(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶接される材料が異なる溶接ゾーンを迅速に入れ替えてワークピースをレーザ溶接する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/073 20060101AFI20241003BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20241003BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20241003BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20241003BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241003BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
B23K26/073
B23K26/082
B23K26/067
B23K26/064 K
B23K26/21 N
H01M50/55 101
H01M50/562
H01M50/566
H01M50/533
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522449
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022077365
(87)【国際公開番号】W WO2023061783
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021126754.4
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
【テーマコード(参考)】
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168BA87
4E168CB04
4E168DA39
4E168EA05
4E168EA07
4E168EA17
5H043AA19
5H043CA04
5H043DA11
5H043DA20
5H043EA36
5H043HA17D
5H043HA17E
5H043HA36D
5H043HA36E
5H043LA00D
5H043LA00E
5H043LA02D
5H043LA02E
(57)【要約】
ワークピース(17)をレーザ溶接する方法であって、レーザビーム(8)がスキャナ光学系(13)によってワークピース(17)に向けられ、レーザビーム(8)により任意の順序で、少なくとも第1のコンポーネント(21)が第1の溶接ゾーン(31)においてベース部品(20)に溶接され、第2のコンポーネント(22)が第2の溶接ゾーン(32)においてベース部品(20)に溶接され、第1のコンポーネント(21)と第2のコンポーネント(22)とは、少なくとも第1の溶接ゾーン及び第2の溶接ゾーン(31、32)の領域において異なる材料からなる方法において、レーザビーム(8)のレーザエネルギーが、少なくともレーザビームのコアビーム(9)に対応するコア部分(KA)と、コアビーム(9)を囲むリングビーム(10)に対応するリング部分との間で変更可能に分割され得ることと、コア部分(KA)とリング部分へのレーザエネルギーの分割が第1の溶接ゾーン(31)の溶接の場合と第2の溶接ゾーン(32)の溶接の場合とで異なるように選択されることとを特徴とする方法。本発明により、異なる材料からなるコンポーネントがベース部品に溶接され、ワークピースの製造を加速させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(17)をレーザ溶接する方法であって、
レーザビーム(8)がスキャナ光学系(13)によって前記ワークピース(17)に向けられ、
前記レーザビーム(8)により任意の順序で、少なくとも第1のコンポーネント(21)が第1の溶接ゾーン(31)においてベース部品(20)に溶接され、第2のコンポーネント(22)が第2の溶接ゾーン(32)において前記ベース部品(20)に溶接され、
前記第1のコンポーネント(21)と前記第2のコンポーネント(22)とは、少なくとも前記第1の溶接ゾーン及び前記第2の溶接ゾーン(31、32)の領域において異なる材料からなる、方法において、
前記レーザビーム(8)のレーザエネルギーが、少なくとも前記レーザビームのコアビーム(9)に対応するコア部分(KA)と、前記コアビーム(9)を囲むリングビーム(10)に対応するリング部分との間で変更可能に分割され得ることと、
前記コア部分(KA)と前記リング部分とへの前記レーザエネルギーの分割が前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接の場合と前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接の場合とで異なるように選択されることと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接の場合と前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接の場合とで、前記ワークピース(17)に対する前記スキャナ光学系(13)の位置が同じままであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接中及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に時間的に平均して、前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、前記コア部分KA1に、
0%≦KA1≦60%、好ましくは20%≦KA1≦50%が適用されることと、
前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、前記コア部分KA2に、
40%≦KA2≦100%、好ましくは50%≦KA2≦70%が適用されることと
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコンポーネント(21)が、少なくとも前記第1の溶接ゾーン(31)の領域においてAl又はAl合金からなり、前記第2のコンポーネント(22)が、少なくとも前記第2の溶接ゾーンの領域においてCu又はCu合金からなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークピース(17)が電池の一部材であり、特に前記電池の角柱セルの蓋(20a)であることと、
前記第1のコンポーネント(21)が前記電池のカソード(21a)を形成し、前記第2のコンポーネント(22)がアノード(22a)を形成し、特に、前記第1のコンポーネント(21)と前記第2のコンポーネント(22)がそれぞれ、前記角柱セルのフォーク状のソフトコネクタ(21b、22b)として形成されていることと
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶接ゾーン(31)を溶接する場合、及び/又は前記第2の溶接ゾーン(32)を溶接する場合、初期フェーズ(AP)中に前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が増加する、及び/又は最終フェーズ(EP)中に前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が減少することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザビーム(8)を生成するために、可変分割装置(26)を用いて出力レーザビーム(1)を前記コアビーム(9)と前記リングビーム(10)とに分割することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記可変分割装置(26)を用いて、前記レーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分により、前記出力レーザビーム(1)がコアファイバ(5)と、前記コアファイバ(5)を囲むリングファイバ(6)とに供給され、特に、前記可変分割装置(26)が移動可能な光学ウェッジ(4)を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記可変分割装置(26)を用いて、前記出力レーザビーム(1)が前記レーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分によりDOE又はROEの傍らを通過し、前記DOE又はROEを通り抜け、特に前記DOE又はROEが移動可能であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビーム(8)を生成するために、前記コアビーム(9)が第1のレーザモジュールにより生成され、前記リングビーム(10)が第2のレーザモジュールにより生成され、前記第1のレーザモジュールの出力及び前記第2のレーザモジュールの出力が可変に調整可能であり、特に、前記第1のレーザモジュールが、第1のプリレーザビームをコアファイバ(5)に供給し、前記第2のレーザモジュールが、第2のプリレーザビームを前記コアファイバ(5)を囲むリングファイバ(6)に供給することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’に、
1/10≦KSD’/ARSD’≦1/2、
好ましくは1/3≦KSD’/ARSD’≦1/5、
特に好ましくは、KSD’/ARSD’=1/4が適用される
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の溶接ゾーン(31)及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に、前記レーザビームに面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’が一定のままであることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スキャナ光学系(13)が3Dスキャナ光学系として形成されていることと、前記第1の溶接ゾーン(31)及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に、前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’を、前記3Dスキャナ光学系を用いて焦点位置を前記レーザビーム(8)の伝播方向(SA)に変化させることによって変更することとを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶接ゾーン(31)及び/又は前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接時に前記レーザビーム(8)が焦点面(FE)にある場合、
前記コアビーム(9)がコアビーム直径KSDを有し、前記コアビーム直径内に前記コアビーム(9)のレーザ出力の86%が存在し、
前記リングビーム(10)が外側のリングビーム直径ARSDを有し、前記外側のリングビーム直径内に前記リングビーム(10)のレーザ出力の86%が存在し、
前記リングビーム(10)が内側のリングビーム直径IRSDを有し、前記内側のリングビーム直径において、前記外側のリングビーム直径ARSDに存在するのと同じ、前記リングビーム(10)の円周にわたって平均した放射密度が存在し、その結果、前記内側のリングビーム直径IRSDと前記コアビーム直径KSDとの間に強度ギャップ幅ILB=(IRSD-KSD)/2の強度ギャップが生じることと、
ILB≦0.3*KSD及びILB<10μm*AVであり、ここでAVが前記スキャナ光学系(13)の結像比であり、
特に、前記レーザビーム(8)が、光ファイバケーブル(3)のファイバ端(7)に提供され、前記光ファイバケーブル(3)が、少なくとも、コアファイバ直径KFDを有するコアファイバ(5)と、前記コアファイバ(5)をリング状に囲み、外側のリングファイバ直径ARFDを有するリングファイバ(6)と、コアファイバ(5)とリングファイバ(6)との間に位置し、前記コアファイバ(5)を囲み、外被層厚さMSDを有する外被層(11)とにより形成され、ここでMSD、MSD≦0.3*KFD及びMSD<10μmであることと
を特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接が、
溶け込み深さETに100μm≦ET≦5mmが適用され、及び/又は
生成される溶接シームの深さTと幅Bとのアスペクト比T:BにT:B≧0.5:1が適用され、及び/又は
シングルモードでは前記レーザビーム(8)のビームパラメータ積に0.38mm*mrad≦SSP≦16mm*mradが適用され、好ましくはSSP≦0.6mm*mradであり、又はマルチモードでは、SSP≦100mm*mradが適用され、好ましくはSSP≦32mm*mradであり、並びに/或いは
シングルモードでは前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)における前記レーザビーム(8)の総直径GD’に10μm≦GD’≦300μmが適用され、好ましくは30μm≦GD’≦70μmであり、又はマルチモードでは50μm≦GD’≦1200μmが適用され、並びに/或いは
前記レーザビーム(8)が、800nm≦MWL≦1200nm、好ましくは1030nm≦MWL≦1070nmの中波長MWLの少なくとも1つのIRレーザ、或いは特に400nm≦MWL≦450mm又は500nm≦MWL≦530mmの中波長MWLの少なくとも1つのVISレーザにより生成され、並びに/或いは
前記スキャナ光学系(13)が、1:1≦AV≦5:1、好ましくは1.5:1≦AV≦2:1の結像比AVを有する
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
電池の角柱セルであって、蓋(20a)と2つのフォーク状のソフトコネクタ(21b、22b)とを備え、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を用いて、第1のコンポーネント及び第2のコンポーネント(21、22)としての前記ソフトコネクタ(21b、22b)がベース部品(20)としての前記蓋(20a)に溶接されている、角柱セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースをレーザ溶接する方法に関し、
レーザビームがスキャナ光学系によってワークピースに向けられ、
レーザビームにより任意の順序で、少なくとも第1のコンポーネントが第1の溶接ゾーンにおいてベース部品に溶接され、第2のコンポーネントが第2の溶接ゾーンにおいてベース部品に溶接され、
第1のコンポーネントと第2のコンポーネントとは、少なくとも第1の溶接ゾーン及び第2の溶接ゾーンの領域において異なる材料からなる。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接は、ワークピース部品をワークピースに接合するための性能のよい方法である。レーザ溶接は主に、高い溶接速度、狭い溶接シーム、又はワークピースの少ない熱歪みが求められる場合に使用される。
【0003】
レーザ溶接では、多くの場合、ベース部品に複数のコンポーネントを溶接しなければならない。例えば、電池のセルでは、カソードがアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金からなり、アノードが銅(Cu)又は銅合金からなることが多く、これら2つのコンポーネントをセルの共通のベース部品に溶接しなければならない。
【0004】
通常、レーザ溶接するために、溶接されるワークピース(若しくは互いに溶接されなければならないワークピース部品)がスキャナ光学系の前に配置される。スキャナ光学系は、通常、典型的には光ファイバケーブルが接続されるレーザ放射入口と、様々な光学素子(たいていは、コリメートレンズ又はコリメートレンズ系、並びに集束レンズ又は集束レンズ系)と、調整可能な偏向器(たいていはピエゾ素子により調整可能なミラー)とを含み、偏向器により、特にレーザビームを所望の溶接経路(溶接シーム)に沿って誘導するため、又は更にベース部品に異なるコンポーネントが溶接される異なる溶接ゾーンにレーザビームを次々に導くために、スキャナ光学系から出射されるレーザビームの向きをワークピースに対して変化させることができる。
【0005】
異なる材料のコンポーネントをレーザ溶接するため、特にスパッタや気孔を最小限に抑えるために、多くの場合、溶接レーザビームのスポットサイズが様々に異なることが有利である。この目的のために、スキャナ光学系若しくはレーザ加工ヘッドとワークピースとの距離をビーム伝播方向に変化させることができる。例えば、ワークピースに対するスキャナ光学系の第1の相対位置において、レーザビームに面するワークピース表面がレーザビームの焦点面にある場合、ワークピース表面におけるレーザビームのスポットサイズが最小となる。ワークピース表面を焦点面から第2の相対位置へ相対的に移動させることによって、ワークピース表面におけるレーザビームのスポットサイズを拡大することができる。
【0006】
ただし、スキャナ光学系をワークピースに対して相対的に移動させることは複雑で、比較的多くの時間を必要とする。したがって、ワークピースにおいて異なる材料のコンポーネントを共通のベース部品に次々に溶接する場合、上記の手順では、ワークピースの製造が比較的遅くなり、そのようなワークピースを大量に製造する場合、スキャナ光学系の調整に起因する遅延がワークピースごとに発生する。
【0007】
(特許文献1)から、少なくとも1つのコアファイバと1つのリングファイバを含むマルチクラッドファイバを用いてレーザビームのビームプロファイル特性を変化させることが知られている。出力レーザビームは、一部分(コア部分)がコアファイバに供給され、別の部分(リング部分)がリングファイバに供給され、これらの部分を、例えばマルチクラッドファイバのファイバ端の前にある出力レーザビームにおける光学ウェッジの位置によって変化させることができる。したがって、マルチクラッドファイバを用いて、調整可能な部分によりコアビームとリングビームを含む変形されたレーザビームを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010003750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、異なる材料からなるコンポーネントがベース部品に溶接される、ワークピースの製造を加速させることができるワークピースをレーザ溶接する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、レーザビームのレーザエネルギーが、少なくともレーザビームのコアビームに対応するコア部分と、コアビームを囲むリングビームに対応するリング部分との間で変更可能に分割され得ることと、
コア部分とリング部分とへのレーザエネルギーの分割が第1の溶接ゾーンの溶接の場合と第2の溶接ゾーンの溶接の場合とで異なるように選択されることと
を特徴とする冒頭で述べた種類の方法によって解決される。
【0011】
本発明の範囲内で、異なる材料の少なくとも2つのコンポーネントを共通のベース部品にレーザ溶接する場合に、コア部分とリング部分とへのレーザエネルギーの分割を異なるように選択することが提供される。レーザ出力のコア部分とリング部分との間の分割を変更することによって、それぞれレーザビームに面するワークの表面において溶接するレーザビームの有効スポットサイズを変更若しくは調整することが可能である。これにより、スポットサイズを様々な溶接ゾーンの条件若しくは様々なコンポーネント、特にこれらのコンポーネントの様々な材料に適合させることができる。同時に、加工中にレーザビーム(全体)の強度プロファイルの変更若しくは調整も行われる。どちらも、異なる溶接ゾーン若しくは異なるコンポーネントにおけるレーザ溶接の品質を最適化するために、特にスパッタや気孔を最小限に抑えるために使用できる。
【0012】
これらの変更若しくは調整には、複雑で時間のかかるスキャナ光学系の位置を変更する必要がない。したがって、本発明の範囲内で、ワークピースに対するスキャナ光学系の位置は、第1及び第2の溶接ゾーンの溶接中、特に溶接ゾーンが入れ替わる場合にも一定に保たれることが好ましい。代替的に、溶接ゾーンが入れ替わる場合に(有効)スポットサイズを変更するために、ワークピースとスキャナ光学系の(相対)移動と、コア部分とリング部分との間のレーザエネルギーの分割の切り替えとの組み合わせを適用することができ、この場合、(相対)移動経路の大幅な短縮が達成でき、それに応じて溶接ゾーンを入れ替えるための付随時間が短縮され、したがって全体として溶接方法を大幅に加速させることもできる。レーザ出力の分割の変更は、例えば光学ウェッジをわずかに移動させることによって迅速且つわずかな労力で可能であり、特に目立った付随時間を引き起こさない。
【0013】
レーザビーム又はビーム部分(例えば、コア部分とリング部分とを含むレーザビーム全体、又はコアビーム単独、又はリングビーム単独)の有効スポットサイズは、86%基準に従って決定することができる。レーザビームのスポットサイズは、86%基準に従って、レーザビームのレーザパワーの86%が入る円形面(レーザビームと同軸)の直径によって定義される。
【0014】
コア部分とリング部分とへのレーザエネルギーの分割を変化させて有効スポットサイズを変更することにより、多くの用途において重要なシーム幅(進行方向に対して横方向の溶接シームの幅)を、特に異なるコンポーネントの異なる材料に合わせて簡単且つ迅速に調整することが可能である。例えば、特に関与する材料の異なる溶融特性(粘度及び湿潤特性)を考慮するために、Al系のカソードには比較的幅広のシームを選択し、Cu系のアノードには比較的幅狭のシームを選択することができる。本発明による方法若しくはスポットサイズの適合は、特に、様々な溶接ゾーン若しくは様々なコンポーネントで同じ溶け込み深さ(Einschweisstiefe)を達成するために使用することができる。溶接欠陥、特にスパッタ及び気孔も最小限に抑えることができる。
【0015】
シーム幅/スポットサイズを拡大するためには、コア部分に比べてリング部分を増加させる。シーム幅/スポットサイズを縮小するためには、コア部分に比べてリング部分を減少させる。このようにして、有効スポットサイズを、実質的にリング部分(単独)のスポットサイズとコア部分(単独)のスポットサイズとの間の範囲で調整することができる。コア部分とリング部分とへのレーザエネルギーの分割を変更することによって、コア部分のスポットサイズ及びリング部分のスポットサイズはそれぞれ変更されないことに注意すべきである。それに対応して、本発明による方法の特に簡単な変形形態では、第1溶接ゾーンと第2溶接ゾーンとが入れ替わる場合に、コアビームのスポットサイズとリングビームのスポットサイズとは一定のままである。
【0016】
製造されるワークピースは、ベース部品と(少なくとも)2つのコンポーネントとを溶接して統合される。通常、ワークピースの溶接中、レーザビームのレーザ出力は全体として時間的に(異なる溶接ゾーンにわたって、及びこれらの溶接ゾーン内の両方で)一定のままである。第1及び第2の溶接ゾーンは、ビーム伝播方向に対して少なくとも横方向に互いに離間している。通常、ワークピースにおける2つの溶接ゾーンはスキャナ光学系から(ビーム伝播方向で)同じ距離にあり、スキャナ光学系の光軸に対する角度オフセットがあったとしても無視できるほど小さい(例えば5°より小さい)か、両方の溶接ゾーンでそれぞれ少なくともほぼ同じである(例えば5°未満の差)。
【0017】
リングビームは、たいていの場合、円周方向に変わらない強度を有する(たいていの場合、出力レーザビームをコアファイバとリングファイバとに分割すること、及びリングファイバ内でレーザ光を多重反射することによって生成される)が、円周方向に連続する複数の局所的最大値を有するリングビームを使用することも可能である(例えば、DOE、回折光学素子、又はROE、屈折光学素子を用いて生成される)。スキャナ光学系は、たいていの場合、ビーム伝播方向でスキャナ光学系の前に固定焦点位置を有する2Dスキャナ光学系として選択される。通常、レーザビームは、コアファイバとリングファイバとを有する光ファイバケーブルを介して提供され、コアファイバ直径KFDは、たいていの場合、10μm~50μm(シングルモードの場合)又は50μm~400μmの範囲、特に50μm~200μm(マルチモードの場合)に選択され、(外側)リングファイバ直径ARFDは、たいていの場合、20μm~500μm、特に40~200μm(シングルモードの場合)の範囲、又は40μm~2000μm、特に80μm~800μm(マルチモードの場合)で選択される。KFD:ARFDの比率は、たいていの場合、1:2~1:10、好ましくは1:4である。光ファイバケーブルの一方(前)のファイバ端はスキャナ光学系(加工ヘッド)に接続されている。光ファイバケーブルのもう一方(後)のファイバ端は、レーザ源(レーザモジュール)に接続されており、いくつかの変形形態では、複数のレーザ源(レーザモジュール)にも接続されている。本発明のレーザ源は、CW動作又はパルス動作するように形成することができる。本発明の範囲内で、シングルモード動作又はマルチモード動作を選択することができる。
【0018】
本発明の範囲内で、ファイバレーザがレーザ源として使用されることが好ましく、代替的に、例えばディスクレーザをレーザ源として使用することもできる。
【0019】
本発明の好ましい変形形態
第1の溶接ゾーンの溶接の場合と第2の溶接ゾーンの溶接の場合とでワークピースに対するスキャナ光学系の位置が同じままである、本発明による方法の変形形態が特に好ましい。すなわち、ワークピースにおける溶接ゾーンが入れ替わる場合でも、ワークピースとスキャナ光学系とは相対して移動されない。これにより、ワークピースに対するスキャナ光学系の相対的な移動が行われず、したがって付随時間も引き起こさないため、ワークピース、特に次々に加工される一連の多数のワークピースを加工する場合に非常に大きい加速を達成することができる。レーザエネルギーのコア部分とリング部分との間の分割を切り替えるだけで、スポットサイズの適合を迅速に行うことができる。更に、ワークピースとスキャナ光学系との間を相応に迅速に自動で移動できるということは基本的に必要でないため、必要に応じて溶接装置の特に単純な構造を使用することができる。
【0020】
第1の溶接ゾーンの溶接中及び第2の溶接ゾーンの溶接中に時間的に平均して、レーザエネルギーのコア部分が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%異なることを提供する、本発明による方法の変形形態が好ましい。これにより、レーザビームの有効スポットサイズ(若しくは有効総直径)の特に大幅な変更を達成することができる。溶接ゾーン間のレーザエネルギーの配分を切り替えることにより、レーザビームの「有効総直径」(例えばレーザに面するワークピース表面で測定され、86%基準に従って決定される)に応じてシーム幅も切り替えられる。通常、第1の溶接ゾーンから第2の溶接ゾーンまでのレーザビームの有効総直径は、大きい方の直径に対して同様に少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%変化する。
【0021】
更に、第1の溶接ゾーンの溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、コア部分KA1に、
0%≦KA1≦60%、好ましくは20%≦KA1≦50%が適用されることと、
第2の溶接ゾーンの溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、コア部分KA2に、
40%≦KA2≦100%、好ましくは50%≦KA2≦70%が適用されること
とを提供する変形形態が好ましい。この変形形態では、基本的に、更にKA1<KA2、好ましくはKA1≦KA2-20%、特に好ましくはKA1≦KA2-30%も適用される。このようなレーザエネルギーの分割は、実際に、特に第1溶接ゾーンでAl系の第1のコンポーネント、及び第2溶接ゾーンでCu系の第2のコンポーネントを溶接する場合に有効であることが実証されている。
【0022】
第1のコンポーネントが、少なくとも第1の溶接ゾーンの領域においてAl又はAl合金からなり、第2のコンポーネントが、少なくとも第2の溶接ゾーンにおいてCu又はCu合金からなる変形形態が特に好ましい。第1のコンポーネント(Al/Al合金、通常、Alが少なくとも50wt%)は、バッテリ又はバッテリセルのカソードとして設けることができ、第2のコンポーネント(Cu/Cu合金、通常、Cuが少なくとも50wt%)はアノードとして設けることができる。ベース部品は、例えばアルミニウム又はスチールで作ることができる。ベース部品には、溶接されるコンポーネントの領域に、特にAl、Al合金、Cu又はCu合金からなる端子(局所コーティング)を設けることができ、好ましくは、それぞれのコンポーネントに同じ材料からなる端子が選択される(Al/Al合金からなるコンポーネントをCu/Cu合金からなる端子に溶接され得ることは比較的まれである)。Al合金は1000系合金として選択できる。Cu合金は、CU-EPT又はCU-OFとして選択できる。この手順は、実際に、Al系及びCu系のコンポーネントを製造する場合に有効であることが実証されている。どちらの種類のコンポーネントでも、スキャナ光学系をワークピースに対して移動させることなく、エネルギー配分を切り替えることによって、スパッタと気孔の少ない溶接シームを生成することができた。
【0023】
ワークピースが電池の一部材、特に電池の角柱セルのための蓋であることと、
第1のコンポーネントが電池のカソードを形成し、第2のコンポーネントがアノードを形成し、特に、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントがそれぞれ、角柱セルのフォーク状のソフトコネクタとして形成されていることと
を提供する変形形態が特に好ましい。本発明による方法を用いて、電池に必要な溶接シームの高品質、若しくは製造される電池部材の高い信頼性を効率的に確保することができる。
【0024】
更に、第1の溶接ゾーンを溶接する場合、及び/又は第2の溶接ゾーンを溶接する場合、初期フェーズ中にレーザエネルギーのコア部分が増加する、及び/又は最終フェーズ中にレーザエネルギーのコア部分が減少する変形形態が好ましい。このような出力ランプ(Leistungsrampen)によって、(それぞれの溶接ゾーンの溶接の)それぞれのプロセスの開始時のスパッタ及び終了時の気孔を低減することができる。通常、主フェーズ(初期フェーズと最終フェーズの間)中にそれぞれの溶接ゾーンを溶接する場合、レーザエネルギーの分割は一定のままである。それぞれの溶接ゾーンの溶接の初期フェーズ及び最終フェーズにおける出力ランプは、通常、5~500ミリ秒、好ましくは10~50ミリ秒の期間にわたって適用される。初期フェーズでは、コア部分は、例えば(主フェーズの)目標値と比較して、(少なくとも)20%、更には(少なくとも)40%減少した値で開始することができる。最終フェーズでは、コア部分は、例えば(主フェーズの)目標値と比較して、(少なくとも)20%、更には(少なくとも)40%減少した値で終了することができる。通常、出力ランプは時間とともに直線的になるように設定されている。
【0025】
レーザビームを生成するために、可変分割装置(variable Aufteilungsvorrichtung)を用いて出力レーザビームをコアビームとリングビームとに分割する変形形態が好ましい。これは特に簡単に設定することができ、特に、出力レーザビームのためのレーザモジュール(レーザ源)のみが必要である。
【0026】
この変形形態の好ましい発展形態は、可変分割装置を用いて、レーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分により、出力レーザビームがコアファイバと、コアファイバを囲むリングファイバとに供給され、特に、可変分割装置は移動可能な光学ウェッジを含むことを提供する。コアビーム及びリングビームは、コアファイバ及びリングファイバを介して簡単に、半径方向及び方位角方向の両方でそれぞれのビーム断面にわたって、特に比較的均一な強度分布で生成することができる。移動可能な光学ウェッジは、特に簡単に設定することができる。
【0027】
別の発展形態では、可変の分割装置を用いて、出力レーザビームがレーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分によりDOE又はROEの傍らを通過し、DOE又はROEを通り抜け、特に、DOE又はROEは移動可能であることが提供されている。DOE(回折光学素子)又はROE(屈折光学素子)を用いて、これに入射したビーム部分が偏向され(場合によっては複数の局所的最大値に)、この偏向されたビーム部分がリングビームを提供する。DOE又はROEの傍らを通過する偏向されないビーム部分がコア部分である。この構造は簡単且つ省スペース的に実現でき、マルチクラッドファイバは必要ない。
【0028】
代替の有利な変形形態は、レーザビームを生成するために、コアビームが第1のレーザモジュールにより生成され、リングビームが第2のレーザモジュールにより生成され、第1のレーザモジュールの出力及び第2のレーザモジュールの出力が可変に調整可能であり、
特に、第1のレーザモジュールは、第1のプリレーザビームをコアファイバに供給し、第2のレーザモジュールは、第2のプリレーザビームをコアファイバを囲むリングファイバに供給することを提供する。この変形形態では、コアビームのレーザ出力とリングビームのレーザ出力を、特に簡単に互いに独立して調整することができる。コアビーム及びリングビームは、コアファイバ及びリングファイバを介して、方位角方向及び半径方向の両方で比較的均一な強度分布を提供することができる。
【0029】
好ましい変形形態では、レーザビームに面するワークピース表面において測定される、コアビームの直径KSD’及びリングビームの直径ARSD’に、
1/10≦KSD’/ARSD’≦1/2、
好ましくは1/3≦KSD’/ARSD’≦1/5、
特に好ましくは、KSD’/ARSD’=1/4が適用されることが提供されている。コアビーム直径KSD’及び(外側の)リングビーム直径ARSD’のこれらの範囲は、実際に有効であることが実証されており、(例えばAl系及びCu系の)の様々なコンポーネントの条件に適合させるためにたいてい十分である。
【0030】
レーザビームに面するワークピース表面において測定される、コアビームの直径KSD’及びリングビームの直径ARSD’が、第1の溶接ゾーン及び第2溶接ゾーンの溶接中に一定のままである変形形態が特に好ましい。これは、2Dスキャナ光学系(及びスキャナ光学系からビーム伝播方向で等距離にある溶接ゾーン)を用いて特に簡単に設定することができる。
【0031】
代替の変形形態では、スキャナ光学系が3Dスキャナ光学系として形成されていることと、第1の溶接ゾーン及び第2の溶接ゾーンの溶接中に、レーザビームに面するワークピース表面において測定される、コアビームの直径KSD’及びリングビームの直径ARSD’を、3Dスキャナ光学系を用いて焦点位置をレーザビームの伝播方向に変化させることによって変更することとが提供されている。これにより、加工レーザビーム全体の有効スポットサイズを調整できる範囲を拡大することができる(特に、ビーム伝播方向にスキャナ光学系から等距離にある溶接ゾーンの場合)。通常、焦点位置の変更は溶接ゾーンが入れ替わる場合にのみ行われる。
【0032】
更に、第1の溶接ゾーン及び/又は第2の溶接ゾーンの溶接時にレーザビームが焦点面にある場合、
- コアビームがコアビーム直径KSDを有し、コアビーム直径内にコアビームのレーザ出力の86%が存在し、
- リングビームが外側のリングビーム直径ARSDを有し、外側のリングビーム直径内にリングビームのレーザ出力の86%が存在し、
- リングビームが内側のリングビーム直径IRSDを有し、内側のリングビーム直径において、外側のリングビーム直径ARSDに存在するのと同じ、リングビームの円周にわたって平均した放射密度が存在し、その結果、内側のリングビーム直径IRSDとコアビーム直径KSDとの間に強度ギャップ幅ILB=(IRSD-KSD)/2の強度ギャップが生じることと、
ILB≦0.3*KSD及びILB<10μm*AVであり、ここでAVがスキャナ光学系の結像比であり、
特に、レーザビームは、光ファイバケーブルのファイバ端に提供され、光ファイバケーブルは、少なくとも、コアファイバ直径KFDを有するコアファイバと、コアファイバをリング状に囲み、外側のリングファイバ直径ARFDを有するリングファイバと、コアファイバとリングファイバとの間に位置し、コアファイバを囲み、外被層厚さMSDを有する外被層とにより形成され、ここでMSD、MSD≦0.3*KFD及びMSD<10μmであることと
を提供する変形形態が特に好ましい。この手順は、特に安定した蒸気毛細管をもたらし、それに対応してスパッタ、気孔、又は亀裂などの溶接欠陥が特に少なくなる。特に、MSD≦0.2*KFD及び/又は更にILB≦0.2*KSD、好ましくはMSD≦0.15*KFD及び/又は更にILB≦0.15*KSD、特に好ましくはMSD≦0.1*KFD及び/又は更にILB≦0.1*KSDを適用することもできる。更に、特にMSD≦9μm及び/又はILB≦9μm*AV、好ましくはMSD≦7μm及び/又はILB≦7μm*AV、特に好ましくはMSD≦6μm及び/又はILB≦6μm*AVを適用することができる。
【0033】
第1の溶接ゾーンの溶接及び第2の溶接ゾーンの溶接が、
- 溶け込み深さETに100μm≦ET≦5mmが適用され、及び/又は
- 生成される溶接シームの深さTと幅Bとのアスペクト比にT:B≧0.5:1が適用され、及び/又は
- シングルモードではレーザビームのビームパラメータ積SPPに0.38mm*mrad≦SSP≦16mm*mrad、好ましくはSSP≦0.6mm*mradが適用され、又はマルチモードでは、SSP≦100mm*mrad、好ましくはSSP≦32mm*mradが適用され、並びに/或いは
- シングルモードではレーザビームに面するワークピース表面におけるレーザビームの総直径GD’に10μm≦GD’≦300μmが適用され、好ましくは30μm≦GD’≦70μmであり、又はマルチモードでは50μm≦GD’≦1200μmが適用され、並びに/或いは
- レーザビームは、800nm≦MWL≦1200nm、好ましくは1030nm≦MWL≦1070nmの中波長MWLの少なくとも1つのIRレーザ、或いは特に400nm≦MWL≦450mm又は500nm≦MWL≦530mmの中波長MWLの少なくとも1つのVISレーザを用いて生成され、並びに/或いは
- スキャナ光学系は、1:1≦AV≦5:1、好ましくは1.5:1≦AV≦2:1の結像比AVを有する
ように行われる、方法の変形形態が好ましい。これらのパラメータは実際に有効であることが実証されている。(有効)総直径GD’(「スポットサイズ」)は、レーザビーム(全体)の86%基準により決定することができる。
【0034】
蓋と2つのフォーク状のソフトコネクタとを備え、請求項のいずれか一項に記載の方法を用いて、第1及び第2のコンポーネントとしてのソフトコネクタがベース部品としての蓋に溶接されている、電池の角柱セルも本発明の範囲内に含まれる。角柱セルの蓋は、本発明の範囲内で、簡単、迅速、且つ高品質で製造することができる。第1及び第2のコンポーネントは、通常、Al系のカソードとCu系のアノードによって形成される。
【0035】
本発明の更なる利点は、以下の説明及び図面から明らかになる。同様に、本発明によれば、上述の特徴及び更に詳細に説明される特徴は、個別に、又はいくつかを任意に組み合わせて使用することができる。図示及び説明された実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な性格を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】本発明のレーザビームのレーザエネルギーを分割するための例示的な可変分割装置の領域の光ファイバケーブルに沿った概略縦断面図を示す。
【
図1b】
図1aの光ファイバケーブルのファイバ端の上面図を示す。
【
図2】本発明の例示的なスキャナ光学系の概略縦断面図を示す。
【
図3a】本発明による方法の範囲内の例示的なワークピースの加工の概略側面図を示す。
【
図3b】
図3bのワークピースの概略上面図を示す。
【
図4a】本発明による方法の例示的な変形形態によるワークピースの第1の溶接ゾーンにおける第1のコンポーネントのレーザ溶接時の、焦点面におけるビーム伝播方向に対して横方向の場所の関数としてのレーザビームのレーザ強度の図を示す。
【
図4b】
図4aの変形形態によるワークピースの第2の溶接ゾーンにおける第2のコンポーネントのレーザ溶接時の、焦点面におけるビーム伝播方向に対して横方向の場所の関数としてのレーザビームのレーザ強度の概略図を示す。
【
図5】本発明による例示的な変形形態による第1及び第2の溶接ゾーンの溶接時のコア部分の時間的経過の概略図を示す。
【
図6】本発明による方法を用いて溶接された電池の角柱セルの蓋の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1a~
図3bは、本発明による方法を実行することができる、ワークピースをレーザ溶接するための例示的な構造の様々な部分を示す。
【0038】
図1aに見られるように、出力レーザビーム1は、集束レンズ34によってマルチクラッドファイバ3(ここではダブルクラッドファイバとして形成されている)の後のファイバ端2に供給される。光学ウェッジ4は、図示される状況では、外側から半径方向に出力レーザビーム1のほぼ中心まで出力レーザビーム1のビーム経路内に突き出す。
【0039】
光学ウェッジ4の傍らを通過する出力レーザビーム1の第1部分1a(
図1aでは、出力レーザビーム1の下部)は、後のファイバ端2の集束レンズ34からマルチクラッドファイバ3のコアファイバ5に供給される。光学ウェッジ4によって偏向される出力レーザビーム1の第2部分1b(
図1aでは、出力レーザビーム1の上部)は、後のファイバ端2の集束レンズ34からマルチクラッドファイバ3のリングファイバ6に供給される。
【0040】
次に、マルチクラッドファイバ3は、変形されたレーザビーム8を前のファイバ端7で提供する。レーザビーム8は、コアファイバ5から出射されるコアビーム9と、リングファイバ6から出射されるリングビーム10とを含む。コアビーム9とリングビーム10は基本的にファイバ端7から発散して出射される。レーザビーム8のレーザエネルギー全体(実質的に出力レーザビーム1のレーザエネルギーに相当する)は、光学ウェッジ4によって引き起こされる分割に従って、コアビーム9(第1部分1aに由来するコア部分)とリングビーム10(第2部分1bに由来するリング部分)とに分かれる。
【0041】
コア部分とリング部分とへのレーザエネルギーの分割を変更するために、光学ウェッジ4を移動方向VRに沿って出力レーザビーム1のビーム伝播方向SAに対して横方向に移動させることができる。例えば、光学ウェッジ4が
図1aの状況から上方に(出力レーザビーム1から更に外に)引っ張られると、コア部分が増加し、リング部分が減少する。これに対して光学ウェッジ4が下方に(更に出力レーザビーム1の中に)動かされると、コア部分が減少し、リング部分が増加する。したがって、マルチクラッドファイバ3の後のファイバ端2の前にある出力レーザビーム1における光学ウェッジ4は可変分割装置26を形成する。
【0042】
他の形式では、コアビーム及びリングビームの生成を他の方法で、そしてコアビームとリングビームへのレーザエネルギーの分割を他の方法で、例えば複数の独立したレーザモジュールによって、又は出力レーザビーム内に様々な距離で移動させることができるDOE又はROE(詳しく説明せず)によっても行うことができることに注意すべきである。
【0043】
図1bは、
図1aのマルチクラッドファイバ3の前のファイバ端7を上面図で示す。コアファイバ5は、断面が円形であり、図示の例では75μmであるコアファイバ直径KFDを有する。コアファイバ5をリング状に囲むリングファイバ6も断面が円形であり、外側のリングファイバ直径ARFDと内側のリングファイバ直径IRFDを有し、図示の例では、ARFD=300μm及びIRFD=90mmで形成されている。コアファイバ5とリングファイバ6との間に配置された外被層(クラッディング)11の外被層厚さMSDは、ここでは7.5μmである。更なる外被層12(クラッディング)がリングファイバ6の外側の周りに配置されている。つまりMSDとKFDの比率は、ここでは約MSD=0.15*KFDである。別の例では、例えば75μmのKFDと400μmのARFDも選択できる。
【0044】
コアファイバ5及びリングファイバ6の断面の幾何学的形状が前のファイバ端7又はレーザビーム8の焦点面における(スキャナ光学系による結像後)、コアビーム9とリングビーム10を含むレーザビーム8のビーム断面に実質的に対応し、後者の場合、結像の結像比AVに従って伸長又は圧縮されることに注意すべきである。したがって、特にコアビーム9及びリングビーム10も、ファイバの幾何学的形状に対応して断面が円形である(これについては
図1aも参照)。
【0045】
図2に示されるように、マルチクラッドファイバ3はスキャナ光学系13に接続されている。図示の形式では、前のファイバ端7から出射されるレーザビーム8(すでにコアビームとリングビームを含む)は、コリメートレンズ14によってコリメートされる。コリメートされた(平行化された)レーザビーム8aは、2つの軸の周り、
図2の座標系においてx軸及びy軸(図面平面に対して垂直に延び、x、y、zはデカルト座標系を形成する)の周りで傾動可能であるスキャナミラー15に衝突する。次に、反射されコリメートされたレーザビーム8bは、集束レンズ16によって、溶接されるワークピース17の方向に焦点面FEに集束される。図示の例では、レーザビーム8に面するワークピース17の表面18は焦点面FEに位置する。
【0046】
スキャナミラー15を旋回させることによって、特にワークピース17に所望の溶接シームをトレース(すなわち作成)するために、又はそれぞれ溶接シームが作成されるワークピースの異なる溶接ゾーン間で入れ替えるために、ワークピース17の表面18においてレーザビーム8若しくはそのレーザスポット19を動かすことができる。
【0047】
図示の例では、ワークピース17の表面18(少なくともワークピース17上でレーザ加工が行われる場所)は、レーザビーム8の平均ビーム伝播方向SAに対してほぼ垂直に位置し、平均ビーム伝播方向SAは、ここでは実質的に集束レンズ16の光軸に相当し、ここではz方向にある。
【0048】
レーザビーム8によるワークピース17の加工中、溶接ゾーンが入れ替わる間を含めて、ここで提示される変形形態におけるスキャナ光学系13とワークピース17の相対位置は、特に(ビーム伝播方向SAに沿って延びる)
図2のz方向のそれらの距離に関して固定されたままである。スキャナ光学系13は移動されない(ただし、スキャナミラー15はスキャナ光学系13内で旋回される)。代替の変形形態では、ワークピース17を加工する際に、ワークピース17とスキャナ光学系13との間の相対的な移動を提供することもでき、本発明によれば、レーザエネルギーの分割が切り替えられることにより(詳しく説明せず)、溶接ゾーンが入れ替わる場合に有効スポットサイズを調整するための相対的な移動経路を短縮することができる。
【0049】
それに加えて、図示の形式では、焦点面FEとスキャナ光学系13の距離(z方向)が固定されており、つまりスキャナ光学系13は2Dスキャナ光学系として形成されている)。代替の形式では、焦点面FEの位置を、例えばスキャナ光学系13内で集束レンズ16をz方向に移動させることによって、スキャナ光学系13に対して変更可能とすることもできる(詳しく説明せず)。
【0050】
図3aにおいて、本発明によるワークピース17の加工が詳細に説明される。ここで、ワークピース17はベース部品20を含み、その上に第1のコンポーネント21及び第2のコンポーネント22が溶接される。図示の例では、ベース部品20は、電池の角柱セルのための蓋20aであり、蓋20aは、ここではAl合金から作られている。第1のコンポーネント21は、ここではセルのカソード21aであり、第1のコンポーネント21は、フォーク状のソフトコネクタ21bとして形成され(これについては
図6も参照)、第1のコンポーネント21は、ここでもAl合金から作られている。第2のコンポーネント22は、ここではセルのアノード22aであり、第2のコンポーネント22もフォーク状のソフトコネクタ22bとして形成され(これについては
図6も参照)、第2のコンポーネント22はここではCu合金から作られている。
【0051】
ワークピース17の加工中、スキャナ光学系13から出射される加工レーザビーム8は、第1の溶接ゾーン31と第2の溶接ゾーン32に(任意の順序で)次々に向けられ、第1の溶接ゾーン31で第1のコンポーネント21がベース部品20に溶接され、第2の溶接ゾーン32で第2のコンポーネント22が溶接される。その場合、図示の変形形態では、2つのコンポーネント21、22が(平均ビーム伝播方向SAに関して)ベース部品20の前に位置し、これも一般的に好ましい。
【0052】
図3bに見られるように、図示の変形形態では、その場合、ワークピース17の表面18におけるレーザビーム8のレーザスポット19のそれぞれの経路23に対応して、リング状に閉じた溶接シームが作成され、この表面18は、ここではコンポーネント21、22に位置する。代替的に、例えば、線状に(ハッチング)溶接することもできる(詳しく説明せず)。
【0053】
2つのコンポーネント21、22は異なる材料からなるため、両方のコンポーネント21、22におけるレーザビームの溶接作用は基本的に異なる。これは、例えば、異なる形の溶接欠陥(スパッタ、気孔、亀裂など)をもたらす可能性がある。異なる材料は、特にそれぞれの溶け込み深さETに影響を与える可能性があり、溶け込み深さETは、ワークピース17の材料がレーザビーム8によって溶融される深さであり、これについては、
図3aに例として示される溶融フロント24、25を参照されたい。基本的に、各コンポーネント21、22若しくは関与する材料ごとに溶接作用を最適化すること、及び例えば溶接欠陥を最小限に抑えるか、或いは多くの用途において、すべてのコンポーネント21、22にほぼ同じ溶け込み深さETを達成することが望ましい。
【0054】
この目的のために、本発明の範囲内で、ワークピース17の溶接ゾーン31、32が入れ替わると、レーザビーム8のエネルギー配分がコア部分(コアビーム)とリング部分(リングビーム)との間で切り替えられ、これに対して、図示の変形形態では、スキャナ光学系13に対するワークピース17の位置は同じままである。
【0055】
本発明により行うことができる、2つの溶接ゾーン31、32若しくはコンポーネント21、22への可能な異なるレーザエネルギーの分割が
図4a及び
図4bをもとにして例として説明される。両方の図はそれぞれ、ビーム伝播方向に対して垂直で、レーザビームの中心軸を通るx軸に沿った場所の関数として局所的レーザ強度の図を示す(「強度プロファイル」)。レーザビームはこの中心軸に関して実質的に回転対称であることに注意すべきである。
【0056】
強度プロファイルはそれぞれ焦点面において示されている。焦点面は、レーザビームに面するワークピース表面と一致することが好ましいことに注意すべきであり、この場合、図示されている焦点面の強度プロファイルは、同時にワークピース表面の強度プロファイルに対応する(また、図示されている焦点面のアポストロフィー無しのサイズは、同時にワークピース表面のアポストロフィー付きのサイズに対応する、例えばKSD=KSD’など)。
【0057】
強度はそれぞれ任意単位a.u.で表わされている。強度プロファイルは、
図1a~
図3bにおいて説明したものと同様の構造により作成することができる。
【0058】
図4aは、第1のコンポーネントを溶接する場合に第1の溶接ゾーンにおいて適用される強度プロファイルを示す。このために、エネルギー分割として、第1のコア部分KA1を20%、第1のリング部分RA1を80%に選択した。したがって、コアビーム9とリングビーム10は強度プロファイルにおいて重ね合わされる。
【0059】
コアビーム9は、中央の局所的な強度最大値を引き起こし、最大強度は約1.5a.uである。86%基準(したがってコアビーム9のレーザ出力の86%が直径KSD内に位置する)に従って決定される、コアビームのコアビーム直径KSDは、ここでは約75μmである。リングビーム10は、コアビーム最大値の両側にそれぞれプラトー領域を有し、最大強度は約1.0a.uである。86%基準(したがってリングビーム10のレーザ出力の86%が直径ARSD内に位置する)に従って決定される、リングビーム10の外側のリングビーム直径ARSDは、ここでは約400μmである。ARSDの場所、つまりリングビームの外側では、リングビーム10の強度はプラトー領域の最大強度と比較してすでにいくらか低下している。リングビーム10の内側の対応する(同じ)強度を探すと、それによって、ここでは約160μmである内側のリングビーム直径IRSDが得られる。図示の例では、リングビーム10とコアビーム9との間の強度ギャップ幅ILBは、(IRSD-KSD)/2に対応する(160μm~75μm)/2から計算され、ここでは約43μmである。他の実施形態では、著しく小さい強度ギャップ幅ILB、したがって特にILB≦0.3*KSDを選択できることに注意すべきである。
【0060】
86%基準に従って(したがって全レーザビームのレーザパワーの86%がGD内に位置するように)決定される、レーザビーム全体の総ビーム直径GD、つまりコアビーム9とリングビーム10の重ね合わせは、ここでは約340μmである。この比較的大きいスポット直径は、ここでは、第1のコンポーネントとしてのカソードのAl合金を溶接するために使用される。
【0061】
次に、第2のコンポーネントとしてのアノードのCu合金が、同じレーザ出力全体により同じワークピースに溶接される。そのために、例えば
図1aに示されるように光学ウェッジを移動させることによって、レーザエネルギーの配分が切り替えられる。
図4bは、第2のコンポーネントを溶接する場合に第2の溶接ゾーンに適用される強度プロファイルを示す。このために、新たなエネルギー分割として第2のコア部分KA2が60%に、第2のリング部分RA2が40%に選択される。つまりコアビーム9とリングビーム10が強度プロファイルにおいて再び重ね合わされる。切り替えた場合、ここではレーザ出力の40%がリング部分からコア部分に移し替えられる。
【0062】
コアビーム9は、約4.5a.u.の最大強度を有する、著しく高い中央の局所的強度最大値を引き起こす。86%基準に従って決定される、コアビーム9のコアビーム直径KSDは、約75μmで変化しない。リングビーム10は、コアビーム最大値の両側に再びそれぞれ1つのプラトー領域を有するが、最大強度はここでは約0.5a.u.と著しく低い。86%基準に従って決定される、リングビーム10の外側リングビーム直径ARSDは、約400μmで変化しない。ARSDの場所では、リングビーム10の強度はプラトー領域の最大強度と比較してすでにいくらか低下している。リングビーム10の内側の対応する強度を探すと、それによって約160μmで変化しない内側のリングビーム直径IRSDが得られる。
【0063】
しかしながら、86%基準に従って決定される、レーザビーム全体、すなわちコアビーム9とリングビーム10の重ね合わせの総ビーム直径GDは、ここではわずか約220μmである。これは、特にコアビーム9の領域において、小さい半径での強度が大きくなり、より大きい半径でのレーザ強度が小さくなるためである。比較的小さいスポットサイズは、第2コンポーネントのCu合金の溶接に良く適している。
【0064】
切り替えた場合、レーザビームの総出力は変化していないことに注意すべきである。
【0065】
図5は、
図4a及び
図4bの例でも適用できるような、第1の溶接ゾーン31及び第2の溶接ゾーン32の溶接にわたるコア部分KAとリング部分RAへのレーザビームのエネルギー配分の典型的な時間的経過を示す。右に時間tがプロットされ、上にコア部分KAが%の単位でプロットされており、KA+RA=100%であることに注意すべきである。
【0066】
第1の溶接ゾーン31では、初期フェーズAPにおいて、コア部分KAは、時間tとともに0%から20%まで直線的に増加する。主フェーズHPでは、コア部分KAは20%で一定のままである。最終フェーズEPでは、コア部分KAは時間とともに20%から0%まで直線的に減少する。初期フェーズAP及び最終フェーズEPでの出力ランプにより、第1のコンポーネントにおける溶接欠陥、特にピアシング(Einstechen)時のスパッタ形成や第1のコンポーネントの切り出し(Ausstechen)時の気孔形成を減らすことができる。初期フェーズAP及び最終フェーズEPは、たいていの場合、主フェーズHPよりもはるかに短いことに注意すべきである(通常、AP≦0.1*HP及びEP≦0.1*EP)。したがって、第1の溶接ゾーン31の溶接は、主に主フェーズHPによって特徴付けられ、主フェーズHAのコア部分KAは第1のコア部分KA1と呼ばれ、ここではKA1=20%である。初期フェーズAPと最終フェーズEPがより大きい割合を有する場合、代替的に、KA1を、AP、HP、及びEP全体にわたるコア部分KAの時間平均として決定することもできる(詳しく説明せず)。
【0067】
第2の溶接ゾーン32では、初期フェーズAPにおいて、コア部分KAは、時間tとともに20%から60%まで直線的に増加する。主フェーズHPでは、コア部分KAは60%で一定のままである。最終フェーズEPでは、コア部分EPは時間とともに60%から20%まで直線的に減少する。初期フェーズAPと最終フェーズEPの出力ランプによっても溶接欠陥、特にピアシング時のスパッタ形成や第2コンポーネントの切り出し時の気孔形成を減らすことができる。初期フェーズAP及び最終フェーズEPは、たいていの場合、主フェーズHPよりもはるかに短いことに注意すべきである(通常、AP≦0.1*HP及びEP≦0.1*EP)。したがって、第2の溶接ゾーン32の溶接は、主に主フェーズHPによって特徴付けられ、主フェーズHAのコア部分KAは第2のコア部分KA2と呼ばれ、ここではKA2=60%である。初期フェーズAPと最終フェーズEPがより大きい割合を有する場合、代替的に、KA2をAP、HP、及びEP全体にわたるコア部分KAの時間平均として決定することもできる(詳しく説明せず)。
【0068】
図示される例では、KA1とKA2は40%異なる。本発明の範囲内で、少なくとも20%の差が好ましく、更に少なくとも30%の差が特に好ましいことに注意すべきである。主フェーズHPの強度分布は
図4a、
図4bの図にすでに示されたことに注意すべきである。
【0069】
図6は、本発明による方法を用いて溶接されたワークピース17を示す。ワークピース17は、ベース部品20として、電池の角柱セルの蓋20aを備え、この蓋の上に、Alで作られたフォーク状のソフトコネクタ21bとして形成されたカソード21aが第1のコンポーネント21として、及びCu合金で作られた、同様にフォーク状のソフトコネクタ22bとして形成されたアノード22aが第2のコンポーネント22として本発明による方法を用いて溶接された。それに加えて、ここでは蓋20aにカバー33も取り付けられている。
【符号の説明】
【0070】
1 出力レーザビーム
1a 第1部分(出力レーザビーム)
1b 第2部分(出力レーザビーム)
2 後のファイバ端
3 マルチクラッドファイバ
4 光学ウェッジ
5 コアファイバ
6 リングファイバ
7 前のファイバ端
8 レーザビーム
8a コリメートされたレーザビーム
8b 反射されたレーザビーム
9 コアビーム
10 リングビーム
11 外被層
12 別の外被層
13 スキャナ光学系
14 コリメートレンズ
15 スキャナミラー
16 集束レンズ
17 ワークピース
18 表面(ワークピースの、レーザビームに面する)
19 レーザスポット
20 ベース部品
20a 蓋
21 第1のコンポーネント
21a カソード
21b ソフトコネクタ
22 第2のコンポーネント
22a アノード
22b ソフトコネクタ
23 レーザビームの経路
24 溶融フロント
25 溶融フロント
26 可変分割装置
31 第1の溶接ゾーン
32 第2の溶接ゾーン
33 カバー
34 集束レンズ
AP 初期フェーズ
ARFD 外側のリングファイバ直径
ARSD リングビーム外径(焦点面)
EP 最終フェーズ
ET 溶け込み深さ
FE 焦点面
GD 総直径(焦点面)
HP 主フェーズ
I 強度
ILB 強度ギャップ幅
IRFD 内側のリングファイバ直径
IRSD 内側のリングビーム直径(焦点面)
KA コア部分
KA1 第1のコア部分(第1溶接ゾーンのコア部分)
KA2 第1のコア部分(第2溶接ゾーンのコア部分)
KFD コアファイバ直径
KSD コアビーム直径(焦点面)
MSD 外被層の厚さ
SA ビーム伝播方向
t 時間
VR 移動方向
x 方向
y 方向
z 方向
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(17)をレーザ溶接する方法であって、
レーザビーム(8)がスキャナ光学系(13)によって前記ワークピース(17)に向けられ、
前記レーザビーム(8)により任意の順序で、少なくとも第1のコンポーネント(21)が第1の溶接ゾーン(31)においてベース部品(20)に溶接され、第2のコンポーネント(22)が第2の溶接ゾーン(32)において前記ベース部品(20)に溶接され、
前記第1のコンポーネント(21)と前記第2のコンポーネント(22)とは、少なくとも前記第1の溶接ゾーン及び前記第2の溶接ゾーン(31、32)の領域において異なる材料からなる、方法において、
前記レーザビーム(8)のレーザエネルギーが、少なくとも前記レーザビームのコアビーム(9)に対応するコア部分(KA)と、前記コアビーム(9)を囲むリングビーム(10)に対応するリング部分との間で変更可能に分割され得ることと、
前記コア部分(KA)と前記リング部分とへの前記レーザエネルギーの分割が前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接の場合と前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接の場合とで異なるように選択されることと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接の場合と前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接の場合とで、前記ワークピース(17)に対する前記スキャナ光学系(13)の位置が同じままであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接中及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に時間的に平均して、前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、前記コア部分KA1に、
0%≦KA1≦60%、好ましくは20%≦KA1≦50%が適用されることと、
前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に時間的に平均して、及び/又は主フェーズにおいて、前記コア部分KA2に、
40%≦KA2≦100%、好ましくは50%≦KA2≦70%が適用されることと
を特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコンポーネント(21)が、少なくとも前記第1の溶接ゾーン(31)の領域においてAl又はAl合金からなり、前記第2のコンポーネント(22)が、少なくとも前記第2の溶接ゾーンの領域においてCu又はCu合金からなることを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークピース(17)が電池の一部材であり、特に前記電池の角柱セルの蓋(20a)であることと、
前記第1のコンポーネント(21)が前記電池のカソード(21a)を形成し、前記第2のコンポーネント(22)がアノード(22a)を形成し、特に、前記第1のコンポーネント(21)と前記第2のコンポーネント(22)がそれぞれ、前記角柱セルのフォーク状のソフトコネクタ(21b、22b)として形成されていることと
を特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶接ゾーン(31)を溶接する場合、及び/又は前記第2の溶接ゾーン(32)を溶接する場合、初期フェーズ(AP)中に前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が増加する、及び/又は最終フェーズ(EP)中に前記レーザエネルギーの前記コア部分(KA)が減少することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザビーム(8)を生成するために、可変分割装置(26)を用いて出力レーザビーム(1)を前記コアビーム(9)と前記リングビーム(10)とに分割することを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記可変分割装置(26)を用いて、前記レーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分により、前記出力レーザビーム(1)がコアファイバ(5)と、前記コアファイバ(5)を囲むリングファイバ(6)とに供給され、特に、前記可変分割装置(26)が移動可能な光学ウェッジ(4)を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記可変分割装置(26)を用いて、前記出力レーザビーム(1)が前記レーザエネルギーの所望の分割に従って対応する部分によりDOE又はROEの傍らを通過し、前記DOE又はROEを通り抜け、特に前記DOE又はROEが移動可能であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビーム(8)を生成するために、前記コアビーム(9)が第1のレーザモジュールにより生成され、前記リングビーム(10)が第2のレーザモジュールにより生成され、前記第1のレーザモジュールの出力及び前記第2のレーザモジュールの出力が可変に調整可能であり、特に、前記第1のレーザモジュールが、第1のプリレーザビームをコアファイバ(5)に供給し、前記第2のレーザモジュールが、第2のプリレーザビームを前記コアファイバ(5)を囲むリングファイバ(6)に供給することを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’に、
1/10≦KSD’/ARSD’≦1/2、
好ましくは1/3≦KSD’/ARSD’≦1/5、
特に好ましくは、KSD’/ARSD’=1/4が適用される
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の溶接ゾーン(31)及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に、前記レーザビームに面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’が一定のままであることを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記スキャナ光学系(13)が3Dスキャナ光学系として形成されていることと、前記第1の溶接ゾーン(31)及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接中に、前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)において測定される、前記コアビーム(9)の直径KSD’及び前記リングビーム(10)の直径ARSD’を、前記3Dスキャナ光学系を用いて焦点位置を前記レーザビーム(8)の伝播方向(SA)に変化させることによって変更することとを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶接ゾーン(31)及び/又は前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接時に前記レーザビーム(8)が焦点面(FE)にある場合、
前記コアビーム(9)がコアビーム直径KSDを有し、前記コアビーム直径内に前記コアビーム(9)のレーザ出力の86%が存在し、
前記リングビーム(10)が外側のリングビーム直径ARSDを有し、前記外側のリングビーム直径内に前記リングビーム(10)のレーザ出力の86%が存在し、
前記リングビーム(10)が内側のリングビーム直径IRSDを有し、前記内側のリングビーム直径において、前記外側のリングビーム直径ARSDに存在するのと同じ、前記リングビーム(10)の円周にわたって平均した放射密度が存在し、その結果、前記内側のリングビーム直径IRSDと前記コアビーム直径KSDとの間に強度ギャップ幅ILB=(IRSD-KSD)/2の強度ギャップが生じることと、
ILB≦0.3*KSD及びILB<10μm*AVであり、ここでAVが前記スキャナ光学系(13)の結像比であり、
特に、前記レーザビーム(8)が、光ファイバケーブル(3)のファイバ端(7)に提供され、前記光ファイバケーブル(3)が、少なくとも、コアファイバ直径KFDを有するコアファイバ(5)と、前記コアファイバ(5)をリング状に囲み、外側のリングファイバ直径ARFDを有するリングファイバ(6)と、コアファイバ(5)とリングファイバ(6)との間に位置し、前記コアファイバ(5)を囲み、外被層厚さMSDを有する外被層(11)とにより形成され、ここでMSD、MSD≦0.3*KFD及びMSD<10μmであることと
を特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶接ゾーン(31)の溶接及び前記第2の溶接ゾーン(32)の溶接が、
溶け込み深さETに100μm≦ET≦5mmが適用され、及び/又は
生成される溶接シームの深さTと幅Bとのアスペクト比T:BにT:B≧0.5:1が適用され、及び/又は
シングルモードでは前記レーザビーム(8)のビームパラメータ積に0.38mm*mrad≦SSP≦16mm*mradが適用され、好ましくはSSP≦0.6mm*mradであり、又はマルチモードでは、SSP≦100mm*mradが適用され、好ましくはSSP≦32mm*mradであり、並びに/或いは
シングルモードでは前記レーザビーム(8)に面するワークピース表面(18)における前記レーザビーム(8)の総直径GD’に10μm≦GD’≦300μmが適用され、好ましくは30μm≦GD’≦70μmであり、又はマルチモードでは50μm≦GD’≦1200μmが適用され、並びに/或いは
前記レーザビーム(8)が、800nm≦MWL≦1200nm、好ましくは1030nm≦MWL≦1070nmの中波長MWLの少なくとも1つのIRレーザ、或いは特に400nm≦MWL≦450mm又は500nm≦MWL≦530mmの中波長MWLの少なくとも1つのVISレーザにより生成され、並びに/或いは
前記スキャナ光学系(13)が、1:1≦AV≦5:1、好ましくは1.5:1≦AV≦2:1の結像比AVを有する
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項17】
電池の角柱セルであって、蓋(20a)と2つのフォーク状のソフトコネクタ(21b、22b)とを備え、請求項
1又は2に記載の方法を用いて、第1のコンポーネント及び第2のコンポーネント(21、22)としての前記ソフトコネクタ(21b、22b)がベース部品(20)としての前記蓋(20a)に溶接されている、角柱セル。
【国際調査報告】