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特表2024-537387空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける晶帯軸推薦方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける晶帯軸推薦方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241003BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20241003BHJP
   H01J 37/295 20060101ALI20241003BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01J37/22 501Z
G06V10/70
H01J37/295
H01J37/28 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522440
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022015355
(87)【国際公開番号】W WO2023063703
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136499
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0156578
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0156580
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0157137
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185805
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521550998
【氏名又は名称】ライトビジョン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ラ,ムン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,へ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョン ジ
【テーマコード(参考)】
5C101
5L096
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101AA05
5C101AA16
5C101HH25
5C101HH36
5C101JJ04
5C101JJ07
5L096BA18
5L096HA11
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法を提供し、対象素材の空間群候補を推論し、次の撮影のための晶帯軸を推薦する方法を提供するものである。
【課題の解決手段】 空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法が開示される。 SADP分類体系は、複数のラベルを含み、前記ラベルは、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で撮影されたSADP(Selected Area Diffraction Pattern)イメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記ラベルは、結晶学観点の分類体系の空間群と連結される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラベルを含み、
前記ラベルは、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で撮影されたSADP(Selected Area Diffraction Pattern)イメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記ラベルは結晶学観点の分類体系の空間群と連結されることを特徴とするSADP分類体系。
【請求項2】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項1に記載のSADP分類体系。
【請求項3】
前記SADPイメージは、前記空間群の晶帯軸を基準にして獲得されたイメージであり、前記ラベルの数は、前記空間群と晶帯軸の積より小さいことを特徴とする請求項2に記載のSADP分類体系。
【請求項4】
TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して2Dパターンに対する複数のラベルを有するSADP分類体系を生成する回折パターン分析部と、
前記SADP分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部とを含み、
前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一でマッチングされることを特徴とする分類体系システム。
【請求項5】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項4に記載の分類体系システム。
【請求項6】
前記SADPイメージを機械学習を介して分類することができるように回転パターン分類アルゴリズムを学習させる学習部と、
素材のSADPイメージに前記回転パターン分類アルゴリズムを適用して獲得されたラベルとマッチングされた結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の分類体系システム。
【請求項7】
前記確率基盤空間群推論部は、前記SADPイメージから推論された確率をensemble(総合)して最終確率を導出するか、又は推論された確率を累積した後、最大値を示す空間群のみを導出することを特徴とする請求項6に記載の分類体系システム。
【請求項8】
TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して複数のラベルを有するSADP分類体系を生成する回折パターン分析部と、
素材のSADPイメージに機械学習によって学習されたアルゴリズムを適用して獲得されたラベルと連結された結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とを含み、
前記結晶学観点の分類体系は、空間群と晶帯軸情報を有することを特徴とする分類体系システム。
【請求項9】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項8に記載の分類体系システム。
【請求項10】
前記確率基盤空間群推論部は、前記SADPイメージから推論された確率をensemble(総合)して最終確率を導出するか、又は推論された確率を累積した後、最大値を示す空間群のみを導出することを特徴とする請求項8に記載の分類体系システム。
【請求項11】
TEMで撮影されたSADPイメージを機械学習を介して分類することができるように分類アルゴリズムを学習させる学習部と、
素材のSADPイメージに前記分類アルゴリズムを適用して獲得されたラベルと連結された結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とを含み、
前記ラベルは、前記SADPイメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記結晶学観点の分類体系の空間群と連結されることを特徴とする分類体系システム。
【請求項12】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項11に記載の分類体系システム。
【請求項13】
プログラムコードを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記プログラムコードは、
TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して複数のラベルを有するSADP分類体系を生成するステップと、
前記新しい分類体系を結晶学観点の分類体系と連結させるステップとを含む方法を遂行するために使用され、
前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一に連結されることを特徴とする記録媒体。
【請求項14】
2Dパターンに対する複数のラベルを有するSADP(Selected Area Diffraction Pattern)分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部と、
素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸(zone axis)を推薦する晶帯軸推薦部とを含み、
前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一でマッチングされることを特徴とする分類体系システム。
【請求項15】
前記晶帯軸推薦部は、一つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項14に記載の分類体系システム。
【請求項16】
前記晶帯軸推薦部は、前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度を計算し、計算結果の無秩序度が相対的に高い晶帯軸は推薦せず、相対的に低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項14に記載の分類体系システム。
【請求項17】
前記計算結果の無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項16に記載の分類体系システム。
【請求項18】
前記晶帯軸推薦部は、前記計算結果の無秩序度として下記数式1のエントロピーを求め、前記エントロピーが最も小さい晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項17に記載の分類体系システム。
【数1】
(数式1)
ここで、p(x)は特定の晶帯軸においてj番目のラベルの確率を意味し、kはラベルの総数を示し、p(x)は該当のラベルにおいてi番目の空間群に属する確率を意味し、nは該当のラベルにおいて空間群の総数を示す。
【請求項19】
前記晶帯軸推薦部は、最も小さいエントロピーを有する複数の晶帯軸が存在する場合、前記晶帯軸のうち一つを任意に推薦することを特徴とする請求項18に記載の分類体系システム。
【請求項20】
結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有するラベルで構成されたテーブルと、
素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸を推薦する晶帯軸推薦部とを含み、
前記推薦される晶帯軸は、前記ラベル内に含まれた晶帯軸のうち一つであることを特徴とする分類体系システム。
【請求項21】
前記晶帯軸推薦部は、一つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項20に記載の分類体系システム。
【請求項22】
前記晶帯軸推薦部は、前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度を計算し、計算結果の無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項20に記載の分類体系システム。
【請求項23】
結晶構造の空間群及びこれとマッチングされる晶帯軸に関する情報を有するラベルから素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸を推薦する晶帯軸推薦部を含み、
前記晶帯軸推薦部は、
前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度を計算する計算部と、
前記計算結果の無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦する推薦部とを有することを特徴とする分類体系システム。
【請求項24】
前記晶帯軸推薦部は、前記計算結果の無秩序度として下記数式1のエントロピーを求め、前記エントロピーが最も小さい晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項23に記載の分類体系システム。
【数1】
(数式1)
ここで、p(x)は特定の晶帯軸においてj番目のラベルの確率を意味し、kはラベルの総数を示し、p(x)は該当のラベルにおいてi番目の空間群に属する確率を意味し、nは該当のラベルにおいて空間群の総数を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法に関するものである。
また、本発明は、対象素材の空間群候補を推論し、次の撮影のための晶帯軸を推薦する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SADP(Selected Area Diffraction Pattern)は、分析しようとする素材に電子ビームを照射して、電子の回折をイメージ形態に作ったものである。SADPは、3次元結晶構造を2次元のイメージ形態で見るものであるため、一つのSADPでは該当素材の空間群を明確に特定することができない。これらの問題を解決するために、Ziletti et al.は、6枚のSADPで一つのdiffraction fingerprint(回折指紋)を作り、diffraction fingerprintを学習/分析して、素材の空間群を特定する方法を提案した。
【0003】
Diffraction fingerprintは、TEMでSADPを撮影するとき、素材を6方向に回転してSADPを獲得した。回転する方式は、[001]晶帯軸を基準に回転させた。このとき、x軸に±45度回転して獲得したSADPはRGBのred channelに累積し、y軸に±45度回転して獲得したSADPはgreen channelに累積し、z軸に±45度回転して獲得したSADPはblue channelに累積してdiffraction fingerprintを生成する。
Diffraction fingerprintを生成するためには、最初に電子ビームの進行方向と素材の[001]晶帯軸を整列しなければならないが、素材の結晶構造を知らない状態で電子ビームの進行方向と素材の[001]晶帯軸を整列することはほとんど不可能に近い。
もし、電子ビームの進行方向と素材の[001]晶帯軸を整列したと仮定しても、等方晶系(cubic system)、六方晶系(hexagonal system)ではない結晶構造に対しては、それぞれx、y、z軸に±45度回転して撮影したSADPが意味のある情報を含むことが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、空間群推論が容易な分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法を提供するものである。
また、本発明は、対象素材の空間群候補を推論し、次の撮影のための晶帯軸を推薦する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るSADP分類体系は、複数のラベルを含み、前記ラベルは、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で撮影されたSADP(Selected Area Diffraction)イメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記ラベルは結晶学観点の分類体系の空間群と連結される。
【0006】
本発明の分類体系システムは、TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して結晶構造の複数のラベルを有するSADP分類体系を生成する回折パターン分析部と、前記SADP分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部とを含む。ここで、前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は又は一対一でマッチングされる。
【0007】
本発明の分類体系システムは、TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して複数のラベルを有するSADP分類体系を生成する回折パターン分析部と、素材のSADPイメージに機械学習によって学習されたアルゴリズムを適用して獲得されたラベルと連結された結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とを含む。ここで、前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有する。
【0008】
本発明の分類体系システムは、TEMで撮影されたSADPイメージを機械学習を介して分類することができるように分類アルゴリズムを学習させる学習部と、素材のSADPイメージに前記分類アルゴリズムを適用して獲得されたラベルと連結された結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とを含む。ここで、前記ラベルは、前記SADPイメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記結晶学観点の分類体系の空間群と連結される。
【0009】
本発明のプログラムコードを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、前記プログラムコードは、TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して複数のラベルを有するSADP分類体系を生成するステップと、前記新しい分類体系を結晶学観点の分類体系と連結させるステップとを含む方法を遂行するために使用され、前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一に連結される。
【0010】
本発明の分類体系システムは、2Dパターンに対する複数のラベルを有するSADP(Selected Area Diffraction Pattern)分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部と、素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸(zone axis)を推薦する晶帯軸推薦部とを含む。ここで、前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは前記空間群と一対多又は一対一でマッチングされる。
【0011】
本発明の分類体系システムは、結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有するラベルで構成されたテーブルと、素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸を推薦する晶帯軸推薦部とを含む。ここで、前記推薦される晶帯軸は、前記ラベル内に含まれる晶帯軸のうち一つである。
【0012】
本発明の分類体系システムは、結晶構造の空間群及びこれとマッチングされる晶帯軸に関する情報を有するラベルから素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸を推薦する晶帯軸推薦部を含む。ここで、前記晶帯軸推薦部は、前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度を計算する計算部と、前記計算結果無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦する推薦部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法は、類似するSADPイメージを特定の基準で群集化して新しい分類体系を生成し、このような分類体系を利用すれば空間群を容易に推論することができる。
さらに、前記分類体系システムは、結晶構造の専門家の助けを借りずにTEMで撮影された一つ以上のSADPイメージを活用して素材の空間群を推論することができる。
さらに、前記分類体系システムは、次の撮影時に空間群を明確に特定できる晶帯軸を推薦し、その結果、素材に加えられるストレスを最小限に抑えて分析を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の分類体系システムを図示した図面である。
図2】本発明のる分類体系構造及び分類体系連結を図示した図面である。
図3】本発明のSADPイメージ分類基準を図示した図面である。
図4】本発明の空間群を推論する過程を図示した図面である。
図5】同一決定分類に属するSADPイメージの一例を図示した図面である。
図6】本発明の分類体系システムを図示した図面である。
図7】結晶学観点のSADP分類体系とコンピュータが区分しやすい新しいSADP分類体系が連結された表を図示した図面である。
図8】本発明の晶帯軸推薦部の構造を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される単数の表現は、文脈上明らかに異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「構成される」又は「含む」などの用語は、明細書上に記載された複数の構成要素、又は複数のステップを必ずしもすべて含むものと解釈されてはならず、その中の一部構成要素又は一部ステップは含まれないこともでき、又は追加的な構成要素又はステップをさらに含むことができるものと解釈されるべきである。また、明細書に記載された「...部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェア又はソフトウェアで具現されるか、又はハードウェアとソフトウェアの結合で具現されることができる。
【0016】
本発明は、分類体系システム及びこれにおける分類体系構築方法に関するものであって、結晶学観点の分類体系をコンピュータが区分しやすい新しい分類体系に再構築することができる。
ここで、新しい分類体系は、SADP(Selected Area Diffraction Pattern)イメージを特定の基準に基づいて分類して生成される複数のラベルを含むことができる。すなわち、共通の特徴を有する又は類似する構造のSADPイメージが同じラベルに属することができる。
【0017】
また、前記分類体系システムは、結晶学観点の分類体系とコンピュータが区分しやすい分類体系を連結し(マッチングさせ)、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で撮影した一つ以上のSADPイメージを人工知能、特に機械学習(例えば、deep learning)技術で分析して、素材の空間群を推論することができる。
【0018】
以下では、添付の図面を参照して本発明の様々な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る分類体系を図示した図面であり、図2は、本発明の一実施形態に係る分類体系構造及び分類体系連結を図示した図面であり、図3は、本発明の一実施形態に係るSADPイメージ分類基準を図示した図面である。図4は、本発明の一実施形態に係る空間群を推論する過程を図示した図面であり、図5は、同一決定分類に属するSADPイメージの一例を図示した図面である。
【0019】
図1に示すとおり、本実施形態の分類体系システムは、結晶学観点の分類体系と他のコンピュータが区分しやすい形態の新しい分類体系を構築し、回折パターン分析部100、分類体系連結部102、回転パターン分類アルゴリズム学習部104、確率基盤空間群推論部106及びこれらの動作を全体的に制御する制御部(図示せず)を含むことができる。
回折パターン分析部100は、一つの回折点とこれに最も近い二つの回折点から構成された三角形の内角情報と構造因子(structure factor)計算を介して分かることができるforbidden reflection(禁制反射)情報を利用し、コンピュータが区分しやすい形態のSADPイメージを群集化して新しい分類体系(SADP分類体系)を生成することができる。分類体系を生成させる点から、回転パターン分析部100は分類体系生成部と命名されることができる。
【0020】
例えば、回折パターン分析部100は、図3の左側に図示された一つの回折点(O)とこれに最も近い二つの回折点(A、B)から構成された三角形の内角情報(∠AOB、∠OAB)と図3の右側に図示されたforbidden reflection情報を活用し、外形的に類似するSADPイメージを群集化して新しい形態の分類体系を作ることができる。ここで、前記新しい分類体系は、2次元格子が持てる基本形態を基準に正方形(square primitive、A)、長方形(rectangle primitive、B)、正六角形(hexagonal primitive、C)、平行四辺形(oblique primitive、D)に分けることができる。
【0021】
他の実施形態によれば、回折パターン分析部100は、一つの回折点とこれに最も近い二つの回折点ではなく、一つの回折点又は三つ以上の回折点との間の内角情報でSADPイメージを群集化して新しい分類体系を生成することもできる。
さらに他の実施形態によれば、回折パターン分析部100は、内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報のうち一つのみを利用してSADPイメージを群集化して新しい分類体系を生成することもできる。
さらに他の実施形態によれば、回折パターン分析部100は、中央の回折点とその周辺の回折点との間の角度の平均角度を利用してSADPイメージを群集化して新しい分類体系を生成することもできる。
【0022】
図2の分類体系構造を察すると、結晶学観点の分類体系は空間群(space groups)を含んでいる。ただし、互いに類似する構造を有する空間群が存在することができる。
新しい分類体系の構築過程を察すると、前記分類体系システムは、まずTEMを利用して空間群に対するSADPイメージを獲得できる。図2において「001」などの表示は、素材に走査する電子ビームの方向を意味することができる。例えば、「001」は、電子ビームをZ軸と平行に発射するときの電子ビームの方向を示すことができる。この場合、特定の基準に分類するとき、類似又は同一の構造を有する複数のSADPイメージが存在することができる。
【0023】
回折パターン分析部100は、回折点からなる三角形の内角情報(∠AOB、∠OAB)とforbidden reflection(禁制反射)情報を利用してSADPイメージを群集化し、新しい分類体系を生成することができる。このとき、SADPイメージを新しい分類体系に分類することは、図4に図示されたように回転パターン分類アルゴリズム(モデル)によって遂行されることができる。
例えば、回折パターン分析部100は、五つの空間群213、221、225、227、229の16個の晶帯軸([001]、[101]、[102]、[103]、[104]、[111]、[112]、[113]、[114]、[203]、[212]、[213]、[214]、[223]、[313]、[323])を基準に獲得したSADPイメージを群集化して60個のラベルを定義することができる。このとき、結晶学観点の分類体系を基準にSADPイメージは112個のラベルに分類することができる。このような群集化により、ラベルの数は結晶学観点の分類体系基準ラベルの数よりも小さくなる。
【0024】
図5は、他の空間群に属するが同じラベルに属するSADPイメージを示す。すなわち、複数の空間群に対応するSADPイメージが一つのラベルに属することができる。
一方、回折点を利用して新しい分類体系を生成する限り、SADPイメージを群集化するための基準は多様に変形されることができる。
【0025】
分類体系連結部102は、図2に図示されたように空間群と晶帯軸(zone axis)で表すことができる結晶学観点の分類体系とコンピュータが区分しやすい形態のSADP分類体系を連結させることができる。すなわち、分類体系連結部102は、3D構造の空間群と2D構造のラベルを連結させることができる。
前記ラベルと前記空間群の連結は、基本的に一対多で連結されるが、SADPイメージの形態に応じて一対一で連結されることもできる。すなわち、特定の空間群と晶帯軸に属するSADPイメージが一つのラベルに属することができる。この場合、一つのSADPイメージ入力だけで正確な空間群と晶帯軸情報を探すことができる。
【0026】
回転パターン分類アルゴリズム学習部104は、SADPイメージを機械学習を介して分類できるようにモデル(回転パターン分類アルゴリズム)を学習させることができる。
一実施形態によれば、回転パターン分類アルゴリズム学習部104は、off-the-shelfディープラーニングモデルであるAlexNet、Inception v3、ResNet、DenseNetなどを使用して回折パターン分類アルゴリズムを構成し、学習させることができる。
【0027】
確率基盤空間群推論部106は、素材のSADPイメージに回折パターン分類アルゴリズムを適用して獲得したラベルと連結された結晶学観点の分類体系を分析して、確率的に前記素材の結晶構造の空間群を推論することができる。
例えば、図4に図示されたように一つの素材に属する二つのSADPイメージが与えられた場合、確率基盤空間群推論部106は、前記SADPイメージにそれぞれ回折パターン分類アルゴリズムを適用して獲得したラベルと連結された結晶学的分類体系を分析し、結晶構造の空間群を確率的に推論することができる。
【0028】
一実施形態によれば、確率基盤空間群推論部106は、複数のSADPイメージから推論された確率をensemble(総合)して最終確率を導出することができる。図4では、各推論された確率の平均を取って最終確率を示したが、各推論された確率を累積した後、最大値を示す空間群のみを導出することもできる。
【0029】
図4を参照して、回折パターン分類アルゴリズムに入力される二つのSADPイメージを察すると、そのうち上部に位置したイメージは回折パターン分類アルゴリズムを介してA1-0ラベルに分類され、該当のラベルは空間群221、225、227、229と一対多マッチングがされるため、それぞれの空間群である確率25%を有すると推論される。一方、下部に位置したイメージは回折パターン分類アルゴリズムを介してD8-0ラベルに分類され、該当のラベルは空間群225と一対一マッチングがされるため、225空間群である確率100%を有すると推論される。最終的にこれら二つの確率の平均を取ると、225空間群である確率が62.5%、221、227、229空間群である確率12.5%と推論される。
【0030】
従来は、このような結晶学観点の分類体系を利用して素材の空間群を推論した。具体的には、TEMで六つのSADPイメージを獲得し、前記獲得されたSADPイメージを分析して前記素材がどの結晶分類に属するかを検出した。しかし、このような方法は、素材を6方向に回転させながら電子ビームを走査しなければならないなどの難しい過程が存在したため、専門家だけが分析が可能であった。また、素材を6方向に正確に回転させながら電子ビームを走査することも難しいため、正確な空間群を推論することもできなかった。
【0031】
一方、本実施形態の分類体系システムは、SADPイメージを群集化して複数のラベルを生成し、前記ラベルと連結された空間群を分析して素材の空間群を確率的に推論することができる。その結果、結晶構造の専門家の助けを借りずにTEMで撮影した一つ以上のSADPイメージを利用して前記素材の空間群を推論することができる。
【0032】
整理すると、本実施形態の分類体系システムは、結晶学観点の3D分類体系とSADPイメージを群集化することによって形成された新しい2D分類体系を連結させ、TEMを介して獲得された素材のSADPイメージが属するラベルと連結された空間群を分析して、前記素材の空間群を推論することができる。
【0033】
このような分類体系を導入すると、次のような利点がある。
1.汎用的な機械学習技術を活用しても高精度で素材の空間群推論が可能である。
2.一つのSADPイメージに対しても確率的に素材の空間群推論を遂行することができ、複数のSADPイメージが与えられる場合、それぞれの推論確率をensemble(総合)してより正確な素材の空間群推論を遂行することができる。
3.TEM機械と本発明を融合したとき、現在撮影したSADPイメージを分析し、次のSADP撮影をするときにどの角度で撮影したら空間群推論確率を高めることができるかを提案することができる。
実際に素材の結晶構造をTEMを利用して把握しようとすると、SADPイメージが2Dイメージであるため、3D構造を決定するためには少なくとも3枚以上のSADPイメージを分析する過程が推薦される。これらのSADPイメージは、電子ビームの走査方向を変更しながら獲得される。このとき、正確な電子ビームの走査方向が決定されないと、多くの回数の電子ビーム走査が行われることになるが、電子ビームを物体に多くの回数で走査すると、素材が電子ビームのエネルギーに耐えられず壊れる可能性がある。したがって、多くの回数の電子ビーム走査は抑えられるべきであり、正確な電子ビームの走査方向が決定される必要がある。本発明の分類体系を使用すると、正確な電子ビームの走査方向推薦、すなわち晶帯軸推薦が可能である。
【0034】
以下では、走査方向、すなわち晶帯軸推薦方法を詳察する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る分類体系システムを図示した図面であり、図7は、結晶学観点のSADP分類体系とコンピュータが区分しやすい新しいSADP分類体系が連結された表を図示した図面であり、図8は、本発明の一実施形態に係る晶帯軸推薦部の構造を図示した図面である。
図6に示すとおり、本実施形態の分類体系システムは、回折パターン分析部100、分類体系連結部102、回折パターン分類アルゴリズム学習部104、確率基盤空間群推論部106及び晶帯軸推薦部600を含むことができる。晶帯軸推薦部600を除いた残りの構成要素の動作は、前記実施形態と同一又は類似であるため、以下では説明を省略する。
【0035】
まず、図7を参照して晶帯軸を推薦する方法の概念を説明し、その後、晶帯軸推薦部600の機能について説明する。図7の表(テーブル)は、結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有するラベルで構成される。
図7の表に示すとおり、結晶学観点の3D SADP分類体系と新しい2D SADP分類体系が連結されているとき入力されたSADP映像を分析してA1-0ラベルを獲得したと仮定する。この場合、A1-0ラベルは、空間群225の晶帯軸[001]、空間群227の晶帯軸[001]、空間群229の晶帯軸[001]と一対多マッチングを有する。 したがって、前記入力されたSADP映像は、225、227、229の三つの空間群にすべて属する確率を有し、その結果、前記入力されたSADP映像に該当する素材の空間群を特定することができない。ただし、晶帯軸([001])に関する情報は正確に分かることができる。
【0036】
このような状況において、次のTEM SADP撮影時に明確に空間群を特定できる晶帯軸を推薦する必要がある。したがって、本発明は、前記素材を回転させてどの晶帯軸と整列すれば空間群を明確に特定できるのかを分かることができる方法を提案する。
次のTEM SADP撮影時に前記素材を晶帯軸[111]と整列させると、次の撮影されたSADP映像を分析したときにC1-0ラベルを獲得する。前記C1-0ラベルは、空間群225、空間群227及び空間群229に属することができ、したがって前記素材の空間群を明確に特定することができない。したがって、前記分類体系システムは、晶帯軸[111]を推薦しないことができる。
【0037】
次のTEM SADP撮影時に前記素材を晶帯軸[102]と整列させると、次の撮影されたSADP映像を分析したときにB2-0ラベル又はD11-0ラベルを獲得できる。B2-0ラベルを獲得すると、前記素材が空間群225に属するということを確実に分かることができるが、D11-0ラベルを獲得した場合には、空間群227と空間群229のうちどの空間群に属するかを明確に特定することができない。この場合、晶帯軸[111]と整列することよりは望ましいが、依然として明確に空間群を特定することができない。したがって、前記分類体系システムは晶帯軸[102]を推薦しないことができる。
【0038】
次のTEM SADP撮影時に前記素材を晶帯軸[101]と整列させると、次の撮影されたSADP映像を分析したときにB1-0ラベル、D7-0ラベル又はD7-1ラベルを獲得できる。B1-0ラベルを獲得すると、前記素材が空間群229に属するということを明確に分かることができ、D7-0ラベルを獲得すると、前記素材が空間群225に属するということを明確に分かることができ、D7-1ラベルを獲得すると、空間群227に属するということを明確にわかることができる。したがって、どのような場合でも空間群を明確に特定することができ、その結果、前記分類体系システムは晶帯軸[101]を推薦することができる。
【0039】
一方、SADP映像分析結果がB5-0ラベルであれば、晶帯軸[104]と晶帯軸[223]が存在するため、正確な晶帯軸情報を分かることができない。この場合には、晶帯軸[104]である場合を仮定して前記過程を経て獲得した次の撮影時に整列する晶帯軸と、晶帯軸[223]である場合を仮定して前記過程を経て獲得した次の撮影時に整列する晶帯軸のうち、空間群をより効果的に区分できる晶帯軸を選択することができる。
このような一連の過程は、TEMハードウェアと連結されているときに前記素材に電子ビームを走査する回数及び時間を大幅に減らすことができるので、前記素材を効果的に分析することができる。
【0040】
整理すると、本発明の分類体系システムの晶帯軸推薦部600は、次のTEM SADP撮影時に使用可能な晶帯軸を順次選択しながら該当の晶帯軸が選択されたときに空間群が明確に特定されるか否かを判断し、空間群が明確に特定される晶帯軸を推薦することができる。
一実施形態によれば、晶帯軸推薦部600は、一つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸を次の晶帯軸として推薦することができる。すなわち、晶帯軸推薦部600は、空間群に対する分別力が非常に高い晶帯軸を推薦することができる。好ましくは、晶帯軸推薦部600は、晶帯軸に対する分別力を求め、最も分別力の高い晶帯軸を次のTEM SADP撮影のために推薦することができる。
もちろん、一つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸が存在しない場合、晶帯軸推薦部600は、次善策として、二つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸を推薦することができる。ただし、晶帯軸推薦部600は、二つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸も存在しない場合には、三つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸は推薦しないことができる。この場合、空間群を特定する確率があまりにも低くなるためである。
【0041】
このような晶帯軸推薦のために、晶帯軸推薦部600は、次の撮影時に整列した晶帯軸の空間群に対する分別力がどれほど高いのかを下記数式1のエントロピー(entropy、H(X))計算を通じて把握することができる。
【0042】
【数1】
(数式1)
【0043】
ここで、p(x)は特定の晶帯軸においてj番目のラベルの確率を意味し、kはラベルの総数を示し、p(x)は該当のラベルにおいてi番目の空間群に属する確率を意味し、nは該当のラベルにおいて空間群の総数を示す。
【0044】
前記エントロピーは無秩序度を示すので、前記エントロピーが高いということは空間群に対する分別力が低いことを意味し、前記エントロピーが低いということは空間群に対する分別力が高いことを意味することができる。
したがって、晶帯軸推薦部600は、全ての晶帯軸又は既に設定された晶帯軸に対するエントロピーを求め、エントロピーが最も小さい晶帯軸を次のTEM SADP映像撮影のための晶帯軸として推薦することができる。
【0045】
前記入力されたSADPを分析してA1-0ラベルを獲得した場合には、空間群225、空間群227、空間群229に属する確率がそれぞれ1/3であるため、A1-0ラベルに対するエントロピー計算結果は下記の数式2の通りである。前記エントロピーの最大値は1であり、エントロピーが1と出たので、空間群225、空間群227、空間群229に対して何の分別力も有しないと判断することができる。
【0046】
【数2】
(数式2)
【0047】
前記A1-0ラベルを獲得した後に晶帯軸[102]に整列させると、B2-0ラベル又はD11-0ラベルを獲得できる。B2-0ラベルは空間群225である確率が100%のラベルであり、D11-0ラベルは空間群227である確率50%、空間群229である確率50%のラベルである。前記晶帯軸[102]に整列した場合、B2-0ラベルが出るのか、又はD11-0ラベルが出るのか分からないので、この確率を50%と仮定すると、晶帯軸[102]に対するエントロピー計算結果は下記の数式3の通りである。A1-0ラベルであった場合よりもエントロピーが低くなったので、晶帯軸[102]に整列することが相対的により高い分別力を有することができる。
【0048】
【数3】
(数式3)
【0049】
晶帯軸[101]に整列させると、B1-0ラベル、D7-0ラベル又はD7-1ラベルを獲得できる。B1-0ラベルは空間群229である確率が100%のラベルであり、D7-0ラベルは空間群225である確率が100%のラベルであり、D7-1は空間群227である確率が100%のラベルである。晶帯軸[101]に整列した場合、B1-0ラベルが出るのか、D7-0ラベルが出るのか、又はD7-01ラベルが出るのか分からないので、この確率を33.3%と仮定すると、晶帯軸[101]に対するエントロピー計算結果は、下記数式4の通りである。
【0050】
【数4】
(数式4)
【0051】
晶帯軸[102]と晶帯軸[101]に整列させたときのエントロピーを比較すると、晶帯軸[101]のときのエントロピーが低い。したがって、晶帯軸推薦部600は、前記素材の走査ビーム方向に晶帯軸[101]を推薦することができる。その結果、電子ビームが晶帯軸[101]に走査されることができる。
【0052】
整理すると、晶帯軸推薦部600は、すべての晶帯軸又は複数の晶帯軸に対するエントロピーを計算し、最も低いエントロピーを有する晶帯軸を次のTEM SADP映像撮影のための晶帯軸として推薦することができる。したがって、結晶構造専門家の助けを借りずにTEMで撮影したSADPを活用して該当素材の空間群を推論することができると同時に、次の撮影時に最も効果的に空間群を分類できる晶帯軸方向を知らせることによって素材に加えられるストレスを最小限に抑えながら分析を進めることができる。
一方、最も低いエントロピーを有する複数の晶帯軸が存在する場合、晶帯軸推薦部600は、前記晶帯軸のうち一つを任意に推薦することができる。
【0053】
上記では、エントロピーを利用して無秩序度を計算したが、無秩序度を計算して晶帯軸を推薦する限り、無秩序度を計算する方法は多様に変形されることができる。
このような晶帯軸推薦部600の構造を図8を参照して詳察すると、晶帯軸推薦部600は、テーブル部800、計算部802及び推薦部804を含むことができる。
テーブル部800は、結晶構造の空間群とこれとマッチングされる晶帯軸に関する情報を含むラベルで構成されることができる。
計算部802は、前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度、例えば、前記のエントロピーを計算することができる。
推薦部804は、前記計算結果無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することができる。
【0054】
一方、前述した実施形態の構成要素は、プロセス的な観点から容易に把握されることができる。すなわち、各構成要素はそれぞれのプロセスで把握されることができる。また、前述した実施形態のプロセスは、装置の構成要素の観点から容易に把握されることができる。
また、前述した技術的内容は、様々なコンピュータ手段を介して遂行され得るプログラム命令の形態で具現されてコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されることができる。前記コンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独で、又は組み合わせて含むことができる。前記媒体に記録されるプログラム命令は、実施形態のために特別に設計されて構成されたものであるか、又はコンピュータソフトウェア当業者に公知されて使用可能なものであることができる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープのような磁気媒体(magnetic media)、CD-ROM、DVDのような光記録媒体(optical media)、フロプティカルディスク(floptical disk)のような磁気-光媒体(magneto-optical media)及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を格納して遂行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラム命令の例としては、コンパイラによって作成されるもののような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを使用してコンピュータによって実行されることができる高級言語コードを含む。ハードウェア装置は、実施形態の動作を遂行するために一つ以上のソフトウェアモジュールとして動作するように構成されることができ、その逆も同様である。
【0055】
上述した本発明の実施形態は例示の目的のために開示されたものであり、本発明についての通常の知識を有する当業者であれば、本発明の思想と範囲内で種々の修正、変更、付加が可能であり、このような修正、変更及び付加は下記の特許請求の範囲に属するものとみなすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラベルを含み、
前記ラベルは、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)で撮影されたSADP(Selected Area Diffraction Pattern)イメージを特定の基準に基づいて群集化することによって構築され、前記ラベルは結晶学観点の分類体系の空間群と連結されることを特徴とするSADP分類体系。
【請求項2】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項1に記載のSADP分類体系。
【請求項3】
前記SADPイメージは、前記空間群の晶帯軸を基準にして獲得されたイメージであり、前記ラベルの数は、前記空間群と晶帯軸の積より小さいことを特徴とする請求項2に記載のSADP分類体系。
【請求項4】
TEMで撮影されたSADPイメージを特定の基準に基づいて群集化して2Dパターンに対する複数のラベルを有するSADP分類体系を生成する回折パターン分析部と、
前記SADP分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部とを含み、
前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一でマッチングされることを特徴とする分類体系システム。
【請求項5】
前記特定の基準は、前記SADPイメージにおいて一つの回折点とこれに最も近く位置する二つの回折点から構成された三角形の内角情報とforbidden reflection(禁制反射)情報であり、
前記三角形の内角情報と前記forbidden reflection(禁制反射)情報が類似であると判断されるSADPイメージは、同じラベルに属することを特徴とする請求項4に記載の分類体系システム。
【請求項6】
前記SADPイメージを機械学習を介して分類することができるように回転パターン分類アルゴリズムを学習させる学習部と、
素材のSADPイメージに前記回転パターン分類アルゴリズムを適用して獲得されたラベルとマッチングされた結晶学観点の分類体系を分析して、前記素材の空間群を確率的に推論する確率基盤空間群推論部とをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の分類体系システム。
【請求項7】
前記確率基盤空間群推論部は、前記SADPイメージから推論された確率をensemble(総合)して最終確率を導出するか、又は推論された確率を累積した後、最大値を示す空間群のみを導出することを特徴とする請求項6に記載の分類体系システム。
【請求項8】
2Dパターンに対する複数のラベルを有するSADP(Selected Area Diffraction Pattern)分類体系を結晶学観点の分類体系とマッチングさせる分類体系連結部と、
素材の次の撮影のために電子ビームが走査される晶帯軸(zone axis)を推薦する晶帯軸推薦部とを含み、
前記結晶学観点の分類体系は、結晶構造の空間群と晶帯軸に関する情報を有し、前記SADP分類体系のラベルは、前記空間群と一対多又は一対一でマッチングされることを特徴とする分類体系システム。
【請求項9】
前記晶帯軸推薦部は、一つの空間群とマッチングされるラベルのみ存在する晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項に記載の分類体系システム。
【請求項10】
前記晶帯軸推薦部は、前記ラベルに属する晶帯軸に対する無秩序度を計算し、計算結果の無秩序度が相対的に高い晶帯軸は推薦せず、相対的に低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項に記載の分類体系システム。
【請求項11】
前記計算結果の無秩序度が最も低い晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項10に記載の分類体系システム。
【請求項12】
前記晶帯軸推薦部は、前記計算結果の無秩序度として下記数式1のエントロピーを求め、前記エントロピーが最も小さい晶帯軸を次の撮影のための晶帯軸として推薦することを特徴とする請求項11に記載の分類体系システム。
【数1】
(数式1)
ここで、p(x)は特定の晶帯軸においてj番目のラベルの確率を意味し、kはラベルの総数を示し、p(x)は該当のラベルにおいてi番目の空間群に属する確率を意味し、nは該当のラベルにおいて空間群の総数を示す。
【請求項13】
前記晶帯軸推薦部は、最も小さいエントロピーを有する複数の晶帯軸が存在する場合、前記晶帯軸のうち一つを任意に推薦することを特徴とする請求項12に記載の分類体系システム。
【国際調査報告】