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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】PVDのための蒸気ノズル
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522268
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2022058332
(87)【国際公開番号】W WO2023062454
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/059432
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルウェット,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】パーチェ,セルジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジレ,オセアーヌ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA25
4K029BA03
4K029BA07
4K029BA12
4K029BA17
4K029BA18
4K029BA21
4K029BA35
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB03
4K029DB04
4K029DB12
4K029EA02
4K029EA03
4K029GA03
4K029JA10
4K029KA01
(57)【要約】
本発明は、金属または金属合金から形成されたコーティングを、走行している基板上に堆積させるための蒸気ジェットコータに関し、前記蒸気ジェットコータは、蒸発管に接続可能に構成された分配チャンバと、前記分配チャンバに接続され、主噴射計画および主噴射方向に沿って金属合金蒸気を噴射することができる蒸気出口オリフィスであって、i.収束部と、ii.発散部とを連続的に具備する蒸気出口オリフィスと、を連続的に備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを堆積させるための蒸気ジェットコータ1であって、前記蒸気ジェットコータは、
蒸発管に接続可能に構成された、分配チャンバ2と、
前記分配チャンバ2に接続され、主噴射計画(P)および主噴射方向(D)に沿って金属合金蒸気を噴射することができる蒸気出口オリフィス3であって、
iii.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(5、6)を画定する壁を具備する収束部4であって、前記2つの面(5、6)は、入口側の距離CENTRYから、および出口側の距離CEXITから離間され、比CEE(CENTRY/CEXIT)は1.2~10である、収束部4と、
iv.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(8、9)を画定する壁を備える発散部7であって、前記2つの面(8、9)は、入口側の距離DENTRYから、および出口側の距離DEXITから離間され、比DEE(DENTRY/DEXIT)は0.1~0.8である、発散部7と、
を連続的に備える蒸気出口オリフィス(3)と、
を連続的に備える蒸気ジェットコータ1。
【請求項2】
前記収束部において、前記比CEEは3~5である、請求項1に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項3】
前記収束部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である、請求項1または2のいずれか一項に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項4】
前記発散部において、前記比DEEは0.25~0.35である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項5】
前記発散部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項6】
前記蒸気出口オリフィス3は、前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの平行な面(80、90)を具備する端部を備え、前記2つの面は距離DEXITから離間される、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティングされた蒸気ジェット。
【請求項7】
走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを連続的に堆積させるための真空堆積設備であって、設備は、
金属または金属合金蒸気を供給するのに適した蒸発るつぼと、
蒸発管と、
所与の経路に沿って基板を通過させるのに適した堆積チャンバと、
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの蒸気ジェットコータと、
を連続的に備える、真空堆積設備。
【請求項8】
請求項7に記載の真空堆積設備内の少なくとも1つの金属から形成されたコーティングを、走行している基板(S)上に連続的に堆積させるための方法であって、方法は、圧力PVACUUMを有する前記真空チャンバで、金属蒸気は、少なくとも1つの蒸気出口オリフィスを通って、圧力PEJECTEDで前記走行している基板の側面に向かって噴射され、少なくとも1つの金属の層が形成されるステップを備え、(PEJECTED/PVACUUM)は2~15であり、噴射された蒸気は、前記発散部7の前記入口側で超音速を有する、方法。
【請求項9】
前記蒸気ジェットコータは、走行している基板から20mm~80mmの距離にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(PEJECTED/PVACUUM)は2~10である、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PVACUUMは1.10-4mbar~3.10-1mbarである、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸気ジェットコータによって噴射される金属蒸気流は3~300g.s-1である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属コーティングが備えられ、場合により製造中に不可避である、微量で存在する、不純物を含み、前記金属コーティングが1%未満の空孔濃度を有する、請求項8から12のいずれか一項に記載の製造された、鋼板。
【請求項14】
電気泳動によって生成された塗料の層が、前記金属コーティングの上部にある、請求項13に記載の鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コーティングを連続的に堆積させるための蒸気ジェットコータおよび真空堆積設備に関する。本発明はまた、そのようなコーティングの堆積方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、亜鉛または亜鉛-マグネシウム系コーティングを走行している鋼帯上に堆積させることを意図しているが、これに限定されない。次いで、このようなコーティングされた鋼帯を、例えばスタンピング、曲げまたは成形によって切断および成形され、次いで塗装されることができる部品を形成することができる。
【背景技術】
【0003】
溶融めっきコーティングおよび電気コーティングなどのいくつかのコーティング方法が存在する。しかしながら、これらの従来の方法は、Si、Mn、Al、P、CrまたはBなどの高レベルの酸化され易い元素を含有する鋼グレードに、満足のいくコーティングを提供しない。その結果、JVD(ジェット蒸着)などの真空堆積技術などの新しい方法が開発されている。
【0004】
JVDでは、超音速で推進される金属蒸気スプレーが基板と接触する。国際公開第97/47782号および国際公開第2009/047333号は、そのようなプロセスを記載している。
【0005】
国際公開第2015/015237号は、JVD(ジェット蒸着)によってコーティングされた鋼の、腐食に対する一時的な保護を改善することを目的としたプロセスを開示している。これは、堆積チャンバ内の圧力と亜鉛噴射チャンバ内の圧力との比が2×10-3から5.5×10-2である真空堆積設備で鋼基板をコーティングすることによって行われる。
【0006】
国際公開第2019/239314号は、微粒子状欠陥を防止する、蒸気ジェットコーティングを開示している。図1に示されるように、この蒸気ジェットコータ101は、分配チャンバ102と、収束部104を備える蒸気出口オリフィス103とから形成される。
【0007】
それにもかかわらず、従来技術の装置は約2%の空孔濃度をもたらすことが観察されている。これは、コーティングの機械的抵抗を制限し、コーティングの厚さを制限するコーティングの密着性の問題を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第97/47782号
【特許文献2】国際公開第2009/047333号
【特許文献3】国際公開第2015/015237号
【特許文献4】国際公開第2019/239314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の設備およびプロセスの欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、様々な実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来技術による蒸気ジェットコータの一実施形態の図である。
図2】本発明による蒸気ジェットコータの一実施形態の図である。
図3】本発明による蒸気出口オリフィスの第1の実施形態の図である。
図4】本発明による蒸気出口オリフィスの第2の実施形態の図である。
図5】本発明による真空堆積設備の一実施形態の図である。
図6】従来技術による蒸気ジェットコータで実現されたコーティングのSEM画像の図である。
図7】本発明による蒸気ジェットコータで実現されたコーティングのSEM画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、図2および図3に示されように、走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを堆積させるための蒸気ジェットコータ1に関し、前記蒸気ジェットコータは、
蒸発管に接続可能に構成された、分配チャンバ2と、
前記分配チャンバ2に接続され、主噴射計画(P)および主噴射方向(D)に沿って金属合金蒸気を噴射することができる蒸気出口オリフィス3であって、
i.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(5、6)を画定する壁を具備する収束部4であって、前記2つの面(5、6)は、入口側の距離CENTRYから、および出口側の距離CEXITから離間され、比CEE(CENTRY/CEXIT)は1.2~10である、収束部4と、
ii.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(8、9)を画定する壁を備える発散部7であって、前記2つの面(8、9)は、入口側の距離DENTRYから、および出口側の距離DEXITから離間され、比DEE(DENTRY/DEXIT)は0.1~0.8である、発散部7と、
を連続的に具備する蒸気出口オリフィス3と、
を連続的に備える。
【0014】
以下では、主噴射方向(D)は、噴射された金属合金蒸気の移動に対して表される。
【0015】
好ましくは、前記基板は帯材である。
【0016】
好ましくは、前記走行している基板は金属基板である。さらにより好ましくは、前記走行している基板は鋼基板である。
【0017】
好ましくは、前記走行している基板は、重量パーセントで、0.15<Si<0.4、0.5<Mn<2.5、0.1<C<0.4、P≦0.03、S≦0.02、0.01<Al≦0.1、Cu≦0.2、Ti+Nb≦0.20、Cr+Mo≦1を含有する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる。
【0018】
好ましくは、前記走行している基板は、重量パーセントで、0.15<Si<0.6、0.17<Mn<2.3、0.1<C<0.4、P≦0.05、S≦0.01、0.015<Al≦1.0、Cu≦0.2、B≦0.005、Ti+Nb≦0.15、Cr+Mo≦1.4を含有する組成を有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる。
【0019】
蒸気ジェットコータ1は、音波蒸気ジェットコータ、すなわち音速の蒸気ジェットを生成することができるコータである。このタイプのコータは、通常、JVD(ジェット蒸着)装置とも呼ばれる。
【0020】
分配チャンバ2の機能は、蒸気出口オリフィスに沿って、したがって基板幅に沿って金属蒸気を均一に分配することである。図2および図5に示されるように、分配チャンバ2は、蒸発管10に接続可能に構成されており、これは、金属蒸気が蒸発管10から分配チャンバ2に流れることができることを意味する。
【0021】
好ましくは、分配チャンバ2は、再加熱手段11、例えば加熱カートリッジを備える。そのような再加熱手段は、蒸発管から来る金属蒸気を、蒸気出口オリフィス3に入るときに、その膨張後に再加熱することを可能にし、蒸気出口オリフィスにおける凝縮を防止する。
【0022】
好ましくは、再加熱手段は、分配チャンバの長さに沿って、さらにより好ましくは全長に沿って延びる。再加熱手段の数および位置は、蒸気の再加熱を最適化するように調整されることができる。
【0023】
蒸気出口オリフィス3は、前記分配チャンバ2に接続され、これは、金属蒸気が分配チャンバ2から蒸気出口オリフィス3へ流れることができることを意味する。この接続は、好ましくは、分配チャンバの壁に切り込まれた開口部を介して行われる。
【0024】
蒸気出口オリフィス3および発散幾何学的形状は、発散部におけるいかなる流れの擾乱も防止するように構成される。
【0025】
図2に示されるように、蒸気出口オリフィスは、収束部4および発散部7を備える。
【0026】
収束部4は、噴射計画(P)の両側に1つずつ、互いに向かって収束する2つの面(5、6)を備える。
【0027】
2つの面は、入口側および出口側を画定する。入口側を通って、金属蒸気は、修復チャンバ2から、収束部に入る。出口側を通って、金属蒸気は収束部から出る。
【0028】
主噴射計画に垂直な計画では、収束部の面は、出口側の距離CEXITに対して入口側の距離CENTRYだけ離間されている。さらに、比
【数1】
は1.2~10である。
【0029】
「互いに向かって収束する」とは、蒸気出口オリフィスの入口側幅が出口側幅よりも小さいことを意味する。これは、側面の形状を決して制限しない。
【0030】
そのような収束部は、ジェット、すなわち金属蒸気ジェットを収束部の出口で超音速に達するために加速することを可能にする。
【0031】
発散部7は噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの面(8、9)を備え、2つの面(8、9)は互いに発散している。
【0032】
2つの面は、入口側および出口側を画定する。入口側を通って、金属蒸気が発散部に入る。出口側を通って、金属蒸気は発散部から出る。
【0033】
主噴射計画に垂直な計画では、発散部の面は、入口側の距離DENTRYと出口側の距離DEXITとに離間している。さらに、比
【数2】
は0.1~0.8である。
【0034】
「互いに収束する」とは、蒸気出口オリフィスの入口側幅が出口側幅よりも大きいことを意味する。これは、側面の形状を決して制限しない。
【0035】
ジェット速度がこの箇所の入口側で超音速である限り、そのような発散部は、ジェット、すなわち金属蒸気ジェットを加速し、その圧力を低下させることを可能にする。
【0036】
本発明者らによって、そのような収束部と、それに続くそのような発散部とを有することは、ジェット圧力の低下に起因して真空チャンバに入るときのジェット膨張(同じ蒸気流の場合)を減少させることが可能であることが見出された。
【0037】
ジェット膨張の減少は、鋼コーティング界面およびコーティング上面の両方でコーティングの多孔性を減少させることを可能にする。
【0038】
好ましくは、前記収束部において、前記比CEEは3~5である。
【0039】
好ましくは、前記収束部において、前記2つの面は、主噴射計画(P)に対して本質的に対称である。このような配置は、コーティングの均一性を改善する。
【0040】
好ましくは、前記収束部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である。さらにより好ましくは、前記収束部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は、等脚台形である。
【0041】
好ましくは、前記収束部において、等脚台形の底角は、60°を超える値を有する。
【0042】
好ましくは、収束部の長さLCONVは、80mm~250mmである。長さは主噴射方向Dに沿っている。
【0043】
好ましくは、距離CENTRYは、30mm~180mmである。さらに好ましくは、距離CENTRYは、50mm~150mmである。
【0044】
好ましくは、距離CEXITは、30mm~75mmである。さらに好ましくは、距離CEXITは、35mm~55mmである。
【0045】
好ましくは、主噴射計画(P)と収束面(5、6)を画定する2つの壁のいずれかとの間の角度は、5°~45°、好ましくは15°~35°である。
【0046】
好ましくは、収束部4の入口の始まりは、以下の条件に従って曲率半径ρENTRYを呈する、すなわち、0.5×CENTRY<ρENTRY<2×CENTRYである。
【0047】
好ましくは、前記発散部、前記比DEEは、0.3~0.6である。
【0048】
好ましくは、前記発散部において、前記2つの面は、主噴射計画(P)に対して対称である。
【0049】
好ましくは、前記発散部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である。さらにより好ましくは、前記発散部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は、等脚台形である。
【0050】
好ましくは、前記発散部において、等脚台形の底角は、60°を超える値を有する。
【0051】
好ましくは、発散部の長さは、30mm~280mmである。長さは主噴射方向Dに沿っている。
【0052】
好ましくは、距離DENTRYは、20mm~60mmである。さらに好ましくは、距離DENTRYは、30mm~50mmである。
【0053】
好ましくは、距離DEXITは、50mm~210mmである。さらに好ましくは、距離DEXITは、60mm~200mmである。
【0054】
好ましくは、前記収束部および前記発散部は連続している。さらにより好ましくは、収束部と発散部との間の接合部における曲率は、40°未満、好ましくは30°未満である。
【0055】
好ましくは、前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの面を具備する壁を備える中立部が、収束部と発散部との間に配置され、前記2つの空間は、前記主噴射方向Dに沿って本質的に一定である距離から離間される。さらにより好ましくは、収束部と中立部との間の曲率は、40°未満、好ましくは30°未満である。さらにより好ましくは、発散部と中立部との間の曲率は、40°未満、好ましくは30°未満である。
【0056】
好ましくは、図4に示されるように、蒸気出口オリフィス3は、前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの平行な面(80、90)を具備する端部を備え、前記2つの面は距離DEXITから離間される。さらにより好ましくは、前記端部は、発散部(7)の長さの5%~15%の長さを有する。
【0057】
この端部は、金属蒸気の経路を辿るときに収束部の下流にある。
【0058】
図5に示されように、本発明はまた、走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを連続的に堆積させるための真空堆積設備12に関し、この設備は、基板(S)を所与の経路に沿って通過させるのに適した堆積チャンバ13および、
金属または金属合金蒸気を供給するのに適した蒸発るつぼ14と、
蒸発管10と、
前述の少なくとも1つの蒸気ジェットコータ1と、
を連続的に備える。
【0059】
この設備は、基板を堆積チャンバに通すための手段15を備える。基板は、前記基板の性質および形状に応じて、任意の適切な手段によって作動させ得る。鋼帯を支えることができる回転支持ローラが特に使用されることができる。
【0060】
堆積チャンバは、好ましくは10-8~10-3バールの圧力に保たれた密閉可能な箱であることが好ましい。好ましくは、堆積チャンバは、入口ロックおよび出口ロック(これらは図示せず)を有し、これらの間で、例えば鋼帯などの基板Sは、走行方向に所与の経路に沿って走行することができる。
【0061】
蒸気ジェットコータは、蒸発るつぼ14から来る金属合金蒸気を走行している基板S上に噴霧するのに適している。
【0062】
蒸発るつぼ14は、主としてポットおよびカバーからなる。蒸発るつぼには、金属蒸気を形成して蒸気ジェットコータに供給することを可能にする加熱手段が設けられている。蒸発るつぼには、有利には、金属合金浴の撹拌および組成均質化をより容易にするという利点を有する誘導ヒータが設けられる。
【0063】
蒸発管10は、一方側が蒸発るつぼ14に接続され、他方側が蒸気ジェットコータ1に接続されている。好ましくは、蒸発器とエジェクタとの間に配置された弁が金属蒸気流を制御する。
【0064】
これらの異なる部品は、例えば、グラファイトで作られてもよい。
【0065】
本発明はまた、前述のように真空堆積設備内の少なくとも1つの金属から形成されたコーティングを、走行している基板(S)上に連続的に堆積させるための方法に関するもので、この方法は、圧力PVACUUMを有する前記真空チャンバで、金属蒸気が、少なくとも1つの蒸気出口オリフィスを通って、圧力PEJECTEDで、前記走行している基板の側面に向かって噴射され、少なくとも1つの金属の層が形成されるステップを備え、(PEJECTED/PVACUUM)は2~15であり、噴射された蒸気は、前記発散部7の前記入口側で超音速を有する。
【0066】
VACUUMは、圧力センサによって測定されるチャンバの圧力である。
【0067】
分配チャンバの圧力PREPは、以下の式(1)を使用して、亜鉛質量流量DZINC、分配チャンバ内の亜鉛温度TZINC、およびエジェクタスロートの断面ATHROATから導出されることができる。
【数3】
式中、γ=C/Cであり、Cは定圧比熱であり、Cは定容比熱であり、Rは気体定数/モル質量の比である。
【0068】
次に、蒸気出口オリフィスによって噴射されるジェットの圧力PEJECTEDは、以下の式(2)を使用して計算されることができる。
【数4】
式中、Mは、DEE比およびγ=C/Cに依存する、蒸気出口オリフィスにおけるマッハ数であり、Cは定圧比熱であり、Cは定容比熱である。
【0069】
走行している基板は、好ましくは金属帯であり、さらにより好ましくは鋼帯である。走行している基板の幅は、好ましくは200~2200mmである。
【0070】
走行している基板は、好ましくは10~800m/分の走行速度を有する。
【0071】
前記少なくとも1つの金属の層は、好ましくは、噴射された蒸気の凝縮によって形成される。
【0072】
好ましくは、コーティングの厚さは0.1~20μmである。0.1μm未満では、コーティングの防食は十分ではない。
【0073】
コーティングは、好ましくは主元素として亜鉛を含有する。コーティングは、以下の追加の元素、すなわち、個々にまたは組み合わせて考慮されるクロム、ニッケル、チタン、マンガン、マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムを含有してもよい。
【0074】
好ましくは、PEJECTED/PVACUUMは2~10である。このような比は、真空チャンバ内のジェット膨張をさらに低下させる。
【0075】
好ましくは、前記PVACCUMは1.10-4mbar~3.10-1mbarである。
【0076】
好ましくは、前記蒸気ジェットコータは、走行している基板から20mm~80mmの距離にある。
【0077】
好ましくは、前記蒸気ジェットコータによって噴射される金属蒸気流は3~300g.s-1である。
【0078】
本発明はまた、前述のように製造され、場合により製造中に不可避である、微量で存在する不純物を含む金属コーティングを備えた鋼板であって、前記金属コーティングは1%未満の空孔濃度を有する鋼板に関する。
【0079】
鋼板は、自動車用の本体部品の製造に使用できるように、好ましくは熱間圧延され、次いで冷間圧延される。本発明は必ずしもこの分野に限定されず、その最終用途にかかわらず、あらゆる鋼部品の用途を見出すことができる。
【0080】
基板鋼は、例えば、1つの特定のグレードのVHS鋼(一般に450~900MPaの非常に高い強度)またはUHR(一般に900MPa超の超高強度)であることができ、非常に酸化され易い以下の要素、すなわち、
最大0.1%(重量基準)のTiを含有し得る、格子間元素を含まない鋼(IF-極低炭素)、
最大1%(重量基準)のSi、Crおよび/またはAlと組み合わせて最大1200(重量基準)3%のMnを含有することができるDP 500 DP鋼までの鋼などの二相鋼、
例えば約1.6%(重量基準)のMnおよび1.5%%のSiを含有するTRIP鋼780としてのTRIP鋼(塑性変態誘起)、
TRIP鋼またはリンを含有する二相、
TWIP鋼(TWining induced plasticity)-高含有量のMn(一般に17から25重量%)を有する鋼、
Fe-Al、例えば最大10%(重量基準)のAlを含有し得る低密度鋼などの鋼、
他の合金元素(Si、Mn、Al...)と組み合わせて、高いクロム含有量(一般に13~35重量%)を有するステンレス鋼、
である。
【0081】
空孔濃度は、SEM画像のコントラストを比較することにより推定される。約10枚の画像を使用して空孔が評価された。空孔濃度の推定は、コーティング厚と同じ大きさの側面を有する、正方形の断面で行われる。より暗いピクセルは空孔に対応する。
【0082】
好ましくは、前記金属コーティングは、純粋な亜鉛の少なくとも1つの層を備える。鋼板は、最終製品の所望の特性に適した方法で、亜鉛層に加えて1つまたは複数の層で任意にコーティングされてもよい。亜鉛層は、好ましくはコーティングの上層である。
【0083】
好ましくは、電気泳動によって生成された塗料の層は、前記金属コーティングの上部にある。
【0084】
実験結果
コーティングの緻密性に対する、特許請求された蒸気ジェットコータの影響を示すために、同じ真空堆積設備でジェット堆積プロセスによって亜鉛コーティングが形成された鋼帯に対して比較試験が行われた。
【0085】
真空堆積設備は、図5に示されるように、基板を所与の経路に沿って連続的に通過させるのに適した堆積チャンバと、亜鉛蒸気に適した蒸発るつぼと、蒸発管と、1つの蒸気ジェットコータとを備える。
【0086】
結果を比較するために、2つのサンプルAおよびBが製造された。両方のコーティングは、同じ組成を有するマルテンサイト鋼(ArcelorMittal製のMS1500)で作製した。
【0087】
両方のJVDプロセスにおいて、真空チャンバにおける圧力PVACUUMは1.2×10-4バールであり、蒸気ジェットコータと基板との間の距離は50mmであり、蒸気流は約108g.s-1である。
【0088】
サンプルAの基板は、国際公開第2019/129314号に記載されているように蒸気ジェットコータでコーティングされており、蒸気ジェットコータは、図1に示されているように収束部のみを備える。蒸気ジェットコータの重要な特徴は表1にまとめられている。
【0089】
サンプルBの基板は、特許請求され、図4に示されているようにコーティングされた蒸気ジェットでコーティングされており、収束部、発散部、次いで端部を備える。蒸気ジェットコータの重要な特徴は表1にまとめられている。
【0090】
各試料について、SEM画像が撮影され、10枚のSEM画像を使用して亜鉛コーティングの緻密性が推定された。
【0091】
空孔濃度は、特許請求された蒸気ジェットコーティングが使用されるときに大幅に低減される。さらに、亜鉛コーティングはより均一である。
【0092】
このようなコーティングの改善は、サンプルA(図6)およびB(図7)の亜鉛コーティングのSEM画像を比較すると、視覚的にも顕著である。
【0093】
実験結果から、本発明は空孔濃度を低下させることでコーティングを改善することが明らかである。
【0094】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを堆積させるための蒸気ジェットコータ1であって、前記蒸気ジェットコータは、
蒸発管に接続可能に構成された、分配チャンバ2と、
前記分配チャンバ2に接続され、主噴射計画(P)および主噴射方向(D)に沿って金属合金蒸気を噴射することができる蒸気出口オリフィス3であって、
iii.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(5、6)を画定する壁を具備する収束部4であって、前記2つの面(5、6)は、入口側の距離CENTRYから、および出口側の距離CEXITから離間され、比CEE(CENTRY/CEXIT)は1.2~10である、収束部4と、
iv.前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの収束面(8、9)を画定する壁を備える発散部7であって、前記2つの面(8、9)は、入口側の距離DENTRYから、および出口側の距離DEXITから離間され、比DEE(DENTRY/DEXIT)は0.1~0.8である、発散部7と、
を連続的に備える蒸気出口オリフィス(3)と、
を連続的に備える蒸気ジェットコータ1。
【請求項2】
前記収束部において、前記比CEEは3~5である、請求項1に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項3】
前記収束部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である、請求項1または2のいずれか一項に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項4】
前記発散部において、前記比DEEは0.25~0.35である、請求項1または2に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項5】
前記発散部において、その長さに垂直な計画に沿った断面は台形である、請求項1または2に記載の蒸気ジェットコータ。
【請求項6】
前記蒸気出口オリフィス3は、前記噴射計画(P)の各側に1つずつある、2つの平行な面(80、90)を具備する端部を備え、前記2つの面は距離DEXITから離間される、請求項1または2に記載のコーティングされた蒸気ジェット。
【請求項7】
走行している基板(S)上に、金属または金属合金から形成されたコーティングを連続的に堆積させるための真空堆積設備であって、設備は、
金属または金属合金蒸気を供給するのに適した蒸発るつぼと、
蒸発管と、
所与の経路に沿って基板を通過させるのに適した堆積チャンバと、
請求項1または2に記載の少なくとも1つの蒸気ジェットコータと、
を連続的に備える、真空堆積設備。
【請求項8】
請求項7に記載の真空堆積設備内の少なくとも1つの金属から形成されたコーティングを、走行している基板(S)上に連続的に堆積させるための方法であって、方法は、圧力PVACUUMを有する前記真空チャンバで、金属蒸気は、少なくとも1つの蒸気出口オリフィスを通って、圧力PEJECTEDで前記走行している基板の側面に向かって噴射され、少なくとも1つの金属の層が形成されるステップを備え、(PEJECTED/PVACUUM)は2~15であり、噴射された蒸気は、前記発散部7の前記入口側で超音速を有する、方法。
【請求項9】
前記蒸気ジェットコータは、走行している基板から20mm~80mmの距離にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(PEJECTED/PVACUUM)は2~10である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記PVACUUMは1.10-4mbar~3.10-1mbarである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸気ジェットコータによって噴射される金属蒸気流は3~300g.s-1である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
金属コーティングが備えられ、場合により製造中に不可避である、微量で存在する、不純物を含み、前記金属コーティングが1%未満の空孔濃度を有する、請求項8に記載の製造された、鋼板。
【請求項14】
電気泳動によって生成された塗料の層が、前記金属コーティングの上部にある、請求項13に記載の鋼板。
【国際調査報告】