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特表2024-537332イオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】イオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像
(51)【国際特許分類】
   G01V 5/00 20240101AFI20241003BHJP
【FI】
G01V5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522125
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022078291
(87)【国際公開番号】W WO2023062027
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21201857.6
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508246076
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ カトリック ド ルヴァン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CATHOLIQUE DE LOUVAIN
【住所又は居所原語表記】Place de l’Universite 1,B-1348 Louvain-la-Neuve,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】コルティナ ギル,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ジャマーンコ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バスネット,サミップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィケンス,ソフィー
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB19
2G105CC02
2G105EE06
(57)【要約】
イオン化粒子検出モジュールでイオン化チャンバを横断するイオン化粒子は、媒体に局所的イオン化を生成する。検出パッド部のマトリクスは個々の検出パッド部が個々のゾーンを覆うようにチャンバに面する。検出チャネル部は、以下の規則に従って、検出パッド部からなる群を備える。第一に検出チャネル部の検出パッド部は隣接せずマトリクス全体に散在している。第二に2つの検出チャネル部はマトリクスで隣り合う最大2個の検出パッド部を有し、2個の検出パッド部の一方は2つの検出チャネル部の一方に属し、2個の検出パッド部の他方は2つの検出チャネル部の他方に属する。検出チャネル部は、局所的イオン化のインジケーションを提供する。クラスタは検出パッド部の中から特定される。インジケーションは、特定されたクラスタが所定最小数の検出パッド部を備える場合に提供される。インジケーションはイオン化粒子がチャンバをどこで横断したかを示す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を備えるイオン化粒子検出モジュール(100):
- 以下を備えるイオン化粒子検出器(101):
- イオン化チャンバ(103)であって、当該イオン化チャンバを横断するイオン化粒子に反応して当該イオン化チャンバ内でイオン化可能媒体(205)に局所的なイオン化(215)を生成するように適合したイオン化チャンバ;
- 検出パッド部のマトリクス(104)であって、個々の検出パッド部が前記イオン化チャンバにおける個々のゾーンを覆うように、前記イオン化チャンバに面する検出パッド部のマトリクス;および
- 複数の検出チャネル部(105)であって、個々の検出チャネル部が、以下の規則に従って、検出パッド部からなる個々の相互排他的な群を備える、複数の検出チャネル部:
- 検出チャネル部の前記検出パッド部は、隣接せず、前記マトリクス全体に散在していること;
- 2つの検出チャネル部は、前記マトリクスで隣り合う最大2個の検出パッド部を有し、当該2個の検出パッド部の一方は、当該2つの検出チャネル部の一方に属し、当該2個の検出パッド部の他方は、当該2つの検出チャネル部の他方に属すること、
検出チャネル部(107)は、当該検出チャネル部の前記個々の検出パッド部によって覆われた、前記イオン化チャンバにおける前記個々のゾーン内のどこかで発生する局所的なイオン化のインジケーションを提供するように適合している;
ならびに
- 横断点ロケータ部(102)であって、同時に局所的なイオン化のインジケーションを提供する検出チャネル部に属する前記検出パッド部の中からクラスタを特定するように適合していて、特定された前記クラスタが所定の最小数の検出パッド部を備える場合に当該クラスタに基づいて横断点インジケーションを提供するように適合しており、当該横断点インジケーションは、前記イオン化粒子が前記イオン化チャンバをどこで横断したかを示す、横断点ロケータ部。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記検出チャネル部は、N個(Nは整数)の検出パッド部を備え、
前記検出チャネル部の検出パッド部は、前記検出パッド部のマトリクス(104)を分割してできるN個のサブマトリクス(301-304)のうちのサブマトリクスに一意に属する、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記検出パッド部のマトリクス(104)は、数百平方センチメートルオーダーの領域を覆う、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記検出パッド部のマトリクス(104)における前記検出パッド部は、0.1mm以上10mm以下からなるピッチを有する、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記検出パッド部のマトリクス(104)は、支持構造(211)の一側部に存在し、前記支持構造の他側部は、前記検出チャネル部の電気回路(213)を備える、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記イオン化チャンバ(103)は、一対の平行なガラス板(201,202)を備える、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
少なくともの1つ前記平行なガラス板(201,202)は、半導電性コーティング(206)を備える、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュールにおいて、
前記イオン化可能媒体(205)は、電子および光子を吸収するクエンチャを備える、イオン化粒子検出モジュール。
【請求項9】
対象物を横断したイオン化粒子の検出に基づいて当該対象物を撮像するように適合した放射線画像撮像システム(600)であって、
請求項1~8のいずれか1つに記載のイオン化粒子検出モジュール(601,602)を少なくとも1つ備える、放射線画像撮像システム。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線画像撮像システムにおいて、
並置された2つのイオン化粒子検出モジュール(601,602)を備える、放射線画像撮像システム。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線画像撮像システムにおいて、
前記2つのイオン化粒子検出モジュール(601,602)の一方(601)における前記横断点ロケータ部(102)によって提供される前記横断点インジケーションと、前記2つのイオン化粒子検出モジュールの他方(602)における前記横断点ロケータ部によって提供される横断点インジケーションとに基づいて、前記検出されたイオン化粒子についての入射角インジケーションを提供するように適合している、放射線画像撮像システム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の放射線画像撮像システムにおいて、
前記2つのイオン化粒子検出モジュール(601,602)のどちらにおける前記検出チャネル部が局所的なイオン化のインジケーションを最初に提供したかを特定することにより、前記検出されたイオン化粒子についての方向インジケーションを提供するように適合している、放射線画像撮像システム。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1つに記載の放射線画像撮像システムにおいて、
同じ面(505)に近接して配置されるように適合した複数のイオン化粒子検出器(501-504)を備える、放射線画像撮像システム。
【請求項14】
対象物を撮像するための請求項9~13のいずれか1つに記載の放射線画像撮像システムの使用であって、
ミューオンは、前記対象物を横断し検出される前記イオン化粒子を構成する、使用。
【請求項15】
撮像対象物を横断したイオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像方法であって、
以下で構成される:
- 以下を備えるイオン化粒子検出器(102):
- イオン化チャンバ(103)であって、当該イオン化チャンバを横断するイオン化粒子に反応して当該イオン化チャンバ内でイオン化可能媒体(205)に局所的なイオン化(215)を生成するように適合したイオン化チャンバ;
- 検出パッド部のマトリクス(104)であって、個々の検出パッド部が前記イオン化チャンバにおける個々のゾーンを覆うように、前記イオン化チャンバに面する検出パッド部のマトリクス;および
- 複数の検出チャネル部(105)であって、個々の検出チャネル部が、以下の規則に従って、互いに電気的に相互接続された検出パッド部からなる個々の相互排他的な群を備える、複数の検出チャネル部:
- 検出チャネル部の前記検出パッド部は、隣接せず、前記マトリクス全体に散在していること;
- 2つの検出チャネル部は、隣り合う最大2個の検出パッド部を有し、当該2個の検出パッド部の一方は、当該2つの検出チャネル部の一方に属し、当該2個の検出パッド部の他方は、当該2つの検出チャネル部の他方に属すること、
検出チャネル部(107)は、当該検出チャネル部の前記個々の検出パッド部によって覆われた、前記イオン化チャンバにおける前記個々のゾーン内のどこかで発生する局所的なイオン化のインジケーションを提供するように適合している、
当該方法は、以下を備える:
- 同時に局所的なイオン化のインジケーションを提供する検出チャネル部に属する前記検出パッド部の中から検出パッド部のクラスタを特定するステップ;および
- 特定された前記クラスタが所定の最小数の検出パッド部を備える場合に当該クラスタに基づいて横断点インジケーションを提供するステップであって、当該横断点インジケーションは、前記イオン化粒子が前記イオン化チャンバをどこで横断したかを示す、ステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、撮像対象物を横断したイオン化粒子の検出のためのイオン化粒子検出モジュールに関する。イオン化粒子は、例えばミューオンであり得る。イオン化粒子検出モジュールは、例えばミューオンテレスコープ、ミューオグラフまたはミューオスコープと呼ばれるものなどの放射線画像撮像システムの一部を形成し得る。本発明の他の態様は、放射線画像撮像システムおよびその使用、ならびに撮像対象物を横断したイオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物は、当該対象物を横断したイオン化粒子を検出することにより撮像され得る。イオン化粒子は、ミューオンであり得る。ミューオンは、宇宙線によって大気圏の上部で生成される。ミューオンは、比較的大きな透過力を有する。その結果、ミューオンは、例えば貨物、建物、さらには山などの比較的大きな対象物を横断し得る。海面には、ミューオンは、約100Hz/mの割合で到来する。ミューオンに基づく撮像は、一般的に新語により「ミューオグラフィ」と呼ばれる。例えば「ミューオンラジオグラフィ」、「ミューオントモグラフィ」および「宇宙線ラジオグラフィ」などの他の用語も使われる。
【0003】
2つの基本的なミューオグラフィ技術:吸収ベースのミューオグラフィおよび散乱ベースのミューオグラフィが存在する。吸収ベースのミューオグラフィでは、ミューオンが撮像対象物に対して片側で検出される。撮像は、ミューオンが対象物を通過する確率に基づいている。散乱ベースのミューオグラフィでは、ミューオンが、撮像対象物の2つの対向する側で検出される。ミューオンの軌道は、対象物を通過する前および後で検出される。撮像は、対象物を横断したミューオンの散乱に基づいている。
【0004】
ミューオグラフィは、吸収ベースであっても散乱ベースであっても、比較的長い時間がかかり得る。比較的小さな対象物を撮像するのに数時間がかかり得る。比較的大きな対象物を撮像するのに数週間がかかり得る。これは、ミューオンが到来する割合が比較的低いからである。ほとんどのミューオンが天頂に近い角度から優先的に到来することから、対象物の向きも一因となっている。
【0005】
ミューオグラフィは、入射ミューオンを検出して、入射ミューオンが検出モジュールをどこで横断したかを示す、検出モジュールを一般的に含む。検出モジュールは、いわゆるガラス抵抗板チャンバを備え得る。基本的に、ガラス抵抗板チャンバは、抵抗性の外層が設けられた一対の平行なガラス板の間に備えられるチャンバである。チャンバは、イオン化ガスを含む。比較的高い電圧が、平行なガラス板の抵抗性外層の間に印加される。これは、イオン化ガスで満たされたチャンバに比較的強い電場を生成する。チャンバを横断するミューオンは、その航跡にイオン化ガスの痕跡を残す。このイオン化ガスの痕跡は、平行なガラス板の1つに面する導電性ストリップによって検出され得る。
【0006】
検出モジュールは、典型的に2つのガラス抵抗板チャンバを備える。2つのガラス抵抗板チャンバの一方は、X方向に導電性ストリップのアレイを備える。他方のガラス抵抗板チャンバは、Y方向、すなわちX方向に直交する方向に導電性ストリップのアレイを備える。2つのガラス抵抗板チャンバを横断するミューオンは、これらのチャンバの各々で局所的なイオン化を引き起こす。一方のチャンバでは、これがX方向における導電性ストリップの1つで信号を生じさせる。他方のチャンバでは、これがY方向における導電性ストリップの1つで信号を生じさせる。これらのそれぞれの信号が生じた、X方向における導電性ストリップとY方向における導電性ストリップとは、ミューオンが検出モジュールをどこで横断したかを示す。
【0007】
ミューオンの軌道を検出するためには、前述の2つの検出モジュールが必要である。各検出モジュールは、ミューオンが当該検出モジュールをどこで横断したかを示す。これらのインジケーションに基づいて、方位角方向における入射角と仰角方向における入射角とを特定することができる。これらの角度は、2つの検出モジュールを横断するミューオンの軌道を示す。したがって、ミューオン軌道の検出は、4つのガラス抵抗板チャンバを伴う。
【0008】
米国特許第10451745号は、先行技術の一例である。この公報は、ミューオン方向と飛行軌道または経路とを特定することが可能なミューオン検出システムについて説明している。このミューオン検出システムは、ミューオン方向を特定するためのシンチレータと、直交する層に配置された、飛行軌道を特定するためのミューオン検出器のアレイとを含む。このシステムは、トモグラフィおよびテレスコピックモードの撮像に使用可能であって、隠されたおよび/または地下の対象物を撮像するのに使用され得る。
【0009】
Procureur S.らによる、“Genetic multiplexing and first results with a 50×50cm Micromegas”と題された、Nuclear Instruments & Methods in Physics Research,Section A,Vol.729,888-894頁に掲載された論文は、先行技術の他の一例である。この論文は、Micromegas検出器、より一般的にはどのマイクロパターンガス検出器(MGDP)でも、粒子が通常、いくつかの隣接するストリップに信号を残すことが判明したと述べている。この特徴は、明らかに冗長性を持ち、適切なグループ化パターンを持つ粒子を突き止めるのに利用可能である。実際に、2つの隣接するストリップiおよびi+1が2つの所定のチャネルaおよびbと接続され、これらのチャネルの各々が順番にいくつかの他のストリップと接続されると仮定する。この接続は、2つのチャネルの所定の組に対して、2つの連続するストリップの組が1つのみ存在するように行われる。したがって、信号がチャネルaおよびbにのみ記録された場合、この信号がストリップiおよびi+1の近くでの粒子の通過に起因することがほぼ確実である。このいわゆる遺伝的多重化は、欧州特許出願公開第2749903号にも記載されている。
【発明の概要】
【0010】
以下の側面の少なくとも1つにおける改善を可能とするイオン化粒子検出モジュールが求められている:小型化、軽量化、使い易さ、空間分解能、低コストおよび低消費電力。
【0011】
本発明の一態様は、請求項1に規定されるように、以下を備えるイオン化粒子検出モジュールを提供する:
- 以下を備えるイオン化粒子検出器:
- イオン化チャンバであって、当該イオン化チャンバを横断するイオン化粒子に反応して当該イオン化チャンバ内でイオン化可能媒体に局所的なイオン化を生成するように適合したイオン化チャンバ;
- 検出パッド部のマトリクスであって、個々の検出パッド部が前記イオン化チャンバにおける個々のゾーンを覆うように、前記イオン化チャンバに面する検出パッド部のマトリクス;および
- 複数の検出チャネル部であって、個々の検出チャネル部が、以下の規則に従って、検出パッド部からなる個々の相互排他的な群を備える、複数の検出チャネル部:
- 検出チャネル部の前記検出パッド部は、隣接せず、前記マトリクス全体に散在していること;
- 2つの検出チャネル部は、前記マトリクスで隣り合う最大2個の検出パッド部を有し、当該2個の検出パッド部の一方は、当該2つの検出チャネル部の一方に属し、当該2個の検出パッド部の他方は、当該2つの検出チャネル部の他方に属すること、
検出チャネル部は、当該検出チャネル部の前記個々の検出パッド部によって覆われた、前記イオン化チャンバにおける前記個々のゾーン内のどこかで発生する局所的なイオン化のインジケーションを提供するように適合している;
ならびに
- 横断点ロケータ部であって、同時に局所的なイオン化のインジケーションを提供する検出チャネル部に属する前記検出パッド部の中からクラスタを特定するように適合していて、特定された前記クラスタが所定の最小数の検出パッド部を備える場合に当該クラスタに基づいて横断点インジケーションを提供するように適合しており、当該横断点インジケーションは、前記イオン化粒子が前記イオン化チャンバをどこで横断したかを示す、横断点ロケータ部。
【0012】
本発明のさらなる一態様は、請求項9に規定されるように、対象物を横断したイオン化粒子の検出に基づいて当該対象物を撮像するように適合した放射線画像撮像システムを提供し、前記放射線画像撮像システムは、上に規定されたイオン化粒子検出モジュールを少なくとも1つ備える。
【0013】
本発明のさらなる他の一態様は、請求項14に規定されるように、対象物を撮像するためのこのような放射線画像撮像システムの使用を提供し、ミューオンは、前記対象物を横断し検出される前記イオン化粒子を構成する。
【0014】
本発明のさらなる他の一態様は、請求項15に規定されるように、撮像対象物を横断したイオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像方法を提供し、当該使用は、以下で構成される:
- 以下を備えるイオン化粒子検出器:
- イオン化チャンバであって、当該イオン化チャンバを横断するイオン化粒子に反応して当該イオン化チャンバ内でイオン化可能媒体に局所的なイオン化を生成するように適合したイオン化チャンバ;
- 検出パッド部のマトリクスであって、個々の検出パッド部が前記イオン化チャンバにおける個々のゾーンを覆うように、前記イオン化チャンバに面する検出パッド部のマトリクス;および
- 複数の検出チャネル部であって、個々の検出チャネル部が、以下の規則に従って、互いに電気的に相互接続された検出パッド部からなる個々の相互排他的な群を備える、複数の検出チャネル部:
- 検出チャネル部の前記検出パッド部は、隣接せず、前記マトリクス全体に散在していること;
- 2つの検出チャネル部は、隣り合う最大2個の検出パッド部を有し、当該2個の検出パッド部の一方は、当該2つの検出チャネル部の一方に属し、当該2個の検出パッド部の他方は、当該2つの検出チャネル部の他方に属すること、
検出チャネル部は、当該検出チャネル部の前記個々の検出パッド部によって覆われた、前記イオン化チャンバにおける前記個々のゾーン内のどこかで発生する局所的なイオン化のインジケーションを提供するように適合している、
当該方法は、以下を備える:
- 同時に局所的なイオン化のインジケーションを提供する検出チャネル部に属する前記検出パッド部の中から検出パッド部のクラスタを特定するステップ;および
- 特定された前記クラスタが所定の最小数の検出パッド部を備える場合に当該クラスタに基づいて横断点インジケーションを提供するステップであって、当該横断点インジケーションは、前記イオン化粒子が前記イオン化チャンバをどこで横断したかを示す、ステップ。
【0015】
これらの側面の各々では、単一のイオン化チャンバを備える単一のイオン化粒子検出モジュールが、イオン化粒子がイオン化チャンバをどこで横断したかのインジケーションを提供することができる。これ故に、イオン化粒子の軌道を特定するには、2つのイオン化チャンバを備える2つのこのようなモジュールだけで十分である。これに対して、先行技術では、イオン化粒子の軌道を特定するのに4つのイオン化チャンバが必要である。したがって、上に規定されたイオン化粒子検出モジュールは、よりコンパクトで、より軽量で、より低コストな放射線画像撮像システムを可能とする。
【0016】
上に規定されたようなイオン化粒子検出モジュールは、検出可能な横断点の総数と比較して、比較的少ない検出チャネル部を備え得る。すなわち、比較的少ない検出チャネル部で、満足のいく空間分解能を達成することができる。検出チャネル部が一般的に比較的高い消費電力を有し、比較的高価であることを考慮すると、これは、比較的低い消費電力予算およびコスト予算内で満足のいく分解能を達成することにつながる。
【0017】
上に規定されたようなイオン化粒子検出モジュールは、シンチレータバーに基づく検出器の魅力的な代替案となり得る。携帯が必要な放射線画像撮像システムは、特にミューオグラフで、シンチレータバーが比較的コンパクトで、比較的軽量で、比較的少ない電力を消費することから、シンチレータバーに基づく検出器を備え得る。しかしながら、これらの検出器は、比較的低い空間分解能を有する。上に規定されたようなイオン化粒子検出モジュールは、コンパクトで、比較的軽量で、かつ比較的少ない電力を消費しつつも、格段に優れた空間分解能を提供し得る。
【0018】
したがって、上に規定されたようなイオン化粒子検出モジュールは、以下の基準の少なくとも1つが重要である適用で、利点を得るのに使用され得る:小型化、軽量化、使い易さ、空間分解能、低コスト、低消費電力。例えば、イオン化粒子検出モジュールは、例えば地下空洞などの比較的小さな空間で動作する放射線画像撮像システムで使用され得る。このような動作は、例えば鉱山探査または考古学で必要であり得る。他の使用例は、物体や、例えば核廃棄物キャスクなどの容器の検査に関する。固定された走査ポータルを使用する代わりに、このようなキャスクは、ポータブルな放射線画像撮像システムによって検査され得、このポータブルな放射線画像撮像システムは、低い消費電力のおかげで電池駆動であり得る。さらに、小型化によって、イオン化粒子検出モジュールが、密集して詰め込まれ得るこれらのキャスクの間の比較的狭い空間に配置され得る。
【0019】
本発明の他の利点は、検出の信頼性に関する。ノイズ、干渉およびその他の寄生効果は、特に多重化方式が適用されたときに、イオン化粒子の誤検出を引き起こし得る。検出が2つのグリッドアレイ、XグリッドおよびYグリッドを伴う場合、二次元面で、誤った位置特定の可能性が2つ存在する。誤検出がXグリッドで発生し得、あるいは誤検出がYグリッドまたはこれらの両方で発生し得る。これに対して、本発明によれば、イオン化粒子の検出は、検出パッド部のマトリクスを伴い、このマトリクスは、二次元面における誤った位置特定の唯一の可能性を構成する。誤った位置特定の可能性は、低くなる。さらに、検出パッド部のマトリクスは、クラスタの形状を特定することを可能とし、このクラスタの形状の特定は、クラスタがイオン化粒子に起因している可能性が最も高いのか、あるいは寄生効果によって引き起こされた可能性が最も高いのか、を確実に判断するのに一助となり得る。
【0020】
本発明のさらに他の利点は、全体的な検出効率に関する。平面を横断するイオン化粒子を検出する検出器は、所定の効率で検出する。平面を横断する100個のイオン化粒子のうち、100未満の所定の数のみが検出され、これは、効率の%として表され得る。イオン化粒子の軌道を検出する先行技術の方法は、少なくとも4つの検出面:上側X面、上側Y面、下側X面および下側Y面、を要する。これに対して、特許請求の範囲に記載された本発明は、上に規定されたように2つの検出モジュールに設けられた2つの検出面のみで軌道を検出するのを可能とする。前述の検出面の各々が、所定の、例えば90%の効率を有すると仮定すると、特許請求の範囲に記載された本発明は、66%よりも若干少ない検出効率を有する先行技術の方法と比較して、より高い検出効率、具体的には81%の検出効率を可能とする。
【0021】
例示を目的として、本発明のいくつかの実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本明細書では、追加の特徴が提示され、そのうちのいくつかは、従属請求項に規定され、利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、イオン化粒子検出モジュールのブロック図である。
図2図2は、イオン化粒子検出モジュールにおけるイオン化粒子検出器の模式的な断面図である。
図3図3は、検出パッド部が属する検出チャネル部を示す参照数字とともに、イオン化粒子検出器における検出パッド部のマトリクスの模式的な天面図である。
図4図4は、検出パッド部と図3に表されたようにこれらが属する検出チャネル部とのマトリクスに関連する、クラスタサイズのヒストグラムである。
図5図5は、同じ面に配置されたイオン化粒子検出モジュールのアセンブリの模式的なブロック図である。
図6図6は、並置された2つのイオン化粒子検出モジュールを備える放射線画像撮像システムの模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、イオン化粒子検出モジュール100を模式的に示している。図1は、イオン化粒子検出モジュール100の極めて模式的なブロック図を提供する。イオン化粒子検出モジュール100は、例えばいわゆるミューオグラフで使用され得る。ミューオグラフは、撮像対象物を横断したミューオンを検出することにより対象物を撮像する放射線画像撮像システムである。
【0024】
イオン化粒子検出モジュール100は、イオン化粒子検出器101と、横断点ロケータ部102とを備える。イオン化粒子検出器101は、イオン化チャンバ103と、イオン化チャンバ103に面する検出パッド部のマトリクス104と、複数の検出チャネル部105とを備える。検出チャネル部は、互いに電気的に相互接続され得る検出パッド部からなる群を備える。これに関しては、後述する所定の規則が適用される。図1では、単純明快にするために、1個の検出パッド部のみが参照符号106によって示されており、1つの検出チャネル部のみが参照符号107によって示されている。
【0025】
前述したように、図1は、極めて模式的である。検出パッド部のマトリクス104は、任意の数の検出パッド部を備え得る。図1は、単なる便宜上、6×6の検出パッド部を示している。同様に、図1は、単なる便宜上、4つの検出チャネル部を示している。検出チャネル部の数は、一般的に検出パッド部の数を多重化係数で割ったものに対応する。これについては、より詳細に後述する。
【0026】
横断点ロケータ部102は、適切にプログラムされたプロセッサまたはプロセッサの集合によって実施され得る。横断点ロケータ部102は、後述する様々な動作を実行する。ソフトウェアプログラムは、これらの動作を規定し得る。
【0027】
図2は、イオン化粒子検出器101の一実施形態を模式的に示しており、イオン化粒子検出器101は、図1に示されたイオン化粒子検出モジュール100の一部を形成する。図2は、本実施形態の模式的な断面図を提供し、これは、以下便宜上、イオン化粒子検出器101としても参照される。イオン化粒子検出器101は、単純化するために図2には表されていないケーシングに収容され得る。ケーシングは、例えばアルミニウム、炭素繊維材料または樹脂材料を備え得る。ケーシングは、アウトガスフリーであることが好ましい。
【0028】
本実施形態で、イオン化チャンバ103は、一対の平行なガラス板201,202を備える。以下便宜上、これらのガラス板の一方である201は、上側のガラス板201として参照され、これに対して他方のガラス板202は、下側のガラス板202として参照される。上側のガラス板201は、数百平方センチメートルオーダーの表面領域と、例えば0.5mm以上3mm以下の厚さとを有し得る。下側のガラス板202は、同様の表面領域および同様の厚さを有し得る。一対の平行なガラス板201,202の間の間隙は、例えば1mm以上3mm以下であり得る。
【0029】
一対の平行なガラス板201,202は、フレーム部203に固定され得る。フレーム部203は、例えば繊維材料製であり得る。イオン化チャンバ103は、図2に示されるように、一対の平行なガラス板201,202の間にスペーサ204をさらに備え得る。これらのスペーサ204は、ボール形状であり得、例えばセラミック材料または一般的に頭字語PEEKによって示されるポリエーテルエーテルケトン製であり得る。スペーサ204は、一対の平行なガラス板201,202の間の間隙の均一性に寄与する。
【0030】
一対の平行なガラス板201,202の間の間隙は、イオン化可能媒体205で満たされ、イオン化可能媒体205は、ガスであり得る。イオン化可能媒体205は、以下例示としてイオン化ガス205として参照される。イオン化ガス205は、例えばフレオン、イソブタンおよび六フッ化硫黄(SF)の混合物または任意の他の適切な混合物であり得る。一例として、フレオンは、95%以上99%以下からなる割合で存在し得、イソブタンは、1%以上5%以下の割合で存在し得、六フッ化硫黄は、0.1%以上2%以下の割合で存在し得る。フレオン95.2%、イソブタン4.5%および六フッ化硫黄0.3%の混合物は、満足のいく結果を提供した。イオン化ガス205は、好ましくは低い可燃性の程度および低い毒性の程度を有する。さらに、イオン化ガス205が比較的低い地球温暖化係数を有することが望ましい。
【0031】
イオン化ガス205は、わずかな過圧を有し得る。すなわち、イオン化チャンバ103内のイオン化ガス205は、大気圧よりもわずかに高い圧力を有し得る。したがってイオン化ガス205のいかなる漏れは、外部から内部にではなく、内部から外部に向かう。これにより、イオン化チャンバ103内のイオン化ガス205の汚染が回避される。
【0032】
イオン化チャンバ103は、比較的高い気密度を有するように構成されている。イオン化チャンバ103は、イオン化ガス205のいかなる漏れが比較的低い割合で発生するように構成され得、この割合は、例えば10-9mbarリットル/秒未満であり得る。これは、環境の安全性に寄与する。さらに、このような高い気密度は、イオン化ガス205の漏れを補うための1つ以上のガスボトルの必要性を除去し得る。結果として、これは、イオン化粒子検出器101の携帯性に寄与する。
【0033】
比較的高い気密度は、以下の方法で達成可能である。イオン化チャンバ103をイオン化ガス205で満たす前に、真空が、イオン化チャンバ103に、一対の平行なガラス板201,202の間の間隙に作られる。続いて、ヘリウムまたは他の適切なガスを用いて、漏れが発生している箇所が特定され得る。次に、これらの特定された箇所が、そこで漏れが発生するのを防ぐために処理される。このプロセスは、1回または数回繰り返され得る。
【0034】
上側のガラス板201は、半導電性コーティング206が設けられた外側部を有する。同様に、下側のガラス板202は、コーティング207が設けられた外側部を有し、コーティング207も、半導電性であり得る。上側のガラス板201上の半導電性コーティング206は、例えばグラファイトまたはアンチモンドープト酸化錫を備え得る。半導電性コーティング206は、例えば10マイクロメートル以上50マイクロメートル以下の厚さを有し得る。半導電性コーティング206は、例えば0.5MΩ/平方以上10MΩ/平方以下からなる表面抵抗率を有し得る。半導電性コーティング206は、上側のガラス板201上に、例えば塗装またはセリグラフィによって積層され得る。前述のことは、下側のガラス板202上のコーティング207にも適用され得る。
【0035】
高電圧源208は、上側のガラス板201上の半導電性コーティング206と下側のガラス板202上のコーティング207との間に、比較的高いバイアス電圧を印加する。このバイアス電圧は、例えば5キロボルト(kV)以上15キロボルト(kV)以下であり得る。これは、イオン化チャンバ103に、イオン化ガス205で満たされた一対の平行なガラス板201,202の間の間隙に、比較的強い電場を生成する。
【0036】
電気絶縁層209は、検出パッド部のマトリクス104と上側のガラス板201上の半導電性コーティング206との間に存在する。電気絶縁層209は、例えばマイラーシートの形態であり得る。電気絶縁層209は、例えば20マイクロメートル以上100マイクロメートル以下の厚さを有し得る。電気絶縁層210は、また、下側のガラス板202上のコーティング207を覆い得る。この電気絶縁層210は、上側のガラス板201上の半導電性コーティング206を覆うものと同様であり得る。
【0037】
検出パッド部のマトリクス104は、イオン化チャンバ103に面し、支持構造211に設けられている。検出パッド部は、従来のイオン化粒子検出器で使用されるストリップとは異なり、例えば導電性材料製の矩形平面状の要素の形態であり得る。支持構造211は、例えば両面プリント回路基板またはこれらの間に相互接続を有するこのような基板の平面アセンブリの形態であり得る。支持構造211は、以下例示としてプリント回路基板211として参照される。したがって、検出パッド部のマトリクス104は、生プリント回路基板を適切にエッチングすることにより形成され得る。保護カバー212は、図2に示されるように、プリント回路基板211に適用され得る。保護カバー212は、例えばポリカーボネートからなり得る。
【0038】
検出パッド部のマトリクス104は、プリント回路基板211の一側部に存在し、これは、以下便宜上、下側部として参照される。プリント回路基板211の他側部は、上側部として参照され、電気回路213を備える。これらの電気回路213は、図1を参照して前述した複数の検出チャネル部105の一部であり得る。検出チャネル部の電気回路は、例えば電荷感応型増幅器、弁別回路、単安定回路およびドライバ回路を備え得る。電気回路213は、一般的に頭字語“ASIC”によって示される特定用途向け集積回路の形態であり得る。
【0039】
検出パッド部のマトリクス104は、数百平方センチメートルオーダーの領域を覆い得る。例えば、覆われた領域は、16cm×16cmであり得る。検出パッド部のマトリクス104は、例えば0.1mm以上10mm以下からなるピッチを有し得る。図2は、個々の検出パッド部がイオン化チャンバ103における個々のゾーンを覆うのを示している。図2では、このようなゾーンの1つのみが参照符号214によって示されている。このゾーン214は、検出パッド部106によって覆われている。したがって、個々の検出パッド部によって覆われた個々のゾーンは、共同で、イオン化チャンバ103内で比較的小さなブロックのマトリクスを構成する。
【0040】
イオン化粒子検出器は、基本的に次の通りに動作する。例えばミューオンなどのイオン化粒子がイオン化チャンバ103を横断すると仮定する。図2は、このような事象を破線矢印によって示している。イオン化粒子は、イオン化ガス205に局所的なイオン化215を生成する。より詳細には、イオン化粒子は、初期の自由電荷キャリアを生成する。これらは、イオン化チャンバ103における比較的強い電場の結果として、自由電荷キャリアの電子なだれを引き起こす。電子なだれは、図2に模式的に示されるように、個々の隣接する検出パッド部によって覆われた、イオン化チャンバ103におけるいくつかの個々の隣接するゾーンにわたって広がり得る。局所的なイオン化215を覆うこれらの隣接する検出パッド部は、クラスタを形成する。クラスタは、検出パッド部のマトリクス104が二次元アレイであるという事実に起因して、典型的に二次元となる。検出パッド部は、面で構成されていて、行と列とに配置されている。したがって、クラスタでは、検出パッド部が、行方向および列方向に隣接する検出パッド部を有し得る。
【0041】
局所的なイオン化を覆う検出パッド部のクラスタは、様々な要素に依拠する典型的なサイズを有する。これらの要素の1つは、検出パッド部のピッチおよびそれらのサイズに関する。ピッチが小さいほど、クラスタがより多くの検出パッド部を典型的に備える。他の要素は、一対の平行なガラス板201,202の間の間隙、そのサイズに関する。さらに他の要素は、一対の平行なガラス板201,202の間に印加されるバイアス電圧に関する。さらに他の要素は、イオン化ガス205、その組成に関する。したがって、これらすべての要素は、いわば、イオン化チャンバ103を横断するイオン化粒子によって生成されるイオン化位置を覆う検出パッド部のクラスタの典型的なサイズを調整するのに使用され得る。
【0042】
例えば、イオン化ガス205は、電子および光子を吸収するいわゆるクエンチャを備え得る。クエンチャは、電子なだれに対する拡大効果を有する。拡大効果は、クエンチャがイオン化ガス205に存在する割合と、使用されるクエンチャの種類とに依拠し得る。前述の混合物では、イソブタンおよび六フッ化硫黄がクエンチャである。
【0043】
局所的なイオン化は、局所的なイオン化が発生するゾーンを覆う検出パッド部にパルス状信号を生じさせる。このパルス状信号は、典型的に、比較的弱く、持続時間が比較的短い。例えば、パルス状信号は、ナノ秒の10分の1のオーダーの立ち上がりと、ナノ秒オーダーの立ち下がりと、またナノ秒オーダーの総持続時間と、を有し得る。例えば、立ち上がりは、約0.2nsであり得、立ち下がりは、約2nsであり得、総持続時間は、約3~4nsであり得る。
【0044】
上側のガラス板201上の半導電性コーティング206は、局所的なイオン化を覆う検出パッド部のクラスタに生じるパルス状信号に関する役割を果たす。まず、このコーティング206の半導電性の性質は、パルス状信号が生じる、またはより正確には、これらの信号が十分に確実に検出可能なようにこれらが生じることを可能とする。パルス状信号は、半導電性コーティング206が例えば0.5MΩ/平方以上10MΩ/平方以下からなる表面抵抗率を有する場合に十分に確実に検出され得、約2MΩ/平方が適切な抵抗率であることが判明している。適切な抵抗率を見つけることは、妥協を伴い得る。一方で、抵抗率が低いほど、イオン化粒子が互いに追従して確実に検出され得る割合が高くなる。他方で、抵抗率が高いほど、個々の隣接する検出パッド部に生じる個々のパルス状信号の間のクロストークが少なくなる。
【0045】
検出パッド部がパルス状信号を生成する検出チャネル部は、アウトプットとして局所的なイオン化のインジケーションを提供するように、この信号を処理する。この処理は、パルス状信号が、前述したように典型的に、比較的弱く、持続時間が比較的短いことを考慮すると、比較的高感度で速い電子機器を要し得る。例えば、入力増幅器は、数mV/fCオーダーの電荷感度を有し、数百ピコ秒オーダーの過渡信号を処理することができる能力を有する必要があり得る。一般的に、検出チャネル部における比較的高感度で速い電子機器は、比較的高価であり、比較的高い消費電力を有する。これ故に、イオン化粒子検出モジュール100が比較的少ない検出チャネル部を備えつつも、十分に高い分解能を提供することが望ましい。これらの目的は、以下の内容から明らかなように、本明細書に記載されているイオン化粒子検出モジュール100によって達成され得る。
【0046】
前述したように、検出チャネル部は、互いに電気的に相互接続され得る検出パッド部からなる群を備える。これ故に、検出チャネル部が局所的なイオン化のインジケーションを提供する場合、局所的なイオン化は、検出チャネル部に属する群における個々の検出パッド部によって覆われた、イオン化チャンバ103における個々のゾーンのいずれか1つで発生した可能性がある。すなわち、検出チャネル部によって提供されるインジケーションだけに基づいて、局所的なイオン化が発生した、イオン化チャンバ103におけるゾーンを特定することは不可能である。
【0047】
前に説明したように、局所的なイオン化は、検出パッド部のクラスタにパルス状信号を生じさせる。これらのパルス状信号は、ほぼ同時に生じる。この結果、局所的なイオン化が発生する場合、いくつかの検出チャネル部がこれらのパルス状信号をほぼ同時に受け取り処理する。パルス状信号の1つを最初に受け取る検出チャネル部は、時間ウィンドウを開き得る。そして、このパルス状信号と、他の検出チャネル部によって受け取られて処理される、この時間ウィンドウ内の後続のパルス状信号とは、検出パッド部のクラスタに生じたとみなされ得る。時間ウィンドウは、例えば数十ナノ秒オーダー、例えば80nsなどであり得る。したがって、イオン化チャンバ103を横断するイオン化粒子によって生成される局所的なイオン化は、典型的に、いくつかの検出チャネル部に局所的なイオン化のインジケーションを同時に、またはほぼ同時に提供させる。
【0048】
以上を踏まえて、局所的なイオン化がイオン化チャンバ103のどこで発生したかの信頼性があるインジケーションは、以下の2つのデータに基づいて提供され得る。第一に、局所的なイオン化が潜在的に発生したとし得る、イオン化チャンバ103における個々のゾーンが特定された。具体的には、これらの個々のゾーンは、局所的なイオン化のインジケーションを提供したいくつかの検出チャネル部に属する個々の検出パッド部によって覆われたものである。第二に、検出パッド部のクラスタが局所的なイオン化を覆うことが知られていて、さらに、このクラスタが典型的に有するサイズも知られている。そして、これ故に、局所的なイオン化のインジケーションを提供したいくつかの検出チャネル部に属する個々の検出パッド部の中でクラスタを形成する検出パッド部が存在するか否かが特定され得る。そして、このようなクラスタが、局所的なイオン化について典型的なサイズに対応するサイズを有するか否か、または少なくともクラスタのサイズが典型的なサイズに十分に近いか否かが特定され得る。
【0049】
図3は、検出チャネル部を示す参照数字とともに、検出パッド部のマトリクス104の一実施形態を極めて模式的に示している。図3は、本実施形態の模式的な天面図を提供し、これは、以下便宜上、検出パッド部のマトリクス104としても参照される。検出パッド部は、比較的小さな矩形として表されていて、単一の矩形は、単一の検出パッド部を表している。本実施形態で、マトリクス104は、合計256個の検出パッド部となる、16×16の検出パッド部を備える。検出チャネル部は、検出パッド部の合計の4分の1である、64個存在する。検出チャネル部は、検出パッド部を表す矩形に参照数字として表されている。検出パッド部を表す矩形における参照数字は、その検出パッド部が属する検出チャネル部を示している。
【0050】
したがって、例えば図3における左上部の矩形は、マトリクス104における左上部の検出パッド部を表している。左上部の矩形は、参照数字1を備え、これは、左上部の検出パッド部が検出チャネル部1に属することを示している。図3における右上部の矩形は、マトリクス104における右上部の検出パッド部を表している。右上部の矩形は、参照数字15を備え、これは、右上部の検出パッド部が検出チャネル部15に属することを示している。図3における左下部の矩形は、マトリクス104における左下部の検出パッド部を表している。左下部の矩形は、参照数字26を備え、これは、左下部の検出パッド部が検出チャネル部26に属することを示している。図3における右下部の矩形は、マトリクス104における右下部の検出パッド部を表している。右下部の矩形は、参照数字26を備え、これは、右下部の検出パッド部もまた検出チャネル部26に属することを示している。したがって、最後に述べた2個の検出パッド部は、同じ検出チャネル部に属している。
【0051】
マトリクス104における検出パッド部は、同じ検出チャネル部に属する4個の検出パッド部からなる相互排他的な群に編成される。したがって、検出チャネル部1は、4個の検出パッド部、具体的には参照符号1を有する矩形として表された4個の検出パッド部を備える。同様に、検出チャネル部2は、4個の検出パッド部、具体的には参照符号2を有する矩形として表された4個の検出パッド部を備え、他も同様である。この編成は、4である多重化係数を提供する:256個の検出パッド部が、64つの検出チャネル部に割り当てられている。各検出チャネル部は、4個の検出パッド部からなる群を備え、これらの群は、相互排他的である。同じ検出チャネル部に属する4個の検出パッド部は、図2に示されたプリント回路基板211上で互いに電気的に相互接続され得る。
【0052】
以下の規則が、検出パッド部および検出チャネル部が編成される方法に関して適用される。第一に、検出チャネル部の検出パッド部は、隣接せず、マトリクス104全体に散在している。第二に、2つの検出チャネル部は、マトリクス104で隣り合う最大2個の検出パッド部を有する。2個の検出パッド部の一方は、2つの検出チャネル部の一方に属し、2個の検出パッド部の他方は、2つの検出チャネル部の他方に属する。図3が、これらの規則に従って検出パッド部および検出チャネル部を編成する1つの可能な方式を示していることに留意すべきである。これらの規則を満足する他の多くの方式が考案され得る。
【0053】
図3に示された方式で、検出パッド部のマトリクス104は、4つのサブマトリクス:左上部のサブマトリクス301、右上部のサブマトリクス302、左下部のサブマトリクス303および右下部のサブマトリクス304に分割されたとみなされ得る。これらの4つのサブマトリクスは、サイズが等しく、各々が8×8の検出パッド部を備える。サブマトリクスの数は、前述の多重化係数に対応し、4である。図3に示された方式は、検出チャネル部の検出パッド部が4つのサブマトリクスのうちの1つに一意に属することを提供する。これ故に、4つのサブマトリクスの各々では、検出チャネル部を示す参照数字が1回のみ現れる。マトリクス104の分割によって検出パッド部および検出チャネル部を編成するこの技術は、信頼性がある検出を可能とする方式を達成するのに寄与する。
【0054】
マトリクス104における検出パッド部のサイズおよびピッチは、イオン化チャンバ103を横断するイオン化粒子によって生成される局所的なイオン化が、典型的に3×3の検出パッド部のクラスタでパルス状信号を生じさせるように、なっている。すなわち、局所的なイオン化についての典型的なクラスタサイズは、3×3である。前に説明したように、典型的なクラスタサイズは、他の要素に依拠し、これらの要素は、図2を参照して、一対の平行なガラス板201,202の間の間隙、そのサイズ、一対の平行なガラス板201,202の間に印加されるバイアス電圧、およびイオン化ガス205、その組成を含む。したがって、これらすべての要素は、本実施形態で、検出パッド部のサイズおよびピッチと併せて、局所的なイオン化についての典型的なクラスタサイズが3×3となるように設定されている。
【0055】
図3では、3×3の検出パッド部のクラスタが濃いグレーのシェーディングによって示されている。この3×3のクラスタは、左上部のサブマトリクス301に存在する。3×3のクラスタは、このサブマトリクスにおける、検出チャネル部36に属する検出パッド部を中心としている。3×3のクラスタは、この中心の検出パッド部を取り囲む8個の他の検出パッド部を備える。3×3のクラスタのこれらの8個の他の検出パッド部は、それぞれ検出チャネル部27,28,29,35,37,43,44,および45に属する。この3×3のクラスタの検出パッド部は、イオン化チャンバ103を横断するイオン化粒子によって生成される局所的なイオン化を、3×3のクラスタの中心の検出パッド部によって覆われたゾーンに近い位置で覆う。したがって、この例で、局所的なイオン化を覆う検出パッド部のクラスタの典型的なサイズは、9である。局所的なイオン化は、典型的に、クラスタを形成する9個の相互に隣接する検出パッド部にパルス状信号を生じさせる。
【0056】
図3は、薄いグレーのシェーディングによって、前述の検出チャネル部27,28,29,35,37,43,44,および45に属するが前述の3×3のクラスタの一部ではない、さらなる検出パッド部を示している。これらのさらなる検出パッド部は、他のサブマトリクス、具体的には右上部のサブマトリクス302、左下部のサブマトリクス303および右下部のサブマトリクス304に位置している。さらなる検出パッド部は、偶発的クラスタを形成し得る。例えば、左下部のサブマトリクス303は、検出チャネル部27および37に属する2個のさらなる検出パッド部の偶発的クラスタを備える。したがって、この偶発的クラスタのサイズは、2である。右下部のサブマトリクス304は、検出チャネル部28,29,および44に属する3個のさらなる検出パッド部の偶発的クラスタを備える。したがって、この偶発的クラスタのサイズは、3である。残りについては、比較的多くの孤立したさらなる検出パッド部が存在し、これらは、サイズが1である偶発的クラスタとみなされ得る。
【0057】
図4は、クラスタサイズのヒストグラムであり、これは、検出パッド部のマトリクス104と、図3に表されたようにこれらが属する検出チャネル部とに関連する。ヒストグラムは、以下の方法で取得された。一連の196個のイオン化粒子は、イオン化チャンバ103を連続的に横断すると仮定される。各イオン化粒子は、図3に示されたマトリクス104の境界にない196個の個々の検出パッド部によって覆われた196つの個々のゾーンのうち、異なるゾーンでイオン化チャンバ103を横断する。196という数は、16×16の検出パッド部を備えるマトリクス104と、前述したように局所的なイオン化についての典型的なクラスタサイズが3×3であることとに関連する。これにより、3×3の検出パッド部のクラスタの中心の検出パッド部を形成し得る196個の検出パッド部が、マトリクス104に存在する。
【0058】
したがって、図3を参照して、第一のイオン化粒子は、左上部のサブマトリクス301における検出パッド部によって覆われていて検出チャネル部10に属するゾーンで、イオン化チャンバ103を横断し得る。第二のイオン化粒子は、左上部のサブマトリクス301における検出パッド部によって覆われていて検出チャネル部11に属するゾーンで、イオン化チャンバ103を横断し得る。この方式を続けると、最後の196番目のイオン化粒子は、右下部のサブマトリクス304における、検出チャネル部52に属する検出パッド部を横断する。
【0059】
イオン化チャンバ103を横断する196個のイオン化粒子の各々は、3×3の検出パッド部のクラスタ、すなわち、クラスタサイズが9であるクラスタによって覆われた局所的なイオン化を生成すると仮定される。この結果、横断する各イオン化粒子について、局所的なイオン化のインジケーションを提供する9つの検出チャネル部が存在する。前述したように、各検出チャネル部は、4個の検出パッド部からなる群を備え、個々の検出チャネル部に属する検出パッド部からなる個々の群は、相互排他的である。この結果、イオン化チャンバ103を横断する各イオン化粒子について、図3を参照して前述したように、クラスタが存在する36個の検出パッド部が存在する。クラスタが特定され、1~9の範囲の各クラスタサイズについてカウントが行われる。図4に示されたヒストグラムは、仮定されるようにイオン化チャンバ103を連続的に横断する196個のイオン化粒子の各々について、このカウントを行うことにより取得される。
【0060】
図4に示されたヒストグラムで、サイズ1~8にカウントされたクラスタは、偶発的クラスタとみなされ得る。これは、ヒストグラムが、イオン化チャンバ103を横断する各粒子が、サイズが9である検出パッド部のクラスタによって覆われた局所的なイオン化を生成する、という仮定に基づいて取得されたからである。この結果、異なるサイズを有するいかなるクラスタは、局所的なイオン化を覆わず、したがって、偶発的とみなされ得る。逆に、サイズ9にカウントされたクラスタは、これらのクラスタが局所的なイオン化がイオン化チャンバ103のどこで発生しているかを示すという意味で、真正のクラスタとみなされ得る。
【0061】
図4に示されたヒストグラムは、真正のクラスタと偶発的クラスタとが明確に判別可能であることを表している。真正のクラスタのサイズである9に比較的近い、サイズが7または8であるクラスタは、比較的少ない、あるいはまったく存在しない。したがって、ヒストグラムは、多重化方式の使用にもかかわらず、信頼性がありかつ正確な方法で、イオン化粒子がイオン化チャンバ103を横断する位置を特定することが可能であることを示している。多重化方式は、前述したように検出パッド部の群を同じ検出チャネル部に割り当てることにある。したがって、多重化方式が使用されない場合よりも、検出チャネル部が格段により少なくなる。より少ない検出チャネル部の使用は、より低いコストおよびより低い消費電力につながる。
【0062】
図1に示された横断点ロケータ部102は、以下の動作を実行する。横断点ロケータ部102は、同時に局所的なイオン化のインジケーションを提供する検出チャネル部に属する検出パッド部の中からクラスタを特定する。例えば、横断点ロケータ部102は、図3に示された前述のクラスタを特定し得る。これらのクラスタは、サイズが9であるクラスタ、サイズが3であるクラスタ、サイズが2であるクラスタ、およびサイズが1である22個のクラスタを備える。
【0063】
横断点ロケータ部102は、特定されたクラスタが少なくとも以下のサイズ基準を満足する場合に、当該クラスタに基づいて横断点インジケーションを提供する:クラスタが所定の最小数の検出パッド部を備える。図3を再び参照して、例示として、所定の最小数は、8または9であり得る。したがって、横断点ロケータ部102は、この図で濃いグレーのシェーディングによって示された3×3のクラスタに基づいて、横断点インジケーションを提供し得る。横断点インジケーションは、このクラスタにおける中心の位置に対応し得る。個々の局所的なイオン化のインジケーションについて個々の重み付け要素が設けられている場合、横断点ロケータ部102は、横断点インジケーションを提供する際にこれらの重み付け要素を使用し得る。個々の重み付け要素は、例えばクラスタの個々の検出パッド部で生じるパルス状信号における個々の振幅に基づき得る。
【0064】
横断点ロケータ部102は、横断点インジケーションを提供する際に、サイズ基準に加えて形状基準を適用し得る。イオン化粒子に起因するクラスタは、一般的に、典型的なクラスタ形状を有する。この例で、典型的なクラスタ形状は、行方向および列方向に同様のサイズを有するものと規定され得る。典型的なクラスタ形状は、さらに、行方向における横断線と列方向における横断線とに対してどちらかといえば対称的であるものと規定され得る。クラスタが典型的なクラスタに十分に類似する形状を有する場合、横断点インジケーションは有効であり、したがって、提供される。逆に、クラスタが典型的なクラスタ形状とは大きく異なる形状を有する場合、クラスタがサイズ基準を満たす場合であっても、横断点インジケーションは、無効となり得、したがって、提供されない。
【0065】
図1図4を参照して前述したイオン化粒子検出モジュール100は、例えばミューオンの検出および位置特定に基づくミューオグラフなどの放射線画像撮像システムで使用され得る。基本的に、放射線画像撮像システムは、イオン化粒子検出モジュール100が、撮像時間として参照される時間中に経時的に提供する、個々の横断点インジケーションを収集する。そして、放射線画像撮像システムは、これらの収集された横断点インジケーションに基づいて画像を形成し得る。
【0066】
図5は、同じ面505に配置されたイオン化粒子検出モジュール501,502,503,504のアセンブリ500を模式的に示している。図5は、このアセンブリの模式的なブロック図を提供する。イオン化粒子検出モジュール501,502,503,504は、各々、図1図4を参照して前述したイオン化粒子検出モジュール100に対応し得る。そのイオン化粒子検出器101は、1つ以上の他のイオン化粒子検出器と接続可能なように、基本的な構成要素として構成され得る。これ故に、より多くの検出パッド部を備える、より大きな検出表面が取得され得、これは、より高い分解能を提供し得る。したがって、複数のイオン化粒子検出モジュールは、モジュール式のシステムを形成し得る。図5に示されたアセンブリ500は、例示として4つのイオン化粒子検出モジュール501,502,503,504を備える。このようなアセンブリは、4つよりも多いまたは少ないイオン化粒子検出モジュールを備え得る。
【0067】
図5は、イオン化粒子検出モジュール501,502,503,504のアセンブリ500が一般的な横断点ロケータ部506を備え得ることを模式的に示している。一般的な横断点ロケータ部506は、各イオン化粒子検出モジュール501,502,503,504についての横断点ロケータ部を機能的に提供し得る。例えば、一般的な横断点ロケータ部506は、イオン化粒子がイオン化粒子検出器のイオン化チャンバをどこで横断したかを特定するための前述の動作をこのプロセッサに実行させるソフトウェアプログラムを実行する、単一のプロセッサであり得る。さらに、一般的な横断点ロケータ部506は、イオン化チャンバが横断されたイオン化粒子検出器を特定する。この特定は、検出チャネル部が局所的なイオン化のインジケーションを生成するイオン化粒子検出器を検出することにあり得る。したがって、図5に示されたイオン化粒子検出モジュール501,502,503,504のアセンブリは、図5に示されたアセンブリにおける粒子検出モジュール501,502,503,504の単に1つよりも4倍多い検出パッド部を有する比較的大きなイオン化粒子検出モジュールと機能的に同等であり得る。
【0068】
図6は、並置された2つのイオン化粒子検出モジュール601,602を備える放射線画像撮像システム600を示している。図6は、この放射線画像撮像システム600の模式的なブロック図を提供する。2つのイオン化粒子検出モジュール601,602は、各々、図1図4を参照して前述したイオン化粒子検出モジュール100に対応し得る。以下便宜上、2つのイオン化粒子検出モジュール601,602の一方は、上側のイオン化粒子検出モジュール601として参照される。他方は、下側のイオン化粒子検出モジュール602として参照される。
【0069】
放射線画像撮像システム600は、撮像モジュール603をさらに備える。撮像モジュール603は、上側のイオン化粒子検出モジュール601からの横断点インジケーションと、下側のイオン化粒子検出モジュール602からの横断点インジケーションとを受け取るように接続されている。撮像モジュール603は、さらに、上側のイオン化粒子検出モジュール601における検出チャネル部と、下側のイオン化粒子検出モジュール602における検出チャネル部とから、局所的なイオン化のインジケーションを受け取るように接続されている。撮像モジュール603は、プロセッサが実行し得る動作を規定するソフトウェアプログラムがロードされたプロセッサを備え得る。このプロセッサは、イオン化粒子がイオン化チャンバ103をどこで横断したかを特定するための動作を実施する前述のものと同じであり得る。
【0070】
放射線画像撮像システム600は、基本的に次の通りに動作する。イオン化粒子がまず上側のイオン化粒子検出モジュール601を横断し、次に下側のイオン化粒子検出モジュール602を横断すると仮定する。図6は、このような事象を破線矢印によって示している。このケースで、撮像モジュール603は、まず上側のイオン化粒子検出モジュール601における検出チャネル部から局所的なイオン化のインジケーションを受け取る。比較的短い遅延の後、撮像モジュール603は、下側のイオン化粒子検出モジュール602における検出チャネル部から局所的なイオン化のインジケーションを受け取る。前述の遅延は、数百ピコ秒オーダーであり得る。例えば、ミューオンは、1mにわたって移動するのに3nsを要する。2つのイオン化粒子検出モジュール601,602が例えば約20cmの距離だけ離れている場合、遅延は、約600psとなる。
【0071】
撮像モジュール603は、2つのイオン化粒子検出モジュール601,602のどちらにおける検出チャネル部が局所的なイオン化のインジケーションを最初に提供したかを特定することにより、イオン化粒子についての方向インジケーションを取得し得る。図6に提示されたケースで、方向インジケーションは、イオン化粒子が下向きの軌道を有することを示している。方向インジケーションは、例えばミューオンなどのイオン化粒子が大気から来ているのか、あるいは地表から来ているのかを判別するのに適切であり得る。
【0072】
撮像モジュール603は、図6に破線矢印によって示されたように2つの粒子検出モジュールを横断する、イオン化粒子の軌道604を特定し得る。上側のイオン化粒子検出モジュール601は、イオン化粒子が前述のモジュール601のイオン化チャンバを横断した上側の横断点を示す横断点インジケーションを提供する。ほぼ同時に、前述の比較的短い遅延を考慮すると、下側のイオン化粒子検出モジュール602は、イオン化粒子が前述のモジュール602のイオン化チャンバを横断した下側の横断点を示す横断点インジケーションをまた提供する。そして、撮像モジュール603は、上側の横断点と、下側の横断点と、2つの粒子検出モジュールを離す距離とを考慮して、方位角方向における入射角と、仰角方向における入射角とを算出し得る。これらの入射角は、イオン化粒子の軌道604を示す。
【0073】
撮像モジュール603は、個々の位置が、撮像モジュール603が潜在的に特定し得る個々の軌跡を表す、マップを規定し得る。このマップは、各位置がゼロカウントを有するという意味で、撮像時間の開始時にブランクであり得る。そして、撮像モジュール603は、撮像時間中、マップにおける各位置についてカウントを行い得る。位置についてのカウントは、マップにおける当該位置によって表された軌道とともに、イオン化粒子が2つのイオン化粒子検出モジュール601,602を横断した回数を示す。撮像時間の終了時に、マップが完成し、計測マップを構成する。この計測マップは、参照マップと比較される。参照マップは、2つの粒子検出モジュールに到達するイオン化粒子が横断した可能性がある対象物が全く存在しない場合に取得されるマップに対応し得る。対象物の画像は、参照マップに対する計測マップのこの比較に基づいて取得され得る。
【0074】
図6を参照して前述した放射線画像撮像システム600は、吸収ベースのミューオグラフィ用に構成される。吸収ベースのミューオグラフィでは、ミューオンが撮像対象物に対して片側で検出される。撮像は、ミューオンが対象物を通過する確率に基づいている。吸収ベースのミューオグラフィは、例えばトンネルの内部から土被りを撮像するのに使用され得る。吸収ベースのミューオグラフィは、比較的遠くにあり、比較的大きくあり得る対象物を撮像するのにも使用され得る。このような適用では、ミューオンが検出器をどこで横断したかを特定する精度が、重要な性能要素である。
【0075】
前述したイオン化粒子検出モジュール100は、散乱ベースのミューオグラフィ用に構成された放射線画像撮像システム600にも使用され得る。散乱ベースのミューオグラフィでは、撮像対象物を通過する前および後のミューオンの軌道が、軌道の変化を計測するように検出される。したがって、散乱ベースのミューオグラフィ用に構成された放射線画像撮像システムは、前述したように撮像対象物の一方側に配置された2つのイオン化粒子検出モジュールと、対象物の他方側に配置された2つのさらなるイオン化粒子検出モジュールと、を備え得る。軌道における変化は、2つのイオン化粒子検出モジュールによって対象物の一方側で検出されたミューオンの軌道と、2つのさらなるイオン化粒子検出モジュールによって対象物の他方側で検出された軌道とを比較することにより計測され得る。このような放射線画像撮像システムは、例えば核材料を備え得る比較的小さな対象物を撮像するのに使用され得る。
【0076】
<注釈>
図面を参照して前述した実施形態は、例示として表されている。本発明は、多数の異なる方法で実施され得る。これを示すために、いくつかの代替案を簡単に示す。
【0077】
本発明は、イオン化粒子の検出に基づく放射線画像撮像に関連する多数の種類の製品または方法に適用され得る。
【0078】
本発明によれば、イオン化粒子検出モジュールを実施する多数の異なる方法が存在する。本明細書で提示された実施形態は、16×16の検出パッド部からなるマトリクスを備え、このマトリクスは、検出パッド部を検出チャネル部に割り当てる目的で4つのサブマトリクスに細分されている。他の実施形態で、マトリクスは、より多いまたはより少ない検出パッド部を備え得、マトリクスは、より多いまたはより少ないサブマトリクスに分割され得る。
【0079】
本明細書で述べたことは、図面を参照して説明した実施形態が、本発明を限定するものではなく、本発明を説明するものであることを表している。本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある多数の代わりの方法で実施可能である。特許請求の範囲の意味および均等範囲内におけるすべての変更は、これらの範囲内に包含される。請求項におけるいかなる参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。請求項における“備える”という動詞は、請求項に記載のもの以外の他の要素または他のステップの存在を除外するものではない。同様の“含む”などの動詞にも、同じことが適用される。製品に関する請求項における単数形の要素についての言及は、当該製品が複数のこのような要素を備え得ることを除外するものではない。同様に、方法に関する請求項における単数形のステップについての言及は、当該方法が複数のこのようなステップを備え得ることを除外するものではない。個々の従属請求項が個々の追加的特徴を規定するという単なる事実は、当該請求項に反映されたもの以外の追加的特徴の組み合わせを除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】