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特表2024-537309セルロースナノクリスタルで安定化された化学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セルロースナノクリスタルで安定化された化学組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/28 20060101AFI20241003BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20241003BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01N25/28
A01N53/08 120
A01P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521884
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078028
(87)【国際公開番号】W WO2023061902
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/262,525
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンス ルイス チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カフリン アンドリュー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヘール マルティーネ イングリッド
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011BA01
4H011BB15
4H011BC05
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA16
4H011DF02
4H011DH10
(57)【要約】
第1の相と、第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、第1の相と第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分とを有する液体組成物、並びにその使用及び製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の相と、
前記第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、
前記第1の相と前記第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、
前記第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分と
を含む液体組成物。
【請求項2】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、グルタルアルデヒドによって架橋されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、前記第1の相と前記第2の相との間の界面の40~80%を被覆する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の相が、前記第1の相中に前記セルロースナノクリスタルを含まない組成物と比較して前記組成物の粘度を10%より大きく変化させるのに十分なセルロースナノクリスタルを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、クエン酸によって架橋されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、タンニン酸によって架橋されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、ホウ酸によって架橋されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、前記組成物の0.1~5%w/wである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋セルロースナノクリスタルが、多峰性分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2の相が、1~10μmの間の中位径を有する液滴を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの農薬有効成分が、前記架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスを介した最大ペイロード放出が遅い、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの農薬有効成分が、前記架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスを介した最大ペイロード放出が速い、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
有効量の請求項1に記載の濃縮組成物を、水及び液体肥料又はこれらの組合せから選択される水性液体担体で希釈し、前記希釈組成物を植物種又はその場所に適用することによって、有害生物による植物種への侵入と闘う、又は植物の成長を調節する方法。
【請求項14】
第1の相中に農薬有効成分を溶解又は懸濁させることと、
前記第1の相又は第2の相の一方又は両方にセルロースナノクリスタルを取り込むことと、
前記第1の相及び前記第2の相を混ぜ合わせて組成物を形成することと、
前記組成物を攪拌してエマルションを形成することと、
前記セルロースナノクリスタルを架橋させて、前記第2の相の液滴の周囲にマトリックスシェルを形成することと
を含む方法。
【請求項15】
前記第1の相及び/又は前記第2の相に塩を取り込むことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物でコーティングされた植物種子を含む製品。
【請求項17】
前記組成物が乾燥されている、請求項16に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/262,525号明細書の利益を主張するものであり、その内容の全体は、参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、例えば、有害生物と闘うための、又は植物成長調節剤としての、安定化された液体化学組成物、このような組成物の調製、及びこのような組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、現在の農薬のためのカプセル化技術は、イソシアネートモノマー基本単位の縮合反応からのポリ尿素壁の形成に依存する。これらの製剤は、特に生分解性でないマイクロプラスチックの放出をもたらし、環境中に何年も残存し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、生分解性の代替物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これら及び他の問題は、農薬製剤においてセルロースナノクリスタル(「CNC」)を用いることで解決される。
【0006】
本発明は、第1の相と、第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、第1の相と第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分とを有する液体組成物を含む。
【0007】
本発明は、第1の相を調製することと、第2の相を調製することと、第2の相に農薬有効成分を溶解又は懸濁させることと、第1の相又は第2の相の一方又は両方にセルロースナノクリスタルを取り込むことと、第1の相及び第2の相を混ぜ合わせて組成物を形成することと、組成物を攪拌してエマルションを形成することと、セルロースナノクリスタルを架橋させて、第2の相の液滴の周囲にマトリックスシェルを形成することとを含む方法を含む。
【0008】
本発明は、第1の相と、第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、第1の相と第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分とでコーティングされた植物種子を有する製品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】2週間のサイクル温度後の架橋及び非架橋CNC製剤の画像である。
図2】乾燥後の架橋及び非架橋CNC製剤の顕微鏡画像化である。
図3】架橋及び非架橋CNC製剤からのフタル酸ジメチルの放出速度のグラフである。
図4】ラムダ-シハロトリンの放出速度プロファイルのグラフである。
図5】さらなるラムダ-シハロトリンの放出速度プロファイルのグラフである。
図6】25℃又は54℃で2週間貯蔵した後のラムダ-シハロトリンの放出速度プロファイルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、製剤中の農薬を安定化及び/又はカプセル化するためにCNCを利用する。CNCは、ピッカリングエマルションにおいて、油水界面を安定化するためにコロイド粒子として使用されている。参照によって本明細書中に援用される米国特許第9,260,551号明細書を参照されたい。
【0011】
CNCは、長範囲の結晶性構造に起因するその両親媒性のために、エマルション安定化の分野で特に独特である。この構造は、一つの面に親水性ヒドロキシル基、そして並列する面に疎水性アルキル基を与える。この特徴により、CNCは、水性媒体と非水性媒体との間の界面領域を湿潤させることができ、その結果、ピッカリング安定化エマルション系が得られる。
【0012】
さらに、針又は棒状の構造を呈するCNCの比較的高いアスペクト比も、エマルションの安定性に役立つ。セルロース系材料は微生物の生分解研究の基準として使用され、したがって、ピッカリング安定剤としてのその利用は、環境に優しく、土壌中で容易に生分解するはずである界面マトリックスを提供しながら、物理的安定性及び農業的有効成分のカプセル化という点で多くの利益を提供する。
【0013】
本発明において、CNCの供給源及び/又は多形体は限定されない。本発明の実施形態は、人工的なものであろうと天然に存在するものであろうと、あらゆるCNCを使用することができる。さらに、CNCは、硬質及び軟質木材パルプ、非木材残渣、尾索類及び細菌、並びに他の供給源などの天然に存在する生体材料から得ることができる。原料は、確立された機械的及び化学的処理の組合せを用いて、マクロ構造から個々のフィブリルへ、そして最終的には結晶性セルロースドメインへ分解することができる。
【0014】
一般に、CNCは、針状又は長尺形状を有し得る。これらの長尺又は針状形状は、長さ及び幅を有するとして2次元で理解することができる。針状形状に関しては、幅は針の最大幅を指す。ある実施形態では、CNCは、1~50nmの幅を有する。好ましい実施形態では、幅は4~25nmである。したがって、幅はおよそ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50nmのうちのいずれか1つ、又はこれらの幅を利用する任意の範囲であり得るということになる。他の実施形態では、CNCは、50~1000nmの長さを有し得る。好ましい実施形態では、長さは100~400nmである。長さはおよそ、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990若しくは1000nmのいずれか1つ、又はこれらの長さを利用する任意の範囲、若しくはこのような長さの間の任意の範囲であり得るということになる。
【0015】
いくつかの実施形態では、CNCは、寸法、すなわちアスペクト比に関して定義することができる。アスペクト比は、幅と長さの比率として定義される。CNCは、1:2~1:200のアスペクト比を有することができる。好ましい実施形態では、アスペクト比は1:20~1:80である。幅はおよそ、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、及び1:50のいずれか1つ、又はこれらのアスペクト比を利用する任意の範囲であり得るということになる。
【0016】
製剤で使用されるCNCのサイズ及び寸法は、ガウス分布の形態であり得る。特定の実施形態では、CNCは、多峰性分布を有することができる。多峰性分布には、二峰性、三峰性、又はそれ以上が含まれる。標準偏差は、特定のパラメータに応じて変化することができ、例えば、幅の標準偏差は、0.1、1、2、3、5、若しくは10nm、又はそれらの間の範囲であり得る。或いは、長さの標準偏差は、1、5、10、25、50、100、250、若しくは500nm、又はそれらの間の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アスペクト比の長さの標準偏差は、±1、±2、±3、±5、±10、若しくは±20、又はそれらの間の範囲であり得る。
【0017】
実施形態に応じて、CNCは、全組成物の約0.1~3%w/wである。好ましい実施形態では、CNCは、0.5~1.5%w/wである。組成物中のCNCの総量はおよそ、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0のいずれか1つ、又はそれらの間の範囲であり得るということになる。いくつかの実施形態では、CNCは、過剰に含まれていてもよい。これらの実施形態では、CNCの総量は、少なくとも約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%w/wであり得る。
【0018】
特定の実施形態では、製剤は、第1の相と、第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、第1の相と第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分とを含む液体組成物を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の相は、農薬有効成分が第2の相のみに、又は実質的に第2の相のみに分布するように選択され得る。このような実施形態では、農薬有効成分は、全く又は実質的に全く第1の相に移行しない。当業者は、第1の相と第2の相との間の化合物の分配係数を決定するための任意の標準的な試験手順に従うことによって、問題になっている特定の農薬有効成分に対して、特定の水性液体がこの基準を満たすかどうかを容易に決定することができるであろう。
【0020】
さらなる実施形態では、第1の相は、水性液体又は水中の水溶性溶質の溶液である。
【0021】
第1の相で使用するのに適した水溶性溶質には、アンモニウム及び周期表の1族~12族の金属などの金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、窒化物及び硫化物などの塩が含まれる。他の適切な溶質には、糖及びオスモライト、例えば、多糖、タンパク質、ベタイン及びアミノ酸が含まれる。
【0022】
一実施形態では、第1の相で使用するのに適した水性液体は、水と実質的に水混和性の非水性液体との混合物である。本発明との関連では、「実質的に水混和性」という用語は、少なくとも50wt%までの濃度で水中に存在する場合に単一の相を形成する非水性液体を意味する。
【0023】
第1の相で使用するのに適した実質的に水混和性の非水性液体には、例えば、炭酸プロピレン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール及び約800までの分子量を有するポリエチレングリコールから選択される水混和性グリコール;ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート又はプロピレングリコールジアセテートなどのアセチル化グリコール;リン酸トリエチル;乳酸エチル;ガンマ-ブチロラクトン;プロパノール又はテトラヒドロフルフリルアルコールなどの水混和性アルコール;N-メチルピロリドン;ジメチルラクトアミド;並びにこれらの混合物が含まれる。一実施形態では、第1の相で使用される非水性で実質的に水混和性の液体は、少なくとも1つの任意の農薬有効成分のための溶媒である。
【0024】
別の実施形態では、第1の相で使用される水性で実質的に水混和性の液体は、全ての割合で完全に水と混和できる。或いは、第1の相で使用される水性で実質的に水混和性の液体は、約1000を超える分子量を有するポリエチレングリコールなどのワックス状固体であり、このワックス状固体と水との混合物は、高温で組成物を形成することによって、液体状態に維持される。
【0025】
別の実施形態では、第2の相は非水性液体である。別の実施形態では、第1の相は、実質的に水非混和性の非水性液体である。水非混和性の非水性液体は、石油蒸留物、植物油、シリコーン油、メチル化植物油、精製パラフィン系炭化水素、乳酸アルキル、鉱油、アルキルアミド、酢酸アルキル、及びこれらの混合物から選択され得る。
【0026】
別の実施形態では、第1の相は、実質的に水混和性の非水性液体を含む。水混和性の非水性液体は、炭酸プロピレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、約800までの分子量を有するポリエチレングリコール、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、リン酸トリエチル、乳酸エチル、ガンマ-ブチロラクトン、プロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルラクトアミド、及びこれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0027】
当業者は、第1の相で使用するのに適した混合水性液体を提供するために、水の量,並びに非水性で水混和性の液体又は水溶性の溶質の性質及び量を変化させることができ、これらの量が過度の実験なしに決定可能であることを認識するであろう。
【0028】
第2の相は、第1の相中に混和しないように選択される。第1の相に基づいて第2の相を選択することもできるし、或いは第2の相に基づいて第1の相を選択することもできる。加えて、第1の相及び第2の相はいずれも、適切な懸濁液又は溶媒和が達成されるように、選択された農薬有効成分の物理的特性に基づいて選択することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、第2の相は、非水性溶媒又は油、例えば、アルキル化芳香族カルボン酸(アセトフェノン、安息香酸ベンジル、安息香酸ブチル);リン酸トリス(2-エチルヘキシル);脂肪酸油(ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、キャノーラ油、菜種油、大豆油);アルキル化脂肪酸油(例えば、メチル化菜種油、オレイン酸メチル、メチル化大豆油);芳香族炭化水素;シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニルエステル;石油蒸留物(鉱油を含む);アルキル化ピロリドン;単純鎖アルカン(例えば、ヘプタン、ドデカン、ヘキサデカン及びそれらの異性体);並びに脂肪アルコール(オクタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール)であるが、これらに限定されない。
【0030】
実施形態に応じて、第1の相は組成物の50~90%w/wを構成し、第2の相は組成物の10~50%w/wを構成し得る。ある実施形態では、第2の相は、約10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、及び50%のいずれか1つ、又はそれらの間の量及び範囲である。
【0031】
一般に、第1の相と第2の相との間の界面の架橋CNCのマトリックスは、第1の相又は第2の相の一方の中にCNCを分散させ、第1の相及び第2の相を混ぜ合わせ、第2の相が第1の相中に分散されるように第1の相及び第2の相を混合及び/又は攪拌し、次にCNCを架橋させることによって形成される。
【0032】
ある実施形態では、CNCの表面における表面電荷密度を必要に応じて調節して、液滴の表面全体にわたるCNCの最大被覆率を保証するために、塩を使用することができる。特定の塩には、NaCl若しくはCaCl2などの一価及び多価金属のハロゲン化物、又は(NH42SO4などの有機塩誘導体が含まれるが、これらに限定されない。塩の濃度は、0.001~0.1Mであり得る。これらの塩は、架橋の前に、又は最終組成物中に存在し得る。ある実施形態では、塩の量は、0.001、0.005、0.01、0.05若しくは0.1、又はそれらの間の量及び範囲である。
【0033】
粒径の均一性及び安定性を助けるために、さらに界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤は、特定の第1の相及び第2の相、又はそれらに含まれる活性物質に基づいて選択され得る。一般に、界面活性剤は、約0.01~5%w/wであり得る。特定の実施形態では、界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウムである。特定の実施形態は、溶媒を含まない製剤に関する。
【0034】
本発明のある実施形態は、第1の相と第2の相との間の界面がCNCによって30~100%被覆されている組成物に関する。100%の被覆率は、固体マトリックスに相当する。特定の実施形態では、界面は、少なくとも60%CNCで被覆されている。他の実施形態では、界面は、50~80%CNCで被覆されている。CNCは、約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%、又はそれらの間の量及び範囲を被覆し得る。
【0035】
CNCは、当該技術分野で知られている任意の技術を用いて架橋され得る。好ましい架橋方法には、ポリアルデヒド、ポリフェノール、ポリアミン又はポリカルボン酸による化学的及び物理的架橋が含まれる。特定の架橋剤には、グルタルアルデヒド、クエン酸、タンニン酸及びホウ酸が含まれる。好ましい架橋剤には、グルタルアルデヒド及びクエン酸が含まれる。
【0036】
架橋のための他の方法は、様々な多価金属及びその対応する塩を用いて、CNC粒子間のイオン相互作用を利用することによって起こることができ、一般的な例としては、Mg(II)、Ca(II)、Fe(III)、Cu(II)、Zn(II)又はAl(III)の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
使用される架橋剤の量は、特定の架橋剤に依存し得る。一般に、架橋剤の量は0.01%w/wを超えることができ、いくつかの実施形態では、架橋剤は0.01~10%w/wで存在する。好ましい実施形態では、架橋剤は、0.01~5%w/wで存在する。いくつかの実施形態では、架橋剤の量は、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、0.7%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、若しくは10%w/w、又はそれらの間の量及び範囲である。
【0038】
特定の実施形態では、第2の相は、1~100μm(ミクロン)の直径を有する液滴を含む。好ましい実施形態では、液滴サイズは1~30μm(ミクロン)である。直径は、平均直径サイズによって定義され得る。直径は、1、1.5、2、2.5、若しくは3μm(ミクロン)、又はそれらの間の量及び範囲であり得るということになる。特定の実施形態では、直径は、10μm(ミクロン)未満、5μm(ミクロン)未満、3μm(ミクロン)未満、2μm(ミクロン)未満、1μm(ミクロン)未満、又は0.5μm(ミクロン)未満である。
【0039】
いくつかの実施形態では、製剤及び液滴は、それらの特性によって定義することができる。例えば、農薬の放出速度又は貯蔵安定性である。
【0040】
いくつかの実施形態では、放出速度は、農業的有効成分が界面マトリックスを横切って周囲の媒体、例えば、土壌又は葉の表面又は溶媒リザーバーに拡散する速度として定義される。定量化の目的で、有効成分が界面マトリックスを横切って拡散する速度を他の製剤と比較するために、放出速度試験が実施され得る。理論に束縛されることなく、架橋などの修飾によって放出速度を調節することができ、その結果、時間の関数としての放出パーセントに基づいて、遅延放出カプセル又は急速放出カプセルのいずれかが得られる。急速放出カプセル及び緩徐放出カプセルはいずれも農業用の殺有害生物剤製品に有利であり、本技術を用いて標的とされる。いくつかの実施形態では、農業的有効成分ペイロードの最大放出は、適用の1、2、3、4、5、6、12、又は24時間以内に達成される。他の実施形態では、農業的有効成分ペイロードの最大放出は、適用の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10日以内に達成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、貯蔵安定性は、最低2年の貯蔵期間にわたって物理的及び化学的に安定した状態を保つ製剤製品の能力として定義される。これは、低温、周囲温度又は高温での長期の貯蔵、及びエイジングプロセスをシミュレートするための温度サイクル手順によって達成され得る。物理的安定性は、合体、オストワルド熟成、綿状沈殿、クリーミング、相分離、又は増粘若しくは沈降などの他の物理的変化によるエマルション破壊に抵抗する製剤の能力を指す。さらに、化学的安定性は、製剤内に含有される農業的有効成分の化学的分解に抵抗する製剤製品の能力として定義される。通常、容認できる有効成分の分解許容度は、これらのシミュレートされた貯蔵条件にわたって、0~1wt%の負荷については±10%、1~20wt%の負荷については±5%、及び20wt%を超える負荷については±3%である。
【0042】
「農薬有効成分」という用語は、望ましくない有害生物、例えば、植物、昆虫、マウス、微生物、藻類、真菌、細菌などを死滅させる、防止する、又はそれらの成長を制御するのに有効である、本明細書に記載されるものなどの化学物質及び生物学的組成物(例えば、殺有害生物剤有効成分)を指す。またこの用語は、他の活性化合物の取り込み及び送達を促進する補助剤として作用する化合物にも適用され得る。またこの用語は、植物の成長を所望の形で制御する化合物(例えば、植物成長調節剤)、植物種において見られる自然の全身的な活性化抵抗反応を模倣する化合物(例えば、植物活性化剤)、又は除草剤に対する植物毒性応答を低減する化合物(例えば、薬害軽減剤)にも適用され得る。2種以上が存在する場合、それらの農薬有効成分は独立して、組成物を必要に応じて適切な体積の液体担体、例えば水中に希釈し、意図される標的、例えば、植物の葉又はその場所に適用したときに生物学的に有効な量で存在する。
【0043】
以下のものは、そのエナンチオマーに加えて、使用に適した農薬有効成分の例であるが、これらに限定されない:アゾキシストロビン、ベンゾビンジフルピル、クロロタロニル、シプロコナゾール、シプロジニル、ジフェノコナゾール、フェンプロピジン、フルジオキソニル、マンジプロパミド、メフェノキサム、パクロブトラゾール、ピコキシストロビン、プロピコナゾール、ピラクロストロビン、セダキサン、テブコナゾール、チアベンダゾール及びトリフロキシストロビンなどの殺真菌剤;アセトクロール、アラクロール、アメトリン、アニロホス、アトラジン、アザフェニジン、ベンフルラリン、ベンフレセート、ベンスリド、ベンズフェンジゾン、ベンゾフェナップ、ビシクロピロン、ブロモブチド、ブロモフェノキシム、ブロモキシニル、ブタクロール、ブタフェナシル、ブタミホス、ブトラリン、ブチラート、カフェンストロール、カルベタミド、クロリダゾン、クロルプロファム、クロルタール-ジメチル、クロルチアミド、シニドン-エチル、シンメチリン、クロマゾン、クロメプロップ、クロランスラム-メチル、シアナジン、シクロエート、デスメディファム、デスメトリン、ジクロベニル、ジフルフェニカン、ジメピペレート、ジメタクロール、ジメタメトリン、ジメテンアミド、ジメテンアミド-P、ジニトラミン、ジノテルブ、ジフェナミド、ジチオピル、EPTC、エスプロカルブ、エタルフルラリン、エトフメセート、エトベンザニド、フェノキサプロップ-エチル、フェノキサプロップ-P-エチル、フェントラザミド、フラムプロップ-メチル、フラムプロップ-M-イソプロピル、フルアゾレート、フルクロラリン、フルフェナセット、フルミクロラック-ペンチル、フルミオキサジン、フルオロクロリドン、フルポキサム、フルレノール、フルリドン、フルルタモン、フルチアセト-メチル、インダノファン、イソキサベン、イソキサフルトール、レナシル、リニュロン、メフェナセット、メソトリオン、メタミトロン、メタザクロール、メタベンズチアズロン、メチルダイムロン、メトベンズロン、メトラクロール、メトスラム、メトクスロン、メトリブジン、モリネート、ナプロアニリド、ナプロパミド、ネブロン、ノルフルラゾン、オルベンカルブ、オリザリン、オキサジアルギル、オキサジアゾン、オキシフルオルフェン、ペブレート、ペンジメタリン、ペンタノクロール、ペトキサミド、ペントキサゾン、フェンメディファム、ピノキサデン、ピペロホス、プレチラクロール、プロジアミン、プロフルアゾール、プロメトン、プロメトリン、プロパクロール、プロパニル、プロパジン、プロファム、プロピソクロール、プロピザミド、プロスルホカルブ、ピジフルメトフェン、ピラフルフェン-エチル、ピラゾギル(pyrazogyl)、ピラゾリネート、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ピリデート、ピリミノバック-メチル、キンクロラック、シデュロン、シマジン、シメトリン、S-メトラクロール、スルコトリオン、スルフェントラゾン、テブタム、テブチウロン、ターバシル、テルブメトン、テルブチラジン、テルブトリン、テニルクロール、チアゾピル、チジアジミン、チオベンカルブ、チオカルバジル、トリアレート、トリエタジン、トリフルラリン、及びベルノラートなどの除草剤;ベノキサコール、ジクロルミド、フェンクロラゾール-エチル、フェンクロリム、フルラゾール、フルキソフェニム、フリラゾール、イソキサジフェン-エチル、メフェンピルなどの除草剤薬害軽減剤;メフェンピルのアルカリ金属、アルカリ土類金属、スルホニウム又はアンモニウムカチオン;メフェンピル-ジエチル及びオキサベトリニル;アバメクチン、クロチアニジン、シアントラニリプロール、シアントラニリプロール、エマメクチン安息香酸塩、ガンマシハロトリン、イミダクロプリド、シハロトリン及びそのエナンチオマー、例えばラムダ-シハロトリン、テフルトリン、ペルメトリン、レスメトリン及びチアメトキサムなどの殺虫剤;ホスチアゼート、フェナミホス及びアルジカルブなどの殺線虫剤。
【0044】
一実施形態では、第2の相中の任意の有効成分は、溶液又は粒子の懸濁液の状態であり得る。加えて、第1の相中に含有される任意の有効成分は、溶液又は懸濁粒子の形態であり得る。
【0045】
本発明のさらなる態様には、ある量の濃縮組成物を水又は液体肥料などの適切な液体担体によって希釈し、必要に応じて植物、樹木、動物又は場所に適用することによって、有害生物による植物種への侵入を防止する、又はそれと闘い、植物の成長を調節する方法が含まれる。また本発明の製剤は、希釈製品のために保持タンクが必要とされないように、連続流装置内で、噴霧適用装置内の水と混ぜ合わせられてもよい。
【0046】
本組成物は、都合よく容器内に貯蔵することができ、そこから組成物が注がれるか又はポンプで送られる、或いは適用前にその中に液体担体が添加される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「農薬として有効な量」という用語は、標的有害生物を不利に制御又は改変するか、或いは植物の成長を調節する(PGR)農薬活性化合物の量を意味する。例えば、除草剤の場合、「除草的に有効な量」は、植物の成長を制御又は改変するのに十分な除草剤の量である。制御又は改変効果には、自然な発育からのあらゆる逸脱、例えば、死滅、遅延、葉焼け、白化、矮化などが含まれる。植物という用語は、種子、実生、苗木、根、塊茎、茎、柄、葉及び果実を含む植物の全ての物理的部分を指す。殺真菌剤の場合、「殺真菌剤」という用語は、真菌を死滅させるか、或いはその成長、増殖、分裂、繁殖、又は拡散を実質的に阻害する物質を意味するものとする。本明細書で使用される場合、殺真菌化合物に関連して「殺真菌的に有効な量」又は「真菌を制御若しくは低減するのに有効な量」という用語は、かなりの数の真菌を死滅させるか、或いはその成長、増殖、分裂、繁殖、又は拡散を実質的に阻害することになる量である。本明細書で使用される場合、「殺虫剤」、「殺線虫剤」又は「殺ダニ剤」という用語はそれぞれ、昆虫、線虫又はダニを死滅させるか、或いはその成長、増殖、繁殖、又は拡散を実質的に阻害する物質を意味するものとする。殺虫剤、殺線虫剤又は殺ダニ剤の「有効量」は、かなりの数の昆虫、線虫又はダニを死滅させるか、或いはその成長、増殖、繁殖又は拡散を実質的に阻害することになる量である。
【0048】
一態様において、本明細書で使用される場合、「(植物)成長を調節する」、「植物成長調節剤」、PGR、「調節する」又は「調節」は、以下の植物応答を含む:細胞伸長の阻害、例えば、茎高及び節間距離の低下、茎壁の強化、それによる耐倒伏性の増大;改善された品質の植物を経済的に生産するための鑑賞植物におけるコンパクトな成長;より良好な結実の促進;収穫高を増大させることを目的とした子房数の増加;果実の脱離を可能にする組織形成の老化の促進;秋季の通信販売のための苗床並びに観賞用灌木及び樹木の落葉;寄生性感染連鎖を遮断するための樹木の落葉;収穫を1~2回の摘み取りに減らすことによる収穫の計画化を目的とした熟成の加速、並びに有害昆虫の食物連鎖の遮断。
【0049】
別の態様において、「(植物)成長を調節する」、「植物成長調節剤」、「PGR」、「調節する」又は「調節」は、農業植物の収穫高を増大するため及び/又は活力を改善するための本発明に従って定義される組成物の使用も含む。本発明の一実施形態によると、本発明の組成物は、真菌、細菌、ウイルス及び/又は昆虫などのストレス因子、並びに農業植物の熱ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、乾燥ストレス、UVストレス及び/又は塩ストレスなどのストレス因子に対する耐性の改善のために使用される。
【0050】
本発明の組成物に対する所望のレベルの殺有害生物活性の提供に関連する適用率の選択は、当業者にとって日常的なことである。適用率は、有害生物の圧力レベル、植物の状態、気候及び成長条件などの因子と、農薬有効成分の活性及び任意の適用可能なラベル比率制限とに依存することになる。
【0051】
植物という用語は、種子、実生、苗木、根、塊茎、茎、花、柄、葉及び果実を含む植物の全ての物理的部分を指す。場所という用語は、植物が成長しているか又は成長することが予想されるところを指す。
【0052】
本発明に従う組成物は、農業において従来使用されている全ての適用方法、例えば、出芽前適用、出芽後適用、収穫後及び種子粉衣に適している。本発明に従う組成物は、作物領域への出芽前又は出芽後適用に適している。
【0053】
本発明に従う組成物は、有用植物の作物において有害生物と闘う及び/又はそれを防止するため、或いはこのような植物の成長を調節するためにも適している。いくつかの実施形態では、本組成物は、噴霧、滴下、及びウィッキングを含む、従来使用されている任意の方法によって適用され得る。
【0054】
有用植物の好ましい作物には、キャノーラ、トウモロコシ、大麦、オート麦、ライ麦及び小麦などの穀類、綿、大豆、サトウダイコン、果実、ベリー、ナッツ、野菜、花、樹木、低木、並びに芝生が含まれる。本発明の組成物で使用される成分は、種々の濃度で、当業者に知られている様々な方法で適用することができる。組成物が適用される比率は、防除すべき特定の種類の有害生物、必要とされる防除の程度、並びに適用のタイミング及び方法に依存することになる。
【0055】
作物は、従来の育種方法又は遺伝子操作によって除草剤又は除草剤の種類(例えば、ALS阻害剤、GS阻害剤、EPSPS阻害剤、PPO阻害剤、ACCase阻害剤、及びHPPD阻害剤)に対して耐性にされた作物も含むと理解されるべきである。従来の育種方法によってイミダゾリノン、例えばイマザモックスに対して耐性にされた作物の一例は、Clearfield(登録商標)サマーレイプ(summer rape)(キャノーラ)である。遺伝子操作法によって除草剤に対して耐性にされた作物の例としては、例えば、商品名RoundupReady(登録商標)及びLibertyLink(登録商標)で市販されているグリホサート抵抗性及びグルホシネート抵抗性トウモロコシ品種が挙げられる。
【0056】
また作物は、遺伝子操作法によって害虫に対して抵抗性にされたもの、例えば、Btトウモロコシ(ヨーロッパアワノメイガ(European corn borer)に耐性)、Bt綿(綿花ゾウムシ(cotton boll weevil)に耐性)、及びBtジャガイモ(コロラドハムシ(Colorado beetle)に耐性)であると理解されるべきである。Btトウモロコシの例は、NK(登録商標)(Syngenta Seeds)のBt176トウモロコシハイブリッドである。Bt毒素は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)土壌細菌によって天然に形成されるタンパク質である。毒素、又はこのような毒素を合成することができるトランスジェニック植物の例は、欧州特許出願公開第451878号明細書、欧州特許出願公開第374753号明細書、国際公開第93/07278号、国際公開第95/34656号、国際公開第03/052073号、及び欧州特許出願公開第427529号明細書に記載されている。殺虫剤抵抗性をコードし、1つ又は複数の毒素を発現する1つ又は複数の遺伝子を含むトランスジェニック植物の例は、KnockOut(登録商標)(トウモロコシ)、Yield Gard(登録商標)(トウモロコシ)、NuCOTIN33B(登録商標)(綿)、Bollgard(登録商標)(綿)、NewLeaf(登録商標)(ジャガイモ)、NatureGard(登録商標)及びProtexcta(登録商標)である。植物作物又はその種子材料は除草剤に耐性であり得ると共に、同時に、昆虫の摂食に耐性であり得る(「スタックされた」トランスジェニック事象)。例えば、種子は、グリホサートに対して耐性であると同時に、殺虫性Cry3タンパク質を発現する能力を有することが可能である。
【0057】
また作物は、従来の育種方法又は遺伝子操作によって得られるものであり、いわゆる出力形質(例えば、改善された貯蔵安定性、より高い栄養価、及び改善された風味)を含有するものを含むと理解されるべきである。
【0058】
他の有用植物には、例えば、ゴルフコース、芝地、公園及び道端における芝草、又は芝生用に商業的に栽培される芝草、並びに花又は灌木などの観賞植物が含まれる。
【0059】
作物領域は、栽培植物が既に成長しているか又はそれらの栽培植物の種子が播種された土地の領域、そしてそれらの栽培植物を成長させることが意図される土地の領域である。
【0060】
除草剤、植物成長調節剤、殺藻剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺ウイルス剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤又は殺軟体動物剤などの他の有効成分は、本発明の製剤中に存在していてもよいし、或いはタンク混合パートナーとして製剤と共に添加されてもよい。
【0061】
本発明の組成物はさらに他の不活性添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤には、増粘剤、流動性向上剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、消泡剤、殺生物剤、潤滑剤、充填剤、ドリフト制御剤、付着向上剤、補助剤、蒸発遅延剤、凍結保護剤、昆虫誘引臭気剤、UV保護剤、芳香剤などが含まれる。増粘剤は、水中で可溶性であるか又は膨潤することができる化合物、例えば、キサンタン(例えば、RHODOPOL(登録商標)23(キサンタンガム)(Rhodia,Cranbury,NJ)などのアニオン性ヘテロ多糖)、アルギネート、グアー又はセルロースの多糖;変成セルロース系ポリマー、ポリカルボキシレート、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトナイト(hectonite)、又はアタパルジャイトなどの合成巨大分子などであり得る。凍結保護剤は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、サッカロース、塩化ナトリウムなどの水溶性塩、ソルビトール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、尿素、又はこれらの混合物であり得る。代表的な消泡剤は、シリコーン油、ポリジアルキルシロキサン、特にポリジメチルシロキサン、フルオロ脂肪族エステル又はペルフルオロアルキルホスホン酸/ペルフルオロアルキルホスホン酸若しくはその塩及びこれらの混合物である。適切な消泡剤は、ポリジメチルシロキサン、例えば、Dow Corning(登録商標)Antifoam A、Antifoam B又はAntifoam MSAである。代表的な殺生物剤には、PROXEL(登録商標)GXL(Arch Chemicals)として入手可能な1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンが含まれる。
【0062】
使用され得る界面活性剤の例としては、直鎖及び分枝鎖アルコールエトキシレート及びその酸エステル、トリスチリル-フェノールエトキシレート及びその酸エステル、アルキル-フェノールエトキシレート及びその酸エステル、直鎖及び分枝鎖アルキル-アリールスルホネート、例えば、ドデシル-ベンゼンスルホネート、脂肪酸エトキシレート、アルキルアミンエトキシレート、エチレンオキシド及び高級アルキレン(プロピレン、ブチレン)オキシドのブロックコポリマーが挙げられる。非ミセル高分子分散剤の例としては、15~120kDaの分子量を有するポリビニルピロリドンホモポリマー、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルランダムコポリマー、リグノスルホネート、スルホン化尿素-ホルムアルデヒド縮合体、スチレンアクリルコポリマー、アルキル骨格及びポリアクリル酸の側鎖を有する櫛型ポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、並びに他の一般的な非乳化分散剤が挙げられる。
【0063】
分散剤は当該技術分野でよく知られており、その選択は所与の製剤に応じて種々の因子を有し得る。好ましい分散剤には、上記のように、限定はされないが、15~120kDaの分子量を有するポリビニルピロリドンホモポリマー、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルランダムコポリマー、リグノスルホネート、スルホン化尿素-ホルムアルデヒド縮合体、スチレンアクリルコポリマー、アルキル骨格及びポリアクリル酸の側鎖を有する櫛型ポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、並びに他の一般的な非乳化分散剤が含まれる。
【0064】
本発明の組成物は肥料と混合され、それでもまだその安定性を維持することができる。
【0065】
本発明の組成物は、従来の農法で使用され得る。例えば、本発明の組成物は、水及び/又は肥料と混合することができ、航空機の噴霧タンク、灌漑装置、直接注入噴霧装置、背負い式噴霧タンク、ウシ浸漬槽、地上噴霧で使用される農機具(例えば、ブームスプレーヤー、ハンドスプレーヤー)などの任意の手段によって、出芽前及び/又は出芽後に所望の場所に適用することができる。所望の場所は、土壌、植物などであり得る。
【0066】
本技術はさらに、種子又は植物繁殖体を処理するための方法であって、前記種子又は植物繁殖体を本発明の組成物と接触させることを含む方法を含む。本技術は、種子の収穫と種子の播種との間の任意の時期;播種中又は播種後;及び/又は発芽後に、任意の生理学的な状態の種子又は植物繁殖体に適用することができる。種子又は植物繁殖体は、十分に耐久性のある状態であり、処理プロセス中に、物理的損傷又は生物学的損傷を含む損傷を全く又は最小限にしか受けないことが好ましい。製剤は、従来のコーティング又はペレット化技術及び機械、例えば、流動床技術、ローラーミル法、ロトスタティック(rotostatic)種子処理機、及びドラムコーターを用いて、種子又は植物繁殖体に適用され得る。種子又は植物繁殖体は、コーティング前に予め分級され得る。コーティング後に、種子又は植物繁殖体は通常乾燥され、次に分級のために分級機に移される。このような手順は、当該技術分野において知られている。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、種子又は植物繁殖体コーティングの1つの成分として適用される。また処理された種子は、コーティングを保護するために薄膜オーバーコーティングで包まれてもよい。このようなオーバーコーティングは当該技術分野で知られており、例えば、従来の流動床及びドラム薄膜コーティング技術を用いて適用され得る。
【0067】
本発明のある実施形態は、組成物を製造するための方法に関する。製造方法の実施形態は、第1の相を調製することと、第2の相を調製することと、第2の相に農薬有効成分を溶解又は懸濁させることと、第1の相又は第2の相の一方又は両方にセルロースナノクリスタルを取り込むことと、第1の相及び第2の相を混ぜ合わせて組成物を形成することと、組成物を攪拌してエマルションを形成することと、セルロースナノクリスタルを架橋させて、第2の相の液滴の周囲にマトリックスシェルを形成することとを含む。
【0068】
種々の実施形態
実施形態1.
第1の相と、
第1の相中に混和せずに分散された第2の相と、
第1の相と第2の相との間の界面の架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスと、
第2の相中の少なくとも1つの農薬有効成分と
を含む液体組成物。
【0069】
実施形態2.分散剤をさらに含む、実施形態1の組成物。
【0070】
実施形態3.組成物は、乳化界面活性剤を含まない、実施形態1の組成物。
【0071】
実施形態4.架橋セルロースナノクリスタルは、グルタルアルデヒドによって架橋されている、実施形態1の組成物。
【0072】
実施形態5.架橋セルロースナノクリスタルは、第1の相と第2の相との間の界面の40~80%を被覆する、実施形態1の組成物。
【0073】
実施形態6.第1の相は、第1の相中にセルロースナノクリスタルを含まない組成物と比較して組成物の粘度を10%より大きく変化させるのに十分なセルロースナノクリスタルを含有する、実施形態1の組成物。
【0074】
実施形態7.架橋セルロースナノクリスタルは、クエン酸によって架橋されている、実施形態1の組成物。
【0075】
実施形態8.架橋セルロースナノクリスタルは、タンニン酸によって架橋されている、
実施形態1の組成物。
【0076】
実施形態9.第1の相は、水、1つ若しくは複数の実質的に水混和性の非水性液体、又は水と1つ若しくは複数の水混和性の液体との混合物を含む、実施形態1の組成物。
【0077】
実施形態10.実質的に水混和性の非水性液体は、炭酸プロピレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、約800までの分子量を有するポリエチレングリコール、ジ(プロピレングリコール)、ジアセチン、トリアセチン、メチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、リン酸トリエチル;乳酸エチル、ガンマ-ブチロラクトン、プロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルラクトアミド、及びこれらの混合物から選択される、実施形態9の組成物。
【0078】
実施形態11.第1の相は、水及び水溶性溶質を含む、実施形態1の組成物。
【0079】
実施形態12.水溶性溶質は、酸、塩基、塩、糖、多糖、タンパク質、アミノ酸、ベタイン及びこれらの混合物から選択される、実施形態11の組成物。
【0080】
実施形態13.第1の相は、少なくとも1つの農薬有効成分をさらに含み、有効成分は、溶液又は粒子の懸濁液から選択される状態である、実施形態1の組成物。
【0081】
実施形態14.架橋セルロースナノクリスタルは、ホウ酸によって架橋されている、実施形態1の組成物。
【0082】
実施形態15.架橋セルロースナノクリスタルは、組成物の0.1~5%w/wである、実施形態1の組成物。
【0083】
実施形態16.架橋セルロースナノクリスタルは、組成物の約1~2%w/wである、実施形態1の組成物。
【0084】
実施形態17.架橋セルロースナノクリスタルは、組成物の約3~5%w/wである、実施形態1の組成物。
【0085】
実施形態18.架橋セルロースナノクリスタルは、1:1~1:100のアスペクト比を有する、実施形態1の組成物。
【0086】
実施形態19.架橋セルロースナノクリスタルは、約1:50のアスペクト比を有する、実施形態1の組成物。
【0087】
実施形態20.架橋セルロースナノクリスタルは、約1~100nmの幅及び約100~1000nmの長さを有する、実施形態1の組成物。
【0088】
実施形態21.架橋セルロースナノクリスタルは、多峰性分布を有する、実施形態1の組成物。
【0089】
実施形態22.架橋セルロースナノクリスタルは、微生物から得られる、実施形態1の組成物。
【0090】
実施形態23.架橋セルロースナノクリスタルは、植物物質から得られる、実施形態1の組成物。
【0091】
実施形態24.第2の相は、1~100μm(ミクロン)の間の中位径(median diameter)を有する液滴を含む、実施形態1の組成物。
【0092】
実施形態25.第2の相は、1~50μm(ミクロン)の間の中位径を有する液滴を含む、実施形態24の組成物。
【0093】
実施形態26.第2の相は、1~10μm(ミクロン)の間の中位径を有する液滴を含む、実施形態25の組成物。
【0094】
実施形態27.有効量の実施形態1に従う濃縮組成物を、水及び液体肥料又はこれらの組合せから選択される水性液体担体で希釈し、希釈組成物を植物種又はその場所に適用することによって、有害生物による植物種への侵入と闘う、又は植物の成長を調節する方法。
【0095】
実施形態28.
第1の相を調製することと、
第2の相を調製することと、
第2の相に農薬有効成分を溶解又は懸濁させることと、
第1の相又は第2の相の一方又は両方にセルロースナノクリスタルを取り込むことと、
第1の相及び第2の相を混ぜ合わせて組成物を形成することと、
組成物を攪拌してエマルションを形成することと、
セルロースナノクリスタルを架橋させて、第2の相の液滴の周囲にマトリックスシェルを形成することと
を含む方法。
【0096】
実施形態29.架橋は、グルタルアルデヒドによるものである、実施形態28に従う方法。
【0097】
実施形態30.架橋は、クエン酸によるものである、実施形態29に従う方法。
【0098】
実施形態31.架橋は、タンニン酸によるものである、実施形態28に従う方法。
【0099】
実施形態32.架橋は、ホウ酸によるものである、実施形態28に従う方法。
【0100】
実施形態33.取り込みの後であるが混ぜ合わせる前に、第1の相及び/又は第2の相を攪拌することをさらに含む、実施形態28に従う方法。
【0101】
実施形態34.第1の相及び/又は第2の相に塩を取り込むことをさらに含む、実施形態28に従う方法。
【0102】
実施形態35.第2の相は、1~100μm(ミクロン)の間の中位径を有する液滴を含む、実施形態28に従う方法。
【0103】
実施形態36.実施形態1の組成物でコーティングされた植物種子
を含む製品。
【0104】
実施形態37.組成物は乾燥されている、請求項36の製品。
【0105】
実施形態38.少なくとも1つの農薬有効成分は、架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスを介した最大ペイロード放出が遅い、実施形態1の組成物。
【0106】
実施形態39.少なくとも1つの農薬有効成分は、架橋セルロースナノクリスタルのマトリックスを介した最大ペイロード放出が速い、実施形態1の組成物。
【実施例
【0107】
以下の実施例は、本発明の態様のさらにいくつかを説明するものであるが、その範囲を限定することは意図されない。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して他に規定されない場合、パーセンテージは重量によるものである。
【0108】
実施例1:CNC製剤の調製
【0109】
【表1】
【0110】
上記の表に従う組成物は、次のように調製した:NaClを水中に溶解させ、次に必要量のCNC固体を添加し、あらゆるCNC粒子又はCNC凝集体が互いに離散して、20μmより小さくなるまで、高せん断混合を用いて均質化した。ラムダ-シハロトリンを油相溶媒に可溶化し、次に水及びCNC組成物に添加した。高せん断混合(Turrax 15k RPMで2x3分)を用いて得られた組成物を均質化し、1~10μmのエマルション液滴サイズを得た。
【0111】
実施例2:架橋製剤の調製
【0112】
【表2】
【0113】
実施例1に記載されたのと同じ方法で製剤を調製した。標的の液滴サイズが達成されたら、架橋剤:クエン酸(2wt%)、タンニン酸(0.5wt%)、又はグルタルアルデヒド(4wt%の25%水溶液)を穏やかに攪拌しながらゆっくり添加した。添加が完了したら、製剤を60℃に4時間加熱してから、室温まで冷却させた。
【0114】
実施例3:貯蔵
グルタルアルデヒド架橋剤を含むCNC製剤及び含まないCNC製剤について、加速貯蔵研究を行った。試験では、高温及び温度サイクルでの貯蔵後に、明らかな改善が示された。架橋サンプルでは分離は認められなかったが、非架橋サンプルでは温度サイクル管理下で分離が起こった。さらに、pH及び粘度プロファイルは、架橋サンプルでは初期測定値からの変動がはるかに少ないことを示し、架橋剤を使用しない場合は、重度の増粘と共に2pH単位の減少が認められる。20時間ごとに-10~50℃のサイクル温度を2週間行った後の(A)2%グルタルアルデヒドを含む製剤、及び(B)グルタルアルデヒドを含まない製剤の比較は、図1に示される。結果は、以下の表に提供される:
【0115】
【表3】
【0116】
実施例4:ドライダウン
架橋サンプル及び非架橋サンプルを顕微鏡スライド上で乾燥させると、水担体の蒸発時にエマルションの微細構造化を観察することができた。架橋剤を含まない場合、微細構造は観察されず、エマルションの崩壊が明白であった。グルタルアルデヒド又はクエン酸架橋剤が含まれる場合、顕微鏡により微細構造を詳細に見ることができ、界面におけるCNCマトリックスの機械的強度の増大が示される。顕微鏡画像は図2に提供される。
【0117】
実施例5:放出速度実験
【0118】
【表4】
【0119】
上記の表に示される量を用いて、実施例1に記載されたのと同じ方法で製剤を調製した。フタル酸ジメチル(DMP)を第2の相に装入した。組成物を3つの等量に分割し、1つのバッチは架橋剤を含まないままとし(装入量を一定に保つため、他のサンプル中の架橋剤の代わりに、合計100%になるまで水を添加した)、第2のバッチにはクエン酸架橋剤を添加し、第3のバッチにはグルタルアルデヒド架橋剤を添加し、全てのバッチを50℃で18時間硬化させた。別々に、各サンプルに以下のプロトコルを受けさせ、界面マトリックス層を横切るUV活性DMPの拡散を評価した。
1)長さ30cmの透析管片を、脱イオン水中に18時間浸漬することによって調製した。
2)透析管の下端部を、結び目を作ることにより密封した。
3)1mlの製剤を透析管の中央に注入し、次に上部を結んだ。
4)150mlのガラス瓶内の100mlの脱イオン水に管を入れ、振とうさせ、初期サンプル用に3mlを採取した。
5)透析管を含有するガラス瓶をローラーの上に置いた。
6)DMPの吸収が275nmであるため、UV分光光度計において250~300nmの範囲にわたって3mlサンプルのUVスペクトルを収集した。
7)275nにおける吸光度を記録した。
8)サンプルを、透析管を含有するガラス瓶に戻した。
9)このプロセスを30分、1時間、2時間、又はプラトーに到達するまで繰り返した。
【0120】
これらの研究の結果は図3に示される。放出速度研究により、架橋剤を利用すると、架橋剤が使用されない場合と比較して、界面マトリックスを横切るDMPの放出速度は低下されることが示された。すなわち、架橋剤が存在しない場合には、より大量のDMPがより速い速度で放出される。
【0121】
実施例6:放出速度実験
【0122】
【表5】
【0123】
上記の表に示される量を用いて、実施例1に記載されたのと同じ方法で製剤を調製した。組成物を6つの等量に分割し、バッチAは架橋剤を含まないままとした。バッチB及びCには、それぞれ4w/w%及び2w/w%の装入量でクエン酸架橋剤を添加した。バッチD及びEには、それぞれ2w/w%及び0.14w/w%の装入量でタンニン酸を添加した。バッチFには、グルタルアルデヒドを25%水溶液(グルタルアルデヒド含量1w/w%、水溶液含量4%)として添加した。全てのバッチを50℃で18時間硬化させた。別々に、各サンプルに以下のプロトコルを受けさせた。これは、界面マトリックス層を横切る農業的有効成分の拡散を評価するために、国際農薬分析法協議会(Collaborative International Pesticides Analytical Council)(CIPAC)方法「MT190-ラムダ-シハロトリンcs製剤の放出特性の決定」をわずかに修正したバージョンである。この方法に対する修正では、内部標準溶液からエタノールの使用を除外した。
1.ヘキサン(1L)中に溶解させたフタル酸ジシクロヘキシル(350mg)を含む内部標準(IS)溶液を調製した。
2.約500mgの製剤を脱イオン水中に6mLまで希釈し、使用した製剤の正確な質量を記録した。
3.ステップ2で調製した希釈製剤に100mLのIS溶液を添加した。
4.これを穏やかに旋回させ、ヘキサン層の1mLアリコートを取り出し、1滴のトリフルオロ酢酸が添加されたGCバイアルに入れた。次に、バイアルに蓋をし、密封した。
5.次に、サンプルをひっくり返すことなく水平ローラーの上に置き、70rpmで回転を始めた。
6.所望の時点、例えば、5分、10分、15分、30分、60分、90分、180分、360分及び1440分で、さらに1mLアリコートをヘキサン画分から取り出して、1滴のトリフルオロ酢酸が添加されたGCバイアルに入れ、その後密封した。各アリコートを取り出した後、サンプルをローラーの上に戻した。
7.次に、CIPAC法MT190に概説される手順を用いて、ラムダ-シハロトリン含量をGCにより測定した。
【0124】
これらの研究の結果は、図4に示される。放出速度研究により、架橋剤を利用すると、架橋剤なしの場合と比較して、界面マトリックスを横切るラムダ-シハロトリンの放出速度は、使用される架橋剤の種類及び量に依存して低下されることが示された。架橋剤が使用されない場合、擬似逆指数放出(pseudo-inverse exponent release)が観察され、これは初期バースト放出プロファイルを有し、その後時間と共に徐々に弱くなる。クエン酸を使用すると、ラムダ-シハロトリンの定常状態の比較的急速な直線的放出が得られるが、グルタルアルデヒド及びタンニン酸では、はるかにより調節された放出速度が得られ、タンニン酸の量が増加するにつれて放出速度が遅くなる。
【0125】
実施例7:放出速度実験
【0126】
【表6】
【0127】
上記の表に示される量を用いて、実施例1に記載されたのと同じ方法で製剤を調製した。実施例6の方法を用いて、これらの組成物の放出速度を試験した。結果は図5に提供されており、実施例6で見られたのと同様の傾向に従い、種々の架橋剤が界面マトリックスを横切るラムダ-シハロトリンの放出を弱める。タンニン酸は最も高い放出障壁を提供し、次にグルタルアルデヒド、その後にクエン酸であり、これが架橋剤の最も弱い放出障壁を提供する。対照として、架橋剤なしの場合が最も速い放出速度を示しており、架橋剤がラムダ-シハロトリンの拡散に及ぼす効果が例示される。
【0128】
初期試験の後、製剤を25℃又は54℃のいずれかで2週間貯蔵した。放出速度を再度試験した。結果は、図6に提供される。一般に、これらの架橋系は、貯蔵後のその放出速度プロファイル及び拡散動態学に対してほとんど変化を示さないか又はわずかな改善を示し、これにより、緩徐放出系又は急速放出系としてのその長期の物理的安定性が実証される。
【0129】
本発明のいくつかの例示的な実施形態のみが上記で詳細に説明されたが、当業者は、本発明の新規の教示及び利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの改変が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、このような改変は全て、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】