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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】抗グリピカン3抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20241003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07K16/00
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/42
C07K16/46
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522070
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2022125725
(87)【国際公開番号】W WO2023061505
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/124182
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524069695
【氏名又は名称】コンセプト トゥー メディシン バイオテック カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, リウ
(72)【発明者】
【氏名】シェン, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ツイ, フェイフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, レイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045BA40
4H045DA75
4H045EA22
(57)【要約】
マウス抗体、ヒト化抗体、およびさらに最適化されたCDR配列を有するものを含む、抗GPC3抗体が、提供される。抗体は、臨床開発中の有力な抗GPC3抗体候補よりも高い細胞ベースの結合効率を示した。本開示は、様々な実施形態で、ヒトGPC3タンパク質に特異的な抗体および抗原結合性断片を提供する。実験的試験は、これらの新たに同定された抗体がベンチマークGC33抗体よりも性能が優れていたことを示す。上記抗体またはその断片を用いてがんを処置するための方法および使用も提供される
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトグリピカン3タンパク質に対して特異性を有する、抗グリピカン3(GPC3)抗体またはその断片であって、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号71~76のアミノ酸配列を含む、抗グリピカン3(GPC3)抗体またはその断片。
【請求項2】
前記VH CDR1が、配列番号13、25、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号14、19、23、26、29、30、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号16、21、27および31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号18、22、28、32、34および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、
配列番号13、19、15、21、17および18;
配列番号13、19、20、21、17および22;
配列番号13~18;
配列番号13、23、24、21、17および18;
配列番号25、26、20、27、17および28;
配列番号25、29、20、27、17および28;
配列番号25、30、15、31、17および32;
配列番号59、60、15、21、61、および62;
配列番号63、19、15、21、64、および62;または
配列番号13、65、15、21、66、および62
のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
前記VH CDR1が、配列番号13、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号19、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号21のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号18および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号13、19、15、21、17および18のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
前記VHが、配列番号35~39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号40~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
(a)前記VHが、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号41のアミノ酸配列を含むか;
(b)前記VHが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号43のアミノ酸配列を含むか;
(c)前記VHが、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号42のアミノ酸配列を含むか;
(d)前記VHが、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号43のアミノ酸配列を含むか;
(e)前記VHが、配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号44のアミノ酸配列を含むか;
(f)前記VHが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号41のアミノ酸配列を含むか;
(g)前記VHが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号42のアミノ酸配列を含むか;
(h)前記VHが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号44のアミノ酸配列を含むか;
(i)前記VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号41のアミノ酸配列を含むか;
(j)前記VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号42のアミノ酸配列を含むか;
(k)前記VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号43のアミノ酸配列を含むか;
(l)前記VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号44のアミノ酸配列を含むか;
(m)前記VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号41のアミノ酸配列を含むか;
(n)前記VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号42のアミノ酸配列を含むか;
(o)前記VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号43のアミノ酸配列を含むか;または
(p)前記VHが、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号44のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号59、60、15、21、61および62のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
前記VHが、配列番号53のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項10】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号63、19、15、21、64および62のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記VHが、配列番号55のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体またはその断片。
【請求項12】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号13、65、15、21、66および62のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその断片。
【請求項13】
前記VHが、配列番号57のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号58のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の抗体またはその断片。
【請求項14】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号13、19、20、21、17および22のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項15】
前記VHが、配列番号3および45~50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4、51および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の抗体またはその断片。
【請求項16】
(a)前記VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;
(b)前記VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含むか;
(c)前記VHが、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;
(d)前記VHが、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含むか;
(e)前記VHが、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;
(f)前記VHが、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含むか;
(g)前記VHが、配列番号47のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;
(h)前記VHが、配列番号47のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含むか;
(i)前記VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;
(j)前記VHが、配列番号49のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含むか;
(k)前記VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号51のアミノ酸配列を含むか;または
(l)前記VHが、配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号52のアミノ酸配列を含む、
請求項14に記載の抗体またはその断片。
【請求項17】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項18】
前記VHが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の抗体またはその断片。
【請求項19】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号13、23、24、21、17および18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項20】
前記VHが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の抗体またはその断片。
【請求項21】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号25、26、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項22】
前記VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の抗体またはその断片。
【請求項23】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号25、29、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項24】
前記VHが、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の抗体またはその断片。
【請求項25】
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号25、30、15、31、17および32のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその断片。
【請求項26】
前記VHが、配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の抗体またはその断片。
【請求項27】
前記VH CDR1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号19のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号21のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号18、22、28、32および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載の抗体またはその断片。
【請求項28】
(a)前記VHが、配列番号35のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか;
(b)前記VHが、配列番号67のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか;
(c)前記VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号40のアミノ酸配列を含むか;
(d)前記VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号68のアミノ酸配列を含むか;
(e)前記VHが、配列番号69のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか;
(f)前記VHが、配列番号35のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号68のアミノ酸配列を含むか;
(g)前記VHが、配列番号67のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号40のアミノ酸配列を含むか;
(h)前記VHが、配列番号67のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号68のアミノ酸配列を含むか;
(i)前記VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号70のアミノ酸配列を含むか;
(j)前記VHが、配列番号67のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号70のアミノ酸配列を含むか;
(k)前記VHが、配列番号35のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号70のアミノ酸配列を含むか;
(l)前記VHが、配列番号69のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号68のアミノ酸配列を含むか;
(m)前記VHが、配列番号69のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号40のアミノ酸配列を含むか;または
(n)前記VHが、配列番号69のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号70のアミノ酸配列を含む、
請求項27に記載の抗体またはその断片。
【請求項29】
二価Fab抗体であるか、またはF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、FvおよびscFvからなる群から選択される断片である、請求項1から28のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項30】
ヒト化されている、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項31】
請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と、GPC3ではない標的抗原に対して結合特異性を有する1つまたは複数の抗体または抗原結合性断片とを含む、多重特異性抗体。
【請求項32】
請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζ細胞内ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項33】
請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片または請求項31に記載のCARをコードする、1つまたは複数のポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項33に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項35】
(a)請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体またはその断片;および
(b)前記抗体またはその断片にコンジュゲートされたコンジュゲーション部分
を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、前記コンジュゲーション部分が、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組合せから選択される、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項36】
請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片、請求項32に記載のCAR、または請求項35に記載の抗体-薬物コンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項37】
それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片、請求項32に記載のCAR、または請求項35に記載の抗体-薬物コンジュゲートの有効量を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項38】
がんを処置するための医薬の調製のための、請求項1から30のいずれか一項に記載の抗体もしくはその断片、請求項32に記載のCAR、または請求項35に記載の抗体-薬物コンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
グリピカン3(GPC3)は、細胞表面に存在するグリピカン関連膜内在性ヘパラン硫酸プロテオグリカン(GRIPS)ファミリーのメンバーである。GPC3のタンパク質コアは、2つのサブユニットからなり、N末端サブユニットは、約40kDaのサイズを有し、C末端サブユニットは、約30kDaである。6つのグリピカン(GPC1~6)が哺乳動物において同定されている。GPC3は、細胞増殖、分化、接着および遊走を調節する上で重要な役割を果たす。GPC3は、WntとFrizzled(FZD)の両方と相互作用して複合体を形成し、下流のシグナル伝達を誘発する。GPC3のコアタンパク質は、Wntの共受容体またはレシーバーとしての役割を果たし得る。
【0002】
グリピカン3免疫染色は、肝細胞癌(HCC)と肝硬変の際の異形成変化とを識別するためのものであり得る。GPC3タンパク質発現は、HCCに見られるが、正常な肝臓および胆管癌には見られない。GPC3は、より少ない程度にだが、黒色腫、卵巣明細胞癌、卵黄嚢腫瘍、神経芽細胞腫、肝芽腫、ウィルムス腫瘍細胞、および他の腫瘍においても発現される。
【0003】
GPC3は、肝臓がんなどのがんの処置の有望な治療標的である。GC33およびYP7をはじめとする、いくつかの治療用抗GPC3抗体が開発されている。これらの抗体の一部は、肝臓がん細胞においてWntシグナル伝達を阻害する。また、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法が、がんを処置するために様々なステージで開発中である。異種移植または同所性(orthoptic)肝臓腫瘍を有するマウスにおいて、CAR-T細胞は、パーフォリン媒介およびグランザイム媒介細胞死を誘導すること、および腫瘍細胞におけるWntシグナル伝達を低減させることにより、GPC3陽性がん細胞を消失させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本開示は、様々な実施形態で、ヒトGPC3タンパク質に特異的な抗体および抗原結合性断片を提供する。実験的試験は、これらの新たに同定された抗体がベンチマークGC33抗体よりも性能が優れていたことを示す。
【0005】
それ故、本開示の一実施形態に従って、ヒトグリピカン3タンパク質に対して特異性を有する、抗グリピカン3(GPC3)抗体またはその断片であって、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3が、それぞれ、配列番号71~76のアミノ酸配列を含む、抗グリピカン3(GPC3)抗体またはその断片が、提供される。
【0006】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13、25、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号14、19、23、26、29、30、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号16、21、27および31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18、22、28、32、34および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、
配列番号13、19、15、21、17および18;
配列番号13、19、20、21、17および22;
配列番号13~18;
配列番号13、23、24、21、17および18;
配列番号25、26、20、27、17および28;
配列番号25、29、20、27、17および28;
配列番号25、30、15、31、17および32;
配列番号59、60、15、21、61、および62;
配列番号63、19、15、21、64、および62;または
配列番号13、65、15、21、66、および62
のアミノ酸配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、19、15、21、17および18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号35~39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号59、60、15、21、61および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号53のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号63、19、15、21、64および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号55のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号56のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、65、15、21、66および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号57のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号58のアミノ酸配列を含む。
【0015】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、19、20、21、17および22のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3および45~50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4、51および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態では、VHは、配列番号45のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号45のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号46のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号46のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号47のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号47のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、23、24、21、17および18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、26、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、29、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号9のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、30、15、31、17および32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18、22、28、32および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、ヒト化されている。
【0024】
一実施形態では、(a)本開示の抗体またはその断片;および(b)その抗体または断片にコンジュゲートされたコンジュゲーション部分を含むことを特徴とする抗体-薬物コンジュゲートであって、コンジュゲーション部分が、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組合せから選択される、抗体-薬物コンジュゲートも、提供される。
【0025】
一実施形態では、本開示の抗体と、GPC3ではない標的抗原に対して結合特異性を有する1つまたは複数の二次抗体または抗原結合性断片とを含む、多重特異性抗体も提供される。
【0026】
本開示の抗体またはその断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζ細胞内ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)も提供される。
【0027】
別の実施形態では、本開示の抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む細胞、および抗体またはその断片と薬学的に許容される担体とを含む組成物が、提供される。抗体またはその断片を用いてがんを処置するための方法および使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、Biacoreにより測定したときのGPC3タンパク質(ヒトGPC3-hisタグ)に対する52H5D3B8抗体の結合親和性を示す。
【0029】
図2A図2A~Bは、52H5D3B8抗体の親和性が、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞またはHuh-7細胞への結合について、GC33より高いことを示す。
図2B図2A~Bは、52H5D3B8抗体の親和性が、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞またはHuh-7細胞への結合について、GC33より高いことを示す。
【0030】
図3図3は、ヒト、マウスおよびカニクイザルGPC3に結合した52H5D3B8のELISA結合活性を示す。
【0031】
図4図4は、GPC3-CHOK1細胞への結合についての52H5D3B8-6#キメラモノクローナル抗体(mAb)の親和性が、他の最適化52H5D3B8キメラmAbより高いことを示す。
【0032】
図5図5は、GPC3-CHOK1細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞への結合についての52H5D3B8-6#キメラmAbの親和性が、52H5D3B8キメラmAbおよびGC33抗体の中で最も高いことを示す。
【0033】
図6図6は、キメラ抗体へのBiacore 8Kによる測定時のGPC3タンパク質(ヒトGPC3-hisタグ)に対する52H5D3B8-6#抗体の結合親和性を示す。
【0034】
図7図7は、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する各ヒト化抗体のEC50を示す。
【0035】
図8図8は、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する各ヒト化抗体のEC50を示す。
【0036】
図9図9は、捕捉法を使用してBiacoreにより試験したときの組換えGPC3タンパク質(ヒトGPC3-hisタグ)への52H5D3B8-6#-VH+VL、52H5D3B8-6#-VH1+VL1、52H5D3B8-6#-VH1+VL3、52H5D3B8-6#-VH1+VL4、52H5D3B8-6#-VH2+VL4、52H5D3B8-6#-VH3+VL1の結合を示す。
【0037】
図10図10は、ヒトGPC3過剰発現CHOK1細胞およびHEPG2細胞への抗体結合の結果を示す。
【0038】
図11図11は、親和性成熟抗体についてのヒトGPC3過剰発現CHOK1細胞への結合の結果を示す。
【0039】
図12図12は、GPC3抗体媒介ADCCシグナル伝達を誘導する抗体の結果を示す。
【0040】
図13図13は、抗体がNK細胞機能を活性化したことを示す。
【0041】
図14図14は、抗体により刺激されたNK細胞の脱顆粒を示す。
【0042】
図15図15は、刺激されたNK細胞におけるサイトカイン産生を示す。
【0043】
図16図16は、全ての候補ヒト化抗体の結合効率が、GPC3-CHOK1細胞に関してキメラ抗体と同等であり、Huh-7細胞に関してキメラ抗体より良好であることを示す。
【0044】
図17図17は、ヒトGPC3過剰発現CHOK1細胞、Huh-7細胞およびHEPG2細胞への抗体結合の結果を示す。
【0045】
図18図18は、HEPG2細胞への抗体内在化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指し、例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1つまたは複数の抗体を表すと理解されることに留意されたい。したがって、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書では同義で使用され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合性断片」は、抗原を特異的に認識し、それに結合する、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体およびその任意の抗原結合性断片または一本鎖であり得る。したがって、用語「抗体」は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含有する、任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのようなものの例としては、重鎖もしくは軽鎖またはそのリガンド結合部分の相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、あるいはその任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
用語「抗体断片」または「抗原結合性断片」は、本明細書で使用される場合、抗体の一部分、例えば、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造に関係なく、抗体断片は、無傷抗体により認識される同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」は、アプタマー、スピーゲルマー、およびダイアボディを含む。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のように動作する、任意の合成のまたは遺伝子操作されたタンパク質も含む。
【0049】
抗体という用語は、生化学的に区別され得るポリペプチドの様々な広範なクラスを包含する。重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、一部はこれらの中のサブクラス(例えば、γ1~γ4)として、分類されることは、当業者には理解されるであろう。それは、それぞれIgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEのような抗体の「クラス」を決定するこの鎖の性質である。
【0050】
免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgGなどは、十分に特徴付けられており、機能の特化をもたらすことが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプの各々についての改変バージョンは、本開示に鑑みて当業者には容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。全ての免疫グロブリンクラスは、明らかに本開示の範囲内であり、以下の論述は、一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関することになる。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量おおよそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4本の鎖は、典型的に、ジスルフィド結合により「Y」形状に連結されており、軽鎖が、「Y」の口で始まって可変領域まで続いて重鎖を両側から挟んでいる。
【0051】
本開示の抗体、その抗原結合ポリペプチド、バリアントまたは誘導体は、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインを含む断片、Fab発現ライブラリーにより生成される断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書で開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)を含むが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、免疫反応性領域または部位が第1の種から得られまたはそれに由来し、定常領域(本開示によれば、無傷であることがあり、部分的であることがあり、または改変されていることがある)が第2の種から得られる、任意の抗体を意味すると考えられたい。ある特定の実施形態では、標的結合領域または部位は、非ヒト源(例えば、マウスまたは霊長類)からのものとなり、定常領域は、ヒトのものである。
【0053】
本明細書で開示される抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源のものであり得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体である。一部の実施形態では、可変領域は、起源が軟骨魚網様のもの(例えば、サメからのもの)であり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「組換え(の)」は、それがポリペプチドまたはポリヌクレオチドに付随する場合、天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形態を意図しており、その非限定的な例は、通常は一緒に存在しないポリヌクレオチドを組み合わせることにより作出され得る。
【0055】
ハイブリドーマ技術は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行われ得る。一般に、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、約10×SSC、または等価のイオン強度/温度の溶液中、約40℃で実行される。中ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、典型的に、約6×SSC中、約50℃で行われ、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、一般に、約1×SSC中、約60℃で行われる。ハイブリダイゼーション反応はまた、当業者には周知である「生理条件」下で行われ得る。生理条件の非限定的な例は、細胞に通常見られる温度、イオン強度、pHおよびMg2+濃度である。
GPC-3抗体
【0056】
別記実験例で実証されるように、本発明者らは、強力なマウス抗GPC3抗体18C1D9、52H5D3B8、163E7D12、172B4E9、152E9F7および171F9C5(表1)を生成することができた。例えば、実施例3で示されるように、52H5D3B8抗体は、臨床開発中の有力な抗GPC3抗体であるGC33より高い細胞ベースの結合効率を示した。加えて、実験データは、これらの新たな抗体が、細胞への内在化を誘導する点でより高い活性を有することを示す。そのような特性のため、これらの新たな抗体は、例えば抗体-薬物コンジュゲート(ADC)における使用に、特に好適である。
【0057】
さらに、VHおよびVL CDR3におけるアミノ酸置換によって、52H5D3B8抗体の配列をさらに最適化した。そのような最適化抗体の1つ、例えば、52H5D3B8-6#は、GPC3-CHOK1細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に、親52H5D3B8キメラmAbと参照GC33抗体の両方より高い親和性で結合した。
【0058】
52H5D3B8-6#抗体のヒト化バージョンを生成し、GC33はもちろん、別のベンチマーク抗体、Y035(米国特許出願公開第20190046659号において開示されているような)とも比較した。興味深いことに、図10および表14に示されるとおり、ヒト化抗体52H5D3B8-6#-VH1+VL1および52H5D3B8-6#-VH2+VL3は、親抗体の高い親和性を保持し、GC33とY035の両方よりも著しく性能が優れていた。
【0059】
ヒト化抗体を、結合効率をさらに向上させるための努力の一環としてさらなる親和性成熟に付した。図11および表16に示されているように、心強いことに、親和性成熟抗体の全てが、親抗体(52H5D3B8-6#-VH2+VL3)およびベンチマーク抗体GC33と比較して向上した結合効率を示した。また驚くべきことに、中等度のGPC3発現レベルを有する細胞を標的とするとき、ヒト化抗体は、GC33よりかなり高いADCCシグナル伝達作用強度を示した(図12および表17)。
【0060】
これらのヒト化および親和性成熟抗体を、GPC3発現細胞の存在下でNK細胞を活性化するそれらの能力についてさらに試験した。図13および表18に示されているように、これらの新たな抗体の全てが、GC33より高い活性を有した。それらは、GC33よりもNK細胞におけるIFN-γおよびTNF-αの高度な産生を誘導した(図15)。
【0061】
親抗体52H5D3B8をヒト化にも付し、ヒト化したもののうちの2つであるHu 52H5D3B8-7およびHu 52H5D3B8-8を、それらの結合活性および内在化活性について、GC33およびY035を参照として用いて、試験した。図17~18および表24~25に示されているように、これらのヒト化抗体は、両方の参照より性能が優れていた。非常に興味深いことに、Hu 52H5D3B8-7/8のCDRをY035のフレームワークに挿入したとき、またはHu 52H5D3B8-7/8のフレームワーク領域を、Y035のCDRを支持するために使用したとき、結果として生ずるグラフトされた抗体は全て、Y035より成績がよかった(表24)。これは、これらの新たな抗体のCDRとフレームワーク配列の両方の卓越性を明確に示す。
【0062】
これらの抗体およびそれらのCDR配列は互いに高度に相同であることが認められ、これは、CDR配列が交換可能であり得ることを示唆する(表Aを参照されたい)。
【表A-1】
【表A-2】
【0063】
したがって、一実施形態では、本開示は、VH(重鎖可変領域)とVL(軽鎖可変領域)とを含む抗グリピカン3抗体を提供する。VHおよびVL領域は、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3、例えば、表A、1A~1F、5A~5O、8Aおよび8Bに示されているものを含む。
【0064】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号71のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号72のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号73のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号74のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号75のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号76のアミノ酸配列を含む。
【0065】
配列番号71は、 YE Hであり、ここで、Xは、D、RまたはGであり得、Xは、IまたはMであり得る。配列番号72は、AI TAY FKGであり、ここで、Xは、D、GまたはHであり得、Xは、A、EまたはGであり得、Xは、SまたはTであり得、Xは、DまたはGであり得、Xは、D、G、NまたはSであり得、Xは、N、SまたはTであり得、Xは、QまたはSであり得、Xは、R、KまたはLであり得る。配列番号73は、 YS AYであり、ここで、Xは、FまたはYであり得、Xは、FまたはYであり得る。配列番号74は、RS QS VH NG TYL であり、ここで、Xは、RまたはSであり得、Xは、LまたはPであり得、Xは、S、RまたはTであり得、Xは、HまたはNであり得、Xは、HまたはQであり得る。配列番号75は、KVSNRXであり、ここで、Xは、FまたはYであり得、Xは、S、AまたはPであり得る。配列番号76は、 HVPYTであり、ここで、Xは、F、SまたはVであり得、Xは、QまたはEであり得、Xは、SまたはTであり得、Xは、IまたはTであり得る。
【0066】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13および25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号14、19、23、26、29および30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号16、21、27および31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18、22、28、32および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0067】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13、25、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号14、19、23、26、29、30、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号16、21、27および31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18、22、28、32、34および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0068】
一部の実施形態では、ヒトGPC3への結合において本明細書で開示される抗体のいずれかと競合する、抗GPC3抗体および抗原結合性断片も、提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体のいずれかと同じエピトープに結合する、抗GPC3抗体および抗原結合性断片も、提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体のVHおよびVL CDR1、CDR2およびCDR3を含んだ、抗GPC3抗体および抗原結合性断片も、提供される。
【0069】
一部の実施形態では、抗体52H5D3B8-6#またはそのヒト化/親和性成熟バージョンのCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19、60および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17、61、64および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、19、15、21、17および18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号35~39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0070】
52H5D3B8-6#に由来するヒト化抗体または抗原結合性断片の例としては、表8Aに示されているものが挙げられる。例としては、配列番号36のVHおよび配列番号41のVL、配列番号36のVHおよび配列番号42のVL、配列番号36のVHおよび配列番号43のVL、配列番号36のVHおよび配列番号44のVL、配列番号37のVHおよび配列番号41のVL、配列番号37のVHおよび配列番号42のVL、配列番号37のVHおよび配列番号43のVL、配列番号37のVHおよび配列番号44のVL、配列番号38のVHおよび配列番号41のVL、配列番号38のVHおよび配列番号42のVL、配列番号38のVHおよび配列番号43のVL、または配列番号38のVHおよび配列番号44のVLを有するものも挙げられる。
【0071】
一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。
【0072】
一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号36のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。
【0073】
これらの抗体の親和性成熟バージョン、例えば、52H5D3B8-18#-VH2+VL3、52H5D3B8-19#-VH2+VL3、および52H5D3B8-20#-VH2+VL3(表15)も、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号59、60、15、21、61および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号53のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。
【0074】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号63、19、15、21、64および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号55のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号56のアミノ酸配列を含む。
【0075】
一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、65、15、21、66および62のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号57のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号58のアミノ酸配列を含む。
【0076】
一部の実施形態では、抗体52H5D3B8のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、19、20、21、17および22のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3および45~50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4、51および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0077】
52H5D3B8に由来するヒト化抗体または抗原結合性断片の例としては、表19に示されているものが挙げられる。例としては、配列番号45のVHおよび配列番号51のVL、配列番号46のVHおよび配列番号51のVL、配列番号47のVHおよび配列番号51のVL、配列番号48のVHおよび配列番号51のVL、配列番号49のVHおよび配列番号51のVL、配列番号50のVHおよび配列番号51のVL、配列番号45のVHおよび配列番号52のVL、配列番号46のVHおよび配列番号52のVL、配列番号47のVHおよび配列番号52のVL、配列番号48のVHおよび配列番号52のVL、配列番号49のVHおよび配列番号52のVL、または配列番号50のVHおよび配列番号52のVLを有するものも挙げられる。
【0078】
一部の実施形態では、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。
【0079】
一部の実施形態では、表5A~5Oに示されているような代替VH CDR3およびVL CDR3を有するものなどの、抗体52H5D3B8に由来する抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号15、20、24および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号18、22、28、32および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0080】
一部の実施形態では、VHは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号67のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号69のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号67のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号67のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号67のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号69のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号69のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号69のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、抗体18C1D9のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0082】
一部の実施形態では、抗体163E7D12のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号13、23、24、21、17および18のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、抗体172B4E9のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、26、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0084】
一部の実施形態では、抗体152E9F7のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、29、20、27、17および28のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号9のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態では、抗体171F9C5のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片が、提供される。一部の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ、配列番号25、30、15、31、17および32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
抗体-薬物コンジュゲート
【0086】
予備データは、これらの新たな抗体が、細胞への内在化を誘導する点でより高い活性を有することを示す。そのような特性のため、これらの新たな抗体は、例えば抗体-薬物コンジュゲート(ADC)における使用に、特に好適である。
【0087】
一部の実施形態では、抗体または断片は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答改変物質、医薬品、またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0088】
一実施形態では、本開示の抗体または断片は、薬物部分に共有結合している。薬物部分は、抗体上にコンジュゲーション点を有する反応性の基であることがあり、またはその基を含むように改変されていることがある。例えば、薬物部分は、アルキル化(例えば、抗体のイプシロン-アミノ基リシンまたはN末端において)、酸化された炭水化物の還元アミノ化、ヒドロキシル基とカルボキシル基とのエステル交換、アミノ基またはカルボキシル基のアミド化、およびチオールへのコンジュゲーションにより、結合され得る。
【0089】
一部の実施形態では、抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物部分の数、pは、平均1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。一部の実施形態では、pは、平均2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。他の実施形態では、pは、平均1、2、3、4、5、6、7または8である。一部の実施形態では、pは、平均約1~約20、約1~約10、約2~約10、約2~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、約1~約5、約1~約4、約1~約3、または約1~約2の範囲である。一部の実施形態では、pは、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4、または約2~約3の範囲である。
【0090】
例えば、タンパク質の化学的活性化が遊離チオール基の形成をもたらす場合、タンパク質は、スルフヒドリル反応性物質とコンジュゲートされ得る。一態様では、作用因子は、遊離チオール基に対して実質的に特異的であるものである。そのような作用因子としては、例えば、マレイミド、ハロアセトアミド(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロエステル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨウ化物、臭化物または塩化物)、ビニルスルホンおよびピリジルチオが挙げられる。
【0091】
薬物は、リンカーにより抗体または断片に連結され得る。好適なリンカーとしては、例えば、切断性および非切断性リンカーが挙げられる。切断性リンカーは、典型的に、細胞内条件下で切断されやすい。好適な切断性リンカーとしては、例えば、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼなどの細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーが挙げられる。例示的な実施形態では、リンカーは、ジペプチドリンカー、例えば、バリン-シトルリン(val-cit)、フェニルアラニン-リシン(phe-lys)リンカー、またはマレイミドカプロン酸(maleimidocapronic)-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(mc-Val-Cit-PABA)リンカーであり得る。別のリンカーは、スルホスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(smcc)である。スルホ-smccコンジュゲーションは、マレイミド基を介して起こり、マレイミド基は、スルフヒドリル(チオール、-SH)と反応するが、そのスルホ-NHSエステルは、第一級アミン(リシンおよびタンパク質またはペプチドN末端に見られるような)に対して反応性である。さらに別のリンカーは、マレイミドカプロイル(mc)である。他の好適なリンカーとしては、特定のpHまたはpH範囲で加水分解可能なリンカー、例えば、ヒドラゾンリンカーが挙げられる。追加の好適な切断性リンカーとしては、ジスルフィドリンカーが挙げられる。リンカー、例えば、mcリンカーなどを、薬物を放出するために抗体が細胞内で分解されるはずであるような程度に、抗体に共有結合させることができる。
【0092】
リンカーは、抗体への連結のための基を含み得る。例えば、リンカーは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシルまたはスルフヒドリル反応性基(例えば、マレイミド、ハロアセトアミド(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロエステル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨウ化物、臭化物または塩化物)、ビニルスルホンおよびピリジルチオ)を含み得る。
【0093】
一部の実施形態では、薬物部分は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤、放射性同位体、毒素などである。コンジュゲートを、腫瘍細胞もしくはがん細胞の増殖を阻害するために、腫瘍もしくはがん細胞においてアポトーシスを引き起こすために、または患者におけるがんを処置するために、使用することができる。したがって、コンジュゲートを動物のがんの処置のための様々な状況で使用することができる。コンジュゲートを使用して、薬物を腫瘍細胞またはがん細胞に送達することができる。理論により拘束されるものではないが、一部の実施形態では、コンジュゲートは、GPC3を発現するがん細胞に結合し、またはそれと会合し、コンジュゲートおよび/または薬物は、受容体媒介エンドサイトーシスによって腫瘍細胞またはがん細胞内に取り込まれ得る。
【0094】
細胞の中に入ると、コンジュゲート内(例えば、リンカーの中)の1つまたは複数の特定のペプチド配列は、1つまたは複数の腫瘍細胞またはがん細胞に付随するプロテアーゼによる加水分解で切断され、その結果、薬物が放出されることになる。その結果、放出された薬物は遊離して細胞内に遊走し、細胞傷害活性または細胞増殖抑制活性または他の活性を誘導する。一部の実施形態では、薬物は、腫瘍細胞もしくはがん細胞外で抗体から切断され、その後、薬物は、細胞に浸透するか、または細胞表面で作用する。
【0095】
薬物部分またはペイロードの例は、DM1(メイタンシン、N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-またはN2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン)、mc-MMAD(6-マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチン-DまたはN-メチル-L-バリル-N-[(1S,2R)-2-メトキシ-4-[(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-3-[[(1S)-2-フェニル-1-(2-チアゾリル)エチル]アミノ]プロピル]-1-ピロリジニル]-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル]-N-メチル-(9Cl)-L-バリンアミド)、mc-MMAF(マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチンFまたはN-[6-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)-1-オキソヘキシル]-N-メチル-L-バリル-L-バリル-(3R,4S,5S)-3-メトキシ-5-メチル-4-(メチルアミノ)ヘプタノイル-(αR,βR,2S)-β-メトキシ-α-メチル-2-ピロリジンプロパノイル-L-フェニルアラニン)およびmc-Val-Cit-PABA-MMAE(6-マレイミドカプロイル-ValcCit-(p-アミノベンジルオキシカルボニル)-モノメチルアウリスタチンEまたはN-[[[4-[[N-[6-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)-1-オキソヘキシル]-L-バリル-N5-(アミノカルボニル)-L-オルニチル]アミノ]フェニル]メトキシ]カルボニル]-N-メチル-L-バリル-N-[(1S,2R)-4-[(2S)-2-[(1R,2R)-3-[[(1R,2S)-2-ヒドロキシ-1-メチル-2-フェニルエチル]アミノ]-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]-1-ピロリジニル]-2-メトキシ-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル]-N-メチル-L-バリンアミド)からなる群から選択される。DM1は、チューブリン阻害剤メイタンシンの誘導体であり、その一方で、MMAD、MMAEおよびMMAFは、アウリスタチンの誘導体である。一部の実施形態では、薬物部分は、mc-MMAFおよびmc-Val-Cit-PABA-MMAEからなる群から選択される。一部の実施形態では、薬物部分は、メイタンシノイドまたはアウリスタチンである。
【0096】
抗体または断片は、検出可能な標識、例えば、放射性標識、免疫調節物質、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療または診断剤、薬物または毒素であり得る細胞傷害剤、超音波強化剤、非放射性標識、これらの組合せ、を含み得る治療剤、および当技術分野において公知の他のそのような薬剤にコンジュゲートまたは融合され得る。
【0097】
抗体を、化学発光化合物とカップリングさせることにより、検出可能に標識することができる。その結果、化学発光タグ付き抗原結合ポリペプチドの存在は、化学反応の過程において生ずる発光の存在を検出することにより決定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0098】
蛍光を発する金属、例えば、152Eu、またはランタニド系列の他のものを使用して、抗体を検出可能に標識することもできる。ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して、これらの金属を抗体に結合させることができる。様々な部分を抗体にコンジュゲートするための技法は、周知であり、例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. (1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al., (eds.), Marcel Dekker, Inc., pp. 623- 53 (1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), Academic Press pp. 303-16 (1985)、およびThorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev. (52:119-58 (1982))を参照されたい。
多機能性分子
【0099】
腫瘍細胞上に優先的に発現される分子として、GPC3に特異的な抗体または抗原結合性断片を、免疫細胞に特異的な第2のまたはそれより大きい序数の断片と化合させて、二重特異性抗体または多重特異性抗体を生成することができる。
【0100】
一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球およびマスト細胞からなる群から選択される。
【0101】
一部の実施形態では、第2の特異性は、CD3、CD47、PD1、PD-L1、LAG3、TIM3、CTLA4、VISTA、CSFR1、A2AR、CD73、CD39、CD40、CEA、HER2、CMET、4-1BB、OX40、SIRPA CD16、CD28、ICOS、CTLA4、BTLA、TIGIT、HVEM、CD27、VEGFR、またはVEGFに対するものである。
【0102】
異なる形式の二重特異性抗体も提供される。一部の実施形態では、抗GPC3断片および第2の断片の各々は、各々独立して、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から選択される。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、Fc断片をさらに含む。
【0103】
単に抗体を含むものでも抗原結合性断片を含むものでもない、二機能性分子も提供される。腫瘍抗原標的化分子として、GPC3に特異的な抗体または抗原結合性断片、例えば、本明細書に記載されるものなどを、免疫サイトカインまたはリガンドと、必要に応じてペプチドリンカーを介して、化合させることができる。連結される免疫サイトカインまたはリガンドとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHTおよびGITRLが挙げられるが、これらに限定されない。そのような二機能性分子は、免役チェックポイント遮断効果と腫瘍部位局所免疫調節を併せ持つことができる。
キメラ抗原受容体、ポリヌクレオチド、および抗体を調製する方法
【0104】
一実施形態では、本開示の抗体またはその断片を標的化ユニットとして含む、キメラ抗原受容体(CAR)も提供される。一部の実施形態では、CARは、本開示の抗体またはその断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζ細胞内ドメインとを含む。
【0105】
膜貫通ドメインは、抗体または断片を含む細胞外ドメインに、必要に応じてヒンジドメインを介して、融合されるように設計され得る。それは、同様に、共刺激ドメインなどの細胞内ドメインに融合され得る。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、共刺激ドメインの天然の膜貫通領域(例えば、共刺激ドメインとして利用されるCD28Tもしくは4-IBBのTM領域)またはヒンジ領域の天然の膜貫通ドメイン(例えば、ヒンジドメインとして利用されるCD8アルファまたはCD28TのTM領域)を含み得る。
【0106】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通する、しかし細胞の細胞質へとおよび/または細胞外空間へと伸びる、配列を含み得る。例えば、膜貫通のものは、細胞の細胞質および/または細胞外空間へ伸びる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くのアミノ酸をそれ自体がさらに含み得る、膜を貫通する配列を含み得る。したがって、膜貫通ドメインは、膜を貫通する領域を含み、その上、膜自体の内または外面を超えて伸びるアミノ酸をさらに含むことができ、それでもやはり、このような配列は、「膜貫通ドメイン」であると見なされ得る。
【0107】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、短いリンカーを介して細胞質ドメインに融合している。必要に応じて、短いペプチドまたはポリペプチドリンカー、好ましくは、長さ2アミノ酸~10アミノ酸の間のものは、膜貫通ドメインとキメラ受容体の近位細胞質シグナル伝達ドメインとの連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレット(GS)、グリシン-セリン-グリシントリプレット(GSG)、またはアラニン-アラニン-アラニントリプレット(AAA)は、好適なリンカーになる。
【0108】
一部の実施形態では、CARは、さらに、共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、膜貫通ドメインと活性化ドメインの間に位置する。共刺激ドメインの例としては、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD7、CD8a、CD8、CD11a(ITGAL)、CD11b(ITGAM)、CD11c(ITGAX)、CD11d(ITGAD)、CD18(ITGB2)、CD19(B4)、CD27(T FRSF7)、CD28、CD28T、CD29(ITGB1)、CD30(TNFRSF8)、CD40(TNFRSF5)、CD48(SLAMF2)、CD49a(ITGA1)、CD49d(ITGA4)、CD49f(ITGA6)、CD66a(CEACAM1)、CD66b(CEACAM8)、CD66c(CEACAM6)、CD66d(CEACAM3)、CD66e(CEACAM5)、CD69(CLEC2)、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連アルファ鎖)、CD79B(B細胞抗原受容体複合体関連ベータ鎖)、CD84(SLAMF5)、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103(ITGAE)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD158A(KIR2DL1)、CD158B1(KIR2DL2)、CD158B2(KIR2DL3)、CD158C(KIR3DP1)、CD158D(KIRDL4)、CD158F1(KIR2DL5A)、CD158F2(KIR2DL5B)、CD158K(KTR3DL2)、CD160(BY55)、CD162(SELPLG)、CD226(DNAM1)、CD229(SLAMF3)、CD244(SLAMF4)、CD247(CD3-ゼータ)、CD258(LIGHT)、CD268(BAFFR)、CD270(T FSF14)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD279(PD-1)、CD314(KG2D)、CD319(SLAMF7)、CD335(K-p46)、CD336(K-p44)、CD337(K-p30)、CD352(SLAMF6)、CD353(SLAMF8)、CD355(CRTAM)、CD357(TNFRSF 18)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、LFA-1(CD 1 1a/CD 18)、KG2C、DAP-10、ICAM-1、Kp80(KLRF1)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、LFA-1、SLAMF9、LAT、GADS(GrpL)、SLP-76(LCP2)、PAG1/CBP、CD83リガンド、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、MHCクラス2分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、活性化NK細胞受容体、Tollリガンド受容体、およびこれらの断片または組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0109】
一部の実施形態では、CARの細胞質部分は、シグナル伝達/活性化ドメインも含む。一実施形態では、シグナル伝達/活性化ドメインは、CD3ζドメインであるか、またはCD3ζドメインに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0110】
本開示は、本開示の抗体、そのバリアントもしくは誘導体、またはCARをコードする、単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域全体を同じポリヌクレオチド分子上にまたは別々のポリヌクレオチド分子上にコードし得る。加えて、本開示のポリヌクレオチドは、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の部分を同じポリヌクレオチド分子上にまたは別々のポリヌクレオチド分子上にコードし得る。
【0111】
抗体を作製する方法は、当技術分野において周知であり、本明細書に記載される。ある特定の実施形態では、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域と定常領域の両方が、完全にヒトのものである。完全ヒト抗体は、当技術分野において記載されている技法を使用して、および本明細書に記載されているように作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体を、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが内在性遺伝子座が無効にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって、調製することができる。そのような抗体を作製するために使用され得る例示的な技法は、米国特許第6,150,584号、同第6,458,592号、同第6,420,140号に記載されており、これらの参考特許文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
処置および使用
【0112】
本明細書に記載されるように、本開示の抗体、バリアント、誘導体、または抗体-薬物コンジュゲートを、ある特定の処置および診断方法において使用することができる。
【0113】
本開示は、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートを、本明細書に記載される障害または状態の1つまたは複数を処置するために患者、例えば、動物、哺乳動物およびヒトに投与することを含む、抗体に基づく治療に、さらに関する。本開示の治療化合物は、本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)、および本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0114】
本開示の抗体を使用してがんを処置または阻害することもできる。上で提供されたように、GPC3は、腫瘍細胞において、特に、肝臓、胃、膵臓、食道、卵巣および肺腫瘍において、過剰発現され得る。GPC3の阻害は、腫瘍の処置に有用であることが示されている。
【0115】
したがって、一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法が提供される。方法は、一実施形態では、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの有効量を患者に投与するするステップを必然的に伴う。一部の実施形態では、患者におけるがん細胞(例えば、間質細胞)の少なくとも1つは、GPC3を過剰発現する。
【0116】
細胞療法、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法も、本開示で提供される。本開示の抗GPC3抗体を含む(または代替的に、本開示の抗GPC3抗体を発現するように操作された)CARをコードするまたはそれと接触させるベクターによって形質導入される、好適な細胞を使用することができる。したがって、そのような接触または操作によって、細胞を、処置を必要とするがん患者に導入することができる。がん患者は、本明細書で開示されるようなタイプのいずれかのがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組合せであり得るが、それらに限定されない。
【0117】
一部の実施形態では、細胞は、がん患者彼または彼女自身から単離された。一部の実施形態では、細胞は、ドナーによりまたは細胞バンクから提供された。細胞が、がん患者から単離された場合、望ましくない免疫反応を最小限に抑えることができる。
【0118】
がんの非限定的な例としては、膀胱がん、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんが挙げられる。一部の実施形態では、がんは、胃、膵臓、食道、卵巣および肺がんのうちの1つまたは複数である。
【0119】
本開示の抗体もしくはバリアント、またはそれらの誘導体によって処置、予防、診断および/または予後判定され得る、細胞生存期間の増加に関連するさらなる疾患または状態としては、悪性病変および関連障害、例えば、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、および固形腫瘍の、進行および/または転移が挙げられるがこれらに限定されず、固形腫瘍には、肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞種、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
いずれの特定の患者についても具体的な投薬量および処置レジメンは、使用される特定の抗体、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、総体的な健康、性別および食事、ならびに投与の回数、排泄率、薬物の組合せ、ならびに処置される特定の疾患の重症度をはじめとする、様々な因子に依存することになる。医療介護者によるそのような因子の判断は、当技術分野における通常技能の範囲内である。量は、処置すべき個々の患者、投与経路、製剤のタイプ、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および所望される効果にも依存することになる。使用される量を当技術分野において周知の薬理学および薬物動態の原則によって決定することができる。
【0121】
抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの投与方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路を含むが、これらに限定されない。抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、任意の適便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)からの吸収により、投与することができ、他の生物活性薬剤とともに投与することができる。したがって、本開示の抗原結合ポリペプチドを含有する医薬組成物を、経口投与、直腸投与、非経口投与、大槽内(intracistemally)投与、膣内投与、腹腔内投与、局所的に(粉末、軟膏、滴剤もしくは経皮パッチとして)投与、頬側投与、または口腔噴霧剤もしくは点鼻薬として投与することができる。
【0122】
用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入を含む、投与方法を指す。
【0123】
投与は、全身または局所のものであり得る。加えて、本開示の抗体を、脳室内および髄腔内注射を含む任意の好適な経路により、中枢神経系に導入することが望ましいことがあり、脳室内注射を、例えば、オマヤ貯留槽などの貯留槽に取り付けられた、脳室内カテーテルによって容易にすることができる。経肺投与も、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を含有する製剤を使用することにより、利用することができる。
【0124】
本開示の抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、処置を必要とするエリアに局所投与することが望ましいことがあり、これは、例として、限定としてではなく、外科手術中の局所注入、外科手術後の創傷包帯法の、例えばそれと併せての、局所的適用により、注射により、カテーテルによって、坐薬によって、または留置剤によって達成することができ、前記留置剤は、膜、例えばシラスティック(sialastic)膜、または繊維を含む、多孔質、無孔質またはゼラチン質材料のものである。好ましくは、本開示の、抗体を含む、タンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料を使用するように心掛けなければならない。
【0125】
炎症性、免疫または悪性疾患、障害または状態の処置、阻害および予防において有効であろう、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの量を、標準的な臨床技法により決定することができる。加えて、in vitroアッセイを、最適な投薬量範囲の同定を助けるために、必要に応じて利用することができる。製剤に利用されることになる正確な用量は、投与経路、および疾患、障害または状態の重篤性にも依存することになり、実施者の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効用量をin vitroまたは動物モデル試験系から導出された用量応答曲線から外挿することができる。
【0126】
一般的な提案として、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの患者に投与される投薬量は、典型的に、患者の体重のkg当たり0.001mg~100mg、患者の体重のkg当たり0.01mg~20mgの間、または患者の体重のkg当たり0.5mg~10mgである。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドへの免疫応答に起因してヒトの体内で他の動物種からの抗体より長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体のより少ない投薬量、およびより低頻度の投与が、多くの場合、可能である。さらに、本開示の抗体の投薬量および投薬頻度を、例えば脂質化などの改変により抗体の取込みおよび組織透過性(例えば、脳への)を増強することによって、低減させることができる。
【0127】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与され得るサイトカインとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、例えば放射線療法などの、他の治療または予防レジメンと組み合わせて投与される。
組成物
【0129】
本開示は、医薬組成物も提供する。そのような組成物は、抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの有効量と、許容される担体とを含む。一部の実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0130】
具体的な実施形態では、用語「薬学的に許容される」とは、動物における、さらに特にヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の監督機関により承認された、または米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に収載されている、という意味である。さらに、「薬学的に許容される担体」は、一般に、任意のタイプの、非毒性固体、半固体もしくは液体フィラー、希釈剤、カプセル化材または製剤助剤であろう。
【0131】
用語「担体」は、それを用いて治療薬が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液、例えば、水および油であり得、この油には、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などが含まれる。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときに好ましい担体である。生理食塩水、ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に、注射可能溶液に、利用することができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、所望される場合には、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩も含有し得る。抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;および浸透張力の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースも、想定される。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとり得る。旧来の結合剤および担体、例えば、トリグリセリドを用いて、組成物を坐薬として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。好適な医薬品担体の例は、参照により本明細書に組み込まれる、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物は、好ましくは精製された形態での、抗原結合ポリペプチドの治療有効量を、患者への適正投与のための形態を提供するために好適な量の担体とともに、含有することになる。製剤は、投与方法に適していなければならない。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入され得る。
【0132】
ある実施形態では、組成物は、人間への静脈内投与に適応する医薬組成物として常套的手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じ、組成物は、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般に、これらの成分は、別々にまたは混合されて単位剤形で、のどちらかで、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサッシェなどの密閉シールされている容器の中の乾いた凍結粉末または無水濃縮物として供給される。組成物を注入により投与すべき場合、それは、医薬品グレードの滅菌水または食塩水が入っている注入ボトルを用いて分注され得る。組成物が注射により投与される場合、投与の前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルが提供され得る。
【0133】
本開示の化合物を中性または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンとで形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンとで形成されるものを含む。
【実施例
【0134】
(実施例1)
ヒトGPC3に対するマウスモノクローナル抗体の生成
この実施例は、ハイブリドーマ技術を使用する抗ヒトGPC3マウスモノクローナル抗体の生成を説明する。
【0135】
抗原:ヒトGPC3-Hisタンパク質。
【0136】
免疫化:ヒトGPC3を標的とするマウスモノクローナル抗体を生成するために、Balb/cマウスおよびC57BL/6マウスを、先ず、GPC3-Hisタンパク質によって免疫した。その後、免疫化マウスにGPC3-Hisタンパク質によって追加免疫した。GPC3タンパク質に結合する抗体を産生するマウスを選択するために、免疫化マウスの血清をELISAによる抗体力価評価に付した。手短に述べると、マイクロタイタープレートを、ELISAコーティング用緩衝液中の0.5μg/mlのヒトGPC3タンパク質、100μl/ウェルで、4℃で一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロックした。免疫化マウスからの血清の希釈物を各ウェルに添加し、1~2時間、37℃でインキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体とともに、1時間、37℃でインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で現像し、分光光度計によりOD 450nmで解析した。数ラウンドの免疫化後、免疫応答も、GPC3-CHOK1細胞系に対する血清FACSにより試験し、CHOK1親細胞系が陰性対照としての役割を果たした。得られたマウスを、融合に使用した。ハイブリドーマ上清をELISAによりスクリーニングした。
【0137】
細胞融合:融合を電気融合により行った。融合細胞を、融合ごとに50の96ウェルプレートに蒔いた。
【0138】
スクリーニング:上清を、組換えヒト(rh)GPC3-Hisタンパク質およびカウンタースクリーニング抗原に対してELISAによりスクリーニングした。次いで、陽性上清に、GPC3-CHOK1細胞系に対する細胞ベースの結合による確認スクリーニングを行った。
【0139】
サブクローニングおよびスクリーニング:各融合からの陽性初代クローンを、サブクローンが単一の親細胞に確実に由来するように限界希釈によってサブクローニングした。サブクローニングを初代クローンと同じアプローチでスクリーニングし、陽性クローンの培養上清に、親和性ランク付けによる追加の確認スクリーニングを行った。
【0140】
ハイブリドーマクローン18C1D9、52H5D3B8、163E7D12、172B4E9、152E9F7および171F9C5をさらなる解析に選択した。18C1D9、52H5D3B8、163E7D12、172B4E9、152E9F7および171F9C5の可変領域のアミノ酸配列を下の表1に収載する。
【表1】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【表1F】
【0141】
(実施例2)
マウスおよびキメラmAbの結合親和性
マウスモノクローナル抗体の親和性ランク付け
ヒトGPC3-hisへのマウスモノクローナル抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。抗体を、CM5センサーチップを使用して捕捉した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質の単一用量を、捕捉された抗体上に2分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、360秒間、放置して解離させた。全ての実験を、Biacore 8Kで行った。データ解析は、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して行った。
【0142】
表2Aの結果で示されるとおり、全てのマウスモノクローナル抗体は、組換えGPC3タンパク質に対して高い結合親和性を示した。
【表2A】
【0143】
次いで、マウス抗体18C1D9、52H5D3B8、163E7D12、172B4E9、152E9F7および171F9C5の可変領域をヒトIgG1に融合させてキメラmAbを生成した。
Biacoreによる52H5D3B8の完全動力学的親和性
【0144】
ヒトGPC3-hisへのキメラ52H5D3B8 mAbの結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。52H5D3B8 mAbを、CM5センサーチップを使用して捕捉した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉された抗体上に2分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、360秒間、放置して解離させた。全ての実験を、Biacore 8Kで行った。データ解析は、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して行った。
【0145】
図1および下の表2Bの結果で示されるとおり、52H5D3B8抗体は、組換えGPC3タンパク質に対して高い結合親和性を示した。
【表2B】
【0146】
(実施例3)
GPC3抗原に対する結合活性
キメラ抗体のFACS試験
細胞ベースの結合:FACSを使用して、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞に対するキメラmAb(18C1D9、52H5D3B8、163E7D12、172B4E9、152E9F7および171F9C5)の結合活性を、公知のGPC3抗体GC33(Chugai Pharmaceutical)と比較して評価した。
【0147】
手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞をFACS緩衝液により洗浄し、5μg/mLで出発して3倍段階希釈したキメラmAbまたはGC33 mAbを有する各ウェルに、4℃で40分にわたって分けた。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)を各ウェルに添加し、4℃で30分間、インキュベートした。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。Alexa Fluor(登録商標)647の平均蛍光強度(MFI)を評価した。GPC3-CHOK1細胞に対する各mAbのEC50を下の表3Aに収載する。52H5D3B8キメラ抗体は、GC33より高い細胞ベースの結合効率を示した(図2Aおよび表3A)。
【表3A】
52H5D3B8キメラ抗体のFACS試験
【0148】
細胞ベースの結合:FACSを使用して、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する52H5D3B8キメラmAbの結合活性を、公知のGPC3抗体GC33(Chugai Pharmaceutical)と比較して評価した。
【0149】
手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞またはHuh-7細胞を、先ず、Fcブロッキング試薬とともに4℃で15分間、インキュベートした。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、30μg/mLで出発して3倍段階希釈した52H5D3B8キメラmAbまたはGC33 mAbを有する各ウェルに、4℃で60分にわたって分けた。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、2%PFAによってRTで15分間、固定した。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgGを各ウェルに添加し、RTで30分間、インキュベートした。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。Alexa Fluor(登録商標)647の平均蛍光強度(MFI)をMACSQuant Analyzer 16により評価した。図2Bに示すように、52H5D3B8は、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞またはHuh-7細胞に同等の結合効率で結合した。これは、GC33より高い。GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する各mAbのEC50を下の表3Bに収載する。52H5D3B8抗体は、GC33より高い細胞ベースの結合効率を示した(図2Bおよび表3B)。
【表3B】
異種間活性
【0150】
ELISA試験を行って、ヒト、マウスおよびカニクイザルGPC3へのキメラ抗体の結合をそれぞれ評価した。
【0151】
手短に述べると、マイクロタイタープレートを、PBS中の1μg/mlのヒト、マウスおよびカニクイザルGPC3タンパク質、100μl/ウェルで、4℃で一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロックした。9μg/mlで出発するキメラ抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされたマウス抗ヒトIgG Fc抗体とともに、30分間、37℃でインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で現像し、分光光度計によりOD 450nmで解析した。52H5D3B8抗体は、ヒト、カニクイザルGPC3およびマウスGPC3に結合した(図3および表4)。
【表4A】
【表4B】
【0152】
(実施例4)
52H5D3B8キメラmAbの最適化
この実施例は、ヒトGPC3に対する52H5D3B8キメラmAbの結合活性を増強するためのCDR3の変異による52H5D3B8キメラmAbの最適化を説明する。
【0153】
変異:抗体のCDR3ドメインは、抗原と相互作用する上で極めて重要な役割を果たすので、52H5D3B8キメラmAbのCDR3ドメインに変異を加えた。CDRH3とCDRL3の両方を、2つの候補変異部位を有するようにそれぞれ設計した。合わせて、CDRH3およびCDRL3配列の15の候補組合せを、下の表5に収載する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【表5E】
【表5F】
【表5G】
【表5H】
【表5I】
【表5J】
【表5K】
【表5L】
【表5M】
【表5N】
【表5O】
GPC3-CHOK1細胞への最適化抗体の細胞結合
【0154】
細胞ベースの結合:FACSを使用して、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞に対する52H5D3B8、52H5D3B8-1#、52H5D3B8-2#、52H5D3B8-3#、52H5D3B8-4#、52H5D3B8-5#、52H5D3B8-6#、52H5D3B8-7#、52H5D3B8-8#、52H5D3B8-9#、52H5D3B8-10#、52H5D3B8-11#、52H5D3B8-12#、52H5D3B8-13#、52H5D3B8-14#および52H5D3B8-15#キメラmAbの結合活性を評価した。
【0155】
手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞を、先ず、Fcブロッキング試薬とともに4℃で15分間、インキュベートした。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、30μg/mLで出発して3倍段階希釈した52H5D3B8、52H5D3B8-1#、52H5D3B8-2#、52H5D3B8-3#、52H5D3B8-4#、52H5D3B8-5#、52H5D3B8-6#、52H5D3B8-7#、52H5D3B8-8#、52H5D3B8-9#、52H5D3B8-10#、52H5D3B8-11#、52H5D3B8-12#、52H5D3B8-13#、52H5D3B8-14#および52H5D3B8-15#キメラmAbを有する各ウェルに、4℃で60分にわたって分けた。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、2%PFAによってRTで15分間、固定した。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgGを各ウェルに添加し、RTで30分間、インキュベートした。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。Alexa Fluor(登録商標)647の平均蛍光強度(MFI)をMACSQuant Analyzer 16により評価した。図4に示すように、52H5D3B8-6#キメラmAbは、他のものより高い親和性でGPC3-CHOK1細胞に結合した。GPC3-CHOK1細胞に対する各キメラmAbのEC50を下の表6に収載する。
【表6-1】
【表6-2】
Biacoreによる最適化抗体の親和性ランク付け
【0156】
ヒトGPC3-hisへの52H5D3B8 mAbの最適化抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質の単一用量または2用量を、捕捉された抗体上に注入した。全ての実験を、Biacore 8Kで行った。データ解析は、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して行った。
【0157】
上の表6の結果で示されるとおり、最適化抗体は、組換えGPC3タンパク質に対して10-8~10-10の範囲の多様な結合親和性を示した。加えて、52H5D3B8-6#mAbは、GPC3タンパク質に対して最も高い親和性を示した。
GPC3-CHOK1細胞への最適化抗体の細胞結合
【0158】
細胞ベースの結合:FACSを使用して、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する52H5D3B8、52H5D3B8-6#キメラmAb、およびGC33抗体の結合活性を評価した。
【0159】
手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞、Hep3B細胞またはHuh-7細胞を、先ず、Fcブロッキング試薬とともに4℃で15分間、インキュベートした。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、30μg/mLで出発して3倍段階希釈した52H5D3B8、52H5D3B8-6#キメラmAbまたはGC33抗体を有する各ウェルに、4℃で60分にわたって分けた。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、2%PFAによってRTで15分間、固定した。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgGを各ウェルに添加し、RTで30分間、インキュベートした。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。Alexa Fluor(登録商標)647の平均蛍光強度(MFI)をMACSQuant Analyzer 16により評価した。図5に示すように、52H5D3B8-6#キメラmAbは、GPC3-CHOK1細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に、52H5D3B8キメラmAbとGC33抗体の両方より高い親和性で結合した。GPC3-CHOK1細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する各mAbのEC50を下の表7に収載する。
【表7】
【0160】
(実施例5)
キメラ抗体52H5D3B8-6#のヒト化
52H5D3B8-6#可変領域を利用して、ヒト化mAbを作出した。このプロセスの第1ステップでは、52H5D3B8-6#のVHおよびVLのアミノ酸配列を、ヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体として最もよくマッチするヒト生殖細胞系列Ig遺伝子配列を見つけた。
【0161】
52H5D3B8-6#の軽鎖については、IGKV2-2902が最良適合生殖細胞系列であり、52H5D3B8-6#の重鎖については、IGHV1-4601をヒト化骨格として選択した。次いで、ヒト化52H5D3B8-6# CDRグラフト抗体を設計し、CDRL1、L2およびL3をIGKV2-2902のフレームワーク配列にグラフトし、CDRH1、H2およびH3をIGHV1-4601のフレームワーク配列にグラフトした。次いで、3Dモデルを生成して、抗体結合および立体構造に不可欠である、元のマウスFR領域配列内のアミノ酸を決定した。52H5D3B8-6# CDRグラフト抗体配列に基づいて、3本の追加のヒト化重鎖および3本の追加のヒト化軽鎖を作出した。重鎖の場合、フレームワーク内のL、K、I、A、FおよびTが復帰変異に関与した。軽鎖の場合、フレームワーク内のKおよびFが復帰変異に関与した。
【0162】
ヒト化抗体のアミノ酸配列を下の表8に収載する。
【表8A】
【表8B】
【0163】
次いで、4本のヒト化重鎖および4本のヒト化軽鎖を合成し、pcDNA3.4ベクターにそれぞれクローニングした。プラスミドの抽出後、4本の重鎖および4本の軽鎖を対合させ、HEK293細胞に発現させた。ヒトVHおよびヒトVLの対合によって、16のヒト化抗体が作出された(表9を参照されたい)。
【表9】
【0164】
(実施例6)
ヒト化抗体の抗原結合特性
Biacoreによるヒト化抗体の親和性ランク付け
抗原結合活性を評価するために、キメラ抗体の親和性をBiacore 8Kにより測定した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉されたキメラ抗体52H5D3B8-6#-VH+VL上に3分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、720秒間、放置して解離させた。複数検出用量の中で、キメラ抗体の親和性に最も近い親和性を有する2つの濃度を16のヒト化抗体親和性検出に選択した。図6および表10に示すように、16全てのヒト化抗体は、同様の親和性を示した。これらは、キメラ抗体と同等である。
【表10-1】
【表10-2】
ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞への結合
【0165】
抗原結合特性を評価するために、ヒト化抗体を、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞へのそれらの結合についてFACSにより解析した。手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞を、先ず、Fcブロッキング試薬とともに4℃で15分間、インキュベートした。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、10μg/mLで出発して4倍段階希釈したヒト化抗体を有する各ウェルに、4℃で60分にわたって分けた。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、2%PFAによってRTで15分間、固定した。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgGを各ウェルに添加し、RTで30分間、インキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647のMFIをMACSQuant Analyzer 16により評価した。16のヒト化抗体を2つのプレートに分けた。図7~8に示すとおり、GPC3-CHOK1細胞、HEPG2細胞、Hep3B細胞およびHuh-7細胞に対する各ヒト化抗体のEC50を下の表11~12に収載する。同じプレート内の52H5D3B8-6#-VH+VLとヒト化抗体のEC50の比較により、ヒト化抗体の全ての候補は、キメラ抗体と同等の結合効率を示した。
【表11-1】
【表11-2】
【表12】
Biacoreによるヒト化抗体の完全動力学的親和性
【0166】
組換えGPC3タンパク質(ヒトGPC3-hisタグ)へのヒト化抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。52H5D3B8-6#-VH+VL、52H5D3B8-6#-VH1+VL1、52H5D3B8-6#-VH1+VL3、52H5D3B8-6#-VH1+VL4、52H5D3B8-6#-VH2+VL4、52H5D3B8-6#-VH3+VL1、52H5D3B8-6#-VH3+VL3 mAbを、CM5センサーチップを使用して捕捉した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉された抗体上に2分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、360秒間、放置して解離させた。全ての実験を、Biacore T200で行った。データ解析を、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して行った。結果を図9および下の表13に示す。
【表13】
ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞およびHEPG2細胞への結合
【0167】
FACSを使用して、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞およびHEPG2細胞に対する52H5D3B8-6#-VH1+VL1および52H5D3B8-6#-VH2+VL3の結合活性を、GC33(Chugai Pharmaceutical)およびY035(Carsgen Therapeutics、米国特許出願公開第20190046659号)と比較して評価した。GPC3-CHOK1細胞およびHEPG2細胞に対する各抗体のEC50を下の表14に収載する。
【0168】
図10に示すように、52H5D3B8-6#-VH1+VL1と52H5D3B8-6#-VH2+VL3の両方が、GPC3-CHOK1細胞およびHEPG2細胞に同等の親和性で結合した。これらは、ベンチマークmAbより高い。
【表14】
【0169】
(実施例7)
ヒト化抗体52H5D3B8-6#の親和性成熟
52H5D3B8-6#のヒト化抗体の親和性を増強するために、親和性成熟を行った。手短に述べると、CDR領域に単点または2点飽和変異を含有する4つのファージライブラリーを構築した。CDRに特有の変異を有する3つの候補を、固体または液体パニングを用いる2ラウンドのスクリーニングにより得た。これらの候補のCDRを52H5D3B8-6#-VH2+VL3フレームワークに移植して、さらなる結合および機能評価のための抗体を生成した。
【0170】
フレームワークに移植された親和性成熟候補の可変領域のアミノ酸配列を下の表15に収載する。
【表15】
【表15A】
【表15B】
【表15C】
ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞への結合
【0171】
抗原結合特性を評価するために、親和性成熟抗体を、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞へのそれらの結合について、前に説明したようにFACSにより解析した。GPC3-CHOK1細胞に対する各抗体のEC50を下の表16に収載する。
【0172】
図11に示すように、全ての親和性成熟抗体は、GPC3-CHOK1細胞に関して親52H5D3B8-6#-VH2+VL3およびベンチマーク抗体GC33より向上した結合効率を示した。
【表16】
【0173】
(実施例8)
ヒト化GPC3抗体はADCCシグナル伝達を媒介した
GC33と比較して52H5D3B8-6#-VH1+VL1、52H5D3B8-6#-VH2+VL3および3つの親和性成熟抗体の抗原結合媒介抗体依存性細胞傷害(ADCC)シグナル伝達を評価するために、ADCCシグナル伝達レポーターアッセイを構成した。手短に述べると、Fc領域に結合する高親和性アロタイプ(176V)を有する完全長ヒトCD16aを、ジャーカット-NFATルシフェラーゼレポーター細胞系(ジャーカット-hCD16a-NFATと呼ぶ)に導入した。ルシフェラーゼ遺伝子の発現は、この細胞系ではNFAT応答エレメントの支配下にある。ジャーカット-hCD16a-NFAT細胞系によって、本発明者らは、下流のNFATシグナル伝達を調べることによりGPC3結合媒介ADCCシグナル伝達を評価することが可能になった。このレポーター細胞系を、高いまたは中等度のGPC3発現レベルをそれぞれ有するHEPG2またはHuh-7肝細胞癌細胞を含むいくつかのGPC3陽性腫瘍細胞系を用いて共培養した。ルシフェラーゼに基づく化学発光を、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、カタログ番号E6130)およびEnvision multilabelプレートリーダー(PerkinElemer)により検出することができた。
【0174】
図12および表17に示すように、52H5D3B8-6#-VH1+VL1と52H5D3B8-6#-VH2+VL3の両方は、HEPG2細胞およびHuh-7細胞への効率的なGPC3結合媒介ADCCシグナル伝達を示した。これらは、GC33より高度である。加えて、52H5D3B8-19#-VH2+VL3と52H5D3B8-20#-VH2+VL3の両方は、HEPG2細胞へのADCCシグナル伝達の、親52H5D3B8-6#-VH2+VL3より良好なEC50を示したが、52H5D3B8-18#-VH2+VL3は、他の抗体より良好な最大ADCCシグナル伝達作用強度を示した。注目すべきことに、中等度のGPC3発現レベルを示したHuh-7細胞では、全てのヒト化抗体は、GC33より増強された最大ADCCシグナル伝達作用強度を示した。
【表17】
【0175】
(実施例9)
ヒト化GPC3抗体はNK細胞による腫瘍致死を媒介した
この実施例では、GPC3ヒト化抗体の機能活性を試験した。
9.1 GPC3ヒト化抗体により媒介される標的細胞へのNK細胞傷害性
【0176】
GPC3媒介ADCCシグナル伝達活性化が標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害効果につながるかどうかを評価するために、ヒト初代NK細胞媒介細胞傷害性アッセイを構成した。手短に述べると、新鮮なヒト初代NK細胞(CD3-CD56+)を、健康なドナーのバフィーコートから、磁気ビーズ(Miltenyi、カタログ番号130-092-657)によるネガティブ選択により単離した。単離されたNK細胞の純度をFACS解析によりモニターし、純度は、典型的に、90%より高かった。次いで、単離されたNK細胞を24時間、完全培養培地において休ませ、それらをエフェクター細胞として使用した。HEPG2またはHuh-7ヒト肝細胞癌細胞系を標的細胞として使用した。NK細胞媒介細胞傷害性アッセイを、細胞傷害性検出キット(Roche、カタログ番号11644793001)の製造業者のプロトコールに従うことにより行った。エフェクター細胞をウェル当たり細胞5.0×10個の密度で丸底96ウェルマイクロプレートにおいて1.0×10標的細胞と共培養した(E/T比=5:1)。50nMで出発して5倍で抗体を段階希釈し、対応するウェルに添加した。37℃で5時間(HEPG2細胞について)または24時間(Huh-7細胞について)のインキュベーション後、各ウェルにおける細胞の生存を表す乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を細胞傷害性検出キットにより検出した。吸光度を492nmで測定した。計算式:細胞傷害性(%)=(エフェクター-標的細胞ミックス-エフェクター細胞対照-低対照)/(高対照-低対照)×100。4パラメーター非線形回帰曲線適合をGraphPad Prism 9によって行った。
【0177】
図13および表18に示すように、52H5D3B8-6#-VH1+VL1と52H5D3B8-6#-VH2+VL3の両方は、HEPG2細胞およびHuh-7細胞への効率的なGPC3抗体媒介NK細胞傷害性を示した。これらは、GC33より高度である。
【0178】
加えて、52H5D3B8-19#-VH2+VL3と52H5D3B8-20#-VH2+VL3の両方は、HEPG2細胞への、親52H5D3B8-6#-VH2+VL3と同等のGPC3抗体媒介NK細胞傷害性を示した。興味深いことに、中等度のGPC3発現レベルを示したHuh-7細胞では、52H5D3B8-19#-VH2+VL3と52H5D3B8-20#-VH2+VL3の両方は、親52H5D3B8-6#-VH2+VL3より良好なEC50を示した。
【表18】
9.2 GPC3ヒト化抗体により刺激されるNK細胞の脱顆粒
【0179】
NK細胞の脱顆粒を刺激するGPC3ヒト化抗体の能力を調査するために、脱顆粒マーカーであるCD107aの発現レベルをNK細胞において解析した。手短に述べると、ウェル当たり細胞2.5×10個の密度でのエフェクター細胞としての上記のとおり生成したヒト初代NK細胞を、丸底96ウェルマイクロプレートにおいて、HEPG2を含む2.5×10標的細胞とともにコインキュベートした(E/T比=1:1)。50nMで出発して5倍で抗体を段階希釈し、対応するウェルに添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、細胞を回収し、氷冷染色用緩衝液(PBS中の0.5%BSA)で洗浄した。抗CD107a抗体(BioLegend、カタログ番号328608)を、ウェル当たり1μLで、染色用緩衝液で希釈し、細胞とともに40分間4℃で暗所においてインキュベートした。次いで、試料を洗浄し、2%PFAで固定した。細胞をフローサイトメーターMACSQuant(登録商標)Analyze 16(Miltenyi Biotech)で解析した。データをFlowjo 10.0ソフトウェアで解析した。4パラメーター非線形回帰曲線適合をGraphPad Prism 9によって行った。
【0180】
図14に示すように、全てのGPC3ヒト化抗体は、GC33よりも有効なCD107a上方制御をHEPG2細胞の存在下で刺激した。
9.3 GPC3ヒト化抗体により刺激されるNKのサイトカイン産生
【0181】
標的細胞の存在下でNK細胞のサイトカイン産生を刺激するヒト化抗体の能力を調査するために、NK細胞における細胞間IFN-γおよびTNF-αをFACS染色により解析した。手短に述べると、ヒト初代NK細胞をウェル当たり細胞2.5×10個の密度でエフェクター細胞として上記のとおり調製し、丸底96ウェルマイクロプレートにおいて、HEPG2を含む2.5×10標的細胞と共培養した(E/T比=1:1)。タンパク質輸送阻害剤ブレフェルジンA(BFA)を共培養系に添加して、NK細胞活性化中の上清へのサイトカイン分泌を防止した。50nMで出発して5倍で抗体を段階希釈し、対応するウェルに添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、試料を洗浄し、Foxp3/転写因子染色用緩衝液セット(ThermoFisher、カタログ番号00-5523-00)の手順に従って細胞内染色した。抗IFN-γ抗体(BioLegend、カタログ番号506510)および抗TNF-α抗体(BD Biosciences、カタログ番号562783)を、ウェル当たり1μLで、推奨の染色用緩衝液で希釈した。細胞をフローサイトメーターMACSQuant(登録商標)Analyze 16(Miltenyi Biotech)で解析した。データをFlowjo 10.0ソフトウェアで解析した。4パラメーター非線形回帰曲線適合をGraphPad Prism 9によって行った。
【0182】
図15に示すように、全てのGPC3ヒト化抗体は、NK細胞においてGC33より多くのIFN-γおよびIFN-α産生をHEPG2細胞の存在下で誘導した。
【0183】
(実施例10)
キメラ抗体52H5D3B8のヒト化
52H5D3B8可変領域遺伝子を利用して、ヒト化mAbを作出した。このプロセスの第1ステップでは、52H5D3B8のVHおよびVLまたはVKのアミノ酸配列を、ヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体として最もよくマッチするヒト生殖細胞系列Ig遺伝子配列を見つけた。
【0184】
手短に述べると、IGKV2-2902およびIGHV1-202を、それぞれ、重鎖および軽鎖の骨格として使用した。次いで、3Dモデルを生成して、抗体結合および立体構造に不可欠である、元のマウスFR領域配列内のアミノ酸を決定した。52H5D3B8 CDRグラフト抗体配列に基づいて、5本の追加のヒト化重鎖および1本の追加の軽鎖を作出した。重鎖の場合、フレームワーク内のI、K、A、L、Tが復帰変異に関与した。軽鎖の場合、フレームワーク内のFが復帰変異に関与した。
【0185】
ヒト化抗体の一部についてのアミノ酸およびヌクレオチド配列を下の表19に収載する。
【表19-1】
【表19-2】
【0186】
次いで、6本のヒト化重鎖および2本のヒト化軽鎖を合成し、pcDNA3.4ベクターにそれぞれクローニングした。プラスミドの抽出後、6本の重鎖および2本の軽鎖を対合させ、HEK293細胞に発現させた。ヒトVHおよびヒトVLの対合によって、12のヒト化抗体が作出された(表20を参照されたい)。
【表20】
【0187】
(実施例11)
ヒト化抗体の抗原結合特性
Biacoreによるヒト化抗体の親和性ランク付け
抗原結合活性を評価するために、キメラ抗体の親和性をBiacore 8Kにより測定した。キメラ抗体の親和性に最も近い親和性を有する2つの濃度を12のヒト化抗体親和性検出に選択した。ヒトGPC3-hisタグタンパク質を、捕捉された抗体上に3分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、720秒間、放置して解離させた。表21に示すように、12全てのヒト化抗体は、キメラ抗体と同様の親和性を示した。
【表21】
ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞およびHuh-7細胞への結合
【0188】
抗原結合特性を評価するために、ヒト化抗体を、ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞およびHuh-7細胞へのそれらの結合についてFACSにより解析した。手短に述べると、GPC3-CHOK1細胞およびHuh-7細胞を、先ず、Fcブロッキング試薬とともに4℃で15分間、インキュベートした。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、10μg/mLで出発して4倍段階希釈したヒト化抗体を有する各ウェルに、4℃で60分にわたって分けた。細胞をFACS緩衝液により洗浄し、2%PFAによってRTで15分間、固定した。FACS緩衝液により洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgGを各ウェルに添加し、RTで30分間、インキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647のMFIをMACSQuant Analyzer 16により評価した。異なるプレートが52H5D3B8-VH+VLのEC50に影響を与える可能性があったので、12のヒト化抗体を2つのプレートに分けた。GPC3-CHOK1細胞およびHuh-7細胞に対する各ヒト化抗体のEC50を下の表22~23に収載する。図16に示すように、ヒト化抗体の全ての候補は、GPC3-CHOK1細胞に関してキメラ抗体と同等の結合効率、およびHuh-7細胞に関してキメラ抗体より良好な結合効率を示した。
【表22】
【表23】
ヒトGPC3が過剰発現されたCHOK1細胞、Huh-7細胞およびHEPG2細胞への結合
【0189】
FACSを使用して、CHOK1細胞、Huh-7細胞およびHEPG2細胞上に発現されたヒトGPC3に対するHu 52H5D3B8-7およびHu 52H5D3B8-8の結合活性を、ベンチマーク抗体GC33およびY035と比較して評価した。Hu 52H5D3B8-7 AbのCDRおよびフレームワークの特性を評価するために、2つのキメラ抗体を生成した。「Y035 FRに伴うHu 52H5D3B8-7/8 CDR」と名付けた抗体は、Hu 52H5D3B8-7 CDRおよびY035 FRを含有する。「Hu 52H5D3B8-7 FRに伴うY035 CDR」と名付けた抗体は、Hu 52H5D3B8-7 FRに移植されたY035 CDRを有するキメラ抗体を表す。GPC3-CHOK1細胞、Huh-7細胞およびHEPG2細胞に対する各抗体のEC50を下の表24に収載する。
【0190】
図17に示すように、Hu 52H5D3B8-7とHu 52H5D3B8-8の両方は、GPC3-CHOK1細胞、Huh-7細胞およびHEPG2細胞に同等の親和性で結合した。これらは、ベンチマーク抗体GC33およびY035より高い。より重要なこととして、Y035 FRに伴うHu 52H5D3B8-7/8 CDRと、Hu 52H5D3B8-7 FRに伴うY035 CDRの両方は、Y035より高い親和性を示し、これは、Hu 52H5D3B8-7のCDRおよびフレームワークがY035の優れた結合能力の一因となることを実証していた。
【表24】
【0191】
(実施例12)
GPC3が発現された腫瘍細胞系に対するヒト化GPC3抗体の内在化活性
細胞ベースの内在化を使用して、HEPG2細胞に対するHu 52H5D3B8-7およびHu 52H5D3B8-8の内在化活性をY035と比較して評価した。Hu 52H5D3B8-7 AbのCDRおよびフレームワークの特性を評価するために、2つの抗体(Y035 FRに伴うHu 52H5D3B8-7/8 CDR、およびHu 52H5D3B8-7 FRに伴うY035 CDR)も評価した。
【0192】
PHAbチオール色素は、pH>7で非常に低い蛍光を有するpHセンサー色素であり、pHがそれぞれおよそ6.3または4.7であるエンドソームまたはリソソームにそれが内在化されたとき/場合、蛍光の劇的な増加が生じることになる。手短に述べると、pHAbチオール色素で標識したα-hIgG二次抗体(10μg/mL)を、抗体(20μg/mL)とともに30分間、インキュベートした。インキュベーション後、混合Abを2倍で段階希釈した。次いで、希釈された混合物を、2×10個のHEPG2細胞を各ウェルに予め播種した96ウェルアッセイプレートに、添加した。48時間のインキュベーション後、蛍光シグナルをMultimodeプレートリーダー(Envision(登録商標)2105)で捕捉した。
【0193】
図18に示すように、Hu 52H5D3B8-7とHu 52H5D3B8-8の両方は、他のmAbより高い内在化有効性を示した。加えて、Y035 FRに伴うHu 52H5D3B8-7/8 CDRは、Y035より高い内在化有効性(より高いトップおよび同等のEC50)を示し、これは、Hu-52H5D3B8-7のCDRが、Y035と比較して増強された標的媒介内在化の一因となることを示していた。各mAbのEC50およびトップを下の表25に収載する。
【表25】
* * *
【0194】
本開示は、記載した特定の実施形態によって範囲が限定されることはなく、これらの実施形態は、本開示の個々の態様の単一の実例として意図したものであり、機能的に等価であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内である。本開示の主旨および範囲を逸脱することなく、本開示の方法および組成物に様々な改変および変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、本開示の改変形態および変形形態を、それらが添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内に入ることを条件に、包含する。
【0195】
本明細書で言及した全ての公表文献および特許出願は、個々の公表文献または特許出願各々が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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【国際調査報告】