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  • 特表-ポリアミド燃料添加剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリアミド燃料添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/224 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C10L1/224
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522425
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022059422
(87)【国際公開番号】W WO2023062477
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,593
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン - グリーン、フェリシア
(57)【要約】
ガソリンエンジンの腐食または摩耗を防止または低減する方法が提供される。この方法は、脂肪酸とポリアミンとの反応生成物を含む燃料組成物を供給するステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸とポリアミンとの反応生成物を含む燃料組成物を供給することにより、ガソリンエンジンの腐食または摩耗を防止または低減する方法。
【請求項2】
前記燃料組成物は、ガソリンまたはディーゼルの沸点範囲内の炭化水素燃料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪酸は炭素数2~30の脂肪族脂肪酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪族脂肪酸は、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、2-エチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-プロピルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、イソオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4-メチルオクタン酸、4-メチルノナン酸、イソデカン酸、2-ブチルオクタン酸、イソトリデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、3-シクロヘキシルプロピオン酸、4-シクロヘキシル酪酸、またはシクロヘキサンペンタン酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミンは、約2~約12個の窒素原子及び約2~約24個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリ-アルキレン-アミン、N,N’-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン)、N-[(2-アミノエチル)2-アミノエチル]ピペラジン)、1-(2-アミノエチル)-4-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン)、または1-[2-[[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸とポリアミンとの反応生成物を含む燃料添加剤を含む燃料組成物を供給することにより、耐摩耗性または摩擦保護性を提供しながら、ガソリンエンジンの腐食または摩耗を防止または低減する方法。
【請求項8】
前記燃料組成物は、ガソリンまたはディーゼルの沸点範囲内の炭化水素燃料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪酸は炭素数2~30の脂肪族脂肪酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪族脂肪酸は、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、2-エチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-プロピルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、イソオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4-メチルオクタン酸、4-メチルノナン酸、イソデカン酸、2-ブチルオクタン酸、イソトリデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、3-シクロヘキシルプロピオン酸、4-シクロヘキシル酪酸、またはシクロヘキサンペンタン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアミンは、約2~約12個の窒素原子及び約2~約24個の炭素原子を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリ-アルキレン-アミン、N,N’-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン)、N-[(2-アミノエチル)2-アミノエチル]ピペラジン)、1-(2-アミノエチル)-4-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン)、または1-[2-[[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン)である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料添加剤組成物及び燃料組成物に関する。より具体的には、本開示は、耐摩耗性や摩擦保護性を提供しながら腐食防止及び防錆できる長鎖脂肪族ポリアミド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費を改善するために多大な努力がなされている。一般に、高い摩擦及び過度の摩耗を起こりやすい可動部の界面において、特に有効な潤滑剤が存在することにより、自動車エンジンの効率は大幅に向上する。したがって、燃費を向上させるための1つのアプローチとして、エンジンの摩擦を低減することで、必要とされるエネルギーを低減する潤滑剤及び潤滑油添加剤が開発されている。
【0003】
こうした取り組みのいくつかは、金属表面に吸着または反応し、薄い低せん断強度のフィルムを形成して、境界摩擦を低減できる潤滑油添加剤として知られている摩擦調整剤に焦点を当てている。
【0004】
摩擦調整剤は、リミテッドスリップギアオイル、オートマチックトランスミッションフルード、スライドウェイ潤滑剤、及び多目的トラクターフルードに使用されてきた。特に、摩擦調整剤は、燃費向上の要望により、自動車用クランクケース潤滑剤に添加されている。これらの摩擦調整剤は、一般に、境界層条件で耐摩耗添加剤及び極圧添加剤がまだ反応しない温度で、通常の耐摩耗剤または極圧剤に比べて著しく低い摩擦を示す物理吸着した極性油溶性生成物の単分子薄膜または反応層を形成することによって作用する。しかしながら、より厳しい条件下や混合潤滑環境では、これらの摩擦調整剤は、耐摩耗剤または極圧剤と一緒に添加される。
【0005】
最も一般的な種類の耐摩耗剤または極圧剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTPまたはZDDP)である。ZDDPは、摩擦面上に厚い保護トライボ膜を形成することで摩耗を制限する。ZDDPは何十年にもわたって自動車に広く使用されてきたが、リン系の耐摩耗性膜が高圧潤滑接触部の薄膜の摩擦を大幅に増加させる可能性があることが、最近のいくつかの研究で示されていた。これは、結果的に、燃費に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
潤滑油添加剤により摩擦を低減することも重要であるが、燃料添加剤を使用すると燃費がさらに向上する可能性がある。内燃室の状態は、クランクケース内の状態とは大幅に異なるため、潤滑油の性能上の利点をもたらした特定の添加剤または添加剤の種類が、燃料でも同様の利点をもたらすとは限らない。したがって、摩擦を低減し、及び/または燃費を改善できる燃料添加剤を開発する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の項で説明する。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、脂肪酸とポリアミンとの反応生成物を含む燃料組成物を供給することにより、ガソリンエンジンの腐食または摩耗を防止または低減する方法を提供する。
【0009】
別の態様において、脂肪酸とポリアミンとの反応生成物を含む燃料添加剤を含む燃料組成物を供給することにより、耐摩耗性または摩擦保護性を提供しながら、ガソリンエンジンの腐食または摩耗を防止または低減する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概要
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、以下に付与される意味を有する。
【0011】
「ガソリン」または「ガソリン沸点範囲成分」とは、少なくとも主としてC-C12炭化水素を含有する組成物を指す。一実施形態において、ガソリンまたはガソリン沸点範囲成分は、少なくとも主としてC-C12炭化水素を含有し、さらに約37.8℃(100°F)~約204℃(400°F)の沸点範囲を有する組成物を意味するとさらに定義される。別の実施形態において、ガソリンまたはガソリン沸点範囲成分は、少なくとも主としてC-C12炭化水素を含有し、約37.8℃(100°F)~約204℃(400°F)の沸点範囲を有し、さらにASTM D4814を満たすと定義される組成物を指すと定義される。
【0012】
「ディーゼル」という用語は、少なくとも主としてC10-C25の炭化水素を含有する中間留分燃料を指す。一実施形態において、ディーゼルは、少なくとも主としてC10-C25炭化水素を含有し、さらに、約165.6℃(330°F)~約371.1℃(700°F)の沸点範囲を有する組成物を指すとさらに定義される。代替の実施形態において、ディーゼルは、少なくとも主としてC10-C25炭化水素を含有し、さらに、約165.6℃(330°F)~約371.1℃(700°F)の沸点範囲を有する組成物を指すと上記のように定義され、さらにASTM D975を満たすと定義される。
【0013】
「油溶性」という用語は、所望のレベルの活性または性能を付与するのに必要な所与の添加剤の量を、潤滑化粘度を有する油に溶解、分散、または懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。通常、「油溶性」とは、少なくとも0.001重量%の添加剤を、潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。「燃料可溶性」という用語は、燃料に溶解、分散、または懸濁した添加剤に対する類似表現である。
【0014】
「少量」とは、記載された添加剤及び組成物の総重量に関して表す用語であり、添加剤の有効成分としてみなされる組成物の50重量%未満を意味する。
【0015】
「エンジン」または「燃焼機関」は、燃焼室内での燃料の燃焼が行われる熱機関である。「内燃機関」は、燃料の燃焼が制限された空間(「燃焼室」)内で行われる熱機関である。「火花点火機関」は、通常は点火プラグからの火花によって燃焼が点火される熱機関である。この火花点火機関は、燃料の注入と共に圧縮によって生じる熱が、外部火花なしに燃焼を開始するのに十分である「圧縮着火エンジン」、典型的には「ディーゼルエンジン」とは対照的である。
【0016】
本発明は、1つ以上の性能上の利点を有する燃料添加剤組成物及び燃料組成物を提供する。いくつかの実施形態において、当該組成物は、腐食または錆を防止または低減するのに効果的である。いくつかの実施形態において、当該組成物は、摩耗または摩擦を防止または低減するのに効果的である。特に、摩擦を低減して、燃費を向上し得る。いくつかの実施形態において、当該組成物は、2つ以上の利点(例えば、腐食/錆及び摩耗/摩擦の低減)が提供されるという点で多機能である。
【0017】
一般に、当該燃料添加剤組成物は、長鎖ポリアミドを生成する、脂肪酸とポリアミンとの反応生成物である。従来の防錆剤及び/または摩耗防止剤が有機酸系組成物に依存しているのに対し、本発明のポリアミドは非酸であり、堆積物の形成やフィルターの目詰まりの増加を引き起こし得る精製プロセスでの潜在的な汚染物質との相互作用を最小限に抑える。他の利点は、本明細書における開示から明らかになるであろう。
【0018】
脂肪酸
本発明によると、燃料添加剤は、脂肪酸とポリアミンとの間のアミド化反応による生成物である。本発明に適合する任意の脂肪酸が使用されてよい。典型的な脂肪酸は、次の構造を有する。
【化1】

式中、Rは、約5~40個の炭素原子、例えば8~35個の炭素原子、10~30個の炭素原子、または15~25個の炭素原子を有する有機部分である。いくつかの実施形態において、Rは1つ以上のヘテロ原子を含む。好適な脂肪酸は、飽和及び不飽和脂肪酸を含む。脂肪酸はまた、モノカルボン酸であってもよく、または1つ以上の酸部分(例えば、ジカルボン酸)を有してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、脂肪酸は脂肪族脂肪酸である。飽和脂肪酸の例としては、脂肪族脂肪酸が挙げられる。脂肪族基は、直鎖または分枝鎖であってよい。
【0020】
好適な脂肪酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、2-エチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-プロピルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、イソオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、4-メチルオクタン酸、4-メチルノナン酸、イソデカン酸、2-ブチルオクタン酸、イソトリデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、3-シクロヘキシルプロピオン酸、4-シクロヘキシル酪酸、及びシクロヘキサンペンタン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
好適な不飽和脂肪酸としては、二重または三重の炭素-炭素結合を含有する脂肪酸が挙げられる。代表的な不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノエライジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルシン酸、及びドカサヘキサエン酸が挙げられる。
【0022】
ポリアミン
ポリアミンは、好ましくは、1分子当たり少なくとも3個のアミン窒素原子を有し、より好ましくは、1分子当たり4~12個のアミン窒素を有する。最も好ましくは、ポリアミンは、1分子当たり約6~10個の窒素原子を有する。
【0023】
好ましいポリアルケンポリアミンはまた、アルキレン単位当たり約4~20個の炭素原子、好ましくは2~3個の炭素原子を含有する。ポリアミンは、好ましくは、1:1~10:1の炭素対窒素比を有する。
【0024】
好適なポリアミンとしては、ポリアルキレンポリアミンが挙げられる。そのようなポリアミンは、典型的には、約2~約12個の窒素原子及び約2~約24個の炭素原子を含有するだろう。具体的な例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、及び重質ポリ-アルキレン-アミン(HPA)が挙げられる。
【0025】
ポリアミンの他の具体的な例としては、N,N’-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン)(ビスAEP)、N-[(2-アミノエチル)2-アミノエチル]ピペラジン)(PEEDA)、1-(2-アミノエチル)-4-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン)(AEPEEDA)、及び1-[2-[[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン)(PEDETA)が挙げられる。
【0026】
本発明で使用するのに適したポリアミンの多くが市販されており、他のものは、当該技術分野で周知の方法で調製され得る。例えば、アミンを調製するための方法及びそれらの反応は、以下に詳述される:Sidgewick’s“The Organic Chemistry of Nitrogen”,Clarendon Press,Oxford,1966;Noller’s“Chemistry of Organic Compounds”,Saunders,Philadelphia,2nd Ed.,1957;及びKirk-Othmer’s“Encyclopedia of Chemical Technology”,2nd Ed.,特にVolume2,pp.99 116。
【0027】
ポリアミン反応物は、単一の化合物であってもよいが、典型的には市販のポリアミンを反映する化合物の混合物であろう。通常、市販のポリアミンは、示されている平均組成を主に有する1つ以上の化合物の混合物であろう。例えば、アジリジンの重合またはジクロロエチレンとアンモニアとの反応によって調製されるテトラエチレンペンタミンは、低級及び高級両方のアミン成分、例えばトリエチレンテトラミン、置換ピペラジン、及びペンタエチレンヘキサミンを含有するであろうが、その組成は、大部分テトラエチレンペンタミンであって、全体のアミン組成の実験式はテトラエチレンペンタミンの実験式と非常に近似する。
【0028】
好適なポリアミンの他の例としては、様々な分子量を有するアミンの混合物が挙げられる。ジエチレントリアミンと重質のポリアミンとの混合物が挙げられる。好ましいポリアミン混合物は、20重量%のジエチレントリアミン及び80重量%の重質のポリアミンを含有する混合物である。
【0029】
反応
本発明の燃料添加剤は、脂肪酸とポリアミンとの反応生成物である。反応生成物はポリアミドまたは脂肪酸ポリアミドである。本発明のポリアミドは、市販で入手可能であるか、または任意の既知の方法により合成し得る。
【0030】
例示的な例として、脂肪酸とポリアミンとの反応は米国特許第3,169,980号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。ここで、ポリアミドは、脂肪酸とポリアミンを約120℃(248°F)~約260℃(500°F)の範囲の温度で反応させることによって調製される。アミド化反応は2~10時間程度がかかる。続いて、凝縮水を除去する。より低い反応温度でアミド化を達成するには、減圧が必要な場合がある。脂肪酸とポリアミンの割合は、脂肪酸のモルがポリアミン中のアミン基のモル当量と等しくなるような割合であってよい。
【0031】
テトラエチレンペンタミンと、直鎖及び分枝鎖脂肪酸の混合物とから得られるポリアミドを以下に説明する。反応容器にテトラエチレンペンタミン及びシリコーン消泡剤の混合物を入れる。混合物を窒素ガスで覆い、約120℃に加熱する。次に、脂肪酸の混合物を導入し、反応温度を上げて水を除去する。温度を大気圧で約1時間再度上昇させ、次いで真空下、約7時間維持する。
【0032】
燃料組成物
本開示の化合物は、ガソリンまたはディーゼルの沸点範囲内の炭化水素燃料の添加剤として有用であり得る。
【0033】
炭化水素燃料中の、本開示のポリアミド化合物の濃度は、重量基準で25~5000百万分率(ppm)(例えば、50~1000ppm)の範囲であってよい。
【0034】
本開示の化合物は、沸点が65℃~205℃の範囲の、不活性で安定した親油性(即ち、炭化水素燃料に溶解する)有機溶媒を用いる濃縮物として製剤化され得る。ベンゼン、トルエン、キシレン、またはより高い沸点の芳香族化合物もしくは芳香族希釈剤などの、脂肪族または芳香族炭化水素溶媒を用いてよい。炭化水素溶媒と組み合わせた、エタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルカルビノール、n-ブタノールなどといった、2~8個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールもまた、本添加剤と共に用いるのに好適である。濃縮物中の添加剤の量は、10~70重量%(例えば、20~40重量%)の範囲であってよい。
【0035】
ガソリン燃料においては、含酸素添加剤(例えば、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル)、他のアンチノック剤、及び、洗浄剤や分散剤(例えば、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリ(オキシアルキレン)アミン、スクシンイミド、マンニッヒ反応生成物、ポリアルキルフェノキシアルカノールの芳香族エステル、またはポリアルキルフェノキシアミノアルカン)を含む、他の周知の添加剤を用いることができる。さらに、摩擦調整剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、及び乳化破壊剤が存在してよい。
【0036】
ディーゼル燃料では、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン向上剤などといった、他の周知の添加剤を用いることができる。
【0037】
燃料可溶性の不揮発性キャリア流体または油もまた、本開示の化合物と共に用いてよい。キャリア流体とは、要求オクタン価の増加を幾分かは助長するが、燃料添加剤組成物の、不揮発性残留物(NVR)または溶媒非含有流体画留分を実質的に増加させる化学的に不活性な炭化水素可溶性液状ビヒクルである。キャリア流体は、米国特許第3,756,793号;同第4,191,537号;及び同第5,004,478号;ならびに、欧州特許出願公開第356,726号及び同第382,159号に記載されているものなどの、水素添加及び非水素添加ポリアルファオレフィン、合成ポリオキシアルキレン由来の油を含む、鉱油、精製石油、合成ポリアルカン及びアルケンなどの、天然または合成油であってよい。
【0038】
キャリア流体は、炭化水素燃料の35~5000重量ppm(例えば、燃料の50~3000ppm)の範囲の量で用いてよい。燃料濃縮物中で用いる場合、キャリア流体は、20~60重量%(例えば、30~50重量%)の範囲の量で存在してよい。
【0039】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【実施例
【0040】
試験したポリアミドは、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミン(TEPA)との反応生成物である。最初に、6つの試料を調製して、ASTM D665Bに従って腐食試験を実施した。試料は、ベース燃料のみ(試料1及び2)、またはベース燃料及びポリアミド(試料3、4、5、及び6)を様々な量で含有している。
【0041】
試験した試料と腐食結果(ASTM D665B)の概要を以下の表1に示す。腐食試験の視覚的確認は、図1に明確に示されている。
【表1】
【0042】
ASTM 6079に従って追加試験を実施し、ポリアミドの摩擦性能を測定した。試料7はベース燃料のみを含有する。試料8、9、10、及び11は、基準配合物1または基準配合物2のいずれかと、様々な量のポリアミドとを含有する。
【0043】
表2に、試験した試料及び結果(ASTM 6079)をまとめて示す。
【表2】

基準配合物1(BL1):ベース燃料+燃料洗浄剤の混合物+5体積%のメチルtert-ブチルエーテル
基準配合物2(BL2):ベース燃料+燃料洗浄剤の混合物+E10
図1
【国際調査報告】