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特表2024-537380プラスチック由来の合成原料のための防汚剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プラスチック由来の合成原料のための防汚剤
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20241003BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522393
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022046428
(87)【国際公開番号】W WO2023064375
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,784
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】カムズワラ ビャカラナム
(72)【発明者】
【氏名】カリナ ユーレステ
(72)【発明者】
【氏名】セオドア シー.アーンスト
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA24
4F401AA27
4F401BA02
4F401CA70
4F401CA90
4F401CB01
4F401CB10
4F401EA72
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC10
4H129BC34
4H129NA40
(57)【要約】
【課題】組成物で使用される防汚剤、及びプラスチックに由来する合成原料中の汚染物質を低減又は防止するための方法が開示される。
【解決手段】プラスチック由来の合成原料組成物中の汚染を低減又は防止する方法は、カルボン酸無水物又はジカルボン酸無水物及びアルファオレフィンのコポリマーを含む防汚剤を、汚染物質を含有するプラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に添加して、処理された熱分解生成物を提供することを含み得る。汚染物質は、例えば、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、カプロラクタム、安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、プロピレン、トルエン、ペンテン、ブタン、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、テトラヒドロキノリン、並びにそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック由来の合成原料組成物中の汚染を低減又は防止する方法であって、前記方法は、
カルボン酸無水物、又はジカルボン酸無水物とアルファオレフィンとのコポリマーを含む防汚剤を、汚染物質を含有するプラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に添加して、処理された熱分解生成物を提供することを含む、方法。
【請求項2】
前記合成原料が、熱分解油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原料が、約60~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29、及び約5重量%以下の≧C30を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボン酸無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸、無水アクリル酸及びメタクリル酸、それらの誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記防汚剤が、テトラプロピレン-コハク酸無水物又はドデセニルコハク酸無水物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コポリマーが、無水マレイン酸及びアルファオレフィンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記防汚剤が、急冷塔の入口で、急冷塔の出口で、熱分解生成物を含む貯蔵容器に、熱分解油の生成後に、及びそれらの任意の組み合わせで添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記防汚剤が、約10ppm~5,000ppm添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記汚染物質が、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、カプロラクタム、安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、プロピレン、トルエン、ペンテン、ブタン、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、テトラヒドロキノリン、並びにそれらの組み合わせを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記合成原料組成物が、酸化防止剤、流動点降下剤、抽出溶媒、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プラスチック熱分解に由来する前記合成原料が、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)前記熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)前記合成原料を回収することと、を含む工程によって得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
回収された前記合成原料を急冷塔、空冷式凝縮器、又は水冷式凝縮器内で冷却することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記合成原料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
プラスチックに由来する合成原料を含む組成物であって、前記合成原料が、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)前記熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)前記合成原料を回収することと、
(d)防汚剤を前記合成原料組成物に添加して、処理された合成原料を提供することと、
(e)前記処理された合成原料を分離して、汚染物質が低減された合成原料を得ること、という方法によって得られる、組成物。
【請求項15】
前記合成原料が、約60~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29、及び約5重量%以下の≧C30を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記防汚剤が、カルボン酸無水物、又はジカルボン酸無水物とアルファオレフィンとのコポリマーを含む、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記防汚剤が、テトラプロピレン-コハク酸無水物であるか、又は前記防汚剤が、無水マレイン酸とアルファオレフィンとのコポリマーを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記合成原料組成物が、酸化防止剤、流動点降下剤、抽出溶媒、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
合成原料、汚染物質、及び防汚剤を含む、処理された合成熱分解生成物であって、前記防汚剤が、カルボン酸無水物、又はジカルボン酸無水物とアルファオレフィンとを含むコポリマーである、処理された合成熱分解生成物。
【請求項20】
前記合成原料が、約60~約80重量%のC5~C15、約20~約35重量%のC16~C29、及び約5重量%以下の≧C30を含む、請求項19に記載の処理された合成熱分解生成物。
【請求項21】
プラスチックに由来する合成原料中の汚染を阻止する、請求項1~20のいずれか一項に記載の防汚剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、プラスチックに由来する合成原料の生成で使用される防汚剤を対象とする。
【背景技術】
【0002】
使用済みプラスチック及び規格外プラスチック材料は、これらのプラスチック材料を熱分解反応器中で加熱して、ポリマー鎖をより小さい揮発性断片に分解することによって、化学的にリサイクルすることができる。反応器からの蒸気は凝縮され、熱分解生成物又は熱分解油として回収され、一方、より小さい非凝縮性炭化水素断片は燃料ガスとして回収される。
【0003】
熱分解生成物の回収中に、熱分解油に不溶性である黒色又は褐色の残留物又はタール状物質などの汚染物質が蓄積し、蒸留塔、ポンプ、プロセス配管、フィルタなどのプロセス機器を汚染する。経時的に蓄積する汚染物質の堆積は、最終的には洗浄のために機器の停止を必要とする。
【0004】
熱分解生成物(熱分解油)が長期間貯蔵されるときに、貯蔵容器はまた、膜の形態の汚染物質を蓄積し得る。この褐色がかかった黒色の膜は、空気(酸素)の存在を伴って、又は伴わずに形成される。膜は、より長い期間(例えば、1週間)にわたって室温で形成され得るが、膜形成は、上昇した温度で加速される。
【発明の概要】
【0005】
プラスチックから得られた熱分解油から汚染物質を分散させるための組成物及び方法が本明細書に記載される。
【0006】
本出願の一態様は、プラスチック由来の合成原料組成物中の汚染を低減又は防止する方法であって、
カルボン酸無水物又はジカルボン酸無水物及びアルファオレフィンのコポリマーを含む防汚剤を、汚染物質を含有するプラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に添加して、処理された熱分解生成物を提供することを含む、方法である。
【0007】
別の態様では、プラスチックに由来する合成原料を含む組成物であり、合成原料は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)防汚剤を合成原料組成物に添加して、処理された合成原料を提供することと、
(e)処理された合成原料を分離して、低減した汚染物質を含む合成原料を得ること、という方法によって得られる。
【0008】
更に別の態様は、合成原料、及び汚染物質、並びに防汚剤を含む、処理された合成熱分解生成物であり、防汚剤は、カルボン酸無水物又はジカルボン酸無水物及びアルファオレフィンを含むコポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0010】
図2】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0011】
図3】防汚剤を用いた処理を示す、プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0012】
図4A-1】異なる汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
図4A-2】異なる汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
図4B】異なる汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
【0013】
図5】様々な温度での貯蔵後に得られた様々な膜の脱着生成物の棒グラフである。膜汚染物質試料は、以下のように指定される:NE00632=25℃で窒素を含まないブランク熱分解生成物、NE00633=25℃で窒素を含むブランク熱分解生成物、NE00634=43℃で窒素を含まないブランク、NE00635=43℃で窒素を含むブランク、NE00636=75℃で窒素を含まないブランク熱分解生成物、NE00637=75℃で窒素を含むブランク。
【0014】
図6】30日間の安定性試験後の膜又は残留物形成に対する防汚剤の実施形態の効果を示すデジタル写真である。低=200ppm及び高=1000ppm。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、様々な実施形態への言及を提供するが、当業者は、本出願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更がなされ得ることを認識するであろう。様々な実施形態が、図面を参照して詳述される。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。加えて、本出願に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に記載するものである。
【0016】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。本明細書で説明されるものと同様又は同等の方法及び材料が、本出願の実施又は試験に使用され得るが、方法及び材料を以下で説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「汚染物質」という用語は、合成原料の操作及び製造中に機器上に堆積するか、又は貯蔵中に(例えば、合成原料の加工後に)蓄積する有機及び無機物質を意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「プロセス機器」という用語は、プロセスに関連し、汚染を受け得る、蒸留塔、ポンプ、プロセス配管、フィルタ、凝縮器、急冷塔又はカラム、貯蔵機器などを意味する。この用語はまた、流体連通又はガス連通している構成要素のセットを含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「合成原料」という用語は、プラスチックの熱化学変換などのプラスチックに対する処理又はプロセスから得られる炭化水素(例えば、熱分解油又は熱分解生成物)を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択に」という用語は、その後に記載された事象又は状況が発生し得るが発生する必要はないこと、並びにその説明に事象又は状況が発生する事例及び発生しない事例が含まれることを意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内の全ての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。例として、1~5の範囲に関する本明細書における開示は、次の範囲、すなわち、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、及び4~5のうちのいずれかに対する特許請求の範囲を支持するものとみなされるものとする。
【0022】
「ポリマー」、「コポリマー」、「重合する」、「共重合する」などという用語、2つのモノマー残基を含むポリマー、及び2つの異なるモノマーをともに重合することを含むだけでなく、2つより多くのモノマー残基を含む(コ)ポリマー、及び2つより多い又はより多い他のモノマーをともに重合することを含む。例えば、本明細書に開示されるポリマーは、ターポリマー、テトラポリマー、4つより多くの異なるモノマーを含むポリマー、並びに2つの異なるモノマー残基を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなるポリマーを含む。加えて、本明細書に開示される「ポリマー」はまた、単一のタイプのモノマー単位を含むポリマーである、ホモポリマーを含み得る。
【0023】
別段の指示がない限り、単独で、又は別の基の一部として本明細書に記載される「アルキル」基は、例えば、主鎖に1~約30個の炭素原子などの1~約60個の炭素原子を含む、任意選択的に置換された線状又は分岐状の飽和一価炭化水素置換基である。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0024】
単独で又は別の基(例えば、アリーレン)の一部として本明細書で使用される場合の「アリール(aryl)」又は「アル(ar)」という用語は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、又は置換ナフチルなどの、環部分に約6~約12個の炭素を含む単環式又は二環式基などの、任意選択的に置換された同素環式芳香族基を指す。「アリール」という用語はまた、ヘテロアリール官能基も含む。「アリール」という用語は、ヒュッケル則に従って、平面状であり、4n+2n電子を含む環状置換基に適用されることが理解される。
【0025】
「シクロアルキル」は、例えば、約3~約8個の炭素原子、好ましくは約4~約7個の炭素原子、より好ましくは約4~約6個の炭素原子を含む環状アルキル置換基を指す。そのような置換基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。環状アルキル基は、非置換であり得るか、又はメチル基、エチル基などのアルキル基で更に置換され得る。
【0026】
「ヘテロアリール」は、単環式又は二環式の5又は6員環系を指し、ヘテロアリール基は、不飽和であり、ヒュッケル則を満たす。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,2,4-オキサジアゾール-2-イル、5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンズオキサゾリニル、ベンゾチアゾリニル、キナゾリニルなどが挙げられる。
【0027】
本開示の化合物は、好適な置換基で置換され得る。本明細書で使用される場合の「好適な置換基」という用語は、化学的に許容される官能基、好ましくは化合物の活性を打ち消さない部分を意味することを意図している。そのような好適な置換基としては、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリール又はヘテロアリール基、アリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基、アラルキル又はヘテロアラルキル基、アラルコキシ又はヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、複素環基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル及びジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、並びにアリールスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な置換基としては、ハロゲン、非置換C~C12アルキル基、非置換C~Cアリール基、又は非置換C~C10のアルコキシ基が挙げられ得る。当業者であれば、多くの置換基が追加の置換基によって置換され得ることを理解するであろう。
【0028】
「置換アルキル」にあるような「置換」という用語は、当該基(すなわち、このアルキル基)において、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシ(-OH)、アルキルチオ、ホスフィノ、アミド(-CON(R)(R)(式中、R及びRは、独立して、水素、アルキル、又はアリールである))、アミノ(-N(R)(R)(式中、R及びRは、独立して、水素、アルキル、又はアリールである))、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、シリル、ニトロ(-NO)、エーテル(-OR(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、エステル(-OC(O)R(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、ケト(-C(O)R(式中、Rは、アルキル又はアリールである))、ヘテロシクロなどの一つ又は複数の置換基で置き換えられていることを意味する。
【0029】
「置換」という用語が可能性のある置換基のリストを導入する場合、この用語は、その基の全メンバーに適用されることが意図される。すなわち、「任意選択的に置換されたアルキル又はアリール」という語句は、「任意選択的に置換されたアルキル又は任意選択的に置換されたアリール」と解釈されるべきである。
【0030】
プラスチックに由来する合成原料中の汚染物質を低減又は排除する組成物及び方法が記載される。合成原料プロセスにおけるいくつかの汚染物質は、600℃程度の温度で熱分解又は揮発しない。そのような合成原料を本明細書に記載される防汚剤で処理することは、汚染物質を低減又は排除することが見出されている。そのような処理された合成原料は、プラスチックのリサイクルで、及び貯蔵中に使用される機器及びシステムの汚染の低減を示す。
【0031】
プラスチックをリサイクルするために、熱可塑性廃棄物などの様々なプラスチックタイプを使用することができる。廃プラスチック原料において一般的に遭遇するプラスチックのタイプとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、合成原料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの組み合わせを含むプラスチックの熱分解を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びより少ない量のポリスチレンが存在するが、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンテレフタレートは、分類が困難であるために存在する。
【0032】
プラスチック(例えば、廃プラスチック)をより低い分子量の炭化水素材料、特に炭化水素燃料材料に変換する、いくつかのプロセスが知られている。例えば、米国特許第6,150,577号、同第9,200,207号、及び同第9,624,439号を参照されたい。これらの刊行物の各々は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。広く記載されているそのようなプロセスは、制限された酸素を含むか、又は酸素を全く含まず、かつ大気圧を上回る、熱分解-高熱(例えば、約400℃~約850℃)などの熱化学変換によって長鎖プラスチックポリマーを破壊することを含む。熱分解温度は、触媒が使用されるときに低減され得る。熱分解条件は、約400℃~850℃、約500℃~700℃、又は約600℃~700℃の温度を含む。得られた熱分解流出物は、凝縮され、次いで任意選択的に蒸留される。
【0033】
図1に示されるように、熱分解プロセスの実施形態は、廃プラスチックの供給器12、反応器14、及び凝縮器システム18を含む。ポリマー含有材料は、供給器内の入口10を通して供給され、反応器14に熱が加えられる。凝縮器システム18からの出口20は、生成物が出ることを可能にする。図2は、プラスチックの熱分解プロセスの別の実施形態を描写する。図3は、熱分解流出物の凝縮又は急冷後のプロセスを示す、更に別の実施形態を描写する。この熱分解反応を実現するための熱クラッキング反応器は、いくつかの特許、例えば、米国特許第9,624,439号、同第10,131,847号、同第10,208,253号、及び国際公開第2013/123377A1号に詳細に記載されており、これらの刊行物の各々は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、触媒の存在下又は非存在下である。いくつかの実施形態では、凝縮後、流出物は、任意選択的に蒸留される。いくつかの実施形態では、合成原料を回収することは、合成原料を得るために、熱分解流出物を分離若しくは急冷すること、又は分離及び急冷の両方を行うことに関する。
【0036】
熱分解プロセスは、ガス(10℃~50℃の温度及び0.5~1.5大気圧で、5個以下の炭素を有する)、低沸点液体(ガソリン又はナフサ(40~200℃)又はディーゼル燃料(180~360℃)のような)、高(例えば、250~475℃で)沸点液体(油及びワックス)、及び一般的にチャーと称されるいくつかの固体残留物から、ある範囲の炭化水素生成物を生成する。チャーは、熱分解プロセスが完了して反応器の流出物が回収された後に残る材料である。チャーは、原料の一部としてシステムに入る添加物及び汚染物質を含有する。チャーは、重油成分を有するスラッジに似た粉末状の残留物又は物質であり得る。ガラス、金属、炭酸カルシウム/酸化カルシウム、粘土、及びカーボンブラックは、変換プロセスが完了した後に残り、チャーの一部になるほんのわずかな汚染物質及び添加物である。
【0037】
いくつかの実施形態では、熱分解反応は、2~30%のガス(C1~C4炭化水素)、(2)10~50%の油(C5~C15炭化水素)、(3)約10~40%のワックス(≧C16炭化水素)、及び(4)約1~5%のチャーを生じる。熱分解プロセスの完了後、熱分解生成物又は熱分解油は、60~80重量%のC5~C15、20~35重量%のC16~C29、及び5重量%以下の≧C30の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、熱分解生成物又は熱分解油は、70~80重量%のC5~C15、20~35重量%のC16~C29の範囲であり得る。
【0038】
廃プラスチックの熱分解から得られる炭化水素は、アルカン、アルケン、オレフィン、及びジオレフィン又はポリエンの混合物であり、オレフィン基は、一般に、C1~C2、すなわち、アルファ-オレフィンであり、いくらかのアルク-2-エンも生成され、ジエンは、一般に、アルファ及びオメガ位にあり、すなわち、アルク-α,ω-ジエンであるか、又は共役ジエンであり得る。いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、パラフィン化合物、イソパラフィン、オレフィン、ジオレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物を生成する。いくつかの実施形態では、熱分解流出物中の1-オレフィンの割合は、約25~75重量%、又は35~65重量%である。いくつかの実施形態では、合成原料は、25~70重量%のオレフィン及びジオレフィン、35~65重量%のオレフィン及びジオレフィン、35~60重量%のオレフィン及びジオレフィン、又は5~50重量%のオレフィン及びジオレフィンである。
【0039】
加工条件に依存して、合成原料は、石油源からの原油と同様の特徴を有することができるが、様々な量のオレフィン及びジオレフィンを有し得る。いくつかの実施形態では、廃プラスチックに由来する合成原料は、35~65%のオレフィン及びジオレフィン、10~50%のパラフィン及びイソパラフィン、5~25%のナフテン、並びに5~35%の芳香族化合物を含有する。いくつかの実施形態では、合成原料は、約15~20重量%のC9~C16、75~87重量%のC16~C29、約2~5%のC30+である炭素長を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。他の実施形態では、合成原料は、10重量%の<C12、25重量%のC12~C20、30重量%のC21~C40、及び35重量%の>C41を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。なおも他の実施形態では、合成原料は、約60~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29、及び約5重量%以下の≧C30を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。いくつかの実施形態では、合成原料は、約70~80重量%のC5~C15及び約20~35重量%のC16~C29を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。
【0040】
いくつかの実施形態では、合成原料組成物は、その所望の温度よりも高い温度で、又は貯蔵、輸送、若しくは使用温度中に反応して合成原料組成物から沈殿することができる、ある範囲のα又はωオレフィンモノマー成分(例えば、αオレフィン又はα,ωジオレフィン)を有する。
【0041】
熱分解油(熱分解生成物)が長期間貯蔵されるとき、貯蔵容器は、膜を蓄積し始める。この膜は、空気(酸素)の存在を伴って、又は伴わずに形成される。膜形成は、上昇した温度で加速されるが、室温では経時的に形成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、合成原料中の汚染物質は、タール状堆積物であるか、又は膜状汚染物質及びそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、タール状堆積物は、固体粘弾性物質、及び暗褐色又は黒色の粘性液体であり、各々は、廃プラスチックの熱分解から生じる。いくつかの実施形態では、タール状堆積物は、暗褐色又は黒色の粘性液体中の小さな黒色粒子の懸濁液であり、これは柔らかい芸術家の模型用粘土の粘稠度を有する。いくつかの実施形態では、タール状堆積物及び膜は、同じ赤外分光特性を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、汚染物質(例えば、固体粘弾性物質として)は、追加のカルボン酸及びヒドロキシル官能基を有するポリアミドを含み、62~75%の炭素、6~9%の水素、3~7%の窒素、及び12~25%の酸素の元素組成を有する。いくつかの実施形態では、汚染物質の元素組成は、62~75%の炭素、6~9%の水素、3~7%の窒素、及び12~25%の酸素、並びに0.3%未満の硫黄である。いくつかの実施形態では、熱分解油中に存在する汚染物質は、アミド官能基に関連するもの以外にヒドロキシル及びカルボニル官能基も含有する第二級アミドである。いくつかの実施形態では、汚染物質は、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、少量のオレフィン性不飽和を有する芳香族基、及びそれらの組み合わせを有するポリアミドである。汚染物質分析は、2段階ガスクロマトグラフィー/質量分析(gas chromatography/mass spectrometry、GC/MS)技術を使用することによるものであり、第1の段階は、熱脱着によって収集された揮発性成分のGC/MSであり、第2段階は、汚染物質の不揮発性画分の熱分解から生じる揮発性副生成物のGC/MSである。いくつかの実施形態では、第1の段階は、汚染物質が、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、オレフィン性不飽和を有する芳香族基、アルケン、アルカン、安息香酸、カプロラクタム、トルエン、キシレン、クレゾール、フェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール及びジ-tertブチルフェノール、ジメチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、並びにそれらの組み合わせを有するポリアミドであることを明らかにする。一方で、第2の段階は、同定された主要な断片が、プロピレン、トルエン、カプロラクタム、ペンテン、及びブタンであったことを明らかにする。少量の断片には、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロロール、ジメチルフラン、及びテトラヒドロキノリンが含まれた。いくつかの実施形態では、汚染物質は、ナイロン、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリアミド、カプロラクタム、安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、プロピレン、トルエン、ペンテン、ブタン、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、テトラヒドロキノリン、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0044】
熱分解生成物プロセス流又は熱分解生成物に、防汚剤が添加され、これは、熱分解生成物又はプロセス機器における汚染物質形成又は堆積を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、防汚剤は、カルボン酸の無水物又はそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、カルボン酸無水物には、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸、無水アクリル酸及びメタクリル酸、並びにそれらの誘導体が含まれる。
【0045】
いくつかの実施形態では、防汚剤は、一般式Iの無水コハク酸であり、
【化1】
式中、Rは、水素又は8~36個の炭素原子、及び12~24個の炭素原子であり、Rは、直鎖若しくは分岐鎖、又は両方の構造の組み合せであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、8~36個の炭素原子を含む脂肪族アルキル又はアルケニル基である。いくつかの実施形態では、Rは、8~36個の炭素原子の脂肪族直鎖アルケニル鎖である。
【0046】
いくつかの実施形態では、無水コハク酸化合物には、コハク酸、スクシンアミド、スクシンイミド、並びにN-アルキル、N-アルケニル、N-アリール、及びN-アルカリルスクシンイミド又はアルケニル無水コハク酸が含まれる。無水コハク酸化合物には、トリデシルコハク酸無水物、ペンタデシルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、テトラデシルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、防汚剤は、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸である。いくつかの実施形態では、防汚剤は、テトラプロペニルコハク酸無水物(tetrapropenyl succinic anhydride、TPSA)とも称される、ドデセニルコハク酸無水物(dodecenyl succinic anhydride、DDSA)、無水マレイン酸及びアルファオレフィンコポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、防汚剤は、ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、不飽和又は飽和モノマー及びオレフィンの重合コポリマーである。いくつかの実施形態では、オレフィンは、式IIとして示される構造を有するアルファオレフィンであり、
【化2】
式中、R、R、R、及びRは、独立して、水素及びC~C60アルキルから選択されるが、但し、それらの少なくとも2つが水素であることを条件とし、式(I)を有する2つ以上のそのようなアルファオレフィンモノマーのブレンドは、コポリマーに好適に含まれる。いくつかの実施形態では、R、R、R、及びRは、独立して、水素又はC12~C60である。無水マレイン酸モノマーは、式IIIを有し、
【化3】
式中、R及びRは各々、独立して、水素又は上記に記載されるアルファオレフィン若しくはスチレンから選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、アルファ-オレフィンは、10~36個の炭素、又は14~32個の炭素、又は18~30個の炭素、又は24~28個の炭素を有し、炭素の数は、化合物のブレンドを反映する平均数、又は使用者によって決定される実質的に単一の値である。ポリマーは、約1:1~約1:5のα-オレフィン残留物対無水マレイン酸残留物の重量比を含む。コポリマーの重量平均分子量(M,)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって分析されると、約5,000g/mol~約100,000g/mol、5,000g/mol~約25,000g/mol、及び約5,000g/mol~約15,000g/molである。コポリマーは、従来の技術、例えば、ラジカル付加重合原理及びポリマー合成の当業者によく知られている技術を使用して合成される。ポリマーは、標的構造及び分子量が前駆体ポリマーにおいて達成されることを確実にするために、ゲル浸透クロマトグラフィー及び赤外線分析を含む、ポリマー化学者によく知られている従来の方法論を使用して更に分析される。
【0049】
防汚剤は、約15重量%~90重量%、又は約15重量%~85重量%、又は約15重量%~80重量%、又は約15重量%~75重量%、又は約15重量%~70重量%、又は約15重量%~65重量%、又は約15重量%~60重量%、又は約15重量%~55重量%、又は約15重量%~50重量%、又は約15重量%~45重量%、又は約15重量%~40重量%、又は約15重量%~35重量%、又は約15重量%~30重量%、又は約15重量%~25重量%、又は約20重量%~80重量%、又は約30重量%~50重量%、又は約50重量%~90重量%、又は約50重量%~80重量%の上記に記載される防汚剤を含む濃縮物の形態であり得る。
【0050】
防汚剤は、防汚剤組成物が、重量で約10ppm~5000ppm、又は約10ppm~1000ppm、900ppm~5,000ppm、又は約10ppm~500ppm、又は約20ppm~500ppm、又は約30ppm~500ppm、又は約40ppm~500ppm、又は約50ppm~500ppm、又は約60ppm~500ppm、又は約70ppm~500ppm、又は約80ppm~500ppm、又は約90ppm~500ppm、又は約100ppm~500ppm、又は約400ppm~5000ppm、又は約5ppm~450ppm、又は約5ppm~400ppm、又は約5ppm~350ppm、又は約5ppm~300ppm、又は約5ppm~250ppm、又は約5ppm~200ppm、又は約5ppm~150ppm、又は約5ppm~100ppm、又は約10ppm~300ppm、又は約10ppm~250ppm、又は約50ppm~250ppm、又は約50ppm~200ppm、又は約100ppm~200ppm、又は約100ppm~5000ppmの防汚剤に対応する量で合成熱分解流又は合成熱分解生成物に添加されるときに、汚染を低減又は防止し、処理された合成熱分解流又は処理された合成熱分解生成物を形成するために効果的である。
【0051】
処理された合成熱分解流は、重量で合計約10ppm~5000ppmの防汚剤組成物を含む。処理された合成熱分解生成物は、重量で合計約10ppm~5000ppmの防汚剤を含む生成物である。処理された合成熱分解プロセス流は、合成熱分解加工機器内に配置され、重量で合計約10ppm~5000ppmの防汚剤組成物を含む、合成熱分解生成物である。
【0052】
いくつかの実施形態では、処理された合成熱分解プロセス流は、一つ又は複数の合成熱分解加工操作中に、対応する未処理の合成熱分解プロセス流よりも実質的に少ない接触した合成熱分解加工機器の汚染を受ける。汚染の低減又は防止は、一つ又は複数の合成熱分解プロセス流内で、一つ又は複数の石油プロセス装置内の処理された合成熱分解プロセス流の廃棄中に、又は貯蔵容器内の合成熱分解生成物の貯蔵中に観察される。
【0053】
したがって、一つ又は複数の合成熱分解プロセス流中の汚染を低減する方法であって、重量又は体積で約10ppm~5000ppmの防汚剤を合成熱分解プロセス流に適用して、処理された合成熱分解プロセス流を形成することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる方法が本明細書に開示される。防汚剤組成物は、一つ又は複数の防汚剤又は防汚剤ポリマーの組み合わせを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、防汚剤は、テトラプロピレンコハク酸無水物であり、防汚剤ポリマーは、無水マレイン酸及びアルファオレフィンの反応生成物である。上記に記載される組成物のうちのいずれかが、汚染を低減する方法と併せて有用であり、本方法は、重量又は体積で約10ppm~5000ppmの防汚剤組成物を合成熱分解プロセス流に適用して、処理された合成熱分解プロセス流を形成することを含む。
【0054】
防汚剤は、合成原料生成プロセスで使用される急冷塔又はカラムなどのプロセス機器における汚染物質の堆積を防止又は低減することに有用である。いくつかの実施形態では、防汚剤は、合成原料の生成中に、貯蔵して保持されている原料(精製若しくは未精製)又はそれらの組み合わせに添加される。防汚剤は、プロセスにおける一つ又は複数の場所で添加され得る。いくつかの実施形態では、防汚剤は、ガス状熱分解生成物が凝縮し始める時点で添加され、防汚剤は、凝縮した熱分解生成物とともに移動し、沈殿したか、又はそうでなければ防汚剤の非存在下で沈殿するであろう汚染物質との接触を達成することが可能になる。いくつかの実施形態では、防汚剤は、急冷塔の入口若しくは出口に、又は熱分解生成物の貯蔵部に、又は急冷塔若しくはカラム及び熱分解生成物貯蔵部若しくはドラムに添加される。例えば、防汚剤は、図3に示されるように、プロセスにおけるポイントに添加される。
【0055】
いくつかの実施形態では、防汚剤は、熱分解反応器から退出する合成原料蒸気が急冷され、ガスが冷却され、約100℃~200℃、又は約110℃~140℃、又は約105℃~120℃の温度で凝縮されるときに、急冷塔若しくはカラム、又は空冷式若しくは水冷式凝縮器の入口で添加される。いくつかの実施形態では、防汚剤は、貯蔵して保持された合成原料に添加される。
【0056】
ある特定の実施形態では、濾過工程が、上記の場所のうちのいずれかの前及び/又は後に実行され得る。濾過工程は、防汚剤が膜形成成分と相互作用して付加物を作製するような実施形態では有用であり得る。いくつかの熱分解油では、これらの付加物は、可溶性であるが、ある特定の熱分解油では、付加物は、不溶性である。そのような場合において、例えば、防汚剤は、貯蔵容器への膜形成成分の接着を防止し得る。例証的実施形態では、濾過工程は、熱分解油の形成の後及び/又は防汚剤の添加の後であるが、熱分解油の更なる加工の前に実行される。
【0057】
防汚剤は、任意の好適な方法によって添加され得る。例えば、防汚剤は、原液で、又はアジュバントとともに添加され得る。いくつかの実施形態では、アジュバントは、溶媒又は他の分散剤(例えば、界面活性剤)である。いくつかの実施形態では、防汚剤は、システム内の所望の開口部内に、又はプロセス機器若しくはその中に含まれる流体上に、噴霧、滴下、又は注入される溶液として適用され得る。防汚剤は、必要に応じてプロセス機器に連続的に、断続的に、又はバッチ式に添加され得る。
【0058】
防汚剤は、プロセス機器に適用されて、処理されたプロセス機器を形成する。いくつかの実施形態では、処理されたプロセス機器は、防汚剤の添加がないプロセス機器よりも少ない汚染物質堆積を受けることが観察され得る。
【0059】
汚染物質形成又は堆積の低減又は防止は、例えば、ASTM D4625などの任意の既知の方法又は試験によって評価することができる。いくつかの実施形態では、防汚剤で処理された合成原料は、汚染物質の汚染を約5%~95%、5%~75%、5%~50%、5%~25%、5%~15%、50%~95%、50%~20%、又は50%~75%低減させている。
【0060】
他の添加剤を、加工及び貯蔵中に熱分解油に添加することができる。いくつかの実施形態では、他の添加剤は、酸化防止剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、他の添加剤は、熱分解油に添加される酸化防止剤、流動点降下剤、若しくは抽出溶媒、又はそれらの組み合わせである。例えば、添加される酸化防止剤には、米国特許仮出願第63/159266号に報告されている酸化防止剤、米国特許仮出願第63/078111号に報告されている流動点降下剤、及び米国特許仮出願第63/168643号に報告されている抽出溶媒が含まれる。報告された出願は各々、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0061】
以下の実施例は、本発明の異なる態様及び実施形態を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更がなされ得ることが認識されるであろう。
【0062】
実施例1.汚染物質特性評価
【0063】
元素(CHNS)分析を、熱分解油から得られた汚染物質膜の試料に対して行った。膜を熱分解油から分離し、ヘプタンで洗浄し、更にジクロロメタンに溶解した。ジクロロメタンを蒸発させて、汚染残留物を残した。
【0064】
表1は、CHNS分析を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
異なる熱分解源からの汚染物質試料も、赤外(infrared、IR)分光法によって評価した。IRスペクトルは、オンボードダイヤモンド内部反射アクセサリを備えたNicolet iS50 FTIRを用いて評価した。スペクトルは、4つの波数分解能で実行され、32の同時追加スキャンの結果であった。
【0067】
IR分光法は、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、少量のオレフィン性不飽和を有する芳香族基の存在を示した。汚染物質の主成分は第二級アミド(例えば、ポリアミド)であった。様々な試料中の汚染物質が、群の中で脂肪族炭化水素、カルボン酸、アミド、及び芳香族化合物の量のいくらかの変動を伴う類似組成物を示したことを示す、図4を参照されたい。試料内の汚染物質組成物は、異なる温度で同様の組成を示した。
【0068】
異なる供給源からの様々な熱分解試料の熱プロファイルを、発生ガス分析によって分析した。試料を600℃で加熱した。試料の揮発性画分を40℃~300℃で熱脱着させ、ガスクロマトグラフィーによってクロマトグラフィー分離し、質量分析によって検出した。
【0069】
図5は、熱分解生成物からの汚染物質の発生ガス分析及び脱着生成物を示す。同定された揮発性成分は、少量の安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール及び様々な長さのアルケン及びアルカンとともに、カプロラクタムの優勢を示した。600℃での試料の加熱は、試料を様々な断片に熱分解する。同定された主要な断片は、プロピレン、トルエン、カプロラクタム、ペンテン及びブタンであった。少量の断片には、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、及びテトラヒドロキノリンが含まれた。
【0070】
実施例2プラスチック熱分解からの汚染物質の安定性
合成原料の安定性を、様々な防汚剤、すなわち、防汚剤1(15%無水マレイン酸-C24-C28アルファ-オレフィンコポリマー、CAS番号68459-79-0)又は防汚剤2(テトラプロピレン-コハク酸無水物、CAS番号26544-38-7)の存在又は非存在下で、様々な濃度及び異なる温度で評価した。安定性を、ASTM D4626(25℃及び43℃で4週間の貯蔵)によって試験した。25℃及び43℃での未処理の試料(防汚剤の添加なし)が、対照としての役割を果たした。
【0071】
防汚剤を様々な熱分解原料で試験した:熱分解原料試料1(60~80重量%のC5~C15、20~35重量%のC16~C29、及び5重量%以下の≧C30)、及び熱分解原料試料2(70~80重量%のC5~C15、20~35重量%のC16~C29)。様々な防汚剤で処理された熱分解原料を回収し、ASTM D4625手順ガイドラインに従って25℃又は43℃で1ヶ月の期間にわたる安定性試験のためにいくつかの部分に分割した。試料を高温で1ヶ月間、室温で3ヶ月間観察した。防汚剤1及び防汚剤2を用いた貯蔵安定性の結果が、表2に示される。
【表2】
【0072】
実施例3.熱重量分析
【0073】
様々な熱分解生成物の安定性試験後に形成された膜の熱重量分析(thermo-gravimetry analysis、TGA)を行って、熱分解温度(thermal decomposition temperature、Td)及び残留物分析を決定した。600℃までのTGA研究後の不揮発性物質を定量化し、表3に示した。TGAを不活性ガス(例えば、N)で行って、酸化副生成物の形成(燃焼)を最小限化した。
【表3】
【0074】
600℃までに、全ての試料が、約90%の分解又は揮発を示す。しかしながら、膜又は残留物の18~31%は、最大600℃までの温度で揮発しない。換言すれば、膜又は残留物は、対流セクションにおいて完全に揮発する。膜組成物(例えば、主にカプロラクタム、芳香族化合物)は、TGA実験において不揮発性を決定する。防汚剤1を用いた残留物分析は、不揮発性物質を4~12%まで低減する。100%活性防汚剤2が使用されたときに、残留物は残らなかった。したがって、防汚剤2は、膜形成が固体沈殿のない試料2熱分解生成物において軽減されるため、有効である。
【0075】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製及び実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、異なるように明示的に述べられない限り、「a(ある1つの)」という用語は、「少なくとも1つ(at least one)」又は「一つ又は複数(one or more)」を含むことを意図している。例えば、「ある1つのデバイス(a device)」は、「少なくとも1つのデバイス」又は「一つ又は複数のデバイス」を含むことを意図している。
【0076】
絶対的な用語又は近似的な用語のいずれかで示される任意の範囲は、両方を包含することを意図しており、本明細書で使用される任意の定義は、明確にすることを意図するものであり、限定することを意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲及びパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(全ての小数値及び全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0077】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される任意の要素、成分、及び/若しくは原料、又は本明細書に開示される要素、成分、若しくは原料のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含み得るか、それらからなり得るか、又はそれらから本質的になり得る。
【0078】
本明細書に開示される任意の方法は、本明細書に開示される任意の方法工程、又は本明細書に開示される方法工程のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含み得るか、それらからなり得るか、又はそれらから本質的になり得る。
【0079】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」という移行句は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素、成分、原料、及び/又は方法工程を除外しない。
【0080】
「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲に明記されていない任意の要素、成分、原料、及び/又は方法工程を除外する。
【0081】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、特定の要素、成分、原料及び/又は工程、並びに特許請求される発明の基本的及び新規特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0082】
特に明記されていない限り、本明細書で言及される全ての分子量は、重量平均分子量であり、全ての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて25℃で測定した。
【0083】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値で見出される標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差を判定することができない場合、「約」は、例えば、引用された値の5%、4%、3%、2%、又は1%以内を指し得る。
【0084】
更に、本発明は、本明細書に記載される様々な実施形態のうちのいくつか又は全てのあらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうこともまた、理解されるべきである。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
図1
図2
図3
図4A-1】
図4A-2】
図4B
図5
図6
【国際調査報告】