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特表2024-537333画像処理装置、医用撮像システム及びコンピュータプログラム
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  • 特表-画像処理装置、医用撮像システム及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】画像処理装置、医用撮像システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20241003BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241003BHJP
   A61B 6/50 20240101ALN20241003BHJP
【FI】
A61B6/46 536Q
A61B6/03 560J
A61B6/03 560G
A61B6/03 573
A61B6/50 511E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522134
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022079017
(87)【国際公開番号】W WO2023066955
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21290068.2
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ウィムカー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ボンタス クラース
(72)【発明者】
【氏名】ニキッシュ ハネス
(72)【発明者】
【氏名】ペータース ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴラチョミトル アンナ セシリア
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093CA18
4C093CA21
4C093DA02
4C093EA07
4C093FF16
4C093FF35
4C093FF42
(57)【要約】
本発明は、ボクセルで構成されるボリュメトリック医用画像データ7を受信するデータ入力ユニット4と、処理ユニット5とを有する画像処理装置3に関し、前記ボリュメトリック医用画像データ7はスペクトルコンピュータトモグラフィデータである。処理ユニット5は、ボリュメトリック医用画像データ7に対して自動解剖学的形状モデルセグメンテーション8を実行するように適応される。処理ユニットは更に、関心のある第1の層9及び関心のある第2の層11の決定を実行するように適応されている。関心のある第1の層9の第1の投影10が実行されることで、灌流情報データが生成され、関心のある第2の層11の第2の投影14が実行されることで、脈管情報データが生成される。最後に、灌流情報データと脈管情報データとのグラフィカルな合成15が実行されることで、合成された情報データ21が生成される。本発明は、更に、画像処理装置3を有するスペクトルコンピュータトモグラフィシステム1及びコンピュータプログラムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
ボクセルで構成されたボリュメトリック医用画像データを受信するデータ入力ユニットであって、前記ボリュメトリック医用画像データはスペクトルコンピュータトモグラフィデータである、データ入力ユニットと、
処理ユニットであって、前記ボリュメトリック医用画像データに対して、
自動解剖学的形状モデルセグメンテーションと、
関心のある第1の層の決定と、
関心のある第2の層の決定と、
灌流情報データを生成するための前記関心のある第1の層の第1の投影と、
脈管情報データを生成するための前記関心のある第2の層の第2の投影と、
合成された情報データを生成するための前記灌流情報データ及び前記脈管情報データのグラフィカルな合成と、
を実行するよう構成される処理ユニットと、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記処理ユニットは更に、前記ボリュメトリック医用画像データに対して、
関心のある第3の層の決定と、
石灰化データを生成するための前記関心のある第3の層の第3の投影と、
を実行するよう構成され、前記グラフィカルな合成が更に前記石灰化データの合成を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ボリュメトリック医用画像データは、心臓、肝臓、腎臓、乳房、肺、脳又は他の器官の少なくとも部分を含む、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記自動解剖学的形状モデルセグメンテーションは、メッシュモデル又はラベルボリュームを生成する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記関心のある第1の層は、器官の壁内層であり、又は心内膜壁と心外膜壁との間の層である、請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の投影は、平均強度投影、中央強度投影又は中間強度投影である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理ユニットは更に、前記灌流情報データに対応する灌流スケールの動的な自動レベル設定を実行するように適応される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記関心のある第2の層は、器官の経壁層であり、前記関心のある第2の層は、前記関心のある第1の層に直接隣接し、及び/又は前記関心のある第1の層から或る距離のところに配置されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理ユニットは更に、肺領域又は他の解剖学的エンティティとのオーバラップを回避するために、前記関心のある第2の層の制約を実行するように適応される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記処理ユニットは更に、前記関心のある第2の層に対するベッセルネス重み付けの適用を実行するように構成される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記処理ユニットは更に、ベッセルネススケールの動的なレンジ調整を実行するように適応される、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第2の投影は、最大強度投影である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記グラフィカルな合成が、
前記灌流情報データ及び前記脈管情報データを擬似カラースケールにマッピングすることと、
前記灌流情報データに前記脈管情報データをスーパーインポーズして配することと、
を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置を有する、スペクトルコンピュータトモグラフィシステム。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが少なくとも1つの処理ユニットによって実行される場合、ボリュメトリック医用画像データに対して、
自動解剖学的形状モデルセグメンテーションと、
関心のある第1の層の決定と、
関心のある第2の層の決定と、
灌流情報データを生成するための前記関心のある第1の層の第1の投影と、
脈管情報データを生成するための前記関心のある第2の層の第2の投影と、
合成された情報データを生成するための前記灌流情報データ及び前記脈管情報データのグラフィカルな合成と、
を前記処理ユニットに実行させるよう構成され、前記ボリュメトリック医用画像データが、スペクトルコンピュータトモグラフィデータである、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、医用撮像システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータトモグラフィ、スペクトルコンピュータトモグラフィ、磁気共鳴イメージング、又は超音波イメージングから取得されたボリュメトリック医用画像は、様々な医療用途を提供する。一例として、脈管系及び前記脈管系における可能性のある障害が、ボリュメトリック医用画像を使用して検出されることができる。別の例として、例えば、筋肉組織の灌流が、ボリュメトリック医用画像を使用して評価されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脈管系の障害は低灌流の根本原因であり得るので、完全な画像を得るためには、脈管系及び器官(例えば心臓)の灌流の両方を調べなければならない。
【0004】
しかしながら、最大強度投影又は平均強度投影などの標準的な視覚化技術は、左心室と右心室との間の隔壁に関して明瞭なビューを与えることができない場合がある。一方、明示的な脈管セグメンテーションは、筋肉セグメンテーションとのレジストレーションエラーと同様に、セグメンテーションエラーの追加の原因を有する。
【0005】
Dae Yu Kim他の論文"Optical imaging of the chorioretinal vasculature in the living human eye"(Proceedings of the national academy of sciences, vol. 110, no. 35, pages 14354 - 14359, 27 August 2013)は、眼内の毛細血管及び網膜血管の決定、ならびに両者の合成されたグラフィック表現を開示している。
【0006】
M.C. Williams他の論文"CT myocardial perfusion imaging: current status and future directions"(Clinical Radiology 71 (2016) 739 - 749)は、CT冠動脈アンギオグラフィとCT心筋灌流データとの融合を開示している。
【0007】
本発明の目的は、灌流及び脈管系に関する改良された情報を提供する画像処理装置を提供することである。本発明の他の目的は、前記画像処理装置を有する医用イメージングシステム、及び前記画像処理装置の画像処理を実行するコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、画像処理装置が提供される。画像処理装置は、データ入力ユニットと、処理ユニットとを有する。
【0009】
データ入力ユニットは、ボクセルで構成されたボリュメトリック医用画像データを受信するように構成される。前記ボリュメトリック医用画像データは、スペクトルコンピュータトモグラフィデータである。データ入力ユニットは、医用撮像装置からボリュメトリック医用画像データを受信するように適応されたネットワーク接続ユニットでありうる。代替として、データ入力ユニットは、生のセンサデータからボリュメトリック医用画像データを生成した生成ユニットから処理ユニットへ、ボリュメトリック医用画像データを転送するための物理的又は仮想的なインターフェースであってもよい。
【0010】
処理ユニットは、データ入力ユニットからボリュメトリック医用画像データを受信し、受信したボリュメトリック医用画像データに対して以下のステップを実行するように適応される。これらのステップはすべて、1つのプロセッサ上で実行されることができるが、いくつかのプロセッサにわたって分散されてもよい。
【0011】
最初に、自動解剖学的形状モデルセグメンテーションが実行される。これは、ボリュメトリック医用画像データ内に存在する解剖学的構造のラベル付け、又は本画像処理にとって関心のある少なくともそれらの解剖学的構造のラベル付けを与える。前記自動解剖学的形状モデルセグメンテーションは、ディープニューラルネットワーク又は決定木などの訓練された機械学習システムによって実行されることができる。
【0012】
解剖学的形状モデルセグメンテーションに基づいて、関心のある第1の層の決定が実行される。前記関心のある第1の層は、灌流情報が必要とされる層、特に曲線層及び/又は有限の厚さを有するマニホールドである。ここで、灌流とは、血液の灌流を指す場合もあるが、他の体液の灌流を指す場合もある。特に、関心のある第1の層は、関心対象の解剖学的対象の表面に沿うことができる。
【0013】
解剖学的形状モデルセグメンテーションに基づいて、関心のある第2の層の決定が更に実行される。前記関心のある第2の層は、脈管情報が必要とされる層、特に曲線層及び/又は有限の厚さを有するマニホールドである。ここで、脈管系は、血管を指す場合もあるが、他の体液を運ぶ脈管を指す場合もある。特に、脈管系は、関心のある第1の層における灌流に対応する体液を運ぶ脈管を指す。関心のある第2の層は、関心のある解剖学的対象の表面に沿うことができる。特に、関心のある第2の層は、関心のある第1の層に局所的に平行である。
【0014】
更に、関心のある第1の層の第1の投影が実行されることで、灌流情報データが生成される。特に、前記第1の投影は、灌流組織における造影剤の取り込みに関する簡潔で明瞭な情報を提供し、この場合、造影剤の取り込みは、灌流自体の代替物である。
【0015】
更に、関心のある第2の層の第2の投影が実行されることで、脈管情報データが生成される。特に、前記第2の投影は、第1の投影によって灌流が決定された組織に栄養を供給する脈管系にセンシティブである。
【0016】
最後に、灌流情報データと脈管情報データとのグラフィカルな合成(combination)が実行されることで、合成された情報データが生成される。前記グラフィカルな合成は、様々な方法で実行されることができる。合成された情報データの視覚化は、患者固有の脈管系及び特に脈管障害に関連する灌流障害の直感的な同時評価のために有益であり、ここで、栄養血管系の障害は、灌流障害の根本原因である可能性がある。合成されたグラフィカルな情報は、可能性のある灌流障害及び脈管狭窄の処置可能性及び治療可能性の評価を可能にする。更に、灌流解析と脈管系解析とを組み合わせることによって計算コストを節約することができ、脈管系の明示的なセグメンテーション及びレジストレーションからのエラー源が回避される。
【0017】
合成された情報データは、画像として提示されることができる。画像は、関心のある第1及び/又は第2の層の3次元レンダリングの2次元投影を示すことができ、関心のある第1及び/又は第2の層の表面は、合成された情報データに従って色付けされる。代替的に又は追加的に、画像は、特にワールドマップ投影のタイプにおいて、又は特に脳室について、ブルズアイビューにおいて、完全な関心のある第1及び/又は第2の層の2次元投影を示すことができる。更に、いくつかのナビゲーションコンポーネントが、例えば、現在のビューの中心を選択するため、ズームインするために、又はズームアウトするために、ユーザに提供されることができる。
【0018】
スペクトルコンピュータトモグラフィ(スペクトルCT)は、優れた造影剤感受性を特徴とし、したがって、灌流組織及びその栄養血管系の機能評価に有益である。スペクトルCTは、多くの場合、特に脈管系において、石灰化からの高密度と、ヨウ素である造影剤との間の区別が可能であるという特定の利点を有する。灌流された組織における造影剤の取り込みは、組織に埋まっている小さな血管がスペクトルCTシステムの空間分解能限界未満の直径を有する場合であっても、灌流の代用として機能することができる。特に、関心のあるスペクトル特性、例えばヨウ素濃度は、灌流組織と脈管系とでは、動的スケールだけでなく重要性も異なる。関心のある第1の層及び関心のある第2の層では、異なるスペクトル成分及び/又はスペクトル成分の組み合わせが使用されることができる。一例として、灌流情報データを提供する関心のある第1の層では、例えば造影剤に対して最も高い感度を有するスペクトル成分又はスペクトル成分の組み合わせが使用されることができる。更に、脈管情報データを提供する関心のある第2の層では、ノイズが最も少ないスペクトル成分又はスペクトル成分の組み合わせを使用することができる。スペクトル成分及び/又はスペクトル成分の組み合わせの前記選択は、全体的に、すなわち、関心のある第1の層及び/又は関心のある第2の層全体に対して、又は、局所的に、すなわち、関心のある層内の複数の面積及び/又はボリュームに対して行われることができる。
【0019】
画像処理装置は、(一般的な)コンピュータトモグラフィ、磁気共鳴及び/又は超音波のような造影剤の取り込みによって灌流が現れる他のボリュメトリック医用撮像方法からのボリュメトリック医用画像データを処理することもできる。しかしながら、上述したようなスペクトルCTによる利点は、これらの場合には適用されない。
【0020】
一実施形態によれば、処理ユニットは更に、関心のある第3の層の決定を実行するように適応される。前記関心のある第3の層は、関心のある第1の層に等しくてもよく、関心のある第2の層に等しくてもよく、関心のある第1の層と関心のある第2の層との結合に等しくてもよく、又は特に決定されてもよい。次に、関心のある第3の層の第3の投影が実行されることで、石灰化データが生成される。石灰化と造影剤との区別は、ここでもスペクトル特性に基づくものでありうる。最後に、グラフィカルな合成は更に石灰化データを含み、それにより灌流、脈管系、及び石灰化を一度に見ることができる。
【0021】
一実施形態によれば、ボリュメトリック医用画像データは、器官、特に、栄養脈管系及び灌流組織がリンクされている器官、及び/又は特に関心のある外側の解剖学的層を有する器官の少なくとも部分を含む。前記特に関心のある層は、特別な機能に起因することができ、又は、しばしば視覚的な方向付けのための目印として表面脈管系を使用するオペレータにとって最初に可視になるシェル、又は手術器具によって最初に侵入されるシェルであることによる。そのような器官の1つは心臓である。心臓の場合、体液は血液であり、灌流は心筋灌流を指し、脈管系は冠状血管を指す。別のそのような器官は腎臓であり、この場合、体液は尿である。更に別のそのような器官は乳房であり、この場合、体液は乳汁である。更に別のそのような器官は、肺、肝臓又は脳である。
【0022】
一実施形態によれば、自動解剖学的形状モデルセグメンテーションは、メッシュモデル又はラベルボリュームを生成する。メッシュモデルは、関心のある解剖学的対象を囲む表面を提供するが、ラベルボリュームは、関心のある解剖学的対象のボリューム全体を提供する。後者の場合、関心のある解剖学的対象を取り囲む表面を構築することは、簡単である。特に、関心のある第1の層及び/又は関心のある第2の層は、解剖学的関心対象の表面に近接している。心臓の場合、自動解剖学的形状モデルセグメンテーションは、好ましくは、左心室及び/又は右心室を取り囲む心筋を画定する表面を与える。
【0023】
一実施形態によれば、関心のある第1の層は、器官の壁内(endo-mural)層である。器官の壁内層の灌流は、器官を取り囲む脈管系によって最も影響を受ける。心臓の場合、関心のある第1の層は、特に、心内壁と心外壁との間にあり、したがって、関心のある第1の層は、心筋を含む。特に、壁内層は、細小心静脈を有する層である。関心のある第1の層のそのような選択により、灌流情報データは、関心のある第1の層の空間的描写の不完全性に対してロバストである。
【0024】
一実施形態によれば、第1の投影は、平均強度投影である。前記平均は、様々な方法で行われることができる。一例として、平均強度投影は、中間(mean)強度投影でありうる。別の例として、平均強度投影は、中央(median)強度投影でありえ、中央強度投影は、灌流の特にロバストな決定を提供する。
【0025】
一実施形態によれば、処理ユニットは、灌流情報データに対応する灌流スケールの動的な自動レベル設定を実行するように更に適応される。この状況において、灌流スケールは、灌流情報データが表示されるスケールであり、すなわち、灌流スケールは、灌流情報データの色、擬似色及び/又はグレースケールへのマッピングを定義する。特に、灌流情報データに関連するスケールの中心、いわゆるレベルは、例えば、関心のある第1の層内のすべての造影剤密度値の中央値に自動的に設定されることができ、いわゆるウィンドウは、関心のある第1の層内の造影剤密度値の分布の四分位範囲に設定されることができる。前記自動のレベル設定は、患者/検査特有の造影剤濃度レベルに対する自動調整を提供する。
【0026】
一実施形態によれば、関心のある第2の層は、器官の経壁(trans-mural)層である。前記経壁層は、デリケートな解剖学的構造の場合に特にセンシティブである。
【0027】
一実施形態によれば、関心のある第2の層は、関心のある第1の層に直接隣接する。ここで、直接隣接するとは、関心のある第1の層の延在部に対し垂直な方向を指す。特に、関心のある第1の層の外側表面は、関心のある第2の層の内側表面と一致する。合成された情報データの3次元表現のために、関心のある第1の層と関心のある第2の層との間の前記中央表面は、色情報を担持するために使用されることができる。代替として、関心のある第2の層は、関心のある第1の層から或る距離のところに位置付けられることができる。前記距離は、関心のある第1の層の延在部に対し垂直な方向に沿って測定され、解剖学的構造の詳細に応じて一定であってもよく、又は変化してもよい。いくつかの実施形態では、関心のある第1の層と関心のある第2の層とが重なり合うこと、すなわち距離が負であることもおこりうる。
【0028】
一実施形態によれば、処理ユニットは、他の解剖学的エンティティとのオーバラップを回避するために、関心のある第2の層の制約を実行するように更に適応される。前記制約は、例えば、密度閾値に基づいて、共分散測定に基づいて、及び/又は接続性測定に基づいて、実行されることができる。前記制約により、関心のある第2の層内に他の解剖学的エンティティが含まれることから生じる誤った情報が抑制される。特に、心臓の場合、前記他の解剖学的実体は肺である。更に、関心のある第1の層及び/又は関心のある第2の層の他の制約は、例えば、隔壁など、現在関心のないフィーチャをマスクするために実行されることができる。
【0029】
一実施形態によれば、処理ユニットは、更に、関心のある第2の層に対するベッセルネス(血管性、脈管性、vesselness)重み付けの適用を実行するように適応される。ベッセルネス重み付けは、管状構造を強化し、したがって、関心のある第2の層内の脈管系を認識するために有益である。また、ベッセルネス重み付けは、関心のある第2の層に他の解剖学的エンティティを含めることに起因する誤った情報を抑制する。特に、右心室に関しては、関心のある第2の層に左心室の部分が含まれることに起因する誤った情報が抑制され、逆もまた同様である。ベッセルネス重み付けは、ベッセルネスフィルタを使用して、例えば、二次導関数を含むヘッセ行列の固有値によって、又は一次導関数を含む構造テンソルの固有値によって、実現されることができる。
【0030】
一実施形態によれば、処理ユニットは、ベッセルネススケールの動的なレンジ調整を実行するように更に適応される。この文脈において、ベッセルネスは、血管又は脈管の半径又は曲率の尺度であり、ベッセルネススケールは、色、擬似色及び/又はグレースケールへの前記ベッセルネスのマッピングを定義する。動的レンジ調整は、関心のある第2の層内の値分布の四分位にベッセルネス重み付けのスケールを調整することによって実行されることができる。ベッセルネススケールの動的なレンジ調整は、特に、ボリュメトリック医用画像データの検査特有のノイズレベルに対処するのに有用である。
【0031】
一実施形態によれば、第2の投影は最大強度投影である。したがって、小さな血管でさえも認識され、脈管情報データに含められ、次いで、合成された情報データに含められる。
【0032】
一実施形態によれば、グラフィカルな合成は、灌流情報データ及び脈管情報データを擬似カラースケールにマッピングすることと、灌流情報データ上にスーパーインポーズされるように脈管情報データを配置することとを含む。前記擬似色スケールは、データのスペクトル特性に依存し得る。特に、灌流情報データ及び脈管情報データには、それぞれ独立したカラースケールが使用される。特に、脈管系は、灌流を表すために使用される色の範囲内にない色で表示されることができる。一例として、灌流情報データは、灌流に応じて、緑色から青色の色で表示されることができ、脈管系は、白、黒、又は赤で表示される。これは、灌流情報データの前方で脈管系を目立たせる。
【0033】
本発明の別の態様では、スペクトルコンピュータトモグラフィ(スペクトルCT)システムが提供される。前記スペクトルCTシステムは、上記の説明による画像処理装置を有する。特に、スペクトルCTシステムは、灌流情報データ及び脈管情報データを含む合成された情報データを提供するように適応される。したがって、合成された情報データを使用することにより、灌流の障害は、灌流の障害の根本原因であり得る脈管系の障害に容易にリンクされることができる。更なる利点は、上記の説明において与えられる。
【0034】
本発明の更に別の態様では、コンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、少なくとも1つの処理ユニットによって実行される場合に、処理ユニットに、ボリュメトリック医用画像データに対して自動解剖学的形状モデルセグメンテーションを実行させるように適応されており、前記ボリュメトリック医用画像データは、スペクトルコンピュータトモグラフィデータである。コンピュータプログラムは更に、処理ユニットに、関心のある第1の層の決定と、関心のある第2の層の決定とを実行させるように適応される。コンピュータプログラムは、更に、処理ユニットに、灌流情報データを与えるための関心のある第1の層の第1の投影と、脈管情報データを与えるための関心のある第2の層の第2の投影と、合成された情報データを与えるための灌流情報データ及び脈管情報データのグラフィカルな合成と、を実行させるように適応される。合成された情報データを使用することにより、灌流の障害は、灌流の障害の根本原因であり得る脈管系の障害に容易にリンクされることができる。更なる利点は、上記の説明において与えられる。
【0035】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。
【0036】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【0037】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、単なる例示として、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】スペクトルコンピュータトモグラフィシステムの実施形態を示す概略図。
図2】画像処理方法の実施形態のフローチャート。
図3a】心臓のボリュメトリック画像を示す図。
図3b】心臓の別のボリュメトリック画像を示す図。
図4】合成された情報データの様々な表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
これらの図における同様の番号が付された構成要素は、同等の構成要素であるか、又は同じ機能を実行するかのいずれかである。前述した構成要素は、機能が同等である場合には、必ずしも後の図で説明されない。
【0040】
図1は、スペクトルコンピュータトモグラフィ(スペクトルCT)システム1の実施形態の概略図を示す。スペクトルCTシステム1は、スペクトルCT装置2と、画像処理装置3とを有する。スペクトルCT装置2は、ボクセルで構成されるボリュメトリック医用画像データを生成するように適応される。次いで、ボリュメトリック医用画像データは、画像処理装置3のデータ入力ユニット4によって受信される。データ入力ユニット4は、受信された医用ボリュメトリック画像データを画像処理装置3の処理ユニット5に転送するように構成される。
【0041】
処理ユニット5は、図2に示される方法6を実行するように適応される。この方法6は、スペクトルCT装置2のボリュメトリック医用画像データ7から始まる。ボリュメトリック医用画像データ7に対して、自動解剖学的形状モデルセグメンテーション8が実行される。これにより、ボリュメトリック医用画像データ7内の関心のある解剖学的構造、特に器官を表すメッシュモデル又はラベルボリュームが得られる。
【0042】
解剖学的形状モデルセグメンテーション8に基づいて、関心のある第1の層9が決定される。前記関心のある第1の層9は、具体的には器官の壁内層であり、体液の灌流が評価されるべき層である。一例として、心臓の場合は、体液は血液であり、関心のある第1の層は、心内壁と心外壁との間にある。次いで、関心のある第1の層9に関して第1の投影10が実行されることで、灌流情報データが生成される。第1の投影10は、具体的には中央強度投影又は平均強度投影などの平均強度投影でありうる。
【0043】
更に、解剖学的形状モデルセグメンテーション8に基づいて、関心のある第2の層11が決定される。前記関心のある第2の層11は、具体的には器官の経壁層であり、関心のある第1の層9に直接隣接している。関心のある第2の層11は、脈管系が評価されるべき層である。任意には、関心のある第2の層11の制約12が、他の解剖学的エンティティとのオーバラップを回避するために実施される。一例として、心臓の場合は、このような制約12は、肺領域とのオーバラップを回避するために実施される。任意には、ベッセルネス重み付け13が、関心のある第2の層11に適用される。前記ベッセルネス重み付け13は、関心のある第2の層11に見られるものである血管を強化する。更に、ベッセルネス重み付け13は、関心のある第2の層11に対する他の解剖学的エンティティの影響を低減することができる。一例として、心臓の右心室が検査される場合、ベッセルネス重み付け13は、心臓の左心室の影響を低減する。次に、関心のある第2の層11に関して第2の投影14が実行されることで、脈管情報データが生成される。第2の投影14は、特に、より小さい血管であっても評価されることができるように、最大強度投影である。
【0044】
最後に、灌流情報データと脈管情報データとのグラフィカルな合成15が実行されることで、合成された情報データが生成される。具体的には、脈管情報データが灌流情報データの上にスーパーインポーズされて可視となるように、前記グラフィカルな合成15が実行される。合成された情報データの視覚化は、患者特有の脈管系に関する灌流障害と、特に血管障害の直観的な同時評価に有益であり、ここで、栄養血管系の欠損は、灌流障害の根本原因であり得る。合成されたグラフィカル情報は、可能性のある灌流障害及び血管狭窄の処置可能性及び治療可能性の評価を可能にする。更に、灌流解析と脈管系解析とを組み合わせることによって計算コストを節約することができ、脈管系の明示的なセグメンテーション及びレジストレーションからのエラー源が回避される。
【0045】
一例として、心臓16の画像が図3a、図3b及び図4に示されている。図3aは、スペクトルCTによって取得されたボリュメトリック医用画像データ7の断面を示す。心臓16の心外膜壁17は、自動解剖学的形状モデルセグメンテーション8によって識別されている。断面領域において、心外膜壁17は、心筋を囲む線である。更に、断面領域には、心筋の内側の境界である心内膜壁18が示されている。関心のある第1の層9は、心内膜壁18と心外膜壁17との間に延在する。前記関心のある第1の層9について、灌流が評価される。
【0046】
また、断面領域には、心外膜壁17の周りの所定の距離のところに配置されている外側表面19が示されている。関心のある第2の層11は、心外膜壁17と外側表面19との間に延在する。前記関心のある第2の層11内で、脈管系、特に冠状血管が評価される。
【0047】
図3aから分かるように、肺領域20の一部は、右下の関心のある第2の層11内に延在する。肺領域20のこの部分は、第2の投影において誤った情報につながる。したがって、図3bに見られるように、制約12が、関心のある第2の層11に適用されている。制約のために、肺領域20は、例えば、非常に低いハウンスフィールド密度によって識別されることができる。制限された関心のある第2の層11は、もはや肺領域の部分を含まず、それにより、その領域における脈管系のより良好な評価が可能である。
【0048】
最後に、図4は、合成された情報データ21のいくつかの表現を示す。すべての3つの表現において、それぞれ異なるグレーレベルは、関心のある第1の層9内の灌流22の異なるレベルに対応し、一方、脈管系23は、白色で示されている。心室中隔24の効果は、「N極」、すなわち、右上及び右下の表現の最上部、ならびに左下の表現の中心に見ることができる。
【0049】
上側の表現は、ワールドマップビューであり、多くの異なる投影が使用されることができる。具体的には、等積投影は、灌流障害の正確なサイズを示すので有利である。
【0050】
左下の表現は、17セグメントAHAモデルのブルズアイビューである。この表現では、心室中隔24は中心に配置されている。
【0051】
最後に、右下の表現は、心外膜壁17上にマッピングされた合成された情報データ21を示す。この表現は、2つの画像を含み、一方は正面図を示し、他方は心臓の背面図を示す。
【0052】
特に、合成された情報データ21のいくつかの異なる表現を提供することは、灌流障害及び脈管系における障害を識別するのに役立つ。
【0053】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示され説明されてきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。
【0054】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、単語「有する、含む(comprising)」は、他の構成要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0055】
1 スペクトルコンピュータトモグラフィシステム
2 スペクトルコンピュータトモグラフィ装置
3 画像処理装置
4 データ入力ユニット
5 処理ユニット
6 方法
7 ボリュメトリック医用画像データ
8 解剖学的形状モデルセグメンテーション
9 関心のある第1の層
10 第1の投影
11 関心のある第2の層
12 制約
13 ベッセルネス重み付け
14 第2の投影
15 グラフィカルな合成
16 心臓
17 心外膜壁
18 心内膜壁
19 外側表面
20 肺野
21 合成された情報データ
22 灌流
23 脈管系
24 心室中隔
図1
図2
図3a
図3b
図4
【国際調査報告】