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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】顕微鏡および顕微鏡の作動方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522343
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078732
(87)【国際公開番号】W WO2023062229
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21203023.3
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524139172
【氏名又は名称】プレツィポイント イノベーション ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PRECIPOINT INNOVATION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザルビデア,ドブリナ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA09
2G043KA09
2G043LA03
2H052AA08
2H052AA09
2H052AB01
2H052AB17
2H052AC04
2H052AC05
2H052AC15
2H052AC18
2H052AC34
2H052AD02
2H052AD06
2H052AD19
2H052AF14
(57)【要約】
【解決手段】顕微鏡(2)は、実質的にコリメートされた励起光ビームを放射するコリメート光源(20)と、複数のマイクロレンズ(24)を含む回転可能なマイクロレンズディスク(22)と、ビーム形成レンズ系(30)および顕微鏡対物レンズ(34)と、ビーム形成レンズ系(30)内またはビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間に配置される光遮断素子(36)と、を備え、複数のマイクロレンズ(24)は、それぞれ、各マイクロレンズ焦点(60)に向けて、実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を集光し、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズは、それぞれ、各試料照射点(66)において、各マイクロレンズ焦点を通って進む実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を共同して集光し、光遮断素子は、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する前記実質的にコリメートされた励起光ビームの光が集光されるレンズ系焦点(62、64)に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にコリメートされた励起光ビームを放射するコリメート光源(20)と、
複数のマイクロレンズ(24)を含む回転可能なマイクロレンズディスク(22)と、
ビーム形成レンズ系(30)および顕微鏡対物レンズ(34)と、
前記ビーム形成レンズ系(30)内、または、前記ビーム形成レンズ系(30)と前記顕微鏡対物レンズ(34)との間に配置される光遮断素子(36)と、
を備え、
前記複数のマイクロレンズ(24)は、それぞれ、各マイクロレンズ焦点(60)に向けて、前記実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を集光し、
前記ビーム形成レンズ系(30)および前記顕微鏡対物レンズ(34)は、それぞれ、各試料照射点(66)において、各マイクロレンズ焦点(60)を通って進む前記実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を共同して集光し、
前記光遮断素子(36)は、前記複数のマイクロレンズ(24)の間で前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)を通過する前記実質的にコリメートされた励起光ビームの光が集光されるレンズ系焦点(62、64)に配置される、
ことを特徴とする顕微鏡(2)。
【請求項2】
前記光遮断素子(36)は、強度低減素子、特に、半透明素子または不透明素子、および/または位相シフト素子からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡(2)。
【請求項3】
前記光遮断素子(36)は、概ね透明なマスクの光遮断部分である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡(2)。
【請求項4】
前記光遮断素子(36)は、前記ビーム形成レンズ系(30)および前記顕微鏡対物レンズ(34)を通る中心軸(80)上に配置される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項5】
前記光遮断素子(36)は、前記レンズ系焦点(62、64)の周りに遮断の広がりを有し、
前記光遮断素子(36)は、特に1mm未満、さらには、特に0.5mm未満、またさらには、特に0.2mm未満の遮断の広がりを有する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項6】
前記遮断の広がりは、前記光遮断素子(36)の位置において、個々のマイクロレンズビームの広がりの10%未満である、
ことを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡(2)。
【請求項7】
前記光遮断素子(36)は前記顕微鏡対物レンズ(34)の焦点面に、特に、前記ビーム形成レンズ系(30)と前記顕微鏡対物レンズ(34)と間の前記顕微鏡対物レンズ(34)の焦点面に配置される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項8】
前記ビーム形成レンズ系(30)はリレーレンズ(26)を備え、
前記光遮断素子(36)は、前記リレーレンズ(26)の焦点面に配置される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項9】
前記複数のマイクロレンズ(24)は、断面の広がりにおいて、200μmから1200μmの間、特に、500μmから1000μmの間、さらには、特に、700μmから900μmの間であり、および/または、
前記マイクロレンズディスク(22)上のマイクロレンズの充填率は、30%~80%、特に40%~70%である、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項10】
前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)は、透明なディスクである、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項11】
前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)は、積層造形によって形成され、および/または、
前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリ乳酸(PLA)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)から形成される、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項12】
前記顕微鏡(2)は、ピンホールディスクを含まない、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項13】
前記コリメート光源(20)はレーザ光源、特に、前記顕微鏡の試料面に非線形効果を生じさせることができるレーザ光源、さらには、特にパルスレーザ光源からなる、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項14】
前記顕微鏡(2)は、
前記ビーム形成レンズ系(30)と前記顕微鏡対物レンズ(34)との間に配置されるダイクロイックミラー(32)と、
第1チューブレンズ(40)と、
第1デジタルカメラ(42)と、
を備え、
特定の試料照射点(66)から前記顕微鏡対物レンズ(34)に向けて放射された光が、前記顕微鏡対物レンズ(34)を通過し、前記ダイクロイックミラー(32)で前記第1チューブレンズ(40)に向けて反射され、前記第1デジタルカメラ(42)において、前記第1チューブレンズ(40)により各像点(44)で集光されるように、前記ダイクロイックミラー(32)、前記第1チューブレンズ(40)、前記第1デジタルカメラ(42)を配置し、および/または、
前記顕微鏡(2)は、試料面(38)の背面側において、
背面側顕微鏡対物レンズ(50)と、
第2チューブレンズ(54)と、
第2デジタルカメラ(56)と、
を備え、
特定の試料照射点(66)から前記背面側顕微鏡対物レンズ(54)に向けて放射された光が、前記背面側顕微鏡対物レンズ(50)を通過し、前記第2デジタルカメラ(56)において、前記第2チューブレンズ(40)により各像点(58)で集光されるように、前記背面側顕微鏡対物レンズ(50)、前記第2チューブレンズ(54)、前記第2デジタルカメラ(56)を配置する、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の顕微鏡(2)。
【請求項15】
回転可能なマイクロレンズディスク(22)を備える顕微鏡(2)の作動方法であって、前記方法は、
コリメート光源(20)から前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)に向けて、実質的にコリメートされた励起光ビームを放射し、
前記実質的にコリメートされた励起光ビームから、前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)の複数のマイクロレンズ(24)を介して複数のマイクロレンズビームを形成し、
ビーム形成レンズ系(30)および顕微鏡対物レンズ(34)を介して、前記複数のマイクロレンズビームの光を、各試料照射点に集光し、
前記ビーム形成レンズ系(30)内のレンズ系焦点(62)、または、前記ビーム形成レンズ系(30)と前記顕微鏡対物レンズ(34)との間のレンズ系焦点(64)に配置される光遮断素子(36)を介して、前記複数のマイクロレンズ(24)の間で前記回転可能なマイクロレンズディスク(22)を通過する前記実質的にコリメートされた励起光ビームの光を抑制する、
ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡法の分野に関する。特に、本発明は、高度に目標を絞って局所的に顕微鏡試料を励起する顕微鏡の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点顕微鏡法は、極めて高い解像度で試料を励起するための一般的な手法である。共焦点顕微鏡は、1つ以上の光ビームを1つ以上のピンホールを通して集光し、高度に目標を絞って1つ以上の光ビームの光を使用する一方、1つ以上のピンホールの周囲にある遮光構造によって、良好に挙動する1つ以上の光ビームに寄与しない周囲光を遮断するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
顕微鏡試料を広範囲でスキャンするため、共焦点顕微鏡は、回転可能なマイクロレンズディスクと回転可能なピンホールディスクを備えるように開発されてきた。マイクロレンズディスクは多数のマイクロレンズを備え、ピンホールディスクは多数のピンホールを備える。マイクロレンズディスクとピンホールディスクは、マイクロレンズのビーム形成とピンホールディスクによる周辺光の遮断から生じる局所的な励起が、顕微鏡試料を横切って移動するように、動作中に共回転する。マイクロレンズディスクとピンホールディスクが高速回転することにより、顕微鏡試料の励起領域の拡大と顕微鏡試料の高速走査が実現した。しかしながら、その結果、顕微鏡の設計は非常に複雑なものとなり、特に、マイクロレンズディスクとピンホールディスクの回転速度が速く、位置合わせと回転速度についての要求が高くなるため、顕微鏡の製造と取り扱いが非常に難しくなっている。マイクロレンズディスクとピンホールディスクの製造精度に関する要求、マイクロレンズディスクとピンホールディスクを互いに対して正確に支持するための要求、マイクロレンズディスクとピンホールディスクの回転速度を同一または準同一にするための要求により、これらのシステムが非常に複雑なものとなり、信頼性が許容範囲を超えて低下してしまうこともある。
【0004】
したがって、従来の手法に比べて複雑性を低下させつつ、高度に目標を絞って励起しながら顕微鏡試料を高速走査可能な顕微鏡を提供することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的な実施形態によれば、顕微鏡は、実質的にコリメートされた励起光ビームを放射するコリメート光源と、複数のマイクロレンズを含む回転可能なマイクロレンズディスクと、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズと、ビーム形成レンズ系内、または、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間に配置される光遮断素子と、を備え、複数のマイクロレンズは、それぞれ、各マイクロレンズ焦点に向けて、実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を集光し、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズは、それぞれ、各試料照射点において、各マイクロレンズ焦点を通って進む実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を共同して集光し、光遮断素子は、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する実質的にコリメートされた励起光ビームの光が集光されるレンズ系焦点に配置される。
【0006】
本発明の例示的な実施形態によれば、回転可能なマイクロレンズディスクと共に回転するピンホールディスクに依存することなく、多くの試料の照射点にわたり、高度に目標を絞って局所的に顕微鏡試料を励起することが可能になる。レンズ系焦点に配置された光遮断素子は、回転可能なマイクロレンズディスクによって形成されるマイクロレンズビームに寄与しない光を遮断する際に、ピンホールディスクと同様の効果を生む。また、光遮断素子はレンズシステムの焦点位置に配置されるため、回転可能なマイクロレンズディスクのマイクロレンズによって形成されるマイクロレンズビームに対して有害な影響を与えない寸法とすることができる。共に回転するマイクロレンズディスクとピンホールディスクとを複雑に設定構成する必要なく、不要な光を効果的に低コストで遮断することができる。所与の光源パワーについて、比較的複雑性の低い顕微鏡システム設計で、常に良好に試料を励起することができる。また、比較的複雑性の低い構成で、顕微鏡のデジタルカメラで撮影された試料画像において、低レベルの環境光、高レベルのコントラスト、高い信号対雑音比を実現することができる。
【0007】
本発明による顕微鏡はコリメート光源を備え、コリメート光源は、作動中に実質的にコリメートされた励起光ビームを放射する。コリメート光源は実質的に平行な光線を放射し、放射された光線は顕微鏡の光学系に入射すると、下流側での光学操作および試料の励起の基礎を形成する。
【0008】
本発明による顕微鏡は、複数のマイクロレンズを含む回転可能なマイクロレンズディスクを備え、このマイクロレンズは、それぞれ、各マイクロレンズ焦点に向けて、実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を集光する。複数のマイクロレンズは、複数のマイクロレンズビームを形成すると表現することもできる。換言すると、特定のマイクロレンズが各マイクロレンズ焦点に向けて集光する実質的にコリメートされた励起光ビームの特定の部分を、マイクロレンズビームと呼ぶことができる。複数のマイクロレンズが、それぞれ、実質的にコリメートされた励起光ビームの一部を各マイクロレンズ焦点に向けて集光するという表現は、複数のマイクロレンズの全てが、実質的にコリメートされた励起光ビームのそれぞれの部分を、各マイクロレンズ焦点に向けて同時に集光することを意味するものではない。特に、コリメート光源が任意の時点で回転可能なマイクロレンズディスクの一部のみを照射する設定構成では、複数のマイクロレンズのサブセットのみがその時点でマイクロレンズビームを形成する。しかしながら、作動中に回転可能なマイクロレンズディスクが回転すると、複数のマイクロレンズは、それぞれ、作動中の様々な時点でマイクロレンズビームを形成する。作動中、回転可能なマイクロレンズディスクは、毎分5000回転、あるいは毎分10000回転、あるいはそれ以上といった非常に高い回転速度で回転可能である。
【0009】
複数のマイクロレンズは、回転可能なマイクロレンズディスク上に様々なパターンで配置することができる。複数のマイクロレンズは、特に、回転可能なマイクロレンズディスクの回転の過程で全体として見たときに、結果として生じるマイクロレンズビームが、顕微鏡の試料面を実質的に均一に照射するように配置することができる。例えば、複数のマイクロレンズを、密集したスパイラルパターンで配置してもよい。具体的には、複数のマイクロレンズを、ニプコー円板のパターンで配置してもよい。また、経時的に、すなわち、回転可能なマイクロレンズの回転期間にわたって、マイクロレンズビームを介して試料を効果的に走査することができるパターンであれば、他のパターンで配置することもできる。回転可能なマイクロレンズディスクは、多数の、例えば、数百または数千のマイクロレンズから構成されてもよい。
【0010】
本発明による顕微鏡は、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズを備える。ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズは、それぞれ、各マイクロレンズ焦点を通って進む実質的にコリメートされた励起光ビームの一部、すなわち各マイクロレンズビームを、各試料照射点において共同して集光する。換言すると、特定のマイクロレンズによって特定のマイクロレンズ焦点に向かって集光され、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズによって特定の試料照射点に集光される、実質的にコリメートされた励起光ビームの同じ部分である。さらに換言すると、特定のマイクロレンズの位置により、関連するマイクロレンズ焦点の位置が定められ、これにより、さらに、関連する試料照射点の位置が定められる。ビーム形成レンズ系は、複数のマイクロレンズからのマイクロレンズビームを、コリメート光源の元の励起光ビームに対して角度を成し、その後、顕微鏡対物レンズによって各試料照射点に集束される、コリメートされたマイクロレンズビームに変換する。
【0011】
本発明による顕微鏡は、ビーム形成レンズ系内、または、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間に配置される光遮断素子を備える。光遮断素子は、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する実質的にコリメートされた励起光ビームの光が集光されるレンズ系焦点に配置される。複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する実質的にコリメートされた励起光ビームの光という表現は、複数のマイクロレンズの外側や、複数のマイクロレンズのそばで、回転可能なマイクロレンズディスクを通過する光を指す。また、この表現は、実質的にコリメートされた励起光ビームのうち、回転可能なマイクロレンズディスクを実質的に直線状に通過する部分を指すと考えられる。
【0012】
本発明の例示的な実施形態では、平行光線としてビーム形成レンズ系に入射する光が集まる、レンズ系焦点とも呼ばれる、ビーム形成レンズ系の1つ以上の焦点が存在するという事実を利用している。このレンズ系焦点では、所望のマイクロレンズビームに寄与することなく回転可能なマイクロレンズディスクを通過する不要な光に対して、特に好適に遮断したり、作用したりすることができる。
【0013】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、強度低減素子からなる。強度低減素子は、特に、半透明素子であってもよい。半透明素子を設けることにより、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過した不要な光を低減することができる。また、強度低減素子は、不透明素子であってもよい。不透明素子を設けることにより、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過した不要な光を完全に遮断することができる。換言すると、不透明素子により、不要な光を完全に排除することができる。
【0014】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、位相シフト素子からなる。位相シフト素子は、不要な光を通過させるが、その位相をシフトすることによって、不要な光を顕微鏡内で追跡することができる。不要な光は、特に、顕微鏡内の別の場所でフィルタ除去するか、または、別の適切な方法で所望の光から除くようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、概ね透明なマスクの光遮断部分である。概ね透明なマスクは、不透明部分などの光遮断部分を除いて透明な構造として説明することができる。概ね透明なマスクは、特に、ビーム形成レンズ系内、または、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間に配置される平面構造である。概ね透明なマスクは、特に、概ね透明なディスク、例えば、透明な材料で作られ、その上に不透明な部分、例えばブラックドットが配置されるディスクであってもよい。光遮断素子をより大きな部品上に設けること、すなわち、光遮断素子を概ね透明なマスクの一部として設けることにより、顕微鏡の製造時やメンテナンス時における取り扱いおよび位置決めをより容易且つ確実に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズを通る中心軸上に配置される。中心軸という表現は、ビーム形成レンズ系の中心を通り、顕微鏡対物レンズの中心を通る線を指す。顕微鏡内の光が反射鏡などを介して再指向されるかによって、中心軸は、途中で曲がる可能性もある。
【0017】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、レンズ系焦点の周りに遮断の広がりを有する。換言すると、光遮断素子は点状の要素ではなく、レンズ系焦点の周りの光に影響を及ぼすためにある程度の広がりを有している。光遮断素子は、1mm未満、特に0.5mm未満、さらには、特に0.2mm未満、またさらには、0.1mm未満の遮断の広がりを有する。光バリア素子の広がりは、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズを通る中心軸に直交する面、すなわち、励起光の一般的な進行方向に直交する面において測定することができる。また、光遮断素子の広がりは、中心軸に直交する面内で最も広がりのある部分の寸法をもって測定してもよい。例えば、円形の光遮断素子の場合は、遮断の広がりとして、光遮断素子の直径を測定してもよい。また、さらに、正方形の光遮断素子の場合、遮断の広がりとして、光遮断素子の対角線を測定してもよい。遮断素子を所定の値により構成することで、不要な光を確実に遮断したり、不要な光に対して確実に作用したりすることができる一方で、所望の光に対する影響を抑え、なおかつ、製造時やメンテナンス時の取り扱いおよび位置決めを確実に行うことができる。光遮断素子の広がりは、少なくとも1μmとすることができる。
【0018】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、遮断の広がりは、光遮断素子の位置において、個々のマイクロレンズビームの広がりの10%未満である。このようにして、光遮断素子は、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過した全ての不要な光を遮断したり、これらに作用したりする一方で、マイクロレンズビームの所望の光のうち遮断したり作用したりするのは、最大で10%となる。所望の光の減少が比較的非常に少なく、不要な光の遮断や不要な光への作用を、非常に便利で、複雑さを伴うことなく、効果的な方法により行うことができる。各マイクロレンズビームの広がりは、光遮断素子の位置で測定される。ここで、光遮断素子の位置は、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズを通る中心軸に沿った軸方向位置と考える。上述したとおり、遮断の広がりは、中心軸に直交する断面における広がりと考えられる。10%未満という基準を定めるために、光遮断素子の断面積と各マイクロレンズビームの断面積を光遮断素子の位置で比較してもよい。各マイクロレンズビームのパワーの10%未満が光遮断素子の位置で遮断されたり作用されたりするように、遮断の広がりを設けてもよい。
【0019】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、遮断の広がりは、光遮断素子の位置において、個々のマイクロレンズビームの広がりの10%未満である。換言すると、全てのマイクロレンズビームは、光遮断素子によって10%未満で遮断されたり、作用を受けたりする。特に、全ての各マイクロレンズビームは、光遮断素子によって、同程度に遮断されたり、作用を受けたりする。例えば、光遮断素子を、全ての各マイクロレンズビームの広がりの5%~10%が遮断されたり、作用を受けたりするように構成して配置してもよい。このようにして、試料の均一な走査という点では望ましくない可能性のある、各マイクロレンズビームへの潜在的な相対的影響を低く抑えることができる。
【0020】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、光遮断素子は、顕微鏡対物レンズの焦点面に配置される。特に、光遮断素子は、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズの間の顕微鏡対物レンズの焦点面に配置される。顕微鏡内のこの位置において、光遮断素子は、マイクロレンズビームの所望の光に与える影響が特に低くなるように配置されてもよい。特に、顕微鏡内のこの位置において、マイクロレンズビームは比較的大きな広がり、すなわち、比較的大きな断面の広がりを有することができる。したがって、所望の光に対する影響を非常に低いレベルに保ちながら、不要な光を効果的に遮断したり、不要な光に対して作用を及ぼしたりすることが可能になる。
【0021】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、ビーム形成レンズ系はリレーレンズを備え、光遮断素子は、リレーレンズの焦点面に配置される。リレーレンズを設けること、および、光遮断素子をリレーレンズ内に設けることにより、光遮断素子を、顕微鏡において、容易にアクセス可能であり、制限のない部分に設けることができる。特に、顕微鏡の製造時や保守時において、光遮断素子のリレーレンズの焦点面への配置を、効果的かつ確実に行うことができる。
【0022】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、複数のマイクロレンズの形状は、円形、正方形、長方形、六角形、または別の多角形である。
【0023】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、複数のマイクロレンズは、断面の広がりにおいて、200μmから1200μmの間、特に、500μmから1000μmの間、さらには、特に、700μmから900μmの間である。複数のマイクロレンズが円形のマイクロレンズである場合、その直径は、200μm~1200μm、特に、500μm~1000μm、さらには、特に、700μm~900μmであってもよい。マイクロレンズの広がりの所与の値は、回転可能なマイクロレンズディスク上のマイクロレンズの数、各試料照射点における達成可能な励起強度、および回転可能なマイクロレンズディスクの製造態様との間の良好なトレードオフを可能にすることがわかっている。所与の値の範囲により、従来の方法と比較して、寸法の大きいマイクロレンズを設けることができる。所与の光源パワーに対して、不要な光によってより高い照度の所望の照射が損なわれることなく、各試料照射点におけるより強い励起が実現する。光遮断素子を設けることにより、複数のマイクロレンズの間の不要な光を処理するための複雑なシステムを考慮することなく、マイクロレンズのサイズと配置の自由度を高めることができる。
【0024】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、マイクロレンズディスク上のマイクロレンズの充填率は、30%~80%、特に、40%~70%である。マイクロレンズの広がりをより大きくすることができるのと同様に、光遮断素子を設けることにより、従来の方法と比較して、より低い充填率でマイクロレンズディスクを使用することができる。この構成においても、低い充填率で試料上に多くの不要な光が集束する代償なく、また、低い充填率でシステムが複雑化する代償もない。低い充填率に設ける構成は、マイクロレンズビーム間の干渉を極めて低く抑えることが望まれる用途に特に好適である。
【0025】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、回転可能なマイクロレンズディスクは、透明なディスクである。
【0026】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、複数のマイクロレンズを含む回転可能なマイクロレンズディスクは、一体構造である。
【0027】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、回転可能なマイクロレンズディスクは、積層造形、特に、3Dプリントによって形成される。
【0028】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、回転可能なマイクロレンズディスクは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、またはポリ乳酸(PLA)、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)から形成される。また、回転可能なマイクロレンズディスクは、他の適切な熱可塑性ポリマーから形成されてもよいし、ガラスや水晶などの適切な光透過性材料から形成されてもよい。
【0029】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、顕微鏡には、回転可能なピンホールディスクがない。換言すると、顕微鏡は、回転可能なピンホールディスクを備えていない。具体的には、顕微鏡は、作動中に回転可能なマイクロレンズディスクと共回転する回転可能なピンホールディスクを備えていない。したがって、複数のマイクロレンズは、ピンホールディスクのピンホールに光を集束させる必要がない。
【0030】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、コリメート光源はレーザ光源からなる。レーザ光源は、特に、レーザおよび光源レンズ系を備え、光源レンズ系は、レーザ出力からコリメートされた励起光ビームを形成する。
【0031】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、レーザ光源は、顕微鏡の試料面に非線形効果を生じさせることができるレーザ光源からなる。非線形効果を生じさせるために、レーザ光源は、高出力レーザ光源であってもよいし、パルスレーザ光源であってもよい。パルスレーザ光源は、具体的には、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザであってもよい。顕微鏡の試料面に非線形効果を生じさせることで、幅広い試料分析のオプションが可能になる。具体的には、いわゆるラベルフリー診断の様々な方法が可能になる。「ラベルフリー診断」とは、従来は試料の染色や染着が必要であったところ、顕微鏡の試料面における非線形効果により、試料の染色や染着が不要となる特定の種類の分析操作を指す。したがって、光遮断素子を設けることにより、共回転ピンホールディスクと組み合わせた回転可能なマイクロレンズディスクの複雑なシステムに依存する必要なく、ラベルフリー診断の機会を提供することができる。特に、TPEF(2光子励起蛍光)、SHG(第2高調波発生)、3PEF(3光子励起蛍光)、THG(第3高調波発生)、CARS(コヒーレント抗ストークスラマン散乱)、FLIM(蛍光寿命イメージング)、ラマン分光法、SRS(誘導ラマン散乱)などの方法を、本明細書に記載する実施形態のいずれかによる顕微鏡の構成において実施することができる。
【0032】
本明細書で説明するような光遮断素子を設けることと、顕微鏡の試料面に非線形効果を生じさせることができるレーザ光源を使用することは、非常に有益な組み合わせの効果を持つ。従来の手法では、1つまたは複数のピンホールディスクは、2つの目的、すなわち、上述したように、光源からの、複数のマイクロレンズによって調整されない光を遮断する目的、および、試料の不完全な励起によって生じる試料からの迷光を遮断する目的のために使用されてきた。このような迷光は、観察しようとする試料のマイクロレンズビームへの反応を妨害し、試料を撮影した画像に不要な環境光やノイズを加えるおそれがある。顕微鏡の試料面における非線形効果に依存する照射方法は、非線形効果に依存しない照射方法と比較して、より的を絞った励起を起こし、試料からの迷光を抑える傾向がある。したがって、試料面での非線形効果に依存する顕微鏡システムにおいては、試料からの後方散乱などによる迷光への対策について懸念する必要がない。したがって、ピンホールディスクを設けない構成であっても、迷光が画質に及ぼす有害な影響という観点での懸念はない。顕微鏡の試料面に非線形効果を発生させることができるレーザ光源を使用する場合、試料面からカメラまでの進路にピンホールディスクがなくても、特に画像コントラストや信号対雑音比を高めることが可能になる。
【0033】
上述のように、顕微鏡はレーザ顕微鏡であってもよいし、蛍光顕微鏡であってもよい。さらに、顕微鏡が蛍光顕微鏡の枠組みの中でレーザ励起を含むように構成してもよい。
【0034】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、顕微鏡はデジタル顕微鏡である。特に、顕微鏡は、少なくとも1つのデジタルカメラを含む。さらに、特に、少なくとも1つのデジタルカメラは、マイクロレンズビームを介した励起に対する試料の反応の画像を撮影するように配置および構成することができる。
【0035】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、顕微鏡は、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間に配置されるダイクロイックミラーと、第1チューブレンズと、第1デジタルカメラと、を備え、特定の試料照射点から顕微鏡対物レンズに向けて放射された光が、顕微鏡対物レンズを通過し、ダイクロイックミラーで第1チューブレンズに向けて反射され、第1デジタルカメラにおいて、第1チューブレンズにより各像点で集光されるように、ダイクロイックミラー、第1チューブレンズ、第1デジタルカメラが配置される。代替的に、または追加的に、顕微鏡は、試料面の背面側において、背面側顕微鏡対物レンズと、第2チューブレンズと、第2デジタルカメラと、を備え、特定の試料照射点から背面側顕微鏡対物レンズに向けて放射された光が、背面側顕微鏡対物レンズを通過し、第2デジタルカメにおいて、第2チューブレンズにより各像点で集光されるように、背面側顕微鏡対物レンズ、第2チューブレンズ、第2デジタルカメラを配置する。
【0036】
さらに、本発明の例示的な実施形態では、回転可能なマイクロレンズディスクを備える顕微鏡の作動方法であって、この方法では、コリメート光源から回転可能なマイクロレンズディスクに向けて、実質的にコリメートされた励起光ビームを放射し、実質的にコリメートされた励起光ビームから、回転可能なマイクロレンズディスクの複数のマイクロレンズを介して複数のマイクロレンズビームを形成し、ビーム形成レンズ系および顕微鏡対物レンズを介して、複数のマイクロレンズビームの光を、各試料照射点に集光し、ビーム形成レンズ系内のレンズ系焦点、または、ビーム形成レンズ系と顕微鏡対物レンズとの間のレンズ系焦点に配置される光遮断素子を介して、複数のマイクロレンズの間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する実質的にコリメートされた励起光ビームの光を抑制する。顕微鏡の例示的な実施形態のいずれかに関して上述したような追加の特徴、変更および効果は、類似の方法で顕微鏡の作動方法に適用される。光遮断素子を介した光の抑制は、光の遮断、低減、および位相シフトのいずれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡の斜視図である。
図2】本発明の例示的実施形態に係る、顕微鏡の一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。
図3】本発明の別の例示的実施形態に係る、顕微鏡の一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。
図4】本発明に係る顕微鏡ではない顕微鏡の比較例について、一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。
図5】本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡の一部である、マイクロレンズディスクの平面図である。
図6】本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡の一部である、別のマイクロレンズディスクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のさらなる例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0039】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡2を、三次元の斜視図で示している。顕微鏡2には、顕微鏡2を支持するベース4が設けられる。ベース4は、安定して立つようにテーブル上に置かれてもよい。
【0040】
ベース4には、テーブル駆動部が設けられる。テーブル駆動部はベースハウジング内に収容され、それにより、図1では表れていない。ベース4には、テーブル10が取り付けられる。テーブル10は、ベース4に対して移動可能である。特に、テーブル10は、本明細書においてx方向およびy方向と呼ぶ2次元で移動可能である。作動時には、テーブル10は、テーブル駆動部によってx方向およびy方向に移動される。
【0041】
テーブル10には、光透過部分が設けられる。試料は、テーブル10のこの光透過部分の上に配置することができる。図1に示す作動場面では、2つのスライド12がクリップ機構を介してテーブル上に配置されている。2つのスライド12は、それぞれ、本明細書では検体とも称する試料14を含んでいる。スライド12は、試料14がテーブル10の光透過部分に位置するように、テーブル10の上に配置される。光透過部分は、透明または半透明の材料から構成されるか、または、テーブル10の切り欠き部分であってもよい。後者の場合、テーブル10はフレームを形成し、そこを通って光が移動する。テーブル10において試料が配置される部分の平面を、顕微鏡のx-y面と呼ぶ。
【0042】
さらに、顕微鏡2には、支持アーム6および光学部品ハウジング8が設けられる。支持アーム6は、光学部品ハウジング8を支持する形状であり、光学部品ハウジング8がテーブル10の上方で停止できるように構成される。図1に示す例示的な実施形態では、光学部品ハウジング8およびベース4は、共に、様々な光学構成要素を収容する。光学部品の例示的な構成は、図2および図3を参照して以下で説明する。図1の観察方向において、対物顕微鏡34は、光学部品ハウジング8からテーブル10に向かって延びるその下端のみが見えている。
【0043】
光学部品ハウジング8は、支持アーム6に対して、x-y面に直交する移動方向で動くことができる。つまり、光学部品ハウジング8は、基準となる顕微鏡フレームのz方向に移動することができる。この運動は極めて限定的ではあるが、光学部品ハウジング8に含まれる光学系およびベース4に対して、試料14のピント合わせをする目的においては十分である。
【0044】
作動中、テーブル駆動部は、x方向およびy方向の所望の位置にテーブル10を移動させる。テーブル駆動部は、任意の種類の適切なアクチュエータ、例えば、二方向への移動用の小規模電気モータを2つ備えていてもよい。テーブル10を様々な位置に駆動することによって、試料14の様々な部分を表す画像データを生成することができる。
【0045】
図2は、本発明の例示的実施形態に係る、顕微鏡の一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。レイトレーシング部分を見やすくするため、図2は模式的な断面図で表している。
【0046】
顕微鏡2には、コリメート光源20が設けられる。コリメート光源20は、具体的には、レーザ光源であってもよい。さらに詳細には、コリメート光源20には、レーザと、実質的にコリメートされた光の拡張励起光ビームを形成する光源レンズ系とが設けられる。
【0047】
さらに、顕微鏡2には、複数のマイクロレンズ24を備える回転可能なマイクロレンズディスクが設けられる。図2の概略図では、複数のマイクロレンズ24は独立型要素として示されている。しかし、説明を簡略化するためにここでは図示していないが、複数のマイクロレンズ24は、回転可能なマイクロレンズディスク上に配置されるか、または、その一部に配置される。回転可能なマイクロレンズディスクは、顕微鏡2の中心軸80を中心として回転可能に構成される。顕微鏡2の作動時に、複数のマイクロレンズ24は、回転可能なマイクロレンズディスクと共に中心軸80を中心として回転する。
【0048】
作動中、コリメート光源20は、実質的にコリメートされた励起光ビームを回転可能なマイクロレンズディスク上に放射する。実質的にコリメートされた励起光ビームは、任意の時点で、回転可能なマイクロレンズディスク全体に光を照射しないような広がりを持つことがある。図2においてコリメート光源20の右側に示すとおり、実質的にコリメートされた励起光ビームが、コリメート光源20の光の出力面の実質的に全体にわたって出力される場合、実質的にコリメートされた励起光ビームは、図示した断面における直径の約50%にわたって、回転可能なマイクロレンズディスクに入射する。さらに、実質的にコリメートされた励起光ビームの断面が円形または正方形である場合には、任意の時点で、回転可能なマイクロレンズディスクの15%~25%が、実質的にコリメートされた励起光ビームを受光する。なお、図示を簡略化するために、図2では、実質的にコリメートされた励起光ビームの全体を示していない。図2で示しているのは、顕微鏡2の光学系を通る実質的にコリメートされた励起光ビームの特定の部分の進路であり、これについては詳しく後述する。
【0049】
さらに、顕微鏡2には、顕微鏡2の中心軸80に沿って配置されるビーム形成レンズ系30が設けられる。ビーム形成レンズ系30には、複数の個別レンズからなる複合レンズ構造であるリレーレンズ26と、走査レンズ28とが設けられる。ビーム形成レンズ系30は、複数のマイクロレンズ24を備える回転可能なマイクロレンズディスクの下流側に配置される。
【0050】
さらに、顕微鏡2には、ビーム形成レンズ系30の下流側に配置されるダイクロイックミラー32が設けられる。ダイクロイックミラー32は、中心軸80に対して45°の角度で配置されている。ダイクロイックミラー32は、実質的にコリメートされた光の光源が放射した光を、実質的な影響なく通過させる。
【0051】
さらに、顕微鏡2には、顕微鏡対物レンズ34が設けられる。顕微鏡対物レンズ34は、ダイクロイックミラー32の下流側で、中心軸80上に配置される。
【0052】
ここで、図2に破線で示す各マイクロレンズビームに関する、複数のマイクロレンズ24、ビーム形成レンズ系30、顕微鏡対物レンズ34の協働動作について説明する。一例として、複数のマイクロレンズ24のうち上から2番目のマイクロレンズについて説明する。以下の説明において、このマイクロレンズを特定のマイクロレンズと呼ぶ。特定のマイクロレンズは、特定のマイクロレンズに入射する実質的にコリメートされた励起光ビームの光の一部を、本明細書では各マイクロレンズビームとも称するマイクロレンズビームに形成する。特に、特定のマイクロレンズは、特定のマイクロレンズに入射する実質的にコリメートされた励起光ビームの一部をマイクロレンズ焦点60に向けて集光する。マイクロレンズビームは、マイクロレンズ焦点60を通過した後、ビーム形成レンズ系30、特に、リレーレンズ26に入射する。リレーレンズ26は、リレーレンズ26に入射した光ビームと同じように、マイクロレンズビームを平行光のビームに一時的に変換し、その後、再び発散光のビームに変換する。概念上は、リレーレンズ26はマイクロレンズビームに大きな影響を与えるものではない。しかしながら、以下に詳述するとおり、リレーレンズ26を設けることで、不要な光の遮光が可能になる。
【0053】
走査レンズ28は、リレーレンズ26を出た後のマイクロレンズビームを平行光のビームに変換する。このように、平行光のマイクロレンズビームを生成するという性質から、ビーム形成レンズ系30は、顕微鏡2内におけるビーム形成体と見なすことができる。
【0054】
マイクロレンズビームの平行光は、ビーム形成レンズ系30を出ると、ダイクロイックミラー32を通過し、顕微鏡対物レンズ34に到達する。顕微鏡対物レンズ34は、このマイクロレンズビームの光を試料面38上の試料照射点66に集光する。このようにして、試料照射点66において、高度に目標を絞って局所的に試料を照射したり、励起したりすることが可能になる。特に、特定のマイクロレンズに入射する照射パワーの大部分を、試料照射点66上に集光することができる。そのため、試料照射点66において試料の強い励起が実現し、励起に対する試料の強い反応を引き起こすことができる。試料面38は、例えば、図1に示す顕微鏡2のテーブル10上に配置された試料14内の面に対応する。
【0055】
なお、図2では、コリメート光源20から試料面38までを1本のマイクロレンズビームが移動する進路を示しているが、このようなマイクロレンズビームが複数あり、任意の時点において、システム内を移動していると考えてよい。図示を明確にする目的で、図2では、そのうちの1本のみを示している。さらに、作動中にマイクロレンズディスクが回転することにより、複数のマイクロレンズ24の位置が変化し、対応するマイクロレンズビームは、様々な点で試料面38に到達する。
【0056】
複数のマイクロレンズ24に入射するコリメート光源20の光とは別に、コリメート光源20の光の一部は、複数のマイクロレンズ24の間でマイクロレンズディスクを通過していく。以下、顕微鏡2内におけるこの光の進路について説明する。特に、図2において、この光の進路を実線で示す例示的な光線として説明する。図示を簡略化するために、図2では、2つの光線のみを示している。またさらに、図示を簡略化するために、図2の観察方向において、これらの2つの光線を、回転可能なマイクロレンズディスクの下半分の複数のマイクロレンズ24の間を通過するものとして示している。コリメート光源20は、実質的にコリメートされた励起光ビームのいかなる部分もマイクロレンズディスクの下半分に放射することはないため、図2に示す特定の実施形態におけるこの表示は技術的に完全に正しいとはいえない。しかしながら、上述のマイクロレンズビームと、複数のマイクロレンズ24の間を通過する光とをよりわかりやすく区別するために、不要な光の例示的な光線を、複数のマイクロレンズ24の下半分から進むように示している。なお、これに類する光線は複数のマイクロレンズ24の上半分に存在し、実際には、複数のマイクロレンズ24の上半分に存在する。これらの類似の光線は、中心軸に対して、実線で示した光線の鏡像となる。
【0057】
複数のマイクロレンズ24の間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する、実質的にコリメートされた励起光ビームの光線は、リレーレンズ26内の焦点に集光される。特に、この光線は、リレーレンズの第1レンズによって、リレーレンズ26の焦点に集光される。リレーレンズ26の焦点は、ビーム形成レンズ系30の第1焦点と見なすことができるため、本明細書では、第1レンズ系焦点と称することがある。
【0058】
図2に示す例示的な実施形態では、光遮断素子36は、第1レンズ系焦点、すなわち、リレーレンズ26の焦点に配置される。光遮断素子36は、中心軸80の周りに遮断の広がりを有する。遮断の広がりは、顕微鏡2の上流側部分の不完全性や公差を考慮しても、複数のマイクロレンズ24の間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する実質的に全ての光を遮断するように選択される。さらに、光遮断素子36の遮断の広がりは、リレーレンズ26を通過する各マイクロレンズビームのうち、光遮断素子36によって遮断されるのは10%未満になるように選択される。このように構成することで、複数のマイクロレンズ24の間を通過する不要な光の全て、または、実質的に全てが遮断される一方で、所望のマイクロレンズビームに対して及ぼす影響をわずかに留めることができる。
【0059】
光遮断素子36がリレーレンズ26内に配置されているため、複数のマイクロレンズ24の間で回転可能なマイクロレンズディスクを通過する不要な光は、顕微鏡2を通る進路において非常に早い段階で遮断される。このように、不要な光は早期に除去されるため、リレーレンズ26の下流で起こりうるアーチファクトの原因になることはない。通過した所望の光と、遮断された不要な光とを早期に分離することが可能となる。
【0060】
なお、光遮断素子36は、ここでは独立型素子として示しているが、リレーレンズ26の各レンズの間に配置される透明マスクの一部であってもよい。特に、光遮断素子36は、他の透明なマスク上の、黒色部分などの不透明な部分であってもよい。透明マスクを用いると、顕微鏡2の製造時やメンテナンス時における取り扱いおよび適切な位置への配置が容易になる。
【0061】
光遮断素子は、不透明素子、半透明素子、または、位相シフト素子であってもよい。このようにして、不要な光を、遮断や除去したり、低減させたり、または、後に所望の光から分離されるように変更したりする。全体的なシステム構成およびその所望の作動に応じて、不透明素子、半透明素子、または位相シフト素子を、光遮断素子36として用いるようにしてもよい。
【0062】
図面に示す光遮断素子36は、いずれも、マイクロレンズビームの広がりに対して、実際の実施形態における寸法よりも大きく表示されている。つまり、図2に示す顕微鏡2の構成要素は、縮尺通りに表示されていない。図中の構成要素の寸法は、顕微鏡2の基本的な動作原理を例示的に伝えるために示したものであり、縮尺に忠実な設計図に相当するものではない。また、マイクロレンズの焦点位置、試料の照射点、レンズ系の焦点位置、試料面などについて使用される点および面という表現は、その構成要素の位置を幾何学的に完全に説明することを意図しておらず、顕微鏡を現実に実装する際の不完全性や公差により、実際の製品上での配置の不正確さに関連する、概念的な位置を意図している。実際の実装形態では、光遮断素子36の例示的な遮断の広がりは、1μm~100μm、特に、1μm~10μmであってもよい。
【0063】
さらに、顕微鏡2には、2つのカメラシステムが設けられる。第1カメラシステムは、第1チューブレンズ40と、第1デジタルカメラ42とを備える。第1チューブレンズ40および第1デジタルカメラ42は、試料の反応から生じて顕微鏡対物レンズ34に向かって放出される光を撮影するように配置される。試料照射点66での試料の反応は、各マイクロレンズビームに関して上述したような、顕微鏡対物レンズ34およびダイクロイックミラー32を通る進路と実質的に同じ進路を戻り方向で進む。ダイクロイックミラー32は、上述したように、実質的にコリメートされた励起光ビームの光を通過させ、励起されたことに反応して試料が発する光を反射するように構成される。したがって、試料から顕微鏡対物レンズ34を通ってダイクロイックミラー32に戻る光は、ダイクロイックミラーによって反射される。特に、この光は、第1チューブレンズ40および第1デジタルカメラ42に向かって反射される。第1チューブレンズ40は、特定の試料照射点66から戻る光を特定の像点44に集光するように構成され、配置される。第1デジタルカメラ42は、この光を、特定のピクセルとして、または、デジタルカメラ42の画像センサ上のピクセルの特定のセットとして取り込む。したがって、特定の試料照射点での試料の反応は、第1デジタルカメラ42、ひいては第1デジタルカメラ42によって撮影されたデジタル画像における、対応する情報の取り込みに変換される。
【0064】
第2カメラシステムは、試料面38の背面側に配置される。第2カメラシステムは、背面側顕微鏡対物レンズ50と、フィルタ52と、第2チューブレンズ54と、第2デジタルカメラ56とを備える。背面側顕微鏡対物レンズ50および第2チューブレンズ54は、マイクロレンズビームによる励起に反応して試料によって順方向に放出される光を、第2デジタルカメラ56に向ける。特に、背面側顕微鏡対物レンズ50および第2チューブレンズ54は、特定の試料照射点66からの光を特定の像点58に集光するように構成され、配置される。像点58において、第2デジタルカメラ56は、第1カメラ42に関して上述したように、試料の順方向の反応を、デジタル画像内の対応する情報に変換することができる。フィルタ52は、妨げられることなく試料面38を通過し、第2デジタルカメラ56が撮影したデジタル画像にアーチファクトをもたらす可能性のある励起光ビームの残りをフィルタリングするために設けられる。
【0065】
なお、デジタル画像の撮影について、第1デジタルカメラ42の単一の像点44および第2デジタルカメラ56の単一の像点58を用いて説明したが、異なるマイクロレンズや、回転するマイクロレンズディスク上のマイクロレンズの異なる位置に由来する様々なマイクロレンズビームが、励起に対する試料の反応の完全な画像を生成するために組み合わされてもよい。さらに、試料の様々な部分の複数の画像を撮影するために、試料を、例えば、図1の顕微鏡2の可動テーブル10を介して、試料面38上を移動させてもよい。これらの複数の画像は、複数の画像のスティッチングなどを介して、続く画像処理動作において組み立てることができる。また、一般に有限の厚さを有する試料では、試料の異なる層を走査して、試料の3次元表現を生成することができるように、試料の異なる層を、試料面38と位置合わせしてもよい。
【0066】
図1に示す顕微鏡2の機械的構成に関して、試料面38の左側に示す図2の顕微鏡2の構成要素を、光学部品ハウジング8内に配置してもよく、試料面38の右側に示す図2の顕微鏡2の構成要素を、ベース4内に配置してもよい。構成要素を逆に配置してもよい。図2に示す顕微鏡2の構成要素を、任意の適切な方法で配置してもよく、図1に示す顕微鏡2の機械的構成の配置に限定されない。
【0067】
図3は、本発明の別の例示的実施形態に係る、顕微鏡の一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。図3に示す顕微鏡2は、光遮断素子36の配置を除いて、図2に示す顕微鏡2と同一である。顕微鏡2内の他のすべての構成要素およびその機能については、図2に関して上述した説明を参照されたい。
【0068】
図3に示す例示的な実施形態では、光遮断素子36を、リレーレンズ26の焦点面、すなわち、第1レンズ系焦点62に配置せず、代わりに、第2レンズ系焦点、すなわち、ビーム形成レンズ系30の第2焦点に配置する。光遮断素子36を、ビーム形成レンズ系30と顕微鏡対物レンズ34との間に配置する。図3に示す例示的な実施形態では、第2レンズ系焦点は顕微鏡対物レンズ34に隣接している。したがって、図3に示す例示的な実施形態では、光遮断素子36は、顕微鏡対物レンズ34のすぐ隣に配置されている。
【0069】
複数のマイクロレンズ24の間から通過した光の遮断や作用について、光遮断素子36が同じように、または等しく効果を持つことを示すために、複数のマイクロレンズの間を通過する光線を表す実線は、第1レンズ系焦点62から下流側に延在している。特に、中心軸80に平行な複数のマイクロレンズ24の間でマイクロレンズディスク22を通過する光線は、中心軸80に平行なリレーレンズ26を出て、走査レンズ28により、ビーム形成レンズ系30と顕微鏡対物レンズ34との間にある第2レンズ系焦点に向けて集光される。光遮断素子36は、第2レンズ系焦点の周りに配置され、図3に示す実線によって表される不要な光を遮断する。
【0070】
図3に示す例示的な実施形態では、第2レンズ系焦点を、顕微鏡対物レンズ34の焦点面に配置している。このように、第2レンズ系焦点位置は、例えば、その位置が顕微鏡対物レンズ34のハウジング内になる可能性があるため、容易にアクセスできないことがある。したがって、第2レンズ系焦点位置への光遮断素子36の配置は、顕微鏡2の全ての実際的な実施態様において可能であるとは限らない。しかしながら、可能である場合には、光遮断素子36の位置を第2レンズ系焦点に配することで、光遮断素子36の広がりを、各マイクロレンズビームの広がりと比較してさらに小さく選択することができるため、不要な光の遮光について特に効率的となる。これは、各マイクロレンズビームは、顕微鏡対物レンズ34への入射点において、リレーレンズ26内の断面の広がりと比較して、より大きな断面の広がりを有する傾向があるからである。
【0071】
光遮断素子36をビーム形成レンズ系30と顕微鏡対物レンズ34との間のレンズ系焦点に配置する場合、リレーレンズを、図3に示す顕微鏡2におけるビーム形成レンズ系30から省略してもよい。
【0072】
図4は、本発明に係る顕微鏡ではない顕微鏡の比較例について、一部構成要素の概略図であり、その一部をブロック図で、また、他の一部をレイトレーシングによって示している。顕微鏡2の全体的な構成は、図2に示す顕微鏡2の構成および図3に示す顕微鏡2の構成とほぼ同じであるが、図4に示す顕微鏡2は、光遮断素子を有していない点で異なる。具体的には、第1レンズ系焦点62にも、第2のレンズ系焦点64にも、光遮断素子が配置されていない。
【0073】
光遮断素子を設けないことの影響を説明するために、顕微鏡2のシステム全体にわたって不要な光を同様に実線で示している。不要な光は、第1デジタルカメラ42における単一の像点にも、第2デジタルカメラ56における単一の像点にも集光されない。さらに、不要な光の2つの例示的な光線は異なる位置で試料面38に到達するため、各試料照射点の標的照射に寄与していない。複数のマイクロレンズ24の間から通過する全ての光線の全体を考慮すると、不要な光は、試料面の周囲照射と、不要な光に対する試料の意図しない広範な反応とをもたらす。第1デジタルカメラ42および第2デジタルカメラ56が撮影したデジタル画像に関して、不要な光により、顕微鏡2によって観察されることが意図される、高度に目標を絞った局所的なマイクロレンズビームに対する試料の反応がぼやけるおそれがある。また、不要な光により、第1デジタルカメラ42および第2デジタルカメラ56が撮影した画像において実現することのできるコントラストや信号対雑音比が低下するおそれがある。
【0074】
図5は、本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡の一部である、マイクロレンズディスクの平面図である。回転可能なマイクロレンズディスク22は、図5に示す例示的な実施形態において比較的高い密集度で配置された複数のマイクロレンズ24を有する。すなわち、マイクロレンズディスク22上のマイクロレンズの充填率は比較的高い。図5に示すマイクロレンズディスク22は一例に過ぎず、マイクロレンズディスク22の実際の実装形態では、はるかに多数のマイクロレンズ24を配置することができる。実際の実施形態のマイクロレンズディスクでは、数千のマイクロレンズが配置可能である。複数のマイクロレンズ24を含むマイクロレンズディスク22は、上述のように、顕微鏡2の例示的な実施形態のいずれにも使用することができる。
【0075】
図6は、本発明の例示的な実施形態に係る顕微鏡の一部である、別のマイクロレンズディスクの平面図である。図5に示すマイクロレンズディスク22と比較して、図6に示すマイクロレンズディスク22では、配置されるマイクロレンズ24の数が少なく、その充填率は低くなっている。一方で、図6に示すマイクロレンズディスク22のマイクロレンズ24は、図5に示すマイクロレンズディスク22のマイクロレンズ24よりも寸法が大きい。光遮断素子がレンズ系焦点に配置されることにより、システムの残りの部分の複雑化させることなく、マイクロレンズの充填率を低くしてその寸法を大きくすることができる。充填率が低い場合、マイクロレンズディスク22を通過する可能性のある不要な光の数は多くなるが、それらは、光遮断素子によって同様に好適に遮断されたり、作用を受けたりする。
【0076】
図5および図6では、主に、異なるマイクロレンズサイズおよび密度を例示している。マイクロレンズディスク22の実際の実装では、数百または数千のマイクロレンズなど、はるかに多数のマイクロレンズ24を配置することができる。また、マイクロレンズディスク22の実際の実装形態では、マイクロレンズを、図5および図6に示す同心円状の配置とは異なるパターンで配置することもできる。特に、複数のマイクロレンズ24は、回転可能なマイクロレンズディスク22の回転の過程にわたるマイクロレンズビームの全体を考慮して、ニプコー円板パターンのような螺旋パターン、または、高度に均一な方法で試料を照射することを可能にする他の適切なパターンで配置されてもよい。
【0077】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、その要素に等価物を代用することができることは、当業者に理解されるところである。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の開示に適合させるため、多くの変更を加えることができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に該当するすべての実施形態を含むことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】