(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】注射可能なポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20241003BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20241003BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20241003BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/20
A61K9/16
A61K47/36
A61K31/765
A61P17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521747
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2022121527
(87)【国際公開番号】W WO2023061201
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111187296.9
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132841
【氏名又は名称】ベイジン ジョイネラ バイオマテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、タイシュー
(72)【発明者】
【氏名】リー、テン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ハオチエン
(72)【発明者】
【氏名】タン、チャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB11
4C076EE37
4C076FF43
4C076GG02
4C081AB11
4C081BA16
4C081BB08
4C081BC02
4C081CA171
4C081CD082
4C081DA11
4C081EA02
4C081EA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、バイオ医薬技術分野に関し、具体的に、注射可能なポリヒドロキシ脂肪酸エステル(PHA)マイクロスフェアおよびその製造方法を開示する。上記ポリヒドロキシ脂肪酸エステル注射用マイクロスフェアの製造方法が、a)PHA材料を有機溶媒に溶解し、油相を得る工程と、b)ヒアルロン酸を水に溶解し、水相を得る工程と、c)攪拌条件で、前記油相を前記水相に滴下し、滴下が完了した後、攪拌を持続して有機溶媒を揮発させ、その後、固液分離と乾燥を行ってPHAマイクロスフェアを得る工程と、を含み、前記工程a)と工程b)とは、順序の制限がない。本発明の上記方法は、PHAマイクロスフェアの分散性を高めることができ、得られたマイクロスフェアは水中で速やかに分散することができ、マイクロスフェアの形態が完全で、互いに独立しており、凝集現象がないため、針先の詰まりが回避され、後に充填剤として注射することが容易である。また、PHAマイクロスフェアは生体適合性に優れ、拒絶反応を起こすことなく、長期間の充填効果を達成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシ脂肪酸エステル(PHA)マイクロスフェアの製造方法であって、
a)PHA材料を有機溶媒に溶解し、油相を得る工程と、
b)ヒアルロン酸を水に溶解し、水相を得る工程と、
c)攪拌条件で、前記油相を前記水相に滴下し、滴下が完了した後、攪拌を持続して有機溶媒を揮発させ、その後、固液分離と乾燥を行ってPHAマイクロスフェアを得る工程と、
を含み、
前記工程a)と工程b)は、順序の制限がなく、
ここで、前記PHA材料の分子量が、10~100KDaであり、
前記油相において、PHA材料の質量濃度が、2.5%~10%であり、
前記ヒアルロン酸の分子量が、5~500KDaであり、
前記水相において、ヒアルロン酸の質量濃度が、0.01%~1%である、
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記工程c)において、前記油相と水相との体積比が、1:(10~200)である、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルからなる群より選ばれる1種または2種以上である、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記PHA材料の分子量平均値が、15~80KDaである、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記PHA材料がPHBHHxであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が50KDaであり、あるいは、
前記PHA材料がPHBVHHxであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が50KDaであり、あるいは、
前記PHA材料がPHBであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が80KDaであり、あるいは、
前記PHA材料がPHBVであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が40KDaであり、あるいは、
前記PHA材料がP34HBであり、分子量が10~30KDa、分子量平均値15KDaである、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸の分子量平均値が、50~300KDaである、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記ヒアルロン酸は、分子量が5~100KDaであり、分子量平均値が50KDaであり、あるいは
前記ヒアルロン酸は、分子量が10~200KDaであり、分子量平均値が50KDaであり、あるいは、
前記ヒアルロン酸は、分子量が100~500KDaであり、分子量平均値が300KDaである、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
前記攪拌の速度が、100~500rpmである、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌が、マグネチックスターラーによる攪拌であり;
油相の滴下が完了した後、撹拌を持続する時間が、4時間以上である、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
油相の滴下が完了した後、撹拌を持続する時間が、4~6時間である、
ことを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記撹拌の温度が、10~37℃である、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥が、まず冷凍し、その後凍結乾燥することであり、
前記冷凍の温度が-80~-20℃であり、前記凍結乾燥の温度が-60~-40℃である、
ことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の製造方法で製造されるポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェア。
【請求項14】
前記ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアの粒子径が60μm以下であり、および/または
前記ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアの吸引率が85%以上であり、および/または
前記ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアの注射率は88%以上である、
ことを特徴とする、請求項13記載のポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬技術分野に関し、特に、注射可能なポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2021年10月12日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号202111187296.9、発明名称「注射可能なポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアおよびその製造方法」という中国特許出願の優先権を要求し、その全ての内容が引用により本発明に組み込まれている。
【0003】
人間が加齢したり、何らかの疾患の影響を受けたりすると、人体の筋肉とコラーゲン組織にある程度の機能性劣化が生じ、皮膚の陥凹、胃液の逆流などの問題が引き起こされるので、陥凹した皮膚を埋めたり、異物によって筋肉とコラーゲンの再成長を刺激したりするために、多種の充填剤が発明されている。しかし、これらの物質は充填剤としての充填効果維持時間が短く、頻繁に注射で充填効果を維持する必要がある。長期的な充填効果を達成するために、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの生物の分解不可能な材料を充填剤として使用する試みがなされている。これらの充填剤の充填効果維持時間は明らかに長くなっているが、これらの材料は体内に長く残りすぎると、有害物質が放出され、それによって一連の副反応が引き起こされ、人体の健康に危害を及ぼすことになる。
【0004】
近年、生分解性高分子材料が人々の視野に入ってきた。これらの材料は人体に対して無毒で拒絶反応がなく、人体の代謝に伴って徐々に分解して体外に排出でき、また、材料の分子量などのパラメータを調節することで、分解時間を1週間から数年にすることができる。
【0005】
ポリヒドロキシ脂肪酸エステルは、PHAと略称され、天然の高分子生体材料で、微生物から合成された細胞内ポリエステルである。PHAは、良好な生体適合性、生分解性を有するため、現在最も理想的な生物医学材料の一つである。PHAは、体内で細胞と良好な細胞適合性を有し、細胞がこのようなステント上で良好に成長し、かつこのようなステントがCO2とH2Oに分解できる。注射を容易にするために、人々は通常それをマイクロスフェアにして、針を通して注射することができる。人体貪食細胞の存在により、マイクロスフェアの直径は通常20ミクロン以上であるが、マイクロスフェアが大きすぎると、針先が詰まったり、皮膚破裂を引き起こしたりする場合がある。そのため、注射に使用するマイクロスフェアの大きさは、通常60ミクロン以下である。
【0006】
従来、PHA材料を注射可能なマイクロスフェアに製造する場合、通常、水相としてポリビニルアルコール(PVA)水溶液を使用し、乳化法またはマイクロフロー制御法によりマイクロスフェアの製造を行う。しかし、このようなプロセスで生産されたマイクロスフェアは、非常に凝集・癒着しやすく、大きな塊状物質となりやすいため、後続の注射に不便をもたらし、生分解性材料のマイクロスフェアの充填剤としての応用を大きく阻害している。そのため、マイクロスフェアの凝集・癒着の問題を解決するために、新しいマイクロスフェア製造方案が早急に求まれている。
【発明の概要】
【0007】
そこで、本発明の目的は、ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアおよびその製造方法を提供することである。本発明の製造方法は、ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアの分散性を効果的に高め、マイクロスフェアの凝集・癒着の問題を克服することができるとともに、ポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアの吸収性と注射性を効果的に高めることができる。
【0008】
本発明は、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル注射用マイクロスフェアの製造方法であって、
a)PHA材料を有機溶媒に溶解し、油相を得る工程と、
b)ヒアルロン酸を水に溶解し、水相を得る工程と、
c)攪拌条件で、前記油相を前記水相に滴下し、滴下が完了した後、攪拌を持続して有機溶媒を揮発させ、その後、固液分離と乾燥を行ってPHAマイクロスフェアを得る工程と、を含み、
前記工程a)と工程b)とは、順序の制限がない、製造方法を提供している。
【0009】
好ましくは、前記ヒアルロン酸の分子量が、5~500KDaである。
好ましくは、前記水相において、ヒアルロン酸の質量濃度が、0.01%~1%(w/v)である。
好ましくは、前記工程c)において、前記油相と水相との体積比が、1:(10~200)である。
好ましくは、前記油相において、PHA材料の質量濃度が、2.5%~10%(w/v)であり;
前記有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルからなる群より選ばれる1種または2種以上である。
【0010】
好ましくは、前記PHA材料の分子量が、10~100KDaである。
好ましくは、前記PHA材料が、天然または非天然のポリヒドロキシ脂肪酸エステルであり;
前記天然または非天然のポリヒドロキシ脂肪酸エステルが、PHB、PHBV、PHBHHx、P34HB、PHBVHHx、PHHx、PHOのうちの1種または2種以上を含むが、これらに限定されない。
【0011】
好ましくは、前記攪拌の速度が、100~500rpmである。
好ましくは、前記攪拌が、マグネチックスターラーによる攪拌であり;油相の滴下が完了した後、撹拌を持続する時間が4時間以上である。
本発明は、さらに、上記の技術案に記載の製造方法で製造される注射可能なポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアを提供している。
【0012】
本発明の製造方法では、PHA材料を有機溶媒に溶解して油相を作り、ヒアルロン酸水溶液を水相とし、水相溶液を攪拌しながら、水相に油相を徐々に加え、さらに攪拌を持続して有機溶媒を揮発させた後、固液分離と乾燥を行い、PHAマイクロスフェアを製造する。本発明の上記方法は、PHAマイクロスフェアの分散性を高めることができ、得られたマイクロスフェアが水中で速やかに分散することができ、マイクロスフェアの形態が完全で、互いに独立しており、凝集現象がないため、針先の詰まりを回避し、後に充填剤として注射することが容易である。同時に、本発明で得られたポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアは、吸収性と注射性に優れている。そして、PHAマイクロスフェアは、生体適合性に優れており、拒絶反応を起こすことなく、長期的な充填効果を達成できる。
【0013】
実験の結果、本発明が提供する製造方法は、以下の有益な効果を有することが分かった:(1)マイクロスフェア収率の高さ:マイクロスフェア収率が70%以上である。(2)分散性の良さ:本発明で得られたPHAマイクロスフェアは、適当に混合すれば水中に分散でき、静置後、マイクロスフェアが水中で良好な分散性を示し、層分離現象が現れず、水の上層にも浮遊しないし水底にも堆積しなく、水体中に均一に分散され、均一な分散液が形成される。上記分散液を風乾した後、マイクロスフェアの形態を観察した結果、マイクロスフェアの形態は完全で、互いに独立しており、凝集現象がなく、マイクロスフェア粒子の全部または大部分の粒子径は60μm以下であり、注射需要を満たすことができる。(3)吸引性の良さ:シリンジで上記分散液を吸引すると、マイクロスフェアの吸引率が85%以上となり、優れた吸引性が示される。(4)注射性の良さ:シリンジを押して注射された分散液を集め、マイクロスフェアの注射率を計算した結果、マイクロスフェアの注射率は88%以上に達し、優れた注射性が示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、本発明の実施例または従来技術における技術的手段をより明確に説明するために、以下の実施例または従来技術の説明に用いる図面について簡単に説明するが、以下の説明における図面は本発明の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な作業を行わずに、提供した図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【0015】
【
図1】実施例1で得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの光学顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2で得られた注射可能なPHBVHHxマイクロスフェアの光学顕微鏡写真である。
【
図3】実施例3で得られた注射可能なPHBマイクロスフェアの光学顕微鏡写真である。
【
図4】実施例4で得られた注射可能なPHBVマイクロスフェアの光学顕微鏡写真である。
【
図5】実施例5で得られた注射可能なP34HBマイクロスフェアの光学顕微鏡写真である。
【
図6】実施例1~5及び比較例1~5で得られたマイクロスフェアの分散安定性を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル注射用マイクロスフェアの製造方法であって、
a)PHA材料を有機溶媒に溶解し、油相を得る工程と、
b)ヒアルロン酸を水に溶解し、水相を得る工程と、
c)攪拌条件で、前記油相を前記水相に滴下し、滴下が完了した後、攪拌を持続して有機溶媒を揮発させ、その後、固液分離と乾燥を行ってPHAマイクロスフェアを得る工程と、を含み、
前記工程a)と工程b)とは、順序の制限がない、製造方法を提供している。
【0017】
本発明の製造方法では、PHA材料を有機溶媒に溶解して油相を作り、ヒアルロン酸水溶液を水相とし、水相溶液を攪拌しながら、水相に油相を徐々に加え、さらに攪拌を持続して有機溶媒を揮発させた後、固液分離と乾燥を行い、PHAマイクロスフェアを製造する。本発明の上記方法は、PHAマイクロスフェアの分散性を高めることができ、得られたマイクロスフェアが水中で速やかに分散することができ、マイクロスフェアの形態が完全で、互いに独立しており、凝集現象がないため、針先の詰まりを回避し、後に充填剤として注射することが容易である。同時に、本発明で得られたポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアは、吸収性と注射性に優れている。そして、PHAマイクロスフェアは、生体適合性に優れており、拒絶反応を起こすことなく、長期的な充填効果を達成できる。
【0018】
●工程a)PHA材料を有機溶媒に溶解し、油相を得る工程について
本発明では、前記PHA材料、すなわちポリヒドロキシ脂肪酸エステルの種類は、特に制限がなく、当分野で通常の第五世代のPHA商業品であればよい。具体的には、天然または非天然のポリヒドロキシ脂肪酸エステルであり、より具体的には、PHB(即ち、3-ヒドロキシ酪酸エステル)、PHBV(即ち、ヒドロキシ酪酸エステルとヒドロキシ吉草酸エステルの共重合体)、PHBHHx(即ち、P3HB-co-3HHx,3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシカプロン酸の共重合エステル)、P34HB(即ち、P3HB-co-4HB,3-ヒドロキシ酪酸と4-ヒドロキシ酪酸エステルの共重合エステル)、PHBVHHx(即ち、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシカプロン酸と3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体)、PHHx(即ち、ポリヒドロキシカプロン酸エステル)およびPHO(即ち、ポリヒドロキシカプリル酸エステル)中の1種または複数種である。本発明では、前記PHA材料の分子量は、10~100KDaであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記分子量は、10~30KDa、20~100KDa、10~100KDaである。前記PHA材料の分子量平均値は、15~80KDaであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記分子量平均値は、15KDa、40KDa、50KDaまたは80KDaである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、前記PHA材料は、PHBHHxであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が50KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記PHA材料は、PHBVHHxであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が50KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記PHA材料は、PHBであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が80KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記PHA材料は、PHBVであり、分子量が20~100KDaであり、分子量平均値が40KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記PHA材料は、P34HBであり、分子量が10~30KDa、分子量平均値が15KDaである。
【0020】
本発明では、前記有機溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルの1種または2種以上であることが好ましい。本発明は、前記有機溶剤の由来について特に制限がなく、市販の商業品であればよい。
【0021】
本発明では、前記PHA材料が有機溶媒に溶解してなる有機溶液の質量濃度(w/v)は、2.5%~10%であることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記質量濃度は、2.5%、5%、または10%である。本発明では、PHA材料を有機溶媒に溶解してなる有機溶液を油相とする。
【0022】
●工程b)ヒアルロン酸を水に溶解し、水相を得る工程について
本発明では、前記ヒアルロン酸、すなわちHAの分子量は、5~500KDaであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記分子量は、5~100KDa、10~200KDaまたは100~500KDaである。本発明では、前記ヒアルロン酸の分子量平均値は、50~300KDaであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記分子量平均値は、50KDaまたは300KDaである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ヒアルロン酸は、分子量が5~100KDaであり、分子量平均値が50KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記ヒアルロン酸は、分子量が10~200KDaであり、分子量平均値が50KDaである。本発明の別のいくつかの実施形態では、前記ヒアルロン酸は、分子量が100~500KDaであり、分子量平均値が300KDaである。
【0024】
本発明では、前記水は、蒸留水または脱イオン水であることが好ましく、蒸留水であることがより好ましい。
本発明では、前記ヒアルロン酸が水に溶解してなる水溶液の質量濃度(w/v)は、0.01%以上1%以下であることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記質量濃度は0.5%、5%、または10%である。本発明はヒアルロン酸を水に溶解してなる水溶液を水相とする。従来、水相としてポリビニルアルコール(PVA)水溶液を使用してPHAマイクロスフェアを製造していたが、得られたPHAマイクロスフェアは水中で凝集・癒着しやすく、速やかに分散することが困難であった。一方、本発明では、ヒアルロン酸水溶液を水相として使用することで、PHAマイクロスフェアの分散性が向上し、得られたマイクロスフェアは水中で速やかに分散でき、マイクロスフェアの形態が完全で、互いに独立しており、凝集現象がないため、針の詰まりを回避し、後に充填剤として注射することが容易である。同時に、本発明で得られたポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアは吸収性と注射性に優れている。そして、PHAマイクロスフェアは生体適合性に優れており、拒絶反応を起こすことなく、長期的な充填効果を達成できる。
本発明では、上記工程a)と工程b)とは、順序の制限がない。
【0025】
●工程c)攪拌条件下で、前記油相を前記水相に滴下し、滴下が完了した後、攪拌を持続して有機溶媒を揮発させ、その後、固液分離と乾燥を行ってPHAマイクロスフェアを得る工程について
本発明では、油相と水相が得られた後、水相を攪拌し、この攪拌条件で、油相を水相にゆっくりと滴下する。ここで、前記攪拌は、マグネチックスターラーによる攪拌である。攪拌の速度は、100~500rpmであり、典型的かつ非制限的なものとして、攪拌速度は100rpm、200rpm、300rpm、400rpm、または500rpmとすることができる。前記油相と水相との体積比は、1:(10~200)であることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、体積比は、1:10、1:20、1:50、1:100、1:150または1:200である。
【0026】
油相をすべて滴下し終わった後、攪拌過程には、まず攪拌を継続して乳化液を形成し、その後攪拌を持続して有機溶剤を揮発させることを含むことが好ましい。前記撹拌を継続する過程で、前記撹拌は、マグネチックスターラーによる撹拌であり、前記攪拌の速度は100~500rpmであり、本発明のいくつかの実施形態では、前記攪拌の速度は400rpmである。前記撹拌を持続する過程で、前記撹拌は、マグネチックスターラーによる撹拌であり、前記攪拌の速度は100~500rpmであり、典型的かつ非制限的なものとして、攪拌速度は、100rpm、200rpm、300rpm、400rpm、または500rpmとすることができる。前記攪拌を持続する時間は4時間以上であることが好ましく、4~6時間であることがより好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、乳化液を形成した後、攪拌を持続する(有機溶剤を揮発させる)時間は、4時間、5時間、または6時間である。本発明は、上記油相の滴下と攪拌の温度について特に制限がなく、室温で行わればよく、具体的には10~37℃、好ましくは25℃である。
【0027】
撹拌を持続して溶剤を完全に揮発させた後、固液分離を行う。本発明では、前記固液分離の方式について特に制限がなく、当業者によく知られている通常の方式、例えば濾過などに従えばよい。
固液分離を行った後、乾燥して水分を除去する。本発明では、前記乾燥は、まず冷凍し、その後凍結乾燥することが好ましい。本発明では、前記乾燥の温度は、-80~-20℃であり;そのうち、前記冷凍の温度は-80~-20℃であることが好ましく、前記凍結乾燥の温度は-60~-40℃であることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、前記冷凍の温度は-80~-40℃であり、時間は6~12時間であり;凍結乾燥の温度は-40℃であり、時間は24時間であることが好ましい。上記乾燥処理を行った後、PHAマイクロスフェアが得られる。
【0028】
本発明は、さらに、上記の技術案に記載の製造方法で製造されるPHAマイクロスフェアを提供している。
本発明の製造方法では、PHA材料を有機溶媒に溶解して油相を作り、ヒアルロン酸水溶液を水相とし、水相溶液を攪拌しながら、水相に油相を徐々に加え、さらに攪拌を持続して有機溶媒を揮発させた後、固液分離と乾燥を行い、PHAマイクロスフェアを製造する。本発明の上記方法は、PHAマイクロスフェアの分散性を高めることができ、得られたマイクロスフェアが水中で速やかに分散することができ、マイクロスフェアの形態が完全で、互いに独立しており、凝集現象がないため、針先の詰まりを回避し、後に充填剤として注射することが容易である。同時に、本発明で得られたポリヒドロキシ脂肪酸エステルマイクロスフェアは、吸収性と注射性に優れている。そして、PHAマイクロスフェアは、生体適合性に優れており、拒絶反応を起こすことなく、長期的な充填効果を達成できる。
【0029】
実験の結果、次のことが分かった。
(1)本発明により提供される製造方法は、マイクロスフェアの収率が70%以上である。本発明で得られたPHAマイクロスフェアは、適当に混合すれば水中に分散でき、静置した後、マイクロスフェアが水中で良好な分散性を示し、層分離現象が現れず、水の上層にも浮遊しないし、水底にも堆積しなく、水体中に均一に分散され、均一な分散液が形成される。上記分散液を風乾した後、マイクロスフェアの形態を観察した結果、マイクロスフェアの形態は完全で、互いに独立しており、凝集現象はなく、マイクロスフェア粒子の全部または大部分の粒子径は60μm以下であり、注射の要求を満たすことができる。
(2)使い捨ての1mLシリンジに注射針内径0.5mm、長さ19.7mmの注射針(すなわち常用の1mLシリンジの針)を設置して吸引率検出装置とし、1mLのマイクロスフェア分散液(マイクロスフェア乾燥重量0.1g、M0と標記する)を実験試料とする。すべてのマイクロスフェア分散液を一度に吸引し、シリンジ管内に吸引できるマイクロスフェアは取り出して凍結乾燥し、質量はM1であり、吸引率は[M1/M0]×100%と定義される。上記シリンジで上記マイクロスフェア分散液を吸引する場合、マイクロスフェアの吸引率は85%以上となり、優れた吸引性を示した。
(3)使い捨ての1mLシリンジに注射針内径0.5mm、長さ19.7mmの注射針(すなわち常用の1mLシリンジの針)を設置して吸引率検出装置とし、1mLのマイクロスフェア分散液(マイクロスフェア乾燥重量0.1g、M0と標記する)を実験試料とする。1mLのマイクロスフェア分散液をシリンジ後方からシリンジ管内に注入し、すべてのマイクロスフェア分散液を一度に注射し、注射針を通してシリンジ管外に注射できるマイクロスフェアを集めて凍結乾燥し、質量をM2とし、注射率を(M2/M0)×100%と定義される。シリンジを押して注射された分散液を集め、マイクロスフェアの注射率を計算した結果、マイクロスフェアの注射率は88%以上に達し、優れた注射性を示した。
【0030】
本発明をさらに理解するために、以下、実施例に基づいて本発明の好ましい実施例について説明するが、これらの説明は本発明の特徴と利点をさらに説明するためのものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【0031】
実施例1
1gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、油相を攪拌下でゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0032】
投入されたPHBHHx材料量と得られたPHBHHxマイクロスフェア量から、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率が93%として算出された。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果を
図1に示し、
図1が実施例1で得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの光学顕微鏡図であり、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が1~50μmである。
【0033】
実施例2
1gのPHBVHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量10~200KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で4時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-40℃で12時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBVHHxマイクロスフェアが得られた。
【0034】
得られた注射可能なPHBVHHxマイクロスフェアの収率が91%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBVHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果を
図2に示し、
図2が実施例2で得られた注射可能なPHBVHHxマイクロスフェアの光学顕微鏡図であり、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が4~50μmである。
【0035】
実施例3
1gのPHB(分子量20~100KDa、分子量平均値80KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量100~500KDa、分子量平均値300KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で6時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-40℃で12時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBマイクロスフェアが得られた。
【0036】
得られた注射可能なPHBマイクロスフェアの収率が92%である。凍結乾燥処理後のPHBマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果を
図3に示し、
図3が実施例3で得られた注射可能なPHBマイクロスフェアの光学顕微鏡図であり、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が2~55μmである。
【0037】
実施例4
1gのPHBV(分子量20~100KDa、分子量平均値40KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-40℃で12時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBVマイクロスフェアが得られた。
【0038】
得られた注射可能なPHBVマイクロスフェアの収率が90%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBVマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果を
図4に示し、
図4が実施例4で得られた注射可能なPHBVマイクロスフェアの光学顕微鏡図であり、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が1~52μmである。
【0039】
実施例5
1gのP34HB(分子量10~30KDa、分子量平均値15KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-40℃で12時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なP34HBマイクロスフェアが得られた。
【0040】
得られた注射可能なP34HBマイクロスフェアの収率が90%である。凍結乾燥処理を行った後のP34HBマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果を
図5に示し、
図5が実施例5で得られた注射可能なP34HBマイクロスフェアの光学顕微鏡図であり、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が5~100μmであり、そのうち、68%の粒子の粒子径が1~60μmであり、即ち、大部分の粒子の粒子径が60μm以下である。
【0041】
実施例6:油相濃度が異なる場合
それぞれ、0.5g、1g、2gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、2.5%(w/v)、5%(w/v)、10%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0042】
得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率がそれぞれ90%、93%、89%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果として、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径が、それぞれ、0.4~20μm、1~50μm、1~80μmである(83%の粒子の粒子径が1~60μmである)。
【0043】
実施例7:油相と水相との体積比が異なる場合
1gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比をそれぞれ1:10、1:50、1:200とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0044】
得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率がそれぞれ71%、93%、94%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果として、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径がそれぞれ1~110μm(58%の粒子の粒子径が1~60μmにある)、1~50μm、1~50μmである。
【0045】
実施例8:攪拌方式および回転速度が異なる場合
1gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。それぞれ、マグネチックスターラー(回転速度がそれぞれ100rpm、400rpm、500rpm)および高速ホモジナイザー(回転速度12000rpm)で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらに5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0046】
得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率がそれぞれ77%、93%、89%、99%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果として、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径がそれぞれ5~60μm、1~50μm、1~45μm、0.1~10μm(粒子の粒子径が基本的に10μm以下であり、5%のみの粒子の粒子径が1~60μmにあり、全体の粒子径分布が0.1~10μmのレベルにある)である。これにより、高速ホモジナイズ攪拌方式と比較して、本発明ではマグネチックスターラーを採用して適切な速度(100~500rpm)で攪拌することは、より人体に適するマイクロスフェアの粒子径を得るのに有利であることが証明された。
実施例9:油相有機溶媒の種類が異なる場合
【0047】
それぞれ、1gのPHBHHx(分子量10~20KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量5~100KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0048】
得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率がそれぞれ93%、92%、89%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果として、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径がそれぞれ1~52μm、1~50μm、1~55μmである。
【0049】
実施例10:水相濃度が異なる場合
1gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。ヒアルロン酸(分子量10~200KDa、分子量平均値50KDa)を蒸留水に溶解し、最終濃度がそれぞれ0.01%(w/v)、0.5%(w/v)、1%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0050】
得られた注射可能なPHBHHxマイクロスフェアの収率がそれぞれ80%、93%、87%である。凍結乾燥処理を行った後のPHBHHxマイクロスフェアを水に溶解し、適宜に混合すると水に分散することができ、水を風乾した後、光学顕微鏡で観察し、結果として、得られたマイクロスフェアが良好な分散性を有し、球形または楕円球形であることを分かった。粒径計で検出した結果、その粒子径がそれぞれ3~50μm、1~50μm、0.7~50μmである。
【0051】
比較例1
1gのPHBHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。アルコール分解度80%のポリビニルアルコール(PVA)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、PHBHHxマイクロスフェアが得られた。
【0052】
比較例2
1gのPHBVHHx(分子量20~100KDa、分子量平均値50KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。アルコール分解度80%のポリビニルアルコール(PVA)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、PHBVHHxマイクロスフェアが得られた。
【0053】
比較例3
1gのPHB(分子量20~100KDa、分子量平均値80KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。アルコール分解度80%のポリビニルアルコール(PVA)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、PHBマイクロスフェアが得られた。
【0054】
比較例4
1gのPHBV(分子量20~100KDa、分子量平均値40KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。アルコール分解度80%のポリビニルアルコール(PVA)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液が形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、注射可能なPHBVマイクロスフェアが得られた。
【0055】
比較例5
1gのP34HB(分子量10~30KDa、分子量平均値15KDa)を20mLのジクロロメタンに溶解し、5%(w/v)最終濃度の有機溶液に調製し、油相とした。アルコール分解度80%のポリビニルアルコール(PVA)を蒸留水に溶解し、最終濃度0.5%(w/v)の水溶液に調製し、水相とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で水相を攪拌しながら、攪拌状態で油相をゆっくりと水相に滴下し、両溶液の体積比を1:50とした。マグネチックスターラーで400rpmの速度で攪拌を継続し、乳化液をが形成され;さらにこの速度で5時間持続攪拌して有機溶媒を除去した。その後、得られた溶液をまず冷凍し(-80℃で6時間冷凍)、さらに凍結乾燥し(-40℃で24時間凍結乾燥)水分を除去し、P34HBマイクロスフェアが得られた。
【0056】
実施例11:マイクロスフェアの安定性の測定
0.01gの実施例1~5及び比較例1~5で製造されたマイクロスフェアをそれぞれ採取し、蒸留水1mLにそれぞれ分散し、5mLのガラス瓶に入れた。速やかに混ぜた後、静置した。
【0057】
30分間静置した後、それぞれのマイクロスフェアの水中での分散状況を観察した。その結果、
図6に示すように、
図6は、実施例1~5及び比較例1~5で得られたマイクロスフェアの分散安定性を示す図である(左から右の10個の容器がそれぞれ実施例1~5及び比較例1~5の試料に対応する)。実施例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアはいずれも良好な分散性を有し、層分離現象が見られず、マイクロスフェアは水体中に均一に分散していたことが分かった。比較例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアは、水分散性を持たず、いずれも深刻な層分離現象が現れ、マイクロスフェアは水上層に浮遊していた。このことから、本発明では、水相物質としてポリビニルアルコール水溶液を用いた場合よりも、ヒアルロン酸水溶液を用いた方が、マイクロスフェアの分散性と安定性が著しい向上することが証明された。
【0058】
実施例12:マイクロスフェアの吸引性の測定
使い捨ての1mLシリンジに注射針内径0.5mm、長さ19.7mmの注射針(すなわち常用の1mLシリンジの針)を設置して注射率検出装置とし、1mLのマイクロスフェア分散液(マイクロスフェア乾燥重量0.1g、M0と標記する)を実験試料とした。0.1gの実施例1~5及び比較例1~5で製造されたマイクロスフェアをそれぞれ採取し、蒸留水1mLにそれぞれ分散し、ガラス瓶に入れた。速やかに混合した後、マイクロスフェア分散液が形成された。シリンジ1mLで分散液1mLを吸引し、シリンジに吸引したマイクロスフェアをそれぞれ凍結乾燥した。シリンジに吸引されるマイクロスフェアの質量(M1)が全マイクロスフェアの質量(M0)に占める割合を、マイクロスフェアの吸引率(M1/M0)×100%とした。
【0059】
その結果、実施例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアの吸引率がそれぞれ95%、93%、91%、90%および85%である。比較例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアの吸引率がそれぞれ10%、13%、11%、9%および6%である。これにより、実施例1~5のマイクロボールの吸引率は、比較例1~5よりはるかに高いことがわかった。このことから、本発明では、水相物質としてポリビニルアルコール水溶液を用いた場合よりも、ヒアルロン酸水溶液を用いた方が、マイクロスフェアの吸引性が著しい向上することが証明された。
【0060】
実施例13:マイクロスフェアの注射性の測定
使い捨ての1mLシリンジに注射針内径0.5mm、長さ19.7mmの注射針(すなわち常用の1mLシリンジの針)設置して注射率検出装置とし、1mLのマイクロスフェア分散液(マイクロスフェア乾燥重量0.1g、M0と標記する)を実験試料とした。0.1gの実施例1~5及び比較例1~5で製造されたマイクロスフェアをそれぞれ採取し、蒸留水1mLにそれぞれ分散し、ガラス瓶に入れた。速やかに混合した後、マイクロスフェア分散液が形成された。分散液をシリンジ1mLに完全に注入し、シリンジを押して注射された分散液を集め、注射された分散液のマイクロスフェア質量(M2)をそれぞれ凍結乾燥し、全マイクロスフェア質量(M0)に対する百分率を計算し、マイクロスフェアの注射率(M2/M0)×100%とした。
【0061】
その結果、実施例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアの注射率がそれぞれ91%、92%、90%、90%および88%である。比較例1~5におけるPHBHHxマイクロスフェア、PHBVHHxマイクロスフェア、PHBマイクロスフェア、PHBVマイクロスフェアおよびP34HBマイクロスフェアの注射率がそれぞれ7%、11%、13%、8%および4%である。これにより、実施例1~5のマイクロスフェアの注射率は比較例1~5よりはるかに高いことがわかった。このことから、本発明では、水相物質としてポリビニルアルコール水溶液を用いた場合よりも、ヒアルロン酸水溶液を用いた方が、マイクロスフェアの注射性が著しい向上することが証明された。
【0062】
以上の実験結果から、本発明が提供する製造方法は、以下の有益な効果を有することが分かった:(1)マイクロスフェア収率の高さ:マイクロスフェア収率が70%以上である。(2)分散性の良さ:本発明で得られたPHAマイクロスフェアは、適当に混合すれば水中に分散でき、静置した後、マイクロスフェアが水中で良好な分散性を示し、層分離現象が現れず、水の上層にも浮遊しないし、水底にも堆積しなく、水体中に均一に分散し、均一な分散液が形成される。上記分散液を風乾した後、マイクロスフェアの形態を観察した結果、マイクロスフェアの形態は完全で、互いに独立しており、凝集現象はなく、マイクロスフェア粒子の全部または大部分の粒子径は60μm以下であり、注射需要を満たすことができる。(3)吸引性の良さ:シリンジで上記分散液を吸引すると、マイクロスフェアの吸引率が85%以上となり、優れた吸引性を示す。(4)注射性の良さ:シリンジを押して注射された分散液を集め、マイクロスフェアの注射率を計算した結果、マイクロスフェアの注射率は88%以上に達し、優れた注射性が示された。
【0063】
以上、本発明の原理および実施形態を具体的な例を用いて説明したが、以上の実施例の説明は、本発明の方法およびその中核思想の理解を助けるためのものに過ぎず、最良の形態を含むとともに、いかなる装置又はシステムを製造および使用し、いずれの結合を実施する方法も含む。なお、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対して若干の改良や修飾を行うことも可能であり、これらの改良や修飾も本発明の特許請求の範囲の保護範囲に含まれる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって示され、当業者が思いつく他の実施例を含むことができる。これらの他の実施形態は、特許請求の範囲に記載された構成要素に近似している場合や、特許請求の範囲に記載された文言と実質的に差異のない均等な構成要素を含むものであれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【国際調査報告】