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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521752
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 GB2022052551
(87)【国際公開番号】W WO2023057773
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2114436.5
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2208764.7
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132597
【氏名又は名称】アクチュエイト・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・パーマー-フェルゲイト
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH22
(57)【要約】
薬物送達装置が開示されており、そこで作動要素が、薬物送達装置が作動するまで注射器プランジャの横方向の移動を防止するように構成される。薬物送達装置が作動すると、作動要素は変位し、それによって駆動要素の影響下でプランジャの横方向の移動が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に受け入れられ、プランジャを含む注射器であって、前記プランジャは、前記プランジャの長手方向軸に対して非垂直な角度で前記ハウジング内での第2ガイド面に当接するように構成された第1ガイド面を含む、注射器と、
前記プランジャに押圧力を加えるように構成された駆動要素と、
前記ハウジング内での前記プランジャの横方向の移動を防止するように構成された第1位置と、前記ハウジング内での前記プランジャの少なくとも一部の横方向の移動を可能にするように構成された第2位置との間で移動可能である、作動要素とを含み、
前記作動要素が前記第1位置から前記第2位置に変位するとき、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面との間の当接により、前記駆動要素の前記押圧力によって前記プランジャの前記少なくとも一部が横方向に変位し、それにより、前記プランジャが解放され、前記駆動要素の前記押圧力を受けて非押下位置から押下位置に移動する、
薬物送達装置。
【請求項2】
前記プランジャは、前記第1ガイド面を含む第1横方向突出ガイド要素を含み、前記第2ガイド面は、第2横方向突出ガイド要素上にある、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記プランジャは、前記第1ガイド面を含む横方向突出ガイド要素を含み、前記第2ガイド面は、前記横方向突出ガイド要素を受け入れるように構成されたガイド凹部内にある、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記第2ガイド面は、横方向突出ガイド要素上にあり、前記プランジャは、前記横方向突出ガイド要素を受け入れるように構成された前記第1ガイド面を含むガイド凹部を含む、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
前記作動要素は、長手方向に移動可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
前記作動要素は、回転可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
前記作動要素は、前記プランジャの外面の接線方向に移動可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
前記作動要素は、前記作動要素が前記第2位置にあるときに前記プランジャの横方向突出ロック要素を受け入れる形状の開口を含み、前記横方向突出ロック要素は、前記第1位置で前記作動要素に当接する、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項9】
プランジャは、前記作動要素が前記第2位置にあるとき前記作動要素の横方向突出ロック要素を受け入れる形状のロック凹部を含み、前記横方向突出ロック要素は、前記第1位置で前記プランジャに当接する、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項10】
前記駆動要素は、圧縮ばねである、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項11】
前記圧縮ばね内または前記圧縮ばねの周囲に可撓性のガイドチューブをさらに含む、請求項10に記載の薬物送達装置。
【請求項12】
前記駆動要素は、ピストンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項13】
前記注射器の先端に結合された針を保護するように構成された可動針ガードをさらに含み、前記針ガードは、前記作動要素を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項14】
前記横変位は、前記プランジャの曲がり及び/または枢動を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項15】
前記薬物送達装置は、自動注射器、ペン型注射器またはパッチポンプである、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項16】
薬物送達装置内に注射器を保持するための注射器保持部材であって、
環状カラーと、
前記環状カラーの遠位側から長手方向に伸長する1つ以上の支持アームであって、前記1つ以上の支持アームのそれぞれは、それぞれの枢動点を中心に前記カラーに対して枢動可能である、支持アームと、を含み、
前記1つ以上の支持アームのそれぞれは、前記それぞれの枢動点の遠位に、前記注射器のバレルと前記注射器の剛性針シールドとの間の円周方向隙間に係合するための注射器当接ショルダを提供するショルダ部分を含む、
注射器保持部材。
【請求項17】
注射器が前記注射器保持部材に挿入されるとき、前記注射器の当接面が各支持アームの前記注射器当接ショルダのそれぞれの係合面に当接し、前記それぞれの係合面は、前記それぞれの係合面が前記当接面に隣接する当接面の接線に垂直な、前記それぞれの支持アームの前記それぞれの枢動点を通って伸長する直線の近位に配置される、請求項16に記載の注射器保持部材。
【請求項18】
前記注射器当接ショルダは、各支持アーム上の内側に突出した注射器突出部によって形成される、請求項16または17に記載の注射器保持部材。
【請求項19】
前記環状カラーの開口部が針ガードを受け入れる形状になっている、請求項16~18のいずれか一項に記載の注射器保持部材。
【請求項20】
前記支持アームのそれぞれの外面が、自動注射器のハウジングまたは注射器キャリア上の対応する第2ロック要素と整合するように構成された第1ロック要素を、前記注射器保持部材が前記ハウジングから取り外されることを防止するために含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の注射器保持部材。
【請求項21】
注射器が前記注射器保持部材内に受け入れられるとき、前記注射器のバレルが半径方向外側への反力を与え、前記支持アームが内側へ曲がることを防止する、請求項16~20のいずれか一項に記載の注射器保持部材。
【請求項22】
前記薬物送達装置は、自動注射器、パッチポンプまたはペン型注射器である、請求項16~21のいずれか一項に記載の注射器保持部材。
【請求項23】
前記1つ以上の支持アームは、一対の対向するアームを含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の注射器保持部材。
【請求項24】
請求項16~23のいずれか一項に記載の注射器保持部材を含む、薬物送達装置。
【請求項25】
自動注射器キャップであって、
キャップハウジングと、
前記キャップハウジングの側面の開口部に受け入れられ、前記自動注射器内に保持された注射器の剛性針シールドを把持するように構成された把持プレートと、を含み、
前記把持プレートは、前記剛性針シールドの外面の対向する側面に係合するように構成された一対の対向する把持面を含む開口を含み、
前記把持プレートは、前記対向する把持面のそれぞれが前記自動注射器キャップの先端に向かって角度をなすように、前記開口を二等分する線に沿って曲がる、自動注射器キャップ。
【請求項26】
自動注射器であって、
ハウジングと、
後退位置と伸長位置との間で移動可能である、針ガードであって、そこで前記針ガードは、前記ハウジング内に保持された注射器の針を保護するように構成される、針ガードと、
前記針ガードを前記伸長位置に付勢するように構成された付勢要素と、を含み、
前記針ガードは、前記ハウジング内に固定された対応する第2ラッチ要素と整合するように構成された第1ラッチ要素を含み、
前記自動注射器は、最初は第1位置にある作動要素をさらに含み、前記第1位置において、前記作動要素は前記第2ラッチ要素を妨げ、それによって前記第1ラッチ要素と前記第2ラッチ要素との間の当接を防止するように配置され、
前記針ガードが前記伸長位置から前記後退位置に移動すると、前記針ガードと前記作動要素との間の当接により、前記作動要素は、前記第1位置から第2位置に移動し、前記第2位置では、前記第2ラッチ要素が前記第1ラッチ要素に露出され、その結果、その後の前記針ガードの前記伸長位置から前記後退位置への移動が、前記第1ラッチ要素と前記第2ラッチ要素との間の当接によって防止される、自動注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動注射器、ペン型注射器、パッチポンプなどの薬物送達装置を使用して、注射される薬物の送達を自動化できる。
【背景技術】
【0002】
薬物送達装置は、様々なサイズ及び設計で入手可能であり、各装置の少なくとも一部は、一般に、1回以上の用量の薬物が送達されると廃棄される。薬物送達装置のこの「使い捨て」の性質により、大量の廃棄物が生成され、一般に生物医学用鋭利物廃棄物として処理されるため、焼却される。
【0003】
さらに、多くの場合、従来の薬物送達装置には、製造に費用がかかり、組み立てが困難である複雑な作動機構が備わっている。例えば、特許文献1は、プランジャボスを回転させて差し込みスロットからプランジャを解放するプランジャ作動機構を有する自動注射器を開示する。組み立て中、プランジャはケースに挿入され、プランジャにおけるボスが差し込みスロットに係合するように回転する。
【0004】
これらの装置の環境負荷を軽減するために、より少ないコンポーネントを備えた薬物送達装置、及び/またはより環境に優しい材料で作られたコンポーネントが必要とされている。しかし、一部の環境に優しい材料(バイオポリマーなど)は、従来の材料(通常のポリマーなど)ほど強くなく、一部の薬物送達装置で使用される駆動ばねなどのコンポーネントによって加えられる比較的大きな力を抑えるために必要な長期強度が不足している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0199588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、信頼性が高く、組み立てが容易で、環境に優しい材料で作ることができる薬物送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、薬物送達装置が提供され、該装置は、ハウジングと、ハウジング内に受け入れられ、プランジャを含む注射器であって、プランジャは、プランジャの長手方向軸に対して非垂直な角度でハウジング内での第2ガイド面に当接するように構成された第1ガイド面を含む、注射器と、プランジャに押圧力を加えるように構成された駆動要素と、ハウジング内でのプランジャの横方向の移動を防止するように構成された第1(初期)位置と、ハウジング内でのプランジャの少なくとも一部の横方向の移動を可能にするように構成された第2(作動)位置との間で移動可能である、作動要素とを含み、作動要素が第1位置から第2位置に変位すると、第1ガイド面と第2ガイド面との間の当接により、駆動要素の押圧力によって前記プランジャの少なくとも一部が横方向に変位し、それにより、プランジャが解放され、駆動要素の押圧力を受けて非押下位置から押下位置に移動する。
【0008】
従来の薬物送達装置の多くは、プランジャロッドを所定の位置にロックするために、通常はプラスチックの薄くて長い部分である小さな柔軟なプラスチックコンポーネントに依存している。これらの部分は、使用前の保管中に一定の負荷がかかるため、設計の脆弱な部分である。プランジャの横方向の移動(プランジャの長手方向の移動だけ)を制御することにより、本発明の作動機構は、駆動要素(駆動ばねなど)を保持し、最小限の力、例えば、ユーザが装置を注射部位に押し付ける力でプランジャを解放することができる。これは、従来の薬物送達装置の作動機構のコンポーネントとは異なり、作動要素を特に強い材料で作る必要がないことを意味する。また、該ラッチ機構には、2つの剛性の連結コンポーネントだけが必要である。
【0009】
第1ガイド面と第2ガイド面との間の角度をなす(すなわち、長手方向軸に対して非垂直及び非平行)当接により、駆動要素(プランジャの長手方向軸に平行な方向に機能する)の押圧力に対抗する長手方向のコンポーネントと、プランジャを作動要素に向かって押す横方向の力の両方を有する垂直反力が生じる。これにより、作動要素に作用する駆動要素の力の結果としてのコンポーネントがゼロに近くなり、それによって作動要素が最小限の抵抗で移動することが可能になる。
【0010】
第1態様の作動機構の別の利点は、プランジャの回転を必要としないことである。これは、装置を直線的に(すなわち、組み立て中にコンポーネントを回転させることなく)組み立てることができることを意味する。
【0011】
押下力は、プランジャを非押下/引き込み/後退位置から押下位置へ付勢する付勢力である(プランジャは、最初は部分的または完全に後退しており、押下力がプランジャをより押し下げられた位置に向けて押すように機能し得る)。押圧力は、(実質的に)長手方向(すなわち、プランジャの長手方向軸に沿って)に作用するが、押圧力の比較的小さい横方向コンポーネントも存在する場合がある。
【0012】
プランジャの長手方向軸は、プランジャが注射器のバレル内に押し込まれたときにプランジャが移動する方向に平行な(すなわち、駆動要素によって提供される押圧力に平行な)プランジャの軸である。プランジャの長手方向軸は、注射器のバレルの長手方向軸と実質的に同じである。
【0013】
横方向は、プランジャの長手方向軸に垂直な方向である。横変位は、横方向の無視できないコンポーネントを伴う変位を意味する。
【0014】
注射器は、例えば、プレフィルドシリンジであってもよく、任意の適切なサイズであり得る。あるいは、注射器は、隔壁を備えたカートリッジ、またはプランジャを備えた他の薬物容器であり得る。注射器の先端は、必要に応じて、薬物を患者に送達するための針を含み得る。あるいは、注射器の先端は、チューブまたは同様のものに接続されるか、または接続可能であってもよい。
【0015】
第2ガイド面は、必要に応じて、ハウジングの内面上またはハウジング内に受け入れられるフレームもしくは他のコンポーネント上にあってもよい。
【0016】
第1ガイド面は、必要に応じて、プランジャから半径方向/横方向に突出した第1ガイド要素(フィン/ラグなど)上にあってもよく、第2ガイド面は、ハウジング内での第2横方向突出ガイド要素上であってもよい(例えば、ハウジングの内面上またはハウジング内に受け入れられるフレームもしくは他のコンポーネント上)。
【0017】
あるいは、第1ガイド面は、プランジャから半径方向/横方向に突出したガイド要素(フィン/ラグなど)上にあってもよく、第2ガイド面は、例えば、ハウジングの内面上またはハウジング内に受け入れられるフレームもしくは他のコンポーネント上のガイド凹部(または溝)内にあってもよい。ガイド凹部は、横方向突出ガイド要素を受け入れるような形状にすることができる。
【0018】
あるいは、第1ガイド面は、プランジャのガイド凹部(または溝)上にあってもよく、第2ガイド面は、横方向突出ガイド要素上、例えば、ハウジングの内面上またはハウジング内に受け入れられるフレームもしくは他のコンポーネント上にあってもよい。ガイド凹部は、横方向突出ガイド要素を受け入れるような形状にすることができる。
【0019】
第1ガイド面は、プランジャの長手方向軸に対して任意に角度をなしてもよい(すなわち、非垂直及び非平行)。さらに/あるいは、第2ガイド面は、プランジャの長手方向軸に対して角度をなしてもよい(すなわち、非垂直及び非平行)。好ましくは、第1ガイド面の角度は、第2ガイド面の角度に対応する。
【0020】
第1及び/または第2ガイド面は平坦であってもよく、あるいは一方または両方が湾曲/非平面であってもよい。
【0021】
必要に応じて、作動要素は、ハウジング内で長手方向に移動可能であってもよい。つまり、第1位置から第2位置への作動要素の移動は、ハウジング内での作動要素の長手方向の移動を含み得る。さらに/あるいは、第1位置から第2位置への作動要素の移動は、回転移動及び/またはプランジャの外面に対して接線方向の移動を含み得る。
【0022】
作動要素は、作動プレートであってもよい。
【0023】
必要に応じて、作動要素は、作動要素が第2位置にあるときにプランジャの横方向に突出したロック要素(例えば、横方向に突出したフィンまたはラグ)を受け入れる形状の開口またはウィンドウを含み得、横方向に突出したロック要素は、第1位置で作動要素に当接し得る。
【0024】
あるいは、プランジャは、作動要素が第2位置にあるときに作動要素の横方向に突出したロック要素を受け入れるように構成されたロック凹部(または溝)を含み得、横方向に突出したロック要素は、第1位置でプランジャに当接し得る。
【0025】
駆動要素は、プランジャに長手方向の押圧力を加えるのに適した任意のコンポーネントであり得る。
【0026】
好ましくは、駆動要素は、圧縮ばねである。
【0027】
必要に応じて、薬物送達装置は、圧縮ばね内または圧縮ばねの周囲に可撓性のガイドチューブをさらに含み得る。ガイドチューブは、ピストンが押し下げられたときにハウジング内で圧縮ばねがよじれたり座屈したりすることを防止するが、(従来の設計で使用される金属ピンとは異なり)プランジャが横方向に移動できるようにする。
【0028】
あるいは、駆動要素は、ピストンであり得る。ピストンは、必要に応じて、減衰及び/またはリセット可能にすることができる。
【0029】
必要に応じて、薬物送達装置は、注射器の針を保護するように構成された可動針ガードをさらに含み得る。針ガードは、必要に応じて、作動要素を含み得る。
【0030】
プランジャの横変位は、プランジャの曲がり及び/または枢動を含み得る。例えば、プランジャは、注射器のバレル内に受け入れられたプランジャの先端を中心に枢動することができる。
【0031】
薬物送達装置は、自動注射器、ペン型注射器、パッチポンプまたは駆動要素によって駆動される注射器を有する他の薬物送達装置であり得る。
【0032】
本発明の第2態様によれば、自動注射器キャップが提供され、それは、キャップハウジングと、キャップハウジングの側面の開口部に受け入れられ、自動注射器内に保持された注射器の剛性針シールド(RNS)を把持するように構成された把持プレートとを含み、把持プレートは、RNSの外面の対向する側面に係合するように構成された一対の対向する把持面を含む開口を含み、把持プレートは、対向する把持面のそれぞれが自動注射器キャップの先端に向かって角度をなすように、開口を二等分する線に沿って曲がる。
【0033】
ハウジングの側面は、RNSを受け入れる形状のキャップの第1端部と、第1端部に対向するキャップの第2端部との間に伸長する。自動注射器キャップの先端は、キャップの第2端部にある。
【0034】
従来の自動注射器キャップは、金属チューブや歯付き座金などの把持要素を使用してRNS表面を把持する。しかし、これらのキャップを取り付けるには大きな力が必要な場合が多く、歯付き座金の歯はキャップを取り外すときに「オーバーセンタ」形で曲がったり反転したりする傾向があり、その結果、RNSなし(キャップの破損など)でキャップが取り外されることになる。
【0035】
対照的に、開口部を二等分する線に沿って曲がったプレートの両側に把持面を有することにより、プレフィルドシリンジのRNSを比較的小さな力でキャップに挿入することができ(グリップ面が自動注射器キャップの先端に向かって角度をなすため)、把持プレートが反転するリスクが実質的にない。
【0036】
従来の自動注射器キャップと比較したもう1つの利点は、把持プレートを比較的薄くて弱い材料で作成できることである。歯付き座金などの把持要素は金属の剛性に依存して歯の不要な曲がりを防止するが、本発明の把持プレートの曲がった形状は、キャップを取り外す際に、曲がって突出する歯を必要とせずに、把持面が自然に角度を付けてRNSを把持することを意味する。
【0037】
本発明の把持プレートは、曲がり角度を調整することによって異なる直径のRNSを把持するために使用することもでき、それによって在庫のオーバーヘッドが削減され、より大きな製造公差が可能になる。対照的に、従来の把持機構(歯付き座金など)は一般に単一のRNS直径にのみ適しており、高精度で製造する必要がある。
【0038】
好ましくは、把持面は、RNSの長手方向軸に対して非垂直な角度でRNSの外面と係合する。この非垂直係合により、RNSの外面に高い把持力を提供しながら、比較的低い力でキャップをRNSに押し込むことができる。
【0039】
好ましくは、把持面は、開口の周囲の反対側に配置される。
【0040】
把持プレートは、好ましくは、弾性材料から形成され、必要に応じて、把持プレートと開口部の内面との間の当接によって、張力下(例えば、圧縮下)で開口部内に保持され得る。張力下ということは、弾性把持プレートがその平衡位置から変位し、弾性付勢力によって元の位置に向けて付勢されることを意味する。張力下で把持プレートを開口部内に保持すると、把持プレートと開口部の内面との間に生じる摩擦によって把持プレートが開口部内に保持されることが可能になり、これは、サブアセンブリの輸送中や自動注射器の最終組み立て中に把持プレートが開口部から脱落するリスクを低減する。
【0041】
必要に応じて、把持プレートは、L字形の輪郭を有することができる。把持プレートは、(約)90度の角度(すなわち、直角)で曲がることができ、あるいはそれより大きいまたは小さい角度を有することができる。L字形のアームは(ほぼ)同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0042】
あるいは、把持プレートは、W字形の輪郭を有することができる。W字形の輪郭を有することにより、キャップハウジングの側面の開口部が大きくなり、キャップハウジングの製造が容易になり、キャップの組み立てが容易になる。
【0043】
好ましくは、把持プレートは、開口部を二等分する線に沿って、110度~150度、より好ましくは120度~140度、さらにより好ましくは125度~135度、そして最も好ましくは(約)130度の角度で曲がる。これらの角度で曲がるということは、RNSをキャップに簡単に挿入できるだけでなく、RNSと把持プレートとの間の十分な把持も確保できることを意味する。
【0044】
好ましくは、開口部の少なくとも一部は、把持要素の輪郭と一致するように角度が付けられた輪郭を有する。一致する輪郭を有するということは、キャップの取り外し中に開口部が把持面を支持し、把持要素及び/または把持面が反転してRNS上の把持を失うことを防止することを意味する。
【0045】
キャップハウジングは、単一の成形コンポーネントとして必要に応じてかつ有利に形成することができる。
【0046】
本発明の第3態様によれば、第2態様のキャップを含む自動注射器が提供される。
【0047】
第3態様の自動注射器は、本発明の第1態様の特徴のいずれをも必要に応じて有することができるが、これらの特徴は必須ではない。
【0048】
本発明の第4態様によれば、自動注射器が提供され、それは、ハウジングと、後退位置と伸長位置との間で移動可能である、針ガードであって、針ガードは、ハウジング内に保持された注射器の針を保護するように構成される、針ガードと、針ガードを伸長位置に付勢するように構成された付勢ばねとを含み、針ガードは、ハウジング内に固定された対応する第2ラッチ要素と整合するように構成された第1ラッチ要素を含み、自動注射器は、最初は第1位置にある作動要素をさらに含み、第1位置において、作動要素は第2ラッチ要素を妨げ、それによって第1ラッチ要素と第2ラッチ要素との間の当接を防止するように配置され、針ガードが伸長位置から後退位置に移動すると、針ガードと作動要素との間の当接により、作動要素は、第1位置から第2位置に移動し、第2位置では、第2ラッチ要素が第1ラッチ要素に露出され、その結果、その後の針ガードの伸長位置から後退位置への移動が、第1ラッチ要素と第2ラッチ要素との間の当接によって防止される。
【0049】
伸長位置では、針ガードの一部が針の先端を少なくとも部分的に取り囲む。後退位置では、針の先端が露出する(すなわち、針ガードの一部に取り囲まれない)。
【0050】
従来の設計と比較して、第4態様の針ガード作動機構は必要なコンポーネントがより少なく、それによって無駄の削減に役立つ。さらに、従来の設計では、一般に、キャップがオンのときの針ガードは、自動注射器を作動させる位置と比較して異なる位置にあり(すなわち、複数の後退位置がある)、針ガードの「ロックアウト」位置は、「キャップオフ」の位置とは異なる(すなわち、複数の伸長位置もある)。対照的に、第4態様の発明では、単一の完全伸長位置と単一の完全後退位置を使用することができる。
【0051】
従来の装置の複数の伸縮位置に関する問題の1つは、トリガ位置が作動位置に非常に近いことが多く、装置の落下時などに誤って作動する可能性があることである。これを克服するために、従来の設計では複雑なロックアウト機構が使用されており、第4態様の作動機構と比較して装置に必要なコンポーネントの数が増加する。
【0052】
さらに、第4態様の作動機構は、曲がったプラスチックコンポーネントからのばね力に依存するのではなく、金属ばねに蓄積されたエネルギーのみによって作動させることができる。プラスチックの特徴は、プラスチックが把持してその保管位置に変形するため、長期にわたるばね力を提供しないため、第4態様の作動機構は、寿命が改善された自動注射器を提供する。
【0053】
必要に応じて、自動注射器は、取り外し可能なキャップをさらに含み得、針ガードは、最初は後退位置にあり、取り外し可能なキャップを取り外すと、付勢ばねの影響下で後退位置から伸長位置に移動するように構成される。
【0054】
従来の設計では、通常、針ガードは、キャップが取り外される前に、伸長位置に維持される。対照的に、第4態様の作動機構により、針ガードが後退位置にある間にキャップを適用することができ、より多くのRNSが露出されるため、キャップが針のRNSを把持することが容易になる(これは、第4態様の自動注射器を第2態様の自動注射器のキャップと組み合わせて使用する場合に特に有益である)。これは、組み立て中に第1ラッチ要素を作動要素に当接する自動注射器のハウジングに挿入し、キャップの取り外し時に針ガードが伸長するまで第1ラッチ要素が作動要素と係合しないようにすることによって達成できる。
【0055】
好ましくは、針ガードは曲がることなく関節運動することができ、それによって第1ラッチ要素が第2ラッチ要素と係合できるようになる。
【0056】
作動要素は、本発明の第1態様と同じ作動要素であってよく、すなわち、第1位置から第2位置への作動要素の移動によって、自動注射器の注射器プランジャも作動し得る。あるいは、作動要素は、別個のコンポーネントであり得る。作動要素は、必要に応じて作動プレートであり得る。
【0057】
好ましくは、第1ラッチ要素は、針ガードの長手方向のアームである。
【0058】
必要に応じて、付勢ばねは、長手方向アームに横方向の力を与えて長手方向アームを第2ラッチ要素に向かって付勢するように構成され得る。これにより、第1ラッチ要素と第2ラッチ要素との間の係合が改善され、装置の使用後に針ガードが偶発的に後退するリスクが低減される。
【0059】
好ましくは、第2ラッチ要素は、ハウジングの内面上にある。あるいは、第2ラッチ要素は、注射器に対して固定されたハウジング内の別の要素、例えば支持体/フレームなどの上にあってもよい。
【0060】
例えば、第2ラッチ要素は、ハウジング内の凹部または突出部であってもよい。
【0061】
第4態様の自動注射器は、第1及び/または第2態様の任意の特徴を有し得るが、これらの特徴は必須ではない。
【0062】
本発明の第5態様によれば、薬物送達装置内に注射器を保持するための注射器保持部材が提供され、それは、環状カラーと、環状カラーの遠位側から長手方向に伸長する一対の対向するアームであって、一対の対向するアームのそれぞれは、それぞれの枢動点の周囲でカラーに対して枢動可能である、一対の対向するアームとを含み、一対の対向するアームのそれぞれは、それぞれの枢動点の遠位側にショルダを含み、一対の対向するアームが協働して、注射器のバレルと注射器の剛性針シールド(RNS)との間の円周方向隙間に係合するための注射器当接ショルダを提供する。
【0063】
本発明の第6態様によれば、薬物送達装置内に注射器を保持するための注射器保持部材が提供され、それは、環状カラーと、環状カラーの遠位側から長手方向に伸長する1つ以上の支持アームであって、1つ以上の支持アームのそれぞれは、それぞれの枢動点を中心にカラーに対して枢動可能である、1つ以上の支持アームとを含み、1つ以上の支持アームのそれぞれは、それぞれの枢動点の遠位に、注射器のバレルと注射器の剛性針シールド(RNS)との間の円周方向隙間に係合するための注射器当接ショルダを提供するショルダ部分を含む。
【0064】
従来の薬物送達装置では、注射器キャリアと前端コンポーネントは一般に最終組み立て時に組み立てられ、そこでは、注射器はフロントサブアセンブリに押し込まれる前にキャリアに組み立てられる必要がある。第5態様及び第6態様の注射器保持部材では、アームが枢動する方法により、別個の注射器キャリアの必要性が排除され、組み立て中、アームは手動で関節運動して離れ、注射器の挿入が可能になる(すなわち、アームを離さないと、注射器をアームの間に挿入できない)。
【0065】
ショルダ部分(従って、注射器当接ショルダ)を枢動点より遠位にすると、注射器に作用するセルフロック効果が生まれ、注射器プランジャに負荷がかかると、注射器当接ショルダに作用する力により、アームが注射器をこじ開けるのではなく、よりしっかりと注射器を把持するようになる。従来の設計(例えば、枢動点がショルダ部分の遠位にある設計)と比較すると、これは外側のカラーが必要ないことを意味する。
【0066】
当業者には知られているように、注射器の先端は薬物送達装置の近位端(すなわち、キャップのある端部)に向かって配置され、薬物送達装置の遠位端は薬物送達装置の反対側の端部になる(すなわち、注射器の先端及び装置のキャップから離れる)。環状カラーの遠位側は、薬物送達装置が組み立てられると、薬物送達装置の遠位端に向かっ配置されるカラーの側である。
【0067】
好ましくは、注射器が注射器保持部材に挿入されると、注射器の当接面(例えば、注射器のネックの外面上)が、それぞれの支持アームの注射器当接ショルダのそれぞれの係合面に当接し、それぞれの係合面は、それぞれの係合面が当接面に隣接する当接面の接線に垂直で、それぞれの支持アームのそれぞれの枢動点を通って伸長する直線の近位に位置決めされる(または、当接面が平坦な場合、それぞれの係合面が当接面に隣接する当接面に垂直である)。言い換えると、それぞれの係合面が当接面に隣接する当接面上の点は、直線(近位に位置決めされるのではなく、半径方向内側に位置決めされると言うのも同様に有効である)に対する接線上の近位位置(すなわち、組み立てられた自動注射器の針の端部に近い)にある。
【0068】
係合面を当接面の接線に垂直な枢動点を通って伸長する直線の近位に配置することにより、注射器プランジャに負荷がかかった場合に支持アームが確実に半径方向内側に枢動し、それにより、支持アームの周囲にカラーなどを必要とせずにセルフロック効果が得られる。
【0069】
注射器当接ショルダは、アームのそれぞれ上に内向きに突出した注射器突出部によって必要に応じて形成され得る。
【0070】
好ましくは、環状カラーの開口部は、針ガードを受け入れる形状になっている。
【0071】
好ましくは、一対の対向するアームのそれぞれの外面は、注射器保持部材がハウジングから取り外されることを防止するために、自動注射器のハウジングまたは注射器キャリア上の対応する第2ロック要素と整合するように構成された第1ロック要素を含む。組み立てられると、ハウジングは注射器保持部材の周囲の外部チューブとして機能し、一対の対向するアームを注射器上に押し込み、注射器の移動を防止する。
【0072】
好ましくは、支持アームのそれぞれの外面は、注射器保持部材がハウジングから取り外されることを防止するために、自動注射器のハウジングまたは注射器キャリア上の対応する第2ロック要素と整合するように構成された第1ロック要素を含む。組み立てられると、ハウジングは注射器保持部材の周囲の外部チューブとして機能し、支持アームを注射器上に押し込み、注射器の移動を防止する。
【0073】
好ましくは、注射器が注射器保持部材内に受け入れられるとき、注射器のバレルが半径方向外側への反力を与え、対向するアームが内側へ曲がることを防止する。
【0074】
必要に応じて、薬物送達装置は、自動注射器、パッチポンプまたはペン型注射器であり得る。
【0075】
1つ以上の支持アームは、一対の対向するアームを含み得る。1つ以上の支持アームはまた、好ましくは、環状カラーの遠位側の周囲に等間隔に構成された2つ超のアーム(例えば、3つのアーム)を含み得る。
【0076】
本発明の第7態様によれば、第5態様または第6の態様の注射器保持部材を含む薬物送達装置が提供される。
【0077】
第7態様の薬物送達装置は、本発明の第1態様、第2態様及び/または第4態様の特徴のいずれをも必要に応じて有してもよいが、これらの特徴は必須ではない。
【0078】
本発明の第8態様によれば、自動注射器キャップが提供され、それは、キャップハウジングと、キャップハウジングの側面の開口部に受け入れられ、自動注射器内に保持された注射器の剛性針シールドを把持するように構成された把持プレートとを含み、把持プレートは、剛性針シールドの外面の対向する側面に係合するように構成された一対の対向する把持面を含む開口を含み、把持プレートは、対向する把持面のそれぞれが自動注射器キャップの先端に向かって角度をなすように、開口を二等分する線に沿って曲がる。
【0079】
本発明の第9態様によれば、自動注射器が提供され、それは、ハウジングと、後退位置と伸長位置との間で移動可能である、針ガードであって、針ガードは、ハウジング内に保持された注射器の針を保護するように構成される、針ガードと、針ガードを伸長位置に付勢するように構成された付勢要素とを含み、針ガードドは、ハウジング内に固定された対応する第2ラッチ要素と整合するように構成された第1ラッチ要素を含み、自動注射器は、最初は第1位置にある作動要素をさらに含み、第1位置において、作動要素は第2ラッチ要素を妨げ、それによって第1ラッチ要素と第2ラッチ要素との間の当接を防止するように配置され、針ガードが伸長位置から後退位置に移動すると、針ガードと作動要素との間の当接により、作動要素は、第1位置から第2位置に移動し、第2位置では、第2ラッチ要素が第1ラッチ要素に露出され、その結果、その後の針ガードの伸長位置から後退位置への移動が、第1ラッチ要素と第2ラッチ要素との間の当接によって防止される。
【0080】
ここで、以下に説明する添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】自動注射器の側面図を示す。
図2】自動注射器の断面図を示す。
図3】自動注射器のコンポーネントの分解図を示す。
図4】自動注射器の作動機構の断面図を示す。
図5a】薬物送達の異なる状態中の自動注射器の断面図を示す。
図5b】薬物送達の異なる状態中の自動注射器の断面図を示す。
図5c】薬物送達の異なる状態中の自動注射器の断面図を示す。
図5d】薬物送達の異なる状態中の自動注射器の断面図を示す。
図6a】自動注射器の作動を示す。
図6b】自動注射器の作動を示す。
図6c】自動注射器の作動を示す。
図7】ペン型注射器の側面図である。
図8】自動注射器キャップを示す。
図9】自動注射器キャップの側面図を示す。
図10a】自動注射器キャップの別の図を示す。
図10b】自動注射器キャップの別の図を示す。
図10c】自動注射器キャップの別の図を示す。
図11a】自動注射器のシールド作動機構を示す。
図11b】自動注射器のシールド作動機構を示す。
図11c】自動注射器のシールド作動機構を示す。
図11d】自動注射器のシールド作動機構を示す。
図11e】自動注射器のシールド作動機構を示す。
図12】シールド作動機構の側面図を示す。
図13a】自動注射器の注射器保持部材を示す。
図13b】自動注射器の注射器保持部材を示す。
図14a】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図14b】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図14c】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図14d】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図14e】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図14f】注射器保持部材が注射器及び針ガードとどのように組み立てられるかを示す。
図15a】注射器保持部材と注射器及び針ガードとの間の係合を示す。
図15b】注射器保持部材と注射器及び針ガードとの間の係合を示す。
図16】注射器保持部材の断面図を示す。
図17】注射器保持部材の別の断面図を示す。
図18】注射器保持部材の幾何学的形状の簡略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、キャップ101及びハウジング102を有する自動注射器100の形態の薬物送達装置を示す。図2に示すように、自動注射器100キャップ101は、剛性針シールド(RNS)把持要素103を有し、ハウジング102は、針ガード104と、注射器保持部材105と、プレフィルド注射器(PFS)106(投与すべき薬物がプレフィルドされる)、作動プレート107の形態の作動要素と、付勢ばね108と、プランジャ109(プランジャロッドとも呼ばれる)と、駆動ばね110の形態の駆動要素とを含む。
【0083】
自動注射器のコンポーネントは、図3の分解図にさらに詳細に示されており、可撓性ガイドチューブ111も見える。
【0084】
ハウジング102は、自動注射器100のコンポーネントを保持するのに適した任意の容器またはシェルであってもよく、部分的または完全に密閉されてもよい。自動注射器100のコンポーネントを視覚的に確認できるようにするために、ハウジング102は部分的または完全に透明であり得る。あるいは、ハウジング102は、例えば、感光性薬物に必要な場合、半透明または不透明であり得る。ハウジング102はまた、薬物送達装置のコンポーネントが見える1つ以上のウィンドウを有し得、これは、ハウジング102の開口部または透明部分として形成され得る。
【0085】
RNS把持要素103は、ユーザがキャップ101をハウジング102から分離するとき(例えば、薬物を投与するために自動注射器100を使用する直前)に、RNSがキャップ101とともに取り外されるように、PFS106のRNSを把持するように機能する。
【0086】
PFS106は、バレル及びプランジャを有する任意の適切な装置であり得る。PFS106に保管される薬物は液体の形態であってもよいし、あるいは、注射前に液体と混合する粉末などの別の形態であってもよい。
【0087】
注射器保持部材105は、ハウジング102内に針ガード104及びPFS106を保持する。針ガード104は、ハウジング102内で長手方向に移動可能である。針ガード104は、その初期位置(図1及び2に示す)では、PFS106の針を実質的に取り囲み、皮膚に押し付けられたときに自動注射器100を作動させる機能と、使用後にPFS106の針が露出することを防止する機能の両方を行う。
【0088】
付勢ばね108は、注射中にPFS106がハウジング102内に戻るのを防止する保持力をPFS106(例えば、PFS106のフランジ上)に提供することと、針ガード104に復元力を提供するという二重の目的を果たす。図示の付勢ばね108は弾性金属板で形成されるが、代わりに他の機構を使用することもできる(プラスチック付勢ばね、またはPFS106及び針ガード104に別々に作用する一対のばねまたは他の付勢要素など)。
【0089】
プランジャ109は、駆動ばね110の力を受けて薬物をPFS106から押し出すために使用される。図示の駆動ばね110は圧縮ばねであるが、これをピストンなどの代替の付勢要素/駆動要素と置き換えることもできる。可撓性ガイドチューブ111は、駆動ばね110の少なくとも一部を取り囲み、プランジャ109を駆動している間にハウジング内で駆動ばね110が座屈するのを防止するように機能する。あるいは、可撓性ガイドチューブ111を駆動ばね110内に配置することもできるし、駆動ばね110内の可撓性ピンに置き換えることもできる。
【0090】
作動プレート107は、薬物が送達されるまでプランジャ109の移動を防止する。
【0091】
作動機構
次に、自動注射器100の作動機構をより詳細に説明する。作動機構は主に自動注射器に関連して説明されるが、作動機構はパッチポンプやペン型注射器などの他の自動薬物送達装置にも組み込むことができることを理解されたい。
【0092】
作動機構のコンポーネントの詳細は図4に示される。前述したように、作動プレート107は、薬物が送達されるまでプランジャ109の移動を防止する。従来の作動機構はプランジャ109の長手方向の移動に対抗するが(従って、駆動ばね110の圧縮力に直接対抗するように作用する)が、図示される作動機構は、代わりにプランジャ109の横方向の移動(すなわち、プランジャ109の長手方向の範囲に対して垂直な方向におけるプランジャ109の移動)に抵抗するものである。結果として、作動プレート107は、プランジャ109の移動を防止するために比較的低い停止力を及ぼすだけでよい。従来の作動機構は、多くの場合、可撓性ロック部材によって長手方向の移動に対抗する。この部材は、プランジャロッドを所定の位置に保持するロードチェーンの一部である。結果として得られる設計には、可撓性と強度の両方を有する部材が必要である。これらは、多くの場合、可撓性部材が横方向に移動することを防止する別のコンポーネントによって所定の位置にロックされる。
【0093】
自動注射器100の初期状態を示す図4に見られるように、作動プレート107は最初はプランジャ109上の横方向に突出したロックフィン113(横方向に突出したロック要素とも呼ばれる)に当接する。作動プレート107とロックフィン113との間の当接は、プランジャ109の長手方向軸に対して実質的に垂直な方向(すなわち、横方向)であり、従って、ハウジング102内でのプランジャ109の横方向の移動を防止する。
【0094】
作動プレート107は、ロックフィン113を受け入れる形状のウィンドウ(または開口)112を有する。以下でより詳細に説明するように、針ガード104が患者の皮膚に押し付けられると、作動プレート107がプランジャ109に対して長手方向に移動し、それによってウィンドウ112がロックフィン113と位置合わせられ、ロックフィン113がウィンドウ112内に移動できる。
【0095】
図示の作動プレート107は金属製であることが好ましいが、プラスチックなどの別の材料製であってもよい。さらに、作動プレート107は、別個のコンポーネントではなく、針ガード104に一体化することもできる。さらに、この構成は、プランジャが作動要素上の横方向に突出したロック要素を受け入れる形状のウィンドウまたは凹部を含むように逆にすることもでき、その結果、作動要素の移動により、ウィンドウ/凹部/溝が横方向に突出したロック要素と位置合わせされる。
【0096】
自動注射器100が作動するまでプランジャ109の長手方向の移動を防止するために、横方向に突出したガイドフィン115の前縁の第1ガイド面は、ハウジング102内の横方向に突出したガイド突起114(図5a~dに示す)の第2ガイド面に当接する。図示のガイド突起114はハウジング102上にあるが、第2ガイド面はフレームなどのハウジング102内の別の要素上にも同様にあり得ることを理解されたい。同様に、この構成は、第2ガイド面がハウジング内の凹部上にあるように、またはプランジャがハウジング101内で(例えば、ハウジング上、またはフレームなどのハウジング内の他の要素上で)横方向突出ガイド要素を受け入れる形状のガイド凹部を含むように変更することができる。
【0097】
第1ガイド面は、プランジャ109の長手方向軸に対して非垂直(かつ非平行)の角度で第2ガイド面に当接する。これにより、駆動ばね110の圧縮力に対抗する長手方向コンポーネントと、プランジャ109を作動プレート107に向かって付勢する横方向の力との両方を有する垂直反力が生じる。上で説明したように、ロックフィン113と作動プレート107との間の横方向の当接は、プランジャ109の横方向の移動を防止し、その結果、プランジャ109は、第1ガイド面と第2ガイド面との間、及びロックフィン113と作動プレート107との間の通常の反力と組み合わせた駆動ばね109の力の下で最初に平衡状態に保持される。
【0098】
図示の自動注射器100では、非垂直当接角度は、ガイド突起114の対応する角度付き縁(第2ガイド面)に当接するように形状付けられたガイドフィン115上の角度付き前縁(第1ガイド面)を有することによって達成される。しかし、第1ガイド面と第2ガイド面は、必ずしも対応する角度を持つ必要がなく、例えば、1つの表面は、プランジャ109の長手方向軸に対して角度を付けることができ、一方、他方の表面は、それらの間の相対的な角度がプランジャ109の長手方向軸に対して垂直でない限り、プランジャ109の長手方向軸に対して垂直であり得る。
【0099】
ロックフィン113及びガイドフィン115はプランジャ109の遠位端に構成される(すなわち、PFS106の先端から離れる)が、これらの一方または両方を長手方向の伸長に沿った他の場所、例えばPFS106のバレルの近くに代替的に配置することもできる。それに応じて、作動プレート107及び/またはガイド突起114を再配置する必要がある。同様に、ロックフィン113とガイドフィン115は両方ともにフィン状であるが、代わりに、それらは他の形状を有し、より一般的に、それぞれ横方向突出ロック要素及び横方向突出ガイド要素と呼ばれることもできる(ウィンドウ112及びガイド突起114もそれに応じて形成することができる)。
【0100】
次に、図5a~5dを参照しながら、作動機構の動作をより詳細に説明する。
【0101】
図5aは、キャップ101が取り外された初期状態(すなわち、作動前)の自動注射器100を示す。キャップ101を除去すると、PFS106のRNSが除去され、それによって、図5a及び5dにおいて針ガード104の端部によって取り囲まれたPFSの針116が露出する。
【0102】
この初期状態では、プランジャ109はPFS106のバレルから後退し、駆動ばね110は圧縮されており、従って、プランジャ109に押圧力を及ぼす。
【0103】
自動注射器100を作動させるには、自動注射器100の針端が患者の皮膚に押し付けられる。針ガード104と患者の皮膚との間の当接により、針ガード104がハウジング102内に長手方向に押し込まれて図5bに示される状態になり、一方、針116が患者の皮膚の表面を貫通する。針ガード104がハウジング102内に長手方向に後退すると、作動プレート107と針ガード104のアーム117との間の当接により、作動プレート107が初期ロック位置(作動プレート107がプランジャ109のロックフィン113に横方向に当接する)から作動位置まで長手方向に移動する(ここでは、作動プレート107のウィンドウ112がプランジャ109のロックフィン113と位置合わせされる)。
【0104】
図6a~6cを参照して以下でより詳細に説明するように、作動プレート107の作動位置への移動によってプランジャ109が解放され、それによってプランジャ109が圧縮ばね110の復元力を受けてPFS106内に押し込まれ、図5cに示される位置になる。プランジャ109のこの押し下げにより、PFS106内の薬物の少なくとも一部がPFS106から排出され、針116を介して患者に注射される。プランジャ109は、プランジャ109が押し下げられる際に可聴フィードバックを提供するために、付勢ばね108と相互作用するノッチをその外面に必要に応じて有することができる。さらに、ハウジング102内にプランジャ109をガイドするレールがあってもよい。
【0105】
薬物が送達されると、自動注射器100は患者の皮膚から取り外される。次に、付勢ばね108の復元力により、図5dに示すように針ガード104の端部がハウジング102から伸長し、それによって針116を取り囲む。針ガード104は、さらなる使用を防止し、針116との偶発的な接触による損傷を防止するために、以下で論じるようにこの位置にロックされることが好ましい。その後、自動注射器100は、例えば、鋭利物箱に廃棄することができる。
【0106】
プランジャ109が解放される手順は、図6a~6cにさらに詳細に示される。
【0107】
図6aは、作動プレート107のウィンドウ112をプランジャ109のロックフィン113と位置合わせするために作動プレート107が針ガード104によって変位された瞬間の状態にある自動注射器100を示す。これは、図5bに示す構成と同じである。
【0108】
ウィンドウ112とロックフィン113との間の位置合わせにより、プランジャ109の遠位端(すなわち、注射端/針116から遠位のプランジャ109の端部)の横方向の移動を以前に防止した横方向の当接力が除去される。前述したように、(プランジャ109のガイドフィン115上の)第1ガイド面と(ガイド突起114上の)第2ガイド面との間の垂直反力は、プランジャ109の遠位端を作動プレート107に向かって付勢する横方向コンポーネントを有する。
【0109】
従って、作動プレート107の移動により、プランジャ109と作動プレート107の間の平衡が失われ、これにより、ロックフィン113が作動プレート107のウィンドウ112に入ると、プランジャ109の遠位端が図6bに示す位置まで横方向に移動する。ガイドフィン115は同時にガイド突起114に対して滑り、その結果、プランジャ109の横方向の移動に加えて、PFS106のバレル内へのプランジャ109のわずかな長手方向の移動が生じる。
【0110】
図6bでは、プランジャ109の横方向の移動は、PFS106のバレル内に受け入れられるプランジャ109の先端(近位端)を中心としたプランジャ109の枢動として現れる。あるいは、横方向の移動は、プランジャ109を曲げることによって達成することもできる。
【0111】
プランジャ109の横方向の移動は、ガイドフィン115がガイド突起114から滑り出る場合に第1ガイド面が第2ガイド面から外れるまで続く。この時点で、第1ガイド面と第2ガイド面との間の当接によって生じる横方向及び縦方向の垂直反力が除去され、プランジャ109は駆動ばね110の力だけで自由に移動することができ、これは、プランジャ109をPFS106のバレル内に押し込むように長手方向に作用し、それによって、図5a~5dに関連して前述したように、針116を通してPFS106から薬物を放出する。
【0112】
図示の自動注射器100は、駆動ばね110とプランジャ109以外に同軸のコンポーネントを持たないため、組み立て後の内部機構の検査(例えば、透明なハウジング102を介した)が可能になり、プランジャ109が針ガード104によって隠されることなく最終位置に移動するのを見ることができるので、使用者が注射中の進行状況を見ることも可能になる。
【0113】
前述したように、作動機構は、パッチポンプやペン型注射器などの他の薬物送達装置に統合することができる。例示的なペン型注射器700が図7に示される。ペン型注射器は、ハウジング701、PFS702、プランジャ703、複数のウィンドウ(見えない)を有する作動プレート704、横方向に突出したロックフィン705、複数のガイド凹部706a~d、横方向に突出したガイドフィン707及び作動ボタン708を有する。ウィンドウが開いた「U」字形である代替構成も想定される。
【0114】
ペン型注射器700は、ユーザが作動ボタン708を作動させると起動され、自動注射器について前述したのと同じ方法で作動プレート704上のウィンドウをロックフィン705と位置合わせする。複数のウィンドウ及び複数のガイド凹部706a~dを有するということは、ペン型注射器700を使用して薬物を複数回投与することができ、各投与量は同じ作動機構を使用して投与されることを意味する。ガイドフィン707は、各ガイド凹部に順次受け入れられ、ペン型注射器700の作動時にのみ次のガイド凹部に移動することができる。
【0115】
前述した自動注射器100は、図7のペン型注射器700と同じ方法で複数回分の薬物を投与できるように、作動プレート107上に複数のウィドウ及び/または複数のガイド凹部を有するように修正することもできることが想定される。
【0116】
図示の作動プレート107及び704がそれぞれハウジング102及び701内で長手方向に移動する間、代わりに、作動プレートは、例えば、プランジャの表面に対して接線方向または他の方向に移動する、及び/またはハウジング内で回転する他の作動要素(プランジャ外側のチューブなど)によって置き換えることもでき、その結果、作動要素がプランジャの横方向の移動を防止する第1位置から、プランジャの横方向の移動が許容される第2位置まで移動する。重要なことは、作動要素が最初にプランジャの横方向における横方向の移動を防止する力を提供し、作動すると、プランジャが横方向に移動できる第2(作動)位置に移動することである。
【0117】
自動注射器キャップ
図8は、自動注射器100のキャップ101をより詳細に示す。前述したように、キャップ101は、キャップ101がハウジング102から分離される場合にRNSがPFS106から確実に取り外されるように、PFS106のRNSを把持するように機能する把持要素103を有する。
【0118】
キャップ101自体は、把持要素103を受け入れる形状の開口部802を側面に有するキャップハウジング801を含む。把持要素103は開口803を有するプレートとして形成され、把持プレートと呼ばれることもある。把持要素103は、開口803をほぼ二等分する線(すなわち、後述する把持面804間のほぼ中央に位置する線)に沿って曲がる。曲がりによって形成される角度は、キャップ101のサイズ及び構成に応じて変化し得るが、180度未満(全く曲がらない)、0度より大きい(完全に曲がる)。好ましくは、曲がり角度は約130度である。
【0119】
把持面804は、開口803の周囲の反対側に(すなわち、開口803を二等分する線に関して対称的に)配置される。図示の把持面804は、開口803の周囲から伸長する突出部として形成されるが、非突出面も想定される。
【0120】
把持面804は、RNS805の反対側でPFS106のRNS805を把持するように配置される。図示のRNS805は、把持面804とRNS805との間の係合を改善する隆起部を特徴とするが、これらは任意選択の特徴であり、把持面804は、滑らかなRNS(すなわち、隆起部なし)を把持することもできる。
【0121】
図示の把持要素103は、また開口803の反対側で曲がって、両側に翼806を有するW字形を形成する。把持要素103のW字形の輪郭により、開口部802をより大きくすることができ、これにより、キャップハウジング801の製造が容易になり、キャップ101の組み立てが容易になる。しかし、代わりに、把持要素103は、開口803を二等分する単一の曲がり部(例えば、L字形の輪郭または類似のもの)など、より少ないまたはより多くの曲がり部を有して形成され得る。
【0122】
キャップ101の側面図が図9に示される。開口部802は、把持要素103と同様の曲がった/角度を付けた輪郭を有し(すなわち、開口部802の少なくとも一部は、把持要素103の輪郭と一致する輪郭を有し)、これにより、開口部802への把持要素103の挿入が容易になり、キャップ101の取り外し中に把持要素103に構造的支持も提供される。図示の例では、把持要素103の翼806の先端が開口部802の内面に当接し、それによってキャップ101に対する把持要素103の長手方向の移動が防止される。
【0123】
把持要素103は、弾性材料で作られることが好ましく、必要に応じて、張力下(例えば、翼806が相互に押し付けられた状態で圧縮下にある)で開口部802に挿入され得、その結果、把持要素の弾性復元力により、把持要素103と開口部802の内面との間に当接が生じ、それにより、摩擦によって把持要素103が開口部802内に保持される。これにより、自動注射器100を完全に組み立てる前に、把持要素103が開口部802から脱落するリスクを伴うことなく、把持要素103をキャップ101内に挿入することができる。
【0124】
把持要素103の曲がった性質により、把持面804は自動注射器キャップの先端に向かって(すなわち、RNS805を受け入れるキャップの端部から離れるように)角度が付けられる。角度をなす把持面804は、RNSの長手方向軸に対して非垂直な角度でRNSの外面と係合し、従って、RNS805を比較的低い力でキャップ101に挿入できると同時に、805の外面に非常に強い把持力を提供し、これにより、キャップ101が、キャップが自動注射器100から取り外されるときにRNS805から分離するリスクが低減される。
【0125】
キャップ101の別の断面図が図10a~10cに示される。
【0126】
作動ロジック
図11a~11eは、装置使用後の針116の(皮膚への)挿入または露出を防止するために、作動プレート107を使用して針ガード104の位置を制御する方法を示す。
【0127】
図11aは、例えば、キャップ101が取り付けられた初期構成の自動注射器100を示す。針ガード104は、キャップ101によって後退位置に保持される。図示の作動プレート107は、自動注射器100の組み立て中に針ガード104の針ガードアーム1101が段差1102を越えて挿入されることを可能にする段差付きスロットを有する。図11aに見られるように、針ガードアーム1101は、最初は作動プレート107に対する当接によって非平衡位置に曲がる。針アーム1101が、段差付きスロット内ではなく、作動プレート107(または別の作動要素)に沿って挿入される代替構成が想定される。
【0128】
キャップ101が取り外される場合、針ガード104は、図11bに示すように、付勢ばね108の力を受けて伸長位置に移動し、針ガードアーム1101の弾性により、針ガードアーム1101は段差と横方向に位置合わせされる。
【0129】
図11cに示すように、その後針ガード104が後退する場合(例えば、自動注射器100がユーザの皮膚に押し付けられる場合)、針ガードアーム1101の端部が段差1102に当接する。針ガードアーム1101と段差1102との間のこの当接により、作動プレート107の長手方向の変位が生じ、ハウジングの内面上のラッチ要素1201(図12に見える)が露出する。
【0130】
作動プレート107の変位はまた、前述したように、及び図11dに示すように、プランジャ109の作動を引き起こす。
【0131】
自動注射器100がユーザの皮膚から取り外されると、針ガード104は、付勢ばね108の力を受けて再び図11eに示す位置まで伸長する。針ガード104が後退位置にさらに後退することは、針ガードアーム1101(第1ラッチ要素として機能する)とハウジング内のラッチ要素1201(第2ラッチ要素として機能する)との間の当接によって防止され、すなわち、針ガード104は完全伸長位置にロックされる。
【0132】
また、付勢ばね108は、針ガードアーム1101に横方向外向きの力を与え、針ガードアーム1101をラッチ要素1201内にガイドするように作用し、それによって針ガードアーム1101がラッチ要素1201と係合することを確保する。
【0133】
必須ではないが、第2針ガードアーム1101は、図12に示すように、ハウジング102の反対側にある別のラッチ要素1201と係合することもできる。第2針ガードアーム1101と他方のラッチ要素1201との間の係合も、前述したように付勢ばね108によって補助され得る。
【0134】
図12に示されるラッチ要素1201は、針ガードアーム1101に当接する突出部の形態であるが、ラッチ要素1201は、例えば、突出したラッチ要素1201と同じ機能を果たす凹部によって置き換えることもできる(すなわち、針ガードアームに当接する)。
【0135】
図示の作動プレート107は、プランジャ109の作動と針ガード104の位置の制御という二重の目的を果たすが、作動プレート107は、それぞれがこれらの機能のうちの1つだけを果たす複数の作動要素のうちの1つ、すなわち、プランジャ109を作動させるための単一の作動要素、及び/または針ガード104の位置を制御するための単一の作動要素と置き換えることができる。
【0136】
注射器保持部材
注射器保持部材105は、図13a及び13bによって詳細に示される。注射器保持部材105は、環状カラー1301を有し、カラーの遠位側(すなわち、自動注射器100が組み立てられた場合の注射器の針から遠位側のカラーの側)から長手方向に伸長する一対の対向するアーム1302(支持アームとも呼ばれる)を含む。図示の実施形態は2つの支持アームを有するが、3つ以上のアームを備えた代替実施形態が想定され、好ましくはアームが環状カラー1301の遠位側の周囲に等距離に構成されることが理解されるべきである。あるいは、単一の支持アームを備えた実施形態も想定される。このような実施形態は、必要に応じて、カラーの単一の支持アームとは反対側に静的(すなわち、非枢動)支持要素をさらに含み得る。
【0137】
対向するアーム1302のそれぞれは、図示の注射器保持部材105における対向するアーム1302のそれぞれの狭い部分として形成される枢動点1303を中心に枢動可能/関節運動可能である。注射器保持部材105の外面は、ハウジング102の内面上の対応するロック要素と整合するように構成された複数のロック要素1304(対向するアーム1302上)を特徴とする。例えば、注射器保持部材105上のロック要素1304は、ハウジング102上の対応する複数の戻り止めと整合するように形状付けられた複数の突出部/ボスであり得る(またはその逆)。
【0138】
図14a~14fは、注射器保持部材105と針ガード104及びPFS106との組み立てを示す。図14aに示すように、キャップ101、注射器保持部材105、針ガード104及びPFS106は、最初は別々である。
【0139】
自動注射器100の組み立て中、図14bに示すように、注射器保持部材105のアーム1302が手動で外側に枢動され、針ガード104が環状カラー1301の開口(見えない)に挿入される。次に、図14cに示すように、針ガード104が完全に挿入されると、アーム1302を元の位置に戻すことができる。
【0140】
次に、図14dに示すように、キャップ101が注射器保持部材105に対して配置される。次に、図14eに示すように、対向するアーム1302が手動で外側に枢動し、それにより、PFS106が注射器保持部材105及び針ガード104内に挿入され得、PFS106のRNSがキャップ101内に押し込まれる。所定の位置に位置決めされると、対向するアーム1302は、図14fに示すように枢動して元の位置に戻る。
【0141】
注射器保持部材105の断面図を示す図15a及び15bに移ると、PFS106は、枢動点1303の遠位側で対向するアーム1302の内面から突出したショルダ部分1501によって保持される。ショルダ部分1501は、RNS805とPFS106のバレルとの間の円周方向隙間においてPFS106のショルダと係合するような形状である。ショルダ部分1501は、付勢ばね108によってPFS106に加えられる長手方向の力に対抗する反力を提供し、PFS106がハウジングから外れることを防止する。
【0142】
注射器保持部材105の対向するアーム1302はさらに、針ガード104の外面のレッジ1502に当接するように形状付けられる。アーム1302とレッジ1502との間のこの当接により、針ガード104がハウジング102から脱落することが防止される。
【0143】
組み立てられると、PFS106のバレルは、対向するアーム1302が内側に曲がることを防止する半径方向外側への反力を提供する。これは、ロック要素1304がハウジング102の内面上の対応するロック要素から外れることを防止することによって、注射器保持部材105をハウジング102内に保持することに役立つ。ハウジング102は、対向するアーム1302を内側に押すように機能し、それによって全てのコンポーネントをしっかりと引き寄せ、PFS106が移動しないように固定する。注射器保持部材には、必要に応じて、曲がりを防止し、不正行為の証拠を提供するラベル包装を設けることができる。
【0144】
図16及び17は、注射器保持部材105と、それぞれ針ガード104を備えたPFS106及び針ガード104を備えないPFS106の別の断面図を示す。
【0145】
図示の注射器保持部材105は、2つの対向するアーム1302を特徴とするが、より多くのアーム、例えば、3つ、4つまたはそれ以上の対向するアームがある代替例も想定される。対向するアームの数が奇数である場合、アームは相互に直接対向することはないが、正味の平衡力を提供するような方法で注射器保持部材の反対側に構成されるという意味では依然として相互に対向することになる。
【0146】
ショルダ部分を枢動点より遠位にすると、注射器に作用するセルフロック効果が生まれ、注射器プランジャに負荷がかかると、注射器当接ショルダに作用する力により、アームが注射器をこじ開けるのではなく、よりしっかりと注射器を把持するようになる。注射器プランジャに負荷がかかった場合に支持アームが確実に半径方向内側に枢動するように、アームのそれぞれの係合面は、枢動点を通って伸長する直線の近位に位置することが好ましく、支持アームのそれぞれは、注射器がアームに当接するシリンジ表面の接線に対して垂直である。この関係は、アーム1302の幾何学的形状の簡略化された図である図18に示される。図18に示すように、PFS106は点1801で左アーム1302に当接する。点1801におけるPFS106の表面の接線は、破線1802によって示される。点1801は、接線1802に垂直な枢動点1303を通る直線1803の近位(かつ半径方向内側)にあることが分かる(言い換えると、点1801は、線1803に対して接線1802に沿った近位かつ半径方向内側の位置にある)。
【0147】
注射器保持部材105は自動注射器に関連して説明されてきたが、針ガード104の有無にかかわらず、ペン型注射器などの他の薬物送達装置に注射器を保持するために使用することもできる。
【0148】
その他の例と応用例
本明細書に開示される図示の装置は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲内に収まりながら、装置には潜在的に追加または少数の特徴を設けることができることを理解されたい。同様に、装置のコンポーネントの形状とサイズは、図示されるものと異なる場合がある。
【0149】
さらに、特に明記しない限り、方法ステップが提示される順序は単なる例示であり、当業者であれば、本明細書に開示される方法のステップが(技術的に実行不可能でない限り)異なる順序で実行されてもよく、追加のまたはより少ないステップも実行され得ることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
【図
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図14f
図15a
図15b
図16
図17
図18
【国際調査報告】