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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】線量定量化方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20241003BHJP
   A61N 5/10 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G01T3/00 H
A61N5/10 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521307
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 AU2022051214
(87)【国際公開番号】W WO2023056532
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2021903247
(32)【優先日】2021-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500461941
【氏名又は名称】オーストラリアン ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー オーガニゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ サファヴィ-ナエイニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー スティーヴン チャコン
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188BB04
2G188BB09
2G188CC23
2G188CC29
2G188DD02
2G188DD30
2G188EE01
2G188EE12
2G188EE16
2G188EE17
4C082AC05
4C082AC07
4C082AE01
4C082AJ04
4C082AN02
4C082AP03
4C082AR02
(57)【要約】
放射線量定量化方法及びシステムであり、方法は、照射プログラムを受けた被検体内の熱中性子捕捉剤を含む組成物の中性子の捕捉により放出されたγ線を検出器で検出し(中性子は、陽子、重陽子、三重陽子及び重イオンの1以上の粒子の一次ビームと被検体内の原子核との非弾性衝突により発生し、照射プログラムはビームオン/オフ時間枠を含むビーム持続時間を有する照射時間枠を含む)、エネルギー約0.4eV未満の熱中性子の熱中性子捕捉剤による捕捉により生じた選択されたγ線を示すエネルギーのγ線による検出器での検出事象のみを受容する所定のエネルギーウィンドウ又はフィルタを適用し、非中性子捕捉事象に起因する即発γ線による検出器での検出事象を拒否又は無視するタイミングウィンドウを適用し、受容された検出事象から、照射プログラムで被検体が受けた中性子線の放射線量又は放射線の線量マップを決定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの感応体積を有する1つ又は複数の検出器を用いて、照射プログラムを受けた被検体内の組成物による中性子の捕捉の結果として放出されたガンマ線を検出することであって、前記組成物が、1つ又は複数の熱中性子捕捉剤を含み、前記中性子が、荷電粒子の一次ビームと前記被検体内の原子核との間の非弾性衝突によって発生し、前記荷電粒子が、陽子、重陽子、三重陽子及び重イオンのいずれか1つ又は複数からなり、前記照射プログラムが、ビームオン時間枠及びビームオフ時間枠を含むビーム持続時間を有する少なくとも1つの照射時間枠を含む、前記検出することと、
前記1つ又は複数の熱中性子捕捉剤による熱中性子の前記捕捉から生じた、選択されたガンマ線を示すエネルギーを有するガンマ線から得られた、前記1つ又は複数の検出器における検出事象のみを受け入れるように構成された少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウ又はフィルタを適用することであって、前記熱中性子が、およそ0.4eVを下回るエネルギーを有する中性子である、前記適用することと、
非中性子捕捉事象において生み出された少なくとも即発ガンマ線から得られた、前記1つ又は複数の検出器における検出事象を、拒否するか又は無視するように構成されたタイミングウィンドウを適用することと、
前記照射プログラムの間に前記被検体が受けた、少なくとも前記受け入れられた検出事象からの中性子線の放射線量を決定するか、又は前記被検体が受けた、少なくとも前記受け入れられた検出事象からの前記放射線の線量マップを決定することと
を含む、放射線量定量化方法。
【請求項2】
i)各ビームオン時間枠の開始から、前記それぞれのビームオン時間枠の終了後、およそ11nsまで、およそ12nsまで、又は10~12nsまでの間に、前記それぞれの感応体積に到達するガンマ線を拒否することによって、前記即発ガンマ線を拒否すること、
ii)タイミングに基づいて、高速中性子に起因する前記それぞれの感応体積における検出事象を拒否すること、
iii)タイミングに基づいて、0.4eV~1MeVのエネルギーを有する中性子に起因する前記それぞれの感応体積における検出事象を拒否すること、並びに/或いは
iv)経験的に又はシミュレーションによって確認された偽陽性検出事象に対する真陽性検出事象の割合がおよそ1.4未満又はおよそ1.5未満である、検出時間枠内の検出事象を拒否することであって、真陽性検出事象が、前記タイミングウィンドウ及び前記エネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象から生じた事象であり、偽陽性検出事象が、前記タイミングウィンドウ及び前記エネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象以外から生じた事象である、前記拒否すること
を行うように前記タイミングウィンドウを構成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱中性子吸収材料によって、前記1つ又は複数の検出器を遮蔽することを含み、前記材料が、前記1つ又は複数の中性子捕捉剤とは異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料が、
i)熱中性子の大部分を遮断するほど十分に厚いが、中性子捕捉による前記ガンマ線の高過ぎる割合を吸収しない程度に薄いものであるように選択される、並びに/或いは
ii)カドミウム、ガドリニウム、ホウ素及び/又はハフニウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の中性子捕捉剤が、10Bベース及び/又は157Gdベースである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の中性子捕捉剤が、前記ガンマ線が478keVのエネルギーを有するような10Bベース、並びに/或いは前記ガンマ線が79.5keV、182keV、6.75MeV、7.86MeV及び/又は7.94MeVのエネルギーを有するような157Gdベースである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
治療部位及びその周辺でのビーム-標的核相互作用による患者の体内における熱中性子の発生を伴う放射線療法を計画することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中性子捕捉剤が、10Bベースであり、前記1つ又は複数の検出器が、CdTe、CZT、LYSO:Ce及びLaBr:Ce検出器のいずれか1つ又は複数を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビーム持続時間が、1~10μs、又はおよそ1μsである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
天然Cd、天然Gd及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を用いて、前記1つ又は複数の検出器を遮蔽することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記中性子捕捉剤が、157Gdベースであり、前記1つ又は複数の検出器が、LSO:Ce、BGO及びPbWO検出器のいずれか1つ又は複数を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
i)前記ビーム持続時間が、10μs~100msであるか、
ii)前記一次ビームが炭素イオンビームであり、前記ビーム持続時間がおよそ1msであるか、又は
iii)前記一次ビームがヘリウムイオンビームであり、前記ビーム持続時間がおよそ10μsである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
天然B及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を用いて、前記1つ又は複数の検出器を遮蔽することを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれの感応体積を有し、照射プログラムを受けた被検体内の組成物による中性子の捕捉の結果として放出されたガンマ線を検出するように構成された1つ又は複数の検出器であって、前記組成物が、1つ又は複数の熱中性子捕捉剤を含み、前記中性子が、粒子の一次ビームと前記被検体内の原子核との間の非弾性衝突によって発生し、前記粒子が、陽子、重陽子、三重陽子及び重イオンのいずれか1つ又は複数からなり、前記照射プログラムが、ビームオン時間枠及びビームオフ時間枠を含むビーム持続時間を有する少なくとも1つの照射時間枠を含む、前記1つ又は複数の検出器と、
前記1つ又は複数の熱中性子捕捉剤による熱中性子の前記捕捉から生じた、選択されたガンマ線を示すエネルギーを有するガンマ線から得られた、前記1つ又は複数の検出器における検出事象のみをシステムが受け入れるように、少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウ又はフィルタを適用するように構成されたエネルギーゲートであって、前記熱中性子が、およそ0.4eVを下回るエネルギーを有する中性子である、前記エネルギーゲートと、
前記それぞれのビームオン時間枠の開始又は終了を示すビームデータを受信し、前記ビームデータから、非中性子捕捉事象において生み出された少なくとも即発ガンマ線から得られた、前記1つ又は複数の検出器における検出事象をシステムが拒否するか又は無視するように構成されたタイミングウィンドウを生成し、前記タイミングウィンドウを適用するように構成されたタイミングゲートと、
前記受け入れられた検出事象を示すデータを出力するための出力と
を含む、放射線量定量化システム。
【請求項15】
前記1つ又は複数の検出器が、ガンマ線の到達角度を検知できる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
計数されたガンマ線から前記照射プログラムの間に前記被検体が受けた前記放射線の前記放射線量を決定するか、又は前記計数されたガンマ線から前記被検体が受けた前記放射線の線量マップを決定するように構成されたデータロガー又はデータ分析デバイスを含む、請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ又は複数の検出器からの出力信号におけるパイルアップを拒否するように構成されたパイルアップリジェクタを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記タイミングゲートが、
i)各ビームオン時間枠の前記開始から、前記それぞれのビームオン時間枠の前記終了後、およそ11nsまで、およそ12nsまで、又は10~12nsの終了までの間に、前記それぞれの感応体積に到達するガンマ線を拒否することによって、前記即発ガンマ線を拒否すること、
ii)タイミングに基づいて、高速中性子に起因する前記それぞれの感応体積における検出事象を拒否すること、
iii)タイミングに基づいて、0.4eV~1MeVのエネルギーを有する中性子に起因する前記それぞれの感応体積における検出事象を拒否すること、並びに/或いは
iv)経験的に又はシミュレーションによって確認された偽陽性検出事象に対する真陽性検出事象の割合がおよそ1.4未満又はおよそ1.5未満である、検出時間枠内の検出事象を拒否することであって、真陽性検出事象が、前記タイミングウィンドウ及び前記エネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象から生じた事象であり、偽陽性検出事象が、前記タイミングウィンドウ及び前記エネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象以外から生じた事象である、前記拒否すること
を行うためのタイミングウィンドウを適用するように構成される、請求項14~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ又は複数の検出器のいくつか又はすべてを遮蔽するように配置され、且つ熱中性子吸収材料を含む熱中性子遮蔽体を含み、前記材料が、前記1つ又は複数の中性子捕捉剤とは異なる、請求項14~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記熱中性子吸収材料が、
i)熱中性子の大部分を遮断するほど十分に厚いが、中性子捕捉による前記ガンマ線の高過ぎる割合を吸収しない程度に薄いものであるように選択される、並びに/或いは
ii)カドミウム、ガドリニウム、ホウ素及び/又はハフニウムを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つ又は複数の中性子捕捉剤が、10Bベース及び/又は157Gdベースである、請求項14~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記1つ又は複数の中性子捕捉剤が、前記ガンマ線が478keVのエネルギーを有するような10Bベース、並びに/或いは前記ガンマ線が79.5keV、182keV、6.75MeV、7.86MeV及び/又は7.94MeVのエネルギーを有するような157Gdベースである、請求項14~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記中性子捕捉剤が、10Bベースであり、前記1つ又は複数の検出器が、CdTe、CZT、LYSO:Ce及びLaBr:Ce検出器のいずれか1つ又は複数を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記ビーム持続時間が、1~10μs、又はおよそ1μsである、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記1つ又は複数の検出器のいくつか又はすべてを遮蔽するように配置された、天然Cd、天然Gd及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料の、熱中性子遮蔽体を含む、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
前記中性子捕捉剤が、157Gdベースであり、前記1つ又は複数の検出器が、LSO:Ce、BGO及びPbWO検出器のいずれか1つ又は複数を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
i)前記ビーム持続時間が、10μs~100msであるか、
ii)前記一次ビームが炭素イオンビームであり、前記ビーム持続時間がおよそ1msであるか、又は
iii)前記一次ビームがヘリウムイオンビームであり、前記ビーム持続時間がおよそ10μsである、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記1つ又は複数の検出器のいくつか又はすべてを遮蔽するように配置された、天然Cd、天然Gd及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料の、熱中性子遮蔽体を含む、請求項26又は27に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年10月9日に出願されたAU2021903247号の出願及び優先日に基づき、その利益を主張するものであり、その出願内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特に、粒子線療法における中性子捕捉事象の定量化の際に適用される、放射線量定量化方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
国際公開第2019/051557A1号パンフレットは、特に、「中性子捕捉増強粒子線療法」(又はNCEPT)と呼ばれるものにおいて使用される、照射方法及び組成物について開示している。熱中性子は、治療部位及びその周辺でのビーム-標的核相互作用によって患者の体内で発生し、その治療効果は、腫瘍特異的10B又は157Gdベースの薬剤などの中性子捕捉剤を使用して熱中性子を捕捉することによって高めることができる。この中性子捕捉により、高LET(線エネルギー付与)の二次粒子が解放され、10B又は157Gdベースの薬剤では、478keV(10B)、又は79.5keV、182keV、6.75MeV、7.86MeV及び7.94MeV(57Gd)のそれぞれのエネルギーを有するガンマ線が解放される。
【0004】
しかし、内部で発生する熱中性子フルエンスは、治療体積の大きさ及び深さや、中性子捕捉剤の細胞濃度などの因子に依存するため、NCEPTの計画、最適化及び提供は、以前の粒子線療法のものより複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、NCEPTにおける放射線量定量化を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の広範な態様によれば、本発明は、
それぞれの感応体積を有する1つ又は複数の検出器を用いて、照射プログラムを受けた被検体内の組成物による中性子の捕捉の結果として放出されたガンマ線を検出することであって、組成物が、1つ又は複数の熱中性子捕捉剤を含み、中性子が、荷電粒子の一次ビームと被検体内の原子核との間の非弾性衝突によって発生し、荷電粒子が、陽子、重陽子、三重陽子及び重イオンのいずれか1つ又は複数からなり、照射プログラムが、ビームオン時間枠及びビームオフ時間枠を含むビーム持続時間を有する少なくとも1つの照射時間枠を含む、前記検出することと、
1つ又は複数の熱中性子捕捉剤による熱中性子の捕捉から生じた、選択された(例えば、主な又は唯一の)ガンマ線を示すエネルギーを有するガンマ線から得られた、1つ又は複数の検出器における検出事象のみを受け入れるように構成された少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウ又はフィルタを適用することであって、熱中性子が、およそ0.4eVを下回るエネルギーを有する中性子である、前記適用することと、
非中性子捕捉事象において生み出された少なくとも即発ガンマ線から得られた、1つ又は複数の検出器における検出事象を拒否するか又は無視するように構成されたタイミングウィンドウを適用することと、
照射プログラムの間に被検体が受けた、少なくとも受け入れられた検出事象からの熱中性子線の線量(すなわち、計数されたガンマ線)を決定するか、又は被検体が受けた、少なくとも受け入れられた検出事象からの熱中性子線の線量マップを決定することと
を含む、放射線量定量化方法を提供する。
【0007】
放射線量を決定するか又は線量マップを決定することは、一次ビーム位置(すなわち、被検体内の)及びそれぞれの受け入れられた検出事象に対応する一次ビームエネルギーを示すビームデータを追加的に採用することができる。
【0008】
少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウを適用することは、オンラインで(すなわち、検出事象の収集と同時に)又はオフラインで(すなわち、データ収集後、検出事象をフィルタリングすることによって)実行できることに留意されたい。しかし、エネルギーウィンドウの外側にある事象は、本目的にとって有用であるとは考えにくい。同様に、タイミングウィンドウを適用することもまた、オンライン又はオフラインで実行することができる。従って、様々な実施形態では、エネルギーウィンドウを適用すること及びタイミングウィンドウを適用することの一方又は両方は、オンラインで実行され、他の実施形態では、エネルギーウィンドウを適用すること及びタイミングウィンドウを適用することの一方又は両方は、オフラインで実行される。
【0009】
1つ又は複数の検出器は、ガンマ線の到達角度を検知でき、これは、線量マップを決定する際に特に有利である。
【0010】
方法は、それぞれのビームオン時間枠の終了後、少なくともおよそ105.8nsの時間枠又は105.8ns~2×10nsの時間枠における、タイミングウィンドウ及びエネルギーウィンドウ内の中性子捕捉ガンマ線を検出することを含み得る。
【0011】
別の実施形態では、方法は、オフライン処理(例えば、その後のオフラインでのタイミングウィンドウの適用)のために、既定の対象のエネルギーウィンドウ内に入るすべての中性子捕捉ガンマ線を検出することを含む。荷電粒子は、イオン化H(すなわち、陽子)、He(すなわち、一般に重イオンと見なされるアルファ粒子)、C、O及び/又はSiであり、具体的には、C、10C、11C、12C、15O、16O及びSiの数値nが高い同位体(一般に重イオンと見なされるもの)を含む。
【0012】
組成物は、有利には、悪性(例えば、癌性)標的組織によって優先的に吸収される。
【0013】
一次ビームは、典型的には、粒子のサイクロトロン又はシンクロトロン加速によって適切なエネルギーを得る。
【0014】
方法は、1つ又は複数の中性子捕捉剤が複数のエネルギーのガンマ線を生み出す場合は、複数のエネルギーウィンドウを適用することができる。それに加えて、複数の検出器を採用する実施形態では、それぞれの検出器が検出するように構成される又は意図されるガンマ線に応じて、異なる検出器に対して異なるエネルギーウィンドウを定義することができる。
【0015】
方法は、各ビームオン時間枠の開始から、それぞれのビームオン時間枠の終了後、およそ11nsまで、およそ12nsまで、又は10~12nsまでの間に、それぞれの感応体積に到達するガンマ線を拒否することによって、即発ガンマ線を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することを含み得る。
【0016】
方法は、タイミングに基づいて、高速中性子に起因するそれぞれの感応体積における検出事象を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することも含み得る。
【0017】
これは、各ビームオン時間枠の開始から、それぞれのビームオン時間枠の終了後、少なくとも30nsまで、少なくとも40nsまで、少なくとも49nsまで、少なくとも50nsまで、又は30~50nsまでの間の、検出事象を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することを含み得る。
【0018】
方法は、タイミングに基づいて、0.4eV~1MeVのエネルギーを有する中性子に起因するそれぞれの感応体積における検出事象を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することも含み得る。
【0019】
これは、各ビームオン時間枠の開始から、それぞれのビームオン時間枠の終了後、50ns~10nsまでの間の、検出事象を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することを含み得る。
【0020】
方法は、経験的に又はシミュレーションによって確認された偽陽性検出事象に対する真陽性検出事象の割合が1.4未満又は1.5未満である、検出時間枠内の検出事象を拒否するようにタイミングウィンドウを構成することを含み得、真陽性検出事象は、タイミングウィンドウ及びエネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象から生じた事象であり、偽陽性検出事象は、タイミングウィンドウ及びエネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象以外から生じた事象である。
【0021】
従って、1.5を超える割合が有効であるが、割合値が高いほど、画質が良くなるか、又は被検体/標的内の1つ若しくは複数の特定の位置において提供される線量の検証が正確になる。
【0022】
方法は、中性子吸収及び/又は散乱材料の単一の又は複数の(例えば、4つの)層を用いて、1つ又は複数の検出器(及び具体的にはそのシンチレータ)を少なくとも部分的に遮蔽することを含み得、材料は、1つ又は複数の中性子捕捉剤とは異なる。いくつかの実施形態では、方法は、望ましくは、1つ又は複数の検出器が被検体(又はその関連体積)に面している面以外の1つ又は複数の検出器のすべての面を遮蔽することを含む。
【0023】
中性子吸収(それにより、遮蔽体は受動フィルタの働きをする)は、熱中性子においてより実用的である一方で、散乱/偏向は、一般に、かなりの割合の高速中性子を検出器から散乱させるために、高速中性子においてより実用的な手法である。
【0024】
そのような実施形態では、遮蔽体は、1つ又は複数の熱中性子捕捉剤による熱中性子を吸収する及び/又は散乱させるために、1つ又は複数の検出器の前面を覆うように配置することもできる。中性子捕捉剤が10Bベースの薬剤であるか又はそれを含む場合は、線量定量化システムのコンポーネント(シリコン基板又はPCBなど)にドーパントとして存在するどんな微量のホウ素も、熱中性子捕捉剤による熱中性子の捕捉から生じるガンマ線の測定を損なうバックグラウンドを生成し得る。これにより、10Bベースの薬剤を採用する実用的な実装形態では、何らかの遮蔽体が事実上不可欠となる。
【0025】
また、遮蔽体は、同じ理由から、任意に、1つ又は複数の検出器の1つ又は複数の側面を覆うように配置することもできる。中性子捕捉剤が10Bベースの薬剤であるか又はそれを含む場合は、微量のホウ素が存在し(又は過量のホウ素が存在し)、実用的な実装形態では、側面の少なくとも何らかの遮蔽体が事実上不可欠であり得る。
【0026】
中性子吸収又は散乱材料は、それらの中性子吸収及び散乱断面積に基づいて選択され、中性子の大部分を遮断及び散乱して検出器から遠ざけるほど十分に厚いが、中性子捕捉によって発生するガンマ線の高過ぎる割合を吸収しないか又は散乱させない程度に薄いものである。例えば、材料は、高密度プラスチック(高密度ポリエチレンなど)、パラフィン、カドミウム、ガドリニウム、ホウ素、炭化ホウ素、鉛、黄銅及び/又はハフニウムを含み得る。
【0027】
いくつかの例では、1つ又は複数の中性子捕捉剤は、10Bベース及び/又は157Gdベースである。例えば、1つ又は複数の中性子捕捉剤は、ガンマ線が478keVのエネルギーを有するような10Bベース、並びに/或いはガンマ線が79.5keV、182keV、6.75MeV、7.86MeV及び/又は7.94MeVのエネルギーを有するような157Gdベースであり得る。
【0028】
方法は、治療部位及びその周辺でのビーム-標的核相互作用による患者の体内における熱中性子の発生を伴う放射線療法を計画することを含み得る。
【0029】
いくつかの例では、中性子捕捉剤は、10Bベースであり、1つ又は複数の検出器は、CdTe、CZT、LYSO:Ce及びLaBr:Ce検出器のいずれか1つ又は複数を含む。これらの例では、ビーム持続時間は、1~10μs、又はおよそ1μsであり得る。方法は、天然Cd、天然Gd、Pb、黄銅、高密度プラスチック及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を用いて、1つ又は複数の検出器を遮蔽することを含み得る。
【0030】
他の例では、中性子捕捉剤は、157Gdベースであり、1つ又は複数の検出器は、LSO:Ce、BGO及びPbWO検出器のいずれか1つ又は複数を含む。これらの例では、ビーム持続時間は、10μs~100msであり得る。一次ビームが炭素イオンビームである場合は、ビーム持続時間は、およそ1msであり、一次ビームがヘリウムイオンビームである場合は、ビーム持続時間は、およそ10μsである。方法は、天然B及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を用いて、1つ又は複数の検出器を遮蔽することを含み得る。
【0031】
方法(及びシステム、下記参照)は、以下の任意の組合せを採用することができる。
【0032】
【表1】
【0033】
中性子を過度に熱化させることなく検出器の側面を高速中性子から遮蔽するために、Pb、黄銅及びCdを使用することもできる。
【0034】
特定の例では、採用することができるそのような組合せは、1.4を超える又は有利には1.5を超える、偽陽性に対する真陽性の割合RTF(本明細書で定義されるような)を提供するタイミングマスクであった。
【0035】
第2の広範な態様によれば、本発明は、
それぞれの感応体積を有し、照射プログラムを受けた被検体内の組成物による中性子の捕捉の結果として放出されたガンマ線を検出するように構成された1つ又は複数の検出器であって、組成物が、1つ又は複数の熱中性子捕捉剤を含み、中性子が、荷電粒子の一次ビームと被検体内の原子核との間の非弾性衝突によって発生し、荷電粒子が、陽子、重陽子、三重陽子及び重イオンのいずれか1つ又は複数からなり、照射プログラムが、ビームオン時間枠及びビームオフ時間枠を含むビーム持続時間を有する少なくとも1つの照射時間枠を含む、前記1つ又は複数の検出器と、
1つ又は複数の熱中性子捕捉剤による熱中性子の捕捉から生じた、選択された(例えば、主な又は唯一の)ガンマ線を示すエネルギーを有するガンマ線から得られた、1つ又は複数の検出器における検出事象のみをシステムが受け入れるように、少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウ又はフィルタを適用するように構成されたエネルギーゲートであって、熱中性子が、およそ0.4eVを下回るエネルギーを有する中性子である、前記エネルギーゲートと、
それぞれのビームオン時間枠の開始又は終了を示すビームデータを受信し、ビームデータから、非中性子捕捉事象において生み出された少なくとも即発ガンマ線から得られた、1つ又は複数の検出器における検出事象をシステムが拒否するか又は無視するように構成されたタイミングウィンドウを生成し、タイミングウィンドウを適用するように構成されたタイミングゲートと、
受け入れられた検出事象を示すデータを、(例えば、システム内に含まれるか又はその外部にあるかにかかわらず、熱中性子線量又は線量マップを決定するように構成されたデータ分析システムへと)出力するための出力と
を含む、放射線量定量化システムを提供する。
【0036】
システムは、照射プログラムの間に被検体が受けた、少なくとも受け入れられた検出事象からの熱中性子線量を決定するか、又は被検体が受けた、少なくとも受け入れられた検出事象からの熱中性子線の線量マップを決定するように構成されたデータ分析システムを含み得る。
【0037】
データ分析システムは、一次ビーム位置(すなわち、被検体内の)及びそれぞれの受け入れられた検出事象に対応する一次ビームエネルギーを示すビームデータを受信するように、並びにビームデータに基づいて熱中性子線量又は線量マップを追加的に決定するように、追加的に構成することができる。
【0038】
少なくとも1つの事前に定義されたエネルギーウィンドウを適用することは、オンラインで(すなわち、検出事象の収集と同時に)又はオフラインで(すなわち、データ収集後、検出事象をフィルタリングすることによって)実行できることに留意されたい。同様に、タイミングウィンドウを適用することもまた、オンライン又はオフラインで実行することができる。従って、様々な実施形態では、エネルギーウィンドウを適用すること及びタイミングウィンドウを適用することの一方又は両方は、オンラインで実行され、他の実施形態では、エネルギーウィンドウを適用すること及びタイミングウィンドウを適用することの一方又は両方は、オフラインで実行される。
【0039】
1つ又は複数の検出器は、ガンマ線の到達角度を検知でき、これは、線量マップを決定する際に特に有利である。
【0040】
システムは、照射プログラムの間に被検体が受けた、計数されたガンマ線からの放射線の放射線量を決定するか、又は被検体が受けた、計数されたガンマ線からの放射線の線量マップを決定するように構成されたデータロガー又はデータ分析デバイスを構成するか又は含むことができる。
【0041】
エネルギーゲートは、第1の及び第2のコンパレータ(例えば、線形オペアンプ又はシュミットトリガ入力を備えるコンパレータ)を含み得る。
【0042】
システムは、1つ又は複数の検出器からの出力信号におけるパイルアップを拒否するように構成されたパイルアップリジェクタを含み得る。
【0043】
タイミングゲートは、各ビームオン時間枠の開始から、それぞれのビームオン時間枠の終了後、およそ11nsまで、およそ12nsまで又は10~12nsの終了までの間に、それぞれの感応体積に到達するガンマ線を拒否することによって、即発ガンマ線を拒否するために、タイミングウィンドウを適用するように構成することができる。
【0044】
タイミングゲートは、タイミングに基づいて、高速中性子に起因するそれぞれの感応体積における検出事象を拒否するタイミングウィンドウを適用するように構成することもできる。
【0045】
タイミングゲートは、タイミングに基づいて、0.4eV~1MeVのエネルギーを有する中性子に起因するそれぞれの感応体積における検出事象を拒否するタイミングウィンドウを適用するように構成することもできる。
【0046】
タイミングゲートは、経験的に又はシミュレーションによって確認された偽陽性検出事象に対する真陽性検出事象の割合が1.4未満又は1.5未満である、検出時間枠内の検出事象を拒否するタイミングウィンドウを適用するように構成することができ、真陽性検出事象は、タイミングウィンドウ及びエネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象から生じた事象であり、偽陽性検出事象は、タイミングウィンドウ及びエネルギーウィンドウを満たし、且つ中性子捕捉事象以外から生じた事象である。
【0047】
システムは、1つ又は複数の検出器(及び具体的にはそのシンチレータ)のいくつか又はすべてを少なくとも部分的に遮蔽するように配置され、且つ、1つ又は複数の中性子捕捉剤とは異なる中性子吸収及び/又は散乱材料の単一の又は複数の層を含む遮蔽体を含み得る。上記で論じられるように、遮蔽体は、任意に、1つ又は複数の検出器の1つ又は複数の側面を覆うように配置することもできる。
【0048】
中性子捕捉剤が10Bベースの薬剤であるか又はそれを含む場合は、遮蔽体は、最も望ましくは、1つ又は複数の検出器の前面と側面の両方を遮蔽するように配置される。遮蔽体は、典型的には、各検出器に対して遮蔽体を1つずつ含む。中性子吸収及び散乱材料は、それらの中性子吸収及び散乱断面積に基づいて選択され、中性子の大部分を遮断する又は散乱させるほど十分に厚いが、中性子捕捉によって発生するガンマ線の高過ぎる割合を吸収しない程度に薄いものである。中性子吸収又は散乱材料は、ポリエチレン、パラフィン、カドミウム、ガドリニウム、ホウ素及び/又はハフニウムを含み得る。
【0049】
いくつかの例では、1つ又は複数の中性子捕捉剤は、10Bベース及び/又は157Gdベースである。例えば、1つ又は複数の中性子捕捉剤は、ガンマ線が478keVのエネルギーを有するような10Bベース、並びに/或いはガンマ線が79.5keV、182keV、6.75MeV、7.86MeV及び/又は7.94MeVのエネルギーを有するような157Gdベースであり得る。
【0050】
いくつかの例では、中性子捕捉剤は、10Bベースであり、1つ又は複数の検出器は、CdTe、CZT及びLaBr:Ce検出器のいずれか1つ又は複数を含む。ビーム持続時間は、1~10μs、又はおよそ1μsであり得る。システムは、熱中性子遮蔽体を含み得、熱中性子遮蔽体は、1つ又は複数の検出器のいくつか又はすべてを遮蔽するように配置され、天然Cd、天然Gd及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を含むものである。
【0051】
他の例では、中性子捕捉剤は、157Gdベースであり、1つ又は複数の検出器は、LSO:Ce、BGO及びPbWO検出器のいずれか1つ又は複数を含む。ビーム持続時間は、10μs~100msであり得る。一次ビームが炭素イオンビームであり、ビーム持続時間がおよそ1msであってもよいし、一次ビームがヘリウムイオンビームであり、ビーム持続時間がおよそ10μsであってもよい。システムは、熱中性子遮蔽体を含み得、熱中性子遮蔽体は、1つ又は複数の検出器のいくつか又はすべてを遮蔽するように配置され、天然B及び/又は天然Hfを含む熱中性子吸収材料を含むものである。
【0052】
上記の本発明の態様の各々の様々な特徴はいずれも、適切に及び要望通りに組み合わせることができることに留意されたい。
【0053】
本発明をより明確に理解するため、ここでは、添付の図面を参照して実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】照射システムによって生成された粒子ビームによって腫瘍への照射が行われている、中性子捕捉増強粒子線療法(NCEPT)照射システムのカウチに横たわっている患者の概略図である。
図2】本発明の実施形態による線量定量化システムの概略図である。
図3】時間tに対するビーム強度I(%)の概略表現であり、図1のNCEPT照射システムのビームのマイクロ構造を描写している。
図4】本発明の実施形態による、様々な線量定量化システムをモデル化するために使用された、シミュレーションされた標的ファントム/検出器ジオメトリの概略平面図である。
図5】時間t(ns)に対するビーム強度I(%)のプロットであり、図4の線量定量化システムをテストするためにモデル化された一次ビームのマイクロ構造を描写している。
図6A】その上段において、図4の線量定量化システムをテストするために使用された12Cイオンビームのシミュレーションの深さと線量のプロファイルを示し、その下段において、12Cイオンビームを生成するために使用されたエネルギースペクトルを示す。
図6B】その上段において、図4の線量定量化システムをテストするために使用されたHeイオンビームのシミュレーションの深さと線量のプロファイルを示し、その下段において、Heイオンビームを生成するために使用されたエネルギースペクトルを示す。
図7A】多色エネルギーの12C及びHeイオンビームのそれぞれによる照射後の、中性子捕捉インサート(NCI)領域における中性子到達時間t(ns)の二次元スペクトログラムを示し、中性子エネルギーE(eV)と中性子到達時間t(ns)をプロットしたものである。
図7B図7Aの図面の簡単な説明参照。
図8A】NCIを使用しない12Cイオンビーム、NCIを使用しないHeイオンビーム、10B NCIを使用した12Cイオンビーム、10B NCIを使用したHeイオンビーム、157Gd NCIを使用した12Cイオンビーム及び157Gd NCIを使用したHeイオンビームのそれぞれに対する、ガンマ線エネルギーEγ(MeV)の関数としての光子検出器体積到達時間tγ(ns)のスペクトログラムを示す。
図8B図8Aの図面の簡単な説明参照。
図8C図8Aの図面の簡単な説明参照。
図8D図8Aの図面の簡単な説明参照。
図8E図8Aの図面の簡単な説明参照。
図8F図8Aの図面の簡単な説明参照。
図9A】NCIを使用しない12Cイオンビーム、NCIを使用しないHeイオンビーム、10B NCIを使用した12Cイオンビーム、10B NCIを使用したHeイオンビーム、157Gd NCIを使用した12Cイオンビーム及び157Gd NCIを使用したHeイオンビームのそれぞれに対する、中性子エネルギーE(MeV)の関数としての中性子検出器体積到達時間t(ns)のスペクトログラムを示す。
図9B図9Aの図面の簡単な説明参照。
図9C図9Aの図面の簡単な説明参照。
図9D図9Aの図面の簡単な説明参照。
図9E図9Aの図面の簡単な説明参照。
図9F図9Aの図面の簡単な説明参照。
図10A12Cイオンビームによる照射後の現実的な検出器モデルに対する、時間マスクΠ(t)(ns)の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれに対する、異なる検出器材料感度(上段)及びRTF(下段)を比較したプロットを示す。
図10B図10Aの図面の簡単な説明参照。
図11A】光子のみに対する、全照射時間枠(すなわち、ビーム持続時間)の範囲にわたる12Cイオンビームによる照射後の、時間マスクΠ(t)(ns)の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれの2つの最良の検出器材料に対する、感度(上段)及び真陽性/偽陽性の割合(下段)のプロットを示す。
図11B図11Aの図面の簡単な説明参照。
図12A】検出されたすべての事象に対する、全照射時間枠(すなわち、ビーム持続時間)の範囲にわたる12Cイオンビームによる標的照射後の、時間マスクΠ(t)(ns)の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれの2つの最良の検出器材料に対する、感度(上段)及び真陽性/偽陽性の割合(下段)のプロットを示す。
図12B図12Aの図面の簡単な説明参照。
図13A】高い熱中性子断面積を有する前面遮蔽体材料を使用しない場合と様々な前面遮蔽体材料(すなわちCd、Gd、B、Hf)を使用する場合の両方において現実的な検出器で記録された事象に対する、12Cイオンビームによる標的照射後の、時間マスクΠ(t)(ns)の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれに対する、感度(上段)及び真陽性/偽陽性の割合(下段)のプロットを示す。
図13B図13Aの図面の簡単な説明参照。
図14A】ホウ素NCIを使用した場合と使用しない場合の両方(図14A)、ホウ素NCIを使用しない場合(図14B)及びホウ素NCIを使用した場合(図14C)の、計数(N)と12Cイオンビームエネルギー(keV)のプロットである。
図14B図14Aの図面の簡単な説明参照。
図14C図14Aの図面の簡単な説明参照。
図15A】ホウ素NCIを使用した場合と使用しない場合の両方(図15A)、ホウ素NCIを使用しない場合(図15B)及びホウ素NCIを使用した場合(図15C)の、計数(N)とHeイオンビームエネルギー(keV)のプロットである。
図15B図15Aの図面の簡単な説明参照。
図15C図15Aの図面の簡単な説明参照。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、カウチ12に横たわっている、腫瘍14がある被検体10の概略図である。被検体10は、増強粒子線療法(NCEPT)照射システムによって生成された一次粒子(例えば、陽子、ヘリウム、炭素イオンなど)のビーム16による照射を受けている。ビーム16は、この例ではシンクロトロン加速器(図示せず)によって生成されており、治療ノズル18によって放出される。
【0056】
国際公開第2019/051557号パンフレットで説明されるように、NCEPTに従い、被検体10には、157Gd及び/又は10Bを含む組成物などのある線量の熱中性子吸収核種が投与される。組成物は、腫瘍14によって優先的に吸収されるように選択される。
【0057】
被検体における一次粒子の浸透深さの制御は、ビームエネルギー及び形状を制御し、それにより、所望の標的体積に相対的に(及び所望の標的体積内に)ビームのブラッグピークを要望通りに位置付けることによって行われる。
【0058】
次いで、被検体は、一般的には均一な持続時間である1つ又は複数の照射(又は「ビームオン」)時間枠を含み、その各々の後には、照射しない(又は「ビームオフ」)時間枠が続く、予め確立された照射プログラムに従って、所望の走査パターン、深さ、持続時間、ビームエネルギーなどで、一次粒子のビーム16による照射を受ける。これは、被検体の移動を最小限に抑えながら、照射時間枠の合間又は照射時間枠の間に、カウチ12、ひいては標的体積を移動することを含み得る。
【0059】
照射の間、ビーム16のごく一部の一次粒子は、被検体10内の原子核と非弾性衝突を起こし、その結果、短飛程の高LET荷電粒子及び中性子を含む様々な核フラグメントが発生し、それらは、被検体内の衝突点から放出され、それにより、ビーム16の経路を取り囲む領域にそれらのエネルギーが蓄積する。そのように発生した中性子の一部は、投与した組成物の熱中性子吸収核種によって吸収され、その結果、標的体積ひいては腫瘍14に照射される相対的に生物学的効果の高い高エネルギー荷電粒子が発生する。
【0060】
図2は、本発明の実施形態による線量定量化システム20の概略図であり、上記で説明されるように、シンクロトロンから抽出された一次粒子のビーム16による照射を被検体10が受けている状態で示されている。線量定量化システム20は、NCEPT照射システムと共に又はNCEPT照射システムの一部として採用されるように構成され、中性子捕捉から生じた光子と他のプロセスに起因する光子との区別を含めて、直接イオン線量と中性子捕捉による線量の両方を決定するように構成される。
【0061】
線量定量化システム20は、被検体10によって放出されたガンマ線を検出するためのガンマ線検出器22(この実施形態では、シンチレータ24及び光検出器26を含む)と、シンクロトロンからRFパルス列を受信するためのRF信号入力30とを有する。このRFパルス列は、シンクロトロンから直接来るものであり、ビームマイクロ構造を示すものである。伝送遅延はあるが、パルス列は厳密な周期性であるため、システム20の後続のトリガは、その遅延を考慮して適宜調整することができる。
【0062】
或いは、パルス構造は、一次ビームから直接抽出することができる(シンクロトロン、サイクロトロンなどからのRF信号とは対照的に)。これは、ビームがノズル18を出る際にホドスコープをビームの経路に挿入することによって達成することができる。ホドスコープは、例えば、単一のシリコン光電子増倍管に結合された光ファイバ検出器(プラスチックシンチレータを含む)を含み得る。そのような構成(検出効率は低いが立ち上がり時間が速い)の出力は、シンクロトロン又はサイクロトロンのRF信号とは無関係に、直接タイミング信号をデータ取得システムに提供するために使用することができる。
【0063】
ガンマ線検出器22は、照射に応答して(直接又は間接的に)被検体によって放出されたガンマ線を検出するように、具体的には、一次粒子のビーム16と被検体10内の原子核との衝突(これらの衝突の一部は、標的体積内で及び標的体積に隣接して起こる)によって生じる熱中性子のクラウド32において放出されたガンマ線を検出するように配置される。ビーム16は、拡大ブラッグピーク(SOBP)を有するように生成され、これは、ビーム16のエネルギーを変化させ、それにより、ブラッグピークの深さを変化させる又は拡大することによって行われる。熱中性子クラウド32内の領域34は、ビーム16の拡大ブラッグピーク(SOBP)を示す。SOBP 34は、典型的には標的体積と一致する(少なくともほぼ一致する)か又は標的体積を決定する。SOBP 34は、受動的に成形するか(すなわち、ビーム16の経路にリッジフィルタを配置することによって)、又はスライスごとに単色エネルギーの一次粒子ビームで標的体積を「ペイント」することによって動的に提供することができる。
【0064】
図2は、1つのガンマ線検出器22を描写しているが、実用的なシステムでは、システム20は、一般に、例えば、被検体10の周囲にリング状若しくは円筒状に配置されるか、又は部分的にリング状若しくは部分的に円筒状に配置される(被検体10の周囲のC字型ガントリ上に設置されるなどなど)、複数のガンマ線検出器を含むことを理解すべきである。
【0065】
ガンマ線検出器22のシンチレータ24は、対象のガンマ線エネルギーの高い検出効率を有するように選択される。これは、対象のエネルギーにおいて自己吸収が低い高密度/高原子番号のシンチレータ材料を選ぶことを通じて達成される。この実施形態では、シンチレータ24は、LSO(LuSiO:Ce)シンチレータであるが、代替の実施形態では、検出器22は、LaBr:Ceベースの検出器であり得る。
【0066】
必須ではないが、検出器22は、検出されるガンマ線の到達角度を検知することが有利である。例えば、1つ又は複数の検出器22を備えるシステム20の実施形態では、システム20を使用して、被検体に投与された中性子吸収剤の放射線トレーサアナログによって放出される放射線(到達角度を含む)を検出することによって、治療前画像を構築することができ、アナログは、意図される中性子吸収剤のものに匹敵する薬物動態を有する。例えば、中性子捕捉剤として10B-BPAの形態でホウ素が使用される際は、適切な放射線トレーサは、18F-BPA、131I-BPA、18F-FET(すべてBPAボロノフェニルアラニンアナログ)を含む。中性子捕捉剤としてGd-TPP-DOTAの形態でガドリニウムが使用される際は、適切な放射線トレーサは、Gd-TPP-DOTA(MRI造影剤)を含むか、又はGdを44Sc、177Lu又は68Gaと置き換えた放射線トレーサである。
【0067】
治療計画のために行われるこの手順では、放射線トレーサアナログは、被検体に注入され、システム20を使用して、(i)放射線トレーサの空間分布(ひいては中性子捕捉剤の予想される空間分布)、及び(ii)腫瘍、病変又は他の病理組織と非癌性又は正常組織との間で達成することができるコントラスト比が決定される。この情報は、治療計画システムに入力することができ、その結果、中性子捕捉による追加の線量を推定し、照射の間の被検体内の中性子捕捉の分布を予測することができる。最後に、システム20を使用して、中性子捕捉分布を定量化し(例えば、単一コリメート検出器では、特定の位置及び方向で、又はマルチ検出器コリメートイメージングシステムでは、体積全体で)、治療計画システムの予測と照らし合わせて検証することができる。
【0068】
同様に、複数の検出器22を備えるシステム20の実施形態は、中性子捕捉から検出されたガンマ線を使用して中性子捕捉事象の分布を推定し、正確な線量マップを提供するように構成することができる。そのような実施形態は、検出されたガンマ線の到達角度を使用して及び検出器の応答を逆投影して、それを行う。
【0069】
有利には、シンチレータ24は、中性子との相互作用に対する低い断面積、又はより正確には中性子に曝された際の放射化に対する低い断面積を有する(そのような相互作用はバックグラウンドを増加させるため)。しかし、この実施形態では、この潜在的な問題は、任意に、検出器22の前面を覆うように配置される及びこの実施形態では検出器22の側面を覆うように配置される多層中性子遮蔽体28をシステム20に含めることによって対処される(図では、遮蔽体28は、原寸に比例しないことに留意されたい)。遮蔽体材料がNCEPT治療の間に使用される中性子捕捉同位体とは異なることを条件に、中性子は、中性子捕捉ガンマ光子フルエンスを著しく減衰させることなく、高い熱中性子断面積及び高い高速中性子散乱断面積を有する遮蔽体の層によって、ほぼ完全に吸収するか又は散乱させることができる。遮蔽体28は、これらの基準に従って構成され、この実施形態では、ポリエチレン、パラフィン、カドミウム、ガドリニウム、ホウ素、炭化ホウ素及び/又はハフニウムを含み(NCEPT治療の間に使用される中性子捕捉同位体の選択による)、その厚さは、(i)中性子の大部分を遮断するか又は散乱させるほど十分に厚いが、(ii)高過ぎる割合の中性子捕捉ガンマ線(対象のガンマ線である)を吸収しない程度に薄いものであるように選択される。この実施形態の遮蔽体28は、最大で6つの層を有し、各層の厚さは、およそ1mm~2cmであるが、用途や前述の選択基準に従ってこれらの厚さを修正するか又は最適化することは容易である。その上、天然形態の遮蔽体材料(すなわち、それらの構成同位体の濃縮を伴わないもの)が企図される。それらの材料の濃縮形態(すなわち、最も吸収性又は散乱性の高い同位体で濃縮されたもの)を使用することは可能であるが、濃縮にかかる費用は、潜在的な利益によって正当化されるものではない。
【0070】
一部の用途では、システム20は、遮蔽体28を含む必要がないことに留意されたい。例えば、検出器22の中性子放射化の問題(バックグラウンド放射線を増加し得る)は、検出器が古くなるにつれて大きくなる。また、有意数の中性子が検出器22に到達し始めるのは、10ns以降である。前者が懸念されない場合、又はビームオン時間枠の開始から10ns以降に検出される事象が除外される場合は、遮蔽体28は不要であると考えられる。
【0071】
遮蔽体28は、検出器22からの中性子を拒否するのに十分な役割を果たすことが想定されるが、その代替として(又はそれに加えて)、これは、問題のある中性子が検出器22に到達する前に、その少なくとも一部を散乱させることによって行われる。これは、測定に支障をきたさないように十分な効率で対象のガンマ線を伝送するが、検出器に到達する前にそのような問題のある中性子を散乱させるように選択された適切な材料を被検体と検出器22との間に配置することによって行うことができる。適切な材料及びその寸法は、簡単な実験又はシミュレーションによって決定することができる。多くのポリマー(具体的には、低密度ポリマー)は、これらの基準を満たしている。
【0072】
検出器22の光電子増倍管26は、以下で説明されるように、パイルアップ除去回路を使用することによって、高い計数率の増強に対応できるように選択される。この実施形態では、光電子増倍管26は、シリコン光電子増倍管である。
【0073】
RFパルス列は、シンクロトロンからのビーム16がオンであるタイミング及びオフであるタイミング(すなわち、被検体10が照射を受けているか又は照射を受けていないか)を示し、その結果、照射プログラムの照射時間枠に応じてデータ収集を制御することができる。具体的には、以下でさらに詳細に説明されるように、システム20は、被検体10が照射を受けていないタイミングで(すなわち、一般に、逐次照射時間枠の合間に)データ収集が起こるように、及び各照射時間枠が完了してから事前に選択された時間が経過した後に開始するように(例えば、それぞれの照射時間枠の開始又は終了から測定される)制御する。
【0074】
また、システム20は、検出ウィンドウ開始遅延36及びタイミングゲート38も含む。タイミングゲート38は、ビームオン及びビームオフ時間枠に対する検出器22の検出事象のタイミングに基づいて、検出器からの検出事象が拒否されるタイミングを制御するように構成される(以下で詳細に論じられるように)。検出ウィンドウ開始遅延36は、これがビームオン及びビームオフ時間枠に合わせて調整されることを保証する。検出ウィンドウ開始遅延36は、前述のRFパルス列や、検出システムを通じて供給されるトリガ信号を入力として受信し、適切な信号伝播遅延をタイミングゲート38に加えるものであるが、その結果、タイミングゲート38は、その開始がそれぞれのビームオン時間枠開始と一致する、各ビームオン時間枠に対する時間マスクΠ(t)(検出事象が拒否される時間枠)を生成することができる。この時間マスクΠ(t)は、事前に選択された持続時間である。タイミングゲート38は、時間マスクΠ(t)が実施される(すなわち、検出事象が拒否される)場合は、ロー信号を出力し、そうでなければ、ハイ信号を出力する。
【0075】
いくつかの実施形態では、システム20は、データロガーとして、すなわち、すべてのガンマ線検出事象をリストモードで記録する高帯域幅パルス検出システムとして構成することができ、記録された検出事象の各々は、到達時間(すなわち、タイムスタンプ)、事象のエネルギー及び検出事象を記録した検出器のアイデンティティを含むことに留意されたい。次いで、そのような実施形態では、検出事象は、治療の提供後、オフラインで処理することができる。
【0076】
データ収集は、事前に選択されたデータ収集ウィンドウDCWの間、各ビームオン時間枠に対して継続される。データ収集ウィンドウDCWは、典型的には、各ビームオン時間枠が終了した後、対象のガンマ線が受信されるか又は効率的に検出できることが予想される(又は分かっている)時間だけ延長されるように設定され、その時間は、熱中性子(本明細書において定義されるような)が中性子捕捉剤と相互作用するタイミング及び時間長に依存する。この実施形態では、データ収集ウィンドウDCWは、それぞれのビームオン時間枠の終了から、少なくともおよそ105.8ns後、少なくともおよそ10ns後、又は105.8ns~2×10nsの後に終点を有する。これは、ビームオフ時間枠よりも実質的に大きく、その結果、データは、最終的な時間マスクΠ(t)の終了後、収集ウィンドウDCWに等しい時間が経過するまで継続して収集される。
【0077】
データ収集ウィンドウDCWは、データ収集持続時間(ビームオン時間枠が終了してから実施される)として、又はデータ収集開始及びデータ収集終了として指定できることに留意されたい。データ収集開始は、時間マスクの範囲内であってもよいが、タイミングゲート38によって時間マスクΠ(t)が実施されている間は、検出事象は拒否されるため、データ収集は実際には時間マスクΠ(t)が終了するまで開始されない。
【0078】
システム20は、パルスパイルアップリジェクタ40(デコンボリューションフィルタの形態など)を含み、パルスパイルアップリジェクタ40は、ガンマ線検出器22の出力パルスを受信し、シンチレータと関連電子機器の組み合わされたインパルス応答による入力パルス波形をデコンボリューションし、それを検出器に蓄積されたエネルギーに比例するピーク振幅を有する短いインパルスのシーケンスに変換するように構成されたアクティブ回路を有する。シンチレータからのパルスは、速い立ち上がり時間及び(比較的)遅い減衰時間(LSO検出器の例では、合計でおよそ35nsである)を呈する。従って、短い時間枠内で複数の事象が起こる場合は、それらはオーバーラップし得る(そして線形加算される)。パルスパイルアップリジェクタ40は、シンチレータ及びプリアンプ電子機器のインパルス応答のモデルを使用してこれをデコンボリューションし、パルスをディラックデルタインパルスの列(すなわち、持続時間が非常に短く、パルスの高さが蓄積エネルギーに比例するもの)に変換する。パルスパイルアップリジェクタ40の第2の出力42bは、各パルスのピークエネルギーEを示す信号を出力する。
【0079】
パルスパイルアップリジェクタ40は、システム20がオンライン処理用に設定されるか又はオフライン処理用に設定されるかにかかわらず採用される。
【0080】
システム20は、第1のANDゲート44を含み、第1のANDゲート44は、タイミングゲート38からマスク信号を受信し、且つガンマ線検出器22からパイルアップリジェクタ40を通過したパルスを受信し、タイミングゲート38からのゲート信号がローである際に受信されたパルスのみを出力する。
【0081】
システム20は、エネルギーゲートを提供するように構成された、シュミットトリガ入力を備える第1の及び第2のコンパレータデバイス46、48(標準的な線形オペアンプより高速である)を含む。それらは共に、エネルギーウィンドウ(エネルギーEからエネルギーEまで)を定義し、それにより、対象のガンマ線を選択する。即発ガンマ線は、熱中性子吸収核種による中性子捕捉から生じる。第1のコンパレータデバイス46は、その非反転入力において、ガンマ線検出器22によって出力されたパルスの最大の所望のエネルギーEを示す信号を受信し、その反転入力において、各パルスのピークエネルギーEを示す信号を受信する。第2のコンパレータデバイス48は、その非反転入力において、各パルスのピークエネルギーEを示す信号を受信し、その反転入力において、ガンマ線検出器22によって出力されたパルスの最小の所望のエネルギーEを示す信号を受信する。従って、第1のコンパレータデバイス46と第2のコンパレータデバイス48は両方とも、ガンマ線検出器22からのパルスのエネルギーEが、E及びEによって定義されるエネルギーウィンドウ内にある場合にのみ、高い出力を有する。
【0082】
システム20は、第2のANDゲート50を含み、第2のANDゲート50は、3つの入力を有し、第1のANDゲート44、第1のコンパレータデバイス46及び第2のコンパレータデバイス48の出力を受信する。結果的に、第2のANDゲート50は、データ収集タイミングウィンドウ内且つピークエネルギーウィンドウ内(すなわち、EとEとの間)にあるパルスが、ガンマ線検出器22から受信される場合にのみ、高い出力を有する。
【0083】
システム20は、第2のANDゲート50から信号を受信し、受信した信号のログを取るように構成されたデータロガー及びコントローラ52を含む。データロガー及びコントローラ52は、各マイクロパルスを治療計画と相関させることができるように、各ビームマイクロパルス(すなわち、個々のデータ収集ウィンドウの各々)内における検出数及び各ビームマイクロパルスの到達時間を記録する(これは、ビームが空間及びエネルギーにおいて段階的に変化する、ラスター走査ペンシル一次ビームが使用されるシステム20の実施形態において、より重要であり、受動散乱粒子線療法システムでは、ビームは、治療フラクションの間、同じである)。また、データロガー及びコントローラ52は、各ビームオン時間枠に対応するビームデータ(例えば、ビーム16のx、y位置及びビームエネルギーを示す)も受信し、それらのビームデータは、データロガー及びコントローラ52によって記録された検出事象をビームデータと関連付けることができる(タイムスタンプを採用することによってなど)延いては被検体内のビーム16による瞬間的な照射場所と関連付けることができる方法で格納される。
【0084】
また、データロガー及びコントローラ52は、トリガ信号を検出ウィンドウ開始遅延36に提供するようにも構成され、事前に選択される時間マスクΠ(t)及びデータ収集ウィンドウDCWの値の選択及び設定を行うようにユーザ操作が可能なものである。データロガー及びコントローラ52は、データ取得システムに組み込むことができる。データロガー及びコントローラ52(又はそのようなデータ取得システム)は、放射線量の決定を含むデータ分析を実行するように、及び/又はシステム20の一部として提供されるか又は外部のシステム/デバイスとして提供されるかにかかわらず、ログを取ったデータをデータ分析システム若しくはコンピューティングデバイス(図示せず)に送信するように、追加的に構成することができる。この実施形態では、データ分析は、データ分析システムによってオフラインで実行される。
【0085】
そのデータ分析は、データロガー及びコントローラ52によって実行されるか、前述のデータ分析システムによって実行されるか、又は別のコンピューティングデバイスによって実行されるかにかかわらず、ログを取った検出事象に基づいて、被検体が受けた放射線量(すなわち、熱中性子線量)及び/又は線量マップ(中性子捕捉分布として示されるか若しくは線量分布として示されるかにかかわらず)を決定することを伴う。これは、従来の技法を使用して行われる。例えば、ビーム16は、ラスター走査エネルギー変調ペンシルビーム(それは、上記の通り、本質的には、一度に1ボクセルずつ一次イオン線量で標的体積を「ペイント」するものである)であり得る。従って、分析は、検出事象を瞬間的なビーム位置と相関させることができるように、ビームのx、y位置及びエネルギーを検出された中性子捕捉光子と相関させることを伴う。次いで、システム20によって収集されたデータを使用して、中性子捕捉又は線量分布、及び中性子放射線量が決定される。線量は、単位質量当たりの蓄積エネルギー(Gy)として決定され、次いで、要望通りに、グレイイクイバレント(GyE)又は生物学的線量に変換される。
【0086】
有利には、この分析は、治療計画のための照射前CT又はMRI解剖学的(構造的)イメージング、中性子捕捉剤の分布の照射前推定(上記で論じられるように、PET又はSPECTイメージング及び中性子捕捉剤放射線トレーサアナログを使用して測定される)、並びに空間イオン線量分布を間接的に確認するための照射後PETイメージングを追加的に採用することができる。予想される中性子線量は、治療計画(CT又はMRI画像及び中性子捕捉剤分布推定を使用して、イオン及び中性子捕捉線量を含む、所望の線量分布を達成するビームパラメータを計算するもの)に基づいて計算される。提供される総線量は、照射後に捕捉されたPET画像(イオン線量分布の間接的な推定を与えるもの)及びシステム20によって決定された中性子捕捉分布に基づいて推定される。システム20が単一の検出器22(又は限られた数の検出器)を有する場合は、完全な(又は高解像度の)3D中性子捕捉分布の推定は不可能であり得、その場合、システム20からの結果は、治療計画からの予想される中性子捕捉分布と照らし合わせて検証される。これは、限られた投影角度から真の中性子捕捉分布の良い推定を得るために、機械学習を中性子捕捉剤分布推定及び構造情報に適用することによってなど、結果を以前の計画/結果と比較することによって容易にすることができる。
【0087】
図3は、時間tに対するビーム強度I(%)の概略表現であり、ビーム16のマイクロ構造[参考文献29、30]を描写している。図から分かるように、照射は、全照射時間枠(又は「ビーム持続時間」)の間ずっと続く繰り返しパターンを含む。パターンは、パルス繰り返し間隔PRIで繰り返される、幅PWのパルスPを有する「ビームオン」時間枠を含み、逐次「ビームオフ」時間枠は、PRI-PWの持続時間を有する。各データ収集時間枠は、上記で説明されるように、データ収集ウィンドウDCW及び時間マスクΠ(t)に従う。この例では、データ収集ウィンドウDCWは、時間マスクΠ(t)の終了時に開始する。従って、ビーム持続時間は、最初のビームオン時間枠の開始から最後のビームオン時間枠の終了までの時間枠を指す。
【0088】
上記で論じられるように、NCEPTでは、被検体10には、1つ又は複数の熱中性子吸収/捕捉核種(例えば、157Gd及び/又は10B)を含む、ある用量の組成物が投与される。その上、照射プログラムは、標的体積の場所及び性質並びに他の臨床症状によって異なり得る。大まかに言えば、システム20は、少なくともビームオン時間枠(PW)と、非中性子捕捉による即発ガンマ線が放出される時間枠(検出器の特性に応じるが、11nsであると推定される)とを加えた時間マスクを適用するように構成される。この最小時間マスクは、理想的なガンマ線検出器の性能に近い(すなわち、完璧な吸収力を有し、エネルギー分解能が無限であり、無駄時間がない)検出器に最も適しているが、実践では、時間マスクが大きいほど、より良い結果が得られるため、より望ましい。
【0089】
しかし、実践では、「高速中性子」(E>1MeV)及び「中間エネルギー中性子」(本目的では、0.4eV≦E≦1MeVとして定義される)は、潜在的には、中性子捕捉即発ガンマ検出のためのエネルギーウィンドウ(すなわち、エネルギーEからエネルギーEまで)を満たすのに十分なエネルギーを検出器22に蓄積し得る。中間エネルギー中性子は、高速中性子及び熱中性子(本目的では、E<0.4eVとして定義される)と比べて、比較的低いフルエンスで、長いタイムスケールにわたって、検出器に到達するが、検出器の感度を損なうことなく、遮蔽体28によって効果的に遮断することはできない。高速中性子に対する遮蔽は、散乱材料を使用することによって部分的に達成されるが、検出器に到達する残りの高速中性子は、ビームパルスが終了してからおよそ49又は50ns以内に到達する(ただし、検出器自体が長寿命の放射性同位体で活性化しないことを条件とする)。従って、高速中性子の検出は、最大で50nsの時間マスクΠ(t)を使用することによって大幅に低減することができ、時間マスクの増大と共に、利益が増加する。
【0090】
従って、システム20は、有利には、少なくともビームオン時間枠(PW)と、おおよその高速中性子の到達時間とを加えた時間マスクを適用するように構成される。特定の例では、好ましい時間マスクは、ビームオン時間枠(PW)と、49nsとを加えた時間マスクである。
【0091】
データ収集時間ウィンドウDCWの持続時間は、熱中性子に起因する大多数のガンマ線(上記で定義されるような)が検出器22に到達する時間枠に従って選択される。熱化には時間を要するため、これは、ビームオン時間枠の開始からおよそ12ns~10nsまでの間のウィンドウ内で起こり、そのウィンドウの外側ではほとんど何も現れないことが分かっている。従って、原理上、システム20は、ビームオン時間枠の開始から12ns~10ns又は2×10nsまでの間のデータ収集時間ウィンドウDCWを採用することができる。しかし、以下に示されるように、中性子捕捉から生じる光子の大部分は、他のプロセスによって発生する光子よりも少なくとも60ns遅れて検出器22に到達するため、システム20は、ビームオフから少なくとも60ns延長した時間マスクΠ(t)(すなわち、Δt≧PW+60ns)を適用するように構成され、図1に示される特定の例では、システム20は、Π(t)=PW+60nsの時間マスクを適用するように構成される。
【0092】
それに加えて、時間マスクΠ(t)の持続時間は、誤検出事象(本明細書では「偽陽性」と呼ばれる)の数に影響を及ぼし、この数は、全照射時間(すなわち、ビーム持続時間)、中性子吸収/捕捉剤、ガンマ線検出器22のタイプ及び遮蔽体28に使用される材料による影響も受けることが決定されている。システム20は、これらの因子を考慮し、特に、誤検出事象に対する正検出事象(本明細書では「真陽性」と呼ばれる)の高い又は最適化された割合を有するレジームで動作するように構成される。これらのレジームの例(個々のオプションをランク付けしたもの)は、表1A(炭素イオンビーム用)及び表1B(ヘリウムイオンビーム用)にリストされている。
【0093】
組成物が10Bと157Gの混合物を含む場合は、両方のガンマ線エネルギーに対してうまく機能する検出器22(例えば、LSO)が選択されることが想定されるが、この選択は、何らかの妥協が必要であることが認識されている。オプションの遮蔽体28の熱中性子遮蔽体材料も、良い選択肢が少ない(Cd又はHfなど)。最適なビーム持続時間もまた、妥協の産物である。例えば、炭素イオンビームでは、10μsのビーム持続時間は、両方の薬剤に対して許容範囲であり、ヘリウムイオンビームでは、10μsのビーム持続時間は、10Bに対しては許容範囲であり、157Gに対しては最適である。60nsのタイミング又は時間マスクΠ(t)(すなわち、各ビームオン時間枠の終了から49ns延長したもの)は、両方の薬剤に対して許容範囲である。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
或いは、システム20は、一部が10Bに対して最適化され、一部が157Gに対して最適化された、複数の検出器22(任意に、熱中性子遮蔽体28を使用する)を含み得る。
【0097】
シミュレーション例
システム20の好ましい特性は、一連のシミュレーションを使用して、2部構成で、決定及び評価が行われた。
【0098】
最初に、60mmの深さ範囲の拡大ブラッグピーク(SOBP)を有するヘリウム又は炭素イオンビームが照射される標的ファントムを含むモンテカルロシミュレーションモデルが構築された。中性子は主にビームに平行な初期運動量で発生するため[参考文献14、17]、シミュレーションされる検出器と直接相互作用する中性子の数を最小にするため、検出器は、ブラッグピークの近傍に位置決めされ、対象の領域の方向に向けて、シミュレーションされた。
【0099】
シミュレーションでは、以下の3つの標的ファントムが使用された:
i)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の固体均質ブロック;
ii)純10BインサートがSOBPの遠位端に位置するPMMAの固体ブロック;
iii)純157GdインサートがSOBPの遠位端に位置するPMMAの固体ブロック。
【0100】
各ファントムのインサート領域に入ったすべての中性子のエネルギー及び到達時間(一次粒子発生の時間に対する)がスコア化された。また、インサート領域に平行なバンドを介してファントムを出た光子の到達時間(これもまた、一次粒子発生の時間に対する)及びエネルギーもスコア化された。これらの結果に基づいて、中性子捕捉区別に適した時間マスク及びエネルギーウィンドウが決定された。
【0101】
時間マスク及びエネルギーウィンドウは、理想的な検出器に到達するすべての粒子に適用され(すなわち、完璧な吸収力を有し、エネルギー分解能が無限であり、無駄時間がないものとしてシミュレーションされた)、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性分類(検出された各事象の既知の起源をグラウンドトゥルースとする)の数が計数された。真陽性及び真陰性検出はそれぞれ、検出が中性子捕捉及び非捕捉と正しく分類されたものとして定義された。
【0102】
偽陽性は、タイミング及びエネルギー許容ウィンドウを満たしたが、中性子捕捉事象に関連がなかった検出であると定義された。偽陰性は、中性子捕捉に関連があったが、タイミング及び/又はエネルギー許容ウィンドウを満たすことができなかった検出であると定義された。前者の原因は、捕捉の前の中性子の熱化が異常に速いか又は遅いために光子の到達が遅くなり、中性子捕捉の時間分布に低確率ではあるが長い尾を引くことであり得る。エネルギー許容ウィンドウを満たすことができなかった原因は、ファントム内の放出された光子のコンプトン散乱(エネルギーが低くなり、光子の軌道が変化する)、検出器内でのコンプトン散乱(現実的な検出器モデルの場合)及びそれに続く散乱光子のエスケープ(光子のエネルギーの一部のみが検出器に蓄積される)、又は検出器内での光子以外の粒子(例えば、高速中性子、陽子若しくは他のフラグメント)の検出であり得る。
【0103】
研究の最後の部分では、現実的な検出器シミュレーションモデルを使用し、真陽性/真陰性/偽陽性/偽陰性検出について同じ評価が実行された。直接検出型CdTe、CZT(ホウ素中性子捕捉用)、LaBr:Ce、LSO(LuSiO:Ce)、BGO及びPbWOシンチレータベースの検出器(ホウ素及びガドリニウム中性子捕捉用)を含む、いくつかの代替の検出器材料が評価された。これらの検出器は、遮蔽体を使用しない状態と、いくつかの代替の熱中性子遮蔽体材料の薄層を使用した状態の両方でシミュレーションされた。
【0104】
材料及び方法
Geant4バージョン10.2.p03がすべてのシミュレーションに対して使用されたが、その理由は、粒子線療法において実験的なフラグメンテーション測定と最もよく一致することが以前に確認されているためである[参考文献18、19、20]。電磁相互作用は、Geant4の標準物理オプション3モデル(G4EmStandardPhysics_option3)を使用してモデル化し、シミュレーションに使用した他の物理モデル(ハドロン相互作用を含む)については、表2に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
図4は、シミュレーションされた標的ファントムジオメトリ60(原寸に比例しない)の概略平面図である。3つのシミュレーションされた標的ファントム62の各々は、300×300×300mmのPMMA立方体を含み、最初のものはPMMAの均質ブロックであったが、2番目及び3番目のものにはそれぞれ、純10B及び純157Gdの10mm立方体の中性子捕捉インサート(NCI)が含まれており、その中心はPMMAファントム内の深さ140mmの所に埋め込まれ(従って、以下で説明される拡散ブラッグピークの遠位端に位置する)、横方向及び垂直方向では中央に置かれた。シミュレーションで使用された材料の物理特性(元素組成及び密度を含む)は、米国国立標準技術研究所(NIST)によって定義される標準材料ライブラリに基づく[参考文献21]。
【0107】
12C及びHeの多色エネルギービーム66はそれぞれ、225~294MeV/u及び113~156MeV/uのエネルギー範囲で合成され、ファントム内の深さ85mm~145mmでほぼ平坦な生物学的線量が得られるように、拡大ブラッグピークは60mmにまで及んだ(平坦な生物学的線量を得るために使用された手順については、参考文献[1]において説明されている)。イオンビーム66は、回転対称であり、20mmのFWHMのガウスビームプロファイルを有するものであり、ファントム62の前面70の中心68で生成され、ファントムのz軸に平行に移動させた。各ビーム及びファントムの組合せに対して、10個の粒子がシミュレーションされた。ビーム66の「ビーム入射点」(すなわち、ビーム生成点)は、シミュレーション座標系の原点(0,0,0)として定義された。各イオンビーム66による標的ファントム62における蓄積エネルギーは、イオンビーム66の1/10値全幅にわたる深さの関数としてスコア化され、ビーム入射点68における蓄積エネルギーに対して正規化された。
【0108】
中性子及びガンマの特徴描写
ファントム(ii)及び(iii)の場合(すなわち、NCI 64を使用した場合)、インサート領域64に入る中性子のエネルギー及び到達時間が記録された。中性子到達時間(水平軸)と運動エネルギー(垂直軸)を示す、50個の対数間隔の時間ビン(0.1ns~10ns)及び50個の対数間隔のエネルギービン(10-5eV~1010eV)を有する、二次元スペクトログラムが構築された。各粒子に対して、入射炭素又はヘリウム粒子がファントム62の表面70で発生した瞬間に対する時間が測定された。
【0109】
検出器に入る光子及び中性子のエネルギー及び到達時間がスコア化され、エネルギー(水平軸)と光子到達時間(垂直軸)のスペクトログラムが生成された。到達した光子は、1000個の等間隔のエネルギービン(0~10MeVの範囲で、各々が10keVの幅を有する)と、100個の対数間隔の到達時間ビン(0.1ns~1010nsの範囲)とに分散された。到達した中性子は、130個の対数間隔のエネルギービン(10-10MeV~10MeVの範囲)と、100個の対数間隔の到達時間ビン(0.1ns~1010nsの範囲)とに分散された。この場合もやはり、一次粒子が発生した瞬間に対する時間が測定された。
【0110】
検出器材料、ビームオン持続時間及び遮蔽体の最適化
研究の第2の部分では、中性子捕捉インサートにおける熱中性子捕捉から生じた光子と他のプロセスに起因する光子とを区別できる精度を決定し、いくつかの代替の検出器モデルを使用した。
【0111】
図4を参照すると、理想的な検出器72は、検出器体積に入る粒子のアイデンティティ、生成プロセス、到達時間及びエネルギーを記録するように構成された単純な幾何学的体積としてモデル化された。検出器体積は立方体であり、50mm×50mm×50mmの寸法を有するものであった。検出器72は、図4に示されるように位置決めされ、その前面74の法線ベクトルは、ファントム62のSOBP領域の遠位縁の中心78に向けられた(従って、座標点(0,0,145mm)に向けられた。検出器72の前面74は、SOBPの遠位縁の中心78から47.32cmの距離に位置し、イオンビーム66に対して角度θ=60度(垂直軸又はy軸の周りで)を成すものであった。
【0112】
現実的な検出器モデルでは、理想的な検出器と同じジオメトリを使用した。表3は、現実的な検出器をモデル化する際に使用された異なる検出器材料をリストしている。10B中性子捕捉によるガンマ光子の検出には、最大エネルギー分解能を提供することを理由に、LaBr、CZT、LYSO:Ce及びCdTeが適している一方で、157Gd中性子捕捉の間に放出される、より高いエネルギーの光子の検出には、高密度のLSO:Ce、BGO及びPbWOの方がより適切である(いくつかのシンチレータ結晶又は半導体検出器が積み重なって光学的/電子的に結合され、単一の検出器が形成されたと想定された)。
【0113】
【表5】
【0114】
図5は、時間t(ns)に対するビーム強度I(%)のプロットであり、全照射時間枠において繰り返されるパターンでの最初の500ns間のビームのマイクロ構造を描写している。1μs、10μs、1ms、10ms及び100msの全照射時間枠がシミュレーションされた。
【0115】
ビームのタイミングマイクロ構造は、200nsの時間枠PW及び11nsの「ビームオン」時間枠PW(5.5%のデューティサイクル)を有する、一連のパルスPとしてモデル化された。各シミュレーションに対して、合計10の一次粒子が使用され、粒子は、各ナノスピルの間、一定の速度で周期的に注入された。検出器にエネルギーを蓄積するあらゆる粒子に対して、粒子のタイプ、生成プロセス、到達時間、総蓄積エネルギー、検出器内のエネルギー蓄積の場所がスコア化された。複数の相互作用事象(例えば、複数のコンプトン相互作用)から生じた個々のエネルギー蓄積のすべての総和が求められた。光シンチレーションプロセスはモデル化されなかった。Geant4でモデル化することは可能であるが、実行時間が数桁長くなるため、本目的では重要ではない。光検出器からの出力パルス下の面積は、蓄積エネルギーに比例すると想定された。
【0116】
イオンビーム、標的ジオメトリ及び組成物は、この研究の第1の部分と同じであったため、以前のシミュレーションで生成された即発ガンマ光子の位相空間記録(エネルギー、時間、位置及びファントム内での粒子発生の原因となるプロセスを含む)がこのシミュレーションの駆動に使用され、必要なシミュレーション時間が大幅に短縮された。
【0117】
NCI領域における中性子捕捉光子と中性子捕捉とは無関係な光子とを区別するため、研究の第1の部分で示された結果に基づいて、エネルギーウィンドウ及び時間マスクが定義された。マスクアウト間隔の間に検出器に蓄積したエネルギーは、スコア化されなかった。以下の8つの異なる時間マスクが調査された:
・ 0ns:時間マスクを適用しない;
・ 11ns:ビームオン時間枠の間のみ時間マスクを適用する;
・ 11ns+Tprompt=合計22ns:ビームオン時間枠と、即発ガンマ放射時間枠とを加えた時間マスクを適用する(研究の第1の部分の結果に基づいて決定される);及び
・ 11ns+Tprompt+Tneutron=合計30、40、50、60、70、80ns:ビームオン時間枠と、即発ガンマ放射時間枠と、中性子放射時間枠とを加えた時間マスクを適用する(研究の第1の部分の結果に基づいて決定される)。
【0118】
上記で論じられるように、各時間マスクは、各ナノスピルの開始から適用され、照射(「ビームオン」)間隔全体を含むものであった。以下の性能メトリクスは、各照射間隔、各イオンビーム(炭素、ヘリウム)及び各検出器モデル(理想的なモデルと、現実的なモデルの各々とを加えたもの)に対して計算された:
・ 検出器に到達する光子の数によって正規化される、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性検出の数として定義される感度;及び
・ 上記で定義されるような、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性検出の比率。
【0119】
(1)生の真陽性と偽陽性の感度性能メトリクス、及び(2)選択性のメトリクスである、偽陽性に対する真陽性の割合(RTF)を使用して、検出器設計の異なる態様を最適化するために、以下のような一連の個別比較が実行された。
【0120】
検出器材料の比較
性能メトリクスは、照射時間枠を固定し、様々な時間マスク間隔にわたって、異なる検出器材料の各々に対して評価された。10B NCI標的の場合は、研究の第1の部分の結果に基づいて、1μsの照射時間枠が選ばれたが、その理由は、この時間枠の後には、511keV及び2.23MeVの光子の相対数が増加し始め、それにより、バックグラウンドとホウ素中性子捕捉による478keVの光子との区別が難しくなるためである。157Gd NCI標的の場合は、照射時間枠は、絶対感度及び選択性にとってそれほど重要ではなく、1msの照射時間枠が選択された。その後、照射時間枠は、以下の通り最適化された。
【0121】
照射持続時間の比較
様々な時間マスク間隔に対して照射持続時間が感度及びRTFに及ぼす影響は、上記で特定された最高性能の材料に対して評価された。最初に、検出器にエネルギーを蓄積する光子に対してのみ行われ、次に、検出器にエネルギーを蓄積するすべての粒子に対して行われた。この比較のために選ばれた検出器は、10B NCIの場合はCdTe検出器であり、157Gd NCIの場合はLSO検出器であった。
【0122】
遮蔽体材料の比較
最高性能の検出器材料(上記を参照)(すなわち、10B NCIの場合はCdTe、157Gd NCIの場合はLSO)を利用することで、高い熱中性子断面積を有する様々な異なる前面遮蔽体材料が評価された。遮蔽体は、評価された材料の50mm×50mm×1mmの層であり、検出器の前面にのみ適用された。10B NCIを使用したファントムの場合は、潜在的な熱中性子遮蔽体材料として、(天然)ガドリニウム、カドミウム及びハフニウムが評価され、157Gd NCIを使用したファントムの場合は、(天然)ホウ素、カドミウム及びハフニウムが評価された。
【0123】
結果
図6Aは、その上段において、12Cイオンビームの深さと線量のプロファイル(入口線量に正規化されたもの)を示し、ファントムにおける深さd(mm)に対する正規化線量Dとしてプロットされている。実線の曲線は、線量を示し、破線の曲線は、予測される生物学的線量を示す。(140,0)の「x」は、NCI領域の近位面を示す。
【0124】
図6Aは、その下段において、12Cイオンビームを生成するために使用されたエネルギースペクトルを示し、ビームエネルギーE(MeV/u)に対する正規化エネルギー重量Wとしてプロットされている。
【0125】
図6Bは、その上段において、Heイオンビームの深さと線量のプロファイル(入口線量に正規化されたもの)を示し、ファントムにおける深さd(mm)に対する正規化線量Dとしてプロットされている。実線の曲線は、線量を示し、破線の曲線は、予測される生物学的線量を示す。(140,0)の「x」は、NCI領域の近位面を示す。
【0126】
図6Bは、その下段において、Heイオンビームを生成するために使用されたエネルギースペクトルを示し、ビームエネルギーE(MeV/u)に対する正規化エネルギー重量Wとしてプロットされている。
【0127】
図7A及び7Bは、多色エネルギーの12C及びHeイオンビームのそれぞれによる照射後の、NCI領域における中性子到達時間t(ns)の二次元スペクトログラムを示す(これらの例では、10Bのもの)。スペクトログラムは、中性子エネルギーE(eV)と中性子到達時間t(ns)のプロットである。各データポイントの密度は、各スペクトログラムの右側にある目盛りによって校正された、1つの一次粒子あたりの中性子の数を示す。
【0128】
図8A~8Fは、NCIを使用しない12Cイオンビーム、NCIを使用しないHeイオンビーム、10B NCIを使用した12Cイオンビーム、10B NCIを使用したHeイオンビーム、157Gd NCIを使用した12Cイオンビーム及び157Gd NCIを使用したHeイオンビームのそれぞれに対する、ガンマ線エネルギーEγ(MeV)の関数としての光子検出器体積到達時間tγ(ns)のスペクトログラムである(すべてのイオンビームは、多色エネルギーであった)。各データポイントの密度は、各スペクトログラムの右側にある目盛りによって校正された、1つの一次粒子あたりの光子の数を示す。
【0129】
図8A図8Fの各々の下部を横切るガンマ線(1nsから10~12nsまでの間に到達する)のバンド(「γ」とラベル付けされている)は、即発光子(非中性子捕捉光子)に相当する。遅延した511keVの消滅光子(図8A~8Dを参照)が示され、水素中性子捕捉による2.23MeVの光子(図8A及び8Bを参照)、ホウ素中性子捕捉による478keVの光子(図8C及び8Dを参照)及びガドリニウム中性子捕捉による7.94MeVの光子(図8E及び8Fを参照)も示されている。
【0130】
図9A~9Fは、NCIを使用しない12Cイオンビーム、NCIを使用しないHeイオンビーム、10B NCIを使用した12Cイオンビーム、10B NCIを使用したHeイオンビーム、157Gd NCIを使用した12Cイオンビーム及び157Gd NCIを使用したHeイオンビームのそれぞれに対する、中性子エネルギーE(MeV)の関数としての中性子検出器体積到達時間t(ns)のスペクトログラムである(すべてのイオンビームは、多色エネルギーであった)。各データポイントの密度は、各スペクトログラムの右側にある目盛りによって校正された、1つの一次粒子あたりの中性子の数を示す。
【0131】
検出器材料、照射持続時間及び遮蔽体の最適化
最良の時間的マスク及び検出器に対して調査が行われた。炭素イオンビームの場合は、遮蔽体を使用しない検出器と1mmのカドミウムの遮蔽体を使用した検出器の両方に対して、偽陽性に対する真陽性の割合(RTF)が最も高いという理由で、1μsの照射時間枠(すなわち、ビーム持続時間)とCdTe検出器が、ホウ素中性子捕捉インサートに対する最適な組合せであると決定された。ガドリニウム中性子捕捉インサートに対しては、この場合もやはり、遮蔽体を使用しない検出器と1mmのホウ素の遮蔽体を使用した検出器の両方に対して、RTFの値が最も高いという理由で、1msのビーム持続時間とLSO:Ce検出器が、最適な組合せであった。
【0132】
ヘリウムイオンビームの場合は、最適なビーム持続時間は、ホウ素中性子捕捉インサートに対しては、炭素イオンビームの場合と同じ(すなわち、1μs)であると決定されたが、ガドリニウム中性子捕捉インサートに対しては、最適なビーム持続時間は、1msではなく、10μsであると決定された。
【0133】
炭素イオン照射の色々な結果を図10A~13Bに示し、その各々は、その上段において、感度S(検出器に入射する光子の数に正規化されたもの)がプロットされ、その下段において、RTFがプロットされている。その上段において、四角マーカー(□)は、真陽性(T+)を示し、クロスマーカー(×)は、偽陽性(F+)を示す。
【0134】
図10A及び10Bは、検出されたすべての事象に対する、12Cイオンビームによる照射後の現実的な検出器モデルに対する、時間マスクΠ(t)(ns)の持続時間の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれに対する、異なる検出器材料感度S(上段)及びRTF(下段)を比較したプロットを示す。全照射時間枠は、1μs(図10A)及び100ms(図10B)であった。
【0135】
図11A及び11Bは、光子のみに対する、すなわち、検出器と相互作用する他の粒子(シミュレーションにおいて行うことができる)を除外して、全照射時間枠(ラベル付けされているように、1μs~100ms)の範囲にわたる12Cイオンビームによる照射後の、時間マスク持続時間の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれの2つの最良の検出器材料に対する、感度S(上段)及びRTF(下段)のプロットを示す。
【0136】
図12A及び12Bは、検出されたすべての事象に対する、全照射時間枠(ラベル付けされているように、1μs~100ms)の範囲にわたる12Cイオンビームによる標的照射後の、時間マスクΠ(t)(ns)の持続時間の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれの2つの最良の検出器材料に対する、感度S(上段)及びRTF(下段)のプロットを示す。図12Aの下段では、1msと100msの曲線はほぼ一致していることに留意されたい。
【0137】
図13A及び13Bは、高い熱中性子断面積を有する前面遮蔽体材料を使用しない場合と様々な前面遮蔽体材料(すなわちCd、Gd、B、Hf)を使用する場合の両方において現実的な検出器で記録された事象に対する、炭素イオンビームによる標的照射後の、時間マスクΔt(ns)の持続時間の関数としての、10B及び157Gd NCIのそれぞれに対する、感度S(上段)及びRTF(下段)のプロットを示す。全照射時間枠は、1μs(図13A)及び100ms(図13B)であった。
【0138】
図13Aの上段では、偽陽性のカドミウム遮蔽体検出器曲線は、大部分が、ガドリニウム及びハフニウム遮蔽体検出器曲線によって隠されている。ラベルのない曲線は、遮蔽体を使用しない検出器に相当する。図13Aの上段では、真陽性のこの曲線は、ガドリニウム遮蔽体検出器曲線のすぐ上にある。図13Bの上段では、この曲線は、ホウ素遮蔽体検出器曲線によって隠されている。
【0139】
また、ガンマ線エネルギーシグネチャは、10B熱中性子捕捉から生じる478keVのガンマ線のラインの大きさの変化を検出するのに十分に強いことも分かっている。これは、内部(すなわち、ファントム又は被検体内)で発生する熱中性子束がシミュレーションで予測されるよりも大きいことを示している。図14Aは、計数(N)と12Cイオンビームエネルギー(keV)のプロットである。この図は、同じ実験条件下の、10B NCIを使用せずに収集した経験的データ(図14B)と、10B NCIを使用して収集した経験的データ(図14Cを参照)を重ね合わせたものをプロットしている。NCIは、5枚の10Bプレートを含むものであった。
【0140】
この2つのデータセットは、一般に、ビームのエネルギー範囲にわたってほとんど差がないが、478keVのガンマ線のラインは、NCIを使用しない場合よりもNCIを使用した場合の方が明らかに大きいことに留意されたい。
【0141】
Heイオンビームでも同等の結果が得られた。図15Aは、計数(N)とHeイオンビームエネルギー(keV)のプロットである。この図もまた、同じ実験条件下の、10B NCIを使用せずに収集した経験的データ(図15B)と、10B NCIを使用して収集した経験的データ(図15Cを参照)を重ね合わせたものをプロットしている。NCIは、5枚の10Bプレート及び1つの10B立方体を含むものであった。この場合もやはり、2つのデータセットは、一般に、ビームのエネルギー範囲にわたってほとんど差がないが、478keVのガンマ線のラインは、NCIを使用しない場合よりもNCIを使用した場合の方が明らかに大きい。
【0142】
論考
NCI領域に入る中性子のエネルギー及びタイミング分布(図7A及び7Bを参照)から、中性子の到達時間が中性子のエネルギーに依存することは明らかである。高い初期運動エネルギーで生成された中性子は、熱平衡に達するには、何度も散乱しなければならず、それには時間がかかる。炭素イオンビームとヘリウムイオンビームの中性子スペクトログラムは両方とも、熱中性子が生成されてから約12ns~10nsまでの間にNCI領域に到達するという同様の特性を呈する。NCIへの一次粒子の到達と熱中性子の到達との間の時間遅延の結果として、NCI内の熱中性子捕捉プロセスによるガンマ放射は、ビームパルスが開始してから12ns~10nsまでの間に観測され始めることが予想される。
【0143】
NCIを使用しないファントム(炭素イオンビームに対する図8A及びヘリウムイオンビームに対する図8Bを参照)では、すべての即発(非中性子捕捉)光子は、一次粒子が生成されてから最初の11nsまでの間に検出器に到達した。上記で論じられるように、熱化には時間を要するため、熱中性子は、主に、12ns~10nsのウィンドウの間に現れ(2.23MeVの水素中性子捕捉ラインから分かるように)、そのウィンドウの外側では、ほとんど何も現れない。従って、熱中性子捕捉区別のための12ns~10nsのタイミングウィンドウの使用は正当化される。NCIを使用したファントム及びNCIを使用しないファントムでは、その両方において、511keVの消滅ラインは、約10nsから現れ始め、その強度は、時間が長くなり陽電子を放出するフラグメンテーション生成物が減衰するにつれて増加する(ビニングは時間方向に対数であることに留意されたい)。
【0144】
10B NCIを使用したファントム(炭素イオンビームに対する図8C及びヘリウムイオンビームに対する図8Dを参照)では、10B熱中性子捕捉による478keVラインは、熱中性子がファントム内に存在する時間枠に相当する、およそ12nsから10nsまで及ぶ時間枠の間に見える。しかし、その近くの強い511keVの陽電子消滅信号の存在は、中性子捕捉区別の交絡因子であり、候補検出器からの高いエネルギー分解能が要求される。2.23MeVの水素中性子捕捉は、コンプトン散乱により、広い範囲のより低いエネルギーのバックグラウンドにつながる。
【0145】
157Gd NCIを使用したファントム(炭素イオンビームに対する図8E及びヘリウムイオンビームに対する図8Fを参照)では、157Gd中性子捕捉による7.94MeVの光子ラインは、10B NCIラインと同じ時間ウィンドウ内(すなわち、約12ns~10ns)に見え、炭素イオンビームでは主に、12ns~10nsに見え、ヘリウムイオンビームでは、750ns~105.8nsに見える。しかし、10Bの場合とは異なり、近くに減衰ピーク又は捕捉ピークがないため、顕著な散乱バックグラウンドはない。
【0146】
すべてのファントムにおいて、検出器への中性子の到達時間は、中性子エネルギーに依存するものであった(図9A~9Fを参照)。この研究では、本目的のために以下のように定義される、検出器に到達する中性子の3つのエネルギーバンド及びタイミングバンドを考慮する:
・ 高速中性子:1MeVを上回るエネルギーを有し、中性子の大部分は、50ns経過する前に到達する;
・ 中間エネルギー中性子:0.4eV~1MeVのエネルギーを有し、中性子の大部分は、50ns~10nsで到達する;及び
・ 熱中性子:0.4eVを下回るエネルギーを有し、中性子の大部分(>99.9%)は、10~2×10nsで到達する。(熱中性子は、一般に、ボルツマン温度に基づいて、約0.025eVの平均運動エネルギーを有するものと定義される。0.4eVを下回る中性子エネルギーは、一般的に冷中性子、熱中性子及び熱外中性子と呼ばれるものを含む。しかし、当業者によって理解されるように、治療用中性子捕捉用途では、約0.5eVのカドミウムエッジがより適切な閾値として受け入れられており、このエネルギーバンドの上限として0.4eVが選択されることが知られている。)
【0147】
上記で論じられるように、高速及び中間エネルギー中性子は、潜在的には、中性子捕捉即発ガンマ検出のためのエネルギーウィンドウを満たすのに十分なエネルギーを検出器に蓄積し、それにより、偽陽性が生じ得る。これらの高エネルギーの中性子を止めるには、大量の遮蔽体材料が必要であるため、またそれにより、標的において中性子捕捉プロセスの間に放出されるガンマ光子が減衰するため、これらの中性子に対する遮蔽体は非実用的である。検出器に到達する高速中性子はビームパルスが終了してからおよそ50ns以内に到達するため(ただし、検出器自体が長寿命の放射性同位体で活性化しないことを条件とする)、高速中性子の検出は、照射後に50nsの時間マスクを使用することによって大幅に低減することができる。中間エネルギー中性子は、高速中性子及び熱中性子と比べて、低いフルエンスで、長いタイムスケールにわたって、検出器に到達する一方で、潜在的には、偽陽性をトリガするのに十分なエネルギーを蓄積し得る。中間エネルギー中性子は、高速中性子と比べて、その数がはるかに少なく、いずれにせよ、検出器の感度を損なうことなく、遮蔽体によって効果的に遮断することはできない。
【0148】
すべての理想的な光子検出器において、標的が10B NCIを含む際(図11Aを)は、22nsまで時間マスクが拡大するにつれて、RTFは増加し、その後、その割合は減少し始める。これは、非中性子捕捉即発ガンマ放出がビーム注入後(ビーム注入の終了後)11nsまでしか発生しないことが理由で、非中性子捕捉即発ガンマ放出の検出を抑えるのに22nsの時間マスクで十分であるためである。光子がコンプトン散乱を起こし、潜在的に、478keVのエネルギーウィンドウ内で検出器にエネルギーを蓄積することを理由に(図8Aを参照)、高エネルギー放射ピークでこれらの光子フルエンスが増加するため、ビーム持続時間が長くなるにつれて、RTFは減少する。157Gd NCIの場合(図11Bを参照)は、時間マスクが拡大するにつれて、RTFは増加し、40nsのマスク間隔で最大値に達する。しかし、このマスク内では真陽性及び偽陽性の絶対計数が非常に低い(すなわち、感度が低い)ため、22nsの時間マスクが、理想的な光子検出器の選択性と感度の最良の全体的なバランスをもたらす。その上、ビーム持続時間が長くなるにつれて、RTFは増加し、ビーム持続時間が1msのときに最大値に達する。これは、7.94MeVを上回る高エネルギー放射ピークがないためである。ビーム持続時間ひいては取得時間を増加することにより、偽陽性率を増加させることなく、より高い割合の中性子捕捉インサートによる光子(真陽性)を検出することができる。
【0149】
評価されたすべての物理検出器材料において、並びに10B及び157Gdの両方の中性子捕捉インサートにおいて、時間マスク持続時間が約60nsまで増加するにつれて、RTFはその最大値まで増加し、その後、その割合は横ばいになる(図12A及び12Bを参照)。高速中性子は、効果的に遮蔽することができず、検出器にエネルギーを蓄積するものは最初の60ns以内にそれを行い、それにより、偽陰性計数が増加し、RTFが減少する。10B中性子捕捉インサートを使用したファントムの場合は、中性子捕捉光電ピークを上回る初期エネルギーを有する散乱光子の優勢が増すため、ビーム持続時間が長くなるにつれて、RTFは減少する。157Gd NCIの場合は、高エネルギー光子が不足し、且つエネルギー許容ウィンドウにおいてエネルギーを蓄積できる高速中性子や中間エネルギー中性子の数が少ないため、照射時間が長くなるにつれて、RTFは増加し続ける。
【0150】
60nsの時間マスクを有する炭素イオンビームの場合(図10Aを参照)は、10B NCIを使用して最も高いRTFを達成した検出器材料は、CdTe(RTF=2.07±0.01)であり、それに続いて、CZT(RTF=1.645±0.009)であり、最後に、LaBr(RTF=1.402±0.007)であった。
【0151】
60nsの時間マスクを有する炭素イオンビームの場合(図10Bを参照)は、157Gd NCIを使用して最も高いRTFを達成した検出器材料は、LSO(RTF=5.52±0.06)であり、それに続いて、BGO(RTF=1.454±0.008)であり、最後に、PbWO(RTF=0.442±0.002)であった。10B NCIの場合とは異なり、高エネルギー光子からの散乱はなく、これは、すべての偽陽性が検出器内での中性子相互作用の結果であることを意味する。PbWO検出器は、真陽性に対する絶対感度が最も高かったが、すべての時間マスクにおいて、偽陽性率は真陽性率よりも高かった。このことは、中間エネルギー中性子に対する検出器の遮蔽が十分であり、偽陽性の割合を減らすことができれば、より競争力のある検出器材料の選択肢になり得ることを示唆している。それに加えて、RTFが最も高い検出器は、他の検出器と比べて中性子が偽陽性を引き起こす割合が最も低かったため、真陽性に対する感度が最も低かったにもかかわらず、LSO検出器であった。
【0152】
熱中性子は、そのかなりの数が、10ns後に検出器に到達し始める。熱中性子は運動エネルギーが低いため、直接的に偽陽性を引き起こすことはない。しかし、熱中性子は、検出器自体を活性化させ、それがバックグラウンド放射線の増加につながり、その結果、偽陽性が検出されることがある(放出されるガンマ放射線の波長次第で)。検出器が古くなるにつれて、この問題は徐々に大きくなることが予想されるため、検出器からの熱中性子を遮断することが望ましい。
【0153】
検出器の前面に評価された遮蔽体材料のいずれかの薄層を追加すると、10B中性子捕捉インサートを使用したファントムを使用した場合は、RTFがわずかに減少した(図13Aを参照)。これは、検出器の感応体積に到達する前の中性子捕捉ガンマ光子の減衰及び散乱がわずかに増加した結果であり、散乱光子、高速中性子及び中間中性子のバックグラウンドレベルへの影響は最小限にとどまる。
【0154】
157Gd中性子捕捉インサートの場合は、検出器にハフニウム又はホウ素前面遮蔽体を追加すると、偽陽性は主に検出器内の中性子相互作用によって引き起こされるため、ハフニウム(RTF=6.65±0.08)及びホウ素(RTF=9.3±0.1)で、RTFが増加した(図13Bを参照)。しかし、標的において157Gd NCIを用いカドミウム遮蔽体を追加すると、113Cd中性子捕捉反応において8.48MeV及び9.04MeVの高エネルギー光子が放出され、それにより、シングル及びダブルエスケープピークが7.94MeVのエネルギー許容バンドに落ちるため、RTFは非常に大幅に減少する(RTF=0.00667±0.00003)[参考文献31]。
【0155】
熱中性子遮蔽体の効果は、検出器の熱中性子放射化の問題をほぼ完全に排除する一方で、即発ガンマ検出器システムの感度及び特異性への悪影響を最小限に抑えるため(157Gd含有標的の場合のカドミウム遮蔽体を除く)、検出器の寿命を延ばすために熱中性子遮蔽体を使用することは正当化される。
【0156】
最後に、これらのシミュレーション(及び前述の論考)は、炭素イオン及びヘリウムイオンビームに焦点を当てていることに留意されたい。しかし、シミュレーションは、タイミングウィンドウを微調整するだけで、線量定量化システム20を他のビームタイプで使用することもサポートしている(単純な試行によるもの又はシミュレーションによるものにかかわらず)。これは、システム20がすべてのビームタイプに共通する原理(熱中性子捕捉による既知のエネルギーのガンマ線の検出、並びに即発ガンマ線及び熱中性子に起因する検出事象の拒否)に依拠するためである。
【0157】
同様に、これらのシミュレーション(及び前述の論考)は、10B及び/又は157Gdの形態の中性子捕捉剤に焦点を当てている。これは、被検体に害を与えることなく腫瘍又は病変部位に薬剤を到達させるという点で、現在最も優れた薬剤であるためである。しかし、システム20は、各事例において、中性子捕捉ガンマ線のエネルギー(又は複数のエネルギー)に対応して調整可能なエネルギーウィンドウを採用しているため、システム20は、他の中性子捕捉剤にも適している。同様に、検出するガンマ線に応じてガンマ線検出器22のタイプを選択し、中性子捕捉剤と区別できるように遮蔽体材料(採用する場合)を選択することは簡単なことである。
【0158】
その上、上記で示される例及びシミュレーションは、11nsのビームオン時間枠に基づくが、その理由は、これが、多くのシンクロトロンによって提供されるビームオン時間枠であるためである。この時間枠は、他のシンクロトロン又はビーム伝達装置では異なり得るが、時間マスクΔt(ns)の持続時間は、各ビームオン時間枠の終了後のマスクの時間範囲を維持するために、適宜調整するだけでよい。
【0159】
それに加えて、シミュレーションでは、RTFを最適化するパラメータの組合せのバリエーションが特定されたが、RTFの値が1.4又は1.5と低くとも、最適な線量又は線量分布ではないにせよ、許容できる結果が得られた。
【0160】
結論
これらのシミュレーションは、ビームパルス到達時間に対するエネルギーウィンドウ及び時間マスクを介して、粒子線療法の間に、10B又は157Gd中性子捕捉事象と、標的体積からの他の即発ガンマ放射線源とを区別するための方法の実現可能性を示している。
【0161】
全体として、10B NCIを含む標的の場合は、最も高いRTFを得た検出器は、60nsの時間マスク及び1μsの照射持続時間によるCdTe検出器であった。しかし、RTFの許容値は、より短い時間マスク(例えば、50nsの低さまで)で得られた。
【0162】
157Gd NCIの場合は、60nsの時間マスク及び1msのビーム持続時間によるLSO検出器が最も高いRTFを提供した(ただし、RTFの許容値は、より短い時間マスク(例えば、炭素イオンビームでは50ns又は40nsの低さまで)で得られた)。検出器の前面に薄い熱中性子遮蔽体を追加すると、ホウ素NCIを使用した場合は、感度及び選択性がわずかに低減するが、それにより、検出器に到達する前に、ほぼすべての熱中性子を吸収することができ、中性子放射化の問題を回避することができる。ガドリニウムNCIの場合は、偽陽性は検出器内の中性子相互作用によって生じるため、前面遮蔽体の追加により、RTFが増加する。
【0163】
本発明の範囲内での変更は、当業者であれば容易に行うことができる。従って、この発明は、上文で例として説明されている特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0164】
以下の特許請求の範囲及び先行する本発明の説明において、明示的な文言又は必要な意味合いによって文脈上別段の定めがある場合を除いて、「含む(comprise)」という用語又はその変形例(「comprises」若しくは「comprising」など)は、包括的な意味で、すなわち、記載される特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除しないように使用される。
【0165】
さらに、本明細書における先行技術への言及は、そのような先行技術が、あらゆる国における一般的な共有の知識の一部を形成する又は形成したことを意味することを意図するものではない。
【0166】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
【国際調査報告】