(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電気回転変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/18 20060101AFI20241003BHJP
H02K 19/26 20060101ALI20241003BHJP
H02K 19/36 20060101ALI20241003BHJP
H01F 27/10 20060101ALI20241003BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F38/18 Q
H02K19/26 Z
H02K19/36 B
H01F27/10
H01F27/28 176
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521275
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022078213
(87)【国際公開番号】W WO2023061992
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021211474.1
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オスドバ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
5H619
【Fターム(参考)】
5E043AB07
5E043DA06
5E050CA07
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB13
5H619PP36
(57)【要約】
本発明は、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器(1)に関し、回転変圧器は、1次コイル(3)を備えた回転変圧器固定子(2)と、2次コイル(5)を備えた回転変圧器回転子(4)を有する。変圧器電圧を2次コイル(5)に誘導するために、動作中、1次コイル(3)及び2次コイル(5)は相互作用する。回転変圧器(1)の効率の向上は、コイル(3,5)のうちの少なくとも1つは導電体(20)を有し、前記導電体を通って、回転変圧器(1)を冷却するための流体の流路(21)が導かれることで達成される。本発明はさらに、そのような回転変圧器(1)を備えた他励式電気同期機(100)、そのような他励式電気同期機(100)を備えた自動車(200)、及び走行用モーター(120)としてのそのような同期機(100)の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器(1)であって、
前記回転変圧器は、回転変圧器固定子(2)を備え、前記回転変圧器固定子は、変圧器1次コイル(3)を有し、
前記回転変圧器は、回転変圧器回転子(4)を備え、前記回転変圧器回転子は、動作中に、軸方向に延びている回転軸(90)の周りを前記回転変圧器固定子(2)に対して回転し、回転変圧器回転子は、変圧器2次コイル(5)を有し、
前記変圧器2次コイル(5)及び前記変圧器1次コイル(3)は、前記変圧器2次コイル(5)において変圧器電圧を発生するために、動作中に、誘導的に相互作用し、
前記コイル(3,5)のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの導電体(20)を有し、前記導電体を通って流体の流路(21)が導かれ、
動作中、流体は前記流路(21)に沿って流れて、前記回転変圧器(1)を冷却する、
電気回転変圧器(1)。
【請求項2】
前記変圧器の1次コイル(3)はフラットコイル(11)として構成され、少なくとも1つの前記導電体(20)を有することを特徴とする、
請求項1に記載の回転変圧器。
【請求項3】
前記回転変圧器(1)は、前記変圧器1次コイル(3)及び前記変圧器2次コイル(5)が配置された磁心(12)を有し、
前記少なくとも1つの導電体(20)のうちの少なくとも1つは、前記磁心(12)に配置されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の回転変圧器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導電体(20)のうちの少なくとも1つは、中心空洞(22)を有し、前記中心空洞を通って、前記流路(21)が導かれることを特徴とする、
請求項1-3のいずれか1項に記載の回転変圧器。
【請求項5】
前記空洞(22)に収容されたチャネル本体(23)が、前記流路(21)の境界を規定することを特徴とする、
請求項4に記載の回転変圧器。
【請求項6】
前記チャネル本体(23)は、可撓管(24)として構成されることを特徴とする、
請求項5に記載の回転変圧器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導電体(20)のうちの少なくとも1つは、編組線(28)として構成されることを特徴とする、
請求項1-6のいずれか1項に記載の回転変圧器。
【請求項8】
前記編組線(28)は、個々のワイヤ(25)を有し、前記個々のワイヤ(20)のうちの少なくとも一部は、電気絶縁性のケーシング(26)、特にラッカー層(27)に収容されることを特徴とする、
請求項7に記載の回転変圧器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導電体(20)のうちの少なくとも1つは、中空導体(32)として構成されることを特徴とする、
請求項1-8のいずれか1項に記載の回転変圧器。
【請求項10】
前記回転変圧器(1)は、前記流体を前記編組線(20)に入れるための入口(29)と、前記流体を前記編組線(20)の少なくとも1つから排出するための出口(30)とを有することを特徴とする、
請求項1-8のいずれか1項に記載の回転変圧器。
【請求項11】
他励式電気同期機(100)であって、
前記他励式電気同期機は、同期機回転子(101)を備え、前記同期機回転子は、回転子シャフト(102)及び同期機回転子コイル(103)を有し、前記同期機回転子は、前記回転子シャフト(102)上に回転方向に固定されて設けられ、前記回転子コイルは、動作中に回転子磁界を発生し、
前記他励式電気同期機は、同期機固定子(104)を備え、前記同期機固定子は、前記同期機固定子(104)に対して固定された同期機固定子コイル(105)を有し、前記同期機回転子(101)が、動作中に軸方向の回転軸(90)の周りを回転するように、前記同期機固定子コイルは、前記回転子磁界と相互作用する固定子磁界を、動作中に発生し、
前記他励式電気同期機は、請求項1-10のいずれか1項に記載の回転変圧器(1)を備え、
前記回転変圧器固定子(2)は、前記同期機固定子(104)に対して固定され、
前記回転変圧器回転子(4)は、前記同期機回転子(101)上に回転方向に固定されて配置され、
前記回転子磁界を発生するための直流電圧が動作中に前記同期機回転子コイル(103)に供給されるように、前記同期機回転子コイル(103)は、前記変圧器2次コイル(5)に接続された、
他励式電気同期機(100)。
【請求項12】
請求項11に記載の他励式電気同期機(100)及び冷却回路(203)を備えた自動車(200)であって、
流体が前記流路(21)に沿って循環するように前記同期機(100)が前記冷却回路に組み込まれている、
自動車(200)。
【請求項13】
動作中、前記同期機(100)が、走行用モーター(120)として、前記自動車(200)を駆動することを特徴とする、
請求項12に記載の自動車。
【請求項14】
走行用モーター(120)としての、請求項11に記載の他励式電気同期機(100)の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に他励式電気同期機における、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器に関する。本発明はさらに、そのような回転変圧器を備えた他励式電気同期機に関する。さらに、本発明は、そのような同期機を備えた自動車と、走行用モーターとしてのそのような同期機の使用方法に関する。
【0002】
電気回転変圧器は、誘導エネルギー伝送に使用される。この目的のために、回転変圧器は、1次コイル及び2次コイルを有する。1次コイルは、通常は固定されているが、2次コイルは、1次コイルに対して可動、具体的には回転可能である。この目的のために、そのような回転変圧器は、通常、固定された固定子と、回転軸の周りで固定子に対して回転可能な回転子とを有する。回転変圧器の固定子は、以下で回転変圧器固定子とも呼ばれ、通常は1次コイルを有し、それは以下で、変圧器1次コイルとも呼ばれる。回転変圧器の回転子は、以下で回転変圧器回転子とも呼ばれ、通常は2次コイルを有し、それは以下で、変圧器2次コイルとも呼ばれる。回転変圧器の動作中、変圧器1次コイルは、変圧器2次コイルに電圧を誘導する。そうすることで、動作中に、熱が発生する可能性がある。
【0003】
そのような回転変圧器は、特に他励式電気同期機において使用される。他励式電気同期機は、固定された固定子と、動作中に回転軸の周りで固定子に対して回転する回転子とを有し、それらは以下で、同期機固定子及び同期機回転子とも呼ばれる。ここで、同期機回転子の回転子磁界と、同期機固定子の固定子磁界とは、相互作用する。他励式電気同期機では、必要とされる、同期機回転子の回転子磁界は他励式である。この目的のために、同期機回転子は、一般に、磁界を発生するための直流電圧が供給される回転子コイルを有する。回転子コイルへの供給は、回転変圧器によって行われ得る。
【0004】
回転変圧器を備えたそのような同期機は、例えばEP2 869 316 B1から既知である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、前記の序文で記載された種類の回転変圧器、そのような回転変圧器を備えた他励式電気同期機、及びそのような同期機を備えた自動車に対する、既知の解決策を示す先行技術からの欠点を排除する実施形態であって、改良された、又は少なくとも異なる実施形態を示すという課題に関する。特に、本発明は、回転変圧器、他励式電気同期機、及び自動車に対する、効率の向上によって特徴づけられる実施形態を示すという課題に関する。
【0006】
この問題は、独立請求項の主題によって、本発明に従って解決される。好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、したがって、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器の少なくとも1つのコイルに、それを通って、コイル、ひいては回転変圧器を冷却するための流体の流路が導かれる導電体を設けるという概念に基づく。よって、回転変圧器の動作中に発生する熱の放散がもたらされる。したがって、熱による回転変圧器への障害及び損傷が、防止されるか、又は少なくとも低減される。さらに、このようにして、回転変圧器の効率の向上がもたらされる。導電体による、コイルの冷却、ひいては回転変圧器の冷却によって、さらに、回転変圧器のコンパクトな構成及び冷却の効率の向上がもたらされる。
【0008】
本発明の概念によれば、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器は、1次コイル及び2次コイルを有し、それらは以下で、変圧器1次コイル及び変圧器2次コイルとも呼ばれる。さらに、回転変圧器は固定された固定子を有し、それは以下で回転変圧器固定子とも呼ばれ、回転変圧器は回転子を有し、それは以下で回転変圧器回転子とも呼ばれる。回転変圧器固定子は、変圧器1次コイルを有する。回転変圧器回転子は、変圧器2次コイルを有する。回転変圧器回転子は、軸方向に延びている回転軸の周りを、回転変圧器固定子に対して回転可能である。動作中、回転変圧器回転子は、よって、回転軸の周りを、回転変圧器固定子に対して回転する。誘導エネルギー伝送のために、例えば動作中に、変圧器1次コイル及び変圧器2次コイルは、変圧器2次コイルにおいて電圧を発生するために、誘導的に相互作用し、前記電圧は、以下で変圧器電圧とも呼ばれる。コイルのうちの少なくとも1つ、よって、変圧器1次コイル及び/又は変圧器2次コイルは、少なくとも1つの導電体を有し、前記導電体を通って流体の流路が導かれる。ここで、動作中、流体は、流路に沿って流れるので、流体はコイルを冷却し、その結果回転変圧器を冷却する。
【0009】
ここで示される方向は、軸方向に延びている回転軸に関する。したがって、「軸方向」とは、回転軸に対して平行であり、特に同軸である。さらに、「半径方向」とは、回転軸に対して横方向である。
【0010】
好適には、変圧器2次コイル及び変圧器1次コイルは、軸方向に対向して配置される。したがって、変圧器2次コイルにおける、変圧器電圧の、より効率的な誘導が発生する。
【0011】
少なくとも1つの導電体のうちの少なくとも1つは、中空のように、よって中空導体として構成できるので、流路が導かれる空洞が通過するようにその空洞を取り囲むことができる。
【0012】
少なくとも1つの導電体のうちの少なくとも1つは、流路が導かれる編組線(ブレイド)として構成され得る。導電性のために、編組線は、複数の導電性ワイヤ、よって個々のワイヤを有する。
【0013】
好適には、編組線は、個々のワイヤが配置される外側ケーシングを有し、前記ケーシングを通って流路が導かれる。外側ケーシングは、好適には電気絶縁性であり、例えば、電気絶縁性のプラスチックである。
【0014】
導電体、具体的には編組線は、好適には、流路が導かれる空洞を有する。空洞は、好ましくは、編組線の外側ケーシング内を通る。
【0015】
空洞は、好ましくは、導電体の中心に、具体的には編組線の中心に形成される。これによって、編組線の、ひいては回転変圧器の冷却性能が均一になり、冷却性能が向上する。
【0016】
関連付けられたコイルの冷却が流体によって行われる限り、流体は、基本的には任意の流体でよい。流体は、気体又は液体であってもよい。
【0017】
流路は、好ましくは、個々のワイヤに対して電気的にシールされる。
【0018】
基本的には、変圧器1次コイルと変圧器2次コイルとの両方に、少なくとも1つのそのような導電体、つまり内部を通って流路が導かれる導電体を設けることが考えられる。
【0019】
好適な実施形態では、変圧器1次コイルは、少なくとも1つのそのような導電体を有し、好ましくは、フラットコイルとして構成される。その少なくとも1つの導電体は、よって、回転変圧器内で固定される。その結果、回転変圧器の構成の簡素化及び冷却性能の向上がもたらされる。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つのそのような導電体は、変圧器1次コイルを形成する。
【0021】
変圧器2次コイルがそのような導電体を有するとき、少なくとも1つの導電体が、好ましくはプラスチックから作られたキャリアに埋め込まれ、及び/又は収容されることが好ましい。これによって、回転軸の周りで回転する時の、変圧器2次コイルの機械的安定性が向上し、回転速度の増大を可能にする。
【0022】
好適には、回転変圧器回転子は、変圧器2次コイルに設けられた導体板を有する。回転変圧器回転子の簡単な構成と、変圧器2次コイルの、簡素かつ正確な取付及び配置とが、このようにしてもたらされる。
【0023】
変圧器2次コイルが、導体板の、少なくとも1つの導体トラックを有する実施形態は好ましく、前記導体トラックは、以下、変圧器導体トラックとも呼ばれる。これによって、回転変圧器の、構成及び製造が単純になる。さらに、変圧器2次コイルは、このように単純化された方法で構成され、及び/又は導体板によって機械的に安定化される。
【0024】
ここで、変圧器2次コイルは、導体板の少なくとも1つの変圧器導体トラックによって形成されて、導体板の少なくとも1つの変圧器導体トラックからなると特に好ましい。
【0025】
導体板は、好適には、軸方向に平らに構成される。導体板は、よって、回転軸の周りの回転速度の増加にも適している。
【0026】
特に好ましくは、導体板は、軸方向上面図において円形であり、例えば、円板又はリング状として構成される。このようにして、特に、導体板によって引き起こされる不安定さは、防止されるか又は少なくとも低減される。
【0027】
それぞれの少なくとも1つの変圧器導体トラックは、導体板上に配置され得て外部から視覚的に認識することができるか、又は導体板内に囲まれ得て外部から視覚的に認識することができない。もちろん、少なくとも1つの導体経路が導体板上に配置されている実施形態、及び少なくとも1つの導体経路が導体板内に配置されている実施形態の両方が可能である。したがって、導体板は、特に当業者には「多層回路板」として知られている導体板として構成されてもよい。
【0028】
変圧器2次コイルは、軸方向に互いに間隔を空けて配置された、少なくとも2つの変圧器導体トラックを有し得る。変圧器導体トラックは、好ましくは、ここで互いに平行に延びる。
【0029】
好適には、変圧器2次コイルは、回転軸を取り囲んで、具体的には螺旋状のように延びる。特に、変圧器2次コイルは、平坦な巻線として構成される。
【0030】
変圧器コイルが、回転変圧器に対して固定された磁心に配置された実施形態は、好適であると考えられる。変圧器コイルの、互いの相互誘導作用の向上は、このようにしてもたらされる。磁心は、以下で変圧器磁心とも呼ばれ、基本的には、望まれる任意の方法で構成され得る。特に、磁心は、フェライト体に関する。
【0031】
変圧器磁心は、好適には、変圧器1次コイルのための軸方向に開口した凹部を有する。
【0032】
好適には、変圧器磁心は半径方向に開口しており、その結果、変圧器2次コイル、特に導体板は、変圧器磁心を半径方向に通り、変圧器磁心において回転可能である。
【0033】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの導電体のうちの少なくとも1つは、磁心に配置される。回転変圧器は、したがって、簡素化された方法で製造され得て、同時に、磁心は、少なくとも1つの導電体によって冷却され得る。さらに、このようにして、少なくとも1つの導電体と磁心の、好適な熱伝達接続がもたらされる。したがって、回転変圧器は、より一層及び/又はより効率的に冷却される。
【0034】
変圧器1次コイルが、少なくとも1つのそのような導電体、具体的には少なくとも1つのそのような編組線を有する実施形態、及び少なくとも1つの導電体が、磁心に配置、具体的には収容されている実施形態は、特に好適である。
【0035】
好適な実施形態では、チャネル本体は空洞に収容され、前記チャネル本体は、流路の境界を規定する。よって、具体的には、流体、及び編組線のそれぞれのワイヤの間、又はそれぞれの流体、及び中空導体の間で、流体分離が達成される。
【0036】
チャネル本体は、基本的には、任意の所望の方法で構成され得る。
【0037】
チャネル本体は、好ましくは、電気的に絶縁している。よって、チャネル本体によって、編組線のそれぞれのワイヤから、又は中空導体それぞれからの流体の電気的分離がもたらされる。特に、チャネル本体は、プラスチックから製造される。
【0038】
チャネル本体が可撓管として構成されている実施形態は、好適であると考えられる。編組線又はそれぞれ中空導体全体は、よって、容易に変形され得る。したがって、このようにして、関連付けられたコイルは、簡略化された正確な方法で製造され得る。
【0039】
基本的に、編組線のそれぞれのワイヤは、編組線内で互いに電気的に接触され得て、具体的には、互いに対接触して位置し得る。好ましくは、この場合、関連付けられたコイルは、低い周波数において動作させることができる。
【0040】
好適には、編組線の個々のワイヤの少なくとも一部は、電気絶縁性のケーシングに収容される。編組線が外側ケーシングを有しているとき、ケーシングは外側ケーシングに配置される。好ましくは、個々のワイヤのそれぞれは、関連付けられたそのような電気絶縁性のケーシングに収容される。ここで、関連付けられたコイルの動作周波数が増加するにつれて、編組線が使用されるようになる。具体的には、編組線は、いわゆる「高い周波数用の編組線」のような編組線に関する。編組線内の個々のワイヤの電気的相互作用は、よって、防止又は少なくとも低減される。その結果、変圧器電圧の、より効率的な誘導がもたらされる。
【0041】
それぞれのケーシングは、電気的に絶縁している限り、基本的には、任意の所望の方法で構成され得る。
【0042】
ケーシングのうちの少なくとも1つ、好適にはそれぞれのケーシングは、関連付けられた個々のワイヤの少なくとも1つに塗布されたラッカー層である実施形態が好ましい。編組線は、このようにして簡単な方法で製造され得て、個々のワイヤを、信頼度の高い方法で互いに電気的に絶縁できる。
【0043】
回転変圧器は、好適には、回転変圧器に流体を供給するための流体接続部を有する。したがって、回転変圧器は、好適には、流体を回転変圧器に入れるための入口と、流体を回転変圧器から排出するための出口とを有する。流体が少なくとも1つの導電体を通って流路に沿って流れるように、接続部は、少なくとも1つの導電体に、流体的に接続される。
【0044】
その代わりに、またはそれに加えて、少なくとも1つの導電体のうちの少なくとも1つが回転変圧器から突出するようにして流体を供給することが考えられる。
【0045】
回転変圧器は、変圧器2次コイルの下流に、整流回路を有し得る。変圧器2次コイルに交流電圧として誘導される変圧器電圧は、よって、直流電圧に変換され得て、適用される用途に利用可能にすることができる。
【0046】
回転変圧器は、変圧器1次コイルの上流に、インバーター回路を有し得る。変圧器1次コイルの動作に必要とされる交流電圧は、よって、直流電圧を提供する電力源から発生し得る。
【0047】
回転変圧器は、好ましくは、誘導エネルギー伝送のために、他励式電気同期機、具体的には、他励式電気同期モーターにおいて使用される。
【0048】
同期機は、回転子シャフトを備えた回転子を有し、前記回転子は、以下で同期機回転子とも呼ばれる。同期機回転子は、回転子シャフト上に回転方向に固定されて設けられたコイルを有し、前記コイルは、以下で同期機回転子コイルとも呼ばれる。動作中、直流電圧が供給されると、同期機回転子コイルは、以下で回転子磁界とも呼ばれる磁界を発生する。同期機は、さらに、固定された固定子を有し、それは以下で、同期機固定子とも呼ばれる。同期機固定子は、以下で同期機固定子コイルとも呼ばれるコイルを有する。動作中、同期機固定子コイルは、以下で固定子磁界とも呼ばれる磁界を発生する。同期機の動作中、同期機回転子が軸方向の回転軸の周りを回転するように、固定子磁界は、回転子磁界と相互作用する。ここで、回転変圧器固定子は、同期機固定子に対して固定される。さらに、回転変圧器回転子は、同期機回転子上に回転方向に固定されて配置される。具体的には、回転変圧器回転子は、回転子シャフトに回転方向に固定されて接続される。動作中、同期機回転子コイルに回転子磁界を発生するための直流電圧が供給されるように、同期機回転子コイルは、変圧器2次コイルに接続される。この目的のために、好適には、整流回路が、変圧器2次コイルと同期機回転子コイルとの間に接続され、前記整流回路は、上述のように、回転変圧器、具体的には回転変圧器回転子の構成要素となり得る。
【0049】
好ましくは、回転変圧器、具体的には回転変圧器回転子は、同期機回転子の前面において、軸方向に配置される。特に好ましくは、回転変圧器は、同期機回転子コイルに対して及び/又は同期機固定子コイルに対して、間隔を空けて配置される。よって、回転変圧器と、回転子磁界及び/又は固定子磁界との間の、望まれない相互作用の防止又は少なくとも低減がもたらされる。
【0050】
同期機は、基本的には、任意の所望の用途で使用され得る。
【0051】
特に、同期機は、走行用モーターとして使用され得る。
【0052】
同期機は、例えばバルブのような調節要素を調節するためのサーボモーターとしても使用され得る。
【0053】
同期機は、電力源としてバッテリーを備え得る自動車で、特に使用される。同期機は、ここで、特に自動車の駆動に役立つので、自動車の走行用モーターとなる。
【0054】
同期機、具体的には回転変圧器は、好適には、冷却回路に組み込まれ、前記冷却回路を通って、動作中に流体が循環する。これは、流路が回転変圧器及び冷却回路を通って導かれ、その結果回転変圧器が流体によって冷却されることを意味する。
【0055】
特に、冷却回路は、例えば自動車のような、関連する用途の一部である。関連付けられた用途では、冷却回路は、さらなる要素を冷却するために使用され得る。
【0056】
冷却回路は、好適には、冷却回路を通って流体を搬送するための搬送装置と、流体を冷却するための冷却器とを有する。
【0057】
回転変圧器に加えて、他励式電気同期機、自動車、及び走行用モーターとしての同期機の使用方法のそれぞれも、本発明の実施に属することが理解されるべきである。
【0058】
本発明の、さらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面を用いた関連付けられた図面の説明から明らかになるであろう。
【0059】
上記の及び以下でさらに説明される特徴は、それぞれ示された組合せにおいてだけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せにおいても、又は単独でも使用され得ることが理解されるべきである。
【0060】
本発明の好ましい例示的な実施形態は図面に示されており、以下の説明において、より詳細に説明され、同一の参照番号は、同一、類似、又は機能的に同一の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0061】
各図は概略図である。
【
図1】
図1は、導電体を備えた電気回転変圧器を有する他励式電気同期機の断面図、及び導電体の拡大図である。
【
図2】
図2は、別の例示的な実施形態における導電体の断面図である。
【
図3】
図3は、自動車における、回転変圧器を備えた他励式電気同期機の、極めて簡略化された回路図である。
【
図4】
図4は、回転変圧器を備えた他励式電気同期機の同期機回転子の、部分的に断面で示された等角図である。
【
図5】
図5は、他励式電気同期機の、極めて簡略化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
電気回転変圧器1は、例えば
図1、
図3、及び
図4に示されるように、誘導エネルギー伝送器として使用される。回転変圧器1は、
図1及び
図3-5に示されるように、他励式電気同期機100において使用され得る。回転変圧器1及び/又は同期機100は、
図3で非常に単純化して示されているように、自動車200において使用され得る。他励式電気同期機100は、特に、自動車200を駆動するための同期機110として使用され得る。したがって、同期機100は、具体的には走行用モーター120である。
【0063】
図1、
図3、及び
図4から明らかなように、回転変圧器1は、固定子2及び回転子4を有する。固定子2は、以下で、回転変圧器固定子2として示される。回転子3は、以下で、回転変圧器回転子4として示される。回転変圧器回転子4は、軸方向に延びている回転軸90の周りを、回転変圧器固定子2に対して回転可能である。動作中、回転変圧器回転子4は、したがって、回転軸90の周りを、回転変圧器固定子2に対して回転する。誘導エネルギー伝送のために、回転変圧器固定子2は1次コイル3を有し、回転変圧器回転子4は2次コイル5を有する。1次コイル3及び2次コイル5は、
図1及び
図4から明らかなように、示されている例示的な実施形態において、軸方向に対向して配置される。動作中、以下で変圧器1次コイル3とも呼ばれる1次コイル3は、以下で変圧器2次コイル5と呼ばれる2次コイル5に、交流電圧を誘導し、それは、以下で変圧器電圧とも呼ばれる。
【0064】
ここで示される方向は、回転軸90を指す。したがって、「軸方向」とは、回転軸に対して平行である。さらに、「半径方向」とは、回転軸90に対して横方向である。
【0065】
特に
図1及び
図2から明らかなように、コイル3,5のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの導電体20を有し、前記導電体を通って流体の流路21が導かれる。示されている例示的な実施形態では、それぞれ1つのそのような導電体20が設けられる。ここで、動作中、流体は流路21に沿って流れるので、関連付けられたコイル3,5を冷却し、結果として回転変圧器1を冷却する。導電体20は、
図1において拡大して図示もされる。さらに、導電体20は、
図2に別に示される。
【0066】
示されている例示的な実施形態では、変圧器1次コイル3は、そのような導電体20を有する。さらに、示されている例示的な実施形態では、変圧器1次コイル3は、フラットコイル11として構成される。特に、変圧器1次コイル3は、導電体20から形成される。
【0067】
図1から明らかなように、示されている例示的な実施形態における回転変圧器回転子4は、変圧器2次コイル5が設けられた導体板8を有する。導体板8は円板形状のように構成されており、円形であることによって、円板又はそれぞれリング状のように構成される。示されている例示的な実施形態における変圧器2次コイル5は、少なくとも1つの、導体板8の導体トラック9を有し、それは、以下で変圧器導体トラック9とも呼ばれる。示されている例示的な実施形態では、変圧器2次コイル5は、少なくとも1つの変圧器導体トラック9からなり、平面状の巻線10として構成される。
図1から明らかなように、導体板8は、互いに軸方向に間隔を空けて配置された2つの変圧器導体トラック9を有し得て、それらは、螺旋状のように回転軸90を取り囲む。さらに、示されている例示的な実施形態では、少なくとも1つの変圧器導体トラック9は、完全に導体板8内に配置される。
【0068】
図1及び
図4から明らかなように、示されている例示的な実施形態における変圧器1次コイル3及び変圧器2次コイル5は、磁心12、特にフェライトコア13に配置され、それは、回転変圧器固定子2に対して固定される。磁心12は、以下で変圧器磁心12とも呼ばれる。変圧器磁心12は半径方向に開口しており、その結果、導体板8は、変圧器2次コイル5とともに、変圧器磁心12を連通し、そこに回転可能に配置されるようになっている。さらに、変圧器磁心12は、軸方向に開口した凹部15を有し、そこに、変圧器1次コイル3、例えば導電体20が配置される。
【0069】
図1及び
図2における例示的な実施形態では、導電体20は、中空の態様で、つまり中空導体32として構成される。中空導体32は中心空洞22を有し、前記中心空洞を通って流路21が導かれる。
【0070】
図2に示される例示的な実施形態では、導電体20は編組線(ブレイド)28として構成される。示される例示的な実施形態では、編組線20は中心空洞22を有し、前記中心空洞を通って流路21が導かれる。
【0071】
示される例示的な実施形態では、空洞22には、好ましくはプラスチックで作られた、電気的かつ流体的絶縁のチャネル本体23が収容される。ここで、チャネル本体23は、導電体20の流路21を区画し、ひいては中空導体32又はそれぞれ編組線28における流路21を区画する。示される例示的な実施形態では、チャネル本体23は、可撓管24としても構成される。
【0072】
電気的な伝導のために、編組線28は個々のワイヤ25を有し、それは
図2において部分的にしか示されていない。ここで、個々のワイヤ25は、空洞22及びチャネル本体23を取り囲む。個々のワイヤ25は、したがって、チャネル本体23から離れる方向に面する流路21の側に配置される。
図1及び
図2から明らかなように、示される例示的な実施形態における導電体20は、電気絶縁性の外側ケーシング31を有する。ここで、編組線28として構成されている導電体20の場合、個々のワイヤ25は、外側ケーシングに収容される。示される例示的な実施形態では、個々のワイヤは、したがって、チャネル本体23と外側ケーシング31との間に配置される。
【0073】
図2によれば、編組線28は、個々のワイヤ25の少なくとも一部に対して、関連付けられた電気絶縁性のケーシング26を有し得て、前記ケーシングにおいて、少なくとも1つの関連付けられた個々のワイヤ25が収容される。編組線28は、よって、高い周波数用の編組線33の態様で構成される。そのように構成された編組線28は、ここでは、関連付けられたコイル3,5の、より高い周波数での動作に適している。
図2の例示的な実施形態では、編組線28は、それぞれのワイヤ25に対してケーシング26を有し、前記ケーシングにおいて、関連付けられたそれぞれのワイヤ25が収容される。それぞれのケーシング26は、ここでは、ラッカー層27に関する。
【0074】
図3に示されるように、示される例示的な実施形態では、回転変圧器1は、流体を編組線28に入れるための入口29と、流体を少なくとも1つの編組線28から排出するための出口30とを有する。
【0075】
以下で同期機100とも略される、他励式電気同期機100は、特に
図4から明らかなように、回転子101を有する。回転子101は、以下で同期機回転子101とも呼ばれる。同期機回転子101は、回転子シャフト102と、回転子シャフト102上に回転方向に固定されて設けられたコイル103とを有する(
図3-5を参照)。コイル103は、以下で同期機回転子コイル103とも呼ばれる。同期機回転子コイル103は、
図3では、インダクタンス及びオーム抵抗として表される。動作中、同期機回転子コイル103は、以下で回転子磁界とも呼ばれる、磁界を発生する。同期機100は、さらに、
図5で示される固定子104を有し、それは、以下で同期機固定子104とも呼ばれる。さらに、同期機100は、同期機固定子104に対して固定されたコイル105を有し(
図5を参照)、前記コイルは、以下で同期機固定子コイル105とも呼ばれる。動作中、同期機固定子コイル105は、以下で固定子磁界とも呼ばれる磁界を発生する。固定子磁界及び回転子磁界は、動作中に、同期機回転子101が回転軸90の周りを回転するように、ここで、相互作用する。回転子磁界を発生するために、同期機回転子101、具体的には同期機回転子コイル103は、直流電圧、したがって直流電流を必要とする。示される例示的な実施形態では、同期機回転子コイル103の、この直流電圧は、変圧器2次コイル5によって、したがって回転変圧器1によって供給される。この目的のために、
図3から明らかなように、変圧器2次コイル5と同期機回転子コイル103との間に整流回路6が接続され、前記整流回路は、変圧器電圧を直流電圧に変換する。さらに、この目的のために、
図1及び
図4から明らかなように、回転変圧器回転子4は、回転子シャフト102上、したがって、同期機回転子101上に回転方向に固定されて配置される。回転変圧器回転子4は、よって、動作中、回転軸90の周りを回転子シャフト102とともに回転し、その結果、同期機回転子101とともに回転する。さらに、回転変圧器固定子2は、同期機固定子104に対して固定されているので、それは静止している。
【0076】
さらに
図4から特に明らかなように、示される例示的な実施形態では、回転変圧器1は、同期機回転子101の軸方向正面に配置され、同期機回転子コイル103及び同期機固定子コイル105に対して間隔を空けて配置される。もちろん、同期機100は、2つ以上の同期機回転子コイル103及び/又は2つ以上の同期機固定子コイル105を有してもよい。
【0077】
変圧器の電圧を変圧器2次コイル5に誘導するために、変圧器1次コイル3は、以下で一般的には交流電圧とも呼ばれる、交流電圧又はスイッチング(クロッキング)された直流電圧を必要とする。
図3から明らかなように、示される例示的な実施形態における変圧器1次コイル3は、電気エネルギー源201を介して提供され、それは直流電圧をもたらす。示される例示的な実施形態におけるエネルギー源201は、自動車200のバッテリー202に関する。変圧器1次コイル3に交流電圧を供給するために、インバーター回路7が、エネルギー源201と変圧器1次コイル3との間に設けられる。インバーター回路7は、エネルギー源201の直流電圧を、変圧器1次コイル3のために交流電圧に変換する。ここで、インバーター回路7はコンバーターを含むことが考えられる。
【0078】
示される例示的な実施形態における、回転変圧器回転子4に対する回転子シャフト102の回転方向に固定された接続は、
図1及び
図4から明らかなように、導体板8における中央開口部14を介して実現され、前記中央開口部を通って、回転子シャフト102が係合する。
【0079】
図3に示される例示的な実施形態では、単に一例として、整流回路6は、4つのダイオードDa-dを備えたブリッジ整流器16として構成される。さらに、単に一例として、インバーター回路7はフルブリッジインバーター17として構成され、それは、4つのトランジスタTa-dと、トランジスタTa-dのための2つのドライバースイッチSa-bとを有する。
【0080】
図3から明らかなように、同期機100は、
図3に示されるように、冷却回路203において一体化され、その結果、動作中、流体は、冷却回路203において、流路21に沿って循環する。
図3に示されるように、冷却回路203は、例えば、冷却回路203を通って流体を運ぶための搬送機構204、及び流体を冷却するための冷却器205のような、さらなる構成要素を有する。
【国際調査報告】