(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート用バインダーとしてのエチレンビニルアセタールの使用
(51)【国際特許分類】
C04B 35/634 20060101AFI20241003BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20241003BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20241003BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C04B35/634 200
C08L29/04 A
C08L29/14
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522011
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022076702
(87)【国際公開番号】W WO2023061741
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレタ ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン マミー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フランク
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BE03X
4J002BE06W
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE186
4J002ED037
4J002EG107
4J002EW048
4J002FD027
4J002FD096
4J002FD208
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、印刷インキのバインダーとしての特定のエチレンビニルアセタールの使用に関する。1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、バインダーが、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含むエチレンビニルアセタールである懸濁液組成物が開示される。該懸濁液を用いたセラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造のためのバインダーとしてのエチレンビニルアセタールの使用であって、エチレンビニルアセタールが、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含む、使用。
【請求項2】
アセタール基が、2~7個の炭素原子を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記エチレンビニルアセタールが、n-ブチルアルデヒドおよび/またはイソブチルアルデヒドアセタール基を含む、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記エチレンビニルアセタール中の残留ビニルアルコールが、15~40mol%である、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、前記バインダーが、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含むエチレンビニルアセタールである、懸濁液組成物。
【請求項6】
アセタール基が、2~7個の炭素原子を有する、請求項5記載の懸濁液。
【請求項7】
前記エチレンビニルアセタールが、n-ブチルアルデヒドおよび/またはアセトアルデヒドアセタール基を含む、請求項5または6記載の懸濁液。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか1項記載の懸濁液を用いた、セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート用バインダーとしてのエチレンビニルアセタールの使用を対象とする。
【0002】
エレクトロニクス産業用のセラミックコンデンサのようなセラミック材料は、一般に、いわゆるグリーンシート、すなわちセラミック材料を含むフィルム状の薄い成形体を焼結することによって製造される。こうしたグリーンシートの製造のために、有機溶媒中の金属酸化物、可塑剤、分散剤およびバインダーの懸濁液が製造される。この懸濁液はその後、適切なプロセス(すなわち、ドクターブレードプロセス)によりキャリアフィルム上に所望の厚さで施与され、溶媒が除去される。このようにして得られるグリーンシートは、クラックがなく、平滑な表面を示し、かつなおもある程度の弾性を有していなければならない。
【0003】
セラミックグリーンシートの製造には、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールがバインダーとして頻繁に使用されている。このため、独国特許出願公開第4003198号明細書には、残留ポリ酢酸ビニル含量が0~2重量%のポリビニルブチラールをバインダーとして使用したセラミックグリーンフィルム用キャスティングスリップの製造が記載されている。
【0004】
近年、多層セラミックコンデンサ(MLCC)は、エレクトロニクス産業においてますます重要性を増している。MLCCは、複数の個々のコンデンサを並列に積層し、端子面を介して接触させたものである。電子部品の小型化が進んでいるため、粉末粒子のサイズはわずか10nmになることがある。そのため、そこで使用されるセラミックシートの精度向上が製造上求められている。さらに、セラミックグリーンシートの多層スタックは、製造工程でロール状に巻かれることが多い。層間剥離を避けるために、個々のグリーンシートは、結合力および破断伸度に関して優れた特性を持たなければならない。このため、当産業界では、懸濁液に使用されるバインダーのさらなる改良が求められている。
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、接着性の改善、破断伸度の改善、分散効果の改善、環境および安全性への影響の改善、ならびに/またはセラミックグリーンシートの製造および使用におけるより優れた経済的プロファイルをもたらすセラミックグリーンシート用バインダーを提供することであった。
【0006】
こうしたエチレンビニルアセタールおよび他の特定のエチレンビニルアセタールは、セラミック懸濁液の製造のためのバインダーとして、ひいてはセラミックグリーンシートの製造のためのバインダーとして非常に適していることが見出された。
【0007】
したがって、本発明は、セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体の製造のためのバインダーとしてのエチレンビニルアセタールの使用であって、エチレンビニルアセタールが、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含む、使用に関する。
【0008】
本発明のエチレンビニルアセタールは、アルデヒドを、エチレンビニルアルコール(EVOH)とのアセタール化反応に供することにより得ることができる。このようなエチレンビニルアルコールは当該技術分野で知られており、酸性触媒の存在下でエチレンを共重合することによって得ることができる。さらに、エチレンビニルアルコールは市販されている。
【0009】
好ましくは、エチレンビニルアルコールは、エチレンと酢酸ビニルを共重合し、得られた共重合体を加水分解することによって得られる。加水分解反応には、従来公知のアルカリ触媒や酸触媒を用いることができ、中でもメタノールを溶媒とし、苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いた加水分解反応が簡便である。
【0010】
好ましくは、エチレンビニルアルコール中のエチレン単位のパーセンテージは、25~60mol%、より好ましくは30~55mol%、さらにより好ましくは35~50mol%である。
【0011】
アセタール化反応後に得られた反応生成物をアルカリでの中和後に水で洗浄することで、エチレンビニルアセタールが得られる。
【0012】
アセタール化反応を行うための触媒は特に限定されず、有機酸、無機酸のいずれも使用することができる。その例としては、酢酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸などが挙げられる。
【0013】
酢酸基のけん化度は特に限定されないが、好ましくは95mol%以上、より好ましくは98mol%以上、さらにより好ましくは99mol%以上、最も好ましくは99.9mol%以上である。
【0014】
好ましくは、エチレンビニルアセタール中のエチレン単位のパーセンテージは、30~55mol%、より好ましくは35~50mol%である。また好ましくは、エチレンビニルアセタール中のエチレン単位のパーセンテージは、50~60mol%である。
【0015】
好ましくは、アセタール基は、個々に1~7個の炭素原子を有し、すなわち、それらは1~7個の炭素原子を有するアルデヒドとの縮合反応から誘導される。より好ましくは、メタナール(ホルムアルデヒド)、アセトアルデヒド、n-プロパナール(プロピオンアルデヒド)、n-ブタナール(ブチルアルデヒド)、イソブタナール(2-メチル-1-プロパナール、イソブチルアルデヒド)、n-ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソペンタナール(3-メチル-1-ブタナール)、sec-ペンタナール(2-メチル-1-ブタナール)、tert-ペンタナール(2,2,ジメチル-1-プロパナール)、n-ヘキサナール(カプロンアルデヒド)、イソヘキサナール(2-メチル-1-ペンタナール、3-メチル-1-ペンタナール、4-メチル-1-ペンタナール)、2,2-ジメチル-1-ブタナール、2,3-ジメチル-1-ブタナール、3,3-ジメチル-1-ブタナール、2-エチル-1-ブタナール、n-ヘプタナール、2-メチル-1-ヘキサナール、3-メチル-1-ヘキサナール、4-メチル-1-ヘキサナール、5-メチル-1-ヘキサナール、2,2-ジメチル-1-ペンタナール、3,3-ジメチル-1-ペンタナール、4,4-ジメチル-1-ペンタナール、2,3-ジメチル-1-ペンタナール、2,4-ジメチル-1-ペンタナール、3,4-ジメチル-1-ペンタナール、2-エチル-1-ペンタナール、2-エチル-2-メチル-1-ブタナール、2-エチル-3-メチル-1-ブタナール、3-エチル-2-メチル-1-ブタナール、シクロヘキシルアルデヒドおよびベンズアルデヒドからなるリストから誘導される。最も好ましくは、イソブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよび/またはn-ブチルアルデヒドとの縮合反応から誘導される。
【0016】
また好ましくは、本発明によるエチレンビニルアセタールは混合アセタールであり、すなわち、少なくとも2つの異なるアセタール基を含む。換言すれば、本発明で使用されるエチレンビニルアセタールは、それぞれのエチレンビニルアルコールの2つのヒドロキシル基と1つのアルデヒドとの反応に由来する第1のアセタール基と、それぞれのエチレンビニルアルコールの他の2つのヒドロキシル基と第2のアルデヒドとの反応に由来する少なくとも1つの第2のアセタール基とを含み、第1のアルデヒドは、第2のアルデヒドとは異なる。好ましいアルデヒドは、上記の1つのアセタール基を有するアセタールに使用されるものと同じであり;最も好ましい組み合わせは、アセトアルデヒドおよびn-ブチルアルデヒドに由来するアセタールの混合物である。
【0017】
本発明の本実施形態で使用されるエチレンビニルアセタールの製造方法は特に限定されないが、酸性条件下でエチレンビニルアルコール溶液にアルデヒドを添加し、アセタール化反応に供するという方法により製造することができる。
【0018】
好ましくは、本発明で使用されるエチレンビニルアセタールのアセタール化度は、5mol%以上40mol%未満であり、より好ましくはアセタール化度の下限は、6mol%超、7mol%超、8mol%超、9mol%超、最も好ましくは10mol%超である。さらに、アセタール化度の上限は、より好ましくは38mol%以下、36mol%以下、34mol%以下、32mol%以下の順であり、最も好ましくは30mol%未満である。
【0019】
好ましくは、本発明のエチレンビニルアセタール樹脂中のビニルアルコール単位のパーセンテージは、樹脂を構成する全モノマー単位に対して24~71mol%である。
【0020】
エチレンビニルアセタールのビニルアルコール含量および酢酸ビニル含量は、DIN ISO 3681(アセテート含量)およびDIN ISO 53240(PVA含量)に準拠して求めた。ビニルアセタール含量は、DIN ISO 53401/53240に準拠して求められたビニルアルコール含量と酢酸ビニル含量との合計およびエチレンから100とするのに必要な残りの部分として計算される。アセタール化度は、ビニルアセタール含量をビニルアルコール含量、ビニルアセタール含量および酢酸ビニル含量の合計で割った値から算出される。重量%からmol%への換算は、当業者に公知の計算式で行う。
【0021】
エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含量は、NMR分光法によって測定される。まず、エチレンビニルアセタール樹脂をエタノールに溶解させ、2N塩酸ヒドロキシルアミン水溶液および塩酸を加え、混合物を水浴中で冷却器を用いた還流下で4時間撹拌し、冷却後にアンモニア水を加える。その後、メタノールを加え、ポリマーを沈殿させ、洗浄、乾燥してアセチル化エチレンビニルアルコール共重合体を得る。次に、このアセチル化エチレンビニルアルコール共重合体をDMSO(ジメチルスルホキシド)に120℃で溶解させ、室温まで冷却した後、これにN,N-ジメチル-4-アミノピリジンおよび無水酢酸を加え、次いで1時間撹拌し、次いでイオン交換水およびアセトンにより沈殿させ、乾燥させてエチレン酢酸ビニル共重合体を得る。このポリマーをDMSO-d6に溶解させ、400MHzのプロトンNMRスペクトロメーターで測定する。得られたスペクトルを256回積算した。エチレン単位および酢酸ビニル単位に由来するメチンプロトン(1.1~1.9ppmのピーク)と酢酸ビニル単位に由来する末端メチンプロトン(2.0ppmのピーク)との強度比から、エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル比を算出する。なお、エチレン単位はアセタール化反応の影響を受けないので、アセタール化反応前のエチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル比(n)は、アセタール化反応後に得られるエチレンビニルアセタール樹脂のエチレン単位のモル比(n)と等しくなる。
【0022】
第2の態様において、本発明は、1つ以上の無機顔料と、1つ以上の有機溶媒と、1つ以上のバインダーと、1つ以上の可塑剤と、1つ以上の分散剤とを含む懸濁液組成物であって、バインダーが、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含むエチレンビニルアセタールである、懸濁液組成物に関する。
【0023】
好ましくは、アセタール基は、2~7個の炭素原子を有し、上述と同じアルデヒドに由来する。最も好ましくは、エチレンビニルアセタールは、n-ブチルアルデヒドおよび/またはアセトアルデヒドアセタール基を含む。
【0024】
無機顔料は、常誘電体原料または強誘電体原料の細かく粉砕された粒状物から選択することができ、二酸化チタン(ルチル)であって、好ましくは亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、タンタル、コバルトおよび/またはストロンチウムの添加物によって修飾されたもの、ならびにMgNb2O6、ZnNb2O6、MgTa2O6、ZnTa2O6、(ZnMg)TiO3、(ZrSn)TiO4およびBa2Ti9O20またはBaTiO3(チタン酸バリウム)から選択される化合物が挙げられる。無機顔料の平均粒径は、好ましくは約0.01~1μmである。
【0025】
有機溶媒は、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール化合物、さらに好ましくはそれらの混合物から選択することができる。
【0026】
適切な分散剤としては、魚油、リン酸エステル、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する官能性ポリマー、例えばNOF America Cooperation社から市販されているMALIALIM(商標)シリーズが挙げられる。
【0027】
本発明によるバインダーに加えて、懸濁液は、特に、セルロース樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂のような他のバインダー;ポリエチレングリコールまたはフタル酸エステルのような可塑剤および/または消泡剤から選択される他の成分を含むことができる。
【0028】
懸濁液組成物の製造方法は特に限定されない。種々の分散方法を用いることができ、例えば、ビーズミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型ミルを用いる方法、粉末状セラミック、分散媒、分散剤、バインダー、可塑剤などを混練する方法;および3本ロールミルを用いる方法を用いることができる。3本ロールミルを用いる方法としては、粉末状無機顔料を分散剤、バインダー、可塑剤などとともに有機溶媒(混合物)に分散させる方法が挙げられる。
【0029】
好ましくは、粉末状セラミック、分散剤および溶媒(混合物)は、分散剤が粉末状セラミックに吸着されるように予め混合され、分散される。第2の工程では、このようにして形成された混合物にバインダーを添加し、その後、再び混合および分散を行う。
【0030】
これらの工程で製造されるコーティング膜の厚さは、0.25~25μmであってもよく、典型的には0.5~10μmであってもよい。
【実施例】
【0031】
(実施例1-エチレンビニルアセタール)
特開2016-28139号公報に記載された方法により合成されたエチレンビニルアルコール共重合体100重量部を、エチレン単位44mol%を含む1-プロパノール315重量部に分散させ(けん化度:99%)、撹拌しながら溶液の温度を60℃まで上昇させた。その後、温度を60℃に保ちながら、1M塩酸40重量部を加え、続いてn-ブチルアルデヒド34.2重量部を加えた。反応が進行するにつれ、エチレンビニルアルコール共重合体が溶解し、反応混合物は均質な溶液となった。36時間後、炭酸水素ナトリウム6.4重量部を加えて反応を停止させた。反応液に1-プロパノール500重量部を加えて均一にした後、水2000重量部に滴加し、樹脂を沈殿させた。その後、ろ過および水洗の操作を3回繰り返し、得られた固体を60℃で8時間真空乾燥した。このようにして得られたエチレンビニルアセタールは、エチレン単位含量が44mol%であり、アセタール化度が46mol%である。
【0032】
(比較例1 - n-ブチルアセタール)
Kuraray Europe GmbH社から入手したMowital(登録商標)ポリビニルアセタール樹脂B75Hは、n-ブチルアルデヒドおよびポリマー鎖中にエチレン単位を含まないポリビニルアルコールから生成されたアセタール単位を含んでおり、これをPVB溶液の調製に使用する。このPVB溶液を、セラミックグリーンシート製造用のバインダー溶液として使用する。グリーンシートの製造に関する記述の詳細は、以下のセクションに記載されている。
【0033】
・無機分散液の調製
トルエン25gとエタノール25gとの混合溶媒に、ポリオキシアルキレン分散剤(MALIALIM(商標)シリーズ、名称:SC-0505K、供給元:NOF)1.3gを加え、撹拌して溶解させた。次に、得られた溶液にチタン酸バリウム粉末(Fuji Titanium Industry社製、UQBT-20)130gおよびZrO2ビーズ(直径:2mm)500gを添加した。この有機分散液を、ローラーミキサーで6~8時間混合した。
【0034】
・樹脂溶液の調製
エタノール59.8gとトルエン59.8gとの混合溶媒に(ポリビニル)アセタール樹脂10.4gおよび可塑剤3G8 3.95gを加えて、樹脂溶液を調製した。混合物を撹拌して樹脂を溶解させる。
【0035】
・セラミックグリーンシートの製造
得られた無機分散液に樹脂溶液を加え、ローラーブロックミキサーを用いて10時間混合して、セラミックグリーンシート用組成物を得た。
【0036】
ナイロン製スクリーン/フィルターを用いて、分散液からZrO2ビーズを分離した。
【0037】
得られた分散液を脱気し、自動フィルム施与機を用いてドクターブレードプロセスによりキャストした。シリコーン処理PET(Hostaphan(登録商標)RN 2 SLK、厚さ75μm)をキャスティング支持体として使用した。キャスティング後、フィルムを空気中で24時間乾燥させ(温度:23℃、相対湿度:50%)、その後ドローオフした。
【0038】
得られたフィルムは、15μmの厚さを有し、光学的評価においてクラック、ブリスター、欠陥が認められた。
【0039】
グリーンシートから、いわゆる「ドッグボーン」状の適切な引張試験片を打ち抜いた。1つタイプのフィルムにつき8つの引張試験片をキャスト方向に交差させて打ち抜き、人間の目で検査した。実施例1および比較例1ともに、打ち抜き工程によるキズが最も少ないと思われる4つの試験片を選んで測定した。引張力測定には万能引張試験機を用いた。測定は、DIN EN ISO 527-1およびDIN EN ISO 527-3に準拠し、23℃、相対湿度50%の管理された条件下で行った。
【0040】
【0041】
引張試験の結果、エチレンビニルアセタールを用いて得られたセラミックグリーンシートの破断伸度は、PVB標準品を用いて得られた破断伸度の2倍以上の値を示した。
【国際調査報告】