(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プレガバリンの精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/24 20060101AFI20241003BHJP
C07C 235/06 20060101ALI20241003BHJP
A61P 25/02 20060101ALN20241003BHJP
A61P 25/08 20060101ALN20241003BHJP
A61K 31/197 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C07C231/24
C07C235/06
A61P25/02
A61P25/08
A61K31/197
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521340
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2022079456
(87)【国際公開番号】W WO2023071011
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111246329.2
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516172134
【氏名又は名称】浙江華海薬業股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAHAI PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Xunqiao, Linhai Taizhou, Zhejiang 317024 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】汪 有貴
(72)【発明者】
【氏名】蔡 長清
(72)【発明者】
【氏名】譚 俊
(72)【発明者】
【氏名】朱 元勲
(72)【発明者】
【氏名】顔 峰峰
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA04
4C206FA44
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA05
4C206NA20
4C206ZA06
4C206ZA20
4H006AA02
4H006AD15
4H006AD30
4H006BC51
4H006BC53
4H006BV21
(57)【要約】
本発明は、プレガバリンの精製方法に関し、1)反応液を昇温し、保温して不純物を除去するステップと、2)ステップ1)における反応液に酸を加えてpH値を調整し、結晶を析出させ、遠心により乾燥させ、高純度のプレガバリンを得るステップとを含む。本発明の精製方法を採用して調製されたプレガバリンは、その生成物の純度が99.8%以上に達し、生成物の収率が90%以上であり、不純物Xおよび不純物Yの含有量がいずれも≦0.05%であり、かつ相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)反応液を昇温し、保温して不純物を除去するステップと、
(2)ステップ(1)における反応液に酸を加えてpH値を調整し、結晶を析出させ、遠心により乾燥させ、プレガバリンを得るステップと、
を含むことを特徴とする、プレガバリンの精製方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)における反応液は、
(a)水酸化ナトリウム水溶液中で、(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを酸化反応させて、酸化反応液を得るステップと、
(b)ステップ(a)における酸化後の反応液に亜硫酸ナトリウムを加え、次亜塩素酸ナトリウムをクエンチして、反応液を得るステップと、
を含む方法により調製されることを特徴とする、請求項1に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)において、昇温の温度は40~80℃であり、より好ましくは55~70℃であることを特徴とする、請求項1に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)において、保温時間は1~5hであり、より好ましくは2~3hであることを特徴とする、請求項1に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)において、酸は、塩酸、硫酸またはリン酸であり、より好ましくは塩酸であることを特徴とする、請求項1に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項6】
前記ステップ(2)において、pH=5~9に調整し、より好ましくはpH=6~8に調整することを特徴とする、請求項1に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)において、水酸化ナトリウム水溶液の質量濃度は10%~40%であり、より好ましくは20%~25%であり、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の質量濃度は5%~14%であり、より好ましくは8%~12%であることを特徴とする、請求項2に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)において、(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と、次亜塩素酸ナトリウムと、水酸化ナトリウムとのモル比は1:(0.8~1.2):(2~5)であることを特徴とする、請求項2に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を滴下の方式で(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と水酸化ナトリウム水溶液との混合系に加えることを特徴とする、請求項2に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)において、前記酸化反応の時間は2~20時間であり、より好ましくは5~10時間であり、前記酸化反応の温度は-20~30℃であり、より好ましくは-10~30℃であることを特徴とする、請求項2に記載のプレガバリンの精製方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)において、前記亜硫酸ナトリウムの添加量と(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸とのモル比は(0.01~0.50):1であり、より好ましくは(0.02~0.15):1であることを特徴とする、請求項2に記載のプレガバリンの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬化学工業分野に関し、具体的にプレガバリンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレガバリンは、新規なγ-アミノ酪酸(GABA)受容体アゴニストであり、電位依存性カルシウムチャネルを遮断し、神経伝達物質の放出を減少させることができ、臨床では主に末梢神経痛の治療および局所部分てんかん発作の補助治療に使用されている。従来技術は、多くのプレガバリンの調製方法を開示しており、例えば、WO2006121557A1は、大量の液体臭素を用いて、臭素およびアルカリ金属水酸化物の存在下で、化合物(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸を、ホフマン転位させることで、プレガバリンを製造する簡便な方法を開示している。
【0003】
CN101910111Bは、次亜塩素酸ナトリウムを臭素の代替物として50-70℃の温度で反応させることを開示している。該反応条件は特許に言及された相対保持時間が1.3である不純物を低減させることができるが、特許に言及された反応温度が高すぎて、反応収率が低くなる。同時に該特許の方法で調製されたプレガバリンの一部のバッチにおいて相対保持時間が1.3である不純物は0.25%に達し、特に好ましい案において不純物も0.1%に達し、異なるバッチ間で該不純物のレベルの差が大きい。
【0004】
CN106748850Aは、プレガバリンの調製方法を開示し、該方法は、(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを低温反応させ、還元剤を加えて次亜塩素酸ナトリウムを破壊し、最後に触媒を加え、水素ガスを導入して還元反応を行い、濾過し、母液を酸性化し、再び濾過し、湿った生成物をイソプロパノールと水との混合液に加えて再精製し、プレガバリンを得る。該方法は、(R)-(-)-3-カルバモイルメチル-5-メチルヘキサン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを低温反応させ、該条件下で反応が不十分であるかまたは転化率が低く、製品の収率が理想的ではない。該方法はさらにパラジウム炭素触媒を導入して水素添加による還元を行うことにより、プレガバリン中の不純物X、不純物Yの含有量を効果的に低下させることができるが、パラジウム炭素触媒を導入すると、プレガバリン製品中の重金属が基準を超えやすくなり、同時にパラジウム炭素の使用過程には一定の安全上のリスクがある。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006121557A1
【特許文献2】CN101910111B
【特許文献3】CN106748850A
【発明の概要】
【0006】
本発明は、プレガバリンの精製方法を提供し、
(1)反応液を昇温し、保温して不純物を除去するステップと、
(2)ステップ1)における反応液に酸を加えてpH値を調整し、結晶を析出させ、遠心により乾燥させ、プレガバリンを得るステップとを含む。
【0007】
好ましい技術案として、前記ステップ(1)における反応液は、
(a)水酸化ナトリウム水溶液中で、(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを酸化反応させて酸化反応液を得るステップと、
(b)ステップ(a)における酸化後の反応液に亜硫酸ナトリウムを加え、次亜塩素酸ナトリウムをクエンチして、反応液を得るステップと、
を含む方法により調製される。
【0008】
好ましくは、前記ステップ(1)において、昇温の温度は40~80℃であり、より好ましくは55~70℃である。
【0009】
好ましくは、前記ステップ(1)において、保温時間は1~5hであり、より好ましくは2~3hである。
【0010】
好ましくは、前記ステップ(2)において、酸は塩酸、硫酸またはリン酸であり、より好ましくは塩酸である。
【0011】
好ましくは、前記ステップ(2)において、pH=5~9に調整し、より好ましくはpH=6~8に調整する。
【0012】
好ましくは、前記ステップ(a)において、水酸化ナトリウム水溶液の質量濃度は10%~40%であり、より好ましくは20%~25%であり、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の質量濃度は5%~14%であり、より好ましくは8%~12%である。
【0013】
好ましくは、前記ステップ(a)において、(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と、次亜塩素酸ナトリウムと、水酸化ナトリウムとのモル比は1:(0.8~1.2):(2~5)である。
【0014】
好ましくは、前記ステップ(a)において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を滴下の方式で(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸と水酸化ナトリウム水溶液との混合系に加える。
【0015】
好ましくは、前記ステップ(a)において、前記酸化反応の時間は2~20時間であり、より好ましくは5~10時間であり、前記酸化反応の温度は-20~30℃であり、より好ましくは-10~30℃である。
【0016】
好ましくは、前記ステップ(b)において、前記亜硫酸ナトリウムの添加量と(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸とのモル比は(0.01~0.50):1であり、より好ましくは(0.02~0.15):1である。
【0017】
本発明の方法を採用して調製されたプレガバリンは、その生成物の純度が99.8%以上に達し、生成物の収率が90%以上であり、不純物Xおよび不純物Yの含有量がいずれも≦0.05%であり、かつ相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されない。
【0018】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明の調製方法は、パラジウム炭素の使用、水素添加による還元の操作を回避し、製品に過剰な重金属が残留するリスクを低減させ、作業工程を簡略化し、生産効率を向上さ、生産サイクルを短縮し、大規模な工業化にさらに有利である。
【0019】
(2)本発明の調製方法は反応条件が穏やかであり、反応の全過程が制御された状態にあり、自己発熱昇温による副反応を回避し、且つ調製方法は高温、高圧、触媒等の条件に関係せず、製品の不純物の含有量が低く、医薬品用途の要件に合致する。
【0020】
(3)本発明の調製方法は、アルカリ液と酸との用量配合比を合理的に調整することにより、プレガバリンの結晶が析出した後、室温(20~30℃)まで降温した条件下で濾過することができ、さらに-10~10℃まで降温した条件下で濾過する必要がなく、大量のエネルギーを節約し、省エネルギー、排出削減、環境保護の要件に合致する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施例は、本発明を具体的に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
実施例1
反応フラスコ内に66gの25%水酸化ナトリウム溶液を加え、-20℃まで降温した。20gの(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸を加え、次に72gの10.4%次亜塩素酸ナトリウム溶液をゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、10℃までゆっくりと昇温し、3h保温で反応させ、30℃まで昇温し続け、3h反応させた。反応液に1.0gの亜硫酸ナトリウムを加え、20分間撹拌し、残量の次亜塩素酸ナトリウムをクエンチし、反応が終了した。反応液を70℃まで昇温し、2h保温した。反応液を45℃まで降温し、さらに反応フラスコ内に25mlの塩酸を滴下し、pH=7.0に調整し、室温まで降温し、濾過し、乾燥させ、プレガバリンを得て、収率が91.7%であり、純度が99.8%であり、不純物Xの含有量が0.04%であり、不純物Yの含有量0.02%であり、相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されなかった。
【0023】
実施例2
反応フラスコ内に830gの20%水酸化ナトリウム溶液を加え、-15℃まで降温した。200gの(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸を加え、次に720gの10.4%次亜塩素酸ナトリウム溶液をゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、10℃までゆっくりと昇温し、4h保温で反応させ、30℃まで昇温し続け、3h反応させた。反応液に11.0gの亜硫酸ナトリウムを加え、20分間撹拌し、残量の次亜塩素酸ナトリウムをクエンチし、反応が終了した。反応液を65℃まで昇温し、2.5h保温した。反応液を40℃まで降温し、さらに反応フラスコ内に265mlの塩酸を滴下し、pH=7.1に調整し、室温まで降温し、濾過し、乾燥させ、プレガバリンを得て、収率が92.9%であり、純度が99.9%であり、不純物Xの含有量が0.03%であり、不純物Yの含有量0.02%であり、相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されなかった。
【0024】
実施例3
反応フラスコ内に850gの22%水酸化ナトリウム溶液を加え、-16℃まで降温した。200gの(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸を加え、次に700gの10.6%次亜塩素酸ナトリウム溶液をゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、10℃までゆっくりと昇温し、3h保温で反応させ、30℃まで昇温し続け、2h反応させた。反応液に10.0gの亜硫酸ナトリウムを加え、20分間撹拌し、残量の次亜塩素酸ナトリウムをクエンチし、反応が終了した。反応液を60℃まで昇温し、3h保温した。反応液を50℃まで降温し、さらに反応フラスコ内に280mlの塩酸を滴下し、pH=7.0に調整し、室温まで降温し、濾過し、乾燥させ、プレガバリンを得て、収率が92.3%であり、純度が99.8%であり、不純物Xの含有量が0.04%であり、不純物Yの含有量0.02%であり、相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されなかった。
【0025】
実施例4
反応釜内に420kgの20%水酸化ナトリウム溶液を加え、-18℃まで降温した。100kgの(R)-(-)-3-(カルバモイルメチル)-5-メチルヘキサン酸を加え、次に350gの10.4%次亜塩素酸ナトリウム溶液をゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、10℃までゆっくりと昇温し、3h保温で反応させ、30℃まで昇温し続け、2h反応させた。反応液に14kgの亜硫酸ナトリウムを加え、30分間撹拌し、残量の次亜塩素酸ナトリウムをクエンチし、反応が終了した。反応液を70℃まで昇温し、3h保温した。反応液を50℃まで降温し、さらに反応フラスコ内に140Lの塩酸を滴下し、pH=7.0に調整し、室温まで降温し、濾過し、乾燥させ、プレガバリンを得て、収率が93.7%であり、純度が99.9%であり、不純物Xの含有量が0.05%であり、不純物Yの含有量0.02%であり、相対保持時間が1.3である不純物ピークが検出されなかった。
【国際調査報告】