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特表2024-537263子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性子宮内システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性子宮内システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20241003BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K45/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P9/00
A61P15/00
A61P5/00
A61P35/00
A61K9/70
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521317
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022077597
(87)【国際公開番号】W WO2023057456
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2110538
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524131877
【氏名又は名称】ウォメッド
【氏名又は名称原語表記】WOMED
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】524131888
【氏名又は名称】エコール ナショナル シュペリエール ドゥ シミ ドゥ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DE CHIMIE DE MONTPELLIER
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】ギャリック,クサヴィエール
(72)【発明者】
【氏名】イッセンマン,ゴンザギュ
(72)【発明者】
【氏名】レプリンス,サロメ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA94
4C076BB30
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC11
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE23A
4C076EE24A
4C076EE49A
4C076FF31
4C084AA17
4C084MA32
4C084MA56
4C084NA12
4C084ZA36
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC03
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA22
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA76
4C206NA12
4C206ZA36
4C206ZA81
4C206ZB26
4C206ZB31
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC03
(57)【要約】
本発明は、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性子宮内システムに関し、該分解性子宮内システムは、(a)分解性のAおよびBブロックコポリマーであって、Aブロックがポリエステルであり、Bブロックが50kDa以上の重量平均分子量を有するポリ(オキシエチレン)(PEO)であり、および、エチレンオキシド単位/エステル単位のモル比が0.05~5である分解性のAおよびBブロックコポリマーと、(b)少なくとも1つのポリエステルホモポリマーと、(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含む。また、本発明は、本発明における少なくとも1つの子宮内システムと、該システムを子宮腔に挿入するための手段とを含むキットに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性の子宮内システムであって、
(a)分解性のAおよびBブロックコポリマーであって、
前記Aブロックはポリエステルであり、
前記Bブロックは、50kDa以上の重量平均分子量を有するポリ(オキシエチレン)(PEO)であり、および、
エチレンオキシド単位/エステル単位のモル比は0.05~5である、分解性のAおよびBブロックコポリマーと、
(b)少なくとも1つのポリエステルホモポリマーと、
(c)前記子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含む、
子宮内システム。
【請求項2】
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、99/1~1/99、有利には95/5~5/95、より有利には80/20~5/95である、
請求項1に記載の子宮内システム。
【請求項3】
前記AおよびBブロックコポリマーは、ABジブロックコポリマー、ならびにABAおよびBABトリブロックコポリマー、ならびにそれらの混合物、好ましくは、ABAおよびBABトリブロックコポリマー、ならびにそれらの混合物から選択される、
請求項1または2に記載の子宮内システム。
【請求項4】
前記AおよびBブロックコポリマーにおける前記Bブロックの前記重量平均分子量は、75kDa~150kDa、好ましくは80kDa~125kDa、より優先的には90kDa~115kDa、より好ましくは90kDa~110kDaである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項5】
前記AおよびBブロックコポリマーの前記エチレンオキシド単位/エステル単位の比は、0.1~4、好ましくは0.1~3である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項6】
前記Aブロックは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチロラクトン(PBL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、およびそれらのコポリマーから選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項7】
前記Aブロックは、ポリカプロラクトン(PCL)、または、有利には少なくとも50%のL-乳酸を含むポリ(乳酸)(PLA)である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項8】
前記ホモポリマー(b)は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチロラクトン(PBL)、およびポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、およびそれらの混合物から選択され、有利には、前記ホモポリマー(b)は、PLAおよび/またはPCLである、
請求項1~7のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項9】
前記ホモポリマー(b)は、25000g/mol~250000g/molの数平均モル質量を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項10】
前記子宮腔において放出するために用いられる前記有効成分は、抗感染症剤、例えば抗生物質、抗真菌剤、もしくは抗ウイルス剤、ステロイド性もしくは非ステロイド性の抗炎症剤、血管収縮剤、血管拡張剤、子宮弛緩剤、分娩誘発剤、ホルモン剤、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニスト、ならびに抗がん剤、またはそれらの混合物から選択され、有利には、NSAID、ならびにホルモン剤、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニスト、またはそれらの混合物から選択される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項11】
有効成分の含有量は、前記システムの総重量に対して0.01重量%~60重量%、好ましくは1重量%~60重量%である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項12】
前記有効成分は、前記コポリマー(a)または前記ホモポリマー(b)に共有結合していない、
請求項1~11のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項13】
前記システムは、少なくとも10日にわたって前記有効成分を放出する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項14】
前記システムは、水性環境または湿性環境における10日~12か月の滞留時間後に分解する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の子宮内システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの子宮内システムと、前記システムを子宮腔に挿入するための手段とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための新しい分解性子宮内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤痛は骨盤領域の痛みである。女性の生殖器系からの骨盤痛は、一般に、女性の月経周期の一部としての生理学的変化によって調節されている。月経困難症は、痛みのある期間または月経痙攣としても知られており、最も多い種類の骨盤痛である。月経困難症は、月経時の前または月経時に生じる痛みである。この痛みは、通常激しいものであり、脈動性痙攣もしくは鈍い痙攣、または継続的な痙攣の形態であり得る。
【0003】
月経困難症は、原発性(すなわち、関連する根本的原因がない)または続発性(すなわち、骨盤異常による)であり得る。原発性月経困難症の症状は婦人科学的な構造病理によっては説明できず、痛みは子宮収縮および子宮虚血に起因する。続発性月経困難症の症状は骨盤異常によるものである。実質的に、骨盤内臓器に影響を及ぼし得るいずれの異常またはいずれのプロセスも続発性月経困難症を引き起こし得る。続発性月経困難症の一般的な原因は、子宮内膜症(最も一般的な原因)、子宮腺筋症、および子宮筋腫を含む。さほど一般的でない原因は、先天性奇形(双角子宮、中隔子宮、膣横中隔)、卵巣嚢腫および腫瘍、骨盤内炎症性疾患、骨盤うっ血、子宮内癒着、心因性疼痛、ならびに子宮内避妊具(IUD)を含む(“Dysmenorrhoea”,JoAnn V.Pinkerton,MD,University of Virginia Health System,December 2020)。
【0004】
これまで、月経困難症を処置するための主な処置の1つは、痛みを軽減するとともにプロスタグランジンを阻害する非ステロイド性抗炎症薬剤(non-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID)を投与することからなる。NSAIDの投与は、一般に経口で数日間行われる。しかしながら、この処置の有効性は確保されておらず、他のホルモン処置、例えば、ダナゾール、プロゲスチン(例えば、レボノルゲストレル、エトノゲストレル、デポメドロキシプロゲステロンアセテート)、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、またはレボノルゲストレル放出IUDなどが、月経困難症の症状を低下させ得る。
【0005】
かなりの数の患者にとって、既存の処置では、症状や、とりわり痛みの軽減が不十分である。さらに、薬剤は局所ではなく経口で投与されるので、投与される用量が一般に多く、望ましくない副作用、例えば消化器における様々な重篤度の副作用(悪心、胃痛または胸やけ、潰瘍または胃腸出血)などを引き起こす。これは、特定のまれな状況において、頭痛、アレルギー反応(皮疹、喘息)、および腎不全の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、月経困難症の症状、とりわけ痛みをよりよく軽減しながら、侵襲的でなく、望ましくない副作用が少ないことで、患者の子宮を保護する、代替治療が継続的に求められている。
【0007】
代替治療の例として、ホルモン、とりわけレボノルゲストレルなどの活性化合物を放出する子宮内システムが存在する。しかし、このシステムは、永続的なインプラントであり、約5年間の放出を可能にし、剛性であって、これを取り除くために医療専門家の介入を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この状況において、本発明者らは、これらの求めに応える子宮内システムを開発し、とりわけ、子宮腔に容易に挿入することができ、子宮腔において膨潤して排出されることなくそれ自体で展開し、子宮頸を通って自然に排出できるように制御された方法で分解し、子宮壁の領域において有効成分を数日または数か月間にわたって持続的に放出することができる子宮内システムを開発した。
【0009】
特に、本発明者らは、ポリエステルホモポリマーと組み合わせた、ポリ乳酸(PLA)またはポリカプロラクトン(PCL)などのポリエステルのブロック、およびポリ(オキシエチレン)(PEO)のブロックに基づいたコポリマーを使用することによって、子宮腔において長時間使用すること、およびその後に子宮頸を通して自然に排出することに特に適した膨潤および再吸収の特性を組み合わせた材料を作製することが可能になることを発見した。
【0010】
したがって、本発明者らは、有効成分をさらに含むこのような材料から、分解性子宮内システムを開発し、これは、「乾燥」形態において、子宮頸部から容易に挿入できる寸法を有し、子宮腔に入ると、子宮液を吸収し、子宮腔において展開し、子宮壁上または子宮壁近くに有効成分を直接的に放出する。子宮腔において有効成分を直接的に放出することによって、経口または全身性で投与される薬剤に比べて少ない有効成分の量を必要とする局所処置が可能となり、そのため、望ましくない副作用のリスクを低下させることが可能となる。
【0011】
さらに、本発明における材料は、有効成分の持続的な放出を可能にする。具体的には、本発明における子宮内システムは、子宮腔に導入された後、有利には10日~12か月の期間にわたって、子宮腔において有効成分を放出することが可能である。さらに、本発明におけるシステムは、子宮腔において展開して膨潤した後、有利には10日~12か月の期間にわたって子宮頸部を通って排出されることを防ぐ寸法を有する。
【0012】
特に、本発明における材料は、システムの投与後の1日目に突発的効果をもたらし、その後に有利には10日および12か月の間に継続的に放出するように、子宮腔において有効成分の持続的な放出を可能にする。このような放出プロファイルは、例えば、投与直後に痛みを有効に軽減し、その後の数日において鎮痛および抗炎症効果を維持することを可能にする。
【0013】
さらに、子宮腔における/子宮腔からの本発明における子宮内システムの崩壊および除去の時間は、一般に、有利には10日~12か月であり、これによって、望ましい期間にわたって望ましい十分な量の有効成分を放出するように、子宮腔における子宮内システムの十分な滞留時間を確保することが可能になる。
【0014】
このため、本発明の1つの目的は、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性の子宮内システムであって、該分解性の子宮内システムは、
(a)分解性のAおよびBブロックコポリマーであって、
Aブロックはポリエステルであり、
Bブロックは、50kDa以上の重量平均分子量を有するポリ(オキシエチレン)(PEO)であり、および、
エチレンオキシド単位/エステル単位のモル比は0.05~5である、分解性のAおよびBブロックコポリマーと、
(b)少なくとも1つのポリエステルホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含む。
【0015】
また、本発明は、本発明における少なくとも1つの子宮内システムと、該システムを子宮腔に挿入するための手段とを含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、特にヒトの子宮腔における使用に適した、台形フィルムの形態である本発明における分解性子宮内システムの模式図である。
図2図2は、本発明における分解性子宮内システムを子宮腔に挿入するための手段を含む、本発明におけるキットの例の実施形態の長手方向断面模式図である。
図3図3は、本発明における分解性子宮内システムからの経時におけるin vitroのフルルビプロフェン放出の図である。
図4図4aおよび図4bは、in vitroの分解条件下における分解の24時間後(図4.a)および分解の15日後(図4.b)における、フィルム形態の本発明における分解性子宮内システムの写真を示す。
図5図5は、トリブロックABA混合物およびホモポリマーPCLから構成されるABA60/40PCLおよびABA40/60PCLフィルム、ならびに、トリブロックABA単独から構成されるABA100/0PCLフィルムから、経時においてin vitroで放出された、フルルビプロフェンの累積パーセンテージの変化を示す。
図6図6は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成されるABA30/70PCL/PLA50およびABA20/80PCL/PLA50フィルムから、経時においてin vitroで放出された、フルルビプロフェンの累積パーセンテージの変化を示す。
図7図7は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成される、1,000μmおよび2,000μm厚のABA6/94PCL/PLA50+30%Fフィルムから、経時においてin vitroで放出された、フルルビプロフェンの累積パーセンテージの変化を示す。
図8図8は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成される、1mm厚フィルムのABA20/80PCL/PLA50+20%FおよびABA6/94PCL/PLA50+30%Fから、経時においてin vitroで放出された、フルルビプロフェンの累積パーセンテージの変化を示す。
図9図9は、ラットの子宮角に留置した後の様々な時間(11時間、25時間、15日目、28日目、および56日目)におけるABA20/80PCL/PLA50+20%Fフィルムの質量減少の変化を示す。
図10図10は、「ABA6/94PCL/PLA50+30%F」フィルムの留置後にラットの子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量(11時間、25時間、15日目、28日目、および56日目)、ならびに、フルルビプロフェン経口投与後に子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量(11時間、25時間、および15日目)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性子宮内システムであって、特に、医療分野における使用、および特に、雌性哺乳動物、とりわけ女性の骨盤痛および/または婦人科障害の処置に適した、機械的および化学的特性を有するシステムを開発した。具体的には、子宮内システムを形成するために使用されるポリマー組成物の膨潤および展開特性は、有効成分と組み合せて、月経困難症などの女性の婦人科障害を持続的に確実に処置するために子宮腔において使用することが可能であることを意味する。
【0018】
分解性子宮内システム
本発明の1つの目的は、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための分解性の子宮内システムであって、該分解性の子宮内システムは、
(a)分解性のAおよびBブロックコポリマーであって、
-Aブロックはポリエステルであり、
-Bブロックは、50kDa以上の重量平均分子量を有するポリ(オキシエチレン)(PEO)であり、および、
エチレンオキシド単位/エステル単位のモル比は0.05~5である、分解性のAおよびBブロックコポリマーと、
(b)少なくとも1つのポリエステルホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含む。
【0019】
本発明の文脈において、「x~y」という表現は、xおよびyの値が含まれることを意味する。
【0020】
本発明によれば、「ポリエステル」という用語は、主鎖の繰り返し単位がエステル官能基を含み、医療分野において使用できる任意のポリマーを意味する。とりわけ、ポリエステルは、脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリブチロラクトン(PBL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、およびそれらのコポリマーなどを意味すると理解される。
【0021】
好ましい一実施形態において、ポリエステル(Aブロック)は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびそれらのコポリマーから選択される。好ましくは、AブロックのポリエステルはPLAおよびPCLから選択される。
【0022】
好ましくは、ポリエステルは非架橋の形態である。
【0023】
ポリ(乳酸)は、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、またはポリ(D,L-乳酸)であってもよい。有利には、(D,L-乳酸)(PDLLA)が使用される。この場合、ポリマーは、少なくとも50mol%のL-乳酸を優先的に含み、特に、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のL-乳酸を含み得る。具体的には、D-乳酸に対するL-乳酸のパーセンテージを変更することによって、AおよびBブロックコポリマーの分解の速度を変更することが可能である。L-乳酸のレベルの増加によって、コポリマーの分解速度を遅くすることが可能になる。本発明の特定の実施形態において、組成物はAブロックとして100%のPLLAを含む。
【0024】
本発明の文脈において、ポリ(オキシエチレン)(PEO)は、典型的に、エチレンオキシドモノマーまたはエチレングリコールモノマー、好ましくはエチレンオキシドモノマーから作製される線状ポリエーテルである。したがって、本発明によれば、Bブロックはまた、50kDa以上の高分子量を有する、とりわけ、以下に定義されるような分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)であり得る。
【0025】
本発明によれば、Bブロックに使用されるポリ(オキシエチレン)(PEO)は、コポリマーにおけるPEOの総分子量が50kDa以上になるように、高分子量を有する。本発明の文脈において、「分子質量」および「分子量」という用語は、言及しない限り、重量平均分子量(Mw)を意味するように等しく使用される。本発明によれば、Mwは、分析用溶媒としてジメチルホルムアミド中において、標準範囲のポリ(エチレングリコール)を使用して行われるサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0026】
有利には、AおよびBブロックコポリマーにおけるPEOの総分子量は50kDa~300kDaである。例えば、PEOブロックは、50kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、105kDa、110kDa、115kDa、120kDa、125kDa、150kDa、200kDa、225kDa、250kDa、275kDa、または300kDaの分子量を有する。特定の一実施形態において、使用されるPEOブロックは、75kDa~150kDa、優先的には80kDa~125kDa、より優先的には90kDa~115kDa、より好ましくは90kDa~110kDaの分子量を有する。特定の一実施形態において、使用されるPEOブロックは、95kDa~105kDaの分子量を有する。
【0027】
本発明によれば、AおよびBブロックコポリマーに使用されるPEOブロックは、有利には、クロロホルム中、25℃において、1g/lの濃度で、ウベローデ型キャピラリー粘度計によって測定したとき、0.04mg/ml~0.6mg/ml、優先的には0.08mg/ml~0.5mg/ml、より優先的には0.1mg/ml~0.3mg/mlのインへレント粘度を有利には有する。
【0028】
有利には、AおよびBブロックコポリマーは、ABジブロックコポリマー、またはABAもしくはBABトリブロックコポリマー、またはそれらの混合物、とりわけ、[ABAおよびBAB]、[ABおよびABA]、[ABおよびBAB]、[ABAおよびBABおよびAB]から選択される。好ましい一実施形態において、AおよびBブロックコポリマーは、ABAまたはBABトリブロックコポリマーから選択され、優先的にはABAトリブロックコポリマーである。
【0029】
本発明によれば、ABおよび/またはABAコポリマーにおいて、各PEOブロック(Bブロック)は、50kDa以上、有利には50kDa~300kDa、優先的には75kDa~150kDa、好ましくは80kDa~125kDa、より優先的には90kDa~115kDa、より好ましくは90kDa~110kDa、またはさらには95kDa~105kDaの分子量を有する一方、BABコポリマーにおいて、上述のコポリマーにおけるPEOブロックの分子量の合計は、50kDa以上、有利には50kDa~300kDa、優先的には75kDa~150kDa、好ましくは80kDa~125kDa、より優先的には90kDa~115kDa、より好ましくは90kDa~110kDaの間、またはさらには95kDa~105kDaである。
【0030】
本発明の文脈において、コポリマー(a)におけるエチレンオキシド単位/エステル単位のモル比は、本明細書においてEO/LA比とも呼ばれ、AおよびBブロックにおける繰り返し単位のそれぞれのモル比を表す。BブロックはPEOであり、繰り返し単位はエチレンオキシド(「エチレンオキシド単位」またはEO)である一方、Aブロックの繰り返し単位(「エステル単位」)は乳酸単位などのカルボン酸である。本発明によれば、AおよびBブロックコポリマーにおけるEO/LA比は、0.05~5、有利には0.1~4、好ましくは0.1~3である。EO/LA比は、コポリマーの重水素化クロロホルムにおけるプロトンNMR(核磁気共鳴)スペクトルから測定され、PLA-PEO-PLAコポリマーの特徴的なピークの化学シフト(CH(PLA):5.1ppm、CH(PEO):3.5ppm、CH(PLA):1.5ppm)を特定することが可能である。本発明によれば、EO/LA比を制御することによって、子宮内システムの膨潤および展開特性、およびまた、分解時間を制御することが可能となる。典型的に、EO/LA比が低いほど分解時間は長くなる。
【0031】
本発明によれば、「水性媒体」は、生物学的流体のオスモル濃度に類似したオスモル濃度を有する媒体を指す。水性媒体としては、生物学的流体の代表とみなされるリン酸緩衝食塩水(PBS)が一般的に使用される。
【0032】
本発明によれば、「湿性媒体」は、水性媒体と同等の媒体、すなわち生物学的流体のオスモル濃度に類似したオスモル濃度を有する媒体を指すが、湿性媒体は液体ではない。子宮腔は非液体湿性媒体として特徴づけられ得る。
【0033】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、ABAトリブロックコポリマーを含み、AブロックはPDLLAまたはPCLであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である。
【0034】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、ABAトリブロックコポリマーを含み、Aブロックは50%~100%のL-乳酸(PLA50-PLA100)を含むPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である。
【0035】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、ABAトリブロックコポリマーを含み、Aブロックは80%~100%のL-乳酸(PLA80-PLA100)を含むPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である。
【0036】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、ABAトリブロックコポリマーを含み、Aブロックは少なくとも90%のL-乳酸を含むPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である。
【0037】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、ABAトリブロックコポリマーを含み、Aブロックはポリカプロラクトン(PCL)であり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である。
【0038】
本発明におけるAおよびBブロックコポリマーは、当業者に知られている任意のブロックコポリマー合成方法によって得ることができる。例えば、ABA型コポリマーは、Bブロックの末端からの連鎖重合によって得られ得る。典型的に、オクタン酸すずなどの触媒の存在下において、PEOブロックの末端ヒドロキシルによって開始される開環重合が行われる。この重合は、溶媒の非存在下または存在下において行うことができる。BAB型コポリマーは、例えば、メトキシ-PEOをポリエステル鎖にカップリングさせることによって調製され得、その鎖の2つの末端はカルボン酸官能基である。このような「二官能基を持つ」ポリエステルは、例えばポリエステル鎖を無水コハク酸または無水アジピン酸で処理することによって得られる。
【0039】
本発明の文脈において、分解性子宮内システムはまた、少なくとも1つのポリエステルホモポリマー、とりわけ少なくとも1つの分解性ポリエステルホモポリマーを含む。本発明におけるシステムに少なくとも1つのポリエステルホモポリマーを添加することによって、システムの放出特性および分解特性を向上することが可能になり、とりわけ、有効成分の放出時間を延長すること、ならびに、システムの分解および子宮頸部を通しての排出を遅延することが可能になる。有利には、ポリエステルホモポリマー(b)は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチロラクトン(PBL)、およびポリヒドロキシアルカノエート(PHA)から、有利にはポリ(乳酸)(PLA)およびポリカプロラクトン(PCL)から選択される。特定の一実施形態において、分解性子宮内システムは、上述のリストから選択される1つまたは2つのポリエステルホモポリマーを含む。例えば、分解性子宮内システムは、ホモポリマー(b)としてPLAおよび/またはPCLを含み得る。
【0040】
有利な一実施形態において、ポリエステルホモポリマー(b)のモル質量は、本発明における子宮内システムに望まれる放出および分解性プロファイルを得るように選択される。例えば、ポリエステルホモポリマー(b)のモル質量が高いほど、本発明におけるシステムの分解および子宮頸部を通しての排出の前の期間が長くなり、放出がより持続的になる。有利には、ポリエステルホモポリマー(b)は、25000g/mol~150000g/mol、好ましくは50000g/mol~125000g/mol、とりわけ50000g/mol~100000g/mol、特に80000g/mol~100000g/molの数平均モル質量を有する。ポリエステルホモポリマー(b)の数平均モル質量は、分析用溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)またはジメチルホルムアミド(DMF)中において、ポリスチレンまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)の標準物質を用いて行われるサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0041】
特定の一実施形態において、ポリエステルホモポリマー(b)は、25000g/mol~150000g/mol、好ましくは50000g/mol~125000g/molの数平均モル質量を有するポリ(乳酸)(PLA)ホモポリマーである。
【0042】
他の特定の実施形態において、ポリエステルホモポリマー(b)は、25000g/mol~150000g/mol、好ましくは50000g/mol~125000g/molの数平均モル質量を有するポリカプロラクトン(PCL)ホモポリマーである。
【0043】
他の特定の実施形態において、ポリエステルホモポリマー(b)は、ポリカプロラクトン(PCL)ホモポリマーとポリ(乳酸)(PLA)ホモポリマーとの混合物であり、該ホモポリマーは25000g/mol~150000g/mol、好ましくは50000g/mol~125000g/molの数平均モル質量を有する。
【0044】
本発明におけるポリエステルホモポリマー(b)は、当業者に知られている方法に従って、例えば触媒の存在下における重縮合または開環重合方法によって調製される。例えば、PCLは、触媒を用いたε-カプロラクトンの開環重合によって調製され得る。同様に、PLAは、触媒の存在下におけるラクチドの重縮合または開環重合によって調製され得る。
【0045】
本発明の文脈において、AおよびBブロックコポリマー(a)およびホモポリマー(b)は、本発明におけるシステム内に共存するが、一緒に反応しないか、または一緒に架橋しない。AおよびBブロックコポリマー(a)とホモポリマー(b)との混合は、当業者に知られている任意の手段によって、例えば、一般的な溶媒(例えばジクロロメタン)中においてコポリマーおよびホモポリマーの粉末を可溶化し、その後に溶媒を蒸発させるステップが続くこと、またはホモポリマーおよびコポリマーの粉末を冷却もしくは加熱混合(30℃~190℃の温度)することによって、行われ得る。
【0046】
本発明の文脈において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には99/1~1/99である。特に、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には、98/2~2/98、より具体的には97/3~3/97、より具体的には96/4~4/96である。本発明の文脈において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には95/5~1/99である。本発明の文脈において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には95/5~5/95である。本発明によれば、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比はまた、本発明における子宮内システムに望まれる放出および分解性プロファイルを得るように選択される。例えば、この重量比が低いほど、本発明におけるシステムの分解および子宮頸部を通しての排出の前の期間が長くなる。したがって、短期間(すなわち、およそ10日~30日)にわたる持続的な放出システムを得るために、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には、95/5~50/50、特に90/10~50/50、特に80/20~50/50である。この実施形態において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、例えば、95/5、90/10、85/15、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、または50/50であり得る。短期間(すなわち、およそ10日~30日)にわたる持続的な放出システムを得るために、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には、99/1~50/50、特に98/2~50/50、特に97/3~50/50、特に96/4~50/50である。この実施形態において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、例えば、96/4、97/3、98/2、または99/1であり得る。
【0047】
同様に、より長い期間(すなわち、およそ30日~12か月)にわたる持続的な放出システムを得るために、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には、50/50~5/95、特に50/50~10/90、特に50/50~20/80である。この実施形態において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、例えば、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80、15/85、10/90、または5/95であり得る。より長い期間(すなわち、およそ30日~12か月)にわたる持続的な放出システムを得るために、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比はまた、有利には、50/50~1/99、特に50/50~2/98、特に50/50~3/97、特に50/50~4/96であり得る。この実施形態において、コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、例えば、4/96、3/97、2/98、または1/99であり得る。
【0048】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、
(a)ABAトリブロックコポリマーであって、AブロックはPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である、ABAトリブロックコポリマーと、
(b)PLAホモポリマーおよび/またはPCLホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含み、
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には50/50~1/99である。
【0049】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、
(a)ABAトリブロックコポリマーであって、AブロックはPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である、ABAトリブロックコポリマーと、
(b)PLAホモポリマーおよび/またはPCLホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含み、
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には50/50~5/95である。
【0050】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、
(a)ABAトリブロックコポリマーであって、AブロックはPDLLAであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である、ABAトリブロックコポリマーと、
(b)PLAホモポリマーおよび/またはPCLホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含み、
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には95/5~50/50である。
【0051】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、
(a)ABAトリブロックコポリマーであって、AブロックはPCLであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である、ABAトリブロックコポリマーと、
(b)PLAホモポリマーおよび/またはPCLホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含み、
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には50/50~5/95である。
【0052】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、
(a)ABAトリブロックコポリマーであって、AブロックはPCLであり、Bブロックは90kDa~110kDaの分子量を有するPEOであり、EO/LAモル比は0.05~5、好ましくは0.1~3である、ABAトリブロックコポリマーと、
(b)PLAホモポリマーおよび/またはPCLホモポリマーと、
(c)子宮腔において放出するために用いられる少なくとも1つの有効成分とを含み、
コポリマー(a)/ホモポリマー(b)の重量比は、有利には95/5~50/50である。
【0053】
本発明の文脈において、子宮腔において有効成分を持続的に放出するための子宮内システムは、上述のようなAおよびBブロックコポリマー、ポリエステルホモポリマー、ならびに有効成分を含み、該有効成分は子宮腔において放出するために用いられる。
【0054】
好ましい一実施形態において、本発明におけるシステムでは、有効成分は、コポリマー(a)またはホモポリマー(b)に共有結合していない。
【0055】
本発明の文脈において、子宮腔において放出するために用いられる有効成分は、有利には、雌性哺乳動物、とりわけ女性の骨盤痛(月経困難症、子宮内膜症、もしくは子宮腺筋症など)、または婦人科障害(子宮筋腫、子宮内膜がん、子宮内膜着床能低下、薄い子宮内膜、感染症、出血(月経過多、子宮出血)、がんの副作用、老化、閉経、もしくは膣乾燥など)の処置または予防のための有効成分である。より有利には、有効成分は、抗感染症剤、例えば抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤、ステロイド性または非ステロイド性の抗炎症剤、血管収縮剤、血管拡張剤、子宮弛緩剤、分娩誘発剤、ホルモン剤、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニスト、ならびに抗がん剤から選択される。特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、上述の少なくとも2つの有効成分の組合せを含み得る。優先的には、本発明におけるシステムにおいて使用される有効成分は、水性媒体または湿性媒体中にあるとき、システムの外部に拡散することができる。
【0056】
本発明の文脈内において選択され得る抗感染症有効成分の例は、クロルヘキシジン、ドキシサイクリン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、アンピシリン、アモキシシリン、メトロニダゾール、ニスタチン、ミコナゾール、シドホビル、およびイミキモドを含む。
【0057】
本発明の文脈内において選択され得る非ステロイド性抗炎症(NSAID)有効成分の例は、アミノアリールカルボン酸誘導体、例えば、エンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート、およびトルフェナム酸など;アリール酢酸誘導体、例えば、アセメタシン、アセクロフェナク、アンフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、グルカメタシン、イブフェナク、インドメタシン、イソフェナシン(isofenacine)、イソフェゾラシン(isofezolacine)、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、およびゾメピラクなど;アリール酪酸誘導体、例えば、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、およびキセンブシンなど;アリールカルボン酸、例えば、クリダナク、ケトロラク、およびチノリジンなど;アリールプロピオン酸誘導体、例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセンなど;ピラゾール、例えば、ジフェナミゾール、およびエピリゾールなど;ピラゾロン、例えば、アパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、スキシブゾン、およびチアゾリノブタゾンなど;サリチル酸誘導体、例えば、アセトアミノサロール、アスピリン、ベノリレート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニサル、エテルサレート、フェンドサール、ゲンチジン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、1-ナフチルサリチレート、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセトアミド、サリチルアミンo-酢酸、サリチル硫酸、サルサレート、およびスルファサラジンなど;チアジンカルボキサミド、例えば、ドロキシカム、イソキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、およびテノキシカムなど;ε-アセトアミドカプロン酸、s-アデノシルメチオニン、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン、オキサセプロール、パラニリン、プロカゾン、プロキサゾール、チアプロフェン酸、ロフェコキシブ、セレコキシブ、パレコキシブ、およびテニダップなど;ヒドロキシクロロキン;およびそれらの薬学的に許容される塩およびエステル;ならびにそれらの組合せを含む。
【0058】
本発明の文脈内において選択され得るステロイド性抗炎症(SAID)有効成分の例は、ブデソニド、トリアムシノロン、コルチバゾール、フルチカゾン、モメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、アムシノニド、およびジフルプレドネートを含む。
【0059】
本発明の文脈内において選択され得る血管収縮有効成分の例は、ノルエフェドリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニルトロキサミン、プソイドエフェドリン、エフェドリン、フェノキサゾリン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、およびチマゾリンを含む。
【0060】
本発明の文脈内において選択され得る血管拡張有効成分の例は、クエン酸シルデナフィル、三硝酸グリセリン、ニトログリセリン、およびニフェジピンを含む。
【0061】
本発明の文脈内において選択され得る子宮弛緩(抗収縮または子宮収縮抑制)有効成分の例は、アトシバン、リトドリン、サルブタモール、およびテルブタリンを含む。
【0062】
本発明の文脈内において選択され得る分娩誘発(または子宮収縮)有効成分の例は、メチルエルゴメトリン(methylergomatrine)、オキシトシン、ジノプロストン、スルプロストン、ゲメプロスト、およびミソプロストールを含む。
【0063】
本発明の文脈内において選択され得るホルモン、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニストの例は、エストラジオール、レボノルゲストレル、ゲストデン、ドロスピレノン、ノルゲスチメート、GnRHアゴニスト(例えば、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ナファレリンなど)、GnRHアンタゴニスト(例えば、セトロチド、ガニレリクスなど)、メノトロピン、ウロフォリトロピン(urofillitropine)、ダナゾール、メドロキシプロゲステロン、酢酸ノルエチステロン、ジエノゲスト、メゲストロール、タモキシフェン、および酢酸ウリプリスタルを含む。
【0064】
本発明の文脈内において選択され得る抗がん剤の例は、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、カペシタビン、ペメトレキセド、およびトポテカンを含む。
【0065】
本発明の文脈において、子宮腔において放出するために用いられる有効成分はまた、選択的プロゲステロン受容体調節物質、例えば、ミフェプリストン、アソプリスニル、オナプリストン、および酢酸ウリプリスタルなどであり得る。
【0066】
好ましい一実施形態において、使用される有効成分は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、ならびに、ホルモン剤、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニストから、有利にはNSAIDから選択される。本発明の文脈内において特に好ましいNSAIDは、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、アスピリン、ナプロキセン、ケトロラク、チアプロフェン酸、メフェナム酸、テノキシカム、ピロキシカム、メロキシカム、ロフェコキシブ、セレコキシブ、パレコキシブ、フェノプロフェン、アルミノプロフェン、ヒドロキシクロロキン、およびインドメタシンから選択され、好ましくはフルルビプロフェンである。
【0067】
有利には、本発明における子宮内システムの有効成分の含有量は、システムの総重量に対して0.01重量%~60重量%、好ましくは1重量%~60重量%である。特に、本発明における子宮内システムの有効成分の含有量は、有利には、システムの総重量に対して10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~50重量%、特に30重量%~50重量%である。
【0068】
特定の一実施形態において、有効成分をNSAIDから選択するとき、本発明における子宮内システムの有効成分の含有量は、システムの総重量に対して1重量%~60重量%、好ましくは10重量%~50重量%、特に20重量%~50重量%である。
【0069】
他の特定の実施形態において、有効成分をホルモン、ホルモン類似体、ホルモンアゴニスト、およびホルモンアンタゴニストから選択するとき、本発明における子宮内システムの有効成分の含有量は、システムの総重量に対して0.01重量%~60重量%、好ましくは0.1重量%~50重量%、特に0.5重量%~40重量%である。
【0070】
本発明における子宮内システムの調製は、当業者に知られている任意の手段によって、とりわけ、コポリマー(a)およびホモポリマー(b)を含むポリマーマトリックスの形成時または形成後に、所望の有効成分を組み込むことによって行うことができる。
【0071】
他の特定の実施形態によれば、本発明におけるシステムは、当業者に知られている手段によって、とりわけ、
-ポリマーマトリックスのベースポリマー(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))に、少なくとも1つの有効成分を含む溶液を含浸/膨潤させること、
-ポリマーマトリックスのベースポリマー(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))、および有効成分の乾燥粉末を混合すること、
-ポリマーマトリックスのベースポリマー(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))、および有効成分の粉末の融解または軟化によって混合すること、
-ポリマー(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))の溶液と、有効成分の粉末とを混合して、懸濁液または溶液を得ること、ならびに、
-有効成分の溶液と、ポリマーマトリックスのベースポリマー(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))の粉末とを混合して、懸濁液または溶液を得ること、の手段の1つによって、ポリマーマトリックスの形成時に、有効成分を組み込むことによって調製することができる。
【0072】
その後、本発明におけるシステムは、当業者に知られている手段によって、とりわけ、ポリマーマトリックス(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))における有効成分を含む、先のステップにおいて得られるような分散物から、ホットプレス、ホットインジェクション、押出成形、例えばジクロロメタンを使用した溶媒蒸発、エレクトロスピニング、成形または3D印刷によって形成することができる。
【0073】
特定の一実施形態によれば、ポリマーマトリックスの形成は、当業者に知られている任意の手段によって、例えば、押出成形、例えばジクロロメタンを使用した溶媒蒸発、ホットプレス、ホットインジェクション、エレクトロスピニング、成形または3D印刷によって行われ得る。その後、本発明におけるシステムは、
-ポリマーマトリックス(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))に、少なくとも1つの有効成分を含む溶液または懸濁液を含浸/膨潤させること、
-少なくとも1つの有効成分、および任意で水溶性賦形剤を含む溶液または懸濁液を使用して、ポリマーマトリックス(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))をコーティングして、ポリマーマトリックスの表面にコーティングを形成すること、または、
-ポリマーマトリックス(コポリマー(a)およびホモポリマー(b))の表面に、有効成分および水溶性賦形剤を含む粉末を堆積させ、その後、ポリマーマトリックスと粉末とをホットプレスし、ポリマーマトリックスの表面を、アセトン、エタノール、もしくはジクロロメタンなどの溶媒でコーティングして、粉末がポリマーマトリックスに付着しやすくできること、の手段の1つによって形成した後に、ポリマーマトリックス内に有効成分を添加することによって得られ得る。
【0074】
したがって、本発明によれば、有効成分は、コポリマー(a)およびホモポリマー(b)を含むポリマーマトリックスの構造そのものに組み込むことができ、ならびに/または、形成後に、コポリマー(a)およびホモポリマー(b)を含むポリマーマトリックスの外面に少なくとも部分的なコーティングを形成することができる。
【0075】
一般に、得られる本発明におけるシステムの厚さは、使用されるポリマーマトリックスの量、および形成に使用される支持体または型の表面によって決まる。
【0076】
本発明におけるシステムは、子宮腔の形態に適した任意の種類の剤形をとすることができる。したがって、本発明におけるシステムは、フィルム、チューブ、粉末、多孔性構造体、例えば2Dもしくは3Dマトリックスなど、複雑な3D構造体、ゲル、または多孔性もしくは非多孔性ヒドロゲルなどの剤形をとすることができる。
【0077】
フィルムは、例えば、本発明におけるAおよびBブロックコポリマー(a)ならびにホモポリマー(b)を可溶化した溶媒を平坦な表面上において蒸発させることから得られる、二次元材料を意味すると理解される。このようなフィルムの厚さは、有利には、数ミクロン~数百ミクロン、とりわけ10μm~1000μmである。特定の一実施形態において、フィルムは200μm~600μmの厚さを有する。厚さは、形成した後、および任意でコポリマーを可溶化するために使用した溶媒を完全に蒸発させた後、無水条件下において(例えば光学顕微鏡によって)測定されるという意味で、「乾燥」していると理解される。
【0078】
フィルムの寸法は、とりわけ、より大きな寸法のフィルムを所望の寸法に切断することによって、要件に従って適合させることができる。
【0079】
フィルムは、チューブもしくはスリーブを形成するように折り畳まれ得、必要に応じて縫合糸もしくは接着接合によって閉じられ得、または、アコーディオン状に折り畳まれ得る。また、円筒周りでの形成、または押出成形によって直接的に、チューブを得ることもできる。
【0080】
本発明の文脈において、チューブは、中空または中実の三次元円筒状物体を示し、その壁は、本発明におけるAおよびBブロックコポリマー(a)およびホモポリマー(b)のフィルムから形成される。優先的に、このようなチューブの直径は数百ミクロン、とりわけ500μm~5000μmである。特定の一実施形態において、チューブは、1000μmの壁厚、および3000μmの直径を有する。例えば、分解性子宮システムは円筒の形状を有することができ、直径は0.1mm~9mm、好ましくは2mm~6mmとすることができる。円筒の長さは0.5cm~20cm、好ましくは3cm~10cmとすることができる。円筒は、直線状もしくは湾曲状、U字状、V字状、もしくはL字状、蛇行形状とすることができ、またはコア周りに巻くことができる。
【0081】
特定の一実施形態において、本発明におけるシステムは、該システムの一部を形成することを意図した支持体上に形成することによって得られる。例えば、材料が別のポリマーからなる織布または編んだ布の上で乾燥されて、このようにその集合体が複合材料を形成する。
【0082】
有利には、本発明におけるシステムは、コポリマー(a)、ホモポリマー(b)、少なくとも1つの有効成分、および任意で微量の溶媒のみを含むか、またはそれらからなる。
【0083】
特定の場合において、本発明におけるシステムは、賦形剤または添加剤をさらに含んでもよい。この賦形剤または添加剤は、例えば、コポリマー(a)およびホモポリマー(b)中に分散されるように、材料の形成前または形成時にコポリマーに基づく組成物に添加され得る。言い換えると、形成後にこの賦形剤または添加剤を材料に含浸させるまたは被覆することが可能である。
【0084】
本発明におけるシステムは、子宮内使用に特に適した膨潤および展開特性を示す。特に、本発明における子宮内システムの特定の特性によって、子宮腔におけるその投与の容易性、次いで膨潤によるその展開、および、子宮壁近傍における有効成分の持続的な放出を可能にする。特定の一実施形態において、本発明における子宮内システムの特定の特性によって、膨潤および展開の後に該システムと子宮壁との接触が可能になる。このような子宮壁への接触は、とりわけ、より局所的かつ迅速な処置を可能にする。
【0085】
有利には、本発明における材料は、生物学的流体と同一の浸透圧を有する水性媒体または湿性媒体中において、1~20、好ましくは3~15の膨潤率を有する。膨潤率は、以下の方法で測定される。乾燥した材料のストリップの重量を量った後、37℃において24時間、かく拌しながら生理食塩水媒体(PBS1X)にそれを浸漬する。24時間後、余分なPBSを吸取紙で取り除き、ストリップの重量を再び量る。膨潤率は、湿った材料のストリップの重量/乾燥した材料のストリップの重量の比率に相当する。材料の膨潤率は、その水分吸収パーセンテージに比例し、これは、[(湿った材料のストリップの重量-乾燥した材料のストリップの重量)/乾燥した材料のストリップの重量]×100の比率に相当する。
【0086】
材料の膨潤は、表面積および体積の増加(「水和」表面積または体積)を伴い、このことは、特に子宮壁に可能な限り接近するように、子宮腔において材料を展開することを促進するので、有効成分の局所投与のための医療的使用において特に有利である。
【0087】
表面積の増加は急速であり、とりわけ、水性媒体または湿性媒体において、数分から数時間内に200%から300%に達し得る。特に、表面積の増加は、30分内に最大100%、および/または24時間内に最大300%に達し得る。表面積の増加は材料の体積の増加を伴い、膨潤率の測定時と同じ条件下において、生理食塩水溶液中での滞留時間のみを変更することによって、目視で測定される。表面積の増加は、[(浸漬時間t後の「水和」ストリップの表面積-「乾燥」ストリップの表面積)/「乾燥」ストリップの表面積]×100の比率に相当する。
【0088】
したがって、本発明における子宮内システムの特定の膨潤特性は、有効成分を局所的に放出するために、排出されるリスクなく腔内において展開して、有利には子宮壁と接触することを可能にする。
【0089】
好ましい実施形態によれば、本発明における子宮内システムは、少なくとも10日、例えば10日、12日、15日、21日、28日、30日、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月などにわたって子宮腔において有効成分を持続的に放出することを可能にする。有利には、有効成分の持続的放出は、10日~12か月、特に10日~9か月、特に10日~6か月、特に10日~3か月、特に10日~2か月、特に10日~30日で行われる。有利には、有効成分の持続的放出は連続的な持続的放出である。本発明の文脈内において、各放出時間に放出される有効成分の量は、UV検出器、蛍光検出器、または質量分析計を備えたHPLCによって測定され得る。
【0090】
本発明におけるシステムの特に有利なさらなる一特徴は、これが水性媒体または湿性媒体中において分解可能であることである。特に、本発明におけるシステムは、水性媒体または湿性媒体中において、10日~12か月、優先的に10日~9か月、優先的に10日~6か月、特に10日~3か月、特に10日~70日の滞留時間後に分解する。水性媒体または湿性媒体中における分解時間は、とりわけ、子宮モデルにおいてin vitroで測定される。材料の分解は、ポリエステルブロックのエステル結合の加水分解が進行し、次いでPEOを含むブロックが可溶化することによる。材料の機械的特性の喪失は、その分解に直接的に関連付けられる。また、分解は、かく拌しながら生理食塩水媒体(PBS1X)中に37℃において浸漬した後、材料のストリップの分子量の減少を、例えばサイズ排除クロマトグラフィーによって、経時で測定することによって評価することもできる。子宮腔におけるPEOブロックの可溶化およびポリエステルブロックの加水分解は緩やかであり、所望の時間に材料を排出できるように調節されている。したがって、本発明におけるシステムの分解特性によって、システムが、子宮壁において有効成分を持続的に放出するために十分な時間だけ、子宮腔においてインタクトに保たれることができ、その後、その自然な排出を可能にするために十分に分解されることができる。
【0091】
有利には、本発明における分解性子宮内システムは、膨潤によって水和して展開すると子宮腔の壁と接触するように、三角形または台形の形状を有するフィルムの剤形である。
【0092】
フィルムは、例えば、300~600ミクロンの乾燥厚さを有し得る。
【0093】
特定の一実施形態において、図1に示すように、フィルム1は、高さhがおよそ1~4cm、大きい幅Lがおよそ1~2.5cm、小さい幅lがおよそ0.5~1.5cmである、台形形状を有する。例えば、台形は、約2.5cmの高さ、約2cmの大きい幅L、約1cmの小さい幅lを有する。これらの寸法は、処置する患者のタイプ、患者が初産であるかまたは経産であるか、患者の年齢、子宮の解剖学的構造、癒着発生を恐れる理由などに応じて、とりわけ上述の範囲において、当業者によって容易に適合させることができる。
【0094】
本発明における子宮内システムは、雌性哺乳動物、より具体的に女性における、婦人科障害、例えば子宮筋腫、子宮内膜がん、子宮内膜着床能低下、薄い子宮内膜、感染症、出血(月経過多、子宮出血)、がんの副作用、老化、閉経、もしくは膣乾燥など、または骨盤痛、例えば月経困難症、子宮内膜症、もしくは子宮腺筋症などの処置における使用にとりわけ適している。
【0095】
キット
本発明はまた、本発明における子宮内システムを含むキット、および該システムを子宮腔に挿入するための手段に関する。本発明におけるキットは、有利には、子宮腔に材料を挿入して配置するための手段を含む。
【0096】
例えば、図2に示すように、本発明におけるキット10は、中空の円筒状インサーター11を含み得、そのボア12内には、逆台形形状を有するフィルム2が収容されている。有利には、インサーター11の寸法を最小にするため、フィルムは圧縮形態でボア12に収容されている。例えば、フィルムはアコーディオン状に折り畳まれ、ボア12の内壁によって閉じて保持される。アコーディオンが展開するのは、子宮腔において放出されてからのみである。さらに、フィルムのポリマーが子宮内液と接触して水分によって膨潤し、フィルムの体積がほぼ同時に増加することによって、この展開が促進される。
【0097】
キット10は、有利には、インサーターの遠位端14において、並進して摺動するように取り付けられたプランジャー13を含み、反対側の近位端15は、インサーター11が子宮腔に導入されることを意図した端部である。プランジャー13はロッド16からなり、これは、近位端15に向かって、インサーター11のボア12内部に押されると、インサーター11からフィルム2を並進するように動かす。
【0098】
有利には、プランジャー13は、ロッド16の近位端に停止手段17を含み、該停止手段17は、フィルム2がインサーター11から完全に排出されて、子宮腔における所定の位置にあることを、キット10を取り扱う人に知らせるために、インサーターの近位端15に隣接するインサーターの壁に突き当たることが意図されている。その後、挿入手段/インサーター組立体を単純に引き抜くことで取り除けばよく、フィルム2自体は子宮腔における所定の位置に留まる。
【0099】
本発明におけるキット、とりわけ挿入手段は、本発明における分解性子宮内システムを確実に導入して配置することを可能にする。さらに、乾燥形態(膨潤前)の本発明における子宮内システムの圧縮形態によって、キットの寸法を小さくすることが可能になり、このことで患者の子宮頸部を通っての導入が容易になる。
【0100】
本発明におけるキットは、婦人科障害、例えば子宮筋腫、子宮内膜がん、子宮内膜着床能低下、薄い子宮内膜、感染症、出血(月経過多、子宮出血)、がんの副作用、老化、閉経、もしくは膣乾燥など、または骨盤痛、例えば月経困難症、子宮内膜症、もしくは子宮腺筋症などに罹患した患者にとりわけ使用され得る。材料の圧縮形態および小さな寸法のアプリケーターの使用によって、多くの場合に敏感な、これらの患者の子宮腔において、その配置が容易になる。さらに、これが月経周期時に自然に排出されることによって、患者は、上述のデバイスを除去するための医療関係者によるさらなる介入を避けることができる。
【0101】
以下において実施例を用いて本発明を例示する。これらの実施例は、例示として示すものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例
【0102】
実施例1は、子宮腔においてフルルビプロフェンを持続的に放出するための分解性子宮内システムの調製を示す。
1.ABAトリブロックコポリマーの合成
a.材料
市販のポリ(エチレンオキシド)(PEO):供給業者はSigma Aldrich、CAS番号は25322-68-3である。市販のPEOは、その重量平均モル質量(Mw)を決定するために、研究室においてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析された。分析を分析用溶媒(ジメチルホルムアミド)中で行い、Mwを標準範囲のポリ(エチレングリコール)を介して決定した。重量平均モル質量Mwは95000Daであり、そのインへレント粘度は0.16ml/mgである。
【0103】
市販のD,L-ラクチド:供給業者はCorbion Purac、CAS番号は95-96-5である。
【0104】
b.方法
ABAトリブロックは以下の方法で合成される。
PEO(Mw95,000)(200g)およびD,L-ラクチド(458g)を、真空下において周囲温度で24時間乾燥させる。PEOおよびD,L-ラクチドを、オクタン酸すず(85mg)の存在下において、丸底重合フラスコに導入する。その後、真空(10-3バール)とアルゴンとの10回の連続サイクルを行う。その後、混合物を140℃で加熱し、真空とアルゴンとの10回の連続サイクルを再び行う。混合物を周囲温度に戻し、その後氷浴に入れる。結晶化したら、反応混合物を動的真空下に30分間置き、その後、動的真空下において密封する。その後、混合物を、機械的に回転させながら、140℃において3日間、オーブンに配置する。混合物をジクロロメタンに可溶化し、エーテル/エタノール混合物から沈殿させる。沈殿物を回収し、その後真空下において24時間乾燥させる。
【0105】
c.特性評価
ABAトリブロックは、その重量平均モル質量(Mw)を決定するために、研究室においてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析された。分析を分析用溶媒(ジメチルホルムアミド)中で行い、Mwを標準範囲のポリ(エチレングリコール)を介して決定した。重量平均モル質量Mwは113000Daである。トリブロックを、25℃でクロロホルム中において、0.05g/mlの濃度で落球式粘度計によって分析した。ABAトリブロックのインへレント粘度は0.051ml/mgである。
【0106】
2.ABAトリブロックコポリマー、PCLホモポリマー、およびフルルビプロフェンの混合
a.材料
ABAトリブロックに添加したホモポリマーは、市販のポリカプロラクトン(PCL)であり、供給業者はEvonik Operations GmbH、CAS番号は24980-41-4であり、その重量平均モル質量(Mw)を決定するために、研究室においてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析された。分析を分析用溶媒(ジメチルホルムアミド)中で行い、Mwを標準範囲のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を介して決定した。重量平均モル質量Mwは140000Daである。インへレント粘度は供給業者から提供される。PCLのインへレント粘度(25℃、0.1%、クロロホルム)は.1.82dl/gである。
【0107】
有効成分はフルルビプロフェンであり、供給業者はSigma Aldrich、CAS番号は5104-49-4である。
【0108】
b.方法
80重量%のABAトリブロック(3.2g)および20重量%のPCLホモポリマー(0.8g)を周囲温度においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(0.4g、ポリマーの総重量の10%、すなわちシステムの総重量の9重量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロータリーエバポレーターにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。乾燥混合物を回収する。
【0109】
3.本発明におけるフルルビプロフェン放出子宮内システムの調製
a.形成
ABAトリブロック、ホモポリマー、およびフルルビプロフェンを含む混合物を、ホットプレスによって形成する。混合物を、加熱した2つのプラテンの間で85℃において8分間加圧し、2つのプラテンの間に20mPaの圧力を加える。フィルムの厚さは、使用されるポリマーの量、および支持体の表面積によって決まる。得られたポリマーフィルムは、500ミクロンの厚さを有する。その後、フィルムは、パンチを使用して、高さhが2.5cm、最大の幅Lが2cm、および最小の幅lが1cmである台形の形状に切断される。フィルムは、9%のフルルビプロフェン、すなわち18mgのフルルビプロフェンを含む、約200mgの重量を有する。
【0110】
4.本発明における子宮内システムの特性の評価
a.方法
i.放出試験のin vitroの条件
台形フィルムを、33mlのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスフラスコに入れる。フラスコ(n=3)を、機械的かく拌(100rpm)下で37℃に置く。放出の2時間後、4時間後、1日後、2日後、9日後、および12日後に、1mlの溶液をサンプリングする。各サンプリング後、1mlのリン酸緩衝食塩水を媒体に加えるが、9日目のサンプリングでは媒体全体を33mlのリン酸緩衝食塩水に置き換える。各サンプル、すなわち、時間あたりn=3のサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。放出されたフルルビプロフェンの量を、検量線の式から各サンプル時間ごとに計算する。
【0111】
時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの濃度(μg/ml)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)=HPLCにおいて測定した曲線下面積/a、式中、aは検量線の式y=axの値
【0112】
時間tにおいて媒体に放出されたフルルビプロフェンの量(μg)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの量(t)(μg)=媒体の総体積(ml)×フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)
【0113】
そして、時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージは、以下の方法で計算される。
フルルビプロフェンの累積パーセンテージ(t)(%)=(フルルビプロフェンの量(t)(μg)/フルルビプロフェンの初期量(μg))×100%
【0114】
ii.フィルムの表面積の増加を測定する方法
フィルムの表面積の増加を、in vitroの条件下における放出の24時間後に測定する。フィルムを取り除き、ImageJソフトウェアを使用してフィルムの表面積を測定する。表面積の増加は以下のように測定される。
表面積の増加率(%)=((表面積(t=24時間)-表面積(t=0))/表面積(t=0))×100
【0115】
iii.in vitroの分解条件下におけるフィルムの分解の評価
台形フィルムを、33mlのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスフラスコに入れる。フラスコ(n=3)を、機械的かく拌(100rpm)下で37℃に置く。フィルムの外観を、in vitroの分解の24時間、15日、および70日後に評価する。分解の15日後、フィルムを、-60℃において0.025ミリバール下で24時間、凍結乾燥機において乾燥させ、安定した質量を得る。乾燥したフィルムの重量を量って、分解の15日後のフィルムの質量減少を測定する。フィルムの質量減少は以下のように計算される。
質量減少率(%)=((質量(t)-質量(t=0))/質量(t=0))×100
【0116】
iv.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってフルルビプロフェンの放出を定量する方法
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離を、30℃に保ったKinetex C18カラム(2.6μm,100×4.6mm,Phenomenex,California,USA)を含むHPLCシステム(Shimadzu)を使用して行う。移動相は、水60%およびアセトニトリル40%(60/40v/v)から構成される。イソクラティック流速は1.0ml/minである。注入体積は10μlである。247nmの波長において検出を行う。
【0117】
検量線を、50mlの密閉ガラスフラスコ(n=3)において、1mgの純粋な有効成分を40mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に可溶化することによって、作成する。このストック溶液から、PBSを用いて段階希釈を行って、2.5~25μg/mlの濃度範囲を得る。
【0118】
b.結果
i.フィルムの表面積の増加
放出の24時間後、フィルムは808mm2の表面積を有しており、すなわち、フィルムの初期表面積に対して115%の表面積の増加を示した。
【0119】
ii.放出動態
検量線
検量線は2.5~25μg/mlの濃度範囲で直線的(r2=0.99968)である。
【0120】
放出動態
図3は、ABAトリブロックおよびPCLホモポリマーの混合物から構成されるフィルムから経時において放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージを示す。in vitroの放出条件下において、フルルビプロフェンは、1日目の突発的効果、その後の12日目までの放出を伴って、ポリマーフィルムから経時で放出される。子宮内システムによって、in vitroの放出条件下において12日にわたってフルルビプロフェンの放出が可能になる。
【0121】
iii.分解
図4は、in vitroの分解条件下での分解の24時間後(図4.a)および分解の15日後(図4.b)における、ABAトリブロックおよびPCLホモポリマーの混合物から構成されるフィルムの外観を示す。このフィルムは、分解の24時間後、柔軟性および弾力性のあるバリアとなる。分解の15日後、フィルムは、取り扱うと数個の小片へと崩れるので、その機械的特性を失っている。in vitroの分解の15日後、フィルムはその初期質量の30%を失い、臨床使用条件下では自然な経路で容易に除去することができる。in vitroの分解の70日後、フィルムは分解媒体に完全に可溶化する。
【0122】
実施例2は、子宮腔においてフルルビプロフェンを徐放するための分解性子宮内システムの調製を示す。
1.ABAトリブロックコポリマーの合成
実施例1の1節のABAトリブロックコポリマーの合成と同様である。
【0123】
2.ABAトリブロックコポリマー、PCLホモポリマー、およびフルルビプロフェンの混合
a.材料
実施例1の2a節と同様である。
【0124】
b.方法
60重量%のトリブロックABA(2.4g)および40重量%のホモポリマーPCL(1.6g)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(0.4g、システムの総質量に基づいて9質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。乾燥混合物を回収する。製剤は、「ABA60/40PCL+9%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0125】
40重量%のトリブロックABA(1.6g)および60重量%のホモポリマーPCL(2.4g)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(0.4g、システムの総質量に基づいて9質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA40/60PCL+9%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0126】
100重量%のトリブロックABA(4g)および0重量%のホモポリマーPCL(0g)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(0.4g、システムの総質量に基づいて9質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA100/0PCL+9%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0127】
3.本発明におけるフルルビプロフェンの子宮内送達システムの調製
a.成形プロセス
トリブロックABA、任意でホモポリマー、およびフルルビプロフェンを含む混合物を、ホットプレスによって成形する。混合物を、加熱した2つのプラテンの間で85℃において8分間加圧し、2つのプラテンの間に20mPaの圧力を加える。フィルムの厚さは、使用されるポリマーの量、および基材の表面によって決まる。得られたポリマーフィルムは、500ミクロンの厚さを有する。その後、フィルムを、パンチで、高さhが2.5cm、最大の幅Lが2cm、および最小の幅lが1cmである台形の形態に切断する。フィルムは、9%がフルルビプロフェンである、すなわちフルルビプロフェンが18mgである、約200mgの質量を有する。
【0128】
4.本発明における子宮内システムの特性の評価
a.方法
i.放出試験のin vitroの条件
台形フィルムを、33mlのリン酸緩衝液(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスバイアルに入れる。バイアル(n=3)を、機械的振とう(100rpm)下で37℃に置く。放出の2時間後、4時間後、1日後、2日後、9日後、および12日後に、1mlの溶液を採取する。各サンプリング後、1mlのリン酸緩衝食塩水を媒体に加えるが、9日目のサンプルでは媒体全体を33mlのリン酸緩衝食塩水に置き換える。各サンプル、すなわち、時間あたりn=3のサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。放出されたフルルビプロフェンの量を、検量線の式から各サンプル時間ごとに計算する。
【0129】
時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの濃度(μg/ml)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)=HPLCにおいて測定した曲線下面積/a、式中、aは検量線の式y=axの値
【0130】
時間tにおいて媒体に放出されたフルルビプロフェンの量(μg)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの量(t)(μg)=媒体の総体積(ml)×フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)
【0131】
そして、時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージは、以下のように計算される。
フルルビプロフェンの累積パーセンテージ(t)(%)=(フルルビプロフェンの量(t)(μg)/フルルビプロフェンの初期量(μg))×100%
【0132】
ii.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってフルルビプロフェンの放出を定量する方法
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量を、30℃に保ったKinetex C18カラム(2.6μm,100×4.6mm,Phenomenex,California,USA)を含むHPLCシステム(Shimadzu)を使用して行う。移動相は、水60%およびアセトニトリル40%(60/40v/v)から構成される。イソクラティック流速は1.0ml/minである。注入体積は10μlである。247nmの波長において検出を行う。
【0133】
検量線を、50mlの密閉ガラスバイアル(n=3)において、1mgの純粋な有効成分を40mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に可溶化することによって、作成する。このストック溶液から、PBSを用いて一連の希釈を行って、2.5~25μg/mlの濃度範囲を得る。
【0134】
b.結果
i.放出動態
検量線
検量線は2.5~25μg/mlの濃度範囲で直線的(r2=0.99968)である。
【0135】
放出動態
図5は、トリブロックABA混合物およびホモポリマーPCLから構成されるABA60/40PCLおよびABA40/60PCLフィルム、ならびに、トリブロックABA単独から構成されるABA100/0PCLフィルムから、経時において放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージを示す。in vitroの放出条件下において、フルルビプロフェンは、1日目の突発的効果、その後の12日目までの放出を伴って、ポリマーフィルムから経時で放出された。混合物へのPCLの添加によって、最初の数日間におけるフルルビプロフェンの放出動態が調節される。子宮内システムによって、in vitroの放出条件下において12日間のフルルビプロフェンの放出が可能になる。PCLホモポリマーがない場合、50%を超えるフルルビプロフェンが4時間で放出され、この製剤は持続的な放出には許容されない。
【0136】
実施例3は、子宮腔においてフルルビプロフェンを徐放するための分解性子宮内システムの調製を示す。
1.ABAトリブロックコポリマーの合成
実施例1の1節のABAトリブロックコポリマーの合成と同様である。
【0137】
2.ABAトリブロックコポリマー、PCLホモポリマー、およびフルルビプロフェンの混合
a.材料
実施例1の2a節と同様である。
【0138】
b.方法
30重量%のABAトリブロック(96mg)、19重量%のPCLホモポリマー(64mg)、51重量%のPLA50ホモポリマー(166.4mg)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(90mg、システムの総質量に基づいて22質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA30/70PCL/PLA50+22%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0139】
20重量%のABAトリブロック(64mg)、29重量%のPCLホモポリマー(96mg)、51重量%のPLA50ホモポリマー(166.4mg)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(90mg、システムの総質量に基づいて22質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA20/80PCL/PLA50+22%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0140】
3.本発明におけるフルルビプロフェンの子宮内送達システムの調製
a.成形プロセス
トリブロックABA、ホモポリマーPCL、ホモポリマーPLA50、およびフルルビプロフェンを含む混合物を、ホットプレスによって成形する。混合物を、加熱した2つのプラテンの間で85℃において8分間加圧し、2つのプラテンの間に20mPaの圧力を加える。フィルムの厚さは、使用されるポリマーの量、および基材の表面によって決まる。得られたポリマーフィルムは、1000ミクロンの厚さを有する。その後、フィルムを、パンチで、高さhが2.5cm、最大の幅Lが2cm、および最小の幅lが1cmである台形の形態に切断する。フィルムは、22%がフルルビプロフェンである、すなわちフルルビプロフェンが約90mgである、約416mgの質量を有する。
【0141】
4.本発明における子宮内システムの特性の評価
c.方法
i.放出試験のin vitroの条件
台形フィルムの50mgのサンプルを切断して、45mlのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスバイアルに入れる。バイアル(n=3)を、機械的かく拌(100rpm)下で37℃に置く。放出の2時間後、4時間後、1日後、2日後、7日後、および56日目まで7日ごとに、1mlの溶液を採取する。各サンプリング後、1mlのリン酸緩衝液を媒体に加える。各サンプル、すなわち、時間あたりn=3のサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。放出されたフルルビプロフェンの量を、検量線の式から各サンプリング時間ごとに計算する。
【0142】
時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの濃度(μg/ml)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)=HPLCにおいて測定した曲線下面積/a、式中、aは検量線の式y=axの値
【0143】
時間tにおいて媒体に放出されたフルルビプロフェンの量(μg)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの量(t)(μg)=媒体の総体積(ml)×フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)
【0144】
そして、時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージは、以下のように計算される。
フルルビプロフェンの累積パーセンテージ(t)(%)=(フルルビプロフェンの量(t)(μg)/フルルビプロフェンの初期量(μg))×100%
【0145】
ii.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってフルルビプロフェンの放出を定量する方法
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量を、30℃に保ったKinetex C18カラム(2.6μm,100×4.6mm,Phenomenex,California,USA)を含むHPLCシステム(Shimadzu)を使用して行う。移動相は、水60%およびアセトニトリル40%(60/40v/v)から構成される。イソクラティック流速は1.0ml/minである。注入体積は10μlである。247nmの波長において検出を行う。
【0146】
検量線を、50mlの密閉ガラスバイアル(n=3)において、1mgの純粋な有効成分を40mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に可溶化することによって、作成する。このストック溶液から、PBSを用いて一連の希釈を行って、2.5~25μg/mlの濃度範囲を得る。
【0147】
d.結果
i.放出動態
検量線
検量線は2.5~25μg/mlの濃度範囲で直線的(r2=0.99968)である。
【0148】
放出動態
図6は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成されるABA30/70PCL/PLA50およびABA20/80PCL/PLA50フィルムから、経時において放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージを示す。in vitroの放出条件下において、フルルビプロフェンは、1日目の突発的効果、その後の35日目までの放出を伴って、ポリマーフィルムから経時で放出される。混合物へのトリブロックABAの添加は、経時におけるフルルビプロフェンの放出動態を調節する。子宮内システムによって、in vitroの放出条件下において35日間のフルルビプロフェンの放出が可能になる。システムのホモポリマー画分中のPLAのパーセンテージが増加すると、フルルビプロフェンの放出が遅延する。
【0149】
実施例4は、子宮腔においてフルルビプロフェンを徐放するための分解性子宮内システムの調製を示す。
1.ABAトリブロックコポリマーの合成
実施例1の1節のABAトリブロックコポリマーの合成と同様である。
【0150】
2.ABAトリブロックコポリマー、PCLホモポリマー、およびフルルビプロフェンの混合
a.材料
実施例1の2a節と同様である。
【0151】
a.方法
20重量%のABAトリブロック(66.56mg)、30重量%のPCLホモポリマー(99.84mg)、50重量%のPLA50ホモポリマー(166.38mg)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(83.19mg、システムの総質量に基づいて20質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA20/80PCL/PLA50+20%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0152】
6重量%のABAトリブロック(52mg)、9重量%のPCLホモポリマー(78.67mg)、85重量%のPLA50ホモポリマー(748.3mg)を、室温においてかく拌しながら40mlのジクロロメタンに可溶化する。フルルビプロフェン(374.83mg、システムの総質量に基づいて30質量%に相当)を混合物に加え、混合物を4時間かく拌する。混合物を、ジクロロメタンが除去されるまで、ロタベーパーにおいて所定の温度で100ミリバールの真空下において乾燥させる。製剤は、「ABA6/94PCL/PLA50+30%F」という名称とし、「F」はフルルビプロフェンである。
【0153】
3.本発明におけるフルルビプロフェンの子宮内送達システムの調製
a.成形プロセス
トリブロックABA、ホモポリマーPCL、ホモポリマーPLA50、およびフルルビプロフェンを含む混合物を、ホットプレスによって成形する。混合物を、加熱した2つのプラテンの間で85℃において8分間加圧し、2つのプラテンの間に20mPaの圧力を加える。フィルムの厚さは、使用されるポリマーの量、および基材の表面によって決まる。得られたポリマーフィルムは、「ABA20/80PCL/PLA50+20%F-1mm」および「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-1mm」では1000ミクロンの厚さ、ならびに「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-2mm」では2000ミクロンの厚さを有する。その後、フィルムを、高さhが2.5cm、最大の幅Lが2cm、および最小の幅lが1cmである台形形状に切断する。「ABA20/80PCL/PLA50+20%F-1mm」および「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-1mm」のフィルムは、それぞれ、20%フルルビプロフェン、すなわち約83mgのフルルビプロフェン、および30%フルルビプロフェン、すなわち約124.8mgのフルルビプロフェンを含む約416mgの質量を有する。「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-2mm」のフィルムは、30%フルルビプロフェン、すなわち約250mgのフルルビプロフェンを含む約832mgの質量を有する。
【0154】
4.本発明における子宮内システムの特性の評価
e.方法
i.放出試験のin vitroの条件
「ABA20/80PCL/PLA50+20%F-1mm」および「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-1mm」製剤の条件では、台形フィルムの14mgのサンプルを切断して、14mlのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスバイアルに入れる。
【0155】
「ABA6/94PCL/PLA50+30%F-2mm」製剤の条件では、台形フィルムの28mgのサンプルを切断して、28mlのリン酸緩衝液(pH7.4)を含む50mlの密閉ガラスバイアルに入れる。
【0156】
バイアル(n=3)を、機械的かく拌(100rpm)下で37℃に置く。放出の56日目まで、各日後、または3日の間隔で、1mlの溶液を採取する。各サンプリング後、1mlのリン酸緩衝食塩水を媒体に加える。各サンプル、すなわち、時間あたりn=3のサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。放出されたフルルビプロフェンの量を、検量線の式から各サンプリング時間ごとに計算する。
【0157】
時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの濃度(μg/ml)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)=HPLCにおいて測定した曲線下面積/a、式中、aは検量線の式y=axの値
【0158】
時間tにおいて媒体に放出されたフルルビプロフェンの量(μg)は以下のように計算される。
フルルビプロフェンの量(t)(μg)=媒体の総体積(ml)×フルルビプロフェンの濃度(t)(μg/ml)
【0159】
そして、時間tにおいて放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージは、以下のように計算される。
フルルビプロフェンの累積パーセンテージ(t)(%)=(フルルビプロフェンの量(t)(μg)/フルルビプロフェンの初期量(μg))×100%
【0160】
ii.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってフルルビプロフェンの放出を定量する方法
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量を、30℃に保ったKinetex C18カラム(2.6μm,100×4.6mm,Phenomenex,California,USA)を含むHPLCシステム(Shimadzu)を使用して行う。移動相は、水60%およびアセトニトリル40%(60/40v/v)から構成される。イソクラティック流速は1.0ml/minである。注入体積は10μlである。247nmの波長において検出を行う。
【0161】
検量線を、50mlの密閉ガラスバイアル(n=3)において、10mgの純粋な有効成分を10mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に可溶化することによって、作成する。このストック溶液から、PBSを用いて一連の希釈を行って、25~1000μg/mlの濃度範囲を得る。
【0162】
iii.in vivo試験
「ABA20/80PCL/PLA50+20%F」の厚さ1mmのフィルムを、雌ラット(Sprague Dawley、8週)の子宮に留置し、
-水分吸収のパーセンテージ、
-経時における質量減少、
-子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量の評価を行った。
【0163】
フルルビプロフェンを、他の群の雌ラットに経口投与し、子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量を評価し、コントロール群とした。
【0164】
外科手技
フィルム留置の手技
製剤を3.a節に従って成形した。台形フィルムの約15mgのサンプルを切断して、2%イソフルランによる麻酔、開腹、および子宮角の切開後、ラットの子宮(子宮角としても知られる)に留置する。各ラットは2つのラット子宮角を有する。そのため、試験片を各子宮角に留置する。その後、角部を縫合し、デバイスが膣から除去されないように膣側において結紮を行う。
【0165】
経口投与の手技
4mg/kgのフルルビプロフェンを1日2回経口投与した。フルルビプロフェンを、まず、0.5mg/mlのヒドロキシエチルセルロース溶液(Cellosize)に可溶化した。
【0166】
ラットには、手術前の24時間において300mg/kgのパラセタモールを投与し、麻酔後かつ手術開始前に0.05mg/kgのブプレノルフィンを皮下投与した。
【0167】
それぞれの絶命時間において、子宮角を縦方向に切開し、フィルムサンプルを採取した。群を以下のように分ける(表1を参照)。
【0168】
【表1】
【0169】
in vivo条件下においてフィルムの水分吸収を測定する方法
子宮角における留置後の11時間において、フィルムの水分吸収率を測定する(2A群)。フィルムを吸収紙の上に置き、重量を量る。水分吸収のパーセンテージは以下のように測定される。
水分吸収率(%)=((質量(t=11時間)-質量(t=0))/質量(t=0))×100
【0170】
in vivo分解条件下におけるフィルム分解の評価
各絶命時間において、フィルムを採取し、その後、-60℃において0.025ミリバール下で24時間、凍結乾燥によっておいて乾燥させ、安定した質量を得る。乾燥したフィルムの重量を量って、フィルムの質量減少を測定する。フィルムの質量減少は以下のように計算される。
質量減少率(%)=((質量(t)-質量(t=0))/質量(t=0))×100
【0171】
in vivo条件下において子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量の評価
各絶命時間において、子宮角を採取し、質量分析計(Shimadzu TripleQuad 8060)と連結した液体クロマトグラフィー(LC30ADをAgilent C18カラムに装着)(LC-MS)によって分析した。
【0172】
子宮角をエッペンドルフに入れ、0.5mLの1XPBSにおいて粉砕する。100μLの破砕物を採取する。20μLの1mg/mL重水素(D5)標識フルルビプロフェンを破砕物に加える。その後、430μLのメタノール:水混合液(8:1の比、-20℃)を加え、転倒混和し、4℃で20分間かく拌する。混合物を、16,000gで4℃において5分間遠心する。混合物を、Captiva EMR-Lipidsプレートに入れ、200μLの0.1%ACNギ酸(FA)でコンディショニングする。プレートを、1000rpmにおいて2分間遠心する。400μLの上清をCaptiva EMR-Lipidsプレートに移す。プレートを、1000rpmにおいて45分間遠心し、30℃において3時間乾燥させる。60μLのメタノールを加え、20μLを注入する。サンプルをポジティブモードで分析した。
【0173】
a.結果
i.放出動態
検量線
検量線は2.5~25μg/mlの濃度範囲で直線的(r2=0.99968)である。
【0174】
放出動態
図7は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成される、1,000μmおよび2,000μm厚のABA6/94PCL/PLA50+30%Fフィルムから、経時において放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージを示す。in vitroの放出条件下において、フルルビプロフェンは、ポリマーフィルムから経時で放出される。フィルムの厚さによって、フルルビプロフェンの放出動態が調節される。
【0175】
図8は、トリブロック混合物ABAならびにホモポリマーPCLおよびPLA50から構成される、1mm厚フィルムのABA20/80PCL/PLA50+20%FおよびABA6/94PCL/PLA50+30%Fから、経時において放出されたフルルビプロフェンの累積パーセンテージを示す。in vitroの放出条件下において、フルルビプロフェンは、1日目の突発的効果、その後、ABA20/80PCL/PLA50+20%Fでは22日目まで、およびABA6/94PCL/PLA50+30%Fでは14日目までの放出を伴って、ポリマーフィルムから経時で放出される。
【0176】
ii.in vivo条件下におけるフィルムの水分吸収の測定
「ABA20/80PCL/PLA50+20%F」フィルムにおいて、65.34%(Sd 3,49%)の平均水分吸収率を観察した。
【0177】
iii.in vivo分解条件下におけるフィルムの質量減少の測定
図9は、ラットの子宮角に留置した後の様々な時間におけるABA20/80PCL/PLA50+20%Fフィルムの質量減少を示す。「ABA20/80PCL/PLA50+20%F」フィルムは、留置後の56日においてその質量の40%を失った。
【0178】
iv.in vivo条件下において子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量の測定
図10は、「ABA6/94PCL/PLA50+30%F」フィルムの留置後にラットの子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量、およびフルルビプロフェン経口投与後に子宮組織に吸収されたフルルビプロフェンの量を示す。経口投与、または子宮内放出システムの角部への導入後の11時間、25時間、および15日目において、同等のフルルビプロフェンの組織濃度(24~39μg/g)を測定し、子宮内放出システムが同じ治療的作用を達成し得ることを示唆する。また、「ABA6/94PCL/PLA50+30%F」フィルムがin vivo条件下においてフルルビプロフェンを56日間放出することも留意される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】