した。100ppmの2-ヘキサノン-5-メチル内部標準溶液を1.5μL添加して、最終濃度を30ppbにした。
【0536】
それらのボトルに吸着トラップ(Tenax TA/Graphitized Carbon/Carboxen 1000、Restek Corpo比n)を取り付け、上記の飲料をサーモスタット制御の20℃水浴に設置して撹拌しながら1時間の間、100ml/分で窒素を吹き込んだ。
【0537】
50ml/分の水素流を用いて、300℃で15分間、吸着トラップから脱離(Turbomatrix ATD 350、Perkin Elmer)させて、Tenax TA 60/80 (Sigma-Aldrich)およびCarbopack X(Sigma Aldrich)を充填した冷却トラップ(Perkin Elmer)に送り込んだ。3:1スプリット法を用い、上記脱離揮発性物質に焦点を当てて15分間4℃に保った後、トラップの温度を300℃に上昇させることによって移送ラインを通じてガスクロマトグラフカラムに注入した。このガスクロマトグラフ(Agilent Technologies、7890A GC-MS)は、DB-Waxカラム(30m x 250μm;フィルム厚、0.25μm;Agilent technologies)を備えたものであった。
【0538】
勾配プログラムは、35℃で10分間の等温工程、8℃/分で240℃への勾配、その後の5分間の等温工程を含むものであった。このGCは、単一四重極質量分析計(5975C Agilent Technologies)に連結していた。MS移送ラインの温度は250℃で、イオン供給源の温度は200℃であった。20~400の範囲の質量電荷(m/z)で質量分析計による走査を行い、70eVの断片化電圧を用いてスペクトルを取得した。
【0539】
揮発性化合物の識別にはMSデータベース(NIST MS検索バージョン2.0)を用いた。さらに、真の参照化合物と質量スペクトルデータおよび滞留時間を比較することによって、全化合物の確認を行った。同定した揮発性化合物の量は、内部標準2-ヘキサノン-5-メチルの濃度およびピーク面積を用いた半定量的アプローチによって算出した。
【0540】
分析K:UHT処理(超高温処理)乳清蛋白質単離物の官能評価
UHT処理(超高温処理)飲料の官能分析は、オーフス大学の食品科学部で実施した。
【0541】
最終的試飲/臭気確認セッションの前に属性リストを作成した。属性を0=低強度から15=高強度までの15cmスケールで評価した。
【0542】
臭気評価
生産物の臭気性化合物は揮発性なので、上記試料は元々のボトルで供された。パネルリスト自身でボトルを開けて臭気を評価しなくてはならなかった。パネルリスト毎、および異なる繰り返し毎に全て、新しいボトルを用いた。
【0543】
風味および口当たりの評価
鼻腔香気効果を除外することにより飲料の風味を評価した。この試験では、評価中にほんの僅かな揮発性物質が存在することを確認するために、1時間、試料を開放状態に置いた。さらに、試料はストロー付きの小型プラスチックカップで提供した。この方法ならば、試飲時にパネルリストが直接、試料の匂いを嗅ぐことはなかった。さらに、試料のこの風味評価では、パネルリストは、痰つぼ/吐き出しカップを用いた。
【0544】
30重複繰り返しについて「Panelcheck」ソフトウェアの三元配置分散分析(ANOVA)を用いて統計分析を実施した。試料は固定だがパネルはランダム設定とした。
【0545】
最小有意差値(ある文字に関連付けられた群間の対比較)を示すダンカン検定(用いたソフトウェア:XLSTAT)を用いて試料間の有意差を評価した。
【0546】
分析L:RP-HPLC分析による天然BLG/ALA/CMPの定量
MQ水で2%蛋白質に希釈することによって、蛋白質試料/粉末を調製した。蛋白質凝集体を除去するため、その溶液を0.22μmのフィルターで濾過した。各試料について、同一容積をUPLCカラム(Protein BEH C4;300Å;1.7μm;150 x 2.1 mm)のUPLCシステム(ACQUITY UPLC H-Class、WATERS)に載せて、214nmで検出を行った。
【0547】
以下の条件を用いて試料を分析した:
緩衝液A:ミリQ水、0.1%w/wのTFA
緩衝液B:HPLCグレードのアセトニトリル、0.1%w/wのTFA
流速:0.4ml/分
勾配:0~6.00分間、24~45%B;6.00~6.50分間、45~90%B;6.50~7.00分間、90%B;7.00~7.50分間、90~24%B;および7.50~10.00分間、24%B。
【0548】
BLG/ALA/CMPピークの面積を用いて、BLG/ALA/CMP蛋白質の量を定量した;その際、純粋なBLG/ALA/CMP蛋白質標準(BLG Sigma L0130)を用いて作成した標準曲線を利用した。
【0549】
直線範囲外の場合には、試料をさらに希釈してから再注入した。
【0550】
分析M:総固形物の定量
NMKL[110、第2版、2005年(総固形物(水)-乳汁および乳製品の重量測定)]にしたがって、溶液の総固形物を測定するのであってもよい。NMKLは、「Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler」の略称である。
【0551】
溶液の含水量は、100%マイナス総固形物の相対量(%w/w)として算出することができる。
【0552】
分析N:脂肪含量の定量
脂質の量は、ISO1211:2010(脂肪含量の測定-レーゼ・ゴットリーブ(Rose-Gottlieb)重量法)にしたがって決定した。
【0553】
分析O:乳糖含量の定量
乳糖の総量は、ISO5765~2:2002(IDF 79~2:2002)「粉乳、ドライアイスミックスおよびプロセスチーズ-乳糖含量の測定―第2部:乳糖のガラクトース部分を利用する酵素法(Dried milk, dried ice-mixes and processed cheese-Determination of lactose content-Part 2: Enzymatic method utilizing the galactose moiety of the lactose)」にしたがって決定した。
【0554】
分析P:ミネラル組成に関する特徴付け
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、およびリンの総量は、まずマイクロ波分解を用いて試料を分解し、次いでICP装置を用いてミネラル総量を測定する方法を用いて決定する。
【0555】
装置
マイクロ波装置はAnton Paarのものであり、ICPはPerkinElmer社のOptima 2000DVである。
材料
1MのHNO
イットリウム(2%のHNO中)
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、およびリンの好適な標準(5%のHNO中)
【0556】
前処理
粉末試料を0.2グラム、または液状試料を1g、秤量して、粉末をマイクロ波分解チューブに移す。1MのHNOを5mL加える。マイクロ波装置の指示にしたがって、試料をマイクロ波装置で消化する。上記の分解チューブをドラフトチャンバー内に置き、蓋を外して揮発性臭気を蒸散させる。
【0557】
測定方法
前処理した試料を、既知の量のミリQ水を用いてにDigiTUBEに移す。2%HNO中のイットリウム溶液を分解チューブ(約0.25mL/50mLの希釈試料)に加え、既知容量のミリQ水を用いて希釈する。製造元による記載の方法を用いてICPで試料を分析する。
【0558】
ミリQ水を用いて10mLの1M HNOおよび0.5mLのイットリウム溶液(2%のHNO中)の混合液を最終容積100mLに希釈することによって、盲検試料の調製を行う。
【0559】
予想される試料濃度を囲む濃度となるように、少なくとも3種類の標準試料を調製する。
【0560】
液状試料の検出限界は、Ca、Na、Kおよびリンでは、試料100g当たり0.005gであり、Mgでは、試料100g当たり0.0005gである。粉末試料の検出限界は、Ca、Na、Kおよびリンでは、試料100g当たり0.025gであり、Mgでは、試料100g当たり0.0005gである。
【0561】
分析Q:濁度の決定
濁度は、一般的に裸眼で不可視の多数の粒子に起因する液体の混濁または曇りである(空気中の煙と同様である)。
【0562】
濁度は、比濁法濁度単位(NTU)で測定する。
【0563】
20mLの飲料/試料をNTUグラスに加えて、Turbiquant(登録商標)3000IR濁度計内に置いた。安定化後にNTU値を測定し、これを2回繰り返した。
【0564】
実施例1:pH8.0および低温における穏和なチオール酸化
この実験において、乳清蛋白質の遊離チオールのpH8.0における穏和な低温酸化によって、pH中性でのUHT処理(超高温処理)乳清蛋白質飲料の腐敗卵の臭気に類似した不快臭気を低減または除去することが実現可能であることを、本発明者らは初めて発見し実証した。
【0565】
本実施例および後述の実施例においては、「不快(な)臭気」という表現は、腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気を意味する。
【0566】
材料と方法
粉末WPI-A(天然BLGが99.6%)およびWPI-B(BLGが50%)から、それぞれ10%w/wまたは6%w/wの蛋白質を含む溶液を調製した;粉末を超純水(18.2ミリオーム)と混合し、次いでこの混合物を穏やかに撹拌しながら約20℃で1時間水和させたところ、残存する粉末粒子は認めず、溶液が透明になっていた。この試験に用いた粉末の特性を表1に記載する。
【0567】
【表1】
【0568】
乳清蛋白質溶液のpHを測定し、3MのNaOHを用いて20℃でpH8.0となるように調整した。分注物を含む20mLのDuran GL 18ガラス試薬瓶(ねじ蓋付き)中の15mL試料を、参照目的で保存した。試薬瓶中のWPI試料を、水浴で10、25、40、50または60℃に熱平衡化した。分析Lで取得可能なBLGの密度1.11g/mL、モル重量34.01g/mol、およびモル濃度9.79M、ならびにBLGの分子量18.4kDaと共に、30%w/wのH2O2溶液のモル濃度に基づいて、表2に記載のように、H2O2:BLGモル比が5:1または8:1となるように過酸化水素(H2O2)を添加した。同様の6%WPI-B試料セットであって、pH6.5に調整し、8:1のH2O2:BLGの存在比で10℃および25℃にインキュベートしたWPI-B試料セットを作成した。
【0569】
BLGは、典型的には乳清蛋白質のうちの約50%以上を占めるが、さらに乳清蛋白質の遊離チオール主たる供給源でもある(BLGは、分子当たり1個の遊離チオール基を含む)。乳清蛋白質組成物における天然BLGのモル濃度は、したがって乳清蛋白質組成物の遊離チオール基のモル含量についての非常に近い近似値となる。したがって、乳清蛋白質組成物の天然BLG含量を基準とする酸化剤使用量を選択するのは意味のあることである。
【0570】
表2は、18時間のインキュベーション開始時の反応条件のまとめを示している。その後に、(分析Hにしたがう)残存H2O2の分析用に試料を取り分け、H2O2不均化によってWPI試料のさらなるH2O2酸化を停止させるためにカタラーゼ(液状製品150L当たりCatazyme25Lを3.65mL)を添加した。
【0571】
該酸化乳清蛋白質組成物の蛋白質および潜在的凝集物における残存遊離チオール基であって、処理の結果として残存している遊離チオール基を、分析EおよびGのそれぞれにしたがってGPC-MALSにより分析した。
【0572】
UHTシミュレーション
不快な臭気の発生に対する酸化処理の影響を評価するため、試料を後述のようなUHT様処理に供した。
【0573】
試料のpHを7.0に調整して蛋白質が6%となるように希釈した。該酸化乳清蛋白質溶液1.0mLを、2mlのGCバイアル(Mikrolab no ML 33003VU)に移してアルミ蓋(Mikrolab ML 33032)および電子工作用圧着工具(クリンパー)(Thermo Scientific CRMA60180-ECRH11KI)を用いて圧着密閉した。曇りの兆候に関して試料を目視検査し、流動特性を示す第1の指標として、バイアルを転倒させながらモニターを行った。
【0574】
上記の(室温の)密閉バイアルをMikrolab superthermシステム(制御ユニットML306228および加熱ユニットML3062409、Mikrolab A/S、デンマーク)のアルミウム加熱ブロックに移した;この加熱ブロックは、2mlのGCバイアルに適合する寸法の穴であって、製造元が穿孔し作成した穴を有するものである。このブロックを160℃に事前加熱して、ブロック中で試料を160秒間、保持した。約40秒後に温度は100℃に達し、65秒間で約120℃、100秒間のインキュベーション後には140℃、および160秒後には150℃に達した。加熱ブロックでのインキュベーション後に、不快な臭気の発生に至る反応を迅速に停止させるため、試料を氷/水浴に移した。分析Dにしたがい、密閉したバイアル内でH2Sを直接的に測定した。
【0575】
本発明者らは、160℃のアルミニウムブロックで試料を160秒間インキュベートするUHTシミュレーションが、プレート型熱交換器による4秒間の間接的加熱(143℃)を用いた従来のUHT処理(超高温処理)を厳密に模倣するものであることを示した。143℃で4秒間の間接的UHT(超高温処理)処理を行った際のH2S含量に基づいて判定した場合に、160℃のアルミニウムブロックにおいて160秒間で、同一量の不快な臭気が発生することを、本発明者らはさらに発見した。
【0576】
本発明者らは、模擬UHT処理(超高温処理)から24時間後に試料を官能評価し、感知される不快な硫黄/腐敗臭気についてランク付けを行った。評価直前にバイアルの蓋をはずし、低強度である水の強度を0とし、分析Dにしたがって調製した10μMのH2S標準を高強度の15として、0~15のスケールで「不快な硫黄臭」を評価した。

【0577】
【表2】
【0578】
結果
本発明者らは、中性pHの過酷な熱処理(143℃で2~16秒間の処理など)に供した乳清蛋白質単離物(WPI)における不快な臭気の発生について調べ、H2S選択性電極を用いることによって、意外なことに、そのような乳清蛋白質単離物飲料組成物において発生した硫黄様の強い異臭は、主に硫化水素から成るものであり、これはシステインの硫化水素およびデヒドロアラニンへのβ脱離に由来する可能性が高いことを発見した。実際、ガスクロマトグラフィー/質量分析およびガスクロマトグラフィー/炎光光度法による検出を利用することによって、本発明者らは、不快な臭気が主にH2Sから成ることを確認した。
【0579】
表3に示すように、本発明者らは、意外なことに、乳清蛋白質単離物の酸化を可能にする特定の条件を発見し、また、そのプロセスにおける過酸化水素の消費と残存チオール低下の間の直接的関係、およびその結果としての、UHT処理(超高温処理)試料における腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気の発生の低下について明らかにした。
【0580】
より高いpHである8.0で少なくとも最長18時間インキュベートした場合にも、遊離チオールと過酸化水素との間の反応が進行し得るような40℃などの周囲温度より高い温度で、例示的WPI試料(表2のWPI-AおよびWPI-B)を加熱することが必要であることは、本発明者らにとって特に意外であった。実際、10℃または25℃、pH6.5で、8:1のH2O2:BLGを用いてインキュベートした6%WPIのWPI-B試料では、遊離チオール含量の低下がまったく認められなかったので、低温で微生物増殖の停止が期待される典型的な産業的処理条件下で、チオール酸化が効率的に起こるのは予想され得ることではない。
【0581】
UHT処理(超高温処理)した非酸化試料WPI-A1において強いH2S臭気を検出し、発明者らは、強く感知される腐敗卵類似の臭気(官能スコアが10)が、さらに92mVという高い測定電極電位に関連するものであるということを発見した。
【0582】
対照的に、pH8.0、40℃でH2O2:BLGを5:1とする処理に供したWPI-A4試料においては、加えたH2O2の93%が消費され、遊離チオールが81%低下する結果となった。酸化によって、UHTシミュレーション後の不快な臭気が大幅に低減してスコアが4に下がったが、これは、非加熱の6%WPI-A試料のレベルと同程度であることが明らかになった。UHTシミュレーション後に、WPI-A4試料はさらにH2S電極電位が僅か9mVであり、H2Sの発生が大幅に減少して不快な臭気も大幅に低減したことが確認された。10~25℃で処理した試料(それぞれ、試料WPI-A2およびWPI-A3)については、不快な臭気が測定されず、評価を行わなかった。しかし、H2O2の消費およびそれに伴う残存遊離チオールの減少に基づいて、発明者らは、より効率的にチオールを除去し、それによってnUHT処理(超高温処理)後のH2Sを減少させるにはより高い温度の利用が好ましいことを、発見した。
【0583】
10℃~60℃において、8:1のH2O2:BLGモル比で酸化剤に曝露したWPI-B試料についても同一パターンが観察された(それぞれ、試料WPI-B2~WPI-B6)。非酸化試料は、高電極電位である214mV(10.4μMの濃度に相当することが分かっている)によっても示されるように腐敗卵の臭気に類似した強力で不快な臭気(官能スコア9)を発生した。インキュベーション温度を次第に上昇させた(10℃から60℃;WPI-B2~WPI-B6、表3を参照のこと)場合には、感知される不快な臭気がスコア4に低下し、試料WPI-B4~WPI-B5において非加熱の6%WPI-Bと同程度であることが判明した。同様に、これらの試料はH2S測定でも低レベルであった。WPI-Aを基盤とする試料と同様に、消費H2O2、残存チオール、およびその後のUHT処理(超高温処理)での不快な臭気の間の関係が、WPI-Bを基盤とする試料にも観察された。
【0584】
より高い温度を用いるという要件に加えて、40~60℃の温度上昇による75~5590kDa(BLG分子の分子量(Mw)約4~約300に対応する)の重量平均分子量(Mw)の増加から示唆されるように、試料WPI-B4~WPI-B6に認められるような効率的酸化が蛋白質凝集をも引き起こすという意外な事柄を、本発明者らは発見した(表3を参照のこと)。試料WPI-B6において蛋白質が高分子量であることは、試料を上下転倒させた場合に、僅かな曇りおよび粘稠な挙動によって視覚的検出が可能である。
【0585】
より低い温度で処理した試料WPI-B2(29.3kDa)およびWPI-B3(44.1kda)では、凝集がほとんど、あるいは全く観られないことを、本発明者らはさらに観察しており、これは、酸化プロセスの進行のためにはある程度の蛋白質変性を必要とするということを明確に示している。充分な変性に到達すれば(WPI-A4およびWPI-B4など)、最小限の凝集で酸化が進行し得るが、他方、変性が増加すれば凝集増加または過剰凝集が起こる(例えば、WPI-B5およびWPI-B6)。
【0586】
試料WPI-A4、WPI-B4~WPI-B6(表3を参照のこと)によって例示される総蛋白質に対して、BLG含量がそれぞれ約100%~約50%の範囲である広範な乳清蛋白質単離組成物に関して、WPI調製物の酸化により、不快な臭気を低減および除去が可能であることを、本発明者らは実証した。


【0587】
【表3】
【0588】
結論
遊離チオールの大幅な減少を可能にする条件下で予め酸化に供した試料のUHT処理(超高温処理)では、腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気のレベルが低下することを、本発明者らは発見した。
【0589】
6%乳清蛋白質飲料組成物における遊離チオール含量が蛋白質g当たり10マイクロモルSHであることを特徴とする試料では、不快臭気レベルの大幅な低減が感知された;不快臭気レベルが5.0マイクロモルH2S以下のレベルでは、官能検査で非酸化参照と比較して有意に低減したと感知され;2マイクロモルH2S未満のレベルの不快臭気は、官能検査ではほとんど感知されないか、あるいは全く感知されなかった。
【0590】
乳清蛋白質および特にBLG(乳清蛋白質における遊離チオール基の主たる供給源)中の遊離チオールの酸化は、制御条件下で低減可能であることを、本発明者らは実証した。
【0591】
特定のpH範囲および温度範囲の組み合わせが乳清蛋白質の遊離チオールの効率的酸化に有益であることを、本発明者らはさらに発見した。
【0592】
実施例2a:用いた酸化剤のレベルの影響に関する試験
これらの実施例に記載の実験において、発明者らは、インキュベーション温度40℃で20時間のインキュベーション経過中に用いた酸化剤の量の影響を調べた。
【0593】
方法
加えるH2Oを、0:1~178:1の(H2O2:BLG)の範囲のモル比で変化させながら、30%H2O2を添加して混合するということを除いて、実施例1に概説した方法と同一の方法により、WPI-Bから43.2g/LのBLG(約2.35mM)を含む8.6%WPI溶液(20℃、pH8.0)を調製した。溶液はいずれも40℃で20時間インキュベートした。
【0594】
インキュベーション後に、分析Hにしたがって残存H2O2を測定した。
【0595】
さらなる分析を行い、その後の処理工程において過剰酸化を避ける目的で、残存H2O2の除去のためのカタラーゼ(液状乳清蛋白質産物150L当たり3.65mLのCatazyme25L)を試料に添加した。分析Eにしたがって残存遊離チオールを測定した。
【0596】
酸化による個々のアミノ酸の消失を測定し、酸化乳清蛋白質試料におけるアミノ酸の存在量を分析F1およびF2にしたがって評価した。
【0597】
H2S関連臭気の発生は、実施例1に記載のような熱処理(160℃のアルミニウムブロックを用いて160秒間)後に評価した。試料はいずれも、H2S分析前の24時間は室温で保存した。
【0598】
β脱離によるシステインのデヒドロアラニンへの転化、およびリジンまたはシステイン残基とのさらなる反応に起因する非天然架橋のレベルを、UHT処理(超高温処理)後の酸化試料について、開栓器(デキャッパー)(Thermo Scientific CRMA60180-ECRH11KI)を備える電子工作用圧着工具(クリンパー)を用いてバイアルの蓋を開けて分析Iを実施して評価した。
【0599】
実施例1に記載の方法で、不快な臭気の感知を評価した。
【0600】
結果
表4から分かるように、使用量を増加させると残存H2O2の量も増加し、最初の添加量に対する残存過酸化物の割合が10:1の化学量論比(試料WPI-B16)を超えて急激に増加して、17:1~178:1のモル比(試料WPI-B18~WPI-B21)で一定温度40℃にて20時間インキュベートした後でも、最初に添加したH2O2の29%~49%もの量が残存することを、発明者らは発見した。
【0601】
H2O2:BLGモル比が8:1で(試料WPI-B15)、あるいはそれより高い比率(試料WPI-B16~WPI-B21)において、SHの量が蛋白質g当たりおおよそ2.2マイクロモル以下であるという事実から明らかなように、該酸化工程により、遊離チオールが本質的に枯渇したことがさらに明らかになったが、このことは、腐敗卵の臭気に類似した不快臭気の発生の原因となる残留物が、効率的に除去されたことを示唆しているのである。
【0602】
しかし、SHの量が蛋白質g当たり7.5マイクロモルに低下した場合(これは、試料WPI-B12で模擬UHT処理後に1.35マイクロモルのH2Sとなることが判明している)であっても、0~15のスケールにおいてスコア4の非加熱非酸化6%WPI-B参照と同程度と感知されることを、発明者らは発見した。高レベルでH2Sを発生する非酸化の6%WPI-B9試料は、スコア9と評価された。
【0603】
特に、試料WPI-B12~WPI-B21では、蛋白質g当たり最大で10マイクロモルの含量の遊離チオール基が、模擬UHT後に最大で約5マイクロモルのH2Sとなり、加熱処理した参照WPI-B9と比較して大幅に低減した不快臭気レベルであって非加熱非酸化6%WPI-B参照と同程度のレベルとなることを示している。
【0604】
【表4】
【0605】
結論
乳清蛋白質飲料のUHT処理(超高温処理)中および処理後の、腐敗卵の臭気に類似した不快な臭気の発生および感知を顕著に低減させるのに充分な遊離チオール除去には、特定レベルの酸化が必要であることを、本発明者らは発見した。分析的におよび感知によって評価される不快臭気のレベルの低下は、残存遊離チオール含量が蛋白質g当たり約10マイクロモルSH以下であって、そのためH2Sが約5マイクロモル以下となることに一貫して関連付けられるということを、発明者らは発見した。
【0606】
実施例2b:酸化的損傷の試験
従来技術(US2016/0235082A1を参照のこと)における飲料品生産のための乳清蛋白質酸化プロセスでは、特に濁度および/または黄変の発生が起こり、見栄えの悪い飲料となることを、本発明者らは観察している。
【0607】
これらの望ましくない特徴が、高濃度の酸化剤の存在下での過酷な熱処理(UHTなど)の結果であろうと、発明者らは推測した。
【0608】
方法
WPI-B粉末をミリQ水と混合することによって13.5%w/wのWPI溶液を調製し、5%HClを用いてpHを6.5に調整した後、ミリQ水で最終蛋白質濃度が13%w/wとなるように希釈した。分析Lにしたがって測定したところ、BLG含量は65g/L(おおよそ3.54mM)であった。13%のWPI-B(pH6.5)試料の分注物を参照目的で保存した。
【0609】
モル比0:1~174:1のH2O2:BLGに対応する様々な量で、30%過酸化水素(H2O2)をWPI溶液に混合した(表5を参照のこと)。
【0610】
13%WPI試料の1.0mL分注物を実施例1に記載のような模擬UHT処理(160℃のアルミニウムブロックを用いて160秒間)に供した。冷却後に、バイアルを目視検査し、蓋をはずし残存する未反応H2O2を、分析Hを用いて評価した。分析Eを用いて残存チオールを測定した。このプロセスにおける個々のアミノ酸の消失を判定し、それぞれ分析F1およびF2にたがってアミノ酸酸化物の存在量を評価した。β脱離によるシステインのデヒドロアラニンへの転化およびシステイン残基とのさらなる反応に起因する非天然ランチオニン架橋のレベルを、UHT処理(超高温処理)後の酸化試料について分析Iで評価した。
【0611】
結果
表5に実験結果の概要を示し、さらに試料WPI-B22~WPI-B30の写真を図1に示す。
【0612】
大部分の試料において、濁りの発生が認められ、またさらに特定試料WPI-B26、WPI-B27、WPI-B29およびWPI-B30において、UHT処理(超高温処理)に供したH2O2が高レベルであった試料において黄変発生を認めた。これは、過剰量のH2O2がUHT処理(超高温処理)と組み合わさった場合には、望ましくない過度のアミノ酸酸化を引き起こし、その結果、例えば、そのような色変化が起こることを示唆するものであった。
【0613】
さらに、13%WPI-B(WPI-B29)のUHT処理(超高温処理)時に85:1のH2O2:BLGが存在することによって、トリプトファン残基の望ましくない大幅な消失が起こり、さらにはチロシン残基およびトリプトファン残基の両方から酸化物が生成することを、発明者らは発見した(表7を参照のこと)。黄変が、検出したトリプトファン酸化物であるジオキシインドリルアラニン(DiOia)、およびキヌレニン(kyn)に起因することを示唆する証拠を、本発明者らは見いだしている。
【0614】
さらに、チロシンの酸化チロシン(o-Tyr)およびジチロシン(Di-Tyr)への酸化は、過剰酸化の指標と考えられる。
【0615】
試料WPI-B29とは対照的に、WPI-B15(実施例2A)において、40℃で8:1モル比(H2O2:BLG)のより穏和な酸化工程およびその後のカタラーゼによる過剰酸化剤の不均化の後では、WPI-B15のチロシン残基にもトリプトファン残基にも有意な変化は全く存在しないことを、表7は示している。試料WPI-B22(未処理WPI-B)にもWPI-B9(H2O2を添加していない)にも、チロシンの酸化物(例えば、di-tyrおよびo-tyr)もトリプトファンの酸化物(例えば、キヌレニンおよびDiOia-2)も全く観察されなかった。
【0616】
WPI-B9およびWPI-B29(H2O2の存在下でUHT)の両方(非酸化型)と比較して、WPI-B15ではUHT処理(超高温処理)後のランチオニンのレベルが大幅に低いことがさらに示された。この値は、意外なことに非修飾非加熱WPI-B(表7)のレベルに近いものであった。これは、酸化プロセスが蛋白質分解物の生成を低下させるのであるが、そうでなければ本来は非天然ランチオニン架橋の形成が起こるということを明確に示唆している。
【0617】
興味深いことに、試料WPI-B20(40℃/20時間、89:1)では、チロシンおよびトリプトファンの分解を示さなかったが、これは、UHT処理(超高温処理)前のカタラーゼ添加の結果である可能性が最も高く、高温で高レベルのH2O2が望ましくないことを明確に示している。しかし、トリプトファン分解物であるキヌレニンの望ましくない形成が検出され、H2O2使用量の調節が必要であることを強調するものである。
【0618】
【表5】

【0619】
【表6】

【0620】
【表7】
【0621】
結論
高レベルのH2O2存在でWPI溶液を直接UHT処理(超高温処理)した後、ボトル詰めを行うことを含む処理が、アミノ酸(トリプトファンなど)の望ましくない酸化を引き起こし、キヌレニンおよびDiOiaなどの分解物生成をもたらすことを、本発明者らは観察している。さらに、本発明者らは、そのような溶液における濁りまたは黄変の形成を観察し、この発色がアミノ酸分解物の生成に関連し得ることを示唆する証拠を見いだしている。
【0622】
対照的に、実施例2Aに記載されるように、BLG中の遊離チオールの露出と選択的酸化を可能にする適正なpHおよび温度の範囲の慎重な選択によって、より低い遊離チオール基含量で、酸化的損傷のレベルがかなり低い修飾乳清蛋白質組成物およびそれらを含む飲料製品の生産が実現可能になる。
【0623】
実施例3:チオール酸化を可能にするpHの影響
この実験において、本発明者らは、乳清蛋白質の遊離チオール酸化を可能にするpHの影響を調べた。
【0624】
材料と方法
実施例1の記載の方法で、粉末を脱塩水と混合することにより溶解したWPI-Bの水性試料(8.4%w/wの蛋白質含量となるように充分なWPI-B粉末を含む)を調製した。それぞれ10%HClまたは3MのNaOHを用いて、上記試料のpHをそれぞれ、6.5、7.0、7.5、8.0および8.5に調整した。他で特段に言及するのでない限り、pH調整WPI-B試料は、8:1のH2O2:BLGモル比でH2O2を添加した後に、40~55℃で20時間インキュベートした(表8を参照のこと)。インキュベーション後に、分析Hを用いて残存H2O2を測定した。
【0625】
カタラーゼ(液状製品150L当たり3.65mLのCatazyme25L)を添加して、残存H2O2の除去を行った。
【0626】
得られた産物の平均分子量および固有粘度を推定するために、分析Gにしたがいゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による試料分析を行った。分析Eにしたがって残存遊離チオールを測定した。
【0627】
副試料を実施例1に記載のUHT様熱処理(160℃の温度のアルミニウムブロックを用いて、160秒間)に供し、分析DにしたがってH2S含量を評価した。
【0628】
感知した不快な臭気を実施例1に記載の方法で評価した。
【0629】
結果
表8は、遊離チオール酸化を可能にするために特定の温度/pHの組み合わせが必要であることを示している。
【0630】
添加H2O2の非存在下、pH8.0、40℃でインキュベートした未処理のWPI-B31およびWPI-B32では、遊離SHが高レベルを示し、蛋白質g当たりSHが21.6および21.5マイクロモルとなり、WPI-B31において示されるような、UHT処理(超高温処理)後に不快臭気が高レベルを示した。
【0631】
しかし、温度を次第に増加させるとH2O2消費が増加し、その結果、遊離チオールが低下して、pH8.0で蛋白質g当たり2.2マイクロモルのSHとなることを、発明者らは発見した。したがって、UHT処理(超高温処理)中に生成するH2Sのレベルも低下した。
【0632】
その反応については、40℃でpHが約8.0であることが必要となるが、本発明者らは、蛋白質の部分的変性を促進するために、同時に温度を上昇させる場合には、8.0未満のpHでも反応が進行し得ることをさらに発見した。このことは、特定のpHレベルには特定温度が必要であることを意味しているのである。
【0633】
実際、試料WPI-B38から分かるように、pH7.0における不快臭気の効率的除去には少なくとも約50℃のインキュベーション温度を必要とすることが判明した;また、pH6.5の場合には、少なくとも約55℃の温度が必要であった。
【0634】
試料WPI-B35~WPI-B39で明らかなように、効率的な酸化および不快臭気の除去の結果、修飾WPI産物の重量平均分子量が、非処理WPI-B原材料の22.4kDaと比較して、51(WPI-B35)から1142kDa(WPI-B39)に増加したことに、本発明者らはさらに気づいた。
【0635】
遊離チオールの含量が蛋白質g当たり7.4マイクロモルSH以下であることを特徴とする試料のUHT処理(超高温処理)において発生する不快臭気の測定レベルが、測定された1~2マイクロモルH2Sの官能閾値よりも高いことが判明したが、WPI-B35の不快臭気は、翌日(周囲温度で24時間)には既に、非加熱非酸化6%WPI-B試料と同程度のレベルに低下していたことに、本発明者らはさらに気づいた。試料WPI-B36~WPI-B39では、不快臭気が全く検出されなかった。
【0636】
【表8】
【0637】
結論
pHの増加によって乳清蛋白質の遊離チオールの低下が増進されることを、発明者らは見いだした。表8からさらに明白なように、pH6.5からpH7.0、およびまたpH7.0からpH7.5に上昇すると、H2O2消費量当たり「蛋白質g当たりのSH基」の減少が劇的に増進する。理論に限定されるものではないが、pH上昇によってBLGの分子構造が緩み、そのため酸化剤がBLGの遊離チオールにアクセスし易くなり、酸化反応の特異性が増すと、発明者らは推測している。
【0638】
本発明の方法はpH6.5で実施するのであってもよいが、酸化剤の遊離チオールへのアクセスを容易にする目的で蛋白質の部分的変性によってプロセスを加速するために、好ましくはより高い温度(例えば、50℃)で、より長いインキュベーション時間を必要とするであろう。
【0639】
本発明者らはさらに、加熱処理中に温度が上昇すると平均分子量が増加する傾向を観察している。酸化乳清蛋白質の粉末の生産に関しては、粘度増加の問題なしにより高い蛋白質濃度の液流を処理することが可能になるので、凝集サイズを可能な限り小さく抑えることが有利であることを、本発明者らは発見した。
【0640】
実施例4:スポーツ栄養のためのpH中性のUHT処理乳清蛋白質飲料の生産
本実施例において、中性pHにおけるUHT処理(超高温処理)後に不快臭気が意外なほど低レベルである酸化乳清蛋ついて、該プロセスを試験規模に拡大する実現可能性を、発明者らは実証した。
【0641】
材料と方法
WPI-B型またはWPI-C型の粉末を原材料として用いるパイロットプラントで、中性pHでUHT処理(超高温処理)後の不快臭気のレベルが低いインスタント飲料を生産した。WPI-Bの粉末組成物を実施例1に示し、WPI-Cを表9に示す。
【0642】
【表9】
【0643】
試験的処理では、6%w/w蛋白質(WPI-BまたはWPI-C)を含む12kgの溶液を調製した後、30分間の再水和を行った。10%NaOHを用いて、20℃でpHが8.0となるように調整した。次いで、上記の溶液をScanima混合器(SPM-100V、Scanima A/S、デンマーク)に移し、穏やかに撹拌しながら溶液の温度を40℃に上昇させた。その後、H2O2とWPI-BまたはWPI-CのBLGとの間のモル比が8:1になるように、35%のH2O2を上記の溶液に加えた。その溶液を18時間、40℃に保ち、実施例1の記載のように、過剰H2O2を除去するために18時間のインキュベーションの終わりにカタラーゼを添加した。溶液を室温で60分間放置し、UHT前に1MのHClを用いてpHを7.0に調整した。80L/時間の水道水流、20L/時間の産物流、70℃に予備加熱、次いで143℃で4秒間の加熱の操作を伴うプレート型熱交換器(PHE)(HT320~20、OMVE、オランダ)を用いて、UHT熱処理を実施した。排水口の位置で加熱処理飲料を10℃に冷却し、100mlの滅菌プラスチックボトルに注いでさらなる分析のために直ぐに密閉した。さらに、H2Sレベル分析のための試料は、UHTの排水口の部位で充填した。その際、実施例1に記載のように、1mlの試料(各試料につき三回の繰り返し)を2mlのガラスバイアルに注いで直ぐに蓋をして圧着密閉した。
【0644】
飲料の評価に複数の分析を実施した。残存遊離チオールは、18時間の酸化後の試料を分析Eにしたがって測定した。飲料のH2Sレベルは生産から2時間以内に分析した(分析D)。試料はいずれもH2S測定前に室温で保存した。濁度分析は分析Qにより実施した。
【0645】
官能評価は飲料品の生産と同日に実施し、開栓前は100mlのプラスチックボトルを室温で保存した。ボトルを開栓して、3~5人で直接的に評価した(各人につき2つのボトル)。0~15のスケールを用いた。
【0646】
結果
表10に示すような未処理試料と比較して、H2O2とBLGのモル比が8:1におけるWPI-BまたはWPI-Cの酸化によって、遊離チオール量が大幅に減少したことを、結果は明確に示している。さらに、H2O2無添加のWPI-B37およびWPI-C1の両方において、UHT処理(超高温処理)は飲料中のH2Sレベルを上昇させた。しかし、H2O2を添加した場合(試料WPI-B38およびWPI-C2)には、室温で24時間の保存後の不快臭気が、測定した官能閾値よりも低いレベルになった。
【0647】
6%WPI-B飲料に観察される低い濁度、および不快臭気が低レベルであることは、口当たりの良い透明乳清蛋白質飲料には、前処理WPI産物の利用が好ましいことを明確に示している。
【0648】
【表10】
【0649】
結論
透明な中性pHのUHT処理乳清蛋白質飲料であって、腐敗卵の臭気に類似の不快な臭気を感じることのない飲料の生産において、試験的スケールで酸化プロセスが良好に用いられることを、本発明者らは実証した。そのような飲料は特にスポーツ栄養として魅力的であると考えられる。
【0650】
実施例5:スポーツ栄養のための中性pHのUHT処理乳清蛋白質粉末の生産
本実施例において、再水和および中性pHのUHT処理の後に意外なほど低レベルの不快臭気しか発生しない修飾乳清蛋白質単離物の生産を目的とする、濃縮および噴霧乾燥を含む粉末製品加工の生産において、実施例4に記載の条件を用いることの実施可能性を、発明者らは実証した。
【0651】
以下の場合には、水を除去ことは特に有利である:
・ そのような産物が長距離輸送される場合(水の輸送を回避する)、
・ 保存中の微生物増殖のリスクを減少させる目的の場合。
【0652】
材料と方法
10.3%または7.9%蛋白質のWPI-C(実施例4、表9に記載の特性)を含む150kgの溶液を、水で30分間WPI-Cを水和することにより調製した。溶液を40℃に加熱する前に、この溶液のpHを8(20℃)に調整した。上記の加熱溶液では、7.5:1または13:1のモルH2O2:BLG化学量論比を用いてH2O2を添加する前に、pHを7.7(40℃で測定)に調整した。
【0653】
40℃で20時間のインキュベーション後に、残存H2O2を不活性化するために、蛋白質g当たり96Uのカタラーゼ(SigmaC9322)を添加した。次いで、2枚のKoch HFK328(3838/31)膜を備え、10℃にて平均0.9バールの差圧のUFモードで操作されるパイロットスケールMMS NF/ROユニットで、酸化WPIを12%蛋白質に濃縮した。次いで、SPX Anhydroパイロットスケール噴霧乾燥器(温度:注入口で185℃/排出口で85℃)により、UF保持液を乾燥させた。
【0654】
5.9%蛋白質を含む乳清蛋白質飲料(WPI-C4およびWPI-C5)を取得するために、生産した酸化WPI粉末を脱塩水と混合した。3%HClを用いて溶液のpHを7.0(20℃)に調整した。PHEを備えたOMVE HT320-20を用いて、実施例4に記載のように、WPI-C4溶液を143℃で4秒間のUHTに供した。同一方法で、WPI-C粉末から参照飲料を調製した(酸化前処理なし、WPI-C3)。
【0655】
100L/時間で操作され、2段階の予備加熱(すなわち、まず80℃、次いで100℃)、次いで143℃で10秒間の加熱(高温度、短時間(HTST))で構成されるUHT APV/SPX 5010026システムを利用した管状熱交換器(THE)を用いて、WPI-C5溶液の熱処理を行った。次いで、まず78℃への冷却、次いで40℃ヘの冷却、最後に10℃ヘの冷却と3段階で上記飲料組成物を冷却し、100mLの滅菌ボトルに注いだ後、即座に密閉した。
【0656】
分析EでUHT処理飲料を遊離チオール基含量について分析した;またそのH2Sを分析Dで分析した;濁度を分析Qで分析した;粘度を分析Cで分析した;および官能性を分析Kで分析した。
【0657】
結果
WPI-C4およびWPI-C5飲料では、蛋白質g当たりの遊離チオールレベルが、それぞれ蛋白質g当たり2.0および0.3マイクロモルに低下した。表11から分かるように、WPI-C4およびWPI-C5におけるチオールの酸化では、WPI-C3(非酸化参照)と比較して、同程度の粘度、僅かに低い濁度を有し、および重要なことであるがH2Sレベルの大幅に低下したUHT処理飲料が得られた。官能パネルにおいて、酸化WPI-C5飲料では、表12に示される参照飲料(WPI-C3)と比較して硫黄臭/腐敗臭が減少していた。上記の特徴は、0(低強度)~15(高強度)のスコアで評価された(分析K)。WPI-C5飲料の官能スコアは、スコア1.7の非加熱乳清蛋白質溶液に迫るものである。

【0658】
【表11】
【0659】
【表12】
【0660】
結論
遊離チオール基の特異的酸化、過剰の酸化剤の不活性化、その後の限外濾過による濃縮、および噴霧乾燥によって、粉末化酸化WPI-C4/C5産物が生産可能であることが実証された。酸化WPI-C4/C5を粉末形態にすることで、この産物の物流管理および保存可能期間が改善する。さらに、生産した酸化WPI-C4/C5粉末は、6%WPI-C4/C5蛋白質を含むUHT処理飲料において強く感知される硫黄臭/腐敗臭を全く有していないことが示されたが、それは非加熱乳清蛋白質溶液の官能スコアに迫るほどであった。
【0661】
上記飲料は低粘度であり、また同程度のUHT処理を施した非酸化WPI参照飲料と比較して濁度が低い。
【0662】
実施例6:酸化中にpHを一定に維持することの利点
以前の研究において、発明者らは、酸化プロセスで0.5pH単位程度またはそれ以上pHが低下することを見いだした。
【0663】
本実施例において、発明者らは、酸化工程に必要な処理時間を短縮するために、pHスタットを用いてpHを一定に保つことが特に有利であり得ることを実証した。
【0664】
パート1:酸化中のpHの再調整による反応速度改善の可能性
材料と方法
150kgのWPI-C溶液(9%蛋白質;実施例4、表9に記載の特性を有する)を水和させ、実施例5に記載のようにpH調製および加熱を行ったが、酸化については、H2O2のBLGに対するモル比を10:1で実施した。H2O2添加から20分間後に、2つの100ml試料をビーカーに注ぎ蓋を閉じて、撹拌しながら40℃の水浴に配置した。上記2つの試料のうち一方については、酸化経過中にpH調整を行わず(WPI-C8)、他方は、3時間後にpHを7.7に再調整(40℃で測定)した(WPI-C7)。残りの150kg溶液を40℃に保ち、5時間にわたって、20分毎にpHを再調整することによりpH7.7の静的pHとし、その後も酸化を継続したが、pHについては低下するがままにし、全体を通じて22時間、酸化をおこなった(WPI-C6)。H2O2添加から、3時間(3h)、5時間(5h)、および7時間(7h)の時点で、各ビーカーから、ならびに静的pHを維持した容量の大きなものから、試料を採取した。ml当たり5Uのカタラーゼを添加して残存H2O2を不均化する前に、分析Hにしたがって試料中の残存H2O2を測定した。次いで、分析Eにしたがい、全試料の遊離チオールを分析した。
【0665】
結果
酸化中の静的pH7.7により反応速度が大幅に改善され、僅か7時間後に、遊離チオール含量を蛋白質g当たり2.0マイクロモルとすることが可能であったが、他方、WPI-C7およびWPI-C8のいずれも、24時間でそのレベルにはならないということが、判明した。WPI-C7において、3時間の酸化後に単回のpH再調整を実施したが、この場合にも速度の改善がみられた。これらの結果は、チオール酸化促進におけるpHの影響を強調するものである。
【0666】
【表13】
【0667】
パート2:静的pHにおける酸化中のH2O2:BLG比の影響
材料と方法
WPI-Cの10%蛋白質溶液を作成して、そのpHをpH8.0(20℃)に調整した。その溶液の400gをBioXplorer 400(HEL)装置の4つの反応槽のそれぞれに分配した。BioXplorer 400(HEL)装置は、温度調節、機械的撹拌子、pHセンサー、および塩基添加(7%NaOH)のための液体投入システム、およびWINBIOソフトウェア制御システムによる制御を備えるものである。pH7.7へのpH調整前に溶液を40℃に加熱するように、また7%NaOH溶液を加えて40℃で14時間pHを7.7で一定に保つように、上記システムをプログラムした。pHおよび温度が安定な場合には、下記のスキームにしたがって、用手的に反応槽にH2O2を添加した。酸化経過中に、1~1.5時間の間隔で試料を6ml採取した。分析Hにしたがって、試料中の残存H2O2を測定し、残りの試料には、試料ml当たり10Uのカタラーゼを添加した。上記試料をpH7(20℃)に調整し、希釈して6%蛋白質とした。分析Eにしたがい、全試料の遊離チオールについて分析した。各試料の1mlを実施例1に記載のUHT様加熱処理(160℃の温度のアルミニウムブロックを用いて、160秒間)に供して、分析DにしたがいH2Sの分析を行った。粘度は分析Cにしたがって測定した。
【0668】
結果
【0669】
【表14】
【0670】
添加H2O2の用量を増加するとチオール酸化に必要な時間が短縮され、静的pHを用いた場合に18:1モル比の用量では、H2O2:BLGのモル比に9:1を用いた場合に必要な約8時間と比較して、最初の5時間以内に不快臭気を除去可能なことが、判明した。
【0671】
結論
pHを有利な定値に維持することによって、(WPI-C7およびWPI-C8と比較した場合に)より速い反応速度が可能となることを、上記の実験が実証したのである。これは、温度/pHの組み合わせで決まる部分的変性状態の維持による結果である可能性が高い。
【0672】
さらに、より高い用量を用いることによって、反応時間の短縮が可能となり、またpHスタットおよびより高いH2O2:BLG用量を併用することによってプロセス時間を顕著に短縮できることが、上記の実験で示された。例えば、pH8.0(20℃)にて、18:1のH2O2:BLG比で3時間、あるいは9:1のH2O2:BLG比で5時間の酸化前処置を実施することにより、UHT処理による不快臭気の発生を除去可能であった。
【0673】
実施例7:乳清蛋白質源の脂肪含量の影響
本実施例に記載の実験では、(上記の不快な臭気に加えて)揮発性有機化合物からの望ましくない臭気の発生に対する脂肪含量の影響を調べた。
【0674】
材料と方法


【0675】
【表15】
【0676】
穏やかに撹拌しながら粉末を室温で1時間水和させることによって、WPI-BおよびWPCから、それぞれ8%蛋白質溶液を調製した。pHを8.0(20℃)に調整した。8:1のモル化学量論比となるように30%過酸化水素を添加して、20時間後にpH8.0で両試料を40℃にインキュベートした。
【0677】
上記の試料を実施例1に記載のようなUHT処理(超高温処理)に供して、分析DにしたがってH2S含量を評価した。複数の熱処理バイアルから試料を5mL採り、100mLのブルーキャップフラスコに移した。最終濃度が30ppbとなるように、100ppmの2-ヘキサノン-5-メチル内部標準溶液1.5μLを添加した。分析Jにしたがい、揮発性有機化合物に関して試料分析を実施した。
【0678】
結果
pH8.0、40℃で、8:1のHを用いて20時間処理したWPCおよびWPIの飲料を、揮発性有機化合物含量について分析した。この分析には、同定のため質量分析を用いる動的ヘッドスペースサンプリングガスクロマトグラフィー法を利用した。検出した全有機化合物がWPC飲料の上部空間(ヘッドスペース)にかなり多く存在することが、分析によって明らかになった。アルデヒド類、特にヘキサナール、ヘプタナール、2-4ノナジエナール(E,E)、ノナナール、およびベンズアルデヒドなどが、WPIと比較して、かなり多量に存在していた。これらのアルデヒド類は脂質類の酸化に由来するものであり、WPCはWPIよりもかなり多くの脂質類を含むので、やはりWPCからはアルデヒド類の生成もより高速度で起こる。揮発性アルデヒド物質の生成を回避するためには、できるだけ脂肪量の少ない蛋白質供給源を用いることが好ましい。さらに、WPCはまた、ケトン2-ブタノンおよび有機酸(酢酸、ギ酸、および安息香酸)もより多く含む。
【0679】
WPC飲料の上部空間(ヘッドスペース)における全揮発性有機化合物の存在量増加の組み合わせ効果は、WPIと比較して望ましくないかなり強い臭気であり、これは簡単な官能評価によって確認されるのであるが、この官能評価で、WPC試料についておそらく検出揮発性有機化合物の生成に起因すると思われる、WPIと比較してさらに強い複雑な臭気が明らかになったのである。

【0680】
【表16】
【0681】
結論
できるだけ脂肪量の少ない乳清蛋白質供給源が酸化乳清蛋白質産物の調製およびその口当たりの良い製品にとって好ましいことを、本発明者らは発見した。
【0682】
実施例8:熱勾配の利用
遊離チオールをスルフェン酸に酸化し、その後第2の温度段階で、スルフェン酸と露出したチオールの反応により蛋白質間にジスルフィド結合を形成させることを目的とし、蛋白質を部分的変性させるために異なる温度プロファイルを用いる場合には、遊離チオールの除去が特に効率的であり得ることを、本発明者らは発見した。
【0683】
方法
室温で1時間、穏やかに撹拌しながら、10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で粉末を水和させることにより、WPI-A(実施例1を参照のこと)から、1%、2%、3%、4%、5%、および6%w/wの蛋白質溶液を調製した。
【0684】
ミリQ水で30%過酸化水素を0.3%に希釈し、モル化学量論比が2:1となるように蛋白質溶液に添加した。その後、温度/時間段階的勾配(5℃間隔で25℃から99℃、および10.5分間の保持時間で、全体の時間が176分)を用い、PCR装置(Esco Healthcare SwiftMax Pro)にて上記試料を熱処理した。分析前に試料を25℃に冷却した。
【0685】
全試料について、遊離チオール分析(分析E)およびGPC-HPLCによる粒子サイズ分析(分析G)を実施した。
【0686】
結果
意外なことに、蛋白質濃度1%~6%で2:1のモル化学量論比のみを用いて、遊離チオール含量を95%低下させることが可能であることが判明した。測定した遊離チオールを表15に示す。


【0687】
【表17】
【0688】
表15に示されるより高い蛋白質濃度では、凝集が増加したが、意外なことに、高蛋白質濃度での蛋白質凝集は限定的なものであり得る。
【0689】
結論
(1)当業者によって最小凝集となるように選択される低い温度範囲において、遊離チオールの露出およびスルフェン酸状態への酸化を可能にする、および(2)次いで、より高い温度でスルフェン酸と非酸化遊離チオール残基との間の反応を可能にする熱プロファイルの慎重な設計によって、非常に低いH2O2:BLG比で遊離チオールの除去を達成し得る。
【0690】
本実施例の本発明の実施では、システイン酸化の選択性が強化され、それによって例えば、メチオニン酸化を軽減することを示唆する証拠を、本発明者らは見いだしている。
【0691】
実施例9:酸化後の加熱処理と組み合わせた低用量酸化剤の利用
低用量酸化剤の利用を熱処理と組み合わせることよって、H2S濃度が官能閾値より低いレベルになるように遊離チオールレベルを所望の範囲に低下させ得ることを、発明者らは実証した。
【0692】
低レベルの酸化剤および短いインキュベーション時間(例えば、1時間)を用いることによる穏和な酸化で、部分変性蛋白質分子を酸化してスルフェン酸を形成させることが可能である。スルフェン酸は、システイン残基と過酸化物の反応中に生成する一過性中間体であり、所望のレベルの過酸化物の存在下、および/または長時間の反応(例えば、実施例1および2においては8:1で18時間)によるさらなる酸化でスルフィン酸またはスルホン酸を形成させることができる。他方、遊離チオールの存在下で、スルフェン酸はジスルフィド結合形成によって消費され得る。本実施例において、本発明者らは酸化剤を低レベルで用いた(例えば、2:1で、短い反応時間、例えば、1時間)。この酸化剤によって、一部の遊離チオールが酸化されてスルフェン酸を形成し、さらに第2加熱またはUHT処理(超高温処理)に残存する遊離チオールとのジスルフィド結合形成が促進されるのである。
【0693】
材料と方法
6%(w/w;蛋白質に関して)WPI-C溶液(WPI-C粉末に関する詳細を実施例4に示す)のpHを20℃で8.0となるように調整し(分析B)、40℃の水浴に置いた。蛋白質溶液の温度が40℃に達した後、撹拌しながら30%H2O2を2:1(H2O2とBLGとの間のモル比)でゆっくりと添加した。次いで、40℃で1時間のインキュベーションを行った。次に、水浴から酸化蛋白質溶液を取り出し、過剰のH2O2を除去するためにカタラーゼを添加して、室温で15分間放置した。加熱を効率的にするため6ml溶液試料を10mlの細いガラスチューブに充填して、60℃~81℃の温度範囲で異なる時間(2.5分間~最長で30分間)、熱処理を行った。加熱した試料は直ぐに10℃の水浴で5分間冷却した。
【0694】
UHTシミュレーション前の試料について、遊離チオールの分析(分析E)およびGPCの分析(分析G)を実施した。実施例1に記載のようなUHTシミュレーションに試料を供した後に、H2Sレベルを測定した(分析D)。
【0695】
結果
表16の結果は、低用量のH2O2(2:1)を用いた場合に、短いインキュベーション時間、例えば、40℃で1時間が好ましいことを明確に示している。遊離チオールのレベルはインキュベーション後に、蛋白質g当たり31.7マイクロモル(WPI-C11)から蛋白質g当たり5.4マイクロモル(WPI-C12)に低下した。WPI-C12では、第2の熱処理を行わずに直接UHT処理(超高温処理)に供したところ、そのチオールレベルはさらに蛋白質g当たり1.9マイクロモルに低下した。このことは、UHT処理におけるさらなるチオールの低下が、ジスルフィド結合形成に起因すると考えられる。したがって、蛋白質凝集の形成(分子量の増加)が起こり、H2Sが非常に低レベルとなるのである。
【0696】
他方、インキュベーション後に試料の熱処理を実施する場合には(WPI-C13~WPI-C17)、81℃で5分間の加熱によって、チオールおよびH2Sのレベルが最低となる(WPI-C17)。
【0697】
より低い温度でより長い加熱時間の加熱処理(例えば、60℃で30分間(WPI-C13))でも、遊離チオール量の減少が可能であり、したがって非酸化試料(WPI-C11)と比較してH2Sレベルも低下することが判明したのは興味深いことである。しかしながら、この温度と時間の組み合わせでは、81℃、5分間との比較では効率はかなり悪かった。
【0698】
本発明者らはまた、2:1のH2O2用量の場合には、より長い加熱時間(例えば、40℃で7時間)が好ましいものではないことを実証した(WPI-C18)。さらに、H2O2用量を8:1に増加させると、1時間のインキュベーション時間では充分ではない(WPI-C19)。この場合には、実施例1において示されるように、より長いインキュベーション時間(例えば、18時間)を必要とするのである。
【0699】
試料WPI-C13~WPI-C19のUHT前の分子量と固有粘度はいずれも、WPI-C11と比較して増加を示す。このことは、蛋白質分子間でのジスルフィド結合形成に起因する凝集体形成を示唆する。蛋白質溶液は依然として透明でその濁度は低く、14NTUである(試料WPI-C17についてのみ測定した)。

【0700】
【表18】
【0701】
結論
低用量の酸化剤を用いた場合には、6%乳清溶液において遊離チオールおよびH2Sおレベルを低下させることは可能であるが、40℃で短時間のインキュベーションが好ましい。インキュベーション後に蛋白質溶液を直接UHTに供する場合には、加熱工程は不要であり、不快臭気のない飲料としてUHT処理液体を摂取することが可能であった。しかし、上記のインキュベートした蛋白質溶液を粉末に加工する場合には、カタラーゼを不活性化するために加熱処理工程が必要となるが、81℃で5分間の加熱処理によって、その後のUHT処理において不快な臭気が発生しない酸化乳清蛋白質組成物が得られた。
本実施例の本発明の実施では、システイン酸化の選択性が強化され、それによって例えば、メチオニン酸化を軽減することを示唆する証拠を、本発明者らは見いだしている。
【0702】
実施例10:酸化剤のインサイチュ生成の利用
pH8.0、40℃における8時間のインキュベーションにわたって酸化剤を低用量で逐次添加し、その後に1回または2回の加熱工程を実施することにより、遊離チオールを除去し、したがって、不快臭気の低減が達成可能であることを、発明者らは実証した。
【0703】
1モル乳糖のラクトビオン酸への転化によって1モルの酸化剤(H2O2)を生成する酵素を利用すれば、酸化剤が得られる。溶液中に比較的高いレベルのH2O2が存在することによって、該酵素の活性を阻害することが可能である。したがって、反応の初期にH2O2が高濃度であることを回避するために、基質および酵素を経時的、段階的に添加するH2O2のインサイチュ生成を設計した。
【0704】
材料と方法
6%(w/w;蛋白質に関して)WPI-C溶液(WPI-C粉末に関する詳細を実施例4に示す)のpHを20℃で8.0となるように調整し(分析B)、40℃の水浴で470分間のインキュベーションを行った。下記のように、乳糖(α乳糖一水和物、Sigma-Aldrich、USA)および乳糖酸化酵素(LactoYIELD(登録商標)、Chr.Hansen A/S、デンマーク)をWPI-C溶液に段階的に加えた:
・ 0分の時点で、0.75:1(BLGと乳糖との間のモル比)の乳糖および1ml/Lの乳糖酸化酵素を加えた;
・ 180分の時点で0.25:1(BLGと乳糖との間のモル比)の乳糖を加えた;
・ 280分および400分の時点で、0.25:1(BLGと乳糖との間のモル比)の乳糖および0.5ml/Lの乳糖酸化酵素を加えた。
したがって、1.5:1(BLGと乳糖との間のモル比)に対応する総量の乳糖、および2ml/Lの乳糖酸化酵素を反応全体の時間にわたって添加した。
【0705】
乳糖酸化酵素を不活性化するために、470分の時点で上記試料を81℃の水浴にて2.5分間加熱した後、即座に氷上で2分間冷却した。
カタラーゼを添加して、室温で30分間反応させた。
カタラーゼの不活性化のために、上記の試料を再び81℃で2.5分間加熱し、即座に氷上で2分間冷却した。
次いで、上記試料を用いて異なる分析を行った(参照として非酸化非加熱WPI-C20試料を含めた)。UHT前の試料の遊離チオール、分子量および固有粘度を、それぞれ分析E、GおよびGにしたがって実施した。H2Sの検出には、分析Dを用いた。
【0706】
結果
40℃のインキュベーションで470分の時点における遊離チオールのレベルは、蛋白質g当たり25.6マイクロモルから蛋白質g当たり5.5マイクロモルへと良好に低下した。したがって、H2Sも非常に低く、官能閾値よりも低い0.5μMのレベルであった。試料WPI-C20と比較して、試料WPI-C21では分子量および固有粘度はいずれも増加した。このことは、実施例9の場合と同様な凝集体形成を示唆している。
【0707】
【表19】
【0708】
結論
酸化剤成分のインサイチュ生成は、H2O2の直接添加の代替法であり得る。第1のインキュベーション工程における低用量インサイチュ酸化剤の段階的生成によって、遊離チオールを酸化してスルフェン酸を生成させ、次いで実施例9の場合と同様のさらなる加熱工程においてジスルフィド架橋を形成させる。
【0709】
本実施例の本発明の実施では、システイン酸化の選択性が強化され、それによって例えば、メチオニン酸化の軽減を示唆する証拠を、本発明者らは見いだしている。
【0710】
実施例11:乳糖および乳糖酸化酵素の一括添加による酸化剤のインサイチュ生成の活用
実施例10に基づいて、本発明者らはまた、蛋白質溶液から遊離チオールを除去する酸化剤(H2O2)の生成のための、乳糖および乳糖酸化酵の一括添加の可能性についても調べた。
【0711】
材料と方法
6%w/w蛋白質になるようにWPI-C(WPI-C粉末の詳細については、実施例4に示す)を脱塩水と混合して、乳清蛋白質溶液を調製し、20℃でそのpHを8.0に調整した(分析B)。本実施例のpH調整には常に最少必要量の酸/塩基を用いることで、蛋白質濃度をごく僅かな変化のみに抑えた。乳清蛋白質溶液が40℃の温度に達するまで、15分間インキュベートした。次いで、総用量の乳糖(α乳糖一水和物、Sigma-Aldrich、USA)および乳糖酸化酵素(LactoYIELD(登録商標)、Chr.Hansen A/S、デンマーク;LactoYield識別番号91306;および17.2のセロビオース酸化酵素活性(LOXU/g))を一括してWPI-C溶液に添加した。添加した乳糖の量は、乳糖とBLG間のモル比1.5:1に対応するものであり、したがって生成H2O2とBLGの間の理論的モル比1.5:1に対応するものであった。乳糖酸化酵素は2mL/Lの量で用いた。次いで、溶液を40℃に360分間保ち、H2O2を生成させて遊離チオールを酸化させた。
【0712】
インキュベーションの終わりに、細いガラスチューブに試料を6ml取り、83℃で2.5分間加熱した後、即座に氷上で2分間冷却した(試料WPI-C23)。
【0713】
参照試料WPI-C22はWPI-Cの非酸化溶液(蛋白質量は6%w/w)であり、pHを8.0に調整した。WPI-C22では、83℃で2.5分間の加熱を実施しなかった。
【0714】
次いで、WPI-C22およびWPI-C23を異なる分析に供した。UHT前の試料の遊離チオール、分子量の分析は、それぞれ分析EおよびGにしたがって実施した。H2Sの検出は、UHTシミュレーション(実施例1にしたがう)から1時間以内に分析Dを用いて実施した。実施例1に記載のように、官能試験を実施した。
【0715】
結果
40℃でのインキュベーションの420分の時点における遊離チオールレベルは、酸化試料(WPI-C23)において蛋白質g当たり29.8マイクロモル(WPI-C22)から蛋白質g当たり7.3マイクロモルと良好に低下した。WPI-C23の模擬UHT処理(超高温処理)によって、H2Sが1μMと低レベルであることが判明し、H2Sの臭気は、室温における24時間の保存後では感知することができなかった。対照的に、WPI-C22の模擬UHT処理(超高温処理)では、官能検査で容易に感知される強い不快な卵様臭気の発生が認められた。
【0716】
試料WPI-C23においては、参照試料WPI-C22と比較して分子量増加が認められた。このことは、実施例9および10と同様に、熱処理に起因する凝集体形成を示唆している。

【0717】
【表20】
【0718】
参照試料WPI-C22は83℃で2.5分間の加熱処理を行っておらず、したがって、WPI-C22については、全く凝集が認められなかった(したがって、モル重量Mwの増加も認められなかった)。
【0719】
結論
乳糖(したがって、H2O2も)とBLGの間の比を低モル比で一括添加した乳糖および乳糖酸化酵素による酸化剤のインサイチュ生成は、遊離チオールを低下させるための実施可能なアプローチであり、その結果、UHT処理(超高温処理)時の不快臭気発生がごく低レベルにしか起こらないことが、本実施例によって実証された。
【0720】
実施例12:低用量の酸化剤を用いた酸化乳清蛋白質粉末の生産
本実施例で報告する実験において、発明者らは、実施例9に記載の酸化条件およびさらに取得した酸化乳清蛋白質流を濃縮して、噴霧乾燥させることを用いて酸化乳清蛋白質の粉末を調製することの実施可能性を示した。得られた修飾乳清蛋白質粉末では、再水和および中性pHでのUHT処理(超高温処理)後に、不快臭気が意外なほど低レベルでしか発生しなかった。
【0721】
そのような製品が長距離輸送される(水の輸送を回避する)場合にエネルギーを節約する目的、および保存中の微生物増殖リスクを減少させる目的においては、例えば、噴霧乾燥によって水を除去することは特に有利である。
【0722】
【表21】
【0723】
材料と方法
穏やかに撹拌しながら室温で30分間、水を用いてWPI-Cを水和させることによって、7.6%w/wの蛋白質を含むWPI-C(実施例4、表9に記載の特性)の溶液(250kg)を調製した(WPI-C24)。次いで、溶液を40℃に加熱し、KOH(4.5%)とNaOH(2.3%)の苛性アルカリ混合溶液を加えることにより、その溶液のpHを7.8(40℃)に調整した。H2O2とBLGとの間のモル比が1.9:1(おおよそリットル当たり150mgのH2O2に対応する)となるように、充分な量のH2O2を添加し、その溶液を穏やかに撹拌しながら40℃で60分間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、プレート型熱交換器で蛋白質溶液を85℃に加熱して、2分間その状態を保ち、次いで<10℃に冷却した。
【0724】
次いで、30分間撹拌しながら0.3MのHClを用いて、酸化WPIをpH7.1(20℃)に調整した。この時点で、試料(WPI-C25)から200mlを取り、以下の分析評価に供した:
分析Eによる遊離チオール基、実施例1にしたがうUHTシミュレーション、分析DによるH2S、分析Qによる濁度、分析Cによる粘度、および実施例1に記載の方法による官能性の分析評価である。アミノ酸および酸化アミノ酸の定量は、それぞれ分析F1およびF2によって実施した。
【0725】
2枚のAlfa Laval RO98pHt 3838/65膜を備え、10℃および30バールのROモード(最大差圧が1.1バール/エレメント)で操作されるパイロットスケールのMMS NF/ROユニットを用いて、上記残りの酸化WPI溶液を、10.5%w/wの蛋白質含量に対応するBrix14まで濃縮した。次いで、SPX Anhydroパイロットスケール噴霧乾燥器(温度:注入口で185℃/排出口で85℃)により、RO保持液を乾燥して粉末を得た(WPI-C26)。
【0726】
WPI-C26(上掲の表に示す様な組成)を穏やかに撹拌しながら室温で再水和して6%w/wの量の蛋白質を含むWPI-C26溶液を作成した。これを、以下の分析に供して特徴付けを行った:
分析Eによる遊離チオール基、実施例1にしたがってUHTシミュレーション、分析DによるH2Sの評価、実施例1の記載の方法による官能性。残存H2O2については分析Hにしたがって測定した。
【0727】
7.6%w/wの量の蛋白質を含む溶液を得るために、WPI-C26粉末の個別の試料を再水和し、アミノ酸および酸化アミノ酸についてそれぞれ分析F1およびF2により定量した。
【0728】
試料WPI-D24、WPI-D25およびWPI-D26のアミノ酸プロファイルを、EU 152/2009の方法の資料に基づき、Eurofins Vitamin Testing Denmark DJ041-1で測定した。
【0729】
システインとシスチンの総計レベルはeurofins分析によるものであり、ジスルフィド架橋(シスチン)のシステイン残基の量については、データを分析Eのデータと組み合わせて、さらにユニットg/100gを計算することにより算出した(L-システインの分子量を掛け算することにより重量濃度に変換する):
ジスルフィド中のCys = (1-(蛋白質100g当たりの遊離SH) / (蛋白質100g当たりの[Cys+シスチン]))*100%
【0730】
結果
表18に示すように、40℃で60分間のインキュベーションによる低用量H2O2の酸化では、出発材料(WPI-C24)における遊離チオール(29.6)から蛋白質g当たり1.7マイクロモルSH(WPI-C25)に低下して、実験室UHT処理(超高温処理)後のH2Sが非常に低量となり、官能評価では検出不可能であった。試料WPI-C26の特徴である蛋白質g当たり1.8マイクロモルSHでは、0.4μMのH2Sが生じたが、官能評価では感知不可能であった。
【0731】
低濁度および粘度は、試料WPI-C25について測定されたMwの値494kDaと非常に高い整合性があることを、本発明者らは見いだした。
【0732】
実施例12のプロセスの加熱工程において、遊離チオールおよびスルフェン酸によるジスルフィド結合の形成により、分子量が19kDaから494kDaに増加する。濃縮および乾燥工程によって分子量が僅かに増加する(WPI-C26では717kDaに増加)ことを、発明者らは発見した。
【0733】
【表22】
【0734】
アミノ酸分析の結果を図2に示すが、この結果は本発明によって可能となる遊離チオールの選択的酸化を実証している。酸化乳清蛋白質試料WPI-C25およびWPI-C26は、非酸化参照試料WPI-C24と実質的に同一のアミノ酸プロファイルを有している。
【0735】
表19に示すように、試料WPI-C24~WPI-C26におけるトリプトファンおよびメチオニンの分析においては、酸化後(WPI-C25)および乾燥後(WPI-C26)のこれらのアミノ酸のレベルに有意な変化を認めなかったが、このことは穏和で選択的な酸化プロセスであることを明確に示している。
【0736】
表19は、酸化後および乾燥後にはキヌレニン形成が起こらなかったことをさらに示している。さらに、試料WPI-C24~WPI-C26においてo-Tyr、DiTyr、およびDiOiaが痕跡程度にすら存在しないことを、発明者らは見いだした。
【0737】
総システイン(Cys+シスチン)のアミノ酸分析を合計することによって、ジスルフィド結合しているシステインが82.9%(WPI-D24)から酸化試料における99.1%(WPI-D25)および乾燥試料における97.4%(WPI-D26)に増加したことによって示されるように、本実施例の遊離チオール低下の主たる原因がジスルフィド結合形成であることを、発明者らは発見したのである(表19を参照のこと)。発明者らは、WPI-D25とWPI-D26との間のわずかな差が分析誤差内であると予想している。さらに、WPI-D26中の凝集体をWPI-D24の状態まで完全に減少させることが可能であり、これは凝集体がジスルフィド結合によって安定化すること(還元条件下および非還元性条件下で試料のSDS-PAGE分析を行うことによって確認される)を確認するものであることを、発明者らは発見した。
【0738】
最後に、残存過酸化物の分析によって、WPI-D25およびWPI-D26には、すでに添加されている過酸化物の残留が全くないということが、明らかになった。
【0739】
【表23】
【0740】
結論
低用量の酸化剤を短い反応時間で用いることによって、UHT処理(超高温処理)中に望ましくない臭気の生成しない酸化WPI粉末を生産することが可能である。上記の組み合わせでは、還元可能なジスルフィド結合の形態である多量のcysを特徴とし、遊離チオールとしてのシステインレベルが低く、したがってUHT処理(超高温処理)に供した場合に生成するH2Sのレベルが低い液状製品および粉末の両方が得られたのである。
【0741】
WPI-D25およびWPI-D26の製造に用いた酸化剤が低用量であったことから、アミノ酸プロファイルは原材料(WPI-D24)と同等であり、総システイン残基またはメチオニン残基の大幅な消失がないことが特に顕著であるアミノ酸プロファイルが得られ、また酸化物の検出も可能であった。
【0742】
WPI-D25においてもWPI-D26においても、添加した過酸化物の残存物の存在は検出できなかったが、このことは、本法においては過酸化物を酸化剤として用いることが可能であり、カタラーゼ添加の必要がなく、完全に消費されることを示唆している。
【0743】
実施例13:低用量および高温の利用
乳清蛋白質組成物の遊離チオールを良好に低下させ、したがってその後の熱処理時の不快臭気のレベルが低い乳清蛋白質飲料を得る目的において、低用量の酸化剤の使用は、直接的水蒸気圧入UHT処理(超高温処理)との組み合わせで効率的に用いることができることを、本発明者らは実証した。
【0744】
材料と方法
WPI-C粉末を脱塩水に溶解することによって、225kgのWPI-C溶液(6%w/wの量の蛋白質)を調製した。
【0745】
上記のWPI-C溶液を貯蔵タンクで撹拌しながら加熱マントルを用い40℃で加熱した。そのpHを7.8(40℃で測定)に調整して、WPI-C27を得た。
【0746】
20kgのWPI-C27を直接、143℃で4秒間の直接的水蒸気圧入(DSI)によるUHT処理(超高温処理)に供し(WPI-C28)、次いで、フラッシュ冷却で70℃に冷却し、次いで10℃に冷却した。WPI-C28のフラッシュ冷却のフラッシュ水を採取して、試料フラッシュ1とした。
【0747】
残りのWPI-C27を1.9:1のH2O2:bLGにより、40℃で60分間酸化した後、143℃で保持時間4秒間の直接的水蒸気圧入によるUHT処理(超高温処理)を行い、次いでフラッシュ冷却で70℃冷却し、次いで10℃に冷却して、酸化WPI-C29試料を得た。後の利用でH2S発生レベルが低い製品を生産する際に、低用量H2O2を高温処理(ここではDSI)と組み合わせる生産プロセスの実施可能性を調べることを目的として、WPI-C29のフラッシュ冷却のフラッシュ水を採取して試料フラッシュ2とした。
【0748】
採取後直ぐに、フラッシュ1およびフラッシュ2の試料1.0mLを、2mlのGCバイアル(Mikrolab no ML 33003VU)に入れ、アルミ蓋(Mikrolab ML 33032)か被せて、電子工作用圧着工具(クリンパー)(Thermo Scientific CRMA60180-ECRH11KI)を用いて圧着密閉した。試料フラッシュ1およびフラッシュ2のH2S含量を、分析Dにしたがって分析した。
【0749】
過酷な熱処理に供した場合であっても、酸化WPI-C29試料において発生する不快臭気は低レベルであることを実証するために、WPI-C27およびWPI-C29をさらに模擬UHT処理(超高温処理)に供した。試料WPI-C27、WPI-C28およびWPI-C29の遊離チオールの含量および分子量をそれぞれ、分析EおよびGにしたがって分析した。
【0750】
結果
本研究において、発明者らは、表20に示すような遊離チオール含量の効率的低下を実証するために、加熱工程として143℃で4秒間の直接的水蒸気圧入と組み合わせて低H2O2用量(H2O2:bLGが1.9:1)を用いた。
【0751】
直接的水蒸気圧入により、H2O2非存在下で原材料WPI-C27の遊離チオールの含量はわずかに低下し、WPI-C28が得られることを、表20は示している。しかし、WPI-C29の作成における、直接的水蒸気圧入と組み合わせた1.9:1のH2O2:bLGモル比による酸化では、蛋白質g当たり5.9マイクロモルのSHと遊離チオールの含量が大幅に低下した。
【0752】
さらに、WPI-C28およびWPI-C29の熱処理において形成された蛋白質凝集体の分子量は本質的に区別不能であることを実証したが、このことは、WPI-C29の処理における低用量のH2O2の存在が、全体的なWPI-Cの凝集傾向に影響するものではないことを示唆している。
【0753】
WPI-C28の処理において、本発明者らは、意外なことに、試料を加熱する143℃、4秒間の保持時間での直接的水蒸気圧入後に、熱処理の蒸発/濃縮工程中に発生したフラッシュ水(フラッシュ1)からの卵臭に気づいた。実際、採取したフラッシュ水(フラッシュ1)中のH2S濃度が4.3μMであることが示され、また操作者が容易に感知し得るものであった。
【0754】
対照的に、WPI-C29試料の処理中には、本発明者らが卵臭を感知することはなく、またH2S測定によって、採取したフラッシュ水(フラッシュ2)のH2Sは0.1μMと非常に低レベルであることが確認された。このように、意外なことにも、製造プロセスにおいて熱処理で生成したH2Sレベルに操作者が曝露されることを減らすために、低用量のH2O2の使用は本質的に有益であり得ることを、本発明者らは発見したのである。
【0755】
模擬UHT処理に供した試料WPI-C27およびWPI-C29のH2S含量は、それぞれ試料中で5.7μMおよび0.3μMであることが判明した。上記のレベルは、処理における高温の利用と組み合わせた低用量H2O2による酸化によって、飲料の最終的な調製において無/低H2Sレベルの飲料組成物の製造が可能となることを明確に示している。
【0756】
【表24】
【0757】
結論
乳清蛋白質組成物の遊離チオール含量を低下させるため、例えば、1.9:1のH2O2:bLGモル比を用いた乳清蛋白質の酸化を、UHT型の熱処理と組み合わせて用いることが可能であることを、本発明者らは実証した。
【0758】
乳清の処理に低用量H2O2を利用することによって、UHT設備の操作者に対するH2S曝露を大幅に低下させることができる。
【0759】
WPI-C29の遊離チオール基含量は低いため、第2のUHT処理に供した場合にも、望ましくない臭気は発生しないであろう。
【0760】
実施例14:慢性腎臓疾患の患者に好適な酸化乳清蛋白質飲料を生産するための低用量H2O2の利用
蛋白質の豊富な多くの食品(肉、鶏肉、乳製品)には非常によく含まれる有機リンの除去が、慢性腎臓疾患患者では腎機能の不全が原因で非効率的となる。したがって、リンの少ない乳清蛋白質組成物を提供することは特に有益であろう。本実施例は、不快臭気が低レベルである(または不快臭気が全くない)中性pHの栄養飲料を生産するために、BLG単離物を選択的な低用量H2O2酸化に供すること可能であることを実証している。そのような飲料は、脂質類を添加する場合にも、脂質類を添加しない場合にも生産することができる。
【0761】
材料と方法
本実施例の飲料組成物の調製において、表21に記載の特性を有するWPI-Dを用いた。
【0762】
【表25】
【0763】
30分間穏やかに撹拌しながら粉末を脱塩水に溶解して、3リットルのWPI-D蛋白質溶液(6%蛋白質w/w)を調製した。3MのNaOHを用いて20℃でそのpHを8.0に調整し、溶液を少量の分注量に分けて40℃で平衡化した。H2O2とbLGとの間の最終含量モル比が2:1となるように、3%過酸化水素を添加し、酸化させる蛋白質溶液を40℃で1時間インキュベートした。上記の酸化させる溶液を83℃で2.5分間の保持時間、OMVE HT122ベンチトップUHTシステムを用いて加熱処理し、次いで20℃に冷却した。
【0764】
試料WPI-D5を得るために、N2ガスを用い3バールのTMPで、5kDaの限外濾過膜を備えた200mLのAmicon撹拌セルを用いることによって酸化蛋白質溶液を7.8%に濃縮した。蛋白質含量は、PAL-α小型屈折計(ATAGO)を用いて推定し、分析Aで確認を行った。
【0765】
30分間穏やかに撹拌しながらWPI-Dを脱塩水に溶解する(さらなる処理はなし)ことにより、7.8%w/w蛋白質を含む参照溶液(WPI-D6)を調製した。
【0766】
WPI-D5溶液およびWPI-D6溶液の遊離チオールの含量を、分析Eにしたがって評価した。
【0767】
表22に記載の成分を混合することにより、脂質含有および脂質不含の例示的飲料組成物(BEV-D1、BEV-D2、BEV-D3、およびBEV-D4)を調製した。蛋白質および脂質構成成分は、予め個々に水浴で40℃に平衡化して、脂質相には乳化剤を添加した。
【0768】
次いで、上記の予め平衡化した蛋白質溶液を、脂質相または脱塩水と混合して、ultra-turraxを用いて手短に撹拌し、最終的にGEA Pandaホモジナイザーを用いて200バールでホモジナイズし、6%w/wの蛋白質含量を有する表22の飲料組成物を作成した。飲料組成物を、実施例1にしたがって模擬UHT処理に供し、UHTシミュレーションの翌日に分析Dを用いてH2Sを測定した。
【0769】
【表26】
【0770】
結果
最小リン含量の蛋白質供給源を必要とする慢性腎臓疾患患者のための栄養飲料として、特に適したものにする低リン含量を特徴とするWPI-Dから、83℃の加熱処理と組み合わせた低H2O2用量を用いて、酸化WPI-D5を生産することの実施可能性が、本実施例によって示されたのである。
【0771】
上記の酸化プロセスは遊離チオール量を低下させ、表23に示されるようなWPI-D5の酸化後には、WPI-D6の蛋白質g当たり54.2マイクロモルSHから9.2マイクロモルSHに低下することが判明した。
【0772】
脂質含有または脂質不含の栄養飲料組成物を、模擬UHT処理に供した場合に、非酸化WPI-D6蛋白質を含む試料BEV-D1およびBEV-D3は、官能閾値を大幅に超える約10μM超のレベルでH2Sを生成した。対照的に、WPI-D5蛋白質を含む飲料組成物BEV-D2およびBEV-D4は<0.7μMのH2Sを生成したが、官能検査で感知されるレベルよりも低いものであった。
【0773】
【表27】
【0774】
結論
2:1のH2O2:bLGを用いた酸化によって、10%w/wの脂質を含む6%乳清蛋白質飲料を生産するWPI-Dの利用を実証した。WPI-Dのリンが低レベルであることによって、そのような飲料が、特に慢性腎臓疾患に罹患している患者に有用なものとなるのである。
【0775】
実施例15:遊離チオールの露出のための高圧の利用
本実施例において、本発明者らは、除圧後に判定した場合に主要なチオール含有乳清蛋白質(bLG)の強度変性/凝集の誘導には本質的に不充分である中圧での酸化条件に、蛋白質組成物を供することにより、WPI-Dの遊離チオールを酸化することを目的とした。
【0776】
bLG中の遊離チオールの部分酸化によって、新規ジスルフィド結合の形成を達成するコンフォメーションの自由度が存在するのであれば、遊離チオールの酸化によって生成したスルフェン酸と残存する非酸化遊離チオールとの間でジスルフィド結合の形成が可能となることを、発明者らは示唆している。本実施例において、遊離チオールを加圧下でH2O2に曝露した後、溶液を85℃で5分間加熱することにより、上記のコンフォメーション自由度を達成した。
【0777】
方法と材料
室温で穏やかに撹拌しながら、WPI-Dを再水和して6%とし、次いで、20℃で2MのNaOHを用いてpHを8.0に調整した(WPI-D7~WPI-D13)。
【0778】
H2O2:bLGのモル比が2:1になるようにH2O2を試料WPI-D8~WPI-D10ならびにWPI-D12およびWPI-D13に添加した。WPI-D7およびWPI-D11にはH2O2を全く加えなかった。
【0779】
WPI-D13を例外として、各試料32mLをナルゲンHDPEプラスチックボトルに入れ、蓋をして密閉した。上記のボトルを、静水力学的液状媒体を含む圧力容器中に浸漬し、表24に記載のように、20~25℃にてQFK-6高圧ユニット(Avure Technoliges AB、Vesteras、スウェーデン)を用い50または100バールで30分間または60分間加圧した。
【0780】
試料WPI-D8~WPI-D13(WPI-D9を除く)を高圧処理から直接取り出し、15mLの試料を20mLのねじ蓋付きDuran GL18ガラス試薬容器に移し、86℃の湯浴に5分間に漬けた。加熱後に、氷/水浴で試料を冷却した。
【0781】
全試料の遊離チオール含量を分析Eにしたがって測定した。選択した試料を模擬UHT処理(超高温処理)に供し、実施例1にしたがって官能評価、および実施例DにしたがってH2Sの測定を行った。
【0782】
結果
bLG中の遊離チオールへのアクセスを可能にする中圧の使用について評価を行った。
【0783】
H2O2非存在下85℃で5分間の加熱を伴うpH8.0での高圧処理(WPI-D7)では、模擬UHT後の不快臭気が高レベルとなり、発明者らによって「卵のような」臭気としても感知される。
【0784】
H2O2存在下pH8.0における高圧処理(WPI-D12)では、遊離チオールのレベルが蛋白質g当たり約23マイクロモルのSHに低下、あるいは出発材料のちょうど半分未満となる(理論的には蛋白質g当たり54マイクロモルのSH)。85℃で5分間の加熱処理と組み合わせた場合には、得られた遊離チオールのレベルが、WPI-D13では蛋白質g当たり6.8マイクロモルのSH;WPI-D8では蛋白質g当たり5.9マイクロモルのSH;およびWPI-D10では蛋白質g当たり3.9マイクロモルのSHとなった。試料WPI-D8およびWPI-D13の模擬UHT処理(超高温処理)後の不快な臭気の測定によって、チオール減少の結果、不快な臭気が低レベル(0.5μMおよび0.4μMのH2S)となり、官能(感知)が5未満となるという上述の観察が確認された。2:1のH2O2:bLG存在下において、圧力処理を伴わない85℃で5分間の加熱処理を試料WPI-D9に加えた場合には、やはり遊離チオールのレベルは低下したが、僅かに効率が悪く、同定した遊離チオールのレベルは、蛋白質g当たり9マイクロモルのSHであった。
【0785】
【表28】
【0786】
結論
遊離チオールを露出させて酸化を可能にするために、代替の蛋白質変性手段を用いることができることを、本実施例は実証している。ここでは中程度に高い圧力と組み合わせており、H2O2:bLGが2:1である低用量の酸化剤およびその後の熱処理は、遊離チオールのレベルを充分に低下させ、その度合いは、UHT処理(超高温処理)に供した場合に不快な臭気が感知され測定されるが非常に低いレベルであった。
【0787】
実施例16:低用量および短いインキュベーション時間の利用
本実施例において、意外なことに、非常に短いインキュベーション時間での高温酸化によって酸化WPIを生産することが可能であることを、発明者らは示した。
【0788】
材料と方法
6%蛋白質(w/w)WPI溶液(WPI-C)を、40℃でpH7.8に調整し、おおよそ10℃に冷却した。次いで、H2O2:bLGモル比が1.9:1となるように、H2O2を上記のWPI溶液に添加し、1分間撹拌した。その後直ぐに、高温酸化を実施するために、WPI溶液をプレート型熱交換器で85℃に加熱し(保持時間は2分間)、次いで<10℃に冷却した(WPI-C30)。
【0789】
WPI-C30から飲料を生産した(液状酸化WPI溶液)。UHT前に、6%酸化WPI溶液のpHを、1%HClでpH7.0(22℃)に調整した。80L/時間の水道水流、20L/時間の産物流、70℃の予備加熱、その後の143℃で20秒間の加熱の操作を伴うプレート型熱交換器(PHE)(HT320-20、OMVE、オランダ)を用いて、UHT熱処理を行った。排水口の位置で加熱処理飲料を10℃に冷却して、100mlの滅菌プラスチックボトルに注いで、さらなる分析のために直ぐに密閉した。さらに、H2Sレベル分析(分析D)のための試料については、UHTの排水口の部位で採取した。その際、実施例1に記載のように、1mlの試料を2mlのガラスバイアルに注いで直ぐに蓋で圧着密閉した。
【0790】
結果
10℃でH2O2(1.9:1)を添加し、85℃で2分間の短いインキュベーション時間による高温酸化を実施することによって、遊離チオール含量を93%低下させ得ることが、本実験によって示された。これにより、透明な(9.2NTU)UHT飲料中には非常に低レベル(0.2μM)のH2Sしか含まれていないことが判明した。
【0791】
【表29】
【0792】
結論
65℃を超える温度で短い時間、蛋白質を低レベルのH2O2と共にインキュベートすることにより、処理時間を短縮し、エネルギー使用を削減することが可能であることを、発明者らは発見した。取得した酸化乳清蛋白質組成物は、飲料として直接的に用いることができ、例えば、高温酸化直後にボトル詰めをするのであってもよく、あるいはそれ自体を乾燥させるのであってもよく、または濃縮し、次いで乾燥させる、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させるのであってもよい。

図1
【図
【図
【国際調査報告】