(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブとカーボンブラックを含む導電性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20241003BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241003BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20241003BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241003BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20241003BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20241003BHJP
C09D 11/10 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/04
C08L83/07
C08L83/05
H01B1/24 B
C09D11/52
C09D11/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521882
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021078323
(87)【国際公開番号】W WO2023061579
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ザビン-ルシアン、ズラル
【テーマコード(参考)】
4J002
4J039
5G301
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP04X
4J002CP04Y
4J002CP12W
4J002CP13W
4J002CP14W
4J002CP16W
4J002DA017
4J002DA036
4J002DA116
4J002DB006
4J002DD046
4J002FA007
4J002FD116
4J002FD117
4J002FD208
4J002GH00
4J002GQ02
4J039AE11
4J039BA02
4J039BA04
4J039BE25
4J039BE29
4J039CA05
4J039EA03
4J039EA24
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA05
5G301DA18
5G301DA20
5G301DA42
5G301DA48
5G301DA60
5G301DD08
5G301DE01
(57)【要約】
本発明は、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物、その製造方法、及び当該組成物の、センサー、アクチュエーター又はEAP層システムの電極を製造するための非接触印刷プロセスにおける導電性印刷インキとしての使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が最大で300m
2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、
カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、
を含み、溶媒を含まない、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
導電性付加架橋型シリコーンエラストマー組成物であり、
(A)脂肪族炭素-炭素多重結合を有するラジカルを含む少なくとも1つの直鎖状化合物、
(B)水素原子が結合したSiを有する少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、若しくは
(A)及び(B)に代えて、又は、(A)及び(B)に加えて、
(C)脂肪族炭素-炭素結合と、水素原子が結合したSiと、を有するSi-C結合ラジカルを含む少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、並びに
(D)少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
を含む、請求項1に記載の導電性架橋シリコーンエラストマー組成物。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の導電性架橋シリコーンエラストマー組成物の製造方法であって、
a)1成分系の場合、全成分を1工程又は複数の工程で混合し、次いで最大200μmのメッシュサイズを有する金属メッシュに通して加圧濾過を行うか、若しくは、
b)2成分系の場合、前記A又は前記B組成物の成分のみを1工程又は複数の工程でそれぞれ混合し、次いで前記A又は前記B組成物を最大200μmのメッシュサイズを有する金属メッシュに通して圧力濾過を行う、
ことを特徴とする、方法。
【請求項4】
弾性支持体上に導電性エラストマーを製造するための、非接触印刷プロセスにおける導電性印刷インキとしての、請求項1及び2に記載の導電性架橋シリコーンエラストマー組成物の使用。
【請求項5】
前記非接触印刷プロセスは、レーザー転写印刷であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
弾性支持体上に製造された前記導電性エラストマーは、誘電エラストマーセンサー、アクチュエーター、ジェネレーター、及びEAP層システム用の電極である、請求項4及び5に記載の使用。
【請求項7】
BET比表面積が最大で300m
2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造される、最大で200μmの層厚を有する、導電性フィルム。
【請求項8】
BET比表面積が最大で300m
2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造される導電性フィルムであって、
非接触印刷プロセスを用いて製造されることを特徴とする、導電性フィルム。
【請求項9】
BET比表面積が最大で300m
2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造され、最大200μmの層厚を有する導電性フィルムであって、
非接触印刷プロセスを用いて製造されることを特徴とする、導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物、その製造方法、及び当該組成物の、センサー、アクチュエーター又はEAP層システムの電極を製造するための非接触印刷プロセスにおける導電性印刷インキとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性印刷インキは、印刷エレクトロニクスの製造に使用され、電子部品において、任意の所望の印刷プロセスによって、基板上に大面積にわたり、又は構造化された方法で電極を塗布するために使用される。弾性支持体(シリコーン、TPUなど)上に導電性エラストマーを印刷することで、伸張又は圧縮しても電気特性が実質的に変化しない、完全又は部分的に弾性のある電子部品を作ることができる。さらに、導電性エラストマー印刷インキは、PET、PE、PTFE、紙などの柔軟な(ただし伸張しない)基材に印刷することができ、繰り返しの曲げによる持続的な機械的負荷がかかる場合でも、印刷された電極への機械的損傷を低く抑え、またそれ故に例えば抵抗の増加による導電性の変化を防ぐ。印刷エレクトロニクス用の導電性印刷インキは公知であり、市販されているものもある。これらは通常、少なくとも1種のポリマーバインダー、金属粒子又は炭素粒子などの少なくとも1種の導電性成分、及び粘度を調整するための少なくとも1種の溶媒を含む。原則的に、フィラーとして用いられるカーボンブラックやカーボンナノチューブ(CNT)などの導電性炭素粒子は、配合物の粘度を著しく上昇させるという欠点があり、インキの印刷が非常に困難になるため、通常、印刷インキ中の粒子の有効濃度を低下させて、印刷インキの塗布を可能にするために希釈溶媒が使用される。米国特許公開第2016/351289号には、シリコーンベースの導電性印刷インキを塗布するためには、少なくとも10%の溶媒含有量が必要であると記載されている。通常、シリコーン印刷インキの分野では有機溶媒が使用されるが、有機溶媒を完全に除去するには非常に困難が伴い、労働安全と環境保護の観点からユーザーに高いコストがかかる。
【0003】
高導電性用途において、CNT含有配合物には、通常カーボンブラックも添加されている。それはカーボンブラックがCNTよりも粘度上昇をそれほど引き起こすことがないことが一般的であり、電極の導電性が改善され、最終的な構成要素の電極内の電荷分布がより均一になることが保証されるためである。高い表面積と構造を持つカーボンブラックは、通常、10~100Ω・cm未満という低い比抵抗を持つ高導電性材料に使用される。カーボンブラックの導電率は、通常、表面積が大きくなるにつれて増加する。高導電性カーボンブラックのBET測定値は、この場合は通常800m2/gを超える。この典型的な1つの例として、ケッチェンブラック EC600JD(BET1400m2/g)が挙げられる。表面積の小さいカーボンブラック(BET<300m2/g)では、配合物全体における体積及び質量をより大きな割合で使用しなければならず、電気伝導率が低くなる。さらに、比抵抗が100Ω・cmを大きく下回るようにするためには、通常20重量%以上のカーボンブラックが必要である。
【0004】
米国特許第9253878号には、シリコーンエラストマー、カーボンブラック及びCNTをベースとした、28重量%の固形分含有量を有する配合物が記載されており、CNTは少なくとも30nmの厚さを有することを特徴としている。このCNTの性質により、スクリーン印刷において、溶媒を含有する導電性印刷インキに良好な印刷適性を付与するが、これは薄いCNT(<30nm)では不可能である。実施例で使用したのは、高導電性カーボンブラックのケッチェンブラック EC300J(メーカー仕様:BET 800m2/g;OAN 310~345ml/100g)である。米国特許第9253878号に記載されている印刷インキは、1Ω・cm未満の非常に優れた導電性を示す。
【0005】
CNT含有シリコーンエラストマーが知られている。中国特許出願公開103160128号には、CNTとカーボンブラックの両方を含むシリコーンエラストマーが記載されている。この文献に記載されているシリコーンエラストマーは、カーボンブラックの割合が高いことが特徴である。カーボンブラックはさらに、表面積が高い(BET 1400~1500m2/g)ことを特徴とする。カーボンブラックの含有量は少なくとも3.7重量%であることが請求の範囲に記載されているが、実施例では、比抵抗が20Ω・cm未満であるような良好な電気特性を得るためには、少なくとも8.5%の総フィラー含有量(CB+CNT)が必要であることが示されている。これらの組成物を使用した印刷プロセスについては開示されていない。
【0006】
無溶剤系のシリコーン導電性印刷インキはあまり知られていないが、例えば米国特許公開第2014/0060903号の無溶剤系のシリコーン導電性印刷インキは、高アスペクト比の導電性粒子(カーボンナノチューブ=CNTなど)を含まないため、伸張可能な用途には適さない。誘電エラストマーセンサー、アクチュエーター、ジェネレーターを含む伸張可能な用途では、伸張可能なバインダー(エラストマー)と、高アスペクト比を持つ導電性異方性粒子、典型的にはCNTとの組み合わせが使用される。導電性粒子のアスペクト比が高いと、球状粒子とは対照的に、導電性粒子は比較的少ないフィラー量で系全体を通して導電性ネットワークを形成することができ、このネットワークはエラストマーが伸張されても維持される。従って、エラストマーが伸張されても、良好な電子伝導が保証される。
【0007】
シリコーン層を塗布するための従来技術で知られている方法、特にアクチュエーター、センサー及び他の電気活性ポリマー層システムにおける電極層及び/又は誘電体層の製造に適した塗布方法は、その変動性、塗布精度、スループット、及びその後に達成される成分の有効性及び耐久性の点で限界がある。
【0008】
層を塗布するための従来技術として知られている方法のひとつに、レーザー転写印刷と呼ばれるものがある。しかし、この塗布方法は、これまでのところ、低粘度のインキと分散液、及び金属への適用に限られている。
【0009】
例えば、国際公開第2009/153192 A2には、半導体構造上に導電層を製造する方法が記載されており、金属粉末分散液が支持体上に塗布され、レーザービームによって支持体からターゲット上に剥離される。
【0010】
例として、国際公開第2010/069900 A1には、インキのレーザー転写印刷が記載されている。
【0011】
国際公開第2015/181810 A1には、金属体を印刷するためのレーザー転写法が記載されている。これは、透明支持体上の金属膜を選択的に加熱し、滴状に配置することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第09253878号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第103160128号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0060903号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/153192号
【特許文献5】国際公開第2010/069900号
【特許文献6】国際公開第2015/181810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、CNTと組み合わせて少量のカーボンブラックを必要とするが、溶剤を使用せず、同時にレーザー転写印刷プロセスのような無圧塗布プロセスにおける印刷インキとして良好な塗布特性を示す、比抵抗10Ω・cm未満の導電性架橋シリコーンエラストマー組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、本発明によるCNT含有シリコーンエラストマー組成物には、比較的小さい表面積(BETは最大でも300m2/g)しか有さないカーボンブラックを少量(最大でも3重量%)のみ添加すれば十分であり、このことは、それによって製造される電極の電気的特性に悪影響を及ぼさないことが見出された。本発明によるシリコーンエラストマー組成物の粘度は、10s-1のせん断速度で最大60000mPa・sである。従って、溶媒を添加することなく、誘電エラストマーセンサー、アクチュエーター及び発電機用の電極を印刷するための印刷インキとして本発明の組成物を使用することが可能である。さらに、相対抵抗増加R/R0の伸張係数が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明において過剰なページ数を生じさせないために、以下、個々の特徴の好ましい実施形態のみを規定する。
【0016】
しかし、本明細書に接した当業者は、異なる好ましい階層の組み合わせも明示的に開示され、明示的に望まれるような、この開示の態様を明示的に理解すべきである。
【0017】
従って、本発明は、BET比表面積が最大で300m2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%とを含み、溶媒を含まない、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物を提供する。
【0018】
シリコーンエラストマー組成物に使用されるベース材料は、原則として、従来技術で知られているすべてのシリコーンエラストマー組成物であってよい。
【0019】
一例として、付加架橋型、過酸化物架橋型、縮合架橋型又は放射線架橋型のシリコーンエラストマー組成物を使用することができる。好ましくは、過酸化物架橋又は付加架橋組成物である。特に好ましいのは付加架橋型組成物である。
【0020】
シリコーンエラストマー組成物は、1成分又は2成分の配合物を有することができる。シリコーンエラストマー組成物は、熱、UV光、及び/又は水分の供給により系内で架橋される。例として、以下のシリコーンエラストマー組成物が好適であり、HTV(付加架橋)、HTV(放射線架橋)、LSR、RTV 2(付加架橋)、RTV 2(縮合架橋)、RTV 1、TPSE(熱可塑性シリコーンエラストマー)、チオール-エン架橋系及びシアノアセトアミド架橋系である。
【0021】
最も単純なケースとして、好ましい付加架橋型シリコーンエラストマー組成物としては、
(A)脂肪族炭素-炭素多重結合を有するラジカルを含む少なくとも1つの直鎖状化合物、
(B)水素原子が結合したSiを有する少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、又は、(A)及び(B)の代わりに、又は(A)及び(B)に加えて、
(C)脂肪族炭素-炭素多重結合と、水素原子が結合したSiと、を有するSi-C結合ラジカルを含む少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、
(D)少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
を含む。
【0022】
シリコーン組成物は、1成分型シリコーン組成物又は2成分型シリコーン組成物のいずれかとしてもよい。後者の場合、本発明による組成物の2つの成分は、一般に、1つの成分が脂肪族多重結合を有するシロキサン、水素原子が結合したSiを有するシロキサン及び触媒を同時に含まない、すなわち実質的に成分(A)、(B)及び(D)又は(C)及び(D)を同時に含まないという但し書きを付して、すべての成分を任意の所望の組み合わせで含むとしてもよい。
【0023】
よく知られているように、本発明による組成物に用いられる化合物(A)と(B)又は(C)は、架橋が可能であるように選択される。例えば、化合物(A)は、このように、脂肪族不飽和ラジカルを少なくとも2つ有し、化合物(B)は水素原子が結合したSiを少なくとも3つ有し、又は化合物(A)は脂肪族不飽和ラジカル及びシロキサンを少なくとも3つ有し、化合物(B)は水素原子が結合したSiを少なくとも2つ有するか、さもなければ、化合物(A)及び(B)の代わりに、脂肪族不飽和ラジカル及び水素原子が結合したSiを上記の比率で有するシロキサン(C)が用いられる。脂肪族不飽和ラジカル及び水素原子が結合したSiを上記の比率で含んだ混合物(A)、(B)及び(C)の混合物としても可能である。
【0024】
本発明に用いられる化合物(A)は、好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及び好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、又は他のそれらの混合物であってよい。
【0025】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例として、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル1,3-ブタジエン、7-メチル3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチル-1,5-ヘプタジエン、3-フェニル-1,5-ヘキサジエン、3-ビニル-1,5-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-4,5-ジエチル-1,7-オクタジエン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、マロン酸ジアリル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0026】
本発明によるシリコーン組成物は、好ましくは、成分(A)として、少なくとも1つの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含み、尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマーや、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステルアミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシラリレンセグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、エーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーのような、現在までに使用されている脂肪族不飽和有機ケイ素化合物のすべてを付加架橋組成物に使用することが可能である。
【0027】
脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSi-C結合ラジカルを含む有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは、一般式(I)の単位からなる直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンである。
【0028】
R4
aR5
bSiO(4-a-b)/2 (I)
(式中、
R4は、それぞれ独立して、同一でも異なっていてもよい、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない有機又は無機のラジカルであり、
R5は、それぞれ独立して、同一でも異なっていてもよい、少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素多重結合を有する、一価の、置換又は非置換の、Si-C結合炭化水素ラジカルであり、
aは、0、1、2、又は3であり、
bは、0、1、又は2であるが、
ただし、a+bの合計は3以下であり、1分子あたり少なくとも2つのラジカルR5を有する。)
【0029】
ラジカルR4は、一価又は多価ラジカルであってもよい、多価ラジカルとしては二価、三価又は四価のラジカルであり、複数、例えば2、3又は4個の式(I)のシロキシ単位を互いに結合する。
【0030】
さらに、R4の例としては、-F、-Cl、-Br、-OR6、-CN、-SCN、-NCO、及びSi-C結合、酸素原子又は-C(O)-基を介してもよい置換又は無置換の炭化水素ラジカル等の一価のラジカル、及び式(I)のように両末端でSi結合した二価のラジカルである。基R4がSi-C結合や置換炭化水素ラジカルである場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有ラジカル、シアノラジカル、-OR6、-NR6-、-NR6
2、-NR6-C(O)-NR6
2、-C(O)-NR6
2、-C(O)R6、-C(O)OR6、-SO2-Ph及びC6F5である(R6は、それぞれ独立して、同一でも異なっていてもよい、水素原子、又は1~20の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルであり、Phはフェニルラジカルである)。
【0031】
基R4の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチルラジカルのようなアルキルラジカル、n-ヘキシルラジカルのようなヘキシルラジカル、n-ヘプチルラジカルのようなヘプチルラジカル、n-オクチルラジカルのようなオクチルラジカル、2,2,4-トリメチルペンチルラジカルのようなイソオクチルラジカル、n-ノニルラジカルのようなノニルラジカル、n-デシルラジカルのようなデシルラジカル、n-ドデシルラジカルのようなドデシルラジカル、n-オクタデシルラジカルのようなオクタデシルラジカル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシルラジカルのようなシクロアルキルラジカル、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルラジカルのようなアリールラジカル、o-、m-、p-トリルラジカル、キシリルラジカル、エチルフェニルラジカルのようなアルカリルラジカル、ベンジルラジカル、α-及びβ-フェニルエチルラジカルのようなアラルキルラジカルである。
【0032】
置換された基R4の例としては、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピルラジカル、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピルラジカル、ヘプタフルオロイソプロピルラジカル等のハロアルキルラジカル、o-、m-及びp-クロロフェニルラジカル、-(CH2)-N(R6)C(O)NR6
2、-(CH2)n-C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)R6、-(CH2)o-C(O)OR6、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)-C(O)-(CH2)pC(O)CH3、-(CH2)-O-CO-R6、-(CH2)-NR6-(CH2)p-NR6
2、-(CH2)o-O-(CH2)pCH(OH)CH2OH、-(CH2)o(OCH2CH2)pOR6,-(CH2)o-SO2-Ph、及び-(CH2)o-O-C6F5等のハロアリールラジカル(式中、R6とPhは、上述した定義に対応し、oとpは、0~10の同一又は異なる整数である)である。
【0033】
式(I)の両末端においてSi結合した二価のラジカルとしてのR4の例は、水素原子の置換による付加的な結合が存在するという点で、基R4について上述した一価の例から派生するものであり、そのような基の例としては、-(CH2)-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-CH2-、-C6H4-、-CH(Ph)-CH2-、-C(CF3)2-、-(CH2)o-C6H4-(CH2)o-、-(CH2)o-C6H4-C6H4-(CH2)o-、-(CH2O)p、(CH2CH2O)o、-(CH2)o-Ox-C6H4-SO2-C6H4-Ox-(CH2)o-が挙げられる(式中、xは0又は1であり、Ph、o及びpは上記の定義を有する)。
【0034】
基R4は、好ましくは、一価であり、Si-C結合されており、任意で置換された、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない炭化水素ラジカルであり、1~18の炭素原子を有し、特に好ましくは、一価であり、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まないSi-C結合炭化水素ラジカルであり、1~6の炭素原子を有し、特にメチル又はフェニルラジカルである。
【0035】
式(I)の基R5は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)を受けやすい任意の所望の基であってよい。R5がSi-C結合した、置換された炭化水素ラジカルである場合、好ましい置換基はハロゲン原子、シアノラジカル及び-OR6であり、ここでR6は上記の定義を有する。
【0036】
基R5は、好ましくは、ビニル、アリル、メタリル、1-プロペニル、5-ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、ビニルシクロヘキシルエチル、ジビニルシクロヘキシルエチル、ノルボルネニル、ビニルフェニル及びスチリルのラジカル等の2~16の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基であり、特に好ましくは、ビニル、アリル、ヘキセニルのラジカルの使用である。
【0037】
成分(A)の分子量は、広い範囲で、102~106g/molの間で変動してもよい。例えば、成分(A)は、1,2-ジビニルテトラメチルジシロキサンのような比較的分子量の小さいアルケニル官能性オリゴシロキサンであってもよく、鎖又は末端にSi結合ビニル基を有し、例えば105g/mol(NMRによって特定される数平均)の分子量を有する高重合性ポリジメチルシロキサンとしてもよい。成分(A)を形成する分子構造は限定されるものではないが、特に、比較的高分子量のシロキサン、すなわちオリゴマーシロキサン又はポリマーシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分岐状、又は樹脂状、網状である。直鎖状及び環状ポリシロキサンは、好ましくは式R4
3SiO1/2、R5R4
2SiO1/2、R5R4SiO1/2及びR4
2SiO2/2の単位からなり、ここでR4及びR5は上記の定義を有する。分岐状及び網目状ポリシロキサンは、さらに、三官能性及び/又は四官能性単位を含み、式R4SiO3/2、R5SiO3/2及びSiO4/2が好ましい。もちろん、成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することも可能である。
【0038】
成分(A)として特に好ましく使用できるのは、25℃においてDIN EN ISO 3219:1994及びDIN 53019に従い、コーン/プレートシステム、コーンCP50-2、開角2°を備えた校正済みレオメータを使用して、せん断速度1s-1にて測定した粘度が0.01~500000Pa・sであり、特に好ましくは粘度が0.1~100000Pa・sである実質的に直鎖のビニル官能性ポリジオルガノシロキサンである。
【0039】
使用される有機ケイ素化合物(B)は、これまで付加架橋性組成物に使用されてきたすべての水素官能性有機ケイ素化合物であってもよい。
【0040】
本発明において使用される水素原子が結合したSiを有するオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、一般式(III)の単位からなる直鎖状、環状状又は分岐状のオルガノポリシロキサンである。
【0041】
R4
cHdSiO(4-c-d)/2 (III)
(式中、R4は、上記の定義を有し、
cは、0,1,2又は3であり、
dは0,1又は2であるが、
ただし、c+dの合計は3以下であり、水素原子が結合したSiを少なくとも2つ有する。)
【0042】
本発明に使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の全重量を基準として0.04~1.7重量%の範囲の水素原子が結合したSiを含む。
【0043】
成分(B)の分子量は同様に、例えば102~106g/molの間で広い範囲内で変動してもよい。例えば、成分(B)は、テトラメチルジシロキサンのような比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサンであってもよく、鎖内又は末端にSiH基を有する高重合性ポリジメチルシロキサン、又はSiH基を有するシリコーン樹脂であってもよい。
【0044】
成分(B)を形成する分子構造は限定されるものではないが、特に、比較的高分子量のSiH含有シロキサン、すなわちオリゴマー又はポリマーのSiH含有シロキサンの構造は、直鎖状、環状、分岐状、あるいは樹脂状、網目状であってもよい。直鎖状及び環状ポリシロキサン(B)は、好ましくは、式R4
3SiO1/2、HR4
2SiO1/2、HR4SiO2/2及びR4
2SiO2/2の単位からなる(R4は上記の定義を有する)。分岐及び網目状ポリシロキサンは、加えて、三官能性及び/又は四官能性単位を含み、好ましくは、式R4SiO3/2、HSiO3/2、及びSiO4/2である(R4は上記の定義を有する)。
【0045】
無論、成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用できる。特に、成分(B)を構成する分子は、必須のSiH基に加えて、任意に同時に脂肪族不飽和基を含んでいてもよい。特に好ましくは、25℃においてDIN EN ISO 3219:1994及びDIN 53019に従い、コーン/プレートシステム、コーンCP50-2、開角2°を備えた校正済みレオメータを使用して、せん断速度1s-1にて測定した粘度が10~20000mPa・sである、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンのような低分子量のSiH官能性化合物や、ポリ(ヒドロゲンメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロゲンメチル)シロキサンのような比較的高分子量のSiH含有シロキサン、又はメチル基のいくつかが3,3,3-トリフルオロプロピル基又はフェニル基で置換された類似のSiH含有化合物を使用する。
【0046】
成分(B)は、好ましくは、(A)からの脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~20、特に好ましくは0.3~2.0の間となるような量で、本発明による架橋性シリコーン組成物中に存在する。
【0047】
本発明に使用される成分(A)と(B)は、市販品であり、又は標準的な方法によって調製可能である。
【0048】
本発明によるシリコーン組成物は、成分(A)及び(B)に代えて、脂肪族炭素-炭素多重結合と水素原子が結合したSiを同時に含むオルガノポリシロキサン(C)を含んでもよい。本発明によるシリコーン組成物は、成分(A)、(B)、及び(C)の3つすべてを含むことも可能である。
【0049】
シロキサン(C)が使用される場合、これらは、一般式(IV)、(V)、及び(VI)の単位から構成されることが好ましい。
【0050】
R4
fSiO4/2 (IV)
R4
gR5SiO3-g/2 (V)
R4
hHSiO3-h/2 (VI)
(式中、R4とR5は、上記の定義を有し、
fは0,1,2,又は3であり、
gは0,1,又は2であり、
hは0,1,又は2であるが、
ただし、1分子あたり、基R5を少なくとも2つ、水素が結合したSiを少なくとも2つ有する。)
【0051】
オルガノポリシロキサン(C)の例として、SiO4/2、R4
3SiO1/2、R4
2R5SiO1/2、及びR4
2HSiO1/2の単位から構成され、MQ樹脂として知られており、それらの樹脂はさらにR4SiO3/2とR4
2SiOの単位を含んでもよく、実質的にR4
2R5SiO1/2、R4
2SiO及びR4HSiOの単位から構成され、R4及びR5は上記の定義を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0052】
オルガノポリシロキサン(C)は、好ましくは、25℃においてDIN EN ISO 3219:1994及びDIN 53019に従い、コーン/プレートシステム、コーンCP50-2、開角2°を備えた校正済みレオメータを使用して、せん断速度1s-1にて測定したとき、0.01~500000Pa・sの平均粘度を有し、特に好ましくは、0.1~100000Pa・sの平均粘度を有する。
【0053】
オルガノポリシロキサン(C)は、市販品であり、又は標準的な方法で調製できる。
【0054】
本発明による付加架橋型シリコーン組成物は、
-化合物(A)、(B)、及び(D)のそれぞれ少なくとも1つ、
-化合物(C)と(D)のそれぞれ少なくとも1つ、ならびに
-化合物(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれ少なくとも1つ
を含む群より選択することができ、ここで、
(A)は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する少なくとも2つのラジカルを含む有機化合物又は有機ケイ素化合物であり、
(B)は、水素原子が結合したSiを少なくとも2つ含む有機ケイ素化合物であり、
(C)は、脂肪族炭素-炭素多重結合と水素原子が結合したSiを有するSi-C結合ラジカルを含む有機ケイ素化合物であり、
(D)は、ヒドロシリル化触媒である。
【0055】
シリコーン組成物は、シリコーン組成物の全質量を基準として、通常30~95重量%、好ましくは、30~80重量%、特に好ましくは、40~70重量%の(A)を含む。
【0056】
シリコーン組成物は、シリコーン組成物の全質量を基準として、通常0.1~60重量%、好ましくは、0.5~50重量%、特に好ましくは、1~40重量%の(B)を含む。
【0057】
シリコーン組成物が成分(C)を含む場合、シリコーン組成物の全質量を基準として、配合物に、通常30~95重量%、好ましくは30~80重量%、特に好ましくは40~70重量%の(C)を含む。
【0058】
成分(D)の量は、その成分の全重量に応じて、0.1~1000ppmの間、0.5~100ppmの間、又は1~50ppmの間の白金族金属とすることができる。
【0059】
シリコーン組成物中に存在する全成分の量は、シリコーン組成物の全質量を基準として、合計で100重量%を超えないように選択される。
【0060】
使用されるヒドロシリル化触媒(D)は、従来技術で知られているすべての触媒としてもよい。成分(D)は、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム等の白金族金属、又はそれらの有機金属化合物若しくは組み合わせである。成分(D)の例としては、ヘキサクロロ白金(IV)酸、白金ジクロリド、白金アセチルアセトナート、及びマトリックス又はコア/シェル型構造でカプセル化された上記化合物の錯体のような化合物である。オルガノポリシロキサンの低分子量の白金錯体は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む。さらなる例としては、白金-ホスファイト錯体、白金-ホスフィン錯体、アルキル-白金錯体などが挙げられる。これらの化合物は、樹脂マトリックスに封入されてもよい。
【0061】
成分(D)の濃度は、成分(A)と(B)のヒドロシリル化触媒反応に十分な程度であり、ここで説明する製法において必要とされる熱を生成する。成分(D)の量は、成分の全重量に応じて、0.1~1000百万分率(ppm)の間、0.5~100ppmの間、1~50ppmの間の白金族金属としてもよい。白金族金属の成分が1ppm未満であると、硬化率は、低くなることがある。100ppmを超える白金族金属の使用は、経済的に不利であり、接着配合物の安定性を低下させることがある。
【0062】
2成分系の場合、好ましくは、カルステット触媒(白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体)を使用する。1成分系の場合、好ましくは、例えば欧州特許出願公開EP2050768Aに開示されているような白金-亜リン酸錯体を使用する。
【0063】
用語CNTは、カーボンナノチューブを示す。これらは、中空円筒形であり、かつ六角形の炭素構造からなるナノ材料である。当業者は、CNTを選択するとき、制限はされず、市販され又は公知の方法を用いて製造できるいかなるCNTを使用してもよい。
【0064】
CNTは、組成物の全重量を基準として、0.1~5重量%の範囲の含有量で使用され、0.1~3重量%の範囲の含有量が好ましい。
【0065】
好ましくは、平均直径が1~50nm、及びアスペクト比(長さと直径の比L/D)が10~10000のCNTの使用である。
【0066】
SWCNT(単層カーボンナノチューブ)又はMWCNT(多層カーボンナノチューブ)が使用され、好ましくはMWCNTが使用される。
【0067】
カーボンブラックは、ファーネスブラック、サーマルブラック、ガスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラックなど、利用可能で既知のあらゆる改良品が使用可能である。異なるカーボンブラックの混合物を使用することももちろん可能である。本発明では、ASTM D6556に準拠したBET表面積が最大300m2/gを有するカーボンブラックを使用する。カーボンブラックの含有量は、本発明によるシリコーンエラストマー組成物の全重量を基準として、好ましくは0.5重量%~20重量%、特に好ましくは0.5重量%~3.0重量%である。
【0068】
記載された質量は、付加架橋組成物に関する従来技術から当業者が公知であるすべてのさらなら添加剤を任意で含むとしてもよい。これらの添加剤は、例えば、レオロジー添加剤、抑制剤、光安定剤、難燃剤、分散助剤、熱安定剤等であってもよい。
【0069】
本発明はさらに、本発明による導電性架橋シリコーンエラストマー組成物の製造を提供し、以下のことを特徴とする、
a)1成分系の場合、全成分を1工程又は複数の工程で混合し、次いで、最大200μmのメッシュサイズを有する金属メッシュに通して圧力濾過が行われる、若しくは、
b)2成分系の場合、上記A又は上記B組成物の成分のみを1工程又は複数の工程でそれぞれ混合し、次いで上記A又は上記B組成物の成分を最大200μmのメッシュサイズを有する金属メッシュに通して圧力濾過を行う。
【0070】
圧力濾過で使用される金属メッシュは、最大100μmのメッシュサイズを有することが好ましい。
【0071】
ここで使用可能な成分の混合、圧力濾過の方法と、その装置は、従来技術から当業者に十分に知られているものである。
【0072】
例えば、分散は、ロールミル、ニーダー、又は特にディゾルバー(高速ミキサー)を用いて行われ、導電性フィラーの均一な分散を達成するために、通常はスクレーパーがさらに使用される。スクレーパーを有する遊星型ディゾルバーを使用するのが好ましい。スクレーパーとビームスターラーを有する真空遊星型ディゾルバーを使用するのが特に好ましい。ディゾルバーディスクは、任意の配列と歯数を持つものを使用することができる。
【0073】
高アスペクト比(L/D>10)の粒子を含むペーストがメッシュを通過するとき、メッシュが目詰まりしないことは驚くべきことである。加えて、濾過工程が材料の電気的特性に悪影響を及ぼすことも予期された。これは事実ではなく、非架橋印刷インキの電気抵抗も加硫サンプルの電気的挙動も、伸張されても一定である。
【0074】
本発明はさらに、本発明による導電性架橋シリコーンエラストマー組成物の、弾性支持体上に導電性エラストマーを製造するための非接触印刷プロセスにおける導電性印刷インキとしての使用を提供する。
【0075】
本発明による、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物が、例えば非接触印刷プロセスにおいて、印刷インキとして使用される場合、これにより、ギザギザのない滑らかな表面の印刷画像が得られる。このことは、例えばラミネートやオーバーレイによって導電性材料が層間に挿入される多層システムが製造される場合、重要な利点となる。
【0076】
非接触印刷プロセスは、印刷プロセス中に印刷基材の受ける機械的負荷ができるだけ小さくできるという利点を有する。本発明による導電性架橋シリコーンエラストマー組成物は、スプレープロセス、ドロップオンデマンドプロセス、レーザー転写印刷(LIFTプロセス)のような他の非接触印刷プロセスのための印刷インキに使用してもよい。好ましくは、レーザー転写印刷(LIFTプロセス)に使用される。
【0077】
本発明による、導電性架橋シリコーンエラストマー組成物は、誘電エラストマーセンサー、アクチュエーター、ジェネレーター、EAP層システムにおける印刷電極のための印刷インキとして特に好適である。
【0078】
従って、本発明はさらに、BET比表面積が最大で300m2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造される、最大でも200μmの層厚を有する導電性フィルムを提供する。
【0079】
従って、本発明はさらに、BET比表面積が最大で300m2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造される導電性フィルムを提供し、該フィルムは非接触印刷プロセスを用いて製造されることを特徴とする。
【0080】
1つの好ましい態様では、BET比表面積が最大で300m2/gであるカーボンブラックを0.5重量%~3.0重量%と、カーボンナノチューブ(CNT)を0.1重量%~3.0重量%と、を含む導電性架橋シリコーンエラストマー組成物から製造される、最大で200μmの層厚を有する導電性フィルムは、非接触印刷プロセスを用いて製造されることを特徴とする。
【0081】
導電性フィルムは、好ましくは、相対抵抗増加R/R0の伸張係数が1.5以下である。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明が原理的にどのように実施され得るかを説明するものであるが、本発明をそこに開示されたものに限定するものではない。
【0083】
以下の実施例は、周囲雰囲気、すなわち約1013hPa、室温、すなわち23℃、又は追加の加熱又は冷却を行わずに室温で反応物を組み合わせたときに確立される温度で実施した。
【0084】
<化学材料>
CNTs LUCAN BT1001M、LG Chem Ltd.製、メーカー仕様による平均直径は:10nm
【0085】
カーボンブラックプレミックスA、B及びCを製造するために、3本ロールミルで95重量%のViPo 1000にカーボンブラックを5重量%混合した。EXAKT社の3本ロールミル(50 lモデル)を使用した。ロールニップは、最小距離にセットされた。カーボンブラックは、以下を使用した。
【0086】
カーボンブラックA:Birla Conductex 7055 Ultra(BET 55g/m2、OAN 170cm3/100g)
カーボンブラックB:Ensaco 260G(BET 68g/m2、OAN 190ml/100g)
カーボンブラックC:ケッチェンブラック EC-600JD(Nouryonから入手可能、BET 1400g/m2、OAN 495cm3/100g)
【0087】
BETの測定は、ASTM D6556に基づく窒素を用いたガス吸着法によって行われた。OAN値(吸油量)はメーカーの仕様である。
【0088】
ViPo 1000:1000mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジェレスト社から製品名DMS-V31(ジェレスト社カタログ)で入手可能。
【0089】
HPo 1000:1000mPa・sの粘度を有するヒドリドジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジェレスト社から製品名DMS-H31(ジェレスト社カタログ)で入手可能。
【0090】
使用した架橋剤は、α,ω-ジメチルヒドロゲンシロキシ-ポリ(ジメチルメチルヒドロゲン)シロキサンである(粘度130~200mm2/s、Hを0.145~0.165重量%含む。)。
【0091】
1成分系では、欧州特許第EP2050768B1(触媒6)に記載されているように、ホスファイト配位子を持つ白金錯体をヒドロシリル化触媒として選択した。
【0092】
1-エチニル-1-シクロヘキサノールはSigma Aldrich社から入手可能である(CAS番号:78-27-3)。
【0093】
<粘度測定>
粘度測定は、Anton Paar社製のエアベアリングを搭載したMCR 302レオメータを用い、25℃で行った。コーン/プレートシステム(25mm、2°)、ギャップサイズ105μmを使用した。余分な材料は、ギャップ距離115μmでスパチュラにより除去(トリミング)した。その後、コーンをギャップ距離105μmまで移動させ、ギャップ全体を埋めるようにした。各測定の前に、試料の前処理、塗布、トリミングに起因するせん断履歴を消去する「プレせん断」が行われる。プレせん断は、せん断速度10s-1で60秒間行われ、その後300秒間休止する。せん断粘度は、試料を1s-1、10s-1、100s-1の一定のせん断速度でそれぞれ100秒間せん断するステッププロファイルによって測定される。測定値は10秒ごとに記録され、せん断速度ごとに10点の測定となる。これら10点の測定値の平均が、それぞれのせん断速度におけるせん断粘度となる。
貯蔵弾性率G'は、振幅試験によって測定された。この振幅試験では、振幅γを0.01%~1000%まで変化させる(角周波数ωは10s-1、対数ランプ、30測定点)。線形粘弾性(LVE)領域は、一般的に低振幅値で見られ、この領域でG'をγに対して両対数プロットするとプラトー値を持つ。このプラトー値が、決定すべき貯蔵弾性率G'である。
【0094】
抵抗測定
4導体測定では、電流が2つの接点で印加され、すでに試料を流れた電流IUの電圧Uがさらに2つの接点で測定されるため、接触抵抗は測定されない。
【0095】
【0096】
未加硫のシロキサンの抵抗Rは、ケースレー・インスツルメンツのモデル2110 5 1/2桁マルチメーターと、天然PPとステンレス鋼(1.4571)電極で作られた測定装置を用いて測定される。その測定器は、真鍮の接点と実験室のリード線によって電極に接続されている。測定装置は、L×W×Hが16cm×3cm×0.975cmの型であり、この中にシロキサンを入れて測定する。2つの外側の平らな電極は、16cm間隔で取り付けられており、試料全体に電流が流れるようになっている。直径1cmである2つの点電極をベースプレート上に配置し、電圧を測定する。比抵抗は、測定された抵抗Rから次の式を用いて計算される。
【0097】
【0098】
試料の高さh[cm]、試料の幅w[cm]、電極の距離l[cm](ここでは、h=0.975cm、w=3cm、l=12cm)を使用する。
【0099】
<伸張による抵抗値の変化(R/R0)>
ISO37に従って、印刷インキを2mmの板状に加硫し、タイプ1のダンベル試験片を打ち抜いた。試験片は、4導体測定にかけられる。その試験片は、互いの距離が84mmとなるように、2つの導電性クランプの間の中央に固定される。2つの外側の電気的接点に相当するそのクランプは、構造化されており、その構造の結果として、材料への浸透効果(piercing)が実現される。
2つの内側の接点は、それぞれのケースで最も近いクランプから29.5mm離し、互いに25cmの距離に2つのクイッククランプを配置することで準備される。2つの内側の測定クランプは、銀導電ペーストで前処理されている。伸張されることなく(L=L0)このように測定した抵抗値が、R0である。さらに2つの外側クランプは、試験片の一軸伸張を可能とし、伸張(L-L0)/L0=50%の場合、印刷電極の抵抗Rの測定を可能とする。
【0100】
<混合方法>
混合物は、PC Laborsystem GmbHのLabotop 1LA 容量1リットルを用い、減圧300mbar、室温で製造した。使用したツールは、ディゾルバーディスク(歯数14、ディスクに対して歯が90°、直径52mm)、ビームスターラー(標準ツール)、温度測定機能付きスクレーパーである。
【0101】
例1 印刷インキ1の製造
歯付きディゾルバーディスク(直径52mm)を備えたPC Laborsystem GmbHのLabotop 1LAラボミキサーにおいて、CNT(6.0g)を1.2重量%とカーボンブラックプレミックスA(最終配合物中のカーボンブラックAの2.0重量%に相当)を200gとを、ViPo 1000(124g)、HPo 1000(150g)、架橋剤(20.0g)、Pt触媒(0.4g)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(30mg)の混合物中で、室温で60分間、2000rpm(ディゾルバー)と200rpm(ビーム撹拌機)で混合した。均一な黒色のペーストが得られた。
【0102】
例2 印刷インキ2の製造
印刷インキは、例1の印刷インキ1と同様に製造したが、カーボンブラックプレミックスBを使用した点が異なる。
【0103】
例3 印刷インキ3の製造
歯付きディゾルバーディスク(直径52mm)を備えたPC Laborsystem GmbHのLabotop 1LAラボミキサーにおいて、CNT(7.5g)を1.5重量%とカーボンブラックプレミックスA(最終配合物中のカーボンブラックAの2.0重量%に相当)を200gとを、ViPo 1000(124g)、HPo 1000(148g)、架橋剤(20.0g)、Pt触媒(0.4g)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(30mg)の混合物中で、室温で60分間、2000rpm(ディゾルバー)と200rpm(ビーム撹拌機)で混合した。均一な黒色のペーストが得られた。
【0104】
例4 印刷インキ4の製造
印刷インキは、例3の印刷インキ3と同様に製造したが、カーボンブラックプレミックスBを使用した点が異なる。
【0105】
例5 印刷インキ5の製造(非発明)
歯付きディゾルバーディスク(直径52mm)を備えたPC Laborsystem GmbHのLabotop 1LAラボミキサーにおいて、CNT(4.0g)を0.8重量%とカーボンブラックプレミックスC(最終配合物中のカーボンブラックCの2.0重量%に相当)を200gとを、ViPo 1000(108g)、HPo 1000(154g)、架橋剤(20.0g)、Pt触媒(0.4g)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(30mg)の混合物中で、室温で60分間、2000rpm(ディゾルバー)と200rpm(ビーム撹拌機)で混合した。均一な黒色のペーストが得られた。
【0106】
例6 印刷インキ6の製造(非発明)
印刷インキは、例1の印刷インキ1と同様に製造したが、カーボンブラックプレミックスCを使用した点が異なる。
【0107】
例7 印刷インキ7の製造(非発明)
印刷インキは、例3の印刷インキ3と同様に製造したが、カーボンブラックプレミックスCを使用した点が異なる。
【0108】
例8 印刷インキ8の製造(非発明)
歯付きディゾルバーディスク(直径52mm)を備えたPC Laborsystem GmbHのLabotop 1LAラボミキサーにおいて、CNT(10g)2.0重量%を、ViPo 1000(316g)、HPo 1000(153g)、架橋剤(20.0g)、Pt触媒(0.4g)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(30mg)の混合物中で、室温で60分間、2000rpm(ディゾルバー)と200rpm(ビーム撹拌機)で混合した。均一な黒色のペーストが得られた。
【0109】
例9 印刷インキ9の製造(非発明)
歯付きディゾルバーディスク(直径52mm)を備えたPC Laborsystem GmbHのLabotop 1LAラボミキサーにおいて、CNT(6.0g)1.2重量%を、ViPo 1000(319g)、HPo 1000(155g)、架橋剤(20.0g)、Pt触媒(0.4g)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(30mg)の混合物中で、室温で60分間、2000rpm(ディゾルバー)と200rpm(ビーム撹拌機)で混合した。均一な黒色のペーストが得られた。
【0110】
以下の表は、例で使用したCNTとカーボンブラックの量と測定結果を比較したものである。
【0111】
【0112】
印刷インキ1、2、3、及び4は、せん断速度10s-1における粘度60Pa・sを超えず、同時にこれらのインキは、比抵抗が10Ω・cm未満という高い導電性を有する。これに対し、本発明の主題ではない印刷インキ5、6、及び7は、高い粘度を有する。50%伸張時のR/R0が1.5の値を超えないようにする場合、BETが1400g/m2の高導電性カーボンブラックを有する印刷インキ(印刷インキ6および7)の粘度は、少なくとも100Pa・sである。カーボンブラックフリーのインキは、高粘度(No.8)又は低導電性(No.9)を特徴とする。まとめると、BET比表面積の低いカーボンブラックを含む印刷インキ1、2、3、4のみが、良好な電気特性と低粘度を兼ね備えていることが明らかである。
【国際調査報告】