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特表2024-537328中空体の2重シート熱成形のための方法及び得られる中空体
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  • 特表-中空体の2重シート熱成形のための方法及び得られる中空体 図1
  • 特表-中空体の2重シート熱成形のための方法及び得られる中空体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】中空体の2重シート熱成形のための方法及び得られる中空体
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/00 20060101AFI20241003BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C51/00
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522102
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2022051909
(87)【国際公開番号】W WO2023062312
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2110778
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ゴネタン
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ビュッシ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ロダリー
【テーマコード(参考)】
4F208
4J005
【Fターム(参考)】
4F208AA32
4F208AC03
4F208AG07
4F208AR06
4F208AR12
4F208MA01
4F208MA02
4F208MA03
4F208MB01
4F208MC01
4F208MH06
4F208MK08
4F208MK13
4J005AA25
4J005BA00
(57)【要約】
本発明は、2重シート熱成形方法のためのポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる少なくとも1つの面を含むシートの使用、対応する方法、及びこの方法により得られた中空体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体(140)を製造するためのツインシート熱成形方法(100)であって、前記方法が、
ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる少なくとも1つの面(11)を含む2枚のシート(10)を供給する工程、
前記2枚のシート(10)を軟化温度で軟化させて、軟化シート(110)を成形する工程(105)であって、前記軟化温度がそれぞれの疑似非晶質組成物のガラス転移温度以上である、工程(105)、
前記軟化シート(110)を成形して、熱成形シート(120)を成形する工程(115)、
前記軟化シート、及び/又は成形されるか若しくは既に成形されたシートの前記面(11)の少なくとも1つの接触域(12)を接触及び融合させて、中間体(130)を成形する工程(125)であって、前記接触域(12)が接触温度に加熱され、それぞれの接触域が少なくとも接触するまで基本的に非晶質状態のままである、工程(125)、並びに
前記組成物を金型温度で結晶化して、結晶化中空体(140)を成形する工程(135)を含み、
前記結晶化工程(135)が、基本的に前記接触及び融合工程(125)の後に、好ましくは基本的に前記成形工程(115)の後に行われる、ツインシート熱成形方法(100)。
【請求項2】
前記組成物が、200Pa.s~8000Pa.s、好ましくは500Pa.s~5000Pa.s、より好ましくは750Pa.s~4500Pa.sに及ぶ、平行板レオメーターにより測定した380℃、1Hzでの粘度を有する、請求項1に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項3】
前記接触温度での等温半結晶化時間が少なくとも3秒、好ましくは少なくとも5秒、最も好ましくは少なくとも8秒であり、及び/又は前記接触温度での等温半結晶化時間が30分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下である、請求項1又は2に記載の熱成形方法。
【請求項4】
少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、ポリエーテルケトンケトン、好ましくは少なくとも1つの化学式
【化1】
を有するイソフタル酸繰り返し単位(I)、及びコポリマーの場合は化学式
【化2】
を有するテレフタル酸繰り返し単位(T)から基本的になるか、若しくはこれらからなるホモポリマー又はコポリマーであり、
前記T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル百分率が0%~5%、又は35%~78%、好ましくは45%~75%、より好ましくは48%~52%、又は65%~74%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、化学式
【化3】
の繰り返し単位、及び化学式
【化4】
の繰り返し単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるコポリマーであり、
前記単位(III)及び単位(IV)の合計に対する単位(III)のモル百分率が0%~99%、好ましくは5%~95%、より好ましくは10%~50%、最も好ましくは20%~40%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、式
【化5】
を有する繰り返し単位、及び式
【化6】
を有する繰り返し単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるコポリマーであり、
前記単位(III)及び単位(V)の合計に対する単位(III)のモル百分率が0%~99%、好ましくは0%~95%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項7】
前記組成物が、ポリアリールエーテルケトン、任意にポリアリールエーテルケトンとは異なる他の熱可塑性ポリマー、任意に充填剤、及び任意に添加剤からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項8】
それぞれのシートが、互いに独立して、又は互いに独立せず、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項9】
前記2枚のシートが、互いに独立して、又は互いに独立せず、200ミクロン~20ミリメートルの厚み、好ましくは500ミクロン~10ミリメートルの厚みを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項10】
前記結晶化工程が、前記結晶化工程の間、WAXSにより測定した厳密に7%より大きい厚みの平均結晶化度まで、好ましくは10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上もの平均結晶化度まで行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項11】
前記軟化工程(105)が、厳密にTgより高く(Tg+80)℃以下の値を有する、好ましくは(Tg+10)℃~(Tg+75)℃に及ぶ値を有する軟化温度で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項12】
前記結晶化工程が、前記組成物が最低等温半結晶化時間を示す温度に近い金型温度で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項13】
前記金型温度と前記軟化温度の間の差が60℃以下、及び/又は15℃以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項14】
前記接触及び融合工程が、1bar~50barに及ぶ値を有する挟み圧力、好ましくは5bar~40barに及ぶ値を有する挟み圧力、より好ましくは7bar~30barに及ぶ値を有する挟み圧力で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載のツインシート熱成形方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により得られる、ポリアリールエーテルケトンをベースとした結晶化組成物からなる少なくとも1つの内側面を含む中空体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空体のためのツインシート熱成形方法の分野に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、ポリアリールエーテルケトンをベースとしたシートを用いたそのような方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアリールエーテルケトンは、よく知られた高性能のエンジニアリングポリマーである。それらは、温度の観点、及び/又は機械的な制約若しくは化学的な制約までもの観点で制限的な適用に対して用いることができる。それらはまた、優れた耐火性、及び煙又は有毒ガスの低排出を必要とする適用に対して用いることができる。最後に、それらは良好な生体適合性を有する。これらのポリマーは、航空宇宙、海洋掘削、自動車、鉄道、船舶、風力、スポーツ、建築、電子工学又はその他の医療用インプラントのような多様な分野で見られる。
【0004】
熱可塑性プラスチックのツインシート熱成形のための方法がまた、従来技術から知られている。特に、それらは中空の硬い物品の製造を可能にする。
【0005】
ツインシート熱成形方法は、2枚のシートを熱成形して物品の半分のもの(halves)を2つ成形する工程、及びこれらの半分のものを一緒に溶接して中空の物品を成形する工程を含む。
【0006】
2つの方法が特に知られている。
【0007】
第1の方法によれば、2枚の熱可塑性ポリマーシートを固定枠に置き、同時に加熱する。シートが成形温度に達したら、即ち、十分に軟化したら、シート間に空気を入れ、及び/又はシートの外側部分を真空にし、閉じて互いに押し付けることのできる2つの半金型にそれらを押し付け、挟み(pinching)効果を生じさせる。
【0008】
第2の方法によれば、2枚のシートを、それぞれの半金型において順次熱成形する。次いで、2つの半金型を閉じて互いに押し付け、挟み効果を生じさせる。
【0009】
高い熱たわみ温度(HHDT)を有する熱可塑性ポリマーによる実施の例は、米国特許第5,114,767号A2に記載されている。この技術の意味でのHHDTポリマーは、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、ポリアリールスルホン、及びポリフェニルエーテル/ポリスチレン混合物を含む。
【0010】
熱可塑性HHDTポリマーの2層、例えば上記に述べられたようなものをまず、それらのたわみ温度より高く加熱し、前記たわみ温度より低い温度に加熱された2つの半金型の間に置く。低い熱たわみ温度のポリマー(LHDT)の層を、2つの熱可塑性HHDTポリマーの層の間に差し挟む。次いで、2つの半金型を互いに閉じて、HHDTポリマーの2層間の接着をLHDTポリマーの存在により確保する。最後に、金型へのガスの注入により中空体を成形する。
【0011】
この技術は、主に中空体を成形することが意図される2層の間に接着層の追加を必要とするという不利な点を有する。
【0012】
現在のところ、高性能の結晶化中空体を製造するためには熱成形方法においてポリアリールエーテルケトンを使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,114,767号A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、更なる中間層を必要とすることなく結晶化することのできるポリアリールエーテルケトンの少なくとも2枚のシートを含むツインシート熱成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、中空体を製造するためのツインシート熱成形方法に関する。方法は、
- ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる少なくとも1つの面を含む2枚のシートを供給する工程、
- 2枚のシートを軟化温度で軟化させて軟化シートを成形する工程であって、軟化温度がそれぞれの疑似非晶質組成物のガラス転移温度以上である、工程、
- 軟化シートを成形して熱成形シートを成形する工程、
- 軟化シート、及び/又は成形されるか若しくは既に成形されたシートの前記面の少なくとも1つの接触域を接触及び融合させて中間体を成形する工程であって、接触域が接触温度に加熱され、それぞれの接触域が少なくとも接触するまで基本的に非晶質状態のままである、工程、並びに
- 組成物を金型温度で結晶化して結晶化中空体を成形する工程であって、結晶化工程が、基本的に接触及び融合工程の後に、好ましくは基本的に成形工程の後に行われる、工程を含む。
【0016】
有利には、組成物は、200Pa.s~8000Pa.s、好ましくは500Pa.s~5000Pa.s、より好ましくは750Pa.s~4500Pa.sに及ぶ、平行板レオメーターにより測定した380℃、1Hzでの粘度を有することができる。
【0017】
有利には、組成物の接触温度での等温半結晶化時間は、少なくとも3秒、好ましくは少なくとも5秒、最も好ましくは少なくとも8秒、及び/又は30分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、最も好ましくは2分以下とすることができる。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルケトンケトンとすることができる。それは、好ましくは少なくとも1つの化学式
【0019】
【化1】
【0020】
を有するイソフタル酸繰り返し単位(I)、及びコポリマーの場合は化学式
【0021】
【化2】
【0022】
を有するテレフタル酸繰り返し単位(T)から基本的になるか、若しくはこれらからなるホモポリマー又はコポリマーであることができ、
T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル百分率が0%~5%、又は35%~78%、好ましくは45%~75%、極めて好ましくは48%~52%、又は65%~74%である。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、式
【0024】
【化3】
【0025】
の繰り返し単位、及び式
【0026】
【化4】
【0027】
の繰り返し単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるコポリマーであることができ、
単位(III)及び単位(IV)の合計に対する単位(III)のモル百分率が0%~99%、好ましくは5%~95%、より好ましくは10%~50%、最も好ましくは20%~40%である。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトンは、式
【0029】
【化5】
【0030】
を有する繰り返し単位、及び式
【0031】
【化6】
【0032】
を有する繰り返し単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるコポリマーであることができ、
単位(III)及び単位(V)の合計に対する単位(III)のモル百分率が0%~99%、好ましくは0%~95%である。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、ポリアリールエーテルケトンとは異なる少なくとも1つの他の熱可塑性ポリマーを含むことができ、及び/又は少なくとも1つの充填剤を含むことができ、及び/又は少なくとも1つの添加剤を含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、ポリアリールエーテルケトン、任意にポリアリールエーテルケトンとは異なる1つ又は複数の他の熱可塑性ポリマー、任意に1つ又は複数の充填剤、及び任意に1つ又は複数の添加剤からなることができる。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、それぞれのシートは、互いに独立して、又は互いに独立せず、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなることができる。
【0036】
有利には、2枚のシートは、互いに独立して、又は互いに独立せず、200ミクロン~20ミリメートルの厚み、好ましくは500ミクロン~10ミリメートルの厚みを有することができる。
【0037】
有利には、結晶化工程は、結晶化工程の間、WAXSにより測定した厳密に7%より大きい厚みの平均結晶化度まで、好ましくは10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上もの結晶化度まで行うことができる。
【0038】
有利には、軟化工程は、厳密にTgより高く(Tg+80)℃以下の値を有する、好ましくは(Tg+10)℃~(Tg+75)℃に及ぶ値を有する軟化温度で行うことができる。
【0039】
有利には、結晶化工程は、組成物が最低等温半結晶化時間を示す温度に近い金型温度で行うことができる。
【0040】
有利には、金型温度と軟化温度の間の差は、50℃以下であり、好ましくは15℃以上である。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、接触及び融合工程は、1bar~50barに及ぶ値を有する挟み圧力、好ましくは5bar~40barに及ぶ値を有する挟み圧力、より好ましくは7bar~30barに及ぶ値を有する挟み圧力で行われる。
【0042】
本発明はまた、上記に記載されたような方法により得られる、ポリアリールエーテルケトンをベースとした結晶化組成物からなる少なくとも1つの内側面を含む中空体に関する。
【0043】
本発明は、中空体を製造するためのツインシート熱成形方法のための、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる少なくとも1つの面を含むシートの本発明者らによる使用に基づく。そのようなシートの使用は、特に上記に記載されたような方法において実施することができる。それぞれのシートの組成物は、組成物が接触及び融合させられるまで基本的に非晶質状態のままであることから、これらのシートは、シート間の接触域で良質な熱シールを実施することを可能にする。それぞれのシートの組成物は、それでもなお結晶化可能であり、組成物が接触及び融合させられた後に結晶化する。従って、本発明者らは、接着中間層を用いる必要なく、疑似非晶質ポリアリールエーテルケトンの特に有利な結晶化動力学を利用して、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物のシートから結晶化された中空体を用いることができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】ツインシート熱成形装置の略図である。
図2】第1の実施形態に従った、図1に従った装置が特に適したツインシート熱成形方法の主な工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
Tgとして表される用語「ガラス転移温度」は、20℃/分の加熱速度を用い、第2加熱にて、規格NF ISO 11357-2:2020に準じて示差走査熱量測定(DSC)により測定される、少なくとも部分的に非晶質のポリマーがゴム状態からガラス状態に変化するか、又は逆も同様である温度を意味する。
【0046】
本発明において、ガラス転移温度への言及がなされる場合、それはより具体的には、別段の記載がなければ、この規格に規定されたようなステップの半分の高さでのガラス転移温度に関する。本発明において、PAEK(s)をベースとした組成物は、特に必要に応じていくつかの異なる混合しないポリマーの存在に起因して、DSC分析においていくつかのガラス転移レベルを任意に示すことがある。この場合、用語「ガラス転移温度」は、PAEK又はPAEKsの混合物のガラス転移ステップに対応する最も高いガラス転移温度を意味することが理解される。
【0047】
Tfとして表される用語「溶融温度」は、20℃/分の加熱速度を用い、第1加熱にて、規格NF EN ISO 11357-3:2018に準じて示差走査熱量測定(DSC)により測定される、少なくとも部分的に結晶化したポリマーが粘性のある液体状態に変化する温度を意味する。本発明において、溶融温度への言及がなされる場合、それはより具体的には、別段の記載がなければ、この規格に規定されたようなピーク溶融温度である。本発明において、PAEK(s)をベースとした組成物は、特に及び/又は所定のポリマーについての異なる結晶形態の存在に起因して、DSC分析においていくつかの溶融ピークを任意に示すことがある。この場合、溶融温度は、温度が最も高い溶融ピークに対応する溶融温度を意味することが理解される。
【0048】
用語「疑似非晶質」ポリマー、「疑似非晶質」組成物はそれぞれ、そのガラス転移温度よりも低い温度で基本的に非晶質形態であるポリマー、組成物をそれぞれ示すことが理解される。ポリマー、又は組成物は、それでもなお、十分な時間、そのガラス転移温度よりも高い温度に加熱されると結晶化可能である。本発明の意味する範囲内で、「疑似非晶質」ポリマー、又は「疑似非晶質」組成物はそれぞれ、25℃で0%~7%の結晶化度を有する。
【0049】
「結晶化度」は、WAXSにより測定することができる。例えば、分析は、以下の条件のNano-inXider(登録商標)機器で広角X線散乱(WAXS)において行うことができる。
- 波長:主に銅のKα1線(1.54オングストローム)
- 出力:50kV~0.6mA
- 観察モード:透過率
- カウント時間:10分
【0050】
これにより、回折角の関数としての散乱強度のスペクトルが得られる。このスペクトルは、非晶質ハローに加えてスペクトルにピークが見られる場合、結晶の存在を同定することを可能にする。
【0051】
スペクトルでは、結晶ピークの面積(CAで示される)及び非晶質ハローの面積(AHで示される)を測定することが可能である。次いで、(CA)/(CA+AH)を用いてPEKKにおける結晶PEKKの質量比が見積もられる。
【0052】
測定温度で「t1/2」として表される言い回し「等温半結晶化時間」は、規格ISO 11357-7:2015に準じて規定される、測定温度での等温結晶化について0.5の相対結晶化度に達するのに必要な時間を意味することが理解される。
【0053】
この規格によれば、等温結晶化条件は、試料を溶融させる第1工程、次いで、冷却工程の終了後に結晶化が開始するように、選択した測定温度まで可能な限りすばやく冷却する工程により実施される。等温工程が終了する時間、即ち、完全な結晶化曲線を得るのに必要な時間は、結晶化速度に依存する。DSC曲線が明瞭でない場合、この時間は、最大結晶化速度に達するのに必要な時間の5倍に決定される。
【0054】
用語「ポリマーの混合物」は、ポリマーの巨視的に均質な組成物を示すことが理解される。上記用語は、適合性及び/又は混和性のポリマーの混合物、個別に考慮されるそのポリマーのガラス転移温度に対して中間のガラス転移温度を有する混合物を包含する。上記用語はまた、互いに混合しない相からなりマイクロメータースケールで分散したような組成物を包含する。
【0055】
用語「コポリマー」は、コモノマーと呼ばれる化学的に異なる少なくとも2種のモノマーの共重合に由来するポリマーを示すことを意図している。従って、コポリマーは、少なくとも2つの繰り返し単位から成形される。3つ以上の繰り返し単位から成形することもできる。
【0056】
頭字語「PAEK」は「ポリアリールエーテルケトン」を表し、「PAEKs」は「ポリアリールエーテルケトン(複数)」を表し、「PAEK(s)」は「ポリアリールエーテルケトン又はポリアリールエーテルケトン(複数)」を表す。
【0057】
本特許出願において設定される全ての範囲において、別段の記載がなければ、終点は含まれる。
【0058】
ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物
本発明に従った方法のためのシート形態のポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物は、疑似非晶質である。
【0059】
組成物の基本的に非晶質な性質により、ツインシート熱成形方法において接触させられるシートの周辺領域の良好な融合が可能になる。これが、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトン、又はそれを含む組成物が有利には5.0%以下、又は3.0%以下、又は1.0%以下、及び理想的には約0%の結晶化度を有する理由である。
【0060】
組成物は、疑似非晶質状態でシートが成形するのを可能にするのに十分に遅い、TfからTgの間の温度での結晶化速度を有する必要がある。
【0061】
組成物はまた、軟化工程の間、及び接触工程までに基本的に非晶質状態のままであるのに十分に遅い、TfからTgの間での結晶化速度を有する必要がある。
【0062】
一方で、組成物は、接触及び融合工程の後に妥当な時間スケール内で結晶化できるのに十分に速い、TfからTgの間での結晶化速度を有する必要がある。
【0063】
有利には、軟化温度及び/又は接触温度での組成物の等温半結晶化時間は、少なくとも3秒、最大で30分とすることができる。
【0064】
軟化温度及び/又は接触温度での組成物の等温半結晶化時間は、好ましくは少なくとも5秒、より好ましくは少なくとも8秒とすることができる。
【0065】
軟化温度及び/又は接触温度での組成物の等温半結晶化時間は、好ましくは最大で10分、より好ましくは最大で5分、極めて好ましくは最大で2分とすることができる。
【0066】
有利には、窒素パージ下、直径25mmの平行板レオメーターにより測定した380℃、1Hzでの組成物の粘度は、200Pa.s~8000Pa.s、好ましくは500Pa.s~5000Pa.s、より好ましくは750Pa.s~4500Pa.sの値を有する。
【0067】
これらの粘度範囲は、良好な強度を有するシート及びシートの押出し時の実質的に均質な厚み、軟化シートを成形する工程の間の妥当な耐クリープ性を得て、最終的に2枚のシートを互いに接触及び融合させる工程の間に良好に融合させることを可能にするために特に有利である。
【0068】
特に、組成物は、750Pa.s~1200Pa.s、又は1200Pa.s~1600Pa.s、又は1600Pa.s~2000Pa.s、又は2000Pa.s~2400Pa.s、又は2400Pa.s~2800Pa.s、又は2800Pa.s~3200Pa.s、又は3200Pa.s~3600Pa.s、又は3600Pa.s~4000Pa.s、又は4000Pa.s~4250Pa.s、又は4250Pa.s~4500Pa.sの値を有する粘度を有することができる。
【0069】
組成物は、好ましくは125℃以上、より好ましくは145℃以上、極めて好ましくは150℃以上のガラス転移温度Tgを有する。
【0070】
組成物は、好ましくは250℃以上、より好ましくは270℃以上の溶融温度Tfを有する。組成物は、特に、280℃以上、又は290℃以上、又は300℃以上、又は310℃以上、又は320℃以上、又は330℃以上もの溶融温度を有することができる。
【0071】
組成物は、少なくとも50質量%の少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンを含む。これは、本出願のその他の部分においてポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物として交換可能に示される。
【0072】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、以下の式:
(-Ar-X-)及び(-Ar1-Y-)
(式中、
- Ar及びAr1のそれぞれは、2価の芳香族基を示し、
- Ar及びAr1は、好ましくは1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、3,3'位で2価の1,1'-ビフェニレン、3,4'位で2価の1,1'-ビフェニル、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンから選択することができ、
- Xは、電子求引基を示し、好ましくはカルボニル基及びスルホニル基から選択することができ、
- Yは、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、例えば-(CH)2-及びイソプロピリデンから選択される基を示す)
の単位を含む。
【0073】
これらのX単位及びY単位において、X基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より具体的には少なくとも80%がカルボニル基であり、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より具体的には少なくとも80%が酸素原子を表す。
【0074】
好ましい実施形態によれば、X基の100%がカルボニル基を示し、Y基の100%が酸素原子を表す。
【0075】
PAEKの質量、又は必要に応じて組成物のPAEKsの質量の合計は、組成物の全質量の少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも92.5%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.9%、又は100%に相当することができる。
【0076】
一定の実施形態では、組成物は、PAEK(s)から基本的になる、即ち、組成物の全質量の90%~99.9%でPAEK(s)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は、PAEK(s)からなる、即ち、組成物の全質量の少なくとも99.9%、理想的には100%でPAEK(s)からなる。
【0078】
有利には、PAEK(s)は、
- ポリエーテルケトンケトン、PEKKとしても知られる、PEKKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の単位を含む、
- ポリエーテルエーテルケトン、PEEKとしても知られる、PEEKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含む、
- ポリエーテルケトン、PEKとしても知られる、PEKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含む、
- ポリエーテルエーテルケトンケトン、PEEKKとしても知られる、PEEKKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の単位を含む、
- ポリエーテルエーテルエーテルケトン、PEEEKとしても知られる、PEEEKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含む、
- ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、PEDEKとしても知られる、PEDEKは1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含む、
- それらの混合物、及び
- 上述した単位のうちの少なくとも2つを含むコポリマー
(式中、Phは、フェニレン基を表し、-C(O)-は、カルボニル基を表し、フェニレンのそれぞれについて独立してオルト(1,2)型、メタ(1,3)型又はパラ(1,4)型であることが可能であり、優先的にはメタ型又はパラ型である)から選択することができる。
【0079】
更に、欠陥のあるもの(defects)、末端基及び/又はモノマーが、上記のリストに記載されたようなポリマーに非常に少量で組み込まれうるが、それらの性能に影響は及ぼさない。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、テレフタル酸単位(terephthalic unit)及びイソフタル酸単位(isophthalic unit)を含むポリエーテルケトンケトンポリマーを含むか、これらから基本的になるか、又はさらにはこれらからなるものであり、テレフタル酸単位が式
【0081】
【化7】
【0082】
を有し、イソフタル酸単位が式
【0083】
【化8】
【0084】
を有する。
【0085】
所定のファミリー、例えばPEKKファミリーのポリマーについて、「1つ又は複数の単位を含む」とは、この/これらの単位がポリマーにおいて少なくとも50%の合計モル比を有することを意味する。この/これらの単位は、ポリマーにおいて少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも92.5%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.9%のモル比に相当することができる。言い回し「単位から基本的になる」とは、単位がコポリマーにおいて95%~99.9%のモル比に相当することを意味する。最後に、用語「単位からなる」は、単位がポリマーにおいて少なくとも99.9%のモル比に相当することを意味すると理解される。
【0086】
好ましくは、ポリエーテルケトンケトンは、イソフタル酸「I」単位及びテレフタル酸「T」単位から基本的になるか、又はこれらからなりさえする。
【0087】
好ましくは、ポリエーテルケトンケトンは、必要に応じてランダムコポリマーである。
【0088】
T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比の選択は、ポリエーテルケトンケトンの結晶化速度特性の調整を可能にする因子のうちの1つである。
【0089】
T単位及びI単位の合計に対するT単位の所定のモル比は、それ自体知られている方法で重合時の反応物のそれぞれの濃度を調整することにより得ることができる。
【0090】
PEKKのT単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比は、特に、0%~5%、又は5%~10%、又は10%~15%、又は15%~20%、又は20%~25%、又は25%~30%、又は30%~35%、又は35%~40%、又は40%~45%、又は45%~48%、又は48%~51%、又は51%~54%、又は54%~58%、又は58%~62%、又は62%~65%、又は65%~68%、又は68%~73%、又は73%~75%、又は75%~78%、又は78%~80%、又は80%~85%に及ぶことができる。
【0091】
特定の実施形態によれば、ポリエーテルケトンケトンは、「T」単位及び「I」単位から基本的になるか、又はこれらからなりさえするものであり、T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比が0%~5%、又は35%~78%に及ぶ。実際、モル比のこの範囲について、ポリエーテルケトンケトンは適切な結晶化速度を有し、一方では十分に速い冷却により基本的に非晶質の形態で得られ、且つそのガラス転移温度より高く加熱されると十分に速く結晶化することを可能にする。従って、単位T及び単位Iの合計に対する単位Tのこれらのモル比は、単独のポリエーテルケトンケトンから基本的になるか、又はこれらからなりさえする組成物に特に適切である。T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比は、好ましくは0%~5%、又は35%~78%、好ましくは45%~75%、より好ましくは48%~52%、又は65%~74%とすることができる。T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比は、特に約50%又は約70%とすることができる。
【0092】
組成物は、好ましくは、式
【0093】
【化9】
【0094】
の単独の繰り返し単位からなるポリエーテルケトンケトンホモポリマーからなるものではない。
【0095】
実際、このポリマーは、そのTgより高く加熱されると非常に急速に結晶化し、厚い疑似非晶質シートを成形することを非常に難しくし、基本的に非晶質状態のそのようなシートを成形することを非常に難しくもする。更に、その非常に急速な結晶化のために、このポリマーは、シート間の良好な融合を得ることを可能にせず、接触域での不十分な接着性をもたらす。
【0096】
この観察に基づき、それでもなお、様々な方法で上記のホモポリマーの結晶化速度を減少させることを考慮することができる。
【0097】
第1の態様は、式(III)の単位からなるホモポリマーの構造における一定数の欠陥の導入、即ち、その化学構造の改変である。
【0098】
組成物は、式
【0099】
【化10】
【0100】
の単位、及び式
【0101】
【化11】
【0102】
の単位を含むポリマーを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなりさえすることができる。
【0103】
優先的には、ポリマーは、式(III)の単位及び式(IV)の単位から基本的になるか、又は実際にこれらからなりさえする。
【0104】
優先的には、ポリマーは、必要に応じてランダムコポリマーである。
【0105】
単位(III)及び単位(IV)の合計に対する単位(III)のモル比は、0%~99%、好ましくは5%~95%、より好ましくは10%~50%、最も好ましくは20%~40%に及ぶことができる。
【0106】
いくつかの異形のものによれば、組成物は、式
【0107】
【化12】
【0108】
の単位、及び式
【0109】
【化13】
【0110】
の単位を含むか、これらから基本的になるか、若しくはこれらからなりさえするポリマーを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなりさえすることができる。
【0111】
優先的には、ポリマーは、式(III)の単位及び式(IVa)の単位から基本的になるか、又は実際にこれらからなりさえする。
【0112】
優先的には、ポリマーは、必要に応じてランダムコポリマーである。
【0113】
単位(III)及び単位(IVa)の合計に対する単位(III)のモル比は、0%~99%、好ましくは5%~95%に及ぶことができる。
【0114】
組成物は、式
【0115】
【化14】
【0116】
の単位、及び式
【0117】
【化15】
【0118】
の単位を含むポリマーを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなりさえすることができる。
【0119】
好ましくは、ポリマーは、式(III)の単位及び式(V)の単位から基本的になるか、又はこれらからなりさえする。
【0120】
優先的には、ポリマーは、必要に応じてランダムコポリマーである。
【0121】
単位(III)及び単位(V)の合計に対する単位(III)のモル比は、0%~99%、好ましくは0%~95%に及ぶことができる。
【0122】
いくつかの異形のものによれば、組成物は、式
【0123】
【化16】
【0124】
の単位、及び式
【0125】
【化17】
【0126】
の単位を含むか、これらから基本的になるか、若しくはこれらからなりさえするポリマーを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなりさえすることができる。
【0127】
好ましくは、ポリマーは、式(III)の単位及び式(Va)の単位から基本的になるか、又はこれらからなりさえする。
【0128】
優先的には、ポリマーは、必要に応じてランダムコポリマーである。
【0129】
単位(III)及び単位(Va)の合計に対する単位(III)のモル比は、0%~99%、好ましくは0%~95%に及ぶことができる。
【0130】
式(III)の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化を減少させる第2の態様は、それを、結晶化するのにより時間のかかる別のPAEKと混合することである。この他のPAEKは、特に、単位I及び/若しくは単位Tから基本的になる、好ましくはこれらからなるPEKK、又は別法として式(III)の繰り返し単位を含むコポリマー、特に上記に示されたものとすることができる。
【0131】
式(III)の繰り返し単位からなるPEEKホモポリマーの結晶化速度を減少させる第3の態様は、それを、PAEKとは異なる別のポリマー、特に非晶質ポリマーと混合することである。多くのPAEKs、特にPEKK又はPEEKと適合する1つの非晶質ポリマーは、例えばポリエーテルイミドである。
【0132】
式(III)の繰り返し単位からなるPEEKホモポリマーの結晶化を減少させる第4の態様は、ここでは詳細には発展させないが、結晶化速度を調整するための物質として作用する添加剤の添加であろう。
【0133】
いくつかの特定の実施形態によれば、組成物は、特に、
- 特に上記に記載されたようなI単位及びT単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるPEKK、
- 上記に記載されたような式(III)の単位及び式(IV)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマー、並びに
- 上記に記載されたような式(III)の単位及び式(V)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマーから選択される、単独のPAEKから基本的になるか、又はこれらからなる。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、実質的に均質な組成物及び/又は粘度の単独のPAEKを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなる。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、いくつかの異なるPAEKs、即ち、特に異なる化学組成及び/若しくは異なる粘度を有するものを含むか、これらから基本的になるか、又はこれらからなる。
【0136】
いくつかの特定の実施形態によれば、組成物は、異なる化学組成の少なくとも2つのPAEKs、より具体的には、
- 特に上記に記載されたようなI単位及びT単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるPEKK、並びにこのPEKKに加えて、
- 組成物の全質量の50質量%未満、好ましくは組成物の30質量%以下の含有量の、以下のポリマー:PEK、PEEKEK、PEEK、特に上記に記載されたような式(III)の単位及び式(V)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマー、PEEKK、PEKEKK、PEEEK、PEDEK、又は上記に記載されたような式(III)の単位及び式(IV)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0137】
いくつかの特定の実施形態によれば、組成物は、いくつかのPAEKsの混合物を含み、PAEKsは、繰り返し単位のモル比が異なるPAEKのコポリマーである。特に、組成物は、「T型」の単位及び「I型」の単位の合計に対する「T型」の単位のモル比の異なるPEKKコポリマーの混合物を含むことができる。
【0138】
いくつかの特定の実施形態によれば、組成物はまた、いくつかのPAEKsの混合物を含むことができ、PAEKsは、粘度の異なるPAEKのコポリマーである。
【0139】
最後に、組成物はまた、繰り返し単位のモル比及び粘度の異なるPAEKのコポリマーであるPAEKsを含むことができる。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、組成物はまた、PAEKsファミリーに属さない1つ又は複数の他のポリマー、特に他の熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つのフッ素ポリマー、例えば欧州特許第2767986号及び米国特許第9,543,058号に記載されたフッ素ポリマーとPAEK(s)の混合物を含むことができる。フッ素ポリマーは、優先的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フッ化ビニル)(PVF)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー、ペルフルオロアルコキシ-アルカンコポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ペルフルオロエラストマー(FFKM)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、及びそれらの混合物からなるリストから選択することができる。
【0142】
フッ素ポリマーは通常はPAEKsと混合しないことから、組成物は、これらの実施形態において、有利には、前記少なくとも1つのPAEK中のフッ素ポリマーからなる粒子の分散液である。
【0143】
いくつかの実施形態では、組成物は、PAEK(s)、並びにポリエーテルイミド(PEI)、シリコーン-ポリイミドコポリマー又は別法としてポリシロキサン/ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド/ポリジメチルシロキサン(PEI/PDMS))ブロックコポリマー、例えば欧州特許第0323142号及び米国特許第8,013,251号に記載されたポリマーの混合物を含む。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、上述した熱可塑性プラスチックの代わりに、又はこれらに加えて、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリアミド(PA)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ(アミド-イミド)(PAI)、ポリ(エーテルスルホン)(PES)、ポリ(アリールスルホン)、ポリ(エーテルイミドスルホン)、ポリフェニレン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、それらの混合物を含むことができる。
【0145】
いくつかの特定の実施形態によれば、組成物は、
- 特に上記に記載されたような単位I及び単位Tから基本的になるか、若しくはこれらからなるPEKK、上記に記載されたような式(III)の単位及び式(IV)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマー、並びに上記に記載されたような式(III)の単位及び式(V)の単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるポリマーから選択されるPAEKと、
- FEP、PFA、FFKM、PEI、PEI/PDMS、PES、PSU、PPSU、PPS、PPE、及びそれらの混合物からなるリストから選択される別のポリマーとの混合物から基本的になるか、又はこれらからなる。
【0146】
特に、組成物は、
- T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比が45%~75%に及ぶ、I単位及びT単位から基本的になるか、若しくはこれらからなるPEKKと、
- FEP、PFA、FFKM、PEI、PEI/PDMS、PES、PSU、PPSU、PPS、PPE、及びそれらの混合物からなるリストから選択される別のポリマーとの混合物から基本的になるか、又はこれらからなることができる。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、充填剤及び/又は添加剤を更に含むことができる。
【0148】
充填剤のなかでも、繊維状又は非繊維状の主に補強型の充填剤について言及することができる。非繊維充填剤は、特に二酸化チタン、タルク又は炭酸カルシウムとすることができる。繊維充填剤は、特にガラスファイバー及びカーボンファイバーであることができ、これらは粉砕されていてもされていなくてもよい。
【0149】
充填剤のなかでも、主に熱伝導型の充填剤、特に、セラミック、例えば窒化ホウ素若しくは酸化アルミニウム、金属、例えば銅、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、カーボン充填剤、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、無機充填剤、例えばヘマタイト、又はそれらの混合物からなるリストから選択することのできる充填剤について言及することができる。
【0150】
従って、組成物は、組成物の全質量に対して50質量%未満の充填剤、好ましくは40質量%未満の充填剤、より好ましくは25質量%未満の充填剤を含むことができる。
【0151】
添加剤は、安定剤(光、特にUV、及び熱、例えばリン酸塩)、光学的光沢剤、染料、顔料、流動化剤、組成物の溶融粘度を調整するための添加剤、組成物の結晶化速度を調整するための添加剤、組成物の熱容量を調整するための添加剤、又はこれらの添加剤の組み合わせを含む。従って、組成物は、組成物の全質量に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満、更により好ましくは1質量%未満の添加剤を含むことができる。
【0152】
少なくとも1つの面に組成物を含むシート
シートは、典型的には平らであるか、又は実質的に平面であり、その長さ及びその幅の両方よりも有意に小さい厚みを有する3次元の物品である。特に、シートは、その長さ及びその幅の両方に対して10%未満、又は5%未満の厚みを有することができる。
【0153】
シートは、意図される適用及び使用に応じて、孔のないもの、多孔質、微小孔性等であってもよい。
【0154】
いくつかの実施形態によれば、シートは、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなることができる。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、シートは、多数の層、即ち、少なくとも2層により成形することができ、それぞれの層が恐らく互いに独立して異なる化学組成を有するか、又は有さない。この実施形態において、ポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物は、次いで、多数の層の外面、即ち、シートの2つの面の少なくとも1つに層を成形するために用いられる。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、それぞれのシートは、2層からなることができる。ツインシートの1つの有利な例は、繰り返しT:I単位からなりT:Iモル比が約70:30の第1のPEKK層、及び繰り返しT:I単位からなりT:Iモル比が約60:40の第2のPEKK層からなり、PEKKがシートの内側面を構成するために有利に用いられるT:I比を有するシートである。
【0157】
シートの厚みは、例えば標準的なマイクロメーターを用いて測定することができる。
【0158】
シート、又は必要に応じてポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物からなる層は、特に200ミクロン~20.00ミリメートルに及ぶ厚みを有することができる。好ましくは、シートは、500ミクロン~10.00ミリメートルに及ぶ厚みを有する。
【0159】
特定の実施形態によれば、シート、又は必要に応じてポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物からなる層は、500ミクロン~1000ミクロンに及ぶ値と同等な厚みを有するか、又は1.00ミリメートル~2.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は2.00ミリメートル~3.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は3.00ミリメートル~4.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は4.00ミリメートル~5.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は6.00ミリメートル~7.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は8.00ミリメートル~9.00ミリメートルに及ぶ値を有するか、又は9.00ミリメートル~10.00ミリメートルに及ぶ値を有する。
【0160】
通常、シートの厚みは実質的に均一であり、即ち、その厚みは、シート上の1つの位置から別の位置で最大で約10%、好ましくは最大で約5%変化することができる。
【0161】
シート、又は必要に応じてポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物からなる層は、
- ポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物を、その溶融温度より高い適切な温度に加熱して、溶融樹脂組成物を得る工程、
- 溶融樹脂組成物をシートに成形する工程、及び
- 疑似非晶質状態のシートを得るのに十分に速い速度でシートを冷ます工程を含む、それ自体知られている方法により製造することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明で用いられるシートは、溶融押出しにより製造することができる。押出し温度は、ポリマーの溶融温度(PEKKの場合、そのT:I比に影響される)、及びその溶融粘度にも依存する。例えば、PEKKにおけるT:I異性体の比が70:30又は50:50である場合、好ましい押出し温度は、約350℃から約380℃の間である。通常、組成物の溶融温度より約5℃~約70℃、又は約10℃~約50℃高い押出し温度が適した温度である。
【0163】
押出されたシートは、ダイから直接、滑らかな金属のシリンダー又は質感のあるシリンダーに運ばれ、これらのシリンダーの表面温度はポリマーの溶融温度より低く維持されることからこれは「冷却シリンダー」として一般的に知られている。空気又は他のガスの流れがまた、その冷却を容易にするために、押出されたシートに向けられうる。シートが冷却されて固められる速度(冷ます速度と呼ばれる)は、疑似非晶質シート構造を得るうえで重要な側面である。冷ます速度は、冷却シリンダーの温度、シートの厚み及びラインの速度により主に決定される。それは、シートが疑似非晶質状態で得られるのに十分に速い必要がある。
【0164】
ツインシート熱成形方法
図1は、本発明に従ったツインシート熱成形方法、特に図2のブロック図に記載される方法に適合する装置1を図示する。
【0165】
図1を参照すると、装置1は、2枚のシート10をそこに固定することが可能な固定手段21を含む枠20を含む。2枚のシート10は、初めは実質的に互いに平行であり、シート間の空間60により分離されている。
【0166】
シート10はそれぞれ、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる内側面11を含む。2枚のシート10の内側面11は、互いに向き合い、接触及び融合工程の間に少なくとも部分的に接触域12で互いに接触させられることが可能である。
【0167】
装置1はまた、その形状が、製造される中空体の所望の最終形状に適合する壁31を含む、2つの半金型30を備える。
【0168】
半金型30のそれぞれは、互いに独立して形状が平ら、雄型又は雌型とすることができる。
【0169】
有利な実施形態によれば、2つの半金型の一方が雌型である。他方の半金型は、平面、雄型又は雌型でもよい。他方の半金型は、特に、平面又は雌型でもよい。
【0170】
半金型30は、互いに離れた開いた位置(図1)から閉じた位置(示さない)に(矢印の方向に)動くことができ、それにより壁31が空洞を成形する。製造された物品にその「中空体」特性を与えるのは、この空洞である。
【0171】
2枚のシート10の外側面13は、それぞれの半金型30に面する。それらは、挟むことにより確実に閉じることを意図した半金型30の部分32と、挟み域14で接触することが可能である。
【0172】
半金型30の部分32は、平面であってもよく、又は反対に、挟み域14の接触表面を増大させることが可能な形状を有していてもよい。
【0173】
それぞれの半金型30は、少なくとも成形工程の間にガスを排出することを可能にする穴33を含むことができる。これらの穴33は、有利には、ガス排出管40に接続することができ、このガス排出管40によって真空に引くことができ、少なくとも一部分、シート10が成形されることを可能にする。別法として、及び/又は更には、シートは、シート間の空間60に少なくとも一時的に挿入することのできるガス注入管50を用いて加圧ガスを注入することにより、少なくとも一部分、成形することができる。ガスは任意に加熱することができ、それによりシート10は成形工程の間に軟化温度に十分に近い温度を維持する。
【0174】
それぞれのシートは、放射線、対流又は伝導による加熱手段を用いて、その外側面13及び/又はその内側面11を加熱することができ、それを軟化させることを可能にする。加熱は、例えば、赤外線ランプを用いて、及び/又は温風を吹き付けることにより、及び/又はオーブンにおいて行うことができる。加熱手段は、それぞれのシートが可能な限り均一に軟化するように用意される。
【0175】
図1に示される1つの実施形態によれば、加熱手段70をシート間の空間60に配置することができ、それにより軟化工程の間に2枚のシート10の内側面11が加熱されることが可能となる。更に(図1の略図には示されない)、更なる加熱手段を少なくとも一時的に用いてシート10の外側面を加熱することができる。これは、特に、シートが非常に厚い場合に必要とされる。
【0176】
また更に(図1の略図には示さない)、更なる加熱手段が、接触温度が軟化温度より高い実施形態において、少なくとも1つの又は両方のシート10の接触域12を加熱するために用いられうる。いくつかの実施形態によれば、この補完的な加熱様式は、半金型の部分32を2枚のシート10のうちの1つの挟み域14で十分な時間接触させることによる伝導により実施することができる。これらの補完的な加熱手段は、挟み域14が可能な限り均一な温度を有するように用意される。
【0177】
図1に従った装置は、特に、そのブロック図が図2に示される方法に従ったツインシート熱成形方法100を実施するために適合する。
【0178】
図2を参照すると、方法100は、ポリアリールエーテルケトンをベースとした疑似非晶質組成物からなる少なくとも1つの面11を含む2枚のシート10の供給を含む。
【0179】
方法100は、シートのそれぞれを軟化温度で軟化させて軟化シート110を成形する工程105を含む。
【0180】
軟化温度は、そうでなければ「熱成形温度」と呼ばれることがある。
【0181】
軟化温度は、それぞれの疑似非晶質組成物のガラス転移温度以上である。
【0182】
シートの組成が異なる実施形態によれば、軟化温度はそれぞれのシートで異なりうる。反対に、シートの組成が同様である実施形態によれば、それぞれのシートの軟化温度は同様でありうる。
【0183】
軟化温度は、シート10の内側面11の近く(接触域12の外側)で熱電対を用いて測定することができる。
【0184】
軟化温度は、通常、厳密にTgより高く(Tg+80)℃以下の値を有する。軟化温度は、好ましくは、(Tg+10)℃~(Tg+75)℃とすることができる。
【0185】
いくつかの実施形態によれば、軟化温度は、(Tg+15)℃~(Tg+65)℃、又は(Tg+20)℃~(Tg+60)℃とすることができる。
【0186】
有利には、軟化温度は、軟化温度と異なる接触温度が付与される場合、恐らく接触域12及び隣接域を除いて、それぞれのシート10の内側面11の全体にわたって実質的に均質である。
【0187】
例えば、繰り返し単位T及び繰り返し単位Iから基本的になるか、又はこれらからなる、約70%と同等のモル比T:Iを有するPEKKについて、軟化温度は175℃~225℃とすることができる。軟化温度が接触域の接触温度と同等である場合、195℃~215℃の温度を有利に選択することができる。
【0188】
シート10がそれらの軟化温度に達したら、加熱素子70をシート間の空間60から引き抜くことができる。
【0189】
方法100は、軟化シート110を成形する工程115を含む。成形は、特に、内側面11に加圧ガスを吹き付けることにより、及び/又は外側面13の空気を吸うことにより行うことができる。
【0190】
例えば、1~6bar、好ましくは1.2~5barの圧力を内側面11にかけることができ、及び/又は外側面13を0.001~0.9bar、好ましくは0.05~0.85barの真空にすることができる。
【0191】
方法100は、軟化シートの前記面11の少なくとも1つの接触域12を接触及び融合させて中間体130を成形する工程125を含む。接触及び融合工程のために、接触域12は接触温度に加熱され、それぞれの接触域12は、少なくとも接触するまで基本的に非晶質状態のままである。接触工程は、半金型30を接合して、半金型の部分32がまず挟み域14でシート10と接触するようにし、次いで、2枚のシート10をそれらの接触域12で接触させることにより行われる。2枚のシート10の融合は、それらを構成する内側面11の組成物が、接触域12を接触させる際に基本的に非晶質状態であるという事実により可能となる。
【0192】
接触温度は、シート10の接触域12の近くで熱電対を用いて測定することができる。
【0193】
接触温度は、通常、軟化温度以上である。
【0194】
接触温度は、通常、金型温度以下である。
【0195】
いくつかの実施形態によれば、接触温度は、ほぼ軟化温度と同等とすることができる。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、接触温度は、ほぼ金型温度と同等とすることができる。
【0197】
いくつかの実施形態によれば、接触温度は、軟化温度よりも数℃、又は数十℃高くありうる。
【0198】
接触温度は、特に、軟化温度よりも少なくとも5℃、又は少なくとも10℃、又は少なくとも15℃高くありうる。
【0199】
接触温度は、特に、軟化温度よりも最大で75℃、又は最大で60℃、又は最大で50℃、又は最大で45℃、又は最大で40℃、又は最大で35℃、又は最大で30℃、又は最大で25℃、又は最大で20℃高くありうる。
【0200】
いくつかの実施形態によれば、接触温度は、金型温度よりも数℃、又は数十℃低くありうる。これらの実施形態は、特に、シート10の接触域12の接触及び融合工程の前に、半金型30の部分32が、挟み域14で十分な時間接触させられる場合に実施される。
【0201】
接触温度は、特に、金型温度よりも最大で5℃、又は最大で10℃、又は最大で15℃低くありうる。
【0202】
接触域12の融合を容易にするために、2つの半金型30に挟み圧力をかけることができる。いくつかの実施形態によれば、挟み圧力は、1bar~50barである。挟み圧力は、好ましくは5bar~40bar、更により好ましくは7bar~30barとすることができる。挟み圧力は、2つの半金型間に空隙を供給することにより適合することができる。
【0203】
方法100は、最後に、接触及び融合工程115及び成形工程125の後、結晶化中空体を成形するためにポリアリールエーテルケトンをベースとした組成物を金型温度で結晶化して結晶化中空体140を成形する工程135を含む。
【0204】
金型は、適切な金型加熱手段、例えば電熱装置を用いて、好ましくは可能な限り均一な金型温度にすることができる。
【0205】
金型温度は、有利には、組成物が最低等温半結晶化時間を示す温度に近い温度とすることができる。
【0206】
いくつかの実施形態によれば、金型温度は(Tg+Tf)/2に近いものとすることができる。金型温度は、好ましくは、(Tg+Tf)/2よりも35℃以下、又は25℃以下、又は15℃以下、又は10℃以下高い。金型温度は、好ましくは、(Tg+Tf)/2よりも45℃以上、又は35℃以上、又は25℃以上、又は20℃以上低い。
【0207】
例えば、繰り返し単位T及び繰り返し単位Iから基本的になるか、又はこれらからなる、約70%と同等のT:Iモル比を有するPEKKについて、金型温度は210℃~270℃、好ましくは220℃~260℃、より好ましくは225℃~255℃とすることができる。
【0208】
有利には、軟化温度と金型温度の間の差は、あらゆるたわみを回避するために60℃以下とすることができる。軟化温度と金型温度の間の差は、特に、50℃以下、又は40℃以下とすることができる。
【0209】
また有利には、軟化温度と金型温度の間の差は、15℃以上、又は20℃以上、又は25℃以上とさえすることができる。
【0210】
結晶化工程の継続時間は、シートの厚み、金型温度、金型の形状、及び所望の結晶化度に依存しうる。例えば、繰り返し単位T及び繰り返し単位Iから基本的になるか、又はこれらからなる、約70%と同等のモル比T:Iを有するPEKKについて、この継続時間は、1分~30分、好ましくは2分~15分、より好ましくは3分~10分とすることができる。
【0211】
いくつかの実施形態によれば、接触域の十分に長い加熱は、WAXSにより測定した厳密に7%より大きい平均結晶化度を達成することを可能にする。好ましくは、それは、10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上もの結晶化度を達成することを可能にする。
【0212】
図2のブロック図は連続型の工程を表すが、これらの工程のいくつかは、実際には重なることができ、及び/又は同時に若しくは異なる順序でさえも行うことができる。
【0213】
いくつかの実施形態によれば、シート10を成形する工程115は、接触域12が接触させられる前に空気の吹き付け及び/又は真空吸引を開始することにより、接触及び融合工程125の前に開始することができる。これらの実施形態によれば、成形工程115は、接触及び融合工程の前、同時、又は後に終了するように行うことができる。
【0214】
特定の実施形態によれば、成形工程115は、接触及び融合工程125の前に終了することができる。これは特にシートが1枚ずつ成形され、次いで、互いに接触させられる場合である。
【0215】
いくつかの実施形態によれば、成形工程115は、接触及び融合工程125とほぼ同じ時間に終了することができる。
【0216】
いくつかの実施形態によれば(図2には示さない)、成形工程は、基本的に接触及び融合工程の後に行うことができる。
【0217】
結晶化工程は、接触工程の終了前、及び/又は成形工程の終了前にある程度開始されうるが、シートの接触域を接触及び融合させるために組成物が基本的に非晶質状態であることが本発明の実施のために必要である。成形工程が基本的に非晶質な組成物により行われることもまた有利である。
【0218】
本発明に従って用いることのできる中空体は無数にあり、より複雑な形状を有していてもより複雑ではない形状を有していてもよい。可能性のある中空体のなかでも、特に「容器」型の物、又は「ケーシング」若しくは「ケース」型の物について言及することができる。
【実施例
【0219】
(実施例1)
図2のブロック図に従った方法により、図1に図示されたような装置を用いて中空体を製造した。
【0220】
モル比70:30のT単位及びI単位からなるポリエーテルケトンケトンからなる、3906Pa.sの380℃、1Hzでの粘度の厚み2.3ミリメートルの2枚の非晶質シートを用いる。
【0221】
軟化工程としてシートの内側面を210℃の軟化温度に加熱する。シート間の接触域を加熱するために更なる加熱手段は用いない。
【0222】
2つの半金型を10barの挟み圧力で閉じる。
【0223】
240℃の温度に加熱した金型で、2枚のシートを約5分間熱成形して維持する。次いで、2つの半金型のうちの1つを取り除くことにより金型を開き、熱い中空体を空気の噴出により冷却する。
【0224】
得られた中空体は外観が不透明であり、これは結晶化されていることを意味する。
【0225】
(実施例2)
実施例1で用いたのと同じシートを用いて中空体を製造した。
【0226】
軟化工程としてシートの内側面を200℃の軟化温度に加熱する。接触域を220℃の温度にする。
【0227】
2つの半金型を10barの挟み圧力で閉じる。
【0228】
240℃の温度に加熱した金型で、2枚のシートを約5分間熱成形して維持する。次いで、2つの半金型のうちの1つを取り除くことにより金型を開き、熱い中空体を空気の噴出により冷却する。
【0229】
得られた中空体は外観が不透明であり、これは結晶化されていることを意味する。
【符号の説明】
【0230】
1 装置
10 シート
11 内側面
12 接触域
13 外側面
14 挟み域
20 枠
21 固定手段
30 半金型
31 壁
32 部分
33 穴
40 ガス排出管
50 ガス注入管
60 シート間の空間
70 加熱素子
100 ツインシート熱成形方法
105 軟化工程
110 軟化シート
115 成形工程
120 熱成形シート
125 接触及び融合工程
130 中間体
135 結晶化工程
140 結晶化中空体
図1
図2
【国際調査報告】