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特表2024-537336バイオセンサを作製するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイオセンサを作製するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241003BHJP
   C12N 11/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12N11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522172
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022078126
(87)【国際公開番号】W WO2023064908
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,086
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】519177323
【氏名又は名称】ゴットフリート・ビルヘルム・ライプニッツ・ウニベルシタート・ハノーファー
(71)【出願人】
【識別番号】501357201
【氏名又は名称】ヘルムホルツ ツェントゥルム ミュンヘン ドイチェス フォルシュングスツェントゥルム フューア ゲズントハイト ウント ウムヴェルト (ゲーエムベーハー)
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】プレッテンブルク,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】アールブレヒト,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】アダリアン,ディーヴィン
(72)【発明者】
【氏名】シュレール,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】マデロ,シオマラ リネッテ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,サムソン
(72)【発明者】
【氏名】ジラニ,ムハンマド ムサブ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB16
4B033NA23
4B033NA24
4B033ND02
4B033NE02
(57)【要約】
電極の上にヒドロゲルの液滴を配置するステップ、真空において高速でウェハを回転させるステップ、及びウェハを加熱して硬化させるステップを含む滴下-スピン方法によって、バイオセンサ上に薄いヒドロゲル層を作製するための方法及びシステムが記載されている。この方法では、ヒドロゲル又は金属の層を追加することによって、1層及び多層センサを作製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサを作製する方法であって、
表面に電極を有するウェハ又は他の固体材料を提供するステップと、
前記電極の上にヒドロゲルの液滴を配置するステップと、
前記ウェハが部分真空に曝されている間に前記ウェハ又は他の固体材料を回転させるステップと、
水性媒体にある間に、少なくとも1時間、前記ウェハ又は他の固体材料を加熱するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ヒドロゲルは、プルラン、デキストラン、アルギン酸、ヒアルロン酸、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロゲルはプルランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極は、白金、金、グラファイト、チタン、又はナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記回転は、10000rpmまでの最大速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回転は、第1の時間間隔に対するより低い速度から第2の時間間隔におけるより高い速度まで進む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記より低い速度は1000rpm未満であり、前記より高い速度は1000rpmを超える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ウェハを加熱するステップは、1時間以上、少なくとも37°Cまで前記ウェハを加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルは、1つ以上の固定化された酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酵素を含有していないさらなるヒドロゲル層を堆積させるステップをさらに含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記さらなるヒドロゲル層は、オキシダーゼファミリー由来の酵素を含有している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オキシダーゼファミリー由来の酵素は、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウリカーゼオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コルチゾールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼのうち少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなるヒドロゲル層の上に金属層を堆積させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェハを加熱するステップの後で、前記ヒドロゲルの上に金属層を堆積させるステップをさらに含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液滴は、2μLから100μLの範囲内にある、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液滴は、100μLを超える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基板層の上に導電層を含む電極と、
前記導電層の上にヒドロゲル層と、
を含み、前記ヒドロゲル層は、厚さが3マイクロメートル未満であり、前記ヒドロゲル層内に固定化された酵素を含み、前記ヒドロゲル層は、共有結合性で非分解性のネットワークを有している、バイオセンサ。
【請求項18】
前記ヒドロゲル層の上に拡散バリアをさらに含む、請求項17に記載のバイオセンサ。
【請求項19】
前記拡散バリアは金属を含む、請求項18に記載のバイオセンサ。
【請求項20】
前記拡散バリアは、固定化された酵素を有さないヒドロゲルを含む、請求項18に記載のバイオセンサ。
【請求項21】
前記拡散バリアの上に第2の拡散バリアをさらに含み、前記第2の拡散バリアは金属を含む、請求項20に記載のバイオセンサ。
【請求項22】
前記ヒドロゲル層は、厚さが200から600nmである、請求項17乃至21のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項23】
前記拡散バリアは、厚さが50から100nmである、請求項19に記載のバイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2021年10月15日に出願された“Methods and Systems for Fabricating Biosensors”と題された米国仮特許出願第63/256,086号に対する優先権を主張するものであり、その開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、バイオセンサ用のコーティングの作製に関する。特に、本開示は、生体適合性バイオポリマーを用いたコーティングバイオセンサの作製に関する。
【背景技術】
【0003】
酵素アッセイ等のバイオマーカーを測定するための埋め込み型センサは、防御的な異物反応に曝されるため、寿命が限られている。この反応には、炎症、免疫細胞の動員、及びその後の線維性カプセル(a fibrotic capsule)の形成が含まれる。これは、酵素活性の減少、ひいてはバイオセンシング能力の減少、並びに分析物の拡散を制限する可能性のある高密度なカプセルをもたらし、従って機能的測定ウィンドウを減らす。免疫分子はまた、電気化学的電極表面を汚し、電極の酸化還元能力を阻止及び不活性化している。現在の酵素バイオセンサの作製方法は、可変性なしに調整することが困難であり、かなりの個々の較正を必要としているということも事実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP21202802.1
【特許文献2】PCT/EP2022/078635
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、ヒドロゲルをスピンコーティング及び硬化することを介した、生体適合性バイオポリマーを用いてバイオセンサ上に正確なコーティングを作製するための方法及びシステムが記載される。これらの薄い、幾何学的に定められたプルランフィルムは、一貫した細孔サイズ、耐薬品性を有し、酵素に対して安定した保護環境を提供する。
【0006】
本発明の第1の態様において、バイオセンサを作製する方法が開示され、当該方法は:表面に電極を有するウェハ又は他の固体材料を提供するステップ;電極の上にヒドロゲルの液滴を配置するステップ;ウェハが部分真空に曝されている間にウェハを回転させるステップ;及び、ウェハ又は他の固体材料を加熱するステップ;を含む。ウェハの代わりに、ガラス、ポリマー等の別の固体材料を使用して電極を支持することができる。
【0007】
本発明の第2の態様において、バイオセンサが開示され、当該バイオセンサは:基板層の上に導電層を含む電極;及び、導電層の上にヒドロゲル層;を含み、ヒドロゲル層は、厚さが3マイクロメートル未満であり、ヒドロゲル層内に固定化された酵素を含む。第2の態様の一部の実施形態において、ヒドロゲル層は、厚さが1マイクロメートル未満である。一部の実施形態において、酵素は、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウリカーゼオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コルチゾールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、及び/又はサルコシンオキシダーゼ等、オキシダーゼファミリーにおけるものである。
【0008】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴、目的、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の1つ以上の実施形態を例示し、例となる実施形態の説明と共に、本開示の原理及び実施を説明するのに役立つ。
図1A】滴下-スピン(drop-spin)プロセスのための例となるセットアップを示した図である。
図1B】滴下-スピンプロセスのための例となるセットアップを示した図である。
図2A】上部にスパッタリングされた白金で被覆されたプルランの滴下-スピンの一例を示した図である。
図2B】上部にスパッタリングされた白金で被覆されていないプルランの滴下-スピンの一例を示した図である。
図3A】滴下-スピンセンサの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図であり、滴下-被覆(drop-coat)プロセスによるセンサの一例を示している。
図3B】滴下-スピンセンサの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図であり、滴下-スピンプロセスによるセンサの一例を示している。
図4】滴下-スピンプロセスを使用して形成された多層の例を示した図である。
図5A】滴下-スピン堆積により作製されたバイオセンサにおけるプルランヒドロゲルと白金電極との間の接着の例を示した図である。
図5B】滴下-スピン堆積により作製されたバイオセンサにおけるプルランヒドロゲルと白金電極との間の接着の例を示した図である。
図5C】滴下-スピン堆積により作製されたバイオセンサにおけるプルランヒドロゲルと白金電極との間の接着の例を示した図である。
図5D】滴下-スピン堆積により作製されたバイオセンサにおけるプルランヒドロゲルと白金電極との間の接着の例を示した図である。
図6A】例証的な1層の実施形態における滴下-スピン堆積の長寿命を例示した図であり、1層の実施形態の一例を示している。
図6B】例証的な2層の実施形態における滴下-スピン堆積の長寿命を例示した図であり、2層の実施形態の一例を示している。
図6C】例証的な1層及び2層の実施形態における滴下-スピン堆積の長寿命を例示した図であり、経時的な正規化感度の一例を示している。
図6D】例証的な1層及び2層の実施形態における滴下-スピン堆積の長寿命を例示した図であり、36日間にわたる(初期測定値に対する)正規化感度の例となる比較を示している。
図7】例えば滴下-スピンによって作製されたセンサの濃度対電流の一例を示した図である。
図8】濃度対電流についての(滴下-スピン作製方法によって被覆された)1層センサと2層センサとの間のさらなる例となる比較を示した図である。
図9A】リン酸緩衝生理食塩水において保存された(滴下-スピン作製方法によって被覆された)1層センサ(図9A)と2層センサ(図9B)との間の例となる比較を示した図である。
図9B】リン酸緩衝生理食塩水において保存された(滴下-スピン作製方法によって被覆された)1層センサ(図9A)と2層センサ(図9B)との間の例となる比較を示した図である。
図10】経時的なKm値に関する(各々が滴下-スピン作製方法によって被覆された)1層センサ対2層センサの例となる比較を示した図である。
図11】24日間にわたる乾燥ウェハ上で滴下-スピン作製方法によって被覆されたセンサに対する例となる酵素飽和曲線を示した図である。
図12】滴下-スピン作製方法によって被覆されたセンサの長期寿命の例となるグラフを示した図である。
図13A】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、二重層ヒドロゲルの一例を示している。
図13B】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、経時的な感度の例となるグラフを示している。
図13C】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、経時的なK値の例となるグラフを示している。
図13D】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、経時的な正規化最大電流の例となるグラフを示している。
図14A】滴下-被覆層対滴下-スピン層の厚さの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図である。
図14B】滴下-被覆層対滴下-スピン層の厚さの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図である。
図14C】滴下-被覆層対滴下-スピン層の厚さの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図である。
図14D】滴下-被覆層対滴下-スピン層の厚さの例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示した図である。
図15】滴下-スピン方法による層の厚さを示すSEM画像の一例を示した図である。
図16A】二重層ヒドロゲルセンサに対する例を示した図であり、センサコーティングの概略的な組成が描かれている。
図16B】二重層ヒドロゲルセンサに対する例を示した図であり、948日間にわたる1つのセンサに対する酵素飽和曲線の例となるグラフを示している。
図16C】二重層ヒドロゲルセンサに対する例を示した図であり、948日間にわたる1つのセンサに対する酵素飽和曲線の例となるグラフを示している。
図16D】二重層ヒドロゲルセンサに対する例を示した図であり、1148日目のグルコース濃度の関数としての電流の例となるグラフを示している。
図16E】1148日目の酵素飽和曲線の例となるグラフを示した図である。
図17A】二重層被覆のヒドロゲルセンサに関する例となるデータを示した図であり、二重層ヒドロゲルの一例を示している。
図17B】二重層被覆のヒドロゲルセンサに関する例となるデータを示した図であり、1日目のグルコース濃度の関数としての電流の例となるグラフを示している。
図17C】二重層被覆のヒドロゲルセンサに関する例となるデータを示した図であり、1日目の酵素飽和曲線の例となるグラフを示している。
図18A】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、二重層ヒドロゲルの一例を示している。
図18B】二重層ヒドロゲルに関するデータの一例を示した図であり、15日間にわたる酵素飽和曲線の例となるグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
生体適合性バイオポリマーを用いてバイオセンサ上に正確なコーティングを作製することは、電極上でヒドロゲルをスピンコーティング及び硬化することを介して達成することができる。スピンコーティング(「滴下-スピン」)によって、幾何学的に定められたフィルムを堆積させることができ、フィルムは、一貫した細孔サイズ及び耐薬品性を有し、その中で固定化された酵素に対して安定した保護環境となる。ヒドロゲルにおいて酵素を固定化するための例となるプロセスは、Oliver Plettenburg等によって発明され、2021年10月15日に出願された“HYDROGEL FOR IMMOBILIZATION OF ONE OR MORE ENZYME(S) AND METHOD FOR PREPARING THE SAME”と題された特許文献1において見つけることができる。
【0011】
本明細書において使用される場合、電極は、通常は基板(Si、窒化ケイ素、又はSi/SiO等)上の導電層(Pt等)である。
【0012】
本明細書において使用される場合、拡散バリアは、別の金属由来の不純物の拡散から及び環境由来の腐食から導電金属層を保護するために使用される層である。
【0013】
一部の実施形態において、滴下-スピンプロセスは、ウェハの電極の上に1つ以上の間隔をあけたヒドロゲル(例えばプルラン等)の液滴を配置し、次に、高速でウェハを回転させることを含む。ウェハを真空下に配置して(例えば60~70 psiで)スピンコータープラットフォームにウェハを保持するのに寄与することができる。ウェハは、代替案として、加えて接着剤で保持することができる。一部の実施形態において、電極は白金である。一部の実施形態において、電極は、別の貴金属(例えば、金、銀等)、白金族元素、グラファイト若しくはチタン等の金属のような生体適合性材料、又は酸化物(例えば、SiO、酸化チタン、若しくはAl等)、非貴金属、ナノ粒子若しくはナノチューブの層、又は、当技術分野において知られているセンサ上に堆積するための他の適切な導電性材料で作られている。一部の実施形態では、このプロセスに続いて加熱ステップが行われる。
【0014】
ヒドロゲルは、親水性ポリマーの3次元ネットワークである。多糖ポリマーを、全ての用途で使用することができるが、ヒドロゲルが第2の保護層として使用される場合には、他のポリマーを使用してもよい。ヒドロゲルは、例えば、炭水化物組成又は分子量が異なる1つ以上の多糖を含み得る。さらに、炭水化物ポリマーは、互いに又は他の種と共有結合するように官能基化することができる。加えて、ヒドロゲルは、他の非炭水化物ポリマー、例えば、ポリウレタン層又はグルタルアルデヒド/アルブミン混合物等と組み合わせて使用することができる。
【0015】
本明細書において及び本発明に関して使用される場合、「ヒドロゲル」という用語は、当業者には良く知られている用語であり、親水性である共有結合的に架橋されたポリマー鎖の任意のネットワークを含む。ヒドロゲルは、通常、特定の架橋剤によって共に保持されている親水性ポリマー鎖を含む3次元固体を構築する。固有の架橋剤のために、ヒドロゲルネットワークの構造的完全性は水に溶解しない。ヒドロゲルは、高吸収性の(90%を超える水を含有することができる)天然又は合成ポリマーネットワークである。
【0016】
本発明の一部の態様において、異なるポリマー層を使用することが有用であり得る。これらのポリマーは、組成、極性、細孔サイズ、及び架橋の程度が異なり得る。これらの層は、以下に記載されるプロセスを使用して順次設置することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、1つ以上の酵素をポリマーの混合物に添加することができる。さらに、結果として生じる混合物の粘度は、さらなる溶媒、水、界面活性剤、又は当業者には知られている他の成分を添加することによって調整することができる。
【0018】
熱誘起の滴下-スピンゲル化プロセスによって、幾何学的に正確な層をセンサチップ表面に適用することが可能になる。これは、架橋の程度、リンカーの極性、リンカーの長さ、及び、対応して細孔サイズを制御することができるため、モジュール式作製システムを提供する。個々のゲル成分の非粘性溶液を混合及び滴下-スピンコーティングした後、酵素活性を維持するのに適合した温和な温度まで(例えば、1時間から15時間40°Cで)センサを加熱することによって、共有結合性の非分解性ネットワークの形成を層内で誘発することができる。
【0019】
本明細書において使用される場合、「共有結合ネットワーク」は、共有化学結合によって共に結合された、すなわち、例えば(ネットワークの形成に寄与する可能性があるが)静電又はファンデルワールス相互作用に排他的に依存しない少なくとも2つのポリマー成分を含む。「非分解性」という用語は、(例えばペプチダーゼ若しくはエステラーゼ等による)酵素反応又は自己加水分解によって切断することができない結合を形成することを指す。
【0020】
溶液を、電極パターンセットの中心に滴下し、次に、回転させて、標的領域にわたって広げることができる。パターンセット全体に広がる複数の液滴を使用することもできる。層の厚さは、より薄いフィルムを生成するより高い速度で回転速度(例えば、1000~6000rpm等)を変えることによって変化させることができる。このプロセスは、微細作製ツーリングに適合し、結果として生じる層は、微細作製真空システム及び有機溶媒に適合する。20nmから1000nmの薄い層が達成可能であるが、必要に応じてより厚い層を達成することができる。一般に、薄い電極コーティング層は、電極に到達するための生成された反応生成物の拡散時間がより短いため、優れた信号効率を提供する。
【0021】
本明細書において示されているように、滴下-スピンプロセス及び様々な微細作製プロセスは、複数の配置における複数の層が構築されることを可能にする。これらの滴下-スピンヒドロゲルは、繰り返し層及びバイオセンサ電極に対して良好な接着性を示す。
【0022】
図1Aは、滴下-スピン方法の一例を示している。滴下コーティング方法では、アプリケータ(110)(例えばピペット等)が、コーティング(例えばヒドロゲル等)の液滴(115)をウェハ(120)の表面に塗布し、これが、時間の経過に伴い1~3マイクロメートルの厚さまで広がる(125)。滴下-スピンコーティング方法では、回転プラットフォーム(130)がコーティング(135)をわずか200~600nmの厚さまで圧縮させる。例となる液滴サイズは、混合物(例えば、プルラン+酵素、2成分系等)から20マイクロリットル(μL)である。例となる回転速度は、30秒にわたり4000rpmである。一部の実施形態において、回転速度は、1000~6000rpmの範囲内にある。一部の実施形態において、液滴サイズは、2μLから100μLの範囲内にある。一部の実施形態において、液滴サイズは、100μLを超える。一部の実施形態において、回転は、第1の間隔(例えば10秒間等)に対して低速(例えば500rpm等)で始まり、次に、第2の間隔(例えば30秒等)に対して高速(例えば4000rpm等)まで増加する。例えば、低速は、1000rpm未満であってもよく、高速は、1000rpmを超えてもよい。滴下-スピンの後、ヒドロゲルは、(例えば、40°Cのオーブンにおいて)電極の上部で重合することができる。
【0023】
図1Bは、回転ステップの前に回転アセンブリ(155)上にセットされた複数の液滴(145)を有するウェハ(150)を示している。
【0024】
滴下-スピン方法は、ウェハ処理のためのマイクロエレクトロニクス方法に適合する。例えば、紫外線(UV)誘発官能基化、真空、有機溶媒によるクリアリング/洗浄等である。図2A及び2Bは、滴下-スピン方法によって堆積されたプルラン上にスパッタリングされた白金(図2A)、及び、白金を有していない滴下-スピン方法によって堆積されたプルラン(図2B)の例を示している。堆積プロセスは、電極上にバイオポリマーの薄層を正確に配置し、それと共に、その上部に金属コーティングを正確に配置することを可能にする。一部の実施形態において、コーティングは、センサあたり0.2μLから100μLの範囲内にあり、又は、直径100mmのウェハあたり約2~15mL(好ましくは3~10mL)である。また、少量、すなわち0.1μLから10μLを使用することができる。一部の実施形態において、バイオポリマー層は、厚さが600nm未満である。一部の実施形態において、バイオポリマー層は、厚さが200~600nmである。一部の実施形態において、バイオポリマー層は、厚さが200~400nmである。一部の実施形態において、バイオポリマー層は、厚さが200nm未満である。一部の実施形態において、バイオポリマー上の層(例えば白金等)は、厚さが50nmまでである。一部の実施形態において、バイオポリマー上の層は、厚さが50nmから100nmである。一部の実施形態において、バイオポリマー上の層は、厚さが100nmまでである。一部の実施形態において、バイオポリマー上の層は、厚さが100nmを超える。
【0025】
図3は、プルラン-酵素混合物が滴下-スピン方法によって堆積されたセンサの例となる走査電子顕微鏡画像を示している。示されているように、深い3D構造を有さない(例えば、20nmから1マイクロメートル等の)非常に薄い層が可能である。
【0026】
図4は、コーティング技術の例を示している。パネルAは、電極(例えばシリコン/SiO上の白金等)の上の単層ヒドロゲル(例えばプルラン等)を示している。パネルBは、ヒドロゲルネットワークにおいて固定化された酵素を有する単層ヒドロゲルを示している。パネルCは、2層コーティングを示しており、ここで、最上層は、酵素を有さないバイオポリマー層であってもよく、それによって、拡散又は保護バリアとして作用している。これらの層は、特に薄層/多層が望まれる場合に、滴下スピンコーティングによって作製することができ、当業者によって理解されるように、他の作製方法を使用することもできる。パネルDは、最上層にスパッタリングされた白金を有する異なる2層システムを示している。パネルEは、スパッタリングされた白金層及び酵素を含まないヒドロゲル層の両方がヒドロゲル-酵素層の上にある3層システムを示している。これによって、体の免疫応答系の観点から改善されたアプローチが得られ、従って、埋め込み型チップに対してうまく機能する。さらに、所望の特性及び用途に応じて層を追加することができる。
【0027】
図5Aから5Dは、ヒドロゲルと電極との接着の例を示している。この例では、センサ(白金電極)を、滴下-スピンによってプルラン-酵素で被覆し、次に、脱イオン水によって完全に覆われるのを可能にするのに十分大きいチャンバ内で、脱イオン水において2から3日間インキュベートした。これによって、結合したバイオポリマー及び固定化された酵素以外の全てが洗い流された。チャンバからウェハを取り出した後、電極の上にないヒドロゲル領域全てを洗い流した。プルランが電極領域に非常に強く付着する特定の領域が存在する。フォトリソグラフィー及びリフトオフ処理を使用して、基板上の電極の位置を定めることができる。ウェハ(例えばSi等)の他の領域では、プルランは除去される。個々のネットワーク特性及び密度は、使用されるポリマーの性質及びその架橋の程度に依存する。これは、PCM1及びPCM9で覆われた電極の光学的外観によって例示することができる。しかし、電極接着特性は、2つの異なる架橋ポリマーに対して同等である。特定のバイオセンシングの問題に応じて、異なって変更された材料が、当業者によって理解されるように、所望の用途のための最適なコーティングを提供することができる。図5C及び5Dは、1回カルボキシメチル化された(CM)1プルラン(図5C)及び9回カルボキシメチル化された(CM9)プルラン(図5D)の接着の例を示している。
【0028】
本発明に関して、プルランのカルボキシメチル化の程度は、数が続く「PCM」の表現(例えば、PCM1、PCM3、及びPCM5等)によって表される。この数は、それぞれのカルボキシメチル化の程度を特徴づけ、指定された回数の反復カルボキシメチル化反応サイクルを適用することによってプルランに導入されるカルボキシメチル基を意味している。本明細書において使用される場合、CM1、CM2、CM3等は、(特にプルランに言及することなく)一般的な多糖のそれぞれのカルボキシメチル化の程度を記述している。
【0029】
CM1(又はプルランの場合にはPCM1)は、低度に変性したバイオポリマーと考えられる。CM9(又はPCM9)は、高度に変性したバイオポリマーと考えられる。高度に変性したバイオポリマー(PCM5~PCM9)は、短いゲル化時間(2~5時間;40mg/ml材料)を有する。低度に変性したバイオポリマー(PCM1~3)は、3~10時間のゲル化時間(40mg/ml材料)を有する。
【0030】
図6Aから6Dは、滴下-スピンで堆積したセンサシステムの長寿命を例示している。一例では、単一のウェハが、その上に滴下-スピン堆積した2つのセンサタイプを有し:それらは、単層のプルランCM9(図6A)、及び、上部の白金層を有するプルランCM9(図6B)である。ここでのヒドロゲル層は、PCMにおいて単離されたグルコースオキシダーゼ(GOX)を有するプルランCM(PCM)であった。電極システム上に堆積された層は、リン酸緩衝生理食塩水又は空気のいずれかにおいて保存した。滴下-スピンプロセスでは、酵素及びセンサは、室温での乾燥保存後も依然として活性であり、これは、以前の方法では異なるということに留意されたい。グルコース濃度は、42mMまでの範囲であった。どちらのセンサタイプも、高真空に曝露させ、その後、アセトンインキュベーションを(1~2時間)行い、次に、測定に先立ちイソプロピルアルコールで洗浄した。これらの困難な条件下でもセンサの機能性は維持されているということがわかる。
【0031】
図6Cは、センサに対する経時的な正規化感度を示している。図6C、6D、及び7~11では、センサ1、2、5、6、及び7は1層センサ(図6A、PCM9+GOX)であり、センサ3、4、8、9、及び10は2層センサ(図6B、PCM9+GOX+100nm Pt)である。テストを、2つのウェハで行って、1つはPBSにおいて保存し、もう1つは乾燥状態で保存した。
【0032】
図6Dは、それぞれについての36日間にわたる平均感度を示している。1層(図6A)は、0.75の平均感度(正規化)を有し、2層(図6B)は、拡散バリア効果により、0.89の感度を有している。
【0033】
図7は、43日間にわたる前の例のセンサ(図6A及び図6B)に対する濃度対電流のグラフを示している。ウェハは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)において保存した。1層センサ(ここでは1、2、及び7)は、2層センサ(ここでは3、9、及び10)とは異なる傾きを有し、初期勾配は時間と共に変化した。
【0034】
図8は、濃度対電流におけるセンサタイプ(図6A及び6B)の違いも示している。2層センサは、より良好な(遅い)初期勾配を有し、より大きな線形範囲を有している。
【0035】
図9A及び9Bは、1層センサ(図6A及び9A)と2層センサ(図6B及び9B)との例となる比較を示しており、2層センサは100nmの厚さ(白金の最上層)を有し、いずれもPBSにおいて保存した。示されているように、2層センサは、より良好な線形範囲を示している。観察された電流密度は、例えば、10.5A/mであり、これは、測定された電流(nAの縦軸)を作用電極の面積で割ることによって得られ、例えば、測定された150nA=10.5A/mである。
【0036】
図10は、3~24日までの1層センサ(図6A)及び2層「サンドイッチ」センサ(図6B)のKm(酵素の基質親和性)値の比較を示している。Km値は、1層センサよりも2層センサの方が著しく高い。1層センサは、9~12mMのKm値を有し、2層センサは、25~38mMのKm値を有した。
【0037】
図11は、(前の例におけるセンサからの)例となる酵素飽和曲線を示している。データは、乾燥したウェハから24日間にわたって取得した。2層センサ(ここでは4及び8;例えば図6B参照)は、100nmのPt拡散バリア、200~600nmのGOXヒドロゲル層、200nmのPt導電層、2000nmのSiO、及び0.5mmのSi基板であった。2層センサは、より大きな線形範囲を示すため、1層センサと比較して経時的により安定している。1層センサ(ここでは1及び2;例えば図6A参照)は、PCM9である。
【0038】
図12は、PCM5ヒドロゲルの上に50nmのスパッタリングされた白金最上層を有する2層センサ(例えば図4C参照)であるセンサの長期(例えば200日)寿命の例となるグラフを示している。センサは、室温(rt)で1×PBSにおいて保存した。
【0039】
図13A~13Dは、2つの2層センサに対する例となるデータを示している(図4Cのセンサ7及び9参照)。図13Aは、センサの構造を示しており、これは、Ptサンドイッチの代わりにヒドロゲル(酵素なし)で覆われた2層センサである。図13Bは、経時的な正規化感度を示しており、経時的な感度の良好な安定性を示している。図13Cは、経時的なKnee(K)値(mM)を示しており、これも非常に安定していることが示されている。図13Dは、経時的な正規化最大電流を示しており、160日間にわたる100から60への低下のみを示している。これらの結果は、室温でPBS緩衝液(pH7.4)において行ったテストから得られたものである。ヒドロゲルはPCM5(中間範囲)であり、グルコースオキシダーゼが酵素である。
【0040】
図14A~14Dは、滴下-被覆(以前の技術)塗布の例となる走査電子顕微鏡(SEM)画像を示している。示されているように、滴下-スピン塗布方法は、より薄い層を提供する。
【0041】
図14Aは、蒸留水(dHO)における、ヒドロゲルを用いたPCM5の滴下-被覆を示している。図14B及び14Cは、dHOにおける、ヒドロゲルを用いたPCM9の滴下-被覆を示している。図14Dは、PBSにおける、ヒドロゲルを用いたPCM6の滴下-被覆の拡大図を示している。
【0042】
図15は、図14A~14Dとは対照的に、異なる層のSEM画像の一例、及び、dHOにおける、ヒドロゲル(プルラン)を用いた滴下-スピン塗布に対する推定された層の厚さを示している。
【0043】
図16A~16Dは、2層センサ(例えば図4C参照)に対する例証的なデータを示している。図16Aは、センサの組成を示しており、データは、ヒドロゲル層(酵素なし)で覆われた2層センサを参照している。図16B及び16Cは、948日の期間にわたる酵素飽和曲線を示している。図16D及び図16EEのグラフは、1148日目のセンサの感度を示し、従って、センサのロバスト性及び酵素に対するヒドロゲルの安定化効果を例示している。いずれのヒドロゲル層もPCM5を含み、グルコースオキシダーゼを酵素として使用した。センサは、測定期間にわたって室温でPBS(pH7.4)において保存した。
【0044】
図17A~17Cは、2層センサ(例えば図4C参照)に対する例証的なデータを示している。図17Aは、センサの組成を示しており、データは、ヒドロゲル層(酵素なし)で覆われた2層センサを参照している。図17B~17Cのグラフは、高グルコース濃度範囲(0~42mM)にわたるセンサの感度を示している。49nA/mMの特に高い感度を、センサに対して決定した。第1のヒドロゲル層は、グルコースオキシダーゼが固定化されたPCM4ヒドロゲルで構成されており、第2のヒドロゲル層は、アルギン酸ヒドロゲルを含む。センサは、1日37°CでPBS(pH7.4)において保存した。
【0045】
図18A~18Bは、2層センサ(例えば図4C参照)に対する例となるデータを示している。センサの組成が図18Aにおいて描かれており、データは、ヒドロゲル(酵素なし)で覆われた2層センサを参照している。図18Bのグラフは、15日間にわたる酵素飽和曲線を示している。37°Cでの15日間の連続したインキュベーション期間にわたって、これらの結果は、固定化されたグルコースオキシダーゼの安定性及び長寿命、並びに、第2のアルギン酸のヒドロゲル層の肯定的な利点を実証している。第1のヒドロゲル層は、グルコースオキシダーゼが固定化されたPCM4ヒドロゲルで構成されており、第2のヒドロゲル層は、アルギン酸ヒドロゲルを含む。センサは、15日間37°CでPBS(pH7.4)において保存した。
【0046】
例となるヒドロゲル
本滴下-スピン方法は、1つ以上の酵素の共有結合を必要としない生体適合性ヒドロゲル(この例では「生体適合性ヒドロゲル」として特定される)において酵素を固定化する方法と共に使用することができる。このヒドロゲルは、酵素に対する完璧な安定化環境を提供し、より良好な寿命及び酵素の安定性をもたらしている。このヒドロゲルは、生物付着及び体の免疫応答から酵素を保護する。このヒドロゲルは、Oliver Plettenburg等によって発明され、2021年10月15日に出願された“HYDROGEL FOR IMMOBILIZATION OF ONE OR MORE ENZYME(S) AND METHOD FOR PREPARING THE SAME”と題された特許文献1、及び、同じ題名を有し、2022年10月14日に出願され、WO/として公開された特許文献2において記載されており、これらは全て、参照により本明細書において援用する。
【0047】
そのような生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は、以下の:
a) 第1の多糖及び第2の多糖を提供するステップであり、好ましくは、第1の多糖及び/又は第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギン酸、セルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、リケニン、レンチナン、及びそれらの混合物を含む群から選択され、nは第1及び/又は第2の多糖のモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000までの整数である、ステップ;
b) 任意的に、第1及び/又は第2の多糖の少なくとも1つのOH基をカルボキシメチル化するステップ;
c) 第1の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xの1つ以上のリンカー単位で第1の多糖を官能基化するか、又は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xの1つ以上のリンカー単位で第1の多糖を官能基化するステップであり、Aは、-(CH-C(O)-又は-C(O)-NH-であり、dは1から3の整数であり、Xは、-NH-(CH-N、-NH-(CHCHO)-CHCH、及び-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-Nを含む群から選択され、rは2から20の整数であり、sは1から15の整数であり、tは1から15の整数であり;
並びに、
第2の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A´-Yの1つ以上のリンカー単位で第2の多糖を官能基化するか、又は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yの1つ以上のリンカー単位で第2の多糖を官能基化するステップであり、A´は、-(CH-C(O)-又は-C(O)-NH-であり、dは1から3の整数であり、
Yは、-NH-(CH-Q、-NH-(CHCHO)-CHCHQ、及び-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-Qを含む群から選択され、
Qは
【0048】
【化1】
又は
【0049】
【化2】
であり、
M、M´=H又はMeであり、さらに、
W=OMe、OEt、OH、NH、又はNHMeである、ステップ;
d) 任意的に、ステップa)~c)によって形成された混合物に1つ以上の酵素を添加するステップ;
e) ステップa)~d)によって形成された混合物を、水性媒体において25°Cから70°Cの範囲内にある温度、好ましくは40°Cで少なくとも1時間、好ましくは1から10時間インキュベートするステップ;
を含み得る。
【0050】
生体適合性ヒドロゲルは:
以下の構造:
- 第1の多糖及び第2の多糖であり、
好ましくは、第1の多糖及び/又は第2の多糖は、独立して、プルラン、アルギン酸、セルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、リケニン、レンチナン、及びそれらの混合物を含む群から選択され、nは、第1の多糖及び/又は第2の多糖のモノマー繰り返し単位の数であり、nは、10から10000の整数である、第1の多糖及び第2の多糖、
- 第1の多糖を第2の多糖に連結する1つ以上のリンカー単位であり、1つ以上のリンカー単位の構造が、
-A-Z-B-Z-A´-であり、
A及びA´は、互いに独立して、-(CH-C(O)-又は-C(O)-NH-であり、dは1から3の整数であり、
は、-O-、-(CH-、-NH-(CHCHO)-CHCH-、及び、-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-を含む群から選択され、dは1から4の整数であり、rは2から20の整数であり、sは1から15の整数であり、tは1から15の整数であり;
さらに、
は、-O-、-(CH-、-NH-(CHCHO)-CHCH-、及び、-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-を含む群から選択され、
Bは、
【0051】
【化3】
であり、さらに、
R´は、1つ以上の酵素の非共有結合固定化のために、-CF、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH、及び、-C(O)-NHMeを含む群から選択される、1つ以上のリンカー単位、
を含む架橋ポリマーを含み得る。
【0052】
本明細書において使用される場合、「生体適合性」という用語は、特にヒドロゲルに関連して、生体適合性であると呼ばれているか又は評価されているそれぞれの材料が、生物学的系に対して毒性又は有害な影響を及ぼさない品質を有するということ、レシピエントにおいていかなる望ましくない局所的又は全身的な影響も誘発することなくその所望の機能を果たすが、その特定の状況において最も適切で有益な応答を生成する能力、又は、有害な変化を引き起こすことなく組織と調和して存在する能力を有するということを意味する。生体適合性材料の好ましい特性は、炎症及び免疫応答の低下、及び/又は、低い/限定的な線維性カプセル化である。
【0053】
第1及び/又は第2の多糖は、任意的に、ステップb)においてカルボキシメチル化されてもよく、本明細書において先に記載した第1及び/又は第2の多糖の少なくとも1つのOH基がカルボキシメチル化されてもよい。一実施形態において、カルボキシメチル化は、好ましくは、第1及び/又は第2の多糖がプルラン又はデキストランである場合に実行される。
【0054】
本明細書において使用される場合、「官能基化」又は「官能基化された」という用語は、一般に、新しい所望の特性を化合物に提供するための特定の官能基の付加、例えば、既存の多糖構造への1つ又は複数のリンカー単位の付加等を意味する。
【0055】
ステップc)における上記の第2の多糖の官能基化は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A´-Yの1つ以上のリンカー単位で行われてもよく、又は、ステップc)における上記の第2の多糖の官能基化は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yの1つ以上のリンカー単位で行われてもよく、A´は、-(CH-C(O)-又は-C(O)-NH-であり、dは1から3の整数であり、Yは、-NH-(CH-Q、-NH-(CHCHO)-CHCHQ、及び、-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH2-Qを含む群から選択され、
Qは
【0056】
【化4】
又は
【0057】
【化5】
であり、
M、M´=H又はMeであり、さらに、
W=OMe、OEt、OH、NH2、又はNHMeである。
【0058】
本発明において使用される場合、Qは
【0059】
【化6】
又は
【0060】
【化7】
であってもよく、
M、M´=H又はMeであり、さらに、
W=OMe、OEt、OH、NH2、又はNHMeである。構造式
【0061】
【化8】
に対して、構造式
【0062】
【化9】
が、本明細書において他の場所で使用される場合、これは、後者の構造式について、両方のMが同じ(各H又は各Me)でなければならないことを意味するものではない。正しくは、本発明は、一実施形態において両方のMがHであってもよく、一実施形態において両方のMがMeであってもよく、さらに、一実施形態において1つのMがHであってもよく、もう1つのMがMeであってもよい(Mの位置とは無関係に、1つのMがHで、もう1つのMがMeである2つの可能性がある)ということも含み得る。従って、本発明に関して、2つの構造式
【0063】
【化10】
及び
【0064】
【化11】
は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0065】
さらに、本発明に関して、構造-A´-Yの1つ以上のリンカー単位での第2の多糖の官能基化について、
Yは、-NH-(CH-Q、-NH-(CHCHO)-CHCHQ、及び、-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-Qを含む群から選択され、
Qは
【0066】
【化12】
又は
【0067】
【化13】
であり、
M、M´=H又はMeであり、さらに、
W=OMe、OEt、OH、NH、又はNHMeであり、-NH-(CH-Q、-NH-(CHCHO)-CHCHQ、又は、-NH-(CH-CH-C(O))-CH-CH-Q内でのQの連結が、構造式
【0068】
【化14】
及び
【0069】
【化15】
において与えられている破線を介しているということが当業者には完全に明らかである。
【0070】
一実施形態では、ステップd)において、任意的に、ステップa)~c)によって形成された混合物に1つ以上の酵素を添加することが実行されてもよい。この実施形態では、いかなる酵素も原則として可能である。
【0071】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において25°Cから70°Cの範囲内にある温度で少なくとも1時間実行される。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において25°Cから70°Cの範囲内にある温度で1~15時間実行されることがより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において25°Cから70°Cの範囲内にある温度で1~10時間実行されることがさらにより好ましい。
【0072】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で少なくとも1時間実行されることが好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で1~15時間実行されることがより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で1~10時間実行されることがさらにより好ましい。
【0073】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で少なくとも1時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で1~15時間実行されることがより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で1~10時間実行されることがさらにより好ましい。
【0074】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で少なくとも1時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で1~15時間実行されることがより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で1~10時間実行されることがさらにより好ましい。
【0075】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40°Cの温度で少なくとも1時間実行されることがより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40°Cの温度で1~15時間実行されることがさらにより好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40°Cの温度で1~10時間実行されることがさらにより好ましい。
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で4から10時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で4から10時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で4から10時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40℃の温度で4から10時間実行されることがより好ましい。
【0076】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で4から6時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で4から6時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で4から6時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40℃の温度で4から6時間実行されることがより好ましい。
【0077】
ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において30°Cから60°Cの範囲内にある温度で6から8時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから50°Cの範囲内にある温度で6から8時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において35°Cから45°Cの範囲内にある温度で6から8時間実行されることがさらに好ましい。ステップe)において、ステップa)~d)によって形成された混合物のインキュベーションが、水性媒体において約40℃の温度で6から8時間実行されることがより好ましい。
【0078】
生体適合性ヒドロゲルを調製するこの方法は、ステップe)と共に、熱誘起ゲル化を含むステップを含んでもよく、このステップは、例えば、適切に形成された鋳型の完全な気泡のない充填によって、又は親油性有機媒体内に個々の成分の2つの非粘性溶液の混合物を滴下して規定の直径の液滴を形成することによって、例えば、特定のフォームファクタの形成を可能にする。生体適合性ヒドロゲルの共有結合性の非分解性ネットワークの形成は、酵素がその中にカプセル化された場合に、酵素活性を維持することと両立できる上記のような温和な温度まで加熱することによって誘発することができる。この方法は、1,3-双極子環化付加を介した架橋、副反応及び毒性試薬(例えばグルタルアルデヒド等)なしの非常に穏やかな反応条件下(例えば、水性媒体において40°C)での熱ゲル化を含んでもよい。生体適合性ヒドロゲルの細孔サイズの最適化は、パラメータの実現可能な調整及び任意のカルボキシメチル化の程度の調整によって可能である。ステップd)において記載されているように酵素が添加される場合、1つ以上の酵素は、生成された生体適合性ヒドロゲルにおいて固定化され、次に、1つ以上の酵素は、周囲温度又は上昇した温度、例えば体温、37°Cの溶液において遊離の酵素よりも有意に長く安定で活性である。アルコールオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼのような不安定な感受性酵素は、これらの条件下でより良好な寿命性能を有する。この実施形態は、他の感受性酵素にも適用可能である。そのような生成された生体適合性ヒドロゲルは、より多量の酵素活性を失うことなく、乾燥した状態で保存することができる。さらに、酵素の浸出は全く又はほとんど達成することはできない。この方法に従って調製されたそのようなヒドロゲルは、酵素活性を維持しながら、水性又は有機溶媒において懸濁させることができる(例えばアセトン等)。個々の成分並びに混合物の粘度は、容易に調整することができる。
【0079】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、第1の多糖及び第2の多糖は、プルラン、アルギン酸、セルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、リケニン、レンチナン、及びそれらの混合物を含む群から互いに独立して選択される。
【0080】
プルランは、マルトトリオース単位を含む多糖ポリマーである。マルトトリオースの3つのグルコース単位が、α-1,4-グリコシド結合によって接続され、連続するマルトトリオース単位は、α-1,6-グリコシド結合によって互いに接続されている。プルランは、菌類のオーレオバシヂウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)によって澱粉から生成されてもよく、主に、乾燥及び捕食に抵抗するために細胞によって利用されてもよい。この多糖の存在も、細胞内外の両方への分子の拡散を促進する。本発明に関して、プルランに対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0081】
【化16】
の構造を有し、nは上記のプルランのモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000の整数である。
【0082】
アルギンとも呼ばれるアルギン酸は、褐藻類の細胞壁内に広く分布する多糖であり、親水性であり、水和させられると粘性のゴムを形成する。アルギン酸は、(1-4)-結合β-D-マンヌロン酸(M)及びそのC-5エピマーα-L-グルロン酸(G)残基のホモポリマーブロックがそれぞれ異なる配列又はブロックで共に共有結合した線状コポリマーである。モノマーは、連続したG残基のホモポリマーブロック(Gブロック)、連続したM残基のホモポリマーブロック(Mブロック)、又はM残基とG残基とが交互に並んだホモポリマーブロック(MGブロック)で現れてもよい。ナトリウム及びカルシウム等の金属では、その塩はアルギン酸塩として知られている。本発明に関して、アルギン酸に対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0083】
【化17】
の構造を有し、n及びmは、アルギン酸のモノマー繰り返し単位の数であり、n及びmは各々、互いに独立して10から10000の範囲内にある整数である。
【0084】
ヒアルロナンとも呼ばれるヒアルロン酸(hyaluronic acid)(HAに省略される;共役塩基:ヒアルロン酸(hyaluronate))は、結合組織、上皮組織、及び神経組織に広く分布するアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンであり、非硫酸化であり、ゴルジ体の代わりに細胞膜において形成され、非常に大きくなり得るという点で、グリコサミノグリカンの中でユニークである。ヒアルロン酸は、それ自体がD-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンで構成された二糖のポリマーであり、交互のβ-(1→4)及びβ-(1→3)グリコシド結合を介して結合している。本発明に関して、ヒアルロナンに対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0085】
【化18】
の構造を有し、nは上記のヒアルロナンのモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000の整数である。
【0086】
デキストランは、複雑な分岐グルカン(グルコースの縮合から得られる多糖)である。IUPACは、「主にC-1→C-6のグリコシド結合を有する微生物起源の分岐ポリ-α-D-グルコシド」としてデキストランを定義している。デキストラン鎖は、異なる長さ(3から2000キロダルトン)のものである。このポリマーの主鎖は、グルコースモノマー間にα-1,6-グリコシド結合を含み、α-1,3-結合からランダムに分岐している。この特徴的な分岐により、デキストランは、α-1,4又はα-1,6-結合によって繋ぎ止められた直鎖グルコースポリマーであるデキストリンと区別される。本発明に関して、デキストランに対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0087】
【化19】
の構造を有し、nは上記のデキストランのモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000の整数である。
【0088】
リケナン又はコケ澱粉(moss starch)としても知られるリケニンは、特定の種の地衣類に存在する複雑なグルカンであり、化学的には混合結合グリカンであり、β-1,3-及びβ-1,4-グリコシド結合によって結合された繰り返しグルコース単位を含んでいる。本発明に関して、リケニンに対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0089】
【化20】
の構造を有し、nは上記のリケニンのモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000の整数である。
【0090】
レンチナンは、シイタケの子実体から単離された多糖である。化学的に、レンチナンは、β-1,6-分枝を有するβ-1,3-ベータ-グルカンである。本発明に関して、レンチナンに対するそれぞれのモノマー繰り返し単位は
【0091】
【化21】
の構造を有し、nは上記のレンチナンのモノマー繰り返し単位の数であり、nは10から10000の整数である。
【0092】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、第1及び/又は第2の多糖はデキストラン又はプルランであり、デキストラン又はプルランの少なくとも1つのOH基のカルボキシメチル化はステップb)において実行される。この実施形態に対しては、デキストラン又はプルランの少なくとも1つのOH基のカルボキシメチル化はステップb)においてデキストラン及び/又はプルランのCで実行されることが好ましい。この実施形態に対しては、デキストラン又はプルランの少なくとも1つのOH基のカルボキシメチル化はステップb)においてデキストラン及び/又はプルランのCで実行されることが好ましい。この実施形態に対しては、デキストラン又はプルランの少なくとも1つのOH基のカルボキシメチル化はステップb)においてデキストラン及び/又はプルランのCで実行されることが好ましい。この実施形態に対しては、デキストラン又はプルランの少なくとも1つのOH基のカルボキシメチル化はステップb)においてデキストラン及び/又はプルランのCで実行されることが好ましい。
【0093】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらなる実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5のAで官能基化される。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.5のAで官能基化される。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.0のAで官能基化される。
【0094】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法に対して、ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5のA´で官能基化されることが好ましい。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.5のA´で官能基化される。本発明に従って生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.0のA´で官能基化される。
【0095】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらなる実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5のXで官能基化される。本発明に従って生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.5のXで官能基化される。本発明に従って生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第1の多糖は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.0のXで官能基化される。
【0096】
ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5のYで官能基化されることが好ましい。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.5のYで官能基化される。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法のさらに好ましい実施形態では、ステップc)において、第2の多糖は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.05~1.0のYで官能基化される。
【0097】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、dは1である。
【0098】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法に対して、ステップe)は、架橋ポリマーを形成するためのXとYとの間の熱誘起の環状付加反応であることがさらに好ましい。
【0099】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、Nの含有量は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5のNである。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態において、Nの含有量は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.0のNである。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つのさらに好ましい実施形態において、Nの含有量は、第1の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.1~1.0のNである。
【0100】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.5である。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.01~1.0である。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー繰り返し単位あたり0.1~1.0である。
【0101】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態では、ステップc)において、-A-Xは、好ましくは第1の多糖のモノマー繰り返し単位のC、C、C、又はCの少なくとも1つを介して、より好ましくは第1の多糖のモノマー繰り返し単位のCを介して、第1の多糖の少なくとも1つの第1級又は第2級OH基に連結される。
【0102】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態では、ステップc)において、-A´-Yは、好ましくは第2の多糖のモノマー繰り返し単位のC、C、C、又はCの少なくとも1つを介して、より好ましくは第2の多糖のモノマー繰り返し単位のCを介して、第2の多糖の少なくとも1つの第1級又は第2級OH基に連結される。
【0103】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法に対して、当該方法は、毒性試薬を使用せず、好ましくはグルタルアルデヒドを使用しないことがさらに好ましい。
【0104】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、官能基化されていない第1の多糖の分子量は、5から2000kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、官能基化された第1の多糖の分子量は、5から2500kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態において、官能基化された第1の多糖の分子量は、5から2000kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つのより好ましい実施形態において、官能基化された第1の多糖の分子量は、5から1500kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つのさらにより好ましい実施形態において、官能基化された第1の多糖の分子量は、10から1500kDaの範囲内にある。
【0105】
生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、官能基化されていない第2の多糖の分子量は、5から2000kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の一実施形態において、官能基化された第2の多糖の分子量は、5から2500kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つの好ましい実施形態において、官能基化された第2の多糖の分子量は、5から2000kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つのより好ましい実施形態において、官能基化された第2の多糖の分子量は、5から1500kDaの範囲内にある。生体適合性ヒドロゲルを調製する方法の1つのさらにより好ましい実施形態において、官能基化された第2の多糖の分子量は、10から1500kDaの範囲内にある。
【0106】
ヒドロゲルは、上記のような生体適合性ヒドロゲルを調製する任意の方法によって得ることができる。上記のヒドロゲルは、1つ以上のカプセル化酵素を含むことが好ましい。ヒドロゲルは、膨潤性又は膨潤したヒドロゲルマトリックスであることがさらに好ましい。
【0107】
本開示の多くの実施形態が記載されてきた。それにもかかわらず、本開示の真意及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができるということが理解されることになる。従って、他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内にある。
【0108】
上記の例は、本開示の実施形態を作成及び使用する方法の完全な開示及び説明として当業者に提供されており、1人以上の本発明者がそれらの開示とみなす範囲を限定することを意図するものではない。
【0109】
当業者には明らかである、本明細書において開示された方法及びシステムを実行するための上記の態様の修正は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。本明細書において記載された全ての特許文献及び刊行物は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示している。本開示において引用された全ての参考文献を、各参考文献がその全体を個別に参照により援用された場合と同じ程度に、参照によって援用する。
【0110】
本開示は、特定の方法又はシステムに限定されるものではなく、当然ながら、変更され得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定的であることを意図していないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」を伴う単数形は、別段の明確な指示がない限り、その複数形を含む。「複数」という用語は、別段の明確な指示がない限り、2つ以上の指示対象を含む。別段の定めがない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。「上」及び「下」という用語は、他の要素に対する相対位置を示すものであり、地面に対する絶対位置を示すものではないと理解される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
【国際調査報告】